Z-one「狭界、ですか」 (17)
Z-one「…ん」
Z「ここは…」
見渡す限りの草原で老人が目を覚ました
Z(私は、彼との決闘の後にモーメント内部へ…)
身を起こし、立ち上がった所でふと自分の身体を見下ろし気付く
Z「そういえば、生命維持装置もなし…ここは死後の世界という訳か。随分と殺風景ではありますが」
Z「少し、散策してみましょう。見知った顔に出会えるかもしれませんしね」
自嘲気味に微笑んだ後、老人は歩み始める。誰に告げるでもなく呟きながら
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Z「随分と歩いた筈ですが、一向に変わり映えしませんね」
いくらか足を進めた所でふと歩みを止めて独りごちるも、そのぼやきに返答はないまま老人は草原の上に身を投げ出す
ウトウトと意識を投げ出しかけたその時に、ふと老人の上へと影が伸びた
「失敬。ご老体、ここで何をしておいでかな?」
漸く出会えた他者のよく通る高い声に勢いよく半身を起こし、投げかけた視線の先には芝居がかった動作と共に首を傾げ帽子の羽根飾りを揺らす男装の麗人が佇んでいた
外見こそ華奢であるもののその身に纏う雰囲気は生半可なものでなく、老人は思わず表情を強張らせる
Z「ああ、すみません。気付いたら此処にいたもので…当てもなく彷徨い歩いていたところです」
その言葉を受けて麗人は口元を綻ばせた。老人の冷や汗などどこ吹く風で笑顔のままに言葉を紡ぐ
麗人「なるほど、大方何処かの世界から弾き飛ばされでもしたのだろう。此処はそういう場所だからね」
麗人「我輩は弱者の味方だ。歓迎しよう、ええと…」
出会ってから常に自信満々な麗人の表情が僅かに曇る。一瞬の間をおいて老人が口を開いた
Z「私はZ-oneと言います。貴方は…?」
麗人「はっはっは、我輩としたことが名乗りを忘れるとは…」
仰々しくお辞儀をした後、顔を上げて小さくウィンク。逐一芝居がかった所作を挟んで爽やかな笑みを見せてから麗人は高らかに宣言した
エリィ「我輩の名はエリィ=コルドン!この狭界に居を構える魔王の一柱だ。Z-one、以後よろしく頼む」
エリィ「はっはっは。どうした、Z-one?ただでさえ深いシワが増えるぞ」
立ち上がり、姿勢を正すも難しい顔をして考え込む老人を見て快活に笑いながら尋ねる
一方で老人は額に手を当て、女性の方を伺いつつ呟く
Z「すみません。ただでさえ理解出来ない状況の中で分からない単語が増えたもので」
Z「魔王、とは物語に出てくるような悪魔の王…という意味合いでいいのでしょうか?」
口に出す事すら躊躇うように恥じらいの混ざった様子で問うもエリィは満面の笑みで頷いた
しかし僅かばかりの冷たい視線に気付くと帽子のつばを掴んで顔を隠し首を振りながらZ-oneを制すように手の平を差し向ける
エリィ「いや、いい。そのような怪訝な顔をされるのも分かるさ。普通に生きていれば関わる事のない存在なのは確かだろう」
魔王といえばディアボロスだろう
エリィ「だが、実際に目の当たりにすればそうも言ってられまい?」
突き出していた手の平を翻すとその手には一枚のカード
羽根飾りを携えた幅広の帽子から吊り上げた口元だけを晒しながら軽く飛び上がり両の足で同時に地を鳴らして直立する
エリィ「では、とくとご覧あれ」
カードを宙へ放ってすぐに腰に携えた細剣を抜くと目にも止まらぬ速さで丁寧に切り刻んでいく
カードの切れ端が地面に落ちて、Z-oneが我に返るのと同時にエリィはしたり顔を浮かべ
エリィ「ここで終わらないのが我輩の我輩たる所以だ。それはキミにプレゼントしよう!」
エリィ「もっとも、老人…それも別世界から来たであろうキミに面白さが伝わるかは甚だ疑問が残るがね」
一枚ずつ表面を上にして草原の上に並んだ、紙切れだった筈の物体へ人差し指を逆さに向ける
Z-oneが釣られて視線を遣ると、とても馴染み深く…それでいて酷く懐かしく思える玩具があった
Z「M&W、この世界にも…」
手に取り拾い上げて中身を確認していくZ-oneを見据えて、エリィが口元に拳を運び隠す気もなく悪い笑みを晒す
エリィ「おや、キミの世界にもあったのかい?それは都合がいい」
Z「都合がいい、というと?」
訝しむ視線をエリィに向けるも応えは返らず、代わりに深紅の円盤を投げ渡される
エリィ「はっはっは!話は後だ、決闘者同士が出会って決闘を行わない道理もあるまい?悪いがまずは付き合ってもらおうか!」
Z「…いいでしょう」
溜息を吐くも嬉々として蒼い円盤を水平に構えたエリィにこれ以上の言葉は無意味と悟って投げ渡されたデュエルディスクを腕に装着し、見終わってすらいないデッキを挿入すると久方振りに何の柵もなく叫ぶ
二人「デュエル!」
エリィ LP8000
Z-one LP8000
エリィ「どうやら、女神は我輩に微笑みかけたようだ。先行させてもらおう!」
点灯するディスクを見据え口元を吊り上げるとデッキから五枚のカードを引き抜く
エリィ「我輩のターン、ドロースキップ」
Z「…む?ドローは行わないのですか?」
手札の一枚に指を運び嗜虐的な笑みを獲物へと差し向けていたエリィは、相手が口を挟んできたことで眉を下げて嘆かわしいとばかりに大きな溜息を吐く
エリィ「先攻のプレイヤーがドロー出来ないのは常識だろう。何を言っているんだか…続けてもいいかね?」
対するZ-oneも腑に落ちないと目を細めつつも手の平を返して進行を促す
エリィ「ごほん。では…改めて、我輩は魔法カード『ヒーローアライブ』を発動!」
エリィ LP8000→4000
E・HERO プリズマー A1700
エリィ「我輩は既にキミのデッキを知っている。こちらも全て晒け出さなければ不公平というものだろう、半分のライフはご愛嬌だ」
エリィ「我輩はE・HERO プリズマーの効果を発動。エクストラデッキのアルカナ ナイトジョーカーを公開することで…クイーンズ・ナイトを墓地へ送り、その名称を得る!」
エリィ「更に!手札からキングス・ナイトを召喚し、その効果によりデッキからジャックス・ナイトを特殊召喚する!」
キングス・ナイト A1600
ジャックス・ナイト A1900
エリィ「そして、魔法カード『融合』を発動…現れろ、アルカナ ナイトジョーカー!」
アルカナ ナイトジョーカー A3800
エリィ「カードを一枚伏せて我輩のターンは終了だ。Z-one、期待外れは止してくれよ?あまりに弱いと倒すのを躊躇ってしまうからね」
LP4000
手札1
○○ア○○
エリィ「ごほん。では…改めて、我輩は魔法カード『ヒーローアライブ』を発動!」
エリィ LP8000→4000
E・HERO プリズマー A1700
エリィ「我輩は既にキミのデッキを知っている。こちらも全て晒け出さなければ不公平というものだろう、半分のライフはご愛嬌だ」
エリィ「我輩はE・HERO プリズマーの効果を発動。エクストラデッキのアルカナ ナイトジョーカーを公開することで…クイーンズ・ナイトを墓地へ送り、その名称を得る!」
エリィ「更に!手札からキングス・ナイトを召喚し、その効果によりデッキからジャックス・ナイトを特殊召喚する!」
キングス・ナイト A1600
ジャックス・ナイト A1900
エリィ「そして、魔法カード『融合』を発動…現れろ、アルカナ ナイトジョーカー!」
アルカナ ナイトジョーカー A3800
エリィ「カードを一枚伏せて我輩のターンは終了だ。Z-one、期待外れは止してくれよ?あまりに弱いと倒すのを躊躇ってしまうからね」
LP4000
手札1
○○ア○○
□□□□■
Z「勝手な事を、しかし…むざむざと負ける気はないのも確かです」
Z「私のターン、ドロー!」
エリィ「この瞬間、リバースカード発動!『融合準備』!」
Z「早速出鼻を挫かれるとは…先ほどの意趣返し、と言ったところでしょうか?」
エリィ「はっはっは、さてねぇ」
エリィ「それよりも、我輩は二枚目の『アルカナ ナイトジョーカー』を公開する事でデッキの『キングス・ナイト』それから墓地の『融合』を手札に加えさせてもらおうか」
Z(魔法とモンスターを補充されましたか、これは最早対象に取れないと考えるべきでしょう)
Z「私は手札から、魔法カード『高等儀式術』を発動します」
エリィ「いいだろう!」
Z「…デッキから二枚の『仮面呪術師カースド・ギュラを墓地に送り…現れろ、『仮面魔獣マスクド・ヘルレイザー』!」
仮面魔獣マスクド・ヘルレイザー D1800
エリィ「嗚呼、その大きな図体を縮こめて身を守る姿…何とも保護欲をそそられる」
エリィ「だが、それだけではないのだろう?」
Z「いえ、私はこれでターンを終了します」
LP8000
手札4
○○○魔○
□□□□□
>>5 魔王様大好き、魔王勢の誰かに使わせたいけど最上級の闇属性とか色々なデッキの劣化になりそうで怖い
というかしえんの一言が異様に嬉しい。ありがと!!!!!!
エリィ「ドロー…」
エリィ「ふむ、手札事故を起こしているのかな?そうであれば手早く幕引きと行こう」
エリィ「我輩は『思い出のブランコ』を発動し、墓地に眠る『クイーンズ・ナイト』を復活させる」
クイーンズ・ナイト A1500
エリィ「そして、『キングス・ナイト』を召喚し二体目の『ジャックス・ナイト』が駆けつける!」
キングス・ナイト A1600
ジャックス・ナイト A1900
Z-one「…」
エリィ「二体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!現れろ、No.44 白天馬スカイ・ペガサス!!」
白天馬スカイ・ペガサス A1800
Z-one「同じレベルのモンスターを用いた召喚法、ですか」
Z-one(なるほど、このカードの使い道はそういう事でしたか)
エリィ「その様子ではエクシーズも知らなかったと見える、が…キミのデッキにも入っているのでな。身をもって覚えるといい!」
エリィ「スカイ・ペガサスのオーバーレイ・ユニットを一つ取り除くことで、相手モンスターを一体破壊する!」
エリィ「ライフを1000払う事で、無効にすることが出来るがね」
Z-one「当然、無効にします」
Z-one LP8000→7000
エリィ「バトルだ!『アルカナ ナイトジョーカー』で『仮面魔獣マスクド・ヘルレイザー』を攻撃!」
アルカナA3800→ヘルレイザーD1800
Z-one「この瞬間、場の『マスクド・ヘルレイザー』と手札の『エッジインプ・シザー』を墓地に送り…『ダークネス・ネオスフィア』を特殊召喚する!」
ダークネス・ネオスフィア A4000
エリィ「はっはっは!勝負を諦めていないのは分かっていたが、これは迂闊だった。ターンエンドだ」
LP4000
手札2
○ペアジ○
□□□□□
Z-one「ドロー!」
Z-one「まずはそちらの、厄介なカードから倒すとしましょう」
Z-one「バトル!『ダークネス・ネオスフィア』で『スカイ・ペガサス』を攻撃!」
ネオスフィアA4000→ペガサスA1800
エリィ「ぐ、ぅ…!」 LP4000→1800
圧倒的な力の籠った攻撃による砂埃の中に一対、純白の翼が雄々しく羽ばたく
Z-one「…む?」
エリィ「No.は、No.以外との戦闘によって破壊される事はない、これも重要な事だが説明する手間が省けたな」
Z-one「…他に出来ることはありません。ターンエンドです」
LP7000
手札3
○○○ダ○
□□□□□
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