凄く短い小説を書いてみた(10)

記事で見た人は、申し訳ありません。
酒を飲んでおりまして、私は冷静でありませんでした。
拙い文章だと自覚してはおりますが、第三者目線から見てどうなのか評価を頂きたいです。

テスト

巨大樹の森でエレンを捕獲する事に失敗した私は、長時間行った巨人化による副作用で心臓にじわりと迫る痛みを感じ、意識が朦朧とし、自身の身に纏っている巨人の体内から脱出出来なくなっていた。

残っている力を振り絞り、巨人のうなじを内側から切り裂いて外へ出た私は、いまや抜け殻となったこの巨人の頭部によじ上り、息を落ち着かせながら周りの状況を確認する。

そして見下ろした瞬間、言葉を失った。

私が脱出した巨人の抜け殻を、数多の巨人が我先にと奪い合っているのだ。

巨人のその数、二十はくだらないだろう。

巨人の抜け殻の頭部に立ちすくんでいる私を数体の巨人が発見し、私を手中に入れようと手を伸ばしてくる。

嫌悪感を隠し切れない。

先程まで散々人間を惨殺した私と、巨人の残骸を貪り争うこれらが同じモノなはずがない。

この現実を視界から消し去る為に、巨大樹の頂上付近の枝---といっても大きさは通常の十倍はあるが---に対して立体起動装置のアンカーを射出して特殊ガスで一気に巻き取り、勢いよく移動した。

移動した枝から巨大な幹にふらつきながら移動し、幹を背にしてドサリと尻をついた。ようやく地獄の景観から解放されたと同時に、虚無感が身体全体を包み込んだ。

自然涙が目から零れた。

何の表情も作らず、ただ目から涙が落ちるのを、自分の内側から眺めていた。

確かに私は調査兵団の兵士を沢山殺した。

崇高な手段の為としてそれらを自己肯定するつもりもない。

だが、最後の最後で、エレン・イェーガーという目標を逃した。

人類最強と謳われるりヴァイ兵士長、同期主席で卒業したミカサ・アッカーマンによって。

私に残ったのは、目標達成の寸前で獲物を取られたという滑稽さと、人間を大量に殺害した悪魔という事実だけだ。

やがて闇が訪れ、雨が降ってきた。

その雨は何故か、ひどく柔らかかった。

優しい雨が心の痛みを洗い流してくれると、誰かが言っていた気がする。

訓練兵団の図書本だったか、本が好きな同期のアルミン・アルレルトだったか。

…嘘つき。

柔らかい雨が、その一粒一粒が私の身体を突き刺すようだ。

この痛みの雨にひたすら耐え続け、ただひたすら体力の回復を待った。

夜になると雨の勢いは落ちてゆき、次第に止んだ。

巨人の活動は静まり、全てが眠りに落ちる。

私は多少の体力が戻ったのを確認し、その場を立ち上がろうとしたが、その瞬間心臓に激痛が走った。

鳩尾から出てくる疲労が心臓に押し寄せるかのようで、徐々に、確実に臓器を圧迫してくる。

しばしうずくまるが、動悸が収まっていくのを感じると、携帯していた灯火を闇の空間に掲げ、目視出来る範囲で立体起動術で巨大樹の中を移動していった。

このエレン・イェーガー捕獲作戦を実行する前に、万が一に備えて、調査兵団に潜り込んだ仲間のライナー・ブラウンとベルトルト・フーバーに壁内帰還用の馬を用意させていた。

夜間のみに緑光する特殊石を馬の近くに設置しておき、それへ向かって私は移動していった。

一分程度で目標に辿り着いた。

これ以上立体起動を行っていれば、心臓の痛みと疲労による集中力低下で辿り着けなかっただろう。

木に繋がれていた馬を解放して、馬の上部に乗るとひどく安堵感が込み上げてきた。

私はひたすら壁へ向かって馬を駆けた。

夜間で活動能力が弱まっているとはいえ、巨人に遭遇すれば、今の私には抵抗する術も持たない。

だが、夜が明けて私が憲兵団宿舎に居なければ、私が壁外での女型の巨人の正体だと疑われる可能性もある。

まだ空が明けかかっている時間、私はウォール・マリア外壁に着いた。

幸運にも、巨人とは遭遇しなかった。

死に場所はここではないという事なのだろう。

私は立体起動装置で壁内に上り、誰にも見つからないよう潜みながら憲兵団宿舎を目指した。

そして、遂にそれを達成した。

心魂疲れ果てた私は、宿舎の自分に割り当てられている部屋に入ると、着替えもせずにそのままベッドになだれ込んだ。

同室であるヒッチ・ドリスは門限を破られたら連帯責任がどうと言っていた気がするが、そんな事はもうどうでもいい。

ただ、終わった。

だが、終わりではない。

これから自分がどうすれば良いのか考える余力は無く、重く深い眠りに落ちていった。

終わり。

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