真姫「西木野☆星空シアター!3本目!」凛「まだまだ終わらない!!」 (974)

真姫「このスレはSSスレ『凛「西木野☆星空シアター!2本目!」真姫「お楽しみはこれからよ!」(凛「西木野☆星空シアター!2本目!」真姫「お楽しみはこれからよ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1424960858/))』の続きにあたるスレよ」

凛「どういう内容のSSかは前スレ&前々スレ参照だよ」

真姫「それだけだと寂しいから簡単に説明すると」

真姫「いつ終わるかは明確に決まってるけどもう一方がクソ長いせいでなかなか終わらないキチガイ系安価SSと」

真姫「1つのスレで2話分しか話が進まない果たして本当に結末を迎えるのかも定かじゃないシリアス系長編SSを」

真姫「どういう気の迷いか一気に一つのスレでやっちゃおうっていう頭のおかしいSSスレよ」

凛「一度で二度おいしいって思えば解決にゃ!」

真姫「一応わかりやすいように名前欄に今どの話をやってるかを逐一書いていくけど」

真姫「こっちもアホ揃いだから間違ってたら指摘してね」

凛「そして凛たちはその二つの物語をモニターで見ているって設定の進行役ね」

凛「それだけじゃなく、時々進行を放棄してお医者さんごっこして遊んだりもするよ」

真姫「かの有名(笑)な西木野☆星空クリニックを時々挟んでいくわ」

真姫「こっちはオチをぶん投げることに定評のある一話完結型の安価SSね」

凛「とまぁ一つのスレにどれだけぶち込んだら気が済むのって話なんですが」

真姫「スレを分けたらそれはそれでなんか面倒くさいじゃない」

真姫「ヘタをすれば安価SSの方はかなり長いあいだ放置されることになるし」

凛「もしライブ!の一話分がびっくり長いからね…」

凛「と、長話はこれくらいにしておいて、そろそろやっていくにゃー!」

真姫「それでは…、西木野☆星空シアター!」

凛「開幕にゃ!」






SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1429368032

真姫「それじゃ、いきなりだけどうろライブ!第十話ね」

凛「いつもは話を振り返るんだけど…」

凛「それより!忘却の内容だよ!なにあれ!?」

真姫「えー…っと、前回はたしかコンマ以下一桁で忘却先を決めたんだったかしら」

凛「そう!でさ…、ギャンブル性を高くするために置いておいた全員忘れる…ってところに…」

凛「まさか二つも忘却が重なるって!?こんなことある!?」

真姫「…私もびっくりだったわ。でも安価は安価だもの。仕方ないでしょ」

凛「今度から全員はやめようね…」

真姫「それはわからないけど…。じゃ、忘却の確認と行きますか。えっと、最初の一人はにこちゃんで…」

凛「男の存在を忘れて百合が普通だと思い込む…だったっけ」

真姫「これに関しては通常運転だから何の問題もないわね。不幸中の幸い、九死に一生を得るといったところかしら」

真姫「問題はその次から…。もうどっちも全員が対象だから一気に行っちゃうけど」

凛「えー…、身体に纏うもの全てと、メンバーの顔」

凛「どうなんのこれ」

真姫「どうなるんでしょうね…」

真姫「…まぁ、なんとかなるでしょ」

凛「軽っ」

真姫「私たちには関係のないことよ!ただ見てるだけだし!」

凛「それを言っちゃおしまいだにゃ」

真姫「じゃ、うろライブ!第十話…、スタート!」

前回のラブライブ!デン


海未「ついに訪れたラブライブ最終予選、でも当日は大雪!」

海未「(自分の声真似)スク水ニーソとうさ耳で穂乃果は喜んでくれるでしょうか…」

海未「生徒会副会長を解任させられた私はなんとか学校に残ろうとしたのに追い出されて走って会場に!」

海未「(自分の声真似)うぅっ…、こんな雪の日にこの格好はかなり堪えます…!」

海未「会場についた私を待っていたのはよく知りもしないくせに穂乃果を私から寝取ろうとする妖怪オデコ・ツルピッカーでした!」

海未「(妖怪オデコ・ツルピッカーの声真似)朝昼晩きゅうりの浅漬けだけで生きられるわ」

海未「そして穂乃果は漏らしました…!たくさんの観客に向けて…!!」



海未「…ふぅ、完璧ですね」

海未「え、見返しですか?いやいや、このくらいの長さの文章を覚えるのなんて朝飯前ですよ」

海未「見返しなんて必要ありません!完璧です!」デデーン

穂むら


ゴーン…←除夜の鐘


穂乃果「くかー…くかー…」

穂乃果「っは!見逃した!誰が一番叩かれた!?浜田!?田中!?それともやっぱり松本!?」

雪穂「ピカチュウ…」

穂乃果「ぴかちう?」


ゴーン…


ほのママ「穂乃果ー、海未ちゃんたち来…」

ほのママ「なんて格好してるのあなた…こんな真冬に…」

穂乃果「ほえ?なにが?」

ほのママ「なにがじゃないでしょ…。部屋が暖かいのかもしれないけど、全裸ははしたないから!」

ほのママ「せめてシャツ来なさい!海未ちゃんたちも来てるんだから!」

穂乃果「シャ…ホワッツ?」

ほのママ「…」



穂乃果「あけましておめでとう!!」←無理やり着させられた


海未「…あ、あぁ…。おめでとうございます」

ことり「まだ、開けてないけどね」

海未「…」

穂乃果「…」

海未「…あのぉ」

穂乃果「ん?」

海未「ほ、穂乃果のお知り合い…ですか?」

穂乃果「へ?」

ことり「穂乃果ちゃんまだー?」

穂乃果「わ、私が穂乃果だけど…。ていうか、あなたたちは?海未ちゃんの知り合い?」

海未「海未は私ですが」

穂乃果「うわっ!海未ちゃんの声真似!?すごい上手!」

海未「…地声です」

ことり「えっと…海未ちゃん、やっぱりこれ…って」

海未「どうやら私たちと同じ状況のようですね…。とすれば彼女はやはり穂乃果…」

海未「道理で股ぐらが疼くと思いました。顔は忘れても股間は覚えているのですね」

ことり「キモいよ」

穂乃果「あのー…つまりどういうこと?」

ことり「あのね、つまり…」

海未「あなたは>>12>>14てしまったのです!!」

メンバーの顔を

個人情報と一緒にネットにさらす

海未「あなたはメンバーの顔を個人情報と一緒にネットに晒してしまったのです!!」

穂乃果「ぬあっ…!?なんだってー!?」

穂乃果「メンバーってつまり…アネックス1号のメンバーのことだよね?」

海未「えぇ…。それはもう克明に各個人の名前やら国籍やらを事細かに記載して…」

穂乃果「名前とか国籍って大体わかってない?」

海未「そのことがきっかけで私たちはなんかすごいパワーでお互いの顔を忘れてしまったようなのです!」

穂乃果「最後の方雑」

ことり「序盤は無視してくれていいよ」

穂乃果「なるほどー…。ってことはあなたたちは海未ちゃんとことりちゃん、なんだよね?」

海未「えぇ、そうです。この『え、そのとさかは生まれつきなの?それとも朝セットしてるの?』って感じの髪型の方が南ことりで」

海未「才色兼備を絵に書いたような完全無欠の黒髪美少女の私が園田海未です。…鏡見ても誰かわかりませんでしたが」

穂乃果「へー…、あなたが海未ちゃんとことりちゃん…。なんかイメージと違うなぁ」

ことり「なにそのネトゲのオフで初めて出会った人みたいな感想」

ことり「…そんなことより、穂乃果ちゃんはそんな格好で初詣に行くの?」

穂乃果「あ、この布…?へへ、おかしいよねー。なんか…」

海未「そうですね」

海未「私も母親に無理やりこの…なんだかよくわからない布地の何かを装着させられましたが動きづらくて」

ことり「うん…。こんなの付けたら身体が重くて動きづらいのにお母さんが…」

穂乃果「やっぱり脱いだほうがいいかなぁ…」

海未「…いえ、もっと多く装着すべきです。外はものすごく寒いので」

ことり「あ、あとこの…靴っていうのも履いたほうがいいよ!そのままいくと足痛いから!」

穂乃果「そ、そうなんだ…。いつの間にかよくわかんない物が増えたなぁ…」

穂乃果「じゃあことりちゃんの忠告通りもっと大目に付けてくるから少し待っててー。お母さーん…」スタスタ


海未「…なにげに私の名前間違えてましたね」

ことり「才色兼備な完全無欠の美少女だと思ったのは私の方だったんだねきっと」

海未「おのれぇぇぇぇぇぇぇぇっ…!!」

うろ覚えラブライブ! Forgotten Idol Project


第十話「アネックス1号」



神田明神前


穂乃果「うわー…、他の人もちゃんと服着てる…。すげー…」

穂乃果「あ、あの人の服可愛くない?あれがいい!」

ことり「あー…なんかデラックスだよね…。重そうだけど」

海未「あんなきらびやかな服毎日来てたら肩が凝りそうですけどね…」

穂乃果「私もあれ着て踊りたいなー!」

海未「いやいやあんなの着て踊れるわけないじゃないですか…劇場版じゃあるまいし…」

ことり「何の話…」



花陽「あれ?!今穂乃果ちゃんたちの声が聞こえなかった?」

凛「え、あなた誰…」

花陽「だからさっきから花陽だって言ってるでしょ!?」

凛「あぁそうだった…。かよちんかよちん。凛の中でかよちんはモスラみたいなイメージだったから」

花陽「なんでモスラ!?」


穂乃果「あれ…あの子たちから花陽ちゃんと凛ちゃんの声がする…」

ことり「もしかして…凛ちゃんとかよちゃん!?」

花陽「そ、その声は…」

凛「ハナクソかにゃ?」

ことり「誰がハナクソだコラァ」

花陽「ことりちゃんだよ!…多分」

海未「ということはあなたは…花陽ですか!?こんな見た目だったのですか…」

海未「てっきりモスラみたいな見た目かと」

花陽「私のイメージはいつからモスラになっちゃったの…」

穂乃果「うっわ…。凛ちゃんめっちゃ可愛いじゃん…。スゲェ」

凛「そういうクロウエルちゃんもすごく可愛いよ!」

穂乃果「違う!それ声だけ一緒の人!」

ことり「凛ちゃん…、のその服可愛いね」

凛「え、これ?うぅん…そうなのかなぁ…。イマイチ実感なくて」

凛「足スースーして気持ちわるいし。…こんなのクリスマスプレゼントに貰うんじゃなかったなぁ」

海未「親の気持ちを思うと胸を抉られるような言葉ですね…」

花陽「でも真姫ちゃんはなんだかもっとすごくて…さっきまでいたんだけど」

凛「恥ずかしいからって向こうに言っちゃったにゃ」

穂乃果「…真姫ちゃん?」


真姫「…」チラッ


穂乃果「うわっ…、ま、真姫ちゃん?なのかな…?そしてその格好…」

穂乃果「率直な感想をいうと顔は>>20で服は>>22だね」

絵里ちゃん

着物

穂乃果「率直な感想をいうと顔は絵里ちゃんで服は着物だね」

海未「穂乃果の中の絵里の顔のイメージってこうなんですか…」

ことり「そういえば絵里ちゃんの顔も思い出せないけどどんな感じなんだろうね」

花陽「で、服が着物って…」

穂乃果「なんだか着物って感じがする!名前知らないけど!!」

凛「おー、真姫ちゃんも着物だって言って着させられたって言ってたよ」

海未「まさかのフィーリングで名前を当てるとは…やはり天才ですか」

穂乃果「で、なんでさっきから真姫ちゃんらしき人物はこっちに来ないの」

花陽「だから恥ずかしがってるっていうか…。私たちが誰かわかってないみたい」


テクテク…

真姫「は、花陽…。あの人たちは?」

凛「凛はかよちんじゃなくて凛だよ」

真姫「あ、あなたが凛?じゃあ…花陽はこっち?」

女性客「きゃっ?だ、誰?」

真姫「わわっ!ご、ごめんなさい!」

真姫「あのぉ…えっと…。うぅぅ…もうヤダぁ…誰が誰なのぉ…?」


一同(かわいい)


穂乃果「涙目の真姫ちゃんが可愛いし放っていこうか」

花陽「やめてあげて!?ほ、ほら真姫ちゃん、私が花陽だよ~…」

真姫「あ、あなたが花陽?…モスラ顔じゃないのね」

花陽「もうモスラはやめて」



「あら、あなたたち」


穂乃果「はっ…!何奴!?」


ツバサ「わーお、穂乃果ちゃんじゃない」

穂乃果「誰?にこちゃん?」

海未「多分A-RISEの綺羅ツバサだと思いますが…」

凛「凛たちは覚えてるけどことりちゃんは忘れてるの?」

ことり「いやこれ穂乃果ちゃんだから」

英玲奈「…なんだか新年早々大変そうだな」

あんじゅ「あなたたちも初詣?」

海未「あ、はい。A-RISEの皆さんも?」

英玲奈「えぇ。ツバサの狂った頭が早めに良くなるようにって」

穂乃果「ですよね」


(微妙な間)


穂乃果(やべぇ。私たちがA-RISEに大差をつけて予選で優勝したせいで微妙な空気が)

海未(ここは何か気の利いた一言を…じゃあ花陽が)

花陽(私ぃっ!?え、えっと…)

花陽「>>25>>26ですね!」

ツバサ「つまりそれは>>28ということかしら」

私達が勝利し

あなた達が負けた

アネックス一号はラブライブ出場を辞退

花陽「私たちが勝利し、あなた達が負けた」

花陽「ただそれだけの単純な理屈よ」

ことり「誰っ!?」

凛「やっぱりかよちんじゃないんじゃないの」

花陽「ご、ごめんなさいなんだかかっこいい言葉を言いたくなって…」

海未「これでは相手を逆撫でするだけですよ…。なんとかご機嫌を取らなくては…」

ツバサ「つまりそれは…」

ツバサ「アネックス1号はラブライブ出場を辞退、ということかしら」

海未「はい、そういうことで…って、えぇっ!!?」

ツバサ「わーい♪やったわー私たちが出場よー♪」

あんじゅ「よかったねーツバサちゃーん」

海未「いやいや!今の花陽の言葉からどうしてそうなるんですか!?」

英玲奈「まぁ仮に本当にアネックス1号が辞退となっても出場するのは2位のMidnight Catsなんだけどね」

あんじゅ「…私たちドベだったし…」

ツバサ「そういえばそうだったわ…。うぅっ…じゃあ辞退しなくていいです…」

真姫「なんなのこの人…」

英玲奈「精神が不安定なんだ。大目に見てあげて」

ツバサ「…いいわよ。私たちは一度優勝したし」

ツバサ「だから、今度はあなたたちが優勝しなさいよ。ラブライブ」

穂乃果「最後だけかっこよく締めようとしてるこの人」

ことり「めっちゃ涙目なのに」

ツバサ「うるさいわね。悔しくないわけ無いでしょ!…行くわよ」スタスタ

英玲奈「はいはい」スタスタ

あんじゅ「待って待ってー。どこか寄って帰るー?」タッタッ…

凛「行っちゃったにゃ」

海未「はっ…!?今の100%優木さんの台詞…。歌詞に使えそうですね…」メモメモ…

ことり「あんなのどうでもいいから早くお参りしよーよー」



境内


パンパン

穂乃果「…今腰を叩きつける音がした気がする」

海未「手を叩く音です」

凛「真姫ちゃんは何をお願いした?」

花陽「…花陽です」

凛「あぁそうだった…。三船さんは?」

ことり「え、誰?私に話しかけてる?」

花陽「同じクラスの友達だよそれは…」

海未「しかし、やはり私たちがお願いすることと言えば一つですよね!」

凛「うん!>>30だよね!」

海未「>>31ですよね!!」

皆の健康と発展

麻雀で役満上がること

凛「うん!皆の健康と発展だよね!」

海未「麻雀で役満アガることですよね!!」

ことり「うわぁ凛ちゃんまじえんじぇー」

真姫「ここまで来て他人のことを第一に考えるなんて女神としか言い様がないわね」

花陽「それに比べて海未ちゃんと来たら」

海未「…やはり天和のみにするべきでしたか」

ことり「誰もお願いの控えめ具合を指摘してるわけじゃないから」

凛「ていうか麻雀するんだ…」

海未「ここに来る前もひとりでPCの前で通信対戦してきました。飛ばされましたが」

真姫「麻雀やってると浮遊するの…!?すごいわね」

花陽「そういう意味じゃ…まぁ漫画とかでは物理的に吹っ飛んでるのも少なくないけど」

ことり「というかここに来てラブライブのこと関連に一切触れてないのはどうかと思うよ」

海未「まぁここでこんな長話しているのも後ろの人に迷惑ですしそろそろ…」

穂乃果「…」

海未「…あれ、穂乃果?まだお願い事ですか?」

凛「穂乃果ちゃんさっきの会話中ずっとお願いしてたの?ちょっと長すぎないかにゃー?」

真姫「また欲張りなお願いしてたんでしょ」

穂乃果「…」

ことり「穂乃果ちゃん…?」

花陽「あれ、もしかして穂乃果ちゃんじゃないとか?」

海未「いやそんなはずは…。子宮にガンガンくるオーラを滲ませていますし」

花陽「随分と個性的な判別方法ですね」

凛「おーい、穂乃果ちゃーん!」

穂乃果「…っは!?寝てた!」

真姫「立ちながら寝るとか器用すぎるでしょ…」




真姫「…あれかしら」

凛「いや…どうかなぁ…。そんなイメージないなぁ…」

海未「私はあっちの人だと思うのですが」

ことり「えー…、あれがそうだったら幻滅…」

穂乃果「もう勘で行くしかないよ!」タッタッタッ

花陽「あ、穂乃果ちゃっ…」


穂乃果「おーい!希ちゃーん?!」

にこ「…はい?」

穂乃果「あけましておめでとう!」

にこ「え、えっと…、おめでとうございます。あの、何…?誰?」

穂乃果「私?私はあなたの>>35だよ!」

穂乃果「私はあなたのアネックス1号のリーダーだよ!」

にこ「え…えぇっ!?そうなの?そういえば顔を思い出せない…」

穂乃果「でしょー?みんな忘れちゃってるみたいで…」

にこ「そうなのね…」

にこ(…アネックス1号のリーダーって誰だったっけ)

にこ(こんな時にど忘れしちゃったわ。…えっと確か…)

にこ(ちょっと前に凛になったんだっけ。じゃあ凛ね)

にこ「あけましておめでとう。り、凛…」

穂乃果「おーいみんなー!合ってたよー!」

にこ「聞いてないし」


ことり「へー…これが…ちっちゃくない?」

海未「こんなのでしたっけ…」

穂乃果「間違いないよ!ね?」

にこ「いやこいつらが誰よ…」

穂乃果「えっとこっちがことりちゃんで…こっちが海未ちゃん!」

真姫「真姫ですけど…。にゃあ」

花陽「かよちんです」

穂乃果「あれ…、そうだったっけ」

にこ「もうしっかりしなさいよ凛!」

穂乃果「へぇっ!?私穂乃果だよ!?」

にこ「え、凛じゃないの?」

海未「確認が曖昧のようですが…本当に希なんですか?」

にこ「いや私にこだから!」

凛「え、にこちゃん!?うわっ…顔…うわっ…」

にこ「何その反応!?私の顔そんなに変だと思われてたの!?」

ことり「もうややこしすぎるよ…」


希「にこっちー?荷物こっちに…あれ、その人たちは?」


凛「うわぁ!化物おっぱい!」

希「」フッ

真姫「消えた!?」

希「後ろやよ」

凛「なっ…!」

希「だーれーがぁぁぁ…」

希「化物おっぱいやねん!わしわしやぁぁぁっ!!」ワシワシ

凛「ぎにゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

にこ「こっちが希よ」

穂乃果「うん、言われなくてもわかった」

海未「えーっと、それでこちらが…凛?」

ことり「ことりだってば」

海未「あ、そうそう。トサカでしたね」

希「…ま、まぁなんとか覚えたわ。えっと…花陽ちゃん」

真姫「真姫です。…にゃあ」

にこ「真姫…こんな可愛い顔してたっけ?」

にこ「キスしていい?」

真姫「断る」

絵里「ねぇ希…その人たちは?」

穂乃果「あーまたきた」

花陽「多分あれが絵里ちゃんだね…。えっと、私たちは…」


絵里「…ありがとう。大体覚えたわ」

凛「よ、よかったー…。これで全員思い出したね」

真姫「思い出したというより覚え直したが正解だけどね」

花陽「ところでその…その服は下履かなくてもいいものなの?…絵里ちゃん」

絵里「え?あぁ…なんだか蒸れて気持ち悪かったから脱いだわ」

にこ「え、ミコフクって脱いでいいの?じゃあ私も…」

希「あかんあかん!脱いだら警察に捕まるって神主さんに怒られたやん!」

にこ「あ!そうだった!ちょっと絵里!捕まっちゃうわよ!」

絵里「マジか…。どこ置いてきちゃったかしら」

希「ごめん、えりちのミコフク探してくるからこれでね」

にこ「もうバカー!」タッタッタッ…

絵里「ごめんなさい…」トボトボ…



穂乃果「仲良しだねー」

凛「兄弟みたいだにゃー」

真姫「身長的には一番高い絵里が一番だらしないけどね…」

花陽「…でも、もうあと3ヶ月もないんだよね」

穂乃果「…余命?私の?」

海未「違います。彼女たちの卒業です」

海未「真姫も、その話はラブライブが終わるまでしないとこの前約束したはずですよ」

真姫「何回間違えられるのよ…。それは花陽」

凛「全然覚えてないにゃー」

海未「…物覚えが悪くて」

穂乃果「3年生のためにもラブライブで優勝しようって言ってここまできたんだもん!」

穂乃果「頑張ろう!最後まで!」

ことり「…誰が3年生だったっけ?」

穂乃果「決まってるでしょ!絵里ちゃんと希ちゃんだよ!」

一同「あー…そうだったそうだった」

にこ「へぶちゅいっ!!」

絵里「にこ…風邪?」

にこ「…誰かに忘れられてる気がするわ」

希「ハカマも見つかってよかったねー」

絵里「えぇ。…股が蒸れて仕方ないけど」


亜里沙「おねーちゃーんっ!」


絵里「あ、亜里沙…」

亜里沙「あははっ!」ガバッ

絵里「も、もう…。そんなに急に抱きつかれたら濡れちゃうでしょ…。そういうのは家で」

希「何妹に欲情してんの」

亜里沙「あ、ごめん!そうだね、家に帰ってからゆっくりと…」

希「おい妹に何覚えさせた」

絵里「そそそ、そんなことより、何お願いしてきたの?」

亜里沙「えへ、あのね…」

亜里沙「音ノ木坂に合格して、アネックス1号に入れますようにって!」

絵里「…そう」

亜里沙「…?じゃあ雪穂が待ってるから行くね」タッタッタッ

希「…やっぱり、一度みんなと話した方が…」

絵里「希」

希「何?」

絵里「アネックス1号って何…」

にこ「…そこからか」

凛「まだアイキャッチまで遠いけど今日はここまでにしとくね」

真姫「色々付け足すと必然的に長くなって仕方ないわね…」

凛「でも意外とアッサリ顔の問題は解決したね」

真姫「存在そのものじゃなくて顔だけならもう一回覚え直せばいいだけだしね」

真姫「だからなんとかなるでしょって言ったの」

凛「これ以上深く関わり出すと話進まないから仕方ないよね」

真姫「メタ的な話は出さない。…じゃ、次回をお楽しみに」

凛「あと今日は特に遊戯王ネタを使ったつもりはなかったんだけど…」

真姫「パロネタは無意識のうちに使っちゃうからね。つもりがなくてもあるのかも」

凛「まぁどうでもいいや。それじゃ、バイバイ。まじえんじぇー」

真姫「え、今日の西木野☆星空シアターはここまで、からじゃないの?」

凛「もう面倒にゃ。寝る」

真姫「そ、そう…。つ、次に下半身露出するのはあなたかもね?…じゃ、そういうことで」


真姫「もー凛!お約束くらいちゃんと…」

凛「いいじゃん面倒くさい」

真姫「眠たいのはわかるけどだからって…」

凛「今日は他にやることがあるの」

真姫「なによ。またモンスト?それともスクフェスかしら」

凛「こーれー…にゃっ!!」ドンッ

真姫「…なによこれ」

凛「お誕生日プレゼント」

真姫「え」

凛「お誕生日おめでとうございます!いえー!」

真姫「…そういえばそうだったわ」

凛「今日はこれを渡すために早く切り上げたの!ささ、開けてみて!」

真姫「あ、ありがとう…。もう、それならそうと早く言ってくれればいいのに」

真姫「なにかしら…えっと…」カパッ

真姫「…」

凛「どうどう?気に入った?」

真姫「これは…」

凛「>>45だにゃ!」

モスラ顔のかよちんのフィギュア

凛「モスラ顔のかよちんのフィギュアだにゃ!」

真姫「…」

凛「凛の自信作なんだー。かわいいよね」

真姫「キモい…」

凛「なんだと」

真姫「き、キモかわいい…かな」

凛「んー、及第点」

真姫「ま、まぁ…お礼は言っておくわ。ありがとうね」

凛「それを枕の下に敷くといい夢が見れるよ」

真姫「なんだか可哀想なんだけどそれ。…まぁいいわ。じゃあ今晩早速枕の下に敷いてあげる」

凛「うい。じゃあおやすみー。凛はもう寝るにゃ」

真姫「あ、うん…。じゃあ私も寝るわ。このフィギュアを凛だと思って大切に頭で潰させてもらうわね」

凛「色々ツッコミどころはあるけどそれでいいよ」




凛の部屋


凛「…ふっふっふ。上手くいったにゃ」

凛「あのフィギュアをただのかよちんフィギュアだと思ったら大間違い」

凛「本当は…」


凛「真相はまた今度やる西木野☆星空クリニックで明らかに!?」

凛「…なるかどうかは未定!でも今日は眠いし寝る!」

凛「それじゃ一人だけど改めて…」

凛「今日の西木野☆星空シアターはここまで!次にモスラ顔になっちゃうのはあなたかもね?」

凛「まじえんじぇー!…あ、裏設定だけどまじえんじぇーは二人で言わないと真ん中に☆が出ないんだよ。どうでもいいね」





※近いうちにモスラかよちんフィギュアを持った真姫ちゃん描きます

http://i.imgur.com/55oVmrX.jpg
描いた
思いの外モスラかよちんかわいいと思います
今日は疲れたんでこれだけ 誕生日にこんなんでごめんね真姫ちゃん
明日は続き書きます ほなな

もう12時だけどやっていきます
もしの6話がB'zのF・E・A・Rという曲っぽいと言われたので歌詞ググったらホントにそれっぽくてびっくり
実はこれ聴いて思いつきましたと言ってもおかしくない 聴いたことないんですけど

多分次の日 早朝

穂むら


ガララッ

穂乃果「いってきま…うおぉっ!?!!寒っ!死ぬ!」

ほのママ「ほ、穂乃果っ!!?裸で外でたらそりゃ寒いに決まってるでしょ!」

穂乃果「なるほど…」

ほのママ「誰かに見られたらどうするの!恥ずかしいから早く中に入りなさい!」

穂乃果「は、はぁい…」


(着替えた)


穂乃果「いってきまーす」




学校 生徒会室


穂乃果「あ、おはよー」

ヒデコ「おはよ。はいこれ、まとめた書類」

穂乃果「ふ、冬休み中にも関わらず学校に来るとか…キチガイか」

ミカ「暇してたからね!悪かったね!」

フミコ「…穂乃果がいつか友達をなくさないか心配だよ」



屋上


(ストレッチ中)


穂乃果「…自由?選曲も?うぎゅっ…」

海未「はい。歌だけじゃありません。衣装も踊りも曲の長さも基本的に自由です」グイッ

凛「ぐぇっ」

絵里「…私たちに自由を与えるとはね。運営もトチ狂ったと言えるわ」

花陽「つまりなにしても咎められない、ということですよね…?」

にこ「咎められるときは咎められると思う」

花陽「それはさておき出場グループの間ではいかに大会までに印象づけておけるかが重要だとどうたらこうたら」

穂乃果「話長い、三行で」

花陽「一行で話してるんだけど…」

絵里「つまりあのー…50組近いえー…ね?うん、曲が…覚えていられない!から、そう…そうなの!」

穂乃果「なるほど」

花陽「どうしてそっちのうろ覚え台詞のほうはわかるの…」

にこ「このシーン台詞多すぎて面倒だわ。テレパシーで会話しましょう」

ことり「さすがにこちゃん。視聴者に対する思慮を一切欠いた提案だね!」

海未「あぁ、穂乃果…うぅっ…もっと深く…あぁ、そうです…。うっ…イクッ」

希「胸を強調するポーズ」

穂乃果「うわらば」

花陽「途中からみんな露骨にやる気なくなりすぎ!えぇと、つまりなんやかんやで…」

部室


穂乃果「何故かキャッチフレーズを作ることになりました」

花陽「出場チームはこのチーム紹介ページにキャッチフレーズを載せることができるんです。例えば…」

花陽「ぶたのとさつじょう…」

穂乃果「恋の小悪魔って書いてるけど」

花陽「…読めない」

海未「ふたなりアイドル…」

にこ「心そそられる響きね」

花陽「ふたなりじゃなくてはんなりです」

ことり「うぃずゆー…。あ、ウィズと言えば私最近コロプラから配信されているクイズRPGのゲームアプリにハマって…」

真姫「唐突に宣伝入れるのやめて」

絵里「なるほど…みんな考えてるわね」

希「当然うちらも付けておいたほうがええってわけやね」

花陽「はい。私たちアネックス1号を一言で言い表すような…」

穂乃果「アネックス1号を一言で、か…」

穂乃果「『>>75>>77じゃない?』とかどうかな」

矢澤ここあ

仮面ライダーアギト

穂乃果「『矢澤ここあは仮面ライダーアギトじゃない?』とかどうかな」

絵里「それにしましょう」

にこ「ちょっと待てコラァァァッ!!なんでいきなりうちの妹の名前が出てくんのよ!?」

にこ「アネックス1号と何の関係もないじゃない!」

希「にこっちに妹が…!?」

にこ「もうそれはいいから!しかもなんでアギト!?うちの妹はいつからクワガタモチーフの戦士になったのよ!!?」

穂乃果「違うよにこちゃん!」

にこ「な、なにが違うって言うのよ…」

穂乃果「アギトはクワガタじゃなくてドラゴンモチーフぶべるぁぁぁっ!!?」ドゴァァッ

にこ「どうでもいいわそんなん!」シュゥゥ…

花陽「はっ…!なんてパンチ力…!!まさかにこちゃんの正体こそアギト…!?」

にこ「にこのどこをどう見たら賀集利樹に見えるのよ!違うわ!」

ことり「落ち着いてにこちゃん。最初から『じゃない?』って言ってるんだからそうじゃないことを疑ってるんだよ」

にこ「まずここあにその疑惑が持ち上がった時点でおかしいでしょ」

海未「つまりこのキャッチフレーズはアリか保留かで言うと…?」

にこ「却下よっ!保留ですらないわ!なんでちょっと置いておいてよさげのがなかったら仕方なく採用するかも的な位置にこの案を置かないといけないのよ!?」

希「…にこっち」

希「ツッコミが無駄に長い」

にこ「うるせぇ」



校門前


穂乃果「結局決まらなかったね。…アネックス1号かぁ…」

穂乃果「あ!『血よりも固い絆で結ばれた”昆(むれ)”となる』とかどうよ!?」

海未「意外とアリな気もしますがどことなく何かから流用している気がするのでダメです」

穂乃果「じゃあ『人間を舐めるなよ、ゴキブリが』は?」

海未「誰に喧嘩売ってるんですか…」

穂乃果「リクちゃんもちょっとは考えてよ!」

海未「なんという古典的な言い間違い…。もう少しまともなネタはないんですか」

穂乃果「…ご、ごめんなさい」

ことり「…難しいよね。9人性格は違うし、今はただでさえお互いの顔の区別すら曖昧なのに」

穂乃果「でも!目立ちたいって気持ちはみんな一緒だよ!だから毎回毎回センターを争ってるんだし!」

海未「言えてますね。…となるとキャッチスレーズは」

海未「『本番は脱ぎます』…まぁ目立つといえば目立ちますが」

ことり「『実は男の子がいます』とかいいんじゃないかなぁ。まじまじと見てもらえそう」

穂乃果「『ファンの子妊娠しました!』とか注目集めまくりじゃない!?」

海未「それは冗談でも口にしたらダメです。解体されかねません」

穂乃果「怖っ…」

ことり「…あれ?」

穂乃果「ん?」

ツバサ「…」


穂乃果「あ、ヒタイ=ピカリンチョ五世さんでしたっけ」

海未「おでこ関係弄りすぎです。少し可哀想になってきました」

ツバサ「…話があるの」

穂乃果「えっ」

海未「ダメです穂乃果!逃げましょう!」

ことり「うん!今すぐに!!」

穂乃果「お、おう…!」

ツバサ「待って違うの!そういうのじゃないから!お願い話を聞いて!プリーズヒアミー!!!」



ラブライブ!(アイキャッチ)



どっかのベンチ


穂乃果「ごくっ…」


海未「大丈夫ですか穂乃果!?そのコーヒーに何か薬が含まれていたりとか…」

ことり「指先のしびれとかない?プルタブに毒針が仕組まれてたりなんて…」

ツバサ「あなたたちどこまでついてくる気!?ここは二人きりで話をするシーンでしょ!」

海未「信用できません!あなたたちを二人きりにさせるくらいなら夜に露出します」

ツバサ「どういう関連性があるのよ…」

ことり「そんなわけだからこうやってベンチの後ろから監視しておくね」

ツバサ「落ち着かない…」

穂乃果「それで話とは…」

ツバサ「あ、あぁ…ごめんなさいね。でもリーダー同士、二人きりで話したくて」


海未(…なんだかまともっぽい空気ですね)

ことり(あれでも今年の秋まではスクールアイドルのトップスターだったんだし)


ツバサ「ところでその前に気になることを聞いたんだけど」

穂乃果「はい?」

ツバサ「…あなたたち、本番脱ぐの?」

穂乃果「えっ…」

ツバサ「し、しかも実はメンバーの一人は男の子でファンの子を妊娠してるってさっき言ってたじゃない…!?」

ツバサ「あれは本当なのかしら?!」


海未(どうやら目立ちたいがために考えたデタラメなキャッチフレーズを信じているようですが…)

ことり(アホなのかな)


穂乃果「あー…そのことかー…」

穂乃果「それはね…」

穂乃果「>>79なんです」

オウフ ミス
>>81

ああ あれ嘘やで工藤

穂乃果「ああ、あれ嘘やで工藤なんです」

ツバサ「あ、あぁ…そうだったんだ。よかった」

ツバサ「うん、嘘なのはいいけど…工藤なんですって何」

穂乃果「工藤ナンデスっていうあだ名どうですか」

ツバサ「絶対嫌」

穂乃果「ちぇっ…お昼を飾れそうないいあだ名だと思ったんだけどなぁ」

ツバサ「せめて苗字が工藤の人につけてあげてね。…でどこまで話したっけ」

穂乃果「私は何も覚えていません!」

ツバサ「そうでしょうね。…えー、そうそう。二人きりで話したかったってところまでね」

海未「二人きりではありませんがね」ヌッ

ツバサ「顔を挟んでこないで」

海未「失礼しました」スッ

穂乃果「まぁこんなですが気にしないでください」

ツバサ「…うん。練習は頑張ってる?」

穂乃果「はい!本戦ではA-RISEに恥ずかしくないライブをしなきゃ、ってみんな気合入ってます!」

ツバサ「…そう」

穂乃果「あはは、でも予選のA-RISEのライブ!あれは笑えましたよー!!いやある意味では笑えなかったんですけど!え、ウケ狙いだったんですかあれ?」

ツバサ「やめて、思い出させないで」

ツバサ「もう今回のラブライブは私にとって無かったものになってるから」

ツバサ「今はあの出来事を忘れるべくひたすらに練習しているわ。毎晩夢でうなされるのは勘弁だもの」


海未(…確かにあの時のA-RISEはひどかったですしね…)

ことり(映像に残しておくべきだったなぁ…。一生あの人を脅す材料にできたのに)


穂乃果「よかった…。まだ自殺までは考えてないんですね。私だったらそこの池に即時頭からダイブしてもおかしくないほどの醜態だったんですけど」

ツバサ「アーキコエナイキコエナイ」

ツバサ「…ただ、やっぱりどうしてもちゃんと聞いておきたくて」キリッ

穂乃果「えっ今更何を」

ツバサ「…」

ツバサ「…あなた、私のことどう思ってる?」

穂乃果「はぁ?」

ツバサ「私のこと、好き?」

穂乃果「あのちょっと…」


海未「こらぁっ!やっぱりそういう話題なんじゃないですか!!」

ことり「首を絞めるのに丁度いい長さの縄なら常備してるんだよ?」


ツバサ「ねぇ、答えて!」

穂乃果「えぇっと…それじゃあ…」

穂乃果「>>85の次くらいには…>>87です」

アネックス一号

興味ない

穂乃果「アネックス1号の次くらいには…興味ないです」

ツバサ「おっ…おぉ、ぅ…!どっち!?」

穂乃果「え、えっと…!つまり今はアネックス1号に夢中であなたに興味を持てないってことです」

穂乃果「仕事が恋人的な」

ツバサ「あぁ…そう」


海未「…なんだか上手く纏めたようなそうでもないような」

ことり「私はあの人が穂乃果ちゃんに興味を持ってるってだけでもピーしたくなるんだけどなぁ」


ツバサ「…でも結局、私はあなたたちに負けたってことよね」

穂乃果「す、すみません…」

ツバサ「うぅん、いいの。…私は全てをぶつけてあなたにアピールした」

ツバサ「そして、潔く負けた。そのことに、なんのわだかまりもない」

ツバサ「…ってなると思ってたんだけどね」

穂乃果「え?」

ツバサ「やっぱり、引っかかるの」

ツバサ「なんで負けたんだろうって」

穂乃果「は、はぁ…。そう、なんですか…」


海未(穂乃果戸惑ってますよ)

ことり(当然だよね。まるで勝算が少しでもあるような言い方されたら)


ツバサ「理由がわからないのよ。確かにアネックス1号は同じ学校の仲良しな先輩後輩で結成されているし、絆も並大抵のものじゃない」

ツバサ「あなたたちの会話を見て、聞いて、とても羨ましく思ったわ」

穂乃果「…」

ツバサ「でも、なぜそれができたの?」

穂乃果「えっ」

ツバサ「確かに仲良しなんだろうし、中には恋人関係にハッテンしそうなのもわかる」

ツバサ「見立てによると擦り合わせた時の相性だっていい」

ことり「どういう審美眼!?」ヌッ

ツバサ「下から顔を出さないで」

ことり「はぁい」スッ

ツバサ「…でもそれは、私も一緒」

ツバサ「むしろ私はあなたたちよりも綺麗であろうとしてきた。この容姿は私の誇り。抜群のスタイル」

穂乃果(チビじゃん)

ツバサ「だから負けるはずがない。絶対に穂乃果さんと恋人関係になれる。そう思ってた」

ツバサ「…でも負けた」

ツバサ「その理由を知りたいの」カッ

穂乃果「いやそんなことドアップで言われましても」

ツバサ「アネックス1号を結びつけているモノって何?」

ツバサ「あなたたちを支えているもの、原動力となる想い…それはなんなの?」

穂乃果「ナンよりパン…花陽ちゃんはご飯かな…」

ツバサ「ふざけないで。真面目に答えて」

穂乃果「え、えっとぉ…えっと…」

穂乃果「ゴメンなさい!私…>>91で!」

絆ですかね

穂乃果「ゴメンなさい!私…」

穂乃果「絆ですかね」

ツバサ「絆…」

ツバサ「その絆を支えているものは何かって聞いてるのに…」

穂乃果「え、そうだったんですか…?ちょっと質問の意味がよくわからなくて」

ツバサ「そう…。仕方ないわね。かなりのアホだっていうのはもう身に染みて分かったから」

ツバサ「でもそんなあなたが好き」

ツバサ「…好き、だったわ」

穂乃果「ぁ…」

ツバサ「今日は、ありがとう」

穂乃果「…ごめんなさい、なんかちゃんと答えられなくて」

ツバサ「気にしないで」

穂乃果「で、でもA-RISEがいてくれたからこそ、ここまで来られた気がします!」

ツバサ「…ふふっ」



その夜


海未『今日の夕方の件、ですか…』

穂乃果「うん、私、ツバサさんの質問の意味が理解できなくて…」

穂乃果「海未ちゃんはツバサさんが何を聞きたかったのかわかる?」

海未『そうですね…。いや、私あまりあの人の話聞いていませんでしたが』

海未『しかし穂乃果の残滓から微かに漂うあの人の思念から察するに…』

穂乃果「待ってなにその新能力。いつの間にそんな伊能の力を」

海未『冗談です。ちゃんと聞いてましたから。あとそれだと歩いて地図を作る力みたいですよ』

海未『えー、つまり…彼女が聞きたかったのは「あなたたちなんでそんなに仲がいいの?」ってことでしょうか』

海未『ハッ…、私たちの愛の深さに嫉妬しているということですね。哀れですわ』

穂乃果「私たちがどうして仲がいいか…それがキャッチフレーズなのかもね」

海未『は?』

穂乃果「私達を一言で言い表す言葉、それは多分、私たちの絆の原動力となる言葉なんじゃないかな」

海未『ちょっと何言ってるかわからないですね』

穂乃果「…」ピッ


海未「あ、切れました…」



ガララッ


穂乃果「あ、雪穂。こっちで勉強?」

雪穂「うん、部屋寒くて」

穂乃果「…あ!ねぇ雪穂!雪穂から見てアネックス1号ってどう思う?」

雪穂「はぁ?何いきなり…そうだなぁ…」

雪穂「>>94、あとは>>95かな」 ※雪穂はまともなので常識の範疇で

若年性健忘症を本気で疑うレベル

雪穂「若年性健忘症を本気で疑うレベル」

穂乃果「はぁっ!?」

雪穂「そこは突っかかってくるところじゃないでしょ!?正論だよ!」

穂乃果「マジか…。そこまでか…」

雪穂「あとは…夢、かな」

穂乃果「おぉ!それはなんかいい感じ!」

雪穂「常に夢を見ながら生きてるんじゃないか、みたいな。あ、眠って見る方のやつね」

穂乃果「…なにそれ、馬鹿にしてる?一応地区代表だよ?」

雪穂「うん…。なんで予選で優勝できたのか今でも疑問なんだけど」

雪穂「何か不思議な力でも働いてんじゃないの?」

穂乃果「えぇ!?でも雪穂だって私たちのライブいいと思ってくれたんでしょ!?」

雪穂「うぅん…。そうだけど…」

雪穂「あの時は心の底からいいな、って思えるんだけど、家に帰ると後悔の念が残るっていうか」

雪穂「でもなんとなく、応援しなきゃって気持ちになるんだよね。それはお姉ちゃんだとか地元だとか関係なく」

穂乃果「応援しなきゃ、か…」ピリリリリ…

穂乃果「あ、電話…はいもしもし」

海未『なんで切ったんで』ピッ

穂乃果「…」

穂乃果「あ!そうだよ!大事なこと忘れてた!」

雪穂「え?何?」

穂乃果「…忘れた。まぁいいや。寝よ」スタスタ

雪穂「えぇぇ…ちょっ…、まだお風呂入ってないでしょ…?もう…」



翌朝


ほのママ「はい、用意できてるわよ」

穂乃果「えっ!?餅つき…!?どうして…」

ほのママ「昨日寝る前に穂乃果が明日餅つきしたいから用意してって…」

穂乃果「あー…そういえばそうだったような…?」

穂乃果「うーん、餅つきしたい気分じゃなかったんだけどなぁ…」

穂乃果「まぁいいや。呼んだらみんな来てくれるでしょ」



穂乃果「さぁ餅をつくぞー!」

海未「では私はお餅をひっくり返します!さぁバッチこい!」

穂乃果「いっくよー!えいっ!!」ブンッ!!

海未「へぶぢぃっっ!?!」

海未「ぐふっ」バタリッ

絵里「脳天直撃ね…」

にこ「絶対やらかすと思った」

ことり「じゃあ私がひっくり返すねー」

ペッタンペッタン


花陽「うわぁぁ…ご飯KiRa-KiRa Sensationしてたねー…」

にこ「なにその表現ダサッ」

にこ「そういえばツバサさまのオデコのことも綺羅綺羅センセーションとか言ってたけどなんなの?流行ってるのそれ?」

花陽「可愛いと思うけどなぁ」


穂乃果「あ、凛ちゃんやってみ…あれ?凛ちゃんは?」

絵里「そういえばいないような…」

海未「…凛なら昨日準備運動の時に強く押しすぎて動かなくなってしまってそれっきり放置です」

絵里「え、マジで?」

穂乃果「じゃあいいや。真姫ちゃんやる?」

真姫「いや凛のこと心配してあげてよ…」

真姫「それよりなんで急に餅つきなの?在庫処分?」

希「心配してあげてと言った直後にそれよりとは…哲学やね」

穂乃果「在庫処分じゃないよー!えー…なんでだっけ」

穂乃果「ごめん、あんまりやりたい気分じゃなかったんだけど何故かお餅つきをやる流れになっちゃって」

真姫「なにそれ…意味わかんない」

穂乃果「じゃあもっともらしい理屈を…絵里ちゃん、考えて」

絵里「はぁ!?ここで大喜利!?」

ことり「よっ!正月らしい!」

絵里「ど、どうして餅つきを急に始めようとしたか…そ、それは…!」

一同「それは…?」

絵里「…>>99だから!」

凛がカップメンのもちもちの木を見てたら思いついたみたい

真姫「残りわずかだけど時間がアレなんでもう一回区切るわ」

凛「次回はすごい短くなりそうにゃ」

真姫「まぁ時間が余ったら余ったで別の余興をすればいい話よ」

凛「そうだねー。じゃ、今日の西木野☆星空シアターはここまで!」

真姫「次に脳天に杵をぶち込まれるのはあなたかもね?」

凛「怖っ」

真姫・凛「「まじ☆えんじぇー!!」」

http://i.imgur.com/TUVxhwJ.jpg

モスラかよちん単体で描いてみました
手持ちの色鉛筆にかよちんヘアーっぽい色がなかったけど許して
羽はクソ面倒だったのでオミットした

ラ!板で短編書きました ほのうみです 見たい方がいれば自力で探してください
忘却はどうしよう 予定調和で行けば13話は日常回みたいなものだしあってもいいけど
まだ考えてないです とりあえず10話を終わらせよう 再開します

絵里「…凛がカップメンのもちもちの木を見てたら思いついたみたいだから!」


一同「…」


ことり「えーっと、どういう意味?」

穂乃果「穂乃果がやり始めたのに凛ちゃんが思いついたってどういうこと?」

花陽「もちもちの木ってあの童話の?」

にこ「そうじゃなくて、カップ麺の種類にそういうのがあるんですって」

希「説明が必要な時点でどうかと思うわ」

凛「そうにゃそうにゃ」

真姫「座布団全部没収ね」

海未「とのことですが絵里、何か」

絵里「もう殺して!!」

真姫「わかったわ、じゃあ遠慮なく…」ヌッ…

絵里「えっ…、杵を振り上げて…!って!!ちょっと本当に死んじゃったらどうするのよぉぉっ!!?」


亜里沙「あぶなーいっ!!」ダダッ!!


ガバッ

絵里「ふぉむぐっ…!」

ドサァッ

絵里「あ、亜里沙…。お姉ちゃんをかばってくれたのね…」

亜里沙「亜里沙のおもちゃに傷が付いたら大変!」

希「なんか今聞き捨てならない言葉が…」

絵里「あ、亜里沙!お姉ちゃんをおもちゃ呼ばわりしていいのは夜だけだって言ったでしょ!」

にこ「だから何教えてんのよアンタはぁっ!?」



亜里沙「お餅…?スライム?」

花陽「食べてみて。ほっぺた落ちるから」

凛「え、怖っ…」

真姫「というか凛、いつの間に…」

凛「天日ぼしからついさっき回復して皆の気配を嗅ぎ取ってここまで来たの」

海未「よく無事でしたね…」

亜里沙「…」モグモグ…

亜里沙「おいしい!」

穂乃果「でしょ?穂むらのお餅は極上ものだよ!」

ことり「でもこんなにたくさん、私たちだけじゃ食べきれないよね…どうしよっか」

穂乃果「うーんと、じゃあ…>>114しよう!」

海未のアヌスにつっこもう

穂乃果「海未ちゃんのアヌスにつっこもう!」

海未「な、なんですと!?」

穂乃果「さぁ海未ちゃん!お尻だして!頑張って広げて!」

海未「や、やめてください!私のお尻の穴はそんなに広がりません!」

ことり「広がるか否かの問題じゃないような」

絵里「やめて、穂乃果!」

穂乃果「ぅ絵里ちゃん…」

海未「そうです絵里!穂乃果を説得して…」

絵里「私お餅は好きだけどおはぎはあんまり好きじゃないの!」

海未「そうですよねおはぎは…はい?」

絵里「だから海未のお尻のあんことまぜこぜにするのは良くないわ…」

海未「あの女とてつもなく下品なことを言っていませんか…?」

真姫「お食事中の方はごめんなさい」

亜里沙「…隣にいるんだけどなぁ。お食事中の方」

穂乃果「えー!私は海未ちゃんのお尻に突っ込みたい!新しい快感が芽生えるよきっと!」

海未「了承しかねます…。そんな快感芽生えたら下の口の分までエンゲル係数をカウントしなくてはいけなくなるじゃないですか」

希「うーん、となるとどうする?」

絵里「そうだわ!日頃の感謝も込めて学校のみんなに配るのはどうかしら!」

ことり「あ、そっか。雪かきしてくれたみんなにはまだお礼してなかったもんね」

真姫「すぐ冬休みで、お正月だったからね」

にこ「…結局のところ食べきれないから在庫処分であることには間違いないような」

絵里「気にするな!そうしましょう!」

穂乃果「えー…、お尻…」

海未「まだ言ってるんですか…」



ワイワイガヤガヤ…

ヒデコ「んー!お餅おいしー!」

ことり「急に呼んだのに来てくれてありがとー!」

ミカ「いいのいいの!ちょうど何もなくて暇だったし!」

絵里「皆の分あるから、焦らずにね!」

にこ「きなことお醤油、どっちもあるわ!」

花陽「はぁはぁ…!お餅…!!」

凛「かよちんは太るからダメだブホォッ!!」

花陽「黙れ」

海未「どうです、これが私が獲得したラブライブ東京予選の優勝盾です」

フミコ「一人だけで入手したんじゃないんだから…」



穂乃果「…ふふ」

穂乃果「……」

夕方


海未「みんな来てくれて良かったですね」

絵里「冬休みで急なのにも関わらず、随分集まったわねー」

凛「みんなそんなにお餅好きだったのかなぁ?」

花陽「好きだよー美味しいもん」

凛「そういうかよちんのお腹もお餅みたいにおいしそー」

花陽「う…、美味しそうと言われると怒るに怒れない…」

真姫「それでいいの…?」


穂乃果「…」


海未「…穂乃果?どうしました、さっきからボーっとして」

穂乃果「え?あぁ…うん」

穂乃果「何でもない。…えっと、そうだなぁ…」

穂乃果「なんか言いたかったんだけど、なんだったっけ…忘れちゃった」

絵里「もう、なんなのよ。思わせぶりね」

希「あ、せや!キャッチフレーズのこと…まだ考えてないんと違う?」

にこ「そういえばそうねー…。けど、なんだか掴めてきそうじゃない?」

穂乃果「えっ…」

真姫「そうね…。なんとなく、喉のところまでは出てきそうな感覚があるんだけど」

花陽「出てくるような…」

凛「来ないような…」

海未「もうちょっとで、そうだ!ってなりそうなんですけどね」

穂乃果「そうかなぁ…」



神田明神


穂乃果「はぁっ…、はぁっ…!!」タッタッタッ…!!

ことり「はぁっ…、はぁっ…!」タッタッタッ…


海未「はい、穂乃果とことりもゴールです」

穂乃果「さ、さすがに…お餅付いた後だとキツいね…。って、どうしてお餅付いたあとに階段ダッシュなんかやってんだろ…」

海未「でも穂乃果は自己ベスト更新ですよ!」

穂乃果「え?マジで…?そんなに本気出したつもりなかったのになぁ…」

穂乃果「でも、それ聞いたらやる気出てきた!よぉし、もういっちょやるぞー!」

ことり「はぁ…はぁ…。あ、でも…その前に水分補給したほうがいいと思う…」

海未「そうですね。こまめな水分補給が大切です」

穂乃果「んー…そっか…。じゃあ水飲み場行ってくる」

穂乃果「ごくっ、ごくっ…」

穂乃果「ぷはぁっ…。ふぅ…」


穂乃果「…」スタスタ…

穂乃果「…あれ?なんか…やっぱり…」

穂乃果「うーん…」

穂乃果「…ん?」チラッ



穂乃果「これ、絵馬…?」

絵里「すごい数ね…」

海未「お正月明けですからね」

穂乃果「ん?これ…音ノ木坂の生徒の…」

海未「こっちもです!」

ことり「あ!見て!」


『アネックス1号が本大会でやらかしませんように!! 雪穂』

『大会の日 晴れますように!! 亜里沙』



穂乃果「…」



(雪穂「危なっかしい、頼りない、ハラハラする」)

(雪穂「でもなんか心配になっちゃうんだよね」)


(亜里沙「……がケガしたら大変!!」)



穂乃果「…あっ!」

穂乃果「そっか!!わかった!!」

穂乃果「そうだ!これだよ!!」

にこ「はぁ?なによいきなり…」

穂乃果「アネックス1号の原動力!なんで私たちが頑張れるか、頑張ってこられたか!」

海未「…?そんな話、してましたっけ…?」

穂乃果「アネックス1号って、これ…」



(穂乃果「そっか!!わかった!!」)



穂乃果「…っ!!?」



(穂乃果「そうだ!これだよ!!」)

(にこ「はぁ?なによいきなり…」)



穂乃果「…違う」

一同「えっ?」

穂乃果(知ってる…)


(穂乃果「……ってこれなんだよ!!」)

(花陽「これが?」)

(穂乃果「うん!一生懸命頑張って、それをみんなが応援してくれて…」)


穂乃果(私はこの先、なんて言って…)

穂乃果(誰が、なんて答えて…)

穂乃果(どういうことになるか、知ってる…)


穂乃果「違う…違う、違うっ!!」

海未「ほ、穂乃果…?どうしたんですか…」

花陽「いきなりうずくまっちゃった…」


穂乃果(知らない…)



(雪穂「危なっかしい、頼りない、ハラハラする」)

(雪穂「でもなんか心配になっちゃうんだよね」)


(亜里沙「……がケガしたら大変!!」)



穂乃果(私が覚えてる過去で、雪穂も、亜里沙ちゃんも…)

穂乃果(『こんなこと、言ってない…!』)



(雪穂「若年性健忘症を本気で疑うレベル」)

(雪穂「常に夢を見ながら生きてるんじゃないか、みたいな。あ、眠って見る方のやつね」)


(亜里沙「亜里沙のおもちゃに傷が付いたら大変!」)



穂乃果(私の知ってる過去は、こうなのに…)

穂乃果(じゃあこの…)

穂乃果(この『記憶』は、何…?)

穂乃果(今まで私は、私がやってきたことは……!)





(雪穂「何か不思議な力でも働いてんじゃないの?」)





穂乃果「っ!!」

穂乃果「あ…、ぁ…!」

真姫「穂乃果…?」

希「穂乃果、ちゃん…?」

凛「ど、どうしちゃったの…?ぽんぽん痛いの?」


穂乃果「こんなの、違う…!」

穂乃果「違うんだ…!!」

穂乃果「…」

ことり「ねぇ、穂乃果ちゃん…何があったの?急に……」

穂乃果「…どうして、今まで気付かなかったんだろう」

海未「え?」

穂乃果「私たち…都合良すぎだよ…」

穂乃果「なんでここまで、来れたのか…」

穂乃果「どうしてみんな、応援してくれたのか…」

穂乃果「…なんで、一瞬でも疑問に思わなかったのかな」

にこ「アンタ、何を言って…」

穂乃果「私たちさ、今まで…たくさんの変なことやらかして、それでもなんやかんや…」

穂乃果「そう、なんやかんや、進んでこられたよね」

希「えぇっと…」

真姫「いきなり何を言い出してるのよ?」

穂乃果「普段頭のおかしい海未ちゃんも、歌詞になるとホンキになって」

穂乃果「物覚えの悪い私たちが、ダンスや歌は完璧に踊れる、歌える」

穂乃果「でもこれって、おかしいよ…」

花陽「おかしい…?」

穂乃果「都合が良すぎるんだよ!」

穂乃果「まるで私たちが成功するかのように、レールが敷かれてる…!」

穂乃果「うぅん、それだけじゃない!今ここでこうして、神田明神の絵馬を発見することだって決められてる!」

穂乃果「私が水を飲まなかったら、ここをチラリと見ることもなかったかもしれない!」

穂乃果「でも、ことりちゃんや海未ちゃんが水分補給を勧めた!他にも…」

穂乃果「私やみんなが何か変なことをおっぱじめようとしても、他の誰かが急にまともになって筋を戻す!」

穂乃果「歌詞がメチャクチャで!ライブ中に観客の前でおもらしをしようが!私たちはラブライブの予選に勝てた!」

穂乃果「こんなの絶対におかしいよ!おかしすぎるよ!!」

穂乃果「全部…、決められてるんだよ!この世界は!!」

絵里「…穂乃果、あなた…なにが言いたいの…?」

穂乃果「デジャヴるの…。まるで、前にも一度同じことがあったような…」

穂乃果「…うぅん、間違いなく。一度、私は、私たちは同じ経験をして……」

穂乃果「そしてそれと同じ道を、それることなく…それたとしても強引に押し戻されて進んできた」

穂乃果「私たちが成功する未来に、ゴールに向かうように」

穂乃果「これは…定められた出来事…」

穂乃果「この世界は……、やり直されている世界なんだ…」


一同「!!」

絵里「やり直、されている…?」

凛「ち、厨二病発症しちゃったの、穂乃果ちゃん…?」

穂乃果「違う…。そうじゃないの…本当なの!」

穂乃果「今日だって!お餅つきなんてするつもりなかったのに…お母さんが勝手に用意してくれた」

穂乃果「目的がないから誰も呼んでないのに、結局はみんなが集まってくれた」

穂乃果「冬休みでお正月明けてすぐなのに、呼んだほとんどの人になんの予定もなくて」

穂乃果「そして、図ったかのように用意されたお餅は全部なくなって…」

穂乃果「…全部、そうなるように決まってたからなんだよ、これ」

花陽「か、考えすぎじゃないかなぁ…」

にこ「そうよ!偶然よ偶然!」

穂乃果「偶然じゃないよ!」

穂乃果「私、この先どうなるのか、少しだけわかるの」

海未「えっ…」

穂乃果「私がね、『アネックス1号ってこれなんだよ!!』って言ったら…」

穂乃果「花陽ちゃんが、『これが?』って言うんだ…」

穂乃果「それから私が、『うん!一生懸命頑張って、それをみんなが応援してくれて…』って続いて」

穂乃果「私たちが…アネックス1号…うぅん」

穂乃果「『μ's』が、応援してくれているみんなによって支えられている、ってみんなが気づいてくれる」

穂乃果「そういう、未来がわかる」

真姫「…μ's」

希「μ's…うっ…!」

希「…なんかうちも、そんな感じ、してきた…」

希「仄かに、そういう記憶…」

真姫「…私も、ほんのちょっぴり」

ことり「え、嘘…」

穂乃果「どういう理屈かは知らないけど、私には未来がわかって…そして、これまでのことは、既に一度起こったことだって、わかる」

穂乃果「これから先どうなるかは、まだ完全にはわからない…でも、きっと私たちは同じ過程と結末を繰り返す」

穂乃果「そう、決められているんだと思う」


一同「…」


海未「…確かに」

海未「Snow halation…、無理やり歌詞を詰め込んだとはいえ、あれは常人には理解不能な歌詞でした」

海未「A-RISEは不祥事があったから楽勝ではありましたが、Midnight Catsのライブも、かなりのものだったと思います」

海未「…それなのに、私たちが優勝して…」

絵里「もしかしたら…A-RISEがやらかさなければ私たち、優勝できてなかったのかも」

絵里「だからこそ、A-RISEは落ちるところまで落ちた。私達を成功に導くために」

凛「凛たちを成功させる運命…」

凛「それに凛たちは、操られてるって、こと…?」

穂乃果「…」


真姫「…仮に、それが本当だとして」

真姫「だけどそれは、私達を成功させてくれるんでしょ?」

にこ「そ、そうよ!まだどうなるかわかんないけど、ラブライブ、優勝できるのが決まってるのなら…」

にこ「そんなの最高じゃない!なにがいけないって言うのよ…!?」

穂乃果「…」

ことり「穂乃果ちゃん…」

海未「穂乃果…」

穂乃果「…うよ」

にこ「えっ…」

穂乃果「違うよ…」

穂乃果「そんなの、私たちじゃ、ない…!」

穂乃果「今までやってきたこと、全部否定されてるのと同じだよ!」

穂乃果「私たちの表現しようとしたこと、頭をひねって生み出したもの」

穂乃果「それは全部、前の私たちが作ったもので…」

穂乃果「今の私たちの気持ちなんて、全部全部…無視されてるんだ…!」

にこ「あ…っ」

穂乃果「ちがうよっ!私が目指したいのは、そんな…そんなスクールアイドルじゃないっ!」

穂乃果「ほうっておいても優勝できるスクールアイドルが、私たちの叶えたかった夢なの!?」

穂乃果「そんなものに、感動なんてないよっ!!」


一同「…」


穂乃果「…これは、私の、私たちの夢」

穂乃果「運命って名前の神さまに、いいように作られるストーリーなんかじゃない…!!」

穂乃果「誰かに叶えられる物語なんていらないっ…!」

穂乃果「これはっ…!」

穂乃果「私が、私たちが…!」




穂乃果「みんなで叶える物語なんだっ!!」

数日後


穂乃果「…」


海未「…まだ、見ていたんですか」

ことり「もうみんな、行っちゃったよ」



穂乃果(電光掲示板に映し出される、ラブライブ出場チームの面々)

穂乃果(そして、その下には各チームのキャッチフレーズが)

穂乃果(エントリーNo.11、アネックス1号)

穂乃果(その下に書かれた文章)

穂乃果(『みんなで叶える物語』)

穂乃果(これもきっと、誰かに定められた運命なのかもしれない)

穂乃果(こうなるように、決まっていたのかもしれない)

穂乃果(…でも、私たちの決意は違う)

穂乃果(このキャッチフレーズに込められた思いは、きっと前の私たちとは別のもの)

穂乃果(だから、私たちは…)


海未「穂乃果」

穂乃果「…海未ちゃん」

海未「『失敗する運命』に立ち向かうのは、とても辛いものかもしれません」

海未「…でも、穂乃果、あなたは」

海未「今から、『成功する運命』に立ち向かおうとしているのです」

海未「それが、どういうことかは…」

穂乃果「…うん、わかってる」

穂乃果「でも、決めたから」



穂乃果(この先の未来を、変えてみせる)

穂乃果(それが私たちにとってどういうものなのかは、まだ、誰にもわからないけど)





うろライブ! 第十話

おわり

凛「な、なんぞこれは…」

真姫「いきなりシリアスムードになっちゃったわね」

凛「どどど、どうなっちゃうの!?成功する未来に歯向かうってそれ…」

凛「まさか、ラブライブ優勝できない…!?」

真姫「優勝、ということだけが前の結末というわけじゃないわ」

真姫「もっと何か…根本から覆るような何か、を目指すのかもしれないわね」

凛「はぁ…。よくわかんないにゃ」

凛「というか穂乃果ちゃんのアレは薬の効果が切れ始めている、ってことなのかな?」

真姫「まぁ、そういうことにしておきましょう」

真姫「そもそもこういう話にしようと考えたのは十話の二つ目の更新が終わった後だったし」

真姫「つまるところこの先何も考えてないわ」

凛「なんだって」

真姫「だから設定とか完璧にガバガバだから、あまり突っ込まないでね」

凛「はぁ…」

真姫「…と、言うわけで、次回の忘却安価と行きましょうか」

凛「え、もう薬の効果は切れかけているのでは」

真姫「劇中の描写的に思い出しかけているのは穂乃果くらいでしょ」

真姫「私や希も多少思い出してはいるけど効果が切れた、ってほどではなさそうだし」

真姫「運命に立ち向かおうとしているのに仲間の記憶はアレやコレやで穂乃果が焦る様子を描くのも悪くないわ」

凛「10話にして穂乃果ちゃんは1期の希ちゃんなポジションになっちゃったんだね」

真姫「当初の予定ではシリアスなんて一切考えずに最後までアホなノリで突っ走る予定だったけど」

真姫「まぁ思いついたものは仕方ないわ。面白くなろうが駄作になろうが、そういう運命だったと諦めましょう」

凛「穂乃果ちゃんは運命と戦う気満々なのに真姫ちゃんは諦めるのか…」

真姫「じゃ、次回の安価対象だけど…」

凛「次回は3年生をどうこうみたいな話だったっけ」

真姫「じゃあその3人で」

凛「うわテキトー」

真姫「その3人はあまり忘却対象になってないのもあるしね。ちょうど…あ、やっぱなし」

凛「は?」

真姫「凛がまだ一回だけだったわ。それに反してにこちゃんが4回だから…」

真姫「にこちゃんOUT凛INにしましょう」

凛「とんだとばっちりだにゃ…」

真姫「じゃ、そんなわけで今回の西木野☆星空シアターはここまで!」

凛「次に今この世界は一度やり直されていると気づくのはあなたかもね?」

真姫「え、そうなの?」

凛「さぁ」

真姫・凛「「まじ☆えんじぇー!!」」



絵里が忘れること >>132

凛が忘れること >>134

希が忘れること >>136

亜里沙を忘れる

諦めること

訛り

はいこんばんは!!!7話の展開がなんにも思いつかないからクリニックやります!!!!
安価には皆さん是非奮って参加してね!!!!!

真姫「ハーイ。西木野☆星空クリニック院長のドクター真姫よ」

凛「べーたかよちん!ナース凛です」

真姫「今日はまたもや唐突に話の間に突っ込まれしクリニックということになるわね」

凛「どこまで無茶ができるか不安だにゃ」

真姫「あ、そうそうそれとね」

凛「何さ」

真姫「前回のうろライブ!の補足をしておきたいんだけど」

真姫「私たちのこの世界は過去をやり直そうとするとほぼ必ず同じ結果が待っているという設定なの」

真姫「某シュタインズなんたらで言うところの既に観測された未来、っていうのかしら」

真姫「一度起こったという事実を変えるには未来から来た人物、または未来の記憶を持つものが特定の行動をしない限り不可能なのね」

真姫「だからうろライブ!世界のμ's、もといアネックス1号が何してもここまで勝ち上がる運命というのは決定していたってことなのよ」

凛「なんかいきなり本格派SFみたいな設定がぶち込まれたにゃ」

凛「待って待って。じゃあその設定で言うとさ…」

凛「1期の『もしかしたらやり直してもうまくいかないかもしれない』って真姫ちゃんの警告はなんだったのって話なんですが」

凛「過去に戻ってもいつもの調子でいれば確実にみんな揃ってたってことでしょ?警告の意味ないんじゃ…」

真姫「それはほら、穂乃果を焚きつけるための方便ってやつよ」

真姫「あのまま過去に戻ってもなんの危険性もないなんて言っても話が盛り上がらないじゃない!」

凛「穂乃果ちゃんの決意とはなんだったのか…」

真姫「1期のことりが留学するという確定した未来が退学に変わってしまったのも、未来の記憶を持つ希が手紙を破棄してしまったから」

真姫「もし手紙を破棄しなければカンニングは見つかることもなくことりは留学することに、ってなってたのね」

凛「手紙を燃やさない限りはカンニングはバレないってこと?」

真姫「絶対ってわけじゃないけど、そういうこと。バタフライエフェクトってやつね」

真姫「…と、よし、これで前作との矛盾点的なものはないはずよ!たぶん」

真姫「ファッションショーでのセンターが凛から私に変わってるとか細かい事実はもうなんかどうでもいいのよ」

凛「良くないと思います」

真姫「問題なのはラブライブ関連の一点に関してはほぼ変えられない未来っていうことなのよ!」

真姫「何もしなければ確実に優勝する未来…、それを穂乃果たちはどうやって自分たちの夢を叶える未来へと変えていくのか…」

真姫「次回の展開が楽しみね!」

凛「なんか期待を持たせる風にはぐらかして締めやがったにゃこいつ」

真姫「さて、長話も済んだところでクリニックをやっていきましょうか」

凛「はいはーい。それじゃ西木野☆星空クリニック、開院にゃー!」

ここは星の見える丘。そこに建てられた一軒のクリニック。
今日もふたりの女の子が何やらおかしなことを繰り広げようとしています。


真姫「ふぅ…。今日もスクールアイドルの練習で身体が凝ったわね…」

凛「そだねー」

真姫「でも、弱音なんて吐いていられないわ!私には役目があるんだもの!」

凛「うんうん」

真姫「それに、あなたがいてくれたら私…、頑張れるって思うの」

凛「へー」

真姫「だから…これからも一緒にいてくれるわよね?ねぇ…」


真姫「モスちん♪」



モスラかよちん(以下モスちん)「…」

真姫「うんっ、花陽、真姫ちゃんとずっと一緒だよー(裏声)」

真姫「あぁっ!モスちんはなんて可愛いのかしら!ささ、今日も一緒にお風呂に入りましょう」

モスちん「…」

真姫「わーい、お風呂。花陽、お風呂だいすきー(裏声)」

真姫「うんうん!大事なところまできれーいに洗ってあげるからねー♪」

凛「…」

真姫「…何見てんのよ」

凛「…別に」

真姫「そういうわけだから、お風呂言ってくるわ。長くなるから間を持たせておいてね」スタスタ

凛「え、ちょっ…」

凛「…行っちゃったし」

凛「なんてこったい…。まさか真姫ちゃんが…」

凛「信じてプレゼントした真姫ちゃんがモスラかよちんのあまりの愛くるしさにドハマリして裏声ロールプレイを堂々と見せつけるようになるなんて…」

凛「こんなことになるなんて完全予想外だし…くっ」

凛「しかも一人で間を持たせるってどうすればいいんだにゃ…えーっと、えーっと」

凛「こ、こうしている間にも読者は凛のあたふたしている態度に愛想をつかせて去っていこうとしているにゃぁ…!」

凛「何か彼らを引き止めるとてつもなく面白いことをしなければ…!うぅぅぅぅぅん…」

凛「よ、よし!じゃあ凛、>>150をしてみんなを笑わせるにゃー!」

かよちんを呼んで漫才

凛「よし!かよちんを呼んで漫才をしよう!」

凛「というわけでかよちん、どうぞ」

花陽「あれっ!?私さっきまで部屋でベンチプレスしてたのにいつの間に…!?」

凛「かよちんがいつの間にかガチムチぼでーを目指していたにゃ…」

凛「かよちんかよちん!そんなことより凛と漫才しよ!」

花陽「漫才…?そんないきなり言われても私漫才とかわかんないし…」

花陽「漫才ってよく知らないけどあれでしょ?えぇっと…」

花陽「古来の萬歳を元にし愛知県の尾張万歳、三河万歳の影響を受け、日本の関西地方で独自に発達したとされる、主に2人組で披露される演芸・話芸で、2人の会話の滑稽な掛け合いの妙などで笑いを…」

凛「めっちゃ知ってるじゃん!まるでウィキペディアを見たかのよう!」

花陽「ふー、お客さん。どちらまで?」

凛「…は?」

花陽「んんっ…!お、お客さん、どちらまで?」

凛「まさかなんの脈絡もなくコントに移行しようとしている…?!いやいや流れってものがあるでしょ!」

凛「漫才に前向きなのはありがたいけどそんなこと急にやられても対応できないよ!」

花陽「はぁ…。仕方ないなぁ…」

花陽「私ねー、タクシーの運転手になるのが将来の夢なんだー」

花陽「お客さん、どちらまで?」

凛「なんだその取ってつけたようなクソみたいな前置きは…」

凛「…もういいにゃ。十分間は取れたから帰っていいよ」

花陽「え、酷い…。結局タクシーコントはやらないんだ…」

花陽「えーい、もうやめさせてもらうよー!どうも、ありがとうございましたー、えへへへ」

凛「はい、ありがとうございました」

花陽「うん、それでこれから私どうし」シュンッ

凛「かよちんには元いた場所にワープして帰ってもらいました。っと、さて、漫才チックな何かが済んだところで…」

凛「いよいよ今回の話の本題に入ろうと思うの」

凛「うろライブ!の合間に話したとおり、実はあのモスラかよちんフィギュアはただのフィギュアじゃないんだにゃ…」

凛「真姫ちゃんはそうとは知らず病的なまでにあの子を愛してくれているけど…」

凛「実はあのモスちんフィギュア…、>>155という機能が搭載されているのだにゃ!」

見過ぎると周りの人をモスラだと思い込んでしまう

凛「実はあのモスちんフィギュア…、見すぎると周りの人をモスラだと思い込んでしまう機能が搭載されているのだにゃ!」

凛「あのモスちんだけでなく、他の人の顔も全てモスラに…!」

凛「想像しただけで恐ろしい機能だにゃ…!!」

凛「ふふふ、その恐ろしすぎる機能に絶望した真姫ちゃんが凛に助けを求める…!」

凛「『凛、助けて!あなたしか頼れる人がいないの!』」

凛「そうやって恒久のりんまきワールドが展開されるという寸法にゃ。ぬふふ」

凛「おや、そうこうしているうちに真姫ちゃんがお風呂から上がってきたにゃ」

真姫「お先。冷めないうちに凛もお風呂入っちゃいなさい」

凛「うん」

真姫「さ、部屋着に着替えましょうねー」

真姫「真姫ちゃんありがとー(裏声)」

凛「…」

凛「…でもそろそろ効果があってもいい頃だと思うんだよなぁ」

凛「たぶん30分くらい凝視してるだけで効果は発揮されるはずなんだけれど」

凛「不調か…?ち、ちょっと確かめてみるにゃ。真姫ちゃーん!」

真姫「ん?どうしたのよ。さっさとお風呂入りなさいよ」

凛「うん、入るけど…それより聞きたいことがあって!」

真姫「聞きたいこと?」

凛「そう…えーっと…その…」


凛(しっかしストレートに凛のことモスラに見える?なんて尋ねたら何か仕込んでるのバレバレだしなぁ)

凛(遠回りに効果を確かめるような質問って何かないかな…)


真姫「…なによ黙りこくって。何もないなら部屋に戻るわよ。モスちんも裸で寒がってるし」

凛「わわっ!ちょっとまって…うーんと、そうだなぁ…」

凛「じゃあその…凛のこと>>159?」

愛してる?

凛「凛のこと愛してる?」

真姫「…は?」

凛「あっ」


凛(し、しまったぁー!凛はなんて質問を…!)

凛(急いで答えたせいで欲望が前面に押し出されてしまった…!)

凛(こんなんいきなり聞かれたとかまじ☆ドン引きされるに決まってるにゃ…!!)


真姫「…凛」

凛「あーっと!い、今のは違くて!そ、その…つい本音が…じゃない!」

真姫「…決まってるでしょ」

凛「へ?」

真姫「愛してるわよ」

凛「」

真姫「こうして二人でこの場所にいられる、ってことだけで、私にとってはこの上ない幸せなんだから」

真姫「そんなの、言うまでもなく伝わってるって思ってたけど…違ったかしら?」

凛「ま、真姫ちゃんっ…!」

真姫「…いえ、そうね。言葉にしなきゃ、伝わらないことだってあるものね」

真姫「だったら私、今ここではっきり言葉にして伝えるわ」

凛「お、ぉぉ…!」ドキドキ

真姫「…愛してる。大好きよ、この世界の誰よりも」

凛「ま、真姫ちゃぁぁぁんっ…!凛も…!!」

真姫「いつまでも、一緒に居ましょうね…モス…間違えた、凛」

凛「」

真姫「…も、もー!恥ずかしいじゃない!あー顔真っ赤だわー!さーてと、早く部屋に戻って服着なきゃー!いつまでも全裸のままは…」

凛「…」



凛「お風呂上がってから今まで服着てなかった事実にも驚かされるけど…」

凛「…凛のことをまじまじと見つめながらあいつ…モス、まで言ってやがったにゃ」

凛「おそらくこれは…既に凛のことはモスラ顔に見えてしまっているにゃ!」

凛「そしてその上で…放置している!なんにも困ってない!」

凛「おそらくモスちんのことを愛しすぎたせいでモスラ顔に抵抗がなくなっているんだにゃ…こいつぁやべぇ」

凛「仕方ない、こうなれば秘密兵器…真姫ちゃんの部屋の隠しカメラ&盗聴器を使ってモニタリングするにゃ…!」

凛「今まで夜のオカズにしか使用してこなかったこれをこういうふうに使う日が来るなんてね…」

凛「さーて、部屋に戻った真姫ちゃんは今なーにをしているのかなー…はっ!」

凛「どうやら真姫ちゃんは現在…>>161しているようだにゃ!」

ビールマンスピン

凛「真姫ちゃんは自室でビールマンスピンをやっているようだにゃ」

凛「…室内で一体何をやっているんだあいつ」

凛「ちなみにビールマンスピンというのは…ググれ」

凛「しかし綺麗なポーズだにゃ…。見事な反り具合で股間が嫌というほど強調され…」

凛「…っは!ちょうどカメラの位置に真姫ちゃんの股間がドアップで映し出され…あぁっ!逸れた!」

凛「ヌオォォォッ…!!もっと見せ…と、そんなことしてる場合じゃないんだった」

凛「この麗しい股間も惜しいけど真姫ちゃんの様子をモニタリングしてどうにか凛を頼ってくれる糸口を探さないと…」

凛「あ、回り終えたにゃ。なにがしたかったんだ…」

凛「…お?モスちんと何かを話し始めたにゃ。えぇっとなになに…?」



真姫『ふぅ、モスちんお待たせ。お風呂上がりはこうして髪を乾かさないといい感じのくるっ毛にならないからね』

真姫『忘れて寝ちゃってストレートヘアーにでもなっちゃったら無個性なんてものじゃないわ』


凛「どうやらあの行為は翌日の髪型のセットを引き立たせるためだったようだにゃ」

凛「…ストレートな真姫ちゃんも見てみたいんだけどなぁ。あとストレートが無個性とか偏見すぎる」


真姫『ふふ、モスちーん。あぁ、この顔のモフモフ具合が堪らないわね…』

真姫『特にお風呂上がりからの乾いたあとのモフ具合と言ったら神の領域と言っても過言ではないわ』

真姫『いつまでも触ってても飽きない…。はぁぁぁ…』


凛「くそっ…!確かにモスちんの顔の部分は本物のカイコガの毛を用いて作った特注品だけど…」

凛「こうして画面越しに見ているだけでもふわふわしてて気持ちよさそうにゃ…。もう一個作っておけばよかった」

凛「でもリアルな質感を追求しすぎたせいで真姫ちゃんがモスちんにハマってしまったのだとしたら墓穴を掘ったにゃ…」


真姫『…あぁもう、我慢できないわ。モスちん…!ちょっとくすぐったいけど…』


凛「わっ!ま、真姫ちゃんが…!」

凛「モスちんを>>163し始めたにゃ…!?」

自分の性器に出し入れ

凛「モスちんを自分の性器に出し入れし始めたにゃ…!?」

凛「いわゆるオナなんとか!もしくはマスターベーなんとかをやり始めた!」

凛「だ、ダメだにゃ…!ここから先は健全なお子様には見せられないピンクなシーンが…!」

凛「みんなにも見せたいのはやまやまだけどここは心を鬼にして…」

凛「ヘッドホンをつけて凛だけが楽し…観察することにしよう」

凛「モニターの向こうの皆さんは凛の反応でどんな感じかを想像してね」

凛「…っと、わっ…。最初は小さいお手手のところを使って…えぇっ!わわ…」

凛「おぉぉ…なるほどそういう使い方が…」

凛「あ、次は足の部分で…は、早いにゃ…。おほっ…!ちゅぷちゅぷ微かに音が…ゴクリ」

凛「濡れてきて…おぉっと!?モスちんの口の部分を押し付け…うわっ…オイオイ…」

凛「うわー…えぇ…うわー…。へぇぇ…」ゴソゴソ…

凛「なるほどなるほど…」クチュクチュ…

凛「うっ…!つ、ついに…?行っちゃう?行っちゃう系?」クチュクチュ…

凛「い、行った!ブチ込んだにゃ!」クチュクチュクチュ

凛「わー…激し…んっ…、すごい…」クチュクチュ

凛「気持ちよさそ…はわぁ…」クチュクチュクチュ…

凛「んっ…!んんっ…!あ、ふっ…!!はぁっ…、はっ…!」クチュクチュクチュ

凛「あぁっ、ダメっ…!!んぎっ…、きっ…、あっ、ぁ…!たっ…!」ビクンビクンッ

凛「…はぁ、…はぁ…。ま、真姫ちゃんも…お、終わったようだにゃ…」

凛「ふぅ…。…っは!ヤベェ見られてるの忘れてた…!」

凛「あの、えっと…り、凛は何もしてないにゃ!ホントホント!」

凛「そ、それにしてもモスちんをオナペットに使うなんて真姫ちゃんはなんてはしたない子なんでしょう!」

凛「でもこれはつまりモスちんを性的対象として見ているということ…」

凛「真姫ちゃんは戻れないところまで行ってしまっているのかもしれぬね…」

凛「あ、ヘッドンホホ差しっぱなしだった。よいしょ」ヌポッ



真姫『…はぁ。ごめんねモスちん…。苦しかったわよね…』

真姫『でも、この胸の高まりはこうでもしないと抑えられなくて…』

真姫『だって、あなたを見ていると…』

真姫『…モスラ顔になっちゃった凛をどうしても想ってしまうから』


凛「なっ…!」


真姫『はぁぁ…。モスラ凛可愛すぎるわ…。モス凛フィギュアもほしいくらい』

真姫『でもそんなこと凛に言えるわけないし…。それに私が本当にほしいのはフィギュアなんかじゃなくて…』

真姫『…なんてね。何言ってるんだろ、私…』


凛「ま、真姫ちゃん…!真姫ちゃんはモスラかよちんフィギュアを愛でていただけじゃなくて…」

凛「モスラ顔になっちゃった凛のことを想いながら行為に及んでいたということ…?」

凛「つまり凛にその…にゃんにゃんされているのを想像して…はわわっ!」

凛「は、はしたなすぎるにゃ…!そ、そんな真姫ちゃんには…!」

凛「凛から>>166というお仕置きが必要かもしれないね…!」

さっきの行為の映像を見せつける
でも後でモス凛は作ってあげる

凛「真姫ちゃんには先ほどのモスニー映像を見せつけてやるにゃ」

凛「自分がどれだけ恥ずかしい行為をしているかを実感してもらわないと」

凛「己の行為の愚かしさに気づいた真姫ちゃんはもうモスちんフィギュアで行為を行うことはないはずにゃ」

凛「そして自らの行為に悔いた真姫ちゃんを慰めるかのように後々モス凛(鎧モスラver)をプレゼントしてあげるのだ」

凛「『でも絶対モスニーはダメなんだからね!』って言ってプレゼントすればこれはもうモス凛共々凛に夢中になる他ない」

凛「ふふふ…完璧な作戦…じゃなくてお仕置きだったにゃ」

凛「じゃあ思い立ったがよしにち!早速真姫ちゃんの部屋に突入にゃ!」



バタンッ!!

凛「真姫ちゃん!」

真姫「ひっ!り、凛!?開けるときはドアをノックしてっていつも…」

凛「そんなことよりこれを見るのだ!」ガチャリッ

真姫「これって…なにそのVHS…いつの時代の録画機器よ…」

凛「いいから!ほら!」

真姫「…えっ!こ、これって私の部屋…!?」

真姫「しかも、さっきの私の行為が…!!ひゃぁぁぁっ!!」

真姫「み、見ないで!見ないで!!」

凛「いやもうとっくに見ちゃってるんだけどね」

真姫「あぁそう…って!なんでこんな映像があるのよ!?」

真姫「ま、まさか隠しカメラ…!」

凛「そうだよ。真姫ちゃんの日々の行動を逐一観察して夜のオカズにするために設置してたの」

真姫「あんた最低な性癖ね…」

凛「真姫ちゃんに言われたくないよ!まさか凛のプレゼントしたモスちんでオナニーなんて!」

真姫「ぐぬっ…し、仕方ないじゃない!かわいいんだもの!」

真姫「そ、それにその…」

凛「…凛のことを想って?」

真姫「そ、そんなことまで聞いていたのね!?くっ…なぜかあなたの顔までモスラに見えてきてしまって…」

真姫「モスちんの可愛さも相まってあなたがとても愛おしくて…ついやっちゃったのよ」

凛「そうなっちゃう気持ちもわからなくもないけど!でもこんなの恥ずかしいことなんだよ!」

凛「やるならもっと健全に自分の指でだね…」

真姫「…でも気持ちいいし。特に毛が」

凛「…」

真姫「中に擦れるときのザラザラ具合がたまらなくて…。一度やったらやみつきになっちゃったの」

真姫「でもそうよね。そんなのいけないことだわ。これに懲りたらもう二度とモスニーは…」

凛「え、待って待って。そんなに気持ちいいの?」

真姫「え?えぇ…、初めて入れてみたときはまさかと思ったけどこれがなかなか…」

凛「…」ゴクリッ

凛「あのー…」

凛「…一回、凛も試してみていい?」

凛「あっ…!あぁっ…!!しょ、しょこぉっ…!こしゅれ…んひぃっ!!」

真姫「うん、そう…もっと激しく…あは、すごぉい…」

凛「らめぇっ!!見られるのやらぁっ!!真姫ちゃんにトロ顔見られてぇぇ…ひ、ひぐぅっ…!!」

真姫「うぅん、見せて…。凛の一番気持ちいい時の顔…」

凛「ひぃっ…!ダメっ…!!だめぇぇっ!そんなに見られたらぁぁぁっ…!!凛、もう…」


(省略。続きはヴぇえええブで)



凛「はぁぁぁ…」ホッコリ

真姫「気持ちよかったでしょ?」

凛「ハンパねぇにゃ。まさかカイコガの毛がこんなにいいものだとは…」

真姫「やみつきになっちゃうのもわかる、でしょ?」

凛「…う、うん」

凛「で、でも!やっぱりモスちんでオナニーなんてダメ!凛が絶対許さないにゃ!」

真姫「えぇ…そんな。…でも、凛が言うなら…」

凛「そ、その代わり…」

凛「…今度、モス凛作ってあげるにゃ…。だ、だから、それで…ね?」

真姫「り、凛っ…!もうっ!かわいいんだから!」ギュッ

凛「んわぁぁっ!ま、真姫ちゃ…んふふふふ…」


凛(結局なんやかんやでりんまきワールドは形成されたにゃ)

凛(これで凛も真姫ちゃんも幸せ。幸せスパイラル~…)

凛(めでたしめでたし…)




おわり



凛(…と思っていた矢先…)



ピカァァァァッ!!


真姫「っ!?な、何この光はっ…!」

凛「これ…モスちんから発せられている!?」

真姫「モスちんが光ってる…!?これって一体…!!」

凛「わ、わかんない!わかんないけど…」

凛「な、なんだか大変なことになりそうな予感が…う、うわぁぁぁぁっ!!」



ピカァァァァッ!!!

パタパタ…


真姫「…」

凛「…」


モスちん「…」

モスちん「きゅぅぅ…?」


真姫「も、モスちんが…」

凛「宙に浮いてる…!?」

真姫「しかもちょっと喋った」


モスちん「…きゅぅ」


凛「これ…!モスちん…い、生きてる!?」

真姫「ヴぇえぇっ!?どういうことよ!?」

凛「ま、まさか…でもそんなはずは…」

真姫「な、何か思い当たる節があるの…?」

凛「か、仮説だけど…」

凛「真姫ちゃんと凛がモスちんをオナニーに利用したことによって…」

凛「ふたりの愛のお汁が混じり合い…モスちんの中に生命を誕生させた、とか…」

真姫「ナニソレ、イミワカンナイ!!」

凛「凛だってイミワカンナイ!!けど…それくらいしかこの現象を説明できないよ!」

真姫「説明できてないんだけど…。でももしそれが本当だとしたらこの子って…」

凛「凛と真姫ちゃんの…子供…?」


モスちん「…きゅ?」


真姫「…か、かわうぃ」

凛「ま、真姫ちゃん…!」

真姫「凛…!」


真姫・凛「「子育て、頑張ろう…!」」





次回のクリニックへつづく

真姫「…はい、今日はここまでね」

凛「なんという悪趣味なエンドだにゃ…」

真姫「いえ、つづくって言ってるからエンドではないけどね」

凛「まだやるの!?アホなの?!」

真姫「いいじゃない、モスちん可愛いし」

真姫「今度からクリニックはモスちん育成コーナーとしてやっていくのよ」

凛「もはやクリニックとしての面影がない…」

真姫「元からクリニックはどんなこともやっちゃうコーナーだったからなんの問題もないわね」

凛「いいのかにゃそれで…」

真姫「いいの。というわけで次回もモスちんをよろしくね」

凛「いずれ登場するであろうモス凛もよろしくにゃ」

真姫「じゃあ今日の西木野☆星空クリニックはここまで!」

凛「次にモスニーの虜になっちゃうのはあなたかもね?」

真姫・凛「「まじ☆えんじぇー!!」」

今日は前売り第二弾の発売日らしいけどもう第一弾持ってるからいいや
それよりも大切なものがあるんだ… じゃあもしライブ!第七話やっていきまし

真姫「今日はもしライブ!第七回ね」

凛「そうだね」

真姫「特に話すことはないからとっとと始めましょうか」

凛「…なんで前置き入れようと思ったの」

真姫「あ!でも前回のもしライブ!が面倒だわ」

真姫「一々見返して使えそうな台詞探しつつあらすじを説明するの面倒なのよね…長いから説明しきれないし」

真姫「だからもうこれからはなくそうと考えてるの。本編書く体力も削られるしね」

凛「…好きにすればいいんじゃないの」

真姫「というわけでこれからは前回のもしライブ!はカットね。この部分も楽しみにしてくれる人がもしいたのならなんかゴメン」

凛「いらぬ事情も明るみに出たところで!もしライブ!第七話…、スタートにゃ!!」



希の家


真姫(もう11月も半ば。にこちゃん復帰のために時間を要したとはいえ…)

真姫(私たちの活動を疎かにするわけにもいかない。今月も変わらず新曲を発表しないと)

真姫(部費も入って、今回の曲こそが全力のC☆cuteの曲となる)

真姫(衣装やダンスの打ち合わせもいつもより入念になるというわけね)


真姫「…そうね、その部分はもう少し派手に動いたほうがいいと思うわ」

海未『わかりました。ではそのように…ふわぁぁぁ…』

ことり『あれ、海未ちゃん…今のあくび?』

花陽『珍しいです…!』

海未『す、すみません…。そろそろ眠気が…』

真姫「でも最近は夜中の打ち合わせも連続しているし、みんなの疲労も溜まっているのは確かでしょうね」

真姫「眠たくて授業が疎かになるのも避けたいし、今日はこのくらいにしておきましょうか」

海未『了解です…。では、私はこれで…』

真姫「あ!でもまだ話したいこともあるし、明日の朝部室に…」

ことり『あれ?明日部室って…』

花陽『あ、そっか…。部屋、変わるんだったっけ』

真姫「あ…」


真姫(私たちの活動が認可され、部費も入ってきた結果)

真姫(今の小さい部室は改善され、多少大きめの部室が用意されることになった)

真姫(でもそのために明日の朝から業者の方がお引越しのために出入りしてて…)

真姫(両部室とも使えない状態なんだったわ)


真姫「…じゃあ仕方ないわね。明日は私の教室…E組に集合ってことで」

海未『わかりました。真姫の教室ですか…。ふふ、クラスメイトにどんな扱いを受けているのか、少し興味がありますね』

真姫「な、なによそれ…」

ことり『真姫ちゃんクラスじゃ浮いてたり~?』

花陽『そ、そんなことないですよ!意外とクラスではみんなの人気者で…』

真姫「意外ってどういうこと?…もう、早く寝る!じゃあね!」

花陽『あ、バイバイ!また明日!』

ことり『バイちゃ~』

海未『おやすみな…ふわわぁぁぁぁ~…』

真姫「さて…私も寝ないとね…」



リビング


希「お、真姫ちゃん。お話終わった?」

真姫「えぇ。終わったというより中断。続きは明日の朝ね」

希「毎日毎日大変やねー…。全部自分たちでやるっていうのは」

真姫「A-RISEには衣装や曲を作ってくれる人がいるものね」

希「スクールアイドル多しといえども曲から衣装から振り付けからステージまでぜーんぶ自分たちで作ってるグループもそうそういないんと違う?」

真姫「そうなの?」

希「うん。普通は曲やダンスを提供してくれるサポートがいるもんやけどね」

希「もちろんそれも全部学生が行うのが普通なんやけど」

真姫「サポートね…。でも作詞作曲衣装ができる子がアイドルならそれはそれで問題ないし」

真姫「振り付けも考えながら練習したほうが理解も早いし、ステージは私たちだけじゃなく手伝ってくれる人もいるし…」

真姫「それにサポートなら希、あなたがいるじゃない。私たちの体調管理もしてくれて」

希「ん?んー…、まぁ、うちにできることなんてみんなに比べれば安いものだけどね」

真姫「そう?…だったら、希もアイドル、やってみたらいいのに」

希「え、うちが?」

真姫「うん。今からでも大歓迎よ。むしろやりなさい!」

希「うちか…。うちが、アイドルね…」

希「んー…、ちょっと気になるところもある」

真姫「おっ」

希「でもナシっ!」

真姫「え!なんでよ…」

希「うちみたいなインドア派がアイドルなんて似合わへんよ~」

真姫「室内弓道場で部活をしている海未も含めてC☆cuteはみんなインドア派だと思うけど…」

希「そういえばそうかも。あ、でもでも!」

希「カードもうちに語りかけてるんよ。このグループには後ろで見守ってくれる人が必要や、って」

希「いわば縁の下の力持ち?それがないとC☆cuteはダメになってしまう言うてるし~」

希「だからうちはみんなを見守るオカン的ポジションがいいな~、なんて言ってみたり」

真姫「結局動きたくないだけでしょ。…はぁ」


真姫(本音を言えば無理やりにでも希をアイドルにしたいところだけど)

真姫(彼女にはまだ、本気でアイドルをやろうという心構えがない)

真姫(これまでの高校生活で、誰かを支えるだけだった希が、自分から動こうとするきっかけ…)

真姫(それがない限り、希をアイドルにするのは難しいのかも)


真姫「…いつかは来てくれると思うんだけどね」

希「ん?何か言った?」

真姫「なんでも。…もう寝るわ。歯磨いたらね」

希「はいは~い。真姫ちゃん疲れてるみたいやし、よーくおやすみね」

いよいよ、この日が来てしまった。


何日ぶりだろうか。


こんなにきっちりとした身なりになるのは。


新品の服に身を包み、髪も整えて。


外見の清潔な格好とは裏腹に、私の心はとても億劫だった。


できればこのまま二度と、外に出たくなかったけど。


だけど、せめて高校は卒業しろって両親がうるさいから。



「…はぁ」



重いため息が宙に舞う。


少し早いけど、そろそろ行こうかな。


いつまでも家にいるほうが、かえって憂鬱な気分になりそう。


一度行ってしまえば、きっと拍子抜けするほどなんてことないはず。


自分の部屋の扉を開けて、足早に階段を駆け下りて。


両親には顔もみせず、朝食も食べずに革靴に履き替える。


二人が嫌いなわけじゃないけど、もう気まずくてまともに会話もできない。


学校に言っても、誰かと話をするなんて出来やしない。


…いいんだ。私にとって、学校なんてもう…。


ドアノブに手をかけ、もう一度ため息。…もとい、深呼吸。


心の中で唱える。せーのっ…。


ガチャッ、という音を立ててドアが開き、外へと出る。


久しぶりに、外で青空を見たような気がする。


後ろでドアの閉まる音が聞こえる。


両親には、何も言えなかったけど、せめて。


私をずっと匿ってくれた、この家にだけでも出発の挨拶を。



「いってきます」

ジリリリリリ…



真姫「凛!急患よ!」

凛「え!?一体なにがあったの!?」

真姫「穂乃果が暴行にあって大怪我なの!」

凛「ぼ、暴行!?それはマジで大事だよ!病院に連れてったほうがいいって!」

真姫「ダメよ!こういう時でないと外科の真似事なんてできないわ!」

凛「なんて血も涙もないこと言うんだ!!凛もやる!」

真姫「えぇ、それでこそ我が右腕ナース凛ね!」

凛「それで、穂乃果ちゃんはどこ?」

真姫「えぇそこに…」



穂乃果「ぎゃああああ痛いよぉぉぉぉぉお!!やめてええええええ」

絵里「おーっほっほほ!あぁ、穂乃果を殴るのってなんて楽しいのかしら!もうやめられないとまらなぁい!」バッキバッキ



凛「うわぁぁぁぁ!!犯人までついてきた!!」

真姫「絵里!あなたが穂乃果をボッコボコにした犯人だったのね!酷い!」

絵里「なによ!文句言うならあなたもボッコボコにするわよ!」

真姫「ふん!やれるものならやってみるがいいわ!」

絵里「じゃあお言葉に甘えて。くらえ大型スレッジハンマー!」ブオンッ

真姫「ならばこちらは!スタースカイシールド!」ササッ

凛「え、凛の身体を掴んで何を」


ズゴォォッ!!


凛「ぐぎゃあああああ!!頭蓋骨が陥没した!?これは死んだわ」バタリッ

真姫「りいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃんん!!よ、よくも凛を…!」

絵里「やべぇやっちまったわ…。殺すつもりはなかったのに」

真姫「あんなゴリラも殺せそうなハンマー持ち出してよく言えたわね!もう許せない!」

真姫「あなたはこのスタースカイソードでズッコンバッコンに退治してやるわ!」

凛「それ凛の体なんですけどー」

絵里「そ、それは伝説の剣!スタースカイソード!そんなん持ち出されたらもう勝ち目はチカ…」

絵里「でも女には負けると分かっていてもやらねばならぬ時がある!うおおぉぉぉぉ!!穂乃果のアキレス剣!」

穂乃果「あ、足がぁぁぁぁぁぁ!!」

真姫「負けるかああああああああああああ!!!」




ジリリリリリリ…

早朝 UTX学院 1階

正門改札前



穂乃果「…」

穂乃果「…眠い」


穂乃果(生徒会長としての仕事に、朝の挨拶がある)

穂乃果(こうして毎日毎日、正門改札前で登校してくる生徒に対して挨拶をしなければならない)

穂乃果(中には軟弱な精神の、挨拶も返さない弱い心の人間もいるけど…仕事だし仕方ない)

穂乃果(けれど、連日のハードな練習のせいで最近少し日々の生活バランスが崩れかけているかもしれない)

穂乃果(今日は珍しく瞼が重くて…)


「…会長?」


穂乃果「…え」

生徒会役員A「会長…、寝てました?」

穂乃果「…寝てない」

生徒会役員B「ホントですかー?目、瞑ってましたけど」

穂乃果「寝てないから。無駄口挟まない」


穂乃果(…横でヒソヒソと、「顔赤くなってる」「意外と可愛いところあるんだ」なんて声が聞こえる)

穂乃果(ちょっと殴りたくなったけど、正直意識飛んでたところもあったし…私に過失がある。反省しよう)


穂乃果「おはようございます!」

女生徒「おはようございまーす」


穂乃果(眠気を払いのけるように大きな声で挨拶をする。すると…)


ビーッ!!

「えっ…、あれ…。うそ…」


穂乃果(けたたましい…ってほどじゃない警告音が正門に鳴り響く)

穂乃果(まさか不審者?と思いそちらを見ると、そうではなく、生徒が一人改札を通れないでいた)

穂乃果(時折電子生徒手帳のエラーや機器の不調などで改札を通れなくなる生徒がいるので、こういう時のためにも私たちはいる)

穂乃果(常に予備の外部者用の電子生徒手帳を携帯しているのだ)

穂乃果(すぐさま回り込んで外から声を掛けよう。もしこれが生徒の皮を被った不審者なら即刻退場願わなければいけない)


穂乃果「…どうしたの?」


穂乃果(何度も改札に生徒手帳をかざし、その度警告音を鳴らしあたふたする彼女の後ろから声をかける)

穂乃果(うつむきがちにこちらを振り向いた彼女の顔を見て私は…)



穂乃果「…ふぇ?」


穂乃果(長らく出していなかった、とても間抜けな声を出してしまった)

一年E組


花陽「むふふふふ…真姫ちゃんの椅子…真姫ちゃんの机~…」

花陽「すりすり、すりすり…」


ガチャッ

ことり「おはよー」


花陽「ふわぁぁあっ!!」

ことり「…あれ、花陽ちゃんだけ?」

花陽「う、うん…!まだ真姫ちゃん来てないみたい…!」

ことり「…今なんかしてなかった?」

花陽「何もしてないよ!?べべべ、別に真姫ちゃんの机や椅子に頬ずりなんて…」

ことり「…」


海未「おはようございます。…おや、花陽とことりだけですか?」


ことり「うん。まだ真姫ちゃん来てないみたーい」

花陽「な、なにしてるのかなぁ…」

ことり「私としては花陽ちゃんが何してたのかななんだけど」

海未「なにかしてたんですか?」

花陽「何もしてないしっ!」

海未「…必死感がひしひしと伝わってきますね」

ことり「えっ…!海未ちゃん今のダジャレ…!?」

海未「は?」

ことり「ひっし感が、ひしひし…ぷぷっ…!85点…!」

海未「…ことりのハードルは低いのですね」

花陽「こんな実りのない会話するより、早く昨日の続きがしたいなぁ」

ことり「は、花陽ちゃん結構辛辣…!」

海未「まぁ、私も同意見ですが…いつもは一番乗りしていてもおかしくないのですが…遅いですね、真姫」

花陽「何か厄介事に巻き込まれて、とかじゃなければいいけど…」

なんということだ。


まさか、こんなことになるなんて。


長らく使っていなかったせいで、壊れていたのだろうか。


まさか反応せず、立ちぼうけになってしまうなんて予想していなかった。


おかげで周囲の視線が痛い。痛すぎる。


初日から、こんな目に逢う、なんて…。



「どうしたの?」



急に背後から声をかけられ、心臓が跳ね上がる。


喉が狭まって、全身の筋肉がこわばる。


こんな大勢が見ている前で、誰かに話しかけられるなんて体験は。


もう何年もご無沙汰だと思う。


自分の鼓動が耳に痛い。誰かに脳天をライフルで狙われているかのような緊張ぶり。


ともかく、ずっとこうして固まってはいられない。何を言うかも決まらず、後ろを振り返る。


何を言われるのか、どう言い訳すればいいのか、脳内を様々なことがよぎる中。


向き合った相手が発した言葉が…



「…ふぇ?」



そんな素っ頓狂な声だったのだから、私も拍子抜けだった。


かと言って緊張が休まることはないけど。



「…あなた」



すぐに二の句が継げられる。何を言われるのか、不安でしょうがなかった。


たぶん何を言われても、まともに返せる気がしな…



「…何なの、そのメガネ」



べっ…!

「別に誰がメガネかけてようが勝手でしょ!?」



…反射的に、声が出てしまった。

絵里「ぐわあああああああああ!!!」

真姫「やったわ!暴行犯絵里を死闘の末やっつけた!」

絵里「ぐ、ぐぅぅうぅ…!けれど私を倒したとしてもすぐに第二第三の私がお前を倒す…!」

真姫「え、絵里ってばそんな魔王みたいに分裂する仕様だったの…?!」

絵里「ゴメン嘘付いた。後継者なんていないわ!いつでもぼっちよ!」

真姫「絵里…」

絵里「今回のこれだってあまりに寂しすぎてついつい手が出ちゃった系アイドルなの」

絵里「孤独が私を変えてしまったのよ。人ごみに流されて変わっちゃったのよ」

真姫「そうだったのね…絵里…。私ってばあなたって人を誤解していたみたい」

絵里「ま、真姫…!」

真姫「絵里…!これからは手を取り合って」


ズバッ!!


絵里「ごぴゅっ」


真姫「え、り…?」


ゴロンッ…


真姫「え、絵里の…生首が…!きゃあぁぁぁっ!」

希「…」

真姫「希…!あ、あんたがやったの…!?」

希「…真姫ちゃん」

真姫「許さないっ…!許さないわ希!彼女はやり直せたはずなのに…!」

希「真姫ちゃんっ…!」

真姫「彼女を殺した罪!贖ってもらうわよ!!」

希「真姫ちゃんっ!!」

希「早く起きてっ!!」



真姫「…んぇ?」

希「もうとっくに朝やよ!!ほら起き!!」

真姫「…あれ、今…もしかして…夢…?」

真姫「って!希!?今何時!?」

希「はい時計!」

真姫「…え、やばっ…!完全に打ち合わせに遅刻じゃないっ!?なんで起こしてくれなかったのよ!?」

希「さんざん起こしたっちゅうに!思ってたより疲れがたまってたんやね…」

真姫「や、や、や…!」

真姫「やらかしたあああああああああああああああああああああ!!!!!」

「…はぁ」



まさかメガネのことを言われるとは思ってなかった。初対面の人に。


相当おかしいのかな、私のメガネって…。


かなり高級なフレームなのに。デザイン気に入ってるのに。


レンズだってPCから発せられるブルーライトを遮断する目に優しい作りになって…どうでもいいわそんなの。


ともかくあのあと、あの声をかけてきた人は事務的な手続きで私に電子生徒手帳の予備を貸してくれた。


帰りまでに学内のオフィスで再登録をしないといけないらしい。


私に対して特に何も質問してこなかったのはありがたいけど、あっちもなぜか急ぐように説明して、すぐに持ち場に戻っちゃった。


変な声を聞かれたのが恥ずかしかったのかな。



「…っと」



先ほどの出来事を追想していたら、教室の前にたどり着いてしまった。


ここで、合ってるわよね…?


早めに来たけれどもう既に何人かが教室に集まっている。


もし何か言われたらどうしよう。


そんなことないはず、とわかってはいるのだけど、不安でならない。



「大丈夫…。大丈夫…」



顔を伏せて入れば、誰も私になんか気づかない。


顔も、きっと名前すら覚えている人なんていないだろう。


だから、大丈夫。


勇気を出して、教室のドアを開いて…。


そして、最初に出会った人とは目も呉れず、一目散に私の席へ…。



「あっ!おはよう!!」

「…はい?」



そ、そんないきなり元気よく挨拶されるなんて…予想外だった。


そして今更気づく。


私の席って、どこだ。

1年E組


海未「…遅い、ですね」

ことり「完全に遅刻ですなぁ~。これはキツいお仕置きが必要かも」

花陽「や、やっぱり前みたいに何か事故か事件に巻き込まれて…!わわわ…!」

海未「流石にそれはないと思いますが…」

花陽「でももう教室に人も集まってきたしそろそろ来ても…」

ことり「電話してみる?」

海未「そうですね…。一度真姫の電話に…」


「あっ!おはよう!」

「おっはよー!西木野さん!」


ことり「…ん?あ、来た!真姫ちゃんだ!」

花陽「え…、あ、ホントだ。おはよー!真姫ちゃん!」

海未「…こちらに気づきませんが」

ことり「何やってんだろう、真姫ちゃん。おーい、こっちだよー!」

海未「遅刻しているから気が引けているのでは?」

ことり「む!その可能性や高し!無理やり連れてくるしかないね!」

花陽「もー!真姫ちゃん!こっちこっち!」


真姫「…あ、あの」

海未「遅いですよ、真姫。どうしたんですか?」

真姫「えっと…ご、ごめんなさい」

花陽「ごめんなさいじゃわかんないよ。何かあったの?また事故に巻き込まれたとか」

真姫「え…その…あの…、な、何も…ない、です…」

ことり「…なんかいつもと様子が違うね。やっぱり何か隠してるー?」

海未「…はぁ。今更遅刻の理由など聞いていても仕方ありません。とにかく、早く昨日の続きと行きましょう」

真姫「…昨日?」

花陽「で、どこまで話してたっけ?」

ことり「たしかダンスの振り付けを変えてみようって話で…」

海未「あとは衣装の最終案でしたね。まだ私と真姫の分が未定で…」

海未「真姫はたしかことりの考えた衣装案をアレンジして今日までに持ってくるという話でしたが」

ことり「そうそう。早く出して?」

真姫「え…?な、なんの…話、ですか…」

花陽「いや、なんの話、って…だから衣装の話だって!もしかして、忘れちゃった?」

真姫「あ、あのぉ…衣装って…、なんの?」

海未「はぁ?ふざけているのですか?もう時間がないんですから早く!」

真姫「ほ、本当にわからなくて…」

海未「おふざけに付き合う余裕はありません!というかなんなんですかそのメガネは…」

真姫「だからメガネは関係ないでしょぉっ!?」

海未「っ!?」

ことり「…急に元気になったね」

花陽「やっぱり…、なんか変?」

何っ!?何!?なにぃっ!?


私の目の前で、私の知らない言葉で、私の知らない人達が私に向けて何かを話しかけてくる。


どうしてこんなことになった。


意味がわからない。


日本語なのか何かわからない会話で、私に振らないで。


そして私のメガネはそんなに変か。そんなにおかしいかよ。


まさか初日にいきなり二回も突っ込まれるなんて思ってなかったわ。


というかなんでみんな私を知っているの?


私は…春から休学していたのに。


半年ぶりに学校に来たはずなのに、多くの人が私の顔と名前を知っていて。


私を友達のように扱って…。


昔、そんな映画を見たことがある気がする。


自分の知らぬ間にクローンに存在を乗っ取られて、家に帰ろうとしたら自分が自分の家族と団欒してた、みたいな。


私はいつの間に映画の登場人物になったんだ。


でも、そんなことありえない。ここは映画じゃない。


もうひとりの私なんて、存在するはずがない。




ガタンッ!!


大きな音を立てて、教室のドアが開いた。


誰かが大急ぎで、教室に入ってきたようだった。



「ご、ごめんなさいっ!花陽、ことり、海未っ!ね、寝坊しちゃって…!」



誰かに向かって謝罪する、そのたった今教室に入ってきた、誰かは。



私だった。



「えっ…」



もうひとりの私が、そこには存在していた。

真姫「はぁっ…!はぁっ…!!」


真姫(学校には間に合うけど…、打ち合わせには完全遅刻だわ…!)

真姫(3人とも怒ってるだろうな…)



改札前


ピッ


真姫「あ、穂乃果…」

真姫「おはようございます!!」タッタッタッ…


穂乃果「おはようございます。あ!廊下は走ったら…」

穂乃果「…に、西木野、さんっ…!?」


真姫「ごめんっ!今急いでるからっ!!」タッタッタッ…



穂乃果「どうして…西木野さんが…」

穂乃果「もう一回…登校してきたの…?」



1年E組前


真姫「はぁっ…はぁっ…!」ガチャッ 

真姫「ご、ごめんなさいっ!!」ガタンッ!!


真姫(ドアを開くか開かないかというところから謝罪に入る。事情を知らぬ人はビックリでしょうね)


真姫「花陽、ことり、海未っ!ね、寝坊しちゃって…」


真姫(すかさず遅刻理由を述べる。ごまかすよりこうした方が早く済んで…)

真姫(と、何やら私を見る顔がおかしい。怒っているというより…驚いている?それも、相当)

真姫(何を驚くことがあるのか、と思いつつ、視線を少し逸らす。…すると、そこには)


真姫「えっ…」


真姫「…わ、私…?」


真姫(…私だ)

真姫(私が…、花陽たちに囲まれて、私の席に座っていた)

真姫(色々考えることはあっただろうが、私の脳裏によぎった言葉は、たった一つ)


花陽「ま、真姫ちゃんがっ…!?」

ことり「真姫ちゃんが…」

海未「真姫が…!」


「「「ふ、二人ぃぃっ!!!?」」」



真姫(…これは、ヤバいことになった)

今日はここまで
7話はいつもより短い予定だったけどこのペースだとやっぱり長くなるやもしれぬ
でも6話ほどではないから安心してね ほなな

間空いた上にこんな時間な上におそらく短くなるだろうけど再開します

しばらく呆気に取られて、動けなかった。


今起きている事象に頭が追いつかない。理解の埒外の更に外を行っている。


知らない人に訳のわからないことを問い詰められただけでも相当に混乱してたのに。


それに加えて。


まさか、自分と同じ顔の人間が登校してくるなんて、誰が考える?


もしかして、私が引きこもりを続けているうちに、世間ではそういうことが一般的になってたりして。


…なんて、現実味のないことを一瞬本気で考えもしたが、どうやらそういうわけでもないみたい。


周りの人も、私と同様に、開いた口がふさがらないようだった。


じゃあやっぱり、これはおかしい事態なんだろうな。


馬鹿に冷静に事を分析できている自分を少し滑稽に思いつつ、やはり目の前の不思議への理解は出来ないでいると。



「あ、あーーーーーっ!!!」



目の前の私…と同じ顔の誰かが叫んだ。



「もー!!来るなら来るって事前に言っておいてよー!…えーっと、み、みんなビックリしてるじゃん!」



は?


何を言い出しているのか、こいつは…、って!?



「ち、ちょっと来なさい!!」


「えぇっ!?なんでっ…」



き、急にそいつに腕を引っ張られて、教室の外へ連れ出される。


私を引っ張るそいつはカバンで顔を隠し、往来の中を私を引っ張りながら突き進む。


なんなのよ一体。


どうして復学初日から、こんな目にあわなくちゃ…



「…いけないのよーっ!!!」

1年E組


真姫「だ、誰…?私…、なの…?」


真姫(…や、ヤバい…!)

真姫(まさか…、まさか私が…この世界の私が復学してくるなんて…)

真姫(想像してなかったわけじゃないけど、いつか来るかも、なんて思ってもいたけど)

真姫(いざ本当に来るとなると、心の準備なんて一切してない…!)

真姫(ど、どどどどうしよう…!あ、ちなみに↑で喋ってるのはこの世界の私だから)

真姫(ちょっとの間私かあっちの私か区別付きづらいかもしれないけどなんとなく察して!…って誰に言ってるの私)



花陽「ま、ま…真姫ちゃんん…!?」

ことり「え、そ、そっくりさん…?」

海未「そっくりにもほどが、あるでしょう…ふ、双子…?」



真姫(花陽たちも相当に混乱してる。そりゃそうでしょうね。事情が分かる私すら混乱してるんだし)

真姫(だけど、どうすればいいか…それは少し思いついてきたかも)

真姫(こういうのは、思い切りが肝心っ…!!)



真姫「あ、あーーーーーっ!!!」


「!!!?」



真姫(私に向かって人差し指を突きつけ大声で叫ぶ)

真姫(そして、あたかも知っている人物のように…)



真姫「もー!!来るなら来るって事前に言っておいてよー!…えーっと、み、みんなビックリしてるじゃん!」



真姫(当の本人は何言ってんだコイツみたいな顔してるけどそんなの気にしてられるか)

真姫(間髪入れず…)



真姫「ち、ちょっと来なさい!!」

真姫「えぇっ!?なんでっ…」



真姫(引っ張って外へ連れ出す!)

真姫(みんなになにが起こったのか理解させる間を与えず…、とにかく二人きりになれる場所に…!)

真姫(って言っても…部室は今使えないし…!)

真姫(顔を隠しながら、登校してくる人ごみの中をもうひとりの自分を引っ張って歩く)

真姫(忙しい時期だってのに…なんで私がこんな目にあわないと…)



真姫「「…いけないのよーっ!!!」」


真姫(…なんでハモるのよ)

音楽室


真姫「はぁっ…、はぁっ…。ここなら誰もいないはず…」

真姫「…っていうか最初からここで待ち合わせしてればこんな急に鉢会うことも…」


真姫「な、なんなのよ…。っていうか、あなた誰なの?」

真姫「どうして、私と同じ顔…っていうか、声も同じだし…。い、意味わかんない…」


真姫「えっと、それは…あーっと、ちょっと待って。…よいしょ」ペタリ

真姫☆「これでよし、っと」

真姫「…?なにしたの?」

真姫☆「あー、気にしないで。あなたには関係ない事だから」

真姫☆「…で、どこから話せばいいかしらね…」

真姫「だから!まずあなたが何者なのか説明して!」

真姫「まさか…、私に化けた幽霊や妖怪?それとも怪盗とか…」

真姫「もしくはクローン人間で私の存在を乗っ取ろうとしてるなんて…!」

真姫☆「いやいや、クローンなんてありえないでしょ…」

真姫☆(…ありえなくない世界もあったけど、それを言うと拗れるし)

真姫☆「いい?落ち着いて聞いて。端的に説明すると私は…」

真姫☆「…別の世界の、あなた自身なのよ」

真姫「別の、世界…?」

真姫☆「そう、この世界とは並行にある世界…つまり、パラレルワールド」

真姫☆「星の数以上に存在するそんな世界の一つから時空を超えてやってきた…」

真姫「…へ?」

真姫「ふ、ふざけてるの!?なにがパラレルワールドよ!?映画の話なんて聞きたくないわ!」

真姫☆「ちょっ…、だから落ち着いてって言ったのに!ていうか幽霊や妖怪やクローンを前提に出しておいて平行世界は否定っておかしくない?!」

真姫「だ、だって、いざ真面目な話するって時に本当にそんなこと言われたらそうなるわよ…!」

真姫☆「あー…、そうよね…。普通は信じられないでしょうけど…」

真姫☆「でも、真実なのよ。今こうしてあなた…西木野真姫と同じ顔で同じ声の私がここにいる事実で納得してもらいたいものだけど」

真姫「うっ…。し、信じられそうにないけどでも…あなたはどう見ても…わ、私…」

真姫「普通の事態では考えられそうに、ない…わよね」

真姫☆「そういうこと。まだ理解が早いほうで助かるわ」

真姫「で、でも!?なんで並行世界の私がこの学校にいて、そしてこの学校の制服を着ているのよ!?」

真姫「…あっ!も、もしかして…クローゼットにあったあのどこかの制服って…」

真姫☆「あ、あれ私の」

真姫「やっぱり…!いつの間に私の制服と交換して…。おかげでこの制服を買うハメになっちゃったじゃない」

真姫☆「ご、ごめんなさい…。あ、っと、それで、私の制服は?」

真姫「ママが懐かしい、って言ってたからあげたわ。母校の制服と同じだったからって。…不思議がってはいたけど」

真姫「それより!どうしてあなたがここにいるのか、説明してもらうから!」

真姫☆「あ、あぁ…そうね。わかった。手短に話すから…」

真姫☆(私は彼女に私がこの学校にいる理由を簡単に説明した)

真姫☆(誤ってこの世界に落ちてきてしまったこと。迎えが来るまで帰れないこと)

真姫☆(最初はただ興味本位で制服を借りて学校に忍び込んだこと。けれども生徒会長に捕まってその次の日も登校させられたこと)

真姫☆(そしてなにより重要なこと)

真姫☆(私がこの学校で…スクールアイドルをやっていることを、彼女に伝えた)


真姫「アイドル…?」

真姫☆「…えぇ。同級生の花陽の夢を…実現させてあげたくて」

真姫☆「だからなんだか勢いで、スクールアイドルを立ち上げちゃって」

真姫☆「思ってたより順調なのよ?…なんて」

真姫「…そう、アイドル…」

真姫「衣装とか、歌詞とか…そういう意味だったのね…」

真姫☆「え、っと…ご、ごめんなさい。あなたの存在を勝手に使わせてもらってその上アイドルだなんて…」

真姫「…いえ、それに関しては別にいいわ」

真姫「とにかく、あなたの素性は大体理解できた…。9月頃から出席してくれたのはかなりありがたいけど」

真姫「でも、ずっとこのまま私の代わりに出席してくれるわけじゃないんでしょ」

真姫☆「えぇ、まぁ…。いずれは迎えがくる…と思うんだけど」

真姫「よね。…本当ならあなたがずっと私の代わりに出席してくれると、助かるんだけど」

真姫「そうもいかないなら、やっぱり私が出席しないといけない」

真姫☆「えぇ…そう、なるけど」

真姫「でも!私はあなたの役を引き継ぐつもりはないわ!」

真姫「そもそもアイドルなんてできるわけないし!」

真姫「勝手にアイドルをやってたことに関しては何かを言うつもりはないけど、でも私の存在を返してもらった後ならそうはいかないわよ」

真姫「私は、そのスクールアイドルをやめるから」

真姫☆「…」

真姫「なに。何か文句があるなら今のうちに…」

真姫☆「いえ、文句はないのだけど」

真姫☆「…けど、西木野真姫がC☆cuteを脱退するのはダメ」

真姫「はぁ?じゃあ文句があるってことじゃ…」

真姫☆「だから。私にいい考えがあるの」

真姫☆「今日から私は、この世界の西木野真姫を演じるのをやめるから、あなたは代わりに…」



真姫「…なるほどね。それなら確かに…」

真姫☆「いい考えでしょ?というわけだから…」

真姫「待って」

真姫☆「え?」

真姫「…あなただけ提案するのは面白くないわ」

真姫「私からも、条件をつけさせて。あなたの案に乗る代わりに、私の提案も聞きなさい」

真姫☆「…何?」

真姫「それは…」

1年E組


ざわざわ…  ざわざわ…


ことり「うわー…すごい。教室中が真姫ちゃんの話題で持ちきりだよ…」

海未「当たり前でしょう…。まさか真姫が、二人いた、なんて…」

花陽「ど、どうしよう…。もし真姫ちゃんが二人なら…」

花陽「ダンスのフォーメーションを変えないと…!?」

海未「言ってる場合ですか!?真姫が二人共アイドルをやる必要はないでしょうに…」

ことり「うーん、って言っても、騒ぎが大きくなるとややこしいのは間違いないし…」

ことり「早く静まってくれないかなぁ…」


ガチャッ


真姫「…」



花陽「あっ!ま、真姫ちゃん!」

ことり「帰ってきた!」

海未「せ、説明をお願いします!どうしてあなたが二人いたのかを!」


ざわざわ…  ざわざわ…


真姫「…あ、えっと…その…」

真姫「ぅ…」ゴクリッ

真姫「じ、実はっ…!!」


花陽「じ…」

ことり「じぃ…?」

海未「実は…?」


真姫「い、今まで…9月から、が、学校に通ってた、わ、私は…」

真姫「本当は、私じゃなくて…」


真姫「私の、お、お姉ちゃんだったの!!」




シーン…


花陽「お…」

ことり「お姉ちゃん…?」

海未「真姫に…、お姉さん、が…?」

真姫「う、うん…今まで学校に通ってたのは、じ、実は私のお姉ちゃんで…」

真姫「私に驚く程そっくりなんだけど、年齢は3歳も離れてて、ね…?」

真姫「だ、大学にもいかず職にもつかずのニートだったから、って…」

真姫「ま、ママに…その…休学してる私の代わりに、が、学校に行け、って言われて、通ってたの」


クラスメイト共「…」


真姫「う、うぅ…!」

真姫(やっぱり、メチャクチャよぉ…!信じてくれるはずない…!!)



(真姫☆「存在をそのまま入れ替えるんじゃなくて、今まで通ってたのは別人…そう、あなたのお姉さんという設定にすればいいの」)

(真姫☆「もちろん、担任や他のクラスの生徒には内緒にして、ね」)

(真姫☆「そうすれば、アイドルとして私はこのまま活動でき、あなたは今までの私を演じる必要もない」)

(真姫☆「完璧な作戦よね!」)



真姫(…って言ってたけど、こんな与太話、そうそう簡単に信じてもらえるわけ…)


クラスメイト共「なーんだ、そうだったんだー」


真姫(信じた!?)


「確かになんか西木野さんって大人びた感じあったもんねー」 「3歳も年上だったんだ…」

「こっちの西木野さんの方が年相応っぽいし、納得ー」 「妹さんのために代わりに学校に行くなんて優しいお姉さんなんだなぁ…」


真姫「ま、マジで…?」



ことり「なるほどねー。だから今まで私たちのこと、一つ上なのに呼び捨てにしてたんだー」

海未「あれだけ偉そうだったのも年上だったからなのですね…。となると、これから真姫のことは真姫さんと呼んだほうが…?」

花陽「えぇっ!?い、今更真姫ちゃんから真姫さんになんて変えられないよぉ…」



真姫(…驚く程すんなり受け入れてるわね…。ビビるわ…)

真姫「え、えっと!それで、このことは先生や他のクラスの人たちには絶対に内緒にしてて、…ってお姉ちゃんが」

真姫「本当はいけないことだから先生に知られるとマズいし、あんまり周りに知られると噂が広がってマズいから…」


「わかったー」「任せといてー」「絶対言わないからー」


真姫(…かなり不安だわ)

真姫「あ、と…それからその…あなたたちも」

花陽「わ、私たち…?」

真姫「こ、これからもお姉ちゃんは私の名前を借りてアイドル、やるって言ってたから…その…心配しないで、って」

ことり「そう、なんだ…。う、うん…わかった。ありがとう、伝えてくれて」

海未「それはそれとして…その、お姉さんの方は今どこに…?」

真姫「えっと…今は…」

秋葉原


真姫☆「…はぁ」

真姫☆(本来の私が復学してきた以上、私はUTX学院にいられなくなった)

真姫☆(放課後の練習だけなら入れ替わりでなんとかなるけど…)

真姫☆「日中の行き場はなくなっちゃったわね…」

真姫☆「だからこうして、秋葉原を散策しているわけだけど…」

真姫☆「特にやることがない…とてつもなく暇ね」

真姫☆「そろそろポケットマネーも底が近づいてきたから無駄遣いするわけにもいかないし…」

真姫☆「スクールアイドル専門店にでも行って他のアイドルの研究しておこうかしら…」





スタスタ…

真姫☆「…うっ」

真姫☆「なにこれ…なんか、気持ち悪…」

真姫☆(街中を歩いていると、急に吐き気を催してきた)

真姫☆(慣れない雑踏に久々に出てきたせいかしら)

真姫☆「頭をシェイクされたような気持ち悪さ…うぇぷっ…」

真姫☆「…まさか、想像妊娠なんかじゃないでしょうね。つわり…」

真姫☆「ハハハ、まさかね」

真姫☆「…ふぅ、っと。あ、そうだ…」

真姫☆「今日の夜の件について、せめて…彼女だけにでも話しておきましょう」

真姫☆「あいつなら、もうほとんど気づいてるようなものだし…」ポピパ…

休み時間 1年E組


親衛隊D「へー、西木野さんの妹ねー…」


真姫「…え」


親衛隊E「す、すごくそっくりです…!見分けが付かないよ…」

親衛隊F「真姫ちゃんに妹…。ビックリだわ…」


真姫「あの…あなたたち…」

真姫「…このクラスの生徒じゃない、のよね…?なんで、そのこと…」

花陽「あ、それは私が」

真姫「えっ…、えっと、小泉さん…?だったっけ…」

花陽「うん!小泉花陽!」

真姫「ど、どうしてあなたが別のクラスの人たちにそのこと…。内緒にして、って言っておいたのに…」

親衛隊D「ふふっ!それは私たちが小泉花陽親衛隊だからさ!」

真姫「は…?し、親衛隊…?」

親衛隊E「こ、小泉さんを愛して愛してやまない人たちで構成された小泉さんを愛でるための部隊なの!」

親衛隊F「まぁ、私たちはC☆cuteのお手伝いもやるからいつか必然的にわかっちゃうでしょ、ってことで、花陽ちゃんがね」

真姫「はぁ…そうなんですか…。まぁ、3人くらいなら…」

親衛隊D「ん?親衛隊構成員は全員で26人いるよ?」

真姫「んなっ…!?」

親衛隊E「そ、そして全てのクラスに満遍なく…!」

親衛隊F「芸能科じゃない生徒までいるからねー。ホント花陽ちゃんの可愛さは恐ろしいわー」

花陽「も、もー、恥ずかしいよー」

真姫「そ、それじゃあいつか全クラスに噂が広がっちゃって…!」

花陽「うぅん!大丈夫!親衛隊のみんなは信頼のおける人たちばかりだから!」

花陽「絶対に言っちゃダメだよ!絶対だからね!って何度も念を押したから、大丈夫だよ!」

真姫「不安要素が増したわ…」



真姫(…というか、あまり私に話しかけてこないで欲しい)

真姫(緊張して、口が回らないから)

真姫(私は、あの『私』とは違うんだから)

真姫(馴れ馴れしく、しないでよね…)

昼休み

廊下


グギュルルルルルル…


女生徒A「…え、何今の音…」

女生徒B「か、雷…?こんな晴れてるのに…」


絵里「…どいて、そこ」


女生徒A「あ、あぁごめんなさい…あ!絢瀬さん…」

女生徒B「…いつ見てもクールでカッコいいよねー…」


スタスタ…


グギュルルルルルルル…


絵里「…お腹すいた」

絵里(…昨日の夜から何も食べてなかったのよね)

絵里(A-RISE候補生のスケジューリングに忙しくて何かを食べるのすら忘れていたわ)

絵里(…にこが落ちなかったのは想定外だったけど、でも…それなら彼女も利用するだけ)

絵里(私の理想を達成するまでは…)


グギュルルルルルルルルルル…


絵里「ふひぃぃぃぃぃ…」

絵里「ひ、ひもじい…。早くご飯食べたい…」



食堂


絵里「ふふふ…!今日は奮発してグラタンうどんチーズ大盛りにしたわ…!」

絵里「あぁヨダレが止まらない…!さてと、どこに座って…おや?」


穂乃果「…」ポケー…


絵里「…穂乃果?おーい、穂乃果ー」

穂乃果「…」ポケー…

絵里「死んでる…?」

穂乃果「…ハッ!え、絵里ちゃん!?な、何?私どうかしてた?」

絵里「絵里…ちゃん?」

穂乃果「あっ…!す、すみません、絵里さん…。その、ぼーっとしてて」

絵里「うん、いいんだけど…。生徒会長かつ次期A-RISEのあなたがそんなんじゃみんな幻滅するわよ?あ、ここ座ってもいい?」

穂乃果「えぇ、どうぞ…」

絵里「じゃあお言葉に甘えて、っと…」スワリッ

絵里「いただきまーす。…もぐもぐ」

穂乃果「…」ポケー…

絵里「…」

絵里「…穂乃果」

穂乃果「…」ポケー

絵里「ハノケチェン!!ボーっとしてるとご飯抜きですよ!」

穂乃果「はわぁっ!!ご、ごめんことりちゃん許して!」

穂乃果「…はっ!」

絵里「…穂乃果。マルゲリータ丼、冷めちゃうわよ」

穂乃果「そ、そうですね…。すみません…もぐもぐ」

絵里「ぼーっとしてるのには訳があるんでしょう?言ってみなさい」

穂乃果「…もぐもぐ、…ごくんっ。…訳、ですか」

絵里「溜め込んでるとメンタルの上で練習の負担になりかねないわ」

絵里「あなたには万全の状態で練習してもらわなきゃいけないんだから、何か気になることがあるならすぐ相談なさい」

穂乃果「…でも」

絵里「でも、じゃない。口答えしたらほっぺたをつねるわよ」

穂乃果「…わかりました。実は…」



穂乃果「…ということがあって」

絵里「…ふぅん」

穂乃果「多分、何かの見間違えだと思うんですけど…」

絵里「…真姫が二人、ね…」

穂乃果「それもありますし、後この間のにこちゃんの件…」

穂乃果「あれにも、西木野さんが何か関わってるんじゃないかって…」

穂乃果「…もし、私たちの妨げになるようなら…」

絵里「壊しておく、…っていうのもアリなんだけど」

絵里「直接的にやっちゃうと、私が殺されちゃうし」

穂乃果「殺され…?」

絵里「…それに、私は真姫が欲しいの」

絵里「下手に誰かに任せて壊したとして、使い物にならなくなったらどうしようもないし…」

絵里「…」

絵里「…ふふっ」

穂乃果「…なんですか、その笑いは」

絵里「ねぇ、穂乃果。もし、真姫が二人いるんだとしたら…」

絵里「…そのうちの一人くらい、貰っちゃってもいいわよねぇ?」

穂乃果「…はい?」

同じく昼休み

正門前


真姫☆「さてと、連絡通りならそろそろ…」

真姫☆「…あ、来たわね」


希「んふっ、どーしたん真姫ちゃん。わざわざこんなところまで呼び出したりして」


真姫☆「今は迂闊にそっちに入れないのよ。…というか、あなたはどこまで知ってるの?」

希「どこまで…ってどういうことかな?」

真姫☆「その…今日の朝の出来事…なんだけど」

希「んふふ、真姫ちゃんが二人事件のことかな?」

真姫☆「…知ってるんじゃない。もしかして、結構噂、広まってる?」

希「安心して。少なくとも3年生のクラスまでは届いてないみたいやから」

希「うちが知ってるんは…ほら、スピリチュアルやし」

真姫☆「…そうね」

希「で、うちをここまで呼び出した理由は何かな?」

真姫☆「そろそろ、あなたに話してもいい頃かな、と思って」

真姫☆「私の、正体について」



希「…そっか。異世界人、ってことやね」

真姫☆「って言っても、薄々気づいてたんでしょ?」

希「消去法で考えていったら最終的にありえないものが候補になって…まさか、それが正解になるとはね」

希「予想はしてたけど、いざそうや、って確定すると結構驚くもんよ」

真姫☆「って言って、そんなに驚いてないじゃない」

希「んふっ、真姫ちゃんはうちが驚いたとこ、見てみたいん?」

希「うわー!真姫ちゃん異世界人やったんかー!!びっくりびっくり!」

真姫☆「…最大級にイラッときたわ」

希「でしょ?真姫ちゃんの精神の平穏のためやよ」

真姫☆「まぁ…そんなわけだから、これからもそっちに厄介になるわよ、ってこと、言いたかったの」

希「うんうん。それに関しては前々から言ってるとおり、全然構わへんから!真姫ちゃんが元の世界に帰るまでずっといてくれていいのだ!」

真姫☆「うん、ありがと。…で、もう一つ」

希「ん?まだあるの?もしかして、実は花陽ちゃんも…?それは予想外すぎるんやけど」

真姫☆「私もびっくりよそれなら。…そうじゃなくて、今日の夜のこと、なんだけど」

真姫☆「こっちの世界の私から、提案されたことでね」

希「なになに?」



真姫☆「…今日、この世界の私が、あなたのうちにお邪魔するから」

真姫☆「代わりに、私がこの世界の私の家に帰る」

真姫☆「いわゆる…スワッピングよ」


希「…それはなんか違うと思う」

意外とスラスラ出てきて割と長いことできたけど今日はここまで 次回もう一回もしをやってからうろに戻ります
ちなみに主人公真姫ちゃんの名前欄の☆は名前欄に貼り付けることで同じ人物が出てきても区別がつくようになるステッカー、という設定です
つまり☆が付いてる方が主人公のドクター真姫ですし そんなわけで次回をお楽しみですし ほなな

最近著しくやる気に欠けてしまう グータラな生活が祟ったからでしょうか
反面絵をよく描くようになったので更新代わりに置いておきます
メガネ真姫ちゃんだよ
http://i.imgur.com/JtKwlXA.jpg

メガネ以外に違う点は若干毛が跳ねてるのとアホ毛があることです
ケータイ撮りのままなのでサイズクソでかいけど我慢してね
明日は続き書く…予定 一応宣言しておこう

じゃああいかわらずこんな時間だけど再開
短編は予行演習とでも調べたら出てきます

~回想~


真姫☆「夜だけ入れ替わる…?」

真姫「うん。それが私の提案よ」

真姫☆「ど、どうして…?なんの理由があって」

真姫「その…、私が引きこもってたこと、あなたも知ってるのよね?」

真姫☆「えぇ…まぁ」

真姫「そのせいでパパやママとちょっと…気まずい感じになっちゃって」

真姫「多分今日も帰ったら色々と聞かれると思う…」

真姫「私…パパやママと話すのが怖いのよ。引きこもりのことに触れられるのが」

真姫「でも!パパもママもきっと私のこと本気で心配して、ってことはわかってるの。私も、パパのこともママのことも嫌いじゃない」

真姫「だけど、同じ場所に居たくない、っていうか…」

真姫☆「…まぁ、なんとなくだけどわかるわ。自分の弱いところに触れられるのは嫌だものね」

真姫「そう。だから!今日はあなたが家に帰ってパパとママとお話して」

真姫「今までの心境とか、これからどうするのとか、色々尋ねられることはあると思うけど…なんとか凌いで」

真姫☆「つまり、あなたが家に帰って両親と話すのが億劫だから、その代わりを私にして欲しい、ってことなのね」

真姫「えぇ、そういうこと!できれば関係を良好にしてくれれば尚の事グッドよ!」

真姫☆「…はぁ。まぁいいけど。でも私が住んでるのはその…先輩の家、なんだけど」

真姫「え?」

真姫☆「部活の部長の家に居候させてもらってるってこと。それでもいいならいいけど」

真姫「…う。知らない人か…」

真姫「い、いいわ。それで」

真姫☆「わかった。一応あっちにも訳を話しておくから。彼女、もう私のことほとんど気づいてるみたいだし」

真姫「へぇ…」

真姫☆「じゃあ今日の夕方、部活が終わる頃にUTX近くの公園に来て。そこに彼女も来させるから」

真姫「うん。わかったわ」



~回想おわり~



真姫☆「…ということ」

希「ふーん、真姫ちゃんも面倒なこと引き受けたねー。平気なん?」

真姫☆「まぁ…、大丈夫でしょ。これからもアイドルを続けるために私の妹って設定を彼女も引き受けてくれたんだし、まぁ…」

希「真姫ちゃんがいいならいいんやけど。…そっか、こっちの真姫ちゃんがね…」

真姫☆「人見知りみたいだから、扱いには気をつけてね?」

希「ふふ、うちの生徒会長時代のコミュ力を舐めたらいかんよ。すーぐに友達になっちゃうんやからね」

真姫☆「じゃあ事情は話したから。私はこれで…」

希「あ、待って真姫ちゃん。今真姫ちゃんの生徒手帳はどうしてるん?」

真姫☆「え?私が持ってるけど…」

希「多分…こっちの世界の真姫ちゃんの生徒手帳は使えない状態のはず」

真姫☆「あ、そういえばこの生徒手帳を作ったときにそんなこと言ってたわね。再登録の際に前の手帳は使えなくなるって」

希「うん。だから今多分こっちの世界の真姫ちゃんが使ってる生徒手帳は予備の分やと思うんやけど…」

希「これを返却する前に使用不可になった自分の生徒手帳を再登録する必要があるんよ」

真姫☆「あっ!そっか…。こっちの私が再登録しちゃったらこの手帳は使えなくなっちゃうのよね…」

希「せやね」

真姫☆「でも…再登録しないとあっちの私がUTXから出られないし…かと言ってされたら私が…」

真姫☆「どちらか片方しか持てないこの状況…ヤバくない…?」

希「ふふふ、そんな時のためにうちがおるんよ!」

真姫☆「え?」

希「あんまり多用しちゃいけないんやけどー…」

希「生徒手帳を改造すれば、他の手帳を再登録してもデータが抹消されずそのまま使えるという裏ワザがあるのだ!」

真姫☆「な、なんですってー!?」

希「これを利用してムダに二台持ちなんかしている子もいるんよ」

真姫☆「なんのために…。ま、まぁそれが使えるならお願いするわ。改造はどれくらいかかるの?」

希「まぁ…今日の放課後までには。放課後にまたここに来てくれたら改造済の手帳を渡したげるね」

真姫☆「ありがとう。じゃあ預けておけばいいのね。はい」

希「ん、確かに。じゃ、また放課後にね」

歌手専攻授業

音楽室


真姫「…」


花陽「わわわわー♪」


親衛隊ズ「「キャー!花陽様ーっ!!」」



先生「…はい。お上手ね。さすがスクールアイドルといったところでしょうか」

花陽「え、えへへ…」

先生「ではお手本にもうひとり…そうね、同じスクールアイドルの西木野さん」

真姫「は、はいっ!?」

先生「今小泉さんが歌った曲、あなたも歌ってもらえる?」

真姫「え、えっと…は、はい…」


親衛隊B「あっちの西木野さんって妹なんだよね?どうなんだろ…」ボソボソ

親衛隊A「お姉さんがあんだけ上手いんだからちょっと期待しちゃうかも…」ボソボソ

親衛隊C「どうなんでしょう…」


真姫「…ぅ」ゴクリッ

真姫「い、行きます…」




真姫「…あ~~」

真姫「…」


「…」


先生「…えー…、西木野さん…」

先生「今日は、調子が悪いんですか…?」

真姫「…すみません」



親衛隊ズ(す、すごい下手…!!)


花陽「ま、真姫ちゃん…」



真姫(う、歌なんてここ半年全く歌ったことないんだもん!仕方ないでしょ…!)

真姫(中学までは、少しは歌ったりしてたけど…)

真姫(…もう、自分から歌う、なんて…)

放課後

UTX裏


真姫「…おまたせ」

真姫☆「うぅん、平気。じゃ、ここからは私と交代ね」

真姫「あっ…そういえば生徒手帳…もう再登録しちゃったけど」

真姫☆「あーいいのいいの。さっき改造したの貰ったから」

真姫「改造?」

真姫☆「居候させてもらってる先輩にね。これでいちいち生徒手帳の受け渡しとかせずに済むから」

真姫「そ、そう…?ならいいけど」

真姫☆「練習終わりにその先輩が公園まで迎えに来るから、それまで適当に時間潰してて」

真姫「あなたは、私の家に帰る…のよね。場所はわかる…?」

真姫☆「当たり前でしょ。同じ私なんだから」

真姫「あ、あぁ…そうだったわね。よ、よろしく頼んだわよ!」タッタッタッ

真姫☆「え、えぇ…」

真姫☆「…パパとママ、かぁ」

真姫☆(私も活発になった方ではあるけど、面と向かって話すとなるとあまり自信はない)

真姫☆(しかも引きこもりから卒業してすぐ、だ。きっと長々とお話することになるんでしょうね…)

真姫☆「考えてみれば結構なこと押し付けられちゃった気がするわ…」



UTX学院 

アイドル応援部 新部室


花陽「わ、わぁぁぁ…!!大きい…!」

ことり「かたぁい…///」

海未「なにが固いんですか…」


希「どや!新しくなった我らが部室は!」


花陽「いつもの狭い部室に比べるとすごく広い感じがします!」

海未「これでも普通サイズなんですけどね…。前が狭すぎました」

ことり「でもかなり綺麗だし言うことないよー」

花陽「うん!これで心機一転…」


ガチャッ

真姫「おまたせ。…あ、みんなもう揃ってるわね」


ことり「あっ…」

海未「えっと…」

花陽「あのー…」


真姫「…ど、どうしたのよ。なんか歯切れ悪いわね」

花陽「あの、真姫ちゃんは…」

海未「どっちの真姫、ですか…?」

真姫「…アイドルの方です」

音楽室


花陽「うぅん…!」

真姫「な、何?そんなまじまじ見て…」

花陽「や、やっぱりすごく似てる…!」

ことり「本当に姉妹なの?しかも大学生くらいの年齢って…」

海未「あまりに似過ぎて区別がつきません…」

真姫「ほ、ほら!私はメガネしてないでしょ!それで区別しなさい!」

ことり「メガネの有無だけで区別しろってそれ今までどうしてたの?」

真姫「え、えっと…こうしてたの!」ペタリ

真姫☆「これなら見分けがつくでしょ!」

花陽「はっ!本当だ!」

海未「な、なぜでしょう…。外見的には何も変わっていないふうに見えるのですが…」

真姫☆「…常にこれでいた方が良さそうね」

ことり「でも真姫ちゃんは年上、なんだよね?」

花陽「あ、今までと接し方は同じ、でいいのかな、ってみんなで相談してて…」

真姫☆「なによ。今更接し方を変えるつもり?今まで通りで構わないわよ」

海未「しかし…せめて本名は教えてくれませんか?」

真姫☆「へ?」

ことり「そうそう!ホントの名前はなんていうの?」

花陽「真姫ちゃん、は妹の名前なんだよね?」

真姫☆「え、えっと…本名…?」

真姫☆(そんな急に言われても…。本名も何もこれが本名だし…)

真姫☆「え、えっと…!」

真姫☆「本名も…真姫なの!」

ことり「えっ!?い、妹と同じ名前なの!?」

真姫☆「そ、そうなのよ…。えっと、字だけは違うんだけど…」

真姫☆「私の本当の名前は、『摩季』なの」

海未「そ、そうだったのですか…姉妹揃って同じ発音の名前とは珍しい」

花陽「なんだか真姫ちゃんの本当の名前は大きくて黒そうだよね」

ことり「大きくて…黒い…///」

真姫☆「何頬染めてんのよ。…だから今までどおり、真姫でいいわ」

花陽「うん!わかった!」

真姫☆「じゃ、朝できなかった打ち合わせとそれから練習!やっていきましょう!」

夕方

公園


真姫「はぁ…、暇ね」


真姫(放課後に家に帰れないというのは、かなり時間を持て余す)

真姫(誰か友達でもいれば、一緒にどこかに寄ることもできただろうけど)


真姫「友達なんて、出来るわけない…」


真姫(不登校児が復学したら、基本的に卒業まではぼっちルートに入るというのが一般的)

真姫(コミュ力がある人なら例外もあるかもしれないけど、私には無理…)


真姫「…友達、か」


真姫(もし私が不登校なんかにならなければ、友達のひとりやふたり、できてたのかな)

真姫(休み時間には話し合ったり、お昼ご飯を一緒に食べたりする…そんな友達が)

真姫(どういう繋がりの友達だろうか。FPS?…でも私がFPSをやり始めたのは引きこもった後からだし)

真姫(やっぱり、音楽…かな。好きな歌の話で盛り上がって…、ピアノとか、ギターとか、弾いたりして…)

真姫(もしかしたら、あの子達みたいに、勝手にスクールアイドルなんか始めたりして…)


真姫「…何、考えてるんだろ、私」

真姫「そんなの、ありえないのに…」

真姫「…」

真姫「アイ、ドル…」



真姫(ひとりの公園で、そんなことを延々と考え続けていた)

真姫(いつの間にか時間は過ぎ、そして…)



「…真姫ちゃん。おまたせ」


真姫(うつむいている私に、誰かが声をかけた)

真姫(『私』が言っていた先輩、だろうか。顔をあげて返事をしようとした)

真姫(けど…)

アイドル応援部部室


真姫☆「ふぅ…今日もお疲れ様。そろそろ新曲も形になってきたわね」

ことり「うん!衣装作り、頑張るよ!」

海未「真姫がふたりでどうなることか、とヒヤヒヤしましたが、なんとかなりそうですね」

花陽「そうだねー…。ってあれ?希さんは…?」

海未「そういえば…もう帰ったのでしょうか」

真姫☆「あー…そうなのかしら」

真姫☆(あっちの私を迎えに早めに帰ったのかな。というか、あいつも放課後はこの部室にいるくらいで他に何もしてないんだから…)

真姫☆(もっと早めに帰ってもよかったのに。あっちの私を無駄に待たせちゃったかも)

ことり「じゃ、私たちも帰ろっか。戸締り、キチンとしてね」

海未「えぇ、そうしましょう」

真姫☆(…希。あっちの私に手を焼いてないといいけど)



公園


希「…真姫ちゃん。おまたせ」


真姫「…あ、はい…」

真姫「えっ…!あ…」


希「んふ、久しぶり、やね」


真姫「の、希…先輩…!」

真姫「『私』の言っていた先輩って…あなた、だったのね…」

希「ん。数少ない知り合いでびっくりした?今日はあっちの真姫ちゃんの代わりにうちに来るんやんね?」

真姫「は、はい…。そういうことになってます…」

希「…そっか」

希「これで、二度目、やね。うちに来るのは…」

真姫「…」

西木野家前


真姫☆「…」ゴクリッ


真姫☆(何日ぶりかな、家に帰るのは…)

真姫☆(この世界に来て初めに忍び…堂々と入ったのは除くとして)

真姫☆(となるとこの世界に来る前…でもその頃はクリニックで寝泊りが多かったから…)

真姫☆(…とにかくすごく久しぶり。なんでクリニックで寝泊ってるんだよとか野暮なツッコミは許さない)

真姫☆(じゃあ私も家族と話すのとかかなりご無沙汰じゃない…。安請け合いなんかするんじゃなかったかも…)


真姫☆「…って言っても、私がスクールアイドルを続ける交換条件としてはまぁ…仕方ないわね」

真姫☆「ウダウダ言ってても仕方ない…!覚悟を決めて…!!」


真姫☆(ドアノブに手をかけ…引いた)

ガチャッ


真姫☆「た、ただいま…」


真姫☆(見慣れた我が家。数ヶ月帰ってなくても、その風貌は忘れない)

真姫☆(懐かしくて少し涙が出そう。ホームシックってやつなのかしら)

真姫☆(靴を脱いでそのままダイニングへ。この時間ならもう晩ご飯を食べていてもおかしくない)



ダイニング


真姫ママ「あ、真姫。お帰りなさい」

真姫☆「ただいま。ママ」


真姫☆(これまた久しぶりな母親。ちょっと抱きつきそうになったがこらえる)

真姫☆(昨日まで引きこもってた娘がいきなり抱きついてきたら色々な意味でびっくりしそう)


真姫ママ「どうしたの、こんな時間まで。もうご飯できてるわよ?」

真姫☆「あ、あぁ…ごめんなさい。色々あって…あれ、パパは?」

真姫☆(父親の姿はダイニングには見当たらない。自室か、そうでなければ…)

真姫ママ「パパは病院の方。今日は夜まで帰ってこれないんですって」

真姫☆「…そう」

真姫☆(数少ないパパに会えるタイミングで会えなかったのは少し寂しいが、同時に安堵した)

真姫☆(パパはこういう機会になると話が長くなるから、あっちの私には悪いけど今日話すことがなくてよかった)

真姫ママ「だから今日は私とふたりで食事ね。冷めないうちに食べちゃいましょう。手、洗ってきなさい」

真姫「う、うん…」

真姫☆「…もぐもぐ」


真姫☆(私にとっても、そしてママにとっても多分、すごく久しぶりであろう、母娘での食事)

真姫☆(家族と話すのが怖いと言っていたあっちの私のことだ、きっとご飯だってひとりで食べていたんでしょう)

真姫☆(しばらく、咀嚼音と食器の擦れる音だけが食卓を支配した)

真姫☆(沈黙を破ったのは、ママから)


真姫ママ「…真姫」

真姫☆「な、何?」

真姫ママ「学校は、どうだった?」

真姫☆「が、学校?そうね…」

真姫☆(ここで『友達とたくさん遊んだわ!』って言ったらママも喜ぶだろうけど)

真姫☆(嘘をつくとこの世界の私が後々大変だし…ここは無難に)

真姫☆「普通だったわ…。うん、意外と普通…」

真姫ママ「そう…、よかった。友達はできそう?」

真姫☆「え、えぇ…。仲良くしてくれる子も、いたはいたわ」

真姫ママ「そっか…。うん、それならママも安心」

真姫ママ「明日も、学校行く?」

真姫☆「えぇ…もちろん。明日こそは友達を作ってみせるわ」

真姫ママ「ふふ…、そう…。頑張ってね」

真姫☆「う、うん…」

真姫ママ「意外と真姫が元気そうでホッとした。私、あなたがあの人に行けって言われたから嫌々行ってるのかって心配で…」

真姫☆「そ、そんなことないわよ…。しっかり自分の意思で…」


真姫☆(…そういえば私はどうして復学しようとしたんだろう)

真姫☆(本当はパパに行けって言われたから嫌々、だったんだろうか。それだとママの心配は的中していることになってしまう)

真姫☆(そう思うと心苦しいこともあるけど…気になるのはもう一つ)

真姫☆(私はどうして、不登校になってしまったんだろう)

真姫☆(FPSにドハマリして堕落…?ありえなくもないけど…)

真姫☆(…今度あったらそれとなく聞いてみよう)


真姫ママ「…ママね」

真姫☆「はい?」

真姫ママ「私…、あなたとこうしてもう一度ご飯が食べられるようになって…本当に嬉しい…」

真姫ママ「もしかしたらもう二度と…ここで顔を合わせることはないんじゃないかって…!」

真姫ママ「そう思ったら怖くて…怖くてっ…!う、だからっ…!うぅっ…!!」

真姫☆「ちょっ…!ま、ママ…!?」


真姫☆(ママが泣き出した…。それは私も見たことがない、ママの顔で…)

真姫☆(その顔は私をとても切ない気持ちにさせて…)

真姫☆(私まで、泣きそうになってしまった)

真姫☆(今、入れ替われるならアイツと入れ替わってやりたい。この気持ちを感じるべきは、あっちの私のほうなのだから)

真姫ママ「ぐすっ…うぅ…」

真姫☆「ママ…。へ、平気よ…。ほら、私はもうこうしてここにいるんだから」

真姫☆「これからいつだって一緒に晩ご飯、食べられるわ。だから、ね?笑顔になって、ママ」

真姫ママ「ずずっ…、えぇ…ありがとう、真姫。優しいのね…」

真姫ママ「ママったら娘に泣き顔を見せちゃうなんて…母親失格ね…。ダメダメだわ…」

真姫☆「そ、そんなことないって!ほら、ママの泣き顔なんて前から見てるもの!えっと、感動的な映画を見てる時とか…」

真姫ママ「もう…そういう涙じゃないわよ…。ふふっ…」

真姫☆「あはは…、そうよね…」

真姫ママ「…うん、でも、もう笑えるわ…。はぁ…よかった…。本当に、よかったわ、真姫…」

真姫☆「うん…。私も、ママが笑顔になってくれて嬉しいわ」

真姫ママ「えぇ…。ふふ、真姫ってば、私を励まそうとまでしてくれるのね…」

真姫ママ「それならすぐに、お友達も作れるわ。とても優しい子だから…」

真姫☆「う、うん…。大丈夫大丈夫…」

真姫ママ「…ごめんなさい。変な空気にさせちゃって…まだご飯、食べきってないのにね」

真姫ママ「さ、頂きましょう。真姫も…あら?」

真姫☆「ん?どうしたのママ…」

真姫ママ「…この匂い…汗?」

真姫ママ「真姫、汗かいたの?もしかして、体育…じゃないわよね。体操服持って行ってないんだし…」

真姫☆「えっ…あ…」


真姫☆(練習でかいた汗だ。いつもはご飯前にお風呂に入るのだけど、帰ってきた時間が時間だけに今日はご飯が先になってしまった)

真姫☆(しかしどう説明したものか…)


真姫☆「えーっと…」

真姫ママ「遅くなったのって何か汗かくようなこと、したからかしら?なにしてきたの?」

真姫☆(ここぞとばかりに質問攻めを食らう。そりゃあ引きこもりの娘がスポーツか何かをやったなら喜ばしいことではあるけど…)

真姫☆(でも私がやってるのはスクールアイドルの練習であって…)

真姫☆(そんなものを復学初日目からやり始めるのはいくらなんでも不自然だろう…。どうしよう…)

真姫☆「あのね…その…えー…」

真姫☆「あ、アイドルなの!」

真姫ママ「アイドル…?」

真姫☆(結局口をついてでたのはその言葉だった。それしか思いつかなかった)

真姫☆「あの…う、うちってアイドルが有名じゃない?A-RISE」

真姫☆「ほら、私も…その、学校に行ってA-RISEを見て、アイドルになってみたくなったの!」

真姫☆「だからひとりで誰も見てないところでダンスの練習してて汗をかいちゃったっていうか…そんな感じ!」

真姫ママ「あなたが…そう、そうだったの…」


真姫☆(即興で考えた少し無理のある言い訳だったが、なんとかママを納得させることができたらしい)

真姫☆(よかったよかった、と胸をなでおろす)

真姫☆(…と、その時だった)

真姫ママ「…でも、まさかアイドルなんてね」

真姫☆「え、まさか?」

真姫ママ「真姫がアイドルになりたいなんて言い出すなんて…驚いたわ」

真姫☆「そ、そんなにおかしい?いいじゃない、私だって…」

真姫ママ「え…、だってあなた…言ってたじゃない」

真姫☆「言ってた?何を…」

真姫ママ「学校に行かなくなる前の春頃よ。あの時はあんなに、アイドル嫌ってたのに」

真姫☆「…アイドルを、嫌ってた…?」

真姫ママ「えぇ…、夜遅く帰ってきて…泣きながら…」


真姫ママ「『アイドルなんか大嫌い。もう、やりたくない』って…」



真姫☆「っ!!」

真姫ママ「だからまたやりたくなったのかなってママ驚いちゃって…」

真姫ママ「でも応援するわよ。ママだって若い頃は…」

真姫☆「そ、それって…!」

真姫ママ「え?あぁ…若い頃って言ってもほら…中学生の…」

真姫☆「…」

真姫☆(ママの話はもう、耳には届かなかった)

真姫☆(私の頭の中には、さっきのママの言葉がこべりついて離れない)



『アイドルなんか大嫌い。もう、やりたくない』



真姫☆(…もう…?)

真姫☆(もう、ということは、つまり私は…それまでは、やってた、ということだ)

真姫☆(何を?…決まってる)

真姫☆(アイドルが大嫌いになる理由なんて…UTX学院にひとつしかありえない)

真姫☆(私が…この世界の私が不登校になった理由って、まさかっ…!!)


真姫☆「私も…アイドル専攻だった…!?」

はいここでおわり 続きはうろライブ!を挟んだ先で
この調子なら7話は短めで終われるかも! ほなな

遅くなってごめん 今から安価だけど人は集まるだろうか
とにかくゆっくりやっていきます

真姫「今日はうろライブ!第11話ね」

凛「ついに物語は佳境へ、といったところだね」

真姫「前回で穂乃果は自分たちのいる世界が繰り返されている世界だと気づいてしまった」

真姫「同じ未来を辿る運命から穂乃果たちは逃れられるのか、ってところね」

凛「なんだかうろライブ!に似つかわしくないシリアナルな展開だにゃ…」

真姫「突っ込まないからね」

凛「え、突っ込んでよ!シリアナルに!」

真姫「…違う意味に聞こえるから」

凛「えー、さて。そんなところで今回の忘却安価のおさらいだね」

凛「今回の三人は絵里ちゃん希ちゃんと、どさくさ紛れで追加された凛だにゃ」

真姫「えーっと、まず絵里は…亜里沙ちゃんを忘れる、とあるわね」

凛「ひどい!ひどすぎるよ!」

真姫「そうね…。実の妹の存在を忘れるのは亜里沙ちゃんに対して酷な…」

凛「絵里ちゃんは妹すきすきキャラで固定してたのに!これじゃ個性が失われちゃうにゃ!!」

真姫「…」

真姫「で、凛が…諦めること」

凛「おお!前の絵里ちゃんの『限界』みたいなかっこいい忘却だね!」

真姫「結局その限界が上手に有効活用はされなかったけどね」

凛「きっといいところでなんかいい感じに使われると凛は信じてる!」

真姫「そして希。訛り、ね…」

凛「ひどい!ひどすぎるよ!」

真姫「…個性が失われちゃうからね」

凛「口調に関する忘却はあんまりして欲しくないって言ってたのにー!」

真姫「まぁいいじゃない。シリアスな雰囲気にあったガチ希が見られるかもしれないし」

凛「誰が喋ってるか分かんなくなる状態になるだけだとおもうけどなぁ」

真姫「どうなるかはこれからのお楽しみ。じゃあうろライブ!第11話…」

凛「スタートにゃ!」

音ノ木坂学院

入試合格発表の日


雪穂「112,113…あ!118!あった!!」

亜里沙「私もあった!雪穂ぉっ…!」

雪穂「亜里沙ぁ…!!」


「「やったー!!」」


亜里沙「やったよ!これで音ノ木坂だよ!私たち、音ノ木坂の生徒だよ!」

雪穂「うん!」

亜里沙「アネックス1号だ!私、アネックス1号だー!!」

雪穂「…」

亜里沙「あ!お姉ちゃーん!!私、アネックス1号に入るー!!」タッタッタッ…

絵里「えっ…、あ、誰…?」

亜里沙「えぇっ!!?お、お姉ちゃん…?」

絵里「その…ごめんなさい、人違いじゃないかしら…」

亜里沙「お姉ちゃん!!忘れたの!?あの夜やあの夜のことを!!」

絵里「あの夜…!?うっ、頭が」


雪穂「…アネックス1号…か」



穂むら


ガララッ

雪穂「ただいまー」


ほのママ「どうだった!?」

穂乃果「もうメールしてよー!一緒に行くって言ったのに!!」

雪穂「あ、うん。合格したよ」

ほのママ「あぁ…、おめでとう!!」

穂乃果「なんでそんな冷静な訳!?合格だよ!万歳だよ!ばんざーい!!」

雪穂「ねぇ、お姉ちゃん」

穂乃果「ばんざ…ひょ?」

雪穂「…アネックス1号って、3年生が卒業したら…」

雪穂「どうするつもりなの?」

穂乃果「ぇ…」

うろ覚えラブライブ! Forgotten Idol Project


第11話「私たちじゃない私たちが決めたこと」




部室


海未「ラブライブの本大会まであと1ヶ月。ここからは負荷の…」

海未「あとは各自で想像してください」

凛「練習のスケジュールだけで説明を想像するのは難しいにゃ…」

花陽「これからの練習の少なさ加減からきっと体調を維持することを…忘れた」

凛「そこまで来たら最後まで言っちゃおうよ」

海未「A-RISEの方にもアドバイスしてもらって休みの日も設定してみました」

穂乃果「…」

海未「…ん?穂乃果?聞いてましたか」

穂乃果「…違うよ!これじゃダメダメ!!」

海未「えっ」

穂乃果「私たちは未来を変えるんだよ!?こんな練習、前の私たちだってきっとやったはず!!」

穂乃果「同じことをしてるだけじゃ運命は変えられない…!」

穂乃果「だからここはまた違う感じのトレーニングメニューを考えるべきだよ!」

海未「そんな急に言われましても…違う感じのトレーニングというのは、例えば?」

穂乃果「ん?えー…っと、そうだなぁ…」

穂乃果「>>265をする!…とか」

人狼

穂乃果「人狼をする!…とか」

ことり「ほ、穂乃果ちゃん!この歳で焼酎はダメだよ!」

穂乃果「は?」

絵里「それは多分違うものだと思うけど…」

海未「えっと、人狼ってなんですか?」

穂乃果「えっとね、まず役割を決めるの!この人数なら、人狼が2,3人であとは村人とか占い師とか、なんか色々な役職に分かれてね…」

穂乃果「…以下略。あとはググって!」

にこ「…嘘つき大会みたいなものよね。何となく知ってるわ、穂乃果は白とか言うんでしょ」

海未「な、なんで今日の穂乃果のパンツの色をにこが知ってるんですか!?」

ことり「まずどうして海未ちゃんが知ってるんだよって話になるね」

にこ「で、その人狼をしてどうしろというのよ。アイドルとなんか関係があるの?」

穂乃果「わかんないけど。でもいいと思うの!いいよね、にこちゃん!!」

海未「いいわけないじゃないですか…」

にこ「うーん、まぁ…悪くはない、かなぁ…?」

海未「えぇっ!!?」

穂乃果「ね!にこちゃんもいいって言ってる!やろう!」

海未「いやいや!ダメに決まってるでしょう!ね?にこ!」

にこ「えっ…、そ、そうよ…!アイドルに関係ないのにやる必要は…」

穂乃果「えぇっ!悪くないって言ったじゃん!賛成なんだよね?」

にこ「んと、まぁ…賛成といえば賛成…?」

絵里「どっちなのよ…。支離滅裂じゃない…」

にこ「だ、だってなんか断れなくて…うぅん…」

真姫「…そんな無茶な提案、通るわけないでしょ。前と違うことすればいいってだけじゃないんだから」

穂乃果「う、ぐぬぬ…」

真姫「あ、それより…亜里沙ちゃんと雪穂ちゃん、合格したんでしょ?」

穂乃果「え?あ、うん…。これもきっと前と同じなんだよね…」

ことり「え!?落ちたほうがよかったの!?」

絵里「穂乃果、前と違う結果を求めすぎて思考が短絡的になってるわよ。滅多なことをいうものじゃないわ」

穂乃果「…ごめんなさい」

絵里「ところでその亜里沙って子は誰の子?」

ことり「滅多なこと言ってる!!」

花陽「絵里ちゃんの子だよ!」

絵里「えっ!私に子供が…いつの間に」

凛「そういうことじゃないんですけど…」

真姫「それはともかくとして二人がアネックス1号に加入してくれたらメンバーが11人になっちゃうわね」

真姫「あっ、来年は3年生卒業してるから8人かー!いえでもにこちゃんは留年するから変わらず9人ね!」

海未「あなたはデリカシーの欠片も無いですね」

希「…そうだね。もう、私たちは…」ドヨーン

ことり「うわ、めっちゃ落ち込んでる…」

花陽「一気に空気が澱んじゃったね…」

絵里(…ここは何か気の利いた一言でこの空気を払拭しないと年長者として示しが付かないわ)

絵里「>>268!」

王様ゲームスタートよー!

絵里「王様ゲームスタートよー!いえーい!ぱふぱふ!」

にこ「…は?」

絵里「王様だーれだ!」

凛「まだ何も配られてない状況でそんなこと言われましても」

絵里「じゃあ王様ことり!いま頭の中で誰と誰が何番って決めたからテキトーに命令を下しなさい!」

ことり「へ、えっ…!?え、んーと、じゃあ…」

ことり「3番と5番が>>271しなさい」

理事長にタブルラリアット

ことり「3番と5番が理事長にダブルラリアットしなさい」

海未「じ、自分の母親になんてことを…!」

ことり「最近怒られてちょっとイライラしてたからその仕返しにね☆」

絵里「えーっと、3番と5番…じゃあ海未と花陽で」

花陽「えぇぇっ!!!?」

海未「じゃあ、ってあなた絶対今考えたでしょう!?」

絵里「知らなーい。これも失敗できない場面で緊張しないようにする特訓と思いなさい!」

にこ「大体なんで王様ゲームが始まったのかすらわかんないんだけど…」

絵里「王様の命令は絶対よ…!さぁ、行きなさい!」

海未「…くっ。しかし、そんなことできるわけ」

花陽「いってきます」スタコラ

海未「あっ花陽!軽い!えぇい!こうなればヤケです!私も…」スタコラ

ことり「ホントに行っちゃった…」

凛「…あれ、そういえばなんの話してたんだっけ」

真姫「もう何でもいいんじゃない」

絵里「じゃあ私たちは一足先に練習に行きましょう」



グラウンド


穂乃果「はっはっはっ…」タッタッタッ…



海未『何かあったんですか?考え込むような顔をして』

穂乃果「えっ…あれ、今海未ちゃんの声が聞こえた気がしたのに…」

ことり「今頃理事長質でお説教食らってるはずだから気のせいじゃない?」

海未『ふふ、生霊だけ飛ばしてきました。ことりには見えてませんよ』

穂乃果「…雪穂にね、3年生卒業したらどうするのって聞かれちゃって…」

ことり「何いきなり語りだしてるの…」

海未『穂乃果はどう思うんですか?』

穂乃果「スクールアイドルは続けていくよ。歌は好きだし、ライブも続けたい。でも…」

ことり「ははぁん…、よくわかんないけどつまりこういうことかな?」

ことり「>>276のままでいいか、ってことだよね?」

イベント一枚取り

ことり「イベント一枚取りのままでいいか、ってことだよね?」

穂乃果「…」

ことり「石もこの間11連したばかりで少ないし、イベント終了まで間もない」

ことり「もう今回は諦めよう、そんな気持ちになっちゃうのはわかるわかるよ大いにわかる!」

穂乃果「あの…」

ことり「でも本当にそれでいいの!?満足したって言えるの!?」

ことり「覚醒あとのイラストとストーリーを逃せば、もう二度と見れなくなるんだよ!?」

ことり「まぁガチャでも当たらなくはないけどすごい低確率だし」

ことり「今の石の残量じゃボーダーに届くかも怪しい、時間だってギリギリ、間に合わないかも」

ことり「でもそこで全力を出さなきゃ、きっと推しキャラのイベントのときにも同じ結果を招くことになっちゃう!」

ことり「だから決して、イベント一枚で満足してちゃダメなんだ、って穂乃果ちゃんは思ってるんでしょ!?」

穂乃果「…もうそれでいいよ」

海未『多分そういうことでないと私は理解しました。生霊ですが』

ことり「私は別に一枚でもいいと思うな。所詮イベント産とかステ低いし」

穂乃果「散々語っておいてそれかよ」



穂乃果「…はっはっはっ…」タッタッタッ

海未「私も穂乃果と同じ気持ちです」

穂乃果「うわっ!いつの間に並走…というか何の話…」

海未「生霊を飛ばしてたときに穂乃果が考えていたことですよ。アネックス1号のままでいいのかと考えていたのでしょう」

穂乃果「さも当然のごとく言ってるけど生霊ってなんなん」

海未「3人…いえ、2人かもしれませんが…彼女たちが抜けたアネックス1号を、アネックス1号と呼んでいいものなのか…」

ことり「あ、海未ちゃんそういえばお説教は?」

海未「花陽が主犯格になりました」

穂乃果「…」


穂乃果(なんで卒業なんてあるんだろう…)

穂乃果(…なんて、きっとこの悩みも、この気持ちも…一度、私は体験してるんだろうな)

穂乃果(そして私たちがどれだけ悩んだ末の結果は…もう既に決まっている)

穂乃果(どう考えて、どういう結末に行き着くのか…)


にこ「続けなさいよ!」

穂乃果「えっ…?」

にこ「メンバーの卒業や脱退があっても、名前は変えずに続けていく」

にこ「それがアイドルよ」

ことり「アイドル…」

にこ「そっ。そうやって名前を残していってもらうほうが、卒業していく私たちだって嬉しいの」

にこ「だから…」


ボヨンッ


にこ「ぼふぁっ!!?」ドサァァ…

にこ「い、痛ぁ…!」

希「その話は>>280>>282してからって約束よ」

大会

卒業

希「その話は大会が卒業してからって約束よ」

穂乃果「大会が卒業…?」

ことり「ラブライブが何を卒業するの…?」

海未「それはほら、あれでしょう。この腐った現代社会という檻から…」

にこ「ラブライブが一体どうなるって言うのよそれ?!」

希「何言っているのだ。大会とはラブライブのことではないのだ」

希「3年生の大会(おおえ)さんのことなんだぜ」

海未「誰ですか!?」

希「この3年間大会さんとは色んな事があったきぃに…彼女と一緒に卒業できるまでその話はしたくないんじゃ…」

にこ「あんたと知り合って初めて聞く名前なんだけど…」

ことり「…というかその喋り方なんなの」

希「喋り方?なんのことを言ってますの?」

ことり「それだよそれ!口調安定しないそれ!!」

希「…実はアタイ、なんか普通の喋り方しててもしっくりこなくってさ」

希「いつかしっくり来る口調に出会えるまで色々模索してみようと考えたのだよ」

海未「だからそんな喋り方に…」

穂乃果「でも可愛いからなんかグッドだよ希ちゃん!」

希「ホントかえ?それはわっちも嬉しんす」

にこ「…ところで知らない人のために吹っ飛ばされた私は一体…」

花陽「それはそうと、話聞いてなかったけど、本当にそれでいいのかな…?」

絵里「あれ…花陽…。いきなりどうしたの?」

海未「お説教は?」

花陽「私のお気に入りのバイb…ゲフンゲフン、おもちゃ渡したら帰してくれたよ」

花陽「それでね、何となく3年生が卒業した後のアネックス1号の在り方の話をしなきゃいけない気がするからするけど…」

花陽「亜里沙ちゃんも雪穂ちゃんもアネックス1号に入るつもりで…」

穂乃果「ダメだぁああああああああああああああああああ!!!!」ヒュオンンッ!!

花陽「いるんでげぶふあああああっっ!!!!」ズゴォォォッ!!


フオッ…

ドッサァァァァッ…!!


「…」


花陽「…」ピクピク

穂乃果「…ふぅ、危なかった」


凛「ほ、穂乃果ちゃああああんっ!!?かよちんに何しでかしてるの!?」

穂乃果「とびひざげりだけど」

真姫「何してるのよ!?花陽のきゅうしょに決まっちゃったじゃない!穂乃果はどちらかといえばかくとうタイプ寄りだからタイプ補正もかかってるのに!」

凛「しかもかよちんはその可愛さからノーマルだし、こうかもばつぐんだよ!」

真姫「…いや、彼女はたぶんアブノーマルだからそれは平気だと思うけど」

海未「霊魂になった私ならば平気だったでしょうが…しかし一体何を…」

穂乃果「だから!未来を変えるためなんだって!」

穂乃果「何となく、とか、しなきゃいけない、みたいな使命感に駆られたときは絶対その話をしちゃダメなの!」

穂乃果「それは一度やったことを無意識になぞろうとしてやっちゃう行為だから!だからその話はぜーーーーったいに、ダメーっ!!」

ことり「じゃあどうすればいいって言うの?」

穂乃果「んーとじゃあ…その話題をどこかにポイ捨てするために>>285の話をしよう」

妹達のバストサイズ

もう眠たいので続きは次回 ほなな

最近日中に体力使い果たして更新できなかったので
今日のお昼一気にやろうと思います 愛想が尽きてなければどうかお付き合いください

3時はギリギリお昼なのでそろそろ始めます
夜までに11話終わらせられればいいね

穂乃果「んーとじゃあ…その話題をどこかにポイ捨てするために妹達のバストサイズの話をしよう」

真姫「妹達…?誰の妹よ」

穂乃果「もちろん妹といえば私と絵里ちゃんの妹…雪穂と亜里沙ちゃんのことだよ!」

絵里「亜里沙ちゃんってあの金髪ロリ少女のこと?へぇ…私の妹だったのね…」

にこ「バストサイズの話…ってどういう話よ」

穂乃果「え?えっとねー…、最近うちの妹の雪穂の胸が急成長してきまして…」

穂乃果「今までのブラじゃきつーい、なんて部屋から聞こえるの。服の上からも確かな膨らみが…」

穂乃果「…あ」

凛「ん?どうしてそこで止まるの?」

穂乃果「な、なんでもない…」ジロー…

にこ「…ん?」

穂乃果「ま、まぁこの話は置いといて…」

にこ「何遠慮してるのよ。続けなさいよ」

穂乃果「べ、別に平たい胸族のにこちゃんに遠慮して胸の話をやめたってわけじゃ…」

にこ「あ、続けるって言ったら私たちの卒業後もあんたたちはアネックス1号を続け…」

穂乃果「チェストォォォォォォォッ!!!!」ズゴァッ

にこ「ふぎゅぁぁぁぁっ!!!!!」ドサァッ

ことり「顔面にチョップが炸裂!!」

真姫「わぁぁ!にこちゃんまで!!」

穂乃果「だからそういう話はダメだってば!!今は妹達の…」

凛「その妹さんたちって来年音ノ木坂に進学するんだよね」

真姫「そう、そして二人共アネックス1号に入りたがっているって…」

穂乃果「どぅおるぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」ドゴォォッ

凛・真姫「「うわらばぁぁあぁぁぁぁっ!!」」ドサァッ

ことり「喉元にダブルラリアットが直撃!!」

穂乃果「この腕の届く距離でその話はさせないから!!」

海未「ほ、穂乃果…何もそこまで…」

穂乃果「うらぁぁぁぁぁっ!!」バキョォォッ!!

海未「ぐふぅぅっ!!!?」ドサァッ

海未「なん、で…」バタリ

ことり「見事な腹パンが…」

希「何も言ってなかったのにね」

穂乃果「はぁ…はぁ…」

絵里「穂乃果…」

穂乃果「何っ!?」

絵里「…何でもないです」

穂乃果「そう…」

絵里「…き、決めるのは穂乃果たちだからね。続けるかどうか…」ボソッ

穂乃果「だぁぁぁぁぁぁっ!!!」

絵里「いやああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

練習後 帰り道


ことり「…なんか結局、なんだかんだ話すことになっちゃったね」

海未「でも、仕方ない気がします。いくら運命を変えるためとはいえ、曖昧な気持ちのまま大会に挑むのは良くなかったですから」

穂乃果「うぅん…」

真姫「もう…、どうしたいのよ?穂乃果は私達をメチャクチャにしたいの?」

花陽「卒業後の話は遅かれ早かれいつか考えなきゃいけないことなんだし…」

凛「うやむやにしても詮ないことにゃー」

穂乃果「わかってるんだけどぉ…」

穂乃果「…3年生がいなくなってから、か…」



穂むら前


穂乃果「じゃあ」

海未「穂乃果」

穂乃果「うん?」

海未「聞いておきたいのですが…」

海未「穂乃果はこの先のことを、どれだけ知っているというのですか?」

穂乃果「え…」

海未「この世界が繰り返されていて、そして私たちは勝利を手にするという運命を知っているというのは何となくわかりますが…」

海未「今考えている…3年生が卒業した後のアネックス1号の在り方については、覚えていないのですか?」

穂乃果「…あ、うん…」

海未「でしたら、何が一度繰り返したことで、何がその運命に背くことなのか…それは分かっていない、ということなのですよね」

海未「何を考え、何を選んだとして、その選択が決められたものなのか、そうでないのかすら…わからないんですよね」

穂乃果「…ちょっと何言ってるかわかんないんだけど」

海未「私も途中から何言ってるかわかんなくなってきました」

海未「…えぇと、つまり…」

穂乃果「ごめん長くなりそうなら明日お願い。今すっごいおしっこ我慢してるから」

海未「あ、ご、ごめんなさい…。わかりました。では明日…」



穂むら


穂乃果「ただいまー」

雪穂「おかえりー」

亜里沙「あっ…、穂乃果さん!!」

穂乃果「あ、いらっしゃい」

亜里沙「あのっ…、穂乃果さん、ちょっといいですか!?」

穂乃果「えっ…(トイレ行きたいんだけど)」

亜里沙「えぇっと…」モジモジ

亜里沙「アネックス1号…ミュージックスタート!!」チョキシテウエニアゲルヤーツ

穂乃果「えっ…」

亜里沙「どうですか?練習したんです!」

穂乃果「>>299

えっと…なにそれ?

穂乃果「えっと…なにそれ?」

亜里沙「え…」

穂乃果「意味がよくわかんないなぁ…。というか練習する必要ある?」

穂乃果「亜里沙ちゃんは人差し指と中指以外の指を閉じて前に突き出し掛け声とともに腕を上に挙げる行為に練習が必要なの?」

亜里沙「え、えぇぇ…!?」

穂乃果「まぁ…亜里沙ちゃんがいいならそれでもいいけど。あ、私すごいトイレ行きたいからもういいよね」

亜里沙「え、あっ…ちょっと待ってください!」

穂乃果「何…?」

亜里沙「私…アネックス1号に入っても、問題ないですか…?」

穂乃果「え、あっ…その話…」

雪穂「亜里沙、お姉ちゃんは本番直前なんだから、あんまり邪魔しないの」

穂乃果「そうそう。膀胱も破裂直前だしねー」

雪穂「お、おぉ…」

穂乃果「ごめんね、ゆっくりしてってー」スタタタ…


亜里沙「…」

雪穂「…」(PCでスノハレ見てる)

亜里沙「オアッ!ハルァショー!!明日ここのところ練習しよ!」

雪穂「…じゃあ亜里沙はサビでおしっこおもらししてね」

亜里沙「うんっ!!…へ?」

雪穂「…あのね、亜里沙」

亜里沙「ん?」

雪穂「亜里沙は、アネックス1号のどこが好きなの…?」

亜里沙「えっ…」


雪穂「あんなのの、どこがいいと思ってるの?」


亜里沙「えっ…、雪穂…?」



穂乃果の部屋


穂乃果「…」


(海未「でしたら、何が一度繰り返したことで、何がその運命に背くことなのか…それは分かっていない、ということなのですよね」)

(海未「何を考え、何を選んだとして、その選択が決められたものなのか、そうでないのかすら…わからないんですよね」)


穂乃果「…そんなの、わかんないよ」

穂乃果「でもはっきりわかるのは…この先どんなことがあっても、私たちは優勝するってことだけ…」

穂乃果「記憶にはないけど、確信を持って言えること…」

穂乃果「じゃあそれ以外は…どうなんだろ…」

穂乃果「…私たちは、続けることを選んだのかな。それとも…やめることを選んだのかな」

穂乃果「わからないことから背くって…どうしたらいいのかな…」



神田明神


雪穂「…私は、そうしたらいいんじゃないかって思うんだけど」

雪穂「亜里沙のためにも、アネックス1号のためにも。どうかな?」

亜里沙「…」

亜里沙「…うん」




翌朝


穂乃果「いってきまーす」

穂乃果「…なんか結局…何考えてたのかわすれちった」


雪穂「おねーちゃんっ」


穂乃果「…雪穂」

雪穂「ちょっと話があるんだけど、いいかな?」

穂乃果「え…?」

亜里沙「あの、私…私…」

亜里沙「…アネックス1号に入らないことにしました!!」

穂乃果「えっ」

亜里沙「昨日、雪穂に言われてわかったの」

亜里沙「私、アネックス1号が好き、9人が好き」

亜里沙「…でもその理由が、イマイチよくわかんなくて」

穂乃果「なんだって」

亜里沙「よくよく考えてみたらスノハレの歌詞も意味わかんないし、みなさんの言ってる言葉も支離滅裂だし、お姉ちゃんは私を忘れるし、穂乃果さんはライブ中におしっこ漏らすし…」

亜里沙「…ホントは好きじゃないものを、好きだって思い込まされてただけなのかなって気づいたんです」

亜里沙「だから私は!私のいるハルァショーなスクールアイドルを目指します!!雪穂と一緒に!」


穂乃果「」

穂乃果「」ワナワナ…


雪穂「うわ…めっちゃショック受けてる…」

亜里沙「やっぱり言い過ぎだったんじゃ…」

雪穂「…これくらい言わないと、またやらかしちゃうじゃん」


穂乃果「つ、つまり…亜里沙ちゃんは…雪穂は、私たちが、き、きらい…?」


亜里沙「え、と…」

雪穂「そう!もう惑わされない!!アネックス1号はみんな頭おかしいよ!」

亜里沙「そ、そうです!目を覚ませばこんなスクールアイドル、好きになる方がおかしいような…」

穂乃果「っ!」ダキッ!!

亜里沙「ふぇっ…!?」

雪穂「ひゃっ…!お姉ちゃん…?!」

穂乃果「そうだよね…変だよね、おかしいよね私たち…人気出るわけないもんね…」

穂乃果「二人は、気づいてくれたんだねっ…!!」

亜里沙「えっ…あ」

雪穂「お姉ちゃん…?」

穂乃果「頑張ってね!私たちみたいなスクールアイドルには絶対なっちゃダメだかんね!!」

雪穂「え、あ…ハイ」

亜里沙「はぁ…」



穂乃果(雪穂と亜里沙ちゃんが…アネックス1号に入ることを拒んでくれた…!)

穂乃果(これってきっと、前とは違う運命になってるんだ!)

穂乃果(今までメチャクチャなアネックス1号を無条件で好きになってくれる運命から、目を覚ましてくれたんだ!!)

穂乃果(もしかしたら…少しずつ運命は変わってきてるのかも!)

穂乃果(よし、よぉしっ…!だったら…!)


穂乃果「…うんっ」



ラブライブ!(アイキャッチ)



街中


穂乃果「よぉしっ!!」

穂乃果「>>303するぞー!!」

就職活動

穂乃果「就職活動するぞー!」


にこ「就活!?」

絵里「いきなり日曜に呼び出してきたから何かと思えば…」

希「我らはまだ学生の身分なるぞ?」

穂乃果「それはそうだけど、大学に受かるかはまだわかんないじゃん?」

穂乃果「今のうちに就活して、大学落ちた時の働き口を探そうって思って!」

海未「そ、そうですよ!特ににこは頭も悪いですし!」

ことり「大学へ行っても学費の無駄遣いして終わっちゃいそうだし!」

花陽「大体女性が学ぶなんておこがましいって昔の本で読んだことあるし!」

真姫「私が家を守ってあげるからにこちゃんは働きに出てくれればいいし!」

凛「おっぱいボンバイエ」

にこ「散々な言われようで涙が出そう」

穂乃果「ほら、まだ名の知れてるアネックス1号時代の方が就職にも有利なはずだよ!ね?」

にこ「…でも就活ってアップルインターネットなしでできるものなの?」

希「iphoneかなんかかしら?」

絵里「たぶんアポイントメントって言いたいのかな…」

にこ「そうそれ!」

凛「飛び込みで行けばなんとかなるなる!アネックス1号ぞ?我、アネックス1号ぞ?」

希「無謀すぎると思うのじゃ…」

ことり「とにかく何も考えずに行ってみよー!」

絵里「行くってどこの企業へ…?」

凛「凛は>>305に行ってみたいにゃー!」

真姫「幼稚ね。私は>>306

花陽「断然>>307がいいと思います!」


にこ「…ていうかなんでアンタらが決めてんのよ」

希「就職するとしたらおいどんらなのにね」

株式会社オネスト

ブシロード

ヒモ

凛「凛は株式会社オネストに行ってみたいにゃー!」

絵里「どこ!?」

穂乃果「戦闘じゃほぼ無敵を誇ってそうな感じするよね」

真姫「幼稚ね。私はブシロードがいいわ」

にこ「アンタのほうがよっぽど幼稚そうだけど…」

海未「ブシロードですか…。にこならすぐに採用されそうな気がします…。…私もですが」

花陽「断然ヒモがいいと思います!」

希「もはや就職する気を捨ててるのねん」

ことり「男を引っ掛ければいいのかな…?」

にこ「…って!バラバラじゃない!」

希「どうするおつもりかしら」

穂乃果「んー…じゃあ、全部!」

にこのぞえり「「「はぁっ!?」」」

穂乃果「発注型Web-EDIシステムを扱いながらTCGの運営を行いつつ収入は全て貯金して生活費はカレシに全部出してもらう道を選ぼう!」

にこ「なんというハードワーカーのジゴロ…」

穂乃果「でも落とされる可能性もなきにしもあらずだし、みんな行きたい企業を一つずつあげて、全部受けに行こう!いいでしょ?」

にこ「なによそれ…」

希「でもちょっと面白そうでごわす!」

絵里「…単なる冷やかしにしかならなさそうだけど…」

穂乃果「よーしっ、しゅっぱーつ!!」



株式会社オネスト


受付の人「あのぉ…」


穂乃果「私たちスクールアイドルのアネックス1号と申します!!そして彼女たちが今年卒業する3年生!」

絵里「あ、あははは…どうも」

穂乃果「彼女たちを是非御社に入社させていただきたく!お願いします!」

凛「そうにゃそうにゃ!」

受付の人「…申し訳ありませんがそういったことは事前に人事の方へ連絡をお願いします」

穂乃果「えぇっ!けちんぼ!!私達を誰だと思ってるんですか!!スクールアイドルアネックス1号ですよ!東京で最強の学生アイドルなんですよっ!!」

凛「そうにゃそうにゃ!」

受付の人「知りませんけど…」

穂乃果「ハァッ!?浅学にも程があります!あなたを入社させるくらいなら絵里ちゃんにやらせたほうが数万倍…」

凛「そうにゃそうにゃ!」

絵里「こ、こら穂乃果ぁっ!!もう恥ずかしいからやめてって…ご、ごめんなさい、失礼しましたぁぁぁっ!!」

受付の人「はぁ…」

凛「…」

受付の人「…あの、まだ何か」

凛「味噌汁メイルシュトローム」

受付の人「…は?」

凛「バイバーイ」タッタッタッ

受付の人「なんだったんだ…」

ブシロード本社


真姫「うわぁ…すごい。いろんなアニメやカードゲームのポスターがいっぱい」

にこ「か、勝手に入ってきていいの…!?」

海未「いいんです。もはや顔パスが許されるレベルでしょう」

にこ「いつの間にあんたはブシロードに顔が知れ渡ってたのよ!?」

真姫「ねえ見てこれ!なんのカードゲームかしら…」

にこ「って真姫!?あんまウロチョロしない!」

ブシロ社員「…あれ、女子高生…?どちら様…?」

にこ「げっ…!見つかったし…!!」

海未「あ、どうもお疲れ様でーす」

ブシロ社員「あっ…なんだあなたですか。お疲れ様です」

にこ「えっ…!?」

海未「どうです。見事な顔パスでしょう」

にこ「ど、どういうことなの…」

真姫「一枚くらい貰ってもいいわよね。ポスター」ペリペリ

にこ「っておぉい!!勝手にはがさない!」


ブシロ社員「…声は聴き馴染みのある彼女だったけど、あんなコスプレは初めてだったな…」

ブシロ社員「みるみるナントカとは別の番組のロケか何かかな…?」



街中


ことり「あのー」

男性A「はい?」

ことり「この人を養ってもらえませんか?」

希「うふ☆」

男性A「…は?」

ことり「結婚というわけには行きませんが月一くらいなら会うこともオッケーなので、生活費を全額…」

男性A「すいません急いでるんで」タッタッタッ

希「あ、行っちゃった…」

ことり「うーん、なんでうまいこといかないのかなぁ…?」

希「タチの悪いキャッチだと勘違いされてるんじゃないかね。それ以上にタチの悪い事なんだけどね、実際にやってることは」

花陽「あ!ことりちゃーん!希ちゃーん!見つかったよー!お金出してくれる人ー!!」

希「ホントに!?」

花陽「うん!その代わりに今からホテルにって…あ、あと薬局に寄ってから…」

ことり「それは危ないからパス!」



それから数々の企業やその他いろいろを回り…



にこ「はぁ…、はぁ…。こんな無茶な休日、初めてだわ…」

絵里「それで、最後は穂乃果が行きたい企業だけど…」

穂乃果「…私は、企業じゃなくて…>>310に行きたい」

765プロ

穂乃果「私は765プロに行きたい」

にこ「765プロって…超有名な芸能プロダクションじゃない!」

希「行ってどうするつもり?」

穂乃果「大学にも企業にも行けなかった時のために、プロのアイドルとして活動できるように売り込むんだよ!」

絵里「ぷ、プロぉ…!?私、プロになる気は毛頭…」

にこ「プロ…!なんて甘美な響き…!!」

絵里「うわぁやる気まんまん」

穂乃果「765プロは大田区にあるんだって!今から乗り込もう!」



765プロ前


花陽「うわぁぁぁ…!大きなビル…!!」

凛「これがプロのアイドルの事務所ー!」

にこ「く、来るのは…初めてね…」


真姫「…穂乃果、心の準備、できてる?」

穂乃果「…うん」


絵里「い、行くの?本当に行くの…?」

穂乃果「もちろん!お邪魔しまーすっ!!」



ことり「…っと、ここが普段アイドルの人が集まってるところ?」

海未「そのようですね。いやぁこうしてみると本物のアイドルになったような気がします」

P「…あれ?君たち…」

穂乃果「あ、おはようございます!」

P「あ、あぁ…おはよう。君たち、見ない顔だけど…もしかして新人さんかな?」

にこ「え、その、あの…」

穂乃果「はい!スクールアイドルです!!」

P「スクール…?」

凛「アイドルの卵にゃー!いやいやむしろそんじょそこらのアイドルなんか比べ物にならないくらいすごいなんだけどね!」

P「君たち、何言って…あ!ま、まさか…」

P「アネックス1号…!?ホンモノ…?」

花陽「知ってるんですか!?」

P「あ、あぁ…。ラブライブの地区予選で優勝したっていう…そのアネックス1号がどうしてここに…」

真姫「…まぁ、顔を売りに来たというか」

穂乃果「顔どころじゃないよ!あの、プロになりたくてきたんですが!!」

P「き、君たちがプロアイドルに…!?それは急な話だけど…うぅん…」

海未「どうやら悩んでいるようですね…。にこ、ここはお得意のアレで彼の心をギュッですよ」

にこ「え、私!?というかお得意のアレって何…」

花陽「何でもいいから何でもいいから何でも何でもいいから!」

真姫「オーライオーライグッバイグッバイ!!」

にこ「なぜそこでトラバス風…えぇいわかったわよ!>>312すればいいんでしょう!!」

>>311
土下座

にこ「土下座すればいいんでしょう!?」

にこ「お願いしますぅぅぅっ!!プロにしてくださいいいいぃぃぃぃぃっ!!」

希「出た!にこっちのプライドを全く感じさせない年季の入った土下座!」

にこ「にこが日頃から土下座してるみたいな言い草やめてよ!!」

絵里「これを見させられた私たちはどんな顔していればいいのよ…」

穂乃果「どうですか!これだけ頭を下げているんだからもう…ね!?」

P「ね、と言われても…自分が一任するわけにはいかないし…社長さえいれば…」

社長「呼んだかね?」

P「どわっ!社長…!?いたんですか…」

社長「騒いでるんで何事かと思ってね。と、君たちは…?」

穂乃果「はい!音ノ木坂学院スクールアイドル、アネックス1号です!」

社長「スクールアイドル…、あぁ、例の。話には聞いているよ」

花陽「ほ、本当に!?」

社長「あぁ、聞くところによるとなかなかに大人気そうじゃないか。市場が違うからマークはしていなかったが…」

P「どうやら彼女たちがプロになりたいと…」

社長「プロに?ははぁ…そっちから言いに来るとはね…」

ことり「ということはまさか、スカウトしてくれる可能性もあったということ?」

社長「まぁ可能性を感じれば、だが。こう見えて私はアイドル選別には厳しくてね」

社長「自分の目で見てこれだ!と思うような子以外は選ばないようにしているんだ」

凛「それでそれで?凛たちを目の当たりにしての感想はいかがかにゃ?」

社長「うーん…確かに可愛げはあるのだが…」

絵里「…あんまりウケは良さそうじゃないけど」

海未「ほらにこ!必殺の土下座で社長の心までも鷲掴みにしてあげませう!」

にこ「こんな時に顔伏せてたらにこの自慢のプリティフェイスが見せられないじゃないのよ!?」

真姫「大丈夫よ。にこちゃんは後頭部もプリティだから」

にこ「褒められてるのそれ…?」

社長「うーん…、そうだねぇ…」

社長「ひとり、彼女ならプロとしてやっていけると思った子ならいる」

P「本当ですか!?」

穂乃果「だ、誰ですか!」ドキドキ

社長「それは…君だ!>>314!!」

えりちか

社長「それは…君だ!」

絵里「…え、私!?」

にこ「え、絵里ぃぃぃっ!!?」

真姫「確かに前もモデルにスカウトされてたし…!」

絵里「あ、あの…、本当に私…?」

社長「あぁ間違いない!いい面構えだ、ティンときた!」

絵里「えぇぇ…」

希「お、羨ましいなぁ。いいんじゃないの?プロになっても」

絵里「わ、私プロになる気はさらさら…!」

海未「何言っているんですか!こんな機会滅多にありませんよ!」

凛「そうにゃそうにゃ!」

絵里「う、そう言われると…」

花陽「今すぐでなくても、せめて卒業後ということにしておけば…!」

絵里「そ、それなら…!内定という形でもいいなら…」

社長「まぁそれでも構わない!」

にこ「う、羨まじいいいいいいい…!!」

社長「間違いなく君は輝く…!」


社長「プロデューサーとして!」


絵里「…へ?」

社長「君は誰かを導くのに向いている顔をしているよ。若い頃の私そっくりだ」

絵里「あの…、え、プロデューサー…?」

社長「そうだ、プロになりたいんだろう?」

P「あぁ、プロってそういう…」

ことり「なぁんだ…プロデューサーか」

真姫「ガッカリね」

花陽「よかったね!就職先ができて!」

にこ「ぷぷぷ…!オッサンの若い頃にそっくり…!!ぶふっ…!!」

絵里「…」

凛「プロのアイドルは無理なんだってさ。頑張れエリチカP」

絵里「…だ」

絵里「誰がプロデューサーなんてやるかボケェェェェェェェッ!!!!」

穂乃果「そうだそうだー!アイドルやらせろぉぉぉぉぉぉっ!!!」




その日、日が傾くまで事務所で暴れまくった彼女たちなのだった…。

タッタッタッタッ…


絵里「はぁっ…、はぁっ…」

にこ「も、もう追ってこない…わよね?」

希「そうみたいだぴょん…」

にこ「まったく…危うく警察沙汰になるところだったじゃない」

海未「それもこれも、絵里がキレるから…」

絵里「ご、ごめんなさい…。つい理性を忘れて…」

凛「…で、ここどこにゃ?」

花陽「夕日が綺麗…波の音も…」

真姫「…って、ここ海…?私たち、どこまで逃げてきたのよ…」

穂乃果「逃げるのに夢中で、こんなところまで来ちゃったってことかな…あははは」

凛「よーし!どうせならめいっぱい泳ぐにゃー!」

絵里「勘弁してよ…。もう流石に体力が持たないわ…」

ことり「そうだね…。こうして沈む夕日を見てるだけで、心が安らぐよね…」


ザザーン… ザザーン…



絵里「合宿の時も、こうして朝日見たわね」

一同「合宿…?」

絵里「…その反応は大抵覚悟してたわ」

花陽「あぁ、去年の話ですよね」

絵里「まだ知り合ってないっつーの」

穂乃果「…あのね」

絵里「何?穂乃果は覚え…」

穂乃果「…」

絵里「…穂乃果?」

海未「…っ」

ことり「…」

穂乃果「…あのね、私たち話したの。あれから6人で集まって、これからどうしていくか」

穂乃果「私たちじゃない私たちが作った道をなぞらない、私たちの物語を紡いでいくには、どうすればいいのかって」

穂乃果「一人一人で答えを出した。そしたらね、全員一緒だった。みんなおんなじ答えだった」

穂乃果「だから、だから決めたの。そうしようって…言うよっ…!せーのっ…!」

穂乃果「…って言ったら言うんだよ!?」

ことり「そういうのいいから」

穂乃果「ごめん、言うよ…!せーのっ!」



「た「たいか「かいがお「いがおわった「ったらアネッ「らアネ」ネックス1」はおし」す1号は」まいにします!」ます!」



絵里「…なんて?」

にこ「何言ってるのかさっぱりわかんないんだけど」

希「そっか…そういうことだったんだね…!アネックス1号とは…運命とは…!!」

にこ「ひとりで虚無るな」

絵里「…で、何が言いたかったの?」

穂乃果「アネックス1号はおしまいにする、って」

にこ「ど、どうしてよっ…!?どうして…」

にこ「アネックス1号は私たちがいなくなっても続けてくれるんじゃないの?!」

穂乃果「…うぅん」

にこ「なんでよっ!続けたくないの!?」

穂乃果「続けたいよ!すごく、続けたい…!」

ことり「みんなも、一緒だった…。絵里ちゃんの、希ちゃんの、にこちゃんの気持ちを引き継いで、ずっとずっと続けたいって…」

花陽「みんなみんな、続けたいって気持ちで、同じ、だったんだよ」

にこ「じゃあ…、なんで…?」

穂乃果「…だって、みんな続けたいって思ってるなら」

穂乃果「きっと、前の私たちも、続けたいって思ってたんだよ」

穂乃果「運命に逆らうなら…その逆を行かないと、いけないんだって」

にこ「まさか、アンタ…!」

希「前の自分たちと、違う選択をするために…?」

穂乃果「うん…」

にこ「ば、バカッ!!そんなくだらない理由で…!やりたいと思ってることを捨てる気なの!?」

穂乃果「でもっ!私たちの思い、やりたいこと…気持ち!」

穂乃果「私たちにしかない、私たちだけのスクールアイドル!」

穂乃果「それをみんなに伝えるためには…、同じことをしてちゃ、意味がないんだよっ…!!」

にこ「っ…」

海未「同じ運命をなぞった未来に、ラブライブでみんなが見てくれるライブは、私たちのものではありません」

真姫「…私たちじゃない、私たちのライブ、ってことよね」

にこ「なによ、それ…」

穂乃果「今日ね、就活しよう、って言ったじゃん」

穂乃果「その先で、おかしなこと、いっぱいしたよね」

穂乃果「そしたら、知れ渡ると思うんだ。アネックス1号って、おかしなグループなんだって」

穂乃果「前の私たちとは違う、変な…バカな子達のアイドルなんだ、ってさ」

穂乃果「それでね、そんな前評判が行き渡ってる私たちでもね…ラブライブですっごいライブしてさ…」

穂乃果「変だと思ってたけど、意外とやるじゃんって思われたとしたら…」

穂乃果「一位は取れなくても…二位や三位に、なれるかもしれない…」

絵里「もしかして、穂乃果…!あなた、そのために…!?」

にこ「二位調整、ってこと…?」

穂乃果「…」コクリ

にこ「そこまでしてっ…!バカよ!大馬鹿じゃない!」

にこ「私たち、一位を取れるアイドルなのに…、それをみすみすふいにして、わざわざ二位を取るなんて…!」

にこ「意味わかんないわよっ!!」

穂乃果「優勝できるって…わかってるなら、いいじゃん」

穂乃果「私たちは一度、優勝トロフィーを手にした」

穂乃果「その事実は間違いないとして…、でも」

穂乃果「…スクールアイドルとして一番大切なのは自分たちのライブを見てもらうことだから」

穂乃果「それはきっと、優勝より大切なこと、だから」

にこ「…納得、できないっ…!そのために、続けたいアネックス1号をやめる、とか…!」

にこ「もっとほかに、やりようがあるじゃない…!あるんじゃないの!?」

にこ「こんな奇跡みたいなグループに巡り会えて、みんなと出会えてっ…!」

にこ「それをなくしちゃうなんて…いやよ…」

真姫「私だって続けたいわよ!にこちゃんが、アネックス1号ってスクールアイドルだった事実を、伝え続けたいっ…!」

真姫「だけどっ…!ラブライブは、にこちゃんが踊る、にこちゃんと踊れる、最後のライブなのにっ…!」

真姫「なのに誰も、このにこちゃんを見てくれないなんてっ…、そんなの、悲しすぎるでしょっ!」

真姫「バカなところもあって、ちょっと下品で…、度々百合に絡めてきてメンドくさい、それでもアイドルとして最高のあなたを、この世界の誰にも見てもらえない、なんて…!」

にこ「う、うぅっ…!!」

凛「みんな、アホの塊でさ…。何回言っても、何回聞いても、何も覚えられなくて」

凛「この9人はきっと、世界で一番、アホな9人だと思うの」

凛「もう前の凛たちとは、別人なんだって…そのくらい違う、私たちだから…」

凛「今まで誰にも見てもらえなかった私達を、見てもらいたいから…っ」

凛「そのためだったら、二位だって、三位だって…最下位だって…う、うぅっ…!!」

花陽「凛ちゃんっ…!だ、ダメだよっ…!泣いちゃ、ぅ、うぅっ…!」

穂乃果「あーーーーーーーーーーーーー!!!」

一同「っ!?」

穂乃果「おしっこ漏れる!でるでるでるっ!!もれるー!!」ダダダダッ

海未「えっ、ちょ、穂乃果っ!?」

ことり「漏れそうなのに全力疾走!?」


穂乃果「ッ…!!」タッタッタッタッ…

最寄駅前


一同「はぁっ…はぁっ…」

海未「ほ、穂乃果…トイレは?」

絵里「もしかして、間に合わなかった…?」

凛「え゙っ…、きたなっ…」

穂乃果「えへへ、ごめん…。引っ込んじゃった…」

ことり「穂乃果ちゃん…」

穂乃果「それとも、別のところから出ちゃったのかな…なんて」

穂乃果「みんなだって、おしっこ垂れ流し、しそうだったし…目からさ…」

花陽「あははは…」

海未「穂乃果のならバケツ一杯分飲み干せますけどね」

真姫「いきなり何言い出してるのこのHENTAI」

にこ「こんなんじゃ、清純派アイドルなんて夢のまた夢ね…」

凛「みんなにバカにされちゃうにゃ」

海未「でも良かったです。9人しかいない場所に来られました」

絵里「そうね。今日あの場所で海を見たのは、私たち9人だけ。この駅で、今こうしているのも私たち9人だけ」

花陽「なんかステキだったねー…」

穂乃果「ね、みんなで写真撮らない?」

花陽「あ、じゃあ携帯あるよ!」

穂乃果「そうじゃなくて!そんな平凡な撮り方じゃ、面白くないでしょ」

穂乃果「もっと奇抜に…あれで撮ろうよ!記念に!」

海未「証明写真、ですか…」



「いだだだ!押さないでよ!!」「そっちこそー!」「ちょっ、おしり触ったー!?」「さわってませんよー!」

「あぁんっ!だめそこはっ…」「ぐえっ!苦しいにゃっ…」「むぶふっ…」「はわわわわ…!」「ほら、撮るよー!」



パシャッ


穂乃果「ぷふっ…、にこちゃん頭切れてるー」

凛「あははは!真姫ちゃん変な顔にゃー!」

真姫「凛だってこっちの手しか写ってないでしょー」

穂乃果「あははは…」

希「にこっちこれはないじゃろー」

にこ「あえてよ、あえて!」

ことり「これ、私の髪ー?」

海未「ぬふっ、なんですかこれ…」

絵里「ふふ、見て、この希。にこの髪が髭みたいになってるっ…!」


「あははははははは…」


花陽「あはは、はっ…ひ、ひぐっ…う、ぅぅっ…!!」

凛「かよちん泣いてるにゃ…?」

花陽「だって…嫌、だもんっ…!ずっとずっと続けたいよ、みんなで、スクールアイドル…!」

凛「い、いけないんだって…!同じことしてたら…、誰も、凛たちのこと、見てくれないから…だからっ…!!」

凛「ひっ、ひっぐ…!うぅっ…!!」

真姫「もう、やめてよっ…。やめてって…、言ってるのに…!!」

穂乃果「二位でも、いいなんて…っ、嘘、だよっ…」

穂乃果「やっぱり…、優勝したいっ…!誰よりも、目立ちたいっ…!!」

穂乃果「目立ちたいけど…優勝したら…、私たち…っ!誰よりも、見てもらえないっ…!!」

穂乃果「ヤだよっ…!そんなの、おかしいよぉっ…!!なんで、なんでっ…あぐっ…!!うぁぁっ…!!」

ことり「穂乃果、ちゃんっ…!」

海未「どんなおかしい歌詞を書いても…ライブさえ成功させれば、優勝できるなんて…」

海未「作詞する意味、ないじゃない、ですかっ…。どんなっ、うぅっ…!どんな気持ちを込めた歌詞ですらっ…」

海未「誰にも、届かないっ…!ぐぎゅぅぅっ…!!うあああぁぁぁっ…!!」

絵里「…今日あの場所で海を見たのは、私たち9人だけ。この駅で、今こうしているのも私たち9人だけ」

絵里「本当に、そうなのかな…」

絵里「…本当は、まだ誰かいたのかも、しれない」

絵里「ここにはいない誰かが、同時に、ここにはいて…」

絵里「私たちだけの思い出なんて…作ることは、できないのかも、しれないわね…ぐずっ…」

にこ「もうっ!メソメソしないでよ!あんたたちが決めたことなんでしょっ!」

にこ「運命に逆らって、自分たちのしたいことをしないって決めたのは、あなたたちじゃないっ…!泣くってことは、それ…否定してるってことじゃないのっ…!」

にこ「そんなのっ…、私が許さないんだからっ!!」

希「…にこっち」

にこ「泣かないっ!私は泣かないわよっ!!」

希「っ!!」ガバッ!!

にこ「のわっ!泣かないんだからっ…!二位でだって、続けてくれなくたって…見てもらうためならっ、て…!」

希「っ…!」

にこ「だからっ…!この手でトロフィーを握りたいとかっ…、優勝旗を振りたいとかっ…!!思ってなんて、ない、ない、ないんだからぁぁぁっ…!!!」

にこ「あぁぁぁぁっ…!!バカぁぁぁぁぁっ!!どうして、こんな気持ちにならないと、いけないのよっ…!!くそっ、運命の、運命なんか…くそくらえっ…!!」

にこ「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ…!!!!!」

翌日

放課後 部室


キュッ、キュッ…

穂乃果「よっ、と…。これでよし!」

穂乃果「さ、練習行こ!」


一同「うん!」



穂乃果(屋上へ練習に行くため、みんな部室を出る)

穂乃果(最後に出る前、振り返ってもう一度、ホワイトボードに書いた文字を見る)


『ファイトだよ!! ラストライブまであと一週間!!』


穂乃果(その真ん中に、昨日撮った証明写真)

穂乃果(みんなとの、私たちだけの思い出)

穂乃果(…でも本当に、そうなのかな)

穂乃果(この気持ちを共有した誰かが、もしかしたら…まだいるのかもしれない)

穂乃果(運命から逃げようとして、みんなで選んだ、アネックス1号を終わらせるって選択は)

穂乃果(本当に、運命に背けているのか)

穂乃果(未来を知らぬ私には判断の付かないことで)

穂乃果(きっと、これで正しいのだと信じることしかできなかった)

穂乃果(そんな、少しの不安をもみ消すように)

穂乃果(誰もいない部室を、後にした)





うろライブ!第11話

おわり

真姫「穂乃果が下した、運命を変える手段」

真姫「自分たちのやりたいことが、きっと前の自分たちもやったことだと信じて」

真姫「それと反対のことをやる、というそれは」

真姫「それまで、卒業後の話を穂乃果が極端に嫌ったが故に」

真姫「『μ'sはこの9人でしかありえない』という議論がなされぬまま、進めてしまったことで」

真姫「当たり前のように、アネックス1号を続けたいという気持ちが先行してしまい」

真姫「結局彼女たちが選んだのは、前の自分たちと同じ選択」

真姫「運命から逃げようとしてとった行動が、巡り巡って運命をたどることに」

真姫「彼女たちは未だ運命に翻弄され続け、勝利の栄光という名の敗北から、逃げ出すことはできない」



真姫「…という話の11話だったわ」

凛「回りくどくて意味がわからないにゃ」

真姫「いくらあがいても運命から逃れることはできない、って虚無感を表現したかったのね」

凛「凛ってことは穂乃果ちゃんたちアネックス1号は、このまま優勝しちゃうってこと?」

真姫「さぁ、まだ一週間、運命を捻じ曲げるための時間は残されているけど…どうなることかしらね」

凛「でも、優勝できなかったとして、それを素直に喜べるかどうかって…難しいよね」

真姫「…そうね。その二律背反に苦しむ姿が、今回のうろライブ!のキモ、といったところかしら」

凛「まぁそんなこんなで11話も終わって…」

真姫「忘却、といきたいところだけど、今は少し時間ないからまた後でね」

凛「余裕とやる気があれば、今日の夜中にもしライブ!第7話の続きをするにゃ」

真姫「予定は未定だけどね」

凛「そんなところでひとまずお別れ!ほなにゃ!」

真姫「じゃあ今更後回しにしてた次回の忘却の安価と行きましょう」

凛「次回は誰になるのかな?」

真姫「やっぱり終盤はこれといってスポットライトのあたる人物がいないし…」

真姫「ここはやはり忘却数の少ない人物にしましょう。公平にね」

凛「というと誰になるの?」

真姫「前回凛がまさかの(全体を除けば)まだ一つしか忘れていないことが発覚したわね」

真姫「前話忘却した分も含めてまだ二つしか忘れてないとなると、次も凛に忘れてもらうことになるわ」

凛「終盤に凛が忘却…うっ、前期の悪夢を思い出しそうにゃ…」

真姫「で、同率一位で、海未が二つしか忘れていないわね」

凛「そのふたりはいいとして…最後は?」

真姫「そうなのよね…。三つ忘れた子は私、ことり、絵里、希と4人もいるのよね」

凛「じゃあその4人をランダムにするの?」

真姫「…いえ、今回はもうふたりでいいわ」

凛「なんだって」

真姫「そのかわり!今まで忘却といいつつその一話分くらいでしか活躍することのなかった…というか時間の経過で書き手の方が忘れてしまった…」

凛「こっちのほうがよっぽどうろ覚えだよね」

真姫「そのこれまでのうろ覚えをなるべく全部登場させるつもりよ!」

凛「扱いきれるのそれ…」

真姫「って言っても、既に忘れてから学習したものはほとんどスルーね」

真姫「例えば希の記憶の思い出し方、や、キャラを忘れて中二病、をといった学習できないものをなんとか本文中に再登場させる、が目標かしら」

凛「次回始める頃にはこの目標忘れちゃってそう」

真姫「…自分でもそう思うけど、とりあえずの目標よ!達成できなかったとしても知ったことじゃないわ!」

凛「ひでえや」

真姫「…で、忘却安価後の予定だけど」

凛「このままもしライブ!…といきたいところなんだけど、その前に…」

真姫「私と凛のモスラかよちん育成計画を挟むことにするわ」

凛「クリニックね…。というかいたね、そんなの」

真姫「あのプリティなモスちんにまさか生が宿るなんてね!これは徹底的に愛でるしかないでしょ!」

凛「…えー、そんなわけでもし!を楽しみにしてくださってる皆々様方はもう少々お餅いただきたいにゃ」

真姫「穂むらに行きなさい。…あと、このあとの予定ではあるけどこのあとすぐにやるわけではないからね。できれば本日の夜…かしら?」

凛「起きてればね」

真姫「じゃあ今回も一旦お別れね。バイバイ」



凛の忘れること >>335

海未の忘れること >>336

寝食

自分の好物

吐き気するほど眠いけどやっていきます レス感覚1時間以上空いたら寝落ちなので速やかに解散してください
「寝食を忘れる」を忘れるでなく、「寝食」を忘れる、なので、凛がすごい集中力MAXって解釈でいいのかしら

真姫「ハロー。西木野☆星空クリニック院長のドクター真姫よ」

凛「べーたかよちん!ナース凛だりんだにゃ」

凛「そんでもってここは一応クリニック前のオープニングトークにゃ」

真姫「特に話すことはないんだけど、やっておかないとなんだか落ち着かなくてね」

凛「じゃあとっとと終わらせて本編スタートしようよ」

真姫「んー…と、ちょっと待って」

真姫「間も空いちゃったことだし前回の流れを覚えていない人もいるでしょうから、簡単に前回のおさらいと行きましょうか」

凛「お皿洗い?」

真姫「誰もそんなこと言っとらんわ。えー、前回は確か…」

凛「真姫ちゃんの誕生日プレゼントに凛お手製のモスラ顔のかよちんフィギュア、略してモスちんフィギュアをプレゼントしたんだよね」

凛「最初は微妙な反応の真姫ちゃんだったけど、次第にその可愛さに魅了されモスちんを愛でるようになっていくの」

凛「しかしそのモスちんフィギュアはただのモスちんフィギュアではなかった!」

凛「真姫ちゃんをちょこっと困らせるための仕掛けが内密に施されていたんだにゃ!」

凛「その仕掛けとは、長時間モスちんフィギュアを見つめ続けると他人全てがモスラ顔に見えてしまうというよくわからん機能!」

凛「これで真姫ちゃんは周囲全体がモスラな現実にビビり、あたふたして凛に助けを求め…なんだかんだで訪れるりんまきワールドを期待していたんだけど…」

凛「真姫ちゃんはモスちんを愛しすぎてしまった結果、別に凛の顔がモスラでも全く動じなくなってしまったのだった!」

凛「これじゃどうしようもねぇ、そう危惧した凛は隠し兵器の盗撮で真姫ちゃんの動向を観察する!」

凛「するとあろうことか真姫ちゃんは愛するモスちんフィギュアでなんとモスニーを始めちゃったのにゃ!どっひゃー!」

凛「こんなそそるものを見せられたににゃー凛も正気じゃいられなくなって…まぁそれは置いておいて」

凛「モスニー現場の決定的な証拠を掴んだ凛はこれをダシに真姫ちゃんを脅そうとするんだけど…」

凛「逆に言いくるめられて凛までモスニーを体験してしまったのにゃ…。あれはいいものだ…」

凛「そして結局なんだかんだりんまきワールドで幕を閉じる…と思ったその時!不思議なことが起こった!」

凛「なぜかモスちんの中に生命が宿り、フィギュアのはずのモスちんが動き出してしまったにゃ!」

凛「しかも鳴き声がこれまた可愛くて…それにもまた魅了された真姫ちゃんはモスちんを我が子だと思って子育てに奮闘するつもり、なのでしたとさ」

凛「こんな感じ?」

真姫「…えぇ、ありがとう。簡単なおさらいなんてレベルじゃないおさらいをね」

真姫「というわけで今回はモスちんの育成に励んでいくわよ!きっちりとした清楚な女の子に育て上げてやるんだから」

凛「女の子…?まぁいいけど…。そう上手くいくものかにゃ?」

真姫「万事やってみなきゃ何も始まらないわ。じゃ、西木野☆星空クリニック…」

凛「開院にゃー!」

ここは星の見える丘。そこに建てられた一軒のクリニック。
今日もふたりの女の子が何やらおかしなことを繰り広げようとしています。


真姫「…」


モスラかよちん(以下モスちん)「…きゅ?」


真姫「んもー!可愛いわね!」

モスちん「きゅー」

真姫「ハーイ、ママよー。なでなで」

モスちん「きゅ~♪」


凛「楽しそうなのはいいけど…、なんでモスちんに生命が宿ったのか、とか気にしてないの…?」


真姫「ん?なによ、いいじゃないそんなの」

凛「いやいやいや…。フィギュアに命が宿るとか学会で発表したらすごいよ?世の中のオタッキーな人種が血涙を流して喜ぶよ?」

真姫「だからアレじゃないの?私と凛のドロドロが溶け合って受精した的な…」

凛「凛と真姫ちゃんのドロドロには一切精と名のつくものは含まれてないけど!?めしべとめしべをこすりつけても子供は生まれないっての!」

真姫「じゃあ私かあなたのどちらかが体内でips細胞を生み出したってことにしましょう」

凛「なにそれ…。そんなのテキトー感溢れる投げやりな考えナシ!」

真姫「アリよ。ips細胞はありまぁす!」

凛「ips細胞の存在の有無について語ってるわけじゃないにゃ!だからつまりこの生命誕生のメカニズムを…」

モスちん「きゅ~…」

真姫「あーっ!もう…ごめんね、凛が大きな声出すから怖いわよね?」

真姫「ダメじゃない、怖がらせちゃ。それでもパパなの?」

凛「凛パパじゃないにゃ…。夢見る乙女だにゃ…」

真姫「見るからに凛のほうがちんこ生えてそうな感じじゃない。パパ役はあなたよ」

凛「恥も臆面もなくちんことか口に出せる真姫ちゃんのほうが男らしいと思いますにゃ」

真姫「…はぁ。ていうか、ちんことかちんことかそんな話どうでもいいのよ」

凛「そんなにちんこの話はしてなかったと思うけど…」

真姫「今はモスちんをどう育てるか、でしょ。仮にも命が宿ったんだから、このまま放置とはいかないわ」

凛「それはそうだけどさ…」

真姫「実際に子供が生まれたと仮定して考えていきましょう。この子は赤子なのよ」

真姫「まず赤ちゃんが生まれたらいの一番に何をしたらいいのかしら?あまり詳しくないからわかんないんだけど」

凛「赤ちゃんが生まれてまずすることといえば…」

凛「>>351かにゃ?」

真姫「>>352じゃないかしら」

名前を付ける

おっぱい飲ませる

凛「名前を付ける、かにゃ?」

真姫「ま、まぁ確かに…名づけっていうのは必要だけど…」

真姫「一応この子は唯一無二のモスラかよちんなわけだし、別に固有名は今すぐ必要ってわけじゃ…」

凛「真姫ちゃんが我が子のつもりで、って言ったんじゃん!真姫ちゃんは自分の子供に名前つけないの!?」

真姫「付けないわけじゃないけど…生まれた瞬間から名前を考えるっていうのはちょっとタイミングがおかしいと思うわ」

真姫「その前にやることがあるはずよ!」

凛「やることって?」

真姫「やっぱりあれでしょ。おっぱいを飲ませることじゃないかしら」

凛「おっぱい?」

真姫「よく考えたらモスちんは生まれてから一度も食事を摂っていないわけだし」

真姫「なにか栄養のあるものを摂取するべきよ」

凛「で、おっぱい、と?…誰が出すの」

真姫「出ないの?」

凛「出るかぁ!凛ズフラットおっぱいじゃミルクどころか何かを挟むことだってムリだよ!」

真姫「じゃあ私が…」モミモミ

凛「どれだけ揉んだって出ないもんは出ないってば!妊娠が必要条件だから!」

真姫「そういえばそうね…。はぁ、仕方ないわ」

真姫「妊娠するために街で男を引っ掛けてくるからお留守番お願い」

凛「あー、いってらっしゃ…ってコラァッ!!」

凛「アウトだよ!もういろいろな意味でアウトだよその発言は!」

真姫「妊娠しろって言ったのはそっちじゃない」

凛「誰もしろ、とは言ってないって!別に栄養のあるものならおっぱいである必要ないでしょ?」

真姫「あー、そっか。盲点だったわ」

凛「普通に考えたらわかるでしょ…」

真姫「…でも、モスちんって何食べるのかしら」

凛「そもそも元フィギュアが消化器を持っているものなのかにゃ」

真姫「命ある限りなにかを食べるとは思うけど…、じゃあ私>>355を用意してみるわね」

凛「じゃ、凛は>>356を持ってくるにゃ」

お粥

米1合

真姫「食べやすい流動食のお粥を作ってみたわ」

凛「真姫ちゃん、お粥作れたの…!?」

真姫「失礼ね。お粥なんてご飯と水さえあれば誰だって作れるわよ」

真姫「はい、モスちん。お口あーんして」

モスちん「…きゅ?」

凛「通じてないにゃ」

真姫「うむぅ…。ご飯よ、ご飯!はい、食べなさい!」

モスちん「…きゅっ」プイッ

凛「そっぽ向いちゃったにゃ」

真姫「お粥はお好みじゃないのかしら…」

凛「きっと水分の多いものはお腹壊しちゃうんじゃないのかな」

凛「というわけで凛はお米一合をキッチンから持ってきました」

真姫「なんで生米なのよ…」

凛「意外と行けると思うにゃ。はーいモスちん、お米だよー」

モスちん「きゅ?」クンクン

真姫「あ、匂い嗅いでるわ」

凛「…よく考えてみればどこがモスちんの鼻なのかな…」

モスちん「…もきゅっ」カリッ

凛「あ!食べたにゃ!」

真姫「まさかの生米が正解!?」

モスちん「…もきゅもきゅ」

モスちん「ぺっ」

凛「吐き出しちゃったにゃ…」

真姫「無理か…。うーん、そもそも固体だと難しいのかもしれないわね」

凛「液体のものかー…。元々モスラは蛾だし、花の蜜とかでいけるんじゃない?」

真姫「そうね、それがいいかも知れないわ」

真姫「というわけで凛、下半身に身につけているものを脱ぎなさい」

凛「はい?」

真姫「モスちんに蜜をあげるから」

凛「おかしいおかしい。真姫ちゃんの言ってる蜜はなんか別のものだよそれ」

真姫「モスちんは凛の蜜で生まれたようなものなんだからきっとそれが一番の栄養源よ!さぁ早く脱ぎなさい!」

凛「ひぃぃぃぃぃぃっ!!乱暴はダメにゃああああああああああああああ!!」

真姫「ふふふh、艶やかなお尻ね。私が先に味見しちゃおうかしら…じゅるっ」

凛「またそんなエロ方面に持ってこうとしてぇぇぇっ!安易にそっちに持ってっちゃダメだってば!」

凛「だ、誰か助けてぇぇぇぇぇっ!!」

モスちん「きゅーっ!!」ヒュッ

真姫「へぶっ!?」ズゴォッ

真姫「も、モスちんが私に頭突きを食らわしてきたわ…!?」

凛「も、モスちん…!助けてくれたの…?」

モスちん「きゅー」

凛「うぅぅぅ…!ありがとうにゃー!」ギュッ

真姫「今までの私の愛は一体…ガクッ」

モスちん「きゅー♪」ゴクゴク


凛「いろいろ試したらオレンジジュースで何とかなったにゃ」

真姫「あいたたたた…意外と強いわね、この子…」

凛「結構戦闘力ある感じ?」

真姫「そうね…。そっち方面に育てたらかなりの戦術兵器になるかもしれないわ…!」

凛「またそんなよからぬこと考えて…。モスちんはプリティなんだからそういうことしちゃ可哀想にゃ」

凛「ほらモスちーん。お友達のモス凛とモス真姫だにゃー。動かないけど仲良くなれるといいねー」

モスちん「むきゅー?」

モスちん「むきゅきゅ…、きゅっ!」ゲシッ

凛「あー!モス凛がぶん殴られたにゃ…。いたただよ…」

真姫「やっぱり思ったより好戦的なのね…」

真姫「…」


真姫(この小さいカラダで私を気絶させられるくらいのパワーを秘めているとはね…)

真姫(だったらもし、この力を更に発展させるように育成できれば…)

真姫(プリティかつ誰にも負けないような最強の生物兵器を所持できる…!)

真姫(ふふふ…、うまくできれば国すらもこの手に収めることだって…!!)


凛「…真姫ちゃんなんかやらしいこと考えてない?」

真姫「えっ」

凛「や、やめてよ?次は凛のおしりのチョコレートとか…」

真姫「そ、そんなこと考えてないわよ!これからどうやってモスちんを育てていこうか考えてたところ!」

凛「そう?じゃあ…とにかく栄養面はなんとかなりそうだから次は…名前をつけるべきにゃ!」

真姫「もうモスちんでいいじゃない。それで定着しちゃったんだし、繁殖する予定もないなら」

凛「それでもなんか固有名が欲しいにゃ!凛の気に入る感じの…うーん、何がいいかな…」

真姫「…別に凛が呼びたいならそれでもいいんだけど」

凛「よし決めた!モスちんの本名は…」

凛「>>363(苗字)>>365(名前)に決定にゃ!!」

西空

ゴルバチョフ

凛「モスちんの本名は西空ゴルバチョフに決定にゃ!」

真姫「ものすごい濃い名前ね…」

凛「可愛いでしょー!今日からキミは西空ゴルバチョフだ!わかったね?」

モスちん「…きゅぅ?」

真姫「自分のこと呼ばれてるって気づいてないみたいだけど」

凛「えぇー!ゴルバチョフー!キミの名前はゴルバチョフなんだってー!ユアネームイズゴルバチョフウエストスカイ!」

真姫「言い聞かせてもわかんないでしょうが…」

モスちん「きゅ」

凛「ぬおぉぉっ!名前欄も頑なにモスちんのままだし!くそぉ、いいもん!ゴルバチョフが浸透するまで呼び続けるからね!」

真姫「そうですか」

凛「ふふふー、ゴルバチョフは可愛いにゃー」

真姫「…で、名前も決まったところでモスちんをこれからどうするか、だけど…」

凛「ご、ゴルバチョフ…」

真姫「私はモスちんをたくましく育てたいの。ムッキムキにしたいのよ」

凛「えー!ムキムキとか可愛くないにゃ!」

真姫「ゴルバチョフに言われたくないけど…で、そのために凛のお薬を使えば手っ取り早くたくましくなれるんじゃないかって考えてるんだけど…どう?」

凛「断固反対だよ!そんなことのために凛のお薬を使わせるわけにはいかないね!」

真姫「そう言うと思ってたけど…じゃあ逆に聞くけど、凛はモスちんをどういうふうに育てたいわけ?」

凛「んー、やっぱり凛が思うにゴルバチョフは…」

凛「>>368で、>>369な感じに育ててみたいの!」

高飛車

真姫ちゃんそっくり

凛「高飛車で、真姫ちゃんそっくりな感じに育ててみたいの!」

真姫「はぁ?なにそれ…」

凛「やっぱり真姫ちゃんを愛好する者と致しましてはゴルバチョフにもそんな感じに育ってくれるとありがたいなって」

真姫「いや…、言っても見た目花陽なのよ?いや、顔はモスラだけど」

真姫「つまり凛の言ってることはこういうことでしょ?」



花陽「なによそれ、意味わかんないんだけど。いい加減にして」

花陽「別に、いいんじゃない?勝手にすれば」



真姫「こんな花陽でいいの!?」

凛「実際にかよちんがこんなんなったら割腹自殺を図るレベルで嫌だけど…」

凛「でもかよちんとゴルバチョフは別物だからいいの!名前も西空で若干真姫ちゃん入ってるし!」

真姫「成分としては10%程度じゃない…。親が子にタカビーを望むなんてあまりよくないことだと思うわ」

真姫「やはりここは実践にも耐えうる超人…ならぬ超蛾になるように教育すべきね!」

凛「ヤダ!ゴルバチョフには温室ぬくぬく育ちでわがままが何でも叶っちゃうそんなクソ真姫ちゃんみたいな性格にするの!」

真姫「なによー!!」

凛「やんのかー!」

モスちん「き、きゅぅぅ…」

真姫「こうなったら…えいっ!」ササッ

凛「あっ!ゴルバチョフ!!」

真姫「凛に見つからないところで英才教育よ!」ダダダダッ

凛「逃げやがったにゃ!く、クソォッ…!」



真姫「ふふふ…、ここまでくれば凛には見つからないはずだわ」

モスちん「きゅぅ…?」

真姫「さーてと、モスちん。あなたには私のために超強い子に育ってもらうからね」

真姫「オーバーレイユニットかファンネルのように体の周りを停滞しつつ命令したら敵を攻撃する…」

真姫「そんなロマン溢れる飛行ユニットみたいにね!」

モスちん「きゅ…」

真姫「私との合体必殺技とかもあれば尚良しね…ふふふ、妄想がフルスロットルだわ」

真姫「でもそのためにはまず基礎体力をつける必要があるわね」

真姫「モスちん、まずは体力作りのために、>>371をしましょう」

私とえっち

真姫「私とえっちをしましょう」

モスちん「きゅ?」

真姫「よくよく考えてみればモスちんに生命が宿ってから一度もモスニーしてないのよね」

真姫「その上命があるということはこれはもはやモスニーではなくモスックスなわけよ」

真姫「体力をつけるのにこれほど効率のいいやり方もないわ」

モスちん「き、きゅぅぅ…!」

真姫「さぁモスちん、服をぬぎぬぎしましょう…!フィギュアなれどあっちの部分はどうなってるのかしら…!!」

モスちん「きゅぅぅぅっ!!」ブンブンッ

真姫「うわっ…、モスちんが尋常じゃなく嫌がっているわ…」

真姫「なによ!あなたはモスニーによって誕生したんだからえっちくらいいいでしょ!」

モスちん「きゅっ!!きゅぅぅっ!!」

真姫「う、涙目になっているわ…。えっちはまだ怖いお年頃なのかしら…」

真姫「…仕方ないわね。折衷案として…」

真姫「服の上からの摩擦で勘弁しておいてあげましょう。えいえいっ」スリスリッ

モスちん「んきゅっ!?きゅ、きゅぅぅ…///」

真姫「お、甘い声を出し始めたわね。気持ちいいのね…うりうり」

モスちん「きゅぅぅんっ///っきゅんっ!きゅぅぅぅ…!!」

真姫「えいえいっ!これでどうっ!」

モスちん「んきゅっ!きゅっ…きゅぅぅぅぅぅっ!!!!」ビクンビクンッ

モスちん「き、きゅぅぅぅ…///」

真姫「どうやら絶頂したみたいね…。トロ目のモスちんも愛らしいわ…」

真姫「これで一つ大人の愉しみ方というのを学べたわね。次ムラムラしたときは今のをひとりでやるのよ」

モスちん「んきゅ…」

真姫「…元の目的から離れてきている気がするわ。よし、じゃあ次はそうね…」

真姫「やはり何よりも筋力ね。パワーをつけるための特訓よ!」

モスちん「きゅぅっ!」

真姫「そうね…。どうすればいいかしら…」

真姫「じゃあダンベルを持ち上げるみたいに…」

真姫「>>373を持ち上げて力をつけるって方法はどうかしら」

子泣き爺

真姫「子泣き爺を持ち上げて力をつけるって方法はどうかしら」

モスちん「き、きゅぅぅぅ…?」

真姫「なんか子泣き爺って背中にしがみつくとどんどん自分の体重を重くして背負った人を潰す、って聞いたことがあるし」

真姫「子泣き爺を手懐けて一番重い状態になるまで徐々に体重を上げさせていって…」

真姫「一番重い状態でも楽勝で持ち上げられるようになればこれはもう最強に違いないわ!」

モスちん「きゅぅ」

真姫「…問題は子泣き爺よね。どこにいるのかしら」

真姫「うーん…、妖怪なんかに出会ったことなんて一度もないし…」

真姫「あ!そうだわ!西木野驚異のメカニズムでロボット子泣き爺を制作すればいいのよ!」

真姫「こんなことを思いつくなんてなんて天才なんでしょ」

真姫「そんなわけでちょこっと制作に時間がかかるから待っててね、モスちん」タッタッタッ…

モスちん「き、きゅ」



数分後…


モスちん「…きゅぅぅ」


ガチャッ


モスちん「きゅっ!」

モスちん「…きゅ?」


凛「ふふふふふ…、こんなところにゴルバチョフを隠していたなんてね…」

凛「でも凛の嗅覚を舐めてもらっちゃ困るにゃ。例え地の果てであろうとも真姫ちゃんのお股の匂いなら簡単に嗅ぎ分けられるんだもんね…」

凛「ゴルバチョフは日頃のモスニーの連続から真姫ちゃんのベタベタまみれなのは言わずもがな…。匂いが染み付いてるのだにゃ」

凛「都合よく今は真姫ちゃんもいないことだし…。ゴルバチョフは返してもらうにゃ!そして今度は凛が教育を施して…むふふのふ」

モスちん「きゅぅぅぅ…」




凛「よしよし、ここまでくれば真姫ちゃんなんかにはもうみつけようもないはずにゃ」

凛「さーてと、ゴルバチョフには立派に真姫ちゃニズムを学習してもらおうかにゃー」

モスちん「きゅぅぅ?」

凛「真姫ちゃニズムっていうのは真姫ちゃんっぽさを言い表した言葉にゃ」

凛「ナニソレ、イミワカンナイをスローガンに18世紀初頭にかけてフランスあたりで深く浸透した考え方なんだよ」

凛「嘘だけど」

モスちん「…きゅぅ」

凛「ふふふ、凛は嘘つきなんだにゃ。真姫ちゃんは頭が壊れてる系女子だけど」

凛「まーそれはいいとして、ゴルバチョフを真姫ちゃん色に染めるには真姫ちゃニズムに則って教育を施すべきだけど…」

凛「真姫ちゃんと言えば大体休日は近所の>>375>>376を素振りしつつ、『>>377』って叫んで>>378に喧嘩売るのが日課だよね」

ラブホ

チョコバット

キモチワルイ

近所の人

凛「真姫ちゃんと言えば大体休日は近所のラブホでチョコバットを素振りしつつ、『キモチワルイ』って叫んで近所の人に喧嘩売るのが日課だよね」

凛「凛としてはドン引きにも程がある趣味なんだけど数少ない真姫ちゃんの楽しみの一つを奪うわけにはいかないから容認してるにゃ」

凛「きっとゴルバチョフもそれをやれば真姫ちゃんチックな性格になれる気がするのにゃ!」

モスちん「きゅ、きゅぅぅぅ…」



ラブホ


凛「すみませーん、女子ふたりの部屋って空いてますー?」

受付「はいどうぞ」チャリン

凛「あざーす」


凛「…ラブホにまさかレズ専の部屋があるなんて知らなかったにゃ」

凛「まぁいいや。さぁゴルバチョフ!ここでチョコバットを素振りするんだにゃ!」

モスちん「きゅっ!きゅっ!!」ブンブンッ

凛「おおいい感じ!ゴルバチョフにはちょうどいいサイズで振り甲斐がありそうだね!」

凛「そして近所の人にキモチワルイって叫んで喧嘩を売るのにゃ!」

凛「今は近所の人はいないけどデモンストレーションでどうぞ!」

モスちん「きゅきゅきゅっ!!」

凛「し、しまったー!!ゴルバチョフはきゅーきゅーしか喋られないにゃ!」

凛「これじゃああの真姫ちゃニズムを象徴する罵倒ができない!くっ…、ミスったにゃ…」

モスちん「…きゅぅ」

凛「…あ!そだ!そだ!ゴルバチョフも喋れるようにすればいいんだ!」

凛「たぶんそんなお薬を作り置きしてた気がするにゃ」

モスちん「きゅー」

凛「今からクリニックに戻ってそんなお薬を調達してこよう!さ、ラブホはあとにしてクリニックへ向かうにゃ!」



クリニック内


ガチャッ

凛「ただい…あ」

真姫「あ」


凛「ままま、真姫ちゃんっ!帰ってたの!?」

真姫「まさかそっちから帰ってくるなんてね…!探す手間が省けたわ…!」

真姫「よくも私のモスちんを強奪してくれたわね…っ!!」

凛「元はといえば真姫ちゃんが先に奪ったのが悪いんでしょ!ていうかなんで凛のお薬貯蔵庫にいるの!」

真姫「ふんっ!決まってるでしょ。モスちんが手っ取り早く強くなるお薬を探してるのよ」

凛「なにー!そのお薬の所有権は全て凛のものなのにゃ!盗っ人猛々しいにも程があるよ!」

真姫「それで言えばこのクリニックは私のものなんだからクリニックの中にあるものは全て私のものなのよ!」

凛「ふ、ふざけたことを抜かしてくれるにゃ…!えぇい、こうなったら…!」

凛「一定時間>>380が3倍になって>>382という特殊能力が使えるようになるお薬を使用して真姫ちゃんを撃退にゃ!」

全ステータス

人いないなあ~

加速下

凛「一定時間全ステータスが3倍になって相手の精神を掌握するという特殊能力が使えるようになる薬を飲むにゃ!」

真姫「なにそれチート過ぎるでしょ!?!」

凛「チートすぎる位の方が攻略が楽しいもんだよ!よしっ…ゴクンッ」

凛「ぐ、ぐおぉぉぉぉぉっ…!!」

真姫「…く、来るっ…!!」

凛「…ふっ!!」シュンッ!!

真姫「な、消えっ…!?」

凛「遅いにゃ」

真姫「う、後ろ…!」

凛「もみもみ」

真姫「ひゃぁんっ!!?何してんのよっ…!」

凛「おっぱいをひとしきりもんだあとは…っ!」ガッシ

真姫「ぐっ…!腰を掴まれっ…!?」

凛「ジャーマンスープレックスをお見舞いにゃあああああああっ!!」グォォォンッ!!


ズゴッシャァァァァァァァッ!!


真姫「へぶぅぅぅぅっ!!!」

真姫「ぐ、っふ…」

凛「へっ、楽勝にゃ」

凛「さてと…、ゆっくりとお目当ての薬を探して…」


ポイッ


凛「…にゃ?」

真姫「…へ、へへ」

凛「な、何かが凛の体にしがみついて…ぬおぉぉっ!!?」グオンッ

凛「お、重っ…!!?な、なにこれ…!」ズシィィィ…!!

真姫「我が西木野財閥が総力を結集して数分で作り上げた筋力増強兵器…、ロボ子泣き爺よ」

凛「いつの間に真姫ちゃんちは財閥になってたんだよぉぉぉ…!!」

真姫「あんたの筋力が3倍になった程度で支えきれる重さじゃないわ…!ふっ、油断したわね…!」

凛「で、でもっ…!真姫ちゃんこそそんなボロボロの体で何ができるというのにゃ…!!」

真姫「…何が?ふっ、そうね…。私は何もできないかもしれないわ…でも」

真姫「モスちん!助けて!!」

モスちん「きゅーっ!!」

凛「にゃっ!?ど、どうしてゴルバチョフが真姫ちゃんのところに行っちゃうの!?」

真姫「簡単なこと。このモスちんは花陽をモチーフとして作られている…。誰かが『助けて』というと助けたくなってしまうのよ」

凛「だ、だからさっき凛を助けてくれたのかにゃ…!だ、だったら凛も…!!た、たす…」

真姫「遅いっ!!行くわよモスちん!ふたりの合体必殺技で凛をノックアウトよ!」

真姫「私の体を発射台として限界以上のパワーで突進する…!その名も…!!」

真姫「>>385>>386>>387(単語×3)!!」

グレート

グレート

グレート

真姫「その名も…!」

真姫「グレートグレートグレート!!」

モスちん「きゅぅぅぅぅぅっ!!」シュゴォォォォッ!!

真姫「はぁっ!!」ブオンッ


ズゴォォォォンッ!!


凛「ぐぶふぅぅっ!!」

凛「がはっ…!な、なっ…」

凛「名前、クソダサ…すぎ…」バタリンコ


真姫「…」

真姫「何も聞かなかったわ。…よし、じゃあ決着もついた事だし」

真姫「そこらへんの筋力が超付きそうな薬をテキトーに拝借して飲ませてあげましょう」

モスちん「きゅぅぅ」

真姫「じゃあコレと、コレと…後ついでにこれでいいかしらね」

モスちん「きゅ?」

真姫「はーい、じゃあこれを…」


ピキィィィンッ…!!


真姫「っ…!!?」

真姫「あ、ぐぁっ…!!て、手がっ…!」プルプル…

真姫「ど、どうして…」


凛「…クククク」


真姫「ま、まさかっ…!」

凛「アハハハハッ…!油断したのはどっちかなぁ…?」

凛「聞いてなかったのかにゃ…?凛の薬の効能…」

真姫「精神の、掌握…!」

凛「そう…。つまりそれは対象を凛の思い通りに操れるってことだにゃ」

凛「慣れないと完璧には操れないけど…、まぁ、身体を動かすくらいなら朝飯ぱくぱくだにゃ」

真姫「く、くそぉっ…!」

凛「凛の身体が動かなくても…真姫ちゃんが代わりに凛の思い通りにしてくれるにゃ…」

凛「さぁ真姫ちゃん…。そんな薬捨ててもっとインテリジェンスなお薬をゴルバチョフにご馳走してあげて…?」

真姫「ぎ、ぎぃぃぃっ…!!」

モスちん「きゅ、きゅっ…?」

凛「さぁ、さぁっ…!」

真姫「うあぁっ…!こ、このっ…う、動けっ…!!」

凛「無理だよ…!もう真姫ちゃんの運動神経系は凛の手中にゃ!真姫ちゃんの体はもう真姫ちゃんのものじゃない!」

真姫「ぐ、ぐぅっ…!だ、だったら…!!」ガッシッ!

凛「にゃっ…!?な、何してるの!?そこはまだ試作途中の薬置き場…!」

真姫「アンタの思い通りなんかクソッタレよ…!そうなるくらいなら…!」

真姫「こうしてやるわっ!!」ズゴッ!!

モスちん「もぎゅぅぅっ!!?」

凛「ご、ゴルバチョフウゥゥゥッ!?!」

モスちん「ぎゅっ!?ぎゅぎゅっ!!?」


凛「な、何してるの真姫ちゃぁぁんっ!!?よくわからないお薬をモスちんに大量に…」

真姫「…わ、私もヤケクソになっちゃってつい…」

凛「ついじゃないよ!?ど、どうなっても知らないからね!?」

真姫「ど、どうなるっていうのよ!?」

凛「知らないってだから!」


モスちん「ぎゅぎゅ、ぎゅぎゅぎゅっ…!!」

モスちん「ぐぎゅううぅぅぅ~~~~~!!!!!!!」


真姫「な、なんかヤバくない…!?」

凛「ゴルバチョフぅっ!!しっかりしてぇぇっ!!」

真姫「か、身体が、膨張してきている…!?」

凛「どんどんおっきくなっててるにゃぁぁぁぁっ!!」


ミシミシ… バキバキバキッ…!!


真姫「まず…、このままだと…!」

凛「クリニックが壊れるっ!」

真姫「に、逃げるわよ!」ガシッ

凛「ま、真姫ちゃぁっ…!ゴルバチョフが!モスちんがぁぁっ…!!」

真姫「今はそれどころじゃないわ!倒壊したクリニックに押しつぶされちゃうかも…!!」

凛「モスちんっ!!モスちぃぃぃぃんっ!!」



クリニック外


真姫「はぁっ…、はぁっ…!一体中では何が…」

凛「モスちん…!」


ベキベキベキッ…

ドガシャァァァッ!!


真姫「げっ…!!」

凛「うわぁっ!!」


モスちん「ぎゅううぅぅぅぅぅぅ…!!」


真姫「で、でかい…!本物のモスラくらいのデカさになってる…!」

凛「何をどうすればあんなのになるのぉぉっ!?」

真姫「いろんな薬を摂取したせいで様々な化学反応が体内で起こってしまったんだわ…」

真姫「今のモスちんに一体どんな特殊能力が備わっているか…」


モスちん「ぎゅぅぅぅっ!!」ピガガガッ…

ピッシャァァァッ!!


凛「ひぃぃぃっ!!」

真姫「か、雷がっ…!!天候を操る能力までっ…!?」

凛「ゴルバチョフ!しっかりして!!パパとママがわからないにゃ!?」

真姫「薬のせいで正気を失ってしまっているんだわ…!」

凛「真姫ちゃんのせいじゃん!このバカー!!真姫ちゃんが飲めばよかったんだぁぁぁっ!!」

真姫「そ、そんなこと言ったって…」


モスちん「ぎゅうぅぅぅぅ…!」シュッ…!!


真姫「あっ!モスちんの見た目が変わった…!?」

凛「なんだかシュッとした体型に…」

真姫「ハッ…!ま、まさか…!!」


モスちん「ぎゅぅぅっ!!」

ヒュンッ!!



凛「えっ…!き、消えた…?」

真姫「違うっ!ワープ…タイムワープしたのよ!」

凛「た、タイムワープ…?」

真姫「元々モスラに備わっているフォルムチェンジの機能だわ…。あのフォルムは…光モスラ!」

真姫「過去への時間跳躍が可能になるフォルム…!つまり今モスちんは…」

凛「か、過去に飛んじゃったってこと!?」

真姫「早く追いかけないと、過去でモスちんが何かしでかしたら…!」

凛「現在が大変なことに!く、クリニックを早く発進させ…って壊れてるしぃぃっ!!」

真姫「ど、どどど…!どうすればぁぁっ!?」


ゴゴゴゴゴッ…!!


真姫「マズいっ…!時空改変の波がっ…!」

凛「うえぇっ…!は、吐き気が…!波で体が揺らされて…気持ち悪いにゃ…」

真姫「くっ…、クリニックが壊れた今、どうすればモスちんを追えるの…!?どうすれば…!」

凛「ち、ちょっと吐いてくるにゃ…お、おえぇぇぇぇぇぇ…」

凛「…ん?クリニックの残骸から…これって…」

凛「あ!そうだ!!」

真姫「ど、どうしたの?」

凛「こ、これを使えば…!モスちん…ゴルバチョフの後を追えるかも!」

真姫「そ、それはっ…!!」





つづく

真姫「というわけでまさかのまたまたつづくで終わっちゃったわね」

凛「クリニックまで長編になっちゃったらどうするの…」

真姫「平気よ。次回で終わるから」

凛「ホントかにゃぁ…?」

真姫「あ、タイムワープする形態は光モスラじゃなくて正確にはモスラ・光速モードだったわ」

真姫「ついでに本来はアクアモスラを経由しないと変身できないみたいね」

凛「どうでもいいです」

真姫「で、次回からついにもしライブ!再開ね。書きだめはほとんどしてないからやっぱりスローペースだけど」

凛「最近は7時過ぎるとびっくり睡魔に襲われるようになって夜中の更新が難しくなっちゃったにゃ」

真姫「なるべく日の開かないようにしたいわね」

凛「うろ!の方もクライマックスだしね!ドキドキハラハラの連続だね!」

真姫「果たして読んでいる側はそう思っているかどうか」

凛「なんでネガティブなの…」

真姫「じゃあ次回をお楽しみに。今日の西木野☆星空クリニックはここまで!」

凛「次に大量の薬を飲んで巨大化しちゃうのはあなたかもね?」

真姫・凛「「まじ☆えんじぇー!!」」

実に10日以上ぶりのもしライブ!再開していきます 待たせてゴメソ
初期の頃と見比べると設定の齟齬が複数見受けられるけど仕方ないものとしてライブ感を楽しんでね
なるべく説明でこじつけてくから

希の家前


ガチャッ

希「…はい、入って」

真姫「お、おじゃま…します」


バタンッ



真姫「…ぅ」

希「どう?半年ぶりの生徒会長のお家は」

希「あの頃とは見えるものも変わってるんと違う?」

真姫「そう…ですね」

真姫「あの時は、周りなんて見ようともしなかったから」

真姫「…こんな、家だったんだ」

希「うちがどれだけ話しかけても、一言も話してくれなくて」

希「結局、次の日からずっと学校に来なくなっちゃって」

希「…ダメだったかと思った。また、心に傷を負った子を助けられなかったって、ひどく落ち込んで」

希「でも、それじゃダメだから…うち、くよくよしないためにすっぱり忘れちゃっててね」

希「考えるとずっと引きずっちゃうタイプやし…他にも助けを必要としている子もたくさんいるし、悪いことやとおもいつつも…」

希「だから新学期始まってすぐ、真姫ちゃん…西木野さんが学校に来てくれたときも、最初は気づかんかってんよ」

希「けどすぐ思い出して…ふふ、あの時は一度も話してくれなかった西木野さんが、今度はあんなにうちを頼ってくれて、すごい嬉しくて…」

希「…でもあれは、ホントは西木野さんじゃ、なかったんよね」

真姫「…」

希「今は、どう?少しは元気、出た?」

真姫「…うん。あの時ほどじゃ、ない」

真姫「4月頃の私は、本当に、何もかもが嫌になって…アイドルどころか、学校すらなくなればいいのに、って思ってた」

真姫「だけど引きこもってる間、あなたのことだけは…私に手を差し伸べてくれたあなたに何も応えられなかったことだけは、とても悔やんでて…」

真姫「一度、家まで行って謝りたいって思って…住所を調べようとしたんだけど」

真姫「調べ方がよくわからなくて。生徒会長だってことは知ってたから、学校のHPで名前だけは知れたんだけど」

希「あ、やっぱりうちの名前、覚えててくれんかったんや。家に誘った時に何度か自己紹介したんだけどね」

希「今日顔見て覚えててくれてちょっとびっくりしたけど、そういうことやってんね」

真姫「え、えぇ…。あの頃のことは本当に…何一つ思い出せないし…思い出したくもないから」

希「んで。知りたがってた住所が知れたけど…どうかな?」

真姫「…あ。あ、えっと…」

真姫「ご、ごめんなさい…。あの時は、何一つ相談できなくて。あんなに、私のこと心配してくれたのに」

真姫「そして…ありがとうございます。こんな私を心配してくれて」

真姫「立ち直れたきっかけの一つに、間違いなくあなたがいるから」

希「…お礼を言われるほどのことでもないよ。うちはうちで、親切心というより…義務感でやってたことやから」

真姫「…それでも」

希「…うん。せやね。ここは素直に受け取っといたほうが、西木野さんにとっても嬉しいことかな」

希「さてと。それじゃ、積もる話はこれくらいにして…せっかく我が家に来たことやし、ゆったりしていってね」

真姫「あ…、はい。ありがとうございます」

真姫「…」


真姫(…懐かしい。あの出来事から、もう半年…まだ半年、って言ったほうが、正しいのかな)

真姫(あの時は、何も感じなかったけど)

真姫(一人きりの暗い部屋に閉じこもってから、この家を訪れた夜のことを、度々思い出していた)

真姫(血のつながりのない、他人…友達の温かみ、というものが、人恋しくなっていた)

真姫(私が復学してもいいと思った理由の大半が、彼女…東條希先輩に、もう一度会いたいから、というものだった)

真姫(UTX学院において数少ない外部との繋がり…。まだ喋ることに抵抗の少ない人物ではあるから)

真姫(友達ができないであろうこれからの学園生活の拠り所に、できるかもしれないって思って…)

真姫(…そして、もう一人…。彼女にも、もう一度…)


希「真姫ちゃん?」

真姫「は、はいっ?」

希「さっきから何度も名前呼んでるのに返事ないから…。あ、もしかして真姫ちゃん、やと馴れ馴れしすぎるかな?」

希「まだ一回しか会ってないし、あの頃も西木野さん、で通してた…はず?やから。西木野さん、でいい?」

真姫「え、あ…はい。ど、どっちでも…いいです」

希「じゃ、あっちの方と区別付けるために、西木野さん、で。西木野さん、うち、料理作ってるから」

希「何かあったら、遠慮なく呼んでね?暇やったら勝手にテレビ付けてもいいから」

真姫「あ、あぁ…お気遣いありがとうございます」

希「ん」


真姫「…ふ」

真姫(やはり、彼女となら、心なしか他の人より緊張せずに話せているような気がする)

真姫(…でも、『あっちの方』…。自称異世界人の…)

真姫(彼女は、希先輩の、どこまでを知っているのかしら…)


希「ねぇ、西木野さん。西木野さんは、あっちの真姫ちゃん…9月からUTXに来た真姫ちゃんのこと、どれくらい知ってるん?」

真姫「えっ、どれくらい…どれくらい、って言われても…」

希「スクールアイドルを始めた、ってことくらいは知ってるんよね?」

真姫「…え、えぇ」

希「んふふ、そっかそっか。やーね?真姫ちゃんが来た9月からのUTXの激動具合と言ったらねー…」

真姫「…」

希「西木野さんも、これから学校に来るんやったら、ちょっとは今のスクールアイドル事情を知っておいたほうが流行に流されんで済むと思うんよ」

希「西木野さんも一度はA-RISEを志した…あっ、ごめん。やっぱまだ…嫌、かな?そういう話…」

真姫「そ、そんなことは…」


真姫(…ない、とまでは言い切れない。あの時ほどではないというだけで)

真姫(アイドルに対して、そしてUTXに対してもまだ多少の…恨み、というものが残存している気がする)

真姫(といっても、ほんの少し、胸の奥に小さいトゲのように残っているだけで、触られるとチクリとする、程度なんだけど)


真姫「…希先輩の話なら、私はなんでも…」

希「ん、そう?じゃあねー…どこから話そっかなー…」

西木野家 食卓


真姫ママ「…真姫?」

真姫☆「へっ?」

真姫ママ「どうしたの、さっきから虚空を見つめて」

真姫ママ「もしかして…幽霊でも見える!?暗い部屋でずっと過ごしてたからそういう目に…」

真姫☆「ち、ちち…違うわよーっ!ただ考え事してただけ!」

真姫ママ「うふふ、そう。ならいいのよ。ほぉら、早くご飯食べないと冷えちゃうわよ?」

真姫☆「はぁい…」


真姫☆(さっきの泣き顔はどこ吹く風で、すっかり茶目っ気たっぷりのママに逆戻りね)

真姫☆(彼女としては娘とこうして話せるだけでも相当にテンションが上がって仕方ないのでしょうけど…)

真姫☆(…私としても嬉しいんだけど、今はそれどころじゃない)

真姫☆(そう、この世界の私も、アイドル専攻に通っていたという事実)

真姫☆(過去の私の言葉から推測できるその事実に、私の脳内は埋め尽くされていた)

真姫☆(彼女が心に傷を負い、生活の6分の1ほどを無駄に消耗してしまった理由も、もはやお馴染みのアイドル専攻…)

真姫☆(改めてこの世界でもUTX学院というものの存在の闇に、衝撃を受けざるを得ない)

真姫☆(…いえ、UTX学院そのものというよりやはり、元凶は…)

真姫☆(絢瀬絵里…なんでしょうね。全く、この世界ではよからぬことばかりしでかしてくれるものだわ)

真姫☆(音ノ木坂の制服を着た彼女が恋しい。あっちなら程よくアホで見ていてとても癒され…)


真姫☆「あ、そうだ!ママ、あの…」

真姫ママ「ん?なにかしら」

真姫☆「私のクローゼットに入っていた、えーっと…謎の制服、なんだけど」

真姫ママ「あぁ…あれのこと?」

真姫☆「そう、多分アレ。アレ…どうしたかな、って」

真姫ママ「ふふ、あの服はね、私の通ってた学校の制服にとてもよく似てたから、今は私のタンスで大切に保管してあるわ」

真姫ママ「って、前も言ったわね、これ。どこで手に入れたの、って言っても、知らない、ばかりだったけど」

真姫☆「え、えぇ…。いつの間にかあって、代わりにUTXの制服がなくなってて…そ、そう。まだあるのならいいんだけど」


真姫☆(勝手に処分されても困る…ってほどでもないけど)

真姫☆(捨てられると少し複雑な気分になってしまう。私物だし)

真姫☆(…というか今は制服のこととかどうでもよくて…あぁ、ママといるとなんだか集中できないわね)

真姫☆(やはり私には、根っからの引きこもり体質なのかも。集中するなら、自室でひとりきりが一番だと思える)

真姫☆(ママにももう少し、娘との団欒を提供してあげたいけど、ここは私の事情が一番大事だから…)


真姫☆「もぐもぐもぐっ…ごくんっ!」

真姫☆「ごちそうさま!お風呂、後で入るから、ママ先に入ってて!」タッタッタッ…

真姫ママ「え、あ、…なんなのかしら。昨日とは全然違うわね、あの子」

真姫ママ「でも、あれくらい元気なほうが、見ていて楽しいかも」

バダンッ



真姫の部屋


真姫☆「…ふぅ」


真姫☆(というわけで、およそ3ヶ月ぶりの、この世界の私の部屋)

真姫☆(整然としたこの私の部屋とは違い…コードやら何やらでとてもグチャグチャしてる)

真姫☆(こんな部屋で寝たくない…。よく過ごせてたわね、アイツ)


真姫☆「ま、でもどっちみち…」


真姫☆(部屋を漁るのだから、片付けついでにちょうどいい)

真姫☆(この世界の私が、どのようにして心を病んでしまったか。その原因がこの部屋にあるといいんだけど)

真姫☆(もしかしたら、絵里に対抗する術…とか、見つけられるかもしれないし。多分ないけど)

真姫☆(それに、ヤブでも便宜上ドクターを名乗っている者だから、いずれこの世界を去るのなら…)

真姫☆(この世界の全てを正常に戻してから、スッキリして帰りたい。立つ真姫ちゃんは後を濁さないどころか綺麗に掃除して帰るのよ)


真姫☆「まだアイドル専攻には謎も多いし…特に絵里のこととか…」ゴソゴソ…

真姫☆「…あんなに人を傷つけてまで、実力主義を突き通す…。異常だわ」ゴソゴソ…

真姫☆「いくら音ノ木坂とUTXの環境が違っていたとしても、あそこまで考え方が変わるとは思えない…」ゴソゴソ…

真姫☆「もしかしたら、何か他に事情が…おや?」

真姫☆(一枚の印刷紙をコードの束の底からサルベージする。これは…)

真姫☆「UTX学院のホームページ…?」

真姫☆「現在の生徒会長近影…。穂乃果じゃなくて希が写ってるってことは、9月以前に印刷したものかしら」

真姫☆「名前欄に赤ペンまで入ってるけど…なんなのこれ」


真姫☆(よくわからないけど、彼女のトラウマに関するものではなさそうだった)

真姫☆(とにかく今は、時間が許すまでこの部屋を漁り尽くそう)

真姫☆(この世界の私に、『アイドルなんて大嫌い』とまで言わせた原因が何か…)

真姫☆(それが見つかるまで、ひたすらに)

真姫☆(…でも、彼女はもう学校に復帰してるんだし、その必要もないのかもしれないけど)

真姫☆(一度気になると動かざるを得なくなるのが、私の性分だからね)

希の家


希「ん、でねー。そこでまさかのっ…!」

真姫「ふふっ…」


真姫(希先輩の話は、『私』から簡潔に聞いた話とそれほど大差はなかったけど)

真姫(一部、私でもわかるような大袈裟な脚色がしてあって、これまた大袈裟な語り口調で説明してくれるため)

真姫(否応無しにも、口元が緩んでしまう。笑顔になってしまう)

真姫(…こうして過ごす短い時間の中で、私は確信し始めていた)

真姫(あぁ、この人といると…とても安心する)

真姫(長い間口角の上がることのなかった顔面すらも弛緩してしまうほど、安らぎを感じている)

真姫(まるで母親のように…などというと、本当のママに失礼かもしれないけど)

真姫(暖かく包んでくれる心地よい抱擁感は、特別なものがあった)


希「…そして、今のC☆cuteがあったのでした。めでたしめでたし」

真姫「へー…」

希「今じゃ結構な人気で、今度のライブは対外に向けたものにしよう、って言っててねー…」

希「ついにA-RISEを超える時が来たか!?なーんて、真姫ちゃんは言ってるけど…どうなることやら」

真姫「…」

希「しかし学内でもそこそこの支持率も出てきて、UTX内部でも対立が徐々に起き始めているくらいではあるのかなー…」

希「いつか人気が完全に二分して…ってそうなると更に争いが増えるんか…。どうしたらいいんかな」

真姫「…」

真姫(彼女の話は、とても楽しい…のだけど)

真姫(時折、胸の中で渦巻く、この感情は何…?)

真姫(そう…、それは決まって、『私』の名前が出てきた時に、モヤモヤと心を覆うような、感情)

真姫(…よく、わからない)

希「…と、ご飯できたから持ってくね。ととと…」

希「よいしょっ。どや!特性親子丼やよ!デデーン!」

真姫「あ、美味しそう…。料理も上手、なんですね…」

希「ふふふ、まぁ一人暮らしも長いと、嫌でも料理のバリエーションは増えてくもんやよ。ささ、お食べ」

真姫「ありがとうございます。いただきます…もぐっ」

真姫「…うん。美味しい」

希「せやよねー。ふふ、ありがとー。何度聞いても嬉しい言葉やんっ」

真姫「…ふふふ」


真姫(彼女の無邪気な、子供のような笑みがなんだか可笑しくて)

真姫(でもそれでいて、なんだかとても彼女らしい笑顔で、私も釣られて笑ってしまう)

真姫(こんなに顔の筋肉を動かしたのは、いつぶりだろうか)

真姫(明日の顔面の筋肉痛が本気で心配になるほどの、幸せな時間だった)

真姫(彼女の親子丼は実際にとても美味しくて、ともすれば何杯でも食べてしまいそうなほどだったけど)

真姫(「学食の味に頑張って近づけてみたけど、まだまだや」とのことらしい。学食の親子丼、どれほど美味しいものだというのか)


希「…って言っても、最近うちは学食食べてないんやけどね」

真姫「え?」

希「いっつも部室でひとりでお弁当。なるべく生活費を浮かせるためー…って、一人養ってる時点でどうなん、って話やけど」

真姫「…『私』のことですか?」

希「うん。ま、真姫ちゃんのために、って考えればそれくらい、やけどね」

真姫「真姫の、ため…か」

希「ん?何か気に障るようなこと、言ったかな?」

真姫「え?あ、いや…何でもないです」

真姫「えっと、それより…じゃあどうして、学食の味を?食べてないのに…」

希「あぁ、それはね…」

希「去年までは、学食でも食べてたんよ。これも時折、やけど」

真姫「へぇ…、どうして?」

希「友達に誘われて、かな」

真姫「…友達」

希「うん。前はね、めっちゃ友達いたんよ」

希「それこそ、うちは人気者やった。クラスの中心人物、って言えるくらい」

希「毎日毎日、賑やかでね。中学までは一人ぼっちが常やったのが嘘だと思えるほど」

真姫「そうだったん、ですか?」

希「んふ。まぁ昔のことやけど」

希「そう、昔の話。一人ぼっちだったのも…、そして、友達がいたことも」

真姫「え…」

希「うちが人気だったんは、うちの人望があったからじゃなくて…うちがA-RISEに深く関われたからだって気づいたのは…結構後のことやったかな」

希「気づいたら周りには誰もいなくて、それからうちは…騒がしい場所があまり好きじゃなくなってしまった」

希「今は部員のみんなもいるけど、学年は違うし、集まるまでのラグがあって…」

希「なにより、部室でお弁当を食べていると、なんだか昔のことを思い出せて…なんて、バカみたいな感傷に浸ってたりなんかして…」

希「あ、でもでも!仲間はやっぱり大切やよ!愚痴もこぼし合うと、絆が深くなるための潤滑剤になるし!」

希「だから西木野さんも、早く友達を作るべきやよ!きっとクラスにも、いい子たくさんいるでしょ?」

真姫「えっ…あ…」

真姫「…友、達。仲間…」

真姫(友達)

真姫(復学するにあたり、私はそれを半ば諦めていた)

真姫(…うぅん、半ば、じゃない。今はもう、完全に捨てていた)

真姫(友達が欲しくないわけじゃない。他人との触れ合いはむしろ、歓迎したいくらい)

真姫(けどそれは、誰でもいいわけじゃない。話していて、充足感に満たされる人物でないと、嫌)

真姫(長時間の引きこもり生活のせいで他人と喋るときに緊張してしまう体質になってしまったのも一員だ)

真姫(今日一日クラスで過ごして、一度たりとも誰かと目線を合わせられたことなどない)

真姫(メガネのレンズを曇らせて、視線を逸らして、人の集まる教室で孤独に徹していた)

真姫(私だって、もしかしたら…そう、もしかしたら、心の許せる他人がいるかもしれない、なんて考えた)

真姫(…でも、その可能性は潰えたと、今日の経験でわかった)

真姫(『私』…、異世界の西木野真姫のせいで、完全に)

真姫(私に話しかけてくれる人はたくさんいたけれど、それは全て、『私』との差異が可笑しくて、興味本位で近づいただけ)

真姫(まるで檻の中の珍獣を見るかのように。それが私にとって、堪えようもなく嫌で、嫌で堪らなかった)

真姫(だからもう、私には…)


真姫「…友達は、いらない」

希「えっ…」

真姫「少なくとも、同じクラスの人間は…いい、です」

真姫「…友達には、誰もなりたくない」

希「そ、そんなことないって。うちも真姫ちゃんの教室、何度か言ったけど、みんないい子だったけど…」

真姫「…そんなの、感じ方なんて人に依る、でしょ」

希「…まぁ、そうかもしれないけど」

真姫「わ、私は…えっと、その…」

希「ん?」

真姫「わ、私、には…そのぉ…」


真姫(変なタイミングで言い淀んでいるせいか、希先輩が訝しんでいる)

真姫(言うのは正直メチャクチャ恥ずかしい。どうしよう、言ってしまおうか)

真姫(いいや、きっと大丈夫。言ってしまおう)


真姫「…私には、あなたが、いればいいから…」

希「え…?」

真姫「あ、あなたがいれば、寂しくない、って…言ったの!」

希「う、うち…?なんでうち…」

真姫「…なんだって、いいじゃない…ですか」

希「あ、ま、まぁ…そうやけど!そっかー、うちかー…」

真姫「…」


真姫(ヤベェ。彼女にとっても結構予想外の返しだったらしく、目が泳いでいる)

真姫(でも、本心なのだから仕方がない)

真姫(今の私にとって、頼れるのは…希先輩しかいないのだから)

希「うちのこと…、信頼してくれている、ってことかな?」

真姫「…」コクリ

真姫(いざ口に出そうとすると、顔から火が出るほど恥ずかしくて、頷くくらいしかできない)

真姫(私が一緒にいたいと、そう思えるのは今のところ、あなたしかいない)

希「…そう、か。そうね…」

希「んふ、ありがと。うちのことそんな風に思ってくれてる、っていうんは、予想外やったけど…」

希「でも西木野さんに頼られてるんはめっちゃ嬉しい!生徒会長冥利に尽きるわー、もう生徒会長じゃないけど」

真姫「…そう、ですか」

真姫(生徒会長じゃなくて、あなたが)

真姫(…私はあなたが、いいのだけど)

希「けど、ずっとうちだけ、だとそれはちょっと困るなー」

真姫「え…」

希「だってうちは、数ヶ月後には卒業しちゃうからね。西木野さんが二年生になる頃にはいなくなっちゃう」

真姫「…ぁ」

希「西木野さんの学園生活が今年で終わるなら、うちだけを頼ってくれてもいいけど、そうじゃないでしょ?」

希「いつかは頼れる仲間、見つける必要があると思うな、うちは」

真姫「…」

希「もちろん!それまではうちは全力で西木野さんのサポートはするつもりだけどね!」

真姫「…わかりました。それでも、私は…平気です」

希「そっか。そう考えてくれたら嬉しいわ」

希「あ、それと…お友達だけじゃなくて、お父さんお母さんとも、仲良くすべきやよ」

真姫「はい…?」

希「今日、真姫ちゃんと立場を交換したのは、両親と話したくないから、なんよね?」

希「面倒な親子の会話を、真姫ちゃんにしてもらうために」

希「けど、それじゃいつまで経っても本当の意味で、親と子の関係が治ったとは言えないんよ」

真姫「え、ぁ…」

希「仮に、明日も真姫ちゃんにあっちへ行ってもらおうって思っているなら…考え直してほしい」

希「真姫ちゃんなら上手くやってくれるかもしれないけど、…それは西木野さんのためにならないし」

真姫「…」

希「親子っていうんは、この親子丼みたいに、心身溶け合って…って、親子丼例に挙げるんはちょっと残酷かな」

希「ま、とにかく!明日は一度帰るんよ?せめて入れ替わるんは交互に。それが最低条件やよ」

真姫「…わかり、ました」


真姫(確かに、私は明日も、『私』と入れ替わるつもりでいた)

真姫(でもそれは家族と会話したくなかったからだけではなくて…)

真姫(…)

眠い おやすみ
次回へ続く ほなな

ドクターの方の真姫ちゃんは意図的にテンション上げ目で書いてますお
ヤベェは焦りを表現するためが1割ほどで残りは大体おふざけです それ以外でイメージ外に該当してたらなんかスマン
本編のキャラとは多少変わった人生観持ちってことで勘弁してください では珍しく早めに始めて行くよ!!

真姫の部屋


カチャカチャ…

真姫☆「…」

真姫☆「…チッ」

真姫☆「…」

真姫☆「…っし」

真姫☆「…」

真姫☆「あーっ!ウザッ!芋消えろ!ったく…」


「…真姫ー、お風呂空いたわよー」


真姫☆「…あ、はーい!」

真姫☆「ふぅ、部屋の物色をしていたと思ったらいつの間にかFPSに熱中していたわ」

真姫☆「特に私の思っていたものは出てこなかったし…しかし、結構面白いのね、FPSって」

真姫☆「これならあっちの私がハマるのもわかる気がするわ。全然活躍できなかったけど」

真姫☆「さてと…じゃあそろそろお風呂に…、ん」


真姫☆(そういえば、ママにもわかるくらい汗の匂いを漂わせているのよね、今の私って…)

真姫☆(…汗かぁ)


真姫☆「…すぅ…、くんくん…」

真姫☆「うーん…、そんなに匂う感じしないけど…くんくん…」

真姫☆「…っは!わ、私ってば何を…」

真姫☆「これじゃあまるで匂いフェチじゃない!しかも自分の匂いを嗅ごうとするなんて…」

真姫☆「やめやめ。とっとと汗を流してフローラルな香り漂わせる真姫ちゃんになりましょう」


ガチャッ バタンッ

希の家


真姫「…ふぅ」

真姫(家主より先にお風呂をお借りして、今はほんのり湯気の上がる身体を借り物のパジャマで着飾っている)

真姫(希先輩との体格差から、すこし大きめのものが出てくるかと思っていたけど、サイズは私にぴったりだった)

真姫(…これ、希先輩も着たのかしら)

真姫「…すんすん」

真姫「洗剤の匂いしかしないわね」

真姫「…」


(希「じゃ、うちもお風呂入るわー。少しの間一人で退屈かもしれんけど、我慢しててねー」)

(希「常識の範疇ならそこらへんのものいじっててもかまへんよー」)


真姫「…いじる、って、何を」


真姫(自分が今いるところはダイニングで、あるものといえば食器棚や花瓶や、その他特に変哲のないもの)

真姫(退屈ならテレビを見てればいい、とも思ったけど、別に見たい番組もないし)


真姫「そこらへん、って言ってたけど…」

真姫「…こ、この部屋でなくてもいいのかな」


真姫(自分の気持ちを誤魔化し、鼓動が少し高まるのを抑え、家の中を散策する)

真姫(そして見つけた、お目当ての部屋)



希の部屋


真姫「…ぅ」ドキドキ…

真姫「か、勝手に入っても、怒られたりしない、わよね…?」

真姫「そ、そう。退屈なんだし、少しくらい…」


真姫(部屋に入った瞬間、リビングやダイニングとは違う、甘い香りが鼻腔を刺激する)

真姫(シャンプーや化粧品や香水や…希先輩本人の匂いが入り混じった香り)

真姫(脳を焦がすような官能的なその匂いに、一瞬目眩を感じ、倒れそうになる)

真姫(悪いことなんて何もしていないはずなのに…ヤバいくらいに緊張してる…!)


真姫「た、他人の家にお呼ばれしてるんだから、べ、別に…部屋に入ったって、いいわよね…!」

真姫「へぇ…、希先輩、こんな趣味なんだ…。意外と…可愛らしいものが好きなのね」

真姫(机の上の筆記用具類やアクセサリー、壁に貼られたアイドルのポスターや飾られたたぬきのぬいぐるみは、私の思っていた彼女のイメージとは、少し違ったものを感じた)

真姫「ここまでくると…ふふ、天蓋付きのベッドとかあってもおかしくないけど、普通のベッドね」

真姫「ただ毛布はふかふかしてて、気持ちよさそう…」

真姫「…」ゴクリッ

真姫「ふ、ふかふか感がどれほどのものか、確かめるだけ…ただそれだけ、なんだから…」

真姫(誰もいない空間に、強いて言えば自分に、言い訳をしつつ…)

真姫(フレームの形が崩れないように、あらかじめメガネを外してから…)

真姫(思いっきり、毛布に顔を埋めた)

真姫「ん、んんっ…すぅっ…んはぁぁぁ…」


真姫(顔を埋めながら、盛大に深呼吸)

真姫(濃厚な女性の香りが、体内に侵入して、神経を痺れさせる)

真姫(へその下のところがジンジンと疼き、指先はピリピリと仄かな痛みが)

真姫(身体が裂けて血が噴出するかと思うほどに、心臓が血液を激しく送り出す)

真姫(胸の中心でミニガンを全力稼働するような衝撃でも、不思議と心地よく感じてしまう)


真姫「はぁっ…、ん、ふぅっ…」

真姫「これが…、希先輩の…匂い…」

真姫「んくっ…、すぅぅぅぅっ…、あ、っはぁぁぁぁぁ…」

真姫「はーっ…、はーっ…。ふ、ふふふふ…ヤバ…」

真姫「こんなこと、変態のすること、なのに…」

真姫「でもっ…、んんっ…!すぅぅっ…」


真姫(肺の中の空気を全て入れ替えるかのように、只管に鼻呼吸する)

真姫(満たしたい、満たされたい)

真姫(この匂いに包まれた全身のように、心までも、彼女に)

真姫(暗澹とした絶望の淵に沈む私を助けようとしてくれた人)

真姫(あの時は少しウザったいとすら思っていたけれど)

真姫(日を経るにつれ、次第に膨れ上がる、恋しさ)

真姫(彼女なら私を認めてくれるんじゃないかって…こんな、どうしようもない私でも)

真姫(自身の矮小さをさらけ出した上で、それでも私を愛してくれる人なのかもしれない、って)

真姫(部屋を離れ、独りでなくなってしまった今は、とても心細いから)

真姫(満たされたくて、満たしたくて)

真姫(彼女だけに、私の全てを捧げて)

真姫(彼女を、私だけのものにしたくて)

真姫(そんな、独善的で、独占的な考えを抱いてしまう)



真姫「ふすぅっ…ぷ、はぁぁっ…」

真姫「布団もいいけど…ま、枕はどうなのかしら」

真姫「あの艶やかな長髪が直に敷かれた…、むふっ…、想像しただけで鼻から汁が…」

真姫「ごめんなさいごめんなさい…!でも抑えられないからぁっ…!」

真姫「じゅるっ…!希先輩の頭の匂い…!い、いただきっ…」


真姫(そう言ってまた鼻を近づけようとしたとき)

真姫(枕元に置かれた写真立てが目に入った)


真姫「…これ、は…」

真姫(メガネをかけ直して確かめる)

真姫(希先輩が写った写真)

真姫(それは二枚あって、一枚は古いものと、もう一枚は最近のもの)

真姫(どちらの希先輩も、人に囲まれている)

真姫(古い方は多分、夕食時に話していた、昔の友人なのだろう)


真姫「…本当に、いっぱいの人に囲まれてる」

真姫「人気者、だったのね」


真姫(その友人は全て離れていき、今は部室で一人昼食を食べている、とも言っていた)

真姫(彼女も孤独なんだって、そこで少し思っていたんだけど)

真姫(…でも、そうじゃないのよね)

真姫(新しめの写真の方に目を向ける)


真姫「私…」

真姫「…いえ、『私』が、写ってる」


真姫(それは『私』と、そして今日の朝出会った、おそらく『私』と同じスクールアイドルの仲間が写った写真だった)

真姫(こちらは前の写真よりも当然のように人は少ないし、希先輩も古い写真ほど中心にいるわけでもない)

真姫(けど…)


真姫「こっちの先輩は、すごく楽しそう」

真姫「周りの人たちもみんな…すごい笑顔」


真姫(穢しようもないほどの純粋すぎる喜び)

真姫(写真からは今にも動き出しそうなくらいの躍動感すら伝わってくる)

真姫(簡潔に表現すれば、これが青春ってもの、なのかしら)

真姫(私が嗅いだものとは、違う種類の汗を流す…かけがえのない大切な宝物)

真姫(経験したことない私でも、それが解る)

真姫(わかってしまう。この笑顔を見れば)


真姫「…」

真姫「私には…」

真姫「私は、これ以上の笑顔を…希先輩に与えられそうにない」

真姫「全てをさらけ出しても…彼女を…」


真姫(…独占なんて、できるわけがなかったのよ)

真姫(それが赦されるのは、赤子が親に求める時だけ)

真姫(誰もこんなわがままを、赦しはしない…のだから)

真姫(そう思うと途端に虚しさが身体に満ちる)

真姫(勝手に期待して、勝手に裏切られて、人知れず道化を演じていたかのような馬鹿馬鹿しさで)

真姫(寂しさで、ほんのちょっぴり涙が出た)

希「西木野さーん?」

真姫「ひぃっ!!」ビクゥッ


真姫(涙ぐんでいると急に後ろから声をかけられ、心臓が跳ね上がる)

真姫(そのまま口から飛び出すかと思った)


真姫「のののの、希せんぱいっ!!あの、これは、え、その…!」

希「西木野さん、もしかして…」

真姫「ちがちがちが、いやそうじゃ、えっとだからこれはそうでなくてあれがこれでうんたらかんたらししゃごにゅう…」

希「…もうおねむなん?」

真姫「あだだだだだだだ……、は?」

希「いや、ベッドにいるから…眠たいの?そこ、うちのベッドなんやけど」

真姫「あ、え、そのっ…、眠たいっていうか…」

希「西木野さんがベッドの方がいいって言うんやったらそこでもいいけどね。どうする?」

真姫「えっ…、あ、じゃあ…」

真姫「…お、お願いします」



希「じゃ、電気消すねー」パチリ


真姫「…ぅ」

真姫(まだ眠たくないのに寝る羽目になってしまったわ)

真姫(引きこもり時代は夜中までFPSは当然だったからこんな早くに部屋を暗くしても寝られる気がしない)

真姫(しかもよりにもよって希先輩のベッドで寝る、だなんて…!)

真姫(先ほど全身に満ちた虚しさが更なる興奮によって塗り替えられる)

真姫(鼻からの流血で枕を汚してしまわないか心配だった)


希「…西木野さん」

真姫「は、はい。ナンデスカ」

真姫(ベッドの近くで布団を敷いて、希先輩も隣で寝ている)

真姫(よくよく考えれば、これだけでも相当レアでアレな体験ね…)

希「ん、何でもないんやけど…ごめんね、眠たいのに話しかけて」

真姫「ベツニダイジョウブデス」

希「そか。あ、そのパジャマ着心地はどう?うちの古着で…」

真姫「っ!」

真姫(や、やはりこの服は先輩の古着だったのね!ってことはこれにも先輩の汗が染み込んでいたりなんか…)

希「今は真姫ちゃんが着てる奴なんやけど」

真姫「…」

真姫(…自分と同じ顔のヤツの汗なんて嗅ぎたくもなかった)

希「…着づらい?」

真姫「あ、いや…ぴったりでちょうどいい感じ…です」

希「うん、それならよかった。キツくて寝苦しかったりしたらちょっと心配だったからね」

真姫「…」

真姫(それは、『私』よりも体格が太っている心配をされた、ということだろうか)

真姫(考え過ぎかもしれないけど、ちょっと悲しかった)

希「…なんか、こうしてると9月の頃、思い出すなぁ」

真姫「9月…?」

希「うん、真姫ちゃんがここに来た時のこと」

希「あの時はまだ真姫ちゃんのことを、西木野さんやと思ってて」

希「スクールアイドル始めた時なんか、えらくアグレッシブに生まれ変わったんやな~、なんて思ってたんよ」

真姫「…へぇ」

希「西木野さんは、明日も学校行くよね?」

真姫「え?あ…行きますけど。親にも、迷惑かけられないし」

希「学校に行く理由って、親に迷惑かけたくないからってだけ、なん?」

真姫「そ、それは…」

真姫(…あなたに会いたかったから、なんてクサイ台詞、演劇やってても言える気がしない)

真姫「…それだけです。他に理由なんて…ない」

希「そっか…。それなら仕方ないけど…でも、これから学校に通い続けるなら、楽しみを見つけたほうがいいよ、ゼッタイ」

希「ほんの小さな、どんなくだらないことでもいいから、学校が楽しみになるような。そしたら、毎日行けるようになる」

真姫「…楽しみ」

希「うん。どうしても見出せないって思ったら、いつでもうちを頼ってくれていいから。お昼休みと放課後はアイドル応援部にいるし」

希「いつかうちだけじゃなくて、他にも頼れる仲間、友達が西木野さんにも出来てくれたら、うちも、とっても嬉しいんよ」

真姫「…」

希「生徒会長になってから、心に傷を負った子を何人も見てきて、その子達が次第に元気になっていって、忘れた頃に友達連れてお礼にいいに来てくれた時なんか…」

希「うち、涙が出るほど嬉しかったんよ。生徒会長やっててよかった、って、心から思える瞬間やった」

希「9月に真姫ちゃんを泊めてからこれが最後の生徒会長の仕事やね、なんて思って、ほんの少し寂しかったりもしたけど、まだうちを頼ってくれる人がいて」

希「もう高校生活も終わりってときに、ここまで幸せな気持ちになれるなんて…うちはめっちゃ恵まれてるんやと思うんよ、なんて…ふふ」

希「こんなこと、西木野さんに言ってもしょうがないよね。…もう、寝ちゃったかな?」

希「それじゃ、うちもおやすみするね。明日、また一緒に学校行こうね」

希「…おやすみなさい」

真姫「…」


真姫(…寝ては、いなかった)

真姫(彼女が淡々と語るその言葉を、ずっと聞いていた)

真姫(希先輩の喋り方がまるで、我が子をあやす様な、慈愛に満ちたものであるせいで)

真姫(諦めかけた独占欲がまたもや湧き出てくる)

真姫(彼女の声が、笑顔が、何もかもが愛おしくて)

真姫(…信じがたいことだけど、もしかしたら私は)

真姫(西木野真姫は)

真姫(東條希に)

真姫(…恋を、しているのかもしれないなんて)


真姫「…バカバカしい」


真姫(そんな愚かな考えを、小声で呟いて否定して)

真姫(不貞腐れるかのように忘れるかのように、無理やり目を閉じて、寝床についた)

翌朝

西木野家


真姫☆「おはよ…あれ、ママ…」

真姫☆「…そっか。まだ寝て…」

真姫☆「こっちは朝練があるから早起きに慣れてるけど、ママはそうじゃないものね」

真姫☆「いってきます、を言いたかったんだけど、起こすわけにもいかないし…」

真姫☆「…メモを残して先に家を出ましょう。いってきます、ママ、あと…いれば、パパもね」



希の家


真姫「…ん、んんっ…んぁ…」

真姫「んっ…ふわぁぁぁぁぁ…、今、何時…」

希「あ、おはよ。意外と早起きやね」

真姫「え、あぁ…希せんぱ…ほわぁぁぁぁっ!!?!?」

希「え、あっ…ごめんごめん。着替え中やった…」

真姫「な、何も見てないからっ!布団かぶってるから、早く着替えてくださいっ!!」

希「わ、わかった…。ごめんね、気ぃ使わせて…」



ダイニング


真姫(いつもより早寝だったせいで、起きるのも早かった)

真姫(こんなに早く起きても、することなんてないのに)


真姫「…もぐもぐ」

希「西木野さん、いつ出る?うち、そろそろ出ようかと思うんやけど」

真姫「え…、どうして?まだ一時間目には全然時間が…」

希「スクールアイドルの朝練があるんよ。だから早めに行かんとね」

真姫「あぁ…、そうなんですか。大変ですね。希先輩も踊るんですか?」

希「えっ…、あ、うちはアイドルじゃないから…。部室を開けるために部長が行かんといけないからね」

真姫「そのためだけに?…なおさら大変ね…」

希「…うん。ま、だから…後から出るなら、西木野さん、戸締りしてくれる?鍵置いていくから」

真姫「わかりました。任せてください」

希「ありがとっ!登校したらアイドル応援部部室まで来てくれればいいから。ほな、お願いね」


ガチャッ… バタンッ


真姫「…わざわざ部室を開けるためだけにこんな早起きするなんて」

真姫「殊勝な人なのね…もぐもぐ」

真姫「…あ」

真姫「やっぱり一緒に学校、行けばよかったかな」


真姫(…昨日の彼女の、寝る前の言葉を思い出して)

真姫(あれは彼女自身の願望だったのかな、なんて少し思った)

UTX学院

アイドル応援部 部室


真姫☆「おはよー…」ガチャッ


花陽「あ!おはよ、真姫ちゃん!」

希「おはようさん。眠そうやね」

ことり「おはよー」

海未「おはようございます。今日はメガネかけていないのですね」

真姫☆「…それは違う方だって」

海未「わかっていますよ。と、さて…今日は朝練の前に」

ことり「次のライブ!だよね!!」

真姫☆「そうね。もうあとは衣装とステージさえ揃えば問題ないし…」

真姫☆「ハイペースで行けば来週末には披露できるかも知れないわね」

花陽「11月ギリギリだね…大丈夫かなぁ」

希「やっぱり一ヶ月に一回の新曲リリース、&ライブ、なんて無茶な設定やと思うけどねー」

真姫☆「そのくらいしないとトップは取れないの!できるできる!!」

真姫☆(μ'sなんて10月中に2回新曲リリース&ライブしたしね。トラブルもあったくせに)

真姫☆(…考えてみればどこにそんな余裕があったのかすら不明だわ。私たちって相当すごいことやってたのね)

海未「で、肝心の場所ですが…」

花陽「つ、次こそ大々的に、みんなの見ている前でのライブ、なんだよね…!?」

ことり「そのつもりなんでしょ?うっわー、ドキドキするねー」

真姫☆「外部の方にも見てもらえる場所でいいところとなると…」

希「前にも提案したUTX前が一番やと思うな、うちは」

海未「そう、ですね…。人の集まれるスペースもありますし、休日に登校する生徒の邪魔にならないようにすればいいかと」

海未「できれば大型モニターも使いたいところですが…学校に許していただけるかどうか」

ことり「学校としてはA-RISEを推していきたいんだもんね。貸してくれないって可能性も…」

花陽「でもでも!もう私たちだって結構人気だよね…?前のライブのおかげで知名度もグンと増したし」

希「せやね。もはやUTXの顔の二代目、って言えるくらいまでには近づいてるかも」

真姫☆「だったら認めさせるほかないでしょ!むしろここから始まるのよ、A-RISE一強の体制を崩すための革命は!」

海未「そうですね。では今日にでもお願いしに行きましょう。来週の休日にモニターを貸してもらえるようにと」

ことり「よぉし!決まりだね!顔面ドアップで撮されても恥じないようなパフォーマンスにしなきゃ!」

花陽「ど、どあっぷ…!恐ろしいです…!」


希「…ふふ」

希「みんな、頑張ってな…」

真姫(そろそろといったところで、希先輩の家を出る)

真姫(ちゃんと忘れないように、鍵を閉めて…これを忘れてしまうと非常に危ないからね)

真姫(…さてと)

真姫(やっぱり、学校へ向かうのはすこし億劫)

真姫(希先輩からは友達を作れ、と言われたけど…私には出来そうにもない)

真姫(今の私が学校から求められる楽しみ、といえば、やはり希先輩の存在くらいしかありえないのだ)

真姫(…というわけで今日も、誰からも話しかけられないように、顔を伏せて登校する)

真姫(流石に今日も、昨日みたいに改札で引っかかるようなことはない…はず)



アイドル応援部 部室


ことり「はふー…、本番も近いから練習も朝からハードだねー…」

花陽「だけど歌もダンスも、前回以上にクオリティの高いものにはなってきていると思う!…多分!!」

海未「元気のよい自信のない発言ですね…。っと、ではそろそろ予鈴もなりそうですし、私はこれで」

ことり「あ、じゃあ私も!またお昼ねー」

花陽「私も戻ってるね。また放課後にね、真姫ちゃん!」


ガチャッ バタンッ


真姫☆「…と、じゃあ私は始業のベルがなるまで待機ね」

真姫☆「誰かに出て行くの見られるのも困るし」

希「今は生徒会の子たちが挨拶してるからねー」

真姫☆「ん?希は教室戻らないの?あ、そっか、戸締りあるものね…。部室以外の場所で待機しておいたほうがいいかしら…」

希「ん、まぁそれもあるんやけど…」


ガチャッ

真姫「…先輩、鍵…あっ」

真姫☆「あ、私」

真姫「…ま、まだ慣れないわ。同じ顔がいるって事実…」

希「あー、ありがと。家の鍵持ってきてくれたんやね」

真姫「は、はい…。戸締りもしておきました、ちゃんと」

真姫☆「あぁ…、家の鍵を待ってたのね」

希「うんうん、ありがとうね。そろそろ授業も始まるし、うちらも部室出よか」

真姫☆「そうね。…あ、そういえば今日も入れ替えるの?」

真姫「え、えぇと、それは…」

希「今日はダメ。もし西木野さんがまた来たい、って言うんなら、明日やね」

希「せめて交互にでも、親に顔見せないと解決には至らないからね!」

真姫☆「あぁ、そうね。あ、昨日はママとしか話してないわ。パパ、帰ってこなかったから」

真姫「そう、なの…」

真姫☆「だから、今日パパが帰ってきたらちゃんと話すのよ?ママにも心配かけちゃダメだからね」

真姫「わ、わかってるわよ。あなたに言われなくても…わかってるから」

希「まぁまぁ、話はまた後でね?さ、西木野さんも教室戻ろっか」

真姫「…うん」

1年E組


真姫「…」


女生徒「あ、真姫ちゃんおはよー」

真姫「…おはよう」

女生徒「…あ、ご、ごめん。いつもみたいに挨拶しちゃって…」

真姫「…」


真姫(項垂れながら自分の席へと座る)

真姫(朝から気分は最悪だった)

真姫(あわよくば、希先輩と二人きりになれる、なんて思いながら学校に来たら)

真姫(…一番見たくないヤツの顔を見てしまった)

真姫(学校に来ても、私はまだ『私』に間違われる)

真姫(やはりずっと、あっちに学校に来てもらったほうが良かった気がしてきた)

真姫(ただ、こうしてアイツの妹とという設定にするには、やっぱりこのタイミング以外難しいところだし、仕方ない…)

真姫(いつかアイツも、元いた世界に帰ってしまう事情もあるんだし)

真姫(…でも、それなら帰るまではここにいてくれてもよかったかも)

真姫(まだ、私は学校に楽しさを見出せそうにない)

真姫(ただ無心に、時が過ぎ行くのを、願うだけ)




放課後


キリーツ、レーイ…


真姫「…ありがとうございました」


真姫(終わった…)

真姫(長い長い一日だった。ゲームをしている時の数十倍の体感時間を過ごした)

真姫(無心なんて出来る訳もなく、妄想と苛立ちに心を弄ばれて一々時間を気にしていたせいで、さらに長く感じていたのかも)

真姫(…誰にも話しかけられないように、空気に徹していたのも、却って寂しさを加速させただけだった)

真姫(もういい。帰ろう。帰ってゲームしよう。FPSの中なら私を認めてくれる人もいる)

真姫(そう思い、席を離れたとき…)


「…西木野真姫、さん?」


真姫「…っ!」

真姫(…話しかけられた。だ、誰?)


「私、2年の~~って言うんだけど」


真姫(聞いたことのない名前だった。当たり前だ。私は昨日この学校に戻ってきたばかりなんだし)

真姫(じゃあ、『私』の知り合い?…でも、彼女の方も私と始めて会ったような口ぶりだし)


「…ちょっと用事があって、付いてきてくれる?すぐ済むから」


真姫「え…あ、はぁ…」

真姫(…ここで断れるような度胸とコミュ力は持ち合わせていない。今の私なら容易くキャッチセールスに引っかかりそうだった)

真姫(でも、すぐ済む、っていうなら…なんて軽い気持ちで、その知らない誰かの後ろをトボトボとついていくことにした)

真姫(でも)


真姫(彼女に付いていった先で、私は)


真姫(激しく心を揺さぶられることとなる)




真姫(胸の奥にひっそりと眠る、小さな小さなトゲの種子が)


真姫(…ほんの少し、芽吹いたような気がした)




真姫「はっ…はっ…!!」タッタッタッタッ…

真姫「はぁぁっ…!!はぁぁっ…!!」タッタッタッタッ…



西木野家


ガチャッ


真姫「ただいまっ…!!」



真姫ママ「あぁ、お帰りなさい。今日は早かったのね」

真姫ママ「ね、今日はパパ、早めに帰って…」


真姫「ごめん、今日ご飯、いらないからっ…!!」タッタッタッ…


真姫ママ「…え?」



真姫(大慌てで自分の部屋に飛び込み、ドアに鍵をかける)

真姫(今誰かと話ができる精神状態じゃなかった)

真姫(落ち着ける独りの部屋で、心を落ち着けなければ)

真姫(私は、どうなるかもわからない)


真姫「はーっ…!はーっ…!!」

真姫「ケホッ…!!コホッ…、が、はぁっ…!はぁっ…!!」


真姫(慣れない運動をして、心臓が悲鳴をあげている)

真姫(だけど今はそれどころじゃない。心臓なんてどうでもいい)

真姫(もう、何が何だかわからなくて、変な涙が溢れて止まらない)

真姫(私は…ねぇ、私は一体どうしたら…)



真姫「どうしたら…どうしたら…」

真姫「どうすれば、いいのよぉぉぉ…!!?」



真姫(頭を抱えて、塞ぎ込む)

真姫(人生最大の葛藤に答えが出るのは、その翌日だったけど)

真姫(その時の私に、それを知る由もなかった)

今日はここまで
真姫ちゃんが若干変態チックだけどまぁ気にしないでね ほなな

こんな時間だけど始めます
今日中に区切りのいいとこまで行きたかったけど眠いから途中で中断するかも いや絶対にします
予めご了承ください

放課後

UTX学院前


真姫☆「…そろそろ、授業も終わって部活が始まる時間よね」

真姫☆「授業中はほとんど会話はないとは言え、休み時間やお昼ご飯時にも皆と会えないのは寂しいわね」

真姫☆「まぁ元々私はこの世界の住人ではないんだから、贅沢は言ってられないわよね」

真姫☆「もうあっちの私、学校抜けたかな?じゃあ私も…」


グワンッ…


真姫☆「…うっ」

真姫☆「ま、また…吐き気…?うぇっ…、気持ち、悪い…」

真姫☆「今度は、か、かなり、キツい…!う、ぐぅっ…!」

真姫☆(この感覚…どこかで…)

真姫☆「…はぁっ、はぁっ…。や、やっと収まった…」

真姫☆「もしかして、何か病気…?そんな…こんな時期に」

真姫☆「でも、吐き気はあっても弱音を吐いてる場合じゃない…!笑顔のトップアイドルまで、あと少し、なんだから…!」

真姫☆「練習に、行きましょう」



アイドル応援部 部室


ガチャッ

真姫☆「…あれ」


希「ん、真姫ちゃん。遅かったね」

真姫☆「…みんなは?」

希「先音楽室向かったよ。真姫ちゃんなら後からでも大丈夫だろう、って」

真姫☆「はぁ…、薄情ね。待っててくれてもいいじゃない」

真姫☆「で…、あっちの私はもう帰った?」

希「いやぁ…、うちに聞かれても。多分帰ったん違うかな?」

真姫☆「…そう。ま、ここまで来てから聞いても仕方のないことよね」

真姫☆「じゃあ、着替えてから練習に…」

真姫☆「…うっ」クラッ

希「…真姫ちゃん?」

真姫☆「な、なんでもない…なんでも」

希「調子、悪いん?」

真姫☆「…少しね。平気よ、これくらい」

希「…自分だけでの判断は危険やよ。体調の変化を見過ごしてると取り返しのつかないことになるかもしれんし」

真姫☆「…はぁ、そうね。そのとおりだわ」

希「今日はうちも、練習行くわ。見学だけやけどね」

真姫☆「…お願い」

音楽室


ガチャッ

真姫☆「…遅れたわ、ごめんなさい」


花陽「あ、真姫ちゃ…あれ、部長…?」

ことり「希ちゃん先輩まで…。練習?」

希「いや、ちょっとね。真姫ちゃんの調子が悪いかも知れないから、練習中に何かあってもすぐに対応できるようにって」

海未「体調不良ですか…?気分が優れないのでしたら無理に練習するべきでは…」

真姫☆「大丈夫。考えすぎよ。ほんのちょっぴり吐き気があるだけで、身体には異常はないはずだから」

真姫☆「マジでダメそうなら素直に引き下がるわ。…そんなことはないでしょうけど」

ことり「なんか素直そうじゃない応対だなぁ…。ホント、無理しないでよ?」

真姫☆「わかってるって」

花陽「心配だよ…」

海未「真姫が平気だというのならば仕方ありません。では準備運動から…」



数十分後…


希「…」


海未「ではもう一度、ダンスのおさらいに行きましょう。部長、手拍子お願いします」

希「ん。了解」


希「ほな、行くよー?いっせーのーで…」

希「ワンツースリーフォー…」パンパン…


花陽「よっ…ほ、はっ…」

ことり「花陽ちゃん、立ち位置もう少し左…!」

花陽「はいっ…!」

海未「と、ふっ…やっ!」

真姫☆「うん、いい感じ…!もうほとんど完璧…とっ…!あとは最後の決めポーズさえ…」


グワンッ…!!


真姫☆「…っ!!」

真姫☆(ま、マズっ…!最大級の…!)

真姫☆(身体が…頭が…揺れっ…)


バタンッ!!


海未「っ!!」

ことり「真姫ちゃんっ!!」

花陽「だだだ、大丈夫!?真姫ちゃんっ!!」

真姫☆「…大丈夫、こけた、だけ…だから」

希「…」

真姫☆「の、希…」

希「…今日は、おやすみ、やね」

真姫☆「…わかったわよ」

真姫☆(そのあとの今日の練習を、私は全て見学した)

真姫☆(こんなこと、スクールアイドル始まって以来の不覚だけど…)


希「真姫ちゃんは何でもかんでも自分ひとりで頑張りすぎ」

真姫☆「…そんなことないわよ。みんなだって…」

希「人一倍、背負い込んでるってことよ。それが祟って疲労でそうなったん違うん?」

真姫☆「…そうかもしれないけど」

希「…経験者やからって、調子乗ってるんと違う?」ボソッ

真姫☆「ぅ…」

希「なんてね。今はとにかく身体を休めて、明日からまた頑張ろね」

真姫☆「…はい」


真姫☆(希がいてくれたおかげで歯止めが効いた)

真姫☆(もし支えてくれる人が誰もいなかったら、私はもしかしたら、無茶していたかもしれないから)

真姫☆(一昨日の夜に希が言っていた、『このグループには後ろで見守ってくれる人が必要』っていうのは…)

真姫☆(…あながち、まちがってないのかも)





希の家


ガチャッ

希「ただいまー」

真姫☆「ただいま。久しぶりね、我が家。一日帰ってないだけだけど」

希「おかえりー。我が家ちゃうけどなー」

真姫☆「いいの。もうここはこの世界での我が家って決めたわ」

希「ふふ、そこまで思ってくれてたら逆に嬉しいかも。じゃ、我が家で二人、今日もゆったりしよな~」

真姫☆「そうね…。あぁ…、希の手料理が恋しいわ。はよ。はよはよ」

希「わーかってるって。今日は元気の出るもの、作ってあげないとね」

真姫☆「よろしくお願いするわ」

真姫☆(…今日の晩ご飯は牛や豚の臓物を甘辛く煮たり焼いたりしてかつニンニクやネギやその他諸々たっぷりのよくわからない丼だった)

真姫☆(よくわからないけど味だけは抜群に美味しかったわ。…明日の口臭が気になるけれど)


真姫☆「げぷっ…。ふぅ、相変わらずのお肉メニューね…」

希「安売りしてたからねー。たっぷり買い込んだから明日も何らかのホルモンかなー」

真姫☆「…なんで賞味期限の短いものをたっぷり買い込むのよ…」

希「まぁまぁ…。あ、そういえば」

希「昨日、真姫ちゃんはどんな感じのこと、ご両親と話したん?あ、お母さんだけやったっけ」

真姫☆「何を話したか…?えっと…限りなく無難な会話ね」

真姫☆「日頃の会話が少なすぎたせいか逆にそこまで踏み込んだ会話はなかったわ。パパがいなかったのもあるけどね」

希「ふぅん、そっか。じゃあ今日の西木野さんが却って大変かも?」

真姫☆「…かもね。それで言ったら、そっちはどうなのよ?」

希「そっち?」

真姫☆「昨日。あっちの私とどんな会話したの?」

希「あー…そっか」

真姫☆「それと、アイツが春から不登校になった理由…、アイドル専攻が関わってるのよね」

希「…知ってるん?」

真姫☆「えぇ。ママとの会話からほんのちょっぴりだけ、だけどね」

真姫☆「そのことも含めて、知っている限りアイツに関しての事情を聞いておきたいわ」

希「なんでよ。真姫ちゃん関係ないやん」

真姫☆「知りたいの。考えてみれば、私はアイドル専攻の内部事情をほとんど知らないし」

真姫☆「絵里や穂乃果たちの行動原理を知れたら、彼女たちと敵対する上で有利に働くかも知れないじゃない」

希「知りたいだけなのをそれっぽく言い繕ってる風に聞こえるなぁ~」

真姫☆「…もうそれでいいから、教えてって」

希「いいけど…うちが西木野さんに関して知ってることはほとんどないよ」

希「会話も、春時点ではゼロに等しかったし」

希「それに、彼女について知っても、えりちや穂乃果ちゃんの対策にはならないと思うけどね」

真姫☆「どうしてそう言い切れるのよ」

希「別に、えりちや穂乃果ちゃんにいじめられてた、とか、そういうんじゃないから」

真姫☆「え、じゃあどういう…?」

希「あんまよく知らないけど…多分、自分の限界、違うかな」

希「アイドル専攻のキツい練習量についていけなくなって、ギブアップ…とかやったと思う」

真姫☆「まぁ、そうでしょうね。春時点での私がいきなりハードな練習なんてしたら…」

真姫☆「…っていうか、まずどうしてアイドルを始めよう、なんて思ったのかが謎なんだけど」

希「それはうちも知らんわ…。なんで、なんやろうね?」

真姫☆「…さぁ、皆目見当も付かないわね」

希「…じゃあ真姫ちゃんは、なんでアイドル始めよう、って思ったの?」

真姫☆「え…?」

希「もしかしたら、西木野さんも真姫ちゃんと同じ理由かもしれないから、参考までにね」

真姫☆「私がアイドルを始めるきっかけ?そうね…」

真姫☆「…危なっかしいやつに誘われたから、かしら」

希「ふんふん」

真姫☆「何も考えてないように見えて、実は考えてて…と思ったら本当に何も考えてない、楽観的な子にね」

真姫☆「私も最初は乗り気じゃなかったんだけど、最終的に言いくるめられて、…後、お友達に勇気をあげた付き添いで、成り行きってのもあったかな」

真姫☆「気づいたらやってて、気づいたら好きになってた、みたいな感じかしら…」

希「へー…」

真姫☆「…って!私のことはどうでもいいのよ!そっちはどうなのって私が聞いてるんだから!」

真姫☆「昨日あっちの私とアイドル専攻のことについて何か話したの?」

希「いや、そのことはデリケートな問題かな、って思って触れなかったわ」

希「なんてったって、西木野さんは一度はアイドルが大嫌い、って言ってた子やから」

真姫☆「あぁ…そういえばそうだったらしいわね。…でも、練習がハードだからって、アイドルまで嫌いになる?」

真姫☆「やっぱり、実はいじめられてたからじゃ…」

希「…うーん、でも春頃にうちの家に泊まったときに、うつむきながら延々と自分を責めている感じ、あったしねぇ…」

真姫☆「責めている…?」

希「なんか『練習についていけない私とか死んじゃえ』みたいなことをブツブツ…。ちょっと怖かったわ」

希「誰かからの嫌がらせならそのことについてもなんか言いそうなものやけど、それは特になかった気がするし…」

真姫☆「…うーん、じゃあやっぱり単純に練習のハードさに嫌気がさしたから、なのかしらね」

希「かもね。…で、昨日話したことは…えっと、あれやね。友達の話」

真姫☆「友達…あぁ、何となく想像がつくわ」

希「久しぶりに登校してきたなら、とにかく友達作ろうね、的なことを言ったんよ」

真姫☆「でしょうね。あなたが言いそうなことだわ」

希「で、そしたら…えー…」

真姫☆「どうしたのよ、そこで言い淀んで」

希「…なんか、ちょっと恥ずかしいんやけど」

希「うちが友達作ったら?って言ったら、西木野さんは…」

希「友達はいらない、…って言って、そのあとに…」

希「あなたさえいればいい…って」

真姫☆「えっ」

希「うちびっくりして、目がこの時期に寒中水泳始めてたわ…」

真姫☆「それは私も驚きね…。あっちの私って、そんなに希のことを?なにかしたの?」

希「いや…うちは一回この家に泊めただけやけど。まさかそこまで信頼されてるなんてね…」

真姫☆「そうね…。どうしてそこまで…」

希「…うちも、かなり謎やったけど」

希「でも、今真姫ちゃんと話して、ちょっとだけ理由がわかったかもしれんよ」

真姫☆「え?」

希「真姫ちゃんは多分…染まりやすい子、なんじゃないかな」

真姫☆「ど、どういう意味よ、それ…」

希「真姫ちゃんがアイドルを始めたきっかけも、誰かに誘われたから、なんでしょ?元々アイドルに興味があったとかではなく」

真姫☆「ま、まぁね。音楽には興味はあったけど」

希「多分、真姫ちゃんは誰かがその方向に引っ張ってくれれば、すぐにそっちに寄っていっちゃうタイプなんやと思うわ」

希「好きでもなかったアイドルを、好きになれる程度には」

真姫☆「…なんか納得いかないけど、まぁ…そうかもね」

希「で、おそらく西木野さんも真姫ちゃんと同じ。アイドルが好きになった理由も似てるん違うかな」

真姫☆「誰かに誘われたから…、ってこと?」

希「多分ね。で、うちを頼ってくれるのも…」

希「春、うちが西木野さんを家に泊めてあげたから。その時の経験に、心が引っ張られているんよ」

真姫☆「…あぁ。なんとなくわかるわ」

真姫☆「引きこもり暮らししてたら、他に頼るもの、無くなっていっちゃうでしょうし」

真姫☆「孤独な日々が重なるごとに、あの時のあの人は優しかった、って心の中で思い出が増幅していっちゃうのかも」

真姫☆「そっか、だからあのプリント…」

希「まぁ、うちの推論やから、正しいとは言い切れないけど…」

希「だから、今の西木野さんはきっと、とても誰かに染まりやすい状態、って言ってもいいと思う」

希「…いや、違うかな。心を許している人に染まりやすい、って感じかな」

真姫☆「そして、その心を許している数少ない人物が…」

希「うち、か…。喜んでいいやら困っていいやら…」

真姫☆「いいんじゃないの?あなたが根気よく友達作れって言ってたらあの子も友達作ろうって気になれるってことだし」

希「…せや、ね。そっか…」

希「…」

真姫☆「多分花陽だったらあっちの私でもすぐ仲良くなれるだろうし、親衛隊のみんなだって…」

希「ねぇ、真姫ちゃん」

真姫☆「はい?な、なによ」

希「…真姫ちゃんってさ、いつか…帰る日がくるんよね」

真姫☆「え、えぇ…。そうね、そう、なるわね…」

希「その時、C☆cuteはどうするつもりなん?」

真姫☆「えっ…」

希「…真姫ちゃんが抜けて、それでおしまい?」

真姫☆「…そうは、させたくないけど」

希「そうやんね。うん、そう…。UTXでこれからもC☆cuteは続けていくべきやと思う」

希「…だったら、真姫ちゃんが抜けたあとのことも、考えておかないと」

真姫☆「の、希…まさか、あなた…」



希「…西木野さんを、C☆cuteに勧誘するべきや」

眠いので短めだけどここで中断 今日中に続きかけたらいいね
いつの間にか行数限界が85行になってて私歓喜 実に俺得ですね じゃ、おやすみ ほなな

真姫☆「はぁっ…!?え、あ、ちょっ…はぁ!?」

真姫☆「の、希…それマジで言ってるの?」

希「大マジや。西木野さんを、今からでもC☆cuteに入れてあげよ」

真姫☆「ち、ちょっと待ってよ!アイツは…アイツは、アイドルを一度は大嫌いになってるってのに…」

真姫☆「そんな彼女がまた、アイドルを始める、なんて…」

希「心の傷が深ければ難しいとは思う。でも、西木野さんの傷は今ではほんの小さなものになってるはず」

希「彼女自身が興味を持ってくれさえすれば、精神面でアイドルに抵抗を持つことはないと思うよ」

真姫☆「そうかもしれないけど…っていうか!今から、って…」

真姫☆「今アイツにC☆cuteに入られたら西木野真姫が二人になっちゃうわよ!?」

真姫☆「人類史上どんなアイドルグループにも同一人物が二人いたなんてことはないわよ!どうするつもり!?」

希「…それはほら、適材適所?」

真姫☆「どういう意味よ…」

希「うん、まぁ…だから…」

真姫☆「もしかして…私には引退しろ、って言うんじゃないでしょうね」

希「…」

真姫☆「ちょっとぉ!?希、あなたそこまで薄情な人間だったなんて…!」

希「そ、そういうこと言ってる訳違うって!」

希「真姫ちゃんの意思に関わらず、いつか真姫ちゃんはC☆cuteを脱退することになるはずやん?」

真姫☆「…それは、そうだけど」

希「真姫ちゃんが抜けてから真姫ちゃんに替わる誰かを探してたんじゃ活動のペースが落ちちゃうし」

希「真姫ちゃんがいるうちは、慣れるまで真姫ちゃんと西木野さんでシフト制にするとかで、着々と育てていく…みたいな」

真姫☆「バイトじゃないんだから…」

希「…それに、真姫ちゃん…今日、フラフラしてたやん」

希「あれがもしずっと続いたら、真姫ちゃんは到底アイドルが務まるとも思えないし」

真姫☆「い、一時的なものよ、それに関しては!…でも、確かに、そうね…」

真姫☆「私が作ったとは言え、C☆cuteはこの世界のスクールアイドル…」

真姫☆「いつまでも私が仕切るわけにもいかない、ってわけね…」

希「…どうかな?」

真姫☆「…ふぅ、わかったわ。私はそれに賛成」

真姫☆「明日にでも、この世界の西木野真姫をC☆cuteに入隊させるように図りましょう」

希「うん!…あ、でも一応みんなの意見も聞いておいたほうがいい…、かな?」

希「それに、彼女を急に誘っても多分…拒否されると思うわ」

希「まずはゆっくり、ゆっくりと打ち解けていくところから始めないと」

真姫☆「…そっか。じゃあ明日はみんなに意見を聞くだけに留めておきましょうかね」

希「そうしよっか。よぉし、決定や!」

希「西木野さん、これで学校に前向きになってくれるといいけどなぁ…」

真姫☆「スクールアイドルが好きになれると、いいわね」

希「…うん」

西木野家


真姫「…」


真姫(…脳内で放課後の出来事がいつまでもいつまでも、ループし続ける)

真姫(不安と、驚きと、喜びと、畏れと、迷いと…様々な感情が胸中を彷徨って、廻り捩れる)

真姫(何を考えても、『私はどうすればいいのか』という問いから、一向に思考が前に進みそうにない)

真姫(ただわかるのは、一つ)

真姫(私は、選択しなければならないということ)

真姫(今までの変化のない生活から、いきなり変化をもたらす選択を余儀なくされている)

真姫(どちらを選んでも、私の中の大切なものが何か、抜け落ちてしまいそうで)

真姫(そのことを思えば思うほど、考えがまとまらなくて…)



チュン… チュンチュン…


真姫「…ぅ」

真姫「外が…明るい…?」



真姫(体操座りで、部屋の隅で思考を巡らせて)

真姫(気づいたら、朝になっていた)



UTX学院

1年E組 授業中


真姫(…昔から、悪い癖だった)

真姫(考え始めると、時間が過ぎることすら忘れてしまう)

真姫(これが自分の好きなことでも、ってことなら、暇潰しに使えるのだけど)

真姫(…残念だけど、私の頭を惑わすことでしか、時は早く進んでくれない)

真姫(そして今日に限っては…時間は早く進んで欲しくなかった)

真姫(もっと考える時間、考える時間が欲しくて…)

真姫(でもいくら考えたところで、何も、わからなくって…)

真姫(わからなくて、わからなくて…)



教師「えー…じゃあここを…西木野」

真姫「…わかりません」

教師「また即答…!?」



真姫(今の私には、何もわからなかった)

真姫(脳みそが思考を放棄している)

真姫(澱んだ微温い空気に圧し潰され、窒息している)

真姫(寝不足のように…実際に寝不足なのだけど)

真姫(判断力の欠けた足で、トボトボと無意味に廊下を歩く)

真姫(私は、何をしに廊下へ出たのだったか)

真姫(それすらももう、覚束無い)

真姫(思考を放棄した脳細胞であっても、考えるという行動から開放されることはなく)

真姫(もはや自分でも何を考えているか理解できないのに、考えることをやめることはできなかった)

真姫(かろうじて読み取れる思考の端々からは、数式のようなものを感じた気がする)

真姫(x=y^2+3zがどうのこうの…多分さっきの数学の授業が混ざってしまっているんだ)

真姫(言うことを聞かない脳は、その機能を失ってまだ、暴走を続ける)

真姫(私の精神をすり減らすことだけを目的に、熱烈稼働を終わらせない)

真姫(あぁ、しんどい)

真姫(頭が割れるように痛い…。考えすぎで頭脳がオーバーヒートを起こしているに違いない)

真姫(そうだ。寝よう)

真姫(寝てしまえば、何も考えなくて済む)

真姫(よろめく足で、私は保健室をただ目指した)

真姫(ユラユラと揺らめく風景…。世界が轟いている?いえ、私がふらついている)

真姫(今にもぶっ倒れそうな状態で、ようやく白いシーツのベッドのある部屋にたどり着いた)

真姫(あぁ、これで楽になれる…)

真姫(数分前まで、考える時間が欲しくてたまらなかった私は)

真姫(思考する時間、数時間分を)

真姫(あっさり手放して、私を包んでくれる天使に、身体を投げ出した)



ドサッ

放課後

アイドル応援部 部室



希「…」



(希「…あなたが、西木野さん?」)

(希「どうして、そんなに自分を責めるん?」)

(希「いいんよ、楽にして。西木野さんが悪いんじゃ、ないんやから」)

(希「…うん、うん…。せやね、そう…そうやね…」)

(希「大丈夫…、うちが…うちが守ってあげるから」)



希「…西木野さん」

希「うちが、西木野さんのためにできることは…」


ガチャッ

海未「…おや、部長だけ、ですか?」

ことり「花陽ちゃん、まだなのかな?」


希「ん?あぁ…せやね。あと、真姫ちゃんもまだみたい」

海未「そうですか…。では今日も先に着替えて、音楽室で…」

希「あ、ちょいまち」

海未「はい?」

希「今日はちょっと…、待ってもらえるかな?話したいことがあるんよ」

ことり「話したいこと、ですか?」

希「うん。みんな揃ってから言いたいこと」

ことり「何か大切なことなのかな?」

海未「そのようですね…。わかりました、でしたら着替えだけ済ませてあとの二人を待ちましょうか」

ことり「うん、そうだね」


ガチャッ

花陽「あ、海未さん、ことりちゃん、希部長…。遅れました…?」

ことり「まだ何も始まってないから遅れてないよー」

花陽「みんな揃ってたから…。あ、でも真姫ちゃんがまだだね…」

海未「残りは真姫、ですか…。学外から駆けつけるせいか最近はここに集まるのが遅いですね」

希「…まぁ、真姫ちゃんはいいか。じゃ、ここにいる3人に話しておきたいことがあるんよ」

花陽「話…?」

ことり「なんだかみんなに言いたいことがあるんだって。真姫ちゃんは知ってる、のかな?」

希「うん。結構大事なことだから、よく聞いてね。実は昨日、うちと真姫ちゃんで考えたことなんやけど…」



真姫(白いシーツに包まっている)

真姫(誰かに抱かれている)

真姫(私は小さな存在で、声を上げて泣いている)

真姫(そんな私を、包容してくれている人がいる)

真姫(だれが、私を…?)

真姫(こんな、私に、誰が…慈愛を向けてくれているのだろうか…)

真姫(そっと目を開ける)


真姫「あっ…」


真姫(東條希が、そこにはいた)

真姫(しかも、ただいるわけじゃなくて…)

真姫(大きな胸をはだけさせて、それを私に押し付けるように)

真姫(そこで初めて気がついた)

真姫(私は…私は赤子なんだと)

真姫(考える力も、判断する力も、何も持たない無力な赤子であると)

真姫(そしてそれ故に、力あるものに頼り、全てを授けられうる対象であると)

真姫(そう。私は赤ん坊なのよ)

真姫(あらゆるわがままが赦される、唯一無二の存在)

真姫(だから私は、心の限り望んだ)

真姫(彼女が、欲しい)

真姫(今、私の目の前で豊満な胸をさらけ出している彼女…希が)

真姫(彼女の全てを、我がものとしたい…!)

真姫(私は希の胸を乱暴に掴み、その乳首をおもむろに咥えた)

真姫(希が小さく喘ぐ。だけど私は気にしない)

真姫(彼女の中の何もかもを吸い尽くすように、ちゅぱちゅぱと音を立てて、仄赤くとんがった乳首をしゃぶる)

真姫(口の中に溢れる芳醇な甘さのミルク。これほどの美味を私は知らない…)

真姫(甘くて、美味しくて…唇や舌を巧みに動かし、搾乳器のように搾り取ろうとする)

真姫(その度希が快楽に震える声を発して…)

真姫(その声で私の支配欲は堪らなく満たされる…!)

真姫(もっと聞かせて、そしてもっと味わわせて。あなたの味を、あなたの…)



キーンコーンカーンコーン…



真姫「…はぁっ!?」

真姫「…あ、あれ…」


真姫(聞き慣れた鐘の音で、目が覚める)

真姫(気づけばそこは、何ら変哲のないただの保健室で)

真姫(ひどく唾液に塗れたシーツだけが、普段とは違う点だった)

真姫(すぐに状況を理解した私は、トマトのように顔を真っ赤に染めた)


真姫「…わ、わたっ…、私、ったら…!」

真姫「なんっ、て、夢をぉぉぉぉっ…!!!!!」


真姫(誰もいない静かな保健室に、毛布に顔を沈めてバタバタと手足を悶える音だけが、しばらく響いた)

真姫「はぁっ…、はぁっ…!!」

真姫「なんてバカな夢…、見てるのよ、私はぁ…!!」


真姫(恥ずかしさに打ち震えながらも、口は夢の感覚を覚えている)

真姫(無意識に何かを吸うように唇が動いて…)


真姫「…っ!ば、ばかっ…!」

真姫「どうしたのよ、私は…、なんで…」

真姫「あっ…!じ、時間っ…!そうよ、今日は…!」


真姫(『彼女』から与えられた期限は、今日までだった)



(『…明日、一日、ゆっくりと考えなさい』)

(『その気になったら、また明日も、この時間に、この場所に』)

(『それが、あなたを愛してあげる条件』)



真姫(愛してあげる…)

真姫(…『彼女』は、このUTXにおける、もうひとりの信頼できる人)

真姫(私に、喜びと、楽しさを教えてくれた人)

真姫(そんな人に、そんなことを言われた日には跳ねるほどに心躍るというものだけど…)

真姫(でも、ただそれだけじゃなくて、そのためには条件があって…)

真姫(そうなると…)


真姫「…えっ!!?ウソ…!」

真姫「もう、放課後…!?」

真姫(記憶が正しければ、私がこの保健室で身をゆだねたのは、2時間目の終わりの休み時間だったはず)

真姫(それが見事に熟睡して、そして…約束の時間まで、あと十数分しかない)

真姫「なん、てこと…!」

真姫(もう自分で考えている余裕はない。せめて、最後に誰かに判断を仰ぎたいところだけど…)

真姫「だ、誰に…あっ!」



(希「いつでもうちを頼ってくれていいから。お昼休みと放課後はアイドル応援部にいるし」)



真姫「希、先輩っ…!」

真姫(もはや、彼女しかいない)

真姫(この残されたわずかな時間、彼女に相談を持ちかけるほかなかった)

真姫(すぐ立ち上がり、私は彼女のいる部室に向かうため、駆け出した)

アイドル応援部 部室


希「…という、ことなんやけど」


海未「…あの真姫を、C☆cuteへ、ですか…」

ことり「なるほどなぁ~…」

花陽「でもそうなると、真姫ちゃんは…?」

希「真姫ちゃんはその…ほら、正確にはここの生徒じゃないんやから」

希「いつか、C☆cuteを離れることになるやん」

希「真姫ちゃんもそれを了承して、後継として西木野さんをC☆cuteに入れるべきや、ってことでね」

ことり「そっか…、そうだよね。真姫ちゃん、年齢的には大学生だったんだもんね」

海未「明らかに同年代のように見えますが…、本人が言うのだからそうなのでしょうね」

花陽「あの真姫ちゃんが、いつかいなくなっちゃうん、だよね…」

花陽「…」

希「…うん。せやね。でも、その代わりとして、とは思って欲しくない」

希「同じ見た目の真姫ちゃんでも、新しいメンバーとして…そして、新しい友達、仲間として関わって欲しいんよ」

希「C☆cuteの主戦力である真姫ちゃんが半分抜けて、ほぼ初心者の西木野さんが入ってくるんは、この大切な時期的にもかなりキツいかもしれない」

希「けど将来性も加味して、そして復学した西木野さんのことも考えて…うちは西木野さんをC☆cuteの新メンバーとして推したい」

希「まだ彼女自身の意思は確かめてないけど…みんなの意見を先に聞かせて欲しくて。どう、かな…?」


一同「…」


希「…」

ことり「…えっと、喋っていい空気?」

希「え?う、うん…」

ことり「じゃあ、私は賛成!」

希「ほ、ホント!?」

ことり「うん。希ちゃん先輩がそんなに推してるんだから、断れないよ~」

希「い、いや、うちのことはいいんやけど、ことりちゃん自身が…」

ことり「私も、新しいお友達が増えるのは大歓迎かな!いずれ真姫ちゃんが抜けちゃうなら、人数合わせにもちょうどいいし!」

海未「人数合わせって…。し、しかし、私も、いいと思います」

海未「この時期に新メンバーともなると確かに大変ですが…しかし、それを乗り越えてこそのC☆cuteではないでしょうか」

海未「誰もがいつでも、トップアイドルを目指すことができる。それが真姫と…そして、花陽の目指した夢のスクールアイドル、なのでしょう?」

花陽「…うん。選ばれた人しかなれない、それ以外の人は泣くしかできない…そんな現実を壊してくれるような」

花陽「応援してくれる人、うぅん、世界中だれもが笑顔になれるスクールアイドル。それが私の夢だから!」

花陽「どんな初心者でも一から手を取り合って、ともに成長していければ…それこそ、私の理想なんだもん!当然、オッケーです!」

希「み、みんな…!」

海未「ふふ、蓋を開けてみれば、簡単なことですね」

ことり「気持ちは全員一緒なんだよね~。聞くまでもなかったかも?」

花陽「ちょっと時間、勿体無かった?」

希「かも、しれんね…!ふ、ふふふっ…」

希「あははははははははは!」

一同「あはははははは…」


希「よかった…!これで、うちは…!」

希「最後の最後で、誰かを救うことが、できるのかもしれない…!」

タッタッタッ…


真姫「はぁっ…はぁっ…」


真姫(もう時間もわずかしか残されていない)

真姫(自然と気も急いてしまい、呼吸も整わず)

真姫(大した距離ではないのに、かなり疲弊してしまった)


真姫「はぁっ…、はぁっ…」

真姫「希先輩に、相談を…!」


真姫(最初からそうしていれば、こんなに悩まずに済んだのに)

真姫(複雑に絡まった思考では、そんな単純なことすらも思いつかなかった)

真姫(けれど、もうそういった煩雑な思考に囚われることはなくなるはず)

真姫(希先輩なら…彼女ならきっと助けてくれる…!)


真姫「希、せんぱいっ…!」


真姫(精一杯の嘆願を込めつつ、ドアノブに手をかけ、扉を開こうとした)

真姫(そのときだった)



「あはははははははは…」



真姫(ドアの内側から、笑い声)

真姫(希先輩と、そして…数人の声が、一緒に聞こえる)

真姫(それだけで私の手は、惑ってしまった)


真姫「希先輩だけじゃ、ない…」

真姫「…誰か、いる…」


真姫(今度はそっと、ほんの少しドアを開いて、中を覗き見る)

真姫(そこにいたのは、希先輩を含んだ4人)

真姫(『私』は、いなかった)

真姫(何か楽しいことでもあったのか、希先輩と他の部員の人たちは、嬉しそうに笑っている)

真姫(なぜ笑っているのかは、私にはわからない)

真姫(希先輩の気持ちが、私には、わからない)



真姫「ほんとうに…嬉しそう…」



真姫(私に、彼女をあんな笑顔にすることは、できるだろうか)

真姫(考えるまでもなく、わたしにはできない)

真姫(頼るだけで、与えることのできないわたしには)

真姫(彼女の、あんな笑顔を見ることなんか――)



真姫「…っ!ぶ…!!」

真姫(また、涙が出てきた)

真姫(けど、今度は解る。なぜ私が泣いているのか)

真姫(悲しいから。悲しくて、辛いから)

真姫(彼女の全てを望む私が、決して彼女の全てを手に入れられないという事実に)

真姫(あの楽しそうな輪の中に…)

真姫(…私の入り込む余地なんて、ない)


真姫「…」


カチャッ…


真姫(静かに、扉を閉める)

真姫(眩い笑顔に照らされたせいで、涙も枯れたみたい)

真姫(今はもう、なんだって…いい)

真姫(…希先輩を手に入れられないなら)

真姫(ならいっそ…全て…)



真姫☆「…あれ、あなた…」


真姫「あっ…」

真姫☆「どうしたの?応援部に用?」

真姫「え、いや…」

真姫☆「あっ、もしかして希から例の話…」

真姫「ご、ごめんなさいっ…!!」ダダッ

真姫☆「えっ…、あ、行っちゃった…」ガチャッ


希「…ん?あ、真姫ちゃん。遅かったね」


真姫☆「さっき、そこであっちの…もとい、妹に会ったんだけど」

花陽「え?真姫ちゃん…いたの?」

真姫☆「えぇ、ドアの前に。すぐ走って逃げちゃったけど」

ことり「いたのなら入れば良かったのにー。今ちょうど話してたところだったんだけどなぁ」

真姫☆「話…?あ、もしかして例の…」

海未「えぇ、みんな、乗り気ですよ。あとは、彼女の意思次第ですね」

真姫☆「そう…。うん、よかった。そろそろ私の役目も終わりそうね」

花陽「えぇっ…!ま、真姫ちゃんはまだ居てくれていいんだよ…?」

真姫☆「ふふ、わかってる。まだアイツの勧誘もしてないしね」

真姫☆「とにかく今は、次のライブ!遅れたちゃったし、私が言う権利ないかもだけど…」

真姫☆「とっとと練習に行くわよ!」

真姫(…返事は決まった)

真姫(私は希先輩の全てを手に入れることはできない)

真姫(ならもう、それでいい…)

真姫(わたしには、もう一人大切な人がいるから…)

真姫(彼女なら、私を愛してくれる…)

真姫(そのための条件ならば、全て飲もう)

真姫(私は、昨日と同じ場所に、同じ時間に着くように向かった)


真姫「…」スタスタスタ…

真姫「…」ピタリ


真姫(…着いた)

真姫(思えば、懐かしい)

真姫(彼女と初めて出会ったのも、この場所だった)

真姫(私がピアノを引いていて、許可がなければ使ってはいけないと注意を受けて…)

真姫(そしてそのあと、私は…)

真姫(アイドルを、教わった)



「…来たのね」

真姫「えぇ…」

「返事を、聞かせてもらえる?」



真姫(この音楽室で、二人きり)

真姫(今日は、昨日の二年生もいない)

真姫(私を呼び出すために彼女が遣わしただけなのだから、当たり前だけど)

真姫(この部屋に微かに漂う青春の香りを払うかのように)

真姫(私は、選択する)

真姫(その選択は胸のトゲを、大きく成長させる肥料となって)

真姫(過去の遺物を掘り起こす、引き金と化した)


真姫「…私は、あなたの…」



真姫(…もう、引き返せない)

真姫(あとはただひたすら)

真姫(壊す、だけ)

十数分後

音楽室


真姫☆「さてと…、準備運動も済んだことだし今日は何から始めましょうか」

ことり「やっぱり、昨日の復習かな?」

花陽「真姫ちゃん、昨日は来てすぐに倒れちゃったからね…」

真姫☆「わ、悪かったわね。今日は大丈夫よ、多分」

海未「…そういえば、昨日は真姫、到着が遅れたのでしたね」

真姫☆「え、えぇ…。そうだけど。何、今日になって責められるの?」

海未「あ、いえ…、そうではなく。なら昨日、彼女とは出会っていないのだな、と思って」

真姫☆「彼女…?」

ことり「あっ、そういえば…」

花陽「突然だったから身構えちゃったよね…。意外と優しかったけど…」

真姫☆「え、な、何の話…?いったい誰と出会ったっていうのよ」

海未「…絢瀬絵里先輩です」

真姫☆「え、絵里!?」

ことり「うん、音楽室に向かう途中でバッタリ…。向こうも音楽室に寄ってた、のかな…?」

海未「向かう経路さえ変えていれば出会うこともなかったのに…、と一瞬悔やみましたが…」

花陽「にこやかに挨拶してくれて拍子抜けしちゃったよね。もしかしたら優しい人なのかな?」

真姫☆「そんなバカな…。絵里がクズなのは私が身をもって知ってるけど…」

真姫☆「…でも、なんで音楽室に…?」


ガチャッ

女生徒「た、大変っ!!」



ことり「きゃっ!?な、何…?」

花陽「あ、あなた、私のクラスの…」

真姫☆「どうしたのよ、急に…」

女生徒「そ、それが…!西木野さんが…って西木野さんっ!?どうしてここに…」

海未「え…真姫がここにいることが何か…」

真姫☆「…っ!ま、まさかっ…!ねぇ、何があったの!?」

女生徒「いや、でも…西木野さんがここにいるなら…違う、のかな…?」

花陽「あっ…!もしかして…!!」

真姫☆「なんでもいいから言いなさい!!聞いたこと、そのまま全て!!」

女生徒「う、うん…。わかった…」

女生徒「あの、アイドル専攻の手伝いしてる友達から、さっき聞いた話なんだ、けど…」




海未「なぁっ…!?」

ことり「嘘…!」

花陽「そんな…っ!」

女生徒「いや、でも…西木野さんがここにいるなら…これってデマなんじゃ…」

真姫☆「…」

真姫☆「…ぎぃっ!!」

真姫☆「最、悪ッ…!!」

多目的ホール


絵里「みんな、一旦手を止めて、集まってくれる?」


絵里「今日はみんなに大事な話があるの」



にこ「…大事?」

凛「何かな何かな?なんだと思う?」

にこ「私に聞かないでよ…」

穂乃果「何を…」



絵里「私はこの1年間、あなたたちを育てるために尽力してきました」


絵里「けれど、時間というものは残酷なもの。いずれ、別れの時は来るのよね」


絵里「私もそろそろ、卒業というタイムリミットが迫ってきている。悲しいことだわ」


絵里「けれどこのまま、何も残さずにあなたたちとお別れするのは…忍びないわよね」


絵里「だから私は…私の後継者を残すことにしました」



穂乃果「後継者…?」



絵里「…彼女なら、このアイドル専攻を…そして、次世代のA-RISEを導いてくれる存在となるでしょう」


絵里「なにせ、彼女自身もアイドルなのだから」



にこ「え、どゆこと?」

凛「さー」



絵里「じゃあ、紹介するわね。入ってきて」


スタスタスタ…



にこ「えっ…!?」

凛「にゃ?」

穂乃果「っ…!あなた…!」



絵里「…必要ないかもしれないけど一応。自己紹介、お願い」



「今日から、あなたたちの指導補佐を任されました」


真姫「…西木野、真姫です」






もしライブ! 第7話

おわり

真姫「はい、第7話だったわ。いやー、今回は短くてよかっ…」

凛「良くないよ!?何この終わり方!?」

凛「今まではキッチリ一つの事件を解決して終わってたのに!」

凛「今回は起承転結でいうところの承あたりで終わってるじゃん!?」

凛「どういうことなの」

真姫「…原作リスペクトよ。アニメのね」

真姫「一期第7話もいいところ…廃校が決定した、って理事長が言うところで終わってたじゃない」

真姫「それみたく、なんかすごい衝撃的なシーンで終わらせたくて」

凛「いつもより短くなる予定なはずだにゃ…。だって終わんないんだもん…」

真姫「まだ私…あっちの私の過去に、様々な謎が残されたままだしね」

真姫「ここからどうなっていくのか、あっちの私を無事引き戻せられるのか、はたまたまさかのラスボス枠となってしまうのか…」

凛「もしくはそのどちらかでもないか…。なんだかんだで予想のつかない展開だね!」

真姫「それを私たちが語ると滑稽この上ないけどね」

凛「そんなことないよ、だってこの先はまだ…」

真姫「それ以上は言ってはいけないわ。さて、次回はうろライブ!ね」

凛「ひと時のモヤモヤ感をお楽しみくださいにゃ」

真姫「安心して、うろライブ!の方だって一応クライマックスなんだから!」

凛「こっちもお楽しみいただけると嬉しいにゃ」

真姫「じゃ、今日の西木野☆星空シアターはここまで!」

凛「次に同位体と敵対関係になっちゃうのはあなたかもね?」

真姫「劣化レプリカかしら」

真姫・凛「「まじ☆えんじぇー!!」」

始めます 最近はラクガキにかまけてて更新遅くてゴメンね
もし!の終わりは一応考えてはいますがまぁ全何話か言っちゃったらなんとなく話の流れ読めちゃいそうだし秘密ね

真姫「今日のうろライブ!第12話は事実上のクライマックスといったところね」

凛「…12話って何やってたっけ」

凛「学校にお泊りして星見てライブしてた記憶しかないにゃ」

真姫「それはまぁ…、もうライブしかすることないけどなんとか24分引き伸ばした結果だから…」

凛「そこまでは言ってないけどさ」

真姫「一応この話の結末は考えてあるから、わざわざ安価に頼る必要はないんだけど…」

真姫「こちらとしてもライブまでの流れはほとんど考えてないし、やっぱり安価でお茶を濁すことにするわ」

凛「ストーリーがネジ曲がらない程度の面白いお話になるといいね」

真姫「で、今回の忘却安価のおさらいね」

凛「忘れるのは異例の二人だけ、なんだったっけ」

真姫「凛と海未だけね。凛が確か…」

凛「寝食、だったかな?」

凛「って、寝るのと食べるの忘れたら凛死んじゃうよ!」

真姫「いえ、この場合…『寝食を忘れる』で一つの慣用句になっているのね」

真姫「つまり今回の凛は『寝食を忘れる』ほど何かに没頭した状態、ってことになるわね」

凛「最初はマジで寝るのも食べるのも忘れたことにしようとか考えてたんだにゃ…」

真姫「こういう慣用句があるって教えてくれてありがとう」

凛「そして海未ちゃんが自分の好物…だったっけ」

真姫「公式設定によると海未の好物は穂乃果の家のおまんじゅう、だそうね」

凛「これを忘れてどうなるというのか…」

真姫「はたまた、そういう意味での『好物』ではないのか…」

凛「なんだか嫌な予感がするにゃ」

真姫「じゃ、そろそろ始めるわよ」

凛「あ、その前に前回の約束覚えてる?」

真姫「…これまでの忘却をなるべく突っ込む、って話ね」

凛「ただし、凛の『過去の記憶を忘れる』ってやつは一時的で、今は思い出してるから多分使わないにゃ」

真姫「こんな感じで既に思い出したor学習済みのものは使われないかもね」

凛「これまでの忘却はスレを辿るかして確認してね!」

真姫「そんなわけでそろそろ最終回も近い、うろライブ!第12話…」

凛「スタートにゃ!!」

前回のラブライブ!デン


にこ「…えー、っと」

にこ「泣いた記憶しかないわ…。前回どんな話だったっけ…」

にこ「え、もう時間ない…?早く言えって?わ、わかってるわよ!」

にこ「お、わ…えー…、あー…クッソ…」

にこ「にっこにっこにーーーーー!!!!!!」



凛「…ちょっと寒すぎないかにゃー?」

にこ「ごめん…」




ラブライブのくじ引きの会場


『エントリーナンバー11、音ノ木坂学院スクールアイドル、アネックス1号!』


穂乃果「は、はいっ!」


一同「ざわざわ…」


にこ「な、なんだかんだ言っても、ついにここまで…!!うぅっ…!」


穂乃果「…あー、くじ引き緊張する」

穂乃果「よし、ここは…」

穂乃果「にこちゃん!」


にこ「へ?」


穂乃果「>>482のはにこちゃんだよ!」

笑いをとる

穂乃果「笑いを取るのはにこちゃんだよ!」

にこ「なん、だと…?」

真姫「よっ、待ってました!」ピューピュー

凛「最期を有終の美で飾るにゃ!」

にこ「そんな死ぬみたいな…」

穂乃果「さ、カモン」

絵里「穂乃果…、さすがにそんな無茶ぶりは…」

にこ「わかったわよ!」

絵里「…応えるのね」



スタスタ…

にこ「いよいよ来たのね…」

穂乃果「…うん」

にこ「こ、ここで一発ギャグをかませばいいのよね…?!」

穂乃果「うん、参加者全員大爆笑のやつお願い」


『では、代表者前へ』


にこ「ごくりっ…!」

にこ「い、行くわよ…!」

にこ「にっこにっ




うろ覚えラブライブ! Forgotten Idol Project


第12話「スラトライブ」




部室


にこ「ふ、ふふ、ふふふ…」ドヨーン…


凛「にこちゃんすごいにゃー尊敬しちゃうにゃー」

にこ「そ、そうでしょ…あんなギャグかませるなんて…私ってば大銀河宇宙ナンバーワンよね…は、はは…」

花陽「会場静まり返ってたね」

希「あれはまさしく死の静寂…『クライシス・オブ・ヴァルキュリア』ってところじゃね…」

にこ「もう表歩けない」

真姫「ま、まぁ…くじ引きの結果は良かったし、差し引きプラマイゼロよ。…にゃあ」

ことり「ミジンコいいこと言うわ」

絵里「最後っていうのはプレッシャーでもあるけれどね」

穂乃果「でも!私はこれで良かったと思う!」

穂乃果「にこちゃんが滑りに滑り倒してくれたおかげで、きっと私たちの前評判もダダ下がり!」

穂乃果「これなら二位を狙える!」

希「そうだわね。円環の理に導かれて行ってしまったんだわさ」

にこ「みんな死ぬしかないじゃない」

絵里「にこのネガティブに巻き込まれる前に練習行くわよ!」

一同「うん!」

ヤルニャーガンバルニャー

ドタドタドタ…


にこ「み、みんなにこを置いて出て行ってしまったわ…」

にこ「もう私には未来は残されていないのね…」


「大丈夫だよ」


にこ「こ、この声…」

にこ「お米の妖精!?」

花陽「死ぬときは私も一緒だから」

花陽「…それに、私みたいに個性のない子より、にこちゃんのほうがよっぽど…」

にこ「な、なんか負のオーラが迸ってるわよ…?」

花陽「あ、そうだにこちゃん!」

花陽「本番が晴れになるようにてるてる坊主つくろっか」

花陽「とびきり大きなてるてる坊主…、二つ…。天井から、ロープでぶら下げるの…ふ、ふふふ…」

にこ「いやあああぁぁぁぁぁ!!やっぱりまだ死にたくない!」

にこ「バカなこと言ってないで練習行くわよ?!」

花陽「グラウンドにトマトケチャップ投下の方がいい?」

にこ「どっちも嫌!」



屋上


凛「よーし、みんな行くよー!」

凛「ワンツースリーフォーワンツースリーフォーワンツースリーフォー…」

凛「ジャジャーン!!」


絵里「…休憩時間にスクフェスするのはいいけど、静かにね」

凛「よーしもう一回いっくにゃー!!ワンツースリーフォーワンツースリーフォー…」

絵里「聞こえてねぇ」



穂乃果「ふぅ…あっつ…」

海未「ず、ずずいぶずぶいんぶん、あたたかたかいでですね…!!」

穂乃果「なんでそんなどもってるの…」

海未「え?いえ?別に別にそんな…えぇ、そんな、えぇ…」

穂乃果「よ、よくわかんないけど…お水ありがと」

穂乃果「ふぅ…こんな暖かいと…」

穂乃果「>>485したくなっちゃうねぇ…」

ことり「いよいよ>>486、って感じだよね」

露出

警察沙汰

穂乃果「こんなに暖かいと露出したくなっちゃうねぇ…特に乳首を」

海未「えぇぇっ!!?」

ことり「いよいよ警察沙汰、って感じだよね」

海未「いやいや、止めてくださいよ!?警察呼ばれたら大変じゃないですか!」

ことり「え?」

海未「あ、あのっ…、あなたも…ダメですからね!?ろ、露出とかそんな…その、破廉恥なことは」

海未「してはいけませんから!!」

穂乃果「う、海未ちゃん…。いつもの冗談だから…」

海未「え、そ、そうなんですか…?」

ことり「脱力ツッコミじゃない海未ちゃんも珍しいね。何かあったの?」

海未「い、いや、え、その…何かあったというか、えー…」

海未「いえ、何も…ないです」

穂乃果「そう?変な海未ちゃんだなぁ…」

海未「変なのはあなたです…。ろ、露出とか…急に言い出さないでください…」

ことり「いつものことなのに、ねー」

穂乃果「ねー」

穂乃果「っは!」

ことり「ん?どうしたの?」

穂乃果「…なぜか急にことりちゃんと海未ちゃんを抱きしめたくなった…!」

ことり「え、偶然…私もなの!」

海未「な、なんなんですかいきなり…」

穂乃果「でもこれはアレだよ!前の私たちもやったことなんだよ!」

穂乃果「身体が以前あったことをなぞろうとして行おうとしているアレなんだよ!」

海未「アレを多用しすぎです…。年寄りですか…」

ことり「じゃあここはあえて裏をかいて…」

ことり「>>488ちゃんと>>489ちゃんに>>451しよう!」

ことり「安価間違えちゃった」

ことり「やり直しです!」

ことり「>>489ちゃんと>>490ちゃんに>>492しよう!」

kstkst

絵里

正真正銘のダイレクトアタック

ことり「こうなりゃ絵里ちゃんと希ちゃんに正真正銘のダイレクトアタックだ!」

穂乃果「それアリ」

海未「い、一体何をするつもりなんですか!?」

ことり「それは…こうだよ!」ダダダッ…


にこ「いくわよー、にっこにっこにー!はい、リピートアフタミー!!」

希「にっこにっこにー!」

絵里「Я непристоен…」

にこ「全然違う!なんで急にロシア人キャラ発揮してんの…」

ことり「うおぉぉぉぉぉぉっ!!!」ダダダッ!!

ことり「おりゃあああああああああ!!」ドゴッ

希「へぶっ!?」


ドガッシャァァァッ!!


にこ「…よ?」

絵里「Надежда разрушилась…!?」

にこ「希が吹っ飛ばされた!?」

穂乃果「うおおぉぉっ!!」

にこ「まずい!第二波が来る!」

絵里「Станьте щитом!!」

にこ「ちょぉっ!!?盾にしないでぇぇっ!!」

穂乃果「うおりゃぁぁぁっ!!」ドゴッ!!

にこ「げぶちっ!!?」


ドガッシャァァァッ!!


絵里「…原翔一」

海未「いや誰ですか」


夕方 下校道


凛「あーあ、もう練習終わりなのかぁ…」

絵里「本番に疲れを残すわけにはいかないしね」

にこ「あれだけの突進を食らって無傷な私たちなら楽勝だと思うわ」

希「無傷っていうか複雑骨折したけどなぜか一瞬で治ったノーネ」

絵里「…じゃあ明日、みんな時間間違えないようにね」

穂乃果「は?何が?」

絵里「こういう人もいるので各自連絡を取り合いましょう」

穂乃果「いやだから何の話…」

海未「え、えっと…ラブライブ本番です…」

穂乃果「あぁ!!そういえばそんなのも…」

真姫「それが一番大事でしょ!」

穂乃果「あはははは…」

花陽「…あっ」

穂乃果「ん?」

花陽「もしかして…みんなで>>495するのってこれが最後なんじゃ…」

練習

花陽「みんなで練習するのってこれが最後なんじゃ…」

希「…え?」

希「そう…だったの…!?」

真姫「いやちょっとちょっと待ってよ…。さ、最後…!?」

花陽「そうだよ!練習最後だよ!」

絵里「な、なんてこと…特に心の準備なしで過ごしてしまってたわ…」

絵里「そっか…、最後、なのね…」


一同「…」


にこ「ダメよ!」

一同「えっ…」

にこ「…ラブライブに集中!」

絵里「いや、でも最後チカ…寂しいチカ…」

にこ「うるさい!行くわよ!」

凛「待ってにこちゃんっ…!」

にこ「待たない!いつまでも立ち止まってちゃおぶふぅぅっ!!!」


ドガッシャァァァッ!!


凛「…信号、赤だよ」



神田明神


パン、パン…


にこ「…これでやり残したことはないわね!」

花陽「にこちゃん、本当に無傷だね…」

凛「次はにこちゃんが大怪我するようにってお願いしといたにゃ」

にこ「いらんことせんでよろしい」

穂乃果「そうだね、言葉は違ったかもしれないけど、みんなのお願いって一つだった気がするよ!」

にこ「え…!?みんなにこの不幸を願っている…!?」

絵里「わざわざにこのために神頼みなんか使わないわよ」

希「そうそう」

にこ「…そ、そう…。それならいいけど…」

希「じゃ、念の為にもう一度!」

一同「よろしくお願いします!」 絵里「にこ怪我しますように」 凛「ように」 希「ように」

にこ「もう何も聞かなかったことにするわ」

絵里「さぁ、今度こそ帰りましょう!」

穂乃果「うん、明日」

真姫「そうにゃそうにゃ」

花陽「…」

真姫「もう、霧ヶ峰でしょ」

凛「え、三菱のエアコン?」

花陽「…」

真姫「もう、キリがないでしょ」

凛「テイク2だにゃ」

にこ「そうよ、帰るわよー」


イコッカ… ウン ジャーネー バイバーイ


花陽「…」

真姫「さ、私たちも」

凛「にこちゃんが怪我しますように怪我しますように怪我しますように」

真姫「あなたもいつまでお願い事してるのよ…」

凛「怪我しますように…っは!そういやくじ引きのときに大怪我してたわ」

花陽「帰ろっか…」

真姫「うん」スタスタ…

凛「じゃあ大金持ちになれますようになれますように…あれ、二人がいないにゃ…」



スタスタ…


凛「待ってよー!」

真姫「何してたのよ」

凛「えへへ、お願い事ー。たっぷりしないと損にゃ損にゃ」

花陽「…うん」

スタスタ…


花陽「あ…」


にこ「…なんでまだいるのよ」


真姫「それはこっちの台詞」

にこ「え、にこ台詞間違えちゃった…?ゴメン、何ページから…」

絵里「そういう意味じゃないから。合ってる合ってる」

希「もー、そんなこと言ったらこれが劇中劇やってバレるやん!…あっ」

絵里「重大なネタバレが!」

花陽「何を意味のわからないことを…」


穂乃果「…あれ、みんな…」スタスタ…


凛「穂乃果ちゃん、どうしたの…?」

穂乃果「え?あぁ…うん」

穂乃果「なんか…神社に来て>>498することで興奮を得たくなって」

とろとろどんどん

凛「というわけで一旦ここで中断するね」

凛「ゆったりめの進行だったせいでこんなに遅くまで付き合わせちゃって申し訳ないにゃ」

凛「まだ半分過ぎてないけど次回に終わらせられるといいね!」

凛「っていうか前回まではそこそこに苦悩してた穂乃果ちゃんたちだったけど…」

凛「今回は能天気だね…。こんなので本当に運命は回避できるのかな?」

凛「そのへんも次回にお楽しみに!」

凛「え?真姫ちゃんはどうしたのかって…?むふふ…それはねぇ…」

凛「おっと、これを言っちゃうと…ゴニョゴニョ…」

凛「んー?凛は知らないにゃー。もう帰っちゃったんじゃなーい?」

凛「あ、もしくは今回のサブタイを『スラトライブ』って誤タイプしちゃったせいで恥ずかしくて顔向けできないのかも!」

凛「もー、真姫ちゃんってば仕方ないなー、正しくは…」

真姫「ふぅ、めっちゃ溜まってたわ。あ、始まってる?」

凛「おわっ!どうしてこのタイミングで帰ってくるの!?ミスリードが台無しにゃ!」

真姫「は?洋芥子のこと?」

凛「それはマスタード…って全然かかってないよ!」

真姫「そうね、マスタードが全然かかってないと風味が足りないわよね」

凛「それは言えてる…ってどうでもいいわ!」

凛「じゃあ締めるよ!えーと、今日の西木野☆星空シアターはここまで!」

真姫「次に一週間分溜まってたのが出るのはあなたかもね?」

真姫・凛「「まじ☆えんじぇー!!」」



凛「…そんな溜まってたんだ。辛かったね」

真姫「そうなのよ、スクフェスの受け取らなかったプレゼントが一週間分…」

凛「ベンピの話じゃなかった…」

再開します
ストーリーに関わることじゃないし安価少なめの方がいいかもね

穂乃果「なんか…神社に来てとろとろどんどんすることで興奮を得たくなって」

凛「えっ…、何それは…」

にこ「なっ…!とろとろどんどんですって…!?」

海未「なんてことを…!」

絵里「ダメよ!そんなことをしたら大変なことにナチャーウわよ!」

花陽「え、そうなの…?っていうか知ってるんだ…」

穂乃果「けどとろとろどんどんしたいの!したいのーっ!!」

にこ「ちょっ…、声が大きい!ご近所に聞かれたらどうするのよ!私たちの評判が地に落ちちゃうじゃない!!」

真姫「そこまでひどいものなの…!?」

穂乃果「評判下落上等だよ!そうすれば運命だって多少は変わるかも…」

海未「そんなこと言っても、こ、こんな誰が見ているかもしれないところで、そんな破廉恥な…」

ことり「破廉恥なんだ…」

凛「一体何なんだ…そのズンドコペロンチョって…」

希「全然違う」

穂乃果「とろとろどーんどん!あそーれとろとろどんどーん!!」

絵里「うわぁ…卑猥すぎる…。いつまでもここに穂乃果を放置しておくわけには行かないわね…」

凛「あ、それなら!」




学校 部室


穂乃果「とろとろどーん…はっ!い、いつの間にか部室に布団が敷かれている…!」

真姫「ちょうど16人分…」

花陽「真姫ちゃんには何が見えてるの?」

凛「学校でお泊り!(>ω<)/ー!!」

希「凛ちゃんが謎の顔文字を発音した!?これが世に言う『エンディミオンバルバロッサの福音』ってやつなのか…!」

絵里「なにそれめっちゃカッコイイ」

凛「ちなみにテンション上がるにゃーって言ったにゃ」

海未「でも、本当にいいんですか…?」

ことり「うん、お母さんに聞いたら…」

ことり「>>504って言ってた」

メンバーのヤバい写真

ことり「メンバーのヤバい写真って言ってた」

海未「は?」

ことり「メンバーのヤバい写真を奉ればお泊りを許してくれるんだって」

ことり「だから海未ちゃんの[田島「チ○コ破裂するっ!」]写真を数枚ほど渡しておいたね」

海未「な、何をしてくれているのですかぁぁぁぁっ!!?」

ことり「いいじゃん、[田島「チ○コ破裂するっ!」]写真くらい。クラスのみんなにバレバレだよ?いつもトイレから声が…」

凛「あー、聞いたことあるにゃ。トイレの園田さん」

真姫「あの噂、ホントだったのね…」

絵里「毎休み時間ごとに何か湿ったものが擦れる音と女性のか細い声が二年の奥から二番目のトイレから聞こえる都市伝説…!」

希「みんなが帰ったあとにそのトイレを覗いてみると、なんと恐ろしや、壁一面に白濁色の粘ついた液体が…!」

海未「ちょっとぉっ!?なんでみんな知ってるんですか!そして話が飛躍しすぎです!」

海未「それでは私が生えているみたいではないですか…、全く」

穂乃果「え、生えてなかったんだ…。幻滅…」

海未「生えてたらアイドルなんかできませんよ…」


ガチャッ

にこ「そうよ!生えてたら誰かさんに何されるかわかったものじゃないわ!そして麻婆豆腐が完成したわ!」

穂乃果「おぉ!絶妙なトロみの麻婆豆腐!そしてどことなくイカっぽいかほりが…」

真姫「まさかナニか入っている…!?」

にこ「入っとらんわ!さ、花陽!ごはんは?」

花陽「…は?何の話…?」

にこ「えっ…、ご飯炊いておいて、って言っておいたじゃない…」

花陽「知らんなぁ…」

にこ「知らんなぁ、じゃないわよ!?絶対言ったわよ!」

希「ということはそのマーボーさんは…」

絵里「ライス抜きということになるわね…」

凛「じゃあ凛はこのラーメンにマーボーを乗っけたマーボーラーメンにするにゃ」

真姫「抜け目ないわね…」



穂乃果「もぐもぐ…」

穂乃果「…辛ぁぁぁぁぁぁぁい!!」

穂乃果「はっ、しかしこの食べたあとの何とも言えない旨み…!堪らないね!」

ことり「ご飯がほしい…」

凛「マーボーラーメンめっちゃうまー」

にこ「ぐっ…、かなり美味しそう…!」

希「いやぁ…それにしても合宿の時みたいだの」

一同「合宿…?」

希「…うん、なんでもない」

穂乃果「っは!ねぇねぇ、今って夜だよね!」

にこ「ん?そうだけど…」

穂乃果「夜の学校ってさ、>>506って気分にならない!?」

肝試し

穂乃果「夜の学校ってさ、肝試しって気分にならない!?」

絵里「えッ」

穂乃果「トイレで吐き出され死んでいった無数の命とかの幽霊が出そうで新鮮!」

海未「ここは女子高ですのでそういうのは出ないと思いますけど…」

にこ「生えてない限りはね」

絵里「き、肝試しはひゃめてちぇおいてゃほうがひぃとおもふわ…」

凛「絵里ちゃん口が回ってないにゃ」

希「えりちは肝試しが今から楽しみすぎて脳内麻薬がドカドカ排出されてるからそうなってるんだよね?」

絵里「貴様何を」

穂乃果「お、絵里ちゃんそうなの!?」

絵里「え、いやそれは…」

カチッ

絵里「ひっ!?く、暗いチカ!!あんぎゃああああああああああああああああ!!!」モッギュー

ことり「え、えりぢゃ…、ぐるじ…」

絵里「ダメぇぇぇぇっ!!殺されるぅぅぅぅぅっ!!ミイラに呪い殺されるぅぅぅぅぅっ!!」モギュギュギュ…

ことり「…」ピクピク

ことりの魂『肝試しはそういう類の怪物は出てこないと思うよぉ~~』

絵里「いやぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!オバケぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえっ!!!」

真姫「絵里が絞め落とした結果だけどね…」

海未「もしかして絵里…」

花陽「Clein are got core eat cow…!!」

ことりの魂『クラインは牛を食べコアを持っている…?イミフ』

希「実はえりちは周りが暗くなると己が本能を抑えられず魂を狩る番人、『アドガルフ』と化し人々を恐怖の渦へと陥れる…」

絵里「そんな設定はないから!ただの怖がりだからぁぁぁっ!!もう真姫ぃっ!部屋の電気を消すなんて悪趣味よ!」

真姫「えっ…?私消してないけど…」

絵里「」ブクブク

絵里の魂『わぁぁ~~体がかる~い』

真姫「…冗談よ。点けたげるから」

穂乃果「待って!」

真姫「え?」

穂乃果「…」

穂乃果「暗いとさ…」

穂乃果「なんか、イケない気持ちになったりするよね…」

花陽「はいぃ…?」

穂乃果「…ちょっと、屋上…行ってくる」タタタタッ…


真姫「…確実に開放感に浸りながら、するつもりだわ」

ことり「私も行ってくる」ダッ

絵里「あ、ズルい!私も!!」ダッ

海未「なぜか私も行かねばならぬ気がします!!」ダダッ

にこ「…私たちも、一応行きましょうか」

花陽「う、うん…」

凛「何しに行ったにゃ?」

真姫「あなたは知らなくていいから」

屋上


穂乃果「ふっ…、くっ、んんっ!!」

穂乃果「んんっ…、っはぁっ…!はぁっ…」


ことり「くっ、一足遅かったちゅん…!」

絵里「なんてこと…」

穂乃果「いやぁ、なかなか外で下履かないって経験はできないねー」

穂乃果「おかげでいいのができた!」

花陽「な、何をオカズにしたの…!?」

凛「オカズ?麻婆豆腐にゃ」

真姫「あなたはもう黙ってていいから」

穂乃果「オカズはねー…あれ!」

花陽「アレ?…って、ふわぁぁぁ…!」

真姫「ここからの景色…?綺麗…」

ことり「光の海みたい…」

海未「光属性の私ですか…?」

穂乃果「この一つ一つが、みんな誰かの光なんだよ」

穂乃果「そして方角的にはちょうどこっちを見ている人もいるかも知れない」

穂乃果「それに、この光の中で情事に走っている人だっていっぱいいるかも…」

穂乃果「そう思いながら下を出すとこの上なく興奮するんだよね…」

絵里「すごいわかる」

希「わかっていいものなの…?」

穂乃果「この光全てが、私を見てくれている」

穂乃果「この中にはきっと、私と話したことも、会ったこともない、触れ合うきっかけもなかった人たちが、たくさんいるんだよね」

にこ「その人たちが全員、私たちを見てくれたとしたら…」

穂乃果「うん、これ以上なく、目立ててるってことだよ」

穂乃果「偶然なんの気なしに振り向いた方向に、私たちがいて…その時、変なことしてたり、ちょっぴり犯罪に走ってたり」

穂乃果「ちょっぴり検挙されかかってたり…、ちょっぴり、歌ってるかも知れない」

穂乃果「日本中…、うぅん、世界中がもし、一斉に、そんな偶然に見舞われたら…素敵だよね」

にこ「だからアイドルって最高なのよ。…言葉じゃない、歌で、音楽で…世界を繋げられるから」

穂乃果「…うん!」



海未「…あれ?いつの間にかいい感じ風になってる…?」

ことり「あっ、雲が晴れて…」

花陽「月が…!」


ペッカァァァァ…


一同「うわぁぁぁぁぁ…!」


穂乃果「っ!」

穂乃果「私っ…!!」

穂乃果「スクールアイドルやって…」

穂乃果「よかったあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

ヨカッタァァァヨカッタァァカッタァァァ…



真姫「ど、どうしたの!?」

穂乃果「だって、そんな気分なんだもん!」

穂乃果「みんなに伝えたい気分、きっと前の私も!」

穂乃果「そして、誰でもない、今の私の、素直な気持ち!!」

穂乃果「みんなぁぁぁぁっ!!!」

穂乃果「明日、精一杯歌うから、聞いてねえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」

一同「…ふふっ」



穂乃果「…って大声で言っても結局誰にも聞こえてないんだけどさぁっ!!」

絵里「台無しよ…」


穂乃果「…本当に、世界中に届けばいいのに。私たちの歌…」





ラブライブ!(アイキャッチ)

翌朝


穂乃果「んむぅぅ…」

穂乃果「っは!いい天気!」

穂乃果「カーテンガバーっ!!」ガバー


ことり「眩しいぞオラァ…閉めろや…」

花陽「うぅ…、胸のあたりが涼しい…」


穂乃果「みんなー、おっきろーーーーーーーーーー!!!」

絵里「穂乃果…、何…?」

凛「うわぁ、かよちんおっぱい丸出しになってる」

花陽「あ、ホントだ…。まぁいっか…」

真姫「良くないわよ。早く隠しなさい」

穂乃果「おい聞け!朝だよっ!!」

希「休日の朝なんだからもう少しゆっくり寝かせて…」

穂乃果「それもそうかな。じゃあ二度寝しよ。…おやすみ!」

穂乃果「ってそうじゃなーい!ラブライブだよー!!」



ラブライブ本戦会場前


真姫「これが、会場…」

穂乃果「おっきい、ね…///」

ことり「朝から色気ムンムンだね、穂乃果ちゃん」

絵里「さすが本戦はシュノーケルが違うわね…!」

希「それ?んだの?ガチ間違いなの?」

凛「ここで歌えるなんて…!」

にこ「トップアイドル並に注目を浴びてるのよ、ラブライブは!」

凛「おぉ、そっか!」

花陽「注目されてるんだ、私たち…!!」

穂乃果「ほわわぁぁぁぁぁぁぁ…!」


ピカッピカッ


海未「おぉ!光りました…、なんですかアレ…」

ことり「照明だねー」

希「アレ売ったらお金になりそうスね」

にこ「…ひとつくらいいただいちゃおうかしら」

絵里「何考えてんのよ…」

穂乃果「…ここで歌えるんだ…」

穂乃果「…うぅん、一度、歌ってるんだ…」

穂乃果「次も、…今度は、前以上に見てもらえるように…!」



ラブライブ本戦会場前


雪穂「すごい、こんな大きな…」

雪穂「月!」

亜里沙「え、そっち?」

雪穂「冗談冗談…。看板デッカい!」

亜里沙「雪穂雪穂!写真!」

雪穂「はいはい…」

亜里沙「あの月の!」

雪穂「え、そっち?」

亜里沙「冗談!」

雪穂「もー、亜里沙ったらー…」



フミコ「こんな大きな会場で大丈夫かな、穂乃果たち…」

ミカ「優勝候補とか言われてるし、緊張してるかも…」

ヒデコ「だいじょ」


(見所無いのでカット)


ヒデコ「えぇぇっ!?」




理事長「あのぉ…」

ほのママ「ん?」

理事長「使います?これ…」スッ

(海未のほにゃにゃん写真)

ほのママ「…ご心配なく!」ササッ

(ことりのほにゃにゃん写真)

理事長「っ!?」

控え室


穂乃果「ほわぁぁぁぁ…!みんな、かわいい…って海未ちゃん!?」

海未「はい、何か…」

穂乃果「衣装グッチャグチャだよ!?何その着こなし!」

海未「え、あ…そうですか?こんなものだと…」

花陽「えっと…ちょっと手直しするね…」ゴソゴソ…

真姫「こんなので大丈夫なの…?にゃあ」

絵里「でも、ことりの仕事はさすがね」クルリンッ

ことり「は?何まわってんの?調子乗ってる?」

絵里「ごめんなさい」ドサーッ

海未「素晴らしい土下座だと思います」

希「そこまでせんでもいいじゃろう」

絵里「だって怖いんだもん…」

ことり「みんな、準備はいい?」

一同「はい!」



ワー キャー


ことり「トリを飾るのは私たちだね…!ことりだけに…!」

穂乃果「ことりちゃんの本番で緊張してるみんなの心を落ち着けようとする配慮…嫌いじゃないけど好きじゃないよ」

海未「…楽しみですよね」

穂乃果「え?観衆の前でオナるのが?」

海未「もうすっかりクセになり…いや違います!!違いますから!!」

海未「たくさんの前で歌う楽しさの話です!変なこと言わないでください…えー…ほ、ほの…」

穂乃果「…?穂乃果だよ?」

海未「そう、穂乃果!」

ことり「どうしたの?穂乃果ちゃんの名前を忘れるなんて海未ちゃんらしくない…」

海未「…い、いえ…そうですね…」

海未(…まさか、今更言えません…)

海未(穂乃果のことを、全然覚えていないなんて…)

穂乃果「…うん、でも海未ちゃんの言うとおり!」

穂乃果「今はほかのことは何も考えず…全力でやりきろう!!」

ことり「うん!」

海未「…えぇ、そうですね!」

海未(でも、この数日でわかりました)

海未(穂乃果を忘れる前の私は…きっと彼女のことが大好きだったのだろうと)

海未(だって、今の私ですら、穂乃果の勢いに乗せられて、こんなにも楽しいのですから…)

海未(…どこか、だれも知らないところへ、連れて行ってくれるような…)

海未「…おや?今の言葉…どこかで」

穂乃果「ボーっとしない!集中だよ、海未ちゃん!」

海未「は、はい、わかっていますとも!」

花陽「大丈夫かなぁ…可愛いかなぁ…」

花陽「こんなブサイクな私見てみんな卒倒したりしないかなぁ…」

凛「大丈夫にゃ!凛ほどじゃないにしてもかよちんもそこそこ可愛いよ!」

凛「ほら、くるりんくるりん!」 真姫「私はどう?」

花陽「うん、真姫ちゃんはとっても可愛いよ!」

真姫「でっしょー!」

凛「あれ、聞いてねぇ」


希「今日のうちは遠慮しないで前に出るから覚悟しときぃよ!」

穂乃果「希ちゃんが?」

にこ「アンタが前に出たら大きすぎて他の子が脂肪でかくれちゃほぎゃああああああああああ!!」

希「いらんこというのはこの胸かな?」ワシワシ

にこ「おっぱいは喋らないわよおぉぉぉ…」

絵里「ならっ」ヒラッ

絵里「私もセンターのつもりでぇっ」クルリンッ

絵里「目立ち、まくるわよぉんっ!」シュパパワァッ

絵里「最後のステージなんだから!」シュビッ

希「うわ、ウザい動き!逆にかわいい」

凛「そっか…あんくらい派手な動きの方がいいのか…」

凛「真姫ちゃんも、ほら、やるにゃ!」

真姫「え、えぇ…。わ、わかったわよ!」

真姫「まっきまっきまー!みんなのハートにまきまきまーよ!」

にこ「えっ、パクり!?ふん、面白いじゃない…!」

にこ「もうそのネタは古いわ…!これからのにこはこれよ!」

にこ「るるららるるららるんるんるーんっ、おかしな世界にミラクルおこして、みんなみーんな、にこにこ笑顔になっちゃえ!うふっ♪」

真姫「なにそれ…」

真姫「…最高にクールじゃない!それももらっちゃうわ!!」

にこ「え…、全部パクられるの…?」

海未「さ、そろそろ時間ですよ」

穂乃果「え、何の?」

海未「…」

穂乃果「よーし、本番もすぐ目の前だー!」

穂乃果「みんな、全部ぶつけよう!」

穂乃果「あ、手品しまーす」

穂乃果「今までの気持ちと、思いと…ありがとうを!」

ことり「え、何か変わった…?」

凛「はっ!カットが変わった瞬間穂乃果ちゃんの髪飾りのお花が消えてる!」

絵里「全く見えなかったわ…1Fの猶予すらなかった…」

海未「作画ミスにそんなこと言うのはやめましょうよ…」

穂乃果「いくよ!」スッ

一同「…」ユビヲピースニシテマエニツキダスヤツー

穂乃果「…今まで、何とかして運命に立ち向かおうって、歯向かってきた」

穂乃果「街での評判落としたり、自分たちのしたいことの、逆をしたりって」

穂乃果「それで何が変えられるか、わからない」

穂乃果「何が変わったのかも、多分わからないまま終わっちゃうんだと思う」

穂乃果「でも、これだけは変わらない」

穂乃果「私たちはみんな、笑顔を届けたいんだってこと!」

穂乃果「そして、それ以上になによりなにより…」

一同「目立ちたい!」

穂乃果「そう!」

穂乃果「目立とう!この時間、この瞬間、全世界の誰よりも!」

穂乃果「偶然目を向けた先が、全員私たちの方向になるように!!」

穂乃果「ふぅっ…」

穂乃果「アネックス1号、スラトライブ!!…?んだっ!!」

穂乃果「もういい、1っ!」

ことり「穂乃果ちゃんらしい! 2っ!」

海未「いいんですかそれで…。 3っ!」

真姫「ふふ、いいんじゃない? 4っ!」

凛「もうなんでもいいにゃー! 5っ!」

花陽「え、えぇっと…何言お。 6っ!」

にこ「無理していう必要ない! 7っ!」

希「実は訛り思い出したやん。 8っ!」

絵里「噛むのは私の役なのに。 9っ!」



「アネックス1号! ミュージック、スタートっ!!!」

KiRa-KiRa Sensation!終わり…


キャー!! ワー!!


パチパチパチパチ…



穂乃果「はぁっ…!はぁっ…!!」

穂乃果「ありがとうございました!」


希「東條希!」

真姫「遠坂…じゃない、西木野真姫!」

海未「園田海未!」

凛「星空凛!」

にこ「矢澤にこ!」

花陽「小泉花陽!」

絵里「絢瀬絵里!」

ことり「南ことり!」

穂乃果「高坂穂乃果!」

穂乃果「音ノ木坂学院スクールアイドル、アネックス1号!」


「ありがとうございましたー!!!」


キャー!! ワー!!



舞台裏


真姫「は、ははは…」

花陽「ふふ、ふふふ…」

凛「えへへへ…」

ことり「やった…、やったよ…!」

海未「えぇっ…!!」

にこ「うぅっ…!!」

希「全部、出し切った…!」

絵里「これで、最後…!」


穂乃果「…何か、変われた、のかな」

絵里「…穂乃果」

穂乃果「私たちの全力を出して、それが…前の私達を超えられたのかな」

穂乃果「結局私たちは、運命に翻弄されたまま、終わっちゃったの、かな…」

ことり「…」

穂乃果「もちろん、こうしてここにいられるのは、嬉しいよ…」

穂乃果「嬉しいけど…でも、やっぱりもどかしいよ」

穂乃果「…証が欲しい。私たちが、前の私たちと違ったって証…!」

海未「穂乃果…」




アンコール!! アンコール!!

花陽「はぁぁ…!客席から…!」

真姫「ったく、ソロライブじゃないんだから…」

穂乃果「餡子売る!?仕入れ時か!?」

希「こんな時までボケんでいいから…」

凛「えへへ、圧倒的だね…」

穂乃果「…うん、圧倒的だ…」

穂乃果「ここまで求められたら…下がれないよね」

にこ「…穂乃果」

にこ「この声聞いて、まだあなたは、運命に翻弄されてるって言い続けるつもり?」

にこ「疼かないの?胸の中の熱い欲求が…!」

穂乃果「…疼くよ!ジンジンだよ!!」

穂乃果「でも、やっぱりそれは、前の私たちのおかげなんだって思うと…」

穂乃果「これが、私たちの限界、なんだって思うと…」

絵里「…限界?」

絵里「限界って、なにかしら。さっぱりわからないわ」

穂乃果「絵里ちゃん…?」

絵里「穂乃果、私たちは忘れっぽいのよ」

絵里「だから、なんだって忘れちゃう。自分たちの限界だって」

絵里「前を向いて、最後まで突っ走る。抜け落ちていくものなんて気にせずにね」

凛「そうだにゃ!穂乃果ちゃんらしくないよ、こんなところで…あ、あきら…」

凛「なんだっけ?」

真姫「諦める」

凛「うん、こんなところで諦めるなんて、穂乃果ちゃんらしくない!」

凛「まだ凛たちには残ってるんだよ!最後の最後の、本当に最後の時まで…諦めるなんて、忘れちゃおう!」

穂乃果「みん、な…」



(穂乃果「…今は、この苦しみを忘れられない。…また、同じ苦しい気持ちになるかもしれない。…やめたい、って思うことがあるかもしれない」)

(穂乃果「でも、苦しいって思ったまま忘れたくない!とにかく全力で頑張って、塗り替えたい!!」)

(穂乃果「今、私たちが感じているこの苦しみを、100%の喜びでっ!!」)



穂乃果「う、うぅっ…!!」

穂乃果「そうだ…!たとえ、同じ結果になったのだとしても…」

穂乃果「塗り替えよう…!過去の自分たちを忘れてしまうほどの、最高のライブで…!!」

穂乃果「行こう!今度は100%じゃない…!」

穂乃果「120%の、喜びのライブを!」

アンコール!! アンコール!!



穂乃果「行くよっ…!!」



テーンテテーンテンテーテテーンテテテーン…


キャアアアアッ!!



穂乃果「よしっ…!!」


テッテーテレッテーテッテッテーテレレーテテーレテーテレテッテッテー



「  まっすぐなーおもーいがーみんなを…  」




バリバリバリィッッ!!



穂乃果「っ!!?」


ガコンッ…



花陽「ふえぇぇっ!?」

絵里「ひやあぁぁぁっ!!!暗い!暗いの怖いチカァァッ!!」

にこ「停電っ!?こんな時にぃっ!?」

ことり「そんな…」

海未「し、しかし…何か変です…」

真姫「大きな雷の音、しなかった…?」

希「嘘…、こんなに晴れてるのに…?月が見えるくらい…」


穂乃果「…何か…くる…!?」



バリバリバリィィィッ!!


凛「ひやぁっ!!まただにゃぁぁっ!!」

真姫「なんなのよ、これ、一体っ…!」

ことり「あぁっ!!み、見て…!アレ!!」

絵里「えっ…?あっ!つ、月が…!!」

希「月が大きな影に、隠れてる…?」

海未「あれは一体…!?」



ゴロゴロゴロ…

バシュゥゥッ!!


にこ「影の中から、何か出てきたわよっ!?」

穂乃果「あれは…」

「ぎゅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!」




凛「お、お、お…」

凛「おっきなかよちんだにゃああああああっ!!」

真姫「うわホント、おっきい…」

花陽「えぇぇぇっ!!?私、あんな変な顔じゃないよっ!?」

絵里「そ、そうね…アレは…」



ヒュンッ!!

ヒュンッ!!


希「あっ!また影から何か出てきた!」

ことり「今度は二つ!次は…」

にこ「凛と真姫!?…みたいな何か!!」




穂乃果「あれ…見たことある」

穂乃果「小さい頃、怪獣映画に出てた…」

穂乃果「あの、大きな、蛾の怪獣は…」




穂乃果「…モスラ?」






うろライブ! 第12話

おわり

第12話「スラトライブ」



真姫「…この題名は間違いね」

真姫「本当は…こう」


キュッキュッ… カキカキ…




次回のうろライブ!




第12.5話

「モスラトライブ」





真姫「…お楽しみにね」

凛「ばいばいまじえんじぇーにゃー」

じゃあやっとこさうろライブ!完全オリジナル、12.5話に取り掛かるよ!
あ、もしライブ!を期待してた人はゴメンね こっちを先にやります

真姫「今日は12.5話ね」

凛「…いや、12.5話って何…」

真姫「前回特に何も言わずに終わっちゃったけど、一応状況の説明だけしておくわね」

真姫「12話で登場した謎の花陽っぽいモスラ顔の巨大な何か、それは言わずもがな…」

凛「暴走して過去に飛んじゃったモスちんだったにゃ!」

真姫「そしてその後ろを追いかけてきた、凛と私っぽい何か…これもモス私たちなのね」

凛「つまりクリニック世界線とクロスオーバーしちゃった…ってことなんだよね」

真姫「今まで時々挟んでいたクリニックはこの展開にしたいがための布石だったのよ」

凛「もううろライブ!がほぼモスラに侵食されてるにゃ…」

真姫「モスラをこれっぽっちも知らない、って人は遅くないから、今からWikipediaで設定を調べてきなさい」

真姫「ちょっとしたモスラの特性も、これからのお話に関わってくるから」

凛「ちなみに凛たちもそんなに知らないにゃ…。ゴジモスギドラ見たくらいにゃ」

真姫「で、今日は安価を使う予定はないわ。普通に普通のお話としてやるつもりね」

凛「モスラが出てくるお話が普通とか思いたくないけどね」

真姫「暴走してしまったモスちんを止める私たちと、穂乃果たちの願いが交錯する12.5話」

真姫「物語はまず、前回のクリニックの続きから始まるわ」

凛「じゃ、そんなわけでー…、西木野☆星空クリニック、もとい、うろライブ!第12.5話…」

真姫「スタートよ!」





真姫「…その前に訂正」

凛「えっ」

真姫「レス番514の穂乃果の台詞の『穂乃果「アネックス1号、スラトライブ!!…?んだっ!!」』ってところが文字化けして?になっちゃってるのね」

真姫「正しくは、『噛んだ』って書きたかったわけ。難しい方の字を使ったせいで文字化けしちゃったわ」

凛「…そういうことでした。では改めて、本編をお楽しみくださいにゃ!」

クリニック前


凛「あ!そうだ!!」

真姫「ど、どうしたの?」

凛「こ、これを使えば…!モスちん…ゴルバチョフの後を追えるかも!」

真姫「そ、それはっ…!!」

真姫「わ、私と凛の、モスラフィギュア…!?」

凛「うん!」

真姫「どうしてその二つでモスちんの後を追えるって言うのよ!?」

凛「ふっふっふ…、真姫ちゃんは甘いにゃ…」

凛「もしゴルちんの生まれた条件が凛と真姫ちゃんのアレぢるだとすれば…」

凛「この二つでモスニーすることによってまた新たな生命がここに誕生するのだ!」

真姫「さ、再現性があるってことね…!で、それが…?」

凛「モス凛とモス真姫もモスちんと同じようにモスラの特性を持っているなら…」

真姫「あ!モスちんのやったように過去に飛べるかも知れない…ってことなのね!」

凛「そういうことにゃ!!今度はちゃんと凛たちの言うことを聞くようにいい感じのお薬を飲ませて…」

凛「いい感じに巨大化させられば、過去に飛んだモスちんを追いかけられるはず!!」

真姫「なるほど…やはり天才ね。さすが私が見込んだ男だわ」

凛「女だよ」

凛「…まぁ、てなわけで真姫ちゃん。はよ」

真姫「は?」

凛「脱ぐにゃ。下」

真姫「えっ…」

凛「今から急いで相互モスニーするの!そんでもってこのモスフィギュアたちをアレぢるでべっちょんべっちょんにしてあげるの!」

真姫「うわぁそうだったわ…。えぇ、でも今そんな気分じゃないし…濡れないし…」

凛「知らん!事は一刻を争う事態なんだよ!無理矢理でもいいから濡らして!」

真姫「わ、わかったわよ…」ズルッ

真姫「…仕方ないわね。こういう時の十八番の、凛についてる妄想で…」コスコス

凛「り、凛も…かよちんと真姫ちゃんがシャム双生児状態で融合しちゃった妄想で…」コスコス

数分後…


モス凛「ぴぎゃー」

モス真姫「ヴぇえええええ」


凛「よし!生まれたにゃ!!」

真姫「…鳴き声が可愛くない…」

凛「言ってる場合じゃない!さ、真姫ちゃん!いい感じの薬をあのクリニックの残骸の中から拾ってきて!」

真姫「えぇ…」

凛「早くしないとゴルバチョフに世界がめちゃくちゃにされかねないにゃ!あっ!あそこのビルが…」

真姫「なっ!」

凛「…特に何にもなってないにゃ」

真姫「…こいつ」

凛「そうなるかもしれないんだから、はよ!はよはよ!!」

真姫「わかったわよー!えぇいっ…!」


真姫「これと…これと…あとこれも!」ゴソゴソ…


真姫「はい、持ってきたわよ!これでいいのね!?」

凛「おーよしよし、可愛いにゃー。…あ、サンクス」

凛「うん…、よし、これとこれとこれを組み合わせれば…」

凛「真姫ちゃん、ちょっと離れてて!」

真姫「え…?あ、うん…」

凛「さ、モス凛、モス真姫。これを食べるにゃ」


モス凛「ぴぎゅぅっ…モグモグ」

モス真姫「ヴぇえええええ…モグモグ」


凛「うおぉぉぉっ!!」ダダダッ

真姫「えぇっ!!全速力でこっちに向かってくる!?」

凛「何が起こるかまだ正確には把握してないから怖いにゃ!!もしかしたら最悪核爆発を起こして…」

真姫「怖っ!!」


モス凛「ぴ、ぴぎゃっ…!!」ムクムクムクッ…

モス真姫「ヴぇ、ヴぇヴヴぇヴぇえええええええええええええええええ…!!」ムクムクムクッ…


真姫「お、おぉ…!大きくなってるわ…」

凛「モスちんほど巨大じゃないけど…これならそれぞれ背中に乗ることは可能そうだね」

真姫「言うことは聞くの?」

凛「お薬の効果で従順になってるはずだから多分大丈夫…にゃ」

凛「モス凛!モス真姫!背中に乗せて欲しいにゃ!」


モス凛「ぴぎゃー」ササッ

モス真姫「ヴぇ」ササッ


真姫「背中を差し出してくれたわ…。よかった、平気そうね」

凛「よーし、じゃあこのまま二匹の背中に乗って、ゴルちんを追いかけるのにゃ!!」

真姫「ふえっ…いざ乗るとなるとちょっと怖いわね…」

凛「もう今はこれしか方法がないにゃ…!贅沢言ってられないよ!」

真姫「あ、股のところがモフモフで擦れて気持ちいい…」

凛「感じてないで行くよ!さぁモス凛、ゴルバチョフの後を追って欲しいにゃ!」

真姫「追う、っていうけど、どうやって追うのよ…?何か宛でもあるの?」

凛「それに関しては問題ないよ!時空を超えて嗅覚に強くなるお薬も飲ませておいたから!」

凛「これで真姫ちゃんと凛のアレぢるの匂いを嗅ぎ分けられれば追いつけるはずにゃ!」

真姫「あぁ…、そうなんだ…。それならいいけど…」

凛「よっしゃ、じゃあモス凛…、お願い!!」

真姫「モス真姫も行けるわね?掴まってるから…早く行って!」

凛「レディゴーにゃ!…おわっ!!?」バヒュンッ!!

真姫「え、思ってたより早っ…うひぃっ!!?」バヒュンッ!!



時空の狭間


真姫「うぅ…ドラ○もんのタイムマシン移動中の風景が続く…うぇっ…酔うわ…」

凛「も、もう少し…もう少しのはずにゃ…!」

凛「あっ…!景色が見えてきたにゃ…!綺麗な月がっ…!!」

真姫「過去の時間に…、はじき出されるっ…!!」


ヒュンッ ヒュンッ




ヒュオォォォッ…


凛「こ、ここは…ひっ!!高いにゃ!!」

真姫「どうやら東京の上空ね…。いつの夜なのかしら…」

凛「わ、わかんないけど…」

真姫「…っ!凛、前!!」

凛「えっ…」



モスちん「ぎゅううぅぅぅぅぅぅっ!!!」バヒュゥゥッ!!



凛「ひっ!ゴルバチョフ!!ちょっ…!こっち来るっ!?」

真姫「モス凛!避けてっ!」

モス凛「ぴぎゃぁっ!」ササッ


バヒュオンッ!!


凛「ひぃっ!!間一髪…!ぶつかってたら即お陀仏だよぉぉっ…!」

真姫「どうやらあっちはやる気マンマンのようね…。着いていきなりだけど、覚悟しなさい、凛っ!」

凛「わ、わかったにゃ…!多少痛めつけてもゴルバチョフを止めないと…!」

真姫「東京の街が、危ないっ…!!」

ラブライブ本戦会場


穂乃果「モスラ…?」


にこ「モス…なにそれ?」

穂乃果「蛾の怪獣だよ!知らない!?」

凛「あ!知ってるにゃ!かよちんの顔でしょ!」

花陽「私あんな顔じゃないって!いつまで引っ張るの!?」

海未「し、しかし…モスラってあんな顔でしたっけ」

ことり「あれは鎧モスラの顔だね。しかも鎧を外した鎧モスラ・エターナルっていう形態の」

絵里「なんでそんな詳しいの!?」

希「というか、この距離でよく顔の判別がつくね…」

真姫「それはいいとして…どうして私たちをモチーフにしてるの…?」

穂乃果「誰かが作成依頼した…とか?」

海未「するわけ無いでしょうあんなもの…」

にこ「というか、この状況どうするのよ…。会場全体停電になっちゃうし…」

ことり「せっかくモブの三人が新しい衣装届けてくれたのにね…」

絵里「あなた彼女たちのことそんな呼び方してたの…?」

花陽「このままだと、せっかくのアンコールライブが台無しだよ…」

一同「…」

穂乃果「と、とにかく今はっ…」



バチバチバチィィッ!!



穂乃果「ひぃっ!」


キャーッ!! チカイ!?


希「ちょっ…、雷が近くに落ちて…」

凛「あのでっかいかよちんが雷を放ってるんだにゃ!!」

ことり「えぇっ!怖っ…!」


キャァァァァァッ!!


海未「ま、マズいですね…。会場が慌ただしく…!!」

真姫「これじゃ雷がこっちに降ってこなくても、混乱で大怪我が起こるかも…」

花陽「えぇっ!?どどど、どうしよぉぉっ…!!」


穂乃果「…っ」

東京上空


モスちん「ぎゅうぅぅぅぅっ!!!!」


バチバチバチィィッ!!


真姫「くおぉっ!!避けてっ!!」

モス真姫「ヴぇぇっ!」ササッ

凛「あ、あの雷発射が厄介すぎる…!」

真姫「モスちん!落ち着いて!!私たちがわからないの?!」


モスちん「ぎゅぅぅっ!!」


凛「ダメにゃ…!声が届いてない…」

真姫「大体こんな上空で高速戦闘してたらっ…!聞こえる音も聞こえない…かっ…!」


モスちん「ぎゅぅぅぅぅぅっ!!」ブンッ!!


バヒュゥゥゥッ!!


真姫「こ、今度は何っ!!?」

凛「台風にゃ!!か、風がっ…!!」



ブフォォォォッ!!



真姫「や、ヤバっ…!!振り落とされっ…!!」

モス真姫「ヴぇぇぇぇっ…!!」

凛「で、でも風ならっ…!モス凛、モス真姫っ…!ば、バリアを展開するにゃ!!」

モス凛「ぴぎゃっ!!」ブオンッ

モス真姫「ヴぇぇっ!!」ブオンッ

真姫「おぉっ…風が止んだ…?」

凛「これは風を遮断するバリアにゃ。そういうお薬を飲ませておいたの」

凛「これならどんな高速戦闘しても風が凛たちの顔面に降り注ぐことはないよ!」

真姫「便利な能力ね…。他に特殊技能はないの?」

凛「ゴルバチョフを攻撃するための能力ならひとつだけ…」

真姫「それで攻撃してモスちんを鎮めさせましょう!」

凛「う、うんっ!モス凛、モス真姫、お願いにゃ!」

凛「おでこレーザー!!」


モス凛「ぴぎゃあっ!」バシュゥウッ

モス真姫「んヴぇぇっ!」バシュゥウッ


モスちん「ぎゅぅっ…!?」


ドガァァンッ!!

モスちん「ぎゅぅぅぅっ!!」



凛「よ、よしっ!当たったにゃ!!」

真姫「これで、どうなるか…」

シュゥゥゥッ…


凛「ゴルバチョフ…?」

真姫「…」



モスちん「ぎゅぅぅぅっ…!!」


凛「き、効いてないっ…!」

真姫「…やっぱり」

凛「しかもめっちゃ怒ってるにゃ!!」



モスちん「ぎゅぅぅっ!!ぎゅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!」


バヒュウゥゥゥッ…!!


凛「…?風を一箇所に集め始めたにゃ…」

真姫「こちらを風で攻撃するわけでもないし…何を…」

真姫「はっ!ま、まさか…!」

凛「真姫ちゃん…、何かわかるの!?」

真姫「に、逃げるのよ凛っ!!なるべく遠くへっ!」

真姫「『アレ』が…、来るっ!!」



バヒュゥゥゥッ…!!

モスちん「ぎゅぅぅぅっ…!!」



真姫「固めた風を発射台のようにして相手に突進する合体技…いえ、もう一体でできる必殺技…」

真姫「その名もっ…」



モスちん「ぎゅぅぅぅぅっ!!!」


ズギュゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!


真姫「『グレートグレートグレート』!!凛っ!!」



凛「ひっ!モス凛っ!避けっ…」

モス凛「ぴっ…」


ズバッシャァァァッ!!


モス凛「ぴぎゅぅぅぅうっ!!」

凛「も、モス凛っ!!」


真姫「ま、マズっ…!モス凛がかすった…!」

真姫「凛の体勢が崩れて…」


凛「お、落ちっ…」

凛「落ちるにゃあぁぁぁぁぁっ!!!!」

ラブライブ本戦会場


『…だいま復旧に…が…っておりま…。…様方は…のま……ちくだ…い…』


キャアアアァァッ!! ウワァァァッ!!


絵里「ぱ、パニックよ…!」

にこ「館内放送もほとんど聞こえてない…!」

ことり「これじゃ、最高のライブにするつもりが…」

凛「みんな怪我しちゃうよおぉぉっ…!!」

穂乃果「…っ」ダッ

海未「ほ、ほのかっ…!?」

真姫「ちょっ…、どうするつもり!?」



穂乃果「はぁっ…はぁっ…!!みんなっ!落ち着いて!!おちついてくださいっ!!」

穂乃果「慌てると怪我につながりますから!お願い、冷静になって!!冷静にっ!!」


ワァァァァァァァァッ!!


希「穂乃果ちゃんの声も、聞こえてない…」

花陽「もう、やめてよぉぉ…。嫌だよおぉっ…!!う、うぅっ…!!」

にこ「…どうして、こんなことにっ…」

絵里「本当なら、今、ライブをしているところなのに…」


穂乃果「…」

穂乃果「…ライブ」

穂乃果「っそうだ!!それだっ…!!」


穂乃果「すぅっ…!!」


穂乃果「  だってー可能性感じたんだ そうだーススメー  」


海未「…穂乃果?」

ことり「穂乃果ちゃん…?」


穂乃果「ほら、みんなも!」


穂乃果「  だってー可能性感じたんだ そうだーススメー  」


絵里「…っ!うんっ!!」

絵里「 だってー可能性感じたんだ そうだーススメー  」

にこ「私だって…!」

にこ「  だってー可能性感じたんだ そうだーススメー  」

希「うちもっ!」

希「  だってー可能性感じたんだ そうだーススメー  」


凛「絵里ちゃんたちまで…」

穂乃果「続きは、みんなでっ…!いくよっ、せーのっ!!」



「  後悔したくない目の前に 僕らの道があるー…  」

シーン…


穂乃果「はぁっ…はぁっ…」

穂乃果「へへ、今の私たち…」

穂乃果「…すっごい、目立ってる」


真姫「会場が、静まり返った…」

にこ「私たちの、歌で…」



穂乃果「…んんっ!」

穂乃果「お願いします、聞いてください!」

穂乃果「慌てないで!慌てるともっと大変な事故が起こるかもしれません!」

穂乃果「照明が落ちて辺りが暗い今の状態だと、もっと危ないです!だからっ…」

穂乃果「明るくなるまで、ここでじっとしてください!お願いしますっ!!」

海未「…っ、お願いします!」

ことり「お願いしますっ!!」

「お願いします!!」


シーン…



「…じゃあ明るくなるまで、どうやって間を持たせてくれるのかしら?」

「高坂穂乃果さん?」



穂乃果「えっ…」

にこ「この声…」

ことり「…泥棒鳥」



ツバサ「ふふっ…」

英玲奈「…何いきなり大声出してるの、このバカ」

あんじゅ「んふっ、大・胆っ♪」



穂乃果「え、えっと…じゃあ…」

穂乃果「う、歌いますっ!!アカペラで!!」

穂乃果「…にこちゃんが!」

にこ「わ、私っ!?」

希「ご指名やん。さ、行ってき」

にこ「く、うぅっ…!いいわ!くじ引きの時の汚名挽回よ!」

絵里「…返上ね」

にこ「どっちでもいいの!やってやるもの!」

にこ「ぅ、…ぅ、歌いますっ!!」

にこ「すぅっ…」

にこ「にこぷり、にこにこ♪にこぷり、にこにこ♪」



真姫「…なんでよりにもよって、その曲…」

東京上空


真姫「はぁっ…、はぁっ…」

凛「あ、っぶねぇにゃっ…!モス真姫が助けてくれなかったら…し、死んでた…」

真姫「まっ…私たちは何回も死んでるんだけど…ね」

凛「落下して粉々だけは避けたいにゃ…」


モスちん「ぎゅぅぅっ…!!」


凛「うぅっ…!モス凛、モス真姫!もっかい、レーザー…!」

真姫「待って!ダメ!!」

凛「え、どして…」

真姫「…あのレーザーじゃダメージを与えられない。ただ闇雲にモスちんを刺激するだけよ」

凛「って言っても、攻撃手段はレーザーしかないよ?!他にも突進は出来るけど、凛たちが振り落とされるかも…」

真姫「…そう、よね…。そうなるとモスちんにダメージを与えるのは不可能と言っていいわ…」

真姫「他に、方法は…」

凛「うぅぅ…!どうしたらいいの…?」

真姫「…」

真姫「…ん?」

凛「ん、どうしたの?」

真姫「何か…聞こえない?」

凛「は?な、何が…?」

真姫「分からないけど…微かに、何かが…」

凛「こ、こんな上空で空飛んでるのに何も聞こえるはずないよ!」

真姫「…そうなんだけど、でも…」

ラブライブ本戦会場


にこ「ぷーりてぃがぁるっ!」


パチパチパチパチ…


にこ「あ、ありがとうございましたっ!」

穂乃果「まだ復旧には時間がかかりそうかな?」

ことり「じゃあ次私ー」

穂乃果「お、どうぞどうぞ!」

ことり「海未ちゃんも、ほら!」

海未「えぇっ!!?私もですか!?」

ことり「ちょうどいい曲があるでしょー。ろんりまいらー、ろんりまいはー♪」

海未「つ、つぼみじゃーないっ!」



穂乃果(それからも、私たちの静かなアンコールライブは続いた)

穂乃果(そこにはただ私たちの歌声と、サイリウムの揺れる光だけが存在していた)

穂乃果(でも、これは…)

穂乃果(私は、うぅん、私たちは確信していた)

穂乃果(これは、私たちのライブ)

穂乃果(前の私たちですら経験していない、初めての…私たちだけのライブ)

穂乃果(暗くて何も見えないけど、確かにそこにあるライブ)

穂乃果(今、本当の意味で私たちは)

穂乃果(…目立ってるんだ)




凛「とってもとってもミラクル!きっとねきっとね…」


ガコンッ


凛「わわっ…!つ、点いた!!」


『照明の復旧は完了しました。お騒がせして申し訳ありませんでした』



絵里「よかったー…、だれも、怪我しなくて済んで…」

花陽「うん…!歌のおかげ、だね…!」

にこ「そうよ!私のにこぷりがなかったら大変なことになってたかもだものね!」

希「うん…?あれ…?なんか…」

希「近づいて、きてない…?」

にこ「へっ…?」

東京上空


真姫「…やっぱり、聞こえる…!」

凛「だ、だから何がっ…」

真姫「今は…あなたの声よ!」

凛「え?そりゃ凛はここにいるんだから聞こえて当然…」

真姫「違う!あなたの歌がっ…」



ガコンッ



凛「にゃ?停電してたところに電気が…復旧したのかな?」

真姫「…あ!」

凛「あれ、あそこって…」

真姫「ラブライブ本戦の会場…!そっか、この日は…」

凛「ラブライブ本戦当日!?マジかにゃ…!」

真姫「つまり今あそこに…穂乃果たち、アネックス1号がいるってことよ!」

凛「ひえぇぇ~~…、なんてこったい」

真姫「だから耳の良い私には微かに歌声が聞こえていたのね。なるほど」

凛「いやいや…どんだけ耳いいの…」

真姫「…ぁ」

真姫「あ!!」

凛「うわぁっ!?急に叫んでなに!?」

真姫「そうよ!それよっ!!どうして気付かなかったのかしら!!」

凛「え、何が?」

真姫「モスちんに対抗する手段!」

凛「えっ、あるの!?」

真姫「うんっ!そう…!そうよ、これしかない!!モスラを鎮めるための方法といえば…」



真姫「歌よっ!」



凛「…歌?」

真姫「えぇ、モスラの映画は見たことあるでしょう?」

凛「ま、まぁ…ほんのちょっぴり」

真姫「そこで小美人、っていう小さい女性たちが歌ってるシーン、見覚えあるわよね?」

凛「え…あ、もしかして…!」

真姫「そう、彼女たちはモスラに話しかけているの。歌という方法で!」

真姫「それならモスラの性質を持つモスちんならきっと…歌で今の暴走を抑えられるわ!」

凛「な、なるほど!そうと決まれば早速…!凛たちでBeat in Angelを…!」

真姫「何言ってるの」

凛「にゃ?」

真姫「…歌を届けるなら、もっと適任がいるじゃない!」

真姫「ほら、ちょうどあそこに!全員、揃ってるんだから!」

凛「…あ!」

次回に続く いきなりこんな話で付いてこれてるか心配
こんなんでも楽しんでいただけてると幸いです ほなな

http://i.imgur.com/IKWBtoe.jpg

ちなみにモス凛とモス真姫の参考画像です
真姫が鎧モスラで凛がフェアリーモスラです
これに羽生えた状態で飛行してるって脳内保管しておいてね

今日中に終われますように… 再開します

ラブライブ本戦会場


にこ「う、うわぁぁぁぁぁっ!!」

絵里「も、モス…モスラが…!」

花陽「こっちに近づいてくる…!?!」


バサバサバサ…


凛「なんだオラー!やる気かにゃ!?」

穂乃果「ま、待って…。誰か乗ってる…」

ことり「あ、本当だ…」

真姫「…ん?あれって…」



真姫「…っと、予想通りね」

凛「このままじゃ判別付きにくいんじゃないかにゃ?」

真姫「そうね…じゃあこれで」ペタリンコ

真姫☆「ふふ、完璧」

凛☆「おーい、凛は悪い凛じゃないにゃー」



海未「ま、真姫と凛っ!?」

希「でもこっちにも真姫ちゃんと凛ちゃんはおるし…」

海未「フタリハフタゴダッタノデスネ」

真姫「ち、違うわよ!?思考がおかしくなってロボットっぽくなってるわよ海未!」

にこ「だけど、それだったらなんで真姫と凛が二人なのよ…」


凛☆「…っと、よしよし、モス凛とモス真姫はいい子だからちょっとの間おとなしくしててね」

真姫☆「えー、っと…」

真姫☆「お集まりの皆さんも色々と気になることはあるでしょうけど…」

真姫☆「…とりあえず今は…黙って話を聞いて欲しいの」

真姫☆「あの上空にいる、でっかいモスラかよちん…をなんとかするために」

穂乃果「…あ!」

穂乃果「思い、出した…!」

穂乃果「真姫ちゃんって…、真姫ちゃんだよね!?あの…未来から来た!」

一同「えっ!?」


真姫☆「…えぇ、そうよ。前も一度会ったことがあるわよね。穂乃果」


真姫「未来から来た…ってどういうことなのよ?」

穂乃果「前にも一度同じことがあったんだよ!えっと確か…」

穂乃果「あぁんもう説明めんどくさい!なんだかんだでススメ→トゥモロウなの!」

ことり「意味がわからないよ…」

凛☆「とにかく今は未来からやってきたってことだけ理解してくれればそれでいいのだにゃ」

絵里「…じゃあそれでいいとしましょう。肝心なのは…」

希「あの上空のでっかいの…何とかする、って話やんね?」

花陽「って…、やっぱりあれ、私なの!?モスラかよちんって…」

凛「かわいいにゃー!!」

にこ「いやぁ…趣味悪い…」

穂乃果「…どうやって何とかするの?」

真姫☆「それを説明したいのは山々なんだけど…」チラッ



モスちん「ぎゅうぅぅぅぅぅぅっ…!」



凛☆「…ここでちんちんたらたらしてたらモスちんを見失っちゃうかも」

真姫☆「そうね…。今はとにかく、このモス凛とモス真姫に乗って。話はそれからにしたいの」

真姫「ゲッ…、こ、これが私…!?」

凛「これが凛!かわいいにゃー!!」

海未「…どうでしょうか」

絵里「の、乗るったって…どう乗るの!?」

真姫☆「羽を水平に広げたら十分に11人は乗れるスペースがあるわ」

凛☆「さぁさぁ、快適でない空の旅へご招待にゃ」

ことり「お、落ちたら一巻の終わりだね…」

穂乃果「でも、やるしかないよ。私たちでないとダメだから、ここに来てくれたんだよね?」

真姫☆「えぇ、もちろん」

穂乃果「じゃあやろう!行くよ、みんな!」

希「ひぃ…大変なことになってきたね…」

バサバサ…



ヒ・フ・ミ「「「…」」」

ヒデコ「いまの、何…?」

フミコ「さぁ…」

ミカ「…が、頑張れ穂乃果ー!!」



ツバサ「高坂さん…」

ツバサ「…飛び立つ瞬間にパンツ見えたわ…ありがとう」

英玲奈「アホかお前」

あんじゅ「そもそも衣装だから見えてもいいパンツだと思うけどねー」

ツバサ「シット!!」





東京上空


花陽「はわわわわ…!!」

にこ「こ、これは穏やかじゃないわねぇぇ…!!」

凛「高いにゃぁぁ…!怖いにゃぁぁ…!」



モスちん「ぎゅぅぅぅぅぅぅうぅうっ…!」



真姫☆「凛、モスちんの様子は?」

凛☆「今はこっちの事は気にしてないみたいにゃ。テキトーにうろちょろしてる」

真姫☆「…そう。じゃあまだ時間に余裕はあるってことね」

真姫☆「なら今のうちに…あなたたちにこれからしてもらいたいことの説明をするわ」

海未「な、何をしろというのですか…私たちはあんな大きな怪物を相手取る力などありませんよ!?」

真姫☆「そんなこと、私だって百も承知よ。戦ってほしいわけじゃない」

真姫☆「あなたたちアネックス1号に…歌ってほしいの」

絵里「歌う…?」

希「ここで?」

真姫☆「そう、ここで!」

真姫「…なんで?」

真姫☆「その説明をこれから…」

真姫☆「…凛がするわ!」

凛☆「そう、凛が…って、えぇぇっ!?凛がするの!?なんでやねん!」

真姫☆「めんどくさいからよ。さぁ、早くしろバカ」

凛☆「相変わらず暴虐非道だにゃ…。人を人だとも思ってないにゃ…」

にこ「真姫ってそんなキャラだったの…?」

真姫「わ、私…そんなことないと思うけど」

真姫☆「覚悟しておきなさい。将来こうなるから」

凛☆「えーっと、ではかいつまんで説明するにゃ…。実は…」

凛☆「…ということなのです」


絵里「ま、まさか今までのことを全てモニターされていたとは…」

花陽「今も無数の小型カメラがそこかしこを飛び回ってるって本当…!?」

真姫☆「えぇ、マジよ。今もこの映像データは私の家のHDに保存されているわ」

にこ「なんて大容量なの…!?」

真姫「え、驚くとこそこ…?むしろ私の家にそんなパソコンが置いてた事の方が驚きなんだけど」

ことり「それでもって、あのモスラかよちゃんを鎮める方法が歌…。映画に準拠してるね」

凛「でもそもそもモスラが暴れだす事例なんて東宝史上一度もなかったと思うにゃ。…たぶん」

希「歌が実際に通用するかどうかはわからない…の違う?」

真姫☆「痛いところをつくわね…。確かにそうかもしれないわ」

真姫☆「けど、あのモスちんがモスラの特性を色濃く持っていることは確かなの」

真姫☆「歌による問いかけなら、普通の手段より効果が強いと判断したわ」

真姫☆「そもそも、もう他にできる方法がないのも事実なんだけどね」

穂乃果「…そっか」

海未「しかし歌うといっても…何を歌えと?」

ことり「もすらーや、もすらー…って歌えばいいのかな?」

絵里「えぇ…聞いたことはあるけど歌詞とか全然知らないわよ、私…」

希「うちも最初の一節しかわかんないわ。はにゃへへーんにゃ、ひんどんむー…って歌っていいなら歌うけど」

凛☆「確かにモスちんはモスラだけど、でも同時にかよちんでもあるの!」

凛☆「だったらきっとμ's…ひいてはアネックス1号の曲で語りかければ、効果はあると思うんだ!」

花陽「な、なるほど…私だもんね…」

穂乃果「うん、大体わかったよ。じゃあみんなで大声で歌おう!」

凛「歌うにゃー!」

にこ「よ、よしっ…!ここまできたらやってやるわ…!!」

穂乃果「さぁ、準備して!歌うのは…」

海未「ま、待ってください」

穂乃果「ほぇ?」

海未「ここで歌うなんて無茶です!」

凛☆「こんなところまで来て怖気づいたにゃ!?それだから海未ちゃんは…」

海未「そうではありません!」

海未「そうではなくて…」



海未「…どうやってここから、あのモスちんまで歌声を届かせるというのですか?」

凛「…にゃ?普通に歌えばいいんじゃないの?」

絵里「海未の言うとおりよ。こっちもあっちも高速飛行しているっていうのに、マイクもスピーカーもない状態で歌ったところで…」

真姫「風にかき消されて、到底あっちにまで声は届かない、…わね」

凛☆「それに関してはバッチこい!にゃ!」

ことり「え、なんとかなるの?」

凛☆「このモス凛とモス真姫を甘く見てもらったら困るにゃー。こんなこともあろうかと対策は万全なんだよ!」

凛「おぉ!さすが凛!天才にゃ!」

凛☆「いい?声って言うのは空気の振動により伝わるんだよ」

凛☆「その振動をそのまま伝えられれば、マイクもスピーカーもなくてもはっきりと伝わるんだよね」

希「それはわかるけど…肝心なのはどうやってそれをやるかやん?」

凛☆「おっと、話は最後まで聞くにゃ!このモス凛&モス真姫には、風を操る力も備わっているのだ!」

凛☆「みんなが発した声を、そのまま風に乗せてゴル…モスちんにぶつけることだって可能にゃ!」

花陽「そんなことできるの!?」

凛☆「もちろん!使い方によってはアンテナ方式で声の振動を増幅させることだって…」

真姫☆「…残念だけど、今はその方法は使えないわ」

凛☆「…へ?」

真姫☆「今のモスちんと私たちははひたすら飛び回ってる…。風で声を運ぼうとしたら指向性が必要よ」

真姫☆「こんな早く飛び回ってちゃ狙いが定まらないわ。聞こえたとしても途切れとぎれ…。到底歌や言葉としては伝わらないでしょうね」

凛☆「Oh…マジか…」

凛「なんだ。凛ってばクソバカじゃん。期待して損し痛ァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!」

凛☆「例え過去の自分だろうと容赦しないのが凛のいいところにゃ」

凛「お、おごぉ…。久々過ぎて痛さ倍増にゃ…」

海未「し、しかし…その方法が使用できないとするならば、他にどうすれば良いのですか…」

凛☆「え、えっと…それはほら、真姫ちゃんならいい手段を考えてるんだよね?もちろん」

真姫☆「…」

凛☆「ま、真姫ちゅぁん?」

真姫☆「…か、考えてなかった」

一同「えぇっ!!?」

真姫☆「声を届ける方法とかすっかり抜け落ちていたわ…!そ、そうよね…。普通は聞こえないわよね…」

真姫「この私…想像以上にアホね…」

ことり「じゃあここに来た意味ないじゃん!ただいたずらに高所恐怖症にトラウマ与えただけじゃん!」

にこ「そうよ!私なんかすっかりチビっちゃってんのよ!?パンツに黄色いシミつけた責任はとってもらうからね!?」

真姫☆「そ、それはもちろん…後で私が責任をもって舐めとらせて…」

海未「こんな時に何変態チックなことを言ってるんですか!?私でもドン引きですよ!!」

絵里「こ、今度はこっちが大パニックよ…」

穂乃果「え、えっと…今度はどうすれば…どうすれば…」

花陽「な、何か大きなスピーカーがあればいいのに…」

希「どこにそんなのあるって言うん!?」

凛☆「そうにゃそうにゃ!しかもモスちんは飛び回ってるんだよ!?スピーカーも飛び回ってくれないと声が届かないよ!」

花陽「そ、そうだよね…。そんなスピーカーあるわけ…」


真姫「…あるわ」

一同「…え?」

真姫「ある…。とっておきのスピーカーが…ここにはあるじゃない!!」

凛☆「ここで一部間違いがあったことをお詫び申し上げますにゃ」

真姫☆「↑のレスで急にうろ世界の私が天性の閃きを発揮したように見えるけど…」

真姫☆「下から3行部分は『真姫』ではなく『真姫☆』の発言よ」

凛☆「別にこの世界の真姫ちゃんが閃いてもいいんだけど、さすがにこの閃きに関してだけはどうしようもないにゃ」

真姫☆「まぁそんなわけで、訂正してお詫び申し上げるわ。メンゴメンゴ」

凛☆「謝る気ゼロだにゃ…。えー、それでは引き続き、うろライブをお楽しみくださいにゃ」

凛☆「おぉ!真姫ちゃんでなく、真姫☆ちゃんが何か閃いたようだにゃ!」

真姫「な、何を閃いたというの!?私ではなく未来からやってきたとか言う方の私!」

海未「訂正がしつこすぎますよ…」

穂乃果「あるって…どこにスピーカーがあるの?」

真姫☆「ここよ!」バッ

希「…?腕をバッて開いてどないしたん?」

絵里「ま、まさかこの世界の空気が全ての声の振動を運び出す一種のスピーカーとかいう場に似つかわしくないポエミーな発想…?!」

にこ「もしくはそのすこし控えめな可愛らしいおっぱいが実は持ち運び可能なスピーカーに改造されているとか…!」

真姫☆「んなわけあるかぁ!!違うわ!」

花陽「じゃあ一体何を指して…」

真姫☆「だから…、この街!そして、この世界!!」

ことり「ハァ?」

凛「想像以上に意味不明にゃ」

真姫☆「…せ、説明が足りなかったわね」

真姫☆「私が言っているのは…、この日本の…いえ、世界中のあらゆる街にあるスピーカー…」

真姫☆「…そして、街頭モニター。デジタル・サイネージのことよ」

希「ハッ…!まさか動き出したというの…。魔の兵器、『デジタル・サイネージ』が…」

真姫☆「あぁもうめんどくせぇ!UTXにドカーンって置いてあるでっかいテレビのことよ!!」

絵里「そ、それはわかるけど…それがどうしたというの…?」

真姫☆「ふっ…、この日本には既にほとんどの街中にそういった巨大なスピーカーを内蔵した巨大なテレビが巨大に設置されているの」

穂乃果「う、うん…。それで?」

真姫☆「もし、このテレビを…そしてスピーカーを…」

真姫☆「…全世界、同時にジャックできれば」


一同「!!?」


真姫☆「世界中、どこに行っても、あなたたちの声が届く、ってこと」

真姫☆「例え、空を飛んでいようともね」

海未「な、何を…何をバカなことを言っているんですか!?」

凛☆「そうだよ!このアホ!バカ!トンチンカン!ヘソがセクシー!!」

真姫☆「黙りなさい。私の神なる発想に間違いはないわ」

凛☆「じゃあ質問させてもらうけど!そのジャックとやらはどうするつもりなの?!」

凛☆「そもそもジャックして何を流そうっていうの!?真姫ちゃんの秘蔵エロDVDですか!?」

にこ「え、そんなん持ってるの…?」

真姫☆「…持ってないわ。何言ってんのバカ」コツンッ

凛☆「い、いてえ…も、持ってるくせにぃ…」ボソッ

真姫☆「流すものも、ジャックするのも、…あなたが管理してるんじゃない」

凛☆「…へ?」

凛☆「ぁ…あぁーっ!!そ、そっか!!」

凛☆「アネックス1号の動向を逐一監視するための小型飛行カメラ!!」

凛☆「アレなら…!アレの電波を世界の映像機器に送ってしまえば…!!」

真姫☆「…全世界、同時生中継の出来上がりってことよ」

ことり「そ、そんな大それたことが…」

海未「できるというのですか!?」

凛☆「できる!凛のビックリドッキリメカに不可能はないにゃ!」

凛☆「ただ、電波の乗っ取り準備にすこし時間がかかるにゃ…。10分くらい」パソコンササッ

真姫「充分早すぎるくらいね…」

凛☆「この方法ならモスちんに確実に歌を聴かせることができるにゃ…!」カタカタカタ…

凛☆「みんなはその間に歌を歌う準備をしてて!」カタカタカタ…

凛「うわっ、凛タイピング早っ…。これがホントに未来の凛…?」

真姫☆「人は急速に成長するものなのよ」

にこ「う、歌の準備ったって…。は、発声練習とか…?」

真姫☆「…それでもいいけど、でも…」

穂乃果「違うよ、にこちゃん」

にこ「えっ…」

真姫☆「…」

穂乃果「さっきの話、聞いてた?」

穂乃果「…全世界、同時生中継だって」

にこ「…も、もしかして、あなた…」

穂乃果「これって…これって…!」

穂乃果「本当に、私たちの声が、全世界に届くってことだよ!」

穂乃果「声だけじゃない、姿が、歌が、踊りが…ライブが!」

穂乃果「みんながふと目をを向けた先には、私たちがいるんだよ!」

穂乃果「偶然じゃなく、今度は必然的に!!」

希「え、ってことはつまり…」

絵里「ライブをするの!?歌を歌うだけじゃなくて!?」

穂乃果「もちろんっ!!全世界の人たちに見てもらえる、最初で最後のチャンスなんだもん!!」

花陽「ど、どこで!?今からライブ出来る場所なんて…」

穂乃果「ふふ、それは…ここでだよ!」

穂乃果「この子…モス凛ちゃんとモス真姫ちゃんたちが広げた羽の上…」

穂乃果「目一杯広げたら、ちょうどラブライブ会場のステージと同じくらいの大きさにならない?」

凛「ほ、穂乃果ちゃん、それ正気…!?」

穂乃果「ホンキもホンキ!マジだよ!」

穂乃果「空中をモスラ二匹に乗りながら、高速で飛行してライブをするアイドル…!」

穂乃果「それを全国同時生中継なんて、未だ誰も成し遂げたことのない偉業だよ!」

海未「い、偉業と言ってしまっていいのですかそれ…」

穂乃果「やろう!ここで…、今、ここで!!」

穂乃果「最っ高に目立つ、私たちの…私たちだけのライブ!!」

モスちん「ぎゅぅぅぅぅっ…!!ぎゅううぅぅっ!!」


バチバチバチィッ!!



真姫☆「…っ!つ、ついにモスちんが暴れ始めたわ!」

絵里「ほ、本当にやるつもりなのね!?穂乃果っ!」

穂乃果「やるよ!私…やるっ!!」

穂乃果「やるったら、やるっ!!」

絵里「だったらもうっ…!」

にこ「止める理由はないわねっ!!」

希「穂乃果ちゃんがやるって言ったら、もう聞かないもんね!」

凛「よぉしっ!!全力でやってやるにゃぁっ!!」

花陽「全世界っ…!私たち、すごいことやろうとしてる…!」

真姫「こんなの、ありえない…!」

ことり「そのありえないを、実現しちゃうのが…穂乃果ちゃんのすごいところなんだよ!」

海未「さぁ、連れて行ってください!私達を…まだ誰も見たことのない高みへ!」

穂乃果「うんっ!!」



凛☆「…もう少し…もう少し…!」



モスちん「ぎゅううぅぅぅっ!!!」


バチバチバチッ!!



穂乃果「…うっ」


真姫☆「…準備はいいわね、みんな。小型カメラは無数に私たちの周りを取り囲んでる」

真姫☆「風もモス凛とモス真姫の力で遮断されてる。広さも充分…」

真姫☆「いつもと同じようにやれば、成功するわ」


穂乃果「…緊張する、するけど…」

穂乃果「高鳴る!胸が…、全身が!」

穂乃果「始まるっ…!これが本当に本当の…!」

穂乃果「最初で最後の、私たちのライブなんだっ…!」



凛☆「よし…、繋がったにゃ…!」

凛☆「音楽はこっちに任せて!穂乃果ちゃんの流して欲しいタイミングで流すから!」

凛☆「行くよ…電波ジャックまで…5、4、3、2、1…」



凛☆「今っ!」

指の限界にゃ もうちょっとだけ続くんじゃ
次回ライブ編 さすがに次で終わりだよ! ほなな

昨日は路上で徹夜してたので書けませんでした 眠いけどがんがる
もしの方の展開を思いついて最高にテンション上がってるのでさすがになんとか今日12.5話は完結させたい
でも思いついてるの9話以降なんだよなぁ… 8話ェ… じゃ、やっていきます

全世界の街頭モニターに今…

アネックス1号が映し出された。



ざわっ…!!



花陽「き、聞こえるっ…!ここからでも、みんなのざわめきが…街が騒然となってるのが…!」

凛「しーっ!かよちん、もう映ってるんだからあんまり大きな声で喋っちゃダメにゃー!」

真姫「…あんたが一番大きいって」



穂乃果「えー…っと、も、もう喋っていいんだよね…?」

穂乃果「ん、ごほんっ…」

穂乃果「えと、すみません!突然でびっくりされてるかもしれませんけど…」

穂乃果「と、とりあえずまずは、自己紹介させてください!!」


…テクダサイ!!


穂乃果「おぉ、1拍遅れて声が聞こえる…」

穂乃果「…っと、わ、私たち、東京の音ノ木坂学院という学校のスクールアイドル、アネックス1号といいます!」

穂乃果「今、この映像は…えっと、なんだっけ…ライデン?」


真姫☆「…電波ジャックされてるの」


穂乃果「そ、そう!電波ジャックさせてもらってます!全世界、同時に!」

穂乃果「だ、だから日本語がわからない人たちのところにも流れてるかもですけど…。えっと、な、なんかごめんなさい!!」

穂乃果「これにはすごーく、ものすごーっく、深い理由があるんですけど…一旦それは置いておいて…」

穂乃果「こ、混乱しているかもしれませんが、とにかくっ…!」

穂乃果「今から、ライブします!歌とダンスします!」

穂乃果「言葉がわからなくても、状況が飲み込めなくても…ほんの少しでもいいから」

穂乃果「聞いてください!私たちの歌!」



ざわざわ… ざわざわ…



穂乃果「…行くよ、みんな。準備はいい?」

一同「…」コクリ

穂乃果「オッケー。…じゃあ、歌います」

穂乃果「聞いてください!曲はっ…アネックス1号で…!」

穂乃果「僕らは今の中で!」



凛☆「よーし、ミュージック…スタートにゃ!」ポチッ


~♪




モスちん「ぎゅううぅっ!!…ぎゅ?」

~♪


穂乃果「…すぅっ」


ことほのうみ「  真っ直ぐな思いが みんなを結ぶ  」

ことほのうみ「  本気でも不器用 ぶつかり合う…  」


穂乃果「こっこっろっ!」


まきりんぱな「  それでも見たいよ 大きな夢は  」

まきりんぱな「  ここにあるよ 始まったばかり  」



モスちん「ぎゅっ…、ぎゅぅぅぅっ!!?」



真姫☆「っ…!モスちんが反応してる…!」

凛☆「歌に込められた思いに心揺らいでるんだにゃ…!」



ことり「わかってる~♪」

にこのぞえり「  楽しいだけじゃない 試されるだろう  」

凛「わかってるー!」

にこのぞえり「  だってその苦しさもミライ  」

花陽「いくんだよぉっ!」

ことほのうみ「  集まったら強い 自分になってくよ  」

真姫「きっとね!」

にこのぞえり「  変わり続けて  」

海未「We'll be star!!」



「  それぞれが好きなことで頑張れるなら  」

穂乃果「あーたらしいっ!」

一同「ばーしょがっ!」

「  ゴールだね  」

「  それぞれの好きなことを信じていれば  」

穂乃果「とーきめーきをっ!」

一同「抱ーいーてっ!」

「  進めるだろう  」


「  恐がる癖は捨てちゃえ とびきりの笑顔で  」


「  跳んで跳んで高く  」


「  僕らは今のなかで  」

穂乃果(届けっ…!私たちの思い…!!)

穂乃果(世界の全ての人たちに、私たちだけの歌を、ダンスをっ…!!)

穂乃果(響けっ!響けっ!!)



穂乃果「響けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」





モスちん「ぎゅうぅぅっ!!」ヒュヒュンッ!!



凛☆「モスちんっ、歌から逃げるように飛び回ってるにゃ!」

真姫☆「無駄よっ!なぜならっ…!」



「  考えるだけより みんなで走ろう  」

「  明日は未完成 予想できないちから  」



ことり「すごいっ…!本当にどこに行っても、歌が聞こえる…!」

海未「今、この世界は…、わ、私たちの歌で染まっている…のですね…!」



モスちん「ぎゅぅぅっ…!ぎゅうぅぅっ…!」



真姫☆「モスちんが大人しくなってきた…!もう少し…!!」

凛☆「一気に畳み掛けるにゃぁっ!!」



「  振り返る暇なんてないね そんな気分さ  」

「  広がるよ 君と どこまでも  」

「  振り返る暇なんてないと感じているよ  」

「  刺激への 期待 盛り上がってく  」



絵里「熱いっ…!熱気が…下から熱気が伝わってくる…!!」

希「みんな、うちらの歌に魅了されてるっ!」

にこ「地球って最大級のホールで、50億人の観客を沸かせてるのよ!私たちっ…!!」



「  弱気な僕にさよなら 消さないで笑顔で  」

「  跳んで跳んで高く  」



穂乃果「僕らは今のっ…中をっ!!!」

ウオオォォォォォッ!!

ハイ!!ハイ!!ハイ!!


真姫「ま、街中からコールが…!」

凛「すごいよっ…!!凄すぎるにゃぁっ…!!」

花陽「夢、みたいっ…!夢じゃ、ないんだよねっ…!?」


穂乃果「…そう、夢じゃない」

穂乃果「夢だけど、夢じゃないんだっ…!」

穂乃果「届いた…!ずっとずっと願ってた、私たちの思い…!」

穂乃果「ラブライブ優勝という運命から、逃れることにっ…!!」

穂乃果「やった…!やったよ、みんなぁっ…!!」

海未「穂乃果っ…!」

ことり「穂乃果ちゃんっ…!」

穂乃果「…うぅんっ!まだ、まだ最後が残ってる…!」

穂乃果「ラストっ!最後まで気を抜かないで…!行くよっ!!」

一同「うんっ!!」


ことり「夢がおおきくっ…」



モスちん「ぎゅううううぅぅぅぅっ!!!」


バリバリバリィィィッ!!


ことり「きゃあぁっ!?」

絵里「な、何っ…!?大きな雷…!」

希「あの子、暴れてるやん…!逆効果やったん…?」


真姫☆「…いえ、効果は間違いなくあったはず…!」

凛☆「あ、そっか!モスちん、もしかして…」

凛☆「反抗期に入っちゃってるんだにゃ!だからこっちの言葉に耳を貸してくれないんだ!」

真姫☆「…メンドくさいわね、それだと…」


モスちん「ぎゅうぅぅぅっ!!!」バヒュゥゥゥゥッ!!


真姫☆「わっ!?また風っ…!?」

凛☆「ふふんっ、風ならモス凛&モス真姫の能力で無効…わぷっ!?」


にこ「ち、違うっ…!ただの強風じゃなくてこれはっ…あぶふっ!」

海未「猛吹雪っ!?」

花陽「雪が口の中に入って…!」

凛「これじゃ、まともに歌えないにゃぁぁっ…!」



モスちん「ぎゅ、ぎゅ、ぎゅううぅぅぅっ!!!」ギュオンッ!!



凛☆「あ!モスちんがフォルムチェンジした!?」

真姫☆「ま、まさかアイツ…!過去に逃げる気!?」

凛☆「しまった…、その手があったにゃ!」

バシュゥゥッ!!


真姫☆「マズっ…!モスちんに過去へ飛ばれちゃったわ!」

凛☆「い、一体いつに逃げちゃったにゃ!?」

真姫☆「モス凛、モス真姫!追える!?」

モス凛「ぴぎゃっ!」

モス真姫「んヴぇっ!!」

ギュオンッ!!


穂乃果「え、えっと…これからどうするの…!?」

真姫☆「…モスちんを追うわ。史上最大規模のライブは一旦終わりね」

穂乃果「ざ、残念だけど仕方ないか…。み、皆さん!ありがとうございましたっ!!」

凛☆「…うん、電波も切れたにゃ。よし、今から過去に飛ぶよ!」

凛☆「揺れが激しいから、ちょっとの間何かに捕まってて!」

花陽「お、落ちたりしないよねぇぇ…!?」

真姫☆「腕の力によるわ!さぁ、行けぇっ!」


バシュゥゥゥッ!!



凛「う、うわぁぁぁっ!!目が回るにゃぁぁぁぁっ!!」

にこ「ひぃぃぃぃっ!!」

希「うぷっ…、吐きそう…」

ことり「汚いからやめてぇぇぇぇっ…!」


真姫☆「み、見えてきたっ…!次は…」

凛☆「ま、真冬かにゃ?」

真姫☆「出るわよっ!」


バヒュゥゥッ!!


真姫「…っ、ここは…」

海未「あっ、あれを見てください!!」


モスちん「ぎゅうぅぅぅぅっ!!」バヒュゥゥゥゥゥゥッ!!


穂乃果「街に猛吹雪を…!」

真姫☆「…どうやら到着する時間が少しズレたみたいね…」

真姫☆「ほんの少しの間だけど、モスちんはこの街で暴れてたんだわ…!」

凛☆「ま、街中真っ白けにゃ!ここからじゃ街の様子も見えない…」

真姫☆「これじゃカメラは使えないわね…。まともに撮影できそうにないわ」

絵里「そ、それじゃ…どうすればっ…!!?」

穂乃果「…ぉぅ」

一同「えっ?」

穂乃果「歌おう!今度はもっと…熱い思いを込めて!」

穂乃果「あの子が反抗期で言うこと聞かないっていうのなら、ガツンと言ってあげないとダメだよ!」

穂乃果「愛を込めた、生の感情…!ラブでライブな言葉で、あの子を説得しよう!」

海未「ほ、穂乃果っ…!穂乃果がなんてたくましく見えるのでしょう…!」

ことり「これが…っ!成長、ってやつなんだね…!!」

希「見違えたやん、穂乃果ちゃんっ!!」

穂乃果「えへへへ…、そこまで褒められると照れるなぁ…」

にこ「で、でもぉっ!伝えるったってどうするのよ!カメラが使えないんじゃもう…」

真姫☆「…いえ、やってやりましょう。行けるわ」

花陽「え?行けるの?どうやって…」

凛「あ!そうだよ、この子達の…風で送るんだよ!声を!!」

凛☆「そのとおりにゃ!さすが凛!天才にゃ!」

真姫☆「この真っ白に澱んだ視界ならモスちんも高速飛行は難しいはずよ。なら指向性を持ってあの子に風を直撃させることができる!」

真姫☆「吹雪ごと弾き返して、あなたたちの熱い思いで、今度こそ猛省させてあげましょう!」

真姫「なるほどねっ…!面白いじゃない…!!」

絵里「いたずらっ子にはお仕置きしなくちゃね…!」

穂乃果「よしっ!今度こそ、最後の戦いだよっ!」


モスちん「ぎゅううぅぅっ!!ぎゅうぅぅぅぅぅっ!!」


バヒュゥゥゥゥッ!!



穂乃果「くっ…!すごい勢いの吹雪…!」

海未「ともすれば雪の勢いだけで倒れてしまいそうですっ…!」

ことり「ほ、穂乃果ちゃんっ…!」

穂乃果「みんなぁっ…!手をっ…、手をつなごうっ…!」

穂乃果「あの海岸で…、アネックス1号の終わりを告げた時みたいに…」

穂乃果「みんなの心を、一つにしようっ!」

にこ「…結構ずれてたけどね」

絵里「いいとこなんだから茶化さない」

穂乃果「さぁっ!ラストから再開だよっ!」

穂乃果「みんなの熱い思いを、一人一人…モスちんちゃんにぶつけよう!!」

一同「うんっ!!」

穂乃果「行くよっ!せーっの!!」

ことり「夢が大きくなるほどぉぉぉぉぉっ!!」

にこ「試されるだろぉおおぉぉぉっ!!」



モスちん「んぎゅぅっ…!?ぎゅううぅぅっ!!」バヒュゥゥゥッ!!



モス凛「ぴぎゃあぁっ!!」バヒュゥゥゥッ!!

モス真姫「んヴぇええぇぇっ!!」バヒュゥゥゥゥッ!!


希「胸の熱さで乗り切れぇぇぇぇぇっ!!」

凛「僕の温度はぁぁっ!!」

海未「熱いからぁぁあっ!!」

花陽「熱すぎてぇぇっ!!!」

絵里「とまらないぃぃっ!!」



バヒュゥゥゥゥゥッ!!

グオオォォォォッ…!!



真姫☆「行けるっ…!どんどん押し切ってる…!」

凛☆「そのままいっけぇぇぇぇぇぇっ!!!」



真姫「無謀な賭けぇぇっ…!!」

穂乃果「勝ちにいこぉぉぉぉぉぉおぉおおおぉぉっ!!!!!!!」




バヒュオォォォンッ!!


モスちん「ぎゅぅぅっ!!?」


凛☆「やったっ!モスちんの体勢を崩したにゃ!」

真姫☆「ラスサビっ…!これで決めなさいっ!!」



穂乃果「すぅっ…!」


ことほのうみ「  それぞれが好きなことで頑張れるなら  」

まきりんぱな「  新しい  」

にこのぞえり「  場所が  」

ことほのうみ「 ゴールだね  」



モスちん「ぎゅ、ぎゅっ…。きゅうぅぅぅっ…!」



「  それぞれの好きなことを信じていれば  」

「  ときめきを 抱いて 進めるだろう  」

穂乃果「怖がる癖は捨てちゃえ!」


「  とびきりの笑顔で  」


穂乃果「『飛んで飛んで』高く!」


「  僕らと今を  」


穂乃果「弱気な僕にさよならっ!」


「  消さないで 笑顔で  」


穂乃果「飛んで飛んで高くっ!!」



「  僕らは今の中で  」



モスちん「ぎゅっ…、きゅぅぅぅっ…!」シュワワワワァ…



穂乃果「輝きを待ってた…!」ビシィィッ!!↑↑



ピカァァァァァ…!!




真姫☆「あんなに曇ってた空に…太陽が…」

凛☆「す、すごいにゃぁぁっ!やっぱり穂乃果ちゃんって天候を操れる系女子!?」


穂乃果「そんな…たまたま…」

海未「…いえ、その気になったら人間できないことはない…」

ことり「…だよね?」

穂乃果「…うん!そうだったね…!!」


モスちん「きゅぅぅっ…」


凛☆「あ、モスちんがちっちゃくなって帰ってきたにゃ」

真姫☆「今度から暴れるなんてしちゃダメよ?」

モスちん「きゅぅ」

凛☆「…元はといえば真姫ちゃんがヤケクソでモスちんに薬をがぶ飲みさせたのが悪いんじゃ…」

真姫☆「…それは忘れて」



花陽「ふふ、でも良かった…。これで解決、だね」

にこ「そうね。真っ白だった視界も太陽で温められて次第に晴れてきたし…」

真姫「…ん?これ、この街って…」

絵里「音ノ木坂、だわ…。私たち、ちょうど音ノ木坂学院の真上にいたのね…」

穂乃果「へーすごい偶然…。下の様子はどうなってるかな…って、あれ…あれって…」

穂乃果「みんなが、音ノ木坂の生徒たちが…雪かきしてる…。も、もしかして…」

ことり「この日、って…!!」

海未「ら、ラブライブ予選決勝の、当日…ですか!?」

真姫「あ、じゃああの急な勢いの吹雪って…!」

凛「モスちんのせいだったの!?」

希「そ、そうやったんか…」

花陽「お昼から晴れる予報だったはずが猛吹雪なんて、おかしいと思ってたんだ…」

にこ「裏にはこんな隠された事実があったとはね…」

穂乃果「あっ…、じゃあじゃあ…今から私たち、会場に向かって走りに行くところじゃない!?」

ことり「ホントだ!上から応援してあげよっか!!」

穂乃果「うん!それがっ…」

真姫☆「…それでいいの?」

一同「へ?」

真姫☆「上から、なんて、遠慮しなくていいじゃない」

真姫☆「どうせなら、直接声をかけてきたら?」

穂乃果「え、でも…」

真姫☆「心配しないで。私を誰だと思っているの」

真姫☆「なんでもできちゃう万能ドクター、ドクター西木野真姫よ」

真姫☆「こんなこともあろうかと…ごそごそ」

真姫☆「てれれてってれーん!人数分のフード付きコートを用意してたのよ!」

凛☆「都合良すぎだにゃ」

真姫☆「これを目深に被れば情報収集をしに怪我人を殴りに行く時だって安心。顔を見られることはないわ」

真姫☆「…未来のあなたたちから、過去のあなたたちへ、エールを送ってあげましょうよ」

穂乃果「真姫、ちゃん…」

穂乃果「うん!そうしよう!みんなっ…」

海未「穂乃果、着替えるのが遅いですよ」

凛「もうみんな羽織ってるにゃー!」

ことり「穂乃果ちゃん待ちだよー」

穂乃果「早っ!よ、よしっ…!私も…」セコセコ…

穂乃果「蒸着完了!オトノキのみんなに混じって私達を応援しに行こう!!」

一同「うんっ!!」

穂乃果「はぁっ…、はぁっ…!」タッタッタッ…



穂乃果「あ、見えてきた!」

真姫☆「言う言葉、考えてる?」

絵里「あ、ど、どうしようかしら…」

凛☆「気持ちさえ伝わればなんだって大丈夫にゃ!」

穂乃果「…うん、そうだね…!よしっ…!」




ことり「ちゅんちゅんっ!」



凛☆「いっくにゃー!!」



真姫☆「…ま、頑張ってね」



花陽「き、きっと大丈夫、ですっ…!」



穂乃果「ファイトだよっ!」



絵里「ハラショー!」



海未「あなたたちなら行けます!必ず!」



真姫「私たちも頑張ったんだから、あなたたちもね?」



にこ「アイドルの意地、見せなさいよっ!」



希「もうちょっとやよ!」



凛「…みんなが、待ってるから!」




穂乃果「…ふふっ」


穂乃果(まだ、何も見えなくて不安かも知れない)

穂乃果(運命に翻弄されて、涙するかもしれない)

穂乃果(だけど、心配しないで)

穂乃果(あなたたちは必ず、その手で栄光を掴むことが出来るから)

穂乃果(誰も成し遂げたことのない、最高のライブが…できたから)

穂乃果(だから、今は…)


穂乃果「…頑張れ、ファイトだよ」

生徒「…あれ?あなた…」

穂乃果「げっ…し、失礼しましたー!」



穂乃果「はぁっ…はぁっ…」

花陽「えへへ、貴重な体験…できたね」

にこ「あのあと意味不明な歌詞の歌を歌うんだと思うと…ちょっと不安だけどね」

凛「いい歌詞だと思うけどにゃー?」

海未「そう思ってくれるのはあなただけです。…私すら除いて」

真姫「さてと、用事も済んだことだし…帰りましょう」

絵里「…あ、けど…今帰ったらとんでもないことになってるんじゃ…」

ことり「そ、そうだよ!私たち、世界に対して大立ち回りを演じちゃったんだよ!?」

希「今頃大騒ぎ&大パニックになってるんやない…!?ど、どうしよ…」

穂乃果「ま、真姫ちゃん、凛ちゃん…。どうすればいいかな…」

真姫☆「…それに関しては問題ないわ」スチャッ

凛☆「そうにゃそうにゃ」スチャッ

にこ「あれ、あんたたち、いつの間に黒スーツに着替えて…」

絵里「しかも、なにそのサングラス…」

真姫☆「…元々、穂乃果、あなたが記憶を多少でも取り戻すのがイレギュラーなのだからね」

真姫☆「異常は、正常に戻さなければならない」

凛☆「はーい、この棒の先っちょをよーく見ててねー…」

真姫☆「…さよなら、アネックス1号」

真姫☆「あなたたちの伝説を知っているのは、私たちだけよ」



ピカァッ






うろライブ! 第12.5話

おわり

真姫「てなわけでメンインブラックな終わり方の12.5話だったわ」

凛「麺INブラック…!?黒マー油かにゃ?」

真姫「9話頃から張りに張り続けた伏線を一気に回収した回だったわね」

凛「もう何も残ってないっていうくらい残ってないにゃ」

真姫「今回で終わりにしてもいいくらいなんだけど…まぁ一応、最後までやりましょう」

凛「エピローグがあるのはいいことにゃ」

真姫「完全オリジナルな上にモスラ要素たっぷりだったけど面白かったかしら?」

凛「元々天候を操る何かを過去に飛ばす、くらいは予定してたんだけど…」

真姫「初詣の花陽モスラ顔発言からこうなるとは思ってなかったわ…」

真姫「だけど、個人的には最高に熱い展開を描けたんじゃないかと自負しているわね」

凛「別に真姫ちゃんが書いてるわけじゃないのに何を言ってるのかね」

真姫「悪い電波を受け取っただけよ。ジャックされたの」

凛「さいですか」

真姫「で、次回は…最終回ね」

凛「もう面倒だから忘却もナシ!めでたく大円団でまとめるにゃ!」

真姫「大金持ちの集団か何か…?大団円ね!」

凛「そうそう、それそれ!でももし!のあとだけどね!」

真姫「9話やら最終話の展開を思いついたのに未だに8話は思いついてないのよね…」

真姫「なるべく早めに更新するからそれまで待っててね」

凛「じゃ、今日の西木野☆星空シアターはここまで!」

真姫「うろ9話の穂乃果たちが駆けていくシーンにちゃんとみんなの台詞があるから見返してみてね」

真姫・凛「「まじ☆えんじぇー!!」」

遅くなってごめん 最近はお絵かきの方に傾倒しがちで
節操のない拙僧ですまない あんまり何も考えてないけど出来うる限りやっていくよ

真姫「今日はもしライブ!第8話ね」

凛「実に10日ぶりだよ…。こんなんじゃ読者離れていっちゃうにゃ」

真姫「専ブラの端っこの方に放置してくれると助かるわ」

凛「…で、前回ってどんな話だったっけ。久々過ぎてもう忘れちゃったよ」

真姫「読んでくれている人たちももしかしたらもう覚えてないかもしれないわね」

真姫「じゃあ前回のもしライブ!替わりに凛、あらすじを簡単に教えてあげて」

凛「え、なんで凛が…。別にいいけど」

凛「確かもしライブ!第7話はついにもし世界の真姫ちゃんが学校に戻ってきた話だったね」

凛「朝の学校でいきなり二人の真姫ちゃんが顔合わせ!二人で示し合わせることでなんとかその場を乗り切ったんだけど…」

凛「もし世界の真姫ちゃんに、代わりに家に帰って両親と話して欲しい、って頼まれちゃったんだよね」

凛「その夜、真姫ちゃんがもし世界の真姫ちゃんのママと色々話している間、入れ替わりで希ちゃんの家に行ったもし真姫ちゃんの方にも進展が」

凛「実はもし真姫ちゃんと希ちゃんは既に一度、春学期の時点で出会っていたんだにゃ!しかも、家にお泊りもしている!」

凛「希ちゃんとしてはカウンセリングをしたけども救えなかった生徒のうちのひとり…くらいにしか考えてなかったみたいだけど」

凛「でももし真姫ちゃんからしたら自分を救ってくれるかも知れない信頼できる人間、として深く認識されていて…」

凛「希ちゃんに独占欲…もしくは淡い恋心、のようなものを抱いてしまったのだ」

凛「暗い未来しか想像していなかったもし真姫ちゃんにも多少の希望が見えたことでちょっと浮き足立つんだけど…」

凛「その翌日、もし真姫ちゃんの心をひどく揺さぶる事態が!」

凛「一方その頃、謎の目眩により練習の断念を余儀なくされる真姫ちゃん」

凛「その夜に希ちゃんは、真姫ちゃんがいなくなったあとのこと、そしてもし真姫ちゃん自身のことも考えて、彼女をC☆cuteに勧誘しようと提案」

凛「真姫ちゃんも悩んだ末にそれを了承。翌日にみんなで相談して結論を出そうと考えたの」

凛「でも当のもし真姫ちゃんは決断を迫られて心揺れててそれどころじゃない。日が変わっても悩みは晴れなくて…」

凛「その日までに決めなければいけないのにあまりの緊張からか保健室で放課後までぐっすり!」

凛「これはやばいと焦った真姫ちゃんは希ちゃんに判断を仰ごうとアイドル応援部に向かうも…」

凛「アイドル応援部内ではもし真姫ちゃんをC☆cuteに迎え入れる案が可決されてみんな笑顔!」

凛「でもその希ちゃんとみんなの笑顔だけを覗き見て、もし真姫ちゃんはここに自分の入る余地はないと思い込んでしまう…」

凛「希ちゃんが自分のモノにならないなら…ともし真姫ちゃんは何かを決意した顔でアイドル応援部を去ってゆく…」

凛「その数十分後、C☆cuteのみんなに衝撃の知らせが…!」

凛「それは、もし真姫ちゃんがアイドル専攻の指導補佐に就任したという事実なのでした…!」

凛「こんな感じ?」

真姫「…長すぎるわ。簡単とはなんだったのか」

凛「でもまぁ大体の話の流れはこれだけ見てくれたらわかると思うにゃ。本編に使う体力をここで使うのもどうかと思うけどね!」

真姫「じゃ、そんなわけで始めていきましょうか…」

凛「もしライブ!第8話…スタートにゃ!」

衝撃の知らせがC☆cuteに舞い込んだ前日…


放課後 


スタスタスタ…

二年の先輩「…」

真姫「…」


真姫(…結構歩いてきたけど…どこまで連れて行くつもりなのかしら。この人…)

真姫(話があるのならすぐ近くでいいと思うんだけど…)

真姫(そんなことを考えていたら、二年の先輩はとある教室の前で立ち止まった)


二年の先輩「…ここよ」

真姫「ここって…」

真姫「音楽室…?」

二年の先輩「ここで待っている人がいるわ。入って」

真姫「え、あ…はい…」


真姫(この人の用事ってわけじゃなくて、呼び出すために遣われた人だったのね)

真姫(…なんでわざわざ第三者に呼び出しに行かせたのかしら)

真姫(そもそも私に用事って言われても、私は『私』じゃないのだから…何を言われてもわからない)

真姫(さすがに私自身に用事のある人間が、この学校にいるとも思えないし…)

真姫(…適当にあしらって帰ろう、もしくは『私』に責任を押し付ければいいことだ)

真姫(そう考えつつ、ドアを開ける)


ガチャッ


真姫「…あの、用事って…」

真姫「っ…!!」

真姫「あ、あなたは…!」


真姫(…窓から差し込む低い太陽の光を背に立つ女性の姿)

真姫(その姿を、私は見たことがある)

真姫(前も、ここで出会ったことがある)

真姫(あの時は、全くの反対側だったけれど)



絵里「…こんにちは、真姫」

真姫「えっ…、ぁ…」



真姫(夕焼けに染まる音楽室、一人ぼっちでピアノを弾いていて)

真姫(音楽室は許可がないと使えないと教えてくれた人)

真姫(そして…その後、私に…アイドルを教えてくれた人)

真姫(この学校で、もうひとり…信頼できると思える人)

真姫(名前は確か…絢瀬絵里、先輩だった)

絵里「ふふ…」

真姫「…ぁ、その…」


真姫(数少ない、私が覚えている人物の一人だったけど…)

真姫(…でも、彼女が私に用事があるとは限らない)

真姫(だって、春に数度顔を合わせて話し合った私よりも、秋から来た、明らかに目立つ『私』への用事である確率の方がはるかに高い)

真姫(だから私は、彼女にどう返事を返すべきか迷っていた)

真姫(『お久しぶりです』…?いえ、それよりも『お疲れ様です』かも…)

真姫(というよりも『私』と絢瀬先輩の関係性を私は全く知らないのだから、正しい返事が返せるわけ…)


絵里「真姫」

真姫「えっ…ふぁぁぁっ!!?」


真姫(考え事をしていて全く気づけなかった)

真姫(いつの間にか目と鼻の先に絢瀬先輩の顔が近づいていたということに)

真姫(私の頬に手を当て、艶やかな眼差しでこちらを舐めるように見てくる)

真姫(どうしていいか分からずに、蛇に睨まれた蛙の如く固まってしまう)


真姫「ぇ、あ、あの…!?その…!?」

絵里「…」スッ…

真姫「ふひゅぅっ!!」


真姫(唇に指を当てられる)

真姫(カサカサの私の唇を弾くように、ちょんっ、と)

真姫(ほんのり指の脂の味を感じた気がして、ますます縮こまる私)


真姫「あ、あのぉっ…!?」

絵里「…やっぱり」

真姫「は、はい…?」

絵里「やっぱりあなたは…」

真姫「ぇ…?」


真姫(得心がいった、とのように顎に手を当てて思慮を巡らせる絢瀬先輩)

真姫(対する私は、全く何も分かっていないのだけど…)


絵里「…いえ、ごめんなさい。いきなり変なことをして…」

真姫「ぁ…いえ、その…」

絵里「じゃあ、改めて…こんにちは、真姫」

絵里「…春に出会ってぶり、ね」

真姫「っ…!も、もしかして…!」

絵里「あなたと初めてであったのも、ここだったわよね。真姫」

真姫「お、覚えていてくれたん、ですか…!?」

絵里「えぇ、もちろんよ。あなたのような人を忘れるものですか」

真姫「…!」

絵里「あなたは私の出会った子の中で、最も才能に溢れていたわ」

絵里「だからこそあなたに、アイドルという道を示したんだもの」

真姫「ぁっ…!」

絵里「秋から来ている彼女とは…別人、なのよね?どういう理由かは知らないけど」

真姫「え、あっ…!そ、その…!」

絵里「うぅん、いいの。そのことに関してとやかく言うつもりはないから」

絵里「今日はただ、あなたと話がしたくて、ここに呼び出したんだもの」

絵里「それともやはり…私のことを恨んでいるかしら?」

真姫「えっ…!!?」


真姫(恨むなんて、とんでもなかった)

真姫(彼女は、没頭できるものが何もなかった私に、アイドルの楽しさを一から教えてくれた人だったから)

真姫(私がアイドル専攻の授業についていけなかった時も、何度も励ましてくれて…)

真姫(でも結局、諦めてしまって…心から申し訳ないと思っていた)

真姫(アイドルの事は嫌いになってしまったけれど…彼女のことを嫌いになる理由なんてない)

真姫(彼女は私の、もうひとりの恩人なんだから)


真姫「い、いえ…そんなこと!むしろ、私の方こそ謝りたくてっ…!」

真姫「せっかく、私を誘ってくれたのに…私の体力不足で諦めてしまって…」

絵里「あら、殊勝ね。春はもっとぶっきらぼうな子だったのに」

真姫「そ、その時は…ちょっと、鬱陶しいかも、って思ってたけど…」

真姫「でも話していくにつれてアイドルってものがどういうものかってよくわかって…」

真姫「少なくともっ…!あなたとアイドルの話をしているときはとても楽しかった!」

真姫「そのことは、とても感謝しているの…!」

絵里「…そう」

絵里「じゃあ…今は?」

真姫「え…」

絵里「私のことじゃなくて、アイドルのこと」

絵里「…今は、嫌い?」

真姫「え、えと…今は…嫌い、ってほどじゃ、ない…」

真姫「そんな、好きってわけでも、ないけど…」

絵里「…」

真姫「ぇ、あっ…!ごめんなさい!アイドル専攻を指導しているあなたにこんなこというなんて…」

絵里「うぅん。それでいいの」

真姫「…え?」

絵里「…今は、どっちつかずの状態、ってことよね」

絵里「過去に、嫌いになったという事実がある…」

絵里「今はなりを潜めて、胸の奥深くで眠っている…」

絵里「そして、才能に溢れている…」

絵里「…そんなあなただからこそ、いいのよ」

真姫「どういう…こと?」

現在

アイドル応援部部室


バダンッ!!


真姫☆「希っ!!」



希「…真姫ちゃん」


真姫☆「あ、アイツが…!あっちのわた…いや、妹が…!」

希「…知ってる。さっき一年生の子が来て教えてくれた」

希「真姫ちゃんたちにも早急に知らせたほうがいい、って思ってうちが音楽室に知らせに行かせたんよ」

花陽「あっ…そういうことだったんだ」

ことり「そ、それで…本当なの!?えっと…真姫ちゃんが…アイドル専攻の指導補佐、って…」

海未「なにかの冗談ではないのですか!?」

希「うちもそう思ってさっきまで調べてて…」

希「…どうやら、本当のことみたいよ」

花陽「そんなっ…!」

海未「い、一体どうして…!?彼女がアイドル専攻の指導をする理由、なんて…」

ことり「そもそも、真姫ちゃんにアイドル専攻の指導ができるツテなんて…」

真姫☆「…あっ!まさかっ…」

希「どうしたん?真姫ちゃん」

真姫☆「そういえば昨日…音楽室に向かう途中に絵里と会ったって話してたわよね?」

ことり「ん?あぁ、そういえば…」

真姫☆「…もしかしたら彼女は、そこで妹と話をしていたのかも」

花陽「えっ!?」

真姫☆「そこで何らかの理由で妹を勧誘して…アイドル専攻の指導補佐、つまり、絵里の跡取りへと指名した」

真姫☆「でなければ、いつもはホールで専攻の指導をしている時間にアイツが音楽室にわざわざ出向く理由なんて他に考えられないわ」

希「確かに…一理あるね」

海未「ですが、どうして真姫を…?つまり彼女は、真姫を普段の違う真姫だと認識していたのですよね…?」

海未「そうでなければライバルである真姫を勧誘するなんてありえませんし…」

真姫☆「…そういうことになるわね」

花陽「なんでわざわざ真姫ちゃんを選んだんだろうね…?別人なら尚更、あっちの真姫ちゃんにはアイドル経験なんてないはずなのに…」

希「春にほんの少し、経験はしてたんやけどね」

ことり「え!?そうなの!?」

希「うん。すぐやめっちゃった子のうちの一人やよ」

ことり「…そう、なんだ」

真姫☆「絵里が妹を選んだ理由は私にもわからない。けど彼女のことだから…きっと理由があるには間違いないと思うけど」

花陽「なんの理由があるにせよ、これで真姫ちゃんをC☆cuteに勧誘するのは難しくなっちゃったね…」

海未「そうですね…。しかし、めげていても仕方がありません」

海未「いずれ彼女を説得してアイドル専攻の指導をやめさせることも念頭に置きつつ、今は来週の私たちのライブのために練習をするべきです」

ことり「そ、そうだね…!ぼーっとしてたらそれこそA-RISEに置いてかれちゃうもんね…!よし、今からまた…」


真姫「…それは、できないわ」

ことり「…え?」

花陽「できない、って…?」

海未「練習ができない、ということですか…?」

真姫☆「ごめんなさい。言葉不足だったわね」

真姫☆「練習自体ができないってことじゃなくて…私はその練習に参加できない、って言いたいの」

ことり「どうして…?」

真姫☆「私が…西木野真姫がアイドル専攻の指導補佐になったってことはきっと明日にでも知れ渡る」

真姫☆「そんな状態で、音楽室でも西木野真姫がアイドルの練習をしていたらどうなるかしら?」

花陽「あっ…!」

真姫☆「…全校生徒に、西木野真姫は二人いると認識される」

真姫☆「当然学校側にもその情報は伝わるでしょうね。不測の事態にきっと両親に呼び出しがかかるでしょう」

真姫☆「…そこで、私が妹の代わりに代返していた、なんて事実が浮き彫りになれば…」

希「退学は免れない…ね」

海未「そんな…っ」


真姫☆(実際は、親なんか呼ばれたら退学よりも大変なことになりそうだけどね…)

真姫☆(いるはずのない姉が、存在しているのだから)


真姫☆「だから、今は私は練習には出られない…。うぅん、おそらく、このままだと二度とC☆cuteに戻れない」

真姫☆「アイドル専攻にいるってことは、私はC☆cuteを脱退したと巷に認知されるでしょうし」

真姫☆「だから来週のライブも…参加できないかもしれないわね」

ことり「そ、それって…もう、終わり、ってこと…!?」

花陽「だ、ダメだよっ!今真姫ちゃんに抜けられたら…!」

花陽「A-RISEに対抗するなんて…できないよ…!」

真姫☆「…そう、ね。私もまだ脱退なんてしたくない」

真姫☆「ならば、今現在何よりも優先すべきことは…」

希「…西木野さんをアイドル専攻から引き抜くこと」

真姫☆「そういうことね」

海未「し、しかしっ…!かと言ってそれに全力を注いでしまっては…」

ことり「来週のライブ、万全の状態で臨めるとは言えないよね…」

花陽「ライブが行えるかどうかも怪しくなってくるよね…どうしよう…」

真姫☆「あなたたちは今までどおりライブの練習に集中してくれればいいわ」

真姫☆「…妹を引き戻す係は」

真姫☆「希」


希「っ…!」


真姫☆「…あなたしかいない」

希「せや、ね…。うちが一番暇を持て余してるんやし、順当かな」

花陽「ひとりで…!大丈夫なんですか…?」

希「…まぁ、むしろあの子はうち一人で説得したほうがいいと思う。他の子に心を許してないみたいやし」

希「だから、西木野さんの件はうちに全て任せて。みんなはいつもどおり、練習しておいて」

海未「…わかり、ました。花陽、ことり、行きましょう」

花陽「う、うん…」

ことり「わかった…」

真姫☆「…」

ガチャッ… バタンッ



希「…ふぅ」

希「真姫ちゃんはどうするん?」

真姫☆「…ん、私?そうね…どうしようかな…」

真姫☆「今は学校にいられないしね…。顔を見られただけで生存の危機よ」

真姫☆「花陽のクラスメイト一人に知られるだけなら口止めでなんとかなるけど、複数人に知られるとなるどどうしようもないし」

真姫☆「今はとにかく、こっそり学校を抜け出して…そこで出来うる限りのことをするしかないわね」

希「…そっか。そうやね」

希「えりち…どうしてこんなことを」

真姫☆「さぁね。アイツの考えることなんて私には1ミリたりとも理解できそうにないわ」

真姫☆「あなたの方が、彼女を知ってるんでしょう?何か思い当たる理由、ないの?」

希「…確かに、えりちは西木野さんの才能を強く買ってた」

希「寵愛していた…って言ってもいいくらい。その頃はほとんどえりちに関わらなかったうちでも、西木野さんへの入れ込みは噂で聞くくらいだったし」

真姫☆「へぇ…珍しいのね…」

希「でも…西木野さんに限界が来てからのえりちは…冷たかったな」

希「西木野さんが不登校になってからえりちに問い詰めたら、『才能があっても花開かなければ、そこらの雑草と変わらないわ』なんて…」

希「たぶん、数日もしないうちに西木野さんの存在すら忘れてたと思う。真姫ちゃんも、えりちに初めて会った時…初対面みたいな反応されたと思うわ」

真姫☆「あ、あぁ…確かに…」


(絵里「…1年生?見ない顔ね」)


真姫☆「…顔どころか、存在すら全く記憶になかったみたいね。その後、思い出してた素振りはあったけど」

希「うん、まぁだから…今更、西木野さんを後継者として指名する理由がうちにはわからない…」

希「もしかして、アイドルじゃなくて指導者としての才能なら花開くのかも、って考えたのかもしれんけど…」

希「彼女のやり方を理解してる2年生以下の子ならたくさんいるのに…わざわざ経験の乏しい西木野さんを選ぶ理由、か…」

真姫☆「絵里のやり方…。真の強さを欲するには他人の才能を踏み台にする…ってことね」

真姫☆「確かにそうよね…。アイツがこんな…高度って言っていいのかわからないけど、普通じゃない指導方法を理解して正しく指導できるなんて…私は思えないわ」

希「そこらへんもしっかり調べる必要がありそうやね…」

希「…うち、直接アイドル専攻に行ってみる」

真姫☆「えっ…!」

希「そんで指導の仕方とか、その他もろもろちょっとだけでも覗いてきて…西木野さんの様子も調べておきたい」

希「機会があれば、直接西木野さんや、えりちに話をつける」

真姫☆「で、でも…部外者が勝手にホールに入って…」

希「…うちを誰やと思ってるん?」

希「アイドル応援部部長やよ。もろ、アイドル専攻に関わりのある人間やん!」

真姫☆「…まぁ、そうかもしれないけども」

希「まぁ、えりち以外から注意を受けることはないと思うわ。別に目立とうってわけでもないし」

希「でも、真姫ちゃんは逆に絶対に目立ったらいかんよ?バレたら一瞬で命取りになるんやし」

真姫☆「…そうね。そろそろ私も外に出ていったほうが良さそう。希、頑張ってね」

希「了解や」

秋葉原


真姫☆「…はぁ」


真姫☆(外に出てきたはいいものの、何をすればいいのかしら)

真姫☆(出来うる限りのこと…といってもこの状況、私にできることなんて何も思いつかない)

真姫☆(せいぜい変装してC☆cuteの宣伝でもして…って、そんなことしても意味ないわよね)


真姫☆「…いつか離れる時が来る…か」

真姫☆「確かに、いつかは私は帰らなきゃいけないけど…」

真姫☆「今こんな時に…帰れるわけ無いわよ」

真姫☆「…まだ、花陽と、ことりと、海未と、希と…私たちに協力してくれる、いろんな人たちのためにも…」

真姫☆「UTXの革命の時まで…私は終われない」

真姫☆「笑顔のスクールアイドルを実現するのが」


バッ

ガシッ!!


真姫☆「っ!!?」


真姫☆(独り言をつぶやいていて、完全に油断していた)

真姫☆(突如路地脇から現れた小さな影)

真姫☆(それが誰かすら認識する前に、私は口を押さえられ、後ろ手を極められた)

真姫☆(悲鳴の欠片もあげる隙なく、私は路地の奥へと連れ去られ…)

真姫☆(…そこで、私の意識は消滅した)





多目的ホール前


希「…」

希「ここに来るのは…何日ぶりかな」

希「もう二度と、直接関わることはない、って思ってたんやけど」

希「…いや、真姫ちゃんに関わってから、こうなることは決まってたんやろうね」

希「いつかうちも、えりちと決着つけないけない時が来るんやろうし…」

希「今日はそのための前調べってことで…いざ、入らせてもら…」


ガチャッ!!


希「えっ…」

希(うちがドアノブを掴む前に、ホールのドアが勢いよく開いて…)


女生徒「うああぁぁぁぁぁぁっ!!!」ダダダッ!!


希(…一人の女の子が、叫びながら走って出て行った)

希(床には数雫…汗と一緒に、涙も落として)


希「…嘘やん」

希(指導初日から…これ?)

今日はここまで 8話は色んな視点が錯綜する群像劇チックな物語になる といいね
出番の少ないぱなことうみもメイン張れるストーリーに できるといいな
ちなみにうろ!の方を長くやってしまったので今回、8話全てやりきってからうろ!に移行するつもりです
そして既に最初にもし!を始めてから半年が経とうとしている… Museより長くやってる意識全然ないわぁ
まだもう少しだけ続くんじゃ それまでお付き合いください ほなな

映像見ながら語ってるという設定なのでまぁそんな感じです
再開します

多目的ホール


絵里「ワンツースリーフォー…」


女生徒A「ふっ…!だ、っ…はぁっ…」タンタンッ…

女生徒B「やっ…たっ…!よっ…」タンタタンッ…


真姫「…」テクテク…


女生徒C「くっ…とっ…、んんっ…!」タタタンタッ…


真姫「…不細工ね」


女生徒C「えっ…!?」


真姫「誰が動きを止めていいっていったの?続けなさい」

女生徒C「ぁ、うっ…!」タタンッ…

真姫「…あぁ、別にあなたの顔のことを言ったわけじゃないの」

真姫「動きが…不細工だと思って」

真姫「今まで練習してきてその程度だなんて、よっぽど才能に恵まれていないのね」

真姫「可哀想だとは思うけど、アイドル専攻は各人の自由だし、いいんじゃないかしら」

真姫「結局ここで培ったダンスと歌の技術は永劫活かせぬまま朽ちていくんでしょうけど」

真姫「楽しいダイエットが出来たと思えば時間を無駄にしなくていいんじゃない?」

女生徒C「っ…!あんたねぇっ!!」


ざわっ…


絵里「…そこ、静かに」



女生徒C「い、言わせておけばズケズケとっ!!何様のつもりっ!?」

女生徒C「わっ…私は、二年生なのよ!?それを年下のあんたがっ…ふざけないでよっ!!」

女生徒C「指導補佐か何か知らないけどいい気になってんじゃ…」


真姫「黙りなさい」


女生徒C「っ…!!」

真姫「…誰が口を開いていいと言ったのかしら」

真姫「ダンスしか脳がないんだからただ無心で踊っていればいいのよ、あなたは」

女生徒C「ぎっ…!何をっ…!」

真姫「口答えしないで。ここでは私の言葉は絢瀬先輩の言葉と思いなさい」

真姫「私に歯向かえば…どうなるかわかっているわよね?」

女生徒C「…っ!は、はい…」

真姫「返事の前と後ろには『教官殿』とつけなさい」

女生徒C「は…?」

真姫「口でクソ垂れる前と後に『教官殿』とつけろと言ったの。…理解できた?」

女生徒「…き、教官殿…わかりました、教官殿…」

真姫「…よろしい」



にこ「…なにあれ」

凛「お、おっそろしいにゃぁ…。アレが指導ってやつ?」

にこ「アメリカの軍隊かなにかじゃないんだから…あれじゃあの子の評判落とすだけよ…」

にこ「…なんで真姫ちゃんがアイドル専攻の指導補佐になったのかは知らないけど…もしかしたら専攻生を蹴落とすため、だったりするのかしら」

凛「げー…やり方がえげつないにゃ…。そろそろあっちのスクールアイドルもホンキになってきたってことかな?」

にこ「…どう、なんでしょうね。でも…」

にこ「私の知ってるあの子は、あんなこと…」

穂乃果「…」



穂乃果(…私の知っているあの子も、あんな風じゃない)

穂乃果(アイドル専攻を直接叩くなんて乱暴なことはしそうにないし…仮にしようとしたとしても)

穂乃果(…あんな暴言、吐くなんて思えない)

穂乃果(やっぱり…)



穂乃果「西木野さん…二人、いるの…?」





希「…う、うわぁ…」


希(ホール入口近くで事の成り行きを見守ってたけど…)

希(に、西木野さん…どうしたんや、あれ…)

希(昨日までとは雰囲気がまるで違うというか…)

希(あんな人に対して強く当たれる子やったっけ?)

希(真姫ちゃんとも、昨日までの西木野さんとも違う…もしや3人目の!?…なんて一瞬思ったりしたけど)

希(でも、アレは間違いなく…西木野さんやね。真姫ちゃんよりも筋肉がしぼんだ体つき…無造作な髪…)

希(それと、血のように赤いメガネがそれを物語ってくれている)

希(何のために西木野さんがあんなことをしているのか…それをまず突き止めないと、彼女をここから引き戻すのは難しそうやね…)

希(その鍵を握るのは…やはり)


希「…えりち、か」

希「あんまり、顔を突き合わせたくはないんやけど…仕方ないな」

希「…ひとまず、キリのいいところまで見学させてもらおか、…な」

絵里「では、私はバックダンサー…いえ、次期A-RISEのレッスンへ行くので…」

絵里「…後のことは真姫、あなたに任せたわ」

真姫「…ぅ、うん…。わかった…」



真姫「…」


専攻生ズ「…」ジー…


真姫「…ぅ」

真姫「ん、んんっ…!!…ふぅ」

真姫「えー、それでは…アイドル専攻、授業を始めます」

真姫「…それにあたりまず第一に…皆さんに伝えておきます」

真姫「私から話しかけられたとき以外口を開かないこと」

真姫「返事をするときは腹の底から大きな声を出すこと」

真姫「そして、言葉の前と後ろに『教官殿』とつけること」

真姫「…いいわね?」


専攻生ズ「…」シーン…


真姫「…返事は?」

専攻生ズ「…」

真姫「…そう。わかったわ」

真姫「今日はもうおしまい。帰っていいわよ」

女生徒A「えっ…!?」

真姫「何のプライドか知らないけれど、指導補佐の私の言うことに従えないのなら仕方ないわ」

真姫「もうあなたたちを指導する気も起きない」

真姫「だから、帰っていいって言ったの。そして、もう明日から来なくていいわ」


「そ、そんな…!」「なによそれ!!」「ふざけんな!」


真姫「ふざけるなと言いたいのはこっちのほうよ」

真姫「やる気のない人は即刻切り捨てる。…それがこの、アイドル専攻の掟よ」

真姫「少なくとも私がいた頃はそうだったわ。今はもうやる気のない人しかいないの?」


「…っ」


真姫「上に登りたければ従いなさい。ここでは安っぽいプライドなんか捨てること」

真姫「屈辱に塗れた戦場を生き抜いた者のみ、その先に待つ栄光のステージへとたどり着ける」

真姫「アイドルって、そういうものよ」

真姫「もう一度聞かせてもらうわ。…あなたたち、やる気はあるの?」


「…き、教官殿!あります!教官殿!」


真姫「…ふふ、よろしい」

穂乃果「…」



真姫「…じゃあ聞くわ。あなたは何?」

A「わ、私はっ…」

真姫「違う」

A「教官殿!私はダンスしか取り柄のないブタです!教官殿!」

真姫「えぇ、そう。その口は今は返事するのと水分補給のみに使われるだけの穴よ」

真姫「ここで歌えるのは、頂点に立ったものだけ。そうでしょう?」

A「教官殿!はい!教官殿!」

真姫「はい、よろしい。…じゃあ次。あなたは何?」

B「教官殿!わたしは…」




穂乃果「…」


絵里「…穂乃果。話聞いてる?」

穂乃果「はい。聞いてます」

絵里「じゃあなんて言ってたか説明して」

穂乃果「…今年度のA-RISEの活動も最終段階に差し迫ってきており、ラストライブに向けての準備を着々と進める必要有り」

穂乃果「それと同時に来年度、次期A-RISE…私たちのための新譜の準備も行う必要もあるのでこれから多忙になると」

穂乃果「それに向けアイドルショップで販売される私たちのグッズのデザインやブロマイド撮影などによる…」

絵里「…あぁわかったわ。ありがとう。今度からちゃんとこっち向いて話聞いてね」

穂乃果「わかりました」


凛「うひゃー。相変わらず穂乃果センパイはハイスペックだねー。凛なんかもう忘れちゃったにゃ」

にこ「それはどうかと思うわよ」


穂乃果「…ついでに、一つ訪ねてもいいでしょうか」

絵里「何?」

穂乃果「今専攻生を指導している彼女…西木野さんのことなんですけど」

穂乃果「あれは、あなたの指示で?」

絵里「あれ、とは?彼女が指導していることかしら」

穂乃果「指導の仕方です。あれではまるで戦前の軍隊です」

穂乃果「…育成の上で効率のいい方法だとは思えません」

絵里「へぇ…穂乃果。あなたはいつから私のやり方に口出しできるほど偉くなったの?」

穂乃果「…っ。じゃあ、あれはやっぱり、あなたの指示なんですね」

絵里「私がああしろ、といったわけではないわ。でも、彼女の指導の権利は私と同等のものよ」

絵里「だから、アレは私のやり方、って言っても差し支えはないわね」

絵里「それともあなたは、私が信用できないの?…あなたをここまで育て上げた私のことを」

穂乃果「…そういうことじゃ、ない、です」

絵里「なら安心して。来年、私がいなくなっても…A-RISEは立派に強くなってくれるわ。…えぇ、強く、立派にね」

穂乃果「…」

穂乃果(絵里先輩は偉大な人だと、私は信じてきた)

穂乃果(彼女の幼い頃のバレエの経歴は、素晴らしいの一言に尽きるほどで)

穂乃果(あらゆるコンクールの金賞を総嘗めにしてきたその実力は、本物としか言いようがない)

穂乃果(だから私はスクールアイドルになるため、強くなるために、彼女のやり方に賛同して)

穂乃果(どんなことがあれども、彼女に従ってきた)

穂乃果(けれど…)

穂乃果(私は最近、揺らいできている)

穂乃果(彼女の今までのやり方が間違っていたとは思わない。確かにこれで、私は強くなれた。数々の人を、心を犠牲にして)

穂乃果(でも最近は…彼女の意思が、何か純粋でないと感じるように、なってきていた)

穂乃果(ただ、『強さ』を求めているだけとは…思えなくなってきていた)

穂乃果(にこちゃんを犠牲に私達を育成しようと考えていたことはまだ、理解できた)

穂乃果(きっとにこちゃんがダメになっていたら、私たちは更なる躍進…恐怖によるブーストで、成長できていたかも知れない)

穂乃果(けれど今回の…西木野さんの起用は、理解できない)

穂乃果(あの方法がA-RISEに…UTXに有益をもたらすとは、思えなくて…)

穂乃果(『何か理由があるんじゃない?』って、凛ちゃんもにこちゃんも言うけど)

穂乃果(その理由が…『強さ』ならいいのだけど)

穂乃果(…もし、私の感じている『強さ』以外の何かのためだとしたら…)

穂乃果(そう思うと、懐疑心が胸を塞いで止まない)

穂乃果(その何かは、私にはまだ、分かりそうにないけれど)



絵里「…じゃあ、今日はここまでにしましょう」

にこ「えっ…、もう終わり?」

絵里「えぇ、話し合いに結構時間を割いてしまったし…今から練習しても中途半端に終わっちゃうでしょうし」

穂乃果「居残りですればいいのでは?」

絵里「それがいいと思うのなら、あなたたちが自主的に行って。とりあえず、私の仕事はここまで」

絵里「これ以降のスケジュールの管理の追い込みが忙しいから、帰って整理しないと。…まぁ、私のためってことよ」

凛「うーん、それなら仕方ないにゃー。じゃあ穂乃果先輩とにこちゃんは後で一緒に練習ね!歌も合わせよう!」

にこ「そうしましょうか。先輩も忙しいでしょうし、頑張ってね」

絵里「えぇ、あなたたちもね。それじゃ私はお先に着替えてくるわ」

凛「お疲れ様ですー。よーし、じゃあ発声練習、いっくにゃー!」タタタタッ…

にこ「あ、もう…発声練習にどうして走る必要があるのよ…」

穂乃果「…余裕があるなら、一度生徒会の方に戻っていいかな。あっちも来年度の予算の方で慌ただしくなってるし、確認しておきたくて」

にこ「いいんじゃない?アンタも忙しいわねー…」

穂乃果「もう、来年も近いからね。…じゃ、また後で。遅くなりそうだったら先に始めておいてね」

にこ「わかったわ。凛にも言っとく」



穂乃果「…」スタスタ…


希「…おや、もう終わりなん?」


穂乃果「ひゃあっ!?の、希せんぱっ…」

穂乃果「…どうしてここに」


希「まぁ、いいやん。それより…」

希「ちょっとお話、いいかな」

多目的ホール前


穂乃果「…絵里先輩と、西木野さんのこと、ですか」


希「うん。えりち、何か言ってなかった?西木野さんのこと」

穂乃果「いえ、何も。…あれでいい、とくらい、ですね」

希「そっか…。やっぱり、直接本人に理由を問い詰めるしかない、かな…」

希「穂乃果ちゃん自身はどう思う?西木野さんのこと」

穂乃果「…別に。絵里先輩がいい、と思っているのなら…いいんじゃないでしょうか」

穂乃果「私は彼女のやり方を支持している派なので」

希「ふふっ…、せやったね。穂乃果ちゃん、えりち派やもんねー」

穂乃果「…何がおかしいんですか」

希「あぁ、うん…別に何でもないよ。ごめんね、呼び止めちゃって」

希「もうえりち帰るんやろ?うちそれまで待っとくわ。ありがと、穂乃果ちゃ…」

穂乃果「その前に」

希「ん?」

穂乃果「…あなたに聞いておきたいんですけど」

穂乃果「あの西木野さんは…私の知ってる西木野さんとは別人ですね?」

希「…なんで、そう思うん?」

穂乃果「昨日の朝、西木野さんに二回、出会ったのもありますけど」

穂乃果「…あなたが彼女のことを、『真姫ちゃん』ではなく『西木野さん』と呼んでいることも、起因して」

希「…鋭いなぁ。結論から言えば…まぁ、その通りやね」

穂乃果「そんな簡単にバラしてしまっていいんですか?…結構、重大なことだと思うんですけど」

希「ん?…うーん、穂乃果ちゃんなら、大丈夫かな、って」

穂乃果「…私、なら?何故…ですか」

穂乃果「あなたは、私のこと…好きじゃないんでしょう?」

希「なにそれー?どこ情報?うち穂乃果ちゃんの事嫌ってはおらんよ?」

希「嫌いなんは…やり方、やね。えりちから教わった、その思想が、うちは嫌い」

穂乃果「…」

希「ねぇ、穂乃果ちゃん。穂乃果ちゃんが生徒会に就任した日のこと、覚えてる?」

穂乃果「えっ…。いや…」

希「穂乃果ちゃんに…結構キツいこと言われちゃって、うちかなり凹んだんよ?」

穂乃果「…すみません。そこまでいちいち覚えていられません」

希「せやろね。穂乃果ちゃんにとってはなんでもない言葉やったんやろうけど」

希「うちの今までを全て否定された気がして…随分落ち込んだわ。あの日」

穂乃果「…なんて、言ったんですか。私」

希「…えっとね」




「生徒を救うなんて、おこがましいこと、もうやめてください」

「あなたのしているその行為は、慰められた方を更に惨めにするだけの行為です」

「あなたが慰めているのは傷ついた人間ではなく…あなた自身だと言うことに、まだ気づかないんですか」

穂乃果「そんなことを、私が…?」

希「…うん。生徒会長を辞めたなら、もう一切しないで、って」

希「それ聞いて、うち今まで…孤独な自分を慰めたかったから、傷ついた誰かを家に呼んでたんかな、って…」

希「ホントは、自分より悲しんでいる人を眺めて、自分の傷を癒したかったんかな。…そう思ったら」

希「卑しいな、なんて…柄にもなく落ち込んでたんよ」

穂乃果「…でも、それは事実だと思いますよ」

穂乃果「あなたは、誰ひとり救うことができなかった」

穂乃果「それは、あなたに救う気がなかったからです」

穂乃果「本当に誰かの心を癒したいと思っている人は…諦めない人だから」

希「…せや、ね。うちも、そう思う」

希「うちはずっと、諦めてばかりだった。西木野さんが不登校になってしまっても…」

希「次の傷ついた子のために、自分が傷つかないために、って…存在すら忘れてしまったんやもん」

希「本当に誰かを助けたい人は…どうあっても諦めない人や、って気づいたのは…あの子が来てから」

希「真に心の強い子。…真姫ちゃんが、家に来てから」

穂乃果「それが…私の知っている西木野さん、ですか」

希「あの子は…どんな時も諦めなかった」

希「自分がどれだけの無茶をやらかそうとしてても、決して諦めはしなかった」

希「あの子のおかげで救われた子を、うちは何人も見てきた。…うちが一年かかっても、一人も救えなかったのに」

希「うちも、そのうちのひとり、かもね」

穂乃果「…」

希「真姫ちゃんは、強い子やよ。それは、穂乃果ちゃんも知ってるんじゃない?」

穂乃果「私、が…?」

希「にこっちのこと、もう気づいてるんと違う?あの子が立ち直れた原因が…」

穂乃果「…やっぱり、そう、だったんですか」

希「うん。真姫ちゃんのおかげ。あの子が躍起になってにこっちの崩れた心の支えを見つけてくれたから、今のにこっちがある」

穂乃果「…彼女が、にこちゃんに何かしたわけじゃ、なかったんですね」

穂乃果「その可能性も少しは考えてましたけど…じゃあ…」

希「…うちがね、穂乃果ちゃんのこと、嫌いじゃないのは」

希「穂乃果ちゃんは、えりちじゃないから」

穂乃果「えっ…?」

希「えりちの考え方を受け継いではいるけど、染まりきってはいない」

希「芯は、強い穂乃果ちゃんの意思が貫いてる。純粋な、穂乃果ちゃんの気持ち」

希「『努力している子を、応援したい』って感情。違う?」

穂乃果「…そうでしょうか。自分でもよく、わかりません」

希「だからうちは穂乃果ちゃんになら、真姫ちゃんの秘密を明かしてもいい、って思えたんよ」

希「まだえりちに染まりきってないなら、この秘密も、穂乃果ちゃんはうまく扱ってくれるかもしれないって」

穂乃果「…買いかぶりすぎですよ。学校に、言うかも知れないのに」

希「うん、でも…うちは穂乃果ちゃんを信じたかった」

希「いつか、穂乃果ちゃんは真姫ちゃんの味方になってくれるかもしれない」

希「そして…、真姫ちゃんが、穂乃果ちゃんの味方になってくれるかもしれないから」

希「努力している子を純粋に応援してくれる、本当の穂乃果ちゃんへの…ちょっとした投資みたいなもの、かな」

穂乃果「…バカバカしい」

希「ま、前生徒会長から現生徒会長へのエールやよ。これをどう扱うかは…穂乃果ちゃん次第だから」

希「でも…遅かれ早かれ、気づかれてたのは変わらないと思うけどね」

穂乃果「…長話に付き合わされ損ってことですか」

希「穂乃果ちゃんが退屈してたなら、そうなるかも」

穂乃果「…はぁ」

穂乃果「もう、いいです。西木野さんが二人いる事実が確認できたなら、私はこれで」

希「ん。じゃあね、生徒会、頑張って」

穂乃果「…はい」

穂乃果「いえ、やっぱり…」

希「うん?」

穂乃果「最後に、もうひとつだけ」

穂乃果「あなたはここで…どうするつもりですか」

穂乃果「あなたが誰よりも嫌いな絵里先輩と対峙してまで…どうしたいんですか?」

希「んふっ、そんなこと?でも、せやね…。理解しがたいかもね」

希「だけど、簡単な理由」



希「きっと初めて、心から誰かを救いたい、って思ったから」




生徒会室


ガチャッ


生徒会役員「…あ、会長。お疲れ様です。アイドルのほうは大丈夫なんですか?」


穂乃果「…」

穂乃果「…答えに、なってないっての…」


生徒会役員「はい?」

穂乃果「…ごめん、なんでもない」

生徒会役員「そう…、ですか。あの、失礼ですが、何かありました?」

穂乃果「…え?」

生徒会役員「いえ、いつもは考え事をしていても意識を分散させている会長が、何か考え込んでいるようなので…」

生徒会役員「もしや重大な事件でも抱え込んでいるのかと…!?」

穂乃果「あ、あはは…そんな…」

穂乃果「…ぁ」


穂乃果(役員の子が冗談めかして言った、重大な事件という言葉に)

穂乃果(西木野真姫が、二人いるという事実が、頭をよぎる)


穂乃果「…」


穂乃果(けれど)


穂乃果「…うぅん。なんでもない。それより、来年度の予算の件についてなんだけど…」



穂乃果(そんなことは些細なことだと思い返し、今日も私は…生徒会長としての職務を全うする)

絵里「長話は終わった?」


希「っ…!」




多目的ホール前



絵里「…そんなに深い話されてたら、出るに出られないじゃない」

希「えり、ち…」

希「どこから?」

絵里「最初から、…って言いたいところだけど、安心して」

絵里「真姫が二人いる…とかどうとか、穂乃果が言ってたところくらいからしか聞いてないわ」

希「そう、…よかった」

絵里「聞かれたくない話?ふふ、つれないわね」

絵里「私にも、聞かせてくれたらいいのに」

希「…じゃ、うちの長話、付き合ってくれる?」

絵里「話にもよるわ。なんなら今からパフェ食べに行く?」

希「そこまで長くはならんよ。すぐ、済む」

希「…単刀直入に聞くわ」

希「どうして、西木野さんを指導補佐なんかにしたんや」

絵里「長くなりそうだわ。パフェ食べに行きましょう」

希「答えて!」

絵里「…」

希「やっぱり…、ただならぬ事情があるんじゃないの!?」

絵里「そんなわけ、あるわけないじゃない」

絵里「私はただ、真姫の才能を買っただけよ」

絵里「あの子なら、私がいないA-RISEを強くしてくれるって、思ったから」

希「そんな、歯の浮くようなっ…!」

絵里「でも、事実だもの」

絵里「そうよね?真姫」

希「…えっ」



真姫「…希、先輩…」


希「西木野さん…」


真姫「どうして、ここに…」

希「西木野さんこそどうして…。まだ指導の途中なんじゃ…」

真姫「…今、休憩中だから…」

希「…ちょうどいい。西木野さんにも聞きたいことがあるんよ」

希「なんで、あんな乱暴な指導の仕方してるんや…」

希「普段の西木野さんは、あんなこと言わないはずやん」

真姫「それは…」


絵里「…真姫。おいで」

絵里「ご褒美をあげるわ」

希「えっ…?」

真姫「あっ…!はい!」タタタタッ…


絵里「…偉いわね。初めてなのにあんなにできて」

真姫「うん…。緊張したけど…頑張ったわ」

真姫「ああいうロールプレイならオンラインゲームで何度か演じたことがあったし…。余裕よ」

絵里「あなたならやればできる、って思ってたの。私が見込んだだけのことはあるわね。よしよし」ナデナデ

真姫「はぁぁぁぁ…!」



希「…あの。なんでいきなりイチャイチャし始めたん?」


絵里「なによ。希もナデナデされたいの?いいわよ、おいで」

希「いらんわ」

希「そうじゃなくって…!」

絵里「報酬よ。これが、真姫への報酬」

希「報酬…?」

絵里「私の後継者になってくれるための条件よ」

絵里「ただ、真姫を愛する。彼女が欲した時はいつでも…とまでは言えないけど、可能な限り愛してあげる」

絵里「それが私が真姫に提示した、条件」

希「なんやっ…、それっ…!?」

真姫「え、絵里…。もっと…もっと撫でて」

真姫「希先輩と話してないで…私だけを見てよ…」

絵里「もう、仕方ないわね…。よしよし、真姫…可愛い子ね」ナデナデ

真姫「うん、ありがと…。はふぅっ…」

希「えぇ…いや、うちの話も…」

希「というか西木野さん、昨日はうちのことも信頼してくれてるって言ってたのに…」

真姫「…」

希「西木野さんっ!」

絵里「…ふふ、馬鹿ね」

希「え…?」

絵里「あなたは、彼女が求めるものも何も分かっていなかった」

絵里「この子に必要なのは仲間じゃない」

絵里「ただひとりの…愛よ」

希「なっ…」

絵里「…昔からそう。あなたは心の機微に疎い」

絵里「それだから誰も救えないのよ。元生徒会長さん」

絵里「代わりにあなたは肉体の変化や疲労に敏感だったわね。触診や汗の匂いで体調を管理するのが上手だった」

絵里「あなたが身体、私が心。そうやってアイドル応援部は様々な状況に対応し、地位を確固としたものにしていったんじゃない」

絵里「…でも今は、その名誉も全て、私の手の内なのだけどね」

希「…っく」

絵里「結局、疲労も自分でコントロールできないアイドルなんて…必要ないってことなのよ」

絵里「才能が全て。言うことを聞かないなら…ふふっ、あとはわかるでしょう?」

希(えりちが人心掌握術に長けているのは、事実だった)

希(だからこそこんな無茶なやり方でも、アイドル専攻は破綻せず続けていられる)

希(心傷つき、病んでいってしまう人たちが、アイドルを嫌うことはあっても…)

希(…えりちを嫌うことは、ほとんど、ない)



絵里「この子は飢えていたのよ。他人の愛に」

絵里「欲すれば手に入る。当然の権利」

絵里「そんな誰でも持ってそうで…なかなか与えられない、いつでも愛される、ってことを」

絵里「あなたにもそれを求めていた。けど…あなたははぐらかしたそうじゃない」

希「えっ…あ、いや…」

絵里「…そうよね。無条件の愛なんてそんな、誰にでも与えられるものじゃないものね」

絵里「でも、それがあなたの限界」

絵里「彼女の欲しているものも与えられない愚かなあなたの、終着点よ」


希「っ…!ち、違うっ!!」


絵里「…」

希「西木野さんが欲しているものと、彼女に必要なものは別や!」

希「今の西木野さんに必要なんは…仲間やよ!」

希「えりちはすぐに卒業してしまう!そしたらその後、西木野さんはひとりぼっちやん!」

希「西木野さんが充実した毎日を送るためには、今仲間を作っておくことが大事なんよ!」

希「だ、だからうちは…うちらは!西木野さんを…」

真姫「…いいの」

希「えっ…?」

真姫「学校なんて、楽しくなくていい」

真姫「絵里は、卒業しても私を愛してくれるって言ったわ」

真姫「これからの一生、私に尽くしてくれるって言ってくれたもの」

真姫「だから、こんな生活、充実しなくて構わない」

真姫「大嫌いな学校で、大嫌いなアイドルを育てる」

真姫「ただ、絵里に愛される。それだけのために」

希「大、嫌い…?そんな…西木野さん、もう、嫌いやないって…言ってたのに…」

真姫「嫌いよ。心からアイドルが憎い」

真姫「大好きな絵里を悩ませて…、大好きだったあなたを独り占めにできなかった理由のアイドルが…嫌い」

真姫「嫌いなまま、強くする。それが私の思想よ」

真姫「…もう、これ以上あなたと話すこともないわ。さようなら、大嫌いなアイドルを応援する人」

真姫「あなたも、嫌い」

希「待って!西木野さんっ!!うちはっ…!」

希「西木野さんもっ!仲間にっ…!!」


ガチャンッ


希「…ぅ、あ…」

絵里「…もうあなたは部外者なの。アイドル専攻にとっても、私にとっても、そして、彼女にとっても」

絵里「もう来ないで頂戴。ふふ…、私だけに用事があるなら、内密に来てもいいけどね」

絵里「それじゃ、さようなら。…希」

希(目の前で閉じてしまった…そして、もう開くことのないホールのドアを、眺めて)

希(ただただ呆然と、立ち尽くすことしかできなかった)


希「…ぐ、ぅっ…!」


希(もう既に、西木野さんはえりちにかなり心酔している)

希(もはや、うちの言葉では西木野さんの心を開かせることは…難しいのかもしれない)

希(でもっ…)



希「こんな、絶望的な状況でもっ…」ギリィッ…!!

希「今度こそ、絶対に諦めないんやっ…!」



希(何度無理な状況に陥っても、何度無茶なことを挑戦することになっても)

希(必ず、その全てに打ち克ってきた、あの子のように)

希(拳を握り、奥歯を噛み締め、決意する)

希(今度は、そう)

希(うちが、無茶をする番やもの)


希「…もし、西木野さんの心を開かせ、目を覚まさせるものがあるとするならば」

希「それは…」



希(えりちの言葉自身)

希(はぐらかされて聞き出すことの出来なかった、彼女の本心を、西木野さんに聞かせられたなら)

希(うちの言葉でなく、えりちの口から発せられた言葉で)

希(…それがどれほど無理難題なのかは、うちも承知しているけど)

希(これが、生徒会長として成せなかった、…いや、成す気がなかったうちの)

希(最初で最後の、全力投球…!誰かを、孤独の闇から救い出すっ…!!)




希「絶対にっ…!負けへんからなぁぁっ…!!」




希(そう唸り、まずすべきことを確認する)

希(とにかく…悩んだらひとりで悩むな。カッコ悪くても、誰かを頼る)

希(うちの知っていることで、真姫ちゃんに教わったことでもある)

希(今うちが頼れるのは、真姫ちゃんしかおらんから)

希(音楽室で練習しているあの子達に頼るのは後回しにして、まずは真姫ちゃんに連絡を取ろう)

希(彼女の電話番号に向けてコールする)


希「…無茶するんはうち自身でいいから、せめてアドバイスだけでも…」

希「お願い、真姫ちゃんっ…!」


プルルルルッ… プルルルルルッ…


ピッ


希「あ、もしもし真姫ちゃん?実は…」






『おかけになった電話は電源が入っていないか電波の届かない場所にいるためお繋ぎできません』





希「…あれ?」

次回に続く ほなな

乙以外にもなんか言ってくれてもええんやよ ありがたいけどね
んじゃ続きやっていくます

音楽室


ことり「よーしっ!もうワンセットー!」

海未「ふっ、はっ…」

花陽「よととと…」


海未「ふー…、そろそろいい時間でしょうか」

ことり「そだね。じゃあ最後に…うーん、どうしよっかなぁ…」

花陽「なんか…やっぱり真姫ちゃんがいないと締まらないね…」

海未「そうですね…。3人だとどうしてもバランスが悪くなってしまいますし」

ことり「こうしてここに集めてくれた子がいないって考えると、なんか寂しい気分もあるよね」

花陽「また、一緒に練習できるようになるといいね…」

海未「はい…、一刻も早くその時が来ることを願って…」

ことり「明日休みなんだし神田明神で練習する分には真姫ちゃん来てもいいんじゃないかな?」

花陽「…」

海未「…」

海未「そういえばそうですね!」

花陽「だねー!あははははは…」


ブルルルル… ブルルルル…


ことり「…あれ?携帯のバイブ音…誰のだろう」バッグガサゴソ…

海未「私ではありませんね」

花陽「あ…私だ。えーっと…、希部長からだね」

ことり「何かな?」

花陽「うん。…はい、もしもし。花陽です」

花陽「…え?うぅん、来てない、ですけど…」

花陽「はい…。はい、わかりました。じゃあ…」ピッ

海未「部長はなんと?」

花陽「…真姫ちゃんに連絡がつかなくて、こっちに来てないか、って」

ことり「連絡が?」

花陽「うん。何回かけても電源が入っていないか電波の届かない場所にいるか、って…」

海未「どうしたんでしょうか…。何かあったのか…」

ことり「ま、ま、まさかっ…!また誰かに襲われちゃった、なんて…!」

海未「いや、そんな…。そんなことないと思いますが…」

花陽「でも、前にも一度同じようなことがあったし…」

花陽「ま、真姫ちゃんっ…!大丈夫かな、心配だよ…」

花陽「もし、明日の練習にも来ない、なんてなったら…っ!!」

海未「か、考えすぎですよ…。きっと真姫は明日、練習に来てくれます」

ことり「…そう、だといいけど」

その夜

希の家


希「…真姫ちゃん」


希(家に帰っても当たり前のように真姫ちゃんの姿はなくて)

希(もう夜も夜やというのに、未だ帰って来ない)

希(最悪、警察に通報しようかとも考えたけど…)

希(…真姫ちゃんの出自じゃ、却って厄介なことになるだけ、やよねぇ…)

希(二つの意味で、うちに頼れるものはなくなってしもた)

希(真姫ちゃんの心配と、…そして西木野さんの心配で頭がいっぱいで)

希(考えなきゃ、って思っていたことも、考える余裕がない)

希(ただ時間だけが無意味に過ぎてゆく…)



希「…はぁ」

希「せっかく二つ作ったんやから、食べて欲しかったなぁ…」


希(真姫ちゃんがいつ帰ってきてもいいようにちゃんと、晩ご飯は真姫ちゃんの分も作っておいたんやよ)

希(すっかり冷えてもて…明日の朝ごはんはこれをチンしたやつやからね?)

希(…もし明日も帰ってこなかったら、明後日で、明後日もダメだったら…)

希(ダメ、だったら…)



希(…ずっと、帰ってこなかったら)




希「…そんなん、やめてよ」

希「いつか、いなくなるってわかってるけど…、いなくなるんやったら…いなくなるいうてからいなくなってよっ…!」

希「黙って帰っちゃうなんて…そんなん許さへんからね…!」

希「食費だって、生活費だって…うちが全部負担してあげててんからっ…!」

希「返さないで帰るとか、最低やんっ…!!」

希「返してくれるまで、延々と呪い続けたるんやから…」

希「だからっ…、はよぉ…はよ、帰ってきてよ…」

希「…真姫ちゃん」


ピンポーン


希「っ!誰か来たっ…!もしかして…」デンワガチャ

希「…はい、どちら様?」


『…私よ、希。西木野じゃない方の、真姫ちゃん』

『入っていい?』


希「ま、真姫ちゃんっ!!今まで何を…いや、うぅん、入っていいよ!」


『…わかったわ。ちょっと、驚くかもしれないけど…まぁ、気にしないでね』

ガチャッ


希「真姫ちゃんっ!おかえりっ!もー、どうしてこんな遅くまで…って、え…?」

数時間前


真姫☆「…ん、ぅ…」

真姫☆「あれ、ここ…」


真姫☆(意識が混濁している…)

真姫☆(私は今まで、一体何を…)

真姫☆(どうして、こんなところで寝て…)

真姫☆(…確か、秋葉原を歩いている途中に…)

真姫☆(そう、誰かに急に捕まえられて)

真姫☆(そのまま路地裏に引っ張りこまれたのまでは覚えてるんだけど…)

真姫☆(そこから意識を失って…)

真姫☆(…でも、どうして。前、絵里の派閥に捕まった時は変なクスリを嗅がされたみたいだったけど…)

真姫☆(今回は何にも嗅がされた感じはなかったし…それに確か…)

真姫☆(気を失う寸前に…あの目眩が…)

真姫☆(…そんなことより、絵里たちに捕まったのだとしたら…)

真姫☆(早く逃げないと…!また良からぬ目に…)


真姫☆「…って、あれ?」

真姫☆「特に縛られていない…」


真姫☆(私は小さなベッドに寝かされていて、身体を拘束されている様子もなかった)

真姫☆(っ…!じゃあまさか、この部屋自体に私を捕まえる仕掛けがっ…!?)

真姫☆(くっ、なんて卑劣な…!こんな薄汚いどことも知らない密室に私を閉じ込めるなんて…!)

真姫☆(こんな…見知らぬ…部、屋…に…)


真姫☆「…いや」

真姫☆「ここ…知ってる…?」

真姫☆「なんだか随分と…見覚えのある、部屋…の気が、する…」

真姫☆「長い間見なかったけど、長い間過ごしていた…」

真姫☆「…まさか、ここって」



「…あ、目、覚めた?」


真姫☆「っ…!」


「もー、急に気を失っちゃうんだもん。びっくりしたよー。もう平気?気分悪いとことかない?」


真姫☆「あ、あなたはっ…!」

真姫☆「凛…」


凛「…ん?凛だけど、何かにゃ?」

真姫☆「や、やっぱりっ…!」

真姫☆「私を捕まえたのはあなただったのね!」

凛「えっ、いや、捕まえた…うん、まぁ捕まえたけどさ」

真姫☆「このっ…、卑怯よ!」

凛「え、何が!?」

真姫☆「言いなさい!何が目的なの!私を捕まえてどうする気!」

凛「え、いや…その、あの…」

真姫☆「あなた一人でどうこうできるとは思えない…!絵里になんて指示されたの!?」

真姫☆「もし花陽たちに手を出す気なら私、あなたにも容赦はしないっ…!」

凛「えぇっ!?か、かよちんに手を出す…、なんて、アハハ、そんなぁ…///」

凛「んー、まぁ?法と世界が許すなら別に凛はかよちんに手を出してもいいんですけどー…ってそんなつもりは更々ないからねっ!?」

真姫☆「何をわけのわからないことをっ…!」

凛「わけわかんないのはそっちのほうだよ!どうしちゃったの真姫ちゃん!?」

凛「やっぱなんか変なモノでも食べた!?変な蟲に寄生された!?変なベルで催眠をかけられた!?」

真姫☆「あなたこそ何を…、あれ」

真姫☆「凛、その服…」

凛「へ?服?いつものナース衣装だけど…」

真姫☆「いつもの…」

凛「ん?」

真姫☆「…」

真姫☆「今日の西木野☆星空クリニックはここまで!」

凛「次にヤバい病気にかかっちゃうのはあなたかもね?」

真姫☆・凛「「まじ☆えんじぇー!!」」



真姫☆「りぃぃぃんんっ!!!!?あなたっ…、凛ねっ!?」

凛「どぅぁからさっきから凛は凛だって言ってるでしょぉぉっ!!?」

真姫☆「じゃあ、じゃあここはっ…」

真姫☆「この薄汚い、嫌になるほど見覚えのある部屋はっ…!!」

凛「クリニックだよ?」

真姫☆「っ!!」

真姫☆「わ、私…」



真姫☆「帰ってきちゃった…?」

凛「…真姫ちゃんがクリニックから転落したと知って一ヶ月…」

凛「凛は真姫ちゃんを探しに探し続けたにゃ」

凛「様々な世界に行っては帰り、また行ってはちょっと観光してすぐ帰り…」

凛「…時々数日間異世界で遊んだりもしたけど」

凛「そんなこんなでようやっと真姫ちゃん…凛の真姫ちゃんが見つかって、心の底から叫びだしたいほど嬉しかったんだけどー…」

凛「同時に不注意で転落しやがったおかげでこんなにも必死で探させられる苦労も味わせてもらったって考えるとちょっぴりイラッ☆ってしちゃったから…」

凛「少し驚かせたろーと思ってお得意の異次元CQCで真姫ちゃんの身柄を拘束させてもらったら…」

凛「…なんか知らんけど気を失っちゃってこちとら大パニックだよ」

凛「もし凛のおふざけが真姫ちゃんを死へと追いやったなら後追い自殺する気マンマンだったりしたんだけど」

凛「どうやら心臓は動いてるみたいだったから一安心。寝てる間にクリニックに運んでこの世界へと戻ってきたってわけにゃ」

凛「どぅゆぅあんだすたん?」

真姫☆「…理解したわ」

真姫☆「つまり凛の感覚ではまだ世界は1ヶ月しか時間経過していない…ということなのね」

凛「世界…ってか凛は、だね。世界自体はたぶん一日も経過してないんじゃないかな」

凛「真姫ちゃんはどれくらい?」

真姫☆「私は…3ヶ月弱ね。前の経験も含めたらそろそろ二年生に年齢が追いつきそうだわ」

凛「海未ちゃんあたりはゆうに追い越してるね」

真姫☆「…そうね」

凛「いやー、でも見つかってホントに良かったよー。経過した時間も数ヶ月程度で済んで!」

凛「もし時空壁が数年後の時点にあったら大変なことになってたし、不幸中の幸いだね!」

真姫☆「時空壁…?」

凛「とにかくこれで万事解決!やっと真姫ちゃんとの平穏な暮らしが戻ってきたって考えると一安心にゃー」

真姫☆「…そう、ね…」

真姫☆「万事解決…よね…」

真姫☆「…」

真姫☆「…ってぇっ!そうはいかないのよぉっ!!」ダダッ

凛「えぇっ!!?真姫ちゃんどこ行くの!?」



西木野☆星空クリニック パイロットルーム


真姫☆「えっと…、確か世界線は…っと…。あぁもうっ!久々過ぎて操作忘れた!」

凛「ちょっとちょっと!?真姫ちゃん帰ってきて早々に何をっ…」

真姫☆「…えぇいっ!今はとにかくっ…!」

真姫☆「西木野☆星空クリニック…改め!西木野☆星空スターゲイザー!発進よっ!!」


ガコンッ ボシュゥゥゥッ!!

グニュワンッ


凛「ぬおわっ…!?ま、真姫ちゃんっ!いきなり時空ワープ!?どこ行く気にゃあぁぁっ!?」

真姫☆「決まってるでしょっ…!」



真姫☆「帰るのよっ…!あの世界へ!」

真姫☆「私はまだ、あの世界でやり残したことがあるんだからっ…!」

グラングランッ…


凛「えぇっ…、ちょっ…うぇっぷっ…!ま、真姫ちゃん、運転荒すぎ…酔うにゃっ…」

真姫☆「おぇっ…ご、ごめんなさい…。一旦止めるわ…」


凛「はぁっ…、足掴まれてぶん回されたみたいだにゃ…」

真姫☆「…この感覚…うぷっ…、あの、目眩と似てる…」

凛「目眩?」

真姫☆「最近、急に目眩を感じることがあるのよ。足元が覚束なくなるような、キツイの」

凛「真姫ちゃんがいた世界で、ってこと?」

真姫☆「えぇ…。つい最近からね」

凛「…じゃあたぶんそれ、時空壁の生成の影響かも」

真姫☆「時空…なにそれ」

凛「…その前に、真姫ちゃんはあっちの世界に戻って何をする気なのか説明してほしいにゃ」

凛「急にこんなことされても、凛戸惑っちゃうよ」

真姫☆「…わかった。説明するわ。私があの世界で体験した、3ヶ月の出来事も全て」











凛「…な、なんてことを…。真姫ちゃん、ガッツリ別世界と絡んじゃったの…?」

真姫☆「まぁ…そうね。私も最初はそんなつもりじゃなかったんだけど。興味本位からUTXに行ったら成り行きで大変なことになっちゃって」

凛「だから、あれほどの時空壁が…。それで、真姫ちゃんはこれから帰ってどうする気?」

真姫☆「もちろん、あっちの世界の私をアイドル専攻から連れ戻す。それがまずすべきことよ」

真姫☆「そのあとは…とにかく!花陽と約束した、笑顔のスクールアイドルを実現させるまでは…帰れない」

真姫☆「私のC☆cuteで、UTXの頂点を獲るまではね」

凛「…なるほど、にゃ。大体わかった」

凛「でも…凛はそれ、オススメできないにゃ」

真姫☆「えっ…!な、なんでよ!」

真姫☆「これ以上別世界に干渉することは許されない、なんて言わないでしょうね!そんな綺麗事、凛らしくもないわ!」

凛「…割と本心で、そう思ってもいるよ。眺めるだけならまだしも、そんなに深く関わるのはホントはやっちゃいけないことだもん」

真姫☆「でもっ…!もう関わっちゃったんだから仕方ないでしょ!」

真姫☆「もう、あの世界に…私の居場所ができてしまったのよ!」

真姫☆「ダメだから、って…それを放棄して帰るなんて、私にはできないわ。約束だって、したんだから」

凛「…うん。その気持ちは凛にも理解できるよ。だから、そのことは問題じゃないの」

凛「凛は…、真姫ちゃんのこと、心配してるんだよ」

真姫☆「え…?」

凛「…もし、真姫ちゃんがあの世界で、これからもアイドルを続けちゃったら…」


凛「もう、真姫ちゃんはアイドルができない身体になっちゃうかも、しれないんだよ」

真姫☆「ど、どういう意味よ、それ…」

凛「真姫ちゃんが最近感じてる目眩のこと」

凛「あれは、時空壁があの世界に生成されたことによる時空振動によって、真姫ちゃんの身体が揺り動かされたことによって起こされる現象なの」

真姫☆「え、えっとー…?いきなり難しい単語が…」

真姫☆「さっきから言ってる時空壁、ってなんのことよ…。時空振動は歴史の改変が行われた時に感じる身体の揺れ…のことよね?」

凛「うん。大体それでいいよ。時空壁、っていうのは、その歴史の改変を行われないように、世界が取る防護策、だにゃ」

真姫☆「世界…?世界自身が、歴史の改変を防ぐ、ってこと?」

凛「そう。…あのさ。真姫ちゃんがあの世界にいるって分かったなら、真姫ちゃんがあの世界に落ちた3ヶ月前に行って、その時の真姫ちゃんを拾ってくればいいと思わない?」

真姫☆「え?あぁ…そうね。それなら凛が1ヶ月私を探し回っただけで済むんだから」

凛「でも、それはできないの。なぜなら、時空壁が邪魔をしているからだにゃ」

凛「時空壁が生成されると、それ以前の時間へは戻ることができなくなる」

凛「まさしく、時間を遡る上で立ちはだかる壁、みたいなもの」

凛「凛があの世界でたどり着ける最も経過の少ない時間が…真姫ちゃんが今まで過ごした3ヶ月のラインだった、ってこと」

真姫☆「そう、だったの…。でも、どうしてその3ヶ月の時点で、時空壁が生成されたの?」

凛「それは、真姫ちゃんがあの世界の真姫ちゃんと接触したことが原因…なんだと思う」

真姫☆「えっ…でもあの世界にたどり着いた初日にも、あっちの私と出会ったけど…」

凛「…うん、じゃあちょっと違うかな…。正確には、『あっちの真姫ちゃんが、異世界の真姫ちゃんを認識してしまった』ことが原因」

凛「その時点で、世界はパラドクスを起こしてしまったにゃ。本来はあり得なかった、あり得る筈のない歴史を」

凛「世界が拒絶反応を起こしてるの。真姫ちゃんに対して。その結果が、時空壁の生成」

凛「そして、その際に起こる時空振動の波、だにゃ」

真姫☆「…つまり何。私が目眩を起こすのは京都で言うところのぶぶ漬けを出されている状態ってこと?」

凛「うん、そんな感じにゃ」

真姫☆「じゃあ私はそのぶぶ漬けを喰らい尽くしてやるわ。その程度の催促で帰るわけにはいかないの」

真姫☆「目眩が辛かろうが、私はっ…!」

凛「でもっ!…そんな状態で、真姫ちゃんにアイドルが務まると思う?」

真姫☆「…」

凛「このままあの世界に真姫ちゃんが居続けたら、更に大きな目眩だって引き起こすかもしれない」

凛「その目眩が練習中や、ライブ中に起こってしまったら…大怪我するかもしれないんだよ」

凛「そうなったら真姫ちゃんは…最悪、もう動けなくなっちゃうかも知れないんだよ」

凛「そうでなくても本番中にぶっ倒れでもしたらどうなるか…知らない真姫ちゃんじゃないでしょ」

凛「…どっちみち、これ以上あの世界で真姫ちゃんにアイドルは無理、だよ」

凛「諦めてよ。真姫ちゃん…」

真姫☆「…」

真姫☆「…っは」

凛「にゃ?」

真姫☆「ははは…あははははっ!なによ…なによ、そんなこと?」

真姫☆「…なら、なんの問題もないわ」

真姫☆「アイドルできないってんなら…しなきゃいいのよ」

真姫☆「しなくても、夢は叶えられる。とっくに私の代替を用意する計画だって…考えてあるんだからっ…!」

真姫☆「だからあなたが何を言おうと、私はっ…!」グイィィッ…!!


ガコンッ…!!

凛「ひぃぃっ!!ま、真姫ちゃんっ!!」

真姫☆「あの世界へ帰る!私の、花陽の…みんなの夢を叶えるために!」

グワングワンッ…!!


凛「待ってよ真姫ちゃんっ!!い、いくらアイドルはやらないからって…!」

真姫☆「っ…」

凛「目眩はあの世界に居続ける限りいつ襲ってくるかわからないんだよ!」

凛「身体を揺らされる目眩と吐き気…真姫ちゃんも体験して…ううぇっ…こ、こんな感じだよぉっ!!」

凛「これがぁっ…、ほ、発作的に襲って来るのに…!真姫ちゃんにこんな苦痛、凛、見過ごせな…」

真姫☆「うっさいわねぇっ!!」

凛「まっ…」

真姫☆「…私だって、そのくらいわかってる…!」

真姫☆「けど、諦めるわけにはいかない…うぅん、諦めたくないっ!」

真姫☆「これが今私の、やりたいことなんだから!」

真姫☆「苦痛がなによっ…!あっちの世界でだって、それを耐えて、耐え抜いて…今頂点目指して頑張ってるにこちゃんもいるのよっ…!」

真姫☆「それを考えれば、この程度の揺れっ…!屁でもないわ!!」

凛「…真姫ちゃん」

真姫☆「お願い、凛…。行かせて」

真姫☆「あなたは…い、一ヶ月に一回くらい様子見に来てくれればいいから。あなたにとっては時空跳躍ですぐなんだし」

凛「…はぁ。わかったにゃ。そこまで言うなら…もう止めないよ」

凛「でも、約束」

凛「決して、無茶はしないで。真姫ちゃんが倒れるところなんて、想像したくないよ」

真姫☆「…ごめん、凛。それは約束できない」

真姫☆「もう今までだって、無茶しかして来なかったんだもの」

真姫☆「だから…ぶっ倒れそうな時は誰かを頼るわ」

真姫☆「幸運にも、私の周りには…私を、支えてくれる人がたくさんいるもの」

凛「…ふふ、羨ましいこというね!」

凛「よぉしっ!このままあっちの世界へレッツゴーだよ!」

真姫☆「えぇ、そのつもりよ!」



凛「うぅっ…、も、もう少し…もう少しで到着だよ…」

真姫☆「うん…。そろそろっ…見えた!時空の出口…!」


シュバァッ!!


凛「ふぅっ…よ、ようやく着いたにゃ…。どこにクリニックを着陸させよっか…」

真姫☆「ここからなら、そうね…。やっぱり近いところで音ノ木坂学院跡地が一番…」


グワンッ…!!

真姫☆(うっ…!!?)


真姫☆(この世界に着いた途端、身体を大きな揺れが襲った)

真姫☆(でもそれは、クリニックでワープしている時なんか比べ物にならないほど、激しい揺れで…)


真姫☆「あ、うぐっ…!!」ガクッ

凛「え、ま、真姫ちゃっ…!!」


真姫☆(思わず、倒れこむ)

真姫☆(その時、無意識に身体を支えようとハンドルに体重をかけてしまい…そのまま…)

グリュルンッ…!!



凛「ま、ま、ま真姫ちゃぁんっ!!クリニックが傾いてるっ!!」

真姫☆「り、凛っ…ごめ…んっ」

凛「あぁもうだから言わんこっちゃないにゃ!くっ、このままじゃ二人まとめて墜落してお陀仏だよ!」

凛「なんとか…今から体勢を立て直っ…すっ…!!」グググッ…!!


真姫☆「…ごめん、なさい…凛…」

真姫☆「私の…せい、で…」


凛「バカっ!何泣き言言ってるの!?」

凛「真姫ちゃんは今から無茶するんでしょ!」

凛「こんなとこでへこたれてちゃっ…、聞いて呆れるよっ!!」

凛「こんくらいのヘマ…凛に任せておいてっ!」

凛「ぬおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」グググググッ…!!


ユラユラユラッ…


凛「く、なんとか墜落コースからは外れた、けどっ…!」

凛「安定着陸は無理っぽいぃっ…!く、仕方ないにゃっ…」

凛「多少機体が削れることは覚悟の上でっ…胴体着陸するしかないっ…!!」

凛「真姫ちゃん!なんでもいいからどこかに掴まってて!めっちゃ揺れるよ!」

真姫☆「わ、わかった…」ガシィッ!!

凛「うおぉっ!?ま、真姫ちゃん胸があたってまんがな!?なんで凛掴むの!?クリニック掴まないと意味ないって!」

真姫☆「アンタも…支えてあげないとっ…着陸の衝撃で吹っ飛ぶかもしんないでしょっ…!」

真姫☆「身体の固定は私に任せて…、アンタは着陸に集中しなさいっ…!」

凛「…っ!わ、わかった!ってもう地面が目の前っ!!」

凛「ぬ、ぬあああぁぁぁぁっ!!!」



ドッサァァァァァッ!!



シュゥゥゥッ…


凛「…」

真姫☆「…」

凛「…真姫ちゃぁん…」

真姫☆「なにぃ…?」

凛「…生きてる?」

真姫☆「…割と」

凛「そっか…良かったにゃ…」

凛「全っ然良くないよ!?」



音ノ木坂学院跡地


真姫☆「…動力部がイカレてるわね…。これじゃ飛行できそうにないわ」

凛「こ、これでクリニックが壊れるの何回目だよぉぉぉぉ…」

真姫☆「幸い時空転移装置は無事だったんだし、動力部さえこの世界で賄えばなんとかなるわよ」

凛「それまでどうするの…。クリニックも中グッチャグチャで到底衣食住に満足できるとは言い難いよ」

真姫☆「それは…」

真姫☆「…仕方ない。彼女に…厄介になるしかないわね」

凛「彼女…?」

真姫☆「とにかく、クリニックの中から使えるものを手当たり次第持って行くわよ。そんでステルスモードで外部の人間からは見えないようにしておいて」

凛「わかったにゃ…。で、どこに行くの?」

真姫☆「…ついてきたらわかるわよ」





希の家


希「…そんで、そんなボロボロなんやね」

真姫☆「えぇ、驚いたでしょ。あと、養うヤツもひとり増えたわ」

凛「えーっと…は、初めまして。星空凛といいます。希ちゃん…だよね?これからお世話になります…」

希「うん、初めまして。この凛ちゃんはあっちの凛ちゃんより可愛げがあっていいね」

真姫☆「そうでしょ?私の自慢の凛なんだから」

凛「…今はそれより、この荷物と衣服をどうにかしたいよ」



シャー…

凛「ふひー…、いちちっ…。お湯が傷に染みるにゃぁ…」


真姫☆「…希。これ」

希「え?これ…封筒?なによこれ…」

真姫☆「いいから」

希「…あっ!これ…お金やん!どうしたんよこれ!」

真姫☆「今までの生活費、賄ってもらってた分、返しておかないとと思って。お金も用意できたしね」

希「え、でも…」

希「…」

希「…いらんよ。うちは…真姫ちゃんさえ戻ってきてくれればいいんやしっ。はい、返す」

真姫☆「残念ながらクーリングオフは受け付けていないわ」

希「せやけど…明らかに真姫ちゃんの生活費より多いし…。こんなたくさん受け取れへんよ」

真姫☆「いいのよ、それで。…だって」

真姫☆「これからも、ちょっとの間厄介になるんだから。そのお金で、たっぷり美味しいもの、食べさせてちょうだいよ?」

希「っ…!ふふっ…」

希「…わかった。頂いとくわ。真姫ちゃん、ご飯は?」

真姫☆「まだよ」

希「じゃあ今からっ…、ホッカホカの美味しいご飯作るから、ちょっと待っててね!」

真姫☆「…えぇ、ありがとう。希」

今日はここまでにゃ
ほんの一言でもいただけるとモチベの維持につながります そしてストーリー全然すすまねぇぇぇ
まだしばらく時間がかかりそうだNE 楽しみに待っててね ほなな

うちの凛ちゃん大人気で嬉しい限りです
そんじゃ今日ものほほんと続きをば

凛「はぐはぐはぐ…っ!んんーっ!おいしいにゃー!」

希「ゆ、ゆっくり食べな?凛ちゃん、見ていて気持ちがいい食べっぷりやね」

凛「だって…がつがつ…こんな美味しいご飯食べたの久しぶりだよーっ!もぐもぐ…晩飯パクパクにゃ!」

真姫☆「あなただってお料理上手じゃない」

凛「それは二人暮らしする上で真姫ちゃんがあまりにも料理下手なせいで上手にならざるを得なかったの!命の危機すらあるからね!」

希「そうなん?」

真姫☆「…私の得意料理はもっぱらトーストだわ」

凛「でも凛は自炊するの好きってわけじゃないしー、最近はコンビニご飯や安い外食で済ましてたのー」

凛「だから希ちゃんのご飯は五臓六腑に染み渡るほど美味しいよー!凛よりずっとずっと上手だね!」

希「そこまでストレートに褒められると照れてまうなーえへへ…」

真姫☆「けどもう少し静かに食べなさいよ。ほら、机にこんなにご飯のくず零して…バカ」

凛「うぅ…!真姫ちゃんの優しい罵倒も久々にゃ…。けど言うことは聞かない」ガツガツ

真姫☆「…はぁ」

希「いいよいいよ。うちが後片付けしといたげるし」

真姫☆「…甘やかすのはいけないと思うわ」



凛「ふひー…けぷっ…。食った食った…。もう食べられないにゃ…ぐてー」

真姫☆「食ってすぐ寝ない。はぁ…だらしないわね」

凛「ごめんにゃー」

希「…ふふふ」

真姫☆「何笑ってんのよ」

希「ん?あ、いや…仲がいいんやな、って思って」

凛「凛と真姫ちゃんが?そりゃまー…親友だもんね!」

真姫☆「今のやり取りで仲が良さそうに見えるのもどうかと…まぁ、仲は悪くはないわね」

凛「素直じゃないんだから真姫ちゃんはーこのー」プニプニ

真姫☆「ほっぺたつつくな」

希「…いやぁ、羨ましいわ。うちにもそんなことできる友達がいればなぁ…」

凛「え、希ちゃん友達いないの?意外だね」

希「んふっ、昔はおってんよ?今は…」

真姫☆「今もいるでしょ。私たちが。ほれ、ぷにぷによ」プニプニ

希「やーん。…ふふふ、そ、やね…。あははは…」

凛「凛もぷにぷににゃ!うりゃうりゃ」プニプニ

希「もー、凛ちゃんまでっ。それっ、しかえしや!」

凛「むにーっ!ほっぺ挟むのにゃしだにゃぁぁぁ…」

真姫☆「んふふふっ…」


凛「ふわぁぁぁ~…なんだか眠たくなってきたにゃ…」

真姫☆「あなたが?珍しいわね…いつもは夜ふかししまくってるのに」

凛「最近は真姫ちゃん探しで疲れが溜まってたからねぇ…。安心したらどっと眠く…」

希「じゃ、うちの部屋に布団、用意しといたから。眠たかったらいつでも使ってくれていいよ」

凛「ありがとうございます…。ほんじゃ、お先にねんねするね…。おやすみぃぃ…」

真姫☆「えぇ、おやすみ」

希「おやすみな」

真姫☆「…希」

希「ん?」

真姫☆「話したいこと、何かあったんでしょ?」

希「えっ…どうして?」

真姫☆「そんな顔してる。相談したいことがあるってツラよ」

希「へぇ…真姫ちゃんも相当洞察力高いね。次のアイドル応援部部長は真姫ちゃんで決まりかな?」

真姫☆「残念だけど…あなたが卒業する前にこの世界からはいなくなる予定よ。…本当に、残念だけど」

希「そっか…。うん、それは仕方ないことやけどね…」

希「…せやね、悩み事…相談したいことあったんよ。西木野さんのことについて」

真姫☆「まぁそうでしょうね。今日アイドル専攻に行ってきたんでしょう?何があったの?」

希「…何が、うーんと、色々なことがあったね…」

希「何から話せばいいか…」


希(うちは思いつく限りの、今日うちが見たこと、聞いた話を真姫ちゃんに話した)

希(西木野さんが乱暴な指導の仕方をしていたこと、それがえりちの指示だということ)

希(えりちは西木野さんを愛するという条件で西木野さんを指導補佐に仕立て上げたこと)

希(西木野さんの収まりかけていた、アイドルと学校が嫌いという感情が、再び芽生えてしまったということ)

希(それと後…穂乃果ちゃんにも、真姫ちゃんが二人いると知られたことも、ついでに)


真姫☆「…穂乃果に?だ、大丈夫なの…?学校にチクられたりしたら…」

希「穂乃果ちゃんはそんなことしないと思うから平気やよ」

真姫☆「そ、そうかしら…生徒会長就任演説を聞いてたらかなり厳しそうだったけど」

真姫☆「少しの異常も見逃さないような…」

希「サボりや規則違反には厳しいかもしれないけど、事情があるなら穂乃果ちゃんはそこらへん寛容やよ」

希「あの子にはちゃんとした、優しさも兼ね備えているから」

真姫☆「あの穂乃果に、優しさ…?私には理解できそうにないわね…」

希「…ま、穂乃果ちゃんとの付き合いはそこそこ長いからね、うちは」

真姫☆「…それはいいとして、あっちの私…、絵里にいいように使われちゃってるわね」

真姫☆「希の言っていた、誰かに染まりやすい状態っていうのをまんまと利用されちゃったって感じね」

希「そう…うちも知っていたはずやのに…。西木野さんはえりちにアイドル専攻へ勧誘されたってことに」

希「人の心を操るのが得意なえりちなら、西木野さんの信頼を勝ち取るくらい楽勝だなんて、わかりきってたことやったのに…」

希「…そのことまで、頭が回らなかったうちの失態や…。もっと注意するように言っておくべきだった…」

真姫☆「行っても無駄よ。絵里はそんな猜疑心を煽る言葉も忘れされるでしょう」

真姫☆「きっとあっちの私にとって、誰かに愛されるということは何事にも代え難いほどの充足を得られる行為なのでしょうし」

真姫☆「あなたからちょっとの注意を受けたところで、その誘惑に勝てるとは思えないわ」

希「…せやね。じゃあうちがずっと付き添って…いや、現実的に無理か、それは」

真姫☆「そう。そして今考えるべきは、あの時こうしていればよかった、なんかじゃない」

真姫☆「これから、どうするべきか。それだけよ」

希「…うん」

真姫☆「あなたには何か、考えていることはないの?あっちの私をアイドル専攻から抜け出させる方法」

希「ひとつだけあるとすれば…、えりちの本心の言葉を、西木野さんに聞かせる…かな」

希「えりちは西木野さんのことを信頼して…なんて言ってたけど、そんなはずない」

希「自分が都合よく動かせられるから…西木野さんを選んだにほかならないはずや」

希「愛するなんて、形だけ。西木野さんは騙されているだけに過ぎないんだって、彼女に気づかせれば…」

真姫☆「…それで、本当にいけると思う?」

希「えっ…」

真姫☆「私は…それじゃダメだと思うわ」

希「そ、そんな…。なんでそう思うん?」

真姫☆「きっと私なら…騙されていてもいい、って考えるもの」

希「騙されていても…?」

真姫☆「形だけでも…愛されていたい、って」

真姫☆「相思相愛でなくても、愛されるという行為を受けてじぶんが満ち足りていればただそれでいい」

真姫☆「そういう考えなはずよ。アイツは」

希「そうなん…?」

真姫☆「…まぁ、私だとしたらそう思うかも、って想像だけど。でも私とアイツは一応同一人物だし」

真姫☆「アレはアレで、引っ込み思案っぽく見えて…意外と我が強いヤツよ」

真姫☆「自分が正しいと思うことは正しい…そう思いこんで止まないタイプ」

真姫☆「彼女に考えを変えさせるなら…もっと根本から叩き直すべきね」

希「叩き直す…、具体的に言うと、どうするべき?」

真姫☆「つまり、愛されることが幸せでないと考えさせる」

真姫☆「あなたの言うように、仲間を持つことが大事なのだと考えさせることが必要だと、私は考えるわ」

希「西木野さんに、仲間を大事に思わせる…」

希「…でもそれは、無理やよ」

希「今の西木野さんに…えりち以外の言葉は届かない」

希「そうするならやっぱりまずはえりちの本心を聞かせて信頼を緩める方が…」

真姫☆「そうしても、愛されることが幸せだと考えているうちは、彼女の本心を語っても信頼は揺るがないわ」

真姫☆「信頼といっても、一方的に依存しているだけだもの。絵里が必要でないと思わせることの方が優先されるわ」

希「でも説得しようとしても…」

真姫☆「彼女は話を聞かない、でしょうね…」

希「これじゃあいつまでたってもイタチごっこやん…。どうしようもない…」

真姫☆「…私だけの考えじゃ、どうしようもならないわね」

真姫☆「もう夜も遅いし、明日…、休日だし、神田明神でみんなの考えも聞いてみましょう」

希「そっか…、明日は学校じゃないから真姫ちゃんも一緒に練習、できるんよね。ふふ、みんな喜ぶやん」

真姫☆「…、それがね…」

希「ん…?」

西木野家

真姫の部屋


真姫「…」


コンコン


真姫「…はい?」


『…真姫?起きてる、かしら…』


真姫「ママ…」


『あの…、今日帰ってくるのが遅かったけど…何、してるのかなー、って』

『もしかしたら、お友達ができて遊んでて遅くなったのならママ…』


真姫「…いいじゃない、別に」

真姫「私がなにしてたって…ママには関係ないことよ」

真姫「もう、寝るから…ママも部屋に帰ってよ」


『…』

『…うん、ごめんね。あ、明日お休みだし、久しぶりに一緒にショッピングなんて…』


真姫「明日は朝から学校へ行くの。用事で」

真姫「だからいかない。明後日も」


『…そう。そうなの…。わかった、おやすみなさい、真姫…』


真姫「…」




真姫「明日も、学校…」

真姫「…面倒くさい、けど…」

真姫「あの人に、愛されるため、だもの…」

真姫「希先輩を敵に回してでも…」

真姫「…っ」

真姫「なに弱気になってるの…、自分で選んだ道なのに…」

真姫「また、昨日みたいになっちゃう…揺らいでちゃ、ダメ…!」

真姫「…そう、昨日…。絵里から…あんなこと告げられた、後みたいに…」

~回想~


昨日の夕方 音楽室


絵里「…ってことなんだけど…どう?」

真姫「えっ…」


真姫(彼女の話した内容が複雑過ぎて、私には理解の埒外だった)

真姫(かろうじて理解できたのが…、私に彼女の担当している、アイドル専攻の指導補佐を務めてほしいとと言われていることと…)

真姫(そうしてくれたら…、彼女は私のことを…愛してくれる、と言ったことくらいだった)


絵里「なんて…急に言われても、難しいわよね」

絵里「ふふ、でも私はあなたならできるって考えてのことなのよ。あなたの才能を枯らせるなんて勿体ないって思って」

絵里「難しいことをするわけじゃないわ。ただ私の言うとおりに動いてくれればいいだけ」

絵里「たったそれだけのことで、私はあなたに報酬を与えられる」

真姫「報酬…」

絵里「…あなたを、愛してあげる」

絵里「あなたが愛に飢えているのは見てすぐにわかったわ。誰かに愛されたくて、しょうがないんでしょう?」

絵里「それも親からではない…他人からの愛情。自分のために尽くしてくれる、誰かからの愛」

真姫「…ぅ、どう、して…」

絵里「ふふ、そういうの感じるの、得意なのよ」

絵里「でもあなたも…贅沢よね。そんな愛情、そうそう手に入るものじゃないわよ?」

絵里「よっぽどの美貌を持つ大金持ちとかか…もしくは、赤ん坊とか」

絵里「普通はそんな大それた愛情を求めるのは、おこがましいと考えるわ」

絵里「でも…私はそれを与えてあげられる。いつでも、ってわけではないけど…出来うる限りずっとね」

真姫「ずっと…?」

絵里「えぇ…。私が卒業しても、ずっと。休日はあなたと一緒にいてあげてもいい」

絵里「なんなら…私が一人暮らしを始めたら、あなたもそこに住んだって構わないわ」

真姫「ホント、に…?」

絵里「えぇ…本当に」

真姫「だ、だったら私っ…!!やるっ!やりますっ…!」

真姫「あなたに愛されるなら、それで…」

絵里「…でも、ほんの少し覚悟して欲しいことがあるわ」

真姫「えっ…」

絵里「指導って結構大変なのよ。難しくはないけど、休日は日中全て埋め尽くされるし」

絵里「休日のプライベートの時間はあまり用意されない、って考えてちょうだい」

真姫「…それくらいなら、大丈夫です。休日、誰かと遊んだりなんて…しないし」

絵里「そう。それならいいわ。…そして、あともう一つ」

真姫「もうひとつ…?」

絵里「…アイドル専攻の指導になる上で」

絵里「必ず…この学校のもう一つのスクールアイドルと敵対することになる」

真姫「あ、そ、それって…」

絵里「もちろん、そんなところに属している人たちや…それに与する人たちとも仲良くしてもらうと困るのよ」

絵里「だから…」


絵里「…東條希とは、決別しなさい」

真姫「ぇっ…!」

絵里「彼女と今後一切関わりを持たないこと。それが指導補佐になるために必要なことよ」

真姫「わっ…、私、それはっ…!」

絵里「…できないって言うの?なんで?」

絵里「彼女が、あなたに優しくしてくれたから?」

真姫「ぁ、うっ…」

絵里「ふふ…、あの子のことを好きになっちゃう気持ちはよーくわかるわ。でもね…」

絵里「あなたが希のことを好きでも…希はあなたのこと、好きなのかしら?」

真姫「え…」

絵里「あなたが欲しているほどの愛情を、彼女が与えてくれると思う?」

絵里「さっきも言ったけど、そんなの…なかなかもらえないわよ」

絵里「今の希は既に恵まれている…。あの子の欲しているもの、ほとんどをあの子は与えられている」

絵里「そんな満ち足りている彼女が、あなたまで欲するなんて…思えないでしょう?」

真姫「…それ、は…」

絵里「でも、私は違う」

絵里「私は…あなたが欲しいの。今はただ…あなた一人が欲しい」

絵里「だから私はあなたを愛してあげられる。あなただけを」

絵里「ね?どっちがいいか、なんて…子供でもわかるでしょ?」

真姫「…」

絵里「まだ、私を信用できない?」

絵里「それも仕方ないわよね。…うん、いいの」

絵里「まだ混乱して正常な判断ができないのはわかるわ。だから…考える時間をあげる」

絵里「そうね…明日、までってどうかしら」

真姫「あし、た…」

絵里「そんなに待ってられないのよ。私の後継になりたいって思う人はいっぱいいるから」

絵里「私が特別に、あなたのために与えた一日のチャンス…。これでも最大限頑張って用意してあげたんだから」

絵里「指導補佐、やりたいか、やりたくないか」

絵里「私か、希か」

絵里「…明日、一日、ゆっくりと考えなさい」

絵里「その気になったら、また明日も、この時間に、この場所に」

絵里「それが、あなたを愛してあげる条件」

真姫「…っ」

絵里「それじゃあ、私今からアイドル専攻の方に行かなきゃいけないから。あなたも、帰って検討していて」

絵里「…さよなら、また逢いましょう。真姫」



ガチャッ… バタン


~回想終わり~



真姫「…もう、選んだから」

真姫「希先輩は、いらないんだ、って…。彼女に愛されることだけ、欲したんだから…」

真姫「…」

ごめんぬ今日は頭が回らないのでここまで 2時間で5レスしかできないことで共感してください
ほなな

http://i.imgur.com/HHe8ieT.jpg

短くなっちゃったお詫びと言ってはなんだけどうちの西木野さんのつままれストラップをどぞー

自分の絵でよければ好きに使ってください 髪の毛の端っこが数ドット塗り忘れてるのでついでに修正してくれてもいいですよ
じゃ、今日もぬるりと続きを

翌朝

園田家


海未「…ふ、ぅぅ…はわぁぁぁああぁぁ…」

海未「…あぁ…、今日も、練習…」

海未「しんどいです…」



街角


ことり「おはよー」

海未「おはようございますことり!今日も張り切っていきましょうね!」

ことり「げ、元気だね…」

海未「内部事情が複雑な現在、少しでも元気を出して勢いをカバーしなければいけません!」

海未「真姫のいない分も、頑張るぞー!おぉー!!」

ことり「…」

海未「何ボーっとつっ立っているんですかことり!あなたもほら…、おぉー!」

ことり「お、おぉぉ…」

海未「はい、元気出ましたね!では神田明神へ向かいましょう!」スタスタ

ことり「…元気なのはいいけど朝からそんなに大声だとご近所に迷惑だと…」


ドンッ


ことり「あいたっ…!?う、海未ちゃん!?急に止まらないでよー…、頭に鼻打っちゃった…」

海未「…」

ことり「…海未ちゃん?」

ことり「…ぁ」



穂乃果「…」



海未「…ほ、穂乃果…」

ことり「ぐ、偶然…だね…。こんな時間に…」

海未「…っ!」ソソクサ

ことり「あっ…、う、海未ちゃん…!なんで私の後ろに隠れ…」

海未「ソンナコトイワレテモー」

ことり「声ちっさ!さっきまでの元気どこいったの!?」

海未「シリマセンヨソンナノー」



穂乃果「…ふふ」



ことり「え…?」



穂乃果「…おはよう」スタスタ…



海未「…」ポカーン

ことり「…」ポカーン

神田明神


海未「…」ポケー…


花陽「…海未さん?」

ことり「今日の朝かくかくしかじかなことがあってから、こうなっちゃって…」

花陽「穂乃果さんに挨拶を?へぇ…」

ことり「海未ちゃん、去年の秋からまともに穂乃果ちゃんと話してなかったから…ああやって挨拶をしてくれたことがかなり衝撃だったみたい」

花陽「ほとんど一年ぶり…だもんね。びっくりするよ…」

ことり「どうして…穂乃果ちゃん、挨拶してくれたんだろう…」

花陽「え?」

ことり「…穂乃果ちゃん、海未ちゃんのこと、嫌ってたはずなのに」

ことり「それに、去年から滅多なことじゃ笑わなくなっちゃった穂乃果ちゃんが…笑ってた」

ことり「何か、あったのかなぁ…」

花陽「何か、ですか?」

ことり「…うん。もしかしたら穂乃果ちゃん…少しずつ変わっていってるのかな」

ことり「元の優しい穂乃果ちゃんに…ちょっとだけ」

花陽「もしくは…海未さんのこと、認めてくれたとか」

花陽「私たちも、もうA-RISEに肩を並べる…とまでは言い過ぎだけど、知名度も増してきたし」

花陽「もう、アイドルのことを何も知らない海未さんじゃないから…穂乃果さんも少し心を許してくれたのかも」

ことり「ふふ、そうかもね。なんにせよ、悪い変化じゃないと思う」

ことり「このアイドルがきっかけで、穂乃果ちゃんの心も変わってきてくれたのなら…本当に、やってよかったって思えるよ」

花陽「うん…!」

ことり「…なのに当の海未ちゃんったら」


海未「ぽけー…」


ことり「あんなに不抜けちゃって…。それじゃ穂乃果ちゃんにまた貶されちゃいますよ?」

海未「…うぅ、ごめんなさい…。はぁ…録音しておけばよかった…」

花陽「え、そこまで?」

ことり「…それにしても、真姫ちゃん来ないね。やっぱり誰かに目撃されるのを恐れて…」

花陽「そんな…。今日くらい一緒に練習…」

海未「…って言ってたら来ましたよ」

花陽「えっ」


真姫☆「…ごめんなさい。少し遅れちゃったわね」

海未「もう!遅刻ですよ!」

真姫「希が、起こしてくれなかったから…」

ことり「そっか。今日はバイトで早朝からここのお掃除してるんだよね」

海未「自分で目覚められないって…その年齢で恥ずかしくないんですか?」

真姫☆「…お恥ずかしい話よ。凛に顔見せできないわ…アイツも多分まだ寝てるけど」

花陽「え?凛…?」

真姫☆「あぁ、こっちの話よ。えっと、それで…」

ことり「うん、練習だよね!遅れた分取り戻そう!」

真姫☆「…違うの。それが、私もう…」

真姫☆「練習に参加できない。…うぅん。もう…アイドルが、できない」




花陽「えっ…?」




海未「…ど、どういう…ことですか。アイドルができないとは…」

ことり「C☆cute…やめちゃうの?」

真姫☆「そういうことになるわね…」

花陽「どっ、どうして!?ま、真姫ちゃんがどうしてやめないといけないの!?」

花陽「誰かに…何か言われて、脅されて…!?それで、仕方なくっ…」

真姫☆「違うのっ…!そうじゃ、なくてぇっ…」

花陽「じゃあなんでなのっ!?真姫ちゃんっ、真姫ちゃんが…アイドルを辞めるなんてぇっ…!」

ことり「お、落ち着いて花陽ちゃんっ…!真姫ちゃんの肩、強く掴みすぎ…」

海未「…指、食い込んでますよ」

花陽「あっ…」

真姫☆「…痛いわよ」

花陽「ご、ごめん…。でも…」

真姫☆「わかってる。理由もなしにやめるわけじゃないわ」

真姫☆「あなたたちにも…もう、全部話すから」

真姫☆「C☆cuteを辞める理由も…そして、私が何者であるのかも」










ことり「…嘘」

真姫☆「…本当。今話したこと、全てね」

真姫☆「西木野真姫に、姉なんて存在しない」

真姫☆「今アイドル専攻で指導補佐しているのも西木野真姫で」

真姫☆「ここにこうして立っている私も…同じ西木野真姫」

真姫☆「違うのは、ただ暮らす世界ってだけ」

真姫☆「私は…異世界人なのよ」

海未「…変な映画でも見たんですか?」

真姫☆「全部ガチよ!信じて!」

真姫☆「別の世界の違うスクールアイドルをしていた私が時空を超えてこの世界にやってきた」

真姫☆「それが紛れもない真実なの!…って言っても」

真姫☆「信用されないってことはわかってるわ。…でもとにかく、そういうことなのよ」

花陽「真姫、ちゃん…」

真姫☆「さっき言ったとおり、なんか…意味不明の目眩がこれから度々、発作的に私に襲いかかってくる」

真姫☆「いつ、どこで目眩に襲われるかは私もわからない…。練習中、ライブ中に倒れでもしたら、私の命が危ないの」

真姫☆「メンバーの一人がライブ中に倒れた、なんてなったら、学校側からも何らかの処置が下されるかもしれない、からね」

真姫☆「そういった可能性を危険視して…私はもう、これから…C☆cuteを脱退する」

真姫☆「納得できないかもしれないけど、納得して。お願い」

ぱなことうみ「…」


真姫☆(…まぁ、こんなことを言えば困惑されるのも当然ね)

真姫☆(今はともかく…私が脱退するという事実を受け止めてくれれば、それでいいわ)

真姫☆(それ以外はこれから、ゆっくりと理解してくれたら…)


「…ぅ、だったんだ…」


真姫☆「ん?」


花陽「そう、だったんだ…!」

花陽「真姫ちゃんが異世界人…、だったなんて…!」

花陽「カッコイイ…!!」



真姫☆「え」

真姫☆「ええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!?!?!!」



海未「そ、そういう反応なんですか!?」

花陽「え、カッコよくない?異世界人だよ!別の世界なんだよ!?」

花陽「一度そういう人と会ってみたいなぁ…って子供の頃から妄想してたの!」

花陽「そ、それがまさか真姫ちゃんがそうだったなんて!ゆ、ゆ、夢みたいっ!!」

ことり「あ、あははは…ま、まぁ…花陽ちゃんがいいなら、いいんじゃない…?」

真姫☆「…意外とすんなり、受け入れられちゃったわね…。花陽には…」

海未「…はぁ。そうですね…」

海未「いいでしょう、私も半信半疑ですが…今はそれでいいとします。問題は…」

ことり「真姫ちゃんが抜けた穴を、どうするか…だよね」

真姫☆「私の考えは当然…アイツよ」

ことり「アイツって…」

花陽「真姫ちゃんで言うところの…この世界の真姫ちゃん、ってこと?」

真姫☆「…えぇ。私の抜けた穴を埋めるには、私が一番でしょう」

海未「し、しかし…あなたの言葉を信用するならば、彼女のアイドル経験はあなたの数十分の一ほどでしょう…」

海未「なにせ、あなたは今年の春からずっとアイドルをしているのに対して彼女は…ほんの数日なのでしょう?」

真姫☆「…そうね。ダンスの技術も、歌の技術も、私とあの子は随分と離れているでしょう」

花陽「確かにあの真姫ちゃんは…歌、ヘタだったなぁ…。驚くくらい」

真姫☆「…でも、そんなの関係ないわ。だって私たちが目指しているアイドルは…」

真姫☆「どんな女の子でも、なろうと思えばなれる…夢に溢れたスクールアイドルなんだもん」

真姫☆「シロウトの技術でも、数日でアマチュア程度には仕上げてみせるわ」

ことり「ふふっ…、相変わらずムチャクチャだなぁ…」

花陽「そんなムチャでも…真姫ちゃんなら無理じゃないかもって思わせられるのが、不思議だよね」

海未「…しかし、彼女は今、アイドル専攻の指導補佐、なのですよ。いわば、私たちの敵中の敵。親玉のようなものです」

海未「戦闘員を育てているショッカー大首領を戦闘員無視していきなり仲間に引き入れるような真似、さすがに無理があると思いますが…」

真姫☆「そうね。…無理な可能性の方が高いと思うわ」

海未「えぇ…認めてしまうのですか」

真姫☆「…だから、その時のためにもちゃんと、保険は用意してあるわ」

真姫☆「そうでしょ?…希」

ことり「えっ…?」

花陽「希、って…」

海未「部長っ…!?」



希「…」



ことり「い、いつからそこに…」

花陽「あれ…?でも、その服…私服?」

海未「まだバイトの時間、なのでは…」


希「…やめてきた」


はなことうみ「っ!!」


希「神主さんに言って、今日限りで、ってことで…」

希「急なお願いやったけど、快く了承してくれたわ。ほんま、ありがたいな…」


花陽「なんで…部長がやめなきゃいけないんですか…。バイト…」


希「…うち、今日から…スクールアイドルになる」

希「それに集中するために、休日の時間を開けるために…バイトを辞めた」

希「昨日の夜、真姫ちゃんがもうアイドルできない、って聞いてから…二人で話し合った結果やよ」


海未「アイドル、って…今からですか!?もう、部長には…」

ことり「卒業まで、半年も、もうないのに…」


希「ふふ…4ヶ月もあれば充分やん」

希「卒業後の進路はもう決まってるから、自分の時間は自由に決められるし」

希「学生生活の最後に、大きな花、咲かせたろっかな、なんてね」

希「真姫ちゃんの言ってたとおり…C☆cuteって言うんは、どんな女の子でもなろうと思えばなれる夢のスクールアイドルなんやから」

希「それが、卒業間近だろうと、変わらないよね?」



ぱなことうみ「…」



真姫☆「…希は、こう言ってたわ」

真姫☆「タロットカードで占ったら、このグループには後ろで見守ってくれる人が必要なんだ、って」

真姫☆「だから今まで、C☆cuteの縁の下の力持ちとして、希はいてくれた」

真姫☆「今日からは…交代よ。私が、その後ろから見守る役となる」

真姫☆「今まで支えるだけだった希が…今度は表舞台に立つの」

真姫☆「彼女が、どうしても救いたい…一人のために」

花陽「その、一人、って」


希「西木野さん」

希「えりちの誘惑のために、孤独の闇に絡め取られようとしている彼女を…どうしても救いたいんよ」

希「ひとりぼっちは、寂しいもん」

希「去年の秋から一年間、ずっと一人やったうちだから、わかる」

希「他の人たちの話し声を聞くと、胸を締め付けられるような孤独感に襲われる」

希「口が、話し相手を求めて勝手に動いたりする。うちの周りには誰もおらんのにね」

希「生徒会長として人助けしようとしたのも、話し相手が欲しかっただけ、なのかもしれんね」

希「…そんな孤独の怖さを、西木野さんには味わって欲しくない」

希「いつかにこっちみたいに…身体に悪影響だって及ぼしかねない」

希「うちは西木野さんに、うちのホンキを見せつけるために…アイドルを始めるんよ」


ことり「ホンキって…」

真姫☆「…昨日、考えてみたの」

真姫☆「この世界の私を絵里の誘惑から…アイドル専攻から助け出すにはどうすればいいのかって」

真姫☆「私の意見と希の意見、どちらも決め手に欠けるからって水掛け論で…結論は出なかったけど」

希「真姫ちゃんがスクールアイドル辞めるって聞いてから、思い直した」

希「…やっぱり、貫き通すべきなんや、って」

希「西木野さんがえりちに魅了されている時点では、うちの声は届かへんから…まずえりちをどうにかしないと、って考えてた」

希「でもっ、それじゃダメなんよっ…!ダメ、って諦めている時点で、うちはホンキやないっ…!」

希「本当に心から、誰かを救いたい人間はっ…」

希「絶対に、諦めない人だって、知ってるからっ…!!」

希「だからうちは、うちの声が届くまで…西木野さんに話し続けることに決めたんよ」

希「うちの全身全霊を持って、西木野さんの未来に光を灯してあげたい」

希「うちの、アイドルとして『夢』は…それ、なんよ」

花陽「夢…」

花陽「私が、凛ちゃんの心を取り戻したいと思うのと、同じように…」

ことり「私と海未ちゃんが、穂乃果ちゃんとやり直したいって思うのと同じように…」

海未「部長…希さんには希さんの、大きな夢を…」

真姫☆「にこちゃんのときとは違って、今度は根気の勝負よ」

真姫☆「アイツの心が傾くのが先か、私たちが折れるのが先か…」

真姫☆「そのために…希に、私たちの全てをつぎ込んであげましょう!」

真姫☆「私たち全員の想いで…、あの子を救ってあげるためにっ…!」

真姫☆「希の夢を、叶えるために…!!」

花陽「…うんっ!」

ことり「そう言われたらもう…やるしかないよっ!!」

海未「部長…いえ、希さん!これからは同じ…スクールアイドルの仲間として…よろしくお願いしますっ!!」

希「…うんっ、よろしくね!」

真姫☆「でも、もう時間はないからねっ!私たちも全力でビシビシ鍛えてあげちゃうんだから!」

希「ふふっ…、とっくに覚悟はできてるんよ!さぁっ…やろう!!」

嫌い。




UTX学院

多目的ホール



女生徒D「はぁっ…!はぁっ…!!」


バタンッ!!


女生徒D「う、っぐっ…!」

真姫「…なにやってるの。立ちなさい」

女生徒D「あ、うぐっ…」




大嫌い。




真姫「返事がないわね」

女生徒D「…っ、あっ…!き、教官、殿…」

真姫「二度はないわ」

真姫「…帰って」

女生徒D「そ、そんなっ…!!」

女生徒D「…」




どうして、そんな顔をするの。


一瞬、悲しそうな顔をして。


でも、そのすぐ後。


とっても、解放されたような顔になるのは、何故?




ガチャッ… バタンッ



「…今日でもう5人目よ」「これじゃあ…来月頃には何人…」


真姫「…」




嫌い。大嫌い。


身体を縛っていた鎖が砕けたような、吹っ切れた表情。


大嫌い。

嫌い。



真姫「…答えなさい。あなたはどうしてここにいるのか」


女生徒E「教官殿!私はA-RISEのようなスクールアイドルになりたくてここにいます!教官殿!」

真姫「そのためにはどんなことでもする覚悟はある?」

女生徒E「教官殿!いかなる厳しい試練であっても、血反吐を吐いたとしてもやり遂げる覚悟であります!教官殿!」

真姫「よろしい。じゃあ次…」



大嫌い。


与えられた役割を愚直に演じるその姿。


滑稽を通り越して、不気味。




女生徒G「教官殿!私は口からクソ垂れることしか能のない役立たずであります!教官殿!」

女生徒G「教官殿!この能無し豚をどうぞ導いてください!教官殿!」




気持ち悪い。


それが、あなたたちのやりたかったアイドルなの?


この役割を演じることに、なんの疑問も抱かないの?


気持ち悪い。気持ち悪い。


だから、アイドルは嫌いなのよ。


自身の栄光のためならば、裏でどんな屈辱を受けようとも耐える。


優越感に浸りたくて、無様に悔しがる誰かを見下したくて、


欲望の器を満たすその時まで、汚水すら喜んで口にする、下劣な生き物。


それが…、アイドル


嫌い…、大嫌い。



アイドルなんて、消えてしまえばいい。

好き。




真姫「…ん、っはぁっ…。絵里の…匂い…。甘い、香り…」

絵里「ふふっ…、もう、そんなに首筋に鼻を近づけないの。誰かに見られたら…勘違いされちゃわよ?」

真姫「いいのっ…。勘違い、されたいっ…!」

絵里「もう…おバカさんね」




大好き。


こんなゴミ溜めの中にいても尚、私に安らぎを与えてくれる絵里が好き。


甘い香り…。ずっと嗅いでいたい…。



真姫「でもっ…本当にこれでいいの?絵里…」

絵里「いいの…あなたの思うまま、してちょうだい」

絵里「あぁすることが、彼女たちにとっての起爆剤となるのだから」

真姫「…へぇ、そうなの。やっぱり、気持ちわるいのね、アイドルって」

絵里「そうかもね…」




私に無上の愛を捧げてくれる絵里。


今の私にとって、これ以上は考えられない。


彼女に抱きしめられて、耳元で囁かれることが、何よりも安らぎをもたらしてくれる。


大好き。絵里…大好きよ。


あなたしか、私はいらない。



真姫「…絵里」

絵里「なぁに?」

真姫「…キス、して」

絵里「…」

真姫「お願い…」

絵里「…今は、ダメ」

真姫「え…?」

絵里「今は休憩中だし…、それに」

絵里「キスは本当に大切な時にしかしちゃダメなのよ。こんな時にしたら、ありがたみがなくなるでしょう?」

真姫「…そ、そうね。ごめんなさい…」

絵里「うぅん…いいの。あなたが私を満足させてくれたら…いくらでもしてあげるわ」



優しい、絵里…。


大好き。

真姫「…はぁ」



練習の時間が終わってしまった。


絵里とは、もう一緒にいられない。


もっと彼女と一緒にいたいのに、彼女は規定時間を過ぎたらすぐに帰ってしまう。


アイドル専攻から逃げるように。


そうよね。


あんな汚物に塗れた空間に、いつまでも居たくないわよね。


けれど、私は練習の時間が待ち遠しい。


絵里の体温を感じられない時間がもどかしくて仕方がない。


彼女は実家暮らしだから、学校にいる時と練習の時でしか、愛してもらえない。


もっと…もっと愛してもらいたいのに。


でも、我慢、我慢。


彼女が卒業すれば、一人暮らししてくれるから。


毎日、アイドル専攻が終われば彼女の家に遊びに行ける。


もっと長いあいだ、愛してくれる。


だから、それまでは我慢の時。


けどやっぱり、帰り道は憂鬱で。


薄紅に染まる静かな街道を、トボトボと思い足を引きずるようにして歩く。


俯き伏せた目に、影が映った。



真姫「えっ…?」



いつもは誰もいないはずの、私の家の前。


誰かが立っている。


その人は、私を見つけるなり笑顔を浮かべ、


優しく、こちらに手を振って。




希「おかえり」


真姫「希…、先輩…っ」




どうして。

キリがいいので今日はここまで
ストーリーは8話は大体思いついたけどおそらく後3,4回更新が必要です 頑張れ俺 ほなな

そろそろ書こう
書いてる途中はいいんだが始めるまで億劫なのが辛いところだな

希「おかえり」


真姫「…希、先輩」

真姫「どうして、私の家に…」


希「うちはまだ、西木野さんを諦めたわけやないから」

希「お願い、西木野さん。うちの話を…」


真姫「…っ」


スタスタ…


ガチャッ… バタンッ



希「…」

希「…ふぅ」



西木野家 玄関


真姫「…なんでよ」

真姫「私はもう、絵里だけを選んだんだからっ…!」

真姫「来ないでよっ…!!」



あなたのことは、もう嫌いになったんだから。


だから…。


私の心をこれ以上、揺さぶるのは、やめて。


胸の奥の悪の芽が、彼女のことを思うたびに疼きだす。


東條希のことは、忘れろ、と。


絢瀬絵里だけを、求めろ、と。


人を人とも思わない鬼畜に成り果ててまで、今の道を選んだんだから…。


私にとって、今が一番の幸せなんだから…!

翌日

夕方 西木野家前


真姫「…」



希「おかえり、西木野さん」



いた。


また、彼女が、私の家の前に。




希「指導、お疲れ様やね。朝から大変やん?」

希「でも実はうちもね。今日一日中練習しててんよ」

希「アイドルの…」


真姫「…っ!!」スタスタ…



ガチャンッ!!



希「…ぁ」






西木野家 玄関



真姫「何がっ…、アイドルよ…!」

真姫「嫌い、嫌い、嫌いっ…!」

真姫「鬱陶しいのよっ…!来ないで欲しいのに…!」

真姫「どうして分かってくれないの…!?」



トゲがチクチクと、心を締め付ける。


わかってる。


わかってるからっ!!



だからっ…、これ以上、私を苦しめるのは、やめてよっ…!

翌日 月曜日




テクテク…


真姫「…はぁ」



もうめっきり寒くなってきた。


今日は平日だったから、アイドル専攻は夜まで続いて。


こんな夜中ともなれば、外気温は真冬のようなものだ。


だから、今日はいないはず。


寒空の下、外で待ちぼうけなんて…するわけ、ない。




希「…おかえり」


真姫「…」


希「はー…。ふふっ、さぶいね。もう息が白くなるくらいやん」

希「でも最近は慣れない運動してて、身体がよく火照ってるからね」

希「さぶくてもへっちゃらやん」


真姫「…運動、って…」

真姫「アイドル、ですか」


希「ん?…うん、せやよ」

希「うち、アイドル始めてんよ。もう卒業間近やってのにね、えへへ」

希「けど、楽しいんよ。みんなでわいわい、あれこれ考えて、歌って、踊って…」

希「きっと…、西木野さんもやってみたら楽しい、って思ってくれると思う」

希「だからね…、西木野さん…」


真姫「…っ!興味、ないですっ…」


希「西木野さんっ…!」

真姫「お断りしますっ!!」


タタタタッ…


ガチャンッ!!



西木野家 玄関


真姫「…」

真姫「…く、うぅっ…!」



嫌い。


大、嫌い…!

翌日 火曜日

UTX学院 多目的ホール




ザー… ザー…


にこ「…っくちんっ!!ずずっ…」

凛「にこセンパイ、風邪?うつさないでよー?」

にこ「かもしれないわね…。っくちんっ!!」

にこ「でも、まだ大丈夫だから…、行けるわ」

凛「そう?ま、せいぜい頑張りなよー。んじゃねー」

にこ「うん、バイバイ。…と、じゃあ私もそろそろ…ん?」


真姫「…」


にこ「…あんた」

真姫「へっ…?あ、にこ…ちゃん」

にこ「帰らないの?もう規定時間は過ぎたんだし…」

真姫「い、いいの…。今日は…居残って練習を見ていくわ」

真姫「雨だって、降ってるし」

にこ「…あっそう。好きにすればいいんじゃない」

にこ「じゃあね。…真姫」



真姫「…」




今日は…帰りたく、なかった。


絵里の家に泊めて、ってお願いしたけど、両親も妹も居るからお泊りはダメ、だって…。


休日の夜に、食事に来るくらいなら、いつでもいいわ、って言ってくれたけど…。


私は今日、帰りたくないの。


また、希先輩の顔を、見てしまうかも知れないから。


だから、特に見たくもない練習を見てから…、


外が、真っ暗の真っ暗になってから…、帰る。


今日はあいにくの雨だし、…いえ、絶好の雨日和だし。


夜遅くまで、寒い中雨に打たれるなんて…まずありえない。


そう、確信していた。


でも…、どうしてだろうか。


胸の奥、トゲじゃない、何かが。


高まっている感覚が、あるのは…。

学校の電気も全て消えた頃。


ようやく校門を出る。


まだ外には、雨が降っていた。




真姫「…あ」



しまった。


傘を、上に忘れてきてしまった。


取りに戻ろうかとも思ったが、教室へ続く道は閉じられているだろう。


仕方ない…。走って帰ろう。




真姫「…っ」ピチャピチャッ…




雨に顔を打たれながら、靴を水に濡らしながら走る。


ソックスにも水が染みて、足元がなんとも気持ち悪い。


息を切らせながら、全力で走っているのに。


冷たい雨は私の体温を無情にも奪ってゆく。




真姫「さっぶっ…!」



足が氷の彫像のようだ。


もはや、走る体力もなくなって、濡れることも気にせずにトボトボと歩く。


暖かいお風呂に入って、今日はもう寝よう。


私の頭の中はもう、それしか考えていなかった。


いなかった、から。


もしかして有り得たかもしれない考えすら、忘れていた。






希「…おかえり」



真姫「…どうして」



東條希が、私の家の前に…いるかもしれないということを。

真姫「どうして…ここに…」

希「西木野さん、ずぶ濡れやん。傘は?」

真姫「わ、私の話を聞いてっ…」

希「身体濡らすと、風邪引くよ。ほら、うちの傘使い」サッ

真姫「…もう、家そこだから」

希「うん、そうやね。…ごめん、じゃあ今日はもう、うちは帰るわ」

希「暖かくして、寝るんやよ?それじゃ…」


真姫「待って!!」


希「…」

真姫「なんでっ…、なんでなのっ…!!」

真姫「どうしてそこまで、するのよっ!!」

真姫「意味、わかんないわよぉっ…!」

真姫「寒いでしょ…。雨降ってるし…濡れるし…」

真姫「家の前、だし…なに、やってるの…」

真姫「もう…、なんなの…?」

真姫「何がっ…、なんでっ!?」



もう、言葉にならなかった。


彼女は私をどうしたいのだろうか。


彼女も、私を愛してくれるのだろうか。


けどそれは、同時に絵里から愛されなくなってしまうということで。


それを思うと、とても、嫌。嫌、なのに…。



ギュッ


真姫「っ…!」


希「…うちは、西木野さんに…」

希「西木野さんに、わかってほしいから」

希「誰か一人に、大きな愛をもらえることは…、幸せやない、ってことを」

希「そりゃまぁ…考え方によっては、それもアリかもしれないけどね」

希「でも、西木野さんに今、必要なのは…小さな小さな、愛なんよ」

希「みんなからの小さな愛を、大切な仲間からたっぷり貰う」

希「空っぽになった心の器を、最初に満たすやり方は…そうじゃないといけないんよ」

希「えりちからだけの愛情に頼ってたら…西木野さんはいつか、ダメになってしまう」

希「気づいてほしい。仲間と共に、愛を育む事の楽しさを。喜びを」

希「そんで、学校をね…アイドルを…好きになって欲しいんよ」

希「そのほうが…嫌いより、ずっと…いいやん」

暖かい。


両の手で抱きしめられて。


全身が、彼女にすっぽりと収まって。


傘は道端に転げて、二人共冷たい雨に打たれているのに。


暖かい…身体が、心が。


彼女の言葉は、姿は、途中から意識できなくなっていたけど。


何かが瓦解するように、目から大粒の雫がとめどなく溢れ出ていたから。


声を殺して、彼女の胸元を涙で濡らしてしまう。


こんな姿、見られたくなかった。


恥ずかしくて、みっともなくて。


アイドルが嫌になった、春でさえ、誰かに涙は見せなかったのに。


だけど、不思議と、心地いい。


幼い頃を、思い出していた。


昔もこうして、ママの胸の中でよく、大泣きしていたっけ。


ママの胸が、優しく、暖かく、私を包んでくれた。


その度に、強くなれた。


私の大粒の涙は、雨にかき消され。


彼女の服に、その跡が残ることは、なかった。




希「…西木野さん」

真姫「…ぅ、ぇ?」


急に声を掛けられ、驚く。

声がかすれて上手く返事ができなかった。


希「明日、またうちに会ってもいい、って思ってくれたなら…専攻の指導が終わったら、すぐ帰ってきて欲しい」

希「西木野さんに見せたいもの、あるから」

真姫「…」


声をだして、返事したかったけど。

なんか言えば、今度こそ泣き喘いでしまいそうだったし。

ただ、頷くことしかできず。

彼女に肩を抱えられたまま、私は自分の家の、玄関を開けた。

翌日 放課後

多目的ホール


真姫「くちっ!…ふぇ」


絵里「…大丈夫?風邪?」

真姫「平気…っくち!!」



流石に堪えた。


家までの道を雨に濡れながら走っていれば、風邪もひくというものだ。


でも不幸中の幸いというべきか、その風邪は鼻づまりとくしゃみくらいのもので、特にダルさがあるわけでもなく。


多分、明日には治っていることだろう。



真姫「…私より…、あっち、かな…」

絵里「あぁ…」



にこ「は、は…っ!」

にこ「はっくゅんっ!!!」

凛「うわぁっ!!?飛沫かかった!」

にこ「うぇー…ごべんなざい…」

凛「センパイ…、休んだほうがいいよ…。凛たちにもうつされると困るし、ね?」

にこ「でも…」

穂乃果「…にこちゃん。今日は…もう帰ろ」

穂乃果「絵里さんだって、もうにこちゃんをそう簡単に下ろしたりできないし」

凛「そうそう!なんてったって凛たちはもはや次期A-RISEに決定しちゃったんだから!」

凛「撮影もレコーディングも始まってきてるのに、にこセンパイが数日休んだくらいじゃ何も変わらないって!」

にこ「そう、かしら…」

凛「うんうん!だから…お大事にしたほうがいいよ。さ、帰ろ?なんなら凛が付き合ってあげるにゃ」

にこ「…わかった。だけど一人で十分…、帰るわ…。ってアンタ…やけに今日は優しいじゃない…。気味悪い…」

凛「凛だって…センパイが体調悪かったら心配するよ…。…尊敬する先輩だもん」

にこ「へへ…言ってくれるじゃない…。ありがとね、凛…じゃあ、お先に失礼するわ…」トボトボ…

凛「風邪でなきゃこんなこと言わないんだからねー!ばいばいー!」



絵里「…はぁ。にこは風邪で欠席、か…。長くなりそうね」

真姫「そう、ね…」

絵里「体調不良は仕方ないとはいえ…あー、もう…これじゃあスケジュールが…」

真姫「…」

絵里「ごめんなさい真姫。私、穂乃果と凛とで明日以降の予定について話し合いたいから、今日はこれで…ね?」

真姫「…うん。お疲れ様…頑張ってね」

絵里「うん…」スタスタ…

彼女が忙しそうで、助かった。


この胸の内を、知られずに済みそうだから。


って、なに考えているんだろう、私…。


希先輩と会えるから、って…ワクワクしてちゃいけない…のに。



真姫「…ふふ」




…帰り道。


未だ乾ききっていない道路を、普段より軽い足並みで歩く。


心のトゲは、もう疼かない。


心の雨を流した際に、一緒に流れ落ちていってしまったのかもね。



希「…おかえり」


真姫「…ただいま」



いた。


今日も…、いてくれた。


いつもはもふもふしたダウンジャケットを羽織っている彼女だけど、今日はひざ下まであるコートだった。


あれじゃちょっと寒そう…、大丈夫かな。



真姫「…それで、見せたいもの…って?」

希「うん。それはね…」



そう言うと彼女はコートのボタンを一つずつ外してゆく。


…えぇっ!!?



真姫「え、ちょっ…!ま、まさかぁっ…!!」



希先輩はそういうプレイがお好み…!?


それを、私に見て欲しくてっ…!!?



真姫「あの、ちょっと…!私としてはやぶさかでもないんだけどでも心の準備というものがぁっ…!」



構わず彼女はコートを脱ぎ捨てる。



希「そりゃぁぁっ!!」バッ

真姫「ひゃあああぁぁあぁっ!!」

真姫「…え?」



コートの下から現れたのは、彼女の裸体などではなく。


可愛らしく、絢爛な、アイドルの衣装だった。



希「…ふふ。どう?似合ってるかな」

真姫「ぇ…あ、…そのっ…」



一瞬で、目を奪われた。


スラっと伸びた脚に、艶やかに括れた腰に。赤く火照った腕に、白く陶器のような首筋に。


そして、無邪気に笑う、彼女の笑顔に。


心すら、全てを持って行かれた気分だった。



真姫「…似合ってます。すごく」

希「ふふふっ…よかった。これ、無理言って大急ぎで作ってもらったんよ」

希「まだ完成品やないんやけど、どうしても西木野さんに見せたくて」

希「うちの始めてのアイドル着、かわいいでしょ?」

真姫「可愛いけど…ふふ、それが見せたくて、こんな夜にコート一枚でいたんですか?」

真姫「寒い…でしょ」

希「うん、さぶい。風邪引きそう」

真姫「最近風邪、流行ってるんだから、気をつけてくださいよ。…で、それだけですか?」

希「ん?…ふふ、実は…もう一つ」

真姫「もう一つ?」

希「おいで!」

真姫「えっ…」


ことり「どーんっ!!」

真姫「ふぁぁぁっ!!?」

花陽「捕まえた!」

真姫「ちょっ…!」

海未「今度は逃がしませんよ!」

真姫「えぇっ!?」


真姫☆「…アイドル応援部の前まで来て、逃げ出してもらったら」

真姫☆「みんなの応援部の名が廃るからね!」


真姫「あなた…」

希「今日はみんなで、西木野さんを誘いに来たんよ」

真姫「誘いに…って」

希「当然、アイドルにね」

花陽「C☆cute、入ろう!大歓迎だよ!!」

ことり「すっごく楽しいから!めっちゃくちゃ楽しいから!」

海未「練習は厳しいですけどね!」

真姫「あ、アイドルに…」

希「最悪…西木野さんがどうしても嫌、というのなら、アイドルでなくてもいい」

希「せやけど…みんなと友達になって欲しいんよ」

希「そんでね。もう二度と、学校が嫌い、アイドルが嫌い、なんて言って欲しくない」

希「西木野さんには、これからの人生を大いに楽しんでほしいんよ」

真姫「っ…」

真姫☆「あなたがアイドル専攻で何を見させられて、そしてどんな指導をさせられているか、私は興味もないけど」

真姫☆「でも、私たちの…笑顔のスクールアイドルを見ないまま、アイドルを嫌いだなんて言って欲しくないわ」

真姫☆「本物のアイドルっていうのはね、笑顔でいっぱいになれるアイドルなんだから」

真姫☆「笑顔、嫌いじゃないでしょ?」

真姫「ぁ…」



心奪われた、希先輩の笑顔。


それを嫌いだと言えるほど…、私の心は錆び付いてはいなかったみたいだ。



希「…アイドルでなくてもいい、って言ったけど」

花陽「今ならC☆cuteに加入するとこんないいことが!」

ことり「じゃじゃーん!これ見てこれ!!」バッ

真姫「これは…?」

真姫☆「私の…もとい、あなたの衣装よ。次のライブのための、ね」

海未「これを着て、踊れる権利を差し上げます!」

真姫「これを着て、踊る…」

花陽「さらに!ふふっ…、希部長と同じダンスを踊れる権利も!」

ことり「希ちゃん部長と同じステージに立てる権利も!」

海未「超のつく特等席で、希部長のライブを共に感じられる権利まで!」

真姫☆「…そのおまけとして、私たちがもれなくついてくるわ。もういいことばかりじゃない」

真姫☆「嫌とは、言わせないわよ?」

真姫「私が…アイ、ドル…?」

希「西木野さんが憧れた、アイドル」

希「ここに、あるんよ」

真姫「っ…!!」

真姫「わ、わたしで…いい、の…?」

真姫「わたしっ…なんか、でっ…!」

真姫☆「もちろん」

真姫☆「あなただからこそ、いいのよ」

真姫「っ!」

でもっ…。


心に一欠片、残ったトゲが、疼き始める。


私にアイドルを教えてくれた、彼女。


絢瀬、絵里。


彼女たちのスクールアイドルに入るということは、つまりアイドル専攻を裏切るということだ。


絵里の信頼を、裏切るということだ。


それは…。




真姫「…できない」


花陽「えっ…」

ことり「どうして…?」

真姫「絵里が…絵里先輩が、私を信じてくれているから」

海未「まだ、そんなことを…。彼女はあなたを利用しているだけなんですよ!」

真姫「そんなこと言って欲しくない!」

真姫「たとえ、あの愛情は偽物だったとしても…」

真姫「アイドルを私に教えてくれた優しさと、指導を私に任せてくれた想いは…信じてるから」

真姫「だから、私…まだ…」

希「…西木野さん…」

真姫☆「まぁ…、そうでしょうね。例えここで私たちが、彼女の思惑を語ったところであなたは信じられないでしょう」

真姫☆「絵里自身の口から、あなたに対する本心を聞き出すまでは」

真姫「そんなこと…できるの?」

真姫☆「できるわ」

真姫「えっ…!?」

希「…明日の、放課後。うちらに作戦がある」

希「その時に、えりちの本心を聞き出すつもりや」

真姫☆「その時間、アイドル専攻に訪れる前に…応援部に来て欲しい」

真姫☆「そこで…、作戦を決行するから」

真姫「…」ゴクリッ

今日はここまで!
頑張って次回、8話を終わらせられるといいね!ふー! ほなな

スマヌ 次はいっぺんに終わらせたいので書き溜めして一気に貼る予定です
明日更新できるといいね おやすみ

じゃあようやくやっていきます まだ最後までは書きだめてないけど多分今日終われるはず

えー、仮にこの世界を2014年の11月とするならば最終週の月曜日は休日だったけど
うん、気にしないでください パラレルです 誰も気にしてないとは思いますが

翌日 朝

UTX学院ロッカー前


絵里「…」


絵里「なにこれ…」

絵里「ロッカー開けたら手紙入ってた…」

絵里「…ら、ラブレター?まさかこんな前時代的な…」

絵里「ま、まぁ嫌いじゃないけどね…。っと、誰にも見つからないように…」コソコソ

絵里「えーっと、なになに…」

絵里「『今日の放課後、話したいことがあります。音楽室の前で待ってます。一人で来てください』」

絵里「…『東條希』」

絵里「…」


ポチポチ

プルルルル…


希『はい、もしもし』

絵里「この手紙を入れたのはあなた?」

希『あ、読んでくれたんやね。読まずに捨てられるかと思ってちょっと心配やったけど』

絵里「…ラブレター、ではないのよね?」

希『当たり前やん。真剣な話し合い…やよ』

絵里「…はぁ」

絵里「ちょっぴりガッカリだわ。でも、今度はそっちから話したい、なんてね…」

絵里「ふふ、いいわよ。今日の放課後…アイドル専攻が始まる前、でいいのかしら?」

希『…うん。一人で来てね』

絵里「わかった。遅れずに来るのよ」

希『わかってる』


プツッ… ツーツー


絵里「…何を考えてるのかしらね」

~回想~


4日前 日曜日 夜

希の家


ガチャッ


希「…ただいま」


真姫☆「お帰りなさい、希」

凛「おかえりにゃ。ささ、お風呂温めてるよ!」

希「ん、ありがとう凛ちゃん。早速…入らせてもらうわ」



希「…ふー。あったまるねー…」

真姫☆「もう冷え込んできているってのに、よく外で人の帰りを待つ、なんてできるわね」

凛「風邪ひいちゃうよ?」

希「うん、ちょっと心配やけど…大丈夫大丈夫!いうてまだ11月やし、厚着もしてるんやもん!」

真姫☆「でも…、他に方法はないわけ?家の前で待ち伏せ、なんて、一歩間違えば逆に嫌われるわよ」

希「あー…、かもね」

凛「もし凛の家の前に知らない人が毎日いるって考えたら…、うぅっ…鳥肌ものだよ」

希「でも、うちは西木野さんにとって知らない人やないし…それにうち、不器用やから」

希「顔を突き合わせて話し合うことしか、今までやって来なかった」

希「それで今までダメ、やってんけど…けど、この方法が間違ってるとは思ってないもん」

希「足りなかったのは、うちのホンキ。ダメだって諦めずに、やり抜き通す心」

希「本心で向き合えば、いつか西木野さんの心も、開いてくれるって信じてるから」

凛「家の前以外はないの?ちょっと怖いにゃ」

希「うーん…、うちがどこそこに来て、なんて言っても聞いてもらえないやろうし」

希「唯一二人きりで話せる場所って考えると、自然とね」

真姫☆「…希が正しいと思っていることを私たちがとやかく口出しすべきじゃないわ」

真姫☆「これは、希の夢なんだもの」

希「…うん。ありがと、真姫ちゃん」

真姫☆「えぇ。…問題は、あっちの私が心開いてからよ」

真姫☆「絵里に対しての依存心。これをどうにかしないと…、完全にあっちの私を勧誘するのは難しいでしょう」

真姫☆「これの対策も、考えておかないと」

希「対策、かぁ…。うちが考えてるのは、えりちが西木野さんをアイドル専攻に誘った本当の気持ちを、直接本人に言ってくれればいいんやけど…」

凛「そっちの絵里ちゃんがどんな人かは知らないけど、後ろめたい気持ちがあるならそんなこと本人に言ったりなんてしないじゃないかなぁ…?」

希「せや、よね…。まさか本当に西木野さんをただただ信頼してくれて、なんてこと…」

真姫☆「…絵里に限って、それはないわよね。彼女、バックダンサーズのことすら自分の夢を叶える道具、くらいにしか思ってなさそう」

真姫☆「人を信じる、って心を完全に無くしちゃってるのよ、アイツは」

希「…そう、やね。多分えりちは、西木野さんが自分にとって都合がいいから指導補佐、っていう役職に就かせたはず…」

希「何とかしてそれを吐かせられたら…、あれ?凛ちゃん、どこいったん?いつの間にか消えてるけど…」

真姫☆「アイツならさっき自分の部屋で飛行エンジンの製作に戻ってたわ。なんかいいアイデアが浮かんだんですって」

希「えぇ…なにそれ。凛ちゃんそんなんまで自作してるん…?すごいね…」

希「…アイデア、かぁ。うちにもいいアイデアが浮かべば、なぁ…」

現在

UTX学院 食堂


絵里「…話、ねぇ」

絵里「もぐもぐ…」


絵里(…まぁ、なんの話、かなんて大方見当がついている)

絵里(西木野真姫のことでしょうね)

絵里(彼女のことを…私の口から色々と聞き出したいのでしょう)

絵里(でも、希は二人きりで、って言っていた)

絵里(私と二人きりで話して、何かを聞き出したとして)

絵里(それを口頭で真姫に話しても、それは伝聞でしかない)

絵里(彼女に伝聞での情報を聞かせて、それで信用させられるならわざわざ私に話を聞きに来るなんて真似…しないはず)

絵里(だとしたら希はどうして…)


ポンッ


絵里「…ん?」


穂乃果「どうしたんですか。珍しく難しそうな顔して」

絵里「あぁ…穂乃果。あなたに肩なんて叩かれたの、初めてじゃない?ビックリしたわ」

穂乃果「私だって、フランクな接し方くらいしますよ。…で、何かあったんですか?」

絵里「ん?うぅん…、なんでも。少し考え事をね」

穂乃果「あぁ…最近忙しいですもんね。スケジュール、こっちも大変ですけど、絵里さんだって大変でしょ?」

絵里「えぇ…。ホント、多忙だわ。卒業後もあなたたちの力を保つ必要があるしね」

絵里「そのための引き継ぎにも手を焼いて…、忙しくて堪らないわ」

絵里「…むしろ、私がいなくなったあとからが、本番なんだから」

穂乃果「はい?」

絵里「うん?あぁ…A-RISEのこと。いなくなった後でも変わらない体制でいてくれないとね」

絵里「誰よりも強いスクールアイドルが、私のモットーなんだから」

穂乃果「誰よりも、強い…。絵里さんはA-RISEにそれを求めている、と?」

絵里「えぇ。それ以外は考えられない。…昔から、そう言われて育てられてきたから」

穂乃果「…」

絵里「…あぁっと、ごめんなさい。ちょっと語りすぎちゃったかしら」

絵里「じゃあ私はこれで失礼するわね」

穂乃果「あぁ…もう行っちゃうんですか?まだ私ご飯に一口も手をつけてないのに…」

絵里「一人の方が集中できるから」

穂乃果「…そうですか。でも、何か大事そうな話ならもっと話してくれても良かったのに」

穂乃果「そうすれば携帯で録音して、いつかの切り札にでもできたんですけどね」

絵里「ふふ…、怖いこと言うわね。けど、そんな簡単に尻尾は出さないわ」

絵里「別に聞かれて困る話でもないし…。それじゃ、また放課後にね」

穂乃果「…はい、また。…」モグモグ



絵里「…」

絵里「…ふふふ、あぁ、そういうこと…」

~回想~



3日前 月曜日 夜

希の家


ガチャッ


希「…ただいま」


真姫☆「おかえり。もう…、こんな夜にまで…」

凛「明日、雨って天気予報で言ってたよ?一日だけだけど、結構激しいらしいにゃ」

凛「それでも…明日も行く気なの?」

希「もちろんやよ。明日だって、明後日だって…西木野さんがうちに心を開いてくれるまで…」

希「うぅっ…!」ブルルッ

真姫☆「やっぱり寒いんじゃない。さ、今日もお風呂沸かしてあるから、ちゃっちゃと入っちゃいなさい」

希「うん…」



希「…ふぃー…。あったまるなぁ…」


真姫☆「あぁ、希。お風呂上がったのね」

希「うん…。それはいいとして…」

希「凛ちゃん、その…机の上に置かれたたっぷりのゴミの山は?」

凛「ゴミなんて失礼だよ!これは宝の山なんだから!」

希「た、宝…?」

凛「今日のお昼に秋葉原まで行って買い込んできたジャンクパーツ!」

凛「これらを組み合わせてなんとか飛行エンジンを組み立てようと必死なのにゃ」

希「ジャンクパーツって…パソコンとかの部品でしょ?そんなんで…え、エンジンができるものなん?」

真姫☆「…まぁ、この子はやろうと思えばなんだって作れる天才っ子だから。いつの間にか」

凛「ふふふ…、ヤバいお薬だって市販の薬剤で作れるのだよ…。流石にチートすぎるからこの世界じゃ作らないけどね!」

希「ヤバ…?あぁ…、まぁいいけど。ちゃんと片付けるんやよ?」

凛「わかってるにゃー。えーっと、これとこれをくっつけると…うん、いい感じにゃ!」

希「…」

真姫☆「しかし買い込むって…、ジャンクパーツといえどもお金がかかるんだからね?無駄遣いはしちゃダメよ」

凛「わかってるって!凛の脳内にはちゃんとした設計図が…」

希「ねぇ凛ちゃん」

凛「にゃ?どうしたの?」

希「凛ちゃんは…作ろうと思えばなんでも作れる、って言ったよね…?」

凛「ま、まぁ…時を超える機械は凛でも結構難しいんだけど、大抵の物なら割とできるよ」

真姫☆「それでも十分チートよね」

希「じゃあさ、例えば…」



希「…盗聴器、って、作れる?」

凛「と、盗聴器…?何に使うの?」

希「いいから。作れるかどうか、聞いてるんよ」

凛「え…、つ、作れるにゃ。現に真姫ちゃんの部屋には…おっと、内緒だったわこれ」

真姫☆「いやもう知ってるけどね。…って、もしかして希…」

希「…うん」

希「えりちが直接西木野さんに本心を語る必要はない」

希「肉声であれば、十分な証拠足り得るはず。だから…」

希「うちが一対一で話し合って、えりちの本心を聞き出す」

希「うちの身体に、盗聴器をつけて…!」

真姫☆「っ…!」

凛「な、なるほどなー!それをあっちの真姫ちゃんに聞かせて、絵里ちゃんへの信頼を払う作戦ってことかにゃ!?」

希「…うん。一回携帯電話や無線機で、って言うんも考えたりはしたけど…肉声を鮮明に聞き取らせるには相当声を近くにしないといけない」

希「それに、大きさだってそこそこあるから、バレやすいはず…」

希「でも、小型の盗聴器を身体に仕込んでおいたら、外見じゃわからへんと思うんよ!」

真姫☆「確かに…。私たちに用意できそうな無線機器じゃ、大きさに限界があるけど…。凛が作る盗聴器なら…」

希「どんくらいちっさくできる?」

凛「え?えーっとねー…そうだねー…」

凛「最小で100円玉くらい?」

希「ちっさ!」

真姫☆「そのサイズなら身体に仕込んでおいてもバレはしないでしょうね」

希「それって、遠くの距離でも聞き取ることできる?」

凛「実験してみた中だと、ぬいぐるみやお布団の中に仕込んでいても数メートル範囲の物音ならハッキリ拾うことが可能なはず…にゃ」

真姫☆「どこで実験されたか非常に不安ね…」

希「で、でもっ…それなら身体の外に出しておく必要もない!服の中や鞄の中に入れておいて盗聴することだってできるやん!」

希「これや!これしかないっ…!これならえりちの声を盗むことが…できるっ…!」

真姫☆「…」

希「凛ちゃんお願い!この作戦を決行に移すことができるのがいつになるかはわからんけど…」

希「その盗聴器…エンジンの合間でいいから作っといてくれる?」

凛「うん!合間とは言わず集中して作ってみるね!」

凛「凛に任せてくれれば盗聴器なんてあっとゆう間の朝飯パクパクにゃ!」

真姫☆「最近好きねそれ」

希「よぉしっ!断然燃えてきたやんっ!」

希「雨やろうが槍やろうが…、今のうちならなんでも跳ね返せる気がする!」

凛「お、おぉ…、希ちゃんがすごいオーラに包まれているにゃ…」

真姫☆「でも体調は気をつけて欲しいところね…」

二日前 火曜日 放課後

UTX学院 音楽室


ザー… ザー…


海未「…雨、止みませんね」

花陽「こんな日にも、真姫ちゃんを待ち伏せする気なんですか…?」

希「…うん、そのつもり」

ことり「自分の身体も、大切にしてね…?」

ことり「ほら、希ちゃん部長の衣装、超大急ぎで仕上げてるんだもん!」

ことり「明日までには完成できるかもしれないし、それで身体壊しちゃったら着れないんですよ?」

希「ふふ…ありがと、ことりちゃん。海未ちゃんも、花陽ちゃんも心配してくれて」

希「けどうち、今は燃えてるから!だから雨の冷たさもへっちゃらやん!」

ぱなことうみ「…」

希「もう…、そんな目で見んといてよ」

希「大丈夫。濡れないように傘も用意してるし。寒さ対策にカイロだってあるし」

希「みんなに迷惑かけないようには、心がけてるつもりやよ」

海未「…わかりました。希さんの覚悟も相当なものなのでしょう」

海未「今からは素直に、応援します。私たちの気持ちも、あっちの真姫にぶつけてきてくださいね」

希「…うん」

花陽「もうひとりの真姫ちゃんとも、私お友達になりたいから…部長!」

花陽「お願いしますっ!」

希「任せて!」

ことり「明日、この服…真姫ちゃんに見せてあげよう?」

ことり「そしたら、希ちゃん部長の可愛さに胸キュンで、真姫ちゃんもコロッとC☆cuteに入りたくなっちゃうよ!」

希「かもしれんね!…うん、明日、見せたげられるように…頑張ってくる!」



練習終わり

帰り道


花陽「今頃希さん、家の前で待ってるの、かな…」

海未「もう真姫と話している頃でしょうか…。うまくいけば良いのですが」

ことり「…でも、ふふ、無茶で無鉄砲なこの感じ、真姫ちゃんっぽいよね」

花陽「そうだねー…。希さんも真姫ちゃんに影響されちゃったのかな?」

海未「真姫でももう少し自分の身体に気を遣いそうなものですけどね。むしろこの感じは…」

ことり「…中学までの穂乃果ちゃんっぽい?」

海未「…かも、しれませんね」

花陽「穂乃果さん、こんな感じ、だったんですね。想像もつかないや…」

海未「今の私ですら、ちょっと想像がつきません。穂乃果が、今更こんなふうになってくれるか、なんて…」

ことり「…でも、それが私の夢なんだよ。穂乃果ちゃんと…やり直すんだ。あの頃を」

ことり「また…友達になるんだよ」

海未「…えぇ、それもいつか…叶えたい夢ですね」

その夜

希の家


真姫☆「…」

凛「…」


真姫☆「…」ススッ

凛「ダメだよ、真姫ちゃん」

真姫☆「…わかってるわ。連絡はダメ…。希を信じてるんだから」

真姫☆「それにしたって、今日は遅すぎ…」


ガチャッ


真姫☆「っ!の、希っ!!」


希「…」


真姫☆「び、ビショビショじゃないっ!それにっ…」

真姫☆「うっ、身体冷たい…。一体どれくらい外で待ちぼうけてたのよ…ホント、バカなんだから…!」

凛「け、結局真姫ちゃんと話せなかった、とかじゃない…よね?」

希「うぅん…それは、大丈夫…。西木野さん、帰るん遅かったけど…今度こそ、ちゃんと話せた」

希「多分…西木野さんの心を…こじ開けられた、気がする…」

希「だから、あとは…あとは…」

真姫☆「絵里からの、解放、よね」

真姫☆「安心して。盗聴器は完成したわ。これを身につけて絵里の本心を聞き出せれば…」

希「うん、ようやっと…うちは…」

希「うっ…」ガクッ

凛「の、希ちゃんっ!!」

真姫☆「…大丈夫、気を失ってるだけみたい。熱もないみたいだし…」

真姫☆「相当疲れが溜まってたのね。凛、服脱がせるの手伝って」

凛「おぉ…寝入りを襲うってやつですか…」

真姫☆「こんな時までふざけんじゃないの。着替えさせるのよ」

凛「わかってるわかってる。じゃ、まずは奥まで運んで…っと」



希「…すぅ、すぅ」


真姫☆「本当なら、お風呂に入れてあげないとなんだけど、もう今日は起きそうにないわね」

凛「…だね。お布団はいい感じに温めておいたから寒いってことはないと思うんだけど」

真姫☆「彼女もホンキだして、ここまでやったんだから…」

凛「凛たちも、だよね」

真姫☆「…えぇ。この作戦を、失敗させるわけにはいかないんだから」

真姫☆「希、今は…静かに眠っていてね」

現在

金曜日 放課後

UTX学院 音楽室前


希「…」ゴクリッ


希(盗聴器はちゃんと仕掛けた。今、西木野さんは応援部の部室にいるはず…)

希(ここからのうちとえりちの会話を、聞いてくれる予定や…)

希(もしえりちの会話にやましい要素が見受けられなかった場合…西木野さんがうちらに加わることはない)

希(…最悪、それでもいい。今の西木野さんなら、花陽ちゃんたちとも、ちゃんと友達になってくれるはずやから)

希(けど…えりちがただ信頼して、ってだけなはずない。いつか西木野さんに…)

希(それだけは避けたい。だから、ここでえりちの本心をなんとしても聞き出すんや)

希(絶対に…!)


スタスタ…


希「っ!足音…」

希(来たっ…!!)



絵里「…」


希「えりちっ…、えっ…!」



取り巻きA「…」

取り巻きB「…」

絵里「…ふふ、待たせちゃったかしら?」


希「…うちは、一人で来て、って言ったはずやけど」

希「誰なん、その後ろの二人は」

絵里「私の信頼できる後輩たちよ、可愛いでしょう?」

希「そんなん聞いてないよ!約束を破る気!?」

絵里「…そんなこと、言っていいのかしら?」

希「ど、どういう意味やよ…。約束違反はそっち…」

絵里「違うわ」

絵里「あなたこそ、反則よ」

希「えっ…」



絵里「盗聴器を、外しなさい」

希「っ…!!」

希「な、何をっ…!」


絵里「ふふ、あなたってば本当にわかりやすい」

絵里「心のうちが、手に取るようにわかる」

絵里「今だって、焦りが顔に浮かびすぎよ。心臓の音だって、聞こえてきそうなくらい」

希「…っ、盗聴器、なんて、うちは…」

絵里「行って」

取り巻きA・B「はい」

希「きゃっ…!なにす…」ゴソゴソ…

取り巻きA「…これかな」

取り巻きB「ありました」スッ

絵里「…ふぅん、これが…」

希「っ…!そ、それは違っ…」

絵里「…知らない」グシャッ

希「っ…!」

絵里「ひとつだけとも限らないわ。くまなく捜しなさい」

取り巻きA・B「了解しました」


ゴソゴソ…


希「んんっ…!ん、あぁっ…!そこはっ…!」



絵里「あなたが私を話し合いに誘い出したことに、なんの疑問も持たないと思った?」

絵里「あなたが今更、私の心境を聞いたところで…思い出したくもない記憶を引きずるくらいにしかならない」

絵里「じゃあやはり、あなたには何かしらの秘策があるんでしょう、と」

絵里「誰もが考えそうなことよね。盗聴、なんて」

絵里「私なんかには、お見通し」

絵里「まさかこんな…精密なものを用意してくるとは驚きだけど」



取り巻きA「もう一つ、ありました」

希「っ…くそぉっ…!」

取り巻きB「これは…?」

希「そ、それはただのキーホルダーやからっ…」



絵里「…もう面倒だわ。希、衣服を全て脱ぎなさい」

希「なっ…!」

絵里「別に、全裸で話し合いをしましょうなんて考えてないわ」

絵里「こっちで用意したジャージと下着に着替えてくれればいい」

絵里「鞄も、話し合いが終わるまでこちらで預からせてもらうわ」

絵里「この音楽室で、っていうのも怪しいわね。もしかしたらこの部屋の壁にも仕掛けられてるかも」

絵里「普段使用されてない教室の鍵を借りてきたわ。ここなら…誰にも邪魔されない。盗聴器にも、ね」


希「…っ」

希(…終わった)

空き教室


希「…」


絵里「…流石に、身体の中までは調べてないけど、大丈夫よね?」

絵里「そこまではしてない、って勝手に信じてるけど…やっていい?」

希「…やらなくていい」

絵里「えぇ、いいわ。信用してあげる」

希「…」

絵里「さぁ希。早速お話しましょう」

絵里「何からする?私、今日この時間をずっと楽しみにしていたのよ」

絵里「久しぶりに希と二人きりで色々なことをお喋りできる、って」

希「…」

絵里「去年の冬頃…、アイドル応援部が崩壊するちょっと前から、仲違いしちゃったものね」

絵里「私は私の本心とやり方を語っただけだったのに、思いっきりビンタされちゃって…」

絵里「私、とてもショックだった。希とは仲良くしたかったのに…」

絵里「うぅん、今でも仲良くしたい。だから希。話しましょう」

絵里「そうね、まずは…今、どんな気持ち?」

希「っ…!」

絵里「悔しい?うまくいく、って思っていた作戦を見破られてしまって」

絵里「居たくもない人とこれから無駄におしゃべりに興じないといけなくなって」

絵里「でも呼び出したのはあなたなのよ?真剣な話があるから、だなんて」

絵里「私はアイドル専攻の指導を押してでもあなたに会いに来たっていうのに…」

絵里「なのにあなたは何も話さないの?…ふふ、でも、それでも構わないわ」

絵里「そういえば…盗聴器なんて持ち込んだことに対する謝罪をまだしてもらってないわね」

絵里「そうねぇ…。希、あなたが私の靴に口づけでもしてくれたら、許してあげてもいいけど」

希「なっ…、え、えりちっ…!!」

絵里「…さぁ、するの?しないのなら、あの盗聴器…学校側に提出してもいいんだけど」

絵里「もう片方はまだ壊さずに取っておいてあるし…立場がどうなるか、あなたでもわかるわよね?」

希「…」

希「…わかった。やる…」

絵里「…えぇ、どうぞ」スッ…

希「う、うっ…!」

希「…っ!!」ソーッ…


絵里「…なんてね、冗談よ」サッ

希「えっ…」

絵里「私があなたに対して、そんなことするわけないじゃない。提出もしない」

絵里「ふふ、驚いた?」

希「…軽蔑しそうになったわ」

絵里「そう。…まだ、してなかったんだ」

希「いや、もっと…しそうにね」

絵里「ふふ…、されなくてよかった」

絵里「ねぇ、希」

希「…何」

絵里「もう一度…お友達にならない?」

希「えっ…」

絵里「もう私だってあなただって、卒業するんだし、一度過去のことは清算して、…ね?」

絵里「正直ね。こんなことになってしまったのは、私も少し反省してたりするの」

絵里「あの頃は一番正しいと思ったやり方をやったけど、でも…多くの人に対して悪いこと、しちゃったな、とも思ってる」

絵里「でも、結果を残したかった…!誰もが憧れるアイドルを…、私の…うぅん、私たちアイドル応援部の手で成し遂げたかったの!」

絵里「いい方法とは言えなかったかもしれない…。結果的に、仲違いしてしまったわけだし、ね…」

絵里「けど、私の気持ちもわかって…。私だって、必死だったんだもの…」

絵里「こんなやり方を今まで続けてしまったのも、他に方法が思いつかなかったから…」

絵里「こうしないと強くなれないなら、やり方を維持するしかないじゃない…」

希「えり、ち…」

絵里「…今は許してくれなくてもいいわ。ひどい女だって思ってくれても、構わない」

絵里「だけど…せめて卒業したら…もう一度、お友達になりたいのよ」

絵里「私…希のこと、好きだから…」

希「…」

絵里「希…」スッ

希「…ぁ」

絵里「握手、してくれる?」

絵里「今は…それだけでも嬉しい、から」

希「…えりち」


希(…えりちと、もう一度友達に…)

希(卒業したら、うちは…)

希(…アイドル応援部のみんなと、C☆cuteとお別れすることになる)

希(でも…えりちなら…)

希(卒業後も…)

希(とも、だち、に…)

希(ひとりぼっちじゃ…ない…)



希「…」スッ…

絵里「ふふっ…」




(本当に誰かの心を癒したいと思っている人は…諦めない人だから)




希「っ!」


パシィィンッ!!



絵里「…これは、どういうことかしら」


希「…うちは、諦めない」

希「そんな甘い誘惑に、乗るわけには…いかんのよっ!!」

希「…そうやって、数々の人の心を騙してきたんやね、えりちは」

絵里「騙してなんかいないわ。本心よ」

絵里「少なくとも、あなたと友達になりたいのは…ね」

希「じゃあ他は嘘、ってことやね…!」

絵里「…ふんっ。可愛げがないのね、希」

希「結構や!」

希「…うちにだけでも教えてもらおうか。西木野さんをアイドル専攻に誘った理由を」

絵里「まだ言ってるの?あなただけが知ったところで無駄でしょうに…」

希「それでもや!えりちの…どす黒い本性を…、表に出しておきたいんよ」

希「もう誰も、騙されたりしないように…!」

絵里「ひどい言われようね。言うに事欠いて、どす黒いだなんて」

絵里「私が真姫を誘った理由?あの子に才能があったからに決まってるじゃない」

希「…あぁ、そうやろうね」

絵里「あら、意外とすんなり納得するのね」

希「でも、それだけなはずがない」

絵里「…」

希「えりちは才能を…才能が枯渇し、燃え尽きる様を見させて、他の才能を育てようとしている」

希「にこっちの時やって、そうやったやん!!」

絵里「…そんなつもりじゃなかったんだけど」

希「…自分が、昔そう言ったんやないか」

希「忘れたとは、言わさんよ」

絵里「…」

絵里「…はぁ。いいわよ。仮に、仮ににこのそれが私のやり方の一環だったとして」

絵里「真姫は指導役なのよ?特に厳しい練習なんてしていない。誰かに追いつかないと、なんて焦りもない」

絵里「どうしてそれで才能が枯れる、って言うのよ」

希「…焦りがない?それは、違う」

絵里「えっ…」

希「えりちが卒業した後…西木野さんはえりちの後を継ぐことになる」

希「そこで、えりちと同じ働きを、期待されることになる」

希「えりちに追いつかなければ、っていう焦りは、絶対的に持つことになるっ…!!」

希「今えりちが言った、焦りを持つこと…!それが、才能の枯渇に繋がると認めるのならばっ…!」

希「やはり西木野さんは、えりちの…非道な教育の…、教材として取り入れられたんと、違うんかっ!!」

絵里「…っ、のぞ、み…」

絵里「…ふ」

絵里「ふふふふふっ…あはははははっ…」

絵里「アハハハハハハハハ!!」

希「なっ…、何がおかしいんよ!」

絵里「…ふふ、希…」

絵里「あなたも…わかってきたじゃない」

希「ッ!なら、やっぱりっ…」

絵里「…そう。真姫は…更なる才能を伸ばすための、起爆剤に過ぎないわ」

絵里「そうね…爆薬に例えるならば…さしずめ時限爆弾といったところかしらね」

希「時限、爆弾…?」

絵里「真姫の才能は確かなもの。私から直々に指導を任されたという責任も、大きい」

絵里「けれど、今のやり方をずっと続けていたら…いつか、反感を持つ人が現れるわ」

絵里「こんな方法で、アイドルになれるはずがないと気づく人間が出てくる」

絵里「そうなると真姫は焦っちゃう。自分に歯向かう人間に対する術を持ち合わせていないから」

絵里「今は私という権力を振りかざすことだけでなんとかなるけれど、私が卒業してからはそうはいかない」

絵里「十数人がアイドル専攻からの反逆を考えれば、真姫の体制はあっという間に崩壊する」

絵里「そして、真に私の思想を受け継いだ誰かが、また私のやり方でアイドル専攻を始めてくれる」

絵里「見せかけの改革。その中で本当に強いものと弱いものが、振り分けられることでしょう」

絵里「体制に疑問を持ち、新たな場所を築こうとするものが強者。専攻が絶対のものだと思い込み、変わることを拒むものが弱者」

絵里「真姫には、その振り分けのための傀儡になってもらうのよ。…そして、体制とともに、彼女にも崩壊してもらう」

絵里「そうすることで、真姫の才能を糧として、新たな才能が育ってゆく…」

絵里「私のいないところで、私の指導が進んでゆく。だからこその、時限爆弾」

絵里「それが、私の計画」


希「…っ」

絵里「…はい、話してあげたわ」

絵里「どう?面白いでしょ」

希「お、お前っ…!!」

絵里「…ひどいわ、お前、だなんて。あなたが知りたかったから教えてあげたのに」

絵里「でも、あなたには何もできない。これから真姫に…もっと深い愛情を与えないとね」

絵里「私、ちょっと真姫のこと、遠慮しちゃってたから。今度は奥深くまで…侵略してあげるの」

絵里「私以外のこと、信じられないくらいにね」

希「まっ…、待てっ!!!」

絵里「無駄。あなたの声は誰にも届かない」

絵里「この計画を知るのは、私とあなただけ」

絵里「真姫には、あなたの声すら聞きたくなくなるくらい、滅茶苦茶にしてあげないと」

絵里「ふふ…、全部あなたのせいなんだからね?」

絵里「あなたが知らなければ、真姫も壊れずに済んだのに…」

希「ちょっ、何をっ…!!おい、やめっ…」

絵里「やめない、待たない」

絵里「さようなら、希」

絵里「もうあなたと友達になれないのは寂しいけど、それも仕方ないわね」

絵里「哀れな、負け犬さん」


ガチャッ… バタンッ


希「…っ」

希「く、そっ…」

音楽室前


取り巻きA「これ、衣服と鞄です。どうぞ」

希「…ありがと」


希「…」キガエキガエ…


希(えりちの本心は聞き出せた。うちの思っていたより、ずっと汚いものだった)

希(でも…、ただただ虚しいだけ)

希(こんなこと知ったとて、うちの心が痛ましいだけ、だった)

希(盗聴がバレた時点で、西木野さんがアイドル専攻に戻っていることだろう)

希(いつまでも、何も聞こえないスピーカーに耳を傾けるほど、暇な身分ではないはずだから)

希(今からこのことを西木野さんに伝えようとしたとて、…何もかも遅すぎる)

希(もう、えりちに…何をされているかすら…考えたくない)

希(…うちは結局、誰も…誰も救えないまま、終わってしまった)

希(もう…うちに…アイドルをやる資格すら…)


ブルルル… ブルルル…


希「…ん?携帯が震えてる…電話かな…?」

希「誰から、やろうか…。あ、真姫ちゃん…」


希(…何も聞こえないことを心配してかけてきたのだろうか)

希(鞄を取られて、今まで返事できなかったから)

希(あまり出たい気分ではなかったけど…そうもいかないし)


ピッ

希「…もしもし」


『もしもし、希?あの…』


希「ゴメン真姫ちゃんっ!!うち、うち…もう、そっちに西木野さん、おらんよね…?」

希「うちのせいや…うちが、甘かったから…だからっ…」


『落ち着いて聞いて、希』




『作戦は、成功したわ』



希「…えっ?」







多目的ホール前


絵里「…ふぅ、えらく遅れてしまったわね」

絵里「もう真姫が始めてる頃かしら?私も早く行かないと…」


真姫「…」


絵里「…あら?真姫…、どうしたの?指導は?」

絵里「それとも、もう休憩…」




真姫「今まで、ありがとうございました」

真姫「…私、指導補佐…やめます。さよならっ…!!」ダダッ




絵里「…」

絵里「…え?」

絵里「…どう、して」

絵里「まさかっ…、まだ、盗聴器が…?」

絵里「そんなはずはっ…!だって希の衣服は全て取り払った!鞄も、場所だって変えた…!」

絵里「本当に体内に…?いえ、そこまでするわけっ…」

絵里「じゃあどこに…?」

絵里「希じゃ、ないなら…教室でもないなら…」

絵里「…」



絵里「…私?」



絵里「そ、そんなっ…!だって、私、今日…あの子たちに会ったりなんて…」

絵里「鞄だって、衣服だって、彼女たちに何かを仕掛けられるタイミングなんてなかったはずっ…!」

絵里「誰かに身体を触られたことだって…」


絵里「っ!!!」

絵里「…ある」

絵里「一度、だけ…。応援部でも…一年生でも、ないけど」

絵里「あの、時…」



(「あなたに肩なんて叩かれたの、初めてじゃない?ビックリしたわ」)



絵里「あの時っ…、私の肩に触れた、のはっ…!!」



(穂乃果「私だって、フランクな接し方くらいしますよ」)




絵里「穂乃、果っ…!!!」








真姫☆「絵里、あなたは人の心を読むのが得意なようね」

真姫☆「それが希でも、あっちの私でも」

真姫☆「だとするなら…あなたが道具のようにしか考えていない人なら?」

真姫☆「あなたが、あなたに従順だと思い込んでいる人間なら?」

真姫☆「一手、遅かったわね。絵里」

真姫☆「哀れな、負け犬さん」

まだちょっとどころじゃなく続きそうなので今日はここまで
次はもう終われる 絶対に終われるから ほなな

じゃあこんな時間ですが流石に今日で終わらせます たぶん

~回想~



2日前 水曜日 夜

希の家


ザー…


真姫☆「…希、遅いわね」

凛「もういつもなら帰ってきててもいい時間、なのにね…」

真姫☆「こんな雨の中いつまでも外に居たら…希のほうが参っちゃうわよ」

凛「そだね…。迎えに行く?」

真姫☆「…そうしたいのはやまやまなんだけど」

真姫☆「けど、希がしたい、って思ってることを私たちの判断で止めてしまうのは避けたいのよね」

真姫☆「案外、捨て鉢になりかけてる時のがいい結果を残せたりするものよ」

凛「捨て鉢になっちゃいけないんじゃ…。希ちゃんこれからもアイドルやるんでしょ?」

真姫☆「…そうなんだけどね。まぁ、今はまだ、ってことよ。それより…」

真姫☆「私にはもう一つ、不安要素があるの」

凛「不安要素?なんの話?」

真姫☆「昨日の盗聴云々の話よ。凛、盗聴器はもう出来たの?」

凛「うん、ちゃっちゃと完成させたにゃ」

真姫☆「見せて」

凛「ほい」

真姫☆「…本当に小型ね。これ自体の性能はいいんでしょうけど」

真姫☆「でもこれじゃ…」

凛「え?何かこれにいけないことでもあるの?…あ、実は…」

真姫☆「いえ、盗聴器がいけない、ってことじゃないの。倫理的な問題も考えてないわけでもないけど、そうじゃなくて…」

真姫☆「希は以前、絵里は人の心を感じ取るのが得意、的なことを言っていたわ」

真姫☆「その特技でアイドル専攻の人たちの心を物にしてきた、とか」

真姫☆「だとするならば、もしかしたら…希が盗聴器を仕掛けている、ってことすら、読まれてしまうかもしれない」

凛「えっ…、そ、そこまで?」

真姫☆「可能性は十分に考えられるわ。アイドル専攻生全員の心を掌握できるくらいなんだもの、そのくらい…」

真姫☆「もし絵里に見破られて盗聴器を外されでもしたら、この作戦はオジャンよ。そうね…」

真姫☆「…希も知らない別の作戦を、裏で実行するべきだと思う。絵里にもバレない何かを…」

凛「何か、って…なに?」

真姫☆「…そうよね。彼女の話を間接的に聞く方法…うーん…盗聴器以外に…」

真姫☆「ん?そういえば凛、さっきあなた、『実は…』って何か言いかけてなかった?」

凛「え、あぁ…そうだった」

真姫☆「何言おうとしたのよ。もしかして盗聴器に欠点でもあるんじゃ」

凛「違うよ!凛の作る機械は完璧だよ!言いたかったのは…」

凛「実は希ちゃんに言った盗聴器のサイズ…あれは最小のものじゃないんだ」

真姫☆「最小じゃない…?」

凛「うん。ホントはもっと小さくできるの。落ちたら探すのに苦労するレベルで」

真姫☆「へぇ…なんで言わなかったのよ。紛失されるかもしれないから?」

凛「それもあるんだけどさ。集音機能に難があるんだよね、そこまで小さくしちゃうと」

凛「半径1~2メートルくらいの音しか拾ってくれないんだ。だからあらかじめ省いちゃったってこと」

真姫☆「あぁ…そうだったの。うん、まぁそれなら…」

真姫☆「…」


真姫☆「あっ…!」


凛「にゃ?どうしたの?」

真姫☆「…それだわ!」

真姫☆「小さくて発見が困難で、それでいて周囲1,2メートルの音が拾える…!」

真姫☆「確かにそれだと、第三者が所持していちゃ誰かの会話を拾うことは困難だけど…」

真姫☆「じゃあそれを、話す本人にくっつければ…!」

凛「おぉ!」

凛「…でも自然に絵里ちゃんに近づいて、尚且つ違和感なく身体に盗聴器くっつけられる人、なんている?」

真姫☆「私たちの中にはいないかもしれないけど…」

真姫☆「…バックダンサーズなら」

真姫☆「そうね…、にこちゃんなら、なんとか協力してくれるかも知れない」

真姫☆「貸しを作ったとは思ってないけど、絵里のやり方には反感も持ってるかもしれないし」

凛「なるほど…!協力してくれる人もいる、ってことだね!」

真姫☆「えぇ、よし!凛、今から作れる?身体にひっつけて傍目からは視認が難しい感じの超小型盗聴器!」

凛「任せておいて!明日には完成させたるにゃ!」

真姫☆「…ふふっ、見てなさい、絵里。あなたがいくら裏を読もうと…」

真姫☆「私はその裏の裏を行ってみせるんだからっ…!」

金曜日 朝

アイドル応援部


希「それじゃ、手紙出しに行ってくる。…来てくれるかは、ちょっと不安やけど」


ガチャッ バタン


真姫☆「…」

花陽「うぅ…心配だね」

ことり「でも、いつまでも心配なままじゃこっちの練習にも身がはいらないしね」

海未「うまくいくと信じて、今は…私たちだけでも練習に行きましょう」

真姫☆「待って」

海未「はい?」

花陽「真姫ちゃん?って、早く学校でないと怪しまれるんじゃ…」

真姫☆「その前に話があるの。希には言えない、大事な話…」



ことり「え、絵里さんの身体にも、盗聴器をっ…!?」

真姫☆「えぇ。これなら、万が一希の方の盗聴器がバレても、安全に盗聴できるはず」

花陽「た、確かに…めっちゃ小さいね」

真姫☆「制服に紛れるように作ったからね。一度くっつけたら凝視しない限りは見えないわ」

海未「しかし、どうやって本人にそれを付けるつもりですか?」

真姫☆「ここはやっぱり…絵里に不審がられず近づけるにこちゃんに依頼して…」

ことり「えっ…、にこちゃん?」

海未「ま、真姫っ…。にこは…」

真姫☆「えっ?」

ことり「…にこちゃん、昨日すごい風邪で、多分今日は…来てないと思う」

真姫☆「んなっ!?」

海未「昨日、アイドル専攻を早退したとも聞きました。おそらく…来ないでしょうね」

真姫☆「う、嘘っ!?病欠!?聞いてないわよ!」

花陽「真姫ちゃん、今は学校情報に疎いから…」

真姫☆「そんなっ…、にこちゃんが休むなんて考えてなかった…。どどど、どうしよう…」

真姫☆「誰かがこっそり近づいて貼り付けてくる…?で、でももし気づかれたら一巻の終わりだし…」

真姫☆「他に彼女に警戒されずに近づいて、尚且つこんなこと頼める人、なんて…」

真姫☆「ま、マズい…!詰んだかも…!!」

花陽「そ、そんなっ…!!」

ことり「…ね、ねぇ、海未ちゃん…」

海未「はい?なんでしょう…」

ことり「…もしかしたら……ちゃん、なら…」

海未「えっ…!そ、それは…」

真姫☆「な、なんて?ことり…今なんて言ったの?」

海未「…無理、ですよ。彼女が、そんな…」

ことり「…私、もしかしたら…彼女なら引き受けてくれるかもしれないって思うの」


ことり「今の、穂乃果ちゃんなら」

日程にミスがありました

>>711は木曜日で
>>736は2日前 火曜日 夜で
>>740は木曜日の朝でした

えりちと希の会話は木曜日のものです 限りなくストーリーには関わらないですが一応

真姫☆「穂乃果…?」

海未「ことり、それはありえません。だって、穂乃果は…」

ことり「…ぅ」

海未「穂乃果は、絵里先輩のやり方に同調しているのでしょう?」

海未「…そんな、絵里先輩を裏切るような真似に、協力してくれるとは…」

真姫☆「…」

花陽「作戦に協力して欲しい、ってなると、事情の説明もあるだろうし…」

花陽「生徒会長に真姫ちゃんが二人いる、なんて知られちゃったら一巻の終わり…」

真姫☆「…いえ」

花陽「え?」

真姫☆「穂乃果…、アリ、かもしれないわね」

海未「なっ…!ど、どうして!?」

真姫☆「さっき、花陽の言ったこと…私が二人いるという事実だけど」

真姫☆「実は…穂乃果はもう知っているの」

ことり「えぇっ!?そ、そうな…の?」

真姫☆「うん。穂乃果に怪しまれちゃったから希がバラしちゃったんだって。…おかしな話よね」

真姫☆「でも、一週間ほど前の話だというのに、未だ学校側に私たちのことは把握されていない」

真姫☆「生徒会長が、一言報告すれば、すぐ明るみに出るはずのことなのに」

真姫☆「…これって、どういうことなのかしらね」

海未「つまり…穂乃果は、真姫が二人いるという事実を知ってなお、黙っている…ってことですか?」

花陽「あ、あの厳しそうな生徒会長が…!?」

真姫☆「希が言うには…穂乃果は、ちゃんとした優しさも兼ね備えている、だそうよ。寛容な心、っていうのかな」

ことり「…やっぱり、穂乃果ちゃん」

ことり「変わってきているのかも、しれない」

ことり「うぅん…、変わってるんじゃなくて…」

真姫☆「戻ってきている。昔の穂乃果が、…って言いたいのかしら」

ことり「うん。昔の、優しくて…交わした約束は何が何でも守る、そんな…私の知ってる穂乃果ちゃんに」

海未「そんな…。彼女に、変わるきっかけか何か、あったのでしょうか…」

真姫☆「…それは、私にもわからない」

真姫☆「だけど希だって言ってたことでしょう。変わりたいと思えば、知らず知らずのうちに変わっていゆくものだって」

ことり「あっ…!」

真姫☆「きっと彼女も、変化を求めている。今のままじゃいけないって思い始めているんだわ」

真姫☆「だから、今の穂乃果なら…もしかしたら、協力してくれるかも知れない」

花陽「そ、そうだねっ…!一瞬ダメかと思ったけど、それがうまくいけば…!」

海未「…っ」ゴクリッ

ことり「それで…穂乃果ちゃんへ話をつけに行くのは、いつ?あ、でも真姫ちゃんが行くのなら…この朝でないといけないし…」

真姫☆「…」

真姫☆「私はいかない」

ことり「えっ」

真姫☆「この話は…」

真姫☆「ことり。あなたが穂乃果と交渉するべきよ」

3時間目 授業終わり

穂乃果の教室


キリーツレーイアリガトゴザイマシター


穂乃果「…ふぅ」

穂乃果「…ん?」


海未「こ、コトリー、ガンバッテクダサイー」

ことり「海未ちゃんも行くの!ほら、しがみついてないで!!」

海未「むりですー!」

穂乃果「…もしかして、私に用事?」

海未「っ!」

海未「」

ことり「う、海未ちゃんが固まっちゃった!」

穂乃果「…」



穂乃果「…ここなら、誰も来ないと思うけど」

ことり「…うん」

海未「ハァ…、ハァ…!」

穂乃果「…それで、なんの話?」

ことり「えと…実は…」



~回想~


真姫☆「ことり。あなたが穂乃果と交渉するべきよ」

ことり「え…えぇぇっ!!?」

真姫☆「…驚く程のことでもないでしょ」

真姫☆「今のこの時間、穂乃果はアイドル専攻で練習中だし。朝の予鈴がなる前に私はここを抜け出さなきゃいけない」

真姫☆「私が穂乃果と交渉する時間はないわ。だとするなら…」

ことり「わ、私…ってこと?」

真姫☆「花陽が穂乃果と交渉するのは無理があるしね」

海未「が、頑張ってください!応援してます!」

真姫☆「…当然、海未も行くのよ?」

海未「ホワイッ!?わたひもれすか!?」

花陽「舌回ってないよ、海未さん…」

真姫☆「一人より二人の方がいいに決まってるでしょ。それに…」

真姫☆「これは、チャンスだわ。あなたたちの、夢を叶えるための」

ことり「私たちの…」

海未「…夢」

真姫☆「戻りたいのでしょう?あの頃に。なら…」



ことり(…なら、私が…、私たちが行動を起こさなきゃ!)

ことり「…ということなの。だから…、協力して欲しくて」

穂乃果「…」

穂乃果「…えっと」


穂乃果(急に教室を訪ねられたときも驚いたけど)

穂乃果(いわば敵、とも言える私に…彼女たちがこんなお願いをするなんて)


穂乃果「…誰に話してるか、分かってる?」


ことり「ぇ、それは…」

海未「わ、わかっていますとも!!」

ことり「海未ちゃん、落ち着いて…」

穂乃果「…はぁ」


穂乃果(頭が痛くなる)

穂乃果(私に頼み事をする時点でどうかしている)

穂乃果(絵里さんに…盗聴器を付ける、なんて…)


穂乃果「…ごめんだけど、その依頼には応じることはできないよ。アイドル専攻としても、生徒会長としても」

穂乃果「じゃあ、私はこれで…」

ことり「まっ…、穂乃果ちゃんっ!!」

穂乃果「…」スタスタ…

海未「待ってください、穂乃果っ!!」

穂乃果「…」ピタリ

海未「わ、わわっ…私たちも、ホンキなのですっ!!」

海未「それはスクールアイドルを…C☆cuteを存続させるため、もありますがっ…!ですがそれ以上に…」

海未「一人の人生が変わってしまうかも知れない瀬戸際なのですっ!」

海未「このままではもしかしたらっ…彼女まで、わ、私のようになってしまうかもしれない…!」

海未「それは嫌なんですっ!だから…、お願いしますっ!お力を…力を貸してくださいっ!」

穂乃果「…」

海未「穂乃果ぁぁっ!!」

ことり「海未ちゃん…」


穂乃果(…彼女から名前を叫ばれたのは、いつぶりだろう)

穂乃果(あの日、彼女と別れを告げた日、から…)

穂乃果(…あの時、私は)



(穂乃果「私は…、私はスクールアイドルでトップを獲らなきゃいけないの…!それ以外は何の意味もない…、屑同然なの…!」)

(穂乃果「誰よりも上へ登って、頂点を獲って…輝かしいステージに立つのが、私の夢なのっ!!」)

(穂乃果「それを、そんなもの呼ばわり…!?あなたに何がわかるの!?」)

(穂乃果「アイドルのことなんて、何も知らないくせにっ!!!」)



穂乃果(今の…今の『海未ちゃん』は)

穂乃果(アイドルのことを、何も知らない海未ちゃんだろうか)

穂乃果(私が、強さを求めるために切り捨てたものが)

穂乃果(今、私に並ぶくらい強くなって、ここにいる)

穂乃果(…強さって、一体何なんだろう)

穂乃果(私が求める、強さって…なんなの、かな)

穂乃果(私が知っている強くなる方法)

穂乃果(…それは全て)

穂乃果(絢瀬絵里から学んだもの、だった)

穂乃果(そして、現在私は)

穂乃果(その絢瀬絵里すら、わからなくなってきている)

穂乃果(なら、私は…)

穂乃果(私が、求めるべき、は…)



穂乃果「…貸して」


海未「はい?」

穂乃果「その…、盗聴器とやら」

ことり「穂乃果ちゃん…?」

穂乃果「今はないの?」

ことり「う、うぅんっ!あるけど…ってことは、つまり…!」

海未「き、協力してくれる気になったんですか!?」

穂乃果「…協力、じゃない。ただ…」

穂乃果「私もそろそろ…自分のやり方を見つけるべき、なのかなって思って」

ことり「ほ、穂乃果、ちゃぁんっ…!」

海未「穂乃果っ…!」

穂乃果「っ…!だから勘違いしないで!」

穂乃果「私とあなたたちは…敵同士だから」

穂乃果「友達になる気は…ない、から」

海未「穂乃果…」

ことり「…うん、今はそれでも、いい」

ことり「協力して…うぅん、穂乃果ちゃんのやりたいことが見つかって、よかった」

ことり「ありがとう。穂乃果ちゃん」

穂乃果「…」




穂乃果の教室


穂乃果「…」



(希「いつか、穂乃果ちゃんは真姫ちゃんの味方になってくれるかもしれない」)

(希「そして…、真姫ちゃんが、穂乃果ちゃんの味方になってくれるかもしれないから」)

(希「努力している子を純粋に応援してくれる、本当の穂乃果ちゃんへの…ちょっとした投資みたいなもの、かな」)



穂乃果「…ふっ」

穂乃果「ホント、バカバカしいよ…」

穂乃果「…これが、私の…やりたい、ことか…」

放課後

アイドル応援部



真姫「…」ガチャッ


真姫☆「…あぁ、来たわね。ここ、座って」

真姫「本当に…いなきゃ、ダメ?」

真姫☆「ダメよ。希があなたのために必死で繋いだ、最後の道なんだもん」

真姫☆「応えてあげなさい。…あなたにとって、辛い思いになるかもしれないけど」

真姫「…」

真姫☆「花陽、状況は?」

花陽「うん、今のところ三つとも聞こえてる…」

海未「穂乃果は、バレずに絵里先輩に盗聴器を仕掛けることに成功したよう、ですね…」

ことり「よかったぁっ…!」

真姫「盗聴…!?」

真姫☆「まぁまぁ落ち着いて。…こうするしか彼女の本心を聞き出すことはできないでしょ」

花陽「穂乃果さん…、協力してくれたんだ…」

真姫☆「…えぇ。上手くいってよかった」

海未「私も、行ってよかったと思います…。彼女の中の何かも、変えられることができたようなので」

ことり「…その話もいいけど、そろそろ…」

花陽「きたっ!」

真姫「っ…!」



真姫☆(…私の予想通り、最初の盗聴器は見破られていた)

真姫☆(予備に持たせた二つ目の盗聴器すら発見され)

真姫☆(衣服に持ち物、全て別のものと変えられ、万端に万端を期した準備を絵里はしてきた)

真姫☆(…なればこそ、気づかない)

真姫☆(二つあったから、もうあるはずないと、タカをくくっている。その油断こそ…)

真姫☆(私たちが、付け入る隙。あとは、失敗したと思い込み、希が作戦を諦めることも不安要素ではあるけど…)

真姫☆(…いえ、彼女に限ってそれはない。もう彼女は…諦めない人間なのだもの)

真姫☆(そして、私たちの作戦は成功した)

真姫☆(悲痛に歪む心を観察することが好きな絵里のおかげで、彼女の醜い本心を余ることなく堪能させてもらえた)

真姫☆(…ありがとう、絵里。あなたが完璧な人間だったら、私たちに勝利はあり得なかった)

真姫☆(そして…)



真姫「…ぅ、うぅっ…!!」

花陽「ま、真姫…ちゃんっ…」

真姫☆「わかったでしょう。これが…絵里の本当の狙い」

真姫☆「あなたは…生贄だったのよ。強いアイドルを育てるための」

真姫「っ!!」ダダッ

ことり「あっ、真姫ちゃんっ!!?」

真姫☆「…行かせてあげて。きっと彼女にも…もう、わかったはずだから」


真姫「今まで、ありがとうございました」

真姫「…私、指導補佐…やめます。さよならっ…!!」ダダッ




絵里「…っ!ほ、穂乃果ぁぁぁ!!」



多目的ホール


ガチャンッ!!

女生徒「あっ、絵里さ…きゃぁっ!!?」


絵里「穂乃果ああぁぁぁぁっ!!!」ダダッ


凛「ひぃっ…!?」

穂乃果「…っ!」


パシィィンッ!!

絵里「はぁーっ…!はぁー…!!」

穂乃果「…」


凛「え、え…?い、一体何が…」


絵里「裏切ったわね、穂乃果っ…!」

絵里「あなたが、私に…盗聴器を…!!」

絵里「ふざけたマネ、してくれたわねっ…!!即刻…」

穂乃果「下位落ち、ですか?」

絵里「当たり前よっ!!この私に逆らって…!」

穂乃果「…私は、裏切ってませんよ」

絵里「はぁっ!?シラを切るつもりっ!?舐めないでっ!今日私に触れたのは…」

穂乃果「私は、何もしていない」

穂乃果「ただ…あなたの声が少し大きかっただけだよ」

絵里「なっ…」

穂乃果「全て、あなたが招いた結果だよ」

穂乃果「本当に強さを求めるのなら…あなたが本当に強さを求めているのなら」

穂乃果「心の奥なんて、誰にも明かすべきじゃなかった」

穂乃果「あなたは自分の愉悦を求め、純粋に強さだけを求めていなかったから」

穂乃果「負けたんだ」

絵里「…っ!!このぉっ…!!」


ガシィッ!!

絵里「っ!」

穂乃果「今まで私は、あなたの強さに憧れてきた」

穂乃果「あなたに従えば、あなたのように強くなれるって思って」

穂乃果「…でも、今はもう、違う」

穂乃果「あなたの強さだけを信じていたら…本当に強いアイドルにはなれないっ…」

穂乃果「私は…っ、私のやり方を信じますっ!!」

絵里「ほっ…の、か…!」

絵里「何がっ…!強いアイドル…よっ…!!」

絵里「ここで私に逆らって、生きていけると思っているの!?」

絵里「もう、あなたはっ…!」

穂乃果「…いや、あなたに私は殺せない」

絵里「なっ…!」

穂乃果「私が…強いから」

穂乃果「今、A-RISEから私がいなくなれば、あなたにとっても相当な損失になる」

穂乃果「あなたの夢から、遠ざかる」

絵里「っ…!!」

穂乃果「仮に私を切り捨てても…私は新たに別のスクールアイドルを始めます。一人でも」

穂乃果「私にとっての強いアイドルは…もはや、A-RISEだけじゃない」

穂乃果「C☆cute、彼女たちだって、十分に…強いアイドルであるから」

絵里「く、ぁっ…!!ぁ、ぁぁぁああぁぁっ…!!!」



(絵里「体制に疑問を持ち、新たな場所を築こうとするものが強者。専攻が絶対のものだと思い込み、変わることを拒むものが弱者」)



絵里「私がっ…私の、計画がっ…!!」

絵里「私に、牙をォォッ…!!」

穂乃果「…行こう、凛ちゃん」

穂乃果「練習の、続き」

凛「えっ…あ、うん…」


絵里「…ぐ、ぐぅぅっ…!!」



(「強くなるの。それ以外に…価値はないわ」)



私、強くなった。



(「ほら、見て…。また私、コンクールで優勝して…」)



誰にも、負けないくらい強く。



(「…ストレスが原因だって医者は…」「ひどくやつれていたからねぇ…」)



強く、なって…周りを見渡せば。



(「…ねぇ、だから…起きてよ。目を、覚ましてよぉぉ…!!」)



もう、誰も、いなかった。






絵里「ぐぅっ…、うぐあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

音楽室


希「えー…それじゃあ…何が何だかよくわからんけど、うちの…いや、真姫ちゃんの計画が無事成功した、ということなので…」

希「改めて、紹介…うぅん、自己紹介といこか!さ、西木野さん」

真姫「…ぐずっ、は、はいぃ…」

真姫☆「まだ泣いてるの?」

海未「…仕方ありませんよ。信頼していたものの口からあんな言葉を聞かされては…」

花陽「真姫ちゃん、い、行ける…?」

真姫「へ、平気っ…!んんっ!じ、じゃあ…」

真姫「に、西木野、真姫ですっ…!春から、半年くらい休学してたけど…ついに学校に戻ってきました!」

真姫「だから、わ、私とっ…友達になってください!」

花陽「うんっ!友達だよ!」

ことり「先輩だけど、遠慮なーく、ことりちゃん、って呼んでいいんだよ」

海未「え、では私のことは海未と…」

真姫「わ、わかったわ!ことりちゃん!海未!」

真姫☆「わぁ、ちょっと違和感」

希「…で、西木野さんは…C☆cuteに入るつもりはあるん?」

真姫「…ちょっと、迷ってます」

真姫「でも、打算目的でも…絵里が、私にアイドルの楽しさを教えてくれた、ってことは、紛れもない真実だから」

真姫「彼女には裏切られたけど、でも…この自分の好きな気持ちを、もう裏切りたくないから…」

真姫「私、もう一回…アイドル、やってみる!やってみたいのよ!!」

希「うん!その意気や!」

花陽「ってことは、真姫ちゃんはC☆cuteに正式加入、だよね!?」

真姫☆「私が抜けて、こっちの私と希が追加、計6人のメンバーね」

ことり「…でも、今週末のライブ、間に合わないよね。どう考えても」

海未「その件に関しては…繰り上げ、だそうですよ。12月の最初の週末になるそうです」

真姫「え、そのライブ、私も出る、ってこと…?」

真姫☆「もちろんでしょ!今から一週間、私と遜色ないレベルまで踊れるようになるまで、みっちり特訓させてもらうんだからね!!」

花陽「あと歌も!こっちの真姫ちゃんは歌、すごくヘタになってたし…いっぱい歌わないと!」

ことり「髪の毛のボサボサも整えて!こっちの真姫ちゃんには身だしなみが足りてません!」

海未「あとダンスの時に危なくないようにこっちの真姫もメガネをやめて…」

真姫「って!さっきからこっちの真姫こっちの真姫って、それで定着するの!?」

希「うーん、せやけど同じ名前やとどうもね…。みんなも西木野さん、って呼ぶ?」

花陽「それだとなんか他人行儀っぽいイメージで…うーん、そうだなぁ…」

ことり「あ!名案です!」

ことり「西木野さんじゃなくて、西木野ちゃん、って呼ぼう!で、それだとあんまり可愛くないから…」

ことり「略して…キノちゃん!こっちの真姫ちゃんのことは、今度からキノちゃんって呼ぼう!」

真姫「き、キノちゃん…?」

真姫☆「なんかモーターバイク(注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)に乗って旅をしそうね…」

花陽「でもかわいい響き!いいと思う!ね、キノちゃん!」

真姫「キノちゃ…、ま、まぁいいわよ!好きに呼べば!?」

海未「ふふっ、こういうところ、やはり同一人物ですね」

真姫☆「…私こんなふうなのね」

真姫☆(希と、この世界の私…あだ名は、キノで定着しちゃった、西木野真姫を加え)

真姫☆(新生C☆cuteは動き出した)

真姫☆(一週間のライブの延期期間のあいだに、ほぼ初心者の希とキノをみんなと同じくらいに動かさせる)

真姫☆(オマケに二人共歌がめっきりで…想像以上に慌ただしい一週間になってしまったけれど)

真姫☆(でも、その一週間は、みんなが笑顔で)

真姫☆(まさか…学校が楽しくないなんて人が、この中に紛れているなんてこと、あるはずもなかった)

真姫☆(楽しくて楽しくて、仕方がない)

真姫☆(その楽しさを、見てくれる人、みんなに伝えてあげる)

真姫☆(それが、私の知っているスクールアイドル。μ'sと…そしてC☆cute)

真姫☆(C☆cuteは…私の見せたかった風景に、限りなく近づいたといっても、言い過ぎじゃないでしょう)

真姫☆(もう、この世界でやり残したことは、私には…)



真姫☆「だーかーらっ!!そうじゃないって!」

真姫「いえっ!私はこれでいいと思うわ!」

真姫☆「そんなリズムの曲が万人受けするわけ無いでしょっ!あなたが作ってるのは歌じゃなくてゲームミュージックよこのバカっ!!」

真姫「ばっ、バカですって!?バカはそっちよバカーッ!!」


花陽「…なにで言い争ってるの?あの二人」

ことり「真姫ちゃんの作曲のセンスをキノちゃんに受け継ごうとして…」

希「同じ人でも環境が違うと曲の好みも変わってくるもんなんやね…」

海未「ふふ…、またまた、騒がしくなりそうですね」



真姫☆(…どうやら、このスクールアイドルには…まだ私の居場所があるらしい)

真姫☆(仕方ないわね…。もう少しだけなら、いてあげてもいいわよ?…なんてね)



ライブ当日

舞台裏


ことり「うっ、わー…!こ、こんなに人がっ…!」

海未「初めての対外ライブで、こんなに集まる、なんて…!」


真姫「っ…!」ゴクリッ

希「西木野さん、緊張してる?」

真姫「うっ…、ま、まぁ…」

花陽「当然だよね。初めてのライブが…こんな大規模なやつじゃ…」

真姫☆「しっかりする!あなたには私と同じ働きをしてもらわないといけないんだからね!」

真姫「…わかってるわ!今度こそ…、私の選んだ道だもの!」

ことり「よしっ!じゃあ…」

海未「いつものやつ、ですね!」

真姫「いつもの…?」

真姫☆「はい、指をこう!」ビシッ


一同「こうっ!」ビシッ


真姫「こ、こう…」ビシッ

真姫☆「…私のいないC☆cute。でも、これが本当の姿よ!今日みんなを、一番の笑顔にしてきなさい!」

真姫☆「1!」 花陽「2!」 ことり「3!」 海未「4!」 希「5!」

真姫「えっ…、あっ!6っ!!」

真姫☆「…それで良し!さぁ…お客さんが待ってるわ!行ってきなさい!」

希「…行こう!西木野さん!」

真姫「…っ!うんっ!!」

すっかりよれよれになった制服に着替え、食卓に座る。


もうそろそろクリーニングかな、なんて、ママと会話。


パパは相変わらず寡黙だけど、気持ちは伝わってる。


いけない、そろそろ朝練習の時間。


食べる手を早め、かつ汚くない程度に。


ごちそうさまも、忘れずに。


鞄は持った。ハンカチも。


そして、練習着に、白い五線譜。


ドアノブに手をかけ、深呼吸。


ガチャッ、という音を立ててドアが開き、外へと出る。


もう見飽きたくらいの、青空が待っていた。


まだ、ドアノブには手をかけたまま。


私を出迎えてくれる、この家と。


食卓にいる、パパとママに、聞こえるくらいの大声で。





「いってきますっ!!」






もしライブ! 第8話

おわり

凛「長かった…。7話からの続きものだと考えるとおそらく最長だにゃ…」

真姫「…というわけで、もしライブ!第8話、どうだったかしら」

真姫「毎回毎回誰かしらがエグい問題抱えてるせいで長くなっちゃうのは必然なのよね」

凛「この世界の真姫ちゃん…キノちゃんは割と性格に難があったよね…」

真姫「誰かに対する依存心を正すために希が奔走する。更に絵里の野望も潰すために。様々な視点でそれを描いてきたわね」

凛「なんでもつい最近『街』と『428』をプレイしていろんな人の考えが交錯してうんたらかんたら的なストーリーが書きたくて仕方なかったらしいよ」

凛「だからいつもはほとんど真姫ちゃん視点でしか物語が進まないけど、今回は加えて希ちゃん、キノちゃん、それに絵里ちゃん、穂乃果ちゃん、と敵サイド?にも焦点を当ててみたにゃ」

真姫「穂乃果の考えの変化や、絵里の本格的な敗北もあって、そろそろクライマックスに近づいてきた感じがあるわね」

凛「…まだどれくらいのお話があるかは、まぁ…わかんないけどね」

真姫「ていっても私たちもう体験したんだけど」

凛「そうそう、まさかあんなことに…って言えるか!」

真姫「ついにもし世界にも凛が登場しちゃったからねぇ…」

凛「凛と真姫ちゃんがタッグを組めば簡単に問題は解決しちゃうんだけどー」

凛「流石にそれは面白くないから凛は基本エンジンの組み立てに勤しんでいたのですにゃ」

真姫「結局、この世界の人たちでも維持できるようにならないと、私のやっていることに意味がないからね」

真姫「お薬に頼るのは本末転倒なのよ」

凛「そんなこんなで次回!…もう12月に突入!どうなっちまうのかお楽しみにゃ」

真姫「そんでもって、忘れられてそうだけど…まだうろライブ!の最終回やってないからね」

真姫「そっち終わらせてから、第9話に入りたいと思うわ」

凛「それまでしばしのお別れだね!」

真姫「そういうこと。じゃ、今日の西木野☆星空シアターはここまで!」

凛「次にいってきますを言うのはあなたかもね?」

真姫・凛「「まじ☆えんじぇー!!」」

こんばんは 今日は諸事情で更新はするけどうろじゃないです
真姫ちゃんのキノに関してはクリ真姫ちゃんとこの世界の真姫ちゃんの名称をわかりやすく分けたかったので名づけました
公式の俗称ではないので受け入れがたい人もいるかもだけどご了承くらさい 希が西木野さんのまんまなのはこれでしっくりきたからです

真姫「こんばんは、西木野☆星空クリニック院長のドクター真姫よ」

凛「べーたかよちん!ナース凛だにゃ!」

真姫「この挨拶も久方ぶりね…」

凛「なんで今日はこの挨拶から始まっているからというと…」

凛「なんと!中の人事情なんです!」

真姫「…別に用事があるとかじゃなくて」

真姫「夜にしかやる気が出ない体質の癖に最近夜になると眠くなっちゃうとかいうどうしようもないことになっちゃって」

凛「そんでもってうろ!もし!がほぼぶっ続けでシリアス?というか王道展開だったせいか、アホなことを考える脳みそが退化しちゃってるっぽいんだよね」

真姫「うろ!最終回はほとんど日常回だからみんなのノータリンな会話でダラダラしたかったんだけど、それすらも浮かばないってことなの」

凛「だから今日はクリニックでお茶を濁してアホな会話と安価耐性を少しでも取り戻そうというアレにゃ!」

真姫「って言ってもまじ☆ノープランプランだから何するかすら考えてないんだけど」

凛「いつもどおりじゃん」

真姫「…そうね。まぁ、もしかしたら寝落ちするかも知れないけどそうなったらもうオチもなくそれでおしまいってことで」

凛「夜中起きる耐性もつけようって魂胆なんだよ。あんまり付けるべきものじゃないと思うけどね」

真姫「…こんな時間に安価に付き合ってくれる人がいるかは甚だ疑問だけど、ウダウダ言ってても仕方ないわね」

凛「うん!クリニックでリハビリと行くにゃ!」

真姫「じゃ、そんなわけで…西木野☆星空クリニック、開院よ!」

ここは星の見える丘。そこに建てられた一軒の病院。
今日も二人の女の子が様々な病に悩む患者を待っています。


凛「…うん」

真姫「…はい」

凛「…何する?」

真姫「ホントにノープランなことがバレちゃうから少しくらい考えてよ」

凛「だって!『この頭が寝ぼけてる状態でうろ更新とか無理だわ』って思ったけど『でも間開けるのもアレだしとりあえずテキトーにお茶濁すか』って即興で始めたんだもん!」

凛「なんも考えてないのは当たり前にゃ!!」

真姫「いつもは患者の症状だったりくらいは事前にお風呂の中で考えてたりはするんだけどね…」

凛「もうここは開き直ってそこのアホ面でこっち見てる…おっと失敬、イケメンのお兄さんにぶん投げてもいいんじゃない?」

真姫「もうそこまで言ったなら取り繕う必要もないんじゃないかしら。まぁ私も考えるの面倒だし決めてもらいましょうか」

凛「えーと…、じゃあまずクリニックといえば二つの営業形態があるよね」

真姫「このクリニックに誰かを呼ぶパターンと、クリニックを飛行させて別の世界に行っちゃうパターンね」

凛「じゃあこっから決めてもらおうかにゃ」

真姫「…もしくは全く新しいパティーンを創造してくれてもいいんだけどね」

凛「えー、というわけで今日は>>772という形式でクリニックするにゃ!」


1.誰か呼ぶパティーン
2.別の世界行っちゃうパティーン
3.新しいパティーン(内容もどうぞ)

3
新薬開発

凛「新薬開発という形式でクリニックにゃ」

真姫「新薬開発…って、いつもとどう違うの?」

凛「いつもは凛がテキトーに作っちゃったお薬を投与しちゃう治験のバイト(強制)的なお話だったけど」

凛「今度はそのお薬の開発に色々吟味して行っちゃおうというコーナー…なんじゃない?」

真姫「って言ってもいつもは1レスで作り終えちゃうお薬の開発に今更どう吟味しろと…」

凛「うーん、そうだなー…」

凛「よし!決めた!」

真姫「ん??なになに?」

凛「まずねー、誰かをテキトーに病に伏させて…」

凛「みんなで作ったお薬で徐々に直していこう!って感じにしよう。うん」

真姫「それが新薬開発になるの…?」

凛「それまでに作ったお薬を全部混ぜたらその病の特効薬みたいなもんでしょ。それが新薬だよ」

真姫「あぁ…というかその前にテキトーに病に伏せさせるって…鬼畜ね」

凛「いいのいいの。えーと、というわけで早速その誰かを決めていきたいと思いまーす」

凛「ルーレットで」

真姫「ルーレット…嫌な記憶が蘇るわね」

凛「嫌なのは凛の方だよバカ。今度はちゃんと公平にするにゃ!」

凛「で、同時にどんな病気にかかるかも安価しようかなー」

凛「急にはじめちゃったからきっと人も少ないし最小限の安価で色々決める立ち回りで行くにゃ」

凛「んーと、じゃあ…病気にかかるのは(>>774のコンマ一桁)ちゃんで>>774って感じの病気にかかってもらいます」




1 穂乃果
2 海未
3 ことり
4 花陽
5 にこ
6 希
7 絵里
8 ツバサ
9 英玲奈
0 あんじゅ

はい

凛「えー、にこちゃんにはいって感じの病気になってもらいます」

真姫「…ハイになる病気かしら」

凛「何かが身体に入ってくる感じになっちゃう病気だにゃ」

真姫「覚醒剤の副作用なんじゃそれは…」

凛「同時にハイな気分も味わえるから一石二鳥だね!」

真姫「えぇ…にこちゃんに打っちゃうの…?」

凛「エロ同人だったらいっぱい打たれてるしその特効薬が見つかったら世界中のオーバードーザーが救われるんだよ!」

真姫「初めて聞いたわその単語」

凛「凛も初めて使ったにゃ。だからにこちゃんにはその尊い犠牲となってもらうんだよ」

真姫「…ゴメンにこちゃん。私も本当は止めたいんだけど安価だし流れ出ししょうがないの。それに本当はそんなに止めたくもないの」

凛「というわけでにこちゃんとしゃぶしゃぶに行ってくるにゃー!」

真姫「…行ってらっしゃい」



数十分後…


凛「帰ってきたにゃ」

にこ「…」

真姫「…首筋にいくつかの注射痕が」

凛「しゃぶしゃぶどころかしゃぶしゃぶしゃぶしゃぶしゃぶくらいしたにゃ」

真姫「これはヤバい」

にこ「…でへ」

にこ「まぁぁきちゅぁぁぁん…にひへへへへへ…たのじぃぃぃぃぃいぃぃぃぃぃっ…」

にこ「あたまぽわぁぁぁぁぁぁんなにょほほほほぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…ぷぴー!ぷぷっぴー!!」

にこ「にっこにっこにぃぃぃぃぃぃひひひひひひひっ…!おっひょぉぉっ!とぶとぶっ!」

真姫「…」

凛「楽しそうでなによりにゃ」

真姫「これ、治るの?」

凛「治らなかったら次のにこちゃんを用意すればいいだけのことだよ」

真姫「…冗談みたいなホンキはやめて」

凛「というわけでアホになっちゃったにこちゃんを治すためのお薬をつくるにゃー!」

凛「ただし最初からパッと治っちゃっても面白くないからテキトーに縛りも入れていこう!」

真姫「にこちゃん、理解できた?」

にこ「ぎゅんぎゅんぎゅーん!!おしりおしり!いただきますっ!あはぁぁんっ!」

真姫「バッチリね!!!!!!」

凛「…えー、じゃあ最初のお薬は」

凛「服用すると>>779から>>780が出るようになるお薬にゃ」

イヤッホオオオォォッォォォオオオウ!!!!!

凛「喉からイヤッホオオオォォッォォォオオオウ!!!!!が出るようになるお薬にゃ」

真姫「あからさまに悪化させるだけに聞こえるんだけど」

凛「まぁものは試しということで。はい、どうぞ」

にこ「ぶりぶりぶりぶりー!ぐっすんおよよ!パイナップルボレー!!だんご五百二十四姉妹!!」

凛「話すら聞いてくれないにゃ…」

真姫「…アンタ一体何を刺したのよ…」

凛「こうなったらこのキチガイにこちゃんに無理やりお薬を飲ませるにゃ!」

にこ「むぐっ…!ごくんっ…」

にこ「んぐひっ…、ふひぃぃ…。なにしゅるにょ…」

にこ「っは!ここはっ…」

真姫「あれ、まさかいきなり治った…?」

凛「な、なるほど…。よくわかんないけど薬がいい風に作用してくれたんじゃ…!」

にこ「はぁぁぁ!黄金の国ジパングだわ!ついにここにたどり着けたのね!」

にこ「ボリビアから陸路をたどってマラソンしてきた甲斐があったわね!イヤッホオオオォォッォォォオオオウ!!!!!」

真姫「何も治ってなかった…」

凛「だよね」

にこ「コップ一杯半のお水で人生は幸せになるのよ。知ってた?」

真姫「…いきなり何言ってるの」

にこ「何もわかってないのね…。メッコリだわ」

にこ「いい?真姫ちゃん。まずコップをアブラゼミィィィィィィッ!!!抜本的改革!!」

にこ「でんでんでん!!魏志倭人伝!!あっひゃあああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

にこ「おほほほほ、ポップコーンバリアだわ…。ゲスト出演決定ね」

真姫「…怖いのだけど」

凛「この薬じゃ無理だったのかな…」

にこ「イヤッホオオオォォッォォォオオオウ!!!!!イヤッホオオオォォッォォォオオオウ!!!!!」

にこ「セメタリーからトラップのエフェクト発動!」

にこ「それはどうかなと言える…」

真姫「なんか違うなにかまで飛び出してきたわ」

凛「とっとと次の薬を飲ませてにこちゃんを楽にしてあげないと!」

凛「うーんと、じゃあ次の薬は…」

凛「体の一部が>>782になってさらに無性に>>783したくなっちゃうお薬を投与にゃ!」

連取りアリならにこにこスティック

乱交

凛「体の一部がにこにこスティックになって無性に乱交したくなるお薬を投与ですね」

真姫「…懐かしい名称が」

真姫「ちなみににこにこスティックはおちんちんのことね」

凛「恥ずかしげもなく言うね。よーし、じゃあにこちゃん。性欲の権化と化してしまえ!」

にこ「ふむぐぅっ…!!ごくりっ…」

にこ「はぁっ…!あ、ぐぅっ…!」

にこ「ぐぎゅっ…!!あ、がぁぁぁぁぁっ!!」ムニュニュヌユッ

凛「おお!にこちゃんの股間から大きなモノがそそり立っているにゃ!」

真姫「いや…想像以上にデカイんだけど。身長の半分位あるじゃない…」

にこ「はぁっ…、はぁっ…。あ、うっ…。な、なんだか、頭に登っていた血が下りて冷静になったわ…」

にこ「私、いままで一体何を…」

真姫「あ、にこちゃん!正気に戻ったのね!」

にこ「え、えぇ…よくわかんないけど、今の私は普通のイヤッホオオオォォッォォォオオオウ!!!!!矢澤にこよ」

真姫「部分的に治ってない!」

凛「それは凛のお薬の効果だし仕方ないね」

にこ「…ぐ、ひぃいっ!イヤッ…、なにこれ!?」

真姫「え、あぁ…それはにこにこスティックよ。懐かしいでしょ」

にこ「そ、それもだけどっ…!な、なんか…身体にヘンなのが這い回ってる感覚がぁっ…!」

にこ「イヤぁぁぁっ!!入ってくるっ!!細い虫みたいなのが毛穴から入ってるのぉっ!!」

凛「あ、幻覚作用だね」

真姫「冷静に言ってる場合…。にこちゃん、待ってて!今すぐ治すから…」

にこ「ひっ…、ひぃっ…!!あ、ひぃっ…!!ま、真姫ちゃ…来ちゃ、ダメェ…!」

真姫「えっ…」

にこ「もう…耐えられなっ…!んばぁぁっ!!」バサッ

真姫「ひゃぁっ!!?にこちゃっ…、覆いかぶさってきて…」

にこ「はぁっ…はぁっ…!」ヘコヘコ

真姫「っ!ま、まさか私と…!だ、ダメよにこちゃん!」

にこ「い、入れさせてぇ…!入れないと…!入れないと入ってきちゃうのぉぉぉっ…!」

真姫「ちょっ…!だ、ダメっ…!凛!早くっ…」

凛「次のお薬ね。えー、ちょっとまってねー…」

真姫「早くしてよ!このままじゃにこちゃんに私の…」

にこ「えいっ!!」ズボォッ!!

真姫「んぎぃぃぃっ!!!?え、う、嘘…。まだ、脱いでない、のに…」

真姫「パンツの上から…強引に…」

にこ「んあっっ!ああぁぁっ!!ぎもぢっ…!!ながぁぁっ!!入れられるのより入れるのンギモヂィィィィッ!!」

真姫「あぁぁっ…!!あぐぅっ…!お、大きい…!太くてっ…、お腹圧迫されっ、うぷっ…吐きそう…!」

にこ「凛っ…!凛も、凛も一緒に気持ちよくなろう…!」

凛「…お断りにゃ」

凛「次はこの精神が>>788になる代わりに>>790ができなくなるお薬をあげる!」

西木野病院患者

我慢

凛「次はこの精神が西木野病院患者になる代わりに我慢できなくなるお薬をあげる!てい!」

にこ「むぐぅっ…!な、なにをっ…!!」

にこ「まきちゃん」

真姫「えっ…」

にこ「まきちゃんまきちゃんまきちゃんまきちゃん」ゴスッ!!ゴスッ!!

真姫「んぎゅひぃっ!!深がぁっ…!!だ、が、ぁ…!!」

にこ「まきちゃんまきちゃんまきちゃんまきちゃんまきちゃんまきちゃんまきちゃんまきちゃん」ズッコンバッコン

真姫「おぶぅっ!!だぁぁっ!!はぎゃぁっ!!ヤダァッ!!もっ…、ぐぎぃっ!!ひぎぃぃ!!」

にこ「まきちゃんまきちゃんまきちゃんまきちゃんまきちゃんまきちゃん」ビュルルルルッ…!!

真姫「あっ…!!ふ、ぐひぃっ…!!で、出てるぅっ…!!いっぱい…でて…出ちゃってる…!!」

真姫「お腹がぁぁ…、に、妊婦さんみたいに…膨らんでるのぉぉ…」

にこ「まきちゃんまきちゃんまきちゃんまきちゃんまきちゃんまきちゃん」ズコズコ

真姫「おへぇっ…!!ま、まだ…うごぉっ…!!もう、ムリィィッ…!!ぐべぇっ!!おげぇぇっ!!」

凛「…ふむふむ。色々大変なことになってるけどー…」

凛「ぱっと見最初のハイな状態も禁断症状もなくなってるね!これは成功かも!」

真姫「え゙ッ…!?ん、なにっ…いっでぇっ…」

凛「というわけでこのお薬三点セットを世界中のオーバードーザーに配ってくるにゃ!」

凛「これで世界から麻薬中毒に苦しむ人たちが消えてなくなるね!」

真姫「ま゙っ…!待っでぇっ!!ぞんなごと、じだらぁぁっ…!!」

にこ「まきちゃんまきちゃんまきちゃん」ビュルルルッ!!

真姫「ぐぶぎぃぃぃっ!!ごぇぇえぇっ!!げぼぉぉっ!ごぼぉッ…!がっ…!!」

凛「いってきまーす」タタタタッ…

真姫「り゙…んっ…!」




数日後



凛「…う、臭いにゃ」

凛「全世界の麻薬中毒者は全員治癒したって話にゃー。なんでも心身ともにスッキリしたんだって」

凛「よかったねー…おえぇっ…。ひどい姿だにゃぁ…」


真姫「…」

真姫「ごぷぅっ…」


凛「もう真姫ちゃんの体の大半が中毒者の白濁液でコーティングされちゃってるにゃ」

凛「生きてるのが不思議なくらいだね」

凛「…これ、どうしよっか。…真姫ちゃん」

真姫「ん?…まぁ、もう用済みだし、捨てていいんじゃない?」

凛「わかったにゃー。焼却処分しておくねー…っと」

凛「えっと、これで真姫ちゃんは累計…何人目だったっけ?」

真姫「…さぁ、もう、覚えてないわね。凛も、私も」

凛「…まぁ、凛たちが死んでも、代わりはいくらでもいるからね」





おわり

真姫「…というわけでまたもや投げっぱなしホラーエンドでおわりね。懲りないものだわ」

凛「どこぞの世界からクローン技術を仕入れてきたんだにゃ」

凛「うふふ、これで凛たちがいつ死のうがまた新しい凛たちが」

真姫「えいっ」バンッ

凛「ふびゅぅっ」

凛「」バタリッ

真姫「…こうやって脳天を拳銃で打ち抜いても」

凛「ひどいにゃー。またお掃除が大変だにゃ」

真姫「こうやってまた新しい凛が生まれるのよ」

真姫「わぁなんて恐ろしい」

凛「…なんて世界にはなりたくないよね、って教訓でした」

真姫「そうね」

凛「…ていうか、アホな話が書きたかったのに今回は徹頭徹尾キチガイだったね…」

真姫「眠たいと頭が本当に働いてくれないみたいね。これがうろじゃなくてよかったと思うべきね」

凛「超ハードなレイプ描写も突っ込んだしねー。興奮はするけど書いてて体力を消耗するって話にゃ」

真姫「…まぁ、そんなこんなで散々なリハビリだったわ。こんなのに夜遅くまで付き合ってくれた人たちには感謝よ」

凛「次やるときはもうちょっとマシな話を用意しておきたいものだね」

真姫「流石に次回はうろライブ!最終回をやる予定よ。明日、また脳みそが死んでない限りは」

凛「うろが終わったら…どうしよっか」

真姫「一応もしを集中してやるつもりだけど、行き詰まったりしたら別の企画か今日みたいにクリニックが挟まるかも」

凛「それにはまず終わらせることが先決にゃ!」

真姫「うん、分かってる。じゃあ明日に備えて、今日の西木野☆星空クリニックはここまで!」

凛「次にオーバードーズしちゃうのはあなたかもね?」

真姫・凛「「まじ☆えんじぇー!!」」

昨日やる気マンマンだったけど結局今日になっちゃいました
あいも変わらず脳みそ死んでるけどどうぞ数時間お付き合いください

真姫「今日はついに大団円を迎えるうろライブ!、最終回の前半ね」

凛「もう分割しちゃうのは決定なのね」

真姫「今の状態でぶっ続けで最後までやるなんて無謀なこと出来るはずないわ」

真姫「とにかく思いつくことを思いついただけ書き垂れ流していくスタンスで行くつもりよ」

凛「一体何が始まるというのか…」

真姫「てなわけで、前回の忘却の振り返り…をいつもならするところだけど」

凛「もう面倒だから今回はナシ!だったんだっけ」

真姫「うろ1期は最終回がどシリアスでボケを挟む余地がなかったからの処置だったのよね」

真姫「今回は別にシリアスでもないから忘却しても良かったんだけど…」

凛「読んで字のごとく面倒だったからの一言に尽きるにゃ」

真姫「ま、扱いきれなくて消化不良より後腐れなく終わっていく方がスッキリするでしょ」

凛「そんで今回の文中での安価だけどー…」

真姫「色々と待たせちゃった上に予告もなしに始めちゃったからリアルタイムで見てくれる人も少ないでしょうし…」

真姫「なるべく少なめにしようと思うわ。ここは使うべきでしょ、ってところ以外は」

凛「他はひたすら思いついたアホなことを書き連ねるだけってことだね」

真姫「…趣味があうといいわね」

凛「最初から笑わせる努力を放棄しないの!趣味が合わなくても眺めるくらいはしていってね!」

真姫「それじゃ、うろライブ!ついについにの最終回…!映画版とドラマとかはまだ未定だけどー…」

真姫「とりあえず、スタートよ!」

穂乃果「はーっ…!はーっ…!!」


海未「…では、テイク358回目」

ことり「開始までー、5、4、3、…アクションッ!!」


穂乃果「こ、このびゃんぐみはっ…!ゴランノス・ポンサーの帝京大学で…」


絵里「違うっ!カットよカット!!」

真姫「提供クレジットで何回撮り直してるのよ…」

凛「そろそろ帰って寝たいにゃ…」

花陽「が、ガンバレー…」


穂乃果「う、うぅ…、私、ファイトだよ…!」




穂むら


穂乃果「できたーっ!!できたできたできた!!」ダダダダッ…!!

穂乃果「でぇぇぇきたぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」ガララッ!!


ゆきあり「!?」


穂乃果「できたよっ!!」

雪穂「ぬ、ぬぁにが?」

穂乃果「…なんだっけ」

雪穂「おい」

穂乃果「…あ、そうそう!決まってるじゃん!」

穂乃果「提クレだよ!提供クレジット!!」

穂乃果「あぁ…、やっと読めた…!ずっと詰まってたんだー…!!」

雪穂「へー…ところで今日何の日か知ってる?」

穂乃果「へ?えーっと…そうだなぁ…」

穂乃果「女の子の」 雪穂「卒業式だよ!!」

亜里沙「確か生徒会役員は早めに行かないと、って話だったんじゃ…」

穂乃果「え!そうなの!!?早く言ってよ!」

雪穂「昨日自分で言ってたんじゃん…」

穂乃果「まぁ私には関係のない話だけど」 雪穂「お姉ちゃん生徒会長だからモロ関係あるよ!」

穂乃果「マジかよ」



穂乃果「いってきまーす!!あ、お母さん!今日もいいペンキー!」タタタタッ…!!



ゆきあり「…」

亜里沙「穂乃果さん、私たちの服…」

雪穂「完全に気づいて…いや、私たちの制服が何かすらおねえちゃんは知らないんだよたぶん…」


ガララッ

穂乃果「ごめん、言いそびれた!」

雪穂「お、お姉ちゃっ…」

穂乃果「ヒルナンデス予約しといて」 雪穂「早く行けオラァッ!!」

私、高なんとか坂穂乃果!音ノ木坂なんとか学院の…生徒会長なんとか!

今日は私にとって、なんか…すごい…なんかアレな日!なぜなら!!



うろ覚えラブライブ! Forgotten Idol Project


第13話「叶え!誰かの夢――」



凛「おーい!!」

花陽「穂乃果ちゃんおは」 凛「やっほー!!わーい!!」

花陽「…」 凛「…あれぇ?全然やまびこ帰ってこないにゃー」

花陽「どこに山があるというの…」

穂乃果「おはよーおはよーここにいるのー」

花陽「穂乃果ちゃんは山だった!?」

真姫「朝っぱらからテンション高い会話で羨ましいにゃん」

花陽「あ、あっちにはにこちゃんが!」 凛「語尾にゃはもうやめてほしい」



こころ「あ、穂乃果さん!」

ここあ「ひさしぶり!」

こたろう「あおきしみゅーずぅぅぅぅ…」


穂乃果「みんな!久しぶり!」

凛「それにこちゃんがこないだのゴッフェスで引いたやつだにゃ。確率アップ対象外なのに」

花陽「私たちに何の関係もないよね」

凛「多色パのリーダー何もいないのに無駄引きだよね!ね、にこちゃんっ!」


??「ん?あらぁ…!」


凛「にこ…チャンジャがないにゃ!?」

??「はじめま…」

真姫「なんですって!焼肉屋にチャンジャが置いてないなんて一大事よ!あれがあるのとないのでは大きな差があるわ!」

花陽「白米ともお酒…じゃない、ソフトドリンクとも相性いいからねぇ…」

??「…話に聞いてたとおりの異次元会話ね」

花陽「わ、私たちのこと知ってるんですか!?」

真姫「そりゃにこちゃんなんだから知ってるでしょ」

凛「いやこれにこちゃんじゃないって」

真姫「え!?チャンジャが」 凛「もういいから」

穂乃果「明らかににこちゃんより身長が高い…!その上大人っぽいし声がベテラン臭い…!!」

穂乃果「つまりあなたは…>>809ってことですね!!」

未来から来た英雄ヤザワ

穂乃果「未来からきた英雄…ヤザワってことですね!」

花陽「な、なるほど…!だからこんなに身体的に成長してるわけなのかぁ…!」

凛「声にそこはかとないベテラニックを感じるのもにこちゃんの中のスペシャリティ・ブルースカイさんが経験を積んだ結果なわけだね!」

??「あなたたちが何を言っているのか私にはさっぱりわからないわ…」

真姫「…そんなわけないでしょ。未来から人が来るわけないじゃないまったく。まったくまったく」

穂乃果「そうかなぁ?なんか英雄感あるじゃん!ね!あの決め台詞お願いします!ほら、月に代わってなんとか…」

??「そんなの知りません!」

凛「いやいやここはマ○コでちゅ!だにゃ!」

??「そんなん言えるかぁ!」

真姫「…言ってるくせに」

??「…んんっ!ゴホン、えーっと…」

??「私はー…、にっこにっこにー、の母です!」

穂乃果「えぇぇぇっ!!?そうだったんですか!?」

花陽「は、初めまして!先ほどは失礼をどうも…」

凛「うわぁ…にこにこにーをこんなベテランさんがやってくれるなんてサービス精神旺盛にゃ…まさに」

真姫「サービスサービスゥ!」

花陽「さっきから中の人ネタがしつこす」 にこ「ママぁぁぁっん!」

にこ「んはぁぁんっ!ママぁぁんっ!にこにー寂しいんでちゅー!ママと一緒じゃないとおもらししちゃうにょらぁ!」

にこ「いっちょにおといれー!おといれいくのー!!はーやーくー!!」

穂乃果「にこ…ちゃん?」

にこ「」

にこ「…ゴホンッ」

にこ「って絵里が言ってた」 凛「言い訳が苦しすぎるにゃ」




校内


凛「にこちゃんの意外な一面、発見にゃ」

穂乃果「末代までの恥になりそうだね」

にこ「お願いだからもう忘れて」


アイドル研究部部室


ガチャッ

にこ「じゃあ行くわよー…、ジャーンッ!!」

にこ「見て!これがっ…!」

にこ「>>813!!」

勇者の剣

にこ「勇者の剣よ!」ババーン!!


ここあ「お、おう…」

にこ「ふふふ、これを手にしたものは大いなる祝福と神の力を授かりし英雄となりてかの邪悪なる魔王を倒すために…」

こころ「お姉さま…、でもこれは剣というより…」

こたろう「旗じゃん」

にこ「なによ!旗も剣も似たようなものよ!ジャンヌダルクならどっち持ってても違和感無いでしょ!」

凛「じゃあこれが剣?キンピカに光ってるからありえるにゃ!」

凛「おらっ」ゴスッ

にこ「おぶっ!」

凛「切れないと思ったらどう見ても立派なトロフィー!おやおやこれはラブライブ優勝の証ではないですか!」

にこママ「今娘が暴行を受けていたように見えたんだけど…」

にこ「い、いつものことだから気にしないで…」

花陽「そうっ!私たち…優勝したんだよねっ!ラブライブに!!」

真姫「もう…、今更でしょ」

にこ「ね!ね!本当だったでしょ!?ラピュタは本当にあったのよ!」

にこママ「うん、おめで…ラピュタ!?何の話!?」

穂乃果「まぁ…なんか優勝したときの記憶はすこぶる曖昧だけどね」

にこ「気にしないきにしない!優勝できたんだし!!」

にこママ「それより…これ、全部あなたの私物?」

にこ「えっ…、そ、そうなのかしら…。気づいたらここにあったから私のなのかは微妙なのよね…」

にこママ「あ、あぁ…そうなの…」

にこ「…ま、まぁ私のならちゃんと持って帰るわ!貴重なものもいっぱいあるし!」

穂乃果「えぇっ!!?これは部の備品だよ!食い扶持に困ったときは売り払うし!」

にこ「ダメ!人のもの勝手に売り払おうとしてんじゃないわよ!ちゃんと持って帰るからね!」

穂乃果「うぅ…」

真姫「それより穂乃果…」

穂乃果「ふぇ?」

真姫「今日も…可愛いわね」

穂乃果「えっ、急に告白…!?」

真姫「何か言おうとしたけど忘れちゃったから…」

穂乃果「そっかー…」

花陽「真姫ちゃんが唐突に穂乃果ちゃんのこと可愛い、なんて言い出すから…私もそんな気になってきちゃったよぉ…///」

凛「凛も穂乃果ちゃんのこと大好きにゃー!」スリスリ

穂乃果「わぁん!み、みんなぁ…!これはほのまきりんぱなっていう新しいジャンルだね…!」


海未「そうはさせませんっ!トウッ!」ゲシッ

まきりんぱな「へぶっ!!」バタリンコ


海未「ハッ!ほのうみこそがこの世の絶対法則、無謬の正義だというのがまだわからないようですね!」

海未「愚か者どもは放っておいてイチャイチャしましょう、穂乃果」

穂乃果「お断りします」

海未「ひどいっ!」



ことり「…ふたりとも遅いなー」

生徒会室


ガチャッ

穂乃果「ご、ごめん!遅れちゃった!!」


ことり「あ!遅いよぉっ!何してたの!?生徒会役員は式の2時間前に集合ってあれほど…」

海未「言われてましたっけ…?」

ことり「たぶん!」

穂乃果「と、とにかく…遅れた分は取り返そう!急いでこれとあれと…そんでもってあれを運べばいいのかな!」




タタタタッ…


穂乃果「ふぅっ…、生徒会長も大変だー!」

ことり「全然仕事してないけどねぇっ!」

海未「それはそれとして…送辞はちゃんと完成したのですか?」

穂乃果「え、掃除?生徒会室の?」

海未「は?」

穂乃果「こ、これ終わったら掃除までしなきゃいけないの!?横暴だよ!」

海未「そ、そうではなくて…」

ことり「違うよ穂乃果ちゃん!この図形とこの図形は大きさは違えど同じ形であることを証明する…」

海未「相似形の相似でもなくて!」

穂乃果「天の道を往き総てを司る…」

海未「おばあちゃんは言っていません!」

ことり「新選組一番隊隊長の…」

海未「もう大喜利はいいですから!卒業する3年生の方々を送る言葉のことですよ!」

穂乃果「なにそれ」

海未「今日までに考えてくるという約束でしょう!?どうするんですか!」

穂乃果「え、えっと…それを考えてこないとどうなるんだっけ…」

海未「式で穂乃果は何も語れずに3分ほど立ちぼうけとなります」

穂乃果「悪夢じゃん!?」

ことり「へー…そんなのあったんだ。頑張ってね」

穂乃果「あ、もう見捨てる気マンマンだね」

海未「こうなれば仕方ありません…。穂乃果!」

穂乃果「は、はひっ!」

海未「…今から、考えていてください」

穂乃果「何ですとっ!?」

ことり「もうそれしか道はないよねー」

穂乃果「う、うぅ…。何やるかすら曖昧なのに出来るわけないよぉ…」

海未「立ちぼうけよりは多少マシなことでいいので…穂乃果のできる何かを考えていてください」

穂乃果「…わかったよぉ…」

体育館


穂乃果「おぉぉ…!」

穂乃果「この学校体育館とかあったんだ…」

海未「…確かに出番は少ないですが」


ヒデコ「お、穂乃果!いいところに!去年の卒業式の記録ってある?」


穂乃果「えっ…あ、え…ど、どうも」

ヒデコ「コイツ忘れてるな私のこと…」

ことり「ご、ごめんねバルバドスちゃん…穂乃果ちゃん忘れっぽくて」

ヒデコ「ヒデコだよ!そんなゴツイ名前じゃないっての!」

海未「去年の卒業式の記録、ですか…えっと…」

穂乃果「私たちが所在を記憶してるわけないけどたぶんあるんじゃない」

ミカ「照明がどうもうまくいかないの…」

ことり「やっぱり合同の問題より相似形の問題の方が証明は難しいよね」

海未「さっきの話題引っ張らないでください。えぇっと…生徒会室にいけばあると思います、おそらく」

穂乃果「わかった!ちょっと見てくるよ!」


ガチャッ

穂乃果「…お?」


穂乃果「…あの」

希「ん?あ、穂乃果ちゃ…」

穂乃果「保護者の方ですか?OGだからって流石にまだ式が始まる前から校内に居られては…あと制服は厳しいものが…」

希「髪型変えただけでこの反応…?」

穂乃果「え…」

希「…」

希「スピリチュアルやね!」

穂乃果「は?」

希「…」

希「うわっ!焼肉やん!うまそう!!」

穂乃果「希ちゃん!その髪型すっごい似合う!」

希「…傷つくわ」

穂乃果「えへへ、なんて冗談!最初からわかってたよ!」

穂乃果「今日の卒業式、一緒に3年生を送ってあげようね!」

希「…うん、うち送られる側やねんけどね」

穂乃果「じゃ、また後で!」

希「あ、えりち知らない?」

穂乃果「エリツィ…?」

希「絢瀬絵里さん知らない?」

穂乃果「あぁ…絵里ちゃんか…。えっと…」

穂乃果(全く所在に検討はつかないけど…)

穂乃果「さっき一人で>>817してるところを見かけたよ」

かくれんぼ

穂乃果「さっき一人でかくれんぼしてるところを見かけたよ」

希「え、ひとりかくれんぼ…?」

穂乃果「へへ、いくら友達がいないからって寂しすぎるよね。笑える」

希「ち、違うよ穂乃果ちゃんっ!ひとりかくれんぼって言うんは…」

希「まさかえりち、この学校に呪いをっ…!?いかん、早まったら!」タッタッタッ…

穂乃果「あ…行っちゃった。嘘なのに」

穂乃果「まぁいいや。本当に見かけたらあとで報告しておいてあげよう」



生徒会室


絵里「…」

絵里「…なんで私ここに来たんだっけ…」


ガチャッ

穂乃果「あ、絵里ちゃん。どうしたの?希ちゃん探してたよ」

絵里「わ、私でもどうしてここに来たのかわからなくて。気づいたらここに…」

穂乃果「え、それ若年性健忘症じゃない?」

絵里「怖いこと言わないでよ…。たぶん平気よ。で、穂乃果は式の準備は万全?」

穂乃果「うーん…なんかそうじ?っていうのをやり忘れてて…全く万全じゃないなぁ…」

絵里「掃除…?あぁ、そう…頑張ってね」

穂乃果「でもやる気だけはマックスだから!最高の式にするから、楽しみにしててね!」

絵里「…ありがとう」

穂乃果「ん?心配事?」

絵里「うぅん…ただ、ちょっとだけ」

絵里「昨日、アルバムを整理してたらアイドル応援部だったことを思い出してね…」

穂乃果「は?」

絵里「あの頃は希とも仲良しで…今みたいに誰かにあんなことやこんなことをすることもなくて…」

穂乃果「…なにいってるのえりちゃん」

絵里「…っは!?な、何か謎の電波による思考妨害を受けていた気がするわ…」

穂乃果「あ、あぁそう…」

絵里「ところで式の準備は万全?」

穂乃果「…」

穂乃果「えりちゃぁんっ!!」ギュッ

絵里「わっ!?どうしたのよ穂乃果…」

穂乃果「絵里ちゃん…式が終わったら病院行こうね…。亜里沙ちゃんが悲しまないうちに適切な治療を受けてぅ延命処置を施してもらおう…」

絵里「穂乃果…、うん、わかったわ…。ところで式の準備は…」

穂乃果「私、絵里ちゃんの分まで人生を楽しむよ…。絵里ちゃんの魂は今ここに受け取ったからね…」

穂乃果「本当にありがとう…!!」

絵里「あれ、私どうしてここに…ほ、穂乃果!いつの間に部屋に入ってきてるのよ!?」

穂乃果「あはは!じゃあ行くね!」

絵里「あ、あぁ…。…あれ?私はどうして生徒会室に…」

エリツィの脳みそが大変な状態になったところで眠たいので今日はここまで
できれば明日 ほなな

なんか身体が異様に暑いけどやります

ガチャッ

穂乃果「あ、希ちゃん」

希「穂乃果ちゃんっ…、え、えりちは…!えりちはどうなったん!?」

穂乃果「えっ…、いや、別に普通だけど…」

希「そ、そう?」


絵里「希?私がどうかした?」


希「あ、えりち…」

穂乃果「あっ!そうだ、送辞考えないと…また後でね!」タッタッタッ…

絵里「穂乃果も、大きくなったわね…」

希「そ、そうかなぁ…?いつも通りな気もするけどね…」

絵里「考えなきゃいけないこと覚えてる時点で十分よ」

希「十分か…?っと、それよりえりち!ひとりかくれんぼは危ないからいかんよ!」

絵里「は?かくれんぼなんてしてないけど…」

絵里「あ、でも横恋慕ならしてるかもだけど…///」

希「えっ!」

絵里「…ごめん、言ってみたかっただけ」

希「よこれんぼってなんや…進化系?」

絵里「…もう何でもないわ」



それから1時間とちょっと後…

体育館


『それでは、卒業生の入場です!拍手でお出迎えください!』


パチパチパチ…



理事長「この音ノ木坂学院はみなさんのおかげで、来年も新入生を迎えることができます」

理事長「心よりお礼と感謝を述べるとともに、卒業生の皆さんが輝かしい…」



ことり「…」コックリコックリ

海未「…くかー…」

穂乃果「ふわぁぁああぁぁぁ…ねむ…」ウトウト



『…続きまして、送辞。在校生代表、高坂穂乃果』

シーン…


穂乃果「…すぴー」


『あ、あれ…?ほ、穂乃果…』


ことり「…ふぇっ、…あっ!穂乃果ちゃん!」

穂乃果「にゃ?」

ことり「そ、送辞だよ!出番だよ!!返事しなきゃ!!」

穂乃果「えっ!あ、え、そのっ…」

穂乃果「>>828!!」

これ(送辞のカンペ)餡子はいってんじゃん!

穂乃果「えっ!あ、え、そのっ…(ヤバ、カンペ用意しないと…)

穂乃果「ってこれ餡子入ってんじゃん!!」」


ザワ… ザワ…



にこ「…何言ってんのよアイツ」



ことり「ほ、穂乃果ちゃんどうしたの…?」

穂乃果「忘れないようにと用意してたカンペにいつの間にか餡子がぎっしり…」

ことり「暗刻がぎっしり…?四暗刻かな?」

穂乃果「話が通じてないことりちゃんはほっといて海未ちゃん…」

海未「ごがぁぁぁ…」

穂乃果「もうだめだ、おしまいだ…」

ことり「と、とりあえず早く前に行かないと…」

穂乃果「う、うぅ…」



穂乃果「…っ」ドキドキ

穂乃果「えと…送辞、ざ、在校生代表、高坂穂乃果…!」

穂乃果「あの…せ、先輩方、ご卒業、おめでとうござ…い、ます」


絵里「た、たどたどしいわね…。大丈夫かな、穂乃果…」

希「カンペチラ見してるのバレバレやん…」


穂乃果(くぅっ…!せっかくの良文が書けたと思ったのに餡子のせいでほとんど読めない…)

穂乃果「えー…、ほ、本日はお日柄もよく…この良き日に…なんだこれ…」

穂乃果「その…これからの…あのぉっ…」



ジー…



穂乃果「ふ、ふぇっ…!」

穂乃果(し、視線が痛い…)

穂乃果(…、視線…?)

穂乃果(今私…みんなに見られてる…)

穂乃果(目立ってる…?そう思ったら…なんだか勇気が湧いてきた気がする…!!)

穂乃果「…っ!」カンペクシャッ

穂乃果「あのっ!!!!!」キィィィィンッ…!!


花陽「きゃっ…!いきなり大声…」

真姫「ハウってるじゃない…」

凛「耳痛いにゃ…」


穂乃果「あのっ…、私っ…!!」



ことり「穂乃果ちゃん…目つきが変わった…?」

海未「ふ、ふぇ…あ、私寝て…おや、送辞始まってますね…ん?」

海未「…あれ、小腹が空いた時に食べようとした穂むらのあんこがいつの間にかいつの間にかどこかになくなっている…何たることでしょうか…」

穂乃果「えっと、私…実はこの送辞の内容を、ついさっきまで考えてたんです」

穂乃果「それはついさっきまでずっと何を話そうか悩んでいた…というわけじゃないんです」

穂乃果「式が始まるほんの少し前まで…送辞のことをすっかり忘れていて」

穂乃果「それで慌てて、足りない頭で文章をひねり出して、式になんとか間に合わせたつもりだったんです、けど…」

穂乃果「不慮の事故によりカンペがオシャカになってしまいました…。その…、だからっ」

穂乃果「今から私がここで話すのは、今私が本当に思った気持ちをそのまま、口から出した言葉です。えっと…、変なことも言っちゃうかもしれませんが見逃してください…」


ザワザワ…


絵里「穂乃果…大丈夫…?」

希「うちもう直視出来へん」



穂乃果「えーっと…、あ、送辞のことを忘れていたって言いましたけど、それはたまたま…とかじゃないんです」

穂乃果「私、非常に忘れっぽくて。数分前に聞いたことすら覚えていないような、ダメな頭の持ち主で…」

穂乃果「今まで色々なことを学んできては忘れ、教わっては忘れ…」

穂乃果「ま、まさに!私の学園生活は忘れることとともにあったといってもいいでしょう!」


アハハハ…


にこ「…アンタの話なんて聞いてないっての…もう…」



穂乃果「けれど、そんなわたしでもこうして、楽しく生きていられるのは…」

穂乃果「何度忘れても学ばせていただける、先輩方がいたから。何度忘れても教えてくれる、頼れる人たちがいてくれたから」

穂乃果「何度失敗しても励ましてくれる…支えてくれる。そんな人たちに見守られて…見ていただけるおかげで、私は目立つことができた…」

穂乃果「目立つにはまず、見てくれる誰かが必要なんです!大声を出しても、歌を歌っても、必死に踊って、あがいても…相手にしてくれなければ目立つことにはなりません」

穂乃果「この音ノ木坂学院で、日本一のスクールアイドルが生まれた理由は…決して努力を見過ごさない…そんな校風にあるんだと…私は思います」

穂乃果「そういった気質を先輩方から私たちへ、私たちから後輩へ…」

穂乃果「決して廃れることなく、これからも伝えていければいいな、なんて…思ってます」

穂乃果「で…えっと、それからっ…」

穂乃果「も、もっと言いたいことはいっぱいあるんですけど…でもこれ以上長くなるとアレなんで…」

穂乃果「…う、歌いますっ!」


ザワッ…!!


花陽「え」

凛「ハァ?」

真姫「いきなり何を…」


穂乃果「べ、別に歌って目立ちたいとかじゃないんです!ホントです!」

穂乃果「いつも歌うことでしか自分を表現できなかった私の…せ、精一杯で誠意いっぱいの送辞の言葉としたいんですっ!」

穂乃果「えと、じゃあ伴奏…ま、真姫ちゃんおいで!ピアノあるから!」


真姫「ヴぇええぇぇぇっ!!?いきなり指名!?聞いてないわよ…」

花陽「ま、まぁ…行ってくればいいんじゃない…?」

凛「ガンバにゃ!」

真姫「…で、何を弾けばいいの」

穂乃果「んーっと…じゃあ…ゴニョゴニョ…」

真姫「え…マジで?いいの?」

穂乃果「うん。個人的に好きだから」

真姫「…こ、これをここで…はぁ…」



穂乃果「…んんっ、じゃあ…歌います」



真姫「…ふぅっ」

テンテンテンテンテンテンテンテン…



穂乃果「すれちがってーもー、わからないくらーいおとなーにーなったーときにー…」

穂乃果「なつかしさへーかわるのかなー…なんてかんがえてたー…」


シーン…


全校生徒(…き、聞いたことない曲だ…)



海未「あれこないだボツになった曲じゃないですか…」

ことり「私たち以外誰も知らないよ…」



穂乃果「つねにとなりにいるからーそれがあたりまえすぎるこーとー」

穂乃果「なやんだりわらったりの、まいにちがきっとつづいてーくー」

穂乃果「たーの、しーとー、おもういまをー、ほぞーんしたーいきもーちー」

穂乃果「はじめてかんじたーんだよー…」

穂乃果「すれちがってもー、わからないーくらーい、きみーもーぼくもーおとなーにー…」

穂乃果「なーったころがー、そうぞうできーないー、だってーずっとーいーっしょだーからー」

穂乃果「きのせーいだよねいーつものみんなだーねーふーざけてかーけあしころびそーだー」

穂乃果「まってーまってーどこかよってかーえるー…」


穂乃果「…ふぅ」

穂乃果「常に隣にいて、当たり前すぎる毎日。それは…先輩方が卒業しても、何も変わらず続いていきます」

穂乃果「でもそれは…当たり前のようで、とても大変な…やっと手にした毎日なんです」

穂乃果「ほんの少し間違えば、手に入らなかった…当たり前だったから」

穂乃果「そんな毎日を、これからもっ…!私たちが卒業してっ!後輩たちが卒業して!」

穂乃果「お母さんになっても、おばあちゃんになっても、音ノ木坂学院という学校にいられたことを誇れる…、そんな毎日を、これからも作っていきます!」

穂乃果「だからっ…、安心して、卒業してくださいっ…!先輩っ…!」

穂乃果「ありがとうございましたぁぁぁっ!」



絵里「…穂乃果…」

希「ふふ…、やっぱり…不器用やん…」

にこ「…バカ」



穂乃果「あの…さ、最後は…最後はみんなで、サビを歌いましょう。好きなんですこの歌詞」

穂乃果「行きますよー、せーのっ…」

穂乃果「すれちーがってもー、わからーないーくらーい…あれ」


シーン…


穂乃果「…あはは、やっぱり一度聞いただけじゃムリですよね…あははは…」



海未「きみーもーぼくもおとなーにー…」

ことり「なーったころがーそうぞうできないー…」



穂乃果「あ、…海未ちゃん、ことりちゃん…」

穂乃果「ん、んんっ…!!」


穂乃果「だってーずっとーいっしょだーからー…」

穂乃果「もう一回!」


穂乃果「すれちがってもーわからーないーくらーいっ!」



凛「きみーもーぼくもおとなーにー!」

花陽「なーったころがーそうぞうできないー!」


真姫「んんっ…だってずっといっしょだーからぁぁっ…!」


穂乃果「さぁっ!!」



「  すれ違っても わからないくらい  」

「  君も僕も大人に なった頃が 想像できない  」

「  だってずっと一緒だから  」



穂乃果「…っ!」

穂乃果「こっ…、こもれーびのーなかぁぁっ、よんでみたけどぉぉっ…!!」

穂乃果「かぜぇぇがぁぁっ…ふいにかきけぇえぇぇすぅぅぅっ…!!」

穂乃果「いっ…いっしゅ…だか…あうっ…うぅっ…しきが…ゆれうごぉぉいたぁぁぁぁ…ぁ、あぁぁっ…」

穂乃果「ずずっ…!景色が…揺れ、動いたぁぁ…」

穂乃果「ふ、ふふ…あははは…あははははは…」


海未「ふふっ…ぐずっ…」

ことり「えへへへ…」


凛「にひひひ…」

花陽「ふふふ…」


真姫「…ふっ」


絵里「…うぅっ…、あうぅっ…ずずっ…へ、えへ、はぁっ…」

希「へへ…えりち…変な顔…うぅっ…ふ、ふふふ…」

絵里「希、こそっ…ふ、ふふふっ…」


にこ「…」

にこ「ホント…バカ、なんだから…ふふ…」

式おわり


海未「…あの歌の歌詞は少々卒業式向けではないのでは…」

ことり「だってずっと一緒だから、って言っちゃってるもんね。離れ離れになるのに」

穂乃果「えぇー、好きなのになぁ…。こ、心はいつまでも一緒だよ!ってことを言いたかったんだよ!」

海未「何も考えてなかったんでしょうね」




ラブライブ!(アイキャッチ)



部室


凛「うわぁ…差し押さえにゃ…」


にこ「差し押さえ違うわ!元々私のだから!」

真姫「こんな大量のグッズをにこちゃんが…?ありえないわ…」

花陽「な、何かイケナイことをしてお金を稼いでるとか…っ!?」

にこ「してないわよぉっ!!バイトよバイト!…たぶん」

凛「まぁいいけどさぁ…」

花陽「でも、ここに何もなくなっちゃったら、ちょっと寂しくなるね」

にこ「アイドル研究部なんだから、次の部長が…」

にこ「えーっと…どうしたらいいと思う?」

凛「え、問題形式?」

にこ「そ、そう!アイ研部員なんだからそのくらいわかって当然でしょ!」

真姫「初めて聞いたわねその略語…」

にこ「花陽!わかるわよね!」

花陽「えぇっ!?ここで私に振るの…?」

花陽「えーっと…じゃあ次の部長が…」

花陽「>>836すればいいと思います!」

ラブライブ2連覇

やっぱり今日はここまでにしとくにゃ
ただただ卒業式にSSSを使いたかっただけです ほなな

明日の夜から千葉に行くので今日中に最終回にケリをつけたいと思います
よっぽど暇でない限り出先で更新とかはないと思われる そんじゃやっていきます

花陽「次の部長がラブライブ2連覇に導けばいいと思います!」

にこ「ほぉ…言うわね」

花陽「にこちゃんの意思を継ぐ2代目部長だもん!そのくらいしないと話にならないよ!」

花陽「むしろそのくらいの気概がないと部長っていうかアイドルすらやっていけないよね!」

花陽「もはや予選でのパフォーマンスだけで優勝確定させるくらいの意気込みは欲しいところだよ!!」

真姫「どこまでビックマウスよ…」

花陽「いいの!だって部長だもん!」

花陽(…どうせ部長になるのは穂乃果ちゃんだし無茶言えるだけ無茶言っておけばいいや)

にこ「なるほどね…。花陽の気持ちはよくわかったわ」

凛「かよちんかっこいいにゃー!…で、次の部長って誰にゃ?」

にこ「花陽よ」

花陽「」



花陽「ムリムリムリー!!誰か助けてー!!」

にこ「あそこまで大口叩いたんだから成し遂げなさいよ。二連覇」

花陽「嫌だよっ!部長なんて穂乃果ちゃんにやらせておけばいいの!」

穂乃果「えぇ…めんどい…」

にこ「生徒会長に兼任させるわけには…って、そこまでやる気ないのもどうかと…」

真姫「自分で言ったことにはちゃんと責任持ちなさいよ」

花陽「うぅ…でも部長だなんて…」

凛「凛だってアネックス1号のリーダーやったんだよ!」

凛「かよちんならでき…で、できるっ!!」

花陽「今一瞬ためらったよね!?」

真姫「そーそーできるできるーわーまじかっこいいー」

花陽「真姫ちゃんがいつも以上に棒読みだ!?」

にこ「…できるわよ、あなたなら」

凛「凛との赤ちゃん?」

にこ「そう、女同士でも…違う!赤ちゃんができるなら私も歓迎だけど!」

真姫「歓迎しないでよ…」

にこ「ここには助けてくれる仲間がいる、って言いたかったの!」

花陽「ニコチン…」

にこ「誰がニコチンよ!ったく…、もっと賑やかな部にしといてよね!また遊びにくるから!」

花陽「え…来るの…?うわぁ…」

にこ「そんなに嫌なら行かないわよ…」

真姫「花陽、にこちゃんが涙目だからもっと嬉しがってあげて」

花陽「う、うん…。嬉しいよ!し、仕方ないから部長、継いであげるんだからねっ!」

真姫「ツンデレキャラがかぶるからやめてその言い方」

凛「ま、何はともあれやったにゃー!かよちんが次の部長ー!」

花陽「私が部長で、凛ちゃんがリーダーで…だったら」

花陽「真姫ちゃんは>>843だね」

副会長だね

花陽「真姫ちゃんは副会長だね。生徒会の」

真姫「えぇ、そうなるわね。ふふ、一年生が揃いも揃って役職持ちなんて、なんだか誇らしいかも」

凛「だねー!」

海未「うぇぇええぇぇぇいっ!!?ちょっと待ってください!その設定まだ生きてたんですか!?」

真姫「当たり前でしょ平役員」

海未「あなた今回の卒業式で何もしてなかったじゃないですかっ!!生徒会は2時間前に集合ですよ!?」

真姫「それは、あなたほら…忘れてたからに決まってるじゃない」

海未「さも当たり前のように言わないでください!忘れてるくらいなら生徒会はやめてください!」

穂乃果「ダメだよ海未ちゃん!真姫ちゃんは正式に副会長なんだし、そもそも副会長は辞任できるものじゃないよ」

海未「なんでこういう時だけ詳しいんですか!?し、しかし…」

ことり「真姫ちゃんを辞めさせたかったら役員の意見を通して解任させるしかないよね」

にこ「懐妊…!?真姫ちゃんが…!」

凛「なんか別のもの想像してる顔になってるにゃ」

海未「なんですかその面倒なやり取り…。絶対嫌です…」

海未「でもっ…、じゃあ副会長じゃなくていいので私も何か名前のある役職に就きたいです!会計とか総書記とか!」

希「それやとお隣のトップやん」

花陽「あ、じゃあアイドル研究部の副会長ってことで」

海未「ハァァッ!?いりませんよそんな役職!!」


パチパチパチ…

絵里「みんな、頼んだわよ」

海未「ま、待ってください、私はまだっ…!」

真姫「もう!別にいいけど!」

海未「あなたが勝手に了承しないでくださいっ!!!」

希「さぁ、これでもう必要なことは全部終わったね」

海未「あ、これはもう話が収束するパティーンのやつです…」

希「そのパティーンやよ。…じゃ、うちらはそろそろ行こっか」

穂乃果「えっ…もうイっちゃうの…///」

絵里「顔がヤラしいわよ穂乃果。…イクじゃなくて行くね。せっかくだし校舎を見てまわろうと思って」

穂乃果「じ、じゃあ私たちも行くよっ!だって、ほら…この48人でってのは…これが最後だし!」

にこ「いつの間にかえらい数増えてるわねうちのスクールアイドル」

希「それは会いにいくのにすごいお金がかかる会いに行けるアイドルやね」

凛「…ん?あ、言ったにゃー!」

穂乃果「お?何が?」

凛「忘れたけどなんか穂乃果ちゃん縛り違反してるにゃ!」

ことり「えっとたしか…まつ毛を1ミリ以上動かすと罰則だったっけ?」

穂乃果「なにその無理ゲーすぎる縛り。まばたきすらできないよ!」

海未「私も何か忘れましたが縛りを破ったんですから罰則が必要ですね」

穂乃果「ば、罰則って…?」

ことり「みんなに>>846を奢る約束!」

ドライバー

ことり「みんなにドライバーを奢る約束!」

穂乃果「えっ…、ドライバー!?何に使うの…」

穂乃果「ネジ外すくらいしか使いどころが…」

海未「では私は戦極ドライバーが欲しいです」

穂乃果「え、そっち!?変身アイテム!?」

凛「じゃあ凛はディケイドライバーがいいにゃー!」

真姫「じゃあ私はダブルドライバーかな」

ことり「私はオーズドライバーがいいなー」

絵里「私はウィザードライバーかしら」

花陽「んーと、じゃあファイズドライバーがいいかも…」

希「うちスクリュードライバーが好きやね」

にこ「私はフォーゼドライバー!」

穂乃果「まってまって!そんなに奢ったら私のお財布が…ってひとりお酒いたよね!?」

ことり「約束は約束だよ!」



校庭


穂乃果「う、うぅ…。もう財布スッカラカンだ…」

絵里「ふふ、穂乃果の奢りのシャバドゥビタッチヘンシーンはチョーイイネサイコー!!ね」

希「穂乃果ちゃん…ヒック、ありがと」

穂乃果「未成年飲酒で捕まれ…」

真姫「そういえば最近パンツ被ってないわよね」

穂乃果「うん、ラブライブもあったし、我慢してたんだ」

海未「へぇ…まさかパンツかぶってた被ってたんですか!?」

穂乃果「被る訳無いじゃんバカなの?」

海未「バカなんです、あなたが」



アルパカ小屋


ことり「久しぶり~!グリグリ~」

白アルパカ「うぎゃあぁぁぁぁぁぁ眼球裏がコリコリぃぃぃぃぃぃっ!!」

絵里「う、うわあぁぁぁ…グロすぎる…」

海未「そういえば絵里はこれを見るのは初めてでしたね…」

凛「そういえば随分こっちの茶色ちゃんは太ったにゃ」

海未「言われてみれば…」

真姫「待って!」

真姫「これってもしかして…赤ちゃんじゃ!」

一同「えーっ!!?」

花陽「ま、真姫ちゃん…誰と!?」

真姫「えっ、なんで私…」

希「さっきの懐妊云々は伏線やったんやね…おめでとう真姫ちゃん」

にこ「うぅ…日頃の努力の積み重ねね…。これから夫婦二人、手を取り合って育てていきましょう…ア・ナ・タ」

真姫「殺すわよ」

講堂


穂乃果「うわぁぁぁ…!」

穂乃果「なんで卒業式はこっちでやらなかったんだ…」

海未「そう感じるのはあなたの心が歪んでいるからです」

穂乃果「なんで今罵倒されたの私」

花陽「それにしても…まだ信じられないよね」

ことり「…うん」

花陽「きっ…客一人も入らないとかwwwwwwwwww笑えるwwwwwwwwwww」

ことり「誰か包丁持ってきてー」

海未「最初のお客さんに笑われてはもう泣くしかないですね」



多分グラウンドの草あるところ



一同「ぐてー…」


絵里「…」

希「最初に9人で歌った時も、こんな青空だった」

絵里「えっ…」

希「そう思ってたんやろ?」

絵里「あ、いや…空を眺めてると巨大な怪物がこっちにやってきそうだなって…」

希「え、マジで?実はうちもやねん…なにこれ怖…」

穂乃果「もう情緒も何もないや」

凛「凛たちにそれを求めるのがどうかしてるにゃ」



屋上


絵里「最後はやっぱりここねー」

穂乃果「あ、今最後って言った。ドライバー奢って。ドライブドライバーでいいから」

絵里「また今度ね」

海未「考えてみれば…」

海未「…どうしてこんな雨風も凌げないような場所で練習なんかやってたんでしょうかね」

ことり「なんでだろうねー」

真姫「むしろ練習してたかどうかも曖昧ね」

穂乃果「スクフェスで連コしてた事の方が印象に残ってるや」

絵里「こんなふざけた頭を育んだり…」

にこ「なんだかんだ全部ここだったわね…全部かどうかは定かじゃないけど」

穂乃果「…あ、そうだ!」


穂乃果「えーいっ!できたっ!!」ベシャベシャ

花陽「水で『アネックス1号』って…」

真姫「でも、この天気だからすぐ消えちゃ…あぁもう『ックス1号』としか読めない」

凛「卑猥にゃ」

穂乃果「それでいいんだよ…」

真姫「えっ」

花陽「…穂乃果ちゃん、頭のなかいっつも猥褻なこと考えてるから…」

凛「あぁ…納得」

穂乃果「ちゃうわ」

穂乃果「…」


一同「…」


絵里「…なんか言いなさいよ」

海未「何を言えと」

希「お礼でも言えばええんちゃう?」

穂乃果「『人間を嘗めるなよ、ゴキブリが』って言おうか」

ことり「誰に喧嘩売ってるの…」

にこ「もう、いいじゃない…口に出さなくても、何かしら伝わってるわよ。多分」

ガチャッ


凛「あ、締めるのが面倒だから帰ったにゃ」

海未「…私たちも、行きましょうか」

ことり「…うん」


スタスタ…


穂乃果「…っと、私も…」

穂乃果「あ、私モップとバケツ片付けないと…クソめんどい…」

穂乃果「よい、しょっ…と」



『穂乃果ちゃーん、待ってー!』


穂乃果「えっ…」


『穂乃果、いつも言っているでしょう?』

『えへ、ごめんごめーん』


穂乃果「あっ…」



穂乃果「ほら、早く早くー!急がないとっ…」

海未「だからそんなにはしゃいでは…」

ことり「もー、誰かに見つかっ…あ」



穂乃果「…えっ」


穂乃果「…」

海未「…まだ穂乃果、いたんですね」

ことり「い、一旦帰ろう!」シュバッ



穂乃果「…(つд⊂)ゴシゴシ」

穂乃果「…(゚д゚;)」

穂乃果「…な、なんだったんだいまの」

穂乃果「白昼夢…かな?」

穂乃果「…そ、そうに違いない。まさか私と海未ちゃんとことりちゃんのお化けが出たとかじゃないはず…」

穂乃果「いや私が生きてるのに私のお化けってなんやねん」

穂乃果「あれか、ポルターガイスト…じゃなかった、えー…なんだっけ」

穂乃果「ま、まぁいいや…私もそろそろ行こう」



穂乃果「…」

穂乃果「ふふ…おかしいよね。こんなに忘れっぽい私が…私たちが、ここまで、来れたなんてさ…」

穂乃果「なんだか、ホントに夢みたい」

穂乃果「ノリと勢いだけで始めちゃったスクールアイドル…アネックス1号…」

穂乃果「…でも、これで、最後か…」

穂乃果「やり遂げたよ。最後まで」



穂乃果「おー、らーばぴー…やさしーかぜにーなるふんふふふ~ん…」

穂乃果「ゆめみたがりやでふんふん~…あ、これ違うやつだ」

穂乃果「ふんふふんふふ~ん、らららら~らら~、なんとかえんじぇ~…こっちは今日やるやつだ」



校門


海未「…ほ、穂乃果…、何してるんですか。遅いですよ」

穂乃果「ゴメン歌ってたら遅くなっちゃった…」

にこ「あんたねぇ…。私たちと最後のお別れなのよ?もっと空気読みなさいっていうか…」

真姫「穂乃果が空気読まないなんて今更でしょ」

希「ふふ、そうかも…ね」

絵里「…じゃあ、そろそろ行くわね」

穂乃果「うん…」


ピロンッ♪


花陽「ん?あ、メールだ…」

花陽「なになに…?ん…?」

花陽「え…、え?えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!?」


絵里「ん?花陽…?」

にこ「どうしたのよ」


花陽「大変ですぅっ!!」


穂乃果「ハァ?はいはい、どうせ期待を煽って最後まで言わないパティーンでしょ。もう飽きた」

花陽「ち、違うよ!言うから!!ここで言うから!!」

ことり「だったら一体なにが…」

花陽「め、メールが…来たんです」

真姫「そりゃあ…メールくらい来るでしょ」

花陽「そ、そのメールを送ってきたのが…」


花陽「…わ、私なの」

にこ「はぁ?なによそれ…」

花陽「わ、私何もしてないはずなのに…何故か私のメールアドレスからメールが…」

凛「え、怖…ホラーだにゃ」

ことり「内容は何が書いてあったの?」

花陽「それが…それもよくわからなくて」

花陽「えっと確か…『そこは危ないから今すぐ離れて』…って」

海未「危ない…?何が危ないと…」

絵里「み、みんなっ!あ、あ、あれっ…!」

希「あれ?…ぬわぁぁぁっ!!?なんやあれ!?」

真姫「あれはっ…」

穂乃果「お、お、おっきな花陽ちゃんの大群がぁぁっ!!」



『ぎゅぅぅぅっ…!』『ぎゅぅぅっ…!!』『ぎゅうぅぅぅぅっ!!』



花陽「えぇぇぇぇっ!!!?私あんな変な顔じゃ…」

にこ「あれってなんだったかしら…。どこかで見たことのある…」

凛「そ、そんなことより…あ、あれこっちに近づいてきてないっ!?」

絵里「まずいわ!逃げましょう!!」


ダダダダッ…!!



『ぎゅうぅぅぅっ!!!』



バシュゥゥゥッ!!



希「ぬわぁぁぁぁぁっ!!び、ビーム撃ってきた!?」

にこ「なんでこうなるのよーっ!!?」

海未「このままじゃ私たち…や、やられ…」


??「待たせたわねっ!」

??「とうっ!」


シュタッ


ことり「えっ…!」

海未「あなたたちは…」



真姫☆「…ふふ、久しぶりね!」

凛☆「にゃ!」



真姫「うわぁぁぁぁっ!!?私がもうひとり!?」

凛「凛も!?き、キモいにゃ!」


真姫☆「…そういえば記憶を消したままだったわ」

凛☆「覚えてないのも無理ないね」

穂乃果「あなたたちはだ、誰…?」


真姫☆「細かい話は後。今は時間がないのよ」

凛☆「凛の実験が失敗して今度はモスちんが大量増殖して襲ってきたんだにゃぁぁぁっ!」

真姫☆「私たちのみならずμ'sみんなが追われることになっちゃって…」

凛☆「こうして過去に逃げてきても追っかけてくるんだよぉぉっ!!」


花陽「えぇぇぇ…!?」

真姫「なにそれ、意味わかんない!」

にこ「えっと…つまりあなたたちは未来人!?」


穂乃果☆「そ、そういうことなの!」

海未「わっ!?ほ、穂乃果まで!」

海未☆「助けてくださいっ…このままではやられてしまいます」

ことり「海未ちゃんも…ってことは」

ことり☆「私もいるよー」

穂乃果「ことりちゃんっ…!ってことはさっき見たのは…!」



絵里☆「…ったく、わざわざこんな日に戻ること無いでしょ」

希「えりち!」

希☆「ふふ、でもまさか…また卒業式の日に来れるなんてね」

にこ「希っ…!」

にこ☆「…ふぅ。でも、もう安心よね」

絵里「あ、安心…?何が…」


花陽☆「ま、真姫ちゃん…ホントにこの日で大丈夫なの?」

真姫☆「えぇ、今の彼女たちになら…戦える力があるはずだわ」

穂乃果「戦える力…?なにそれ…」

海未「私たちにアレらと戦えと!?無茶でしょう!」

ことり「な、なにを使って戦えっていうの!?」

凛☆「…今、みんなが持ってるそれ、だよ!」

凛「それ?って…も、もしか、して…」

真姫「…変身ベルト?」

絵里「穂乃果に奢ってもらったやつじゃない」

希「…ん?ていうか穂乃果ちゃんはこの変身ベルトをどこで…」

穂乃果「なんか購買に売ってた」

にこ「売ってるわけないでしょうがこんなもん!?」

真姫☆「その変身ベルトには本物と同等のパワーが秘められているわ」

凛☆「だから、モスちんの大群と戦って凛たちを助けて!ラブライブ!」


ことり「な、なんて責任転嫁…」

海未「過去の私たちに助けを求めるとは…」

穂乃果「…でも」

穂乃果「誰がなんであれ、困ってるんだもん!助けてあげよう!」

真姫「…ふぅ、そうね。ここまで来たら…」

凛「やれるだけやってやるにゃ!」

花陽「うんっ!!」

にこ「え、マジで!?」

絵里「やるしかないでしょう!」

希「…って、うちは持ってないんやけど。それ」

穂乃果「あ!私もまだだよ!」


真姫☆「あなたたちのは…ここにあるわ」ポイッ

凛☆「希ちゃんはダブルドライバーで穂乃果ちゃんはドライブドライバーにゃ」


穂乃果「こ、これで変身…!よぉしっ!みんな、つづけーっ!!」


花陽「う、うぅっ!戦うことが罪なら、私が背負ってあげる!」ピッピッピッスタンディンバーイ コンプリート

凛「通りすがりのスクールアイドルだにゃ!」カメンライドォ…ディケーイ!!

真姫「…行くわよ、相棒」 希「うんっ!」

真姫・希「「お前の罪を数えろ!」」 \サイクロン!!/ \ジョーカー!!/

ことり「私が欲しかった力。どこまででも届く私の腕。それって…こうすれば手に入ったんだ!」タカ!!トラ!!バッタ!! タトバッタトバタットッバ!!

にこ「大銀河宇宙…キター!!私は、世界中のみんなを笑顔にする女の子よ!」3,2,1… デケデケデケデケデーン

絵里「約束するわ…私が最後の希望よ!」シャバドゥビタッチヘンシーン フレイム…プリーズ!!ヒーヒーヒーヒーヒー!!

海未「そ、卒業式にこんな目に会うなんて…絶対許しません!フルーツジュースにしてあげます!」オレンジアームズ!!花道、オンステージ!!


穂乃果「脳細胞が…トップギアだよ!見ててください…私のトップギア!」ドラーイブ!!ターイプスピード!!



真姫☆「うわぁ…色々と壮観ね…」

凛☆「この展開の元ネタがいないのが不可解にゃ…」



一同「ハァー…、ハァッ!!」



穂乃果「私たちのラブライブは…まだまだこれからだよっ!!」







うろライブ! 第13話

おわり

真姫「…というわけで、うろライブ!最終回でした」

凛「え、いいの!?これでいいの!?終わっちゃっていいの!?」

真姫「いいのよ」

凛「まさかの最後がパロネタってどうなのさ!?」

真姫「もう最初からこうするって決めてたんだもん!仕方ないでしょ!」

凛「に、煮え切らないにゃ…」

真姫「感動展開はもし!の方をお楽しみにね」

凛「…なんだかんだでうろライブ2期も長いことやってたね…」

真姫「1期のときのような超展開ながらも感動の最終回、という流れに持っていけなかったのは気がかりだったけれどね」

凛「長編を二つ掛け持ちは個人技じゃ無理だと判明したにゃ」

真姫「一応モスちん関連は熱い展開に持っていこうと努力したんだからね」

凛「それでもパロディからは脱却できてないにゃ…」

真姫「いいのいいの。最後は東映と東宝の夢のコラボレーションだったし」

凛「…えっと、ちなみにわからない人のために言うと最後の展開は仮面ライダーキバの最終回のパロディだにゃ」

凛「そしてキバが出ていないという不条理」

真姫「だってキバのベルトはドライバーじゃなくてキバットベルトだもん」

凛「…うん。最初はクリニックでみんなと撃退するつもりだったんだけど」

凛「何故か途中で変身ベルトを受け取ってしまったせいでこんなことに…。完全に偶然だにゃ」

真姫「こういうこともあるから安価って楽しいのよね」

凛「これからも安価SSは時々やっていけるといいね」

真姫「そうね。これ以降はほとんどもし!だけになっちゃうけど、時々は何かしらクリニックとかほかの何かを挟む形になるといいわね」

凛「希望的観測の余地を出ないにゃ」

真姫「んじゃ、今日はここまでにしておきましょうか」

凛「そだねー…。んじゃ、みんなは映画を楽しんできてね!ネタバレなんぞしようものなら首をはねてやるにゃ!」

真姫「待って…。あえてネットに転がってるちょっとしたネタバレを紡いで勘と予測でこんな話なんじゃね?と予想するSS…」

真姫「題してかもライブ!theMovie!なんてどうかしら!?」

凛「勝手にやっててください。じゃあ今日の西木野☆星空シアターはここまで!」

真姫「…次に提案を即却下されるのはあなたかもね」

真姫・凛「「まじ☆えんじぇー!!」」

こんにちは 千葉から帰ってきたよ
映画もついでに見てラブライブ\エナジー!!/をたっぷり貰って
創作意欲がバリバリなので恐らく今日やります
ですがもし!をやると次のスレがもしかしたらすごく短くなってしまう、もしくは第9話が中途半端に切れるかも、と思ったので
西木野☆星空シアターの前の前にしていた仮面ライダーWパロの作品の番外編をVシネという形でやっていきたいと思います アクセル編を期待してた人には悪いが完全オリジナルやよ!
そんなわけで更新は今日の夜になりますがよろしくお願いします

で、こっから完全に私事なんだけど
今回の映画のテーマソングの曲は絵里センターでAngelic Angelって言うんだけど
先のスレで9ヶ月前頃にAngelicというメモリを使った話を絵里を主軸に書いてて
その頃は映画の話が欠片も出ていなかったので偶然の一致に恐らく世界でただ一人アホみたいに舞い上がってました
ついでにことりの「穂乃果ちゃんヒーローみたい」って台詞もHEROとほんのり一致してて嬉しかったです
長々と失礼しました じゃ夜までほなな

それじゃやっていくよぉ
その前に真姫ちゃんたちの仮面アイドルMuseの説明からどうぞ

真姫「今日は予告通り、仮面ライダーWのパロディ作品、仮面アイドルMuseシリーズの番外編をやっていくわ」

凛「その前に仮面アイドルってなんやねんという人へ説明にゃ」

真姫「えっと…『希「ここが、うちの探偵事務所や!」真姫「それを言うなら私たちの、でしょ?」(希「ここが、うちの探偵事務所や!」真姫「それを言うなら私たちの、でしょ?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1398/13984/1398434859.html))』スレから始まり…」

真姫「その後半年にわたって3スレ続いた仮面ライダーWの世界観を模してやってきたほんのちょっぴり安価成分のあるSSよ」

凛「話の流れはほとんどWの本編と変わらないにゃ。序盤から中盤にかけては細部の設定が違うだけでほとんど一緒だね」

真姫「ま、でも終盤…そうね、あの世界の私と、そして…ラスボスが出会ったところあたりからだいぶ設定に差異が出てきたわね」

凛「一応一つの作品として完結はさせてあるから、仮面ライダーWを全く知らない!って人でも一応は楽しめるはずだよ!」

凛「まぁ結局クリニックにほんの少し繋がるんだけどさ…」

真姫「あと特撮関連の知識が全くないとところどころのネタについていけなかったり登場人物の顔が想像できないって不具合はあるけどね」

真姫「そして今回の番外編…前のスレでも言ってたVシネがやっと思いついたので、今回はそれをやろうって話なのよ」

凛「もううちのSSたちをずっと読んでくれてる前提だよね…」

真姫「…まだ未見な方は良ければ見て欲しいわね。かなり量多いけど」

凛「やってる期間はもし!の方が長いけどこっちはうろ!と交互にやってたから量的にはたいしたことないけど…」

真姫「つまりMuseはもし!とうろ!2期足した量くらいあるのよね。大変だわ」

真姫「でも今回のSSはそのMuseシリーズの核心に迫るネタバレを前提とするお話になる予定だから…」

凛「流石に未見のままじゃお話の理解すらできないかもしれないね…」

真姫「めんどくさい!もしライブ!にしか興味がないよ!…って人はごめんなさい、少しの間待っててね」

凛「安価は一切使う予定はないから寝て起きて見る、パターンでも全然大丈夫にゃ!」

真姫「…じゃあ、これくらいでいいかしらね」

凛「よーし!…そういえば登場人物決め忘れてたの思い出したからほんの少し間があくけど!」

真姫「Vシネ仮面アイドルMuse…始まるわよ!」

一年前… 某所



カタカタカタ…


研究員A「…数値、依然として安定しています」

研究員B「細胞増幅炉、可動準備できています」



謎の女性「…オッケー。では、取り掛かりなさい」



ジュボォォッ…!! ゴポポッ…


研究員C「培養細胞、投下」

研究員D「急激なスピードで成長しています…!」

研究員E「す、すごいっ…!これは…!!」



謎の女性「フフ…、ベリーグッドだわ。そう、その調子…いい子よ」



研究員F「既に幼体へと成長が完了しました…」

研究員G「このまま成長を続けますか?」


謎の女性「…ノー。ストップよ」

研究員A「は?しかし…」

謎の女性「いいの。このままで…このままだからいいのよ…」



ジュルゥッ… バシャァァッ…



謎の女性「…グレイト。ものの数秒でこんな立派な生命が生まれるなんてねぇ…」

謎の女性「錦野財閥の遺産はなんてマーヴェラスなのかしら。ゾクゾクしちゃう…」

謎の女性「…そして、あなたも」ナデナデ

幼女「…」

謎の女性「さて、では次は教育のプログラムを埋め込みましょう」

謎の女性「あらゆる敵を殺すことのできる、最強の兵士になるためのプログラムを」

謎の女性「…さぁ、始まるのよ。私の計画…そう、ネーミングするならば…」

幼女「…」

謎の女性「あなたにちなんで、こうしましょう」


謎の女性「Project Bell、始動よ」






Vシネマ 仮面アイドルMuse RETURNS

星空のY / 幸せの色に染まれ

現在

東條西木野☆探偵事務所内


凛「はい、はーい。お疲れ様でしたー」バタンッ



真姫「…なんだったの?配達」

凛「なんか小包みたい。送り主は…」

凛「あっ!絵里ちゃんだ!」

希「えりち?どれどれ、見せて!」

凛「待って待って…今開けるから。っと…」ガサガサ…

凛「ん、小さい箱にゃ…あ、メッセージカードも入ってる」

真姫「希へ…って書いてあるわね。あなたが読んだら?」

希「せやね、そうしよ…なになに…」



絵里「親愛なる東條希様。梅雨の季節、いかがお過ごしでしょうか」

絵里「そう、梅雨の始まりといえば…あなたの生まれた日でもあるのよね」

絵里「去年は色々と大変なことも重なって祝ってあげられなかったけれど、今年は何かしら…」

絵里「…って思ってたんだけどね。私も自分の用事で忙しくて、あなたの元へは戻れそうにないみたい」

絵里「今私は、自分の夢…フェンシングの世界王者になるための特訓に勤しんでいるわ」

絵里「いつか王者になったその時は…その時こそ、あなたの元へ真っ先に言いに行くからね」

絵里「だから、戻れないせめてもの代わりとして、あなたへの誕生日プレゼントを送ります」

絵里「そんなに大したものじゃないけど…私の気に入ったデザインだったから、あなたも気に入ってもらえると嬉しいな」

絵里「それじゃ、元気でいることを願って。あなたの親友、絢瀬絵里より」



希「…やって」

真姫「ふーん、誕生日プレゼントね…。羨ましいわね。私の誕生日には何も送ってこなかったくせに」

凛「それはほら、想いの違いというか…」

真姫「あん?」

凛「…えー、っと、多分真姫ちゃんの誕生日を知らなかったんだよ、きっと」

希「それより、中に何が入ってるか見てみよっか!よいしょっ」カポッ

希「うわぁぁっ…!」

真姫「可愛らしい…何かしらこれは」

凛「よ、よくわかんないけど…可愛らしい何かの…なに?」

希「…アクセサリーかな?」

真姫「妹のデザインもだけど、姉妹揃って突き抜けたセンスを持ってるわね、絢瀬家は」

凛「バロンくん…今じゃアニメ映画にもなってるくらいだもんね…」

希「ふふ、でもなんであれ、えりちがうちのために選んでくれたものやもん。嬉しいわ…」

真姫「…むっ!わ、私だってこの間誕生日プレゼント送ったでしょ!」

希「もー、わかってるって。真姫ちゃんのも大切にするから、ね?」

真姫「…ホントかしらね」

凛「おぉー、真姫ちゃんがいっちょまえに妬いてるにゃー」

真姫「妬いてないし」

希「誕生日か…そっか、もうそんなに経ったんやね…」

真姫「私と希が出会ってから…2年?3年くらいか、経ったのは」

凛「前に希ちゃんの誕生日を祝ってから2年だね」

希「アウェイクの事件の日やったっけ…。凛ちゃんには辛い体験やったね、あれも」

真姫「ってことは…希ってもう24歳?うわっ…うわぁっ…」

希「なんなんその反応」

真姫「だ、だって24歳って…四捨五入して二十歳になれる最後の年じゃない!」

真姫「もう絵里は今年で四捨五入したら30よ!?おいおい…」

凛「海未ちゃんが飛び込んできて『四捨五入はしないでください』って言いそうにゃ」

希「そんなこと言ってもいずれ人間は年老いるものやし仕方ないやん…」

真姫「時間の流れって残酷よね、って思ったのよ。…その点私はまだピッチピチ!」

真姫「あぁ…早くアイドルになりたい!なんで世間は私の美しさに気づいてくれないの!?」

希「それはまぁ…アイドルが売れるかどうかには運も必要やし」

凛「けど穂乃果ちゃんは見事にトップスターへの階段を登ってってるけどね」

希「…もう情報屋にも頼れなくなっちゃったね」

真姫「くっ…、カリスマ地下アイドルHONOKAの仮面を捨てメジャーデビューを果たした高坂穂乃果…!」

真姫「私は彼女を許せないわ!教えてくれたらもっとサインねだってたのに!」

希「そういうことになるから真姫ちゃんには教えなかったんやと思うわ」

凛「真姫ちゃんは頑張って地道にアイドルのお仕事こなしていこうね」

真姫「…でも探偵業も忙しいし」

真姫「この街…この世界から悪がいなくならない限り、私が大成することはない気がしてきたわ」

凛「か、悲しいこと言わないでよぉ…」

真姫「もう仮面アイドルアイドルとして宣伝しようかしら」

希「…それは絶対にやめてほしいな」

希(6月も半ば、曇り空の音都)

希(うちらはいつものように、3人でとりとめのない会話を続けていた)

希(まだ仮面アイドルとしての力を捨てるわけにはいかないけど、でも以前よりかは街の音色は平和で)

希(時々飛び込んでくるお騒がせな依頼を、主に凛ちゃんに任せながら、のんのんと暮らしていた)

希(だから、この時はまだ誰も予想だにしていなかった)

希(このすぐ後に、あんな…身の毛もよだつような、残酷な事件へと巻き込まることに、なるなんて)



真姫「…はむはむ。んふー、やっぱりドーナツはプレーンシュガーが一番ね…」

凛「もー!そんなに甘いものばっか食べてたら太っちゃうよ!?アイドルは体調管理も大切!」

真姫「ちゃんと運動するからいいの」

凛「最近ずっとぐってりしてるじゃん!?あんじゅちゃんみたいなトップアイドルになるんじゃなかったの!」

真姫「うぅ…凛がうるさいにゃ…」

凛「だ、ダメだ…。腑抜けきってるにゃ…。の、希ちゃんもなんとか言って…」

希「…ふふふ」

凛「…希ちゃん?」

希「ふふっ…えりち…」

凛「おーい、希ちゃーん!」

希「…っは!な、なんか言った?」

凛「さっきからプレゼント眺めて…そんなに嬉しい?」

希「んふ、まぁね…。大切な人からのプレゼントってのは、嬉しいものやよ…」

真姫「むっ…」

希「…と、特に、滅多に会えない人、とかはね」

希「凛ちゃんもそうやない?おやっさんから誕生日にプレゼントもらってたりなんかして」

凛「お父さんから?うーん、そうだなぁ…」

凛「確かにお父さん、家には滅多に帰ってこなかったけど…凛の誕生日には必ず帰ってきてくれてたなぁ」

凛「それでね、凛の欲しかったものをくれるんだけど…それともう一つ、依頼人から貰ったものとかを凛にくれたりしたんだ」

凛「俺が持ってても仕方ないからー、ってかんじで。なんだか価値があるんだかないんだかよくわからないものも多かったけど…」

凛「でも、そんなものでもお父さんから貰ったものって思ったら、大事にしてたなぁ…」

希「ね?そういうことやん!これを眺めて今はいないえりちのことを想ってるんよ」

真姫「…まぁいいわよ。それより凛、よくわからない物って例えばどんなものなの?」

凛「ん?うーん、そうだね…。たまに髪の伸びる市松人形だったり、ドクロマークのネックレスだったり…怖いものもあったにゃ」

凛「あ!それでね、一番気に入ってたのが…虹色?っていうのかな…もしくは玉虫色に光る…なんだったんだろ。あれもアクセサリーなのかな…」

凛「それを小さい頃にもらって、とっても綺麗だったからすんごく大事にしてた記憶があるにゃ!でも…」

希「でも?」

凛「それが…知らないうちにどこかに行っちゃったの。ずっと大事にしてたはずなのに、家中探しても見つからなくて…」

凛「お父さんからもらった大切なものなくしちゃったって、泣き叫んだ記憶があるなぁ…あはは」

真姫「へぇ…凛にも可愛らしい時代があったのね」

凛「それじゃあ今が可愛くないみたいじゃないか」

希「凛ちゃんはずっと可愛いよ」

ことり「うん、凛ちゃんは可愛いよ」

凛「えへへー、そうだよねー…って、うわぁっ!!?ことりちゃん!?」

ことり「こんにちはー」

真姫「い、いつの間に…!気配を感じなかったわ…!!」

ことり「ふふふっ、警察を舐めたらいけないよ…!」


希(南ことり、音都署の若きえりーち…もとい、エリート刑事さん)

希(UTX壊滅後からガイアメモリ関連の犯罪が激減したため、今は超常犯罪捜査課からは外れ、重犯罪の取締を主な役職にしてる)

希(仮面アイドルとしての力もあり、警察全体からの信頼も熱い彼女だけど…)

希(本当は誰かに奉仕する方が性にあっているらしく、ここに来るといっつもコーヒーを淹れてくれる)

希(でもことりちゃんの淹れるコーヒーがこれまた美味しくて…)


ことり「はい、どーぞ」コトッ

希「あぁどうも…って早っ!?今来たばっかりやのにもう入れたん…?」

ことり「いつからついさっき来たと錯覚していた?」

希「なん…やて…」

ことり「ま、いいからいいから。新作のチョコクランチフラペチーノでぇす」

凛「うっわぁ…。カロリー高そうだにゃ…」

真姫「うん、おいしいわね」

凛「うわぁもう平らげてる!?こらぁっ!だから太るって…」

ことり「あはぁんっ!怒ってる凛ちゃんも可愛いね!」ギュッ

凛「んひぃっ!?い、いきなり抱きつかないでぇっ!!?」

ことり「はぁぁぁ…凛ちゃんエネルギーを補充なのです…」

凛「あ、暑い…この季節にこれはジメジメしてキツいにゃぁ…!」

真姫「ちょっと、そんなことしてたらお嫁さんに怒られちゃうんじゃないの?浮気だって」

ことり「それが聞いてよ!ほ、ほ…穂乃果ちゃんてばぁ…!」

ことり「お仕事が忙しいからって全然私に構ってくれなくって…!穂乃果ちゃんは少しの時間居れたらそれでいいなんて…!!」

ことり「私はもっと穂乃果ちゃんと一緒にいたいのにぃっ!!ぐすんっ…だから凛ちゃんで癒されるのです…」ギュッ

凛「だから暑いって…」

希「でもあっちはトップアイドルやし…。時間がないのはお互い様やん?穂乃果ちゃんはその間の少しでもことりちゃんと会えるだけでも嬉しいって言ってんやし…」

真姫「理想のお嫁さんのように聞こえるわね」

ことり「でもぉ…でもぉ…!私はもっと…穂乃果ちゃんとぉ…!」

真姫「これじゃどっちがお嫁さんか分かりっこないわね…。あなたが妊娠すれば?」

ことり「今は体外受精が一般的だから産休はないよ…」

希「フラスコの中の生命、やね。穂乃果ちゃんとことりちゃんの子…どんな子が生まれるんかな?」

ことり「って言ってもまだ受精手続きは済ましてないから子供は先の話だけどさ…。いつになることやら」

凛「…あの、暑いんでそろそろ…」

ことり「そう!そろそろ本題に入らないと!」モギュッ

凛「ぐえっ」

真姫「本題?」

ことり「こうしてグダグダ喋りにきたわけじゃないだよ!」

ことり「ゴホンッ…。あのね、あなたたちに協力してもらいたい事があって」

希「協力…なにを?」

ことり「…結構、重大な事件を追ってて。しかもかなり…危険な」

ことり「だから超人の力を所有するあなたたちに、協力を仰ぎたくてここまで、ね」

真姫「…一気に仕事の顔になったわね」

希「凛ちゃんは抱いたままやけど」

希「…幼年兵?」

凛「って何?」


真姫「読んで字のごとく、少年兵よりももっと幼い…年端もいかない少年少女の兵士のことね」

ことり「うん。そうだよ」

希「なっ…!?な、なによそれ…!」

希「少年兵よりも若いって…、そんな子供が、兵士…人殺し…!?」

希「ふざけてる…!人道的にありえへんよ!」

真姫「それがあり得るのよ。このふざけた世界じゃあね」

希「…うっ。で、でも…いくらなんでもそんなに小さい子供に、兵士ができるものなん?」

希「剣や銃を使いこなすのにだって知識や筋力だっているし…。無理があるんじゃ…」

ことり「それが、そうでもないんだよ」

ことり「…クローン技術によって、ね」

凛「クローン…!」

真姫「錦野財閥が遺した、人口減少への対策案…」

真姫「今は政府が取り扱っているものだと思ってたんだけど…民間にも普及しているの?その禁忌は」

ことり「そんなわけ無い…。完全に違法だよ」

ことり「ヒトクローンを悪用して幼児の兵士を育成…。その兵士を戦争や紛争に加担する国に派遣する会社…」

ことり「いわゆるPMCが、この音都に潜んでいるって情報があってね」

凛「ぴ、ぴーえむしー?またわかんない単語が…」

希「これならうち分かる。PMC…民間軍事会社。傭兵を派遣して生計を立てている会社のことやね」

真姫「傭兵…。以前戦ったことのあるNEVER…天海春香の一派みたいなものかしら」

ことり「種類としては同じものだと考えていいよ。でも、この場合NEVERと異なるのは…」

ことり「あちらが死人の兵士であり、多少のキズや怪我を物ともしない強靭な兵士であるのに対し…」

ことり「幼年兵はいくらでも替えが効く。つまり、死を前提とした運用ができるってことだよ。例えば…」

真姫「…自爆とか」

ことり「…うん」

凛「っ…!そんな…!!」

ことり「見た目は完全に年端もいかない少年少女のおかげで、敵陣の真ん中に潜り込むことも可能なんだ。捕虜として捕らえられたりもして」

ことり「そこで大量の火薬と共に自爆すれば…相手は大ダメージ。混乱の隙に一気に制圧、なんて戦略も可能になる」

希「待って。さっきから少年少女って言ってるけど…クローンの遺伝子は複数なん?一つなら必然的に男女のどちらかになるはずやし」

ことり「えっ…あぁ…それはまだわからないの。巧妙に搬送…うぅん、『輸出』の手口は隠蔽されていて、実際の幼年兵を目撃した人は少なくて」

ことり「幼年兵を見た人も、頭からすっぽり黒いローブを被っているせいで顔が判別できない、だとか」

真姫「そしてすぐに消える。通常の戦力として使用され、仮に殺されたら敵の近くで爆発…。それじゃ性別すらもわからないわけよね」

凛「そんな残酷なことをする会社が…この音都に、あるの…?」

ことり「…確かな情報だよ。…穂乃果ちゃんからの、ね」

希「それは…信用せざるを得ないね」

真姫「なんだ、立派に情報屋、やってるじゃない」

凛「…」

希「…しかしクローンといえども、いくらでも替えがきくとは思えないなぁ…」

希「学習や鍛錬にも時間がいるし、そのコストも考えるとボンボン爆発させていいはずは…」

凛「っ!な、何言ってるの!!ぼ、ボンボン…って…」

凛「そんな、言い方も考えてよっ…!希ちゃんまで…、残酷な…う、うぅっ…!!」

希「あ…、凛ちゃん…」

ことり「…希ちゃんの意見も尤もだよ。まだその情報に関しては掴めていない」

ことり「だから、探偵としてのあなたたちの力も借りたいの。その会社に潜入して、幼年兵育成の方法を暴く」

ことり「あちらの戦力から考えると下準備なしに現場を押さえるのはいくら警察を総動員しても難しい…」

ことり「だから、潜入の際に育成の阻害になるような妨害工作もできたら…嬉しいかなって」

希「…キツい任務やね」

ことり「…それと、凛ちゃん…。ごめんね、こんな話持ってきちゃって」

ことり「希ちゃんだって、悪気があって言ったわけじゃないから…」

凛「…うん、ぐすっ…わかってるけど…でもっ…」

真姫「…凛は直接人の死と触れ合う経験が、私たちに比べると少ないからね」

真姫「まだ抵抗は感じるんでしょう。いくらクローン兵といえども」

凛「だって!く、クローン兵って言っても…それって音都の人達とおんなじってことなんだよ!?」

凛「そんな、死ぬために生まれた命なんて…許せないよ…」

希「…せやね。ゴメン。うちの言い方も悪かった」

希「でも、もうそんなことさせないために…うちらが動くしかない。力を持っているうちらが、ね」

ことり「ホントならこんなこと、普通の探偵に頼める仕事なんかじゃないんだけど」

ことり「あなたたちが持っている力は何よりも強大。他に替えがきかないものだから…」

真姫「…あっちとは正反対のね」

希「っ…、真姫ちゃん」

真姫「…ごめんなさい」

凛「悪趣味だよ…」

ことり「今日は依頼の内容だけ、伝えに来たの。実行はそちらの都合によるよ」

ことり「ただし…早めの方が、犠牲者を減らせるってことは考えておいてね」

希「わかった。こっちも色々と準備しとくね」

ことり「…ありがとう、それじゃ…凛ちゃん」

凛「えっ…」

ことり「最後に…」ギュッ

凛「あっ…」

ことり「…ごめんね。これも…仕事だから」

凛「うん、うん…。わかってるにゃ…。希ちゃんも、ことりちゃんも…悪くないんだよね…」

凛「…真姫ちゃんはちょっぴり悪いけど」

真姫「ぐぅの根もでないわ」

ことり「わかってくれると、嬉しい。じゃあ私は今日はこれで。あとで詳しい情報は送っておくから、目を通しておいてね」

希「了解やよ。久々の大仕事…ホンキ出してこね。真姫ちゃん」

真姫「がってん承知よ」

凛「が、頑張って!凛も…応援してるにゃ!」

真姫「いやあなたも探偵なんだから参加してもらうわよ。応援だけでなく」

凛「えぇぇぇぇぇぇっ!!!?」

というわけで今日はここまで
こんなもんVシネマだろうが元々幼児向けの番組でできるかみたいなダークな内容だけどこっから先はまだ曖昧
手探りで進めていきます 楽しんでくれると嬉しい ほなな

オリジナルっても展開はどこかで見た何かのツギハギみたいなものだけどな!
今回はゲストキャラにスクフェスの子を使うので名前だけ見てもわからない人はググってね じゃ、やっていきます

数日後


希「…ここか」

ことり「うん、そのはず…」

希「じゃ、早速インターホンを…」


ピンポーン


『…はい、こちらレベッカバイオラボラトリーです。どちら様でしょうか』


希「えっと、うちらは…」

ことり「先日連絡させていただいた者です。今日こちらに伺わせていただくと…」


『…あぁ、そうでした。どうぞ、お入りください』


ガチャッ


希「…どうやら空いたみたいやね」

ことり「うん、入ろう」



レベッカバイトラボラトリー内


希「おぉ…、ここが」

ことり「なかなか…ハイテクノロジーな感じの研究所だね」

希「情報が正しければ…この研究所のどこかで…」



「ハーイ、どうもどうもー!お待たせして申し訳ありませーん!」タタタタッ…


レベッカ「私、ここの所長をしてますレベッカと申します。あなた方は…」


ことり「私たちは…」

ことり「…文部科学省から派遣された調査員で、私は南…南ととりといいます」

希「えー、うちは東條かなえです。よろしく」

レベッカ「ハーイ、よろしく。今日は我がラボの調査に参られたとかなんとか…」

希「はい。国家の管理下にない研究所には我々が直接調査に赴いて、どのような研究をしているのかを報告する義務がありますので」

ことり「本日はよろしくお願いしますね」

レベッカ「あぁ!そうだったのね。わかりました、では我々の研究をどうぞご覧になっていってください」スタスタ…


ことり「…うまくいきそうだね」ボソボソ

希「うちらはいいとして…問題はあっちやね」ボソボソ

数日前

東條西木野☆探偵事務所内


希「…どうやらことりちゃんから送られてきた情報によると、そのクローン兵が作られている場所の見当はついているみたい」

希「レベッカバイオラボラトリー…って名前のところみたいやね」


凛「ばいお…ハザード!?まさかゾンビ的な…」

真姫「バイオテクノロジーの研究…かしら。まさにクローンを作るのに最適ね」

希「多分ゾンビは作ってないと思うけど…。でもクローンの生成ならそのとおり。なにせこの研究所は、実際にクローンの研究を行っているみたいやから」

凛「えっ…?でもクローンって国の許可がないとできないんじゃ…」

真姫「それはヒトクローンのみの話よ。おそらくそこで行っているのは動植物の話でしょう」

真姫「それに、国からを一般の研究所にヒトクローンの許可を下ろすことはないわ。人口を増やす目的以外での使用は今でも禁忌中の禁忌だもの」

希「せやね。ホームページでの説明だと食用の牛や鶏肉、あと魚とかのクローンの研究をモットーとしているみたい」

凛「へぇ…」

真姫「そして裏では…人殺しの生きる兵器を飼育している、ってことね。人を生かす食物を生産している研究所が、皮肉なことね」

凛「でも場所がわかってるなら警察が一気に捜索したらいいんじゃないの?」

希「それはさっきも言ってたように、その研究所でどれほどのクローン兵を所有しているか知れたものじゃないから…」

希「下手すれば一個の軍隊に相当する戦力だって所有しているかもしれない。ヘタに暴力で解決しようとしても返り討ちにされる」

真姫「仮に押さえられても…犠牲者は免れないでしょ」

凛「あぁ…、そっか」

希「だからまずは研究所内部の情報を探る。建物の構造から研究の詳しい内容も」

希「そしてその際に、出来るならばクローン兵生成についての情報も手に入れたい」

真姫「でも、簡単に調べられるとも思えないわよね。あちらも警戒してるだろうし。まさか教えてと言って教えてくれるとも思えないし」

希「そこでうちらの出番やよ。ことりちゃんの計画によると、うちとことりちゃんが調査員という名目でその研究所に潜入…」

希「そこで研究所の表立った活動の報告を受ける。これで建物内部の構造と一般研究の内容を詳しく知ることができる」

真姫「調査員ね…。まぁそこはことりがうまくやってくれるでしょう」

希「そしてそれと同時にもう一つ…。うちらに気を取られているうちに、どうにかして別口から研究所に侵入」

希「こっちはクローン兵の情報を得る。…かなり危険な任務やね」

凛「へぇ…、…ん?え、でもそれ…希ちゃんとことりちゃんは調査員なんでしょ?誰がやるの?」

希「…指名が来てるのは…凛ちゃん。キミやよ」

凛「ファッ!?」

希「どうやら通気口のダクトから中に侵入できるらしいけど、そこに体格的に入れそうなのが…凛ちゃんくらいしか候補がいないんよ」

凛「いやいやいや!!え、り、凛がぁ…!?待ってよ!そんな危険な…真姫ちゃんじゃダメなの!?もしくはにこちゃんとか!」

真姫「私と凛とじゃ凛の方が小さいじゃない」

凛「そ、そうだけどさぁ…」

希「どうやらにこさんもちょっと前の任務で怪我をして数ヶ月は激しい運動ができそうにないらしいんよ」

希「そこで、ことりちゃんが知る最も体格の小さな凛ちゃんに白羽の矢が立ったというわけやね」

凛「う、うぐっ…!」

希「ことりちゃんだって大切な凛ちゃんを危険な任務に向かわすのは心苦しいだろうけど…」

希「でもこれは、ことりちゃんが一人の探偵としての凛ちゃんを信頼してのことやから」

真姫「あなたもお父さんのような立派な探偵になりたいんでしょ?もう、私たちを応援するだけから卒業するのもいいと思うけど」

凛「…う。い、犬猫を探すのだって立派な探偵だにゃ…。うん、でも…」

凛「そ、そうだね…!希ちゃんや真姫ちゃんだって今まで命張って危険な依頼に立ち向かってきたんだもん!」

凛「そろそろ凛も…、立ち向かう頃だにゃ!」

現在

レベッカバイオラボラトリー 通気口ダクト内


凛「…って言ったものの」

凛「けほっ!うぅ…暗いにゃ…狭いにゃ…埃っぽいにゃ…怖いにゃぁぁ…」


ケツァルコアトルス型のガジェット『あまり大きな声を出さないの』


凛「…あ、真姫ちゃん…でもぉ…」

『一人で心細いのはわかるけど、もう後戻りはできないんだから、今更泣き言は言わない』

凛「あう…」

『いざとなったら私が付いてるわ。何かあればすぐにワイルドスターで突入する』

『あなたの命に危機が及ぶようなことには決してならないから、安心して』

凛「…う、うん…。わかったよ…。だけど…」

凛「けふっけふっ…!この埃っぽさはガマンできそうにないよ…」




レベッカバイオラボラトリー内


レベッカ「あなたたち、お寿司は好き?」


希「…は?」

ことり「えっと…」


レベッカ「え!日本人なのにお寿司、好きじゃないの?」

希「いや…好きですけど…。質問の意味がよくわからなくて」

レベッカ「私はね、ブリが好き。脂身の乗ったよく肥えたブリが特に!」

レベッカ「他にも大トロやキンメダイ、イクラにハモに、あ、あとウナギも!」

ことり「ウナギ?なにそれ…」

レベッカ「あぁ…今じゃ出しているお店も少ないけれど、すごくレアでデリシャスなお魚なんです。日本では今はほとんど漁獲できていないとか」

レベッカ「あとは魚だけでなく、ローストビーフのお寿司もおいしくて。柔らかい赤身が実にお醤油とマッチする…」

希「じゅるっ…お、お腹すいてきた…」

ことり「…好きなお寿司のネタはいいんですけど、それが一体何か?」

レベッカ「オゥ、ソーリー。私が言いたいのは、そういうおいしいお魚やお肉は、得てして漁獲や飼育が難しい、っていうことなのよ」

レベッカ「脂身を多く含むブリは限られた間しか獲られず、大トロはマグロのほんの一部分、ウナギのような今じゃ口にできないようなお魚もたくさん」

レベッカ「牛肉だって、柔らかいお肉になるように育てるには血統や餌の種類、それ以外にも環境など様々な要因が必要となってくるわ」

レベッカ「けれどクローンはそれら全ての問題を一挙に解決してくれる…」ピ、ポ、ピ、パ…


ガコンッ… カシュー…


レベッカ「ここが私たちの研究室です。どうぞ」


希「これは…」

ことり「すごい…。色々な動物が培養されてる…」

レベッカ「フフ、ただ育てているだけじゃないのよ」

レベッカ「クローンで生まれた動物たちの細胞をも操り、より美味しくすることを研究しているの。どや」

希「細胞を…」

レベッカ「私、クローンって素晴らしい技術だと思うの!」

希「おぉ…いきなりなんや…」

レベッカ「本来種を存続させるためには異なる性別を持つ二体の個体が必要でしょ?」

レベッカ「けれどクローンを使えば…一つの遺伝子だけで同じ生命が山ほど生まれる!」

レベッカ「種の保存という点においてクローンはまさに人間が神を超越した点だと…」


研究員A「し、所長…。調査員の方、困ってますよ…」


レベッカ「…ん?お、オゥ…、ごめんなさい。クローンのことになるとつい熱くなっちゃって。てへ」

希「それはいいですけど…」

ことり「クローンがそれほど好きだから、この音都へ?」

レベッカ「イエスイエース!日本にクローンの…しかもヒトクローンの楽園が存在すると聞いて必死で日本語を勉強したの!」

レベッカ「全てはここでクローンの研究をするために!来てみて驚いたわ!同じ顔がいっぱいいるんだもの!ここは私にとってのヘブン…天国だった!!」

希「…まさかヒトクローンを秘密に生成してるなんてことは…」

レベッカ「アハハ!まさか!流石に私もそんなことしてませんよ!」

レベッカ「許されるならばしたいところだけど…そんな余裕も費用もこの研究所にはありませんし」

ことり「…その割にはやけに研究所はハイテクな気がしますけど」

レベッカ「それはそうよ。研究者にとって最も大切なのは研究する環境だもの」

レベッカ「必要な機材や資料がなくては出来る研究もままならないからね」

希「そのための費用はどこから?」

レベッカ「もちろん、私たちの作った食用動物を売ることで費用に変えてるの」

レベッカ「なにせ今は細胞を高速培養させる増殖炉すら存在するのだし」

希「高速で培養…」


希(今から10年ほど前…錦野真姫のクローンである真姫ちゃんも、そこで3年のうちに10歳の体へと成長させられた)

希(今は技術も進歩して、成体になるのに数時間もかからないのだから恐ろしいものやね)


レベッカ「そして!我々のすごいところはそれだけにとどまりません!どや」

希「さっきからチラチラ見せてくるドヤ顔すっごいいらつく」

レベッカ「先程も言ったけれど、私たちはクローンの細胞を変異させることでよりおいしいお肉を実現しているのよ」

ことり「細胞を、変異…?それだけ聞くと何やら怪しげに聞こえるのだけど」

レベッカ「とんでもない!ただ赤身だけの身体を脂肪も含むお肉に変えたり、逆に筋肉の含有量を増やすことで引き締まった身にしたり…」

レベッカ「今やクローンの動物たちは家畜のお肉よりも格段に美味しく、そして低コストなのです!」

希「そのお肉を売ってお金を?でもクローン牛やクローン豚がお店に並んでるってあまり聞かないような…」

レベッカ「まだ大量生産には至らず多く出回ることは少ないですが…一部の高級料理店などにそれまでのブランド牛などからうちのクローン牛に変えたお店も多々あるの」

レベッカ「それにより評判が上がったお店はあれど、一度もクレームがついたことはありません」

レベッカ「多くの料理店から厚い信頼を受け、今現在そういった部分から安定した収入を得ている、ってところ…かな?」

ことり「…なるほど」



ことり(確かにそれに関しても研究は熱心と言えるけれど…)

ことり(この研究所の規模的にそれだけじゃおそらく費用は賄えないはず…)

ことり(…やはり裏で、もっと大きなお金が動いてるに違いないね)

レベッカバイオラボラトリー 通気口ダクト内


ゴソゴソ…

凛「わっせ、わっせ…」

凛「…ふぅ。ホント、身体ギリギリだから…進むのにも一苦労にゃ」

『やっぱり私だったら途中で腰がつっかえてたかもしれないわね』

凛「…っていうか、ガジェットで来られるなら潜入はそれでよかったんじゃないの?」

『…それは、まぁ、人間の手でないといけないところもあるかも知れないじゃない?』

凛「…はぁ。もうここまで来たなら考えるのはナシにゃ。っと…お、ここから下の様子が見られるね」

凛「どれどれ…?」



「…1267番の様子はどうだ?」

「ダメだ。すっかり怯えてしまっている。ある意味では珍しい個体だが…」

「一度感情を持つとチップでの制御にも不具合が生じやすいからな。仕方ない、処分か」

「もったいないな。持って帰ってペットにでもしてやりたいところだけど」

「バカを言うな。このことが外部に漏れたら俺たちの命はないんだぞ」

「へいへいわかってるって冗談だよ。ちゃんとカギもかけたし漏れることなんて…」



『…今の話聞いた?』

凛「ダダ漏れだったね…。人の口に戸は立てられないのだにゃ」

『感情だのチップで制御だの、明らかに家畜の言い様ではなかったわ』

『まず間違いなく、ヒトクローンの話でしょう。あの研究員がその部屋に入るためのカギを持っているはず…』

凛「…そっか。鍵がかかってるんだよね…。どうしよう…」

『あの研究員から手に入れるしかない…。凛、そこから降りられる?』

凛「え、まぁ…降りられるかもしれないけど…ま、まさか…」

『…強奪よ』

凛「そ、そうなるのかぁ…」




レベッカバイオラボラトリー内


研究員B「…どうやら今は科学省の調査員だかが来てるらしいからな。油断はするなよ」

研究員C「わかってるって。そんなヘマは…」


ガタンッ!!


シュタッ


研究員B「っ…!?な、なんっ…」

凛「せいっ!!」ズゴォッ!!

研究員B「ぐぶふっ…!?うっ…」

研究員C「なっ…!」

『動くな。動けば…体中から血を吹いて死ぬことになるわ』シャキンッ

研究員C「う、う…!」

凛「あの、お願いします。あなたがさっき入っていた部屋に入りたくて…」

凛「だから協力を…」

研究員C「っ!な、き、キミは…!!」

凛「えっ…?」

研究員C「そんなっ…、う、ウソだろう!?」

『ふっ!』ズゴォッ

研究員C「えうっ…」バタリッ

凛「あっ…」

『大声を出されて仲間を呼ばれるとマズイわ。とっとと済ませましょう』

凛「う、うん…」

『彼が入ってた部屋がどこにあるか見当はつく?』

凛「多分…あっちかな?厳重なロックがしてそうな部屋があるよ」

『その部屋の前まで、彼を運んで。静脈認証によるロックがあるかもしれないわ』

凛「り、了解にゃ…。よいしょっ…」ズルズル…


凛「えっと、部屋の前まで来たけど…うーん…」

凛「どうすればいいかわかんない」

『…そうね。カメラ越しだから不確実だけど…どうやら研究員のタグと静脈での識別、あとはパスワードによるロックがかけられているわね』

凛「うわぁ…厳重だにゃ」

『けどタグと動脈はそこにあるから平気。凛、やって』

凛「了解にゃ。これと…これ、と」


ピッ ピッ


『あとはパスワード…。これは私に任せなさい』

<グエー シュルルッ… カチンッ

『ふふ…こんな程度の機械なんて、私の音楽室でちょちょいのちょいね』

『すぐ済むから、誰か来ないか身構えておいて』

凛「わ、わかったにゃ…」ドキドキ

凛「…誰かきたら一巻の終わりだよ…」

『…っと、よし解けた。凛、~~~~…って入力して。あ、念のためその人の指を使って』

凛「り、了解にゃ。よいしょっ…、ポチポチポチ…っと」


ビー ガチャンッ


凛「お、空いた!」

『でかしたわ!凛、侵入して写真を撮ってきて』

『私はここで誰か来ないか見張ってるから。誰かが入ってきそうになったら携帯越しに警告するわ』

凛「わかったにゃ…。うぅ…、マジでヤバいことしてるよ、凛…」ドキドキドキ



ヒトクローン培養室内


凛「う、うわっ…!あったにゃ…!!マジで…」

凛「うぅっ…、気持ち悪い…。これみんな誰かのクローンなんだよね…」

凛「わ、忘れずに写真を…」


凛(そう思って培養液に閉じ込められているそのクローンを改めてよく見て)

凛(凛は、思わず手に持ったカメラを、落としてしまった)

カツーンッ… カランカランッ…


凛「ぇ…あ…!ぇ…ッ!!」


凛(あまりのことに、驚きの声すら声にならなくて)

凛(写真を撮るっていう任務も忘れて、そのクローンたちに釘付けになってしまったの)

凛(呆けてそのクローンのうちのひとりに近づく。その時…)

凛(培養管をコントロールする機械に手が触れてしまい…)


ピッ シュゴォォッ… バシャァァッ…


凛「あっ…!ひぃっ…!!」


バタリッ


凛(クローンの子がその場に投げ出される)

凛(そしてその瞬間…)



ビー!! ビー!!


凛(けたたましく、警報が鳴り響いた)



一方その頃


希「うわっ…!美味しっ!このお肉めっちゃおいしい!」

ことり「ホントだぁ…。しかも刺身で食べられるなんて…さすがクローン牛…」

レベッカ「でしょうー!?清潔な環境で育てられているから菌も寄生虫も沸かないの!だから生でもノープロブレム!」

希「牛肉の刺身がこんなに美味しいものだったなんて…うち初めて食べた…」

レベッカ「昔にはレバーの刺身は一般的だったらしいけれどね。あ、そうそう、それでさっきの話の続きなんだけど…」

レベッカ「私日本のものがすごく好きで!アメコミみたいな暑苦しいものなんかより日本の特撮のクールでスタイリッシュなヒーローが子供の頃から大好きで!」

希「おお!気が合うね!うちもやよ!」

レベッカ「オゥイエー!特撮いいわよね!サムライもニンジャもいるし!それに…」


ビー!! ビー!!


ことり「…っ!?な、何の音…!?」


『不当なアクセスが発見されました。不当なアクセスが発見されました。直ちに修正します』


希「不当なアクセス…?」

レベッカ「あぁ…何かトラブルでもあったのかしら?でもノープロブレム。すぐガードロボットが向かって修正してくれるわ」

ことり「修正とは…?」

レベッカ「職員による操作ミスだったら顔の識別とタグの確認ですぐに収まる。仮に侵入者でもいた場合は…」

レベッカ「…排除されるから、安心してください」


希・ことり((や、ヤバ…!))

『…んっ!!凛っ!!聞こえてる!?』


凛「…っは!?ま、真姫ちゃっ…」


『け、警報が鳴ってるじゃない!貴女なにしたのよ!?』

凛「え、あっ…!ご、ゴメン…!うっかりして機械を触っちゃったみたいで…」

『…このバカ!今すぐそこから離れて!』

凛「わ、わかったにゃ!」タッタッ…

凛「あっ…!」


ピー ギー 


凛「な、なんか変なロボットがくるにゃ…!見るからに銃で撃ってきそうなやつが!」

『…チッ。遅かったわね。いや、どのみち逃げ切ればしなかったでしょうけど』

『だったら逃げるのはナシ!…私がそっちまで行くわ!凛はその部屋に隠れて、ひたすら待ってて!』

凛「わ、わかった…!で、でも…隠れるったって…」

凛「…こんな部屋、落ち着けないにゃぁ…!」


幼女「…ん、ううぅ…。あ、あれ…?もうおはよう…?」

幼女「あれ…おねえちゃん…誰…」


凛「あっ…!凛が出しちゃったクローンの子…」

凛「…こ、こっち!こっちに隠れるにゃ!」

幼女「えっ…」

凛「早くっ!!」タタタッ…




希「…はい、はい、わかりました」

希「はい、それでは…」ピッ

レベッカ「どちらから?」

希「上司からの連絡です。すぐ戻って来いとのことで」

ことり「もう調査も十分に済んだし、これ以上長居するわけにもいかないし…」

ことり「少しトラブルもあったみたいなので、今日はこのあたりで失礼させていただきますね」

レベッカ「そうですか。もう少しゆっくりしてくれてもよかったんだけど。…いえ、それでは」

希「はい、失礼します」ガチャンッ

レベッカ「…」


希「…っ!!」ダダダッ!!

ことり「大変なことになったねっ…!」

希「とにかく…!」シュルルッ… カチャンッ!!

希「変身するんが先決やね…!行くよ、真姫ちゃんっ…!!」

真姫『えぇ。ここは私が行くわ!』

希「オッケー!」\スター!!/

真姫『無事でいてちょうだいよね…、凛っ!』\ワイルド!!/



真姫・希「『変身っ!!』」


\ワイルド!!/\スター!!/  デーデデーデデーデレレレーン

今日はここまで
序盤と終盤の展開しか考えてなかったからここら辺の繋ぎがキツいにゃ でもがんばるにゃ ほなな

アクションシーンは特撮の華だろうけどSSではどう表現していいものか悩ましい
必殺技ぶちかますシーンとか以外は簡素になるかもね じゃあやっていきます

Muse「ふっ…!」スタタタタタッ…!!


研究員「し、侵入者!?何者だ!」


Muse「ごめんなさい、ちょっと黙ってて…ねっ!」ゲシィッ!!

研究員「うぐっ…!」

Muse「…っと!凛のいるところ…どこよ」



ヒトクローン培養室内


『不当なアクセスを発見。直ちに修正を行う』ギー ピー



凛「ひぃっ…!」

凛(とっさに物陰に身を潜ませたけど…)

凛(見つかれば凛の命は…ないにゃ)

幼女「…誰を探してるの?ロボット」

凛「しっ!静かにして…」

凛(…って、どうして凛はこの子まで匿ってるんだろう…)

凛(理由は、なんとなくわかっていることではあるけれど…)

幼女「ふぇっ…へくちゅっ!!」

凛「わっ…!さ、寒い?」

幼女「うん…」

凛(培養液から出てきて全身水浸しの上今全裸だもんね…。えと、何か羽織るもの…)

凛「あ、ここに黒いローブがあるにゃ…。これなら…」ガシッ


『生命反応を発見。所内データベースを検索…該当者ナシ。侵入者と判断し迎撃します』


凛「ゲッ…!み、見つかっちゃった…!!」


『なお誤作動の場合研究員タグを5秒以内にかざしてください。一つのタグにつき一度のみ機能が停止します』


凛「た、タグ…?あ、ここのロックを開けるカギの一つだにゃ…!」

凛「さっきここに入るために強奪しておいたから…えいっ!」ササッ


『タグを確認。一時的に機能を停止します』ピー…


凛「あ、危なかった…!でももうこのタグは使えないんだよね…慎重に行動しないと」

幼女「へっくちゅいっ!ううぇぇ…」

凛「あぁ…寒いんだよね。ハイこれ、羽織っておいて」

幼女「ありがとー…」

凛「おぉ…なかなか礼儀のいい子だにゃ。こういうところも…」

凛「…っていうか、真姫ちゃん、希ちゃん、早く来てよぉぉ…!」

レベッカバイオラボラトリー内


Muse「あっ!あそこ…!」「ガードロボットが大量に押し寄せている…!」

Muse「おそらくあそこに、凛が…!」「急ごう!」



『侵入者を発見。敵対反応アリとみなし、迎撃に移ります』ピー ガガガ…

『迎撃、開始』


ズガガガガッ!!


Muse「ぬわっ!!」「撃ってきおった!」

Muse「ま、まぁ量産機の銃弾でやられる仮面アイドルなんていないけどねっ!」「…多分ね」


『迎撃行動を開始した味方機を検知。援護行動を開始します』ガガガ…


ズガガガガッ!!


Muse「ちぃっ…!一気に攻撃が激しくなってきたわね…!」「焦らず一体一体処理していこう!」ガション!!

\シャイニングスター!!/


Muse「せいっ!!」ズバァンッ!!


『ギ…ピ、ピ…』

ドガァァンッ!!


Muse「はぁっ!せやぁぁっ!!」ズバァッ!!ズゴシャァアッ!!


ドガァァンッ!! ドガァァンッ!!



『接近時の破壊確率大。遠距離からの戦闘を行います』ウィーンッ…

ズガガガガガッ!!



Muse「破壊時の状況まで読み取って戦闘方法を変えてくる…?」「こんなものが一般のガード用のロボットであってたまるものですか…!」

Muse「凛が危ないわ…!やはりまとめて処理しないと…!」「離れた敵には…こいつや!」ガションガションッ!!

\ワイルドストーム!!/


Muse「刃の嵐をっ…!喰らいなさいぃっ!!」ヒュバァァァンッ!!


ズババババババッ!!


『ギギッ…!』


ドガガガガァァンッ!!


Muse「よし、道が開いたっ!」「急ぎましょう!」

ヒトクローン培養室内


凛「な、なんか爆発する音が聞こえたんですけど…!?希ちゃんと真姫ちゃん…?」

幼女「う、うぅ…!」

凛「こ、怖いだろうけどすぐ助かるから、安心して…」ドキドキドキ…

凛「って言っても、やっぱり凛も怖…」


『生命反応を発見。所内データベースを検索…』


凛「あっ…!ま、マズい…!見つかったっ!?油断してたにゃっ…!」


『…うち一人該当アリ。ベル1267番と断定』


凛「…ベル?もしかして…この子の名前?」

幼女「え…?」


『脱走兵と判断し処分を行います』ウィーン…


凛「う、ウソっ…!や、やられっ…」



「「ハァッ!!」」ズバァァンッ!!


『ぴ、ギギッ…!』


ドガァァンッ!!


凛「…あ」


Muse「…ギリギリ、間に合ったようね」「早く逃げるよ、凛ちゃん!」

凛「の、希ちゃん!真姫ちゃんっ!う、うんっ!」

幼女「あう…」

凛「あっ…、き、キミも!ここにいたらさっきのロボットに殺されちゃうにゃ!」ガシッ

幼女「う、うん…」



タッタッタッタッ…!!

レベッカバイオラボラトリー外


ことり「あ、凛ちゃん!よかった…無事だったんだね」

Muse「ことりちゃんはそのままうちの身体を運んどいて!こっちはリボルマキーで帰るから!」

ことり「わかった。くれぐれも気をつけてね!」ブロロロロ…

Muse「さてと…」ピポパ…


ギャルルルルルッ!!


幼女「ふえぇっ!なんか来た!?」

凛「追ってが来る前に逃げないと!乗り込むよ!」

Muse「その子持ってきて大丈夫なん…?」「その子がクローン兵の一人なら好都合だわ。乗せましょう」

Muse「…爆弾が仕掛けられてないといいけど」「戦争に送り込む前の兵士に爆弾をくくりつけることはないでしょ。…多分」



ギュルルルルッ…!!




レベッカバイオラボラトリー内


研究員「…侵入者には逃げられました。例の部屋も目撃されたようですが…」

レベッカ「ふぅん…。そう」

研究員「い、いいんですか…?どうやら脱走した兵もいるようですが…」

レベッカ「いいのよ。どうせ誰かに見られたとして、生半可な力でどうこうできるとも思えないし…」

レベッカ「…ふふふ、それより…いいものが映ってるわね。監視カメラに…」

レベッカ「ようやく見つけた…!オリジナル…!!」




東條西木野☆探偵事務所内


ことり「…やっぱり、上手くはいかないかぁ」

真姫「建物内部のセキュリティは想像以上に厚いものだったわね…。当たり前っちゃ当たり前だけど」

希「禁忌を違法利用している上に人殺しの兵器を製造しているわけやからねぇ…」

真姫「凛が余計なことしなければ穏便に済ませられたかもしれないのに…」

凛「ご、ごめんにゃ…。だけど…」

ことり「…ところで、この子、誰?」

幼女「う、うぅぅ…」

真姫「凛が余計なことをして檻から逃がしたクローン兵の子ね」

希「えらく怯えてるね…。こんな子が本当に戦場で役に立つん…?」

真姫「研究所で聞いた話だとチップで感情を制御がどうとか…」

真姫「おそらく従順になるよう脳にそういったものを埋め込まれて意図的に操るようにするみたいね」

凛「それもあるけど…多分この子、その人の話に出てた珍しい個体、って子なんじゃない、かなぁ…」

凛「あのロボットも1267番って言ってたし…」

ことり「ふーん…。ということはほかの個体はみんな無感情、ってことなんだね…」

ことり「なんだかそれを思うと悲しいね…」

真姫「…それより、ことり。今までクローン兵は遠巻きでしか目撃されてなかったんでしょ?」

真姫「この子、初めて間近で見られるクローン兵じゃない。どんな顔してるか見せてよ」

希「この子もローブで顔を覆ってるから見えてへんもんね。どんな子なん?」

幼女「ふぇ?」

凛「ま、ま、待ったぁぁっ!!ダメダメ!ダメだにゃぁっ!!」

ことり「えっ…」

凛「か、顔を見るのはナシ!絶対に見ちゃダメなんだから!!」

真姫「どうしてよ…。顔見るくらいいいでしょ?」

凛「だ、だって…この子これしか着てないし、か、かわいそうじゃん」

希「そう言われても、いつまでもそれしか着せないってわけにもいかんやん?いずれは顔見る状況になるし」

ことり「どうして凛ちゃんはそこまでこの子の顔を見せるの、嫌がってるの?」

凛「そ、それは…」

幼女「お姉ちゃん…?」

凛「…お、お姉ちゃん…。冗談にならないよ、キミが言うと…」

希「へ?」

凛「わ、わかった…。いい、そのローブの頭のところ…取るね」

幼女「うん…?いいけど…」

凛「…っ。い、いくよっ…!」

凛「えいっ!!」ガバッ!!


希「おぉ…可愛いやん。なかなか…ん?」

真姫「…なぁっ!!?こ、これ、って…!」

ことり「ま、まさかっ…」



凛「こ、この子…」

凛「…凛に、そっくり、だよね?」

幼凛「そっくり…?」


希「ホンマや…!凛ちゃんに…凛ちゃんにめちゃくちゃ似てる!」

ことり「あわわわわわわ…!」

真姫「似てるってもんじゃないわ…!明らかにこれは…!!」

真姫「凛の、クローン…!」

希「どういうことなん…?なんで、あの研究所で凛ちゃんのクローンが…!」

凛「凛の方が知りたいよ…。あの部屋に入った瞬間一面に浮かぶ凛のクローンたち…」

凛「もう頭がどうにかなりそうで…そのせいでミスっちゃったんだよぉ…」

ことり「あわわわわわわ…!」

真姫「カメラも落としてくるしね…。しかし、これは…仕方ないわね。流石に」

希「自分のクローンが生産されている、なんて夢にも思わんやろうし…」

希「しかし、どうして凛ちゃんのクローンなんやろ…?だいたいどこで遺伝子情報を…」

真姫「遺伝子ならそこらに転がっているわよ。髪の毛一本、使用済みのお箸からでも細胞が採取できるんだし」

真姫「でもなんの考えもなしに凛のクローンを使ったとは考えにくいわね…。どういう目的で…」

ことり「あわわわわわわわ…!!」

凛「ことりちゃんさっきからあわあわ言ってどうし…」


ことり「かっ…、かわいいいっ!!!!」モギューッ


幼凛「むぎゅっ!!?」

ことり「あはぁぁぁっ…!!ち、ちっちゃい凛ちゃん!ちっちゃい凛ちゃんはすはす!んんっ!!かわいいよ!!」

幼凛「た、助けてぇぇ…!」

希「まさか興奮してそうなってたとは…」

ことり「お姉さんは怖くないよ!立派な正義の味方のお姉さんだよー」

ことり「私は南ことり!あなたのお名前は?」

幼凛「…名前?なまえ…」

真姫「もしかして…名前が無いの?」

幼凛「わかんない…」

希「クローン兵にいちいち名前をつけてられないやろうしね…」

ことり「じゃあじゃあ!凛ちゃんがつけてあげて!この子の名前!」

凛「えっ…、凛が?」

希「んふ、いいんやない?もうあの研究所には戻れないやろうし、名前が無いのも寂しいやろうから」

凛「名前…名前かぁ…」

幼凛「…にゃ?」

凛「あ、確かあのロボットから呼ばれていた名前があったような…『ベル1267番』とかって」

真姫「識別番号にクローンとしての集合名を付けた名前でしょう。凛が元になっているから、ベル、なのね」

凛「なるほど…。…うん、決めた!この子の名前!」

ことり「なになに?」

凛「そのまんま、ベルにするにゃ!」

希「え、安直…」

凛「安直でもいいの!凛が気に入ったから!」

凛「これからよろしくね、ベル!」

ベル「…にゃ」

ことり「ふふっ、凛ちゃんの『にゃ』を気に入ったのかな?」

凛「そういうふうに使うものじゃないにゃー!お尻に付けるの!」

ベル「おしり?」プルンッ

凛「わぁー!そっちのおしりじゃない!語尾ってことだよ!」

希「というか、この子にも洋服着せてあげたほうがいいんやないかな?いつまでもこのままは…」

真姫「でもこの小ささに合う服なんてある?」

凛「うーん…、じゃあ後で買いに行こう!ね?ベル」

ベル「わかったにゃー」

凛「そうそう!そんな感じにゃ!」




ベル「にゃー!にゃー!」

凛「うおー!やったなー!」



希「…もう打ち解けてるし。オリジナルやからかな」

真姫「しかし、こうなってくるとまだまだ謎はたくさんね…」

真姫「凛の細胞を使ったこともだけど、特に体力に秀でているわけでもない凛のクローン兵が戦場で通用するっていうのも…」

希「最後には自爆するけども、一応戦力としても運用できるんやもんね…」

ことり「うっ…そっか。凛ちゃんのクローンが爆発…してたんだよね…。そう考えると…」

真姫「…誰のクローンだろうと変わりはしないわ。うちの凛には関係ない」

希「ベルを調べたら何かわかるかな?」

真姫「解剖する?」

ことり「…凛ちゃんと私が泣くよ」

真姫「冗談よ。私が解剖したところで何もわかんないし。それに…」


凛「ほれー!こしょこしょにゃー!」

ベル「あはははは!こそばゆいにゃー!」


真姫「…凛にあっさり捕まっているベルに、特別な何かがあるとは考えにくいわ」

真姫「研究員も『出来損ない』として扱っていたし、ベルには兵士としての特別な力はないのかも」

希「そっか…」

ことり「でもその『出来損ない』っていうのは感情を持っていたから、ってことじゃなかったの?力を持っていなかったから?」

真姫「…わからない。話を聞く限りではそのはずだけど、だとしたらベルは二重に欠点を持っている…?」

真姫「いえ、もしくは…」



ガチャッ…

カランコロンッ…


真姫「ん?なに…?」

希「なんか、ドアから投げ込まれ…」


ことり「伏せてっ!!!」



ドガァァァァンッ!!

モクモク…


希「けほっ、ごほっ…!な、なんやこれ…!」

真姫「スモークグレネード…!?まさかっ…」


ことり「誰かが、事務所を襲ってきたっ…!くっ…凛ちゃんっ!!」



凛「もがーっ!!むぐぅっ…!!」ジタバタ…!!



真姫「ッ!まずい…凛が捕まってるっ…!!」

ことり「うぅっ…煙で視界が…」

希「行けっ!ガジェットたち!!」

<グエー <ワンチュー <ピョンピョン!!


ゲシゲシッ!!


「邪魔…!」ビシッ!!


<グエー… <ワンチュー… <ピョォン…


真姫「笑えないほど役に立たなかったわね…」

希「でも、敵のいる場所はわかった…!そこやぁっ!!」ダダッ!!

希「ハァッ!」


ズゴォッ!!


「うぐっ…」ヨロッ…



希「凛ちゃん!」

凛「げほっ…!ごほっ…べ、ベルは…?」

ベル「ここだにゃ」

希「よかった…ふたりとも無事やね…!」

凛「一体何が…」

希「今はそれより、一刻も早くここから逃げよう!」


真姫「こっちよ!地下からリボルマキーで退散よ!」


希「よしっ…!凛ちゃん、うちの手を離したらあかんよ!」ギュッ

凛「うんっ…!ベルも!」ギュッ

ベル「に、にゃぁっ…」


タタタタッ…

東條西木野☆探偵事務所地下


真姫「くっ…まさか事務所にまで押しかけられるなんて…」

ことり「私たちの正体に気づいていたのかな…」

真姫「かもしれないわね…。くっ、とにかく今は…」


クローン兵B「…」


真姫「…っ!ちょっと…こっちにもいるの…!?」

ことり「銃器を持ってる…!真姫ちゃんは下がって!」

真姫「ど、どうする気!?」

ことり「ここは私が…振り切るよ!」\ルーク!!/

ことり「変…、身ッ!!」

\ルーク!!/ ゴゴゴゴ!!


ルーク「ハァッ!!」ダダダッ!!



クローン兵B「…!」ズガガガガッ!!


ルーク「フンッ…!この硬い身体には、そんなのじゃ傷一つつかないよっ…!」

ルーク「てぇいっ!!」ズゴォッ!!

クローン兵B「ぐぶっ…!」

ドガァァッ…!!



希「ハァッ…、そ、そっちにもおるん!?」

凛「こ、怖いにゃ…」

真姫「希、凛!…ことり、逃げるわよ!早く!」


ルーク「…私は後で行く」


真姫「ど、どうして!そっちのクローンを片付けたなら…」


ルーク「まだ…どうやら片付いてないみたい…!」


真姫「えっ…だって、ルークの一撃をまともに食らって…」



クローン兵B「…」ムクリ


希「っ…!ウソやん…!」

真姫「あんな小さな身体の癖して、まだ立ち上がるの…!?」

ルーク「だから早く行って!ここで私が足止めしているうちに!」

凛「こ、ことりちゃんは!?」

ルーク「…あとで必ず追いつくから!早く!」

希「…わかった!行こう!凛ちゃん、ベル!乗り込むよ!」

凛「う…、うんっ…!!」

ベル「…」


ギャルルルルッ!!

街道

リボルマキー内部


凛「う、うぅ…!まさか事務所を追われるなんて…」

希「目撃者は生かしておかない…ってことやね」

凛「えぇっ…!そんなっ…!」

ベル「死んじゃうにゃ?」

凛「嫌だよそんなのっ!死にたくない…にゃ…」

真姫「…果たして本当にそうかしら」

希「え?」

真姫「もし殺す気があるなら、最初に凛がクローン兵に捕まった時、殺されているはずよ」

凛「ひっ…!う、運が良かったってこと…?」

希「いや、真姫ちゃんが言いたいのはそうじゃなくて…殺すつもりはなかった、ってことやない?」

真姫「えぇ。多分、生きたままの捕獲を目的としている」

真姫「それが凛だけなのか、私たちも標的にされているのかはまだ不明だけど…」

ベル「カギ…」

凛「…へ?どうしたの、ベル?」

ベル「いま外で…カギ、って聞こえた」

ベル「凛お姉ちゃんのこと、呼んでるにゃ」

凛「呼んで…?」


ドガァァンッ!!

キキィィィィッ…!! グラグラ…


希「のわぁっ!!?な、なにっ!?」

真姫「こ、攻撃を受けている…!?まさかっ…、ハッチをあけて!」

凛「う、うんっ…!」ポチッ


ウィーン…


希「…っ!なぁっ…!!?」



クローン兵A「ふっ…」ダダダダダッ…!!

クローン兵B「…」ダダダダダッ…!!



真姫「おいおい嘘でしょう…!?」

凛「く、クローンの凛たちが…」

希「は、走ってリボルマキーを追ってきてるっ…!?」

希「め、メモリを使ったりは…!?」

凛「見た感じどう見ても生身だよ…」

真姫「どうやらあっちは、完全に人間を捨ててきていると思っていいわね…」

真姫「小さい凛だと思って手加減している場合じゃないみたい…!」



クローン兵A「…投げて」

クローン兵B「…!」ガシィッ…!!

クローン兵B「ふっ!」ブンッ!!


ヒュオォッ!!


真姫「っ!避けっ…!」


ズゴォォッ!!

希「ぐがぁっ…!!」

クローン兵A「…」


ベル「ひっ…!」

凛「の、希ちゃんっ…!!」

真姫「片方が片方を投げ入れてくるなんてっ…!希っ!」

希「…ふ、平気っ…!」グググッ…

クローン兵A「…なに?」

希「間一髪…ベルトがうちを助けてくれたみたいやね…!」

希「ギリギリ急所への衝撃は…避けてくれたようや…よっ!」ゲシィッ!!

クローン兵A「ぎゅっ…!」ドゴッ…!!


ドサァッ…!!ゴロンゴロンッ…!!


クローン兵B「ふっ…!」ガシィッ

クローン兵A「…ありがと」


ダダダダッ…!!


希「ったく、蹴り出してもまだ走ってくるんかいなっ…!いてて…」

真姫「大丈夫?私が変身する?」

希「いや、今度は…うちが変身する!」\スター!!/

真姫「やれやれ…無茶はしないでよね」\クレッシェンド!!/


希・真姫「「変身っ!!」」 

\クレッシェンド!!/\スター!!/ デレレーンデレレデレレレーン



Muse「…さぁ、来いっ!」「私の身体、奥まで運んでおいて」


凛「り、了解にゃ!よいしょ…」

ベル「手伝うにゃー。よいしょっ…っと。お、重い…」

凛「ベルは力ないんだね…」

Muse「マッキーボイルダー…、発進!」


ブロロロロ…!!


Muse「くらえ、普通のキック!!」ゲシィッ

クローン兵A「っ…、邪魔っ…!」ヒュッ

Muse「ちぃっ…、身のこなしも素早いわね…!だったら!」\フェルマータ!!/

\フェルマータ!!/\スター!!/ テレレンダダーンデレレレーン


Muse「ノビール!」「フェルマータスターは体の一部が伸びるんよ!どっかで見たとか言わない!」


ヒュンッ!! バシィッ!!

クローン兵A「ぐっ…!」

バシバシィッ!!

クローン兵A「うあぁっ!」ドサァッ…!!


Muse「よし、払った…!あとは…」「…?もう一体は…?」



凛「ひ、ひぃぃぃっ…!!」

クローン兵B「…」


Muse「しまった…!目を離した隙に凛ちゃんに近づかれ…」



凛「た、助け…!凛は食べても美味しくないにゃ…!」

ベル「べ、ベルも…美味しくないにゃ」

クローン兵B「…カギを」

凛「…へ?」

クローン兵B「カギを…渡せ…」

凛「か、カギ…?」



Muse「凛ちゃんがピンチやっ…!」「となるとここは…こうでしょう!」\ダル・セーニョ!!/ \ハーミット!!/

\ダル・セーニョ!!/\ハーミット!!/ ティーリティティータドドーン


Muse「ダル・セーニョのメモリは半身を瞬間移動させるメモリっ!」「とうっ!」シュバッ




クローン兵B「カギを…!」

凛「ちょ、ちょぉっ…!」

クローン兵B「カギを渡せぇぇっ…!!」

se「せいやっ!!」シュバァッ!!

クローン兵B「っ!」タタッ

se「ハーミットは足に鋭い刃を持つ素早さに長けるメモリや!たぁぁあっ!!」シュバババッ!!

クローン兵B「ぬ、うっ…!」ヨロッ…


Mu「よろめいたところをすかさずひき逃げアタックよっ!!」ギュルルルルッ!!


クローン兵B「…ッ!」


ドガァァッ!!

クローン兵B「くはっ…!」ドサァァッ…!!


Muse「いよーしっ…、危ないところやった…!」「凛の顔をした子を攻撃するのは少し心が引けるけどね…」


凛「ひき逃げまでしたやつがよく言うにゃ…」

ベル「にゃー」


Muse「そうでもしないと倒れてくれそうになかったからねー!」「心なしか楽しそうやったけど…」


凛「…っ!の、希ちゃん、真姫ちゃんっ!後ろっ!!」



Muse「へ?うし…」「っ!」

クローン兵A「にが、さないっ…!!」ガシィッ!!

Muse「そんなっ…!まだ動けっ…」

クローン兵A「この近距離で、爆発すれば…」カチッ…!!

Muse「ま、マズいっ…!!」「よせっ!!」



ダダダダッ…!!


\ビショップ!!真姫シマムドライブ!!/


ナイト「燃えろぉぉっ!!」ボファァァァッ!!


バフゥゥゥッ!!

クローン兵A「ぐぅあぁっ!!」


ドサァァッ…!!


クローン兵A「く、そぉっ…!」カチッ…


ドガァァァァァンッ!!



ナイト「っ…!」ダダダダッ…


Muse「ことり…、ありがとう。助かったわ…」「もう少し遅かったらうちらまで爆発に巻き込まれてた…」

ナイト「…自爆することにためらいがないのは恐ろしいね…。っと、遅れてごめん。私のことは無視してそっちを追いかけ始めたから…」

Muse「ということはやはり、無差別の排除ではなく特定の個人が目的…?」「誰を狙ってるんやろ…」



凛「…」


(クローン兵B「カギを…渡せ…」)


凛「カギって…もしかして…」

ベル「んにゃ?」




※ちなみに今はリボルマキー(大型車両)に凛とベルが、マッキーボイルダー(バイク)にMuse、それに並走してナイト(疾走態)って状態です
 クローン兵と凛が会話している時はリボルマキーに乗り込まれた状態と思っててね

森林

リボルマキー内


ことり「ひとまずここまで逃げてくれば安心…かな」

凛「まさか事務所にまで攻め込まれるなんて…予想外だにゃ…」

希「…金庫とか荒らされてなければいいけど」

真姫「あんな規格外の金持ちが希のショボイ財産を欲しがるわけないでしょ」

ベル「しょぼい」

希「うるせぇ」

凛「お金持ち…ってことはやっぱり、あの研究所の人が差し向けてきたの…?あのクローン凛…」

真姫「当たり前でしょ。他に誰がいるって言うのよ」

ことり「なんのために…」

真姫「それはまだわからないけど、話通りの幼年兵がいた、って事実は本当だったみたいね」

希「…ご丁寧に目の前で爆発までしてくれたし」

凛「し、死んじゃったの…?」

希「…せやよ」

ベル「…」

凛「う、うぅ…」

ことり「凛ちゃんにしてみれば、自分の分身が死んじゃったようなもの、だもんね…」

ことり「…こんな外道なことをするやつは、許しておけないよ」

凛「うん…」

希「あのレベッカって研究所の所長が黒幕なのは確実として、うちらを追い回す目的はなんや…?」

希「真姫ちゃんが言ったように、ただ目撃者の排除、というには回りくどいし…」

凛「あの…それなんだけど」

真姫「うん?なにか心当たりがあるの?」

凛「あのね、さっきのクローンの凛が…凛に襲いかかろうとしてたとき」

凛「『カギをよこせ』って言ってきたの…」

ことり「カギ…?」

凛「それで…もしかしたらこれのこと、言ってるんじゃないかって…」スッ

真姫「これは…もしかして研究員のタグ?」

凛「うん。ロックを解除するときにポケットに入れたのをそのまま持ってきちゃって…」

凛「これを凛から奪い返そうとして追ってきてるんじゃないかな…。ロックを解除する『カギ』でもあったし」

希「そうか…。そのタグにはひょっとしたら研究所の秘密の情報かなにかが備わっていて…」

希「それの流出を恐れたレベッカが取り戻そうとクローン兵を派遣した…とかかな」

ことり「殺しても所在が分からなければ意味がないからね…。凛ちゃんが持っていない可能性もあるし」

真姫「…そう考えれば辻褄は合う、かも…?」

凛「じ、じゃあこれは重要は証拠ってこと!?」

ベル「おぉー、すごい」

真姫「わかってないでしょアンタ。…まぁ、もしかしたら、だけどね」

真姫「でも、それが重要なものだとしたら凛が持っているのは危ないわね。今あいつらが狙ってきているのは凛のわけだし」

ことり「捕らえられてそれを取り戻されたら、凛ちゃんの命は…」

希「もし凛ちゃんが捕まってしまった時の交渉材料として、それは預かっておいたほうがいいかもね」

凛「そ、そうだね…。じゃあ希ちゃん、これ!」スッ

希「うん、確かに受け取ったよ」

ベル「へっ…、へっ、っくしょんっ!」ビシャッ

凛「ぬわぁっ!は、鼻水飛んだ!汚いにゃー…」

ベル「しゃ、しゃぶいにゃ…」

ことり「寒い?私のジャケットいる?」

ベル「だいじょぶ…凛お姉ちゃんがあったかいから…」ギュー

凛「あはは…その前に顔拭こうね…」ゴシゴシ

真姫「…ねぇ、ベル。あなたは自分がいつ生まれたか、わかる?」

ベル「にゃ?」

希「どういう意味?真姫ちゃん」

真姫「ベルの見た目はおそらく7,8歳程度だけど…生まれたのはつい最近だと思うの」

凛「えっ…?」

ことり「あの研究所はクローンを急激に成長させることも出来るわけだからね。この見た目がイコール年齢ではないのかも」

真姫「替えのきく兵士として成長に数年…もしくは数ヶ月かけるのはどう考えても供給が間に合わない」

真姫「すぐに生まれて、それからすぐに兵士として育成されるんでしょう」

希「…えっと、結局何が言いたいん?」

真姫「そう、だとしたら…今のベルは生まれて数日、数ヶ月程度の赤ちゃんなのに」

真姫「かなりの知能を持っていることになるわ」

凛「あ、そうだよね…。凛のことお姉ちゃん、って言ってくれるし。日本語が上手なんだにゃー」

真姫「少なくとも見た目程度の脳は持っている。あのクローン兵たちも仲間を背負いあげて車内に投げ込む、なんて戦略を考える程度には学習させられている」

真姫「でもクローン兵を量産するのなら、そこまで育成するとなるとコストが否応無しにかかってくるはず…」

ことり「そうだよね…。一人一人に武器の使い方を教えるわけにもいかないし…」

希「…なんか特殊な育成方法が…」

凛「ねぇベル…。ベルはその日本語どうやって覚えたの?」

ベル「にゃ?うーん…、わかんないにゃ。気づいたら喋れるようになってたにゃ」

希「気づいたら、って…」

真姫「…つまり、何かを教えられた記憶はないのね?」

ベル「にゃ」

凛「肯定してるみたい」

真姫「じゃあ…わかったかも」

ことり「え?どうやって育成してるか?」

真姫「えぇ、育成じゃなくて…チップを埋め込まれたのよ。知能を持つようになるチップ」

凛「チップって…研究員の人が言ってた、感情を制御するためのもの…みたいな?」

真姫「えぇ、それとは別に、必要最低限の知能を得ることが出来るチップも存在しているんでしょう」

真姫「だからこそクローン一人一人に兵士としての働きが期待できる。量産が可能ならば自爆しても痛くない…ってことね」

ことり「完全に量産化のレーンが出来上がってる…ってことかな。ここ最近始めたことじゃなさそうだね…」

希「でも、頭はいいとしてあの人並み外れた力はどうなんよ?あれはどうしようも…」

凛「ベルにもその力はなかったし…まさかレアな個体を見つけるまで生んで処分を繰り返す、なんて…!」

真姫「そんなバカなことはしないはずよ。それだとベルに知能を植え付けている理由にならない」

真姫「ベルにも元々は感情はなかったんだけど、感情が芽生えたせいで出来損ないとして処分されることになったんだろうし」

希「とすれば…」

真姫「…思いつくことはあるけれど確実じゃない。となるとここは…」

ことり「真姫ちゃんの、調律…かな?」

真姫「すぅっ…!」ファァァァ…


ベル「ちゅうりつ?」

凛「調律。…『音楽室』っていうこの世界の記憶を音として内包した場所に、真姫ちゃんはアクセスできるの」

凛「その音自体はとりとめのない、形のないものとして漂っているんだけど、キーワードで絞り込むことによって情報を楽譜として読み取る」

希「それが…調律やね」

ベル「なにいってるかわかんねーにゃ」

希「…うん、せやろね」

ことり「つまりすごいグーグルみたいなものってこと」

ベル「おぉ」

希「わかるんだ…」

真姫「…アホな会話してないで始めるわよ。…調律したい事象は、『クローン』」

真姫「キーワード、まず一つ目は…」

希「…『怪力』」

真姫「…ふむふむ。これだけじゃどうにも…二つ目」

凛「えっと…ベルにも知能を施されたってことは、生まれつきのものじゃない、ってことだよね?」

希「つまり…何かしら、外部からの作用によってか、もしくは後々備わる力…」

希「キーワード二つ目は…『後天的』」

真姫「結構絞れは来たけど、まだダメ…はっきりと楽譜の形を成していないわ」

真姫「もっとなにか…ヒントになりそうなこと、あの研究所で掴んでこなかった?」

希「ヒント…」

ことり「レベッカが私たちに話していたことで、怪力の秘訣につながりそうなことは…」

ことり「…っ!もしかして…!」


(レベッカ「ただ赤身だけの身体を脂肪も含むお肉に変えたり、逆に筋肉の含有量を増やすことで引き締まった身にしたり…」)


ことり「筋肉の含有量を増やす…!」

希「あっ!そうや…!引き締まった身とするために細胞を変異させる、とかなんとか言ってた…!」

希「最後のキーワード…、『細胞変異』や!」

真姫「…オッケー。揃った…。あまり聴き心地のいい音色ではないけど…」

真姫「凛のクローンが人並み外れた力を有していた謎、それは…」

真姫「筋繊維を常人の数十倍の密度にすることによって、細身の身体に化け物のようなパワーを内包させていたからよ」

凛「えっ…?」

ベル「いみわかんないにゃ」

真姫「人間は人によって体つきは違っても、筋肉の構造は変わらない。出せる力には限度があるわ」

真姫「ヤツは筋肉の構造そのものを変えて爆発的なパワーを生み出せるように、クローンを改造したのよ」

希「そんなことが…!?」

真姫「無論、こんなことを普通の人間に施工したら全身に激痛が走る…それを感情をコントロールするチップか、もしくは痛みを制御するなにかで抑えているんでしょう」

ことり「どこまでも卑劣なことを…!クローンをなんだと思ってるの…!?」

真姫「…よく動く人形、とくらいにしか思っていないんでしょうね」

希「それはなんとなくわかったけど…でも凛ちゃんのクローンを使った理由は…」

真姫「…まだ、わからないわね」

ベル「…くる」

凛「にゃ?どうしたの、ベル?」

ベル「なにか…くるにゃ」

真姫「なにか?」

ベル「…いっぱい、いっぱいベルたちを取り囲んでる…」

ベル「みんなが、こっち見てるにゃ…」

希「…っ!まさかっ…!」

真姫「外部の状況を!」


ゾロゾロ…


真姫「…これは」

ことり「のんびりしている間にクローン兵たちに取り囲まれている…」

凛「う、ウソっ…!?二人のクローン兵は倒したのにどうして居場所が…!」

希「…それは直接、本人に聞いてみよか。ハッチ、開けて」

凛「本人…?」


ウィーン…


希「…いるんやろ?そこに」



ガサガサ…

レベッカ「ハーイ。お久しぶり…でもないわね。仮面アイドルさんたち」


ことり「レベッカ…!」

真姫「知っていたのね…」

凛「ど、どうしてこの場所がわかったの!?」

レベッカ「ふふ、言うと思う?」

希「大体は分かってる。ベルに居場所が分かる発信機のようなものを取り付けてあるんやろう」

希「兵士たちに脱走されて、誰かに見つけられたら大事やものね」

レベッカ「さすが探偵さんといったところね…。鋭い洞察力」

レベッカ「そうなのよー、クローン兵たちはみんなおしりのところに発信機が埋め込まれているの!どや」

レベッカ「おかげであなたたちがどこにいても丸分かり!準備だって簡単だったってわけよ」

ことり「…なるほど、お尻ね…。そういえばさっきおしりを見せてもらったとき黒い何かが」

凛「それは蒙古斑だと思うにゃ」

ことり「…」

真姫「え、ガチなの?」

ことり「えぇい!」\ナイト!!/

ことり「変…、身っ!!」

\ナイト!!/ ヒヒーンッ!! \ビショップ!!プロモーション!!/

ナイト「ベルちゃん、おしり見せて」

ベル「こうかにゃ?」プルンッ

ナイト「ていっ!!」ビリビリッ!!

ベル「ひにゃぁぁっっ!!?」


シュゥゥ~…

凛「わぁ!?ベルに何するの!?」

ナイト「お尻に発信機がついてるなら機能を止めればいい話でしょ」

ナイト「微弱な電流を流せば精密機械ならすぐに壊れるはず。どうかな?」

レベッカ「…」

レベッカ「喋りすぎちゃったみたいね」

レベッカ「でもいいわ。全然ノープロブレム。だって…あなたたちはもうここから逃げられないんだもの」


「…」「…」ザサッ…



希「…ちっ、もう逃げ場はない…、か…!」

真姫「レベッカ!教えなさい!どうして凛を…凛のクローンを使ったの!」

希「せや!凛ちゃんをオリジナルにした理由はなんなんよ!」


レベッカ「ふふ…、これから死んでいく人に言って意味があるの?」

レベッカ「…やりなさい」


「っ!」サッ!!



希「来るっ…!!真姫ちゃんっ!」\クレッシェンド!!/

真姫「撃退するしか…ないわねっ!」\スター!!/

\クレッシェンド!!/\スター!!/ デレレーンデレレデレレレーン



クローン兵C「っ!」シュバッ!!

Muse「このっ!!」ゲシィッ!!


クローン兵D「はぁっ!!」ベキィッ!!

ナイト「痛っ…!よくもっ!」\ルーク!!/

\ルーク!!プロモーション!!/

ナイト「吹っ飛べ!!」バシィンン!!

クローン兵D「ごほっ…!」ドサァァッ


Muse「くっ…この量、キリがない」「さっきの量産機とはパワーが段違いや…!」

Muse「ここは…絡め手で行くべきのようね!」\ビブラート!!/ \ストレングス!!/

\ビブラート!!/\ストレングス!!/


Muse「ことり!合図をしたら飛んで!」

ナイト「なにをするつもり…?」

Muse「いいから!」

ナイト「…わかった」

Muse「いくわよっ…1、2のっ…」「3っ!!」

ナイト「はっ!」ピョンッ


ドゴォォォンッ!! グラグラッ…!!

クローン兵たち「「っ!?」」グラグラッ…

レベッカ「おわっ…とと…!ホワッツ…!?なにを…」


Muse「地面に巨大な振動を与えたわ!ただの地震じゃなく…」「身体自身が震えるような振動をね!」

Muse「これでクローン兵はまともに動けない…!」「ことりちゃん!今やで!」


ナイト「…っと」シュタッ

ナイト「了解っ…!」\エース!!/

\エース!!/ ウゥゥゥゥィィィィィィィ!!



ナイトエース「はぁぁぁああぁぁっ!!」ビュンビュンビュンッ!!


ズゴゴゴゴゴッ!!


クローン兵たち「「うぐぅぅっ!!」」


ドサァァッ…

クローン兵たち「ぐ、うぅっ…」



Muse「はんっ!どうや!これが仮面アイドルの力やよ!」「いくら兵士が強いからといっても敵う相手じゃないわ」

ナイトエース「おとなしく諦めたらどう?」



レベッカ「…ふふ、評判通り、確かに強いのね。マーヴェラス。大好きだわ」

レベッカ「けど、私たちの兵だってそんなに弱くは…ないのよ」ポチッ


ビクンッ!!

クローン兵たち「っ!」ダダッ!!



Muse「くっ、大きなダメージを与えたのにまだ…」「待って、様子がおかしい…!あの子たち、意識を失っているはずなのに…!」

ナイトエース「さっき何かスイッチのようなものを押して…まさか、操られて…!」

Muse「こっちへ一斉に迫ってくる…!」「ちょっと…ヤバい予感がっ…!!」


ダダダダッ…!!


ナイトエース「…っ!まさか、自爆っ!?」

Muse「い、いけないっ…!この量はっ…!!」「くっ…、間に合えっ…!!」


クローン兵たち「っ!」ビガッ…!!



ドガガガガガァァァァァアアァァァァァァァァンッ!!!


レベッカ「…」



\エクセレント!!/ テレレレテーレッテレッテッテレー



シュゥゥゥッ…


Muse「…危機一髪、間に合ったようやね」「シャイニーシールドで大方の爆風は打ち消してやったわ…!」

ナイトエース「し、死ぬかと思った…」

レベッカ「…やったと思ったのに、しぶといのね」



凛「ひ、ひどいっ…!り、凛のクローンたちが…!!」

ベル「っ…!」



Muse「…どうしてこんな真似」「あなた、クローンが好きなんでしょう?酷いと思わないの!?」

レベッカ「クローンは好きよ。この音都に来たのもクローン研究のためであることは間違いない…」

レベッカ「でもね…。一年と少し前のあの日…私の中で何かが目覚めたのよ…!」

レベッカ「そう…音都タワー襲撃事件の日にね…!」

ナイトエース「音都タワー襲撃…!まさか、NEVERの…!?」

Muse「あの日、あなたに一体何があったって言うのよ…!?」

レベッカ「私…、日本の特撮が好きだった」

Muse「は?今なんでその話…」

レベッカ「でもね!私が好きなのは…ヒーローじゃない!悪の組織なの!」

レベッカ「戦闘員をこれでもかと量産して、世界を血の色に染める…!そんな悪の美学が大好きだった…!」

レベッカ「カートゥーンは強大な一つの力が世界を支配することが多いわ…。でもそんなのにはロマンがない…」

レベッカ「だからいつか…兵士を量産して、世界を制服する…!それが私のドリーム!夢だった…!!」

ナイトエース「そうか…、あの音都タワー襲撃のNEVERを見て、その野望を強めて…」

レベッカ「ん?ノンノン。あんなの面白くないわ。たかが音都の支配なんてスケールが小さい、ファックよ」

Muse「え、それじゃあ…」「なにを見たというの…?」

レベッカ「私が見たのは…凛ちゃん、あなた」


凛「…へ?」



レベッカ「あの日…、音都市民の歌とともにMuseへと融合するあなたを見て…」

レベッカ「あなたには何か特別な力があると気づいたの!そう、仮面アイドルに染まることのできる力が!」

Muse「確かに…結局あの現象についての謎は解明されないまま…」「も、もしかして…そんな理由で凛ちゃんをっ…!!?」

レベッカ「イエスイエス大いにイエースッ!!あなたの遺伝子を入手して、量産に量産を重ねた!」

レベッカ「戦闘データや体質のデータを山ほど採取し、おまけに精神汚染タイプのメモリの耐性まであるなんて…」

レベッカ「とんだおまけ付きだったけど、とうとう判明したわ…!私の求める、仮面アイドルに染まる力…!」

レベッカ「それは染まる力ではなくっ…!世界を染めることのできる力だということも!」

ナイトエース「凛ちゃんにそんな力がっ…!?」


凛「う、ウソ…?」

ベル「凛、お姉ちゃん…?」


レベッカ「さぁ、そこをどいて…。私に凛ちゃんを頂戴…」

Muse「させるか!」「もうあなたには、あなたを守る力はないっ…!観念することね!!」

レベッカ「力がない…?アハハハッ!笑わせるわ!」

レベッカ「…悪の組織のロマンは二つ…一つは最強の戦闘員…」

レベッカ「もう一つは…その戦闘員すら圧倒する、首領の大いなる力!」スチャッ

ナイトエース「っ!?そ、それはっ…ガイアメモリっ!!」

レベッカ「…見せてあげるっ…!数々のデータを寄せあつめて作った、最強の怪人…!私自身をっ…!」\コンバット!!/

ピチュゥゥンン…!!


コンバット・D「フゥゥゥゥッ…!!」



Muse「えらくマッシヴな体型になったね…!」「可愛い顔が台無しじゃない」

コンバット・D「いいの…、これこそが私の求めた首領の姿なのだもの…」

Muse「その割には武器はナイフと銃器って…」「雑魚の装備ね」

コンバット・D「そう言ってられるのも…今のうちよ?ハァッ!!」ズガガガッ!!

Muse「ハッ!エクセレントにそんなチャチな装備が通用するとでもっ…」「っ!?なっ…いないっ…!?」


シュバッ  コンバット・D「後ろよ」ジャキンッ


Muse「っ!」サッ!!

ズバッ!!

コンバット・D「…ジーザス、外した」

Muse「一瞬遅れてたら喉笛をかっ切られていた…!」「なんつう速さっ…!真姫ちゃん、あいつのデータを検索してっ…!」

コンバット・D「ふっ!!」ズガガガガッ!!

Muse「っ…!そんなのする余裕がっ…!」「あかん、また消えたっ…!後ろ…」


コンバット・D「次は上」ポイッ


Muse「なっ…!」「グレネー…」


ドガァァァァァンッ!!



Muse「ぐあぁあぁぁぁっ!!」ドサァァァッ!!



凛「そ、そんなっ…!クレッシェンドスターエクセレントのMuseが、ただのドーパントに圧倒されてる…!?」



コンバット・D「結局戦場で最も強いのは異能の力ではなく、個々の実力」

コンバット・D「戦い方と己のスペックを数々のデータから磨き上げたら、それがすなわちパーフェクトなウォリアーなのよ」



ナイトエース「っこのっ…!」


Muse「くるなっ!」


ナイトエース「えっ…」

Muse「ことりちゃんはっ…、凛ちゃんとベルを連れて逃げてっ…!」「ここは私たちが食い止めるっ…!」

ナイトエース「でもっ…!」

Muse「こいつが狙ってるんは凛ちゃんや!もし本当に凛ちゃんに世界を染める力があるとするのなら…」「こんな奴の手に渡すことはできないっ…!!」

ナイトエース「っ…!」


凛「希ちゃんっ…!真姫ちゃんっ…!」

ベル「う、うぅ…」


ナイトエース「…」ピチュゥゥンン…

ナイト「…凛ちゃん、行こう!ここは二人に任せてっ…!」

凛「で、でも、でもぉぉっ!!」

ナイト「二人の気持ちを無駄にしちゃダメっ!二人は凛ちゃんを守ろうとして…」

凛「だけどっ!ことりちゃんは今の見て…二人があのドーパントに敵うと思うの…?」

ナイト「私に質問するなっ!」

凛「っ…!」

ナイト「…大丈夫。二人は負けない。だってあの子達は…探偵で、そしてこの街を守る仮面アイドルなんだから」

ナイト「信じよう。それが二人の何よりの力になる」

凛「…うん、わかったにゃ」

ナイト「ふっ…!」ヒヒーンッ!!

ナイト「さぁ、私の背中に乗って!ベルちゃんも!」

ベル「わ、わぁ…!」

凛「ベル、行くよっ!」

ベル「にゃ、にゃぁ…!」


ダダダダッ…!!



Muse「…えらくすんなり逃がしたわね」

コンバット・D「いいのよ…あなたたちを死の紅に染めてから、ゆっくりと後を追うから」

Muse「うちらがそう簡単にやられてたまるかっ…!」「逆にあんたを打ちのめしてやるわ…!」

コンバット・D「…そうね、急がないと…」

コンバット・D「あなたたちがやられる前に、あの子達が捕まっちゃうかも知れないからね」

Muse「…何?」「まさかっ…!」






ダダダダッ…!!


ナイト「ふぅっ…!」


凛「…」

ベル「凛お姉ちゃん…大丈夫かにゃ?」

凛「え…、何が…」

ベル「さっきから震えてるにゃ…」

凛「…」

ナイト「…凛ちゃんが命を狙われるなんて、あんまりないことだからね…。怖いのも…」

凛「…ち、違うにゃ。そうじゃなくて…」

凛「もし二人が、本当に…本当に死んじゃったら…凛は…」

ベル「…お姉ちゃん」ギュッ

ナイト「それだけは絶対に…ないから」

ナイト「何があっても二人は負けない。今までだって…っ!!」

キキッ…!!


ベル「にゃっ!!」

凛「ど、どうしたの急ブレーキかけて!?」

ナイト「…く、っ…!!」



クローン兵たち「「…」」ズラズラ…

Muse「ハァァァァッ!!」ヒュンッ!!


ガキィィンッ!!


コンバット・D「フッ…!フゥ、ジーザス…。いい剣を使ってるのね。まともにやったらすぐ殺されそう」

Muse「こいつ…!あの短いナイフでムーンソードをいとも容易くあしらって…!」「なんて戦闘の技術…!」

コンバット・D「戦場に送ったクローン兵たちのチップから戦闘データをどんどん吸収しているからね」

コンバット・D「兵が死ねば死ぬほど後の兵強くなり、そして私も強くなる…!あらゆる戦闘に対応できる力を持てる…!」

コンバット・D「あなたたちがどれだけ強い力を持っていても、動きさえ読めればなんのことはないわ!」シュンッ!!

Muse「チッ…!またっ…!!」「盾で防ぐ余裕がっ…」

コンバット・D「ハァッ!!」ズバァァッ!!

ズシュゥゥッ!!

Muse「グアアアァァッ!!」ドサァッ…


コンバット・D「フフッ…意外と早く片付きそうね…!」ガシッ!!

Muse「う、ぐぅっ…!馬乗りにっ…!」「ヤバ…!」

コンバット・D「さぁ…トドメっ!!」ブンッ!!





ナイト「…っ」


クローン兵たち「「…」」



凛「こ、ことりちゃんっ…!」

ナイト「既にこんなにも兵士がいたなんて…」

ベル「も、もう終わりなのかにゃ…?」

ナイト「…私に質問しないで。ここで終わりになんかさせない…!」

ナイト「凛ちゃん、ベルちゃん…。あのクローン兵たちの相手は私がするから…」

ナイト「…ふたりで、どこか安全なところまで逃げて」

凛「えっ…!」

ナイト「この量を、二人を庇いながらは…私の力じゃ難しいかもしれないから」

ナイト「まだ追手はいるかもしれないけど、この森の中を木陰に隠れるようにしたら…見つからないかもしれない」

凛「そんなっ…!ことりちゃんまでっ…!!」

ナイト「お願いっ…!私も二人の思いを無駄にしたくないからっ…!」

凛「っ…!」

ナイト「走ってっ!!!」

凛「ベルっ!行くにゃぁぁっ!!」ダダダッ…!!

ベル「に、にゃあぁぁぁっ…!!」タタタタッ…




クローン兵「「…」」


ナイト「ここから先は…一歩だって通しはしない…!」

ナイト「さぁ、チェックメイトだよ…!!」

凛「ハァッ…!ハァッ…!!」タッタッタッ…

ベル「う、うぅっ…!凛お姉ちゃん…!」

凛「後ろは見ちゃダメっ…!今はただ、誰にも見つからない場所に逃げるんだっ…!」

凛「希ちゃんの、真姫ちゃんの、ことりちゃんの…みんなの想いのためにもっ…!!」


タタタタタッ…!!





コンバット・D「さぁ…トドメっ!」


Muse「…っ!」ピッ


ギャルルルルッ!!


コンバット・D「なっ!?」


ドガァァッ!!

コンバット・D「ぐああぁっ!!」

ドッサァァァッ…!!



Muse「…ふぅ、間一髪っ…!」「リボルマキーが近くにいてくれて良かった…!」

Muse「…まともにやって勝てる相手じゃないわっ…!ここは…」「退却や!ことりちゃんを追うよ!」「おうよ!」


ギャルルルルルッ!!



コンバット・D「あっ…!…シット。逃げられちゃったわね」

コンバット・D「こっちも凛ちゃんを探さないと…!ちっ…、1267番に取り付けた発信機がオジャンになってる…」

コンバット・D「…迂闊に口を滑らせるものじゃないわね」






ナイト「ハアァァァッ!!」\ルーク!!真姫シマムドライブ!!/

ナイト「たああぁぁぁっ!!」ブンッ!!

ズゴァァッ!!


クローン兵たち「「うぐぅっ!!」」ドサァァァッ!!



ナイト「ハァッ…!ハァッ…くっ…どれだけ倒せば…!」

クローン兵R「ふんっ!!」ガシィッ!!

ナイト「あっ…!」

クローン兵R「おわりっ…!」カチッ…


ドガアアァァァンッ!!

ナイト「くあああぁぁぁぁっ!!!」ピチュゥゥンン…

ことり「が、はぁっ…!!く、そぉっ…!」


クローン兵たち「「…」」ゾロゾロ…


ことり「…ここまで、か…!」

\スター!!真姫シマムドライブ!!/\フォルテ!!真姫シマムドライブ!!/\アレグリッシモ!!真姫シマムドライブ!!/\コン・フォーコ!!真姫シマムドライブ!!/


Muse「「シャイニーノクターン!!」」


ビガアァァァァァッ!!


クローン兵たち「「うっ…ぐああぁぁぁぁっ!!」」


ドガァァァァンッ!!



ことり「…の、希ちゃ…真姫ちゃんっ…!」

Muse「良かった…。ことりちゃん、無事やね?」「凛たちは?」

ことり「二人で、安全なところに、って…」

Muse「そっか…。わかった。今は逃げよう。そんで…」「凛を探しましょう。奴らに見つかる前に…」

ことり「…うん…!」




山道


タッタッタッ…


凛「ハァッ…ハァッ…!山の上までなら…だ、誰も来ないはずだにゃ…!」

ベル「はぁっ…、はぁっ…」

凛「べ、ベル…?大丈夫?疲れてない?」

ベル「疲れたにゃぁぁ…」

凛「そ、そうだよね…。でも、ここで休んでたら追いつかれちゃうにゃ…!頑張れ、山頂アタックにゃ!」

ベル「ううぇぇぇぇ…さくしにきたはずにゃぁぁぁ…」

凛「さくし…?よ、よくわかんないけどいっくにゃぁぁぁぁぁっ!!」


タタタタタタッ…!!




夕方


ベル「ぜぇぇっ…ぜぇぇっ…!ま、まだつかないの…?」

凛「もうちょっと…!あと少しの辛抱だから、ガマンしてっ…!」

ベル「もう、む、むりにゃぁっ…!」


ズルッ… バタンッ!!

ベル「んに゙ゃぁぁっ!」

凛「あっ…!ベルっ!!」

ベル「う、うぅっ…!」

ベル「うわああぁぁぁぁぁぁんっ!!痛いよぉぉぉぉぉっ!疲れたよおぉおぉぉぉぉぉぉっ!」

凛「ベル…」

凛「…そう、だよね…。ベルはクローン兵でも、普通の8歳くらいの女の子だもんね…」

凛「力だって凛より全然ない、か弱い女の子にゃ…」

ベル「うぅぅっ…もう、ヤダぁぁぁぁ…!一歩も走れないにゃぁぁぁ…!」

凛「…よしっ!凛がおぶってあげる!」

ベル「…にゃ?」

凛「ベルはもう疲れただろし、まだ元気な凛が背負って山頂まで登るにゃ!」

ベル「ホント…?」

凛「うん!だから行こう!ね?」

ベル「…う、うん…あ痛っ!」ズキッ

凛「どうしたの…?あ、膝擦りむいてる…。さっき転んだ時に怪我したんだね…」

ベル「痛いにゃ…赤いのでてる…」

凛「血だ…。バイキンが入っちゃうかも知れないにゃ…」

凛「よぉしっ…。凛のツバで…ぺっぺっ」

ベル「んっ…!染みるにゃ…」

凛「っと…あとはハンカチで止血して…ぎゅっぎゅっ!」

ベル「うぅ…キツイよぉ…」

凛「こうしないと悪い菌が膝に入って化膿しちゃうからね。よし、これでもう平気!」

ベル「…」

凛「…ベル?どうしたの?まだ痛い?」

ベル「…ねぇ、凛お姉ちゃん」

ベル「ベルも…もしかしたらさっきの子達みたいに、爆発して死んじゃったのかなぁ…」

凛「えっ…」

ベル「体中から赤いの、びしゃってなって…し、死んじゃうの、かなぁぁ…?」

ベル「怖いよぉ…!ヤダ、ヤダよぉぉ…!赤く、なりたくない…!いや、イヤだぁぁぁ…!」ブルブル…

凛「…」

凛「…大丈夫だよ」ギュッ

ベル「凛…、お姉ちゃん…」

凛「ベルには爆弾はついてないし、強くないから戦場に行くこともない」

凛「もしどこか怪我しても、凛の…黄色いハンカチですぐに赤い血なんか止めちゃうにゃ!」

ベル「黄色い…」

凛「知ってる?黄色い色は幸せの色なんだよ」

凛「むかーし幸せの黄色いハンカチって映画があったんだにゃ。ベルの膝についてるハンカチと一緒だね」

凛「あ、ほら見て!夕日」

ベル「う、うん…赤いね」

凛「違うにゃ!よーくみたら…おひさまの真ん中は黄色いの!」

凛「みんなを照らしてくれる太陽は黄色い光なんだよ!だからみんな、毎日幸せに照らされて生きてるんだにゃー」

ベル「…よくわかんない」

凛「そ、そっか…。まぁつまり黄色は幸せの色!その黄色い光が世界を覆ってるんだから、世界を血の色に染めさせはしないにゃ!って言いたいの!」

ベル「おぉ、なんかかっこいいにゃ」

凛「ふふ、でしょ?さ、凛の背中に掴まって」

ベル「よいしょっ…これでいい?」

凛「うん、ベルは軽いねー。こんなの背負ってないのとおんなじにゃ!」

凛「さ、行こう!」

ベル「にゃー!」


タッタッタッ…



凛(正直凛だって、めっちゃ疲れてた。希ちゃんや真姫ちゃんがいたら、凛も泣き言を言ってたと思う)

凛(背中にかかるベルの体重も、ホントは軽いものじゃなくて、ヘトヘトの凛にはかなり堪える…)

凛(けど、今は凛がへこたれてちゃダメなんだ…!だって、お姉ちゃんなんだもん!!)

凛(凛のことをお姉ちゃんって呼んでくれるベルの前では、立派な存在でなくっちゃ…!)

凛(今、ベルが頼れるのは凛しかいないんだからっ…!!)

凛(だから、行こうっ!どれだけ疲れてたって、足が鉛のように重く感じたって…!)

凛(凛は、ベルを守るんだっ!)






山頂


凛「つ、ついた、にゃ…」

ベル「すぅ…すぅ…」

凛「は、ハハ…。やった…」

凛「やったにゃー!」

ベル「ふぁぁっ…!?な、なに…?」

凛「あっ…、ごめん…。起こしちゃった…」

ベル「あれ、ここ…どこ?」

凛「山頂だよ。凛たち、着いたんだ!ここのコテージに隠れてれば、当分見つからないはずにゃ」

凛「電話も借りて、希ちゃんたちに迎えに来てもらえるまで休めるね!」

ベル「おぉ、やったにゃ」



コンコン…


凛「…誰もいないにゃ」

凛「コテージ開いてないし」

ベル「え、じゃあどうするの…?」

凛「…この近くで野宿、かなぁ…」

ベル「に、にゃぁぁ…」

凛「じゃ、ここらへんで…よいしょっ」

ベル「ホントに外で寝るの…?」

凛「仕方ないでしょ。他に寝る場所ないんだもん」

凛「…きっと明日になれば希ちゃんたちが見つけてくれるにゃ…」

凛「さ、寄り添いあって寝よ。ギュッってしてたら明日もすぐそこだよ」

ベル「わかったにゃー」



ギュッ…


凛「ふうっ…ベル、あったかい…」

ベル「凛お姉ちゃんもあったかいにゃぁ…」

凛「うん…。あ、見てみて!あの星空!」

ベル「にゃ?はわぁぁ…綺麗…」

凛「あのお星様も全部、おひさまの光に照らされているんだよ」

凛「地球だけじゃなくっていろんな星まで幸せの光に照らしてくれるなんて、おひさまってば懐が深いにゃー」

ベル「ふかいにゃー」

凛「あ、そういえば…実は凛の苗字も星空、って言うんだよ。あの星空とおんなじだにゃ」

ベル「ほぇー…じゃあベルは、星空ベル?」

凛「え?…あはは、そうだね。ベルは星空ベルだにゃ」

ベル「えへへ…星空ベル…かわいいにゃ」

凛「そだねー…」

ベル「…ベルね、凛お姉ちゃんとこれからも一緒にいたいにゃ」

凛「…ぇ」

ベル「研究所は何もないし、研究員の人は怖いし、居てもいつか痛いことさせられるんでしょ?」

ベル「だからベルは戻りたくない…。ずっとずっと、凛お姉ちゃんとこうやって…ギュッってしてたいにゃ」

凛「…」

凛「…うん。そだね」

凛「全部済んだら、ベルはうちの一員にゃ。東條西木野☆探偵事務所にニューフェイス登場だね!」

ベル「ホント?えへへ…やったにゃ。ベルね、帰ったらね…お洋服欲しい…」

ベル「可愛い…お洋服来て…お姉ちゃんと一緒に…おで、か…け…」

ベル「…くぅ。…すぅ…」

凛「ふふ…寝ちゃったか。凛も…もう、オネムだよ…」

凛「おやすみ、ベル…。お洋服はお姉ちゃんのお下がりあげるにゃ」

凛「…すぅ。くかー…」




凛「すう…くかー…」

ベル「…」

ベル「…」スクッ…

凛「ん、んんっ…あれ、ベル…?もうお目覚め…?」

ベル「…」スタスタ…

凛「どしたの…ベル…?おしっこ?」

ベル「あっち…行きたい…」

凛「え?あっちって…」

ベル「あっち、行く…」タッタッタッ…

凛「えっ…!あ、ちょっ…!ベル!?待って!」




タッタッタッ…!!


ベル「…」


凛「ベル!ベルったら!どこ行くの!?そっちは下のほうだよ!」

ベル「…」タタタタッ…

凛「下りたら見つかっちゃうよ!ベル!ダメ!行っちゃダメ!!」

ベル「…」タタタタッ…

凛「はぁっ…!昨日の疲れが残ってて…速く走れないっ…」

凛「ベル!待ってったらっ!!」




凛「はぁっ…、はぁっ…、ベル…?ベル、どこいったの…?」

凛「もう山降りてきちゃった…。どうしよう…」


ザー…


凛「ふぇっ…!あ、雨…?うぅ…梅雨だから急に降ってくるにゃ…」

凛「へくちっ!ベル、体濡らして冷えてないといいけど…」

凛「ベルっ!ベルー!!」



ベル「…」スタタタ…



凛「あ、ベルいた!こらっ!行っちゃダメだって!お姉ちゃんの声が聞こえないの!?」

凛「あぁもう…どうしちゃったのベル…」


タタタタッ…

タタタタッ…


凛「ベルっ!!ベルぅっ!!どこまで行くのっ…!!」


凛「はぁっ…、はぁっ…!なんか、このあたり見覚えが…」

凛「…っ!こ、ここって…」



レベッカバイオラボラトリー前


凛「あ、あの研究所だにゃ…。なんでベル、こんなところに…」



「あ、来た」


凛「っ!こ、この声…」


レベッカ「…ふふふ、出来損ないでも役にたつじゃない。ちょっとは」


凛「なっ…!うそっ…!」


ベル「…」

レベッカ「よしよし、いい子よ。ちゃんと凛ちゃんを連れてきてくれたわね」


凛「な、なんでっ…!どうして!!?」


レベッカ「この子の脳内に仕込んであるチップに遠隔操作で『ここに来い』という命令を下したの」

レベッカ「一度感情を持ってしまうと完全な制御までは無理だけど、この程度なら簡単なのよ」

レベッカ「その代わり、チップと脳には結構な負担…ダメージがかかるけど」


凛「そん、なっ…!!」


レベッカ「さぁ凛ちゃん…。私にカギを渡して」

凛「カギっ…!?カギって…」

凛「凛はカギを持ってないにゃ!あれは希ちゃんに渡してあるもん!」

レベッカ「渡す…?」

凛「え、あの…あの研究員のタグでしょ!?あれに重要なデータが入っててそれで…」

レベッカ「あは、あははははっ!なにそれ!面白いジョークね!」

凛「えっ…?」

レベッカ「…そんなタグなんて必要ないわ。私が欲しいのはっ…!」ガシィッ!!

凛「にゃあぁっ!!」

レベッカ「あなたが持っている、『虹色のカギ』…!あらゆるものに染まることができ、そして世界を思うがままに染めることのできる、未知のオーパーツ…!」

レベッカ「それが欲しいのよ…!」

凛「虹色の…カギ…!?」

凛「し、知らないよそんなのっ!虹色のカギなんて…」

レベッカ「しらばっくれないで!あなたが仮面アイドルと同化できた理由は、そのカギを持っていたから以外には考えられえない…!」

レベッカ「持ち主の意思に反応して色を変えるそのカギをあなたは持っているはず!出さなければっ…!」

凛「ほ、ホントに知らないんだってば!だから離しっ…」


サッ…


凛「え、ホントに離して…」


パァンッ!!


凛「っ!!?な、なにっ…」




シュゥゥゥ~…


ことり「…外した」


凛「ことりちゃんっ!」


レベッカ「…どうしてここが?」

ことり「犯人の拠点を抑えるのは捜査の基本…。すぐに希ちゃんたちも駆けつけるはずだよ」

ことり「さぁ、凛ちゃんを返してもらおうかな」

レベッカ「嫌よ」


パァンッ!!


レベッカ「…」ツー…


ことり「…今度は当てるつもりだったんだけど。どれだけ反射神経がいいの、あなたは」

レベッカ「私の脳内にも戦場での戦闘データが組み込まれている。弾丸なんてスローリィ…止まって見えるわ」

ことり「…私が遅い?私がスローリィ…?」

ことり「冗談じゃないよね」\ナイト!!/

ことり「変…、身ッ!!」


\ナイト!!/ ヒヒーンッ!!


ナイト「…さぁ、チェックメイトだ」


レベッカ「…1267番。あなたは凛を捕まえておいて」


ベル「…」ギュッ


凛「べ、ベルっ…!い、痛いよぉっ…!目を覚ましてよ、ベルっ!!」

ベル「…」



レベッカ「…無駄よ。強力な信号を送っているから、私の許可なしじゃ目は覚まさない」

レベッカ「その間に…あなたを血の色に染めてあげましょう」\コンバット!!/ ピチュゥゥンン…!!


コンバット・D「…フゥゥゥゥゥッ!!」

ナイト「…!」\スラッガー!!/

\スラッガー!!/ ピピーピピピーピッピッピッピッ


ナイトスラッガー「ふんっ!!」カキィンンッ!!

ビュオンッ!!


コンバット・D「ハッ!」サッ


ナイトスラッガー「チィッ…!」カキィンンッ!!

ビュオンッ!!


コンバット・D「遅い遅いっ!アハハハッ!!」ダダンッ!!


ナイトスラッガー「飛んだっ…!?」


コンバット・D「はいプレゼントっ」ポイポイポイッ


ナイトスラッガー「グレネードかっ…!えぇいっ!!」カキンカキンカキィィンンッ!!


ヒュオンッ… ドガガガァァァンッ!!



シュタッ

コンバット・D「…なかなかやるわね」


ナイトスラッガー「ナメるなぁぁっ…!」

\ナイト!!プロモーション!!/


シャキンッ!!

ナイトスラッガー「…ハァァァァッ!!」

ナイトスラッガー「せいっ!!」シュバァァンッ!!


コンバット・D「飛ぶ斬撃っ…!それは見たことないわね…」

コンバット・D「だから何って話だけどっ…!」ピョンッ


ナイトスラッガー「…そこぉっ!!」カキィンンッ!!


コンバット・D「しまっ…」


ベゴォォォッ!!

コンバット・D「ごぼぉっ…!が、ふっ…!」

ドッサァァ…


ナイトスラッガー「…絵里ちゃん直伝、飛ぶ斬撃…。それとスラッガーの組み合わせだよ…!」

ナイトスラッガー「どう、少しは痛かった?」


コンバット・D「ハ、ハハ…!アハハハ…!笑わせてくれるわ…!」

コンバット・D「…ここからは、ホンキなんだから…!」

コンバット・D「アハーハーァッ!!」ズガガガガガガッ!!


ナイトスラッガー「ちっ…!」ササッ


コンバット・D「逃がさないっ…!」ガコンッ…!!


ナイトスラッガー「なっ…!RPGっ…!?」


コンバット・D「サノバビィーッチ!!」

バシュゥゥッ!!


ナイトスラッガー「こんな街中でなんてものっ…!!」ササッ…!!


ドガアァァァンッ!!


ナイトスラッガー「くっ…紙一重で躱しっ…」

コンバット・D「気を取られすぎぃっ!」

ナイトスラッガー「なっ…!」

コンバット・D「ホント戦場は地獄よねーッ!!」ビュンッ!!

ドゴォォッ!!


ナイトスラッガー「げはぁぁっ!!」ヨロヨロ…


ナイトスラッガー「ぐ、がっ…!」


コンバット・D「みぞおちにデカイの一発…。さて、あとは…っ!」ガションッ!!

コンバット・D「ミンチにしてあげるっ!!」



ズガガガガガガガッ!!


ナイトスラッガー「っ…!」

ナイトスラッガー「ぐあああぁぁあぁぁぁぁぁぁっ!!!」ピチュゥゥンン…


ことり「く、はぁっ…!」バターンッ…!!



凛「こ、ことりちゃぁんっ!!」


ことり「り、凛、ちゃん…!」

コンバット・D「…ふふふ」

ことり「ぐ、うぅっ…!」

コンバット・D「よいしょっ…」ゴソゴソ…

ことり「な、なにをすっ…」

コンバット・D「いいから大人しくしてなさい。殺すのは最後にしてあげるから。嘘じゃないわよ?」ゴソゴソ…

コンバット・D「…っと、あったあった、これこれ」

ことり「っ…!それは、私の拳銃…!」

コンバット・D「生かしておいてあげるんだから、ちゃんとその目で見てなさいよ?」

コンバット・D「大切な仲間が、自分の銃で殺されるところ」


ことり「なっ…!」


凛「っ…!!?」

ザー…


コンバット・D「…ふふ、雨の中無常にも味方の銃弾で倒れる少女…」

コンバット・D「とても絵になると思わない?この雨は私を祝福してくれているのね…」


凛「ど、どうしてっ…!凛の持ってるカギが欲しいんじゃ…!」


コンバット・D「いいの。ここまで連れてきてくれたらあとは殺して運べばいいだけの話だし」

コンバット・D「カギは亡骸から頂いておくわ。だからここは…かっこよく死んでね」


凛「や、ヤダよっ…!死にたくなっ…」


パァンッ!!


ヒュオンッ!!  凛「ひぃっ!!?」


コンバット・D「フフ…もう数センチ横に動かしたら、あなたの心臓に小さな穴が開くわ」

コンバット・D「それで、おしまい」


凛「あ…!ぁぁぁあぁ…!!」ガクガク…!!



ことり「凛、ちゃんっ…!」

ことり「くそぉっ…!動けぇぇっ…!うごけぇぇえぇぇぇっ!!!」



コンバット・D「…最後に何か言っておきたいこと、ある?」


凛「しに、たくないっ…!まだ死にたくないよぉっ…!!」

凛「お願いっ…!撃たないでっ…!!うたないでぇぇぇっ!!おねがいいいぃぃぃぃぃっ!!!」


コンバット・D「アハァ…!いい表情…!」

コンバット・D「でもごめんなさい。私、お願い事破るの大好きだから♪」


コンバット・D「バイバイ、凛ちゃん」


パァンッ!!


凛「っ…!たすけっ…」



「凛お姉ちゃんっ!」


ドンッ!!

凛「えっ…」ユラッ…



パシュゥッ…!!

ベル「か、はぁっ…!!」




凛「…べ、ベル…?」


ドクドクドク…


凛「ベルぅぅぅぅぅぅっ!!!」

今日はここまで
レス数足りねぇんじゃねぇかとヒヤヒヤしてたけど全然いけそう 次回VシネMuse、衝撃のクライマックス! ほなな

そんじゃ今日で終われるといいな ことりちゃんには今回活躍の場はないにゃ
エースとスラッガーで既に二つ強化形態あるからいいやん! やっていきます

ベル「う、うぅぅ…い、痛いぃぃ…」ドクドクドク…


凛「ベル…っ!ベルぅぅっ!!血が…凛の代わりに銃弾を…!!」



コンバット・D「…あら、電波での拘束はちょっとやそっとじゃ破れはしないはずなんだけれど」

コンバット・D「やはり感情を持つと不具合が生じやすいようね」



ベル「…凛、お姉、ちゃん…」ドクドクドク…

凛「ベルっ…どう、してっ…」

ベル「え、へ…。どうして、か、にゃ…?自分でも、わかんない…」

ベル「でもね、凛お姉ちゃんが…助けて、って言ってたから…わかんないうちに…体が、勝手に…ね…」

凛「うんっ…!うんっ!もういいよっ!!だからっ…!」

ベル「だい、じょぶ、だよ…。だって、だってね…?」

ベル「ベルの中から赤いのがでても…お姉ちゃんのハンカチでおおえば…すぐ、とまっちゃうにゃ…」

ベル「きいろい色は、しあわせな色だから…」

ベル「だからお姉ちゃんも…そんな、悲しい顔、しちゃ、ダメ…だにゃ…」

ベル「凛、おね、え…ちゃん…」

ベル「…」

凛「べ、ベルっ…!!」



コンバット・D「出来損ないが死んだか…。ノープロブレム、いえ、プロブレムにすら値しない」

コンバット・D「予定調和。いずれ死にゆくデスティニーだったんだから」

コンバット・D「その儚い命を以てしても、何も変えられはしない」

コンバット・D「さ、あなたも後を追わせてあげる」スチャッ



ことり「凛ちゃんっ…!に、げぇっ…!!」



凛「…う、うぅぅっ…!!ベルっ…止まらないにゃ…!血が…!!」

凛「黄色いハンカチが…すぐに赤くなっちゃう…!」


コンバット・D「…そう。人の死は世界を赤く染める」

コンバット・D「この世界で最もメジャーな色、それが血の色なのよ」

コンバット・D「ふたり揃って、真っ赤に染まりなさい」


凛「…」

凛「違う、ちがうよっ…」

凛「この世界は…この世界はっ…!!」

凛「黄色いおひさまの光で、覆われているんだ…!」

凛「真っ赤な血の色すら、全てを染めるほどの、おひさまの光でっ…!!」

凛「だからっ…!だからぁぁぁぁっっ!!」

凛「うぅぅっ…、うあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」




ビカァァァァァァァァァッ!!

コンバット・D「っ!?何、この光っ…!」



タタタタッ…!!

希「ことりちゃんっ!!」

ことり「希ちゃん…真姫ちゃん…うぅっ…」

希「しっかりするんやっ!よいしょっ…」

真姫「ベルっ…間に合わなかった…!?でもあの光は一体…!」



凛「うあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」ビカァァァァァァァッ!!

シュピィィィィィィンッ…!!



希「っ!凛ちゃんの体の中から…何かがっ…!」

真姫「あれ、もしかしてっ…!!」



凛「こ、これっ…!昔、お父さんから貰った虹色のアクセサリー…!」

凛「失くしたとずっと思ってたのに…こんなところ…凛の中にあった、なんて…!」



コンバット・D「それはっ…!!それよっ!それがっ…『虹色のカギ』!!」

コンバット・D「世界に染まることのできる、世界を染めることのできる力を持った伝説のアイテムっ…!」

コンバット・D「まさかっ…!凛ちゃんの体内に染まっていたとはねっ…!フフ、でも…」

コンバット・D「出てきたのならもうこっちのもの…!さぁ、それを渡しなさい…!命だけは助けてあげる…!!」



凛「…」

凛「…いやだ」


コンバット・D「…へ?」


凛「このカギには確かに、世界を大きく変えることのできる力がある、って分かる…。力の奔流を感じる」

凛「だからこそ絶対に…!お前みたいなやつには渡さないっ…!」

凛「世界を血の色で染めさせはしないっ!世界を一色に染めるのはっ…!!」

凛「幸せの黄色だからっ!!」


コンバット・D「…っは、ハハハハッ…!!何をトチ狂っているの…!?」

コンバット・D「そうか、死にたいのね!クレイジー!!アハハハハハッ!」

コンバット・D「じゃあお望み通り殺してあげるっ!何が黄色よ!クリムゾンに沈みなさいっ!」


凛「…いいや。染まるのは…、お前のほうだ!」

凛「お願い、虹色のカギ、ほんの少し、力を貸して」

凛「たった一色だけ…そう、幸せの黄色だけでいいからっ…!」

ピカアァァァァッ!!


希「カギがっ…!虹色だったカギが…」

真姫「黄色いカギにっ…!!」



凛「…さぁ、行くよ」カチッ \イエロー!!/

凛「変身っ!!」

希「変…!?」

真姫「身っ…!?」

ことり「凛、ちゃんがっ…!?」



凛「はああぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」ビカアァァァァッ!!



コンバット・D「く、うおおっ…!」



バシュゥゥッ…!!


「…」



希「光が収まった、けど…」

真姫「あれが…凛…?」

ことり「か、カッコイイ…」



コンバット・D「…なにを、なにをしたのっ…!?」

コンバット・D「虹色のカギはどうしたの!?答えなさい、星空凛っ!!」



「…今の凛は、星空凛じゃない…」

「この街の涙を拭い、赤く染める血を覆う黄色いハンカチ」

「その名もっ…!」




イエロー「仮面アイドル、イエローだにゃっ!!」

希「仮面…!」

真姫「アイドル…!!」

ことり「イエロー…!!?」



コンバット・D「何が仮面アイドルよっ!そんな貧相な見た目で何ができっ…!?あ、あれ…?」

コンバット・D「なによ、これ…!世界が…世界が黄色くなってる…!!」



希「ほえぇっ!?う、うちらも身体が黄色一色に…!?」

真姫「それだけじゃない…辺り一面が見る限り黄色になっている…」

ことり「これがイエローの力…?」



イエロー「…」


コンバット・D「ハ…、ハッ!だからなんだって言うの!?黄色いから何っ!?」

コンバット・D「その程度で何が変えられるって言うのよっ!!」

パァンッ!!


希「凛ちゃん、危ないっ!!」



イエロー「…」パサァッ…



コンバット・D「…へぇ?」


イエロー「無駄だよ」

イエロー「このイエローの世界では黄色以外は意味を持たない」

イエロー「黒い鉛玉を撃ち出そうとも、誰かに当たる前に消える」

イエロー「イエローの世界で、暴力は無意味だにゃ」


コンバット・D「なん、ですってっ…!!?」



真姫「なによそれっ…!つまり今の凛は…無敵って事!?」

ことり「み、見てっ!ベルちゃんの身体っ…!」

希「…っ!血が…血が止まっている…!!」

真姫「イエローの世界が赤い血を溢れさせることを拒絶しているんだわ…!!」

希「まさに…、無暴力の世界!最強やんっ…!!」



コンバット・D「こ、このっ!!このぉぉっ!!!」ズガガガガガガッ!!


イエロー「…」パスススッ…

イエロー「無駄だっていうことがわからないんだね」

イエロー「…そうだ、わからないんだよ。数々の命を、尊いクローンたちの命を弄んできたお前には、何もっ!!」

イエロー「暴力で世界を支配しようと、世界を赤く染めようとした愚かな自分を、思いっきり悔いるがいいにゃぁっ!!」

イエロー「さぁ、お前の罪を数えろっ!!」

コンバット・D「ぐ、う、あぁぁっ…!!」


イエロー「…お仕置きの時間だにゃ」

\イエロー!!真姫シマムドライブ!!/


イエロー「ハアァァァァッ!!!」


キュピオォォォンッ!!

コンバット・D「うぎゅぅっ!!?う、あ、あぁぁぁっ…!め、目がっ…!世界が、黄色に…!」

コンバット・D「黄色以外、何も、見えないぃぃっ…!!誰か、誰かたすけっ…!!」



イエロー「…だれも助けは来ないにゃ。永遠に黄色い孤独を彷徨うがいいよ」


希「り、凛ちゃんっ…!」

真姫「あなた、その姿…」

イエロー「…自分でもよくわかんないけど、なんかできちゃったにゃ」

ことり「へへ…すごいね、凛ちゃんは…」

イエロー「うん。…あ!それよりっ…!!ベルッ!!」

ベル「…ぅ、うぅ…」

イエロー「よかった…!まだ息がある…!!」

希「…でも、今は血が止まっているけど出血が酷い…。早く手当てせんと手遅れになっちゃうよ…」

真姫「この状態のまま病院に送ることはできないの?」

イエロー「多分、できると思う…。一刻も早くリボルマキーで送って…」

真姫「…えぇ、わかった。今すぐリボルマキーを呼びましょう」

ことり「…あれ?いない…」

希「え…?」

ことり「レベッカが…さっきまでいたはずのレベッカがどこかに…!」

真姫「まさか、研究所に戻った…!?」

イエロー「え、ウソ…!何も見えてないはずなのに…」



レベッカバイオラボラトリー内


コンバット・D「う、うぅぅっ…!見えない…!何も見えないぃぃっ…!!」

コンバット・D「誰か助けてっ…!この黄色い地獄から開放してっ…!!」



ヨロヨロッ…


研究員A「所長っ!?ど、どうしたんですか…!」

研究員B「虹色のカギは…!?」


コンバット・D「う、うああぁぁぁっ…!誰かぁ…!だれかあぁぁぁっ…!!」ヨロヨロ…


研究員C「聞こえてないのかっ…!?」

研究員D「…っ!し、所長!そっちはダメです!!そっちはっ…!!」

研究員E「細胞増殖炉に、落ちるっ…!!」


コンバット・D「ここ…、ここ、あったかい…!!アハッ…!!」

コンバット・D「アハハハハハハハハハッ!!!!!!!!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ…!!



ことり「っ…!?何、この音…!!?」

真姫「地面が揺れてるっ…!?」



グジュルルルルッ…!! ゴガアァァァンッ!!


『GUGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!』




希「な、なんやあれっ!!?」

イエロー「研究所から、で、でっかい怪物がっ…!?」

真姫「ま、まさかあれ、コンバット・ドーパント…!!?」

希「う、ウソぉっ!!?なんであんなに大きくっ…!」

真姫「わかんないけど…多分全身の細胞を無茶苦茶に増殖させて…機械と周りの人間すら取り込んであの大きさにっ…!」

イエロー「だ、だとしたら…!あの大きさで音都を攻撃してくるかもしれないのっ…!!?」

ことり「そんなことになったら…音都は今度こそ壊滅だよ」

希「…イエローの無暴力の世界は?」

イエロー「あ、あんなに大きかったら有効範囲外にゃ…!」

真姫「…と、なると」

希「うちらしかいないみたいやね…!!」

ことり「まさかMuseでどうにかする気…!?クレッシェンドスターエクセレントでもあの大きさのドーパントは…!」

希「いぃや!うちらに残されているんはクレッシェンドスターエクセレントだけやない!」

真姫「…最後にもう一つ、あったでしょう?」

イエロー「あ!もしかしてっ!」

希「凛ちゃんの虹色のカギの力で、もう一度うちらと融合する!」

真姫「クレッシェンドスターウィングベルエクセレントになるのよ!」

イエロー「希ちゃんっ…!真姫ちゃんっ…!!」

希「あとはうちらに任せて、ことりちゃんはベルをリボルマキーで病院に!お願い!」

ことり「了解!」

ギャルルルルッ!!



ピチュゥゥンン…

凛「…虹色のカギ、もう一度、今度はめいっぱい、力を貸して」

希「この街を救う仮面アイドルに、新たな力をっ…!」

真姫「私たちに、世界を染める力をっ!!」



ビカアアァァァァァァァァァァッ!!


「「「変身っ!!!」」」

\クレッシェンド!!/ \スター!!/


\エクセレント!!/


\レインボー!!!!/




ビカアアアァァァァァァァァァァァッ!!


Muse「ハアァッ!!」「やった…!成功にゃ!」「しかも今度は…全身が虹色に…」

Muse「虹色のカギの力を最大限に引き出した証拠やね…!」「そう、名付けるなら…!!」

Muse「Museクレッシェンドスターウィングベルエクセレントレインボー!…なんてどうかしら」「長いよっ!」

Muse「バカ話してないでっ…いっくにゃー!!」「「うんっ!!」」


リィンッ… ビュオォォォォンンッ!!




『GU…GUGAAAAAAAAAAAAAAッ!!!』



Muse「こうして見てみると嫌になるくらいデカいわねっ…!!」「それでもうちらが、何とかするしかないっ!!」


『GU、GIIIIIIIIIIIIIIIIIッ!!!』ドガガガガガガッ!!




Muse「ひぃっ!撃ってきた!!」「ミサイルみたいに巨大な銃弾ねっ…!!!」「こんなん全部防ぎきれっ…」


ビカアアァァァァッ!!


Muse「なんやっ…!ムーンメモリが紫色に光って…!」「虹色のカギが力を貸してくれてるんだにゃ!!」「使いなさい!」

Muse「よっしゃあぁっ!これでどうやっ!!」\ムーン!!/ \バイオレット!!/


ビガアァァァンッ!! ジャキィンンッ!!


Muse「っはああぁぁぁっ!!!」ズバアァァァァンッ!!


ズバババババッ… ドガアアアァァァァンッ!!



Muse「すっ…、すごい…!紫色の光の剣で一気に銃弾を切り落とした…!」「これが虹色のカギの力っ…!」

Muse「名付けるならっ…、バイオレットムーンソード!ってとこやね!」

Muse「油断しちゃダメ!アイツ…まだ何かしでかす気だわっ!!」



『GUAAAAAAAAAAAAAAAAAAA…!!』コォォォォォッ…!!



Muse「く、口からなんか吐き出す気やよ!?」「研究所内の膨大なエネルギーを砲弾としてぶつける気なのね…!!」

Muse「あの研究所のエネルギーなんか吐き出されたら音都はめちゃくちゃにゃ!」「分かってる!なんとかしなきゃっ…!!」


ビカアァァァァァッ!!


Muse「っ…!今度はサンのメモリが赤く光っている!」「し、しかもこれ…真姫ちゃんに使えって言ってるにゃ!希ちゃんのメモリなのに!」

Muse「えぇ…また浮気か」「カギが使えって言ってるんだから仕方ないでしょ!やってやるわよ!!」\サン!!/ \レッド!!/

ビカアァァァァァァァッ!!


Muse「っ…!右手に赤い砲台が…!」「ロックマンみたい!」「いや、剣と砲の組み合わせやからオメガモン…」

Muse「どっちでもいいわよっ!ッハアアァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」クオォォォォォォッッ!!

Muse「ハァァッ!!」


ドゴォォオォォォォォォォォォォォォォォンンッ!!


『GUGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!』


バゴォォォォォォォォッ!!



Muse「ぐ、ぐぅぅぅっ!!強大なエネルギーで押し返されるっ…!!」「負けるなぁぁぁぁっ…!!」

Muse「負けるわけないでしょぉっ!私たちを誰だと思っているのっ…!」

Muse「探偵で…!」「アイドルでっ…!」「そして、街の涙を拭う、黄色いハンカチにゃあぁぁぁっ!!」

Muse「「「うりゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」」」


ズゴォォォォォォォッ!!


バシュオォォォォォォォォォッ!!



『GUGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!』



Muse「よぉしっ!やったわ!押し返した!!さすが我が愛砲サンシャインレッド!」「えぇっ!?おひさまの光は黄色だからその名前ナシ!!」

Muse「い、今はそんなこといいやん!相手がエネルギーを押し返されて怯んでるっ…!チャンスや、凛ちゃんっ!!」「うんっ!!決めるにゃああぁぁっ!!」


\レインボー!!真姫シマムドライブ!!/


Muse「はあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ…!!!」ゴゴゴゴゴゴゴッ…!!

Muse「雨やめええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」


バシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!


Muse「うおぉっ!虹色の光がっ!」「雨雲を払って雨を止ませたわ!…えらく強引ね」

Muse「人間やってやれないことはないにゃ!さぁ、これで黄色いおひさまがこの音都を…世界を照らしてくれているにゃぁっ!!」

Muse「受けてみろっ!最大最強!!幸せの色に染めてやるにゃあぁぁっ!!」


\イエロー!!真姫シマムドライブ!!/


リィィィンッ…!! バッサァァァァァッ


Muse「おひさまの光を背中に受けてっ…!全身全霊を込めたMuseのキック!!!」

Muse「ウィングベル…!イエローォォォォッ…!!!」

Muse「フィナーレえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!!!!!」


ビュオォォォォンッ!!!



「「「ハアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!!」」」

ズゴォォォォォォォォォォォォォォォッ!!



『GUGIIIIIIIIIIIッ…!!GA、GAAAAA…!!』



ドッガアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!


『GUGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!!!!』




ピキィィィッ… パリィィンッ





ヒュォォォンッ… シュタッ


Muse「…や、やった…!勝ったにゃぁぁっ!!」「ドーパントごと研究所も吹き飛んだ…。もう、無駄に散ってゆく命が量産されることもないわね」


ピチュゥゥンン…


凛「ふぅっ…、ありがとう…。虹色のカギ…。最後まで力を貸してくれて…」


ピキッ… 


凛「えっ…?」

パキンッ

凛「あっ!虹色のカギがっ…!」

真姫「割れた…。おそらくエクセレントのパワーに耐え切れなかったのね」

希「世界を染める力、って言ってもそのくらいのもんやねんね。うん、誰かの手に渡るよりはいいんと違う?」

凛「…そう、だね。…あっ!空!!」


パアァァァァァ…!!


希「雨が晴れてお日様が差したから、虹が…!」

真姫「綺麗ね…」

凛「うんっ…!ベルにも見せてあげたいにゃっ…!あ、そうだ、ベルっ…!!」

希「せやね、無事かどうか、病院に行って確かめよう」

凛「お願い、ベルっ…!生きていて…!お願いっ…!!」

音都総合病院


301号室


ベル「…」


凛「ベルっ…!ベル、目を覚ましてっ…!お姉ちゃんが迎えに来たにゃ!」

凛「一緒に帰ろう!そんで…可愛いお洋服、お下がりだけじゃなくてちゃんと買ってあげるから、だからっ…!!」


ベル「…ん」

ベル「ん、んん…」


凛「あっ…!ベルぅっ!!よ、よかったぁぁ…!生きてた…!よかったにゃあぁぁぁぁぁ…!!」

ベル「…おねえちゃん…」

凛「そうだよ!お姉ちゃんだにゃ!」


ベル「…おねえちゃん…」

ベル「だれ…?」



凛「…え?」




301号室前


医者「…なんとか一命は取り留めたんですが、脳に大きなダメージを受けてしまっていたせいで…」

希「今までの記憶が、ない…?」

医者「はい…。多分出血とは関係のないことだと思うんですが…」

ことり「…レベッカが脳に埋め込んだチップに命令を送っていたせいで、脳がダメージを受けたんだ」

ことり「そのせいで、記憶が…」

真姫「…けれど、研究所での辛い記憶も消えたと考えたら…彼女にとっては良かったのかもしれないわね」

希「でもっ…、でも、それじゃあ凛ちゃんは…」





ベル「おねえちゃん…だれ?」


凛「…」

凛「…凛、は…」

凛「おねえちゃんは、おねえちゃんはねっ…!」

凛「探偵さん、だにゃ…」

ベル「たんてい、さん…?」

凛「…うん。無くしちゃったしあわせを見つける、探偵さん」

凛「そんで、そんでっ…、悲しいこともっ…黄色いハンカチで覆ってあげられるっ…!たん、てい…なの…!!」

凛「でも、でもねっ…!凛と、いっしょにいたらっ…!また、かなしいことにっ…、まきこまれちゃうかも、しれないからぁぁっ…!!」

凛「う、うぅぅっ…!!さよならっ…ベルっ…!!うぅぅああぁぁぁぁぁぁぁぁっ…!!」

ベル「どうしたの?なんで泣いてるの…?悲しいこと、あったの…?」

ベル「よしよし、泣いたらしあわせがにげちゃうよ。なでなで」

凛「うん、うんっ…!泣かないっ…!泣かない、にゃっ…!」

数日後

東條西木野☆探偵事務所内


ザー…


希(幼年兵を育成し、戦場へと派遣していたPMC…レベッカバイオラボラトリーは壊滅した)

希(唯一生き残ったクローン兵、ベルちゃんは、それまでの記憶を無くし、ただの女の子に)

希(かつての錦野財閥が経営して、今もまだ残っている孤児院へと彼女は送られた)

希(そうして事件は無事解決。けれど…)

希(凛ちゃんの心の雨雲が晴れるには、まだ時間がかかりそう)



真姫「…雨、止まないわね。数日前からずっとじゃない」

ことり「仕方ないよ、梅雨なんだし…」

真姫「あとアイツ…いつまで窓際で黄昏てる気よ。一生あのまま?」


凛「…」


希「…仕方ないよ。凛ちゃんにとっては妹みたいな存在やったんやもん」

真姫「…まぁ、気持ちはわからなくもない、けどね」



ガチャッ チリンチリーン


「お届け物でーす」


希「ん?またお届け物か」

真姫「凛っ…は無理か。仕方ないわね…よいしょっ」



ことり「…なんだったの?」

真姫「なんか…書類?手紙?あ、例の孤児院から…」

希「中身は?」

真姫「えっと…あ!!」

希「これっ…!!」

ことり「り、凛ちゃんっ!!これ見てっ!!」



凛「…にゃ?なにを…」

凛「っ!!これ…」

希「凛ちゃんと、ベルちゃんの絵」

真姫「…手紙がついてる。孤児院でベルがお絵かきしたそうよ。あなたと、お揃いのお洋服を着ている絵、ですって」

凛「べ、ベルっ…!!」

ことり「ふふっ…手紙のここ、見て。『ほかの子は太陽を赤く描いたのに、この子だけ黄色で塗ったんです』」

ことり「『それでいいの?って聞いても、これでいいの!って言って聞かないんです。おかしな子ですね』だって」

凛「うぅんっ…!!うぅんんっ…!!おかしくないっ…!おかしくないにゃぁっ…!」

凛「そうだよねっ…!おひさまは、黄色いもん、ねっ…!」

真姫「えぇ、そうね…」

凛「ベルっ…うぅぅぅぅっ…!ずずっ…!な、なかないにゃぁっ…!しあわせが逃げちゃうもん…!」

ことり「おっ、強がってる?」

凛「強がってなっ…うええぇぇぇぇぇぇ…!!ダメにゃぁぁぁぁ…!喋ったら涙が溢れちゃうのにゃあぁぁぁぁぁ…!!」

真姫「ふふふっ…ブサイクな顔になってるわよ?」

凛「うるさぁぁぁいっ…!ううぇえぇぇぇぇぇぇ…」



希「…あ」

希「雨、止んでる」



希(どうやらベルは…)

希(凛ちゃんの心の雲を晴らす、幸せの黄色いおひさまに、なってくれたみたいやった)








Vシネマ 仮面アイドルMuse RETURNS

星空のY / 幸せの色に染まれ



おわり

真姫「というわけで、仮面アイドルMuse、番外編でした。ちょっと長くなっちゃったかしら」

凛「いやー、ベタにベタな展開だけど、こういうのが堪んないにゃー…うぅ、涙が…」

真姫「戦闘に関してもMuse、ことり共々に見せ場を作れたし、ラストの展開も映画っぽくてかなり良かったと思うわ」

真姫「もっと今まで使ったことのないメモリの組み合わせも出したかったけど、流石に難しかったわね」

凛「ビブラートストレングスくらいかにゃ?」

真姫「あとは一応ダル・セーニョハーミットもね。ダル・セーニョがどうあがいても発展性のない能力だからあまり目立ってないかもだけど」

凛「身体を半分に分ける以外にできることがないからね…」

真姫「それで、虹色のカギで変身した凛、仮面アイドルイエローについてだけど」

真姫「これはメモリの力による変身ではなくて、全く異質なものって設定ね」

真姫「だから直差しとかではなく…そうね、イメージとしてはカギが凛を包み込んで鎧へと変化した、みたいな感じかしら」

凛「ガイアウィスパーっぽいのもメモリを模したカギの力の現れってことにしておいてね」

真姫「あと最後の必殺技、ウィングベルイエローフィナーレは急降下片足キックよ!ゴールデンエクストリームとはまるで正反対ね!」

凛「脳内パースは完全にスーパーイナズマキックだにゃ」

真姫「そしてもしかしたらSEだけだったからわかってなかったかもしれないけど!」

真姫「最後の巨大コンバット・ドーパントとの決戦は空中戦だからね!」

凛「クレッシェンドスターウィングベルエクセレントレインボーは羽ばたく時鈴の音がなるんだにゃ。そういう設定も忘れてないにゃ」

真姫「まぁ、そんなこんなでどうだったかしら。Museを読んでくれてた人も、これを読んで気になってくれた人がもしいたらその人も、楽しんでくれたらありがたいわね」

凛「夕日や星空が見れた次の日の朝に雨が降るという天候の矛盾については目をつぶっていて欲しいにゃ」

真姫「…雨が降って虹の差す展開は直前に思いついたんだもん」

凛「そんでこのスレはこれでおしまい!次スレからようやくお待たせしました、もしライブ!の続きにゃ!」

真姫「色々並行してやっていたとはいえ、4スレ目に入る長編はこれが初めてね…」

凛「流石に次のスレで終わるはず!最後までついてきてね!」

真姫「じゃあ、今日の西木野☆星空シアターはここまで!」

凛「次に変身するのはあなたかもね?」

真姫・凛「「まじ☆えんじぇー!!」」

今日やろうと思ってたけど集中力切れてて出来ませんでした…
あ、明日は絶対に更新すると言っておこう… 自分のためにも
自分が死なない限り最後まで書ききるつもりなので気長に待っててくだしあ

平気?と言われたのでなんか立てられない規制でもあんのかと不安になったけど立てられました お待たせ

凛「西木野☆星空シアター!4本目!」真姫「グランドフィナーレを目指して」
凛「西木野☆星空シアター!4本目!」真姫「グランドフィナーレを目指して」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1435161328/)

1レス目って160行も書き込めるんですね… すげぇや
これからもよろしくね いっくにゃー

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