橘ありす「二宮飛鳥観察記録」 (27)

過去作
モバP「年少組の相手を飛鳥に任せた」
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的場梨沙「家出してきた」
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世界観が同一なので先に上の2つを読んでいただけるとわかりやすいです
でも読まなくても一応大丈夫だとは思います

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1429618931

車の中 P運転中

P「撮影お疲れ様。スタッフの人も褒めてくれてたぞ」

ありす「そうですか。でもこのくらいは普通です」

P「普通、か。それだけありすが日々成長しているってことだな」

ありす「そういうことです」

ありす「(成長……か)」

ありす「(アイドルとしての力は身についてきたと思う。……身体のほうも、少しずつ大きくなってきたと思う)」

ありす「(でも、Pさんは私を子ども扱いし続けている。私の機嫌が悪くなるから、直接は言わないようにしているみたいだけど)」

P「ありすはしっかりしているから、俺も仕事が楽だよ」

ありす「(しっかりしているという言葉も、子どもにしては、という一言が頭につくんだろうな)」

ありす「……飛鳥さんも、しっかりしているんじゃないですか?」

P「飛鳥? まあ、しっかりしていると言えばそうなんだが……たまにあいつのペースに巻き込まれるからなあ」

ありす「独特の雰囲気を持った人ですからね」

ありす「(飛鳥さんは、Pさんに信頼されている。そんな風に私には見える)」

ありす「(小さい子達の面倒をPさんの代わりに見てあげたり、この前は梨沙さんを部屋に何日か泊めてあげていた)」

ありす「(本人はまだまだ子どもだと言っていたけど……きっと、私よりは大人なんだと思う)」

ありす「(年も近いし、まずはあの人を参考にしてみようかな)」

ありす「いきなり成人した人を参考にするのは難しいですし」ブツブツ

P「ん? 何か言ったか?」

ありす「な、なんでもありません!」

観察1日目 夕方の事務所

飛鳥「………」ペラッ

ありす「(飛鳥さんはよく本を読んでいる)」

ありす「(種類はバラバラで、ハードカバーだったり漫画だったり日によって違う。今日は文庫本みたい)」

飛鳥「ふう」パタン

ありす「(本を閉じて、窓から見える夕日を眺め始める)」

ありす「(物憂げな表情で何を考えているのだろう)」

飛鳥「……夕日」ボソ

飛鳥「優雅な夕日……たいして韻を踏めていない」

飛鳥「夕日と雄飛……いまいちつながらない」

ありす「(ダジャレ考えてるだけでしたか)」

ありす「(そういえば、この前も詩的で私的とか刹那が切ないとか言っていたな……ダジャレというより、言葉遊び?)」

飛鳥「今度楓さんに意見をうかがってみようか」ブツブツ

ありす「(どちらにせよ、そんな深刻そうな顔で考える内容じゃないと思います)」

観察3日目 昼

晴「P、暇ならサッカーしねーか?」

P「あー、すまん。これからちょっと出かけなくちゃいけないんだ」

晴「そっか、なら仕方ないな。じゃあ飛鳥、サッカーやろうぜ。暇そうだし」

飛鳥「サッカーか……気乗りはしないわけでもないけれど」

晴「本読んだりラジオ聞いたりばっかじゃ体がなまっちまうぞ?」

飛鳥「レッスンしているから鈍ることはないと思うけど……確かに、たまには体を動かす遊びもいいね。いこうか」

晴「そうこなくちゃな!」

ありす「(2人が外に出ていった)」

ありす「(観察しに行きたいけど、宿題をしている途中だから難しい)」

ありす「(勉強をおろそかにするのはよくないから、おとなしく待っていよう)」

30分後

晴「ただいまー」

ありす「おかえりなさい」

飛鳥「た、ただいま」ヨロヨロ

ありす「お、おかえりなさい。……随分疲れているようですが」

晴「球技は苦手なんだってさ。なのに必死に俺とドリブル対決繰り広げた結果がこれ」

飛鳥「無理だなんだと簡単に諦めるのはつまらないからね……」グッタリ

ありす「お水どうぞ」

飛鳥「あぁ、ありがとう」ゴクゴク

晴「でもヘディングしようとして後頭部に当てたのは痛かっただろ? ちょっと涙目だったし」

飛鳥「まあね。でもボクは最後に一本とれたから満足だよ」

ありす「一回はボールを奪えたんですね」

晴「(かわいそうになったからちょっとだけ手抜いたのは黙っとこう)」

飛鳥「ところで晴、キミはありすのように宿題をしなくていいのかい?」

晴「げっ」

飛鳥「……どうやら、今度はキミが苦手なことに挑戦する番らしいね」

晴「マジかよ」

飛鳥「本気(マジ)だよ。今やるのなら、わからないところをボクが教えてあげるから」

晴「しょうがねーなー」

ありす「(飛鳥さんは意外と面倒見がいい……あとでメモしておこう)」

観察5日目 夕方の女子寮

ありす「(寮で何をしているのか気になるので、思い切って訪ねてみることにした)」

ありす「すみません」コンコン


梨沙「はーい」

ありす「……?」

梨沙「あれ、ありすじゃない。どうしたのよ、そんな馬鹿っぽい顔して」

ありす「ここ、飛鳥さんの部屋ですよね」

梨沙「そうだけど。飛鳥は買い物に出かけてるから、たまたま遊びに来てたアタシが留守番してあげてるのよ」

ありす「そうでしたか」

梨沙「はい、冷たいお茶」

ありす「ありがとうございます。……えらく手慣れていますね」

梨沙「何度も来るうちにいろんな物の場所覚えちゃったのよ」

ありす「そんなに頻繁に来てるんですか」

梨沙「ここにいるとなんとなく落ち着く……じゃなくて、ええと。そう、飛鳥の部屋は漫画がたくさん置いてあるから! だからついつい来ちゃうのよ」

ありす「はあ」

梨沙「多分あと10分くらいで帰ってくると思うから、待ってなさいよ」

ありす「(梨沙さん、ベッドの上でものすごくくつろいでいる。まるで自分の部屋であるかのよう)」

ありす「そうさせてもらいます。お手洗いを借りてもいいでしょうか」

梨沙「うん。あっちにあるから」

ありす「ありがとうございます」トコトコ

3分後

ありす「戻りました」

梨沙「おかえりー」

ありす「ところで、ひとつ聞いてもいいでしょうか」

梨沙「なに?」

ありす「洗面所に歯ブラシが2本あったんですが」

梨沙「あー、あれ? 毎回毎回お泊りの時に持ってくるのが面倒だから置きっぱなしにしてるのよ」

ありす「めちゃくちゃ住みついてますね」

飛鳥「ただいま」

梨沙「あ、飛鳥帰ってきた」

飛鳥「おや? ありすじゃないか。珍しいね、キミがここに来るなんて」

ありす「お邪魔しています。その……少し勉強でわからないところがあって、年上の人に聞きたいなと思ったんです」

飛鳥「なるほど。力になれるかどうかはわからないけど、手伝ってみよう」

梨沙「勉強教えてもらいに来たの? ありすって真面目ねー」

ありす「わからないまま終わるのは、負けたみたいで嫌なので」

飛鳥「つまり、教科書のここの部分は前に説明したこの式を利用しているだけなんだ」

ありす「ああ、なるほど。そういうことだったんですね」

梨沙「……お腹すいたわね」

飛鳥「夕食にはまだ早い時間だけど」

梨沙「そうだ。飛鳥、いつものチャーハン作ってよ。まだ材料残ってるでしょ?」

飛鳥「やれやれ。仕方ないね」

ありす「お料理するんですか?」

飛鳥「お姫様が小腹を満たしたいそうだからね」

ありす「見学させてもらってもいいですか」

飛鳥「? 見せ物にするような価値はないと思うけど、別にかまわないよ」

ありす「私もお料理の練習中なので、色々な人の料理する姿を見ておきたいんです」

飛鳥「先ほど言った通り、チャーハンを作る」

ありす「(料理の時はエクステ外すんだ)」

飛鳥「まずはフライパンに油をたらして十分に加熱する」

飛鳥「その間にボウルの中でご飯と卵をかき混ぜ、終わったらネギとチャーシューを適当なサイズに刻んでおく」

ありす「計量器とか使わないんですか?」

飛鳥「だいたいでいいんだよ、こういうのは」

飛鳥「十分フライパンに熱が通ったことを確認したら、卵をしっかり浸透させたご飯をフライパンに投入する」

飛鳥「そしてジュージューと強火で炒める」フライパンフリフリ

ありす「あの、勢いよく振り過ぎじゃないですか? 中身がフライパンから飛び出しそうで怖いんですが」

飛鳥「大丈夫。ここ最近は失敗していないから」

ありす「(飛鳥さん、予想以上に豪快な料理スタイルでした)」

飛鳥「十分に炒めたら、スーパーで買ってきた冷凍ミックスベジタブルとネギとチャーシューを投入。再び炒める」

飛鳥「さらに塩コショウ醤油を投入――」

梨沙「あすかー、銀の匙の3巻どこー?」

飛鳥「その辺にないかい? よく探してみてくれ」

ありす「今完全によそ見しながら調味料入れましたよね。分量まったく確認してなかったですよね」

飛鳥「多少味が変わるのも醍醐味さ」

ありす「(なんの醍醐味なんだろう)」

飛鳥「ほら、できたよ」

梨沙「いただきまーす」

ありす「あんなに雑だったのにちゃんとご飯がパラパラになってる……」

飛鳥「慣れだよ、慣れ。キミも食べるかい」

ありす「……はい。いただきます」

飛鳥「めしあがれ。二宮流男気チャーハンだ」

梨沙「この味のしつこさが癖になるのよねえ、飛鳥のチャーハン」パクパク

ありす「……確かに、濃いですね。でもおいしいです。ミックスベジタブルのおかげで見た目の色合いもなかなかですし」パクパク

飛鳥「ボクは味付けが濃い方が好みなんだ。自分用に作る時がほとんどだから、必然的に自分の好みの味付けに近づいていくのさ」

梨沙「ジャンクフードとかも好きだもんね、アンタ」

梨沙「[しつこい女]二宮飛鳥、という称号をあげるわ」

飛鳥「しつこいのは味付けだけだと思うよ? 多分」

ありす「私はしっかり材料の分量をはかって料理するので、飛鳥さんのやり方は新鮮でした」

飛鳥「軽く作るチャーハンなんて、このくらいでも十分さ。最低限の要所を抑えればパラパラに作れる。全部に肩肘張って取り組む必要はない」

ありす「なるほど」

ありす「(私も今度、てきとう気味にいちご料理を作ってみよう)」

観察7日目 事務所にて

薫「あすかお姉ちゃん! またお姉ちゃんを操縦してもいーい?」

飛鳥「えっ……あ、あぁ。かまわないよ」

薫「やったあ! じゃあさっそく」エクステツカム

飛鳥「(いい加減真実を話すべきか……)」ガシャンガシャン

ソファーの裏に隠れた梨沙「ういーんういーん」


ありす「(1週間飛鳥さんを観察したけど、大人になるためのヒントは見つけることができなかった)」

ありす「(ただ、ひとつわかったことがあって。それは、あの人が意外と好きなように生きているというか……お茶目で自由だということ)」

ありす「(お茶目で自由というと、まさに子どもらしい特徴そのもの。だけどもしかしたら、それが私と飛鳥さんの違いなのかもしれない)」

ありす「(あの人は、自分が子どもだということを受け入れているのかも)」

ありす「(時々Pさんに子ども扱いされて拗ねているから、完全に受け入れているわけじゃないだろうけど。私よりは、割り切っているんだと思う)」

ありす「受け入れる……それもまた、大人なのかな」

仁奈「ありすおねーさん、どうかしやがりましたか? 元気ねーですよ?」

ありす「……いえ、なんでもないです」

ありす「束縛に抵抗することも、またひとつの束縛なのかもしれないなと思っただけです」フフッ

仁奈「………はい?」ポカン

ありす「あ」


ありす「観察しすぎて、口調が移ってしまいました」


おわり

飛鳥君38位おめでとう!
ありすも逆風の中45位は頑張った!

チャーハンは男の料理だというのが私の持論
お付き合いいただきありがとうございました

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