【ラブライブ!】園田海未(21)「穂乃果が……だっ、だだだ男女交際ぃッ!?!?」 (119)


恥の多い人生を送って来ました。


中学生時代、所謂中二病と笑われてもおかしくないようなポエムを書きしたためていたのは、依然として真っ黒な思い出。

高校では普通に過ごすつもりでいたというのに、ひょんなことからなんとスクールアイドルをやることに。

鏡に向かって可愛く笑顔、至るところで変顔の応酬、挙句の果てに「ラブアローシュートっ! ばぁん♡」などとやりだす始末……。

あぁぁぁぁぁあああああ恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!! 思い返しただけで頭が沸騰してしまいそうです!


……コホン。すみません、私としたことが取り乱してしまいました。

別にスクールアイドル活動を後悔しているわけではありません。むしろ誇らしいとさえ思っています。

しかし私も既に成人を迎えたわけですし、これからはより一層、園田家の者として門下生の見本となる生き方をしなければならないという意味合いでありまして……。



────これはそんな私、園田海未の、ほのかな成長を描いた物語となっております。




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     ◇◆注意◆◇


・最後まで書き溜め在り、2万5千文字程度の短編SS。

・タイトルからお察しの事とは思いますが、百合や俺嫁しか許せないという人は非閲覧推奨。

・ただし百合要素皆無とは言っていない。

(※決して対立や荒れを望んでいるわけではありません。ヘテロも百合も好きです)


以上の点が大丈夫な方、最後までお付き合い頂けると幸いです。



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↑挿絵風に描いたウミチャー

時の流れとは驚くほどに早いもので、高校を卒業してから3年あまりもの月日が流れました。

私は家での鍛錬を続けつつも文系大学へ進学し、至って一般的なキャンパスライフを満喫しています。

大学の知人・友人に言わせてみれば、「園田さんって生真面目だよね」「今くらいしか遊んでられないんだから、もっと青春を謳歌しなよ!」ということらしいのですが……。

私にとってはこれが普通なのだからいいではありませんか。普通です! ザ・普通!!


ちなみに穂乃果は調理関係の専門学校へと進学し、昨年無事に卒業しています。

現在は家を継ぐべく穂むらで本格的に修行中ですが、それでも私と暇が重なりさえすれば、昔のように一緒に遊ぶことも珍しくありません。

今日も穂乃果の部屋にお邪魔して、穂乃果お手製新作饅頭の味見をするという、非常に平穏な日常をおくっていました。

否、つい先程まで、平穏な日常をおくっているのだと思っていました。


だというのに、穂乃果の口から……その……か、彼氏などという……耳を疑いたくなる単語を耳にすることになるだなんて!


海未「穂乃果が……だっ、だだだ男女交際ぃッ!?!?」ガタリ!

穂乃果「しぃーーーっ! 海未ちゃん声大きいよ、まだ家族にも内緒のことなんだからぁ」


待ってください待ってください待ってください!!

穂乃果に彼氏? 穂乃果に彼氏っ!?

いやいやいや、そんなまさか……。


あ、なるほど。

そういうことですか。


海未「まったく、いい歳して相変わらずですね」

海未「エイプリルフールなら一週間程前に過ぎ去ったというのに、今更嘘を吐きたがるだなんて」

海未「ふふ。最近しっかりしてきたようにみえて、まだまだ子供といったところでしょうか」

海未「いえ、責めているわけではないのですよ? 精神年齢が低すぎては問題ありますが、いつになっても子供心を忘れないのは大変素晴らしいことです」ニッコリ

穂乃果「…………」

海未「…………」

穂乃果「………………」

海未「………………」


あの……、何か言ってもらえませんかね?

穂乃果は何かを思案した後、徐にスマートフォンを取り出し、その側面に貼られたプリクラを見せてきました。


穂乃果「はい、これ。この前デートした時に撮ったやつ」

海未「     」


そこには、厳格そうながらもどことなく優しい風貌をした男性と、とても楽しそうな表情を浮かべた穂乃果のツーショットが……。


海未「こんなにベッタリくっついて腕まで組むなんて、破廉恥です!!」

穂乃果「えぇっ!? 腕組むだけでも海未ちゃんの中ではハレンチなの!?」


その後穂乃果は、出会ったきっかけや付き合い始めるまでの経緯などを話してくれました。

なんでも付き合い始めてから1ヶ月程度しか経過しておらず、まだ清い男女交際をしているのだとか。

……ん? うん!? まだってなんですかまだって!!

じきに清くない交際をするつもりなのですか!?///

他にも色々と言いたいことはあります。

ありまくりです。

しかし、頬を薄く朱に染めながらニヤケ面……もとい嬉しそうな顔で話す姿を見ていると、私にはこれ以上文句を言うことなど出来るはずもありません。


穂乃果「あ、あのね? 恋人ができたからって友達との時間を蔑ろにするつもりなんて全然ないし」

穂乃果「まだ誰にも教えてないのに海未ちゃんには話したのだって、あの、えーと、なんていうの?」


……まったく、仕方がないですね。


海未「無理に言わなくても良いですよ。なんとなく伝わりましたから」

海未「穂乃果、初の恋人ですね。おめでとうございます」

海未「その恋が一時のものなのか永遠のものなのか私には分かりませんが、後悔のない道を歩んでくださいね」

穂乃果「うんっ!」






・ ・

・ ・ ・

・ ・ ・ ・

・ ・ ・ ・ ・



海未「……と、いうわけです」

凛「うん、それは分かったんだけどさ、どうして凛がこんなことに巻き込まれなきゃならないの?」


現在私達は小洒落た喫茶店に居ます。

そして少し離れた席には穂乃果と……あまり認めたくはありませんが、その彼氏さんの姿が。


凛「デートの尾行なんて良くないと思うな」

海未「仕方ないじゃありませんか。どうしても気になってしまったのですから」

凛「そりゃ凛も気になるけどね? でもやっぱり気が引けるにゃ~」

海未「……すみません。周りから見たらくだらないであろうこんな私用に誘うことのできる相手なんて、凛しか思いつかなかったものでして」

凛「海未ちゃん……。凛のこと、そんなに信用してくれてたなんて……」ウルウル


海未「ことりは海外。絵里と希は新社会人になったばかり。真姫は医大生ということもあり忙しそうですし、人気アイドルな花陽とにこは言わずもがな」

海未「内容が内容なだけに、雪穂や亜里沙を巻き込むのは気が進みません。となると、後は凛しか残っていないじゃないですか」

凛「消去法で選ぶなんてひどいにゃー!!」ウワーン!

凛「あのね、凛だって大学とか部活とか色々あってそんなに暇人ってわけじゃないんだよ!」


凛は持ち前の身体能力を生かして、現在体育大で活躍中ですからね。

忙しいというのも本当の事でしょう。


海未「ふふ、冗談ですよ。消去法なんて用いるまでもなく、こういった相談をするなら凛しか居ないと思っていました」

凛「今更そんなこと言われても信用ならないにゃ……」グスン…


本当にただの冗談なんですけどね。

凛にこんな意地悪をしてしまうなんて、もしかしたら自分で思っている以上に気を病んでいるのかもしれません。

くっ、更に精神を鍛えなければ……。


凛「で、相談って?」

海未「そうですね、例えば……花陽に彼氏が出来たとしたらどうします? 素直に祝福できますか?」

凛「う~ん……。多分海未ちゃんと同じで、口ではおめでとうって言うだろうね。内心穏やかじゃないと思うけど」

凛「もしかしたらこっそり泣いちゃうかも」

海未「……? それはなぜなのか説明していただきたいのですが」

凛「だってそりゃそうでしょ。身内を除けば、かよちんの中で一番大事な相手は昔からずっとず~っと凛なんだよ?」

凛「でも彼氏ができるってことは、凛の一番はかよちんのままなのに、かよちんの一番は凛じゃなくなるってことじゃん!」


穂乃果の中での1番は私やことりのはずで、恋人ができるということはその1番の座が奪われてしまう、だから悲しい。

……なるほど。

同じく幼馴染持ちの凛に相談したのは、やはり正解だったようです。

感情論にも関わらず筋が通っていますし、理屈は理解できます。

私のこの鬱々とした気持ちも、そういうことなのでしょうか?


海未「なのに、おめでとうは言うのですね」

海未「私には分からないのです。上辺では穂乃果を祝福しておきながら、本心ではまるで喜べていない己の心が」

海未「変なんですよ。凄くモヤモヤするというか……」

凛「大親友、しかも幼馴染にいきなり恋人ができちゃったら、そうなるのが普通だと思うけどなー」


穂乃果だって大人なのです。

しかも私の様な学生とは違い、既に社会人。

そもそも私に、穂乃果の私生活に対し意見をする資格なんて、とっくにないのかもしれません。

お目付け役は、もう不要なのですから……。

そういった事柄が、私のもの悲しさを助長させているのかもしれません。

海未「普通……なのでしょうか?」

凛「うん。きっとそうだよ」

海未「つまり、このモヤモヤを一生抱えて生きていけと」

凛「そんなことは一言も言ってないにゃ……」


はぁ……。

凛の言っていることは理解できるのに、なぜだか素直に納得できません。


海未「そもそもどうして急に彼氏ができるのですか」

海未「ことりや絵里や希なら不思議じゃありません。しかしあの穂乃果ですよ穂乃果!」バンバン!

凛「そうだね。可愛くてかっこよくて美人で元気でコミュ力高くて、昔ほど破天荒でもなく、良い具合に落ち着いてきた穂乃果ちゃんだね」

海未「ぐっ……」

凛「これで男が寄ってこない方が不自然だと思うにゃ」

海未「そ、それはそうですが……。しかし男が寄ってきたとして、実際に付き合い始めるのは不自然極まりないです!!」


凛「そう? ここ数年の穂乃果ちゃんは、普通に恋愛とか興味ある感じだったじゃん」

海未「ッ!?」


穂乃果が恋愛に興味???

中学の頃など、何人かの男性に想いを寄せられておきながら、全てを無意識のうちに振るという凄技をやってのけた……

あの! 穂乃果が! 恋愛に! 興味!?


凛「海未ちゃんの場合、昔の印象が強すぎるだけなんじゃないかにゃ?」

凛「凛が大学で告白されてどうしようか悩んでた時も相談に乗ってくれたし、その時穂乃果ちゃん羨ましがってたよ」

海未「凛と穂乃果がそのような話をしているだなんて……。失礼ながら、はっきり言って想像できません」

凛「そりゃ恋バナくらいするよー。海未ちゃんは恋話とか苦手なこと皆知ってるから、そういう話を振られないんだと思うけど」

海未「たしかにそのような類の会話は不得手ですが……」


そう言われてみると、なんだか仲間外れみたいで少し寂しいです。


……こいばな……コイバナ……恋バナ。

自分自身が恋愛をしてみようという気はないのですが、とはいえ私もお年頃の女子大生。

話自体に1ミリたりとも関心がないと言えば、それは嘘になってしまいます。

しかし大学の友人等に、今更恋バナを振るなどという恥ずかしい真似ができるはずもないわけでして……。


海未「そうだ! ならば今恋バナしましょう!」

凛「にゃにゃ?」

海未「告白されて、凛は結局どうしたのですか?」

凛「お断りしました」

海未「な~ぜ~♪」

凛「テンションおかしいよ大丈夫?」

海未「すみません。恋バナのテンションというものが分からないもので……」


凛「まぁいいや。でも、なぜって聞かれてもあんまちゃんとした回答はできないんだよね」

海未「どういうことです?」

海未「その男性が気に入らなかったからとか、そもそも恋愛に興味がないとか、理由なら何かしらあるはずだと思いますけど」

凛「大学では彼氏持ちの友達そこそこ居るし、そういう人達の話聞いてると少しは良いなぁ~って思うから、恋愛に全く興味ないわけでもないよ」

凛「それに告白してきた人のことはちっとも嫌いじゃないしね。たまに喋ったりする、友達かどうか微妙なラインの相手だったし」

凛「だからお友達から始めましょうって返事するのも有りかなーと思ってたんだけど、穂乃果ちゃんに相談したらそれはやめた方がいいって」

海未「……? 穂乃果がそう言ったのですか?」

凛「えっとね、『友達として何ヶ月か過ごして、それからやっぱり付き合えないなと思っても、凛ちゃんの場合断り辛くなるんじゃないかな?』……みたいなこと言われちゃった」

凛「言われてみればたしかにその通りだと思うにゃ。しばらくの間期待させておいて、それから振るなんてこと……凛には無理だよ」


穂乃果は凛にとって、良き理解者なのですね。

ここ数年、花陽も真姫も忙しい日々が続いていますから、凛が他にも頼れる相手が居て良かったです。

私も、誰かにとってのそういう相手になれているでしょうか?


……あまり自信がありません。


凛「だから嫌だったわけじゃないんだけど、その人と付き合うっていうのがどうもしっくりこなくて……」

凛「そんな曖昧な気持ちで恋人になるのはなんかあれだし、それでハッキリ断ることにしたの」

凛「一言でまとめると、失礼ながらなんとなく断ったってことになっちゃうんだけどね」

海未「なんとなく、ですか」

凛「うん。その後気まずくなって今では疎遠気味だし、悪いことしちゃったなーって感じだにゃ……」

海未「人の心など得てして曖昧なものです。そのなんとなくに従うのも、時には正しいことなのかもしれませんよ」

海未「ですから、凛が気に病む必要などありません」

凛「そっか……、そうだね。うん、ありがと!」

海未「いえいえ、どういたしまして」


少しばかり臭い台詞だったでしょうか?

ま、まぁそんなことは置いておいて、己の言葉に少し引っかかった部分があります。


海未「今の自分の発言でふと思ったのですが、逆説的に考えると、穂乃果は現在なんとなくでお付き合いをしているのでしょうか?」

海未「それではなんだか不誠実な気がしてしまうのですが……」


凛「さぁ? そもそも穂乃果ちゃんに彼氏ができたことも今日まで知らなかったし、そんなこと聞かれても凛知らないよー」

凛「でもさ、彼氏の話する時すっごく嬉しそうだったんでしょ? ならそういうことなんじゃないかにゃ?」

海未「そうですね……。あの時の穂乃果は、だらしないニヤケ面を晒しつつもどこか真剣で、真摯な姿勢が見て取れました」


海未「しかし! しかしですよ!」

海未「ことりは海外から滅多に戻ってきませんし、穂乃果まで手の届かない存在になってしまったら私はどうすれば良いのですかっ!!」ウワァァァ!!!

凛「えぇ~~~……」


ことりは高校卒業後、服飾の本場であるパリの専門学校へと進学しました。

慣れない地で必死に学び、在学しながら自分のブランドを立ち上げています。

ブランド名は “Les petits oiseaux” フランス語で“小鳥”という意味だそうです。

今では無事専門学校を卒業し、依然フランスでの活動を継続中。

留学した最初の年は、長期休暇を利用し日本へ戻ってくることも珍しくなかったのですが、それ以降は忙しいのかまるで帰ってきてくれません。

それどころか、近頃連絡すらほとんど寄越さない始末。

正直少し……いえ、とても寂しいです。


凛「さっき凛のこと励ましてくれた時はせっかく見直しかけたのに、やっぱり海未ちゃんは海未ちゃんだね」

海未「それどういう意味です……」

凛「にゃははは」


凛「でもまぁほら、実際のとこそんなに心配しなくていいんじゃないかにゃ?」

凛「ことりちゃん、一生海外で生活するってわけでもないんでしょ?」

凛「それに穂乃果ちゃんも、彼氏ができたからって友達と遊ばなくなるわけじゃないんだし、『手の届かない存在』なんて言っちゃうのは大袈裟すぎるにゃ」

海未「それはそうですが……、でも……しかし……」

凛「それとも何? 海未ちゃんは付き合いたい的な意味で穂乃果ちゃんが好きなの?」

海未「さぁ、どうなのでしょう」

凛「どうなのでしょうって……」

海未「生憎私は恋愛などしたことがありませんからね。好きの種類なんて考えたこともありませんでした」

海未「凛こそ、花陽のことが大好きなのではありませんか?」

凛「もちろん大好きだよ。小さい頃なんて、本気でかよちんをお嫁さんにしたいって思ってた!」


海未「つまり、今はそうではないと」

凛「うん。大好きな気持ちは変わらないし、お婆ちゃんになっても一緒にいられたら嬉しいなーって思うけど、結婚したいとかって気持ちはないかな」

海未「同じ大好きにも、色々と種類があるのですね。難しいです……」

凛「そんなに難しいことかな? 自分の心に素直になって考えてみればいいだけのことだと思うにゃ~」

海未「素直に……」

凛「うん。直感でいいからさ、もしも穂乃果ちゃんに告白されたらどう答えるか、って考えてみたら?」

海未「穂乃果が私に告白、ですか?」



『海未ちゃん!』

『どうしたのですか?』

『実はね、私海未ちゃんのことが……ずっとずっと好きだったの!!』

『今更ですね。私も穂乃果が大好きですよ』

『えぇっと、そういう意味じゃなくてぇぇぇ~~~……』

『?』

『私と、私とっ……、付き合って下さい!!!』

『!??!!?』



海未「む、無理です無理ですそんなの無理ですっ!!!!」バタバタ!

凛「あんまり騒ぐと、向こうにいる穂乃果ちゃんにバレちゃうにゃ」


はっ! いけません! 私としたことが迂闊でした。


海未「つい取り乱してしまい、大変申し訳ございませんでした……」

凛「で、どうして無理なの?」

海未「だって、恥ずかしいじゃないですか」///

凛「えー、理由それだけー?」

海未「他にも理由を挙げるとしたら、そもそも付き合う必要性がないからでしょうかね」

海未「そんなことをしなくても一緒に居られますし、わざわざ世間から冷たい目で見られるリスクを冒してまで、女性同士で付き合う意味があるようには思えません」


同性愛者の方々を愚弄するつもりなど毛ほどもありませんが、瀬感からの風当たりが強いのは事実ですからね。

付き合ったからといって私と穂乃果の関係が変わるとも思えませんし、好き好んで茨の道へ歩を進める必要もないでしょう。


凛「じゃあ、一緒に居られない人……。例えばことりちゃんから告白されたらどうする?」

海未「ことり……ですか……」

凛「海外に旅立つ前にさ、もしも告白されたとしたらどう返事した?」



『本当に、行ってしまうのですね』

『うん……。ずっと3人一緒に居たいって言ったのは私なのに、ごめんね』

『謝るようなことではありませんよ。夢を叶えるための旅立ちなのですから、むしろ目出度いことです。ご武運を、祈っています』

『ありがとう。はぁ……言わずにいようと思ってたのに、やっぱり我慢できないや』

『?』

『こんな時に言うことじゃないかもしれないけど、私ね……海未ちゃんのことが好き。愛してるの!』

『なっ!? それは、その……友人としてとかそういう意味ではなく……』

『うん、そういう意味じゃないよ。私、南ことりは、園田海未のことを心の底よりお慕いしています』


『……返事は、今するしかないのですよね』

『もちろん』

『…………』

『もしOKしてくれても遠距離恋愛ってことになっちゃうけど、それでも私は付き合いたい。そしたら海外で一人になっても、きっと頑張れると思うのっ!』ウルウル

『ことり……』

『海未ちゃん……、おねがぁい♡』



海未「あぁぁぁぁぁ……そんな、上目遣いでおねだりなんて……ことりはズルイです! これでは断ろうにも断り切れません!!」///

凛「…………」シラー…

海未「あ、いえ、そのですね、今のは凛に想像してみろと言われたので仕方なくやっただけであってなにもそのような願望を抱いているとかそういうわけでは決してなく……」

凛「凛まだ何も言ってないよ」

海未「あきらか退いていたではありませんか!」

凛「そういう妄想力が作詞に繋がるんだなって関心してただけで、これっぽっちもイミワカンナイとかキモチワルイとかそんなこと思ってないにゃ」ウンウン

海未「そうですか気持ち悪いですかそうですかそうですか……」ズーン…


真面目な話……今現在と、ことりが海外へ旅立ってしまった時、私が抱いている想いは似ているような気がします。

あの時も私は、表面上はことりの門出を祝福しました。

しかし今になって思い返してみると、心の奥底では、また穂乃果に我儘を言ってほしいと──ことりを引き止めてほしいと願っていたのかもしれません。


私は最低です。

夢に向かって羽ばたくことりを、応援するのは口先だけ。

そうやって自分だけ良い幼馴染を演じ、汚れ役をまた穂乃果に押し付けようとしていた。


ことりは自ら前へ進んだにも関わらず、ずっと3人一緒に居たいと思い続けていたのは私の方だった。

あの時穂乃果は、みっともなく泣き叫びながらも、最後には心の底からことりを応援し送り出していたというのに。

なのに私は……私は…………。


凛「あっ、顔伏せて!」

海未「え?」


凛「いいから早く!」バッ!

海未「は、はいっ!」バッ!



穂乃果「────────」アハハハ!

穂乃果「────────」スタスタ



凛「……ふぅ。どうにかバレなかったみたいだね」

海未「この状況でよくバレませんでしたね」

凛「穂乃果ちゃんお喋りに夢中だったみたいだし。それに恋は盲目ってやつだにゃ」

海未「恋は盲目という言葉に、物理的に視野が狭くなるという意味合いは含まれていなかったように思うのですが」

凛「細かいことは気にしない気にしない! で、これからどうするの? まだ尾行続ける?」

海未「……もう終わりにしましょう。こんな子供じみた真似に付き合わせてしまい、すみませんでした」



我ながら本当に子供じみています。

歳だけとっても、高校時代からまるで中身が成長していない。


凛「……もしかして、キモチワルイって言ったの本気で気にしちゃった? ごめんね?」

海未「あぁいえ、断じて凛のせいではではありませんよ。ただ、少し物思いに耽っていただけです」

凛「物思い?」

海未「はい。ここだけの話、幼少期における私・穂乃果・ことりの中で、実は私が一番未熟だったのです」

凛「えぇ~!? そんなの全然想像つかないにゃー!」

海未「そうは言われましても本当のことですから」


どう説明すれば上手く伝わるでしょう?

少々恥ずかしいですが、凛に対しては今更な感じもしますしね。

昔話と洒落込みますか。


海未「昔からやんちゃで勇気溢れる穂乃果に、穏やかながら肝の据わっていることり」

海未「私はそんな強い2人の影に隠れて怯えているだけの、臆病で気弱な子だったのです」

凛「へぇ~。恥ずかしがりやなのは知ってたけど、臆病で気弱っていうのはなんか意外かも」

海未「強くなろうと、大人になろうと努力しましたからね」

海未「中学生になる頃には、3人の中で私が肉体的にも精神的にも最も強く、一番大人であるのだと思えるようになっていました」

海未「それは思い違いでも自惚れでもなく、多分事実だったのでしょう」

凛「わかるにゃわかるにゃ」

海未「しかし私は、背伸びをしすぎていたのかもしれません」


そう、早い段階で背伸びをしすぎた。

2人に置いていかれるのが嫌で、繊細で我儘な心に蓋をしてまで、無理矢理大人になったのです。


海未「そうやって己を律し、強引に成長した結果が、好きの違いすら分からないような今の私です」


海未「それだけなら、まだよかったのですけどね……」

凛「?」

海未「周りの皆は日々成長しているのに対し、私の成長は、中学や高校の時点で止まってしまっているのですよ」

凛「そんなことないと思うけど」

海未「いいえ、そんなことあります。中途半端に大人になって、ずっと本当の大人になりきれないまま……」

凛「海未ちゃん……」


おっと、凛が瞳を伏せてしまっています。

悲しい気持ちにさせたくて、昔話を始めたわけではないというのに……。

やはり私は未熟者ですね。


海未「すみません、そんなに気にしないで下さい。今のは悩みというより、ちょっとした愚痴とでも思って聞き流してもらえれば幸いです」

凛「そんなぁ。悩みくらい聞かせてほしいにゃあ!」


海未「ありがとうございます。けれど私は平気、大丈夫です」

海未「今凛に話を聞いてもらえただけでも、幾分か楽になったような気がしますから」

凛「ほんと?」

海未「本当ですとも」

海未「穂乃果やことりの前では、口が裂けせてもこんな弱音吐けませんからね。凛が居てくれてとても助かりました!」

凛「えへへ~」


もちろん、穂乃果とことりを信用していないわけではありません。

それどころか最も心を許せる相手です。

しかし……だからこそ言えない、ということもあります。


海未「あの2人には、つい強い自分を出したくなってしまいます」

凛「あ、それなら凛もわかるにゃ! かよちん相手にカッコイイとこ見せたくなる時あるもん!」

海未「ふふふ、そうですか。共感を得られて嬉しいです」


海未「そうだ。穂乃果の尾行だけして解散というのもなんですし、今日は凛の好きなラーメン屋巡りでもどうです?」

凛「っ!!!」

海未「お詫びも兼ねて奢りますよ。如何でしょうか?」

凛「うぅぅぅ~~~!! テンション上がるにゃー!!!」>ω</



穂乃果とことりの前では、弱い自分を隠してしまう。

矮小なプライドの塊り。

ただの強がりで格好付け。


……卑屈になるつもりはありません。

自分に真っ当な評価を下したらこうなってしまっただけ、残念ながらこれが現実です。

ほらね、典型的な子供でしょう?





・ ・

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・ ・ ・ ・

・ ・ ・ ・ ・



それから1年が経過し、私もついに学生の身分からおさらばです。

いつの日か園田の華である日舞を継ぐことを夢見て修行をしつつ、弓道と剣道では師範代として教える側にまわるという、中々に多忙な毎日を過ごしています。

しかし休日がまるでないわけではありませんし、穂乃果との関係性が変わる……ましてや疎遠になるなどということはありませんでした。


社会人になったとはいえ穂乃果も私もほとんど家にいますし、厳しい稽古も幼い頃から日常の一部でしたから、変化というものを感じようにも感じられません。

以前の私は穂乃果に恋人が出来た程度のことで狼狽えていましたが、あれは全て杞憂だったのでしょうか?


……あ。1つだけ、変化と呼べる出来事がありましたね。

しかしそれは、とても喜ばしい変化した。


大学卒業から更に半年程経過したある日。

何の連絡もなく、穂乃果が突然うちにやってきた時のことです。


海未「急にどうしたのですか? 今日は弓道の生徒達があと数時間で来ますし、あまり暇はないのですが」

穂乃果「あー、その、えっと……。怒らないで話聞いてくれる?」

海未「……つまり、怒られるようなことをしでかしたのですね」


それにしても、わざわざ私に報告しなければならないような悪いこととは何なのでしょう?

高校時代であればいくらでも想像はつきますが、今はもう大半のことは自己責任です。

しかし穂乃果の表情は不安気で、私の怒りを本気で恐れているように見えます。


もし、家族にも彼氏にも言いにくい事が起き私の元を訪れたのだとしたら、どのような理由があるでしょうか。

ま、まさかっ!

まだ結婚もしていないというのに新たな命を宿してしまったとかそういう類のことではないでしょうね!?

いけませんいけません! いくらなんでも怒って済む問題ではないじゃありませんか!!


穂乃果「むっ、なんか変なこと考えてない?」

海未「何を言い出すのですか! そんなわけないでしょう、破廉恥です!!」

穂乃果「海未ちゃん……、ハレンチなこと考えてたんだね……」

海未「ちちちちち違います! 見当違いも甚だしいですよ!!」アタフタ


あぁぁ……。

私はなんという想像をしていたのでしょう。


海未「……それで、一体どうしたのですか?」

穂乃果「あ、それはね、私が怒られるわけじゃなくって……」チラッ


先程から穂乃果が門の方をチラチラと見ているものですから、私も目を向けてみると──


海未「なっ、もしや……」


──そこには見覚えのあるサイドセールと、非常に特徴的なとさかが見え隠れしているではありませんか!


海未「ことりっ!! ことり、ことりですよね!?」

ことり「う、うん」オズオズ…

ことり「……ただいま、で良いのかなぁ?」

海未「どうしてまるで連絡してくれなかったのですかっ!!!!!」クワッ!

ことり「ぴぃ!?」

海未「ことりにもことりの事情があるのでしょうし、ここ数年まるで帰国してこなかった件については何も言いません!」

海未「しかし! しかしですよ? 電話なりメールなり手紙なり、連絡手段ならいくらでもあるではありませんか!!」


海未「今日戻ってくることだって私はまるで耳にしていませんし、それに──」

穂乃果「まぁまぁ海未ちゃん! 落ち着いて!! 私だって連絡もらってなかったし急に帰って来て驚いてるんだから!」

ことり「穂乃果ちゃん、海未ちゃん。本当に……ごめんなさい」

ことり「で、でもね、ちゃんとすっごく頑張ってたんだよ? それで段々私の作品の人気が出てきて、ようやくお店を持てるかもしれないとこまできたの!」

海未「本当ですか!? 店というのは、その、ことりがデザインしてことりが作った服を販売することりの店ということですよね?」

ことり「うん。向こうでもそういう話は出てたんだけど、日本からも『単なるブランドではなく会社にしてみないか?』って声がかかったの」

ことり「まだちゃんとお店を開けるかどうかも分からないけど、でも、もし日本に会社を持つことができたらそれが1番嬉しいな……って」

ことり「それで急に戻ってくることになって……だけど、せっかく2人がくれた連絡を無視しちゃったことも今まで何度かあったし、だから、私、不安で……」

穂乃果「それだけ忙しかったってことでしょ? 私は全然怒ってないよ。だって、こうやってちゃんと帰ってきてくれたんだもん!」ヨシヨシ

ことり「ホノカチャン……」(;8;)

海未「私だって好きで怒っているわけではありません!!」


こんなにも感情を露わにしたのはいつぶりでしょうか?

師範代として怒ることはありますが、それはあくまで指導の一環ですし、頭ごなしにならないようできるだけ冷静な態度を心掛けています。

そのため、穂乃果に手がかからなくなって以来、本気で誰かを怒ったことはないかもしれません。


なのに今は、ことりと数年振りの再会に感情が高ぶり、まるで抑えが効きません。

嬉しくて嬉しくて堪らないのに、更に怒鳴りつけてしまいそうです。


穂乃果「ことりちゃんことりちゃん」

穂乃果「………………」ヒソヒソ

ことり「…………」コクリ


ことり「許して海未ちゃん! ……おねがぁい♡」

海未「うぐっ!?」


その手に惑わされてはいけません!

園田海未! 己を強くもつのです!!


海未「クククッ……、まだまだ甘いですね」

穂乃果「!?」

海未「私はこの数年間、特に精神面での強化を試みてきました。今更そのような手にしてやられるわけがないでしょう!」

ことり「ぁぅ~~~~……」


まったく、この2人ときたら。

成長しているのか何も変わっていないのか、時々分からなくなってしまいます。

……仕方がないですね。


海未「けれどまぁ、帰ってきてくれたことは純粋に嬉しいです。とてもとても、嬉しいです」

海未「ことり、今日この後時間はありますか?」

ことり「え? う、うん。ある程度余裕をもって戻ってきたから、今日と明日は暇だけど……」

海未「それはよかった。明日は私も休みですし、本日の仕事が終わり次第ことりの元へと向かいます。そこでたっぷりと話を聞かせて下さい」

海未「海外での活動、連絡できない程に忙しい日々、ことりが何を見て何を得てきたのか」

海未「私たちの知らないことりのことを、沢山教えてほしいのです。まだまだ小言は言い足りませんが、それで全て不問にします」

ことり「海未ちゃん……」


穂乃果「よ~し、それじゃあ今日はお泊り会だねっ! うわぁー何年振りだろう!!」ウキウキ

海未「こら、穂乃果は明日も仕事でしょう?」

穂乃果「うっ……。それはほら、朝起きてすぐ家に帰ればなんとかなるって!!」

ことり「ちゃんと起きられるようになったの?」

穂乃果「それは~そのぉ~……朝はまだ少し弱いかなーあははははー」

海未「はぁ、笑い事ではありませんよ」


海未「何はともかく、……ことり」

穂乃果「ことりちゃん」


海未「お帰りなさい」
穂乃果「おかえり!」


ことり「……うんっ! ただいま!!」



その日の晩、数年振りに3人で布団を並べ一緒に寝転がりながら、ことりは様々な話を聞かせてくれました。

パリ特有の文化や、そこで出会った人々のこと。

日本では見ることのできない街並みや景色。

そして何より興味深かったのは、ブランドを経営していくうえでの話です。


穂乃果「ちゃんとしたお店を構えて仕事してたわけじゃないんでしょ? じゃあどうやって商売してたの?」

ことり「希望通りのお洋服を作ります! っていうのを売りにしてたから、基本的には電話やメールで注文を受け付けて、お客さんの要望を聞くことが多かったかな」

ことり「もちろんあらかじめ作ってある作品を売ることも少なくなかったけど」

海未「お店でもないのに売る……というのが、経営経験のない私には些か想像しにくいですね」

海未「田舎では農家の作った野菜が、お店を構えることなく路上で販売でされていることがあるそうですが、そのようなものと捉えてしまってもいいのしょうか?」


ことり「ん~とね、ブランドを立ち上げるって言葉だけ聞くとなんだか物凄いことの様に感じるけど、実際はそうじゃないの」

ことり「本人が『○○って名前のブランドを立ち上げました』って、そう宣言するだけでOKなんだぁ」

海未「なるほど、知りませんでした」

ことり「もちろん商標を取ったりとか法律的なことが絡んだりもしてくるけど、それよりももっと重要な問題となってくるのは……ズバリ! 売れるかどうかってこと」

穂乃果「たしかに誰でもブランドつくれちゃうんじゃ、そりゃそうなるよねー」

ことり「うん。だから必死で頑張ったんだ」

ことり「朝昼は学校に通い、夜はアルバイト。そして貯めたお金や仕送りは宣伝費用や衣服の作成費用にあてて、残ったお金でどうにか衣食住をやりくりする……最初はずっとそんな感じで赤字続き」

ことり「でも学校を卒業する頃には、徐々に徐々に支出額と収支額が同じくらいになってきて、その内安定して利益が生まれるようになったの!」

海未「そこから会社立ち上げの話を持ち掛けられるまでに成長したのですから、とてつもなく凄いことですね」

ことり「でもそれは周りの手助けがあったおかげで、自分の頑張りだけじゃどうにもならないこともよくあったから……」

海未「感謝の気持ちを忘れないのも素晴らしいことではありませんか」

穂乃果「そうだねっ!」

ことり「うふふ。2人とも、ありがとっ♡」



他にもスランプに陥った時のことですとか、多数の出来事を教えてもらいました。

当然ながら、異国の地における活動は並大抵の苦労ではなかったそうです。

しかしことりの場合、デザイン力も手先の器用さも昔からずば抜けていましたからね。

才能に満ち満ちた人間が、決して驕ることなく日進月歩を忘れなければ、努力が実るのは奇跡ではなく必然なのかもしれません。

私に日舞の才があるかどうかはともかく、努力は報われるものであると、そう思いたいだけでもありますが。


……とまぁこのように、ことりが我々の元へと帰ってきてくれた。

先ほど述べた喜ばしい変化とはこのことですね。



そうそう。

変化と言えるかどうかは判断しかねますが、驚いたことがもう1つ。

穂乃果の家に集まり、ことりの帰国を祝しパーティーを催した時のことです。

パーティーといっても、少しばかり豪華な食事をとりつつ、談笑していただけなんですけれども。

話題の矛先はコロコロと変わり、ことりが今度お店を持つことについての話となりました。


穂乃果「経営で困ったことがあったら、私になんでも聞いてね!」

ことり「穂乃果ちゃんありがとうっ!」


また穂乃果は適当なことを……。

職人としても店員としても頑張っているのは知っていますが、穂むらを直接経営しているのはまだ御両親でしょうに。


海未「和菓子屋の経営知識がことりの役に立つことは、果たしてあるのでしょうか……」

穂乃果「馬鹿にしすぎだからぁ! あるにきまってるじゃん!!」

雪穂「あ、分かった。海未ちゃんはただ売る事しか考えてないんでしょ?」

海未「そ、そんなことはありません! 様々な問題があることくらいは知っています」

穂乃果「具体的には?」

海未「立地条件ですとか、人件費ですとか……。他には、えぇっと、税金とかですか? あとは……」ウーン…


ここまであっていますよね。

……あってますよね?


穂乃果「ちゃんとした商人や事業主して仕事をするってなると、法人税や所得税や事業税や確定申告はもちろん、もっと色んな問題が出てくるんだよ」

穂乃果「例えばお店を開くのに必要な資格とか、あとは登記も忘れちゃいけないし」

穂乃果「税金関係は全てを自分でやるより、税務署に相談するなり経理さん雇うなりした方が良いよ。登記なら行政書士さんに相談だね」

穂乃果「まぁ会社を法人化するかどうかによっても変わってくるんだけどさ」


ちょっと待ってくださいあなた誰です?

専門用語が口からこんなにも滑らかに出てくるなんて、本当に私の知っている穂乃果ですか!?


穂乃果「他にもまだまだ言い切れないくらい問題は山積みなんだけど、それは今度分かりやすい本や資料をことりちゃんにあげるよ!」

穂乃果「それと、私が法律関係で直接手助けするのは無理でも、うちがお世話になってる人達を紹介するくらいのことならできると思うな~」


ことり「わぁ! 穂乃果ちゃん、とっても頼もしい!!」モッギュー!

穂乃果「ハッハッハ、それほどでもあるかなー! なんちゃって~」エヘヘー

雪穂「しっかりしてきたなぁと思いきや、すぐ調子に乗るんだから……」

海未「くっ、私が穂乃果より浅学だなんて……。屈辱です……!」ガクリ


あんなにも勉強嫌いだった穂乃果がここまで知識を有していたとは、驚愕の一言につきます。

しかしよくよく考えてみれば、昔からやると決めたことにはとことん一直線な子でしたからね。

穂むらを継ぐと完全に決意したその時から、きっと和菓子造り以外の勉学にも精を出していたのでしょう。



そして暫くして、ことりの会社が現実のものとなりました。

そこからの成長は本当にめざましいもので、ほんの数年にして有名ブランドに!

この数年の経過により、私たちは四捨五入したくない年齢となってしまったわけですが……努力ではどうしようもない現実からは目を逸らしましょう……。

と、とにかく! ブランド“Les petits oiseaux”の勢いは留まるところを知らず、今では海外進出まで果たしていています。


そのためことりは海外へ飛ぶ機会も増えたのですが、もう何も言うまい……今度こそ心の底から応援しようと胸に誓いました。

幸い定期的に日本へ帰って来てくれていますし、飛び疲れたことりの止まり木になれたらなぁと、そう思うのです。


もちろんことりが日本に戻ってきた際には、穂乃果も含めた3人で集まることが多く、積もる話に花を咲かせています。

主な話題と言えば、仕事のことや他のμ'sメンバーのこと、あとたまに学生時代の思い出話といったところでしょうか。

こうやって2人と話していると、まるで学生に若返ったような気がして……。


だからでしょうか、私はすっかり忘れてしまっていたのです。



────穂乃果には、もう4年以上寄り添い続けた殿方が居るのだということを。


ごめんちょっと風呂入ったりなんやかんやしてくるんで、一旦さようなら。

ラストまでちゃんと書き終わっているので、今日中には完結すると思います。

期待レスありがとうございます。
風呂も晩御飯も終わったので、更新再開しますよっと!





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丁度ことりが帰国している、とある日の事です。

携帯電話が鳴り響き目を向けてみると、画面には高坂穂乃果の文字が。


   prrrrr prrrrr ピッ!
海未「はい、もしもし」

穂乃果『あ、もしもし海未ちゃん? 今時間ある?』

海未「数時間程度であれば大丈夫ですよ」

穂乃果『じゃあ今すぐことりちゃんちに来て! じゃあねっ!』

海未「ちょっと穂乃果、待ちなさ──」ツー…ツー…ツー…


……切られてしまいました。

いきなりことりの家へ来いと言われましても、要件の検討もつかないのですが。

まぁいいでしょう。

数時間程度であれば大丈夫と言ってしまった手前、すぐに南家へ向かうとしますか。



   ピンポーン!
海未「…………」

ことり『どちら様ですか~?』

海未「園田です。穂乃果に呼ばれたため来たのですが、ことりにも話は通っていたでしょうか?」

ことり『うん、大丈夫だよ。今開けるね』

   ガチャリ
ことり「いらっしゃい、海未ちゃんっ」

海未「えぇ、お邪魔します」

ことり「こっちこっち」トテトテ


ことりに先導され、2階への階段を上っていきます。

どこか少し浮き足立っているようにも見えますし、何か見せたいものでもあるのでしょうか?


ことり「さ、どうぞ!」


ことりが部屋のドアを開け、私を招き入れてくれます。

するとそこには──


海未「なっ……」


──一瞬、純白の天使かと見紛う程、とてつもなく煌びやかな衣装を纏った穂乃果の姿が。

それはあまりにも綺麗で、思わず目を疑ってしまいました。


穂乃果「似合ってるかな? どう? どう?」

海未「…………」アングリ…

ことり「どうしたの?」

海未「あ、いえ、なんでもありません。とても似合っていますね。ですが……ウエディングドレスって……」

穂乃果「ふふふー、良いでしょ~」クルクルー

ことり「ホノカチャン! まだあんまり動いちゃ駄目っ」

穂乃果「おっと、ごめんごめん」


こう言ってしまっては凛に大変失礼ですが、あのファッションショーとは比べ物にならない程に豪華な装いです。

あれはあくまでウエディングドレスを模したライブ衣装ですし、本物の方が華やかなのは当然かもしれませんが。


ことり「式場も抑えてないのに気が早いかな~って思ったんだけど、ちゃんとプロポーズはされたみたいだし、ちょっとくらい早くてもまぁ良いかなって」

ことり「だから張り切って、穂乃果ちゃん専用のウエディングドレス作っちゃいました~!」

穂乃果「驚かせようと思って、このこと彼にもまだ内緒なんだよ? 凄いでしょ」

海未「凄いというか何といいますか……世界的なデザイナーである南ことりが手掛けた特製衣装。値段がとんでもないことになりそうですね」

穂乃果「っ!?」

ことり「だ、大丈夫だよ! 作るのとっても楽しかったし、見えない部分まで勝手に拘っちゃったりしてるし、製作費以上を請求するつもりなんて全然ないから!」

穂乃果「良かったー……」

ことり「あ、それでね、この部分なんだけど~」


ことりがウエディングドレスについて、色々と説明してくれました。

本当に穂乃果のことを想って作ったのだなということがひしひしと伝わってきて、感動してしまいます。


ことり「ここはもう少しフリルのボリューム出そうかな……」

海未「これ、完成品ではないのですか?」

ことり「ん~、普通なら完成だよ? あんまり衣装が豪華すぎても、花嫁さん自身が目立たなくなっちゃうし」

ことり「でも穂乃果ちゃんならそんな心配しなくていいから、もっと手を加えてみるのもアリかなって」

穂乃果「えぇ~~~、嬉しいけどそんなことないよぉ! ことりちゃんの方が全然カワイイし、海未ちゃんの方が美人さんじゃん!」

ことり「あのね、穂乃果ちゃんはとっても可愛いし、それに大切なのは顔だけじゃないの」

ことり「ウエディングドレスを着たときに堂々としていられるか。衣装負けしちゃわないか。着る人の表情やオーラも考えて作ってるんだよ?」

穂乃果「ほぇー……、さすがトッププロ」

海未「本当に凄いですね……」


それにしても、結婚。

結婚ですか……。


海未「どうしたものか、言葉が出てきませんね。おめでとうございますを言うのは少し早いでしょうか?」

ことり「私はもうおめでとうって言っちゃったけど……」

海未「そうですか、では改めまして……。穂乃果、この度はおめでとうございます!」

穂乃果「ありがとね、海未ちゃんっ!」


ことり「…………」ジィー…

海未「な、なんですかことり」

ことり「あんまり浮かない顔してるけど、大丈夫?」

穂乃果「もしかして私の結婚嬉しくないの!?」

海未「いえ、そういうことではありません。ただ……」

海未「もう結婚を考えなければならない歳なのかと思うと、少しは気も滅入りますよ。私もいずれお見合いなどさせられてしまうのでしょうか……」

穂乃果「海未ちゃんちの親って厳しいけど根は凄く良い人たちだし、無理矢理結婚させられちゃうことはないんじゃない?」

ことり「それに三十や四十で結婚する人も沢山居るんだし、焦ることじゃないよ」


ならいいのですが。

できることなら、いつの日か自然な恋に落ちてみたいものです。


ことり「…………」

海未「?」

ことり「ううん、なんでもない」

穂乃果「海未ちゃん、急に呼び出しちゃってごめんね? どう手直するか決める時に、どうしても海未ちゃんの意見も聞きたかったから」

海未「気にしないでください。ですが完成品を最初に見せる相手まで、私にしてしまってはいけませんよ」

穂乃果「分かってるって! ちゃんと式のこととか決まったら招待状送るね?」

海未「ええ。楽しみにしています」





・ ・

・ ・ ・

・ ・ ・ ・

・ ・ ・ ・ ・



そして数ヶ月後。

ついに穂乃果の結婚式当日となりました。

式場でことりや雪穂と談笑していると、向こうから聞き覚えのある声が聞こえてきます。


   「お~い」ブンブン

ことり「!?」

雪穂「えっ、もしかして凛先輩ですか!?」


最近凛と関わりのなかったことりや雪穂が、驚いてしまうのも無理はありません。

今日は全員正装ですし化粧も気合いが入っていますから、全員普段とは少し雰囲気が違っていますが、昔との差が1番激しいのは凛でしょう。

整った顔立ちに肩より少し長めでストレートな髪、全体的に上品で大人びた空気を醸し出しています。

http://i.imgur.com/Ffglby5.jpg
↑他のスレで貼ったものの使い回しですが、結婚式参加用の服を着た大人リンチャンダヨォォォオオオ!!!!!!


海未「やはり驚かれてしまうようですね」

凛「そんなに変わったかなぁ?」

ことり「昔も可愛かったけど、今では物凄い美人さんっていうか……凄い別人みたい!」

凛「そんなに褒められると照れちゃうよー」///

雪穂「本当に綺麗ですよ。お久しぶりです」

凛「うん、久しぶり~!」

海未「花陽達はまだ来ていないのですか?」

凛「もう来てるよ。さっきまで向こうで、かよちんと真姫ちゃんとにこちゃんと希ちゃんと話してたし」

海未「そうですか。ならば……」


……私達もそちらへ行きましょう。と言おうとしたところで、入り口付近に見知った顔を発見しました。


亜里沙「あ、雪穂ー!」オーイ!

雪穂「絵里さん、亜里沙~、こっちこっちー」


海未「御久し振りです」

ことり「ひさしぶり!」

亜里沙「お久しぶりです!」

絵里「ええ、皆久しぶりね」

海未「芸能人とは予定が合い辛いですし、ことりは最近世界中を飛び回っていますし、このような機会でもなければ中々集まれませんから」


アイドルを続けているにこや花陽だけでなく、絵里も芸能界で大活躍中です。

このような冠婚葬祭でもなければ、一堂に会することなどまず不可能でしょう。

今や絵里は、モデルや女優からバラエティー番組の司会までこなすマルチタレントとして、画面の向こうでお見かけすることも珍しくありませんからね。


ことり「今日は皆に会えてとっても嬉しいっ」

凛「私もだよ!」

海未「そうですね、私も嬉しいです」

絵里「……?」


絵里が凛の顔を見つめ、不思議そうな顔をしています。

あなた……まさか……。


絵里「えっと、こちらの方は? 海未やことりや穂乃果の御友人?」

ことり「えっ……」

雪穂「絵里さん、それマジで言ってます?」

海未「あなたは最低です」

絵里「ぅえぇ!!? ちょ、ちょっと待って! こんな綺麗な女性が知り合いに居たらそうそう忘れることなんてできないだろうし、本当に知らないわよ!?」

凛「そんな……、本気で私の事忘れちゃったんだ……」シュン…


いくら見た目の雰囲気が変わっているとはいえ、凛は凛です!

まったく! 絵里の目は節穴ですか!!


亜里沙「お姉ちゃんお姉ちゃん」クイクイ

絵里「?」

亜里沙「…………」ヒソヒソ…

絵里「……」

絵里「…………」

絵里「……ッ!!??!?!? あ、あなた凛なのっ!?」

凛「そうだよ! どこからどう見たって凛でしょ!!」


絵里「いや! だって! 見た目も雰囲気も口調も何から何まで別人じゃない!!」

海未「言い訳とは見苦しいですよ。顔も声も凛のままじゃないですか」

凛「いくら数年ぶりだからって酷いよぉ……」

絵里「うぅぅ……、大変申し訳ございませんでした……」ペコリン


そんな会話をしている内に、思った以上に時間が経過していたようです。

照明の雰囲気が変わり、周囲の話し声も少し落ち着きました。


司会『本日は、誠におめでとうございます。たいへん長らくお待たせいたしました。只今より──』


海未「始まるようですね」

ことり「絵里ちゃんも凛ちゃんも一旦落ち着いて、ね?」

凛「うん」

絵里「はい」


     パパパパ-ン♪  パパパパ-ン♪


暫くすると結婚式の定番ともいえる曲が流れ出し、式場の大きな扉が開かれます。

扉の向こうに居るのは、ことりが手掛けたウエディングドレスを身に纏った花嫁姿の穂乃果と、そのお父上。

日頃から常に職人気質で威風堂々とされた方なのですが、今は極度の緊張のためか非常に顔を引きつらせ、足取りも覚束ないといった具合です。

私も幼いころから幾度となくお世話になった相手ですからね。

隣で気を揉む雪穂の気持ちが、嫌という程に分かります。


それに対し穂乃果は、……ことりの予想通りです。

とてつもなく煌びやかな衣装に劣ることなく堂々としていて、確かな足取りでバージンロードを進んでいます。


絵里「ハラショー……」パチパチパチ

亜里沙「хорошо……」パチパチパチ

凛「すっごくキレイ……」パチパチパチ


雪穂「うっ、うぅぅ……。よかった、本当によかった……」グスン…

ことり「そうだね、おめでたいね……うわぁぁぁぁん」(;8;)

海未「2人共みっともないですよ。そんなに涙を流していては、せっかくのメイクが崩れてしまいます」

雪穂「そんなこと……ぐすっ、言われたって……」

ことり「海未ちゃんだって泣いてるじゃない……」

海未「そんな!? 私は泣いてなど……あっ……」


自分でも意識しないうちに、両の目から涙が溢れていました。

感動……勿論それもあるのでしょう。

だが違う、感動だけが理由ではないと、私は気がついてしまった。


気がつかない方が幸せだったかもしれないというのに。

今になって、もうどうしようもないタイミングになってから、私は肝心なことを理解してしまったのです。




────「それとも何? 海未ちゃんは付き合いたい的な意味で穂乃果ちゃんが好きなの?」

────「さぁ、どうなのでしょう」

────「どうなのでしょうって……」

────「生憎私は恋愛などしたことがありませんからね。好きの種類なんて考えたこともありませんでした」



────「同じ大好きにも、色々と種類があるのですね。難しいです……」

────「そんなに難しいことかな? 自分の心に素直になって考えてみればいいだけのことだと思うにゃ~」



……ふふ、そういうことですか。

こんなにも簡単なことを今更理解するなんて、なんと愚かで滑稽なのでしょう。


牧師『──を夫とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も共に歩み……』


生を終える瞬間、最期に穂乃果の隣に居るのは、私ではなくあの殿方だ。

そう考えると、悔しくて、苦しくて、今にも胸が張り裂けそうで……どれだけ己を律しても、涙の洪水はまるで収まってくれません。


牧師『他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに誓いますか?』

穂乃果「誓いますっ!」



幼い頃は、いつまでも隣に居るのが当たり前であると、そう考えていたものです。

しかし高校卒業後、別々の進路を歩みだし、ずっと隣に居られるわけではないということを実感しました。

しかしそれは本当に実感したわけではなく、実感した気になっていただけだったのですね。


今、穂乃果が新郎と誓いの口付けを交わす瞬間を目の当たりにして、初めて真の実感を得る事ができました。

それと同時に、全てを理解してしまったのです。


己の中において、穂乃果が占める割合大きさ。

大切さ、かけがえのなさ。

そして溢れ出んばかりの想い。



なるほど、これが……恋。




私は何年も何年も前から、穂乃果のことを常に愛していたのですね。

先程私は、気がつかない方が幸せだったかもしれないと思いました。

しかし、それでも尚、気がつくことができて良かった。


穂乃果は私を強くしてくれました。

穂乃果は私とことりを繋いでくれました。

穂乃果は私にまだ見ぬ景色を見せてくれました。

穂乃果は私の青春を鮮やかに色付けてくれました。

そして穂乃果は私に……恋というものを教えてくれました。


これだけ沢山のタカラモノをいただけた幸福を、享受しなければバチがあたってしまうというものです。



そしていつしか涙も収まり、盛大な式も終わりを迎えました。

ここで解散……かと思いきや、希が二次会のセッティングをしてくれていたようです。


希「やっきにく~♪ やっきにく~♬」ルンルン

真姫「いくら大部屋を借りたとはいえ、結婚式の二次会が焼肉ってどうなのよ」

穂乃果「私は普通に嬉しいよ?」

凛「旦那さんはほっといて大丈夫なの?」

穂乃果「う~ん、最初はマズイかなーと思ったんだけどさ、せっかく旧友と集まれたんだしたまには思いっきり遊んで来い! ……って言われちゃって」

花陽「凄く良い人そうだね」

凛「羨ましいな~」

ことり「さっすが穂乃果ちゃん!」

穂乃果「でしょー?」


たしかに良い人のようですね。

穂乃果も大変幸せそうですし、その点に関しては心配ないでしょう。


にこ「にしても、私達の中で最初に身を固めるのが穂乃果だなんて思いもしなかったわ」

絵里「ほんとにね。凄く驚いちゃった」

凛「そうかなぁ? 私からしたら予想通りって感じだけど」

にこ「なんでよ」

凛「だって学生の頃は穂乃果ちゃんや海未ちゃんと遊ぶ機会も多かったしね~、前々から穂乃果ちゃんに彼氏いること知ってたよ。たしかもう4年くらい前だっけ?」


正確には、そろそろ5年経過しますね。

最初はあっさり別れるものかと思っていたのに、まさか結婚までするなんて、予想外にも程があります。


にこ「そんなに前から!? てっきり電撃結婚かと……」

海未「いくら穂乃果とはいえ、思い付きだけで結婚してしまう程に短絡的ではありませんよ」

穂乃果「あたりまえじゃん!」


私は今、普段通りに振る舞えているでしょうか。

それだけが不安です。


私のそんな不安も他所に、二次会は宴もたけなわ。

皆さんのお酒も食事も進んできた頃、何やらにこと絵里が騒いでいるようです。


絵里「一生独身のまま過ごすつもり?」

にこ「さあね。ファンに結婚の心配されるような歳になったら、その時に考えるわ」

絵里「そんなことを言っていたら、あっという間に歳を取ってしまうわ」

絵里「すぐに年増よ! 賞味期限切れよ!!」

にこ「ぬぁ~んですってー!! 日本中から愛されまくりのにこにー相手に何てこと言ってくれんのよ!!!」

絵里「最近じゃ知名度も仕事内容も、私達大体同じじゃない。どうせ同じ未来を辿るのよ……独り身のまま世界から消えていくんだわ……」

にこ「私はあんたみたいな負け犬とは違うっ!」

絵里「いいえ、同じよ」

絵里「ははは……私もにこも仕事が恋人なんて言っている内に、気づいたら取り返しのつかない年齢になっているのよ……。そしてそのまま孤独死していくのだわ……」ズーン…


なんなのでしょうか絵里のこのテンションは……。


穂乃果「……ぅ絵里ちゃん? 一体どうしちゃったの?」

真姫「イミワカンナイ」

希「飲むと面倒になるんはいつものことやから、えりちのことは気にせんでいいんよ」

穂乃果「へぇ~。意外な一面だね」

真姫「まったく、嫌な一面ね」

海未「希は随分と余裕そうですが……」

ことり「もしかして、良い人居たりするの?」

希「うふふ、それはどうやろね~」


希の意味深な返事を耳にして、にこと絵里はますますヒートアップしているようです。

芸能人のこのような姿、世間にバレなければ良いのですが……。

絵里のような悪酔いはしたくないものですね。


海未「すみません、少し夜風にあたってきます」


そう言い残し部屋を後にして、店員さんに一声掛けてから、店の外へと足を運びました。

ふと夜空を見上げると、結婚を祝福するかのごとく満面の星空が広がっています。


あぁ……。

ことりの留学の時と同じく、私はまた本心から祝えていなかったのですね……。


そんな自分にほとほと嫌気が差してきたそんな時、後ろから足音が聞こえてきました。


海未「ことり……」

ことり「海未ちゃん、大丈夫?」

海未「えぇ。そこまで酔うほどアルコールを口にしていませんし、絵里のようになる恐れはないかと」

ことり「そういうこと聞いてるんじゃないんだけどなぁ」

海未「どういう意味です?」

ことり「海未ちゃんは一生、私に隠し事はできないって意味♪」


シラを切ろうとするだけ無駄ということですか。


海未「……そんな見透かしたようなこと言わないでください。いつまでもことりに敵わない、私のままではありません」

ことり「ううん、変わらないよ」

ことり「どれだけ歳をとっても、結婚しても、家庭を持っても……」

ことり「私たちが一緒に積み上げてきた時間だけは、何があっても絶対に変わらない」

海未「…………」

ことり「パリに住んでた頃、全然連絡すら取らなくなって、2人を無視しちゃって……」

ことり「急に帰ってきた時、それでも変わらずに受け入れてくれたでしょ? それがすごく、すっごく嬉しかったの!」

海未「私と穂乃果がことりのことを、拒絶するわけないじゃないですか。何があろうとも当たり前のことです」

ことり「うん、そうだね。そうなんだよね」

ことり「つまり大丈夫! 結婚したくらいのことで、穂乃果ちゃんは私たちから離れていったりなんてしない」



ことり「だからね、海未ちゃん」

ことり「そんな悲しそうな顔で、微笑まなくっていいんだよ」

海未「…………」


ことりの方こそ、そんな慈愛に満ちた顔で微笑まないでください。

せっかく引っ込めた涙が、また込み上げてきてしまいます。


海未「……少し、また泣いてもいいですか?」

ことり「もちろん。私の胸の中で、思う存分泣いてくださいっ」

海未「うっ……うぅ…………ぐす………………」

ことり「…………」ヨシヨシ

海未「……ことりは、本人すら自覚していなかった、私の気持ちに……気がついていたのですか?」

ことり「う~ん、小さな頃からなんとなくはね」

海未「なんとなく、ですか」

ことり「うん。なんとなく」


ことりの家で穂乃果のウエディングドレス姿を見た際、ことりが私に意味ありげな視線をおくってきたのはそういうことだったのでしょう。

本当に見透かされていたのですね……。


海未「今……、物凄い喪失感に襲われています」

ことり「よく皆の前では耐えたね。えらいえらい」ナデナデ

海未「はぁ……。初恋と失恋を同時に味わってしまったようなものです……」

ことり「無理に忘れようとしちゃダメだよ? どうせそんなことできないんだから。ね?」

海未「酷い言い草ですね。まぁ、その通りだと自分でも思いますが」

海未「大丈夫ですよ、忘れたりなんてしません。どれだけ辛かろうとも……絶対に、忘れてはならない……うぅ……大切な経験です」


涙も枯れ果て落ち着きを取り戻すまでの間、ことりは静かに私を癒し続けてくれました。

この上なくありがたいことです。


ことり「ちょっとはスッキリした?」

海未「えぇ。ありがとうございます」


海未「今日の出来事で、私の中で長らく止まっていた成長の時計が、ようやく針を進めてくれたように感じています」

ことり「止まった成長? ……なんの話???」

海未「あなたと穂乃果にだけは、絶対に秘密です」

ことり「えぇ~、ケチっ」

海未「ふふ、何とでも言ってください。ことりでも見透かせない私の一面があるということですよ」

ことり「むぅ……」


ことりが悔しそうに頬を膨らませています。

いくら可愛い顔をしたって教えてあげませんよ。

既に散々泣き顔を見られているとはいえ、2人に追いつこうと背伸びしすぎてしまった結果云々の話をするのは、更に恥ずかしいではありませんか。


海未「あまりここで長々としていては心配をかけてしまいますね」

海未「さぁ! 早く皆の元へと戻りましょう!!」

ことり「あっ、海未ちゃん待ってよぉ~~~!」



夜風に頬を優しく撫でられながら、ことりの前を歩いていきます。


まだ完全に吹っ切れたとは言えませんが、それでもどうにか前へと進めそうだと、そう思えました。

今日はまだ無理かもしれませんが、いつか必ず、純度100%の「御結婚おめでとうございます」を穂乃果に告げるのです。

今度こそ、心の底から祝うのです。

そしていつの日か、私も己の幸せを掴み取ってやりましょう!


穂乃果、ことり……本当にありがとう。

あなた方の幼馴染でいられることを、どんな時もずっと、誇りに思っています。



────こうして私の初恋は、ほのかな成長の兆しだけ残し、ひっそりと幕を閉じたのでした。






          ラブライブ! 二次創作SS

     園田海未(21)「穂乃果が……だっ、だだだ男女交際ぃッ!?!?」

                   ─了─


これピクシブにあるやつだよね
作者本人なのか?



センチメンタル(?)なおはなしを書いてみたかったんや……。


閲覧してくださった皆様、ありがとうございます。

実は同一の世界線として書いた話が他にもあったり。


にこ「私はあんたみたいな負け犬とは違うっ!」 絵里「いいえ、同じよ」


↑これは今作とは毛色も雰囲気も主題もまるで違いますが、1部だけ同じシーンもありますので、お暇でしたら見ていってもらえると嬉しいです。




http://i.imgur.com/3O3H0YN.jpg
(↑感謝のイラスト)


乙レスありがとうございます。
後日談を書くつもりはありませんが、海未ちゃんならきっと幸せになれると、そう祈っております。

海未ちゃん、ファイトだよっ!
http://i.imgur.com/u2b6ycj.gif


>>83
うん???
あぁ~。>>84に貼った作品は渋にもうpしたし、その作品と一部表現の被る部分はあるけど、このSSはここで初公開ですよ!!

すみません。最後に過去作全て貼るつもりだったのに忘れてました。


【俺ガイル】 八幡「例えば、あり得たかもしれないそんな世界」 【俺ガイル】 八幡「例えば、あり得たかもしれないそんな世界」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1406964695/)

由比ヶ浜「キス……しても、いい?」 八幡「なっ!?」 由比ヶ浜「キス……しても、いい?」 八幡「なっ!?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1407390423/)


絵里「あの子達なら、私達が居なくても大丈夫そうね」 希「せやな~」 絵里「あの子達なら、私達が居なくても大丈夫そうね」 希「せやな~」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1425028943/)




過去作こんな感じです。
最後のやつだけSSではなくイラストやGIFスレですが、よければどうぞ。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年04月10日 (金) 20:14:24   ID: XNkLWvcu

あれ・・?これピクシブにあるやつだけど本人?かな

2 :  SS好きの774さん   2015年04月10日 (金) 20:21:43   ID: oXnr0gvY

>>1
その話kwsk

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