勇者「待ってろ、魔王!」魔王「せいぜい足掻くがよい!」(30)

魔王「側近よ。」

側近「はい。ここに。」

魔王「勇者一行は今どこに」

側近「はい。我が軍からの報告によると、人間界と魔界の狭間の街にたどり着いたとの報告です。」

魔王「ほう…はやいな。」

側近「今の勇者の実力ならばたどり着くのも時間の問題かと。」

魔王「…我と対峙し、どちらが勝つと思うか?」

側近「…正直五分五分…かと。」

魔王「ふははは!!歯に衣着せんやつよ。」

側近「…申し訳ありません。」

魔王「よい。だが勝つのは我。早くこい勇者よ……」

側近「魔王様は、ああおっしゃられたが・・・」

側近「万が一、魔王様が勇者に討たれることなどあってはならぬ。」

側近「・・・ここはひとつ、こちらから仕掛けてみるか。」

~防具屋

店主「・・・いかがでございましょう?」

勇者「腕周りと肩は改善されたな。問題は胸部プレートだ。」

店主「はい。それはこちらに。」

勇者「うむ。ぴったりだ。良い仕事をしてくれた。」

店主「ありがとうございます。」

店主「では最終調整をいたしますので、お引渡しは明日。」

勇者「残りの金は現物と引き換えで。」

店主「わかりました。ではお待ちしております。」

勇者「ふう。やっとここまで来たか。」

勇者「最初は周囲から期待もされず、他の自称・勇者と同じと思われていたが・・・」

勇者「だがついに勇者の証をたてることができた。」スラッ

勇者「これが伝説の剣か・・・」

?「くっくっく。」

勇者「誰だ!」

?「お初に目に掛かる。我が名は魔王。」

勇者「! 貴様が、魔王!?」

魔王「くっくっく。」

勇者「ここであったが百年目! 魔王、覚悟!」

勇者「せい!」ブン

魔王「まあ、待て。」スッ

勇者「貴様と話すことなど何もない!」

魔王「くっくっく、そう邪険にするな。貴様にとっても良い話だぞ?」

魔王「貴様ほどの力を持ったものをただ消すのは惜しい。」

魔王「勇者よ、われの味方となれ。さすれば」

勇者「黙れ!」ザン

魔王「うぐぅ!?」ガク

勇者「そんな手に乗ると思ったか?」

勇者「これで終わりだ!」

側近「それはどうでしょう?」

勇者「な!?いつの間に?」

側近「隙だらけですよ?」ザクッ

勇者「うぐぅ・・・」ドサッ

側近「だまし討ちとはいえ、勇者ともあろうものが情けない。」

側近「このまま殺すのはたやすいことだが・・・」

側近「貴様にはこれから・・・」

勇者(やべぇ、意識が・・・)

勇者(俺はこんなところで死ぬのか?)

勇者(俺を見下していた連中を見返すこともできず。)

勇者(なにも成し遂げられなかったヤツラと同じように。)

勇者「はっ!」

勇者「こ、ここは・・・どこだ?」

勇者「確か魔王と戦って胸に・・・」サワ

勇者「傷がない? あれは幻だったとでもいうのか?」

勇者「! 剣が無い!」

勇者「しまった・・・ それが狙いだったのか?」

勇者「ここでぼーっとしても仕方ない。」

勇者「とにかく街の方へ行ってみよう。」

勇者「なんだか街も様子が変だ。」

勇者「街に魔物が!」

魔物「お!また魔王軍が勝ったぞ!」

魔物2「ほんとか!ちょっと俺にも見せてくれ。」

魔物3「ははは!こりゃ今日も酒がうまくなりそうだ!」

魔物「魔王様万歳!魔王軍万歳!」

勇者「魔物め!ここから出ていけ!」ブン

魔物「うわっ!なんだこいつ!」

魔物2「おい、やめろ!」

勇者「たとえ剣がなくたってお前らぐらい!」

魔物3「こいつ!」ドカッ

勇者「うぐっ」

魔物2「このガキ!」ボカッ

魔物「ふん!まったく最近のガキは・・・」

魔物2「これからは相手を見て喧嘩するんだな。」

魔物3「同族のよしみで命だけはカンベンしてやる。」

勇者「同・・・族だと?」

勇者「な、何を言ってるんだ?おれは人間だ!」

魔物「ははは!お前が人間だと?」

魔物3「こいつもしかして親人派か?」

魔物2「なら吊るしちまうか!」

?「待ってください!」

少女「待ってください!」

魔物「なんだ?お前は。」

少女「この人は私の兄なんです。」

魔物2「兄だ?家族の落し前はてめえが払ってくれるっていうのか?」

少女「兄さんはこの戦争でおかしくなってしまって・・・」

少女「たった一人の家族なんです。どうかお許しを・・・」そっ

魔物「ち、こんなはした金じゃ・・といいたいところだが今日のとこは勘弁してやる。」

魔物2「次はないと思えよ!」

少女「大丈夫ですか?」

勇者「どうして君は・・・?」

少女「? どうしてって困っている人がいれば助けるのは当たり前でしょ?」

勇者「くっ そんなきれいごと言ってたらいつか命を落とすぞ!」グイッ

少女「嫌なんです。たとえこの目に光が届かなくても見て見ぬふりなんて。」

勇者「お、お前目が見えてなかったのか?」


少女「なにがあったかわかりませんが自棄を起こすのは・・・

勇者「くっ 話にならないな。」

勇者「・・・この借りはちゃんと返す。じゃあな!」

少女「嫌なんです。たとえこの目に光が届かなくても見て見ぬふりなんて。」

勇者「お、お前目が見えてなかったのか?」

少女「なにがあったかわかりませんが自棄を起こすのは・・・」

勇者「どうしてそうやって他人の事情に平気で・・・」

勇者「くっ 話にならないな。」バッ

勇者「・・・この借りはちゃんと返す。じゃあな!」

勇者「いったいなんなんだ。どうなっている?」

勇者「俺ともあろうものが、素手とはいえ魔物相手に手こずるなんて。」

勇者「それよりあいつら気になることを言っていたな・・・」

勇者「俺が同族だと。」

勇者「川があるな。ちょうどいい。」

勇者「いてて。モロにくらっちまったな。」

勇者「! なんだこれ? これが俺?」

勇者「耳が。 目も。 というかもはや別人だ・・・」

勇者「一体どうなっているんだ?」

勇者「今の状況をまとめてみよう。」

勇者「目が覚めたら別人になった俺、魔族がいる街、伝説の剣の行方。」

勇者「はぁ。」

勇者「まったくどうなっているんだ。」

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