春香「天海春香です!」美希「ふぅん……じゃあハルハルだね」 (47)


パシャ……カシャ……
シセンコッチクダサーイ
カシャカシャ……イイヨーサイコーダヨー
ナノ!

「……はい! 本日の撮影は終了でーす。おつかれさまでしたー」

「おつかれっしたー」「おつかれさーん」

美希「おつかれさまでした! ……あふぅ」

編集「お疲れ様。星井さん、これで満足かな?」

美希「どれどれ……うん! バッチシなの! あとはいい具合に編集、頑張ってね!」

編集「ははは、有難う。いやーそれにしても、星井さん自らダメ出しして撮り直しとか、びっくりしちゃったよ」

美希「ご迷惑をおかけしてごめんなさい、でも、少しでもいいものに」

編集「分かってます、むしろ嬉しいんだ。最近すっごくやる気出してるって、プロデューサーさんも喜んでたよ」

美希「ほんと!? ハ……プロデューサーさん、美希のこと褒めてた!?」

編集「うんうん。さらに可愛くなったんです! とか、以前よりキラキラしてます! とか、強さと優しさと美しさを兼ね備えている正に真のアイドルです! とか……営業してるんだかノロケて回ってるんだか分からないって、評判だよ」

美希「そ、それは、ちょっと恥ずかしいの……」




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編集「まぁ、とにかく仕上がりを楽しみにしてて下さい。今日のところはこれで。またそちらさんの事務所にはお世話になるだろうから、ハニーさんには宜しく伝えておいてね」

美希「分かりました! ハニーには……って……えぇえーっ///」


……

-撮影所近くの公園


美希「……うぅ、思いっきりバレてたの。でもこれは、ミキじゃなくて、ハニーのせいだって思うな。……ま、悪い人じゃないから別にどこかに流されたりはしないだろうし……ってそもそもちょっと変わった呼び方してるってだけで、別に何かジジツカンケーがあるわけじゃないけど…………むー」

美希(ミキには人前では甘えるなとかハニーって呼ぶなとか言っておいて……ハニーのバカ)

美希「あふぅ……それにしても遅いの。迎えに来るって言うから待ってるのに。……あったかいし……眠くなってきちゃった……こんなところでねちゃ……だめなの…………」



「……き! ……みき!」

美希「ん……? んむー……はにぃ……?」

??「みき! みき!! 起きるんだプロ!」

美希「ハニー? どこ? どこにいるの?」

??「こっち! ここだプロ!」

美希「むー、隠れてないで出てきて欲しいの! イヂワルしちゃ、や!」

??「いじわるなんかしてなっ」

美希「どこなのっ!」ダッ

メメタァ


??「むぎゃあ!」

美希「ひゃっ何か踏んだの!」

??「」

美希「……良かった。潰れてないみたい。……でもこれなに? ねこさん? たぬきさん? ……うーん、響なら分かるかな?」

??「ネコでもタヌキでもないプロー!!」ガバッ

美希「ひゃああ! シャベッタアアアア!!」

??「オレはれっきとしたようせ」

美希「あ、これがハクビシンかも」

??「違う! っていうかハクビシンも喋らないプロ!」

美希「? じゃあなんだろう」

??「妖精! オレは妖精だプロ! とある使命を帯びて妖精の世界から」

美希「ミキ、動物さんとお話しできるようになっちゃった。響とおそろい。あはっ!」

??「聞け!!」

美希「でも結局この動物はなんなの?」

??「妖精だって! 君が動物と喋れるようになったんじゃなくて、オレが元々ニンゲンの言葉を」

美希「で、妖精さんの使命って?」

??「……マイペースだプロ……」


妖精「まぁ使命を託すにはこのぐらい図太いほうがいいプロ!」

美希「あー! 美希、太くなんかないよ! ほら見て!」

妖精「すすスカートをたくし上げるな! この視点だとただでさえローアングルでやばいプロ!」

美希「とにかく早く話して欲しいな。ミキ、眠くなってきちゃった……あふぅ」

妖精「この状況で!? ……と、とにかく、オレの使命というのは、ニンゲン達の中から伝説の戦士を探し出すことなんだプロ! そして君こそが!」

美希「あふぅ……むにゃ」

妖精「伝説の戦士プリキュ……寝るな!!」

美希「むにゃむにゃ……え? ……何か言った?」

妖精「……」

美希「妖精さん?」

妖精「いや、なんかもう説明は諦めたプロ」

美希「でもミキ、戦士なんかじゃないよ? フツーの、どこにでもいる女子中生なの」

妖精「どこにでもはいない」

美希「そうかな? 意外と、あなたのすぐぞばに……気が付けばミキは……」

妖精「ホラーみたいに言われても嬉しいだけだプロ」

美希「ごめんね。ミキは探してる戦士さんじゃないって思うの。もっと戦うのに相応しい子はウチの事務所にも何人か……でも危ないことはして欲しくないし、他を当たってね、妖精さん」

妖精「……いや、やっぱり君だプロ」

美希「えー? でもミキ」


「そこまでだぜ! ちっこいの!」


妖精「はっ!」

美希「こ、今度は誰なの!? って宙に浮いてるの!!」

妖精「お前はラセツ!」

ラセツ「こんなところにいやがったか……随分と探したぜ。だが、お前をとっ捕まえて、今日こそは妖精世界を」

美希「すごいメイク。分かった、ピエロさんなの。だから浮いてるんだね。」

妖精「ラセツはどっちかと言うとオニだプロよ」

ラセツ「ごっちゃごちゃ言ってんじゃねぇ! とっととそのちっこいのを渡しな!」

美希「や!」

妖精「!」

ラセツ「……んだとぉ?」

美希「妖精さん、あの人のところに行きたくないんだよね?」グワシ

妖精「そ、そうだプロ、あと頭を鷲掴みはやめ」ギュウウ

美希「なら逃げるのっ!」ダッ

ラセツ「やろぉっ……待ちやがれ!」ヒュンッ


……


タッタッタッタッ……

美希「はぁっはぁっ」

ラセツ「待て! このぉ!」ギュォオ

妖精「!? みき! あぶない!!」ドンッ


ドガァアン!

美希「きゃあ!!」ドタッ

妖精「みき!! 無事かプロ!?」

美希「う、うん……」

ラセツ「かわしやがったか……ちっ、運のいいやつだぜ。だが……ん? ありゃあ……」


編集(戻って表紙用の写真を選んで、あとキャッチコピーと……)スタスタ


ラセツ「へっ、ちょうどいいぜ。出やがれ! ネムイナー!!」ゴォオオオオッ……

編集「ぅぐっ……! なん、だ……」

美希「! 逃げて! そこの人!!」

ラセツ「もう遅いぜ!」

ズズズズズズズズ……

編集「ぅう、眠い、眠すぎる……仕事が……これを、編集しなきゃ……雑誌……落ち、る」

ボワン!!

ネムイナー「ネムイナー!」


美希「な、なにあの怪物!?」

妖精「くっ……あれはネムイナーだプロ。ニンゲンの、何かから逃げ出したい気持ちや、楽がしたい、面倒臭い、そういう気持ちをエサにして生まれる怪物プロ!」

ラセツ「ひゃはは! それだけじゃあねぇぜ? ネムイナーは取り込んだ人間の見ている“夢”を吸い取り、そのエネルギーを使って、キングネムイナー様を復活させるのさ!」

美希「見てる……夢を……?」

ラセツ「そぉうさ! ネムイナーにされた人間は、永遠に夢を見続ける……最高だろ? もう二度と煩わしい現実に帰らなくていいんだぜ……?」

妖精「そんなの違うプロ!」

ラセツ「てめぇは黙ってな!」ギュィイン!

妖精(ぐっ……からだが、動かないプロ……!)

ラセツ「いいかお嬢ちゃん? 現実には辛いことや悲しいことがいっぱいある。仲間はずれにされたり、いわれのない悪口を浴びたり、名前を間違えられ続けたり童貞扱いされたり」

美希「後半よく分かんないの」

ラセツ「いいや、分かるだろ。お前はいつも現実から逃げたがっていたハズだ。自分のことを理解しようともせず、外見やイメージだけでビッチだ不良だと罵るやつらや、口うるさく小言を言うやつら。ちょっとしたすれ違いや勘違いで嫌われたり憎まれたりする。煩わしくってしょうがなかったんじゃーねぇのか? ずっと眠っていたい……夢の中に逃げたいと」

美希「そんなこと……ない」

ラセツ「夢の中は最高だぜ! なんでも思い通りになる。今すぐトップアイドルになれるしずっとハニーといちゃついていられる! おにぎりもいちごババロアも食べ放題だ!」

美希「食べ放題……」

妖精(そこプロ?)


ラセツ「現実はいつだって残酷だぜ……何一つ思い通りになんてなりゃしねぇ……どんなに素質があろうが、どんなに努力しようが、ふとしたことで全てがパァになる。……そうだ。この男は心の片隅でこう思ってる……いざとなった時に売れる、いいスクープネタを手に入れた、ってな」

美希「な、なんのこと」

ラセツ「今更とぼけんなよ。ハ・ニ・ー、のことだろ? こいつはもし自分が危うくなったら、てめぇらのことを売っちまおうって腹だったんだよ! そうなったら、これまでの努力の全てが水の泡さ。いやそれどころか、家族や、事務所の連中にも迷惑がかかるだろうなぁ?」

美希「う、うそ……そんなの」

ラセツ「嘘じゃねぇさ。俺には見えるぜ……心の闇が。お前だって、団結だ仲間だと言いながら、他のやつ蹴落としてでもトップアイドルに、そしてハニーを手に入れたい。……そう思ってる」

美希「それはっ」

ラセツ「だが、そんな欲望も夢の中でなら叶えられる。誰にも迷惑もかけない。誰も悲しまない。最高だろ? そのちっこいのを渡せば……お前も、ネムイナーにしてやるよ。そうすればもう、何一つ辛い思いなんかしなくていい。勉強も仕事も、試験も学校も、怪我も病気もない」

美希「……」

ラセツ「夢の中へ行こうぜ。……お前だって、たくさん嫌な思いをしてきただろう? なぁ、金、髪、毛、虫」

ブチッ


妖精「……き、さ、まぁあ……!!」

美希「よ、妖精さん?」

妖精「みきを…………みきをバカにするなぁああああ!!」ドカッ


ネムイナー「ネムッ!?」

ラセツ「なに! なぜ動ける!?」

妖精「みきは……みきの努力は、決して無駄になんかならないプロ! 必ず、必ずトップアイドルになるプロ!!」

ラセツ「なれなかったらどーすんだって言ってんだろーが! バカかてめぇは!」

妖精「なるプロ! 絶対に!!」ドカッ

ネムイナー「ネム?」

ラセツ「ハハハ!! てめぇがネムイナーに敵うわけねぇだろうが! まぁ出てきたんならちょうどいいぜ。ネムイナー! 捕まえろ!!」

ネムイナー「ネムイナー!」グオオ……

美希「……」バッ

妖精「! み、みき」

ラセツ「……なんの真似だ。てめぇ」

美希「……最初に言った通り。妖精さんは渡さないよ」

ラセツ「あぁん? おかしいんじゃねぇのかてめぇ? 人間だってネムイナーと戦うなんて無理だぜ。それにこっちにつけば」

美希「いらない」

ラセツ「なにぃ?」

美希「なんでも思い通り? つらいことのない世界? 確かに、自分が傷つくことも、誰かが傷つくこともなく、幸せになれるなら、すっごく素敵だよ。でもね、」


美希「そんなの、一つもキラキラしてないの」


ラセツ「キラキラだぁ……?」

美希「みんな、みんなが頑張って生きてる。自分の夢に向かって。誰もがトップにはなれないし、つまずくことも、うまくいかないこともあるよ? でもね…………」

美希「傷ついて、傷つけあっても、それでもまた手を取り合って、みんなで夢を見れるの。だからキラキラできるの!」

妖精「みき……」

美希「誰も傷つかない代わりに、誰とも手を取り合えない世界なんて、や!!」

ラセツ「ちっ……イライラするぜ。てめぇらを見てるとよ…………夢は眠って、一人で見るもんだぜ!!」

妖精「みき!」ポイッ

美希「えっなにこれ?」パシッ

ラセツ「やっちまえ! ネムイナー!!」

ネムイナー「ネムイナー!!」グォオオ!

妖精「その時計のねじを!」

美希「これ時計なんだ。なんかゴテゴテしてておもちゃみたいなの。でもまぁ可愛いからいっか」

妖精「いいから早く!!」

美希「えっと、こうかな?」カチカチカチ……

プリキュア!オンステージ!

ピカァアアアアアアア!!


ラセツ「な、なんだ!? 眩しい! 何も見えねぇぞ!」


シュゥウウウウ……

黄緑色の衣装を纏った乙女「やぁああああああ!!」ビュッ

ネムイナー「ネムッ!?」

ズガァアアアン!!

ネムイナー「ネムイナァアー!?」ドシャァア……

ラセツ「なっ……バカな! ネムイナーが吹っ飛ばされた!?」

妖精「す、すごいプロ!」


……きらきら輝く、星のアイドルッ

スター「キュアワンダリングスター!!」ビシッ!!

妖精「伝説の戦士が目覚めたプロー!!」

スター「あふぅ、なんかゴロ悪くない? キュアワンダリングスター」

妖精「気にするなプロ!」

ラセツ「伝説の戦士だとぉ、んなもんハッタリだ! さっきのもまぐれに決まってる! やっちまえネムイナー!! やつらを永遠に眠らせてやれぇ!!」

スター「そっちこそ」スタッ

ラセツ「っ!?」

スター「現実が見えてないんじゃない?」シュッ

ラセツ「はやっぶべらっ」ドガァッ

妖精「つ、強いプロ」

スター「あふぅ、もう決めちゃいたいんだけど、いいよね?」カチャ

オーバーマスター!!

ラセツ「ま、まt」

スター「答えは聞いてないの」ゴォオオオオオ……


スター「「プリキュア!! モーニングコールッ!!」」アサナノー


ギュアアアア……ズゴォオオオオオオオオオオオ!!!

ネムイナー「マブタヲアケテサワヤカオメザメー」シュウウゥ……


ラセツ「く、くそっネムイナーが! ……ぉ、覚えてろよぉーっ!!」ドヒュン!


パァアアア……

美希「寝言は寝て言えなの。あふぅ」

妖精「みき……」

美希「なに? 妖精さん」

妖精「色々早かったプロね」

美希「早く帰って寝たかったから」

妖精「……それなら、なぜネムイナーにならなかったプロ?」

美希「決まってるの。夢は、キラキラするためにあるんだもん」

妖精「……」

美希「一日頑張ったから、いい夢が見れるの。夢が見れるから、次の日も頑張れるの!」

妖精「……みき」

美希「さ、早く帰ろ?」

妖精(そうプロ……アイドルは夢に向かって走り、そしてみんなに夢を届けるプロ。その夢は、逃げて眠るためのものじゃない。現実と、戦うエネルギーだプロ! みきならきっと、それができる……!)

妖精「これからも伝説の戦士として、よろしく頼むプロ!」

美希「え? やらないよ?」


妖精「え?」


美希「ミキ、アイドルのお仕事と学校だけで手いっぱいだもん。それに戦ってて玉のお肌に傷でもついたらたーいへんなの」

妖精「いや、でも」

美希「あふぅ、とにかくやらないから。また明日ね、ハニー」

妖精「いやいやでも…………え?」




妖精「どええぇええぇええええええええ!!??」



END?


妖精「仲間を紹介するから! それから考えて欲しいプロ!」

美希「仲間……?」


春香「じゃーん! 天海春香です!!」

美希「……」

春香「……」

美希「ふぅん……春香っていうんだ」


美希「じゃあハルハルだね」

春香「なんで? っていうか私達仲間だよね? もう見知った仲だよね?」


美希「聞いてないの! 既になってる子がいるなら最初にそう言って欲しいしなんで助けに来なかったの!?」

妖精「春香達は別の場所で戦ってたプロ」

美希「達……?」


千早「私よ」

美希「千早さんだったの」

千早「全く気づかなかったでしょ?」

美希「ううん、なんとなくそんな気がしてたの」

千早「……くっ」


美希「で、二人はなにキュアなの?」

春香「えへへ、私はね」

美希「キュアドンガラ?」

春香「じゃあ美希はキュアオニギリだね」

美希「別にいいの」

千早「春香はキュアドンガラリボンよ」

春香「千早ちゃん」

千早「ふふっなぁに?」

春香「なぜさらっとウソついた挙句そんないい笑顔ができるのか、私には分からないよ」

千早「褒めても何も出ないわよ?」

春香「褒めてないよ」

美希「千早さんは?」

千早「私は」

春香「キュアボード」

千早「春香」

春香「キュアウォール」

千早「……」


妖精「……さ、やる気になったプロ?」

美希「ならないよ?」


千早「キュアカッカ」

春香「キュアイジッパリ」

千早「キュアアザトイ」

春香「キュアチハヤチャンノイジワル」

千早「キュアダッテハルカガカワイイカラ」

春香「もう……///」

千早「ふふ……///」



美希「二人でやってろなの」

妖精「……プロ」


……
-事務所へと続く道

美希「あふぅ……今日も眠たいの……」


響「……」テクテク

美希「あ、響! おはようなの!」

響「あ、うん、おはよう美希」

美希「はいさい! じゃないの?」

響「うん、はいさい!」

美希「どうしたの響? 元気ない……?」

響「う、ご、ごめん美希。心配させちゃった? いやー我那覇さんは今日も元気元気」

美希「何かあったの?」

響「えっと……ちょ、ちょっと気がかりなことがあって……でも体に異常はないさー! 今日は一緒にダンスレッスンだっけ? ガンバロー!」

ガシッ

響「え、えっと」

美希「ミキ、話してくれるまで離さないよ?」

響「ほんとになんでもなくって」

美希「ウソついちゃ、や!」

響「……美希、」

美希「ダメだよ、響はウソ下手なんだからね?」

響「はは……確かにそうさー。自分、まだまだだぞ」

美希「……」

響「うん、話すよ……」


響「実は、貴音のことなんだ……」

美希「貴音の?」

響「……昨日から、連絡がつかなくって……」

美希「それで心配してて、上の空だったんだ。響らしいね」

響「そうか? ……こんなの、全然自分らしくないぞ。自分、カンペキなのに……」

美希「そうかな?」

響「うがー! なんだよ美希、こんなときにイジワル言うなんて」

美希「違うよ。ミキはね、今の響だってカンペキだって思うの」

響「へ? どこがさ、ボーっとして、美希に心配かけて」

美希「仲間を心配するのなんてトーゼンなの! それは響と貴音も一緒だよ? むしろ仲間のことを思いやれないやつなんて、ぜーんぜんカンペキじゃないの」

響「美希……」

美希「まぁ、響はちょーっと心配しすぎかなって思うけど。一日連絡しない日だってあるでしょ?」

響「ないぞ」

美希「……?」

響「毎日、会うか電話するかしてるぞ」


美希「そ、そぅ、なんだ」

響「なんだよ」

美希「ううん! ちょっと仲良すぎて引いただけだよ」

響「引かれたのか」

美希「でも、たまたまってこともあるだろうし。それにあの貴音が危機に陥るなんて考えにくいの」

響「貴音だってああ見えてか弱い女の子なんだぞ!?」

美希「ああ見えて?」

響「いやぁ、うん」

美希「とにかく、事務所には連絡が来てるかもしれないし、行ってみよ? 案外ただの食べ過ぎでお腹壊して、トイレから出られないだけかもしれないの」

響「はしたないし失礼だぞ……」


……
-事務所

美希「おはようございまーす」

響「おはようだぞ」



妖精「あぁ、二人共おはようプロ」



響「うぎゃああああああ!! タヌキがシャベッタアアアア!!」

小鳥「落ち着いて響ちゃん!」

響「小鳥もシャベッタアアアア……あ? 小鳥は喋るのが普通か……」

小鳥「……」

美希「あれ? っていうかハニー、その姿ってことは……」

妖精「あぁ……また出たんだ。やつらが」


響「やつら……って」

小鳥「ネムイナーよ」

響「ネムイナー?」

小鳥「そう、ネムイナー。人の弱い心……何かから逃げ出したい気持ちや、楽がしたい、面倒臭い、そういう気持ちをエサにして生まれる怪物よ。さらにネムイナーは取り込んだ人間の見ている“夢”を吸い取り、そのエネルギーを使って、キングネムイナーというネムイナーのボスを復活させるの……」


美希「でも響って元々動物とお話できるんじゃなかったの?」

妖精「確かにプロ。なんで驚いたんだ?」

響「言ってることが分かるってだけで、別に人間の言葉で話してるように聞こえてるわけじゃないぞ?」

美希「あ、なーるほどなの」

響「それよりハニーって……まさかこれプロデューサーなのか!?」

妖精「違います。人違いですプロ」

響「じゃあなんでプロデューサーの机でせっせと書類整理してるんだよ!」

妖精「妖精さんは仕事を手伝ってくれる有難い存在プロ」

響「そういうのは人が見てるときじゃないだろ」


妖精「気難しい年頃プロねー」

響「なんでそっちがやれやれみたいになってるの」

美希「響、なんか忘れてない?」

響「忘れてないよ! 貴音のことだろ? 今から聞こうと思ってたさ」

妖精「……貴音が、どうかしたプロか」

美希「昨日から連絡がないんだって」

響「正確には一昨日の晩にうちでご飯食べてばいばいしたきりだぞ」

妖精「……そうか」

小鳥「プロデューサーさん……」

妖精「あぁ……分かってる」

響「な、なんだ? どうかしたのか……まさか貴音に何かあったのか!?」

妖精「……それを確かめるためにも、まずは行こう」

美希「行くってどこに……?」

妖精「もちろん……」


妖精「ネムイナーの現れる場所へ……!」



……
-街中


ネムイナー「ネームイナー!」ドガァッ

ボカァアン!!

ウワー! キャー! タスケテクレー!!

美希「こ、こんな街中で暴れてるの!」

響「ななな、なんだあのまじむん!!」

妖精「マジムンじゃなくてネムイナーだプロ」

美希「言ってる場合じゃないの! 貸して!」

妖精「なにをだプロ?」

美希「もう! 分かってるでしょハニー! あの時計!」

妖精「伝説の戦士はやらないんじゃなかったプロか?」

美希「今はそれどころじゃないでしょ!!」ガシィッ

妖精「あっあっ鷲掴みやめるプロ、やめるプロ」ポロッ

美希「これ!」パシッ


美希「いくよ!」カチカチカチ……!

プリキュア!オンステージ!
ピカァアアアアアアア!!

シュゥウウウウ……
……きらきら輝く、星のアイドルッ

スター「キュアワンダリングスター!!」ビシッ!!


響「ななななななんだぁあああ!?」ワタワタ

妖精「少しは落ち着くプロ」


スター「冷たい布団にくるまれた夢……返してもらうの!」

スター「覚悟はいーい? あはっ☆彡」ヒュンッ


ズガァアアアア!!

ネムイナー「ネムブフェエ!!」ドゴォン……


響「ふ、布団のばけものが吹っ飛んだ……!」

妖精「千早が来たらもう一回言ってあげるといいプロ」

響「え、千早も来るのか? 美希みたいに、変身して戦うの?」

妖精「そうプロ。今は他の場所のネムイナーと戦っているハズプロ。そっちが片付いたら合流する手筈プロよ」

響「……千早、美希……」


スター「はぁああ! とどめなの!」グォォオ

「させないよ!」ガシッ

ブォンッ

スター「えっきゃあああ!」ドカァン!

響「美希ぃい!」

妖精「大丈夫プロ! 投げ飛ばされたぐらいじゃ平気プロ!」

響「で、でもビルの残骸に思いっきり」


ガララッ

スター「いたた……腰ぶつけたの」スタッ

響「ほ、ほんとだ……」


「ふぅん、さすがにラセツを退けただけはあるね、エンジジェルちゃん」

妖精「お、お前はっ……チャオ!!」

チャオ「チャオ☆」

スター「むー! 星はこっちのセンバイトッッキョなの! 勝手に使っちゃや!」

チャオ「おっと、これは失礼、強くて可憐なエンジェルちゃん」

妖精「気をつけるプロ! そいつはラセツより手ごわいプロよ!」

スター「ふぅん、でも、負ける気はしないって感じ!」

チャオ「そうかい? ……でも、これならどうかなっ」パチンッ


ネムイナー「ネムイナー」
ネムイナー「ネムイナー」
ネムイナー「ネムイナー」
ネムイナー「ネムイナー」
ネムイナー「ネムイナー」

響「ひっ、あ、あんなにたくさん……!」

妖精「これは……ちょっとまずいかもプロ」


チャオ「ふふっどうだい? さすがのエンジェルちゃんでも、これだけの数が相手じゃあ」

スター「関係ないの!」

チャオ「なに……」

スター「どんな数だろうと、どんな大きさだろうと、人の夢を閉ざすやつならっ」


スター「戦うだけなの!」ビシッ


……

ドガッ
ズガァッ
ナノナノナノ!

ドゴォオオオン!

スター「はぁ……は、ぁ……」

チャオ「ズタボロになりながらも必死に戦うエンジェルちゃん……いいね、美しいよ」

スター「ふ、ふん、どうも……なの」ヨロッ


響「な、なぁ、もう限界なんじゃないのか!?」

妖精「くっ……せめて千早達が来てくれれば……!」


「如月千早なら、ここには現れませんよ」

妖精「なにっ……!?」

響「その声っ……」


漆黒の衣装を身に纏った女「ふふ……彼女には、眠ってもらいました。冷たい布団の中で」

響「たか、ね……なのか……?」フラフラッ

妖精「あ、あぶない響!!」タッ

ヒュンッ……バシュウウン!

響「ひっ……!」ペタン

妖精「やめるプロ! 貴音!」

スター「ど、どういうことなの……?」

貴音「どうもこうも、見ての通りですよ、美希」


貴音「私は、あなた方の……敵です」


響「そ、そんな……うそ、うそだよね……? たかね?」

貴音「……私が、響に嘘を申したことがありますか?」

響「た、たかね……」

スター「待つの響! きっとヤンデレのごとき理由があるんだよ!」

妖精「やんごとなき、かプロ?」


チャオ「どうやら、この場は任せても良さそうだね。俺はキングネムイナー様復活のために夢のエネルギーを集めてくるよ。じゃあね、フォーリンエンジェルちゃん」シュンッ

貴音「……」

スター「さぁ! チャオはいなくなったの! 事情があるならちゃんと話して! どうしてミキ達の敵に」

貴音「……事情など、ありません」

スター「!?」

貴音「それに、わたくしは敵になったのではありません」

響「た、たかねぇ」

貴音「あなた方が、わたくしの敵となったのです」

響「ぇ……」

妖精「逃げるプロ! 響!!」

ギュォオッ

響「ぅ、うわぁああああ!」


ガシィ!!

スター「どういう……つもりなのっ貴音!!」ググググ……

貴音「まだ分からないのですか……? 美希はもっと賢い子だと思っていましたが」ググゥッ

妖精「へ、変身してるのに、ワンダリングスターが押されてるプロ……!」


……

響(…………自分、やっぱりダメなやつさ)

響(こんなに近くで、友達が戦ってるのに……)

響(目の前で、友達が苦しんでるのに……)

響(何もできない…………臆病者さぁ!)ギリィッ


スター「きゃぁあああ!!」ドタアァ

妖精「プロぉおおお!!」ポテンッ



響(自分……自分はっ)


ヂュイッ

響「は、ハム蔵? ハム蔵、いったいどこに……」

ヂュイ! ヂュイヂュイ!!

コロン……

響「こ、これって……美希がつけたのと……同じ……」


響「でも……自分に何ができるって言うんだ……? こんな状況で……できないぞ……自分には何も…………」

ヂュヂュイ!! ヂュイヂュイ!

響「ハム蔵……」

ヂュイ! ヂュイ! ヂュイヂュイイッ!!

響「はは……確かにな…………ハム蔵の、言う通りだぞ」ゴシゴシ……


響「自分に……たった一つだけ、できることは……!!」


……


貴音「……どうやら、ここまでのようですね」

スター「ぅう……たか、ね」

妖精「く、くそっ……オレは、諦めないぞっ」ヨタ……ヨタ……

貴音「せめて……苦しまぬよう、わたくし自身の手で」


「待つさぁ!!」

貴音「……何用ですか。……響」

響「はぁっ、はぁ……貴音、自分には、でっかいばけものと戦うとか、貴音を敵に回すとか、怖くて、ぜったいできない」

貴音「……こちらにつく、ということですか?」

響「違うよ、貴音。自分にできることは、たった一つさ」

貴音「一つ……」


響「貴音を、信じること」

貴音「……」

響「自分、貴音といっぱい一緒にいた。いっぱい笑いあったし、いっぱい励まし合った。いっぱい遊んで、いっぱいレッスンして……誰よりも、貴音を知ってるつもりでいた」

貴音「わたくしの、何が分かると」

響「うん。ぜんぜんだ。ぜんぜんだった。自分、なんにも分かってなかったぞ。勝手に貴音と、通じ合った気になってた」

貴音「……」

響「…………だから、教えて欲しい。自分の知らない、貴音のこと。ちゃんと知りたいんだ」


響「だって……」


響「だって、友達だからっ」ニパァッ


貴音「……そのまま寝ていれば、助かったものを」

響「貴音、自分、信じてるぞ。例え、どうなっても。貴音のこと」

貴音「分かっているのですか、響……わたくしは、人間の世界を絶望のドン底へと落とそうとしているのですよ」

響「うんっ、分かってる。けど、絶望のズンドコだってへっちゃらだよ!」

響「貴音と、一緒なら。……そうでしょ? 貴音……」ジワッ


貴音「っ……」


スター「ひ、響……」

妖精「……響っ」


貴音「……ひ、ひび、き」

響「……こんなこと、ほんとは、したくないんだな?」

貴音「なにをっ世迷言を」

響「貴音……手、震えてるぞ」

貴音「っ!」

響「したくないことなら、どうしてするんだ。ちゃんと、ちゃんと教えて欲しいぞ!」

貴音「わたくしはっ…………わたくしはもう、止まれないのです! わたくしに期待するっ……民のために!!」

響「貴音が自分で止まれないって言うなら! 止めてやるまでさ!!」カチカチカチッ


プリキュア!オンステージ!!


ゴォオッ……ピカァアアアアアアアッ

貴音「こ、これはっ……!」

妖精「ま、眩しいっ!」

スター「それに……温かいの。まるで……日に干したお布団に包まれてるみたい……」パァアア……

妖精「スターの傷が……治ってくプロ!」


貴音「! わ、わたくしの負った傷までもが……!」パァアア……


スタッ

……太陽さんさん! 照り返す海のアイドル!!

浅葱色の衣装を纏った少女「キュアッパァーフェクトサンッ!!」ドッカァアアアン!!

スター「すごい! 背景が爆発したの!」


貴音「……まさか、響が……」

妖精「なぁ貴音、ほんとは、予期していたんじゃないのか? だからわざわざオレ達を呼び出して」

貴音「なにを、戯言を……」

妖精「もしくは、期待してた……んじゃないのか」


サン「いくぞっ……貴音ぇ!!」ダッ

貴音「くぅっ!」バッ


妖精「こうなることを……」

スター「ハニー、ミキも」

妖精「いや、響にやらせるプロ」

スター「でもっ」

妖精「貴音は力じゃ倒せないプロ。でも……響なら……」

スター「……分かった。じゃあミキは、千早さん達を探して、ネムイナーとチャオをなんとかするね!」シュバッ

妖精「あぁ! 頼んだプロ!」


貴音「響っ……ぐっ、本気ですかっ」シュタ……

サン「言ったろ! 自分にできるのは、貴音を信じることだけさ!」グォオッ

貴音「ならばっ」タタッ

サン「だからだよ!」ダッ

バシイィイイ!!

サン「貴音が止めてほしいなら、自分が止める! 貴音が苦しんでるなら、自分も側でその苦しみを分けてもらう! 貴音の背負う荷物は……自分も背負う!!」ググォオオ

貴音「ひ、響っ」ググ、グ……

サン「貴音ぇえええ!!」ォオオッ

ドガァアアアアアン!!


妖精「響っ、貴音ぇー!!」


モワモワモワ……

妖精「ど、どうなったんだ!? 2人はっ」

バシュッ


スタッ

貴音「…………響、今日のところはこれまでにしましょう」


ガララッ……フラァッ……

サン「く……へ、へへっ……また、会えるんだな……?」

貴音「響達がネムイナーに負けることがなければ……いずれ」フワッ……

シュバァアア……

妖精「消えた……プロ」

サン「自分……信じてるぞ…………信じてるからな………………たかねぇええええええええええええええええ!!!」



……


……

美希「あんなに強かった貴音を追い帰しちゃうなんて、さっすが響!」

響「へへっ……自分、カンペキだからな!」

妖精「あぁ……ほんとに、よくやったプロ」

美希「でも、結局どうして貴音は、ミキ達が敵になった、なんて」

響「分からない……けど、大丈夫さー! 自分、貴音を信じてるから……!」

美希「……うん! ミキも信じるね。貴音と、響のことっ」

響「美希……」

妖精(しかし……チャオやカンケーシも追い帰して、率いるネムイナー軍団もニンゲンに戻ったが……今回の大規模な戦いで、かなりのエネルギーを集められてしまったハズ……プロ)

妖精(……キングネムイナーの復活が、近づいているプロ……それに対抗するには…………まだ誰か分からない、キュアミッシングムーンを……早く見つけないとプロ)

妖精「キュアミッシングムーン……いったい、誰が……」



響(大丈夫……自分、信じてるさ。月蝕は、そう長くは続かないって……)

響(自分の光で……きっと貴音の心、照らしてみせる。そして、必ず取り戻すさー)


響「月に太陽が必要なように……太陽にも、月が必要なんだから」


END……?



真「おかしいですよプロデューサーさん!」

妖精「いやオレはプロデューサーじゃなく、妖精」

真「どうして! こういうことに一番活躍できそうなボクが! 変身してないんですか!?」

妖精「いやぁ、そう言われても……」

真「イメージカラー的にもですね! ボクと雪歩で、ふたりは……って感じじゃないんですか!? おかしいですよ! ぶっちゃけありえないです!!」

妖精「すまんな、そこらへんは小鳥さんの管轄なんだプロ」

小鳥「ピヨォオオ!?」

真「小鳥さん! いったいどういうことなんですかぁあ!!」

小鳥「おっおちつ、落ち着いて真ちゃん、ほ、ほら、主役は遅れて登場するっていう……例のあれよ」

真「そうなん、ですか? じゃあボク、出番あります?」

小鳥「た、多分……」

真「え?」

小鳥「い、いやぁーおそらくきっと、でも未来のことは誰にも分からないから、ね?」

真「何が、ね? なんですか。目を見て話して下さい」

小鳥「ピヨォオ……プロデューサーさ…………いないいいいいい!!」

真「ボクとしてはですね、衣装はこーんなフリルがここからここまで……」


……


妖精「……ふぅ」

「ガー」

妖精「あ……カモ先生」

カモ「……ワンダリングスター、覚醒めたようじゃな」

妖精「はい……先生のおかげプロ」

カモ「わしは何もしとらせんわい。ただあの子の頑張りと……それを引き出そうとしてくれた、おぬしの力じゃ」

妖精「そんな……」

「パーフェクトサンも、ようやくか」

妖精「ハム蔵さん!」

ハム「ふー……あいつなら、やれると思ってたけどな」シュボッ……モクモクモク

妖精「ハム蔵さんも、信じてたプロね」

ハム「よせやい、そんなんじゃねぇって……吸うかい?」プハーモクモク……

妖精「あ、オレ、たばこは……」

カモ「あの子達のためかの」

妖精「はは、まぁ、それもありますけど……こう……妖精が喫煙ってのも……ねぇ」

ハム「ふぅん」モクモクモク

カモ「とにかく、あと一人……か」

妖精「ですね……プロ」

ハム「見つかるさ……でなけりゃ」ジュッ

ハム「この人間世界も、俺らの故郷の二の舞だ……」ポイッ

カモ「こらっ! 池に投げ捨てるでないわ!」

ハム「ちっ、相変わらずうるさいやつだぜ……」

妖精「ははは……」

妖精(みんな……待っててくれプロ……オレ達が、必ず……!!)



END。

間が空く可能性がありましたので、一旦終了しました。
続きは近々、また別に立てて書きます。

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