みなみけ  ~さよなら~ (113)


この物語は南家3姉妹の非凡だった日常から6年後の世界をたんたんと描くものです。
過度な期待はしないでください。



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千秋 「・・・春だな」


千秋 「・・・・おいカナ、私はもう学校に行く。起きないでいいのか?」

夏奈 「んー・・・・」

千秋 「おい、バカ野郎」

夏奈 「チアキ・・・お前は知らないかもしれないが大学というものはいつも朝9時に始まるという訳ではないんだ」

千秋 「そんな事を言ってこの前は1限から授業あったとか言って走って行っただろう」

夏奈 「今日は本当に11時からなんだよぉ・・だからその布団にかけた手を引いてくれよぉ」

千秋 「・・まあいいけど、ちゃんと時間になったら起きろよ」

夏奈 「うん・・・あ、朝ご飯は用意しておいてほしい」

千秋 「自分でやれバカ野郎」


千秋 「全く・・・春はバカがさらにバカになる・・・私も学校に行こう」


高校生になって二回目の桜を見ながら私は思うのだ。

私は、あの時のハルカ姉さまと同じようにちゃんとやれているんだろうか。

それとも小学生のころから何も変わっていないんだろうか。

春は別れの季節という。

これは私が大切な人に“さよなら”を言えるようになるまでの短い物語だ。


吉野 「チアキ、おはよう」

千秋 「ああ、吉野か。おはよう」

吉野 「どうしたの?なんだか浮かない顔だよ?」

千秋 「いや・・・カナのバカ野郎がまた家でゴロゴロしていてな」

吉野 「春だからねー」

千秋 「この前みたいに藤岡に迷惑かけるのはやめてほしい」

吉野 「授業来ないから休み時間に迎えに来たんだったよね」

千秋 「まったく・・バカな姉を持つと苦労する」


吉野 「でも藤岡さんはそんなに迷惑だって思って居ないと思うよ。心配はしてると思うけど」

千秋 「・・そうか?」

吉野 「うん」

千秋 「・・・・そういうものか」

吉野 「・・・」

千秋 「・・・そうだ、そういえば今年はどうする?」

吉野 「何が?」

千秋 「花見だ。カナのバカ野郎が今週末行きたいって騒いでたからな」

吉野 「うーん・・今週末は彼と出かける約束してるからパスかなぁ」

千秋 「・・・そうか」


内田 「だからぁ!そうじゃないんだって!!」

マコト「でも今更どうするんだよ」

内田 「そこはちゃんと誠意を見せてさー」


千秋 「・・・」

千秋 (あのうるさいバカップルは誘うのよそう。これ以上バカが増えても困るしな)


内田 「あ・・ちょっとチアキ!」

千秋 「・・・ッチ」

内田 「今明らかに舌打ちしたよね?!ヒドイ!!」

千秋 「いや・・・お前たちを見ていると春だなぁって思ってな」

マコト「待て待て!それは俺たちがバカって事じゃないよな?!」

千秋 「・・・・」

マコト「やっぱりそう思ってた!!?」


内田 「あマコト君、朝練じゃないの?」

マコト「ホントだ、じゃあ俺先に行くから!」

・・・

千秋 「・・・なあ内田」

内田 「なに?」

千秋 「・・マコトはなんであんなにバカなんだ?」

内田 「え?・・・でも最近はそんなに成績も悪くないよ?」

千秋 「そうなのか?バカのことは感知していなかった」

内田 「新学期なのにチアキもヒドイね。マコト君部活でも結構活躍してるんだよ」

千秋 「バカは走るのが早いからな・・・やっぱり内田はマコトの肩を持つんだな」

内田 「え?!別にそういう訳じゃないんだけど・・・」

千秋 「・・・マコトのことよりも順調に下降気味の内田の成績を何とかした方がいいと思うけどな」

内田 「うわぁああ・・言わないでぇぇぇ」


***

冬馬 「おーいチアキ、一緒に飯食おうぜ」

千秋 「あ、うん」

冬馬 「どうした?なんかぼーっとしてるな?春だからか?」

千秋 「私をあんな馬鹿どもと一緒にするな」

冬馬 「??」


冬馬 「そういやさ、チアキはもう決めた?」

千秋 「何が?」

冬馬 「文理選択」

千秋 「・・・ああ・・いや決めてない」

冬馬 「ふーん・・・オレ、理系にしようと思うんだ」

千秋 「・・・」

冬馬 「あ、今お前“こいつが数学とか出来るのか”って顔で見ただろ」

千秋 「驚いたな・・トウマはいつから人の心が読めるようになったんだ」

冬馬 「失礼な奴だなー・・文系は覚えることいっぱいでオレには無理そうだなって思ったんだよ」

千秋 「なんだその消去法は。理系だって覚えることは山ほどあるぞ・・たぶん」

冬馬 「まぁでも化学とかに興味あるのは事実だし。でもお前はどっちもできるからそんなに悩まなくていいよなー」

千秋 「・・・」


週末。

夏奈 「なんだなんだ!なんだって今日はこんなに人が少ないんだ!!」

藤岡 「まぁまぁカナ。みんな忙しいんだよ。俺達だって高校生の頃はそうだったでしょ?」

夏奈 「しかしせっかくのお花見なのに藤岡とチアキの三人だけなんて!」

千秋 「みんなお前と違って忙しいんだバカヤロー」

夏奈 「じゃあつまりお前の友達はみんな青春を謳歌してるって事か?!」

千秋 「お前のわけのわからない妄想を押し付けるんじゃない」

夏奈 「チアキは謳歌する青春が無いって事か」

千秋 「なんだと」

タケル「僕が居ることも、忘れないでね」


夏奈 「おい藤岡」

藤岡 「ん?どうしたの?」

夏奈 「この前は起こしに来てくれてありがとう」

藤岡 「え・・あ、うん//」

夏奈 「うーん・・・」
ばたん

タケル「カナちゃん?」

千秋 「タケルの飲み物を飲んでしまったのか」

藤岡 「か・・カナ・・大丈夫?」

カナ 「うん・・・私はいつでも大丈夫だ・・・今だって私の周りで星が輝いている」

タケル「ちょっと水買ってくるね。カナちゃんの様子見ててあげてくれるかな」

藤岡 「あ、ハイ」


**


千秋 「・・・藤岡さん」

藤岡 「何、チアキちゃん」

千秋 「・・いつも姉がお世話になってます」

藤岡 「そんな事無いよ・・どちらかと言えば俺の方がお世話になってるかな」

千秋 「・・・」

藤岡 「?」

千秋 「・・・藤岡・・さんは、カナのどこが良かったんですか?」

藤岡 「え・・?//」

藤岡 「・・・えっと・・いつも素直で元気な所かな//」

千秋 「・・・」


藤岡 「・・何かあったの?」

千秋 「いえ・・・ただ・・最近友達が急に大人になった気がして・・・私は昔とたいして変わってないのに」

藤岡 「チアキちゃんは、チアキちゃんの良さがあるから、無理して変わろうとしなくても良いんじゃないかな?」

千秋 「・・・」

藤岡 「・・・俺はチアキちゃんとは年も違うし、男だからチアキちゃんの相談をに全部答えてあげるの難しいと思うからさ、同年代の友達とかに相談してみたらどう?・・・なにか悩みがあるなら」

チアキ「・・・そうですね」


タケル「おーい水買ってきたよ。カナちゃん飲める?」

夏奈 「うーん・・」

藤岡 「少し休んだら、今日はもう帰った方がいいかもしれないですね」

タケル「うん。そうだね」

千秋 「このバカ野郎は一人で騒いで一人で潰れやがって」


千秋 (・・・同年代の友達か・・相談して一番まともな答えが返ってきそうなのは吉野だが・・・恋人もいるし部活もあるから忙しいだろうな)

千秋 (・・・トウマは・・・アイツはどちらかというとバカサイドだからな・・)

千秋 (・・・内田は論外だ)


千秋 (ん・・・そういえば・・・最近会ってないな)


内田 「っつくしゅん!!」

内田 「あれー?花粉症かなー?」



千秋 「おい、カナ」

夏奈 「ん、どうした?」

千秋 「久々にマコちゃんに会いたいんだが、連絡先教えてくれないか」

夏奈 「・・・えっと・・マコちゃんは転校したって言ったでしょ?」

千秋 「ああ、聞いた。だが久々に会いたいんだ。連絡先を教えてくれればこちらから連絡するから」

夏奈 「ん・・んー・・いきなり迷惑なんじゃないか?久しぶりだし、チアキの事忘れてるかもよ?」

千秋 「いや・・私とマコちゃんの友情は少々の時間では引き裂けない。何度も一緒に遊んだり一緒に服を買いに行ったりしたからな」

夏奈 (そういえばマコトの奴チアキと一緒に下着とか買いに行ってたもんなぁ・・)

とりあえずここまでで中断します

こんにちは
少しだけ更新します


夏奈 「はい、本日皆さんにお集まりいただいたのは他でもないウチのチアキのことです」

内田 「皆さんって私とカナちゃんしかいないよ」

夏奈 「いいんだよ、そこは雰囲気だから!」

内田 「あ、私ドリンクバー行ってくるねカナちゃんは?」

夏奈 「コーラ」

内田 「うん」


内田 「で、チアキがどうしたの?」

夏奈 「恐れていたことが起きてしまった」

内田 「え?」

夏奈 「この前チアキにマコちゃんのことをしつこく聞かれた」

内田 「え?!・・・転校したってことにして落ち着いたんじゃなかったっけ?」

夏奈 「そのはずだったんだけど何か思うところあったらしく連絡先を教えろ、自分から会いに行くと言って聞かないんだ」

内田 「えー・・どうやって誤魔化したの?」

夏奈 「連絡先がスマホに入ってないから、見つかったら教えると言ってとりあえずその場をしのいだ」

内田 「うーん・・」


内田 「マズイねー・・その流れは。納得するまで諦めないよチアキは」

夏奈 「分かってるよ。だからこうやって共犯者を呼んでどうするか話してるんじゃないか!」

内田 「え?!私って共犯者なの?!」

夏奈 「当り前だよ!マコちゃん誕生に立ち会っただろ?それに服を貸したり」

内田 「えー・・・でも後半はマコト君自分で服買いに言ってたよ?」

夏奈 「ああ・・チアキと一緒にブラを選んだり、お互いの服を交換したり・・」

内田 「目に余るものがあったよね」

夏奈 「転校ってことであの話は終わったはずなのに・・・ばれたらどうなると思う?」

内田 「そうだね・・・とりあえずマコト君は二度とチアキと喋ってもらえないかな」

夏奈 「マコトのことじゃなく、私たちだ!学校で会うだけのお前はいいが、私は日々の食事がかかっているんだぞ!!」

内田 「え・・ハルカちゃんが・・その・・居なくなって、家事は分担じゃなかったの?」

夏奈 「8:2くらいで分担してるぞ!」

内田 「・・・」


千秋 「なあトウマ」

冬馬 「ん?どうした?」

千秋 「お前、確か兄が居たよな?」

冬馬 「おお、3人もいるぞ。どれか欲しいか?」

千秋 「要らないし、人にあげるもんじゃないだろ、それ」

冬馬 「そうか?で、兄貴たちがどうかしたのか?」

千秋 「一番下の兄って確か中学の時、カナの後輩だったよな?」

冬馬 「ああ、確かそうだったと思うけど」

千秋 「ちょっと聞きたいことがあるから今度会わせてもらえないか?」

冬馬 「?別にいいけど?じゃあ今日大学から帰ってきたら会うか?」


**

アキラ「あ、こんにちは。確かカナさんの妹の」

千秋 「チアキです」

アキラ「えっと・・トウマから聞いたんだけどオレに聞きたいことあるって」

千秋 「はい・・えっと、結構前のことだと思うので、覚えてればでいいんですが、アキラさんが中学の時同級生だったマコちゃんって子の連絡先知りませんか?」

アキラ「ん?・・ああ!マコちゃんかぁ懐かしいな!」


アキラ「南さん家にお邪魔した時、何度か会ったんだけど、学校では不思議と一度も会わなかったんだよなー」

千秋 「・・そうですか」

アキラ「可愛かったから学校でも話したいと思って探したんだけどさー」

千秋 「・・・」


***


千秋 「おいカナ」

夏奈 「ん?どうした?」

千秋 「今日、トウマの兄のアキラに会った」

夏奈 「え?」

千秋 「学年が同じだったはずだと思ってな・・マコちゃんについて聞いたんだが、アキラも学校では会ったことが無かったそうだ」

夏奈 「そ・・そうなんだー」

千秋 「カナ、連絡先を知らないのはしょうがないが、せめてマコちゃんが引っ越す前にどこに住んでたかとか知らないか?」

夏奈 「え・・えーと・・・私もその辺のことはよく知らないんだよー・・ハハハ」

千秋 「そうか・・・」


次の日の放課後。

冬馬 「チアキー、一緒に帰ろうぜ」

千秋 「ああ」

冬馬 「昨日、アキラと何話したんだ?」

千秋 「・・・(そういえばトウマもマコちゃんと仲良かったな・・)」

冬馬 「チアキ?」

千秋 「いや・・マコちゃんのことを聞いたんだ」

冬馬 「マコちゃん・・?ああ!懐かしいな」

千秋 「確かトウマも仲良かったよな?」

冬馬 「ハハ・・まあそうだな。俺も藤岡に男と思われてなかったから変に意気投合してな」

千秋 「?」

冬馬 「にしてもお前もよく許したよなー確かカナはお前に引っ越したって言ったんだろ?」

千秋 「・・ちょっと待て。どういう事だ?」

冬馬 「ん?」


ヴー・・・ヴー・・
夏奈 「ん?・・・トウマから電話か珍しいな」

ピッ
夏奈 「もしもし?カナ様はまだ大学だ」

冬馬 『おいカナ!!』

夏奈 「ん?どうした、そんな大声で」

冬馬 『マコちゃんの事だ!』

夏奈 「え・・・?」

トウマ『お前確か前に“マコちゃんの件は解決した”って言ったよな?!』

夏奈 「え・・うん・・えーっと・・」

トウマ『チアキにマコちゃんの正体ばらしてなかったのか?!』

夏奈 「・・・えっと・・・それは」

トウマ『オレ、今日チアキに聞かれたから言っちゃったぞ!!』

夏奈 「・・・」

トウマ『とにかく、俺、責任ないからな!!』

ツー・・・ツー・・


藤岡 「どうしたの、カナ?」

夏奈 「・・・藤岡」

藤岡 「?」

夏奈 「今日、泊めてくれ」

藤岡 「??!!///」


翌日。

内田 「あ、チアキおは・・・」

千秋 「・・・」

内田 (チアキが・・この世のものとは思えないくらい怖い顔をしている)

吉野 「チアキ、おはよう」

千秋 「・・・おはよう」

吉野 「どうしたの、すごい顔してるよ?お腹痛いの?」

千秋 「いや・・どこも痛くはない・・しいて言えば殺したい奴が何人かいるだけのことだ」

吉野 「?よく分からないけどケンかはダメだよ?」

千秋 「・・・なあ吉野」

吉野 「ん?」

千秋 「もし私が・・私でなかったら吉野はどうする?」

吉野 「え?」

千秋 「私が実は別人で、自分の素性を隠して吉野と付き合っていたら?」

吉野 「え?・・えっと・・・それは最初から?」

千秋 「・・ああ」

吉野 「だったら特に気にしないかなー」


千秋 「・・え?」

吉野 「だって、最初からだったらチアキがチアキじゃなくても私には関係ないでしょ?」

千秋 「・・・」

吉野 「友達であることには変わりないよ・・それに何か隠してるんならきっとそうしなきゃいけない事情があるってことだと思うし」

千秋 「・・・そうか」

吉野 「で、チアキはチアキじゃないの?」

千秋 「いや、私はチアキだ」

吉野 「うん、私は吉野だよ」

千秋 「知ってる」

吉野 「じゃあ私自分の教室行くね」

千秋 「あ、ああ」


マコト「あ、チアキ、お早う!」

千秋 「・・・」

マコト「?・・・チアキ?」

千秋 「私の視界から早急に消えろ」

マコト「ええ?!」


放課後

マコト「なあ内田・・今日オレ、チアキに無視されてるんだけど・・何かしたっけ?」

内田 「あ・・・えっと・・さっきカナちゃんからメールがあったんだけど・・」

マコト「?」

内田 「その・・・チアキにバレたみたい」

マコト「何が??」

内田 「・・マコちゃんの正体」

マコト「・・・・うそ?」

***


マコト「・・・内田・・オレ、旅に出ようと思うんだ」

内田 「何の解決にもならないよ、それ!」

マコト「じゃあどうすればいいんだ・・オレ・・もうだめだ・・!!」

内田 「だからもっと早く打ち明けて謝ったほうがいいって言ったのに!」

マコト「打ち明けたらその時点で終わりだろ!!」


プルルルルルル!!


マコト「・・・」

内田 「・・電話・・じゃない?」

マコト「・・・チアキからだ」

内田 「え?!」

マコト「ハハハ・・なんだろ?オレ、どんな方法で殺されるのかな?」

内田 「気持ちは分かるけど、電話出た方がいいよ!!」

マコト「内田、今まで色々ありがとな。オレが死んでも元気でな」

内田 「いいから、早くでなよ!!」


ピッ
マコト「・・もしもし」


千秋 『ああ、久しぶり。マコちゃんか?私だ。チアキだ』

マコト「え・・えっと」

千秋 『マコちゃん風邪ひいてるのか?声が変だぞ』

マコト「・・・・ゴメンチアキ・・オレ・・っ!!」

千秋 『変なマコちゃんだな?突然電話したから驚いてるのか?』

マコト「うう・・・」

千秋 『あ、そうだ電話したのはな、久しぶりに会いたいと思って』

マコト「・・・え?」


千秋 『久しぶりに会って、マコちゃんと話したいことがあるんだ』

マコト「え・・でも・・オレ・・」

千秋 『なんだ?私には会いたくないか?』

マコト「そ・・そういう訳じゃ!」

千秋 『じゃあ今週の土曜、駅前で待ち合わせしよう』

マコト「あ・・えっと」

千秋 『いいか?』

マコト「は・・はい」

千秋 『じゃあ時間は朝10時な』

マコト「チアキ・・お・・オレ!」

千秋 『ああそうだ、マコちゃんて結構おしゃれだったな』

マコト「へ?」

千秋 『マコちゃんのファッションとても参考になるから、お気に入りのファッションで来てくれないか?』

マコト「はい?」

千秋 『そうだな・・スカートがいいな』

マコト「ええ?!」

千秋 『じゃあ遅れないでくれよ』
ガチャ



ツー・・・ツー・・・
マコト「・・・・」

内田 「えっと・・・チアキ何だって?」

マコト「・・・“久しぶりに会いたいって”」

内田 「・・え?」

マコト「土曜日、駅で待ち合わせ・・オシャレして来いって・・・スカートで」

内田 「・・・そういうことか」

マコト「・・どういう事?」

内田 「これは・・敢えてマコト君をマコちゃんとして扱って、思う存分いたぶろうって事だよ」

マコト「・・・」

内田 「スカート・・・履くの?」

マコト「さすがに・・今の体格でスカート履いたら変態だよ」

内田 「・・かといって履かないとチアキの怒りを逆なですると思うよ」

マコト「ふ・・・そうか・・まず社会的に殺すって事か・・分かったよ・・」

内田 「・・・マコト君?」

マコト「内田・・・オレ・・スカート履くよ。そして盛大に死んでくる。それがオレに出来る精一杯の謝罪だよ」

内田 「マコト君・・なんかカッコイイこと言ってるようだけど、たぶん変態だよ?!」

ここまでにします

こんばんは

更新します


土曜日。


モブA(なあ・・あの人)
モブB(ああ・・女装だよな・・顔は可愛い感じだけど・・体格がな・・)
モブA(いわゆるアレか?ゲイか?)
モブB(いや知らんし・・あんまジロジロ見るなよ)


マコ (・・・ああ・・オレは今日社会的に死ぬんだな・・ハハ・・)

千秋 「あ、マコちゃん。久しぶり」

マコ 「や・・やあチアキ・・久しぶり」

千秋 「うん、やっぱりマコちゃんの服装はオシャレだな」

マコ 「ハハ・・(内田の意見とファッション誌を取り入れました)」

千秋 「じゃあ早速行こうか」

マコ 「え?えっと・・どこ行くの?」

千秋 「まずは服屋だ」

***


マコ 「えっと・・千秋が着る服を選ぶのか?」

千秋 「ああ、マコちゃんのセンスで選んでくれないか?」

マコ 「え・・えーっとこれなんてどう?」


千秋 「レースアップか・・ちょっとヒラヒラしすぎじゃないか?」

マコ 「い・・いやチアキは可愛い系かキレイ系かで言えば可愛い系だからこういうの似合うと思うよ」

千秋 「そ・・そうか?でもあまり子供っぽいのはな・・」

マコ 「じゃあこれはミニ丈だからあんまし派手系じゃない色のギンガムチェックのボトムスを合わせたら?」

千秋 「なるほど」


店員 (あの人・・体格はどう見ても男よね・・でも明らかに一緒に居るコより女子力高いわ・・)


***


千秋 「服はこんなところだな。マコちゃんはいいのか?」

マコ 「え?・・あ、オレはいいよ」

千秋 「そうか?じゃあ次は下着かな」

マコ 「えっ?!」

千秋 「昔もよく一緒に下着選んだりしたじゃないか」ニッコリ

マコ 「ソ・・ソウデシタネ・・・(目が笑ってない)」


千秋 「マコちゃんはどれがいいと思う?」

マコ 「いやっ・・下着はっ・・自分に合ったものがいいんじゃないかな?!」

千秋 「なあマコちゃん、昔話したのを覚えているか?二人で胸が大きく見えるブラを探したよな」

マコ 「は・・はい」

千秋 「マコちゃんのアドバイスは的確だったなぁ・・今でも私はあの時のマコちゃんのアドバイスに従ってブラをつけるときは下を向いてつけているぞ」

マコ 「あ・・うん。お役に立てて・・光栄です」

千秋 「で、そんなマコちゃんに相談したいんだが、実は最近ブラの締め付けが痛いって感じることがあってな」

マコ 「えっと・・・それこそ店員さんに聞いた方がいいんじゃないかな?」

千秋 「店員にそういう事言うの恥ずかしいじゃないか」

マコ 「お・・オレに言うのはいいのか?」

千秋 「ハハハ・・今更マコちゃんに遠慮はしないさ。色々相談したからなぁ・・男子には決して言えない事とかも相談したからなぁ」ニヤッ

マコ (ひいいいいいいいいい!殺される!!確実に殺される!!)


千秋 「なあ、マコちゃんはどんなのがいいと思う?」ニヤッ

マコ (いや・・・オレは決めたんだ・・今日はオレはマコちゃんだ・・・そうすることしかオレがチアキに出来ることは無いんだ・・たとえ今後二度とチアキと仲直りできなくても・・)

マコ 「チアキ・・締め付けがきついならアンダーフリーのを選んだらどうだ?それでストラップが細いものはやめた方がいいと思う」

千秋 「・・・そうだな。だけどそれだと胸が小さく見えるんじゃないのか?」

マコ 「じゃあ上に着るシャツをカシュクールとかにしたらどうだ?今日みたいなただのTシャツとかよりはいいと思うぞ。それと服の色も明るめにした方がいい。白は膨張色だから」

千秋 「・・・」

マコ 「それと・・たぶんそんなに気にしなくてもいいと思う」

千秋 「?」

マコ 「別に・・今のチアキはそこまで気にするほど胸小さくないと思うから」

千秋 「・・・そうか」


千秋 「・・・マコちゃん、今日はありがとう」

マコ 「あ・・ああ。・・えっと・・何か話したいことあったって言ってなかったっけ?」

千秋 「そうだったな・・・いや、また今度にする。来週も会えるか?」

マコ 「・・・ああ、いいぜ」

千秋 「・・・」



ヴー  ヴー

ピッ

藤岡 『あ、もしもしチアキちゃん?!』

千秋 「・・・藤岡・・さん」

藤岡 『チアキちゃん、カナとケンカした?』

千秋 「絶賛ケンカ中だ」


藤岡 『・・・えっと、カナ教えてくれないんだけど、また何かカナがイタズラしたのかな?』

千秋 「・・・ああ」

藤岡 『なんていうか・・カナまたうちに居るんだけど、しばらくチアキちゃんと会いたくないって言ってるから』

千秋 「スイマセン、ウチのバカ野郎が」

藤岡 『まあ、いつものことだからこちらは大丈夫だけど、今回ちょっと長いなって思って』

千秋 「・・・とりあえず帰ってきたら家事1年で許してやろうかと思ってるので・・あ、カナには言わないでください」

藤岡 『ははは・・カナが何やったか知らないけど、チアキちゃんは大人だね』

千秋 「・・・そうですか?」

藤岡 『うん、チアキちゃんは昔から怒ってもちゃんと相手のこと考えてるよね』

千秋 「・・・そんなこと・・ないです」

藤岡 『?』

千秋 「・・例えば・・藤岡さんは、ずっと自分のこと騙してる人がいたらその人を許せますか?」


藤岡 『え?(カナのことかな?)』

千秋 「・・・私はそういう奴のことを許す方法が分かりません」

藤岡 『うーん・・・よく分からないけど、騙してる人にも理由があると思うから、ちゃんとその人に話を聞くことも必要なんじゃない?』

千秋 「・・・」

藤岡 『・・・とりあえず、カナはもうしばらくウチに居るつもりだと思うけど、チアキちゃんが整理ついたら教えてくれる?』

千秋 「あ・・・ハイ、スイマセン」


ピッ

千秋 「・・・」


今日はここまでにします

間空きましたが続きです


千秋 「・・・」

冬馬 「ち・・チアキ」

千秋 「・・トウマか」

冬馬 「えっと・・お早う」

千秋 「おはよう」

冬馬 「えっと・・土曜はどうだった?」

千秋 「・・・トウマ、例えばの話だ。女子高生である私よりもはるかに女子力の高い同世代男子ってどう思う?」

冬馬 「いや・・・なんというか・・大体わかった」

千秋 「・・・しかし、私が会ったのは2つ年上の女子だ」

冬馬 「え?」

千秋 「土曜日は友達のマコちゃんと一緒に買い物した。それだけだ」

冬馬 「?」


内田 「と・・トウマ」

冬馬 「ん?」

内田 「チアキ・・その・・なんか言ってた?」

冬馬 「なんかって?」

内田 「えっと・・マコちゃんのことで」

冬馬 「いや・・・なんかマコト、女子力高かったらしい」

内田 「・・・」

冬馬 「マコトは・・どこで道を間違ったんだろうな」

内田 「え・・たぶんカナちゃんが面白半分に女装させたところじゃない?」

冬馬 「そういえば、そもそもなんでマコトは女装してたんだ?」

内田 「えっとね・・それはマコト君がハルカちゃんに会いたかったからで・・」

冬馬 「え?ハルカが大学行って一人暮らしした後もしばらく来てたよな?」

内田 「え・・うんまぁ・・」


内田 「でもチアキが私のこと怒ってなくてよかったーっ!」

冬馬 「チアキの怒りの矛先はとりあえずカナとマコトにむいてるみたいだな」

内田 「・・・マコト君完全無視されてるよね」

冬馬 「その割にはマコちゃんとは楽しく買い物したみたいだぞ」

内田 「そこがチアキの恐ろしいところだよ」

冬馬 「え?」

千秋 「マコちゃんの時は仲良くして、学校でのマコト君の反応を楽しむということだよ」

冬馬 「チアキ・・恐ろしい奴」



・・・それからしばらくチアキとマコちゃんの関係は続いた。


内田 「マコト君・・その・・最近なんかキレイになったね」

マコト「そうか?」

内田 「うん・・なんていうか手足少し細くなった気がするし、髪の長さも少し長くなったから・・なんていうか中性的だね」

マコト「・・・チアキはさ・・オレのこと嫌いかもしれないけど、“マコちゃん”の時は普通に接してくれるから・・」

内田 「マコト君・・・いや・・マコちゃん」

マコト「許してくれることは無いかもしれないけど、チアキが望むならオレは全力でマコちゃんになりきるよ」

内田 「・・・男の子に狙われないように気を付けてね」

マコト「今週末もチアキと遊びに行く約束してるんだ」

内田 「そうなんだ」

マコト「チアキが見つけたデザートバイキングのお店に行くんだ」

内田 「え?私も行きたい!」

マコト「そうか?じゃあ今度行こうか?」

内田 「うん!トウマも誘おうよ。甘いモノ好きだし」

マコト「そうだなー。ちょっとした女子会だな」

内田 (マコト君・・自分が男子なの忘れかけてる・・)



千秋 「・・・」



男1 「ねえ、君今日ヒマなら俺たちと遊ばない?」

マコ 「え・・ゴメンナサイ。オレ友達と待ち合わせしてるんで」

男2 「えー?いいじゃん。その友達も一緒にさあ・・ね?」

がしっ
マコ 「うわっつ!(腕掴まれた!)」


「おい、お前たち」

男1 「ん?」

保坂 「嫌がる女性を無理やり誘うのはどうかと思うぞ」

男2 「は?アンタだ・・れ・・」

保坂 「・・・・・・・・」

保坂 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

男1 「お・・おい行こうぜ」
男2 「あ・・ああ」


・・

マコ 「スイマセン。助かりました」

保坂 「いや、気にすることは無い・・じゃあこれで」

マコ 「あの・・お名前は?」

保坂 「名乗るほどの者ではない・・・・そうだな・・よかったら駅前の“La Hosaka”というレストランに一度来てくれ。私の店だ」

マコ 「・・はい!」




千秋 「お待たせ、マコちゃん」

マコ 「あ、チアキおはよう」

千秋 「えっと・・大丈夫だったか?」

マコ 「あ・・・見てたんだ?」

千秋 「ああ・・その出ていかないですまない」

マコ 「ただのナンパだったみたいだし大丈夫だよ」

千秋 「・・・あとから来た大男は?」

マコ 「助けてくれた人。駅前のレストランやってるから一度食べにおいでって」

千秋 「そ・・そうか」

マコ 「じゃあ行こうか」

千秋 「うん」


マコ 「それにしても、まだ10時だし店開いてないんじゃないのか?」

千秋 「ああ、その通りだ」

マコ 「?」

千秋 「今日は待ちに待った甘いモノ解禁日だ。そのためにはコンディションを整えておかなければならないだろう?」

マコ 「そうか!お腹を空かせて挑もうってわけだな!」

千秋 「うん。さすがマコちゃんだ・・察しがいいな」

マコ 「オレも朝食は抜いてきたけど。で、どこ行くんだ?」

千秋 「同じ建物の中に屋内遊園地があるからそこに行かないか?」

マコ 「いいね!」

ここまでにします

すみません・・一週間開いてしまいました
続きです


千秋 「私はだいぶ空腹だが・・マコちゃんはどうだ?」

マコ 「ペコペコだよ!」

千秋 「よし、じゃあそろそろ行くか」

・・・

マコ 「うわ・・・」

千秋 「すごい混んでるな」

マコ 「どうする?並ぶ?」

千秋 「当り前だ」

マコ 「そうだな」

店員 「こちらにお名前をお書きくださーい」


千秋 「ただ待ってるのもつまらないな」

マコ 「うん」

千秋 「なあマコちゃん、そういえば私はマコちゃんに話があるんだった」

マコ 「・・え?」

千秋 「マコちゃんに話したいことがあって連絡を取ったんだったが、またこうして一緒に遊ぶようになってなんだか楽しくてすっかり忘れていた」

マコ 「えっと・・何?」

千秋 「マコちゃんは私が小学生だった頃のことを覚えているか?」

マコ 「・・覚えてるけど」

千秋 「そうか。私も覚えているぞ。マコちゃんが初めてウチに来た時のことを」

マコ (・・・そうか・・こんなタイミングでオレの心を殺すつもりか・・いいぜチアキ・・オレも漢だ・・・逃げないぜ・・!)

千秋 「マコちゃん。私はあの頃と比べて大人になったと思うか?」

マコ 「・・・・え?」


千秋 「最近思うんだ。私の周りの友達はみんな大人になったって」

マコ 「・・・そうかな?」

千秋 「マコちゃんは最近会ってないから知らないかもしれないが、吉野には彼氏ができたようだ」

マコ (・・・知ってるけど)

千秋 「内田のバカも別のバカと付き合っているようだし」

マコ 「ん・・?それ違・・」

千秋 「ん?」

マコ 「いや・・何でもいない」

千秋 「・・・」

千秋 「それとこの前、トウマに進路の話を聞かれた・・・アイツは理系に行くらしい」

マコ 「・・・そうなんだ」

千秋 「・・・・昔な、まだ・・ハルカ姉さまが居た時、指輪を拾ったことがあるんだ」

マコ 「?」


千秋 「私にはまだ指輪の価値が分からなかったから、迷うことなく交番に届けたんだ。そんなものより私にとっては夕食の方が大事だったからな」

マコ 「うん」

千秋 「ハルカ姉さまは・・褒めてくれた」

マコ 「・・うん」

千秋 「・・・そのとき思ったんだ。“私にはまだ早いから”って」

マコ 「・・・」

千秋 「今の私は・・あの時よりも少しだけ成長した。でもいまだに指輪の価値は分からないし、大人になれたのかも分からない」

マコ 「チアキは・・・大人になったと思うよ」

千秋 「・・・そうか?」

マコ 「ていうか元々チアキは大人っぽいと思うよ。小学校の時から」

千秋 「・・・マコちゃんにはそう見えていただけだ。私は・・・わがままで子供っぽい。たぶん今も変わってない」

マコ 「・・・・そうかな」

千秋 「じゃあ聞くが、今の私はあの時のハルカ姉さまと比べてどうだ?」

マコ 「・・・」


千秋 「・・・子供だろ?」

マコ 「・・それは違うよチアキ」

千秋 「?」

マコ 「チアキはチアキだ。ハルカさんとは違う人間だよ」

千秋 「・・・・私は・・ハルカ姉さまに憧れていた。いつかこうなりたいと思える存在だった」

マコ 「・・うん」

千秋 「マコちゃんだってそうだろ?」

マコ 「え?」

千秋 「知っているぞ。マコちゃんもハルカ姉さまに憧れていたこと」

マコ 「え・・えっと」

千秋 「家によく遊びに来ていた理由の一つがそれだろ?」

マコ 「・・・うん。そうだったかもしれないな」

千秋 「やっぱりそうか」


マコ 「でも」

千秋 「?」

マコ 「別にハルカさんが居ないときでも遊びに行ってただろ?」

千秋 「まあ確かにそうだが」

マコ 「オレさ・・確かに最初はハルカさんに会いたくて遊びに行ってた時もあったけど、後半は違うよ」

千秋 「?」

マコ 「オレ、チアキと遊びたくて行ってたんだ」

千秋 「え?」

マコ 「チアキと、他愛のない話したり、買い物に行ったり」

千秋 「・・・」

マコ 「学校で見るチアキとは違う、素のチアキが見たくて」

千秋 「・・・ま・・マコちゃんは学校では会わないだろ・・」

マコ 「・・・あ」


店員 「二名でお待ちのミナミさまー!」


千秋 「・・・ここ、デザートの他にサラダとパスタもあるんだな」

マコ 「・・う・うん」

千秋 「マコちゃんはなんでまずサラダから食べてるんだ?」

マコ 「えっと・・・空腹時はまず食物繊維をとると脂肪とか糖分の吸収が穏やかになるってテレビで言ってたから・・」

千秋 「食べる順番ダイエットか。私も聞いたことがあるな・・サラダとってくるよ」

マコ 「あ・・うん」


千秋 「待っていてくれたのか・・すまないな」

マコ 「いいよ。食べようか」

千秋 「うん」

マコ 「あれ?チアキ、キャロットラペとったのか?人参嫌いじゃなかった?」

千秋 「ああ。でも克服した」

マコ 「そっか」


千秋 「・・・好き嫌いがあるのは子供だからだと思っていた」

マコ 「え?」

千秋 「いや、小学生の頃は人参とかピーマンとか嫌いだった」

マコ 「うん」

千秋 「でも、大人でも好き嫌いのある奴は大勢いる」

マコ 「そうだね」

千秋 「私は大人になるため必死に嫌いなもの克服したんだけどな」

マコ 「・・・」

千秋 「マコちゃんはどう思う?」

マコ 「え?」

千秋 「大人になるってどういう事だと思う?」

マコ 「うーん・・」

千秋 「法律で言われているように20歳になったら突然大人になるのか?」

マコ 「それはなんか違う気がするよ」

千秋 「やっぱりマコちゃんもそう思うか」


マコ 「うん。例えば大学生って20歳以上の人いるけど、あんまり大人に見えない人もいるし」

千秋 「・・ああ。ウチのバカ野郎とかな」

マコ 「・・・」

千秋 「それに高校生でも大人っぽい人もいる」

マコ 「そうだね」


カランカラン

店員 「季節のフルーツタルトご用意できましたー!!」


千秋 「あ」

マコ 「オレも行く」

千秋 「うん」


千秋 「少し前にタケルにも聞いてみたんだ」

マコ 「ん?・・・えっと・・チアキの親戚のおじさんだっけ?」

千秋 「ああ」

マコ 「聞いてみたって何を?」

千秋 「大人になるって何なんですかって」

マコ 「うん」

千秋 「タケルの奴、偉そうに“それは自分したことに自分で責任を持てるようになることだよ”とか言っていた」

マコ 「ああ、それもよく言うよね、大人が」

千秋 「だから私は“じゃあ自分のせいでレイコさんに振られたタケルは自分で責任を取るから大人だな”って言ったらこの世の終わりのような顔になった」

マコ 「・・・チアキ容赦ないね」


千秋 「大体なんだ、自分でしたことに自分で責任を取るって。そんなの当り前だろ」

マコ 「うーん・・例えば学生の間は間違いとかしても、怒られて許してもらえるけど、大人になったら最悪法律で裁かれる・・とか?」

千秋 「それって、20になったら大人って言うのと変わらなくないか?」

マコ 「言われてみればそうかも」

千秋 「だから私は、そういう事言う大人は結局自分では何も考えてないんだと思っている。だって何もしてなくたって20年経てば勝手に20歳になるからな」

マコ 「まあ確かに」

千秋 「あ、マコちゃんその抹茶のやつどうだ?」

マコ 「結構抹茶の味がしっかりするよ。甘さは控えめかな」

千秋 「一口貰っていいか?」

マコ 「あ、どうぞ」

千秋 「・・・うーん・・私には結構苦い」

マコ 「そっか。オレは抹茶味結構好きだからアリだな」


千秋 「で、だ」

マコ 「うん」

千秋 「私の周りにいた大人っぽい人の言動を考えてみた」

マコ 「うん」

千秋 「考えた結果、そんな奴は居ないということが分かった」

マコ 「ええ?!それじゃこの話終わっちゃわないか?!」

千秋 「ああ。仕方がないから周りに居る奴が大人っぽいと感じた瞬間について考えてみた」

マコ 「瞬間瞬間はあるんだ」

千秋 「例えば、吉野は私が遊びに行こうって誘った時、“今日は彼と約束があるから”と断る瞬間大人っぽい」

マコ 「本当に瞬間だった!」

千秋 「他の時は別に大人っぽさを感じないしな。確かに時々鋭いこと言うけど、大体は何を考えてるかよく分からないところがあるし」

マコ 「そ・・その他の同級生たちはどうなの?」

千秋 「あとは概ねバカが多いからなぁ」

マコ 「・・・」



千秋 「でもトウマが進路の話した時は驚いた」

マコ 「チアキは決めてないの?」

千秋 「・・・私はなんとなくしか考えてない」

マコ 「そんなもんだと思うよ」

千秋 「そうか?」

マコ 「うん」

千秋 「マコちゃんは?」

マコ 「え?」

千秋 「マコちゃんは高校生の時文系と理系のどちらを選んだ?」

マコ 「へ?!・・えーっと・・文系かな(選ぼうと思ってるという意味で)」

千秋 「やっぱり将来のこととか考えてたか?」

マコ 「え?い・・いや、大学受験科目、文系の方がオレに合ってると思って!」

千秋 「・・・そうか」

マコ 「だ・・大学と言えば、現役の大学生たちに聞いてみたらどうだ?お・・俺以外の!」


千秋 「カナの知り合いの大学生たちはみんな大人には見えない」

マコ 「・・・それはカナのせいじゃないのか?」

千秋 「そうかもしれない。でもアイツらが勉強してるとこ見たことないし、カナの同級生とかがウチに来た時はいつも遊んでるだけだからな」

マコ 「藤岡さんは?」

千秋 「藤岡・・さんは、大人というより、お兄さんという感じだ」

マコ 「あ、それなんか分かるな」

千秋 「面倒見がいいし頼りになる。でも大人という感じではない」

マコ 「カナには勿体ないくらい良い人だよな」

千秋 「全くだ」


カランカラン
店員 「とろとろカスタードプリン出来上がりましたー!」

マコ 「行くだろ?」

千秋 「勿論だ」


千秋 「小学生のころは、高校生が大人に見えたな」

マコ 「そうだね」

千秋 「ハルカ姉さまの先輩の速水という奴がいてな」

マコ 「ああ、いつも目を閉じている人か」

千秋 「イベントの度にやって来ては私たちに酒を飲まそうとする」

マコ 「それは大人は大人でも、悪い大人だよな」

千秋 「ああ、よく知らんが会社とかで上司に居たら面倒くさいタイプなんじゃないか?」

マコ 「今でも来るの?」

千秋 「カナともそれなりに付き合いがあるようだ」

マコ 「そうなんだ」


千秋 「あ、そういえばハルカ姉さまの同級生にアツコというのが居たのを覚えてるか?」

マコ 「えっと・・たしか背が大きい人?」

千秋 「ああ、たぶんそれだ。アツコ、もうすぐ子供生まれるらしい」

マコ 「へー、結婚してたんだ」

千秋 「大学を出てすぐ結婚したみたいだ」

マコ 「でも、あの人はならなんとなく分かる気がするな」


千秋 「マコちゃんもそう思うか」

マコ 「うん、なんとなくだけど」

千秋 「アツコは何というか・・適度にスキがあって男からすれば可愛いんじゃないか?」

マコ 「・・・(なんとなくコメントしづらいな)」

千秋 「大学の時はナンパとか雑誌モデルのスカウトとかされまくってたらしい」

マコ 「そうなの?」

千秋 「マキがウチに来てよく愚痴ってた」

マコ 「ハハハ」

千秋 「私はナンパなんてされたことないが」

マコ 「・・・」

千秋 「マコちゃんはさっきされてたよな」

マコ 「うう゛っ!!・・・げっほげっほ!!」

千秋 「どうした?コーヒーにむせたか?」

マコ 「あ゛っ・・・うん・・大丈夫」


千秋 「私から見てもマコちゃんは魅力的だと思う」

マコ 「・・・え・・あ・・どうも」

千秋 「最近は特に腕とか足のラインがガーリィだ」

マコ 「・・・えっと・・うん」

千秋 「マコちゃんは彼氏とかいるのか?」

マコ 「ぶばっ!」

千秋 「どうした?コーヒーを吹きだして」

マコ 「げっほ!げっほ!!・・いいいイヤ大丈夫!居ないよ!そんな人は!!アハハ・・」

千秋 「そうなのか?」

マコ 「あ・・・ああ」

マコ (まさかこのタイミングでまた攻めてくるとは・・・!!)

千秋 「私もカフェオレ持ってこようかな」

マコ 「あ・・あー!オレ行ってくるよ!自分の分のコーヒーもってくるついでに!!」

千秋 「そうか?悪いな」

ここまでにします


・・・より…の方が読みやすいと思う
個人的な意見だけど

こんばんは
更新します
>>84修正して行きます


マコ 「はい」

千秋 「ありがとう」

マコ 「うん」


千秋 「ふー…食べたな」

マコ 「そうだね」

千秋 「まだ時間あるしゆっくりゆっくりコーヒー飲むか」

マコ 「うん」



千秋 「マコちゃん」

マコ 「ん?」

千秋 「マコちゃんの意見を聞きたいんだが」

マコ 「何が?」

千秋 「最近分かったことなんだが、カナのバカ野郎が6年以上も私を騙していたんだ」

マコ 「!!」

千秋 「どんな罰を与えてやればいいと思う?」

マコ 「あ…えっと…」



千秋 「ん?どうしたマコちゃん、顔が青いな。体調が悪いのか?」

マコ 「だ…大丈夫です!…えっと…その…騙してたってどんなこと?」

千秋 「……いいだろう教えてやろう」

マコ 「は…はい…」

千秋 「私の同級生にバカな男子が居た」

マコ 「・・」

・・・


千秋 「……と言う訳だ」

マコ 「…チアキ」

千秋 「なんだ?」

マコ 「カナは確かに最初にチアキを騙したかもしれないけど、それ以降にチアキを騙してたのはその男子だ。だからカナは許してもいいんじゃないかな?」

千秋 「・・・そうか?しかし、カナが最初に騙してせいで、私はそのバカな男子を女子と勘違いし遊びに行ったり、買い物したりした。記憶が確かなら、下着姿を見られた」

マコ (ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・)

千秋 「それもこれもカナのせいだと思わないか?」



マコ 「もしも…その男子が途中で本当のことをチアキに打ち明けてればそんなことにならなかったわけだろ」

千秋 「……じゃあ、悪いのはバカな男子だってわけか?」

マコ 「…ああ」

千秋 「バカな男子はなんで途中でそうしなかった?バカだからか?」

マコ 「……」

マコ 「チアキが……相談して来たり、何かを頼んできたりしたのを…無下に断れなかった……んじゃないか?」

千秋 「…」

マコ 「その男子は…女装することで学校とは違うチアキの様子…チアキの本当の性格を知って、普段は強くてしっかりしてるように見えてたチアキが、本当は悩みとかもあることに気付いた。だから例えいつかバレた時に嫌われるたとしても、チアキの相談相手として精一杯つとめることを選んだ…とか」

千秋 「…」

マコ 「…だけど、そうだとしてもその男子がしたことは許されることじゃないと思うから」

千秋 「…ああ」



千秋 「………なあマコちゃん」

マコ 「え?」

千秋 「この間一緒に服買いに行ったとき、マコちゃんと会うのは3年ぶりくらいだったか」

マコ 「あ…えっと…うん。そうだね」

千秋 「私は…どうだった?」

マコ 「え?」

千秋 「マコちゃんから見て大人になっていたか?」

マコ 「チアキは…大人だよ。オレから見たら、今も昔も」

千秋 「…そうか」

マコ 「チアキ…オレ、」

千秋 「マコちゃん」

マコ 「え?」

千秋 「そろそろ行こうか」

マコ 「…うん」


千秋 「…じゃあ今日は付き合ってくれてありがとう」

マコ 「うん。オレも楽しかった」

千秋 「マコちゃん、引っ越したって言うのに何度も呼び出して悪かった」

マコ 「え?いや…そんなこと」

千秋 「マコちゃん」

マコ 「ん?」


千秋 「さよなら」



…………それ以来、チアキが“マコちゃん”を呼び出すことは無かった。



それから何週間かして。


内田 「マコト君、最近マコちゃんにはなってないの?」

マコト「ああ…チアキから電話がかかってこないからな」

内田 「えっと…なんかあったの?“マコちゃん”の時に」

マコト「…うん」

内田 「え?!それって…!」


チアキ「おい、マコト」

マコト「!!」
内田 「!!」

チアキ「今日の放課後空いてるか?」

マコト「え?…あの…空いてます」

チアキ「じゃあ家に来い。話がある」

マコト「へ?」

チアキ「ウチに来るのは嫌か?」

マコト「え?!…あの…嫌でないです」

チアキ「…じゃあ5時に来い」

マコト「は…ハイ!」

ここまでにします

こんばんは
だいぶ時間空きましたが続きです


ピンポーン
マコト「…」

チアキ『はい』

マコト「えっと…マコトです」

チアキ『今、開ける』

マコト「…」


・・・


チアキ「今、お茶を入れる」

マコト「あ…えっと…はい」


マコト「チアキ…その…話って?」

チアキ「…」



チアキ「マコちゃん」

マコト「!!」

チアキ「“マコちゃん”は、私にとって大切な友達だった」

マコト「…はい」

チアキ「いろいろと相談に乗ってくれたし、同級生ではなかったが、ハルカ姉さまの次くらいに大好きだった」

マコト「…」

チアキ「だから、お前が私を騙してるって分かった時、私はお前のことが大っ嫌いになった」

マコト「…」

チアキ「…」

マコト「チアキ」

チアキ「なんだ?」

マコト「…オレ、自分が悪い事したって分かってる。オレのこと一生許さないでいい。ゴメン。本当にごめん…」

チアキ「…」


チアキ「…ここ何か月かで分かったことがある」

マコト「?」

チアキ「私はマコちゃんに甘えていた」

マコト「へ?」

チアキ「学校のみんなや、ハルカ姉さまとかに言えない悩みを相談したり、ストレスがたまった時に一緒に遊んでもらったりしていた」

マコト「……オレが言えることじゃないけど、友達なら普通だと思う」

チアキ「そう私も思ってた。だが、この間“マコちゃん”に話を聞いてそうじゃないってことが分かった」

マコト「え?」

チアキ「お前は……半分は私のために“マコちゃん”になっていてくれたんだろ?」

マコト「…でも」

チアキ「だから私はそんなお前に甘えていた。お前は私よりずっと大人だった」

マコト「そんな事…ないよ」

チアキ「マコト」

マコト「?」

チアキ「ありがとう」


チアキ「…マコト、ちょっとこっちに来い」

マコト「…え?」

チアキ「はやく」

マコト「…ハイ」

マコト(・・・近い)

チアキ「これからは、私はマコちゃんに頼らずに生きていく」

マコト「…ハイ」

チアキ「だが今までお前をマコちゃんと信じて様々なプライベートを喋ってしまった」

マコト「…う」

チアキ「その部分は怒りを覚えている」

マコト「ご…ゴメンナサイ」

チアキ「マコト、歯を食いしばれ」

マコト「へっ?!」


バッシーーーーン!!!
マコト「」


チアキ「…これで許す」

マコト「は・・ひ」


・・・

チアキ「…カナのことも許すことにしたんだ」

マコト「…そうなんだ」

チアキ「むろんヤツが謝ってきたらのハナシだが」

マコト「…ああ」

チアキ「ところでマコト、これからはマコちゃんにしていた相談はお前にするからな」

マコト「え?」

チアキ「もうお前には色々とばれてることが分かったし」

マコト「確かにチアキは普段強がってるけど実は寂しがり屋で」
バシーーン!!
マコト「えぶしッ!!」

チアキ「これからはお前に素の私を隠す必要もないし容赦なく殴るからな」

マコト「…そのチアキは…前から知ってる…」

チアキ「何か言ったか?」

マコト「…イッテマセン」


チアキ「…まず相談なんだが、もうすぐ文理選択じゃないか」

マコト「うん」

・・・

・・・



約1年後。


千秋 「おい、そろそろ出るぞ。線香は持ったか?」

夏奈 「うん。花はいつものところで買うんだよな?」

千秋 「ああ」


街から少し外れた郊外の墓地に夏奈と千秋の姿があった。


夏奈 「じゃあ線香に火つけるぞ」

千秋 「ん」

・・・

少し長い沈黙。

千秋 「…」

千秋は墓に眠る人に去年一年の報告をした。

春香 「…チアキ、カナ」

千秋・夏奈「「!!!」」


千秋 「ハルカ姉さま!いつ帰ってきたんですか?!」

春香 「ついさっきよ。今年はチケット取れたから少し早くに年休とって帰ってきちゃったの」

夏奈 「連絡くれれば家で待ってたのに!」

春香 「うん。でも今日は命日だからお父さんとお母さんのところに居ると思って」



春香 「なかなか帰ってこれなくてごめんね」

千秋 「いいんです。それだけハルカ姉さまが優秀だという事です。お父さんもお母さんもきっとそう思ってます」

夏奈 「お土産は無いのか?!」

千秋 「お前の分は無い」

春香 「コラ、ケンカしないの。ちゃんと二人の分買ってきたから」

夏奈 「やった!舶来物のお菓子だ!」

千秋 「ハルカ姉さまありがとうございます」

春香 「私もお参りするね」


***


千秋 「ハルカ姉さま、イギリスの生活はどうですか?何か不自由はないですか?」

春香 「イギリスは日本に比べるとちょっと寒いけど、職員住宅は暖房があるし快適よ」

千秋 「それは良かったです」



春香 「チアキも大学合格おめでとう」

千秋 「はい、頑張りました」

春香 「大学に入ると出来ることが一気に広がるし、交友関係も一気に広がるわ」

千秋 「はい」

春香 「一生の友達にも出会えるかもしれないわよ」

千秋 「はい…あの、私、ハルカ姉さまに報告することがたくさんあります」


・・・

春香 「色々あったのね。チアキも大人になったね」

千秋 「私は・・・たぶんまだ子供です」

春香 「そうなの?」

千秋 「未だに嫌いな食べ物もありますし、イラッとして手が出てしまう事もあります(主にカナに対して)」

春香 「でも、人を許すことができるようになるってことはすごく大事な事だと思うよ」

千秋 「…」


春香 「それに、自分が誰かに甘えてるなんて自覚するのはすごく難しい事よ」

千秋 「…その人が、教えてくれたことで気づけたんです」

春香 「その友達は一生大事にしないとね」

千秋 「はい」

春香 「ん?…そういえば、その友達って私が知ってる人?」

千秋 「あ…えっと…」

春香 「?」

千秋 「知っているような…知らないような…多分知らない方がいい友達です…な、カナ」

夏奈 「あ…うん。そうだな」

春香 「??」


春香 「ふふふ…でもチアキもついに大学生か」

千秋 「…」

春香 「カナが藤岡君を彼氏としてウチに連れてきたのはいつだったっけ?」

夏奈 「なっ・・///それは今関係ないだろー!!」

春香 「ふふっ…そうね、でもチアキもそのうち彼氏を家に連れてくるのかなーってね」

夏奈 「チアキはガキだからまだそんな事ないだろ」

千秋 「…」

夏奈 「…?」

春香 「…チアキ?」

千秋 「いえ…その…ハイ。なんでもないです」

夏奈 「おい…お前まさか」

千秋 「黙れ」

タケル「チアキちゃん?!」

千秋 「タケルは最後まで黙っていろ」


春香 (…ついに私だけになっちゃったか……はぁ…)




みなみけは、いままでも、これからも、ずっと平和です。


おわり

これにてお終いです

読んで下さった方、ありがとうございました

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年06月06日 (土) 23:21:01   ID: CA4941BY

ええやん?

2 :  SS好きの774さん   2015年06月07日 (日) 12:49:30   ID: 12FqT3bz

普通に名作だと思う

3 :  SS好きの774さん   2015年06月08日 (月) 21:38:11   ID: mz1T460z

タケル使いがうまい

4 :  SS好きの774さん   2016年12月19日 (月) 11:34:51   ID: 2WaqQhCO

やっぱ千秋にはマコトだよな。

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