【モバマス】夕美「百花繚乱!」【麻雀】 (20)

※ムダヅモをパク……リスペクトしたトンデモ麻雀です。
※登場アイドルは相葉夕美、渋谷凛、西園寺琴歌。
※手牌等は萬子(漢数字)、筒子(丸付数字)、索子(算用数字)です。

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四月上旬、春一番と冬将軍が交互に来る乱れた気温にもかかわらず、桜は美しく並木道に咲いていた。

「綺麗……」

肌寒い一陣の風に煽られ、無数の桜花が視界に広がった。

花弁の舞う道でアイドル・相葉夕美はその何物にも代え難い笑顔をプロデューサーに見せていた。

「まるで花の中を泳いでいるみたい」

「ここもたくさん咲くようになったな。道路の傍にあるのが少しかわいそうだが」

プロデューサーは言った。これだけ見事に咲いているのに吸える空気が

自動車の排気ガスばかりとは何とも悲しい。

「もっと新鮮な空気を吸った綺麗な桜のある場所があるんだ。
 県境にあるんだけど、そろそろ花盛りだと思うな」

「あっ……プロデューサーさんっ、明日の午後、休みだよね?
 良かったらそこにお花見、一緒に……!」

プロデューサーは、快く了承した。最近彼は忙しくて夕美は二人で出かける事がほとんどなかった。

彼のプロデュースしているユニットメンバー、相葉夕美、渋谷凜、西園寺琴歌が

ブレイクし始め、仕事量が増えたのもある。

いずれにせよ、夕美にとっては久々に二人きりで過ごす時間が出来て

前日の布団の中から胸を高鳴らせていた。

しかし、当日待ち合わせの場所に来ても、プロデューサーの姿はなかった。
三十分待っても来ないので心配に思った夕美は彼に電話した。

「もしもしプロデューサーさん?」

『夕美……た、助け……』

携帯は彼の一言だけを伝えて切れた。

とりあえず夕美はプロデューサーのいる事務所に辿り着いて彼の姿を探した。

すると廊下の端にある部屋で呻き声と共に麻雀牌のぶつかり合う音が聞こえてきた。

ドアを開けると、そこには事務員の千川ちひろと、渋谷凛、西園寺琴歌のアイドル二人に囲まれて

麻雀を打っているプロデューサーの姿があった。

彼の身体は椅子に鎖で繋がれ、その生気を失った瞳には疲労困憊の色がありありと見えていた。

「ちひろさん、プロデューサーを椅子に縛りつけて何をしているんですか!」

夕美はすぐプロデューサーの下に駆け寄り、鎖を外そうとする。

「相葉さん、落ち着いて。これは彼が望んだ事なのよ?」

「望んだ、事……?」

説明を求める夕美に対してちひろは説明した。

プロデューサーは夕美のプロデュースに全力を注ぐあまり

大量のスタミナドリンクを消費しながら営業を続けていた。

あろうことか彼は金の融通の利く千川ちひろに足りない分を借りてしまった。

当然それは借金として積み重なり、グレーゾーンの利息も手伝ってどんどん膨らんでいく。

返済を求められて返す当てがない。もう少しだけ待っていてくれと

馬鹿正直に伝えたプロデューサーに、ちひろは高レートの麻雀勝負を持ちかけた。

上手く行けば今までの借金を返してリターンも期待できる、と甘い言葉を囁いたのだ。

起死回生を図るため、彼はちひろと彼女の雇った二人のアイドル雀士、渋谷凛と

西園寺琴歌を相手に麻雀をする事を決めた。

夕美の約束の時間までに何とか借金を返そうと彼は必死で打ったが

徒に失点を重ねて更に新たな借金を背負わされる悪循環に陥ってしまった。

「彼は今までリャンピンレートでトータル十七万円分負けているの。

 これを返さない限り、悪いけれど貴方との約束は後回しね」

「……ちひろさん。私がプロデューサーさんの分まで勝ったら

 プロデューサーさんを、解放してくれますか?」

「相葉さんが? ふふ、いいですよ。勝ったら、の話ですけど」

ちひろは微笑みながら夕美に席を譲る。

代わりに卓についた夕美は凛、琴歌との間に静かな火花を散らした。

彼女たち二人がちひろに組している理由はただ一つだ。

忙しいプロデューサーの借金を幾らか肩代わりする事によって

後でデートの約束をこぎつけるつもりだった。

少ない休日に少しでもプロデューサーと一緒に過ごしたいという気持ちは一緒だった。

――東二局、十二巡目。親は凛。ドラは九索――


二三四③④⑤⑤⑦⑧⑨234 


凛はここに来て七索を自摸った。

手牌は既に三色聴牌であり、この牌は明らかに不要牌だった。

彼女は横目で下家の夕美の捨て牌を見た。


北西21⑦⑨八68三八


序盤の字牌整理と辺張あるいは嵌張を嫌っている所を見るに

凛は典型的なタンヤオ手だと推測した。

少なくともチャンタとは考えられない。

端牌絡みの三色手という線もまずあり得ないだろうと

凛は七索をそのまま自摸切りした。

「――ロン」
「……!」


七八九九九⑦⑧⑨78899 ロン7 


夕美の手牌が倒れた。純チャン三色一盃口ドラ2、倍満の手である。

「……随分な挨拶ね」

凛は点棒箱の中から一万六千点を握り、夕美に渡した。

渡された彼女は顔色一つ変えずにそれを懐にしまう。

「譲れないものが、あるから」

「……」

――東三局、七巡目。親は夕美。ドラは七索――

五六②④⑥⑦55567888 

琴歌はこの手牌から四筒を切り出した。

果たして彼女は次巡で七萬を自摸り、そのまま二筒を河に放った。

「リーチでございます」

「リー棒はいらないよ、琴歌ちゃん。ロン。タンヤオドラ3」

夕美は手牌をそっと倒して相手に見せた。

二三四②③④⑤234777 ロン② 

(あら、直前に六索を捨てられています。
 三色確定の三面待ちを捨ててまで……
 まさか、私の余剰牌を狙い撃ち……?)

琴歌は顔色一つ変えずいつものように穏やかに微笑み、親満の一万二千点を支払った。

恐らく夕美は、琴歌の牌を狙い撃ちする意図もあっただろう。

だがそれよりも、特筆すべきは五・八索待ちが薄い事を聴牌時に嗅ぎ分けた事だ。

麻雀強者特有の勘で、彼女はその待ちの死臭を嗅ぎつけたのだ。

半荘が済み、夕美は圧倒的点差でトップを勝ち取った。

屈辱的にも凛と琴歌のタッグは三位と四位に終わる。

千川ちひろは据えた視線を凛と琴歌の二人に向けて沈黙している。

彼女の沈黙は啖呵を切る極道者よりも恐ろしい、と村上巴は仲間たちに時折打ち明ける。

ウマ有りオカ有りのルールにおいて、その順位差は更なる開きを生み、数値以上の隔たりを魅せていた。

「流石ね、夕美。じゃあ私たちも手加減してられないよ」

「花牌ルールを適用してもよろしいですか? 夕美さん?」

この時凛と琴歌の二人は夕美を好敵手とみなし

自分たちが全力を出せる新しいルールを提示した。

「いいよ。ただし、次からのレートはデカリャンピンでお願い」

夕美は静かに言った。

先程の半荘ではプロデューサーと合わせてプラス五十一で大勝したものの

リャンピンレートではやっと一万円弱返せただけだ。

いくら麻雀の強い彼女と言えど、今のレートのままでは一日かけても

プロデューサーの借金を返済し難い。

休日には限りがある。リスキーだがここは極端にレートを吊り上げ

最短で相手を飛ばし一気に返済したい。

そうでもしなければデートがまた数か月先に延びてしまう。

第二回戦は半荘戦で、レートはデカリャンピン。

ウラドラあり、花牌あり、トビあり、焼き鳥あり。

ウマはワンスリー、オカは二万五千点持ちスタートの三万点返しのルールの下で行われた。

         東          【東一局】
     ┌───┐      東 : 25000点  渋谷凛
     │      │      南 : 25000点  相葉夕美
   南│      │北     西: 25000点  P
     │      │      北 : 25000点  西園寺琴歌
     └───┘
         西

――東一局、一巡目。親は凛。ドラは三筒――

凛は第一手で早速花牌を脇にやった。

嶺上牌を自摸った彼女は静かにそれを手牌の真ん中に引き込み

顔色を変えず手牌から三筒を横に切り出した。

「ダブリー」

何もない河に千点棒と横牌が横たわる。五巡程して、彼女は一筒を自摸った。

「ツモ! コランバイン(ダブリーツモ平和一盃口ドラ1花1)!」


三三六六七七八八②③④⑤⑥ 夏 ツモ①


コランバイン……和名で糸繰草と呼称されるその花は

「断固として勝つ」という花言葉を冠していた。

(流石はシンデレラガールズだね、凛ちゃん……自分を曲げない強い意志を感じるよ……!)

――東二局、四巡目。親は夕美。ドラは二萬――

「あら、綺麗ですね」

琴歌はここで二枚目の花牌を脇にやり、嶺上牌から八筒を自摸った。

「ツモ! エーデルワイス(嶺上開花白混一花2)!」


③③③④⑤⑤⑥⑦⑧⑧白白白 夏冬 ツモ⑧ 


琴歌もまた自らの想いを牌に込め、夕美と対話する。

美しい残雪を被った高山に、凛々しく咲き誇るエーデルワイス……その花言葉は、「初恋」だった。

琴歌は少し照れた後で夕美たちから六千点・三千点を受け取った。

彼女の花言葉に秘めた想いは鈍感なプロデューサー以外の全員に伝わる。

(初めて好きになった人なんだ……でも琴歌ちゃん、それは私だって同じなんだ。
 だから、私も全力で勝ちを取りに行く!)

――東三局、十巡目。親はプロデューサー。ドラは六筒――

「リーチ!」

プロデューサーは意気揚々と次の手からドラの六筒を切ってリーチした。


二三三三四②④⑥234北北北

西中89六發5五⑦ リーチ⑥


「……」
二巡後、夕美はしばらく彼の捨て牌を見た上で、次の手牌から三筒を切った。


五五六六七③③③③④④⑤⑤ ツモ⑥


「ロン! プラートプファンネ!!」

プロデューサーは腕を胸の前で交差し、凛々しい眼差しをアイドルたちに向けて決めた。

リーチ三色裏ドラに北が乗り、満貫になった。

プロデューサーの発言に夕美たちは口を押さえて笑い声を噛み潰した。

「なっ、何で笑うんだ皆? さっきまで皆大体こんなノリだったじゃないか?
 俺、何かおかしかったか? く、空気読めなかった?」

「フフフッ……! う、ううんっ!
 お、おかしくないよプロデューサーさんっ! アハハハッ!」

夕美はとうとう口を開けて笑い出した。

プロデューサーのこの天然な行動が空気の張りつめたこの卓に一石を投じたのは確かだった。

無論、夕美もただサービスをしたいがために彼に差し込んだ訳ではない。

(とにかく、プロデューサーさんはこれで焼き鳥にならずに済んだ訳ですね……)

彼女の差し込みがこの局での焼き鳥対策だという事は凜も琴歌も気づいていた。

――東三局一本場、八巡目。親はプロデューサー。ドラは一筒――

「カン!」

夕美は凜の手牌から溢れた發をすかさずカンした。嶺上牌を持つ手が美しく卓上を飛ぶ。

「ツモ! サザンカ(嶺上開花發一気通貫ドラ4花1)!」


三四五④⑤⑥7899 發・發發發 春 ツモ9 


發が槓ドラとなって四枚乗った。

この場合はやや特殊だが、カンをさせた凜の責任払いとなる。

トップの凛から倍満一万六千点を直撃したのだ。

山茶花の花言葉は「困難に打ち勝つ」、総選挙上位ランカーかつ

シンデレラガールとして君臨する女帝・渋谷凛に対する夕美の明確な意思表示だった。

戦いは花を咲き乱れさせながら、更にヒートアップしていく。

そしてその熱気は彼女たちを更なる高みへと昇らせる。

しかし次局、プロデューサーが叫んだ。

「待ってくれ! 何か花牌がおかしいんだ」

プロデューサーは手牌と場に出ている花牌を見て目をこすった。

どう見ても冬の花牌が五枚、場に出ている。

初心者の彼はそれを見て麻雀牌が不良品だと感じたのだ。

「…………! 大丈夫だよ、プロデューサーさん。問題ないから」

「問題ないって、これ、どう見ても……」

夕美はプロデューサーの手を熱く包み込んで微笑む。

「やっと咲いたの……冬の時を堪え忍んだ末に、勝利の花が……!」

『花を統べる者』相葉夕美
『花の護り手』渋谷凛
『花織り姫』西園寺琴歌――。

花を愛し、かつ花に愛されし類稀なる『華力』を持つ者たち三人が

一堂に会すれば自ずとこのような特異な光景が起こり得る。

そう、これは必然なのだ。

河という豊かな緑の大地に立ち、三人のアイドルが自ら抑制していた力を解放し

せめぎ合えば、次々に美しい花が咲く。

そして土壌は肥え、結果として圧倒的華力によって時空は歪みを生じる。

本来存在し得ないはずの花までその華力によって導かれるまま卓に花開く事になるのだ。

「久しぶりですね、このような花戦(たたかい)は……」

「……簡単には、咲かせないからね」

美姫たちの手によって花は卓に満ちていく。

手牌には当たり前のように花牌が五枚も六枚も紛れ込んでくる。

十四枚嶺上牌を確保しているはずの王牌は、瞬く間になくなっていった。

(こんなに花牌があっても嶺上牌が足りなくなるだけじゃないか!
 ドラ表示牌でもツモれというのかこれは!)

空になった嶺上牌を見ながら、プロデューサーは途方に暮れた。

とりあえず要らなくなった花牌を切らない事には面子が出来ない。

彼は花を河に捨てたが、美しき花騎士たちは違った。

凛「ツモ! ジャーマンアイリス(チャンタホンイツツモ花6)!」


一二三七八九春春春夏夏白白 ツモ夏


プロデューサーは気づいてなかった。この卓は既に花で満ちている。

花がルールの根幹に宿り、狂い咲き、歪ませているのだ。

夕美「ロン! アラセイトウ(リーチチートイ花4)!」


春春冬冬二五五①①⑧⑧發發 ロン二 


この華やかながら異質な世界では、従来の花牌ルールなど全く意味を成さない。

花はもう、ただ嶺上牌を掴むためのドラ牌ではない。

独立した面子を成し得る牌へと変貌を遂げていた。

三人の歌姫たちは花を身に纏って火花を散らす。

花と花のぶつかり合いの中でプロデューサーは

美少女たちの闘牌を、ただ見守るしかなかった。

――南二局、一巡目。親は夕美。ドラは冬――

         北          【南二局】
     ┌───┐      北 : 48000点  渋谷凛
     │      │      東 : 28000点  相葉夕美
   東│      │西     南:  16000点  P
     │      │      西 : 13000点  西園寺琴歌
     └───┘
         南

「……? これは……」

琴歌と凛の二人は、椅子の肘掛けに違和感を覚えた。

手に触ったものを見ると一本の細い蔓が椅子にしがみついている。

その蔓は茎に一つまた一つと蕾を作り、どこまでも長く枝分かれして伸びていった。

彼女たちは気づいた――それがこれから起きる「予兆」だと。

(……。これだけじゃ足りない……プロデューサーさんを救うには……!)

「カン!」

夕美は声高く叫んだ。

■■■■■■■■■■■春春■ カシャッ

夕美が花牌をカンした時、卓に一陣の薫風が吹く。

(負けられないっ! 私だってプロデューサーさんとのデート
 ずっと楽しみにしてたんだからっ!)

「カンッ!」

■■■■■■■■春春■■夏夏■ カシャッ

夕美は自摸ってきた嶺上牌で、更に花牌をカンする。

すると香り高い春風と共に、雀卓、椅子、ソファー、テレビ、パソコン、窓

そして床に至るまで鮮やかな花々が次々と咲き

無数の長い蔓が机やソファーに絡み付いていった。

(プロデューサーさんへのこの想いは誰にだって負けない、負けたくないっ!)

「カンッ!!」

■■■■■春春■■夏夏■■秋秋■ カシャッ

開花は止まらない――彼女たちのいる部屋だけでなく、少し離れたアイドル寮

社長室、レッスンスタジオ、コンビニ、浴場、果てはカフェテリアに至るまで

次々と草花は咲き乱れ、生い茂り、346プロダクション全体を呑み込んでいった。

「まあ、これは……!?」

「まさか、あの伝説の……!?」

凛と琴歌は増幅していく夕美の華力、そしてその力のもたらすプレッシャーに圧倒された。

この場にいるだけで植物の中に取り込まれ、その一部と化してしまいそうだ。

「カンッ!!!」

■■春春■■夏夏■■秋秋■■冬冬■ カシャッ

「……!? 何てこと……!」

ちひろは手にした最新スカウターを装着しそれを通して夕美を見ていた。

しかし測定量を大幅にオーバーしたスカウターは、一瞬で火を吹いて用を為さなくなった。

測定不能となった夕美の華力はなおも高まり、オーラの影響範囲を広げていく。

(この強い想いをっ、牌に込めるっ……!)

「ツモ――ッ!!」

夕美が最後の嶺上牌を引き入れた時、346プロダクションの敷地内一帯は

足の踏み場もない程に数多の美花に包まれた。

開かれた窓から優しく温かな風が流れ込んできた。

「百花繚乱ッッッ!!!(嶺上開花四槓子四暗刻単騎ドラ56花18)」

春春春春夏夏夏夏秋秋秋秋冬冬冬冬春 ツモ春 ドラ春×8枚、冬、秋、

「……負けたわ」

親の夕美がトリプル役満を和了し、百花園と化した部屋の真ん中で

凛は額に手を当てて天を仰いだ。負けたはずなのにどこか心地良い。

敗者も勝者も、この無数の花の芳香が優しく包み込んでくれるからだろう。

「見事な闘牌でした、夕美さん」

琴歌は屈託のない笑みを浮かべて、一枚のしおりと共に夕美の手を握った。

「しかと見せていただきました。夕美さんの咲かせたかった、美しい花を」

「今度はしくじらないからね、夕美」

「凛ちゃん、琴歌ちゃん……」

この時、凛も琴歌もプロデューサーも、手牌には一枚も花牌がなかった。

花が、夕美を選んだのだ。

すっかり蔓草に覆われた椅子から立ち上がったちひろは、放心状態のプロデューサーの前に立った。

彼女は胸の谷間から七万円を取り出し、彼の太ももの上に置いた。

ウマオカ含めたトータルは次の通りだ。

夕美:+187 凛:-20 P:-72 琴歌:-95

プロデューサーと夕美の合計トータルをレートで換金した金額は二十三万円
借金を返すとちょうど七万円が残る。

「青天井ルールにしなくて良かった、とでも言いましょうか?」

ちひろは言った。

「プロデューサーさん、今日は相葉さんの咲かせた素晴らしい花と闘牌に免じて引きます。
 ですが安心して下さい。プロデューサーさんが困った時には
 いつでもリーズナブルな金額と溢れる誠意をもって貴方を助けますからね」

プロデューサーは歯をガタガタと鳴らしてブルブルと震えたまま首を横に振った。

脚の上にある七万円という金が妙に重く感じた。

「何とかなって良かったね」

助手席に乗った夕美は隣で運転しているプロデューサーに言った。

時刻は午後五時を回っている。フラワーパークに変貌した346プロダクションを後にし

二人はこれからドライブを楽しもうとしていた。

「助かったよ、夕美」

車にキーを入れ、プロデューサーはエンジンをふかした。

思わずタバコの吸いたくなる対局だった。

今でもあの時起こった状況が彼は理解出来ずにいた。

「これに懲りたらもう無理して借金しないでよプロデューサーさん」

「面目ない。これからは無計画にエナドリを飲まないようにするよ」

FMのラジオを流しながら、彼の車は動いた。

夕美は琴歌からもらったしおりを見た。

しおりには彼女の手で美しく押し花された紅弁慶が咲いていた。

その花言葉は「幸福を告げる」――

二人のデートが上手くいくようにという琴歌のメッセージだった。

夕美は先程まで戦っていた友人の優しさに、心を温かくさせられた。

「……プロデューサーさんと二人っきりって久しぶりね」

「そうだな。あ、夕美。夕食の前にこれから夜桜を見に行かないか?
 前言っていた所とは違うけれど、夜景の綺麗な場所を見つけているんだ」

「いいね、行きたい行きたい!」

夕美は満面の笑顔をプロデューサーに向けた。

彼女の幸せな一日は始まったばかりだ。

以上です

>>11の手牌ミス修正

「ツモ! サザンカ(嶺上開花發一気通貫ドラ4花1)!」

三三12345678 發・發發發 春 ツモ9 

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