時雨「いい雨だね」満潮「何処がよ!」 (33)

雨。軒先。雨宿り。昼頃。

二人は買い物の帰り。

辺りに人気は無い。


満潮「ああ、もう、服がびしょ濡れじゃない!

   買い出しになんか付き合うんじゃなかった!」

時雨「付き合わせちゃってごめんね」


普通の人は雨が嫌いみたいだ。

でも、ボクは雨が好きかな。

満潮の方を見て呟く。


時雨「いい雨だね」

満潮「何処がよ!」


今は特に。

何故なら、満潮の服が透けているから。

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注意事項 時雨が変態

濡れた服が張り付いて体のラインを浮かび上がらせ、透けて見える肌色はボクの心を浮き立たせる。

色香を感じさせる鎖骨、撫でまわしたくなるお腹、フェチには堪らないへそ。

まだなだらかな双丘はジュニアブラで隠されているけれど、服越しに浮かび上がるブラの色彩はそれだけで世界を鮮やかにする。


普段は軽やかに舞いその動きでボクを幻惑するスカートは、今は重くまとわりついて下腹から太ももの線を露わにし、

濡れた髪から滴るしずくは何時もと違う雰囲気を醸し出す。

そして、降りやまない雨を見る彼女の目は……今は、ボクの方を見ている。


満潮「どこを見ているのかしら」


低く、重く、冷たく、地を這うような声。

氷点下の冷たさを持つ問いと眼差しにボクはこう答えた。


時雨「寒くなって来たね。風邪を引きそうだよ。服を乾かさないかい?」

数分後


満潮「はあ、何でこんな奴と二人きりで雨宿りしてるのかしら」

時雨「何も殴ることないじゃないか。殴られた所がまだ痛いよ」

満潮「時雨が悪いんじゃない。服を脱がせようとするなんて何考えてるのよ」

時雨「それはもちろん、満潮の素肌を…」

満潮「もういいわ!時雨に聞いた私が馬鹿だったわ!

   それで、いつまでここにいればいいのかしら?迎えはまだ来ないの!?」

時雨「…雨は、いつか止むさ」

満潮「止むまで待てないわよ!こんな格好で!」

時雨「そうかな、ボクは素敵だと思うよ」

満潮「………時雨はいいわよね。服が黒いから透けないし」

時雨「ボクの裸に興味があるの?いいよ、何でもしてよ」

満潮「違うわよ!!」

夕立「迎えに来たっぽい。はい、傘」

時雨「ありがとう、夕立。迷惑かけるね」

夕立「問題ないっぽい。言われた通り、上着も持ってきたっぽい」

満潮「結構早かったじゃない。ここから鎮守府までかなりあるわよね?」

夕立「時雨が全速力で来いっていうから急いだっぽい」

時雨「満潮に風邪を引かせるわけにはいかないからね。

   はい、満潮、この上着、帰る間上に羽織っておくといいよ」

満潮「あ、ありがと」

鎮守府に着いた。


金剛「二人ともお帰りなさいデース!買い物ご苦労様ネー!

   風邪を引かないようにお風呂に入ってくるデース!」

時雨「さあ、満潮、一緒に入ろうか」

満潮「…変なことしたら追い出すから」

脱衣所


この時間帯だとボク達二人しかいないみたいだ。

これなら、満潮が服を脱ぐ姿を堪能でき…


満潮「馬鹿なこと考えてないで早く入りなさい!」

大浴場


言われた通りお風呂場へ行き、体を流す。

シャワーの温かさが冷え切った体に心地良い。

ボクの隣では満潮が体を流している。


シャワーから流れ出るお湯が彼女の肢体を伝わり、流れ落ちる。

お湯の熱で肌は艶めかしく上気し、そして、


満潮「どこをを見ているのかしら」


…声は氷のように冷たい。

シャワーの温かさも吹き飛ぶようなその眼差しにボクはこう答える。


時雨「背中を流そうかい?満潮」

満潮「出てけー!!!!!」

脱衣所


追い出されてしまった…。

しかし、困ったな。まだちゃんと温まっていないのだけれど。

ふと、満潮の脱衣籠が目に入る。

…この状況なら仕方ないよね。

満潮の服に顔を埋め、匂いを嗅ぐ。

鼻腔いっぱいに広がる彼女の香りはボクの心をときめかせ、興奮が体を火照らせる。

何時までもこの匂いを感じていたい。


そうしてボクは匂いを嗅ぎ続け、


満潮「何を、して、いるの、かしら」


今に至る。


氷点下の眼差しはついに絶対零度の域にまで達し、興奮の熱を根こそぎ奪う。

全てを凍り付かせるような冷たさと怒りに満ちた問いに、寒気を感じながらボクはこう答えた。


時雨「ちゃんと温まれなかったからね。満潮の服で暖を取っているんだよ」

数分後・廊下


時雨「頭が痛いよ…」

満潮「当然の報いよ。ほら、温かいお茶。温まってないんでしょ」

時雨「ありがとう」

満潮「次やったらこんなもんじゃ済ませないから」

時雨「あはは…」


極まりが悪いのを誤魔化そうと窓の外を見る。

雨が降っている。


時雨「いい、雨だね」

満潮「何?今度は何を企んでるの?」

時雨「心外だよ…」

お風呂に入った後、食堂で満潮と昼食を食べた。

食べ終わって辺りを見ると遠くのテーブルに人だかりができている。中心には金剛さんがいるみたいだ。

近づいてみる。


金剛「それでデスネー、テートクが『月が綺麗ですね』って言ったから

   『イエース!榛名達にも見せてあげたいデース』って答えたんデース。

   そうしたらテートクがガッカリしてたんデスが、どうしたんでショー?」

比叡「司令…、可哀想に…」

榛名「さすがに榛名もこれは…」

霧島「お姉さま…」

荒潮「あらあらー」

夕立「さすがにそれはないっぽい」

青葉「これは記事にできないですね。司令官が不憫すぎます」

金剛「皆どうしたんデース?」

霧島「お姉さま、”月が綺麗ですね”というのはですね、

   ”あなたを愛しています”というのを日本の古風な感覚で表現したものなんです。

   昔の日本人は奥ゆかしくて、”あなたを愛している”と直接口にする習慣が無かったんです。

   だから遠まわしに愛を表現していたんですよ」

金剛「どうして”月が綺麗ですね”が”I love you”になるんデスか?

   訳が分からないデース!」

満潮が歩いて行って話に加わる。


満潮「司令官も馬鹿ね。金剛は英国出身なんだからそんなの分かるはずないじゃない」

金剛「oh、満潮、グッドタイミング!さっきのお買い物のご褒美のなでなでデース!」

満潮「いらないわよ!」

金剛「つんつんしてる満潮もcuteネー!

   でも、女の子は時には素直になることも必要ネー!」

満潮「ほっといてよ!」

金剛「そんなんだと時雨に嫌われちゃうデスヨ?」


満潮「ななななんで私がこんな変態の事気にするのよ!」

荒潮「あらー。満潮はいつも時雨ちゃんと一緒にいるじゃない。

   さっきだって買い物について行ったのは満潮じゃないかしらー」

満潮「そ、それは…」


からかわれて顔を赤くしている満潮も可愛いなあ。

夕立「そういえば時雨が、”月が綺麗ですね”と”いい雨だね”は似てるって言ってたっぽい。

   月が雨に変わっただけだって。時雨、ときどき満潮に『いい雨だね』って言ってるっぽい」

満潮「なっ」


ちょっと、夕立!?


時雨「や、やめてよ、夕立、秘密だって言ったじゃないか」

夕立「んー、そうだったっぽい?」


ギャラリーから歓声が上がる。顔が熱い。

夕立のやつ、後で覚えてろ。


青葉「その話、詳しく聞かせてください。

   時雨さん、ズバリ、満潮さんのどこが好きですか?」

時雨「き、君たちには失望したよ」


捨て台詞を吐き、満潮の手を取ってその場から逃げ出す。

戦略的撤退だ。

廊下


満潮「み、みんな何考えてるのかしら。べ、べつに私は時雨のことなんか…。だいたい…」


満潮がぶつぶつ言っている。

ボクも照れ隠しに目をそらし、外を見る。雨が降っている。


ボクはこういう雨の降っている風景が好きだ。

この風景みたいに素敵なものを好きな人とこれからずっと分かち合っていけるなら、それはどんなに素晴らしいことだろう。

だから…

「ねえ、満潮」

「何よ?」

「いい、雨だね」

「…そうね」


終わり

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