女「転校生のアへ山アへ子です。特技は…」クラス一同(アへ顔だろ…)(59)

女「あ」

クラス一同(やっぱりアへ顔だろ)

女「あやとりです!」

ざわ… ざわ…


男(すごい名前だなあ、でもすごい可愛いな)

担任「じゃあアへ山さんの席は…あそこで」

女「はい」

男(あ…隣だ)

女「よろしくねっ」にぱっ

男「あ…うん、僕は男って言います」

担任「じゃあ授業始めるぞ」

そして、休み時間には転校生が来たらありがちな質問タイムが繰り返されあっという間に昼休みに

男(ふう…やっぱ昼ごはんの前はうんこしてからに限るよな)

ざわ… ざわ…

男「ん?なんか騒がしいな…どうしたの?」

クラスメートの女「あ…さっきアへ山さんがさ…dqn達に連れていかれちゃって…」

男「えっ!?」

クラスメートの女「アへ山さんあんな名前だし可愛いから…」

男「も…もしかして…」

クラスメートの女「…」

男「だ、誰も止めなかったの!?」

クラスメートの女「だって…なにされるかわかんないし…」

男「先生には言ったの!?」

女「…チクったらなにされるかわかんないし…」

男「くそっ!どこ行ったかわかる?」

クラスメートの女「校舎裏だと思う…」

男「くそっ!」

ダッ

校舎裏

男(あっ!あれだ!)

dqn1「おい、お前さあ、面白い名前してんじゃん」

女「そうですか?」

dqn2「そんな名前でそんな可愛かったらエロマンガじゃ当たり前にアへ顔するパターンじゃん」

dqn3「だから本当にそういうパターンはありか試させてくれよ」

dqn一同「げっへっへ」

男(と、止めないと!)

だが男の行動は遮られる結果となる
何故なら目の前で有り得ない光景が展開されたからである

まず最初の異変はdqn1がアへ山の胸元に手を伸ばしたと思った刹那、dqn1は宙を回り腰を打ち付けた

何が起きた?

男の脳で理解するには時間がかかる
何故ならば、あのような華奢な体で180はある男性を軽々と投げ飛ばせる訳がない
まるで時が止まったように感じられたが直ぐ様、次の衝撃が襲う

dqn1の体が地面に落ちて1秒もしないうちにdqn2の顔が凹む
何故なら体を起こすついでに裏拳を叩き込んだのだ

それはまるで漫画のようなワンシーン

男の理解が追い付かないようなスピードで女は舞う

裏拳を放った後に素早く体をひねり回し蹴りでdqn3の横腹を蹴った

そして静寂

男は漏らしていた

男はまるで1秒が永遠にも感じるような恐怖感を味わった
そしてその恐怖の原因が男を視界に捉える

女「…」

男は戦慄した。もし、もしも自分が奴等の仲間だと勘違いされていたら?
先程まで助けようとした女の子はただの女の子じゃなかった
それは狩人の目だ

だが女は男を見下すように睨み付けるとゴミを見るような目で一瞥しそのまま立ち去った

男は直感した、女は自分がdqn達の仲間じゃないとわかったわけでも無ければ見逃した訳でもない

ただ狩る価値の無いゴミとしてしかみていなかったのだ

そして昼休み終了のチャイムで男は我に帰る

男(漏らしたし今日は帰ろう…)

とぼとぼ…



男の家

男「ただいま…」

姉「早いな、うぬは学校はどうしたのだ」

男「はい、姉上…具合が悪くて…」

姉「だから下半身がすっぽんぽんなのか、我はうぬがいじめというくだらない児戯にへこたれたのかと心配したぞ」

男「ぎくっ!?」

姉「貴様…今の反応はまさか…」

男「違うよ!実はさ…」

姉「ほう…」

男(女の強さにびびって漏らしたなんて…やっぱり殺されるな)

姉「時に愚弟よ」

男「はい!」ビクビク

姉「今宵は我が精のつく食事を作ろうではないか」

男「えっ!?怒らないの?」

姉「我が怒る理由があるか?」

男「だって…」

姉「いいから愚弟よ、何か履くのだ」

男「あ…うん」



男「ん?目が覚めちゃったなぁ…いつもなら姉さんが寝ぼけて布団に入り込んでくる時間なのに…」

男「姉さんはあんなしゃべり方だけど外見はキリッとした顔立ちでスマートボディで黒髪ロングが綺麗なすごく可愛いからしいからなぁ…あのしゃべり方さえなければ…」

男「まあ、いっか…寝ようかな」

そして男は眠りに落ちる
何が起きているかも知らずに…

公園

女「…」

アへ山は公園にいた
何故ならばそこに敵がいるから…

姉「うぬがアへ山アへ子か」

女「相違なし、貴様も私のアへ顔が見たいなどという愚劣な欲望を叶えに来たのか?」

虎と龍が睨み会う
公園の空気はまるで神々の闘争の前触れ
そして嵐の前のような静けさに包まれる

姉「勘違いするでない、我は貴様を我が最強への糧にしてやろうと言うのだ」

女「ふ、ふふふふ、ふははははははは!!!」

空気が揺れる
まるで大気を震わせるかの如く衝撃波が女を中心に円形に展開される

姉「何を笑う?」

女「ほう…これで足がすくまないとは大したものよ」

そして睨み合いが続く
それはまるで視線だけで殺し合いをしているようだ

そして互いの意思は繋がった

闘争の意思である



先に動いたのは姉
彼女は砂ぼこりを上げ地面を蹴りそのまま跳躍し空中で腰をひねり右の蹴りを繰り出す

だがもちろん女はカウンターを入れる為に足を掴み引き寄せ打撃を与える為の体勢に入る

その瞬間姉の口元がつり上がる

してやったりと言わんばかりの笑顔である

カウンターは格闘技においては重要な約割を担う
昨今の格闘技において確実に基礎の基礎とし、警戒は当たり前、そして隙あらば狙うのが当たり前である

だから女はカウンターを狙った

だが姉はカウンターをが来ることを予測していた

通常、この体勢なら反撃は有り得ない
だから確実に姉が一撃を貰うパターンである

だが結果は違った

女の頬に謎の打撃が襲う

そして思わぬ衝撃で足を掴む腕が緩む

直後、姉はそのまま逆の足で女の顎を爪先で蹴り上げる

女はよろめき、姉は着地する

女は思考の時間を得る

今のは何だ?

何故あの体勢から?

答えは簡単だ

姉の鮮やかな黒髪の長いポニーテールの先にある毛先をまとめる丸い髪止めである

姉は蹴りの瞬間カウンターに合わせ首を振ったのだ

女「随分と姑息な手を使うものだ」

姉「相手の全てを観察し相手の全てを武器と思え、それが格闘を生業にする者の常識なのだ。まさかうぬはそれすらわからぬと?」

女「ふふ、ふふふふ!!その通りである!貴様!中々出来るではないか!」

まるで木々を薙ぎ倒さんばかりの威圧感で女は笑う

女は直感した
こいつ生温い手合わせをしたがる格闘家や名前に釣られ格闘とすら呼べぬ攻撃をする間抜けなハエ共とは違う

奴は『闘い』が出来る相手

ずっと待ち望んでいたそれなのである

女は反撃に出る

一気に距離を詰める

姉(速い!)

あっという間に間合いに入り込まれる
その瞬間女は右のハイキックで姉の側頭部を狙う

ここで姉は敢えてカウンターという手段は取らなかった
何故ならば女が先程のカウンター封じに対し何かを思いついた可能性があるからだ
だからそれをかわして出鼻を挫くつもりなのだ

だが姉は気付いていなかった

初撃から仕込みはあったのだ

姉が蹴りに対しギリギリのスウェーで拳一つの間でかわした瞬間、姉の側頭部に打撃の衝撃が走る

だが浅い

でも女にとってはそれで十分だった

意識外の攻撃は如何に達人レベルの使い手であろうと思考を鈍らせる

例えそれが刹那の時であろうと格闘においては大きな隙になってしまう

そのまま仕返しと言わんばかりに右足を下ろしつつ地に着かぬうちに左足を真っ直ぐ天に蹴り上げる

姉の顎に爪先が直撃、よろめきながら思考する

何故?

かわしたはず…

その答えは女の右足にあった

姉「パンツ…か!」

そう、一連の動きで女は下着の左側を千切りするりと落ちる
その後距離を詰める一瞬で足首まで下ろす

女は拳による打撃を最初からフェイントに入れパンツに気付かれないようにしていたのだ

姉が蹴りをギリギリでかわすことは女はわかっていた

カウンター封じを警戒すると踏んだからだ

だから姉はパンツによる蹴りの延長を受けてしまったのだ

姉「ふっ、くまさんパンツを武器にするか」

女「長年の友だ、失うは惜しかったが貴様はそれほどの相手であるのだ」

姉「ならば決着まで付き合ってもらうぞ」

互いの手の内はわかった

二人は似ているのだ
ファイティングスタイルや考え方

だから二人は昂っているのだ

今までの退屈が嘘のような楽しさ
闘争に愉悦すら感じるような高揚感

もうこの空間に入れるモノは存在しないくらいに公園という空間は二人のモノになっていたのだ

互いが互いのことがわかる

このままでは互いの予測と牽制の繰り返しで闘いは長期にわたってしまう

互いにそれは理解していた

そして先に動いたのは姉だった

ファイティングスタイルを変えたのだ

今までがオールラウンドで全ての技に対して全ての技で対応できるスタンスだったのだが姉は足周りを軽くして今までの腰を低くしたスタンスを崩す

足を使いスピードと手数で勝負するつもりだ

だがそれでは防御が疎かになってしまう

本来は攻撃力と耐久力はバランスが重要となる
攻撃力を疎かにすれば相手の防御力に勝てず防御力を疎かにすれば相手の攻撃力に勝てないのだ

それは戦闘だけではなく全ての理

ではなぜ姉はこのようなスタンスをとるのか

答えはスピードにある

簡単な理屈だ

如何に強力な攻撃だろうと当たらなければいい

傍目から見れば愚かだろう

だが姉は自信があったのだ

この姉のスタンスの武器はスピードだけではない
そのしなやかな、まるで闘争などが至上の喜びであるとは思えないほどの美しい肢体の柔軟さである

まるで舞うように、美しく立ち回るその様はギャラリーがいるならば必ず見とれてしまう鮮やかさ

だが姉はそのスタンスを得意とはしていない
されど姉と戦ったモノは必ず口にする

あのスタンスに勝てるモノはいない

女「ふふ、面白い!ならば私も決着を急ごう」

女もスタンスを変える

だがそれは膝を曲げ腰を落とし重心を低くする今までの構えとほぼ同じ
違うとすれば右手の位置だ
相手を正面に体の向きを左を前側にして斜めにし左腕を相手に突き出したままの状態
そしてそのまま相手の呼吸と自分の呼吸を調える

完全に待ちのスタンスである

姉「変わった構えであるな、ではいざ!」

姉は戦闘を再開させる

まずはステップ

足運びは格闘においては重要だ
リズム、距離、それを如何に見出し相手の目測を崩すかが鍵になる

だから姉は繰り返す
距離を詰めると見せかけ攻撃に出たりそのままフェイントにしてステップ数を増やし翻弄する

まるで雨のような打撃
打突が、蹴りが、しなやかに、鮮やかに
リズムが一定では無いのにも関わらずその動きはまるでダンス

名付けるならば『妖精の舞踏(フェアリーダンス)』と言うべきか

対する女は防戦一方

軽めの打撃は受け、重めの打撃はかわしていく

だがこのままでは防御力が削れるばかりである

そう

女は体力勝負に持ち込むつもりなのだ

自分が先に防御を崩すか、相手が先に動きが鈍るか



全ての勝負はそのどちらかが訪れた時に決まる
互いにその時の為に切り札を残しているのだ

姉「どうした?そのまま亀のように身を潜め嵐が止むのを待つか?」

嵐のような打撃の中、言葉を、息をもきらさずに問う

女「…」

姉は女が防戦のみでくるとは微塵も思っていない
眼光が物語る勝利への道筋への模索

女の切り札は一撃必殺

そう直感したのだ

だから焦らす

一撃必殺はタイミングが全てである

だからこそコンマのズレすら命取りなのだ

女は思った
こんなに苦戦したのは初めての経験だ

兄弟子や師範をも簡単に凌駕した彼女は敗北を知らない

だから初めて見えるものがあった

負けへの恐怖だ

女は敗北を見てきた

最初は自分を見下し、暴力で圧倒し蹂躙するモノ達だった
彼等は女の強さに絶望していく
最初は自信にまみれた顔も女の技に歪んでいく
やがて手足が動かなくなる

それは身体へのダメージだけなどではない

彼等は心が動かなくなったのだ

圧倒的強者、まるで獅子を知らず相手に丸腰で挑んでしまったかの如き後悔

だが女は敗北者の気持ちは知らない

その片鱗すら与えるモノがいなかったからである

女「心地よい!心地よいぞ!初めての感覚だ!これ程の高揚感は初めてだ!」

それは恐怖から目を反らした訳ではない
恐怖すら切り離し敵とする

全ては闘いなのだ

相手が人だろうと気持ちだろうとそこにあるのは勝負なのだ

対する姉にも初めての経験に高揚していた

この嵐のような打撃にここまで耐え抜いた人間はいない

今まであらゆる人間がこの美技に抗おうと幾つもの手段をとった

だが無意味

雨をかわしながら歩ける人間など存在しないのだ

だがこの女は違う
この女の防御はただの防御などではないのだ

その答えは構えにある

この死角なしの舞踏の中、女の構えは変わらないのだ

それは本来愚の骨頂
だが女は襲い来る打撃に手足を持って弱部を庇わず敢えて狙わせている
そう、姉は警戒心によっていつもの打撃が有効部分に放てない

使う体力はそのままで防御によって攻撃力が削がれているのだ

心による壁

体による壁

その二枚の壁は今までの何よりも厚い壁だったのだ

姉は攻撃を防御とし、ゼロになった防御力を補う

女は防御を攻撃とし、ゼロになった攻撃力を補う

端から見れば一方的な展開

姉が女を圧倒している

だが違う、攻撃と防御の狭間で互角の勝負が繰り広げられているのである

互いが気まぐれで始めたこの闘争に興奮していた

これまでいくら望んでも得られなかった快楽がそこにはあった

このままこの時が永遠に続けば…

だが二人の思惑を引き千切るように結末への布石が訪れる

姉の打撃数が減り、女の左手が下がった

互いの切り札の発動条件が揃った

まず女は右足を軸に回転し、姉に背を向ける
そして右膝を曲げその重量は全て右足へ集約していく

後は放つだけ、背を面としたただの体当たりではあるが威力は相当なモノ
全ての体重、それを全ての力で放ち一番の威力が出る瞬間にでぶつける
全力の打撃技だ

だがこれを使うのは初めてだった

使わなかったわけではない
使う相手がいなかったわけでもない

全ては姉が引き出した

この切り札を作らせてしまったのだ

対する姉の切り札はやはり蹴り

姉の長くしなやかで美しいその脚は蹴り技の精度を何倍も輝かせることが出来る

その美しい脚に何人もの人間が惹かれ、群がり、そして姉の蹴りの輝きを鮮やかにさせるための犠牲になってきた

その足技の秘技はやはり蹴り

両足のバネを最大限に使い女へと跳ぶ

真っ直ぐに

そして跳んだ勢いとしなやかな体の全てを使い捻る

そして全ての外側には踵がある
この踵には遠心力と跳躍力の合わさる威力が秘められている

空気が暴れている

木々は狂ったように揺れ、その先に付く葉は悲鳴をあげるかの如く散り、砂ぼこりはその空間からまるで逃げていくように荒れ狂う

それはまるで互いの切り札がぶつかり合う瞬間を恐れるかのように

二つの打撃がぶつかる

全ての威力を一点に集中させた踵と、全てのパワーを背中に集中させた究極の打撃

まるで爆発が起きたようだった

もし間近に人間がいたなら抵抗など許さず吹っ飛ばされていたことだろう

だが二人はその爆心地にいる

吹っ飛んだのは姉

何故ならば彼女は空中にいたから

その威力になす術もなく飛ばされる

だが女のダメージは深刻だった

面に飛ばされた姉とは違い、点に一部を打ち抜かれた女

まだ闘いは終わっていない

姉は宙を威力に飛ばされ、無抵抗に宙を舞う

もちろん吹っ飛ぶのは折り込み済みだった

だが誤算が一つ

余りに威力が強すぎて体の回転と意識の回転が想像以上だった

着地体勢がとれない
このままでは地面への打撃が始まる

相討ち

そう考えた刹那、視界に有り得ないモノが飛び込む

さっきの面が飛んでくる

女は威力の終着点で姉とぶつかり合った
そしてそのまま左足でもう一撃を地面に放ち跳躍したのだ

完全なる決着の為に

飛ばす面は先程とは違い打撃が目的ではない

文字通り跳ぶ為にあった

距離を詰め最後の一撃を叩き込む為に

女は体を捻りそのまま為を作る
そして放つ

全力の拳

無抵抗の姉を地に落とす一撃を叩き込んだ

姉は悟った

敗北を

決着を

そして自分が劣っているという事実を



そして



強がっていただけの自分を

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