勇者「仮面の獣人?」 (7)

王「勇者よ、近頃は魔物の活動が例年に比べ倍以上に活発になっておる」

勇者「はい、存じております」

王「そこで、そなたにはその原因の究明のため、少々の旅をして欲しいのだ」

勇者「旅、でございますか?」

王「尽くせる限りの支援はしよう。ここに金貨300枚と我が王家に伝わる伝説の剣がある」

勇者「さ、300枚!?」

王「しかし、一度にこれ全てを渡すと非常に危険で、そなたが盗賊に狙われやすくなってしまう。少しずつ旅先のそなたにおくることとしよう。まぁ、旅の予算とでも考えてくれ」

勇者「は、はい。それで、剣の方は?」

王「うむ、こちらは我が国が建国された時、太祖が用いたとされるあの太陽の剣だ」

勇者「そ、それがあの太陽の剣なのですね……」

王「とはいえ、少々刃こぼれなどしておる。まずは優れた刀鍛冶がおるという南の村に向かってはどうかな?」

勇者「わかりました。他には?」

王「太陽の剣が使えぬ間は、この剣を使うが良い」

勇者「こちらは?」

王「先ほど言った、2代前の南の刀鍛冶に作らせたという名剣だ」

勇者「何から何まで……ありがたき幸せ」

王「うむ。健闘を祈る」


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〜中央都市〜


勇者「何から何まで至れり尽くせりだったなぁ」

勇者「金貨なんて1枚で半年は遊んで暮らせるよ」

勇者「とりあえず5枚もらったが……これだけでも心臓が爆発しそうだ」

勇者(治安のいい中央ならともかく……地方に行ったら気を付けないとな)

勇者「さて、出発だ!」

〜道中〜


勇者「なんか忘れてるなと思ったらパーティー作るのを忘れてたよ」

勇者「まぁ南の村まではそう遠く無いから良いか」



勇者「! あれは」

ウサギ「ギャーギャー!」ピョンピョン

勇者「早速この剣の切れ味を試してみるか」

勇者「うおおお!」ズバッ

勇者(なに!?)

ウサギ「」

勇者「水でも切るみたいに切れた……もしこれが太陽の剣だったら一体どうなるんだ」

〜南の村〜

勇者(あの後かなりの回数襲撃されたけど、この剣のおかげでめちゃくちゃ楽だったな)

勇者「それにしてもすごい賑わいだな」

勇者(中央で有名な鍛冶屋がいるんだもんな)

勇者「あの、鍛冶屋はどちらに?」

村人「おん? あんたも旅のもんかい?」

勇者「ええ、ここには鍛冶屋に用があって」

村人「鍛冶屋はそこの通りの左にドデカいのがあるから、すぐにわかると思うぜ」

勇者「ありがとうございます」

村人「気を付けてな」

勇者「? ありがとうございます」

〜鍛冶屋〜


勇者「ここか……確かにデカイな」

勇者(鍛冶屋がこんなにデカイ必要は有るのか?)

勇者「すいませーん」

職人「……」

勇者「あの」

職人「……その口調。中央のもんだな。どんな御用かな」

勇者「この剣を鍛えて頂きたくて」

職人「……! ……どこでこれを」

勇者「俺は勇者です。王の任務で旅をすることになりまして、その時にそれを賜りました」

職人「……なるほど。良いだろう。だが1つ条件がある」

勇者「条件?」

職人「この村の外れに森がある。そこで獣人を退治して欲しい」

勇者「獣人? 人から変身するあの?」

職人「そうだ。それで無くとも、これほどの剣だ。おそらく国じゅうで鍛えられるのは俺だけだろう。つまりは報酬だ。それ位はして欲しいね」

勇者「わかりました。その条件を受けましょう」

職人「よろしく頼む」

勇者(とにかく、まずは情報を集めないとな)

村人「あれ、あんた。鍛冶屋は見つけられたかい?」

勇者「あっ、先ほどはどうも」

村人「いやいや。じゃあな」

勇者「あ、ちょっといいですか?」

村人「ん?」

勇者「獣人について何か知ってることは無いですか?」

村人「……ついて来な」

〜慰霊碑〜


勇者「……これは?」

村人「“黒仮面事件”で犠牲になった奴らさ」

勇者「“黒仮面事件”というのは?」

村人「……今から大体200年前、森から現れた凶悪な獣人が一匹、村の人々を虐殺した。昔から鍛冶で有名だったうちの村は人口も多くて、町と読んでもおかしくは無いレベルだった。その人口の、約3割。つまり1万5000人が死んだ。その多くが、鍛治職人だったらしい」

勇者「…………それにしては、慰霊碑に有る数は少ない気が」

村人「死んだやつの多くは爆発による焼死、あるいは爆死だった。死体は殆ど見つからなかった。要するに、正確に死んだとわかる奴しか載せてないのさ」

勇者「……」

村人「その獣人の顔が、まさに黒い仮面だったことから、黒仮面事件と名付けられた。以来うちの村では、あの森に近づく奴は死にたがりか気が触れた奴が大半だ」



村人「あんた、その胸の勲章、勇者証だろう」

勇者「……ええ」

村人「やめとけ。悪いことは言わない。大人しく帰ることをオススメするよ」

勇者「それは……」

村人「まぁいい。俺の名は情報屋。困ったことがあればいつでも来な」

勇者「……」



勇者(とんでもないことを引き受けてしまった)

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