狩人「目指すは伝説級ハンター!」(975)





モンハンSSです。
>>1はP2Gから始めました。
多少、公式とルールの違う箇所があると思いますが
「こまけぇこたぁいいんだよ!」の精神で見ていただけると嬉しいです。
申し訳ありませんが、不定期更新です。あしからず……

それでは始めます。




ふもと村 集会所


     ガヤ ガヤ

狩人「…………」

狩人(……ここはふもと村の集会所)

狩人(集会所とは、食堂も兼ねているが)

狩人(少々手ごわいモンスター等を他のハンターと共同で受注する事ができる場所だ)

狩人(…………)

狩人(ここには『村つき』と呼ばれるハンターや)

狩人(流れのハンター、依頼主の旅商人や村人の憩(いこ)いの場でもあったりする)

狩人(運営はハンターズギルドが行っている)

狩人(…………)

狩人(今の俺は駆け出しのペーペー)

狩人(もちろんハンターランク(以下HR)は最下級の 1 ……)


狩人(いずれはここを利用する様になるだろうけど)

狩人(他のハンターがどんなものなのか、見ておきたくてここに来た)

狩人(あれが、あの姿が、未来の自分なんだと……!)


??「……あの」

狩人「はひっ!?」

??「あなたもハンターなんですか?」

狩人「え? ああ、はい! そうです!」

狩人「もっとも、昨日この村に着いたばかりのド新人ですけどね……」 ハハハ…

狩人「名前は狩人、って言います」

??「へえ、奇遇ですね!」

??「私も先週ここに来たばかりなんですよ!」


??「あ、自己紹介がまだでしたね」

??「私、少女って言います。 よろしくね!」

狩人「ああ、よろしく!」

狩人「……で、少女はここの仕事、受けるつもりなの?」

少女「うん。 そのつもり」

少女「狩人は?」

狩人「あ……えと……俺は」

少女「HR1でもキノコ狩りとかは一人でできるよ?」

少女「ちょっと量が多くなるけどね」

狩人「…………」

少女「私も最初は怖かったんだけど、やってみれば案外大した事ないよ?」

少女「何なら今から一緒に付き合ってあげようか?」


狩人「!」

狩人「そ、そうだな……」

狩人「よ、よし! やってみる!」

少女「うんうん。 じゃ、クエスト受注してくるね」

     スタ スタ スタ…

狩人「…………」

狩人(思いがけず、クエストへ行く事に)

狩人(しかも割と可愛い女の子ハンターと!)

狩人(緊張するなぁ……)///

狩人(よし! ここはひとつ俺の才能の片鱗を見せてやるぞ!)

少女「お待たせ!」


少女「武器は私と同じ片手剣でいいの?」

狩人「ああ、問題ないよ!」

狩人「どんと来いさ!」

少女「うふふ、なぁに? 急に張り切って」 クスッ

少女「じゃ、装備や持ち物に問題がないのなら」

少女「掲示板に貼ってある受注クエストの張り紙にサインしてね」

狩人「ほいほい……これでいい?」

少女「うん!」

少女「それじゃ雪山へキノコ狩りに出発ー!」

狩人「おー!!」

    パァ~フォ~



―――――――――――


少女「…………」

狩人「ご、ごめん! 少女!」

狩人「ま、まさかただの鹿があんなに強いなんて思わなくて!」

少女「う、うん。 まあ……そういう時もあるよね」

少女(ガウシカに喧嘩売って3乙とか……無いでしょ)

少女「狩人、今日は調子が悪いみたいだから」

少女「また今度一緒に行こうね!」

少女「じゃ!」

狩人「あ……」

狩人「…………」


????「はっはっはっ!」

????「どうやらお前さん、振られたらしいな!」

狩人「……ほっといてください」

????「まあガウシカに負けるようじゃ、言わずもがな、だな!」

狩人「だからほっといてくださいって!」

????「まあ落ち着けって」

????「俺はイケメンって名前だ」

イケメン「お前みたいな新人は大事にしなくちゃな」

狩人「はあ……」

イケメン「そこで、だ」

イケメン「俺がいろいろと基本を教えてやってもいいぜ?」

狩人「え?」


イケメン「もちろんタダじゃないがな」

イケメン「もう一度キノコ狩りのクエを受注してこい」

イケメン「で、そのクエの報酬を全額俺にくれるのなら」

イケメン「ガウシカとの戦い方だけでなく、他の小型モンスターの対処法も教えてやるよ」

狩人「…………」

狩人「そういう事なら……お願いします」

イケメン「ようし。 契約成立だ」

イケメン「じゃ、頑張って行こうぜ!」

狩人「はい!」

    パァ~フォ~



―――――――――――


雪山


狩人「では、教えてもらえますか?」

イケメン「まあまあ慌てなさんな」

イケメン「先に手分けしてキノコを集めておこう」

イケメン「そうすりゃ残った時間をフルに訓練へ使える」

狩人「なるほど。 確かにそうですね」

イケメン「そうだな……せっかくだし」

イケメン「ひとつ競争しないか?」

狩人「競争?」

イケメン「どっちがより多くキノコを集められるか勝負しないか?って事だよ」

狩人「え? でも俺、まだここのマップにも慣れていませんし……」

イケメン「なら、ハンデをくれてやるぜ?」


狩人「ハンデ?」

イケメン「そうだな……キノコ6つ分、お前さんにハンデとしてやるよ」

狩人「6つも!?」

狩人「……いくらなんでもそれじゃ俺が勝っちゃいますよ?」

イケメン「ほう……なら、何も問題はないよな?」

狩人「……わかりました」

狩人「受けて立ちます!」

イケメン「その息その息♪」

イケメン「じゃ……お先に!」

狩人「あ! ずるいですよ!」



―――――――――――


狩人「よし……これで10個目だ!」

狩人「ハンデと合わせれば16個。 いくらなんでも勝てるな!」

狩人「BC(ベースキャンプ)に戻ろう」

―――――――――――

狩人「……ふう」

狩人「…………」

狩人「イケメンはまだか」

狩人「…………」

―――――――――――

狩人「…………」

狩人「……もうすぐ日が暮れる」

狩人「いくらなんでも遅すぎる」


狩人「…………」

狩人(……まさか)

狩人(モンスターの乱入!?)

狩人(…………)

狩人(もし……そうだったら)

狩人(俺の実力じゃ話にならない)

狩人(急いで戻って、ギルドに応援を呼ばないと!)


―――――――――――


ふもと村 集会所


狩人「す、すみません!」


受付嬢「はい?」

狩人「あ、あの! イケメンってハンターが」

狩人「たぶんモンスターの乱入に襲われたみたいで!」

受付嬢「ああ、そのハンターなら、とっくに戻って報酬を受け取ってますけど?」

狩人「…………」

狩人「……は?」

受付嬢「そういう契約をあなたと交わしたと承っておりますので」

受付嬢「こちらはお支払いしていますが……」

狩人「そ、それは! 確かにそうですが……!」

受付嬢「それよりも依頼内容のキノコの納品はどうなっているのでしょうか?」

狩人「!!」

狩人「え……と」


受付嬢「……依頼の半分足らずですね」

狩人「で、ですが! こちらにも事情が!」

受付嬢「残念ですが。 クエストは失敗したとみなします」

受付嬢「先払いした報酬は、あなたが支払ってください」

狩人「」

受付嬢「この命に従えないのなら」

受付嬢「あなたには少々怖い思いをしてもらう事になります」

受付嬢「よろしいですね?」

狩人「」





     こうして……

     俺の集会所デビューは



     くそみそで、クソッタレな感じで

     幕を閉じた……




ちょっと間抜けで不器用な新米ハンターの物語です。
それでは、また。



―――――――――――


数日後の午後

ふもと村 村長宅前


村長「はい、ご苦労様」

村長「これが報酬だよ」

狩人「どうも」

村長「明日もよろしくね」

狩人「もちろん頑張ります」

狩人「じゃ……」


狩人「…………」

狩人(あれから数日過ぎて……ようやく落ち着いてきた)

狩人(ギルドに立て替えてもらったお金は)

狩人(ギルドに支給してもらった初期装備の武器をいくつか売って何とかした)

狩人(…………)

狩人(何だか本末転倒で、申し訳ない気もするが……)

狩人(改造しようが、ホコリを被ろうが、好きにしていいと言われていたので)

狩人(売っても問題ないだろう)

狩人(…………)

狩人(あのイケメンとかいうハンターは流れ者で)

狩人(そういう連中は、何も知らない新人をカモにする事はよくあるのだとか……)

狩人(…………)

狩人(嫌なことは早く忘れて、次の仕事に集中しよう)



―――――――――――


数日後の午前

雪山


     ギュアッ! ギュアッ!

狩人「くっ……! このっ!」

     ブンッ ブンッ!

狩人(くそぉ……どうして当たらないんだよッ!)

     ギュアッ! ギュアッ!

狩人「わ、わああああっ!!」



―――――――――――


ふもと村


狩人「」

救助アイルー「じゃ、確かに届けたニャ」

     ガラガラガラ…

村長「…………」

―――――――――――

村長「大丈夫かい?」

狩人「……ええ、おかげ様で何とか」

村長「……時に」

村長「3乙はこれで何回目かな?」

狩人「……5回目です」


村長「……私も長いことハンターを見てきたけど」

村長「ギアノス5匹狩猟にこんなに手間取るハンターは始めてだよ」

狩人「…………」

村長「キツい言い方になるけど」

村長「もっとしっかりしてくれないと困る」

狩人「…………」

狩人「……すみません」

村長「本当に頼むよ……」

     テク テク テク…

狩人「…………」



―――――――――――


狩人の家


     ドサッ…

狩人「……疲れた」

狩人「…………」

狩人(村長さんが怒るのも当然だ……)

狩人(村付きハンターは、ハンターズギルドに依頼してハンターを派遣するが)

狩人(そのハンターの住まいなどは、維持費も含めて村が支払わなくてはならない)

狩人(簡単に言えば、村がモンスターに対する用心棒を雇っているという事)

狩人(…………)

狩人(その用心棒がそこら辺の下っ端モンスターに手こずっていりゃ)

狩人(金返せ、とも言いたくなるわな……)

狩人「はあ……」



―――――――――――


翌日の朝

村長宅前


狩人「おはようございます」

村長「おはよう」

村長「今日はいつものキノコ狩りかい?」

狩人「ははは……はい」

狩人「また契約金稼ぎしてきます」

村長「そうかい」

村長「めげないのは、いい事だね」


狩人(契約金か……)

狩人(これが意外とバカにできない)

狩人(依頼の多くは契約料が発生する)

狩人(不測の事態に備え、救出ネコタクがいざという時、助け出す為の契約料なのだが……)

狩人(…………)

狩人(そして一回乙する度に、賞金を3分の1ずつ取って行き……)

狩人(3回乙するとクエストは失敗となる)

狩人(まあこれはハンターが無茶をしない様に、という配慮でもあるが)

狩人(そして……クエスト失敗となれば賞金を出している依頼者は丸損)

狩人(採取クエなら目的のブツは手に入らず、出したお金がパァ……)

狩人(狩猟目的なら金を出したのにモンスターは生きたまま……)

狩人(村長さん、マジすんません……)



―――――――――――


数日後の午後

ふもと村 広場


狩人(よし……そろそろ契約金が払えるくらいは溜まった)

狩人(キノコ狩りのついでに見かけたギアノスを相手に訓練もした)

狩人(一匹ずつ相手にするなら……何も問題はない)

狩人(今度こそ……!)


??「あ……」

狩人「!!」

狩人「……少女」


少女「……久しぶり」

狩人「あ、ああ……久しぶり」

少女「…………」

少女(防具……ギルドから支給されたマフモフスーツのまま)

少女(苦労しているみたいね)

狩人「…………」

狩人(あれは……ギアノス……じゃないな?)

狩人(ギアノスよりもっと強い青色している……そのウロコや皮を使った鎧)

少女「…………」

狩人「…………」

少女「じゃ、私……行くね?」

狩人「……ああ」



     スタ スタ スタ…


狩人「…………」

狩人(彼女……)

狩人(順調みたいだな……)

狩人(…………)


―――――――――――


狩人の家


狩人「…………」

狩人「明日は……どうする?」

狩人「思い切って武器を変えてみるか?」


狩人「…………」

狩人(いや……やっと慣れてきたところだし)

狩人(片手剣でギアノスを倒せるようになってきたんだ)

狩人(これで行こう)

狩人(…………)

狩人「明日も頼むぞ、相棒」



     俺は、ハンターナイフの手入れを始めた。




※注


公式はどうなっているのか知らないのですが
>>1の解釈で、ハンターが払う契約料はネコタクへの契約料、という事になっています。
ゲームで3分の1ずつ減っていくのは、救出ネコタクの使用料と解釈。

また、賞金は依頼者が負担していますが、これとは別に
ギルド側にも仲介料が発生していて、簡単にまとめると


ギルド側  依頼者から仲介料を徴収(儲け)。  集会所の運営費を負担

救出ネコタク  契約料、及び救出(命懸け)ごとに賞金のお金

ハンター  契約料を負担 依頼達成で賞金がハンターの儲け

依頼者  ギルドへの仲介料と賞金の負担  クエ達成がメリット


と、なっております。

というところで今日はここまで……
依頼者不利すぎな気もするけど、こんな感じです。
それでは、また。



―――――――――――


翌日の午前中

雪山


     ギュアッ! ギュアッ!

狩人「でやああああああああっ!!」

     ザシュッ!  キュウウウゥゥ…

狩人「よし、次っ!」

     ガブッ!!

狩人「ぐっ……! このぉっ!」

     ザシュッ!



―――――――――――


BC(ベースキャンプ)


狩人「」

狩人「……はっ!?」

救助アイルー「気がついたかニャ」

狩人「ここは……BC」

狩人「という事は……1乙しちまったのか」

救助アイルー「そういう事だニャ」

狩人「けど、3匹はやったはず……」

狩人「あと2匹やれば、クエストクリアだ!」

救助アイルー「…………」


救助アイルー「なあ、新人ハンターさん」

狩人「ん?」

救助アイルー「あんた……こんな調子で、この先やっていけるのかニャ?」

狩人「…………」

狩人「……んな事、わからねーよ」

救助アイルー「まあ俺らはギアノス程度で、こんなに稼がせてもらってありがたいけど」

救助アイルー「あんた、こんなこと繰り返していたら」

救助アイルー「体の方が先に参ってしまうニャ」

狩人「…………」

救助アイルー「俺から言うのも何だけど……」

救助アイルー「武器を鍛えてからとか、防具を買い揃えてからとか」

救助アイルー「もうひと工夫してから挑戦した方がいいと思うニャ」


狩人「……契約金稼ぐので精一杯なんだよ」

狩人「とてもじゃないが、そんな余裕は……」

救助アイルー「狩りに行くのを一回我慢すりゃ」

救助アイルー「簡単な武器の改造くらいはできるはずニャ」

狩人「…………」

狩人「でも……他のハンターは、そんな事しなくてもこのクエをクリアしている」

救助アイルー「…………」

狩人「やっぱり俺……才能無いのかな」

救助アイルー「いいや。 それは絶対に無いニャ」

狩人「え……」

救助アイルー「ギルドがあんたをハンターと認めているのなら」

救助アイルー「少なくとも最低限の才能は持ち合わせていると判断しているニャ」


狩人「…………」

狩人「……慰めなんて」

救助アイルー「そんなつもりは無いニャ」

救助アイルー「ギルドに認められるハンターってのは」

救助アイルー「現存するすべての種類の武器を、ある程度使えないと許可が降りないニャ」

救助アイルー「あんたは、大剣やランス、ガンランスの重量武器を振えるけど」

救助アイルー「普通の人は持って歩く事すら出来ないニャ」

狩人「…………」

救助アイルー「ハンターになれる」

救助アイルー「それだけで、十分才能は持ち合わせているニャ」

狩人「…………」


救助アイルー「……それに」

狩人「それに?」

救助アイルー「力尽きたハンターを救助するのは」

救助アイルー「俺たちだって命懸けニャ」

狩人「…………」

救助アイルー「ハンターが乙しなければ」

救助アイルー「俺たちは何の苦労もなく、契約料が手に入るニャ!」

狩人「……おいおい」

救助アイルー「んじゃ……俺はそろそろ行くニャ」

救助アイルー「健闘を祈るニャ」

     タッ タッ タッ…

狩人「…………」



―――――――――――


その日の午後

ふもと村 村長宅前


村長「おお、狩人!」

村長「どうにかギアノス5匹狩猟できたみたいだね!」

狩人「ええ」

村長「……?」

村長「どうしたんだい? あまり嬉しそうじゃないみたいだが……」

狩人「一回乙しましたしね……素直に喜べませんよ」

村長「……そうかい」

狩人「それじゃ……今日はもう休みます」

村長「ああ、お疲れ様」



―――――――――――


狩人の家


狩人「…………」


救助アイルー「武器を鍛えてからとか、防具を買い揃えてからとか」

救助アイルー「もうひと工夫してから挑戦した方がいいと思うニャ」


狩人「…………」


救助アイルー「ハンターになれる」

救助アイルー「それだけで、十分才能は持ち合わせているニャ」


狩人「…………」


狩人(工夫……か)

狩人(…………)

狩人(才能を言い訳にして愚痴るのは)

狩人(誰にだってできる)

狩人(有名なハンターだって……最初から何もかも出来たんだろうか?)

狩人(……そんなわけ無いよな)

狩人(…………)

狩人(きっと……)

狩人(俺の知らないところで、何か努力をしていたんだろう)

狩人(…………)



―――――――――――


翌日の朝

村長宅前


村長「おや? 狩人」

村長「今日も早いね」

狩人「おはよう、村長さん」

村長「ああ、おはよう狩人」

狩人「採取クエ、あるかい?」

村長「もちろんあるけど……ギアノス狩猟で疲れているんじゃないのかい?」

狩人「大丈夫。 それよりも目的ができたんでね」

狩人「しばらくお金を貯めようと思う」


村長「そうかい」

村長「まあ疲れていないのなら、こちらとしては断る理由はないよ」

村長「薬草、鉱石、お馴染みのキノコと」

村長「選り取りみどりだ」

狩人「どれどれ……」

狩人「割が良さそうなのは鉱石か」

狩人「じゃ、これを」

村長「ほいほい」

村長「じゃ、頑張ってね」

狩人「ああ」

    パァ~フォ~



―――――――――――


雪山


     カーン… カーン…

狩人「ふう……また鉄鉱石か」

狩人「マカライト出ないな」

     カーン… カーン…

―――――――――――

     ギュアッ! ギュアッ!

狩人「ギアノス……邪魔だな」

狩人「はあっ!!」



―――――――――――


狩人「ふう……」

狩人「よし、依頼の量は確保できたな」

狩人「戻ろう」

     ギュアッ! ギュアッ!

狩人「またかよ……」

狩人「!?」

狩人(何だコイツ……異様にでかいし、あのトサカに足の鉤爪)

狩人(…………)

狩人(まさか……!)

     グアアッ!!

狩人「くそっ!!」



―――――――――――


BC(ベースキャンプ)


狩人「はあっはあっ……」

狩人「どうにか……逃げ切ったぜ……」

狩人(…………)

狩人(あれは、たぶんギアノスを束ねるリーダー)

狩人(ドスギアノス……)

狩人(並のギアノスより攻撃力も耐久力もかなり上だとか)

狩人(幸い仲間を呼ばれなくて、何とか逃げ切れた……)

狩人(…………)



―――――――――――


ふもと村 村長宅前


村長「え? ドスギアノスを見かけたって?」

狩人「ああ」

村長「そうかい……この前少女が倒したばかりだったんだが」

村長「また出たみたいだね」

狩人「…………」

村長「ともかくご苦労さん」

村長「また少女に討伐依頼出しておくよ」

狩人「…………」

狩人「なあ、村長さん」

村長「ん?」











狩人「俺に……やらせてもらえないか?」










こんなふうにいつも筆がノってくれたらなぁ……
というところで今日はここまでです。



―――――――――――


加工店


職人「おう狩人」

狩人「職人さん、できてますか?」

職人「ああ、できてるぜ」

     スラァ…

職人「ハンターカリンガだ」

狩人「どうも」

職人「素材と金さえもらえれば、どんどん強くしていけるからな」

狩人「ああ、頑張るよ」


狩人「…………」

狩人(結局……ドスギアノスは狩らせてもらえなかった)

狩人(…………)

狩人(おまけにふて腐れる間もなく、少女があっさりとドスギアノス狩ってくるし)

狩人(真面目に肩身が狭い……)

狩人(…………)

狩人(ともかくだ。 武器も強化したし)

狩人(例のギアノス5匹狩猟クエをそつなくこなせる様になれば)

狩人(俺にもやらせてもらえるだろう)

狩人(当座の目標はドスギアノス!)

狩人(頑張るぞ!)



―――――――――――


数日後の午前

雪山


狩人「これで……最後!」

     ズバッ! クウウウウゥゥゥ…

狩人「はあっはあっ……よし!」

狩人「ついに1乙もしなかったぞ!」

狩人「あはははははは!!」

狩人「…………」

狩人「おっと、剥ぎ取りしないと……」


狩人「…………」

狩人(それにしても武器の強化が、これほど効果的だったなんて)

狩人(あんなに苦労してたギアノスだったのに……)

狩人(あっさり狩れる様になった)

狩人(もちろんあいつらの動きに慣れた、というのも大きいだろうけど)

狩人(…………)

狩人(さて、そろそろ帰るか)


―――――――――――


ふもと村 村長宅前


村長「やあ、おかえり。 狩人」

狩人「どうも、村長さん」


村長「最近、順調だね」

狩人「はは、武器を新調しましたから」

村長「そうかい」

村長「それなら、そろそろ大きいの行っておくかい?」

狩人「!」

狩人「ドスギアノスですか!?」

村長「あー残念だけど違うよ」

村長「ドスファンゴだ」

狩人「ドスファンゴ……ファンゴのボスですか」

村長「ある意味ではドスギアノスより厄介だよ」

村長「攻撃力が高くて、普通の人がまともに食らうと即死もあり得る」

狩人「……なるほど。 確かに手強そうですね」


狩人「じゃあ回復薬とか、調達し終えたら」

狩人「やります」

村長「ああ、わかった」

―――――――――――

狩人「…………」

狩人(……ストアで売っているの買えばいいんだけど節約しないとな)

狩人(明日いっぱいは、薬草とアオキノコ採取に使うとして)

狩人(その次の日は休養に回そう)

狩人(その翌日が……決戦の日だ!)

狩人(…………)

狩人(……そうだ。 少し余裕も出来てきたし)

狩人(武器もだけど、防具の方も新調できないか見てみよう)


加工店


職人「よお、狩人」

狩人「どうも、職人さん」

狩人「それなりに素材とお金が貯まりましたんで」

狩人「武器もですけど防具でも何が作れるか、見てもらえますか?」

職人「おう、いいぞ」

―――――――――――

狩人「防御力でバトルシリーズ……でも全部は作れない」

狩人「その点、ハンターシリーズは揃えられる……か」

職人「まあその辺りは好みだと思うぜ?」

職人「何が何でも全部揃えなきゃならん、という事はねぇ」

職人「この段階じゃ、そんなに性能差はないからな」


狩人「そう言われても……迷いどころだなぁ」

狩人「う~ん……」

職人「…………」

狩人「……よし」

狩人「ハンター装備一式買います!」

職人「ああ、わかった」

職人「2~3日待っててくれ」

狩人「では3日後に取りに来ます」



―――――――――――


二日後の午後

ふもと村 広場


女「ただいまー」

村人「やあ、女ちゃん。 おかえり」

村人「今回の仕入れは、ずいぶん長かったね?」

女「帰る途中の街道で、ティガレックスが出てね」

女「討伐されるまで足止め食っちゃったのよ……」

村人「そう……そりゃ災難だったね」

女「で? こっちの方もハンターが何人か引退したそうじゃない」

女「大丈夫なの?」


村人「ああ、それなら新人だけど2人来てくれたから」

女「へえ。 さすがギルドね」

女「仕事が早い」

村人「本当に良かったよ、2人で」

村人「ハズレだけだったら、えらい事になってたよ……」

女「ん? ハズレ?」

―――――――――――

女「あはは! ガウシカに3乙!?」

女「本当にハンターなの!?」

村人「まあ、今は多少マシになったけど」

村人「少し前までギアノス相手に何度も3乙繰り返してたよ」


女「……うわぁ」

女「そりゃ確かにハズレだわ……」

女「で、もう一人はどんな感じ?」

村人「見た目は女ちゃんと代わらないくらい可愛い女の子なんだけど」

村人「こっちは順調に狩猟クエをこなしているよ」

女「ふーん」

女「…………」


―――――――――――


少女の家


女「こんにちはー」

少女「はい? どなたですか?」


女「初めまして。 私、女って言います」

女「あそこのストアの仕入れ担当で、今日帰ってきたので」

女「新しいハンターさんに挨拶を……と思って」

少女「あ、これはご丁寧に」

少女「私、この前ここに来た、ハンターの少女って言います」

少女「よろしく」

女「よろしくね♪」

女「なんか順調に強くなってるって、聞いてるよ?」

少女「最近はちょっと伸び悩んでいるんですけどね……」

女「ふーん? そうなの?」

女「ま、頑張ってね!」

少女「はい。 頑張ります」


女(ふむふむ、なかなか感じのいい娘ね)

女(確かに当たりって感じだわ)

女(さて、ハズレの方はどんな感じかな?)


―――――――――――


狩人の家


女「こんにちはー」

女「…………」

女「あれ?」

女「こんにちはー?」

女「…………」


女「居ないのかな?」

     ……グォー ……グォー

女「…………」

女「あれまあ……窓を開けっ放しにして、のんきに寝てるわ」

女「さすが、ハズレハンターね」

女「…………」

女「挨拶は、また後でいっか」

―――――――――――

狩人「ふああああ……」

狩人「…………」

狩人「あー……よく寝た」


狩人「…………」

狩人(今日は休養日だけど……)

狩人(日課の素振りや、薪割りをしておかないとな)

―――――――――――

狩人「……ふう」

狩人「こんなものだろう」

狩人「…………」

     コンニチハー

狩人「ん? 誰か来た」

狩人「はーい」

狩人「誰ですか?」


女「お、今度は起きてた」

狩人「は?」

女「あはは! 何でもない!」

女「初めまして。 私は広場前のストアで仕入れを担当している、女って言います」

女「新しいハンターさんに挨拶しておこうと思って、来ました」

狩人「そうなんですか」

狩人「初めまして。 この前、派遣されてきたハンターの狩人です」

女「よろしくね」

狩人「はい、よろしく」

女「私もたまに店番してるから、たくさん買ってくれると嬉しいな!」

女「じゃ!」

狩人「…………」

狩人「可愛い人だったなー」


女「…………」

女(んふふ)

女(外見だけなら、十分合格ね)

女(外見だけなら)

女(…………)

女(でも……)

女(いつまでもハズレのままじゃ)

女(こちらとしては困るのよねー……)

女(…………)



―――――――――――


翌日の午前中

村長宅前


村長「やあ、狩人。 来たね」

狩人「はい」

村長「おっ……武器だけじゃなく」

村長「防具も新調したのかい」

狩人「ええ。 今日の為に」

村長「気合入ってるね」

村長「じゃ、ドスファンゴ狩猟、頑張ってくれ」

狩人「行ってきます!」

    パァ~フォ~



―――――――――――


雪山


狩人「さて……ドスファンゴ」

狩人「待ってろよ……!」

     ヒュウウウウウ……

狩人「ううっ……寒いな」

狩人「マフモフじゃないから寒さが堪えるぜ……」

狩人「早いとこ済ませないと」



―――――――――――


狩人「はあっ……はあっ……」

狩人「くそっ……!」

狩人「寒くて……動きにくくなってきた……」

     ブモー!!

狩人「!!」

狩人「現れたな……ドスファンゴ!!」

     ズシャ…! ズシャ…!

     ドドドドドドドドッ!

狩人「来たな……そんな直線的な攻撃、軽く避けられるぜ!」


狩人「どうだ!」

狩人「!?」

     ドゴォッ!!

狩人「ぐはっ!!」

狩人(……かわしたと思ったら)

狩人(次の攻撃がこんなに早く来るなんて……!)

     ドドドドドドドドッ!

狩人「うわああああああああっ!!」

狩人「く、くそっ」

     ドドドドドドドドッ!

狩人「寒くて……動けな……」

     ドゴォッ!!



―――――――――――


村長宅前


村長「…………」

狩人「」

救助アイルー「……それじゃ」

     ガラガラガラ…

―――――――――――

狩人「すみません! 村長さん!」

村長「い、いや……いいんだよ」

村長「君は頑張っていた。 それは確かだから」


女「ちわーす、村長さん」

女「頼まれていた品物届けに……ん?」

女「どうしたんですか?」

村長「あー……うん、何でもないよ」

狩人「…………」

女「…………」

女(……3乙したみたいね)

狩人「ともかく、村長さん」

狩人「もう一度……依頼を受けさせてください!」

狩人「お願いします!」

村長「狩人……そんなに頭を下げなくても大丈夫だから」

村長「ぜひ、再挑戦してくれ」


狩人「ありがとうございます!」

狩人「次は、マフモフで行きますから……」

村長「……ん?」

女「……は?」

女「何でわざわざ防御力の低い装備に戻すの?」

狩人「それが……この装備だと寒くて、すぐ動けなくなったから……」

村長「」

女「」

狩人「……?」

狩人「どうしたんですか?」


女「……ねぇ」

女「BC(ベースキャンプ)にさ、支給品の入った青い箱、あるでしょ?」

狩人「ええ、ありますね」

女「それにさ」

女「ホットドリンクっていう薬があると思うんだけど?」

狩人「ああ、確かに見かけましたけど……それが?」

村長「…………」

女「…………」

女「えと……どうして飲まなかったの?」

狩人「どうしてって……何の薬かわからなかったし」

狩人「まあいっか、って感じで、放っておいただけですけど……」

村長「…………」

女「……はあ」

狩人「???」


女「あのね、新人クン」

女「あの薬……ホットドリンクっていうのはね」

女「一定時間、寒さを緩和する効果があるのよ」

狩人「…………」

狩人「え」

狩人「えええええっ!?」

女「……あきれた。 本当にあなたってハンターなの?」

村長「ま、まあまあ、女ちゃん」

村長「狩人もひとつモノを知る事が出来たんだし、よかったじゃないか」

狩人「…………そうですね」

狩人「次は……ちゃんと飲みますから」

     トボ トボ トボ…


村長「…………」

女「…………」

女「ねえ、村長さん」

村長「う、うん」

女「真面目に交代のハンターを要請すべきじゃない?」

村長「……正直を言えば、頭をよぎったけどね」

村長「ハズレだから交代させて、何て通らないと思うよ……たぶん」

女「はあ……本当にとんでもないハズレを掴まされたものだわ」

女「少女ちゃんが唯一希望の星ね」

村長「……まあ、それなりに役には立ってくれてるし」

村長「長い目で見ていこうよ……」

女「はあ……」


狩人の家


狩人「…………」

狩人「何の薬かなぁ……とは思っていたんだけど」

狩人「そんな効果があったなんて……」

狩人(…………)

狩人(……大恥じ、かいちまった)

狩人(…………)

狩人(……もう寝よう)

狩人(…………)





     忘れろ……

     忘れるんだ……



     そう呟きながら

     俺は眠りについたのだった……



えと、たまたま書けていますけど……
フツーに一週間とか掛かるようになると思うので……今から覚悟しておいてください。
という事で、今日はここまでです。



―――――――――――


数日後の午前

ふもと村 集会所


     ガヤ ガヤ

少女「よろしくお願いします」

流れハンター「ああ、よろしく」

ハンター(女)「よろしくね」

色黒ハンター「こちらこそよろしく」

色黒ハンター「これでカニ(ダイミョウザザミ)装備、できるんだっけ?」

少女「はい」

少女「たぶん素材が出揃うかと……」


ハンター(女)「でも噂で聞いてたのと違うね、少女ちゃん」

少女「え?」

ハンター(女)「ガウシカに3乙したとか、ギアノス相手に何度もクエ失敗したとか」

ハンター(女)「ふもと村の新しいハンター、すごいヘタレだって聞いてたから……」

少女「あー……それ私の事じゃないです」

少女「派遣されてきた日が近かったから、よく混同されるんですけど」

少女「狩人って名前のハンターの事ですね」

流れハンター「今の話、本当か?」

流れハンター「よくハンターになれたな……」

ハンター(女)「まあ戦闘センスとかは審査基準にないからね」

色黒ハンター「そんな奴とは組みたくねーなぁ」

     ハハハ…

少女「…………」



―――――――――――


雪山


     ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!

狩人「ひぎっ!!」

     バコッ!!

狩人「ぶべらっ!!」

     バチバチバチバチッ!

狩人「gっどんjcdcんhmfjhッ――!!」



―――――――――――


村長宅前


狩人「」

救助アイルー「毎度どうもニャ」

     ガラガラガラッ…

村長「……ご苦労様」

―――――――――――

狩人「すみませんっ!」

村長「あー……何度も言うけど、気にしなくていいから」

狩人「でも……」

村長「その分、採取クエで割は取ってくれているよ、君は」

村長「だから大丈夫」

狩人「……そうですか」


狩人の家


     ドサッ…

狩人「あー……疲れた」

狩人「フルフル強すぎだぜ……ドスファンゴとは比べ物にならない」

狩人「…………」

狩人(せめて、あの咆哮さえ無くなればなぁ……)

狩人(切り込んでる最中にやられると)

狩人(ダメージが全然入らない)

狩人(…………)

狩人(どうすればいいんだろう……)


少女の家前


狩人「おーい、少女」

     シーン…

狩人「…………」

狩人「居ないのか……」

女「あら、狩人」

狩人「あ……女さん」

女「少女ちゃんなら、密林へ遠征に行くって言ってたわよ」

女「一週間くらい帰ってこないって」

狩人「…………」

狩人「……そうですか」

女「それより君、また3乙したんだって?」

狩人「……はい」


女「そう……」

女「まあ、次があるよ」

狩人「ハハ……頑張ります」

女「……ところで少女ちゃんに何の用だったの?」

狩人「!」

狩人「た、大した用事じゃないですよ」

女「…………」

女「……あ」

女「もしかしたら、戦い方を教えてもらおうとしたの?」

狩人「ほ、ホントに何でも無いですから!」

     タッ タッ タッ…

女「……図星か」


狩人の家


狩人「はあっ……はあっ……」

狩人「…………」

狩人(……どうすりゃいいんだよ)

狩人(…………)

狩人(思い切って集会所へ行くか……?)

狩人(…………)

狩人(だめだ)

狩人(もうあそこには行きたくない……)

狩人(おまけにヘタレだの3乙ハンターだの噂されてるし)

狩人(馬鹿にされるのがオチだ……)



―――――――――――


ふもと村 集会所


女「こんにちは」

女「食材のお届けに参りました」

受付嬢「ご苦労様です」

女「受取証にサインをお願いします」

受付嬢「はい」

     サラサラ…

女「毎度どう……」

女「あ!!」


受付嬢「?」

受付嬢「どうしました?」

女「い、いえ。 何でもないです」

女(教えを請うのなら、ここに来ればいいのに……)

受付嬢「左様ですか」

女「ははは……ただ、狩人ってハンター」

女「いつも村のクエストしかしていないなーと思って」

受付嬢「ああ、あのヘタレハンターですか」

女「え」

受付嬢「ふもと村の武勇伝が入ってきてますからね」

受付嬢「少女さんがいちいち説明していて迷惑そうでした」

受付嬢「まあ、その彼がここに来られるとは思いませんが」


女「…………」

女「……それじゃ」

受付嬢「はい」

―――――――――――

女「…………」

女「……そういう事だったのね」

女「…………」

女「後で様子を見に行ってやるか」

女「美味しいものでも差し入れよう」



―――――――――――


加工店


     カーン… カーン…

女「こんにちは」

職人「おう、こんにちは」

女「注文されていた道具と部品です。 サインを」

職人「ありがとう」

     サラサラ…

職人「……そうだ、女ちゃん」

女「はい?」

職人「狩人ってハンターの事は知っているかい?」

女「ええ、知ってますけど?」

職人「こんな事、頼むのは筋違いなんだけどな……」


職人「あいつの事、励ましてやってくれねぇか?」

女「え?」

職人「女ちゃんもヘタレだのハズレだのっていう、狩人の噂を聞いてると思うけど」

職人「あいつは、あいつなりに精一杯頑張っている」

女「…………」

職人「もちろん結果が伴わなければ、評価なんてされねぇ……でもよ」

職人「俺ァ……あいつの使い込まれた武器を鍛えているからわかるんだ」

職人「あいつの一生懸命さがよ……」

女「…………」

職人「俺も頑張れって言ってやったけどな」

職人「こんな蒸さいおっさんよりも、可愛い女の子に言ってもらった方が」

職人「ヤローって奴ァ頑張れるもんなんだよ」

女「…………」


職人「どうだい? ひとつ頼まれちゃくれねぇかな?」

女「…………」

女「……そうですか」

女「職人さんの頼みなら、喜んで聞きますよ」

職人「すまねぇな」

女「これからもウチをご贔屓にしてくださいね?」

職人「ちゃっかりしやがって」 ハハハ…

職人「もちろん、そうさせてもらうよ」

女「毎度ありです♪」



―――――――――――


ふもと村 広場


????「ふう……やっと着いたな」

??「…………」

村人「あ!」

村人「ロートルさんに ソロさん!」

村人「お帰りなさい!」

ロートル「ああ、ただいま」

ソロ「……ただいま」


村人「半年もの長期遠征でしたからね……お疲れ様でした」

ロートル「いや、こっちも長い間、村を空けてすまなかった」

ソロ「…………」

ロートル「それよりも……手紙を読んで驚いたんだが」

ロートル「玄人(くろうと)と女戦士が引退したんだってな」

ロートル「一体何があった?」

村人「それが……」

―――――――――――

ロートル「そうか……玄人のやつ、右腕を失ったのか」

ロートル「女戦士は、あの無鉄砲ぶりだったから、いずれ命を失うと思っていたが……」

ロートル「まさかあの玄人がな……」

村人「ええ……私たちも女戦士は意外でも何でも無かったんですが」

村人「あの慎重な玄人さんが、と、驚きを隠せませんでした」


ロートル「じゃあ今、この村のハンターは俺たちだけか……」

ロートル「みんな不安だったろう。 もう大丈夫だ」

村人「あ、いやそれが……新人ハンターですけど」

村人「ギルドがすぐに2人も派遣してくれまして」

ロートル「ほう?」

―――――――――――

ソロ「…………」

ロートル「当たりとハズレ……ね」

村人「まあ少女ちゃんは優秀なんで、安心できました」

村人「けど……もう一人がねぇ」

ロートル「…………」


ロートル「……まあ、みな息災で何よりだ」

ロートル「後で村長のところに顔を出しておくよ」

村人「ええ、きっと村長も喜ぶと思います」

村人「じゃ、また!」

ロートル「ああ」

     スタ スタ スタ…

ソロ「…………」

ロートル「…………」

ロートル「……ふふ、ガウシカに3乙、か」

ソロ「…………」

ロートル「なかなか面白そうな奴が入ってきたな」



―――――――――――


狩人の家前


女「…………」

女「こんにちは」

女「…………」

女「また寝てるのかな?」

     ……ハッ! ……トアッ!

女「ん?」

女「家の裏の方から何か聞こえる」

     スタ スタ スタ


女「!」


狩人「はっ! とりゃ!」

     ブンブンッ!

狩人「はっ! はっ! はあっ!!」

     ブンブンッ! ブウンッ!


女「…………」

女(一生懸命……か)

女(…………)

女「あのー」

狩人「はっ! は……え?」

狩人「! 女……さん」


女「頑張ってるみたいね」

狩人「はは……恥ずかしいところ、見られたな」///

女「女、でいいよ」

狩人「は?」

女「名前。 女って、呼び捨てでいいよ」

狩人「は、はあ……」

     ゴソゴソ…

女「これ、差し入れ」つ(弁当)

狩人「え」

女「おっと、勘違いするんじゃないわよ?」


女「狩人ってさ、ちょっと痩せすぎてると思うのよ」

女「だから、これでも食べて、どっしりとしたハンターになりなさい」

狩人「…………」

女「…………」

女「今は……嫌な噂とか広まっちゃってるけど」

女「狩人の事、応援している人も少なからず居るわ」

狩人「…………」

女「私も、今から応援する一人になる」

狩人「!」

女「だから、頑張ってね」

狩人「女さ……あ、いや……」

狩人「女、ありがとう」

女「うふふ、どういたしまして!」

女「じゃ!」







     その日は……



     とてもいい風が吹いてる気がした。






あれ? クック先生は?
というツッコミはナシの方向で……
というところで、今日はここまでです。



―――――――――――


翌日の午後

ふもと村 墓地


     ザッ ザッ ザッ…

ロートル「玄人」

玄人「……ロートルか。 帰って来たんだな」

ロートル「まだ怪我が治りきっていないと聞いている」

ロートル「こんな所まで出歩くのは、体に良くないぞ?」

玄人「…………」

ロートル「…………」

ロートル「女戦士の墓か?」

玄人「ああ……」

玄人「あいつの好きだったファンゴのジューシィ焼き……供えたくてな」


ロートル「…………」

ロートル「こう言っては何だが……」

ロートル「いずれこうなると思っていた」

玄人「……ああ」

玄人「確かにな」

ロートル「だが、お前が右腕を失う事になるとは思わなかった」

ロートル「何があったんだ?」

玄人「別に何でもない。 よくある事さ」

玄人「何度目かもわからない、雪山に現れたドドブランゴを討伐に行って失敗した」

玄人「それだけだ」

ロートル「…………」

玄人「やり慣れた相手……知り尽くした場所……」

玄人「俺たちは……いつも通りに奴を狩る。 そのはずだった」


ロートル「…………」

玄人「……どこか、油断していたのだろうな」

玄人「たぶん、『当たり前』に慣れすぎていたんだと思う」

ロートル「…………」

玄人「奴にダメージを与え、そして逃げた。 いつも通りのあの場所へ」

玄人「このまま倒すか、それとも捕獲するか?」

玄人「まだ勝ったわけでもないのに、俺たちは帰った後の晩飯を何にするか」

玄人「そんな事まで鼻歌交じりに話していた」

ロートル「…………」

玄人「ところがだ」

玄人「あいつはあそこに居なかった」


ロートル「何?」

玄人「答えは簡単だ」

玄人「奴に与えたダメージを測りそこなったんだ」

ロートル「…………」

玄人「ペイントの効果も消されていたし」

玄人「俺たちは慌てて奴を探した」

ロートル「…………」

玄人「ホットドリンクを使い切ってしまっていたから」

玄人「時間の経過が気になり……」

玄人「……不用意に山頂エリアに入ってしまった」

ロートル「…………」


玄人「俺は不意打ちを受け、右腕を食いちぎられた」

玄人「それを女戦士は庇い立てして、奴と、奴の呼ぶブランゴの群れに飛び込んでいった」

ロートル「…………」

玄人「……俺は痛みで気を失い」

玄人「気がついた時は、ふもと村の集会所……すべて終わった後だった」

玄人「救助アイルーの話だと、全身傷だらけでドドブランゴの頭に太刀を突き刺し……」

玄人「立ったまま、女戦士は死んでいたそうだ」

ロートル「……そうだったのか」

玄人「…………」

玄人「……俺なんか見捨てて逃げれば良かったのに」

玄人「いや、それ以前にホットドリンクが無くなった時点でリタイアしていれば」

玄人「こんな事にならなかったのにッ!!」

ロートル「…………」


ロートル「……お前には家族が居る」

玄人「っ!」

ロートル「女戦士は無鉄砲だったが……情のない奴じゃない」

ロートル「そして、お前の子供達と仲が良かった」

ロートル「きっと……そういう事なのだろう」

玄人「…………」

ロートル「……女戦士はいつも言っていた」

ロートル「家族を持つのが怖い、と」

ロートル「家族を持ってしまったら、きっと一歩を踏み出せなくなって」

ロートル「ハンターとして弱くなる、と」

玄人「…………」


玄人「……馬鹿な奴だ」

玄人「それでいて……こんな事で……命を失いやがって……」

玄人「馬鹿野郎がッ……!」

ロートル「…………」

玄人「ううっ……ぎっ……く…………ああっ……」

玄人「馬鹿……野郎ッ…………何で………死んだんだよ………」

玄人「息子と娘に……何て言ってやりゃいいんだよ……!」

玄人「……うっ……うっ……うああっ……ぎっ……」

玄人「ぐっ……くっ……うあっ…………ひぎっ…………」

ロートル「…………」

ロートル「好きなだけ泣くがいいさ……」

ロートル「気持ちの整理がつくまで……な」



―――――――――――


雪山


     ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!

狩人「くっ……!」

狩人(よし! 調べた通り、咆哮は盾で防げるぞ!)

狩人(そして……反撃!)

     バコンッ!

狩人「ぶべらっ!?」

     バチバチバチバチッ!!

狩人「おgfklぢfm;s、;jvlばshjsッ――!!」



―――――――――――


ふもと村 村長宅前


狩人「」

救助アイルー「毎度ー」

     ガラガラガラッ…

村長「どうも」

―――――――――――

狩人「もう少し! もう少しだったんですよ!」

狩人「足を引きずっていたんです!」

村長「うんうん」

村長「次、頑張ろう」


ロートル「やあ、村長」

村長「ああ、ロートルさん」

村長「もう疲れは取れましたか?」

ロートル「だいぶな」

ロートル「俺も歳をとったし、調子を戻すのが大変になってきた」

村長「ははは。 お互い、もう歳はとりたくないですな」

狩人「…………」

村長「ああ、狩人。 すまないね」

村長「こちらは君と同じく、ふもと村の村つきハンターのロートルさん」

村長「この前、長期遠征から帰ってきたんだよ」

ロートル「よろしく」

村長「で、こちらは、最近入ってきた新人ハンターの狩人」

狩人「……よろしく」


ロートル「ほう……君が噂の新人ハンターか」

狩人「……ロクでもない噂ばかりで、がっかりしたでしょうね」

ロートル「がっかりというより、懐かしかったがな」

狩人「は?」

ロートル「それよりも君、また3乙したのか?」

狩人「…………」

ロートル「……気に障ったのなら謝るが」

ロートル「何度も3乙して無事でいられるのは、立派な才能でもある」

狩人「……そうですかね?」

ロートル「まあこれから先、そんな調子のままでいたら」

ロートル「早々と命を散らす事になると思うが」

狩人「…………」


ロートル「村長、狩人は何のクエで3乙したんだ?」

村長「フルフル討伐だよ」

ロートル「フルフルか」

ロートル「あいつじゃ仕方ないところもあるな」

ロートル「狩人、武器は何を使っている?」

狩人「片手剣ですけど……」

ロートル「ほう……となると」

ロートル「咆哮からのテールアタックか、放電でヤられているな?」

狩人「!!」 ギクッ!

ロートル「図星か」

狩人「…………」


ロートル「俺から言えるアドバイスとしては」

ロートル「武器を変えてみる事だ」

狩人「武器を……?」

ロートル「ああ」

ロートル「モンスターと武器の相性ってのがある」

ロートル「フルフル相手だと、片手剣や双剣は間合いが近すぎて」

ロートル「奴の攻撃を喰らいやすい」

ロートル「初見では特にな」

狩人「…………」

ロートル「奴の咆哮や、放電をかいくぐりなら、必殺の一撃を繰り出せる」

ロートル「大剣かガンランス」

ロートル「ハンマーでもいいが、フルフル相手では少し分が悪い」


ロートル「それか、ガンナーになって」

ロートル「奴の射程外の安全圏からチクチクやるのもオススメだ」

ロートル「時間は多少掛かってしまうがな」

狩人「…………」

ロートル「参考になればいいが」

狩人「……ありがとうございます」

狩人「では、俺はこれで……」

     スタ スタ スタ…

村長「……何だかあまり嬉しそうじゃなかったな」

ロートル「なぁに」

ロートル「男なら誰でも持っているプライドってやつが、邪魔をするんだよ」

村長「プライド?」


ロートル「たぶん、あいつはこれまでずっと片手剣でクエをこなしていたんだろう」

ロートル「だから、フルフルも片手剣で倒したいんだ」

村長「……楽にモンスターを狩れるなら、そうすべきだと思うがなぁ」

ロートル「これまで培ってきた自信やプライド」

ロートル「そして安定した狩りに対する渇望」

ロートル「それらが、せめぎ合っているんだよ」

村長「…………」

村長「私にはわからない概念だね……」

ロートル「ああ、そうだとも」

ロートル「これはハンターであり、男の子であるからこそ」

ロートル「持ってしまう問題なんだ」 クスッ



―――――――――――


狩人の家


     ガサゴソ ガサゴソ…

狩人「…………」つ(バスターソード)

狩人「……大剣、か」

狩人「…………」

狩人(確かに、あのロートルとかいうハンターの言う通りだ)

狩人(咆哮で邪魔されても一撃が強ければ)

狩人(確実にダメージは入っていく)

狩人(…………)

狩人(しかし、ここまでやって、いまさら武器を変えるなんて……)


女「狩人、居るー?」

狩人「あ、女」

狩人「何か用?」

女「いきなりご挨拶ね」

女「また3乙したって聞いたから、陣中見舞いしに来たのに」

狩人「…………」

女「ほらほら、そうやってすぐ気にする」

女「狩人の悪い癖よ」

狩人「……んなこと言われても」

女「まあ、それはいいわ」


女「それよりもさ!」

女「我がふもと村の歴戦の勇者!」

女「ロートルさんと、ソロさんが、長期遠征から帰ってきてるの!」

狩人「…………」

女「お話してみたらいいと思う」

女「きっと狩人の力になってくれると思うな!」

狩人「あー……うん。 たぶんね」

狩人「後で会いに行くよ」

女「……様子がおかしいわね」

女「何か隠してるでしょ?」

狩人「べ、別に何も隠してない」

女「正直に話しなさい」

狩人「…………」


狩人「……ってワケです」

女「そう。 もう知り合っていたのね」

女「せっかく貴重な意見をもらったんだから」

女「その通りにしてみたらいいんじゃない?」

狩人「……そう単純な話じゃないんだよ」

狩人「武器っていうのは、慣れっていうものがあって」

狩人「モンスターとの間合いとか、いろいろ違ってくるんだ」

女「ふぅ~ん」

狩人「ふ~んって……」


女「でもさ」

女「狩人、安定した狩りをしたいんじゃないの?」

狩人「…………」

女「なら、迷う必要、ないと思うけどな」

狩人「…………」

女「…………」

女「……なんか、邪魔みたいだから帰るわ」

女「これ、いつもの差し入れ」つ(弁当)

女「じゃ」

狩人「……ああ」

狩人「ありがとう」

狩人(…………)


※ここでラオシャンロン決戦のBGMを流すといいかもです



―――――――――――


数日後の午前

雪山


     ザッ ザッ ザッ

狩人「…………」

狩人(俺は……確かに迷った)

狩人(さすが経験者の意見)

狩人(頷ける言葉だった。 説得力があった)

狩人(…………)

狩人(……でも)


     ヒュオオオオオオオォォ……

狩人(俺にだって意地がある)

狩人(ランクは低くても俺だってハンターだ)

     ゴフッ ゴフッ ゴフッ…

狩人(この前の戦いだって……負けたけど確かな手応えがあった)

     オオオオオォォ……

狩人(……こっちに気がついたな)

狩人(でも……今度は負けない)

狩人(必ず、この片手剣で……俺のやり方で!)

狩人(フルフルを倒すっ!!)


     ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!



狩人「ぐっ……!」

狩人(この咆哮から……大抵テールアタック!)

     ブウンッ!

狩人「よし! 読み通り!」

狩人「はあああああっ!!」

     ザシュッ ザシュッ!

狩人(ここで攻撃を切って、様子見っ!)

     グルルル…… バチッ

狩人(よしっ! 放電だ!)

     バチバチバチバチッ!!

狩人(これの終わりを見極めて……)

     チッ……

狩人(切り込むっ!!)


狩人「でやああっ!!」


     ブルルルロロンッ!


狩人「!!?」

狩人(首が伸び――)

     バゴォッ!

狩人「あびばっ!!」

     ……バチッ

狩人「し、しまっ」

     バチバチバチバチッ!!

狩人「hgでdsぉにjんhgfぎdxzdsjおッ――!!」



―――――――――――


BC(ベースキャンプ)


狩人「」

狩人「はっ!?」

救助アイルー「気がついたかニャ」

狩人「……1乙したか」

救助アイルー「どうするニャ?」

救助アイルー「ここで、リタイヤという手だってあるニャ」

狩人「…………」


狩人「……さっきのは、まだ見てなかった動きのせいだ」

狩人「今度はアレにも気をつければいいだけ!」

救助アイルー「頑張ってくれニャ」


―――――――――――


狩人「はあああっ!!」

     ザシュッ ザシュッ!

     グルルル……

狩人(!)

狩人(咆哮か!?) サッ(防御姿勢)


     ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!


狩人(っ! よしっ! 読み通りっ!)


狩人「でやあああああああっ!!」


     ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!


狩人「ひぎっ!?」

狩人(れ、連発!?)

     バコンッ!!

狩人「ぶべらっ!」


     バチバチバチバチッ!


狩人「あhgfdぎxylpぎへkjdびzxgkる;ッ――!!」



―――――――――――


BC(ベースキャンプ)


狩人「」

狩人「はっ!」

救助アイルー「大丈夫かニャ?」

狩人「……大丈夫だ」

狩人「咆哮って連発もできるのかよ……」

狩人「だけど、それも覚えたぜ!」

救助アイルー「言っとくけど次、乙したらふもと村へ帰還ニャ」

狩人「……ああ、わかってるさ」

狩人「だけど、もう少しなんだ!」

狩人「必ず仕留めてやるっ!」

救助アイルー「頑張ってくれニャ」



―――――――――――


     バコンッ!

狩人「うがぁっ!!」

狩人「はあっはあっはあっ……」

     グルルルルル……

狩人(くそっ……! 回復薬、これで最後だ) グビッ

狩人(次の攻撃は……!?)

     アオオッ… アオオッ…

狩人(!!)


狩人「足を引きずってる!!」

狩人「もう少しだ!!」

狩人「うおおおおおっ!!」

     ザシュッ ザシュッ!

狩人「いい加減にくたばれっ!」

     ……バチッ

狩人「っ!! やば――」

     バチバチバチバチッ!!

狩人「hgだllgjどhjfhvjぐdrでッ――!!」

狩人(…………) ドサッ…

狩人(終わった……たぶんフルフルは、こっちに向かってタックルしてくる)

狩人(これで……3乙、か……)

狩人(…………)


狩人(…………)

狩人(……あれ?)

     アオオッ… アオオッ…

     バサッ  バサッバサッバサッ…

狩人(……!)

狩人(逃げていく……)

狩人「……くっ」 ヨロッ…

狩人「…………」

狩人(……とりあえず助かったけど、どうする?)

狩人(何とか追い詰めたが、回復薬を使い切ってしまった)

狩人(なのにこっちはボロボロ……)

狩人(…………)


狩人「!」

狩人「そうだ!」

狩人「無いのなら、作ればいいんだ!」

―――――――――――

狩人「あった!」

狩人「普段、採取クエしまくってるから、薬草もアオキノコの場所も」

狩人「よく知っている」

狩人「……こんな形で役に立つなんてな」

―――――――――――

狩人「よし、完全回復!」

狩人「あとは……」


     グオオオ… グオオオ…

狩人「…………」

狩人(寝込みを襲う形で悪いが)

狩人(決着を付けさせてもらうぜ……!)

狩人「……はああああああああっ!!」

     ザシュ ザシュ ザシュッ!

     ギエエエエエエエエエエエエッ!!

狩人「うおおおおおおおおおおおおっ!!」

     ザシュッ! ザシュ! ザシュ!

     ズズンッ…

狩人「はあっはあっ……!」

狩人(ここで反撃してくるっ!) サッ(防御姿勢)


     …………

狩人「…………」

狩人「…………」

狩人「…………あれ?」

狩人「…………」

狩人「…………」

狩人「…………」 …ツンツン

狩人「…っ!」 ササッ!(防御姿勢)

狩人「…………」

狩人「…………」

狩人「……動かないな」

狩人「死んだふりか?」


狩人「…………」

狩人「……いや」

狩人「そうじゃない」

狩人「…………」

狩人「…………」

狩人「……倒した?」

狩人「俺が……しかも片手剣で……」

狩人「フルフルを……倒した」

狩人「…………」

狩人「…………」


※ここでP2G勝利BGMを流すといいかもです。










     【 目的を達成しました 】









狩人「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

狩人「ざまああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」

狩人「みろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」


狩人「はあっ……はあっ……はあっ……」

狩人「はあ……はあ……」

狩人「…………」

狩人「……うう……うっ……ああああっ……」

狩人「倒した……倒したんだ…!………うあっ……」

狩人「この俺が……うくっ……ダメとか……ハズレとか……言われてた、俺がっ!」

狩人「ひぐっ……くっ……ぐうっ……ひぎっ……」

狩人「よがっだ……うううっ……よがっだぁ……あがっ……」

狩人「たおっ……倒したんだぁ……えぐっ……えぐっ……」

狩人「うああっ……ひぐっ……うぐっ……うああっ……」

狩人「いひひっ……ぐっ……ぐくっ……はっ……」




     俺は……この日の事を

     一生忘れないだろう。



     この日の喜びを

     達成感を

     涙の味を









     ……浮かれて剥ぎ取り忘たけど。



―――――――――――


その日の夕方

村長宅前


村長「おめでとう、狩人」

狩人「あはは……ま、かろうじて、ですけどね」

村長「それでも成功は成功さ」

村長「よく頑張ったね。 今日はゆっくり休むといい」

狩人「ええ、そのつもりです」

女「狩人」

狩人「女」

女「……結局、片手剣で行ったのね」

狩人「……ああ」


女「ロートルさんの意見を聞いていれば」

女「そんなにボロボロにならずに済んだだろうに」 クスッ

狩人「いいだろ、別に」 クスッ

狩人「俺には俺のやり方があるんだよ」

ロートル「……そうか」

ロートル「それは余計な事を言ったな」

狩人「! ……ロートルさん」

狩人「すみません、せっかくの意見を無視して」

ロートル「気にするな」

ロートル「お前さんの言う通り、それぞれのやり方ってのがある」


ロートル「どれが正解か、なんてのは」

ロートル「クエを達成できるか、できないか、というシンプルな物かもしれん」

狩人「…………」

ロートル「ともかく、フルフル討伐成功おめでとう」

狩人「ありがとうございます」

ロートル「……それでな」

ロートル「疲れているところ悪いんだが……頼みたい事がある」

狩人「はい?」

ロートル「これから……君と少女の前任者」

ロートル「この村のハンターだった奴の見送りをするのだが」

ロートル「ぜひ、君も彼を見送りに来て欲しい」


狩人「はあ……それはいいですけど」

狩人「着替えてから……」

ロートル「あいつも元ハンターだ」

ロートル「そんな事は気にしないだろう」

狩人「…………」

狩人「じゃあ、すぐ行きます」

ロートル「女ちゃん、悪いけど」

ロートル「少女を呼んできてくれないか?」

女「え?」

女「あ、はい。 いいですよ」

ロートル「すまないな。 頼む」



―――――――――――


ふもと村 入り口付近


ロートル「待たせたな」

玄人「いや、そうでもない」

狩人「…………」

少女「…………」

玄人「……君たちが新しいハンターか。 若いな」

ロートル「だが二人共、有望株だと俺は思う」

玄人「そうか……ロートルがそう言うのなら、安心だ」

狩人(……有望、ねぇ) ハハハ…

少女(…………)


玄人「……君の防具、その焦げ跡」

玄人「フルフルか?」

狩人「さすがですね……その通りです」

狩人「何とか倒せました」

玄人「そうか」

玄人「…………」

玄人「見ての通り、俺は右腕を失った」

玄人「今の俺の姿は……未来の君達の姿かもしれない」

狩人「…………」

少女「…………」

玄人「そうならないよう……ひとつだけ忠告したくてな」


狩人「忠告……ですか」

玄人「ああ……」

玄人「…………」

玄人「狩りの最中に飯の話をし出したら、危ない、と思え」

狩人「…………は?」

少女「…………?」

ロートル「…………」

玄人「いいか? 狩りの最中に飯の話をするんじゃない」

玄人「さもないと……俺の様になる」

狩人「……何だかよくわかりませんけど」

狩人「心がけます」

少女「……同じく」


玄人「そうか」

玄人「これで……俺の言いたい事は終わりだ」

玄人「わざわざ来てくれてありがとう」

狩人「いえ……」

少女「…………」

玄人「ロートル、ソロ」

玄人「この村を頼む」

ロートル「ああ。 故郷でも達者でな」

玄人「時間はかかるだろうが……嫁さんと子供を食わすくらい何とかするさ」

玄人「じゃ……元気で」

ロートル「ああ……」

ソロ「……また会おう」




     『狩りの最中に飯の話をするな』




     その言葉の本当の意味を知るのは

     少し先の事だったけど……

     去って行く、引退ハンターの後ろ姿は

     俺の心にとても印象強く残った。



というところで、今日はここまでです。
今回は、狩人のこだわりみたいに書きましたけど
モンハンやってると、使い慣れた武器で出会った強敵に勝ちたいな……
と思う、プレイヤー心理を少しでも表現できたらな、と思って書きました。
みなさんも経験ありませんか? 思い入れのある武器で倒したい、と思った事。
では、また。



―――――――――――


数日後の朝

ふもと村 集会所


流れハンター「……え? ソロが帰ってきているのか?」

色黒ハンター「ああ」

色黒ハンター「何日か前、長期遠征から戻ったらしい」

流れハンター「ソロ……どんなクエも常に一人で片付けるプロフェッショナル……」

色黒ハンター「大剣使いは多いが……」

色黒ハンター「あいつほど使える奴は数えるくらいしか居ないだろう、という話だ」

流れハンター「!」

流れハンター「おい……噂をすれば」

色黒ハンター「ああ……」


     ソロダ……   アイツガ……

     ザワ…… ザワ……

ソロ「…………」

ソロ「このイャンクックのクエを頼む」

受付嬢「はい。 かしこまりました」


流れハンター「……イャンクックか」

色黒ハンター「たぶん、軽い調整なんだろうよ」

流れハンター「ああ、たぶんな」

流れハンター「噂じゃシェンガオレンを初見で倒した、ってのがあるし」

色黒ハンター「マジかよ!? 俺、あれを初めて見たときは足がすくんだぜ……」



―――――――――――


雪山


狩人「……はああああああっ!!」

     ブウウウンッ!! ザクゥッ!

     ギエエエエエエエエッ……

狩人「よし、ここで……タメ3!」

狩人「……はあっ!!」

     ドガァッ!!

     アオオオッ…

狩人「…………」

狩人「……もう足を引きずり出した」

狩人「…………」


狩人(……俺が初めてフルフルを倒してから半月が過ぎた)

狩人(それから俺は、3度目になるフルフル討伐を行っている)

狩人(フルフルは繁殖力が強く、一度出現すると、度々出る様になるらしい)

狩人(こうなると、出なくなるまでかなり時間が掛かるそうなのだが)

狩人(フルフル素材目当てのハンターや商人が集まり、ふもと村は活気が溢れている)

狩人(女は、フルフルバブル到来と言っていた)

狩人(…………)

狩人(……何となく釈然としないが)

狩人(俺としても武器や防具の素材が欲しいわけで、今現在、絶賛討伐中なのである)

狩人(…………)


狩人(そして)

狩人(俺の方も意識改革を始めた)

狩人(最初は、扱いづらかった大剣だったが……)

狩人(ロートルさんにコツを教えてもらってからは、いい感じである)

狩人(大剣は出したら仕舞う、出したら仕舞う、の繰り返し……)

狩人(出しっぱなしの時に感じていた移動の遅さは、これでだいぶ解消できた)

狩人(…………)

狩人(……これから先、モンスター素材で作れる武器や防具は)

狩人(どうあがいても出現する時期や数で制限される)

狩人(上を目指すのなら、様々な武器を使いこなせた方が都合がいい)

狩人(…………)

狩人(……グウの根も出ないほど正論だ)

狩人(この前のことも……)

狩人(…………)



―――――――――――


その日の昼頃

ふもと村 村長宅前


村長「もうフルフルを討伐したのかい!?」

狩人「ええ」

狩人「試しにロートルさんの言う通りにしてみたら」

狩人「あっさり狩れました」

村長「ほう……」

村長「でも、嬉しそうじゃないね?」

狩人「…………」


狩人「……何ていうか」

狩人「意地張って片手剣で頑張ってやり遂げたのに」

狩人「同じ相手が、別の方法でこんなにあっさり狩れる様になると……」

狩人「あの時の苦労は何だったんだ?という気持ちになってしまって……」

村長「ふむ……」

狩人「ああ、すみません、村長さん」

狩人「愚痴ってしまって……」

村長「いや……そんな事はないよ」

村長「でもね、狩人」

狩人「はい?」

村長「私はハンターじゃないから、違うかもしれないけど……」

村長「間違いも経験の内だと思うんだ」


狩人「間違いも経験の内……」

村長「うん」

村長「言いたくはないけどね……私だっていろんな間違いをやったものだよ」

村長「そのせいで、いろんな人たちに迷惑をかけたものだ」

狩人「村長さんが?」

村長「ああ……」

村長「だけど、その経験があるおかげで」

村長「今の私があり、村長としてやっても行けていると思う」

狩人「…………」

村長「あの時の間違い経験が、思わぬ形で役に立ったりするしな」

村長「無駄かどうかなんて、最後までわからないよ」

狩人「村長さん……」


村長「ははは……ちょっとらしくない話をしてしまったね」

村長「ともかく、フルフル討伐ご苦労様」

村長「旨いものでも食べて、ゆっくり休むといい」

狩人「はい。 そうします」


―――――――――――


少女の家


少女「じゃ、今日からお願いね」

コックアイルー「ガッテン承知だニャ!」

コックアイルー「ご主人様の身の回りのお世話を精一杯させてもらうニャ!」

少女「頼りにしてるわ」


少女「ふう……」

少女(ようやく、キッチンアイルーを雇える様になった)

少女(これで家の事は安心ね)

少女(…………)

―――――――――――

   ギャオオオオオッ!!

       オトウサンッ
            オカアサンッ

  早ク逃ゲルンダッ   船ヲ出セッ

      ギャアアアア……

―――――――――――

少女(っ!) ビクンッ!


少女(…………)

少女(……もう逃げない)

少女(私は立ち向かう)

少女(その為にハンターになったのだから)

少女(…………)

少女「……ふう」

少女(…………)

少女「気分転換でもするか……」

少女「う~ん……」

少女「…………」

少女「……集会所でご飯でも食べよう」


広場


少女「……あ」

狩人「……おっ、少女」

少女「…………」

狩人「…………」

少女「……武器」

少女「変えたんだ」

狩人「え? あ、ああ」

狩人「慣れるまでちょっとかかったけどね」

少女(……ちょっと、か)

少女「そう」


少女「フルフル、だいぶ狩れるようになったんだね」

狩人「お陰様でね」

狩人「防具の方も何とかなりそうだよ」

少女「そう」

少女「私、これから集会所でご飯食べようと思ってるんだけど……」

少女「良かったら一緒に行く?」

狩人「……いや、自分の家で食べるつもりだから」

少女「そう……じゃ、また」

狩人「ああ、まt」

ロートル「……いかんな、狩人」

狩人「!?」

少女「ロートルさん」


ロートル「レディからのせっかくのお誘いだ。 受けておけ」

狩人「い、いや、でも……」

ロートル「何だ? お前、女の子と付き合った事が無いのか?」

狩人「べ、別に、そういう訳ではっ」///

ロートル「なら、問題ないだろう?」

ロートル「メシってのは、大勢で囲んでワイワイ言って食うから、美味いんだ」

ロートル「おまけに可愛い女の子を見ながらだ」

ロートル「格別だろうぜ!」

少女「……味は変わらないと思いますけど」

ロートル「いいじゃないか、気分だよ、気分!」

ロートル「ふもと村、村付きハンターの交流会も兼ねて、昼飯と行こう!」


集会所


     ガヤ ガヤ…

ロートル「本当はソロの奴も呼びたかったんだけどな」

ロートル「あいつ、今日に限ってクック狩りなんぞに行きやがった」

狩人「……はあ」

少女「今の時期に?」

少女「森丘はシーズンが終わってるから……密林あたりですか?」

ロートル「おう、正解だ」

ロートル「繁殖期が済んで、はぐれたのが毎年何頭か密林に現れるんだが」

ロートル「今年は多いと聞いている」

少女「…………」

狩人「詳しいんだな、少女」


少女「このくらいの事、ハンターなら常識よ」

少女「狩人も講義を受けたでしょ?」

狩人「……あーいうの苦手なんだよ」

ロートル「という事は、寝てた口か?」

狩人「……黙秘します」

ロートル「ははは! 気にするな」

ロートル「ハンターは、そういう奴も多い」

狩人「そうですか……」

少女「それよりもレイアとレウスの方が気になります」

少女「そろそろのはずですが、観測所ではまだ確認されていなと……」

ロートル「……ふむ」


ロートル「ところで……興味本位で聞くが」

ロートル「お前さん達は、どうしてハンターになった?」

少女「!」

狩人「俺は……以前からハンターに憧れてまして」

狩人「ラオシャンロンを倒したハンター達の凱旋を見て」

狩人「あんな風になれたらなぁ……と」///

ロートル「ほう……」

狩人「現実は厳しいですけどね……」 ハア…

ロートル「ははは。 いや……笑うのは失礼だな」

ロートル「頑張って夢を叶えればいい」

狩人「ははは……」///

ロートル「で? 少女は?」

少女「…………」


少女「……別に話すほどの事では無いです」

少女「ハンターになれば、いい稼ぎになりますし」

ロートル「そうか……俺と同じだな」

狩人「同じ?」

ロートル「俗に言う『でもしかハンター』なんだよ、俺は」

少女「…………」

狩人「でもしかハンター?」

ロートル「ハンター『しか』できない。ハンターに『でも』なるか」

ロートル「そんな最後の選択として、ハンターになった人間なんだよ、俺は」

狩人「え……」

ロートル「大した学もない。才能もない」

ロートル「大きな声じゃ言えないが、ハンター試験だってギリギリで受かった」


狩人「そ、そうなんですか?」

ロートル「ああ、そうだとも」

ロートル「俺は大剣とか重量武器が苦手でな」

ロートル「当時、ハンターが不足していた事もあって、お情けで合格させてもらったんだよ」

少女「…………」

狩人「へぇ……なんか意外ですね」

ロートル「そうか? まあ俺みたいな食いつめでハンターになる奴は結構いる」

ロートル「逆に、俺と同じ境遇でハンターになれない奴も大勢見てきた……」

ロートル「そういう連中は、モンスターと命懸けで戦う俺たちの苦労を知らないが」

ロートル「羨ましい、とか思ってるのかね……」

狩人「…………」

少女「…………」


ロートル「おっと、つまらん話になったな」

ロートル「年を取ると、どうも説教臭くなっていかん」

狩人「いえ……」

ロートル「じゃあ、話を変えるが」

ロートル「お前さん達、浮いた話をまったく聞かないけど」

ロートル「いい相手の一人や2人、居ないのか?」

少女「……流れ者のハンターとか言い寄って来て困っています」

ロートル「ははは! まあ、少女は可愛いからな」

ロートル「狩人、お前はどうなんだ?」

ロートル「ストアの女ちゃんと仲がいいって聞いてるぞ?」

狩人「……時々差し入れをしてくれるだけですよ」

狩人「何となくですけど、向こうは出来の悪い弟か何かだと思ってるんじゃないかなぁ……」


ロートル「おいおい、二人共あっさりしてるなぁ」

ロートル「たまには一夜の花でも咲かせて、憂さ晴らしした方がいいと思うぞ?」

少女「何焚きつけてるんですか?」

少女「うかつな事をしてハンター業引退とか、シャレにならないですよ」

狩人「…………」

狩人(一夜の花を咲かせるって、どういう意味??)

ロートル「別に引退まで考える事は無いだろう?」

ロートル「結婚して家族を持ったハンターも大勢いる」

少女「女性は出産で、体の耐久力が著しく衰え」

少女「復帰するまでに相当な時間を必要とします」

少女「そのまま引退の道を選択する女性ハンターが、大勢を占めていますが?」

ロートル「う……」


狩人(すげぇ……ロートルさんが言いくるめられている)

ロートル「ははは……こりゃまいったね」

ロートル「どうやら少女は、ハンターにただならぬ思い入れがあるみたいだな」

少女「一般論を言っただけです」

狩人「そ、そういえば」

狩人「さっき話に出た、レイアとレウスってモンスター」

狩人「ロートルさんは、どんな風に狩っているんですか?」

ロートル「お! それを聞いてくるか」

ロートル「もちろん話してやるぞ」

ロートル「俺が最初に奴らと出会ったのは……」



―――――――――――


広場


少女「それじゃ、ここで……」

ロートル「ああ、楽しかったぞ」

狩人「ありがとう」

     スタ スタ スタ…

ロートル「…………」

狩人「…………」

狩人「じゃ、俺もここで……」

ロートル「狩人」

狩人「はい?」

ロートル「これで、多少は集会所に行きやすくなったか?」

狩人「!」


狩人「…………」

狩人「……ええ、まあ多少は」

ロートル「そうか」

ロートル「採取クエは、集会所の方が割がいい」

ロートル「支給品も4人分手に入るしな。 いい小遣い稼ぎになる」

狩人「……え?」

狩人「あれって持って帰ってもいいんですか?」

ロートル「応急薬とか、支給専用の物はダメだが」

ロートル「それ以外は自由だ」

ロートル「新米の内はホットドリンクとか作り辛いし、ギルドのささやかな贈り物だろう」

狩人「知らなかった……俺、余ったものはあの箱に戻していましたよ」

ロートル「……今時珍しいくらい律儀な奴だな」

     ハハハ…



―――――――――――


狩人の家


狩人「ふう……」

狩人「集会所の採取クエか……」

狩人「…………」

狩人(よし)

狩人(雪山にもだいぶ慣れたし、そろそろ他の地域にも行ってみたい)

狩人(採取クエは、下見も兼ねられるから、お得でもある)

狩人(……ひとりで行くのなら、受領するとき我慢すればいいだけ)

狩人(フルフル防具ができたら、さっそく行ってみよう)



―――――――――――


数日後の朝

ふもと村 集会所


少女「……あ」

少女「狩人……」

狩人「おはよう、少女」

少女「おはよう」

少女「フルフル防具、もう完成したんだ」

狩人「思ったより早く出来たよ」

少女(……羨ましい)


少女「何を狩りに行くの?」

狩人「いや……密林ってところのキノコ集めに行くつもり」

少女「そう」

狩人「少女は?」

少女「解禁になったリオレイアを狩りに行くわ」

狩人「そっか。 俺が言うのもなんだけど……」

狩人「頑張ってくれ」

少女「大丈夫よ」

少女「何人かでやるから」

狩人「なら……心配ないか」

少女「ええ」

狩人「…………」


狩人「なあ、少女」

少女「何?」

狩人「いつか……モンスターは何でもいいけど」

狩人「一緒に狩猟クエ、行かないか?」

少女「…………」

少女「そうね……いつか、ね」

狩人「ああ……いつか、でいい。 でも約束だ」

狩人「迷惑かけないよう、それまでに腕を上げておく」

狩人「じゃ!」

     タッ タッ タッ…

少女「…………」





     その日……

     周りの視線やヒソヒソ話が、多少気になったけど



     俺は、堂々と胸を張って、集会所の採取クエを受注した。




というところで、今日はここまでです。



―――――――――――


数日後の夕方

ふもと村 集会所


     ガヤ ガヤ

狩人「え? 雪山が入山規制?」

受付嬢「はい」

受付嬢「現在、雪山には非常に強いフルフルの個体が確認され」

受付嬢「ギルド観測所はこの個体を『G級』と認定」

受付嬢「このG級個体を討伐するまで、入山を規制しております」

狩人「G級かぁ……」


狩人「…………」

狩人(G級……)

狩人(通常は古龍とか呼ばれる、来ただけで村や町が崩壊する様な)

狩人(天災に近いダメージをもたらすモンスターの事を指すが)

狩人(モンスターも経験を積み、非常に厄介な存在になる事がある)

狩人(そういうモンスターは異様に大きかったり)

狩人(通常のものより動きが素早かったり、未知の行動を取るものが多い)

狩人(そいうものが現れた場合、俺みたいなHRの低いハンターは戦うこともできない)

狩人(そういった犠牲を減らすため、時たまこういう規制が行われるのだ)

狩人「……そうですか」

狩人「解除には、どのくらいかかりそうですか?」

受付嬢「早ければ一週間、という所でしょうか……」


狩人「分かりました」

受付嬢「はい」

ロートル「お、狩人」

ロートル「帰ってきてたのか」

狩人「ロートルさん」

ロートル「G級規制の事は聞いたか?」

狩人「G級規制?」

ロートル「G級個体出現による進入規制の略称だよ」

狩人「ああ……はい、たった今聞きました」

ロートル「今回のフルフルを生み出してるのはおそらくそいつだろうな」

狩人「という事は、ツガイで居るんですか?」


ロートル「フルフルは雌雄同体と言われてる」

ロートル「詳しくは知らんが、一匹で増える事ができるそうだ」

狩人「そうなんですか……」

ロートル「それくらいは不勉強な俺でも知っている事だが……まあいい」

ロートル「晩飯は済ませたか?」

狩人「まだです」

ロートル「なら、俺と食わないか?」

狩人「ええ、いいですよ」

ロートル「よし、決まりだ」

ソロ「…………」

狩人「……こちらのハンターは?」

ロートル「俺たちと同じ、このふもと村の村つきハンターのソロだよ」


ソロ「……よろしく」

狩人「ああ、はい。 よろしくお願いします」

ロートル「ま、堅苦しい挨拶はその辺りでいい」

ロートル「俺の家に行くぞ」

狩人「え? ここで食べないんですか?」

ロートル「不服か?」

狩人「い、いえ……」

ロートル「ははは! 安心しろ!」

ロートル「俺が料理を作るわけじゃないから」

ロートル「さ、行くぞ」


ロートルの家


台所アイルー「お待たせしましたニャ、旦那さん」

ロートル「おう」

     ゴトッ

狩人「」

ソロ「…………」

ロートル「ほら、どんどん食え。 遠慮はいらんぞ?」

ソロ「……いただきます」

狩人「す、すごい量ですね……」

狩人「あ……いただきます」

ロートル「ははは!」

     ムシャ ムシャ

ロートル「うん、美味いな! 上出来だ!」


ロートル「どうだ? お気に召したか?」

ソロ「……ああ、美味い」

狩人「ええ、とっても美味しいです」

狩人「……ところで」

ロートル「ん?」

狩人「あのアイルー、雇っているんですか?」

ロートル「ああ、そうだが?」

ロートル「村長から話を聞いていないのか?」

狩人「話?」

ロートル「……そうか」

ロートル(村長の奴……狩人がアイルーを雇えるほど稼ぐとは、思っていないという事か)


ロートル「まあ、いずれ話してくれると思うが」

ロートル「アイルーにもギルドがあってな」

狩人「はい」

ロートル「さっきの台所アイルーみたいなのを仲介してくれる」

ロートル「通称ネコ婆さんってのを紹介してくれるんだ」

狩人「そうなんですか」

ロートル「毎月の給金はいるが、かなり役に立ってくれるぞ」

ロートル「掃除、洗濯、炊事、薪割りから風呂焚きまで」

ロートル「ありとあらゆる雑用をしてくれる」

狩人「それはいいですね……羨ましい」

ロートル「ははは! まあな」

ロートル「それと……おーい、ゴゴマル!」


     ヒョコ

ゴゴマル「何ですかニャ? 旦那?」

ロートル「すまんが、ちょっとこっちに来てくれ」

ゴゴマル「はいニャ!」

     トテテテテ

ロートル「こいつはオトモアイルーといって」

ロートル「クエストに付いて来てくれるアイルーだ」

狩人「ええー!?」

ロートル「村で扱ってるクエは単独行動だから、こいつの存在はでかいぞ?」

ロートル「頼りになる相棒だ!」

ゴゴマル「ニャハハ……テレますニャ、旦那!」///

ロートル「ははは!」


ロートル「ゴゴマル、もう行っていいぞ」

ゴゴマル「はいニャ!」

     トテテテテ…

狩人「…………」

ロートル「……ま、ここだけの話」

ロートル「使える様になるまでが、大変なんだけどな……」

狩人「は、はは……」

ソロ「…………」

ロートル「おい、ソロ」

ロートル「お前も何か話せよ」

ソロ「……いや、俺は……別に」

ロートル「狩人に親近感湧いてんだろ? ソロ!」 クヒヒ!


ソロ「ロ、ロートル!!」///

狩人「へ?」

ロートル「どうした、ソロ?」 ニヤニヤ

ソロ「その話はするなと言っただろう!?」

ソロ「わざわざ恥をかきに来た訳じゃないんだぞ、俺は!!」

狩人(……意外と喋る人なんだな)

ロートル「まあまあ、落ち着け、ソロ」

ロートル「そう言うと思ったから、俺の家にしたんだよ」

ロートル「お前だって同じ村付きのハンターとは、仲良くしたいだろう?」

ソロ「……別に……俺は……」


ロートル「一人でクエに出るの辛くて、オトモアイルーの方を先に選んだくらい」

ロートル「寂しがり屋なんだから、狩人くらいには素直にな」

ソロ「ロ―――トルッッッ!!!」///

ロートル「ははは!」

狩人「…………」 唖然…

ロートル「おっと。 完全に置いてけぼりだよな」

ロートル「まあ……簡単に言うと、だ」

狩人「はあ……」

ロートル「ソロもお前と同じく……最初は失敗ばかりで」

ロートル「ハズレだのダメハンターだの言われていたんだよ」

狩人「え」

狩人「ええー!?」

ソロ「…………」///


ロートル「今でこそ『大剣のソロ』とか『孤高のスレイヤー』とか」

ロートル「ご大層な二つ名で呼ばれたりしているが」

ロートル「真相はいろいろ言われるのが嫌で」

ロートル「集会所でも常に一人でクエをこなしていたら」

ロートル「いつの間にかそう呼ばれる様になったってだけなんだよ!」

狩人「そ、そうなんですか……」

ソロ「…………」///

ロートル「……ま」

ロートル「さすがにそれを見かねて、俺もある日」

ロートル「ソロに声をかけ、何とか集会所クエに同行したんだが」

ロートル「まあ……酷かったな」

ソロ「…………」


狩人「酷い?」

ロートル「常に遠慮して、おどおどしてて……」

ロートル「モンスターじゃなく、俺にビビっていた」

ソロ「…………」

ロートル「そんな態度に俺も最初、辟易していたが」

ロートル「モンスターと対峙する当時のソロの動きは、今の俺から見ても」

ロートル「一流の動きだと思う」

狩人「そうなんですか……」

ソロ「…………」

ロートル「…………」

ロートル「俺は、な」

ロートル「嫉妬したよ」


狩人「……え?」

ロートル「確かに俺は長い間、この仕事を続けてきたが」

ロートル「ハンターとしては二流だ」

ロートル「いや、本当はもっと下かもしれん」

ソロ「……そんな事はない」

狩人「……ロートルさんが二流以下なら、俺はどうなるんですか」

ロートル「ははは!」

ロートル「……話がそれたが」

ロートル「要は、今の噂をそんなに気にするなって事と」

ロートル「いつか、ソロの奴と一緒にクエに出てやってくれって」

ロートル「言いたいだけなのさ」


狩人「お、俺が……ですか?」

ソロ「…………」

ロートル「まあHRとか腕の差は、今はいかんともしがたいだろう」

ロートル「けど、将来ずっと単独行動するのは……命がいくつあっても足りなくなる」

ソロ「…………」

狩人「…………」

ロートル「お前たちは、出だしでつまづいた同士」

ロートル「そういう意味では気後れすることは少ないし、気兼ねもしないで済む」

ロートル「今すぐ、とは言わないが……」

ロートル「できれば最低限二人でクエに挑む様になって欲しい」

ロートル「長年……この仕事を続けてきた経験者の答えとして、な」

ソロ「ロートル……」

狩人「ロートルさん……」


ロートル「ま、最初の一歩として今日の飯を計画したわけだが」

ロートル「どうだ? お互いの第一印象は?」

ソロ「……言えるか」

狩人「……気後れするなってのが、そもそも無理ですよ」

ロートル「だろうな! ははは!」

ソロ(……だんだん腹が立ってきた)

狩人(……人生楽しそうだな)

ロートル「んじゃ、交流第二弾として」

ロートル「女の子の話でもするか!」

ソロ「……帰る」

狩人「気持ちは分かりますけど! 俺一人にしないでください!」

ロートル「ははは!」




     この後もロートルさんのペースで食事会は進み

     終始、ソロさんは怒鳴っていた。



     ……でも

     ソロさんには悪いけど

     俺はちょっと嬉しかった。

     自分みたいな奴が他にも居るんだと

     そんな人も凄腕ハンターになれるんだと、わかって……

     ただ、嬉しかった。





―――――――――――


半月後の午前中

ふもと村 集会所


狩人「…………」

狩人(さて、ドスランポスやドスゲネポス、ドスガレオスも)

狩人(三乙を何度かしてしまったが、問題なく倒せる様にはなった)

狩人(……依頼主さんの突き刺さる様な視線は痛かったけど)

狩人(…………)

狩人(やはり、誰かとクエに出た方が失敗は少ないんだろうな)

狩人(…………)

狩人(とは言っても、俺と組んでくれるハンターが居るだろうか……)


狩人(……ん?)


DQNハンター「へー! 少女って名前なんだ!」

DQNハンター「いい名前だな!」

少女「どうも」

アフロ「レイア狩りのコツなら、俺たちが教えてやるぜ?」

少女「いりません」

アフロ「硬いこと言うなよ、少女ちゃん」


狩人(…………)

狩人(……なんか、変なのに絡まれてるみたいだな)

狩人(助け舟……出したほうがいいか?)


少女「!」

狩人(あ……こっちに気がついた?)

少女「狩人!」

狩人「え? あ、ああ、少女、お待たせ」

少女「ごめんなさい、私、狩人とクエに行く約束してたんで!」

DQNハンター「はああ!?」

DQNハンター「そりゃねーんじゃねーの? 少女ちゃん!」

アフロ「そうだぜ!」

アフロ「それにそいつ……確かふもと村のハズレハンターだろ!?」

アフロ「そんな奴と一緒に行ってもつまんねーって!」

狩人「…………」

少女「あいにくと」


少女「私は狩りをつまるか、つまらないかで、やっているわけじゃないわ」

少女「他を当たって」

DQNハンター「はああああああ!??」

DQNハンター「何それ。 ちょっとカチンと来るんですけどぉ~!?」

アフロ「まあまあ……落ち着けよDQNハンター」

アフロ「いいから、とりあえずあいつ込みで、クエに参加しようぜ?」

アフロ「少女ちゃんもあいつのヘタレっぷりを見たら、俺たちの魅力にメロメロさ♪」

DQNハンター「……ま、俺らの実力なら行けるか」

DQNハンター「ど-よ? ヘタレハンター」

DQNハンター「俺らついて行っても問題ねーだろ?」

少女「……断って、狩人」

狩人「…………」


DQNハンター「何黙ってんだよ?」

DQNハンター「あー、あれか」

DQNハンター「やっぱクエの約束とか、ウソだったわけ?」

アフロ「少女ちゃん、それは俺ら傷つくわ~」

少女「くっ……」

狩人「……えと」

狩人「受付嬢さん、このクエ、お願いします」

受付嬢「はい、分かりました」

DQNハンター「…………」

アフロ「…………」

少女「ちょ、ちょっと……!」




     闇間のイャンクック?

     場所:密林

     時間:昼

     内容

     はぐれたイャンクックが、また出やがった!

     今年はやけに多いぜ!

     暗がりだったけど、ちょいと大きい奴だった。

     ハンターさん、ちゃっちゃっとやっつけてくれ!




DQNハンター「んだぁ? クックかよ」

アフロ「うわっ! ショボ!」

狩人「ははは、俺、まだイャンクック狩ったことがないので」

狩人「少女にいろいろ教えてもらう、という約束をしてたんです」

DQNハンター「素人かよ……」

狩人「ヘタレなんで」

狩人「こんなクエですが、来てくれますか?」

DQNハンター「…………」

アフロ「…………」

少女(……なるほど、考えたわね)


少女(ここから密林まで約往復一週間)

少女(ただのナンパで、しかもクック狩りなんていう低ランクの標的に付き合うのは)

少女(割に合わないわ)

少女(これならさすがに断る……)

DQNハンター「……ああ、いいぜ」

アフロ「なっ!? マジかよ!?」

狩人「」

少女「」

アフロ(正気かよ、DQNハンター!)

アフロ(確かに少女ちゃん可愛いけど、割に合わねーって!)

DQNハンター(うっせ! ここまでコケにされて引き下がれるか!)

DQNハンター(意地でもあの女の子、モノにする!!)

アフロ(マジかよ……)


少女「…………」

狩人「…………」

少女(……いいの?)

狩人(……もうここまで来たら、乗りかかった船だ)

狩人(クック狩っていないのも事実だし、いい勉強になると思ってやるよ)

少女(そう……)

少女(……ごめんなさい、巻き込んでしまって)

狩人(ははは……いいって)

少女(…………)


狩人(……どうやら俺は)

狩人(最初につまづく運命にあるみたいだな……はあ……)





     ……まあ、ともあれ

     一応誰かとクエに行くことになったんだ。

     それなりに喜ぼう。 うん。



     はあ……






※注 それぞれの装備

DQNハンター(HR 3)

武器:双剣
防具:レウス装備一式

アフロ(HR 3)

武器:ハンマー
防具:レウス装備一式

狩人(HR 2)

武器:大剣
防具:フルフル装備一式

少女(HR 3)

武器:片手剣
防具:ザザミ装備一式




―――――――――――


数日後の午前中

密林のBC(ベースキャンプ)


     ザアアアア……

狩人「うへぇ……土砂降りだな……」

DQNハンター「このくらいの雨で何言ってんだ?」

アフロ「ヘタレハンターの噂は、伊達じゃねーって事だろ」

     アッハッハッ……

少女「……私たちは」

少女「誰が上でも下でもない、クエのモンスターを狩るという」

少女「共通の目的を持っているハンター同士よ」

少女「今からそんな風に和を乱すのは、良くないと思うわ」


DQNハンター「……へいへい」

アフロ「か、軽いジョークさ」

少女「軽い、ね……」

狩人「いいさ、少女。 俺は気にしてない」

狩人「俺にとっては初めてのモンスターだから緊張もしている」

狩人「ヘタレってのもあながち間違いじゃない」

少女「…………」

少女「そう」

DQNハンター「んじゃ、さっさと片付けに行こうぜ」

アフロ「ヘタレの出番は、無いと思うな!」



―――――――――――


     ザアアアア……

少女「……雨、弱くならないわね」

狩人「え? 何か言ったか?」

少女「雨が弱くならないって、言ったの」

狩人「ああ、確かにな」

狩人「おまけに木々が邪魔で、あたりの様子も見えにくいし……」

DQNハンター「これだから素人は困るんだ」

DQNハンター「いいか? 教えといてやるが」

DQNハンター「クックみたいに火を吹く奴らの火炎攻撃は、結構きついが」

DQNハンター「こういう雨の中じゃ威力が半減するんだ」


アフロ「そうそう」

アフロ「だからむしろ、こういう天候は大歓迎なんだよ!」

狩人「な、なるほど……」

少女(…………)

少女(……確かにそれは合っているわ)

少女(でも、こんな見通しのきかない場所で、さらに雨雲のせいで暗く、見えにくくなるのは)

少女(やっぱり歓迎できない)

少女(……何事もなければいいけど)

狩人(…………)

DQNハンター「ちっ……にしても見つからねーなぁ」

DQNハンター「どこに居んだよ……」

アフロ「早く狩って帰って、美味い飯、食いてーな……」


DQNハンター「ああ、そうだな」

DQNハンター「モスのバラ肉煮込みにビールでかっこみたい!」

アフロ「いいねぇ」

アフロ「俺はカニだな!」

アフロ「ザザミソの熱々スープにフラヒヤ麦飯!」

DQNハンター「美味そうだな!」

     ギャハハ……

少女「…………」

狩人「……おい、まだ狩りの最中なんだぞ?」

狩人「そんな話をしてる場合じゃ無いだろ?」


DQNハンター「ああん? 軽い常識も知らねード新人が何指図してんだぁ?」

アフロ「飯の話くらい、別にかまわねーだろ」

狩人「…………」

少女「…………」


     『狩りの最中に飯の話をするな』


狩人「…………」

少女「…………」

狩人「……少女」

少女「……うん」

狩人「大丈夫……だよな?」

少女「たぶん……クックだし」

狩人「…………」



―――――――――――


     ザアアアア……

DQNハンター「おっ?」

DQNハンター「あれじゃね?」

     ドスッ… ドスッ… ドスッ…

アフロ「のんきに歩いてやがるな……」

アフロ「でも確かにちょっと大きい感じだ」

狩人「少女?」

少女「ええ、シルエットからイャンクックに思える」

少女「けど……」

狩人「けど?」


少女「…………」

少女「……ごめん、うまく言えない」

少女「何か、違和感があるんだけど……何かしら?」

狩人「…………」

狩人「よし、ともかくペイントボールを……」 ゴソゴソ…

DQNハンター「必要ねぇよ」

DQNハンター「クックくらい、俺の双剣でナマス切りにしてやらァ!」

     ダッ!

少女「あ……!」

アフロ「やれやれ……しょうがねぇな!」

アフロ「俺のハンマーの分も残しとけよ!」

     ダッ!


狩人「二人して勝手だなぁ……」

狩人「まあいい、ともかくペイン」

     ガキィンッ!!

DQNハンター「っ!?」

アフロ「おらぁっ!!」

     ガギィィンッ!!

アフロ「んなぁ!?」

DQNハンター「な、何だ? こいつ……硬ぇ!?」

アフロ「バカ! 止まるな!」




     コ……コ、コ、コ……!



救助アイルー「っ!?」

救助アイルー「こ、これは……まさか!?」




     クワアアアアアア―――――――――――ッ!!




DQNハンター「っ!!」

アフロ「がっ!?」

狩人「……!?」

少女「……っ!!」


狩人「こ……これって……」

狩人「咆哮か!?」

少女「まさか!」

少女「イャンクックがバインドヴォイスを仕掛けるなんて、聞いた事もない!」


救助アイルー「お前ら! 逃げるニャ!」


狩人「!」

少女「!」


     バスッ! ビスッ! グチャッ!


DQNハンター「」 ドサッ…

アフロ「え……」



     ズガッ! ギュルルルッ……ドズッ!!


アフロ「あ……がああああああああああああああああああああああああああああっ!!?」

アフロ「ひっ……ひぎいいいいいっ!!」


狩人「な……何なんだ!? あれ!?」

狩人「あんな巨体で、めちゃくちゃ早いぞ!?」


救助アイルー「いいから早く逃げるニャ!!」

救助アイルー「お前らじゃ相手にならないニャ!!」


     グルルル……


救助アイルー「あいつは……あいつは……!」










救助アイルー「G級個体のイャンガルルガだニャ!!」








クック先生、雑魚扱いしてすみません。
救助アイルーがガルルガを見聞きしただけで『G級』と判断したのは
何らかの理由でG級のガルルガしかこの地方に飛来しない為、ガルルガ=G級
と判断していると思ってください。
という所で今日はここまでです。


狩人「イャン……ええっ!? G級個体!?」

少女「で、でも! まだ他のハンターが!」

救助アイルー「俺たちは救出のプロだニャ!」

救助アイルー「あいつらの事は、任せておけ!」

救助アイルー「お前らが居ると邪魔ニャ!!」

狩人「……っ」

少女「……行こう、狩人」

狩人「……分かった!」

     ダッ!

救助アイルー「行くぞ、野郎ども!」

救助アイルー「G級モンスでも、やる事はいつも通りニャ!」

     ニャ… ニャー!!

救助アイルー(……とはいえ)

救助アイルー(クックのつもりで準備していたから、キツい仕事だニャ……!)



―――――――――――


密林 洞窟の一区画


     タッ タッ タッ…

狩人「はあっ……はあっ……」

少女「はあっ……はあっ……」

狩人「だ、大丈夫か……少女?」

少女「ええ……何とか……」

     クエエエエエエエエエエエエ……

狩人「……あいつら、大丈夫かな」

少女「……わからないわ」


狩人「…………」

少女「…………」


     ザアアアア……


少女「雨の音……ここまで聞こえるのね」

狩人「ここは、まだ入口に近い方だからな」

少女「……そうなの?」

狩人「鉱石掘りによく来てるから、知ってる」

少女「…………」

狩人「……ともかく、これからどうすればいい?」

狩人「目的のモンスターはクックじゃなかったし……」

少女「……リタイヤするしかないわ」

少女「救助アイルーの言う通り、あのモンスターがG級なら」

少女「下位装備の私たちじゃ歯が立たない」


狩人「そうなのか……」

狩人「雨だし、暗くてよく見えなかったけど」

狩人「あのハンター達、あっさりやられていた感じだったしなぁ」

少女「…………」

少女「とりあえずBC(ベースキャンプ)に戻りましょう」

少女「救助アイルーも助けたハンターを運ぶには、あそこに行くしかない」

狩人「そうか」

狩人「じゃ、行くとするか」

少女「でも、ちょっと待って」

少女「今来た道を戻るのは、危ないと思う」

少女「あのモンスターが居るかもしれない」


狩人「ああ、それは大丈夫だ」

少女「え?」

狩人「この奥に出口があるんだよ」

狩人「BC(ベースキャンプ)に近い湖岸側に出ている」

少女「そうなの?」

狩人「狭いから、あのモンスターは入って来られないだろうし」

狩人「ドスランポスの通り道みたいになってて、出くわすかもしれないが」

狩人「それでもあのイャン……なんちゃらよりはマシだ」

少女「…………」

狩人「さ、行こうぜ」

少女「う、うん」



―――――――――――


     ザアアアア……


狩人「くそっ……土砂崩れか」

狩人「通れなくなってやがる……」

少女「…………」

狩人「すまん、少女……」

少女「……これは仕方無いわよ」

少女「狩人のせいじゃない」

狩人「…………」

狩人「さて、どうするかな……」


少女「他に出入り口は無いの?」

狩人「あるにはあるが……」

狩人「どれもあのG級モンスターに出くわした場所に近い所なんだ」

狩人「おまけに飛竜とかが、巣にした形跡まである所も……」

少女「……居るかもしれないわね」

狩人「くそ……ペイントしておけば」

狩人「大まかな居場所が分かるのに……」

少女「この雨じゃ、それも難しいかも知れないわ」

狩人「…………」

狩人「となると……後はどうすればいい?」

少女「しばらく様子を見るしかないと思う」

少女「せめて、雨が止むか、弱くなるのを待った方がいい」


狩人「そうなれば、モドリ玉を使えそうだな」

少女「ええ」

少女「きっと、救助アイルーが見つけてくれると思う」

狩人「なら……しばらく休もう」

少女「そうね」

少女「…………」


―――――――――――


     ザアアアア……


狩人(……いつまで降り続くんだよ、この雨)

少女「…………」


狩人「……腹減ってきたな」

少女「……そうね」

狩人「…………」

     ゴソゴソ…

狩人「ほい。 こんがり肉」

狩人「食うか?」

少女「うん」

     ムシャ ムシャ

少女「美味しい」

狩人「良かった」

少女「用意がいいわね」

少女「私はかさ張るから、持って行かないわ」


狩人「携帯食料は味気なくてな……」

狩人「食ってもすぐ腹が減るし」

少女「まあ……確かにそうね」

狩人「……っと」

狩人「狩りの最中に飯の話はダメだった」

少女「……あれは別の意味が込められていると思う」

狩人「別の意味?」

少女「推測だけど……油断するなって意味だと思うわ」

狩人「!」

狩人「……油断、か」

狩人「なるほど」


少女「…………」

少女「ねえ、狩人」

狩人「ん?」

少女「あなたって、南部か中央の出身でしょ?」

狩人「え……よくわかったな」

狩人「その通りだよ」

少女「やっぱりね……」

狩人「…………」

狩人「……気のせいか、トゲのある言い方だな」

少女「…………」

少女「この際だから、洗いざらいぶちまけるわ」

少女「ええ。 あなたの事、馬鹿にしたの」

狩人「!?」


少女「そもそも、ハンターになった理由が『憧れ』である時点で」

少女「安全な中央地区か、南部地方の出身だと思ったわ」

狩人「…………」

少女「モンスターなんて、絵本か、物語の中でしか知らない存在で」

少女「ハンターという職業を『かっこいい』とか思っているあたり」

少女「現実を知らない、安全なところで育ったお坊ちゃんの発想よ」

狩人「…………」

少女「それに……ヘタレとか、ハズレとか言われても怒らないなんて」

少女「プライドも何もなく、ハンターとしての気概さえ持っていなかった」

狩人「…………」


狩人「……まあ」

狩人「確かにそれは否定できないな」

少女「…………」

狩人「でも」

狩人「俺に戻る場所はもうない」

少女「……え?」

少女「まさか……私と同じようにモンスターが?」

狩人「いいや」

少女「……どういう意味よ?」

狩人「俺……孤児院出身なんだ」

少女「!」

狩人「…………」

少女「……その割に言葉遣いは綺麗ね」


狩人「少女が孤児院をどう見ているのか知らないが」

狩人「俺たち孤児が最も力を入れて教えられるのは」

狩人「『お行儀よくする事』なんだよ」

少女「……どういう意味?」

狩人「例えば言葉使い」

狩人「孤児院にお金を出してくれる人への挨拶は特に大事だ」

狩人「これで行儀が悪かったら、お金を出して貰えなくなるかもしれないからな」

少女「…………」

狩人「……俺たち孤児に自由はない」

狩人「きちんと挨拶ができなかったり、逆らったりした奴は」

狩人「厳しい罰を受けたって聞いた」

少女「…………」


少女「逃げようって、思わなかったの?」

狩人「俺は……よく言えば素直」

狩人「悪く言えば、何も考えずに言う通りにしていたからな」

狩人「自分の待遇に何の疑問も持たず生活をしていた」

狩人「そうすれば食べ物も出てくるし、たまに美味しいお菓子にもありつけたから」

狩人「むしろ、逆らう奴の方がおかしいって思ってたくらいだ」

少女「…………」

狩人「…………」

狩人「……でも、ある日」

狩人「俺の大好きだった人が、突然連れて行かれた」

少女「…………」

少女「どういう人だったの?」


狩人「……優しい人でね」

狩人「俺たち孤児にとって先輩にあたる、太陽みたいなお姉さんで……」

狩人「気さくな人だった」

少女「…………」

狩人「いつも俺には『素直すぎ』だって注意してたけど」

狩人「もちろんその時の俺に、意味はわかってなかった」

少女「…………」

狩人「その人がある日」

狩人「孤児院にお金を出している人のお屋敷に 住み込みで働く事になった」

狩人「唐突な事で、孤児のみんなは俺も含めてすごくショックだった」

少女「…………」


狩人「俺は……いや、俺たちは連れて行かないで、と、お願いした」

少女「…………」

狩人「その時に返って来た言葉は……」


     お前らは食わせてもらってるだけありがたいと思え!逆らうな!


狩人「……だった」

少女「…………」

少女「……そのお姉さんはどうなったの?」

狩人「さあ……」

少女「さあ……って」

狩人「連れて行かれた場所を知らないし」

狩人「探そうとしたら、お金を出していた人は偽名を使ってたみたいで」

狩人「すぐに行き詰まったから……」

少女「…………」


狩人「こういうの、どう言うんだろうな?」

狩人「悔しいけど何もできなくて、ムカムカするっていう感じ」

少女「……絶望……かしら」

狩人「絶望……ね」

狩人「じゃ、その絶望してた俺だったけど」

狩人「そんな時にラオシャンロンを倒して凱旋するハンター達を見たんだ」

少女「…………」

狩人「少女の言う通り、俺は憧れたよ」

狩人「あんなに大きなモンスターにも勝ってしまう強さ」

狩人「自由で、誰の命令にも従わずに行動できる奔放な勇敢さ」

少女「…………」


狩人「俺もあんな風になりたい」

狩人「自分の生き方を自由に決められる様になりたい」

狩人「あそこに立てる様な、強さを持ったハンターになりたいって」

狩人「心の底から思ったんだ」

少女「…………」

狩人「…………」

狩人「……話が長くなったけど」

狩人「少女から見たら、物足りない部分はあるかもしれない」

狩人「だけど、決してふざけた気持ちでハンターになった訳じゃな……」

少女「もういい」

少女「もう……わかったから」

狩人「…………」

少女「…………」



     ザアアアア……


少女「…………」

少女「……私は、ね」

狩人「う、うん」

少女「狩人に……」

少女「ただ……嫉妬しているの」

狩人「…………」

狩人「え……嫉妬?」

少女「…………」


少女「私は……ね」

少女「大剣とか重すぎて、使えないのよ」

狩人「…………」

狩人「は?」

少女「なのにあなたは、武器を自由に変えられる」

少女「いつの間にか、単独でフルフルを狩ってこられる様にもなっていた」

少女「羨ましかった……」

狩人「ちょっと待てよ」

狩人「使えないって、どういう事だ?」

狩人「それじゃあ、ハンター試験で落ちてしまうだろ?」

少女「…………」

少女「ロートルさんが言ってたでしょ?」

少女「お情けで合格したって」

狩人「少女もそうだったのか……」


少女「いいえ」

狩人「……は?」

少女「私はロートルさんより酷いわ」

少女「試験官の人にお金を掴ませて、合格にしてもらったのだから」

狩人「!!」

少女「…………」

狩人「…………」

狩人「……何でそこまでしてハンターになろうと思ったんだ?」

少女「…………」

少女「ごめん……言いたくない」

狩人「……そっか」


狩人「…………」

少女「…………」


     ザアアアア……


狩人「……どうして、そんなこと俺に話したんだ?」

狩人「バラすつもりはないけど、バレたらまずい事だろ?」

少女「さあ……何でかな」

少女「自分でもよくわからない」

狩人「…………」

少女「…………」

少女「ただ……」

少女「誰かに聞いて欲しかったから……かもしれないわ」

狩人「少女……」




救助アイルー「……ここに居たのかニャ」



狩人「どわぁっ!?」

少女「きゃっ!?」

救助アイルー「なんかいい雰囲気っぽかったけど」

救助アイルー「あんまり余裕もないんで邪魔するニャ!」

狩人「じゃ、邪魔って……」

少女「……今の話、聞いてた?」

救助アイルー「何の事だニャ?」

救助アイルー「俺の仕事はハンターの救助であって」

救助アイルー「探偵じゃないニャ!」


狩人「聞いてたのは否定しないのか?」

救助アイルー「そういう野暮なツッコミ入れるあたり」

救助アイルー「お前は女の子にモテない奴みたいだニャ」

狩人「……いつも世話になってるけど」

狩人「余計なお世話だ」

少女「…………」 クスッ

救助アイルー「さ、あのG級イャンガルルガの位置は把握しているニャ」

救助アイルー「今なら安全にBC(ベースキャンプ)に戻れるニャ」

狩人「わかった」

少女「道案内、よろしくね」



―――――――――――


BC(ベースキャンプ)


     ニャァ…… ニャァ……

狩人「…………」

少女「…………」

救助アイルー「……酷い惨状に思えるかもしれないけど」

救助アイルー「俺たちに死んだ奴は居ないニャ」

救助アイルー「G級モンスター相手でこれなら、御の字ニャ」

DQNハンター「」

狩人「……じゃあ、こっちの布をかけられているのって」

救助アイルー「布を剥がすのはおすすめ出来ないニャ」

救助アイルー「頭の中身がこんにちは✩してて、ひどい状態だニャ」


DQNハンター「」

狩人「…………」

少女「…………」

アフロ「…………」 ガタガタガタガタ…

救助アイルー「…………」

救助アイルー(……こっちのハンターは幸いにも怪我で済んだけど)

救助アイルー(別の意味で引退かもしれないニャ……)

救助アイルー「…………」 フウ…

救助アイルー「もう少しで出発の準備が整うニャ」

狩人「あ……何か手伝おうか?」

救助アイルー「これは俺たちの『仕事』だニャ」

救助アイルー「ハンターは、ハンターの『仕事』に集中すればいいのニャ」


狩人「…………」

少女「…………」

アフロ「…………」 ガタガタガタガタ…


―――――――――――


数日後の午後

ふもと村 集会所


ロートル「狩人! 少女!」

ソロ「……無事だったか」

狩人「ロートルさん……それに」

少女「ソロさん……」


ロートル「G級モンスターに出くわして、ハンターに犠牲者が出たと聞いてたから」

ロートル「心配していた」

狩人「俺と少女は直接、戦っていないので……」

少女「あの二人を助けに行こうとしたら、救助アイルーに止められたんです」

ソロ「……それで正解だ」

狩人「! ……ソロさん」

ソロ「犠牲になったハンターは気の毒だが」

ソロ「下位装備なんて、G級モンスターの前では紙切れも同然……」

ソロ「お前たちの判断は間違っていない」

少女「…………」


ロートル「……まあ詳しい話は、また今度聞こう」

ロートル「しばらくゆっくり休むといい」

狩人「……そうします」

少女「同じく……」


―――――――――――


ロートルの家


ソロ「……実は、ギルドから注意を受けていてな」

ロートル「何?」

ソロ「例の場所から逃げ出したG級モンスターが一匹居る」

ソロ「イャンガルルガは、シルエットがクックに似ているから」

ソロ「不確定な目撃情報や怪しい、と思える依頼はそれとなく見ておいてくれと……」

ロートル「……最近、時々クック狩りに行ってたのは、それか」


ソロ「ギルド観測所のモンスター鑑定員も不足気味」

ソロ「こういう事態を防ぎたかったのだろうが……」

ロートル「起こってしまった……か」

ロートル「…………」

ソロ「…………」

ロートル「……あの2人」

ロートル「どうするのだろうな」

ソロ「……ハンターをやっていれば、いずれ出くわす問題だ」

ソロ「遅かれ早かれ、な」

ロートル「…………」

ロートル「……身勝手な事を言うが」

ロートル「あの2人には乗り越えて欲しいよ」

ソロ「…………」

ソロ「……そうだな」



―――――――――――


狩人の家


狩人「…………」


少女「そもそも、ハンターになった理由が『憧れ』である時点で」

少女「安全な中央地区か、南部地方の出身だと思ったわ」


狩人「…………」


少女「ハンターという職業を『かっこいい』とか思っているあたり」

少女「現実を知らない、安全なところで育ったお坊ちゃんの発想よ」


狩人「…………」



少女「なのにあなたは、武器を自由に変えられる」

少女「羨ましかった……」


狩人「…………」


少女「私は……ね」

少女「大剣とか重すぎて、使えないのよ」

少女「試験官の人にお金を掴ませて、合格にしてもらったのだから」


狩人「…………」



少女「自分でもよくわからない」

少女「誰かに聞いて欲しかったから……かもしれないわ」


狩人「…………」

狩人(……いろいろあるんだろうな)


少女「まさか……私と同じようにモンスターが?」


狩人(…………)

狩人(聞いちゃいけない事……なんだろうな)

狩人(…………)



―――――――――――


少女の家


少女「…………」


狩人「俺に戻る場所はもうない」

狩人「俺……孤児院出身なんだ」


少女「…………」


狩人「……俺たち孤児に自由はない」

狩人「きちんと挨拶ができなかったり、逆らったりした奴は」

狩人「厳しい罰を受けたって聞いた」


少女「…………」



狩人「少女の言う通り、俺は憧れたよ」

狩人「あんなに大きなモンスターにも勝ってしまう強さ」

狩人「自由で、誰の命令にも従わずに行動できる奔放な勇敢さ」


少女「…………」


狩人「俺もあんな風になりたい」

狩人「自分の生き方を自由に決められる様になりたい」

狩人「あそこに立てる様な、強さを持ったハンターになりたいって」

狩人「心の底から思ったんだ」


少女「…………」

少女(……同じじゃない)

少女(私と……)



狩人「……どうして、そんなこと俺に話したんだ?」

狩人「バラすつもりはないけど、バレたらまずい事だろ?」


少女「…………」

少女(……本当にその通りよね)

少女(私……バカみたい)

少女(…………)

少女(…………)

少女(ううん……違う)

少女(たぶん、バカなんだわ)



―――――――――――


翌日の朝

狩人の家の前


狩人「ふああああああああ……」

狩人「ムニャムニャ……」

狩人「…………」

狩人「井戸……顔を洗わないと」

―――――――――――

     バシャ バシャ

狩人「……ふう」


少女「おはよう、狩人」

狩人「……ん?」

狩人「ああ、少女。 おはよう」

狩人(少女……こんな所まで顔を洗いに来た?)

狩人(……な訳ないよな)

狩人「…………」

少女「…………」

少女「……少し、歩かない?」

狩人「わかった。 付き合うよ」


     テク テク テク…

狩人「…………」

少女「…………」

狩人「……静かだな」

少女「そうね」

狩人「そういえば、こんな時間に出歩くの初めてかも」

少女「私も」

狩人「…………」

少女「…………」


     テク テク テク…

少女「……ねえ、狩人」

狩人「ん?」

少女「例の……怪我ですんで、生き残ったあのハンター」

少女「引退するって聞いたわ」

狩人「……そうか」

少女「…………」

狩人「…………」

少女「私は続けるつもり」

狩人「!」

少女「一応、目的あるから」

狩人「そっか……」

少女「狩人は?」


狩人「もちろん続けるよ」

狩人「憧れている、あの時のハンターになる為に」

少女「そう」 クスッ

狩人「ははは」

少女「…………」

狩人「…………」

少女「で、さ……」

狩人「うん」

少女「今度、ライトボウガンを練習しようと思うの」

狩人「!」

狩人「ガンナーに?」

少女「もちろん片手剣を捨てるつもりはないわ」


少女「でも、これから先、何が起こるかわからないって事を」

少女「身にしみてよくわかった」

少女「だから……選択肢をできるだけ多くしたいって思ってる」

狩人「…………」

少女「けど……ひとりは不安だから」

少女「狩人に手伝って欲しい」///

狩人「まあ、俺でいいのなら」

少女「…………」

少女「……このニブチン」 ボソッ

狩人「ん?」

少女「何でもない」



     ナニオコッテンダ? オコッテナイ

     オコッテルジャナイカ  オコッテナイ!


ロートル「…………」

ソロ「…………」

ロートル「……どうやら、いらぬ心配だった様だな」 クスッ

ソロ「ああ……その様だ」

ロートル「それにしても」

ロートル「青春だねぇ」

ソロ「……モゲロ」

ロートル「同感だ!」

     ハハハ…







     爽やかな朝もやの中

     俺と少女は、次の狩りを一緒に行く約束をしたのだった。






という所で、今日はここまでです。



―――――――――――


数日後の午後

ふもと村 広場


女「ふう……あー今回の仕入れは疲れたぁ」

女「ボッケ村の温泉にでも行ってこようかしら……」

女「…………」

女「狩人はどうしてるかな?」

女「また3乙とか、繰り返して悩んでたりして」 クスッ

女「うふふ♪」



―――――――――――


狩人の家


女「狩人ー? 居るー?」

女「……ん?」

     コンナ雑ナ手入レシテ!

     テ、テキトウデイイダロ!?

女「…………」

女「はい?」

女「…………」

女「狩人、入るよー?」


狩人「だから、そこは使っていないから……ん?」

少女「そんな調子だからいつまでも……え?」

女「……少女ちゃん?」

少女「……女さん?」

狩人「女、仕入れから帰ってきてたのか」

少女「!」

少女(呼び捨て!?)

女「そう。 で、狩人、どうしてるかなーと様子を……と思ったんだけど」

女「邪魔だった?」

狩人「いやいや、全然邪魔じゃないよ」

少女「…………」


女「ところで何してたの?」

狩人「あー……その」

少女「……ちょっとお世話になったので」

少女「部屋の掃除でもしてあげようとしたら、いちいち文句を言うんです」

狩人「それは少女の方だろ……」

女(……ん?)

少女「どうしてよ?」

少女「こんな雑然とモノが散乱して、きったない部屋!」

少女「徹底して整理整頓しないとダメでしょ?」

狩人「俺は、この状態のままで何の支障もなく暮らしてるんだから」

狩人「このまま掃除すればいいんだよ」

女(…………)


女「……えと」

女「何か、二人とも急に仲良くなったわね?」

少女「……!」///

狩人「……そうですか?」

女(……ほうほう)

女(そういう事ですか)

女「まあ、取り込み中みたいだから」

女「私はこれで。 じゃあね、狩人!」

狩人「え? ……あ、ああ」

     スタ スタ スタ…

少女「…………」

狩人「…………」


少女「……私も帰る」

狩人「へ?」

     スタ スタ スタ…

狩人「…………」

狩人「何なんだよ……ったく」

狩人「…………」

狩人「…………」

狩人「俺もアイルー雇おうかな……」

狩人「はあ……」



―――――――――――


数日後の午前

雪山


     ダンッ! ダンッ! ダンッ!

少女「くっ……!」

     ギュアッ! ギュアッ!

狩人「よっと!」(防御姿勢) ガキッ!

狩人「大丈夫か?」

少女「ええ、ありがとう」

狩人「はあっ!」 ズバッ!



―――――――――――


少女「ふう……」

狩人「…………」

狩人(ドスギアノスでも結構時間がかかるな)

狩人(こりゃ……単独で狩りをするのには向いてないかも)

少女「……思ったより時間がかかるわね」

狩人「……そうだな」

狩人「でも、結構使えてる方じゃないか?」

少女「一応、練習はしたから……」

狩人「俺も一度、真似してやってみたけど」

狩人「リロードをついうっかり忘れてしまうんだよなぁ」


少女「私も出来るだけ気をつけているんだけど……」

少女「困った事にボウガンごとで打てる弾丸の種類や装弾数が違ったりするの」

狩人「うひゃあ……」

少女「目的や自分に合うボウガンを選別して、慣れていくしかないわ」

少女「でも、そこに目をつぶれば十分メリットがある武器よ」

狩人「俺はダメだなぁ……そういうの」

狩人「絶対管理できない自信がある」

少女「まあ、その辺りは人それぞれだと思うわ」 クスッ

少女「今後しばらくボウガンでやってみる」

狩人「そうか」

少女「狩人はガンナー武器、使わないつもりなの?」

狩人「う~ん……そう言われると、何か覚えた方がいい様に思えるなぁ」


少女「狩人は弓が向いてると思う」

少女「大剣と同じく溜め攻撃できるし」

狩人「そうなの?」

少女「どういう仕組みかわからないけど」

少女「弓矢は無限に出てくるのも勧める理由の一つ」

狩人「なにそれこわい」

少女「竜人族の秘法だとか何とか……」

狩人「……何か怪しげな雰囲気プンプンするなぁ」

少女「でもリロードの手間はないし、扱いやすさはダントツだと思う」

狩人「なら少女は、どうして使わないんだ?」

少女「……非力で弦を引けないのよ」

狩人「あ……ご、ごめん」


少女「ううん。 あやまらなくていい」

少女「それよりもこれでだいたいの感じは掴めたわ」

少女「ありがとう、狩人」

狩人「いや、別に礼を言われるほどの事じゃ……」

少女「ふふふ」

少女「さて、それじゃそろそろ戻りましょうか」

狩人「そうだな」


狩人(……ガンナー武器か)

狩人(やっぱり何かひとつくらい使えた方がいいんだろうな)



―――――――――――


夕方

ふもと村 広場付近


     ガヤ ガヤ

狩人「……ん?」

少女「何か……騒がしいわね?」

女「あ、狩人に少女ちゃん。 お帰り」

狩人「ただいま」

少女「女さん、何か騒がしいみたいですけど……」

女「ああそうか、二人は初めてだっけ」

女「明日、村総出で避難訓練するの。 その準備だよ」

狩人「避難訓練?」

少女「……モンスター対策ですか」


女「うん、正解」

女「5年くらい前かな?」

女「この村、ティガレックスに襲われたの」

狩人「!」

少女「…………」

女「それ以前も訓練はしてたんだけど……長いあいだ平和だったからいい加減でね」

女「ハンターが仕留めてくれたけど、村の住人に犠牲者が出てしまったわ」

女「で、それ以降、ちゃんとしようって事になって」

女「準備も念入りになったの」

狩人「……そうだったんですか」

少女「私たちはどうすれば?」


女「あなたたち村付きのハンターは」

女「基本、襲ってきたモンスターを倒すか、撃退するって事になる」

狩人「ですよね……」

女「でも、ケース・バイ・ケースという気もするわ」

少女「え……」

女「敵わない相手……例えばG級モンスターとかが襲ってきたら」

女「HRの低いハンターじゃ相手にならないし……」

女「ギルドの方でも最近じゃ規定を変えて、村付きハンターにも」

女「一定の撤退権を認め始めているって聞くしね」

少女「何を言ってるんですか!?」

女「!?」

狩人「!?」


少女「私はこの村の住人の為に最後まで戦います!」

少女「たとえ、G級モンスターが相手でも!」

女「そ、そう。 そう言ってくれると、この村の一員として嬉しいわ」

少女「村付きハンターが村を見捨てて逃げるなんて……あってはいけない事ですよ!」

少女「絶対に!」

狩人「…………」

女「……うん。 たぶんそれは正しいし、村付きハンターの契約条項にも書いてあるね」

女「だからこそ、住処だって村が用意しなくちゃならないし」

女「これまでずっと、ギルドが逃げたハンターに制裁を加えていた」

狩人「…………」

女「でもね。 世の中、気合や根性だけで何とかできる訳じゃない」

少女「…………」


女「契約でそうなってるからって、死ぬとわかっている相手に向かって行けなんて」

女「私は言いたくない」

狩人「女……」

少女「…………」

女「もちろん助けて欲しいとは思うし、私たちを見捨てて逃げて欲しくないけど」

女「ハンターが敵わない相手なら、最初からみんなで逃げた方がいいわ」

狩人「…………」

狩人「……俺も」

狩人「できれば戦いたいし、敵わない相手に向かって行って死にたくないです。 でも……」

狩人「この村が無くなるのも嫌だ」

女「……うん。 私はそれでいいと思う」

少女「…………」


女「でね、一応最悪の事を考えて対策は講じてあるの」

狩人「というと?」

女「まずはお金ね」

女「ふもと村は割と交通の要になっていて、経済的には潤ってる方なの」

少女「……村つきハンターが4人も居ますしね」

女「ふふふ、そうね」

女「で、村のみんなで毎年少しずつお金を出し合って、蓄えをしているわ」

女「いざという時は、復興にこのお金を使う予定」

女「管理はギルドに任せて預けているわ」

狩人「なるほど、いい考えですね」


女「それから避難経路の複数化」

女「住人が一斉に同じ方向へ逃げたんじゃ、混乱するし」

女「モンスターが追いかけてきた時、一網打尽にされる危険性がある」

女「5年前は、このせいで犠牲者が出てしまった」

少女「…………」

女「ふもと村では、住んでいる地区ごとに逃げる方向を決めていて」

女「どれか一つ、モンスターに襲われても……」

女「住人全部が犠牲にならない様にしているわ」

狩人「……ひとりも犠牲者が出ない様に頑張ります」

少女「…………」

女「うん、期待してる」 クスッ

女「それから近隣の村同士の連携も呼びかけていて」

女「モンスターだけでなく、自然災害などで被害が出ても」

女「お互いがお互いを助け合うよう協定を結んでいるわ」


狩人「すごい……完璧ですね!」

女「まあ、私が考えたんじゃないんだけどね……」

少女「…………」

女「それじゃ、私、そろそろ行くね?」

狩人「ああ、ありがとう!」

狩人「明日の訓練、俺も頑張るから!」

女「うん!」

     スタ スタ スタ…

狩人「いやぁ~……それにしてもいろいろ考えているんだなぁ」

狩人「世の中には頭のいい人が居るもんだ……」

少女「…………」


狩人「少女?」

少女「……え?」

少女「ごめん……聞いてなかった。 何?」

狩人「い、いや、何か様子が変だなって思って……」

少女「そう……」

少女「じゃ、私も帰るわ」

少女「今日はありがとう、狩人」

狩人「あ、ああ……お安い御用さ」

少女「またお願いね」

     スタ スタ スタ…

狩人「…………」

狩人(……なんか、元気が無かったな?)



―――――――――――


少女の家


     ドサッ…

少女「……ふう」

コックアイルー「あ、おかえりなさい、ご主人様」

コックアイルー「夕飯は何にしますかニャ?」

少女「そうね……」

少女「…………」

少女「お任せにするわ」

コックアイルー「わかりましたニャ!」

     タッ タッ タッ…


少女「…………」

少女(……そんな対策)

少女(私の村だって、やってたわよ……!)

少女(…………)

少女(みんな……いざという時はわがままで、身勝手で……)

少女(誰ひとりとして、訓練通りに動かなかった……近隣の村も手のひらを返した)

少女(…………)

少女(信頼していたハンターは真っ先に逃げ、それが引き金になった)

少女(ギルドに制裁を加えられた事が……唯一いい出来事)

少女(…………)

少女(……ギルドが制裁を止めたら、もっと犠牲が増えるだけよ)



―――――――――――


ロートルの家


ロートル「ほう? 女ちゃんが説明してくれたのか」

狩人「はい」

ロートル「俺の仕事が無くなったな」 クスッ

狩人「いや、そんな事はないですよ」

狩人「実は聞きたい事があって……」

ロートル「ほう?」

狩人「明日の訓練の俺の役割と……」

狩人「村付きハンターの契約についてです」


ロートル「訓練については、そんなにやる事はない」

ロートル「俺たちの役割は、住民が逃げる時間を稼ぐって事の再確認という感じだ」

ロートル「で、村付きハンターの契約って?」

狩人「女に聞いたんですけど……」

狩人「逃げたハンターに制裁を加えなくなりつつあるとか」

ロートル「ああ、それならとっくに制裁条項は改変されているぞ」

狩人「そうなんですか?」

ロートル「以前は問答無用で逃げた村付きハンターをギルドが粛清していたが」

ロートル「そうする事で困った出来事が起こったんだ」

狩人「というと?」


ロートル「例えばだ」

ロートル「このふもと村はまだ比較的襲われにくい村だが」

ロートル「中には襲われやすい村や、危険地帯に近いところに村があった場合」

ロートル「危険性は格段にアップする」

狩人「はい」

ロートル「そういうところに送られるハンターは、優秀な奴が多いが」

ロートル「それでも限界があるし、誰もが命を投げ打って戦ってくれるわけじゃない」

狩人「そうですよね……」

ロートル「そこでギルドは粛清を思いつくわけだが」

ロートル「そうなると引退を宣言するハンターが続出した」

狩人「!」


ロートル「最初は村の移転を望んだのだが、そんな事いちいち聞いてられるほど」

ロートル「優秀なハンターが居る訳じゃない」

ロートル「当然、却下していたが、命を大事にしたいハンターは」

ロートル「やむを得ず、引退を選ぶようになった、というわけだ」

狩人「…………」

ロートル「こうなるとハンターの居ない危険地帯の村々は どんどんと人が住まなくなり」

ロートル「ギルドとしても、探索の拠点や中継点を次々失うという事態に陥った」

ロートル「加えて、いままで安全だった土地にまでモンスターが現れる様になり」

ロートル「人間の活動領域まで狭くなるという事に繋がりかねなくなった」

狩人「…………」

ロートル「そして、ギルドは粛清を止め、一定の条件下で撤退を認め」

ロートル「粛清ではなく、罰則金、という形を取る事にしたんだ」

狩人「そうだったんですか……」


ロートル「規定では古龍及びG級個体は、HRに関わらずどんなハンターでも逃げてもよし」

ロートル「上位及び下位モンスターの場合はHRによって罰則金の支払い」

ロートル「と、大まかに定められている」

狩人「……G級は逃げてもよし、ですか」

ロートル「……酷なようだがな」

ロートル「G級モンスターってのは、本当に化物だ」

ロートル「ギルドが認めているG級ハンターですら」

ロートル「戦う相手が『何か』わかっていて、下準備をしていないと」

ロートル「まともに戦う事すら出来ない怪物なんだよ」

狩人「…………」

ロートル「……とまあ、こんな感じだ」

狩人「あ……はい」

狩人「ありがとうございます、よく分かりました」



―――――――――――


数日後の朝

狩人の家


狩人「ふああああ……」

狩人「…………」 ムニャ ムニャ…

狩人「…………」

狩人「……さて、起きるか」

狩人「井戸……顔を洗いに行かないと……」

狩人「ふあぁぁ……」


     バシャ バシャ

狩人「ふう……」 フキフキ

狩人「…………」

狩人(避難訓練は滞りなく終了した)

狩人(ロートルさんの言う通り、俺たちハンターの出番はそれ程なく)

狩人(村の住人総出で訓練を行っていた)

狩人(…………)

狩人(モンスターが村に出現と同時に特殊な半鐘が鳴らされ)

狩人(それぞれの地区の住人が、それぞれの避難道へと逃げ混んでいく)

狩人(G級かどうかは関係なく、モンスターが現れたら、即、逃げる)

狩人(それが基本姿勢の様だった)

狩人(…………)


狩人(……それもそうか)

狩人(ハンターでもない、一般の人にとって)

狩人(G級個体だろうが、ドスギアノスだろうが)

狩人(危険度は変わらないわけだしな……)

狩人(…………)

狩人(……俺は、どこか)

狩人(ハンターという仕事を軽く考えていたのかもしれない……)

狩人(…………)



―――――――――――


集会所


     ガヤ ガヤ

狩人「…………」

狩人(……ダメか)

狩人(掲示板に依頼貼ったけど、誰も来てくれない)

狩人(今日は少女も居ないし)

狩人(かと言ってロートルさんやソロさんに頼むには内容が低いし)

狩人(…………)

狩人(しょうがない……ひとりで行くか) ハア…

    パァ~フォ~



―――――――――――


密林 BC(ベースキャンプ)


狩人「さて、着いた」

狩人「依頼内容は……ゲリョス……と」

狩人「初めて戦う奴だから、誰かと来たかったが……しょうがない」

狩人「おろしたてのフルミナントソード(大剣)もあるし、気をつけて戦おう。 うん」

狩人「さて、出発するか」

―――――――――――

     ザッ ザッ ザッ…

狩人「!」

狩人(居た! 多分あいつだ!)


狩人(紫色の外皮に変わった感じのトサカ……硬そうだな、あれ)

狩人(それに尻尾……なんかフルフルみたいに多少は伸び縮みするのかもしれない)

狩人(テールアタックには気を付けないと……)

     ドスッ… ドスッ… ドスッ…

狩人(大きさはフルフルと同じか、ちょい小さいくらいか)

狩人(尻尾に気をつけて間合いを考えよう)

狩人(よし……ペイントボールを当てて) グッ

     ブンッ! ヒュ―――…… ベチャッ!

狩人(うし、ペイント成功!)

狩人(戦闘開始だ!)

     ギュワアアアアアア――!


     ペッ!

狩人「!?」

狩人(何か吐き出した!!)

狩人「くっ……!」 回避!

     ドベチャッ!

狩人「うへぇ……何だこれ? 気持ち悪い紫の液体 吐き出したぞ……」

狩人「何か分からないけど、絶対当たらない方がいいな」

狩人「……ん?」

     ガンッ! ガンッ! ガンッ!!

狩人「何だ? トサカを火打石みた――」



     ビ  カ  ァ  ッ !!


狩人「うわああああああああっ!?」

狩人「目、目が……目がああああっ!!」

     ドスッ ドスッ ドスッ!

狩人「っ!」

狩人(この音! 近づいてきてる! ヤバイッ!!)

狩人「く、くそっ!」

     コケッ

狩人「ぎゃふんっ!」

     ベチャッ!

狩人「うわあああっ!? こ、これ、さっきの紫のやつか!?」

     バゴォッ!!

狩人「ぶべらっ!」



―――――――――――


ふもと村 集会所


狩人「」

救助アイルー「毎度どうもニャ」

受付嬢「ご苦労様」


流れハンター「……またあいつか」

流れハンター「今度は何にやられたんだ?」

ハンター(女)「確か……ゲリョスって聞いたけど」

ハンター(女)「この前はドスゲネポスに3乙してたよ」

色黒ハンター「これだけ3乙してて生き残ってるのも ある意味すごいな」

色黒ハンター「組みたいとは、これっぽっちも思わないけどな……」



―――――――――――


狩人の家


     ドサッ…

狩人「…………」

狩人「……疲れた」

狩人「…………」

狩人(あのトサカの閃光……真面目に厄介だ)

狩人(二回目は大剣で防ぐ様にしたけど)

狩人(今度はテールアタック……しかも何だよ、あの伸び縮みは)

狩人(最後はあの液体……救助アイルーが毒だって言ってたな……)


狩人(いずれにしてもコテンパン……)

狩人(そしてまた契約料稼ぎしないと、依頼が受けられない)

狩人「はあ……」

狩人「…………」

狩人(……やっぱり、少女に聞いてから挑むべきだったかなぁ)

狩人(…………)

狩人(……何か、割のいい採取クエ)

狩人(ないかなぁ……)

狩人(はあ……)



―――――――――――


ロートルの家


ロートル「割のいい採取クエ?」

狩人「はい……虫がいいのはわかっていますけど」

狩人「もうキノコや鉱石じゃ追いつかなくて……」

狩人「何かありませんか?」

ロートル「ふむ……割のいい、ね……」

狩人「…………」

ロートル「…………」

ロートル「……狩人は、忍耐力のある方か?」

狩人「え? 忍耐力?」

ロートル「まあ一度やってみて、合わなければ止めればいいか」

ロートル「森丘に行った事はあるか?」


狩人「ええ、ドスランポス狩りに行きましたから……」

ロートル「あそこのBC(ベースキャンプ)設置場所近くに」

ロートル「黄金魚が釣れる池があるんだ」

狩人「黄金魚? それに釣り?」

ロートル「釣りをやった事は?」

狩人「……無いです」

ロートル「まあ、経験は無くてもエサで何とかなるが……」

ロートル「釣れるまで我慢しないといけないからな」

狩人「で? 黄金魚って売れるんですか?」

ロートル「一匹500z(ゼニー)になる」

狩人「」


狩人「ちょ!? 一匹500z(ゼニー)!?」

狩人「キノコの採取クエ一回分程度の報酬を一匹で貰えるんですか!?」

ロートル「ああ」

狩人「いい事を聞きました!」

狩人「さっそく明日にでも……」

ロートル「あー待ってくれ、狩人」

狩人「はい?」

ロートル「さっきも言ったけどな、釣るまで忍耐力がいる」

ロートル「高い魚だけになかなか釣れないんだ」

狩人「……そうですか」

ロートル「そこでエサなんだが……『黄金ダンゴ』というものを使えば」

ロートル「結構食いついてくれるぞ」

狩人「どうやって手に入れるんですか?」


ロートル「ツチハチノコと釣りフィーバエか、釣りホタルを混ぜるとできる」

狩人「なるほど、ツチハチノコと釣りフィーバエ……ん?」

狩人「ツチハチノコって、聞いた事ないんですけど?」

ロートル「あれは蜂の巣箱とか、ハチミツ採取でたまに取れるんだよ」

狩人「え……そうだったんですか」

狩人(蜂の巣なんて無視してたな……)

ロートル「もし、持ってないのならストアの女ちゃんに聞いてみるといい」

ロートル「少々高いが、買う事もできるぞ」

狩人「分かりました!」

狩人「黄金ダンゴ……ツチハチノコと釣りフィーバエか、釣りホタルですね」

狩人「とにかくやってみます!」

ロートル「ああ、頑張ってみてくれ」



―――――――――――


翌日の午前中

ふもと村 広場 ストア前


狩人「女!」

女「ひえっ!?」

女「か、狩人?」

女「どうしたの? 薮から棒に……」

狩人「ツチハチノコ! ツチハチノコを売ってくれ!」

女「……あ~、黄金魚か」

狩人「そう!」

女「ちょっと待ってね……」 ゴソ ゴソ…


女「はい」

狩人「おお……これがツチハチノコか」

狩人「一匹いくら?」

女「150z(ゼニー)」

狩人「高ぇ!?」

女「そりゃあ黄金魚の買取価格が一匹500z(ゼニー)だもの」

女「必然的に高くなるわよ」

狩人「これは予想外だった……」

女「どうする? またにする?」

狩人「…………」

狩人「2匹、くれ」

女「毎度♪」



―――――――――――


森丘 BC(ベースキャンプ)


狩人「……くそっ」

狩人「調合に一回失敗した……」

狩人「…………」

狩人「なぁに! それでも黄金魚一匹釣れば200z(ゼニー)儲けだ!」

狩人(フツーに採取すれば良かったって思うな、俺!) ←若干涙目

狩人「さあっ! 釣るぞー!!」

     ポチャン

狩人「♪~」

狩人「♪♪~」



―――――――――――


狩人(…………)

狩人(…………)

狩人(…………)

狩人(…………)

     (浮き)プカ プカ

狩人(…………)

狩人(…………)

狩人(…………)

狩人(……まあ、なかなか 釣れないって聞いてるし)



―――――――――――


狩人(…………)

狩人(…………)

狩人(…………)

狩人(…………)

     (浮き)プカ プカ

狩人(…………)

狩人(…………)

狩人(…………)

狩人(…………)

     (浮き)プカ プカ

狩人(…………)



―――――――――――


狩人(…………) イライラ

狩人(…………) イライラ

狩人(…………) イライラ イライラ

     (浮き)プカ プカ

狩人(…………) イライラ イライラ

狩人(…………) イライラ イライラ

狩人(…………) イライラ イライラ イライラ イライラ

     (浮き)プカ プカ

狩人「だ―――――――――――!!」

狩人「やってられっか―――――――――――!!」


狩人「もう夕方じゃねーかよ……」

狩人「何で釣れないんだよぉ……」

狩人「普通に採取クエやってれば良かった……」


―――――――――――


集会所


ロートル「おお、狩人」

ロートル「黄金魚は釣れたか?」

狩人「一日粘ったけど、ダメでした……」

ロートル「そうか……釣れる時は釣れるんだけどな」

狩人「はあ……」


ソロ「黄金魚だって?」

狩人「あ、ソロさん」

狩人「頑張ったんですけど……釣れませんでした」

ソロ「そうか……洗いは試したか?」

ロートル「ん? 洗い?」

狩人「洗いって何ですか?」

ソロ「普通に魚を釣って、黄金魚が出てくるのを待つ方法だ」

ソロ「黄金魚は臆病な魚でな。 他の魚がたくさんいると出てこないが」

ソロ「普通の魚を釣って減らすと出てくる事があるんだよ」

狩人「」

ロートル「そ、そんな方法があったのか!」

ソロ「ああ」


ソロ「それから黄金ダンゴは、黄金魚を見かけてから使わないと意味がない」

ソロ「他の魚は食いつかないし、黄金魚がいない時に使っても徒労に終わる」

狩人「」

ロートル「な、なんだって!?」

ソロ「知らなかったのか? ロートル」

ロートル「……ああ、今初めて知ったよ」

狩人「…………」

ロートル「何て言うか……すまん、狩人……」

狩人「……イエ。 マタアシタガンバリマス。 ハハハ」

     トボ トボ トボ…

ソロ「……どうやら やらかしたみたいだな。 ロートル」

ロートル「……今度、飯でもおごって お詫びしておくさ」




     俺が何したって言うんだ……畜生

     あ……晩飯食うの忘れた。



     何か……ホントにダメダメな一日だったな

     もう寝よう……



     腹がぐうぐう鳴ってたけど

     何かする気力はもう無く……

     俺はそのまま眠りについたのだった……




※補足説明

ツチハチノコですが、P2Gでは、村施設の蜂の巣箱のみで採取できます。
フィールドにある蜂の巣では取れません。それから行商婆さんからしか買えません。
あと調合は釣りホタルのみです。

今回のお話で『 洗い 』なるテクニックが出てきましたが
これは>>1が勝手に名付けた技名で、公式でも何でもありません。

3以降は、黄金ダンゴを投げ入れると黄金魚だらけになりますが
P2Gでは、マジに黄金魚を確認してから使わないと意味が無く
>>1も狩人と同じく無為に時間を過ごし……ゲフンゲフン。

最後にP2Gで黄金魚はz(ゼニー)ではなく『ポッケポイント』という
今で言う『旅団ポイント』みたいな扱いの架空貨幣のみに交換されます。

蛇足ですが、>>1の周りで『ポッケポイント』稼ぎ方法No.1は
訓練所クエをヤリまくる事でしたが……>>1は黄金魚釣りが大好きで
マカルパ装備買って、釣りまくりました。
何で4や4Gもそうしてくれなかったのかなぁ……『旅団ポイント』稼ぐの地味に辛い。

以上です。

という所で、今日はここまでです。
お付き合いありがとうございました。



―――――――――――


半月後の午前中

集会所


     ガヤ ガヤ

少女「…………」 ムスッ…


ソロ「……何だか機嫌が悪そうだな、あの娘」

ロートル「ここに居るという事は、あの日じゃないだろうし」

ロートル「狩人と同じく、狩りが上手く行っていないのかもしれん」

ソロ「そういえばガンナー武器を使い始めた、とか聞いたな」

ロートル「ああ」

ロートル「たぶんそういう事なのだろう」


少女「…………」 ムスッ

少女(……まったく、狩人ったら)

少女(一体何を一生懸命になっているのよ)

少女(…………)

少女(私との狩りより大事なことなの……?)

少女(…………)

少女(それとも……誰か私以外のハンターと仲良くなって)

少女(そのハンターと一緒に……?)

少女(…………)

少女(ま、まさか……ね)

少女(…………)



―――――――――――


森丘 BC(ベースキャンプ)


     バシャバシャバシャ!

     ザバーンッ!

狩人「っしゃあー!」

狩人「大食いマグロキター!!」

狩人「これでマカルパ装備まで後一歩だぜ!!」


狩人(黄金魚のことを職人さんに話したら)

狩人(釣りが格段に上手くなるという装備の情報を聞けてラッキーだった!)

 ※注 マカルパ装備一式揃えると『釣り名人』というスキルが発動します


狩人「さぁーて、次々……お?」

狩人「…………」

狩人「キター!!」

狩人「黄金魚キター!!」

狩人「黄金ダンゴを付けて……と」

狩人「ウヒヒ♪」

狩人(あー……ここは雑魚モンスターも来ないし)

狩人(コツを覚えたら釣りってメチャクチャ楽しいわー♪)

狩人(行ける……!)

狩人(この分なら、キッチンアイルーだって、オトモアイルーだって雇える様になる!)

     ボチャン!!

狩人「はいキター!!」



―――――――――――


昼頃

ふもと村 広場付近


     ガヤ ガヤ

女「あら、少女ちゃん」

少女「女さん」

女「どうしたの? 今日は狩りに行かなかったの?」

少女「ええ……欲しい素材のモンスター討伐依頼がなかったので」

女「そう」

少女「じゃ……」

女「…………」


女「あ、ちょっと待って、少女ちゃん」

少女「はい?」

女「お昼はもう済ませた?」

少女「済ませました」

女「そう……んーそれじゃあ」

女「食後のお茶でもどうかな?」

少女「お茶……ですか?」

女「まあぶっちゃけると、それは口実」 クスッ

女「たまには女の子同士、お話でもしない?と思って」

女「どうかな?」

少女「…………」



―――――――――――


ストア裏 女の家


女「どうぞー」

少女「お邪魔します」

女「ちょっと待っててね。 お茶を持ってくるから」

少女「はい」

     カチャ カチャ…

少女(…………)

少女(あ……あの服。 とっても可愛い)

少女(…………)

少女(……ハンターの私には必要のない物ね)


女「お待たせ~」

     コト…

少女「ありがとうございます」

女「んー硬いなぁ」

少女「え?」

女「そりゃ歳は、ちょ――っとだけ、離れてるけど」

少女「はは……」

女「できれば、もっと気さくに話してくれると嬉しいな♪」

少女「と、言われても……」

女「まあ急には無理よね」 クスッ

     ズズッ…


女「でさ、すっぱりズバッと聞くけど」

少女「はい?」

女「少女ちゃんて、狩人のコト好きなの?」

少女「んなっ!?」///

少女「ななな、何を言っ」///

女「わかりやすいなぁ~」

少女「~~~っ!」///

女「別に恥ずかしがる事じゃないよ、少女ちゃん」

女「狩人って、ダメなところたくさんあるけど……」

女「きっと少女ちゃんのコト、大事にしてくれると思うな」

少女「…………」


少女「女さんはどう思ってるんですか?」

女「私? んー……そうねぇ」

女「手のかかる弟、って感じかな」

少女「そうなんですか?」

女「だってダメだのハズレだのっていう噂を聞いて」

女「最初の出会いが3乙仕立ての姿で、まー子鹿みたいな泣きそうな顔してたし」

女「男としての魅力、これっぽっちも感じなかったんだもの」

少女「あはは……」








狩人「……っえくしっ!!」


女「けどね」

女「あいつ、前向きでさ」

女「どこか憎めなくて、応援したくなるのよ」

少女「…………」

女「そういうトコに少女ちゃんもやられたのかな?」

女「何て言うか、母性本能くすぐられた?みたいな?」

少女「私は……」

少女「……正直、よく分かりません」

女「分からない?」

少女「いい人だとは思います。 けど……」

少女「何て言うか……具体的に『どこ』に惹かれたのか」

少女「よく分からないんです」


女(んー♪ 初々しいなぁ♪)

女「そっか……」

女「よく分からないけど、好きなんだ?」

少女「そ、それは……そのっ……はい」///

女「あはは♪」

女「まあ好きになる人なんて、理由なんか無くても出来るものよ」

女「狩人は物件として、イマイチかもしんないけど」

少女「……そうですか?」

女「ごめん、悪気があるわけじゃないのよ?」

女「ただ、あいつ、人を信用しすぎて将来騙されそうな気がするのよねー」

少女(……分かる気がする)

少女(本人も言われた事を疑わずに……とか言ってたしなぁ)


少女「女さんはどうなんですか?」

少女「好きな人、居ないんですか?」

女「私かぁ……職業柄、いろんなモノ見ちゃったからねぇ」

女「少女ちゃんみたいに純粋な『好き』って気持ちになれないのよー」

少女「……もったいないですよ」

少女「女さん、とっても美人なのに」

女「うふふ、ありがと♪」

少女「ソロさんとか、かっこいいし」

少女「ハンターとしても一人前じゃないですか?」

女「んー……ソロさんねぇ」


女「あの人、なんかビビリだし」

女「私と一緒にいたら、ソロさんの方がまいっちゃうんじゃ無いかな?」

少女「ビビリって……」

女「あれ? 気が付いてない?」

女「あの人、誰かと話す時、目を合わせないか伏し目がちで話すの」

女「たぶん人嫌いじゃなく、人に怯えていると思う」

少女「そうなんですか?」

女「もちろん根拠も何もないけど」

少女「…………」

女「でもま、私だって結婚をあきらめてるとかじゃないんだよ?」

女「いい人がいればな、とは思ってるんだけどね……」 ハハハ…

少女「どういう人が好みなんですか?」

女「それがねー……いまいちよく分からないのよー」


女「そりゃね? お金持ってる人とか、経済的に潤っている人なら将来安心だけど」

女「それってなんか違うって思うし」

女「かといって、いくらかっこいい人でもその辺りがズボラなのは嫌だし」

女「だいたい若い人にそんな奴いるか!って話になるじゃない?」

少女「はあ……」

女「今のはちょっとした理想を言っただけだけど……」

女「自問自答しても答えが出てこないのよね」

少女「…………」

女「だから……さ」

女「私、少女ちゃんが羨ましいのかも」

少女「え?」


女「私もさ、少女ちゃんみたいに誰かを純粋に好きなって」

女「その気持ちに正直になって行動できたら……きっと幸せだろうなって」

女「考えちゃうの」

少女「…………」

少女「幸せ……ですか?」

女「うん! だって今の少女ちゃん、以前よりさらに可愛くなったんだもん」

少女「……そうですか?」

女「そうよ? いつもハンターの格好だけど」

女「たまにはさ……」

     ファサ…

女「こういう服を来て、狩人の奴をメロメロにしてみたらいいと思うな!」

少女「あ……」

少女「…………」


女「どうしたの? こういう服は嫌い?」

少女「いえ! 嫌いだなんて!」

少女「むしろ好きですよ!」

女「ふふ、でしょでしょ?」

少女「……でも」

女「ん?」

少女「…………」

少女「ハンター生活に必要のないものですから」

女「…………」

女「少女ちゃん」

少女「はい?」


女「何を言ってるの!?」

少女「はひっ!?」

女「こういうものはね、無駄とかじゃないの!」

女「女の子が女の子である為の必需品! 心の潤いを保つ為の清涼剤なのよ!」

少女「は、はあ。 心の……潤い?」

女「自分を可愛いなー♪とか思えるって、とっても大事なんだから!」

女「そうだ! そんなこと言うからにはお化粧とかも知らないでしょ!?」

少女「し、知らないです……」

女「あーもう! 気が付いて良かった!」

女「こうなったら、私が徹底的に女の子の嗜(たしな)みを教えてあげる!」

女「いいえ! 女子力をアップさせてあげるわ!」

少女「…………」

少女(どうしよう……断れそうにない)



―――――――――――


森丘 BC(ベースキャンプ)


狩人「っしゃー! これで黄金魚9匹目!」

狩人「一日で4500z(ゼニー)もの大金を稼げたぜ!」

狩人「…………」

狩人「……ここまで来たら、魚籠(びく:魚を一時保留するカゴの事)をいっぱいにしたいな」

狩人「次、釣れたら帰るとするかな!」

狩人「♪~」

     ザッ ザッ ザッ…

?????「……おや? 先客が居たのか」

狩人「え?」


?????「ほほう……随分とお若いの」

?????「隣、いいかな?」

狩人「え? ええ、どうぞ」

?????「ふふ、よっこらせっと……」

     ポチャン…

?????「ふう……」

狩人「…………」

狩人(……ここに来た、という事は)

狩人(このお爺さんもハンターって事か……)

?????「…………」

狩人「…………」


     ボチャッ! バシャバシャ…

?????「ほっ……もう来たか。 よっと」

     スルッ…

狩人「!」

狩人(う、上手い! それもあんなにあっさりと黄金魚を……)

?????「……お前さん、名前は何と言うのかの?」

狩人「え? ……狩人って言います」

?????「ほほう。 お前さんか、最近うわさの3乙ハンターとは」

狩人「……否定はしませんけど」

?????「ほっほっほ」

     ポチャン…


狩人「…………」

?????「…………」

狩人「あの……」

?????「何かな?」

狩人「あなたはハンターなんですか?」

     ボチャッ! バシャバシャ…

     スルッ…

?????「……ああ、いかにも」

狩人「なんていうお名前なんですか?」

?????「そうさな……老ハンターとでも呼んでくれ」

狩人「老ハンター……ですか」

老ハンター「ああ……さて、帰るとするかの」


狩人「え? 今来たばかりじゃないですか?」

老ハンター「ええんじゃ」

老ハンター「ワシのような老いぼれハンターはの」

老ハンター「日々を生き抜く糧があれば、それで十分じゃよ」

老ハンター「もうクックはおろか、ドスランポスすら狩れぬからの」

狩人「それなら……たくさん取って売れば、後が楽になるんじゃないですか?」

老ハンター「確かにな」

老ハンター「じゃが……毎回それができるかどうか分からぬし」

老ハンター「若い連中の邪魔はしたくないからの」

狩人「邪魔だなんて……」


老ハンター「お前さん……狩人と言ったか」

老ハンター「3乙ハンターなどと噂されるからには」

老ハンター「普通のクエで失敗ばかりしておるのだろう?」

狩人「…………」

老ハンター「ええんじゃ。 失敗は若い時にたくさんしておけばええ」

老ハンター「次の成功に繋げるために黄金魚をどんどん釣ればいい」

老ハンター「ワシはの……その邪魔をしたくないんじゃよ」

狩人「老ハンターさん……」

老ハンター「ふふ……無駄話をしてしまったな」

老ハンター「じゃが、無理はするでないぞ?」

老ハンター「3乙ができるのも運が良かっただけかもしれぬ」

老ハンター「再挑戦出来るうちは、1乙で撤退も考えておくとよかろうて」

狩人「……そうですね」


老ハンター「では、機会があれば また会おう。 狩人」

     テク テク テク…

狩人「…………」

狩人(……そうだ。 俺は元々契約料が欲しくて黄金魚を釣りに来ていた)

狩人(でも……いつの間にか)

狩人(お金を稼ぐって目的に変わってしまっていたんだ)

狩人(…………)

     ヒュッ… (糸)パシッ

狩人「…………」

狩人「終わりにしよう」

狩人「もう目的は達成しているんだから……」



―――――――――――


夕方

ふもと村 広場付近


狩人(とりあえず、当分は安心だ)

狩人(……その前に3乙しないように頑張らないとな)

狩人(…………)

女「狩人!」

狩人「え?」

狩人「女? 何か用?」

女「今あんたの家に……ってそこはどうでもいいわ」

女「とにかく、付いてきて!」


狩人「どこに行くんです?」

女「私の家よ」

狩人「はあ?」

女「いいから!」


―――――――――――


ストア裏 女の家


女「じゃ、ちょっと待ってて!」

狩人「はあ……」

狩人(いったい何なんだ?)


     ホラホラ ショウジョチャン!

     ヤ、ヤッパリ……ダメデスヨッ!

狩人(……ん? 少女も居るのか?)

狩人(何なのだろう?)

     バッ!

少女「ひゃ……」///

狩人「」

女「んふふ~」

女「どう? 狩人?」

少女「…………」///

狩人「…………」




     そこに居たのは、いつもの少女じゃ無かった。

     綺麗に下ろされた黒髪。

     赤を基調とした可愛らしいデザインの長袖服。

     普段ズボンだからか、やけに新鮮に見えてしまうスカート姿。

     そして……化粧?とかいうやつだろうか?

     顔まで違って見える。

     それも『可愛い』じゃなく、大人の雰囲気を漂わせている感じで

     何故かドキリとさせられてしまう……




狩人「えっと……」///

少女「う、うん……」///

狩人「とても……綺麗だな、少女」///

少女「!」///

女「うんうん♪」

狩人「というか、どうしたんだ? いきなり?」

少女「説明すると長くなるんだけど……」

少女「まあ……気分的なモノだと思って」///

狩人「そっか……女の子だもんな」

狩人「とっても似合ってるよ。 びっくりした」

少女「そ、そう……ありがとう」///

女「…………」

狩人「それでさ、ちょっと聞きたい事があるんだけど」

少女「え?」


狩人「ゲリョスっていうモンスターに手こずっていて……」

少女「ああ、それなら毒対策は必須よ」

狩人「それは身にしみてよくわかったよ……」

狩人「閃光はどう対処すればいいんだ?」

少女「いくつか方法はあるけど……例えば」

狩人「ふむふむ」

女「…………」

少女「って感じかな」

狩人「なるほど、罠を使うのか」

少女「でも気をつけて」

少女「ゲリョスにシビレ罠は通じないから」

狩人「あぶねぇ……思いっきり用意しようと考えてしまった」

少女「もう……」 クスッ


女「…………」

女(……んーこれは)

女(何て言うか、腹が立ってきたかも)

女(…………)

     ……デ、テールアタックハ

     アレキツインダヨナ……

女(…………)

女(……ふふ、でも)

女(少女ちゃん、楽しそうだし)

女(ま、いっか!)



―――――――――――


狩人の家


狩人「は~……疲れた」

狩人「でも少女の説明はわかりやすいし、ありがたい」

狩人「本当に参考になるなぁ」

狩人「…………」

狩人(……少女)

狩人(綺麗だったなぁ……)///

狩人(どうしてあんな格好してたんだろう?)

狩人(ああしていると、やっぱり女の子なんだなって思う)

狩人(普段もけっこう誰彼かまわず声かけられているしな)

狩人(あの格好で出歩いたら、男どもが放っておかないだろうなぁ……)

狩人(…………)



―――――――――――


少女の家


少女「…………」

少女(……狩人、綺麗だって言ってくれた)///

少女(うふふ)///

少女(…………)///

少女(……けど、結局いつもモンスターの話になる)

少女(…………)

少女(まあ……狩人らしいよね) クスッ

少女(…………)

少女(心の潤い……か)

少女(…………)

少女(少しくらいなら……いいかも)///



―――――――――――


翌日の朝

ふもと村 広場付近


女「あら、狩人」

狩人「女? こんな時間に仕入れに行くの?」

女「うん。 今回はすぐ近くの草原村だからね」

女「上手く行けば、日帰りで済ませられると思って」

狩人(草原村……森丘に近い場所にある村だ)

狩人(森丘は俺たち村付きハンターも日帰りができて、非常にありがたい)

狩人「そっか」


女「狩人は? また密林?」

狩人「ゲリョスにリベンジしたいけど……」

狩人「依頼が無かったら雪山のクエにしようと思ってる」

女「そう。 やっぱり少女ちゃんと行くの?」

狩人「少女には世話になってるけど、いつも一緒ってわけじゃないよ」

狩人「できれば他のハンターと組んで、色々と慣れていきたいし……」

女「そういうのも少女ちゃん込みでやればいいんじゃない?」

狩人「それが……少女の奴」

狩人「他のハンターを待とうとすると、早く行こうって急かすんですよ」

狩人「どうせ待ってても誰も来ないって、グサリと突き刺す事も言うし……」

女(……少女ちゃん。 意外と独占欲が強いのね……)

女「ふ、ふぅん。 そうなんだ」


女「まあ、そういう事なら狩人の自由にすればいいかな」

女「怪我をしないようにね」

狩人「ああ、頑張るよ」

狩人「女も気をつけてな」

女「うん!」

女「それじゃ、またね!」



―――――――――――


雪山


狩人「ふう……」

狩人(……ゲリョスは依頼されてなかった)

狩人(ドスファンゴ討伐依頼を受けて、雪山にいる)

狩人(今なら難なく倒せるだろうけど油断は禁物)

狩人(心して取り掛かろう)

狩人(…………)

狩人(とか言いつつ、ツチハチノコ(ハチミツ)や鉱石採取しておこうとか思ってるし)

狩人(まあとにかく、油断はしないで取り組もう。 うん)



―――――――――――


夕方

ふもと村 集会所


狩人(ふう、無事に終わって返って来た)

狩人(採取でちょいと時間を食ったが……)

     ガヤ ガヤ

狩人(……ん?)

狩人(妙にざわついているな?)

狩人(何かあったのか?)


狩人「あのー」

受付嬢「はい?」

狩人「妙な雰囲気ですけど……何かあったんですか?」

受付嬢「それがですね……」

受付嬢「このふもと村に近い草原村がティガレックスに襲われたそうなんです」

狩人「え!?」

受付嬢「現在、詳しい情報を集めているところでして」

受付嬢「ギルド観測所に問合わせているのですが、詳細はわかっていません」

狩人「…………」

狩人「なんて……事だ……」




     普段、人の住む集落にモンスターは襲いかかったりしない。

     だが、縄張りを追われたり、ものすごい飢餓状態に晒されたりすると

     猟区外へ来てしまったりする……


     ティガレックスは、特にそれが顕著なモンスターで

     厄介な事に『轟竜』と呼ばれるほど強く

     気が荒い事でよく知られている飛竜だ。


     たまに小さく、下位モンスターと認定される時もあるが

     大抵は上位扱いの大型肉食モンスターに分類される。

     女……どうか、無事でいてくれ……!



という所で今日はここまでです。



―――――――――――


遡る事、数時間前

草原村 正面入口


女「こんにちは」

草原村人「やあ、女ちゃん」

草原村人「今日はこんなに早く来たのか。 珍しいね」

女「ええ、日帰りで済ませられるかと思って」

草原村人「なるほど」

草原村人「それじゃ、俺は野良仕事に出るから」

女「はい」


女「さて、まずは縫製の品物ね」

―――――――――――

女「どうもーふもと村ストアの女です」

草原店主「ああ、女ちゃん。 いらっしゃい」

女「こちらが頼まれていたドンドルマ産のゼニマスの干物になります」

女「他にも野草やきのこ類の乾物も入ってますよ」

草原店主「ありゃりゃ……こんなに早く届くとは思ってなかったなぁ」

草原店主「こりゃ物々交換だけじゃ済まないね」

草原店主「ちょっと待っててくれ、お金を取ってくるから」

女「はい、ごゆっくり~」

女「…………」

女「……ん?」





     チクショウ… チクショウ…

     アイツメ…… オレノナワバリ アラシヤガッテ……!

     ユルサナイ…… ユルサナイ…… ゼッタイユルサナイ……!

     アンナヤツ ハライッパイナラ ナンナクコロセル

     クイタイ…… クイタイ……

     クッテ クッテ クイマクッテ

     アイツヲブチノメス!!





女「あ……あ……」



     ヒュ―――――……



女「まさか……そんな……」

草原店主「お待たせ、女ちゃん……ん?」

草原店主「どうしたんd」



     ド   ズ   ン   ッ  !!



草原店主「」











     ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!











草原店主「う、うわあああああああああああああっ!!?」

草原住民「ティ、ティガレックス!?」

草原住民「に、逃げろ! 逃げろ――!!」

草原女「いやああああああああっ!!」

草原子供「ままぁ――!!」

草原男「ハ、ハンターは!? ハンターを呼べぇぇぇぇっ!!」


     ワー ワー  ギャー ギャー

     ドズッ! グチャ!!  ドゴォッ!!


女(逃げないと……逃げないとっ!)

女(………っ!)

女(あ、足が……すくんで……!)

     グルルル……

女「ひっ……!」










     ド   ガ   ア   ッ  !!











―――――――――――


ふもと村 集会所


ロートル「狩人! 良かった、ここに居たか」

狩人「ロートルさん!」

ロートル「近隣の村がティガレックスに襲われた話は聞いたか?」

狩人「はい、たった今」

ロートル「よし」

ロートル「今、村長が村の住民に呼びかけて、救援に向かう準備をしている」

狩人「!」

ロートル「手の空いている者、総出で事に当たるのだが」

ロートル「相手はあの轟竜ティガレックスだ」

ロートル「安全の為、俺は先発隊として草原村に向かうが、狩人」

ロートル「できれば、お前にも手伝ってもらいたい」


狩人「」

狩人「ええ!?」

狩人「で、でも、俺のHRはまだ低くて上位モンスターとは……」

ロートル「それはわかっている。 ティガとは俺が戦うが」

ロートル「狩人には、救援隊の護衛を行ってもらいたい」

ロートル「夜間だし、道中にはランポスが時々出る」

ロートル「やってくれないか?」

狩人「…………」

狩人「分かりました」

狩人「俺でいいのなら、やります」

ロートル「クエ帰りで疲れているところ、すまん」


ロートル「少女にも頼んであるから、彼女に必要な物を聞いて準備してくれ」

ロートル「終わったら広場へ集合だ」

ロートル「ソロには念の為、ふもと村に残ってもらう」

狩人「分かりました。 準備でき次第、広場へ行きます」

ロートル「頼むぞ」

     タッ タッ タッ…

狩人「…………」

狩人「急がないと!」


―――――――――――



少女「狩人!」

狩人「少女!」

少女「ロートルさんから話は聞いたわね?」

狩人「ああ」

少女「これ、必要なものをメモに書いてまとめておいたわ」つ(メモ)

狩人「……え?」

少女「全部は無理でも、集められるものは できるだけ持って行きなさい」

少女「いい? ほら、早く受け取って!」つ(メモ)

狩人「あ、ああ……」つ(メモ)

少女「時間はまだ少しあるわ。 焦らずにね! じゃ……」

     タッ タッ タッ…

狩人「…………」



―――――――――――


広場


     ガヤ ガヤ

少女「狩人!」

狩人「すまん! 待たせたか?」

少女「いいえ、大丈夫よ」

村人「えー、お集まりの皆さん、忙しいところ集まっていただき感謝します」

村人「今回の救援隊、臨時リーダーを務める事になった、村人です」

村人「まだ詳細はわかりませんが、多数の負傷者が出ているみたいです」

村人「手当の心得がある人は、重点的に……」


狩人「ロートルさんは?」

少女「とっくに出発したわ」

少女「上位ハンターの足なら、かなり早く草原村に着けると思う」

狩人「そうか……」

狩人「こっちはどれくらいに着ける?」

少女「そうね……たぶん夜中すぎくらいかしら?」

狩人「……思ったよりかかるな」

少女「しょうがないわ。 夜の上、ポポ荷車に一般の人たちの足だから……」

狩人「…………」

少女「……どうしたの?」

狩人「ん? いや、何でもないよ」

少女「?」




     …………

     いつか打ち明けないといけない事が俺にはある。

     だけど……今は、時間がない。



     不安を抱えたまま、俺は

     救援隊と共にふもと村を出発した。




※注 それぞれの装備


ロートル(HR 6)

武器:双剣
防具:ゲリョスS装備一式


狩人(HR 2)

武器:大剣(フルミナントソード)
防具:フルフル装備一式


少女(HR 3)

武器:ライトボウガン
防具:ガンナー用ザザミ装備一式



―――――――――――




街道


     ザッ ザッ ザッ…

狩人「…………」

狩人「……思ったより暗くないな」

少女「今夜は雲も少ないし、半月だけど月明かりもあるからね」

少女「それよりも狩人」

狩人「ん?」

少女「どうして大剣を持ってきたの?」

狩人「え……そりゃあティガがこっちに来るかも知れないと思って」

少女「確かにその可能性はあるわ」


少女「でもこういった場合のモンスターは」

少女「用事が済めば、大抵もとの住処に戻っていくものなの」

狩人「用事?」

少女「……お腹いっぱいになったら、と言った方がいいかしら?」

狩人「…………」

少女「それに草原村の村付きハンターが倒している可能性も高いと思う」

少女「一度人間のテリトリーに入り込んだモンスターは、味をしめて」

少女「また同じように村を襲う事がよく知られているから……必ず倒さないといけない」

狩人「…………」

狩人「詳しいな」


少女「……だから今回に限り」

少女「私たちは救援隊の護衛に専念すべきよ」

少女「相手にするのは小型のものを主と考えて武器を選ぶべきだったと思う」

狩人「……すまん」

少女「ううん……ティガの遭遇に備えるのは悪くないわ」

少女「でも今回、目的は『モンスターを倒す事』じゃ無いという事」

少女「大剣を振るうのなら、周りに気をつけてね」

狩人「ああ」

少女「それから……」

少女「こうやって、私たち護衛がひと固まりにまとまって歩くも良くないわ」

狩人「! ……そうだな」

狩人「俺は左の方を歩く」

少女「ええ、任せるわ」

少女「お互い、頑張りましょう」



―――――――――――


草原村


     アア…… ウウ……

     ミズヲ……ミズヲクレ……

ロートル「これは……酷いな」

ロートル「誰か! 村長は居ないか!?」

ロートル「代理の責任者でもいい!」

ロートル「ふもと村の村付きハンター、ロートルだ!」

ロートル「今、救援隊がこちらに向かっている!」

     ザワッ!!

草原村人「救援!? 本当か!?」


ロートル「ああ、今、こちらに向かっている」

ロートル「おそらく夜中くらいに着くだろう」

草原村人「おお……!」

ロートル「村長は? それとここの村付きハンターにも話を聞きたい」

草原村人「わかりました。 案内します」

ロートル「頼む」

―――――――――――

ロートル「」

ロートル「何だと!? 仕留め損なった!?」

草原ハンター「すまん……」

草原ハンター「あと一歩というところだったんだが……逃げられた」


ロートル「くっ……」

ロートル「どっちに逃げたかわかるか?」

草原ハンター「ペイントもしていなかったし、うろ覚えだが」

草原ハンター「たぶん……北の方角だと思う」

ロートル「っ!!」

草原ハンター「ここはアプトノスばかりで、奴の好物のポポが少ないからな……」

草原ハンター「おそらく雪山にでも行ったのだろう」

ロートル「……わかった」

ロートル「後の事は俺たちに任せて休んでてくれ」

草原ハンター「すまん……」


ロートル「…………」

ロートル(こうしてはいられない……草原ハンターは優秀な上位ハンター)

ロートル(満足な準備ができなかったとしても……)

ロートル(ただのティガに遅れを取るハンターではない)

ロートル(それが仕留め損ねた……間違いなく上位クラスか、それ以上のティガだ!)

ロートル(狩人たちの救援隊に襲いかかったら……!)

ロートル(くそっ!!)

     ダッ!!


―――――――――――





     アアアアアアアア……

     イタイ  イタイ  イタイ


     ジャマサレタ…… チイサイ イタイノ フリマワシテ

     ユルサナイ  ユルサナイ…

     オレノナワバリアラシタ ヤツモ チイサイノモ

     ユルサナイ


     ポポクッテ タクサンクッテ コロシテヤルッ

     スコシヤスンデ コロシテヤルッ!






     ……ン?

     クンクン……

     …………



     ポポダ! ポポノニオイガスル!

     ポポクッテ タクサンクッテ アイツモ チイサイノモ

     ブチノメシテヤルッ!!





―――――――――――


街道


     ザッ ザッ ザッ…

狩人「…………」

少女「…………」

狩人(今のところ、静か……だな)

少女(このまま順調であって欲しいわね……)


     ヒュ―――――……


狩人(何事も起きてくれるなよ……)

少女(……草原村まであとどのくらいかしら)









     ド   ズ   ン   ッ  !!








少女「」

狩人「」

村人「」

救援隊一同「」










     ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!










村人「う、うわああああああああああああっ!?」

     ワー! ニゲロー! クワレルッ!

少女「くっ! み、みんな! 落ち着いて!」


     ドスッドスッドスッ!


少女「ひっ!」

狩人「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


     ドガァ!!

     ギュアアアアアアッ……!!


狩人「はあっはあっはあっ……大丈夫か!?」

少女「狩人! ……ごめん、助かったわ」




     オオオ…… イタイ……

     ココニモ

     チイサイ イタイノ フリマワス チイサイノ イル

     ……ジャマスルナ





     グルルル…


狩人「はは……すげぇ迫力だな……」 ブルブル…

少女「一番起きて欲しくない事が、起きてしまったわね……」

狩人「……どうする? 俺たちでやれるか?」

少女「…………」

少女「…………」 カチャ カチャ…

少女「……私に考えがある」 ジャキン!


     ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!


狩人「くそっ、またきた!」

少女「くっ……!」









     ポポ クウノ……



     ジャマスルナッ!!










     ドスッドスッドスッ!


狩人「!」

狩人(俺狙いか!)

狩人(ちっ……避けられそうにない!)

狩人「くそっ!!」(防御姿勢)


     ガシィッ!!


狩人「がっ……!!」

狩人「ぐっ……くっ……」 ビリビリビリビリッ!!

狩人(……受け流すよう角度つけて防御したのに)

狩人(それでもダメージが入って……くそっ!)

狩人(こんなの少女がまともに食らったら……!)



     ダンッ! ダンッ! ダンッ!


狩人「! 少女! やめろ!」

狩人「ガンナー装備のお前じゃ……!」


     ギィアアアアアアッ……!!

     クウウウウウゥゥゥ…… zzz


狩人「!?」

狩人「な、何だ? 寝ちまったのか?」

少女「狩人!」

狩人「少女、一体何をしたんだ?」


少女「全部を説明してる時間がないから、必要な事だけ言うわ」

狩人「……わかった」

少女「とりあえず眠らせただけ。 すぐ起きる」

狩人「!」

少女「でも逃げた人たちは、少なくともこのティガに追いかけられる事はもうない」

少女「ティガの狙いは、おそらく荷車を引いてたポポ」

狩人「! じゃあ俺たちはポポを囮にして逃げ……」

少女「……たぶんダメ。 私たちはティガの視界から逃れられない」

狩人「!!」

少女「で、これからどうするか、だけど……」

少女「狩人、罠は持ってきた?」

狩人「ああ、この前の残りの落とし穴罠を持ってきた」

少女「今すぐ、そこに仕掛けて」


狩人「わかった」

     カチャ カチャ…

少女「……ここからは、イチかバチかよ」

少女「あのティガを……捕獲する」

狩人「!!」


     捕獲! その手があったか!

     罠を仕掛け、その際に浸透性の高い特殊な麻酔をかけ

     モンスターを生け捕りにするやり方だ。

     ただ……それにはいくつかの条件が前提になる。





     理屈は分からないが、今、少女がティガに撃った

     睡眠系のモノとは全く別系統の麻酔らしく

     モンスターが罠にハマり

     それに気を取られている内に仕掛けないと効果は望めない。



     もう一つ……これが相当に厄介なのだが

     モンスターを死なない程度に弱らせる必要があるという事。



     この見極めが非常に難しく、モンスターが足を引きずるとか

     そういう明確なサインがあれば仕掛けやすいのだけど……

     それを見ずに捕獲をしようとすると、失敗するリスクも高くなってしまう。




狩人「足を引きずっていたのか!?」

少女「見てないわ」

狩人「…………」

少女「でも……ティガの体はどこも傷だらけ」

少女「草原村のハンターと相当やりあった証拠でもある」

狩人「…………」

少女「……けど、こうなる可能性を私、低く見てたから」

少女「前の残りで たまたま持ってた麻酔弾は、たったの二発……」

少女「ギリギリ一回分しかない」


狩人「……そうだな」

少女「失敗したら、あとは死に物狂いで戦うのみよ」

少女「私たち下位の装備でどこまでやれるか……でも」

狩人「ああ……わかっている」

狩人「最後の最後まで……あがいてやるさ!」


     グルルル…


少女「……起きたみたいね」

狩人「……その様だな」


     ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!


狩人「くっ……!」

少女「うっ……!」


少女「まずは私たちを囮にして、罠に誘い込むわよ!」

狩人「わかった!」


     ズシャァッ!!


狩人「!?」

少女「!?」


     しかしティガの方は、それを見越してか

     その巨大でたくましい右腕を振るい、地面をえぐり

     そのままの勢いを付け、巨大な土の塊を

     こちらに向かって押し出してきた……!


狩人「あんな攻撃ありかよっ!?」(防御姿勢)

少女「くっ……!」(しゃがみ姿勢)



     ドガァッ!!


狩人「ぐおっ……!!」 ビリビリビリビリッ!

少女「狩人!」


     防御ごと俺は後ろへ弾き飛ばされ、尻もちをつく……!


狩人「……くそったれっ!」

少女「もう一発くるわ!」

狩人「うおおおおおっ!」



     しかし大剣を出しっぱなしじゃまともに動けない!

     背中に背負う暇も もちろんない。

     やむを得ず、俺は地面を転がるようにティガの土投げ?を回避する!


     ゴウッ!!


狩人「あ、あぶねぇ……!」


     巨大な土の塊が俺の頭のすぐ隣を通り過ぎていった。


狩人「少女、大丈夫か!?」


少女「はあっはあっはあっ……」


     少女の息が荒い……

     俺だってまともに喰らえば、死ぬかもしれないあの攻撃……

     通常の半分しかない防御力であるガンナー装備の彼女は

     避けられなければ間違いなく即死だ。

     その緊張は極限にまで達しているだろう……


狩人「ちくしょう! この野郎! 早く俺を食いに来い!」

狩人「このチ○カス! デベソ! ええと……腐れマ○コ!」


     俺は、大剣を背中にしまいつつ

     思いつく限りの悪口を大声で言い、ティガの気を引く。




     ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!


狩人「!!」


     想いが通じたのか

     俺に向かって突進してくるティガ!


狩人「くっ……そおおおおおおおっ!!」


     きびすを返し、罠の落とし穴へと誘うため全力で俺は走った!

     頭で分かっていても正直、生きた心地がしねぇ!


狩人(少女! あとは任せるぞ!)


少女「……!」 スチャッ…


     少女はライトボウガンを構え

     罠の上あたりに照準をつける……!


少女(お願い……! 大人しく捕獲されて!!)



     ズ  ボ  ッ !!


     ギィアアアアアアアアッ!



狩人・少女「かかった!」


     ドウッ! ドウッ!




     ビシッ! バシッ!


少女「よし! 命中!」

狩人「……!」


     だが……喜んだのも束の間

     ティガは相変わらず、罠から脱出しようともがいている!

     失敗だ……まだ、捕獲できるほど弱っていないんだ!


少女「……そ……そん……な」

狩人「くっそおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

     ダッ!!

少女「狩人!!」




     ……この時の俺は

     はっきり言えば、やけくそになっていた。

     深い考えがあってティガに向かって行ったわけじゃない。



     ただ……どうせ死ぬのなら

     ティガの野郎に一矢報いてやる!というような

     そういう気持ちで大剣を振り下ろしただけ。



     それだけだった。





     ドガァ!!


狩人「ちくしょおおおおおっ!」


     ザクッ!! ズガァッ!!


狩人「死んでたまるかっ……死んでたまるかぁっ!!」


     ドズッ!! ズシャアッ!!


狩人「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


     ザシュッ!!



少女「……え?」


     クウウウウウゥゥゥ…… zzz


狩人「はあっ……はあっ……はあっ」

狩人「はあ……はあ……」

狩人「…………」

狩人「……え?」


     スピー…zzz  スピー…zzz



狩人「…………」

少女「…………」

狩人「……寝ている?」

少女「……捕獲できた?」

狩人「…………」

少女「…………」

狩人「何で……?」

少女「さっきの狩人の一撃で、捕獲できる状態になった……のかも?」

狩人「…………」

少女「…………」


狩人「はああああああああああああっ……」 ドサッ…

少女「ふう……」 ストンッ…

狩人「…………」

少女「…………」

狩人「…………」

少女「…………」

狩人「……くくっ」

少女「……ぷっ」

狩人「はははは……」

少女「ふふふふ……」


     アハハハハハハ……!





     とりあえず助かった、という安堵感と

     いまいち腑に落ちない達成感を感じた俺と少女は

     その場にヘタリこみ……




     何故か、笑いがこみ上げて

     止まらなくなったのだった。







―――――――――――


数時間後の夜明け前

草原村 臨時集会所


ロートル「……それにしても驚いたぞ」

ロートル「まさかあのティガを捕獲している、なんてな」

狩人「……俺たちの手柄じゃないですよ」

少女「ここの……草原村のハンターがダメージを与えてくれてなかったら」

少女「私たちは生きて、ここにいませんでした」

ロートル「そうか……だが、とっさの判断としては正しかったと思うし」

ロートル「運も実力の内、という言葉もある」

ロートル「お前たちは立派に仕事をした。 誇っていいと思うぞ」


狩人「ははは……」

少女「草原村……だいぶ酷い状況みたいですね」

ロートル「ああ……」

ロートル「死傷者はおよそ50人」

ロートル「死者は20人を下らないそうだ」

少女「…………」

狩人「……そうですか」

ロートル「ともかく、疲れているだろう」

ロートル「不幸中の幸い、侵入ティガはお前達が捕獲してくれた。 安心して休んでくれ」

少女「そうですね……」

狩人「そうします……」



―――――――――――


仮設テント


女「!」

女「狩人! 少女ちゃん!」

狩人「女!?」

少女「女さん!」

狩人「無事だったか……良かった」

女「うん……生きた心地しなかったけどね」 ブルルッ…

女「それにしてもあのティガ、捕獲したんだって?」

女「すごいじゃない!」


狩人「ははは……」

少女「普通に相手をしていたら、たぶん私たち死んでいますよ……」

女「なら、なおさらすごいじゃない!」

狩人「それがなぁ……さっきロートルさんにも言ったんだが」

狩人「ここ……草原村のハンターが、かなり追い詰めていてくれたから、なんだよ」

女「あー……なるほど、そういう事か」

女「でも、それでも十分すごいよ」

狩人「俺一人じゃ間違いなく死んでたと思う」

少女「それは私も同じよ。 狩人が居なかったら、きっと死んでたわ」

少女「ロートルさんも言ってたけど、運が良かった」

女「そっか……」

女「おっと、ここには休みに来たんだよね?」


狩人「ああ」

少女「本当に疲れました……」

女「ごめん、また後で話をしましょう」

女「ゆっくり休んでね。 あ、女の子はこっちのカーテンの向こう側ね」

少女「はい」

―――――――――――

狩人「…………」

狩人(……横になったらすぐ眠れると思ったが)

狩人(作業をする周りの声とか、音とかが気になってなかなか寝付けない)

狩人(…………)


狩人(……あれがティガレックスか)

狩人(ものすごい衝撃の攻撃だった)

狩人(…………)

狩人(上位に上がったら……あんなのを相手にしないといけないんだな)

狩人(…………)


     あの時の重い衝撃の感触……

     今も手に残っている。



     憧れていたハンターの姿が

     どこか、遠のいてしまった気がした……





―――――――――――


同日の昼頃

仮設テント付近


狩人「ふあ……」

狩人「……ふう」

狩人(…………)

狩人(腹が減ったな……)

狩人(…………)

狩人(……こんな状況だけど、飯を頼むか)



―――――――――――


仮設食堂


     ガヤ ガヤ

狩人「いい匂いだ……」

狩人「あのー……俺も何かもらっていいですか?」

草原村人「ああ、構わないよ」

草原村人「お? あんた、ふもと村のハンターか!」

狩人「ええ」

草原村人「あんた達が、あのくそったれティガに止めを刺してくれたんだってな」

草原村人「かたきをとってくれてありがとう。 感謝してる」

狩人「いえ……」

草原村人「さあ、大したもんはないが、遠慮なく食ってくれ!」



―――――――――――


狩人「ふう……満腹だ」

狩人「…………」

狩人「これから……どうすればいいのかな?」

狩人(勝手に帰るわけにはいかないだろうし)

狩人(ここの復興を手伝う?)

狩人(う~ん……)

狩人(…………)

狩人(とりあえず、ロートルさんを探そう)


狩人(……ん?)

狩人「!!」

     タッ タッ タッ

狩人「あの!」

草原男「ん? なんだい?」

狩人「その荷車で運ばれている人って……」

草原男「ああ……さっき息を引き取ったんだ」

草原男「腹の傷が深かったし……相当な爺さんだしな」

狩人「…………」

     俺は……この人に見覚えがあった。

狩人「老ハンターさん……」

草原男「老ハンター? 違うよ、そんな名前じゃない」

草原男「こいつはグランドって名前で、老いぼれたお荷物ハンターだよ」

狩人「……え?」


草原男「昔は名うてのハンターだった様だが……」

草原男「いつまでも村付きハンターを止めなくてな」

草原男「村としても昔の恩があるし……面と向かって引退しろとは言い辛くてな」

草原男「他に身寄りもなく、ズルズルと居着いてて困ってたんだ」

狩人「…………」

草原男「たまに採取クエを受注して、細々とやっていたみたいだが」

草原男「それだけじゃねぇ……」

狩人「…………」

狩人「……埋葬するんですか?」

草原男「ああ、無縁墓地に他の遺体とまとめてな」

狩人「…………」



―――――――――――


夕方

草原村 共同墓地


     ザッ…  ザッ…

少女「狩人、探したわよ」

女「こんなところに居たの」

狩人「……ああ」

ロートル「墓を作っていたのか?」

狩人「はい。 ……うんしょっ、と」

     (大きめの石)ドサッ…

狩人「ふう……」

ロートル「知り合いだったのか?」


狩人「そうですね……でも、深くは知りません」

狩人「少し話をした程度なんです」

ロートル「……なのに墓を作ってやったのか」

狩人「はは……その通りです」

狩人「自分でも何故、そうしたのか……分かりません」

ロートル「…………」

女「名前は何ていうの?」

狩人「グランド、という名前だって」

ロートル「グランド? ……知らないな」

狩人「そうですか……ロートルさんでも知らないハンターなんですね」

ロートル「ハンターだって?」

ロートル「しかし……草原村の村付きハンターは、草原ハンターしか知らないが」

狩人「……もう一人居たんです」

狩人「採取クエで細々と生計を立てていた老人の村付きハンターが」

ロートル「…………」

少女「…………」

女「…………」

ロートル「……同情か?」

狩人「多分違います」

ロートル「ほう?」

狩人「……もちろん詳しい事情なんて知りませんけど」

狩人「最後の最後まで現役ハンターとして、今日まで生き残ってきた」

狩人「……そうそうできる事じゃないと思います」

女「狩人……」


狩人「そんな彼が、敬意も払われず葬られるなんて……」

狩人「なんか……嫌でした」

少女「…………」

ロートル「…………」

ロートル「そうか……」

ロートル「なら、この墓標には、お前が名を刻んでやれ」

狩人「え!?」

ロートル「きっとグランドとやらも、それを望むだろう」

狩人「い、いや……俺は……その、字が汚いし不器用なので」

ロートル「じゃあ、俺も手伝おう」

ロートル「自慢じゃないが俺の字は綺麗だと、よく言われるんでな」

ロートル「それの上をなぞって刻むといい」


狩人「!」

狩人「ええ、お願いします、ロートルさん」

ロートル「なに……俺も同じハンターとして、このハンターを弔(とむら)ってやりたい」

ロートル「その手伝いができるのなら光栄だ」

少女「…………」 クスッ

女「…………」 クスッ

―――――――――――

狩人「ふう……」

ロートル「なんだ、不器用とか言ってたわりに上手く刻めたじゃないか」

狩人「ははは。 クエより神経使ったかもしれません」

ロートル「ははは! ……では、我々の村へ帰るとするか」

狩人「はい!」





     俺たちハンターと、女は

     グランドさんの墓に一度手を合わせたのち

     様々な村からの救援隊到着の姿を見届け

     草原村を後にしたのだった……






―――――――――――


深夜

ふもと村 ソロの家


ソロ「……そうか、G級のティガだったのか」

ロートル「ああ……詳しく調べてみないと、とは言っていたが」

ロートル「ギルド観測所の職員は、ほぼ間違いない……とな」

ソロ「ふふ……お互い先をこされたな」

ロートル「半日近くG級とやりあった、草原ハンターを褒めてやれよ」 クスッ

     ハハハ…

ソロ「……で?」

ソロ「こんな夜中に俺の家を訪ねた理由はなんだ?」

ロートル「……ああ、それなんだが」

ロートル「一つ、腑に落ちない事がある」


     コポコポコポ…

ロートル「…………」 グビッ

ロートル「ふう……」

ソロ「…………」

ロートル「……今回のティガ」

ロートル「どこから飛来したと思う?」

ソロ「……通常なら火山か砂漠のあたりだと思うが」

ロートル「それは俺も考えた」

ロートル「しかし……ティガは跳躍して滑空するタイプの飛竜だ」

ロートル「飛行距離はレイアやレウスより短いが……」

ロートル「火山や砂漠からの飛来なら直接雪山まで行けるのに」

ロートル「なぜ森丘に近い草原村に降りたんだ?」


ソロ「ふむ……猟区からすれば不自然さはないと思うが」

ソロ「たまたま降りただけかもしれないし……」

ソロ「腹が減ってとりあえず、という意味合いで草原村に降りただけかもしれん」

ソロ「森丘は今、リオ夫婦のシーズンだから近づきたくなかったので手前で降りたとか」

ロートル「ありえそうな仮説だな」

ロートル「だが、森丘に奴の好物のポポはいない」

ロートル「ティガが直接目指すのに森丘は不自然だと思う」

ソロ「……何が言いたい?」

ロートル「…………」

ロートル「あくまで推測だが」

ロートル「雪山まで直接行けないくらい弱っていた、と仮定したらどうだ?」


ソロ「バカな……」

ソロ「確かにそれならしっくりくるが、G級のティガだったのだろう?」

ソロ「そんな奴を飛行距離まで短く、弱らせる事ができるモンスターなんて……」

ソロ「!!」

ロートル「……俺の言いたいことがわかったか?」

ソロ「い、いや、しかし……」

ソロ「いくらなんでも」

ロートル「こう言ってはなんだが……」

ロートル「G級ティガなのに優秀とはいえ、準備不足の草原ハンターが渡り合えた」

ロートル「G級ハンターでもない、俺たちと同じ上位ハンターのな」

ソロ「…………」


ロートル「となると……これはそう考えるしかない」

ロートル「あのG級ティガは……」

ロートル「『何か』にコテンパンにされて住処を追い出されたんだ」

ソロ「……G級ティガをボコれて」

ソロ「さらに砂漠か火山に出没するモンスターとなると……」

ロートル「G級のグラビモスやディアブロス」

ロートル「もしくは……古龍」




ロートル「テオ・テスカトル……だな」





という所で、今日はここまでです。
お付き合いありがとうございました。



―――――――――――


数日後の午前中

ふもと村 集会所


狩人「え? 受け取っていない報酬?」

受付嬢「はい」

受付嬢「狩人様と少女様が共同で捕獲した、G級ティガレックスの報酬です」

狩人「」

少女「」

     ザワッ……!

狩人「ちょ、ちょっと待ってください!」

受付嬢「はい?」


狩人「あれは俺たち、ほとんど何もしていなんですよ!?」

狩人「偶然襲われたから最後に罠張って、捕獲しただけで……」

狩人「報酬を受け取るべきなのは、数時間かけてダメージを与えた」

狩人「草原ハンターさんですよ!」

少女「それにG級!?」

少女「あのティガって、G級だったんですか!?」

受付嬢「落ち着いてください、順を追って説明しますので」

狩人「…………」

少女「…………」

受付嬢「まず、ギルドの仕組みとして」


受付嬢「今回のティガレックスは、ギルド観測所により正式にG級と認定されました」

受付嬢「また、今回の捕獲は『緊急クエスト』と同義として扱われます」

狩人「…………」

少女「…………」

受付嬢「次に報酬ですが」

受付嬢「先ほどあなた方が言っていた通り」

受付嬢「草原ハンターさんが主にダメージを与えていたとしても」

受付嬢「捕獲したのはお二人の手柄であり、お二人が居なければ」

受付嬢「G級ティガによる被害は拡大の恐れがありました」

狩人「…………」

少女「…………」


受付嬢「ですので、ギルド規定による『緊急クエスト』報酬は」

受付嬢「草原ハンター、狩人、少女の3名による共同捕獲と判断し」

受付嬢「報酬のお金・モンスター素材、それぞれを」

受付嬢「三等分で支払うのが妥当、と判断しています」

狩人「そ……そうなんですか」

少女「……いまいち釈然としませんが」

受付嬢「もっと胸を張ってください」

受付嬢「何度も言いますが、今回の討伐はお二人が居なければ」

受付嬢「早期解決しなかったんです」

受付嬢「あなた方に救われた人は、お二人の想像以上に多いと思ってください」

狩人「……はあ」

少女「…………」

     ……パチ パチパチパチ


狩人「え?」

少女「!」

     ソウダゼ、ヨクヤッタンダ! ムネヲハレ!

     ウマイコト、ヤリヤガッテ! ワー! ワー!

狩人「は、ははは……」///

少女「~~~っ」///

受付嬢「ふふふ」

受付嬢「それでは報酬です。 どうぞ受け取ってください」

     ドサドサッ!

受付嬢「134000z(ゼニー)とG級ティガレックスの素材になります」

狩人「じゅうさんまっ……!?」

少女「G級ティガの素材……」 ゴクリ…


ロートル「おー……それが報酬か」

ロートル「G級素材……羨ましいな」

狩人「ロートルさん」

少女「私たち下位なのに……いいんでしょうか?」

ロートル「ああ、受付嬢さんの言う通り、どこに断る必要もない正当な報酬だ」

ロートル「もらっておけ」

ロートル「草原ハンターの奴も今頃もらって、驚いている事だろう」

狩人「こ、こんな大金……初めて受け取ります」 ガクブル

少女「……狩人、言っておくけど」

少女「たぶん素材を全部売ったら、それの4~5倍の金額になると思うわ」

狩人「」

ロートル「まあG級素材を売る奴なんて、滅多にいないけどな」


狩人「……何て言うか」

狩人「G級って、本当にすごいんだなって、改めて思いました……」

少女「同じく……」

ロートル「そうか」 クスッ

ロートル「で、だ。 話を変えるが……二人に頼みたい事がある」

狩人「はい? 何ですか?」

ロートル「俺とソロは、しばらくふもと村を離れたいと思うんだ」

狩人「しばらく……というと?」

ロートル「期間はわからん」

ロートル「ある『目的』を達成するまで帰らないつもりだ」

ロートル「それまで、ふもと村の事をお前たちに任せたい」


少女「!」

狩人「ある目的?」

ロートル「今回はもしかしたら、早く済むかもしれんが……」

ロートル「まあ、何かあったら手紙をくれ。 砂漠村を拠点にするから」

狩人「はあ……」

少女「…………」

ロートル「じゃあな、狩人、少女」

ロートル「無理せず、強くなれよ」

     スタ スタ スタ…

狩人「……?」

少女「…………」

少女「ねえ、狩人」

狩人「ん?」


少女「今日は休みにしない?」

狩人「はあ?」

少女「たまにはいいでしょ?」

少女「とにかく決まり」

狩人「は?」

少女「……ちょっと話したいことがあるの」

少女「もらった報酬を家に置いたら、私の家に来て」

少女「じゃ……」

狩人「あ……」

狩人「…………」

狩人(何なんだ?)



―――――――――――


少女の家


コックアイルー「いらっしゃいませだニャ!」

狩人「あ、ああ……」

コックアイルー「どうぞ、お入りください」

コックアイルー「ご主人様がお待ちですニャ」

狩人「お邪魔します」

―――――――――――

狩人「……キッチンアイルー雇ってたのか」

少女「ええ。 報酬が安定して来た時に、ね」

少女「狩人も大金が手に入ったんだし、一人くらい雇ってみたらいいわ」

少女「本当に助かるから」


狩人「さっそく村長さんに聞いてみるよ」

少女「うん」

狩人「それで……話って?」

少女「…………」

少女「……さっきのロートルさんの話」

少女「どう思った?」

狩人「どうって言われても……何か突然だな、としか」

少女「そうね」

狩人「何が言いたいんだ?」

少女「…………」

少女「狩人、そろそろランクアップのクエ、受注できるんじゃない?」


狩人「え? ……ああ、その通りだけど」

狩人「対象となるモンスターが出現するまで待ってくれって言われてる」

少女「うん。 私もそうだった」

狩人「で? それがどうかしたのか?」

少女「…………」

少女「……ロートルさんと、ソロさんってさ」

少女「HR6だよね」

狩人「ああ」

少女「その上を目指す、としたら何になる?」

狩人「そりゃあG級しかないじゃ……」

狩人「……ん?」

少女「…………」

狩人「そういやG級に上がるのって……どんなモンスターを狩るんだろう」


少女「さあ……それは私にも分からないけど」

少女「G級モンスターって、たまにしか出現しないよね」

狩人「……あんなのがポコポコ出たら困る」

少女「確かに」 クスッ

少女「でも……それってさ」

少女「G級に上がる為の対象モンスターにも言えないかしら?」

狩人「…………」

狩人「……あ」

少女「そうなると当然、そのモンスターを目当てにした者同士の奪い合いになる」

少女「報酬や素材目当てのハンターも多いけど」

少女「G級猟区に存在する鉱石目当てでG級ハンターになりたいハンターも多いわ」

少女「高値で取引されているから」


狩人「……ロートルさん達が後者だとは思いたくないが」

狩人「G級ハンターになるのが予想以上に大変そうなのはわかった」

少女「うん」

狩人「それで、今回のロートルさんの行動とどう繋がるんだ?」

少女「…………」

少女「……たぶん、だけど」

少女「もしかしたら、ロートルさん達……」

少女「G級に上がるための対象モンスターの情報を掴んだのかもしれない」

狩人「!」

少女「その辺りの詳しい事は分からないけど」

少女「いずれにしても命懸けである事は間違いないわ」

狩人「…………」


狩人「……この村を任せるって」

少女「……うん」

少女「そういう意味だと思う」

狩人「…………」

狩人「だ、大丈夫さ」

狩人「必ずまた会おうって言ってたし」

少女「そうね」

少女「でも……ある程度は覚悟しておいた方がいいと思うわ」

狩人「…………」

狩人「……そう……か」


狩人(…………)

狩人(……G級、か)

狩人(…………)

狩人(いや、ロートルさん達の心配なんて)

狩人(下位の俺がしてもしょうがない)

狩人(俺は、俺の出来る事をして)

狩人(少しでも彼に近づける様、努力するべきだ)

狩人(……そうとも)

狩人(まずは自分の心配をしないとな……)

狩人(…………)



―――――――――――


村長宅前


狩人「村長さん」

村長「お? 狩人か」

村長「聞いたよ、莫大な報酬をもらったんだってな」

狩人「はは……なんか申し訳ない気もしましたけど」

村長「ははは。 で、何か用かい?」

村長「まさか採取クエの受注じゃないよね?」

狩人「ええ」

狩人「実は、アイルーを雇いたいと思いまして」

村長「あっ……! すまん狩人、そういえばその事を言ってなかったね」

狩人「いえ……」


村長「では、アイルーの仲介をしてくれる、通称ネコ婆さんという人を紹介するよ」

村長「こっちに来てくれ」

狩人「はい」

―――――――――――

村長「この人だよ」

ネコ婆さん?「初めまして、狩人さん」

狩人「」

村長「どうかしたのかい?」 ニヤニヤ

狩人「……その」

狩人「もっと、お年を取った人を想像していたので……」

村長「だよねぇ」 ニヤニヤ


村長「少し前まで、本当にお婆さんな人がやってたんだけど」

村長「この前、お孫さんが代替りしてね」

村長「ネーコ、という名前なんだ」

ネーコ「改めて。 通称ネコ婆さんをやっている、ネーコです」 ニコッ

狩人「ど、どうも……」///

狩人(何て言うか、ものすごく可愛い女の子だ……)///

狩人(女や少女も十分可愛いし、綺麗だけど……この娘は格別だなぁ)///

村長「じゃ、後は彼女にいろいろ聞くといい」

村長「ネーコちゃん、お願いするね?」

ネーコ「はい、村長さん」

村長「じゃ……」

     スタ スタ スタ…


ネーコ「それでは、狩人さん」

ネーコ「仲介をする前に、簡単な説明をしますね?」

狩人「あ、はい。 ネーコさん」

ネーコ「ネーコでいいですよ」 クスッ

狩人「そ、そうですか……」///

狩人「それなら俺も狩人、でいいよ」///

ネーコ「いえいえ、お客様には節度を持って対応しないといけないので」

狩人「そ、そうか……」///

ネーコ「で、説明ですが」

ネーコ「まず仲介するにあたり、仲介料が発生します」

ネーコ「これはアイルーの報酬とは別にいりますのでご了承ください」

狩人「はい」


ネーコ「次に」

ネーコ「アイルーを雇う際に保証金を預からせていただきます」

狩人「保証金?」

ネーコ「はい」

ネーコ「これは無責任なハンター様の雇用と解雇を防ぐ目的があり」

ネーコ「また、ハンター様の引退や死亡に際し、雇用したアイルーに対する手当てとして」

ネーコ「私が責任を持って預からせていただきます」

狩人「……ハンターの引退や死亡」

ネーコ「そうです」

ネーコ「雇用主であるハンター様は、突然いなくなる可能性があり」

ネーコ「失業したアイルーが路頭に迷わないよう必要な処置として」

ネーコ「ご了承ください」


狩人「…………」

ネーコ「……厳しい事を言うようですが」

ネーコ「彼らは次の仕事を待つ期間や、故郷に帰る為の資金がどうしても必要になります」

ネーコ「それらをハンターに望むのは間違っているのでしょうか?」

狩人「……そ、それは」

狩人「俺にはわからないよ……けど」

狩人「幾らになるのか分からないが、高くつくな……と思ってしまって」

ネーコ「それは否定しませんが……」

ネーコ「しかし、この制度ができるまで」

ネーコ「大勢のアイルーたちが泣き寝入りをしていたのも事実なんです」

ネーコ「ハンターの気まぐれや、ささいな間違いで突然不当解雇されて……」

ネーコ「中には名前が気に入らないとか、寝相が気持ち悪いとか」

ネーコ「そんな理由だってまかり通っていたんです」

狩人「…………」


狩人「……わかったよ」

ネーコ「ありがとうございます」

狩人「で、いくらくらいになるのかな?」

ネーコ「それでは料金のご説明をさせていただきます」

狩人「…………」

ネーコ「まず、キッチンアイルー、オトモアイルー共に」

ネーコ「ランク分けされています」

ネーコ「当然ですが、上に行けば行くほど、料金も高くなります」

狩人「……ですよね」

狩人「おすすめは、やっぱり高い方なんですか?」

ネーコ「即戦力が欲しいのなら、そうですね」


狩人「料金が安い方を選ぶハンターも居るんですか?」

ネーコ「そこはハンター様の事情も絡みますので、十人十色です」

狩人「う~ん……」

狩人「ちょっと疑問なんですけど」

ネーコ「はい」

狩人「安い方は、ずっと安いままなんですか?」

ネーコ「基本的にはそうですけど……アイルーが給金に不満を持った場合」

ネーコ「私が仲介して交渉する事もあります」

ネーコ「それでハンター様との合意が得られない場合は」

ネーコ「辞める事もあるとお考え下さい」

狩人「そうですか」


ネーコ「では、詳しい料金ですが」

ネーコ「ランクは大まかに3段階あり」

ネーコ「C、B、Aの順に料金も高くなります」

狩人「はい」

ネーコ「Cランクは仲介料200z(ゼニー)と保証金が1500z(ゼニー)」

ネーコ「月々の給金は500z(ゼニー)です」

狩人「…………」

ネーコ「Bランクは仲介料500z(ゼニー)と保証金3500z(ゼニー)」

ネーコ「月々の給金は1000z(ゼニー)です」

狩人「…………」

ネーコ「Aランクは仲介料1000z(ゼニー)と保証金7700z(ゼニー)」

ネーコ「月々の給金は2100z(ゼニー)となります」

狩人(高ぇ……)


ネーコ「いかがなさいますか?」

狩人「…………」

狩人「……ちょっと待ってくださいね」

ネーコ「はい」

狩人(最後のAランクって、普通のクエ2回分くらいが毎月かかるのか……)

狩人(しかも仲介料や保証金とか、すごい値段)

狩人(……今なら払えるけど、ちょっと躊躇するな)

狩人(…………)

狩人(安い方はどうなんだろ?)

狩人(下手な掃除や不味いメシ作られたりするのかな……)

狩人(う~ん……)


ネーコ「…………」

狩人「…………」

狩人「じゃあ……Bランクのアイルーを見せてもらえますか?」

ネーコ「はい。 こちらになります」つ(一覧表)

狩人「どれどれ……」

狩人「…………」

狩人「……あの」

ネーコ「はい、何でしょう?」

狩人「こんな事を聞くのはおかしいかもしれないけど」

狩人「選ぶ時の基準とかあります?」

ネーコ「……それはハンター様のお心しだいです」


ネーコ「キッチンアイルーならば、好物の料理が得意なアイルーを選んだり」

ネーコ「オトモアイルーなら、自分の戦闘スタイルと相性のいい」

ネーコ「アイルーを選択すればいいと思います」

狩人「なるほど」

狩人(……難しいなぁ)

狩人「う~ん……」

ネーコ「…………」

狩人「……じゃあ」

ネーコ「はい」

狩人「この板前アイルーってのをお願いします」

ネーコ「ありがとうございます」


ネーコ「オトモアイルーはいかがですか?」

狩人「それはまた今度でいいです」

ネーコ「わかりました」

ネーコ「では、仲介料と保証金あわせて4000z(ゼニー)いただきます」

狩人「はい」

―――――――――――

ネーコ「……はい、確かにいただきました」

ネーコ「それでは……板前アイルーさーん」

板前アイルー「ニャ!」

ネーコ「たった今、こちらのハンター様が あなたと雇用契約を結びました」


板前アイルー「ニャ! 旦那、あっしは板前アイルーって名のケチな野郎ニャ!」

板前アイルー「遠慮なくこき使ってくれニャ!」

狩人「お、おう。 よろしくな」

板前アイルー「頑張るニャ!」

ネーコ「それでは狩人さん、板前アイルーさん」

ネーコ「仲良く頑張ってくださいね」

―――――――――――

板前アイルー「ニャ! ここが旦那の住処かニャ?」

狩人「ああ、そうだよ」

板前アイルー「やりがいのありそうな職場だニャ!」

板前アイルー「炊事・洗濯・掃除、全部お任せニャ!」

狩人(……ちょっと暑苦しい奴だな)

狩人「おっと、掃除についてなんだけどな」

板前アイルー「ニャ?」


狩人「俺の部屋は、このままの状態で掃除してくれ」

板前アイルー「このままでかニャ?」

狩人「乱雑に思えるだろうけど、これで俺は使いやすいんでな」

板前アイルー「わかったニャ!」

狩人「それじゃ、仕事にかかってくれ」

板前アイルー「ニャ!」

―――――――――――

板前アイルー「旦那!」

狩人「ん? なんだ?」

板前アイルー「夕食は何にするニャ?」

狩人「もうそんな時間か……そうだな」

狩人「やっぱり肉料理だな」


板前アイルー「注文、ガッテン承知だニャ!」

板前アイルー「では、食材を買ってくるので、20z(ゼニー)欲しいニャ」

狩人「え……あ、そうか」

狩人「そりゃ食材が無いと作れないな……ちょっと待っててくれ」

     ゴソゴソ…

狩人「はい、20z(ゼニー)」

板前アイルー「はい! 確かにいただきましたニャ!」

板前アイルー「では! 行ってきますニャ!」

狩人「おー」

―――――――――――

板前アイルー「お待たせしましたニャ!」

狩人「…………」


     プ~ン…

狩人「…………」

狩人「……何か嗅いだ事のないニオイだな」

板前アイルー「あっしの特製肉料理だニャ!」

板前アイルー「ささっ! 冷めない内にガッツリ行くニャ!」

狩人(……何か嫌な予感がするが)

狩人「じゃあ……いただきます」

     モグッ…

狩人(お? 意外と味は悪くないな)

     ムシャムシャ…

狩人(まあそこそこって感じだけど……)

―――――――――――

狩人「ごちそうさま」


板前アイルー「どうでしたかニャ?」

狩人「ああ、何か不思議な……」

     ゴロ…

狩人「……ん?」

     ゴロゴロゴロ……

狩人「ヴッ!?」

     ピーゴロゴロゴロ……

狩人「bhszこhさrlんgy!?」

     ダダダダダダッ!! バタンッ!

板前アイルー「ニャ?」




――――――――――――――――――――――



     お見苦しい描写の為、割愛します。

     しばらくお待ちください。



――――――――――――――――――――――






――――――――――――――――――――――



     お見苦しい描写の為、割愛します。

     しばらくお待ちください。



――――――――――――――――――――――






――――――――――――――――――――――



     お見苦しい描写の為、割愛します。

     しばらくお待ちください。



――――――――――――――――――――――




狩人「……お前……毒でも……入れたのか?」

板前アイルー「すまねぇ旦那……ちょいと冒険しすぎたみてぇだニャ」

狩人「冒険……って……うっ……」

板前アイルー「ま! たまにはこんな事もあるニャ!」

板前アイルー「笑って許して欲しいニャ! 旦那!」

     ニャハハハハハハ!

狩人「…………」

狩人(……これ)

狩人(解雇しても十分いい理由だよな……?)

狩人(…………)

狩人(……でも4000z(ゼニー)も払ってるしなぁ)

狩人(納得いかねぇ……)



―――――――――――


翌日の朝

狩人の家前


狩人「――というわけで」

狩人「俺は今日、休む……」

少女「……それは災難だったわね」

少女「まあ仕方ない、か……」

狩人「おう……すまんな」

少女「ううん。 クエから帰ったら、お腹に優しいもの持ってくるわ」

少女「じゃ!」



―――――――――――


昼頃


狩人「ふう……どうにか落ち着いてきた」

狩人「…………」

狩人(とりあえず、ネーコに文句の一つも言わないと気が収まらん)

狩人(……我ながら人間ちっちゃい気もするが)

狩人(酷い目に合わされたんだし)

狩人(アイルーの入れ替えくらいには応じてくれるかもしれん)

狩人(ダメもとで文句くらい言ってもいいだう)

狩人「……出かけるかな」



―――――――――――


ネーコの家付近


狩人「……ん?」

狩人「…………」

狩人(どうやら出かけるみたいだな)

狩人(…………)

狩人(どうする? また今度にするか?)

狩人(…………)



―――――――――――


ふもと村 墓地


狩人「…………」

狩人(……何で墓地に?)

狩人(しかもこんな昼間から……)

     ザッ… ザッ…

狩人(!?)

狩人(墓を掘り始めた!?)

狩人(白昼堂々と墓荒らしか!?)

狩人(…………)

狩人(ともかく、止めないと!)

     ダッ!

狩人「お、おい! ネーコ!」


ネーコ「え?」

ネーコ「ああ、狩人さん」

ネーコ「どうかなさいましたか?」

狩人「それはこっちのセリフだ」

狩人「真昼間から墓荒らしなんて……何をしているんだ?」

ネーコ「墓荒らし? ……ああ」

ネーコ「これは墓荒らしではありませんよ」

狩人「はあ? どう見ても……」

ネーコ「……これを見てください」つ(つつみ)

狩人「は? ……何ですか、これ?」

ネーコ「あるアイルーの尻尾です」

狩人「!?」


ネーコ「時々あるんです」

ネーコ「雇っていただいた ハンター様の事が忘れられなくて」

ネーコ「遺言に亡くなったハンター様のお墓に埋めて欲しい、というアイルーが……」

狩人「…………」

     ザッ… ザッ…

ネーコ「ふう……故郷が遠くて、体の一部分でもいいから、と」

ネーコ「このアイルーは、言い残して亡くなったんだそうです」

狩人「…………」

ネーコ「狩人さん、周りのお墓……見てみてください」

ネーコ「ところどころ、お墓の脇に小さなお墓があるでしょう?」

狩人「……ありますね」

狩人「あそこなんて、3つもある」


     ザッ… ザッ…

ネーコ「……これでよし。 あとは……」

     (小さな墓標)トン…

ネーコ「これで……あっちでも一緒です」

ネーコ「きっと……」

狩人「…………」

狩人「……あれ?」

ネーコ「どうしました?」

狩人「名前が……墓標に名前が無いけど?」

ネーコ「ああ、それは……故事にならって、そうしているんです」

狩人「故事?」

ネーコ「ポッケ村に伝わる……ある歴戦ハンター様の晩年のお話です」


ネーコ「……という事で」

ネーコ「それ以降、ハンター様のお墓に寄り添うアイルーのお墓に」

ネーコ「名前を刻まない事が、ポピュラーになったんです」

ネーコ「最近は名前を刻む事も多いんですけどね」 クスッ

ネーコ「今でもそのハンター様のお墓と、アイルーのお墓はポッケ村に残っていて」

ネーコ「事情を知っている人は、そっと花を手向(たむ)けるそうです」

狩人「……そうですか」

ネーコ「それで……狩人様は、私に何かご用だったのですか?」

狩人「!」

狩人「あー……その……何でもないです」

狩人「たまたまネーコを見かけたんで……」

ネーコ「そうですか」


ネーコ「それでは、私はこれで」

狩人「あ、ああ……」

     テク テク テク…

狩人「…………」

狩人(……何か気が削がれてしまったな)

狩人(…………)

狩人「はあ……」

狩人「…………」

狩人「まあ、悪気があったわけじゃないだろうし」

狩人「板前アイルーにもう冒険はするなって、言えばいいか……」

狩人「はあ……」



―――――――――――


数日後の朝

ふもと村 集会所


狩人「ガノトトスが出現した!?」

受付嬢「はい。 ようやく出現しました」

狩人「やっと出たかぁ……長かった」

少女「狩人?」

狩人「あ、少女!」

狩人「聞いてくれ! ガノトトスがやっと出たんだ!」

少女「そう。 ランクアップ対象モンスターが出たのね」

少女「けど……」

狩人「ん?」


少女「密林だと一週間かかるから」

少女「私たち二人一緒に出かけるのは、まずいわね……」

狩人「あー……」

狩人「い、いや、まあ……そりゃ心配かもしれないだろうけど」

狩人「俺もそれなりに腕を上げたんだし……ひとりでも何とかなるさ」

少女「そう……」

少女「じゃ、せめてガノトトスの弱点を教え……」

ハンター(女)「あら、ガノトトス狩りに行くの?」

ハンター(女)「あたしで良かったら手伝おうか?」

狩人「え」

少女「え」


娘ハンター「あ、あの!」

娘ハンター「よ、良かったら私も……」///

狩人「」

少女「」

露出女「ちょいと待ちな」

露出女「そんな小娘とじゃなく、あたいとどうだい?」

露出女「いい仕事して見せるぜぇ~?」

狩人(何て格好を!?)///

少女(ボーン装備……あれで戦う女の子が居るなんて)

少女(って! 問題はそこじゃない!)

少女(どうして女の子ハンターばっかり寄ってくるの!?)

狩人「え、ええと、俺、3乙ばっかしているんですけど……」


ハンター(女)「でも一皮むけたんだよね」

ハンター(女)「何しろG級ティガをやっつけたんでしょ?」

娘ハンター「私、いろいろ教わりたくて……」///

娘ハンター「あ、後でG級ティガのお話も聞かせてくださいね?」///

露出女「一人のメスとしちゃあ、実力もだが……」

露出女「運のいいヤローにツバつけときたいんだよ♪」

狩人「」

少女「」

     ワー ワー ギャー ギャー

狩人「……どうすりゃいいの?」

少女「知らないっ!」

少女「その人達と一緒に行けば!?」 フンッ!

狩人「…………」






     弱点の事、まだ聞いてないんですけど……

     と、言いたかったが

     雰囲気がそれを許してくれなかった……







―――――――――――


砂漠村 集会所


ロートル「…………」

ソロ「ロートル」

ロートル「ソロ。 そっちはどうだ?」

ソロ「噂話程度だが……焼け焦げたアプケロスをよく見かけるようになっている」

ソロ「ハンターやメラルー・アイルーの仕業にされているみたいだ」

ロートル「こっちも同じだ」

ロートル「目撃した場所は?」

ソロ「砂漠のあるエリアに集中している」


ロートル「よし、これも同じ」

ロートル「砂漠地帯で決まりだな……」

ソロ「ああ」

ロートル「…………」

ソロ「…………」

ソロ「古龍殺し(エルダーキラー)は無条件でG級ハンターに……」

ロートル「前回はアカムトルムを探して半年粘ったがダメだった」

ロートル「今回はモノにしたいな……」

ソロ「そうだな……」

ロートル「…………」

ロートル(今度こそ……今度こそは)

ロートル(G級に……!)








     ロートルの目は、一瞬あやしく輝き

     そして、グラスの酒を一気に飲み干した……








※補足説明


原作(P2G)のゲームでは、旧猟区と樹海以外、下位でも入れましたが
このスレでは、HRごとに入れる猟区が制限されています。

下位ハンターは、雪山・森丘・密林・砂漠に入れます。

上位から、火山・沼地・塔・樹海にも入れるようになります。

G級は無制限でどの猟区にも入る事ができ、今回のお話でも出てきましたが
貴重な鉱石はG級ハンターしか、取ってくる事ができません。

P2Gで上位からG級に上がるキークエのモンスターは、アカムトルムですが
このスレでは、G級モンスターは希少なため、それ以上に希少な出現率の
古龍モンスター撃破は、例外的に無条件でG級に上がれるとしています。

また、G級モンスターの報酬額は、原作ゲームの約10倍にしています。
これは古龍クラスも同様です。
モンスター素材もその値段で売買されています。


また、今回のお話で出てきた『 故事 』とは
非公式のエピソードでして、知る人ぞ知るお話です。

気になる人は、『名無しのアイルー』で検索してみてください。
ハンカチ必須。

という所で、今日はここまでです。
お付き合いありがとうございました。



―――――――――――


数日後の昼頃

密林


露出女「そっちに行ったよ! 狩人!」

狩人「ああ!」

狩人「でやああああっ!」

     ブウンッ!(亜空間タックル)

     バゴォッ!

狩人「ヘベッ!?」

娘ハンター「だ、大丈夫ですか!?」



―――――――――――


BC(ベースキャンプ)


狩人「」

狩人「はっ!?」

救助アイルー「気がついたかニャ?」

狩人「…………」

狩人「……また1乙したのか」

救助アイルー「そろそろガノトトス、狩猟される頃だと思うニャ」

救助アイルー「早く行かないと、剥ぎ取り損ねるニャ」

狩人「そ、そうか……早く行かないと!」

救助アイルー「頑張ってくれニャ」



―――――――――――


露出女「おー、帰ってきたか」

娘ハンター「あ、大丈夫ですか?」

ハンター(女)「早く剥ぎ取りしなよ?」

狩人(……本当に終わってるし)

狩人「お、おう……」

―――――――――――

狩人「はあ……間に合った」

狩人「でも、なんかほとんど任せてごめん……」

露出女「お疲れ!」

娘ハンター「調子の悪い時もありますよ」 クスッ

ハンター(女)「そうそう」



―――――――――――


数日後の午後

ふもと村 集会所


狩人「あの、どうもありがとうございました」

露出女「いやいや。 礼を言われるほどの事じゃねーよ」

娘ハンター「これでHR3ですね。 おめでとうございます」

露出女「けどまあ……どうしてもってんなら」

露出女「ひとつだけ頼みを聞いてくれねーか?」

狩人「え? ああ、俺に出来る事なら」

ハンター(女)「んふふ、やっぱそれ狙いか」

狩人「……?」

露出女「あんたの髪の毛を一本くれないか?」


狩人「髪の毛……ですか?」

ハンター(女)「そう! ぜひちょうだい♪」

娘ハンター「お、お願いします……」///

狩人「は、はあ……」

     ピッピッピッ…

狩人「これでいいんですか?」

露出女「そう! これでいいの♪ あんがとねー♪」

ハンター(女)「じゃ! またねー!」

娘ハンター「私、しばらく、ふもと村に居ますから、また誘ってください」

娘ハンター「それじゃ」


狩人「あ、ああ……また」

狩人「…………」

狩人(……何なんだ、この展開)

狩人(みんな(特に女性ハンター)手のひらを返した様に接してくる)

狩人(どうやら俺の髪の毛が目当てだったみたいだが……)

狩人(しかも全員上位ハンターだよな?)

狩人(……わからん)

????「……ただのゲン担ぎだ」

狩人「え?」

狩人「!」

狩人「あ、あんたは!? イケメン!!」


イケメン「……いかにも俺はイケメンだが」

イケメン「どこかで会っていたか?」

狩人「白々しい! 何も知らない俺を騙して、クエストの報酬だまし取っただろ!」

イケメン「! ……そういう事か」 ハア…

狩人「あの時の金、返せ!」

イケメン「いいから落ち着け」

イケメン「お前の言う『イケメン』の顔には、頬に傷跡が無かったか?」

狩人「何が傷跡だ! そんな事でもう騙され……え?」

イケメン「ここだ。 この部分に傷跡が無かったか?」

     イケメンは、自分の頬にトントンと指で指し示す。

     もちろん傷跡など無い。

狩人「……確かに」

イケメン「まったく……」


イケメン「君に迷惑をかけたのは、俺の双子の兄の方だ」

イケメン「名前もベテラン、という名前でな」

狩人「はあ!?……偽名まで使っていたなんて」

狩人「ギルドにバレたらタダじゃ済まないのに……」

イケメン「俺も迷惑している」

イケメン「おそらく、クエの受注は君にさせたのだろう?」

イケメン「ギルドは受注者以外の素性は余り確かめない」

イケメン「そこを上手く突いているんだよ」

狩人「……ギルドは黙認しているんですか?」

イケメン「ある意味な」


イケメン「もっとも被害者が初心者ばかりで、極端に訴える者がいない」

イケメン「内容も少し気をつければ住む事だし、被害金額も少なく」

イケメン「告発自体を恥ずかしいと考えて、泣き寝入りする者がほとんどだ」

イケメン「君もその口か?」

狩人「…………」

イケメン「……やれやれだな」

狩人「よ、余計なお世話だ!」///

狩人「あんたも身内なら、もっと注意してやれよ!」

イケメン「兄は俺の言う事なんて聞きゃしないよ」

イケメン「まったく……兄のしでかした事で何度、嫌な目に合わされた事か……」

イケメン「……というか、なぜ、兄の話になったんだ?」

狩人「あんたが俺に声をかけてきたんじゃないか」

狩人「なんか、ゲン担ぎがどうとか……」

イケメン「あー……そうだったな」


イケメン「さっきの……お前の髪の毛を欲しがったのは」

イケメン「下位ハンターがG級モンスターを打ち破ったと聞いて」

イケメン「それにあやかりたいんだよ」

狩人「……なるほど」

イケメン「G級に上がるには努力はもちろんだが……」

イケメン「運の要素も強い」

イケメン「幸運を手にした者の一部は、効果がありそうだからな」

狩人(聞いていると切なくなる話だ……)

イケメン「まあその分、クエを手伝ってもらえたんだ」

イケメン「よしとしておくんだな……じゃ」

狩人「…………」



―――――――――――


狩人の家


狩人「……ただいま」

板前アイルー「おう! けえってきたかニャ、旦那!」

板前アイルー「お疲れ様だニャ!」

狩人「おう……」

板前アイルー「……なんか元気ねぇけど、どうかしたかニャ?」

狩人「いや、何でもない」

狩人「今日はさっぱりしたもの……刺身とかいいかな」

板前アイルー「ガッテンだニャ!」

狩人「金はまだあるか?」

板前アイルー「問題ないニャ!」


     ドサッ…

狩人「ふう……」

狩人(…………)

狩人(……待てよ?)

狩人(俺でこれなら……少女の奴はもっとすごいんだろうな)

狩人(何もなくたって、彼女の髪の毛ならお守りになりそうだし)

狩人(欲しがる男は多そうだなぁ……)

狩人(…………)

狩人(俺ももらおうかな)

狩人(……まてまて、何かそれはダメすぎな気がする)



―――――――――――


翌日の朝

ふもと村 集会所


     ガヤ ガヤ

少女「おはよう、狩人」

狩人「ああ、おはよう少女」

少女「見事にガノトトス倒したんだってね」

少女「おめでとう」

狩人「……倒したっていうか」

狩人「むしろ倒してもらったって言う方が正しいと思う」

少女「……たくさんの女の子に囲まれて良かったわね」 フンッ

狩人「俺の髪の毛目当てだったんだよ」

少女「髪の毛?」


少女「なるほど……ゲン担ぎね」

狩人「少女も野郎ハンターからクレクレ言われているんじゃないのか?」

少女「全くないけど……」

狩人「え? そうなの?」

少女「うん」

狩人「へー……ちょっと意外だな」

狩人「俺なんかより、よっぽど御利益ありそうなのに」

少女「…………」

少女「……欲しい?」

狩人「ん?」

少女「私の髪の毛」


狩人「……考えはしたけど」

狩人「なんか、いろいろダメな気がするから……」

少女「……そう」

狩人「それよりHRも同じになったし」

狩人「何か狩りに行かないか?」

少女「それもそうね」

少女「じゃあ……レイアはどう?」

狩人「ああ、ちょうどいいかも」

狩人「話には聞いていたし、ランクが上がったらやってみたかったんだ」

少女「なら問題ないわね」

少女「火炎攻撃は離れてても飛んできて厄介だから、よく見て覚えて」

狩人「わかった」



―――――――――――


砂漠のとあるエリア


ロートル「はあ!」

     ズバズバズバッ!

ロートル「ふう……ドスゲネポスを狩るのも飽きてきたな」

ソロ「そう言うな、ロートル」

ソロ「これも目的のためだ」

ロートル「……わかっているさ」

ロートル「…………」



―――――――――――


砂漠村 集会所


ロートル「ふう……」

????「よう。 クエは順調か?」

ソロ「む……?」

????「おっと、こいつは失礼」

????「俺はイ……ベテラン、という名前のハンターだ」

ベテラン「よろしく」

ロートル「よろしく。 ロートルだ」

ソロ「よろしく。 ソロだ」

ベテラン「少し話をしたいんだが、構わないか?」

ベテラン「挨拶がわりに一杯おごろう」


     コト…

ロートル「……で? 話とは?」

ベテラン「まあまあ。 その前に少し聞きたいんだが」

ベテラン「おたくら、何を狩りに来たんだ?」

ベテラン「今の時期、砂漠なら上位クラスのガノトトスってトコなのに」

ベテラン「ここ数日ドスゲネポスしか狩っていないな?」

ロートル「……片手剣の素材を集めているだけだ」

ソロ「ついでにダイミョウザザミも狩っている」

ベテラン「なるほど。 もっともらしい理由だ」

ベテラン「だが……」

ベテラン「俺はふと、ある事に気がついた」


ロートル「…………」

ソロ「…………」

ベテラン「最初の疑問は武器と防具の属性だ」

ベテラン「ドスゲネポスを狩るのに水属性で火炎耐性の防具」

ベテラン「おまけにかなりの鎧玉をつぎ込んだ重装備……」

ベテラン「どう考えてもドスゲネポス相手とは思えねぇ」

ロートル「……他に防具を持っていないだけだ」

ロートル「どんなモンスター相手でもこれを使っている」

ロートル「武器は使い慣れているから、としか言い様がないな」

ベテラン「……ま、そういう言い訳は、ごもっともだな」

ベテラン「が、ここからは俺の推測だ」

ベテラン「おたくらはドスゲネポスを目的にしているんじゃないと仮定した場合」

ベテラン「ひとつだけ思いつく共通点が見えてきた」


ロートル「…………」

ソロ「…………」

ベテラン「おたくらはドスゲネポス……いや、クエのモンスターが目的なんじゃない」

ベテラン「砂漠の『あるエリア』のクエを受注しまくっているんだ」

ロートル「…………」

ソロ「…………」

ベテラン「水属性で火炎耐性の防具……」

ベテラン「まるで火山のモンスターを狩りに行く装備だ」

ベテラン「何が目的なんだ?」

ベテラン「今の時期の砂漠には似つかわしくないぜ?」

ロートル「……そう言われてもな」


ロートル「ベテラン……とか言ったな」

ロートル「君の言う通り、怪しく見えても」

ロートル「俺たちはドスゲネポスを狩りに来ただけ……それだけだ」

ベテラン「…………」

ベテラン「やれやれ……どうやら警戒されているみたいだな」

ベテラン「じゃ、今日はここまでにしておく」

     ガタタ…

ベテラン「機会があったら、俺も『ドスゲネポス狩り』に参加させてくれ」

ベテラン「ぜひな」

ロートル「まあ考えておくさ」

ベテラン「期待してるぜ……ふふふ」

     スタ スタ スタ…

ロートル「…………」


ソロ「……ガブラス野郎め」

ロートル「油断も隙もないな……」

ロートル「だが……確かに人数は欲しいところだ」

ソロ「気持ちは分かる」

ソロ「しかし、俺たちは何度も裏切られてきたからな」

ロートル「ああ……」

ロートル「何度もな……」

ソロ「…………」

ロートル(古龍殺し(エルダーキラー)を狙っている事を感づかれてはダメだ)

ロートル(G級を目指すハンターならば、この情報は喉から手が出るほど欲しいモノ……)

ロートル(絶対に他のハンターに気取られてはいけない)

ロートル(信頼して出し抜かれた事は一度や二度では無いからな)


ロートル(だが……時間が経てば経つほど)

ロートル(あのベテランとかいうハンターの様にカンのいい奴が出てくる)

ロートル(早く出現しろ……テオ・テスカトル)

ロートル(…………)

ロートル(狩人達が同じ上位ハンターならな……)

ロートル(信頼もできるし、修行という名目もできて怪しまれずに済むのに)

ロートル(…………)

ロートル(ふ……いかんな)

ロートル(まだまだヒヨっ子のあいつらを頼ろうとするなんて)

ロートル(ましてやロクな装備もなしで古龍殺し(エルダーキラー)に付き合わせるとか)

ロートル(何を考えているんだ……俺は)



―――――――――――


森丘




     ギャオオオオオオオオッ!!



狩人「くっ……!」

狩人(こんな所まで咆哮の影響が来るのかよ!)

     ダンッ! ダンッ! ダンッ!

少女「怒ったわ!」

少女「ここからが正念場よ!」

狩人「わかった!」


狩人(これがリオレイア……!)

狩人(火炎攻撃は厄介だし、目が退化しているフルフルと違って)

狩人(狙いもバッチリで隙が少ない!)

狩人(だが……!)

     ブウウンッ!

狩人(テールアタック!) 回避!

狩人「でやあああああああっ!」

     ドガァッ!!

     ギャオオオオオ……

狩人(基本的な動きや動作はフルフルとほぼ同じだ!)

狩人(懐に入ってしまえば……)



     ザクッ!!


狩人(こっちのモノだ!)

狩人「はあああああああああっ!」


     グルルル……(後ずさり)


少女「!」

少女「ダメ! 狩人! 下がって!」

狩人「へ?」


     ギャアアッ!(サ○ーソルト)


狩人「あべばっ!?」



―――――――――――


BC(ベースキャンプ)


狩人「」

狩人「はっ!?」

救助アイルー「気がついたかニャ?」

狩人「…………」

狩人「……また1乙か」 ハア…

救助アイルー「毎回思うけど」

救助アイルー「あんたは本当に頑丈だニャ」

狩人「……ヤられてたら意味がないよ」


救助アイルー「何言ってるニャ」

救助アイルー「レイアの宙返りテールアタックをまともに食らって」

救助アイルー「その程度で済んでるなんて、フツーありえないニャ」

狩人「……褒めても何も出ないぞ?」

救助アイルー「下位のレイアとはいえ」

救助アイルー「あいつの最大最強の攻撃方法だニャ」

救助アイルー「フツーの下位ハンターなら良くて一日中気絶」

救助アイルー「悪ければ体中の骨が砕けて再起不能ニャ」

狩人「……ウソだよな?」

救助アイルー「大真面目な話だニャ」


     タッ タッ タッ

少女「狩人!」

狩人「え? 少女?」

少女「だ、大丈夫!?」

少女「私が分かる!?」

狩人「も、もちろん分かるし、大丈夫だよ」

少女「…………」

少女「は――っ……」 ヘナヘナヘナ…

救助アイルー「……とまあ」

救助アイルー「このくらいの心配される攻撃力なのは間違いないニャ」

狩人「…………」

少女「で? 狩人は大丈夫なの?」

救助アイルー「助けたこっちが驚いてるくらい元気だニャ」


少女「そう……良かった」

救助アイルー「じゃ、俺はもう行くニャ」

     タッ タッ タッ…

狩人「…………」

少女「…………」

狩人「……なんか、ごめん」

少女「ううん、狩人が無事なら……」

少女「…………」

狩人「少女?」

少女「ねえ、狩人」

少女「あなた……モンスターの書物、読んでいないの?」


狩人「!!」

狩人「あ……あ~……その……」

少女「…………」

狩人「……すまん」

少女「……私に謝る事じゃないわ」

少女「ねえ、狩人」

少女「モンスターの書物は、判明している事柄すべてを載せている」

少女「貴重な情報源よ」

少女「弱点部位、弱点属性、罠の効きやすさ、行動や習性、食性すらも書いてある」

少女「初めてのモンスターに挑むのなら、最低限、読んでおかないといけないものなのよ」

少女「ハンターとして」

狩人「…………」


少女「今日はこの程度で済んだけど」

少女「明日は分からない」

少女「あなた自身の身の安全の為に、一度は目を通しておいて?」

少女「せめて、今日狩るモンスターの部分だけでもいいから」

狩人「そ、そうだな……うん」

狩人「分かったよ……」

少女「……本当に?」

少女「本当に分かってるの?」

狩人「分かってるよ」

狩人「ちゃんと読むよ……モンスターの書物」

少女「…………」


少女「なら、いいわ」

少女「とりあえず今回は、私が一通り教えるから」

狩人「ああ、頼む」

少女「そうね……まず攻撃方法だけど」

少女「狩人が受けた宙返りテールアタックと、もう一つ要注意な攻撃があるわ」

狩人「うん」

少女「これは通常の火炎攻撃と動作がほぼ同じだから見分けがつきにくいけど」

少女「怒った時にやると思えばいいと思う」

少女「普通は単発だけど、三連続で、しかも左右に角度をつけて撃ってくるわ」

狩人「三連続か……角度ってどれくらいだ?」

少女「それほどないと思うけど、一度見れば分かると思うわ」

狩人「ふむふむ」

少女「それから……」




     少女の説明は分かりやすく、的確で

     その後のレイアの狩りは問題無く終了した。



     …………

     だけど……

     このままでいい事はない。

     いい加減に言っておかなければ……






     下手をすれば、彼女にも迷惑をかけてしまう。

     いや……少女だけじゃない。きっと他のハンターにだって……





     …………





     もしかしたら彼女に……俺は軽蔑されるかもしれない。





―――――――――――


夕方

ふもと村 集会所


少女「報酬は受け取った?」

狩人「ああ」

少女「そう」

狩人「……俺の1乙で少なくなってしまったな。 ごめん」

少女「いいよ、このくらいで謝らなくても……」

少女「それよりもモンスターの書物、ちゃんと読むのよ?」

狩人「……あ、ああ」

少女「それじゃ、また明日」

狩人「…………」


広場


     タッ タッ タッ

狩人「少女!」

少女「え? 狩人?」

少女「どうしたの?」

狩人「…………」

狩人「……実は」

狩人「話したい事があるんだ」

少女「え? ……うん、何?」


狩人「ここじゃちょっと……」

狩人「そうだな……少女の家に行ってもいいか?」

少女「……いいけど」

少女「いったい何のはn」

少女「!」

少女(……も)

少女(もしかして……もしかしたら)///

少女(もしかする……かも!?)///

少女「…………」///

少女「……大事な話……なの?」///

狩人「ああ……俺にとっても少女にとっても」

少女(わ、私にとっても!?)///


狩人「とにかく、二人だけで話がしたいんだ」

狩人「頼む、少女」

少女「う、うん……分かった」///

少女「で、でも! ちょっと時間をちょうだい」///

狩人「え? 時間?」

少女「家……少し散らかってるから、片付けたいのよ」///

狩人「い、いや、俺は気にしな」

少女「私が気にするの!」///

少女「とにかく……そうね」

少女「一時間くらいしたら来て」

狩人「……分かった」


少女(…………)

少女(大事な話……)

少女(狩人と私にとって……)

少女(おまけに二人きりでって……)

少女(…………)

少女(……こ、これは)///

少女(間違いない……よね?)///

少女(そんなに経験ないけど……)

少女(両思いになれる……のよね?)///

少女(~~~~~っ!!)///



―――――――――――


一時間後

少女の家


     コン コン

狩人「少女、俺だ。 狩人だ」

     キィ…

少女「い、いらっしゃい……」///

狩人「…………」

狩人(……着替えたかったのは分かるけど)

狩人(この前並に気合の入った格好だな……)

狩人「……何か、気を使わせたみたいだな」

少女「う、ううん、そんな事ないよ!?」///

少女「そ、そういう気分ってだけだからっ」///


狩人「えと……入っていいか?」

少女「!」

少女「あ、う、うん。 どうぞ、入って」

狩人「お邪魔します」

     パタン

―――――――――――

少女「…………」///

狩人「…………」

少女「……え、えと……お茶でも出すね」///

狩人「あ、いや……そんなに気を使わないでくれ」

狩人「これから話す事は、そんなにいい話じゃないし……」


少女「……え?」

狩人「…………」

狩人「……実はな、少女」

少女「う、うん」///

狩人「俺……前からずっと言わなきゃ、って思ってた事がある」

少女「そ、そう……」///

狩人「出だしで躓(つまず)いて、集会所に出入りしにくくなったから」

狩人「必要ない様に感じていたけど……」

狩人「今日みたいな事が起きて、やっぱり言わないといけないって痛感した」

少女(……ん?)

狩人「今まで黙っていてごめん、少女」

狩人「実は……俺……」

少女「…………」










狩人「字が……読めないんだ」









という所で、今日はここまでです。
投下遅れてすみませんでした……


少女「…………」

少女「……え?」

少女「字が……読めない?」

狩人「……ああ」

少女「……ちょっと待って」

少女「そんな訳ないでしょう?」

少女「だったらハンター試験はどうなるの?」

少女「筆記試験もあったじゃない」

狩人「あれは答えが選択式の試験だし……」

狩人「他のハンター受験者の話を聞いて一番右を選んで書いておけば」

狩人「とりあえず合格点には届くって知ってたから」

少女「……名前はどうしたの?」

狩人「孤児院に居た時、それだけは教えてもらって書ける様になったんだ」


少女「…………」

少女「……そうだったの」


少女(そうだ……狩人は……)

少女(孤児院出身者だった)

少女(一応学校はあるけど……辺境、それも特に猟区に近い村なんかは)

少女(そういった施設が無い事が多いって聞く)

少女(さらに国や地域で修学制度も違うし、彼のようなハンターが居てもおかしくない)

少女(…………)

少女(これは……ハンターの需要と供給のバランスで)

少女(ある程度、黙認されている事なのかも知れない)

少女(私だって……ハンター試験の問題をお金で解決した)

少女(…………)


狩人「…………」

狩人「この前の……G級ティガ襲来で」

狩人「少女にメモを渡された時、焦ったよ」

少女「!」

狩人「ティガがどんなものか、だいたい知っているって程度だったし」

狩人「とにかく、あの時はティガというモンスターに対して備えるって事しか」

狩人「俺には出来なかった」

少女「…………」

少女「……結果的には、それで助かった側面もあるわね」

少女「私のメモ、持っていけたら罠を……としか書いてなかった」


狩人「そうだったのか」

狩人「ロートルさんの言う通り、本当にツイてたんだな……俺たち」

少女「…………」

狩人「…………」

少女「……あ」

狩人「ん?」

少女(字が読めない……という事は)

少女(調合書も読めない、という事)

少女「……まさか」

少女「狩人、もしかして今まで……」

少女「秘薬とか強走薬とか……飲んでない……の?」


狩人「……それがどういう飲み物なのかも知らないよ」

少女「」

狩人「…………」

少女「…………」

少女「……狩人がどうしてよく3乙するのか」

少女「今、やっと分かったわ」

狩人「…………」

少女「クエの受注はどうしてたの?」

狩人「受注書類には場所と仕事内容(狩猟や捕獲が色分けされている)」

狩人「それに討伐モンスターの絵が書いてある。 あれで判別していたんだ」

狩人「それに受付嬢さんに『ガノトトスのクエある?』とか聞けば出してくれるし」

少女「……なるほど。 確かにあったわね」

少女(やっぱりギルドは……ある程度の黙認をしているんだわ)


少女「……ともかく」

少女「読み書きができないっていうのは結構な問題ね」

狩人「…………」

少女「事情はわかった」

少女「狩人、早めに打ち明けてくれてよかったわ」

狩人「……え?」

狩人「怒らないのか?」

少女「どうして私が怒らないといけないのよ?」

狩人「いろいろ迷惑かけたし……」

少女「…………」

少女「……そうね」

少女「でも、気に病む必要はないと思う」


狩人「……そうか?」

少女「ギリギリだったけど、まだ取り返しがつく段階だし」

少女「反省が出来るのなら、これから何とかすればいいのよ」

狩人「少女……」

少女「でも」

少女「これは……そうねぇ」

少女「女さんに相談してみるべきだと思う」

狩人「女に?」

少女「狩人、確か……数字は分かってたわよね?」

狩人「ああ、足し算と引き算はできるし、数字や単位はある程度分かる」

狩人「孤児院で数字がわからないと、大変だからな」

少女「何が大変なの?」


狩人「主に買い物で必要だった」

狩人「買い出しで金額とか間違えたら、ものすごく怒られたし……」

少女(子供を働かせる孤児院だったのかしら……)

少女「……なるほど」

少女「となると……」

少女「やっぱり彼女にお願いするのが一番だと思う」

少女「読み書きはすぐに出来るものじゃないし、私はハンターとしての仕事もある」

少女「その点、女さんなら仕入れはあるけど割と村に居るし」

少女「識字に関する資料を集められる情報も持っていると思うわ」

狩人「……よくわからないけど」

狩人「女が適任、って言いたいんだな?」

少女「ええ」


少女「もちろん私も手伝うわ」

少女「でも、しばらく狩人は、狩りを休む必要があると思う」

狩人「……そっか」

狩人「せっかくランク上がったばかりなのにな」

少女「毎日休む必要はないわよ」

少女「例えば3日勉強して1日狩りをして1日休む」

少女「こんな風にすればいいのよ」

狩人「なるほど。 少女は頭がいいな」

少女「この程度……ううん、とにかく今はG級ティガの報酬で余裕もあるし」

少女「いい機会だと思ってやればいいと思う」

狩人「そう……か。 そうだな」

狩人「じゃ、明日さっそく女に相談してみるよ」


少女「うん、それがいいと思うわ」

狩人「ありがとう、少女」

狩人「俺、少女に打ち明けて良かった」

少女「ふふ、どういたしまして」

狩人「それじゃ、帰るよ」

少女「ええ、またね、狩人」

     パタン…

少女「…………」

少女「……字が読めない、か」


少女(…………)

少女(でもそれは、多少時間がかかっても何とかできる事柄)

少女(だけど……秘薬もなしで今まで戦ってこれたなんて)

少女(とてつもない身体能力……)

少女(…………)

少女(……いくら努力したって、私は絶対に得る事ができない才能だわ)

少女(…………)

少女(羨ましい……)



―――――――――――


翌日の朝

ストア裏 女の家


女「」

女「字が読めない!?」

狩人「ええ……」

女「あきれた……でも結構難しい言葉を知ってるのに」

女「!」

女「ちょっと待って……字が読めないって事は」

女「秘薬とか鬼人薬とか作れないだろうから、飲んだ事が無いって事!?」


狩人「そうです」

女「」

狩人「少女にも同じように驚かれた」

女「……狩人がよく3乙する理由が分かった」

狩人「それも少女に言われたよ」

女「…………」

女「あんたって……ううん、何でもない」

狩人「?」

女(秘薬なしで、今まで3乙しながらも狩りを続けてこれたって事は)

女(もしかしたら狩人は……とんでもない才能を持っているのかも……)

女「とにかく、要件はわかったわ」

女「私もお店があるから毎日は無理だけど……協力するわ」


狩人「ありがとう、女」

女「となると……教材がいるわね」

女「まあ、何とかなるか」

女「とりあえず今夜、狩人の家に行くわ」

狩人「ああ、分かった」

狩人「しばらくは雪山での採取クエをやる事にする」

女「そうね。 それがいいと思う」

女「それじゃ、今夜」

狩人「ああ」

女「…………」

女(……う~ん)



―――――――――――


その日の夜

狩人の家


女「とりあえず目標を決めてかかるわ」

狩人「目標?」

女「そう、目標!」

狩人「具体的には?」

女「まずはこの本を読める様になろう」つ(絵本)

狩人「わかった」

狩人「……けど、なんか子供っぽい表紙の本だな」

女「でも、読めないんでしょ?」

狩人「……はい」


女「それじゃ最初に基本的な事から始めないとね」

女「読み書きって、文字通り『読んで』『書かない』と覚えられないのよ」

狩人「はい」

女「そこでまずは……『こんにちは』とか『さようなら』とか」

女「そういうのを何度も書いて覚えてね」

狩人「何度も、か……」

女「うんうん、気が滅入るよね」

女「でも私たちは、そういう教育を受けて、字が読めるし書ける様になったのよ」

狩人「教育……」

女「そうよ」

女「さ、英雄への道も一歩から」

女「書いて書いて、書きまくって覚えるの!」

狩人「は~い……」 ←若干涙目




     こうして、文字を読める様になる勉強が始まった。

     お手本を見て、お盆位の大きさの黒板に

     チョークで繰り返し、繰り返し

     『こんにちは』を書いていった……



     正直面倒くさいことこの上ないが

     文字が読めれば、最初のホットドリンクだって

     どういう効果なのかラベルを読んで理解できたんだ。










     そう思いつつも……

     やっぱり面倒くさかった。 ううっ……









―――――――――――


数日後の午前中

砂漠村 集会所


ベテラン「よお、お二人さん」

ソロ「…………」

ロートル「……またあんたか」

ベテラン「まあまあ。 そう言わずに俺も参加させてくれ」

ベテラン「ドスゲネポス狩りに」

ロートル「…………」

ロートル「わかった」

ソロ「……おい、ロートル」

ロートル「いいんだ、ソロ」

ベテラン「へへっ、ありがとうよ」


ソロ(……本当にいいのか、ロートル)

ロートル(どこまで気がついているのか知らんが)

ロートル(装備は俺たちの属性をしっかりと真似してきている)

ロートル(HRも6だ)

ロートル(足でまといにはならんだろう)

ソロ(…………)

ロートル(それにここで断ったら返って怪しまれる)

ロートル(一度つき合わせて、ドスゲネポス狙いだと思わせておけばいい)

ソロ(…………)


ロートル(古龍が出たら出たで構わないだろう)

ロートル(運がよければ、みんな揃ってG級になれる)

ロートル(古龍殺し(エルダーキラー)は、人手があればありがたいからな)

ソロ(…………)

ソロ(背に腹は代えられない、か……)

ソロ(分かった、ロートル)

ロートル(よし)


ロートル「よろしくな、ベテラン」

ソロ「よろしく」

ベテラン「ああ、よろしく!」


※注 それぞれの装備


ロートル(HR 6)

武器:双剣(ギルドナイトセーバー)
防具:レウスS装備一式


ソロ(HR 6)

武器:大剣(蒼刃剣ガノトトス)
防具:レイアS装備一式


ベテラン(HR 6)

武器:ランス(アクアンスピア)
防具:クック(亜種)U装備一式



―――――――――――


砂漠のとあるエリア


     ザッ ザッ ザッ…

ロートル「…………」

ソロ「…………」

ベテラン「…………」

ベテラン「……まあ信用されてないのは分かるが」

ベテラン「もう少し口数があってもいいんじゃないのか?」

ロートル「……そんなんじゃない」

ロートル「ソロ……気づいているか?」

ソロ「ああ。 様子がいつもと違うな」

ベテラン「様子?」


ロートル「いつもならゲネポスの群れがここに居るんだが……」

ロートル「見当たらないな」

ベテラン「へえ?」

ベテラン「だが、ツガイだったら群れのない時もあるぜ?」

ソロ「……確かにな」

ベテラン「ここんとこ、おたくらがドスゲネポス狩りまくったせいで」

ベテラン「単純に居なくなったんじゃねーの?」

ロートル「かもしれん」

ベテラン「へっ……」

ベテラン「にしちゃあ……嬉しそうだな、あんたら」

ベテラン「いよいよお目当てのモンスターが……ってとこか」


ロートル「…………」

ソロ「…………」

ベテラン「……そろそろ何を相手にするのか」

ベテラン「教えてくれないか?」

ロートル「見ればわかるさ」

ロートル「嫌でもな」

ベテラン「ふん……」

ベテラン(どうやら、ただならぬ相手みたいだな)

ベテラン(火炎耐性の防具に水属性の武器……)

ベテラン(普通ならグラビモス、ってところだが)

ベテラン(砂漠にグラビモスが出たなんて聞いたこともねぇ)

ベテラン(いったい何を狙ってんだ……?)




     ゴガアアアアアアア……



ロートル「!」

ソロ「!」

ベテラン「……!?」

ロートル(ついに……)

ロートル(ついに来たか!)

ロートル「クーラードリンクを飲み直せ!」

ロートル「ベテラン、これから長丁場になる。 覚悟しておけ」

ベテラン「あ、ああ……」


ベテラン(何だ……? 今の鳴き声)

ベテラン(正直、聞いた事もない鳴き声だったぞ)

ベテラン(…………)

ベテラン(火炎耐性……水属性の武器……)

ベテラン(知らない鳴き声……)

ベテラン(そして……こいつらの秘密めいた行動……)

ベテラン(…………)

ベテラン(っ!!)

ベテラン「ま……まさか!?」

ロートル「気がついたか? ベテラン」

ベテラン「……正気か、お前ら。 俺がいなかったら二人で……」

ベテラン「いやそれよりも、どうやって古龍の情報を……」

ロートル「そんな話は、終わってからいくらでも話してやるさ」 クスッ




     鳴き声の主は

     この目の前の砂丘を越えれば見えるだろう。



     G級ティガをも圧倒する古龍……

     それを上位装備で倒そうというのだから、並大抵の実力では

     敵う事なく終わることも珍しくない。



     だが――

     それでも、自身がG級ハンターになる為にはやるしかないのだ。

     衰えが見え始めた自分が手に出来るチャンスは……もう少ないのだから。






     これで死んだら

     狩人や少女はどう思うだろうか……

     先輩らしい事を多少した程度だし

     それほど悲しみはしないだろうな。



     そんな事を少し考え、ロートルは迷いを払うかの様に首を振る。

     そして、おもむろに背中に携えた愛用の双剣を引き抜き、構えると

     気合と抑揚を込めて、口を開く。












ロートル「さあ、狩りの時間だ!!」










※補足説明

識字率について尋ねられた人が居ますが
具体的に何%かは決めていません。

モンハン世界では銃器(ボウガン)などの武器もありますし
作り手側の竜人族の識字率は高いものと推測できますが
ハンターの識字率及び、教養は低いのではないかと思います。

ゲームをやっていて特に気にした事はなかったんですが
2年くらい前に甥っ子(当事4歳)とモンハン4をしばらくやっていて
「クック行くー」と言って自分でクエを受注して、ものすごく驚きました。

どうやったのか聞いたら、クックの絵で判断していたので
他のモンスターの絵はわかっているのか尋ねてみると、ほぼ正解。
ここから今回のエピソードを思いつきました。


このSSの狩人がやらかしている失敗は、ほとんど>>1の失敗なんですが
私の場合は初心者で秘薬なんかの存在を『知らなかった』んです(汗)

友人に聞いて「え!? そんなのあるの!?」状態……
>>1がそれに気がついたのはシェンガオレンに対峙した後で
友人も驚いていましたw

最後に、ゲームではキークエを受注したハンターのみですが
このスレでは古龍殺し(エルダーキラー)のみならず
クエに参加した条件を満たしたハンターは
ランクアップ対象モンス討伐に成功すれば、全員めでたくランクアップします。

という所で、今日はここまでです。
お付き合い、ありがとうございました。

おわっ!? 何か支援やらレスが多くなってる!?
緊張するなぁ……でも嬉しいです!



―――――――――――


狩人の家


狩人「こうして おひめさまは」

狩人「わるいりゅうを たおして かえってきた はんたーと」

狩人「すえながく く……ろ? くろしまし……」

女「く『ら』しました」

狩人「……くらしましたとさ」

狩人「めでたし めでたし」

狩人「ふう……」


女「うん。 こんなに短い間に随分読めるようになったわね?」

狩人「ははは……」

狩人「いや、字って分かる様になったら結構おもしろくてさ」

狩人「今まで単なる……うーんと……記号?みたいに思ってたモノが」

狩人「ああ、そういう意味か、って分かって……何て言うか」

狩人「そう! 世界が違って見える感じなんだ」

女「ふふ、そっか」

狩人「…………」

女「狩人?」

狩人「ん? あ、いや。 ちょっと気になった事があって」

女「何が気になったの?」


狩人「この絵本ではさ」

狩人「主人公のハンターは、一人で討伐に行ってるけど……」

狩人「俺たち現実のハンターだって最大4人までしか参加できない」

狩人「もっと大勢でやれば、楽にモンスターを狩れるのにな……と思って」

女「ああ、そういう事」

狩人「何か知ってるのか?」

女「少しヤな話もあるんだけど……表向きはね」

女「救助するネコタクアイルーの確保が厳しいってのがあるわ」

女「例えばハンターひとりにだいたい3~4人のアイルーが付くけど」

女「10人のハンターでそれをやると、凄い人数のアイルーが必要になる」

狩人「ハンターひとりひとりに付けていたのか……」

狩人「あれって一つのクエに3~4人だと思ってた」


女「最初はそうだったのかもね」 クスッ

女「でもそれだとハンターが複数で一人が乙した場合」

女「残されたハンターの安全が確保しにくくなるわ」

狩人「なるほど……確かに」

女「もう一つは同士打ちを防ぐ、という目的があるわ」

女「ラオシャンロンみたいな巨大モンスターならともかく」

女「ドスギアノス程度で10人一斉に斬りかかったらどうなると思う?」

狩人「うわぁ……想像したくない」

女「ふふ、そうよね」

女「とまあ、ここまでが表向きの理由」

狩人「裏の理由があるのか」


女「もちろん」

女「ある意味、至極真っ当で、情けない理由……」

狩人「?」

女「分配される報酬が少なくなるからよ」

狩人「……あ~」

狩人「でも、一番納得もできる理由だなぁ……」

女「ホントね」 クスッ…

狩人「それじゃ、話を戻すけど」

狩人「次はどうしたらいい?」

女「そうねぇ……基本的には同じなんだけど」

女「絵本をこれだけ読めるのなら、もう少し難しいの行ってもいいかもしれないわね」

狩人「調合書とかは まだ無理か?」

女「う~ん……じゃあ一度、1ページだけ試してみましょうか?」

狩人「調合書、持ってくるよ」


女「そういえば、狩人は回復薬を調合できたっけ」

女「どうやって覚えたの?」

狩人「ハンター講義の時、これだけは最低限覚えておけって」

狩人「目の前で実演してくれたから覚えたんだ」

女「なるほど」

女(……見たり聞いたりした事なら出来るんだ)

女(それにしても今まで回復薬のみで戦って来たなんて)

女(よく生き残れたものね……)

女「それじゃ1ページだけ、読めないところや単語を指差してくれる?」

女「私が読むから」

狩人「ああ、頼むよ」



―――――――――――


女「……って読むのよ」

狩人「ふむふむ……」

女「意味は分かる?」

狩人「ああ、大丈夫だ」

女「うんうん」

女「狩人って、頭良いね」

狩人「え? そ、そうかな……」

女「今までは知らなかったってだけだから」 クスッ

女「物覚えは早いし、言葉の意味はしっかり把握してる」

女「頭良い証拠よ」

狩人「ははは……何か照れるな」///


女「じゃあ、今日はここまでにしとくね」

女「私、これから仕入れに行かないといけないから2~3日はお休みよ」

狩人「そうか……いつも悪いな」

狩人「そうだ、昼飯くらいは奢らせてくれ」

女「んーそうね。 ご馳走になろうかな♪」

狩人「よし。 おーい、板前アイルー」

女「あら? キッチンアイルー雇ったんだ? いつの間に?」

狩人「うん。 ついこの前」

     タッ タッ タッ

板前アイルー「あいよー! 旦那、お呼びかニャ?」

狩人「昼飯、俺と女の分、作ってくれないか?」

狩人「おっと……くれぐれも冒険はするなよ?」


板前アイルー「ニャハハ……旦那、わかってるニャ!」

板前アイルー「メニューは何にするニャ?」

狩人「俺は肉料理」

狩人「女は何がいい?」

女「うーん……そうねぇ」

女「焼き魚定食……みたいなのできる?」

板前アイルー「お任せあれニャ!」

狩人「じゃ、これ材料費……100z(ゼニー)くらいで足りるか?」

板前アイルー「お釣りがくるニャ!」

板前アイルー「んじゃ、少々お待ちくださいニャ!」

     タッ タッ タッ

女「……ちょっと元気すぎるアイルーね」


狩人「ははは……まあな」

狩人「でも仕事はきっちりしてくれるし、本当に助かってる」

狩人「一度雇うと、手放せなくなるかも」

女「あーそれ。 ハンターの人からよく聞くわ」

女「給金が高いから一般の人は縁遠いんだけどね」

狩人「毎月1000z(ゼニー)もいるからな……」

女「わっ! そんなにするんだ」

女「私の月給の6分の1くらいだよ、それ」


狩人「へえ……女って結構いい稼ぎなんだな」

女「えー? そうでもないと思うけど?」

女「部屋の借り賃とか、その他もろもろ引くと、手元に残るのはほんの僅か……しくしく」

狩人「俺がハンターやり始めた頃は、間違いなくそれより低かったよ」

狩人「部屋代は要らないから助かってたけど……」

狩人「そうじゃなかったら、とっくにこの村を追い出されてると思う」

女「3乙ばっかりしてたもんね」 クスッ

狩人「……ヤなこと思い出さないでくれ」 ハア…

     アハハ…



―――――――――――


砂漠のとあるエリア


ロートル「うおおおおおおおおっ!!」


     ズバッズバッズバッ!


ロートル「ソロ!」

ソロ「おうさ!」


     ブウンッ!  ドガァッ!!

     ギュアアアア……


ベテラン「ヒュー! やるねぇ……」


ベテラン(さすがにテオ・テスカトルを見た時は、腰が抜けそうになったが)

ベテラン(あの二人の動き……おそらく何回かやり合った事があるみたいだな)

ベテラン(初見なら しばらく見とけと言われて、ここから観戦させてもらっているが)

ベテラン(前足の攻撃範囲は広いみたいだし、大きな隙は火を吹いた時くらいか)

ベテラン(それにしてもあの二人、それ以外の少ない隙を突いて……いや)

ベテラン(ロートルが主に隙を作り出して、ソロが強力な一撃を与えている)

ベテラン(……見事な連携だ)

ベテラン(…………)

ベテラン(だが……)


     ゴガアアアアアアアアアッ!!


ベテラン(怒ったみたいだな。 問題はここからだ)




     ズガッ! ドガッ!



ソロ「ぐっ……!」(防御姿勢) ビリビリビリッ…!

ソロ(ただの前足攻撃なのに、何度受け止めてもキツいなッ……!)

ソロ「ロートル!」

ロートル「おおっ!」


     ズバッズバッズバッ!


ベテラン(うへぇ……今度は役割を変えたのか?)

ベテラン(双剣の乱舞技はスイッチが入っちまったら、止められねぇってのに……)



     ギュアアアア……


ベテラン(!!)

ベテラン(いいタイミングで怯んだな……運のいいことで)


     ブワワワ…… チリチリチリッ


ベテラン(!? なんだあれ? 何か粉みたいなを撒き散らしている……?)

ソロ「赤! 近距離!」

ロートル「おうっ!」 回避!


     ガチンッ!  ボボボボボボボンッ!!


ベテラン「」

ベテラン「んなっ!? 爆発した!?」


ロートル「はあっはあっはあっ……」

ソロ「ふー……ふー……ふー……」


     グルルル……


ベテラン(こいつはおったまげたぜ……どういう理屈で爆発したのか分からねーが)

ベテラン(粉振りまいたと思ったら爆発した。 知っていないと確実にやられていたな)

ベテラン(しかも近距離って言っていた。 という事は……遠距離もあるって事か?)


ロートル「はあああああああっ!」


     ズバッズバッズバッ!


ロートル(くっ……切れ味が!)

ロートル(もうこんなに刃こぼれしているのか……!)


ロートル「ソロ! 時間だ!」

ソロ「! 分かった!」

ベテラン(時間?)

ソロ「…………」つ(閃光玉)


     ブンッ…   カッ!!

     ギュアアアア……


ロートル「よし! 一度下がるぞ!」

ソロ「ベテラン! そこの洞窟へ入れ!」

ベテラン「ああ、分かったぜ!」



―――――――――――


砂漠の洞窟


ロートル「はあっはあっ……ふー……」

ソロ「ふう……」

ベテラン「…………」

ベテラン「それにしても見事なもんだな、お二人さん」

ベテラン「聞くまでもないが、テオとやり合った事があるのか?」

ロートル「……ああ。 5年くらい前にな」つ(砥石)

ソロ「…………」つ(砥石)

     シャッ… シャッ…(砥石使用中)

ベテラン「5年も前かよ……」


ベテラン「にしちゃ、かなり息の合った連携だ」

ベテラン「まるで毎日テオ相手に練習していたかの様だったぞ」

ロートル「……悔しい思いをしたからな」

ロートル「俺もソロも……」

ソロ「…………」

ベテラン「……まあ、その辺りは聞かないでおいておく」

ロートル「どうだ、ベテラン」

ロートル「やれそうか?」

ベテラン「へっ……正直、最初はブルっちまったが」

ベテラン「今はやる気満々だぜ」

ロートル「そうか」


ベテラン「おっと、再戦の前に一つ聞いておきたい事がある」

ロートル「なんだ?」

ベテラン「お言葉に甘えて、テオの攻撃方法をじっくり見させてもらったが」

ベテラン「あの爆発。 あれはどういう理屈なんだ?」

ベテラン「いや、それはどうでもいいな……」

ベテラン「近距離とか言っていたが、見分け方を教えてくれ」

ロートル「ほう。 よく見ているな」

ロートル「俺も理屈は知らん。 が、赤い粉だと奴の近距離で爆発して」

ロートル「黄色い粉だと遠距離で爆発するんだ」

ベテラン「なるほど……赤で近距離、黄色で遠距離ね」

ベテラン「覚えたぜ」


ベテラン「んじゃ、行きますか」

ベテラン「俺は二人の邪魔にならないよう、援護に徹するぜ」

ベテラン「もちろんヤバそうなら間に割って入る」

ベテラン「それでいいか?」

ロートル「ああ。 それでいい」

ソロ「…………」

ベテラン「ソロのあんちゃんもそれでいいかい?」

ソロ「……ああ」

ベテラン「へへっ……ま、信用できねーのは分かるが」

ベテラン「もうちょっと愛想よくできないのかねぇ」

ソロ「……この顔は生まれつきなんでな」

ソロ「無駄口はそのくらいでいいだろう」

ソロ「行くぞ」




     古龍テオ・テスカトル

     外見は赤い表皮に覆われ、龍の羽こそあるが

     肉食獣に近い見た目で鳴き声もそれに準じている。



     大きな特徴として、その頭に冠の様な角があり

     また、近づくだけで衣服に火が付く様な高温の体温であるため

     別名『炎王龍』との異名を取る。



     性格は凶暴で縄張り意識が強く

     火山や砂漠など、暑い地域に生息している。






     もちろん下位ハンターが手を出していい相手ではない。

     上位でもトップクラスの実力者や

     G級ハンターでないと、生き残る事すら難しい相手なのである。



     もし、テオ・テスカトルを見かけた時

     その実力に達していないと思うのなら

     自分の存在を気づかれる前に逃げる事をお勧めする。

     それは恥ではない。

     テオに限らず古龍相手ならば、生存をかけた逃走であるのだから。




ロートル「はあっ!」

     ズバッズバッズバッ!!

ロートル(……そろそろか?)


     ゴアアアアアアアッ!!


ロートル「……やっぱり鳴いてきたか」

ロートル「はあっ!」

ベテラン「どぉうりゃあああああっ!!」つ(ランス)

     ザクッ! ザクッ! ザクッ!

ベテラン「よっと」(防御姿勢)

     ドゴォッ!!

ベテラン「ぐっ……くっ!!」 ビリビリビリビリッ!


ベテラン(ただの前足攻撃なのに、なんてクソ重い一撃だ……!)

ベテラン(まともに食らったら、ヤバイなんてもんじゃねぇぜ!)


ソロ「はあああああああああっ!!」(タメ3)


     ドガァッ!!

     ギュアアアアアアッ……


ロートル「! すっ転んだ!」

ロートル「叩き込め!」

ベテラン「言われなくてもぉぉっ!」(突進)

ソロ「おおおおっ……!」(タメ3)

     ドガガガガガガガッ!!



―――――――――――







     数時間後










砂漠の洞窟


ロートル「はあっはあっはあっ……!」

ソロ「ぜぇ……ぜぇ……ぜぇ……」

ベテラン「はあっはあっはあっ……くそっ」

ベテラン「どんだけ……はあっはあっ……タフなんだよ……ひー、ひー……」

ロートル「くっ……覚悟は……していたが……はあっはあっ……」つ(砥石)

ソロ「ぜぇ……ぜぇ……」

ソロ「ちょっと……言っておきたいんだが……ぜぇ」つ(砥石)

ベテラン「なんだ……? 足を引きずっているの……はあっはあっ……」

ベテラン「見かけたとかか……?」つ(砥石)

     シャッ… シャッ…(砥石使用中)

ソロ「生命の粉塵(同じエリアの味方ダメージを回復するアイテム)の残りが後ひとつだけだ……」

ベテラン「ちっ……悪い知らせかよ……」


ベテラン「俺はあと……二つだな」

ロートル「俺は使い切った……それと、もっと悪い知らせがある」

ベテラン「聞きたくねーなぁ……」

ソロ「……何だ?」

ロートル「グレートはおろか、強走薬も使い切ってしまった」

ベテラン「……くそっ」

ロートル「…………」

ロートル「これからは作戦を変えるぞ」

ベテラン「どうすんだ?」

ロートル「シンプルに自分の事は、自分で何とかする」

ソロ「……仕方ないな」


ロートル「幸い、ここまで俺たちは1乙もしていない」

ロートル「奇跡はきっと起こせるさ」

ベテラン「……へっ」

ベテラン「そういうの、嫌いじゃねーぜ」 ニヤッ

ロートル「ただし、大きなダメージを負ったら、この洞窟に逃げ込んで回復するんだ」

ロートル「もう閃光玉も効果が薄くなっている」

ロートル「各自の判断で撤退して体制を整えるんだ」

ソロ「……そうだな」

ソロ「それしかないだろう」

ベテラン「ああ、俺もそれでいいと思う」

ロートル「よし」

ロートル「……行くぞ!」



―――――――――――


夕方

砂漠のとあるエリア


ロートル「でやああっ!!」


     ズバッ! ズバッ!


ベテラン「このっこのっ!!」

ベテラン「いい加減、くたばりやがれ!!」


     ゴガアアアアアアアアアッ!!


ソロ「ぐっ……しまった!」



     ドゴオッ!!(突進攻撃)


ソロ「ぐあああああああああっ!!」

ロートル「ソロッ!」

ロートル「くそおおおおおおおおっ!!」


     ズバッズバッズバッ!!


ベテラン「! やけになるな! その間合いで乱舞技は……!」


     ズガァッ!!


ロートル「ぐぎゃああああっ!!」

ベテラン「言わんこっちゃねぇ!!」


ベテラン「うおおおおおおおおおおおおおおっ!」つ(ランス)


      ドドドドドドドドドドドドッ!(突進攻撃)

      ズガガガガガッ!!


ベテラン「今のうちだ! 下がれ!」

ロートル「……すまんっ」


     ギュアアアアアッ!!

     ドガァッ!! ゴギャッ!!


ベテラン「ぐっ……くっ……!!」(防御姿勢)

ベテラン(くそったれっ……!)


砂漠の洞窟


ロートル「はあっ……はあっ……」

ソロ「ぜえっぜえっぜえっ……」

ロートル「ソロ……大丈夫か……?」

ソロ「……心じゃ……ぜえっ……やる気は、あるんだがな……」

ソロ「くそっ……もう回復薬すら使い切ってしまった……」

ロートル「……そうか。 あとは任せて休んでおけ」

ロートル「俺とベテランで何とかする……はあっはあっ……グビッ」つ(回復薬)

ソロ「……お前も……それ最後じゃないのか……?」

ロートル「……実を言うと……クーラードリンクも使い切っている」

ソロ「はっ……それは一大事だな……」

ロートル「なに……なんて事ないさ……ふふ」

ソロ「ふふふ……」


ベテラン「うおおおおおおおおおおっ!?」


     ガチンッ! ボボボボボボボボンッ!!


ベテラン「ひー! あ、あぶねえ!」


     ゴガアアアアアアアアアッ!!


ベテラン「くっそお……! 怒りすぎだろーが!!」

ベテラン「このおっ!!」


     ザクッ! ザクッ! ザクッ!




     ギュアアアアアッ!!

     ドガァッ!! ゴギャッ!!


ベテラン「ひえええええっ!!」 バックステップ回避!

ベテラン「はっ!? し、しまった! 壁際に追い詰められ……」


     グワアッ!!


ベテラン「わわっ!? ちょ、タンマ!!」


     ズバッ!!

     ギュアアアアア……


ベテラン「…………」

ベテラン「……へ? 生きてる?」


ロートル「大丈夫か!?」

ベテラン「ロートル!」

ベテラン「すまねぇ……助かったぜ」

ロートル「いい。 これで貸し借りなしだ」

ベテラン「ああ、そうだな!」

ベテラン「うおおおおおおおおおおっ!!」つ(ランス)

ロートル「でやあああああああああっ!!」


     ドガガガガガガガガッ!!

     ギュアアアアアッ……


ベテラン「はあっ……はあっ……」

ロートル「はあっ……はあっ……」



     ズルルッ… ズルルッ…


ベテラン「!」

ロートル「!」

ベテラン「あの野郎、足を引きずってやがるぜ!」

ロートル「ああ! もう一息だ!」

ロートル「もう一息で……」


     バサッ…


ベテラン「あ……」

ロートル「な……!?」



     バサッ バサッ バサッ…


ベテラン「…………」

ロートル「…………」

ベテラン「あの高さ……」

ベテラン「……エリチェン……じゃねーな」

ロートル「…………」

ロートル「……そ……だ」

ロートル「……うそだ……うそだ……」



ロートル「うそだあああああああああああああああっ!!」



ベテラン「…………」




     砂漠の地平線に夕日が沈んでゆく。

     そして砂の大地に、あらん限りの絶叫が響いた。



     傷つき、足を引きずりだした古龍テオ・テスカトルは

     その翼をはためかせ、沈みゆく太陽に向かって羽ばたいていく。



     ……それはまるで











     ロートルを、ハンター達を

     あざ笑うかの様だった……









今回のエピソードは、P2Gをやった事がある方はお分かりだと思いますが
実は原作ゲームでも古龍退治でこういう事があります。

簡単に言うと、普通の討伐クエより時間が短く設定してあるのに
ある程度以上のダメージを与えて30分が過ぎると強制終了となるんです。
何が【古龍は傷つき去っていった】だぁー!! 倒しきらせろー!!
と、何度PSPを叩きつけそうになった事か……

ただ、ゲームでは、再び同じ古龍が現れたとき(場所は違う事あり)
ダメージを負った状態で現れるので無駄にはなりません。
が……開始5分以内で終わることもあり
さらにイラッとする事態になったりもしますw

という所で、今日はここまでです。
お付き合い、ありがとうございました。


5がハンター世界では不吉な数字ってのは説明しないのかな?

>>667
P2Gからっていうし知らんのじゃね?
不吉な数話ってココットで聞けるんじゃないっけ?

>>667 >>669
一応それなりに知ってはいたんですが、あえて無視しました。
>>1の解釈で、どうにも腑に落ちない設定だったので……
モンスター側がこちらの事情を考慮してくれる訳はないし
ハンター側が、自らを縛ってどうするの?と、前々から疑問に思っていたので
>>1自身が納得できる理由をこのスレで使ってみました。



―――――――――――








     半月後











午前中

狩人の家


狩人「……っと」

狩人「これが秘薬か」

少女「うん。 そう」

狩人「回復薬にもグレートとかあるし……」

狩人「調合って奥が深いな」

少女「奥が深いとは思わないけど……」

少女「すごいハンターを見た事があるわ」

狩人「すごいハンター?」

少女「すごい、と言うか、器用、と言うか……」


少女「ババコンガに追いかけられながら調合していたのよ」

狩人「ぶっ!?」

狩人「嘘だろ!?」

少女「エリチェンしてからやればいいのに……と思ったけど」

少女「調合し終わったら、また戦っていたわ」

狩人「……すごいんだか、無駄な才能というか」

狩人「判断が難しいな」

少女「まあ出来るにこした事はないとは思うけど」

少女「調合書開きながらやってるのにも驚いたわ」

狩人「……もうそれ曲芸でお金取れるレベルだな」

少女「それにしても字、大分読める様になったんだね」


狩人「にひひ、まあな」

狩人「女が辞書っての持ってきてくれて」

狩人「知らない単語が出てきたら、これを調べて読んでるよ」

少女「そこまで出来るようになったんだ……」

少女「狩人って頭いいね」

狩人「女にも言われたけど、そうなのかな?」

少女「だって普通は、子供の頃から何年もかけて覚えていく事なのよ?」

少女「狩人は覚え始めて一ヶ月、経ってないし」

狩人「ふうん……」

狩人「まあ何て言うか、こう……出来なかった事が出来る様になっていってるという」

狩人「実感がすごくあってさ」

狩人「それが楽しいし、世界が違って見える気がするんだよ」

少女「そうなんだ」


狩人「まあ、まだ調合書1巻目の半分くらいしか読めてないけど」

少女「うふふ」

     トコ トコ トコ…

板前アイルー「旦那、もうそろそろ昼だニャ」

板前アイルー「どうするニャ?」

狩人「もうそんな時間か」

狩人「少女、どうする? 一緒に食うか? もちろん奢るぜ?」

少女「そうね。 じゃ、お願いするわ」

狩人「んじゃ、俺はいつもの肉料理」

狩人「少女は?」

少女「んー。 魚の煮付け……みたいなのできる?」

板前アイルー「できますニャ! まどもわぜる」


狩人「何だよ、まどもわぜるって……」

板前アイルー「何か、れでーに対しての親愛の言葉って聞いたもんで……」

狩人「相変わらず覚えた事、すぐ使いたがるな……」

狩人「おっと、くれぐれも冒険はするなよ?」

板前アイルー「……ニャハハ、分かってますって旦那!」

狩人(やる気だったな、こいつ……)

狩人「ほい、100z(ゼニー)」

板前アイルー「ガッテン承知だニャ!」

板前アイルー「少々お待ちくださいニャ!」

     タッ タッ タッ

少女「元気なキッチンアイルーね」

狩人「それはいいんだけど、時々俺で新メニューの実験しようとするんだよ……」


少女「そういえば、いつだったか……」

少女「猫飯でお腹壊したって言ってたっけ」

狩人「黙ってやるな、とは言っておいたんだが」

狩人「この前、調味料間違えたとかって 言い訳してきたし」

狩人「何でこっそりやろうとしたがるのか……」 ハアッ…

少女「解雇すれば?」

狩人「それも考えたんだけど……そこ以外は真面目に完璧なんでな」

狩人「まあ、あいつの個性だと思って、そのままにしてる」

少女「個性……か」

少女「そういう意味じゃ、私のコックアイルーはどれも無難な感じね」

少女「時々、材料を焦がしたりしてダメにしちゃったり」

少女「食器を割ったりしてごめんなさいって言ってくるわ」


狩人「そうなのか」

狩人「板前アイルーはそういうの無いよ」

少女「ちょっと羨ましいかも」 クスッ

狩人「でも時々雇い主で実験します」

少女「やっぱり羨ましくないわ」

狩人「ははは……」

少女「ふふふっ」

狩人「…………」

狩人「そういやさ」

少女「ん?」

狩人「昨日、集会所に行って少し気になったんだけど」

狩人「なんか、ハンターの数が少ないな?」


少女「あ、それ私も気になってるのよ」

少女「どういう訳か、上位の……それも」

少女「HR6のハンターばかり、急に姿が見えなくなってるの」

狩人「へぇ……」

狩人「どうしてなのかな?」

少女「さあ……でもHR6のハンターに限って、というのが」

少女「何か関係しているのかもね」

狩人「HR6か……」

狩人「…………」

狩人「ロートルさん達は、どうしてるのかな」

少女「そうね……あれっきり何の連絡もないから」

少女「さっぱり分からないわ」

狩人「…………」



―――――――――――


砂漠村 集会所


     ワイ ワイ ガヤ ガヤ

ロートル「…………」

ソロ「…………」

ベテラン「…………」

ベテラン「……あれから、あの場所のクエを受注しにくくなったな」

ロートル「……そうだな」

ソロ「……ギルド観測所・所員の報告を聞いてたのが居たんだろう」

ソロ「ネコタクアイルーから、という事もあるかもしれん」


ロートル「結局……こうなったか」

ベテラン「正式な古龍討伐依頼はG級扱いだし」

ベテラン「俺たち上位ハンターは『偶然遭遇』しないと、ありつけないからな」

ソロ「……古龍は、現れた場所にまた舞い戻ってくる」

ソロ「それは周知の事実……」

ロートル「…………」

ロートル「くそっ……」

ベテラン「…………」

ソロ「…………」


ロートル(……またか?)

ロートル(また、なのか……?)

ロートル(…………)

ロートル(5年前も……この前の半年間も)

ロートル(最終的には別のハンター達が仕留める結果に……)

ロートル(…………)

ロートル(ここからは、あの場所のクエの奪い合いになる)

ロートル(時間が経てば経つほど、受注が難しくなっていく……)

ロートル(…………)

ロートル(……いや、諦めるな)

ロートル(まだ……チャンスはある)

ロートル(きっと……)



―――――――――――


さらに数日後の朝

ふもと村 集会所


狩人「…………」

狩人「あ」

狩人「ババコンガの依頼がある」

少女「おはよう、狩人」

狩人「少女。 おはよう」

少女「どうしたの?」

狩人「ああ、ババコンガの依頼があってな」


少女「ババコンガかぁ……という事は密林ね」

狩人「そう」

狩人「俺たち下位ハンターは、ここでしかババコンガを狩れないからな」

狩人「上位の沼地って猟区が、よく出るんだっけ?」

少女「正解。 でもランクアップ対象モンスターだから」

少女「必ず狩らないといけないし……面倒なモンスターよね」

狩人「ははは……モンスター書物を読んだけど」

狩人「ウ○コぶつけてくるんだってな……喰らいたくねぇ」

少女「私は出来れば、もう二度と狩りたくないわ……」

狩人「ははは……」

狩人「それじゃ、ちょっと行ってきていいか?」


少女「うん。 これを狩猟できたら、狩人も上位ランクアップクエを」

少女「受注できるようになるね」

狩人「そうだな」

少女「帰ってきたら、一緒に上位ランクアップクエに挑戦かも?」

狩人「そうそう上手く行くかな……」

狩人「ドドブランゴだっけ?」

狩人「今、待っている状態なんだよな?」

少女「うん」

少女「ドドブランゴはシーズンがある訳じゃないから」

少女「基本待つ事になるのよねぇ……」

狩人「こっちの都合に合わせて出てくれたらいいのにな」

少女「ふふっ、ホントだね!」

     ハハハ…


狩人「じゃ、持っていくもの準備し直して行ってくる」

少女「うん」

少女「頑張ってね」

狩人「ああ」

狩人「……それにしても」

狩人「さらにハンターが居なくなってるな……?」

少女「うん……原因は何なのかしら?」

狩人「帰ってくる頃には、分かっているといいんだが」

狩人「ともかく、行ってくるよ」

少女「ええ」




※狩人の装備


武器:大剣(フルミナントソード)
防具:フルフル装備一式





―――――――――――


密林

BC(ベースキャンプ)


狩人「ふう……やっと着いた」

狩人(いつも思うけど、どうしてここだけこんなに遠いのかなぁ)

狩人(さて、愚痴っててもしょうがない)

狩人(初見な上にまた一人……まあ今回はハンターが少なかったからだけど)

狩人(難易度高くなるのは事実だからな)

狩人(消臭玉に閃光玉と罠……)

狩人(思いつく限りの準備はしてきたつもりだ)

狩人(そして……)

     ゴソゴソ…

狩人「秘薬!」つ(秘薬)


狩人(飲んだハンターの耐久力を引き上げる効果がある)

狩人(これも最初から知っておけば……)

狩人(って、それは言いっこなしだな)

     ゴクゴク… シュオオオッ!!

狩人「おおっ!?」

狩人「なんか……うまく言えないが」

狩人「ちょっと強くなった気がするな!」

狩人「よし、回復薬グレートに、その予備として調合分も持ってきている」

狩人(……ハチミツなんて使い道を知らなかった時は売っぱらってたからなぁ)

狩人(今からすると、何てもったいない事をしてたのかって思うぜぇ……) トホホ…

狩人(よし、準備万端)

狩人(待ってろよ、ババコンガ!)



―――――――――――


     フゴッ フゴッ

狩人(居たいた……全身ピンクの体毛の牙獣種)

狩人(普通のコンガと見分ける一番の特徴は、頭にある黄色いトサカみたいな毛)

狩人(まあ大きさで だいたい分かる気もする……)

狩人(いずれにしても、間違いなくコンガの親分格、ババコンガだな)

狩人(…………) ゴソゴソ…

狩人(…………)つ(ペイントボール)

狩人(よっ……と) ブンッ!

     ヒュ―――…… ベチャ!

狩人「……でやあああああっ!!」



     ドガアッ!!

     アオオオォッ……


狩人「先制攻撃成功!」

狩人「ここで……タメ3!」


     バキッ!


狩人「ぶげっ!?」

狩人(い、意外と素早い!?)

狩人「くっ……」



     ブロロオオオオオオオオオンッ!!


狩人(怒ったか……まあ当然だな)


     フゴッ! フゴッ! フゴッ!

     ドドドドドドドドドッ!!


狩人「うおっ!」(防御姿勢) ガシッ!

狩人(あの時のティガに比べたら大した事はないけど)

狩人(この突進は要注意だな……)

狩人「おりゃあああっ!!」


     ドガァッ!!




―――――――――――


狩人「…………」

狩人「ふう……」

狩人「とりあえず倒せたけど……」

狩人「臭ぇ……」

狩人「剥ぎ取りもあんまりしたくないなぁ……」

狩人「…………」

狩人「消臭玉使えば、多少はましかな?」

     ザシュ… ベリリ…

狩人「…………」

狩人「……おえっ」



―――――――――――


数日後の午前中

ふもと村 集会所


狩人「あ~……やっと帰ってきた」

狩人「一応、体も装備も洗ったけど」

狩人「まだ臭う気がするなぁ……」

     ソ、ソンナ! デスガ…

狩人「……ん?」

狩人(ハンターが……ひとりも居ないな?)

狩人(それにあれは、村長さんに女……受付嬢さんと何の話をしているんだろう)

狩人(やけに深刻そうだけど……)


狩人「あのー……」

女「!」

村長「か、狩人!」

女「良かった……帰って来たんだね!」

狩人「ど、どうかしたんですか?」

狩人「ハンターが一人も居ませんけど……」

女「…………」

女「狩人、最初から話すわね」

狩人「あ、ああ……」

女「まずね……3~4日くらい前に」

女「ドドブランゴが現れたの」

狩人「はい」


女「それ自体は普通のこと」

女「特に気にするべき事案じゃない……でも」

女「次の日、さらにドドブランゴがもう一頭現れた」

狩人「…………」

女「それだって珍しいけど、まあ無かった事じゃないわ」

女「だけど……」

女「昨日になって、全部で4~5頭ものドドブランゴに増えていたの!」

狩人「!?」

女「こんな事は、さすがに初めてよ……」

女「ブランゴじゃなく、ドドブランゴが群れになって現れるなんて……!」

女「最新のギルド観測所の話だと、今は、もう2~3頭増えているかもしれないって」

狩人「い、一体どうして!?」


女「…………」

女「狩人、もうそれは問題じゃないわ」

狩人「え……?」

女「今、受付嬢さんから、ギルドからの避難勧告が伝えられたの」

狩人「!?」

女「今朝、参加できるハンター総出で討伐隊が結成され、出発したけど」

女「全部で8人しかいない」

狩人「なっ……!?」

狩人「それで避難って……」

狩人「! そ、そうだ、少女は!?」

女「……もちろん討伐隊に参加してる」

狩人「」


女「受付嬢さんの話では……」

女「雪山周辺の集落全部に避難勧告が出ているそうよ」

女「理由はわからないけど……」

女「どこの村も強いハンターが遠征しているそうで」

女「こんな状態で、この数のドドブランゴ相手では……難しいと判断したみたい」

狩人「難しいって……!」

狩人「じゃあ討伐に行ったハンターは、どうなるんですか!?」

女「………っ」

村長「狩人……」

村長「どう言い繕っても結果は同じ事だから、私がはっきり言うよ」

狩人「…………」











村長「ただの……時間稼ぎにしかならない、という事だ……」











狩人「」

狩人「そ……そんな!!」

狩人「じゃ、じゃあ……少女や、他のハンターを」

狩人「見捨てるって言うんですか!?」

女「…………」

村長「…………」

受付嬢「…………」

狩人「……っ!」

     ダッ!!

女「!!」

女「狩人! 待って!!」

     ギュッ!

狩人「止めるな! 女!」


女「あなた一人が行って、どうにかなるの!?」

狩人「っ!!」

狩人「…………」

女「狩人……落ち着いて聞いて」

女「今、ギルドが総出で近隣の村や街に、この異常事態を知らせに回ってる」

女「だけど、どうやっても上位ハンターがここに来るまで」

女「3日以上はかかってしまうのよ……!」

狩人「…………」

女「私だって……こんなのは嫌よ……!」

女「でも、他にどうすればいいの?」

女「少女ちゃん達が居てくれたからこそ、逃げる時間ができた」

女「今は……早く避難しないと、雪山を降りてきたドドブランゴに対抗する手段が」

女「私たちには全くないのよ!!」


狩人「……っ」 ギリッ…

狩人「…………」

狩人「……く」

狩人「くっ……そおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

村長「…………」

村長「……皆に知らせてくる」

村長「もう時間が無いからね……」

     スタ スタ スタ…

狩人「ぐっ……くっ……くそっ……くそぉっ……うぐっ……」

女「ごめん……狩人……ごめ、ん……」

女「ごめんなさい……少女ちゃん……ひっく……」




     ……この世の中は、本当に理不尽だ。

     こういう事態が起きた時

     自然の営みとか、神様って奴の気まぐれとか

     何かしらそう理屈づけて語る奴が多い。

     でも……どんな奴でも必ず最後にこう付け加えるんだ。



     『仕方ない』



     ああ、そうさ。 その通りだ。

     『仕方ない』んだよって……納得するしか無いんだよな。

     弱いから……






     …………



     だけど……俺はハンターだ。

     弱くても……ハンターなんだ。

     モンスターを狩る、ハンターなんだ!



     俺は……俺は……












     俺は、ハンターだ!






   


連続狩猟で一体ずつ出てきてくれるモンスターさん、マジイケメン。
なんか久しぶりに筆が乗りましたw
という所で、今日はここまでです。



―――――――――――


雪山


     ダンッ! ダンッ! ダンッ!

少女「くっ……!」

モブハンター1「くそっ! こっちにも一頭いるぞ!」

ロン毛ハンター「いったい何匹いるんだ!?」


     ドバァッ!!


モブハンター2「うわあああああっ!!」

モブハンター2「」 ドサッ…

モブハンター3「くっそおおおおおおおっ!!」


少女「だめ! やけにならないで!」

少女「!」

少女「あっちのドドブランゴ、雪塊を投げてくるわ!」

ロン毛ハンター「固まるな!」

ロン毛ハンター「巻き添えを食うぞ!」


     ドド―――――ンッ!!


少女「きゃあっ!」

ロン毛ハンター「くっそおおおおおっ!!」


モブハンター1「」 ドサッ…

モブハンター3「」 ドサッ…

少女「ああ……」

ロン毛ハンター「畜生!」

ロン毛ハンター「もうだめだ! 一時撤退しよう!」

少女「分かったわ!」つ(閃光玉)


     ブンッ!  カッ!

     オオ――――ン……


少女「洞窟に向かいましょう!」

ロン毛ハンター「賛成だ!」

モブハンター4「はあっ……はあっ……」

     タッ タッ タッ…



―――――――――――


雪山の洞窟


少女「はあっはあっはあっ……」

ロン毛ハンター「はあっはあっはあっ……」

モブハンター4「はあっはあっはあっ……」

少女「くっ……みんな、怪我はない?」

ロン毛ハンター「ああ、なんとかな。 俺は擦り傷程度だ……」

モブハンター4「こっちも一応大丈夫だ……」

少女「そう……とりあえず朗報ね」

ロン毛ハンター「くそっ……それにしても数が多すぎる」

ロン毛ハンター「昨日言ってた4~5頭より絶対多く居るぞ……」


少女「ええ……そうね」

少女「それにドドブランゴ達で連携しているようにも思える」

少女「一匹だけでも厄介なのに……」

ロン毛ハンター「それのせいで一匹に集中砲火を浴びせられないしな……」

ロン毛ハンター「くそっ……」

モブハンター4「どうする?」

モブハンター4「正直、お手上げだ……」

モブハンター4「少なくとも もう数の上で敵いっこないぞ」

少女「…………」

少女(冷静に考えなくても撤退しかない)

少女(でも……それじゃあドドブランゴ達が雪山を降りてきてしまう)


救助アイルー「ニャ! ここに逃げ込んでいたのかニャ!」

少女「!」

少女「救助アイルー!」

ロン毛ハンター「おお、ネコタクのアイルーか!」

ロン毛ハンター「ちょうどいいところに……ん?」


モブハンター1「」

モブハンター3「」


救助アイルー「…………」

モブハンター4「……おい、なんで乙ったハンターを」

モブハンター4「BC(ベースキャンプ)に連れて行かないんだ?」

モブハンター4「それに……どうして二人だけなんだ?」


救助アイルー「…………」

救助アイルー「BC(ベースキャンプ)には、もう戻れないニャ」

救助アイルー「すぐ手前のエリアに2頭のドドブランゴが陣取ってて……」

救助アイルー「乙ハンターを抱えながら通るのは……無理だと判断したニャ」


一同「!?」


救助アイルー「乙ハンターが二人なのは……これが精一杯だったからニャ」

救助アイルー「今の俺たちの人数と技量の限界というだけニャ……すまないニャ」


一同「…………」


ロン毛ハンター「なんてこった……」

ロン毛ハンター「下山する事も出来ないなんて……」


モブハンター4「……とりあえず」

モブハンター4「ここで救助を待つしかないんじゃか?」

モブハンター4「俺たちのみじゃ、どうしようもない」

ロン毛ハンター「確に……と言いたいが」

ロン毛ハンター「BC(ベースキャンプ)の手前まで降りてきているのなら」

ロン毛ハンター「奴ら、いつ猟区外へ行ってもおかしくないぞ」

ロン毛ハンター「今は、上位ハンターが極端に不足している異常状態……」

ロン毛ハンター「俺たちの救助は、いつになるのか……」

モブハンター4「なら、その手前のドドブランゴ達だけを倒せばいんじゃないのか?」

モブハンター4「2頭だけなら俺たちだけでも何とか……」


ロン毛ハンター「仲間を呼ばれたらどうする?」

ロン毛ハンター「下手に戦えば、返ってBC(ベースキャンプ)に戻れなくなるぞ」

モブハンター4「じゃあどうしろって言うんだ!?」

モブハンター4「ここにいる乙ハンターだって、早く何とかしないと死んじまうぞ!?」

ロン毛ハンター「俺にだってわからねーよ!」

ロン毛ハンター「くそっ……どうしてこんな事に……」

少女「…………」

少女「……ひとつだけ、私に提案がある」


一同「!」


ロン毛ハンター「提案?」

モブハンター4「聞かせてくれ」

少女「その前にまず……救助アイルー」

少女「あなただけなら、BC(ベースキャンプ)に戻れる?」


救助アイルー「それなら問題なくできるニャ」

少女「そう……」

少女「ここからは推測も入っちゃうけど」

少女「今日、ふもと村に帰ってくる予定のハンターが一人いるわ」


一同「…………」


ロン毛ハンター「上位か?」

少女「残念ながら下位よ」

少女「でも、ドドブランゴと戦う条件を満たして帰ってくる」

モブハンター4「あんたと同じ、ランクアップ直前ハンターか」

モブハンター4「で?」


少女「救助アイルーにふもと村まで行ってもらって」

少女「彼に助力を仰ぐわ」

少女「まず、BC(ベースキャンプ)手前のドドブランゴの相手をしてもらって」

少女「その隙に乙ハンター二人をネコタクアイルー達で」

少女「BC(ベースキャンプ)に連れて行ってもらう」

ロン毛ハンター「ちょっと待ってくれ」

ロン毛ハンター「さっきも言ったが、仲間を呼ばれたらどうするんだ?」

少女「…………」

少女「私達が雪山に打って出て囮になれば」

少女「数の多い、こちらに気を取られるはずよ」

ロン毛ハンター「」

モブハンター4「」


ロン毛ハンター「しょ、正気か? あんた……」

ロン毛ハンター「またあれだけのドドブランゴとやり合おうってのか!?」

少女「やり合う必要はないわ」

少女「あくまで囮……引きつけておくだけ」

少女「少し戦う素振りを見せて、引く」

少女「それを繰り返せばいい」

モブハンター4「し、しかし!」

少女「上手く行けば、乙ハンター達も狩りに復帰できて」

少女「私たちの下山も可能になるかもしれない」

ロン毛ハンター「…………」

モブハンター4「…………」


少女「どの道、賭けになる」

少女「ここで救助を待つのが私たちにとっては一番安全だけど」

少女「この乙ハンター二人は治療できないから助からない」

少女「かと言って、私たちだけで打って出ても結果は目に見えている」

少女「また、ふもと村に狩人……さっき私の言ったハンターが」

少女「都合よく帰っているかどうかも分からない」


一同「…………」


少女「救助アイルーをふもと村に向かわせるのは」

少女「状況を把握したい、というのもある」

少女「最悪……私たちを見捨てて避難しているかもしれないわ」

ロン毛ハンター「っ!!」

モブハンター4「!!」



一同「…………」


ロン毛ハンター「……確に上位ハンターが極端に居ない上に」

ロン毛ハンター「俺たちがボロ負けしたのは、ギルド観測所が把握しているだろうしな」

モブハンター4「ふもと村含め、周辺の村とかも同じ状況だったし」

モブハンター4「住民の安全を考えたら、やりかねないな……」

少女「…………」

ロン毛ハンター「いいだろう」

ロン毛ハンター「あんたの策、乗ってやる」

少女「!」

モブハンター4「……やるしかなさそうだな」

モブハンター4「幸い、回復薬のたぐいはタップリ残っている」

モブハンター4「使う暇が無かったからな……」


少女「……ありがとう」

ロン毛ハンター「礼は及ばんさ」

ロン毛ハンター「自分の命の為でもある」

ロン毛ハンター「それにこの二人をただ見捨てるのも寝覚めが悪いしな」

モブハンター4「まあどの道、あんたの言うハンターが居なかったら」

モブハンター4「そこで終わりだけど……」

少女「…………」


少女(……本当は居ない方がいい)

少女(狩人は……こんな無茶な作戦で命を散らしていいハンターじゃない)

少女(きっと、とんでもなく強くなれる才能を秘めている)

少女(私なんて遠く及ばないような……)


少女(…………)

少女(でも……私……)

少女(まだ死にたくないよ……!)

少女(あなたにもう会えなくなるのも……嫌……)

少女(…………)

少女(……私は……わがままね……)

少女(…………)

少女(ごめんなさい……狩人)


少女「……それじゃ救助アイルー」

少女「往復でどれくらいの時間がかかるかしら?」

救助アイルー「ふもと村なら……だいたい2時間ってとこニャ」


少女「2時間……乙ハンター達は、それまで持ちそう?」

救助アイルー「ひどい外傷は見当たらないし、脈もしっかりしているニャ」

救助アイルー「凍えさせなければ、たぶん大丈夫ニャ」

少女「分かった。 凍えさせないようにできるだけ気を配るわ」

救助アイルー「それは部下たちに任せてあるニャ」

救助アイルー「ホットドリンクもあるから問題ないニャ」

少女「そう。 じゃ……お願いね」

少女「あなたが帰って来なかったら……私たちはここで救助を待つ」

救助アイルー「……わかったニャ」

救助アイルー「じゃ、行ってくるニャ!」

     タッ タッ タッ…



―――――――――――


ふもと村 狩人の家


狩人「…………」

狩人「…………」

板前アイルー「旦那」

狩人「……ん?」

板前アイルー「どうするんだニャ?」

板前アイルー「本なんて読んでる時じゃねぇと思うニャ」

狩人「…………」

狩人「少女達を助けに行くつもりだ」

板前アイルー「……左様ですかニャ」


狩人「……短い間だったけど」

狩人「ありがとうな」

狩人「本当に助かったよ」

板前アイルー「…………」

板前アイルー「なあ、旦那」

狩人「ん?」

板前アイルー「せめて、あっしの飯を食ってから行きやせんかニャ?」

狩人「……冒険は無しだぞ」

板前アイルー「もちろんニャ」

板前アイルー「今のあっしにできる、最高の猫飯を食って行ってくだせぇニャ」


板前アイルー「どうぞだニャ」

狩人「いただきます」

     ムシャムシャ モグモグモグ…

―――――――――――

狩人「ありがとう、板前アイルー」

狩人「とても旨かっ……」

狩人「……!?」

     シュインッ!!

狩人「こ、これは……!?」

板前アイルー「いかがですかニャ?」

狩人「なんか……秘薬を飲んだ後みたいだ」

板前アイルー「たぶん、その通りだニャ」

狩人「どういう事だ?」


板前アイルー「これはあっしの故郷に伝わる秘伝の猫飯でして」

板前アイルー「旦那のお役に立てれば、と思って作りましたニャ」

狩人「……なんで今頃」

板前アイルー「実は人によっては、拒絶反応でお腹を壊したりする食材が含まれてまして」

狩人「おい!?」

板前アイルー「悪いと思いましたけど」

板前アイルー「普段の食事にその食材を少しずつ混ぜて」

板前アイルー「旦那の体を慣れさせてましたニャ……」

狩人「それなら最初から言ってくれよ……」

板前アイルー「これまで雇ってもらえた旦那には、全て断られてきましたんで……」

板前アイルー「旦那も強くなれるかもしれないけど、お腹を壊すモノを」

板前アイルー「体を慣らしてまで食べたいとは思わねぇでしょ?」

狩人「まあ……そうだな」


板前アイルー「実は、本当はこれでも完璧じゃねぇですニャ」

板前アイルー「もっとすごい効果のある猫飯なんですが」

板前アイルー「今のあっしの腕前では、これが限界……」

板前アイルー「許してくだせぇ……旦那」

狩人「…………」

狩人「……今の飯、本当に旨かった」

狩人「また食いたい」

板前アイルー「旦那……!」

狩人「じゃ……行ってくる」

板前アイルー「へい! 必ず……必ず! 戻ってきてくだせぇニャ!」

狩人「ああ……」



―――――――――――


ふもと村 集会所


受付嬢「いいえ、ダメです」

受付嬢「許可できません」

狩人「なら……勝手に行かせてもらうだけだ」

受付嬢「ですが!」

女「狩人!」

女「バカ! もうダメなのよ!」

女「あなた一人行ったって、何も変えられないのよ!!」

女「無駄に死にに行くのと同じなんだから!!」


狩人「…………」

狩人「……でも」

女「え……?」

狩人「俺はハンターだ」

狩人「このまま逃げ出して、少女達を見捨てたら……」

狩人「きっと後悔すると思う」

女「なに、かっこいいこと言った!みたいな顔してるの!?」

女「ふざけないで!!」

女「命がかかってるのよ!?」

女「少女ちゃんを助けに行って、あなたが死んだら、何にもならないじゃない!」

狩人「女、分かってくれ……」

女「分からないわよ!!」


救助アイルー「……取り込んでる所、ごめんだニャ」


一同「!?」


狩人「お前は……救助アイルー! 無事だったか!」

救助アイルー「そっちも元気そうで何よりニャ」

狩人「それで!? 少女達は無事なのか!?」

救助アイルー「今話すニャ」

―――――――――――

救助アイルー「……という状況ニャ」

女「…………」

狩人「そうか、分かった」


狩人「受付嬢さん、女」

狩人「俺、行ってくるよ」

狩人「もう討伐じゃない。 少女達の下山を助けてくる」

狩人「それなら、みんな揃っての避難だ」

女「…………」

女「……分かったわ」

女「でも……相当に危ない道よ?」

女「全員が生きて帰ってくる事は……難しいと思う」

女「その事は忘れないで」

狩人「ああ。 肝に銘じておく」

狩人「女も他の人たちと一緒に逃げてくれ」

狩人「草原村で落ち合おう」

女「……うん」


※ それぞれの装備と状況


行方不明

モブハンター2(HR 4)

武器:片手剣
防具:ハンターS装備一式


死亡

モブハンター5(HR 3)

武器:太刀
防具:フルフル装備一式


モブハンター6(HR 4)

武器:ハンマー
防具:ハイメタS装備一式


乙中

モブハンター1(HR 4)

武器:太刀
防具:ギアノスS装備一式


モブハンター3(HR 5)

武器:弓
防具:ガンナー用ギザミS装備一式


健在

モブハンター4(HR 4)

武器:双剣
防具:ゲネポスS装備一式


ロン毛ハンター(HR 5)

武器:ハンマー
防具:フルフルS装備一式


少女(HR 3)

武器:ライトボウガン
防具:ガンナー用ザザミ装備一式


狩人(HR 3)

武器:大剣(フルミナントソード)
防具:フルフル装備一式



―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)


狩人「…………」

救助アイルー「じゃ、手はず通り、合図が来たら頼むニャ」

狩人「わかってる」

狩人「……少女によろしく言っといてくれ」

狩人「必ず生き残ろう、と」

救助アイルー「分かったニャ」

     タッ タッ タッ…

狩人「…………」


狩人(ドドブランゴ……別名『雪獅子』の異名を取る全身真っ白の牙獣種)

狩人(ブランゴを束ねるリーダーであり、大きな特徴として)

狩人(鋭く、大きな牙を持つ)

狩人(ドスギアノスの様に群れを従え、統率の取れた動きで)

狩人(ハンターに襲いかかってくる、厄介なモンスター)

狩人(…………)

狩人(動きが俊敏で、慣れるまでは攻撃を当てるのにも苦労する)

狩人(ドドブランゴの攻撃方法は幾通りか有り)

狩人(突進攻撃や大きなモーションの後に行う 飛びかかり攻撃は)

狩人(よく見ていれば、避ける事はそれほど難しくない)

狩人(が、地中移動して地面の下から襲いかかる『地中急襲』は)

狩人(相当に悪辣な攻撃だ)


狩人(さらに巨大な雪の塊を投げてきたり、ブレスを吐いて)

狩人(ハンターの動きを大きく制限する『雪ダルマ』状態にする事も)

狩人(…………)

狩人(……それが、最低でも2頭同時……か)

狩人(…………)

狩人(いや、困難なクエなのは最初から分かっていた)

狩人(一応対抗手段は用意してある)

狩人(消散剤は持ってきた。 走り回るだろうから強走薬も作れるだけ作ってきた)

狩人(…………)

狩人(少女……)



―――――――――――


雪山の洞窟


     タッ タッ タッ

救助アイルー「お待たせニャ!」

少女「救助アイルー!」

少女「待ってたわ……」

モブハンター4「それで? 状況はどうなっている」

―――――――――――

救助アイルー「という事で、BC(ベースキャンプ)で待機してるニャ」

少女(狩人……!)

ロン毛ハンター「よし、何とか首の皮一枚つながったな」

少女「ええ……でも、ここからが正念場よ」

ロン毛ハンター「わかっているさ」


救助アイルー「それじゃ、俺は乙ハンターのところに行くニャ」

救助アイルー「ああ、それから狩人は必ず生き残ろうって……囮役、頑張ってくれニャ」

少女「うん……ありがとう、頑張るわ」

     タッ タッ タッ…

少女「…………」

ロン毛ハンター「…………」

モブハンター4「…………」

モブハンター4「さて、行きますか」

ロン毛ハンター「雪山の地形は大丈夫か?」

少女「問題ないわ」

少女「ドドブランゴに分断されないよう気をつけましょう」



―――――――――――


雪山 山頂手前付近


ロン毛ハンター(ひょー……居るいる)

ロン毛ハンター(今のところ3匹か……)

少女(まず、私がペイント弾でマーキングしていくわ)

少女(その後、少し戦って山頂方向へ向かい、脇道にそれて洞窟へ入る)

少女(こんな感じでどうかしら?)

モブハンター4(先がどうなってるのか、分からないから不安だ……)

モブハンター4(だが、雪山にいるドドブランゴを引き付けないと意味がないからな)

モブハンター4(OK。 それで行こう)

ロン毛ハンター(よし。 合図の爆弾も用意できてる。 いつでもいいぞ)

少女(……分かった。 始めるわ)



―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)


狩人(…………)

狩人(…………)


     ……ドドーン


狩人「!!」

狩人「よし、始まったな」つ(強走薬) グビッ

     シュイン!

狩人「少女……頑張ってくれ」

狩人「行くぞ!」



―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)近くの洞窟出口付近


救助アイルー(始まったかニャ……)

救助アイルー(…………)

救助アイルー(正直、あいつじゃドドブランゴ2頭同時なんて)

救助アイルー(もって5分……というところだニャ)

救助アイルー(何としてもこの二人を早く気づかせて、戦列に復帰させないと)

救助アイルー(いくらあいつでも死んでしまうニャ……)

救助アイルー(…………)

救助アイルー(雪山の方も……どこまで持つのか……)

救助アイルー(…………)



     ザッ ザッ ザッ…


狩人「…………」


     グルルル……?


狩人「……さて、どうなるかな」つ(ペイントボール)


     ヒュッ ヒュッ… ――――ンッ ベチャ! ベチャ!


狩人(まずは……様子を見るだけでいい)

狩人(救助アイルー達に注意が向かない様にしないと……!)



     ゴアアアアアアアッ!!


狩人「まずは威嚇か……!」


     ググッ……バッ!


狩人「……!」 回避!

狩人(なるほど……あれが大きな動作からの跳びかかり攻撃か!)


     バキッ!


狩人「ぐっ!」

狩人(別の一頭からの攻撃……!)

狩人(これは……相当に厄介だ!)

狩人「このおっ!」



     ブウウンッ! ドガッ!

     グアアッ!


狩人「うしっ!」

狩人(だけど大剣の溜め攻撃は、しない方がいいな)

狩人(今は倒す事より、あいつらの注意を引き、動きを見る)

狩人(これに徹するんだ!)


救助アイルー「…………」

救助アイルー(おいおい……何があったのか知らないけど)

救助アイルー(俺はあいつを過小評価してたみたいだニャ)

救助アイルー(いつの間にあんなに冷静な行動を取れるように……)

救助アイルー(いや、それどころじゃないニャ)


救助アイルー「いいか、野郎ども」

救助アイルー「もうすぐドドブランゴ達が怒るニャ」

救助アイルー「俺たちはそれを確認した後、全速力でBC(ベースキャンプ)に戻るニャ」

     ニャー!!

救助アイルー「BC(ベースキャンプ)に戻った後」

救助アイルー「医療班を除いた1班2班は、雪山のハンターの援護に向かってくれニャ」

救助アイルー「残りは、俺と共にここのハンター達を援護するニャ」

     ニャー!!

救助アイルー「よし」

救助アイルー「…………」

救助アイルー「…………」




     ゴガアアアアアアアアアアアッ!!



救助アイルー「ミッションスタート!!」


―――――――――――


狩人「……!」

狩人(よし、いいタイミングだ! 救助アイルー!)

狩人「うおおっ!!」


     ザシュッ!!

     グガアアッ!!




―――――――――――


雪山 山頂付近


     ゴガアアアアアアアアアアアッ!!


ロン毛ハンター「ちっ、この程度で怒ってんじゃねーよ!」

     ドウッ! ドウッ! ドウッ!

少女「ペイントは済んだわ! そこの脇道に行くわよ!」

モブハンター4「わかった!」

モブハンター4「オラァッ! そこをどきやがれ!!」つ(ハンマー)


     ドゴオッ!!


少女「上手い! スタンを取った!」



―――――――――――


雪山 中腹付近の洞窟


少女「はあっはあっはあっ……」

ロン毛ハンター「はあっはあっはあっ……」

モブハンター4「はあっはあっはあっ……」

少女「確認できるペイントの煙は……全部で……はあっはあっ……8頭かしら」

ロン毛ハンター「通りで……ふうっふうっ……敵わないわけだな」つ(回復薬G)グビッ

モブハンター4「くそっ……はあっはあっ……何でこんな数のドドブランゴが……!」

少女「残念だけど、これで全部かどうかは分からない」

少女「それに……」


ロン毛ハンター「ああ、分かってる。 みなまで言うな」

ロン毛ハンター「俺たちの仕事はこれで終わりじゃない」

モブハンター4「最後まで持つかなぁ……」

ロン毛ハンター「今から泣きごと言ってどうする」

ロン毛ハンター「閃光玉の残りとか、確認しとけ」

モブハンター4「わかってるよ……」

モブハンター4「あと2発だ」

ロン毛ハンター「俺は5発丸々残ってるぞ」

少女「私は3発と調合で10個作れるわ」

ロン毛ハンター「そいつは頼もしいな」

モブハンター4「唯一とも言えるいいニュースだぜ」

少女「急いで山頂手前付近の出口に向かわないと……さ、行くわよ」



―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)


救助アイルー「よし!」

救助アイルー「医療アイルー以外の1班2班は予定通り雪山のハンター援護へ!」

救助アイルー「それ以外は、俺について来いニャ!」

     ニャー!

救助アイルー「今回は異常事態ニャ!」

救助アイルー「普段は禁じられている出過ぎたサポートも俺の責任で許可するニャ!」

救助アイルー「ハンターの命を守る事に全力を尽くすんだニャ!!」

     ニャー!!



―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)近くのエリア


狩人「ぐあああああああああっ!!」


     グルルル…


狩人「く、くそっ!」


     バキッ!


狩人「ぐはっ!?」

狩人(くそったれ……! もう1頭の死角からの攻撃がキツいっ!)

狩人(……いや、やけになるな)

狩人(冷静になれ! もっと集中するんだ!)つ(回復薬G) グビッ




     狩人は確かに成長していた。

     事前にモンスターの情報を知り

     調合の知識や薬効を理解し

     状況を見、頭で考え、冷静に行動していた。

     それは目を見張るほど素晴らしい成長ぶりである。






     だが……



     決定的に足りないものがひとつだけあった。

     才能がどれだけあろうとも

     それは……時間をかけなければ得る事ができないのである。





     ゴアアアアアアアッ!


狩人(雪塊攻撃!)

狩人(何度も見たぜ!) 回避!


     グルルル…


狩人「!?」

狩人(もう一匹が……居ない!?)

     地中移動して地面の下から襲いかかる『地中急襲』は

     相当に悪辣な攻撃だ

狩人「!!」


狩人(しまっ―――)



     ド  ガ  ア  ア  ッ !!



狩人「がっ……」



     ゴ  キ  ン  ッ !!



狩人「」











狩人「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」













     狩人の右腕から鈍い音と同時に

     強烈な痛みが彼に襲いかかる。




     そう……

     狩人は、複数同時の討伐モンスターを相手に戦った『経験』が

     圧倒的に足りていなかった。



という所で、今日はここまでです。
お付き合い、ありがとうございました。



―――――――――――


雪山 山頂手前付近



     ドウッ! ドウッ! ドウッ!


少女(くっ……! ペイントの効果を消してるのが、もう何頭か居る!)

少女(…………) チラッ…

少女(山頂に2頭……ここに3頭、脇道付近に1頭……)

少女(そして、BC(ベースキャンプ)近くに2頭)


     ゴアアアアアアアッ!


ロン毛ハンター「ちっ、また怒りやがったか!」

モブハンター4「そろそろ移動じゃないか!?」


少女「ええ!」つ(閃光玉)

     ブンッ… カッ!

     グアアアア……

少女「今のうちよ!」

ロン毛ハンター「ヒュー……いつもながら3頭同時に見事なもんだ」

モブハンター4「これが終わったらギルカ交換してくれ」

少女「無駄口叩かない!」

少女「あなた達、私よりHR上なんでしょ!?」 ←HR 3

ロン毛ハンター「……そうですね」 ←HR 5

モブハンター4「……すみません」 ←HR 4

少女「さ、早く行くわよ」

     タッ タッ タッ…



―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)手前エリア



 痛い     痛い  痛い         痛い
              俺……どうしたんだ……?

   あれ? 何を…           痛い
痛い     ヤバイ…               痛い        痛い
                   ああ……
         痛い     痛い          痛い

    ドドブランゴから逃げないと……
                        苦しい……
   ここは……?         何が……?     少女……
 痛い      痛い      痛い      痛い
      ドドブランゴ……?
                       くそっ……
        痛い




     ドサッ!!



狩人「がふっ!!」

狩人「……ぐ……くっ……はっ……」


     ドドブランゴの「地中急襲」の直撃を寸前で避けた狩人だったが

     代わりに右腕が犠牲になった上に、結局数メートル上空に突き上げられ

     地面に叩きつけられる結果となった。

     その落下の衝撃で意識が飛びそうになるが

     何とか持ちこたえるものの……朦朧(もうろう)とするのはさすがに抑えられなかった。


狩人「はっ……はっ……」




     ゴアアアアアアアッ!



狩人「!」


     まるで勝ち誇ったかのような

     ドドブランゴ達の雄叫びでようやく意識がはっきりする。

     ヨロヨロと立ち上がり、首を軽く振ると

     狩人は自分の右腕を見る。


狩人(……くっ)

狩人(痛みの場所から そうだと思ったが……折れてるな……これ)

狩人(おまけに……武器まで失った……くそっ……!)


狩人(だけど……)

狩人(最後まで諦めるものかっ!)


     狩人は、剥ぎ取り用の小さなナイフを左手に構える。

     だがこれは、剥ぎ取るために作られたものなので

     討伐用の武器とは比べ物にならないほど貧弱で脆い代物だった。


狩人(……これがダメになったら、噛み付いてでも戦ってやる)

狩人(さあ……かかってこい、ドドブランゴ!)


     威勢のいい事を考えているが

     どう見ても悪あがきでしかない……


狩人「はあっ……はあっ……」




     だが、そんな狩人を見て

     ドドブランゴ達は少々戸惑っていた。

     これだけ圧倒的に不利な状況で大ダメージを受け

     ましてやあの奇妙な道具(武器)も失い

     自分たちに抗う術(すべ)などないハズ……


     だが、いま目の前に居るこの小さいのは

     それでも立ち上がり、何かを取り出して

     圧倒的に有利である自分たちを睨みつけ、戦う姿勢を崩さないでいる。

     何かあるのか……?


     ドドブランゴ達は、本能的に狩人を警戒してしまったのだった。




     グルルル…


狩人「はあっ……はあっ……」


     一方、狩人の方に余裕など少しもない。

     正直、立っているだけでも辛い、という状況だった。


狩人(……何とか……武器を……!)

狩人(ドドブランゴの後ろにある大剣を拾わないと……!)


     狩人は もう冷静ではなかった。

     痛みで気を失いかけながら考えた事は、ただ”勝つ事”のみ。

     根拠など何もなく、自分の武器さえ取り戻せば何とかなる、と

     思い込んでいるにすぎない……


狩人「はあっ……はあっ……」




     ゴガアアアアアアアッ!



狩人「!」

狩人「く……うおっ」 回避!

狩人「ぎ……ああああっ!」


     しびれを切らしたドドブランゴの突進に思わず避けたが

     その動きだけで激痛が狩人の体を駆け抜ける……!


狩人「はあっはあっはあっ……」


狩人(痛ぇ……たった……これだけの動作で……)

狩人(どうすればいい……)

狩人(どう……すれば……)


     あまりの痛みに気が遠くなる狩人。

     ついには、剥ぎ取りナイフすらも落としてしまった……


狩人「はあっ……はあっ……」

狩人(もう……ダメ……かな……)

狩人(…………)

狩人(……女……君の言う通りになってしまったよ……)

狩人(俺一人じゃ……何も変えられなかった……)

狩人(…………)



     ドドブランゴの一頭が、飛びかかりの前動作を始めるのが見えた。

     狙いはもちろん狩人だ。


狩人(…………)

狩人(畜生……)



     カッ!!


     ゴアアアアアアアッ!?



狩人(!?)

狩人(閃光……玉!?)


救助アイルー「3班は右のを!」

救助アイルー「4班は左の注意を引くんだニャ!」

救助アイルー「乙ハンターは居ないから、いつもより軽い仕事だニャ!」

     ニャー!!

救助アイルー「大丈夫かニャ!?」

狩人「救助……アイルー……うっ」

救助アイルー「……折れているニャ」

救助アイルー「…………」

救助アイルー「状況が変わったニャ!」

救助アイルー「3班! このハンターをBC(ベースキャンプ)へ!」

救助アイルー「3班のドドブランゴは、俺が何とかするニャ!」

     ニャ!?


救助アイルー「時間がもったいないニャ!」

救助アイルー「早くしろニャ!」

     ニャ……ニャー!!


―――――――――――


BC(ベースキャンプ)


     ガラガラガラ…

3班アイルー「状況! 右、前腕部骨折!」

医療アイルー「了解!」

3班アイルー「俺たちは戻るニャ!」

医療アイルー「こっちも済んだらすぐ行くニャ!」


医療アイルー「さ、この布を噛むニャ!」

狩人「……え? ぐもっ」

医療アイルー「他の連中は、患者を抑えるニャ!」

     ニャー!

医療アイルー「時間が惜しいから荒療治ニャ!」


     コキッ パキョ…

     グギギギギギギギギギギギギギ……コキンッ✩


狩人「―――――――――――ッ!!!!?」

医療アイルー「添え木……固定完了!」

医療アイルー「回復薬や秘薬は持っているかニャ?」

狩人「」


医療アイルー「ほれ、起きるニャ」 ペチペチ

狩人「……う、う~ん……」

医療アイルー「回復薬や秘薬は持っているかニャ?」

狩人「え……?」

狩人「あ、ああ……持ってるけど」

医療アイルー「じゃあ回復薬……できればグレートと秘薬を飲んで休んでいるニャ」

医療アイルー「安静にして一日一回は回復薬Gと秘薬を飲んでいれば」

医療アイルー「3日後くらいに治っているニャ」

狩人「そうなのか……わかっ」

狩人「って! 休んでなんていられないんだよ!」

医療アイルー「お前は意識こそ失わなかったけど」

医療アイルー「武器を手放した段階で乙扱いになるニャ」


狩人「し、しかし!」

医療アイルー「……その腕じゃ、どの道足でまといニャ」

狩人「……っ」

医療アイルー「けど、お前はよくやってくれたニャ」

医療アイルー「おかげで二人のハンターを治療できたニャ」

狩人「!」

医療アイルー「だから、休んでいてくれニャ」

医療アイルー「乙から復帰したハンターが、きっと何とかしてくれるニャ!」

医療アイルー「じゃ……」

     タッ タッ タッ…

狩人「…………」



―――――――――――


雪山 山頂付近


モブハンター4「くそっ!」

ロン毛ハンター「雪塊、来るぞ!」


     ドガァァァァンッ!!


少女「はあっはあっ……そろそろ潮時」


     ガウウウウッ!!


少女「きゃあっ!!」

ロン毛ハンター「野郎!!」

モブハンター4「大丈夫か!?」


少女「っ……な、何とか……」

ロン毛ハンター「脇道に入るぞ!」


     グルルル…


少女「!」

ロン毛ハンター「なっ!?」

モブハンター4「ま、待ち伏せ……だと!?」


     ガアアアアアアアアッ!!


ロン毛ハンター「くそっ! だめだ、散れっ!」


モブハンター4「畜生!」

     バババッ!

少女(いけない……このままじゃ分断される!)


     ドウッ! ドウッ! ドウッ!


少女「はあっはあっはあっ……!」

少女(今、このエリアには4頭……)

少女(確認した最大の頭数から単純計算でBC(ベースキャンプ)近くのを除けば)

少女(残りは2頭ということ)

少女(なら……!)

少女「このまま、それぞれでエリアチェンジしよう!」

ロン毛ハンター「!」

モブハンター4「!」


ロン毛ハンター「ちっ……!」

モブハンター4(それしかないか……!)

ロン毛ハンター「わかった!」

モブハンター4「洞窟で落ち合おう!」

少女「ええ!」つ(閃光玉)

     ブンッ!  カッ!

     グアアアア…

―――――――――――


雪山 山頂手前付近


ロン毛ハンター「はあっはあっはあっ……」



     ゴアアアアアアアッ!!


ロン毛ハンター「くっ!?」

ロン毛ハンター(どうやら……貧乏くじは俺が引いたみたいだな……)

ロン毛ハンター(くそったれ!)

ロン毛ハンター「だが、何としてもそこを通してもらうぜ!」

ロン毛ハンター「うおおおおおおおおおおおっ!!」

―――――――――――


雪山の洞窟


少女「はあっはあっはあっ……」

モブハンター4「! 良かった……あんたは無事だったか」

少女「ええ……はあっはあっ……なんとか、ね……」


モブハンター4「……という事は」

少女「…………」

少女「助けに行きましょう」

少女「彼が行ったルートは、たぶん、山頂の手前に出る場所」

少女「すぐに行かないと命に関わ……」


ロン毛ハンター「……大丈夫だ」


少女「!」

モブハンター4「!」

モブハンター4「無事だったか!」

ロン毛ハンター「…………」


モブハンター4「……?」

モブハンター4「どうした?」

少女「どこか、怪我でも?」

ロン毛ハンター「…………」

ロン毛ハンター「……ネコタクアイルーが一人死んだ」

ロン毛ハンター「俺を庇って……」

少女「!」

モブハンター4「!」

モブハンター4「……そうか」

ロン毛ハンター「…………」

ロン毛ハンター「閃光玉の残りは、後どれくらいある?」


モブハンター4「……俺は使い切った」

少女「私は……あと2発」

ロン毛ハンター「……俺も使い切ってる」

ロン毛ハンター「正直、これはヤバイ状況だ」

ロン毛ハンター「俺たちの行動は、だいぶ奴らに読まれている上に」

ロン毛ハンター「頼みの閃光玉も無くなりかけている」

少女「…………」

モブハンター4「……囮のアタックもあと一回できるかどうか」

モブハンター4「BC(ベースキャンプ)手前の2頭は、どうなったんだ?」

モブハンター4「こっちはそろそろ限界だぞ……」

少女「…………」


少女「でも、信じて合図を待つしかないわ」

少女「ネコタクアイルーも加わってくれるのなら、多少私たちの負担も減る」

ロン毛ハンター「…………」

モブハンター4「…………」

ロン毛ハンター「……しょうがない、か」

モブハンター4「よし、思い切って今度は逆ルートで行ってみないか?」

モブハンター4「単純だが、少しは時間稼ぎになると思うが?」

少女「そうね……試してみる価値はあると思う」

少女「じゃ、今度は中腹あたりの出口から山頂を目指して」

少女「山頂手前の洞窟を目指しましょう」

ロン毛ハンター「ああ、わかった」

モブハンター4「早いとこ合図来てくれよぉ……」



―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)手前付近



     ゴアアアアアアアッ!!


救助アイルー「ギニャアアアアアッ!!」

3班アイルー「隊長! もう下がるニャ!」

3班アイルー「乙ハンターも復帰して今戦ってくれているニャ!」

救助アイルー「かはっ……」 ビチャ…

3班アイルー「医療アイルー!」

3班アイルー「来てくれニャ!」

救助アイルー「はあ……はあ……」


救助アイルー「誰か……ハンターに……」

救助アイルー「合図の仕方を……教えるニャ……」

3班「分かってるニャ! だからもう休むニャ!」

医療アイルー「……!!」

救助アイルー「はあ……はあ……」

医療アイルー「……ここは僕に任せるニャ」

医療アイルー「BC(ベースキャンプ)に連れて行くから……」

3班アイルー「任せたニャ!」

     タッ タッ タッ…

救助アイルー「はあ……はあ……」

医療アイルー「…………」



―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)


     タッ タッ タッ…

狩人「!」

医療アイルー「…………」

救助アイルー「はあ……はあ……」

狩人「救助アイルー!?」

狩人「だ、大丈夫か!?」

医療アイルー「…………」

医療アイルー「……静かに見てやって欲しいニャ」

狩人「え? で、でも俺……」


医療アイルー「……っ」

医療アイルー「内蔵をしこたまやられてて……手の施しようがないニャ……!」

狩人「っ!!」

医療アイルー「だから……看取ってやってくれニャ」

狩人「だ……だから……って」

医療アイルー「僕は……まだ仕事が残ってるニャ!」

医療アイルー「ここで放り出したら、隊長は僕を怒るニャ!」 グスッ…

狩人「!」

医療アイルー「……頼んだニャ」

     タッ タッ タッ…

狩人「…………」


救助アイルー「はあ……はあ……」

狩人「…………」

救助アイルー「……ふふふ……そんな顔するな……」

救助アイルー「俺が……自分の判断で……やった事ニャ……」

狩人「……けど」

救助アイルー「はあ……はあ……」

救助アイルー「やっぱり……アイルーじゃ……」

救助アイルー「どうやっても……討伐モンスターには……勝てないみたいだニャ……」

狩人「…………」

救助アイルー「はあ……はあ……」

救助アイルー「昔は……オトモアイルーとして……」

救助アイルー「旦那さんと……フィールドを……駆け回ってたニャ……」

狩人「…………」


救助アイルー「はあ……はあ……」

救助アイルー「でも……旦那さん……守れなかったニャ……」

救助アイルー「目の前で……グラビモスの……ブレスで……」

救助アイルー「……俺は……悔しかった……ニャ」

狩人「…………」

救助アイルー「はあ……はあ……」

救助アイルー「何度も……何度も……自分がハンターだったらって……」

救助アイルー「そうしたら……仇(かたき)を討って……やれるのにって……」

救助アイルー「考えたニャ……」

狩人「…………」


救助アイルー「はあ……はあ……」

救助アイルー「でも……こうやって……ハンターを救っていけば……」

救助アイルー「いつか……俺の旦那さんの無念を……晴らしてくれるって……」

救助アイルー「そう考えるように……して……この仕事……始めたニャ……」

狩人「……そうだったのか」

救助アイルー「はあ………はあ………」

救助アイルー「なあ……新人ハンターさん……」

狩人「……なんだ?」

救助アイルー「俺は……頑張れたかニャ……?」

救助アイルー「旦那さんは……喜んで……くれるかニャ?……」

狩人「当たり前だ」

狩人「きっと……笑顔でお前を迎えてくれるさ」


救助アイルー「ふふふ……そうか………」

狩人「…………」

救助アイルー「あんたみたいな……ハンターを……最後に……救えて……」

救助アイルー「本当に……良かった……ニャ……」

狩人「ああ……俺も感謝してる」

狩人「そしていつか、お前の主より強くなって」

狩人「グラビモスだって、ラオシャンロンだって」

狩人「一人ででも倒せるくらいになってみせるさ……!」

救助アイルー「ふふふ………はあ………はあ………」

救助アイルー「……期待…………してるニャ」

狩人「絶対に裏切らないよ」

救助アイルー「ふふふ…………」


救助アイルー「…………」

救助アイルー「あんたが……そういう…………ハンターになった……」

救助アイルー「武勇伝を……」

狩人「…………」

救助アイルー「……あっちで……」

救助アイルー「旦那さんと…………聞け……るの…………」

救助アイルー「……楽…………し……み………………に…………」

救助アイルー「」

狩人「…………」

狩人「…………」

狩人「救助……アイルー……」

救助アイルー「」


狩人「…………」

狩人「……っ」

狩人「……ぐっ……うくっ…………ぐっ…………」

狩人「……うあ……ああああっ……ぐっ……くっ……」

狩人「バカ……野郎っ……ひぎっ…………ぐっ……くっ……」

狩人「何で……ぐくっ……何で、だよっ……うあっ………はっ…」

狩人「ひぎっ……うっ、うっ……ぐっ……うあっ……はっ……」

狩人「あああっ……ぐっ……ひぎっ……くっ……うっ……ああっ……」

狩人「……ひうっ……ぐっ……くっ……ぎっ……くあっ……」




     ……俺が、救助アイルーを看取って

     泣いていると……



     ドドブランゴを倒した、という合図である

     大タル爆弾の炸裂音が響いてきた。



     ……これで、やれる事は一応全部済んだ。

     けど……











     下山してきた少女達も含め

     喜んでいる者は、誰ひとりとしていなかった……










―――――――――――


翌日の昼

草原村 仮設テント


女「狩人!」

女「それに……少女ちゃん」

狩人「……やあ、女」

狩人「怪我したけど何とか帰ってきたよ……」

少女「すみません……討伐できなくて」

女「ううん……謝る必要はない」

女「むしろ、私たちの方こそ許しを請う立場よ……」

女「何しろ我が身可愛さに少女ちゃん達を見捨てて逃げたんだから」

少女「…………」

狩人「…………」


女「……でも」

女「ここへ生きて帰ってきてくれて」

女「本当に良かったわ……」

少女「…………」

狩人「…………」

女「ここには駆け足で来てくれたHR6のハンターが、ついさっき何人か着いたの」

女「明日にはもっと来る予定よ」

女「今は……体を休める事に専念して」

少女「ええ」

狩人「そうさせてもらうよ……」



―――――――――――


砂漠村 集会所


ギルド連絡員「急報!」

ギルド連絡員「現在、雪山猟区にて、ドドブランゴが大挙して襲来!」

     ザワッ……!

ギルド連絡員「手の空いているハンターは救援に向かわれたし!」

ギルド連絡員「繰り返す!」

ギルド連絡員「手の空いているハンターは救援に向かわれたし!」


ロートル「…………」

ソロ「…………」

ベテラン「…………」


ロートル「…………」

ソロ「…………」

ソロ「……?」

ロートル「…………」

ソロ「……ロートル?」

ロートル「! ……なんだ?」

ソロ「なんだ?は、無いだろう?」

ソロ「ふもと村に戻る準備をしないと」

ロートル「…………」

ソロ「……おい、ロートル」


ロートル「……大丈夫だろう」

ロートル「俺やお前がいなくたって……」

ロートル「何とかなるさ」

ソロ「…………」

     バキッ!

ロートル「ぐっ……!」 ドサッ…

ベテラン「…………」

ソロ「……今のは聞かなかった事にしてやる」

ソロ「さあ、ふもと村に帰る準備をするんだ」

ソロ「俺たちは、ふもと村の村付きハンターなんだぞ」

ロートル「…………」

ロートル「…………」

ロートル「……わかった」

ベテラン「…………」



―――――――――――


翌日の昼

草原村 墓地


ネーコ「……そうですか」

ネーコ「救助アイルーさん、そんな事を……」


ネコタクアイルー一同「…………」


狩人「…………」

狩人「なあ、ネーコ」

ネーコ「はい?」


狩人「もしかしたら……ネコタクアイルーって」

狩人「救助アイルーみたいな 元オトモアイルーなのか?」

ネーコ「…………」

ネーコ「半分くらいは……その通りです」

ネーコ「もう半分はご主人様と生き別れ、とういうわけでなく」

ネーコ「ただ給金がいいから、という理由できている元オトモアイルーです」

ネーコ「人間とあまり変わりませんよ」 クスッ…

狩人「そうか……」

狩人「でも、みんな元オトモアイルーなのか」

ネーコ「ええ」

ネーコ「ネコタクアイルーの条件にありますので……」


狩人「…………」

狩人(救助アイルー……)

狩人(俺……必ずあの約束を守るよ)

狩人(…………)

狩人(でももし守れなかったら……)

狩人(その時は遠慮なく、俺を蹴っ飛ばしてくれ)

狩人(…………)

狩人(だから……)

狩人(あっちでもまた会おうな……)

狩人(救助アイルー)





     今回のドドブランゴ襲来で犠牲になったのは

     ハンターが3人 ネコタクアイルーのアイルーが2人……



     覚悟こそそれなりにしていたが

     俺にとって、最も辛く、苦い経験となった……






―――――――――――









     ビュオオオオオオオオオオ……














     ここは雪山の遥か北に位置する場所。

     見渡す限り……白く凍てつく氷の大地。

     一見すると息づくものはなく

     常に吹雪が渦巻いていた。





     が……







雪山深奥



     ズシン… ズシン… ズシン…



     



     ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!















     付近の山と見間違うほど巨大で大きい何かが突然吠えた。

     生き物、というのには躊躇(ちゅうちょ)するそれは

     何かに導かれるように南に向かって進み始めた……






という所で、今日はここまでです。
お付き合いありがとうございました。



―――――――――――








     約一週間後










午後

雪山 山頂付近


狩人「くらえ、ドドブランゴッ!!」


     ドガアッ!!

     グアアアアッ…


狩人「よしっ」


     ダンッ! ダンッ! ダンッ!

     アオオオッ……!


少女「狩人! 今よ!」

狩人「はああああっ!!」(タメ3)


     ドガアッ!!




     あれから一週間が過ぎた。



     あの時の俺たちの頑張りが功を奏したのか

     結局、雪山を降りてきたドドブランゴは一匹もおらず

     ふもと村を含め、雪山周辺の村々にも被害は全く出ずに済んだ。



     そしてロートルさん達を含め

     駆けつけてきたHR6のハンター総数は60人を超え

     雪山に来たドドブランゴ達は一掃された。






     だけど、それからも1~2日に一頭くらいの頻度で

     ドドブランゴは現れ続け

     ギルド含め、雪山周辺住民にも動揺が広がっていた。



     何かの前触れではないかと……



     無論、ギルド側も事態を重く見て

     調査隊を派遣する事を決めた。

     のだが……





―――――――――――


夕方

ふもと村 集会所


狩人「ふう……」

少女「狩人、もう腕は問題ないみたいね」

狩人「ああ」

狩人「けど骨が折れるのって、もの凄い激痛なんだぜ……」

狩人「あの痛みは もう味わいたくないよ」

少女「それは……ごめんなさい、狩人」

狩人「ん?」

狩人「何で謝るんだ?」


少女「だって……」

少女「私が助けを求めて、複数のドドブランゴを相手にさせたから……」

狩人「……いや、気にしなくていいんだよ」

狩人「俺も少女の事、助けたかったし……」///

少女「!」 ドキッ

少女「そ、そう……」///

受付嬢「お待たせしました」

受付嬢「こちらが今回のドドブランゴ討伐の報酬です」

     ドサッ

受付嬢「そして、これがHR4のギルドカードになります」

受付嬢「これでお二人共、正式に上位ハンターですね」


狩人「ありがとう、受付嬢さん」

狩人「これで上位の猟区に行けるんだな……」

受付嬢「はい」

受付嬢「ただし、塔はHR5から」

受付嬢「樹海猟区はHR6からになります」

狩人「そうですか……まだまだ先は長そうですね」

受付嬢「ええ。 それでは、上位に上がった際の注意点を説明いたします」

狩人「注意点?」

受付嬢「まず……これまでの猟区より危険なモンスターが出没するため」

受付嬢「支給品の配送が遅れる事が多々あります」

受付嬢「ぶっちゃけると、ほぼ毎回、猟区到着時には『無いもの』と思ってください」


狩人「そうなんですか……」

受付嬢「上位猟区配送員の人員確保は難しくなっておりますので……すみません」

狩人「わかりました」

少女(これは……今まで以上に準備を心がけないと)

少女(猟区に着いて『クーラードリンク忘れた!』なんて)

少女(シャレにならなくなるわ……)

少女(…………)

少女(……たぶん、狩人は事の重大さに気が付いてない気がする)

狩人「他には何かありますか?」

受付嬢「猟区の砂漠なのですが」

受付嬢「上位から”夜の砂漠”に行くクエが登場します」

狩人「はい」


受付嬢「これまで下位クエでは昼間ばかりだったので知らないでしょうが」

受付嬢「砂漠は夜になるとホットドリンクが必要になるくらい冷え込むんです」

狩人「……冗談ですよね?」

受付嬢「信じられませんか……」

受付嬢「理屈はまだ分かっていないのですが、本当に『そうなる』ので」

受付嬢「これからの砂漠クエ受注の際、時間帯をよく見て、注意してください」

狩人「はあ……」

狩人(あんなに暑い砂漠なのに……本当かなぁ?)

受付嬢「以上が上位に上がった際の注意点です」

受付嬢「これまで以上にできるだけ無理せず、少しずつ強くなってください」

狩人「はい」

少女「わかりました」



―――――――――――


ふもと村 広場付近


     ガヤ ガヤ

狩人「あ……あの荷車」

狩人「まだ調査隊、出発していないのか」

少女「ギルド側は調査隊の護衛にG級ハンターを付けたいみたいなんだけど」

少女「なかなか応じてくれるG級ハンターが居ないみたい……」

狩人「HR6のハンターなら、たくさん居るのに……」

少女「未知の……ううん、モンスターのテリトリーに入っていくのだから」

少女「どんな不測の事態になるのか、分からない」

少女「それに備えてG級ハンターの護衛を付けたいのよ」


狩人「それは分かるんだけどな……」

少女「特に今回は山あいで天候が安定しない地域だから」

少女「気球観測ができないし……」

狩人「…………」

     スタ スタ スタ…

ロートル「……お」

狩人「あ……」

少女「ロートルさん」

ロートル「…………」

ロートル「……その様子だと」

ロートル「ドドブランゴ討伐、成功したみたいだな」


狩人「はい」

少女「上位ハンターになれました」

ロートル「そうか……おめでとう」

狩人「ありがとうございます」

ロートル「じゃ……」

     スタ スタ スタ…

狩人「あ……」

狩人「…………」

少女「…………」

狩人「……ロートルさん」

狩人「帰ってきてから様子がおかしいな……」

少女「うん……」



―――――――――――


ふもと村 集会所


     ガヤ ガヤ

ロートル「タンジアビールにモス煮込みを頼む」

     アイヨー

ロートル「ふう……」

ベテラン「……よお」

ロートル「!?」

ロートル「ベテラン……なぜここに居る?」

ベテラン「ま……気まぐれってやつさ」


ベテラン「ねーちゃん、俺は黄金芋酒に刺身盛り合わせな」

     ハーイ

ベテラン「ふう……」

ロートル「…………」

ベテラン「……もう知ってるかも しれねーが」

ベテラン「砂漠のテオ……討伐されちまったよ」

ロートル「…………」

ロートル「……そうか」

ベテラン「お前さんがふもと村に向かって、2日後の事だった……」

ロートル「…………」

ロートル「で? それをわざわざ伝えに、こんな所まで来たのか?」

ベテラン「…………」


     オマチー ソッチノオキャクサンモー

ロートル「おう」

ベテラン「ありがとよ」

     ガツガツ… ムシャムシャ…

ベテラン「なかなか旨いな」

ロートル「ここは刺身より煮物の方が旨いぞ」

ベテラン「そうか……今度試してみる」

ロートル「……で? 何でここへ?」

ベテラン「……深い意味はねーよ」

ベテラン「ただ……」

ロートル「ただ?」


ベテラン「ソロの兄ちゃんがお前を殴った時」

ベテラン「俺も殴られた気がした」

ロートル「…………」

ベテラン「結局……俺は残って、古龍殺し(エルダーキラー)のおこぼれに預かろうとしたが」

ベテラン「おたくら同様、怪しまれて相手にされなかったよ……」

ロートル「…………」

ベテラン「何でかね……」

ベテラン「ソロの兄ちゃんの方が正しいのは分かってるんだが」

ベテラン「お前の事を応援したかった」

ロートル「…………」


ベテラン「けど……俺はそうしなかった」

ベテラン「目の前にある、細い一本のチャンスって名前の紐を掴みたかったし」

ベテラン「面倒事に巻き込まれるのも、お前さん達の関係を悪くするのも避けたかった」

ロートル「…………」

ロートル「……そんなに気にする事じゃないだろう?」

ロートル「流れのハンターなら、当たり前の事じゃないのか?」

ベテラン「まあな……」

ベテラン「だが、テオ討伐の報を聞いて……ものすごく後味が悪くなった」

ロートル「…………」

ベテラン「こんな事……何度もあった、経験したハズなのに」

ベテラン「逃げるテオを見た後のお前の絶叫を どうしても思い出しちまう」

ロートル「!」


ベテラン「…………」

ベテラン「ねーちゃん、黄金芋酒、おかわり」

     ハーイ

ロートル「…………」

ベテラン「…………」

ベテラン「すまなかった、ロートル」

ロートル「…………」

ロートル「……いいさ」

ロートル「もう……」

     ガヤ ガヤ…



―――――――――――


翌日の朝

ふもと村 集会所


狩人「さて……新しい猟区、さっそく行ってみるかな」

狩人「……ん?」

狩人「!!」

     ツカ ツカ ツカ!

狩人「おい! あんた!」

ベテラン「あん?」

狩人「その頬の傷……間違いない!」


狩人「イケメンの兄貴だな!」

ベテラン「っ!」

狩人「あの時はよくも騙してくれたな!」

狩人「騙し取った金、返せ!」

ベテラン「な、何の事だぁ~??」

ベテラン「何か証拠でもあんのか?」

狩人「まだしらばっくれる気か!?」

     ザワ… ザワ… ナンダ? ケンカカ?

ベテラン「い、いいから落ち着けって」

狩人「落ち着いてられるか! だいたいあんたが……」

ロートル「どうした? 狩人?」

狩人「ロートルさん! 聞いてください!」


狩人「――という訳で」

狩人「このハンターから、お金を騙し取られたんですよ!」

ロートル「……なるほど」

ロートル「ベテラン、何か反論は?」

ベテラン「反論も何も……俺はこんな奴しらねぇし」

ベテラン「言いがかりは よしてもらいたいってだけだが?」

狩人「この……!」

ロートル「落ち着け、狩人」

狩人「でも、ロートルさん!」

ロートル「いくらやられたんだ?」

狩人「は? ……750z(ゼニー)ですけど」


     ゴソ ゴソ…

ロートル「ほら、この財布をやる」

ロートル「中に1000z(ゼニー)くらいは入っているから」

ベテラン「!?」

狩人「はあ!?」

ロートル「金さえ戻れば文句は無いのだろう?」

狩人「え? い、いや、それは……」

ロートル「いいから。 それで抑えておけ」

狩人「…………」

ベテラン「…………」

狩人「……わかりました。 けど」

狩人「そんなハンター、庇っても何もならないと思いますけどね」

狩人「じゃ……」


ロートル「…………」

ベテラン「…………」

ベテラン「……何してくれてんだよ」

ベテラン「礼なんて言わねぇからな?」

ロートル「ああ。 そんなもの気にしていないさ」

ロートル「狩人の奴は、人を信じすぎるきらいがあるから」

ロートル「お前や俺みたいに、ロクでもない人間が居る事を知らないといけない」

ベテラン「…………」

ベテラン「けっ……だからって、お前にまで不信を抱かせるこたぁねーだろ」

ロートル「そうとも」

ロートル「お前が一番いやがるだろうから、ああしたんだ」


ベテラン「…………」

ロートル「…………」

ベテラン「……ロートル」

ロートル「なんだ?」

ベテラン「お前って……いい性格してるな」

ロートル「おいおい。 今頃気がついたのか?」

     ハハハ…

―――――――――――


沼地 BC(ベースキャンプ)


狩人「全く……」

少女「何を怒ってるの? 狩人?」

狩人「ロートルさんの事なんだが……」


狩人「――って事があったんだよ」

少女「ふうん……」

狩人「何だってロートルさんは、あんな奴を庇ったんだか……」

少女「それは私にも分からない……けど」

狩人「けど?」

少女「ロートルさんが何の考えもなしに そんな事はしないと思う」

狩人「…………」

少女「きっと、深い何かがあるんだよ」

狩人「……そうかな?」

少女「うん」


少女「……世の中ってさ」

少女「何もかもが、こう……善と悪、みたいに分かりやすいモノじゃないし」

少女「そういう風に決めつけて見ちゃうと……世間って、小さく見えて……」

少女「!」

狩人「……?」

狩人「少女?」

少女「……何でもない」

狩人「??」

少女「とにかく」

少女「私たちは目の前の採取クエに集中しないと」

少女「ね?」

狩人「あ、ああ……」

少女「…………」


少女「…………」


少女(昔……)

少女(私を引き取ってくれた、おばさんに)

少女(同じ事を言われた……)

少女(…………)

少女(……私は)

少女(悪い奴を悪いと言って何が悪いの!……って)

少女(言い返したっけ……)

少女(…………)

少女(皮肉なものね……) クスッ…



―――――――――――




ふもと村 集会所


狩人「あー……戻ってこれた……」

少女「日帰り、行けるかと思ったけど……」

少女「ぬかるみに足を取られて、想像以上に疲れる上に時間も掛かるわね」

狩人「ああ……今度は沼地猟区近くの村に泊まって帰ろう」

少女「マップで見ると森丘猟区より近くなのに……」

少女「……ん?」




     ✩急募✩

     調査隊ビバーク品輸送員、護衛のハンターを

     募集しています。

     条件はHR6以上でG級モンスター及び

     古龍との遭遇・戦闘経験のあるハンターです。

     報酬などはギルド員と直接交渉で……




狩人「調査隊……ビバーク品?」

少女「簡単に言うと食料や体を温める暖房用の燃料の事よ」

狩人「何でそんな物がいるんだ?」

少女「たぶんだけど……」

少女「雪山のかなり奥地まで調べるつもりなんだと思う」

少女「この前も言ったけど、天候の関係で気球観測は出来ないし」

少女「そうなると、食料やその他備品は歩いて持っていくしかない」

狩人「ふむふむ」

少女「でも、一人で運んでいける荷物の量は限界があるし」

少女「それでは限られた距離しか奥に行けないわ」

狩人「うん」

少女「だから中継地点を設けて、そこに食料品や燃料を備蓄しておけば」

少女「より遠くへ行く事ができる様になる」

狩人「なるほど!」


狩人「この募集の紙は、それを運ぶ人達の護衛ハンターを求めているのか」

少女「そういう事ね」

狩人「…………」

狩人「……という事は」

狩人「本命の調査隊護衛のG級ハンターも見つかった……という事か?」

少女「うん。 少なくともその目処が立ったのだと思う」

狩人「いよいよ動き出すのか……」

     テク テク テク…

ロートル「狩人」

狩人「あ……ロートルさん」

ロートル「…………」

ロートル「俺とソロとベテランは明日の朝、ビバーク品輸送部隊の護衛で出発する」


狩人「!」

少女「!」

狩人「……そうですか」

狩人「ソロさんはともかく、ベテランって、あのハンターですか?」

ロートル「ああ」

ロートル「狩人がどう思っていようが、腕は立つからな」

狩人「…………」

少女「どのくらいで帰ってきます?」

ロートル「一応、往復で約一週間から10日……と言われている」

少女「わかりました」

少女「ふもと村の事は、私たちに任せてください」

ロートル「頼む」


     テク テク テク…

狩人「…………」

狩人「大丈夫かな……」

少女「そういえば……ロートルさん」

少女「この前の遠征について、何も言ってくれないね」

狩人「ああ……」

狩人「あのベテランとかいうハンターに騙されてないといいんだが」

少女「さすがにそれは大丈夫だと思うけど……」

少女「でも今回の急な話。 随分あっさり行くのを決めた気がする」

狩人「いけないのか?」

少女「報酬の部分が曖昧なのが気になるの」


狩人「ギルドと交渉……って書いてあるな」

少女「うん」

少女「破格のお金や素材じゃないのが、どうもね……」

狩人「そういうのを求められる、って事じゃないのか?」

少女「確かにそれは考えられる話だけど……」

少女「ごめん、うまく言えない」

狩人「そうか……」

狩人「じゃ、そろそろ俺たちも休むか」

少女「そうね」

少女「お疲れ様、狩人」

狩人「ああ、お疲れ様」



※それぞれの装備


ロートル(HR 6)

武器:双剣(ゲキリュウノツガイ 火属性)
防具:ガノスU装備一式


ソロ(HR 6)

武器:大剣(ブルーウィング 火属性)
防具:ザザミU装備一式


ベテラン(HR 6)

武器:ランス(シェルクロウランス)
防具:フルフルS装備一式



―――――――――――


翌日の朝

ふもと村 広場付近


     ガヤ ガヤ…

ベテラン「よお」

ロートル「おはよう」

ソロ「……おはよう」

ソロ「ベテラン、その武器……火属性じゃないな?」

ベテラン「ああ。 火属性、あるにはあるんだが……まだちょいと力不足なんでな」

ベテラン「迷ったんだが、こっちにした」

ソロ「そうか」

ベテラン「寒い地域のモンスターは、どうも苦手だ……」


ロートル「……ハンターの集まりが悪いな」

ロートル「昨日聞いていた通りなら、8人の予定だったと思うが……」

ベテラン「寝坊して遅れてるんじゃねーの?」

ロートル「だったらいいんだが……」

     タッ タッ タッ

観測所員「すみませーん」

観測所員「護衛のハンターさん、何人か風邪を引いてしまって参加できないそうです」

     ザワッ…!

ベテラン「おいおい……大丈夫なのか?」

観測所員「と、私に言われましても……」

観測所員「ですが、全部で5人もいらっしゃいますし」

観測所員「もう予定は変えられないので、このまま出発します」


ロートル「……やれやれだな」

ソロ「5……か」

ソロ「何事もなければいいが」

ベテラン「おや? ソロの兄ちゃん、迷信を信じる口か?」

ソロ「多少はな」

ベテラン「へっ……5だろうが、9だろうが、数字は数字」

ベテラン「いちいち気にしてたら、その若さで涼しげなヘアースタイルになるぜ?」

ソロ「……その軽口を叩く癖。 直した方がいいと思うぞ」

ロートル「まあまあ。 その辺りにしておけ」

ロートル「それよりも古龍の情報を優先して貰える、という報酬は魅力だ」

ロートル「参加できなかったハンターは無念だと思っているだろう」


ベテラン「おおともよ」

ソロ「……確かにそれは言えるな」

ロートル「昨日話した通り」

ロートル「観測所は今回の騒動の原因、古龍クシャルダオラと見ている」

ロートル「閃光玉は多めに持ってきたか?」

ベテラン「モチのロンだぜ」

ソロ「俺も調合分を含めて持ってきている」

ロートル「よし」

ロートル「もうひとつの候補はラージャンらしいがな……」

ベテラン「そうだったら、おたくら死ぬな」

ロートル「他に鍛えている防具がない……その時は尻尾巻いて逃げるさ」

ソロ「クシャルダオラ前提で考えたからな……」



―――――――――――








     3日後の夜














     ビュオオオオオオオオ……





雪山奥地 調査隊中継地点 ビバーク予定地 洞窟テント内


ベテラン「う~さむさむさむ……」

ロートル「見張り、ご苦労さん」

ロートル「あまり旨くないが、モス煮込みだ。 温まるぞ」

ベテラン「ほっ、ありがてぇ……」

     ガツガツ… ムシャムシャ…

ベテラン「熱っ……はふはふ……ふう……あったまるぜ」


ロートル「結局、クシャルダオラは襲来せず……か」

ベテラン「ここらでもドドブランゴのみだったな」

ベテラン「しかも並の奴ばかり……原因の『何か』は、もっと奥地みてーだぜ」

ロートル「…………」

ロートル「……それはしょうがない」

ロートル「モンスターが俺たちの都合を考えてくれる訳はないからな」

ベテラン「ちげーねぇ」

     ハハハ…

ベテラン「……明日はいよいよ帰還、か」

ロートル「何事もなく済めば、それでいいさ」

ロートル「命あっての物種だ」


ベテラン「ほお? ずいぶんあっさりしてるな」

ロートル「今回のドドブランゴ襲来で命を落としたハンターは3人も居る」

ロートル「ネコタクアイルーにも犠牲が出た」

ベテラン「…………」

ロートル「俺たちハンター全員が『そうである』必要はないし、強制もできん」

ロートル「が……自分より若いハンターが命を散らさずに済むよう務めるのは」

ロートル「俺たちにとって、最低限の役割なんじゃないだろうか……」

ベテラン「…………」

ベテラン「……かも知んねぇな」

ベテラン「ハンターやってりゃ、誰だってG級目指したいの同じだが」

ベテラン「さすがに今回は、醜態さらしちまった気がする」

ロートル「……そうだな」


ロートル「さあ、休んでくれ」

ロートル「時間になったら起こす」

ベテラン「ああ。 休ませてもらうぜ」


―――――――――――


??「……ラン……ベテラン」

??「起きてくれ」

ベテラン「……ん」

ベテラン「…………」

ベテラン「……ソロの兄ちゃん」

ベテラン「……もう……交代の時間か……ふあああっ」

ソロ「違う」


ベテラン「はあ?」

ソロ「ともかく、起きて外に出てくれ」

ソロ「帰り道が無くなった」

ベテラン「……何言ってるんだ?」

ソロ「いいから早く」

ベテラン「??」

―――――――――――

     ザッ ザッ ザッ…

ロートル「起きたか、ベテラン」

ベテラン「……どうした、ロートル?」


ロートル「しっ……声を絞れ、ベテラン」

ベテラン「はあ?」

ロートル「百聞は一見にしかず……とりあえず、声を上げないように」

ロートル「あの巨大モンスターを見てくれ」

ベテラン「……!?」

ベテラン(巨大モンスター!?)

ソロ「…………」

     スッ…

ベテラン「」

ベテラン「なっ……何だ、ありゃ……!?」

ベテラン「あんなの知らねぇぞ……!?」




     ベテランが驚くのも無理は無かった。

     いつの間にか吹雪は止み、視界が開けていたのだが

     ロートルに促(うなが)され、岩の影からこっそりと覗いたら

     昨日、自分たちが来た道を塞ぐように

     巨大な『何か』が横たわっていたのだ。



     ……いや、もっと正確に言うと

     寝息を立て、寝ていたのだ。






     大きさは縦に約10~15m。

     丸まっているので全長は推定だが、尻尾を含めると

     軽く50mは超える、と、言ったところか……



     そいつは全身を真っ白なウロコ状の甲殻に包まれ

     全体的に流線型の体型をしている。

     特徴的なのは顔面の顎。

     スコップ状の形で、そのまま地面を掘れそうな感じだった。




ロートル「俺も見た事がない」

ロートル「吹雪が止んだので、帰り道の確認をしに来たら」

ロートル「『あれ』が居たんだ」

ベテラン「…………」

ベテラン「……今回のドドブランゴ騒動は」

ソロ「ああ……たぶん『あいつ』のせいだろう」

ベテラン「…………」

ベテラン「しかしでかいな……ラオシャンロンくらいは ありそうだ」

ロートル「……ともかく、これはまずい事になった」

ロートル「ラオシャンロンは国の軍隊の協力や準備してた防衛設備」

ロートル「そしてHR関係なく、ハンター総出で事に当たって何とかしているのに」

ロートル「あんな奴、たった5人のハンターで相手にできるモンスターじゃない」


ソロ「ましてや、どんな攻撃をするかもわからん」

ソロ「しかも……」

ベテラン「くそったれ……帰り道を塞がれたら、逃げる事もできねーじゃねーか」

ロートル「その通りだ」

ロートル「ともかく今は、奴がどう動くか見極めてからでないと行動できん」

     スタ スタ スタ…

観測所員「何事ですか? こんな朝早く……」

ロートル「しっ……静かに」

ロートル「見た事もない巨大モンスターが寝ている」

観測所員「!!」

ロートル「ゆっくりと……息を殺して『何』なのか、見極めてくれ」

観測所員「……わかりました」



     スッ…


観測所員「……!!」

ロートル「……どうだ? 何か分かるか?」

観測所員「…………」

観測所員「……わ……私の記憶が正しければ」

観測所員「あれは……おそらく……」



観測所員「崩竜……ウカムルバス……!」



一同「…………」

ロートル「崩竜ウカムルバス……詳しい情報はあるか?」


観測所員「残念ながらありません」

観測所員「ウカムルバスが最後に確認されたのは……確か50年くらい前で」

観測所員「当時の雪山周辺は、まだ未開の土地……」

観測所員「ラオシャンロン同様、何年かに一度の割合で回遊しているのではないか?」

観測所員「と、推測されただけです」


一同「…………」


ロートル「ほぼ、情報はなし、か……」

ソロ「ラオシャンロンと同じように回遊する、と推測した根拠はあるのか?」

観測所員「……大きさから、そう推測されたと記憶してます」

ベテラン「こいつはキツいねぇ……」


ベテラン「こっちは戦える奴は5人。 非戦闘員は多数」

ベテラン「おまけによく知らねぇ デカブツ相手で、逃げ道が塞がれちまったときた」


一同「…………」


ロートル「ともかく、確かめたい事もある」

ロートル「一度ビバーク地点まで下がるぞ」

―――――――――――

     ザワ ザワ… ドウスンダヨ…

ロートル「みんな、落ち着いてくれ」

ロートル「ここは洞窟で、とりあえず奴には見つからない」

     …………

ロートル「よし」


ソロ「ロートル」

ロートル「戻ったかソロ」

ロートル「どうだった?」

ソロ「残念だが……お前の懸念が当たっていた」

ソロ「観測所員の話だと、計画されていたルートは」

ソロ「8年前の雪山奥地探索ルートを元に作られているが」

ソロ「ざっと調べた限り、奴の通った跡は見事にそのルートに沿っていた」

ロートル「……そうか」

ベテラン「俺たちは、やっこさんの通った獣道を探索ルートに選んでいたって事か……」

ロートル「回遊する、という言葉を聞いて、ふと、な……」

観測所員「……通りで通りやすいわけですね」

ロートル「…………」


ロートル「俺の考えとしては、3つある」

ソロ「……聞こう」

ロートル「一つ目は、迂回ルートを選択して一刻も早く帰還する、だ」

ロートル「だが、これは予定されていないルートを通る事になる為」

ロートル「遭難の危険性があるし、たぶん時間もかかる」

ロートル「そうなったら手持ちの食料や燃料が、どこまで持つか不安になる」


一同「…………」


ロートル「二つ目は、ここで救助を待つ事」

ロートル「ウカムルバスの目的は何なのか分かっていないので」

ロートル「ふもと村の方向へ向かっている、とも言い切れない」

ロートル「ここには調査隊本隊の食料や備品もあるので」

ロートル「原状、我々が一番安全な方法とも言える」


ロートル「しかし……奴がふもと村の方角へ向かっていった場合」

ロートル「俺たちの救助は遅れに遅れる事が予測される」


一同「…………」


ロートル「最後の選択肢だが……」

ロートル「俺たちハンターが奴の囮となり、非戦闘員たちだけで帰還してもらう事」


一同「!!」


ロートル「……正直、一番危険な策だと思う」


ロートル「囮になるハンターはもちろん、逃げる非戦闘員も」

ロートル「ギアノスやブランゴ等のモンスターの脅威にさらされる」


一同「…………」


ロートル「だが同時に最も早く、迫ってくるウカムルバスの危険や」

ロートル「救助の求めを伝えられる可能性が高い」

ロートル「同じルートを進んでくる後発隊に接触できるしな」


一同「…………」


ロートル「他に何か、いい考えはあるだろうか?」

観測所員「……ひとつ聞きたいんですが」

ロートル「何だ?」


観測所員「囮になったハンターは……どうなるんですか?」

ロートル「もちろんあいつを適当にあしらったら……」

ロートル「ここで救助を待つさ」

ロートル「死ぬつもりなんて、これっぽっちもない」

観測所員「…………」

観測所員「私は……3つ目の選択肢を選びます」

     ザワ…!

ベテラン「……こいつは意外だったな」

ベテラン「一番反対すると思ってたぜ」

観測所員「私だって安全に行きたいですよ」

観測所員「でも……ふもと村含め、この脅威を雪山周辺の皆さんは知りません」

観測所員「リスクを冒してでも、伝えなければならない事だと思います」



一同「…………」


ロートル「ハンター含め、みんなもよく考えてくれ」

ロートル「自分が『どうすべき』なのかを……」


一同「…………」


―――――――――――


約一時間後

ウカムルバス 就寝地点


     グルルル…zzz グルルル…zzz



ベテラン「……まだ寝てやがるな」

ロートル「どの道、あいつが起きだしたら俺たちが通ってきたルートを進む」

ロートル「退路を絶たれてるのは変わらんさ」

ベテラン「へっ……違ぇねぇ」

ベテラン「なら、こっちの思惑通り動いてもらおうぜ」

ロートル「ああ。 手はずは?」

ソロ「できている」

ソロ「例の洞窟で非戦闘員は待機して、合図を待っているぞ」

ロートル「そうか……」

ベテラン「じゃ……最終確認と行くか」


ベテラン「俺たちハンターは、囮としてあのデカ物をこの先の開けた窪地へ誘導」

ベテラン「その隙に非戦闘員は元来た道を使って帰還」

ベテラン「大体はこうだな?」

ロートル「ああ」

ロートル「しばらく奴に付き合って、時間を稼ぐが」

ロートル「俺たち囮のハンターは、あの洞窟に立て籠って救助を待つ」

ベテラン「合図は大タル爆弾で……だったな?」

ロートル「雪崩が心配だが、他に手段がないからな……」

ベテラン「……よし」

ベテラン「そろそろ、おっぱじめるとするか」

ソロ「……いつでもいいぞ」

ロートル「わかった」つ(ペイントボール)

     ブンッ ……―――ンッ ベチャ!



     グルルル…


ベテラン「おーおー……あのでかい図体で、あんなのでも起きるんだな」

ロートル「先に行け」つ(強走薬グレート)

     グビッ …シュインッ!

ソロ「わかった。 気をつけろよ」

ベテラン「頼んだぜ!」

     タッ タッ タッ…

ロートル「……ああ」


※ここで ウカムルバス戦闘 のBGMを流すといいかもです。