穂乃果「えーっと……」
八幡(あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!目が覚めたら知らない部屋で、隣に女の子がいた!何を言ってるのかry)
八幡「す、すみませんが、お名前は?」
穂乃果「あ、え、えっと!高坂穂乃果、です……」
八幡「ひ、比企谷八幡です……よろしく」
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八幡(その後お互い軽く自己紹介をし、同い年ということがわかったのでとりあえず敬語はやめた)
八幡(そして次は状況確認。現在俺たちは高級マンションの一室のような部屋にいる。)
八幡(1LDK、風呂トイレ別。洋室が2つあり、窓から見える景色は都会のようだが、見覚えはない。そして俺たちは互いに何故かリビングで寝ていた。)
八幡(高坂に昨日寝るの記憶を聞いてみたが、自室で寝ただけという、これといった情報は得られなかった。俺も似たようなもんだが……)
八幡(そして何故か携帯は繋がらない。いや、アンテナも二本立っているし、ネットにも繋げられるんだが、電話やメール、その他外部と連絡をとる機能がことごとく使えなかった)
八幡(玄関にも鍵がかかっていて、止むを得ず窓を壊そうと試みたが、椅子を殴っても蹴っても、椅子を投げつけてもビクともしない。完全な密室だ)
八幡(一体ここはどこで、何故俺と高坂はここにいるのか?第三者の犯行だとしても目的が謎すぎる。)
八幡(どれもが現実離れしているが、その中でも一番不思議な点が一つある)
八幡(それは窓から見える一本の木。その木が見事な紅葉を実らせていること)
八幡(確か季節は冬で、クリスマス目前だったはずだ。なのになんでこんな……)
八幡(そしてもう一つ不思議なことが……)
穂乃果「ねぇねぇヒッキー!冷蔵庫、たくさん食べ物入ってるよー!」
八幡(あいつ順応早すぎだろ!っていうかヒッキーって、由比ヶ浜かよ!髪型も似てるし、あとアホっぽいとこ!)
穂乃果「へぇー、ヒッキーって料理出来るんだね?」
八幡「家事は専業主婦の必須スキルだからな」トントン
八幡(つーか近いよ。意識持ってかれて指切っちゃうだろ)
穂乃果「そーなんだ、将来の夢がちゃんとあるのっていいね!」
八幡(感心された……やっぱこいつアホの子だ)
八幡「……なに、お前は無いのか?将来の夢とか」
穂乃果「んー、私は実家が和菓子屋で、たぶんそこを継ぐことになるかなー?先のことはよくわからないや!」
穂乃果「だから、やりたい事が決まってるヒッキーが、羨ましいな」ニコッ
八幡「っ……いや、俺も別に決まってるわけではないんだが……」
ーーーーー
ーーーー
ーーー
穂乃果「ふー、ご馳走様」
八幡「お粗末!」シュルッ
穂乃果「そーいえばヒッキーって千葉に住んでるんだっけ?」
八幡「あぁ、高坂は……東京だっけか?」
穂乃果「うん!音ノ木坂学園ってところで、………スクールアイドルやってたんだ」
八幡「スクールアイドル?」
八幡(それから俺は、高坂からスクールアイドルなるものを聞かされた。その説明は要領を得てなくてわかりづらいものではあったが、それでも、楽しそうに話す彼女の様子から、本当に好きなことなのだということがわかる)
八幡(先ほど高坂は、俺が羨ましいと言ったが、俺からしたら、夢中になれるものがある高坂の方が、そして何より、そんな顔して話せる仲間がいると言うのが、本物を持っていると言うことが、よっぽど、羨ましかった)
穂乃果「それでねー!ことりちゃんは……あっ」
八幡「ん、どうした?」
穂乃果「な、何でもない!私の話は終わり!ヒッキーの話聞かせてよ!」
八幡(突如高坂の顔色が変わったと思ったら、取り繕うような笑顔で俺に話を促す)
八幡(先ほど高坂は「スクールアイドルをやっていた」と言っていた。おそらく、「ことりちゃん」とやらと何かあったのだろう)
八幡(まぁ、本人が話したく無いのを無理に聞き出すのも憚れるので、俺も自分の話をする事にした)
八幡(と言っても、俺の話の引き出し、通称比企出しには、8割が黒歴だ。ある程度親しくない奴に自虐ネタは通じないことは先の件で学習している)
八幡(となるとやっぱり話すことは……)
八幡「俺は高2になってから、ある部活に入らされたんだが……」
八幡(それから奉仕部について、話をした。いつも罵倒してくる雪ノ下。高坂と髪型もアホっぽいとこも似ている由比ヶ浜。暴力教師平塚先生。中二病の材木座。スイートマイエンジェル戸塚。妹の小町。奉仕部を通して起こった様々な出来事……)
八幡(高坂は聞き上手とでも言うのだろうか?感情表現が豊かで、俺の話に耳を傾け、時に声をあげて笑い、時に感心したように頷き、時に顔を顰めて口の端を吊り上げ……って、俺引かれてんじゃん)
八幡(とにかく、そんな高坂の聞き方に引っ張られてしまったのか……)
八幡(話すつもりはなかったのだが、つい、修学旅行の事件について語ってしまった)
八幡(おそらく自嘲気味な笑みを浮かべながら、自分の行動について、語ってしまった)
八幡(俺は、自分の行動を悔いているのだろうか?)
八幡(随分長々と話し終えた気がする。高坂の顔を見てみると、少し困ったような笑みを浮かべていた)
八幡(そりゃそうだ。急にこんな話しされたってそら困るわな)
八幡(「すまん」と軽く謝ろうと、口を開いた時だった)
穂乃果「難しいことはよくわかんないけど……」
穂乃果「ヒッキーって、すごいね」
穂乃果「うーん、上手く説明できないんだけど……」
穂乃果「ヒッキーのやったことで、その人達の関係は崩れずに済んだんでしょ?」
穂乃果「ヒッキーのやったことで、救われた人がいるんだよね?」
穂乃果「それって、本当すごいと思う。私には出来そうにないから……」
八幡(相変わらず要領を得ない話し方だが……)
八幡(高坂は嘘を言っているようでも、気を使っているわけでもなさそうに)
八幡(ただ、自分の思ったことを言っただけのようだった)
八幡(そんな言葉に、少しだけ俺の心が軽くなったのを感じた)
このSSまとめへのコメント
そりゃ椅子を殴っても窓は壊れないわな
期待