モバP「イカれた闇鍋メンバー紹介するぜ!」 (25)

もう既に誰か書いてそうですが、モバマスキャラで闇鍋パーティする話です。

※登場人物は双葉杏・大原みちる・椎名法子・浅利七海・星輝子・
 橘ありす・柊志乃・村上巴・三村かな子・佐久間まゆ・姫川友紀・難波笑美の12人
※まゆの愛が重めです

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事務所のアイドルたちは、いつも食費と睡眠時間と寿命を削って

仕事をしているプロデューサーのために、ある誕生日サプライズを企画した。

アイドルたちが持ち寄った食材をグツグツと似た鍋に放り込み

それをプロデューサーに食べてもらおうという企画だ。

彼は常日頃から偏食気味の個性豊かなメンバーに囲まれていて

しばしば一緒に食事を摂っていた。

「志乃さんたちの極端な食生活に付き合ってばかりいますから、もう胃が丈夫になって仕方ない。
 腹の中で全部一緒になるから、もう食べられないもんなんてないですよ」

「へー、でもそんな事言って、いざとなったらどうせ食べ残したりするんでしょう?」

朝っぱらからワインを浴びるように呑んでいる志乃の言葉をプロデューサーは笑い飛ばした。

「そんなもったいない事する訳ありませんよ! タダなら何でも喜んで食べてやります。
 年中空腹というスパイス持ってるますからね、ハッハッハッ!」

プロデューサーは日々そのような事をアイドルたちにほざいていたため

それなら食べてもらおうじゃないかと闇鍋パーティを開催する事にした。

しかしスケジュール管理をしているプロデューサーに黙って

パーティーの準備をするのは骨が折れる。

結局何人かのアイドルたちはライブや営業を理由に当日来られなくなり

遅れてくる数名以外、七人で鍋パーティーの買い出しと準備を済ませる事になった。

「はぁ、はぁ、遅くなりました!」

このメンバーに加えて、仕事がやっと済んだ佐久間まゆが入ってきた。

「まゆさん、ギリギリセーフ!」

「ふふ、良かったです!」

法子の言葉にまゆは優しげに答えた。

急いできたのか彼女の体は汗ばんでいて、少し息が荒かった。

「後はプロデューサーだけど……」

「プロデューサーなら来てますよ」

呼吸を整えながらまゆは言った。

「あっ、もうこのマンションに着いてるのね」

「なら先に煮込んですぐ食べられるようにしておこうよ!」

みちるの声掛けで具材をあらかじめ煮ておこうと、彼女たち八人は部屋の明かりを消した。

「いっくよー! せーのっ!」

志乃と法子の声掛けによって、闇の中で一斉に具材が鍋に投入された。

ドボドボ、ボッチャンボッチャン、トクトクトクトク、モッサァー、ゴツン、ポトポト
ニュルニュルニュル、プカプカ、ゴクゴク、ドサドサ、サーッ。

無慈悲な電気は依然として部屋に通っていたため
志乃がスイッチをつけるとパッと辺りが明るくなった。
眼前に転がっているものが不可解な場合、乳児は口に入れて有害かどうか確かめるという。
同じように幼児は手で掴んで確かめ、童児は視覚や嗅覚で危険かどうか見分ける。
ここにいる人間は食材に対するエゴのぶつかる坩堝を一瞥し
それがいわゆる大変ヤバいものだと瞬時に察した。

「こ、これは……?」

杏は菜箸でゴマ団子モドキをつまんで聞いた。

法子が元気良く手を上げて己の罪を主張する。

「あっ、それあたしです! 一番美味しいお店の、小さくて食べやすい
 コロコロしたドーナツです! 美味しいですよ」

法子は美味である事を力説したが、それが美味しいかどうかは判断しかねた。

少なくともこの鍋の中でポコポコ浮き沈みを繰り返している団子たちは

その甘い羽織ものを出汁に溶かして大浴場を満喫していた。

「そして、これ……」

杏はオタマでドロリとした赤色のアメーバを掬った。

これは唯一液状の食材にもかかわらず、出汁との同衾を拒否された哀れな存在だった。

「私です。どのような食材が来るのか分からなかったのですが
 とりあえず万能な味付けを施せばいいと判断し、無難なものを選びました」

ありすの言葉を聞いて杏とその他のメンバーは頭を抱えた。

一体全体どこをどう捻ればイチゴジャムが無難な味付けの食材と判断できるというのか。

この問いは、形而上的問題として彼女たちを悩ませた。

「本当はイチゴを擦り下ろしてもう少し上品な酸味を演出したかったのですが、問題ありません」

問題しかないありすの発言を脇にやり、杏は再び具材の検証にかかった。

幸い、残った食材は鍋との親和性が高いものばかりに見えた。

「フヒ……私、ホンシメジ、ブナシメジ、入れた……エリンギも、少々。……美味しいよ?」

鍋の隅にこんもりと積まれている茸類を見て輝子は不気味に笑った。

量が多いという問題はあるが、聞けばちゃんと洗って投入したというし

具材的にもアクの薄いものだから比較的良チョイスと言えるだろう。

「七海は鯛と鰤を入れたれす~」

七海の食材は嫌でも分かった。グツグツと煮えている鯛の頭部が

その死んだ色のクリッとした目でガンを飛ばしていたからだ。

彼とその弟分はご丁寧にその太い骨を地獄の釜に沈めて

無頼な来訪者相手にやや不機嫌な昆布出汁のご機嫌を伺っていた。

鯛は縁起物、鰤は出世魚という事で投入したらしいが

まさかこの二匹もこんな場所で葬られるとは思っていなかっただろう。

「んっ、これははんぺんか……な……?」

杏が掬い上げた二等辺三角形の形状をしたものは

全く柔らかくなく、水気を存分に吸って重くなっていた。

「なんですそれ」

みちるが言った。

「あー何か分からない」

「それはなんですって」

「だから何か分からないんだって」

「だからなんなんです」

「杏にもなんなのか分からないって」

「なんだって言っています!」

「言っているのは分かってるってば!」

「杏ちゃん、それ……」

志乃がみちるの投下したものがカレー料理に使うナンだと教えてくれた。

紛らわしいにも程がある。

「私はお酒を入れたわ。隠し味に丁度いいでしょう」

志乃は赤ら顔で言うと、ごくごくと何杯目かの日本酒を静かに煽った。間違いなく出来上がっている。

この人が筆頭である時点でこの闇鍋の未来は既に決まっていたかもしれない。

「杏ちゃんは何を入れたの?」

「…………。今から、入れる」

そう言って杏は黄色い袋を取り出して呪われた魔女の釜に降り注いだ。

魔法の粉であるカレー粉は、その全てを包み込む度量で

彼女たちの過ちをまとめて懐に抱いてくれた。

「カレー味にすれば大体のものは食べれるって、歴戦の傭兵さんが言ってたんだ」

「賢明な判断ですね。流石に私のイチゴジャムでも
 これだけの食材はフォロー出来ませんから」

「なんでも合いますね!」

「シーフードカレーれす~!」

「カレードーナツ!」

やがて八人は黄色い祝福を受けた鍋の住人を救出にかかった。

「なんや、もう始まっとるやん」

遅れてこの黒ミサに参加した面々は

村上巴、姫川友紀、難波笑美、三村かな子、ライラの五人だ。

笑美はチラッと鍋を覗くと大量の茸を脇に従えた鯛の頭が見えたので、思わず唸った。

「えっらいもん、ぎょーさん入っとんなぁ~。
 これ鯛やろ? 七海はんが持って来たん?」

「はいれす~。出汁もよく出てますよ~」

「カレーで相殺されてそうだね……あっ、志乃さん!
 はいっ、頼まれていたお酒、持って来たよ!」

「ふふ、友紀ちゃんありがとう。早く乾杯しましょう」

友紀は志乃の横に陣取り、早速瓶ビールの栓を開けた。

「この赤いもんは苺か、なかなか美味いのう」

巴はどかっと腰を下ろして法子の一口ドーナツにあの赤いアメーバを絡めて食べている。

気を利かせたかな子が暗躍するイチゴジャムを

そっくりオタマでその大半を回収し、巴の椀に注いだ。

そのため、この赤い悪魔の被害は最小限に止められた。

「あれ、お肉が入ってるよ?」

底の方に箸を入れたかな子はカレーにまみれてよく分からない肉片を発見した。

今まで鍋底で隠れていたその肉は丁度いい具合に火が通っていた。

「魚じゃないれすね~」

「まゆが入れました」

まゆは口内に蜜唾を充満させて、目を輝かせてその肉を口に運んだ。

頬を膨らませ、じっくりと舌鼓を打ちながら咀嚼する彼女の幸せそうな表情に

釣られて、一人また一人と、その肉を鍋から口に運んだ。

「中々噛みきれないね」

「でも脂身は結構とろんとして美味しいでございます。ライラさんは好きですよー」

友紀はビールを飲みながら、その筋のある肉を興味深げにつまんでいたが

杏は苦戦の末二口で止めて無難なシメジを食べ始めた。

一方ライラはドーナツだろうがナンだろうが空き腹にどんどんと運んでいった。

そのため隠れていたその肉は次々にカレーの海から顔を出していく。

「何や癖のある妙な味やなぁこれ……うーん、牛でも豚でもないわ。何やろ?」

「鶏でもないのぅ……」

笑美と巴は口内でその肉を転がしながら推理していた。

「板橋のお店で食べた事あるような……猪だったかしら」

志乃も酒のつまみがてらそれを食べて店の名前を思い出そうとしていた。

「シシ肉? 珍しいな……。まゆちゃんも美味しそうに食べてるし、少し食べてみよう……フヒ」

輝子は幾つか切れ端を茸と一緒に自分の器に入れた。

彼女の言う通り、まゆはやや興奮気味にその癖の強い肉を次々と口に運んでいる。

普段少食な彼女にしては珍しくハイペースだ。

潤んだ瞳でうっとりとしながら、彼女は肉を食べ続けた。

「まゆちゃん美味しそうに食べてるね、私も食べるっ!」

こうしてこの肉はここにいるメンバーによって一通り堪能された。

「そういえば、プロデューサー遅いね。笑美たち会わなかった?」

「プロデューサーはん? いや全然会わんかったで」

笑美だけでなく巴も同じように言ったので杏は首を傾げた。

友紀は既に志乃と一緒に泥酔してゴロゴロ転がりながらナイター中継を見始めていた。

「どこで油売ってるんだろうプロデューサー」

「まあもうすぐ来るんじゃない? まだまだ具あるし」

「みんな一番大好きなものばっかりたくさん入れたもんねー」

メンバーの興味は再び闇鍋に向けられた。

(フフフ……、フフフフ……、フフフフフ……!
 大好きなプロデューサーさんと一緒、これからずっと、まゆと一緒……!)

まゆは頬を赤らめ、嬉しそうに腹部をゆっくりと撫でる。

彼女は人知れずじんわりと汗ばむショーツの真ん中を

こっそり左手の指で押さえながら、口内の肉を堪能した。

以上です。>>6で改行ミスがありました
本来は全部一行空けです

すみません。>>3>>5の間にこの文章が入ります↓





主催者の柊志乃を筆頭に、双葉杏・大原みちる・椎名法子・

浅利七海・星輝子・橘ありすの七名が卓で煮えた鍋を囲っていた。

彼女たちは何気なく談笑し合っていたが、それぞれの胸中では

ここに集ったメンバーに一抹どころでない不安を感じていた。

彼女たちほどこのパーティーに相応しいメンバーもいないし

逆にこれほど壊滅的なメンバーもいないだろう。

食材を入れた鍋がどんな不協和音を奏でるのか、あるレベルまでしか想像出来ない所が

各々の頭にある完成予想図を一層底知れないものにさせていた。

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