変態と恋愛は紙一重で似ていると思う。 (6)

あれはある暑い日の思い出だ。
夏でもなく春でもなくいつだったか・・・。
それすら忘れた頃の思い出だ。
どっかの小説のようなドラマもなければアニメのような展開もない。ただただ、毎日を自他楽に過ごした俺の物語。
妄想だけなら世界ランカーになれると本気で信じていたあの頃の俺をーー。










今思えば全力で殴りたい。











「蓮ー起きろよ蓮ー」

「ん・・・?」


見知らぬ天井。な訳もなくここは俺の部屋だ。
幼い頃にやんちゃしてぶちまけた絵の具のシミが天井にこびり付いている。
今更、掃除する気にもならんしあれはあのままでいい。
あれはアートなんだ。


「あ、やっと起きた?」


幼馴染なんて俺には居ない。
嫌がらせのように全体重を俺の腹の上に掛けてくる糞アマの存在なんて俺が作り出した妄想だ。


「重い。」

「・・・!この・・・ばぁかあああああああああ!」


朝から痛恨の一撃を喰らい二度目の就寝、もとい、二度寝という贅沢な時間を過ごすことが出来るはずだった。
頬に食らったコークスクリュー・ブローは永遠とも思える痛みを与え続けてくれた。


「おかげで起きられたわけだが」

「あんた何言ってんの?」

「・・・」


頬が痛い、相変わらず痛い。親の目線も痛い。糞アマは相変わらず我が家のタダ飯を黙々と食いやがる。
そうだ、これは夢なんだ。夢だからこんな酷い目に朝からあうんだ。
飯を食い終わったらまたベットに潜り込んで、あの娘とイチャイチャするんだ。


「次寝たら殺すから」

「許可する」


許可すんなよクソ親父。俺なんも言ってねーし、それに殺したら永眠じゃねぇか。やってみろよ。
殺される前に通報してやる。国家権力なめんなよ?すごいんだぞ。


「襲われそうになったって言えばどっちを信じてくれると思う?」


お前だろうな。




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酷い朝から数時間。大したイベントもなくズルズルと授業も終わった。
今日はこれといって特別な日でもない。二階の教室から見る景色に変わった光景もない。
あの桜の木の下。俺のクラスで一番のイケメンにこれから告白するであろう女子生徒を眺めながら、昼休み時間をエンジョイするんだ。


「あれって告白だよな?」

「だろうな」


人間観察をしていたらクラスの奴に話しかけられた。彼はこれから告白するであろう女子生徒のことが気になっていたらしい。
ご愁傷さまだが、安心しろ骨は拾ってやる。・・・それにな、あの告白は失敗するんだ。


「・・・そんな、どうして!」

「・・・」


青春が今終わった。驚きと悲しみで思わず出した悲鳴にも似た少女の声は、二階に居る俺たちにも聞こえた。
あの泣きながら走っていく姿は綺麗なのかもしれない。だがそれは第三者から見ればだ。
俺はあのイケメンの正体を知っている。理不尽な断り方もすればあんな声も出るだろう。


「蓮!蓮君~!」


黙れホモ。俺を見つけた瞬間に手を振るな。お前は今、ひとりの少女を傷つけたんだぞ?
何嬉しそうにしてんだよ気持ち悪い。


「な、なぁ・・・あれは・・・」


ほれみろ、気になる女の子をふっておいてめちゃくちゃいい笑顔にでもなれば、いくらなんでもドン引きだ。
しかも俺の名前を呼びながらだとなお一層、お互い気まずいだろう。


「俺のこと睨んでないか?」

「・・・」


ホモはクラスの奴を睨んでいた。理由は知りたくもない。
名前を呼んだらたまたま隣に立っていたクラスの奴に、なにかよからぬ感情を抱いていようと俺には関係ない。


「蓮君から離れろ!」

「なんか言いながら走ってるんだけど・・・お、俺なにかしたか?」

「知らね」


興味がない。とりあえず隠れろとは言っておいた。「分かった」と言ってクラスの奴は慌てて教室から出て行く。
それから数十秒後、ホモが息を切らせながら教室に入ってきた。


「大丈夫だった?」

「何がだ?」

「僕がいなかった・・・はぁはぁから・・・んはっはぁはぁ、別のやつにちょっかい出されてたんでしょ?」


息を切らせながら気持ちわるいことを言うこいつは本当に気持ち悪かった。


「キタコレ」


おい、今きたこれとか言った女子生徒よ。名乗り出ろ。


「安心してくれ!僕は君だけだか・・・」


気づいたら殴っていた。素晴らしいことに今朝食らったコークスクリュー・ブローもどきが見よう見まね上手く決まってくれた。


「君の熱いの・・・僕は受け止めた」


ホモは倒れた。何か伝えたそうに顔を赤らめて倒れる。クラスの女子からは歓喜と悲鳴が聞こえる。
歓喜の声を上げてるのは絶対に変態だ。悲鳴は・・・どっちだろうな。

結論から言えばこの出来事はいつもの事だ。
昼休みが終わり、教室に入ってきた今年五十五歳、社会科教師が授業を始める。ホモは倒れたままだ。

「え~この答えを昴君」

「倒れてます」

「あ~じゃあ楓さん」

「はい」

すげぇスルースキル。この一言に尽きる。さすがに五十五年も生きてるとこんなことでは動揺しないのだろうか?
それとも社会にはこれ以上の出来事があるんじゃないかと思ってしまう。どうでもいいが二番目に呼ばれたのはホモの妹だ。


「・・・です」


模範解答。特にこれといったひねりもなく普通に答えてホモの妹は座る。ホモの妹は流石に失礼だろうか?
あまり話したことはないから、別にこちらがなんと思おうとも向こうは気にしないはずだ。



結局、ホモは次の休み時間まで起きることは無かった。次の授業は体育だ。
クラスの野郎どもが準備を始める、もちろん女子もだ。男子は廊下、女子は教室。一見、理不尽に見えるが更衣室がない学校ではこれが普通だと思う。
かと言って同じ場所で着替えようとする猛者は居ないだろう。


「ふむ、次は体育だな。」


妙に真剣な顔でホモが立ち上がった。言わなくても分かってるのにわざわざ一言を言い、廊下へと出て行った・・・。これもいつもの事だ。


「なぁ、見られてない?」

「見られてないから」

「いや、昴に」

「・・・」


熱視線を感じるとしてもそれは気のせいとするべきだろう。気があるんだろ(迫真)な展開になられたらぶっ飛ばしてやる。
話しかけてきた奴はさっき逃がしたやつだ。また睨まれるから気をつけろ。

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