にこ・花陽「沈まぬ太陽~天国にいる兄と弟へ~」 (128)

注意
・オリジナルキャラが出てきます。
・他のアニメ・いろんなアニメのキャラが出てきます。


こんにちは、高坂穂乃果です。季節が冬から春に向かう日の夜のこと。
高校を卒業してから数年。私たちはそれぞれの道に進みましたが、たまには連絡を取り合って会ったりしています。

20XX年3月3日、すなわちひな祭りの日、私はテレビでラブライブの録画中継を見ていました。
私の母校、音ノ木坂学院のスクールアイドルの後輩、Wingsが優勝したラブライブ。
そして丁度Wingsのライブの最中、あのニュース速報テロップが飛び込んできました。

よりにもよって音ノ木坂学院の、私の後輩の出番のときに表示されたニューステロップ。
そしてそのニュースは、私の友達、にこちゃんと花陽ちゃんの運命を変えてしまうものでした。

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・・・
第1話 ウチにおいでよ

私は小泉花陽。

高校を卒業後、凛ちゃんと同じ大学に進学。
そして私のお兄ちゃん、光司は、結婚して3人の子持ちでいる。結婚相手は子供がいる既婚者だったけど、かつてお兄ちゃんの憧れの人だったらしい。

・・・
中学の時、不良だった光司。
クラスにいた5人の問題児の1人、それが光司だった。

不良グループは教師に反抗し、夜は歌舞伎町で暴走、パチンコや喫煙をしていた者もいた。
何度も警察のお世話になっていた。

しかし1人だけ、不良から抜け出そうとする者がいた。

光司「俺、本当はあいつらと関わりたくないんだ。」

光司「本当はちゃんと授業受けて、楽しい学校生活を送りたい。」

光司「だけど俺には友達もいないし、だからあいつらしか頼れる奴がいなくて。」

光司「正直言うと鈴木って奴に脅されてるんだ。」

優子「そうだったの。じゃあ先生に任せて。」

光司「あの、先生。できればあいつらにも楽しい学校生活を送らせてやることできないかな?」

光司「きっと俺と同じで、孤独なんだと思う。」

優子「そうね。考えてみる。」

優子「私は信じてたよ。小泉君は本当は心の優しい子だって。」

教師ならあの不良グループを放ってはおけなかった。

こうして優子先生は不良グループを更正させることができた。
不良問題が解決してしばらくして

光司「俺、好きな人がいるんだ。誰だかわかるか?」

優子「うーん、○○さんかな?クラスで一番人気の。」

光司「やっぱ分からないか。」

光司が好きになった相手、それは。

光司「俺、先生のことが好きだ。」

優子「そんなの困るよ。私たち、教師と生徒なんだし、それに私結婚してるんだし。」

光司「わかってる。やっぱり無理だよな。」

優子「じゃあ今度デートしましょ。」

光司「ほんと?」

そしてとある日曜日

優子「待った?」

光司「俺も今来たとこ」


光司「久しぶりにいい思い出になった。鈴木たちといるよりずっと楽しい。」

光司「先生、またデートしてくれるかな?」

優子「今度のテストの点数がよかったら、考えてあげてもいいな。」

その後何回かデートした。

優子「でもこれ以上2人きりで過ごすわけにはいかないかな。」

光司「そうだよな。旦那さんのことも大切にしなきゃな。」

中学を卒業し、先生には子供もできた。しかしその後、先生の夫の浮気が発覚する。
さらに同時に先生が光司と不倫していたこともバレたため、離婚。
双方が浮気をしたため、慰謝料なしで和解した。

俺は高校を卒業したあと、先生と再会した。

夫と別れ、教師と生徒の関係でもなくなった2人は付き合うようになった。
そして光司が21歳のとき、結婚した。

・・・
花陽「お兄ちゃんの結婚相手、優子さんって中学校のときの先生なんでしょ?」

光司「ああ。でも結婚するならその人だと思ってた。」

光司「既婚だったことは知ってたけど、俺が大学生のとき先生の旦那さんが浮気した話を聞いてね。」

光司「それで俺と付き合うことになったってとこかな。」

花陽「これエロゲみたいな展開だよね?」

光司「それを言うか!」

私のお父さんはガンで、私が中学生、お兄ちゃんが高校生のとき亡くなった。
そしてお母さんは、お兄ちゃんの結婚式の翌日に亡くなった。
病気をおして、結婚式に出席したのだ。

お母さんはお兄ちゃんの結婚式を見るために、余命を乗り越えて生き続けたんだと思った。

今、私は1人で暮らしている。

・・・
私はその日、横浜市港北区菊名の兄と優子さんの家を訪れていた。

花陽「お邪魔します。」

小太郎「さあ入って。」

花陽「覚えてる人もいるかな?」

花陽「私は小泉花陽。あなたたちのパパの妹。いわゆる伯母って関係になるのかな。」

小太郎「僕は小泉小太郎、小学5年生、11歳です。」

鉄平「小泉鉄平、6歳です。」

りんご「あたしは小泉りんご、4歳。」


花陽「パパやママがいないときは小太郎君がお世話してるの?」

小太郎「はい。この家の長男ですから。」

花陽「えらいね。」

小太郎「父さんは最近いろんなところに言ってるみたいです。」

小太郎「去年は京都に、その次は富山に、こないだは仙台に行ってたみたい。」

小太郎「今度は福岡に行くって言ってたっけ。」

花陽「出張も大変だよね。でも旅行できていいかも。」

・・・
その後、兄と優子さんが帰ってきた。

優子「今日はこの子達のお世話ありがとうね。」

光司「馴染んでくれてよかった。」

光司「これを見て安心した。花陽ならこいつらを任せて大丈夫だな。」

花陽「え?」

優子「実は私も3日ほど家を開けることになったの。」

優子「福岡まで光司さんと一緒に行くんだけど。」

優子「だから花陽ちゃんにうちの子たちを任せたいな、と思って。」

花陽「私がこの子たちの世話できるかな。」

光司「大丈夫だよ。花陽ならできる。俺は妹のこと信じてるから。」

光司「それになんだかんだで小太郎もしっかりしてるからな。でもさすがに3人だけじゃ不安なんで、花陽に面倒見てもらおうと思う。」

光司「4人いれば安心だろう。」

花陽「わかった。任せといて。」

・・・
1日前に兄が出発、そして今日優子さんが出発した。

小太郎「いってらっしゃい。」

優子「じゃあ花陽ちゃん、よろしくね。」

花陽「任せといて下さい。」


小太郎「花陽お姉ちゃん、俺とゲームで対戦してくれないかな。」

花陽「ゲームか。いいよ。」

花陽「今はこういうゲームが流行ってるんだね。」

小太郎「花陽お姉ちゃんは初心者ですか?でも手加減しないよ。」

花陽「私だって。」

小太郎「うわー、なかなか強いな。負けるか。」

花陽「絶対勝つ。」

小太郎「ここでそう来るか!」

小太郎「よっしゃー。勝ったー!」

花陽「負けたー。」

小太郎「お兄ちゃん強い。」

花陽「悔しい。もう1回!」

小太郎「いいよ。」

花陽「今度こそ・・・」

花陽「やったー、勝った!」

小太郎「なかなかやるな。」

鉄平「僕も花陽お姉ちゃんと対戦したいな。」

花陽「いいよ。」

そして時間は過ぎていった。


鉄平「そうだ。今日から数日の間、ママって呼んでいいかな?」

花陽「え?」

りんご「それはいいね。」

小太郎「確かに、お姉ちゃんとはちょっと違うし、年齢的におばさんじゃ変だし。」

鉄平「花陽ママ、なんてどうかな?」

花陽「でもその呼び方は本当のママ、優子さんだけにしようよ。」

花陽「夕方だ。ご飯の準備しないと。」

小太郎「俺が作ります。」

花陽「私も手伝うよ。」

花陽「今日は3月3日で、ひな祭りでしょ?私の家では毎年この日はちらし寿司を作ってるんだけど。」

小太郎「そうなんだ。じゃあやってみるか。」

花陽「ねえ今日7時からは何見るの?」

小太郎「特には・・・」

鉄平「僕も・・・」

りんご「あたしはラブライブが見たいな。」

花陽「そう。ねえ、ラブライブ見ていいかな?」

小太郎「いいです。」

・・・
花陽「私は音ノ木坂学院のスクールアイドル、μ'sのメンバーだったんだよ。」

小太郎「お父さんから聞いたことあります。」

花陽「ちなみに私の学年は1クラスしかなくて、廃校になりそうだったんだよね。」

小太郎「そうだったんですか?」

花陽「廃校から救ったのは私たちμ'sのおかげなんだよね。」

鉄平「そういうことがあったんだ。」

『続きまして、音ノ木坂学院、Wingsです。』

りんご「次音ノ木坂学院だって。」

花陽「Wings、私の後輩か。いいチームなんだろうな。」

第1話 終わり

第2話 ラブライブ中の突然のニューステロップ

元μ'sのメンバーたちは、その日母校の音ノ木坂学院のスクールアイドルが出場するラブライブを見ていた。
後輩の大型スクールアイドル、Wingsを誰もが楽しみにしていた。

しかしそのときには既にある場所で悲劇が起きていた。
そして衝撃のニュースがWingsが歌っていた画面の上に表示されるのだった。

・・・
南家

『続きまして、音ノ木坂学院、Wingsです。』

ことり「次Wingsだよ。」

理事長「そう。」

ことり「Wingsがここに立っていられるのも、私たちが廃校を阻止したおかげだよね。」

理事長「そうね。」

・・・
園田家

海未「私も、後輩を誇りに思います。」

・・・
星空家

凛「Wingsが楽しみだにゃあ」

・・・
高坂家

『続きまして、音ノ木坂学院、Wingsです。』

穂乃果「雪穂、Wingsが始まるよ。」

その時間、元μ'sのメンバーの全員がテレビで自分たちの後輩のライブに釘付けになっていた。
そのときだった。効果音とともに画面の上部に表示された文字。それは突然のニューステロップだった。

『ピコーン ピコーン ピコーン』
『FNN ニュース速報』

穂乃果「何でよりにもよってWingsの出番でニュース速報なの?」

『羽田発福岡行きの桜ヶ丘航空機がレーダーから消える。』
『国土交通省によると、桜ヶ丘航空機から「緊急事態が起きた」と伝えてきた。』
『桜ヶ丘航空機には乗客500人が乗っており、現在国土交通省が調査中。』

穂乃果「飛行機がレーダーから消えるってどういうこと?穂乃果わかんないよ。」

穂乃果「そんなことどうでもいいから早く邪魔なテロップ消えてよ。Wingsがよく見えないじゃない。」

・・・
園田家

海未「航空機がレーダーから消えた・・・」

海未「なんだか嫌な予感がします。」

・・・
南家

ことり「ねえレーダーから消えるってどういうこと?」

理事長「まさか・・・」

ことり「しかもなんでWingのときに出てくるの!」

・・・
星空家

凛「Wingsがんばれ」

凛にはこのときテロップなど気にしてなかった。

凛「航空機がレーダーから消えた。そんなの関係ないにゃあ。」

・・・
兄家族の家

『ピコーン ピコーン ピコーン』
『FNN ニュース速報』

花陽「うわー、Wingsついてないな。自分の出番でニューステロップが入るなんて」

『羽田発福岡行きの桜ヶ丘航空機がレーダーから消える。』
『国土交通省によると、桜ヶ丘航空機から「緊急事態が起きた」と伝えてきた。』
『桜ヶ丘航空機には乗客500人が乗っており、現在国土交通省が調査中。』

小太郎「飛行機がレーダーから消える?それってどういうこと?」

鉄平「単にレーダーが壊れただけならニュースにならないよね?」

花陽「さあ、何があったんだろう。」

花陽(羽田発福岡行き?確かお兄ちゃんと優子さんが今日行ったのも福岡・・・)

兄のことを心配しながらも、私はWingsのライブを見た。

・・・
そしてニューステロップに留まらず、ついにラブライブの番組を中断して臨時ニュース速報が入る。

アナ『番組の途中ですが、ここでニュースをお伝えします。』

穂乃果「何、ニュースだって!?いいとこなのに!」

穂乃果「しかもまた飛行機のニュース?」

アナ『乗員乗客522人が乗りました羽田発福岡行きの航空機が、今夜7時ごろ、レーダーから姿を消しました。』

アナ『桜ヶ丘航空本社によりますと、消息を絶ったのは羽田を17時40分ごろ経った羽田発福岡行きの桜ヶ丘航空334便で、今日18時20分ごろ、機体後部が異常が起きたという連絡があり、羽田に引き返したいという連絡を最後に消息を絶っております。』

アナ『香川県讃州市の住民から上下左右に揺れている飛行機が低空飛行していたという連絡がありました。』

アナ『また香川県の山に登山に来ていた観光客から、讃州山から西の空に飛行機が墜落する音が聞こえたという連絡も入っております。』

アナ『現在国土交通省が確認中です。今のところまだこれしか情報が入っておりません。』

・・・
南家

アナ『乗員乗客522人が乗りました羽田発福岡行きの航空機が、今日18時50分ごろ、レーダーから姿を消しました。』

理事長「墜落したわね。」

ことり「え?」

理事長「30年ほど前にもこんなことがあった。日航123便の墜落事故。」

・・・
園田家

アナ『乗員乗客522人が乗りました羽田発福岡行きの航空機が、今日18時50分ごろ、レーダーから姿を消しました。』

海未「私が心配するのもなんですが、これ、このままラブライブを放送していいのでしょうか?」

・・・
花陽「やっぱり墜落したんだ・・・」

花陽「ねえ、パパは福岡に行ったんだよね?」

小太郎「うん。でも飛行機にはあまり乗らないと思うんだ。飛行機が苦手ではないけど、鉄道好きだしね。」

鉄平「僕の名前の鉄平ってのも鉄道が由来みたい。」

花陽「そういえば数年前、福岡に行った時は新幹線で行ってたっけ。福岡まで新幹線で行く人は1割もいないみたいだけど。」

花陽(でも今日は飛行機に乗ってそうだな・・・)

小太郎「ここ菊名の家に住むようになったのは、新幹線の駅が近いからってのもあるみたい。」

花陽「でも前は新幹線にもあまり乗ってなかったな。前は光司お兄ちゃんは青春18切符愛好者、18きっぱーだったし。」

花陽「大阪まで在来線の普通列車で行ったこともあったみたい。丸1日かかったみたいだけどね。」

花陽「確かに隣が新横浜ってのはいいよね。アリーナも近いからアイドルにとってもいいとこかも」

小太郎「それと菊名は最寄りの路線で北は川越や飯能まで一本で行ける便利なところでもある。」

鉄平「だけど僕には何が何だかわからない。行き先がいっぱいあって、どの電車に乗ればいいか迷いそうだし。」

花陽「そうなんだ。」

りんご「そういえば1回だけ夜に森林公園って行き先を見たけど、あれどこなのかな?」

花陽「えーっと川越の先の方だったかな」

・・・
Wingの優勝で終わったラブライブ。
ラブライブの中継が終わると、どのテレビ局もドラマやバラエティ番組を中止し、一斉に特番になった。

ラブライブに夢中だった私、穂乃果はこのとき初めて事の重大さに気づいた。

アナ『消息を絶っておりました羽田発福岡行きの桜ヶ丘航空334便は、香川県と徳島県の県境に墜落した模様です。』

アナ『乗客の名簿が入ってきました。ただいまからお1人ずつ読み上げます。敬称は略させてもらいます。』

この乗客名簿はあ行から50音順に紹介されたが、いきなり最初に衝撃の名前が出てくる。しかも2人続けて。

アナ『アオミネ・ダイキ』

アナ『アカシ・セイジュウロウ』

雪穂「青峰大輝、赤司征十郎って・・・。バスケットボール日本代表の赤司君と青峰君?」

穂乃果「え?そうなの?」

『ナントカカントカ』

アナ『イトウ・マコト』

アナ『イトウ・ユウキ』

次々の名前が読まれる
さらに後半のは行では人気絶頂の男性アイドルの名前をアナウンサーが口にする。

アナ『ヒジリカワ・マサト』

雪穂「聖川真斗って、今人気のアイドルじゃ・・・」

穂乃果「そうだよね?」

・・・
花陽や子供たちもラブライブのあとのニュースで乗客名簿が読み上げられるのを見た。

アナ『乗客の名簿が入ってきました。ただいまからお1人ずつ読み上げます。敬称は略させてもらいます。』

アナ『アオミネ・ダイキ』

アナ『アカシ・セイジュウロウ』

小太郎「え?バスケの青峰選手と赤司選手?」

りんご「赤司君が乗ってたってこと?まさか・・・。」

そしてか行に入り、アナウンサーが読み上げた2人の名前。
その瞬間、あまりのショックに時間が止まったように感じた。

アナ『コイズミ・コウジ』

アナ『コイズミ・ユウコ』

花陽「小泉光司・・・。」

鉄平「お父さんとお母さんの名前?」

小太郎「単なる同姓同名だよね?」

花陽「パパって飛行機に乗ってるのかな?」

花陽「飛行機に乗ったとしても、日●航空でも全●空でもなく、桜ヶ丘航空にパパが乗るかな・・・」

そのとき、電話が鳴った。

花陽「もしもし、小泉です。」

親戚「優子の母です。」

花陽「あの、光司と優子さんは福岡に着いたのでしょうか?」

親戚「何も聞いてないのですか?」

親戚「今朝、電話で今日夕方17時30分の飛行機に乗るって言ってました。」

親戚「だからもう・・・」

現実だった。
私は気を失ってその場に倒れてしまった。

小太郎「花陽お姉ちゃん・・・」

りんご「ママ・・・」

テレビでは搭乗者の家族が羽田空港か福岡空港に集合する案内が流れていた。

第2話終わり

第3話 にこのアイドルデビューと虎太郎の旅立ち

私は矢澤にこ。
μ'sがラブライブで優勝し、高校卒業後して数年後、夢のアイドル歌手デビューを果たすことができた。

この日、私は福岡でライブを行っていた。
同じ日、末っ子の弟の虎太郎が長崎にいる知人に会いにいくことになった。
虎太郎とその友人の先輩らしい。

当初母がついていくことになっていたのだが、急用が入ってしまいドタキャン。
そこで丁度福岡にいる私がついていくことになった。
予約していた羽田~長崎の航空便を羽田~福岡に変え、福岡空港で待ち合わせることになった。

矢澤母「でもせっかく羽田~長崎の切符を取ったんだし、そのままその飛行機にして、にことは長崎で待ち合わせてもいいんじゃないかしら。」

にこ「うーん、多分ライブのあと長崎に行くのは次の日になりそうだし、一晩虎太郎を1人にしておくのは不安だしさ。」

矢澤母「じゃあ福岡行きに変えるね。」

にこ「それに長崎行きってJALだよね?福岡行きのほうがもっと安いのがあるよ。」

当時ジャンボ機では世界一の格安航空会社で知られていた桜ヶ丘航空のチケットを買った購入。便名はその日の夕方の334便であった。

桜ヶ丘航空は羽田から新千歳、大阪伊丹、広島、福岡、熊本、鹿児島、沖縄行きの空路を運転している航空会社。
何年か前、「すべての航空会社は道を譲れ」という挑発的なポスターが話題になった。

長崎行きはなかったため大手の日本航空を購入したのだが、今回の変更でこの桜ヶ丘航空に変えた。
歌手として全国を飛び回っている私には航空業界の知識もあったのだ。
思えばこれは安さに目がくらんだ軽はずみな判断だったかもしれない。

その切符は3月3日、午後5時30分発、桜ヶ丘航空334便だった。

・・・
私はその3日前、家で虎太郎に会った。まさかそれが最後になるとは、まだ知る由もなかった。

矢澤母「これから羽田に行くの。」

にこ「そう。じゃあ私はこれからライブだから。今夜のラブライブ、ちゃんと録画してきてくれるよね?」

矢澤母「任せといて。」

にこ「ちょっと虎太郎に変わって。」

にこ「ねえ虎太郎、1人だけど着いたら私が迎えに行くから。」

虎太郎「うん。にこ姉ちゃんもライブ頑張ってね。」

そしてこれが、私が聞いた虎太郎の最後の声だった。

羽田空港

アナウンス「皆様、桜ヶ丘航空334便、福岡行きは、ただいまからご搭乗を開始します。」

係員「係員の山本です。矢澤さんでいらっしゃいますか?」

矢澤母「はい。」

矢澤母「虎太郎君、1人だけど係員のお姉さんもいるし、福岡についたらにこお姉ちゃんが待ってるから大丈夫だよ。」

虎太郎「うん。」

矢澤母「飛行機の中では静かにしとくんだよ。」

虎太郎「わかった。」

係員「じゃあ行きましょうか。」

矢澤母「今日はよろしくお願いします。」

虎太郎「行ってきます。」

係員「行ってらっしゃい。」

母は、虎太郎が不安そうな顔をしているのを見た。まだ小学5年生、1人で飛行機に乗るのは不安だっただろう。
しかしそれが母が見る、最後の虎太郎の顔だった。

母の不安は当たっていた。その30分後、虎太郎の身に重大な危機が迫っていた。

・・・
機内

ドカーン

虎太郎「何の音?」

何かが爆発した音がした

自動放送「酸素マスクをつけてください。ベルトをしめてください。電子機器はお使いにならないでください。只今緊急降下中です。」

乗務員「皆さん、シートベルトと酸素マスクをして下さい。」


機長「スコーク77」

機長「こちら桜ヶ丘航空334便。機体の後方が破損した模様です。」

機長「羽田に引き返すことを希望します。」

司令官「了解」


乗務員A「皆さん落ち着いて下さい。」

乗務員B「不時着に備えてリハーサルしよう。」

乗務員C「わかりました。」

虎太郎はそのとき、母にあるメールを送っていた。

・・・
虎太郎と別れた母が家に帰ると、こころとここあがテレビを見ていた。
その日はラブライブ全国大会の中継の日。私もその中継を録画していた。

ここあ「ラブライブ♪」

こころ「お姉さまもこれに出たんだよね?μ'sで。」

ここあ「学校は音ノ木坂学院だよね?」

こころ「次だよ、音ノ木坂学院。」

『続きまして、音ノ木坂学院、Wingsです。』

こころ「そういえば虎太郎君は見ないのかな。」

ここあ「あいつは男の子だからこういうの興味ないでしょ。」

そのときだった。それは突然のニューステロップだった。

『ピコーン ピコーン ピコーン』
『FNN ニュース速報』

『羽田発福岡行きの桜ヶ丘航空機がレーダーから消える。』
『国土交通省によると、桜ヶ丘航空機から「緊急事態が起きた」と伝えてきた。』
『桜ヶ丘航空機には乗客500人が乗っており、現在国土交通省が調査中。』

こころ「上になんか出た。」

ここあ「羽田発福岡行きの桜ヶ丘航空機、レーダーから消えたってよ。」

こころ「どういうことだろう?」

ここあ「レーダーとやらが壊れたんじゃない?」

こころ「こんなのニュースにすることじゃないよね」

矢澤母「え?」

矢澤母「羽田発福岡行き・・・。まさかね・・・。」

・・・
希「桜ヶ丘航空機がレーダーから消える、か。」

希「なんか大変なことが起きちゃったみたいね。」

絵里「そういえばにこちゃんから聞いたんだけど、今日にこちゃんの弟さんが九州に行くとか行ってたけど大丈夫かな?」

希「確か長崎じゃなかった?」

絵里「そうか。じゃあ関係ないね。」

・・・
矢澤家

アナ『桜ヶ丘航空本社によりますと、消息を絶ったのは羽田発福岡行きの桜ヶ丘航空334便で・・・』

矢澤母「桜ヶ丘航空334便・・・」

事故の一報を聞いた母親は、何が何だかわからなかった。

矢澤母「これは夢だ!夢だ夢だ夢だ!」

矢澤母「覚めろ覚めろ覚めろ!」

しかし現実だった。

・・・
矢澤家

アナ『乗客の名簿が入ってきました。ただいまからお1人ずつ読み上げます。敬称は略させてもらいます。』

矢澤母「嫌、聞きたくない!」

終盤の方のや行に入り・・・

アナ『ヤザワ・コタロウ(11)』

アナ『名前の右の数字は年齢でございます。年齢が分かっている方はお年も出ております。』

・・・
そのころ、私、矢澤にこはライブを終え福岡空港に虎太郎を迎えに来ていた。

にこ「多分もう着いてるはず。」

にこ「すいません。羽田発17時30分の便は到着しましたか?」

係員「いえ、まだです。」

にこ「そうなんですか?」

にこ「おかしいな。もう2時間経つし、とっくに着いてるはずなんだけど。」

係員「遅れていたり、天候の関係で羽田に引き返したり、別の空港に着陸したりいろいろありますけど、まだこちらのほうではどうなってるかわかりません。」

しかし、羽田から来た飛行機が次々と到着している。虎太郎が乗ってる飛行機より後に羽田を出発した便が。

「どうかしたんですか?」

にこ「羽田発17時30分の便がまだ着いてないようなんです。」

「そうなんですか?僕が今乗ってきたのは羽田発18時の便なんですけど。」

明らかにおかしい。今日は関東と関西では雨が降っていたが、福岡周辺は晴れており、着陸不能な天候ではない。

そしてアナウンスが入った。突然のことだった。悪夢のアナウンスが・・・。

アナウンス「お客様にお知らせします。」

アナウンス「さきほど、羽田発福岡行きの桜ヶ丘航空334便が、レーダーから消えました。」

アナウンス「繰り返します。羽田発福岡行きの桜ヶ丘航空334便が、レーダーから消えました。」

にこ「まさか・・・」

にこ「334・・・」

にこ「虎太郎が乗ってるの・・・」

茫然自失としたにこは母親に電話する

にこ「お母さん、虎太郎が乗ってる飛行機が・・・」

矢澤母「聞いた。」

矢澤母「さっき桜ヶ丘航空から連絡があって、羽田空港に集合だって。」

矢澤母「現場までバスが出るらしい」

にこ「現場ってどういうこと?」

矢澤母「それ以上はわからない。」

にこ「お母さん、虎太郎を迎えに行ってあげて。」

矢澤母「うん。」

矢澤母「待っててね、虎太郎。」

・・・
ラブライブで後輩の活躍を見るはずが一転、事故の一報を聞いた元μ'sメンバー。
それでも自分には関係ないとラブライブに夢中になっていたが、やがてラブライブの放送が終わり、全てのチャンネルが事故のニュースになると現実を思い知る。
そして乗客名簿が読み上げられる。

アナ『乗客の名簿が入ってきました。ただいまからお1人ずつ読み上げます。敬称は略させてもらいます。』

アナ『アオミネ・ダイキ』

アナ『アカシ・セイジュウロウ』

最初に読み上げたバスケ日本代表の2人の名前にも動揺した。
さらには行で衝撃の名前が読み上げられる。

アナ『ヒジリカワ・マサト』

人気絶頂の男性アイドルの名前を聞くと、日本中が動揺しただろう。
だがμ'sメンバーの誰もが一瞬で凍りつく名前が読み上げられたのが、終盤のや行だった。
著名人ではないが、矢澤にこ率いるアイドル研究部の部員なら聞いたことがある名前を。


アナ『ヤザワ・コタロウ(11)』

アナ『名前の右の数字は年齢でございます。年齢が分かっている方はお年も出ております。』

希「矢澤虎太郎、11歳? にこっちの弟?」

希「いや行き先は長崎だったんじゃ・・・。どういうことや?」

希「きっと別人よね・・・」

・・・
穂乃果「ヤザワ・コタロウ・・・、確かにこちゃんの弟の名前虎太郎だった。」

雪穂「そうなの?」

穂乃果「もしかして・・・」

・・・
海未「ヤザワコタロウ、どこかで聞いたことある名前です。」

海未「さて、どこだったでしょうか?」

海未「ヤザワ・・・、にこ先輩・・・、矢澤にこ・・・」

海未「にこ先輩の弟の名前が確か・・・、虎太郎・・・」

・・・
ことり「ヤザワ・コタロウって、にこちゃんの弟じゃ・・・」

ことり「いや、まさかね。ただの同姓同名かもしれないし・・・。」

・・・
西木野家

真姫「そういえばにこから聞いた・・・」

真姫「弟が飛行機に乗るって。にこが福岡空港で待ち合わせてるって。」

真姫「だから・・・」

・・・
星空家

アナ『乗客の名簿が入ってきました。ただいまからお1人ずつ読み上げます。敬称は略させてもらいます。』

アナ『コイズミ・コウジ』

アナ『コイズミ・ユウコ』

凛「今の名前、かよちんのお兄ちゃんとその奥さん・・・」

凛「は・・・。かよちん今日はお兄ちゃんの家族の家にいるんだっけ?」

凛「かよちんのお兄ちゃん出張だって・・・」

花陽の兄の名前を聞いた凛は花陽に電話する。
だがつながらなかった。このとき花陽はショックで気絶していたのだ。

そのあとさらに知り合いの名前を聞いてしまう。

アナ『ヤザワ・コタロウ(11)』

アナ『名前の右の数字は年齢でございます。年齢が分かっている方はお年も出ております。』

凛「ヤザワ・・・コタロウ・・・」

凛「にこちゃんの弟の名前、確か虎太郎だったにゃ・・・」

凛「こんなことって・・・」

・・・
光司の家

鉄平「お父さんとお母さん、乗ってたんだ・・・。」

小太郎「大丈夫だよ。お父さんとお母さんなら。鍛えてるし、怪我の手当てもできるし、自分で手当して生きてるんじゃないかな。」

鉄平「何もなかったように元気に帰ってくるよね?」

小太郎「うん」

小太郎「そういえばさっきの名簿の最後の方に、俺と同じ名前で、俺と同い年の子がいたな。」

小太郎「ヤザワ・コタロウって。」

・・・
希「もしもし、にこっち。」

にこ「希ちゃん・・・」

希「さっき墜落した飛行機の乗客名簿を読み上げてたんやけど、その中に矢澤虎太郎って名前があったんや。」

希「もしかして・・・」

にこ「うん・・・。虎太郎が乗ってたの・・・」

にこ「私のせいで・・・」

・・・
μ'sメンバーに真姫からメールが届く。

「にこの弟が例の飛行機に乗ってたみたい。何とかにこを励ましてあげたいんだけどどうしよう?」

とはいえ今は虎太郎の無事を願うことしかできなかった。

第3話 終わり

期待

パパ聞きが元かな?
花陽サイドは特に

続きもがんばって

>>34 >>36
ありがとうございます。では続きいきます。

ちなみに第3話はいろんなアニメのキャラが出てくるので注意

第3話 勇者の目撃情報

20XX年3月3日

香川県の山間の街、讃岐市。
香川は全国的に有名な讃岐うどん。讃岐市はうどんと勇者の街である。
この日、結城友奈ら勇者たちが山でパトロールしていた。

18時30分ごろ、友奈たちがある物を目撃した。

「ゴウン‥‥‥ゴウン‥‥‥」

背後の山から雷が聞こえる。その日は雨が降っていたが、雷の予報はなかった。
しかし雷のような音が聞こえる。何事かと思い振り向くと、巨大な白い飛行機がすぐ近くに飛んできた。

友奈「なんなのあれは?自衛隊か米軍かな?危ないな!あんな大きい飛行機を低空で飛ばすなんて!」

美森「友奈ちゃん違うよ。あれは多分ジャンボジェット機だよ。旅客機だよ。」

友奈「旅客機?そうなの?」

美森「うん、テレビで見た「桜ヶ丘」のロゴがチラっと見えたから。」

風「でも旅客機なんてこの辺飛んでたっけ?」

美森「飛んでないはず。」

訂正
第4話 勇者の目撃情報

あとから話数を1つ加えました

それは桜ヶ丘航空334便だった。左右に激しく揺れながら南の方へ飛んでいった。
近くでもあまりの大きな音に赤ん坊が目を覚ましたり、犬やにわとりが吠えたり、帰宅途中の子供達が大騒ぎしていた。

美森「すごく不安定な飛び方してた。しかも低空飛行だし。落ちたりしないかな?」

樹「うわー、怖い。」

そのあと、さっき飛行機が飛んでいった上空にキノコ雲が見えた。
墜落直後のキノコ雲であった。高台にいた一部の人が目撃していた。
だが墜落音は聞こえなかった。山に阻まれたせいだと思われる。

友奈「美森ちゃん・・・。まさかさっきの飛行機本当に落ちたの?」

美森「・・・わからない。」

樹「そう。」

風「ねえ、あの飛行機、人が乗ってた?」

美森「わからないけど、たくさん乗ってたと思う。」

友奈「帰ろう。」

半ば慌てて帰宅する

友奈「ねえ夏凜ちゃん。さっき飛行機がすごい音を立ててこの町をかすめていったの見た?」

夏凜「あー見たな。びっくりた。すごい音だったな。」

樹「あの飛行機、どうも向こうの方に落ちたみたいなの」

夏凜「え?マジ?」

その後、7時の番組でこの街にもニュース速報が流れた。

・・・
同じくこの近くで桜ヶ丘航空334便を目撃した人が他にもいた。
埼玉の飯能から登山にきていた登山グループ。

あおい「山小屋まであとどれくらいなの?」

楓「もう少しよ」

ひなた「頑張って行こう」

「ゴウン‥‥‥ゴウン‥‥‥」

あおい「ひなた、今おならしたでしょ?」

ひなた「してないよ。おならしたのあおいでしょ?」

あおい「私はしてないよ。じゃあ楓さん?それともここなちゃん?」

楓「おならなんかしてないわよ。」

ここな「そもそもおならの音なんですか?」

楓「そうよ。こんな大きなおならする人いるわけないでしょ。」

あおい「じゃあなんの音だろう?」

ひなた「なんかだんだん大きくなってきてない?」

「ゴウン‥‥‥ゴウン‥‥‥」

おならなわけがない。轟音は次第に大きくなってそして最大になったとき、あおい・ひなた・かえで・ここなの4人が一斉に同じ方向を振り向いた。
4人は唖然とした。彼女らの真上、至近距離を飛んでいたのは・・・

楓「ひ、飛行機?」

あおい「ちょっと!私たちがいるのになんでこんなとこ飛んでるの?ぶつかったらどうするのよ!」

ここな「すごい低空飛行ですね。走り高跳びのオリンピック選手がここでジャンプしたら余裕で届きそうなくらい。」

ひなた「あれって自衛隊かな?いや、旅客機に見えたな。」

楓「私もあれは旅客機だと思います。上下左右に揺れてました。なにかあったのでしょうか?」

ひなた「ハイジャックとか?」

あおい「まさか・・・」

そしてそのとき

「ドーン」

あまりにも大きな衝撃音がした。墜落音だった。
そして飛行機が向かっていった南の空からキノコ雲が沸き上がっていた。

あおい「なにこれ?まるで原爆が落ちたような雲。それにさっきの爆撃音。」

ひなた「まさかさっきの飛行機落ちたの?」

楓「わからない。どっかのミサイルの音かも知れないし。」

ここな「いや、どう考えても飛行機が落ちたのでしょう。ミサイルなんてどこから飛んでくるんですか。」

あおい「あの飛行機、何人くらい乗ってたの?」

楓「ジャンボジェット機だからね。400人くらい乗れるんじゃないかと。」

あおい「その人たち、みんな死んじゃうのかな?」

ひなた「そうかもね。だとしたら大惨事だね。私たちは大変なものを見てしまったことになる。」

楓「携帯テレビを持ってきたので、後で見ましょう。」

・・・
夜7時すぎ、各報道機関に第一報が入る。テレビの各チャンネルに速報のニューステロップが入った。

それをさっき飛行機を目撃した友奈や風たちも見た。

樹「お姉ちゃん、この番組何?」

風「ラブライブね。スクールアイドルの全国大会。今日放送だったんだ。」

『続きまして、音ノ木坂学院、Wingsです。』

『ピコーン ピコーン ピコーン』
『FNN ニュース速報』

『羽田発福岡行きの桜ヶ丘航空機がレーダーから消える。』
『国土交通省によると、桜ヶ丘航空機から「緊急事態が起きた」と伝えてきた。』
『桜ヶ丘航空機には乗客500人が乗っており、現在国土交通省が調査中。』

樹「ねえ、桜ヶ丘航空ってさっきの?」

風「多分そう。」

樹「レーダーから消えたってどういうこと?」

風「やっぱり墜落したんだろうね。」

・・・
友奈「どの番組見よう」

ふと目に付いたチャンネルで友奈もニューステロップを目撃する。

『ピコーン ピコーン ピコーン』
『FNN ニュース速報』

『羽田発福岡行きの桜ヶ丘航空機がレーダーから消える。』

友奈「桜ヶ丘航空?もしかしてさっきの?」

友奈「レーダーから消えるって何なの?」

その後番組を中断してニュースが入り、やがてすべてのチャンネルが航空機行方不明のニュースになると友奈は事の重大さを知った。

アナ『羽田発福岡行きの桜ヶ丘航空334便が、今夜香川県の南部に墜落した模様です。』

勇者である友奈も搜索に協力しようと、警察に電話を入れた。

友奈「香川県讃岐市の結城友奈です。」

友奈「6時半くらいに、飛行機がものすごい音を立ててすぐ近くを飛んで行きました。」

友奈「そのあとものすごいキノコ雲が上がってきました。」

友奈「南の方の空だったと思います。」

警察「了解しました。ご協力ありがとうございます。」

・・・
山小屋に到着したあおいたち登山グループは、楓の携帯テレビで事故のニュースを知る。

アナ『羽田発福岡行きの桜ヶ丘航空334便が、今夜レーダーから姿を消しました。』

あおい「レーダーから消えたってどういうこと?」

楓「多分墜落したってことよ。」

ここな「現場はこの近くですね」

ひなた「この辺捜索隊とか来るのかな?」

楓「少し離れてるから関係ないでしょう。」

あおい「私たちも目撃者だし、警察に連絡したほうがいいのかな?」

ひなた「じゃああおいにお願いするよ。」

あおい「私なの?別にいいけど。」


あおい「あの、香川県の山に登山に来ている者です。」

あおい「飛行機が私の頭上すぐ上を通過して、そのあと飛行機が墜落する音が聞こえました。」

あおい「讃岐山から西の空だったと思います。」

警察「了承しました。ご協力ありがとうございます。」

・・・
山小屋に到着したあおいたち登山グループは、楓の携帯テレビで事故のニュースを知る。

アナ『羽田発福岡行きの桜ヶ丘航空334便が、今夜レーダーから姿を消しました。』

あおい「レーダーから消えたってどういうこと?」

楓「多分墜落したってことよ。」

ここな「現場はこの近くですね」

ひなた「この辺捜索隊とか来るのかな?」

楓「少し離れてるから関係ないでしょう。」

あおい「私たちも目撃者だし、警察に連絡したほうがいいのかな?」

ひなた「じゃああおいにお願いするよ。」

あおい「私なの?別にいいけど。」


あおい「あの、香川県の山に登山に来ている者です。」

あおい「飛行機が私の頭上すぐ上を通過して、そのあと飛行機が墜落する音が聞こえました。」

あおい「讃岐山から西の空だったと思います。」

警察「了承しました。ご協力ありがとうございます。」

・・・
その後乗客名簿が読み上げられるのを、友奈たちは聞いた。

アナ『乗客の名簿が入ってきました。ただいまからお1人ずつ読み上げます。敬称は略させてもらいます。』

アナ『アオミネ・ダイキ』

アナ『アカシ・セイジュウロウ』

友奈「青峰、赤司・・・バスケットボールの選手?」

アナ『ヒジリカワ・マサト』

友奈「それアイドルの真斗君のこと?」

・・・
楓「さっきテレビで乗客名簿が読まれてたんだけど、例の飛行機にアイドルの聖川真斗君が乗っていたようなのよ。」

あおい「えー?だったら嫌だな・・・。真斗君死んじゃったら嫌だ・・・」

ひなた「あれ?ファンなの?」

あおい「そんなんじゃないけど」

ここな「yahooのニュースによると、バスケットボールの赤司選手と青峰選手も乗ってたそうです。」

あおい「大変なことになっちゃったな。」

第4話 終わり

第5話 命拾いした人たち

絢瀬家

希「桜ヶ丘航空機がレーダーから消える、か。」

希「なんか大変なことが起きちゃったみたいね。」

絵里「そういえばにこちゃんから聞いたんだけど、今日にこちゃんの弟さんが九州に行くとか行ってたけど大丈夫かな?」

希「確か長崎じゃなかった?」

絵里「そうか。じゃあ関係ないね。」

希「エリチどうしたの?なんかハァハァ言ってるけど。」

絵里「なんでもない。あの飛行機のこと心配だな、って思って。」

・・・
1週間前

絵里「亜里沙、今度は福岡でイベントがあるんだっけ?」

亜里沙「うん。3月3日夕方の飛行機の予約を取った。」

絵里「じゃあ気をつけてね。」


今朝

亜里沙「お姉ちゃん、お腹が痛い。頭も痛い。」

絵里「熱があるの?」

亜里沙「ないみたい。今日寝れば治ると思うけど、一応出発は明日にすることにした。」

亜里沙「予約取り直すよ。」


そして・・・

絵里「亜里沙、今日あんたが乗ろうとしてた飛行機って桜ヶ丘航空・・・」

亜里沙「うん。今ニュース見て寒気がした。あれに私が乗ってたのかと思うと・・・」

亜里沙「怖いよ・・・」

体調が悪かったおかげで例の飛行機に乗らずに済んだ。
まさに命拾いだった。

・・・
一方桜ヶ丘334便に関わっていた人がもう1人
スターライト学園出身のアイドル、星宮いちご。

いちご「もしもし、らいちいる?」

らいち「うん」

いちご「今日これから佐賀の鳥栖に行くんだっけ?」

らいち「うん。1週間くらい帰ってこれないと思う。」

いちご「そうか。1週間か。」

らいち「そういうお姉ちゃんはアイドルなんだから1ヶ月くらい海外に行ってることもあるでしょ。」

いちご「そうだね。」

らいち「じゃあまたね。」

ところが、らいちに超不運なことが。そのときは不運だと思っていたこと。
羽田空港に向かう京急線の平和島駅で人身事故が発生。らいちが乗っていた電車が大森海岸駅と平和島駅との間で止まってしまった。
その間、1時間の立ち往生。

らいち(このままじゃ5時半の飛行機には間に合わないよ。)

電話

らいち『月島さん、電車が止まってしまって5時半までに羽田に間に合わないかもしれないんです。』

らいち『間に合わなかったら払い戻しをお願いします。』

結局電車が動き出し、羽田空港に到着したのは出発の10分前。
当然搭乗手続きは締め切られており、間に合わなかった。

仕方なく次の航空便に振り替え。とはいえ間に合わないことをわかっていて京急電車の車内でマネージャーにキャンセルの連絡を入れていた。

らいち「次の飛行機は全●空か。その次は日●航空だし。どっちも桜ヶ丘より高いんだよな。でも仕方ないか。」

らいち「今回の件から僕が得るべき教訓は、飛行機に乗るときは1時間以上余裕を持つべきってことだ。」

らいち「まあ当たり前のことだけどね。新幹線みたいに出発直前でも乗れるわけじゃないわけだし。」

らいち「ついてないな。」

ついてない。このときはそう思っていた。

18時の羽田発福岡行きに乗り、福岡空港に到着した。
そこで思いがけない事実を知る。

らいち「どうかしたんですか?」

にこ「羽田発17時30分の便がまだ着いてないようなんです。」

らいち「そうなんですか?僕が今乗ってきたのは羽田発18時の便なんですけど。」

らいち(ってことはさっき乗れなかった桜ヶ丘より早く着いちゃったってこと?どういうことだろう?)

途中通ったJR博多駅で、電光掲示板のニュースで事実を知った。

『羽田発福岡行きの桜ヶ丘航空334便がレーダーから消える。522人が乗っており、現在捜索中。』

らいち「え?羽田発福岡行き、桜ヶ丘航空334便ってさっき乗り遅れた奴?」

鳥栖市内のホテルでテレビをつけると、どのチャンネルも桜ヶ丘航空334便のニュースばかりだった。
そのとき、携帯の電源を入れるとお姉ちゃんから何回も電話が来ていたことを知る。

僕はかけ直した。

らいち「もしもし、お姉ちゃん。」

いちご「ら、らいち・・・。無事なの?」

らいち「うん。」

らいち「実は羽田に向かう電車が人身事故で止まっちゃって、5時半の飛行機に間に合わなかったんだ。」

らいち「で、仕方なく次の6時の飛行機で来たんだけど。」

いちご「・・・よかった・・・」

いちご「ぐす、うえーん。」

らいち「お姉ちゃん、泣いてるの?」

いちご「ニュース見た?そのらいちが乗ろうとしてた飛行機が行方不明で、墜落しただろうって・・・」

らいち「今見た。さっき博多駅の電光掲示板にも流れてた。」

いちご「私、その飛行機にらいちが乗ってると思って・・・」

いちご「何度も電話したけどつながらないからやっぱり・・・」

らいち「あ、電源切ってた。ごめん。」

いちご「もう、だったらさっさと電話しなさいよ!」

いちご「乗客の親族は羽田空港に集合って言われたから、今準備してたところなのよ。」

らいち「僕のこと心配してたの?」

いちご「当たり前でしょ!あなたは私の大切な弟なんだから。」

いちご「ぐすっ、死んだかと思ったじゃない。あんたが死んだら私も、お母さんも・・・」

らいち「心配かけてごめん。」

らいち「ありがとう。お姉ちゃんがそんなに心配してくれると思わなかった。」

らいち「用事が終わったらすぐ帰るから。」

僕はあの人身事故のおかげで命拾いした。とても喜べることではない。
もし人身事故が起きてなかったら、そしてあの飛行機に乗っていたらと思うと・・・
でもそのおかげで久しぶりに姉の愛を感じることができた。

今回の件から僕が得るべき教訓は、時には乗り遅れたほうがいいことがあるということだ。
また僕が遅れたことで、マネージャーの月島も命拾いした。

・・・
星宮らいちとは対照的に羽田空港に間に合ってしまったのがバスケ日本代表の2人。
らいちの1本前の羽田空港行きの電車に乗っていた。この1本が明暗を分けた。

車掌「平和島駅で人身事故が発生しました。現在時間調整を行います。」

赤司「平和島って通り過ぎたよな?」

青峰「ああ、今蒲田だ。ということは、危なかったな。」

電車は10分ほど遅れて羽田空港に到着。折り返し電車が本日に限り京急蒲田止まりとなるアナウンスがあった。

赤司「17時30分の便には余裕で間に合ったな。」

青峰「でも危なかったぜ。乗る電車が1本遅かったら飛行機に乗り遅れるとこだった。俺たちついてるな。」

青峰「今回の件から俺たちが得るべき教訓は、飛行機に乗るときは1時間以上余裕を持つべきってことだ。」

赤司「まあ当たり前のことだけどな。新幹線みたいに出発直前でも乗れるわけじゃないわけだし。」

ついている。このときはそう思っていた。

赤司「俺、羽田は久々だな。特に国内線は。」

青峰「そうなのか?」

赤司「高校は空港のない京都だったし、国内の移動は専ら新幹線だ。」

赤司「海外への遠征では成田か関空だし。」

青峰「そうだったな。」

青峰「だが俺は羽田の国際線ターミナルもよく使ってたんだぜ」

青峰「搭乗手続きはあっちだ」

まさに電車1本の差だった。星宮らいちとはこの2人は対照的に京急電車の人身事故に巻き込まれなかったばっかりに、桜ヶ丘航空334便に間に合ってしまい、墜落事故に遭った。

・・・
他にも別の意味で事故を寸前で回避した人がいた。それはμ'sのよく知る人である。

桜ヶ丘航空334便の一本前に、同じ機体の飛行機が北海道の新千歳から羽田に向かっていた。
これに搭乗していたのが北海道でのライブを終えた元A-RISEの綺羅ツバサ、統堂英玲奈、優木あんじゅであった。
当時、3人は地方公演を行うも人気が出ず、低迷していたころだった。

羽田空港到着後

英玲奈「あれ聖川真斗君じゃない?」

あんじゅ「え?あ、本当だ。生だ・・・。あの真斗君と会えるなんて」

ツバサ「だからなんだっていうの。まさかサインもらおうなんて思ってるんじゃないでしょうね?」

英玲奈「ちょっと思った」

ツバサ「今は無名かもしれないけど、いつかあいつより有名になってやるんだから。」

ツバサ「そして空港でもいっぱいサインねだられてやるんだから。」

ツバサ「矢澤にこだって、聖川真斗だって、私たちの敵じゃないくらいにね。」

ツバサ「なんたって私たちはラブライブの初代優勝者なのよ。」

あんじゅ「そうだよね。」

英玲奈「そういえば今夜はラブライブの放送があるんだよね」

あんじゅ「そうだった。でもUTX学院は出れなかったんだよね。ここ数年連続出場してたけど、今年は音ノ木坂学院が強すぎた。」

ツバサ「私たちも冬のラブライブにはμ'sに負けて出れなかったし。」

ツバサ「今や東京が事実上の決勝戦といっても過言ではないくらい。夏の大会は東京から3チーム出てたし。」

矢澤母「虎太郎君、1人だけど係員のお姉さんもいるし、福岡についたらにこお姉ちゃんが待ってるから大丈夫だよ。」

虎太郎「うん。」

矢澤母「飛行機の中では静かにしとくんだよ。」

虎太郎「わかった。」

係員「じゃあ行きましょうか。」

矢澤母「今日はよろしくお願いします。」

虎太郎「行ってきます。」

係員「行ってらっしゃい。」


ツバサ「あの子小学生くらいだよね?」

英玲奈「へえ、小学生が1人で飛行機に乗るんだ。」

あんじゅ「私たちにはそういうのは無理だよね。」

その日ツバサ・英玲奈・あんじゅの3人は人気絶頂のアイドル聖川真斗と、矢澤にこの弟虎太郎を偶然羽田空港で見かけた。
まさかあのあとその人たちが乗った飛行機が墜落するなど、もちろん知る由もなかった。

3人も夜のニュースで事故の一報を聞いた。
そしてその数週間後、墜落した飛行機が自分が乗った飛行機の次の運用の便だったことを知るのだ。

3人はそれを知って凍りついた。

ツバサ「私たち、命拾いしたんだ。」

英玲奈「なんか飛行機に乗るのが怖くなりそう。」

あんじゅ「でも人気が出たら海外にも行かなきゃいけないし・・・」

・・・
夜23時、墜落場所が四国の山中と判明した。

1985年の御巣鷹山事故では、現場の特定が翌朝の日の出後になってしまったが、インターネットの普及や捜索隊の強化もあって今回は墜落から4時間ほどで墜落現場を特定することができた。
だが夜中の救出は難しかった。
その日は深夜アニメも中止となり、TOKYO MXを含めて全テレビ局が夜通し事故のニュースが報道された。

・・・
機内

ドカーン

虎太郎「何の音?」

何かが爆発した音がした

乗務員「皆さん、シートベルトと酸素マスクをして下さい。」


乗務員「皆さん落ち着いて下さい。」

乗務員「不時着に備えてリハーサルしよう。」

乗務員「わかりました。」

既に死を覚悟した乗客の何人かが遺書を書いていた。時代は進化し、メールで遺書を書くものが多かった。
虎太郎も母にあるメールを送っていた。

異常発生から30分、桜ヶ丘航空334便は墜落した。

第5話 終わり

第6話 奇跡の救出、しかし・・・

虎太郎は気づいたら真っ暗闇にいた。そこがどこなのかわからない。
墜落直後、何人かの乗客が励ましあっていた。だがその声はやがて消えていった。
夢なのか現実なのかもわからなかった。できれば夢であってほしかった。

乗客「寝ちゃダメだよ。寝たら死んじゃう。」

誰かの声だった。

上空からヘリコプターの音が聞こえてきた。
助かるかもしれない。しかしそのヘリコプターはすぐに離れていった。

たった一晩が、何日にも、何年にも感じられた。
そして夜明け近く、レスキュー隊が来た。

レスキュー隊「誰かいませんか?」

虎太郎「ここにいます。」

レスキュー隊「生存者がいたぞ。」

レスキュー隊「すぐに助けてやるからな。」

・・・
翌朝、ニュース速報が入った。

アナ『墜落場所の四国の山中で、生存者が1人発見されました。』

穂乃果「へえ、生きてたんだ。よかった。」

雪穂「でも1人だけなんだ・・・」

・・・
午前7時、生存者発見。その後も2人、3人の生存者が発見された。
その後午前10時、ヘリによって救出された。だがそこで、虎太郎の意識は途切れた。

・・・
アナ『生存者の名前がわかりました。』

アナ『矢澤虎太郎、11歳。』

・・・
穂乃果「虎太郎君生きてたの?」

雪穂「生存者、にこ先輩の弟だったんだ。」

・・・
ことり「虎太郎君が生きてたって?」

校長「そうみたいですね。」

・・・
海未「にこちゃん、よかったですね・・・」

・・・
小太郎「生存者、矢澤虎太郎、11歳か。」

小太郎「俺と同い年で同じ名前なのにすごいな。」

鉄平「いや、名前は関係ないでしょ。」

りんご「でもこれならパパとママも生きてるんじゃないかな?」

花陽「矢澤虎太郎・・・、にこちゃんの弟だ・・・。」

花陽「助かったんだ。そうだ、きっと助かる・・・。お兄ちゃんも・・・」

・・・
電話

希「にこっち・・・、虎太郎君、生きてたって。」

にこ「うん・・・、泣きそう・・・、もう泣いてるんだけど・・・。」

にこ「私もすぐにあいつのとこに行ってあげたい」

希「うん、行ってあげて。」

・・・
午前10時、3人の生存者が救出され、ヘリで運ばれた。
その映像は誰もが見守った。もちろん、μ'sのメンバー、そしてにこも。

そのときの視聴率は昼間ながら35%を記録し、その年の年間視聴率で紅白歌合戦に次ぐ2位になる。

ヘリで陸地に運ばれたあと、救急車で香川県内の病院に運ばれる映像もカメラに記録された。
そのうち虎太郎は西木野総合病院高松支部に運ばれた。
しかしそのとき、虎太郎を含めた3人の生存者の意識がなくなった。

誰もが3人の生存者の無事を喜んでいた。しかしそれは束の間のことだった。
3人とも意識不明の重体で、すぐに緊急手術が行われた。

アナ『さきほど救出された生存者3人はともに重体とのことです。』

海未「重体?無事じゃないってことですか?」


親族が見守って、心臓が張り裂けそうになっていた。
あるとき、手術室のランプが消えた。

医師「あの・・・」

医師「申し訳ありません・・・全力を尽くしましたが・・・」

親族「え・・・」

医師「15時11分、ご臨終です・・・」

親族「う・・・」

手術の甲斐なく、生存者3人のうち2人は死亡した。
残る1人、虎太郎も生死をさまよっていた。

・・・
一方、光司の子供たちと花陽は

親戚「誰かが身元確認に行かなければならないのだが、両親はいないし、花陽ちゃんは子供たちの世話があるし・・・。」

花陽「私が行きたいですけど、家で待ってます。親戚の方にお願いします。」


兄からメールが花陽に届いていた。

実は飛行機の中からのメールはどういうわけか遅れて届くようになってたのだ。

『飛行機が今急速に降下している。もう飛行機には乗りたくない。きっと俺は助からない。
花陽、お前を1人にしてしまうことは本当に残念だ。お前のことは絶対に忘れない。
花陽も、俺のことを忘れないでくれ。

小太郎、鉄平、りんごに、どうか仲良く頑張って生きろと伝えてくれ。』

・・・
機内

光司「優子先生、永遠に愛してます。」

優子「何言ってるのよ。まだ死ぬと決まったわけじゃないでしょ。」

光司「多分無理だ。」

光司「もし生まれ変わったら、また結婚して下さい。」

優子「そんなフラグいらないから・・・」

優子「光司君、100年経っても愛していてね・・・。」

・・・
花陽「やめてよ・・・。嘘でしょ・・・。」

花陽「こんなあからさまな死亡フラグは、生きてるってことだよね?」

小太郎「ねえ、花陽お姉ちゃん、行ってきなよ。」

花陽「いいの?」

小太郎「俺が弟と妹の世話するから、花陽お姉ちゃんはお父さんとお母さんを迎えに行ってきて。」

鉄平「きっと生きてるよ。だから連れて帰ってきて。」

花陽「わかった。」

・・・
にこが虎太郎が運ばれた西木野総合病院高松支部に到着。

にこ「西木野総合病院って四国にもあったんだ。」

にこ「でもこんなことで来たくなかったよ・・・」


にこ「お母さん・・・」

矢澤母「大変だったね・・・」

にこ「虎太郎は・・・」

矢澤母「今手術中だって・・・。かなり危険な状態だって・・・。」

にこ「実は虎太郎からメールが届いていたの。あの機内からだと思う。」

そのメールには

1件目
『飛行機が事故を起こしたみたい。みんなメールで連絡を取ってる。だから僕も取ることにした。
お母さん、短い間だったけどありがとう。にこお姉ちゃん、こころお姉ちゃん、ここあお姉ちゃんとも今まで仲良くできなかったけど、感謝してる。これからもみんな仲良くして。
いつもは照れくさくて言えなかったけど、今ここで言うね。
僕を産んでくれてありがとう。

にこ姉ちゃん、こころ姉ちゃん、ここあ姉ちゃんも幸せに生きて。』

2件目
『スチュワーデスさんがリハーサルしてる。あの人たちは諦めてない。
あきらめたらそこで試合終了だ。こんなメールを送っちゃった僕は負けなのかもしれない。

僕もあきらめないぞ!』

にこ「虎太郎の奴!。死を覚悟した状態で、こんなメールが書ける11歳がどこいいるのよ・・・」

にこ「生きてる間、1度だって感謝の言葉を聞いたことないのに。」

矢澤母「むしろ、死が迫ってる状態でしかこういう言葉が出なかったのかもね。」

・・・
虎太郎「にこ、お姉ちゃん。」

虎太郎「僕、そろそろ行かなくちゃ・・・。」

にこ「まるで私が殺したみたいじゃない。」

虎太郎「そんなことないよ。ただほんのちょっと運が悪かっただけ。」

にこ「もういじわるしないから。無視したりしないから。」

にこ「家でゴロゴロしてるだけでいいから・・・」

虎太郎「大丈夫だよ。いい子にしていれば、またいつかお姉ちゃんとも会えるから、そのときまでほんのちょっとのお別れだね」

にこ「やだ。行かないで・・・虎太郎!」

・・・
にこ「は!」

私は飛び起きた。

にこ「夢・・・」

夢であって欲しかった。
まだ虎太郎の手術は続いていた。

夜になっても手術は続いた。そしてついに日付が変わり、事故発生2日目になった。
日付が変わった直後、手術室のランプが消えた。

にこ「虎太郎は、虎太郎はどうなったんですか・・・」

医師「最善を尽くしましたが・・・」

にこ「そんな・・・」

医師「申し訳ございません。0時25分、ご臨終です・・・。」

にこ「うわーん・・・」

にこはその場で泣き崩れた。
20XX3月5日、虎太郎は11年の短い生涯に幕を閉じた。

・・・
そしてテレビでは、救出された3人が病院で死亡のニュースが伝えられた。

アナ『さきほど、生存者と救出されるも重体だったの最後の1人、矢澤虎太郎君12歳の死亡が確認されました。』

ことり「虎太郎君・・・」グス

・・・
穂乃果「私、にこちゃんになんて声かければいいの・・・」

・・・
海未「にこちゃんの弟さん、せっかく助かったと思ってたのに・・・」

・・・
遺族の待機所

続々と遺体が運び込まれ、身元が確認される。
1985年の日本航空123便墜落事故では身元を確認する方法がほとんどなく、腕や足だけという部分遺体が大多数だった。
しかし今回はDNA鑑定が進んだため、五体満足な遺体を発見できたことが多かったが、体の一部が引きちぎれバラバラになった遺体ばかりだった。
首や手足が吹っ飛び、胴体だけが残った遺体、焼け焦げた手や脚が散乱し、地獄絵図と化していた。

あまりにも無残で変わり果てた姿に遺族は皆その場で泣き崩れた。

係員「聖川真斗さんのご家族の方」

その日、アイドル聖川真斗の遺体が確認されると、テレビは大々的に報じた。

花陽は最後まで兄の無事を信じた。だがついにそのときが・・・

係員「小泉光司さんのご家族の方」

花陽「・・・」

係員「小泉光司さんのご家族の方」

花陽は車で連れられて遺体安置所に向かった。

係員「DNA鑑定の結果、光司さんと一致しました。」

棺を開けると・・・

花陽「ウエッ・・・」

頭や腕や足が引きちぎれバラバラになった遺体を見て思わず吐き気がしてしまった。兄のものであると知りながら・・・
生まれてからもっともグロい物を目撃してしまったのだから仕方ない。

花陽「はい。兄のもので間違いありません。」

花陽「うえーん・・・」

花陽(ずっと私と一緒だって言ったのに・・・)

花陽(まだあの子たちのこともあるのに・・・)

花陽(私を1人にしないでよ・・・)

花陽(どうしてこんなことになっちゃったの・・・)

そのとき、テレビに泣きじゃくる花陽が映っていた。
花陽が兄の死を受け入れた瞬間だった。

その様子を、μ'sのメンバーたちも見ていた。

・・・
凛「かよちん・・・」

・・・
穂乃果「かよちゃん可哀想・・・。両親も死んじゃったのに、この年で1人ぼっちなんて・・・」

・・・
ことり「こんなに泣いてるかよちゃん初めて見た・・・」

・・・
海未「花陽に可哀想なことさせてしまいました・・・」

海未「私だけでも力になってあげていれば・・・」

・・・
その後、桜ヶ丘航空334便墜落事故は、乗員乗客522人全員死亡が発表された。
1985年に発生した日本航空123便墜落事故の死者520人を抜き、単独機では世界最悪の航空機事故となった。

第6話 終わり

第7話 さようなら、それぞれの悲劇

・・・
矢澤家

こころ「お姉さま」

ここあ「お母さん。虎太郎はどうなったの?」

にこ「きれいな顔してるでしょ?ウソみたいでしょ?死んでるんだよ・・・。もう動かないんだよ。ねえ、嘘みたいだよね・・・。」

にこ「嘘って言ってよ、虎太郎・・・。」

矢澤母「きれいな顔してることが奇跡よ。ほとんどの遺体が原型を留めていないから・・・」

矢澤母「私のせいだわ。私が行けなくなって、1人で飛行機に乗せたりしたから・・・」

にこ「いや私のせいだ・・・。飛行機を変えたりしたから。私が長崎まで迎えに行ってあげればこんなことには・・・」

にこ「いや、私が安いからって理由で桜ヶ丘航空になんか乗せたから・・・」

虎太郎を殺したのは私だと、自分を責め続けました。あの飛行機に乗せたのは私と母だった。
しかしそんなことを言っても仕方なかった。運命には抗えない。

にこ「あいつ、ついこないだまで注射やジェットコースターも怖がってたほどの怖がりなんだぜ。」

にこ「最近ようやく注射で泣かなくなったけど・・・。」

にこ「その虎太郎があの飛行機の中でどんだけ怖い思いをしたか。」

にこ「死の恐怖なんて注射やジェットコースターの比じゃないだろ。」

希「そうやね。」

にこ「墜落の瞬間、どれだけ痛かったか・・・。」

にこ「まだ小学生なのに、1人ぼっちでどんだけ辛い思いしたか。」

にこ「私だったら声を上げて泣いてただろうな・・・」

にこ「なのにあの虎太郎が、あんなに怖がりで弱虫だった虎太郎が・・・」

にこ「あの恐怖の中でメールで『産んでくれてありがとう』だなんて・・・。そんな言葉が出てくる小学生がどこの世界にいるんだよ・・・。」

にこ「だいたいそれ子供が死に際に言う台詞か?逆だろ。親の死に際に子供が言う台詞じゃねえか。」

にこ「親にとって死に際にそれを言ってくれたら嬉しいが、子供が死に際にそんなこと言われたら一生後悔するだろ。なんで自分より先に逝かせてしまったんだ・・・。」

にこ「私だってそうだ。私たち四兄弟で一番遅く生まれたのに、一番早く死んじまうなんて・・・。」

にこ「それでもあいつは最後に自分以外の誰かを祈ることができた。」

にこ「あいつ、最後の最後に男の意地を見せたんだ。私にはとてもできないこと・・・」

希「にこっち・・・。」

真姫「にこ・・・」

にこ「全部私が悪いんだよ。係を決めるじゃんけんでいつも負けるのも、学園祭のくじ引きで私が外れて講堂が使えなかったのも・・・」

にこ「虎太郎が事故に遭ったのも・・・」

にこ「でもこれは運が悪かったで片付けられる問題かよ・・・」

にこ「希が羨ましいよ。」

にこ「希って生まれてから一度もくじ引きを失敗したことないんだよな。」

にこ「だったらあの学園祭の講堂使用権をかけたくじ引きでもあんたが回していれば当たってたのかな?」

希「あれは、部長のにこっちの顔を立ててあげたんや。」

にこ「今回も、乗る飛行機をあんたが選んでいたら、虎太郎は死なずに済んだのかな。」

希「そんなのウチにもわからないって」

真姫「いつ事故が起こるかなんて誰にもわからないよ。」

にこ「神様って酷いよ。酷すぎるよ。虎太郎の幸せ、全部奪って行ったんだ。」

にこ「私、虎太郎に何もしてやれなかった。長女の私から見たら年の離れた弟だから、ただの子供にしか思ってなかった。」

にこ「何やってたんだろう私。こんなことなら、もっと優しくしてあげればよかった。」

・・・
虎太郎が通っている小学校でお別れ会が行われた。
そして矢澤家でも葬儀が行われた。

お別れ会では虎太郎が機内で死を覚悟しながら母に送ったメールが紹介された。
諸君らも虎太郎君みたいにどんなときでも誰かを祈れる人になってほしい、そのようなことを小学校の校長先生が言っていた。

・・・
こころ「虎太郎、いなくなっちゃったんだね。」

ここあ「そうだね。」

こころ「でもあんまり変わらないけどね」

ここあ「そうだね。そういえばいたよね、って感じ。」

ここあ「いてもいなくてもどうでもいい存在だったな。でもいないとちょっと寂しいかも。」

こころ「言っちゃ悪いけど、不登校だった生徒が死んだとか、退学したようなものかな。」

「虎太郎との思い出なにかある?」

ここあ「家族でキャンプに行った時とか?あまり覚えてないな。お姉さまとの思い出はいっぱいあるけど。」

ここあ「私たち四姉弟で唯一の男だったからね。あいつとは遊ぶ気になれなかった。」

こころ「というか虎太郎のほうが私やここあやお姉さまのこと避けてたし、私たちのこと嫌いなのかな、って思ってた。」

ここあ「正直言ってあいつ邪魔だったけど、本当にいなくなっちゃうと寂しいな。」

こころ「ひょっこり出てこないかな。幽霊とかで。」

ここあ「いたらそれはそれで怖いよ。」

ここあ「幽霊より、バックダンサーとかで」

こころ「なんでバックダンサー?」

ここあ「間違えた。バックダンサーじゃなくて・・・、BLとかで。」

こころ「BL?あんたそういうの読んでたっけ?」

ここあ「違う。ABC・・・。」

ここあ「いやNPB・・・、YMC・・・」

こころ「もしかしてNPCって言いたいの?」

ここあ「うん、それ、NPC。」

こころ「ないよ。人間がNPCになるとか。ABの高松じゃあるまいし。」

ここあ「でも、今頃は死んだ世界戦線で戦ってるのかな。」

こころ「あんな戦線本当にあったら怖いよ。」

ここあ「アインクラッドに閉じ込められてたりするかも。そしてボス攻略目指してギルド無冠の五将で戦ってたり。」

こころ「そんなの実在したらもっと嫌だ。」

・・・
にこ(こころとここあ、今日も夜空見てるんだ。)

こころ「今夜は星が綺麗だね。」

ここあ「いや、都会からは見えないでしょ。」

こころ「見えてるふりだよ。」

ここあ「虎太郎ってお星様になったんだね。」

こころ「うん、多分そう。」

ここあ「虎太郎の星ってどれかな?」

こころ「わかんない。」

ここあ「虎太郎、どこかで私たちのこと見守ってくれてるかな?」

こころ「どうだろう。そうだといいな。」

こころ「あいつならきっと、この星空にも感動しないんだろうな。」

こころ「でももうすぐ生まれ変わるかもよ。貝あたりに。」

ここあ「貝?」

こころ「人間に生まれ変わるとは限らないわけだし。私は貝になりたい、ってドラマあったしね。」

こころ「生まれ変わったら来世は貝かもしれない、ゴキブリかもしれない、アブラムシかもしれない。」

ここあ「そんなのに生まれ変わったら嫌だな。」

こころ「すーぐそこーにアブラムシ~」

こころ「すーぐそこーの虎太郎の頭の上にもアブラムシ~」

・・・
花陽が光司の住む家に帰ってきた。光司と優子は無言の帰宅。

遺体安置所となった体育館で花陽が泣き崩れたところがテレビで放映された。
それを見たμ'sのメンバーたちから花陽に励ましのメールが届いていた。

光司と優子の告別式は花陽の家の近くで行われた。
光司と花陽の両親、優子の親族、光司の子供たち、そして凛が出席した。

親戚「子供たちも可哀想だけど、花陽ちゃんも可哀想。」

親戚「両親もいなくて、兄が唯一の親族だったんでしょ?」

・・・
優子さんの父親がこれからのことを子供たちに話した。

義父「りんごは僕が引き取る。」

義父「小太郎と鉄平はそれぞれ孤児院か、養子に引き取ってもらうことにする。」

義父「小太郎は全寮制の中学校に進学してもいいな。受験がダメでもおじさんの知り合いに養子に引き取ってもらう。」

小太郎「そんな・・・、それじゃあ友達とも、鉄平やりんごとも離れ離れか・・・。」

鉄平「僕たち、離れたくありません。3人で一緒にいたいです。」

義父「気持ちはわかるけど・・・」

りんご「お父さんとお母さんも死んじゃって、お兄ちゃんたちともお別れなんて・・・」

義父「夏休みにでも、会いに来ればいいじゃないか。」

義父「お前たちのことを思って言ってるんだ。」

義父「小太郎はもうすぐ中学生なんだからそろそろ弟・妹離れしなきゃ。」

花陽「ちょっとそれは酷いんじゃないですか?鉄平君とりんごちゃんはまだ小さいんだし、小太郎君だってまだ小学生なんだから。」

義父「花陽、お前は黙ってなさい。」

小太郎「迷惑かけませんから、3人一緒にいさせて下さい。」

義父「わがままを言うな。3人引き取るのは無理だ。」

結局その日が、彼ら3兄弟が一緒に過ごす最後の1日になってしまった。

・・・
花陽「グスッ」

花陽「凛ちゃん、私、1人ぼっちになっちゃったよー。」

凛「大丈夫、凛がいるにゃ。」

花陽「ずっと私のそばにいてくれる?」

凛「もちろん。凛はずっとかよちんの友達だにゃあ」

凛「だから泣かないで」

花陽「凛ちゃん・・・ぐすっ」

花陽「私が泣いてちゃいけないよね。あの子たちはまだ小さいのに両親をなくしてもっと辛いんだから。」

・・・
他にも全国各地で犠牲者の告別式やお別れ会が行われた。

バスケの日本代表、青峰大輝と赤司征十郎。事故から4日後に遺体が確認された。
2人の母校の帝光中学校、赤司の母校洛山高校、青峰の母校桐皇学園で在校生とOBがお別れ会を行った。

アイドルの聖川真斗。事故から3日後に遺体が確認された。
聖川の所属している事務所でお別れ会を行った。


東京都に住むある女性は、30年前の日本航空123便の事故で父親をなくし、今回の事故で今度は息子と娘をなくした。
このことをイギリスで「世界一運の悪い女」という番組で笑い話として取り上げられ、苦情が殺到した。

その他前年の年末ジャンボ宝くじで3億円を当選した男性がこの事故の犠牲になるという悲劇もあった。

・・・
この事故であまりにも大きなものを失った学校があった。

それは今月行われる春の選抜高校野球に出場が決まっていた九州の城西高校。
しかし野球部の主力選手が東京への遠征からの帰りにこの事故に遭ってしまい、全員死亡。

実は城南高校は去年生徒数の減少で廃校の可能性があることが発表されていた。
野球部はそんな状況の中で甲子園出場を決めたのだ。
それもあって来年度はなんとか存続することができた。

しかしそんな廃校の危機に立ち向かっていた城西高校に突然の悲劇。野球部のレギュラーが乗った飛行機が墜落事故。
事故機に城南高校の野球部が乗っていたことが判明すると、マスコミも高校野球ファンも大騒ぎになった。
出場辞退か? 誰もがそう思った。
しかし今回の春の甲子園にどの学校よりも懸けていた城西高校にとって、そう簡単に棄権することはできない。

メンバー全員の遺体が発見されないまま、3月14日に選抜高校野球の組み合わせ抽選が行われた。
この日、高野連は出場の可否が問われる城西高校を1回戦最後の試合、大会6日目の第1試合に組み込むことを決めた。
これは東日本大震災があった2011年に、東北高校に対して行われた手法と同じである。
ちなみに大会6日目の第1試合、城西高校と対戦することになったのは奇しくも事故の犠牲者、バスケットボールの青峰大輝選手の母校、桐皇学園であった。

また城西高校が開幕2日前以降に出場辞退した場合、補欠校の繰り上げ出場は行わず、相手校を不戦勝とすること、
今大会に限り、組みわせ決定は1回戦のみとし、2回戦以降は夏の選手権同様再抽選とすることとなった。
これは桐皇学園が不戦勝となった場合の考慮してのことだった。
もし城西高校が出場辞退した場合は、補欠校を出す場合はそのまま城西高校に代わって大会6日目の第1試合に組み込み、
桐皇学園が不戦勝となった場合は、桐皇学園は2回戦最初の試合、大会6日目の第2試合で開幕戦勝者と対戦とすると発表した。

翌日の夕方、城南高校の校長は選抜高校野球を棄権することを発表した。
これによりまだ開幕まで1週間あったため、補欠1校の繰り上げ出場が決定した。
補欠校の甲子園練習は大会初日の第3試合終了後に行うこととなった。これは2005年に、明徳義塾高校が不祥事で出場辞退し高知高校が繰り上げ出場したときの手法と同じである。

このニュースはかつて同じ廃校という危機を経験したμ'sのメンバーにも響いた。

穂乃果「あの城南高校の人可哀想だよ。」

穂乃果「せっかく甲子園に出れて、そしたら廃校を阻止することができたかもしれないのに。」

穂乃果「こんなのあんまりだよ。」

ことり「廃校って、私たちも向き合ったことだったから他人事だと思えなくて。」

海未「とはいえ、ここ数年は毎年全国でどこかの学校が合併や廃校は出ています。」

海未「しかしこんな形で廃校になってしまったら、あまりにも可哀想です。」

実は野球部は数少ない生徒の半数を占めていたため、あまりにも影響が大きかったのだ。
また城南高校は元々滑り止めとなることが多かったため、4月の新入生も定員を大きく下回った。
さらに事故と関係があるかどうかは不明だが、学校法人が倒産寸前になってしまった。

6月、城南高校は在校生の卒業を待たずに、来年3月に廃校とすることを発表した。

第7話 終わり

第8話 幻の生存者

乗員乗客522人を乗せ香川県讃州市の山間部に墜落した桜ヶ丘航空334便。
残念ながら生存者はゼロに終わった。

しかし、実は1人だけいたのだ、生存者が。それは乗客名簿の最初の方、バスケ日本代表の2人の次の次、4番目に読まれた名前だった。
そしてこの事故では、親族が現場に来なかった乗客が2人いたのである。

・・・
アナ『乗客の名簿が入ってきました。ただいまからお1人ずつ読み上げます。敬称は略させてもらいます。』

アナ『アオミネ・ダイキ』

アナ『アカシ・セイジュウロウ』

アナ『アスミ・カナ』

アナ『アララギ・コヨミ』

アナ『イトウ・マコト』

青峰大輝、赤司征十郎の名前に続き、実は3人目にも有名人の名前があった。
そう。声優、阿澄佳奈である。この名前を聞いたアニメファンの多くが驚愕し2ちゃんねるの声優板は荒れた。

しかし、これはその日のうちに同姓同名の別人であることが判明する。
阿澄佳奈はその日、名古屋でひな祭りイベントを行っていたいうアリバイ(?)があったのだ。
それを見ていた観客からの書き込みもあり、その日のうちに阿澄佳奈の死亡騒動は収まる。
翌日、阿澄佳奈自身がブログに書き込んだことにより正式に無事が確認された。

問題はその次、4番目に読まれた名前だった。

・・・
翼「お待たせしました。羽川翼です。」

ひたぎ「羽川さん、ニュース見た?」

翼「戦場ヶ原さん。ニュースなら見たわよ。飛行機が行方不明で、どうやら墜落したらしいって。」

ひたぎ「アナウンサーが乗客名簿読んでるの聞いた?その中に、『アララギ・コヨミ』って・・・」

翼「聞いた。あれ、阿良々木君なの?」

ひたぎ「阿良々木君、今東京に住んでて、今日は福岡に行くって言ってた。間違いないわよ・・・。」

ひたぎ「だから・・・」

翼「戦場ヶ原さん、落ち着いて。」

翼「阿良々木君は吸血鬼の能力があるじゃない。きっと無事だと思う。」

ひたぎ「それならいいけど・・・」

羽川の言葉通り、阿良々木暦は生きていた。

暦の席は前方だった。前方の乗客は墜落の瞬間、100Gや200G以上の重力がかかり、全員が頭や腕や脚などがちぎれ、即死だった。
当然阿良々木暦も手足がバラバラにちぎれる衝撃を受けたが、不死身の吸血鬼である以上それでも死ぬことはなかった。

・・・
墜落直後

それでも暦は数十分ほど意識を失っていた。

忍「うぬ、そろそろ目を覚まさないか。」

暦「その声は・・・、し・・・忍か。」

忍「かなりの重傷じゃの。手や足がもげておる。」

忍「うぬ、儂の血を吸え。そしたら助かるぞ。」

暦「うん、ありがとう。」

暦「飛行機が墜落したようだが、一体ここはどこなんだ?」

忍「儂にもわからん。だがかなり深い山の谷底のようじゃ。夜じゃし、人間が助けに来るのはまだまだ時間がかかりそうじゃな。」

暦「それじゃあ助からないじゃないか。」

忍「安心しろ。そろそろあいつが助けにくるころじゃろう。」

暦「あいつ?」

余接「イエーイ、助けにきたよ、鬼のお兄ちゃん、忍お姉ちゃん。」

余接「こんなところで[ピーーー]ると思うな。鬼いちゃんを[ピーーー]のはこのボクだ。」

暦「斧乃木ちゃん・・・」

暦「なんでこの場所がわかったんだ?まだ誰も救助に来てないのに。」

余接「臥煙さんから聞いたんだよ。早く鬼のお兄ちゃんを助けに行きなさいって。」

暦「あ、そうか。あの人はなんでも知ってるんだっけ。」

暦「なあ、この中に生きてる人が何人かいるようだ。その人も助けられないか?」

余接「それは無理だ。それは人間がすることだ。」

暦「こんな夜の山奥、救助はいつ来るかわからない。最悪明日の朝になるかもしれないんだぞ?」

暦「このままじゃ生きてる人まで死んでしまうじゃないか。」

余接「目を覚ませよ、鬼のお兄ちゃん。ここで他の人まで助けたら、その人に鬼いちゃんやボクたちのことまで知られて厄介なことになる。」

余接「それだけはしてはならない。」

暦「そうか。」

暦「僕にできることはせいぜいまだ生きてる人の無事と、亡くなった人の冥福を祈ることしかないのか。」

忍「さあ、早くしないと人間が来てしまう。そいつらにもうぬや儂の正体を知られてはいかぬ。」

余接「じゃあ行くよ、ボクに捕まって。」

暦「わかった。」

余接「アンリミテッドルールブック・離脱版、ボクはキメ顔でそう言った。」

こうして阿良々木暦はこっそり墜落現場の山を抜け出し、桜ヶ丘航空334便に乗っていたことがウソのようになに食わぬ顔で自分の街に帰っていった。

・・・
その後墜落現場から阿良々木暦の遺体は発見されず、また阿良々木暦の親族も現れなかったため、報道では謎の搭乗者と言われて一部の雑誌で取り上げられた。
実際は阿良々木暦は生きているわけだが、当然ながら生存は確認されなかったため死亡者の数に入っている。

親族の待機所に親族が来なかった乗客は2人、そのうち1人はもちろん阿良々木暦である。
もう1人は、乗客名簿で阿良々木暦の次に名前があった『イトウ・マコト』、伊藤誠である。

伊藤誠の席は後ろの方であったため、遺体の損傷が少なくすぐに発見された。
持っていた搭乗券の座席により伊藤誠の遺体であると判明したが、伊藤誠の親族はとうとう最後まで現れず、身元不明のまま桜ヶ丘航空の合同慰霊祭で火葬された。

・・・
今回、報道で乗客名簿が読み上げられたのはNHK、日本テレビ、フジテレビの3局だった。
そのうち日本テレビではこのように読み上げられていた

アナB『堺さん、乗客名簿が入ってきました。』

アナB『読んでいただけますか?』

アナA『はい。』

アナA『ただいまから敬称は略させていただきますが、お1人ずつ読み上げます。』

アナA『アオミネ・ダイキ』

アナA『アカシ・セイジュウロウ』

アナA『アスミ・カナ』

アナA『アヤセ・アリサ』

アナA『アララギ・コヨミ』

アナA『イトウ・マコト』

4番目に読み上げられた名前はそう、絵里の妹の亜里沙である。
当日キャンセルした亜里沙が間違って名簿に入ったままであった。

幸いμ'sの元メンバーが見ていたのはNHKかフジテレビだったため『アヤセ・アリサ』の名前を聞くことはなかった。
しかし亜里沙の元同級生には日テレを見ていた人もいて、その後問い合わせの電話が相次いだという。

ちなみに

アナA『ホシミヤ・ライチ』

同じく出発直前にキャンセルした星宮らいちの名前も入っていた。
それを聞いたらいちの同級生により、その日は姉の星宮いちごに電話が相次いだ。

第8話 終わり

第9話 花陽の決断

事故から半年くらい過ぎた頃、花陽は光司の長男、小太郎が学校を休んでるという知らせを聞いた。しかも昼間はどこかをうろついていると。
小学校6年生になり、転校して亡くなった両親だけでなく友達とも弟や妹とも離ればなれになってしまった。
それがあまりにも小太郎の精神に影響したのだ。

花陽「ねえ小太郎君、学校に行ってないって本当?」

小太郎「本当。かれこれ3ヶ月くらいかな。」

花陽「休んでるとどんどん行きづらくなるよ」

小太郎「行ったって仕方ねえよ。学校にだってこの家にだって俺の居場所はないんだ。」

小太郎は小学校を卒業するまでの1年間限定で両親を亡くした子供が生活する孤児院に預けられた。
今、小太郎は学校でもこの施設でもいじめにあってるらしい。

小太郎「なんでいつもこうなるんだよ。」

小太郎「もう家族と別れるのは懲り懲りだっていうのに!」

気持ちはわかる。小太郎は小さい頃実の父親が浮気、両親は離婚した。その後母親は花陽の兄と再婚したのだ。
小太郎にとっては産みの親に続いて、育ての親も、兄弟もいなくなってしまった。

施設の人に話を聞くと、入った当初は毎日のように夜1人で泣いていたという。最近でもたまに1人で泣いているらしい。

花陽「ねえ小太郎君はどうしたいの?なにか願いがあるなら聞くけど。」

小太郎「なんでもいい。もう一度家族で暮らしたい。」

小太郎「父さんと母さんは死んじゃったから仕方ない。でもせめて鉄平とりんごと一緒にいさせてほしい。」

花陽「そうか。」

小太郎「俺、できるお兄ちゃんでいたくて頑張ったんだ。あいつらが誇れる兄でいること、それだけが俺の生き甲斐だった。」

小太郎「あいつらとは産みの母は同じでも、父が違う。本当の兄弟じゃないかもしれない。」

小太郎「アニメとかドラマでよくあるじゃん。血のつながりがなくて、本当の兄弟じゃないせいで、理由で間に壁があって、いつも仲が悪いって兄弟。」

小太郎「最初は俺もそうなっちゃうのかな、って思ってた。」

小太郎「でもあいつら、俺を本当のお兄ちゃんだと思ってくれてた。俺はそれが嬉しかったんだ。」

小太郎「俺はそれに応えたくて、あいつらが誇れる兄でいようと決めたんだ。」

小太郎「なのにそれを親戚のおじさんが全部奪っていった。友達とも別れて、知らない人だらけのこんなところに連れてこられて。」

小太郎「俺にはもう何も残されてない。もう生きてる意味もない・・・。」

そうだったんだ。小太郎君はあの子たちのお兄ちゃんでいたい。それだけが彼の願いだった。
そんなささやかな幸せまで、あのおじさんは奪ってしまったんだ。

そのあと鉄平君とりんごちゃんにも会ったけど、みんな答えは同じだった。兄弟と暮らしたい。

なんとか、3人を一緒にさせてあげたい。そのためには何をすればいいだろう。
それは自分でもわかっていた気がした。

私はその翌日凛ちゃんに相談した

花陽「小太郎君、このこたろう君はにこちゃんの弟の方じゃなくて、私のお兄ちゃんの息子のほうなんだけど、小太郎君は両親だけでなく友達や弟や妹とも離れ離れしなって、すごく落ち込んでるの。」

花陽「そして小太郎君に聞いたら、やっぱり兄弟で暮らしたいって。2人のお兄ちゃんでいたいって言ってた。」

花陽「私、小太郎君の願いを叶えてあげたい。また3人を一緒にいさせてあげたい。」

花陽「でもそのためにはどうすればいいのかな、って。」

凛「そうだね。小太郎君や子供たちを助けてあげたいって気持ちはわかる。」

凛「それは簡単なことだよ。かよちんが」

凛「・・・」

凛「すればいいと思うにゃあ。」

花陽「それ、私もそう思った。そのやり方しかないよね。」

花陽「でも私にそんなことできるのかなって。」

花陽「無理だよ。私がお願いしたって親戚のおじさんも認めてくれるわけがない。」

凛「かよちんなら大丈夫だよ。」

そして私は優子さんのお父さんの家へ

花陽「小泉花陽です。お邪魔します。」

祖父「何の用だ?」

花陽「小太郎君に会ってきました。鉄平君やりんごちゃんとも。」

花陽「みんな3人一緒にいたいと言っています。」

祖父「そんなこと知ってる。」

花陽「小太郎君は、2人のお兄ちゃんでいることが生き甲斐だったんです。」

花陽「それすら失って、毎日のように泣いてるそうです。」

花陽「家族は、兄弟は一緒にいるべきなんです。」

祖父「だから無理だ。3人一緒に引き取れる者などいない。」

花陽「私に引き取らせて下さい。」

祖父「何の権利があってそんなこと言ってるんだ。」

祖父「君は鉄平やりんごとは血のつながりがあっても、小太郎とは赤の他人なんだぞ。」

花陽「そんなの関係ないです。」

花陽「小太郎君が可哀想、2人が誇れるお兄ちゃんでいたかったって。」

花陽「鉄平君やりんごちゃんも3人で一緒にいたいって。」

花陽「3人から兄弟を取っちゃうのかあまりにも可哀想。」

花陽「家族は一緒にいなきゃダメです!」

・・・
花陽「小太郎君、神田にある私の家に来ない?」

花陽「そこであなたたちはまた3人で一緒にいられるよ。」

小太郎「花陽お姉さん、それってまさか・・・」

花陽「私が3人を引き取ることにした。」

小太郎「そんなの、親戚のおじさんやおじいちゃんが認めるわけがない。」

花陽「ちゃんと許可取ってきたよ。」

花陽「おじいちゃんもよろしくって」

・・・
祖父「君だったらそう言うと思ってたよ。」

祖父「心を鬼にしてああいうことを言ったが、本当は俺も3人を引き裂くのはあまりにも可哀想だと思っていた。」

祖父「君が引き取りたいというのを待ってたんだ。」

花陽「何ですかそれ。だったら最初から言ってくれれば」

祖父「頼めるわけないだろ。こんなことする義務は花陽にはないんだ。」

祖父「花陽がこの子たちのために自分の青春を犠牲にするようなことがあってはいけないんだ。」

花陽「大丈夫です。私、あの子たちといると楽しいので。」

花陽「それに私には大切な親友もいますから。」

・・・
小泉家

小太郎「お邪魔します。」

花陽「今日からここがあなたたちの家。ここで3人仲良く暮らしてね。」

花陽「できれば私のこと、お母さんのように思ってほしいな。」

鉄平「本当に僕たち、また一緒に暮らせるんだ。」

小太郎「夢みたい。」

りんご「あたし、お兄ちゃんたちとお別れしてとても寂しかった・・・。」

小太郎「ぐす・・・」

小太郎「花陽お姉さん、本当にありがとうございました。」

小太郎「俺のわがままのために、こんなことしてくれて。」

花陽「当然のことをしたまでなの。むしろ半年前に言うべきだった。」

花陽「あのとき、私は3人を引き取る勇気がなかった。」

花陽「おかげで半年間もあなたたちに寂しい思いさせて、小太郎君なんか不登校になっちゃって。」

花陽「遅れてごめんなさい。」

小太郎「いいんです。俺、花陽お姉さんに感謝してます。」

鉄平「4人いれば、お父さんとお母さんが死んじゃった悲しみも分け合える気がする。」

小太郎「そうだよな。」

花陽「ねえ、パパも小太郎君が本当の父親だと思ってくれて嬉しかったって言ってたよ。」

・・・
光司「小太郎の母親は優子だが、小太郎の父親は俺ではない。小太郎の父親はあくまで優子先生の前の夫だ。」

光司「アニメとかドラマでよくあるからな。再婚して連れ子の父親になったのはよかったが、本当の父親じゃないからいつもギクシャクしてる親子。」

光司「俺もそうなっちゃうのかと心配してたんだけどな、小太郎は俺を本当の父親のように思ってくれて嬉しかった。」

光司「いや、違うな。むしろ俺が本当の子供じゃない小太郎を愛せるのか心配してたのかも。」

光司「でも安心した。俺は小太郎のために誇れる父親でいないとね。」

・・・
花陽「パパも小太郎君と同じで、血のつながりがないのが不安だったけど、きっと最後まで本当の親子のようにいれてよかったと思う。」

小太郎「ならば花陽さん、俺のことはどう思ってくれますか?」

花陽「年齢的には弟かな。親子にしては差が小さいし。」

小太郎「そうですね。」

花陽「これからよろしくね。」

花陽「それと今日は私の親友を呼んだんで。」

それは今回の決断に、私の背中を押してくれた人。

・・・
凛「それは簡単なことだよ。かよちんが3人と一緒に暮らせばいいと思うにゃあ。」

花陽「それ、私もそう思った。そのやり方しかないよね。」

花陽「でも私にそんなことできるのかなって。」

花陽「無理だよ。私がお願いしたって親戚のおじさんも認めてくれるわけがない。」

凛「かよちんなら大丈夫だよ。」

・・・

「ピンポーン」

花陽「あ、来た。」

凛「こんばんは。みんな来てたんだにゃあ。」

凛「星空凛です。」

真姫「西木野真姫です。よろしくお願いします。」

小太郎「あの、2人もμ'sだったんですか?」

真姫「そう。まあ結成したのは私たちの1つ上の先輩なんだけどね。」

花陽「今日は鍋パーティーだから。」

凛「すごーい。凛も手伝うにゃ。」

花陽「凛ちゃんって今は料理上手くなったの?」

凛「任せといて。」

花陽「鍋といっても、食材少ないし、シンプルなおかゆにしようかな。」

真姫「まさかサム●タン」にするんじゃないわよね?

花陽「それは私にも無理。」


真姫「これから3人でこの家で暮らすの?」

花陽「うーん、もしかしたらここ神田よりお兄ちゃんが住んでた菊名の家の方が広いしいいのかもしれない。」

花陽「でも凛ちゃんも協力したいって言ってるから。」

凛「できればかよちんにはここにいて欲しいにゃ」

こうして私と3人の子供たちの新しい生活が始まった。

第9話 終わり

第10話 虎太郎の最後の願い

・・・
(AA略)

にこ「そうだ。これは夢なんだ。」

にこ「にこは今、夢を見ているんだ。」

にこ「目が覚めたとき、虎太郎はまだ11歳。」

にこ「起きたら今日もあいつは学校に行って、にこの見てないところで暴れてきて、帰ってきたらあいつと一緒に遊んでやるんだ…」

にこ「・・・」

にこ「夢でしょ?夢だよね?」

にこ「夢って言ってよ・・・」

にこ「虎太郎・・・」

・・・
私、矢澤にこの三番目の妹、矢澤ここあはかつて心臓の病気で入院していた。
私が高校を卒業し大学に進学した年の夏のこと、移植しないと救えないと言われた。

そんなとき、ある人がここあに心臓を提供してくれた。
ここあは縁もゆかりもなく会ったこともない人に命を救われたのだ。

それを見ていた虎太郎は、臓器提供の意思表示をするカードにサインをした。
小学校の保健の先生からもらったものなのだろうか。母親もそれに同意していた。

自分も臓器を提供して誰かの命を救いたい、それが実の姉であるここあの命を救ってくれた恩返しだと思ったのだろう。
虎太郎はその後どこへ行くときもそのカードを持っていった。

あの事故の日、機内では虎太郎は母へのメールの他にも、乗客にある呼びかけを行っていた。

虎太郎「このカードを持ってる人いますか?」

虎太郎「これは臓器提供の意思表示のカードです。」

虎太郎「これにサインすれば、自分が死んでもここにいる誰かを救うことができるかも知れない。」

虎太郎「もし自分の命が尽きても、その命が人のために使われる。生きてきた意味を作れるんだ。」

虎太郎「持ってる人がいたらサインして下さい。」

青峰「お前ガキのくせに何偉そうなこと言ってるんだ?」

真斗「こんなときに死ぬことなんか考えるな。まだ死ぬと決まったわけじゃない。」

虎太郎「そんなことわかってます。でも不時着したときにも重傷者が出るかもしれない。」

虎太郎「そのときにこのカードがあれば・・・、その人を救える。」

虎太郎「それにここにいる人以外にも、心臓の病気とかで臓器を必要としてる人がいます。その人にこのカードで・・・」

赤司「子供が勝手に仕切ってるんじゃない。機内では静かにしろ。」

虎太郎の呼びかけは無視された形になったが、実際は機内で何人かカードを持ってる人がサインをしていたようだ。
客室のボイスレコーダーにこの虎太郎の声も録音され、テレビで紹介されたりyoutubeやニコニコ動画にもアップされていた。

しかし事故で乗員乗客522人全員死亡。虎太郎の臓器も提供できる状態ではなかった。
自分も臓器を提供して誰かの命を救いたいという、虎太郎の最後の願いも叶わなかった。

・・・
にこ「あいつ、死を覚悟した状態で母への感謝のメールだけでなく、臓器提供まで考えたたのか。」

にこ「縁もゆかりもなく会ったこともない人のことを考えたたなんて・・・」

にこ「虎太郎はなんていい奴なんだ。それでも小学生かよ。」

にこ「私なんて足元にも及ばなかった。」

にこ「スクールアイドルとか、学校を廃校の危機から救うとか、そんなことでヒーロー気取りだった私がバカみたい。」

にこ「私はそんな立派な弟を無視し続け、冷たくしてきたんだ・・・。」

これほど自分の愚かさを嘆いた日はなかった。

・・・
この事故のあと、にこは芸能活動を休止した。
数ヵ月後に再開したが、今までのように歌えなくなった。

自分の弟が突然いなくなった。それがあまりにも精神的にきつかった。
そのせいで、声が出なくなった・・・

ある日、アイドル研究部の旧友から電話がかかってきた。相手は穂乃果

穂乃果「もしもし、にこちゃん。」

にこ「あ、穂乃果。」

穂乃果「にこちゃん、虎太郎君が死んだこと今でも自分のせいだと思ってるの?」

穂乃果「そんなのにこちゃんらしくないよ。どんなときでも明るく笑顔だったじゃない。」

穂乃果「学園祭のくじ引きを外したときも、ことりちゃんの留学のときも。」

穂乃果「落ち込んでる私に喝を入れてくれたにこちゃんはどこに行っちゃったの?」

にこ「ネットの書き込みも、マスコミも、みんな私を責めるのよ。」

とある雑誌に矢澤にこは弟の虎太郎に格安航空会社である桜ヶ丘航空を勧め、弟は事故にあったと書いた。
それを見た心無いファンから罵声を浴びせられるようになった。マスコミから興味本位のインタビューもあった。

とても歌手としての活動を続けられる状態ではなかった。

半年前、CDがオリコン6位を記録し、さらに事故の1週間前に発売されたシングルは3位を記録したが、
事故が発生するとあっという間にオリコンから消えた。

ことり「にこちゃん、酷い人もいるけど、ファンはみんなにこちゃんが帰ってきてくれることを願ってるよ。」

海未「私もあなたの新曲を楽しみにしてるんです」

にこ「人は、1人じゃ生きていけないよね。」

にこ「私もそうだった。今の自分があるのは私だけの力じゃないってことを。」

にこ「でも虎太郎は、あいつはずっと1人だった。ずっと1人で生きてきたようなもんだった。」

にこ「私にも、家族にも頼ったところを見たことがない。」

にこ「あの日もそうだった。虎太郎は最後の最後まで1人ぼっちだった。」

にこ「虎太郎は1人寂しく死んでいったってのに、私はまた誰かと助け合って生きていこうなんて虫が良すぎるよ。」

海未「まるでいつかの穂乃果ですね。」

穂乃果「そうだね。」

にこ「私、どうすれば・・・」

希「にこっち、このまま芸能活動をしないなら暇なのよね?」

にこ「そうかもね。」

希「だったらちょっと協力してほしいことがあるんやけど。」

気づけば事故から1年が経とうとしていた。私も1年間芸能から離れていた。

希「虎太郎君が通ってた小学校で今月卒業式があるんだけど、そこにサプライズで出て欲しいの。」

にこ「サプライズ?私が?」

絵里「よくある話なんですけど、事故とかで亡くなった同級生にも卒業証書を手渡すっていう。」

絵里「だから虎太郎君もそうなるみたい。」

海未「単なる病気とかじゃそういうの少ないけど、これだけの大事故だったからね。虎太郎君に限らず、事故で亡くなった小学生には卒業式で卒業証書を手渡してる。」

海未「受け取り役はにこのお母さんになるそうですが、にこにはサプライズゲストとして卒業式に出てもらうことにしました。」

にこ「そう。」

にこ「でも私、何をすればいいの?」

絵里「卒業生の方、虎太郎君の同級生に手紙を書いたらどうかな。来賓の人の祝辞みたいに。」

にこ「私が祝辞?そういうの読んだことないけど、そこまで言うならやってみるよ。」

にこ(とはいえサプライズだ。歌手である以上、私は歌もプレゼントしなきゃいけないだろう。)

にこ(しかし今の私に歌うことなんてできない。)

にこ(これじゃあただの無関係者。)

・・・
こころ「おかえりなさいませ。お姉さま。」

ここあ「おかえり、お姉ちゃん。」

にこ「ただいま、こころ、ここあか。」

にこ「今日もこの3人か。いつも通りだけど、やっぱり寂しい。」

にこ「本当はあと1人いるはずだった。まあその1人は生きてる間はいてもいなくてもどうでもいい存在だと思ってた。」

にこ「失って初めていてほしかったと思うなんて。」

こころ「私も同じです。弟なんていらないと思ってたけど、本当にいなくなっちゃうと心に穴が空いてしまった気分。」

ここあ「ここあも同じかな。」

にこ「こころ、ここあ、知ってる?にこはあんたたちのお姉ちゃんじゃなかったころがあるんだよ。」

こころ「どういうこと?」

にこ「生まれてから最初の6年間、にこは一人っ子だったし、次の2年間、にこは二人姉妹だった。」

にこ「6年経ってようやくにこはこころのお姉ちゃんになり、その2年後にここあのお姉ちゃんになったんだよ。」

こころ「そういうことですか。」

にこ「でもあんたたちは生まれた時からにこの妹だったんだよ。」

にこ「こころはにこの妹で、ここあはにことこころの妹だった。そうじゃなかったときはひと時もない。」

にこ「それと、こころとここあも、虎太郎のお姉ちゃんじゃなかったときがあることはわかるよね?」

にこ「今から12年前、あんたたちは虎太郎のお姉ちゃんになったんだ。」

こころ「そうですね。」

ここあ「じゃあ今はもうここあは虎太郎のお姉ちゃんじゃないのかな?」

にこ「それは違う。虎太郎はこの世からはいなくなってしまったけど、私たちの心の中に存在してる。」

にこ「永遠ににこやこころやここあの弟で、にこたちは虎太郎のお姉ちゃん。そうでなくなることはない。」

にこ「あいつのためにも、虎太郎のことは忘れないであげてね。」

こころ「うん、絶対忘れません。」

ここあ「ここあも絶対忘れないよ。」

・・・
絵里「希、今日はどこに行くの?」

希「小学校の教師と打ち合わせがあるんで。」

絵里「打ち合わせ?卒業式のこと?」

希「そう」

希「ついでに児童への発表もある」

絵里「児童ににこのことバラすの?それじゃあサプライズにならないでしょ」

希「どうやろう。いいやり方があるんや。」

・・・
そして神田神保町にある小学校の卒業式。
実はこの学校は穂乃果とことりと海未が通っていた小学校でもあるらしい。

6年生2クラス全員の名前が呼ばれ、卒業証書授与が終わった。
そして最後に

教頭「今回は、昨年3月の航空機事故で亡くなった矢澤君の卒業証書授与も行います。」

教師「矢澤虎太郎」

矢澤母「はい。」

卒業証書を受け取るのはにこたちの母親。
その後母親がコメントをする。

矢澤母「皆さんの同級生の矢澤虎太郎は昨年の3月3日に起きた航空機の墜落事故で亡くなりました。」

矢澤母「本当は今日この場所にいるはずだった息子、しかしここにはいない息子。」

矢澤母「その日私は羽田空港まで虎太郎を送ったあと、家に帰ってきて夕食の準備をしていたらテレビで飛行機が行方不明になったというニュースを聞いて、頭が真っ白になりました。」

矢澤母「私はまだ小学生の息子を1人で飛行機に乗せてしまった上、こんな事故に巻き込ませてしまったと、自分を責めました。」

矢澤母「その後乗客の家族が集まる体育館に行き、夜が明けるとある知らせが入ってきました。生存者がいたというニュース、そしてその生存者の1人が虎太郎であったのです。」

矢澤母「私は泣くほど喜んで、とてもホッとしていました。」

矢澤母「テレビで虎太郎を救出されるところを私も見ました。本当によかった、救出してくれた皆さんありがとうと、感謝の気持ちでいっぱいでした。」

矢澤母「しかし、そのとき虎太郎は危険な状態で、すぐに手術を受けることになりました。」

矢澤母「病院で私は祈るように手術室の前に座っていました。」

矢澤母「しかし手術の甲斐なく、翌日の深夜、虎太郎は11年の短い人生を終え天国に旅立ちました。」

矢澤母「私はどうして虎太郎にもっと好きなことをやらせてあげなかったんだろうと、失って初めて思い、後悔しました。」

矢澤母「虎太郎は飛行機の機内の中で自分の死を覚悟しながら、『僕を産んでくれてありがとう』というメールを私に送っていました。」

矢澤母「それを見て、彼は短かったけど幸せな人生のだろうか、そういう思いを感じました。」

矢澤母「また私の娘で虎太郎の姉であるここあが、心臓の病気で心臓移植を受けたことがありました。」

矢澤母「それを見ていた虎太郎は生前、自分も臓器提供をしたいと言って書面のカードにサインしておりました。」

矢澤母「彼は最後に、世界のどこかで自分の臓器を必要としている人のことを思っていたのでした。」

矢澤母「私はその思いも受け継ぎたいと思います。」


矢澤母「虎太郎と仲良くしてくれた皆さん、ありがとうございました。」

矢澤母「虎太郎はきっと天国で皆さんを見守ってくれていると思います。」

第11話に続く

第11話 虎太郎の卒業式

今年の卒業文集に、虎太郎の作文はもちろんない。
その代わり母親が保護者としての思い出の作文が載っている。
そして虎太郎があの飛行機の中で死を覚悟したときのメールでの遺書が文集の代わりに載せられていた。

・・・
飛行機が事故を起こしたみたい。みんなメールで連絡を取ってる。だから僕も取ることにした。
お母さん、短い間だったけどありがとう。にこお姉ちゃん、こころお姉ちゃん、ここあお姉ちゃんとも今まで仲良くできなかったけど、感謝してる。これからもみんな仲良くして。
いつもは照れくさくて言えなかったけど、今ここで言うね。
僕を産んでくれてありがとう。

にこ姉ちゃん、こころ姉ちゃん、ここあ姉ちゃんも幸せに生きて。

スチュワーデスさんがリハーサルしてる。あの人たちはまだあきらめてない。
あきらめたらそこで試合終了だ。こんなメールを送っちゃった僕は負けなのかもしれない。

僕も諦めないぞ!

・・・
教頭「続きまして、今日は特別ゲストが来ております。」

卒業生や保護者がざわめき始める。
いよいよサプライズのにこの出番。

教頭「高校生のスクールアイドルの全国大会、ラブライブの第2回大会で優勝したμ'sのメンバーで、現在歌手として活動している、矢澤にこさんです。」

教頭「この方は矢澤虎太郎君のお姉さんでもあります。」

式場から歓声があがる。

教頭「それでは矢澤にこさん、どうぞ。」

拍手に迎え入れられ、にこが壇上に立つ。

にこ「皆さん、ご卒業おめでとうございます。」

にこ「矢澤にこです。私も卒業というものには深い思い入れがあります。」

にこ「小学校や中学校では、卒業式では泣かないようにしようと強がっていても、泣いてしまうのが私でした。」

にこ「私は高校ではスクールアイドルをやっていました。」

にこ「ここにいる皆さんで知っている方もいるかもしれませんが、音ノ木坂学院高校のスクールアイドル、μ'sのリーダーとして高校3年生の冬にあった第2回のラブライブで優勝しました。」

にこ「その全国大会の直前、μ'sのメンバーで一緒に海に行ったとき、私は生まれて一番綺麗な夕日を見ました。」

にこ「海といっても冬でしたから泳ぐことはできないし、ただ眺めてただけなんですけどね。」

にこ「みんなで海を見ながら、もうすぐ楽しかったスクールアイドル生活が終わっちゃうんだと思うと、思わぬ涙が出てきてしまって、気づいたらみんな泣いてました。」

にこ「そしてラブライブの全国大会のあと、全力を尽くせたことに感動して、そのときもまたみんな泣いてしまいました。」

にこ「そういうところで泣いてしまったためか、小学校や中学校のときと違って、高校の卒業式では意外に落ち着いていて、笑顔でいれました。」

にこ「私はスクールアイドルで大切な仲間に出会うことができました。今でも最高の思い出です。」

にこ「皆さんも6年間の小学校生活で、色々な思い出があるでしょう。」

にこ「4月からは中学生、3年後には高校生になるわけですが、これからの人生で最高の思い出を作ってほしいな、と思います。」

にこ「さて、さきほど私の母のスピーチにもあったように、弟の虎太郎が去年の3月3日の航空機事故で亡くなりました。」

にこ「私は歌手としてデビューし、あの日は福岡でライブをしていたのですが、福岡に弟を迎えに行ったとき、事故の一報を知りました。」

にこ「高校のときの友達から励ましのメールをもらって、みんなが無事を祈ってくれてることを知りました。」

にこ「そして友達のみんなが同じ時間にそれぞれ自分の場所で、虎太郎が救出されていくのをテレビで見ました。」

にこ「スクールアイドルのとき以来、みんながひとつになれた瞬間だったのかもしれません。」

にこ「しかし残念ながらその時点で虎太郎は重体で、医者の皆さんが懸命に手術を行うも力及びませんでした。」

にこ「あのあと私は弟が死んだショックで歌手の活動を休んでしまい、そのままやめてしまいました。」

にこ「今回この卒業式に呼んでいただいて、ありがとうございます。」

にこ「本当は自分は歌手である以上、皆さんになにか歌をプレゼントしなければならないのかな、って思ったのですが、結局何も浮かびませんでした。」

にこ「・・・本当は私にサプライズをする資格なんてないんです。」

にこ「だって虎太郎をあの飛行機に乗せてしまったのは私だから。」

にこ「皆さんの友達を殺したのは私だから・・・。」

にこ「そして私は虎太郎に何もしてあげることができませんでした。」

にこ「両親が出張に行っていないとき、母親代わりになってお世話したことはあったけど、それくらい。」

にこ「四姉弟で唯一の男の子だったから一緒に遊んだりすることも少なくて、距離を置いていた。」

にこ「私はアイドルのことに夢中になって、二人の妹はアイドルの私に夢中になって、私は虎太郎のことを気にかけてませんでした。」

にこ「私は、虎太郎に酷いことをしてしまったんじゃないかと、彼が死んでから初めて気づいて後悔しました。」

にこ「ちゃんとスピーチの原稿用意して来たのに・・・・。すいません・・・。すいません・・・。」

にこはスピーチのあと泣き崩れてしまった。
それを見ていた小学校の卒業生

児童「6年1組の対馬裕太です。」

児童「僕は矢澤君と1年生からの同級生でした。」

児童「矢澤君は生前、お姉さんのにこさんのことをとても誇りに思ってると言っていました。」

児童「1人ぼっちで誰もついてきてくれなかったのに、それでもアイドルをやることをあきらめなかった。」

児童「そしてメンバーを集めて全国で一番になれた。だからお姉さんはすごい、僕もお姉さんに負けないようにしたいって言ってました。」

にこ「虎太郎・・・」

・・・
虎太郎が2年生のときに書いた作文

『2年1組 やざわ こたろう
ぼくにはあまり友だちがいません。おうちでも、おとこのこはぼくだけだからおねえちゃんたちともなかよくできません。
でも、つしまくんだけはぼくとなかよくしてくれます。
つしまくんには九州に住んでるいとこのおにいちゃんがいます。おにいちゃんはとてもかっこよくて、やさしいひとです。
(中略)
一番上のおねえちゃんは、高校のスクールアイドルで日本一になりました。
いつもはぼくとあそんでくれないおねえちゃんだけど、ほこりにおもっています。』

・・・
児童「矢澤にこさんは、僕たちにとっても誇りです。」

児童「だから矢澤君のためにも、にこさんはもう一度歌手に復帰して欲しいです。」

児童「にこさん頑張れ~」

児童「またアイドルに戻ってきてよ~」

にこ「みんな・・・」

絵里「これでわかったわね。虎太郎君も、ここにいる虎太郎君の元同級生も、誰もにこのことを恨んでなんかいないのよ。」

希「もういいんじゃない、にこっち。いつまで虎太郎君が死んだの自分のせいだと思ってるの?」

ことり「いつまでも自分を責めて、芸能活動を休んでるにこちゃんなんて、虎太郎君だって望んでないと思うよ。」

穂乃果「みんなが憧れ、何度も夢見てきて、誰かが立ちたくても立てなかった芸能界のトップ、その位置ににこちゃんはいるんだよ?」

穂乃果「そんな簡単にやめちゃったら許さないから」

海未「さあ、戻りましょう。にこにとっての夢の舞台に。」

にこ「・・・」

にこ「なんであんたたちがここにいるの?」

にこ「まさかここの生徒に私が来ることバラしたんじゃ?」

希「その通り。」

にこ「それじゃあサプライズじゃないじゃない!」

希「ウチが頼んだのよ。にこっちを励ましてほしいって。」

海未「あなたさっき自分にサプライズをする資格なんてないって言ってましたよね。全くその通りです。」

海未「だいたいここにいる6年生はにこの弟さんの同級生。いくらにこが小学生に人気のアイドル歌手であっても、それじゃあサプライズになりません。」

ことり「同級生の実の姉が来るサプライズなんて聞いたことないよ。」

海未「児童たちも始めから予想がついてしまうし、ただの親族の枠になってしまいます。」

穂乃果「そんなことにも気づかないなんてにこちゃんはバカだな。」

にこ「穂乃果、あんたには言われたくないわよ。」

最初は希がにこに卒業生へのサプライズとして小学校の卒業式に来ることを頼んだのだが、実は逆。
6年1組の児童には卒業式ににこが来ることは最初から知っていた。
希、そして穂乃果・海未・ことりのこの小学校のOG3人が、卒業式の日ににこを励まして、芸能界に復帰することを呼びかけてほしいと頼んだのだ。

つまりサプライズの本当のターゲットはにこ、児童たちが仕掛け人。逆ドッキリだったのだ。
ちなみににこを招待することを話したのは虎太郎が所属していた6年1組(旧5年1組)のみ。
6年2組と5年生以下には教えなかった。
そのためにこが入ってきたとき、6年2組や5年生の中にはびっくりして本当に自分たちへのサプライズだと思った児童もいる。
にこはそれを見たので自分がサプライズだと信じて疑わなかった。
これも希の作戦の1つだった。

穂乃果「さあ、私たちも歌おう。にこちゃん、聞いててね。」

卒業生と穂乃果たちが歌った、仰げば尊し、旅立ちの日に。

にこはその歌を聞いて涙が溢れた。

にこ「みんな、ありがとう・・・。」

にこ「私、きっと帰ってくる。アイドル歌手に。きっと戻ってくる。」

にこ「次のCDの発売、待ってるよ。」

虎太郎の元同級生と、穂乃果たちのサプライズのおかげで
20XX年3月3日で止まっていたにこの時間は再び動き出した。

・・・
真姫「そうだ。にこにもう1つお知らせがあるんだった。」

にこ「何?」

真姫「私のお父さんから聞いた話なんだけど、虎太郎君の臓器、あのあと誰かに提供されたそうだよ。」

にこ「え?本当?」

真姫「既に死んでたから、膵臓だけだったけど、移植に使われたみたい。」

真姫「それが誰かは言えないけど。」

にこ「そうか。よかった。じゃあ虎太郎の願い、かなったんだね。」

にこ「虎太郎の体は、ドナー登録で残せたんだ。私の弟は誰かの役に立てた。」

にこ「それが知れて嬉しい。」


にこ「そして、にこのアイドル活動が再び始まった。」

おわり

皆さんありがとうございました。

ちなみに現在続編製作中

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年04月11日 (土) 00:47:55   ID: gX5rmbeL

カテゴリにアイカツも追加よろ

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