千早「だから今、一秒ごとに~♪」(109)


千早「世界線を越えて~♪」


優「んー…朝からうるさいよ…姉さん…」

千早「あら、朝食作りながらハミングするくらいいいじゃない」

優「…姉さん、ハミングの意味しらないでしょ…」

千早「?」

優「はー…まぁいいよ…今日なんだっけ?なんとかプロダクションの面接」

千早「7・6・5!765プロダクションよ!さいっこうにかわいいアイドルがいっぱいいるんだから!」

優「そうだねー…朝飯ちょうだい?」

千早「もう…!またそうやって…!」

優「あーはいはい…面接は何時からだっけ?」

千早「10時から…ってやだ!?もうこんな時間じゃない!?行ってくるわ!」

ダダダ・・・

優「…今からじゃ電車が止まらない限り9時にはつくよね…ほんとそういうところ真面目だよなぁ…」

千早「お父さんお母さん!優!行ってきまーす!」

優「いってらー」


ガタンゴトン…

千早「えーっと…資料資料…うん、ばっちりね!」

千早「あぁ…これで憧れの水瀬さんや高槻さんに会えるのね…!」

―――――

765プロダクション前

千早(だいぶ早く着いたわね…)

「そこのお方」

千早(今は9時…どうするべきかしら?あまり早くから中に入っているのもご迷惑がかかるだろうし)

とんとん

千早「ひゃあぁ!?」ビクッ

「も、申し訳ございません…何やら声をかけても反応がなかったものですから…」

千早「い、いえ…こちらこそボーっとしてしまって…」

「765プロに何かご用でしょうか?」


千早「もしかして関係者の方ですか?」

「はい…ここで候補生をしております…四条貴音と申します」

千早「如月千早です。候補生の方でしたか…私、今日は面接を受けにきたんです」

貴音「なんと…あなただったのですか…!期待のにゅうふぇいすとは…そういうことでしたら中へどうぞ」

千早「ご迷惑じゃありませんか?」

貴音「問題ないでしょう…社長もおりますし…もしかしたらすぐにでも面接が始められるかもしれませんよ」

千早「え、でも…」

貴音「そういうところですから、ここは」


―――――

千早(し、四条さんの言うとおり…あっという間に社長室まで通されてしまった)

社長「君が如月君か!話には聞いていたがこれほどとは…!」

千早「話、とは?」

「ん?千早ちゃんって結構有名なんだぜ?知らなかったのか?」

千早「あの…こちらは?」

社長「わが社の若手敏腕プロデューサーだよ」

p「よろしく」

千早「はい。よろしくおねがいします」ペコリ

千早「それで、有名とは?」

p「千早ちゃんの学校、あっちこっちのコンクール出てたろ?」

千早「ええ」

p「………」

千早「………」


p「マジでわかんない?」

千早「え、ええ…」

p「そん時スカウトさんも一緒に会場にいたんだよ。そんで、千早ちゃんは目つけられてたんだぜ?」

千早「そうだったんですか?」

p「そそ。しかも結構な大手の人でさ…業界のあちこっちで宣伝して回ってたからな」

千早「え、でも…私が声をかけられたことは…」

p「ん?あれ、そうなん?」

千早「はい」

p「ふーん…ま、いっか。有望な人材が来てくれたことに変わりはないんだし…」


千早「そうだ…これ、資料です」

p「ほいサンキュー」

社長「ま、採用は確定だから安心したまえよ!」

千早「ずいぶん軽いですね」

p「社長、直感で物事決めるからな…ん?」

千早「どうかしました?」

p「いやーなんか…スリーサイズに違和感が…」

千早「違和感?」

p「 b80 w55 h82 …身長172 体重48…」

千早「多少の誤差はあるかもしれませんが…」

p「?たぶん…気のせいだろう…」

千早「そうですか…?」

p「さ、何はともあれ面接は済んだな…つれてけ」


パチン

千早「?」

「「さー!いえっさー!」」

ガッシ

千早「え、ちょ…!?」

p「さぁ、パーティの始まりだ!」

―――――

ッパーン

貴音「採用おめでとうございます、千早」

「「「「「「「「「「「「おっめでとー!」」」」」」」」」」」」

p「おめでとー」

社長「グスッ…友情とは…いいものだね…!」

千早「………みんな…ありがとう!!これからよろしくおねがいします!!」

p「あら、意外に順応性高い」

―――――


「では!自己紹介たーいむ!」

千早「私の名前は如月千早です!好きなものは歌と優と高槻さんと水瀬さん!です!よろしくお願いします!」

亜美「おうふいきなり濃いね…亜美は亜美だよ~ん」

真美「真美は真美だよ~ん」

亜美真美「「好きなのは悪戯!よろしくねん!」」

千早「ええ!よろぴく!ぶふっ!」

亜美真美「自分で言って…自分で吹いてる…だと…?」

p「テンション高いな~」


真「きゃっぴぴぴぴぴーん!まっこまこりーん!菊地真だよ!よろしく!」

千早「ちっはちはやーん!よろしくね、まこりん!」

真「へへーっ!気が合いそうだね!よろしく千早!」

雪歩「えと、萩原雪歩…ですぅ…ダメダメな私ですけど…」

千早「かっ…!」

雪歩「ひぅ!?」

千早「かわいい!」

雪歩「えっあの…」

千早「よろしくね!萩原さん!」

雪歩「…うん!よろしく!千早ちゃん!」

p「…うん、割とマジで順応性たけーな」


響「自分、我那覇響、だぞ!よろしくな、千早」

千早「ええ、よろしくね!」

響「動物が大好きな沖縄出身さー!」

千早「あら、私もねこ鍋とか好きなの!」

響「………へっ?」

千早「?ねこ鍋よ、ねこ鍋…猫を入れた鍋!」

響「そ、そうなのかー…」

ススス…

千早(あ、あら?なんか少し引かれてしまった…かしら?)

やよい「うっうー!千早さんもねこ鍋好きなんですか!?」

千早「!!!!!た、たたたたたたたかつきしゃん!」

やよい「高槻やよいです!よろしくお願いしまーっす!」

千早「ええ、こちらこそよろしくね!大っファン!なの!」


響「そんな…やよいまで…」


伊織「水瀬伊織よ!アンタ、私のファンなんですって?にひひっ」

千早「ええ!大大大ファンです!これから一緒に働けるなんて…!感激です!」

伊織「だったら『伊織』でいいわ!これから一緒に働く友達でしょ?」

千早「えっと…じゃあ、伊織!よろしくね!」

伊織「ええ、一緒にがんばりましょう!」

律子「秋月律子よ。よろしくね、千早」

千早「ええ、よろしくお願いします、律子さん」

律子「律子でいいわ。堅苦しいのはナシよ」

美希「えっ!?じゃあ美希も…」

律子「アンタはだめ。敬意ってもんを知りなさい」

美希「そんなーひどいのー…律子………さん」

律子「よろしい」

千早「美希?さん、よろしく」

美希「星井美希なのー。よろしくね、千早」

千早「ええ、よろしく」


あずさ「私は三浦あずさっていうの。千早ちゃんもねこ鍋好きなのね~」

千早「はい…あずささんも好きなんですか?」

あずさ「そうなのよ~かわいいわよね~」

千早「すごくいいと思います!」


響「…すごくいいと思うならなんで食べるさー?」

千早「…食べる?」

響「そうだぞ!ね、ねこ食べるなんてかわいそうじゃないか!」

千早「???…あ、ふふっ…そういうことだったのね」

響「わ、笑いごとじゃ…!」

千早「優しいわね、我那覇さん…でも、ねこ鍋っていうのはねこを使った鍋じゃないの」

あずさ「そうよ~…ほら、これ」

響「…あ、鍋に猫が入ってる…こ、これ…スゴイ可愛いな!これのことだったのか!」

千早「そうよ…ふふっ…それにしても…食べると思ってたなんて…」

響「は、恥ずかしいから蒸し返すのやめてくれ~!」


春香「私は、天海春香!よろしくね、千早ちゃん!」

千早「ええ、よろしくね。春香!」

春香「うーん…それにしても千早ちゃん背、高いね!スタイルもいいし!」

千早「そうかしら?春香のほうが私よりはるかに…ぶふっ」

亜美真美「本日二度目か…沸点低いのかね…?」ヒソヒソ

春香「千早ちゃんって面白いね!」

パンパン!

p「さーさー自己紹介は済んだんだろ!飯だ飯!社長のおごりだから!ガンガン食っとけ!」

社長「ちょっ」

p「こんな機会でもないとうちの事務所は大盤振る舞いできねーからな。ガンガン食って活躍してくれ!以上!乾杯!」

「「「「「「「「「「「「カンパーイ!」」」」」」」」」」」」」


春香「千早ちゃん、家はどこ?」

千早「ここの近くのアパートよ」

春香「へー…親御さんとかは?」

千早「全員そこで暮らしてるわ、あ、あと弟の優も」

真美「さっき好きなものに挙げてたうちの一つですな…ま、まさかイケナイ関係なんじゃ」

千早「意味わかっていってないでしょ?」

真美「うん」

千早「このあっさり感スゴイ可愛いわね、春香!」

春香「千早ちゃんのほうがかわいいよ」

真美「えーっ!?真美のほうがかわいいよ!」

春香「そこは粘るんだ!?」


貴音「…なにやら人気者ですね、千早」

千早「ふふっ…そうかしら?……本当に最高の事務所ですね…ここは」

貴音「そうでしょう?…わたくし、ここでなら頂点を目指すことができると思うのです」

千早「…そうですね。私もそう思います」

貴音「意見が合いましたね…真、わたくしたちは相性が良いのかもしれません」

真美「絶対そうだって!絶対ギエナがかわいいって!」

春香「千早ちゃん!結局!チェブラーシカとギエナってどっちがかわいいの!?」

千早「それはまぁ…チェブラーシカかしら?」

貴音「…面妖な」


p「突込みが足りないな」


春香「えーでもシャパクリカは…」

真美「fbiに指名手配されてるんだよ!?カッコイーじゃん!」



千早「あ、ごめんなさい、四条さん…続きを…あら?」

伊織「貴音なら『いけずです』…って言いながらどっか言っちゃったわ。ま、いつものことだからすぐ戻るでしょうけど」

やよい「うっうー!千早さんとお話ししてみたいかなーって!」

千早「た…高槻さん!」

やよい「うー…千早さん、私より年上だし…やよいってほしい呼んで欲しいです」


千早「わ、わかったわ…スーハースーハー…や、やよい!ハイ!」

やよい「たーっち!」

千早・やよい「いぇいっ!」

伊織「ふふっ…あんた達なんだか微笑ましいわ」

千早「伊織もやる?ハイ」

伊織「は、はぁっ!?やらないわよ!」

千早「えっ…」

伊織「わ、わかったわよ!やればいいんでしょやれば!たーっち!」

千早・伊織「いぇいっ!」


パッシャー

p「ふくくく…いおりちゃあん…今の現場は抑えさせてもらったぜ…!」

伊織「なっ!ちょっとアンタ!」

p「さーぁ!今のテレ顔をばらまかれたくなかったら!俺の言うことをふごぉ!?」

伊織「あっけないわね…削除削除ォ!っと…」

p「く…そ…」

ガチャ

「追加の差し入れ持ってきましたよー!」

社長「ありがとう、音無君」

千早「今日からお世話になります、如月千早です」

小鳥「音無小鳥よ。事務員をやってるわ…よろしくね、千早ちゃん」

千早「………?」

やよい「あ、あの!小鳥さん!プロデューサーが死んじゃいます!」

小鳥「ほ、ほんとだ!伊織ちゃん!落ち着いて!」

千早(………あの人………どこかで?)


―――――

千早「あ…っと」

p「どうかしたか?」

千早「すみません…ちょっと用事があるので…もう少ししたら帰らなきゃいけないんです」

p「ん、そりゃそうだよな…そっちの都合考えてなかったわ、わりぃ」

千早「いえ、本当に楽しかったですから!」

p「そりゃよかった」

春香「えーっ!?千早ちゃん帰っちゃうの!?」

千早「ええ…本当に残念だけどね」

真美「だすヴぃだーにゃ!」

千早「パカ!」


p「どーでもいいがお前らのロシア知識は誰仕込みなんだよ」


千早「あっ、今後の予定とか教えていただけますか?」

p「予定?んーっと…しばらくレッスンだな」

千早「…今決めませんでしたか?」

p のヮの

律子「こんなんだけど仕事はできるから安心して頂戴」

千早「えぇ、それはなんとなく」

p「んー…じゃあ、来週末レッスン見るから来てくれ」

千早「「はい、わかりました」

貴音「では、また会いましょう、千早…」

あずさ「時間があるときはいつでも来てくれて構わないからね~」

千早「はい、ではみなさん」

「「「「「「「「「「「「「パカ」」」」」」」」」」」」」


p「この事務所кгбへのスパイでも量産してんの?」

社長「はっ…кгб48とかどうだね!?うむ!ティンと」

小鳥「来ないでください」


―――――

千早「ただいまー…」

優「おかえり」

千早「お父さんとお母さんは?」

優「まだ仕事先。今日は遅くなるってさ」

千早「やっぱり…はやく帰ってきてよかったわ」

優「ん、飯ならもう食ったけど」

千早「えぇ!?そうだったの!?」

優「俺ももう子供じゃないんだし、飯くらい作れるよ。姉ちゃんの分もあるから」

千早「そうね…せっかくだし頂くわ」


―――――

千早「おいし…くはないけど…まずくもないわね」

優「…やっぱり?」

千早「えぇ。でも…最初のほうは私、これよりよっぽどひどかったわ」

優「あー…うん、個性的だったね」

千早「いいわよ…家族なんだから、変な気を使わないで」

優「ハイ…」

千早「そうね…私、これから忙しくなるかもしれないし…時々ご飯作るの頼んでもいいかしら?」

優「うん、元からそのために練習してたんだし」

千早「もー…優ってばかわいい!!」

優「わ、ちょ!抱きつかないでよ!」

千早「今日は一緒に寝ましょう!!」

優「!?や、やだよ!」

ダダダ・・・バタン!ガチャッ

千早「あっ…もう…!逃げちゃった…」


―――――

千早「レッスンは週末と言っても…やっぱり自主トレも欠かせないわよね」

千早「おはようざいまーす…うん、案の定誰もいない…」

千早「ふー…部室を独り占めできるのはいいけど…なにか複雑な気分ね」

千早「あーあーあーあーあー…」

―――――

部員「おっはよー」

千早「あら、おはよう」

部員「うへー…如月こんな朝早くから練習?」

千早「そんなところね。みんな自主トレってしてるのかしら?」

部員「放課後バリバリやってるよ!朝に昼休みに…加えて放課後にまでここにいるアンタが異常なの!!」

千早「そうかしら?」

部員「アンタについて行ったら喉持たないわよ」

千早「ふふっ、でもあなたは朝から練習するのね」

部員「そりゃそうでしょ…かなりレベル高い合唱部って言われてるんだから、見合ったレベルにはならないと」

千早「プロ意識ね、カッコいいわ」グッ

部員「あーもう…いいからちょっと教えてよ!」

千早「照れてるわね」

部員「照れてないわっ!!」


―――――

千早「はー…今日も疲れたわね…んっ…のど飴、に…お茶でも買っていこうかしら?」

雪歩「あれ?もしかして…千早ちゃん?」

千早「萩原…さん?奇遇ですね!」

雪歩「本当だねぇ。もしかして家…結構近いのかな?」

千早「はい。この通りをまっすぐ行って…左手のマンションです」

雪歩「私の家もそっちの方向なんだよ!」

千早「じゃあ、一緒に帰りませんか?私、会計済ませてきますから!」

雪歩「うん。先に出て待ってるね」


―――――

雪歩「あ、ここが私の家だよ」

「「「オッス!!お疲れっす!!お嬢!!」」」

千早「えっ」

雪歩「あっ…ははー…」

千早「個性的で素敵な家族ですね!」

雪歩「素でそんな反応する人初めて見たよ…」

「お嬢!こちらの方は?」

雪歩「新しい候補生の人で、如月千早ちゃん」

「そうですか!これから頑張ってください!!」

千早「ええ!あなたたちも!じゃあ萩原さん」

「「ダスヴィダーニャ」」

「「「ダスヴィダーニャ!」」」


p「スーパー行く途中で不思議な光景を見た…」


―――――週末

千早「…あっ、そういえば時間指定されてなかったわね」

千早「むむむ…」

千早「つまり、できるだけ早く来いと…そういうことね!」

優「それはおかしいような気がするけど…」

千早「まぁ…準備万端だし、もう出るわ。行ってきまーす…」

優「いってらー…」


優「朝の5時の出来事である」


―――――

千早「おはおはーっ!!」

p「おはー」

千早「!?ずいぶん早いんですね…」

p「誰もいないと思って油断したな?戦場じゃそれが命取りなんだよ…」

千早「は、はぁ…」

p「まぁ正直半信半疑だったけど…マジで早いのな…」

千早「?」

千早「なるほど」


「なるほど」

ミス


p「雪歩に聞いたんだよ…お前いっつも朝早くから部活に出てるんだって?」

千早「あ、こないだ…プロデューサーの声が聞こえた気がしたんですけど、アレはほんとに近くにいたからだったんですか」

p「ん、まぁな。雪歩んちのお茶うまいから…スーパーに行く途中でよってったんだよ」

千早「あ、お茶屋さんだったんですね」

p「?あぁ」

千早「やーさんかと思いましたよ」

p「あぁ…雪歩の父親が建設現場で働いてるからな」

千早「なるほど」


―――――

小鳥「おはようございまーす」

千早「おはようございます、音無さん」

p「おっすぴよちゃん」

小鳥「二人とも早いですね」

千早「時間指定されなかったので…ご迷惑かとも思ったのですが早く来てしまいました」

p「で、それを読んでた俺大勝利」

小鳥「すごいすごーい(棒)」パチパチ

p「くっ…」


千早「じゃあ大勝利()なプロデューサー、行きましょうか」

p「千早ちゃんまで馬鹿にしてぇ…」

―――――

千早「私…音無さんのこと、どこかで見たことあるような気がするんです」

p「ほう。デジャビェ?」


千早「かみましたよね」

p「うん、かんだ」


千早「で、なにか知りませんか?」

p「質問が漠然としすぎてるが…ま、その答えなら知ってるよ」

千早「え、本当ですか?」

p「あの人、昔はアイドルだったんだよ」


千早「…!!」

p「ま、あんまり有名にはなれなかったんだけどね…」
 
千早「…空になりたい、自由な空へ~♪…翼なくて飛べるから、素敵ね~♪」

p「………その歌…小鳥の…」

千早「私、この歌を初めて聞いたときに、アイドルになろう…って決めたんです」

p「そっ…か…」

千早「ふふっ…ところで…今小鳥って呼びましたよね?」

p「………ぴゅーぴゅぴゅぴゅー」

千早「口笛ふけてませんから。ま、詮索はしませんよ」

p「な、なんのことかなぁ…」

千早「レッスン場です。おりましょう」


ダンスレッスン


千早「バク転ってこうですか」

クルッ

スタッ

p「すげえなおい。何一つ実用的じゃないが」


ヴィジュアルレッスン


千早「うれし…そうに!!ちっはちっはや~ん!!!」

p「確かにうれしそうだけども」


ボーカルレッスン


千早「きせーきじゃなくて~♪運じゃなくて~♪自分をもっと信じるの」

p「突っ込みどころがないってのも不安だな…」


千早「ふぅ…」

p「なんか結構突っ込みどころあったが…ま、すごいよ千早ちゃんは」

千早「そうですか?」

p「ん、歌だけじゃなくて運動神経もいいんだな。ビビったよ」

千早「ありがとうございます」

p「ん~この調子だと再来週にはオーディション受けられるかな?」

千早「本当ですか!?」

p「曲も作ってあったり」ピラ

千早「プロデューサー最高!愛してます!」

p「お、おう…」

千早「…なんでちょっと照れてるんですか…?」

p「なんでお前は引いてるんだ…」


貴音「おはようございます」

千早「四条さん!おはようございます」

p「おはよう、貴音」

貴音「こんなに早くからレッスンに励んでいるのですか…精が出ますね、千早」

千早「四条さんも」

貴音「わたくしは明日オーディションを受けるので…」

千早「もうデビューするんですか!?」

貴音「はい」

p「今日は最後の調整だから軽くな、軽く」

貴音「わかっていますよ」

―――――

貴音「泣くことならたやすいけれど~♪悲しみには、流されない~♪」

千早(すごい…上手いだけじゃなくて…表現力も高い…!透き通った声質と合わさって、すごく完成度の高い歌になってる…!)

千早「………私もまだまだですね」

p「ほんと、お前はストイックだよな」

千早「やっぱりデビューは先延ばしに…」

p「俺の間違いない眼力で見れば、お前もすでに貴音に近いレベルだよ」

千早「そんなこと…」


―――――

貴音「どうでしたか?千早」

千早「すごく良かったと思います!特に低音域がよく出てて…私にはまねできません!」

貴音「ふふっ…千早がそういうなら、きっと明日も大丈夫でしょう。ありがとうございます」

千早「そんな…私がお礼を言われることじゃ…」

p「んー…ま、その曲はダンス中心じゃないからそこまで気にならんが…少しキレが悪かったかな」

貴音「はい。明日はもう少し気をつけます…ではわたくしはこの辺で…」

千早「明日、頑張ってくださいね!」

貴音「はい。千早も…」

―――――

千早「じゃあ、私はもう少しレッスンしてから帰ります」

p「あ、マジか」


千早「?」

p「んー…ミーティングしたかったんだけど…」

千早「そうならそうと言ってください」

p「いや、大したことじゃないから。明日も来れる?」

千早「はい」

p「じゃ、明日でいいや。昼からミーティングしよう」

千早「わかりました」

p「んじゃ、俺も千早ちゃんが終わるまで待ってるか」

千早「…暇なんですか?」

p「まぁね。うちの事務所まだ小さいから仕事なんてほとんど来ないし…」

千早「それは…まぁしょうがないですね」

p「でも千早みたいにコアなファンはついてくれるんだけどね。絶対数が少ないというか…」

千早「大々的に宣伝できれば一気に人気が出ると思いますよ。知名度が低いだけだと思います」

p「ま、大々的ってのが難しいのさ」

千早「む、確かに」


p「んで俺は万人受けしそうな貴音を中心に売り出そうと思ってるんだけどね」

千早「確かに…四条さんはスタイルもいいし、歌もうまいですからね。みんなをまとめる能力もありそうですし」

p「ま、プロデュースについてアイドルが考えたって仕方ないよ。練習するんだろ?」

千早「そうでしたね…じゃあ、ダンス見ててください」

p「あいよ」
 
―――――

キュキュッ…

p「………」

千早(さっきの四条さんは…たしかここでこんな動きをしていたわね)

千早(ここは…曲調から考えて…もっとゆったり…でも速度は速く…)


p「………こいつ…やべぇな」

千早「………」


―――――

千早「………どうでしたか?」

p「どうしたもこうしたも…お前すごすぎ…」

千早「そうですか…?」

p「…あちゃー…これ俺指導できるのか…?」

千早「すみません…あまり勝手をしすぎましたか?」

p「ん、千早に非はないけどさ…なんつーか…やっぱお前は音楽の才能あるんだな…」

千早「才能があるかはわかりませんが…ダンスは好きです。曲と一体になる感覚が気持ちよくて」

p「はー…」

千早「プロデューサーって不思議な人ですよね」

p「ん?」

千早「他人の呼び方がイマイチ安定してません」

p「あー…それな」


p「いろいろあってさ。なんつーか…俺、嘘をつくのが仕事だったんだよ」

千早「嘘をつくのが仕事…ですか?」

p「んー…で、やめたばっかだからイマイチ自分のキャラわかんなくてさ」

千早「なるほど…ちなみに私は千早ちゃんがお気に入りです」

p「わかった、じゃあ千早ちゃん?さすがにそろそろ帰るよな?」

千早「ええ、帰ります」

p「じゃ、ついでだから家まで送ってくよ」

千早「はい、お願いします」


―――――

p「ここ…だよな?」

千早「はい、ありがとうございました。じゃあ…さようなら」

p「ズド…おう、さようなら、千早ちゃん」


「千早?」

千早「あっ…お母さん!今日は早く仕事終わったの?」

千早母「ええそうよ。それにしても…まったく。こんな遅くまでどこへ行っていたの?」

千早「今日はレッスンで…」


p「挨拶普通だったな…」


コンコン

p「?はい」

千早母「今日は娘がすいませんでした。送っていただいてありがとうございます」

p「いえいえ、うちの期待の星ですから」

千早母「ではお気をつけて…」ペコ

p「はい。わざわざありがとうございます…」

―――――

p「あんまり似てないんだな…?」


―――――

千早母「あの人、いい人そうね」

千早「ええ。とっても」

千早母「それにしても千早は…どうしていきなりアイドルになろうなんて思ったの?」

千早「いきなり…というわけではないの。前からなりたかったんだけど…」

千早母「そうだったの…お母さん知らなかったわ」

千早「お仕事、忙しいんでしょ?しょうがないわよ…」

千早母「今日は久しぶりに時間ができたから、たくさんお話ししましょう?」

千早「…うん!」


優「蚊帳の外なんだ…ご飯作って待ってたのに…」

千早・千早母(か…jかわええ!)


―――――

千早「おはようございまーす!」

千早(うん!予定より2時間早い!)

春香「あ、千早ちゃんおはよー!」

千早「春香、おはよう!」

春香「今日の予定は?」

千早「プロデューサーとミーティングよ。春香は?」

春香「うーん…特にないんだけど、来ちゃった」のヮの

千早「さすがにプロデューサーもまだ来てないのね…」

春香「予定って何時からだったの?」

千早「12時よ」

春香「まだ10時だもんね…」


千早「…今日は四条さんのオーディションなのよね」

春香「そうだねー…伊織、やよいに続いてデビューだから…頑張ってほしいね」

千早「春香はどうしてアイドルに?」

春香「歌が好きだから!」

千早「私も!」


春香「対応早いね!?」

千早「リアクション芸よ」


―――――

春香「ふふっ…なんかいいなぁ…千早ちゃんとこうやって話すのすごく楽しい」

千早「あら、ありがとう」

春香「千種さんは元気なの?」


千早「?どうして春香が私の昔の母親の名前を知っているの?」

春香「えっ…?」


春香「や…やだなー!新手のボケ?あは…あはははは…」

千早「母のこと…何か知っているの?」

春香「………な…なんで?なにこれ……!?なんで!?」

千早「は、春香!落ち着いて!」

春香「む、昔のって…どういう…ことなの…?」

千早「………死んだの」

春香「しん…!?」

千早「交通事故で、ね…」

春香「そ、そんなことって…」

千早「優が…ボールを追って飛び出したのを、文字通り命を懸けて救ってくれたのよ」

春香「!!!そんな…!そんな……!」

千早「でも、もう済んだことよ。私たちにできるのは彼女を忘れないこと。そう思って今は元気に暮らしてるわ」

春香「……………わたしの、せいだ」ボソッ

千早「?春香?」

春香「ごめん…今日はもう…帰るね…」


p「よしよしよーっし!やったな貴音!デビューおめでとう!」

わしゃわしゃ

貴音「くすぐったいです…」

どん!

p「おっと…すいません…って春香か?どうしたん…」

春香「……すいません……」

たたたっ…

p「?」

貴音「どうしたんでしょうね…?」


―――――

「そんな…!?なんで…?私は、ただ千早ちゃんと…千種さんに幸せになってもらいたくて…!」

「…やはり、君だったか…勝手にアレを使ったのは…」

「!!!」

「本当にすまないと思うが…あの『メール』は…取り消させてくれないか…」

「い、いやです!!」ダッ


「………それはそう…だよな.…それでも、俺は…」


―――――

千早「………」ポケー

p「珍しい千早ちゃんだな」

貴音「ええ。真に…いつも楽しそうにしていますのに…」

千早「………すみません、少し…混乱気味で」

p「春香と関係あるのか?」

千早「はい…さっき、春香の口から私の…昔の母親の名前が出てきて…」

p「昔の?」

貴音「はて…どういうことでしょう?」

千早「私の母親…昔に交通事故で亡くしてしまっているんです…」


p「…そうか。今の母親とは?」

千早「5年ほど前に父が再婚しました…とてもいい人です。事故の直後から…父のこと、何かと気にかけてくれて」

p「…確かに妙だな…なんで春香がそのことを知っていたんだ…?」


貴音「………ところで千早、とりあえず祝ってください」

p「空気よめ」

千早「よしよし」ナデナデ

貴音「………」ポケー

p「くっ…」


千早「結局考えても…考えても…春香に聞かないことには、推測の域を出ませんから…」

貴音「話してくれるまで待つのがべすとでしょう」

p「あーはいはい…ったく。じゃあ…千早、ミーティングな」

貴音「千早…行ってしまうのですか?」

千早「一緒で構いませんよね」

p「別にいいよ」


貴音「やったぁ」

千早「よしよし」


―――――

p「できれば今週中に曲をマスターしてもらいたいんだが…」

千早「いいでしょう。というか大筋はもう覚えてきました」

p「マジでか…」

千早「目が逢う瞬間…素晴らしい曲ですね」

貴音「是非聞いてみたいですね」

千早「ふふっ…ありがとうござます」

p「なんだったらどうだ?今、ここで」

千早「じゃあ…」

―――――

千早「目と目が逢う、瞬間好きだと気付いた~♪」


貴音「………」ポッ

p「まてまてまて…気づくなよ?頼むから…」


―――――

千早「どうでした?」

p「うん、完成度高いな。マジですごいよ、お前」

バアン!

「こ、ここなの!?」

貴音「」ビクッ

千早「」ビクッ

p「美希がすごい剣幕だ…珍しい」


美希「今の…今の歌、千早の…ううん!千早さんの歌なの!?」

千早「え、ええ…」

美希「すごいの~!」ガシ

千早「ちょ…い、いきなり抱きつかないで…」


貴音「じーっ」

テテテッ ガシッ チョ、シジョウサンマデ…


p「もうつっこまんぞ」


―――――

美希「千早さんほんとにすごいって思うな!もうなんていうか…とにかくスゴイの!」

千早「さっきからそればっかりよ…」

美希「だってすごいものはスゴイの!」


p「うーむ…美希にさん付けで呼ばせるとは…なかなか出来るな」

貴音「律子嬢の場合は強制するから反発してるだけなのです…本当は美希だって敬意を持っているのですよ…」

p「あぁ、それはなんとなくわかる」

貴音「でしょう?」


千早「じゃあ、これから一緒にレッスンに行く?」

美希「行く!行くの!」

千早「じゃ、今から行きましょうか」

p「送ってくか?」

千早「はい。お願いします」


―――――

千早「お疲れ様、美希。あなたもすごいのね!」

美希「ありがとうなの!千早さんみたいに歌えるように頑張るの!」

ガチャ

p「貴音送ってきたぞー…下に来るまとめてあるから、お前らさっさと乗れ」

千早「私は…寄っていきたいところがあるので…タクシーで帰ります。お疲れ様でした」

美希「またね!千早さん!」


p「さて…よりたいところ、ね…」


下に来るまとめて

下に車とめて


―――――

「………」

千早「なんとなく、だけど…ここにいるような気がしたわ、春香」

春香「………千早ちゃん」

千早「本当に不思議…どうしてあなたがうちのお墓を知っているのか…」

春香「………それ、は…」

千早「でも…ま、ぶっちゃけどうでもいいわ」

春香「えっ」

千早「何かしら事情があるんでしょう?さすがに気にならなくはない…けど、私は深くは聞かないわ」

春香「千早ちゃん…」

千早「話したくなったら話してくれればいいわ…それだけよ。もう遅いんだし、そこのプロデューサーに送ってもらうといいわ」


p「なん…だと?」


p「…よく気付いたな」

千早「あ、本当にいたんですか」

p「………」

千早「…ふふっ、じゃあ、春香のこと頼みましたよ」

p「…わかったよ、かなわねえな…千早ちゃんには」

千早「それでは。春香、また今度ね」

春香「………うん」

―――――

千早「ただいまー…」

千早母「お そ い ! どこほっつき歩いてたのよ!?」

千早「友達のところ」

千早母「まったく…私より遅いだなんて…」

千早「ふぁ…さすがに今日は疲れたから寝るわ…」

千早「シャワーくらい浴びてから寝なさいよ?」

千早「はーい…」


―――――

『だからお前は72なんだよ!』

―――――

千早「はっ!?」

千早(な、なんという悪夢…!!)

千早「…時間は…ろ、六時半!?学校の用意しなきゃ!?」

バタバタバタ


優「学校まで徒歩10分なんだけどなぁ…」

部員「いいからッ!」


部員「いいからッ!」←ミス


―――――

千早「7時半か…あんまり長い時間はできないわね」

千早「あーあーあーあーあー…」

ガララッ

部員「うわっ…またいるよ…」

千早「おはよう」

部員「おはよう、如月…よく飽きないね…」

千早「そうかしら…?逆に練習に飽きるって状況が分からないわ」

部員「ま、そうかもね…」

千早「あなただって…なんだかんだほとんど毎日見てるけど」

部員「そんなこと………あれ?ほんとにほぼ毎日来てるかも…」

千早「努力家ね。えらいわ」グッ

部員「……べつにそんなんじゃないから。…ちょっとわからないとこあるから教えて」

千早「照れてる照れてる」

部員「いいからッ!」


―――――

千早(さて…今日は部活に出ようかしら…?)

千早(それとも事務所まで行ってレッスンに…うん、そうしよう。四条さんに付き合ってもらおうかな…)

千早(四条さんがいればいいんだけど…)

―――――

765プロ

千早「こんにちはー」

p「…あれ?千早ちゃん?どうかしたの?」

千早「レッスンしようかと思いまして」

p「そりゃまた急だな」

千早「四条さんにも付き合ってもらいたいんですが…今日の予定のほうは?」

p「ちょうど今からレッスンだ」

千早「ちょうどよかったですね」

p「春香も一緒だから…その…うん、手伝ってやってくれ」

千早「?」


―――――

春香「~♪」


p「…どうよ、千早ちゃんから見て。このままでデビューできるか?」

千早「いいとおもいます。私は春香の歌、好きですよ」

p「あれ?マジで?」

千早「多少音程に不安はありますし、足元もおぼつかないですけど…」

千早「もし春香がライブをしたら…今のままでも、とてもいいステージになると思いますよ」

貴音「わたくしも、そう思います。春香は『アイドル』としての才能は高いと思います」

p「お前らが言うなら、俺の見込みがまだまだってことか…」

千早「ですが、おっしゃるように技量不足も確かだと思います。春香にしっかりした技量がつけばさらに多くファンが得られると思います」

p「スパシーバ、参考になった。んじゃレッスンに励んでくれ」

貴音「……では千早、一緒に一曲歌いませんか?」

千早「はい」


―――――

春香「千早ちゃん、お疲れ!はい!千早ちゃんの水筒!」

千早「ありがとう春香。いただくわ…」ゴクゴク

貴音「真、よき時間でした…ありがとうございます、千早」

千早「こちらこそです。とても参考になりましたから。よかったら、これ飲んでください」

貴音「……………ゴクリ……………」

貴音「頂きます」



p「今の間はなんだ…?」


―――――

p「んじゃ、そろそろ解散な。特に千早ちゃんは無理すんなよ。今週末は…」

千早「わかってますから!」

p「本当かよ?自主トレも度が過ぎると…」

千早「もう!しつこいですよ!」

春香「………千早ちゃん、ちょっと話があるから…このあと、時間ある?」

千早「?ええ」

p「でかした春香!そのまま千早ちゃんをはなすなよ!」

春香「………はい」

貴音「ではわたくしも…」

春香「ごめんなさい…千早ちゃんにしか話せない事情があって…」

貴音「………」シュン

千早「四条さん、今度一緒に遊びに行きましょう?」

貴音「は、はい…!」


―――――

春香「………」

千早「で…話…と、いうのは?」

春香「信じてもらえるかわからないけど…話すね」


春香「私は…過去にメールを送ったの」

千早「………」

春香「本当なら…こんなこと言っていいのかわからないけど、優君は今はもう…」

千早「事故で死んでいた…のね」

春香「………」

千早「なるほど…母が…優をかばって死んだから…だから『私のせいだ』とそう思ってるのね?」

春香「………」

千早「それは違うわね」


千早「私の母の意志が弟を助けた…そして母を死なせた。それだけのことよ」

春香「でも…!私がメールを送らなければ…!」

千早「もしかしたら…私の家庭は崩壊してたかもね」

春香「……!!」

千早「でも…私にはそうなってしまったからと言って私が『不幸』だなんて思わないわね」

春香「…え?」

千早「そんなに自分を思ってくれる仲間がいて…不幸だなんてことわないわ」

春香「千早ちゃん…」

千早「泣かないの。抱っこしてあげるから」

春香「グス…ちはやちゃん…」

千早「よしよし…」


―――――

千早「落ち着いた?」

春香「うん…でも…なんで信じてくれたの?」

千早「なんとなく…ね。春香のことは信じて大丈夫ってそう思えるから…かしら」

春香「そっか…」

千早「あら?でも…どうして春香にはそっちの記憶があるの?」

春香「それは…」


「リーディングシュタイナーだ」


春香「!!」

千早「?あの…どちらさま…ですか?」

「………助手…?いや…」

千早「?」

「すまない…俺の名前は岡部倫太郎」

千早「岡部さん…ですか?」

岡部「そっちの春香が言っていた『過去にメールを送る』機械を持っているのは俺だ」

千早「!」

岡部「今日は折り入って頼みがあってきた…」


千早「頼み…ですか?」

岡部「あぁ…春香のメールを取り消させてほしい」

千早「構いませんが」


岡部「えっ」

千早「えっ」

春香「えっ」


千早「あ、それで…リーディングシュタイナーとは?」

岡部「あ、あぁ…話すと長くなるが…要するに過去を変えても変わる前の世界の記憶を引き継げる能力…だ」

千早「それで?」

岡部「ほとんどの人間が知覚できないレベルでしか持っていないが…俺や春香は違うらしい」

千早「なるほど…」

春香「ちょ、ちょっと待って!メールを取り消していいって…!そんな簡単に…!」

千早「それもそうね…理由をお聞かせください」


岡部「………このままでは、俺の幼馴染が殺される」

千早「………わかりました。改めて、構いません」

岡部「………どうしてだ?話を聞く限り…それでは君の弟が」

千早「殺されるわけではありませんから」

岡部「…!」

春香「千早ちゃん!でも…でも、弟さんの意志は?こんなひとの好き勝手で…」

千早「好き勝手なんかじゃない。自分の大事な人の命を救おうとするのは誰だって一緒よ、春香」

春香「でも…!」

千早「好き勝手というならあなただってそうよ」

春香「………!」


千早「人間、生きていれば誰だってそれなりに辛いことに会うわ」

千早「それを回避することはきっとできないの」

千早「でも…それでも回避したいと思うのは、当然のことなのよ」

千早「だから私は二人のことを責めることなんてない。他人のためにそこまでしようとするのは、愛があるからだもの」


岡部「…本当に…いいんだな?」

千早「はい」

岡部「わかった…ありがとう」

千早「どういたしまして」

春香「千早ちゃん…」


岡部「数日後にはメールを取り消す…ただ…その前に、弟さんと話がしてみたいんだ」

千早「どうして…ですか?」

岡部「俺のせいで…犠牲にしてしまう人たちのことを、せめて覚えておきたい」

千早「優しくて…強い人なんですね」

岡部「いや、最低の人間だ」

千早「だったら何にも言わずにメールを取り消せばいいだけですから」

岡部「………」


p「おーい、話ってまだ終わら…誰こいつ?」


岡部「!!!」

千早「ぷ、プロデューサー!?どうして…!」

p「ん、いや…貴音送った後念のため戻ってきてみたんだが…え?なにこの状況…」

岡部「き、貴様は…ラウンダー!?」

p ピクッ

p「あっていきなり貴様呼ばわりとはね…」

岡部「……すまないが……今日はもう帰る」

千早「岡部さん?」

p「さ、春香と千早ももう帰るぞー」

千早「は、はい…」

春香「わかりました…」


―――――

『なんだ?電話かけてくるなんて初めてじゃねーかよ』

「今…そっちはどうなってんの?」

『本当だったら今頃『アレ』とあいつら確保できてたんだろうが…牧瀬紅莉栖が事故でな』

「…牧瀬が事故で死んだのか」

『あぁ…ったく…監視もロクにできないやつらが…お前戻ってこないか?』


p「ん?いや、俺は…もう死んだ身だから関係ないんだろ?…ってアンタがそうしてくれたんだろうが」

『そりゃな。お前の目的としては途中で抜けないわけにはいかなかったもんな?』

p「給料は良かったんだけどなー…やることなすこと犯罪過ぎて、な」

『惚れた女のそばにいたかったんだろ?』

p「……アイツは関係ねーだろ」

『は?なに言ってやがる。そもそも入ってきたのだってその女がひでー病気になっちまったからだろうが』

p「………岡部倫太郎は、ラウンダーのことつかんでるみたいだったぜー」

『なに?』


『てめー…話そらそうとしてんじゃねーだろうな?』

p「誰がんなめんどくせーことするかよ…そもそもの本題だ。今日、岡部に会ったんだよ」

『んで?…』

p「アイツ、俺の顔見るなり『ラウンダー?』だとよ」

『………』

p「牧瀬が死んでんなら…全員処分しても問題ないんじゃないの?」

『お前ってやつは…ほんと、あの女が絡まないことには興味ないんだな』

p「………そうでもないよ、最近は」

『そうかい。だったらさっさとその物騒な思考回路捨てることだな』

p「はいよ…じゃ、もう切るぜ」

『おう』

ピッ


p「………俺、何やってんだろうな。もう…関わらないって辞めるとき決めたはずなんだが」

p「はー…アホか。俺のせいで岡部とその仲間が死ぬ?知ったこっちゃねぇよ」

p「………本当に、知ったこっちゃない」

p「……………ほんと、なんで岡部に嫉妬してんだ、俺は…」



千早『優しくて…強い人なんですね』



p「………くそ」


―――――

部員「あれっ?もしかして私一番乗りじゃ…」

千早「無いわよ」フゥッ

部員「きゃっ!?か、隠れてたの!?てか耳に息かけるな!」

千早「ふふっ…」

部員「…もう!」

千早「じゃ、今日も始めましょうか」

部員「はいはい…」

―――――

千早(こんな日常も…終わってしまうと考えると、寂しいものね)

貴音「千早?どうかしましたか?」

千早「あ、いいえ…なんでもないの…」

貴音「では、来週の計画ですが…」

千早「そう、ですね…」

千早(四条さん、ごめんなさいね…)


―――――自宅

ぴんぽーん

千早「はーい…」ガチャ

岡部「すまない…予定は変更だ」

千早「お、岡部さん?」


岡部「今日中にメールを取り消したい」

千早「そう、ですか…」

岡部「弟君は…」

千早「今はまだ部活で…」

岡部「そう、なのか…」

千早「気に…しないでください」

岡部「すまない…」

千早「では、また…」

岡部「………」


―――――

p「………そろそろ心決めるか」

小鳥「なんかいいましたか?」

p「ん、いや…ちょっと、な…小鳥に…話があるんだ」

p「俺さ…ずっと、お前のこと…す」

―――――

prrrrrrr…

千早「プロデューサーにつながらない…」

千早(………話、聞いてもらいたかったんだけどなぁ…)

優「ただいまー…」

千早「!!ゆ…」

―――――

岡部「dメール…送信」


ぐにゃ…

岡部(……今日、このタイミングでなければ…明日にはラウンダーが来る…ダルも鈴羽も…殺される)

岡部(本当に、すまない…俺のせいで…さまざまな人に思いを、踏みにじった)

岡部(ここまで来たんだ…後は最後のdメールを…)


―――――世界線変動率 1.048596 にて

千早「おはよう、ございます…」

千早(早朝に部室に顔を出すなんて…なんでかしら…)

千早「…あーあーあーあーあー…」

部員「おはようござ…如月?」

千早「…おはよう」

部員「…普段部活にも来ないアンタが朝から部室で練習ですか…都合イイね」

千早(………なんで………こんなこと、言われ慣れてるはずなのに………)

千早「うっ…グスッ…」ポロポロ

部員「は、はぁ!?アンタ…なんで泣いて…」

千早「ご、ごめんなさい…!」ダッ


部員「………さすがに、言い過ぎた…わよね」


千早「うっ…ヒグッ…」

千早(なんで…彼女の言葉が、こんなに心に刺さるんだろう…)

―――――765プロ

千早「………はぁ」

p「どうしたんだ、千早?ため息なんかついて…」

千早「…なんでもないです」

p「俺はお前のプロデューサーなんだから、悩みがあったら話してくれよ?」

千早「はい…」

ガチャ

貴音「おはようございます」

千早「おはようございます、四条さん」


貴音「千早?顔色が優れないようですが…」

千早「…気にしないでください」

貴音「わかりました…プロデューサー、今度のオーディションなのですが…」

千早(四条さんと私は別にそこまで仲がいいわけじゃない…)

千早(なのに、彼女に私は何を期待したんだろう?)

千早(私は今、四条さんなら私のこと理解してくれるって…勝手にそう思ってしまった…)

千早(こないだ眩暈で倒れてから…何か変ね、私…)


千早「はぁ…」

「どうかしたのか?千早ちゃん」

千早「あぁ、音無さん…いえ、なんでもないんです」

音無「なんでもないって顔じゃないけどな」

千早「そうかもしれませんね…でも、自分でも何が原因で悩んでいるのか…」

音無「ふーん…ま、そんなことだってあるさ」

千早「音無さん…いえ、小鳥さんの具合はどうなんですか?」

音無「ん?あぁ…ま、いつも通りだから心配するなよ」


千早(いつも通り…か…)

千早(先日まであんなに元気だったのに…まさか病気で倒れて入院なんて…)

音無「ま、心配するなよ。嫁の代わりはしっかり務めるからさ」

千早「ついてなくていいんですか?」

音無「仕事上がったらちゃんとついてるさ」

千早「…なら、いいんですけど」


春香「おはよーございまーっす!」

千早「春香…おはよう」

春香「あ…千早ちゃん…」

千早(春香の態度も、私が倒れて数日たったあたりから何かおかしい…)

千早(春香とは…『親友』とも呼べる間柄だと思うから…彼女が自分を嫌っているのではないことはなんとなくわかる)

千早(今の春香は…私といることに何かしらの罪悪感を抱いているように見える…)

千早「私、レッスンに出てきますから」

春香「…また、あとでね…千早ちゃん…」

千早「……ええ……」


音無「お、そうだ。千早ちゃん、今週末はオーディションだからなー」

千早「何度も言わなくてもわかってます」

音無「?あれ?さっき決まったってプロデューサーが言ってたんだが…」

千早「………すいません、行ってきます」

千早(………なんだったの、今のは………?………まるで自然に口から出てきたような………)


春香「………」


―――――

千早「あおいーとりー♪」

千早「自由と…孤独…」

千早「ふたつの………」

千早(………違和感………)

千早(私の歌なのに………まるで私の歌じゃないような…?四条さん…が、歌っていたような…)

千早「………ダメね………調子が出ないわ」

千早(………今日は帰ろう)

―――――

千早「ただいま…って、誰もいないわよね…」

千早「ほんと…どうしちゃったのかしら…今までずっと一人だったのに…」


―――――

千早「また…来てしまったわね…」

千早「………あーあーあーあーあー…」

部員「声量足りてないよ」

千早「ひゃっ!?」

部員「………」

千早「ぁ……」

部員「あ、あのさ…なんか…昨日は、ごめんね…」

千早「……いえ…私こそ…」

部員「アンタってさ…もっとお高く決まってるやつなのかと…思ってたわ」

千早「………」

部員「イメージってあてになんないよね…ってわけでさ、一緒に練習しない?」

千早「いいです、けれど…」

部員「教えてほしいところがあってさ…」

千早「……なるほど…ここはもっと…」

千早(始業ギリギリまで彼女と話した)

千早(わかったのは…彼女の歌のレベルが高いこと…真剣な気持ちで、歌を歌っていること)

千早(………まじめで、優しいこと………)

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom