六男「狩人一家」 (23)


【雪山 深部】

【狩人の家】


三男「じょうっねっつのっ あっかい~バ~ラ~♪」トントントントン

三男「そ~し~て~ジェ~ラ~シ~ィ~♪」ジャッ ジャッ

ガチャ

三男「恋の……あっ、おかえりー」

六男「ただいま三兄さん」

三男「ご飯もうすぐだから待っててねー。姉さん達は?」

六男「納屋。五兄さんは朝帰りになると思う」

三男「そっか、じゃあ一人分余っちゃうね……」

六男「それは大丈夫」

ガチャ

次男「ただいま! 三男、晩御飯はなんだい?」

三男「次兄さん。週末までギルドに泊まりだったんじゃ?」

「仕事が入ったんだとよ!」

次男「おっと……」

バタン!

長女「化け猿倒してやっと街に帰ってきたアタシらに、労いの言葉じゃなく契約書を突き付けて来やがったんだ、このモヤシ兄貴は」ゲシッ

次男「だから明後日にしてあるだろ!」

三女「次兄さんは私達の苦労が分かってないんですね。流石は狩猟組合員、一次生産者から搾取することしか頭にない」

次男「人聞きの悪い言い方はよしてくれよ」



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六男「……」

クイクイ

六男「?」

四女「ちび兄さん、イチジセイサンシャってなに?」

六男「……チビって言うな」

四女「ちび!」

六男「」

三男「まあまあ……ほら、とりあえず着替えよう? あ、雪を掻いておいたから温泉も使えるよ」

長女「じゃーアタシら風呂先にするわ」

三女「渡り廊下の庇がもう少し長ければ雪掻きする必要もないんですけどね」スタスタ

四女「あたしも!」タタ

次男「我が家自慢の狩人温泉は貸し切られてしまったか」

三男「余ってるシチューと適当な炒め物にしようと思ってたんだけど、何か増やそっか」

次男「つまみか?」

三男「飲むでしょ? ……六くん、先食べるー?」

六男「まだいい」

六男「先に銃の手入れしなきゃ」

三男「はーい」


【街 商業区】

【料亭】


東方商人「……」

長男「……」チビ…

東方商人「"三百や"」トク トク

長男「何と?」

通訳「……では、300ということでどうでしょう」

長男「……300?」

通訳「"聞き返しています"」

東方商人「"――"」

通訳「……はい。当方としましては……」

長男「500」

東方商人「……」ピク

通訳「"――」

東方商人「"言わんでええ。数をなんつうかぐらい分かるわ、商人やぞ"」

東方商人「"兄さん。わしらは何もあんたんとこの、全部こっち回せっちゅうとるんやないんや"」

東方商人「"ちょびっとだけでええ"」

東方商人「"シェアを分けてくれませんか、とこうして頼み込んどるんや。手土産まで持ってのぉ。勿論チェックは不渡りやないで"」

長男「……」

東方商人「"足りん言うから聞けば……金貨300やぞ? それを、500?"」

東方商人「"足元見んのも大概にせぇやァッッ!!"」ガッシャァアアッ

通訳「"商人殿、落ち着いて下っ――"」

東方商人「"こいつァわしら東のアキンド銘々が血眼んなって集めた金を犬の糞でも出されたような目ぇで見腐った挙げ句"」

東方商人「"総代のわしの面に小便かけて足蹴にしよったんやぞ? これが落ち着いてられるかい"」

長男「……」

東方商人「"……通訳せぇや! そのために金払っとんやぞ"」

通訳「"い、一字一句ですか"」

東方商人「"早よせえ"」

通訳「……、――」

長男「地金が出たな」

通訳「は、はっ?」

長男「何度来ようが返事は変わらない、そちらと手を組む気はない……と、そう伝えて下さい」スク

東方商人「"待ちィ、コラぁ!"」

長男「酒は旨かった」

長男「じゃあな」

スー パタン


【玄関】


侍「……」

侍部下「……」


長男「ここはそちらの国の習わしに沿ったレストランだったな」

長男「靴を脱がせたのはこうして客を引き留め易くするためなのか。え?」

侍「そういう訳ではござらんが」

長男「……話せたか。あんたは新顔だな」

侍「別口の取引に出払っていました故。仕事が済んだので、苦戦しているという商人殿の様子を見に来た次第にござる」

侍「侍と申す。以後見知り置きを、長男殿」

長男「……」

侍「早速だが……商人殿の罵声が聞こえたということは、長男殿は今回も蹴ったのでござるか」

長男「ああ」

侍「考え直しては頂けませぬか」

侍「商人殿が申された通り、我々は本国の、こちらで言う"ぎるど"の代表としてこの中央大陸に足掛かりを……という話は散々聞かされておられるのでござろうな」

長男「あんたが言えば都合四度目になる身の上話だ」

侍「……」

侍「失礼。お帰りになられる所を」ス

長男「……」


侍部下「いいんですか、侍殿」

侍「いいのか、とは? 引き留めてどうするというのだ」

侍「常に提示した額の上を要求し、取り付く島もない……と聞いた。どんな驕慢な男なのか見てみたかっただけ、というのが拙者の本音にござる」

侍部下「……どうでしたか」

侍「商人殿の手には負えまい」

侍「怒号で縮ませ、銭の洪水で押し流すだけでは勝てぬ相手が、ここに来てようやっと現れたのでござるよ」

侍部下「我らの出番ということでしょうか」

侍「急くな」

侍「まずは拙者が行こう。あの物腰。護衛も無いところを見ると、下手な者には任せられぬ」


【商業区 路上】

【タクシー 車内】


ルルルル…

カシュッ カシュッ

運ちゃん「点きませんか? マッチ」

長男「ああ。朝買ったんだがな……シケってやがる」クシャ

運ちゃん「ひじ掛けの中に乾いてるやつがあります。どうぞ」

長男「いつの間にサービス増やしたんだ。幾らだ」カパ

運ちゃん「チップに含まれてます」ハハハ

長男「そー来たか」カッシュ スパー

運ちゃん「……しっかし、若旦那も肝が据わってますね」

長男「あんたには敵わないさ。リョウテイのすぐ目と鼻の先で待っててくれなんて、普通お抱えの運転手でも聞いちゃくれないよ」

運ちゃん「馬やら魔獣やらでカーチェイスになったらあんたを放り出して逃げるだけです」

長男「それがいい」クク

運ちゃん「さて、次を右と……」

長男「あ、今日は直帰じゃない。歓楽街の方に向かってくれ」

運ちゃん「乾く暇ありませんねぇ」

長男「そいつはな。出迎えさ」

運ちゃん「ああ」

長男「営業に電話で頼まれてね……また派手に遊びそうだからとかで」

運ちゃん「ふ、次男さんは営業ですか……」

長男「事実を述べたに過ぎない」フゥー…


長男「俺の兄弟達は業界最高のハンターだからな。外獣を始末する仕事は次男が受ける。俺はその後片付けさ」

運ちゃん「後片付けだなんてそんな……ただでさえ狭い市場なのに、魔獣素材のシェアはほぼ独占ですからねぇ」

長男「したくてしている訳じゃない、他に並び立てる連中がいないからってだけだ」

長男「代われるのなら代わって欲しいよ……。ああいう連中に絡まれると尚更」

運ちゃん「大変ですね」


ルル…


【歓楽街 往来】



ザワザワ ザワザワ

「何だ、どうした?」

「何やってんだあいつら」

「喧嘩だ喧嘩。女取り合ってる」

「んな古風な」


ズドッ

チンピラ1「がはッ……」ヨロッ

チンピラ2「てめぇ!」バキッ

赤毛「五君っ……」

五男「ってェな……」ペッ グイ

チンピラ2「立て1!」

チンピラ1「おう……ヘッ、ガキがふざけやがって。何だ今のは。全然効いてねーぜ!」

チンピラ1「んなヘナチョコパンチしか出せねえなら殺されねー内にとっとと失せろや」

チンピラ2「二対一だぞコラ、簡単な算数も出来ねぇのか? マジ死ぬぜお前」

赤毛「五君、五君もういいよぉ……」

五男「赤毛ちゃんってホント優しいよねー……」

チンピラ2「そっちの彼女は分かってんじゃねーか! おい、詫び入れてその子置いてきゃ許してやんぜ」

五男「バカじゃねーのかお前ら」

五男「そんなに死にてェんなら分かった、殺してやる」ダッ

チンピラ1「バカはお前――」グシャッ

五男「パンチじゃねェ、掌底っつー手加減なんだよこれは!」ヒュッ

チンピラ1「ぐ、ぶっ……クソが!!」ガシッ

チンピラ2「知らねーよボケ、死ね!」ブンッ

五男「羽交い締めか?」グルン

チンピラ1「うお、投げッ……ぐはぁ!」ガツッ

チンピラ2「やッべ――」

五男「チンピラ君がハンター様の身体能力に敵うわきゃねーだろ」

ドズッ

チンピラ2「ぅぶ……ッ」

五男「あーあー友達殴るなんて酷ェな」ガスッ バキッ ドガッ

五男「まあミジンコちゃん同士ならしょうがねーか、簡単な算数も出来ないみたいだし?」ガッ ゴッ ズンッ

五男「正しくは一人と二匹だ 蟻ンコ」ゴシャアッ

赤毛「五君、ストップ! ストップ!」

五男「ちゃんと加減してるよー、大丈夫だから。ほら」

チンピラ1「」
チンピラ2「」

赤毛「ぴくりとも動かないよ……」

五男「死んでないし」


赤毛「あーもー……」ハァ

五男「はぁー、赤毛ちゃんはやっぱ簡単に行かねーなぁ。男のダチだったらやれー行けー! って応援してくれんのに」

赤毛「この時間酔っ払い多いし、絡む方も絡む方だけどね……やっぱりケンカは良くないよ」

五男「そういう男嫌い?」

赤毛「嫌いって程じゃないけど……。追い払ってくれたっていうのは本当だし」

赤毛「その、ありがと……」

五男「……」

赤毛「?」

五男「ね、酔い醒めちゃった。もう一回飲み直さない?」

赤毛「えーまだ飲むのー?」

五男「どこかゆっくり出来る所でさ」ニコ

赤毛「……やだー、笑ってるのに目怖いよー!」アハハハ

五男「駄目? 赤毛ちゃんとまだまだ飲みたいな俺」

赤毛「朝まで?」

五男「朝まで……」

赤毛「……」クスッ

五男「……じゃ、行こうか――」

長男「なら俺が送ろう」

五男「は? げっ、長兄貴!?」ビクッ

赤毛「お、お兄さん? この高そうなスーツの人が?」


長男「初めまして。邪魔したかな」

赤毛「あ、いえ、そんなことは……」

五男「……見りゃ分かんだろーが。邪魔。超邪魔」

赤毛「そこまで言わなくても……」

五男「いいんだよコイツは。なあ、用無いんならフケてくんねーかな。俺これから遊び行くんだけど」

長男「次男の奴から聞いてないのか?」

五男「ギルド寄ってねーし」

長男「仕事が入った」

五男「はぁ!? 帰って来たばっかだろうが!?」

長男「明後日には発って貰う」グイ

五男「うがッ、放せこの野郎! 全自動肺ガン散布機!!」ジタバタ

赤毛「(現役ハンターの五君を担いでる……)」

五男「チェインスモーカー! 公害! 副流えnはぅっ」ドスッ

長男「喧しい」

赤毛「(手刀で!?)」

長男「そういう訳なんでね。悪いが、今日は諦めてくれないか」

赤毛「あ、は、はい……」

五男「」チーン

赤毛「あ……えっと、待って下さい!」

長男「分かってる、帰りの足代なら勿論」スッ

赤毛「ありがとうございます……ってそうじゃなくて」ゴソ ビリ

長男「(メモ書き?)」

赤毛「あの、これ五君に起きたら渡してくれますか。私の家の住所」

赤毛「その……また今度ね、って」モジ

長男「……」

赤毛「伝えて下さいね!」タッ

長男「……ったく、遺伝か」


ルルルル…


五男「……余計なことしやがってよ」

長男「他にもいるだろ」

五男「一瞬一瞬マジなんだっつの」

長男「そうかい」スパー

五男「くれよ」

長男「……」フゥーッ

五男「ふざっ――げっほげっほげっほ!」ゲホゲホ

五男「死ねボケ!」

長男「避妊はちゃんとしてんだろうな?」スパー

五男「たりめーだろ……やめろキモいから」

長男「病気移されんなよ」

五男「やーめーろ」

長男「最近またクスリが出回り始めてる」

五男「やんねェよ」

長男「分かってるが念のためだ」

五男「もういい。寝るわ。黙っとけ」ゴロ

長男「着いたら起こしてやる」

五男「うっせ黙れ」

長男「……」フゥーッ

五男「やめろ!」ベシッ

長男「はははは……。ああ、あとこれ」ピラ

五男「んだよ」

長男「さっきの子が別れ際に渡してきた。流石だな」

長男「また今度ねだとさ」

五男「っしゃ」

長男「避妊しろよ」

五男「しつけー。うん」




【住宅街 長男の事務所前】

ルルルル……ギッ

五男「……」ZZZ

長男「着いたぞ」

五男「ん……あーマジか」ムクリ

長男「マッチ分はこれくらいでいいか」チャリ

運ちゃん「次回からはライターに出来そうですよ」

長男「ライターは臭いから俺は嫌だな……」ガチャ

運ちゃん「毎度どうも」

五男「あ? 兄貴ん家じゃん」ガチャ

長男「朝に帰れ。馬車に予約を入れておくから、お前はもう寝ろ」

五男「おう……」


《翌日》

【雪山 狩人の家】

【地下二階 六男の部屋】


六男「(僕の家はハンター業を営んでいる)」グッ ガション

六男「(ただし大物専門。どうしてかと言えば、例えば、小さい村を襲う狼の群を追い払うなんて仕事まで取ったら、他のハンターの仕事が無くなっちゃうからだ)」グッ ガション

六男「(って兄さん達は言ってた)」グッ ガション

六男「(男兄弟の末っ子が僕だ。無愛想だとよく言われる。三兄さん以外はみんなひどい奴ばかりだ)」グッ ガション

六男「(……)」グッ ガション

六男「(何してるか分かり辛いよね)」グッ ガション

六男「(銃弾を作りながらだけど、家族を紹介するよ)」グッ ガション

六男「(……沢山作るから暇なんだ)」グッ ガション



ジリリリリリリリリン

ガチャ

次男「中央大陸狩猟組合支部です」

次男「狩猟依頼ですね。少々お待ち下さい」

六男『次兄さんは普段、街のギルドで働いている。コネ入社だ。敏腕だから問題はないけど』

六男『普通に依頼の処理をする傍ら、他のハンターじゃ太刀打ちできない仕事が舞い込んできた時には僕らに斡旋してくれる。パイプ役だ』

六男『結構モテるらしい』

六男『女の人達は家での顔を見てないから』


次男「………………」ヒック

三男「次兄さん、皿片付けるよー」

次男「ビールが無い……」

次男「ビールが無いぃぃ……」ジワ

長女「まーた始まった」グビ

次男「何だよう……悪いかよぉ、無いんだビールが……」グス

三女「酔っ払う度にめそめそめそめそめそめそめそめそ、兄さんは恥ずかしくないんですか?」

次男「…………」ムシャモグ

三女「私は恥ずかしいです。だからみんなで食事に行きたくないんです」

次男「…………」ジワ…

四女「次お兄ちゃん、元気出して! 私はお兄ちゃんが泣き虫さんでも平気だよ!」

次男「四女ちゃん……」

四女「先生言ってたもん、赤ちゃんは泣くのが仕事だって!」ペカー

長女「ぶふぉっwwwwww」

次男「三男んんんん妹達が虐めるよおおおおおおおおおお!!!!」ブワー

三男「兄さん、はい、お酒のお代わり」トン

次男「……」グビグビグビグビ


六男『これが露呈するからなのかは分からないけど、次兄さんに彼女が出来たって話は聞いたことがない』

六男『早く仲の良い男友達を作って欲しい』



シュボッ スパー

長女「……」スパー

三女「眉間に皺寄ってますよ」

長女「ストックヤバいんだよね……。買い足しときゃよかったな……チッ、クソ兄貴のせいだ」キィ キィ


六男『実動部隊筆頭が長姉さんだ』

六男『超強い。ゴブリンくらいなら手刀で殺す。肝の据わり方は半端じゃなくて、ブラジャーより銃との付き合いの方が長いと豪語する若きベテラン』

六男『目付きと口が物凄く悪い。怒らせると怖いけど怒ってなくても怖い。女というには狂暴過ぎる、と言った五兄さんは一度殺され、一緒に居た四兄さんはハムにされた。僕は姉さんに服従を誓った』

六男『暖炉の前は姉さんの特等席で、唯一、揺り椅子に揺られながら何かしてる時はとても安定してる姿を見られる』


長女「……」ペラ

三女「姉さん、何を読んでるんですか?」

長女「本」ペラ

三女「えっと、内容……」

長女「読む? ほら」

三女「いいんなら、じゃあ……」ペラ

三女「!?」ギョッ

長女「カバーは外さない方がいいぞ」スクッ

三女「あの、姉さん、これっ……」アタフタ

次男「何を読んでるんだい?」

三女「い、言えません……」

次男「いいじゃないか、減るもんじゃないだろう」

長女「見たら殺す」ドスッ

次男「何で腹パ……見てな…………っ」プルプル

長女「仕事の件でに決まってんだろバァーカかてめぇは!? ムカつくんだよ!」

長女「あームっカつく……五男の野郎が帰って来るまで作戦会議も出来ねーし」イライラ

次男「先にすればいいじゃないか……」

長女「二度手間だろうがよ!!」ゲシッ

次男「痛い!! 悪かったってば!」

三男「長姉さん、ホットミルク飲むー」

長女「ったくよぉ……あーありがと」キシッ

長女「ふー、ふー……」キィ キィ


六男『怖くて気難しいけど、扱い方を心得ていればこの上なく頼りになる人の一人だ』

六男『怖くて気難しいけど』




三男「もっしも~君が挫けっそう~な時も~♪」ワシャワシャ

三男「大丈~夫僕が勇気を送るよ~♪」ゴシゴシ

三男「悲しみも……えーと何だっけ」カチャン


六男『三兄さんは専業主婦。狩猟の仕事はできないけど、文字通り鼻歌混じりに家の全てを一人で熟してる』

六男『何て言うか……色んな意味で突然変異だと思う。料理は凄く美味しいし、優しくて気配り上手な上、女の人みたいに線の細いポニテのイケメンだ』

六男『母親代わりは誰かと聞かれれば、満場一致で三兄さんを挙げるだろう。姉さん達はあんなだし……』


長女「三男、昼飯何」

三男「昨日お肉買ってきたから、ステーキにするつもり!」

次男「重いなぁ……あー頭が……」ズキズキ

三男「冷蔵庫に苦肝の塩漬けがあるよー。次兄さんには何か軽いのがいいね」

四女「三兄おやつ!」

三男「まだお昼前だよ? んー、今はジャムしか無いなぁ。地下室」

三女「三兄さん、私の部屋着知りませんか?」

三男「洗濯中……だけど、三ちゃんはもう少し部屋を綺麗に使わなきゃ。女の子なんだから」

三男「次からは自分で掃除するんだよ」

三女「……はい」

四女「プププ」

三女「何!」

四女「何でもなーい! ジャム取りにいこー」

三男「洗いたてのシャツ~♪ 青空に揺れてる~♪」テクテク


六男『鼻歌のレパートリーは多数。けど僕も知ってる曲は今のところ一つとしてない』

六男『買い出しに行く時に覚えて来るって言ってた。四兄さんの影響を受けなければいいけど……』

六男『あ、ここにいない家族の紹介はまた今度ね』



四女「三ちゃん、終わったらトランプしよ!」

三女「やです」

四女「やですー」

三女「真似しない! というか、勝手に決めないで。私は今読書中なの」ペラ

四女「なんか顔赤いよ?」

三女「……ああもう。ジャム取りに行きますか?」

四女「さっすが三ちゃんは話が分かるぜー」

三女「五兄さんの真似もしない。バカになっちゃいますよ」


六男『姉妹の末二人は一緒くたに紹介しようかな。三女と四女は双子なんだ』

六男『見た目はそっくり。神経質で毒舌で医術の心得がある方が三女で、無神経で幼くて魔法の使える方が四女。背は僕の方が高い』

六男『チビ呼ばわりされる謂れは無い』


四女「五お兄ちゃんに言い付けちゃうよ!」

三女「別に」

四女「ねー何で怒ってるの? ねー」

三女「怒ってません」

四女「顔が赤いのは怒った時か熱の時なんだよ」

四女「元気だから、怒ってるんでしょ」

三女「これ以上続けるならそうですね」

四女「あ、分かった! 本だ!」

三女「っ」ギク

四女「貸して!」

三女「ダメ、四女にはまだ早い!」バッ

四女「同い年じゃーん、三ちゃんが早くないならあたしも大丈夫だよ!」グイグイ

三女「よ、読み終わったら貸してあげるから!」

四女「? 本にムカついたんじゃないの?」

三女「はあ?」

四女「ビリビリにしようよ。そうすればスッキリするよ」

三女「……気にしてくれてありがとう、でも大丈夫だから余計なことはしないで下さいね。本当に」

四女「ねー三ちゃん何ジャムにする? あたしも同じのにするから!」

三女「」イラッ


六男『どっちも生意気だけど、銃が下手なことを差し引いても狩猟では欠かせない仲間だ』

六男『三女が居なければ命を落としてた狩りは少なくないし、四女も――』

四女『ちび兄さん、ちょっと上に来てー』ミョンミョン

六男『こいつ、脳内に直接……!』



六男「(……今のは四女の魔法"念話"だ。向こうがチャンネルを合わせてくれれば、こっちからも喋れるんだけど……)」グッ ガション

四女『ちび兄さーん? 聞こえてるでしょー?』ミョンミョン

六男「(聞こえてるよ。返事が出来ないだけ)」グッ ガション

四女『無視しないでよー』ミョンミョン

六男「(繋げよ)」グッ ガション

四女『ねーえーねーえーねえねえねえねえねえねえねえねえ』ミョンミョン

六男「(気が散る)」グッ ガション

六男「(弾丸がズレたらマズいんだけど)」グッ

四女『あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』ミョォォォ

六男「」キーン

ガチッ

六男「あっ……やっちゃった」

六男「ケース(薬莢)が歪んじゃった……」

六男「……」

六男「はあ……」ヨイショ


【地下一階 屋内倉庫】

六男「来たよ」

四女「おっそーい!」

三女「……ああ、六男に話してたんですか。いきなりテレパシーしだすから何かと思いました」

六男「頭が痛い……。明日から使うんだから魔力無駄遣いしちゃ駄目だろ、四女」

四女「ちーび」ベー

六男「じゃあね」クル

三女「いちいち真に受けないで下さい」

六男「(お前が言うか)」

六男「それで、どうして呼んだの」

三女「あれですよ」

六男「木箱だけど」

三女「いつの間にか増えてた山積みの、ね。誰の?」

六男「……僕のだ」

三女「やっぱり……。退かしていいですね? 奥の樽に用があるんです」

六男「それだけ? 勝手に退かせばいいじゃん」

三女「中身は」

六男「銃関係。水銀とかの手入れ用品、爆竹とか癇癪玉とか、液体火薬に固体火薬、薬莢と、ライフルの弾丸とか封魔弾頭とか……」

四女「なんでこっちにあるの?」

六男「多分、昇降機の鎖の調子が悪かったからだと思う。行ってる間に三兄さんに受け取って貰ったんだけど、言い忘れてたからここに置いといたんだ。きっと」

三女「勝手に動かさなくて正解でした」ジト

三女「後はよろしくお願いします、六男」

四女「三ちゃんはー?」

三女「六男がいるから大丈夫でしょう」スタスタ

四女「これ重いー……」ウーン

六男「……僕がやるから、四女はどいてて」

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