P「流れているんです、愛さえ友情さえ……!」 (373)


未央「つっかれたーーーー!」

凛「今日は快眠出来そうだよね……」

卯月「でも、楽しかったですね……」

凛「……うん」

未央「私達も、美嘉姉みたいなライブをするんだよ」

未央「何せ、決まったんだもん、CDデビュー!」

未央「いやー、ここまで下積みコツコツやってきてよかったよーホント」

卯月「あ、あんまり下積みはしてないような……」

未央「ま、それもこれも実績を上げたからってやつ?」 フフ

凛(スレが変わったからって成績捏造する気だ……)


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1429885341


【注意】

・このスレッドは、
卯月「心に愛がなければスーパーアイドルじゃないんですよ……!」
卯月「心に愛がなければスーパーアイドルじゃないんですよ……!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1421/14215/1421502668.html)
のパートスレです(2スレ目)

・アニメ序盤時のプロットなので、アニメ設定に沿いつつも所々矛盾する世界観です

・誤字や物理法則や投下ペースの遅さについては「だってゆでだから」の精神で暖かく見守っていただければと思います


<島村家>

卯月ママ「卯月ー、昨日のケーキ残ってるけどー?」

卯月「食べるー!」

卯月ママ「ふふ」

卯月ママ「はい、全部食べちゃって」 ドカ

卯月「さすがにまだ無理かなっていうかウエディングケーキサイズで発注してるせいで3日くらい毎食ケーキだよママ」

卯月ママ「だっておめでたいことだし……」

卯月ママ「それに、ほら、ゲン担ぎよ」

卯月ママ「売れ残るような負け犬にならないようにっていう」 グッ

卯月(ママが最近同窓会に呼ばれてない理由分かった気がする……)


<渋谷家>

凛「ハナコ……いってくるね」

ハナコ「キャインキャイン」 BHガブー

凛「……」

凛「あのさ」

凛「店、あんまり手伝えなくなるかも」

凛「CDデビュー、決まった」

凛父「……そうか」

凛父「お前は気にするな」

凛父「店くらい、なんとでもなるさ」

凛父「凛が宣伝してくれれば、当分は安泰だしな」

凛「……うん」

凛父「これからは相手を植木鉢で殴るときは植木鉢に店の名前を書いたシールを貼ってカメラに映るようにだな」

凛「それは絶対にイヤ恥ずかしい」


<未央の通う学校>

同級生壱「本田マジかよーーーーーっ!」

同級生弐「すごーい、絶対ライブ行く!」

同級生参「この世紀の大イベント、女房を質に入れてでも見に行かなくちゃいけないぜーーーーーっ!」

未央「ありがとー」

未央「ってぇ、まだライブあるかわかんないんだけどー」 ムフー

同級生肆「そんなわけあるかーーーっ! あの346プロがライブをしないわけないだろーーーっ!」

同級生伍「おうともーー! 折角だから横断幕を作ろうぜーーーーーっ!」

同級生陸「そうだーーーっ! 私もその意見に賛成だーーーーっ!」

未央「いいねえ~! どうせなら冥王星まで届くようなでっかいの作ろう!」

同級生漆「シャババババーー! 自分で作ってどうするのだ同士よーーーーー!!」

未央「いっけねーwwwwww」

HAHAHAHAHA


<プロダクション>

ちひろ「随分、思い切りましたね」

P「……少し早い気もします」

P「が、本田さん達をイメージした曲を書いていただけるのは、チャンスですし……」

偉そうなジジイ「あんな忙しい人に頼めるなんてラッキーだよ」

偉そうなジジイ「確かに、あの三人はよかった」

P「元々、二人と……三人とも、以前のトーナメントで346のファンには存在感をアピールしていました」

ちひろ(気を使う必要ないんじゃあ)

P「そこにきて、城ヶ崎さんのライブでのあの扱い」

P「ライブに出たことで、多少は三人も知られましたし……」

P「タイミング的には、今かと」

偉そうなジジイ「……忙しくなるね」

偉そうなジジイ「レコーディングにスパーリングにライブ……」

偉そうなジジイ「会社も期待しているよ」

P「……はい」

P「この好機に、全てをひっくり返します」

P「346プロの、勢力図を……」 ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨


<レッスン場>

未央「ライブ……」

卯月「できるんですかッ!?」

P「……はい」

P「CD発売イベントのミニライブですが」

みく「実はそのライブではスペシャルゲストとしてみくが出ていって、デビューアルバムの発表が」

P「……一つの意見として真摯に受け止め、上に進言してはみます」

凛「かつてないほど困ったような顔をしている……」

みく「えっ、みくのデビューそんなに絶望的なの」

P「……現在、企画中です」

みく「ちくしょーーーー!」

未央「あっ逃げた」

凛「どうせほっといてもデビュー権を賭けて勝負とか言ってきそうだし、話し進めていいんじゃないかな」

未央「良くも悪くも完全に慣れてきたよねこのプロジェクトに」


みく「ちょっと待つにゃーー!」

凛「二分も経たずに戻ってきた……」

未央「レッスンしなよ」

みく「うるさーーい!」

みく「新入りが先にデビューだなんて、やっぱり納得いかないにゃ!」

みく「みく達と勝負にゃ!」

みりあ「にゃー!」

莉嘉「にゃー!」

P「……」

みく「ルールは簡単!」

みく「好きな所に剣を刺して、先に黒ひげを飛ばしたら負けにゃ!」

みりあ「負けないよー!」

莉嘉「先手あげるし、好きなとこから刺しちゃっていーよ」

凛「えっと……じゃあ右目で」

みく「私のじゃなくて樽の好きな所に」


凛「でも、何で飛ばしたら負けなの?」

莉嘉「ああ、それは――」

カチッ

ズドン

ニャッ

凛「なんかロケットみたいな勢いで黒ひげが空に登っていったけど」

莉嘉「試しにエンジン詰んでみたんだ」

未央「黒ひげごと天井に突き刺さってる……」

みりあ「うわー、みくちゃんぱんつまるみえー」

莉嘉「可哀想だし下ろしてあげよっか」

凛「ぱんつ以前に大惨事だよ」


未央「見るからに負けネコ状態だし、これで私達のデビューを認めるよね!」

莉嘉「あ、別にみくちゃんとはチームでもなんでもないから!」

みりあ「みりあ達はまだ負けてないよー」 フフー

未央「そうきたか……!」

凛「子供って残酷……!」

卯月「あ、あはは……」

莉嘉「次は私と闘虫で勝負!」

卯月「わあ、カブトムシ……!」

凛「ガンガン壁にタックルで穴開けてるんだけど」

莉嘉「大事に育てたこのタワーオブグレーちゃんは、飛行機だって落とせるからね!」 ムフー

凛「大理石に穴が開いてる……」

莉嘉「虫持ってないなら生身で挑んできてもいいけど」

卯月「棄権します」 ガクガク


みく「莉嘉ちゃん達が勝ったし、みく達を、CDデビューさせるにゃ……」

凛「死にそうな顔して図々しいッ」

莉嘉「デビューしたーい!」

みりあ「かわいいうた、うたいたーい!」

P「ええと……」

トレーナー「こんなところにいたのか」

トレーナー「休憩とっくに終わってるぞ!」

トレーナー「何やってるんだ!」

みく「あ、す、すいません、天井に高速で突き刺さって首の筋肉が痛いのでちょっと医務室に……」

トレーナー「本当に何やってんだ」


<防音ルーム>

美波「あっ……んっ……ああっ……!」

美波「ああ~~~っ」

未央「おお、何かボイトレがエロい」

凛「これがオトナの魅力……」

未央「シンデレラプロジェクトにも、とうとうエロさ担当が加わったんもんなー」

未央「こりゃプロジェクトの先輩としてはうかうかしていられないね」

卯月「アイドルとしては、私達が大分後輩ですけどね」 フフ

トレーナー「はじめまして」

トレーナー「ボイスレッスン担当のトレーナーです」

未央「おおっ!? まさかの三つ子!?」

トレーナー「実はかつては六つ子で、それぞれ得意分野の時に入れ替わってテレビに出ていたんですよ」

未央「な、なるほどそんな方法が……」

トレーナー「ギャラの取り分で揉めたせいで、今では四つ子になってしまいましたけどね」

未央「二人は!? あとの二人はどうなっちゃったの!?」


みく「ああ、基礎練ばっかりにゃ……」

莉嘉「最近シャドーもスパーもないもんね」

みりあ「運動はしてるけど、踊ったりばっかりだよねー」

みく「いや、それはあるべきアイドルの姿な気がするけど、まあともかく……」

みく「やっぱりそろそろ一花咲かせないとマズイにゃ」

みく「ロリはともかく、アダルティーなのまできて、このままだとみくは深夜のお色気番組で乳をさらされるはめに……」 グヌヌ

莉嘉「また勝負にいこうよー」

みりあ「トランプしようよー、ねー」

みく「これは遊びじゃないにゃ」

莉嘉「じゃあチェーンソーデスマッチで負けた方が二度とステージに上がれないよう足を切るとか」

みく「遊びの要素もちょっとはあるから殺伐しすぎるのはなしにしよ」

みく(子供こわっ……)


みく「これはアイドル生命を賭けた真剣勝負なの」

ヘレン「アイドル生命~~~?」

ヘレン「まだアイドルっぽいこと全然していない井の中のオタマジャクシが何言ってンだか」

みく「出たな噛ませ犬」

ヘレン「噛むことも出来ない総入れ歯ネコが何言ってンだか」

莉嘉「……ヘレンちゃんはCD出したくないの!?」

ヘレン「……」

ヘレン「出したいわ」

ヘレン「だからこそ――あの娘達に挑んで勝っても無駄だと思っているからこそ」

ヘレン「自分に出来る方法で必死になってるのよ」

ヘレン「ただ漫然と突っかかるだけのお子ちゃまとは違うのよ」 フフン

ヘレン「精々そうやってお井戸の水でちゃぷちゃぷ遊んでなさい」 スタスタスタ

みく「……」

みく(このやり方じゃダメだってことくらい、みくだって……)


みく「たのもー!」

莉嘉「たのもー!」

みりあ「たのもー!」

凛「また来たんだ……」

みく「ふっふっふ」

みく「今回は、交渉に来たんだにゃ」

凛「交渉……?」

みく「そう、壁際で困った顔で愛想笑いを浮かべる美波ちゃんに!」

美波「えっ……」 ビクッ

凛(可哀想に、かかわり合いになりたくなかったんだろうな)


P「…………はぁ」 カツカツ

ガチャッ

みく「みく達のライブにようこそにゃ!」

P「……!?」

みく「ねっ、美波にゃん!」

美波「ええっ……と」

美波「す、好きにぷにぷにするにゃ!」

みく「そんでもってしれーーーーっとついてきてたヘレンにゃん」

ヘレン「NIKU-KYU気持ちEにゃ」 キリッ

P「……」

凛「プロデューサーがかつてないほど言葉に困ってる……」

ヘレン「ふっ……ようやく違う角度で攻めるっていうから、様子を見に来ただけよ」

卯月「あ、あはは……何も混ざらなくても……」

ヘレン「私だって、やれることならなんでもやるにゃ」

未央「ネコっていうかライオンだよねあの眼光……」


みく「これどう?」

みく「にゃんにゃんユニット、可愛いでしょ!?」

P「……」

ヘレン「あざとすぎるし、あまりにも短絡的ね」

みく「自分もノリノリでやっておいて!?」

ヘレン「否定するからには一回やってみようかなって思っただけよ」

みく「ひどいにゃ!」

ヘレン「折角のオトナの雰囲気を活かすなら、クールに行くべきでしょう」

ヘレン「ワールドワイドにいきましょう」

ヘレン「そう、コンセプトはヌーディスト・ビーチ!」

みく「放送コーーーード!!」


みりあ「ぬーでぃすとびーちってなに?」

莉嘉「んっとね、皆がおっぱい丸出しの海水浴場的な?」

みりあ「ええ~!? えっちー!」

莉嘉「まー、おねえちゃんならきっと毎年夏に行ってるだろうけどねー」

みりあ「すごーい」

莉嘉「一流アイドルなら、多分そんなの当たり前だよ」

みりあ「ふえー」

みりあ「じゃあ莉嘉ちゃんもぬーでぃすとびーちするの?」

莉嘉「いやいや、私はそれよりこっちの方がいいと思うよー」

莉嘉「日本を感じるモミジのしたで、アメリカ人も驚くボディでこう言うの!」

莉嘉「一緒に可愛いシールを見ようって」

莉嘉「そしてジャパニーズ制服をたくしあげて、互いのシールを見つめ合いながら、なんちゃらなんちゃらって愛を囁き合うの」

みく「なんちゃらなんちゃらって何にゃ!!」

莉嘉「放送禁止用語だよ」

みく「!?」


P「あの、この騒ぎは一体……」 オズ・・・

卯月「えっと……」

卯月「ユニットデビューが最近の主流だから、美波さんと一緒に誰か一人くらいはデビュー出来るんじゃないかって……」

未央「まったくおこぼれでデビューしようなんてさもしいよね」

凛「……」

未央「言いたいことがあるなら言いなよ」

凛「オトナだからグッと堪えるよ」


みりあ「ねえねえ、プロデューサー!」

みりあ「あたし、楽しいユニットがいいなー!」 キャイキャイ

ヘレン「……」

ヘレン「まあ、いいんじゃないかしら」 ナデ

みく「くっ、無邪気なガキに甘い奴め」

ヘレン「一生懸命かつまともな方向性だもの」

P「……」

P「新田さんは、確かにタッグの方が映えると思います」

みりあ「!」

みく「!!」

ヘレン「!」

P「ですが……」

P「申し訳ございません。今は、前川さん達と組ませる予定はありません」

みく「なっ……!」

みりあ「……」

莉嘉「……」


<数時間後、レッスンルーム>

未央「……でも、ちょっと可哀想だよね」

凛「……まあね」

凛「プロデューサー達も、色々大変なんだろうけど」

未央「私らは、運が良かったのかもね」

卯月「……うん」

バン!

鈴帆「大変ばーーーーい!」

卯月「きゃあっ!?」

凛「な、なにその格好は……」

鈴帆「ビッグオ……いや、それどころじゃなか!」

鈴帆「立てこもり事件ばい!」

凛「はあ!?」


卯月「ど、どうしてそんな……」

鈴帆「さあ……」

鈴帆「何でも主犯は前川みくで、赤城みりあや城ヶ崎莉嘉も共犯らしか」

凛「はあ?」

未央「何だいつものかー」

鈴帆「いやくつろいどるけど、マジでカフェを乗っ取っとるからねあの娘ら」

卯月「でも、いったい何で……」

鈴帆「何でも彼奴ら、カフェ解法の条件として、CDデビューを約束させようとしてるんだとか……」

凛「なんて強引な……」

鈴帆「あと、ヘラクレスオオカブトとかお菓子とか、手当たり次第要求しとるみたいでな」

鈴帆「交渉は難航しちょるらしい」

未央「はっはっは、大変だなー」

鈴帆「あと本田未央の首も要求されたものリストに入っちょるのう」

未央「!?」


<346カフェ>

菜々「あのぉ……困るんですけど……」

みく「オーダーは?」

菜々「え、ええと……」

菜々「アイスティーひとつ」

みりあ「ガムシロップとかいるー?」

菜々「あ、はい」

菜々「アイスティーガムシロスクナメヤサイマシマシニンニクカラメです」

みく「野菜!? それ絶対アイスティーとしておかしいよ!?」


未央「はあ、はあ……」

ヘレン「あら、貴女達も来たの」

卯月「あの、みくちゃん達は……」

ヘレン「あのバカ、カフェを占拠してくれちゃって」

ヘレン「おかげで私のアイスティーがこんな有り様になってしまったわ」

卯月「!」 ビックゥ

未央「かつてないほどの怒りの形相……」

凛「グラスにやばいくらいの野菜と脂が浮いてる……」

鈴帆「……」

ヘレン「あの糞猫、あとでしこたまぶっちめる」

未央「お、鬼の形相……」

鈴帆(トイレ行くから頼んでおいて、ってのがフリだと思ってウチが頼んでおいてたことは黙っとくばい……)


未央「えー、君たちは完全に包囲されている!」

未央「おとなしく投降しろー!」

莉嘉「しないもーん!」

ヘレン「狙撃準備もできてるわ」

卯月「も、モデルガンですよね!?」

未央「いや本当におとなしく投稿した方が身のためっぽいよ!?」

ヘレン「大丈夫、ちょっと改造してるだけのおもちゃだから、精々額に穴が空くだけよ」

卯月「十分すぎる威力ですよ!?」

ヘレン「大丈夫。友人に元軍人がいるから、きちんとヘッドショットも出来るわ」

凛「何がどう大丈夫」

未央「実家のお母さんが泣いてるぞー!」

ヘレン「どうせ親御さんは泣いてるし、棺桶の傍で泣いても変わらないか……」

未央「み、美嘉姉も泣くぞ~!」

未央「少なくとも撃たれたら絶対泣くぞーーーーー!!」


莉嘉「ええ!?」

莉嘉「じゃあ辞める……」

みく「!?」

みく「そ、それでいいの!?」

みく「莉嘉ちゃんはCDを――」

莉嘉「出したいけど……」

莉嘉「一番は、おねえちゃんの横で一緒に笑いたいからだったし」

莉嘉「お姉ちゃんが悲しんだら、意味ないもん」

みく「うぐっ……」

莉嘉「……どうする? 一緒に降伏する?」

みりあ「……」

みりあ「そうする」

みく「にゃあ!?」

みりあ「みりあ達がこうしてると、困る人がいっぱいみたいだし」

みりあ「みりあもお歌は出したいけど……」

みりあ「楽しいアイドルがやりたいんだもん」

みりあ「皆が楽しくないことをしちゃ、ダメだよね……」

みく「う、うううう……」

みく「それでもみくは!」

みく「一人でも抵抗を辞めないにゃあ!」


みく「例え最後の一人になっても、みくは絶対に諦めないにゃ!」

未央「もー! みくにゃんも諦めよーよ!」

凛「デビューのことは、プロデューサーに相談を――」

みく「……したにゃ」

みく「何度も……」

みく「でもダメだった!」

みく「なんで!?」

みく「なんでダメなの!?」

みく「みく達も頑張ってるのに……何で!?」

みく「レッスンだって頑張って、小さなお仕事も汚れ仕事も頑張ってきた!」

卯月「みくちゃん……」

みく「なのにほっとかれて、気がつけば負けるのが芸風みたいな扱いをされていて!!」

みく「耐えてればきっと何かが返ってくると信じたかったのに!」

みく「得られるものは負け犬ネタキャラの地位ばっかりで!」

未央「なんだろう、他人ごととは思えない……」


みく「もっと頑張ればいいの? もっとってどれくらい?」

みく「わかんないよ……」

みく「みくはもう頑張れない!」

みく「何も信じられないよ!!」

P「前川さんッ!」 バッ

みく「――――っ!」

P「前川さんを不安にさせたことは誤ります」

P「ですが――」

みく「うるさいうるさいうるさい!」

みく「言い訳なんて聞きたくないにゃ!」

みく「そうやってズルズル飼い殺されるくらいなら、さっさとトドメでも刺してくれてたらよかったのに!」

P「前川さんっ!」

凛「プロデューサーの説得も届かないなんて……」

未央「そもそも説得が耳に入っていないんだ」

未央「プロデューサーってだけで、存在そのものを拒もうとしている……」

卯月「……」

卯月(皆、困ってる……)

卯月(このままで、いいわけないよ……)

卯月(みくちゃんも、プロデューサーさんも……)


卯月「荒木さん、このインクは黒ですね?」

比奈「え、ああ、そうっす」

比奈「カフェで描いてた漫画のベタに使う用だったんで……」

ビリィ

凛「っ///!?」

未央「ちょ、どしたのしまむー!?」

P「島村さん!?」

P(アイドルにとって衣服は命とも言えるくらい大切なもの)

P(ましてや女性である時点で衣服を破くのは勇気がいるというのに……)

P(それを破ってしまうなんて……)

バシャッ

ヘレン「!?」

鈴帆「おお、今度はインクに浸したと!!」

卯月「プロデューサーさん……これを!」

バサァ

P「こ、これは……」

菜々「な、なぁに!? あれって牧師の格好じゃ……」

比奈「そんな格好をさせて一体どうしようっていうんスか!?」

凛「……」

凛「そうか!」

凛「346プロ関係者ならみくちゃんを刺激するかもしれないけど」

凛「神の使いである牧師なら、みくちゃんも気をゆるしてしまう!!」

未央「し、しかも今のみくちゃんは心情をぶちまけたい気分!」

未央「懺悔慣れした牧師様は受け入れたくてしょうがないはず!!」

未央凛「「なんという冷製で的確な判断力なんだ!!」」


P「あ、あの、さすがにこれは……」

卯月「プロデューサーさん……」

卯月「お願いです」

卯月「みくちゃんと、話し合って、二人とも納得して346カフェを出てきてくださいっ」 キラキラ

凛「うん、あとは託したよ、プロデューサー」

未央「やってくれるって信じてるからねっ!」

P「……」

P「一応、行ってはみますが……」

P「……」

P「あ、あの、私は神の使いなのですが、カフェに入れてはくれないでしょうか」

みく「ふーむ……」 ジロジロ

P「……」

みく「……」 ジロジロ

P「……」 ダラダラ

みく「神の使いである牧師さまの言うことだし、信用してもいいにゃ」

P「えっ」

みく「……えっ、って何にゃ」

P「いえ……何でも……」


P「前川さん」 バッ

みく「ゲエーーーーーーーーーッ、Pちゃん!!」

みく「みくを騙したにゃ!?」

P「そ、そういうわけでは……」

みく「もう何も信じないにゃ!」

みく「牧師様ですらみくをだますし……」

みく「こうなったらもうネコとみくだけが救われる全く新しい宗教を立ち上げるしか……」

P「そ、それはちょっと……」


みく「それで、何しにきたにゃ!」

みく「説得か!? それとも無理矢理終わらせにでもきたのかにゃ!?」

P「いえ……」

P「今回のことで……前川さんの胸の内を知れましたし、そのご不安はもっともだと思います」

P「ですので――」

P「ありのままの真実を、お伝えさせていただこうと思いまして……」

みく「!」

P「ただし――他言無用でお願いします」

みく「……」 ゴクリ


<346カフェ前>

菜々「ああっ、見てください!」

未央「おお! さすがプロデューサー!」

凛「しっかり説得させるなんて……」

菜々「若いっていいですねえ」 シミジミ

菜々「暴走も、ごめんなさいで済むことも、オトナになるとありませんしねえ」

ヘレン「設定崩れてるわよ」

菜々「……と、いうようなことを、居酒屋でサラリーマンのおじさんが言ってるのを聞いたよ★」

鈴帆「設定でいうなら酒は飲むなよ……」


みく「……卯月ちゃん」

卯月「ふえ?」

みく「反省文を書かされる前に、一つだけ言っておくにゃ」

卯月「???」

みく「ライブ、みくたちの分まで頑張るにゃ」

みく「……」

みく「今の346プロの行く末は――」

みく「皆の出す結果に大きく左右されるにゃ」

卯月「!」

みく「詳しくは言えない」

みく「けど……」

みく「羨ましくてしょうがないほどの大任は、任せてやるにゃ」

卯月「……はい」

卯月(声援に答えられるよう、頑張らないと……!)

凛「と、とりあえずカッコいい表情するならスカートを履こ///?」

アホほど眠たいし、一区切りついたので、本日の投下は異常とさせていただいます
スレタイは表記をモバPにするっての知らなくて申し訳なかったぜ。

皆様意見ありがとうございます。
とりあえずこのスレをサクサク進めてアメリカ遠征編で一旦完結、次を建てるときは気をつけたいと思います。
今後スレタイにPを使うときはモバP表記をさせて頂きます。


【数日後】

未央「うーん」

未央「なんか、こう、アイドルになったーって実感がわいてきた……!」

凛「レコーディング、やっぱりちょっと緊張するね」

卯月「つ、次は取材ですよ取材」 カチンコチン

未央「かったいなーしまむー」

未央「そんなだから、リーダー交代になるんだよー」

卯月「うう……」

凛「まあ、緊張しいだし、大会優勝の影響で忙しかったもんね」

凛「その点未央なら時間もあってニュージェネレーションの告知に力注げるし、この役割交代は前向きでよかったと思うよ」

未央「まー、いずれ私が多忙になってもリーダーは返さないけどねー」 フフン

凛「まあ、ニュージェネレーションが売れてきたら事務処理とかも増えるもんね」

未央「リーダーっていうか裏方させるつもりだよねそれ」


記者「じゃあ、お一人ずつCDデビューへ向けてのコメントを頂けますか」

卯月「はいっ!」

卯月「島村卯月ですっ!」

卯月「とにかくがんばります!」

凛「渋谷凛です」

凛「んー……」

凛「まだ実感ないけど、がんばります」

未央「リーダーの本田未央です!」

未央「リーダー的には、皆に、私達のCDをいっぱい聴いてほしいです!」

未央「リーダー的にライブもいっぱいやりたいし、ファンイベントなんかもリーダーとしては欠かせないですし!」

未央「あと、やっぱりリーダーの立場から言えばテレビの歌番組とか……」

凛(そんなにリーダーにしてもらったのが嬉しかったんだ……)

未央「ああ、あとバラエティとかも楽しそうだし!」

凛(未央がそういうとお笑い路線になりそうで不安だ……)


未央「あー緊張したー」

卯月「興奮しすぎてすごい顔になってましたもんね」

凛「世紀末リーダーみたいな感じになってたよ」

未央「そういうしまむーだって、今にも漏らしそうなくらい緊張してたじゃんかー」 ムー

卯月「も、もももらしてなんか……」 アワアワ

凛「でも、ああいうときって、どんなこと喋ったらいいのかな」

卯月「うーん……」

未央「私は、もっといっぱい喋りたかったなあ」

凛「いや、十分喋ってたと思うけど……」

凛「アレ以降質問内容に『一言』って枕詞が付くようになったし」

卯月「頼もしかったです、さすがリーダーです!」

未央「ほんと!?」

未央「私がリーダーだし、たくさん喋んなきゃーって思って」

凛(リーダーというより広報部長……)

未央「でも、なんか地味じゃない?」

未央「なんか、こう、もっと、ばーーーんって、派手に記者会見やると思ってた……」

未央「折角泣きながら会見するモノマネ練習してたのになぁ……」

凛「ファラオの人とつるむのやめなよ。方向性感染しつつあるよ」


卯月「でも、最初はこんな感じなんじゃないですかね」

凛「多分……」

未央「うーん、とりあえずみなみんのインタビュー覗いてみよっか」

卯月「ですね」

凛「時々思うけど、変な所でアクティブだよね卯月も」

未央「そう言いながらちゃっかり付き合うしぶりんもね」 ガチャッ

美波「はい」

美波「プレッシャーもなるべく楽しむようにして、ミニライブでは皆さんの期待に応えるようにしたいとおもっています」

凛「おお、優等生……」

卯月「恥ずかしさや緊張も楽しんで、期待にこたえる、かあ……」

未央「何か特殊なプレイみたいだね」


卯月「オトナの記者が相手なのにすごいです!」

凛「うん、オトナーって感じだった」

未央「クラスの男子がよく見てるDVDの冒頭インタビューも真っ青な貫禄だったよ!」

美波「ふふ……」

美波「これでも緊張して腰がガクガク震えてたの」

美波「それでも練習していたから……」

未央「練習?」

美波「しっかりと想いは伝えたいから……」

卯月「練習……」

凛「私達もやればよかったかな」

未央「私はちゃんと練習してたのになぁ」

凛「宴会芸をな……」

未央「貴方にはわからんでしょうねェ!!」

凛「ちょっと似てるのがムカつく」


未央「まあ私達はその分ミニライブを盛り上げよう!」

未央「美嘉姉のバックで踊った経験を活かして、リーダーの私がちゃんと仕切っちゃうよ!」

美嘉「お、いたいた」

未央「美嘉姉!」

凛「噂をすればなんとやら、かな」

美嘉「うーっす」

美嘉「きいたよー」

未央「早めのパブロン?」

美嘉「違うよ! それをわざわざ報告するシチュエーションってそんなにないからね!?」

美嘉「CDデビューのこと!」

美嘉「やったじゃんって言おうと思ってさ」

未央「えへへー」

卯月「ありがとうございます!」

美嘉「しかも発売イベントまで!」

美嘉「美波もよかったねー」

美波「ありがとうございます」

美嘉「ホントよかった。発売イベント、ソフマップとかになるんだろうなあって思ってただけに」

美嘉「あれ結構くじけるから、美波の発売記念イベントがいい場所でのミニライブで本当によかったよ」 ウンウン

美波「あ、ありがとうございます……?」


美嘉「それにしても……イベント、歌もやるんでしょ?」

美嘉「ちゃんとレッスンしてる~?」

未央「ふっふっふー」

未央「ばっちし!」

美嘉「へえ、緊張してるかと思ったら、意外と余裕なんだね」

卯月「そ、そんなこと……」

未央「心配いらないって、しまむー!」

未央「なんたって、美嘉姉のバックですごいステージを体験しちゃったもんね!」

未央「最後には一緒に踊ってた皆にも認めてもらえたし!」

凛「まだまだ、とも言われたけど……」

凛「でも、レッスンはしっかりやってるしね」

美嘉「うんうん」

美嘉「アンタ達なら、やれると思うよ!」

美嘉「本番に強いのは、アタシが一番良く知ってるし!」 グッ

卯月「……!」 パァ


<レッスン>

トレーナー「ワンツースリーフォー」 バンバン

トレーナー「ファイブシックスセブンエイト」 バンバン

トレーナー「いいぞ、本田はそのままフォールしろ」

トレーナー「渋谷は小さくまとまるな」

トレーナー「もっとダイナミックに!」

トレーナー「島村は今のところいつも引っかかるぞ!」

トレーナー「気をつけろ!」

卯月「……はいッ!」

卯月(不安は、ある)

卯月(本番でも失敗しないか、正直不安)

卯月(でも……)

卯月(それを吹き飛ばして、成功するためにも、がんばらなきゃ……!)


卯月「今日もいっぱい怒られちゃった……」

卯月「もっといっぱい頑張らないと」

未央「うん、がんばろっ!」

コンコン

ガチャリ

P「お疲れ様でした」

P「汗を拭いたら、衣装室に行ってください」

P「リングコスチュームが、届いています」

卯月「……!」 パァァァ


<衣装室>

卯月「うわあ!」

卯月「凛ちゃんかわいいです!」

凛「……///」 テレッ

未央「ほっ!」 バッ

未央「うーん、ぱんつは見えないきっちりした作りになってる」

凛「思ったより動きやすいね」

卯月「はい!」

卯月「でも、ヒールでのダンスやストンピングは苦手なので、慣れないと……」

凛「うん、そうだね」

未央「この衣装を着て……」

凛「?」

未央「また、あのステージに立つんだよね」

未央「あの時みたいに……!」 ウットリ

凛「……うん」

卯月「緊張したけど楽しかった、あのライブのステージに、今度は私達が……」

凛「注目を浴びつつも肉弾戦に終始しちゃったあの決勝のステージで、歌って踊るだけなのかって思うと、緊張するね」

未央「しれっと私が味わってないステージ混ぜ込んでくるのやめてね」


卯月「どちらにしても、今度は私達三人で……」

凛「……うん」

未央「わくわくするよね……!」

コンコン

美波「失礼します」

美波「……わぁ」

未央「おお、みなみん」

未央「あ、そだ、どう、この衣装?」 ヒヒー

P「よく、お似合いだと思います」

未央「みなみんのは……」

凛「よくお似合い……というか……」

未央「すごく似合ってる……」

卯月「露出は全然ないし、コスプレっぽくもないのに……」

未央「なんだこの布面積にとらわれないセクシーさは」 グギギギギ


<その夜>

P「はい。当日の段取りは、進行表の通りでお願い致します」

P「はい」

P「それでは、失礼します」 ガチャッ

枕を受ける立場っぽいジジイ「どうかね」

枕を受ける立場っぽいジジイ「準備は問題なく進んでいるかな?」

P「はい」

枕を受ける立場っぽいジジイ「しかし、良い会場を抑えてくれたねえ」

枕を受ける立場っぽいジジイ「新人のデビューライブとしては、最高のステージだ」

P「私も、そう思います」

枕を受ける立場っぽいジジイ「デパートの屋上や水着でソフマップから始めるプロダクションとは違う……」

枕を受ける立場っぽいジジイ「傲慢な言い方になるが、そういうところを見せつけねばならない」

P「……心得ています」

枕を受ける立場っぽいジジイ「このプロジェクトが、君にとってもいい転機となってくれると、いいんだがな」

P「……はい」

枕を受ける立場っぽいジジイ「そして、346プロのアイドル部門にとっても――」


<本田家>

未央「6時だよ6時」

未央「来ないと絶対損するからね」

同級生壱『わかってるって』 フフ

未央「ああ、あと、魔王とムーミンにも声かけといて」

同級生壱『はいはい』

未央「来ないと絶対損するって言っておいてよー」

同級生壱『はいはい、大袈裟なんだから』 クス

未央「ホントだって!」

未央「こないと来週から毎朝上履き消えるし、絶対損だよ」

同級生壱『人為的に損を演出するのはやめとこ?』


未央「んじゃーねー」 プツッ

未央「これで全員かな~♪」

未央「いやー、これならチケットノルマとかあっても余裕だったなー♪」 フンフフーン

未央「……あ」

未央「……折角だから……」 ピポパポパ

とぉるるるるるるん

とぉるるるるるるん

ブツッ

凛『もしもし?』

未央「やっほー」

未央「なにしてるかなーと思って」

凛『そんな付き合いたてのカップルみたいな』

未央「今もじもじして電話機のコードをくるっくるしてるくらい恋しちゃってる、みたいな?」

凛『コードのついた電話機触れたことがない可能性すらある世代のくせに何いってんだか』

未央「じゃあコードの代わりに下半身をいじ」

ブツッ

ツー・・・ツー・・・

未央「切られた」


とぉるるるるるるん

とぉるるるるるるん

ブツッ

凛『もう、まだ何かあるの?』

未央「いやー、真面目な話、今なにしてるのかなーって」

凛『真面目なの、それ……?』

凛『まあ、とりあえず私は、今歌詞を見返してた』

未央「歌詞?」

凛『うん。ちょっと、気になる所があって……』

未央「あー、小さく前ならえでなんとなーくアルゴリズム体操を思い出すとかそういう?」

凛『全然違うしまた切っていい?』

未央「ごめんって」


未央「ああ、ユニゾンのとこかろあ」

未央「あ、待って!」

未央「それなら――」

卯月『ああ、それなら、確かに三人の気持ちを合わせた方がいいですよね!』

未央「うん、明日もう一度相談しよっか!」

卯月『はい!』

卯月『それじゃ、また明日!』

プツッ

未央「うーん、今の私リーダーっぽい!」

未央「このままニュージェネレーションズのリーダーとして、ライブを引っ張るぞー!」 オー!


<翌日>

卯月「……」 ブツブツ

未央「ねぇねぇ、出る時の合図、決めとこうよ!」

凛「え?」

未央「なま!はむ!めろん!とか」

凛「出づらいよ……」

未央「オレサマ! オマエ! マルカジリ!」

凛「出づらいっていうかほんとにやったら出禁まであるよ」

未央「とりあえず! そのへんで! だるま落としだ!」

凛「意味分からないし何を目指してるのチャンプ」

未央「こわれ! かけの! レディオー!」

凛「いいから早くオトナに変わりなよ」


未央「それじゃあ、皆乗りやすく緊張がほぐれるように、チッチ!チッチ!オッパーイ!」

凛「ボインボ……やらないから!」

未央「むー」

未央「ねえねえ、しまむーは――」

卯月「ワンツースリーフォー」 ブツブツ

未央「しまむー?」

未央「ただのカウントじゃ登場合わせしにくいよ?」

凛「いや、多分普通に話聞いてないだけだと思うけど」

卯月「わわっ、すみません!」

卯月「も、もう時間ですか!?」

未央「あ、いや……」

卯月「えっと、ラジオで国士でしたよねっ!?」

未央「告知だよしまむー!?」

凛「落ち着いて卯月! とりあえずその麻雀牌がくっついた棒状のものしまうか捨てるかしておこう!?」


<ラジオブース>

藍子「高森藍子の許不安タイム!」

藍子「今日のゲストは、CDデビュー間近・ニュージェネレーションズの皆さんですっ」

未央「せーロン」

卯月凛未央「「「こんにちは、ニュージェネレーションズです!」」」

未央「是非とも名前を覚えてもらおうと思ってやってきましたっ!」

藍子「それでは、早速おはがきを読んで頂いて……」

未央「はい!」

未央「えーっと、まずはおはがきを一通!」

未央「ラジオネーム・恋するウサミンちゃん17歳」

凛「……17歳?」

未央「まあラジオネームとはいえ、豪快に鯖読んだね」

凛「まあ、触れないであげた方がいいのかな。年齢的にも」

藍子「……」 オロオロ


未央「えーっと、『何故人を好きになるとこんなにも苦しいのでしょう』だってさ」

凛「歳だからじゃない?」

未央「まあ歳を取ると何でもないときに疲れてぜぇぜぇ言うようになるらしいしねえ」

凛「あと、年齢的に焦りも生まれるからだと思う」

藍子「え、ええと」 ハラハラ

未央「しまむーはどう思う?」

卯月「ふぁいっ!?」

凛「もう、何もそこまで緊張しなくっても」

未央「そーそー」

未央「シンプルな頭で聞けばいいんだよ」

未央「自称17歳のおばちゃんが人を好きになって苦しい想いをしています、どうしますか!」

卯月「え、ええと、is GAME OVER」

未央「おおう、あっさりばっさり切り捨てた」

凛「壊れかけたピンボールをレバー連打するみたいに、質問文が曖昧なままとにかく返事だけしなくちゃってなったことがよく伝わるね」

藍子「え、ええと、う、歌の方にいきましょう!!」


<その晩>

卯月「……っ」 ハァッハァッ

卯月「よし、もう一回……!」

未央「しまむー」

卯月「!?」 ビクッ

卯月「……未央ちゃん……」

卯月「凛ちゃん……」

凛「一人で練習してたんだ?」

未央「なんでー?」

未央「一緒にやればいいじゃん!」

未央「そうすれば成功の喜びは3倍になるし、悲しいことは1/3で済むよ!」

卯月「あ、その、私、いつも同じ所で失敗するから……」

卯月「次は迷惑かけないようにしようって……」

未央「だーかーらー」

未央「三人で一緒に練習しよ?」

未央「その方が絶対早いって!」

凛「うん。私もいるよ」

鈴帆「これが友情パワーばい」

未央「あ、ニュージェネレーションズの会合なので部外者の方はちょっと……」

鈴帆「ひどか!」

凛「むしろ何でしれっと混ざれると思ったんだろ……」


<???>

謎のアイドル「……」

謎のアイドル「次のスケジュールの、これ……」

謎のマネージャー「?」

謎のマネージャー「ああ、ニュージェネレーションズさんですね」

謎のアイドル「ニュージェネレーションズ……」

謎のマネージャー「ほら、以前ちらりとお話をした、大会優勝者の……」

謎のアイドル「……ふうん」

謎のマネージャー「気になりますか、橘さん?」

ありす「……別に」

ありす(……)

ありす(あの大会の……)

眠気の限界がきたので本日の投下を終了いたします

眠たいので少しだけですが投下します


<とあるマンションの一室>

楓「……」

楓(ラジオ、上手く回っている……)

楓(あの娘達が大きくなる日は近い)

楓「……」

楓(さすがはあの人のプロデュース、ね)

楓「私も……決着をつけなくちゃね……」

美波「あの……部屋を暗くして何を……」

楓「ムードは大事」

楓「蹴りをつけるといいけり、なんてね」 フフ

美波「……」


<リハ会場>

スタッフ「では、そんな感じで」

P「よろしくおねがいします」 ペッコリン

未央「ぐむ~っ」

P「?」

P「どうか、しましたか?」

未央「こんな感じなんだ……」

未央「人が止まったら、お店とか、通る人の邪魔になりそうだよね」

P「……?」

未央「私、結構友達に声かけちゃったけど、大丈夫かな?」

P「大丈夫だと思いますが……」

未央「え、ほんとに?」

未央「学年中に声かけまくったし昼の校内放送でも宣伝しまくったんだけど」

P「それで“結構”の範疇ですか……」


未央「うーん……」

未央「まあ、プロデューサーがそう言うならいいんだけど……」 スタスタ

P「……」

未央「でもなあ、やっぱり邪魔になると思っちゃうけどなあ」 スタスタ

P「……???」

未央「美嘉姉みたいに花火ブシャーってやったら向かいの洋服屋さんとか火だるまになりそうだしなあ」

P「それは本当に邪魔になるのでしないでください」


【本番、開演前】

未央「うん、うん」

未央「あと少しで開演だから、早く来てよ」

未央「はい、じゃーね」 プチッ

卯月「未央ちゃん、何人呼んだんですか?」

未央「とりあえずクラスの友達全員と、学校の人と、あと近所の人と……」

卯月「わあすごい」

未央「でももっと早く呼べばよかった……」

未央「立ち見だから、後ろの人見づらそうだよね」

凛「上の階もあるし、大丈夫じゃない?」

未央「でもさあ、折角来たのにちゃんと見れなきゃ勿体無いじゃない」

未央「しぶりんのパンチラとかさあ」

凛「しないから」

卯月「そうですよねえ……」

凛「そうですよねえじゃないから」


コンコン

美波「はい」

薫「きたよー!」 ガチャ

鈴帆「おっすおっす」

凛「あ、いらっしゃい」

薫「えへへー。応援にきちゃった」

鈴帆「前回は大挙して怒られたし、代表してエールをと思って動画用意したと」

未央「おお、みくにゃん」

凛「へえ、結構いい感じの先輩っぽいメッセージじゃん」

卯月「こういうの、嬉しいですよね!」

鈴帆「ちなみに後ろにチラッと映っちょる宇宙人からのメッセージばあるたい」

鈴帆「なんでも、ウサミンは本当にバリバリ若いんだから次にそういうのラジオで行ったら杵と臼で安倍川餅の具にすると」

未央「だってさ、しまむー」

卯月「ええ!? 私ですか!? 私は別にそんなひどいこと言ってないですよ!?」

寝落ち申し訳ない。
ちょっとだけ投下しておきます。


幼女「随分と、騒がしいですね」

未央「お?」

凛「知らない娘……」

未央「みなみんのお客さん?」

卯月「……ん?」

卯月「ゲェーーーーーッ! 橘ありすちゃん!!」

未央「知っているのしまむー!?」

卯月「聞いたことがあります……」

卯月「今346が売り出している最もバブル状態なのが橘ありすちゃんだと……」

凛「へえ、すごい娘なの?」

凛「前の大会じゃ見なかったけど……」

ありす「大会に出られるのは、仕事がなくて暇な新人と、新人バブルの時期を生き延びた者くらいですよ」

未央「なるほど、確かに」

卯月「ブルーナポレオンも、売り出し中ではありましたけど、現れては消えるバブル期間は乗り越えた後の安定期でしたもんね」

凛「なるほど、現在進行形で新人だからと推されてる娘は出てなかったんだ……」

鈴帆「勿論、ベテランも出なかったモンはようけおるばい」


鈴帆「橘ありすと言えば、今もっとも346がゴリ押ししとるジュニアアイドルたい」

薫「すごーい!」

凛「そんな娘が、なんだってここに……」

ありす「……ライブの仕事ですけど」

未央「ええ!?」

未央「もしかしてサプライズゲストとしてバックで踊ってくれるとか!?」

未央「いやーそうなると嫌でも盛り上がっちゃうなー」 ハハ

ありす「……そんなわけないじゃないですか」 ムッ

ありす「貴方達の後ろで踊る必要性がありません」

ありす「大体、注目された大会で失禁するようなアイドルの後ろで踊るなんて、恥ずかしいじゃないですか」

卯月「うっ……」

凛「おい!」 ガタッ

卯月「ま、待って凛ちゃん!」

卯月「大丈夫、私は気にしてないから……」

凛「……」 ギリ


未央「えーっと……じゃあ、一体何を? 激励とか?」

ありす「……」

ありす「たまたま近場でソロライブをすることになってましたたから」

ありす「たまには、付き人の我儘くらい聞いてあげようと思って」

未央「付き人……?」

凛「マネージャーかプロデューサーのことかな」

ありす「今日の店内イベントの司会を、うちの付き人がさせていただきます」

ありす「よろしくおねがいします」

未央「な、何ィーーーーー!?」

未央「よ、よりにもよってコネでねじ込まれただけの付き人が司会進行~~~~~~!?」

薫「あ、おなじよーなこと、バックダンサーになったばっかりのとき、未央お姉ちゃんも言われ」

鈴帆「しっ、そこまでにしとき!」

凛(子供の悪意ない言葉怖っ……)


未央「ぐむーっ、随分ナメられたもんだね」

未央「美嘉姉のバックダンサーという実績だってこっちにはあるのに」

未央「そんなどこぞの馬の骨ともわからない……」

ありす「ほら、入ってきて挨拶してくださいよ」

ありすのマネージャー「あ、どうも、はじめまして!」

未央「あ、これはどうもご丁寧に」

未央「今日はよろしくおねがいします」 ペコリ

凛「そこはちゃんと挨拶するんだ……」

卯月「こ、これが社交性……」


卯月「……ん?」

卯月「あ、あ、あ、ああああなたはもしかして!」

ありす「……ああ、ご存知なんですね」

ありす「まあ、実績だけなら、あるみたいですし。過去の栄光ですけど」

凛「誰?」

未央「私もちょっとわからないかも」

凛「未央がわからないってことは……結構なロートル?」

卯月「おふたりとも、ご存知、ないのですか!?」

卯月「あの人こそ、世のアイドルブームにおいて、普通であることを武器にアイドル界のトップまで駆け上がった初代アイドルマスター!」

卯月「最初のシンデレラガールと呼ばれ、日本中の女の子に夢を見せた伝説の存在!」

卯月「天海春香さんですよ!!」

春香「そ、そこまで言われると照れるな……」


春香「今日は司会進行、精一杯頑張ります!」

春香「よろしくおねがいしますね」 ニッコリ

卯月「はいっ!」

未央「ふふん!」

未央「ニュージェネレーションズ……つまりは新世代VSロートルってことだよね」

未央「世代交代の引導を渡してあげようっ!」

凛「まあ、でも、この業界、席は決まってるんだもんね……」

凛「引退を決意させる、くらいの気持ちで挑まなくちゃ」

春香「それじゃあ、先にステージに出て、盛り上げてきますね」

未央「はい、よろしくおねがいします!」

ひとまず昨晩の投下予定の場所までは進められたので投下を一区切りさせて頂きます

眠たいですが、最近休みすぎてるので投下します


美嘉「おっ、結構皆来てるね」

未央「美嘉姉!」

美嘉「袖でしっかり見てるからさ」

美嘉「ぶちかましてきなよ!」

未央「オッケー!」

未央「美嘉姉に負けないような、すごいライブしちゃうんだから!」

卯月「頑張ります!」

コンコン

P「間もなく、開演時間です」

P「スタンバイ、お願いします」

凛「はい」

未央「さあ、鮮烈デビューだ!」

卯月「わわ、ここまでお客さんの笑い声が聞こえ……」

未央「へー、なかなか盛り上げてくれてるんだね」

未央「それじゃあお返しに、ニュージェネレーションの凄さも魅せつけてあげないとねっ!」


P「……こほん」

卯月「……」 ゴクリ

P「今日は……」

卯月「……」

凛「……」

未央「……」

P「……」

P「第一歩目です」

P「がんばってください」

凛「…………え?」

未央「それだけ!?」

卯月「頑張ります!」

未央「記念スべきはじめの一歩なんだし、もうちょっと何かあっても……」

卯月「まあまあ」

卯月「はじめの一歩残しとく!ってやつですよきっと」

未央「なにそれ知らない」

卯月「ええ!?」

卯月「だるまさんがころんだで、やりませんでしたか!?」

未央「こっちはそんな残すだなんてよくわからないルールなかったなあ」

凛「脱線してる脱線してる」

個人的に
P「(モバアイドルの名前)~」
モバP「~~~」
ならいいんだけどこのスレタイみたいにモバ要素ないなら>>1に注意書きするかなんかしてほしい
モバ全く知らない俺みたいのもこうして釣られてしまいましたし

寝落ちやら何やら本当に申し訳ない
とりあえずちょいと進めます


P「……いきましょう」

卯月「はい!」

未央「ニュージェネレーションズのすごさ、教えてあげなくちゃ」

美波「……」 ブルッ

卯月「……緊張、しますよね」 ハハ

美波「……ええ」

卯月「あのっ……」

美波「?」

卯月「握手、しませんか」 スッ

美波「……」 キョトン

卯月「お互い、いいライブ、出来るといいですね……」

美波「……ええ」 クス

ギュッ


卯月「……」

卯月「大丈夫、ですよね……」

卯月「いっぱい練習したし……きっと上手くいきますよね……」 カタカタ

未央「大丈夫!」

未央「楽しいことが待ってるって、私達知ってるじゃん!」

未央「お客さん達だって盛り上げてくれるし、ぜーったい上手くいく!」

未央「ね、しぶりん!」

凛「うん、そうだね」

未央「だから自信持とうよ!」

卯月「未央ちゃん……凛ちゃん……」 ウルッ

卯月「はいっ……」

卯月「緊張しておトイレ籠もりそうだったけど、トイレに行かなくても大丈夫ですよねっ……」

未央「それは行っておこう」

凛「万が一が起きたら大惨事になるよ」


美波「……」 スゥ

美波「……」 ハァ

美波「先、行くね」

卯月「あ、はいっ……」

美波「……」

美波(イベントがまず成功するように、盛り上げなくちゃ)

美波(スカウトされただけで芸歴があるわけじゃない私より、この世界が長いとはいえ、この娘達はまだ高校生)

美波(年上の私が、頑張らなくちゃ……)

ワァァァァァァァァァァ


美波「ありがとうございましたっ……!」

パチパチパチ

ヒューヒュー

美波「……っ!」

美波「ありがとうございますっ……!」

P「……」 パシャパシャ

ちひろ「いい笑顔ですね」

P「……ええ」

ちひろ「私も一枚記念に」

P「ローアングルはちょっと……」

ちひろ「売れなくなった時の切り札に」

P「させませんから」


パチパチパチ

凛「……っ」

卯月「ありがとうございましたっ……」

凛「ありがとう、ございました……」

未央「ありがとう……ございました……」

卯月「未央ちゃん……?」

卯月「お手洗い……?」

未央「違うよッ」

卯月「」 ビクッ

凛「……っ」

凛「ニュージェネレーションズ、これからも、よろしくお願いします!」 ガバッ

卯月「よろしくお願いします!」 ペコリ

未央「……」 ペコ


ミオーー

ミオーーーーーーー

未央「ッ!」

未央(こ、この声は……) キョロキョロ

ミオーー

シャババーーーー

ミオーーーーーーー!!

イイゾーーー

ミオーーーーーーー!!

横断幕「頑張れM★I★O」

未央「あ、ああ~~~~~っ」 ガーンガーンガーン

未央「っ」 ダァッ

卯月「未央ちゃんっ!?」


ざわ・・・       ざわっ・・・
      ざわっ・・・
エ、ナニ・・・?    ざわっ・・・
  ざわ・・・   ざわっ・・・
       ミオ・・・?
ざわっ・・・       ドーシタノ? 
     ざわっ・・・  ざわっ・・・


凛「……っ」

ポン

春香「ここは……先輩にまかせていいから」 ボソ

春香「お友達のとこ、行って来てあげて」 ニコリ

凛「……」 ダッ


美波「嬉しい……」

美波「あんなに色んな人が……」

未央「……」 ユラァ

美波「あっ、未央!」

美波「お疲れさ――」

美波「……?」

卯月「未央ちゃん!」

美嘉「あ、おっつかれー」

美嘉「よかったよぉ~」

鈴帆「うーん、なんかこう、18禁同人誌のラストみたいな発言……」

未央「……」

鈴帆「ん?」


美嘉「あれ……?」

P「すみません、通してください……」

未央「……」

P「どうかしました……?」

未央「なんで……」

P「?」

未央「お客さんメチャクチャ少ないじゃん!!」

P「……十分かと思いますが……」

未央「あれで!?」

未央「この前のライブと全然違うじゃん!!」

P「この前……」

P「本田さんがジャンケンで敗れ、島村さんと渋谷さんが一騎打ちをした……」

未央「そっちじゃない!!!」


未央「すっごいライブやるからって、友達に行ったのに……」

未央「早くこないと、いい席なくなるからって……」

未央「このライブの映像が、近い将来ヤフオクで何百万の価値がつくから撮影自由の内に撮っておきなよって!」

未央「サインだってクラスの皆に書いて回ったのに!!」

P「……」

卯月「み、未央ちゃん……」

鈴帆「そ、それは、その、大変たいね……」

未央「もっともっと、前のステージみたいに、盛り上がると思ったのに……」

美嘉「それって、アタシのライブに出た時のこと!?」

P「……!」


P「……」

未央『あたし、結構友達とかに声かけちゃったけど、大丈夫かなぁ』

P「つまり……」

P「あの時に比べて、盛り上がりが足りないと……?」

未央「……ッ!」

P「……」

P「いいえ」

P「今日の結果は、当然のものです」

未央「ッ……!」

凛「!」

卯月「!!」

鈴帆「そんな理屈は通ぜん」

薫「たぶんだまってた方がいーよ」 ヒソヒソ


未央「あ・・・? あ・・・?」

未央「とうぜん……?」

未央「ひどいよ……なんで……!?」

未央「私がリーダーだから!?」

P「……」

未央「もういいよ!!」

未央「あたし、アイドル辞める!!」

P「…………っ!!!」 ガーンガーンガーン

卯月「未央ちゃんっ!」 ダッ

凛「……っ!」 ダッ

ドカッ

凛「……どいてくださいっ」 キッ

凛「未央っ!」 タタタ

P「アイドルを……辞める……」


卯月「未央ちゃん……うう、どこに……」

凛「くっ、無駄に高い身体能力で振り切られた……」

凛「私はこっちを探すから、卯月はそっちを!」

卯月「は、はい!」

凛「車には気をつけて、見つけても見つけなくても30分後にはメールして!」

卯月「はい!」

凛「うっかり追いかけた先で顔面とか剥がされないように気をつけて!」

卯月「は、はい……?」


卯月「うう、未央ちゃん、どこに……」

春香「どうかした?」

卯月「あっ……春香さん!!」

春香「……さっき逃げるように舞台を降りちゃった娘?」

卯月「……はい……」

春香「……」

春香「アイドルって、素敵だよね」

春香「キラキラしてて、夢の中にいるみたいで」

卯月「はいっ」

卯月「やっぱり春香さんも、そう思っていたんですねっ」

春香「うん……」

春香「でも、夢は、いつかは覚める」

卯月「…………え?」

春香「さっきの娘も――夢から覚めちゃったのかも」

卯月「そ、そんな……」


春香「……でも……」

春香「夢から覚めても、夢を与えることは出来る」

卯月「え……?」

春香「現実の世界として、この世界を生きることは、まだ出来るんだよ」

卯月「……」

春香「ガラスの靴は、ちょっと折れちゃったかもしれない」

春香「でも、まだ履ける」

春香「ハッピーエンドになるための条件は、まだ消えてない」

春香「……ステージは、ちゃんと収集つけといたから」

春香「まだ、戻ることは出来るよ」

卯月「春香さん……」

春香「あとは、ヒビの入ったガラスの靴を、もう一度履勇気が持てるか」

春香「でも、それは、プリンセス本人と――」

春香「王子様にしか出来ない役目」

卯月「……プロデューサー……」

春香「その王子様が自分じゃないと思うなら、今やることは、無理矢理靴を履かせることじゃない」

春香「帰ってくることが出来るように、この場所を守ることだと思うな」

卯月「春香さん……」


卯月「ありがとうございます……」

春香「どういたしまして」 フフ

卯月「……あの」

春香「?」

卯月「どうして……そこまでしてくれるんですか?」

春香「……先輩面、したかったのかも」 アハ

卯月「ふえ?」

春香「……」

春香「それに……」

春香「とても、似ていたからかな」

春香「卯月ちゃん達が、昔の私達に……」

卯月「春香さん……」

卯月「私達の名前、覚えていてくれたんですねっ……!」

春香「……うん」

春香「今回のこのお仕事も……」

春香「卯月ちゃん達に会うために、無理言って入れてもらったくらいだし」

卯月「ええっ!?」


卯月「そ、そこまで私達を……」

春香「……」

春香「私達に似てる卯月ちゃん達なら、やってくれるかもしれないって思ったから」

卯月「え?」

春香「……私が……」

春香「こうなっちゃった理由、知ってるかな」

卯月「……あっ……」

春香「……その感じだと、知ってるってことかな」

春香「人気絶頂時の、熱愛報道」

春香「担当プロデューサーと付き合っていることがバレて、世間からバッシングを受けた……」

卯月「……」

春香「ちょうど処女信仰が強まってた時期なのもあって、インターネットで炎上」

春香「あらゆる仕事を降ろされて、その時敵対していた961事務所にも屈して……」

春香「そうして、後ろ盾を持たなかった765プロは、346プロへと吸収された」

卯月「春香さん……」

春香「……正直……とっても辛かった」

春香「プロデューサーとの関係を祝福してもらえなかったことも」

春香「……事務所の皆が、私のせいで仕事をなくしてしまったことも」


春香「それでも私は……この世界から去ることが出来なかった」

春香「他の皆が、アイドルを辞めて田舎に帰ったり、他の職業に就いた後も」

春香「いつかまた……765の皆でステージに立ちたい」

春香「そう願って」

卯月「……」

春香「……でもね」

春香「本当は分かっていたんだ」

春香「もう、私のステージは終わって、ガラスの靴は砕け散っちゃったんだって」

春香「だから――託そうと、思ったんだ」

春香「後輩達に。私の成し得なかった夢を」

春香「大好きな仲間と見る、てっぺんの景色を、代わりに見てきてもらおうって」

春香「だから――」

春香「どうせ頼むなら、プロデューサーが大好きっていう、私と同じ人がいいかなって」 クス

卯月「え?」

卯月「いやいやいやいや、わ、私は別にそんなっ///」 ブンブンブンブン

春香(うーん、可愛い)

春香(事務所の皆によくからかわれた理由が分かっちゃった気がする……)


春香「正直、やっぱり、今でも恋愛禁止の風潮は強いと思う」

春香「特にアイドル人気の一端を担うアキバにおいては」

卯月「……そう、ですよね……」

春香「でも――」

春香「時代を塗り替え、新たなスタンダードを作るのがトップアイドルのお仕事」

春香「卯月ちゃんになら、それが出来る」

春香「私は卯月ちゃんの中に、黄金の精神とダイアモンドのような気高き輝きを見たの」

卯月「は、春香さん……!」

春香「処女信仰、そしてロリコン――」

春香「ありすちゃんには、その両者を満たす属性が備わっている」

春香「まさに時代に沿ったアイドル」

春香「事務所で推されるのも納得の、ね」

春香「でも――卯月ちゃんなら、勝てるわ」

卯月「ええ!?」

春香「ニュージェネレーションズが、じゃない」

春香「島村卯月が、アイドル橘ありすを打ち破る」

春香「お友達が戻ってくるまでにやっておくこととしては、上出来だと思うけどな」


卯月「でも――勝てるんでしょうか」

卯月「本当に、私が……」

春香「……今のままじゃ、難しいかもしれない」

春香「さっきのライブも……」

春香「卯月ちゃんやお友達が納得行ってないような内容だったし」

卯月「うう……」

春香「でも――特訓すれば、卯月ちゃんは化ける」

卯月「特訓……?」

春香「うん」

春香「かつてシンデレラガールと呼ばれた天海春香さん特別メニュー」

春香「厳しいけど……ついてくる?」

卯月「……はいっ!」


春香「……いい目」

春香「卯月ちゃんになら――教えてもいいかもしれない」

卯月「え?」

春香「普通の、どこにでも居る女の子」

春香「そんな女の子が、シンデレラになるべく編み出された技術」

春香「シンデレラを量産する魔法使いが編み出した、ステージ上の戦闘術」

春香「殺人技扱いされるだけあって、その威力は強大無比」

春香「それ故に、力に振り回されずに使いこなす心の強さが求められる」

卯月「……ゴクリ」

春香「使いこなしてみせて」

春香「この、48(フォーティーエイト)の殺人技を――!」

一区切りついたので、一旦投下を終了します

ありすちゃんのマネージャーも付き人もプロデューサーも全部春香さんです
投下します







卯月「はあ……はあ……」

春香「……限界?」

卯月「まだ……」

卯月「やれます……」

春香「……」

春香(この娘の気迫……)

春香(折れない心……)

春香(この娘なら、本当に――)

卯月「早く技を身につけて……」

卯月「皆で、また、ステージに――」 グラァ

春香「!」

春香「卯月ちゃん!」 ガシッ

春香「……すごい熱……」

卯月「まだ……倒れるわけには……」

春香「……」

春香「今日は、これまでにしましょう」

卯月「そ、そんな……!」

春香「……とはいえ、私もそこまで時間はない」

春香「明日は休めない」

卯月「……はい」

卯月「明日も、這ってだろうとここにきます!」

春香「這わなくていいよう安静して治して」

卯月「じゃあレッスンも少し控えめで」

春香「休んで」


みく「……」

みく「おかしい」

みく「人が少ない」

みりあ「どーしたんだろうね」

みりあ「莉嘉ちゃんはカブトムシ採取しようとして体に樹液塗ったらスズメバチにたかられて入院中って言ってたけど」

みく「それはそれでどーしたのっていうか何やってんの!?」

みりあ「ニュージェネレーションの皆も……」

凛「……」

凛(卯月……未央……)


みりあ「卯月ちゃんも来ないのは、びっくりだよね……」

薫「うん……」

鈴帆「うーむ……応援はしちょるが、こりゃあひょっとすると……」

みりあ「ええ!? ニュージェネレーションズ、解散しちゃうの……?」

薫「昨日デビューしたばっかりなのに……」

みく「そんなの……プロ失格だにゃ!」

みく「みく達より先にデビューしたのに……!」

鈴帆「いや、ウチはもうデビューしとるけどね」

みりあ「シンデレラプロジェクトのメンバーで、ってお話だよ多分」

薫「それでもまだデビューしてない人の方が少数派なよーな」

鈴帆「プロジェクトの後輩も全然増えんせいで、ウチらと練習合同になっとるばい」

鈴帆「あやつよりデビュー遅いメンバーなんて、この調子だと一生……」

みく「シリアスなシーンで茶々入れないで」


凛(……)

凛(未央は、電話に出てくれない)

凛(卯月も、全然連絡がとれない)

凛「……」

凛「プロデューサー」

P「……はい」

凛「……卯月は」

P「……先程連絡がありました」

P「体調不良で、今日は休まれるそうです」

凛「……」

凛「体調不良、か……」

凛「……」

凛「未央は?」

P「……」

P「まだ、連絡は……」

凛「……」

P「既読になっているので、読んでいるはずなのですが……」

凛「いい大人がラインでしか連絡取らないの社会人としてどうかと思う」


凛「……」

凛「私達、どうなるの」

P「……」

凛「このまま、未央が来なかったら」

P「……」

凛「一発屋として、深夜バラエティで胸を出させられて」

凛「ほとんどアダルトビデオなイメージビデオを数本出した後で追い出されるの?」

凛「それでなまじっかAVにも出ちゃったせいで実家にも居られず、学校を中退して、誰も知らない街で細々と清掃員でもすることになるの!?」

凛「あの人は今の取材が来ても、惨めで辛くて取材を拒否して逃げるように引っ越せって言うの!?」

P「いや、その、さすがにそこまで悪いことには……」

凛「ならないって言い切れるの!?」

P「…………」

P「申し訳、ありません……」


凛「……それで」

凛「本当に、私達はどうなるの」

P「……こちらで、調整を……」

凛「……調整? なにそれ?」

P「その……」

P「皆さんは、各々できることを行ってください……」

凛「……ッ」

ボコッ

P「……っ」 ガシャン

凛「……ハァ……ハァ……」

凛「今の私に出来ることなんて……」

凛「プロデューサーをぶん殴ることくらいだよ」

P「……」

P「この拳は……渋谷さんの気持ちとして、素直に受け止めます」

凛「……」

P「ですが、その振りかぶった植木鉢を素直にもらうわけには……」


凛「……チッ」

P「その、他にも何か、できることを……」

凛「……出来ない」

P「……ッ」

凛「この状況は何なの!?」

凛「あんたはどうするつもり!?」

凛「納得行く答えを聞かせて!」

P「……」 オロオロ

P「見解の相違が……あったことは認めます……」

凛「だったらなおさらだよ!!」

凛「何で未央を連れ戻しに行かないの!?」

凛「信念があって、こんな世界でも自分の信じられる道を歩いていたいみたいな理由があるならまだしも!」

凛「単に見解の相違があっただけなら、どうして……!」


P「ただ……本人が本調子じゃないようなので……」

凛「……ッ!」

凛「逃げないでよ」

P「うっ……」

凛「未央が本調子じゃないとか、そういう問題じゃないでしょ」

凛「本調子だってジャンケンで負けるんだし」

P「……」

凛「大体……あんた言ったよね」

凛「ここに来れば、今までと違う世界がある……って」

凛「きっと、きっとって私を動かしてて、嫌なことばかりじゃないから次の扉をノックしろって!」

P「そ、それは別の人では……」


凛「はじめてステージに立った時……」

凛「完成した自分の歌を聴いた時……」

凛「トーナメント本戦進出が決まった時、植木鉢でKO勝利を奪った時……」

凛「圧勝劇でヒールになった時も、卯月に負けた時も」

凛「私、見つかるような気がした」

凛「夢中になれる何かってやつ」

P「それだけの頻度で思っているのなら、それはもう見つかったのでは……」

凛「でも今は!!」

凛「……見つかる気がしない……」 ギリッ

凛「夢中になれそうにも、なんとかやっていけそうにもない」

凛「植木鉢であんたを殴っても、ちっとも楽しくないし心だって晴れない」

P「……」

P(植木鉢で殴って気分が晴れる方がおかしいのでは……)


凛「……教えてよ」

凛「見解の相違って何?」

凛「何で未央を連れ戻さないの?」

凛「あんたは、何を考えてるの!?」

P「……申し訳ありません」

ジャーーーーーーーーンwwwwwwwwwwwww

ジャラジャラジャラジャラジャラ……ジャッwwww

凛「大事な話してる最中に天鳳してんじゃない!」 ギリギリ

P「ち、違います、手が触れてしまい誤操作を……」

凛「ワンクリックで対局開始するような状態を仕事用PCでするな!」


凛「……」 バッ

凛「信じてもいいと……思ったのに……」

P「…………っ!」

凛「全然、違うじゃん」

凛「夢中になれるって、言ってたのに……」

凛「なのに……」

P「……!」 

凛「……もう、いいよ」

凛「私……」

凛「……」

凛「……今日は、もう、帰るから」

バタン・・・

P「…………」

いい時間なので投下を区切らせて頂きます

ちょいちょい投下していきます
感覚空いて申し訳ない


みく「はあ!? 帰った!?」

莉嘉「ええー」

鈴帆「こりゃいよいよやばいかもしれんばいね……」

みく「うぐぐぐぐ……」

みく「みく達より先にデビューしといて、そんなザマ許されないにゃ!」

みく「二人とも!」

莉嘉「ん?」

みりあ「え?」

みく「一緒に来るにゃ!」

みりあ「どこへ……?」

みく「腑抜けたメンバーを連れ戻しにだにゃ!」

みりあ「でも、レッスンは?」

みく「レッスンは勿論大事、あんな腑抜けたちのために無駄にするのは勿体無いにゃ」

みく「だけど今日のレッスンは、陽気なダンス!」

みく「天岩戸ってやつだにゃ」

みりあ「アマノイワトってなーにー?」

莉嘉「網戸か雨戸のことじゃない?」

みりあ「なるほどー」

みく「全然違うしどの辺がなるほど」


ありす「……」

ありす「……」 キョロキョロ

ありす(……いない)

ありす「……」

ありす(いつもは……セットの近くにいるのに)

ありす(まるでまだ、アイドルにしがみついているかのように……)

ありす「……」

ありす(……一体、どこに……)


凛「……」 バタン

凛「……」

凛(信じてもいいと、思ったのに……)

凛「……」

ポツ・・・ポツ・・・

ザアアアアアアアアアアアア・・・

凛「……」

凛(やっぱり……)

凛(葉緑体のない存在を信じたことが間違ってたの……?)


ちひろ「以上が、次のマッチングの概要です」

P「……何か、質問はありますか?」

美波「いえ……」

P「……」

P「あの……」

美波「?」

P「以前のステージ……」

P「どう、思われましたか」

美波「……」

美波「電飾が綺麗だなあ、と」

P「舞台装置としてのステージでなく、公演という意味でのステージです」

突然PCが固まったので一旦中止
申し訳ない
またこのクソPC環境が落ち着いたらガシガシ投下させていただきます

パソコン直しました。ほそぼそと復活します。


美波「……」

美波「ステージの間は、頭が真っ白で、歌うだけで精一杯でした」

美波「でも……歌い終わったあと、拍手をいっぱいもらいました」

美波「アイドルとして、ここからまた一歩が始まるなって思うと、嬉しくて……」

美波「でも、今はこういう状況だから、どうしたらいいかわからなくて……」

P「……」

美波「あの後の握手会でもそう」

美波「未央ちゃんのお友達からも、未央ちゃんどうかしたんですかって言われて……」

美波「思わず、最近生理来てないって言ってたし、吐き気がするって言うから大事をとって帰ったって」

美波「そしたら笑ってくれるどころかざわついてしまって、訂正する間もなく……」

ちひろ(……本田さんが来なくなった一因では、とは言わないようにしておきましょうか……)


<島村家>

卯月ママ「ふう……熱下がってよかったわ」

卯月ママ「アナr……おしりにネギを挿したおかげね」

卯月「うう……恥ずかしかったし痛かったけど、下がってよかった……」

卯月ママ「パパに似ておしりがガバガバでよかったわぁ」

卯月「ふえ?」

卯月ママ「ママに似てたらローション塗ってもなかなか入らなかったもの」

卯月「ま、まま……?」

卯月ママ「今日はゆっくりしてなさいね」 フフ

卯月「ネギだよね!? ネギのお話なんだよね!?」

卯月ママ「うふふふふふふ」 ギィーバタン

卯月「意味深に笑って帰らないでママァ!!」


卯月「……」

卯月「凛ちゃん、心配かけちゃったかな……」

卯月「熱で頭がおかしくなってて、心配してくれるラインに対しても変なお返事しかできなかったし……」

卯月「いくらお尻にネギを刺されていたくて辛かったとはいえ……」

卯月「どうしたのってラインに対して『熱とケツが出てます』ってのはなかったよね……」

卯月「……」

卯月「未央ちゃん……」

卯月「今日は来ますよね……きっと……」

コンコン

卯月「なぁにぃママぁ……」

卯月「ネギならちゃんと奥まで挿入(はい)ってるよ……」 モゾモゾ

P「……具合は、いかがですか」

卯月「ふぇ!?!?」




P「突然、申し訳ございません……」

P「お見舞いの品だけ、置いていくつもりでしたが……」

P「お母様が、どうしてもと……」

P「もう、帰りますので……」

P(……聞いてはいけない言葉を聞いてしまいましたし……)

P「それでは、お大事に――」

ガチャッ

卯月「あ、あのっ」 ギィ

卯月「し、下で、待っていてくださいっ」

卯月「すぐ……行きますから……」

P「……」

P(刺さっている……)



卯月「すみません、こんな大事なときに、風邪なんて……」

卯月「……」 ネグセボーン

卯月「わ、わわっ……///」

P「お気になさらず……」

卯月「そうはいっても……」 モゾモゾ

P(ズボンがテント張るくらいの長さのネギは気にしてほしかったですが……)

P(こちらが立つとズボンの中身が見えてしまいますし……)

卯月「うう……」

卯月(ネギを隠すため無理やりズボンを履くのに夢中で、寝癖のこと忘れてたよお) グスン


卯月ママ「この娘、ちゃんとアイドルやれてますか?」

P「ええ」

卯月ママ「この前の舞台も相当不安だったらしくって、ずーっと一人で練習してたんですよ」

卯月ママ「それでねえ」

卯月「ま、ママ!」

卯月「いいから!」

卯月ママ「ふふ……ごゆっくり」

卯月「も、もうっ、そーいうのいーから///!」

卯月ママ「あ、そうだ、お茶請けにねぎ焼きとかいかがかしら」

P「あ、いえ……」

P(このタイミングでネギはちょっと……)

卯月ママ「じゃあ鶏皮のネギまみれとか……」

P「だ、大丈夫です」

卯月「ママ!ほんともういいから!!」


卯月「ママ、話好きで……」

P「……」

卯月「……」

卯月「プロデューサーも、風邪なんですか?」

P「え?」

卯月「なんだか、元気がないような気がして……」

P「……」

P「いえ……」

卯月「よければ、ネギ、使いますか?」

P「いえ……」

P(食べるでなく、使う……)


P「……」

卯月「私達……これからどんなお仕事するんでしょう!」

P「……」

P「島村さんは……」

P「今後、どうなりたいとお考えですか……?」

卯月「ふえ!?」

卯月「あ、アイドルは恋愛禁止ですし、ど、どうにかなるわけには……っ///」 アタフタ

P「?」

P「アイドルとして、どういう活動をしたいのか、ということですが……」

卯月「あ、ああ、そ、そうですよねっアイドル!」

P(まだ熱で朦朧としているのでしょうか……)

卯月「憧れだったステージにもリングにも立てましたし……」

卯月「CDデビューも、ラジオ出演も、トーナメント優勝も出来ましたし……」

卯月「次は、テレビ出演か宇宙野武士狩りができたらいいなって!」

P「宇宙野武士はちょっと……」


卯月「……」

卯月「実は、この前のミニイベントなんですけど……」

P「……っ!」

卯月「ちょっと、心残りがあって」

P「……くっ」 グッ

卯月「私、折角のステージなのに、最後まで笑顔でやりきることができなくて」

P「……………………え?」

卯月「だから、次は最後まで、笑顔でステージに立ちたいなって」

卯月「凛ちゃんと、未央ちゃんと一緒に……!」

卯月「気づいてあげられなかったけど、未央ちゃんならきっとママになってもアイドルを続けると思いますし!」

P「あ、それはデマです」

卯月「…………!?!?」


卯月「そんな……」

卯月「お祝いのベビー用品、もう用意を……」

P「……」

卯月「ま、まあ、とりあえず明日には風邪も治ってるでしょうし」

P「無理は、なさらず……」

卯月「いえ、大丈夫です!」

卯月「私が、やりたいだけですので!」

卯月「……」

P「……」

卯月「プロデューサーは……」

卯月「いつでも私を……私達を気にかけてくれてますよね」

卯月「だから……黙っていたくないから、言いますね」

P「……?」

卯月「この前――橘ありすちゃんが、お家に来ました」

P「!!」

卯月「ちひろさんに、住所は聞いたみたいです」

卯月「それで――」

卯月「熱が治るだろう今晩、私、彼女と試合をします」

P「!!!」


卯月「挑まれたんです」

卯月「私、実は春香さんに特訓してもらっていて……」

卯月「それが、気に入らなかったみたいです」

卯月「口では私が気に入らないみたいなことを言ってましたけど……」

卯月「でも一番の理由は、春香さんが私ばかり気にかけてたってことみたいで」

卯月「多分、嫉妬なんだと思います」

P「……」

卯月「それで、突っかかってくるだろうことも、春香さんは想定していて」

卯月「……アイドルとプロデューサーやマネージャーって、やっぱり、そういうものなのかなあって」

卯月「心の底では信頼しあってて、互いのことを理解していて」

卯月「普段は素直になれないのに嫉妬しちゃうほど大切な存在なのかなって」

卯月「……だから……」

卯月「信じてますから」

卯月「未央ちゃんとプロデューサーも、ちょっと表面上すれ違っちゃっていても、必ず元通りになるって」

卯月「だから、明日からもまたよろしくおねがいします!」 ペコリ

P「……はい」

キーボードに慣れないせいで行きたいとこまで行けてないですが、眠気も強くなってきたので一旦透過を終了します

多忙シーズンに突っ込んでますが、合間見て投下していきます


<事務所>

ガチャッ

ドン

P「あっ……」

みく「あっ……プロデューサー!」

みく「……ちゃんと聞かせて!」

みく「この部署はどうなるの!?」

莉嘉「未央ちゃんは!? 凛ちゃんは!?」

みりあ「やっぱり辞めちゃうの!?」

みく「せっかくデビューを信じて待ってみようって気持ちに……」

莉嘉「退職金は!? 私も気まぐれで休んでいい空気なの?!」

鈴帆「失業保険降りるんかいのう」

薫「一緒にユニット組む?」

みりあ「それはそれで面白いかも」

みく「今とっても大事なお話してるし100円あげるからあっち行ってて」


みく「みくたち、どうしたら……」

P「大丈夫です」

みく「……」

P「ニュージェネレーションズは解散しません」

P「誰かが辞めることもありません」

P「必ず連れて帰ります……っ!」

P「信じて待っていてください……!」

みく「……」

鈴帆「この100円どないすっと?」

莉嘉「皆で割り勘?」

薫「中古ゲームでも買って皆でやるとか……」

みりあ「バウンサーやりたいなあ」

みく「みくは信じてるけど、それはそれとしてちょっとそういうの口にしにくい空気だから後ろの人達解散させていいかにゃ」


みく「……行っちゃった」

莉嘉「でも……あの目、信じていいかもね」

みりあ「うん……」

みく「中古ゲーム屋の袋片手に言っても説得力がないにゃ」

ガチャ

莉嘉「あ、おそーい」

みりあ「コントローラー持ってきてくれないと全員で出来ないんだかr――」

枕強要出来そうな権力を持つジジイ「やあ、どうしたね?」

莉嘉「わあ!?」

みりあ「えっと……私達……」

みく「プロデューサーを……待ってます……」

枕強要を出来そうな権力を持つジジイ「ふむ……」

枕強要を出来そうな権力を持つジジイ「では、それまで少し話をしようか」

みりあ「でもバウンサー……」

みく「そんなクソゲーいつでも出来るからちょとおとなしくしててね」


枕強要を出来そうな権力を持つジジイ「むかしむかしあるところに、とてもマッスルな男がいてね」

枕強要を出来そうな権力を持つジジイ「男はいつも道を示した」

枕強要を出来そうな権力を持つジジイ「シンデレラ達が迷わないように、マッスル、マッスル」

枕強要を出来そうな権力を持つジジイ「でも……いくらマッスルで正しい道でも」

枕強要を出来そうな権力を持つジジイ「時と場合によっては、暑苦しく息苦しく感じてしまうものだ」

枕強要を出来そうな権力を持つジジイ「結果、何人かのシンデレラ達が男のもとを去っていった」

枕強要を出来そうな権力を持つジジイ「新アイドル団体を旗揚げするために……」

枕強要を出来そうな権力を持つジジイ「それ以来、男はとても臆病になってしまった」

枕強要を出来そうな権力を持つジジイ「そして、男は自分を、シンデレラたちをお城へ送る無口な車輪へと変えてしまった」

みりあ「それって……」

莉嘉「プロデューサー?」

枕強要を出来そうな権力を持つジジイ「ふふ……」

枕強要を出来そうな権力を持つジジイ「さて、その魔法が解けるかどうか」

枕強要を出来そうな権力を持つジジイ「もう少し、待ってみようじゃないか」




<特設リング>

春香「……これで、48の殺人技の伝授はおしまい」

春香「いよいよこれから本番だね」

卯月「はいっ……」

春香「……」

春香「大丈夫。貴女なら勝てる」

春香「二人をよく見た私が保証する」

卯月「ありがとうございますっ!」

春香「……」

春香「ねえ」

卯月「?」

春香「……」

春香「プロデューサーのこと、好き?」

卯月「ふえ///?!」

卯月「そ、それは、その……///」 アタフタ

春香「……クスッ」

春香「その反応が得られたら十分」

春香「さあ、行ってらっしゃい」

春香「私の到達できなかった、高みまで――」

意識飛びそうなので一旦中断します

またのんびりやります


ありす「理解に苦しみますね」

ありす「ただでさえ多忙なはずの付き人の仕事やマネージメント、プロデュースを全部しているというのに」

ありす「わざわざ無関係のアイドルを特訓だなんて……」

ありす「必要性を感じませんよ」

ヒュウウウウウウ

COOL!! COOL!! COOL!!!

卯月「わわ、すごい歓声……」

春香「……」

春香「秋葉原は、ヲタクの聖地」

春香「彼らは、かわいい幼女の立ち振舞は全部萌えやらご褒美として処理をする……」

春香「一方で、彼氏がいると思しきアイドルには……」

春香「う、うう~~~~~~っ!!」

卯月「は、春香さん!?」

ありす「貴女のトラウマですもんね、この秋葉原は」

ありす「さあ、これで万が一もなくなりましたよ」

ありす「ここからは――一方的な、蹂躙の幕開けです」

ありす「安心してください」

ありす「そんなに暇でも歪んだ趣味もないですから、さっさと終わらせてあげますよ」

カーーーーン






【エキシビジョンマッチ 島村卯月 VS 橘ありす ―― 試合開始(ゴング)】


卯月「いきますっ!」 ダッ



キモオタ「へん!」

キモオタ「清純そうな面してるが、中身はどうかはわからねえ」

キモオタ「その点幼女は最高だぜーーーーーーっ!」

オタク「ま、まて……あ、あれを見ろッ」

キモオタ「ゲエーーーーーッ! あの構えハッ!」

オタク「僕らの会えるアイドルフォーティエイトの殺人技がコピーされているーーーーーっ!」



卯月「春香さんがトラウマで戦えないのなら1」

卯月「私が代わりに栄光をつかみとりますッ!」

卯月「島村ーーーーーっしゅ!」 ドコドコドコドコドコ


卯月「私……とっても嬉しいんですっ」 ガガガ

卯月「春香さんに指導を受けられたことが」

卯月「そして……」

卯月「同じく春香さんに指導されてるであろう姉弟子と戦えるのが!」 ヒュッ

ありす「姉弟子……?」

ありす「違います」

ありす「私は――別に何も教わってませんよ」

ヒュパッ

卯月「……!?」 グラァ

卯月(か、カウンター……!?)

ありす「あくまでも仕事」

ありす「給与も出ないのに特訓を受けるほど、ヒマじゃないですから」


比奈「ありゃりゃ、何を騒いでるのかと思ったら……」

オタク「ぶひぃ! あ、あれはブルーナポレオンの荒木比奈ちゃんッッ」

比奈「薄い本を買いに来てよもやこんな場面に遭遇するとは……」

菜々「まさかこのカードが野良試合で成立するとは意外でしたねえ」

オタク「ゲエーーーーーッ! あ、あっちには安部菜々が!」

菜々「アウェイの空気を吹き飛ばし、観客を一瞬で魅了する卯月ちゃんは確かにすごい」

菜々「何せナナを倒したくらいですからね」

菜々「でも――」

菜々「ありすちゃんは、かなり厄介」

菜々「何せ彼女は……」

ウオー!

ナナチャーン!

菜々「えーーーっ、みんなナナを知ってくれてるんですかぁ~~~!」

比奈「解説ぶるなら途中で辞めないでもらってもいいっすか」


ナナチャーン!

菜々「ありすちゃんは、とても冷静……」 フリフリ

菜々「心のどこかで周りと距離をおいてるし……」

菜々「どこか、冷めた目をしています」

比奈「現代っ子ってやつっすね」

菜々「クールっ娘とも言いますね」

ヒナチャーン!

ナナー!

菜々「とにかく、その冷静さであの娘はなんでも切って捨てる」

菜々「話を広げる気もなく、それでも見た目とロリのおかげで支持を得ている得意な存在……」

比奈「うーん、でもそれならなんとかなるんじゃないっすか?」

比奈「会話の流れをぶった切って自分有利に持ってく卑怯な戦法っすけど……」

比奈「それなら既に、前の大会で散々破っていたような」

キャー コッチムイテー!

菜々「確かに、楓ちゃんという会話主導権を変化球で奪う王様を倒した腕は本物かもしれません」

比奈(貴女もその卑怯な奴の一人なんすけどね)

ババアー! ケッコンシテクレー!

菜々「でも、あの娘のそれはナナ達のとは違います」 ギリギリギリ

比奈「こらこら一般人にコブラツイストはやばいっすよ」

菜々「オフだから大丈夫ですよ」

比奈「いやいやダメっすから」




比奈「でも……違うっていうのは?」

菜々「ナナ達は、あくまで自分のペースに引き込むために流れをすべて叩き斬ります」

菜々「そして自分の喋りたいことを喋る」

比奈「そうっすね」

比奈「やりたくても、普通の人には真似が出来ない技術っす」

菜々「でもありすちゃんはそうじゃない」

菜々「自分の語りに持って行くでも、話を広げるわけでもないんです」

比奈「え……?」

菜々「あの娘は、空気が凍ることを恐れない」

菜々「自分の利すら考えない」

菜々「ただバッサリと、淡々と切り捨てる――」

菜々「本質からして、ナナ達とは違います」

比奈「なるほど……」

菜々「アイドルとしては、楓ちゃんの方が上」

菜々「それでも、相手にした時の厄介さは、事故を恐れないありすちゃんに軍配があがるかもしれません」

菜々「故に、バラエティ界隈ではこう呼ばれてます」

菜々「返し技の達人」

菜々「どんな会話のパスも絶対に叩き斬り、対処の難しい一撃を叩き込むことに関しては、346の中でも有数ですよ……!」


ありす「だからどうしたんですか」

卯月「うぐっ……!」

菜々「さすがの卯月ちゃんも、トーク・バトル双方で軽く切られると、ピンチみたいですね……」

卯月「はは……さすがに強いや……」

ありす「……何笑ってるんですか」

卯月「……」

卯月「私、決めたんです」

卯月「この前、上手く笑えなかったから」

卯月「怖いことや、緊張することはいっぱいあるけど、絶対最後には笑ってようって」

卯月「そのためにも、笑うべきだと思った時は泣くべきじゃないって!」

ありす「言っている意味がわからな――」

卯月「私は、今、とっても楽しいです」

卯月「普段こない秋葉原で、こうして戦えているのが」

ありす「……幸せそうで羨ましいですね、理解できません」

卯月「ありすちゃんは、強いアイドルです」

卯月「どんな攻撃も切って捨てるし、トークだって恐れずにぶった切るし……」

卯月「そんなすごいアイドルだからこそ――伝えたいんです」

卯月「私がそうだったように、うっかり忘れちゃってるのかもしれませんから」

卯月「ライブは最高に楽しいよっていうことを……!」


春香「……」

春香(ライブは楽しい……)

春香(そういえば……昔はそうだったな……)

春香(ドジもたくさんして、辛いこともいっぱいあって)

春香(それでも、毎日が楽しかった……)

春香(この街には、嫌な記憶もある)

春香(プロデューサーと付き合ってることがバレていこう、所謂アキバ系の人には怖い目にあわされたけど)

春香(それでも――)

春香(いい人だって、多くはないけど確かにいたのに)

春香(私はそれに、気づくことができてなかったから)

春香(今度こそは!)

春香「この秋葉原で、清濁併せ呑んで楽しまなくちゃ……ッ」 グギギギギ

ありす「!」

卯月「春香さんっ!」

春香「ごめんね、卯月ちゃん」

春香「もう、大丈夫だから……」

春香「だから――この地を、貴女と私の転機にしましょうっ!」

卯月「~~~~~~~っ!」

卯月「はいぃ!!」

一旦投下終了
夏コミシーズンまではこんな頻度になりそうですが、秋までには終わらせたいです

ちょいちょい書きます


ありす(くっ……切り返せないわけじゃないけど、一撃一撃が急に厄介に……)

ありす(これが……) チラッ

春香「うん、そこ!」

春香「そこから首相撲に持っていく!」

ありす「くっ……!」

卯月「わわ、まだ止められる……!」

卯月「は、春香さん!」

春香「不安そうにしないの」

春香「それに……」

春香「私のアドバイスに、そんなすごい力なんてない」

春香「本当にすごいのは、貴女の中に眠る素質なんだよ」

卯月「え……?」

春香「何かを無理矢理意識することなんてない」

春香「ううん、むしろ逆」

春香「多分、私と一緒で――」

春香「心から楽しんで、思ったことをするのが一番強くなれるタイプだから」

春香「迷った時は、自分の心に聞くのが一番」

卯月「自分の、心……」


卯月「それなら、私はやっぱり……」

卯月「ありすちゃんと仲良くなりたいですっ」

ありす「……え?」

卯月「確かに今は、お互いの意地と誇りを賭けて戦ってるけど……」

卯月「でも、こんなに素敵な空間を一緒に作ってくれてる仲間だから!」

卯月「この熱気も、歓声も、私一人じゃ作れなかったから」

卯月「だから……」

卯月「私は、ありすちゃんとも友達になりたいですっ」

卯月「ナナちゃん達がそうであってくれたように、戦いを通じて、友達にっ!」


ありす「またそんなッ……」

ありす「夢物語ですよ」

ありす「所詮芸能界はビジネス」

ありす「利益があるから仲良くされているだけに――」

卯月「アイドルは!」

卯月「夢物語を、ホントにする存在なんですよっ!」

ありす「――――っ!」

パカン

ありす「ぐっ……!」

比奈「は、入ったッ」

ナナ「う、ううん! 浅い!」


ありす「みんな……いい顔をして……」

ありす「結局、お金と体しか見てないのに……!」

ありす「大人は皆そう」

ありす「私は、大好きな歌を仕事にしたかっただけなのに!」

ヒュパン

比奈「カウンターッッ モロに入ったっすね!」

卯月「アイドルだって、立派な歌のお仕事だよっ!」

比奈「でも……全然退く気はないんすねえ」

ありす「別に……お金の世界を否定する気はないです」

ありす「きっとそれが正しいんでしょう」

ありす「でも、だからこそ!」

ありす「私を見ずに、貴女を育てた選択肢が金勘定の世界においても誤っていると、証明をしてみせますっ……!」


卯月「見ていない……?」

卯月「そんなことありませんっ!」

卯月「だって……もしそうだったら、わざわざ私をぶつけたりなんてしないですよっ!」

ありす「……!」

卯月「それに、的確に苦手をついたアドバイス……」

卯月「しっかりと見ていないと、決して出来ることじゃありません!」

ありす「うる……さいっ!」

比奈「なッッ」

比奈「キャラを壊してまで、攻撃に打って出た――!?」

菜々「若いですねえ」

菜々「どうにも納得できずに反抗しちゃう時が、若い時にはあるものですよね」 ウンウン

比奈「…………」 ジトー

菜々「あっ、も、もちろんナナだってピッチピチの現役反抗期ですよ!?」

菜々「それはもう盗んだバイクでララバイララバイおやすみするほどナウなヤングで」 アタフタ

比奈「ボロ出るなら喋らなくてもいいんっすよ?」


卯月「……!」

卯月(攻撃してきた……!?)

卯月(カウンターはすごかったけど……普通の打撃なら大したことがないような……)

卯月(でも、カウンターがある以上下手なことは……)

卯月(どうしたら……) チラッ

春香「……」

卯月(その目……)

卯月(黙って私に任せてる……?)

卯月(でも、どうすれば――)

春香「……~~♪」

卯月(う、ううん!)

卯月(よく聴くと、黙っているわけじゃない!)

卯月(この鼻歌のメロディ……できたてEvo!Revo!Generations!?)


卯月(何度も、練習した……)

卯月(自然と体がリズムを刻みはじめる……)

卯月(ダンスはもう、染み付いてる!)

卯月(私はこの曲が大好きで、今度こそちゃんと踊りたい曲だった……)

卯月(……そうか、じゃあ、今私がすべきことは――――)

卯月「小さく、前ならえ――」 ピトッ

ありす「!?」

ありす(慣れない攻撃で隙は作っちゃった……)

ありす(でも――威力もない、このただの前ならえは、一体――!?)


春香(ずっと、気にはなってた)

春香(夢を叶えて忙しかったはずなのに、どうしてわざわざ自ら依頼を受けたのか)

春香(きっと――私と同じ気持ちだったんだよね)

春香(あの子達に、自分たちが出来なかったことを託そうって)

春香(若い世代に、夢を任せようって)

春香(だからこその、この歌詞)

春香(だからこその、このダンス)

春香「卯月ちゃん!」

卯月「――――無拍子ッ!」 ドッ

ありす「がァ――――ッ!?」

比奈「ゲエーーーーーッ! 何っすかあの威力は!?」

菜々「脂肪越しに伝わる威力が高すぎて、ありすちゃんの前にも後ろにも体内のあれこれが弾け……!」

春香「歌、ダンス、バラエティ……それに、プロレス」

春香「あらゆるアイドルレッスンを積んだからこそ繰り出せる必殺の一撃」

春香「きっと、これのために」

春香「未来を担うアイドルを育てるために、作詞家として仕事を請け負ったんだよね……」

春香「そうだよね――千早ちゃん」


きりがいいので投下を終了します

時の流れは激しくて涙こぼれてしまいそうになりますね……
月明かりが切なすぎるのでここでのんびり投下したいと思います


ありす(痛い……)

ありす(立てないし、無理して立つより、このまま救急車を待つほうが……) チラリ

春香「……」

ありす「……」

ありす(ずっと、一人だった)

ありす(周りの大人は皆汚くて)

ありす(周りの子供は、穢れを知らなさすぎて)

ありす(私の心は、ずっと孤独で荒れ果てた大地のようだった……)

ありす(でも……)

春香『はじめまして! 天海春香です!』

ありす(私の心にも、チューリップみたいなお花が咲いた……)

ありす(お花を咲かせてくれたのは……ッ) ググ

比奈「なッ、立ち上がった!?」

菜々「あれだけ体液を流したら、安静にしてなきゃ危ないですよっ!」

ありす「負け、たくない……」

ありす「私だって……!」 ギリィ


卯月「ありすちゃん……」

ありす「ヒュー……ヒュー……」 フラァ

ありす(どう、すれば……・)

ありす(勝ち、たい……)

ありす(かっこつけて、大人ぶって、冷めた目なんてしないから……)

ありす(どうか……)

ありす(あの人の心を取り返せるような、奇跡を……) クラァ

春香「……ありすちゃん」

ありす(……)

ありす(笑ってる……)

ありす(そんなにも、私のことが……)

ありす(当然、か……あれだけ冷たくしてたんだから……)

ありす(……)

ありす「そ……っか……」

ありす(あれは……不出来な私へのアドバイス……)

ありす(若さと見た目に甘えて、淡々と仕事をこなすだけだった私への……)

ありす「笑顔は武器……ですか」 ニコ

ありす「少し……分かったような……気がしますよ」


卯月「……」

卯月「決着は、とうについてます」

卯月「でも……」

卯月「それでもまだ、立ち上がってくるというなら」

卯月「全力で、とどめをさしますっ……」

卯月「全力を尽くせないで後悔するのは、もう嫌だから」

卯月「それに――全力には全力で応えないと、きっと失礼だから……!」

ありす「いい、ですよ……」

ありす「それも……返して……みせますから……」

卯月「……」

卯月「いくよ」

卯月「島村リアーーーーーーット!」 ダッ

ありす「右から……左へ……受け流すッッ」

菜々「さばいたッ!」

比奈「うまいっ!」

比奈「そのまま相手の勢いを使って放り投げた!」

菜々「い、いや、これは!」

卯月「これで……終わりですっ!」 ビョイーーーーン

比奈「リングロープに突っ込んで……」

比奈「そ、そうか! この技は――」

卯月「マッスル・ミレしまむー!!!」

ズッガーーーーーーーーン


ありす「あ……が……」

ありす(ああ……指一本動かせない)

ありす(お金になるわけでもないのに、無駄な労力使っちゃったな……)

ありす(でも……なんでだろう)

ありす(仰向けになって……微塵も動けないっていうのに……)

ありす「星が……見える……」

ありす「なんて……いい気分……」

ありす(不思議……こんな満足感に包まれるなんて)

ありす(また戦いたいって気持ちでいっぱい……)

ありす(こんなことなら……)

ありす(もっと早くに、戦っていればよかったな……)



【エキシビジョンマッチ 勝者・島村卯月】


ワアアアアアアアアアアアアア

シッマッムー! シッマッムー!

ありす「……」

スッ

春香「……お疲れ様」

ありす「……」

春香「いい――笑顔でしたよ」

ありす「笑、顔……」

ありす(そっか……いつの間にか、私も笑顔にさせられて……)

ありす「……完敗しました」

春香「うん、そうみたいだね」

春香「でも――この負けは、ありすちゃんにとって大きな財産になると思う」

春香「だから――また、一緒に這い上がろう?」

ありす「……はい」 グスッ

眠気がピークなので投下を中断いたします

今夜もちょいちょい進めます


P「島村さんッッ」

卯月「えっ、プロデューサー!?」

P「はあ……はあ……」

P「試合は……」

P「試合はどうなりましたか……?」

卯月「は、走ってきたんですか?」

P「ええ……」

P「僅かばかりでも、応援をしようと……」

P「どうやら、間に合わなかったようですが……」

卯月「い、いえ! その気持ちだけでもうれしいです!」

卯月「それに……えへへ、私勝ちました!」

P「そうですか……」 フッ

卯月「あ……」

卯月(笑ってくれた……?)


卯月「でも、どうして……」

卯月「未央ちゃんを迎えに行ったんじゃ……」

卯月「あ、もしかして、もう戻って――」

P「……」 フルフル

P「本田さんのお宅には……別の頼りになる仲間がいきました」

卯月「……ふえ?」

P「同じシンデレラプロジェクトの仲間、赤城さんと城ヶ崎さんです」

卯月「二人が……?」

P「本田さんのご自宅の前で、どうやって部屋まで上げてもらうか考えていました」

P「そこで……お二人に呼び止められたのです」


回想莉嘉『Pくん!!』

回想P『城ヶ崎さん!?』

回想みりあ『聞いたよ……車輪になっちゃったって!』

回想P『???』

回想莉嘉『待ってるなんて出来ないよ!』

回想莉嘉『だってアタシ、Pくんのことが大好きだもん!』

回想みりあ『車輪だなんて寂しいこと言わないで……』

回想みりあ『みりあは、プロデューサーのこと、車輪だなんて思ってないよ』

回想みりあ『夢を叶えてくれる素敵な魔法使いで』

回想莉嘉『そしてエスコートしてくれる王子様だって思ってる』

回想みりあ『だから、困ったら言って!』

回想莉嘉『車輪みたいにひっそり無理して壊れるなんて、寂しいことしないでよ!』

回想莉嘉『Pくんが言ってくれたら、なんだって手伝うんだから!』

回想P『城ヶ崎さん……』

回想みりあ『困ってるんだよね、未央ちゃんの部屋に上がれなくて……』

回想莉嘉『それに、他のメンバーのことも気になるんだよね』

回想莉嘉『だったら――行って!』

回想莉嘉『連れ出すまでは出来なくても、少しくらい心を開かせとくから!』


回想P『いえ、ですが……』

回想P『私には、こうなったことに対する責任を取る義務が――』

回想莉嘉『あー、もう! ムツカシイこと言われてもわかんない!』

回想みりあ『わかんなーい!』

回想莉嘉『大体終わったことに対して責任どーこーとか』

回想莉嘉『毎回きっちり責任取ってやりたいことも我慢しなきゃいけないなら』

回想莉嘉『人間なんて誰も幸せになれないじゃん!』

回想みりあ『よくわかんないけど、そーだよそーだよ!』

回想P『それは極論では……』

回想莉嘉『いいから、ほら』

回想莉嘉『行って、Pくん。アタシが上がる』



P「……そう言うと、二人はマンションへのエレベーターに駆け込んでいって……」

P「迷ったのですが、部屋の前でまた押し問答をするよりは、お二人に任せる方がまだ可能性が残るかと」

卯月「な、なるほど……・」


P「あちらのことなら、心配ありません」

P「彼女たちならきっと、心のドアを叩いてくれているでしょうから」

卯月「……はい」

P「それより……」

P「予定が早まったことを、どうするかです」

卯月「ふえ?」

P「橘さんへの勝利は、とても嬉しく思います

P「賞賛こそすれ、咎めるようなことではありません」

P「ですが……」

P「このタイミングで橘さんが戦闘不能になったとなると――――」


【その頃、本田家】

ドンドンドン

みりあ『未央ちゃーん』

ドドドンドンドン

莉嘉『お外は楽しいよー』

ドドドンドンドンドド

ドコドコドコドコドコドコドコドコ

未央「う、うるさい……」 ゲッソリ

ドンドンドンカッ

莉嘉『フルコンボだドン!』

みりあ『わーい、もう一曲だぁ!』

未央「やろう人ン家の玄関で太鼓の達人してやがる……!」」



もうちょい進める予定でしたが、意識なくなりそうなので中断します

またちょいちょいと進めていきます


<秋葉原特設リング>

ザ、ザザー

比奈「ん……?」

ザワザワザワ

菜々「あ、あれは――――っ!?」

謎の女性の体の映像『んっふっふー』

卯月「あの街頭スクリーンに映ってるのって……」

謎の女性の体の映像『いやー、さすが島村卯月さん』

謎の女性の体の映像『あの高垣さんやありすさんを倒しただけありますね』

謎の女性の体の映像『未来のシンデレラであるボクを、声だけで判別するなんて』

比奈「ゲエーーーーッ! リアル生中継っすか!?」

菜々「うそ!? こっちにもカメラがどこかに!?」 キョロキョロ

謎の女性の全身の映像『驚いてくれました?』

卯月「やっぱり、輿水幸子ちゃん……!」

幸子『このボクくらいになると、そのくらいのサプライズができるんですよ!』 フフーン


幸子『ちなみにカメラは紗枝さんが、そしてマイクは美穂さんが――』

比奈「いえーい」

菜々「ナナも!! ナナもカメラに!!」

幸子『そっちとの中継出来ないと困るんでちょっと離れててもらってもいいですかね』

卯月「秋葉原の街頭テレビを使ってまで、一体……」

P「……」

P「始まるのでしょう」

P「今後の346プロの運命を決める戦いが……」

卯月「……え?」


幸子『さすがはシンデレラプロジェクトのプロデューサーさん』

幸子『どうやらよく内情はご存知のようで』

卯月「ど、どういうことなんですか?」

P「……」

P「346プロダクションは……まだ、アイドル事業の歴史が浅く、手探りの状態です」

P「まさに、これから事務所全体の方向性や得意分野が固まるところ……」

比奈「そしてその方向性が、今、ようやく見えてきている……」

卯月「あ、荒木さん!」

比奈「比奈でいいっすよ」

比奈「……もしかすると、これかアタシらら旗印になってもらうかもしれないんっすから」

卯月「ふえ?」

比奈「……何でもないっすよ」

比奈「それより……今の346の内情っす」

比奈「そっちのプロデューサーさんじゃあ少し話しにくいでしょうから、代わりにお話しますよ」


比奈「アイドルにとっての登竜門は、たくさんあるっす」

比奈「その中でもテレビ出演というルートに関していえば、やはり深夜番組の存在があげられるっす」

比奈「今346で売れてテレビに出てるアイドルは、アタシらを含め皆なんらかのバラエティ番組でそこそこ爪痕を残してる者ばかり」

卯月「確かに……」

卯月「幸子ちゃんも、ブレインズキャッスルでブレイクしたんですよね……」

幸子『よくご存知で』

幸子『カワイイことで有名なボクの存在が世間に知れたのは、あの番組がキッカケ』

幸子『そこにいる紗枝さんや美穂さん、それに友紀さんもそう』

幸子『深夜バラエティは、アイドルに取って欠かせぬ存在』

幸子『それは事務所も認めています』

P「事務所手動のネット番組だけでなく、地上波の深夜バラエティも出なくてはならない……」

P「そういう働きがけの末、新たに346プロダクションが中心となった深夜バラエティ番組が立ち上がることになりました」

卯月「ええ!?」

卯月「すごいじゃないですか!」

比奈「でも……」

比奈「その内容、そして方向性で難航してるんっすよね?」

P「…………」

P「……はい、そのとおりです」


比奈「深夜バラエティでアイドルに求められる方向性はざっくり分けて大体2つ」

比奈「ズバリ、笑いかエロっす」

卯月「笑いと……え、えろ……?」

菜々「ただカワイイだけじゃ、埋もれてしまう――」

菜々「それに、ただそれだけなら既に売れてるアイドルを使った方が数字が取れますからね」

菜々「既存のアイドルに打ち勝つためには、個性溢れてるキャラクターが必要とされるんです」

菜々「とにかくインパクトがあって、視聴者の心に残るようなキャラクターが」

比奈「もしくは、売れてるアイドルがやりたがらないお色気をするか……」

卯月「……」

P「そして……」

P「346メインの番組は、どちらに重きを置くのか」

P「どちらに舵を切り、アイドルを売り出し、番組を人気にするのかで、今346内は揉めています」

卯月「知らなかったです……そんな……」

菜々「……その表情」

菜々「やっぱりまだ、納得できませんか?」

卯月「その……少し……」

菜々「わかりますよ」

菜々「アイドルは、ファンのため笑顔で踊るものだとか、各々自分のアイドル像ってありますもんね!」

菜々「ナナだって、えっちなお仕事ばかりだとか、自分を切り売りするような芸人さんみたいなお仕事はあまり好きじゃないです」

菜々「……でも……」 スッ

卯月「……え?」

菜々「そんな仕事をしたとしても、ナナはまだアイドルでいたい」

菜々「だからナナは、お笑い向きの個性を持ったアイドルを後押しする幸子ちゃんにつきます」

菜々「ナナが生き残れる道は、多分もう、そっちしかないですから……」

卯月「ナナちゃん……」


比奈「……勿論、必ずしもエロか笑いかを選ばなきゃいけないわけじゃないっす」

比奈「ブルーナポレオンだって、限界まで宙ぶらりんやってたし、今でも決めてないアイドルは大勢居るっすから」

比奈「シンデレラプロジェクトも、どちらの派閥にも属さない集団っすよね」

P「……はい」

P「そのどちらを満たした場合でも、使い捨てになる可能性が高まります」

P「お笑いの場合、初見こそウケど、その後はウケたネタを滑り切るまで連投させられることが多々あります」

P「その結果、最初こそ大歓迎してた人達でさえも、面白く無いと叩いてくることになります……」

菜々「芸人さんと同じですね」

比奈「この方向性は、アイドルの先輩と真っ向からパイを奪い合わなくなった代わりに、芸人という新たな敵が加わることにもなりますしね」

比奈「エロだってそう」

比奈「際限なくエロを求められ、歳を取ったら高確率でサヨナラバイバイっす」

P「私は……このプロジェクトのメンバーを、そんな消耗品のようにはしたくありませんでした」

P「一時的な人気を得ても、すぐさま消えてしまったり、おかしな方向に進んでは元も子もありませんから……」

卯月「そっか……みくちゃんのデビューが遅れてるのもそれで……」

P「はい……」

P「今だと、単なる不遇な当て馬キャラとして認知され、すぐさま飽きられ消えていたでしょうから……」


比奈「でも……」

比奈「今、2つの組織に属さぬアイドルは窮地に立たされてるっす」

比奈「……」

比奈「ほかならぬ、貴女のせいで」

卯月「…………え?」

P「荒木さんッ!」

比奈「……言いたくない気持ちは分かるっす」

比奈「けど、後日心ないアイドルに言われ知るよりよっぽどいいと思うので」

P「それは……」

卯月「……」

卯月「どうして……私のせいなんでしょうか……」

卯月「どんな辛い現実でも、受け止めます」

卯月「だから……だから教えて下さいっ!」


比奈「346のエースがまだ高垣楓さんだった頃、エロも笑いもバランスが取れていたっす」

比奈「それこそ、彼女一人でエロも笑いも高水準で取れてましたから」

比奈「どちらかに突き抜けられないアイドルは、皆彼女に憧れたくらいっす」

比奈「でも――」

比奈「あの日、無名の新人アイドルに、高垣楓さんは敗れた」

比奈「自分の大事なトコロを晒して――」

卯月「あっ……」

比奈「2つの派閥のバランスは、その日を堺に崩壊したっす」

比奈「それまで無所属ながらも両派閥の誰より仕事を持ってた高垣楓さんが抑止力だったんすけど……」

比奈「股間を晒して敗北して以来、彼女はお色気サイドに取り込まれちゃいました」

比奈「しかしそれも長くは続かず、現在は失踪中」

比奈「それにより、高垣楓くらいになっても派閥にいることは大事であるという風潮が出来――」

比奈「更にはお笑いサイドの人々に、エロで売れてしまった末路を想起させる結果になったっす」

比奈「そして相手の派閥にはなりたくないなと、これまでと違い直接相手を叩き潰し自分達が勝とうとする動きが増えてきました」

比奈「それでもまだ可愛さやライブパフォーマンスで勝負をするアイドル達は残っている」

比奈「でも――」

春香「その旗印が、バラエティでネタを持つわけでもエロを出してるわけでもないありすちゃんだった……と」

比奈「……はい」

比奈「でもそのありすちゃんも、今敗れ、そして当分は再起不能になったっす」

比奈「おそらく、その機に乗じてエロにも笑いにも属さぬアイドルを屈服させるためにわざわざ輿水幸子は接触してきたんでしょう」


幸子『その通り』

幸子『今のまま三つ巴を続けるつもりはありませんからね』

幸子『これを機に、エロにもネタにも染まらない方には退場頂くつもりです』

幸子『ですが……ボクはカワイイだけでなく心も広いですからね』

幸子『こちら側につくというのなら、プロジェクト単位で歓迎しますよ?』 フフン

卯月「……ありがとうございます」

卯月「でも――お断りします」

卯月「私は……」

卯月「私は笑顔で自分の描いたアイドル像を追いかけていたいです……!」

幸子『それは残念』

幸子『せいぜい空中分解には気をつけてくださいね』

幸子『そこにいるブルーナポレオンみたいにならぬよう、ね』


卯月「え……?」

比奈「……」

比奈「テレビに出ても、何だかんだもう一歩突き抜けられてないっすからね」

比奈「まだまだ、藻掻いている最中」

比奈「……紗理奈ちゃんが色気グループに飛び込んだのも仕方のないこと」

比奈「そして……紗理奈ちゃんが頑張ってブルーナポレオン単位で取ってきた仕事を……」

比奈「千枝ちゃんが、無理だと言って逃げ出しちゃうのも仕方のないことっす」

比奈「川島さんは最近ずっとソロのお仕事だし……」

比奈「上手くいかないもんっすね……」

卯月「……・」

幸子『その通り』

幸子『各方面に媚を売るためのバランスがいいアイドルグループの限界はそこなんですよ』

幸子『かといって、単なる仲良しグループでも頂点は取れない』

幸子『同じ方向性を得意とするトップクラスのアイドルが集まって、ようやく花が開くのです』

幸子『紗枝さんがご友人の美穂さんとでなく、ボク達とカワイイぼくと野球どすえを組んでいるのもそう』

幸子『一人では取れない仕事も、最高レベルの同士とならば取れるということの証明』

幸子『単なる慣れ合いではないユニットこそが!』

幸子『言うならばカワイイ・オブ・カワイイのボクこそが!!』

幸子『346を導くにふさわしいということですよ!』


謎の声「あら……人を導くには、まだまだ若すぎるわね」

幸子『!』

幸子『何奴です!?』

菜々「ゲゲーーーーーッ! あ、貴女は……!」

礼子「深夜バラエティはお色気派、高橋礼子よ」

礼子「大人の魅力、見せてあげようかしら」

雫「も、もお~……」

比奈「な、なんっていう色香っすか……!」

卯月「た、立ってるだけで腰が砕け……」 ブルッ

菜々「そ、それにあの及川雫ちゃんを乗り物代わりに使っているあの姿……!」

菜々「まるで猛獣を乗りこなす世紀末覇王のような風格が……!」

礼子「そんなわけで、貴女達が導くというのには意義を唱えるわ」

礼子「けれど――」

礼子「ここいらで、どこが真に導く者か決める、というのは大賛成よ」 ニヤリ


礼子「346のメイン番組もそろそろキャスティングが始まる……」

礼子「決着をつけましょう」

礼子「深夜バラエティに求められる真の要素は何なのかを」

幸子『面白い……』

幸子『とてもカワイく、そのカワイさで魅了するボクが!』

幸子『お笑い担当の野球とどすえと共に分からせてあげますよっ!』

幸子『ねっ、友紀さ――』

謎の声『っっああ゙あ゙ーーーーーーーーっ!』

謎の声『だから振るなって言ったのにぃぃぃーーー!!』

幸子『……あの』

謎の声『もおおおおおノーアウト満塁からなーーーーんでゲッツー合間の1点しか取れないの!』

幸子『……』

幸子『と、とにかく勝つのはボクですからね!』

幸子『勝負に準備もいるでしょうし、2日後に試合と行きませんか?』

幸子(ここからのキャッツの調子次第では、他の仲間を見つけた方がいいかもしれないし……)

礼子「あら、私は今すぐでも構わないわよ」

謎の声『あ、2日後はドームのチケット取ったから無理』

幸子『……』

幸子『じゃ、じゃあ、まあ3日後で……』

卯月「それ……」

卯月「その勝負、私も参加しますっ!」


卯月「えっちに偏るんじゃない」

卯月「ツッコミ系実況向きに舵を切るんじゃない」

卯月「ただ、皆が皆、素敵な自分の個性で輝ける……」

卯月「そんなアイドル番組こそ、私は346の番組であってほしいですっ」

幸子『ヌルいことを』

礼子「でも、いいでしょう」

礼子「このまま無視してもいいけど、それだと口実を与えてしまうことになるわ」

礼子「直接戦ってたら勝ってたはずなのに――と」

幸子『あ、それも確かにそうですね』

幸子『どのみち中立派やその他派閥をどうするかは課題だったところです』

幸子『その代表として、卯月さんに試合に出て頂きましょうか』 クックック

礼子「あの高垣楓・橘ありすを下したという肩書があれば、代表を名乗るには十分」

礼子「それでも不服な中立派の人間がいたら、名乗り出るなり3日以内に代表の座を奪い取るなりすればいい」

礼子「面白くなってきたじゃない」 クスクス

幸子『三つ巴ってやつですねえ』 クククク


???「ちょっと待つにゃーーーーーーっ!」

礼子「!?」

幸子『何者です!?』

菜々「ゲ、ゲェーーーーーーーーーッ! あれは!」

???「勝手に盛り上がってもらっちゃあ困るにゃ」

???「名乗りでればいいって言うから名乗らせてもらおう」

???「みくの名前は――」

比奈「ま、前山田みく!!」

みく「勝手に名乗るにゃ!」

みく「っていうか間違ってるにゃ!!」

礼子「その娘が名前を叫ぶより早く名乗ってたじゃない」

みく「いや、みくっていうのは名前じゃなくて一人称で……」

幸子『あれ、じゃあ名前はみくさんじゃないんですか』

みく「ええと、それはまあみくなんだけど……」

比奈「出てきて早々グダグダっすね」


P「前川さん……」

みく「……」

みく「Pちゃんの気持ちはよくわかったし、嬉しかったにゃ」

みく「王道アイドルとしてやってくため、美波チャンと組ませたくないってのもわかる」

みく「みくはPちゃんを信用してるから、それは甘んじて受け入れるにゃ」

みく「でも!」

みく「みく一人の進退どころか、プロジェクトやプロダクション全体の問題なら、話は変わるにゃ!」

みく「みくだって、346プロが大好きだにゃ」

みく「だから――このプロダクションはみくが導くにゃ!」

みく「みくが信じたように……・Pちゃんも、みくを信じて!!」

P「前川さん……」

幸子『うーん……どうしましょう……』

礼子「いいんじゃない?」

礼子「これで参加が4チーム」

礼子「総当りにして、1日に2試合すれば、お客さんも飽きないでしょうしイベントも盛り上がるわ」

幸子『ふーむ、確かに』

幸子『……いいでしょう!』

幸子『カワイイぼくが、大四勢力としての参加を認めますよ!』


卯月「でも、一体誰とチームを……」

P「……城ヶ崎さん達ですか……?」

みく「生憎、あの二人はまだ方向性が定まってないにゃ」

みく「正確にはお色気向かいたがってるけど、色々と、アレだにゃ」

みく「だから――」

みく「エロだのバラエティだのくだらないって意見を持つ仲間を集めたんだにゃ!」

???「そう――大事なのは、エロでもバラエティでもなくメガネ!!」

比奈「わわっ、春菜ちゃん!?」

春菜「病院から帰ってきたわ!」

春菜「ブルーナポレオンが色気と笑いで割れてることは聞いてました」

春菜「だから――再度ブルーナポレオンを、メガネで一つにしてあげますよ!」

比奈「え、あ、はい」

みく「そして、枠なんて飛び越えたがってる鈴帆チャン!」

礼子「貴女達バラエティサイドなんじゃなくて?」

みく「王道アイドルにゃ」


鈴帆「そしてウチを加えた3人が346を引っ張るとよー!」

幸子『う、うわーーーっ、お城が喋った!?』

鈴帆「まさに、ウチ自身が346プロになるということばーーーい!!」

礼子「ねえ、これ本当にバラエティサイドじゃないの?」

幸子『こっちに押し付けないでくださいよ!』

菜々「どっちかっていうとラブホテルっぽいし、お色気さんサイドのよーな気も」

礼子「……うさみん星にもあるのね、いかがわしいホテル」

菜々「ふえ? ナナなんのことかさっぱり☆」 テヘペロリーン

比奈「カオスっすね」

卯月「こ、この人達相手に存在感を出すんですよね……」

比奈「いやー……ガンバとしか言えないっすわ」


幸子『で、組み合わせ抽選は――』

礼子「初戦の相手、私は島村卯月ちゃん率いる王道派アイドル軍を所望するわ」

卯月「ふえ?」

幸子『まあ、ボクは別に構いませんけど……』

幸子『お二人はどーです?』

みく「ただのバラエティなんかとは違うってことが早々に証明できるのは願ったり叶ったりだにゃ」

卯月「私は別にどこでもいいです」

礼子「……」

礼子(かかった……!) ニヤリ

礼子(どう見ても4組目はお笑い寄りの構成)

礼子(一見すればバラエティサイドが有利なだけな構図)

礼子(でもこれは、ファンの心を掴む必要のある戦い)

礼子(物量差は判官贔屓を誘発する)

礼子(そしてそれを最大限に活かすのがこの戦闘順)

礼子(まずは王道軍を真っ当なライバルとして叩き潰し、心を掴む)

礼子(どすえ達は相手が似たようなチームのせいで、勝ってもやらせ感が拭えない)

礼子(そこで差をつけ、まず飛び入りリームを撃破し、最後にどすえを仕留めれば、まさに物語の主人公)

礼子(最初に飛び入りを倒してどすえとの因縁を作るルートもありといえばありだけど……)

礼子(これだと、どすえに敗れ戦力が減った王道軍と戦うはめになって、盛り上がりに欠ける)

礼子(私達深夜お色気チームにとっては、この順番こそベストなのよ……!)


幸子『それじゃあ決まりですね!』

幸子『勝負は総当りのリーグ戦!』

幸子『勝者の方針が346全体の方針となります』

礼子「その運命の初戦が三日後……ね」

幸子『そーいうことです』

幸子『それではここに、カワイイボクが346プロダクション内のマッチフェスティバル――』






幸子『プロダクションマッチフェスティバルの開催を宣言しますよっ!』






幸子『それでは皆さん、また3日後に会いましょう』 ブツン

菜々「切れた……」

礼子「それじゃあ私も行くわ」

礼子「深夜要素を売りにした私達は、まだ上位3人が未定……」

礼子「楓ちゃんの穴はまだ埋まっていない……」

礼子「この3日で、新たなエロスの女王を発掘しなくちゃいけないもの」

礼子「……貴女も」

礼子「試合が盛り上がらなかった、なんてならないように、しっかりチームメイトを見繕っておきなさい」 スタスタスタ

卯月「……」


比奈「……どうするんっすか、チームメイト」

P「荒木さんは……」

比奈「生憎、今は原稿が手一杯で……」

ありす「ぐう……わ、私が……」  ヨロッ・・・

春香「ちょ、無茶ですよそんな怪我で!」

ありす「わた、しにも……意地と、誇りが……」 フラァ

春香「大丈夫」

春香「後は私がやるから」

春香「だからまずは体を休めて――」

P「……」

P「休むべきというのには賛成です」

P「ですが……」

P「今はアイドルではない天海さんを出すようでは、意味が無いと思います」

P「かつてのアイドルの復活など、消耗されるただのキャンペーンにすぎません」

P「どちらかというとバラエティチームの持つ強さです」

P「やはり、現役の王道アイドルの娘達が勝たねば……」


春香「……そう、ですよね……」

春香「でも、元々人数が少ないのに、どうやって仲間を……」

卯月「そんんあに少ないんですか?」

春香「……うん」

春香「例えば、ここに白米があるでしょ?」

卯月「はい」

春香「白米の半分を鶏そぼろにして、残りの半分を桜でんぶにして……」

卯月「お腹が減ってきますね……」

春香「そして最後、真ん中に梅干しを乗せる」

卯月(桜でんぶやそぼろにも梅干し……)

春香「この桜でんぶや鶏そぼろを、376内における深夜番組への取り組み方派閥2つだとすると」

春香「私達は、梅干しよ」

卯月「……」

卯月「………………え?」

春香「今の私達の勢力は、図にするなら、その梅干しくらいしか……」




卯月「……大丈夫ですよ」

卯月「心配なんていりません」

卯月「それに――どのみち、3VS3なら、組む人は決まってますから」

P「まさか……」

卯月「ニュージェネレーションズ」

卯月「またあの三人で、今度はもっといいステージをしたいんです」

ありす「……」

ありす「でも……噂じゃ、ニュージェネレーションズのメンバーはもうステージに立てない精神状態なんじゃ……」

春香「試合まで3日しかないのに、説得なんてできるの……?」

卯月「なあに、3日もあるんですから大丈夫ですよ」 ニカッ

卯月「それに――私達にはプロデューサーもついてますから!」

卯月「……ねっ、プロデューサー」 ニコリ

P「……っ!」

P「……はい」

P「必ずや――試合までに、渋谷さんも本田さんもその気にさせてみせます」

そんなわけでプロダクションマッチフェスティバル編です
眠いので中断します
夏の修羅場が終わるまではだいたいこの頻度です、申し訳ない

またちょいちょいと


【翌日】

ちひろ「その宣言は瞬く間に広がりました……」

ちひろ「ワイドショーでもとりあえげられ、346の特大企画として今や若者で知らぬ者はいないほどのビッグイベントに」

P「?」

P「虚空に向かって一体何を……」

ちひろ「語り部ごっこです」

P「?」

ちひろ「それより……」

ちひろ「我々はニュージェネレーションズ残りの二人の説得に3日という期間を使うとして……」

ちひろ「他のチームは、どうしているんでしょうね」


<原宿>

莉嘉「ふう」

莉嘉「勝っちぃ☆」 ブイッ

みりあ「わあ、お洋服全部そろったよー!」

莉嘉「この衣装争奪路上ライブ、修行にもなるし、なかなか楽しい企画だね」

みりあ「……そういえば、なんか事務所のホーコーセーっていうのが大変みたいだねー」

莉嘉「ねー」

莉嘉「まあ、あんまり興味ないんだけどさ、よくわかんないし」

みりあ「そーなんだ」

莉嘉「お姉ちゃんもお色気チームから声かかったけど辞退したみたいだし」

莉嘉「シンデレラプロジェクトからニュージェネレーションズの皆が出てるし、無理してでなくていいかなーって」

莉嘉「こうしていろんな人と野良試合するのも楽しいしね」


???「せやなあ……よほど露骨に偏っとらんかったらあんまり影響ない話やし」

みりあ「!?」

莉嘉「その声は――!」

みりあ「小早川紗枝ちゃんだあ!」

紗枝「うふふ」

紗枝「久しぶり~」

美穂「こんにちは」 ペコリ

莉嘉「どーしたの、お笑いチームの代表なんじゃなかったっけ?」

紗枝「んー……」

紗枝「うちも、別にマッチフェスは割りとどうでもよくなっとるんどす」

紗枝「うちは別にバラエティ偏重でもないし……」

紗枝「それよりも……前の大会で不完全燃焼だった戦いに、決着つける方がおもろそうやな~って」 ニィ

莉嘉「へえ」

莉嘉「それでわざわざ原宿まで」

紗枝「ぼさっとしとると、この街角ゲリラバトル企画終わってまうやろ?」

紗枝「負けて終わるには丁度いいタイミングやし、混ざろ思てな」 ザッ

莉嘉「悪いけど、負ける気はないよ」 ザッ


莉嘉「あんまり強くない人を倒すの飽きてきてたし……」

莉嘉「全力で行くよッ」

紗枝「それはうちとて同じこと!」

紗枝「ストロング・ザ・舞踊と呼ばれたうちの真の実力をお見せするえ~!」 ヒュバッ

みりあ「、懐から取り出した着物とかにつけるハンカチ的なやつを投げつけたーっ!」

美穂「服紗……?」

莉嘉「違うッ! 広がったあとのこの面積!」

莉嘉「薄く伸ばされたクレープだッッ!」

莉嘉「そこからくすねとったみたいだけど、残念!」

莉嘉「原宿でクレープを散々食べたアタシにクレープは通用しな――」 パク

紗枝「……」 ニヤリ

莉嘉「!?」

紗枝「ふっふっふ……」

紗枝「それは今しがた調達したクレープとちゃうで」

紗枝「事前に準備しとった八つ橋や!!」

紗枝「さあ、この独特のニッキ臭さに囲まれて、いつまで冷静におられるかな~?」


寝落ちしてました。
2期始まったし少しでも進めます。


莉嘉「うぐう~~~」

莉嘉「この匂い、何か嫌……!」

莉嘉「さっさと切り裂いて――」

紗枝「生憎やけど……」

紗枝「あの技はもう研究しとるえ」

紗枝「鋭い爪で引き裂くには、大きく振りかぶる動作が必要……」

紗枝「全身を八つ橋で巻かれた状態では使えへん。せやろ?」

みりあ「――――っ!」

紗枝「食らっておくれやす」

紗枝「美穂はんに会いに城ヶ崎美嘉のライブへ行って」

紗枝「美穂はんと組んどった茜はんに手伝ってもらって完成した技ッ」

紗枝「素早い舞踊の最中、鉄扇に炎を纏わせる情熱溢れるダンス」

紗枝「平等院鳳凰堂極楽鳥の舞ッ!」

ボゥッ!

みりあ「り、莉嘉ちゃーーーん!」


紗枝「!」

ヒュバッ!

莉嘉「あーーーっ、惜しい!」

莉嘉「完全に不意をついたと思ったのに!」

紗枝「くっ……効いとらんの……?」

美穂「もしかして、今の……」

莉嘉「ふふーん」

莉嘉「どうやったか、分かるかな?」

みりあ「すごーい」

みりあ「今のって、前からやってた手首のスナップだけでやるってやつだよね?」

美穂「あっ」

紗枝「しれっと味方に背中撃たてはる……」

莉嘉「もー! 黙ってた方がかっこよかったのに!」

みりあ「あ、ごめん……」


莉嘉「まあ、いいや」

莉嘉「空気を切り裂き炎ですら絶てる今のアタシに隙などなーい!」

莉嘉「今のアタシなら烈海王にだって勝てるし、この爪で真っ二つに出来るッッ」

紗枝「誰」

莉嘉「いっくよー、必殺・ギャルリンの赤い姉ーーーーーっ!」

紗枝「平等院鳳凰堂・極楽鳥の舞ーーーーーっ!」

ズドォォォォォォン

美穂「……えっ?」

みりあ「ええ!?」

謎のフードマンとの女「……」

莉嘉「アタシ達の攻撃の間に入って、二人ともの攻撃を止めた……!?」

紗枝(うちの燃えとらん部分や莉嘉はんの手首といった、掴んでも問題ないところをピンポイントで掴んではる)

紗枝(こ、この人、強い……!)


謎のフードマントの女「……挑戦」

謎のフードマントの女「誰でも挑めるフリーのライブバトルをしていると聞いたのだけれど」

莉嘉「!」

莉嘉「挑戦者かー、いいけど、今ちょっと順番待ちを――」

みりあ「じゃあ、先にみりあと闘ろうよー!」 ダッ

謎のフードマントの女「…………フッ」

莉嘉「ゲエーーーーーッ! みりあちゃんの不意打ちを避けた!」

紗枝「それどころか、あのカウンターは――!」

美穂「あ、アルゼンチンバックブリーカー……!?」

莉嘉「……」

莉嘉「!」

莉嘉「ち、違う……」

紗枝「え?」

莉嘉「あれは、ただのアルゼンチンバックブリーカーじゃない」

莉嘉「新歓コンパで調子こいてサワーを飲み過ぎグロッキーになって横たわる大学生みたいなフォルム……」

莉嘉「あ、あれはまさしく――――」


紗枝「……まさか!」

謎のフードマントの女「……」 ミリアポイー

紗枝「そのマント、脱いでもらいますえ」

紗枝「平等院鳳凰堂・極楽鳥の舞!」

ボオオオオオ

ヒュッ

紗枝「え――――っ」

紗枝(この炎の中を、突っ込――――)

謎の燃え落ちたフードマントの女「居酒屋ボンバァ!」 ドガァ

莉嘉「!」

莉嘉(この技のキレ、間違いない……!)

謎のフードが完全に落ちた女「……」 ガシッ

莉嘉「ぐはっ!」

莉嘉(この技の威力、やっぱり……)

莉嘉「た、か……えで……」

莉嘉「がふっ!」

もう謎でもなんでもない女「…………」


【更に翌日】

<東京ドーム>

友紀「だーーーーっ、負けたァ!」

友紀「今日みたいな負けが一番悔しいんだよなあ」

通りすがりのキャッツファン「……」 ジロジロ

友紀「……あ、あはは」

友紀(……アイドルとしてテレビに出てから、球場で好き放題が出来なくなっちゃったなあ)

友紀(ヤジだって飛ばせないし)

友紀(なのにアイドルとして野球に触れられるわけじゃないしなあ)

友紀「はあ……」

謎の影「……」 スッ

友紀「ん?」

友紀「ゲェーーーーーー! あ、あんたはーーーーー!!」

寝落ちする前に投下終了宣言しときます


【試合当日】

幸子「……とんでもないことになった……」

幸子「ぬわああああああああ」

幸子「なんで僅か2日でカワイイぼくと野球どすえがカワイイぼくたった一人に!」 ゴロゴロ

幸子「紗枝さんが“あの人”に負けて入院したのはまあいいとして……」

幸子「いや良くはないですけど、まあしょうがないこととしても!」

幸子「野球選手と合コンしたのを速攻フライデーされるって!!」

幸子「フライデーって!!!」

幸子「ボクが目立てなくなるからって、あの人のメンバー入り希望を蹴るんじゃなかったあ~~~」 バタバタ

幸子「まさかここにきて人数足りなくなるだなんてえ~~~~!!」

幸子「うう、どうしましょう」

幸子「助けてくださいドラえもーーーん!!」


謎の影「・・・・・・・・・・(何かをしゃべっている)」

幸子「ふむ」

幸子「ドラえもんにツッコミが入らなかったのはともかく……」

幸子「今のお話、本当ですか?」

幸子「だとすると……」

幸子「なるほど、これは天がカワイイボクに与えしチャンス!」

幸子「今すぐその人を呼んで来てください」

幸子「ふっふっふ」

幸子「これでカワイイボクが346の頂点に……!」


<スカイツリー前>

ちひろ「ついにこの日がやってきました」

ちひろ「346プロの今後を担うビッグタイトルマッチ」

ちひろ「プロダクションマッチフェス」

ちひろ「その初戦が、ここスカイツリーで行われようとしています!」

ちひろ「実況解説は、私全アイドルの見守り人こと千川ちひろと!」

瑞樹「川島瑞樹でお送りします」

鈴帆「ひえーーー、それにしても立派とね」

比奈「無駄にお金かかってるし、よくこんな場所がすぐ取れたっすね」

ちひろ「取れてませんよ」

比奈「…………へ?」

ちひろ「そんな急に会場を貸してくれる所なんてありませんよ」

ちひろ「ですから――――」

みく「ゲエーーーーーッ! あ、あれはーーーーーーっ!!」


卯月「く、空中にリングが!?」

ちひろ「そう!」

ちひろ「スカイツリーでのライブ認可を得られませんでしたが・・・・…」

ちひろ「その天辺部の権利を得ることならできました」

ちひろ「よって今回の対決は!」

ちひろ「スカイツリーてっぺんの特設リングで行いますッ!」

卯月「わわ……」

菜々「あの高さで……」


礼子「さて……」

礼子「先手は譲ってあげる」

礼子「どうせなら、万全な相手と戦いたいしね」 フフ

幸子「やれやれ、カッコつけますねえ」

幸子「相手が一人だけならば、叩き潰すチャンスでしょうに」

礼子「アイドルっていうのは、カッコつけてなんぼなのよ」

礼子「勝つのは当然」

礼子「有利な状況は、アイドルとしては当然不利」

礼子「そういう貴女こそ――」

幸子「……勿論」 ニィ

幸子「そういうわけです」

幸子「リングに行きましょう」

みく「え?」

みく「でもそっちも一人だけじゃあ」

幸子「いいんですよ」

幸子「貴女達など、ボクひとりで十分ですから」 ンフフフフ


みく「にゃにぃ~~~~~~!!」

春菜「ふっ……ここで怒るようじゃまだまだですよ」

みく「春菜ちゃん!」

春菜「ここは敢えて挑発に乗るべきです」

春菜「少人数側が揃うまで待つという道は既に使われています」

春菜「そうなると、後はもうこの戦いは相手を侮っていいものではないとしらしめるしかない」

春菜「ここは全力で叩き伏せます」

鈴帆「おう!」

みく「わかったけど、リーダーはみくにゃ!」


鈴帆「わーーーーっ、高ッ!」

春菜「し、ししし下を見てはいけません!」

みく「ふたりとも足が笑ってるにゃ」

春菜「っていうか、なんでエレベーターではなく階段なんですか!」

みく「まったく、情けないにゃ」

みく「みくは猫ちゃんみたいに高いとこ余裕だにゃーん」 フフーン

春菜「確かにちょこちょこ高い所に登って落下してたような……」

鈴帆「アイドルとしては落下出来るほど上がってもおらんのにのう」

みく「階段揺れるかな」 グラグラ

春菜「わーわーわー!!」

鈴帆「やめちょーよ!!」

卯月「……」

菜々「た、楽しそう……ですね」

比奈「あれでリングまで辿りつけるんっすかねえ……」


幸子「……」

幸子「遅かったですねえ」

幸子「いやほんと、最初からそう言おうとは思ってたんですけど、割りとリアルに結構待ったんですけど」

春菜「あ、あはは……」

みく「っていうか、自分だけエレベーターに乗るなんてずるいにゃ!」

鈴帆「一般客もいるせいで、エレベーター一基しか使っちゃいかんのはきつかね」

春菜「ここに来るだけで息上がっちゃいましたもんね」

幸子「多分若干一名については着ている気ぐるみのせいであって言うほどボクは関係ないんじゃあ」

鈴帆「言われとるばいね、猫ちゃん」

みく「みくのはコスプレでもきぐるみでもなく、猫耳を生やした美少女ってだけだにゃ」

春菜「私自身がメガネとなっています」

幸子(あ、これ一人で相手にするの、普通に面倒臭いやつですね……)


幸子「しかし、まあ、ずいぶん作りこまれたかぶりものですねぇ」 マジマジ

鈴帆「ふふん」

鈴帆「気合は入っちょるばいね」

幸子「これだけもふもふだったら、ここから飛び降りてもクッションになりそうですよね」

鈴帆「えっ」

幸子「?」

鈴帆「……」

鈴帆「いやいやいやいやいや、やらんとよ!?」

鈴帆「さすがにこの高さから落ちたらヤバイばいね!?」

鈴帆「いやほんとこの高さは洒落にならんと!!」

みく「えっ、ちょ、なんでリングの端にわざわざ――」

鈴帆「いやほんと押したらダメなレベルばい!」

鈴帆「絶対押したりしたらダメばいね!?」

幸子「ばいばいばいばい五月蝿いですねえ」 ドン

鈴帆「でんでんでんぐり帰ってバイバイば~~~~~~~い」

みく「お、落ちたあああああああ!?」

春菜「な、なんて残忍な……」


幸子「いや、さすがに死んだりはしませんよ」

幸子「セーフティーネットがあるのを、ボクは見てますよからね!」

春名「確かに、グチャって音は聞こえませんでしたけど……」

幸子「不安なら、覗きこみますか?」

春名「えっ」

幸子「まあ、普通の人ならこっから下を覗きこんでもわからないですけど……」

幸子「メガネという高性能レンズをお持ちならば、ここから覗きこんでも十分見えるかなと」

春名「……ふっ」

春名「その通り! メガネがあればなんでもできます!」

春名「例えばそう!」

春名「この馬鹿高いなリングの上から、下界を覗きこむのだって!」

幸子「」 ドゲシ

春名「余裕うううううああああああああああああ」

みく「あ、あっさり蹴り落とされたにゃ……」

意識ふらふらなので今日はもう投下終わります


みく「くっそー!」

みく「ずるいにゃ、そーやってちょっと蹴りを入れるだけで落下する位置に誘き寄せるなんて!」

幸子「カワイイぼくによる華麗な頭脳プレーと呼んでください」

幸子「伊達にブレインズキャッスル常連じゃあないということですよ」 ククク

みく「ぐむ~~~~っ!」

みく「でもみくは絶対絶対ぜーーーーったい、そんなフリには屈しないにゃ!」

幸子「?」

幸子「……ああ、ご安心ください」

幸子「貴女にはあんな方法使いませんよ」

みく「ふえ?」

幸子「既にブルーナポレオンとして実績を持ち実力が一枚上の春菜さん」

幸子「そして勝敗とは別の次元で全てを持っていきかねない火薬庫の鈴帆さん」

幸子「この厄介な二人に離脱してもらうことこそが目的」

幸子「そして――」

幸子「唯一残った雑魚である貴女は、カワイイボクが直々に叩き潰してあげますよ」 フフーーンドヤドヤ

みく「にゃ、にゃにい~~~~~!?」

みく「その言葉、取り消すにゃーーーーーっ!」 ダアッ


みく「つめとぎスラーーーッシュ!!」 ヒュバッ

幸子「効きませんよ」 フッフッフ

幸子「その程度の威力ならば、まだ莉嘉さんの――」

みく「……ニヤリ」

みく「覚えておくにゃ」

みく「猫は身軽で――素早いんだにゃ!」

ズドン!

比奈「ふ、振り下ろした右腕を!」

菜々「素早く相手のボディへと……!」

みく「クリーンヒット……」

みく「これでみくを見直してもらえたかにゃ?」

みく「もいっぱーーーつ!」

みく「おまけの必殺ねこパンチッ!」

ボゴォ!!

幸子「おぐえっ!?」

菜々「は、入ったッ!」

卯月「みくちゃん……!」


幸子「ヴォェェェェッッ」 ビチャビチャビチャン

みく「!?」

卯月「え、は、吐いた……!?」

菜々「痙攣もしてますね……」

比奈「大丈夫っすか、あれ……」

ザワザワザワ

みく「こ、この空気は……!」

みく(これはまずいにゃ!)

みく(半官贔屓をされると苦しいし、既に観客が既に向こうの応援サイドになりつつある……!)

ナニモアソコマデ・・・

みく(でも今から仕留めるには苦しすぎるし……)

ヒデエアリサマダ・・・

みく「だあああああ!」

みく「うるっさいにゃ!」

みく「こちとらちゃんとした正々堂々たる戦いで――」


ガシィッッ

みく「!?」

幸子「ふふ……背中を見せましたね」

みく「なっ……!」

みく「あれだけのダメージ……う、動けないはずじゃあ……」

幸子「残念でしたねえ」

幸子「カワイいボクは、その可愛さのあまり、よく殴られるんですよ」

幸子「何度も殴られて強くなったお腹に、あの程度でダメージがあるとでも?」 フフーン

みく「そ、んな……」

みく「あ、あの嘔吐量や顔色は間違いなく……」

幸子「ボクは可愛くて演技も出来るアイドルですよ」

幸子「それに……あの人がボクのそういう顔を見て喜んでくれたんです」

幸子「そういう表情くらい、いつだって出来るんですよ」

幸子(……まあ、本当は殴られすぎて早く復帰できるってだけで、ダメージ自体は本物だったんですけど)

幸子(わざわざ本当のことをいう必要はないですよねえ) クク


幸子「このまま絞め落としてあげますよ……!」

みく「ぐぎっ……」

みく「み、みくは……」

みく「絶対に……ぎ、ギブアップなんて……」

幸子「……いいでしょう」

幸子「そのガッツに免じて、カワイイカワイイボクによる最強の技で終わらせてあげますよっ!」 シュバッ

比奈「と、飛び上がった……!」

幸子「いきますよっ!」

幸子「カワイイ ボクによる とっても 痛い ターンバックルパワーボムーーーーっ!」 ズガーーーーン

比奈「名前長ッ……!」

菜々「最後まで言えてませんでしたね」

卯月「痛いを言い終わる前にはもう激突してましたよね……」


比奈「可哀想っすけど……」

菜々「……こうなることは、見えていましたよね」

卯月「そんな……」

比奈「そもそもあちらは準備万端での戦闘」

比奈「付け焼き刃の急増チームでは、そりゃあ……」

菜々「うん」

菜々「それに――」

菜々「ネコっていうのは、基本的にヤラれる側ですからね」

比奈「うむ」

卯月「???」



【プロダクション内マッチフェス第1回戦  勝者・チームバラエティーズ】


礼子「さて……出番だけれど……」

礼子「数で勝って相手を袋叩きにする趣味はないのだけれど……」

礼子「かといって、こちらの人数を減らす方法は既に使われている」

礼子「そこで――」 クルリ

比奈「?」

比奈「リングはタワーの上っすよ?」

礼子「こういうのはどうかしら」

礼子「島村卯月ちゃん」

卯月「は、はいっ」

礼子「貴女を“ご指名”のある人が、リングで待ち受けているわ」

卯月「え……?」

礼子「それが誰かはついてみてのお楽しみ」

礼子「そして――」

礼子「たどり着くには、1階にいる私と、最上階でリングに続く通路手前で待ち受けているアイドルを倒さねばならない」

礼子「どう?」

礼子「少しは王道で燃えてくるでしょう?」


菜々「でも、その流れだと、ボスは他の人になるんじゃあ……」

礼子「ええ、そうよ」

礼子「この流れで、私がトップである必要はない」

礼子「必ずしもここで目立たずともいい」

礼子「そうやって割り切れるオトナの力、教えてあげるわ」

礼子「私すら倒せないようなら、所詮はそれまで」

礼子「先鋒として、存分に戦わせてもらうわ」

卯月「うう……」

菜々「この大会、欠席はありだし、怪我で離脱とかもありえるけど、参加出来るのは開始前に申請していたメンバーのみ……」

菜々「今日負けても後日フルメンバーで闘うこともできますけど……」

比奈「おそらく春名ちゃん達は戦闘不能」

比奈「そうなると、お色気組の1勝はほぼ確定」

比奈「ここで負けてる余裕はないっすよ……!」

卯月「うう……」

卯月「わかりました」

卯月「まずは、この1階のリングで……」


未央「その必要はないよしまむー」

卯月「凛ちゃんとみ……未央ちゃん!」

凛「遅くなって、ごめん」

ちひろ「まさか本当に間に合うなんて……」

ちひろ「プロデューサーさん、本田さんをどうやって説得し…」

未央「へへーッ、そいつは後回しだよちひろさん!」

凛「時間もないんだ、早いとこ試合のゴングというこ」

未央「ハッハッハ」

未央「つまりは、そーゆーことだよしまむー」

凛「ご指名、入ってるんでしょ」

凛「そこまでの二人は、私と未央とで引き受けたから」

未央「生意気にも指名してきた奴に対して、魅せつけちゃってきてよ!」

卯月「ふ、ふたりとも……」 ジーン


未央「迷惑かけちゃったし、ここは私が!」

礼子「あら、私は全員で来てくれても構わないのだけれど」

礼子「複数人を手球に取るのはオトナの嗜みよ」

未央「そんなオトナを勢いで倒せるのが若さってこと、教えてあげるよ!」 ダァッ

比奈「突っ込んだ!」

未央「一番首、取ったりーーーーーっ!」

礼子「積極的なアプローチは嫌いじゃないわ」

礼子「でも――」

礼子「何でも素直に食らうほど、焦っているつもりはない」

凛「う、受け流した!」

卯月「未央ちゃん!!」

礼子「けれども決して逃しはしない」

礼子「付かず離れず、高位置をキープし続けるッッ」 ガシッ

凛「つ、掴まれた!!」

未央「ひ、引き剥がせない……!」

礼子「のらりくらりと受け流しつつも、決してこちらから離れさせることはない」

礼子「そのキープ力も、オトナの嗜みよ」 ギリギリギリ

未央「ぐ、ぐむ~~~~~~!!」

礼子「アダルティック・バスターーーーーッ!!」

ズガーーーーン

未央「ぐあっ……!」

礼子「覚えておきなさい」

礼子「きれいなバラにはトゲがあるのよ」

礼子「気軽に手を出すと怪我するってこと、覚えておくのね」 フフ


未央「く、まだまだァーーーー―!!」

凛「ストップ、未央」

未央「何、しぶりん!」

未央「まさか、アンタじゃ無理だ私が変わるとか言うんじゃあ……」

凛「アンタじゃ無理、アタシが変わる」

未央「……ッ!」

凛「別に馬鹿にしてるわけじゃないし、むしろ未央のことは買ってる」

凛「単純に、相性が悪い」

凛「若さと元気が売りで直情型の未央は、多分相手に取って得意な相手」

凛「だからここは、私が行く」

凛「未央は、卯月をリングに届けてあげて」

未央「しぶりん……」

凛「それに――――」

凛「私も、思い知らせてあげなくちゃ」

凛「綺麗なバラのトゲを抜くのは、花屋の得意分野だって」 ザッ


礼子「さあ、かかっていらっしゃい」

凛「生憎、私は未央とは違う」

凛「未央ほど真っ直ぐに、駆け抜けることが出来ない」

凛「だから――」

ギュルッ

礼子「!」

礼子(これは……触手!?)

凛「私は、じっくりこの子たちを育てるし、育っていく」

凛「駆け抜けるだけが若さの特権じゃない」

凛「ゆっくり成長する時間があるって強みを、教えてあげる」

礼子「ふっ……上等」 シュル

凛「!」

礼子「あら、触手を抜けたことがそんなに意外かしら」

礼子「オトナの女は触手相手の立ち回りも慣れてるものなのよ」

凛(これが、オトナ、か……) タラリ

凛「でも……私だって、譲る気はない……!」


未央「行くよ、しまむー!」 ダッ

卯月「は、はいっ!」

卯月(凛ちゃん……)

エレベーター「ポーン」

未央「よし、このまま最上階へ――」

ガタン

未央「!?」

未央「そ、そうか!」

未央「密室という環境と、共に閉じ込められるというハプニング溢れるエレベーター……」

未央「このエレベーターは、既に敵の得意分野と化しているッッ


ガタン

未央「!」

未央「天井に潜んで――!?」

相手の中堅「……」 シュタッ

未央「ああ、そんな……」

未央「ばかな!」

未央「みなみん!?」

美波「……」


未央「なんでここに……」

美波「……ごめんね」

美波「私が、次の対戦相手」 ドンッ

グラッ

未央「!?」

美波「衝撃で、エレベーターは急停止」

美波「でも、私の後ろの階数ボタンをもう一度押せば、再度動き出すようになってる」

未央「……なるほどね」

未央「押してみろ――ってか」

卯月「未央ちゃん……」

未央「だいじょーぶ」

未央「確かに、狭い密室はセクシーでエロスなみなみんのテリトリーかもしれない」

未央「でも私だって、最近まで狭くてジメジメした部屋に引きこもってたんだ、負ける気はしないよ!」

卯月「何かちょっとネタにしていいか迷うやつだよ未央ちゃん!!」


未央「しまむーじゃ、相性悪いだろうしね」

卯月「え……?」

未央「仲間になる娘の情報は、しっかりと調べたからね」

未央「みなみんの異名、知ってる?」

美波「……」

未央「歩くセックス」

卯月「せっ……///!?」

未央「その圧倒的色香は、346でも1・2を争うと言われてるんだってさ」

未央「だからここは、しまむーでなく、ニュージェネレーションのセクシー担当の私が!」

卯月「………………?」

未央「ツッコミ入れるならともかく素でキョトンとするのはやめてね」


美波「不本意なアダ名ではあるけれど……」

美波「大事な友だちのためだから……」

美波「手加減は、出来ない」 ザッ

未央「愛のためにパワーアップ、かあ」

未央「まさにセックスだね」 ザッッ

美波「…………」

未央「…………」

美波「…………」

ヒュパンッ

未央「!?」

未央(い、今、何か食らっ――)

美波「最初は、まず、優しく触れるだけの打撃を」

美波「いきなり、本丸には攻め込まない」

未央「ぐっ……」

未央(威力はさほどないのに、的確に全身を責められるせいで攻め込めないっ……)


未央「ぐうっ……!」

未央(まずいまずいっ!)

未央(これ完全にみなみんのペースッ!!)

未央(このペースを崩すには!)

未央「エロにはエロ!」

未央「私のセクシーさで観客の視線も主導権も奪うッ!」

未央「セクスィーパンチラキーーーーック!」

美波「……」 スッ

比奈「屈んで避けたっ……!」

菜々「ううん、あれは――!」

ガシィッ

卯月「て、低空タックル……!」

美波「ごめんね」

ズゴォォォォォン

比奈「ゲェーーーーーッ! そ、そのまま脳天を!」

菜々「食らった側のあの体勢、まさにまんぐり返し落とし……ですね……!」

比奈「死んだんじゃないっすか、あれ。肉体的にもテレビ的にも」


未央「うぐ~~~っ」 フラァ

未央「ま、まだまだーーーーっ!」

未央「セクシー飛び蹴りッ!」

美波「……」 ガシィッ

比奈「また足を……!」

菜々「そ、そのまま駅弁スタイルでジャイアントスイング……!」

卯月「す、すごい……」

卯月「私とはまた別の、48の必殺技を……?」


礼子「浅知恵ね」

礼子「エロスとは、内から醸しだされるもの」

礼子「それを自らの意志で自然に出せるようになるには、長い年月と経験が必要」

礼子「若さに任せて露骨なエロを見せても、それは股間に響かない」

礼子「若さしか売りのない花は、容易く枯れるもの」

凛「ぐっ……」

凛(この人、強い……)

凛(伊達に薔薇を背負うのが似合うわけじゃないッ)

礼子「さあ、お遊びはここまで」

礼子「オトナのすごさ、味わわせてあげる」


未央「う、うう……」

未央(か、勝てない……)

未央(やっぱり、まだ発展途上の身体じゃ、みなみんには……)

ミオー!

未央「こ、この声は……」

ガンバレ、ミオー!

未央「き、聞こえる……」

未央「エレベーターの中だから、微かにだけど……」

未央「み、みんなが……」

未央「皆が見に来てくれてる」

未央「あんなに醜態を晒したのに……」 ググ

未央「だったら……もうちょっとくらい……」

未央「アイドル本田未央の凄さ、見せとかないとね……!」

美波(急に顔つきが変わった……!?)


未央「目指すはナンバーワンだけど……」

未央「誰にも負けるつもりはないけど……」

未央「まだ、発展途上なのは認めないといけないもんね」

未央「だから、今は!」

未央「みなみんに勝てなくてもいい!」

未央「今はただ、一撃を入れてしまむーを送り出す!」

未央「私はニュージェネレーションズ・本田未央だ!」

未央「そのくらいの意地は――あるっ!」 バッ

卯月「未央ちゃんっ!」

菜々「技のキレが……!」

比奈「吹っ切れて動きがよくなったッスね」

美波(それだけじゃない……これは……!)


比奈「あれ……」

比奈「気のせいっすか?」

比奈「どことなく……」

菜々「うん……」

菜々「動きにエロスが加わっていますね……」

ヘレン「若さ、ね」

菜々「わわっ、いつのまに」

ヘレン「今さっきよ」

ヘレン「人混みの最前まで来るのに苦労したわ」

ヘレン「一応ヘタレな子猫ちゃんの試合を見に来てあげたのに、車で移動中に決着ついてるし」

比奈「ああ、速かったっすもんね……」

菜々「それより、若さっていうのは……」

ヘレン「そのままの意味よ」

ヘレン「今の私や貴女にはない、若さゆえのエネルギー」

菜々「な、なななナナは十七歳ですよっ!」

ヘレン「あざとい狙ったエロスでも、熟成された色香でもない」

ヘレン「健康的な若者の、健全な躍動感と光る汗」

ヘレン「人は、エロスとは程遠いはずのソコにも、多大なエロスを感じるのよ――!」


美波(健康的な腋チラ……)

美波(これは、私には――――!)

未央「うおおおおお!」

美波(これを貰うわけには……)

美波「中指フェンシングーーーッ!」

ヘレン「あの指の曲げ具合……」

ヘレン「恐ろしく正確に相手の弱いトコロを突く、まさに強力無比な一撃ッ!」

未央「辞表バリアーーー!」

美波「な……!?」

卯月「辞表が代わりに破れ――」

未央「人が堕落していきやすいのは、性にだけじゃない!」

未央「怠惰にもだよ!」

未央「喰らえ!」

未央「辞めてやるってもう言わないぞパーーーンチ!」

ズドゴォ

夜更かしできない身体になった
ねむたいので一旦投稿を終了します

コミケも終わったので、のんびりだらだらやっていきます。


未央「これが……」

未央「怠惰を知った者の強さだ!」

ウィィィィン

卯月「エレベーターが動き出しましたよ、未央ちゃん……!」

未央「……しまむー」

未央「開いたらダッシュでリングに行きなよ」

卯月「ふえ?」

未央「……みなみんは、まだ全然戦えるよ」

未央「何Rも出来る絶倫ってことかなー」 ハハ

未央「まだまだこのエレベーターは戦場にするからさ」

未央「だから――走れ、しまむー!」

ポーン

卯月「で、でも……」

美波「……友達のいうことは、よく聞かないと」

未央「やっぱり立ってくるかー」

未央「ほら、いきなよ、しまむー」

美波「……うん」

美波「あの人と、戦ってきてあげて……」

卯月「あの人……?」

美波「……」 ジッ

卯月「……」

卯月「わかりました」

卯月「お願い、未央ちゃん!」 ダッ

未央「おうよ! 任されたッ」


未央「最初から、行かせる気だったよね」

美波「……」

未央「私にもちょっと気を使ったり?」

未央「だとしたら……もう大丈夫」

未央「例えボッコボコにされても、もう辞めるなんて言わないからさ」

未央「本気で来なよ」

未央「まだ、奥の手を隠してるっしょ」

美波「……うん」

美波「さっきので……少し、火が」 ヒュッ

未央「それ……」

未央「ラクロスの、ラケット……?」

美波「これが本来のファイトスタイル――」

未央「なーるほど」

未央「棒の扱いはプロフェッショナル、か」 タラリ

美波「そして――」

未央「げっ、ボール的なのもあるの!?」

未央「棒を振り回して何かを発射させる、かあ」

未央「なるほど、しまむーを巻き込むからさっきまで使えなかったわけだ」

美波「本当なら、誰にも使えないはずだったんだけど……」

美波「ちょっとだけ、本気で戦いたいなって」

未央「光栄だねぇ~」

未央「それじゃ、私も応えないとね」 ダッ


礼子「行ったようね」

礼子「ま、でもそうなるわよね」

礼子「私だって、そうさせるわ」

礼子「そうした方が盛り上がるもの」

凛「ずいぶん、余裕なんだ……」

礼子「大人はいつでも余裕ぶっておくものよ」

凛「実際余裕なんだろうけど……」

凛「その油断、足元をすくわれるよ……!」 ギュアッ

礼子「ピラニアンローズ」

礼子「その華も、扱い慣れているわ」

礼子「勿論枯らせることもできる」

凛「ぐっ……!」


礼子「いつだって一番を狙う」

礼子「だからといって、最初から最後まで頂点に居続けるなんてこと、限られた一握りにしかできない」

礼子「……今回、最前に出るのは私じゃあない」

礼子「この試合、私は名脇役でさえあればそれでいい」

礼子「主役じゃなくても、しっかりと存在感を示すことが大切」

礼子「酸いも甘いももぐもぐしてきたからこそ、きちんと脇を固められる」

礼子「本当なら、もうちょっとお喋りをしていたかったけど……」

礼子「メインイベントが始まる前に、終わらせておいた方がいいでしょう」 ザッ

凛「くっ……」

礼子「来なさい」

礼子「一番自信のある技で」

礼子「派手に叩き潰してあげる」


凛「メインイベント……」

凛「貴女ですら喰ってしまう大物……ってこと?」

礼子「今回に限っては、ね」

礼子「ずうっと食われ続けないために、今こうして脇を固めつつ逆転のための地盤を固めているのよ」

凛「……」

凛「貴方達の三人目は、一体――」

礼子「……そうね」

礼子「どうやら彼女の出陣前に終わらせることは厳しそうだし……」

礼子「最後の植物の準備をしている間に、教えてあげるわ」


比奈「お色気チームの3人目……」

比奈「一体誰なんっすかね」

菜々「うーん、難しいですねえ」

莉嘉「知ってるよ」

比奈「わわっ!」

P「城ヶ崎さん……!」

ちひろ「どうしたんですかその傷!」

ちひろ「ドリンク飲みますか?」

莉嘉「遠慮しとく」

みりあ「あはは、ちょっとライブバトルで負けちゃって」

莉嘉「どすえ達が粘ったから、こうしてここまで来られる程度には回復したけど……」

莉嘉「当分、ライブは出来そうにないや」

莉嘉「ごめん」

P「いえ……」

P「正々堂々としたライブバトルの結果としてのこと」

P「今は責めても悔やんでも仕方がありません」

P「しかし――お二人をここまでできる方とは、一体……」

莉嘉「それは――」


卯月「うう、高い……」

卯月「お、落ちたら、死んじゃいますよね……」 ブルリ

謎のフードの女「……」

卯月「あ、あの……」

卯月「貴女が、私の……?」

謎のフードの女「……ええ」

謎のフードの女「貴女と闘う日を、ずうっと待ち望んでいたわ」

卯月「え?」

謎のフードの女「あの日から、ずっと、ずうっと」

卯月「……!」

卯月「そ、その声は、まさか……」

謎のフードの女「こうして顔を隠さないと町中を歩けなくした、貴女と闘う日を、ずっと!」 バッ

卯月「た、高垣楓さんっっっ!!」


凛「た、高垣楓……!?」

礼子「ええ」

礼子「深い因縁や恨みがあるみたいだったからね」

礼子「今回のメインはどう転んでもあの二人」

礼子「私に出来るのはそれを盛り上げながら、自分自身をも魅せることだけよ」

凛「でも……何で高垣楓が卯月を……」

莉嘉「いや、そりゃ恨みはしてるでしょ」

菜々「ネット中継であんな姿を晒されたんですもんね……」

比奈「トラウマレベルっすからねえ」

礼子「相当な挫折だったみたいよ」

礼子「でも、それを乗り越え帰って来た」

礼子「そんな彼女に、スポットが当たらぬわけがない……」

礼子「だから、次で決めちゃいたいのだけれど」

礼子「技の準備と心構えは十分かしら?」

凛「……上等ッ」

さすがにねむたいので終わります

また少し投下します


卯月「よかった……」

卯月「あの後、テレビとか全然出ないから、心配して――」

楓「……」

卯月「――――っ!」 ビクッ

卯月(こ、この眼光……)

卯月(う、恨みのこもった目……)

卯月「こ、こわい……」 ブルッ

楓「リングに、上がりなさい」

卯月「うっ……」

卯月「また……戦わないといけないんですか……?」

楓「そのために、帰って来たの」

卯月(こわいっ……)

卯月(ま、前に戦った時よりも、数倍の威圧感があるっ……!) ジョロジョロ


凛「卯月は悪意を向けられるのに慣れていない」

凛「私だって……倒した相手に恨まれることを考えて、尻込みしたことがある」

凛「だから……行って支えてあげなくちゃ」 スッ

礼子「あら、それは――」

比奈「なんっすか、あれ」

菜々「なんだかゴボウみたいですね」

P「あれは……雪鈴草の根ですね……」

菜々「雪鈴草……?」

P「雪鈴草……」

P「ロシア北部の寒冷地でしか生えないという珍しい植物です」

P「極寒の地で咲き続ける雪鈴草の凄さは、その根にあると言われています」

比奈「根……?」

P「ええ」

P「雪鈴草の根はどれほど凍結した土をも貫き、決して折れないと言われています」

P「その事から、ロシアでは兵役に就く際決して折れたりしないようにと雪鈴草の根を煎じ飲み干す儀式があったそうです」

P「寒冷地でしか育たないため、ロシアの一部地域でしか栽培されておらず、日本では滅多にお目にかかれないのですが……」

莉嘉「さすが花屋……ってことかなあ」

みりあ「ほへー」


礼子「その根の凄さはそれだけではない」

礼子「乾燥させ撚り合わせることによって、何者にも破れない槍となる」

礼子「今でこそ銃剣に取って代わられたものの、かつてロシア周辺において主戦武器とされていた……」

礼子「始まりは1700年前のロシア方面の部族だったかしら」

礼子「そうして作られた雪鈴草の根による武具は、名を雪鈴草から取って『切麟槍』と呼ばれるようになった」

礼子「純白の大地に鈴のような華をつけるはずが、麒麟すら切断する鬼人の武器となってしまった」

礼子「かつてロシアを攻めた中国の劉将軍が、その名をつけたとされている……」

凛「……詳しいんだ」

礼子「小粋なシモネタジョークも雑学も大人の嗜み」

礼子「絶倫は、決して折れず萎えず戦場で最後まで使えた切麟槍から取られた単語」

礼子「刀と違って、錆びて使えなくなることもないからね」

礼子「他にも獲麟など、切麟槍から生まれた言葉は多い」

凛「すごいな、スタジオでガヤをやれるよ」

礼子「若さにかまけて水着からしか仕事を取れない娘とは違うのよ」

礼子「知性を使うのも、大人の嗜みよ」


凛「花屋の娘として、植物を使った武器の扱いは仕込まれてるから」 ヒュッ

礼子「さすがね」

礼子「元が植物だけあって、切麟槍は持ち手が歪になりがち」

礼子「それをここまで綺麗に振るえるなんてね」

凛「刺さると、痛いじゃ済まないよ」

礼子「あら、警告のつもりかしら」

礼子「なら私も言っておくわ」

礼子「棒状のものの扱いなら、私だってお手の物なのよ」 フフ


凛「フッ!」 ヒュオッ

菜々「速いっ!」

莉嘉「完全に武器を自分のものとしている……!」

礼子「速いだけじゃあ、満足なんてさせられないわよ!」

比奈「いなしたッ!」

みりあ「でもまだ凛ちゃんの猛攻は続いているよ!」

P「これこそが切麟槍の真の恐ろしさ――」

P「見た目の割に軽いため、再度の攻撃に転じやすい」

比奈「なるほど……」

比奈「決して攻めが終わらず、相手がバテるまで攻めることが可能ってことっすか」

莉嘉「だから絶倫の語源になってるんだ……」

みりあ「絶倫ってなーに?」

菜々「えっ!?」

比奈「あー……まあ、なんていうか、その……」

莉嘉「Pくんみたいな人のことを言うんだよ」

菜々「えっ///!?」

比奈「うわ……シンデレラプロジェクトのとこのプロデューサーさんって、そういう……」

P「あの、なんだかよからぬ誤解をされているのでは……」


礼子「切麟槍は決して折れない――」

礼子「それでもたった一つ、切麟槍を破る方法がある」

比奈「す、すごい……」

莉嘉「全て掌を滑らせて軌道を逸らしてる……!」

みりあ「でも反撃に展示させない凛ちゃんもすごいよ!」

礼子「完全に避けるわけでもなく、何故私が掌を触れさせ続けたかお分かりかしら」

菜々「あ、あれを!」

莉嘉「ゲゲーーーッ!」

莉嘉「切麟槍が反り立ってきてる!?」

礼子「切麟槍は本来極寒の地で用いられた武具」

礼子「日本という国の気候に適した武器じゃない」

礼子「そして摩擦を加えてあげれば、変調をきたすッ」

莉嘉「まずい、フィニッシュブローがくるッ!!」

凛「くっ……!」

礼子「切麟槍は本来その頑丈さから防具にもなった」

礼子「でも、私の愛撫でヘニョヘニョになった今、その役目は果たさないッッ」

ボキィィッ

凛「がっ……!」

みりあ「り、凛ちゃーーーーーん!」

礼子「折れたわね」

礼子「切麟槍も」

礼子「そして貴女の骨も」


凛「ぐっ……」

礼子「無理して立たない方がいいわ」

礼子「おとなしく降参してくれたら、お姉さんが優しくこの手でタたせてあげる」

凛「切麟槍を……へし折れるなんてね……」

礼子「言ったでしょう、棒の扱いは得意なの」

礼子「ただ身体に受け入れるだけがテクニックだと思ってる内はまだまだよ」

凛「確かに……」

凛「経験とか、そういうのは、私じゃ、勝ってないと思う」

凛「でも……」

凛「この勝負は、私の勝ち……」

礼子「!?」

凛「信じていた……」

凛「周りも立てつつ全体の流れを重視出来る大人の貴女なら、綺麗に試合を終わらせるため近付いて勝利宣言をするって」

凛「信じていた……」

凛「貴女ほどのアイドルなら、切麟槍を切り飛ばすって」

礼子「何を――」

凛「だから――」 ヒュルルルル

凛「アイドルとしてはまだ未熟でも、この勝負は――私の勝ちッ」

グサァァッ

礼子「ぐえっ……!」

礼子「馬鹿な……計算していたというの……」

礼子「へし折られた切麟槍が、落下して私の身体を貫くことを……!」

凛「計算が得意なのは大人の方かもしれないけど……」

凛「こっちだって、毎日毎日宿題で計算はしてるんだよ」

凛「勉学の現役を退いた人に、計算で負ける気はないから」 バァーーン

とりあえず今日はここまで
アニメがどんどんキン肉マンみたいな展開になってるので、早くスレもたたまないと……

またちょいちょい勧めます


楓「居酒屋――」

楓「ボンバァッッ!!」 ゴガッ

卯月「あぐっ……!」

楓「……その程度なのかしら」

楓「その調子だと、簡単にロープからはじき出されて真っ逆さまよ」

卯月「う、うう……」

卯月「どうしてそんなに目の敵にするんですか……」

楓「……」

卯月「あ、はい、心当たりあります……」


楓「……それも、まあ、あるけれど」

卯月「?」

楓「普通のアイドルじゃいられなくなって、メディアを追われて……」

楓「ファンにも掌を返されて、下劣な言葉を色々な所で投げられて」

楓「それで……思い出したの」

卯月「……?」

楓「私が、欲しかったもの」

楓「……」

楓「今の私に残された、唯一のファン」

楓「最初のファンで――最初の、闘う理由」 チラリ

卯月(今、あっちの方を見た……)

卯月「闘う理由って、もしかして……」

卯月「東京タワー……?」

楓「大雑把にあっちに居るかなって思っただけで、別にここから見えるものってわけではないわ」


楓「色々と、考えすぎて分からなくなって」

楓「一度、複雑な思考を全て取っ払って」

楓「そしたら、残ったのは、プロデューサーへの想いだった」

卯月「…………」

卯月「ええ?!」

楓「それから、ふつふつと色々な感情が蘇ったわ」

楓「嫉妬と、八つ当たり」

楓「それと――安いプライド」

楓「色々あるけど、要するに、まあ――」

楓「貴方に勝ちたいの、私は」 ザッ


楓「あんな負け方じゃ、納得なんて出来ないもの!」

グワッ

比奈「ゲエーーーーーッ、あの体勢は!」

菜々「伝家の宝刀サワーブリッジ!!」

楓「あの時、この手を離したことをずっと後悔していた……」

楓「あの人の手も、あの試合で貴女の身体も、ずっと掴んでいればよかった」

ギリギリギリギリ

卯月「ぐう~~~~~~っ!」

卯月(い、痛い……!)

卯月(か、身体が裂け……)

チョロチョロチョロチョロ

楓「……ごめんなさいね」

楓「例え貴女が意識を失おうと、血反吐を吐いて失禁しようと、もう、この手は緩められないのよ」


卯月(だ、だめ……)

卯月(ルックスも戦闘力も経験も、やっぱりまだ勝てない……)

卯月(の、逃れることが……)

春香「卯月ちゃん!」

卯月「は、春香さん……」

春香「確かに地力じゃ勝てないかもしれない」

春香「でもそんなときでも、笑顔で立ち向かうのがアイドル!」

春香「笑って自分をまず騙して、そして嘘にまみれた自信を真実に変えていくのがアイドルだよ!」

春香「最後の瞬間まであがいてこそ、奇跡は生まれるし、逆転ファイターになれるの!」

卯月「最後の……瞬間まで……」

卯月「そう……ですよね」

卯月「私……がんばりますっ……!」

予想以上に更新する間がなくなりましたが思い出したように更新してでもおわらせはしようと思います


卯月「ぐ、うう……!」

楓「どれだけ力を入れても、この拘束が解けることは――――」

卯月「う、ううっ……」 ベキベキベキ

菜々「あわわわわっ!」

比奈「あ、あれを見るっす!」

菜々「あれ……って」

菜々「なんだろう、下からじゃよく見えないけど、噴水……?」

春香(恐怖による失禁……)

春香(それでもなお、諦めずに力を入れることによって、尿圧が高まり尿が弧を描いて飛んで――)

春香「はっ、このままじゃ!」

菜々「ふえ?」

比奈「お気づきになったっすか!?」

比奈「やっぱり、このままあの噴水みたいなのが飛び続けたらやばいっすよね!」

春香「駄目ッ、もう手遅れ!」

菜々「え? え?」

比奈「ああっ、噴水が報道ヘリに……!」

春香「このままじゃ視界全てを濁った水で防がれたまま水圧でバランスを崩したヘリコプターは落下する……!」


卯月「あ、あわわわわ!」

卯月「へ、ヘリコプターが落下してきてますよぉ!?」

楓「そんな嘘で緩めるわけが……」

卯月「ほ、ほんとですよお!」

卯月「ヘリのプロペラ音が迫ってるじゃないですかあ!」

楓「!」

楓(でも……ここで離したら……)

楓(離したくない……)

楓「例え雨が降ろうとヘリが降ろうと、離すわけにはいかない……」

楓「どんなにEverydayEveryNight、離したくはないッ」

ベキベキベキ

卯月「ぐ、ああ~~~~~~っ」

楓「もう、逃げない」

楓「例えあのヘリが、落下してくることになろうとも」


凛「卯月ッ……!」 ダッ

凛「早くッ……エレベーター……!」 カチカチカチ

ポーーーーン

凛「あいた……!」

ドサッ

凛「――――!?」

凛「み、未央!?」

未央「」 ビビクン

凛「そんな……痙攣してる……」

美波「これが野外だったら、どうなっていたかわからないけど……」

美波「全てが棒の射程に入る密室なら、誰にだろうと負ける気はしないから」 ヒュパッ

凛「くっ……」

美波「このエレベーターには、乗らせない」

美波「上の決着がつくまでは……」


凛「未央、大丈夫!?」

未央「あへえ……」 ビクンビクン

凛(完全に戦闘不能、か……)

美波「……」

凛「ねえ」

凛「いいの?」

凛「上の闘い、放っておいて」

美波「……」

凛「詳しいことはわからないよ」

凛「でも……」

凛「決して良くない因縁の対決ってことくらい、私にも分かる」

美波「それでも……」

美波「大人になると、間違ってるかもって思っても、やめられない闘いがあるの……」

美波「邪魔をするって言うなら――」


凛「……邪魔をするって言ったら、なに?」

凛「行かせないけど、イかせてあげるとでも?」

美波「……」

凛「美波は良い奴だよ。それは分かる」

凛「誰かの意見を尊重できるし、人の想いを察してくれる優しさを持っている」

凛「でも、今のコレは優しさなんかじゃない」

凛「本当に応援してるなら、しょうがないって思っているなら、ちゃんと背中を押してあげなよ!」

凛「止めるべきだと思うなら、争ってでも止めてあげなよ!」

凛「今の美波は、ただ目を背けて従っているだけじゃないか!」

凛「そんなの、見捨ててるようなものじゃんか!」

美波「……ッ」

凛「大事な人だから」

凛「だから、時には争うかもしれなくても本音でぶつかる必要がある」

凛「そうすることで、前に進めることだってある」

凛「それを、私は未央とプロデューサーに教えられたから」

凛「今の美波には、負けるわけにはいかない……!」


莉嘉「二人とも! 争ってる場合じゃないよ!!」

凛「!?」

美波「莉嘉ちゃん……?」

莉嘉「ヘリコプターが、今にも上の2人に向けて落下を」

凛「!!」

莉嘉「部外者のアタシたちじゃ中に入れないから!」

莉嘉「助けに行ってあげて!」

凛「……わかった!」 ダッ

美波「あ……」

凛「ほら、行くよ!」

凛「主張がどうなのかはさておいて……」

凛「チームの仲間を助けたいって気持ちだけは、少なくとも一緒でしょ!?」


楓「……」 メリエリメリ

卯月「ううっ……!」

楓(この期に及んで、まだ抵抗をする力があるなんて、参っぱわね……)

楓「……タワーだけに参ったわーの方がよかったかしら」

卯月「え?」

楓「ひとりごとよ」 ミシミシィ

楓(ああ、このままこの娘と2人で落下かしらね……)

ヘリ「……」

楓(プロペラの音……このままじゃ、潰れるけど――)

凛「卯月!」 バン

卯月「り、凛ちゃん!?」

美波「一旦非難して!!」

楓「……」

グシャアゥ

比奈「おわーーーーっ!」

比奈「とうとうヘリが突っ込んだーーーーっ!」


卯月「うう、あいたたた……」

凛「卯月!」

卯月「凛ちゃん!」 ギュッ

凛「わっ、ちょ、そんな強く抱きしめないでよっ……」

卯月「もうダメかと…・…」

卯月「あれ……でも、なんで……」

美波「楓さん!」

卯月「う、うそ……」

凛「ヘリコプターに潰され……!?」

卯月「わ、私を投げ飛ばして庇ったんですか……!?」


楓「……別に」

楓「ただ……仲良くヘリにKOされるのも、癪だなって思ったのよ……」

美波「今、助けに――――」

楓「駄ー目」

楓「何のために、わざわざそっちに操縦士まで投げたと思っているの?」

美波「……っ!」

凛「不味い、ヘリ落下の衝撃で、リングを支えているロープが千切れそうだ!」

楓「まずは……意識のない、その人を――」

卯月「じゃ、じゃあ私が――!?」 ガクン

卯月「あ、あれ……?」

卯月「あ、足が……」

楓「ふふ……」

楓「手を緩めてないサワーブリッジを受けたのだもの」

楓「立てるわけ、ないじゃない」


凛「どうして、卯月を……」

楓「……」

――貴女のそういうところは、素晴らしいだと思います。

楓「別に……」

楓「ただ――かっこ、つけたかったの」

楓「あの人にと……」

楓「あの人が認めた人の前で……」


ガラガラガラガラガラ

比奈「ああっ、ステージが崩れるっす!」

美波「……ッ!」

凛「駄目!」

凛「今行ったら、あの人の覚悟が無駄になる!」

美波「で、でも……」

ガラガラガラガラガラ

美波「あ、ああ……」

凛「……」

凛「この高さから落ちたら、もう……」

凛「いや、既に何人か落ちてたような気がするけど、それはともかくヘリまで加わってたらもう……」


パチパチパチ

美波「!」

幸子「いやーさすがですね」

幸子「可愛くて知的なボクですら、ここから飛び降りる真似はできないですよ」

幸子「ましてやヘリに潰されてだなんて……」

美波「……ッ!」

凛「このっ……!」

幸子「わわっ、熱くならないでくださいよ」

幸子「ほめてあげたんじゃないですか」

凛「アンタには良心の呵責とかないわけ!?」

幸子「正直わりと心痛いです」

凛「真顔」

幸子「ですが……」

幸子「お葬式をして中止にすれば彼女が喜ぶわけでもなし」

幸子「ヒールコースになってしまいそうな流れである以上、それに乗っかり盛り上げる」

幸子「そういう地道~な頑張りこそが、最後ファンの心を掴むんですよ!」 フフン


幸子「それより残念ですねえ」

幸子「こんな騒ぎになってしまったら、一旦中断せざるを得ません」

幸子「つまり……」

幸子「この試合は、勝敗つかずのドローということに」

凛「なっ……!」

美波「そんなの、横暴じゃ……!」

幸子「失敬な」

幸子「これは客観的立場から見た意見ですよ」

幸子「図らずとも、この闘いは3VS3のシングルス三本勝負となっていました」

幸子「礼子さんは凛さんに敗れ、そして未央さんは美波さんに敗れた」

幸子「ここまでは、誰が見てもそうでしょう」

幸子「では……卯月さんと楓さんの試合は?」

幸子「リングアウトした卯月さんも、そのまま奈落に落ちた楓さんも、どちらも勝者とは言い難い」

幸子「つまり引き分けが一番妥当なんですよ」

幸子「それとも……」

幸子「落下を免れたからと、勝ちを主張してみますか?」

凛「くっ……」

凛「そんな、ことは……」

幸子「できませんよねえ、当然」 フフン


幸子「ま、どうしてもというのなら、お二人でぶつかってもらってもいいんですが……」

凛「くっ……」

美波「……」

美波「今回は、引き分けにしておきましょう」

凛「そんな!」

美波「今戦っても、あの事故の影で埋もれるだけ……」

美波「それなのに、無駄な負傷を負うことはないわ」

凛「くっ……」

美波「次のマッチメーク……」

美波「万全の状態で、本気で叩き潰しに行くから」 キッ

幸子「おー、こわいこわい」

幸子「ま、精々可愛いぼくの踏み台になってくださいよ」 フフフ







未央「うう……」

凛「あ、起きた」

未央「あれ、ここ……私は……」

凛「色々ぐったりして、丸一日爆睡してたんだよ」

未央「ええ!?」

未央「し、試合は!?」

凛「……色々あって、引き分け」

未央「ひ、引き分けえ?」

凛「そう」

凛「もう後がない」

凛「……とは言っても……」

凛「次の相手は、全員この前の試合で死んだみくのチームだから、私たちは戦うことないだろうけど」

未央「えっ、死んだの!?」

凛「いや、死体は見つかってないらしいけど」

凛「あの高さから落ちて生きていられても引くっていうか……」

未央「それはまあ確かに」


春菜「とーころーがどっこいー生きてーいるー、ですよっ!」 バーン

未央「げえーーーっ、眼鏡をかけたミイラ!?」

凛「い、一体どうやって……」

鈴帆「まっ、きぐるみはもふもふばいね」

鈴帆「それで落下の衝撃が――」

凛「あの衝撃がその程度で緩和されるなら世界中の軍がきぐるみで埋まるよ」

鈴帆「ふもっふ」

春菜「まあ、きぐるみは実際すごいですよ」

春菜「きぐるみを着ることで、ネグレクト両親が振り向くこともあれば、理不尽な親の暴力を受けても痣を作らないことに貢献することも」

未央「今しれっと際どいこと言ってない?」


未央「百歩譲ってきぐるみがエアバッグになったんだとしてもだよ」

未央「きぐるみ着てたのは一人だけなよーな」

春菜「眼鏡がなければ即死でした」

未央「即死だよ! 眼鏡をかけても普通は即死だよ!」

春菜「眼鏡は目の周りへのダメージを軽減してくれますからね」

未央「仮に眼鏡が衝撃を100パー吸収してくれるとしても、残った胴体が真っ赤に弾けるよ!!」


みく「病室ではお静かに、にゃ」

凛「あ……」

みく「みくも、全身痛いけど、こうしてまだ何とか命拾いしたにゃ」

みく「その生命、ニュージェネレーションズに勝利することで再び輝いを取り戻させていただくにゃっ!」

春菜「そう。拭ききての眼鏡のように!」

凛「一応、病室だからお静かになんだけど」

未央「自分で読んでおいて、速攻無視しはじめたね」


凛「それで、何をしに?」

みく「凛ちゃん達はみくのライバル」

みく「でも……」

みく「万が一!!」

みく「万が一にもみく達が負けるようなことがあったら……」

みく「優勝は、凛ちゃん達にしてほしいにゃ」

凛「……」

みく「確かにみくに近いのは、バラエティチームなのかもしれないにゃ」

みく「でも――みくは、個人的にだけど、みく達以外なら凛ちゃん達を応援したい」

凛「みく……」

鈴帆「じゃけえ、特訓してやりに来たとよ」

春菜「昨日の敵は今日の友、ってね!」

凛「きぐるみの人……それに眼鏡の人まで……」

未央(名前覚えてないのか……)


<そして、試合前夜――>

ザザーン・・・

ザザーン・・・

春香「特に深い意味もなく深夜の海で特訓を重ねはや数日」

春香「48の殺人技は、すべて伝授したけど……」

卯月「ありがとうございますっ!」

春香「でもまだ、全てじゃない」

春香「関節技も残ってるから」

卯月「はいっ!」

春香「今は、時間がなくて出来ないけど……」

春香「次の試合に勝って、最終バトルまでには伝授するね」

卯月「楽しみに待ってますね♪」


みく「ふう、これで伝えられることは全部伝えたにゃ」

みりあ「あんまりなかったね」

莉嘉「まあたくさん持ってるようなら前あんな負け方しないしね」

みく「ちょっとリアルにへこむ発言やめてほしいにゃ」

未央「でも、実際いい特訓になったよ」

未央「ありがとね!」

鈴帆「ま、お互い様っちゃね」

春菜「こっちも、リハビリに付き合ってもらったようなものですからね」

未央「明日はお互い、いい試合をしようね!」

みく「もちろんにゃ!」

みく「勝つのはみく達だけどにゃ1」


凛「みく……」

凛「これ」 スッ

みく「あ、キレーなお花」

みく「退院祝いかにゃ?」

春菜「お礼とかじゃない?」

凛「ううん、お詫び」

みく「?」

凛「ごめんね」 ガシャーーーン

鈴帆「なァ!?」

未央「う、植木鉢で殴ったァ!?」

凛「これで両チームとも過剰な犠牲を出さないで次の試合に進める」

未央「そのクールさが時々怖い」


鈴帆「くっ、場外乱闘とはやるっちゃね!」

鈴帆「ばってん、この衝撃吸収きぐるみなら――」

凛「ねむりごな」 ファサァ

鈴帆「」 グースカピースカ

春菜「あ、ああ、なんてこと……」

凛「残すはあんた一人だね」

凛「悪いけど、不戦勝のため、ここで負けてもらうよ」

春菜「くっ……」

春菜「ですが、如何に固い植木鉢と言えど、眼鏡の防御力の前では――」

凛「別に無意味じゃないと思うけど、一応防御無視できそうな触手を用意してきたけど」

春菜「しょ、触手なんかには絶対に屈したり――」


春菜「」 ビクンビクンジョワー

凛「よし、これで勝ち抜け決定」

未央「なりふり構わずだなー」

凛「そうでもしないと、駄目だから」

凛「それより、急ごう」

凛「私達自身は不戦勝が確約されてるとはいえ、注目の一戦がある」

凛「試合を見て、弱点を探る――!」


幸子「ふぅん、逃げずに来たことだけは褒めてあげますよ!」

美波「アイドルは、どんな状況でも逃げないんだよ」

礼子「その通り」

礼子「例え2人だけになったとしても、ね」

幸子「肩から何か生えてるんですけど」

美波「前の試合で突き刺さった木の根を抜いたらしばらく動けなくなるからって……」

美波「私は抜いて入院したほうがって何度も……」

礼子「よもや肩に根を張って成長するだなんてね」

礼子「水分を取られて乾燥しないように気をつけなくちゃ」

幸子「その人頭からも養分取られてそうだし病院行った方がいいと思うんですけどね」


美波「私もそう思うんだけど、本人はやる気満々みたいだし……」

幸子「……まあいいでしょう」

幸子「でもま、これなら2人で来る必要もありませんでしたね!」

幸子「手負い相手なら可愛いボク一人でじゅーぶん!」

幸子「ここはボクに行かせてもらいますからねっ!」 フフフーン

フードのアイドル「……」 コクリ

美波(全身を覆うフードのアイドル……)

美波(なんだろう、体格の情報から相手を絞り込もうにも、意味のない行為な気がしてきている……)


礼子「ふっ、すぐにそのフードを脱がして、リングの上に立たせてあげるわ」

礼子「ほら行くわよ」

礼子「何でも知りたがる知的好奇心は、一旦横に置いておいて」

礼子「どうせ引きずり出して来れば中身なんて分かるんだから」

美波「……とと、それもそうだよね、ごめんなさい」

幸子「そのまま向こうを意識してる間に可愛いボクがぶっ倒す、というのもありでしたが……」

幸子「仕方ありませんね」

幸子「ボクは真っ向勝負でも強いってこと、教えてあげますよ!」 バッ

ヘレン「仕掛けた――!」

未央「っと、間に合った!?」

凛「あの、試合は!」

ヘレン「今始まった所よ」

ヘレン「時間にルーズだなんて、世界的でやるじゃない」

ヘレン「まあでも――よかったわね。ロックアップは見逃さなくて済みそうよ」


幸子「さすがスポーツマン……」 グググ

幸子「ちーっとも動く気がしませんね……」 グググ

美波「それでも組んではくれるんだ」 グググ

幸子「カワイイうえにアイドルですから」 グググ

幸子「期待に応えないわけには……いかないんですよね!」

未央「へ、ヘッドバット!?」

ヘレン「何だかんだで弄られ殴られることに慣れてるからね、あの娘」

ヘレン「自らのダメージを気にせずに繰り出せるがゆえ、その威力は絶大」

幸子「ふふふ」

幸子「まだまだーーーっ!」

ドガッ


ヘレン「ただ――あの娘の場合、すぐ調子に乗っちゃうのが難点ね」

ヘレン「それに若くて経験不足」

ヘレン「知らないんでしょう。激しい殴打がともなうセックスも、世の中にはあるということを」

幸子「がっ……!?」

美波「ダメージ慣れしてるのは、貴女だけじゃない」

美波「アイドルも愛も、過酷な暴行を経てより高みに登っていく」

美波「私だって、これくらい――!」

未央「おおーーーーっ! 強烈なヘッドバット対決ーーーーーっ!」

凛「これが……歩くセックス……!」


幸子「くっ……!」

未央「たまらず手を離したッ!」

美波「ふっ!」

凛「速いッ」

ヘレン「隙を逃さず絞め落としにいく、か」

ヘレン「打撃慣れした相手には良い判断」

美波「相手を絞め落とすような愛もある……」 ギリギリ

幸子「か、かはっ……!?」

凛「すごい……」

未央「や、ヤンデレってやつなのかな」

ヘレン「歩くセックス・リョナモード――といったところじゃないかしら」


ガキィン

礼子「あらあら」

礼子「一人でやるっていうから、私は休憩していたのだけれど?」

フードのアイドル「……」 グググ

礼子「先にカットに動かれちゃあ、こちらも行かざるを得ないわよねえ」 グググ

礼子「最初から2人で来なかったことを、後悔することになるわよ」 グググググ

未央「な、更にパンプアップした!?」

ヘレン「本来3VS2。それも負傷の有無も大きいこの勝負」

ヘレン「それでもワンチャンスがあるのは、この相性によるものが大きい」

凛「相性?」

ヘレン「ベテランで、忠告をすることで視聴者の共感や好感を得、更にそれを笑いにも変えられる」

ヘレン「そんな存在になり得るからこそ、自分をageることでアイデンティティを確立する輿水幸子には強い」

ヘレン「それに、少数で挑む、という己の力を過信しナメているとも取れる言動にも、強い」

礼子「さあ、正体を表しなさいッ」 バリバリバリバリバリ

未央「ああーーーーっ!」

未央「パンプアップして膨れ上がったパワーが、フードを伝ってフードにヒビを入れていく~~~~っ!!」

凛「どうなってんだろ、あのフード……」

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