【艦これ】 工作艦 明石。がんばります! (194)


※ 明石さんが主人公のSSになります。
 
※ 暴力表現や過度なエロはありません。

※ キャラの性格や口調などは、筆者なりの解釈です。自分の好みと違うようであれば、そっとスレを閉じていただけると幸いです。

※ 結構長くなります。短編でないとダメ、という方も、そっとスレを閉じていただけると幸いです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1428241231



提督「わが鎮守府にようこそ」(敬礼)

明石(敬礼) 「工作艦 明石です! 修理ならお任せ下さい! 」

提督「大事な艦娘たちの命を君に預ける。どうか、みんなをしっかり支えてもらいたい」

明石「は、はい! 微力ながら精一杯がんばります!」

提督「装備の開発や強化もお願いすることになる。長い戦争を戦いぬくために、君に頼ることはものすごく多くなると思う。どうか一緒に頑張って欲しい」

明石「はい!! 」


こんなに歓迎してもらえるなんて思わなかった。まだまだ小さな鎮守府みたいだけど、頑張ってサポートしましょう!


――――― 工廠

はじめまして、工作艦の明石です。修理したり、装備を強化したり、そういうサポート業務が得意です。ですので、工廠に住み着いて、日々、鉄と油とボーキサイトにまみれて生活しています。


島風「明石さーん、タービン整備してー! 」

明石「昨日整備したばっかりじゃないですか。まだ大丈夫ですよ」

島風「えー、整備したらもっと速くなれそうなのにー……」

明石「今度また改修しましょうね」

島風「ほんとに! 約束だよっ! じゃあ今日はー……提督のところに遊びに行こっと。じゃあねー!」

明石「はーい、転ばないように気をつけて下さいねー」


近代化改修なんかもわたしが担当しています。それで、装備や強化の相談を受けることも多くて、日々忙しいです!


清霜「明石さん、わたし、そろそろ戦艦になれそうかな? 」

明石「うーん、排水量的にちょっと10倍ぐらい足りないですから……まだまだ頑張らないとですね」

清霜「そっかー。じゃあ46cm砲とかもまだ積めない?」

明石「……積む場所もないですし、もし積めても、発射した瞬間に衝撃でひっくり返っちゃいますね、多分……」

清霜「うーん、戦艦になる日はまだまだ遠いなぁー」

明石「千里の道も一歩からですね。今できそうなこと、わたしも考えてみますね」

清霜「ほんと!? 明石さんありがとうー!」


空母のみなさんは、艦載機の整備で、良く工廠に遊びに来てくれます。


瑞鳳「やっぱり、99式艦爆の足が一番かわいいですよね~。この丸っこい足が(スリスリ) 」

祥鳳「確かに独特の可愛さがあるよね! 」

明石「わたしは彗星のクチみたいなところがかわいくて好きですねー」

祥鳳「たしかに、他にはない不思議な形ですよね。サメっぽいというか」

瑞鳳「彗星は整備が大変なのよー」

明石「確かに、水冷は馴染みがなくて、良くわからないですね~」

龍驤「うちは彩雲が好きやなー。たいらでのぺーっとしてて、かわいいわ! 」

隼鷹「あたしは零戦21型だねー。銀色でかっこいいよっ! 」


みなさん艦載機をすごくかわいがっています。わたしもクレーンをもっと可愛がろうかな。クレーンちゃん、行っくよ―! みたいな……。やめとこう……。


提督「じゃあ、この20.3cm連装砲を強化してもらおうかな」

明石「はい、ではさっそく……」

カーンカーンカーン

明石「はい、どうぞ! ちょっとだけですが強くなりました」

提督「ありがとう。明石が来てくれたお陰で、少しずつだけど確実に強くなれて、助かるよ」

明石「えへへへ……。ありがとうございます!」


強化や開発、修理状況の確認なんかで、提督は良く工廠に来てくれます。わたしは当然、機械オタクだけど、提督もお仕事柄、装備なんかに興味津々なので、話し相手としては最高です!


提督「あー、じゃあ、航空優勢以上が取れる前提なら、やっぱ主砲2のほうが……」

明石「そうですね。それなら徹甲弾も積みたいですね! 」

提督「うちは徹甲弾が全然足りてないからなー」

明石「じゃあ次はこんなレシピで開発を……」


楽しいです!


明石「じゃあ、お二人でこちらにどうぞー」

加賀「ありがとう、では完治まで、ゆっくり入らせて頂きます」

赤城「わたしもお隣でゆっくりしてますねー」

加賀「ふぅ……ドック(大浴場)だと、やかましい子たちもいっぱい来るから、こうやって静かに休めるのは助かるわ」

赤城「静かですぐ寝てしまいますけどね……ふぁ~ぁ」

明石「ふふ……完治したら起こしますので、ごゆっくりなさって下さい」


少しのダメージなら、わたしの小型ドックで修理できます。小型ドックというか、一人用お風呂だけど……。たまには一人でゆっくり湯船に浸かるのも嬉しいって好評です!


提督「zzzz……」

明石「あれ、提督、寝ちゃいましたか。しょうが無い、毛布毛布っと……。はい、風邪ひかないでくださいね……」


わたしの小型ドックを使うには、わたしを秘書艦=第1艦隊旗艦にする必要があります。とは言え、わたしは工廠を離れるわけに行かないので、その時はこうやって提督が工廠まで来てくれます。


提督「zzzz……」

明石「提督、おつかれみたいですね。でも、寝顔は無防備でかわいいです……」


修理完了までは、あまりできることがありません。ですから提督は、この時間は、ぼんやりしたり、うとうと寝てしまうことが多いです。


明石「じー……」


こうやって寝顔をゆっくり見れるのは、わたしだけの特権……。ちょっと嬉しいです。


明石「大丈夫。修理とか工作機械の手入れとか、色々やることあるから! 」


さ、寝顔ばかり見ていてはダメです。頑張ってお仕事しましょう! わたし、明石は、こんな毎日をすごしています。


短いですが、本日は導入部だけどいうことで以上となります。

明石さんと他の艦娘たちとの日々。提督との日々をゆっくり書いていくつもりです。

続きはまた明日の予定です。よろしければまたお越しください(o_ _)oペコリ


――――― 朝 工廠

島風「明石さん、おっはよー! 」

明石「島風さん、おはようございます。今日も早いですね! 」

島風「うん、日課のジョギング、いっぱいしてきたから、早速整備してほしいなって! 」

明石「はい、約束でしたもんね。今日はしっかり整備しましょう! 」

島風「おねがいしまーす! 」


カチャカチャ カーンカーン


明石「はい、整備完了! 機関快調です! 」

島風「あっりがとー! これでもっと速くなったかな? 」

明石「う~ん、島風さんは、すでに一番速いですから、整備してもなかなかこれ以上は速くならないですねー」

島風「えー! もっともっと速くなりたいのに……」


明石「でも、かけっこでも一番速いでしょ?」

島風「…………」

明石「あれ、どうしました? 」

島風「最近、誰も、かけっこしてくれないんだ……」

明石「そうなんですか……どうしてでしょう」

島風「わたしが速すぎて誰も追いつけないから、やりたく無いみたい。でもいいの! わたしが一番速いからなんだもん! 」

明石「島風さんと同じくらい速い、ライバルが来てくれたらいいですね……」

島風「ライバル? 」

明石「そうです。同じことを頑張る友達見たいな感じでしょうか。例えば島風さんのライバルなら、誰よりも速くなるぞ! って毎日頑張って競争するような人です」

島風「そっかー! 楽しそうっ。島風、ライバルを探すよ! 明石さんありがとうー! 」


……確かに島風さんには誰も追いつけませんから、かけっこの相手なんて提督ぐらいしかいませんよね。でも、かけっこ大好きな島風さんは寂しそうです。あの子は姉妹もいませんから、もしかしたら毎日寂しい思いをしているのかも……。うーん、提督にお話してみましょうか。


――――― 夕方 工廠

明石「はい、お二人ともお疲れ様でした。小破ですから、夕食までには治ると思いますよ」

伊58「ありがとでち。はぁー、お風呂はいいでちねー。オリョールの疲れが抜けていくでち」

伊401「ふー、お風呂にどぼーん! 気持ちいい~~」

明石「では、完治したら呼びに来ますので、ごゆっくり~~」


提督「おう、お帰り」

明石「ただいま戻りました。夕食までにはお二人とも完治する予定です」

提督「了解、ありがとう。ま、今日はもう出撃は終わりだな」

明石「そうですね。今日も皆さん頑張りましたっ」

提督「さてさて、そろそろ備蓄も危なくなってきたし、出撃や開発も考えないとなー」

明石「あはは、無駄遣いすると大淀に怒られますね!」


大淀は秘書艦です。いわゆる「できる女」で、提督をしっかりサポートしていますが、結構いい加減なところがある提督は、最近大淀に叱られることが多くて、すっかり尻に敷かれている感じです。わたしと大淀は長い付き合いで、仲の良い友達ですけど、わたしも良く叱られてます。


明石「あ、そうだ提督、ちょっと相談があります。島風さんのことなんですが」

提督「ん、島風がどうした?」

明石「実は今朝こんなことが……(明石説明中)……というわけなんです」

提督「そっか、明石のところでもそんな話してるんだな。俺も最近、毎日かけっこに付き合わされてて、こいつ友達いないなーって思ってたんだよ」

明石「……島風さん、姉妹もいないし、速さで追いつける人もいないし……きっと寂しいんじゃないでしょうか? 」

提督「うーん、そうだよなー。一応、俺にも考えがあって頑張っているんだが、なかなか思い通りに行かなくてな」

明石「あ、提督も考えがあるのですか? 」

提督「お、ということは明石にも考えがあるのか? 教えてくれよ」

明石「提督のも教えて下さいよっ。わたしのアイディアはですねー…………」


明石「なるほど、提督のアイディアいいですね! 実現したら最高ですねー」

提督「明石のアイディアは可能性が高くて、幅も広がっていいな! 」

明石「賛成していただけますか! 」

提督「ああ、俺が許可する! 実現するまでおもいっきりやってくれていいぞ! 」

明石「やった! じゃあ早速とりかかります。楽しみだな~ 」

提督「俺の方も、明日から集中的にがんばろう。きっと何とかしてみせる……」

明石「わたしの方は、数こなせば必ずできますから、問題は提督のほうですね。是非がんばってください! 」

提督「ああ。その代わり、ドックの方も忙しくなるから、明石も大変だぞ~」

明石「あはは、そっちもがんばりますっ…………って、あれ、もうこんな時間! 晩御飯、すっかり食べそびれちゃいましたね。簡単なもので良ければ作ります」

提督「うお、もう2100か。確かに腹減ったな。ま、時間を忘れるぐらい有意義な話ができて良かったよ」

明石「ええ、わたしも…………あ…………!」

提督「どうした?」

明石「ごーやさんとしおいさん……小型ドックに放置しっぱなしです……」


……

伊401「おなかが~~~」

伊58「すいたでち~~~~」


――――― 数日後

天津風「天津風、着任しました。次世代型駆逐艦のテスト艦で、島風のいとこみたいな船よ。よろしくね! 」

提督「おおお、ついに、ついに来てくれた! 君を迎えるために、必死で戦ったんだ……。ありがとう……ありがとう!」

天津風(こ、こんなに歓迎されるなんて……///)「そ、そんなに喜ぶなんて……どういう風の吹き回しかしら」

提督「さ、島風。いとこ?の天津風が来てくれたぞー」

島風「天津風、くるのおそーーい!」(抱きつきっ)

天津風「し、島風! もう着任してたのね。って、抱きつかないでっ。もう、なんなのー! 」

連装砲くん「ヤー」

連装砲ちゃん「ヤー」

提督「二人は同室になる、どうか仲良くやってくれ」

島風「はーい! さ、天津風、お部屋案内するよっ。はやくはやくー!」

天津風「ちょ、ちょっと引っ張らないでっ」


――――― 同時刻 工廠

明石「雪風さん……これが……例の秘密兵器です……」

雪風(ご、ごくり……)

明石「この2つをセットで装備してください……そうすれば……」

雪風「これで……勝てます! 早速行ってきます!!」

明石「は~い、ご武運を~~~」


島風「ここがわたしたちの部屋だよー。そっちの空いてるベッドが天津風のね! 」

天津風「あーあ、島風と同室なんて、うるさくて大変そうね。ま、よろしくね 」

島風「えへへー、よろしくね! 」

雪風(コンコン)「おじゃましまーす! 」

天津風「あ、雪風じゃない、こんにちは! 」

雪風「わぁ、天津風! 着任したんだね。わーい!」

天津風「うん、よろしくね! 」

島風「雪風、何か用事ー? 」

雪風「そうそう、島風、かけっこしましょ! 今日は勝ちますっ! 」

島風「え! もうわたしとはかけっこしないって……」

雪風「ふふーん、これを見てください! 改良タービンと強化缶ですっ! これで島風にも負けませんっ! 」

島風「すっごーい! いいよ、わたしも負けないよ! 天津風もいこー! 」

天津風「ちょ、ちょっと。わたしはまだ来たばかりで荷物もっ。あーもう、引っ張らないで! 」

イッチバーン エーモウイッカイ! ワイワイ


大淀「工作艦 明石さん。提督執務室までお越しください。繰り返します……」


あ、大淀の呼び出し。この声は……怒ってるよね。あーあ、まぁ、叱られるのもしょうが無いかぁ。


――――― 提督執務室

コンコンコン

明石「明石、まいりました」

提督「あー、すまんな、わざわざ来てもらって。俺の責任だから呼ぶ必要は無いって言ったんだけどなー」

大淀「て・い・と・く・?」

提督「あ、うん、必要だよね……あはは」

明石「えっと、大淀……? やっぱ怒ってるの? 」

大淀「怒る? わたしが何に怒るっていうんですか?(にっこり)」

提督「いや、怒るのは当然だよな。資源すっからかんにしちゃったからなー」

大淀「ものの見事にすっからかんですね」

明石「ご、ごめんね。レシピはあってたはずなんだけど、タービンも缶もなっかなかできなくて、ついつい熱くなっちゃって……」

提督「俺もなー、なかなか天津風が仲間に出てくれなくて、ひたすら出撃とバケツの繰り返ししちゃったからなぁ」


大淀「はぁ~~~。理由は提督からうかがいました。島風のために頑張ったのは素敵なことだと思います。でも、やり過ぎるのはいけないと思います」

提督「いやほんと、面目ない」

明石「ほんと、ごめんなさい」

大淀「なにより……。そんな大切なことを、わたし抜きで決めたことが一番いけませんね」

明石「えー……だって……」

提督「事前に相談したら、絶対怒られそうだし……」

大淀(キラーン)「なにか? 」

ブンブンブンブン

提督「わ、わかった、次からはちゃんと相談する。約束する」

明石「ほ、ほんとに。ちゃんと相談するから」

大淀「わかって頂いて何よりです(にっこり)」

提督(こ、こえ~~)


あ、大淀、実は拗ねてる。ごめんね。
のけ者にされた気がしちゃったみたいです。後でちゃんと謝ってフォローしておこう。大淀だって、きっと内心では賛成でも、資源の浪費は認められないみたいな、難しい立場なんです。


――――― 夜 工廠

千歳「ふー、お風呂に入ると楽だわー。最近、肩こりがひどくて……」

龍驤「うちは全然肩こりなんてせぇへんなー」

千歳「やっぱり重さの差かしら~(チラ)」

龍驤「うちの胸になんか用か?(怒)」

明石「あ、あはははは。で、では完治した頃に来ますから、どうか、仲良くお願いしますね~~」


提督「おう、おつかれさん」

明石「お二人とも小破ですが、練度が高いですから、完治するのは深夜になるかと。もうお二人にはこのままお休み頂くつもりです」

提督「ありがとう。明石も程々で休んでくれよー。最近、開発だ修理だでフル回転させちゃったからな」

明石「いえ! 好きでやっていることですからっ。ひさしぶりにおもいっきり開発しちゃいましたっ。大淀には怒られちゃいましたけどね(ぺろっ)」

提督「巻き込んでごめんな。俺も、あの後もこっっっってり絞られたから、しばらくは大人しく執務に励むよ……」

明石「あははは。大淀も大変なんですから、ちゃんと言うこと聞いてあげて下さいね」

提督「ああ。俺のダメな部分をしっかりカバーしてくれて助かってるからな。……たまーに、ちょっと息苦しいけどさ」

明石「あー! 大淀に言いつけちゃいますよ? 」

提督「マジ勘弁してくれ……」


明石「島風さん、すごく嬉しそうでしたね。良かった~」

提督「ああ。頑張ったかいがあったよ」

明石「これでもう寂しく無いですよね。姉妹がいなかったり、同型艦仲間がいなかったりすると、どうしても一人になっちゃいますから、解決できて良かったです」

提督「そうだな。特に駆逐艦は、姉妹が多くて賑やかにしてるのが多いから、一人ぼっちは特に寂しそうだよな」

明石「でも、もう大丈夫ですね! 」

提督「ああ、もう大丈夫だ」


損傷は修理できますけど、寂しさや不安、悩み、そういうものには、クレーンもドックも役にたたなくて悔しいです。でも今回は、提督のお陰で解決出来ました。とても嬉しいです!


提督「明石、今日はもう仕事終わりだろ。一緒に晩飯食おうぜ。鳳翔さんのところでさ」

明石「はい、ご一緒します! では、千歳さんと龍驤さんに連絡してから行きますね」

提督「おう、先に行ってるぞー」


……こうして、夕食をご一緒できることが多いのも、わたしのささやかな特権です。


――――― 少し後 鳳翔さんのお店

提督「ほんじゃ、かんぱーい(ぐびぐび)」

明石「かんぱーい(ちびちび)」

提督「さてさて、しばらくはデスクワークだなー。明石も、ちびちびとした開発しかできないから覚悟してくれよー」

明石「あ、それなら実はアイディアがあるんですよ!」

提督「ほうっ! 聞かせてくれ」

明石「えっと、資材をほとんど使わない装備をピンポイントで狙うんです。具体的にはソナーと爆雷なんですけど…………」

提督「そか、あれはたくさんほしいしなー…………」

明石「それで、失敗率は高いんですけど…………」

提督「それなら数をこなして…………」


せっかく二人っきりで夕食でも、話すのはいつもと同じことばかり。楽しいからいいんだけど……たまにはちょっと何かあってもいいのになー……って思ったりもします。


提督「あー、そうだ、話は変わるんだが、明石?」

明石「はい、どうしました? 」

提督「んー、こういうことを真正面から聞くべきでは無いのかもしれないけど……」


……あ、あれ? と思ったら急にいつもと違った感じに……。な、なんだろう。ちょっとドキドキしてきました!


提督「島風がさ、姉妹がいなくて寂しそうって話ししてただろ? 」

明石「は、はい……? 」

提督「それを言ったら、明石が一番寂しいんじゃないかと思ってな。工作艦なんて明石一人だし、姉妹もいないだろ? どうだ……正直に言って、寂しさとかは無いか?」

明石「…………え、えっと……ちょ、ちょっと待って下さいね」


び、びっくりした! 言われてみればそうです。いつも賑やかに、いろんな人と接するけど……工作艦としての悩みとか、開発の相談とか……そういうことができる仲間っていないんですよね。でも、あんまり寂しいって感じたことないなぁ……。そっか、そういう相談って、毎日のように提督にしちゃってるからだ……。


明石「いえ、寂しくないです。提督が居てくれますから! 」

提督「え……! あ、ああ、そ、そうか……///」


あれ、提督がなんかうろたえてる……って、今の言い方じゃ、まるで、こ、こ、告白みたいじゃないですか!! だめだめだめだめ!!


明石「あ、その、ほ、ほら! 提督って、開発とか修理とかの話が大好きじゃないですか!! だから、すっかり工作艦仲間の気分でお話できるので、あくまで工作艦っぽい存在として、仲間がいるから寂しくないっていうかっ! 」

提督「そ、そうだよな! 俺、機械好きだし、一緒に大淀の目を盗んで開発回しちゃうしな! 仲間仲間! そっか、そうだよな、うん! 」


ふーーー、なんとかごまかせました。ドキドキ。


提督「ふー、結構飲んじゃったな」

明石「そうですねー。もう寝ちゃいそうです」

提督「あー、そうだ、いっこだけ」

明石「はい? 」

提督「そうは言っても、同型艦や姉妹が居ないことで、悩みとか相談できる相手が居なくて困ったりすることがあるかもしれない。その時はちゃんと相談してくれよ? ま、俺は工作艦じゃないけどな」

明石「あはは。提督もクレーン生やしてみますか? 」

提督「俺じゃ、クレーン一本で潰れちゃうよ……」

明石「お心遣いありがとうございます。そういうことがあったら、是非頼らせて下さい! 」

提督「ああ、是非そうしてくれ。それじゃ、おやすみ」

明石「はい、おやすみなさい」


提督の優しさがとっても嬉しかったです。お酒もまわっていて、もう、帰り道はスキップしてしまいそうです。


提督が居てくれるから、悩みを共有できる相手がいない寂しさや孤独……。そういうものと無縁でいられるんだって、今日気が付きました。提督はもしかして、そのために、しょっちゅう工廠に居てくれるのでしょうか。わたしってば、大事にされてる? えへへ。


あ、でも……。同型艦や姉妹がいない、悩みを共有できる相手が居ないって……。一番当てはまる人は提督ですよね。そもそも艦娘じゃないし、男性だし、司令官だし……。提督は悩んだりしているんでしょうか……?


本日分は以上となります。こんな感じで、ゆったりと進めていくつもりですので、気長にお付き合い下さい。

できたら明日また投下できるよう頑張ります。

乙 こんな可愛い明石ちゃんが「頭ですか?」なんていうようになるんかのぉ・・・


提督には既に伸縮できるクレーンが付いてるじゃないか


――――― 1か月後

カタカタ カーンカーン

明石「はぁ……」

今日も小破までの軽微な損傷は無し。だから小型ドックは不使用。……つまり、今日も秘書艦になってないし、提督も来ません。


明石「はぁ~~~~」

先月の資材の浪費。それから大規模作戦の内示。その結果、うちの鎮守府は『資源溜め込み月間』になっています。レベル上げの出撃は損傷しないように配慮しての最低限。あとは潜水艦によるオリョールだけ……。


明石「最低限の開発と修理……がんばろう……」

開発もデイリーの最低限のみです……。暇です……。やることがありません。


明石「そういえば、ここ数日、誰にも会ってないなー」

修理に来る人も居なければ、開発禁止で開発希望者も来ません。空母さんの出撃も無いから、艦載機整備にも来ないし……。


明石「こんなのは不健全! よし、今日は大淀を晩御飯に誘おう! 」

いくら機械オタクのわたしでも、一日中、機械としか会話してないのは良くないですよね!


――――― 夜 鳳翔さんのお店

大淀「あは♪ さすがの明石も、機械いじりだけでは退屈してしまうのですね」

明石「もー、人を何だと思ってるんですかっ。まぁ、機械に囲まれていれば幸せなのは否定出来ないですけどっ」

大淀「工廠は遠い場所にあるから、用事がないと行かないですよね。出撃が絞られている今、確かにあまり人が行かないかもです」

明石「そうだよー。出撃が無いのが悪いんだっ。大淀~もっと出撃しようよ~~」

大淀「あらあら、出撃を絞らないといけないのは、誰のせいでしたっけ?」

明石「うう、それを言われると言葉がないけれど……」

大淀「次の作戦も大変そうなので、どうしても物資の備蓄は必要なんです。作戦が始まったら目が回るくらい忙しくなりますから、それまで我慢して下さいね」

明石「うう、わかりましたっ。もうちょっと我慢しますっ」


うん、わかってるんです。物資不足で作戦遂行できなかったら、提督が責任を問われちゃいます。そうならないように、大淀がしっかり管理してくれてるんですよね。


明石「大淀、ごめんね。変な愚痴で。大淀が、心を鬼にしてでも物資を貯めないと! って頑張ってるのはわかってるんだけど……」

大淀「はい、そうですね。浪費大好きな提督さんと明石が、叱られた犬みたいにしゅーんってしてるのを見ると、さすがに心がぐらついちゃいますから。鬼にならないとっ! 」

明石「い、犬みたいになんてなってないですっ」

大淀「ふふふ……。明石はともかく、提督はもう、叱られた子犬みたいにしょんぼりしてますよ。毎日毎日、遠征組と潜水艦組に責められてるし……わたしたちだけ忙しいって」

明石「そうなんだー。提督も大変ですねー」


やっぱり、司令官って色々悩みが多そうです。きっと苦情係みたいになっちゃうんでしょうねー。


大淀「でも、明石がしょんぼりしているのは、本当は、『退屈だから』ではないでしょう? 」

明石「へ? 」

大淀「何をぽかんとしているの? 工廠で、一人で退屈していて、『寂しい』って、それでしょんぼりしているのでしょう? 」

明石「え、そうなんですか? 」

大淀「だって、退屈なだけなら、やろうと思えばできることはいっぱいあるでしょう? そのやる気が起きないのは、一人で頑張るのが寂しいからじゃないのかしら。違うの?」


…………違わない。そっか、わたし、一人で寂しかったんだ。
あ、自覚したらなんだか悲しくなってきました。そっかー……。


大淀「あらあら、明石が本当に、叱られた子犬みたいになってしまいましたね」

明石「うーん、寂しいって自覚したら、すごく寂しくなってきたんですっ」

大淀「まぁまぁ。お仕事はどうしても一人でやることが多くなりますけど、ご飯とか、こうしてご一緒すればいいじゃないですか」

明石「うん、ありがとう……」

大淀「で・も・♪ 」

明石「? 」

大淀「明石はほんとは、誰かさんと一緒に居られなくて寂しいだけなんじゃないかしらー? それだと、わたしが一緒にご飯を食べても、焼け石に水かもしれないかもですねー」


……だ、誰かさんって……! 顔に火がついたみたいに真っ赤になってしまいました!!


明石「そ、そんな! わたしは別に提督とは何でもないですからっ! ただ話が合うから一緒に話せると楽しいだけですからっ! 」

大淀「あれぇ~? わたしは提督だなんて一言も言っていないのに、どうして真っ赤になって弁明するんでしょうね~」

明石「!!! も、もう、ほんとに違うから!!」


……か、からかわれたんだよね。もう、大淀はいじわるなんです。ぷんぷん


――――― 夜 工廠 明石の部屋

工廠の開発室(いつもいる部屋です)の隣にあった倉庫をあけて、自分の部屋にしてしまってます。すぐに部屋に帰れるから楽ですけど、職場に住み込んでるみたいで……女子としてこれでいいのかっ! という気もしますが、それはとりあえず棚に上げてっと……。


ゴロンゴロン

……眠れない……大淀に言われたことが心に引っかかって……。


明石「寂しい……かぁ……」


ついこの間、島風さんが寂しそうなのを何とかしよう!って、提督と頑張りました。
人の世話を焼いていたわたしが……ねぇ。しかも、わたしは大人なのに……。

ゴロンゴロン

島風さんの場合……自分の好きなことを一緒に楽しんでくれる人が居なかったり……日々を一緒に過ごしてくれる姉妹が居なかったり……そういうことが寂しさの原因だったんだと思います。

ゴロンゴロン

じゃあわたしの寂しさの原因は……。ううん、大淀の言うとおりなんです。ほんとはちゃんとわかってるんです。


明石「はぁ……」


提督が……来てくれないから。この間提督と話した通り……。姉妹も同型艦も居ないわたしですが、提督がいるから寂しくなかったんです。でも……もう2週間近く、提督は来てくれません……。
だから……寂しい……すごく寂しいです……提督……。


明石「うう……ぐす……ぐすっ……」


提督は、司令官という大切なお仕事。みんなを支える人です。だから、わたしのわがままなんかで、大事な時間を使わせちゃいけない。振り回しちゃいけない……。でも……。


明石「だめだめっ。切り替えてちゃんと寝よう! また明日がんばります! 誰も聞いてないけどっ」


……島風さんも、ずっとこんな寂しさを抱えてたのかな……? 他にも同じように寂しい人はいるのかな……? 提督も……やっぱり、寂しくて眠れない日とかあるのかな……?

ううん。提督はみんなから好かれてる。きれいな人やかっこいい人、すごい人、みんな提督のことが好きです。だからきっと、提督は寂しくなんか無い……きっとそうだ……。


zzzzzz……


――――― 翌日 提督執務室

提督「やれやれ、いざ貯めようと思うと、なかなか備蓄できないもんだな」

大淀「ええ。ですから無駄遣いを戒めているんですよ(にっこり)」

提督「ハイ……自業自得です、ハイ……」

大淀「あら? 島風のために、頑張って物資使っちゃったこと、後悔なさってるんですか? 」

提督「うーん。大淀には悪いけど、後悔はしてないんだよなー。俺は絶対に必要なことだったと思ってるし」

大淀「提督らしいですね」

提督「ただ、その俺のわがままで、大淀に苦労かけちゃってるのは確かだから、申し訳ないという気持ちになるわけだ……」

大淀「あら、お気遣いありがとうございます。でも、仲間のために頑張るのは素敵なことですから、どうか胸を張って下さい」

提督「うーん、ありがとう……」

大淀「ところで、寂しい島風のために、そんなにも頑張った提督ですが、今はもっと寂しがっている子が居るのはご存じですか? 」

提督「なにっ! いや、初耳だ。誰なんだ? 」

大淀「あーあ。これじゃあ、あの子が可哀相ですね」


提督「大淀、もったいぶらずに教えてくれよ。知らないと対処のしようが無いじゃないか」

大淀「だめです。こんなことも自分で気が付けない鈍い人は、少し頭を冷やすべきなのです」

提督「ぐぬぬ……(いじわる女め)」

大淀「何か?(ニッコリ)」

提督(き、聞こえてる、絶対心の声が聞こえてる……。すいませんすいません)


大淀「提督も、ほんとは心当たりあるんですよね? はい、おっしゃって下さい」

提督「あー…………。もしかして明石か? 」

大淀「はい、よく出来ました」

提督「しばらく工廠行ってないしなー。修理とかも無くて退屈してるんだろうな」

大淀「わかっているなら、どうして行かないんですか? 」

提督「いやー……」

提督(だって、用もないのに、明石が一人でいるところに通ってたら……下心ありそうで気持ち悪いじゃないか! 明石は、たとえ迷惑に感じても、上官の俺には文句言えないだろうし……)


提督「よし、こうするか! 」

大淀「どうするんですか? 」


ノシノシノシ

提督「あーあー、テステス。マイクテス」

提督「あー、提督だ。鎮守府のみんなに連絡」

ガヤガヤ

ナンデショウ

明石「提督から放送なんて、何事でしょう?」


提督「あー。みんな、工廠の明石には、修理や整備でお世話になっていることと思う」

大淀「あ、あの、提督……」

提督「しかし、最近、出撃が少ないせいで、工廠に訪れる人はほとんど居ない。それで、明石がとても寂しいそうだ」


ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい! なんですかこの羞恥プレイーーー!
やめてーやめてーー!


提督「みんなも、普段からお世話になっているんだから、明石のところに遊びに行って、寂しくないようにして欲しい。以上だ」

大淀「提督……あなたという人は……」

提督「? あれ、何か間違ってたか?」

大淀「そこに正座しなさーーい!!」

提督「ひぃっ。は、はい!(正座)」


――――― 少し後 工廠

がやがやがやがや

金剛「ハーイ、Afternoon Teaをご一緒するデース」

比叡「よいしょ、よいしょ、金剛お姉さま、ここでいいでしょうか」

青葉「明石さん、実は寂しがりんぼなんですね。その胸中を独占インタビューしちゃいます!」

睦月「よぉーし。睦月型全員、突入~~。明石さんを取り囲め~~」

暁「第六駆逐隊も突入するわよ! レディは寂しい友達を一人になんてしないんだから!」

那珂「明石さん、わたしとユニットを組もう! アイドルになればファンがいつでも押しかけてくるから寂しくないよっ!」

川内「夜はわたしと夜戦しよう。大丈夫……夜戦はほんとに良いんだ……すぐ癖になるよ……ふふふ」

明石「えっと、あ、あははは……」


ど、どうしてっ! どうしてこんなことにっ!! 誰かたすけてーーー。


大淀「はーい、みなさん、いっぺんに押しかけても困るだけですよー。用がなくてもたまには遊びに来る、ぐらいで結構ですので、今日のところは解散です、解散! 」

エーザンネン

アカシサンマタネー


明石「お、大淀。ありがとうっ! どうなることかと思いましたぁ……(へなへな)」

大淀「いえ、提督のあれを止められなかったわたしの責任でもありますから……ごめんね、明石」


明石「はい、お茶です」

大淀「ありがとう。ほんとにごめんなさいね。提督が、まさかあんな放送するなんて」

明石「ほんとにびっくりしました! ひどい羞恥プレイですよー」

大淀「あら、明石さんもエッチな言葉を知ってるんですね」

明石「/// か、からかわないでっ。ほ、ほんとに何なんですか、あの放送は」

大淀「えーっと。提督に、島風みたいに寂しがってる子が居ますよってお話しした結果です……」

明石「あ……あはは……なるほどー……ストレートすぎてあれですけど、提督らしいといえば提督らしいですね」


……そっか、提督は、わたしが寂しいってことに気がついてくれたんですね。……でも……自分で遊びにくるんじゃ無くて、みんなに放送したんだー……。(しょぼん)


明石「はぁ……。なんだかもうバタバタです。大淀、良かったら今夜も晩御飯一緒に食べましょ? 」

大淀「ごめんなさい、今日は提督とギリギリまで残業して、その後、足柄さんと食事する約束なの。一緒で良ければ来ますか? 」

明石「あー、いいのいいの! きのう一緒に食べたばっかりだし! 次の機会にしましょっ」

大淀「ええ、ごめんね。あと、提督にはきっつくお仕置きしておいたから、もう変な放送はしないので安心してね」

明石「あ、あはは……。一回だけでもう手遅れですけどねー……」


――――― 夜 工廠

カーンカーン

大変だったけど、あんなに大勢で来てくれて、みんなが心配してくれました。超恥ずかしかったけど、とっても嬉しかったです。やり方はともかく、提督、ありがとうございます。


カンカンカンカン キリキリキリ

きっと明日からも、いろんな人が気軽に遊びに来てくれるでしょう。これでもう寂しくなくなりますね。はぁ……。


トントントントン ギギギギギ

大淀は足柄さんと食事ですかー。あの二人はとても仲良しですよね。前世でも二人でイケイケしたそうですし、できる女同士、気が合うのかもです。


明石「はぁ~~」

それとも、大淀はまだ提督と残業でしょうか……。


明石「はぁ…………」

提督はずっとここに来てない……。ここに居ないということは……別の場所で、誰かと一緒に居るわけですよね……。そんな当たり前のこと……気付いてなかったです……。


明石「大丈夫! 修理とか工作機械の手入れとか、色々やることあるから大丈夫です! ……大丈夫……ぐす……」


提督「おーい、おじゃまするぞー」


ひっ!!!


提督「あ、明石! ど、どうした、何があった!? 」


や、やばいやばいです。ちょっと泣いちゃってるところを見られてしまいましたっ!!


明石「(ゴシゴシ) あ、あはは、いやー、目に油が入っちゃって、参りました。いたいいたい(棒)」

提督「さすがにそのぐらいの嘘はわかる。どうした……? 」


あう……ごまかし失敗です……。それに……提督が心配そうに見てる……これじゃ、冷静になんて……


明石「(じわっ)提督……やっと来てくれました……」

提督「……明石……」

明石「うう……ぐすっぐすっ……提督が居るから寂しくないって……工作艦仲間だって……言ってたのに…………ずっと来てくれなくて……ぐすっ」

提督「すまん……ほんと、気が利かなくて、ほんとすまん……(なでなで)」


提督になでられたの初めて……駆逐艦の子たちが、ご褒美になでてもらってるって誇らしげに言ってたっけ……うん、すごく心地よい……


提督「さ、今日は鳳翔さんにお弁当作ってもらってきたんだ。一緒に食べて、ゆっくり話をしよう。な?」


ふふ……提督、すごいおろおろしてる……。不器用でスマートじゃないかもしれないけど、提督らしくて、この方がずっといいです。


明石「はい、いただきますっ! 」


明石「それで、提督。仲間だって。何でも相談しろって言ったのに、どうして全然来てくれなかったんですか? 」

提督「あー、ちょっと言いにくいけど……泣かせた罰だ、仕方ない、話すか」


うう、油臭くて嫌だとか、機械の音がうるさいとか……まさか、わたしのことが苦手だとか……。


提督「だってさー、女の子が一人で作業してるところにだよ? 用もないのに遊びに行くってなぁ。しかも、俺って上官だろ? 断れないのをいい事にセクハラしてるみたいだろ? 」

明石「へ? 」

提督「いや、だからさ。明石が『一人で作業進めたいのにー』とか『相手しなくちゃいけなくて面倒だなー』って思っても、俺が上官だから、なかなか言えないだろ? だから、仕事無いのに来るのはだめだなーって」


こ、この人は……。おもいっきりズレてますね! やっぱり訂正。ちょっとぐらい器用でスマートなほうがいいですっ!


明石「提督~? わたし、そんなふうに迷惑そうに見えました? 」

提督「いや、そうは見えなかったけど。でもなー、女心ってほんと分かんなくてな。どうにもオロオロしちゃうんだよ。もしかして考えすぎだったか? 」

明石「あたりまえですっ! いいですか? もし忙しくてどうしても手が離せないとか、困ったりしたらちゃんと言いますから! だからっ!」

提督「うん。だから?」

明石「だから……その……」


本当はもっと伝えたいことがあるような気がするんだけど……よく分からないから……


明石「いつでも遊びに来て、話し相手になって下さい! 工作艦仲間なんですからっ!! 」

提督「ああ、俺もいよいよ、本気で工作艦にならないとダメかっ」

明石「はい! まずはクレーンを両肩に取り付けましょうっ! 」

提督「まずは、重さに耐えられる体力をつけるところから始めるかな……」


――――― 数日後 工廠

瑞鳳「それで~。このかわいい足を残した、もっと強い艦爆が作れたらいいと思うんですよっ」


今日は瑞鳳さんが遊びに来てくれています。開発は禁止ですから、せめて、どんな開発ができたら良いかのイメージを話し合っています。……これってただの雑談ですねっ。


明石「彗星の足はだめですかっ?」

提督「足なんて別に何でもいいと思うけどなぁ」


提督も、やっとわかってくれて、暇な時にふらっと遊びに来てくれます。相変わらず開発や装備の話ばっかりですけど……とっても楽しいですっ!


瑞鳳「何を言ってるんですかっ。この愛くるしい丸っこい足こそが至高です! 」

提督「丸っこい足かー。確か、同盟国の爆撃機で、同じような足の優秀な機体があるとか聞いたなぁ」

明石「あ、多分Ju87ですよっ」

瑞鳳「うわー、良いですねー。それ作りましょう!」

提督「いや、だから、外国の話だってば……」

明石「同盟国ですから、そのうち技術が入ってくるかもですね。そしたら作りましょう」

瑞鳳「わーい、楽しみだなぁ~」


大淀「見つけました! やっぱりここでしたねっ」

提督「げっ! 」

大淀「執務が一段落したとはいえ、ちゃんと執務室に居ていただかないと困りますっ。緊急事態があったらどうするんですかっ」

提督「うー。執務室でぼーっとしてるのも暇なんだよなぁ」

瑞鳳「あ、じゃあわたしが遊びに行きますっ。せっかくだからお昼ごはん作っていきますね! 」

提督「おー、嬉しいなぁ。大淀の分も頼むよ」

瑞鳳「了解です! 明石さんも一緒に行きましょっ♪ 」

明石「えっ……。わたしもですか? 」

瑞鳳「だって、出撃が無くて暇なんですよね? 」

提督「そうだな。やることが無いのに工廠に張り付いている必要も無いだろう」

大淀「提督は執務室に張り付いていないといけませんけどね♪ 」


そっか……寂しい時には、自分で外に出ることだってできるんだ……。あはは……わたしったら、そんなことにも気が付かなかったんだ……。


明石「はいっ! じゃあ瑞鳳さん、一緒に作りましょう! わたしはカレーが得意なんですよ! 」

瑞鳳「うわぁー。いいですね! わたしは玉子焼きが得意です♪ 」

大淀「はい、提督は行きますよー(引きずり)」

提督「じゃあ、待ってるからなー(ズルズル)」


今日は楽しい一日になりそうです!


本日の投下は以上となります。できるだけ毎日投下したいのですが分量的にだんだんつらくなってきた(自業自得)。
何とかがんばって、明日また投下予定です。

>>34
うちの明石さんはそんなことを言う子じゃありませんっ

>>35
大淀「そんなシモネタを言う人は、そこに正座です」


――――― 1か月後 工廠

長門「明石、皆ボロボロだ。すまんが修理を頼む」

明石「うわー! ほんとに皆さんボロボロじゃないですかっ! お疲れ様でした。生還、なによりです! 」

榛名「榛名もちょっと大丈夫じゃないです……」

加賀「派手にやられて頭にきましたプリプリ」

赤城「まぁまぁ、加賀さん。無事突破できたんだからよしとしましょう」

愛宕「も~、ボロボロよ~。これで突破できなかったら泣いちゃうところだったわ」

北上「いやー、もう二度と行きたくなーい。はやく修理したーい」

明石「早速、順番に修理に入りますね。みなさん、どうぞのんびりしてくださいっ」


皆さんの活躍で、何とか作戦完了です! こんなにボロボロになるまで……。皆さん本当にすごいです!


明石「長門さん、大破じゃないですか! 任務も大切ですが、どうぞご自身も大事にしてくださいね!」

長門「おかしなことを言う。わたしは提督に勝利を約束して出撃した。もちろん轟沈は避けるが、勝利のためには、自身が損傷することなど気にしない」

榛名「長門さん……素敵です! 」

北上「ま、わたしもすぐ大破しちゃうけど、確かに自分の損傷なんて気にしてられないなー」

明石「でも……痛いし怖いですよね? 」

加賀「強い恐怖は無いわ。提督は轟沈するような指示を出しません。ですから、損傷はしても沈むことは無いと信じてますから」

赤城「もちろん、被弾の恐怖はありますけどね。でも、戦闘中は必死で、あまり気にならないですね、確かに」

愛宕「これで服が破けなければ言うこと無いんだけどね~~」

明石「あ、あはは。服も含めてしっかり治しますね! 」


わたしは戦闘に出ることが無いですから、こうやって最前線で恐怖に耐えて戦っている人たちが、とてもまぶしいです。


長門「しかし、前回の作戦と比べると、ずいぶん安定して楽に突破できたな」

加賀「ええ。編成も装備も上手に組み合わせていたわ。ちゃんと戦訓を元に研究したのね」

榛名「さすが提督です。しっかり研究なさって、必ず前進しています」

愛宕「最初は頼りない提督だと思ったけど、立派になったわね~」

北上「大淀さんに叱られて正座してるの見ると、立派な提督って感じはしないけどね~」

赤城「偉そうな感じがまるでない人ですからね」

サクセンシキガ シッカリシタジュンビガ ワイワイ


……わたしだけが見られる提督の姿もあるけど……戦っている人たちもまた、わたしの知らない提督を見ているんですよね。ちょっと羨ましいけど……わたしが見る機会はきっと無いですね(しょんぼり)


明石「さ、後は皆さん、長時間になりますがドックでゆっくり入渠なさって下さい。提督から、無事突破できたからゆっくりしてくれ、との伝言です」

北上「おお、ありがたいね~。でも、ゆっくり休暇なのは、バケツ不足が深刻だからだよね~」

赤城「この作戦で使いきってしまいましたから……。熱くなって使いすぎて、また大淀さんに大目玉をもらったとか」

加賀「ああ、夜に廊下で正座していたのは、それだったのね」

榛名「ちょっとかわいそうです……」

長門「まぁ、お言葉に甘えて、今夜はゆっくりさせてもらおう」

ワイワイ


本当にみなさんお疲れ様です。わたしは、今後も戦闘に出ることは無いだろうけれど、みなさんに最高の修理ができるように、みなさんが最高の装備で挑めるように……がんばります!


……と、思っていたのですが……。


――――― 翌朝 提督執務室

明石「えええ! わたしが戦闘に参加するんですか!? 」

提督「あ、戦闘といっても演習だけどな。実戦じゃない」

大淀「機銃を満載して、旗艦を勤めていただこうかと」

明石「待ってください! いくら演習とはいえ、わたしは戦闘は全然ダメですよ。役に立たないですよ~」

提督「あ、うん。戦闘で活躍してもらうっていうわけじゃないんだ。練度を上げて欲しいだけだから、みんなで明石を守りながら戦う感じになる」

明石「へ……? なんでそんなことを? 」

大淀「実はね、明石に担当してもらってる修理とか開発なんですけど……。明石自身の練度が上がることで、効率や成功率が上がるそうなのです」

提督「理由は不明だが、そういうデータが出てるんだ。だから、明石にも演習なんかで少しずつ練度を上げてもらいたい」


しゅ、出撃……わたしが……? そりゃ機銃ぐらいは撃てますけど、戦闘訓練なんて全然したことないんですよー! でも、修理や開発の能力があがるのかぁ……そうすればもっとお役にたてるかな……。


明石「そ、そういうことであれば、頑張りますけど……。でも、ほんっっとに、戦闘能力は期待しないで下さいね!」

提督「あははは、わかってるって。クレーン振って、他のみんなを応援してくれるだけでいいから。あ、何ならチアガールの服装でも……」

明石「そんな恥ずかしいカッコしません! 」

大淀「て・い・と・く・?」(キラーン)

提督「おっほん。では冗談はこのくらいにして。不慣れなことで大変かと思うが、他のみんなにしっかりサポートしてもらうから、どうか気軽に出撃してくれ」

明石「はい! 」


そんなわけで、わたしの初出撃が決まってしまいました!(演習だけど)
とりあえず機銃とか装備してみましたが、他にどんな準備をすればいいのか……。ほんとに応援するだけになりそうです……しくしく


提督「それじゃあ、今日の演習艦隊を発表する。まずは旗艦、明石」

明石「ひゃ、ひゃい!」

提督「これからしばらくは、明石の練度上げが演習の重点課題になる。知っての通り、明石は戦闘艦ではないから、皆でしっかり守ってくれ。旗艦を守りぬく訓練も兼ねていると考えてもらってもいい」

提督「明石の専属護衛は五月雨がついてくれ」

五月雨「はい! 護衛ならお任せ下さいっ 」

提督「航空戦力は龍驤と隼鷹だ。明石の護衛のためにも、直掩をしっかり頼む」

龍驤「うちにおまかせや! しっかり守るでー! 」

隼鷹「あたしは攻撃もしっかりやるぜっ」

提督「砲戦は陸奥と羽黒だ。しっかり頼む」

陸奥「わたしの出番ね! ばっちりやってあげる♪ 」

羽黒「精一杯頑張りますっ」

明石「実は、演習も含めて戦闘参加は初めてです。みなさん、本当によろしくお願いいたします(ぺこり)」

龍驤「戦闘に駆りだされて大変やなぁ。なーに、整備や修理でいつもお世話になっとるんや。恩返しに全力で守るで! 」

羽黒「そうです。いつも本当にお世話になっていますから、恩返しですっ」

五月雨「一緒に出撃したら、寂しくないですもんね! 」

明石「うわーん、そのことはもう忘れてくださーい! 」


皆さんの優しさが身に染みます。せめて足を引っ張らないようにがんばらないと……。


龍驤「よっしゃ、彩雲発進! 見つけてきてや~」

羽黒「水偵さんも、偵察お願いしますっ! 」


特に打ち合わせも無しに、皆さん一糸乱れず移動して偵察して……すごいなぁ。鎮守府で見てる姿と全然違ってます。


龍驤「よっしゃ、敵艦隊発見! 戦艦も空母もおるでー」

隼鷹「第一次攻撃隊、発艦するぜっ! 」

龍驤「直掩あげるでっ」

五月雨「敵攻撃隊が来ると思います、明石さんはわたしの後ろにっ! 」

明石「は、はい、分かりましたっ」


うう、普段はドジっ子でかわいい五月雨さんに守ってもらうわたし……。
って、うわ……敵の艦載機が来た……こ、怖い!


龍驤「少しだけ撃ち漏らしたわっ。対空防御頼むでっ! 」

羽黒「了解、全艦対空防御ですっ! 」

明石「た、対空防御了解。機銃発射っ! 」


隼鷹「攻撃隊帰還。結構損害を与えてきたぜっ! 」

陸奥「おっけー。次はわたしの出番ね。全砲門開け! 撃てー!」

どどどーーーーん!!


うわうわうわうわ、す、すごい音! これが長門級の一斉射撃! す、すごい迫力です……。


羽黒「続けて、わたしも。全砲門開け。撃ちます!! 」

五月雨「敵の砲撃も来ます! 明石さん、回避を! 」

明石「は、はいっ! 回避回避っ。って、とりあえずジグザグしてれば……」


多くの砲弾が……こちらに向って……すごい音を立てながら落ちてきます……。こ、怖いです……。


五月雨「明石さん、わたしが前に出て盾になります……って、わわ、勢いつけすぎて通り過ぎちゃった! 止まって~~」

明石「え、え、え。五月雨さん、どこに行くの~~。って、わわわ! 」(ぺしゃ)


ペシャって何か……あ、これはペイント弾。そっか、わたし被弾したんだ。これが実戦だったら……怖い~~。


五月雨「も、戻ってきました。もう大丈夫です! さ、盾になりますっ! 」


ドーンドーン ワーワー


提督「えー、演習は無事勝利だ。みんなお疲れ! 」

大淀「皆さんお疲れ様でした。リザルトは、旗艦明石さんが小破、隼鷹さんが中破。他の皆さんは損害無し、または軽微。一方、相手艦隊は全滅です。見事なS勝利です」

提督「MVPは陸奥だな。見事な砲撃だった」

陸奥「あらあら、わたし? 悪い気はしないけど、どうせなら明石さんに譲りたかったわ」

明石「と、とんでもないです。わたしなんて、目をつぶって機銃撃ってただけですから……」

羽黒「いえ、ちゃんと回避運動されてましたし、立派な旗艦でした! 」

五月雨「わたしがドジしなければ、被弾も防げたのに……ごめんなさい(しょぼん)」

提督「あはは、五月雨のあれは、いかにも五月雨らしかったけど、実戦ではワンミスが命取りになる。今後気をつけてくれ」

五月雨「はいっ! (敬礼)」

隼鷹「じゃあ、あたしたちは艦載機の補充と整備行ってくるよ。結構落とされちゃったからね」

龍驤「やっぱ正規空母相手やときついわー」

提督「おう。じゃあ解散だ。明石は残ってくれ」


ガヤガヤ


大淀「お疲れ様。慣れない戦闘で大変だったでしょ?」

提督「ほんとにお疲れ様だ。無事終わって、俺もホッとしてる」

明石「ありがとうございます。あんなに緊張するなんて思わなかったです」

大淀「ふふふ……慣れないことをするっていうのはそういうものですよね」

提督「大変だとは思うが、徐々に慣れていってくれ。当面は、落ち着いて戦えそうな演習相手の時だけ参加してもらうようにする」


うわー。やっぱり今後も参加するんだぁ……。でも、練度上げるって決めたんですから、腹をくくって、頑張りましょう!


明石「はい、わたしが不慣れなばかりにご迷惑をお掛けしますが、よろしくお願いしますっ」

提督「いや、明石の練度上げは、半分は俺のわがままみたいなものなんだから、責任は俺にある。明石は気楽に参加してもらえればいいさ」

明石「は、はい。がんばります……」


なんだろう、ちょっと引っかかりました。修理なんかの能力を上げるのは、みんなのためであって、提督のわがままでは無いような……?


――――― 少し後 工廠

五月雨「明石さん、いらっしゃいますか? 」

明石「あ、五月雨さん、いらっしゃい。どうしました? 」

五月雨「えと、先ほどの演習のことを謝りたくて……。ドジでごめんなさい! (ぺこぺこ)」

明石「いえ、そんな! 立派に護衛して頂いて (ぺこぺこ)」


五月雨さん、わざわざ謝りに来てくれたんですね。わたしがちゃんと回避できなかったからなのに……。ちゃんとお話して、戦闘の心構えでもお聞きしようかな。こんな小さな体で、敵の砲弾を受けるために、勇気を出して前に出るんですから……とても立派です。


明石「はい、甘い紅茶です。どうぞ~」

五月雨「ありがとうございます。甘いです! 」

明石「先程の演習のお話なんですが……」

五月雨「はいっ! ほんとにごめんなさい(ぺこぺこ)」

明石「い、いえ。謝って頂く話ではなくて……。えっとですね、わたしは本当に戦闘が初めてで、怖くて、わたわたしてしまっていて」

五月雨「いえ、そんな……」

明石「特に、敵の艦載機や砲弾がこちらに向かって来た時……怖くて、体がぎゅって硬くなって、動けなくなってしまいました」

五月雨「明石さんは、戦闘は初めてでしたから、しょうが無いですよ」

明石「はい、ありがとうございます。でも、五月雨さんは、あの砲弾の雨の中、盾になるために前に出てくれました」

五月雨「と、通り過ぎちゃいましたけど……」

明石「あは♪ でも、その後ずっと盾になってくれました。それは、その身で砲弾を受けてでも守るっていうことですよね」

五月雨「はい、それが護衛の仕事です! でも、駆逐艦はあたっちゃったら負けですから、盾になりつつ避けますけれど! 」

明石「はい、見事に回避されてました。でも……もし当たったらって思うと……怖くないんですか?」


五月雨「う? うーん? 当たるとすごく痛いですけど……、でも、怖いっていうのはあんまり感じないかもです」

明石「そうなんですかー……何故なんでしょう」

五月雨「えっと……うーんうーん……。きっと、提督のご指示通りに戦っていれば、決して沈まないって信じてるからかな。それから、どんなに損傷しても、明石さんがすぐに元通り治してくれるって思っているからかもしれません」

明石「は、はい! どんな損傷でもすぐに完全に修理してみせますっ! 」

五月雨「えへへ、ありがとうございます。明石さんが治してくれるから、安心して戦えますっ! 」


わたしのお仕事が、ちゃんと、戦ってるみんなの役に立ってるって……こうやって聞けると、やっぱり嬉しいです。


明石「そういえば加賀さんも同じことを言っていました。提督の指示なら、絶対に沈むことはないと信じてるって」

五月雨「提督は、ずっと前から、どんなことがあっても、絶対に誰も沈めないで戦い抜くって、良く言ってます。実際、作戦も判断も、必ずその通りにされてます。だからみんな、そういう点では心から提督を信頼してますよ! 」


あうう……戦う艦娘のみなさんと提督の固い絆を感じます……。うう、嫉妬しちゃいます……。


明石「そうなんですね……。わたしも、練度上げのために度々演習に参加することになるそうですから……提督を信頼して……怖くなくなるようにがんばります」

五月雨「大丈夫です! 次からもきっと守り抜いてみせます! ……もうドジはしません……きっと」

明石「あはは♪ 大丈夫です、ドジっても、ちょっと赤ペンキがつくだけですから! 」

五月雨「えー、わたしにも護衛艦としてのプライドが~」


次も五月雨さんが護衛だといいな。少しはリラックスして挑めそうです。


――――― 夜 工廠

提督「明石ー、きたぞー」

明石「はーい、お待ちしてました」


今日は、提督が夕食を持って遊びに来てくれました。ふふ……初出撃したわたしの事を心配してるんですよね。もー、優しくしてくれるのは嬉しいけど、誰にでもこうなんですよねー。


提督「いつもカレーを作ってもらってるから、趣向を変えて、今日はビーフシチューを持ってきた」

明石「いいですねー! おっ、肉じゃがじゃなくて、ちゃんとビーフシチューですねっ」

提督「美味しそうなパンも付けてもらった。鳳翔さんって、洋食も作れるんだなー」

明石「鳳翔さんは何でも作れるんですよー。でも、和食がよく似合いますよね」

提督「ほんとなー。日本のおかあさん!って感じだ」

明石「あは♪ 言いたいことは分かりますけど、鳳翔さんが聞いたら、きっと叱られますよっ」

提督「そ、そうだよな。気をつけよう」


明石「は~、おいしかったぁ~」

提督「うん、美味かった。後で鳳翔さんにお礼言っとこう」

明石「飲み物入れますね。コーヒーで良いですか? 」

提督「すまんな、頂こう」


提督「あーっと、それでだな」

明石「はーい、何でしょう」

提督「今日は初出撃だったわけだが……、どうだ? 今後もやれそうか? きついようなら無理しなくてもいいんだぞ? 」

明石「ええ、先ほど報告したとおりっ。大丈夫でした! 」

提督「それなら良いんだが……。いや、正式な命令だと断れないだろ? 実は、すごく嫌なんだけど、仕方なく頑張ってるんじゃないかと心配でなぁ」


もー……この人の心配性は困ったものですね。


明石「いくらわたしでも、例えば練度1の駆逐艦の子と比べたら十分強いんですからっ。そんなに心配しないで下さいっ」

提督「そうだな、耐久力なんかの面では確かにそうなんだけどさ……。明石は他の艦娘の誰とも違う、特別な人だから……どうしても心配なんだよ」


そ、それって……! うわ、だめだめ、耳まで赤くなっちゃう! 血、昇らないで! 止まって止まって!


明石「あ、あの……」

提督「明石だけが、前世も含めて、戦闘に参加する事を想定してない艦だからな。当然、戦場への慣れや感覚が、他の艦娘と全然違うはずだ」


がくっ……。えーえー、そうでしょうとも。期待したわたしがバカでした……。


明石「うー……。えーえー、どうせ戦闘はダメですよー! 」

提督「なんで怒ってるんだ。いや、その代わり、他の誰にもできない修理や開発ができるんだから、すごいことだと思うが」

明石「べー! フォローしても遅いですよっ プリプリ」

提督「な、なんだよ。いやまぁ、フォローというか、ちょっと真面目な話なんだが」

明石「? はい」

提督「艦娘は、前世の記憶と力を持って生まれてきてるだろ。で、俺がこれまで見ていた経験上の話なんだが」

明石「はい」

提督「訓練成果、乗組員たちの意思、敵を沈めるんだという闘志、命がけの実戦……。艦娘はさ、前世の、そういったあらゆる要素を取り込んでるなって感じるんだ。だから、初出撃の艦娘も、怯えること無く敵に向かって攻撃するし、攻撃されることも恐れない」

明石「そういえば……。五月雨さんや、他の人たちも同じように言っていました。戦闘や、被弾への恐怖はあんまり無いって」

提督「そうだな。でも、それは戦闘艦だからの話なんだ。例えば商船やタンカーなんかは、敵からひたすら逃げるわけだから、もし艦娘になっても、きっと前向きに戦闘なんてできないだろう」

明石「あ……そうか……だからわたしは……」

提督「そう。明石は工作艦として生まれただろ? 自分から戦場に赴いて攻撃するみたいな意思・経験なんかは一切無いんだよ。どちらかと言えば商船に近い」


……そっか、それがみんなとわたしの違いだったんだ。みんなは、前世から引き継いだ、敵を倒す!っていう意思を持っていて、わたしは、みんなを修理するっていう意思を引き継いでるんだ……。


提督「だからさ、戦場で、明石だけが強い恐怖を感じたり、戦闘に前向きになれないのは当然なんだ。だから、その……すごく心配だし……その」

明石「……? 」

提督「それで、コンプレックスを持ったり、みんなと違うって寂しく感じたり、そういうことにならないかってな……また考えすぎかもしれないけど」


……もう、どうしてこの人は、こんなふうに心を包むような優しさを見せるんでしょう。もー、バカバカ! 泣きそうなの堪えるのが大変ですよっ!


明石「わ、わたし、そんなにわかりやすいですかね~。確かにちょっと思ってました。わたしだけダメだなって……」

提督「そうか……辛いようなら、もう出撃は控えるが……」

明石「いえ、逆です。まず、わたしはみんなをもっともっと修理や開発で支えたいです。だから、練度を上げて、もっともっと支えられるなら、そこは頑張りたいです。あとは……」

提督「うん」

明石「わたしは前世から戦いの記憶は引き継いでいないけれど……それなら、今から少しでも戦いを学んでいきたいです。やっぱり、みんなと一緒がいいですから! 」

提督「そうか……ほっとした……明石はがんばり屋だよな、ほんと」(ナデナデ)


うう……なんか駆逐艦の子みたいな扱いをされてるような……でも、文句言ったら撫でてもらえなくなりそうだから黙ってよ……。


そうだ……せっかくの機会だから、気になったことを聞いてみようかな。


明石「提督、ひとつ気になったんですが」

提督「ん? 」

明石「わたしの練度上げって、修理や開発を良くするためですよね? 」

提督「まぁ、そうだな」

明石「でも、今日の出撃から戻った時、提督、半分は俺のわがままで練度上げするって言ってましたよね? 」

提督「うお、そんな細かいところを気にしたのか。鋭いな」

明石「半分がその修理や開発のためだとして……。残り半分の、提督のわがままってなんですか? 」

提督「うーん、口を滑らせちゃったな。しかし……明石を慣れない戦場に投げ込むのに、その理由を隠すのもフェアじゃないよなぁ……」

明石「隠し事なんて、工作艦仲間の風上にも置けませんね! 」

提督「まー、理由はいろいろなんだが……。そうだな、これを機会に、そのうちの一つだけ話しておくか。ただ、これは大淀にすら言ってない、誰にも言えないことだ。絶対に他言無用にしてくれよ?」


……提督、口調はいつも通りだけど、目がマジです……。軽い気持ちで聞いちゃったけど、これは予想外に大事みたいです……。


明石「守秘義務了解! 絶対に他言無用ですね」

提督「ああ、頼む」


提督「俺達は深海棲艦と戦っているわけだが、彼らが何者で、どうやって生まれて、どうして襲ってくるのか、何が目的なのか……。そういうこと、何もわかってないっていうのは、知ってるよな? 」

明石「はい、戦いが始まって、もう何年も経つのに、未だに全然わかってないそうですね」

提督「そうだな。でな、普通の戦争なら、相手のことがわかるから、勝てそうとか負けそうとか、ここが危ないとか、いつになったら戦争が終わりそうとか、そういう予想も幾らかは立てられるんだが……この戦いでは、まるで何もわからない。ここまではいいか? 」

明石「は、はい……」


なんだろう、わたしの練度上げが、なんだか壮大な話に……。


提督「じゃあ、明石に質問だ。深海棲艦はいろんな海域で待ち受けてるけど、俺達の基地や街には攻めて来ないよな」

明石「来たら大変ですよ! でも、彼らは海に来るものを攻撃しますけど、こちらまで襲いには来ないですよね」

提督「明石、それを保証できるか? 」

明石「え……? 」


そうだ……これまではそういう例がなかったけど……。深海棲艦のことは何もわかっていないんだ……いつか行動が変わってもおかしくないんだ……


明石「保証できません……」

提督「だよな。なにせ何を考えているか分からない相手だ。もしかしたら今は、じっと力を蓄えているところで、あるとき突然、大攻勢をかけてくるのかもしれない」


ぶるっ……。寒気がしました……。もしそんなことになったら……


明石「その……すごく怖いです……そんなこと考えたこともなかったです」

提督「ああ、それでいいんだ。みんなにも余計な心配をしてほしいわけじゃない。ただ、そういう可能性だってある。だから、みんなには最低限、戦える力を持っていて欲しい。ぶっちゃけ、ここを攻撃されたって、みんなで逃げ切れればいいんだ。基地なんてまた作ればいいんだから」

明石「……」

提督「だが、轟沈したら終わりだ。だから、万が一の事があっても、生き延びれるくらいの力は持っていて欲しいのさ。全員にさ」


……提督が、主力だけの練度を集中的に上げるわけじゃなく、みんなの練度を底上げする理由……わたしみたいな非戦闘艦を戦いに慣れさせようとする理由……。やっぱりこの人は司令官なんだ……。この人が一人で抱えている問題なんだ……。


提督「だから、明石が練度上げを前向きに捉えてくれてホッとしたよ。基地が攻撃されたりしたら、おそらく真っ先に標的になっちゃうからな」

明石「こ、怖がらせないでくださいよ……」

提督「すまんすまん。まぁそういうわけで、俺は明石に、万が一攻撃されても生き延びるための訓練をしてもらいたいわけさ。戦果なんて上げなくていい。どうか、必ず生き延びてくれ。どんな時でも……」

明石「……分かりました。わたしだって轟沈はイヤです。頑張って生き延びる訓練します! 」

提督「あはは、頼むよ! 」


明石「はい、コーヒーばっかりだとあれなので、今度は紅茶にしてみました」

提督「おお、ありがとう。金剛のお陰で、最近はすっかり紅茶も飲むようになったなー。前はコーヒー一辺倒だったんだが」

明石「わたしもです。ま、わたしのはお徳用のティーパックですけど! 」

提督「まぁ、俺達の舌なら、これで十分だよなっ」

明石「ですよね~~」


提督「まぁ、さっきの話は、ほんとに万が一の話だから、ほどほどで聞いといてくれな」

明石「もー、変なホラーよりよっぽど怖かったですよっ」

提督「だよなぁ。まぁ、変に不安や恐怖を持たれるわけには行かないから、だから他言無用なんだ。ほんと、頼むよ」

明石「わかってますって! 青葉さんじゃないんだからっ」

提督「青葉なんかに話したら、翌日には全員が知ってるよな……」


ここで……勇気を出して言うべきことがありますっ……。提督の防壁を一つ乗り越えるんですっ! 弾幕に飛び込む五月雨さんのような勇気をっ!


明石「ね、提督? 」(ドキドキ)

提督「んー? 」

明石「さっきみたいな話……。今後の戦いのこととか、悲惨な未来の可能性とか……。やっぱり司令官として、いつも考えているんですか? 」

提督「いつもってわけじゃないけど、まぁ、そうだな。何を決めるにしても、未来の可能性や、その備えは切っても切り離せないからなー」

明石「それで、誰かに相談したりすることなく一人で抱えてるってことですよね 」

提督「抱えてるとは思わないけど。こんなことは司令官が考えれば済むことだ。みんなが余計な不安や恐怖を感じることはないからな」

明石「司令官は一人だけだし、提督は姉妹……って兄弟か、も居ないし……。わたしや島風さんと同じですね。一人で抱えて、相談相手も居なくて、寂しいでしょー? 」

提督「んー。まぁ、俺は男だし、司令官だし、そのぐらい耐えるよ」

明石「かわいくないなぁ。そこは寂しいって言えばいいんですよ! わたしたちは同型艦なんですから、そういうのはちゃんと相談してください! 」

提督「そっか、工作艦仲間でもあるからなー」

明石「そうですっ! ……わたしも、提督にたくさん助けてもらってるんです……提督が寂しさで泣かないように……わたしにも頼って下さい……お願いです……」


あ、だめだめ。泣きそう。泣いちゃだめ……泣き落としは卑怯だよね。うん。


提督「……わかった。もちろん言えないこともあるけど、ちゃんと相談することにするよ」

明石「はい! ほんとに、ちゃんと相談してくださいよ?」


……少しだけ提督に近づけた。少しだけ提督の特別になれた。そんな日でした。



本日分は以上となります。ゆっくりで良いという温かい言葉をいただきましてありがとうございます。愚痴聞いてもらえて幸せです。

しかし筆者は、なんか続きを書かないと不安で……日が経つと書けなくなりそうな気がしちゃうんですよね。

ですので、日刊更新出来るだけがんばるつもりです。また明日投下しますので、よろしければまたお越しください(o_ _)oペコリ


――――― 1か月後 工廠

明石「よしっ。近代化改修、完了です! 」

清霜「やった! もうすぐ戦艦になれるかな? 」

明石「うーん、今の近代化改修は、駆逐艦としての強さをあげてるので、まだ戦艦にはなれないですねー」

清霜「そっかー。残念……」


清霜さんは駆逐艦なのですが、戦艦に憧れていて、どうしても戦艦になりたいそうです。そういう改装が来てくれれば良いのですが……。うーん、排水量とかまで上がる改装ってあるんでしょうか。


明石「今夜にでも、提督に相談してみます。何か、戦艦になるために必要なこととか知っているかもしれません」

清霜「ありがとう! 是非聞いてみてっ!」

明石「でも……前から聞こうと思っていたのですが、どうしてそんなに戦艦になりたいんですか?」

清霜「かっこいいからです!! 」

明石「あ、あはは……。そうですね、かっこいいですね」

清霜「あ、でも、それだけじゃなくて……。なんだろう、ぼんやりとした記憶なんだけど……憧れていた、とても大切な人を守れなかった……見送ったみたいな……。もうそんなことが無いように、強くなりたいみたいな……、ごめんなさい、よくわかんないや」

明石「なるほど……ありがとうございます」


……これも提督の言う前世から引き継いだ気持ちなのでしょうか。何か力になれたらいいんだけど……。


――――― 夜 工廠

提督「ああ、それは多分、前世で武蔵の沈没を見届けた記憶だろうな」

明石「そうですかー……うちの鎮守府には武蔵さんは居ませんけど、立派な戦艦さんだと聞いてます」


提督は、最近はほとんど毎日、工廠に来てくれます。きっと、わたしが寂しく無いように気を使ってくれてるんですよね。おかげで、毎日がとっても充実してます! ……ただ、二人で話してると、ついついノリノリで開発計画建てちゃって……資源使いすぎ!って大淀に怒られる毎日です。たはは……


提督「うーん。戦艦への改装かぁ。改装で艦種が変わることは良くあるし、可能性がゼロとはいえないけどなぁ」

明石「水上機母艦から軽空母とかですよね。でも、絶対的な排水量が上がってるわけでは無いですからねー」

提督「だよなぁ。でもまぁ、艦娘のことはまだ全然わかってないんだ。年月とともに成長して排水量が大きくなるとかあるかもしれないよな。五十鈴なんて改二ですごい変わったし……」

明石「提督……、どこの話ですか……? 」

提督「あ、いや、ほら、対潜とか対空とかすごい上がったしなー! 」


提督もスケベですよね。ふんっ。


提督「まぁ、ともかく、すぐに戦艦になるのは無理だよなぁ。でも、せっかく頑張ってるんだから、何かできたらいいんだが……」

明石「そうですねー」

提督「まぁ、考えてたことはあるんだが……結果はどうなるかわからないけど」

明石「ほうほう、どんなことですかっ? 」

提督「明石の協力も必要なんだ。実はな…………」

明石「わぁ、それは喜ばれるかもしれませんね。わたしの方はすぐに準備できますよ」

提督「じゃあ後は、長門と陸奥に協力をお願いして……」

明石「明日には完成します。それからこんな工夫をしては……」

提督「おお、それはいいな。じゃあ2日後ぐらいがいいかな……」


また二人でこっそり悪巧みです。でも、今回は資材を使わないから大丈夫! 楽しいです!


――――― 2日後 提督執務室

清霜「しれーかん! 清霜来たよー」

提督「お、来たか」

清霜「あ、あれ? 長門さん、陸奥さん」

長門「おはよう清霜。今日も元気だな」

陸奥「おはよ~!」

明石「わたしも居ますよ。おはようございます」

大淀「おはようございます。入室するときはちゃんとノックしなさいね」

清霜「えええ、なんかすごいメンバー……。清霜……なんか怒られちゃう……?」

提督「ああ、違う違う。頑張ってる清霜に表彰があってさ」

清霜「えっ! 」

提督「清霜は、遠征や護衛任務を頑張って、先日ついに、改装を受けてパワーアップした。がんばったな!」(なでなで)

清霜「えっへっへー! うん、清霜がんばったよ! 」

長門「偉いぞ清霜」(なでなで)

陸奥「清霜えらいわ~」(なでなで)

清霜「うひゃ~。長門さんも陸奥さんもありがとう! 」


尊敬する戦艦のお二人から褒められて、清霜さん嬉しそう……。本当は武蔵さんも居てくれたら良かったんだけど……。提督は良い人だけど、運は全然無いから……。


提督「それでだな、立派に成長して戦艦に近づいた清霜を、長門型見習いとして、長門型三番艦カッコカリに任命することになった」

清霜「え……? 清霜が……長門型に……? 」

提督「ぬか喜びをさせたくないからちゃんと話しておくが、今のところ、駆逐艦を戦艦に改装する見込みは立っていない。だから、清霜をいつか戦艦にするという約束はできない。でも、戦艦を目指してがんばる清霜は、心意気はもう戦艦見習いと言っていいと思う。どうだ、やってくれるか? 」

清霜「…………ぐすっ……はい、喜んで! 長門型三番艦カッコカリ 清霜! がんばります! 」

提督「よし、じゃあ明石。長門型の証を」

明石「はい提督。清霜さん、これを頭に付けさせて下さいね」

清霜「これって……長門型お揃いのヘッドギア……」

明石「はい。清霜さんに合わせてサイズはちょっと小さいですが、お揃いですよ」

長門「うん、よく似合っている。立派な長門型だ。これで清霜はわたしの妹だな」(抱きっ)

陸奥「わたしも末っ子から真ん中に昇格ね! お姉ちゃんになったわ~♪ 」

清霜「うう、嬉しいです。ありがとう……ありがとうございます……頑張ります………ぐすぐす」

長門「よしよしいい子だ。これからは長門型の誇りをもって一緒にがんばろう」

清霜「はい……長門姉さま、陸奥姉さま」

長門「ああ、なんという甘美なひびきだ……」

陸奥「あ、わたしも、きゅ~んってきたわっ」


ぐす……清霜さん、良かったですね。でも……なんだか長門さんが一番喜んでいるような気がするんですが、気のせいでしょうか……。


――――― 少し後 提督執務室

提督「喜んでもらえたようでよかったな」

明石「はい、良かったです!」

大淀「とても素敵なアイディアだったと思います。提督と明石は、こういうことを考えるのが上手ですね。わたしは数字は得意ですが、人の気持ちを明るくするのは苦手です」

提督「いや、明石が清霜の悩みに気がついて相談してくれたんだ。本当に、よく気がついてくれて助かるよ」

明石「いえ、提督が素敵なアイディアを出してくださったから……」

大淀「あ、ノロケあいとか結構ですので」

提督「の、ノロケってなぁ」

明石「そんなんじゃないですよね、提督っ」


お、大淀はすぐこうやってからかうんだから……もうっ!


大淀「はいはい。では今後も仲良く、良いアイディアを出してくださいね。今回は資材を使わなかったのが特に良かったです」

明石「えっと……そんなに苦しいの? 」

大淀「ええ! 提督が、清霜のために武蔵をわが鎮守府に! とか言ってですねー」

提督「面目ない……」

明石「わちゃ~~」

大淀「で・す・の・で・! 当分はまた備蓄の日々ですからねっ! 」

提督「ああ、わかってるよ……。また潜水艦のみんなに怒られるなぁ……」

明石「また開発は我慢かぁー」

大淀「明石、また退屈で寂しくなったりしないでね? あ、もう提督が足繁く通ってくれるから大丈夫かなぁ~♪」

明石「/// もう忘れてってばー! 」


――――― 3日後 工廠

清霜「明石さーん! 」

明石「あ、清霜さん、出撃お疲れ様でした。って、大破してるじゃないですか! 」

長門「ああ、結構ひどい損傷なんだ。早速修理してやってくれ」

清霜「でもでも、聞いてっ! わたし、敵戦艦を撃沈したのっ。初めて! 」

明石「ええ! す、すごいじゃないですか! 」


戦艦といえば、排水量で言えば清霜さんの10倍もある大きな相手です。そんな相手を倒すなんて、すごいことです!


清霜「夜戦でだけどね。勇気を出してふところに飛び込んで、一撃で仕留めたよ! ……ただ、踏み込み過ぎて、別の艦からカウンターで攻撃もらっちゃって……」

長門「いや、長門型の名に恥じない、素晴らしい戦いだった。特に、損傷を恐れず勝利をつかむ意思と勇気が素晴らしい。清霜は自慢の妹だっ」(抱きっ)

清霜「えへへ……長門姉さま、苦しいよ」(にこにこ)

明石「とりあえず、すぐに修理しましょうっ。大丈夫、すぐに治りますよー! 」


――――― 少し後

明石「はい、あとはゆっくり入渠していてくださいね。2時間くらいで治りますので」

清霜「ありがとう! ゆっくりお風呂だねー。 あ、そうだ明石さん、この長門型ヘッドギアって、明石さんが作ってくれたんだよね? 」

明石「はい、そうですよ」

清霜「すごく気に入ったの。ありがとね! これをつけているから、わたしも長門型だって自信が持てるんだ~。みんなにも、いっぱい自慢しちゃった! 」

明石「ふふ……。それは提督のアイディアなんですよ。おそろいを作ってあげたらきっと喜ぶって」

清霜「しれーかんが考えてくれたんだ! じゃあ、明日ちゃんとお礼言っとくね! 」

明石「はい、是非そうして下さいっ」


……聞いていいことかわからないけど……聞いちゃおう……


明石「あの、清霜さん? 」

清霜「はーい! 」

明石「その……前にお話していた、強くなるために、守るために、戦艦になりたい。というお話ですが……。戦艦見習いになって……前進したというか、何か変わりましたか? 」

清霜「うん。なんかね、戦艦でなくても、戦うこと、守ることはできるって。そういう勇気と自信がついた気がするかなっ。それで、今日は頑張って戦艦をやっつけたんだもん! 駆逐艦だって強いよね! 」

明石「そうですか……清霜さんは本当に強いですね。わたしも、清霜さんみたいに強くなりたいです」

清霜「ええ~~。明石さんみたいな大人の女の人に言われると、なんか照れちゃうよっ」(てれてれ)

明石「わたしも、もっと頑張りますねっ! 」

清霜「わたしは、もっともっと頑張っちゃう~」

明石「じゃあ、わたしはもっともっともっと頑張ります! 」

清霜「ええ~~~」


ほんとうに……もっと強くなりたいです……。


――――― 夜 工廠

提督「うん、戦艦撃沈の話は聞いてる。ほんとに頑張ったよなー。あとは、がんばりすぎて無茶しないようにだけ気をつけて見ることにするよ」

明石「わたし、感動しちゃいましたよ。長門さんもすごく嬉しそうでした」

提督「なんかもう、長門がすごい喜んでるんだよな。駆逐艦好きだからな、あいつ」

明石「あはは……小さいものが好きだって聞きましたけど……」


……

明石「はい、コーヒーです」

提督「ありがとう。ふー、今日も一日終わったなー」


二人でゆっくりコーヒーを飲む落ち着いた時間……。とっても幸せだけど、でも、これだけで満足したくない……。


明石「ね、提督? 」

提督「ん? 」

明石「清霜さんは、戦艦になりたい、強くなりたい、そんな気持ちで、とっても強くなったように思うんです」

提督「そうだな。まず目指す何かがあって、人はそれに向かって成長したり変わったりしていくんだと思うよ、俺も」

明石「そうですね……。それで、わたしにも目指す何かっていうのがあるんですよ」

提督「ほほう、どんな目標なんだ? 」

明石「それは内緒ですっ。でも、そのために、もっと戦闘に慣れて、強くなりたいなって思うんです」

提督「空母になりたいとかじゃないだろうな……工作艦じゃ無くなったら困るぞ、俺」

明石「そーゆーことじゃないですっ。もっと内面的というか人としての強さの方です! それでですね、今はまだ簡単な演習だけですけど、もし可能なら、ほんっとに簡単なところからで良いので、実戦にも参加させて欲しいんです」


提督「……新着任艦の練度上げなんかを行う、戦いやすい実戦はあるが……。演習とはやっぱり違うぞ? 」

明石「前に提督がお話してくださったことを思うと、結局、実戦の空気を経験してないと意味が無いかなって思うんです。違うでしょうか? 」

提督「……そうだな、いざとなった時が初実戦だったりしたら、萎縮して取り返しがつかなくなる……そういう可能性は十分にある」

明石「わたしも、きっとそうなると思います。ですので、是非検討してください」

提督「うーん、俺は全く考えてなかったから、ちょっと保留。まずゆっくり考えさせてくれ」


うん、だんだん分かってきた。この人はいい加減に見えて、徹底的に考えて悩んだ上で結論を出すんですね。そういう部分を聞きたいんですよねー。


提督「しかし、あんなに戦闘を怖がってたのに、ずいぶん前向きだな。心配でもあり、嬉しくもあり、複雑だよ」

明石「あ、あはは。だからー、わたしもちょっと心に期するところがありまして……」

提督「で、内緒なんだよな? 」

明石「はい、内緒ですっ」


……結局、あれから何の悩みも言わず、わたしの心配ばっかりしてるあなたに、もっと頼ってもらえるような。わたしは、そんな強い女になりたいです。もちろん、こんなこと言えませんっ!


――――― 数日後

吹雪「えへへー、あこがれの扶桑さん(改二)のはちまき~。いいでしょ! 」

電「わたしは龍驤さんバイザーなのです。うちが居るから、これが主力艦隊なのです! 」

暁「わたしは高雄さんベレーよ! あんなふうなナイスバディなレディになるわたしには、とっても似合うでしょ! 」

ワイワイ


提督「まさかこんなことになるとはなぁ……」

明石「駆逐艦の子たちにコスプレブームが来ちゃいましたね……」

大淀「まあ、資源節約で暇ですし、遠征で頑張ってくれる子も多いですから、このぐらいハメを外すのは大目に見ましょう」

明石「製作依頼が殺到しちゃって、作るのが大変なんですよ~~」

大淀「資源を使わない程度にがんばってくださいね!」

提督「みんなあんなに楽しそうだからな。すまんがしばらくつきあってやってくれ」

明石「まー、作るのも面白いですから、がんばりますけど……」


みんな、あこがれの人、目指すべき姿、色々なんですね。何かを目指してるのは、わたしだけじゃない……。みんながんばれ! 応援しますっ。わたしも……がんばりますっ!


本日投下分は以上となります。硬派な長門さんファンにはちょっとごめんなさいですね。うちの長門さんも駆逐艦(敵の)が大好きなんで……。

あと1回か2回で終わりになると思います。次も明日投下予定です。よろしければまたお越しください(o_ _)oペコリ


――――― 3週間後 北方海域 帰途

実戦に参加するようになってから一週間。おっかなびっくりで周りを心配させていたわたしですが、大分落ち着いて戦えるようになってきました! とはいえ、必死に回避してるだけな気がしますが……。


千代田「明石さん、もうすっかり慣れたね」

五月雨「もう堂々たる旗艦ですね! 」

明石「うう、ほんと勘弁して下さい。お荷物で申し訳ないんです」


わたしが必死に逃げていると、みなさんが敵を倒してくれる……。うーん、これでいいんでしょうか。


五月雨「でも明石さん、練度上げのために実戦に出るなんて。演習でもあんなに大変そうだったのに、すごく頑張ってますね! 」

千代田「提督も、練度を早く上げたいからって、明石さんを無理に実戦に連れ出すなんてひどいよね。演習でのんびり上げたっていいのにさー。やっぱ男ってせっかちでダメだよね! 」

明石「いえ、とんでもないです! わたしから提督にお願いして、仕方なくOKしてもらったんですよ」

龍驤「え、意外や! 明石さんのほうが積極的だったんかいな」

足柄「提督に押し切られて仕方なくだろうね、って話していたんだけど……。意外ね! 」

明石「いえ、提督はすごく渋ってて……。でも頑張ってお願いして、一週間かけて、やっとOKもらったんですよ! 」

五月雨「うわ! 明石さん情熱的です! それじゃあ、提督もイヤとは言えないですね」

千代田「明石さーん、あんまりつけあがらせちゃダメだよ~」

足柄「明石さんも、意外とがっつり積極的なタイプだったのね……。今度一緒に飲みましょ! 」

龍驤「いやー、でもそんなに積極的なら、提督も悪い気はせえへんよね」

明石「は、はい……、すごく心配だけど、積極的に頑張るならちゃんと応援するって言ってくれました」

五月雨「うわぁ! 素敵ですね~~」

ワイワイ


――――― 夜 工廠

提督「今日も無事被弾なしでホッとしたよ。最初に小破した時はハラハラしたけど、意外と落ち着いてたよな」

明石「はい、やっぱり、何度も演習させてもらってましたから、実戦でもなんとか落ち着いていられましたっ」


実戦に出始めてからと言うもの、毎日毎日、わたしの被弾状況の心配ばかり。他の子たちは日常的に被弾してるんですし、わたしに対して過保護すぎますよね。プリプリ


提督「出撃してる他のみんなとはどうだ? 」

明石「演習でもご一緒することが多いメンバーですし、わたしも安心して頑張ってますよ。あ、ただですねー」

提督「ん? 何か問題あるか? 」

明石「実は今日の帰途で聞いたんですが、みんなの間では、提督が無理を言って、嫌がるわたしを実戦に投げ込んでる、みたいな話になっていたみたいですよ」

提督「うぇー。俺、そんな鬼に見えてるのかなー」

明石「あは♪ ちゃんと訂正しておきました。わたしがお願いして、無理やり実戦に出させてもらってるって」

提督「なーに、どうせいつでも俺が悪者なんだから、別にいいさ……ふふ……ふふふ……」

明石「あはは♪ 」


あ、そうだ、気になったことは、ちゃんと話しておきましょう。


明石「それからですねー、わたしの考えすぎかもしれないですけど」

提督「ふむふむ」

明石「皆さんすごく応援してくださるんですけど……。ちょっと不自然さとか違和感とか感じることはあって……。やっぱり、お荷物のわたしを連れての練度上げには、あまり気が進まない人も居るのかなって思います」

提督「うーん……。名前は出したくないと思うから言わなくていいが、具体的にはどんな感じだ? 」

明石「そうですねー。明るく元気に応援してくださるんですけど、移動中とかに、そっとため息をついておられたり、わたしの練度が上がってるのを見て、ちょっと寂しそうにされたりとか……。あと、上の空だったのか、会話がなんとなく噛み合わなかったり……」

提督「ふむ……。強い反発とかではないが、ちょっと気が進まないとか、そんな感じだろうか」

明石「良くわかりませんが……そうですね、そんな感じかもしれません。わたしに、みんなのお荷物になりながら、練度上げさせてもらってるっていう後ろめたさがあるから、そう見えるだけかもしれないですけど……」

提督「なるほど。良くわかった。何か苦情が出たり実害が出るような感じではなさそうだが、出撃メンバーの組み合わせには気を使ってみる」

明石「わたしのわがままで、本当にごめんなさい」(しょぼん)

提督「なーに、元はといえば、俺が明石に戦闘訓練することをお願いしたんだ。頑張ってくれているんだから、ちゃんとバックアップするさ」


提督も、みなさんも、笑顔で応援してくれます。わたしはそれに応えられて居るんでしょうか……。


――――― 数日後 西方海域

明石「この海域は初めてです……寒くなくて良いですね! 」

那珂「ここはねー、ほとんどの場合、潜水艦を相手に戦えるから、対潜装備を充実させれば、練度をあげやすいんだー」

響「こういう場所でないと、駆逐艦はなかなか安心して練度を上げられないからね」

明石「ははぁ、いろいろあるんですねー」

五月雨「敵は軽巡が少し出ることがありますが、後は潜水艦だけですので、魚雷にだけ注意してくださいね」

明石「わかりました! 」


実戦に出るようになってからずっと、北方海域で、新しく着任された方たちと一緒に練度上げをしていたのですが、違う戦いも体験したほうがいいかと思って、他の海域に連れてきてもらいました。


明石「最初からずっと北方だったから、練度上げ=寒い! ってイメージだったんですが、価値観が変わりそうです! 」

阿武隈「北方はもういやだよー」

那珂「あ、そろそろだよ。哨戒開始! 」

阿武隈「はーい、哨戒開始しますっ」


明石「ふぅ~、わたしは、潜水艦は全く見えませんから、なんだかよくわかりませんでした……」

阿武隈「潜水艦との戦いは、軽巡と駆逐艦の独壇場なのです、えっへん! 」

那珂「那珂ちゃんが輝くステージなんだよっ! 」

明石「でも、よく見つけられますね、潜水艦」

響「コツがあるんだよ。ほら、そこに居るよ」

明石「えええっ! 」

伊58「むむむ、さすがに響はするどいでち」

明石「ごーやさんでしたかっ」

五月雨「ソナーを使って、音で探すんですよっ! 」

明石「うーん、理屈は知っていますが、自分でできるイメージはないですねー」


響「さて、そろそろ……と言いたいところなんだけど……ちょっと進路がズレた気がするね」

那珂「うん、那珂ちゃんはこの辺は見たこと無いかも……」

五月雨「周囲、警戒します! 」

阿武隈「!!! 敵艦隊発見! 大型艦も居るみたい! 」

那珂「索敵飛ばしますっ 」

響「まずいね……。わたしたちは対潜特化艦隊だ。今回は被害を減らして撤退するのを目標にしたほうが良さそうだね」

五月雨「了解! 明石さんの護衛に付きますっ 」


き、緊迫した空気です……。そういえば、実戦で想定外の事態は初めてです。緊張します……。


那珂「偵察機帰還。まずいよっ、正規空母がいるっ。他にも空母らしき艦影ありっ 」

阿武隈「もう見つかってるみたい! まっすぐこっちに向かってくるよ」

伊58「小さい船はごーやが引きつけるでち」

響「逃げるのは無理そうだね。じゃあ、まず敵航空機の攻撃を何とかしのいだ後、一戦して離脱。みんないいね! 」

明石「りょ、了解! 」


遠くに見える艦影……。あれは……人の形をした深海棲艦! 噂には聞いていたけど…………赤い目が……わたしを真っ直ぐに……わたし、狙われてるっ!?

五月雨「敵航空機多数来襲。対空防御! 」

那珂「那珂ちゃんは負けないっ! 」

響「まずい、数が多すぎるっ! 」

五月雨「防ぎきれません、明石さん、回避をっ! 」

明石「は、はい。わたしも機銃掃射! 」


無数の敵機が空を埋め尽くして……わたしに向って殺到してきます……。


わたし……この光景を知ってる……。そう、あの時もそうだった……機銃を一生懸命撃ったけど焼け石に水で……直撃を……


五月雨「あ、明石さん、よけてっっっ!!」


衝撃と……耳をつんざく爆発音……ああ、わたしはまた海の底に……。


もう一度だけでいいから……提督に……会いたい……。


――――― 夕方 鎮守府内医務室

うーん……ごろん

明石「…………? 」


天井が見えます……。あれ、ここは?


提督「気がついたか……良かった」

明石「提督……? 」

提督「ああ。意識が無いのにドックに投げ込めないからな。とりあえず医務室で寝てもらっていた。大破してるからあちこち痛いと思うが、どうだ、動けそうか? 」

明石「大破……? 」


そうだ! わたしは攻撃を受けて……直撃を…………(ガタガタ)


提督「明石……? 大丈夫か……って、うわぁ」(がたがたんっ)←飛びつかれて後ろにひっくり返った

明石(ガタガタガタ)「て……提督……提督!!」

提督「あ、明石、大丈夫か? どうしたっ」

明石(ガタガタガタ)「こ、こわっ、怖かった…………あのまま爆発して……わたしは沈むんだって…………」(ぎゅーーー)

提督(ぐぐぐ、全力で抱きしめられて……く、苦しい……)

提督「大丈夫、大丈夫だ、明石。大破はしたけど、艦娘は簡単には沈まないんだ。大丈夫、もう大丈夫なんだ……」(なでなで)

明石(ガタガタ)「ほ……本当に……もう大丈夫? 」

提督「ああ……。大丈夫だ。大破することはあるけど、みんな無事に帰ってきただろ? 明石も無事帰ってきた。頑張って自分で修理して、お風呂に入れば元通りだ。な? 」


そう……これまでも大破した仲間たちを治してきた……みんな、必ず生きて帰ってきた……そっか、わたしも一緒なんだ……


明石「は、はい……。そっか、わたし、ちゃんと生きて帰ってきたんだ……」


そうだ……提督は絶対に艦娘を轟沈させない……。大丈夫なんだ……大丈夫っ!


提督「あーっと、それでだな、明石。落ち着いて聞いてくれ」

明石「は、はい。ごめんなさい、落ち着きました」

提督「では、俺はこれから目を閉じる。絶対に開けないから、その間に布団の中に戻ってくれ。さ、閉じたぞ……」

明石「???」


提督は何を言って…………わたし…………大破したまま…………ほとんど裸で……提督を押し倒して…………そ、そういえばお腹に何か硬いものがあたって…………うわっ……うわうわうわうわ!!


明石「う。うひゃぁぁぁぁ」(布団に飛び込みっ)

提督「あ、あは、あははははは。び、びっくりしたよな! も、もーいーかーい? 」

明石「/// は、はい……動転して大変お見苦しいものを……もういいですー」

提督(お見苦しいどころか、何だあの押し付けられた感触は! ビバおっぱい!)

提督「いやいやいやいや……役得でほんとって俺は何を言ってるんだ! さ、大破してるんだから修理しなきゃな修理! 大淀に来てもらうから、じゃ、俺はこれでっ! 」

明石「/// は、は、はい。すぐに修理します修理!! 」

提督(き、気まずい……。脱出、とにかく脱出!)

ガチャン バタン シーン……


わたしったら動転してたとはいえ、なんてはしたないことを! よりによって、裸で押し倒すなんて、ドン引きされたよね……。で、でも、お腹に当たってたあれは……提督も、こ、興奮してたっていうことで……

大淀(コンコン)「明石、はいりますよ?」

明石「うひゃぁぁ!」

ガチャリ

大淀「なに奇声を上げてるんですか。そんなに痛いの? 」

明石「あ、大淀。う、ううん、大丈夫大丈夫! 痛みはほとんどないよ、ほんとほんと! 」

大淀「それなら良いのですが……。でも、ほんとに大変でしたね? 」

明石「ほ、ほんとにね! わたしも動転しちゃって、軽率で……」

大淀「いえ、あれは提督が悪いんです。極低確率とは言え起こりえることでしたから」

明石「でもでも、あんな突進して抱きついちゃうような真似を……」

大淀「え、突進!? 艦載機での爆撃って聞きましたけど? 」

明石「え? 」

大淀「え? 」


大淀「なるほど、何の話かと思えば、そんなことでしたか……」

明石「そ、そんなことって! きっと提督ドン引きだよ……。ああ、わたしったら、なんてはしたないことを……」

大淀「…………これは、由々しき事態です。さすがのわたしも、ここまでとは予想出来て居ませんでした……」

明石「そ、そんな……。どうしたら良いと思う? 」

大淀「シャラップ! 」

明石「シャラップ!? 」

大淀「わたしはほとほと呆れているんです。えっと、この後は修理と入渠ですよね。で、夜は無理ですから……では、明日の朝、工廠にうかがいますので、そこでじっくりお話させてもらいます。いいですね? 」


あれ……大淀がすごく怒ってるというか、イライラしてるというか……? 大破して心配をかけたのに、提督の話なんかしちゃったからでしょうか……。


明石「大淀……。なんかすごく怒ってます……? 」

大淀「怒っているというより呆れています。良いですね、明日、必ず時間を取って下さい」

明石「は、はい……(こ、こわい)」

大淀「大破したままなのは落ち着きません。まずは何より、明石の入渠です。さ、行きましょ? 」

明石「あ、ありがとう……。修理というか、時間かかるけどこのままドックに入っちゃうのがはやそうです」

大淀「はい。では肩を貸しますから、ドックに行きましょう」


――――― ドック

明石「大淀、ありがとう。後は一人で入れます」

大淀「はい、じゃあわたしは戻りますが……明日のこと、忘れないで下さいね」

明石「はーい……その、何怒ってるのかわからないけど、お手柔らかにお願いしますね? 」

大淀「それは無理ですね(にっこり)」


うわーん、怖いです! 怖いです!


五月雨「あ! 明石さん、気が付かれたんですね!」

響「よかった、もう大丈夫そうだね」

那珂「那珂ちゃんも中破して入渠だよ。もちろん、顔は守ったけどね! 」

明石「みなさんも無事で良かったです……。気絶してしまって、本当にお恥ずかしいです……」

五月雨「一発大破の大ダメージですから、当然です! 護衛のわたしが守りきれなくて……」

響「あの数を守り切るのは不可能だよ。でも、ちゃんとみんな無事に帰ってきたんだから良いじゃないか」

那珂「うんうん。さ、明石さんもお風呂一緒にはいろー! 」(ひっぱり)

明石「うわっ……ありがとうございます! 」

那珂「明石さんと一緒にお風呂は初めてだけど……なかなかのスタイルっ。グラビアもいけそうだねっ! 」

五月雨「大人のスタイル憧れちゃいます……」(ぺたーん)

響「こればっかりは、練度をあげてもね……」(ぺたーん)

明石「うわーん、恥ずかしいです、そんなに見ないで下さいっ! 」


戦って、生き残って、みんなでお風呂に入って……。これが皆さんの日常なんですね。わたしも、今はちょっとだけ戦友気分になれて嬉しいですっ


――――― 夜 工廠

ふー、完治完治。練度が低いから、治るの早かったですねー。戦友……えへへ……の皆さんとゆっくりドック入りできたし……大変だったけど、良い経験だったのかな?

コンコンコン

明石「はーい」

提督「あー、俺だ。もう戻ったって聞いてな」

明石「あ、提督。どうぞどうぞ。今、ドックでですねー…………」

提督「あ、ああ。ほうほう、戦友気分かー。それは良い経験だな。俺は絶対経験できないからなー」

明石「あは♪ それは可哀相ですねー」


はて……、提督がなんだかギクシャクしてますね……。って、ああああ!


明石「あ、あ、あははは。そ、そういえば、そうでした。いえ、ほんとに、あはは……」

提督「いや、俺が悪い。ほんとにすまなかった。大淀から、起きた時に提督が横に居たほうがいいって言われて、何も考えずに横についてたんだ」

明石「あ、大淀が……。うん、居てくださって良かったです。わたし、パニックでしたから……」

提督「な、なー。でもな、男の俺に横に付けって言うくらいだから、服ぐらいちゃんと着せてると思ってたから……俺の油断だ。いやー、大淀もうかつだよなっ(あせあせ)」

明石「あ、あはは。そうですね、大淀にきつく言っておかないとですね!あははは(あせあせ)」


ぐぬぬ……大淀め……。あ、大淀といえば……


明石「そ、そういえばですね、提督! なんか、大淀がすごくお怒りで、明日、呼び出しくらっちゃいました! 」

提督「あ、俺にもすごい怒ってた。明日は明石と大事な話があるから秘書お休みですって、一方的に……」

明石「……やっぱり、わたしが無理に実戦参加して、大破したの、怒ってるんでしょうか……」(しょぼん)


提督「うーん……明石の大破報告を受けた時には、そんなに怒っているようには見えなかったけどな。むしろ、心配して慌ててる感じだった」

明石「じゃあ……心配してたけど、無事だとわかったら、腹が立ってきたとかでしょうか?」

提督「あ、それかもな。心配すると、腹が立つんだよな。わかるわかる」

明石「うーん。じゃあ、今後は実戦参加、止められちゃうかもしれないですね……」

提督「なんだ、あんなに怖い目にあったのに、まだ行くつもりだったのか。明石はやっぱり根性あるなぁ」

明石「い、いえ。根性というか、負けず嫌いというか……たはは」


大淀には悪いけど、話題そらし成功です! 提督がドン引きしてなくて良かった……


提督「忘れてた、とりあえず夕食にしよう。どのぐらい食欲あるかわからなかったから、今日はおにぎりを持ってきた」

明石「あ、じゃあお茶入れます。そういえばお腹すいた~ 」


提督「今日行った海域な、本当に低確率で、潜水艦以外の敵が出る場所に進路がズレて、そこでは、すごい低確率で空母がいる強い艦隊が出るんだ」

明石「そうだったんですかー。じゃあ、今日は本当に運が悪かったんですね」

提督「運悪く、そういう最悪を引いても、誰も轟沈だけはしないようにしてある。だが、突然の事態で本当に怖かったと思う。俺の説明不足だった。すまない」

明石「いえ! わたしこそ、心構えが足りなくて、うろたえてしまって……」

提督「いや、これは俺の責任なんだ。俺は、明石がおそらくは敵攻撃機による空爆が苦手だろうってわかってたんだ。ただ、演習でちょっとずつ空母編成と戦ってみて、大丈夫そうだって甘く見てた」

明石「…………空をうめつくすような数の攻撃機を見て……。ちょっとだけ思い出しちゃったんです」

提督「ああ……。前世の記憶。その中でも、やはり沈んだ時の記憶は、強く染み付いている子が多いみたいだ」

明石「不思議ですね。自分の艦生? が終わった記憶があるのに、わたしはこうして生きているんですから」

提督「俺はその気分は実感できないけど……一度終わった艦生なのに、他人の都合で転生するのって……辛かったり、嫌だったりしないか? 」


ふふ……またこの心配そうな目。わたしが困ってないか、嫌がってないか、すぐそればっかり心配するんですから。わたし、そんなに怒りんぼに見えるんでしょうか。


明石「わたし、前世と同じように、開発したり修理したりできて、ほんとに幸せですよ。だから、そんな心配そうな顔しないで下さいっ! 」

提督「そっか。そうだな、好きなことができるなら、それは幸せだよな。じゃあ、これからも精一杯、開発と修理を楽しんでくれっ」

明石「はいっ。……でも、大淀に怒られない程度にしますね」

提督「あははは、そうだな、浪費は控えめにな。お前が言うなって言われそうだけどさ! 」


そして……。船ではなく艦娘として生まれることができて…………。恋……することが出来ました。たはは、工学系女子には似合わないですけどね!

わたしを転生させてくれた運命に……幸せな日々をくれる提督に……心から感謝しています。

本日投下は以上になります。

あと1回で終わりの予定でしたが、思ったより長くなって、あと2~3回かな。
また明日投下しますので、よろしければ是非またお越しください(o_ _)oペコリ


――――― 翌朝 工廠

大淀「おはよう、明石(にっこり)」

明石「お、大淀サン、お、オハヨウゴザイマス……」


予告通り大淀が来ました! 来ちゃった~~!


明石「い、今お茶淹れますねっ」

大淀「はい、ながーーーい話になるでしょうから、お願いしますね(にっこり)」


うわーん、わたし一人で迎撃なんて無理です~~。提督助けてー!


大淀「じゃあ、まず最初に、ちょっと相談に乗ってもらいたいんです」

明石「へ? 相談?」


あ、なんかそんなに怒ってないっぽいです。心配してくれただけだったのかな?


明石「あ、うん。昨日は心配かけちゃったから、何でも相談に乗りますよっ」

大淀「そうですか。じゃあまずは話を聞いて下さい。相談というのは、わたしの知り合いの司令官とそこの艦娘さんのお話なんですが……」

明石「ほうほう」

大淀「その艦娘は、ちょっと特殊な仕事をしている関係で、友達もあまり居ないし、単独行動ばかりになっていたんです。姉妹もいなくて、いつも一人で寂しそうにしてました」

明石「以前の島風さんみたいな感じですね」


そういえば大淀、数字は得意だけど人間関係は苦手って言ってましたね。そっかー、誰かのトラブル解決の相談だったんだ。


大淀「それに気がついた司令官が、その子を気にして、よく様子を見に行くようになって……。他にも色々工夫して、その子もあんまり寂しく無くなったみたいなんです」

明石「へー。優しい司令官さんだね。それで? 」

大淀「その後、司令官とその子は、気が合ったみたいで、司令官は毎日のようにその子のところに顔を出すようになりまして」

明石「おー、その子も良かったですねー」


前に島風さんが寂しい時、みんなで解決しようってがんばりましたけど……。他の鎮守府でも同じように頑張ってるんですねー。


大淀「ただ、仲良くなりすぎたみたいで、今では毎日、仕事が終わるとその子の部屋に直行するように……」

明石「うわぁ! それがきっかけで恋人になったんだぁ。上官と部下の恋かぁ。いいですね~。あ、でもそれが問題になっちゃったとか?」

大淀「いえ、周りの理解もあって……。他の子も気を使って、司令官を夕食に誘うことも無くなりましたし、秘書艦も気を使って、残業が無いように調整するようにして……」

明石「素敵だねー。みんなで応援してくれてるんだぁ。でも、それなら何の問題も無いですよね」

大淀「これで終わりじゃ無いんですよ。その子は仕事柄、戦闘はあまり得意じゃないんですけど、最近になって突然、演習とか練度上げの出撃にバンバン参加するようになって……」

明石「!!! そ、それってもしかして、ケッコンカッコカリのために……? 」

大淀「そう思いますよね? それで、みんなで応援しようって、練度上げをバックアップしてるんですよ」

明石「うわぁー、素敵だなぁ~。でも、何の問題も無い気がするんだけど……。も、もしかして、その子って駆逐艦で、憲兵さん的に問題があるとか!? 」

大淀「いえ、ちゃんと大人で憲兵さんもニッコリです。問題はもっと別の場所に……しかも、全てがひっくり返るくらいの深刻な問題があったんです……!」


幸せそうな話なのに……急転直下で不幸な話なのかな……ドキドキ


明石「(ごくり)どんな深刻な問題なんですか……? 」

大淀「実はね……信じられないかもしれないですが……司令官とその艦娘は、未だに恋人にすらなってないみたいなんです!! 」


な、なんだってー!!!


明石「えええ! で、でも、毎晩通ってるんですよね? あ、それは、司令官が実は女の人とかいうオチなんでしょっ! 北上大井ペアみたいな件もあるし、わかんないですよ~」

大淀「いえ、この司令官は立派な男性です。それなのに、何ヶ月も、毎晩毎晩通って、未だにキスどころか、おそらく手すら握ってないですね……」

明石「し、信じられないなぁ……、え、でも急に練度上げしてるって、それはケッコンカッコカリのためでしょ? 話がおかしいですよ~」

大淀「ええ、そこが相談なんです。一体どういうつもりなんだと思います? わたしには、この二人が考えていることがさっぱりわからないんです」

明石「うーん……ケッコンカッコカリの準備をしてから告白しようとしているとか……? でも、そんな周りくどいことしなくていいような気もしますねー。毎日一緒にいるんですし……。わからないなぁ……」

大淀「いえ、この答えがわかるのは、明石しかいません。しっかり考えて下さい! 」

明石「えええ!? わたし、恋愛とかそんな、機械しか詳しくないし……。分かりそうな人はもっと他に居ると思いますけど……」

大淀「いいえ、多分、明石にしかわからないです。もう一つ情報を加えると、この司令官というはうちの提督で、この艦娘というのはあなたのことです、明石」

明石「…………へ? 」

大淀「わたしはもう、あなた達が何を考えてるのかさっっぱりわかりません! 今日は、わかるまで、しっっかりお話させて頂きますからね!! 」


え、え、え、え、えええーーーー!


落ち着けわたし……、そう、こういう時は素数を数えるんです……2、3、5、7……


大淀「さ、話して下さい」

明石「ちょ、ちょっとまって、わたしと提督はそんなんじゃ……」

大淀「まず確認しますが、わたしが先ほど話した司令官と艦娘の話。間違っていませんね? 」

明石「えっと、寂しいぼっちの艦娘が居て……司令官が気を使って寂しくなくなって……ぼっちの艦娘てわたし!? 」

大淀「そうです! 」

明石「うう、それで、寂しくないように、司令官がその子のところに足繁く通うようになって……そのうち毎晩欠かさず…………あってますね……」

大淀「その頃には、わたしも含めてみなさん、提督と明石がくっついたから、邪魔しちゃいけないって工夫してたんですよ」

明石「そ、そうだったんだ……全然気付いて居ませんでした……」

大淀「提督は、以前はよく残業してましたし、わたしや他の子と夕食を食べることも多かったでしょ? でも、最近は全くなくなりましたよね? 」

明石「そういえばそうでした……そっか、みんな我慢してくれてたんですね……」

大淀「ええ。わたしたちも馬に蹴られたくはありませんから」


明石「それで、最近急に練度上げをするようになって……」

大淀「ええ。皆さんついに、ケッコンカッコカリのために、提督が明石さんを戦場に連れ出した! って話題になっていました」


あ……そういえば……なんか話が噛み合ってないと感じてたけど……みんなは、提督とわたしが、ケッコンカッコカリのために練度上げをしてると思ってたから……


明石「う、う、うわぁぁぁ……///」


顔から火が出そうです…………うう、わたし、ケッコンのために必死になってるって見られてたんだぁ……。


大淀「はぁ……。順番に聞きますね。昨日の医務室での一件を聞いて、これは二人は恋人にすらなっていないと判断して驚きました。これは、あっていますね? 」

明石「う、うん……提督とわたしは、その……工作艦仲間であって、恋人とかじゃないです……」

大淀「工作艦仲間って……なんですそれ? じゃあ、何ヶ月も毎晩毎晩、何してたんですか? 」

明石「何って……。えっと、まず晩御飯を食べて、コーヒー飲んで……」

大淀「はい、それから?」

明石「えっと、開発の話したり、装備の組み合わせの話したり、あの子が戦闘でこんなだったとか、出撃で怖かったけどがんばったとか……」

大淀「……」

明石「大淀にまた怒られたとか、資源節約していかに開発して遊ぶかとか……」

大淀(ズキズキ)

明石「連装砲ちゃんを量産して駆逐艦のみんなに持たせられないかとか……」

大淀「はぁ……。お二人が駆逐艦以下なのは、よーく分かりました(ズキズキ)」

明石「駆逐艦以下!? 」


大淀「なんですかその、小学生男子が集まって一緒に遊んでる、みたいな雰囲気はっ!」

明石「だ、だめでした……?」

大淀「ちょっと挑発的な私服着て、食後にお酒だして、胸元をはだけながら『今日は酔って体が熱くなっちゃった』とか言えばいいじゃないですか! 」

明石「えええ! そ、そんなの……大淀エッチだよエッチ! 」

大淀「こんなのは全然えっちじゃありません! 何を小学生みたいなことを言ってるんですかっ」


そ、そんなぁ……。わたし、小学生並なんでしょうか……。


大淀「……つい熱くなってしまいました。話を戻しますね。お二人が恋人でないことは、よーっく分かりました」

明石「は、はい……(しょぼん)」

大淀「で、明石は提督のこと好きなんですよね? 」

明石「え!? 」


ド直球ストレートです……ど、どうしよう……ごまかせない……ですよね。


明石「う……うん……好き……だよ。絶対内緒だよ、内緒だからね!! 」

大淀「はぁぁ~~~~。内緒も何も、提督以外は全員知ってます」


がくり……そ、そんな馬鹿な……!


大淀「それで。好きならどうして行動しないんですか? 時間はいくらでもありましたよね」

明石「行動ってそんな……。提督はわたしが寂しくないように毎日来てくれてますけど……わたしなんかより綺麗な人やかわいい人はいっぱいいるし……その……」

大淀「へー。じゃあ、他の誰かが提督に熱烈アタックして、提督が取られてしまってもいいんですね。そしたらもうここには来なくなりますね」

明石「……」

大淀「おっぱい大好きな提督は、愛宕さんや高雄さんが好きかもしれないですねー。それか、熱烈にアタックしてくる金剛さんにほだされちゃったり……」

明石「…………」

大淀「鈴谷さんも提督大好きですし、あんなにかわいらしい人ですから、提督もすぐなびいちゃうかもしれないですね」

明石「………………ぐす」

大淀「それとも……提督は長門さんみたいに駆逐艦が好きなのかしら。駆逐艦でも、潮さんや浜風さんは提督の好みでしょうし……」

明石「……………………ぐす……ぐす……うぇーん……」

大淀「ああもう、泣きたいのはこっちですよ」(ぽんぽん)

明石「ぐすぐす……大淀がいじわる言うから……うぇーん」

大淀「いじわるじゃありませんよ。みなさん提督大好きなんですから、十分にあり得ることなんですよ」


明石「ぐす……でもでも、そんな取られちゃうとか……」

大淀「明石? 皆さん、提督と明石がすでに恋人になってると思ってるから、諦めて身を引いて下さったんですよ? 」


あ……。わたしの練度上げで寂しそうにしてた人は……提督を好きだった人なんだ、きっと……。そっか、わたしが提督を取っちゃったんだ……。


大淀「でもっ! 明石がいつまでももたもたしていて、まだ恋人でも何でもないって知られたら……? 」

明石「!!! ぴ、ピンチです! 」

大淀「だから煽ってるんですよ。改めて聞きますけれど、提督を取られてしまってもいいんですか? 」

明石「………………………………………………ヤダ」

大淀「じゃあどうするんです? 」

明石「……あーん、大淀、どうしよう~~」

大淀「簡単ですよ。今夜、提督が来たら、鍵をかけて、電気を消して、服を脱いで、抱きつけばいいんです。それですべて解決です」

明石「/// 大淀のエッチ! そんなことできるわけ無いですっ」

大淀「そんなことを言ってるから、今でもそんな関係なんですよ。いい大人が情けない……」


うう、機械しか知らない工学系女子にそんなこと求められても……。


大淀「明石だって、提督と恋人になる想像ぐらいはしたことあるのでしょう? 参考までに、どんなイメージをしていたのですか? 」

明石「そ、それはその……。提督が真面目な顔で……好きだーとか、俺と付き合ってくれーって言って、わたしが……はい、喜んで……///」

大淀「…………ほんとに駆逐艦レベルですね。前進してない訳が、よーっく分かりました」

明石「えー。でも、告白って普通、男の人からでしょ? 」

大淀「まったく。そんなのは人それぞれ、関係それぞれでしょ? 」

明石「そ、そういうものなの……かな? 」

大淀「明石は提督のことを良く知ってますから、提督が、明石の事を好きなのに手を出してない理由なんて、分かるでしょ? 」

明石「/// そんな! て、提督がわたしの事……」

大淀「提督が明石のことを好きだと思ってないのは、多分、明石だけよ。いいから、その前提で考えてみてください」


そんなこと言われても……。って、あれ? 考えるまでも無いですね。提督はいつも、無理させて無いかとか、自分が上官だから仕方なく言うこと聞いてるんじゃないか、とか、そんな心配ばっかりですね。


明石「きっと……自分が司令官だから……わたしが断りにくいかもしれないとか、職権乱用になっちゃうかもとか……またズレた心配をしている……とか? 」

大淀「それしか無いでしょ。だから、提督と明石の関係は、明石が飛び込まない限り前に進まないんです」


ああ、言われてみれば当たり前でした。……って、それじゃあ、提督は毎日わたしのところに来て……わたしが飛び込むのを……ずっと待っててくれてるのかな……?


明石「で、でも、わたしもちゃんと、アタックしてたんですよ! 」

大淀「具体的には? 」

明石「それはその……。提督の悩みとかもっと相談して下さいって言ったり……もっと強くなりたいから実戦に参加させてもらえるようにお願いしたり……」

大淀「……それで? 」

明石「そ、それで……。それでもし、もっともっと強くなって練度99とかになったら……もっと頼りにしてもらえたり、その、あ、あわよくば、指輪とかもらえちゃうとか……」

大淀「はぁ~~~~」

明石「ふ、深いため息つかないで~~」

大淀「では、次に前進するのは練度99ですか。一体何年後でしょうね……」

明石「それはぁ……その……」

大淀「わかりました。もう強攻策しかありません!! 」

明石(びくっ)

大淀「今夜、関係が進まなかった場合。明日、鎮守府の全員に、提督と明石が恋人関係だというのは誤解だと伝えます。また、残業もバンバン入れることにします! 」

明石「えええ!! ひ、ひどいよ大淀~~」

大淀「ひどいも比叡もありません!! いいですね、今夜、必ず前進してください!」


た、大変な事になっちゃった……。今夜……わたし、どうしようっ!!


本日分は以上となります。
長らくお付き合い頂きましたが、多分明日で終了です。もう1日、お付き合いいただけますと幸いです(o_ _)oペコリ

そう言えばこの鎮守府は、例の修羅場った所とパラレルワールドな感じなのかな?
龍驤バイザーとか出てきてるし


――――― 少し後 廊下

大淀(まったくもう。明石ったら……)

大淀(でも、ああいう、子どもっぽくて真っ直ぐで素直で臆病なところが、とても可愛らしいんですよね。きっと、提督もそこに惹かれたんでしょう)

大淀(焚き付けたものの、明石のことです。きっとオロオロするだけで前に進みませんね。ここは友人として、手を打っておかないと……)


――――― 提督執務室

コンコン

大淀「提督、大淀、戻りました」

提督「あ、ああ。お帰り。明石とはちゃんと話せましたか?」

大淀「なんで敬語なんです? そんなに怯えないで下さい」

提督「い、いやぁ。なんだかすごく怒ってたみたいだから……」

大淀「あら、大丈夫ですよ」(にっこり)

提督「そ、そうか……それなら良かった」

大淀「提督が怯えるのは、これからなんですから」(にっこり)

提督「え゛? 」

ツカツカツカ ガチャン バタン カチャッ

提督「あ、あの……大淀さん……? どうして鍵を掛けるんですか……? 」(びくびく)

ツカツカツカ シャーー

提督「あの、どうしてカーテンを閉めるんですか……? 」

大淀「扉の外には、『本日急用につき不在』の看板を掛けてあります。これで邪魔ははいりませんよ? 」


提督「あ、あの……そ、それでどういう……」(ガタガタ)

大淀「あらぁ~。まだお話も始まっていないのに、そんなに怯えられたら、大淀、困ってしまいます♪」

提督「でもデスネ。なんだか尋常じゃないというかデスネ」

大淀「さて、冗談はこのくらいにして。明石のことでお話したいことがあります。わたしに怯えるごっこもそのぐらいにしてください」

提督(ほんとに怖いんだけどなぁ)

提督「ふむ。大淀がここまでするんだ。大事な話なんだろ? 今日はあんまり仕事もないし、ゆっくり聞こうか」

大淀「ありがとうございます。今日という今日は、絶対に、ごまかされるつもりはありませんから、そのおつもりで! 」

提督(うわぁ。大淀、なんか本気モードだ)


大淀「先ほど明石と話して確認してきました。提督、未だに、明石と恋人にすらなっていないそうですね?」

提督「……やっぱりその件か」

大淀「その件か、じゃありません! みなさんが、提督と明石が恋人だと思っているって、知ってらしたでしょ? 」

提督「そりゃ知ってたけど……。違うって否定してたろ? 」

大淀「でもそれは、立場とか公私混同とかの問題で、公式には否定してるだけだって、みなさんそう思っていました。それも知っておられましたよね? 」

提督「うう……だけど、それ以上どうすることもできないしなぁ……」

大淀「何より行動ではっきり示されてましたから」

提督「行動って言うと……」

大淀「毎日毎日、仕事が終わったら一直線に明石のところですよね。これを見たら、どれだけ否定しても無駄ですよ……」

提督「それはなぁ……ほら、明石が寂しがるといけないからっていう話だったし……」

大淀「それにですね、なにより…………」

提督「?」

大淀「提督、しばらく前から、他の子たちの、きわどいセリフとか挑発、スキンシップ、そういうのをやんわりと拒絶するようになりましたよね? 」

提督「…………」

大淀「そういう、提督の心の変化って、ちゃんとみんな感じ取ってますよ」

提督「……はぁ……女は怖いなぁ……」

大淀「明石は鈍いですけどね」


大淀「ですからっ! 提督と明石はすっかり恋人になったと、みなさん思っていました。不覚にもわたしもです」

提督「お、おう。それは分かった……。それで、何を怒ってるんだ? 」

大淀「……何を怒ってる……ですって……? 」

提督(こえぇぇ)

大淀「提督、あなたは、明石のところに通い始めて2ヶ月ぐらいですか。一体、毎晩何をしてたんですかっ ! 」

提督「えっと、晩御飯食べてコーヒーとか紅茶飲んで……資源使わないで遊べる開発の話とか……」

大淀「そういうことは明石にもう聞きましたっ! 両想いの大人の男女二人が、毎晩同じ部屋に居て、なんで恋人にすらなっていないかって聞いているんですっ! 」

提督「おう……今日はほんとに直球だなぁ……」

大淀「やんわり聞いたらはぐらかされるのは、良く分かってますから! 」


提督「……嫌な言い方をすれば、プライベートな事だし話す義務は無い! ってなるんだが……」

大淀「……」

提督「大淀がここまでするんだ。今日はそういう訳にはいかなそうだな。明石のこと、心配してるんだろ? 」

大淀「当たり前ですっ。大事な親友ですから! 」

提督「しかたない、降参だ。今だけは何でも話すよ。何でも聞いてくれ」

大淀(ほんとにこの人は……。心のうちは徹底的に隠すから……聞き出すのも一苦労ですね)

大淀「ふぅ。提督の本音を聞き出すのは本当に大変です。これだけがんばって、やっと準備OKですか」

提督「えー。俺はいつでも本音なんだけどなぁ」

大淀「寝言は寝ているときにどうぞ」

提督「辛辣!! 」


提督「とはいえなぁ。明石にもすでに聞いてきたみたいだし……。大淀のことだ、あらかたわかってるんだろ? 」

大淀「はい、わかっています。その上で質問ですが……」

提督「うん」

大淀「提督は、明石が提督のことを好きな事は、当然気付いてますよね? 」

提督「まぁ……。そうだろうな、とは思ってる」

大淀「でも、あの子のことですから、いつまでもモジモジして、飛び込んで来たりしないっていうのも、お分かりですよね? 」

提督「……そうだな。明石が突然、俺にアタックしてくるとか、あんまり想像つかないな」

大淀「でしたら、今のままだと前進することはない、ということは分かっておられるわけですよね? 」

提督「ああ」

大淀「そこです! 明石のこと、お好きなんでしょ? ではなぜ、停滞し続けることを良しとされるんですかっ! 」

提督「……大淀、さすがだなぁ。情報収集・分析。その結果、現状を的確に理解してる」

大淀「ごまかさないで下さいっ! 」


提督「でも、そこまで理解してるなら、その先もわかってるんじゃないか? 」

大淀「ええ。提督のことです。どうせ、自分は上官だから、明石がもし嫌でも断れないだろうから、自分から告白できないとか、そういうお話なんですよね」

提督「なるほど、そこで間違ってるのか。だからおかしな話になってるんだな」

大淀「え? 」

提督「確かに、そういう心配もゼロじゃないけど……。前に、寂しくて泣いてる明石を放置しちゃった経験があるからな。行動しないで悲しませるぐらいなら、そういう不安はあっても、ちゃんと告白したいと思うよ」

大淀「え……? 」

提督「そんなに予想外だったのか。大淀はほんと、丁寧に作戦を練る分、予想外の事態に弱いな」

大淀「/// わ、わたしのことはいいんです! それじゃあ、どうして……? 」

提督「言いたくない」

大淀「…………何でも話してくださるお約束です」

提督「そうだったか? 」

大淀「そうですっ! 」


提督「うーん……」

大淀「や・く・そ・く・! しましたね、何でも話すって」

提督「…………そうだな、ここでちゃんと話しておかないと、一生話す機会が無いかもしれない。分かった」

大淀「……ずいぶん大げさな感じですね」

提督「まー、できれば有耶無耶にしたかった話だからな」

大淀「……」


提督「……俺な、あんまり恋愛経験とか無いんだよ」

大淀「は、はぁ」

提督「それなのに、いきなり女だらけの職場だろ? で、みんな俺のことを大事にしたり、好意を向けてくれる。嬉しいやら困るやらで、最初大変だったんだよ」

大淀「色男は大変ですねっ! 」

提督「ま、俺がいい男なんじゃなくて、提督と艦娘っていう関係だったからだと思うけどな。でもな、俺は古風な男で、じゃあみんなと仲良く!っていう風には思えなくてな」

大淀「……提督らしいです」

提督「じゃあ俺は誰が好きか、誰が大切か、そういう事を考えたりするわけだよ」


提督「そのうち、俺は自分が、明石に恋してるのを自覚した。なかなか不思議なもんだよな」

大淀「……それなら……」

提督「ところがさ、恋とは違う気がするが、とても大切に思える人が他にも一人居てな」

大淀「……」

提督「その人と恋人になる未来も想像して……それもすごく素敵なものに思えた」

大淀「…………」

提督「その人は、いつでも俺の側で支えてくれて、俺のダメな部分を叱ってくれて、それでいて、見えないところで、こっそりと俺のサポートをしてくれて」

大淀「………………」

提督「俺の鎮守府が成長して、ここまで来られたのは、すべてその人のおかげだと思っている」

提督「また、女性としても、とても魅力的なかわいらしい人で……。できることなら、ずっと側に居て欲しいって、そう感じていた」

大淀(あれ……どうして…………わたし、涙が…………)

提督「その人も、俺のことを慕っていてくれると感じていた。とても嬉しいことだが……同時に苦しかった。俺が明石を選んだら、この人を悲しませてしまうってな」


提督「それなのに、その人は、俺と明石のために、自分の気持ちなんてすっかり隠して、こっそり応援してくれてるんだよ」

大淀(どうして……涙……とまらない…………)

提督「そういうわけだ。俺は、君を振り払う勇気が足りなくて、今まで躊躇していた」

大淀「ぐすっ……そんな、わたしは…………」

提督「大淀、君も明石のことは言えないな。とても不器用だ」

大淀「ひ、ひどいです、わたしは別にそんなことは………ぐす」


抱きしめ


提督「ごめん。それから、ありがとう。俺は、君に支えられる未来にも憧れたけど……それでも、明石を……あの、あぶなっかしくて、ほおって置けない泣き虫な子を……支える生き方をしようと思う」

大淀「そうです……それでいいんです…………ぐす……。でも、今は、今だけは……」

ぎゅーー

大淀「うわーーーーん、ううう、うわーーーん」

提督「ごめん、ありがとう大淀……」


大淀「大淀、一生の不覚です。まさか提督に泣かされるとは……この恨み、忘れませんよ」

提督「怖いなぁ」

大淀「恋愛経験が少ないとか言って、女心をよくご存知じゃないですか、ふんっ」

提督「違うよ……。ずっと近くにいて支えてもらったから、大淀のことはわかるってだけさ。他の女の子は相変わらず戸惑うよ」

大淀「ふーん。上手いこと言っても、もう知りませんから」

提督「あは、あははは……」

大淀「明石には、今夜進展がなかったら、明日にはみんなに、提督と明石は恋人じゃないってバラすし、残業だらけにして提督を帰さないって伝えてありますから! 」

提督「うわぁ……。それはひどい脅しだなぁ……」

大淀「明石、今夜はそわそわ待ってるでしょうから、残業にならないよう、しっかりお仕事して下さいね! 」

提督「はいはい、じゃあ、お仕事しますかね」

大淀「わたしは、今日は秘書お休みなので、これで失礼しますから、しっかり終わらせて下さいね! 」

提督「あれ、行っちゃうのか? 」

大淀「ええ、せっかくのお休みですし、先ほどの恨みもありますから、お仕事は提督に差し上げます」

提督「了解……。また明日な? 」

大淀「ええ、また明日。良い報告、期待していますね」


――――― 少し後 大淀の部屋

大淀(不覚です、不覚……。提督を甘く見ていたつもりはありませんでしたが、まさか、自分でもモヤモヤしていた心の中を見抜かれていたなんて……)

大淀(……きっと、時間をかけて、ずっとずっと、明石のこと……そして、わたしのことを考えてくれていたんでしょうね。あの人らしい……)

大淀(大丈夫! 想いは伝わっていた。それだけで十分…………もちろん悔しいけど……相手が明石なら、応援できる……)

大淀(他の女にちょっかい出したら、きつくお仕置きしてやりましょう……)

大淀(さ、わたしも自分の心に整理を付けましょう……2ヶ月たって、やっと整理がついてきたところでこれでしたから、また1からやり直しですけど。ほんとにもう、あの二人は! )

大淀(今夜は、足柄さんに、やけ酒に付き合ってもらいましょう……)

大淀「ぐす……ぐす……」

大淀(さようなら、わたしの大好きな提督……。でも、これからも、よろしくお願いします)


――――― 夜 工廠

あああああーーー、うろたえているうちに、もう夜です! どうしよう! どうしよう!


コンコンコン

提督「明石ー、来たぞー」

明石「は、は、はい! ど、ど、どうぞっ!!」

提督「こんばんは。今日もお疲れ様」

明石「は、はい! お疲れ様ですっ。ご、ご飯は明石カレーですっ」

提督「お、カレーか。やっぱカレーは嬉しいな」

明石「すぐっ! すぐ用意しますね!!」


ど、どうしよう~。提督の顔が見れない……。でもでも、今日はがんばらないと!


提督「明石、なんか緊張してる? 大淀にそんなに怒られたのかー? 」

明石「は、はい。もう、こっぴどく怒られましたっ」

提督「大淀、怒ると、ほんとに怖いよなー」

明石「はい、昔からもう、にっこり笑ってる時が一番怖くて……あはは……」


――――― 食後

さ、さて……今日は、が、が、が、がんばらないと……


明石「て、提督……? 今日は、洋酒が手に入ったんですけど、よ、良かったらいかがですか? 」

提督「お、ウイスキーか。珍しいな、頂こう」

明石「は、はい。では、わたしはお水で少し割りますが、提督はストレートでいいですか? 」

提督「ああ、せっかくだしな」


提督「ほんじゃ、かんぱーい」

明石「か、乾杯っ! (ちびちび)」


こ、ここまでは計画通りです……


提督「そういえば、ここで酒飲むのは、はじめてじゃないか? 鳳翔さんのところでは飲んだことあったけど」

明石「え、ええ、普段はお酒は置いてないんです。工業用アルコールとかはいっぱいあるんですけど……あはは」

提督「それは……悪酔いしそうだな……」

明石「悪酔いどころか、飲んだら大変です! ダメですよっ」

提督「あはは、俺は酒だけで十分だよ(ゴクゴク)」


わたしは……お酒弱いけど、思い切るためにちょっとだけでも飲んで……


提督「ふー、喉の焼けつく感じがいいな……。普段は日本酒ばかりだけど、たまにはいいなー」

明石「わたしは、もうちょっと甘いのがいいかもです(ちびちび)」


よ、よし……。い、行きます!!


明石「え、えーっと。なんか、酔っ払って、暑くなって来ちゃったなー! 」

提督「明石、まだそんな飲んでないだろ? 」

明石「え、えっと。そうですかねー。じゃあもっと飲みます(ゴクゴク) うう、辛い……」

提督「おいおい、そんな無理しなくても」

明石「い、いえ! お酒美味しいなー。あー、酔っちゃって暑いな~(パタパタ)」



……

明石「ふょれででふね、51cm砲とかつくっちゃえばいいとおもふのでふよ」

提督「えー、そんなの積めるのかー? 」

明石「らいりょぶれふよー、こう、砲塔をぐ~るぐ~るって回して……はれ、止まらない……ぐ~るぐ~る……」

パタン ぐ~

提督「ついに潰れたか……。きっと、大淀がなんか入れ知恵して、それでおかしなことになってたんだろうなぁ……」

明石「うみゅ~~、zzz……」

提督「ったく、男の前で酔いつぶれるとか、無防備にもほどがあるぞ……」

明石「みゅ~、提督……ありがと~……むにゃ……」

提督「やれやれ、今日は進展させないとダメな日なんだろ? しょうが無い、起きるまで側にいるか」


――――― 深夜

うーん……あれ? 朝? あれ、ソファー?


明石「あ、あれ、わたし、どうして……?」

提督「起きたか。おはよう」

明石「あ、おはようございます。わたし、いったい? 」

提督「急に酒飲み過ぎて、パタンって寝ちゃったんだよ」


あ、あ、あああ!! そ、そうでした! 『わたし、酔っちゃったみたい……』作戦が!


提督「頭痛くないか? はい、水だ」

明石「あぅ……ありがとうございます、大丈夫みたいです」(こくこく)


あぅぅぅ……大失態です……


明石「提督、ごめんなさい。こんなはずじゃなかったんですけど……」

提督「わかってるよ、大淀に煽られて、何か吹きこまれたんだろ? 」

明石「うう……はい……」

提督「明石らしいな。スッキリしたら、少し話したいことがある。大丈夫か?」

明石「はい、もう大丈夫そうです……」


提督「さてっと。まず俺から話があるんだけど、いいか? 」

明石「はい、どうぞ……」


うう、酔いつぶれたお説教だよね……うう、ダメだなぁ


提督「明石、俺、お前のこと好きなんだ。俺の恋人になってくれ」

明石「………………へ? 」


あれ……なんかおかしな話が出たような出なかったような……まだお酒残ってるのかなぁ……


ぶんぶんぶんぶん


明石「ごめんなさい、まだちょっとお酒残ってるみたいで……困りました」

提督「いや、多分酔っ払って無いぞ。改めて言うけど、俺の恋人になってくれないか? 」

明石「……………………へ?? 」


なんだろう……あれ、何が起きたんだろう?


提督「うわー……思い切った愛の告白だったんだけどなぁ……もうちょっとロマンとか必要だったか? 」


愛の告白って…………えええええええ!


明石「ちょ、ちょ! て、提督、な、何を言ってるんですか!! 」

提督「何をって……明石~、俺もすごい緊張して思い切って言ってるんだから、とりあえず落ち着いてくれよ~ 」


う、うそ……何この不意打ち……。ま、まさかわたし、酔っ払ってほんとに提督と、え、え、エッチなことを……!


明石「あ、あのあの、提督! わたし、酔っ払ってその、変なことしたかもしれませんが、全然覚えてないっていうか! 」

提督「いや、突然パタンって寝ただけだぞ。って、まぁ、明石らしいとは思うけど……、まずは落ち着いてくれよ、どうどう」


う、馬じゃないです!


明石「えっと、それじゃあ……」

提督「前から明石のことが好きだったんだ。でも、勇気がなくて、なかなか言い出せなくてな……。でも、明石もだと思うけど、大淀に叱られてな。ちゃんと勇気を出して前に進もうと思ってさ」


あ、やっと……なんか……理解できた……何を言われてるか……


明石(ぼろぼろぼろぼろ)

明石「うぐっ、ひぐっ、ひぐっ、わだ、わだ、わだしも……だいずきですーー」

提督「ああ、ああ、もう泣きすぎだ……ほら、涙拭いて……ほら、鼻水も……はい、チーン」

明石「ごどもあつかいしないでぐだざいー」

提督「あーあ、俺達らしいけど、ロマンチックの欠片もないなぁ……あはは、あはははは!」

明石「あーんあーん、ごべんなざいー」



……

提督「はい、紅茶。明石にはやっぱり、酒よりこっちのほうが似合うな」

明石「は、はい。ありがとうございます……」(ふーふー)


提督「さて、やっと泣き止んでくれたところで。OKでいいのかな? 」

明石(ぶわっ)

提督「あー、もう、泣くの無し無し! 」

明石「ぐす……はい、もちろん喜んで……。でも、ほんとにわたしでいいんですか? 」

提督「あははは、まぁ、定番な返しだけど、明石じゃなきゃダメなんだよ」

明石「/// うー、信じちゃいますからねっ」

提督「ま、信じてもらえないと困るけどな」

明石(ぼろぼろぼろぼろ)

提督「あーもー、また泣く~」

明石「だって、だって……ぐすぐす」


そうです……夢みたいとか浮かれてないで、ちゃんと話しておかないと……


明石「提督……一つ聞いて下さい……」

提督「んー? 」

明石「その……わたしの、友人としてのカンでしか無いんですが……」

提督「……」

明石「大淀も……提督のこと……きっと……。わたしもそれで……どうしたらいいだろうって……どうして自分を抑えて応援してくれるんだろうって……」

提督「今日、ちゃんと大淀と話してきたよ」

明石「!!!」

提督「そっか、明石も気づいてたんだな。俺も大淀も、明石は鈍いから気付いてないと思ってたよ」

明石「ひ、ひどいですっ!! 」

提督「あはは、過小評価だったな。ごめんごめん。ほんとはな、大淀とそういう話をするつもりはなかったんだけど……まぁ、問い詰められて。俺は明石を選ぶよって、ちゃんと伝えて来た。明石も気付いていたなら、結果的にこれで良かったな」

明石「そ、そうだったんですか……」

提督「明石の言うとおり、大淀は自分の気持ちは抑えて、俺と明石を応援してくれた。明石からも、お礼を言っておいてくれ」

明石「はい……うう、でも、どんな顔して会えばいいんだろう~ 」


大淀……ありがとう、ごめんなさい……。でもでも、わたしにもちゃんと話してくれてもいいのに! それに、鈍いってなんですか鈍いって!


提督「さ、今日はすっかり遅くなっちゃったな。ちゃんと進展したし、そろそろ部屋に帰るよ」

明石「は、はい! わたしが寝ちゃったばかりに……」

提督「ちなみに、酒出してどういう作戦だったんだ? 」


!!! い、言えるわけありません!


明石「あ、あはは、えーっと、提督を酔い潰しちゃおうかなーって……あはは」

提督(これで嘘がバレてないと思ってるんだから、こいつはほんとにかわいいなぁ……)

提督「それで先に寝たら意味ないな~」

明石「あは、あはは、失敗でした失敗! 」

提督「ほんじゃ、最後に恋人らしい挨拶してくか」

明石「へ? 」


抱きしめっ


明石「あ、あぅ ///  あの、提督……」

提督「ほんと、待たせてハラハラさせて済まなかった……。愛してる……。これからもずっと一緒にいてくれ」

明石「///// ひゃ、ひゃい! よ、よろ、よろ、喜んでっ」


ちゅっ


明石「ふわ……」


キスしちゃったぁ……


提督「さて」

明石「だめ! 」(ぎゅー)

提督「なんだなんだ? 」

明石「も、もう一回です、もう一回! 」

提督「なんだ、気に入ったのか」


ちゅっ……


明石「はふぅ~」(うっとり)

提督「よし、それじゃあ」

明石「だめ!」(ぎゅー)

提督「おいおい……」

明石「だめです。もっと! 」

提督「おいおい、歯止めきかなくなってもしらないぞ(俺の)」


ちゅ……ちゅっちゅ……ちゅ……ちゅ……


明石「はふ……ん……うん…………」


提督「…………やっぱ帰るのやめる」

明石「…………コクン」


こうして、わたしはついに、恋を成就させることが出来ました。愛する提督と、応援してくれた仲間たち、そして……とてもとても大切な親友に…………心からの感謝を……。






――――― 一週間後 朝 工廠

ワーワー ドタドタドタドタ

明石「?」

バタン

島風「いっちばーーん! 」

天津風「くっ、島風、先にスタートするなんてズルいわ!」

雪風「ふーふー、つ、疲れました」


まだ朝早く。朝食の準備をしているところでした。駆逐艦の子たちは元気ですねー!


明石「おはようございます。3人でどうしたんですか? 」

島風「明石さん、おっはよー! ちょっと相談があってきたの」

天津風「おはようございます。雪風の連装砲のことでご相談が」

雪風「そうなんです! わたしだけ、普通の連装砲なので、連装砲ちゃんとか連装砲くんみたいなのが欲しいんです! 」

明石「おー、やっぱりそう思いますか」

島風「え? 」

明石「実はですね、提督と、どうせなら駆逐艦のみんなが、連装砲くんや連装砲ちゃんを持てたらいいねって話してて、研究中なんですよ」


天津風「さすがね! それで成果はどうなの? 」

明石「うーん、まだ研究を始めたばかりでして、いつになるかは……。そうだ、良かったら一度、連装砲ちゃんと連装砲くんとお話させてください。どうしてお二人の連装砲だけ、意思をもって動くのかそれさえ分かればなんとかなるかも……」

雪風「楽しみですね!」

島風「そっか……必要なら、連装砲ちゃんを一人、分解することになっても……」

連装砲ちゃん「み゛!」(おどおど)

明石「や、やだなぁ、分解なんてしないですよ! お話させていただいたり、ちょっと調べさせて貰えれば……」

連装砲ちゃん「みゅー」(ほっ)

明石「それにそういえば、新しい駆逐艦の子が、長10cm砲ちゃんっていう子を連れているらしいですよ。その子にも会ってみたいですね! 」

島風「いいなー! その子も速いのかな! 」


ガチャ


提督「ふぁーあ。朝から賑やかだな。その新しい駆逐艦の秋月は、まだうちに来てくれるのは先になると思うぞー。主に俺の運の都合で」

雪風「あ、しれぇ。おはようございまーす! 」

島風「提督、おっはよー! って、あれ、そこ明石さんのお部屋だよね。なんで提督が出てくるの? 」

天津風「しっ。島風、バカ! お二人は恋人なんだから、その……お、お、お泊りしたのよっ! 」


もう、提督のばか! 隠れててくれればいいのに……恥ずかしい……


島風「お泊りいいなー。ずっるーい! 」

明石「あ、あは、あはははは」

提督「ま、そんなところだ。で、聞こえてたけど、雪風の連装砲の件は、いつになるかわからんぞー」

雪風「そうですか……残念だけど仕方ありませんっ」

提督「仲良し三人でお揃いにしたいんだろ。それじゃあ、代わりに、オリジナルのアクセサリでも作ってお揃いでつけるのはどうだ? 」

天津風「それ、素敵かも」

提督「風とか光とか、なんか速そうな意匠のバッチとかでいいんじゃないか? 」

島風「提督、作ってくれるの! 」

提督「ああ、俺も工作機械でちょっと作ってるものがあるから、ついでに作ってみるよ。で、気に入ったら改めて明石に頼んでくれ。俺よりずっと上手く綺麗に作ってくれるからさ」

雪風「し、しれぇ、ありがとうございます! 」

天津風「あ、ありがと……」

島風「さっすが提督~! 」

提督「じゃあ、これから朝飯だから、そうだな、お昼前くらいにまた工廠に来てくれよ」

島風「はーい! それじゃあ、お部屋に帰る競争、スタート!」(ぴゅー!)

天津風「島風、また先にスタート、ずるい!」(ぴゅー)

雪風「負けませんっ!」(ぴゅー)


明石「もーもー! 提督がお泊りしてるなんて噂が広がったらどうするつもりなんですか! 」

提督「……すまん、明石、それはもう手遅れだ……」

明石「え! 」

提督「だって俺、ここんとこずっと、ここから執務室に通勤(?)してるだろ。俺の私室と逆方向だから、もう、通りがかるみんなにもろバレなんだが……」


う、う、う……だからここのところ、なんかみんながニヤニヤしてたんだ……うわーーーん


明石「/// ううう、恥ずかしい……」

提督「まぁまぁ、どうせ毎日泊まりこんでたらすぐバレちゃうんだ。もう堂々としてようぜ」


あの日以来、提督はわたしの部屋にすっかり住みこんでいて、最近は着替えも持ち込んでいます……。これって同棲だよね。ああ、わたしがこんな生活をする日が来るなんて!


明石「とりあえず、朝ごはんにしましょうっ」

提督「いつもすまんな。いただきます」


提督「ふー、さて、これ飲み終わったら出勤か。今日もたいして仕事無いんだけど、行かないわけにはいかんからなぁ」

明石「資源節約中ですからねー。あ、演習はわたしも参加する予定です! 」

提督「ああ。気をつけて行ってきてくれよ。空母がいない編成を選んであるから」


もー、心配性は変わらないんだから。


明石「今日は演習じゃないですか。そんな心配されても困っちゃいますよ。大体、わたしにだけ過保護すぎますっ。いくら工作艦だからって……」

提督「明石はおばかだなー」

明石「なにー! 」

提督「工作艦だからじゃなくて、好きな子だから心配してるに決まってるだろ。実戦とかもう、ハラハラしながら見てたんだからな」

明石「/// ば、ばかっ! 朝から何言ってるんですかっ」


も、もう! 最近は、結構不意打ちで、こういう好意を口にしてくれるからその……嬉しくて困っちゃうじゃないですか!


提督「あ、そうだ。行く前にまたちょっと工作機械使わせてもらうから」

明石「あはは、さっきも頼まれてましたもんね」

提督「明石が忙しくて手が回らない分、コスプレ用の小物ばっかり頼まれてなぁ……」

明石「コスプレブーム、まだ終わらないですね。昨日、第六駆逐の4人で、お揃いの龍驤さんバイザーかぶってましたよ」

提督「そんなことして、おっぱいまで似ちゃったらどうするつもりなんだ……」

明石「提督……? 」

提督「あ、うん。失言失言! いやあ、まいったまいった」

明石「もう……提督はほんと、おっぱい星人ですね! プリプリ」

提督「えー。でも、明石はりっぱなおっぱいだからいいじゃないか。ありがたやありがたや」

明石「恥ずかしいこと言わないで下さいっ!!! 」


エッチなのはいけないと思います!


――――― 提督執務室

提督「ふむ、この練度上げをやってみるか……」

大淀「なるほど、これは資源消費を抑えつつ練度を上げる工夫ですね。よく考えてありますね」

提督「ああ、これは知り合いの提督からの情報でな。そいつは、所属してる艦娘ほぼ全員が練度99になってる育成の鬼でな。こういう工夫は並ぶものが居ない」

大淀「そ、それはすごいですね……」

提督「うちも慢性的な資源不足だからな。真似させてもらうさ」

大淀「主に提督と明石のせいですけどね」(にっこり)

提督「まぁ、勘弁してくれ……。例えば、今の情報なんかをもらう代わりに、ウチの、各種開発データを提供してるんだ。持ちつ持たれつってやつなんだよ」

大淀「はいはい。それでも、今はほんとに資源が足りてないですから、浪費は控えて下さいね! 大型艦建造なんてもってのほかですからっ! 」

提督「ああ、大和や武蔵や大鳳がうちに来てくれるのはいつになることやら……」


清霜「しれーかん! 呼ばれてきたよー! なになに、武蔵さんがどうしたの!? 」

提督「あ、いやいや、それはこっちの話。頼まれていたものができたから渡そうと思ってな」

清霜「え、もうできたの! しれーかん、ありがとう!」

提督「これだ、安全ピンでつけるだけだから、注意してつけろよー」

清霜「わぁ、立派だね! ありがとう、大事にするね! 」

長門「清霜、何を作ってもらったんだ? 」

清霜「長門姉さま! みてみて、これー! 」

長門「おお、菊の御門ではないか! 」

清霜「もっと長門姉さまに近づこうと思って、しれーかんに作ってもらったの。

長門「おお、ではお揃いの場所に取り付けて。うん、これでどこから見ても長門型だ! 」

清霜「やったぁ! 」

長門「さあ、陸奥も呼んで、三姉妹で甘いものでも食べよう。間宮さんの店だ! 」

清霜「やったぁー! わーいわーい」


大淀「まったく、駆逐艦の子にはとことん甘いですね」

提督「いやー、小さい子に頼まれると断れなくてなぁ」

大淀「明石がヤキモチを焼かないといいですけど! 」

提督「むむ……さすがに駆逐艦相手なら大丈夫だと思いたいけど……」

大淀「明石を泣かすようなことがあったら……覚悟なさってくださいね」(にっこり)

提督「大丈夫だよ……。俺もさ、本当に悩みに悩んで決心したんだ。簡単に揺らいだりはしないさ……」

大淀「……はい。それなら安心です」

提督「ああ、安心してくれ」


大淀「何日か前、明石とひさしぶりに飲みました」

提督「ああ、目を真っ赤に腫らして帰ってきたよ」

大淀「ええ、もう、抱きついてきてわんわん泣いてました。ほんと、あの子はどうしても可愛くて憎めないです。わたしもあんな風になりたかったなー」

提督「大淀が明石みたいだったら、うちの鎮守府はとっくに破産してるけどな……。でも分かるよ。俺もあんな風になれたらなって思うけど……まず無理だなぁ」

大淀「そうですねー。その腹黒いところを治さないととてもとても……」

提督「おやおや大淀、自分の話かな?」

大淀「うふふふふふ」

提督「あははははは」


大淀「…………どうか……幸せにしてあげてくださいね」

提督「……なにせ、こんな先の見えない戦いで、しかも司令官と艦娘だ。未来がどうなるかなんて約束できないけど……最後まで一緒に居ることだけは約束するよ」

大淀「ええ、それなら安心です……」


――――― 夕方 工廠

明石「あれ、提督、もう帰ってたんですか? 」

提督「ああ、また工作機械を使いたくてな。清霜のやつは無事渡せたよ」

明石「あれは作るの苦労してましたもんねー。喜んでもらえましたか? 」

提督「ああ、例によって長門のほうが喜んでたけどな」

明石「長門さん、もう清霜さんにデレデレですね~」

提督「陸奥が呆れてたよ。陸奥もお姉ちゃんを取られたみたいで、ちょっと拗ね気味なのがまたおかしくてな」

明石「あは、陸奥さん、あんなにお姉さんっぽいのに、やっぱり末っ子なんですねー」

提督「そうそう、朝の駆逐艦三人娘のアクセは、意匠決まったから、後で渡すよ。生産は任せた! 」

明石「提督、仕事はやいですねー。三人とも喜びますよー」

提督「その代わり、自分が作りたいものがなかなかできなくてな。こうして、大淀に頭を下げて、早く帰ってきてるわけさ」

明石「あはは、じゃあ頑張ってください! わたしも潜水艦の皆さんの修理行ってきます! 」

提督「ああ、じゃあまた夕食の時に」

明石「はい! 」


――――― 夜 明石の部屋

提督「ふー、ごちそうさま」

明石「はい、おそまつさまでした! 」

提督「じゃあ、今日は俺がコーヒーを入れるよ」

明石「ありがとうございます。さっと洗い物だけしちゃいますね……」


えへへ……夫婦みたいだよね!


提督「しかし、すっかり住み着かせてもらってるけど、二人で住むとなるとやっぱり手狭だなぁ」

明石「そうですねー、元々は物置みたいな部屋でしたから」

提督「まぁ、俺も仕事道具は執務室で、自室には着替えぐらいしか無い男だからなぁ。物はそんなに増えないか……」

明石「狭くなろうが何しようが、居てくれないとダメです……」

提督「あはは、大丈夫だよ。別に帰ろうって言ってるわけじゃないから」

明石「とりあえず、わたしもちょっと工夫してみますね。壁の高いところまで収納を作れば……ぶつぶつ……」

提督「そだな。収納でも何でも作れる環境だし、色々工夫して広くしよう」


提督「ま、とりあえずもっと近くで話そうぜ」

明石「へ? 」

提督「ここにどうぞ」(膝ぽんぽん)

明石「え、えー! わ、わたし駆逐艦みたいに小さくないですし……」(ちょこん)

提督「と言いつつ、迷わず座るのな」

明石「じゃ、じゃあいいですっ!」

提督「だめ、逃がさない」(抱きっ)

明石「あう……」

提督「明石のこの髪……。ふわふわでさ。顔をうずめてみたいって思ってたんだ……」

明石「はうう……お手入れもっとちゃんとしろって、大淀に怒られてますけど……」

提督「なんかさ、長毛種の猫みたいなふわふわで、俺は好きだぞ」

明石「ほ、褒められてるのかなぁ……」


提督「あ、そうそう、ちょっと左手借りるよ」

明石「?」

提督「これ。薬指に……明石が寝てる時にこっそりサイズ測ったから、多分合うはずだけど……」

明石「…………!!! こ、これって!」

提督「形がいびつなのは勘弁してくれよ。俺は明石ほど上手く工作できないからさ」

明石(ぼろぼろぼろぼろ)

提督「あー、もう、また泣くんだから。これからが大事なのに」

明石「だ、だっでー……ぐすぐす」

提督「はいはい、泣いてていいから。本当はちゃんと結婚したいけど、とりあえずのケッコンカッコカリ。も、練度がまだまだ足りなくてできないから」

提督「うーん、言うなれば『ケッコンカッコカリ指輪(カッコカリ)』だな。練度上がるまでは、それで我慢してくれ」

明石「ぐすぐす……なんですそれ……わけわからない名前になってます……ぐすぐす」


無骨なメタル製で……形も確かにちょっとゆがんでるけど……よく見たいな……


提督「あ、ばかっ、せっかく付けたのに外すやつがあるかっ」

明石「え、でもちゃんと形とか見たいから……あれ、内側に文字……」


I love you forever


明石「うぇ、うぇ、うぇ、うぇぇぇぇぇぇぇん」

提督「あーあ、ほんとに泣き虫だなぁ」

明石「だっで、だっで……」


提督「俺は司令官で明石は艦娘だ。戦いの行方も、俺達がどうなるかもわからない。未来のことは、これから時間をかけて、ゆっくり話していくし、一緒に乗り越えて行きたいと思ってる」

明石「ぐす……ぐすっ……はい……はい……」

提督「ただ、これからどんなことがあっても、君を愛しているっていう意思だけは伝えたかったんだよ……。だからこっそり彫ったのに……すぐ見つかるとは……」

明石「ふふふ……工学系女子を甘く見ましたね! どんなものでもまず観察しちゃいます! 」

提督「あはは、まいったまいった」


真っ直ぐで誠実で、ちょっとエッチだけど……。そんなあなたと一緒にいられて、愛して、愛してもらって……。わたし、本当に、転生できて良かったです。改めて、運命とあなたに感謝を……。そして……少しでも長く、あなたと一緒に居たい……それだけがわたしの望みです。


明石「提督、わたしも……何があっても……これからずっと……愛しています」

I love you forever too




おしまい




おまけ

――――― 後日 工廠

提督「ただいま、明石はまだ仕事中か」

明石「おかえりなさい、ちょっと手が離せなくて。すぐ終わりますけど」

提督「ふむふむ、手に持ってるのは危ないものじゃないよな? 」

明石「? はい、ただのボーキサイトですけど……」

提督「じゃあ大丈夫だな。チャンス!」


さわ さわさわさわ


明石「きゃんっ!」

提督「ああ、夢がかなった……」

明石「ちょ、ちょっと提督! なにしてるんですか……ひゃうっ! 」

提督「いや、最初に見た時から、このスリットが気になって気になって……手を入れて見たかったんだ……」

明石「/// な、なにを言ってるんですか!」

提督「だってさー、動くと太ももとかおしりとかがチラチラ見えてさー。もうね、たまらんのですよ」」

明石「え、えっちー!」


提督「ま、予想通りひっぱたかれるオチだったわけだが、でも悔いはない! 」

明石「……提督って、ほんとにスケベですね」

提督「それは違うっ!!!」

明石(びくっ!)

提督「そのスカートを見て、スリットが気にならない男など居ないっ! そのスリットに手をいれるのは、俺だけでなく、すべての提督の夢のはずだっ! 」

明石「は、はぁ……」

提督「そして、大勢の提督に先駆けて、俺は夢を掴んだ……。他の提督たちも、いつか夢が叶うことを祈るよ……」

明石「…………」

提督「……なんだよ、そのジト目」

明石「いえ、何でも……」


って……そういえば、大淀もお揃いの服じゃないですか……。じゃあ提督は、執務室で毎日、大淀のスリットをガン見しているんじゃ……


明石「あの、提督? 大淀もお揃いの服ですよね? 」

提督(ギクッ)

提督「そ、そういえばそうだったな……あは……あはは……」

明石「ふぅ~ん……提督は、大淀のスリットをガン見しながら毎日お仕事してるんだぁ……。大淀、足綺麗ですもんねー……ふぅ~ん」

提督「そ、そんなわけないじゃないか……そんな、なぁ、神聖な執務室で……あは、あはは」

明石「ばか! 浮気者っ! 大淀に言いつけてやるーーー!」

提督「ごめ、ごめん~~~」



おまけもおわり



以上で完結となります。長い長いお話にお付き合いいただいてありがとうございました。

なお、筆者の前作が下記になります。もしよろしければお越しください。

【艦これ】加賀「最近、皆との距離が近い」
【艦これ】加賀「最近、皆との距離が近い」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1426947844/)

>>136さん
おお、筆者の処女作を御覧頂いて居たようで、感謝です。
設定としては、同時代の別鎮守府のお話、という形になっています。>>167でふれている「育成の鬼」の鎮守府が、修羅場鎮守府となっております。

修羅場鎮守府、加賀さん鎮守府、明石さん鎮守府、それから、次作予定の五月雨鎮守府の4人の提督で協力していることになっておりまして、この鎮守府でも電が龍驤さんバイザーをかぶっている理由は、多分次作でちょこっと出てくると思います。

とは言え、単独で楽しめるように書くのが大事かと思っているので、そのへんの設定には全然ふれていませんが!

次作も近日始めますので、その際は是非お越しください。


前作から入ったけど好きな作風なので修羅場鎮守府とやらも見てみたい


乙、ありがとうございます。励みになりまする~

>>179
ありがとうございます。一番最初に書いたものなので、書き方の作法もわからず、作風もずいぶんとあれですが、それでもよろしければ……。

【艦これ】俺の鎮守府が修羅場…?
【艦これ】俺の鎮守府が修羅場…? - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1425881502/)

こちらになります。


こちらのスレをご覧頂いた方々、本当にありがとうございました。

次のお話をはじめましたので、ご案内させていただきます。

【艦これ】 五月雨「パンダ提督とわたし」
【艦これ】 五月雨「パンダ提督とわたし」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1429113386/)

ただ……。明石さんと提督は、ずっと穏やかにラブラブでしたが、次のお話はシリアスよりで、砂糖分やコメディは少ないです。それでもよろしければお越しください(o_ _)oペコリ


なんと、このスレもまだ残っていましたか。せっかくですので誘導を貼っておきます。
この鎮守府のIF話、大淀さんのお話をはじめました。よろしければ是非お越しください。

大淀「駆逐艦の子たちはわたしが守ります!」
大淀「駆逐艦の子たちはわたしが守ります!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1430662266/)

html依頼出さないの?

>>193
完結直後に出したんですけど、抜けちゃってるかな? 念のためもう一回出しておきますね。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年06月13日 (月) 03:59:36   ID: y382v6Yo

何だこのかわいい明石は!?

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