幸子「ボクが一番カワイイんです」凛「待てぃ!」 (34)

幸子「……事務所に来て第一声がそれですか、凛さん」

幸子「大体なにを待つんですか? ボクの可愛さは天井知らずですよ」

凛「『ボクが一番カワイイ』。確かにそう言った?」

幸子「ええ、言いましたよ。揺るぎない事実ですからね」フフン

未央「それを、簡単に認めるわけにはいかないね」スッ

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幸子「……なんですか? 自分たちの方がカワイイと言いたいんですか」

凛「いや……クールの私とパッションの未央では、キュートの幸子に可愛さでは勝てない」

未央「しかし! ニュージェネにもキュートはいる!」

凛「その名は!」

卯月「凛ちゃん、未央ちゃん? 事務所に入らないんですか? ちひろさんが困ってますよ」

ちひろ「……ええと」

凛「あ、すみません」

未央「どうぞお先に」

ちひろ「どうもご丁寧に」ソソクサー

卯月「お話するんだったら座ってしません? ここだと邪魔になっちゃいますよ」

凛「そうだね、そうしようか」

未央「みんなの事務所だもんね」

卯月「じゃあ、ソファーでお話しましょう。今日はクッキーを持ってきたんですよ」

未央「おっ、いいねー。紅茶ってあったかな?」

凛「確かあったよ。幸子も飲むでしょ?」

幸子「えっ、あっ、はい」

ちひろ「あっ、私の分もお願いします」

未央「了解ー。じゃあ、しぶりん任せたっ!」

凛「そこまで言って私に振るか。いいけどさ」

幸子「……あれ?」

卯月「凛ちゃんの煎れたお茶って美味しいですよね」

未央「何か秘密の隠し味とかあるの? やっぱり愛情?」

凛「もう、恥ずかしいこと言わないでって」

幸子「……あの」

卯月「幸子ちゃん、クッキー美味しいですか?」

幸子「美味しいです……けど、あの」

卯月「よかった! 実は私の手作りなんですよ!」

凛「えっ、そうなの? すごくおいしいから店のかと思った」

未央「おー、しまむーもやるね。やっぱり愛情が秘訣?」

卯月「未央ちゃんってばー」

幸子「っておかしいですよ!」

卯月「えっ……。変な味でしたか……?」

幸子「いやそちらはとても美味しかったですよ!」アセアセ

卯月「わぁ……! ありがとうございます!」

凛「よかったね、卯月」

卯月「はいっ! えへへ……」

未央「こうして時間は緩やかに過ぎていくのだった……」

幸子「そうじゃなくて、なんでゆるふわ女子トークが始まってるんですか!」

幸子「ボクが一番カワイイとは認めない、とか言っておいて!」

幸子「その話はどこに行ったんですか!」

凛「あっ……もちろん、忘れてないから」キリッ

未央「ちょうど今しようと思ってたところ」キリリッ

幸子「クッキーのカスを口に付けてそれを言いますか」

幸子「まあ、いいです。それで、ボクよりも卯月さんの方がカワイイと言うんですか?」

未央「うむ……さっちゃんがカワイイことは認めざるを得ない」

凛「しかし! 頂点に立つのは島村卯月、ただ一人!」


卯月「ちひろさん、お茶のおかわりいかがですか?」

ちひろ「ありがとう、いただきます」

幸子「フフン、確かに卯月さんはカワイイです。ボクにも引けをとらないでしょう」

幸子「癖がなく誰からも広く愛される、というのはボクにない長所です」

幸子「しかし! 長所と短所は表裏一体、ままならないもの!」

凛「……何が言いたいの」

幸子「癖がなく誰からも愛される、というのは裏返せば『普通』ということ!」

幸子「大勢の3番目になれても、一番にはなれない!」

幸子「例えるなら湖! 綺麗ではあるがただそれだけ、故に強く引きつける物がない!」

幸子「対してボクは沼です! 大勢に敬遠されようとも、踏み込んだ少数は沈みこみ、離れません!」

幸子「誰かの一番になるには、ボクくらい癖があった方がいいんです!」


卯月「プロデューサーさんはお仕事ですか?」

ちひろ「ええ、今日は遅くなるみたい」

卯月「私も頑張らないといけませんねっ」

未央「ふっふっふ……」

凛「甘い……かな子のダイエット計画くらい甘い……」

幸子「な、何ですって!」

未央「確かにしまむーは普通。性格も普通で普通にカワイイ」

凛「だけど、普通じゃないものが一つある……」

未央「しまむー! 得意のアレを見せてあげな!」

卯月「へっ? わ、私の得意なアレ……」

卯月「ええと……あっ。ぶいっ、です!」エヘガオダブルピース

幸子「ッ!? こ、これは……」

未央「ただのダブルピースでは、アヘ顔コラが作られる欠点があった!」

凛「しかし、このえへ顔ダブルピースは邪な考えを起こす気にもさせない! 攻守において完璧だ!」

未央「これを破ったアイドルはただ一人としていない!」

幸子「くぅ……ただの笑顔にこれだけの威力があるとは……」

凛「ただの笑顔じゃない……普通と言われパッとしない時期を卯月は経験している」

凛「同期が次々と去っていき、最後の一人になろうとも……」

凛「それでも、笑顔は忘れなかった!」

幸子「ッ!」

未央「その冬を乗り越えた笑顔だからこそ、尚更輝いてるのだ!」

凛「卯月は、誰からも愛されるだけでなく、誰もを引きつける武器を手に入れた!」

未央「それがこの笑顔!」

卯月「ふ、二人とも恥ずかしいですよ~」テレテレ

幸子「ボクには……あんな笑顔は出来ません……」

幸子「では、一番カワイイのは……卯月さん……?」

卯月「えっ、私は幸子ちゃんだと思いますよ?」

凛「えっ」

未央「えっ」

幸子「えっ」

卯月「あれ……ひょっとして、一番カワイイのは誰かを話していたんですか?」

凛「いや……」

未央「そう、だけど……」

卯月「ごめんなさいっ。私、さっきまでちひろさんと話してたから……」

幸子「……あの、どうしてボクが一番カワイイと思ったんですか?」

卯月「たくさんありますけど……自信満々な顔で褒めてもいいんですよ!って言ってるときです」

卯月「撫でて貰いたがってる子犬みたいで、カワイイです」

卯月「それと……ボクが一番カワイイって言っても、他人を馬鹿にしないところが偉いと思います」

卯月「あっ、ドヤ顔以外にも表情豊かで見ていて飽きませんし、イジられて困っているときも微笑ましいです」

卯月「あと、『ボクにはレッスンなんて必要ないですよ!』」

卯月「って言いながらレッスンを休んだことはないところも真面目で偉いと――」

幸子「も、もういいです! わかりました、わかりましたから!」

未央「……こう並べると、やっぱりさっちゃんカワイイね」

凛「だけど、一番カワイイのは卯月……」

卯月「あの、そもそもなんで一番カワイイを決めるんですか?」

未央「えっ? そりゃあ……なんでだっけ、しぶりん」

凛「えっと、幸子が『ボクが一番カワイイんですよ』って独り言言ってて……」

凛「いや、うちの卯月の方がカワイイから。って思ったらつい」

ちひろ(卯月ちゃんが飼い犬扱いされている)

卯月「えへへ……照れますね」

ちひろ(そして気がついていない)

卯月「けど、一番カワイイのは幸子ちゃんだと思います」

卯月「凛ちゃんと未央ちゃんがそう言ってくれるのは、嬉しいですけど……」

幸子「卯月さんは、一番可愛くなくてもいいんですか?」

卯月「もちろん、可愛くはなりたいです。だけど、それよりも目指すものがあるんです」

卯月「私は、一番笑顔が素敵なアイドルになりたいんです」

卯月「皆は、私には無いものをたくさん持っています」

卯月「幸子ちゃんには、自分への自信があります」

幸子「卯月さん……」

卯月「凛ちゃんには、クールだけど優しい心があります」

凛「卯月……」

卯月「未央ちゃんには、ぐいぐい人を引っ張っていく元気があります」

未央「しまむー……」

卯月「他の皆さんも、私には無い物をいっぱい持っています」

卯月「だけど、私は笑顔だけは自信があります。だから、その一番を目指そうと思うんです」

卯月「同じことで競いあうだけじゃなくて、それぞれの持ち味を生かしてこそ、アイドルは輝くんじゃないかなって」

卯月「私は、そう思うんです」ニコッ

凛「……」

未央「……」

幸子「……」

卯月「す、すいませんっ。偉そうに語っちゃって! 私が言っても説得力ないですよね……」

幸子「いえ……よくわかりました」

凛「うん……今わかった」

未央「だね……」

幸子「一番カワイイのはボクですが……」

凛「一番天使なのは卯月だね」

未央「うん、大天使ウヅキエルだね」

卯月「……あれ? み、皆さん?」

卯月「わ、私が目指すのは一番笑顔が素敵なアイドルで、天使じゃ……」

凛「卯月、スマイル一つ」

卯月「ぶ、ぶいっ」エヘガオダブルピース

未央「尊い」

幸子「ここに聖堂を建てましょう」

ちひろ「今ならお得ですよ」

卯月「ちひろさん!?」

凛「世界はこのために作られたんだ……」

卯月「スケール大きすぎですって! は、恥ずかしいからやめてくださいよぅ……」

未央「しまむー、いつもの」

卯月「えへっ」エヘガオダブルピース

ちひろ「胸像ならもっとお手頃に出来ますよ」

卯月「ちひろさんもオススメしないでください!」

幸子「卯月さん、笑顔です」

卯月「にこっ」エヘガオダブルピース

凛「やはり天使か……」

卯月「凛ちゃんってばぁ!」


おわり

しまむーはえへ顔カワイイ
しぶりんはクールカワイイ
ちゃんみおは元気カワイイ
幸子はドヤ顔カワイイ
ちひろさんはエガオガステキデス

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