朱「例えばこんな潜在犯」 (27)

・サイコパスのSSです

・書き溜め少しあり

・短編集にできればいいなあ…

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宜野座「被害者はこの部屋に住む主婦」

宜野座「死因はカミソリで頸動脈を切断、即死らしい」

狡噛「部屋に争った形跡は無し。知人の犯行か」

朱「街頭スキャナーにもヒット無しです」

宜野座「…容疑者は無しか。第一発見者によればドアは施錠されていたらしい」

朱「第一発見者というのは?」

宜野座「被害者の夫だ。第一発見者だが犯人の線はない」

最初に~case1~ってつけるの忘れてたorz


宜野座「床の血の渇き具合と死亡推定時刻からありえないことが証明されている」

宜野座「なにより発見前の街頭スキャナーではサイコパスは極めてクリーンだった」

狡噛「ってなると窓もドアも施錠された中、犯人はどうやって被害者を殺したのか…」

朱「床が血塗れ…」

朱「…待ってください、この被害者の近くの血だまりに血のないところがあります」

宜野座「そこには被害者の赤ん坊が倒れていたらしい。頭に内出血があるが命に別状はないらしい」

狡噛「その赤ん坊はどうなった?」

宜野座「第一発見者が保護して、今は公安局で預かった」

朱「ひどい…赤ちゃんの目の前で母親を殺すなんて」

宜野座「赤ん坊も血塗れということは、被害者は赤ん坊を抱きかかえながら殺された可能性が高い」

宜野座「頭の内出血はその時に床に落ちたせいだろう」

狡噛「…」

朱「狡噛さん、何か気づいたんですか?」

狡噛「俺に一つ考えがある。できれば外れて欲しいがな」

宜野座「勝手な行動は慎め執行官」

朱「わ、私が着いて行きます!」

宜野座「まったく…」

~公安局~

縢「あれ?コウちゃん出動中じゃなかったっけ?」

朱「縢くんその赤ちゃんって…」

縢「いやいや俺のじゃねーって!」

縢「なーんか事件に巻き込まれたからさ。とりあえず公安で保護してるらしい」

狡噛「そいつか…」スッ

縢「…っておい!なんでドミネーター持ってんだよコウちゃん!」

朱「ち、ちょっと狡噛さん!?」

狡噛「縢じゃない。…その赤ん坊だ」

縢「はぁ?」

朱「狡噛さんいったい何をする気ですか!?」

縢「おいっ!?ドミネーターがエリミネーターに!?」

狡噛「…なるほど、そういうことか」

狡噛「常守、お前もドミネーターを使ってみろ」

常守「…」ガチャ

ドミネータ「犯罪係数 376 執行モード リーサル・エリミネーター」

常守「犯罪係数376…嘘でしょ…」

縢「マ、マジかよ…」

狡噛「これが事件の真相だ。犯人はこの赤ん坊ってことだ」

狡噛「こう考えれば、街頭スキャナー、現場の密室、血塗れの赤ん坊、全て説明がつく」

狡噛「犯人は最初から室内にいたんだからな」

常守「で、でも赤ちゃんが人を殺すなんてあるわけないです!」

狡噛「赤ん坊の腕力ってのは案外バカにならない」

狡噛「母親の腕にぶらさがれるくらいはある」

狡噛「恐らく隠していたカミソリを抱っこされた時に使い頸動脈を切断したんだろう」

常守「…」

縢「5歳で引っかかった俺とはレベルが違うな…」

狡噛「…とにかくこいつは厄介だ。0歳児の処分なんざ聞いたことがない」

縢「とりあえずは施設に連絡入れて、あとはあっちに任せりゃいいでしょ」

常守「施設なんて…、それじゃあこの子はずっと…」

狡噛「遅かれ早かれそうなっていただろう」

狡噛「ここまで濁ったサイコパスが改善した試しはない」

朱「で、でも…」

縢「年齢なんて関係ねえよ。俺だって5歳でサイコパス検診に引っかかって今や猟犬の身だっての」

縢「年齢で差別はできねえよ。それが今の社会なんだろ、監視官?」

朱「縢くん…」

狡噛「それにこいつは人を殺してる。もう手遅れだろう」

朱「そもそもどうしてこの子は人を殺してたんでしょうか」

狡噛「…こればっかりは同じ潜在犯でもわからん」

狡噛「もしかしたら…それがこいつの本能なのかもしれないな」

case1 end

~case2~

朱「彼が例の事件の潜在犯?」

霜月「ええ、被害者のそばで倒れていたところを確保しました」

朱「現場の状況は?」

霜月「刺殺された遺体が1人。調べた結果あの潜在犯の母親でした」

霜月「遺体の近くに血塗れの包丁がありました。包丁からは被害者の血液が検出されています」

朱「それが凶器に間違いないわね、他には?」

霜月「その…あの潜在犯の犯罪係数なんですが…」

霜月「犯行前の街頭スキャナーでは犯罪係数は恐らく100を超えていたはずです」

朱「街頭スキャナーからの色相判定で現場に出動したから当たり前だと思うけど…」

霜月「今の犯罪係数が40でもですか?」

朱「犯罪係数が下がったってこと?」

霜月「それも大幅に。信じられません!」

霜月「このままだと釈放かも…」

霜月「…潜在犯のくせに」

朱「昔私が関わった事件で、殺人を犯すと色相が改善されたケースがあったわ」

霜月「そんな…どういうことですか!?」

朱「その犯人は日常的に被害者から暴力を振るわれててね」

朱「暴力の元をなくすことで色相が改善されていた」

朱「今回のケースもそれに該当するかもしれないわ。まずは容疑者と被害者の関係を調べましょう」

霜月「親子以外の何かが見つかるかもですね」

……


宜野座「常守、例の事件の容疑者だが、奴の体から暴力を振るわれた形跡が多数見つかった」

宜野座「体も痩せていたことから考えると、恐らく虐待だろう」

宜野座「それも被害者だけではない。複数人によるものだ」

朱「…そういうことね。でも色相まで大きく改善されるなんて。それに犯罪係数も上昇する気配もないみたいだし」

宜野座「それに本人は殺人を全面否定どころか記憶すらないらしい」

朱「記憶がない…、嘘をついている様子は?」

宜野座「恐らくだがないだろう。言動に不可解な点もない」

宜野座「そもそも母親が死んだことをひどく悲しんでいる」

宜野座「…金原の事件とはレベルが違う。恐らく他に何かあるかもしれない」

東金「常守監視官!」

朱「東金執行官!?そんなに慌てて何かあったんですか?」

東金「廃棄区画で遺体が発見されました」

東金「死亡したのは1ヶ月以上前のようです」

宜野座「それ自体は珍しいことではないと思うが」

東金「いえ…遺体に刺さっていたナイフからその潜在犯の指紋が検出されました」

朱「そんな…。街頭スキャナーやカメラはチェックした?」

東金「ええ、現場の近くのスキャナーに写っていました。ですが街頭スキャナーによれば色相に問題なかったようです」

宜野座「街頭スキャナーに問題は?」

東金「いえ、正常です。これはいったい…」

朱(免罪体質…はないわね。それなら霜月監視官が確保した際街頭スキャナーは作動しないはず)

朱「まさか…自在にサイコパスを操れるってことじゃ…」

東金「…確かにそう考えれば辻褄は合います」

宜野座「そんな事が…、その通りだとしたら前代未聞だ」

東金(どういうことだ。シビュラを…母さんを騙すなどできるはずがない)

東金(…奴は俺の手で始末してやる)



~数日後~

東金「常守監視官、例の潜在犯のことですが」

朱「何かあったんですか?」

東金「本日釈放が決まりました」

朱「そんな…、彼が犯人で間違いないのに」

東金「私も同意見です。念の為奴が冤罪の線で捜査しましたがなに一つ有力な手がかりはありませんでした」

朱「少し席を外します。東金執行官は霜月監視官と釈放後の追跡を」


霜月「ちょうどいいわ。釈放の時に車を渡しておいたわ。発信器付きの」

常守「し、霜月監視官!?」

東金「なるほど、それなら追跡は簡単です。常守監視官は?」

朱「私はこの件で話を聞かないといけない人がいるの」

……


霜月「容疑者の足取りは?」

東金「車に乗って北上中。今のところ街頭スキャナーに反応はありません」

霜月「もう!どうして街頭スキャナーは反応しないのよ!」

東金「自分にはわかりかねます」

霜月「…!?これはエリアストレス警報!こんな時に!」

東金「場所は容疑者の現在地とほぼ同じのようです。ホロを変え現場へ急行します」

……


霜月「うっ…これは…」

東金「背中から一刺し…息はないか」

東金「霜月監視官、奴の居場所は!?」

霜月「廃棄区画へ移動してる!何よこれ、さっきまでの方向とまるで違うじゃない!」

東金「応援とドローンの手配は?」

霜月「すぐに来れるドローンはないみたい。現場は応援に任せて追いかけるわよ!」

東金「はっ!」

……


東金「…着信?常守監視官からです」

霜月「…常守監視官、どうされましたか。今例の潜在犯を追っている最中なんですけど」

常守「ならまだ確保したわけじゃないみたいね」

常守「あの潜在犯、殺さないで確保して下さい」

霜月「なっ!?あなた何言ってるんですか!?生かして捕まえるなんて…」

東金「どういうことですか?奴は先程も1人殺しています」

東金「奴を生かしてというのは難しいかと」

常守「わかってる。でも聞きなさい、あの潜在犯の色相のカラクリがわかったわ」

霜月「色相のカラクリって…」

常守「あの潜在犯は恐らく多重人格よ」

東金「…なるほど。奴はサイコパスを操作したのではなく人格を操作していた、ということですか」

東金「そう考えれば記憶障害や色相の回復や悪化に説明がつきます」

常守「ええ、だから人格の中には色相がクリーンな者もあるはずよ」

霜月「だからって確保するだけなんて納得いきません」


霜月「シビュラが処分の判定を下した人格だってあるはずです」

霜月「そんなのを野放しにしてどうするんですか!?」

常守「多重人格は薬で改善することが証明されてるわ。適切な治療を行えば…」

霜月「それでも実際に犯罪を犯した人格には何のお咎めもないじゃないですか!」

常守「とにかく今は潜在犯の確保を優先して。私もすぐに向かいます」

東金「切れましたか。…どうしますか?霜月監視官」

霜月「ドミネーターが作動しないなら確保、でももしも作動したら迷わず執行しなさい」

東金「いいんですか?」

霜月「犯罪係数がオーバーしている人間を裁くだけよ。何の問題もないじゃない」

東金(言われるまでもない。奴はこの手で執行する)


……


東金「どうやら車を乗り捨ててこのプラント工場に逃げ込んだようです」

東金「霜月監視官は車を見張っていて下さい。私は奴を追います!」

霜月「ちょっ!待ちなさい!執行官が1人になって逃げたりしたら私の責任になるじゃない!」

霜月「はぁ…、まあ執行官の位置はすぐにわかるし問題ないか」

ID変わってたw


~1時間後~

常守「これは…どういうことですか、東金執行官!」

東金「常守監視官…、申しわけございません。ナイフで襲ってきたので執行しました」

常守「そんな…。追い詰められた時は人格を変えるはずなのに」

東金「しかしドミネーターが作動したところを見ると、シビュラを欺けなかったということでしょうか」

東金「そもそも今回の事件は一体どういうことがあったのでしょうか」

常守「…これは私ととある心理学者の推理の範疇だけど、恐らく人格は3つあったと思います」

常守「最初からあった人格は2つ。無意識のうちに入れ替わっていたんしょう」

常守「でも周りの人々からの虐待でそのバランスは崩れた」

東金「2つの人格…、つまりは虐待を受ける方と受けない方ということですか。そうして受けない方の色相だけがクリーンなままだった」

常守「ええ、でも虐待を受ける方のサイコパスもなかなか悪化しなかった。それは虐待を母親からの愛と考えたから」

常守「それでも過度な苦痛は人格をもう1つ作り上げた」

常守「多重人格者に過度なストレスを与えると、人格が新たに生まれるケースが過去にもよくあったみたい」

常守「…そうして新たに生まれた3人目の人格はひどく歪んでいたようね」

常守「それが今回の犯人よ。過度の虐待によるストレスで出来た人格は力をつけて他の人格と自在に入れ替われるようになった」

常守「そして最初の事件は廃棄区画で起こった」

常守「人格が変わった瞬間人を殺し、現場から離れて人格を明け渡す」

常守「殺人でストレスを解消したってことだと思う」

常守「そして1ヶ月後母親を殺した。その時街頭スキャナーに引っ掛かったのは…もしかしてだけどわざとかもね」

東金「故意にですか?」

常守「わざと自分を捕まえさせて隔離施設に入ることで、母親以外の虐待者から他の人格をまもろうとしたのかも」

常守「それか単に1度捕まって自分の容疑を晴らしてから、もっと殺人を行うつもりだったのかもね」

東金「ここに来るまでに殺された人はまさか…」

常守「ええ、調べてみたら親戚だったみたい。恐らく虐待していた者の1人ね」

東金「そういえば…私に向かって来た時、一瞬泣いているように見えました」

東金「本当はわたしを襲う気はなく、執行されるために向かってきたのかもしれません…」

東金「これ以上人を殺さないように…他の人格に虐待を受けさせないために…」

常守「本当はどの人格も元は良い人だったのかもしれませんね」

常守「…公安局に戻って虐待していた人を探しましょう」

常守「恐らくその人達も虐待することで色相を保っていたのかもしれません」

東金「被虐待者がいなくなれば色相は改善しないままということですか」

常守「ええ、私達が今できることはそれくらいしかないですから。さあ戻りましょう東金さん」

東金「…少し車で待っていてください。私もすぐに行きます」

常守「…ええ、待ってるわ」スタスタ

東金「…」スッ

ドミネーター「犯罪係数40 執行対象ではありません」

東金(嘘までついたというのに綺麗なままか)

東金(くく…、俺がこいつに泣きながら襲われたか。そもそも俺は襲われてなどいない)

東金(常守の推理のうち外れていたのは、3人目の人格が他の人格を守るために捕まったところか)

東金(色相がクリーンな人格以外はとっくに破綻していたさ)

東金(その証拠に奴は追い詰められた時、案の定人格を色相がクリーンな者に変えてきた)

東金(だから俺が真実を教え黒く染めた。あとは執行するだけ)

東金(シビュラを…母さんを欺いた報いだ。こいつにシビュラの元で生きる価値も資格もない)

東金(…しかしあの監視官。どうあっても黒く染まらないか。興味深い)

東金(だが直に俺が黒く染めてやる…)

東金(母さんを美しく保つために)

case2 end

これでおしまいにします
3つ目の話が思い浮かばないorz
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