陽子「しののいないクラスにまだ慣れないの?」アリス「うん」 (47)

アリス「授業中もシノのことばかり考えちゃって、集中できないんだ」

陽子「そうなの?」

アリス「ほら、さっきの古典のノート見てよ」

『忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍忍』

陽子「うわっ何これ」

アリス「一心不乱に『忍』って字を書き続けてると、ちょっと気持ちが楽になれるんだ」

陽子「写経かよ……」

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陽子「確かにちょっと問題ありだなー」

アリス「このままじゃ成績下がっちゃうよ……どうしよう」

陽子「うーん、そうだなー」

陽子「私としては、私とアリスがもっと仲良くなることが必要だと思う」

アリス「どういうこと?」

陽子「例えばさ、しのといるときの安心感を100こけしとして」

陽子「私といるときは多分70こけしくらいなわけじゃん」

アリス「13こけしくらいかな」

陽子「低! 想像以上に低い!」

アリス「ううん、シノが相対的に高すぎるだけだよ」

陽子「でもちょっとショック!」

陽子「まあとにかく、その差分の87こけしが不安な気持ちを生んでるんだよ」

アリス「確かに、心にぽっかり穴が開いたような気持ちだもんね」

アリス「こけし87体分、心にスキマがあいてるのかも」

陽子「だからもっとお互いにさ、心の距離を詰めるべきだと思うんだよね」

陽子「どうせ1年間一緒のクラスなわけだし」

アリス「心の距離を詰めるって、具体的にはどうするの?」

陽子「とりあえずはアレだな」

陽子「会話の9割がしのの話題っていう今の状況をなんとかするべきだと思う」

アリス「そんなにシノの話してたっけ?」

陽子「今日だけでも、シノの寝癖がアホ毛みたいだったとか、シノが朝ごはんで牛乳ぶちまけたとか、シノが財布を忘れて家まで戻ったのに結局カバンの中にあったとか」

アリス「そうなんだよ、『財布が無いと飲み物が買えません……』って言ってたから頑張って探したのに、見つかったら見つかったで『残金60円なのでどっちにしても買えませんでしたね!』って」

陽子「ストップストップ! またしのの話になってる!」

陽子「しのの話聞きすぎて最近毎日しのが夢に出てくるんだよ!」

アリス「いいなー!」

陽子「よくないよ……」

陽子「だからさ、今度遊びに行こうよ、2人で」

アリス「いいよ! シノも一緒に行っていい?」

陽子「2人でって言ったじゃん……」

アリス「え、じゃあわたしとシノで?」

陽子「それ私いないじゃん! 私が誘ったのに私いないじゃん!」

アリス「あ、そっか」

陽子「そうだよ……」

アリス「じゃあ2人でどこ行く? 焼肉食べ放題? スイーツ食べ放題? 中華食べ放題?」

陽子「なんで食べ放題限定?」

アリス「ヨーコといえば食べ放題かなって」

陽子「とりあえずそういう偏見を払拭できる場所にいきたい」

週末 ショッピングモール

陽子「ごめんごめん、おまたせー」

アリス「……」グッタリ

陽子「なんで遊ぶ前からダウンしてるの!?」

アリス「シノ成分が足りない……」

陽子「早いよ!」

アリス「やっぱりシノ連れてきていい?」

陽子「それじゃ意味ないじゃん……」

アリス「うう……こけし89体分の心の穴が……」

陽子「あれ、2体増えてない? もしかして私のこけし度下がった?」

アリス「それで、最初はどこ行くの?」

陽子「どこがいいかなー」

陽子「ゲーセンとかは? アリスは普段行かなさそうだし」

アリス「え……」

アリス「不良に絡まれそう……」ガタガタ

陽子「大丈夫だって! 別にいないよ不良とか!」

アリス「いそうだよ、スケバンとか」

陽子「どこで覚えたんだよそんな言葉……古いし」

陽子「まあプリクラとか撮るだけでもいいからさ」

アリス「まあそのくらいなら……」

陽子「ほら、ここだよ」

アリス「なんか騒がしくて合わないかも……」

陽子「そう? じゃあプリクラだけ撮ろうか」

アリス「うん」

陽子「あー、でも今先客で埋まってるみたいだ」

陽子「待ってる間ちょっとだけ遊んでかない?」

アリス「うーん……」

陽子「太鼓の達人とかいいんじゃない? 和太鼓だよ和太鼓」

アリス「じゃあちょっとだけ……」

ドンドンドドドン カッカッ ドドドン ドコドコドコドン

アリス「早い早い! ここ早いよ!」

陽子「連打だ連打!」

<失敗……もう少し頑張るドン

アリス「あああ! もう一回! もう一回!」

陽子「大丈夫、まだ復活のチャンスがあるから」

<ちょっと待って! 復活連打とにかく連打で叩きまくろう! よーいドン!

陽子「ほら、叩け叩け!」

アリス「わあああ」ドコドコドコ

<復活失敗だドン……

アリス「うわあああ」

陽子(アリス下手だな……)

<でも大丈夫! もう一曲遊べるドン!

アリス「もう一曲できるって!」

陽子「好きな曲選んでいいよ」

アリス「ありがとう! 何がいいかなー」

陽子(まあなんだかんだ言って楽しそうでよかった)

アリス「ふう……たくさん遊んだよー」

陽子「そろそろお腹減ってきたなー」

アリス「じゃあお昼にする?」

陽子「そうだね、アリスは何食べたい?」

アリス「わたしは何でもいいよ」

陽子「それ一番困るんだよなあ……じゃあハンバーガーでいい?」

アリス「えー、ハンバーガーか……」

陽子「面倒くさい奴か!」

アリス「やっぱりハンバーグ和風おろしソースかけが食べたいな」

陽子「あるじゃん食べたいもの! しかもすごい具体的!」

ファミレス

陽子「結構並んでるなー、どうする?」

アリス「もう口がハンバーグしか受け付けないよ……」

陽子「最初の『何でもいい』って言葉は何だったんだ……まあいいけど」

陽子「じゃあ順番待ちの名簿に名前書いてこなきゃ」

アリス「あ、じゃあわたしが書いてくるよ」

陽子「そう? じゃあお願い」


アリス「書いてきたよー」

陽子「サンキュー、何番目くらいだった?」

アリス「まだけっこうかかりそうだよ」

陽子「そっか、待ってる間何しような」

アリス「じゃあシノの話でも……」

陽子「夢に出るからやめてくれ……」

アリス「えー……」

陽子「えー、じゃない」

アリス「たとえばどんな夢見るの?」

陽子「私がしのに簀巻きにされて海に投げ捨てられる夢とか……」

アリス「いいなー」

陽子「いいの!?」

アリス「わたしもシノに簀巻きにされたい……」

陽子「何願望だよ……っていうか結局しのの話になってるし」

アリス「わたし、ちょっとお手洗い行ってくるね」

陽子「いってらー」

陽子「……」

陽子(そういえば、アリスは名簿に何て名前書いたんだろう)

<大宮さまー

陽子「……」

<大宮さまー 2名でお待ちの大宮さまー

シーン

陽子(まさか)

<大宮さまー お席にご案内しますのでどうぞー

陽子(この『大宮』ってアリスの字だよね)

陽子「すみません、大宮です……もう一人はお手洗い行ってます」

陽子(なんで私がしのの姓を名乗ってるんだ)

アリス「……」キョロキョロ

陽子(トイレから出たみたいだな)

陽子「おーい、アリスこっち!」

アリス「もう順番来たの?」

陽子「意外と早かったよ」

アリス「『大宮です』ってわたしが言いたかったのにー!」

陽子「知らんよ……」

陽子「アリスは何頼むか決まった?」

アリス「わたしは最初から和風おろしソースハンバーグ一択だよ」

陽子「そっか、じゃあ呼び出しボタン押すよー」

アリス「あ、待って! わたしやりたい!」

陽子「え、うん」

アリス「……ポチッと!」ポチ

ピーンポーン

アリス「ふぅ……」ドヤァ

陽子「何その『一仕事終えました』みたいな顔」

店員「オーダーお伺いします」

アリス「和風おろしソースハンバーグで」

店員「……申し訳ございません、当店では和風おろしソースハンバーグはやっておりませんので……」

アリス「」

陽子(お店選び間違えたか……)

アリス「じゃあ、普通のハンバーグセットで……」

店員「かしこまりました、ハンバーグセットおひとつ」

陽子「あと和食セットとー」

陽子「うーん……カレーライスときつねうどんで」

アリス「!?」

店員「和食セットとカレーライス、きつねうどんをおひとつ」

陽子「以上で」

店員「かしこまりました」

陽子「悪いなアリス、食べたいのが無くて」

アリス「それより和食セットとカレーとうどんってどういうこと? 全部食べるの?」

陽子「そりゃ食べるから注文したんじゃん」

アリス(やっぱりヨーコって熊なんじゃ……)ガタガタ

陽子「あれ? なんで震えてるの?」

アリス「もしかして冬眠の準備……?」

陽子「熊じゃねーよ! しかも今春だし!」

アリス「わたし飲み物持ってくるよ!」

陽子「マジで? ありがとー」

アリス「ヨーコは何がいい?」

陽子「じゃあ野菜ジュースで」

アリス「分かった!」


アリス「えーと、野菜ジュース野菜ジュース……」

アリス「あれ、野菜ジュースが無いよ……」

アリス「どうしようかな……そうだ!」


アリス「持ってきたよー」

陽子「ありがと! ってあれ?」

陽子「なんかこの野菜ジュース、禍々しい色してるんだけど……」

アリス「野菜ジュースが無かったから、とりあえず野菜スープをベースに7種類くらいの飲み物混ぜてヘルシーな感じにしたよ!」

陽子「混ぜればヘルシーになるってもんじゃないぞ!」

陽子「マズっ! これマズっ!」

アリス「もう一杯?」

陽子「青汁じゃねーぞ!」

店員「お待たせいたしました、ハンバーグセットと和食セットでございます」

陽子「どうもー」

アリス「いただきまーす」

アリス「うん、まあ普通のハンバーグでも美味しいよ」

陽子「あ、もしかしたらさ」

陽子「私の和食セットについてる大根おろしをハンバーグにかけたら、和風になるかも?」

陽子「なんてな、あはは」

アリス「……天才?」

陽子「いや冗談だって!」

アリス「やってみるよ! 大根おろしちょうだい!」

陽子「えー、止めた方が……」

アリス「……」モグモグ

アリス「マズイよ……」

陽子「だろうね、普通のソースもかかってるのに」

アリス「ヨーコに騙されたよ……」

陽子「騙してないよ! 冗談だっていったじゃん!」

アリス「ふぅ……お腹いっぱいだよ」

陽子「次どこ行く?」

アリス「買い物に行きたいなー」

陽子「いいね、服とか見にいく?」

アリス「あ、あそこにめがね屋さんがあるよ! 寄って行こうよ」

陽子「私たちどっちも裸眼だろ!」

アリス「でも齢をとればいつかは視力も衰えるものだし……」

陽子「何年先だよ! 今から備えなくていいから!」

アリス「じゃあカラーコンタクトとか」

陽子「アリスは青色のままでいいと思うけど……」

アリス「瞳も金色にしたらシノに喜んでもらえるかな……?」

陽子「い、いや……どうだろう」

アリス「あれ?」

陽子「どうした?」

アリス「ヨーコ、あれ何? はんこがたくさんあるよ」

陽子「ああ、あれは印鑑を売ってるんだよ」

アリス「え、そんなの売ってて大丈夫なの!? 自分の名字のはんこを悪用されたりしないの!?」

陽子「大丈夫だよ、あそこで売ってるのはあんまり大事じゃない書類に使うはんこだからね」

陽子「銀行の書類とかに使うはんこはもっとちゃんとしたのを使うんだよ」

アリス「そうなんだ……初めて知ったよ」

陽子「外国でははんこじゃなくてサインだもんね」

アリス「猪熊ってはんこはあるかなー?」

陽子「珍しいから置いてないかもなー」

アリス「カータレットってはんこも探してみよう」

陽子「それは絶対無い」

アリス「あ、大宮ってはんこがあったよ」

陽子「ホントだ」

アリス「……買おうかな」

陽子「何に使うんだ!」

アリス「将来に備えて」

陽子「どんな将来!?」

アリス「あそこは100均だね」

陽子「100均って言っても実際は108円だけどね」

アリス「あ、わたし知ってるよ!」

アリス「安いからって買い過ぎないように、煩悩の数の108に値段が決めてあるんだよね、シノが言ってたよ!」

陽子「騙されてるぞ! 普通に消費税だよ!」

陽子「っていうかアリスが日本に来たころはまだ105円だったろ!」

アリス「そうだっけ……ほとんど100均来ないから覚えてないよ」

陽子「しかもさっきからまたしのの話ばっかりになってるし!」

アリス「あ、ばれた?」

陽子「わざとかよ!」

陽子「お、服のセールやってる! 見ていこうよ!」

アリス「うん!」

陽子「この服かわいいじゃん、アリスに合いそう!」

アリス「……サイズは合わないけどね」

陽子「あ……」

アリス「……どうせ小学生の着るような服しか着られないよ」

陽子「だ、大丈夫だよ! 最近は小学生向けでもかわいいの売ってるし!」

アリス「わたしも大人っぽい服着てみたいな……」

陽子(服だけ大人っぽくしても背伸びした小学生にしか見えないだろうな……)

陽子「ま、大学生になるころには背が伸びて着られるようになってるよ」

アリス「わたし小学生のころから背が伸びてないんだけど……」

陽子「……来世ではきっと」

アリス「今世では無理なの!?」

陽子「ちょっと私トイレ行ってくるよ」

アリス「いってらっしゃい」

陽子「アリスはトイレの外で待っててね、知らない人について行っちゃダメだぞー」

アリス「……あの、幼稚園児か何かと勘違いしてない?」

陽子「い、いや……念のためだよ」

アリス「むしろヨーコの方が『お菓子あげるよ』とか言われたら釣られそうなんだけど」

陽子「釣られないよ!」

陽子「ふぅ……おまたせー」

シーン

陽子「あれ、アリス?」

陽子「おーい! アリスー!」

陽子「いない……」

陽子「ちゃんと待っててって言ったのに……どこ行っちゃったんだか」

陽子(まさか……誘拐!?)

陽子「いや、そんなまさかな……」ハハ

陽子「とりあえず携帯に連絡して……って、アリスは携帯持ってないんだった」

陽子「……」

陽子「……不安だから館内放送かけてもらおう」

サービスカウンター

陽子「すみませーん、友達が迷子になっちゃったんですけど」

陽子「携帯持ってない子なんで、放送かけてもらうことってできます?」

係員「ええ、構いませんよ」

係員「では、お連れ様のお名前を教えていただいてもよろしいですか?」

陽子「ありがとうございます!」

陽子「えーと、名前はアリス……」

陽子「アリス……」

陽子(やべぇ)

陽子(アリスのフルネームって何だっけ……ど忘れしちゃった)

陽子(何かこう……カスタネット的な名前だった気がする)



ピーンポーンパーンポーン

『当店にお越しの アリス・カスタネットさま アリス・カスタネットさま』

『お連れ様がお待ちですので、2階サービスカウンターまでお越しください』

「ヨーコ!」

陽子(お、来たか)

陽子「アリス、無事だったんだな……って」

カレン「Hi!」

陽子「お前かよ!」

カレン「私デース!」

陽子「なんでいんの?」

カレン「なんでって、普通に買い物してたデース」

カレン「それよりなんデスかカスタネットって」

陽子「いやあ、アリスのフルネーム忘れちゃってさ」

カレン「靴を見てたのに大笑いしちゃって、『靴にウケるおかしな女』みたいな目で店員さんに見られちゃったじゃないデスか、どうしてくれるんデス?」

陽子「知らねーよ!」

アリス「ヨーコ!」

陽子「お、アリス! 無事だったんだな!」

アリス「ひどいよ! わたしの名前忘れちゃうなんて!」

陽子「ごめんごめん、いっつもアリスって呼んでるからさ、つい忘れちゃって」

アリス「もう、そんなのシノでも忘れないよ?」

カレン「何気に今シノをバカにしマシタね」


陽子「アリスはずっとどこ行ってたの? 心配したんだぞ」

アリス「ごめんね、目の前でハンカチ落としちゃった人がいたから、あとを追いかけてたんだよ」

アリス「タッチの差でその人エレベーターに乗っちゃったから、そのあと追いつくのがけっこう大変で……」

アリス「で、トイレに戻ったらヨーコがいなくなってたの」

陽子「あー、そこですれ違いになったのか」

アリス「辺りを探してもいなかったから、とりあえずスーパーのお肉コーナーでずっと待ってたよ」

陽子「え、なんでお肉コーナー?」

アリス「ヨーコなら最終的にここに引き寄せられるだろうと思って」

陽子「どういう意味だおい」

カレン「ケータイ持ってないと、こういうとき不便デスよね」

陽子「しのと遊び行くときとか大丈夫なの? お互いはぐれたりしない?」

アリス「はぐれないよ、わたしは片時もシノのそばを離れないからね!」エッヘン

陽子「それは誇らしげに言うことなのか……?」

カレン「そういえば、アリスとヨーコが2人で買い物なんて珍しいデスね」

カレン「シノは一緒じゃないんデスか?」

陽子「アリスのしの依存症を和らげるためにね」アリス「ヨーコがどうしてもわたしと2人がいいって言ったからね」

カレン(どっちデス?)

アリス「カレンはどうしてここに?」

カレン「私は、たまたまここで買い物をしてただけデスよ」

穂乃花「えっ、玉!?」

アリス「!?」

カレン「あ、ホノカ!」

陽子「どっから湧いてきた!」

カレン「そういえばホノカと一緒に買い物に来てたのデシタ」

陽子「そういえばって何だよ……忘れてやるなよ」

カレン「急に放り出してスミマセン、ホノカ」

穂乃花「ううん、気にしないで」

穂乃花「カレンちゃんがいきなり笑い出したかと思うと走っていったときはびっくりしたけどね」

陽子「そりゃびっくりするだろうな」

カレン「ほら、ホノカにまで変な子だと思われたじゃないデスか」

陽子「それはカレンが悪い!」

カレン「じゃあ私たちはこれで」

穂乃花「またね!」

陽子「そろそろいい時間だな……私たちも帰ろうか」

アリス「そうだね」

陽子「あ、ちょっとスーパー寄っていい? 家の買い物頼まれてるんだった」

アリス「いいよー」

スーパー

陽子「えーと、牛乳と、オレンジと、にんじんと……」

陽子「それから豚肉の細切れと……」

アリス「え、お肉買うの?」

陽子「うん、お肉コーナーどこだっけ?」

アリス「やっぱりヨーコはお肉コーナーに引き寄せられたね!」

陽子「何その勝ち誇った顔」


陽子「あと玉子も買わないと……」

穂乃花「えっ、玉!?」

陽子「うわっ! またかよ!」

カレン「偶然デスね!」

陽子「びっくりするよ……2人も買い物?」

カレン「今日はホノカの家で玉パするのでその材料を買ってるデス」

陽子「玉パってなんだよ!」

カレン「最近料理を始めたので、ホノカに教えてもらおうと思ったデス」

カレン「で、料理の基本は玉子料理だそうなので、今日は色々作りつつ美味しくいただこうというパーティなのデス!」

陽子「なるほどね……」

カレン「料理の腕が上がったら、いつか2人にもごちそうするデスよ!」

アリス「本当? 楽しみにしてるよ!」

陽子「高校卒業には間に合わせてくれよー?」

カレン「失礼な! 自分で言うのもなんデスが、これでも私……」

カレン「天才デス!」

陽子「自分で言うな!」

カレン「すぐに2人がおったまげるような美味しい料理を作れるようになるデスよー!」

穂乃花「えっ、玉!?」

陽子「いちいち反応しなくていいわ!」

帰り

アリス「あれ、あそこにいるの美月ちゃんじゃない?」

陽子「ん? ほんとだ。 おーい美月ー!」

美月「あ、お姉ちゃんとアリスちゃん」

友だちA「わー外国人だー!」

友だちB「金髪だ金髪ー!」

陽子「アリス大人気だな」

アリス「あはは……」

美月「こちら、お姉ちゃんの友達のアリスちゃんだよ」

美月「イギリス出身の魔法使いだよ」

友だちAB「すごーい!」

陽子「ハリーポッターかよ」

友だちA「魔法使って魔法!」

陽子「いやいや、アリスは魔法なんて……」

アリス「待ってヨーコ」

陽子「え?」

アリス(魔法使いではないけれど、イギリス人であることは確か……)

アリス(ここはマジレスじゃなくてジョークで返す、イギリス魂を見せなきゃ!)

アリス「さっき買ったオレンジ、ひとつ借りてもいい?」

陽子「いいけど……何するつもり?」

アリス「まあ見ててよ」

アリス「ほら見て、ここに種も仕掛けもないオレンジがあります」

友だちAB「……」ワクワク

アリス(オレンジのうしろに親指を刺して……)

アリス「はい、オレンジが浮きましたー!」

陽子(手品かよ! しかも超しょぼい!)


アリス(……)

『ただの手品じゃん!』ワハハ

『手品じゃないよー、魔法だよー』

『どうみても手品だってー』アハハ

アリス(と、まあ即席だけど軽い笑いの一つくらい取れるに違いないよ)



友だちAB「……」

アリス「……」

友だちAB「……」

アリス「あの、笑ってもいいんだよ?」

友だちAB「……」

アリス(あれ……おかしいな……)

陽子(しかも滑ってるし!)

友だちA「すげー!」

アリス「……え?」

友だちB「マジで浮いたー!」

陽子「えっ」

友だちA「魔法使いだー!」

友だちB「マジで魔法使いだー!」

アリス「いや、ちょっと……」

アリス「……」

アリス「そ、そうだよ、これが魔法だよ!」

陽子(苦し紛れの方針転換!)

アリス「でも本当は人間の世界で勝手に魔法使ったら怒られちゃうんだ……」

アリス「だから、今のは秘密だよ!」

友だちAB「分かった!」

陽子「えーと、じゃあわたしたちはこの辺で……」

アリス「じゃあねー……」

美月「あの、アリスちゃん」

アリス「どうしたの?」

美月「なんか……無茶ぶりみたいになってごめんなさい」ヒソヒソ

アリス「(無茶ぶり?)いいよ、予定とは違ったけど結果オーライだよ」

美月「あと、日本人小学生はみんなあんなにバカってわけではないからね、そこは誤解しないでね?」ヒソヒソ

アリス「う、うん」

美月「お姉ちゃんも、今どきの小学生がみんなあんなわけじゃないからね、『最近の小学生は馬鹿だな……』とか思わないでね?」ヒソヒソ

陽子「お、おう……」


アリス「美月ちゃんはしっかりしてるね、ヨーコ」

陽子「嘘つきだけど頭はいい方だよ……ま、私の妹だからね」

アリス「兄弟って上がダメだと下がしっかりするって言うもんね」

陽子「おい」

陽子「じゃあ、この辺で解散するか」

アリス「そうだね、今日はありがとうヨーコ」

陽子「楽しめた?」

アリス「うん、楽しかったよ」

陽子「私、何こけしくらいになれたかな?」

アリス「うーん、14こけしかな」

陽子「あれだけやって1しか上がってないの!? 昔のRPGかよ!」

アリス「人と人の信頼関係は、そうすぐに築けるものじゃないからね」

陽子「厳しいなぁ……」

アリス「だから、一回遊びに行っただけじゃ、まだ足りないよ」

陽子「え……」

アリス「これからも、もっと遊びに行こうね、ヨーコ」

陽子「アリス……」

陽子「そうだな! もっともっと一緒に遊んだりしような!」

陽子「そしたら2年生が終わるころには、90こけしくらい行けるかもな!」

アリス「うん!」

アリス「まあすぐにこけし度上げたいなら……課金という手もあるけど?」

陽子「そんなソシャゲみたいな友達関係は嫌だ!」

週明け

忍「それではアリス、また休み時間に」

アリス「うん! またね!」

ガララ

忍「……」

綾「どうしたの、しの?」

忍「アリス、やっと新しいクラスになじんだみたいですね」

綾「え、どういうこと?」

忍「2年生に上がってからずっと、私と別れて教室に入るときのアリスはなんだか不安そうな顔でした」

忍「でも今日のアリスは、とっても楽しそうな表情で教室に入っていったんです」

綾「そうなの……」

忍「ちょっと寂しい気もしますが……でも、良かったです」

綾「ふふ、アリスのしの離れかしら」

忍「離れるのは嫌ですー!」ウルウル

綾「じょ、冗談よ!」

陽子「今度遊びに行くときはどこがいいかなー」

アリス「おいしい和菓子が食べたいな!」

陽子「良い店知ってるよ! 20軒くらい!」

アリス「多いね……さすがヨーコ」

陽子「じゃあ今度はスイーツ食べ歩きだな! 一日で全部回ろうぜ!」

アリス「一日で!?」

陽子「一日あったら意外と回れちゃうよ、20軒くらい」

アリス「……いつまでたってもヨーコがモテない理由がわかったよ」

陽子「大食いだからモテないってか! ちゃんと体重はキープしてるよ?」

アリス「違うよ」

アリス「ヨーコは一年中『食欲の秋』だから、いつまでも春が来ないんだよ」ドヤァ

陽子「ドヤ顔すんな!」

アリス「あはは……」



ヨーコと一緒に遊んだ日から、シノのいない教室にもちょっとは慣れてきたような気がする

今まではどこへ行くにもしのと一緒じゃなきゃ嫌だったけど……

でも、たまにはヨーコと2人きりなのもいいかなって、思えるようになったよ

まあ……たまには、だけどね



穂乃花「えっ、玉!?」

カレン「急にどうしマシタ、ホノカ?」


END

きんいろモザイクssよもっと増えろ

>アリス「ヨーコといえば食べ放題かなって」
>陽子「とりあえずそういう偏見を払拭できる場所にいきたい」

偏見じゃなかった

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