女「男君を愛するあまり、>>2の能力を手に入れた」 (1000)

女「この能力を使って男君と恋人になれないかな……」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1429494560

悪いね、グロスカは遠慮で
能力でも何でもないし

安価下

女「好感度が見える能力……」

女「ただし、男君限定」

女「男君が誰をどう思ってるかだけは手に取るようにわかる……」


女「名付けて、『愛の判定裁判(ラブパラメータ)』」


女「でもこれ、相手の顔らへんに透けるように映るから、私自身への好感度は見えないんだよね……」ショボン


女「とりあえずどうしよう……?」

女「男君の周りの女の子を調べてみて、それが極端に高くなければ、今、好きな人はいないって事かな?」

女「それか、もしかして私の事が好きだって事?///」


女「女、実は俺、前からお前の事が!」キリッ

女「みたいな?///」ドキドキ


女「えへへ……///」ニヘラ


女「よしっ! とりあえず調べてみよう! うん、行動あるのみ!」

女「まずは、男君と一番仲が良さそうな>>6からだね!」

女「いっくぞー!」タタタタッ

美少女

『教室』


美少女「でねー、最近ダイエット始めてね」

モブ子「えー、美少女、そんな事しなくても十分やせてるじゃん。スタイルいいしさー」


女「」コソッ


女「いた……」ボソッ

女「男君が入ってるサッカー部のマネージャー、美少女」

女「顔が可愛い上に、スタイルも良くて、性格や面倒見もいい、三拍子揃ってるモテる女」

女「よく部活で話してるの見るし、多分、一番男君と仲が良いはず」


女「でも、逆に言えば、美少女の好感度が低かったら、これで不安の五割方は消える。きっと……」


女「私の能力を使う時が来たね」

女「発動……! 『愛の判定裁判(ラブパラメータ)』!!」キュイーン



好感度
コンマ直下

男→美少女 76



女「高い!?」

女「う、ううん、これは違うよ! アレだよ、アレ! と、友達とかそこら辺だよ!」

女「好きとか、そんな数値じゃないよ、これ! 絶対に違う! それなりに仲が良い友達みたいな、そんな感じ! うん、絶対にそう!」


女「……そうに決まってるもん……!」

女「た、試しに男君とそれなりに仲が良い、友君を確かめてみればわかるよ」

女「うん、そう! そうしよう!」

女「えっと……友君は……」キョロキョロ



友「男、お前、昨日やってた映画見た?」

男「あー、昨日のな。見たよ。なかなか面白かったな」



女「いた! 廊下で男君と話してる!」

女「能力発動!」キュイーン



好感度
コンマ直下

男→友 43



女「低いぃ!!」

女「え、何で!? 何で友君がこんな感じなの!?」

女「それなりに仲が良さそうな友君が43で、美少女が76……!?」

女「嫌だよ、そんなの嫌だよ、やだやだ!!」


ザワザワ、ヒソヒソ


モブ男A「……あいつ、さっきからなに叫んでるんだ?」

モブ男B「……ちょっとヤバイ感じか?」



女「あ、うっ……!」

女「まずい、ちょっと目立ちすぎてる……!」

女「一旦、退避ー!」タタタタタッ



モブ男A「何だったんだ、あれ……?」

モブ男B「春だからな……。よくわからんのが多くなる季節だし……」

『女子トイレ』


女「うぅ……とりあえずここまで逃げてきたけど」

女「にしても、あれ、何なの? どうして、美少女があんなに高いの?」

女「一番仲が良いとはいえ、いつも大体一緒にいる友君より絶対低いはずなのに……!」

女「それで、好感度があれだけあるって事は……もしかして男君……」


女「ううん、違う違う! そんなの嫌だもん!!」

女「男君が美少女を好きだなんて、そんなの考えたくもないよ!!」


ガタッ


女「!?」

女(しまった、個室に誰かいたの……!?)


ガチャッ

>>15「なかなか面白そうな話をしてるじゃない」

オカマ

オカマ「好感度? 男君? なにそれ? アタシにも聞かせなさいよ」

女「オカマちゃん!? 言っとくけど、ここ女子トイレだよ! あなた一応♂じゃない!」

オカマ「でも、心は乙女だもん。男子トイレなんて汚いし恥ずかしいし入れる訳ないでしょ?」

女「そういう問題じゃないの! 私が恥ずかしいでしょ!」

オカマ「そんな事よりも」ズイッ

女「うっ……な、なによ?」

オカマ「好感度って……どういう事? しかもそれが男君とあってはちょっと聞き捨てならないじゃなーい」

女「な、何でもないわよ! ていうか、何で男君だと聞き捨てならないの」

オカマ「そりゃアタシの想い人だもの。聞き捨てならないに決まってるでしょ?」

女「はあ!?」

オカマ「だ か ら」


オカマ「しらばっくれても、ダメよ。絶対に聞かせてもらうから」

オカマ「私の能力、>>17を使ってね」キラン

心の声を聞ける

女「能力って……!?」

オカマ「ふふふ、実はアタシは能力者なの。男君を愛するあまりステキな能力を手に入れちゃって」

オカマ「指定した一人の心の声が聞こえる能力」


オカマ「名付けて、『心の恋人(ラバーオブハート)』!」


オカマ「今まではずっと男君の心を指定していたけど、今、それを解除してあなたを指定するわ!」

オカマ「能力発動!」キュイーン


オカマ「そして、質問よ! 好感度って何? 答えなさい!」


女「うっ!」

女「し、知らないわよ、そんなの! 知らないって言ってるじゃない!(まさか、私と同じ能力者だなんて!)」

オカマ「!? アンタも能力者なの!?」

女「ち、違うわよ! 何よ、能力って!? 意味わかんない!(まずいまずい! もしも好感度がわかるなんて知れたら絶対に利用されちゃう!)」

オカマ「ふうん……ふふふふふふふふ」

女「なに、何なの、急に!(気持ち悪い、いきなり笑いだして)」

オカマ「アンタ、なかなかいい能力を持ってるじゃないの。それなら聞かせない! 私の男君に対する好感度はどれだけ!?」

女「そんなの知らないわよ! いい加減にしてよ!(ヤバイ! 本当にこの子、心が読めるの!?)」

オカマ「早く!」グイッ

女「きゃあ! やめてよ、離して!(すっげー、本気っぽい! どうしよう!!)」


>>20

ほい

女「わ、わかった! 教える、教えるからこの手を離して!(誰が教えるかってーの! レバーブローかましてやるんだから!)」

オカマ「アンタ、いい度胸してるじゃない……!」ギリッ

オカマ「アタシに不意打ちをしようだなんて、許せない!」バシンッ!!

女「あぐっ!!」


オカマ「ほら、早く答えなさいよ! でないと、もっと痛い目にあうわよ!」グイッ

女「こ、のっ……!(もういい、ぶん殴る! まずはフェイントをきかしてジャブ!)」シュッ、シュッ!!


オカマ「ふん。下らないわね!」ヒョイ、ドゴッ!!

女「えぐうっ!!」


女「」ゲホッ、ゴホッ


オカマ「心が読める私にフェイント!? 効くわけないでしょ!」バキッ!!

女「ぎあっ!」


女「ぃっ……うぅ……」

女(ヤバイ、勝てっこない……! 心が読まれてるし、こいつ、力は男だもん……! 本当にまずいよ、これ……! どうすればいいの……!)


>>23

逃げるんだよォーーーッ

女(逃げよう! 無理! こいつには勝てないから、とにかく一旦ここから……!)

オカマ「逃がさないわよ!」ガシッ

女(これも無理なの!? 心が読めるって卑怯じゃない!? 先手先手取られちゃう!!)」

女(こんなのどうしようもないじゃないの! 詰んでるよ、これ!)


オカマ「そう。アンタは絶対にアタシには勝てないのよ。それが理解できたなら、さっさと教えなさいよ!」ドゴッ!!

女「えうっ!!」


女「」ゲハッ、ウエエエッ


オカマ「汚いわね」ゲシッ!!

女「うぐっ……!」


オカマ「ほら、いい加減に言いなさい。それともそうやってトイレの床にずっと這いつくばっていたいの?」グリグリ

女「」ブチッ



女「よくも……」ボソッ

オカマ「は?」

女「許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない!」

女「男君に髪の毛が綺麗って誉めてもらえたのに……!」

女「男君が誉めたその髪を……!」

女「足蹴にしやがって……!!」

女「絶対に……!!!」

女「許さないっっ!!!!」ギランッ


オカマ「……っ!」ゾクッ

女は今日、能力を手に入れたばかり

いわば、『愛の判定裁判(ラブパラメータ)』は完全に発展途上の能力

未完成な力


それが強烈な怒りを覚えた事により


新たな『力』を生み出した





好感度が『見える』という事は、それは『目』だけに力が宿っているという事

では、『目』ではなく、それが『足』にも宿ったとしたら?


男が相手を想う強さ、が『目』には映る

ならば、男が相手を想う強さ、が『足』にどういった影響を及ぼすか


『愛の判定裁判(ラブパラメータ)』は、【進化(エボリューション)】する!

女「」ヒュインッ、フッ……

オカマ「え……! 消えた!? な、何で!?」

オカマ「どこ……!? どこに消え」


メキャッ!!


オカマ「っっっぐはっ!!」





  一  撃  !!

微塵も容赦ない蹴りがオカマの背後を襲った!


狭いトイレ内に響き渡る、木造ドアの破壊音!

そして、それを突き抜け壁へと激突するオカマの絶叫!


  瞬  殺  !!


洋式トイレの中にだらしなく倒れ、泡をふいて気絶するオカマを尻目に女は悠然と立って、それを汚物でも見るような目で見下ろしていた



女「愛の判定裁判を下すわ」

女「男君に近付く資格なし。どうやらあなたは嫌われてるみたいだしね」

女「実刑判決、執行猶予なし」

女「今後、男君の半径十メートル以内に近寄るのを禁止とする」


女「以上、閉廷よ。二度とその汚らわしい顔を私の前に現さないでね」クルッ



ハンカチを濡らして髪を丁寧に拭きながら、女はその場から立ち去っていった……

女の能力、『愛の判定裁判(ラブパラメータ)』

目→男からの相手の好感度が見える
足→男からの相手の好感度によって攻撃力が変化する。相手の好感度が低いほど強くなり、高いほど弱くなる


どこに行く?
>>28

女「はあ……」

女「もう最悪……」


女「髪は汚されるし……殴られるし蹴られるし」

女「頬がまだジンジンしてる……。殴られたお腹もまだ痛むし、足も。絶対これ、アザとかになってるよね」

女「お昼の、少し吐いちゃったし……。匂いとかついてないよね?」クンクン


女「うぅ……。なんか泣きたくなってきた。こんなんじゃ今日は男君に会えないよ。こんな顔と姿、見せらんないんじゃない」


女「とりあえず、保健室に行って湿布でももらってこよう。早くしないともうそろそろお昼休み終わりそうだし」

『保健室』


コンコン

女「失礼します」ガラッ

女「先生いますかー?」


保険医「あら?」

保険医「女さんじゃない。どうしたの、一体?」

保険医「って……聞くまでもない感じね。なにその頬? 真っ赤になってるじゃないの」


女「ああ、はい……。ちょっと」

保険医「とりあえず、理由は後で聞くわ。こっち来て。先に手当てをするわよ。えーと、湿布湿布。どこだったかな?」ゴソゴソ


女(ああ、そっか。まずいなあ。理由聞かれたくないし)

女(どうやって誤魔化そう……)

保険医「あ、あった。えーと、一枚……ううん、二枚かな」ヒョイ


ダダダダッ、ガラッ!!

モブ子「先生! 先生いる!?」ハァハァ


保険医「あらなに、そんなに慌てて? どうしたの?」

モブ子「なんか向こうの女子トイレで泡ふいて倒れてるオカマがいるの!」

保険医「え!」


女(そういえば、ほったらかしにして来ちゃったっけ……)


モブ子「なんかね! 気絶してるみたいで全然気が付かないし、白目むいてるし! 体が変な感じで曲がってるしで、これ、ヤバイんじゃないかって皆言ってて、だから!」


保険医「わかったわ! すぐに行く!」

保険医「女さん、悪いけどここに湿布おいておくから、自分で手当てしといて! 大丈夫よね?」

女「あ、はい。自分で出来ます」


保険医「じゃあ私は行くから! モブ子さん、急いで案内して!」

モブ子「はい! こっちです!」タタタッ


ピシャンッ


女「なんとかなっちゃった……。ラッキー、なのかな?」

女「とりあえず湿布湿布と。体の方もあるから二枚だけじゃ足りないだろうし」ゴソゴソ

女「それにしても……」ペタッ、ペタッ

女「美少女をどうにかしないと……」

女「男君が美少女を好きだなんて信じないけど……」

女「でも、76も男君に想われてるなんて、それだけでムカつくしね」ボソッ


女「どうにかならないかなあ……」

女「あいつがそもそもサッカー部のマネージャーなんかしてるから悪いんだよね」

女「もしも、サッカー部のマネージャーじゃなくなったら……」

女「自然と疎遠になっていくよね?」


女「どうにか辞めさせる事、出来ないかなあ……」ボソッ

女「もしくは、男君に嫌われるような事をあいつがすればいいかあ……」ボソッ

女「美少女を嫌ってる人は、やっぱりそれなりにいるしね。あいつ、モテるもんだから」

女「確か美少女と仲が良くなかった>>34に相談してみようかな……」ボソッ

コギャル

『中庭』


コギャル「でよー、そのオッサンが言うんだって。一万出すからパンツ見せてくれとかさあ」

モブコギャル「えー、なに、コギャル。それで、パンツそのオッサンに見せたの?」

コギャル「まっさかー。金が先だって言ってソッコーで逃げてきたの。警察にオッサンが訴えるわけないし、めっちゃラッキーだった」

モブコギャル「コギャル、ひどーいwwwww」

コギャル「あのオッサンが間抜けだったんだってばwwwww」



女「やっぱりここにいたね……」

女「じゃあ、話を……って、その前に一応男君からの好感度を見ておかないと」

女「まあ、真面目な男君がコギャルみたいな女の子を好きとかそんな事は有り得ないだろうけど、一応ね」

女「能力発動……!」キュイーン



好感度
コンマ直下

男→コギャル 06


女「うん、やっぱり予想通り」

女「コギャルとはきっと友達になれるね」


女「男君が嫌がるようなら縁を切るけど……」

女「それまではいい駒になりそうかな……」ボソッ

女「いざとなれば力ずくで言うことを聞かせられるし……」ボソッ



女「よし、とりあえず話しかけてこようっと」ニコッ

女「ねーねー、コギャル。ちょっと話いい?」

コギャル「あれ、女じゃん。珍しい。わたしに話しかけてくるなんて」

モブコギャル「なになに、妊娠でもしちゃったの?wwwww」

コギャル「で、わたしに相談ってか? お前は何だと思ってるんだよ、わたしをwwwww」

モブコギャル「ごめん、ごめーんwwwww だってコギャルいかにもそんな感じだしwwwww」


女「そういうんじゃないんだけど……。ただちょっと大事な話があって。悪いけど、モブコギャルは外してくれるかな?」


モブコギャル「あー、ひどーい、邪魔者扱いするんだー。傷ついちゃったなあ」

女「そうじゃないんだけど、ね、ごめんね。少しだけでいいから」

モブコギャル「ちぇー。わかったよ。じゃね、コギャル。また後で」

コギャル「ん。またね」

コギャル「んで、話ってなに?」

女「美少女の事なんだけど」

コギャル「美少女……あいつかよ。ちっ。で、何なの?」

女「正直、美少女って腹立たない?」

コギャル「ん? ああ、まあな。わたしはあの女嫌いだよ。何が嫌いってはっきり言えないけど、ともかく生理的になんか嫌い」


コギャル「すましていい子ぶっちゃってさ、それでオトコにモテるだろ、あいつ? ぶりっ子って訳じゃないけど、そんな感じがしてムカつく」

女「だよねー、私もおんなじなの。だからさ……」



女「あの女、どうにかしない?」



女「ちょーっと痛い目にあわせてやろうかなあ……なんてね。そんな事を思っちゃったんだけど」

女「どう? 協力してくれないかな?」


コギャル「んー……そうだな」

コギャル「>>42

めんどい

女「……え?」

コギャル「だから、めんどい」

女「な、何で? 腹立つんでしょ? 嫌いなんでしょ? ムカつくんでしょ? だったら」

コギャル「それとこれとは別。そこまで腹立ててる訳じゃねーしさ」

コギャル「そんな事に時間使うぐらいなら、カラオケとか行ってた方がよっぽど楽しいじゃん?」

コギャル「だからパース。止めはしないけど、協力もしねーよ」

コギャル「やるなら別のやつ誘って。あ、結果は教えてね。気になるからさ」


女「…………」




どうする?
>>44

諦める

女「……そっか。わかった」

コギャル「ん」

女「なんかゴメンね……。いきなり変な事言い出して」

コギャル「別に気にする必要なんかねーよ。ムカつくやつ、苛めたくなる気持ちはわかるし」

コギャル「ま、やるなら先生にバレないようにしなよ。親とか出てくると面倒だし」

女「あ、うん……。それもちょっと一旦保留にする。なんかちょっと落ち着いたし」

コギャル「なにそれ? 美少女に何かムカつく事でも言われたのか? 愚痴や悪口言いたいってんなら聞くよ?」

女「ううん、ありがと。少し感情的になりすぎてた感じだから、もう平気」

女「ごめんね、ホント」

コギャル「いいって。それより、そろそろ授業始まるんじゃねーの。教室にでも行こうぜ」

女「だね」

『授業中』


先生「で、この公式が使える訳だ。これ覚えとけよ」


女「」カキカキ

女(…………)


女(そうだね……)

女(本当にちょっと落ち着いた)

女(いつの間にか、なんか危険な考えになってたし、ある意味、コギャルが否定してくれて良かったかも)


女(ただなあ……)

女(美少女はやっぱり気になるし……)

女(私の能力も、男君と仲良くなれるような直接的な効果がないからなあ……)

女(どうすればいいんだろ?)

女(この能力を使って、どうやったら男君の恋人になれるかなあ)


女(うーん……)



1、可愛い私は流石だね! すぐに名案が思いつく
2、困ってる私に対して、颯爽と誰かが助けてくれる
3、思いつきもしないし、助けもこない。現実は非情である
4、ソナタ。間違えた、その他

>>47

キンコーン、カンコーン


女「ああああああああああ……」

女「結局、何も思い付かないまま、授業終わっちゃったじゃんかあ……」


女「はああああ……現実って厳しいよお……」

女「漫画とかだとここら辺ですぐに、あ、そうだ! この手があった! みたいな感じになるのにいい……」

女「今日は顔も腫れてるから、男君に話しかける事も会う事も出来ないのにいいい……」


女「あうう……」

女「仕方ない……学校終わったし、今日はもう帰ろ」

女「」ハァ……

女「辛いなあ……」トボトボ

『自宅』


女「ただいまー……」





兄弟姉妹は
いる? いない? いるとしたら、誰?
>>51

従姉妹「あ、女ちゃん、お帰り」

女「うん、ただいま……」

従姉妹「んー……あらあら……」

女「な、なに?」

従姉妹「その湿布……どうしたのかしら?」

女「ああ、これ? えっと……」

従姉妹「ええ」


女「……転んだ」

従姉妹「ふうん……転んだの」

女「う、うん……。階段のところで思いっきり……」

従姉妹「…………」ジッ

女「な、なに? 本当だよ」

従姉妹「あのね、女ちゃん。ちょっとお話しましょうか。向こうに座って」

女「う……」

従姉妹「お茶入れるから。ね?」

女「う、うん……わかったけど……」

安価ズレとるよ

『居間』


従姉妹「はい。女ちゃんの好きなミルクたっぷりのミルクティー」コトッ

女「あ、ありがと……」

従姉妹「それでね、女ちゃん。飲みながらでいいから聞いてほしいんだけど」

女「うん……」

従姉妹「私って、大学に通うためとはいえ、この家に居候させてもらってる訳じゃない?」

女「うん……」

従姉妹「でも、女ちゃんも伯母さんも嫌な顔一つせず、受け入れてくれてね。自分の家だと思って過ごしてねとか、そんな風にいつも言ってくれて」

女「そりゃ、従姉妹さんは昔から仲良かったし、私もお姉ちゃんみたいな感じに思ってるから」

従姉妹「うん、ありがとう。私も女ちゃんの事を妹みたいに大事に思ってるよ」ニコッ

女「う、うん!」

従姉妹「だからこそね」



従姉妹「私には本当の事を話してほしいの」


>>54
ああ、ごめん
連とりだったから、一応ずらした

別に禁止って訳じゃないけど、下に安価来てたし、そっちを優先した
悪いけど、納得して

従姉妹「その怪我……転んだんじゃないよね?」

女「え、ううん、本当に転んで」

従姉妹「転んでもそんな風には普通ならないんだよ、女ちゃん。一応、私、医大生だし。わかるよ?」

女「う……」

従姉妹「単なる事故だったらそれでもいいんだけど……。でも、隠すって事は、何か言いにくい事情でもあるんだよね?」

女「あ、その……」

従姉妹「イジメにあってるとか、そんな事ない? 私はそれが心配なの」

女「ない。そんな事ないよ。イジメとかはしてもいないし、されてもいないよ」

従姉妹「本当に?」

女「うん、本当に。神に誓って本当に!」

従姉妹「じゃあ、その怪我はどうしたの? 何で理由を隠すの? おかしいでしょ、それ」

女「だ、だって、その……」

従姉妹「ねえ、女ちゃん。本当の事を言ってくれない? 誰にも言わないから。私は女ちゃんが心配なの。ね? お願い」

女「うぅ……」


女(どうしよう……。言っても、従姉妹さんなら大丈夫、なのかな……?)


>>59

言ってしまおう

女「あ、あのね、実は……」

従姉妹「うん」

女「思いっきり叩かれたの……」

従姉妹「やっぱり……」フゥ


従姉妹「それで叩いたのは誰? クラスの子?」

女「ううん、別のクラスの……」

従姉妹「別のクラスの?」

女「オカマ」

従姉妹「……え?」

従姉妹「ごめん、女ちゃん。オカマって……?」

女「私の学年に一人、いるの。オカマの男の子が。全然可愛くないんだけど」

従姉妹「ああ、うん……そうなんだ」

女「うん」

従姉妹「それで……どうしてオカマに叩かれる事になったの?」

女「その子と好きな人が一緒だったから」

従姉妹「…………」

女「従姉妹さんは信じてくれないかもしれないけど、私、妙な能力を持っちゃったの」

従姉妹「能力……?」

女「うん。で、オカマも変な能力持ってて。心が読める能力らしいんだけど」

従姉妹「…………」

女「それで、私の能力は好きな人限定で好感度がわかる能力なの。だから、自分の好感度を教えろってオカマが殴ってきて」

従姉妹「…………」

女「……やっぱり、こんな話、信じられないよね。でも、本当の事なの。嘘なんかついてないよ。私の目を見て。信じて。お願い」

従姉妹「うん……」

従姉妹「そっかあ……能力なんだ」

女「う、うん」

従姉妹「ついに……女ちゃんも目覚めちゃったんだね」

女「え」

従姉妹「そうだよね。女ちゃんも、もう十七歳だもんね。この話をするべき時が来たのかもしれない」

女「え、え」

従姉妹「私たち、龍神の血を受け継ぐ特別な血筋の話を」

女「ちょ」

従姉妹「遥か昔の事よ。龍神が一人の男に恋をしたの」

女「はあ……」

従姉妹「でも、神様と人が付き合える訳がない。元から対等の関係ではないのだから」

女「はあ……」

従姉妹「思い悩んだ龍神は、ついにある事をする決断をしたの」

女「はあ……」

従姉妹「人間になって、その男と結婚をしようと」

女「ポジティブ」

従姉妹「そうして、神の座を捨てて人間となった龍神は、めでたくその男と結婚する事になって」

女「あ、うん……」

従姉妹「子供を沢山産んだわ。この地でね」

女「はあ……」

従姉妹「私たちはその末裔というわけ。そして、当然の事だけど、この土地一帯にはその末裔が沢山いるわ」

女「そりゃまあ、ずっと昔の話なら子孫が沢山いてもおかしくないけど……」

従姉妹「女ちゃんは不思議に思わなかった? この土地一帯の、名字に『神』を持つ人の異常な多さを」

女「そういえば、神田さんとか八神さんとか神坂さんとか他にも……」

従姉妹「私たちもそうだけど、その人たちは、全員、その龍神の末裔と考えていいわ」

女「ええ……」


従姉妹「まあ、これはおとぎ話のようなもので、実際には龍神じゃなくて――」


従姉妹「何か『特別な遺伝子』を持って生まれた人がいて、その人の血が受け継がれていると考えるのが自然なんでしょうけどね」


従姉妹「どっちにしろ、私たち『神』の名を受け継ぐ一族は、他にはない『特殊な力』を持っているの」


従姉妹「誰かを死ぬほど愛すると、それに応じた『能力』が与えられる……というそんな『力』がね」


女「…………」

従姉妹「だから、ずっと隠していたけど私も『能力者』よ」

女「ふえ!?」

従姉妹「私もとある人が死ぬほど好きになってね。その時、『力』を手に入れたわ」

女「『力』って……従姉妹さんの能力って何なの?」

従姉妹「私の能力は……」


>>70

従姉妹「右手を使って空間を歪める能力」

従姉妹「能力を発動すれば、私の右手に触れた空間は粘土のように自在に歪める事が出来るわ。効果は5秒間」


従姉妹「私は『変幻自在の右手(スペースコントロール)』と呼んでるの」


従姉妹「すごい能力だと思わない? ね?」


女「あ、えっと……」

女「すごいっちゃすごいと思うけど……一つ聞いていい?」


従姉妹「? 何かしら?」

女「それ、何の役に立つの?」


従姉妹「…………」

女「…………」

女「だって、『歪める』んだよね?」

女「ぐにっ、ぐにっ、って」

従姉妹「…………」


女「よくある『移動』とかじゃないんだよね?」

女「あっちの空間をこっちと入れ替えー、みたいな事も出来ないんだよね?」

従姉妹「…………」


女「何の役に立つの?」

従姉妹「…………」

従姉妹「そっか……女ちゃんはそういう事言っちゃうんだ」

女「え、だって、本当に何の役にも立ちそうになかったから」

女「そりゃすごいし、強そうだなあって思うけど、それだけでしょ? 実際、それが恋人作りにどう役立つの?」

女「それどころか、実生活でもそんなに役に立たないんじゃないの?」

女「空間を歪めるって事は、そこにある物とかも一緒に歪めるわけだから、例えばそこのタンスが邪魔だから移動させようと思っても、能力使ったら壊しちゃうよね? 」

女「それ、本当に何の役に立つの?」


従姉妹「あらあら……。しょうがないわねえ」

従姉妹「それなら、どう役に立つかその体に教えてあげる」スッ


女「え……従姉妹さん?」

従姉妹「女ちゃん。『能力』ってのは使い方次第。そしていくらでも【進化(エボリューション)】するものよ」

従姉妹「私も最初はこの能力が何の役に立つのかわからなかったわ」

従姉妹「でもね、ある日、気が付いたのよ」

従姉妹「私の能力は単に『空間を歪める』だけのものじゃない。特別なのは『能力』じゃなくて、この『右手』なんだってね。ふふ」ガシッ

女「な、何で私の肩を掴むの!」


従姉妹「見せてあげる。私の『能力』の真骨頂」



従姉妹「第二の能力、『変幻自在の右手(ハートコントロール)』!」キュイーン


女「うっ!」

女「あうっ……! あた……ま……が……いた……い!!」グラッ

従姉妹「ふふっ」

従姉妹「女ちゃん、どう?」

従姉妹「これが私の第二の能力よ。すごいでしょ?」


女「ウン……。スゴイ……。従姉妹サンハ天才ダネ……」


従姉妹「そうよね。わかってくれて嬉しいわあ」

女「ウン……。私モ従姉妹サンヲ喜バス事ガ出来テ……。トテモ嬉シイ……」

従姉妹「ふふふっ。女ちゃん、可愛いわあ。そういう素直な女ちゃん。好きよ」

女「アリガトウ……。ヤッター……。従姉妹サンニ誉メテモラッチャッタ……。嬉シイナア……」

従姉妹「ふふふふふふふふふふふふふふ」クスクス

従姉妹の能力

第一の能力、『変幻自在の右手(スペースコントロール)』
右手で触れている空間を自在に歪める事が出来る。効果は5秒間継続する

第二の能力、『変幻自在の右手、act2(ハートコントロール)』
右手で触れている人の心を自在に歪める事が出来る。触れている間は効果が持続する。離すと消える。その時の相手の記憶すらも歪める事が出来る

従姉妹「もういいかしらね……」

従姉妹「記憶改竄まで、ある程度の時間がかかるのが欠点だけど……」

従姉妹「これぐらい経てば十分かな」パッ


女「あ……?」

女「あれ……? え? あれ?」キョロキョロ


従姉妹「あらあら、どうしたの、女ちゃん?」

女「あ、ううん。あれ? え?」

従姉妹「女ちゃん、本当にどうしたの? なんかボーッとしちゃって」

女「あ、えと……な、何でもない」

従姉妹「そう?」

女「う、うん……。なんか頭がちょっと重いっていうか……それだけ」

女「あれえ……でもなあ。なんか従姉妹さんからスゴイ能力を見せてもらった気がするんだけど……」

女「思い出せない……。何でだろ?」

従姉妹「ふふ。そういう能力だもの。仕方ないわ」ニコッ

女「えっと……ごめん、従姉妹さん。どんな能力だったっけ? 教えて」

従姉妹「ヒ・ミ・ツ」

女「えー」

従姉妹「女は秘密を一つか二つ持っていた方が魅力になるの。だから、教えない」

女「ずるいよー、従姉妹さん」

従姉妹「はいはい。だけど、その話はもうおしまいね。これ以上はしないわ」

女「そんなー」

従姉妹「それよりもね、女ちゃん」

女「ん、何?」

従姉妹「オカマとはその後どうなったの? 肝心なところを聞いてなかったから」

女「ああ、それなら大丈夫。もうオカマが私に手を出してくる事はないから。私の能力を使ってきっちりお仕置きしておいたし」

従姉妹「? 女ちゃんの能力って好感度がわかる能力じゃなかったっけ? それでどうやってお仕置きが出来たの」

女「それは私、『見える』だけじゃないから。簡単に言うとね」



説明中 ―― 説明中 ―― 説明中 ――



従姉妹「へえ……。便利そうでもあるし不便そうでもある能力ね。使い方が限定され過ぎてて」

女「そうなんだよね……。それで好きな人と仲良くなれる訳じゃないし……」

女「それに、美少女っていう恋敵(ライバル)もわかっちゃって……。美少女の方は、どう思ってるかわからないんだけど、でも、好きな人からの好感度は高くて……」

女「それで、落ち込んじゃってるんだ。どうやったら、好きな人と恋人になれるかな……?」


従姉妹「そうねえ……」

従姉妹「私が女ちゃんの立場だったら、とりあえず恋敵(ライバル)が何人いるかは調べるかなあ」

従姉妹「その中で一番高い人よりも、自分が好かれてればいいんでしょ?」

従姉妹「好感度76って言ったら、まあ、それなりだし、そこまで心配はしないけど」

従姉妹「でも、85とか90がいたら、それは本当に好きっぽいじゃない? だからそれはとりあえず調べるかな」


女「うん。確かにそうだよね」


従姉妹「それか、女ちゃんのその能力を使って、好きな人を助けてあげるとか」

女「私の能力を使って?」

従姉妹「そう。やっぱり優しくされたら嬉しいでしょ?」

従姉妹「普通の女の子なら、お菓子を作ってきたりとか、とれたボタンをつけてあげたりとか、そういう事ぐらいしか出来ないし、それにはちょっと勇気や口実がいるじゃない?」

従姉妹「女ちゃんの能力を使えば、他にも出来る事とか色々あるんじゃないかな?」

従姉妹「だから、好きな人にそういう事をして、さりげなくアピールしてみるとかね」


女「ふんふん」

従姉妹「とりあえず、そのどちらかをしてみたら? 二兎を追う者はなんてやらって言うし、どっちかに絞って」

女「うーん」

従姉妹「どう?」

女「そうだね……」



1、好感度を調べよう!
2、男君にアピールしてみよう!
3、もう少し考えてみる
4、その他

>>86

2

女「やっぱり好きな人からは愛されたいし、頑張ってアピールしてみるね」

従姉妹「あらそう? うん、そうかもね、そっちの方がいかも。最短距離をいく方が女ちゃんの性格に合ってると思うし」

女「うん! 一途さなら誰にも負けない自信があるもん、私!」

従姉妹「かもね」クスッ


女「よーし、そうと決まったら何か燃えてきたよ。私、頑張る!」メラメラ


従姉妹「頑張ってね、女ちゃん。何か困った事があったら、いつでも私は相談にのってあげるから」ニコッ

女「うん! ありがとうね、従姉妹さん!」

『翌日 学校』


女「てな感じで盛り上がったのはいいんだけど」

女「具体的な事はまったく考えずに寝ちゃった。えへ♪」コツン


女「なんて事してる場合じゃないよおおお」


女「とにかく男君にアピールしないと!」

女「男君が困ってる事があったら、どんな事でも颯爽と解決! 女です!」

女「男君がピンチの時には素早く現れ、風のように助ける私! 女です!」


女「あ、ありがとう、女さん! でも、どうして俺なんかを助けて……?」

女「そんなの決まってるじゃない。だって、私は男君の事が……ぽっ///」

女「え、まさか女さんも!?」

女「え、女さんもって事は、まさか男君も……!///」

女「うん、今まで気が付かなかったけど、助けられて今気が付いたんだ。俺は女さんの事を心から愛してるって!」

女「お、男君/// ……嬉しい///」

女「女、もう離さない。俺と付き合ってくれ」キリッ

女「そんな……男君、強引/// でも……好き///」

女「女! 愛してるぜ、死ぬほど!」

女「男君、私も!///」


女「うへへへへへ……////」ニヘラ

女「幸せだよおおお///」ドキドキ



ザワザワ、ヒソヒソ

モブ男A「あいつ、ちょっとヤバくね……?」

モブ男B「春だからな……。仕方ないな……」

女「よーし、男君成分の補充完了!」

女「これで勇気も元気も100倍だよ! 今ならどんな事でも出来そうな気がする!」


女「ただ、問題が一つだけ……!」


女「男君、今、別に困ってなさそうなんだよね……」ショボン

女「なんか男君が困ってるような事ないかなあ……」

女「それを見つけないとなあ……」





―――――――――――――――――――
―――――――――――――――
―――――――――――

『廊下』


男「ん……?」クルッ

友「?」

男「またか……でもな」

友「どうしたんだ、男? 急に振り返ったりして」

男「いや、なんか誰かに見られてるような気がして」

友「は?」

男「気のせいだったみたいだけど……。なんだかな」

友「なんだ、幽霊でも見えるってのか、男?」

男「いや、そんなんじゃないよ。俺、霊感ゼロだし」


男「ただ、なんつーの? ここ何日か、ずっと誰かに見られてるような、そんな感じがするんだよ」

男「例えばさっきも。背中に妙な視線を感じるんだよ。ずっと後をつけられてるみたいな、そんな違和感があるんだって」


友「……お前、それ自意識過剰なだけじゃないのか? それとも尾行されるような何かをしたのか?」

男「いや、してない。と思うけど……」

友「だったら気のせいだろ」

男「俺もそう思うんだけどな……。でも……」






友「それよりも、男。オカマが入院したって話を聞いたか?」

男「は? あのオカマが? 何で?」

友「それが女子トイレで誰かにボコスカにされたって話だぜ。聞いた話だと骨折やらなんやらで一ヶ月ぐらい入院とか」

男「それ、マジで?」

友「ああ、マジ話。誰にやられたかは知らないけど、あっぶねえ話だよな。この学校、不良とかなんてほとんどいないと思ってたのによ」

男「ヤバイな、それ。だけど、何でオカマがそんな目に? あいつ、そういった連中とは付き合ってないっていうか……見てみぬふりをされてたのに」

友「さあな。まあ、遊び半分って感じの暴行じゃないみたいだし、多分、相当な恨みを買ってたんじゃないのか? 俺らが知らないだけでさ」

男「ヤバイ連中にちょっかいでも出したのかな、あいつ?」

友「どうなんだろうな。もしかしたら、やった奴らはオンナ連中かもしれないし。なんせ女子トイレでボコってる訳だからさ」

男「リンチってやつか? それこそ、そっちの方が怖いな。怪我からして、絶対、バットとかも使ってるだろうし」

友「外国じゃ、クラスで一番人気のある男に手を出したとかで、女子生徒数人をメリケンサックとかで集団リンチした事件もあるらしいぜ」

男「マジかよ……。女ってそういうとこ、やっぱ怖いわ」

友「ま、俺はモテないからそんな事とは無縁だけど……」


友「お前は気を付けた方がいいかもな?」

友「結構、人気らしいぜ、お前。この前の>>92の時にかなり目立ったみたいだからさ」

駅のホームに落ちた人を助けた

男「ああ、あれな。まあ、ローカルとはいえ、テレビでもニュースで流れちゃったからな」

友「駅のホームから落ちた子供、そこへ最悪のタイミングでやってきた電車、そこに颯爽と飛び出し正に間一髪で子供を救いだした勇敢な高校生! とかリポーター言ってたもんな」


男「あれなあ……。俺もテレビ見てたけど、嘘ばっかりなんだよ、マジで」

男「逆の線路側に電車が来ないかどうか確認するぐらいの余裕があったんだぜ? 間一髪どころか、間五髪ぐらいはあったよ」

男「それに、電車はもうブレーキをかけてたから、結局俺が何もしなくても子供は助かったんじゃないかな。直前あたりで多分止まってたと思うんだよ」


男「ただ、助けた子供のお母さんが大袈裟に言っちゃったし、あの時は他に大したニュースがなかったもんだから、多分それでな……」

男「ついでに選挙戦も控えてたらしくて、プロパガンダってやつか? 県知事まで絡んできて、市長から感謝状がどーのこーのって」

男「だから、嘘を否定しても謙虚だとか奥ゆかしいとかそんな言葉に全部すり替えられてさ。ありのままを語った俺の言葉は完全に闇の中だよ」


男「大衆操作ってのはスゲー簡単なんだなって、思い知らされたね。なんかもう色々と嫌になってきたもんな」

友「つっても、お前が子供を助けようとしてホームから線路に降りたのは事実だし、お前だけがそれをしたんだろ?」

男「俺はたまたまその親子のすぐ近くにいたし、落ちる瞬間も見てたからさ。ほっとく訳にもいかないだろ?」

友「なら、いいんじゃねえの。事実はどうであれ、親と子供はお前に感謝してるだろうし、お前だってそれに近い事はしたんだからさ」

男「それ、親父にも言われたわ……。お前は誉められる事をしたんだから、それでいいんじゃないかってな」


友「だろうな。それに、俺がお前の立場だったら、お前とまったく同じ事をしたかっていうと、正直、自信はないしな」

友「電車が来てた訳だし、ほっとくって事はしなくても、線路に降りて助けようとかはしなかったと思うぞ」

友「そこら辺はスゲーと思うし、まあ、女に人気が出るってのもわかる」

友「男の俺としても妬みようがないからな。まあ、その事が忘れ去られるまではモテて当然かってのはあるさ」


男「あんまり嬉しくないんだけどな。事実とは違ってる訳だから、無闇やたらとおだてあげられてる気がしてさ」

男「逆にガッカリされないか、そっちの方が心配だわ」


友「と、口ではそう言う男だった」

男「本心だよ!」

友「実際、美少女さんとか、あれからやたら絡んで来るんだろ?」

友「お前の事、気になってるんじゃねーーーの? ひゅーひゅー」

男「お前、何年前の人間だよ……」


友「で、真面目な話、どうなん?」

男「どうなんって言われてもな」

友「見た感じだと、お前だって悪い気はしてないんじゃねーの?」


友「美少女さん、可愛いし性格良さそうだしさ」

男「ん、まあ……。いいかなあ、とは思ってるけどさ」

友「ひゅーひゅー、春だってのに熱いねえ」

男「そのキャラ、うぜえええ」

男「とはいってもなあ」

友「何か問題でもあるのか?」

男「さっきも言っただろ。俺には……なんてーの? 自信? それがないっていうか、引け目みたいなもんがあってさ」


男「仮に美少女さんが俺を好きだったとしても、それは『颯爽と子供を救った勇敢な俺』に対してであって、『本当の俺』じゃないだろうなって思うんだよ」

男「そう考えると、わざとじゃないとはいえ、騙してるような気がしてさ」

男「それに、美少女さんが『本当の俺』を知ったら、幻滅されるんじゃないかって怖さもあるんだよ」

男「だから、どうにもなあ」


友「贅沢な悩みだな。俺も一度同じ事を言ってみたいわ」

男「代われるもんなら代わってやるよ。ぶっちゃけ、テレビの放送なんかなかった方が良かったんだよ、俺は」


友「でもまあ、なかったら美少女さんが近寄ってくる事もなかったかもしれない訳だしな」

友「やっぱ、贅沢な悩みなんじゃねーーーーーーのーーーー? 男くーーーーーん」

男「お前、たまにウザいよな、マジで。お前じゃなかったらラリアットかましてるとこだわ」

友「じゃあ、美少女さんとは保留つーかキープみたいな、そんな感じか?」

男「すっげー嫌な言い方。俺が一気に悪者だよ、それ」


友「でも、多分、美少女さんだけじゃないだろ? 他にもモテてるんじゃねーの?」

友「可愛い美少女さんをキープしつつ、他のオンナともよろしくやってんじゃねーの?」

男「マジで俺を悪者にしたいのか」

友「真面目に聞くと、実の話、どうなんだ? 他に何人か寄ってきてる女の子とかいないのか?」

男「誰が喋るか。黙秘する」

友「おいおい、そうカッカするなって。別にお前を悪者にしようなんて俺は思っちゃいねーよ。ただな」

男「……ただ?」

友「もしそうだったとしたら、俺にも一人ぐらい紹介してくれって話だよ」

男「なに言い出すかと思ったら」


友「いや、だってさ。可愛い女の子と一緒に、カラオケとかボーリングとか行きたいじゃんかよ。普通、そうだろ?」

友「お前としても、モテてる今の内に誰かといい関係になっとかないと後悔するぞ」

友「そして、女の子の方だって遊びに誘われたいはずだ」

友「すると、あら不思議。全員が得をする。これを三方一両得と名付けよう」

男「その元ネタ、知ってるやつの方が絶対少ないだろうけどな……」


友「とにかく吐け」

男「力業かよ」

友「いいから言えって。言っとけって。仲良くて、しかも丁度二人組みたいな、そんな都合のいい可愛い女の子たちはいないのか?」

男「」ハァ


男「>>101>>102の二人は仲が良かったような気がするな。今度、遊ぼうとかそんな話もされてたし……」

演劇部部長

生徒会長

女と男君の関係はいったい

友「おお! あの>>103な演劇部部長と、>>104な生徒会長かよ」

男「よく知ってるな……。二人とも年上で学年違うってのに」

友「そりゃまあ、有名な二人組だし。顔と名前ぐらいはな」

男「ん……。まあ、それもそうか」

友「にしても、その二人とも知り合いの上、遊びにも誘われてたなんてな。ちょっと驚きだわ」

男「テレビ放映されてからは、知ってる人からも知らない人からも散々声かけられたからな」

男「で、その二人とは不思議と気が合って。すんなりとすぐに仲良くなれたんだよ。単に向こうが話上手なだけだったかもしれないけど」

男「そんでまあ、二人とも、年上だから誘いを断り辛かったし、ある意味、丁度いいかと思ってな」


男「友としても、この二人なら文句ないだろ?」

友「俺、年上好きだし文句なんかあるわけねーよ。ちょっと緊張するかもしれないけどな」

友「その時はナイスなフォローよろしくな、男」グッ

男「うええ……めんどくせー」

安価ずれまくりだ
わかると思うけど、>>104の↓1と↓2で

『三年の教室』


ピピッ、ピピピピッ


演劇部部長(巨乳)「あら……? 着信音?」ゴソゴソ

生徒会長(美人)「私のよ。しかも電話じゃなくてLINE」


演劇部部長「やだ……わたしったら、つい勘違いをしちゃったみたい」

演劇部部長「この前もね、部員の子の着信音と間違えてスマホを取り出しちゃった事があってね。でも、それからが面白かったのよ。後輩の一人がね」


生徒会長「」ピッ

生徒会長「へえ……朗報ね」

生徒会長「例の男君、ついに遊ぶ気になったみたい。そんな返事が来たわ」


演劇部部長「え、本当? 良かったあ」ニコッ

演劇部部長「ちょっと可愛らしいものね、あの子。生徒会長もお気に入りなんでしょう? 楽しみよね」

生徒会長「別に……。どんな人間か興味があっただけよ。それだけ」

演劇部部長「それだけで遊びに誘うなんて事は、しないと思うんだけどなあ」

生徒会長「少し話したぐらいじゃ、人間性なんてわからないもの。ある程度の時間を共有する必要があるわ」

演劇部部長「予想通り優しそうな子ね、って色々と後で誉めてたじゃないの。それにもう何回か一緒に話してるんだし、人間性は十分にわかったんじゃないの?」クスッ

生徒会長「それは……。まだ足りないっていうか……。あれぐらいの時間じゃ十分とは言えないから……」

演劇部部長「はいはい。そうだね。物足りないんだもんね」

生徒会長「違うわよ。そんな風じゃないから」

演劇部部長「あらー、怒っちゃった?」

生徒会長「別に怒ってなんかないわよ」

演劇部部長「無理しなくてもいいのに。わたしもあの子ともっと色々とお話しをしたいし」ニコッ

生徒会長「…………」


生徒会長「とにかく」

生徒会長「返事をするわよ。遊ぶのは今度の日曜、つまり明後日でどうかって。それと、友達一人連れてきていいかとも尋ねているわ」

演劇部部長「友達? それって、男の子? それとも女の子?」

生徒会長「男の子だそうよ」

演劇部部長「ふうん……。だったらいいかな。私はそれでいいわよ」

生徒会長「そ。……なら、二人ともオーケーだと伝えておくわ」

演劇部部長「ええ」ニコッ

『廊下』


ピローン

男「お、早い。どれどれ」ピッ

友「おい、男。どうだったんだ。早くしろよ、もったいぶるなよ」

男「お前こそがっつくなよ」

友「で? で? 返事は?」

男「オーケーだってさ。今度の日曜、〇〇駅前の噴水で集合って事で」

友「イエスッ! グーッ!!」

男「…………」


友「あああ、楽しみだなあ。演劇部部長と生徒会長に囲まれてデートか」

男「デートじゃなくて、単に遊びに」

友「デートなんだよ! それをデートと言わずしてなんて言うんだ!」

男「いやだから、遊びに」

友「デートだよな!! そうだよな!!」

男「お、おう……」


友「あ、ヤベ、当日なにを着てこう。こういうのは第一印象が肝心って言うし、やっぱビシッと決めたいところだよな?」

男「……そうだな」

友「あー、どうしよう。服買いにいこうかな。なんせあの演劇部部長と生徒会長との初デートだしな。気合いめちゃめちゃ入れていかないと」

男「大丈夫なのか、これ……? 今、ちょっと後悔してるわ……」

『物陰』


「デート……?」

「それは駄目だよねえ……?」


「私がいるのにさあ……?」


「やっぱ■すしかないのかなあ……」

「それしかないのかなあ……?」



「それしか……」

「ないのかなあ……?」


「アハハハはははハハハははハははははハハハ!!」



「■しちゃっおうか……そうだよねえ?」

「それが一番手っ取り早いもんねえ?」







『日曜日 駅前』


男「結局、デートプランやらなんやら、全部友が立てて」

男「そして、今日に至ると」


男「時刻は約束時間の三十分前」

男「お前なあ、アホか? 最終ミーティングってのがあるんだよ。デートを何だと思ってやがる! ナメんな!」

男「とかいうバカのせいで、今、俺はこんなにも早くここに来ているわけだが」

男「にもかかわらず、そのバカの姿がどこにも見えないと」


男「ケンカ売ってんのか、あいつ? おい友コラ」


男「まさか、寝坊したとかそんなんじゃないだろうな?」

男「ちょっと電話してやるか。イタ電の如く執拗に」スッ


男「えーと、友の番号はと……」


???「あれ? 男君じゃない。どうしたの?」


男「え?」クルッ

生徒会長「約束の時間まで、あと二十六分三十二秒あるわ。それなのに、どうしてここに?」

男「生徒会長!」

生徒会長「まさか、時間を間違えた、なんて事はないわよね?」

男「いえ、俺はその……。そういう生徒会長こそどうしてここに?」

生徒会長「私は買い物よ。夏物の服が欲しかったから、下見がてらウィンドウショッピングに来たの」

生徒会長「それで、たまたまここを通ったら、男君の姿を見つけたからこうして話しかけてる訳よ」

生徒会長「それで、あなたは? 何をしてたの?」

男「俺は、その……友とちょっと約束があったんで」

生徒会長「友? ああ、あなたが今日連れてくるって言っていた友達ね」

生徒会長「それで、その友君は? 見たところ、あなた一人にしか見えないけど。それとも私にそう見えるだけで、実は幽霊や妖精のようにそこらに立っているのかしらね?」

男「そうだったら、俺も電話なんかをかけようとか思わないんで済むんですけどね」

生徒会長「つまり、連絡もなしに遅刻している……という事かしら?」

男「見も蓋もなく言うと、そうなります」

生徒会長「責任感のない男ね。私の嫌いなタイプだわ」

男「本当に見も蓋もないですね……」

男「でも、ひょっとしたら、連絡が取れない状況にあるかもしれませんし」

生徒会長「例えば、事故とか?」

男「あんまり考えたくないですけど、そういう事もあるかもしれないです。それだったら寝坊の方がマシですけど」

生徒会長「優しいのね」

男「それこそ普通だと思いますけど?」

生徒会長「冗談よ」

男「はあ……」


男「なんにしろ、ちょっと電話してみるんで」

生徒会長「そう」

男「じゃあ、ちょっと失礼して」ピッ、ピッ


プルルル、プルルル

プルルル、プルルル、プルルル、プルルル ガチャッ


『こちらは留守番電話サービスです。現在おかけになっている電話番号は、電波の届かない場所にあるか……』


男「留守電に変わるか……。何やってんだ、友のやつ?」

生徒会長「つながらなかったの?」

男「みたいです。電波の届かない場所にあるか、電源が入ってないみたいで」

生徒会長「だとしたら、多分、電車の中ね。電源を切ってるんじゃない? こちらには向かっている、と考えていいと思うけど」

男「そうですね、きっと。どうせなら、その前に連絡して欲しかったところですけど」

生徒会長「それで、男君はその間どうするの? ここで待つ気?」

男「ええまあ」

生徒会長「そう。律儀ね。でも、どうせなら、私に付き合いなさい」

男「え?」

生徒会長「歩き回って少し疲れてたところなのよ。そうね、そこの喫茶店がいいわ。そこで珈琲でも飲みながら、私の話相手になりなさい、と言ってるのよ」

男「ああ、そういう事ですか。いいですよ、付き合います」

生徒会長「そう。良かったわ。それなら行きましょうか」

男「はい」

そう言って男が喫茶店に向けて一歩を踏み出した、その瞬間だった

男の目に信じられない光景が映った


前方の空中に何かが浮かんでいる


『それ』は太陽の光を反射していて、その眩しさから男は『それ』が一瞬何なのかが判別つかなかった


ついていれば、あるいは咄嗟に身構えるなりしていたかもしれない


一秒の約半分ほどの間を置き、 一秒の約1/5ほどの時間を使って、『それ』はまるで燕が低滑空するかのように男に向かって高速で飛んでいった


人の反応時間は、反射をのぞけば0.3秒程度と言われている

目で確認し、それが神経を伝って脳に届き、脳が腕や足に命令を下すまでにかかる時間がそれぐらい

つまり、五メートルの距離から何の前触れもなく秒速二十メートルを超す速度で向かってこられた物体を人は絶対に避けられない


『それ』との衝突が絶対に避けられない距離になって、男はようやく『それ』が何なのかがはっきりと判別がついた


包丁。刃が剥き出しの出刃包丁


それが男の心臓めがけて真っ直ぐに飛んできていた

生徒会長「危ないっ! 男君!!」


冷静さをまったく欠いた叫び声が隣から上がり


それとほぼまったく同じタイミングで


まったく同じセリフが、隣ではなく後ろからも


その声にも冷静さはまるでなかったが、こちらは叫び声ではなく、意志のある強い決意表明だった


女「危ないっ! 男君!!」


飛び込むように、かばうように、守るように

その全ての形容詞を女はその行動で表した


男が半瞬ほど前にいた空間には代わって女がいて

そして、飛んできた包丁は>>117に刺さっていた

腹部

女「うあっ……!!! あ、ぎっ!!」ゲホッ


周りから一斉に悲鳴

何事か起こったのかと一人の通行人が振り向くと、腹に刃物らしき物が刺さった女性が地面に倒れ込む瞬間が映った

血に染まっていく白い服


その横には呆けたように一人の男が地面にへたれこんでいて

近くにいた女性が慌ててスマホを取り出し、電話をかけながら――恐らく119番か110番に――刺された女性の側へと駆け寄っていた


生徒会長「動かないで! 気をしっかり!」

生徒会長「はい! 〇〇駅前の、そうです、噴水のすぐそば!」

生徒会長「お腹に包丁みたいなのが刺さっていて! 何か応急処置が出来るようなら言って下さい! 私がします!」

女「……お、男君は……? ぶ……じ?」ガハッ……

生徒会長「喋らないで。血が口から……!」

女「ぶ……じ……? だって……心配……」ゲホッ、ゴホッ

生徒会長「無事よ! 傷ひとつないわ! だから、喋っちゃ駄目! じっとしてて!」

女「よ……かった……」ニコッ……



痴情のもつれか何かか……?

あるいは、通り魔? いや、まさかな……。


通行人のその男は軽く頭を振って、また歩きだした。野次馬になる気はなかったし、今日はこれから少し遅めの休日出勤だ。遅れる訳にはいかなかった


なんにしても物騒な世の中だよなあ……


そう思いながら目を前に向けると、遠くのビルの陰にちらりと少しだけ

物陰からこちらを伺うような目付きを向けている女性がいる事に彼は気付いた

何だ? 怖いもの見たさの野次馬とは少し違う感じがするが……。

すると、向こうもこちらの存在に気付いたのか、すぐにビルの陰の奥へとその姿を消した


いや、まさか……。そんな訳……


彼は背筋が急にうすら寒くなった。何故なら、ビルの陰へと隠れる瞬間、その女性の手に刃物のような光る物が握られていたのを見たような気がしたから……

彼は立ち止まり、くるりと向きを変えて別の道を使うべく方向を変えた

足取りは自然に早足に、最終的には駆け足へと変わった

例え仕事に遅刻しようとも、先程の道だけは絶対に使う気にはなれなかった。彼は後ろを何回か振り返りながら、かなりの大回りをして仕事場へと向かう事になった

『病院』



【手術中】

母親「……なにこれ。何であの子がこんな事に……」グスッ

従姉妹「一体、何があったの……女ちゃん……。包丁でお腹を刺されたなんて……」


【】フッ

従姉妹「ランプが消えた……! 手術が終わったんじゃ……」


ガラッ

医師「」フゥ……


母親「先生! 手術は……!? 手術は終わったんですか!? 娘は!? 娘の容態は!?」

医師「>>121

何故かピンピンしています

医師「大変、言い出しにくい事なのですが……」

母親「そんな……! まさか……!!」

従姉妹「嘘よ……! 女ちゃんが亡くなるなんて、そんな!」


医師「ええ、奇跡的と言いますかなんと言うか……。ピンピンされてまして……」

母親「……え」

従姉妹「え」


医師「腹部に刺さった包丁なんですが、内臓とかの重要器官を全て避けるように刺さっていまして」

医師「刺さったというより、すり抜けた、という表現の方が遥かに正しいでしょうね」

医師「出血も応急処置が良かったのか大したものでもありませんでしたし、傷を塞ぐ為に手術はしましたが、実際それだけです。輸血も少量で済んでますし」

医師「経過を見て判断はしますが、恐らくどれだけ長くても一週間ぐらいの入院で済むでしょう。早ければ三日後にでも」

医師「とりあえず身の回りのものだけ御用意されて入院の用意をお願いします。後で病室を伝えますので」

母親「あ、はい……」

従姉妹「なんだ……もう……。びっくりしちゃったわ……」ハァ

医師「ああ、それとですね」

母親「はい」

医師「局所麻酔でしたので、本人も意識がありますから。ですので、ひょっとしたら後から警察の方が訪ねてくるかもしれません」

母親「警察が……」

医師「刺されている訳ですからね。犯人も捕まってませんし。事情聴取に来られるはずです。その時は、警察の方の指示に従うようお願いします」

母親「わ、わかり……ました」

医師「傷口の鋭利さからいって、自傷ではないという事は確かなので……。誰かの仕業という事なら、傷害罪……いえ、凶器が出刃包丁ですので殺人未遂罪ですか。恐らくそうなるかと」

母親「はい……」

医師「犯人には早く見つかってほしいものです。では、私はこれで……」

母親「ありがとうございました」ペコッ……

『警察』


刑事「それで、君達二人が第一発見者という事だが……」

刑事「悪いがまた一から状況を詳しく聞かせてもらえるかな」

刑事「なにせ、白昼堂々、しかも人目の多い駅前で起こった犯行だ」

刑事「にもかかわらず、どれだけ証言を集めて回っても誰も犯人を見ていないと言う」

刑事「被害者の女さんが搬送されている病院から先程連絡があったが、間違いなく自傷ではないそうだ」

刑事「だとしたら、誰かが刺した、と考えるのが普通だろう。出刃包丁がたまたまそこの地面に立てて置いてあって、被害者が転んだ拍子にそれに刺さったというなら別だがね」

刑事「では、改めて聞かせてもらおうか」


刑事「君達は本当に犯人を見ていないのか? 犯行現場の目と鼻の先にいたというのに? 有り得なくないか、それは?」

生徒会長「刑事さん、はっきり言ってもらって結構です」

生徒会長「刑事さんは私たちを疑っているのでしょう」

生徒会長「私か男君のどちらかが女さんを刺したんじゃないかって」

生徒会長「でも、それは違うわ。その内、女さんの証言が取れるだろうから、その時にはっきりするでしょうね」

生徒会長「本来、刺されていたのは男君の方で、私はその近くにいただけだと女さんは証言するはずだから」


刑事「それについては、もちろん後で確認させてもらうがね」

刑事「だが、そんなのとは別に――つまり、君達が犯人であろうとなかろうと、関係なく」

刑事「ただ単純に疑問なんだよ。君達の証言は」


生徒会長「…………」

刑事「まず、凶器となった包丁が飛んできたという証言」

刑事「それは野球でいうフライのように上から飛んできたのではなく、ほぼ水平に飛んできたと君は言ったね、男君」

男「……はい。確かにそう見えました」


刑事「て事は、犯人はそれなりの近距離から包丁を投げたって事になる。どれだけ離れていたとしても、三十メートル以内だろう。少なくとも遠距離ではない」

刑事「そして、当たり前の事だが、包丁を投げた犯人は君の正面にいたはずなんだ。包丁がカーブを描いて飛んでくるはずがないからな」

刑事「なのに、君はその犯人を見ていないという。これはおかしくないか?」

刑事「正面にいた人間が見えなかったと言うのかい? 君は」


男「でも、本当に……! それらしい人はいなくて。包丁だけ見てたからそのせいかもしれないけど……!」

刑事「……なるほど」

男「あと、丁度逆光でした。太陽が僕の正面にあって……」

刑事「ふむ……」

刑事「じゃあ、繰り返しになるが次の質問だ」

刑事「包丁は本来、君に向かって飛んできたと言ってたよな?」

男「はい。……そうでした」

刑事「そこへ、被害者である女さんが飛び込んできて君を突き飛ばした。要約すると、君をかばったという事だよな」

男「はい……」

刑事「ふむ……」



刑事「君と女さんの関係は>>129だと言っていたが、これは間違いないかい?」

刑事「そして、生徒会長の君と、女さんの関係は>>130という事だな。これも間違いないか?」

クラスメート

幼馴染

男「はい。クラスメイトです。何回か話した事もあります」

刑事「その言い方だと、友達ではなく知り合いと捉えていいのか?」

男「……そうですね。友達って言うほどの仲じゃないと思います。クラスメイトです」


刑事「逆に、君の方は友達だと捉えていいのかな? 普通の先輩後輩のような仲ではなく」

生徒会長「ええ。あの子とは小学生の時からの幼馴染みで、家が近所なのもあって、それからずっと長い付き合いですから」

生徒会長「友達です。最近はめっきり少なくなってしまいましたけど、一緒に遊んだりとかもよく」


刑事「じゃあ、その友達の君に聞くが、女さんは何故、男君をかばったんだろうな? 自分が刺される危険を犯してまで」

刑事「単なるクラスメイトなんだろう? どうしてだろうな」

生徒会長「……咄嗟の判断としか、私には推測出来ないわ」

刑事「なるほどね……。そこの男君とまったく同じように、咄嗟に、と。ずいぶん勇敢な子だね」

男「…………」

刑事「それじゃあ、次の質問に移るが……」

コンコン、ガチャッ

モブ刑事「刑事、ちょっといいですか。報告したい事が。すぐに済みます」

刑事「わかった。ああ、君達は悪いが少し待っていてくれ」スクッ、スタスタ


バタンッ


男「」フゥ……

生徒会長「……疲れたわね」


男「ええ、そうですね。でも……」

生徒会長「わかってる。女の為だもの。いくらでも協力するわ」


生徒会長「男君を殺そうとした事、そして実際に怪我をしたのは女。私はその犯人を絶対に許さないわ。絶対に……!」

男「とはいえ、俺達も犯人として疑われているみたいですけどね……」

生徒会長「あなたの方は多分そんな事はないわ。女も大怪我にはならなかったし、証言が取れれば疑いも晴れる訳だしね」


生徒会長「実際に疑われているのは私の方よ。多分、私が刺して、それを男君がかばっているんじゃないかとあの刑事は疑っているんでしょうね」

生徒会長「あくまで可能性の一つとして、でしょうけど。こんな風に二人で尋問されているのがその証拠よ」

生徒会長「本気で疑っているなら、部屋を別々にして一人ずつ問い質すでしょうし」


男「…………」

ガチャッ

刑事「すまないな、待たせて」


男「いえ」

生徒会長「構いません」


刑事「ところで、少し話は変わるんだが、君達は友君を知っているかな?」

男「友?」

生徒会長「友君?」

刑事「そう、知っているかな?」

男「はい……友達です。よく知っています。でも、どうして友の名前が?」

刑事「君は?」

生徒会長「……名前だけは。男君から聞いていたので。実際には会った事がなくて、今日初めて会う予定でしたけど」

刑事「ほう、今日会う予定だった……。それはどんな理由で?」

男「俺と生徒会長と友と、あと一人、生徒会長の友達と、この四人で遊ぶ約束をしていたので」

刑事「そのあと一人というのは? 名前は?」

生徒会長「演劇部部長、です。私の友達です」

刑事「演劇部部長ね……」メモメモ


男「……?」

生徒会長「…………」

刑事「その子と君達の関係は? 同じ学校の友達かな?」

生徒会長「そうです」

男「そうですね……。先輩ですけど」

刑事「友君と、演劇部部長の関係は知っているかい? こちらも友達?」

生徒会長「私と同じです。今日、初めて会う予定でした」

刑事「つまり、知らなかったという事だな。面識もなかった、と」

生徒会長「ええ」

刑事「ふむふむ……」メモメモ

男「……あの、さっきから何なんですか? 何で友の名前が?」


刑事「その前に一つ、いや二つかな。質問していいか」

男「……何ですか?」

刑事「今日遊ぶ予定だったという事だけど、それは何時から? あと、最後に友君を見たのはいつかな?」

男「……友を疑ってるんですか?」

刑事「こちらが先に質問しているんだ。先に答えてくれないかな」

男「今日のお昼……十二時からです。最後に友を見たのは、多分、昨日の学校終わりです。部活に行く途中で別れました」

刑事「なるほどね……」メモメモ


刑事「君は?」

生徒会長「面識がなかったと、先程言ったはずですけど」

刑事「……なるほど。そうだったな。それは悪かった」メモメモ

生徒会長「…………」

男「それで……何で友の事を?」

刑事「……彼、サバイバルナイフで刺されていてね」

男「!?」

生徒会長「!?」


刑事「発見されたのは、今日の十一時頃だ。自宅近くの道路で倒れているのが見つかった」

刑事「犯人は目撃もされていないし、当然まだ捕まってもいない」


男「ちょ、ちょっと待って下さい! 友が!? 友が刺されていたって言うんですか!?」

刑事「そう。まだこれだけでは何とも言えないが、あるいは女さんを刺した犯人と同一人物かもしれない」

刑事「捜査と共に友君の交遊関係を洗っていたら、つい先程……男君、君と友達みたいだったって情報が入ってきてね」

刑事「それで尋ねた訳だ。何か知ってるんじゃないかと思ってな」


男「そんな……! 何で友まで……!!」

男「それで、友は!? 友は無事なんですか!?」


刑事「>>137

「能力」に目覚めたみたいだよ

刑事「無事だ。刺されたのは足だからな」

男「」ホッ

刑事「何日かは松葉杖という事になるだろうが、命には別状がない。不幸中の幸いというところか」

男「良かった……。冷や汗をかいたわ……」


刑事「それで、ここからが本題なんだが……」

刑事「彼も不思議な事に犯人を見ていないと言っている。君達と同じでナイフが急に飛んできたとな」

刑事「もっとも、彼の証言は今のところあてにはならないのだがな……」

刑事「病室で話を聞いた他の刑事によると……」


『能力が使えるようになった』

『それでギリギリのところでナイフをかわす事が出来た』

『でなかったら、心臓にナイフが突き刺さって多分死んでいた』


刑事「なんて、意味不明な事を言っていたらしいからな」

刑事「いわゆる錯乱状態だ。よっぽど恐怖だったんだろう。少し落ち着いてからでないと、証言はあてにならないな」

男「……そうだったんですか」

『二時間後』


刑事「二人とも、長々と付き合ってくれてありがとうな。捜査に御協力、感謝する」

生徒会長「つまり、それは私たちへの疑いが晴れたと?」

刑事「そういう言い方をされると、棘が残るが……」

刑事「しかし、君達二人が犯人ではないというのは、恐らく確かだろうな」

刑事「被害者の証言と君達の証言は一致しているし、友君の件にしても、犯行時刻前後の君達のアリバイは先程確認出来たからな」

刑事「男君は、自宅近くのコンビニにその姿が映っていたし、君はショッピングモールの監視カメラに映っていた」

刑事「距離からいって、犯行は不可能だ。つまり、君達には完璧なアリバイがあるという訳だ」

生徒会長「ようやく理解してもらったようでありがたいわね。まさか、四時間近くも拘束される事になるとは思わなかったけれど」

刑事「すまないな、だが任意での事情聴取だ。拘束した訳ではない」

生徒会長「ふんっ」


刑事「時間も時間だ、二人は自宅まで送っていこう。夜道は危ないからな。特に、君達については尚更そうかもしれんし」

男「それは……どういう意味ですか?」

刑事「犯人は、男君、あるいは生徒会長さん、二人と関わりのある人物かもしれない、という話だ」

男「!?」

刑事「通り魔が偶然、君と君の友達を襲った、なんて方が話に無理があるだろう? 普通は、君と君の友達に何らかの恨みがあって犯行に及んだと考えるのが自然だ」

刑事「もっとも、君達の通う学校の生徒全員に、という可能性もあるし、単に高校生ぐらいの歳の男かもしれない。あるいは若い人間なら誰でもという考え方も出来るが……」

刑事「今のところ、それは判別がつかない」

刑事「だとしたら、警戒にこす事はないだろう。君達自身も、十分に注意してくれ」

刑事「一人で行動しない、人気のない場所には行かない、夜間の外出は極力避ける」

刑事「そういった事は肝に命じておいた方がいいだろうな」


男「…………」

生徒会長「…………」

『夜 男の自室』


男「……友が心配だから連絡が取りたかったけど」

男「やっぱり繋がらないか……。多分、電源を切ってるんだろうな」

男「女さんの搬送された病院と同じだって刑事さんは言っていたから、明日、お見舞いに行こうとは思うけど……」

男「一人での行動は控えた方がいいとも言われてるしな……」


男「誰かを誘って一緒に行ってもらうしかないか……」


男「誰を誘おう?」

>>144

クラス委員長

男「委員長を誘うか……。面倒見いいし、きっと一緒に来てくれるはずだ」

男「えーと、委員長の電話番号は、と」ピッ、ピッ


プルルル、プルルル

ガチャッ


委員長「もしもし?」

男「あ、委員長。急に電話かけて悪い。今、大丈夫か?」



委員長の性別
>>146

委員長(♂)「ああ、平気だよ。特に何かしてたという訳でもないし」

男「それなら少し話を聞いて欲しいんだけどな」

委員長「何かな?」

男「今日、うちのクラスの友と女さんが怪我したんだ。もっと詳しく言うなら、どちらも誰かに刺された」

委員長「な、なん(ry」


―― 説明中 ―― 説明中 ―― 説明中 ――


男「て訳で、明日、お見舞いに付き合ってくれないか、委員長」

委員長「わかった。そういう事なら」

男「ありがとな。助かる。えーと、明日、学校が終わってからすぐで大丈夫か?」

委員長「いいよ、それで」

男「じゃあ、明日。一旦家に帰って、それで悪いけど俺の家まで来てくれると嬉しい」

委員長「いいよ、どうせ病院もそっちの方角だし。着いたら電話する」

男「サンキューな。じゃあ、また明日で」

委員長「了解」

『翌日 学校から帰宅後』


プルルル、プルルル

男「お、委員長からだ」

男「て、事はもう来たのか。流石に早いな」ピッ


男「もしもし」

『来たよ。門の近くで待ってる』

男「わかった。すぐ行く」ピッ

ガチャッ、バタンッ

男「お待たせ、って……え?」


委員長「やあ」

モブ男A「よお」
モブ男B「よっ」
モブ子A「はろー」
モブ子B「やっほ」
モブ子C「こんにちは」


男「えっと……何でクラスの皆が?」

委員長「今日、お見舞いに行くって言ったら、皆も来るっていうからね」

委員長「どうせなら、皆で行こうって事になって」

委員長「多い方が友君も女さんも喜ぶだろ? だから」


男「ああ、なるほどね……。皆も、朝に先生から話は聞いてるからそれでか……」

モブ男A「じゃあ、早速行こうぜ」
モブ男B「しっかし、友のやつも災難だったよな」
モブ子A「女さんもねー。通り魔だって。可哀想だったよね」
モブ子B「ホントホント」
モブ子C「にしても、うちのクラスから二人って。偶然って怖いよね」


男「……ま、いっか。……多い方がいいのは確かだし」

委員長「さ、男君も早く」

男「ああ、うん」

『病院』


委員長「受付で聞いてきたけど、友君は二階の病室。女さんは五階の病室だそうだ」

委員長「先に友君のところに行って、それから女さんのところに行こうか」


モブ子A「ごめん。私たちは、友君の事、あんまり知らないから」

モブ子B「悪いけど、先に女ちゃんのところに行ってるね」

モブ子C「友君も、よく知らない私たちがお見舞いに来ても気まずいだけだと思うし」


モブ男A「まあ、確かにな。俺もろくに話した事のない女さんのところにお見舞いに行くのは気が引けるし」

モブ男B「俺らは友のところにだけ、お見舞いに行くわ。帰りはこのまま解散でいいだろ? 待ってるのめんどいし」

モブ子A「私たちもそれがいいかな。別に一緒に帰る必要はないしね」


委員長「……まあ、確かに。それなら男君と俺は二人のところにそれぞれ行くけど」

委員長「どっちから先に行く、男君?」

男「ああ、えっと……」


>>151

男「友の方から」

男(女さんに助けられたって話は、委員長にしかしてないからな……)

男(出来ればモブ子達がいない静かな時に、きっちりお礼を言いたい)

男(それに、刑事さんがした友の昨日の話も気になる。心配だ)

男(あいつ、大丈夫なんだろうな……。もう落ち着いてるといいけど……)


委員長「それじゃあ行こうか」

モブ男A「二階だよな? エレベーター待つより階段で行った方が早いか」

モブ子A「じゃあ、私たちはこれで。バイバイ」

委員長「ああ、バイバイ」

『友の病室』


友「おー! 男!」

友「それに委員長! お前らも!」

友「よく来てくれたな。メッチャ退屈しててさあ。スッゲーありがたい」


モブ男A「おーおー、意外と元気そうじゃん」

モブ男B「刺された、つーから心配してたら。ピンピンしてんな」


友「まあな。足だったからさ。代わりに、右足はこのザマだけどな。包帯グルグル巻きで、これじゃ風呂にも入れねえ」

友「歩けるようになるまで、三週間ぐらいはかかるだろうってさ。結構、深目に刺さってたらしくって」


モブ男A「とんだ災難だったよな、お前も。でもまあ、足でまだ良かったよ」

モブ男B「別のところ刺されてたら洒落になってないもんな」


友「あ、ああ、まあ……な」


男(声が震えてる……。やっぱり、相当怖かったんだろうな……)

男(俺もそうだったからわかるけど、直接経験しなきゃ、あの怖さはわかんねーよ、絶対)

モブ男A「にしても、ここ最近、ヤバイ事件が続くよな」

モブ男B「ちょっと前にオカマがボコられて入院だろ。そんで、すぐに友と女さんが通り魔に遭うとか」

モブ男A「正直、コエーよな。犯人どんな奴だったんだよ、友?」


友「ああ、いや……。俺は犯人見てなくてさ……。いきなりナイフが飛んできてグサッって感じだったから」


モブ男A「マジかよ。デンジャラスだな、おい」

モブ男B「無差別テロみたいなもんか。ナイフ投げるとかエグいわ」


友「だよな……はは」


男「…………」

委員長「ああ、そうだ。これ」スッ

委員長「お見舞いの小説とか漫画。退屈してるだろうと思って」

友「おお、ありがとう。やる事なくてホントに暇でさあ」

友「スマホも今なくて、マジで寝てる以外、何もする事がなかったんだよな」


男「そういえば、友。今はもう落ち着いてるのか? ずいぶん混乱してたみたいだって、聞いてたけど……」

友「ん? ああ、うん……。今はもう大丈夫、落ち着いてる。よく覚えてないけど、何か変な事を口走ってたみたいなんだよな、俺」

男「そっか。落ち着いてるならいいけど」

友「多分、事件の事もあって、パニクってたんだろうな、きっと」

男「だな」


男(良かった……。普段の友だ。あれはやっぱ錯乱してたんだろうな。今は落ち着いてるみたいだし)

『しばらく談笑後』


モブ男A「それじゃ、俺たちはもうそろそろ帰るよ。元気な顔見て安心したしな」

モブ男B「また来るからよ」

委員長「元気で、って言うのも変だけど、元気で」


友「おう、ありがとな」


男「それじゃあな、友」

友「ああ、またな」

男「」クルッ


友「あ、そうだ、男。帰る前に一つだけ」

男「ん?」

友「女さんには気を付けろよ。あの子には近付かない方がいい」

男「……は?」

友「これは警告だよ。あの子、危険だから。何がどうとかは言えないけど、近付くな。でないと……」

男「……でないと?」



友「殺されるかもしれない」


男「……おい、友。急にどうしたんだよ、いきなり何でそんな……」

友「理由は……言えない。だけど、俺を信じろ、男」

男「…………」

友「俺とお前、友達だよな。そりゃたまにはケンカもするし、お互いウザいと思う時だってあるかもしれない」

友「でもな、これはマジ話だ。俺はお前に危険な目に遭ってほしくないんだよ。当たり前の事だろ?」

男「それはわかるよ。俺もお前と同じ気持ちだ。でも、そこで何で女さんが出てくるんだ?」

友「…………」


男「お前もひょっとしたら警察の人から聞いてるかもしれないけど、俺も包丁で刺されそうになってたんだ」

男「下手したら死んでた。いや、死ぬとこだったんだよ、本来なら」

男「でも、それを助けてくれたのが女さんなんだ。言ってみれば、命の恩人だ。なのに、近付いたら殺されるっておかしいだろ」


友「……わかってる。俺もその話は聞いた。かばってもらったってな」

男「だったら、わかるだろ。あの子が危険なはずないだろ」

友「でも、危険なんだよ。俺にはわかるんだ。いや、俺にしかわからないかもしれないけど」

男「意味がわからん。お前……本当に大丈夫なのか? まだ混乱してるんじゃないのか?」


友「してねーよ! これはマジなんだ! だからお前にだけ話してるんだよ。お前なら信じてくれると思ってるから」

友「お前の命がかかってるんだぞ? そんな事で、ウソとかデタラメとか言うと思ってんのか? な訳ねーだろ!」

友「とにかく、頭がおかしいと思ってもらっててもいいから、俺の言う通りにしてくれ、男」


友「女さんには近付くな。距離をとれ。そうしなきゃヤバイんだよ、あの子は」

男「…………」

ヒョイ

委員長「ああ、いたいた。男君」


男「あ、委員長」

友「…………」


委員長「てっきり後ろをついてきてるかと思ったらいないからさ。少しびっくりしたよ。まだ話してたんだ」

男「ああ、うん……。ちょっと」

委員長「どうする? 話がまだあるなら先に行ってようか? 病院なら大勢人がいるから、一人になっても大丈夫だと思うし」

男「いや、それは委員長に悪いから行くよ。話も……」チラッ

友「…………」コクッ

男「終わったとこだし。……大丈夫」

委員長「そう」


男「……じゃあな、友。また来るから」

友「……ああ。例のアレ。忘れないでくれよ。絶対に」

委員長「何の話?」

友「……何かエロ本でも持ってきてくれって話。たまっちまうからさ」

委員長「はは、なるほどね」


男「…………」

友「…………」

『廊下』


委員長「さて、次は女さんのところだね」

委員長「女さんの病室は五階だから、一旦、エレベーターに乗って……」

男「…………」


委員長「? どうしたの、男君? 何だか押し黙っちゃって」

男「ああ、うん……」

委員長「?」



『あの子、危険だから』

『近付くな。でないと……』

『殺されるかもしれない』



男(どうしたんだよ、友のやつ……)

男(やっぱりまだ錯乱してるのか……? それともマジで頭がおかしくなったのか……?)

男(それとも、本当に女さんが危険なのか……?)

男(だけど、あの子は俺をかばって……。命がけで助けてくれたんだぞ……)

男(危険だなんてそんな風に考えたくもないし、それに心からお礼も言いたい……)

男(というか、助けられた俺が見舞いにも行かず、お礼も言わずは人として最低だよな……)

男(だけど……)


男(どうしろって言うんだよ……)


>>161

行ってみる

委員長「……男君?」

男「あ、いや、何でもない」

委員長「……そう? 何かやけに深刻な顔をしてたけど」

男「ちょっと緊張してて……。何て話しかければいいか、わからないしさ……」

委員長「ああ、まあそうだよね。女さんは命の恩人って事になる訳だし」


男(そう。女さんは俺を助けてくれたんだ。俺みたいな紛い物の助け方じゃなくて、本当に命がけで)

男(俺はバカか? なのに、こんな事で迷うなんて……)

男(行ってちゃんとお礼をしないと……。当たり前の事だ。友が何て言おうと、行くべきだろ)


委員長「でも、そんなに難しく考えなくてもいいんじゃないかな。素直な気持ちを素直に言えばいいと思うよ」

男「ありがとう。そうだよな、うん」

委員長「じゃあ、行こうか。心の準備はもういい?」

男「ああ、もう大丈夫だから」

女のいた病室は、友のいた病室とは違って、四人部屋ではなく個室だった

ドアの前までたどり着き、軽くノックする

すぐに、「どうぞ」という声が中から聞こえた

委員長が「失礼します」と言いながらドアを開ける



中にいたのは……

1、女一人だけ
2、女と従姉妹
3、女と生徒会長
4、その他

安価忘れた
直下

生徒会長「あら、男君じゃない」

男「生徒会長?」

女「男君!」


委員長「女さん、お見舞いに来ま」

女「良かった! 本当の本当に無事だったんだね! もうそれだけが心配で心配で!」

男「あ、えっと……」

生徒会長「この子ったら、ずっと私がそう言ってたのに、それでも不安そうにしててね」

男「いや、あの、何て言うか……。何て言えばいいか……」

女「だって、私、あの後すぐに救急車に運ばれて、ろくに確かめられなかったんだよ! そりゃ不安になるよ!」

生徒会長「だ、そうよ? 何か一言言ってあげたら?」

男「えっと……ありがとう//」

女「はわわわわわわ!!/// こ、こちらこそ!」


生徒会長「まったく……。幼馴染みである私が『こんな事』になってるのを知らなかったなんて……。不覚もいいとこね」

委員長「……何だろう、この疎外感」

男「その……女さん。かなり遅くなっちゃったんだけど、あの時は本当に……」

男「本当に、ありがとう」

男「今、俺がこうして生きてるのも全部女さんのお陰だから……」

男「親父やお袋もすごい感謝してて……」

男「多分、夕方頃に二人揃って来ると思う。日を改めてお袋と一緒に俺ももう一度お礼に行くと思うけど」


男「ありがとう」


男「言葉で言い表せないぐらい女さんには感謝してる」

男「女さんは俺の命を救ってくれたんだから」


女「はうううううう///」


女「あう、あう、あう///」ボフッ、ボフッ

生徒会長「やめなさい、罪もない枕を叩くのは」


男「……あ、あの。俺、何か気にさわるような事を言ったかな」

生徒会長「逆よ。喜んでるのよ」

男「はあ……」

生徒会長「ホント、昔から不器用な子だったけど、そこら辺は全然変わってないわね」


女「何かもう死んでもいい///」ウルウル

生徒会長「やめて。あんな想いをするのは一度で十分なんだから」


委員長「何だろう、この圧倒的疎外感は……」

男「ところで……生徒会長もお見舞いに?」

生徒会長「ええ、そうよ。それ以外に見えると言うなら、逆に何をしているのかを聞かせてほしいところね」

男「毒舌ですね」

生徒会長「たまにはね」

男「あまり、たまにって感じはしませんが」

生徒会長「たまに、よ」

男「……はい」


委員長「あ、女さん、これお見舞いの」

女「そういえば、前からちょっと気になってたんだけど、男君と生徒会長って知り合いなの?」

生徒会長「言ってなかったかしら? そうよ」

女「……初耳なんだけど」

男「ああ、えっと……。前の電車の事件の時、結構学校側でも話題になったらしくって」

生徒会長「親からの問い合わせの電話や週刊紙の記者からの取材申込みとかが何十件か来たのよ。それで生徒会にも雑用やらお達しやらが何個か来る事になって」

男「それがきっかけで声をかけられて知り合いに」

生徒会長「そういう事ね」


女「……ふうん」

女「なんかちょっと変だなあ、って思ってはいたんだけどね……」

女「男君に声かけてる女の子がいると思ったら、まさかの生徒会長で」

女「あれえ、何で……? って思って近寄ってみたら……」

女「まあ、結果的にはそれで男君を助けられたから、良かったって言えば良かったんだけど……」

女「…………」


生徒会長「あまり睨まないで欲しいわね。あなたが考えているような関係じゃないんだから」

生徒会長「むしろ、私が睨みたいところよ。まったく……」


男「あ、えっと……」


生徒会長「ま、その話は後できっちりとって事で。私は曖昧なものが嫌いな性格だし」

女「ん。わかった」

生徒会長「ただし、私の事を話す代わりに、あなたの事も聞くから。等価交換よ。いいわね?」

女「ええー……私の事も?」

生徒会長「当たり前よ。いいわね?」

女「うぅ……わかった。話すから」


男「……何だろう、この疎外感」

委員長「男君は疎外されてなんかないじゃないか……。むしろ、中心にいるくせに……」

生徒会長「それよりも私が気になっていたのは……」

生徒会長「あの時、どうして女があそこにいたか、なんだけど」

生徒会長「何をしてたの、一体? 買い物?」

女「あ、あの、そ、それは……」

生徒会長「それは?」

女「か、買い物」

生徒会長「ふうん……買い物なの」

女「う、うん……。買い物」

生徒会長「…………」

女「……買い物」


男「?」


生徒会長「……まあいいわ。それも後でじっくり聞かせてもらうから」

女「じっくり、なの……?」

生徒会長「ええ、じっく」


ガシャーン!! パリンッ!!


男「!?」

委員長「あ、ぐあっ……!」ドサッ


男「おい、委員長! 委員長!?」

生徒会長「危ない、男君! 伏せて!!」


男「!?」

ああいうのを本当に『九死に一生を得た』って言うんだろうな

生徒会長の言葉に、咄嗟にしゃがみ込んだから言える言葉だ


そのほんの数瞬後

割れた窓ガラスから光る物体が勢いよく飛んできて

俺の頭上を瞬間的に通り過ぎ

閉まっていたドアへとぶつかって停止した


目を向けると、ドアには深々とカッターナイフが突き刺さっていて

その衝撃の余剰から、細かく振動していた


そのすぐ下に、コロコロと野球の硬球が転がるのを見て

先程、委員長を襲った物体について、俺は理解した


何でこんな物が飛び込んでくるんだ……!

どうなってるんだよ、マジで……!!

ここは五階だぞ!? 辺りにここ以上に高い建物なんか一つもないんだぞ!?


そうだ、委員長は!? 委員長は無事なのか!?


>>172

右目をやられた

『病院 応接室』


刑事「」フーッ……

刑事「まさか、たった一日で、また君達に会うとは思いもしなかったな」


男「…………」

生徒会長「…………」


刑事「おまけにまた犯人の姿を見ていない……いや、こんな事はもういいか。場所が場所だしな。見える訳がない」

刑事「それよりも、大問題なのが……」

刑事「男君」


男「…………」


刑事「こんな事、本人の前で言いたくはないが、君……」

刑事「確実に狙われてるよな、命を」


男「…………」

刑事「まさか、『たまたま』二日連続で通り魔に襲われた、なんて考えちゃいないよな、君も?」

刑事「もちろん、女さんの病室に投げ込まれた事から、女さんを狙ってともとれるが、昨日の事を考えると俺はそうは思わない」

刑事「昨日も今日も、凶器は君目掛けて飛んできたんだろう?」

刑事「君が今、生きているのは運が良かっただけだ。紙一重で無傷なだけで、本来なら死んでた」

男「……は、い」


刑事「昨日も同じ事を聞いたが、もう一度改めて聞こう」

刑事「君も真剣に考えてくれ。もしかしたら、とかでもいい」

刑事「君に、もしくは君と友君に『怨み』を持っていそうな人間に心当たりはないのか?」

刑事「君の命に関わる事かもしれない。よーく考えてくれ」


男「…………」

男「……ないです」

男「俺が気付いてないだけで……ひょっとしたら誰かに怨まれてるかもしれないですけど……」

男「……でも、そんな。……殺したいと思われるほどの怨みなんて……まったく……」


刑事「本当に?」


男「はい……。思い当たりません……」


刑事「……言いにくいかもしれないが、例えば誰かをイジメていたとか。あるいはカツアゲ、ケンカ、暴力とか……。そういった事をしていたとかは?」

男「してません! 俺も友も、そんな事一回も……!」

刑事「よく考えてくれ。君の命がかかってるんだ。そこは正直に話してほしい。黙ってたばかりに殺されるかもしれないんだぞ」

男「本当に本当なんです! 俺も友も不良とかヤンキーみたいな事は一回もしてないです!」

刑事「……そうか」フーッ……

刑事「それなら逆恨みとかの類いでもいい」

刑事「例えば、男君。君はテレビに出た事があるだろう? 学校じゃ有名人らしいじゃないか」

男「…………」

刑事「人気もなかなかあったみたいだよな。それ自体は大いに結構な事だが……」

刑事「その事で、誰かに僻まれたとか、根も葉もない変な噂をばらまかれたとか……そういった覚えは?」


男「それもありません……。あったとしても、俺自身は聞いた事もないです……」


刑事「なるほど……」

刑事「生徒会長さん、君はそんな噂を聞いた事がないかな?」

刑事「あるいは君自身の事でもいい。男君ほど可能性は高くないが、君も二回現場にいたからな」

刑事「ひょっとしたら、君を狙っての犯行かもしれない」

生徒会長「……私を、ですか」

刑事「その可能性もある」


刑事「ほんの些細な事でもいい。誰かと口論になったとか、悪い噂を聞いたとか、とにかく何か怨みを買った覚え、知らずに怨みを買っているような覚えはないか?」

生徒会長「……ありません。私についても、男君についても」

刑事「誰かを手酷く振ったとか、振ったのにしつこくつきまとわれたとかでもいいがね。いわゆるストーカーの類いだ。女性の場合、そういう可能性も高いんだが、こちらも?」

生徒会長「ないです。振った事ぐらいはありますけど、つきまとわれたりとか、しつこく言い寄られたりとかは一度も」

刑事「……わかった。結局、何もなしか……」


刑事「ただ、何でもいいから、そういった心当りがあればすぐに連絡をしてほしい。今は思い出せなくても、不意に思い出す時があるからな」

刑事「これは俺の電話番号だ。遠慮はいらないから、何かあったらいつでもかけてくれ」スッ


男「わかりました……」

生徒会長「はい……」

コンコン、ガチャッ

モブ刑事「失礼します。刑事、報告が」

刑事「わかった。向こうで聞く。君達は少し待っていてくれ」

刑事「昨日も同じことを言ったような気がするな……。参ったな……」スクッ、スタスタ


バタンッ


男「昨日も……か」

生徒会長「そうね。私の記憶だと、ほぼ同じセリフね」

男「女さんに続いて委員長も……。これ、俺の責任なのか……。俺が狙われて……だから二人が巻き添えを食って……」

生徒会長「落ち着きなさい、男君」

男「だけど……」


生徒会長「この際、はっきり言ってあげる。悪いのは、犯人よ。あなたではないわ」

生徒会長「あなたは被害者よ。もちろん、女も委員長も。間接的に私もね」

生徒会長「もしも、誰かがあなたが悪いなんて言い出したら、すぐに私に報告しなさい」

生徒会長「徹底的に論破してあげるから。相手が土下座して謝るまでね」

生徒会長「悪いのは、犯人よ。あなたは単純に被害者。簡単な図式よ」

生徒会長「だから、自分を不要に追い詰めるのはやめなさい。そんな事をしても、何の得にも役にも立たないのだから」


男「……ありがとうございます、生徒会長。そう言ってもらえると、少し助かります……」

生徒会長「私は事実を言ったまでよ。お礼を言われる筋合いはないわ」

生徒会長「もっとも、言われて悪い気はしないから、取り消しは求めないけどね」ニッ

男「……はい。俺も頼まれても取り消ししませんから」

生徒会長「そうしなさい。ふふ」

『一時間後』


刑事「やれやれ……もうこんな時間か」

刑事「現場検証やらにも付き合ってもらって悪かったな。しかし、そのおかげで大体の事が見えてきた」

刑事「御協力、感謝する。君達は俺の車で送ろう。今日はこの後に用事があったとしても、キャンセルした方がいいだろうからな」

男「ありがとうございます」

生徒会長「お言葉に甘えさせてもらいます」


刑事「それじゃあ、早速行こうか」スクッ


男「あ、その前に委員長の病室に行きたいんですけど……」

刑事「彼なら帰ったよ。というより、親御さんが無理に連れ帰ったがな」

男「……そうなんですか」

生徒会長「あの子の容態はどうだったんですか?」

刑事「硬球が右目に直撃したからな……。失明の危険性はないそうだが、著しい視力低下とかの後遺症は残るかもしれないとの話だ……」

男「!!」

生徒会長「……そう、なんですか」

刑事「まだはっきりとは言えないらしいがね」


男「…………」

生徒会長「あなたのせいじゃないわよ……」


男「……はい」

刑事「そう。君のせいではない。ただ……」


刑事「しばらくは外出は控えた方がいいだろうな」

男「……はい」

刑事「ああ、それと」

男「……はい」

刑事「しばらくの間は君達に警察が護衛をつける事が決まった」

生徒会長「え?」

刑事「当然だろ? はっきりと確定した訳じゃないが、命を狙われている危険性が高いんだ。それぐらいの事はするさ」

刑事「もっとも、四六時中という訳にはいかないがな。学校の行きと帰りの間だけだ」

刑事「俺か、俺が都合の悪い時は他の刑事が車で送り迎えをする。家を出る時間は、後で決めるとして……部活はしばらく休んでもらうしかないな」

男「……わかりました」

生徒会長「生徒会も、という事ね……」

刑事「先生方には事情を話しておく。それと同時に注意も呼び掛けなければならないしな」


刑事「まあ、学校内はまず安全だろう。狙うには人が多すぎる」

刑事「とはいえ、一人になったり、人気のない場所には近付かないように。それと……」

刑事「グラウンド側じゃない方、廊下側だな。そちらの窓には出来るだけ近付かないようにする事だ」

刑事「今回みたいな事があるかもしれないからな。常に人のいる教室の中央付近にいるのが一番安全だろう」


男「……はい」

生徒会長「……わかりました」

刑事「あくまで推測段階に過ぎないが……」

刑事「今回、犯人がいた場所はここから百二十メートルほど離れた雑居ビルの屋上だと思われる」

刑事「四階建ての小さなビルだ。位置的に、あの病室を狙える場所はそこぐらいしかないからな」

刑事「そこから、恐らくボウガンに似たものを使って飛ばしたんだろう。人の力じゃ、普通、届く距離ではない」

刑事「昨日、君と友君を襲った包丁にナイフも恐らくそうだったんだろうな。水平に飛んできたように見えたのはきっと目の錯覚だろう」

刑事「市販のボウガンを改造したか、もしくは自力で作ったかはしらないが、それが凶器だと思われる」


刑事「それと、犯人はかなりの腕前と見ていいだろうな。同じ場所にそれぞれ重量も形状も違うものを正確に飛ばしているのだから」

刑事「無論、無差別攻撃をしたら、偶然そうなったって話も考えられるが、しかしそれはあまりに偶然過ぎる。昨日、狙われた人間がまた偶然狙われるなんてのはあまりに不自然だ」


刑事「以上の事から、ボウガンやライフルなどを使った狙撃、それらに詳しい人間の犯行だろう」

刑事「そんな人間に心当たりがいたら、これも教えてくれ。参考になるかもしれない」


男「はい……」

生徒会長「わかりました」

生徒会長「そういえば、刑事さん、女は……? あの子は大丈夫なの? 病室を変えてもらったっていうのは聞いているけど……」

刑事「ああ、念には念を入れて、偽名で別の病室にこっそり移ってもらった。カーテンも常に閉じてもらうように頼んであるから、少なくともこの病院にいる間はまず心配ないだろう」

刑事「あの子が狙われている可能性も十分あるから、その点は抜かりない。安心してくれ」

生徒会長「その言葉、信用しても?」

刑事「お見舞いや面会もしばらくの間は断ってもらう事になってる。医者や看護婦以外は近付けないさ。保証するよ」

生徒会長「……わかりました」

刑事「君達の方も、自分の部屋の窓にはカーテンをかけて生活してくれ。外から狙われる事のないように注意してほしい」

男「家でも気を抜けないんですね……」

刑事「自分自身の安全の為だ。こちらも犯人逮捕に全力を尽くす事を約束する。それまで我慢してくれ」

生徒会長「一応、お聞きしますけど、犯人の目星はついてるんですか?」

刑事「それは悪いが答えられない。捜査上の秘密だ」

生徒会長「でしょうね。答えが返ってくるとは思ってませんでしたから、いいですけど」

刑事「すまないな」

生徒会長「いえ……」

『夜 病院』


看護師「」コツコツ

看護師「はぁ……嫌よねえ。毎度の事だけど、消灯時間過ぎてからの巡回って……」

看護師「おまけに、今日はあんな事件があったばかりだもの……。大丈夫だとは思うけど、怖いわ……」

看護師「でも、しない訳にはいかないし……。ちゃっちゃっと済ませてとっとと帰りたいなあ……」


看護師「」コツコツ


ヒタヒタ……ヒタヒタ


看護師「……!?」ゾクッ

看護師「な、なに、今の音……? 誰かの足音……?」


シーン……


看護師「誰か勝手に出歩いてるの……?」

看護師「トイレ……?」


シーン……


看護師「……誰か、そこにいるの? いたら返事をして」

看護師「いないの? いるの? どっち?」


シーン……


看護師「……気のせい……なの?」

看護師「誰もいない……わよね? 大丈夫よね……?」

看護師「確か……さっき、こっちの方から音が……」ソロリ、ソロリ……


ガチャンッ!!


看護師「きゃあ!」ビクッ


看護師「な、なに、今の音!? なに!?」


シーン……


看護師「何かが落ちて割れた音……? それっぽかったけど……」


ヒタヒタ……ヒタヒタ


看護師「きゃあああっ!!」ビクッ

看護師「やだ、もうやだ! 絶対誰かいる!!」


看護師「急いでナースステーションに……!!」タタタッ


ドスッ!!


看護師「あ……が……」

看護師「」ドサッ……



シーン……



ヒタヒタ……ヒタヒタ……



『男の自室』


男「はぁ……ようやく親から解放された……」

男「警察の人が先に事情を説明してくれてて、それは助かったけど……」


男「しばらく学校は自主休学した方がいいんじゃないか、か……」

男「そこまで言われるとは思ってなかったな……」

男「特に親父……。お袋以上に心配してたな……」

男「命をかけてまで行くようなところじゃない……。そりゃそうなんだけど……」

男「犯人が捕まるのを待っていたら……何ヵ月かかるかわからないしな……」

男「先生に事情を話せば、ある程度は考慮してくれるかもしれないけども……」

男「下手したら留年になるかもしれないしな……。それは流石に嫌だ……」


男「何より、学校に行かなかったら、俺、完全な引きこもりになるし……」

男「やる事、ゲームかネトゲしかなくなるぞ。一人で買い物すらも行けないしな……」

男「どうしたもんかな……」

ピロリーン

男「ん? LINE……かな?」


男「誰からだろ……?」スッ



1、生徒会長
2、演劇部部長
3、美少女
4、LINEではなく、差出人不明のメール

>>191

2

男「演劇部部長からだ」

男「何だろ……」ピッ


『男君、お元気? って事も多分ないよね……。生徒会長から話は聞いてるから

それでね。これは相談なんだけど、男君、しばらく学校を休んでみたらどうかな?

男君だって外に出るのは危ないってわかってるでしょ? 危ない目には遭いたくないよね? もちろん、ずっとって訳じゃなくて……例えば、一週間ぐらいとか……

実はね。生徒会長もご両親にそう言われたみたいなの。でもね、あの子、少し意地っ張りなところがあるから。逆に行くって言い出しちゃったみたいで……

だから、男君が少しの間、学校を休むって聞けば生徒会長も考え直すと思うの。私も二人には危ない目に遇ってもらいたくないし、だから……

ちょっと真面目に考えてもらえないかな、それで、もし休むって決めたら生徒会長にも連絡して欲しいの。お願い

長々とごめんね。でも、よく考えてみて。お願いね』



男「…………」

男「確かにな……」

男「生徒会長のあの性格から言って、学校を休むとかしなさそうだし……」

男「俺が休むって決めたら、生徒会長もひょっとして考え直すかもしれない」


男「一週間ぐらいなら……留年とかはないだろうし」

男「それに、ひょっとしてその間に犯人が捕まるかもしれないよな……」

男「どっちにしろ、生徒会長の事は心配だよな。俺よりも、両親の方が多分心配してるし……」


男「親父もああ言ってくれてたしな……。休んでみるか」

男「とりあえず、親父に話をしてこよう」スクッ

『生徒会長の家 自室』


生徒会長「ふぅ……」

生徒会長「参ったわね……。お母さんのあの言いようにも」

生徒会長「今後、男君には近づくな。二回も巻き添えに遇ってるのに何でそれがわからないのよ! ですって。心配してくれるのは嬉しいんだけど……」

生徒会長「そんな事は余計なお世話というものよ。男君が狙われているというなら、私が守らなくて誰が守るというのよ」

生徒会長「今日だって、私が真っ先に気が付かなかったら男君は死んでたかもしれないのよ。女の時もそう。救急車の手配から警察への連絡、応急処置も全部私がやったんだから」

生徒会長「そりゃ、私だって確かに怖いけど……」

生徒会長「でも、怖いからといって何も行動しなかったら後悔しそうだし」

生徒会長「意地でも学校には行くんだから。何て言われようとも」


プルルル、プルルル

生徒会長「……電話?」

生徒会長「こんな時間に誰……?」スッ

生徒会長「男君……? どうしたのかしら?」ピッ


生徒会長「もしもし」

『あ、生徒会長ですか。今、電話大丈夫です?』

生徒会長「ええ。問題ないわ。どうしたの?」

『明日なんですけど、実は俺、学校を休む事にしたので』

生徒会長「……休むの?」

『はい。と言うより、一週間ぐらいそのまま休もうかなって。親もそうした方がいいって言ってくれてますし』

生徒会長「あら、そう……。まあ、そうよね。男君は実際に狙われている身だし、家にいた方が安全でしょうから」

『はい。それでその連絡と、もう一つ、提案が』

生徒会長「提案?」

『生徒会長も少しの間、一緒に休みませんか? 刑事さんにさっき連絡したら、学校側にも便宜を図るようお願いしてみようって言ってくれてますし』

『上手くいけば、インフルエンザみたいに欠席扱いにならない措置をとってくれるかもしれないです』

『だから、どうかなって。生徒会長は三年生なので、受験とか気になると思いますが、自分の安全の為にも』


生徒会長「なるほどね……」

生徒会長「そうね。学校からしても、公に言いはしないでしょうが、殺人未遂事件が二回も起きてる事だし」

生徒会長「そして、また起こるかもしれない。まして、それが学校内での可能性もあるものね」

生徒会長「そんな生徒には出来れば休んでてほしいわよね。トラブルを引き起こされたくはないでしょうし」

生徒会長「特例を許可する可能性は高いわね。出席停止扱いにして」


『そこまでは考えてなかったですけど……』


生徒会長「通り魔が三回もうちの生徒を襲っているのよ。名前は伏せておいてあるし、今日の三回目のは刃物ではなく硬球だから事件の関連性について気が付いているマスコミはいないみたいだけど」

生徒会長「もし、四回目が起こったらそれこそ餌に群がるジャッカルみたいに飛びついて、ある事ない事余分な事まで片っ端から報道するでしょうね」

生徒会長「特に男君は例の電車事件で『勇気ある高校生』になっている訳だし」

生徒会長「学校側としては避けたいところでしょうね、そんな事態は。マイナスイメージにしかならないもの」


『……かもしれないですね』

生徒会長「とにかくまあ、あなたの言いたい事はわかったわ」

『じゃあ』

生徒会長「ええ、私も親に頼んで明日から一週間ぐらいは休む事にしようと思うわ」

『そうですか。良かった。実は結構心配していたので』

生徒会長「光栄と言うべきか、不名誉と言うべきかしらね。心配されなきゃいけない人から逆に心配されるというのは」

『光栄という事にしといて下さい』

生徒会長「まあ、そうしといてあげる。男君が休むと言うなら、私も学校に行く理由はなくなる訳だし」

『え?』

生徒会長「な、何でもないわよ!// 忘れなさい!」

『はあ……』

生徒会長「じゃあ、も、もう切るから。早速、親にも言わなきゃいけないし、刑事さんにも言わなきゃいけないし、だからよ? いいわね?」

『??』

生徒会長「聞いてるの? いいわね?」

『あ、はい。聞いてます。わかりました』

生徒会長「じゃあ、これで。またね。お休みなさい」

『はい。生徒会長も』

『深夜』


生徒会長「ふぅ……さっぱりしたわ。少し遅めのお風呂になっちゃったけど」

生徒会長「でも、明日は学校に行く訳でもなし、予定がある訳でもなし、いいわよね」


生徒会長「両親もあっさり賛成してくれたし、まあ、当たり前だけど。気変わりしたのは私の方なんだから」

生徒会長「刑事さんにも連絡しておいたし、明日から一週間は自宅勉強だけの日々ね……。退屈で死なないといいけど」

生徒会長「とりあえず、今日はもう寝ましょう。色々あって流石に疲れたし……」


プルルル、プルルル

生徒会長「あら、また電話? 男君かな……」スッ

生徒会長「……違う? 刑事さん? もう午前0時を回ってるっていうのに何の用かしら?」

生徒会長「」ピッ

生徒会長「もしもし?」

『ああ、良かった。起きていてくれたか』

生徒会長「ええ。これから寝るところでしたけど。それで、御用件は?」

『つかぬ事を尋ねるが、そちらに女さんが行ってないか?』

生徒会長「……いいえ。それにあの子は今、入院……」

生徒会長「まさか、いないんですか……? 病院に」

『どうやらそうらしい』

生徒会長「……!」

『ベッドはもぬけの空だったそうだ。詳しい事は言えないが、とにかく今、行方不明になっている』

『もしも女さんから連絡があるようなら、あるいは連絡がつくようなら、すぐに警察にも教えて欲しい』

『一人で判断せず、まずはこちらに伝えてくれ。すぐに捜査員を向かわせるから』

『宜しく頼む。急いでいるので、これで切らせてもらうぞ。では』


生徒会長「ちょ、ちょっと待って下さい! もう少し詳しく状況を」ガチャッ


ツー、ツー、ツー……


生徒会長「切られたわ……。何なのよ……」

生徒会長「とにかく、女に連絡をしてみないと」ピッ、ピッ


プルルル、プルルル、プルルル

ガチャッ


生徒会長「繋がった……!?」

生徒会長「もしもし、女!? もしもし!」


『こちらは留守番電話サービスです。お客様のおかけになった電話番号は、電波の届かない場所にあるか、電源が入っていない為……』


生徒会長「……っ!」

生徒会長「迂闊もいいとこね……。自分自身でも気付いてなかったけど、相当焦ってたみたい」

生徒会長「落ち着きなさい、私……。焦ってもろくな事にならないわよ」


生徒会長「まずは、そうね……」

生徒会長「……男君に電話してみましょうかしら。女が一番気にかけてるのは、多分、男君だから」


生徒会長「」ピッ、ピッ


プルルル、プルルル、プルルル

プルルル、プルルル、プルルル

プルルル、プルルル、プルルル


生徒会長「出ない……? もう寝てるのかしら……?」

生徒会長「気になるけど……こんな時間に出歩く訳にもいかないし……」

生徒会長「お父さんに頼んで、車で家まで送ってもらう……」

生徒会長「いいえ、それは無理ね。お父さんにも、男君とは事件が解決するまでは関わるなと言われているし……」

生徒会長「どうしようかしら……。打つ手がないわ……。このまま何もせず黙ってろって私にいうの……」

『病院 友の病室』


バタバタ、ザワザワ……


モブ病人「やれやれ、夜中だってのに騒がしいなあ、ろくに眠れやしない」

モブ病人「とんだ迷惑だよな、一体何があったんてんだか」

モブ病人「そこの兄ちゃん、何があったか知らないかい? って知ってる訳ないか。今、起きたんだもんな」


友「…………」

友「俺が行くしかないか……」


モブ病人「は?」

友「…………」スクッ


モブ病人「お、おい、兄ちゃん。あんた松葉杖なしで立ち上がれ」

友「」タタタタタッ


モブ病人「……走ってった……?」

モブ病人「え、だって、あの兄ちゃんは足に怪我して……え? え?」

『女の家』


母親「女が病院からいなくなってるって……」ウゥ……

母親「電話も全然繋がらないし……」グスッ

母親「まさか、誘拐されたんじゃ……」グスッ


従姉妹「叔母さん……。私、探してきます」

母親「でも……探すってどこを……」グスッ

母親「あの子の知り合いには全員連絡したって刑事さんも言ってたし……」グスッ

母親「行きそうな場所にはお父さんが車で行ってくれてるけど……全然見つからないって……」ヒック


従姉妹「だけど、このままここで待ってるなんて、出来ません」

従姉妹「叔母さんは女ちゃんが家に帰って来た時の事を考えて、出られませんし……」

従姉妹「とにかく、私も近所を探してみます。じっとしてなんていられないですから」


母親「でも、でも、もう遅いし……。それじゃ従姉妹ちゃんまで危険よ。だから……」


従姉妹「大丈夫です。友達に連絡して車を出せるか聞いてみますし」

従姉妹「車から探せば安全ですから。だから……!」


母親「うぅ……」グスッ


従姉妹「行ってきますね、叔母さん。何かあったらすぐ連絡して下さい」

母親「うん……。お願いね、従姉妹ちゃん……」グスッ

『倉庫』


男「ぅ……ぁ……」

男「なん……だ……? 頭が……クラクラして……」

男「動け……ない」

男「何が……あったん……だ……」

男「寝てたら……ものすごい音が……」

男「したかと……思ったら……」


男「……いつの間にか……こんなとこ……に」


男「どこ……だよ……ここは」


???「安全な場所だよ」


男「……!?」

男「……誰……だ?」

男「目が……霞んで……」


???「大丈夫。安心して。私は男君の味方だから」

???「男君を助けてあげるから」

???「だから、安心して」スッ


男「あ……う……」

男「また……意識が……遠の……い……て……」


???「安心して、眠ってね、男君……」

???「私が男君を守ってあげるから……」

『男の家』


刑事「それでは……あなた方が駆けつけた時には、もう男君の姿は部屋のどこにもなかったと?」


母親「はい……」グスッ

父親「ええ……」


刑事「駆けつけたと言われましたが、それは時間にしてどれぐらいですか? 物音を聞いてから、男君の部屋のドアを開けるまでの時間は」


母親「すぐです……。お父さんも私も、ほとんど同時に……。急いで階段をかけ上がって……」グシュッ

父親「一分もかかってなかったはずです……。息子が狙われているというのは聞いてましたから……」


刑事「一分もかかってない……」

モブ刑事「」メモメモ


刑事「それで? その後はどうされたんですか。出来るだけ詳しく正確にお願いします」


母親「部屋の窓ガラスが割れてたので……慌てて息子の姿を探して……」グスッ

父親「そうしたら、ベッドに包丁が突き刺さっていました……。何十本も……」


刑事「はい。先程、確認させてもらいました。ちょっと信じがたい光景でしたが……」


母親「だから、だから。息子が殺されたんじゃないかって私、思って……」グスッ


刑事「ところが、男君の姿はどこにもなかった……。そういう事ですね?」


父親「はい……。机を盾にして、そこから窓の外も眺めてみましたが……どこにも」

父親「犯人の姿もです……。見えたのは、音に驚いたのか窓からこちらを見上げてる人だけで……」


刑事「それらしき人は誰も? 例えば、逃げ去っていくような人影とか、あるいはやけに大きな荷物を持っていた人とか……」

刑事「車でも結構です。その場から離れていくような車も見えませんでしたか?」


父親「なかった……と思います」


刑事「ふむ……」

モブ刑事「」メモメモ

刑事「最後に男君を見たのはいつですか?」


母親「……ぅぅ」グシュッ

父親「遅めの夕食を終えた後です。多分、午後十時過ぎあたり……。居間から部屋に戻るところを見たのが最後です……。家内もそのはずです」


モブ刑事「」メモメモ

刑事「その後、男君が家の外に出ていくという事はなかった。あったとしても気付かなかったという事ですね?」


母親「はい……」グシュッ

父親「そうなります……」


刑事「一応、お聞きしますが、事件前に何か妙な物音が聞こえたとかそういう事は? 何らかの異変はありませんでしたか?」

刑事「どんな小さな事でも結構です。何かあればおっしゃって下さい」


母親「…………」グシュッ

父親「なかった……と思います」


刑事「ふむ……」

モブ刑事「」メモメモ

『生徒会長の家 自室』


プルルル、プルルル、プルルル

プルルル、プルルル、プルルル

ガチャッ


『留守番電話サービスです。お客様のおかけになった電話番号は……』


生徒会長「出ないわね……。それどころか留守電に変わるようになったわ……」

生徒会長「女の方もずっと留守電状態……。参ったわ……」

生徒会長「何も出来ずに指をくわえて待ってるだけなんて……」


プルルル、プルルル、プルルル


生徒会長「?」

生徒会長「私に電話……? しかも公衆電話……?」

生徒会長「もしかして、女が……?」


生徒会長「」ピッ


生徒会長「もしもし?」

『…………』

生徒会長「もしもし?」

『…………』

生徒会長「もしもし、誰なの?」


『アハハははハははハハはははハハはははハハハはハはははははハハはははハハハはははははハハハはハハはははは!!』


生徒会長「」ビクッ


『終ワらないの……。頑張っテるのに終わラないの……』


生徒会長「だ、誰!? 誰なの!?」


『わカってルでしょう?』

『何でソんな事言ウのかなア……?』

『一生懸命頑張っテるんダよ……?』

『生徒会長ノ為に……なのにサあ?』

『あイツら死なナイの、しぶトイの……』


『生徒会長に近付くゴミ虫のくセしてさア……』


『ダから、声が聞きタクなったノ……』

『頑張っテネって……。諦めナイでっテ……』

『あイつラ……始末シテねって……』


生徒会長「……!」ゾクッ


『ネエ、言ってヨ……。聞きタイの……』

『そシタラ、もっト頑張れルよ……』

『ダから、言っテ……。ネ?』


生徒会長「あ、う……」ブルブル

生徒会長「……>>211

私はそんなこと望んでない

生徒会長「……わ、私はそんな事を望んでいないわ!」

『エ……?』

生徒会長「人を殺すなんて、正気の沙汰じゃないわよ! 目を覚ましなさい!」

『…………』

生徒会長「人間は正しい道を歩いてこそ、初めて胸を張れるのよ! そうでない人間や行為を誰が認めるって言うの!」

『…………』

生徒会長「少なくとも、私は認めないわ! だから、目を覚ましなさい! あなたは今、悪い夢を見てるのよ!」

生徒会長「悩みやストレスがあるなら聞くわ! 何もかも聞いてあげる! だから」

『アハ……。ダメだヨ?』

生徒会長「何が駄目と言うの! あなたはまだ」

『生徒会長がさア……優しいノハ知ってるケドさあ……』


『ウソは良くナイよ……?』


生徒会長「嘘……?」


『ダって、生徒会長、困ってタよね……? あの汚ナラしいゴミに付きマトわれて……迷惑シテたよね……?』

『大丈夫ダよ……? 私は全部わかっテルかラ……』

『だカラ、安心シテ……』

『ウソなんカつかなクていいノ……。私はイツでも生徒会長の味方なンダから……』

『次コそキッチリ殺してアゲるね……。ダから安心シテ……』


生徒会長「や、止めなさい!」


『アハハはははハハははハはははハハハハははハはハハはははハハハははハハははははハハハははハはハハはは!!』


生徒会長「!!」ゾクッ


『またネ? 生徒会長……』

『バイバイ……』


生徒会長「ちょ、待ちなさ」ガチャッ


ツー、ツー、ツー……

ツー、ツー、ツー……



生徒会長「何よ、これ……」

生徒会長「男君や友君が……狙われる理由って……」



生徒会長「私に……あるって言うの……」


『男の家の前』


友「」タタタタタッ

友「」ハァ、ハァ……

友「流石に走ってここまではきついな……。どっかでチャリでもパクってくるべきだったわ……」


友「おまけに……」チラッ


ザワザワ、ザワザワ

―― KEEP OUT ―― KEEP OUT ――


友「間に合わなかった……っぽいしな……」

友「だけど……能力発動!」キュイーン


友「……男はまだ無事だな。どっかで生きてるのは確かだ……」

友「状態的にちょっとヤバイっぽいけど……生死に関わるような感じじゃない」

友「怪我してる訳でもなさそうだ。だとしたら……縛られて監禁でもされてるのか? それか気絶状態?」

友「今すぐどうこうって事はなさそうだけど……」


友「さて、どうすりゃいいか……。居場所がわからないとどうにもならないしな……」


ザワザワ、ガヤガヤ


友「ん?」

友「今、人混みの中に見知った顔が……」

友「あの人は……確か……」


>>216

生徒会長

生徒会長「」ハァハァ、ハァハァ

生徒会長「いてもたってもいられなくて、つい家を飛び出して来ちゃったけど……」

生徒会長「嫌な予感って言うのは当たるものなのね……」

生徒会長「私のせいで男君が……! ついでに友君も……」


友「……oh」

生徒会長「どうしよう……。どうすればいいのかしら……」

生徒会長「わからない……。こんなの初めての経験よ……。この私が……」


友「あー……生徒会長さん」


生徒会長「え?」クルッ

生徒会長「あなた……!?」

生徒会長「友君じゃないの……!? どうしてここにいるの……!?」


友「あー、まあ……俺も病院を抜け出してきたって言うか……はい」

友「今日はお見舞い、どうもありがとうございます。ついででも嬉しかったんで……」

生徒会長「う……。ひょっとしてあなた、さっきのを聞いていたの」

友「出来れば聞きたくなかったんすけどね……。俺の耳、ブロック機能ついてないんで……」

生徒会長「悪かったわ……。つい本音が出たのよ」

友「ひでえ。直撃じゃないっすか」

生徒会長「そんな事よりも、あなた。自分の立場がわかってるの? あなたは『命を狙われている』のよ?」

生徒会長「今すぐ病院に戻りなさい。怪我する前に。これは命令よ」

生徒会長「って……あら? ちょっと待って」

生徒会長「……あなた、何で普通に立ててるの?」

生徒会長「しばらくは、歩行どころか、立つ事も出来なかったんじゃないの?」


友「それはとりあえずスルーしてくれませんか? 話すと面倒なんすわ」


生徒会長「まさか……仮病? 怪我なのに病気と言うのも変だけど」

友「あ、いや、仮病とかじゃなくて足の怪我はマジなんで。今はたまたま立ててますけど」

生徒会長「たまたまで立てるようなら、立派に仮病ね」

友「そうじゃあないんすけどね……。まあ、それは置いとくとして」

友「生徒会長こそ何でここに? そっちの方こそ危ないですよ」

生徒会長「見てたのならわかるでしょう? 心配で来たのよ。大体、私の方よりもあなたの方が危ないのよ」

生徒会長「その訳は後で話すわ。とりあえず向こうにいる警察の人に保護してもらいなさい。ここに来る前に事情は刑事さんに電話で話してあるから、すぐに」

友「っとそれはチョイとマズイんで……。男が今、行方不明になってるじゃないですか」

生徒会長「……そうね。さっき野次馬の一人から聞いたわ……。どこに行ったのか……もしかしたら……」

生徒会長「私の……せいで……」ウルッ


友「男、多分、監禁か眠らされてるかのどっちかなんですよ」


生徒会長「……!?」

生徒会長「それは……どういう事?」


友「詳しくは事情があって話せないんですけど、とりあえず無事ではあるんです」

友「ただ、そんな状態なもんだから、危険なのは変わりなくって」

友「だから、居場所を探して助けてやらないと……。警察はあまり当てには出来ませんし」

友「なんで、今、病院には戻れないです。男を助けたら戻りますから」


生徒会長「でも、あなたは命を狙われているってさっきから何度も……!」


友「俺なら大丈夫です。死ぬ事はまずないですから」

友「それより、生徒会長さんの方こそ、俺の知らない何かを知ってるんでしょう? 俺が狙われているって確信があるみたいだし」

友「犯人の目星とかついてるんですか?」

生徒会長「誰か、なんてまったくわからないけど……」

生徒会長「ただ、ついさっき、私のところに電話があったのよ。……多分、犯人から」

友「犯人から? 生徒会長さんのところに?」



―― 説明中 ―― 説明中 ―― 説明中 ――



生徒会長「ごめんなさい……。謝罪するわ……。あなたを巻き添えにしてしまって……」

生徒会長「許して、なんて軽々しく言えないけど……。ごめんなさい……。出来るだけの償いはさせてもらうから……」


友「ああ、まあ……。別に生徒会長さんのせいって訳でもないんで……」

友「そこら辺は、えーと……。気にしなくてもいいですけど……」


生徒会長「だけど……」


友「なら、俺の足の怪我が治ったら、デートでも」

生徒会長「嫌よ」

友「マジ凹むんすけど……即答とか……」

生徒会長「悪いわね。自分に嘘はつけない性分なのよ。特に、弱味につけこんで何かを要求してくる人間は嫌悪に値するものだから」

友「余計凹みますわ……ボロクソじゃないすか……」

友「にしても……」

生徒会長「何?」

友「電話してきた犯人……女、なんですね」

生徒会長「ええ……。奇妙に外れた声だったけど……女性の声だったのは確かよ」

友「いわゆるレズビアンってやつ、ですよね?」

生徒会長「そうね……。男勝りな性格からか、女の子から告白されたりする事もたまにあってね」

生徒会長「ただ、あの声は今まで一度も聞いた事がなかったわ。断言は出来ないけど、私の知らない人間、だと思うわね」

友「知らない……か」


友「あくまで確認なんですけど……。女さん、の声では絶対になかったんですか?」

生徒会長「女? 違うわよ。第一、あの子の好きなのは……」

生徒会長「いえ、これは言わない方がいいわね……。勝手に言うと怒るでしょうし、あの子」


友「女さん、じゃないのかよ……。じゃあ、何だってんだ……。何で女さんに、あんな……」ブツブツ


生徒会長「? どうかしたの?」


友「あ、いえ……。こっちの事です」

生徒会長「質問は以上かしら?」

友「はい……多分。犯人の話は参考になったんで助かりました」

生徒会長「それじゃあ、今度はこちらから質問する番ね」

友「へ?」


生徒会長「私からの質問は全部で三つよ」

生徒会長「一点目。どうして、男君が今、監禁されているか、気絶しているかのどちらかだろうと推測出来たか」

生徒会長「二点目。足の怪我はどうなっているのか」

生徒会長「三点目。何で友君は女を怪しいと思っていたのか」


友「おおう……。さっきの、実は聞こえてたんすね……」


生徒会長「これでも耳はいい方なの。五割方はカマをかけたのだけどね」


友「マジっすか……。やらかしたか……」

生徒会長「この三つの質問に対して、私が納得出来るだけの答えを聞かせてもらうわ」

生徒会長「私はあなたに対して、嘘偽りのない正確な情報を提供したのよ。あなたの希望を無視して、警察に保護してもらうよう受け渡す事も出来たのに」

生徒会長「恩を売る訳ではないけど、あなたの心に良識と羞恥心というものがあるのなら、誤魔化したりお茶を濁したりせず、真摯な態度で返答をお願いしたいものね」

生徒会長「友君、あなたは何を隠しているの?」

生徒会長「それを聞かせてちょうだい」


友「ああ……えっと……。参ったな……」


友(言うのは別に構わないんだけどなあ……)

友(言ってもまず信じてもらえないだろうし……)

友(下手したら、頭がおかしいって思われて、病院にまた連れ戻されちまう……)

友(どうするか……)


>>229

言ってしまおう

生徒会長「友君、今はお互い時間が貴重だと思うのだけれど」

生徒会長「言うなら言う、言わないなら言わないでそれだけでもはっきりさせてくれないかしら? 不要な時間の浪費は極力避けたいの」


友「わかりました……。ただし、生徒会長さん。俺がこれからどんな変な事を言っても、とりあえず最後まで聞いて下さいね。それだけはお願いします」


生徒会長「……いいわ。で、何かしら?」


友「俺、いわゆる『特殊能力者』なんすよ」


生徒会長「…………」

友「能力は二つあって」

友「第一の能力が、『危険探索(リスクサーチ)』」

友「第二の能力が、『危険回避(リスクアヴェージョン)』」


生徒会長「…………」


友「『危険探索(リスクサーチ)』は、自分の周り半径30メートル以内の範囲、もしくは特定の人物に対しての危険がわかる能力」

友「その危険性が1から10段階まで判別出来ます」


生徒会長「…………」


友「『危険回避(リスクアベージョン)』の方は、能力名そのままで危険を回避出来るんです」

友「つっても、完璧なものじゃなくて、俺の能力を越える大きな危険は回避ではなく、ダメ軽減に変わります」

友「早い話、軽減してもそれが致死ダメージに届いてたら死ぬんすけどね」

友「でもまあ、前のナイフの時は、即死を免れて全治一ヶ月半ぐらいになったし、かなりの軽減をしてくれるんじゃないかとは思うんで」


生徒会長「…………」

友「で、最初の質問に戻すと」

友「さっき『危険探索(リスクサーチ)』を発動して男の状態を調べたら、レベル3――怪我は負ってないが何らかの危険に直接関わっている状態」

友「そんな状態だったんで、状況から推理して、連れ去られて監禁されてるか、気絶させられてるかのどっちかだろうって」


生徒会長「…………」


友「足の怪我の方は、今、能力を発動して『転ぶ』っていう危険を回避させてるんす」

友「だから、実際は歩けないですし、怪我もマジもんなんすけど、今は走る事だって出来ます。痛み止めの薬飲んでるんで、そこまでって訳じゃないですけど、こうして立ってるのも結構痛いんすよ」


生徒会長「…………」


友「女さんについては、病院にお見舞いに来た男を『危険探索(リスクサーチ)』したら、男に対しての女さんの危険度がレベル7だったんで」

友「レベル7――その人物に対して重傷を与える可能性が高い存在」

友「なんで、俺はてっきり女さんが男に危害を加える為に病院を抜け出したんじゃないか、犯人は女さんじゃないかって思ってたんですけど……」


生徒会長「…………」

友の能力

第一の能力、『危険探索(リスクサーチ)』
自分の周り半径30メートル以内の範囲、もしくは特定の人物に対しての危険度が10段階でわかる
特定の人物を調べる場合、その人物の顔がはっきりとわかっていないと出来ない(顔も知らない人物の危険度まではわからない)

第二の能力、『危険回避(リスクアヴェージョン)』
一定範囲の危険を完全に回避出来る
能力範囲を超えた場合、それは回避ではなく軽減へと変わる(軽減してもそれが致死ダメージに届いてた場合は、無効となる)

友「つー訳なんすけど……」

生徒会長「…………」

友「信じてくれます?」

生徒会長「>>236

正直普段の私なら信じなかったと思うけど嘘とは思えない

生徒会長「率直に言わせてもらうなら……」

友「はい」

生徒会長「到底、信じる事が出来ないわね。足の怪我と一緒に脳の検査も受けた方がいいと思ったわ」

友「oh……」


生徒会長「でも、これまでかなり異様な事があったわ」

生徒会長「刑事さんは目の錯覚だろうと言っていたけど、私は二回とも刃物が『水平』に飛んでくるのを確かに見ているのよ」

生徒会長「そして、今日のあの電話……」


生徒会長「あなたの話自体も、咄嗟に作った嘘とはどうしても思えない」

生徒会長「つくなら、もう少しまともな嘘をつくでしょうし、怪しげな妄想に取りつかれているようにも見えないしね」

生徒会長「特殊能力、なんて普段の私なら一笑に付してたところでしょうけど……」

生徒会長「今は少し笑えないわね……」


生徒会長「まだ半信半疑というところだけど、一応は信じてあげる」

生徒会長「藁にもすがりたいという気持ちもあるかもしれないけど、この際、嘘だったとしても騙されてみようと思うわ」

生徒会長「だって、あなたのその能力……」


生徒会長「ひょっとしたら、犯人がわかるかもしれないもの」

友「……へ?」

生徒会長「さっきも言ったでしょう。男君と『あなた』が命を狙われているのよ」

生徒会長「つまり、自分で自分を『危険探索(リスクサーチ)』してみれば、犯人がわかるんじゃないの?」


友「あー……。すみませんけど、それ、無理なんで」


生徒会長「は?」

生徒会長「どうして無理なの?」


友「自分自信に関しては無理なんす。半径三十メートル以内の危険しかわからないんで」

友「多分、その代わりに第二の能力があるんじゃないかなあって」

友「そんなに世の中都合良く出来てないみたいなんすよねえ……。この能力、そこまで万能じゃないですし……」


生徒会長「くっ……」

生徒会長「それなら、今度は私を『危険探索(リスクサーチ)』してみなさい」

友「生徒会長さんを?」

生徒会長「そうよ。犯人は恐らく今は私に危害を加えるつもりはないでしょうけど、これから先はどうなるかわからないわ」

生徒会長「それに、相手は偏執的なストーカーに限りなく近いのよ」

生徒会長「それは今の私にとっても、十分に『危険』なんじゃないの?」

友「あー……なるほど」ポンッ


友「っても、そのストーカーの顔を俺が知らないと意味ないんですけどね」

生徒会長「どうして? 顔の特徴を言ってもらえれば、ひょっとしたら私にも心当たりがあるかもしれないし……」

生徒会長「そもそも、あなたの能力、危険な人物の名前とか居場所とかまでわからないの?」

友「いや、いくらなんでもそこまでは」


友「正直、なんつーか……かなり杜撰な能力なんで」

友「俺が顔を知らない人間はわからないんすよ」

友「だから、生徒会長を調べても、犯人の顔を俺が知らない場合は……」


生徒会長「何も意味がないと、そういう事ね……」ハァ

友「だから、男を調べた時点で犯人は女さんだと俺が思い込んだ訳で……」

友「つまり、犯人が俺の知らない人物だってのは、さっきの生徒会長の電話の件で判明してるんすよね……」


生徒会長「そういう事になるわね。犯人は男君の命を狙っているのだから」


友「ただまあ、生徒会長さんを調べる事自体は賛成です」

友「ひょっとしたら、犯人以外にも危険な人間がいるかもしれませんし」


生徒会長「それも望み薄ね。私の知り合いをあなたほとんど知らない訳でしょ?」

友「まあそうなるんすけどね……一応」

友「調べてもいいっすか?」


生徒会長「変なところを触らなきゃ調べられない、なんて事は言い出さないでしょうね?」

友「あ」

生徒会長「なに? その『その手があったか』みたいな顔は?」

友「あ、いえ、それはマジで誤解です! そんな事は何も!」アセアセ

生徒会長「……まあ、いいわ。一応調べてみて」

友「あ、はい。じゃあ……」


友「能力発動!」キュイーン


生徒会長の危険度

コンマ一桁
直下

生徒会長「で……どうだったの? もうわかった?」

友「あ、はい……。それはわかったんですが……」

生徒会長「つまり、ダメだった、という事かしら?」

友「んー……まあ、はい……そんな感じで」

生徒会長「やっぱりね……」フゥ


友「」チラッ

友「…………」

友「生徒会長、ちょっといいですか……。声を落として聞いて下さい……」ボソッ

生徒会長「……?」

友「少なくとも、俺の知り合いにはいないです。生徒会長に危険を与えようとしてる奴は……」ボソッ

友「ただ、生徒会長自身の危険度がレベル3でした……」ボソッ

友「男と同じで、怪我は負ってないが何らかの危険に直接関わっている状態、です……」ボソッ


生徒会長「それは……どういう事……?」ボソッ


友「簡単に言えば、生徒会長も誰かに狙われてる可能性が高いって事です……。命に関わるような事じゃないですけど……」ボソッ

生徒会長「でも、それは犯人が私に対して偏執的な愛情を持っているからじゃないの……?」ボソッ

友「そうだったとしたら、それはレベル2になるはずなんです……。何らかの間接的な危険に関わっている状態に……」ボソッ

生徒会長「……それは……つまり」ボソッ

友「今、この場に生徒会長を狙っている人間がいるって事です……」ボソッ

生徒会長「……!?」

友「ただ、俺の第一の能力、『危険探索(リスクサーチ)』によると、ここら一帯――要は半径30メートル以内に危険はないんで……」ボソッ

生徒会長「つまり……どこか遠くから監視されているという事ね……」ボソッ

友「多分、そうなります……」ボソッ


生徒会長「という事は……恐らく男君やあなたを襲った犯人でしょうね……。今度こそうまくやるって言っていたし……」ボソッ

生徒会長「犯行現場に戻ったのか……もしくは友君の行方を追ってここで見つけた……」ボソッ

生徒会長「だけど、その友君は私とこうして会話をしている……」ボソッ

生徒会長「犯人としては、恐らく殺したくてたまらないでしょうね……」ボソッ

生徒会長「そして、それと同時に私にもこれ以上変な虫がつかないように、誘拐を考えてそれを実行しようとしている……」ボソッ

生徒会長「ただ、今はあまりに人目がありすぎてそれを実行できない……。警察もまだ現場検証をしているしね……」ボソッ

生徒会長「だから、監視しつつ、私たちがこの場から離れるのをじっと待っている……」ボソッ

生徒会長「そんなところかしらね……。あなたはどう思う……?」ボソッ


友「名探偵っぽいすね……。生徒会長さん……」ボソッ


生徒会長「こんな時に下らない事を言ってないで……」ボソッ

友「正直、俺にはよくわかりませんけど……。でも、それで合ってると思います……」ボソッ

生徒会長「そう、推理の賛同を得れて結構な事ね……。それなら問題はこれからどうするか、だけど……」ボソッ

生徒会長「私たちが取るべき手段は大きく分けてこうなるわ……」ボソッ


1、二人の安全を第一に考えて、この場は警察に保護してもらうように頼む

2、危険を承知で犯人が誰なのかを突き止めに行く。あわよくば捕まえる

3、私が囮になってわざと犯人に拉致される。友君はこの場に残るフリをしてこっそりどこかに隠れ、私が拉致されたらその後を尾行する

4、その他


生徒会長「当たり前の事だけど、普通は1を選択するわ……。勇気と無謀は別物ですもの……」ボソッ

生徒会長「ただし、その場合……。もし犯人が男君を拉致していた場合は……。その時は、私たちはとんでもないミスを犯す事になるかもしれないわね……」ボソッ

生徒会長「友君の能力によると、男君に今は命の危険がないって事になるけど……。でも、それは犯人が今この場にいるからであって、男君を拉致した所に犯人が帰った時は……」ボソッ

生徒会長「そんな未来予想図は想像もしたくないけど、その可能性も十分にあるわ……」ボソッ


生徒会長「2の場合は、もっと単純に一番危険ね……。死ぬ可能性も十分にある、恐らく最も賢くない選択の一つよ……」ボソッ

生徒会長「ただ、虎穴に入らずんば虎児を得ずとも言うわ……。危険を承知で得られる見返りはきっと多いでしょうね……」ボソッ

生徒会長「犯人を捕まえるというのは恐らく無理でしょうけど……でも、誰かはわかるかもしれない……」ボソッ


生徒会長「3については……私は少なくとも生命の安全を保証されているという前提での話よ……」ボソッ

生徒会長「ついでに言えば、あなたの実力次第ね……」ボソッ

生徒会長「あと、付け加えるなら、今、私を狙っている人間が犯人だという前提の話でもあるわ……。もしも違ったら……」ボソッ

生徒会長「殺される、とまではいかなくとも、きっと私は酷い目にあうでしょうね……」ボソッ



生徒会長「何にせよ、他の案が思い浮かばなければ、私たちはこの内のどれかを実行しなくてはならないわ……」ボソッ

生徒会長「友君はどれが一番良い選択だと思う……? 意見を聞かせてもらえる……?」ボソッ

友「いや……この場合、俺に口を挟む権利なんてないっすよ……」ボソッ

友「一番危険なのは生徒会長さんですし……。俺は能力持ってますから……どうにでもなるでしょうけど……。でも、生徒会長さんは普通の人です……」ボソッ

友「俺、大して頭も良くないんで……。生徒会長さんが選んで下さい……。俺はそれに無条件で賛成します……」ボソッ

生徒会長「……そう。それなら……」ボソッ


>>247

2

友「マジでそれでいいんすね……?」ボソッ

生徒会長「ええ。男君が心配だから……」ボソッ


生徒会長「ここで安全な道を選んでもしもの事があった場合……」ボソッ

生徒会長「多分、私は一生後悔する……。だったら、死んだ方がまだマシよ……」ボソッ

生徒会長「それに、その台詞はむしろ私が友君に言う台詞ね……」ボソッ

生徒会長「あなたこそいいの……? はっきり言えば、私よりもあなたの方が数倍危険なのよ……?」ボソッ

生徒会長「別に無理に付き合う事もないわよ……。反対するなら今の内だから遠慮なく言いなさい……」ボソッ


友「いいっすよ、元々、犯人とドンパチする覚悟でここまで来ましたし……」ボソッ

友「それに、男が心配なのは俺も一緒です……。あいつ、俺の友達なんで……」ボソッ


生徒会長「そう……」ニコッ

生徒会長「ほんの少しだけ、あなたを見直したわ……」ボソッ


友「じゃあ、一度ぐらいデートを……」ボソッ

生徒会長「前言撤回ね……。断固、断るわ……」ボソッ


友「えええ……」ボソッ


生徒会長「冗談を言ってないで行くわよ……」ボソッ

友「めっちゃ本気だったんすけどね……」ボソッ

生徒会長「基本的な作戦を説明するわよ……。よく聞いて……」ボソッ

友「はい……」ボソッ


生徒会長「とりあえずこの場から離れて、街灯のない暗い場所まで行くわよ……。周りに高い塀がある場所ならよりベストね……」ボソッ

生徒会長「監視するとしたら、高いところから双眼鏡やスコープを使っての監視がセオリーよ……。だから、私たちは逆にそこから見えないであろう場所へと行くの……」ボソッ

生徒会長「そうすると、犯人は私たちを監視する為にそこから移動して近くまで寄らざるを得ない……。この理屈はわかるわよね……?」ボソッ

生徒会長「あるいは、そこまで行ったら、犯人は監視をやめて友君に攻撃しようと実行に移るでしょうね……その可能性は高いわ……」ボソッ

生徒会長「つまり、どちらにしろ犯人をおびき寄せる事が出来るのよ……」ボソッ


友「なるほど……」ボソッ


生徒会長「刑事さんの話によると、犯人はボウガンのようなものを持っているから……」ボソッ

生徒会長「それで狙われない場所……早い話、奥まった場所ね……。そこで待つ……」ボソッ

生徒会長「と見せかけて、私と友君はこっそりそこから移動……。物陰か何かに隠れて犯人の顔を確認する……」ボソッ

生徒会長「友君は能力を持っているから、半径30メートル以内まで犯人が近寄ればわかるんでしょう……?」ボソッ


友「そこら辺は任せて下さい……。大丈夫です……」ボソッ


生徒会長「それなら、友君は常に能力を使って警戒……」ボソッ

生徒会長「犯人が近付いて来たら、言葉ではなく手振りで教えて……。予めサインを考えておくから……」ボソッ


友「了解っす……」ボソッ


生徒会長「出来るようならその場で取り押さえたいところだけど……。それには何か罠を考えないと駄目ね……。今は少し厳しいかも……」ボソッ

生徒会長「とりあえず、犯人がもしも私の見知った顔なら、急いでその場を離れて刑事さんにすぐに連絡……」ボソッ

生徒会長「知らなかったら、危険だとは思うけど私が後をつけて尾行するわ……。友君はその場から離れて刑事さんにすぐに連絡して……」ボソッ

生徒会長「私たちの連絡はメールでする……。受け取って読んだらすぐに消す……。もちろん音は切っておく……。暗い場所でライトは使わない……。いいわね……?」ボソッ


友「オーケーっす……」ボソッ

『十数分後 路地裏前、物陰』


友「…………」ゴクッ

生徒会長「…………」ジッ


キュイーン……


友「!!」


友「」サッ、パパッ

友(来ました、生徒会長さん! 危険反応、30メートル以内!)


生徒会長「」コクッ

生徒会長(わかったわ。そのまま、まだ待機よ)

友「……!」

友「」サッ、スッ

友(危険反応、20メートルまで来ました!)


生徒会長「」コクッ





友「……!!」

友「」サッ

友(10メートルです!)


生徒会長「」スッ、サッ

生徒会長(そのまま指でカウントダウンしてって)


友(9メートル……!)スッ

友(8メートル……!)スッ

友(7メートル……!)スッ

友(6メートル……!)スッ


生徒会長「」ゴクッ


友(5メートル……!)スッ

友(4メートル……!)スッ


友「……!?」


生徒会長「……?」


友(反応が……いきなり消えた……?)

友(は? え? 何で急に……!?)


生徒会長(……どうしたのよ、友君? 何があったの……!?)

友(いや……待てよ……)

友(ひょっとして俺の能力が消えたのか……? 犯人じゃなく……!?)


友(いやでも、そんな……! だけど、それ以外に考えられねーし……!)

友(試しにもう一度……! 能力発動……!!)キュイーン

友(違う……使える……)


友(しかも……)チラッ


生徒会長(……? どうしたの? 何があったの……!?)

レベル1
危険がなく安全な状態



友(生徒会長さんの危険度が3から1になってる……)

友(俺の半径30メートル以内にも危険は一切感じられない……)


友(じゃあ、さっきまですぐ近くを歩いていた犯人はどこに消えたってんだよ……?)

友(仮に、もし仮に犯人が瞬間移動能力を持っていてどこか遠くに移動したとしても、生徒会長さんの危険度は2になるだけで、1にはならないはずだろ……!?)

友(なのに、そうなってるなんてのは、有り得ねーし!)

友(じゃあ、なんだってんだよ……!? 犯人がいきなり心臓麻痺でも起こして倒れでもしたっつーのかよ……?)


生徒会長(友君……! どうしたの……!?)


友(とにかく、今、危険がないってんなら……)

友(確かめに行っても構わないって事だよな……!)

友「」タタタッ


生徒会長(ちょっと……! あなた、何を……!!)

『飛び出した先 道路』


友「……え?」


???「アハハははハハはハハハははははハははハハハはははハはハハハ!!!」

???「ミーつケたあ……」


???「これデようヤく一人目だネ……」

???「死ネよ死ネヨ死んジャえええエええエエ!!!」


ズババババババッ!!!



友「っ……! 能力発動!!」

友「『危険回避(リスクアベーショ」


ザクッ、ズバッ、ドスッ!!!


友「がっ……ぐあっ……ダメか……よ……」

友「多す……ぎ……防ぎ……き……れ……」グラッ……


友「うぁ……がっ……」ドサッ

友「」ビクッ……ビクッ

友「」…………



???「ヒャハはハハはハひハヒひひヒヒひヒひひひヒヒヒひひヒヒ!!」


路地裏の陰から私は『その』光景を見ていた

まるでガトリングガンのように友君の体に降り注ぎ突き刺さる無数の五寸釘

丁度、雲間から月が出て、ほんのわずかだけ月明かりに映し出された光景


辺りは相変わらず暗闇の中だというのに

飛び散る大量の血だけが何故か色鮮やかで

それはいっその事、芸術的なまでに凄惨で美しく


一枚の絵画や、あるいは古びた芸術映画のワンシーンのような


題をつけるとしたら……『惨殺』


全身から血の気が引き

平衡感覚が脳から薄れ、やがて消え

強烈な吐き気、サイレンのように鳴り響く頭痛


助け……なきゃ……


そう思う私の心とは裏腹に

そう、いつのまにか、いつのまにか

本当に言い訳ではなく、理性や常識や矜持や誇りなんかとはまるで関係なく


私は叫びながら逃げ出していた


彼を……見捨てて……

見捨てて……

見捨てて……





お前が殺した

お前が殺したも同然だ

お前が余計な事を言い出さなければ

お前が家を飛び出さなければ

お前が生まれてこなければ


そうだろう? 違うのか?


お前は殺人者だよ。少なくともそのお仲間さ

お前は 殺 人 者 だよ



いや! いや!! いや!!!

誰か助けて!! 誰か!!!


誰か……っ!!!

『病院』


生徒会長「」ハッ!!!


生徒会長「あ……う……」ブルブル

生徒会長「ゆ……夢……なの……?」


生徒会長「あ……うぅあ……あ……」ガタガタ

生徒会長「ぃ……ぁ……」ムクッ……


生徒会長「さ……寒……い」

生徒会長「身体中が……ふ……震え……て」ガタガタ

生徒会長「手が……ぅ……上手く……動かせ……口も……」ブルブル

生徒会長「こ……こは……ど……こなの……?」ガタガタ

コンコン……


生徒会長「」ビクッ!!

生徒会長「あ、ぅあ……! あっ……!」ガタガタ


「入りますよー」


生徒会長「い、いや! こ、来ないで!! やめてやめてやめてやめてやめてぇえ!!!」ガタガタ


ガチャッ

モブ看護師「ちょっと……どうしたの? 落ち着いて」


生徒会長「あ、ぁ……うぅぅ……!」ガタガタ


モブ看護師「大丈夫? 何か怖い事でもあったの、そんなに怯えて……」

モブ看護師「先生、呼んで来ましょうか……? すぐに来れると思うけど……」


生徒会長「ぅ、ぁぅ……へ、平気で……す……」ガタガタ

生徒会長「ゆ、夢……。そう……夢だっ……たから……」ブルブル


モブ看護師「怖い夢を見たの? でも、その怯え方はちょっとねえ……」

モブ看護師「やっぱり先生、呼んで来ようか?」


生徒会長「だ、大丈夫……で……す……。さ、寒くて……。だ……から……」ガタガタ


モブ看護師「寒い? 冷房もつけてないのに?」

モブ看護師「熱でもあるのかしら……? ちょっとごめんね。額はからせて」スッ


生徒会長「あ、ぁ!!」ビクッ

生徒会長「いやあああああああああ!!!」ドンッ!!


モブ看護師「ちょっと……! あ、とっ! きゃあ!」ドシンッ


モブ看護師「いたたたた……」


生徒会長「こ、来ないで!! わ、私を殺さないで!!!」


モブ看護師「殺すって……あなた……」


生徒会長「怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ」ガタガタ


モブ看護師「…………」

『診察室』


コンコン

モブ医師「はい、どうぞ」


ガチャッ

モブ看護師「あ、先生、いたんですね。良かった」

モブ医師「どうしたんですか?」

モブ看護師「306病室の患者さんの事なんですけど……」

モブ医師「306病室? ああ、昨日の夜に路上で倒れていたとかで運び込まれた女の子……確か生徒会長さんとか言いましたっけ?」

モブ看護師「はい、その子なんですけど……」

モブ医師「何かありましたか? 外傷とかは一切なくて、特に病気でも栄養失調とかでもなかったはずですけど……」

モブ医師「恐らく貧血の類いだろうと判断して、一応、こちらでベッドを用意した子ですよね? 何か問題でもありましたか?」

モブ看護師「それが……」

モブ医師「そうですか……。それだと精神科って事になりますね」

モブ看護師「はい、多分……。統合失調症の類いなんじゃないかって……」

モブ医師「わかりました……。一度、精神科の先生に診察してもらうよう手配しておきます」

モブ看護師「お願いします」

モブ医師「あと、御両親にも連絡しないとまずいですね。ああ、でもそれは診察が済んでからの方がいいか」

モブ看護師「そうですね。そうされた方が」

モブ医師「昨日、連絡して尋ねた時には確かそういった話は出てなかったんだけど……。ここ最近、発症したという事かな……?」

モブ看護師「ご家族の場合、隠している事も稀にありますけどね」

モブ医師「ああ、なるほど……。その可能性もあるか……」


モブ看護師「ほら、ちょっと前に来た『???』さんの御両親とかそうだったでしょう?」

モブ医師「ああ、そうでしたね。と言っても、あれは本当に御両親が気付いてなかった可能性もありますけど……」

モブ看護師「見た目、本当に普通でしたものね……。そう言われれば確かに……」


モブ医師「何にせよ、生徒会長さんの件は承りました。早急に精神科に連絡しておきます」

モブ看護師「はい、先生。お願いしますね。それじゃ……」

『翌日 学校』


友「よーす、男」

男「おーす、友」


ザワザワ、ザワザワ


友「お前、昨日、テレビ見たぞ。ホームに落ちた子供助けたんだって?」

男「げ。マジかよ……。あれ、見たのか?」ハァ

友「なーにため息ついてんだよ。『命を省みずに勇敢に行動した高校生』様が」

男「やめてくれ、顔から火が出てそこら辺燃やしかねない」

友「柄にもなく照れてんのかあ? うりうり、うりうり」

男「違うんだよ。あれ、マジで事実じゃないんだ。捏造されたっていうか」

友「おーおー、お前は事実無根の事をマスコミに捏造される程の有名人だってのかあ? 照れんなよ、うりうり、うりうり」

男「マジでウゼえからやめろって、おいこら」

友「周囲を見てみろよ。お前にアッツーイ視線を送ってる奴らがたんまりいるぜ」

友「やっぱテレビの影響力ってスゴいよな。新聞とかにも載ってたらしいしよ」

男「……みたいだな」

友「一夜にして、王子様扱いかあ? 羨ましいぞ、こいつううう。ローリングソバット」ゲシッ

男「ってえ! マジでキレるぞ、友!」

友「怒んな怒んな。モテない男のひがみって奴だ。笑って許すのが男の度量だぜ」

男「お前、アホだろ?」

友「うん。今ふと、冷静になって自分でもそう思ったわ……」

男「なんつーかな……、ため息しかでないわ……」

友「すまん」

男「まあいいけどな……」

友「にしても、これからお前、真面目な話、ちょっと大変かもな。多分、色んな奴らから質問攻めにあうぞ」

男「かもなあ……。めんどくせえ……」


女子生徒グループ「おっとこくーん! ねえねえちょっといい?」


友「な?」

男「だな……」

友「行ってこいって。折角のモテるチャンスなんだからよ」

男「まあ、断りはしないけどさ……。じゃ、悪いな、友。後で」

友「おう、またな」

『教室』


モブ女A「昨日、テレビで見たよ! あれ、ホントだよね? 映ってたの、男君で間違いないよねえ!?」

モブ女B「家でボーッとテレビ見てたらさ! いきなり男君の顔と名前が出てくるじゃない? もうビックリして二度見とかしちゃってさ!」

モブ女C「しかも子供助けたんだよね? 電車来てるのに? スッゴーイ、ヤバイよねえ!」


キャイキャイ、キャイキャイ




女「あうううううう!!」

女「なにこれやだよお……!!」

女「私は男君の事、ずっと前から知ってたんだよ! 優しくて頼りがいがあるって知ってたのに!!」

女「なんで今までろくに知りもしなかったあの子たちが、急に近付いて仲良く話してるの……!!」

女「ううううううっ!! やだやだやだ!!」

女「見たくない、こんなの見たくないのにいい!!」

『三年の教室』


演劇部部長「ポツン、って感じね」

演劇部部長「おかしいわねえ。こんな時間になっても生徒会長が来ないなんて……」

演劇部部長「あの真面目を通り越して、規律のお手本みたいになってる生徒会長がまさか遅刻、なんて事はしないだろうし……」

演劇部部長「お休み? でも、それなら私に連絡ぐらいくれるよね?」

演劇部部長「どうしたんだろう……。変だなあ……」

『病院 休憩室』


モブ医師「……で、診察されてみて、どうでした、彼女? やっぱり統合失調症に近いものが?」

モブ精神科医「現段階では何とも言えないですね。そもそも精神病というもの自体、医師の私が言うのも何ですが非常に判断が難しいものなので……」


モブ精神科医「例えば、四十際以上の男性の70%以上が、自分も気付かない間に一度は鬱病になっている、という研究結果もありますし……」

モブ精神科医「これが女性に至っては98%以上になります」

モブ精神科医「女性というのは男性よりも遥かに感情に大きく左右される脳をしていますので……」

モブ精神科医「それが精神的なものなのか、あるいはヒステリーとかと同種のものなのか、その判別が更に難しいんですね」


モブ精神科医「問診してみたところ、彼女――生徒会長さんなんですが、直前に悪夢を見たとか」

モブ精神科医「基本、悪夢を多く見る場合、精神的なストレスやトラウマなどの潜在的な恐怖などがその原因となる事が多い訳ですが……」

モブ精神科医「だからと言って、それだけでは判断できない。悪夢ぐらい誰でも見ますし、それが長く尾を引く場合もあります。夢にリアリティがある方ほどね」

モブ精神科医「まして、彼女。寝ている間に――要は知らない間にこの病院にいきなり搬送された訳でしょう?」

モブ精神科医「不安と、直前に悪夢を見たという恐怖。それが原因と言えなくもない」

モブ精神科医「これまでそういった病にかかった経験はないとの事でしたし、あれだけリアリティのある夢は初めてだとも言っていた」

モブ精神科医「まだ何とも判断がつきませんので、とりあえず、今日のところは鎮静剤を与えるだけに留めて、今日一日は落ち着いて過ごしてもらう事にしました」

モブ精神科医「明日以降もこの調子が続くようなら、何らかの精神疾患にかかっている可能性も十分にありますが、とりあえずは様子見ですね。今日だけで判断は出来ないです」

『生徒会長の病室』


生徒会長「はぁ……」

生徒会長「薬を飲んでようやく落ち着いたわね……」


生徒会長「それにしても……なんて酷い夢だったのかしら」

生徒会長「誰だったか思い出せないけど……。知ってる男の子がいきなり■■されるなんて……」ハァ

生徒会長「おまけにそれが私の判断ミスから……。今、思い出してもゾッとするわ……」ブルッ


生徒会長「疲れてるのかしらね……」フゥ


生徒会長「ああ、そういえば学校……」

生徒会長「多分、お母さんが電話してくれたと思うけれど……」

生徒会長「演劇部部長にまでは無理よね……。あの子、妙なところで心配性だから、きっと今頃心配してるわ……」

生徒会長「安心させてあげないと……。確かスマホは持っていたはずよね……」


生徒会長「」スクッ、スタスタ

生徒会長「ここにあったはず……」ソッ

生徒会長「うん。記憶も正常ね。って我ながら馬鹿みたいね、こんな心配をするなんて」

生徒会長「LINEで演劇部部長に連絡をっと」ピッ、ピッ
















お前が殺した






お前が殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺したあひひハハひひあヒヒあハハはひあひひひヒヒあひひハハひひあヒヒあハハはひあひひひヒヒあひひハハひひあヒヒあハハはひあひひひヒヒあひひハハひひあヒヒあハハはひあひひひヒヒあひひハハひひあヒヒあハハはひあひひひヒヒあひひハハひひあヒヒあハハはひあひひひヒヒあひひハハひひあヒヒあハハはひあひひひヒヒあひひハハひひあヒヒあハハはひあひひひヒヒあひひハハひひあヒヒあハハはひあひひひヒヒあひひハハひひあヒヒあハハはひあひひひヒヒあひひハハひひあヒヒあハハはひあひひひヒヒあひひハハひひあヒヒあハハはひあひひひヒヒあひひハハひひあヒヒあハハはひあひひひヒヒ!!!

生徒会長「きゃあああああああああ!!!」


生徒会長「な、な……なによ、これ……!!」

生徒会長「な……んで……スマ……ホの画面に……こんな……!!」ガクガク


コンコン……


生徒会長「ぃっ……!!」ビクッ

生徒会長「だ、誰……!!」


クスクス

「ミーつけタあ……」

「こンなとコロにいタんだあ……」


生徒会長「や、ぁ、やぁ!! いやぁぁぁ!!!」

生徒会長「た、助け……て!! 誰か、た……すけて!!」


「もチろん助ケテあげルヨ……?」

「ダッて私はいツデも生徒会長の味方ダもン……」



生徒会長「あ、ぁあ、あ……!!」ガクガク

生徒会長「助……けて! 助け……て!! 助けて!!」

『病院 休憩室』


ピピピピ、ピピピピ

医師「ん? 呼び出し?」

精神科医「私ですね。ちょっと失礼」ピッ


精神科医「はい、精神科医ですけど」

精神科医「え……。はあ……なるほど。それは今現在も?」

精神科医「そうですか……。わかりました、すぐに行きます」ピッ


医師「……どうされたんですか?」


精神科医「いえ、先程の生徒会長さんなんですけどね……」

モブ精神科医「助けて、助けてって声が病室から聞こえてきたそうで……」

モブ精神科医「それで担当看護師が急いで見に行ったら、ベッドでうなされてそう叫んでいたそうです」


モブ精神科医「揺り起こして、どうにか起こしたんですが、それからまた暴れ始めたそうで……」

モブ精神科医「その騒ぎで他の看護師も駆けつけてどうにか取り押さえたそうですが、その後もひたすら怯え叫び続けているそうで一向に落ち着かないと……」


モブ精神科医「なのでもう一度詳しく診察に行ってきます。ちょっと酷い状態だそうなので……」


モブ医師「そうですか……。大変ですね。お察しします」


モブ精神科医「いえ、こういうのもよくある事なので……。何故か知りませんが名字に『神』の入っている人は特にね」

モブ精神科医「それでは……私はこれで」スタスタ





モブ医師「よくある事、か……」

モブ医師「そういえばあの子も『神』が入っていたっけ……」

モブ医師「何かの迷信だとは思うんだがな……」








BAD END

今回、生徒会長が目覚めた能力

『奇跡の悪夢(トリック オア ナイトメア)』
悪夢を見る事と引き換えに時間を巻き戻す能力
その戻された時間によってもたらす変化が大きければ大きいほど、悪夢を見る期間と悪夢の悲惨さも増加する

明日あたり、途中から続き始めてきます

>>247からやり直すか、生徒会長の能力発動しない状態で>>254から続けるか

安価直下

時間を巻き戻し
>>246と差し替え



生徒会長「私は、安全を第一に考えて、この場は警察に保護してもらうよう頼むのが一番だと思うわ……」ボソッ

友「それはわかりますけど……。でも、男が行方不明ってのを放っておくって訳には……」ボソッ


生徒会長「友君、私は思うのだけれど……」ボソッ

生徒会長「犯人、あなたと同じで『特殊能力者』じゃないのかしら……?」ボソッ


友「…………」


生徒会長「思い出した事があるのよ……。ずいぶん前に神社の神主さんから聞いた『龍神伝説』……」ボソッ

生徒会長「この町の『神』を持つ名字の人の話をね……」ボソッ

生徒会長「言われてみれば、友君の名字にも『神』の一文字が入っているのよね……」ボソッ

生徒会長「伝説だと、この町に住む者の中で、死ぬほどの恋をした者は数々の奇跡を起こしてきたと言う話だそうだけど……」ボソッ

生徒会長「その奇跡が『能力』だと言うのなら合点がいくわ……」ボソッ

生徒会長「そして、犯人は恐らく私に『死ぬほどの恋』をしているでしょうから……」ボソッ

生徒会長「『能力者』という可能性も十分にあるわ……。むしろ、これまでの事を考えるとかなり高いと思う……」ボソッ

生徒会長「友君は自分が能力者だから心配ないって思っているようだけど……」ボソッ

生徒会長「あなたは攻撃を受けて、全治一ヶ月半の怪我を負っているのよ……。また同じ結果、もしくはそれ以上の悲惨な結果になるんじゃないの……?」ボソッ

生徒会長「それに、友君の能力だと、攻撃を避ける事は出来ても、こちらから攻撃をする事は出来ないのでしょう……?」ボソッ

生徒会長「勝ち目がないわ……。私たちは命のゲームをしてるんじゃないのよ……。気持ちは私だって同じだけど、やはりここは退くべきよ……」ボソッ


友「…………」

友「……確かに俺の能力は、防御専門みたいなところありますね……」ボソッ

友「……それに、犯人が『能力者』じゃないかってのは……俺もわかります……」ボソッ

友「飛んできた包丁、いきなり現れたみたいな感じでしたし……」ボソッ

友「『普通』じゃなかったってのは、スゲー同意見っす……」ボソッ


友「でも、それじゃ俺ら、何もしないし出来ないって事っすかね……」ボソッ

友「男を助けに無理して来たってのに……。それに、犯人が『能力者』だってんなら、警察に逮捕は無理なんじゃないっすか……?」

友「今は引くってのには賛成しますし、生徒会長さんの身が危ないんで、生徒会長さん自身はもう関わらない方がいいとは思いますけど……」ボソッ

友「でも何か……」ボソッ


生徒会長「冗談はよして……」ボソッ

友「え?」

生徒会長「誰がこのまま何もせずにいるなんて言った……?」ボソッ

生徒会長「私はね、友君……。はっきりと怒っているのよ、犯人に対して……」ボソッ

生徒会長「このままにする訳ないでしょう……。私の名誉と誇りにかけて、必ず犯人は捕まえるわ……」ボソッ

生徒会長「ただ、今は駄目よ……。こちらに勝ち目がないから……」ボソッ


生徒会長「これは戦略上の撤退よ……」ボソッ


生徒会長「犯人を捕まえるには『力』が足りない……。ならば補えばいいだけの事よ……」ボソッ

生徒会長「私たちが今やるべき事は『味方』を増やす事よ……」ボソッ

生徒会長「つまり、友君と同じような『能力者』をこちらの味方につけるわ……」ボソッ


生徒会長「私はしばらく犯人が誰かを調べると共に、犯人の気を引き付けるわ……」ボソッ

生徒会長「だから、友君は『味方』を探して……」ボソッ

生徒会長「それが今、私たちのやるべき事よ……」ボソッ

生徒会長「いいわね……?」ボソッ


友「……わかりました。了解っす……」ボソッ

生徒会長「それじゃあ、友君は警察の人にお願いして警護を頼んで、病院に戻りなさい……」ボソッ

生徒会長「病室も窓から狙われないような場所に変えてもらっているのだし、病院なら多分安全なはず……」


プルルル、プルルル、プルルル


生徒会長「電話……!? 誰から……!?」

友「まさか……! また犯人じゃ……!」


生徒会長「」スッ

生徒会長「……表示は公衆電話」


生徒会長「犯人……からなの?」


生徒会長「とにかく、出るわ」

友「はい……」ゴクッ


生徒会長「」ピッ

生徒会長「……もしもし? 誰?」

『あ、生徒会長? 私』

生徒会長「……その声。女……!?」

『うん。ごめんね、何回か電話もらったみたいで。ちょっと事情があってかけ直す事が』

生徒会長「あなた、今、どこにいるの!? 無事なの!」

『無事って? そりゃ、無事だよ。当たり前じゃない』

生徒会長「当たり前じゃなくて……」ハァァ……


生徒会長「私がどれだけ心配したと思っているのよ……! いきなり行方不明になったって聞いて、犯人に拐われたんじゃないかって心臓が潰れるほど、心配したのよ」

『あ、そっか……。うん……。ごめんね』

生徒会長「本来なら二時間ぐらいお説教してるとこだけど、今はそれは後回しよ。とにかく無事なのね?」

『うん。平気。傷口がちょっと痛む時はあるけど、でももうほとんど治ってるらしいし、大丈夫』

生徒会長「で、今、どこにいるの? 後で刑事さんに迎えに行ってもらうわ」

『…………』

生徒会長「女? どこにいるの?」

『それは秘密……かな? ごめん、生徒会長にも言えないんだ……』

生徒会長「秘密って、どうして? ……どういう事なの、女? きちんと説明して」

『説明も……出来ないの。ごめんね』


生徒会長「…………」

生徒会長「女、それなら説明の出来る範囲で答えて」

生徒会長「公衆電話からってなってたけど、これはどうして? 持っていたスマホはどうしたの?」


『今も持ってるよ。ただ、居場所を知られたくなかったから。スマホから場所がわかるみたいな、そんな事を聞いた覚えがあって』


生徒会長「それは公衆電話も同じよ」


『うん、知ってる。だから離れた場所から電話してる』


生徒会長(つまり、特定の居場所がどこかにあって、そこから離れた場所から電話しているという事ね……)

生徒会長「それで、何の為に病院を抜け出したの? 食事がまずかったから、なんて事はないわよね」

『そこまで食いしん坊じゃないよ。……美味しくはなかったけどね』

生徒会長「で、何で?」

『…………』


『男君を守る為だよ』


生徒会長「……どういう事?」


『男君、誰かに狙われてるみたいだからさ』

『今日だってギリギリだったんだよ。私が助けなかったら』



『男君、死んでた』


『だから、男君を安全な場所に連れていったの』

『男君を保護しているの』

『男君を助けているの』

『男君は私が守るの』

『他の誰でもない私が! 私が!!』


生徒会長「お、女……?」


『男君が死なないように』

『男君が殺されないように』

『私が守っているの』

『生徒会長ならわかってくれるよね?』

『そう思って電話したの』



『男君の安全が確保出来るまでは』

『私、帰らないから』

『お父さんとかお母さんとかにもそう伝えておいて』



『よろしくね、生徒会長』



『じゃあね』



生徒会長「ま、待って……! 女、まだ」ガチャッ


ツー、ツー、ツー……


生徒会長「……切れたわ」

友「…………」

『三十分後 警察署』


刑事「まったく……。何て夜だ」

刑事「色々な事が立て続けに起こり過ぎでね……。おまけにどれも血生臭いときたもんだ……」


生徒会長「……すみません」ペコリ


刑事「いや、すまないな……。愚痴るつもりではなかった。被害者の君には同情してるよ……。そして、君が謝る必要はない」


生徒会長「…………」

刑事「とりあえず、友君か。彼に関しては心配いらない」

刑事「病院にも警官を配置したし、前の時の女さん同様、偽名で病室も変えてある」

刑事「100%とは言えないが、まず安全だろう」


生徒会長「…………」


刑事「もちろん、君の方も家の前に警官を配置出来る態勢は整っている」

刑事「今回の件もあるし、二十四時間体制だ。本署にも応援は要請してある」

刑事「君の家の周りも巡回を強化するし、そこら辺は信用してくれ」


生徒会長「……はい」

刑事「で、一旦、状況を整理させてもらいたいんだが……」

刑事「今日の事件の発端は、女さんの行方不明から始まる訳だ」


生徒会長「ええ……」


刑事「その行方不明だが、それに関連して病院内で一つの事件が起きている」

刑事「看護師の一人が気絶した状態で廊下で発見されたんだ。正確に言うなら、これが事件の始まりなんだがね」

刑事「その看護師が言うには、『誰か』に殴られて気絶したとの事だ」


刑事「当然、不審人物がいないかという事で病院内の探索が行われ」

刑事「入り口付近のガラスが割れている事、監視カメラがことごとく破壊されている事、女さんが行方不明になっているという事が判明した」

刑事「その通報を受けた我々は、当然、女さんが誰かに拐われたんではないかと推測した」

刑事「しかし、君にかかってきた電話から考えるに、拐われたのではなく『自分から逃げ出した』と考えるのが自然だろうな」


刑事「看護師についても、自分が見つからないように気絶させたと推測されるし」

刑事「ガラスが割れていたのは鍵が閉まっていたから。監視カメラを破壊したのは見つからないようにする為ともとれる」


刑事「何でそこまで徹底したのかは謎だがね。看護師はともかく監視カメラまで壊す必要はないんだが……」


生徒会長「…………」

生徒会長「それについて何ですが……」

刑事「うん?」

生徒会長「こういう考え方は出来ませんか? 女がガラスを割って病院を抜け出した。その後、その割れ跡を発見した犯人がこれ幸いにとそこから侵入し、監視カメラを破壊した……」

刑事「……!」


生徒会長「目的はもちろん友君を殺すために。ところが、病室が変わっていたのでそれが出来なくなって……」

生徒会長「仕方なく探しているところに、女が気絶させた看護師が発見され騒ぎになった……。なので、犯人はその騒動に紛れて逃げ出した……」


生徒会長「そんな可能性もあるんじゃないですか?」


刑事「……絶対にないとは言い切れないな」


生徒会長「そして今、病院の監視カメラってほとんど壊されてるんですよね? 次から、侵入するのがかなり楽になっていませんか?」


刑事「つまり、犯人はまた来ると。いや、その可能性は高いという事か……」


生徒会長「あれだけの大病院です。警察の方がどれだけ警備しているかは知りませんけど、穴がない、とは言い切れないと思います」

生徒会長「友君の安全の為にも、秘密裏に別の病院に搬送とかそういった事は出来ませんか?」


刑事「検討はしてみよう……」

刑事「それで、話を一旦戻すが、その逃げ出した女さんが男君を拉致したと、そういう認識でいいか?」

生徒会長「拉致か任意同行かは知りませんけど、女は男君を『守っている』と言っていました」

生徒会長「自分の居場所も言えないとも言ってましたし、多分、一緒にいると思います」

刑事「なるほど」


刑事「場所について、何か他に言ってなかったか?」

刑事「会話の端でもいい、何かヒントになるような事……」

刑事「あとは、周りの音だな。工場のプレスのような音が微かにしたとか、車が通りすぎる音だとか、人の話し声……」


生徒会長「何も……。女の声以外は無音でした」


刑事「ふむ……」

刑事「男君が誰にも気付かれず、家の外に出た事から考えると、男君は自分の意思で――少なくとも無理矢理連れ去られたという事はないだろう」

刑事「脅迫されて外に出ていったという可能性も残るが、まあ、状況からいって男君に危害は加えられてはいないと思う」

刑事「それだけは安心できる要素でもあるんだが……」


刑事「男君からの連絡がない、というのが気にかかる面でもある」


刑事「一緒に逃げ出したというなら、直接は無理でも伝言なりなんなりがあると思うんだが……それについては触れられてない……」

生徒会長「はい……」


刑事「女さんは、自分が学校を休むという事は伝えても、男君の事に関しては言わなかった。……そうだよな?」

生徒会長「そうです……」


刑事「相手側の事に関して、お構い無し……というのは少しな。いわゆるストーカーの類いによく見られる傾向なんだ」

刑事「彼女の言葉もそれに近いものがある」

生徒会長「…………」

刑事「彼女の言葉が全て真実だとするなら、女さんは男君をまたも救ったという事になる。実際、救ったのも確かだとは思うが……」

刑事「しかし、どこまで信じてどこまで疑うべきか……」

生徒会長「…………」


生徒会長(友君も女は危険度がレベル7だと言っていた……)

生徒会長(重傷を与える可能性が高い、と……)

生徒会長(その女が恐らく男君と一緒にいる……)

生徒会長(そして、男君は縛られて監禁されているか、気絶させられているかのどちらかじゃないかとも友君は言っていた……)

生徒会長(正直、私もどこまで女を信じて、どこまで疑うべきなのか……。その判別がつかなくなっている……)

生徒会長(…………)

刑事「とりあえず、今日のところはこれで終わりにしよう。事情が事情とはいえ、もう二時半を回っているからな」

刑事「明日になれば、電話会社に連絡して、どこの公衆電話からかけられたかも調べてもらえる。女さんと、犯人だと思われる相手、その両方がな」


刑事「最近は公衆電話を利用する事自体が珍しい。聞き込みをすれば、目撃者が出てくる可能性もあるし……」

刑事「例え離れた場所からかけていると言っても、どちらもかけた場所は参考になるからな」


刑事「何にせよ、今日はこれで終わりにしよう。明日以降も何回か尋ねに行く可能性も高いが、その時はまた協力をお願いしたい」


生徒会長「はい」

『帰宅後 生徒会長の家 居間』


生徒会長「」ハァ……

生徒会長「私の部屋は窓があるから、ここでこれから生活する事になったわね……」


生徒会長「学校に行くのも禁止、外出も禁止。親からそう言い渡されてしまったし……」

生徒会長「これじゃ、犯人探しどころか、私が監禁状態よ。参ったわね……」

生徒会長「やろうと思えば抜け出せない事もないでしょうけど、次、それをやったら、親から何を言われるか……」

生徒会長「最悪、本当の監禁状態になりかねないし、迂闊な事も出来ないわ」


生徒会長「私がこれなのだから、多分、友君も似たような状況でしょうね。ここから、どうしたものか……」


プルルル、プルルル、プルルル


生徒会長「……!」

生徒会長「また電話……今日は本当に大人気ね」

生徒会長「いちいち驚かなきゃいけないのさえなければ、歓迎すべき事態なんでしょうけど……」


生徒会長「それで……今度は誰から?」スッ

生徒会長「……友君から、か。焦らせないでよ」フーッ……


生徒会長「もしもし」ピッ

『あ、生徒会長さん! 良かった、繋がって!』

生徒会長「ついさっき、警察署から帰ってきたところだからね。まだ寝ていなかったわ。それで何の用?」

『今から俺が言う事、ちょっと落ち着いて聞いて下さい。いいですか?』

生徒会長「……何? そんな言われ方されたら、嫌な予感しかしないんだけど」

『さっき、生徒会長さんの危険度をまた調べたんです。そしたら……』



『レベル4まで上がってました』



『怪我は負ってないが、死の危険が間接的にある状態――です』



『生徒会長さん、多分、誰かに命を狙われてます』



『しかもそいつ、結構身近にいます』



『少なくとも、生徒会長さんの知っている誰かです』


『倉庫』


男「ぅ……」

男「ん……」


女「あ、男君、起きた?」


男「お……んな……さん?」


女「良かった。ずっと寝てたから心配してたんだよ。薬が効きすぎちゃったのかな?」


男「く……すり……?」


女「うん」


男「薬って……何の……」


女「あ、そうだ。男君、喉乾いてない? お茶あるよ。ペットボトルのだけど。飲む?」


男「あ、うん……。なんかスゲー喉乾いてる……。もらえるもんなら欲しい……」


女「うん!」

男「え、と……」ムクリ……

男「う……」ドサッ


男「ヤバイ……。なんか知らないけど……」

男「体に全然力入らない……。頭も少し……クラクラするし……」

男「起き上がれない……。何だ……これ……」


女「えと……だったら私用に買ってきたパックのにする? こっちだったらストローあるし」

女「コーヒーになっちゃうけど、それでも良ければ」


男「あ、うん……。それでいい……。ありがとう……」


女「ううん、気にしないで。えへへ」

男「」チュー……ゴクッ

女「美味しい?」

男「うん……。生き返る……」

女「良かったあ」ニコッ


男「ところでさ……。女さん……」

女「何?」

男「ここ……どこ? 俺、確か……家のベッドで寝てたはずじゃ……」

女「安全な場所だよ」

男「ああ、うん……。それはわかるけど……で、どこなの……?」

女「安全な場所」

男「…………」


男「何で……俺……ここにいるの……?」

女「男君が危なかったから。危うく死ぬとこだったんだよ! 包丁が一杯飛んできてさ。本当に危機一髪だったんだから」

男「マジで……。えと……じゃあまた……?」

女「うん。同じ奴だと思う」

男「そっか……。で、俺……どうなったの……? どっか怪我したの……?」

女「ううん! どこも! ギリギリで助かったの!」

男「そっか……。全然覚えてねーや……。助かったんだ……俺……」

女「うん!」ニコッ

男「じゃあここ……病院……?」

男「って訳でもないよね……?」

男「声めっちゃ響くし……。俺が寝てるの、ベッドじゃなくてソファーだし……」

男「明かり、懐中電灯だもんな……」

男「それに、女さん入院してたはずじゃ……。何で……?」


女「何でって、それは、えっと……//」モジモジ

女「男君が心配だったから……///」ゴニョゴニョ


男「…………」


男「えっと……」


女「あ、あの! 私ちょっと外に行ってくるね!//」

女「な、何か欲しいものとかある? あったら買ってくるけど!」


男「あ、ううん……。大丈夫……」

男「それより女さん、さっきのって」


女「い、行ってきます! ちょっとだけ待っててね!」タタタタタッ


ガチャッ、バタンッ!!


男「…………」

『倉庫 外』


女「はうううう! ///」ドキドキ

女「言っちゃったよお! なんか言っちゃったよお!!///」

女「男君、あれ気がついたのかな? 気がついたよね? うああああ!!///」バンバンッ


女「ヤバイよお! 顔じゃなくて口から火が出るぐらいヤバイよお!///」

女「どどどどどうしよう! どうすればいいの、私いいい!!///」ドキドキ

女「あ、あのね、男君、さっきのはね///」

女「大丈夫、わかってるよ、女さん。何も言わなくても。いや、何も言わないで」キリッ

女「え? わかってるって何が……」

女「こっちへおいで、女さん。俺のすぐ近くに。今、俺からは行けないからさ」

女「え、でも……///」

女「来いよ、女さん。いや、女」キリッ

女「え/// う、うん……///」ドキドキ

女「好きだ。お前の事が」ガバッ

女「や/// そんな強引に///」モジモジ

女「俺の事を命がけで助けてくれたお前が好きなんだ、愛してる」キリッ

女「あ、ううう///」

女「さあ、その可愛い顔をこっちに向けてごらん」クイッ

女「お、男君……///」ドキドキ


従姉妹「あら……女ちゃん。なにやってるの?」


女「ふにゃああああああああああ!!///」

女「あああのね、い、今のはああああのそその!」

従姉妹「さあ、その可愛い顔をこっちに向けてごらん」クイッ

従姉妹「お、男君……ぽっ///」

従姉妹「……とかやってたみたいだけど?」クスッ


女「ぐはああああっ!!///」


従姉妹「若いっていいわねえ」フフッ


女「おあううあうあああ///」ガンガンッ

従姉妹「大丈夫よお、誰にも言わないから。安心して」ニコッ

女「ほほほほんとに!? ホントに言わない!? 絶対!?///」

従姉妹「うん、大丈夫。それより、これ。頼まれてた追加の『お薬』。あと、歯ブラシだとかタオルだとかの日用品よ」ニコッ

女「あ、ありがとう」

従姉妹「お風呂は流石に無理だから、濡れたタオルで体を拭くって感じね。水道と電気は通ってるから、ポットを使って沸騰させて、それを水と混ぜて温度を調整して」

女「うん」

従姉妹「トイレはここを少し行ったところの公衆トイレを使ってね。男君は体の自由がうまくきかないはずだから、昼間の間は尿瓶かな」

従姉妹「夜なら女ちゃんが支えてあげる感じでトイレまで連れていってもいいわよ。夜になるとここら辺は人通りがほとんどなくなるから」

従姉妹「尿瓶の使い方は大丈夫よね?」

女「う、うん……。使い方は大丈夫だけど……///」

従姉妹「ふふっ。変な事をしちゃあダメよ。優しくソフトにね」

女「あうう///」

従姉妹「私は昼間は大学があるから来れないけど、それが終わってからならちょくちょく行けると思うから、出来るだけ来るようにするわ」

女「うん。本当にありがとね、従姉妹さん。何から何まで手伝ってくれて」

従姉妹「いいのよ。私は医大生だから、『薬』を誤魔化して手に入れるのはそんなに難しくないし」

従姉妹「女ちゃんの好きな男君が『能力者』に狙われているっていうなら、家にいるよりもここにいた方が安全なのは確かでしょうからね」

従姉妹「叔母さんに嘘つくのは正直心が痛むけど……。叔母さん、すごく心配していたから……」

女「そうなんだ……ごめんね」


従姉妹「いいのよ、仕方ない事だしね」

従姉妹「それよりも、女ちゃん、私はこっちの方が問題だと思うんだけど……」


従姉妹「男君を殺そうとした犯人……見たのよね?」

従姉妹「生徒会長ちゃんだったんでしょ?」

従姉妹「どうするつもり?」


女「…………」

>>312

女「……わからない」

従姉妹「……そう」


女「正直、生徒会長が男君を殺そうとしているなんて信じられないし……」

女「それに、信じたくもない……。生徒会長とは昔から仲良しだし……」


従姉妹「…………」


女「暗かったし遠くからだったから……見間違えたのかもしれないし……」

女「だから……」


従姉妹「ふうん……」


女「そりゃ私だって男君を狙っている奴を出来ることなら殺――どうにかしようと思うよ。でも、まだ本当に犯人が生徒会長だなんて確信はないから、すぐに殺――何とかしようってのはまだ……」

従姉妹「…………」


女「少し、様子を見たいの……。男君を守りつつ」

従姉妹「……そう、わかったわ」

従姉妹「それなら、私は今日はもう帰るわね。時間も遅いし、あまり長居すると怪しまれるでしょうから」

女「うん……わかった」

従姉妹「明日もまた来るから、他に何か必要な物がないか、女ちゃんは考えておいて」

女「うん」


従姉妹「ああ、それと女ちゃん」

女「なに?」

従姉妹「女ちゃんも少し疲れてるみたいね。ゆっくり休んだ方がいいわ。今度、男君用に精神安定剤を持ってくるつもりだったけど、女ちゃんの分も用意しておく」

従姉妹「疲れている時に、あまり短気はダメよ。自分でも信じられない行動に出る時があるから」

従姉妹「もしも、何かカッとなる事があった時は、一旦深呼吸して五秒待ってみて」

従姉妹「男君の為にもね。気を抜くのはダメだけど、出来るだけリラックス。二人しかいない訳だからギスギスピリピリした空気はお互いの為にならないわ。いい?」


女「……男君の為に」

従姉妹「そう。二人の為に」

女「うん……わかった。そうする」


従姉妹「わかってもらえて嬉しいわ。それじゃね」ニコッ


従姉妹「あ、あと一番大事な事を忘れてたわ」

女「なに?」

従姉妹「アレも買ってきておいてあるから、男君が求めてきたら使ってね」ニコッ

女「え/// ちょ」

従姉妹「だって、男女が密室で二人きりなのよ。そういう事もね。ふふ」

女「あ、う、あうう///」

従姉妹「それじゃまた明日ね。バイバイ」

『倉庫』


男「女さん……遅いな……」

男「それにしても……何なんだろう……この状況……」

男「どうして……俺……ここにいるんだ……」

男「知らない天井だ……なんて冗談言ってる場合でもなさそうだし……」


男「つっても……体がろくに動かせないから……どうしようもないんだけどな……」

男「頭、まだ少しクラクラするし……。考えがまとまらない……」

男「瞼が重いや……眠たい訳じゃないのに……寝そう……」


男「もう……起きてるの……無理か……な……寝……」


男「」スースー、スースー……

女「」スーハー、スーハー

女「だ、大丈夫……/// もしもそんな事になっても、今日は可愛い下着をつけてるし……///」

女「よしっ。行くよ、女。ドアを開けるよ//」


ガチャッ


女「ご、ごめんね、男君! ちょっと遅くな」


男「」スースー、スースー


女「……寝てる」

女「良かったような、良くなかったような……ううう」

女「」トコトコ……

男「」スースー、スースー


女「男君……やっぱりカッコいいなあ……」

男「」スースー、スースー


女「」ソッ

男「」スースー、スースー


女「大丈夫だからね、男君……。私が守るから……」

男「」スースー、スースー


女「私、頑張るよ……。だから……」

男「」スースー、スースー


女「ほんの少しでもいいから、私の事を気にしてね……」

男「」スースー、スースー


女「私の事を……好きになって……」ギュッ……

男「」スースー、スースー

『翌日 学校』


モブ子「ねえ……>>320。あの噂……聞いた?」

>>320「?」

風紀委員

性格と性別

直下

風紀委員「噂って何?」

モブ子「男君、って風紀委員も知ってるよね」

風紀委員「知ってるわ。テレビでも見たし、実際に見た事も話した事もあるし」

モブ子「あれ、そうだったの? クラスが違うから、見た事はあっても、話した事なんかなかったと思ったのに」

風紀委員「男君、風紀委員なのよ。だから委員会で」

モブ子「ああ、そうなんだ……。えっと一応聞くけどそれだけ?」

風紀委員「それだけっていうのは?」

モブ子「例えば彼氏だったりとか、そんな関係はないかなって」

風紀委員「ないわ。男女交際はしてないわよ」

モブ子「それは極端な話で言えば、だから。単なる顔見知りなのか、それともある程度仲良しだったりとか、あるじゃない」

風紀委員「そうね」

モブ子「で? どうなの?」

風紀委員「>>325

委員会で話す程度

風紀委員「委員会で話す程度よ。知り合い。もしかしたら向こうは顔すら覚えてないかも」

モブ子「ふーん」

風紀委員「それで、何でそんな質問を?」

モブ子「もしかして仲が良かったりしたら話し辛いからさ」

風紀委員「?」

モブ子「その男君なんだけど、昨日から行方不明って噂なの。ひょっとしたら通り魔にもう殺されてるかもって」

風紀委員「…………」

モブ子「それで、この前襲われた女って子いたじゃん? あの子も行方不明なんだって。だから、こっちももう殺されてるんじゃないかって、朝からずっと皆そんな噂しててね」

風紀委員「怖い話ね」

モブ子「だよね、だよね。朝に週刊紙の記者らしい人から話を聞かれたって子も何人かいてね」

モブ子「帰りは皆で一緒に帰ろうって、そんな話ばっかでさあ。ホントに怖いよねー」

風紀委員「…………」

『昼休み 廊下』


風紀委員「」スタスタ

風紀委員「…………」


風紀委員(ホントに怖いよねー、ね)

風紀委員(本当に怖がっていたら、そんな言い方や表情が出る訳もないのに)

風紀委員(……行方不明に、死んでるかも……か)


風紀委員(嫌な話……なのに……)


\ でよー めっちゃラッキーでさあ /

\ マジー? またー? /


風紀委員「……?」ピタッ

風紀委員「窓の外……。中庭から声……?」

風紀委員「誰?」ヒョイッ

『中庭』


コギャル「マジマジ。男と仲がいいって答えたら、記者から情報提供料とか言ってタバコ1カートンもらえる事になってさー」

モブコギャル「コギャル、男と別に仲良い訳じゃないじゃーん。少し話した事がある程度でしょー」

コギャル「いいんだって、んなの。向こうは知らない訳だし、未成年にタバコ渡してんだから、相手だって後でどーこー言えないしさあ」

モブコギャル「うわ、サイテーwwwww」

コギャル「んなの、お互い様だってーの。アタシだけが悪いんじゃねーしwwwww」





風紀委員「」ピキッ

モブコギャル「大体、コギャル、タバコなんか吸わないでしょー。どーすんの、それー」

コギャル「アタシは吸わないけど、吸う奴は何人も知ってからさー。渡すと有り難がられるんだよねー」

モブコギャル「そんでー、そうやって売った恩を利用してー。コギャルはまーた金儲けに利用するとー。ズルい女だよねーwwwww」

コギャル「バカとハサミは使い用って言うじゃんwwwww」

コギャル「使ってあげなきゃー可哀想だしーwwwww」

モブコギャル「コギャル、ひどーいwwwww」





風紀委員「」ツカツカ

風紀委員「ちょっと、そこのあなた達二人」


コギャル「?」

モブコギャル「?」

風紀委員「話は全部聞かせてもらったわ」

風紀委員「校則違反よ。タバコを出しなさい」


コギャル「……誰、アンタ?」

モブコギャル「いきなり来て、なに先生みたいな事言ってんの? 頭のネジでも外れちゃったのかなー?」


風紀委員「タバコを出しなさい。私は風紀委員よ」


コギャル「……は?」

モブコギャル「風紀委員ってなにそれ? 美味しいの?」クスクス


風紀委員「ふざけてないで出しなさい。それと、あなた達のクラスと名前も」


コギャル「なにこの子? マジで頭のネジが飛んでんの?」

モブコギャル「だよね。てか、いい加減ウザいかなーって」


風紀委員「あなた達!」

コギャル「とりあえずさー、モブコギャルもう行っていいよ。アタシが話つけとくから」

モブコギャル「ん。いっつも悪いねー。じゃあお願いねー」スクッ、タタタタタッ


風紀委員「待ちなさい!」


コギャル「はい、ストーップ。待つのはアンタの方」

風紀委員「邪魔をしないで!」


コギャル「一応言っとくけど、あの子、アタシの話聞いてただけじゃん? あの子まで巻き込むのは、とばっちりってもんじゃないの?」

風紀委員「っ……。確かにそうだけど……」


風紀委員「それならあなただけでいいわ。タバコを出して。それと、クラスと名前も」

コギャル「んー、なんかめんどいよね、アンタ」



コギャル「悪いけどさ、少し大人しくしててくんないかな?」キュイーン



風紀委員「え?」

風紀委員「何? 何!?」キョロキョロ

風紀委員「何で急に真っ暗闇に!?」

風紀委員「え、ちょ、ちょっと……!」アタフタ


風紀委員「ちょっと、さっきのあなた、どこ!?」

風紀委員「どこ!?」


パッ

風紀委員「うっ……眩しい……!」

風紀委員「え……も、戻った……?」

風紀委員「見える……。明るくなって……」



風紀委員「……あの子は?」

風紀委員「あの子はどこに行ったの?」キョロキョロ


風紀委員「いない……」

風紀委員「なに……。何だったの……今の……?」

『廊下』


コギャル「よっと」タンッ

コギャル「脱出完了、ミッションコンプリートってな」


コギャル「アタシの能力、『アンタのものはアタシのもの(スティール スター)』を使って」

コギャル「半径五メートル以内の『物と生命以外のもの』なら何でもアタシは『奪う』事が出来るんだよねー」

コギャル「さっきは軽く視力を奪わせてもらったよっと」

コギャル「アタシが半径五メートル以内から離れると効果は切れちまうのが欠点だけど、これ、かなり使えるよな」

コギャル「何でこんな能力が使えるようになったかはしんないけど、有効活用しなきゃもったいねーし」

コギャル「さーてと、また見つかんねー内にさっさと移動しよっと」タタタッ

『廊下 二階の窓近く』


演劇部部長「…………」ジッ

モブ子「?」


モブ子「どうしたの、演劇部部長? そんなに窓から身を乗り出して? 落ちちゃうよ」

演劇部部長「あ、ううん。何でもないの」

モブ子「なんか下で気になる事でもあったの? 誰かがこっそり抱き合ってたとか」

演劇部部長「ふふっ。だったとしたら、面白いんだけどね」

モブ子「逢い引き現場をこっそりって、演劇部部長もそういうとこあるんだ。ちょっと意外」

演劇部部長「私だって女の子だもん。少しは気になるよ、そういうの」

モブ子「ごめんごめん。でも、ホントに何を見てたの?」

演劇部部長「……ちょっとね。あ、そうそう。私、先生から呼ばれていたからこれで。またね」

モブ子「え? あ、うん……」

演劇部部長「それじゃ」タタタッ


モブ子「変なの……。なんか逃げるような感じだったし。ホント、なに見てたんだろ?」

『教室』


美少女「」ハァ……

モブ子「……美少女、気持ちはわかるけど、元気出して」


美少女「うん……」

モブ子「あんなの噂だよ。男君が……」

モブ子「…………」

モブ子「ただ単に風邪で休んでるだけかもしれないでしょ? だから……」

美少女「うん……」ハァ


モブ子「お弁当……残すの? まだ二口ぐらいしか食べてないのに……」

美少女「うん……。食べる気がしなくて……」


モブ子「…………」

美少女「昨日の夜からなの……」

モブ子「?」

美少女「男君にLINE送ってるのに、ずっと既読にならないの……」

モブ子「…………」


美少女「普段なら……風邪でも引いてずっと寝込んでるのかなって思うんだけど……」

モブ子「…………」


美少女「今日は……あんな噂聞いちゃったから……。だから……」

モブ子「美少女……」


美少女「違う……よね……?」ポロポロ

美少女「そんな事……ないよね……?」ポロポロ

美少女「私……。私……心配で……」グシュッ

モブ子「落ち着いて。泣かないで。大丈夫だよ、きっと噂だから。だから……」


美少女「ぅ……」ポロポロ

モブ子「…………」

『生徒会長の家』


生徒会長「それじゃあ、友君。私の危険度は相変わらずレベル4なのね?」

『はい……残念ながら』

生徒会長「で、男君の危険度も変わらずレベル3でいいのかしら?」

『そうっすね。変化なしです』

生徒会長「……ちなみに、女の危険度は?」

『何故か昨日から一気に下がって、今はレベル2です。昨日の夜――生徒会長さんに電話が入った時点で調べた時には、レベル4だったんですけど……』

生徒会長「……それがよくわからないわね」

生徒会長「一つ聞くけど、友君。危険度っていうのは、そんなに簡単に上がったり下がったりするものなの?」

『それはまあ……そうと言えばそうなんですけどね』


『例えば、生徒会長さんが旅行に行こうとするじゃないですか』

『その時、交通手段に飛行機を選んだとしますね』

『ところが、その飛行機はトラブルがあって無事に到着出来ずに墜落する、という未来だったとします』

『そうすると、生徒会長さんの危険度はレベル4になるんですが』

『でも、途中で参加者が増えて、その人は飛行機は苦手だからって事で、交通手段を飛行機から新幹線に変えたとしますね』

『そうなると、生徒会長さんの危険度はレベル1まで一気に下がるんです』


『危険度の増減ってのは、こんな風に簡単に起こります。だから、そこまで珍しくはないんすけど……』

『今回の場合は、多分、そういう事故とかじゃなくて、犯人に狙われてるから――殺意と、それを実行するだけの行動力を相手が持ってるから、って事になるんすよ』

『それがそのまま危険度になってると思うんすよね』


生徒会長「つまり、途中で犯人の気が変わった、とそういう事かしら?」


『何とも言えないすけどね……。そうかもしれないです』


生徒会長「昨日、電話で女は、男君をギリギリで助けたと言っていたわ。つまり、犯人の顔を見た可能性が十分にあるという事よね」

生徒会長「だから犯人は、目撃者である女も殺そうと考えた……。だけど、一晩考えてそれを思い留まった。……そう考えるべきかしら?」


『断定は出来ないですけど……』

生徒会長「わからない事はまだあるのよね……」

生徒会長「昨日も散々話したけど、私の危険度が上がったという件よ」


生徒会長「それまではレベル3……恐らく拉致を考えていた犯人が、急に気がわりして私を殺そうと考えた、って事になるのよね」

生徒会長「そして、私は犯人の事を知っている……」


『それも、多分、なんすけどね……。俺、単純な危険度以外の何かを感じる時もあって……』

『生徒会長さんのがそれで、犯人は結構身近なところにいると感じたんすよ』

『だから、状況から推理するとそうなるんじゃないかと思います』

『相手を殺して永遠に自分のものにするって考えは、ストーカーによくある事だと思うんで……』


生徒会長「…………」

『昨日も聞きましたけど、一日経って落ち着いたと思いますし、犯人に心当たりありませんか、生徒会長さん?』

『付きまとわれた経験があるとか、しつこく言い寄られたとか……』

『もしくは、何か不思議な現象――特殊能力っぽいものを見た事があるとか……』


『女の子で、生徒会長さんの知り合いです。ひょっとしたらとかでいいんで』


『誰かいませんか?』



生徒会長「…………」

生徒会長「……そうね」



1、演劇部部長
2、女
3、コギャル
4、従姉妹
5、美少女
6、風紀委員

>>342

生徒会長「従姉妹さん……かしら」

『従姉妹さん?』

生徒会長「はっきりとした確証なんてまるでないの。だけど、ひょっとしてと言うのなら……」

『その……従姉妹さんって言うのは誰ですか?』

生徒会長「女の従姉妹よ。女と私は幼馴染みだから、昔からよく女の家に来ていた従姉妹さんとも私は面識があるの」

『女さんの従姉妹、ですか……』

生徒会長「ええ、そう。私の三つ上だから、今、大学三年生のはずよ」

生徒会長「温和で面倒見のいい人でね。昔はよく女と一緒にお祭りだとか、そういったものに連れていってもらったわ」

生徒会長「最近は私も忙しい事が多くて、ほとんど会ってはいないのだけど……」


『その人に何て言うか、告白されたりとか、そうじゃなくてもベタベタされたりとか、そういう事があったりとか?』


生徒会長「いいえ、そういった事は皆無ね」


『へ?』

生徒会長「従姉妹さんは、綺麗な人だから、昔からモテていたのよ」

生徒会長「中学二年生の時には年上の彼氏がいたわ。二年ぐらい付き合って別れたそうだけど……」

生徒会長「でも、そのすぐ後にもまた彼氏が出来て」

生徒会長「私が知ってるだけでも、三人は男の人と付き合っているはずね。レズビアンというのはちょっと考えにくいわ」

生徒会長「確か今も彼氏がいたはずよ。少し前に女がそう言っていた記憶があるもの」


『だったら犯人じゃないんじゃ……』


生徒会長「ただ」

『?』

生徒会長「半年ぐらい前の事かしら……。一度だけ見た事があるのよ」

生徒会長「女の家に遊びに行く途中の事よ。従姉妹さんを見かけたの」

生徒会長「そこに車が丁度突っ込んで来たのね。あわや大惨事になるところだったのだけど……」

生徒会長「従姉妹さんが、ふっと右手を動かしたと思ったら、車の方がそれていって……」

生徒会長「そのまま壁に激突。従姉妹さんは平然と運転手を助けに行ってたわ」

生徒会長「もちろん、運転手が咄嗟にハンドルを切ってそうなったのかもしれないけど……」

生徒会長「私にはそれが、従姉妹さんが車を逸らした様に見えたのよ。右手一本でね」


生徒会長「あの時はそこまで疑問に思ってなかったけど、でもひょっとして……」

生徒会長「今はそんな風に思えるのよね。従姉妹さんは『特殊能力者』なんじゃないのかって……」


『…………』

生徒会長「私の心当たりと言えばそれぐらいよ」

生徒会長「従姉妹さんは、正直、犯人とは思えない。だけど能力者の可能性はある……そんなところね」

『……そうっすか』

生徒会長「それで今、考えたんだけど友君」

『なんすか?』

生徒会長「あなたの能力、例えば写真を見て顔がわかれば、その人の危険度がわかる?」

『いえ……。某ノート漫画のアレじゃあないんで』

『写真じゃ無理っすね。直接見ないと』

生徒会長「そう……。従姉妹さんを友君に見てもらえれば、従姉妹さんが犯人かどうか、ついでに能力者かどうかもわかるかなと思ったんだけど……」

『あ、先に言っとくと、俺が他の能力者を見ても、その人が能力を持っているかいないかなんてわかりませんからね』

生徒会長「感覚とかでもわからないの? わかりそうなものだけど」

『無理です。さっぱりなんで。『危険』以外のものは俺には全くわかんないっすよ』

生徒会長「……となると、また打つ手なしなのね」フゥ


生徒会長「もしも、従姉妹さんが『能力者』なら、女の件もあるし、私たちの味方になってくれるんじゃないかと考えていたんだけど……」

生徒会長「ただ、万分の一の確率でも、従姉妹さんが犯人かもしれないと考えると、接触は友君に危険を調べてもらってからの方がいいでしょうしね」

生徒会長「どちらにしろ、私も友君も自由に動きがとれない身だから、それについてもまた考えなくてはならないし……」

生徒会長「なかなか難しいわね……お互いに」

『うーん……』

『なら、こういうのはどうっすか』

生徒会長「?」

『こっちから行くのは難しいんで、向こうから来てもらうってのは』

生徒会長「従姉妹さんの方から?」


『はい。俺が今いる病室を伝えるんで、生徒会長さんは昨日お見舞いに行った時に忘れ物をしたとか言って、従姉妹さんに取りに行ってもらうってのは』

『生徒会長さんは犯人に狙われてるんで、家から出れないし、結構自然だと思うんすけど』


生徒会長「ああ……なるほどね。でも、もしよ。万が一従姉妹さんが犯人だった場合、それは友君が危ないわよ」

生徒会長「私としては危険な橋を友君に渡らせるような真似はしたくないわ。これまで十二分に迷惑をかけてる訳だし」


『なら、丁度俺の隣の病室が空いてるんで、そっちに来てもらうってのでどうっすか?』

『危険が感じられなかったら、俺が従姉妹さんに事情を話して味方になってもらうよう説得しますし……』

『もし危険を感じるようならソッコーで逃げ出すんで』

『それでどうっすか?』


生徒会長「……そうね。それなら……」

生徒会長「じゃあ、私はこれから従姉妹さんに電話して頼んでみるから」

『はいっす。俺の病室は三階の307病室なんで、その隣の308病室って伝えて下さい』

生徒会長「わかったわ。それじゃ。行ってくれるようなら、その時間をまたこちらから連絡するから」

生徒会長「それじゃね」

『はい』

生徒会長「」ピッ

生徒会長「さてと、従姉妹さんの番号はと」ピッ


プルルル、プルルル、プルルル

ガチャッ


『もしもし? 久しぶりね、生徒会長ちゃん。どうしたの?』

生徒会長「お久しぶりです。お元気でしたか?」

『ええ、元気よ。って言いたいところだけど、女の事でちょっとね……』

生徒会長「ああ……そうですよね。ごめんなさい」

『ううん……大丈夫。えっと……それでどうしたの? 生徒会長ちゃんが急に電話してくるなんて、珍しいから……。女の事でかしら?』

生徒会長「いえ……。私ももちろん心配してますけど、そちらはもう警察の方に任せるしかないと思っているので……。まだ見つかってないんですよね?」

『うん、そうなの……。警察の方の話だと、誘拐とかの可能性は低いらしいんだけど、でも……』

生徒会長「気持ちはわかります……。ごめんなさい、話がそれてしまって。従姉妹さんに電話したのは、お願いがあって」

『……私に?』

生徒会長「はい。実は……」

『あら……お財布を?』

生徒会長「はい。小銭入れに近い小さなものなんですけど、その時は五千円札も一緒に入れてたので……」

生徒会長「申し訳ないですけど、大学って家までの帰り道にありましたよね。だから、お願い出来ないかなって」

『いいわよ、別に。大した事じゃないし。それでお友達の友君ね、その子のいる308病室に行けばいいのね』

生徒会長「はい。友君にはもう電話で伝えてあるので」

『わかった。帰りに寄るわ。多分、夕方の六時頃ぐらいかしら。その頃に行くって伝えておいて』

生徒会長「ありがとうございます。お願いします」

『相変わらず生徒会長ちゃんは固いわね。昔みたいに敬語を使わず話してくれればいいのに』

生徒会長「それは、その内、また。今はお互いに遊ぶ余裕とかないでしょうけど、事件とかが解決したらどこかに遊びに行きましょうね」

『そうね。女ちゃんと合わせて三人でね』

生徒会長「はい。それじゃあ」

『うん。またね。バイバイ』ガチャッ

『倉庫』


男「ぅ……」

男「ん……くっ」ムクッ

男「ぐあっ……」ドサッ


女「あ、男君、ダメだよ、ムリに起き上がろうとしちゃ」

男「だ……だけど……」


女「男君は寝てて。用事なら全部私がするから」

男「そうじゃなくて……いや、そうでもあるんだけど……」

女「?」

男「その……女さん、本当にここはどこ……なの?」

男「スマホもないし……家に連絡入れないと……流石に心配してるだろうから……」

女「ダメだよ。連絡なんかしたら、どこにいるか男君を狙ってる奴が嗅ぎ付けるかもしれないし」

女「男君の安全の為にも今は何もせずにじっとしてて。ううん、してなきゃダメなの」

男「……でも」

女「ダメなの! 危ないのは男君なんだよ! そんな危険な真似、私が絶対にさせないから!」

男「っ……」

男(何か……おかしい……)

男(相変わらず……体に全然力が入らないし……)

男(それに……居場所も教えてくれない上に……連絡も禁止されて……)

男(これ……監禁されてるんじゃないのか……?)


男(女さん……俺が殺されかけたって言ってたけど……)

男(それ……本当なのか……?)


男(考えてみれば……俺は何も覚えてない訳だし……)

男(そう騙されてるだけじゃ……?)


男(いや、でも、女さんは俺の命の恩人でもある……)

男(その女さんが騙すなんて……)

男(そもそも、俺を監禁しても女さんには何一つメリットなんかない訳だし……)


男(だけど……前に友が……)



『あの子、危険だから』

『近付くな。でないと……』

『殺されるかもしれない』



男(っ……)

男(女さんが俺を殺そうとしている……とは未だに思えないけど……)

男(でも……)



男「女さん……」

女「なに、男君?」


男「じゃあ……場所はいいから……せめてここが何の建物なのか教えて……」

男「何か見た感じ……倉庫っぽいけど……」

女「うん。倉庫だよ。でも、電気も水道も繋がってるし、不便とかはそんなにないでしょ?」

男「ここは……女さんの家の倉庫……?」

女「ううん。どこかは教えられないけど、私の家の倉庫じゃあないよ」

男「……じゃあ、誰の……?」

女「知らない」

男「…………」


女「実際、私もよく知らないんだよね、ホントに。従姉妹さんが、それならいいところがあるわって、教えてくれた場所だし」

男「従姉妹さん……?」

女「私の従姉妹だよ。頼りになるお姉さんって感じ。ほら、男君も『昨日』会ってるじゃない。あの人だよ」

男「昨日……会ってる……?」

女「背が高くて綺麗な感じの……。ここで会って話もしてるじゃん。覚えてないの?」

男「全く……ないんだけど……」

女「やっぱり『薬』のせいなのかな……? 男君、朦朧としてたし……」

男「くす……り……?」ゾクッ

女「何かね。従姉妹さんが言うには、男君、ちょっと特殊な病気にかかってるんだって。病名教えてもらったけど、長すぎて覚えきれなくて……」

女「今、体が重たいのもそれなの。だから男君はじっとしてなきゃダメなの」

男「……病気……って」

女「あ、でも大丈夫だよ。そのお薬は従姉妹さんに頼んで、一杯持ってきてもらってるし」

女「その薬の副作用で、意識が少し朦朧として、前後の記憶が飛ぶ事もあるって言ってたから、きっとそれだね」

男「……!」ゾクッ

女「だけど、安心して。体に害はないから。ちょっと記憶が混乱するだけだって従姉妹さん言ってたし」

女「従姉妹さん、医大生だから。しかもスッゴい優秀なんだよ。全面的に信頼してくれて大丈夫だからね」

男(なんだ……よ、これ……)


男(病気……? 薬……?)


男(しかも病名が謎で……聞いた事もない副作用が起こる薬……?)


男(絶対おかしい……! この子、何かヤバイ……!!)


女「あ、そうだ。そろそろ『薬』注射しないといけない時間だね」ゴソゴソ


男「」ビクッ


女「大丈夫、男君。従姉妹さんから注射の仕方もしっかり教えてもらってるから安心して」ニコッ


男「や……やめろ……!」

男「やめて……くれ……!!」


女「」キョトン

女「男君……ひょっとして注射嫌いなの? そんなに怯えて……」


男「あ、う、うん……! だから……!」


女「うーん……だけど、射たない訳にはいかないし……」

女「ちょっとだけ我慢して、男君。病気早く治さないと困るでしょ? だから、ね」


男「いやだ……! いやだ……!」

男「やめてくれ……! 頼むから……! 頼むからっ!」

『午後六時頃 友の病室、手前の廊下』


友「そろそろ従姉妹さんが来る頃か……」

友「従姉妹さんは犯人じゃない限り、俺の顔を知らないはずだから……」

友「ここの廊下で来るのを待つと」


友「もしも犯人なら30メートル手前に入った時点で、俺は危険を探知できるし」

友「犯人じゃなかったら、そっちの空の病室に入っていくから誰かすぐにわかると」


友「我ながら完璧だぜえ。惚れ惚れしちま」


キュイーン!!
『危険探知! 危険レベル7 距離三十メートル』


友「!?」

友「ちょっ! マジかよ!?」

友「マジでドンピシャ!? 従姉妹さんが犯人!?」


友「いや、でも待て! もしも近付いて来てるのが犯人なら、危険レベルは『即死の可能性が高い』レベル10になるんじゃねーのか!?」


友「いや、そもそも、近付いて来てるのが従姉妹さんじゃなくて犯人なのかもしれねーし! たまたま犯人と一緒に近付いて来てるだけなのかもしれねーし!」


友「どっちにしろ、レベル7なら死ぬ事はありえねー! 重傷は負うかもしれねーが、生き残れるのは確かだ!」


友「どうする! どうする、俺!?」


キュイーン!!
残り距離25メートル!


友「ヤベエ! そろそろ向こうの角を曲がって姿が見られる!」

友「確かめる!? 逃げる!? 隠れる!? 戦う!? とにかくどうするか決めねーと!」

友「ぐっ……!」


>>357

戦う

友「た、戦う! やってやるよ! オラァ!」

友「死ぬ事がないなら、覚悟を決めてやるよ! 最悪、逃げればいいんだしなっ!」


キュイーン!!
距離20メートル!


従姉妹「」ツカツカ





友「来たっ! 多分、アレはマジで従姉妹さんだな!」

友「生徒会長から聞いてた通り、背が高くて綺麗なお姉さんだ! 多分、間違いねえ!」

従姉妹「」ツカツカ


キュイーン!!
距離15メートル


友「ぐっ!」サッ





従姉妹「あらあ、友君じゃない。嬉しいなあ、わざわざ出迎えてくれたの?」ニコッ


友「やっぱ、俺の顔も知ってるのかよ……! じゃあマジで従姉妹さんが……!」



従姉妹「ふふ。でもさあ、友君。その『握った拳』はなあに?」

従姉妹「ダメよお、手は開いておかないと。でないと、お姉さん、歓迎されてないみたいで悲しいじゃない。本気で泣いちゃうよ?」


友(危険は従姉妹さんの右手だけに集中してる……! て事はあの右手が何かの能力を持ってるって事だ……!)

友(あの右手をかいくぐって、腹か顔面に蹴りを入れれば俺の勝ちだ、多分! 他は普通の体のはずだから、少なくとも隙は出来るはず!)

友(先手必勝! ケンカってのは気迫と先制攻撃で八割決まるって話だしな!)

友(『危険回避(リスク アベーション)』を全力で発動しつつ、蹴り飛ばす! 行くぞ!!)


友「『危険回避(リスク アベーション)』!!」ダダダッ!!

従姉妹「あらあら、友君ってば。その能力、また『思い出し』ちゃったの?」

従姉妹「あ、でも、そうよね。それを思い出さないと、あの時は友君の命が危なかったし……」

従姉妹「それ自体はいいんだけど、でも、私その能力……」


従姉妹「『大嫌い』なの」

従姉妹「『あの女』の事を思い出しちゃうから」


従姉妹「二度と使わないようにって、折角、『忘れさせて』あげたのになあ……」

従姉妹「友君が今、変なのもそのせいだよね、きっと。でも、大丈夫よ。私が『治療』してあげるから。ふふっ」


従姉妹「発動……『変幻自在の右手(スペース コントロール)』」スッ

友は従姉妹のその言葉を全く聞いてなかった


『危険回避(リスク アベーション)』を全力で発動しつつ、従姉妹が右手を動かすのを視界にとらえた瞬間、勢いよく横へと跳ね、病院の壁を蹴って飛び上がる!


直線的に向かっていた線の動きから、一気に円を描く点の動きへ!


能力『危険回避(リスク アベーション)』の力によって、どんな無茶な動きをしようと、転倒などは一切有り得ない


人間が行う攻撃というものは、重力の関係により、とかく平面なものになるのだが、この時の友の攻撃は完全に立体的であり、虚をつくには十分過ぎるものだった


壁を利用して跳び、体を体操の月面宙返りのようにひねらせながら繰り出された蹴りは、格闘技においてほぼ素人の友が行ったとは考えられないほど、正確さも威力も十二分に備わっていた


それは、六割ほどは偶然と幸運が友に味方した結果だったが、しかしそれがどんな理由であれ、放たれた蹴りは正確に従姉妹の顔面を狙い、それが当たれば従姉妹はまず気絶する程の威力があったのは事実だ


しかし、その蹴りは届かなかった。永遠に


0.5秒にも満たない僅差で、従姉妹が右手を動かし、なぎ払うように手前の空間を斜め方向に『歪ませた』から


友の体は半回転し、放たれた蹴りはほとんどオーバーヘッドキックのようになって、誰もいない空間を虚しくかすめた


それでも、友は転倒しなかった。『危険回避(リスク アベーション)』の力により、猫のようにしなやかに着地したから


だが、着地した一瞬の隙に従姉妹の右手で肩を掴まれた。それは掴まれただけであり、まだ『回避』するほどの『危険』とは言えない。友の心情はともかく、少なくとも『危険回避(リスク アベーション)』はそう判定した


この時、もしも友が従姉妹の第二の能力を知っていたら、『危険回避(リスク アベーション)』は発動したかもしれない。しかし、それは結果論であり、今となっては確かめようもない事だった


その瞬間、従姉妹の第二の能力『変幻自在の右手、act2(ハート コントロール)』が発動し、友は逃げる事が完全に不可能となった


虚ろな瞳と虚ろな心で友がその場に倒れ込む。これは足の怪我の為で、つまり発動していた『危険回避(リスク アベーション)』の効果がなくなったから


しかし、倒れるよりも遥かに危険な事態が友を待ち受けているのは明白だった


従姉妹の薄く歪んだ微笑が、友にそっと向けられた

従姉妹「ふふっ。友君、友君。愛しの友君。つーかまえた♪」ニコッ

友「あ、う……頭が……!」グラリ……


従姉妹「ふふふふふ……」


従姉妹「ねえ、友君。今の何かなあ? 何で私にあんな事をしちゃったのかなあ?」

友「…………」

従姉妹「友君、何で?」

友「……ゴメンナサイ。従姉妹サンガ最近来ナクテ寂シカッタカラ……」

従姉妹「ああ、そうだったの。……ごめんね、友君。そんなに寂しい思いをさせてるなんて気が付かなかったの」

従姉妹「こんなんじゃ、私、友君の『彼女』失格だね……ごめんね」

友「ソンナ事ナイ……。従姉妹サンハ俺ニハモッタイナイグライノ素敵ナ人ダヨ……」

従姉妹「そう……? でも……」

友「従姉妹サンノ事、俺、愛シテル……。俺ハ従姉妹サンガイナキャ生キテ生ケナインダ……。ダカラソンナ事ヲ言ワナイデ……」

従姉妹「そんな……/// もう、友君たら……///」テレテレ

従姉妹「でも、前にも言ったよね。その『従姉妹さん』って呼ぶのをやめてって。また忘れちゃったのかな?」

友「ゴメン……。従姉妹サン……。ウウン、従姉妹……」

従姉妹「ふふっ/// そう、そう呼んでね///」


従姉妹「それにしても、友君は忘れん坊だよね。私たち、もう『三ヶ月』も付き合ってるっていうのに」

友「ゴメンゴメン……。ハハハハハ……」


従姉妹「残念だけど、今、二人の愛の巣は女ちゃんに貸しちゃってるから……。二人っきりになるっていうのは難しいけれど……」

従姉妹「でも、友君を殺そうとしたゴミを片付けたら、また一緒にあそこで過ごせるから、少しだけ我慢してね、友君」

友「ウン……寂シイケド我慢スル……」

従姉妹「私、友君の子供が早く欲しいから……その時は、ね?/// また一杯してね///」テレッ

友「ウン……。マタ頑張ル……。俺モ従姉妹トノ子供ガ欲シイカラ……」

従姉妹「それで子供が出来たら、一緒に役所に行って結婚して……。二人で幸せな家庭を築こうね。ふふっ」

友「ソウダネ……。今カラ楽シミダナア……。ハハハ……」

従姉妹「大好き、友君///」チュッ

友「ヨセッテ……。照レルダロ……。テレテレ……」

従姉妹「ふふふ……/// ごめんね、つい」

従姉妹「ああ、そうそう。それとさあ、友君に一つ聞きたい事があるんだけど……」

友「ナニ……? 従姉妹ノ頼ミナラ何デモ答エルヨ……」

従姉妹「昨日からさあ、友君に付きまとってるウジむ――生徒会長ちゃん、いるじゃない?」

従姉妹「昨日の夜からずっと友君に近付いて、ベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタベタすり寄ってきたあの便所虫の事を、ああ、いけない。生徒会長ちゃんの事をどう思ってるかなって?」

友「アア……アノ気持チ悪イ雌豚の事……?」

従姉妹「ダメよお、友君。いくら本当の事でも、そんな事を言わないで。生徒会長ちゃん、私とは昔からの付き合いなんだから、ね?」

友「ダケド……アイツ媚ビタ目デ俺ノ事ヲ見テクルカラ、見テルト吐キ気ガシテキテ……」


友「正直、死ンデ欲シイカナッテ思ッテル……」


従姉妹「やっぱり友君もそう思ってた? そうだよね、気持ち悪いもんね、あの売女」

従姉妹「私としては、ゴキブ――生徒会長ちゃんとは昔の縁があるからあ。■すまではどうかなあ……って思ってたんだけど……」

従姉妹「でも、友君が気持ち悪いって言うならしょうがないよね。■して■■ちゃっおか。前のあの『下水道女』みたいに」


友「ソウダネ……。ソウスベキダヨネ……。俺モ手伝ウヨ……」

従姉妹「そう? ありがとね、友君。嬉しい」ニコッ

従姉妹「じゃあ、友君は上手くあのゴキブリを呼び出してくれないかな? 処理と片付けは、友君の手が汚れちゃうから私がするから」

友「ワカッタ……。任セテオイテ……」


従姉妹「ありがとう。それじゃあ……」


従姉妹「能力……最大発動!」キュイーン!!


友「ア、ぎぃ、がっ……!!」

友「頭……ガ……!! ぐあっ……!!」


従姉妹「ちょっとだけ我慢してね、友君。痛いのはほんの少しの間だから……」

従姉妹「これは友君に『必要』な事なの。ゴキブリとはいえ、殺すのは気持ち悪いもんね……。出来る事なら忘れたいだろうから……」

従姉妹「だから、記憶を『歪ませ』ておかないと……。友君は何も知らなくていいの……。ううん、知らない方がいいの……」

従姉妹「もう少しだから、我慢してね……。友君……」


友「あ、ぐ、あがっ……!!」グラッ……

『病室』


友「ん……」ムクッ

友「あ……ぅ……」ドサッ


友「何だ……これ……力が入らなくて……」

友「起き上がれ……ない……」

友「それに……頭も痛む……。クラクラして……」


従姉妹「大丈夫、友君……?」

友「あれ……従姉妹さん……。あれ……俺……何でここに……?」


従姉妹「さっき、トイレに行くって起き上がろうとして、転んで頭を打ったでしょ? 覚えてないの……?」

友「え……ああ、そういえば……そんな気も……」

従姉妹「ダメよ、足の怪我が治ってないのに、そんな無茶をしちゃあ」

友「すみません……」

従姉妹「それよりも友君、さっきの話、本当の事……?」

友「さっき……?」

従姉妹「ほら、友君、思い出したって言ってたじゃない……」


従姉妹「刺された時、犯人の逃げていく姿を見たって……」

従姉妹「生徒会長ちゃんだったんでしょう?」


友「はい……。ちらっとでしたけど、あの顔は生徒会長でした……」

友「騙してたんです……あの人……。犯人はいもしないストーカー女だとか言って……嘘をついて……」


従姉妹「私としてはちょっと信じられないんだけど……。あの生徒会長ちゃんがそんな事をするなんて、とても……」


友「だけど、本当に……。俺だって……信じたくはないですけど……。生徒会長が……自作自演してたなんて……」

従姉妹「…………」

従姉妹「……ところでさ、友君」

友「はい……」

従姉妹「その生徒会長ちゃんの話、私、初耳なんだけど少し詳しく聞かせてもらえないかな……?」


従姉妹「ストーカー女って言うのは?」


友「生徒会長のところに……電話がかかってきたって話です……」

友「それが犯人からで……。犯人は生徒会長の事が好きで……。それで近付いた俺と男を……殺そうとしたっていう……」

友「でも、デタラメな話です……。犯人は生徒会長なんで……」


従姉妹「ふうん……」

従姉妹「それで……友君はどうしたいの?」

友「もちろん生徒会長を捕まえて、罰を与えてほしいです……。俺、正直、あの人の事を憎んでますし……」

従姉妹「そうよねえ……。足を刺されてるものね。当たり前よね」


友「でも、俺、足を怪我してて動けませんし……」

友「警察に連絡しても……多分無駄です……。証拠がありませんから……」


従姉妹「だったら、友君。いい方法があるよ」


友「え……?」

従姉妹「私は生徒会長ちゃんと知り合いだから、私が生徒会長ちゃんの家に行って、証拠を探してくればいいでしょ?」

従姉妹「見つかるかどうかはわからないけど、詳しく調べてみればわかるかもしれないわ」


友「……でも、そう簡単には」


従姉妹「うん。生徒会長ちゃんが家にいたら難しいと思う。だけど、友君が外に呼び出してくれれば……」

従姉妹「その間に調べる事は出来るんじゃないかなあ?」


友「ああ、なるほど……。そうですね……ひょっとしたら」

友「でも……見つかったら危険ですよ……。だから……」


従姉妹「大丈夫よお。だって私、『能力者』だから。さっき教えてあげたでしょう? 忘れちゃったの?」


友「あ……えと……それマジですか……?」


従姉妹「本当よ。姿を消せる能力。だから安全なの」


友「あ、じゃあ……お願いします……。俺……電話してみるんで……」

従姉妹「ええ、任せておいて」ニコッ

『生徒会長の自宅』


生徒会長「遅いわね……友君からの連絡」

生徒会長「もうそろそろ、結果の電話があってもいい頃だと思うのだけど……」


プルルル、プルルル、プルルル


生徒会長「と、思ってたら来たわね」ピッ

生徒会長「もしもし、友君? どうだった?」

『あ、生徒会長……さん……ですか?』

生徒会長「他の誰かの声にでも聞こえる?」

『いえ……』

生徒会長「それで、結果はどうだったの? 従姉妹さんは能力者だった? 協力はしてくれるって言ってくれたかしら?」

『え……??』

生徒会長「……そういう話だったでしょう? 声に張りもないし、まさか寝惚けてる訳じゃないでしょうね?」

『あ……いえ……。ちょっとさっきから……体が疲れてるみたいなんで……』

生徒会長「それは……悪かったわ。大丈夫? ストレス系の心労とかではない?」

『いえ……大丈夫です……。それよりも……さっきの話なんですけど……』

生徒会長「ああ、そうね。従姉妹さんは能力者だったのかしら?」

『…………』

生徒会長「もしもし? 友君?」

『……そうですね。そう……でした』

生徒会長「やっぱりね……。それで協力はしてくれる事になったのかしら?」

『…………はい』

生徒会長「良かった。まずは第一歩というところね。それで、従姉妹さんはどんな能力だったの?」

『あ……えと……』

生徒会長「……?」

『それなんですけど……生徒会長……さん』

生徒会長「何かしら?」

『ちょっと説明し辛いんで……。こっちの病院まで……来れませんか……?』

生徒会長「……?」

『従姉妹さんも……そうした方がいいって言ってるので……』

生徒会長「…………」

生徒会長「行く事自体は不可能ではないと思うけれど……」

生徒会長「でも、それをすると、その後が少し厄介ね。不在にする時間からいって、両親に私がいない事が見つかるのは確実でしょうし……」

生徒会長「それに、私自身の安全が少しね。私の危険度もレベル4なのでしょう?」

『危険度……? レベル4……??』

生徒会長「あなた自身が言った事でしょう? 本当に大丈夫なの?」

『あ……えと……え?』

生徒会長「? もしもし?」

『大丈夫デス……。生徒会長サンノ危険度ハ今、レベル1ナンデ……』

生徒会長「……いつのまにかまた下がったの?」

『ハイ……安全デス……』

生徒会長「……それなら、まあ……従姉妹さんもそう言ってる事だし……」

生徒会長「……ただ、少しだけ考える時間をちょうだい。両親に見つからないで脱け出す方法を考えないといけないから」

『ワカリマシタ……。ソレナラ、家ヲ出ル時ニハ、マタ連絡下サイ……』

生徒会長「……ええ。わかったわ。……それじゃ」ピッ

生徒会長「何か妙ね……」

生徒会長「何がどうとは言えないけど……変な違和感があるわ」

生徒会長「それに、電話で話しにくいって……どういう事かしら?」

生徒会長「危険度がいきなりまた下がったというのも意味がわからないし……」

生徒会長「これまで誰かが私を殺そうとしていたから、危険度はレベル4だったのよ」

生徒会長「それがレベル1まで急に下がった……」


生徒会長「普通に考えれば、犯人が捕まったかあるいは死んだかのどちらかね」

生徒会長「急に心変わりを起こしたってのも否定は出来ないけど……。犯人は異常者なのだし……」


生徒会長「ただ、友君の様子が少しおかしかったのも事実よね……」

生徒会長「どうするべきかしら……」


>>378

カマをかけて見抜く

生徒会長「友君を疑いたくはないけれど……」

生徒会長「私自身の命もかかっているし、少し探りを入れてからの方がいいわね」

生徒会長「問題はどうやって探りを入れるかよ」


生徒会長「下手な事を言えば、怪しまれるし不信感も与えてしまう」

生徒会長「それに、二度も三度も通用するような方法じゃないわ。チャンスは一度きりと考えるべきね」

生徒会長「何て言えばいいかしら……」


>>380

こんな安価怖いわwwwwww

安価下

生徒会長「古典的な手段だけど……」

生徒会長「核心には触れず、失敗してもリスクの少ない質問にした方がいいわね……やっぱり」


生徒会長「となると……」


生徒会長「」ピッ、ピッ


プルルル、プルルル、プルルル

ガチャッ


『もしもし、友です……。生徒会長……さん……ですよね? 家から出られるようになったんすか……?』


生徒会長「いえ、そうじゃなくて……」

生徒会長「一つ聞き忘れていた事があったのよ。私とした事が迂闊だったわ」


『なんすか……?』


生徒会長「お願いしておいた『例の件』、あれはどうだったかしら?」


『例の件……?』


生徒会長「そう、頼んでおいたやつよ。あちらは上手くいった?」


『あ……えと……はい、大丈夫です……。そっちもバッチリなんで……。とにかく……それも一緒に合わせて話すんで……。一旦、こっちにお願いします……』


生徒会長「そう、ありがとう。まだちょっと無理だけど、何とか行けるように頑張ってみるわ。もう少し待っていて」


『はい……それじゃ……』ガチャッ


生徒会長「…………」

生徒会長「」フゥ……

生徒会長「決まりね……」


生徒会長「友君は嘘をついているわ」


生徒会長「こうなると、私の危険度がレベル4から1に下がったと言うのも嘘でしょうね……」


生徒会長「じゃあ何で嘘をついているのかと言えば……」

生徒会長「考えられる理由は三つね」


1、友君が私を拐う、あるいは殺そうと考えている
2、友君が『能力』によって操られている
3、友君が犯人によって脅されている


生徒会長「これは、少し状況を整理する必要があるわね……」

生徒会長「まず、友君が犯人という事はまず有り得ないわ」

生徒会長「私にかかってきた電話は、確実に女性の声だったし」

生徒会長「実際に友君も狙われている。それはない、と考えていいはずよ」

生徒会長「共犯……というのも考えにくいわね。もしそうだとしたら、これまでいくらでもチャンスはあったのだから」

生徒会長「つまり、1の可能性はかなり低い。2か3のどちらかね」


生徒会長「そして、最悪な事にも2か3の場合は……」

生徒会長「犯人は現在、友君に接触している、と見るべきね」

生徒会長「どちらにしろ、友君が危険な状態にいるのは間違いないわ」


生徒会長「そして、犯人は……」

生徒会長「このタイミングからして、従姉妹さんの可能性が極めて高いのよね……」


生徒会長「もし私の想像通り、従姉妹さんが『能力者』だったとしたら、それはもう最悪の展開ね」

生徒会長「さっきの電話の、友君の受け答えからして、記憶を操作されてるか消されてるかのどちらかでしょうし……」

生徒会長「首尾よく私を呼び出す事が出来たら、友君は用済みという事で殺される可能性が極めて高い……」

生徒会長「かといって、私が行かず警察に連絡なりすれば、それはそれで殺されるでしょうね……。どちらにしろ友君の命が危ないわ」


生徒会長「時間を稼ぐ事は出来るかもしれないけど……。でも、稼いだところで打つ手がないというのが現状よ」

生徒会長「それに、今日は無理だと言ったら、友君は殺される可能性もある……。でも、行ったら私が多分殺される……」

生徒会長「詰んでるわね……。どうすればいいのよ……。あまり考えている時間もないというのに……」


1、病院に行く
2、家にいる
3、その他

>>389

えー、これはもう無理だろ…都合よく能力者でも現れない限りは…
またゲームオーバーにしてリプレイしかないんじゃないか?

安価下

コンコン

生徒会長「」ビクッ


「生徒会長、ちょっといいかしら?」


生徒会長「あ、お母さん……」ホッ

生徒会長「なに? 急ぎの用事? そうでなかったら今は後にしてほしいんだけど」


「用事というか……。お友達がみえてるの。あなた会いたいって。断ろうかと思ったんだけど、演劇部部長さんだったから……どうしようか私も迷ってね……」


生徒会長「演劇部部長が……? ん……そうね……」


生徒会長(行くにしろ、別の方法を考えるにしても……協力者がいた方がいいのは確かね……)


生徒会長「わかったわ。丁度、話し相手も欲しかったし、断るのも失礼よね。お通ししてもらえる?」


「そう? じゃあ、上がってもらうわね。すぐにお茶も持ってくるわ」


生徒会長「ええ、お願い」

『友の病室』


従姉妹「それでねえ、女ちゃんったら男君にぞっこんみたいでね」

友「ヘエ……ソウナンダ……」

従姉妹「何だか付き合い始めた頃の私たちを見てるみたいで初々しくて……ふふ。見てて飽きないのよ」

友「男モ隅ニ置ケナイナア……」

従姉妹「何か応援したくなっちゃうっていうか……。可愛らしいなあって」


プルルル、プルルル、プルルル


従姉妹「あ、ごめんね、友君。ちょっとだけ待ってて」スッ

友「ん……ぅっ……」


従姉妹「誰からかしら? こんな時に……」ゴソゴソ

『着信 公衆電話』

従姉妹「…………(女ちゃんから)」


従姉妹「ちょっとごめんね、向こうで電話を取ってくるから」スクッ

従姉妹「」トトトッ


ガラッ、ピシャン


友「ぅ……」

友「ヤバイなあ……さっきから、ちょっと頭が痛いわ……」

友「体も妙に気だるいし……」

友「風邪でも引いたかな……俺……?」

『病院 一階』


風紀委員「……いない?」

受付嬢「はい。患者さん全員のお名前をお調べしたのですが、そういうお名前の方はこの病院には入院はされてませんね」

風紀委員「でも、ここの病院に搬送されたという話を私は聞いています」

受付嬢「そう仰られても……。外科だけでなく、内科、神経科、産婦人科、小児科まで二回もお調べしたのですよ」

受付嬢「聞き違い、という事はありませんか? 申し訳ありませんが、もう一度、あなた様の方で確認をお願いします」


風紀委員「…………」

『男の家、近く』


美少女「……そんな」

美少女「……心配になって、男君の家を調べて来てみたら」

美少女「あの噂……本当だったの……?」

美少女「二階の窓ガラス……壊れてる」


美少女「男君、確か前に……二階が自分の部屋だって……」

美少女「じゃあ、もしかして本当に……」ウッ

美少女「男君……男君……」ウゥ……



私服警官A「おい、あの子……」ボソッ

私服警官B「……ああ」コクッ


私服警官「」ヒソヒソ

私服警官「了解」ボソッ

『駅前』


コギャル「んー……」キョロキョロ

コギャル「何か、カモになりそうなオッサンいねーかな」


モブ男A「」スタスタ


コギャル「あいつは、顔がいいけど、きっちりしてて真面目そうだしなあ」


モブ男B「」トコトコ


コギャル「あいつは、いかにも貧乏っぽい……。論外だな」


モブ男C「」トボトボ


コギャル「あれは金は持ってそうだけど、ダセエ。センスがない」


コギャル「んー……もうちょっと待ってみっかな」

『病院 休憩所』


従姉妹「周りに誰もいないわね……」キョロキョロ

従姉妹「」ピッ

従姉妹「もしもし、女ちゃん? どうしたの?」


『あ、従姉妹さん! 助けて!!』


従姉妹「助けて……? 何があったの!?」


『あ、あのね、男君が、男君が!』グスッ


従姉妹「男君が?」


『ちゅ、注射したの! そしたら急に気絶しちゃって!』グスッ

『ぜ、全然、目を覚まさなくて! 血もだらだら出てきて! わ、私、どうすればいいかわからなくて!!』グシュッ

『このままじゃ、男君が! 男君が死んじゃう!!』グシュッ


従姉妹「…………」

従姉妹「落ち着いて、女ちゃん。それは何分ぐらい前の話?」

『に、20分ぐらい前! 全然、目を覚まさないから、急いで電話ボックスまで来たの!!』ポロポロ

従姉妹「それまで男君、息をしていた? 呼吸が止まってたとかはないのよね?」

『う、うん!』ポロポロ

従姉妹「だとしたら、血管に空気が入ったとかそういう事ではないわね……。それね血がだらだらって事は……」

従姉妹「女ちゃん、男君に注射する時、どんな感じだった? ひょっとして無理矢理に注射したとか、そういう事はない?」

『あ、あのね、男君、注射嫌がったから……! だけど、薬は射たないといけないと思って、だから……!』ポロポロ

従姉妹「なら、それが原因ね、多分……」フゥ


従姉妹「ごくたまにいるのよ、針だとか注射だとかにトラウマを持ってる人とか……。そういう人に無理矢理すると失神する事があるわ」

従姉妹「血が大量に出るのもそう。体に力が入りすぎてるからよ。それほど心配する事はないわ。念の為にすぐ行くけど……」

『ほ、本当に……?』グシュッ

従姉妹「ええ、とりあえず女ちゃんは男君の側にいてあげて。気絶してるというなら、その内、血も止まるわ。ひょっとしたら、もう止まってるかもね」

『よ、良かった……。男君、病気が悪化したんじゃないかって思って……。うぅ……』グシュッ

従姉妹「大丈夫よ。とにかくすぐ行くわ。20分ぐらい待っててね。その間は、男君に何もしちゃダメよ。動かさずに安静にさせておいてね」

『うん……』グシュッ

従姉妹「それじゃ……」ピッ


従姉妹「」フゥ……

従姉妹「男君、注射を嫌がったのね……。もう一回、記憶を『歪ませ』といた方がいいかな……」

従姉妹「困ったものねえ、男君も。もう」

『病室 戻ってきた後』


従姉妹「ごめんね、友君。ちょっと、どうしても外せない急用が出来ちゃったの」

従姉妹「だから、今日のところは生徒会長ちゃんをこ――犯人かどうかの証拠を調べるのは延期してもらえないかな?」


友「あ、そうなんすか……。それならしょうがないっすね……」


従姉妹「ごめんね、いきなりで」

友「いえ……。俺も今日は何か体がダルいんで……。丁度いいかもしれないです……」


従姉妹「それじゃあ急いでいるからこれでね。また、明日来るから」

友「はい……。生徒会長には今日は都合が悪くなったって電話しておくんで……。それじゃ……」

『生徒会長の家』


母親「粗茶ですけど、どうぞ」

演劇部部長「ありがとうございます」ペコリ


母親「それじゃあ、私はこれで。ゆっくりしていって下さいね」

母親「あの子もねえ、こんな時に電話だなんてねえ。本当にもう……。後にすればいいのに」チラッ



生徒会長「……そう。いえ、それは私としても助かるわ。今日は少し無理そうだったし」

生徒会長「ええ。ええ……。わかったわ」



母親「後で少し注意しておくから、許してあげてね」

演劇部部長「いえ、勝手に訪ねて来たのは私の方ですから。気にしてませんし」

母親「そう? でもねえ……」

演劇部部長「お茶、ありがとうございます。ですけど、少し生徒会長と二人で話したい事があるので、しばらくの間、席を外してもらえると嬉しいんですけど……」


母親「ああ、ごめんなさいね。気が付かなくて。それじゃあ、私はこれでね。お父様に宜しくお伝え下さいね」

演劇部部長「はい」


母親「」スクッ、トコトコ

ピシャン……


生徒会長「ええ、それじゃまた」ピッ

生徒会長「」フゥ……


生徒会長(会うのは、明日に延期ね……。打つ手がなくて困ってたから助かったわ)

生徒会長(問題が先送りになっただけなのだけど、多少は余裕が出来たわね……)

生徒会長(今日中に何か妙案を思いつけば……。いいえ、思いつかないと……)



演劇部部長「生徒会長、もういいかな?」


生徒会長「あ、ええ。……大丈夫よ。悪かったわね、待たせて」

生徒会長「それで……大事な話って何かしら? 私が犯人に狙われているってわかってて、それでも家まで来るほどの事なのよね?」

演劇部部長「……うん」



演劇部部長「生徒会長……力が欲しくない?」

演劇部部長「特別な……普通の人にはない力。それが欲しくない……?」



生徒会長「……!?」

生徒会長「……どういう事、演劇部部長?」

演劇部部長「少し話が長くなっちゃうんだけどいいかな?」

生徒会長「どうぞ」


演劇部部長「まずね。こんな事を言っても信じてもらえないかもしれないってのは私もわかってるのね」

演劇部部長「私だって最初は信じられなかったの。でも、それでも信じて欲しいの。私の為じゃなくて、生徒会長の為に」


生徒会長「……そこら辺は気にしないでいいわ。どんな話でも私は最後まで聞くから」

生徒会長「ここ最近は妙な事ばかり起きてるし、信じられないような事も沢山あったから。どんな事でも遠慮なく言って。大体の事は信じるから」


演劇部部長「うん……。それなら覚悟を決めて言うよ」

生徒会長「ええ」

演劇部部長「私はね、宇宙人に改造された人間なの」


生徒会長「!?」

生徒会長「ごめんなさい……演劇部部長。……もう一度言ってくれる?」

演劇部部長「やっぱり信じてくれないよね……。いくら生徒会長でも、そう思うよね……」シュン……

生徒会長「……そういう訳では……ないけど」


生徒会長「ただ、余りにも私の想像を遥かに越えていたから……。宇宙人に改造……?」

演劇部部長「うん。私だけでなく、生徒会長も」

生徒会長「…………」

演劇部部長「生徒会長だけじゃなくて、男君もそうなの。あと、生徒会長は知らないと思うけど、美少女もそうなのよ」

生徒会長「…………(どう反応すればいいのよ、これは……)」


演劇部部長「だから、私には特殊な『チカラ』があるの。もちろんそれは宇宙人に改造された生徒会長にも。でも、今のままじゃ駄目なの」

演劇部部長「その『チカラ』は普通の事じゃ目覚めないから。生徒会長がそれを手に入れるには……」

演劇部部長「この『薬』を飲んでもらうしかないの」スッ


生徒会長「…………(ますます話が怪しくなったわね)」


演劇部部長「生徒会長、今、命を狙われてるかもしれないんだよね? 危険なんだよね?」

演劇部部長「だから、この『薬』を飲んで特別な『チカラ』を手に入れたらどうかなって……」

演劇部部長「でも、これは危険な薬でもあるの。どんな副作用があるかわからない。それでもいいって生徒会長が思うなら……」



演劇部部長「この『薬』を飲んでみて」



生徒会長「…………」



1、演劇部部長は親友。信じる
2、演劇部部長は犯人かもしれないし、頭がどうかしてるのかもしれない。信じられない

>>404

1

生徒会長「私はあなたの事を信じるわ」

演劇部部長「本当に?」

生徒会長「ええ、これまでの付き合いだもの。信じるわ。それは絶対よ」


生徒会長「でもね」

演劇部部長「?」


生徒会長「信じるのは演劇部部長であって、話の全部を信じるという事ではないの」

生徒会長「もしかしたら、演劇部部長が騙されているのかもしれないでしょ? そうしたら、私はそれが嘘か本当かを確認して教える必要があるわ」

生徒会長「あなたも人間ですもの。嘘か本当か完全に見通す事なんて出来ないはずよ。だから……」


生徒会長「詳しく聞かせてもらえないかしら? その、『宇宙人に改造された』という話を」

生徒会長「それを聞いてから、改めてその薬を飲むか飲まないか決める事にするから」


演劇部部長「あ、ごめん。そうだよね……。うん……」

演劇部部長「なんか話を急ぎすぎたね。きちんと説明する。大事な事だし」


演劇部部長「順序よく、きちんと。かなり長くなると思うけど……」

演劇部部長「生徒会長は、ここら一帯に伝わる龍神伝説を聞いた事がある?」

生徒会長「一応はね。詳しく知っている訳ではないけど」

生徒会長「龍神を祀る神社の巫女が、数々の奇跡を起こした……。知ってる事はそれぐらいね」

演劇部部長「それなら、説明するけど……」



江戸時代初期、この町のすぐ側にある〇〇山という山に一人の女性が山菜を取りに向かったが、丸一日経っても山から降りて来ず、行方不明となった


翌日、明るくなってから、心配したその女性の家族が、数人の知り合いと共に山の捜索を行った。しかし、何も見つからない


捜索は三日間行われたが、姿どころか、着物の切れはし一つ見つからない。犬も使われ、彼女の足取りを追ってみたが、山の中腹の滝壺あたりでその匂いは途切れてしまっているようだった


滝壺に落ちた形跡はない。しかし、それ以上は何一つ手がかりがない。山賊や人買いに拐われた、あるいは山のどこか見つかりにくい場所から転落して、そこで死んでいるのではないか


悲嘆した家族は、娘の為に葬式の準備を始めた。しかし、それを行っている真っ最中、消息を消してから丁度五日目の昼に、娘は家へといきなりふらりと帰ってきた


どこに行っていたのか、と慌てて尋ねる家族に対して娘はこう答えた


「龍神様の社(やしろ)にいました」


話を聞いてみると、滝壺近くまで行った時に、彼女は龍神が滝を昇るのを見たという

それを呆気に取られて眺めていたら、不思議な光に包まれ、空へと自分は上がっていった

きっと龍神の元へ召されるのだと娘はそう思った


……だが、それからの記憶はほとんどない。また気が付くと、彼女は滝壺前に山菜を入れた篭を持って立っていた


あれは夢だったのだろうか? 否。そんなはずはない


何故なら自分には不思議な『チカラ』が宿っていたから。それは水を自在に操る『チカラ』だ


龍神は水の神様だ。つまり、これは龍神様が与えてくれた『チカラ』に間違いない


娘はそう確信した

その後、彼女は数々の『奇跡』を起こした事により、当事、この地方一帯を治めていた大名から正式に認められ、山に龍神神社を建立してもらってその巫女となる


やがて、彼女は結婚し、正式には巫女ではなくなるが、しかし『チカラ』はなくならず、通称『龍神の巫女』としてその名を知られる事となる


彼女は五人の子供を生み、その生涯を幸せに暮らしたと伝えられる……





生徒会長「なるほどね……」

生徒会長「でも、この手の話はいつの時代どこの地方にもあるものよ。それほど珍しいものではないわ」

生徒会長「『能力』に関係しているというのはわかるわよ。でも、『宇宙人に改造された』というのは?」

演劇部部長「生徒会長はこんな話を聞いた事がない? 進化っていうのは遺伝子を操作すれば簡単に出来るって」

生徒会長「…………」

演劇部部長「私たちに限らず生物なら全部そうなんだけど、遺伝子によって設計されているでしょ?」

演劇部部長「その遺伝子をいじくれば、進化は起こるって話」

演劇部部長「品種改良だって、結局のところ遺伝子を掛け合わせて新しい遺伝子を作っているだけなんだから」

演劇部部長「それで形から色や味まで違うものが出来るんだよ。人間にだって同じ事が出来る、って考えるのが普通だよね?」


生徒会長「つまり……」

生徒会長「その『龍神の巫女』は、宇宙人に拐われて遺伝子をいじくられた――改造されたと言うの?」

生徒会長「この場合、改造は不適切な表現だけどね。変異させられたと言った方が正しいのかしら?」


演劇部部長「ごめんね。私、あまり言葉を知らなくて……」


生徒会長「それはまあいいわ。それに、よく聞く話と言えばよく聞く話だし。いわゆる都市伝説やオカルトの類いだけど」

生徒会長「確か、ずいぶん前に、サルや原人からヒトになるまでの、その中間の化石がないという話を耳にした覚えがあるわね」

生徒会長「だから、宇宙人が来て、遺伝子を操作してヒトにしたのではないかというそんな話を」


演劇部部長「それは私は初耳だけど……」

演劇部部長「でも、『能力』なんて普通じゃ有り得ない事でしょ?」

演劇部部長「普通に有り得ない事を説明しようとしてるんだから、普通じゃない理由でもおかしくはないと思うのね」


生徒会長「まあ、私はそういう事にあまり興味がないし、科学者って訳でもないから正直に言って理由とかはどうでもいいのよ」

生徒会長「『能力』が使えるようになったのは、宇宙人に拐われて遺伝子を操作された、でも一向に構わないわ。それよりも気になってるのが……」

生徒会長「私と演劇部部長、それに男君に美少女だったかしら? その四人がどうして『宇宙人に遺伝子をいじくられた』って事になるの?」

生徒会長「『龍神の巫女』の話は今から400年ぐらい前の話でしょ? 私たちとは直接関係がないじゃない」

演劇部部長「それが、あるの」

生徒会長「?」

演劇部部長「さっき私、言ったでしょ? 『龍神の巫女』には五人の子供がいたって」

演劇部部長「その五人はその後、それぞれの人生を辿るんだけど……」

演劇部部長「『龍神の巫女』の子供だから、かなり特別扱いされてるのね。それはわかるでしょ?」


生徒会長「七光りというやつかしら?」


演劇部部長「それもあったと思うけど、それ以外の事も」

演劇部部長「実は、この五人の子供全員が『能力』を使えたみたいなの」

演劇部部長「遺伝子を受け継いだからだよね、多分」

演劇部部長「それぞれ何かの功績を立てて、名字を名乗る事を許されてるの」


演劇部部長「その名字にはそれぞれ、『神』の一字を入れる事を許されたわ」


演劇部部長「その中で巫女となった長女の『神坂家』が本家。この家は代々、『龍神神社』を継いできた家系」

演劇部部長「つまり、私の家の家系なの」


生徒会長「……!」

演劇部部長「その後も、この五人の家系――特に直系は不思議な『チカラ』を使える人が多く出たみたい」

演劇部部長「遺伝子やDNAなんてわかってなかった時代だけど、そんなのが十年百年も続けば、流石に気付く人がいたんだろうね」

演劇部部長「五人の家系の内の一人がその事に気付いて――その人は医師だったみたいなんだけど、その立場を利用して……」


演劇部部長「五人の家系の中の何人かを使って、『人体実験』を始めた」


演劇部部長「その人はこう考えたの。この不思議な『チカラ』は『龍神の巫女』の血筋なら全員が使えるはずだ……。なのに、使える人と使えない人がいる……」

演劇部部長「使う為には、何か『条件』がいるんじゃないかって」


演劇部部長「私の家の古文書に残されている記録によると、6人を死亡、8人を後遺症が残るほどの重症にして、その人はようやくその『条件』が何なのか解った」


演劇部部長「異常なまでの興奮、例えようもないほどの恍惚、病的に近いトリップ状態。この三つの内のどれか」

演劇部部長「そんな状態に心当たりがあったその医師は、早速、それを参考に『能力』を引き起こす為の『薬』を作り始めた」

演劇部部長「比較的、それを作るのは簡単だったみたい。元からある『とある薬』を調合しなおすだけの事だったから」


演劇部部長「ここまで言えば何となく想像がつくよね……? その元からあった『とある薬』が何なのかは……」


生徒会長「『麻薬』……よね?」


演劇部部長「そう」コクッ

演劇部部長「私も詳しくは知らないんだけど、多分、『能力』を使えるようになった人はエンドルフィンとかの脳内麻薬の影響なんだと思う」

生徒会長「……興奮状態の時には痛みを感じないというあれね」


演劇部部長「結局、その医師は事が露見して、社会的にも物理的にも抹殺される事になったみたい」

演劇部部長「それをしたのが、私の先祖……『神坂家』。そして、その『薬』の作り方は極秘裏に保管された」

演劇部部長「いざという時に備えて、という事で」


演劇部部長「これが私が『薬』を持っている理由……。ずっと前に偶然知ってしまったの。その『薬』も見つからないように取ってきたやつ」

演劇部部長「もしかしたら、生徒会長が必要に思うかもしれないと思って……」


生徒会長「…………」

生徒会長「……そう言えば、モルヒネとかは医療用で使われていたわね」

演劇部部長「うん。でも、そういうのじゃなくて、どういう風に作っているかもわからない薬だから、どんな副作用があるかは私には全然わからない……」


演劇部部長「でも、私の家に保管されている家系図を見ると、生徒会長は例の五人の子供の中の一人の直系なの」

演劇部部長「だから、他の人より耐性はあるかもしれない」


生徒会長「その五人の直系は他にもいて、それが男君と美少女……。そういう事ね?」

演劇部部長「うん」


演劇部部長「ちなみに私は中学生の頃に川で溺れた事があって、その時に『能力』に目覚めてる……」

演劇部部長「誰も信じてくれないだろうから、今までずっと隠して来たけど……」


生徒会長「それ……どんな能力なのかしら?」


演劇部部長「>>416

触れた物体を氷に変える

演劇部部長「左手で触れた物を何でも氷に変える事が出来るの」

演劇部部長「持続時間は溶けるまで。溶けると元に戻っちゃう。右手で触ってもすぐに元に戻るけど」

演劇部部長「効果範囲は最大で、私の左手から半径三メートル以内までかな。だから、ビルとかをまるごと全部氷にするとかは出来ないのね」

演劇部部長「その場合は半径三メートル以内の部分だけが氷になるの。それ以外の場所は氷にはならない」


演劇部部長「これが私の能力、名付けて『冬の息吹(アイス チェンジ)』かな」


演劇部部長「溺れた時、近くの水を氷にして、どうにか助かったから」

演劇部部長「この能力はその影響だね、きっと」

演劇部部長「それで、生徒会長。改めて尋ねるけど……」

演劇部部長「この『薬』、飲んでみる?」


生徒会長「…………」


演劇部部長「飲まないなら飲まないでもいいの。さっき言った通り、副作用があるかもしれないから」

演劇部部長「でも、命を狙われてるって言ったら、そんな事も言ってられないかと思って……」

演劇部部長「どうする?」


生徒会長「」フゥ……


生徒会長(従姉妹さんに友君の一件もあるし……)

生徒会長(それに、男君に女も……)


生徒会長(出来れば、そんな危なっかしいものは飲みたくはないのだけど……)

生徒会長(私には選択の余地はほとんどないのよね。毒とわかっていても飲まなきゃいけない時……それが今という事かしら……)


生徒会長「……わかったわ。それ、もらえるかしら?」


演劇部部長「……うん」スッ


生徒会長「」スーハー、スーハー……

生徒会長「願わくば、いい能力であって欲しいわね……」


生徒会長「」ゴクッ


生徒会長「ぅっ……!!」

演劇部部長「!? 生徒会長!」

演劇部部長「大丈夫!? しっかり!」

生徒会長「に……」

演劇部部長「に……?」

生徒会長「にっがいのよ……これ。鬼のように、苦い……」


演劇部部長「」ハァー……


演劇部部長「おどかさないでよ……もう。心臓が潰れるぐらいびっくりしたんだから」


生徒会長「だって、苦いものは苦いのよ。我慢出来なかったんだから、仕方ないでしょう」


演劇部部長「はいはい、まったくもう。お茶あるから飲んで」


生徒会長「ありがと」ゴクッ、ゴクッ

生徒会長「」フーッ


演劇部部長「それで……どう? 何て言うか……変な感覚とかしない?」


生徒会長「……そうね」



生徒会長の能力
>>420

生徒会長「……ええ、わかるわ」

生徒会長「今まで少し疑問に思っていたけど、どうやって自分の能力を知ったかという事について」

生徒会長「不思議なものね、感覚的にはっきりと感じられる」


演劇部部長「うん。私もそうだった。それで生徒会長はどんな『能力』を手に入れたの?」


生徒会長「ある意味で最強の能力ね。だからこそかもしれないけど……」

生徒会長「強い制限がかかってるわ……。ノーリスクとはいかないのね……。便利なのか不便なのか……」


演劇部部長「……何?」


生徒会長「私の能力は時間操作よ」

生徒会長「時間を、早送り、巻き戻し、スロー、ストップ、スキップが出来る能力」

生徒会長「制限は一切なし。どれだけ長い時間でも操作出来るけど……」

生徒会長「その代償として、1秒分の時間を操るごとに、10CCの血液が消えていくわ」


生徒会長「確か、血液の3分の1……。おおよそ2リットルの血液が失われた時点で、人は死亡するはずだから……」

生徒会長「必然的に、操れる時間は最大でも200秒……私の体格から言って、もっと手前ね。多分、3分ぐらいが限界よ」

生徒会長「血がどれだけの時間で再生するかなんて知らないけど、一日に何回も、何十秒も使えるような『能力』じゃないわね……」


生徒会長「名前をつけるなら、『代償の血時計(タイム イズ ブラッド)』というところかしら」

生徒会長「でも、この能力は使いどころさえ間違えなければ文句なしで役に立つわ」

生徒会長「ありがとう、演劇部部長。これできっとどうにかなると思う」

生徒会長「正直、困っていたところだから、助かるわ」


演劇部部長「良かった。お役に立てて」

演劇部部長「でも、十分に気を付けてね。今のところ何もないみたいだけど……」

演劇部部長「もしかしたら、副作用が出るかもしれないから。程度の差はあるけど、副作用が存在しない薬なんてないらしいからね」

演劇部部長「本当に気を付けてよ。無茶しないでね」

演劇部部長「私で出来る事があったら何でもするから、困った時は呼んで。きっと力になれると思う」


生徒会長「ありがとう、そうするわ」ニコッ

『病室』


友「ふぅ……。寝てたら、だいぶマシになってきたけど……」

友「でも、まだ体ダリいな……。今日はマジで大人しくしてよう……」


コンコン

友「看護師さんかな……? どうぞ……」


ガチャッ

風紀委員「失礼するわ」


友「?」

友(誰だ……? この人……)


風紀委員「ようやく見つけたわ。苦労した」


友「え……?」

友「あの……君……」

風紀委員「まったく、お見舞い一つ来るだけで、これだけ時間がかかるとは思わなかった」

風紀委員「受付じゃ話にならないから、直接病院を歩き回って、その途中で警察の人に職務質問されて」

風紀委員「あなたへのお見舞いだと言ったら、余計に色々聞かれて」

風紀委員「まさか、持ち物チェックと身体検査までされるとは思わなかったわね。それで、凶器となる物を一切持っていないのが確認されて、ようやく教えてもらったのよ」

風紀委員「もっとも、電話であなたのお母さんが身元を保証してくれなかったら教えてもくれなかったでしょうけど」

風紀委員「今も念のためかドアの前に二人の私服警官がいるしね」


風紀委員「殺されそうになっているというのは……本当みたいね。お陰でそれが確信出来たけど……」


友「……??」

友「えと、お見舞いに来てくれたのは嬉しいんだけど……。君……誰?」

風紀委員「覚えてないの?」

友「あ、うん……ごめん」


風紀委員「……まあ、そうかもしれないわね。あなたとはこれまで二回会っただけだし……」

風紀委員「でも、忘れられてるのはちょっとショックね」

風紀委員「顔立ちも似てるってよく言われるのに……」


友「……???」

風紀委員「まあいいわ……」

風紀委員「私は『女子大生』の妹よ。家に遊びに来た時と……お葬式の時。会ったでしょ……。思い出した?」

友「……?」

風紀委員「まだ思い出せないの? たった一年前の事よ?」

友「……一年前? ……葬式? 悪いけど、何の事か……」

風紀委員「!!」


風紀委員「ふざけてるの!?」ガンッ!!

友「」ビクッ!!


風紀委員「何で何で何で何で何で忘れてるのよっ!! あなたが忘れる訳ないでしょ!! 忘れていいはずがないでしょ!!」グイッ

友「ちょ、やめっ! 苦し……!」ガフッ


ガラッ!!

私服警官「すみません、今のは何の音……なっ!?」


風紀委員「お姉ちゃんの事を! お姉ちゃんの事をあんたが忘れるなんて!! そんなの絶対に許さない!!!」

風紀委員「死ぬまであんたは忘れちゃいけないのよ!! 絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に!!!」グイイッ

友「がっ……! ちょ……!」


私服警官A「や、やめんか! 君ぃ!!」グイッ

風紀委員「離して! こいつが!! こいつが忘れたなんて言いやがるからっ!!!」

私服警官A「いいからちょっとこっちに! 大人しくしないかっ!!」グイッ、ズルズル


風紀委員「離してっ!! 離してっ!! 離し」

ピシャンッ


私服警官B「ふぅ……。大丈夫でしたか……? 友さん?」

友「」ゲホッ、ゲホッ

友「な、何とか……」

私服警官「それは良かった……」ホッ

私服警官「次からは、あの子は面会に通さないのでご安心を。念のために、病室もまた変えましょうか。すぐに手配させます」

友「あ、はい……。わかりました……」

私服警官「ところで、友さん。こうなったいきさつを聞かせてもらえませんか。何があったんです?」

友「それが……俺にもよくわからなくて。『女子大生』って人の事を知らないと言ったら、いきなり……」

私服警官「女子大生……? はて、どこかで聞いた覚えがあるような……」メモメモ

友「あの人はその『女子大生』の妹さんだと言ってました」

私服警官「ふむ……。それで、友さんはその『女子大生』という方を知らないんですよね? 覚えがないと」

友「はい……。聞いた事もありません……」

私服警官「わかりました……。あと、一応ですが、あとで他の刑事が来て、会話の一部始終を聞かせてもらう事になると思うので……。よく思い出しておいて下さい。メモに書き出しておいてもらえると助かります」

友「あ、はい……。わかりました……」

私服警官「それではすみません、私はこれで。病室の手配やら、すぐにやる事がありますので」

友「わかりました……」

私服警官「」スタスタ


ピシャン


友「…………」

友「……マジ意味わかんねー」

友「なんか怖いわ……。どうなってんだよ、最近……」ブルッ

『美少女の自室』


美少女「」グスンッ、ウゥ……

美少女「あの後……様子が変だったからって警察の人から事情聴取されて……」グシュッ

美少女「それはすぐに終わったけど……でも、男君の事については警察の人は何も教えてくれなかった……」グスッ


美少女「一体、どうなっちゃったの、男君……」ポロポロ


美少女「返事もずっと返って来ないし……」グシュッ


美少女「どこにいるの……? 今、どうしてるの……?」ポロポロ

美少女「男君……」ポロポロ

『倉庫』


従姉妹「いない……?」

従姉妹「え、何で誰もいないの……? 女ちゃんはともかく、男君すらいないなんて……」

従姉妹「一体、どういう事? どこに行ったの、二人とも!?」


従姉妹「何がどうなってるの……? 女ちゃんにはここから動かないでって言ってあるはずなのに……」

従姉妹「……訳がわからないわ。何で……?」

『繁華街』


コギャル「ははっ。見事に服とイヤリングをゲットだぜぇ」

コギャル「いやー、便利だわー、この『能力』」

コギャル「ちょいと金もってそうなオッサンのハートを盗んでやっただけで、もうメロメロ」

コギャル「あれ欲しいー、あれもー、って言っただけでポンポン買ってくれるもんなあ」

コギャル「あー、こりゃもう将来困んないわ。バラ色の人生を送れ……ん?」


???「…………」


コギャル「何だ、あいつ……。ジーッとこっち見て突っ立って……」

コギャル「何か気持ちわりーな……。ちょっと別の道を行こう……」クルッ、スタス


???「フふフフふふフフ……」サッ


コギャル「!? な、何だよ! 何でお前がこっちに!?」

コギャル「さっき、向こうにいたじゃねーかよ!!」


???「イいね……ソの能力……」


コギャル「は? はあ!?」


???「私ニもちょウダい……。ちょウダい……」トコ、トコ……


コギャル「く、くんなっ!! こっちくんなっ!!」ゾクッ



???「アヒハはハハはははハハはハハハははハハはハハはハハハはハハははハはハハはははハハはハハハははハハはハハはハハハはハハはは!!!」

『コンビニ』


ウィーン

モブ店員「いらっしゃいませー」


男「」ハァハァ、ハァハァ


男「何とか逃げ切ったみたいだ……」

男「にしても、何だ……。気絶から覚めたら女さんがいなくて、そこは命拾いしたけど……」


男「この……『能力』……」

男「いきなり使えるようになった……。死の危険を感じたからか……?」

男「それでどうにかここまで逃げてきたけど……」




男の能力
>>432

男の能力

『ずっと夏休み(フォーエバー サマー)』

無からありとあらゆる種類のクワガタを召喚出来る。クワガタは男の意思によって自在に動かせるし、意思の疎通も可能。たまにカブトムシも召喚出来る

クワガタはクワガタでしかなく、特別な力を持たない。カブトムシもクワガタもごく普通に棲息しているものと変わらない

男「にしても、これからどうすりゃいいんだろう……」

男「少なくとも監禁されてた訳だし、怪しげな薬も打たれてる……」

男「警察に連絡して、その後、病院で精密検査を受けるべきか……?」

男「ここで電話ぐらいは借りれるだろうし、今いる場所も教えてもらえばいい……。それは出来るけど……」


男「それやると、少なくとも女さんは指名手配されるよな……」

男「話を聞いてると、何か女さんは悪くないような――従姉妹とかいう人に騙されてる気がするし……」

男「もしそうだったとしたら、俺は命がけで俺を助けてくれたその恩を完全に仇で返す事になる……」


男「とにかく、これからどうすればいいか決めないと……」

男「警察に連絡うんぬんもそうだけど、俺、やっぱりまだ命を狙われてる訳だし……」

男「それに、友と生徒会長も気になる。大丈夫なんだろうな、あの二人……」


男「どうするべきか……」


安価直下

男「とりあえず……どこか見つかりにくそうな場所に隠れて町や皆の様子を探るか」

男「折角、能力があるんだから、使うべきだしな」


男「召喚場所は……とりあえずこのコンビニの上空でいいか」


男「能力……発動!」キュイーン





『コンビニ上空』


シュイーン……ポンッ!!

クワガタ6000匹「」ギチギチ





男「とりあえず、これだけいればいいか。偵察はいけるだろ」

男「散れ!」




クワガタ6000匹「」ブイーン!!

男「で、俺はと……」

男「クワガタからの報告を聞かないと駄目だから、外で待つしかないな」


男「財布もないし、スマホもないから、何も買えないのが残念だけど、仕方がない」

男「俺の上空あたりにもクワガタを20匹ぐらい飛ばして、安全を確認しながら移動するか……」


男「近くに公園とかあると、クワガタがそこまで目立たなくていいんだけどな……」スタスタ

ウィーン


アリアトッシター

『道路』


女「」ハァハァ、ハァハァ

女「」キョロキョロ


女「いない……! 見つからないよお!」

女「男君、どこ消えたの! 電話して戻ってきたらいつの間にかドアの鍵が開いてて……!」

女「鍵しっかりかけたはずなのに! 何で……!!」


女「まさか、男君を狙ってるゴミクズが、男君を連れ去って……!?」


女「あうううう! どうしよどうしよう!」

女「男君がピンチだよ! 何とかしないといけないのに!!」


女「どうすればいいの!!」ウルウル


1、頼れる従姉妹に相談
2、生徒会長が犯人かも。カチコミに行く
3、何も思い付かないし時間も余裕もない。ひたすら探し回る
4、その他

安価↓1

女「こうしてる間にも男君が……!」ガクガク

女「急いで、急いで探さないと!」ダダダッ


女「男君ー! どこー!! どこにいるの!?」グシュッ


女「男くーーーーん!!!」ポロポロ




『巡回中 覆面パトカー内』


モブ警察官A「……おい、さっきの声、聞いたか?」

モブ警察官B「はい……。それにちらっとでしたけど、今のって……」


モブ警察官A「そこの角を曲がって、戻るぞ。確認する」

モブ警察官B「無線で連絡しますか? 容疑者を見つけたと」

モブ警察官A「いや、先に確認してからだ。確認が取れ次第、すぐに連絡。本部の指示を仰ぐ」

モブ警察官B「もし、あれが重要参考人の女だったら……どうなりますかね、捕まえて職質ですか?」

モブ警察官A「多分、そうはならないだろうな。後を追いかけて尾行だろう。監禁場所に戻る可能性が高いからな」

モブ警察官B「了解です」

モブ警察官A「気付かれないよう注意しろよ」

『倉庫』


従姉妹「参ったわね……。女ちゃん、スマホまでここに置きっぱなしなんて……」

従姉妹「これじゃあ連絡がとりようもないし……」

従姉妹「でも、何でいなくなってるの?」


従姉妹「まさか、警察に見つかったって事は……」


従姉妹「いえ、それはないわね。そうだったとしたら、ここに警官がいてもおかしくないし……」


従姉妹「だったとしたら、考えられる事は多分……」


従姉妹「男君が逃げ出した……。それで、女ちゃんも探しに外に出ていった……」

従姉妹「もしくは、本当に男君の容態が悪くなって、病院に運んだ……」

従姉妹「男君を殺そうとした犯人に居場所を見つけられた……かな」

従姉妹「男君が逃げ出すってのは少し考えにくいけど、ない事もないし……」

従姉妹「時間があまりなかったから、記憶を歪めての『暗示』が弱かったものね……」

従姉妹「何かのきっかけで解けたのかもしれない」


従姉妹「病院に運んだ場合は、女ちゃんは多分もう警察に捕まってそうね……。気絶した男君をほったらかして、自分だけ逃げるような子じゃないもの」

従姉妹「絶対に男君の側から離れないはず……」

従姉妹「そうだったとしたら……ここにいるのも危ないわね。女ちゃんが私の名前を出すとは思えないけど、監禁していた場所は言うかもしれないし」

従姉妹「ここから移動した方が良さそうね。念のために」


従姉妹「犯人に見つかっていた場合は……」

従姉妹「二人して、連れ去られたというのは考えにくいわね。男君をかばって女ちゃんが別の場所に避難した、って考えるべきかしら」

従姉妹「どっちにしろ、女ちゃんは私の大事な妹同然の子だし……」

従姉妹「その子が好きな男君は殺させる訳にはいかないわね。男君は友君の友達でもあるんだから」


従姉妹「女ちゃん達を探しつつ、そろそろ私も本格的に犯人狩りをすべきね。これまでは女ちゃんの世話と友君の保護で忙しかったから出来なかったけど……」

従姉妹「今なら大丈夫……」

従姉妹「あいつは友君に傷をつけた奴だもの。見つけたら八つ裂きにしてやるから……!」


従姉妹「ふふふふふふっ」

『病院 応接室』


刑事「風紀委員を逃がした……!?」

モブ警察官「はい……申し訳ありません」

刑事「だけど、どうやって!? 警官二人が側にいたんだろう!?」

モブ警察官「それが……」



風紀委員の能力
安価↓1

風紀委員の能力

『風と共に去りぬ(ステルス オペラ)』


触ったものを透明にする事が出来る

時間制限はないが、限度数があり、二個が限界
(二個透明にした状態で、もう一個透明にしようと思ったら、それまで透明にしていたもの一個を解除しなくてはならない)

認識された時点で透明化は消える
(触れたりなどして、透明なものがそこにある事に気付かれたら、能力は強制的に解除される)

自分の1000倍以上の質量を持つものは透明にする事が出来ない

モブ警察官「いつの間にか、いなくなっていたんです……」

モブ警察官「パトカーに乗せるところでした。ほんの少し二人が目を離した隙に忽然と……」

モブ警察官「辺りをすぐに見回しましたがどこにも……。駐車場だったので隠れるような場所さえないはずなんですが……」

モブ警察官「もちろん、車の陰とかも探しました。それなのに、どこにも見つからなくて……」


モブ警察官「まるで煙のように――比喩とかじゃなく、本当にいきなり消えたんです」

モブ警察官「二人して夢でも見てたんじゃないかって思うぐらいの事でした……」


刑事「」フーッ……

刑事「後で眼科に行くんだな。いや、神経科か。始末書は覚悟しておくように」

モブ警察官「はい……」ハァ

刑事「とりあえず、先に友君の話を聞きに行く」カツカツ

モブ警察官「はい」スタスタ


刑事「電話で話は聞いたが、風紀委員は『女子大生』の妹だと言っていたそうだな」

モブ警察官「ええ、そうです。その名前、どこかで聞いたような気がするんですが……」

刑事「俺もそう思った。だから、ここに来る前に確認した」

モブ警察官「どうだったんですか?」

刑事「聞いた事があるはずだったよ。『女子大生』ってのは、一年ぐらい前の、あの『忌まわしい事件』の被害者だったんだからな」

モブ警察官「一年ぐらい前って言うと……」

刑事「例の『下水道バラバラ事件』だよ」

モブ警察官「!!」


刑事「死体を32個に切り刻んで、下水道に捨てた……。しかも被害者の体にはナイフで刻んだと思われる無数の『ゴキブリ』という傷跡があった……」

刑事「怨恨による犯行の線が高いが、しかし、それにしたって尋常じゃない。この時点で犯人はまともな奴じゃないってのが十分にわかる」

刑事「事件の残虐性からかなり話題になり、本庁からも多数の応援が駆けつけたが、しかしその甲斐もなく、犯人は未だ見つからず……」


刑事「その被害者の妹が、友君の元に訪れ暴行を働いた」

刑事「そして、友君がらみの事件も全部まともとは言えない」

刑事「俺はあの事件に関わってないから、これから色々と調べなきゃいけないが、何か繋がってるような気がするんだよ」

刑事「あの事件と今回の事件、何か裏があるようなそんな気がな」

『病室』


コンコン

ガチャッ


刑事「失礼。本庁から来た、刑事と言いま……」


シーン……


刑事「誰も……いない……?」

刑事「おい、病室は間違ってないんだろうな? 移動した病室は216なんだろ?」

モブ警察官「は、はい。そのはずなんですが……」


シーン……


刑事「……すぐに確かめろ。あと、前にいた病室の方も」

モブ警察官「は、はい!」タタタッ


刑事「……嫌な予感がする。……もしも、部屋の間違いでなかったとしたら……」

『森林公園』


クワガタ「」ブーン、ピトッ

クワガタ「」ギチギチ

男「……そうか。わかった。また何か発見したら、教えてくれ」

クワガタ「」コクコク

クワガタ「」ブーン……


男「」フーッ……


男「偵察開始から三十分。ようやく大体の状況が見えてきたな」


男「まず、無事な方から言えば……」

男「生徒会長。家にいるみたいだ。中の様子はわからないけど、窓に張りついて確認してもらったら、ちらりと見えたらしい」

男「そして、近くの停車してる車二台に二人ずつ男が乗ってる。多分、私服警官だろうな。周りを警戒しつつ、たまに電話で連絡してる」


男「友はと言えば、こちらはグレーだな。窓のない部屋にいるのか、外からじゃ確認出来ない」

男「町中探しても見つからないから、多分、病院にいるとは思うんだけど……。俺みたいに拐われたりしてない限りは」

男「人の話してる言葉をクワガタが理解出来ないってのがネックだな……。音はわかるけど、声がわからないんじゃどうにも……」

男「あと、建物の中に入れないのがな……。窓が開けっぱなしとかならともかく、締め切られてるとどうにもならないし……」

男「入ったはいいが、捕まって戻れなくなっても意味がないしな……。そこら辺が厳しい」

男「で、今、気になってるのが……」

男「女さん、そして俺が監禁されてた倉庫から出てきた女性……この二人」


男「さっきからずっと女さんは走り回ってる。で、その後ろ……尾行するようにずっと発進と一時停止を繰り返してるバイク、自転車、自動車がそれぞれ一台ずつ」

男「電話で連絡しあってるところを見ると、マジで尾行だな。女さんはまるで気が付いてないけど……」

男「女さんが俺を探してるのは間違いないだろうから……」

男「その途中で警察に見つかったんだろうな」

男「このままにしとくと、捕まりそうだ」


男「で、もう一人。俺が監禁されてた倉庫から出てきた女の人。ずっと偵察してたけど、車で移動して向かった先が……」

男「警察署なんだよな」

男「そこに入って、しばらくした後にまた出てきて車で移動……」

男「どこに向かってるのかは知らないけど、この人が多分、女さんが言っていた従姉妹なんだろうな」

男「話からして、女さんを騙してたのが多分この人だ。一番危ない」

男「出来れば近付かない方がいいだろうな。覚えとこう」

男「で、女さんをどうするかなんだけど……」

男「このままにしとくと、ちょっとまずいよな」

男「クワガタ使って尾行の妨害するのは簡単だからそれはいいとして」

男「偵察きくから俺が女さんに見つかる事もないし、それもいいとして」

男「問題なのは、このままずっと探し回られそうな気がするって事だよな」

男「尾行を一回二回妨害したって、その内またすぐに見つかって警察に捕まりそうなんだよな 」


男「そこら辺、何とか解決出来ないもんかな……」


男「んー……」


男「あ」

男「今、不意に気付いたけど、よくよく考えたら、俺が行方不明になってるから、警察は女さんを誘拐事件の犯人として追っている訳で……」

男「俺が姿を見せて、女さんと合意の上でどこかに隠れてたって事にすりゃいいのか」


男「あー、となると、電話の一本ぐらいはしないとマズイのか、いやマズイよなそりゃ」

男「どうしたもんか。一旦、近くのコンビニかどっかに行って電話してこようか」

男「それとも、女さんについてる尾行をまいた後で、もう一回女さんに会って、きちんと話し合ってみようか」

男「下手したらまた俺、監禁される可能性あるけど、今度は能力があるしな……」

男「んー……」


安価↓1

男「やっぱり、女さんに直接会うのはまずいか……」

男「あと、例の従姉妹さん……。あの人の事も気になるしな……」

男「女さんを放っておいたら、また従姉妹さんに騙されそうな感じはあるし……」

男「いっその事、警察に事情を全部話して、逮捕じゃなくて保護って感じに……。そうすればまだ……」

男「それに、女さん的にはそれが一番安全なような気がするからな……」


男「よしっ、決めた。そうしよう」

男「とりあえず、電話を借りにコンビニまで行くか」スクッ


男「」タタタッ

『生徒会長の家』


生徒会長「さてと……演劇部部長も帰ってしまったし」

生徒会長「少し早いけどお風呂に入ろうかしら」

生徒会長「今日は心身共に疲れてしまったし、狭いし外から見えないとはいえ、窓のあるお風呂場は危険だしね」

生徒会長「早い内に入って、さっぱりしたいわ。明日の事を考えると憂鬱にもなるし、少し落ち着きたいもの」

生徒会長「いくら強い『能力』が手に入ったとはいえ、従姉妹さんの能力が何かもわからないから……」

生徒会長「正直、不安だらけよ」ハァ

生徒会長「とはいえ、行かない訳にもいかないから行くけど……」

生徒会長「それまでに、何か策を考えてお」


ガシャンッ、パリンッ!!


生徒会長「」ビクッ

生徒会長「なに、今の音は!?」

生徒会長「ガラスが割れたような音だったけど、どこから聞こえたの!?」

ガラッ

生徒会長「」タタタッ


生徒会長「お母さん! 今、ガラスが割れたような音がしたけど!」

生徒会長「お母さん! いないの!!」


シーン……


生徒会長「……っ」

生徒会長「何で返事がないの……?」

生徒会長「今、私がこんな状態だから、お母さんは外に出ていく事はないわ。絶対に家の中にいるはずよ……!」

生徒会長「もし、出てくにしたって一声ぐらいは声をかけるはず……。なのに、返事がない……」


生徒会長「お母さん! どこ!? いるんでしょ!!」


シーン……


生徒会長「……まさか」ゾクッ……


ガタンッ、ドガッ!!


生徒会長「」ビクッ

生徒会長「今度は何……! 台所から……?」

生徒会長「今の鈍い音……何かが倒れたような……」


バリンッ!! ガチャンッ!! バキッ!!


生徒会長「いや! 何なのよ、これ!」

生徒会長「今の……多分、食器棚よね……。それが倒れたみたいな……」


ガリガリ、ギコギコ……


生徒会長「うぅ……!」ガクガク

生徒会長「何かいる……! 誰かいる……! 台所に」


生徒会長「っ……」




生徒会長の行動
安価↓1

震える足を無理矢理抑えつけ、彼女はそっと廊下を移動した

一歩、一歩、静かに

その間にも絶え間なく『物音』は聞こえてくる


その中でも彼女の恐怖心を最も煽ったのが、ノコギリを使う時のような音……


壁に手をつけ、歩く。ともすれば逃げ出したくなる衝動に耐えつつ、そっと……


台所を覗いた


食器棚は、倒れていた

テーブルが、ひっくり返されていた

床には、皿やコップなどの割れた残骸が大量に落ちていた


視線はそこで、奥の方に向けられ、

何か……いた



動いていた

もぞもぞと黒い何かが……


違う

ムカデだ

大量のムカデが床の上――倒れた人間の、上に


誰?

大量のムカデが這いずり回っているのに、ピクリとも動かない『それ』は誰?

右腕が見当たらず、両足が少し離れたところに転がっている『それ』は誰?


彼女は答えを知っていた

頭から急激に血が引くのを感じ、目眩を覚えながら、彼女は『それ』が生きていた頃の名を呼んだ


「と……も……君…………」


返事はなかった

そこには、『それ』以外、何も。誰もいなかった

『警察署』


刑事「」フーッ……

刑事「何から聞けばいいか……」


刑事「ともかく、無事だった事を喜ばせてもらうよ、男君」

男「はい……」

刑事「色々と聞きたい事は山ほどあるんだが……」

刑事「まず最初に聞きたいのが、これまでの経緯だ」

刑事「従姉妹さん、女さんに監禁されていたという話だが……」

刑事「これは間違いなく?」


男「……はい」

『事情説明後』


刑事「なるほど……。病気に薬に副作用か……」

刑事「それで、危険を感じた君は、女さんがいなくなった隙を見て、倉庫から逃げ出した……」

刑事「通常の鍵の他に、外からは南京錠がかけられていたが、しかし、その鍵は慌てていたのか、かけ忘れていたみたいだ……」

刑事「そういう事だね?」


男「はい」

男(……本当は落ちてた針金と釘を使って、クワガタにピッキングさせて鍵を外したんだけど)

男(でも、能力に関しては黙っておいた方がいいよな。怪しまれるのがオチだろうし)

刑事「でだ」

刑事「とりあえず、女さんに関しては元からマークしていたから、君の無事が確認出来た事もあって既に取り押さえている」

刑事「最初は相当暴れたようだが、君がここにいると教えてからは、観念したのか大人しくなったな」

刑事「建前的には公務執行妨害の現行犯という形で身柄を拘束している。現行犯じゃない限り、令状がないと逮捕も出来ないからな」

刑事「今は別室で取り調べ中だ。君が言う保護とは違うが、安全な場所であるのは間違いない。警察署が安全でなかったら、他に安全な場所などありはしないからな」


男「はあ……」

刑事「それで、もう一人……従姉妹さんか」

男「はい。さっきも説明しましたけど、女さんは従姉妹さんに騙されてるような気がするんで」

男「薬にしたって、従姉妹さんが持ってきたと言ってましたし、場所を貸したのも従姉妹さんだそうです」

男「そうでなかったら、多分、女さんはあんな事をしなかったと思うんで……。俺を助けてくれた人ですし」

男「とは言っても……俺もそこまで確信がある訳じゃないですけど……」


刑事「つまり、主犯が従姉妹で、実行犯が女、と君は考えているという事かな?」

男「少なくとも、監禁については」

刑事「ふむ……」

刑事「何にせよ、従姉妹さんに関しては、取り調べをしない訳にはいかない」

刑事「すぐに警官を家に向かわせて、事情聴取を行わせる」

刑事「あと、君も投与された薬の事が気になる。病院へ行って調べてもらった方がいいだろう。これは俺が送るよ。その方が話が早い」

刑事「病原菌や毒を投与されている可能性だってない訳じゃないからな。今は平気そうだが、後から取り返しのつかない事になる場合もある。早い方がいいだろう」


男「はい」

刑事「ああ、それと……。これは強制じゃなく提案なんだが」

男「?」

刑事「男君、家に戻らず、しばらくの間、ここで寝泊まりする気はないか?」

男「ここって……。警察署って事ですよね?」

刑事「そう。部屋なら用意するし、極力、不自由はさせないつもりだ」

男「え、でも、どうして急に……?」

刑事「」フゥ……


刑事「今回の事件の関係者が行方不明になりすぎなんだよ」

刑事「ここにいてくれた方が我々としても助かるんだ。嘘や冗談ではなく、真面目にな」


男「……え?」

男「あの……。それはどういう」

刑事「その前に尋ねるが……君の学校に風紀委員という子がいるんだ。その子の事を君は知っているかい? 君と同じ学年なんだが……」

男「風紀委員……。あ、はい……。知っています。委員会で何回か会った事があります」

刑事「またしても、君の関係者か……」フーッ

男「え……」


刑事「じゃあ、その子と友君の仲はどうだった? 友達だとか、恋人とか、そういう事は?」

男「いえ……知りません。友と風紀委員が知り合いかどうかも……。それに、友に恋人はいませんでした。これは確かです」

刑事「二人が話しているのを見た事もないかな?」

男「はい。ありません」

刑事「ふむ……」

刑事「じゃあ、『女子大生』という名前の人に心当たりはないか?」

男「『女子大生』……。どこかで聞いたような気がしますけど……」

刑事「つまり、君は知らないのか」

男「知らない……かどうかまでは。聞いた気があるような気もしますし……」

刑事「いや、その答えだけで十分わかった。君は『女子大生』には関わっていないという事だ」

男「……?」

刑事「あと、これは素朴な疑問なんだが、友君と君はいつ頃から友達になった? 昔からの付き合いか?」

男「いえ、そんな昔じゃなくて……。一年か半年ぐらい前からだったと思います。漫画の貸し借りがきっかけで友達になって……」

男「それ以来、かなり向こうから話しかけられるようになりました。友のやつ、友達が少ないみたいなんで」


刑事「それほど、仲が良いという訳でもないんだな」


男「普通ぐらい……だと思います」


刑事「道理でか……」ハァ

刑事「君は被害者だから話すんだが……」

刑事「まず、行方不明になったのが、さっきの風紀委員という子だ。この子は『女子大生』の妹だ」

刑事「そして、『女子大生』っていうのが、一年ぐらい前に起こった『下水道バラバラ事件』の被害者だ。君もニュースで聞いた事はあるだろう」

男「あ……!」

刑事「そしてだ。さっきのもそうなんだが、ここからは特に誰にも喋らないで欲しい。それを約束してくれ」


刑事「一年前に、友君はその『女子大生』と……」

刑事「付き合っていた」


男「え!!」

刑事「事件を担当している刑事から聞いた話によると、親公認とか結婚を約束した仲とか、そういう深いものではなかったらしい」

刑事「知り合いの犯行である可能性が高かったので、当然、友君も疑われた。しかし、『女子大生』が殺されたと推定される時刻、彼には完璧なアリバイがあったのですぐに疑いが晴れた」

刑事「学校に行っていたからな。目撃者が多数いるし、どうあがいても犯人にはなりえない」


刑事「そこまではいいんだ。問題は今日起きた事だ」

刑事「その『女子大生』の妹が友君の見舞いに来た。ここまでは、まあわかる」

刑事「姉の元彼氏で、同い年の上に同じ学校だ。知っていたとしても、少しも不思議じゃない」


刑事「ところが、ここから先がよくわからない」


刑事「友君は彼女を知らないと言い、殺された『女子大生』についても『知らない。覚えてない』と言ったそうだ」

刑事「そんな事があるか? 一年ぐらい経っているとは言え、元恋人だぞ?」

刑事「当然、言われた妹も怒るだろうな。実際、彼女は怒り、凄い剣幕で胸ぐらを掴んだそうだ」

刑事「友君もそうなる事ぐらいは予想がついただろう。それ以前に無神経な発言過ぎる。暴力に訴えたのは良くないが、俺はその子の気持ちは十分わかるがね」

刑事「何で知らないと言ったんだろうな、友君は? 俺にはそっちがわからない」


男「…………」

刑事「その後、風紀委員は近くにいた警官に取り押さえられ、事情聴取の為にパトカーで署まで同行してもらう事になっていたんだが……」

刑事「何故か、逃げられたらしくてね。身内の恥を晒す様で面目ないが、彼女はそのまま行方をくらました。家にも帰っていない」


刑事「それで、今度は友君に事情を聞こうとしたら、その友君もいつのまにか行方をくらませた」

刑事「病院に残っていた監視カメラの映像によると、友君は車椅子に乗って、自分から外に出たようだ。どうやって車椅子を見つけて、そこに乗り込んだかは謎だがね」

刑事「病院を出た後の行方はわかってない。足取りを追ってはいるが、今のところは不明だ」


刑事「そして、最後に生徒会長……」フゥ……


男「生徒会長まで……!?」

刑事「彼女の場合も自発的に家からいなくなった」

刑事「一緒に家にいた母親の話によると、台所に来たかと思ったら、いきなり悲鳴を上げて外に飛び出したとの事だ」

刑事「彼女の家の前には、私服の警察官が四人配置されているが、その四人を振りきり、どこかへといなくなったそうだ」

刑事「その時の警官の話によると、錯乱しているような感じだったらしい。酷く怯えているようにも見えたそうだ」


刑事「話を聞く限りではあまり言いたくはないが……」

刑事「神経系の病気にかかっていそうだな……。相次ぐストレスと精神の消耗、恐怖、有り得ない話ではないが……」


刑事「そういう子には見えなかったんだがな……」フーッ


刑事「気丈で、しっかりした子だという印象がある。まあ、これは俺の印象であって、何の参考にもなりはしないんだろうがね……」


男「生徒会長が……家を飛び出した……?」

男(友に生徒会長……それに風紀委員)

男(いつ、いなくなった話なんだ、それ……)

男(偵察用のクワガタは出しっぱなしにしてある。なのに、俺はその事を知らない)

男(……こうやって事情聴取されてる間の事か? いや、違う。そうだったとしたら、刑事さんが知っているはずがない)

男(て事は、コンビニに着いて、その後、迎えに来たパトカーに乗せられてからの事か……? クワガタの報告を聞く事が出来なくなってからのはずだよな)

男(移動時間と刑事さんが来るまでの待ち時間も含めて、最低でも三十分ぐらいはあった。多分、その間……)

男(もしくは、クワガタを偵察に出す前の事か……。だったとしたら、知るはずもないけど……)


男(でも、待ち時間とかの間の出来事なら、報告待ちのクワガタから話が聞けるはずだ)

男(このまま刑事さんに連れられて病院に連れていかれると、また当分の間、報告が聞けない)

男(俺の体に投与された薬ってのも気になるけど……。他の三人の方が気になる)


男(とにかくあれこれ考えるのは、一旦、外に出て、クワガタから報告を聞いてからか。それから考えよう)


男(刑事さんの車に乗っけてもらう予定だけど……。外に出たら俺もどこかで一人にならないといけないな)

男(なら、どうやって言い訳するかだけど……)

刑事「さて、お喋りが過ぎたな、すまない」

刑事「他にも聞きたい事はあるが、それは移動中の車の中で聞こう」

刑事「それじゃあ」


コンコン、コンコン!!

ガチャッ

モブ刑事「すみません、刑事! 緊急事態です!」


刑事「緊急?」

モブ刑事「はい、たった今……」ヒソヒソ


刑事「!?」

刑事「わかった。すぐに行く! 君も来てくれ」スクッ

モブ刑事「はい!」


刑事「っと、男君、すまない! 危急の用が出来た。病院へは別の警察官に送らせる! 君は少しだけここで待っていてくれ!」

刑事「パトカーの手配は!」

モブ刑事「出来てます! 応援も既に呼んであります!」

刑事「上出来だ!」ダダダッ

モブ刑事「はい!」ダダダッ


男「……何だ、一体……?」

男「何だかよくわからないけど……これは俺にとってチャンスだよな……」

男「とにかく、今の内に、外に出てクワガタから報告を聞くか」

男「後から何か聞かれたら、トイレに行ってた、でどうにかなるだろ」

男「行くぞ」スクッ、タタタッ

『警察署 外の道路 電柱の陰』


クワガタA「」ブーンッ

クワガタB「」ブーンッ

クワガタC「」ブーンッ

クワガタD「」ブーンッ

クワガタE「」ブーンッ


クワガタ5匹「」ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ


男「いっぺんに報告するな。訳がわからん」

男「順番だ、順番。並べ」


クワガタA「」ピトッ
クワガタB「」ピトッ
クワガタC「」ピトッ
クワガタD「」ピトッ
クワガタE「」ピトッ


男「よし。報告」




クワガタA「」ギチギチ、ギチギチ

男「え……? 何で……」


クワガタB「」ギチギチ、ギチギチ

男「!?」


クワガタC「」ギチギチ、ギチギチ

男「はあ!?」


クワガタD「」ギチギチ、ギチギチ

男「なっ!!」


クワガタE「」ギチギチ、ギチギチ

男「マジかよ!?」

男「なんだよ、これ……。どうすりゃいいんだよ……」

男「俺の体は一つしかないんだぞ……。なのに、いっぺんに五ヶ所も……」



『報告A』
男の家の前近くで、歩いている演劇部部長を発見。その後を従姉妹が尾行しているように思われる

『報告B』
森林公園近辺で、徘徊する美少女を発見。手には包丁が握られている

『報告C』
廃ビル内で、倒れている生徒会長を発見。見た限りでは外傷はないが、窓と扉が閉まっていて中に入る事が出来ず、生死の確認は不可

『報告D』
人通りのない河川敷で、友と風紀委員を発見。風紀委員の手にはナイフが握られていて、それは友に向けられている

『報告E』
生徒会長の家の前で、コギャルを発見。両手に金槌を持っていて、玄関を叩き壊そうとしている。そのすぐ近くには血を流して倒れている私服警察官が二人



男「こんなの一気に聞いても困るだけだろ……。本当に、俺はどうすりゃいいんだよ……」



男の行動選択
AからEの内、どれか一つを選択
安価↓1


男の『犯人』推理
女、従姉妹、演劇部部長、美少女、生徒会長、風紀委員、コギャル、の8人の内、一人を選択(計二名)
安価↓3と↓4

失礼、最初友も入れてたから間違えた
7人で

男「落ち着け、俺。深呼吸、深呼吸」

男「マジでヤバイけど、こういう時こそ落ち着いて考えるんだ」

男「考えろ、考えろ、マクガイバー」

男「みたいな小説を何かで読んだな。ってどうでもいいだろ、今はそれは!」


男「とにかく、今、一番ヤバイ状況にあるのは友だ! 友のところへ行こう!」

男「生徒会長も心配だけど、今は友の方がピンチだ。こっちは後にするしかない」

男「コギャルもヤバイけど、多分、刑事さんが焦って出ていったのってこれのせいだろ。警察に任せよう」

男「美少女さんも気になるけど、今のところ、実害は出てない。後回しだ」

男「でもって、従姉妹とかいう人と、演劇部部長もそうだな。こっちも後回しでいい」


男「とにかく、今は友のところだ! 急げっ!!」ダダダダッ

『マンション前』


男「」ダダダダッ

男「っとお!」キキィッ


男「駐輪場、駐輪場!」ダダダダッ


男「ここか。チェーンのついてないチャリンコは!」キョロキョロ

男「これでいいか、オラァ!」ゲシッ、ガシッ!!

バキンッ

男「うしっ! 鍵が外れた、すまん! 緊急なんだ。どこの誰のか知らんが借りてく!」

スタッ


男「急げっ!!」コギコギ!!

クワガタ「」ブーンッ

クワガタ「」ピトッ

クワガタ「」ギチギチ、ギチギチ


男「へ?」コギコギ!!

男「疲れた? 休みたい?」コギコギ!!


クワガタ「」コクコクッ


男「あー、そりゃずっと飛び回ってるんだから、疲れもするよな――って、俺、『能力』使えたんだよな!?」

男「ヤバイ、今の今まですっかり忘れてた。何だかんだでテンパってるな、俺」コギコギ!!


男「つーか、俺の能力って最大で何匹までいけるんだ? チャリンコこぎながらだけど、今の状態で使えるか?」コギコギ!!


男「試しに……能力、発動! 最大召喚!」キュイーン




『上空』


シュウン……ポンッ!

クワガタ43992匹「」ブーンッ

カブトムシ8匹「」ブーンッ



男「おおう……何かメチャクチャ出てきたぞ、おい」

男「確か最初に6千匹出してるから……」コギコギ

男「全部で5万匹か……。これが限界って訳だ」コギコギ


男「とりあえず、最初に出した偵察のクワガタ6千匹は新しく出てきたやつと交代させて、休ませるとして……」コギコギ

男「六千匹戻して、六千匹と交代だから、合わせて1万2千匹……。て事は、使えるのは残り3万8千匹か……」コギコギ


男「ふむ……」コギコギ

男「生徒会長はクワガタの力じゃ運びようがないから、どうにもならないけど……」コギコギ

男「五千匹ぐらいいれば、扉なら開けられそうだよな。少なくとも生きてるかどうかの確認は出来るし、上手く使えば人が呼べるかも」コギコギ

男「とりあえず、五千匹! お前らは生徒会長の元に向かえ!」コギコギ


クワガタ5000匹「」ブーンッ!!


男「でもって、美少女か……。こっちはいざという時に備えて2千匹ほど向かわせる。何かあった時、足止めにはなるだろ。行け!」コギコギ


クワガタ2000匹「」ブーンッ!!


男「演劇部部長もそうだな。従姉妹さんが尾行している事を考えると、何かろくでもない予感がする。二人分で4千匹ほど向かわせる。行け!」コギコギ


クワガタ4000匹「」ブーンッ!!


男「コギャルはどうなってんだか知らないけど、警察官が倒れているっていうし、こっちも放っておけないよな。7千匹ぐらいか。行け!」コギコギ


クワガタ7000匹「」ブーンッ!!


男「これで1万8千匹。残りは丁度2万匹だから、友のところにまず1万匹急行させる。行け!」コギコギ


クワガタ10000匹「」ブーンッ!!


男「残りの1万匹は俺の護衛を兼ねた予備兵力にする」


男「にしても、意外と使えるな、この能力。効果範囲がクワガタの体力次第だから、無茶苦茶広いってのがいい」コギコギ


男「欠点はクワガタ以上の力が出ないって事と、明日絶対、季節外れのクワガタ大量発生ってニュースが流れるって事だけどな!」コギコギ

『少し時間を遡って 病室』


友「ここが新しい病室か……」

友「にしても、一日ごとに俺、病室変わってるな……」

友「何でこんな状態になったんだろう……」

友「最初は、生徒会長や演劇部部長とデートだったのに、何で……」


ガチャッ


友「……?」

友「今、ドアが勝手に開いた……?」



フッ

風紀委員「見つけた……!」ギランッ


友「!?」

友「おま……! 一体、どこか」

風紀委員「動かないで! お喋りも禁止よ!」サッ

友「ナイフ……!!」


風紀委員「刺されたくなかったら、私の指示に従ってもらうわ」

風紀委員「もしも、指示以外の行動を取るようなら容赦なく刺すから。脅しじゃないわよ」スッ

ズプ……

友「っ……!」


風紀委員「このまま、額に押し込まれたくなかったら、まずはそこの車椅子に乗って」

友「足が動かせないんだ……一人じゃそれは」

風紀委員「聞こえなかった? 乗って」

風紀委員「這いつくばってでもすれば乗れるでしょう」ズプ……

友「うっ……! っ……! わ、わかった」

『病院近く 道路』


友「……言う通り外まで出たぞ」

「……なら、これからは私が押して歩くわ。車椅子だと目立つしね」

友「…………」

「わかっているとは思うけど、妙な動きや余分な声を出したら刺すから。正直、殺したいぐらいだし」

友「わかった……」

「能力……解除。そして発動」


フッ


風紀委員「…………」

「…………」

風紀委員「さっきから消してはあるけど、首に押しつけられてる感触でわかるわよね。私がナイフを持っているって事は」

「ああ……何もしねーよ」

風紀委員「ならいいわ。行きましょうか」

「どこへ……?」

風紀委員「決まってるでしょ。あなたが死んでも困らない場所よ」

「…………」

風紀委員「そこで、思い出してもらうわ。お姉ちゃんの事を」

風紀委員「思い出せないようなら、あなたが死体に変わる。覚悟しておきなさい」

「…………」

『現在 河川敷』


風紀委員「このっ……!!」バシンッ!!

友「うぐっ!」

風紀委員「どうして! どうして思い出せないのよ!!」バシンッ!!

風紀委員「あんたの頭の中には豆腐でも詰まってんの!? 思い出せっ!!」ドガッ!!

友「がふっ!」ゲホッ


風紀委員「」ハァハァ、ハァハァ

友「ぅ……ぐ……」


風紀委員「」グイッ!!

友「ぁ……ぅ……」


風紀委員「思い出した? 思い出したわよね? お姉ちゃんの事を思い出したわよね?」ギリッ

友「や……め……。死ん……じ……まう……」

風紀委員「思い出せないのなら、死ね!!」バキッ!!

友「がはっ!!」ゲホッ


風紀委員「あんたに今の私の気持ちがわかる? 大好きだったお姉ちゃんが殺されて、おまけにその元彼氏がお姉ちゃんの事を忘れてるなんて聞かされてさあ!」ドゴッ!!

友「あぐっ!!」


風紀委員「お姉ちゃんは私に優しかったのよ! お姉ちゃんは私の憧れだった! お姉ちゃんは私の面倒をいつも見てくれた! お姉ちゃんは私の理想だった! お姉ちゃんは私をいつだって助けてくれた!!」

風紀委員「そのお姉ちゃんが言ってたから! あんたは誤解されやすいけど、優しく強い心の持ち主だって! お姉ちゃんは本気であんたに恋してた! だから、私もその事を祝福した! あんたとお姉ちゃんが幸せになってくれるよう祈ってた!!」

風紀委員「なのにっ!!!」ズガッ!!

友「ぐあっ!!」ゴフッ

風紀委員「一年ぐらい経ったら、綺麗さっぱり忘れてる?」

風紀委員「よりにもよって、あんたが? お姉ちゃんの事を?」

風紀委員「そんなもんだって言うの? あんたにとってのお姉ちゃんは忘れちゃうような存在? そんなもんだって言うの?」

風紀委員「ふざけんなっ!!」バシンッ!!

友「ぐあっ!!」


風紀委員「どうなの? 思い出した? いい加減思い出したわよね? お姉ちゃんの名前を! 姿を! 思い出を! 声を!」

風紀委員「思い出した……わよね?」グイッ


友「ぁ……ぅ……>>515

その名前を聞くだけで頭が痛くなる

風紀委員「は?」

友「マジで……思い……出せない……」

友「思い出そう……と……すると……何か……別のものが……出てきて……」

友「頭が……ボワーッとして……」

友「本当なんだ……本当……に……」ポロポロ

風紀委員「そう……」


風紀委員「ざけんなっ!!」バキッ!!

友「ぎあっ!!」


風紀委員「ならもう、そんな役立たずの脳味噌なんかいらないよね? 必要ないよね? お姉ちゃんの事を忘れた脳味噌なんて持ってる価値ないよね? そうだよね!!」

風紀委員「」スッ

友「っ……!! やめ……!! ナイフ……は!!」

風紀委員「死ね」キランッ


友「!!!」

異変に最初、どちらも気がつかなかった

あえて言うのなら、友の方が先に『それ』に気が付いたのだが、それはほんの数瞬の差でしかなく、風紀委員もほぼ同時に気が付いた

虫の羽音。それも尋常ではない数の

しかも、それは急速に大きくなってきている


この時、片方は殺意に満ち溢れていた為、その音を無意識的に無視する事を選んだが、しかし、ナイフを持つ手に異様な感触がした事は流石に無視出来なかった


反射的にナイフを振り上げた手を引き、目を向けるとそこには一匹の季節外れのクワガタがとまっていた


慌てて手を払い、とまっていたクワガタを振り落とす。それと同時に彼女はふと顔を上げ、そして『それ』が視界に入った瞬間に固まった


黒い雲? 否。それは夜の空を整然と飛行する無数のクワガタの群れだった


鳥肌が急激に立った。それと共に、また手にクワガタが一匹とまる。払って振り落とす。しかし、また一匹。もう一匹。続けて二匹。更に三匹

手だけでなく、足にも顔にも。身体中に。まるで光に虫が集まるかのように次々と彼女の体にクワガタがとまり続ける


「っ!」

噛まれた! いや、挟まれた? どちらが表現として正しいかは知らないが、次から次へと全身に鋭い痛みが走る


「なっ! ちょっ!! あ、う、いっ!! 離れ、ぐっ!」


彼女の手からナイフは既に取り落とされていた。彼女の体にまとわりつくクワガタの数も既に千を軽く越えており、今では彼女の体全体よりも、体にまとわりつくクワガタたちの姿の方が遥かに見える比率が多い


もんどりをうって、彼女は地面に倒れた。ほとんど半狂乱になりながら、体を必死によじってクワガタから逃げようとする

それでもなお、クワガタはそこに樹液でもあるかのように後から後から次々と群がり続け、その数は減るどころか増えるばかりだった


それを友は放心した様子で眺めるしかなかった。助けようにも助けられなかったし、そもそも自分は危うく彼女に殺されるところだったのだ……

『道路』


クワガタ「」ブーンッ

クワガタ「」ギチギチ、ギチギチ

男「マジか。ギリギリだったな。でも、間に合って良かった」コギコギ


クワガタ「」ギチギチ、ギチギチ


男「こっちの被害は今のところ、潰されて消えたやつらが七百匹か……。これ以上、被害を出したくないから、後は牽制だけにしてくれ」コギコギ

男「風紀委員が友にまた近付くようなら攻撃、防衛が第一任務だ。ナイフも拾って遠くに捨てといてくれ。後は任せた」コギコギ


クワガタ「」コクコクッ

クワガタ「」ブーンッ


男「ふぅ……。とりあえずこれで友の方は大丈夫と……」コギコギ

男「こっちの被害もそんなに出てない。後は友を回収して、警察に通報だな。これで何とかなるだろ」コギコギ


男「後は、他の場所の状況だな。どうなってる?」

クワガタA「」ブーンッ

クワガタA「」ギチギチ、ギチギチ

男「ん……了解。引き続き、監視な」コギコギ

クワガタA「」コクコクッ



クワガタB「」ブーンッ

クワガタB「」ギチギチ、ギチギチ

男「ん……わかった。こっちも引き続き監視で」コギコギ



クワガタC「」ブーンッ

クワガタC「」ギチギチ、ギチギチ

男「おー、それはいいニュースだな。わかった、また後で指示する」コギコギ



クワガタE「」ブーンッ

クワガタE「」ギチギチ、ギチギチ

男「うわ……。こっちは間に合わなかったか……。了解。わかった」コギコギ



男「んー……」

男「他の状況がまだ何とも言えないな……」

男「とりあえず、一件は解決というか、俺が関わる必要はもうなくなったんだけど……」



『報告A』
演劇部部長はまだ移動中。従姉妹もその後を追っているようで、前と変化なし

『報告B』
美少女は森林公園の奥へ移動。こちらも前と変化なし

『報告C』
教室の戸を開ける事に成功。生徒会長は息をしていて、気絶しているか眠っているかのどちらか。生きている

『報告E』
金槌を持って暴れるコギャルに警官の一人が発砲。弾は足と腹に当たり、コギャルは病院に搬送された模様



男「コギャルはもう警察任せだな、俺の関わる余地がない」

男「生徒会長も無事が確認出来たし、コギャルが捕まって警察も余裕が出来ただろ。クワガタに字を書かせて、居場所を書いたメモを警察署にこっそり置いとけばいい」

男「誰が書いたかはともかく、調べに行ってはくれるだろ。これで何とかなるはずだ」


男「残りは、美少女。それに、演劇部部長、従姉妹さんか……」

男「正直、何で俺や友が狙われてるかなんて、わかりゃしないんだが……」コギコギ

男「さっきの事を考えると、友を最初、包丁で刺した犯人はきっと風紀委員だろうな」コギコギ

男「刺したが失敗したので、風紀委員はまた犯行に及んだ……って事だろ」コギコギ


男「つまり、俺を刺そうとした奴と、友を刺した犯人は別……?」


男「友と風紀委員の関係は知らないけど、何かの因縁があるんだろうな。でなきゃ、殺そうとする訳がない」コギコギ

男「でも、俺は風紀委員とほとんど関わりがない。狙われるような理由がない」コギコギ

男「犯人は別人で、たまたま偶然が重なったって事か?」コギコギ


男「だとしたら……」コギコギ

男「『犯人』は誰だ……?」コギコギ


男「女さんじゃないのは確かだ。女さんがもし犯人なら、俺を殺す機会なんかいくらでもあった」コギコギ


男「従姉妹さん……は限りなく黒に近いグレーだけど、従姉妹さんがもし俺を殺そうと考えていたら、やっぱりそのチャンスはいくらでもあったんだよな……」コギコギ


男「生徒会長……でもない。生徒会長が犯人なら、多分、俺はとうの昔に死んでた。二回目のカッターを避けられたのは、生徒会長のお陰でもあるしな」コギコギ


男「コギャルでもないだろ、多分……。こっちもやってる事が訳わからんけど、あいつに殺されるほどの恨みなんか買ってないはずだ。大して話した事もないし」コギコギ


男「つー事は……」

男「今のところ、一番怪しいのが、美少女なんだよな……」コギコギ

男「包丁持って歩くって事自体おかしいのに、それが何で夜の森林公園なんかに用があるんだよ……」コギコギ

男「すげー怪しい……よな。狙われるような覚えはないけど、何かの逆恨みって可能性もあるって前に刑事さん言ってたし……」コギコギ


男「あと、従姉妹さんが何で演劇部部長を尾行してるのかがわからん」コギコギ

男「あの人、一番得体が知れないし、正直、一番危ない人だと思うんだけど、その人が何で?」コギコギ

男「まさか、俺と同じように、演劇部部長を拉致しようとしてる……? 何か有り得そうで怖いな……」コギコギ

男「……どっちにしろ、こっちもほっとけないよな」コギコギ


男「っと!」キキーッ!!


男「ようやく着いた。待ってろよ、友。すぐ行くからな」スタッ

男「」タタタッ

『河川敷』


男「おい、友! 無事かー!」タタタッ

友「え……? 男? どうしてここに……?」

男「それを話してると長くなりそうだから、後回しな。つーか、お前、ボロボロじゃねーか」

友「え……ああ、まあ……。だろうな、散々ボコられたからな……」

男「風紀委員は?」

友「そこ……。転がってるだろ……」



風紀委員「ぅ……ぁ……。あぁぁ……」



男「おおう……」

友「多分……全身傷だらけだろうな……。まあ……それは全部、軽傷だろうけど……」

友「どっちかって言うと……心の傷が相当にあるんじゃないかな……。信じられないかも……しれないけど……クワガタが大量に来てさ……」

友「あれ、絶対トラウマもんだわ……。ヤベエって……。服の中から……顔の上まで……全身這いずり回ってたし……」


男「oh……」

男「そういや……昔の拷問方法に、身体中に蜂蜜を塗りたくって森の中に放置するって方法があったっけ……」

友「ああ、それ……俺も聞いた事があるわ……。全身刺されたり這いずり回られたりして……痒さと気持ち悪さから一晩で気が狂うらしいな……」

男「もう少し手加減を覚えよう……ヤバイわ、これ……」ボソッ

友「ん?」

男「あ、いや……何でも……」


男「とりあえず、お前、病院に運ぶぞ。あと、風紀委員もだな」

友「ああ、うん……頼むわ。見てて可哀想なぐらいだったしな……。殺されかけたけど……正直、今はそこまで恨みはないわ……」


男「お、おう……」



風紀委員「ぁぁぁ……! ぅ……ぅぅ……!」

『コンビニで電話を借りて、警察に連絡後』


男「五分ぐらいで来るって言ってたな。風紀委員も友も、一旦、病院に運ぶらしいけど」

友「……だな。口を切って、喋るの痛いわ……」

男「しばらくの辛抱だ。我慢しろ」

友「わかってるけどな……。にしても……ついてねえよなあ、ホント……」ハァ

男「それは、俺もだけどな。まあ、俺はかなりマシな方かもしれないけどさ……」


男「ところで、友……。何でお前、風紀委員に殺されかけてたんだ?」

男「『女子大生』の事を知らないって言って、キレられたのまでは聞いた。そりゃ怒るだろうけど、でも、それだけでここまでするか?」

男「それに、病院はお前一人で出ていったんだよな? 風紀委員に呼び出されたのか?」


友「……ああ、それについては」

『知っている事を説明後』


男「じゃあ『犯人』は、生徒会長だっていうのか……?」

男「いや、それ以前に、何で友が『従姉妹さん』を知っているんだ?」

男「お前の病室に見舞いに来たっていうけど、どういう関係で、どう知り合ったんだ?」

男「大体、何でお前、マジで『女子大生』の事を忘れてるんだ? おかしいだろ。それ?」


友「んな事、言われても……」

友「従姉妹さんとは……バイト先で知り合ったんだ……」

男「お前、バイトなんかしてたか? 聞いた事ないけど」

友「一年ぐらい前までな……。コンビニで……」

友「そこで、バイトの先輩だった従姉妹さんと知り合って……すぐに仲良くなって……」

友「で、付き合い始めたきっかけって言うか……。従姉妹さんが美大から帰る途中、チャリがパンクしたところに偶然出くわして……それを俺が直し」

男「ちょっと待て。美大? 医大じゃないのか?」

友「いや、従姉妹さんは美術大学だよ……。医大じゃない……」

男「……??」


男(女さんは確かに『医大』って言ってたよな……。だから薬やら病気やらの事を女さんが信用したんだ。それははっきり覚えてる)

男(だけど、友は『美大』だって言ってる……。どういう事だ?)

友「で、しばらくして俺はバイトを辞めたんだけど……従姉妹さんとの付き合いはそれからもあって……」

友「デートを何回かして……それで、三ヶ月前から正式に付き合う事に……」

男「おい、待てよ、友。お前、それおかしくないか?」

友「え?」

男「じゃあ、何か? お前、彼女がいるのに、生徒会長や演劇部部長とのデートをあれだけ熱烈に楽しみにしてたのか?」

友「デート? あ、うん、そうだよな……。俺、デートしようとしてたよな……。あれ……?」

友「だけど、俺と従姉妹さんはもう一年半も前から付き合ってて……」

男「お前、さっき三ヶ月前って言っただろ? 何か言ってる事がおかしいぞ」

友「……いや、おかしくない。合ってる……はずだぞ」

男「合ってない。『女子大生』を覚えてないって言ってたし、お前、記憶が少し変だ。何かおかしい」

友「……ち、違う! これは勘違いしてるだけで……!」


男「…………」

男「じゃあ聞くけどな。どうして、『生徒会長』が犯人だって、お前は知ってるんだ?」

男「警察にそれを話せばいいだろ? どうしてそれを言わない?」

友「いや、でも……。言ったところで、信用してもらえないだろうし……」


男「どうして信用してもらえないんだ? 証拠がないからか?」

友「そうだよ、急に思い出したって言っても信用してもらえないだろうから……」

男「誰かにそんな事を言われなかったか? 誘導されるような事とか」

友「いや、何も……。でも、その時、横に従姉妹さんがいて、だったら証拠を私が探してあげようかって……」

男「…………」

友「だから、生徒会長を明日病院に呼び出して、それでその間に従姉妹さんが生徒会長の家に行って探るみたいなそんな話を……」

男「それもおかしい」

友「へ?」

男「生徒会長はお前を殺そうとしてるんだろ? なら何で、お前の病室に呼び出すんだ? 危険だろ? 恋人がそんな提案をするか?」

友「……あ」


友「だ、だけど……それは多分、従姉妹さんが気付かなかっただけで……! 俺も気付かなかったし……!」

男「絶対にそれは違う」

友「……う」

男(従姉妹さんは、多分、生徒会長が犯人じゃないって知ってたはすだ)

男(でなきゃそんな提案はしない……)

男(従姉妹さんと友が付き合ってるって話も妙だ。俺はそんな事、これまで友から一回も聞いた事がない)

男(友が付き合いを隠してたって可能性もあるけど、一年ぐらい前に友が『女子大生』と付き合っていたってのは警察が調べてるんだから間違いない話だし……)

男(そもそも友が『女子大生』を覚えてないってのがおかしい。それでこんな目に遭ってるっていうのに、未だに知らないって言ってる)


男(友が嘘をついてないとしたら、記憶喪失か記憶混乱のどちらかだ)

男(問題は何でそれが起きたかって事だ。そして、関わってるのが『あの』従姉妹さんだって事を考えると……)


男(例の『薬』か……)

男(俺みたいに『能力者』なのか……)


男(どっちか判断はつかないけど、十中八九そうだろうな……)

ピーポー、ピーポー


男「っと……来たか」

友「……ああ、うん」


男「悪いけど、友。俺は他にやる事があるから、一緒に病院にはいけない」

友「え?」


男「大体の場所は教えてあるから、大丈夫だとは思うけど、近くに来たら呼び掛けてくれ。俺がここにいると、俺まで病院か警察に連れていかれるからな」

友「おい、男。お前も狙われてるんだろ? 一人で出歩かない方が」

男「それと、従姉妹さんにはもう会わない方がいい。あの人、危険だ。下手したら殺されるかもしれないからな」

友「ちょっ! おい!」

男「これ、前に同じ事をお前に言われたな。あの時は信用してなくて悪かった。だけど、今度は俺を信じてくれ。頼む」

友「…………」

男「じゃあな、友。また明日、来れたら病院に行く。俺も精密検査を受けなきゃならないからな」

友「おい、男!」

男「気を付けろよ、友!」タタタッ


友「……行っちまいやがった」

『少し離れた道路』


男「」コギコギ


男「さて、と」

男「クワガタからの報告は来てるか?」


クワガタA「」ブーンッ

クワガタA「」ギチギチ、ギチギチ

男「? ……マジか、それ?」


クワガタB「」ブーンッ

クワガタB「」ギチギチ、ギチギチ

男「は? ……何でそんな事を……?」

『報告A』
演劇部部長は神社の境内まで移動。そこで従姉妹と何やら会話を交わしている模様。内容は不明

『報告B』
森林公園の奥で、美少女が包丁を木に突き刺し回っている模様。何かを叫んでいる様子



男「また、妙な事態になってきたな……」

男「どうする……? どっちも気になるし、どっちも怪しい」

男「言葉が理解出来ないからクワガタじゃ何を言っているかは絶対にわからないし……」

男「出来れば、どっちかに行って、状況をきちんと知りたいんだが……」

男「どちらが危険で、どちらが核心に迫れるのか、この時点じゃ何もわかんねえ……」


男「特にAは、演劇部部長と、従姉妹の会話の内容によっては、状況がまるで変わってくるしな……」

男「従姉妹が演劇部部長を拉致しようと企んでるのか、脅しているのか、記憶を操ろうとしてるのか、それとも共犯なのか、はたまた演劇部部長が『犯人』なのか……」

男「演劇部部長がどっち側かで、危険度がまるで違ってくるな。最悪の場合、演劇部部長も従姉妹さんも『能力者』で、俺はノコノコとネギしょって自分から料理されに行く可能性だってある」


男「Bに行く場合も危険なのは変わりないけど……」

男「クワガタがいるし、どうにかなりそうな気はする。少なくとも、殺される事はないだろう」

男「美少女さんが『一般人』だったら……の話だけどな」

男「もし『能力者』だったとしたら……。俺のクワガタはそこまで強い訳じゃない。真冬並の寒さだけでも一発アウトって脆さだ

男「相手の能力と季節次第じゃ無能力者と変わらないからな、俺……」


男「どうする……? どっちも危険と言えば危険だけど……行かなかったら後悔しそうだしな」

男「どっちに行くべきだ……?」



行動選択
AかBで。安価↓1

男「どちらかと言えば……」

男「美少女の方が気にかかるな……」


男「そりゃそうだよな……包丁振り回している訳だし」


男「何してるのか知らんけど、まともじゃない。演劇部部長と従姉妹も気になるけど、こっちは話してるだけで、まだ普通と言えば普通だ」

男「監視のクワガタも四千匹つけてるしな。もしも、従姉妹か演劇部部長のどちらかが、一方に危害を加えようとしたら、攻撃させるようにしといて……」

男「念のため、新しく六千匹を追加で送っとくか。コギャルのところに送ったのが空いてるし、神社からも近いからな」


男「病院にも友と一緒に一万匹つけて待機させてるからこっちは大丈夫だろ」


男「残りの三万匹の内、二千匹はもう美少女に監視としてつけてあるよな」

男「新しく八千匹を追加で送って、残りの二万匹の内、一万匹は俺の護衛。余った一万匹は戻しておくか。また疲れちまうから、少し休ませておかないと」


男「つーか、さっき気付いたけど、七百匹潰された時、多分、俺の体力少し減ったんだよな」

男「五万匹殺されたら、俺、死ぬかも」

男「まあ、分散させてあるし、五万匹全部殺されるなんて事はないんだろうけど……」

男「一万匹殺されたら、体力の五分の一が減るって事だよな」

男「チャリンコもこいで体力消費してるし、それだけ一気に体力奪われたら、逃げるのも一苦労だよな……」


男「頼むから……何も起こらないでくれよ。美少女が無能力者なら、そんな心配はいらないだろうけど……」

男「もしも、『犯人』だったとしたら、能力者って可能性も十分にあるからな……」


男「」フーッ


男「よしっ、行くか!」コギコギ!!

『森林公園』


男「昼間と違って、流石に夜は真っ暗だな、ここ……」

男「灯りもここから先の森の中にはないし……」

男「クワガタが道案内してくれるから、進むのに困りはしないけど……」


男「……ぶっちゃけると、不気味で怖い」


男「スマホでもありゃライトで照らす事も出来たんだろうけど」

男「持ってないし、そもそも灯りをつけたらこっちの位置を教えるようなもんだしな」

男「……やめてくれよ。いきなり後ろからグサッ、みたいな事だけは」


男「何かフラグを立ててるようで、余計怖いわ。何も考えずに進もう……」

男「…………」トコ……トコ……

『森林公園 奥』


クワガタA「」ブーンッ

クワガタA「」ギチギチ、ギチギチ


男「ん……わかった。一応、どちらも監視しといてくれ」ボソッ

クワガタA「」コクコク



男(演劇部部長と従姉妹は話が終わったのか、それぞれ帰ったみたいだな……)

男(何の話をしてたのか知らないけど、とりあえず何もなかった……。何も起こらなかった……)

男(それが逆に怖いな……。『共犯』の可能性もあるし、従姉妹に記憶を操られた可能性もある……)

男(考えてみれば、『犯人』は俺と友がどこに行くかを知ってた可能性が高いんだよな……。家の前で待ち伏せしていて、それぞれ尾行して包丁を投げつけたって方が、可能性としてはよっぽど低い……)

男(それが出来るのは、行き先を知っていた生徒会長と演劇部部長だけだ……)

男(演劇部部長が『犯人』だったとしても、そこまでおかしくはないか……。動機はまったくわからないけどな……)

男「」コソコソ……コソコソ……


男(そろそろ美少女のいる辺りだ……)

男(とにかく、バレないように近付かないと何されるかわかったもんじゃない……)

男(慎重に……慎重に……)コソコソ……コソコソ……


シネ、シネ、シネ、シネシネシネシネ!!


男(……あれは、美少女の声……?)

男(いた……!)

『森林公園 更に奥』


美少女「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!」ズサッ!! ザクッ!!

美少女「お前が!! お前が!!」ザクッ!! ザクッ!!



美少女「男君を襲った犯人なんでしょ!? 死ね!!」ザクッ!! ザクッ!!



それは異様な光景だった

力任せに包丁を近くの木に突き立てている美少女の姿がそこにはあった



男(何やってんだ……一体……!)

男(それに今、俺を襲った犯人って……!)

男(どういう事だ……? 美少女は『犯人』じゃない……?)


男(だけど……あれじゃまるで……!)

男(異常者そのものだろ……!)


男(よく見たら、あそこら辺の木、全部、バッサバサに切られてるし……!)

男(包丁も途中から折れてる……! 何回切りつけてるんだよ……!)


男(……どうする? 今の状況で俺はどうするのがベストなんだ……?)



安価↓1

男(とにかく、落ち着かせないと……!)

男(俺が無事だって知れば、美少女も正気を戻すかもしれない!)


ガサッ

男「美少女!」



美少女「え……?」クルッ

男「俺だ! 男だよ! 俺はここにいる!」

男「だから、落ち着いてくれ!」タタタッ


美少女「なーんだ……そんなところにまだいたんだ」

美少女「犯人が!!」ドスッ!!



男「え……。がっ! あっ!」グラッ

美少女「一体、何人殺せばいいのかなあ? 殺しても殺しても後から後からずっとずっと!」グサッ!! ドスッ!!


男「っっ!! がっ!!!」ビクンッ


美少女「何人殺せば男君に会えるのかな? 早くしないと男君が殺されちゃうかもしれないのに!!」ドスッ!! ドスッ!!


男「……!!!」ビクンッ


美少女「殺しても殺しても殺しても殺しても殺しても殺しても殺しても殺しても全然男君に会えない!!」グサッ!! グサッ!!


男「」…………


美少女「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!」ザクッ!! ザクッ!!


男「」…………


『事件No.358964

通称【〇〇高校連続殺人事件】、及び、【包丁殺傷連続事件】


被害者は、友、女、委員長、男、コギャル、従姉妹、生徒会長、演劇部部長、の八人。関わった警察官十一人、看護師一人も、重軽傷を負った

内、死亡したのが、男、女、コギャル、従姉妹、生徒会長、演劇部部長、の六人


男は〇月□日の昼、森林公園の奥で倒れているのが発見された
凶器は現場近くに落ちていた包丁と、付着した血痕から断定
被害者の死体の損壊は激しく、数十回から数百回、包丁で突き刺されたものと推定される

その翌日の昼頃、病院内でコギャルが死亡しているのが発見された
解剖の結果、致死量を遥かに越えるモルヒネが血管内から検出される。大量にモルヒネを投与されたのが直接の死因と思われる

その二日後の〇月□日、従姉妹が廃ビルの一室でバラバラ死体となって発見された
凶器は不明
直接の死因は失血死と思われるが、断定は出来ず

その翌日、自宅で生徒会長が血まみれになって倒れているのを母親が発見。その横には、同じく血まみれになって倒れている女もいた
すぐに二人とも病院に搬送されたが、どちらも既に死亡していた。死因は共に出血多量による失血死
生徒会長の胸には包丁が刺さっており、女の首にはナイフが刺さっていた。これが直接の原因と思われる

その三日後、演劇部部長が行方不明となり、一週間後に下水道から死体となって発見される
死体は激しく損壊しており、直接の死因は不明


関連事件として、風紀委員による殺人未遂事件、美少女の失踪事件が挙げられる……


失踪した美少女の家の自宅を捜査したところ、時計の裏から一枚のメモ紙がテープで貼り付けられているのが発見された

その最後の行にはこう記されている


「どうか、この事件を解決して下さい。それだけが私の願いです」




ひぐらしエンド 完

>>493からやり直しかな……
そこから再開

行動選択
AからEのどれか(Dは除く)
安価↓1

推理選択
女、美少女、コギャル、従姉妹、生徒会長、演劇部部長、風紀委員、の七人から一人選択(計二名)
安価↓2と↓3

男「おおお落ち着け、俺! 落ち着くんだ! こういう時は素数を数えろ!」

男「1、2、3、5、7、11って意味ねえだろ、こんな事しても! アホか!」


男「」フーッ……


男「うしっ! 少し落ち着いた!」

男「友の方は比較的距離が近いな、クワガタで何とかなるだろ。とりあえず、能力発動! 最大召喚!」キュイーン!!


シュイン……ポンッ!

クワガタの群れ「」ギチギチ


男「スピードがある一万匹を、友の元に急行させる! 精鋭部隊、行け!」


クワガタ10000匹「」ブーンッ!!


男「次に一万匹を均等に散らせて、美少女、演劇部部長、従姉妹、生徒会長の元に向かわせる!」

男「ヤバそうだったら助けろ! 妙な事をやらかしたら止めろ! 判断は任せる! 行け!」


クワガタ10000匹「」ブーンッ!!


男「最後に残った半分は、一番危険そうなコギャルのところに全速力! もう半分は俺の護衛! 行くぞ!」ダダダッ

クワガタたち「」ギチギチ!!

『時間を遡って 繁華街』


コギャル「ははっ。見事に服とイヤリングをゲットだぜぇ」

コギャル「いやー、便利だわー、この『能力』」

コギャル「ちょいと金もってそうなオッサンのハートを盗んでやっただけで、もうメロメロ」

コギャル「あれ欲しいー、あれもー、って言っただけでポンポン買ってくれるもんなあ」

コギャル「あー、こりゃもう将来困んないわ。バラ色の人生を送れ……」


コギャル「」ピタッ


通行人A「っと……」

ドンッ

コギャル「…………」

通行人「あ、すいません」

コギャル「…………」

通行人「……?」


通行人「何だ……あの子? 急に立ち止まって、ボーッとして」

通行人「…………」スタスタ


コギャル「…………」

コギャル「…………」

通行人A「……?」スタスタ


コギャル「…………」

通行人B「なに、あの子……? こんな道の真ん中で棒立ちして……」スタスタ


コギャル「…………」ブツブツ

通行人C「……なんか、気持ち悪いな、あの子。大丈夫か……?」



コギャル「ふフフふふフふ……」ユラリ

コギャル「こノ能力の使イ道……。コギャルのおカゲでいい事ヲ知っチャった……」

コギャル「たダノ操作能力ジャないンダ……。コギャルに出来て、『私』に出来ナい訳ないヨネ……?」

コギャル「元々、能力ヲ覚えたノ、『私』の方が先ダシ……。ソれをコギャルが別ノ使い方デ使ってタだケだもン……」

コギャル「やっト『体』ヲ使えル様になっタし、急ガなきゃ……」

コギャル「待っテテね、生徒会長……。恥ずカシがりやノ生徒会長を素直にシテあげル……」フフ……



コギャル「アハはハハハはハははハハはははハははハハははは!!」

通行人「」ビクッ



コギャル「」トコトコ……



通行人D「ビビったあ……。何だ、あの子いきなり笑いだして……」

通行人D「ああいうコギャルの考えてる事とか俺には理解出来ねえな……」ハァ……

『生徒会長の家の前』


コギャル「着いタ……。きっト鍵が閉マッテるだロウからコじ開けナイといケナいよね……」

コギャル「途中で買っタこの金槌デ……」スッ


コギャル「」トコトコ……


私服警官A「おい、ちょっと、そこの君! 何だ、その持ってる金槌は!」タタタッ

私服警官B「少し話を聞かせてもらうぞ!」タタタッ


コギャル「うるサいナあ……」スッ

コギャル「邪魔ダよ……」

コギャル「消えテ……!!」ズガッ!!


私服警官A「ぐあっ!!」ドサッ

私服警官B「おい、A!?」

私服警官「お、お前、暴行の現行犯で……!!」


コギャル「そっちもダね……」ポイッ

コギャル「能力……発動……!!」キュイーン

シュイン……

私服警官B「金槌が浮いた……!?」

私服警官B「そんなバ」

ヒュンッ!! ドガッ!!

私服警官B「ぐふっ!!」ドサッ


コギャル「フふフフふふふフフふフ」クルッ


コギャル「生徒会長、遊びに来たヨ……。このドア開ケて……」ズガッ!!

コギャル「家の中ニいるンダよね……? 入レて……」ズガッ!!

コギャル「このドア、開ケて……。入れテ……」ズガッ!!

コギャル「生徒会長……。開けテ……」ズガッ!!

『現在』


ウーウー、ウーウー

キキィッ!! バタンッ

刑事「本庁の刑事だ! 今、到着した! 状況は!?」


モブ警官A「犯人は現在、ドアを破壊しようと金槌を振るっています!」

モブ警官B「途中、止めようとして、更に被害に遭った警官が二人! ただ、その隙に倒れていた私服警官は回収出来ました! 息はあります! 只今、病院に急ぎ搬送中!」

モブ警官C「近付こうとすると、金槌を一切のためらいもなく振るうので、簡単には近付けません! 説得も試みましたが、こちらの声には全く無関心です!」


刑事「家族の避難は!」


モブ警官A「標的だと思われる生徒会長は、それ以前に家を飛び出してますので元から不在です!」

モブ警官B「自宅にいたのは母親だけでしたが、既に裏の窓から救出、保護しています!」

モブ警官C「父親にも連続済みです! こちらは念のために勤めてる会社から出ないよう勧告してあります!」


刑事「よしっ! なら後はあの娘を捕まえるだけだな! 機動部隊はいつ頃到着する予定だ?」

モブ警官A「ヘリでこちらへと向かっているそうですが、あと15分はかかると!」

刑事「それまでは下手に刺激しない方がいい。道路の封鎖は済んでいるのか?」

モブ警官B「現在、大急ぎでやっています!」

刑事「我々も遠巻きに囲め。中に侵入した時の事も考えて裏の道路も。全員、万が一の時に備えて拳銃の安全装置は外しておけ」

刑事「ただし、当たり前の事だがギリギリまで発砲はするな。身を守るためにやむを得ずの場合だけだからな!」

モブ警官C「は!」

『道路』


クワガタ「」ブーンッ

クワガタ「」ギチギチ、ギチギチ

男「ん。了解。そのまま偵察に戻れ」コギコギ

クワガタ「」コクコク



男「にしても、チャリをパクってきて正解だったな。とんでもない騒ぎになってるわ」コギコギ

男「道路封鎖もされてるみたいだしな。近付くのは無理か」コギコギ

男「先に飛ばしたクワガタたちは、そろそろ着いてもいい頃だと思うけど、どうか」コギコギ


男「スピードは車より遅いけど、空を行く分、直線的に行けるし渋滞や信号なんか関係ないからな」コギコギ

男「だけど、何でコギャルが生徒会長の家を……?」コギコギ

男「やっぱり、コギャルが『犯人』なのか……? 何とも言えないな……」コギコギ

男「何にしろ、コギャルが逮捕されたら、何か情報が聞けるだろ。今はそれに賭けよう」コギコギ

『生徒会長の家の前』


コギャル「アはハハ! もう少シだよ、生徒会長!」ズガッ!! ズガッ!!

コギャル「あとチョッとで、穴が空クカら!」ズガッ!! ズガッ!!


刑事「拡声器を」

モブ警官A「はい!」


刑事「そこの君! バカな事はやめろ、落ち着きなさい!」


コギャル「アはハハはハハハはハハははハはハハハはハハ!!」ズガッ!! ズガッ!!


刑事「そんな事をしても無駄だ! 生徒会長はそこにはいないし、君は完全に包囲されている!」


コギャル「アはハハはハハハはハハははハはハハハはハハ!! あと少シ!!」ズガッ!! ズガッ!!


刑事「これ以上、罪を重ねる前に大人しく投降するんだ! 逃げ場はもうないぞ!」


コギャル「アはハハはハハハはハハははハはハハハはハハ!! あと少シ!!」ズガッ!! ズガッ!!



刑事「」チッ

刑事「本当に聞く耳持たずだな。……理性もないか」

モブ警官A「はい……。危険ドラッグでもやっているんでしょうかね。説得は無駄だと思います」

刑事「……ああいうタイプが一番厄介なんだがな。次に何をするか全く予想がつかない」

刑事「目下のところ、犯人の関心は家にいると信じきっている生徒会長に向けられているが……」

刑事「もしも、生徒会長が家にいないと知ったらどうでるか……」

刑事「怒りだして、いきなり無差別に攻撃に出る可能性もある」


刑事「ドアも、あと数分ももたないだろう。説得して機動部隊が来るまでの時間を稼ぎたかったがそれも出来ない……」

刑事「各自、最悪の可能性は頭に入れておけよ。相手は凶器を持って振り回してるんだ。街中に出す訳にはいかない。何があってもここの包囲網だけは、破られてはいけないんだからな」

モブ警官「は!」

コギャル「こレデ空くヨ! 生徒会長に会エるンだ!」ズガッ!! バキッ!!


ガチャリ


コギャル「あハハはハ! やっと会エるね、生徒会長!」

コギャル「今、行くカラね!」トコトコ




刑事「くそっ! 家の中に入っていったか……!」

モブ警官「どうします、刑事!」

刑事「警戒しつつ待機だ。全員にそう伝え……。何だ、あれは……? ヘリが来」



クワガタ10000匹「」ブーンッ!!


刑事「クワガタ!?」

モブ警官「うわっ!」サッ



クワガタ10000匹「」ブーンッ!!

ザザザザッ



刑事「家の中に入っていったぞ!? 何だ、あの大量のクワガタの群れは!?」

モブ警官「気持ち悪いぐらいの数がいましたけど……!」

刑事「……どうなってんだ、一体」

『生徒会長の家』


コギャル「生徒会長、来タよ……!」

コギャル「どコ、生徒会長? 私と遊ボウ!」

コギャル「昔みタいに、楽シク、私と遊ボう……!」

コギャル「かくレンぼ? それトも鬼ゴッこ?」

コギャル「いーっパイ、いーっぱイ、私と」


ブーンッ!!


コギャル「……?」クルッ


クワガタ10000匹「」ブーンッ!!


コギャル「!?」

突如、視界を覆う巨大な黒い群れ

それが何なのかコギャルには咄嗟に判断がつかなかったが、こちら目掛けて飛びかかってくるその『何か』に対して危険を感じとったのは当然だっただろう


コギャルはほとんど反射的に『能力』を使っていた


隠し持っていた釘のケース、それが音もなく宙に浮かび、蓋が外れ、釘が空中に霧散し、そして……


宙に浮かび上がったまま、水平に。まるでガトリングガンのような勢いで次々と飛び出していった!


能力、『箱庭の女王(ワールド イズ マイン)』

手で触れた『生物以外の固体』を自在に操作出来る能力

操作範囲、数、操作の速度、精密度、操作可能時間などは、物体の質量に左右され、それが大きくなればなるほど制限がかかる

しかし、釘程度の小さな物なら一キロ近く操作しながら飛ばす事も可能であり、速度は時速150キロを超える。同時に200本の釘を操作し、その全てを針の穴を通すような精密な動きをさせる事も可能だった


そして、コギャルは今それを行った


一万匹のクワガタ VS 200本の釘


玄関から数十歩離れた狭い廊下で、恐らく世界で最も局地的な空中戦が展開される事となった

この戦い、どちらが有利なのだろうか

クワガタには、はっきり言ってしまえば人を殺す程の力はない

その気になれば、目や耳などの体の柔らかい部分を、潰し、切り取る事は可能だろうが、男はそれを望んではおらず、当然、クワガタにもそれを実行するつもりはない

視界を覆い、全身にまとわりついて攻撃を与え、体力を消耗させて戦う気力を奪い取るのを第一目的としている


一方で、コギャルの操作する『釘』は完全に『凶器』であり、コギャル自身も相手を殺す為にそれを操っている

そこに躊躇いは微塵もなく、また容赦すらなかった


もしも、これが同数の戦いだったなら、一分もかからずクワガタは全滅していただろう。コギャルの勝利は疑いようがない

しかし、今は圧倒的に戦力の差があった。弱いとは言え、相手はこちらの五十倍の数を持っているのだから

将棋で例えるなら、こちらは『飛車角を十枚』所有しているのに対し、向こうは『歩が五百枚』である

そして、こちら側の陣地には王将――コギャル自身がいるのだが、相手側の陣地には王将がいないのだった


この戦いの勝敗は初めから決まっていたと言える

コギャルが操作する釘の働きはめざましかった

クワガタの群れへと突っ込み、縦横無尽に飛び回って、自分の十倍以上の数の『敵』を次々と撃破していった

突き刺して貫通し、羽をなぎ払う。右に、左に、縦に、横に。

釘は空中を飛び回り、飛び回った後にはクワガタの死骸がボトボトと落ち、そして消滅していった

それはさながら零戦部隊の中を、最新鋭のジェット戦闘機が自在に駆け抜け、次々と撃墜していく様に似ていた


しかし、全体的な局面を見るなら、それらの活躍はビル火災の一部をバケツの水で消しただけのものに過ぎず、釘の活躍は誰もが認めるものだろうが、炎上自体は一向に止まらない

押し寄せてくる洪水を人の手で止める事が出来ないのと同様、無数の生き残ったクワガタ――釘の凄まじい攻撃の中を突っ切ったクワガタ。その数、実に七千匹――は一斉にコギャルへと襲い掛かった


「ッ! 離レろ!! 来ルなっ!! 来るナアあッ!!!」


しかし、襲い掛かったクワガタは身体中にまとわりつき、決して離れようとせず、噛みついて相手の恐怖心を煽り、それがパニックを誘った

「ィあ! っァ! あァ! ィああアあ!!」

コギャルは視界をクワガタで完全に覆われ、ふらつき、床に倒れ、そして転がり回る


この時点で勝敗は決した。コギャルには釘を操作する余裕がまったくなくなったから。あったとしても、クワガタを攻撃しようとすれば、自分自身にも釘が刺さる事になるから

飛んでいた釘は残らず落ち、小さな金属音を立てて床に転がり、そして停止した


その十分後に突入した機動隊が見たものは、全身に無数の傷跡――全て軽傷だった――をつけ、力ない声を上げながら床をのたうち回るコギャルの姿だった

彼らは脳の中を?マークで一杯にしながらも、警戒しつつコギャルに手錠をかけ、無線で事件が解決した事を告げた

天井に張り付いていた、何匹かの季節外れのクワガタには気付かなかった

まして、彼らが事件を解決した立役者であるなど、誰もが気付くはずもない事だった……

『生徒会長の家の近く』


男「っ、道路が封鎖されてて、ここまでしか行けないか」キキィッ

男「何とか、事情を聞きたいところなんだけど、無理かな……」


クワガタE「」ブーンッ

クワガタE「」ギチギチ、ギチギチ

男「お、コギャルは止めたか。よくやった。偉いぞ」

クワガタ「」テレテレ



クワガタD「」ブーンッ

クワガタD「」ギチギチ、ギチギチ

男「お、友の方も助けたか。頑張ったな、ありがとう」

クワガタD「」テレテレ



クワガタC「」ブーンッ

クワガタC「」ギチギチ、ギチギチ

男「おお、生徒会長までか! 生きてたんだな、良かった。ナイスだぞ」

クワガタC「//」モジモジ



男「これで、緊急なのは全部どうにかなりそうだな。よしっ!」

男「友と生徒会長はクワガタに字を書かせて、居場所を警察に教えるとして」

男「後は、演劇部部長と美少女か」


男「だけど、その前にコギャルの事についてどうにか知りたいけど、警察の人に聞くと教えてくれる前に俺が病院に送られそうだしな」

男「何かいい方法は……」

男「ん?」



モブ主婦A「怖かったわー。ようやく犯人捕まったみたい」

モブ主婦B「生徒会長ちゃん、生徒会長ちゃんって叫んでたわよね、あの子。何だったのかしら?」

モブ主婦C「私、知ってるわよ、あの子。コギャルちゃんでしょ? 昔、この辺に住んでた子よ。あの子のお母さんと仲良かったから、覚えてるわ」

モブ主婦D「ああ、あの子ね。すっかり風貌が変わっちゃったから、わからなかったけど。私も覚えてるわよ」



男「……何か聞けそうだな、あの雰囲気」

男「ちょっと行ってみるか」

主婦C「そういえば、昔は生徒会長ちゃんとよく遊んでたわね、あの子」

主婦D「そうそう。引っ越しする前はよく遊びに来てたみたい」

主婦A「その子が何であんな事を……? 怨みとかがあったとしても、あれはちょっと異常よね」

主婦C「それがね……。ここだけの話なんだけどね」

主婦B「何か知ってるの、奥さん?」

主婦C「この前、下の娘が風邪を引いたんで病院に連れてったのよ。そしたら、あの子とお母さんに偶然バッタリ出くわしてね」


主婦C「私、あの子のお母さんと仲が良かったでしょ。挨拶したのよ、お久しぶりですねって」

主婦C「向こうのお母さんも私に気付いて挨拶を返したんだけど、何か落ち着かない感じで」

主婦C「どうしたんですか? 何か病気でもされたんですかって尋ねても言葉を濁すばかりでね」

主婦C「それで、私、気になったから、それじゃあまた、って別れてからも、後をちょっと目で追ってたのよ」

主婦C「そしたら、お母さん、コギャルちゃんを連れて精神科の方に行くじゃない」

主婦C「鬱病とかそんなのかなって思って、最初はそこまで気にしてなかったんだけど、たまたまよ、たまたま」

主婦C「看護師さんたちが話してるのをちょっと聞いちゃったのよ」


主婦C「あの子、確か解離性同一性障害の子ね、って」


主婦A「その……解離性同一性障害ってどういう病気なの? 聞いた事もないけど……」


主婦C「うん。私もそうだったわ。それで気になって、帰ってから夫のパソコンで調べてみたのよ」

主婦C「そしたら……」


主婦C「二重人格、多重人格、そんな言葉が出てきたのよ」


主婦B「多重人格って……あれよね? 別の人格が自分の中に出来るっていう……」

主婦C「そう、それ。それで自分自身はその事に気が付かないし記憶もないっていう、あれよ」


主婦C「何か周りの人も気付かない事が多いんだって。だから、症状が進行してからじゃないと、発見される事が少ないって」

主婦C「怖い話よねえ……。あの子も多分そうだったのよ」





男「二重人格……? マジかよ……」

男「クワガタから聞いた話だと、コギャルは釘を操っていたって言うし……」

男「釘が操れるなら、包丁だってカッターだってナイフだって操れるよな……」


男「じゃあ、やっぱり俺と友を襲った『犯人』はコギャルって事か……?」

男「コギャルが何でか知らないけど、俺と同じで『能力』を使えるようになって、それで俺と友を襲った……?」

男「コギャル自身は多分、そんな事はしないだろうけど、コギャルの中に『もう一人』人格がいるっていうなら、やってもおかしくない」

男「つっても、未だに襲われるような理由はさっぱりわからんけど、多分、そういう事だよな。コギャルの『もう一人の人格』がそれをしたっていう……」


男「じゃあ、これで『犯人』は捕まって事件は解決か……?」

男「なら、何で美少女は包丁を持ってうろついてんだ? 何で俺は従姉妹さんから怪しげな薬を飲まされてたんだ? 何で生徒会長は教室で倒れてたんだ? 何で友は風紀委員に殺されかけてたんだ?」

男「さっぱりわかんねえ……。どうなってんだ、ホントに……?」

クワガタA「」ブーンッ

クワガタA「」ギチギチ、ギチギチ

男「ん……? 演劇部部長と従姉妹さんが神社の境内で何か話してるっぽい?」


クワガタB「」ブーンッ

クワガタB「」ギチギチ、ギチギチ

男「!?」

男「で、こっちは、美少女が木に包丁をやたらめったら突き刺してる!?」



男「また変な事態になってきたな……」

男「とりあえず……美少女の様子は明らかに変だ。コギャルみたいにまた二重人格とかは思いたくないけど、そんな可能性もある」

男「近寄ったら、俺が何されるかわからんし、もう少し様子を見よう。今のところ実害が出てる訳じゃないし、あそこなら人もそうそう来ないだろうからな。誰かを襲うなんて可能性はまだ低い訳だし」


男「それよりも、演劇部部長と従姉妹だ。従姉妹は危険人物っぽいし、その従姉妹と話してる演劇部部長も怪しい」

男「とにかく、チャリでそっちへ行ってみるか! ここからならそんなにかからないしな」

男「上手くすれば、会話が聞けるかもしれない!」コギコギ!!

『神社の石段前』


男「」キキィッ

男「」スタッ


男「」ハァハァ……

男「猛ダッシュで来たおかげで、そんなに時間はかからずついたな……。途中のクワガタからの報告だと、まだ二人は境内で話中だ……」

男「クワガタはとりあえず二万匹俺の護衛につけて……。後は偵察を残して、全部戻すか」

男「コギャルにかなりやられたし、ちょっと体力の消費が大きい。いざという時に備えて休ませておかないと」


男「おまけにこれから、この長い石段を登らなきゃならないしな……」ハァ……


男「途中でいきなり鉢合わせとかしたくないし、すぐに横の茂みに隠れられるように、慎重に行くか……」ジリッ

『神社の境内 建物の陰』


男「」ササッ

男「」ソッ……


男(二人が境内の裏辺りで話をしてくれてたのは幸運だったな……)

男(向こうも多分見つからないようにそこで話してるんだろうけど、お陰で俺も見つからずに神社の陰までスムーズに来れた……)


男(遠くから見た感じ、言い争っている様子もないし、従姉妹が演劇部部長を脅迫してるとかでもなさそうだ……)

男(普通に何か世間話でもしてるような感じだけど……)


男(もう少し近付いて声が聞けるところまで行くか……。音を立てないよう、ゆっくり、ゆっくり……)ソーッ

『神社の境内 裏』


演劇部部長「……と、そんなところです。こちらからの報告は以上ですね」

従姉妹「ふうん……。美少女も駄目だったのね」

演劇部部長「はい。あの子は駄目でしたね。『能力』にも目覚めてくれなくて。とんだ見込み違いでした」

従姉妹「参ったわねえ。友君を殺そうとしたゴキブリを『見つけ出す能力者』が欲しかったのに……」

演劇部部長「生徒会長も違いましたからね。こうなってくると、『龍神の巫女』の直系以外の人にって事になりますけど……」

従姉妹「何か問題でもあるの?」

演劇部部長「いえ、ただ『薬』の数が足りるかなって思ったので……」

従姉妹「それは大丈夫よ。調合自体、それほど難しいものじゃないし。薬剤師の知り合いにまた作らせるわ。私の能力を使えば簡単だしね」

演劇部部長「そうですか。それなら」

従姉妹「ええ、出来次第、すぐに持っていくから。代わりに家系の調べの方はお願いね」

演劇部部長「はい」ニコッ

『神社の陰』


男(何の話だ……?)

男(途中からだから、意味がよくわからないけど……)

男(でも、今、ヤバめの単語を三つも言ったぞ……)


『能力』 『薬』 『美少女』


男(美少女は駄目だって、どういう事だ……?)

男(今、美少女がおかしくなってるのに関係があるのか? いや、ないって考える方が変だろ、この場合)


男(話通りに聞くと、『薬』が『能力』を目覚めさせてるって事だよな……)

男(でも、美少女は駄目だったって言った……。つまり、『薬』を飲ませられたって事だよな?)

男(その結果が、今の状態に繋がってるとしたら……)


男「」ゾクッ


男(俺も『能力』に目覚めたのは、怪しげな『薬』を注射されてからだ……!)

男(まさか、俺も美少女みたいに『あんな状態』になるのか……!?)

男(まさか……! そんな……!!)

『神社の境内 裏』


従姉妹「それじゃあ、もうそろそろ私は行くわ。警察に疑われているみたいだから」

演劇部部長「警察に? まさか、『女子大生』の一件ですか?」

従姉妹「そんな訳ないでしょう。証拠は一切残してないんだから。残った証拠も『能力』を使って、警察官に消してもらったし」


従姉妹「疑われているのは、男君の保護の一件よ。私が女ちゃんと親しかったから、それでね」

従姉妹「男君も女ちゃんもいつのまにかどこかに行っちゃうし、それもあるから、『見つけ出す能力者』が欲しいの」

従姉妹「出来るだけ早く作ってもらう事にするわ。心配だもの」


演劇部部長「……そうですか」


従姉妹「それじゃあね、また」バイバイ

演劇部部長「はい。途中、気を付けて下さいね」ペコリ

『神社の陰』


男(なんてこった……! 従姉妹が『女子大生』殺しの犯人かよ……!!)

男(それより、従姉妹がこっちに来る! どうする!?)

男(隠れてやり過ごすか!? 逃げるか!? それとも『能力』を使って捕まえる!?)


男(ヤバイ、どうする!?)


安価↓1

男(時間がない! すまん、クワガタ! また頼む!)

男(こっちに能力者がいるってのはバレるけど、それは仕方ない。足止めしてもらってる間に逃げるぞ!)

男(行けっ!)


クワガタ5000匹「」ブーンッ!!

神社に、近くの木に

そこら一帯に大人しく潜んでいたクワガタ五千匹が、この時、一斉に従姉妹に向かって飛び出していった


「な、何よ、これ!」


慌ててしゃにむに手で払う従姉妹。彼女の能力、『変幻自在の右手(スペース コントロール)』も同時に発動される

彼女が右手で触れた空間は奇妙な歪みを見せ、当然、その中にいたクワガタも奇妙に歪み、そして歪んだまま元に戻る

もしも、その中にいたのが人間だったら、よくて複雑骨折、悪くて即死だ。それは硬い外殻と柔らかい中身を持つクワガタにとっては尚更に致命的なダメージであり、歪んだ空間の中にいたクワガタは次々と落ちて消えていく


しかし、彼女の能力は右手限定であり、その能力範囲はかなり限られていた。物量で遥かに勝るクワガタの敵ではなく、後ろから、上から、下から、斜めから

全方向、三百六十度の多角的な動きに人間がついていけるはずもなく、従姉妹の能力もそれをカバー出来なかった


彼女はまとわりつくクワガタを払うのに必死で、その間に男が逃走した事など知るはずもなく、騒ぎを聞いてすぐさま駆けつけた演劇部部長も男の姿を視界に認める事は出来なかった


男が石段を駆け下り、自転車にまたがって安全圏まで逃亡した頃には、クワガタはその数を二千匹近くまで減らしていたが、男は見事に目的を達成した


監視と護衛のクワガタを残して、男は全てのクワガタを戻し、深い息を吐く


一方で、従姉妹と演劇部部長は、自分達の知らない『能力者』がいるという事実を知った訳であり――

その能力者が『誰』なのか?
何の目的があったのか?
どんな能力なのか?
先程の会話は聞かれていたのか?
これについてどう対処するか?

それらの点について改めて話し合う事となった


男にその様な意図はなかったのだが、言ってみれば男は間接的な宣戦布告を二人に対してした事になり……

二人はそれを宣戦布告とは受け取らず、『ゴミ処理』が出来たと受け取った


運命の歯車は加速し、事態は一気に風雲急を告げる事となる

『道路』


男「」フーッ……

男「クワガタのお陰で、多分、見つからずに逃げて来れたと思うけど……」


男「これからどうするか、だな」


男「向こうだって、多分、こっちを探してるだろうからな。クワガタがあれだけ飛んできて、偶然とかで片付けるはずがない」

男「どうしたもんか……」


安価↓1

男「とりあえず。それより先に美少女の方が気になるな」

男「今、どうしてるのか……。まだ、暴れ回ってるのか……?」

男「っと、そういや、しばらくクワガタからの報告を何も聞いてなかったな。先にそれを聞いとくか」



クワガタA「」ギチギチ、ギチギチ

男「ん。……わかった」


クワガタB「」ギチギチ、ギチギチ

男「? そうか……了解」


クワガタC「」ギチギチ、ギチギチ

男「こっちは良い知らせだな。オッケーだ」


クワガタD「」ギチギチ、ギチギチ

男「こっちもか。よし」


クワガタE「」ギチギチ、ギチギチ

男「ん。まあ、仕方ないな。そのまま監視で」

『報告A』
演劇部部長と従姉妹は神社の境内でまた話し合っている様子

『報告B』
美少女は包丁を捨てて、森林公園の中から走って飛び出した。今は道路を歩いている。どこに向かっているかは不明

『報告C』
生徒会長は駆けつけた警察官によって、病院に運ばれた。今は病院内

『報告D』
友と風紀委員も病院に運ばれた。同じく病院内

『報告E』
コギャルは軽傷からか、警察署に連行された模様



男「建物内だと、流石にクワガタも入れないしな……。中の様子はまったくわからないけど……」

男「ともかく、これで友と生徒会長は安全だろう。友から事情を聞いてるだろうから、風紀委員には警察官がついて見張ってるだろうし……」

男「念のために、病院にクワガタ一万匹張り付けとくか。何かあったら、すぐに対応させよう」

男「で、コギャルは今きっと取り調べ中だな……。ま、その内事情はわかるだろ。こっちも脅威はなくなったと見ていいだろ」


男「あと、よくわからんのが美少女だけなんだが……。どこへ行くつもりなんだ……?」

男「包丁を捨ててるから、多分、もう近付いても安全だと思うけど……」

男「演劇部部長の話によると、怪しげな『薬』を飲まされてるみたいだし……」

男「何にしろ、行ってみないとわからないか。行って、状況を見てから考えよう」


男「しっかし、俺、今日チャリこぎっぱなしだな……」ヒョイ

男「合計でクワガタも六千匹近くやられてるしな。体力の消耗が激しいわ」

男「かといって、休む訳にもいかないからな……。体が重いけどしゃーない、行くぞ……!」コギコギ

『道路』


美少女「」ハァ……

美少女「」トボトボ……





男「」キキィ……

男「」スタッ


男(いた……。後ろから来たから、こっちには気付いてないな)

男(どうする?)


安価↓1

男(今のところ、怪しげな素振りはないけど……)

男(しばらく、尾行して様子を見るか……)




美少女「」トボトボ……

美少女「」トボトボ……


美少女「」ハァ……



美少女「」トボトボ……

男(なんか、落ち込んだ感じでずっと歩いてるな……)

男(にしても、どこ行くつもりなんだ……?)



美少女「」トボトボ……

美少女「」ピタッ



男(止まった……!)



美少女「」スタスタ、ガチャッ

美少女「ただいまー……」



男(って、ここ美少女の家か!?)

男(あれ……? じゃあ、普通に家に帰ってっただけ?)

男(あー……。なんか色々と聞くチャンスを逃した感じが……)


男(えっと……)

男(この後、どうしよう……?)


安価↓1

男(しゃーない、一旦俺も家に帰ろう)

男(つーか、スマホが欲しいし、財布も欲しい。全部置きっぱなしで監禁されたからな)

男(連絡手段が何一つないってのは、この先、厄介そうだし、とりあえずそれを取りに行くか)


男(チャリは……尾行の邪魔だから置いてきたけど、それはもうめんどい。明日、取りに行って返してこよう)

男(それで、美少女にLINE送って、様子を聞いてみるか。出来ることなら友にも生徒会長にも)

男(何にせよ、連絡手段がないってのはきっついからな。クワガタで意思疏通が出来りゃいいんだけど、俺しか言葉がわからない訳だしなあ……)

男(とりあえず、家に帰ってスマホ取って来るか)タタタッ

『自宅前』


男「何か家を見るのも久しぶりな気がする……。ある意味、すげーな、この状態……」

男「鍵は……ないんだよな。しゃーない、インターホンを鳴らして……」

ピンポーン

男「…………」


「どちら様……?」


男「あ、俺。お袋、久し振り」

「!? 男なの!?」

タタタッ、ガチャッ

母親「男!」

男「ああ……えっと、ただいま」

母親「ただいまじゃないわよ、あんた。どれだけ心配したと思ってるのよ!」


母親「誘拐されたと思ったら、無事だって言うし、そしたらまた行方不明になったって警察から聞いて……」ポロポロ

母親「お母さん、もう心配で心配で、夜もろくに眠れなくて……」ポロポロ


男「ご、ごめん……」

母親「怪我はないの? 大丈夫なの? 体の方は? 病院は行ったの?」グシュッ

男「ああ、それは……。うん……。一応は大丈夫だって……。また明日、検査に行く事になるけど……」

母親「そう……。ああ、もう……良かった」グシュッ

男「……ごめん」


母親「とにかく上がって。ご飯は? お腹すいてない?」

男「あ、大丈夫……。それより疲れたからすぐ眠りたいんだけど……」

母親「そう? 本当に大丈夫? 軽く何か食べといた方がいいんじゃない? 冷凍食品になっちゃうけど、すぐ作れるわよ」

男「大丈夫。平気だから。つーか、俺の部屋どうなってんの? 何か外から見たら窓ガラスの代わりに段ボール貼ってあるんだけど?」

母親「あれね……割られてね。修理するまでしばらくあのまま。あんたの部屋は警察の人が色々いじくってったから、一応片付けだけはしてあるわよ」

母親「ただ、ベッドはもう駄目ね。あれは壊れちゃってるから、粗大ゴミに捨てるつもりで、物置の隅に置いてあるわ」

母親「寝るなら、居間を使って。すぐにお布団敷くから」

男「oh……。そんな状態になってんのか、俺の部屋」

男「スマホは無事なん?」

母親「さあ……。でも、あれ今、警察の人が持っててるんじゃないかしら……」

男「え」

母親「だって、あなた誘拐されてたでしょ。犯人から電話がかかってくるかもしれないからって、確か持っていったはずよ」

男「……ジーザス。そいつは予想してなかったわ……」

『居間』


母親「それじゃ、すぐにお布団出してくるから」

トトトッ、ピシャン



男「あー……まずいな。成り行きで俺、普通に家に帰っちまったし……」

男「こっから、また出てったらお袋の心配がカンストしちまう……」

男「家電なら美少女にかけれない事はないけど……」

男「美少女の電話番号なんて、俺、覚えてねーし……。登録してあるから覚える必要なかったもんな……」

男「これが携帯社会の弊害ってやつか……」ハァ


男「どうする……? マジでこのまま寝ちまうか? 体力使って疲れてるの確かだしな……」

男「顔も見られた訳じゃないし、平気……な気がするけど、それは考え甘いか……?」


男「うーん……」


安価↓1

男「マジで寝るか……。コギャルも捕まった事だし、従姉妹と演劇部部長の事は明日だな」

男「体力回復させてそれからじゃないと、クワガタもどこまでもつかわかんねえし……」

男「従姉妹と演劇部部長には見つかっていない訳だし、仮に見つかってたとしても、あの二人も流石に家までは襲って来ないだろ……」

男「あ、あと忘れてたけど、警察に連絡はしとかないと」

男「あー、でも、無事だって事を知らせるだけなら、多分、お袋がやってくれるだろ……。つーか、緊張の糸が切れてマジで眠い……」

男「寝よう……。そうし……よ」


男「」コテン……

男「」スースー、スースー



ガラッ

母親「男、お布団持ってきたか……もう寝ちゃってるの?」

母親「仕方ないわね……。もう……」


母親「それにしても良かった……。男が戻ってきて……」グシュッ

『少し時間を遡って 境内』


従姉妹「あら、そうなの……。ふうん」

従姉妹「わかったわ。また何かあったら連絡ちょうだいね。じゃあ」ピッ


演劇部部長「どうでした? 何かわかりました?」


従姉妹「ええ、バッチリよ。やっぱり警察に味方がいると便利ね」

従姉妹「今日、あなたの学校のコギャルって子がウジ虫の家に襲撃に行ったんだって。それで、その時、大量のクワガタが家に入っていったのを見たって言ってたわ」

従姉妹「その時に丁度、行方をくらましていたのが男君。そして、さっきクワガタが襲ってきた時も男君は居場所がつかめず今も行方不明なんだって」

従姉妹「コギャルって子は家の中で倒れていたらしいから、その子の『能力』とは思えないわね」

従姉妹「男君は『龍神の巫女』の直系なんでしょ? 自然に『能力』に目覚めていたとしても不思議じゃないわ」

従姉妹「十中八九、男君が『クワガタの能力者』で間違いないんじゃないかしら?」


演劇部部長「そうですね……。仮にそうじゃなかったとしても、今、行方不明になってるから探すのはいいと思います」

演劇部部長「捕まえれば、その後はどうにでもなりますし」


従姉妹「そうね。私の『能力』で記憶を歪めればいいだけだもの。簡単よね」


演劇部部長「はい」コク

従姉妹「ただ、よくわからないのが、男君が警察に私達の事を連絡してないって事ね。どうしてかしら?」

従姉妹「下手したら録音までされてたんじゃないかって心配してたんだけど……」


演劇部部長「多分、自分で解決したいと考えてるか、証拠が何もなくて信用されないって思ってるかのどっちかじゃないですか?」

演劇部部長「これだけ時間が経ってるのに、警察に連絡がないって事を考えると、多分そうじゃないかなって」


従姉妹「証拠があるとちょっと厄介だったけど、それがないっていうならずいぶん楽ね」

演劇部部長「そうですね。手段はいくらでもありますし」

従姉妹「とりあえず、どうしようかしら? 男君の能力、よくまだわからないけど、私達がここにいるってわかったんだから、多分、偵察能力ぐらいありそうよね」

従姉妹「私達の能力は二人とも近付かないと意味ないから、こっちから行っても無駄よね。多分」

演劇部部長「だったら、向こうから来てもらうしかないですね」

従姉妹「そうね。となると……人質取って呼び出すのが一番簡単かしら?」

演劇部部長「そうですね。それなら……」



演劇部部長「簡単に済みますね。オマケに一石二鳥にもなりますし」ニコッ


『警察署』


コギャル「だーかーらー!」ダンッ!

コギャル「アタシはそんな事してないってさっきから言ってるじゃねーか!」


モブ刑事「いい加減にしろっ!」

モブ刑事「お前は現行犯で逮捕されてるんだぞ! 目撃者だって大勢いる! しらばっくれるな!!」


コギャル「ざけんなっ! いつの間にかこんな所に連れて来やがって!」

コギャル「知らねーもんは知らねーんだよ! 生徒会長だって、昔、遊んだ事があるぐらいで、今はほとんど付き合いなんかねーし!!」


モブ刑事「じゃあ何で生徒会長の家を襲ったんだ! 誰でも良かったのか!?」

コギャル「だからしてねーって何度言わせんだよ! 誤認逮捕だからな、これ! 訴えるぞ!」


モブ刑事「ふざけるなっ!」

コギャル「そっちがふざけんなっ!」

『別室』


女「だから、さっきから何回も言ってるじゃない!」

女「男君が危なかったの! 殺されちゃうとこだったの!」

女「心配で心配で病院抜け出して、男君の家の近くまで行ったら包丁が飛んできて!」

女「だから、助けたの! 助けて匿ったの! それだけだってば!」


モブ刑事B「じゃあ一つ聞くが、どうやって助けたんだ?」

モブ刑事B「包丁が飛んできたところを見たんだろ? 見てから助けに行ったんじゃ到底間に合わないと思うんだがね」


女「それは……えと……その……」

女「あ……」

モブ刑事B「あ?」


女「……愛の力(物理)」

モブ刑事B「こっちは真面目に聞いてるんだがね」


女「お、覚えてないの! 夢中だったから!」

モブ刑事B「覚えてないねえ……。いくらなんでも無理がないかなあ」

女「本当だもん! 本当だもん!」

『病院』


モブ刑事C「で、一応もう一回聞きますけど……」

友「はい」

モブ刑事C「あなたは、風紀委員にナイフで脅され、病院を抜け出したと」

友「はい」

モブ刑事C「監視カメラには、あなたの姿しか映ってなかったんですけど……まあ、それはとりあえず今は置いときましょうか」

友「……はい」

モブ刑事C「で、近くの河川敷まで連れて行かれて、そこで殴る蹴るの暴行を受けたと」

友「蹴られはしなかったですね。ビンタはされましたけど」

モブ刑事C「それも置いときましょうか。とにかく暴行を受けたと。で、最終的にはナイフで刺されそうになったんですよね?」

友「はい」

モブ刑事C「その時、大量のクワガタが飛んできて助かったと」

友「はい」

モブ刑事C「何か、ご自分の証言に疑問はありませんかね?」

友「いや、マジなんすよ……。俺だって信じられないですけど……」

『別室』


風紀委員「う……ぅぅ……」ゴロッ

風紀委員「ぅ……」

風紀委員「」スースー……


モブ刑事D「まだ寝てるのか……。しかし、随分とうなされているな……」

警察官A「病院に運ばれてから、ずっとこの調子ですね」

モブ刑事D「何か嫌な夢でも見ているのか……。まあいい。で、医者は何と言っていた? 署に運んでも問題ないのか?」

警察官B「はい。軽傷だそうですので。起こしますか?」

モブ刑事D「そうだな。一応、任意同行という形にしておきたい。起きるのを待っていたらいつになるかわからんし、構わないだろう」

警察官A「わかりました。おい」ユサユサ


スーッ……


モブ刑事D「!? おい、警察官A! どこに消えた!?」

警察官B「警察官A! どこに行った!? 警察官A!!」


シーン……


モブ刑事D「……な、何が起きた、今……」

警察官B「か、神隠しだ……。神隠しが……」



風紀委員「ぅ……」スースー……

『病院 外』


生徒会長「……すみませんでした。お騒がせして」ペコリ

モブ刑事E「いや、いいさ。何もなかったんなら、それが一番だからな」

生徒会長「本当にどうしたのかしら……。何であんなところに寝てたのか……」

モブ刑事E「医者は精神疲労と過度の恐怖からくる幻覚症状じゃないかと言ってたんだろう? いわゆる幽霊とかと同じで、正体見たり、枯れ尾花というやつだな」

モブ刑事E「怖い怖いとかそう思っていると、電柱ですら幽霊に見えるもんだ。まあ、そんなに気にしない方がいい」

モブ刑事E「君を狙ったと思われる犯人も捕まっているし、もう大丈夫だろう。安心してくれ」

生徒会長「……はい」


モブ刑事E「ところで、帰りはどうするつもりだ? もう暗いし、夜道の一人歩きは危険だぞ」

生徒会長「お父さんが迎えに来てくれる事になっているので大丈夫です」

モブ刑事E「そうか。それならいいが。それじゃあ、俺はまだ仕事が残ってるんでこれで失礼させてもらう」

生徒会長「はい。ありがとうございます」ペコリ

モブ刑事E「では」クルッ、スタスタ



生徒会長「……」フゥ

生徒会長「幽霊の、正体見たり、枯れ尾花ね……」

生徒会長「あれは多分、そういうのじゃないわね……」

生徒会長「きっと『薬』の副作用……。麻薬に近いものだと演劇部部長も言っていたし、幻覚、幻聴は麻薬によく見られる症状よ」

生徒会長「この事、演劇部部長に相談してみるべきね。家に帰ったら電話しないと」

『警察署』


モブ刑事「……といった感じですね」

刑事「ふむ……。大方の証言は男君のものと一致してるな。一部、あやふやなところがあるが、女の証言は大体信じて構わないだろう」

モブ刑事「となると、気になるのが、やはり例の『薬』ですね」

刑事「男君は病院にも行かず、勝手に家に帰って寝ちまったらしいからな。ここまでフリーダムな事件被害者はいないだろうよ」

モブ刑事「まあまあ……。もう犯人も捕まってる事ですし」

刑事「その犯人だが、相変わらずか?」

モブ刑事「はい。一貫して否認してますね。知らぬ存ぜぬの一点張りです。それで逃れられるとでも思っているんですかね」

刑事「そういうものだ。根気との勝負だな」


警察官「刑事!」タタタッ

刑事「どうした?」

警察官「鑑識からの報告が来ました。監禁場所に置いてあった例の『薬』の検査結果です」

刑事「何だったんだ?」

警察官「ビタミン剤だそうです。どれもこれも。それ以外のものはありませんでした」

刑事「ビタミン剤……?」

警察官「はい。入院患者に点滴とかで使うあれです。毒物の類いは発見されませんでした」

刑事「……意味がわからないな。すると、何か? 男君が言っていた体のだるさや、意識の混濁というのは薬物の影響によるものではないと、そういう事か?」

警察官「そこは何とも……。証拠隠滅した可能性も十分にありますし」

刑事「むう……」

刑事「従姉妹の足取りは未だわかってなかったんだよな?」

モブ刑事「はい。重要参考人として、任意同行してもらう予定だったのですが、コギャルの事件もあって後回しになり……」

モブ刑事「通っている医大から一旦家に帰ったようですが、その後、車で移動したらしく、どこに行ったのかは……」

モブ刑事「しかし、こうなってくると、参考人として連行するのも難しいのでは?」


刑事「そうなるな……」ハァ

乙です
できれば登場人物の
能力をおさらいしていただけたら幸いです,,,

刑事「人体に害のある薬物の使用が認められれば、それは立派に犯罪だから、その重要参考人として連行するのは容易いが……」

刑事「監禁の幇助となると、まずは拉致監禁について男君が被害を訴える必要がある。被害がなければ、単なる男女のもつれにしかならないからな」

刑事「つまり、女を拉致監禁の容疑者にしないといけない」

刑事「ところが、男君は女を明らかに庇っているから、被害届け自体取り下げる可能性が高い。実際、方法はどうであれ、保護されていた事に変わりはないからな」

刑事「となると、従姉妹を引っ張ってくる理由もなくなる。何にしろ、これは男君の意思と精密検査の結果次第だな」

刑事「なのに、当事者は病院にも行かず、家で寝てるときたもんだ、まったく」


刑事「……まあいい。ところで、病院にまた搬送された友君の様子はどうだ?」

モブ刑事「既に治療を終え、今は事情を聴取しているようです。その報告はまだ来ていませ」


警察官B「刑事!」タタタッ

刑事「またか……どうした?」

警察官B「病院に搬送された風紀委員なんですが!」

刑事「ああ、例の『女子大生』の妹だな。その子がどうした?」

警察官B「消えました! いきなり忽然と、跡形もなく!」

刑事「またか!?」

>>626
多少、ネタバレも含むけど、構わない範囲で。少し修正も入ってる


女の能力

第一の能力、『愛の判定裁判・一審(ラブ パラメータ)』
愛する人の、相手に対する好感度が見える能力
ただし、自分自身の好感度については見えない

第二の能力、『愛の判定裁判・二審(ラブ パラメータ プラス)』
愛する人の、相手に対する好感度によって脚力が変化する
相手の好感度が低いほど強くなり、高いほど弱くなる

範囲、持続時間は、どちらも共に無制限。ただし、自分の視界に相手の姿が見えていないと効力は発揮されない


オカマの能力

『心の恋人(ラバー オブ ハート)』

指定した一人の心の声が聞こえる
範囲、持続時間、共に無制限。ただし、相手の名前と顔がわかっていないと、能力は使用できない

現在は女の攻撃により入院中(友のいる病院とは別の場所)


従姉妹の能力

第一の能力、『変幻自在の右手(スペース コントロール)』
右手で触れている空間を自在に歪める事が出来る。効果は5秒間継続する

第二の能力、『変幻自在の右手、act2(ハート コントロール)』
右手で触れている人の心を自在に歪める事が出来る。触れている間は効果が持続する。離すと消える
相手の記憶も歪める事が出来る


友の能力

第一の能力、『危険探索(リスク サーチ)』
1、自分の周り半径30メートル以内の危険が察知出来る
2、指定した人物に対しての危険度が10段階でわかる(こちらの範囲は無制限)
特定の人物を調べる場合、その人物の顔がはっきりとわかっていないと出来ない(顔も知らない人物の危険度まではわからない)
自分を特定して自身の危険度について調べる事は出来ない

第二の能力、『危険回避(リスク アヴェージョン)』
一定以下の危険を完全に回避出来る
能力の限界を超えた危険の場合、それは回避ではなく軽減へと変わる(軽減してもそれが致死ダメージに届いてた場合は、無効となる)


演劇部部長の能力

第一の能力、『冬の息吹(アイス チェンジ)』

左手で触れた物を何でも氷に変える事が出来る能力
持続時間は溶けるまで。溶けると元に戻る。右手で触れてもすぐに元に戻る
効果範囲は、左手から半径三メートル以内までが限界。それ以上は氷に変える事は出来ない

第二の能力、『??????』
――まだ登場せず――


生徒会長の能力

『代償の血時計(タイム イズ ブラッド)』

時間操作能力。時間を、早送り・巻き戻し・スロー・ストップ・スキップする事が出来る
操作時間に制限はないが、1秒分の時間を操るごとに代償として10CCの血液が消える

男の能力

『ずっと夏休み(フォーエバー サマー)』

無からありとあらゆる種類のクワガタを召喚出来る
クワガタは男の意思によって自在に動かせるし、意思の疎通も可能。たまにカブトムシも召喚出来る
効果範囲、持続時間はクワガタの体力と命が続くまで。それが尽きるとクワガタは消滅する
一度消滅すると、一週間はそのクワガタを召喚する事が出来なくなる
召喚数は最大で五万匹。ただし、クワガタが消滅する度に男の体力もその数に比例して減っていく
全滅すると(クワガタを一匹も召喚する事が出来なくなると)男は死亡する
体力がない時に、その体力分のクワガタが消滅しても、男は死亡する
召喚したクワガタやカブトムシは普通に棲息しているものと変わりなく、特別な力を一切持たない


風紀委員の能力

第一の能力、『風と共に去りぬ・第一幕(ステルス オペラ)』

触ったものを透明にする事が出来る能力
時間制限はないが、限度数があり、二個が限界(二個透明にした状態で、もう一個透明にしようと思ったら、それまで透明にしていたもの一個を解除しなくてはならない)
認識された時点で透明化は消える(触れたりなどして、透明なものがそこにある事に気付かれたら、能力は強制的に解除される)
自分の1000倍以上の質量を持つものは透明にする事が出来ない

第二の能力、『??????』
――まだ登場せず――


コギャルの能力

『アンタのものはアタシのもの(スティール スター)』

略奪能力、ではなく『操作』能力。半径5メートル以内の『物質と、命以外』を一つだけ操作する事が出来る(聴力や快感、引力や確率など、目に映らないもの限定の操作能力)
ただし、体温や心拍数などの生命維持に関わるものは操作する事が出来ない。気温の著しい上昇や低下など、そういった事も生命維持に関わるものとみなされるので同様に操作出来ない
効果範囲は自分の周り5メートル以内。範囲外に出るか、45分経過するとその効力は消える
(コギャルはこの能力を『奪う』ものだと誤認している)


コギャルの『もう一人の人格』の能力

『箱庭の女王(ワールド イズ マイン)』

物質操作能力。手で触れた『生物以外の固体』なら何でも自在に動かせる(液体や気体は不可能)
ただし、操作する物の総質量が大きければ大きいほど、操作出来る時間・距離・数に制限がかかる

※コギャルの能力は『もう一人の人格』も使えるが、コギャルが『もう一人の人格』の能力を使う事は出来ない
※『もう一人の人格』もコギャルの能力を正確に把握している訳ではない


美少女の能力

『??????』
――まだ登場せず――

『病院 外』


「」ハァハァ、ハァハァ……

「透明になって、思わず病室から逃げ出してきたけど……」

「こんな事しても、事態が悪くなるだけじゃない……。何の解決にもなってないわ……」


「おまけに、私、友君を思わず殺そうとして……」

「逆上して、なんて事を……。やってしまったわ、私……」


「これからどうすればいいのよ……。一生透明で暮らす事なんて出来やしないのに……」

「それに、逃げるなんていうのは駄目だわ……。罪を犯したのなら、それを償うのが人として正しい生き方だし……」

「でも……」

「あの……クワガタの群れ……」

「思い出しただけでも鳥肌が立つけど……」


「あれ……絶対に『能力』よね……」


「だとしたら、友君の能力……?」

「やっぱり……友君も……お姉ちゃんを愛していたの……?」


「昔、お祖母ちゃんに聞いた話……。誰かを真剣に愛してその気持ちが止まらなくなった時……名字に『神』の一字を持つ一族は『不思議な力』を手にする事がある……」

「私は……お姉ちゃんが好きだった。異性としてじゃなく、人として、家族として大好きだった……」

「そのお姉ちゃんが誰かに無惨に殺されて……。その事を聞いた時、私はほとんど気が狂ったように泣きわめいて……」

「お姉ちゃんを殺した犯人を、絶対に私の手で■そうと思った……」

「そうしたら、いつのまにかこの『透明になる能力』が使えるようになっていた……」

「多分……刑務所にいる犯人をこの手で■す為に与えられた能力……」


「だったら、友君は……?」

「私と同じようにお姉ちゃんを愛していて……それで私と同じように『能力』を手に入れたの……?」

「それならわかる。でも、だったら何でお姉ちゃんの事を忘れているの? 何で……!?」


「わからない事が多すぎる……」

「確かめたい。ううん、私は確かめないといけない」

「お姉ちゃんの為に、何としても……!」

『深夜 生徒会長の家』


生徒会長「ようやく家に帰って来れたし、お父さんとお母さんからの質問攻めも何とか終わったわね……」

生徒会長「ずいぶん遅くなったけど、演劇部部長は起きてるかしら……」スッ

生徒会長「起きてるわね。LINEが来てる。しかもそんなに遅くじゃないわ」

生徒会長「直接、電話しても大丈夫よね、多分」ピッ、ピッ


プルルル、プルルル、ガチャッ


『はい、もしもし』

生徒会長「ああ、演劇部部長かしら? 実は相談したい事があるのだけど、少し時間いい?」

『うん。私もお話があったし、平気。それで何?』

生徒会長「実はね……」

『幻覚を見たの……?』

生徒会長「そうみたい。友君の死体を見たわ。まるで現実の事のようにリアルだった……」

生徒会長「今はもう落ち着いているし、家に帰って来て台所も確かめたからはっきりと言える事だけど、やっぱりあれは幻覚で間違いないわね」

生徒会長「壊れたはずの食器棚は壊れてなんかいなかったし、何もかも元通りになっていた」

生徒会長「やっぱりこれは例の『薬』の副作用と考えていいのかしら?」

『うん……多分だけど……』

『記録を調べてみるとね。元々、『龍神の巫女』の家系の人には情緒不安定な人が多かったみたいなの』

『幻覚や幻聴じゃないかと思われる記述がすごい多くてね。実際、それで刃傷沙汰も何度も起きてる』

『それが遺伝子をいじくった結果なのかは知らないけど、そういう不安定な人に限って『能力』を持っていた人が多いのも事実だと思う』

『不安定だからそれを支える為に能力があるのか、能力を手に入れたから不安定になったのかは、卵が先か鶏が先かみたいな話だと思うけど……』


『あの『薬』は人為的にそれを起こしているんだから、幻覚や幻聴とかが見えるようになったとしても不思議じゃないと思う……』

『元々、『麻薬』に近いものらしいし……』


生徒会長「……でしょうね」フゥ

生徒会長「それは予想もしていたし、覚悟もしていたからいいわ」

『ごめんね……』

生徒会長「演劇部部長は悪くないわ。飲んだのは私だし、飲むと決めたのも私よ。それに関してはむしろお礼を言わなきゃならないわね」

生徒会長「ただ、このままにしておくのも正直怖いのよ。いつまた幻覚が見えるかもわからないし」

生徒会長「だから、それの対処法について、何か演劇部部長が知らないかと思ってね。医者じゃ正直当てにはならないから」

生徒会長「どう? 何か知らない?」


『うーん……。ちょっと調べてみないと……』

『それで、生徒会長。少し詳しく聞きたいんだけど、幻覚や幻聴の他には何かなかった? 症状はそれだけ?』


生徒会長「そうね。……今のところは、とつける必要があるけど」


『そっか……。うん、わかった。また家にある古文書をこっそり調べてみるね。何かわかったらまた連絡するから』


生徒会長「ええ、お願いね。それじゃあ」


『うん』

『病室』


友「はぁ……。ようやく帰ってくれたな、刑事さん」

友「それにしても、何なんだろうな……あの子。『女子大生』の妹って言ってたけど……」

友「俺と『女子大生』が付き合ってた? そんなはずないだろ。俺、『女子大生』の顔すら知らないのに……」


カタンッ


友「ん? 何の音だ?」


シーンッ……


友「……何か落ちたのかな?」

友「まあいいや……。とにかく今日は寝よう……。体中痛いし……」

友「はあーあ……」ゴロンッ


友「そういや、明日は生徒会長が病院に来る予定なんだっけ……」

友「従姉妹さん……上手くやってくれるといいんだけど……」

友「…………」


友「」スースー、スースー……





「…………」

『留置場』


女「」ハァ……

女「結局全然信じてもらえなかったよお……」


女「従姉妹さんの事を言う訳にはいかないし、能力の事を話したって信用してもらえないのはどうせ一緒だろうし」

女「あうう……男君に会いたい。男君成分が足りないよお……」

女「犯人が捕まったって言うからそれはいいけど、でも、男君に会えないのが辛いよお……」


女「男君の声が聞きたい。顔が見たい。匂いを嗅ぎたい。男君……」

女「ううぅ……寂しいよ……」グシュッ

『別の留置場』


コギャル「ちきしょう、なんだよこれ!」

コギャル「何でアタシがこんな狭苦しい部屋で、固いベッドで寝なきゃなんねーんだよ!」

コギャル「覚えてろよ、お前ら! 釈放されたら絶対訴えてやるからな! 本気だからな!」


コギャル「ああ、もう!」ダンッ

『警察署 別室』


刑事「!?」

刑事「それじゃあ、母親の話によると……!」

モブ刑事「……はい、コギャルはいわゆる二重人格だそうで」

モブ刑事「今、彼女の主治医に電話して確かめました。間違いないそうです」


刑事「なんて事だ……」ハァ……

モブ刑事「気持ちはわかります……」


刑事「じゃあ、何か。彼女の別人格が今回の事件を起こしたとそういう事か?」

モブ刑事「断定は出来ませんけど……。本人がそれを利用してしらばっくれてる可能性もありますし」

刑事「……彼女は自分が二重人格だという事は知っていなのか?」

モブ刑事「のようですね。もっとも、本人は強く否定していたそうですが」

刑事「…………」

モブ刑事「どちらにしろ、危険である事に変わりはありませんから、釈放は無理でしょうけど」

刑事「相手が青少年でもあるからな……。罪にはならず、精神病院に入院という形でおさまりそうだな……」

モブ刑事「あと、自宅を家宅捜索したのですが、ボーガンやクロスボウみたいな物は一切出てきませんでしたね。それの専門書みたいな物も何も」

モブ刑事「ひょっとしたら、今回の件と、前の包丁事件の犯人は別人という可能性もあります」


刑事「楽しくない推理だな、それは……。ようやく全部片付いたと思っていたのに……」

モブ刑事「何にしろ、彼女――コギャルからの証言は当てに出来ませんね。『もう一人の人格』から聞き出さないと……」

刑事「それすらも当てにならないけどな」チッ

『演劇部部長の家』


演劇部部長「生徒会長……幻覚、幻聴の症状あり」カキカキ

演劇部部長「一時的なもので、今は落ち着きを取り戻し、平時と変わらず」カキカキ

演劇部部長「経過は見る必要があるが、投薬の配分量は考慮する必要あり……」カキカキ

演劇部部長「ただ、これまでの『薬』の中ではもっとも副作用が少ないと思われるので、これをベースにする事を考える……」カキカキ


演劇部部長「コギャルは既に逮捕済み……」カキカキ

演劇部部長「もう実験データも十分に得られたので、用済み……。不要な事を喋る前に処分の必要あり……」カキカキ

演劇部部長「警察に捕まっているので、従姉妹にそれを実行させるのが一番確実と思われる……」カキカキ


演劇部部長「美少女に与えた『薬』は完全に失敗作……」カキカキ

演劇部部長「『能力』も得られず、精神障害だけ起こした模様……」カキカキ

演劇部部長「機会を見て、新しく配合した『薬』を投与する予定……」カキカキ


演劇部部長「次のモルモットには男が適任……」カキカキ

演劇部部長「明日、捕まえて『薬』を投与予定……」カキカキ


『翌朝 男の家』


男「あー、よく寝た」

男「朝飯も食って、体力も回復したし」

男「天気は快晴。今日は祝日だから学校もなし」

男「襲われる事もなかったし、意外と平気そうだな、これ」


男「とりあえず、まずは警察署に行って、スマホを返してもらって……」

男「それから、病院。友と生徒会長の様子を見た後で精密検査を受けて」

男「従姉妹と演劇部部長をどうするかはそれからだな。放って置くわけにもいかない。どうにかしないと」


男「とはいえ、まずは美少女だ。様子が気になるからメールしないとな」

男「っと、チャリも放置してたっけ。先にそれを取りに行って、それから警察署に行くか」



男「お袋ー、これから病院に検査に行ってくるから。帰りはいつになるかちょっとわかんないけど」

『一人で? 大丈夫なの、あんた? 何ならお母さんがついていくけど』

男「いや、大丈夫だろ。昨日、電話で刑事さんも言ってたんだろ? 犯人と思われるやつを逮捕したって」

『ん、まあ、そうなんだけど……。でも、一応……』

男「平気だって、じゃあ行ってくるから」タタッ

ガチャッ、バタンッ


『あ、もう……』

『まあ……もう大丈夫だとは思うけど……』

『生徒会長の家』


生徒会長「」フゥ

生徒会長「多分、もう襲われる事はないから、安心なんだろうけど……」

生徒会長「あの副作用が心配で、やっぱりろくに寝れなかったわね……」


生徒会長「それに、今日は友君のいる病室に行かないといけないし」

生徒会長「犯人は捕まったっていうし、それを理由に友君のところに行かないようには出来るけど……」

生徒会長「これは十中八九、従姉妹さんの罠だから、むしろ行ってここで憂いを絶っておくべきね。でないと、友君も危険な目に合うし」


生徒会長「従姉妹さんは私が『能力』を持っている事を知らないから、油断してるはずよ」

生徒会長「従姉妹さんの能力がどんなものかは知らないけど、何かされる前に時間を止めて捕まえてしまえばいいわね」

生徒会長「不意打ちにあっても、即死じゃない限りは時間を巻き戻して対処出来るし、どうにかなるわ」


生徒会長「問題は、こちらの攻撃力が0に等しい点だから、何か武器を用意しておかないと意味がないという事ね」

生徒会長「それについて、昨日からずっと考えてたんだけど……」


生徒会長「やっぱりスタンガンが一番……ね」


生徒会長「従姉妹さんと対決する前に買っておく必要があるわ」

生徒会長「売っている場所が限られてるから、少し遠出になるわね。早い内に出掛けましょうか」スタスタ


ガチャッ、バタンッ

『病室』


友「今日は生徒会長が来るんだよな……」

友「従姉妹さんの為にも、出来るだけ話を伸ばしてここに引き留めないといけないな。証拠を探ってもらわないと」


「…………」


友「にしても、今日はちょっと冷えるな……。さっき、看護師さんが朝食持ってきてくれた時、暖房入れてもらえば良かったかも」


ハクチョン


友「? 今、くしゃみがしなかったか?」キョロキョロ


シーン……


友「……気のせい? なのか? 何か昨日から、妙な気がするんだけどな……」


「…………」

『道路』


男「さてと、出掛ける前にクワガタ召喚しとくか」

男「俺が寝てる時は自動的に消えるんだな、このクワガタ。寝込み襲われたらアウトだな。気を付けよう」


男「じゃあ、能力発動っと!」キュイーン


シュインッ……ポンッ!!

クワガタ30000匹「」ギチギチ、ギチギチ


男「俺の護衛には一万匹、偵察部隊として六千匹。残りは友とか演劇部部長とか従姉妹とか、そこら辺を見つけたら、順次、それぞれ監視や護衛に回れ。頼んだぞ!」


クワガタたち「」ブーンッ!!


男「これで良しと」

男「さて、どうするか。情報を知ってから動くか、それとも先に警察署に行って、スマホだけ急いで取りに行くか……」

男「俺の護衛はいるし、近場なら近場ほど情報は早く入るしな。そのまま向かっても問題は無さそうだけど……」


安価↓1

男「少し……というか、町全体だから多分一時間ぐらいはかかるけど、情報を知ってからにするか」

男「俺の能力は弱いしな。迂闊に動いて失敗するのも馬鹿みたいだし、一応、慎重にいこう」


男「待つ間、暇だけどな……」フゥ

『病室』


コンコン

友「はい、どうぞー」


ガチャッ

従姉妹「ふふっ。おはよう、友く……!?」

友「あ、従姉妹さん。ずいぶん早」

従姉妹「っ!! ちょっと友君、どうしたの、その顔!! アザだらけじゃない!!」

友「ああ、これっすか……。まあ、何て言うか……」

従姉妹「何て言うかじゃないわよ! どうしたの!? 誰かに殴られたの!?」

友「……はい、そんなとこで」

従姉妹「っ!! 誰! 誰に殴られたの!?」ズイッ

友「ちょっ、従姉妹さん、顔怖いんすけど……」

従姉妹「誰!? 誰がやったの!?」ズズイッ


友「あ、え、えと……」タジタジ



「…………」

従姉妹「風紀委員?」

友「そうっすね……。俺と同じ学校らしいんすけど……」

従姉妹「へえ……そう」

友「はい……」


従姉妹「名字が一緒ね……。もしかして、あのゴキブリの家族かしら……」


友「え?」

従姉妹「その風紀委員ってハエ……子は今どこにいるか知ってる? それと、何で友君を殴ったのかしら?」

友「…………」

従姉妹「聞いてるの、友君? 私が質問してるわよね?」ジッ

友「あ、えと……」ビクッ


友「その……俺にもよくわからなくて。何か前に殺された『女子大生』って人の妹らしいんすけど……」

従姉妹「ああ、やっぱりあのゴキブリの家族なんだ。ゴキブリは一匹見かけたら三十匹はいるっていうけど、本当ね」

従姉妹「根絶やしにしなきゃダメなのかなあ?」


友「い、従姉妹さん……?」ゾクッ




「……!!」

友「ど、どうしたんすか、さっきから……!」

友「何か言ってる事が変ですよ!」


従姉妹「変? どこが?」


友「どこがって……!」


従姉妹「どこが変なの? まさか、友君。あのゴキブリに何か毒されちゃったのかなあ?」ズイッ

友「ひっ!」ビクッ

従姉妹「また治療しなきゃダメなのかなあ? そんなに怖がるなんて変だもんね」スッ

友「なっ、は、離し――」

従姉妹「能力……発動よ」キュイーン


友「あ、ぅぁ、ぎぃ……頭が……!!」




「……っ!!」ガクガク

従姉妹「ほらあ、友君。言ってみて。友君にとって、あの『女子大生』はなあに?」

友「……アレハ『ゴキブリ』。……下水道ノ隅デ……転ガッテルノガ……オ似合イノ女」

従姉妹「違うわよお、友君。お似合いじゃなくて、そうでなきゃいけない女なの。わかった?」

友「ウン……。アレハ下水道デ……流サナキャイケナイ女」

従姉妹「そうよお、友君。良く出来ました。いい子ね」ナデナデ

友「ヤメテ……恥ズカシイ……。テレテレ」

従姉妹「ふふっ。友君はいつまで経っても純情ね。可愛らしいわあ」

友「カラカワナイデ……。従姉妹サンナンカ知ラナイ……。プンプン」

従姉妹「ふふっ。ごめんねえ、友君。これで許して」チュッ

友「ア……。カアッ」

従姉妹「真っ赤になっちゃって。ふふっ」

友「従姉妹サンハズルイヨ……イツモ……。テレテレ」




「…………!!」ガタガタ

(なに、この従姉妹とかいう女……! 頭おかしい……! 怖い……!)ガタガタ

(だけど、今、はっきりわかった……! お姉ちゃんを殺したのは絶対にこいつだ……!!)

(そして、何かの『能力者』……!! 何の能力かわからないけど、人を操る事が出来る……!)


(正直、こいつは怖い……! でも、お姉ちゃんの仇なら、お姉ちゃん以上に無惨に殺してやりたい……!!)

(今、私は透明になってるから、気付かれてない……! こいつも油断してるしチャンス……!)


(だけど、私は今、武器を何一つ持ってない……! あるとしたら近くのパイプ椅子ぐらい……!)

(それか素手て絞め殺すか、どちらか……!)

(どうする……! 出来るの、私に……!)

(失敗したら、私の能力が消えて姿がバレちゃうし……!)


(どうする……!?)


安価↓1

ソローッ

カタンッ……


従姉妹「……?」クルッ


(……!!)ビクッ


従姉妹「今、何か気配がしたような気がするけど……」

(……!)ガクガク


従姉妹「気のせいかしらね……」クルッ


フーッ……



(やっぱり駄目……! 今は駄目ね……)

(危険が大きすぎる……! ここは耐えるわ……!)

(でも、これで何となくわかった……!)

(友君がお姉ちゃんの事を忘れてるのは……多分、この女のせい……!)

(許せない……!! 絶対に殺してやるから……!!)

従姉妹「ああ、それで友君、その気持ち悪いハエは今、どこにいるか知ってる?」

従姉妹「やっぱり警察かしら? 捕まってるの?」

友「ワカラナイ……。昨日、一緒ニ病院ニ運バレタラシイケド……」

従姉妹「警察に連絡はしたのかなあ?」

友「ウン……。警察モ知ッテル……」

従姉妹「ふうん……。それなら、居場所はすぐにわかるわね。ふふっ。安心してね、友君」

従姉妹「二度とそんな事が出来ないようきっちり■してあげるからね」ニコッ

友「アリガトウ……。従姉妹サンハヤッパリ頼モシイナア……。従姉妹サン、大好キダヨ……」

従姉妹「やだ……// そんな……もう//」



(…………!)ブルブル

従姉妹「それと、今日もう一匹害虫駆除する予定だったでしょ? アレから連絡が来たら私にもすぐに教えてね」

従姉妹「演劇部部長ちゃんの提案で、アレを餌にして男君を呼び出す事にしたから」

従姉妹「だから、■すのがちょっと遅れちゃうけど、でも優しい友君なら許してくれるわよね?」

従姉妹「男君にはもちろん手を出さないわよ。すこーし頭の中を治療するだけ。ふふふ」

従姉妹「お願いね、友君。二人の為にも、ね?」


友「ウン……。従姉妹サンニ全部任セルヨ……」


従姉妹「ありがとう、お姉さんはりきっちゃうから」ニコッ



(……男君……!?)

従姉妹「それじゃあね、友君。私、新しくやる事が出来ちゃったからもう行くね」

従姉妹「寂しいだろうけど、我慢してね。私も寂しいんだから」

友「ウン……。我慢スル……」

従姉妹「ふふっ。それじゃあね」スッ

従姉妹「能力、発動」キュイーン


友「ぁ……! ぐっ……!」


従姉妹「ちょっとの我慢よお、友君。ほんのちょっと我慢してね」


友「ぃ……! 頭……が……!!」グラッ

友「」ドサッ


従姉妹「それじゃあ、またね。愛してるわよ、友君♪」

ガチャッ、バタンッ……



(…………!)

(……出てった……)

(バレずに済んだわ……! それなら……)



これからの行動
安価↓1

(急いで、男君を探し出さないと!)

(このまま放っておいたら、あの人、死ぬわ!)

(でも、どうすれば見つけられるの!? 男君は顔見知りだけど、電話番号なんか知らないし!)

(闇雲に探す? それこそ有り得ないわ。見つかるはずがない!)

(そもそも男君って通り魔に襲われて殺されそうになってたんじゃ……!)

(じゃあ、通り魔が従姉妹? ううん、話に出てた演劇部部長って人?)

(駄目、今の状態だと状況がさっぱりわからない!)

(一体、どうなってるの? 男君や友君が襲われたのって、あの従姉妹とかいう女と関係があるの?)

(謎が多すぎよ……! ああ、もう!)

(とにかく、男君を探すのは大前提として……!)

(問題はその方法よ……!)

(何かいい方法がきっとあるはず……!)

(人間は考える葦よ! 思考を停止したら、それは人間ではないわ!)

(何か方法は……!)


1、姿を現して友に事情を話し、協力を仰ぐ
2、警察署に行って情報を探る
3、従姉妹を尾行する
4、その他

忘れてた
↓1で

(あの女の話ぶりからして、友君と男君はお互いの事を知っている関係のはず……!)

(だったら、友君が男君の携帯番号を知っている可能性はあるわ……!)

(ここは姿を現して友君に協力を仰ぐべきね……! 時間もあまりないだろうし、すぐに……!)

(能力……解除!)


スーッ……


風紀委員「ふぅ……」

風紀委員「友君は……寝てる?」


友「」グッタリ……


風紀委員「起こさないと! 友君、友君!」ユサユサ

友「ん……ぅぅ……」

風紀委員「起きて、友君! 一大事なのよ!」ユサユサ

友「んん……う……誰……?」パチクリ

風紀委員「起きた、友君!」

友「!?」ビクッ


友「おま……昨日の……!! どうしてここに!?」

風紀委員「静かにして! 昨日は確かに全面的に私が悪かったけど、でも今はそれどころじゃ」

友「た、助けてくれっ! 誰か!!」

風紀委員「ちょっと! 騒がないで!!」サッ

友「っ!」モゴモゴ!!


友「!!」ガブッ

風紀委員「痛っ!!」


友「い、従姉妹さん!! 従姉妹さん!! 助けてくれ!!」

風紀委員「なっ! やめなさい!! 騒ぐな!!」バシッ!!

友「ぐうっ!!」



ダダダダダッ

ガチャッ!!


従姉妹「友君、どうし……!?」

従姉妹「……!!」


風紀委員「!?」ビクッ

友「い、従姉妹さん、助けて!!」


従姉妹「お前、お前、お前! 友君に何をっっ!!!」

従姉妹「■す! ■す! 八つ裂きにして!! 子宮を引きずり出して、潰して■してやるっっ!!」キュイーン!!


風紀委員「っ! まずいっ!! 能力発動!!」キュイーン!!

従姉妹が獰猛な肉食獣さながら風紀委員に躍りかかった時には、すでに風紀委員は自身の能力を発動していた


姿を消すと同時に、友の寝ているベッドから素早いバックステップで身をかわし、従姉妹の掴みかかった右手を余裕を持って避ける


風紀委員は危機に直面する事で逆に冷静さを取り戻しており、その行動と判断は信じられないぐらい素早かった。それはこの時点において彼女が取れる最良の動きだったと思われる


しかし、最良の行動と判断を取ったからといって、それが必ずしも最良の『結果』に結び付くとは言えないのだった


時に、最悪の行動が最良の結果に繋がる事もあり、その逆もまた然り。そして、最良の行動が最悪の結果に結び付く事は、その逆よりも遥かに多いというのは運命の女神の性格の悪さの表れであろう


従姉妹は風紀委員が消えるのを視認していたが、逆上していた彼女にとって、風紀委員が『どこに消えたか』などは些細な問題でしかなかった


先程まで風紀委員がいた空間を掴みあげ、ひねり、よじり、勢いよく払いおとす


その時、友は目の前の空間――空気しか見えないのだが、しかし――あえて言うのなら、空気の層とでも言うのだろうか。それがはっきりとグニャリと揺れ曲がるのを確かにベッドの上から目撃した


悲鳴が聞こえた


従姉妹は尚も右手を振りかざしながら、狭い病室内を一気に進む。その度に空間が歪み、今度は甲高い絶叫の様な悲鳴。一度、二度!


二度目の時に、風紀委員の姿が不意に現れ――その体は奇妙な形で折れ曲がっていて――関節が曲がらない方向に何ヵ所も曲がっていて


骨付きのフライドチキンを折った時の様に、肉が裂け、骨が飛び出し、腸がはみ出て、その凄惨な光景を目にした瞬間、友は強烈な吐き気に襲われて口を覆った


「足りない! 足りない! 足りない!! こんなものじゃ済まさせないっっ!!!」


従姉妹は狂った様に――元々狂っていたのだろうか――風紀委員のすでに死体となっている体を部屋ごと能力で壊し続けた


その光景は、騒ぎを聞きつけて駆けつけた野次馬、警察官にも目撃されたが、誰もが病室内に入る事に対して二の足を踏んだ。おぞましさと狂気がその部屋中に毒ガスのように蔓延していたからだった


従姉妹はそれにもまるで気が付いた様子がなく、怒りに任せて叫び声を上げながら、死体を細切れになるまでひたすら壊し続けている……。今は笑い声と共に……



「ふふふふふふ、あはははははっっ!!! 消えろ消えろ死んじゃえぇぇ!!! あっはははははっ!!!」


その後の事を語るなら、従姉妹は『捕まらなかった』

細切れになった肉は、その場に集まった野次馬及び警察官によって『処理』され――どの様に『処理』されたかは不明――それに付随する血液は看護師らの手によって綺麗に拭き取られた

警察官は今回の一件について、友が『嘔吐』したものだと各関係者に伝えた


当然と言えば当然だが、記憶を歪める事の出来る従姉妹でも、全ての隠蔽は不可能だった

彼女は全知全能の存在ではなく一人の人間である為、事件を目撃したが、彼女の目や手からこぼれ落ちた人間も複数名存在していた

彼らは無論、事件のことについて、従姉妹の事について、警察に通報ないし直接警察官に話したのだが、しかし、それは逆の意味で彼らを不幸せにした

虚言癖、あるいは幻覚幻聴、一種の精神疾患などと医師から断定されたのだった。真実を語ったにも関わらず、彼らは不本意なレッテルを問答無用で貼られる羽目になった

風紀委員が昨日から行方不明だった事も重なって、今回の事件の真相は遂に表へと出る事はなかった


その後、生徒会長が再び行方不明になり、今度は永遠に見つかる事がなかった

コギャルは留置場でナイフを首に刺して自殺を遂げる。どうやってコギャルがナイフを手に入れたかは謎であり、これに関連して警察の責任問題も合わせて追求された

そのしばらく後、演劇部部長が行方をくらまし、こちらは下水道でバラバラ死体となって発見される

最後に美少女が行方不明になり、こちらも未だ発見されず。事件は迷宮入りのまま終わりを迎える


残った他のメンバーのその後は?

男は女と付き合う事になり、これは両者とも満足していた。彼らの未来はともかく、現在は幸せそうにしている

友も退院し、従姉妹と付き合う事になった。こちらも両者とも満足していたが、それから何ヵ月か後に従姉妹が妊娠している事を告げるのを、友はまだ知らないし想像すらしていない……


風紀委員デッドエンド 完

>>664からやり直し



(とにかく、男君を探すのは大前提として……!)

(問題はその方法よ……!)

(何かいい方法がきっとあるはず……!)

(人間は考える葦よ! 思考を停止したら、それは人間ではないわ!)

(何か方法は……!)


1、友のスマホを探してみる
2、警察署に行って情報を探る
3、従姉妹を尾行する
4、その他

安価↓1

(そうだ……! 警察署なら……!)

(男君は被害者だもの、住所や電話番号なんか記録しているはず……!)

(少なくとも、闇雲に探すよりは見つかる可能性が高い……!)

(今はそれに賭けた方がいいわ……!)

(そうと決まったら善は急げよ……! 行かなきゃ……!)


(友君は……)チラッ


友「」グッタリ……


(寝てる? それなら好都合ね……!)

(急がないと……!)タタタッ


ガチャッ、バタンッ……


『道路』


男「よしっ……」

男「今、わかる情報は全部手に入った」

男「って言っても、ほとんど成果はなかったけどな……」

男「居場所がわからない人間が少し多すぎる」


【所在地不明】
女、友、コギャル、生徒会長、演劇部部長、風紀委員


【所在地判明】
美少女、従姉妹


男「つっても、女さんとコギャル、それに風紀委員はまず警察署だろうな。友はきっと病院だと思う」

男「どっちも、騒ぎみたいなのは起きてないからそれは安心出来るんだけど……」

男「さっき、何故か従姉妹が病院から出てきて、車に乗ってどこかへ行ったらしい……」

男「何の為に病院に行ったんだ? まさか、友に何か……」

男「こんな白昼堂々何かするとは思えないんだが……。従姉妹は『女子大生』を殺してるし、『能力者』だからな……」

男「何をやらかすか、ちょっと想像がつかない……。友が心配だ……」


男「美少女は家にいるのが、窓から確認出来た。クワガタの報告だと、妙な感じはしないらしいからこっちも多分平気だと思うけど……」

男「今のところ、何とも言えないからな……」


男「生徒会長は駅前で確認した。そのまま駅の中に入って電車に乗ったらしいから、こっちはもう追えないな」

男「ただまあ、遠くに行ったってんなら特に問題はないだろ。あまり心配はしなくていいと思う」


男「そして、見つからないのが演劇部部長……。家にいるのか、それともどこか別の建物の中にいるのか……」

男「居場所がわからないってのは嫌だな……。どこで鉢合わせするかわからん」

男「どうする? 友が心配だし、先に病院に行くか?」

男「でも、俺の能力は屋外専門みたいなとこがあるしな……。病院内で襲われたらひとたまりもないはず」

男「友が心配だけど、俺が行っても無力なところはあるしな……」


男「やっぱり先に警察署に行って、スマホを確保する必要があるか……? 誰にも何も連絡のしようがないってのはあまりに不便だ」

男「スマホがあれば、友とも連絡が取れるし、美少女とも。それに警察に従姉妹さんの『薬』の一件は話したし、監禁されてた場所も教えてある」

男「警察に行けば、そこら辺についても詳しく教えてもらえるかもしれない」

男「そうだな。やっぱり最初の予定通り、チャリンコを取りに行った後、警察署まで行くか」

男「外なら何かあってもクワガタが守ってくれるし、まず大丈夫だろ。とりあえず、チャリだな」タタタッ

グロはNGじゃなかったのかよ

>>685
すまん、自分でもちょっとそう思ったけど、話の流れ的にそうなってまうんだ
最初の頃はこんなストーリーになる予定なんかまるでなかったし、見逃してくれ

『数駅離れた駅前大通』


生徒会長「無事に手に入れる事が出来たわね……。スタンガン」バチバチッ

生徒会長「女性の護身用の奴だから、そこまで強力な奴じゃないけど、でも相手をしばらくの間、動けなくさせる事ぐらいは出来るみたい」

生徒会長「ついでに手錠も。これはアクセ用だから、少し改良する必要があるわね。そんなに難しい事じゃないし、出来るでしょ」


生徒会長「あと、何か持っておいた方がいいものってあるかしら? 貯めていたお小遣いをかなり使ってしまったから、あまり高い物は買えないけど……」


安価↓1

生徒会長「何かあった時の為に録音機は欲しいわね……」

生徒会長「でも、これはスマホのアプリで代用がきくかしら? こっちはこれでいいとして……」

生徒会長「もしも、スタンガンを取られた場合の事を考えて、もう一つぐらい護身用のものを……」

生徒会長「確か、痴漢撃退スプレーも売っていたわね。それぐらいなら残りで買えそう」

生徒会長「一旦戻って、それを買いに行きましょうか」


プルルル、プルルル、プルルル


生徒会長「電話ね……。友君かしら」スッ

生徒会長「あら……? 演劇部部長?」

生徒会長「ひょっとして、薬の副作用について……?」

生徒会長「もしもし」ピッ

『もしもし、生徒会長?』

生徒会長「ええ、そうよ。どうかしたの? もしかして副作用の件について?」

『うん。昨日、調べものしていたら、ちょっと気になる記述が出てきたの。それで、今日、生徒会長と会えないかなって思って』

生徒会長「会うのは大丈夫よ。今、ちょっと遠出してるから、すぐにって訳にはいかないけど」

『遠出?』

生徒会長「ええ、用事があって、〇〇まで来てるの」

『そうなんだ。電車?』

生徒会長「ええ。もう少ししたら帰るところ」

『だったら、その後で私の家まで来れないかな? 駅前からならそんなに遠くないし』

生徒会長「そうね。わかったわ。一旦そっちに寄る事にする。多分、行くまで一時間もかからないと思う」

『うん。じゃあ、家で待ってるね。来る前に一度電話して』

生徒会長「ええ、それじゃあまた後でね」

『うん。バイバイ』ピッ


ツー、ツー、ツー


生徒会長「さてと……。そういう事なら少し急がないとね」クルッ、スタスタ……

『警察署』


従姉妹「着いたわ。車を飛ばして来た甲斐があったわね」

従姉妹「まずはあのウジ虫から調べないと。その後は女ちゃんのところにでも寄りましょうか」


従姉妹「」トコトコ



モブ刑事「ん……。あれは……確か」

モブ刑事「」タタタッ

モブ刑事「失礼、ちょっと宜しいですか、警部」


従姉妹「あら、モブ刑事さん。こんにちは」

従姉妹「でも、その呼び方はダメって言いませんでした? 私は刑事さんと違って『極秘』に本庁から派遣されてるので」

従姉妹「その事を知っているのはモブ刑事さんだけなんですから。秘密にしといてもらわないと。敵を騙すには味方からと言うでしょ?」


モブ刑事「はっ! 失礼しました」


従姉妹「その堅苦しい敬語も今はダメって言いましたよね? 私とはあくまで一般人として接して下さい」


モブ刑事「そうでした。すみません。それで、警……いえ、従姉妹さん。今日はどんな御用件で?」


従姉妹「風紀委員とかいう女について、知りたくて」

モブ刑事「ああ、あのまた行方不明になった……」

従姉妹「行方不明?」

モブ刑事「はい。昨日からです。病院で警察官が三人見張ってたんですがね。ゴタゴタがあって、いつのまにか行方知れずになっていたとか……」

モブ刑事「見張っていた犯人を取り逃がしている訳ですから、表沙汰にすると不祥事不祥事と騒ぎ立てられますからね。とりあえず今はそれを伏せて、全力で行方を追っている最中なんですが……まだ」

モブ刑事「刑事さんもそれについては激怒してましたね。ああいう人なんで、あまり顔に出してはいませんけど」


従姉妹「ふうん……。行方不明に……」

従姉妹「その時の事を少し詳しく聞かせてもらえる?」


モブ刑事「はい」

従姉妹「そう……。警官の一人が神隠しに……」

モブ刑事「まあ、本人らはそう言ってますが、どこまで信用していいのか……。一時しのぎの嘘という事の方が十分に考えられますので」

従姉妹「それで、その消えた警官はしばらくして病院の外で見つかったけど、その時の事については全く覚えてないのね……」

モブ刑事「ええ、そうやって右往左往してドタバタしている内に、いつのまにかベッドで寝てたはずの風紀委員も消えていたそうです」

従姉妹「ふうん……」


モブ刑事「まあ、彼らは降格とまではいかずとも減給ぐらいはあるでしょうね。どうせ内々で収めるつもりだとは思いますが」

従姉妹「わかったわ。どうもありがとう。あと、念のために風紀委員の身辺を洗ったデータも見たいわ。後でコピーしてこっそり渡してもらえる?」

モブ刑事「はい。お任せを。すぐに用意させます」

従姉妹「ありがとう。それじゃ、私はまだ用事があるからこれでね」

モブ刑事「はい。では」


従姉妹「」スタスタ……



従姉妹「多分、風紀委員とかいうやつは『能力者』ね……。面倒だわ……」ボソッ

従姉妹「」スタスタ……

『警察署近く』


男「チャリンコも取ってきたし、そろそろ警察署だな」コギコギ

男「今のところ、特にクワガタからの報告もないし、問題ないとは」

クワガタ「」ブーンッ

クワガタ「」ギチギチ、ギチギチ


男「なっ、マジか!」キキィーッ

男「従姉妹が警察署の中にいるのかよ! 移動した先ってそこか」

男「それなら、出来れば顔を合わせたくはないな。くそっ」

男「一旦、どっかに身を隠すか。向こうのマンションの階段辺りならきっと見つからないし、クワガタからの報告も聞ける。移動しよう」クルッ、コギコギ


男「にしても、従姉妹が警察署に? 事情聴取に呼ばれたって事か?」

男「もしそうだったとしたら、当分は出てこないだろうし、ずっと待ってるだけ無駄って事になるな」

男「んー、どうするか。昨日と違って財布もあるし、どっかの公衆電話から電話をかけて、様子だけでも尋ねてみるか?」

男「刑事さんが警察署にいれば、話は早いんだろうけどな。どうしたもんか」



1、電話をかけてみる
2、このまましばらく待機
3、警察署は後回しにして、先に病院に行く
4、その他

また忘れた
↓1

男「んー……いや、先に病院に行くか」

男「電話したところで、精密検査の結果を聞かれるだけだろうし、とりあえず鉢合わせない事を優先しよう」

男「今なら病院が安全圏だろうしな。先にそっちに行く」コギコギ


男「つーか、俺、かなり元気だし、意外と平気そうなんだけどな」

男「とはいえ、潜伏期間が三日もあるコレラ菌とかを注射されてる可能性だってある訳だし、調べてもらわない訳にはいかないんだけど」

男「ってか、今、自分で思ってゾッとしたわ。エイズとかにされてる可能性だってある訳だし、マジで怖くなってきた」

男「急ぐか」コギコギ

『警察署 面会室』


モブ刑事「面会だ、俺が付き添うから君は下がっていてくれ」

モブ警察官「はっ」

モブ警察官「」クルッ、トコトコ


バタンッ


モブ刑事「では、どうぞ。従姉妹さん」


従姉妹「ありがとう」ニコッ

従姉妹「女ちゃん、元気してた? って言うのも何か変だけど……。大丈夫だった?」

女「うん……。大丈夫だけど……でも」

従姉妹「でも?」

女「男君に会えなくて寂しい……」ショボン

従姉妹「そうよねえ……。気持ち、よくわかるわ」


従姉妹「だけど、もうちょっとの辛抱だから、我慢してね。女ちゃんもすぐにそこから出られるようになるから」

女「本当に? 本当に? 絶対?」

従姉妹「ええ、本当よ。だって女ちゃん、悪い事なんか何一つしてないでしょ? 男君を助けてあげただけだもんね」

女「うん……。でも……」

従姉妹「今、女ちゃんがそこにいるのは、男君が被害届を出してるからなんだって。だから、男君が被害届を取り下げれば、すぐに女ちゃんもそこから出られるようになるわよ」

女「男君が……被害届を出してるの……? 男君が……? 何で……?」

従姉妹「それはあれよ。形式的なものだからでしょ。多分、刑事さんに言われて意味もわからず出したんじゃないの?」

従姉妹「男君はほら、『病気』の事もあって今は入院してるから、それで取り下げられずにいるのよ、きっと」

女「本当に? 私、男君に嫌われてない? 大丈夫?」

従姉妹「ふふっ。女ちゃんは心配性ね。でも、大丈夫よ。私が男君のところに行って、その事を教えてあげるから」

従姉妹「そうしたら、男君、すぐに被害届を取り下げるはずよ。可愛い女ちゃんの為だもの。きっとすぐにやってくれるわ」

従姉妹「もしも、万が一、男君が女ちゃんの事を誤解してるようだったら、それも私がきちんと説明して誤解を解いてあげるから安心して」

女「本当、従姉妹さん!?」

従姉妹「もちろんよ。ひょっとしたら、手続きとかでちょっと遅れちゃうかもしれないけど、女ちゃんもすぐに釈放されるわ。私に任せておいて」

女「ありがとう、従姉妹さん! 何から何まで本当にありがとね!」

従姉妹「いいのよ。女ちゃんの為だもの。ふふっ」ニコッ

従姉妹「ああ、それとね、女ちゃん」

女「なに?」

従姉妹「男君の『病気』、もうずいぶん良くなってるから、女ちゃんがそこから出る時にはきっと退院してると思うの」

女「そうなの!」パアッ

従姉妹「お医者さんもびっくりするぐらい、回復が早くてね。これも女ちゃんの献身的な看護……ううん、愛の力かしらね? ふふふ」

女「え、あ、うぅ///」テレッ

従姉妹「ただ、病気の副作用はしばらくの間、残るからね。これはどうしようもない事だから」

女「……うん」

従姉妹「具体的には、記憶の混乱と欠如……になるのかしら? だから、時々、男君はよくわからない事を言うかもしれないの」

女「うん……」

従姉妹「でも、それについてあんまり言っちゃダメよ。追いつめないでそっとしておいてあげてね。『治療』と共にその症状も良くなっていくから」

女「うん」

従姉妹「あと、男君に病気だって言うのもダメよ。男君は自分がそうじゃないって思い込んでるから。言うとパニックになるかもしれないから、絶対に言わないようにしてね」

従姉妹「約束出来る、女ちゃん? 男君の為に」

女「大丈夫。男君の為だったら、私、何でも出来るし、どんな我慢でも平気だよ! 絶対に!」

従姉妹「あらあら、女ちゃんの愛は本物ね。男君が羨ましい。ふふっ」

女「あうう……///」テレッ

従姉妹「じゃあ、そういう事でお願いね。私はこれから男君のところに行って来るから。女ちゃんの事をしっかり伝えておくわ」ニコッ

女「うん! お願いね、従姉妹さん!」

従姉妹「ふふっ。任せておいて。それじゃあね」

『面会終了後』


モブ刑事「警部……いえ、従姉妹さん」

従姉妹「なにかしら?」

モブ刑事「捜査の為とは言え、あんな嘘を言って大丈夫なんですか? 後々、問題になるかもしれませんが……」

従姉妹「嘘? 何の事かしら?」

モブ刑事「ですので、男君が入院してたりとか、病気だとかそういった事です。あと、被害届の事に関して約束してましたが、それも」

従姉妹「ああ、あの事なら問題ないわよ。だって本当の事だし……」

モブ刑事「本当の事……?」

従姉妹「それに、あなたが忘れていれば何の問題にもならないわよね?」スッ


従姉妹「能力……発動」キュイーン

モブ刑事「あぐっ……! 頭が……!!」


従姉妹「ふふっ。死人に口なし。刑事に記憶なし、よ」

従姉妹「いらない事は、忘れてしまうのが一番よね。ふふふふ」

『病院』


男「」キキーッ

男「着いたと」


男「連絡は昨日の内に刑事さんから行ってるはずだから、受付で名前を言うだけで大丈夫だろ」

男「と、その前に友の所に寄ってかないとな。騒ぎは起きてないみたいだけど、やっぱり心配だし」

男「精密検査は時間かかるっていうし、先に友だな。行こう」タタタッ

『一昨日、友のいた病室』


男「……いない?」

男「え、何で? 一昨日は確かここに……」

男「あ、いや待てよ。そういえば、危険だから病室を変えるとかそんな話を刑事さんしてたっけ……」

男「しまったな……。すっかり忘れてた。どうしよう……」


モブ病人「んんー。そこの兄ちゃん、前にお見舞いに来てた人だっけ?」

男「え、あ、はい……。そうですけど……」

モブ病人「そこで寝てた兄ちゃんなら、何か部屋を移ったみたいだぞ。もしかしたら、もう退院してるかもしれないけどな」

男「あ、そうなんですか……。すみません、ありがとうございます」

モブ病人「友達だってんなら、携帯の番号ぐらい知ってるだろ? 電話して聞いてみたらどうだ?」

男「あ、はい……まあ……」

モブ病人「?」


男(スマホは相変わらず警察署なんだよな……。連絡取りようがない)

男(どうすっかなー……。気になるけど、先に精密検査受けてこようか……)



男の行動
安価↓1

男(ん。しゃーない、探してたらかなりの時間がかかりそうだし、俺の体も心配だ)

男(友もきっと無事だろ。従姉妹と友は接点なんてないし、演劇部部長もまだ会ってなかったからな、友と)

男(受付に戻って、精密検査を受けてこよう)


男「どうも、ありがとうございます。それじゃ」

モブ病人「おうよ、じゃあな」


男「」タタタッ


バタンッ


モブ病人「にしても、一日開けてまたお見舞いに来るなんて、いい兄ちゃんだな」

モブ病人「そういや、あの入院してた兄ちゃん、結局何の怪我だったんだろうな……。騒ぎがあった時、平気で歩いて外へ出て行っちまったけど……」

モブ病人「その事聞いときゃ良かったな……。まあ、もう遅いか……」

『駅前』


生徒会長「12時少し過ぎ……。戻ってくるのが、少し遅くなってしまったわね」

生徒会長「演劇部部長の家にこれから行って、それから友君のいる病室へと向かう……」

生徒会長「先に病院に行く時間を連絡しといた方がいいわね。といっても、演劇部部長の話次第によってはいくらでも変わってくるから……」

生徒会長「今日行くけど、何時になるかはわからない……。そんなところね」スッ、ピッ、ピッ


プルルル、プルルル、プルルル

プルルル、プルルル、プルルル


生徒会長「出ないわね……友君。何か検査でもしてるのかしら」


プルルル、プルルル、プルルル


生徒会長「…………」

生徒会長「駄目ね、出ないわ」ピッ

生徒会長「仕方ないわね、これは後に回すとして……」


生徒会長「そういえば、男君にもまだ連絡してなかったわね。女に監禁されてたとか、そんな話を昨日警察の人から聞いたけど……」

生徒会長「無様にも、昨日は私自身が自分の事で手一杯だったし、電話する余裕もなかったから……」

生徒会長「まあ、それは多分、男君も同じだったのだろうけど。事情聴取とかで、大変だっただろうし」

生徒会長「今日なら多分、大丈夫よね。一度電話してみましょう。女の事も気になるし」ピッ、ピッ


プルルル、プルルル、プルルル

プルルル、プルルル、プルルル


生徒会長「こちらもなの……? まだ事情聴取でもされてるのかしら……」

生徒会長「当然、女も……」ピッ、ピッ


プルルル、プルルル、プルルル

プルルル、プルルル、プルルル


生徒会長「それはそうよね……。警察の人が言ってた事が本当なら、電話に出れる訳ないわ」

生徒会長「仕方ないわね。こちらも後回しにして、先に演劇部部長の家に行きましょう」スタスタ

『美少女の自室』


美少女「」ピッ、ピッ


プルルル、プルルル、プルルル

プルルル、プルルル、プルルル


美少女「……やっぱり男君、電話にも出ない……」

美少女「今朝、新聞見て……テレビのワイドショーでも朝から散々やってるのに……」チラッ……


『民家に押し入り、暴行を加えようとした少女Aが逮捕されたとの事ですが……』

『警察の調べによると、この少女Aがその前に起きた二件の包丁通り魔事件、そして野球ボール投げ込み事件の犯人である疑いが強いと、そういう事ですよね?』

『はい。警察の発表によりますと、一連の事件の犯人である可能性はあるとの事です。ただ、逮捕した相手が17才の少女だという事もあってか、これ以上詳しい事は発表されませんでした』

『わかりました。警察の今後の捜査はどういったものになっていくのでしょうかね?』

『はい。警察はまず逮捕された少女に動機とかの詳しい取り調べを行うと共に、二件の事件についても同時に取り調べを行うものと思われます。それと合わせて少女の関係者への聞き込みも強化する方針です』

『聞いた話によると、その逮捕された少女は精神疾患を患っていたと聞きましたが、そちらは?』

『はい。担当していたと思われる医師が今日、警察署へと来て、警官立ち会いの元に問診する模様です』

『家族の方はどうですか? 逮捕された少女のご両親は何と?』

『はい。それがですね。私、今、逮捕された少女の自宅の前まで来ているのですが、ご覧の様に門を閉ざし、窓にはカーテンをかけ、沈黙を保ったままです』

『昨日の夜に、父親が取材陣の前に出てきて、今は何もお話しする事はありません、とだけ』


美少女「」ピッ

プツッ……シーン……


美少女「もう犯人は捕まったはずなのに……。ニュースでも、誰かが殺されたとかやってもいないのに……」

美少女「なら、何で電話に出てくれないの、男君……」

美少女「ううっ……」グスッ

『連絡がないのは……』

美少女「」ビクッ


美少女「誰!?」キョロキョロ


『未だ男君からの連絡がないのは、やはりまだ真犯人が見つかってないからじゃないかと私は思うんですが……』


美少女「テレビのワイドショー……? でも、私、さっき消したはずじゃ……」


『その事について犯罪心理学に詳しい教授に今日はお越し願ってますので、聞いてみましょうか。どう思います、教授?』

『そうですね。私もそう思います。無事なら何か連絡が必ずあるはずですからね』

『という事は、今、逮捕されている犯人以外にも、男君を狙っている犯人がまだいると?』

『それも大勢いるでしょうね。彼は人気者でしたし、それを妬んで、あるいは僻んでいる人間はかなり多いはずです』


美少女「なに、これ……。何で男君の事がテレビで……」


『もしくは、彼を好きな女性が他にも大勢いて、彼を独り占めしようとしている』


美少女「……!」ビクッ


『そういった人達が彼の事を監禁したとしても、少しも不思議はないでしょうね』

『なるほど。私はその中でも彼の事を好きな女性が、それを実行したんじゃないかと考えているんですが……教授はどう思われますか?』

『有り得ますね。むしろ、それしか有り得ないでしょうね』


美少女「それしか……有り得ない……」


『そういった犯人については、どう対処するべきだと教授はお考えですか?』

『■すしかないですね。彼を無事に助け出す為には、それしか方法はないでしょう』


美少女「■す……男君を助け出す為に……」


『ですが、それは犯罪になるのでは?』

『正当防衛です。罪にはなりませんよ。相手側は恐ろしい凶器を持っていますので、やられる前に■すんです。それしか男君を守る方法はありません』


美少女「罪にはならない……。やられる前に■す……。それしかない……」


『■すには、早ければ早いほどいいでしょうね。今すぐに動くべきです』


美少女「今すぐ……」ユラリ……

美少女「■しに行かないと……」フラフラ……


ガチャッ、バタンッ……


『こちらの武器は包丁がいいでしょう。あるいはナイフとか、鉈とか、ノコギリとか』

『わかりました。丁寧な指示をどうもありがとうございます。それでは次のニュースに……』

『警察署前』


(ようやく着いたわ……)ハァハァ、ハァハァ

(これだけ長い距離を消えながら行くって、初めての経験だけど二度とやりたくはないわね……)

(誰かに触らないように注意しながら行かなきゃいけないし、車や自転車はぶつかりそうになっても速度を落としもしないし止まってもくれない……)

(来るまでに危うく二回死にかけたわよ。こっちの方がよっぽど危険だったかも。時間も結構かかったし)

(でも、追われてる身としては、目撃者を出すのも危険だし……)

(とにかくここまで無事に来れたのだから、今は良しとしましょう。次にどうするかはともかく)

(また、人に触れないように、気を付けて中に入らないと……)タタタッ

『入口近く』


(…………)ソロソロ、タタタッ

(いいわね。自動ドアもタイミング良く、人が来てくれたおかげでスムーズに入れたし……)

(後は男君の情報をどうやって調べるかだけど……)



従姉妹「」スタスタ

モブ刑事「」スタスタ



(!!)ビクッ

(また、あの女! どうして警察署に!?)



モブ刑事「それでは、私はこれで。また何かあったら言ってください」

従姉妹「ええ、ありがとうね。それじゃ」



(……今、帰るところ? それにあの人は何? どんな関係なの?)

(これは……チャンスなの? それとも無視して、男君の連絡先を探すべきなの?)

(それか、別の事を考えるべき……?)


(……今、どうするのが、私の取れる最良の行動なの? どうすれば……)



風紀委員の行動
安価↓1

(落ち着いて、今、私がしなきゃいけない事は……)

(男君を助けるのが先……!)

(この女の事も気になるけど、それに関わっている場合じゃないわ……!)

(警察に通報してもいいんだろうけど、逃げている私が通報しても意味がない、だったら……!)

(男君に事情を話して通報してもらうのがベストよ……!)

(ぐずぐずしている暇はないわ、急がないと……!)タタタッ

『警察署 資料保管室』


(ここかしら……?)

(最近は全部パソコンに保管してあると思ったら、そうでもないのね……。ファイルもかなりある)

(多分、部屋の端にあるこのパソコンがそうじゃないかしら)

(人もいないし、今の内なら……)カタカタ


(パスワード……? ロックがかかってる……。当たり前と言えば当たり前だけど……もう!)


(これじゃ調べようがないわね、それなら紙のファイルか何か……)ゴソゴソ

ガコッ、ガタッ

(今度は棚に鍵が……!)

(個人情報が入ってるんだから、こっちも当然かもしれないけど……ああもう!)

『四十分後』


(結局、捜査本部まで行って、隙を見計らって置いてあった資料の一部を持ってくる事しか出来なかった……)

(でも、男君の住所と携帯番号は手に入ったし……)

(友君の住所と携帯番号も)

(あと、生徒会長とかいう女と、女とかいう名前の子のもわかったわ……。こっちは中身をろくに読んでないから、どういう繋がりかは知らないけど……)

(日付からして、男君が休んだ日の事かしら……? 一昨日の事件調書……?)


(まあいいわ、それは後回しにして、とにかくすぐに男君に連絡しないと)

(って言っても、私のスマホも財布も病院に搬送された後からなくなってるのよね、多分警察に押収されたはず……)

(こっちは探しても見つからなかった。もし見つけたとしても、どこかに保管されてるだろうから、取り戻すのは不可能だろうし……)

(どうしよう……。一度、家に帰れば、家の電話を使えるけど、鍵もないからドアを開ける事も出来ないし……)

(透明を解除すれば開けてくれるだろうけど、その後、どうなるかは予想もつかない……。どうなるにしても、電話をかけるのは難しいだろうし……)

(しまったわね……。後の事を何も考えてなかったなんて……。これからどうしよう……)


安価↓1

(電話は……無理そうね。家に戻る訳にはいかないわ)

(だとしたら、直接会って話すしかないけど……)

(家に居るとは限らないのが、また問題ね……)

(時間もないし、絨毯爆撃の様にしていった方がいい……?)

(ここからだと、この生徒会長とかいう人の家が一番近い。男君との関係は知らないけど、一緒に聴取されてるみたいだし、まずはこの人から当たってみるか……)

(もし、男君と仲が良かったら、事情を話せば手伝ってくれるかもしれない……)

(今はそうしましょう。資料を探すのに時間がかかったから、あまり考えている暇もないし)タタタッ

『少し時間を遡って 演劇部部長の自室』


演劇部部長「適当にそこらに座って、生徒会長」

生徒会長「ええ、ありがとう」ストッ


演劇部部長「今、何か飲むもの持ってくるね」

生徒会長「お構い無く。それより、電話で言っていた、私の幻聴や幻覚の事について教えてくれない?」

演劇部部長「うん。でも、それについて話してると少し時間がかかると思うし、私も喉が乾いてるから、だからね」

生徒会長「わかったわ……。それじゃ悪いけどお願い」

演劇部部長「うん。すぐに戻ってくるから」トコトコ


ガチャッ、バタンッ……


生徒会長「あの子もこういうところが何ともね……。のんびりしているというか、落ち着いているというか……」フゥ

演劇部部長「」トコトコ

演劇部部長「はい、どうぞ。グレープフルーツジュースがあったから、それにしたわ」

演劇部部長「ちょっと酸っぱいかもしれないけど……大丈夫? 苦手?」

生徒会長「ううん、平気よ。ありがとう」


生徒会長「」コクッ


生徒会長「ん……。美味しいわね」

演劇部部長「良かった」ニコッ

生徒会長「それで、私に話したい事って何かしら?」

生徒会長「何かわかったの? いい知らせ、悪い知らせ?」

演劇部部長「うーん……。それは難しいかも」

生徒会長「難しい?」

演劇部部長「私も色々悩んでるの。これからどうしようか」

生徒会長「どういう事?」

演劇部部長「生徒会長が協力してくれるなら、それが一番だと思うのね。でも、生徒会長はきっと協力してくれないと思うの。正義感が強いから」

生徒会長「……話が見えないのだけど?」

演劇部部長「ねえ、生徒会長。例えばさ、戦争って生徒会長はどう思う?」

生徒会長「余計、話が見えなくなったわね……」


演劇部部長「戦争は悪だと否定するのが大多数なんだけど、その一方で戦争が文明や科学を進歩させてきたのは確かなの」

演劇部部長「人道上の点を無視して、科学的な点で見た場合、戦争は多いにするべきなのね」

演劇部部長「もしもずっと平和な時代が続いていたなら、科学はここまで進歩しなかった。医学、生物学もそう」

演劇部部長「戦争がなかったら、レーダーは出来なかったかもしれないし、原子力発電所も理論上のものだけだったかもしれない」

演劇部部長「別に私は科学なんかにそんなに興味はないし、他の生物学や医学なんかにもそこまで興味ないからそんな事はどうでもいいんだけど」

演劇部部長「だけどね」

演劇部部長「それでも、戦争が悪いなんてこれっぽっちも思わないの。だって、私は今、生きてるんだから」


生徒会長「……一体、どういう事? 何が言いたいの?」

演劇部部長「もしも、戦争が起こって、それで私の足とか手が銃か何かに撃たれて使い物にならなくなったとしたら」

演劇部部長「家が爆撃されて燃えて、私の住む場所とかがなくなったとしたら」

演劇部部長「私はきっと戦争を憎むと思うの」


演劇部部長「でも、そうでなかったら」

演劇部部長「私のいる場所とは全く無関係の場所で、戦争によって何千万人の人間が死のうと知った事じゃないの」

演劇部部長「むしろ、応援すると思う。これでまた科学が発展するんだから」

演劇部部長「もっともっとやればいいと思う。生物兵器や細菌兵器でも何でも使って、好きなだけやればいいんじゃないかなって」

演劇部部長「だって、私には無関係だもん。私は痛くないもん。他人が苦しんで死のうとどうでもいいし」


生徒会長「……何が……言いたいの?」


演劇部部長「戦争ってどうして起こると思う?」

生徒会長「国と国とが……争うから……でしょ」

演劇部部長「違うよ。『そこに武器があるから』」

生徒会長「…………」


演劇部部長「武器があるから、人は使うの。武器がなかったら戦争は起こらない。それだけだよ」

生徒会長「それは……順序が逆よ。狩りを例外とすれば、先に争いが起こるからそれを実力で解決する手段として……武器は生まれたのよ」

演劇部部長「違うよ。そこに剣があるから使いたくなる。そこに銃があるから試したくなる。核兵器が作れるとわかったから、使うかどうかもわからないのに作りたくなる」

演劇部部長「人間の欲求で一番強いのは何なのか知ってる、生徒会長?」

演劇部部長「睡眠欲でも食欲でも性欲でもないの」

演劇部部長「人間の中で一番強い欲求は『好奇心』なの」

演劇部部長「作れるとわかったら、それがどんなに恐ろしいものでも作っちゃう。作り終えたら、それがどんなに凶暴な威力を持っているか想像がついてるのに使っちゃう」

演劇部部長「聖書の中で、アダムとイブが楽園を追い出された理由はたった一つ。知恵の実を『好奇心』に負けて食べてしまったから」

演劇部部長「人は『好奇心』には勝てないの。知りたいという欲求を抑える事なんか出来ない。過去にどれだけの人が未知の場所へ探検に出掛けて、どれだけの人が帰って来なかったか、それを知ってるのに人はまた同じことを繰り返す」

演劇部部長「閉まった箱があったら、そこに何が入っているのかを確かめたい。パンドラはそれで全人類にありとあらゆる災厄を一つだけ残してばらまいた。でも、私はそれを責めない。知らないものを知ろうとするのは当たり前の事だと思うから。そうでしょ?」

演劇部部長「そこに『薬』があったら……試すでしょ? 生徒会長だってそうだったよね? 副作用があるかもしれないって言ったのに、飲んだよね?」

演劇部部長「私も同じ。ただ『知りたい』の。そして……」

演劇部部長「その邪魔はされたくないの。わかるよね……?」


生徒会長「……どういう事……!? 演劇部部長、あなたさっきから少し……変よ……!」

演劇部部長「ねえ、生徒会長……。何で私がこんな事を言うと思う?」

生徒会長「わからないわよ、そんな事……!」

演劇部部長「理由は二つあるの」


演劇部部長「一つはね。言っても、どうせ生徒会長は忘れちゃうから。記憶から消えちゃうの」

生徒会長「……消える……!?」

演劇部部長「もう一つはね、時間稼ぎ」

生徒会長「……時間……稼ぎ?」


演劇部部長「体がだるくなって来てない? 眠気も襲ってきてない? もうそろそろのはずなんだけど」

生徒会長「……!? まさ……か……!?」

演劇部部長「うん。強力なものはあっても、即効性の睡眠薬ってないんだって。あるとしたら気絶させるクロロフォルムぐらい。でも、それだと生徒会長はきっと時間を止めるか巻き戻しをしちゃうから使えなくて」

演劇部部長「だから、さっきのジュースに混ぜといたの。酸味で味もわからなかったでしょ?」

生徒会長「演劇部部長、あなた……!」スクッ

生徒会長「っ……」グラッ


演劇部部長「頭の回転の早い生徒会長なら多分わかるとは思うけど、もう時間を巻き戻しても無駄だよ。飲んでから三分近く経ってるから」

演劇部部長「それだけの時間を巻き戻したら、生徒会長はどっちにしろ、貧血で倒れちゃうもの」

演劇部部長「諦めよう? 別に殺しはしないから。少しの間、男君を呼ぶための餌にするだけ。あ、もちろん、男君も殺しはしないよ。記憶を消すだけだから」

演劇部部長「だから、眠ろう? ね?」


生徒会長「っ……。それ……を聞いて……私が……考えを変えると……でも……思って……っ……」スッ

演劇部部長「それってスタンガン? 危ないよ、そんなもの持ってたら」ササッ

生徒会長「待ちな……さ……ぅ……」パタリッ……


生徒会長「」スースー、スースー……


演劇部部長「捕獲完了……。呆気ないなあ」クスッ

演劇部部長「さてと……相手は用心深い生徒会長だし、多分」ゴソゴソ

演劇部部長「やっぱり……。スマホで録音してた。いつの間にしたんだろう? 全然、気が付かなかったけど……」ピッ、ピッ


『録音を消去しました』


演劇部部長「他には何かないかな?」ゴソゴソ

演劇部部長「あった、バッグの中に手錠。これも処分しとこう」ポイッ


演劇部部長「後は……」ゴソゴソ

演劇部部長「怪しいものは特になし……。でも、念のため、バッグは私が保管しとこう」

演劇部部長「後は男君を呼び出して、従姉妹に二人の記憶を消してもらうだけかな。ふふふ」


生徒会長「」スースー、スースー

『病院』


(とんだ無駄足だったわね……参ったわ)

(生徒会長っていう人も、男君も、女って人も全員が家にいなかったのだから)

(ただ、収穫は何もなかったって訳じゃない)

(男君は病院に検査に行っているって、男君のおばさんが教えてくれたもの)

(そういう訳で病院まで来たのだけど……)


(何の検査かもわからない上に、もう終わって帰ったのかどうかすらもわからないのよね……)


(この広い病院を探し回って歩く? それとも、まだ帰ってないと信じて、出入り口辺りでひたすら待ってみる?)

(病院には朝から出掛けたっていうし、もう終わって家に帰っている可能性も高いわ。これまた賭けね)


(どちらにするか、それとも……)



1、病院を探し回ってみる
2、出入り口付近でひたすら待ってみる
3、友に事情を話して、協力をお願いする
4、その他

安価↓1

(そうね……。まだ検査が終わってないと信じて……)

(ここで待ちましょう……)


(間違ってたら、アウトだけど、これはもう賭けるしかないわ)

(お願い……! 予想が間違っていないで……!)

『警察署』


刑事「『もう一人の人格』が出てこない?」

モブ医師「はい。いつも通り、逆行催眠をかけて行ったのですが……」

刑事「生憎、私は精神科の事について詳しくないのでお聞きしますが、そういう事はよくある事なんですか?」

モブ医師「ええ、それほど珍しい事でもありません」

刑事「…………」


モブ医師「元々、催眠術というのは、テレビとかでよくある、五円玉を揺らして、とかいうものではないので」

モブ医師「はっきり言ってしまえば、ああいった類いのものは全てインチキですね。催眠術というのはかけられる相手にも努力と協力を要するものなんです」

モブ医師「例えば、かけられる相手が催眠術にかかりたくないと思っていたら、その人には絶対にかかりませんよ。無理矢理出来るようなものではありませんから。相手の協力が必要なんです」

モブ医師「今回の場合は恐らくコギャルさんが無意識的にそれを拒否したんじゃないかと思います。場所が場所ですし、落ち着いた状態とはとても言えるものではありませんでしたからね」


刑事「なるほど……。しかし、彼女が二重人格なのは確かなんですね?」

モブ医師「そうですね。医学的には別の言い方をしますが、二重人格という事になります。証拠のカルテもあります」

刑事「私見で結構ですが、今回の事件についてどう思われます? 『もう一人の人格』がそれを行ったとしても、不思議ではない状態でしたか?」

モブ医師「何とも言えませんね……。実生活にそこまで影響が及んでいたとは言い難かったですし……」

モブ医師「何より、彼女の中の『もう一人の人格』もあんな大それた事をするとは思えませんでしたから……。これは言い訳になるかもしれませんが……」


モブ医師「私たちは彼女の中の『もう一人の人格』を『少女』と呼んでいました。幼い子供です。小学生か、あるいはそれ以下……」

モブ医師「寂しがりやで大人しい子です。多少、思い込みの激しいところもありましたが、それは許容出来る範囲だと考えていました」

モブ医師「事件の後から言われれば、その可能性はもしかしたらあったかもしれないとは思います。ですが、事件の前に言われたなら、それはないでしょうとはっきり答えたと思います。そういう子でした」


刑事「……わかりました。今日はこれで結構ですが、治療と捜査の為にまたお呼びすると思います。その時は宜しくお願いします」

モブ医師「私で出来る事でしたら何でも協力しますよ。私も多分に責任を感じていますので……。では、失礼します」ペコリ

刑事「…………」

『横断歩道』


美少女「」トコ……トコ……

美少女「犯人を■さなきゃ……。手遅れになる前に……■さなきゃ……」


美少女「」トコ……トコ……


モブ通行人「おい! そこの君、危ない! 早く渡れ!」


美少女「」トコ……トコ……


モブ通行人「おい! 聞こえてないのか!? 早く!!」


パッパー!! ブーブー!!


美少女「!」ビクッ

美少女「……? え? あ、え?」キョロキョロ


モブ運転手「おい、そこの姉ちゃん! 早く渡れよ!! ぼさっとしてんな!!」


美少女「ご、ごめんなさい……!」タタタッ


モブ運転手「ったくよお! こっちは急いでるってのに」ブツブツ


美少女「ごめんなさい、ごめんなさい!」タタタッ


モブ通行人「」フーッ……

モブ通行人「大丈夫か、君? 耳が悪い?」


美少女「え、あ、あの! だ、大丈夫です!」タタタッ


モブ通行人「って行っちまったよ……」

モブ通行人「しかし、可愛い子だったな。ひょっとしたら運命的な出会いを逃したか?」

モブ通行人「な訳ねーか……。はあー、彼女欲しいな……」フゥ

美少女「」ハァハァ

美少女「何なの、一体……」

美少女「何で私、あんな所にいたの……? 全然覚えてないのに……」

美少女「昨日も同じ事があった……。気が付いたら公園の中にいて……」

美少女「訳もわからないまま、家まで帰ったけど……」

美少女「一体、私、どうしちゃったの……? 昨日から何かおかしい……」

美少女「どうして……? 何が原因なの……?」


美少女「何にも思い出せない……。昨日は学校が終わったら、男君の家に行って……」

美少女「それで、警察の人に職務質問されて……」

美少女「それから……家に帰って……」

美少女「その後……その後……」


美少女「ご飯を食べて……」

美少女「お風呂に入って……」

美少女「…………」


美少女「何かあった様な気がするけど……」

美少女「でも、覚えてなくて……気が付いたら公園の中にいて……」

美少女「今日も家でテレビを見てたのに……。いつの間にかこんなところに来てて……」


美少女「何だか……怖い……」ブルッ


美少女「私、変になっちゃったの……?」ブルブル

『病院 友の病室』


従姉妹「あら、そうなの? ふふっ、流石ね」

従姉妹「え? ああ、うん、連絡は来てないわよ。だから、男君の携帯はまだ警察署のはずよ」

従姉妹「それを取りに来たらすぐ連絡してもらう事になってるから、もうちょっと待ちね」

従姉妹「私? 私は今、デート中♪ 友君ったら甘えん坊だから、私がついてないと不安みたいなの。ふふっ」

従姉妹「ええ、何かあったらすぐに連絡してね。こっちもそうするから。それじゃ……」ピッ


従姉妹「友君、友君。いいニュースよ」

従姉妹「あのゴキブリが捕まったんだって。演劇部部長ちゃんから連絡があったの」

従姉妹「後でちゃんと■してあげるから、安心して。もうあの汚い顔を見なくて済むようになるのよ。嬉しい?」


友「ウン……。清々スル……。ヤッタア……」


従姉妹「やっぱり友君もそう? 私とおんなじね。嬉しいわあ」

友「俺モ嬉シイ……。イツデモ何デモ従姉妹ト同ジガイイカラ……」

従姉妹「もう、友君たら// ふふふ」

『美少女の家』


美少女「……ただいま」ボソッ

母親「あら、お帰り。いつのまに外に出てったの?」


美少女「…………」トボトボ……


母親「美少女? 聞いてるの?」


美少女「うん……聞こえてる……。ごめん、何か気分が良くないの……」

美少女「ちょっと部屋で大人しくしてるから……。ご飯が出来たら呼んで……」


母親「大丈夫なの?」


美少女「うん……。多分……」トボトボ


母親「?」


母親「あの子、大丈夫かしらね……? 昨日の夜もあんな感じだったし……」

『五時間後 病院』


男「っ!! ああー、もう!!」

男「精密検査ってこんなに時間かかるのかよ! 視力から始まって、聴力やら問診やら血液検査やら尿検査やら、検査検査検査検査検査!!」

男「おまけにやっと終わったと思ったら、バリウム検査までやるとか、マジか! 明日も来なきゃいけないじゃないかよ!」

男「散々体をオモチャにされた挙げ句、明日も来いとか! 俺はエロゲのレイプされて脅迫される女キャラかよ!」

男「外とかもう暗くなってるし、今日の予定がほとんどパーだ! 外にも出られなかったからクワガタの報告も聞けやしねえ!」


男「クワガタは交代で休ませてるから平気だけど、俺のいない時にまたヤバイ事態になってるとかやめてくれよ!」ダダダッ



(いた……! 男君!!)

(メチャクチャ待ったのよ! 途中で別のところに行こうかとも何度も思ったんだから! でも、待った甲斐はあったわ!!)

(諦めなくて良かった!!)ダダダッ



1、今すぐ透明のまま話しかける
2、後をついて行って人気のないところまで行ったら透明化を解除。その後、話しかける
3、しばらく様子を見て、それから話しかける
4、その他

すまん、↓1で

男「」ダダダッ

(速い……! 何でそんなに急いでるの!? とにかく追い付かないと!)ダダダッ


男「」キキィッ!!

(止まった! 今なら!)キキィッ!!


男「急げ! どこか人目につかない場所は!?」キョロキョロ

(!?…… 人目につかない場所? どういう事?)


男「向こうの奥らへんでいいか! 多分、あそこなら目立たないだろ!」ダダダッ

(なに、どういう事? 何をしようとしてるの? とにかく後を追うしかないけど!)ダダダッ

『病院裏、建物の陰』


男「」キョロキョロ

(追い付いた! それに今なら見てる人もいない! 能力を解除して、それから男君に話しかける!)

(って思ってたけど……!)


男「よしっ。ここなら大丈夫だろ。報告を聞ける」

(何をしようとしてるのか、気になる! 話しかけるのは、少し様子を見てからにする!)

(こんなに急いで、人の目を気にするなんて少し怪しい! 一応、確認しておかないと!)


男「いいぞ。クワガタ。順番に整列して報告しろ」

(クワガタ……!?)


クワガタA「」ブーンッ

クワガタB「」ブーンッ

クワガタC「」ブーンッ


(ひっ! クワガタ……!! うあうううっ!!)

(なにこれ、体の震えが……! 止まらない……!! クワガタが……!! クワガタが……!! 私を襲ったクワガタが……!!!)ガクガク


男「報告は?」

クワガタA「」ギチギチ、ギチギチ

男「ん? ……よくわからないけど、了解。引き続き、監視な」

クワガタ「」コクコク


(う、あっ! こいつが!! こいつが私を襲った犯人!!)

(クワガタを! クワガタを操って!!)


「いやああああっ!!!」


男「!?」ビクッ!!

男「何だ。今の声!!」キョロキョロ

男「すぐ近くから聞こえてきたけど……!!」


(逃げないと!! 逃げないと、また!!)

ガサッ、ガサササッ


男「何かいる……!? クワガタ、そこら一帯を徹底的に調べろ!!」

クワガタ五千匹「」ブーンッ!!


(ひあっ!! 助けっ!! 助けて!!)


クワガタ「!」ゴツッ!!

クワガタ「」ブーンッ!! ギチギチ、ギチギチ


スーッ……

風紀委員「いや、いやああああっ!!!」



男「!? 風紀委員!?」



クワガタが風紀委員の体に触れた事により、『風と共に去りぬ(ステルス オペラ)』は強制解除される!

風紀委員はほぼ半狂乱になって逃げ出し、その姿を認めた男は、当然……!


男「また友を襲いに来たのか!? クワガタ、止めろ!!」

クワガタ五千匹「」ブーンッ!!



攻撃命令を下した

すれ違い、と言えばその一言だけで片付いてしまう事態ではある

しかし、この『すれ違い』は両者の間にあまりに深い溝を生んだ上に、それは悲運で彩飾が施されており、おまけにこれは回避しうる事態であった

お互いのタイミングが少しずれていれば、この様な結果には至らなかったであろう

両者は事情を知りさえすれば、互いに助け合っただろうし、タイミングさえ間違えなければその説明と弁明をする時間は十分にもらえたはずだった。その結果、誤解は生じず、二人は手に手を取り合って協力する事も出来たかもしれない

男と風紀委員――偵察と隠密、の両者が揃えば、捕らえられた生徒会長を助け出すのは容易い事であったろうし、そもそも風紀委員は、現状、最強クラスの能力を有しているのだから、演劇部部長と従姉妹を捕まえて警察につき出すのも十分に可能だったであろう

姿を消し、透明にしたスタンガンで後ろから襲えば、それで事が済むのだ

少なくとも、暗殺者という観点だけで見るなら、風紀委員に勝てる能力の持ち主は、実は友と、まだ能力が出てきていない美少女の二人しか存在しない。上手くいけば、男と風紀委員の協力によって、何もかもが綺麗に片付いたはずだった

しかし、それらは今や『もしも』の話でしかなくなりつつあり、そして急速に決して実現しないものとなりつつあった


クワガタは男の命令を忠実に遂行し、昨日の再現よろしく風紀委員の体に千匹単位の集団でまとわりつこうとしている

風紀委員の方はトラウマもあってか、それに対し無闇やたらと声を上げ、手を振り回して払いのけ、必死で抗い続けているが、現状を見る限りではその抵抗が無益に終わるのも時間の問題に思えた

彼女は昨日と同じようにたまらずもんどりを打って転倒し――

不意にその姿が消えた

消えた。本当に。男の見ている前で。多数のクワガタにまとわりつかれている最中に

クワガタも目標物を不意に失った事で狼狽し、彼女の影を探し回る様に周辺を忙しなく飛び回ったが、それは完全に無駄に終わった

周囲にいた五千匹のクワガタは、騒ぎを聞きつけて何人かが集まってくるまでの数分の時間、風紀委員の姿を薮の中から駐車場の車の下までくまなく探し回ったのだが、彼女は遂に見つかる事がなかった


どこへ消えたのか?

どうやって消えたのか?


それが解らないまま、男は騒ぎから逃げるために、急遽、場所を移動しなければならなかった

頭には疑問符を抱え、不信と不安とを心の中でダブルデートさせていたが、意地の悪い時の女神はそれについて深く考える余地を男に与えようとはしなかった

報告待ちをしていたクワガタの一匹がこう告げたからだ


『龍神神社の社務所の中に演劇部部長と生徒会長が入ったまま、四時間近くずっと出てこない』

男「演劇部部長と生徒会長が……!?」

男「いやでもあの二人は仲がいいはずだし、二人でいてもおかしくは……!」

男「だけど、四時間近くって……。しかも昨日の神社だろ……!」

男「いや、もしかしたら、生徒会長もグルって可能性もあるんじゃ……!」


男「待て、それよりも今は友か……!?」

男「風紀委員がまた来てたし、しかも風紀委員、絶対に『能力者』だよな!? 消える能力? 瞬間移動能力?」

男「だとしたら友が危ない! 急いで友の病室を探さないといけないけど……!」

男「行ったら行ったで今度は建物内だから、俺が能力を使えない!」

男「まずいぞ、これ! どうすんだ!」



1、目立つのを覚悟で建物内にクワガタごと突入、友を探し出す
2、近くの公衆電話から警察に連絡。友を守ってもらい、自分は神社へと向かう
3、怪しきでも罰せよ。問答無用で演劇部部長と生徒会長をクワガタに襲わせる。病院にもクワガタを突入させて友を探し、自分は離れた場所でその結果を待つ
4、その他


安価↓1

男「仕方ない、友は警察に任せる!」

男「風紀委員を病院すぐ近くで見たって言えば、すぐに動いてくれるだろ!」

男「それよりも、演劇部部長と生徒会長の方だ!こっちは通報しても何も起こってないんだから動いてくれない! 俺が行くしかない!」

男「チャリンコ、チャリンコ!」ダダダッ

男「行くぞ!!」コギコギ!!

『20分後 友の病室』


コンコン、ガチャッ

モブ刑事「失礼。……おっと、これは警……従姉妹さん」

警察官A「…………」
警察官B「…………」
警察官C「…………」



従姉妹「あら、こんばんは。どうかされました?」


モブ刑事「いえ、この辺りで不審な人物を見かけたという通報がありましたので」

モブ刑事「友君の安全を考えて、我々が警備に来ました」


従姉妹「まあ、そうなの……」


モブ刑事「差し支えなければ、しばらくの間、ドアの前で警護させてもらえますか?」

従姉妹「どうぞ。宜しくお願いしますね」


モブ刑事「ありがとうございます。おい、君ら」

警察官A「はっ」


ゾロゾロ、ガチャッ、バタンッ


モブ刑事「……すみませんが、従姉妹さん、ちょっとだけ話を伺ってもよろしいですか? 別室で」

従姉妹「……別室? わかりました。それじゃ、少しだけ」スクッ


従姉妹「友君、少しの間だけ、出ていくから」

友「あ、はい……」

『廊下の隅』


モブ刑事「ここにいて、丁度良かったです。事情聴取中でしたか?」

従姉妹「ええ、詳しく話を聞いていたところ」

モブ刑事「何か手掛かりになりそうな事はありましたか?」

従姉妹「今のところは何もよ」

モブ刑事「そうですか……。ああ、それで従姉妹さんの耳にも入れておかないといけない事が」

従姉妹「何かしら?」

モブ刑事「先ほど、不審人物と言いましたが、あれ、実は風紀委員でして」

従姉妹「あの女が?」

モブ刑事「はい。この病院の近くで見かけたと、先ほど匿名での通報がありましてね。こうして駆けつけたという訳なんですが……。ただ、それがどうにも妙な電話でして」

従姉妹「妙というのは?」

モブ刑事「風紀委員自体は聞き込みしてますから、見かけたというタレコミがあってもおかしくはないんです」

モブ刑事「ただ、通報したその人物が言うには――若い男の声だったそうですが――友が危ないかもしれないので警護をと」

モブ刑事「風紀委員が友君を襲った事に関しては、まだ伏せてあるんです。つまり、通報者が知ってるはずがないんですね」

モブ刑事「何故、それを知っているのか、という疑問が残るんですよ。あるいは、風紀委員には共犯がいて、注意をこちらに向けさせる為に陽動を行ったかもしれない、という考えも出てきます」

モブ刑事「今、警察官何人かで実際、病院周辺の聞き込みや捜索に当たってますからね。人員の薄さを利用して、別方面で風紀委員が何かしようと企んでいる可能性も……」

従姉妹「…………」

従姉妹(友君から聞いた話だと、昨日、助かったのはクワガタが来たからだと言っていたわ)

従姉妹(クワガタは十中八九、男君の『能力』。つまり、男君は友君を助けた訳だから、友君が風紀委員に襲われたという事を知っていても、おかしくはないわね……)

従姉妹(そして、通報したのは若い男の声だった……)

従姉妹(状況から言って、通報は多分、男君がしたと考えていいはずよ……)


従姉妹(男君は友君を助けようとしているから……。つまり、通報に嘘はないわね、きっと)

従姉妹(という事は、さっきまで男君は病院の近くにいて、それで風紀委員を見かけた?)

従姉妹(ああ、違うわね。男君はクワガタを使えるんだから、多分、偵察も出来るはず……)

従姉妹(それで、風紀委員を見かけて通報したっていう可能性もあるわね……)

従姉妹(となると、これだけじゃ男君の居場所はわからないのね……)

従姉妹(だけど、病院の近くには風紀委員もいる可能性が高いか……)

従姉妹(うーん……)

従姉妹(あのウジ虫の能力……。単純なくせして結構なタチワルなのよね……)

従姉妹(友君から聞いたけど、『透明になれる能力』……)

従姉妹(黙って大人しく突っ立っていたら、誰も気付かない。私じゃ見つけるのは不可能に近いわね……)

従姉妹(それが出来るのが、きっと男君のクワガタ能力……)


従姉妹(やっぱり今は大人しくしているべきね……。さっき演劇部部長とした『打ち合わせ』通りに……)

従姉妹(男君は演劇部部長が捕まえてくれるっていうし、捕まえれば記憶を歪ませて、風紀委員を■す手伝いもさせる事が出来るし……)

従姉妹(そうね……。そうしましょう)

従姉妹(警察の警護も相手が能力者なら当てにはならないし、このまま友君を守りつつ、演劇部部長からの連絡を待つわ)

『神社 社務所前 草陰』


男(無事にここまで辿り着いたけど……)

男(これからどうするか……)

男(とりあえず、二人はまだ中から出てきてないのは確かだ……)

男(周りもくまなくクワガタに調べさせたけど、他に人はいないし、何か怪しげなものがある訳でもない……)

男(どうする……?)


1、男は度胸。中に入る
2、慎重に行こう。クワガタを使って扉を少し開け、中に突入させる
3、このまま隠れながら、大声で呼び掛けてみる。返事があるかもしれない
4、その他

すぐ忘れる
何もなかったら↓1だと思って

男(いや、ここは発想を逆転させろ……!)

男(何も俺が不利な状況下に好んで飛び込む事はない……!)

男(こっちから行くんじゃなく、向こうから来てもらおう……!)

男(孫子も言っている、城を攻めるは下策、策を持って心を攻めるが上策と)

男(いや、これは孔明だったか? まあ、んな事はどうでもいいんだ)


男(問題はどうやってこっちに来てもらうかなんだよな……。それが一番困るんだけど……)


1、郵便でーす。判子お願いしまーす
2、配達でーす。判子お願い(ry
3、お届け物でーす。判子(ry
4、その他

安価↓1

男(ベッタベタだけど……!)

男(この手が一番確実なはず……!)タタタッ


コンコン

男「すいませーん! お届け物でーす。判子お願いしまーす」


男(そして、すぐさま隠れる!)タタタッ

ガサッ、ガサササッ



男(よし、来い……!)

『十五分後』


男(出てこない……)

男(何の反応もなかったわ……。なにこの無駄な時間……)


男(いや、ひょっとしたら、聞こえなかっただけか?)

男(だったら、もう一回大きな声でやってみるか……?)

男(それとも別の手を使って、誘きだしてみるか……?)

男(んー……)


1、再チャレンジ
2、そこらの石を投げて反応を見る
3、一旦引き返し、神社の社務所で火事が起こったと通報してみる
4、その他

男(マジでボヤを起こしてみるか……)

男(すぐ自分で消せるような感じの……。マッチポンプとは正にこの事だな)

男(っても、ライターなんか持ってないから、一旦引き返してコンビニで買ってこないと)

男(いや、ライターかマッチぐらいならクワガタがどっかから拾って持ってくるぐらい出来るよな。町中探せば一個ぐらいは使えるの落ちてるだろうし……)


男(にしても、神の社にこんな事していいのか、俺? 罰が当たりそうだな……)


男(何にせよ、少しここで待ちだな……。クワガタ、頼むぞ)

『二十分後』


男(おし、オーケー。準備は全部整った)

男(クワガタに燃えやすそうな落ち葉を探して集めてもらったし、ライターも手に入れてる)

男(近くに水道もあったし、ホースもあった。いざとなりゃソッコーで消せる……)

男(社務所の裏手あたりに火をつければいいかな……。そこならホースも届くし、問題ないだろ……)


男(ライターも擦るタイプじゃなくて、押すタイプだから、クワガタでも火をつけれる……)

男(俺が実際にやる事は何もなく、もし見つかったとしても俺は罪に問われない……。完全犯罪だ……)

男(ではでは、頼んだぞ。クワガタ。楽しいキャンプファイヤー(放火)の始まりだ)


クワガタ「」ギチギチ、ギチギチ!!


男(着火!)


クワガタ「」シュボッ

ガキンッ!!

クワガタ「」ピキーン……


男(氷……!? え、なに、これ!)

男(いきなり丸い氷の塊が出てきて……!!)


ガラリ……

演劇部部長「あらあら、さっきから何をしているのかと思ってたら……」スタスタ

演劇部部長「神社での焚き火は禁止なのに、もう」

演劇部部長「ダメですよ、男君。どこにいるのかは知らないけど、イタズラしちゃ、めっ」ニコッ


男(バレてる……!? 何で……!!)

男(いやでも、まだ俺の居場所まではわかってないはず!)

男(これはチャンスか!)

男(それともピンチなのか!?)

男(実際、誘きだしには半分は成功している!)

男(どうする……!)



1、攻撃
2、様子見
3、陽動
4、突撃
5、逃亡
6、その他

安価↓1

男(とりかく相手の注意を他所にそらした方が