花陽「大好きですっ!」 (71)

私がいつ恋をしたか、それは、そう遠くないの

私は、アイドルになりたかった

それは、思ったより早く実現した

高校に入って、運命の出会いをして

その出会いの影には、ある存在があった

憧れ、A-RISE

スクールアイドルにおいて、常にトップに君臨し続けている

アイドル好きでありアイドル志望である私にとっては、お手本であり、雲の上の存在だった

でも、私は雲の上に行くことができた

それは、背中を押してくれた凛ちゃんと真姫ちゃんをはじめとする

μ'sのみんなのおかげ

そんなμ'sのみんなは、メンバー同士でのお付き合いが当たり前

穂乃果ちゃんとことりちゃん

絵里ちゃんと希ちゃん

にこちゃんと真姫ちゃん

海未ちゃんと凛ちゃん

私は、メンバーとはそういう関係にはならなかった

みんながくっついていて、私だけ

寂しくなんかない

それでも…私にも、恋人が欲しかった

それは、年頃の女の子なら誰だって思うはず

でも、私には好きな人はいなかった

あの人と知り合うまでは

あの人と…

屋上

海未「さて…」

海未「年が明けました、本戦に向かってスパートをかけていきますよ」

海未「少し厳しくなりますが、頑張りましょう」

μ's「はい!」



海未「ワン、ツー、ワン、ツー」

海未「穂乃果、そこはそうではないですよ!」

海未「真姫、少し急ぎ気味です!」

海未「花陽、少しキレが足りません!」

花陽「あの…」

海未「なんです?」

花陽「ここの振り付け、少し変えてみた方が…」

海未「というと」

花陽「もっとこう…こうやって」

穂乃果「わ…花陽ちゃんエレガント」

にこ「この振り付けには私も賛成だわ」

絵里「確かにこっちの方が目を引くわね」

海未「なるほど…わかりました」

ことり「花陽ちゃんが自分で考えたの?」

花陽「え…いや…その…」

希「隠し事してるって顔やな」

花陽「し、してない」

凛「かよちん、それ、嘘ついてるときの癖でしょ?」

花陽「えっ!?」

凛「指を合わせて」

花陽「凛ちゃん…覚えてるの?」

凛「…あれ」

希「本当に癖なん?花陽ちゃん」

花陽「うん、だって、前、凛ちゃんに教えられたんだよ」

花陽「私は嘘ついてるとき、指を合わせるって」

真姫「これって」

絵里「もしかしてだけど」

にこ「少し、記憶が戻ってきたってこと?」

花陽「凛ちゃん…」ブワッ

凛「あはは、本当はどうなのか、わからないや」

凛「でも、そうだとしたら…嬉しいね」

穂乃果「凛ちゃん…!」

ことり「やったね!」

海未「…」

凛「…!」

凛「海未さん、久しぶりに、泣きそうな顔になってますよ」

海未「い、いえ、別に泣きそうになんか…」

凛「もしかしたら、海未さんとの触れ合いも、いくつか思い出すかも」

凛「そしたら…」

海未「…はい!」ニコッ

絵里「泣き笑い…ハラショー」

凛「それよりかよちん、さっきの続きだけど」

花陽「へっ?」

凛「振り付け、自分で考えたんじゃないんでしょ?」

花陽「いや…」

希「もう嘘だってわかっとるよ」

にこ「凛のおかげでね」

花陽「う…なんでもいいでしょ!」

穂乃果「でもでもー、教えてもらったってことでしょ?」

ことり「誰なのかな〜?」

花陽「もう!練習進めよ!」

真姫「そうね、この話題引きずってちゃ、止まりっぱなしよ」

絵里「ええ、時間も限られているんだし」

海未「そうですね、では、花陽の提案した振り付けを練習してみましょうか」

二週間前、元旦

花陽「誰か助けてー!」

ツバサ「あら、お一人で」

花陽「!」

あんじゅ「お仲間はどうなされたのかしら?」

花陽「い、いえ、私がはぐれちゃっただけです!」

英玲奈「人が多いから、気をつけて」

花陽「すみません、ありがとうございます…でも、どうしてまた戻ってきたんですか?」

あんじゅ「ツバサが、どうしても穂乃果さんとちゃんと話がしたいって」

英玲奈「ひとりじゃ少し気が引ける、なんて言って、私たちも付き合わされているわけだ」

ツバサ「余計なこと言わないで」

花陽「そ、そうですか…」

英玲奈「向こうにいるんじゃないか?」

あんじゅ「ほら、行くなら早く」

ツバサ「ええ」

英玲奈「私はここで待ってる」

ツバサ「わかったわ、ほら、小泉さんも一緒に行けば合流できるんじゃない?」

花陽「はい」

英玲奈「待て」

ツバサ「?」

花陽「…?」

英玲奈「待ってる間、私はこの子と話をしたい」

花陽「えっ」

ツバサ「そう、じゃあ、とりあえずここを動かないでいて」

花陽「えっ、えっ」

あんじゅ「じゃね」

花陽「ちょ、ちょっと…」

花陽「…」

花陽「…」チラッ

英玲奈「…」ジーッ

花陽「っ!」

英玲奈「おっと、驚かせてしまったか」

花陽「あっいえっごめんなさいっ!」

英玲奈「突然だが、ひとつ質問をしてもいいか」

花陽「は、はい…」

英玲奈「君が、アイドルをやる理由はなんだ」

花陽「アイドルをやる理由…?」

英玲奈「そうだ」

花陽「えっと…小さいときからの、夢だったから、です」

英玲奈「夢?」

花陽「はい、夢でした」

花陽「その夢を、みんなに叶えてもらいました」

英玲奈「…そうか」

花陽「あの…逆に質問してもいいですか?」

英玲奈「?」

花陽「英玲奈さんは、どういう理由で」

英玲奈「…それは」

英玲奈「もう、忘れてしまった」

花陽「えっ」

英玲奈「A-RISEとして活動するために、他のことを捨てて、必死になって練習をして」

英玲奈「いざトップになったら、常に光を浴びて、無敵であることを約束しなければならない」

英玲奈「もう、疲れてしまって…何が私の源だったのかなんて、忘れてしまった」

花陽「…」

英玲奈「まあ、終いには君たちにトップの座さえ奪われてしまって」

英玲奈「もう精神はガタガタだよ」

花陽「え…」

英玲奈「…すまない、変な話をしてしまって」

花陽「い、いえ…その…なんか、ごめんなさい」

英玲奈「謝らないでくれ」

花陽「はい…」

英玲奈「君の瞳は輝いている」

英玲奈「アイドルであることに、誇りと幸せを感じている」

英玲奈「その瞳が、今は、ただ羨ましい」

花陽「そんな…」

英玲奈「何があっても忘れるな、その気持ちを」

英玲奈「私のようになってはいけない」

花陽「はい…」

英玲奈「…どうやら全員が戻ってきたようだな」

花陽「あのっ!」

英玲奈「?」

花陽「よ、よかったら…」



この前勧められた振り付け、提案したら採用されました

アドバイス、ありがとうございます

花陽「っと…」

花陽「んーっ!」ドサッ

花陽「やっぱり緊張するなあ、直接顔合わせてるわけじゃないのに…」

ブーッブーッ

花陽「あれ、はや…」

花陽「…」

花陽「やっぱり、一番驚いてるのは、凛ちゃん自身だったんだね…」

大丈夫、戸惑うのもわかるけど、今は素直に喜んでみよう?

花陽「っと」

昼休み、教室

花陽「ねえ真姫ちゃん」

真姫「なに?」

花陽「にこちゃんにはまだ告白してないの?」

真姫「」

花陽「あれ…まだ?」

真姫「そ、そうね、まだ」

花陽「そっか」

真姫「…」

花陽「やっぱり、怖い?」

真姫「にこちゃんは、女の子同士は乗り気じゃないのかな、なんても思うのよ」

真姫「私が告白しても、引かれるだけなのかしら」

花陽「…でも」

真姫「でも?」

花陽「にこちゃん、あと少しでいなくなっちゃうんだよ?」

真姫「…」

花陽「だから…後悔だけはしないようにね」

花陽「今すぐとは言わないから」

真姫「ええ、ありがとう、頑張ってみるわ」

花陽「うん!」

真姫「ところで、花陽には好きな人はいないの?」

花陽「話逸らした」

真姫「違うわよ!本気の質問よ!」

花陽「えへへ、うーん…いないかな」

真姫「そう…気になる人とかもいないの?」

花陽「うん」

真姫「…少し残念」

花陽「どうして?」

真姫「あなたには、幸せになってほしいのよ」

花陽「?」

真姫「ことりの告白も見届けてるし、凛の後押しもしたでしょ?」

真姫「当の凛は覚えてないけれど…」

真姫「だから…」

花陽「ありがとう、真姫ちゃん」

花陽「いい人、見つかるといいな」

真姫「ええ…」

ブーッブーッ

花陽「…」スッ

花陽「…あ、え…?」

真姫「どうしたの?」

花陽「あ、いや…なんでもないよ」

真姫「そう」

花陽「…」

真姫「…?」

屋上

海未「今日はこれで終わりにしましょう、明日、明後日はゆっくり休んでください」

穂乃果「海未ちゃん気合い入りすぎ!」

ことり「ヘトヘトだよ〜」

真姫「花陽、明日、ちょっとお出かけしない?」

花陽「えっと…ごめんね、先に用事が入っちゃってて…明後日ならいいよ」

真姫「明後日は私に用事が入ってるのよ…」

花陽「そっか、ごめんね」

真姫「大丈夫よ、頑張るわ」

花陽「えっ!?頑張るって、もしかして…」

真姫「…」

にこ「真姫ちゃん」

真姫「なあに?」

にこ「誘ってくれてありがと」

真姫「ええ」

にこ「最近勉強ばっかりで疲れてたのよ」

真姫「そう」

花陽「…」ニコッ

にこ「?」

花陽「頑張れ!」

翌日

花陽「…」ソワソワ

花陽「早すぎたかな…」

花陽「うーっ…緊張する…」

英玲奈「…」ポンポン

花陽「ひゃっ!?」ビクッ

英玲奈「また、驚かせてしまったな」

花陽「こ、こんにちは…」



英玲奈「すまないな、付き合ってもらって」

花陽「いえ、いつもアドバイスをもらっているので」

花陽「それより…私なんかでいいんですか?服選びの相手が…」

英玲奈「君はアイドルをよく見ている」

英玲奈「私もアイドルだ、君ならきっと、私に似合う服を選んでくれると思う」

花陽「はい…ありがとうございます」

英玲奈「では、早速」

花陽「は、はい!」

英玲奈「私を、コーディネートしてくれ」

花陽「…」ゴクッ

花陽「そうですね…」



花陽「…」

花陽「大丈夫…なはず」

英玲奈「よし」

花陽「!」

英玲奈「では」

花陽「ど、どうぞ!」

シャーッ

花陽「わ…!」

英玲奈「どうだ」

花陽「カッコいいです!」

英玲奈「うむ」

花陽「英玲奈さんはスタイルがいいから、ズボン、きっと似合うって思いました!」

英玲奈「そうだな、普段から履く方ではある」

花陽「やっぱり!」

英玲奈「カッコいい、か…」

英玲奈「そういう言葉が似合いそうな人、お仲間にもいるんじゃないか?」

花陽「そうですね、海未ちゃんとか、絵里ちゃんとか…」

英玲奈「女子受けは意外と大事だからな」

花陽「受けてるのが身近な人すぎるけど…」

英玲奈「ん?」

花陽「あ、いえ、なんでもないです!」

英玲奈「そうか…そうだ」

英玲奈「ついでだから、私にも君のコーディネートをさせてくれ」

花陽「ええっ!?いや…私は」

英玲奈「嫌と言ってもやる」

花陽「えっと…じゃあ、お願いします…」



花陽「いきます…」

英玲奈「よし」

シャーッ

花陽「…」

英玲奈「やはり、履いてみるものだな」

花陽「ちょ、ちょっと短すぎる気がします…///」

英玲奈「いや、その肉づきのいい脚は見せなきゃ損だと思う」

花陽「う…///」

英玲奈「君にはとても愛嬌がある」

英玲奈「ファンもきっと多いはずだ」

英玲奈「だから、もう少し背伸びしてみるのもいいと思う」

花陽「はあ…」

英玲奈「少なくとも私は、君のことが好きだ」

花陽「!?」

英玲奈「どうした?」

花陽「い、いえっ///」

花陽「好き…とか…」

喫茶店

花陽「オシャレです…」

英玲奈「学校帰りに、よく来る」

花陽「緊張します」

英玲奈「力を抜く場所だ、リラックスしてくれ」

花陽「はい」

英玲奈「最近どうだ、練習の方は」

花陽「はい、海未ちゃんが、はりきりすぎちゃって」

花陽「新年早々みんなお疲れ気味です」

英玲奈「頑張るのは大事だが、無理はするな」

花陽「はい、ありがとうございます!」

英玲奈「…」

花陽「…?」

英玲奈「私と話している君の目は…やはり輝いている」

英玲奈「私は、その瞳が…好きだ」

花陽「へっ!?」

英玲奈「…」

花陽「…///」

英玲奈「君の…」

花陽「あのっ!」

英玲奈「?」

花陽「その…」

花陽「な、名前で…呼んで…ほしいです」

英玲奈「…小泉…いや」

英玲奈「…花陽」

花陽「…はい」

英玲奈「花陽…」

英玲奈「花陽のアイドルへの純粋な気持ち」

英玲奈「私も…思い出したい」

花陽「…」

英玲奈「花陽とより多く触れ合えば」

英玲奈「思い出せるかもしれないな」

花陽「そう、ですか…?」

英玲奈「きっと」



英玲奈「今日はありがとう」

花陽「いえ、こちらこそ!」

英玲奈「では…また会おう」

花陽「はい!また」

昼休み、教室

花陽「真姫ちゃん、お昼食べよ?」

真姫「ええ…今日は部室にしましょ?」

花陽「部室?」

真姫「ええ、花陽をひとりにはしたくはないの」

花陽「…!」

真姫「だから…」

花陽「うん!」

部室

ガラッ

にこ「お、来たわね」

真姫「お待たせ」

花陽「ごめんね、本来なら二人きりが」

真姫「そ、そんなことないわよ!?」

にこ「なーにー?告白したくせにそんなことないって?」

真姫「ベ、ベツニ!?」

にこ「でも、花陽のことは、私も同じ意見だし」

花陽「うん、ありがとう」

放課後、屋上

海未「休憩です、水分はしっかりとってください」

真姫「にこちゃん、私の水とってくれない?」

にこ「はーい、ちょっと待ってね」

真姫「…えっ!?」

にこ「ぷは…はい」

真姫「ちょっと!なんで飲んでから渡すの!?」

にこ「にこが口つけたものは、嫌?」

真姫「そ、そんなわけないじゃない!」

にこ「ならいいじゃない、真姫ちゃんは、にこのことが大好きで大好きで大好きで」

真姫「う、うるさい!」

凛「真姫ちゃん、ついに告白したんだ」

真姫「凛!」

凛「にゃっ!ご、ごめんなさい…」

海未「結果は…見ればわかりますかね」

にこ「真姫ちゃあん」ギュッ

真姫「…///」

希「あらあら」

絵里「大成功、といったところかしら」

穂乃果「ひゅーひゅー」

花陽「…」

ことり「花陽ちゃん?」

花陽「?」

ことり「その…花陽ちゃんも」

花陽「大丈夫、寂しくなんかないよ」

ことり「本当に?」

花陽「うん」

ことり「…」

花陽「でも、気になる人はいる…かも」

ことり「!」

帰り道

にこ「でね、真姫ちゃんが俯きながら」

花陽「うんうん」

真姫「…」カミノケクルクル

にこ「好きですって」

花陽「そこは敬語なんだ」

真姫「いいでしょ!」

にこ「で、私はというと」

花陽「というと?」

にこ「…」

花陽「?」

真姫「私が顔を上げたら…泣いてたの」

花陽「えっ!?」

にこ「…嬉しかったのよ」

にこ「真姫ちゃんなら、いい男だって捕まえられそうなのに」

にこ「私なんかを好きになってくれたから」

花陽「へえ…」

にこ「思い出しただけで恥ずかしいわね…」

真姫「告白されて泣くなんて思ってなかったわよ」

花陽「二人とも、そういうときは弱いんだね」

にこ「恋するときは誰だって乙女よ」

花陽「あはは、そうだね」

にこ「アイドルは恋愛しない、けど」

にこ「私たちは、学生であることが売りだし」

にこ「人並みに恋しても、許してもらえるかな」

にこ「それに、男が相手よりは、女の子が相手の方が、ね」

花陽「だって、真姫ちゃん」

真姫「最初からそう思ってたのね、にこちゃん」

にこ「もちろんよ、男とくっついたらそれこそ終わりよ」

花陽「お幸せにね」

にこ「…あなたは」

花陽「ん?」

にこ「花陽は…幸せに…」

花陽「みんな、私の心配してくれるね」

にこ「だって」

花陽「…」



英玲奈「よくこんなに集めたな」

花陽「えへへ」

英玲奈「…これは私たちだな」

花陽「はい!A-RISEさんのもたくさんあります!」

英玲奈「なるほど…夢だった、というだけある」

英玲奈「熱が伝わってくるな」

花陽「今、お茶を持ってきますね!」

英玲奈「ああ、ありがとう」



英玲奈「これは?」

花陽「発売日、並んで手に入れたんですよ」

英玲奈「これも…」

花陽「自慢の品です!」

英玲奈「うむ」

英玲奈「…」

花陽「どうしました?」

英玲奈「いい香りだな」

花陽「!?」

英玲奈「この部屋は、いい香りがする」

花陽「と、突然何を…」

英玲奈「そういえば…」

花陽「はい?」

英玲奈「…」クンクン

花陽「ひえっ!?」

英玲奈「やはり、花陽からも、同じ香りがする」

花陽「ち、近い…///」

英玲奈「ああ…近いな」

花陽「ちょ、ちょっと…///」

英玲奈「この香りも…好きだ」

花陽「ひう…///」

英玲奈「花陽に会うたびに、どこか惹かれている」

花陽「…///」

英玲奈「顔を上げてくれ」

花陽「は、はい///」

英玲奈「…」ジーッ

花陽「…っ///」

英玲奈「…」

花陽「…///」ドキドキ

英玲奈「花陽…」

花陽「…///」ドキドキドキドキ

花陽「…ダメっ!」

英玲奈「あ…」

花陽「ごめんなさい…ちょっと…」

英玲奈「いや、こちらこそすまない」

英玲奈「花陽の瞳を、見つめていたかった」

花陽「そ、そんなこと言わないで…///」

花陽「…好きになっちゃうよ…」ボソッ



花陽「…」ボーッ

凛「…よちん」

花陽「…」

凛「かよ…ん」

花陽「…」

凛「かよちん!」

花陽「ひゃっ!?」

凛「かよちん、あてられてるよ」

花陽「えっ!?あっ、えっと…ごめんなさい、もう一回お願いします…」

凛「まったく…」

真姫「…?」

昼休み

花陽「はあ…」

真姫「どうしたの?何か悩みでもあるの?」

花陽「…そうかも」

真姫「聞くわよ、部室で」

花陽「うん…ありがとう」



真姫「で、どうしたのよ」

花陽「ちょっと言いにくいな…」

にこ「隠し事はナシよ?」

花陽「うん、わかった…」

真姫「さ、話して…」

花陽「私…好きな人ができたかも」

にこ「!?」

真姫「ついに!?」

花陽「うん…それで授業に集中できなかった…なんて恥ずかしいよ」

にこ「うーん…恋する乙女ね」

花陽「だから、悩みというか…すぐにはどうにもならないよ」

真姫「そう…一応訊くけど、どんな人なの?」

花陽「えっとね…」

花陽「背が高くて、美形でかっこよくて、とっても尊敬できて…」

にこ「超人ね」

真姫「そんな人に惚れちゃったの?」

花陽「私を…見つめてくれるの」

にこ「えっ」

真姫「待ってもう一回言って」

花陽「だから、私のことを、見つめてくれるの」

にこ「それは…」

真姫「脈ありってやつじゃない?」

花陽「…そう?」

にこ「そうよ!大ありよ!」

真姫「見つめてくれるって…」

花陽「そうかな…」

にこ「どのくらい仲がいいのよ!」

花陽「えっと…家に来たよ」

真姫「それは…」

にこ「予想の上だわ」

真姫「友達、なの?」

花陽「言われてみると…どうなのかな」

にこ「とりあえず、するだけするのよ、告白!」

真姫「成功する確率は高いわ!」

花陽「う、うん、ありがとう」

にこ「うー、ついに、花陽が…」

真姫「感慨深いわね…」

花陽「まだ告白してないし成功もしてない…でも」

花陽「恋って辛いね、胸が苦しくて」

にこ「…!」

真姫「花陽…」

放課後、屋上

凛「そうだったんだ…」

花陽「うん」

凛「苦しいのは、わかるよ」

凛「凛も、海未さんにキスされた後は、苦しくて苦しくてたまらなかった」

凛「でも、凛は、最初から海未さんと恋人だったから、ね」

花陽「そうだね…ちなみに」

凛「?」

花陽「凛ちゃんが記憶を無くす前のときはね」

凛「!」

花陽「海未ちゃんと凛ちゃん、両方の気持ちを知っていたから」

花陽「安心して見てられたんだ」

花陽「凛ちゃんが告白しようとしたけどできなくて…」

花陽「海未ちゃんも凛ちゃんのことが好きだって聞いたから、海未ちゃんに、凛ちゃんに告白してあげてって」

凛「そうだったんだ…」

花陽「うん、二人とも、本当に幸せそうな顔だったよ」

凛「かよちんも、そんな顔になれるといいな」

花陽「うん、ありがとう、凛ちゃん」

海未「では、再開しますよ!」

花陽「うんしょ」

凛「かよちん…」

花陽「?」

凛「きっと、伝わるよ」

花陽「…うん!」



プルルルルル…

花陽「あ、もしもし」

ことり「もしもし、どうしたの?」

花陽「ちょっと、相談したくて…」

ことり「ふむふむ、なになに?」

花陽「告白したい相手がいるの」

ことり「好きな人ができたんだね」

花陽「うん」

ことり「それで…聞きたいことは?」

花陽「告白する勇気が…まだ持てなくて」

ことり「…」

花陽「ことりちゃんが告白するの、私、見てるから」

花陽「告白するときの、気持ちというか…」

花陽「心構えとか聞けるかなって」

ことり「なるほど」

花陽「何か…ないかな」

ことり「…私もね、最初は迷って迷って」

ことり「今の関係を越えていいのか」

ことり「やっぱりしまっておくべき気待ちなんじゃないかって」

ことり「もし、拒否されたら、もう二度と同じ関係には戻れないかもしれないでしょ?」

ことり「だから、私も諦めようと思ってた」

ことり「でもね…」

ことり「やっぱり、後悔はしたくないでしょ?」

花陽「…うん」

ことり「それは花陽ちゃんだってわかってるはずだよ」

花陽「うん」

ことり「好きな人に好きって言う、それで何もかも壊れちゃうこともある」

ことり「でも…」

ことり「幸せになれるかもしれない」

ことり「その可能性を、信じた分だけ」

ことり「神様は、味方してくれるかも」

花陽「…うん」

ことり「ごめんね、あんまり役には立たない話だったかな」

花陽「ううん、大丈夫、ありがとう」

ことり「頑張ってね!花陽ちゃんには…」

ことり「幸せになってほしいの」

花陽「…うん、頑張る」



喫茶店

絵里「もうすぐ終わりね」

希「うん」

絵里「三年間…濃かったわ」

希「特にこの一年は、ね?」

絵里「そうね、あの子たちと出会えて本当によかったわ」

絵里「それも、あなたのおかげよ、希」

希「…そう?」

絵里「あなたはいつも、私のそばにいてくれたわ」

絵里「私は時々、周りが見えなくなることがあるけれど」

絵里「そういうときはいつも、希が連れ戻してくれる」

絵里「あなたに支えられて、生きているのよ」

希「…うん」

希「ウチも、えりちに出会えてよかった」

希「なによりも、先に惚れたのは…ウチやし」

希「ウチだってえりちに支えられとるで?」

希「ウチはひとりで抱え込みやすいってみんなに言われるけど」

希「そういうとき、迷いなく頼れるのは」

希「えりちだけなんよ」

絵里「そう言ってもらえると嬉しいわ」

希「本当なんよ、感謝してる」

絵里「これからも…私のそばにいてくれる?」

希「当たり前やん」

希「ウチの隣は、えりちしかありえへん」

希「どこまでもついていくよ」

絵里「私もよ…愛してるわ、希」

希「…ウチも」

絵里「なんだか恥ずかしいわね」

希「うん。あれ」

絵里「どうしたの?」

希「いや…あれ、花陽ちゃんじゃないかな」

絵里「えっ?」クルッ

絵里「あら、本当ね」

希「こう言っては悪いけど、こういうお店、普段は来なさそうだよね」

絵里「ええ、もしかして誰かと待ち合わせとか?」

希「そうかも、おーい」

花陽「!?」

希「あれ…」

花陽「っ!」ダッ

絵里「逃げたわよ?」

希「なんやろ」



花陽「二人がいるなんて…知らなかったよ」

英玲奈「中で待ち合わせじゃなかったか?」

花陽「!」

花陽「こ、こんにちは…」

英玲奈「いいのか?中に入らなくて」

花陽「えっと…」ギュッ

英玲奈「あ…手…」

花陽「っ!」タッ

英玲奈「おい、ちょ、走らなくても」

公園

穂乃果「暗くなってきたね」

ことり「うん」

穂乃果「小さいときも、よく暗くなるまで遊んだよね、ここで」

ことり「そうだね」

穂乃果「海未ちゃんと出会ったのも、ここだよね」

ことり「あはは、そういえばそうだったなあ」

穂乃果「…海未ちゃん」

ことり「…」

穂乃果「少し…」

ことり「だめ」

穂乃果「…」

ことり「私の告白から始まったことだから…」

ことり「辛いのは…」

穂乃果「ごめんね、変な話しそうになって」

ことり「ううん、いいの…」

穂乃果「今は今で、幸せなのかな」

ことり「…」

ことり「ばか」

穂乃果「む」

ことり「せっかくの…」

穂乃果「…こっち向いて」

ことり「え?」

穂乃果「いいから」

ことり「うん…ふっ!?」

穂乃果「ん…」

ことり「…///」

穂乃果「…これで許してね」

ことり「ばか!ばか!///」

穂乃果「えへへ〜」

花陽「はあ…はあ…」

英玲奈「急に走り出して何かと」

花陽「ごめんなさい…」

英玲奈「いいのか?外で」

花陽「…はい、お話はここでもできますから」

英玲奈「そうか…でも暗くなってきたぞ」

花陽「その方が…」

英玲奈「ん?」

花陽「いえ、なんでもないです」

英玲奈「それで…今日は何の用があるんだ」

花陽「…あのっ」

穂乃果「でさー」

花陽「…!?」

英玲奈「今度はどうした」

花陽「や、やっぱりここもダメです!」ギュッ

英玲奈「あ、え?」

花陽「行きましょう!」タッ

英玲奈「ちょ…」



花陽「はあ…はあ…」

英玲奈「どうしたんださっきから」

花陽「ちょ、ちょっと…いてもらいたくない人が」

英玲奈「いてもらいたくない人?」

花陽「な、なんでもないです!」

英玲奈「しかし、もう真っ暗だぞ」

花陽「う…」

英玲奈「こんな道端で話というのも」

花陽「いいんです」

英玲奈「?」

花陽「場所なんて、関係のない話だから」

英玲奈「…」

花陽「あの…」

花陽「今から言うことは、少し、英玲奈さんを驚かせてしまうかもしれません」

花陽「もしかしたら、私のことを…」

英玲奈「それはない」

花陽「えっ?」

英玲奈「今の私が、花陽のことを悪く思うことなんて…ありえない」

英玲奈「だから、なんでも言ってくれ」

花陽「…はい」

花陽「私は…」

花陽「…」

英玲奈「どうした?」

花陽「っ…」

英玲奈「…」

花陽「花陽は…」

花陽「…あなたのことが…英玲奈さんのことが…」

花陽「だ…だ…」

花陽「大好きですっ!」

英玲奈「…!」

花陽「…っ!」

英玲奈「花陽…」

花陽「私の、恋人になってくださいっ!」

英玲奈「…」

花陽「…」

英玲奈「…顔を上げてくれ」

花陽「…はい」

英玲奈「ちゅっ」

花陽「!?」

英玲奈「…」

花陽「えっええっえっ///」

英玲奈「私も、ずっと…」

英玲奈「始めて話したときから…」

英玲奈「花陽のことが好きだった」

花陽「本当ですか…?///」

英玲奈「…本当だ」

花陽「…英玲奈さん」

英玲奈「…」

花陽「このキス…少し、しょっぱかったです」

英玲奈「!?」

花陽「自分では、気づいてなかったんですね?」

英玲奈「…今は、今だけは」ギュッ

花陽「きゃっ」

英玲奈「弱い私でいさせてくれ」

花陽「はい」

英玲奈「ありがとう」

花陽「好きです、英玲奈さん」

英玲奈「好きだ、花陽」

花陽「…!?」

英玲奈「どうした?」

真姫「…!」

花陽「ま…真姫ちゃん…いつから…」

真姫「私は何も見てないわ!」ダッ

花陽「あ、ちょっと!」

真姫「さよならっ!」

英玲奈「…」

花陽「はわわわわわ…」

英玲奈「見られてしまったからにはしょうがない」

花陽「でも…」

英玲奈「今は…この幸せを…んっ」

花陽「ん…っ///」

英玲奈「…」

花陽「…///」

英玲奈「っ…」

花陽「や、やっぱりここは恥ずかしいです///」

英玲奈「それなら、私の大好きな花陽の家に上げてもらおうかな」

花陽「…はい、喜んで」

英玲奈さんに出会って

恋をして

私は、みんなと同じように

恋人ができて…

幸せになりました

好きな人と一緒にいるって

どうして、こんなに幸せなのかな

話を聞いてくれたり

アドバイスをくれたみんなも

大好きだよ

そして

時は流れて



ガチャッ

凛「ただいまー、遅くなってごめんなさい!」

凛「かよちんがさー、もうちょっとだけいてって何回も何回も…」

凛「あれ、いないのかな…」

凛「あ、いた」

海未「すぅ…すぅ…」

凛「置き手紙だ」

凛「今日もえりちに飲まされて潰れちゃったから、家まで送ったよ」

凛「…ありがと、希さん」

凛「せっかくほむまん買ってきたのに、酔いつぶれちゃってるなら仕方ないか…」

凛「にこさんのサイン、飾られてたなぁ」

凛「久しぶりだったけど、お二人は今も元気だったよ」

海未「ふにゅ…まき…えりをとめてください…」

凛「ありゃ、また三人と希さんで飲んだんだ」

海未「わたしはもうむりです…」

凛「災難だったね…」

海未「ん…あれ…りん?」

凛「起きた?」

海未「りーんー」

凛「あ、ダメだよ、寝てて」

海未「わたしと…けっこんしてください…」

凛「…酔いつぶれながらプロポーズなんて、らしくないにゃ」

凛「でも…ありがと」

凛「結婚、しよ」

おしまい

毎度のごとく最後は雑かなあ

今まで読んでくださりありがとうございました

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