千早「好敵手(ライバル)」美希「なの!」 (49)

アイマスSS一作目です。
アニマス25話からのifストーリー完結済

改変、キャラ崩壊、呼称の変更等を含みます

現在こちら【アイマス】「「いっけぇぇぇ!! キサラギぃぃぃ!!!」」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1426968575/)を書いていますが、追い付いていないため暇つぶしになればと思っての投下です

では>>2より投下開始します



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1427283169

某日 765pro応接室



――さて、取材を始めさせてもらうよ

美希「あふぅ……よろしくなの」

千早「よろしくお願いします」

――とりあえず、お二人共今年度IAノミネートおめでとう

千早「有難うございます。プロデューサーさん、律子、そして事務所の仲間のお陰です」

美希「ミキのジツリョクなら当然って思うな!」

――ははっ、正反対の答えだね。ところで今回は異例の同一事務所からのダブルノミネートになったわけなんだけど……

千早「そうですね、昨年度は春香が受賞しましたし、今年も765proから一人くらいはと思っていましたが」

美希「まさかの二人でノミネートされるとは思わなかったの」

千早「正直、私はまだBランクですし、春香と同じ舞台に立てるなんて思ってもいませんでしたから」

美希「ミキはそんなことないって思うな? 千早さんの歌はアイドルとしてはトップクラスと言って間違いないの!」

千早「そんな……あなたこそ私なんかより遥かにアイドルらしいと思うわ。現にランクだってSランクじゃないの」

――ふむふむ、お互いを認め合う仲間がたった一つの、トップの座を狙って競い合う……いい記事になりそうだよ

千早「でも同じ舞台に上がる以上、美希とはいい勝負を……いいえ、勝つつもりで臨みたいと思います」

美希「トーゼン! 手加減なんてしたらミキは許さないの!」

――ところで不思議だったんだけど、さっきも言ったように二人は性格的に正反対と言っていいほど違うよね?

千早「ええ、私もそう思います」

――でも二人はとてもいい関係……そうだな、『良いライバル』といった関係に見えるんだ

美希「当たり前なの、千早さんはミキがどうしても超えなきゃいけない『壁』なのっ!」

千早「72を……くっ」

美希「あー! 違うの千早さん! そういう意味じゃないのっ!」アセアセ

千早「72が……『そういう意味』なのかしらね?」ニッコリ

美希「ひっ……ゴメンナサイなの……ゴメンナサイなの……」ガタガタ

――なんだか良く分からないんだけど、どちらかと言えば如月さんの方が立場が上ってことになるのかな?

千早「いえ、私は対等でいるつもりなんですけど……」

――でも星井さんは如月さんのことだけは『さん』を付けて呼んでいるよね?

美希「それは千早さんがミキの憧れだからなの!」

千早「私はあなたに憧れられるような立派なアイドルじゃないわ」

美希「それは違うって思うな? だって3年前だって……」

千早「ミキ! その話はちょっと……」

――ん? 3年前って言うと、確か星井さんが765proに移籍した辺りだよね?

美希「そうなの、貴音・響・ミキで961proから移籍してきたの」

美希「でも移籍してくる前からオーディション会場とかで千早さんの姿は何度か見てたの、それでね」

… …… ………


P「みんなー! ちょっと聞いてほしい」

春香「プロデューサーさん、どうかしたんですか?」

やよい「うっうー! お仕事ですかー?」

P「ああ、いや仕事はまだなんだが……」

伊織「このスーパーアイドル伊織ちゃんに仕事がないってどういうことよ!?」

真「まぁまぁ、プロデューサーさんだって頑張ってくれてるじゃないか、わがまま言っちゃダメだよ伊織」

伊織「誰がわがままよ!」

真「伊織以外に誰がいるんだよ!」バチバチ

伊織「なんですってぇ!?」バチバチ

雪歩「ふ、二人とも落ち着いてぇ」

いおまこ「「雪歩は黙って(なさい・て)!」」

雪歩「ひっ……こんなひんそーでひんにゅーでちんりくりんの喧嘩を止められない私なんかぁ……」ジャキンッ

いおまこ「「ちょ……!!」」

雪歩「穴掘って埋まってますぅぅぅぅ!!!!」

伊織「ちょっと! また事務所の床に穴あけるつもりなの!?」

真「ボクが体を抑えてるから伊織はシャベルを!」

雪歩「これはスコップですぅぅぅ!!!」

  ワーワー ヤメテー

真美「あ→また始まったよ→」

亜美「ちかたないね→みんなオコサマですからな→」

真美「亜美驚愕の遅刻せずってやつですな→」

あずさ「あらあら、『阿鼻叫喚の地獄絵図』って言いたいのかしら?」

律子「はぁ……プロデューサーの話を聞きなさいってば、困ってるじゃない!!」

亜美「りっちゃんが怒った→」

真美「にっげろ→」

律子「逃がすかぁ!!!」ガシッ

あずさ「あらあら~」

伊織「ちょっと! イスラムの神の名前連呼してないであずさも手伝いなさいよ!」

あずさ「あらぁ?」

雪歩「離して下さいぃ! 私なんて……わたしなんてぇ!!」

真「こっ、この細い体にどれだけのパワーがっ!?」

春香「あ、あの~……そろそろプロデューサーさんがキレちゃいそうかな~って思うんだけど」ソーッ

やよい「さっき何かが切れる音がしたんですけど、なんだったんでしょうね~?」コソー

P「いい加減にせんかぁぁぁぁぁ!!!!!!!」ドッカーン

伊織真雪歩亜美真美あずさ「「「「「「すみませんでした……」」」」」」

P「全く……まあいい、とりあえず新しい765proの仲間を紹介するからな」

亜美「ちょっと! 聞いてないよ兄ちゃ→ん」

真美「まったくハツミミですぞ?」

P「お、お前ら……」プルプル

律子「ハイハイッ! 話が進まないから茶々入れないの!」パンパンッ

P「……おほんっ、あの大手961proから3人の移籍が決まった。四条貴音・我那覇響・星井美希だ」

P「入っていいぞ~」

春香「え、もしかして……プロジェクト・フェアリーの3人ですか!?」

伊織「今大売り出ししてるユニットじゃない……ウチみたいな弱小事務所に移籍なんて、アンタどんな手を使ったのよ」

やよい「前にTVで見ましたけど、我那覇さんってちょっと怖いイメージかなーって」

真「うんうん、基本的にクール路線だからね」

 ガチャ!

響「はいさい! 自分我那覇響だぞ! よろしくっ!!」

貴音「四条貴音と申します。好きなものは月とらぁめん、どうぞよしなに」

美希「星井美希なの……あふぅ、もう朝から眠くて眠くて……寝ていいかな?」

ALL「………」

伊織「なんなのこれ……」

やよい「TVで見るのとずいぶんイメージが違うかなーって」

あずさ「あらあら、体調でも悪いのかしら? 心配だわぁ」

亜美「んっふっふ~、随分と……」

真美「イタズラしがいのある3人ですな→」

律子「やめなさいってば!」ビシッ

亜美・真美「「ひどいよりっちゃ~ん!」」

P「さて、これからみんなで仲良くトップアイドルを……ってあれ? 千早はどこいった?」キョロキョロ

春香「あれ? さっきまで事務所にいたんですけど……」

真「千早ならさっき給湯室にヘッドフォン持って入っていきましたよ?」

春香「千早ちゃ~ん……また1人の世界に入り込んでるんだね」

P「悪い春香、ちょっと呼んできてくれないか? 顔合わせは済ませておきたいからな」

春香「らじゃーですよプロデューサーさん!」タッタッ

千早「~♪」シャカシャカ

春香「ち~は~や~ちゃん!」ドンッ

千早「っ! 驚かせないで、春香」

春香「えへへ、ごめんね? 今事務所の方に移籍してきた人が来てるんだ、プロデューサーさんが千早ちゃんも挨拶しとけってさ!」

千早「移籍……まぁ、どうでもいいのだけれど」

春香「そんなこと言わないの、これから一緒にトップアイドルを目指す仲間なんだよ?」

千早「何度も言うようだけれど、私は歌以外に興味はないわ……と言っても無視するわけにもいかないわね」

春香「さっ、いこっ!」

春香「連れてきましたよプロデューサーさんっ!」

P「悪いな春香。さて千早、こちらが新しく我が765proに所属することになった四条貴音・我那覇響・星井美希の3人だ」

響「えーっと、如月千早さんだよな? 我那覇響だぞ! 響って呼んでくれ!」

貴音「四条貴音と申します」

美希「あふぅ……ミキはミキなの……もう自己紹介メンドクサイの」

千早「はぁ……よろしく、私のことは千早で構わないわ、皆そう呼ぶから」

亜美「も→千早お姉ちゃんテンション低いよ→」

真美「そうだよ→アゲアゲで行こうよ→」

雪歩「それはちょっと古いと思いますぅ」

美希「………」

P「ん? どうした美希?」

美希「如月さん……ミキ如月さんのことだけは知ってるの」

千早「え……?」

美希「如月さんはね……」


美希「ミキとおんなじ天才なのっ☆」


ALL「……は?」

千早「それは……どういう意味かしら?」

美希「正直ね、ミキはほとんどの部分で勝ってるって思うな。ダンスも、ヴィジュアルも」

千早「嫌味のつもりかしら? 残念だけど……」

千早(私に対してそれは嫌味にはならないわ、星井さん)

美希「でも歌では絶対に勝てないって思うの」

千早「っ……そう、それで?」

真(うわっ……なんか空気がピリピリしてきた)

やよい(なんかイヤな感じかなーって……)

伊織(な、何よこれなんなのよ!?)

響(美希……)

貴音(自分の気持ちをぶつけるのですね……星井美希)

美希「だからね、如月さんはミキとおんなじ天才だなって思ったの。だってそうじゃなきゃミキが勝てないワケないの、アハッ☆」

春香「あっ……星井さん! それはちょっと……」


 アイドルとしての素質、プロジェクト・フェアリーで積み上げてきた経験値、そして自分の才能を信じる力。
多くのアイドルが欲するほとんどの才能を持ってこの世に生を受けた彼女に、未だ誰も知らない如月千早の過去など知る由もない。
彼女は許せなかった、自分より遥かにアイドルとして劣るであろう無名のアイドル。

 最初に目にしたのは舞台のオーディション、エントリーナンバー1番ですべての過程を終えた彼女は自身の勝利を疑うこともなく会場を
後に……そんな彼女の足を止めたのは、女神のような、鈴のような、小鳥のような、氷のような歌声だった。

   ♪蒼い鳥 もし幸せ 近くにあっても あの空へ 私は飛ぶ 未来を信じて♪

アカペラで紡がれる旋律は心の底に残って離れることがない。

 いつの間にか聞き惚れていた自分に気がつけば、沸々と胸の中に黒い感情が渦巻いてゆく。
 
美希(ヴィジュアルはミキのほうが上だし、ダンスだってロクに踊れてなかった、なのに……なのに……!!)

美希(なんでそんなに楽しそうに歌っていられるの!!!)

 オーディションの結果は明白、いつも通りの圧倒的な勝利。肩を落としながら去っていく有象無象の中にひとり、笑顔。

美希(おかしいのっ……オーディションはミキの圧勝だったはずなのに!)

 白シャツのうだつのあがらない男が車から出てきた。多分結果を聞いたのだろう、一瞬だけ残念そうな顔を覗かせて……笑顔。

 嗚呼、いつからだろう? 勝っても嬉しくなくなったのは。

 嗚呼、いつからだろう? 負けることをこんなにも恐怖に感じるようになったのは。


 嗚呼、いつぶりだろう? 心の奥にくすぶっていた情熱が、身を焦がす感覚を味わうのは………

 気がつけば黒井社長に辞表を叩きつけていた。適当に取ったボールペンで書き殴った汚い辞表。いくら中学生だからとはいえ
こんなモノが受け入れられるとは思っていない。だからこれは自分なりのケジメ、受け入れらなくとも、自分はここを去るのだという意思表示。

黒井「……出て行け」

美希「お世話になりましたなの」

 二言だけの別れを済ませ、翻した視線の先にふたり。

響「自分は、美希に付いていくぞ」

貴音「わたくしも、星井美希に付いて参ります。黒井殿、今までお世話になりました」


 もう彼は言葉を発することは無かった。ただその背中が『勝手にしろ』、そう言っているようで、深く頭を下げずにはいられなかった。


 移籍した先でやっと出会えた倒すべき相手、よくよく見れば端正な顔立ちの少し年上の少女。気がつけば口は自分が思うよりも多く回る。

 紡ぐ言葉に相手の顔が曇るのがまるでスローモーションのようによく見える。だけど、止まらない、止まれない。

美希(ミキは、この世界で一番キラキラしたいの!)

美希「だってそうじゃなきゃミキが勝てないワケないの、アハッ☆」

 リボンの女の子が何か言っている。焦ったような様子で……如月さんについて、何か知ってるのかな?

千早「ふざけないで」ギリッ

 頬がチリチリと焼けるような感覚、明確な怒り。

千早「あなたみたいな天才にはわからないでしょうね、何もかもを持って生まれたようなあなたには」

千早「私が、どれだけ歌に真剣に取り組んでいるかも知らないで……」

美希「だって美希が負けるなんてありえないのっ!」

  嘘だ、自分が何故負けたのか、そんなことはよく分かっている。それでも、今まで自分を支えていたプライドを捨てられない。
  また自分のアイデンティティを守るために、高慢極まりないセリフを吐く。

千早「私の歌は私が必死に作ってきたものよっ! 軽々しく天才なんて言葉で一括りにしないでっ!!」バンッ

伊織「ちょ! ちょっと落ち着きなさいふたりともっ!!」

春香「そ、そうだよ! 千早ちゃんも落ち着こう? ね?」

雪歩「け、喧嘩はやめてくださいぃぃ」

やよい「うぐっ……ひっく……」

あずさ「あらあら、泣かないでやよいちゃん。よしよし」

やよい「あずささぁ~ん、怖いですぅ~……」

真「千早がここまで怒るなんて……」

律子「誰よりも歌うことに真剣だからこそ、許せなかったんでしょうね」

亜美「千早おね→ちゃん……」

真美「……」

P「だ、大丈夫なのか……これ?」

?「買い出しから帰って来たものの……ドアを開けるタイミングを見失ったピヨ……」

――へぇ~……驚いたね。移籍の理由もそうだけど、今はクールってイメージが板についてきた如月さんがそんなに怒るなんてねぇ

美希「あの時何も言わずに付いてきてくれた貴音と響にはホントに感謝なの!」

千早「お恥ずかしいです……」///

美希「あのときの千早さんはホンットーに怖かったの!」

千早「だ、だって! あの時は美希がふざけたこと言うからじゃないの!」

美希「うー……ミキもあの時のことを思い出すと顔から火が出るの……」///

――あれ? 星井さんも恥ずかしいのかい?

美希「だって……自分が負けたのは相手が天才だったからだ! なんて……負け犬の遠吠えにもほどがあるって思うな」

美希「ミキがそんなことを言ってたなんて……思い出すだけで……恥ずかしいのー!!!」バフッ

――あはは、クッションに顔を埋めるほど恥ずかしいのか

千早「ふふっ、随分反省してるようね?」

美希「反省してます……なの」///

――良かったら、そこからどうやって今のライバル関係になれたのかも教えてくれないかな?

美希「それは簡単なの」

――簡単?

美希「ボコボコにされたの」

――ぼ、ぼこぼこぉ!?

千早「ちょっと美希! 言い方が悪いわ!」アセアセ

美希「アハッ☆ 冗談なの! その後のミニライブでね、プロジェクト・フェアリーの765pro移籍を告知したんだけど」

千早「3人以外にも既に765proに所属していたアイドルから2人ライブに出ることになりまして」

――そこで如月さんが出た、と

千早「はい、私と春香で出ることになりました」

美希「でね、ミキがハn……プロデューサーにワガママ言って千早さんと1:1で歌えるようにしてもらったの」

千早「あの時は本当に緊張したわ……後にも先にもこれから歌おうというときに足の震えが止まらないなんて経験はないわね」

――いわゆるタイマンって感じでいいのかな?

千早「私はあまりそういう意識は無かったですが、ただ自分より遥かにアイドルらしい美希と1:1だったので」

美希「正直ミキは喧嘩してるような感覚だったの」

――それで、結果は?

美希「惨敗だったの……ミキは千早さんを意識しすぎてダンスはボロボロ、ヴォーカルも声は通らないし音程はズレるし、最悪のステージだったの」

――今の星井さんからは想像もつかないね……それで如月さんは?

千早「いつも通りでした。歌い始めたら緊張も何処かへ飛んでいってしまって、お客さんも盛り上げてくれたと思います」

千早「自分としては、あまり勝ったとか……そういう感じもありませんでしたね」

美希「それでもミキは思い知らされたの、この人はすごい人なんだ、自分は天才だ……そんなふざけたことを考えてるヤツに勝てる相手
じゃなかったんだって」

千早「でも美希は本当に天才じゃない、あのミニライブからの追い上げは正直私も恐ろしかったわ。途中で失速したりもしたのだけれど」

――ああ、星井さんがアイドルをやめるって言い始めた時の話かい?

美希「その話はやめてほしいの……」

千早「ふふっ……」

美希「善澤さんはミキたちのことを知りすぎてるって思うな?」

――その方がいい記事が書けるのさ、さてとそろそろ時間だな

「IA出場者のみなさーん! そろそろ袖でスタンバイお願いしまーす!」

P「千早、美希、そろそろだ、準備はできてるか?」ガチャ

美希「ハニー!」ダキッ

P「ちょ! ハニーって呼ぶな抱きつくなー!!」

千早「ふふっ……今日は気負いは無さそうね? 美希」

美希「トーゼンなのっ! 3年前のミキとは、もうお別れしたって思うな!」 

美希「千早さん……ミキは、千早さんに勝ちたいの、絶対」

千早「……」

美希「千早さんは歌をメインでやっていくんだろうし、ミキなんて眼中にないかもしれないけど、それでもミキは勝ちたいの」

美希(これはミキの決意表明なの。あの辞表と同じ、ミキの揺るがない信念を、受け止めて欲しいの)

美希「ミキはね、千早さんのことを尊敬してるし、大好きなの」

千早「なっ……」///

美希「でもね、勝つよ……絶対」キッ

 

  嗚呼、情熱が心を焼いていく

  叩きつけろ、これは挑戦状だ

  目の前の壁を、越えていく

  私は、星井美希は


美希「千早さんを超えるの」

  ガチャ……

黒井「フンッ……勝手に出て行ったと思えば、随分とデカい口を叩くようになったものだな」

P「くっ、黒井社長!? なぜここに!?」

黒井「いつぞやの3流プロデューサーか、まぁいい……星井」

美希「はいなの」

黒井「貴様は我が961proのエースを2人も引き抜いて出て行った馬鹿者だ」

美希「……」

黒井「お陰で後釜を探すのに随分と苦労した、分かるか?」

P「ちょ、ちょっとそんな言い方!」

美希「ハニー、いいの」スッ

P「み、美希?」

美希「それは、本当に悪かったって思ってるの」

黒井「悪かったか……そんな言葉で贖罪を果たしたつもりか?」

美希「それは……」

黒井「勝て」

美希「……え?」

黒井「貴様は貴様が超えると誓った相手を倒すためにこの私の元を去ったのだ。私が育てたアイドルが、負けっぱなしでは私の面子が立たん」

黒井「だから勝て星井、これは社長命令だ。この通り、辞表はまだ受理していないからな」スッ

美希「それ、まだ持って……」

美希「わかったの! 絶対に千早さんに勝つの!」

黒井「フンッ、当然だ」スタスタ

P「な、何しに来たんだあの人は……?」

千早「さぁ……?」

美希「千早さん」

千早「何かしら?」

美希「ミキね、このアリーナの中で一番キラキラするの! だから、ちゃんと見ててね!」

「星井美希さーん! 出番まであと3分でーす!」

美希「ハニー! 行ってくるの!」ダッ

P「おおっ! 楽しんでこい!」

P「嬉しそうだな、千早」

千早「……っ/// ええ、そうですね。私には春香や事務所の皆という仲間と、美希という好敵手(ライバル)がいますから」ニコッ

黒井「フンッ……」

高木「ふふっ、やはり手塩にかけたアイドルは愛おしいかね?」

黒井「黙れ、貴様のような甘い人間に、アイツは扱えんだろう。必ず私のもとに戻ってくる」

高木「確かに、私は甘いかもしれないね。けど、私がティンときたプロデューサーは、かなり仕事のできる人間だよ?」

黒井「あの3流プロデューサーか……フンッ!!」

高木「それに、星井くんもあんなに楽しそうな顔ができるようになったんだよ、君も見ただろう?」

黒井「下らん、失礼するっ!!」

高木「やはり少し強引で不器用だが、黒井……君もやはりアイドルを……」

高木「やめておこう、それは今考えることではない。さて、音無くん」

小鳥「ピヨッ」

高木「我々も客席に行くとしようか」

「みんなー! ミキの声ちゃんと聞こえてるかなー!?」

 会場の熱気は今や最高潮に達していた。それも然り、今やアイドルランクでも常にトップ10に入る美少女が、アリーナに向けて手を降っている。

「ミキ、キラキラしてるかなー?」

 間髪入れずに帰ってくる返事に、少女は満足気に笑う。

「ミキね、今日はどうしても勝ちたいの!」

 圧倒的なパフォーマンスを持つ努力を知らない天才、そんなアイドルであった星井美希の意外な発言に、会場が微かにどよめく。

「ミキにはね、ライバルが居るんだ。昔は絶対に勝てないって思った、ちょっと前まではやっと隣に並べたかな?って思ってたの」

「でもその背中はやっぱり遠くて、でも追いつきたくて必死にここまで走ってきたの!」

「でね、今日やっと、本気で戦えるステージが、このアリーナがミキの目の前にあるの!!!」

 会場を埋め尽くす若草色のサイリウムが煌めく。

「今日のミキは今までのミキとはちょっと違うの! 最後まで付いてこれる?」

 挑戦 流れるサイリウム

「付いてこられなくても置いてっちゃうの!」

 挑発 星空のような緑

「じゃあ行くの、ミキの本気のステージ!」
  
  いつだって追いかけ続けてきた。やっと今手が届く場所まで来れたの!

  あの努力の天才に、非凡なる才を持つ歌姫に、一度は堕ちた蒼い鳥に
 

「勝つよ、ゼッタイ」


  マイクが拾わないように、小さな声で

  視線の先には千早さん

  目が合う、コンマ数秒だったけど、きっと届いたの

「いくの! マリオネットの心!!」

… …… ………

やよい「美希さん……すごいです~」

律子「圧巻ってこの事ね」

真「ダンスも完璧だ、またレベルあげてきたな……く~! こりゃ負けてらんないねっ!」

響「自分もまっけないさー!」

伊織「ふんっ! 765proの代表なんだから当然よこのくらい」

あずさ「あらあら~、その割には悔しそうな顔じゃない?」

伊織「だっ! 誰がっ!!」///

雪歩「はうぅ、美希さんかっこいいですぅ」///

亜美「あれぇ? ゆきぴょんはまこちん一筋じゃなかったのかな→?」ニヤニヤ

真美「おやおやぁ? 浮気ですかな→」ニヤニヤ

P「すごい気合だな……こっちまで気迫が伝わってくる……」

春香「はあっ、はあっ……美希ちゃん、すごい」

P「去年のIA覇者ですら押されるほどか、MCお疲れ様」ポンポン

春香「あっ/// い、いえっ、こんなの全然っ……きゃあっ!」ガッシャーン

やよい「はるかさ~ん! だいじょうぶですか~?」

春香「てへへ、またやっちゃった」テレッ

律子「全く……少しは千早の落ち着きを見習って……ち、千早?」

千早「…………」グッ

春香「千早ちゃん……」

千早「プロデューサー、お願いがあります」

P「?」

千早「~…~~!~…」

ALL「「「「「えええええええ!?!?!?」」」」」」

P「ほ、本気か? 千早……いくらお前と言えど……」

千早「美希に、勝つためです」

春香「勝ちたいの?」

千早「あんなものを目の前で見せられて、黙っていられるほど私はクールじゃないわ」

千早「あの美希の歌、ダンス、パフォーマンス……あれは全て私に向けられているわ。それに応えたい」

春香(自意識過剰かしら? なんて笑ってるけど、目は本気だ)

伊織(いつだったかしら、こんな千早の目を見たのは)

P「分かった、音響さんに話を通してくる」

千早「有難うございます」ペコッ

P「但し、正直に言って異例中の異例だ。IAの審査対象からは外されるかもしれないぞ?」

千早「構いません、これが私の『本気』ですから」

  熱気が押し寄せてくる。怖いくらいの盛り上がりだ。こういう時はダンサブルな選曲をしておいて良かったと思える。
  体を動かしていれば掠れそうになる声も伸びてくれる、笑いそうになる膝も無理やり抑えこんでおける。

♪貴方に気持ち届かない Ahもどかしい♪

  見せ付けろ、私がトップアイドルだ。昔の高慢で世間知らずの自分じゃない。
  腕を振れ、ステップを踏め、喉を開け、スポットライトを全身で浴びろ!

♪ほらね 涙ひと粒も出ない♪

  最後の一小節、出しきれ、出しきれ、出しきれ

  星井美希の全てを、出しきれっ!!!!

♪心が壊れそうだよ・・・♪



「はあっ……はあっ……」

「やり……きったの……」

  肩で息を吸う彼女に、満天の星空が最大の歓声を捧げた。

…… ………… ………………

P「美希っ! 大丈夫か!?」

春香「雪歩! 酸素ボンベ持ってきて!」

雪歩「はいぃ!」ダダダッ

美希「だいじょうぶ、なのっ……!」

響「み、美希、無理はよくないぞ!」

貴音「そうです、さあ座って休むのです」

やよい「うっうー……おやすみしてくださ~い」

美希「ダメなの、まだ倒れるわけにはいかないの……千早さん、きっとミキに本気でぶつかってくれるって思うの」

あずさ「美希ちゃん……」

真「じゃあボクが隣で支えててあげるよ!」ガシッ

響「自分は反対から支えるぞ!」ガシッ

真美「みきみき~、お水だよ→ん」

亜美「ほいっ! タオルもあるよん♪」

美希「アハッ☆ ありがとうなの!」

雪歩「美希ちゃん!」

美希「酸素ボンベ、助かるの……はー……正直限界だったの」

千早「美希」

美希「千早さん……美希のステージ、ちゃんと見ててくれた?」

千早「ええ、しっかりと目に焼き付けたわ」

美希「ミキ、キラキラしてた?」

千早「ええ」

美希「良かったなの!」ニパッ

千早「行ってくるわ、美希」スッ

P「千早……」

春香「ねぇ、美希……」 

美希「? どうしたの春香?」

春香「千早ちゃんね、きっと今本気だよ?」

美希「本気になってくれないとミキがここまで頑張った意味がないの」

春香「違うの、そういう意味じゃなくて……美希はね、一番起こしちゃいけない眠り姫を、起こしちゃったんだよ」

  ライトが眩しい、こんなに暑かったかしら?

  ああ、まだ美希の匂いが会場に残ってる。若草色のサイリウムも沢山……

「こんばんは、如月千早です」

  マイクを通して拡張された声が、アリーナに染みわたる。

「本日はこのような大きな会場で歌わせてもらえる機会を頂き、感謝しています」

  美希が残した熱が、少しだけ冷めたのを感じる。

「突然ですが、私には私をライバルだなんて言ってくれる子がいます」

「いつだってキラキラ光っている彼女が、私は羨ましかった……妬んですら、いました」

  ざわめきが大きくなる。きっと私の言う『彼女』が誰かなんて、とっくに分かっているでしょうね

「でも! その子は、本気でぶつかってきました。アイドルとして、まだまだの私なんかに」

「嬉しかった。舞台袖で泣きそうでした。けど私は歌わなきゃいけないんです」

「私には歌しかないから、歌でしか伝えられないから」

「だから会場にいらっしゃった皆様には、これから大変失礼なことをします。ごめんなさい」

  深々と頭を下げる。それでも許してもらえるのなら、私は……


  『よっ! ナムコプロの歌姫っ!』  『頑張れー!』

       『千早ちゃ~ん!!』

「っ! ありがとうございます!」

  ファンの皆は、いつだって私の背中を押してくれる。

  プロデューサー、765proの仲間、春香……美希。
  この人達がいれば、私はどこだって歌える。誰にだって届けられる!

  そのために、『これ』は、いらない。

      手を、離す。

『ガガッッ!!キィィィィィン……』

  ハウリングが響く。

美希「えっ!?」

春香「千早ちゃん……」

P「千早……かましてやれ!!」


「聞いてください、如月千早」



   『細氷』

♪暗い 暗い 心に映る私の瞳♪

  一番奥まで、届くように。

♪海の底のように 深く息ひそめ♪

  まだ美希の熱が残ってる……

♪切なさがこぼれ落ちる♪

  今歌っているのは美希じゃない!

♪さって行くあなたの背中に♪

  私の歌を、聞きなさいっ!!

♪「さよなら」♪


  誰だろうか、歓声を送るのを止めたのは。

  誰だろうか、サイリウムを振る腕を落としたのは。

  誰だろうか、時間を忘れ、自分が今居る場所を見失ったのは。

♪行き場のない さまよう心♪

  ああ、そうね……迷ったことだってあったわ。

♪離隔に抱かれ♪

  でも、もう迷わない、美希があそこまでやったんだもの……

♪私 もがきながら歩き出すの♪

  勝つわ、本気で、全力で、私の歌で。

♪風に揺られモノクロの♪

  あなたにっ!!!

美希「すごい……の」

伊織「コールも無い、サイリウムすら振らないアイドルのライブなんて……前代未聞じゃない」

あずさ「私も歌には自信があったんだけれど……これには勝てないわぁ」フフッ

真「ちょ、ちょっとボク泣きそうだよ……」

響「ひぐっ……ちはやぁ……自分かんどーしたぞぉ!!」

伊織「既に手遅れなのもいるわね……」

やよい「青いサイリウムが海みたいです~」

真美「ま、誰も降ってないから凪ってカンジだけどね→」

亜美「これはこれで桃の木がありますな→」

律子「それを言うなら趣ね……それにしても、さっきの美希もすごいと思ったけど、千早も凄まじいわ」

貴音「ふふっ、白銀の女王と言われているわたくしですが、今日に限っては千早に女王の名を譲らねばなりませんね」

貴音「そう、『氷の女王』……なんて」

春香「千早ちゃん……」

♪街も 人も 夢も♪

  誰もが、この歌がアカペラで歌われていることを忘れた

♪朽ち果てて♪

  ある者は、如月千早の復活を象徴する『約束』を思い出し

♪もがきながらつまずいても♪

  またある者はその実力を世間に印象づけた『眠り姫』を思い出し

♪立ち止まれない私に♪

  そして、ただ茨の道を歩み続けてきた歌姫を見つめることしかできなかった

♪悲しみや切なさのない光が待っているよ♪

 私の光。
  
  プロデューサーさん、春香、萩原さん、高槻さん、律子、水瀬さん、真、あずささん、亜美、真美、音無さん、社長……そして美希。

♪心燃やし尽くすため息 光に変わるの♪

  美希、貴方が私に火をつけてくれたのよ?

♪強く強く 縛ってよ♪

♪心の中の スヴェート♪

  貴方が、私に夜明けを持ってきてくれたのよ。

… …… ………

千早(歌は終わったのに、拍手もない……当然ね、こんなめちゃくちゃなことをしておいて)

千早(さて、戻りましょう。足、動くかしら?)

千早「……美希?」

千早(何故、泣いているの?)

美希「前に、コンビニで立ち読みした漫画にこんなセリフがあったの」

響「えぐっ……ま、漫画ぁ?」

美希「一流に対して人は惜しみない歓声と拍手を送る」

真「えっと、当然?」

伊織「何言ってんのよ、あったりまえじゃないの!」

やよい「でも今の千早さんのステージすごかったですよ~? なんでみんな黙ってるんですかぁ?」

美希「そして……超一流に対して人は」


美希「まず沈黙する……の」

『あ、あれ……』  『終わった?』     『千早ちゃんの歌……』
   『えっと、何が起こって……あれ?』
              『す、すごい……』
  『いつの間に……え?』   『うう……涙が……』


美希「そして今の千早さんのスゴさがわからない人なんて、いないの!」




   その瞬間、アリーナはその日一番の爆発的な盛り上がりと、惜しみない賞賛の声に大きく揺れた。

――見事、IAを受賞しました! 星井美希さんにお越しいただきました!

美希「みんなー! ありがとうなのー!!」フリフリ

――いやー、すごい人気ですねぇ……

美希「ミキがここまで来られたのは、応援してくれたファンのみんなのおかげかなって思うな! アハッ☆」

――ところで星井さん、授賞式の際に浮かない顔をしていたとファンの間から心配する声なんかもあるんですが……

美希「あー、顔に出ちゃってたの……反省なの」

美希「でも仕方ないって思うな! 目の前であれだけのパフォーマンスを見せつけられて、審査対象外で最下位なんて」

美希「どーしても納得できないの!!」クワッ

――おっとと、抑えて抑えて

――しかし、もちろん星井さんもすごかったですけど、如月さんもとてつもないことをやってくれましたねぇ!

春香「そうなんですよ! ステージ上でマイクを捨てて音まで止めてアカペラなんて考えられません!」

――おっと紹介が遅れました、前回のIA覇者の天海春香さんにもスタジオにお越しいただいております!

春香「プロデューサーさん!ゲストですよっ!ゲストっっ!!」

――ん??

春香「あっ! いえ、なんでもありまっ……きゃぁっ!!」ドガッシャーン

――だ、大丈夫ですか!?

美希「あー、またやったの……」

春香「またってヒドいなぁ美希」

美希「ほら、手貸すの」スッ

春香「ありがと!」

… …… ………


P「やっぱり審査対象外だったな……残念か?」

千早「ふふっ……いいえ?」

P「おいおい、トップアイドルになるチャンスを一つ逃したんだぞ? そんなことじゃ……」

千早「あ! いえ、そういう意味ではなく……」

P「まぁ、あれから順調に仕事も来て、アイドルランクも一気にSまで上がったし、別に……」ブツブツ

千早「でも、本当に後悔なんてしていません」

P「……そうかっ」ニコッ

千早「はいっ!」



  『だって、美希……貴方はまだ私の好敵手(ライバル)でいてくれるでしょう?』

以上になります。読んでくれた方がどれほどいたかはわかりませんが、ありがとうございました。
細氷を聞いて、これを千早がアカペラで歌ったら?って考えてたら指が勝手に(ry

美希の超一流に対して~ってところはジャンプのSOUL CATCHER(S)っていう漫画に出てくるセリフです。少し変えてますけど

あと間違いを一つ

×白銀の女王
○銀髪の女王

失礼しました。

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