2人の美人調薬師【遊戯王OCG】 (95)

はじめに


・このSSは百合次元のフィールを含みます。苦手な方はご注意ください
・R18を含むネタはありません。苦手な方はご安心ください
・ルールを守って楽しくデュエル!

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魔法族の里



アルケミック・マジシャン「よーし、出来た出来た!」

アルケミック「これで依頼されてた分は完成したわね。後は納入するだけ……っと」

アルケミック「それにしても疲れた~。朝から仕事なんてするもんじゃないわね」

アルケミック「かと言って徹夜ですると健康や美容に悪いし……ああ悩ましい」

アルケミック「まあいいや、これでしばらくはゆっくりできるはずだし。まずはお風呂入ってそれからゆっくり寝るとするか」

アルケミック「……ん? そういやなんか忘れてる気が……」

アルケミック「あっ、そうだ! だいぶ前に《ゴブリンの秘薬》の注文受けてたんだった!」

アルケミック「作るの簡単だから後回しにしてたんだっけ……。こうしちゃいられない! えっと納期は……」

アルケミック「あ、明後日!? どんだけほったらかしてたの過去の私!」

アルケミック「い、いやいや今からでも遅くない! 幸い簡単に作れるから時間はかからない。今日明日2日使えば完璧な一品が作れるはず!」

アルケミック「早く作らなきゃ! 材料は《漆黒のパワーストーン》と《至高の木の実》に《レッド・ポーション》でしょ……」

アルケミック「パワーストーンはまだ在庫があったのを確認したし、木の実は自家栽培したのがあるし、レッド・ポーションは薬を扱う職業なら必須アイテム!」

アルケミック「この棚の中にたーくさん……」ガチャ





アルケミック「……ない」

アルケミック「ない! ない! なーい!」

アルケミック「なんで? どうして? 補充し忘れた? 嘘でしょ? タイミング悪すぎ!」

アルケミック「一から作る? 出来なくはないけど時間が……」

アルケミック「なら買ってくる? ダメだ、一般に流通してるのは高くて赤字になるかもしれない」

アルケミック「やっぱ作るしかないか……。やること多すぎてネコ耳族の手も借りたいくらい……」

アルケミック「……ん? 借りる?」


アルケミック「そっか、借りればいいのか」




アルケミック「ここに来るのも一ヶ月ぶりか……。あの子しっかりやってるかしら?」

アルケミック「……しっかりやってたらこんな嫌な胸騒ぎしないよね」

アルケミック「シャイニート?」コンコン


「…………」


アルケミック「シャイニート! シャイニート・マジシャン! 起きてたら家の鍵開けなさい!」コンコン


「…………」


アルケミック「もう~、あの子また夜更かししたな! 昼夜逆転生活は体に悪いって何度言ったことか」

アルケミック「仕方ない、合鍵使うか。ノックはしたから文句は言わせないわ」

アルケミック「入るわよー?」ガチャ

アルケミック「うわ……相変わらず汚い部屋……。実験道具は片付けないし着替えは放置したまま……こりゃ前に私が来てから一度も掃除してないな」

アルケミック「で、肝心の家主はっと……」


シャイニート「zzz……」


アルケミック「やっぱ寝てた……。ほら、起きろー。朝だぞー」

シャイニート「zzz……」

アルケミック「ちょっとやそっとじゃ起きないか。それなら……」



アルケミック「起きろーーーーーーー!!!」


シャイニート「うおおおおおぅッ!? な、何? 《アースクエイク》!? 《雷鳴》!? 《昼夜の大火事》!? それとも《魔導サイエンティスト》!?」ガバッ

アルケミック「おー、起きた起きた」

シャイニート「………………あー、アルちゃん?」

シャイニート「寝る」

アルケミック「待てい。あんたにはいろいろと聞かなきゃいけないことがあるんだけど」

シャイニート「あたしからはなーんも聞くこと無いよー……」

アルケミック「あんた、仕事は? この前バイトでもいいからするって言ってたじゃん」

シャイニート「記憶にございません。きっと《記憶破壊者》の仕業だよ」

アルケミック「勝手に他人のせいにしない。あんたは何かと言い訳ばっかりして働こうとしないんだから」

シャイニート「今はまだ働く時ではない」

アルケミック「いや働けよ。少なくとも学生時代は成績トップだったんだからその時のことを思い出してよ……」

シャイニート「いやー、最近動いてないから今働いたら過労で倒れちゃうよ」

アルケミック「まずは自分の体力にあった仕事を見つけなさいよ」

シャイニート「何!? 仕事を持たないのならば体力0ではないのか!?」

アルケミック「んなわけないでしょ……。もう、あんたが働いてくれないと私も仕事に張り合いが無いんだって」

シャイニート「むー、なんなのさっきからさー。お説教するためにあたしんとこ来たの?」

アルケミック「っとそうだった。説教も大事だけどもっと大事なこともあったんだ」

アルケミック「本題に入るけどちょっとレッド・ ポーションを貸してほしいのよ。今切らしててさ」

シャイニート「レッド・ポーション? ああ、それなら向こうの棚にしまって……」

アルケミック「向こうね。分かったわ!」

シャイニート「……あったけど全部飲んじゃった♪」

アルケミック「飲んだー!?」

シャイニート「徹夜のお供にピッタリなんだよねー。最近は専ら三食コレ!」

アルケミック(無言のゴーグル)

シャイニート「ん? どしたのアルちゃん」

アルケミック「何飲んでんだよあんたは! 実験をしろ実験を! なんでこうなんのよもう! どうしても必要だってのに!」

シャイニート「だったらあたしに任せて! このAmaZONEを使えば欲しい商品が安く早く手に入っちゃうの!」

アルケミック「なんか名前から希望が感じられないんだけど」

シャイニート「そんなこと無いって。これでちょちょいと検索すればっと……」

シャイニート「ひょ? 売り切れてる」

アルケミック「嘘でしょ? なんでただの薬が」

シャイニート「どうやら栄養ドリンクとしてネットで密かにブームになってるみたいだね」

アルケミック「はああああ!?」

シャイニート「ほら、レビュー見てよ。『あのスピード・ウォリアー氏も絶賛!』とか『雨の日も風の日も極寒の吹雪も灼熱の太陽もこれのおかげで乗り切れました!』って」

アルケミック「いくら何でも万能すぎない?」

シャイニート「この薬にアトランティスの海水を入れることによって効果が増幅されるんだよ」

アルケミック「え? そうなの?」

シャイニート「すごいでしょ! なにを隠そうこのあたしが発見したんだ!」

アルケミック(こんなただの薬の効果を増幅させる方法を見つけるなんて……。さすが腐っても優等生か。発想だけは誰よりも優れてたものね)

アルケミック「あれ? ちょっと待てよ。この方法あんたが発見したんだよね?」

シャイニート「そうそう。もっと褒めてもいいんだよ?」

アルケミック「じゃああんたしか知らないはずなのになんでネットで話題になってるの?」

シャイニート「ネットで話題になってるのは……そりゃあ最初にレビューを書いた人がいるからで……」

アルケミック「で、それを最初に書いたのは……」

シャイニート「…………」


シャイニート「てへ☆」


アルケミック「『てへ☆』じゃねーよ! 原因あんたじゃねーか!」

シャイニート「ご、ごめんなさーい!」

アルケミック「まあいいわ。過ぎたことに文句を行っても仕方ないし、あんたも意図的にやったわけじゃないんだし」

シャイニート「で、結局どうすんの?」

アルケミック「そりゃ自分の手で作るしかないでしょ。というわけでさっさと集めてくるわ。邪魔したわね」

シャイニート「あ、ついでにあたしの分も作っといて」

アルケミック「嫌よ、なんで私が。自分で取ってこい」

シャイニート「ちぇっ。ケチー」

アルケミック「あんたね……。私が何でもかんでも世話してくれると思ったら大間違いだっての」

シャイニート「じゃあ代わりに『Dステップ』買ってきてー」

アルケミック「……人の話聞いてた?」

シャイニート「あ、もちろん3冊だよ? 今月の付録強いやつだからさ。お金は後でちゃんと払うから、ね?」


ブチッ




アルケミック「い……いい加減にしろーっ!」



アルケミック「あんた……その私に頼りきった根性を叩き直してやる必要がありそうね」

シャイニート「あ、あれー……もしかして怒ってます?」

アルケミック「当然! あんたにも少し外に出て運動してもらわなきゃね」

シャイニート「ま、待って待って! じょ、冗談だって! だから勘弁して!」

アルケミック「問答無用! さっさと着替える! というか私が着替えさせてやる!」

シャイニート「ちょっ、やめっ、それくらい1人でできるから……」

アルケミック「えっと確か前来た時新しい服はお風呂場に置いといたんだっけ……。ちょうどいいわ、ついでにお風呂に入っておきましょ。私もまだ入ってなかったし」

シャイニート「いやいやいや! 考え直そう? ね?」

アルケミック「さあさあ行きましょ行きましょ」ガシッ

シャイニート「いいいやだああああぁぁぁぁ……」ズルズルズル……





「だから1人で着替えれるって言ってるじゃん……」

「だったら早くしなさいよ。それにしてもあんた肌白いわね。ちゃんと外出てない証拠よ」

「うう……。そんなジロジロ見ないでよ……」

「時間もあまり無いし素早くすませちゃおっか。ほら、洗ってあげるからこっち来なさい」

「だから1人で出来るって! それに頼るなってアルちゃんも言ってたじゃん」

「だってあんた遅いんだもん。それっ、捕まえたっと」

「わっ、まっ、待ってって!」

「大丈夫だって、さっさと終わらせてあげるから。……抵抗しなかったらね」

「ひっ……!」








「きゃーーーー!! ふえーーー!!! らめえーーーーー!!!」

アルケミック「あー、いいお湯だった」

シャイニート「ぐすん、もう仕事にいけない……」

アルケミック「そもそもしてないでしょ」

シャイニート「だいたいなんで一緒にお風呂なんか……」

アルケミック「あら、シャイニートってこういうスキンシップは嫌いじゃないと思ってたけど。私達が初めて会った時だって……」

シャイニート「うっ……その話はよしてよ。ほら、時間が無いんでしょ?」

アルケミック「やっと覚悟を決めてくれたのね。あんたがやる気を出してくれれば私も嬉しいわ」

シャイニート「開き直っただけだよ……」




シャイニート「うへー、久々の外だ。太陽が眩しくて守備力が下がっていくー」

アルケミック「なに弱くなってんのあんたは」

シャイニート「《シャインスパーク》は守備型のステータスには辛いんだよ……」

アルケミック「単に長い間日の光浴びてないだけでしょ」

シャイニート「……で、最初はどこに行くの」

アルケミック「まずは市場に行って《グリフォンの翼》を買う予定よ」

市場


「《強欲で謙虚な壺》売るよー!」

「フィッシュアンドバックス!」


ガヤガヤ……


アルケミック「だいぶ盛況してるわねー」

シャイニート「…………」ギュッ

アルケミック「あんまり服引っ張らないでよー? まったく人の多いとこに来たら急に黙っちゃうんだもの」


魔導雑貨商人「お、アルケミックちゃーん!」


アルケミック「あ、魔雑貨さん! いつもごひいきにさせてもらってます」

魔雑貨「いやいやいいってことよ。で、どうだい? 今日はウチで何か買ってってくれるかい?」

アルケミック「グリフォンの翼を探してるんですけど……」

魔雑貨「グリフォンの翼ね。ちょうど今いいのを仕入れて来たんだよ! よっこらせ!」ドン☆

シャイニート「す、すごい……」

魔雑貨「そうだね……本来ならなかなかに値が張るんだが相手が相手だ。安くしとくぜ?」

アルケミック「すいません、助かります。それじゃ代金を……」





「マッタ!」

アルケミック「だ、誰?」

カラクリ商人 壱七七「オジョウサンタチダマサレチャダメ。ソイツノショウヒンヲソノネダンデカウノハオオゾンダ」

魔雑貨「てめえ壱七七! オレの商品にケチつけるつもりかい!」

壱七七「アタリマエ。ソンナチッポケナハネモドキデヨクショウヒントシテダソウトオモッタナ。ぐりふぉんノツバサッテノハ……コレクライナイトナ!」ドン☆

シャイニート「うわっ、こっちより大きい……」

壱七七「ドウダイ、コイツナンカヨリモヤスクシトクヨ。ナンセウチノショウヒンハホカトハクラベモノニナラナイカラネ」

魔雑貨「てめえ黙って聞いてりゃ……。知らねえのかよ? グリフォンは病気で死んでくんだ! そんなデカイ翼なら病気がついててもおかしくねえぞ!」

壱七七「ウチノショウヒンハソレクライカクニンズミ。ビョウキガツイテルショウヒンヲウルバカハイナイ」

魔雑貨「ふん、口だけなら誰だってそう言えるわ!」


アルケミック「ちょっとこんなとこでケンカなんかされても……」

シャイニート「争いは、同じレベルの者同士でしか発生しない! ……ということは同じレベルのモンスターが2体……来るぞ!」

アルケミック「こねーよ」


魔雑貨「なら証明してもらおうじゃねえか!」

壱七七「イイダロウ! コノ《デスガエル》ノケツエキヲツカエバビョウキノアトガデテクル。コイツデ……」

魔雑貨「おっと待ちな。てめえが用意したものを使うのは無しだぜ」

壱七七「ドウイウイミダソリャア」

魔雑貨「てめえに任せたらどんな手を使われるか分かったもんじゃねえからな。とどのつまり信用できん」

壱七七「ソレジャショウメイデキナイジャナイカ!」

魔雑貨「安心しろ。そこの彼女達に持ってきてもらえばいいだけだ!」

アルケミック「えっ……。私達?」

壱七七「ダガコイツラハオマエノシリアイダロウ。オマエノイキガカカッテテモオカシクナイゾ」

魔雑貨「デスガエルの血は偽造するのは難しいことだ。彼女達の実力はすごいのは知ってるがこればかりはさすがに無理だろう」

アルケミック「《粋カエル》や《魔知ガエル》の血を使えば見た目だけなら本物そっくりに出来るんだけどさすがに効果はちょっと……」

魔雑貨「そういうわけだ、納得したろ?」

壱七七「マアイイダロウ。ダガイカサマヲシタラソノトキハソウオウノショチヲトラセテモラウゾ」

魔雑貨「じゃ、アルケミックちゃん。よろしく頼むぜ」

アルケミック「あ、いや、まだやるとは一言も……」

シャイニート「目指すは《湿地草原》だねー。さ、行こっか」ガシッ

アルケミック「わ、私は遠慮させて……あっこら掴むな、HA☆NA☆SE!」

湿地草原



シャイニート「さすがというべきかジメッとくるぜ」

アルケミック「なんで私がやらなきゃいけないのよ……」

シャイニート「あのままあそこにいても何も進まないでしょ。早く目的のカエル探そうよ」

アルケミック「んじゃ行ってらっしゃい」

シャイニート「何言ってんのさ。アルちゃんも早く……ああ、そういえばアルちゃんってカエル苦手なんだっけ」

アルケミック「だから嫌だって言ったのよ……」

シャイニート「しょうがない。アルちゃんのためにこのシャイニートが重い腰を上げようじゃありませんか」

アルケミック「今回ばかりはそうしてくれると助かるわ……」

5分後



「取ってきたよー!」



アルケミック「お、それじゃ戻ると……」

シャイニート「はい、デスガエル」

デスガエル「ゲコ」


アルケミック「」


シャイニート「さあ早く血液の採取を!」

アルケミック「い……」



アルケミック「嫌に決まってんでしょうがあああああぁぁぁっ!」ダッ



シャイニート「あ、逃げた」

シャイニート「待ーてー! まだ血液の採取がー!」

アルケミック「あんた絶対わざとやってるでしょおおおお!」

シャイニート「無理やり連れ出された恨み、晴らさずにおくべきかー! どこまでも追いかけてやるー!」

数分後



シャイニート「」チ-ン

アルケミック「はぁ……はぁ……。基礎体力の差で助かった……」

シャイニート「もうダメ……。走るどころか歩くこともできない……。アルちゃん、血液採取は任せた……」

アルケミック「あんたがやれ……」

シャイニート「デスガエルもアルちゃんがいいって言ってるよ……」

デスガエル「ゲコゲコ」

アルケミック「ひぃっ! こっち来んな!」

シャイニート「さあ!」

アルケミック「……ああもう! 分かった! 分かったから!」

アルケミック「ちょっと痛いだろうけど我慢してよ。大丈夫、怖くない……」

シャイニート「自分に言い聞かせてるようにしか見えないよ?」

アルケミック「う、うるさいな……。手元が狂うでしょ……」プスッ

デスガエル「!」ビクッ

アルケミック「ぎいいぃやああああぁぁ! うご、動いた、動いたああああああ! 助けてシャイニート!」ダキッ

シャイニート「おーよしよし。なんか本当にごめんね」

アルケミック「悪気があるなら最初からやらせるんじゃない!」

シャイニート「いやでも面白かったよ? いつもは威勢があるのにこういう時だけしおらしくなってかわいいんだもん」

アルケミック「かっ……! と、とにかくさっさと戻りましょ!」

シャイニート「待ってよー。もう少しだけ休ませてー」

再び市場



アルケミック「採ってきましたよ……ってまだ喧嘩してる」


魔雑貨「だいたいてめえの商品はぼったくり価格が多すぎんだよ! そんなんじゃ客が離れてくぞ!」

壱七七「オマエコソシゴトノミスガオオスギルンダヨ! ロクニシゴトモデキナイクセニイバッテンジャネーゾ!」


アルケミック「ダメだこりゃ……。どうする?」

シャイニート「もういっそ別の場所で買わない? ここにはたくさん店があるんだしさ」

アルケミック「このまま待ってても長くなりそうだしね。あーあ、時間無駄にしちゃったなー」


魔雑貨「ええい、表に出やがれ! 叩きのめしてやる!」

壱七七「イイダロウ! コウミエテモオマエヨリハワンリョクニジシンガアルンダ!」

今日はここまで
魔法族の里にネットが繋がるかどうかは気にしないでくれ




アルケミック「よーし、買い物も済んだし次の目的地は……」

シャイニート「アルちゃーん、お腹すいたよー。もうお昼時だよ?」

アルケミック「そういやそっか。確かこの辺に評判のお店があったはずだし、行ってみましょうか」

シャイニート「なるべく近いところでお願いね」





アルケミック「あったあった。この店よ」

シャイニート「『モウヤンカレー』ねえ……」

アルケミック「結構有名な店らしいけど私一度も行ったことなかったのよね」

シャイニート「あたしなんて最近はポーションかレッドデーモンズヌードルしか食べてないよ。カレーなんてどのくらい久しぶりだろう」

アルケミック「あんたよくそれで体壊さなかったわね……っと、ここが最後尾ね。結構並んでるなー……」

シャイニート「あ、アルちゃんあれ見て」


サイバー・ドラゴン・ノヴァ「…………」


シャイニート「あれって機械族だよね? カレー店に並ぶのっておかしくない?」

ノヴァ「聞こえているぞ」

シャイニート「えっ!」

アルケミック「す、すいません……。この子が失礼な事を……」

ノヴァ「いや、気にするな。俺も場違いな絵面なことは分かっている」

アルケミック「あの、機械族にカレーって必要なんですか……?」

ノヴァ「必要はない……普通はな」

アルケミック「ふ、普通?」

ノヴァ「俺は体が特殊な構造で出来ていてな。体の後下部に生命維持装置が付いているんだ」

ノヴァ「そしてその装置を動かす燃料となるのがカレーというわけだ」

アルケミック「いや、まるで意味が分からないんですけど。数ある燃料からなぜカレー……」

ノヴァ「別にカレーでなくてもいい。治療の神の加護やポーションでもいいからな」

ノヴァ「だが一番効率よく集めることができるのがこのカレーというわけだ」

アルケミック「な、なるほど……」

ノヴァ「それにここのカレーは機械の俺を唸らせるほどの味だ。燃料の効率云々を抜きにしてもここに来たくなる魅力がある」

アルケミック「人気店の名は伊達じゃないってわけか」

シャイニート「よく見たらスライムやゾンビも並んでるよ」

ノヴァ「……どうやら席が空いたようだな。俺たちも行くとしよう」

悪魔の調理師「いらっしゃーい」

アルケミック「うわー、大繁盛ね。 こんなに多くの客が来てるなんて」

シャイニート「どんな味なんだろうね。ちょっと楽しみになってきちゃった」

ノヴァ「…………」



ノヴァ「うおおおおおおおッ!!」

ノヴァ「俺はッ! 俺自信でッ! オーバーレイ・ネットワークを再構築ッ!」



アルケミック「な、なに急に!?」

シャイニート「どうしちゃったの!?」


サイバー・ドラゴン・インフィニティ「俺は飢えている……乾いている……料理に!(訳:お腹すいた)」


アルケミック「なんか変身した!?」

悪魔の調理師「ああ、この店ではよくあることなんで気にしないでください」

アルケミック「よくあることなの!?」

悪魔の調理師「ささ、ご注文どうぞ」

アルケミック「え……じゃ、じゃあビーフカレーで……」

シャイニート「チ、チーズで……」

インフィニティ「俺は……カァツッ!!(訳:カツカレーください)」









悪魔の調理師「ビーフカレーのお客様ー」

アルケミック「あ、私です」

シャイニート「それじゃ食べよっか」

インフィニティ「待て、ここのカレーを甘く見るな。俺がサイバー流の食事法を見せてやる」

シャイニート「サイバー流って?」

インフィニティ「ああ。いくぞ……」



インフィニティ「『エボリューション・リザルト・アーティレリー』!!」


インフィニティ「第一皿ア!」ガツガツ

インフィニティ「第二皿ア!」ガツガツ

インフィニティ「第三皿ア!」ガツガツ


インフィニティ「第四皿アアアアア!」ガツガツ






アルケミック「……ってただの早食いかい!」

インフィニティ「……ぐっ!?」

シャイニート「だ、大丈夫?」

アルケミック「喉に詰まったんじゃないの? 詰まるような構造してるかどうか分からないけど」

シャイニート「早く水を……って機械だからダメかな」

インフィニティ「嫌だ……俺は……」



インフィニティ「負けたくないいぃぃぃぃ!!」

シャイニート「ひっ!」


インフィニティ「ヘルカイザーをなめるなァ! バトルだァ!」


インフィニティ「第五皿アアアアァァァッ!」




アルケミック・シャイニート「「…………」」ボ-ゼン


インフィニティ「俺は料理をリスペクトする……。(訳:ありがとうございました、いい料理でした)」



悪魔の調理師「毎度ありがとうございましたー」

アルケミック「何だったのアレ……」

シャイニート「さあ……?」

アルケミック「じゃ、じゃあ私達も食べようか……」

シャイニート「そだね」

シャイニート「……と見せかけて」

シャイニート「先んずれば人を制す。ドロー!」パクッ

アルケミック「あ! 人の勝手に食うな!」

シャイニート「ん、美味しい!」モグモグ

アルケミック「ったく、せめて一言くらい声かけなさいよ……」

シャイニート「じゃあもう一口ちょうだい」

アルケミック「最初からそう言いなさい。ほら、口開けて」

シャイニート「あーん。……ほい、それじゃあたしからも」モグモグ

アルケミック「ん。チーズもなかなかいけるわね。今度来た時注文してみよっと」モグモグ








アルケミック・シャイニート((あれ、これって間接キスじゃ……))

アルケミック(ど、どうしよう……まったく意識してなかった……。シャ、シャイニートの方は気づいてない……よね)

アルケミック(間接キスって自覚するとこんなに恥ずかしいのね……。これじゃ本番はもっと……)

アルケミック(って何考えてんの私は! そもそもあの子は私のことなんて……)

アルケミック(と、とにかく今はこの状況を何とかしないと。変に意識したらあの子に怪しいって思われちゃう。このまま何も無かったかのように食べなきゃ……)パクッ

アルケミック(……味が分からない)

シャイニート(あわわ……。アルちゃんとキスしちゃったよ……間接だけど)

シャイニート(頭の中で整理が追いつかない……。冗談じゃなくヤバいって)

シャイニート(アルちゃんは……気にするそぶり無しか。それどころか普通に食べ始めちゃったよ……)

シャイニート(……それが普通の反応だよね。やっぱりあたしは間違ってるんだ……)

シャイニート(変なこと勘ぐられないうちに早く食べよ……)







悪魔の調理師(2人共顔真っ赤だな……。そんなに辛くした覚えは無いんだけど)

短いけど今日はここまで
非力な私を許してくれ……




アルケミック「…………」

シャイニート「…………」

アルケミック「あー、シャイニート? あんた何か怒ってたり……?」

シャイニート「い、いや別にそういうことは無い……よ……」

アルケミック「そう……。なら次のとこ行きたいんだけど……」

シャイニート「うん……。行こっか……」




アルケミック・シャイニート((気まずい……))

魔導書院ラメイソン



シャイニート「ここってラメイソンじゃん。ここで何するのさ」

アルケミック「次は《エンシェント・リーフ》を取りに行くんだけど、今ちょっと値上がりしてるから知り合いに貰いに行こうと思ってるの」

シャイニート「ラメイソンの中に知り合いがいるんだ……。ここって魔法使い族が将来働きたい職場でエンディミオンと争うくらいの人気なんだよ?」

アルケミック「商売人たるもの人のつながりは持っておいて損は無いわよ」

シャイニート「ベ,ベンキョニナリマ-ス……」




アルケミック「たしかここに職員専用の休憩スペースが……おっ、あったあった」

アルケミック「失礼しまーす」

システィ「あら? アルケミックちゃんじゃない! 久しぶりね」

エアミット「おお、懐かしい顔じゃのう。おや? そちらのお嬢さんは?」

アルケミック「この子はシャイニート。私の学生時代の友人です」

シャイニート「あっ、ど、どうも……」オドオド

アルケミック「ちょっと人付き合いが苦手ですけどね」

システィ「それで今日は何をしに? あっ、もしかしてここで働いてくれるのかしら!」

エアミット「そりゃあいい。こんなべっぴんさんなら大歓迎じゃ! ちょうどウチには古い女がいるから取り替えればいいじゃろうて」チラッ

システィ「あら、私はてっきり老いて脳が腐りきったあなたが引退してくれるものかと思っていましたが……それともそんなことすら分からなくなってしまいましたか?」

エアミット「何を言うか! ワシはまだまだ現役じゃぞ!」

アルケミック「い、いえ、今日は別の用事で来たんです」

アルケミック「その……エンシェント・リーフを分けてもらえないでしょうか? もちろん、相応の対価は払います」

システィ「それくらいお安い御用よ。それに、アルケミックちゃんからお金を取るなんて真似はできないわ」

アルケミック「あ、ありがとうございます!」

エアミット「じゃが……代わりに頼み事を聞いてもらえんかのう……」

アルケミック「頼み事ですか? 私にできることなら任せて下さい」

システィ「ありがとう。それならこの端末を『LDS』に届けてもらえないかしら」

アルケミック「え、LDS!? LDSってあの……?」

シャイニート「アルちゃん、LDSって?」

アルケミック「LDS、『Lion Duel School』は近年勢力を拡大しているデュエリスト育成塾……というよりは機関ね、あれは」

アルケミック「デュエリストの基礎となるカードの知識、デュエルマッスル、カード投擲技術など幅広い分野を高いレベルで教えているの」

アルケミック「創始者の《スーパー・ウォー・ライオン》氏が行方不明になってからは跡取りである《レオ・ウィザード》氏が経営してるそうよ」

システィ「ええ、その通り。それでこの端末をそこで勤めているライオンハート先生に届けてほしいの」

アルケミック「でもどうして端末を? ラメイソンの技術は一般には公開されるものの特定の企業に肩入れすることは無かったはずでは」

システィ「それに関しては問題ないわ、一般人が閲覧できる端末を外に出すだけの話だから。LDSの授業に使用すればラメイソンの名はもっと広がるだろうという上の判断らしくて」

エアミット「ただ、技術の漏洩は恐れることじゃ。そういう意味では上がどれだけLDSを信頼しているかよく分かるのう」

アルケミック「ってそんな大事な物を私に預けていいんですか!?」

システィ「ふふ。これもまた私達からあなたへの信頼の表れよ」

アルケミック「あ、ありがとうございます……」

エアミット「それではこの端末を。頼むぞい」




アルケミック「わ、私の手の中に魔導書の技術が……」

シャイニート「もう、落ち着いてよ。そんな状態じゃ魔導書なくしてまーどうしよーってなっちゃうよ」

アルケミック「笑えない! 笑えないよそのギャグ!」

シャイニート「LDSまで行けばミッションクリアなんだから少しの辛抱だって。ほら、行くよー」

LDS



シャイニート「うっひょー、デカい建物。こんな大きい建物が見れるなんて外に出てみるもんだねー」

アルケミック「朝はあんなに外に出るの嫌がってたのに……調子のいいやつ」





ダンディライオン「ようこそLDSへ。私が受付です」

アルケミック「あの、ライオンハート先生はどこにいるか知ってますか?」

ダンディ「ライオンハート先生ならばこの時間は北校舎の3階で授業をしてるはずです。ここは複雑で迷いやすいから気をつけてくださいね」

アルケミック「ありがとうございます。学校で迷子なんてなりたくないな……」

シャイニート「す、すみません……。この不気味な置物はなんですか……」

ダンディ「LDSのマスコットキャラクター《デストーイ・ホイールソウ・ライオ》くんです。あまり周りから良い言葉は貰えないのですが私はいいと思いますよ?」

アルケミック「なぜ融合の方にした……」

シャイニート「本編との関係を考えるとなんか複雑……」




アルケミック「北校舎の3階は……ここかな?」


「いいか、ここはテキストからは読み取り辛いが実は効果ダメージで……」


「よし、今日の授業はここまでだ。各自予習復習を忘れないように!」


アルケミック「あの、あなたがライオンハート先生……ですか?」

ライオンハート「ん? 来客か。いかにも俺が《No.54 反骨の闘志ライオンハート》だ!」

アルケミック「ラメイソンからの届け物で魔導書の端末を預かってるんですけど」

ライオンハート「魔導書の端末……? おお、そういやそんなの頼んでたな! 今、確認の書類を取ってくるから待っててくれや」

アルケミック「注文した本人が忘れてどうすんの……」

シャイニート「まあいかにもって感じの見た目だし……」

アルケミック「せっかくだし待ってる間に教室の中でも見て回りましょ」

アルケミック「さすが最新技術をふんだんに使った校舎ね。私達がいた学校とは大違い」

シャイニート「科学の力ってすごーい! 魔法も負けてらんないね」

アルケミック「あーあ。できることならこういう校舎で学校生活を過ごしたかったなー」

シャイニート「あたしは別にそうでもないかなー」

アルケミック「なんでよ。こんなにレベルの高い所ならさぞかし研究も捗ったでしょ」

シャイニート「だって……あそこで過ごしたからたくさんアルちゃんとの思い出ができたわけだし……」

アルケミック「シャイニート……」

シャイニート「寮の壁壊して一緒に怒られたり、裏山にある数少ない薬草を取り合ったり……恵まれてないからこそ作れた思い出もあるんだよ?」

シャイニート「それに……あそこじゃなかったらあたしは一生アルちゃんに出会えなかった気がするんだ……」

アルケミック「あ、ありがと……。あんたからそんなこと言われるとは思わなかったわ……」





シャイニート(言ってて恥ずかしくなってきた)

アルケミック(言われてて恥ずかしくなってきた)

アルケミック「あ! シャ、シャイニート! あれ見てあれ、LDSの試験問題があるわよ! ちょっとやってみたら?」

シャイニート「う、うん……」

アルケミック「数学の問題。『次の方程式を解け』」

シャイニート「これは『X=強靭、Y=無敵、Z=最強』を代入すれば解けちゃうね」

アルケミック「次は歴史の問題。『不動・ユリウセイ・カニサルの格言と言えば?』」

シャイニート「『ブルーノス、お前もだったのか!』」

アルケミック「最後は詰めデュエル。結構難しいらしいけど」

シャイニート「羽根帚を使ってチェーンリビデが発動して……あれ? ここタイミング逃すじゃん。これじゃ問題として成立しないよ」

アルケミック「あ、本当だ。どうりで難しいわけだ」


「あのLDSの問題をあんなに早く……」
「なんなの、この人……?」
「レベルが違う……いや、ランクが違うぞ」


アルケミック「すごいじゃない。教師にでもなったら?」

シャイニート「働く気は今のとこなーい」

アルケミック「そんなに才能あるのに埋もれるのはもったいないと思うけどな……」


ライオンハート「やあやあ! 遅れた遅れた!」


ライオンハート「こいつが書類だ。これを持っていけばお偉いさんも納得してくれるだろうよ」

アルケミック「ありがとうございます。あ、そこの試験問題なんですが間違いがあるそうですよ」

ライオンハート「むっ、そうだったか。後で書き換えておかないとな。しかしそれに気づくとはお前さんなかなかの実力者じゃないのか?」

アルケミック「いえ、気づいたのは私じゃなくてこの子です」

ライオンハート「なんと! 素晴らしい人材を発見してしまったな。どうだ、俺たちと一緒に教師をやらないか?」

シャイニート「い、いえ……その……」



シャイニート「遠慮しまああああぁぁぁすっ!」ダッ



アルケミック「ちょっとどこ行くのシャイニート!」




アルケミック「あ、いたいた。もう、急に逃げ出すからびっくりしたじゃない」

シャイニート「だって怖かったんだもん……」

アルケミック「人付き合いの方もなんとかしないと働くには難しそうね……」



再びラメイソン



アルケミック「システィさーん、戻りましたー!」

システィ「ありがとうアルケミックちゃん。はいこれ、お礼のエンシェント・リーフよ」

アルケミック「こちらこそありがとうございます。シャイニート、次のとこ行くわよ」

シャイニート「もう行くのー? もうちょっと休んでからでもいいでしょー」

アルケミック「駄目よ。これ以上ここに居座るとシスティさん達にも迷惑かけちゃうじゃない」

システィ「ふふ、私は別に構わないわ。そうだ! ここを出る前に一つタロット占いでもどうかしら?」

シャイニート「タロット占い?」

システィ「と言っても簡単な方法だけど。22枚の大アルカナのカードを適当に混ぜてデッキを作り、ドローしたカードであなた達の運勢を見るの」

システィ「実際にやってみるのが一番ね。さ、カードを引いて」

シャイニート「よーし……」


シャイニート「最強のデュエリストのドローは全て必然! ドローカードさえも

アルケミック「普通に引け」

シャイニート「はい」ドロ-

システィ「これは……『恋人』の『正位置』ね。意味は『恋愛』『信頼』『絆』……あなた達の仲の良さは偽りのものではないということね」

システィ「より親密になるためにお互いに腹を割って話し合うのもいいかもしれないわ」

アルケミック「そ、そうですね……。考えておきます……」

シャイニート「恋人……。恋人かあ……」

システィ「心配しないで。あなた達ならきっと大丈夫だから」

今日も短いけどこの辺で
アルケミック・マジシャンを切り札にした【里嫁ビート】が環境をとる日は……来ないんだろうなぁ

今日は投稿出来そうにないみたいです
土曜日辺りには終わらせる予定





シャイニート「さーて、次はどこ行くのー?」

アルケミック「……ねえ、シャイニート」

シャイニート「何?」

アルケミック「私さ、あんたを無理やり連れてきちゃったけど……正直後悔してるの」

アルケミック「あの時はちょっとカッとなっちゃって……本当にごめんね」

シャイニート「……別にいいんじゃないかな、気にしなくても」

シャイニート「あたし自身こうやって外に出るのも悪くないなーって思ってるし。とは言え、そんなに何度も出たいとは思わないけど」

シャイニート「後は……純粋にアルちゃんと一緒にいたいってのもあるかな」

アルケミック「……なんだかんだ言ってあんたも昔と変わってるのね。ちょっと前までなら絶対にそんなこと言わなかったのに」

シャイニート「ネオシャイニートと呼んでくれたまえ」

神聖なる森



シャイニート「疲れたー。死ぬー。帰りたーい」

アルケミック「おいネオシャイニート、さっきと言ってること全然違うぞ」

シャイニート「なーんでまたこんな広い森の中を歩き回らなきゃいけないのさ!」

アルケミック「しょうがないじゃない。私達の探してる《魔力の泉》はどこにあるか分からないんだから」

シャイニート「事前にチェックしようよそういうのはさ」

アルケミック「急いで家を出たから仕方ないのよ」

シャイニート「ふう、話してたら疲れちゃった。休憩ー」

アルケミック「まだ休むか……。学生時代はもっと体力あったはずなのにね」

シャイニート「無闇に動くとよくないって不動のデュエルで教わったよ」

アルケミック「そんな言い訳をするために不動のデュエルを使うんじゃない」


ヒュ-……


シャイニート「あでっ!」ガスッ

アルケミック「あ、上からなんか落ちてきた」

ドングリス「…………」タッタッタッ

アルケミック「行っちゃった……。にしてもついてないわね、休んでばかりいるから罰があたったのよ」

シャイニート「お、おおお……。痛くない痛くない……」プルプル

アルケミック「……ふふっ」

シャイニート「笑うことないじゃない……」

アルケミック「ごめんごめん。ちょっと懐かしいなーって思っちゃって」

アルケミック「ほら、覚えてる? 私達が初めて会った時のこと」

数年前



アルケミック『一から材料を集めるのも調薬師の仕事ねえ……。役に立つのかしらそんなの』

アルケミック『ぶつくさ言っても仕方ないしここでいい成績取らなきゃね。……おっ、《マタンゴ》見っけ』

アルケミック『さーて、この調子でガンガンと……』


『…………ぐすっ…………』


アルケミック『? 何かしら今の声』

アルケミック『こっちの方から聞こえてきたような……』


シャイニート『うぅ……い、痛い……』


アルケミック『大変! あの子ケガしてる!』

アルケミック『ねえ、あなた大丈夫? 随分痛そうに見えるけど』

シャイニート『!』ジリッ

アルケミック(距離を取られてしまった……。警戒心が強いのかな)

アルケミック『そんなに警戒しないで。何があったのか教えてくれればいいから』

シャイニート『…………!』ブンブン

アルケミック(ダメか。こうなったら強行手段ね)

アルケミック『大丈夫。私はあなたの敵じゃない』


ギュッ


アルケミック『落ち着いて。自分の身に何があったのか私に教えてくれる?』

シャイニート『あ…………うん……』




アルケミック「ケガの原因がただこけただけってのは苦笑するしかなかったけどね」

シャイニート「すごく痛かったんだよ! あたしはほら、『かよわいおとめ』ってやつだから」

アルケミック「体力無いだけでしょ。ちょっとは鍛えなさい」

シャイニート「笑止」

アルケミック「こいつ……。まあでも、こういう森に来ると女の子の泣き声をついつい思い出しちゃうのよね」


「…………ぐすっ…………」


アルケミック「今、なんか本当に声が……」

シャイニート「だ、誰かいるの……?」


「……た……す……け……」


シャイニート「助けを呼ぶ声だ!」

アルケミック「こっちの方からよ。早く行かなきゃ!」






傭兵A「助けてくれよ~。誰か~」

傭兵B「俺たちいつまでこんなとこにいりゃいいんだよ~……」

傭兵C「おかーちゃーん!」

傭兵D「あはは~。ちょうちょさんだ~」


シャイニート「…………」

アルケミック「…………」

アルケミック「これ……どういう状況?」

シャイニート「聞かないでよ」

傭兵A「人!? 人なのか!? どうしてここに!? 自力で進入を!?」

傭兵B「落ち着け、見苦しいぞ(腹パン)」

アルケミック「えっと……あなた達は?」

傭兵A「いたた……。俺たちは《ならず者傭兵部隊》だ」

傭兵B「というよりもう《ながれ者傭兵部隊》の方が似合ってるけどな」

傭兵C「いやむしろ《はぐれ者傭兵部隊》だろ」

傭兵D「人はそれを『遊戯王』と呼ぶ」※呼びません

傭兵A「とにかく、いろんな地を移住していくうちに仲間とはぐれちまってな」

傭兵B「俺たちって方向音痴だからさ」

傭兵C「ここへ来るまでもいろいろ大変だったぜ。変な装備品は拾っちゃうし、こいつはアホになっちゃうし」

傭兵D「ヌメロン・リライティング・ エクシーズによって書き換えたのだ……」

アルケミック「それは……何というか大変でしたね」

傭兵A「なあ、あんた達どっから来たか知らねえが俺たちを助けてくれねえか?」

傭兵C「そろそろ食糧も切れそうなんだ。頼む! このとおりだ!」

アルケミック「私は別に構いませんけど……」

シャイニート「ねえアルちゃん、この人たちに魔力の泉の場所聞いてみたら?」

アルケミック「そうね。じゃあ、助ける代わりに魔力の泉の場所を教えてもらいたいんですけど」

傭兵B「魔力の泉? ああ、迷っている最中にそんな物見つけた記憶があったな」

傭兵A「そういうことなら俺たちに任せてくれ」



傭兵C「この先を右に曲がって……」


傭兵B「んでここをまっすぐ……」


傭兵A「後はここをくぐれば……」


アルケミック「あった! 魔力の泉!」

傭兵A「なんとか案内できたようだな」

傭兵B「次は俺たちの番だぜ」

傭兵C「やっと家に帰れる~」

シャイニート「あたしちょっと休憩ー。いいイスめっけ」

傭兵D「おれもー」

傭兵D「……ん? なんかこのイスごわごわするー」

シャイニート「確かに。まるで動物の皮みたいな……」


グリーン・バブーン「…………」


シャイニート「どっひゃあああああぁぁ!」

アルケミック「ど、どうしたの!?」

シャイニート「ど、ど、どでかい猿が……!」

傭兵A「やべえ……。あいつは《森の番人グリーン・バブーン》!」

傭兵B「高いパワーとタフな体力はやっかいだぜ……」

傭兵C「逃げるしかねえよ!」





アルケミック「はぁ……はぁ……」

傭兵A「なんとか撒いたか……?」

傭兵B「ここまで来れば追ってこれない……はずだ」

傭兵D「ゴ-ウェイwwwwゴ-ウェイwwww」

傭兵C「ところで……ここどこだ?」


「……………………」


シャイニート「もしかして……あたし達まで迷っちゃった?」

アルケミック「えええええええ!? 嘘でしょ!?」

傭兵A「もう駄目だ……このまま俺たちは飢え死にしちまうんだ……」

傭兵C「助けてくれよーーー!」

アルケミック「ちょっとそんな大声出したら……」


ガサガサ……


バブーン「オオオオォォ……」


アルケミック「ほら出てきた!」

傭兵B「また逃げろー!」





バブーン「…………」

シャイニート「もうやだよー! どこまで走ればいいのー!」

傭兵A「なんでもいい! 逃げ切るまでだよ!」


バブーン「…………」


傭兵B「ぎゃああああ! こっちにも出てきた!」

傭兵C「先回りされてら!」

アルケミック「こ、こっち! こっちに逃げましょ!」







傭兵B「行く先行く先バブーンだらけ……。あいつら兄弟でもいんのか?」

傭兵C「結局意味もなく走り回ってるだけだしな……」

シャイニート「ねえアルちゃん、あのバブーン何で襲ってこないのかな……」

アルケミック「え? そりゃあ……」

傭兵A「そりゃおめえ、俺たちが疲れた所を狙ってるに決まってるだろ!」

シャイニート「そ、そうだよね……。どうしよう……」

傭兵D「ま、ドローしてから考えるか」

アルケミック「確かに襲うなら襲えるはずなのに……」

アルケミック「それにあの出現の仕方……まるで私達を誘導してるみたい」

アルケミック「……もしかすると」


バブーン「オオオオオオオオォォォォォォ!」


傭兵A「また出たあ!」

アルケミック「みんな、こっちに逃げて! 恐らくこっちが出口につながるはず!」

シャイニート「そ、それはどういうこと?」

傭兵B「なんだっていい! 今は逃げるだけを考えろ!」

傭兵C「遅れるな!」

傭兵D「どうしてバイクと合体しないんだ……?」








傭兵A「おい見ろ! 向こうに出口が!」

傭兵B「やった! 脱出できるぞ!」

シャイニート「アルちゃん、なんで出口があるって分かったの?」

アルケミック「多分、あのバブーンは私達をこの森から出すためにああやって行く先々で出てきたんじゃないかしら」

シャイニート「出口まで誘導してたってことか……。なんだ! バブーンっていいやつじゃん!」

ならず者たち「おお、お前たちは!」

傭兵A「ようやく戻ってこれたぜ……」

傭兵B「久しぶりだなー」

傭兵C「俺、傭兵なんてこりごりだ……。実家で真面目に暮らすかね」

アルケミック「傭兵たちも仲間に会えたみたいね」

シャイニート「あたしたちも魔力の泉の水を手に入れたしお互いいい結果で終われたね」

傭兵A「あんた達のおかげで仲間に会えたぜ! この《ドレインシールド》はお礼だ! 受け取ってくれ!」

傭兵B「俺はこの《災いの装備品》をやるよ!」

傭兵C「そんじゃ俺は《呪いのお札》をあげるぜ」

傭兵D「この《愚鈍の斧》あげる~。……ハッ、俺は今まで何を」

アルケミック「こんなにいっぱいもらっちゃった……」

シャイニート「どれもなんか変なオーラを放ってるね」

ならず者「あ、《疫病》いります?」

アルケミック「間に合ってます」

ならず者たち「俺たちはこれにて失礼する。仲間が助けてくれた恩は忘れないぜ。じゃあな!」

アルケミック「……さてと、私達も帰りましょうか」

シャイニート「ようやく材料が集まったんだっけ。長かったなー」

アルケミック「働くにはいい経験になったんじゃない?」

シャイニート「こんなに疲れるのなら働かない方がいいってのがよーく分かったよ」

アルケミック「あんたね……。いい加減観念したらどう?」

シャイニート「アルちゃんならあたしがこの程度で観念するような人じゃないって分かってるでしょ?」

アルケミック「はあ……。じゃあせめて実験の一つくらいはやりなさい。調薬師として腕を腐らせるわけにはいかないでしょ」

シャイニート「気が向いたらね。ところでこの貰った荷物どうする?」

アルケミック「あんたの家の方が近いし、あんたのとこ置いとくわ」

シャイニート「ええー……。あたしの部屋散らかっててただでさえ狭いのにもっと狭くする気?」

アルケミック「それくらい片付けなさい」

シャイニート「じゃあ手伝って。ついでに夕飯も作ってくれると嬉しいな」

アルケミック「まったく調子のいい……。私が甘やかしてるからこの子も駄目なままなのかしら……」

シャイニート「さあさあ早く帰ろうよー!」

今日はここまで
明日に終わらせられればいいなと思ってる

あれから数日後……



アルケミック「ゴブリンの秘薬は作れたものの……最近すっかり仕事が来なくなっちゃったな……」

アルケミック「あーあ、暇だなー。これじゃまるでシャイニートみたい」

アルケミック「そういやあの子なにしてんのかな。働いたとかそういう話は一切聞いてないけど」

アルケミック「会いにいこうかな……。でも、あまり頻繁に会いにいくとあの子も私に依存するようになっちゃうし……」

アルケミック「あの子のためとはいえ、顔を合わせられないだけで寂しくなるものなのね」

アルケミック「こんなこと以前なら起こらないことだったのに……。それって私が昔よりシャイニートのことを……」



アルケミック「はぁ……」


コンコン


アルケミック「あ、誰か来た。仕事の依頼だといいんだけど」



「お前がアルケミック・マジシャンか?」


アルケミック「そうですけど……。あなたは一体?」

「おっと、こいつは失礼。名乗るのは自分からだったか」

チョウレン「俺の名は《予言僧 チョウレン》。ここに来た理由は名前の通りってわけだ」

アルケミック「な、名前の通り……?」

チョウレン「俺はたまに未来を予測することができてね。見えちまったわけよ……よからぬものがな」

チョウレン「シャイニート・マジシャン……そいつが今ちとまずい状況になってるみたいだ」

アルケミック「シャ、シャイニートが!? あの子に一体何が起きてるんですか!」

チョウレン「それを今から確認しにいくのさ。奴は殻に閉じこもって家の鍵を開けようとしねえ。そこで奴の知り合いであるお前を尋ねにきたんだ」

アルケミック「なんかの冗談じゃ……」

チョウレン「あいにく俺の予言は見えちまった時は絶対当たるんだ。俺の予言は10割当たる!」

アルケミック「そんな……」

チョウレン「とにかく友人が心配なら俺に協力してくれや。なに、俺は怪しい奴じゃないから安心しとけ」

アルケミック「わ、分かりましたよ ……」




アルケミック「シャイニート? 入るわよ……って何この臭い!?」



「ああ……。誰かと思ったらアルちゃんか……。なんか用……?」



アルケミック「えっと、シャイニート……だよね?」

「もうその名前は捨てたよ。今のあたしはネオでニューに生まれ変わった……」

ダウナード「《ダウナード・マジシャン》。そう呼んじゃってよ」

アルケミック「えっ……何? 新手のイメチェン?」

ダウナード「生まれ変わったって言ってるじゃん。面倒だから何度も説明させないでよ……」

ダウナード「で、何の用……? 仕事の邪魔だから手短にお願いね……」

アルケミック「仕事!? あのシャイニートが……」

ダウナード「ダウナードだっつーの。魔法薬の個別受注を始めたら大ヒットしちゃってさ……」

ダウナード「もうバカ売れ。休んでばっかのあの頃が懐かしいや」

アルケミック「最近仕事が無かったのはあんたが客全部かっさらったせいだったのか……」

チョウレン「すげえ闇の力を感じるぜ……。おそらく原因はこの家の中にあるとみた」

アルケミック「ちょっとシャイニ……ダウナード! あんた一体どうしちゃったの!」

ダウナード「別にどうもしてないよ。まあ、働かない奴が急に働きだしたら違和感があるのも無理はないけどね」

アルケミック「嘘よ! あんたがちょっとやそっとのことでは働かないってのは長い付き合いである私が知ってるんだから!」

ダウナード「人が真面目に働いてるのにヒドいこと言うんだね……」

ダウナード「ちょうどいいや。商売をするにもライバルは少ない方がいいもんね。だから今ここで潰してあげる!」

アルケミック「はあ!? ちょっとあんた何言ってんの!?」

ダウナード「前から思ってたんだよ、お前はみたいな奴は邪魔だってさ。人のやることにいちいち口出ししやがって。何様のつもりなんだろうね」

アルケミック「あんたに言われたくないわ! 私のことさんざん頼っといてその言い草は無いでしょ!」

ダウナード「だからもうその必要は無いんだって。生まれ変わったあたしは全てが完璧なんだ。もうお前はいらないんだ! いらない奴は消えてしまえ!」

アルケミック「やめて……。あんたの口からそんな言葉聞きたくない!」

チョウレン「よせ。今のあいつには何言っても無駄だ。それよりもあの闇の力の出処を探すぞ」

ダウナード「あたしの邪魔はさせない! くらえ!」

アルケミック「させない!」

ダウナード「! 闇の魔法に対して光属性の力を持つ薬……属性反発作用か」

アルケミック「シャイニート……何があったか知らないけどあんたは私が止めてみせる!」

ダウナード「邪魔ばかりしやがって……! だったら面倒な奴から潰してやるよ!」

アルケミック「チョウレンさん! 私が時間を稼ぐから後は任せます!」

チョウレン「任された!」

アルケミック「……さてと、シャイニート!」

ダウナード「シャイニートじゃなくてダウナードだ! 間違えんな!」

アルケミック「絶対にあんたを正気に戻すから……覚悟しなさい!」

ダウナード「正気? だからこれが普通だって言ってんじゃん。やっぱりお前みたいな奴とつるんでると調薬師としての質も下がっちゃう。早く消さなきゃね」

アルケミック「私の知ってるシャイニートはそんなこと言わないわ。それだけであんたが異常だってのが分かるの」

ダウナード「まだ分からないの!? これが普通! これが正気! これがあたしの本音なんだよ!」






アルケミック「違う!」





アルケミック「私はシャイニートとは数年間しか過ごしてないけど……あの子がそんなことを考える子じゃないってことぐらい分かる!」

ダウナード「口じゃ何とでも言えるんだよ! あたしのことを完全に理解できる奴なんていないんだ!」

アルケミック「確かに完全には理解できない……でもそれくらいなら私には分かる!」

アルケミック「私にとってシャイニートはかけがえの無い友人で……互いを高め合うライバルで……」



アルケミック「私の大切な人だから……!」



ダウナード「な、なんなんだ……貴様……!」

アルケミック「お願い……シャイニート……」

ダウナード「ち、近づくな……! ぐうっ……! か、体が……馬鹿な……奴が意識を取り戻しているというのか……?」


ギュッ


アルケミック「元に……戻って……」

ダウナード「うっ……ぐううっ……!」

ダウナード「うわあああああああっ!!」ドンッ

アルケミック「痛っ!」

アルケミック「シャイニート……駄目なの……?」

ダウナード「アル……ちゃん……」

アルケミック「シャイニート!」

ダウナード「そこの……後ろの棚……試験管を……あたしに……」

アルケミック「こ、これ!? これをどうするの!?」

ダウナード「投げて……早く……!」

アルケミック「え、えーいっ!」ブンッ


ダウナード「う……」



ダウナード「うおおおオオオオッ! こ、これは我の苦手なデスガエルの血ッ……!」

ダウナード「この体はもう使えん……! あそこに……戻らねばッ……!」



シャイニート「」ガクッ

アルケミック「シャイニート!」




チョウレン「この装備品は……! てことはここが奴の根城かね」

チョウレン「なら本体をまず叩き出さなきゃな……。向こうに戻って……」


「ウオオオオオオオオオ!」


チョウレン「あれは《怨念集合体》! そうかこいつが乗っ取ってやがったのか!」

チョウレン「ようし、後は俺に任せておけ。いくぞ怨念共……」



チョウレン「破ァ!!」



怨念「ウウウォォオオオオヲヲヲ……!」シュウウウウ……



チョウレン「諸悪の根源は潰した。もうこの家は大丈夫だろうな」




アルケミック「シャイニート! しっかりして! シャイニート!」

チョウレン「どうした、何かあったのか!」

アルケミック「シャイニートが目を覚まさないんです! お願い、起きて!」

チョウレン「闇の力に体をやられちまったみたいだな……。すぐに病院に連れていくぞ!」

病院



アルケミック「チョウレンさん、シャイニートは……」

チョウレン「俺ができるのはここまでだ。奴の目を覚ますことができるのは付き合いの長いお前しかいない」

アルケミック「私が……」

チョウレン「じゃあな。健闘を祈る」

病室



シャイニート「…………」


アルケミック「シャイニート……私があんたの家に荷物を置いたせいで……」

アルケミック「死なないでシャイニート……。あんたが死んだら私は何を支えに生きていけばいいの……?」

アルケミック「それにまだ働いてないじゃない……。私、楽しみにしてるのよ……あんたとまた一緒に競い合うの」

アルケミック「お互いがお互いの目標となって……行き詰まったら相談しあって……そんな生活を私はまた望んでるの」

アルケミック「だからお願い! 目を覚まして!」


シャイニート「…………」


アルケミック「せめて……あんたが死ぬ前に私のこの気持ちを伝えたい……」

アルケミック「キス……だけでも……」



スッ







シャイニート「ふぁ〜あ、よく寝……いだっ!」ゴツン

アルケミック「あいたっ!」ゴツン

シャイニート「いった~……何すんの!?」

アルケミック「え……? え……?」

シャイニート「いや、その顔はあたしがしたいくらいなんだけど」

アルケミック「良かった……」

シャイニート「きゅ、急に泣かないでよ!」

アルケミック「ごめんなさい……。でも……心配したんだから……」

シャイニート「あ……ごめん。心配かけちゃったね……」

アルケミック「本当に良かった……。闇の力に飲み込まれなくて……」

シャイニート「闇の力? なにそれ?」

アルケミック「覚えてないの? あんたが倒れた原因よ」





シャイニート「アルちゃん……あたしが倒れた原因は『過労』だよ?」

アルケミック「……は?」

アルケミック「過労?」

シャイニート「そう。前に働いたら過労で倒れちゃうよーって話したでしょ? 見事にその通りになっちゃったよ。ちなみに命に別状は無いって」

アルケミック「だ、だってチョウレンさんは意味深なことを……」

シャイニート「ゆっくり寝てるから起こすのはアルちゃんに任せといてって伝えたけど」

アルケミック「なんであんな言い方したんだあの僧侶!」

シャイニート「結局アルちゃんが1人で勘違いしてただけじゃん」

アルケミック「ぐっ……」

シャイニート「でも結局心配させちゃったことに代わりはないか」

アルケミック「ま、まあ私もあんたが無事ならそれでいいんだけどさ……」

シャイニート「ところで……なんであたしが起きた時あんなに顔近づけてたの?」

アルケミック「そ、それは……」

シャイニート「あのままあたしが目を覚まさなかったら……キ、キスしちゃうとこだったじゃん!」

アルケミック「ち、近くで顔見たかっただけよ! 深い意味は無いわ」

シャイニート「…………」

アルケミック「……嫌、だった?」

シャイニート「……嫌じゃない」

アルケミック「相手は女なのよ?」

シャイニート「アルちゃんだったら……嫌じゃない」

アルケミック「……ありがとう、シャイニート」

シャイニート「アルちゃん……」

アルケミック(か、顔がだんだん近く……)ドキドキ

シャイニート(こ、こういう時って目をつぶった方がいいのかな……)ドキドキ









リリー「シャイニートさーん、体調はどうですかー?」ガラッ


シャイニート「頭突き攻撃!」ガスッ

アルケミック「あいったあ!?」




シャイニート「結局普通に退院できたね」

アルケミック「頭痛い……」

シャイニート「帰ったらどうしよっかなー。とりあえずまずは仕事の依頼をキャンセルして……」

アルケミック「なに働かない宣言してんのよ」

シャイニート「だってあれ闇堕ちしたあたしが勝手にやってたことだし」

アルケミック「少しはその意思を引き継ごうとは思わないの?」

シャイニート「全然」

アルケミック「駄目だこりゃ……。あ、そういやあんたどうしてあの霊に取り憑かれたの?」

シャイニート「新しい薬のレシピが思いついたからそれを実行しようとしたらその材料に霊がいて……」

アルケミック「それでああなったと……。なんだかんだで実験を行うくらいにはやる気があるみたいじゃない。働くまでもう一歩ね」

シャイニート「アルちゃんはやっぱりあたしに働いてほしいの?」

アルケミック「そりゃそうでしょ。高みを目指すならライバルの存在は不可欠よ。それに実験をしてた頃のあんたは生き生きしてたからね。昔みたいに元気になってほしいってのもあるかな」

シャイニート「ふーん。じゃあ働こうかな」

アルケミック「えっ、マジで?」

アルケミック「あんなに頑なに働くの嫌がってたのに……どんな心境の変化?」

シャイニート「んー、あたしが働かなかったのはさ、性格もあるけど一番の理由は変わりたくなかったからなんだよね」

シャイニート「学生時代が楽しかったからその気持ちをいつまでも忘れたくないって……そう思ってたの」

シャイニート「でも、みんな変わっていった。みんな別の道を歩んで、楽しかったあの頃はもう二度と戻って来ないんだって。それが嫌で嫌で仕方なかった」

シャイニート「結局、あたしのわがままでアルちゃんが進むべき道を足止めしてただけなんだけどね。もうそんな考えはやめてあたしが変わらなきゃいけないんだって……そう考えたの」

シャイニート「だから、あたしちゃんと働く。あたしが調薬師として活動を始めたら……その時はまた一緒に実験しよ?」

アルケミック「そうね。約束するわ」

シャイニート「うん!」

アルケミック「よし、景気付けよ! 今日は私が料理を作ってあげる!」

シャイニート「ホント!? じゃあせっかくだから泊まっていってよ! 一緒の布団で語り明かそう!」

アルケミック「いいわねそれ。ついでに一緒にお風呂に」

シャイニート「それは遠慮しとく」

そして数日後……



アルケミック「シャイニートのやつ、しっかり働けてるかしら? ここはひとつ私がなにかと教えてやらないと」

アルケミック「シャイニート。いるかしらー?」



シャイニート「『《アクア・ジェット》を使ったマジックコンボで華麗なる戦略を見せつけてやれ!』……さすがDステップは為になる記事が書いてあるなあ」



アルケミック「…………」

アルケミック「ちょっとシャイニート。何してんのあんた」

シャイニート「んー? 雑誌読んでる。3冊あるから1冊あげるよ」

アルケミック「いらんわ! つか仕事はどうした仕事は」

シャイニート「あたしは考えたの。働くには体力が圧倒的に少なすぎる、このままではまた過労になってしまうと」

シャイニート「じゃあまず筋トレしようということで近場にあるジムに通った」

シャイニート「結果筋肉痛になったのでしばらくの間休むことにした」

シャイニート「休んでると段々働くのもめんどくさくなってきちゃって……。このまま一生働かないのも悪くないなって思い始めちゃって」

シャイニート「でもさすがに一生働かないのはアルちゃんに悪いと思ったんだよ? そこであたしは一つの案を思いついた!」

アルケミック「……それは?」











シャイニート「来年から働く」

アルケミック「今すぐ働けええええええええっ!!」



以上です
マスターガイドを読んで書いてみたくなりました
でも百合ネタならもう少しイチャラブを増やした方がよかっただろうか



ここまで読んでいただき本当にありがとうございました


ネタが尽きたのでカード名書けばそのスレをたてるかもしれない
でもDTネタは勘弁な!

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