ｶﾞﾀﾝｺﾞﾄﾝ

真（……）

真（触られてる……）

真（痴漢か……まいったなぁ……）

真（まさかこの僕に痴漢か……）

真（とにかく顔を見られたらまずいよなぁ、色々と……）

真（それに、せっかく痴漢しているのに相手が僕じゃ……）

真（仕方ない、とにかく微動だにせず耐えるしかない）

真「……」

ｶﾞﾀﾝｺﾞﾄﾝ

ｶﾞﾀﾝｺﾞﾄﾝ

真「……」

真（何やっているんだ、僕は）

真（むこうは犯罪者、なぜ僕が気を使う必要がある）

真（いくら普段女の子扱いされないからって卑屈すぎるな）

真（痴漢に遭遇するなんて初めてだから仕方ないか）

真（こんなとき、他の765プロのアイドルだったらどんな反応をするだろう？）

真（……）

真（……）

真（考えるだけ不毛だ……）

ｶﾞﾀﾝｺﾞﾄﾝ

真（よし、何気なく振り返ろう）

真（そうすればきっと手を離すだろう）

真（……）

真（いや、ちょっと待てよ……）

真（もしそうして、奴が僕の尻から手を離したら……）

真（傷つくな……）

真（ああ、どうしてこんなことになってしまったんだろう）

真（互いに嫌な思いするだけなのに……）

真「……」

真（いや、だからといってこのまま耐えるのも嫌だし）

真（よし、振り返ろう）ﾊﾞｯ

冬馬「……！？」

ｶﾞﾀﾝｺﾞﾄﾝ

真「……」

冬馬「……」

真「……」

冬馬「……」

真（あまとう……）

真（こちらに気を使って、こいつ、手を離さない……）

冬馬「……」

真（なんだその憐れんだ顔は）

真（殴られたいのか、こいつは）

真（痴漢行為にそんな気遣いみせてどうする）

真（殴られたいのか、こいつは）

真「……離してください」

冬馬「！？」

真（いや、だから君のしてることは犯罪なんだよ）

真「離してください」

冬馬「……」

真「ぼく、次で降りるから」

冬馬「……」

ﾌﾟｼｭｰ ｶﾞﾀﾝ

真「……」ｽﾀｽﾀ

冬馬「……」ｽﾀｽﾀ

真「いや、いい加減離してよ！」ﾄﾞｶﾞｯ

冬馬「ぐはっ！」ﾊﾞﾀﾝ

真「まったく嫌になっちゃうよ」ｻｽﾘ

真「ん？」

真「制服のスカートに穴が」

真「……あっ」

真「あああぁぁぁ！！」

冬馬「」

真「ぼくはなんてことを……」

真「……ん？」

真「いやいや、普通に言葉で伝えればよかったんじゃ？」

冬馬「」