モバP「心の燃料」 (53)

モバマスSSです。

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「大きくなったらぜったいアイドルになるから!」

「そっかそっか。頑張らないとね」

「うん。かわいいうたをうたってきれいなドレスをきるの」

「そっか。うん」

「だから、見ててね!」

「うん。見てるから」

「うん!」

「すごいねぇ。楽しみだよ」

教室

加蓮(…夢?)

加蓮「随分と懐かしい夢を見た気がする」

加蓮「どれくらい前だっけ」

加蓮(小学生の低学年とかかな…となると10年前かな)

加蓮「なんであの時のことを思い出したんだろ…」

加蓮「案外理由なんてないのかも」

「加蓮ー?どうしたの?」

加蓮「別に何でもないよ」

「この後カラオケとか行かない?」

加蓮「んー、気分じゃないかな」

「あ、どっか行くんだっけ?」

加蓮「なんで?」

「なんか言ってたじゃん」

加蓮「あー、そう言えば言ってたかも」

加蓮(今日レッスンだっけ)

事務所

加蓮「おはようございまーす」

ちひろ「おはようございます」

P「おはよう」

加蓮「レッスン行ってくるから」

ちひろ「はい。頑張って下さい」

P「次のオーディション頑張ろうな」

加蓮「うん。頑張る」

バタン

ちひろ「やる気はあるんですよね…加蓮ちゃん」

P「あるはずですよ」

ちひろ「で、ですよね…」

P「もしかしたら自分の現状には満足はしていないかもしれないですけどね」

ちひろ「た、確かにそうかもしれません…」

P「俺達も頑張りましょうか」

ちひろ「そうですね!」

レッスン室

トレーナー「……よし。今日はここまで!」

加蓮「お疲れ様でしたー」

トレーナー「お疲れ様でした」

加蓮「はい。ありがとうございます」

加蓮「あ、そうだ。一ついいですか?」

トレーナー「ん?」

加蓮「子供の頃の夢ってなんでした?」

加蓮「あ、やっぱりなんでもないです」

トレーナー「?」

加蓮「気にしなくていいです。お疲れ様でしたー」

加蓮(あんな夢見たからかな。あんな質問したの)

加蓮「なんだかなぁ…」

加蓮「皆になんて思われてるんだろ」

加蓮(無愛想とかかな)

加蓮「Pさんにはそれこそ口だけって思われてるかもね」

加蓮「実績も伴わないのに口だけは一丁前だから」

加蓮「でも…最近ちょっとは露出も増えてきたし」

加蓮「…ちょっとだけ体動かしとこ」

加蓮「……ふぅ」

加蓮(こんなものかな)

加蓮「願うだけで叶えば全員ヒーローでヒロインだよね」

加蓮「それって結局みんなで手繋いでゴールしてると同じで意味がないよね」

加蓮「全員がお姫様だったら誰もお姫様を羨ましいと思わないじゃん」

加連「選ばれた人しかなれないから意味があるんだって」

加連「あー、ちょっとネガティブになってきたかも」

凛「加蓮?」

加蓮「ん?あ、凛じゃん」

凛「うん。どうかしたの?」

加蓮「別にー。自主練自主練」

凛「そっか。お疲れ様」

加蓮「凛はどうしたの?今日レッスン入ってたっけ?」

凛「ううん。そういう訳じゃないけど。ちょっと顔だけ出して見たら加蓮がいたから」

加蓮「そっか。これから収録だっけ?」

凛「そうだね。これから出かけるよ」

加蓮「そっかそっか。頑張って」

凛「うん。ありがと」

加蓮「あ、そうだ」

凛「なに?」

加蓮「今さ、凛はどのくらいの位置にいるの?」


凛「アイドルとしてってこと?」

加蓮「そうそう」

凛「どうだろうね」

加蓮「分かんないか」

凛「ごめん。あ、そろそろ行ってくるね」

加蓮「いってらっしゃーい」

事務所

加蓮「ただいまー」

ちひろ「あ、お帰りなさい」

加蓮「Pさんは…凛の付き添いかな」

ちひろ「そうですね」

加蓮「人気者だよねー」

ちひろ「そうですねぇ。雑誌やテレビで見ることも少しずつですけど増えてきましたし」

加蓮「あたしの仕事も増えないかなぁ」

ちひろ「入った時期の問題もありますからねぇ…」

加蓮「ま。確かに入ったばっかのあたしはしょうがないんだけどね」

加蓮(分かってる。分かってるんだけどさー)

ちひろ「でも、きっと加蓮ちゃんなら今に仕事一杯来ますよ。この間まで忙しかったじゃないですか」

加蓮「たまたまね。そうだといいなぁ」

ちひろ「その時の為に頑張りましょうね。これあげますから」

加蓮「ん。ありがとちひろさん」

加蓮(スタドリって美味しいのかな…)

加蓮「そういえばちひろさん」

ちひろ「なんですか?」

加蓮「アイドルとしての才能ってなんだろうね」

ちひろ「才能…ですか?」

加蓮「うん。やっぱり見た目がいいとか。歌が上手いとかかな?」

ちひろ「そうですね。やっぱりそう言う所には目は行きますよね」

加蓮「ま。分かり易いからね」

ちひろ「ですねぇ。でも志って言うのも才能の一つなのかなぁって思いますよ」

加蓮「どういうこと?」

ちひろ「あ、別に深い意味がある訳じゃないんですけどね」

加蓮「ちひろさんがそんなこと言うなんて珍しいって思ってさ」

ちひろ「えーとですね…人って心と体は別々じゃないですか」

ちひろ「頑張ろうと思っても体が言うこと聞かなかったのに、どこも悪くないのに動きたくないとかって時あるじゃないですか」

加蓮「あーあるね」

ちひろ「だから志が高い人がやっぱり最後は活躍するのかなぁって」

加蓮「なるほどねぇ」

ちひろ「ま、まぁ私はただの事務員なんでよく分からないですけどね!」

ちひろ「でも、心が体に影響しないなんてことは絶対ありませんから。それだったらロボットです」

加蓮「中々カッコいいねー」

ちひろ「あ、なんか恥ずかしくなってきました…」

加蓮「そんなことないって。今度誰かに話したくはなるけど」

ちひろ「あはは……」

加蓮の部屋

加蓮「心と体かぁ……」

加蓮「まぁ、そうだよね」

加蓮「志…か。サンタさんにアイドルにして。ってお願いする程度の志じゃダメかな」アハハ

加蓮「器によって中身も変わるってことかな」

翌日
事務所

P「お、おはよう」

加蓮「ん。おはよ」

P「顔赤いな。どうかしたか?」

加蓮「そうかな?」

P「少なくとも俺にはそう見えるけど」

加蓮「んー、別に何ともないから大丈夫だと思うけど」

P「そうか。それならいいけどな。あんまり体力ないんだから無理するなよ」

加蓮「昔に比べて体力はついたとは思うんだけどね」

P「そりゃそうだろうが…」

加蓮「うん。言いたいことは分かってるから。今のはただの冗談」

P「そういや、次のオーディションの話なんだけどさ」

加蓮「うんうん。どうしたの?」

P「この日になったから予定は空けておいてくれな」

加蓮「ん。分かった。とりあえず開けておくね」

P「あぁ、頼んだ」

レッスン室

加蓮「~♪」

周子「やけに機嫌いいね。どうしたの?」

加蓮「別に。ただ、分かり易い目標が出来たってだけ」

周子「あー、オーディションとか?」

加蓮「そ。そういうこと。まずは受かることから始めないと」

周子「まぁ確かに」

加蓮「だよね。それに今凄く体が軽いの。フワフワしてて」

周子「それって平気なの?」

加蓮「大丈夫なんじゃない?」

周子「ならいいけどさ」

周子(自分の体は自分が一番分かってるだろうし…)

加蓮「そうそ――」フラ

周子「えっ…」

加蓮「おっとっと…ちょっとフラついただけだから大丈夫」

周子「いや、明らかにそれはダメなやつだって」

加蓮「大丈夫だって…」

ピリリ

P「どうした?」

周子「あ、あたしだけどさ」

P「周子か。どうした?」

周子「そうそう。シューコちゃん。あ、そうそう。加蓮のことなんだけど…」

P「うん」

周子「病院連れていってよ」

P「……分かった」

周子「話が早いねー」

P「周子が俺に電話してくるなんてよっぽどだからな」

周子「そんなことないと思うけど。きっと明日には夜ご飯について電話するって」

P「しないな」

周子「しないね。それじゃよろしく」

P「あぁ、ありがとう」

車内

加蓮「――なるほどね。だから私はここにいる訳だ」

P「そういうこと」

加蓮「わざわざ練習切り上げてまで行くべきかな」

P「一応な。ほら、折角のチャンスをふいにはしたくないだろ?」

加蓮「まあね」

P「そういうことだ」

加蓮「まぁ、何ともないと思うけどね」

P「それならそれでいいって」

一時間後

車内

P「過労か…」

加蓮「だってね」

P「絶対無理してたろ?」

加蓮「そんなことはないと思うけど」

P「2-3日は安静にしておけよ」

加蓮「…はーい」

P「まぁ、でもただの疲れだけで良かった」

加蓮「心配してくれたんだ?」

P「そりゃな」

加蓮「どうして?アイドルだから?」

P「アイドルだから…ってのもあるのは事実だな」

加蓮「含みがある気がするけど気のせい?」

P「気のせい気のせい」

加蓮「そう言う風にしといてあげるよ」

P「ありがとう」

P「心だけが走ってもハンドルを切れずにコーナーを曲がりきれないこともあるからな」

加蓮「……うん」

事務所

周子「あ、おかえり」

P「ただいま」

ちひろ「どうでした?」

P「ただの疲れだと」

凛「それなら良かった…」

P「周子ありがとな」

周子「ん?あぁ、別にいいって」

ちひろ「あ、ちょっと照れてますね」ニヤニヤ

周子「ノーコメントで」

凛「加蓮のオーディションには間に合うの?」

P「まぁ、平気だろ。安静は数日だし」

周子「それなら平気そうだね」

凛「それなら良かった」

P「ライバルには早く同じ土俵に上がってきて欲しいってか?」

凛「べ、別にそういう訳じゃないけど…。ステージで踊る加蓮を観たいなって」

P「ファンの発想だな」

凛「そうかもね」

周子「お見舞いとかいりそう?」

P「そんな日数じゃないからいいと思うぞ」

翌日

加蓮宅

加蓮(暇…すっごい暇)

加蓮「自宅療養ってもう…」

加蓮「確かに昨日は疲れてたけど…もう平気だし」

加蓮「オーディションも近いのに…」

加蓮「……」

加蓮「…よし!」

周子「『見舞いはいらないんじゃないか』って誰かが言ってたよね?」

凛「そうだね」

P「そうだな」

周子「皆さん友達思いなこって」

P「その言葉そのまま返すぞ」

周子「まぁ、折角だし三人で行きますか」

凛「寝てないか。確認しとくね」

ピリリ

凛「あ、もしもし。うん。ちょっとお見舞いにね。大丈夫?え、あ、うん。プロデューサーもいるけど…」

P「どうかしたか?」

凛「あ、うん。ちょっと待ってね」

凛「着替えるからちょっと待って欲しいって」

P「そうか…。俺だけ待ってようか?」

周子「折角だし三人で待つよ」

ガチャ

加蓮「あ、わざわざありがとね」

凛「大丈夫?」

加蓮「平気平気」

周子「髪濡れてるってことはシャワーでも浴びてたの?」

加蓮「まぁ、そんな感じかな。汗臭いと嫌だし」

P「無理はするなよ」

加蓮「うん。ありがと」

凛「病気してる訳じゃないみたいだから何買っていいか分からなかったけど、ゼリーとか食べる?」

加蓮「あ、うん。ありがと」

周子「あたしからはプリン」

P「俺はスタドリだな」

加蓮「最後のは絶対自分用だよね…」

P「まぁ、自分で飲む用で買ったものだけど。病気とか疲れには効くぞ」

加蓮「そっか。ありがとね」

凛「それじゃ、ずっと話してるの迷惑だろうから帰るね」

周子「ばいばーい」

P「ちゃんと安静にしてろよ?」

加蓮「……ん」

P「さて帰るか」

周子「そーだね。収録もあるし」

凛「元気そうで良かった」

P「そうだな。あの分だと帰ってくる頃にはすっかり元気だろうな」

凛「だね」

加蓮の部屋

加蓮「…ふぅ。まさかPさんまで来るとはね」

加蓮「バレたら何を言われるかたまったもんじゃないし」

加蓮「さて…練習練習。一瞬も無駄に出来ないしね」

加蓮「って言っても部屋で練習するのには限度があるよね…」

加蓮(でも外出るのはなぁ…)

加蓮「大人しく部屋でやるかな」

加蓮「あれ?ここってどうやるんだっけ?」

加蓮「えっとこうして、こうしてここでジャンプ!」ズル

加蓮「うわっ!」ガク

加蓮(カーペットが…)

加蓮「おっとっと!…っ!」ダンッ

加蓮「……!」

加蓮(いったぁ…)

加蓮「いきなりカーペットがズレるなんて…」

加蓮「着地した時ちょっと捻った気もするけど大丈夫だよ…ね?」

翌日
事務所

ピリリリ

P「はい。もしもし」

加蓮『あ、もしもし―元気?』

P「加蓮か。どうした?」

加蓮『ん?いや、暇だからさー』

P「明日には来れるんだから我慢しろって」

加蓮「あ、そうだ。ちょっと今から私の家に来てくれない?」

P「ん?」

加蓮『今日は、親はいないから…』

P「何を言ってるんだ」

加蓮『言ってみたかっただけ』アハハ

P「全く。他の人にはそんなこと言うなよ」

加蓮『当たり前じゃん。言う相手は考えてるよ』

P「まぁ、俺なら加蓮の考えてることだって何となく分かるけど…」

加蓮『なんかアレな気もするけど流しておいてあげる。あ、それでどう?』

P「家か?別にいいけど…」

加蓮『それじゃ、お願いね』

P「…なんかあったか」

P(じゃないと俺なんて呼ばないだろうし…)

ちひろ「どうかしましたかー?」

P「ちょっと加蓮の家まで行ってきますね」

ちひろ「はい?どうぞ」

加蓮の部屋

「大きくなったらぜったいアイドルになるから!」

「そっかそっか。頑張らないとね」

「うん。かわいいうたをうたうの」

「そっか。うん」

「だから、見ててね!」

「うん。見てるから」

「うん!」

「すごいねぇ。楽しみだよ」

……



加蓮「――可愛い歌を歌えるアイドル…か。まぁ、アイドルにはなったけど…」

(なれるのかな…そんな風に。カラオケで流行の歌を熱唱するのが関の山なんじゃないのかな)

ピンポーン

加蓮「…来た」

ガチャ
P「あ、加蓮どうした?」

加蓮「わざわざ…ごめんね。ちょっと入ってくれる?」

P「あ、あぁ…」

加蓮「えっと、折角だから私の部屋にでも…」

P「いいのか?」

加蓮「別にいいって。片付けたし」

P「なら遠慮なく」

加蓮の部屋

P「意外に整理されてるな」

加蓮「意外って言葉が気になるけどね」

P「先入観みたいなもんだ」

加蓮「先入観ねぇ…」

P「悪い悪い。あ、でも、見た感じ体は大丈夫そうだな」

加蓮「だるさとかは何にもないよ」

P「オーディションにはなんとか間に合いそうだな。ギリギリだけど」

加蓮「……」

P「どうした?あ、練習してなくて不安なのか?大丈夫だって――」

加蓮「前距腓靭帯損傷」

P「え?」

加蓮「分かり易い言葉で言うと捻挫かな。足首の。ほらここ」チラ

P「だ、大丈夫か?」

加蓮「うん。軽いみたいだから冷やしてちょっとすれば平気みたい」

P「そ、そうか…ちなみにちょっとって?」

加蓮「うーん…どうなんだろうね?少なくとも三日位じゃないのかな」

加蓮(多分、普通に飛んだり跳ねたりはもう少し時間掛かると思うけど…)

P「三日か…」

P(オーディション当日…)

加蓮「オーディション当日だよね」

P「どうしたんだ?」

加蓮「ん?怪我した理由?家で歩いてたらグキッってね」

P「…そうか」

加蓮「…うん。そうなんだ」

P「てっきり練習でもしてたのかと思ったよ」

加蓮「さっ、流石にさ安静にしてろって言われてそんなことはしないって」

P「そうか。そうだよな」

加蓮「……うん」

加蓮「…ごめん。やっぱり嘘」

P「ん?」

加蓮「怪我した理由。家で踊ってたの」

P「……そうか」

加蓮「だって、何もしないのは不安だったから」

加蓮「折角機会貰ったのに、ダメだったら全部終わっちゃうから」

加蓮「だから…だから…!」

P「そうか…」

P「正直な話をするとな、意外だった」

加蓮「え?」

P「加蓮がそこまでアイドルに拘ってるなんてさ。普段はそんな態度見せないから」

加蓮「…まぁ、恥ずかしいしね」ポリポリ

加蓮「勤勉で昼寝もしない兎に勝つには亀だって頑張らなきゃいけないの」

P「そうかそうか」

加蓮「…怒らないんだ」

P「ん?」

加蓮「てっきり怒鳴られるかと思ったけど…」

P「そりゃ、小言の一つも言いたくなるけどさ」

加蓮「なるけど?」

P「それだけ頬に痕付けてるアイドルを怒れないだろ」

加蓮「え?」バッ

加蓮「……うわぁ」

加蓮(恥ずかしい…)

P「安静の時期に怪我するなんて正直馬鹿げてるとは思うけどな」

加蓮「う……」

P「まぁ、起きたことはしょうがない。今回のオーディションは見送ろう」

P(今軽くても悪化する可能性があるし、何より加蓮なら無茶をしかねないしな…)

加蓮「…ごめん」

P「次があるさ。諦めなきゃな」

加蓮「でも…」

P「誰に追いつき追い越したいか知らないが、万全を期すのが今は重要だ」

加蓮「…うん」

加蓮の部屋

加蓮「あー、なんか気が抜けちゃった」フゥ

P「そんなに覚悟してたか」

加蓮「まぁね」

P「本当は怒りたいけどな」

加蓮「…ごめん」

P「過ぎたことは仕方ないさ」

P「隠れて無理して頑張っても怪我しちゃったらしょうがないな。この経験が活きることを期待するよ」

加蓮「Pさんはさ」

P「ん?」

加蓮「子供の時何になりたかった?」

P「子供の頃か…野球選手だな」

加蓮「あ、ぽいねー」

P「そうか? テレビで見たプロ野球選手がカッコよくてな」

加蓮「私も似たようなものでさ…その、アイドルになりたかったんだ」

P「アイドルか」

加蓮「うん。と言っても皆にそういう話をしたのは小学校低学年くらいまでなんだけどね」

加蓮「恥ずかしいし。学校にもたまにしか行けないのに難しいかなぁって思い始めてた時だったし」

P「なるほどな」

加蓮「でもね、高学年とかになっても家族にはたまに言ってたなぁ…って最近思い出したんだ」

P「そうなのか」

加蓮「うん。恥ずかしい話だけどね」

加蓮(サンタさんにお願いしてたりしたしね)

P「実際夢が叶ったじゃないか」

加蓮「まさか。なるだけが夢じゃないの。その先に夢があるに決まってるじゃん」

P「そうだったか」

加蓮「そうなんです」

加蓮「Pさんには夢を思い出させた責任、しっかり取って貰うから」ニコ

加蓮「そう言えばPさんは今時間あるの?」

P「時間か?うーん。あると言えばあるがないと言えばないな…」

加蓮「なにそれ」

P「アイドルとコミュニケーション取るのは重要な仕事だからな」

加蓮「仕事ねぇ…それじゃちょっと付き合って貰っていい?」

P「ん?何かあるのか」

加蓮「別に。ただ安静にしてるだけじゃ暇だから話相手になってくれないかなって」

P「まぁ、それくらいならいいけど」

加蓮「なにか見たいのある?」

P「加蓮が見たいやつでいいよ」

加蓮「私も特にないんだよねぇ…なんか持ってたりしないの?」

P「そんな偶然……あ」

加蓮「なんかあるの?」

P「この間のライブのDVDを先に貰ったのをそのままにしてたな…」

加蓮「お、それじゃそれで」

P「仕事みたいだけどいいのか?」

加蓮「いいって。話すネタとしては十分だし」

P「ならいいけど…」

凛『今日は来てくれてありがとう』

加蓮『ありがとねーっ!』

ワァァ

加蓮「自分で自分のを見ると少し恥ずかしいね」

P「そりゃなぁ」

加蓮「別に変なこととかしている訳じゃないんだけどね」

P「そうだな」

ワァァァァ

P(そういやこんなことあったなぁ…)

加蓮「……」

P(勉強熱心だな加蓮…)

加蓮「自分のさ…」

P「うん?」

加蓮「自分の限界が分かるといいよね…ゲームみたいに数字で」

P「ん?」

加蓮「だってさ。そしたらどこまでいけるか分かるじゃん。ここまでしか行けないってことも」

加蓮「自分が歩いてた道が途中で途切れているかどうかも分かるってことだし」

P「それは悲しくないか」

加蓮「どうだろ?シンデレラまで繋がってるとかそのレベルの力があるとかだったらワクワクしない?」

P「それは分からなくないが…」

加蓮「逆のパターンの方が多いんだけどね…」

P「そうだな」

加蓮「皆がなれたらシンデレラは特別じゃないしね」

P「確かにな」

加蓮「Pさんの目にはそういうのは映らないの?」

P「伸び代みたいなのか?」

加蓮「そうそう」

P「映らないな」

加蓮「えープロデューサーなのにー」

P「俺だって万能じゃないしな。もしかしたら俺のプロデュース能力も数値化されたらそこまでじゃないかもしれないしな」

加蓮「あー…」

P「数字だけで決まるんだったら俺よりいい人が……」

加蓮「やっぱり、数字は見えなくていいかな」

P「どうした急に」

加蓮「いやね、数字だけで決まったらロボットと同じじゃん」

P「1と0の世界か」

加蓮「うん。実力があっても発揮できなかったり、実力以上のものが発揮出来たりすることもあるしさー」

P「案外大事なのは心の力かもな」

加蓮「どうだろうね」

P「心がどうとか言ってたみたいだけど?」

加蓮「それについてはノーコメントで。勢いが良すぎるとコーナーを曲がりきれないみたいだから私の体は」

加蓮(多分心が先走るから)

P「俺が誘導するからさ」

加蓮「怠慢な誘導だったらぶつかっちゃうからね」

P「そこは頑張ろう」

加蓮「うん…!」

P「実際さ」

加蓮「なに?」

P「オーディション出てたら自信はどうだった?」

加蓮「まぁ、なくはないよ。練習もしてたし」

P「そうか」

加蓮「ただ、どうだろうね。ほら私体力ないし」

P「大分ついたんじゃないか?」

加蓮「とは思うんだけどね。もし、さっきの話じゃないけど数値化されたら私の体力は最低ランクな気がする」

加蓮「ふふ…」

P「それなら尚更体力回復に努めないとな」

加蓮「そうだね。ありがと」

P「おう。あ、そろそろ…」

加蓮「あ、引き止めてごめんね」

P「別にいいって。それじゃお大事に」

数日後

事務所

ピリリリ

P「はい、もしもし。はい。あ、はい。えぇ。えっ本当ですか!?はい。お願いします!」

ちひろ「どうしたんですか?」

P「今度の音楽番組で抜けが出ちゃったみたいで緊急オーディションやるけど出たいか?って話がありまして…」

ちひろ「なるほど。誰か出すんですか?」

P「そうですね。誰にしようかな…」

ちひろ「あ、そうだ。加蓮ちゃんでいいじゃないですか。最近頑張ってますし」

P「そうですね。連絡入れておきます」

事務所
P「――と言う訳だ」

加蓮「うん。頑張るね」

P「あぁ、頑張ってくれ」

加蓮「任せてよ。もうあんな思いはしたくないから」

ちひろ「頑張って下さいね」

加蓮「うん。ありがと」

P「プレッシャーをかけるようで悪いが加蓮の代わりはいないからな」

加蓮「うん?」

P「怪我したりするなよ」

加蓮「うん。分かってる」

加蓮「なんかこう改まって言うのは恥ずかしいんだけどさ、分かったんだよ」

P「なにが?」

加蓮「ちょっとだけだけど、怪我と過労で休んだでしょ?」

P「うん」

加蓮「アイドルやってからああいうの初めてでさ。なんて言うかその…」

加蓮「自分がどれだけアイドルが好きかってのを初めて分かった気がする」

P「今のセリフカッコいいな」

加蓮「わ、わぁ!なんかすごい恥ずかしいこと言ってる気がしてきた…」カァァ

ちひろ「カッコいいですよー」

加蓮「そ、そうかな…えへへ」ポリポリ

オーディション当日

P「急に呼びかけたって言ってたけど多いなぁ…」

P(それだけ顔が広いんだろうなぁ)

加蓮「緊張してるの?」

P「誰が?」

加蓮「Pさんが」

P「俺は踊りも歌いもしないからな」

加蓮「Pさんらしいね」

P「そうか?」

加蓮「うん。カッコつけてるようで全然ついてない。さっきからソワソワしてるし」

P「…さぁな」

加蓮「でもま、これだけの人がいたらそうなるのも無理はないかもね」

加蓮(無難なアピールだけじゃ無理かも…)

加蓮「あ、Pさ―」

P「どんな結果でも俺は受け入れてやるから頑張れよ」

加蓮「最下位かもしれないよ?」

P「いいさ。胸を張って帰って来い。後悔はするな」

加蓮「…ん。そうだね」スッ

P「ん?」

加蓮「ほら、はやくっ!」

P(掌…?)ピタ

加蓮「ん。充電完了。シワとシワを合わせて幸せってね!」

加蓮「あ、そうだ」クルッ

P「どうした?」

加蓮「あなたが育てたアイドルが、私の進む道がシンデレラに繋がったら教えてね」

P「…任せとけ」

加蓮「ん。期待だけしとく」

オーディション会場

凛「どうなってるの?」

P「お。来たのか」

凛「気になるし」

P「まだ始まってないけどな」

凛「そう」

P「凛はさ」

凛「うん」

P「自分の限界ってどこにあると思う?」

凛「…分からないね。そこまで多分自分を追い込んだことないから」

P「だよなぁ…。きっと自分で思う限界より一歩先に本当の限界があるんだろうな」

凛「かもね。どんなに辛くても一歩くらいは踏み出せそうだし」

P「だよなぁ…俺もまだ大丈夫だな」

凛「いや、無理はしないでよ?」

凛「今回オーディションは長丁場なの?」

P「そんなことはないぞ。普通より短いくらいだ」

凛「安心した?」

P「むしろ言い訳が出来ないな」

凛「言い訳?」

P「あぁ。体が弱くて…とか言えないさ」

凛「なるほどね。きっとそうだとしても言わないだろうけどね」

P「だろうな。だけどさ、見てみたくないか?今まで体力ないとか言って逃げ道を常に用意してた加蓮が逃げ道を作れない状況で見せるパフォーマンスを」

凛「興味はあるよ。負けたら凹みそうだけどね」

P「そこはほら俺達がいるから」

凛「そうだね」

P「…こういう話を凛にするのが正しいか分からないけどさ」

凛「なに?」

P「俺は凛と同じくらい加蓮は才能があると思ってるよ」

凛「そうなんだ」

P「油断してると追い抜かれるかもな」

凛「大丈夫だって。こっちにも優秀なプロデューサーがついてるから」

加蓮(…大丈夫。出来るから)

加蓮(子供の頃の私、しっかり見てるかな?)

加蓮(あの時願った夢は何回も挫けたけど手が届きそうだよ)

加蓮(可愛い歌を歌ってカッコよく踊るから)

加蓮「…うん!」

ワァァァ…

数日後

某所

加蓮「あ、これ美味しいね」

P「お、そりゃよかった」

加蓮「ん。ありがと」

P「こう暖かいと眠くなるな」

加蓮「そうだね」

P「なんかまったりしてるな」

加蓮「そうだね」

加蓮「あ、アタシさー」

P「どうした?」

加蓮「特訓とか練習とか下積みとか努力とか気合いとか根性とかそういうの嫌いなんだよね」

P「そうか」

加蓮「そうなんだよねー。きっとどこかで無理だって諦めてるから」

P「俺は加蓮にアイドルをやって欲しいけどな」

加蓮「ふーん。Pさんはさ、私を変えてくれるの?」

P「それは本人次第さ」

加蓮「言ってくれるね」

P「俺は魔法使いじゃないからな。ただ道を示すくらいなら出来ると思う」

加蓮「そっか…もし、アイドルになって綺麗なドレスを着てステージで踊れたら皆に夢は叶うって自慢してあげるね」

P「それは俺も頑張らないとな」

加蓮「だね。Pさんはやっぱりさいこ――」

コンコン

「すみません。そろそろお願いしまーす」

加蓮「あ、分かりましたー」

P「頑張ってこい」

加蓮「うん。ありがと。しっかり歌ってくるから」

P「そういや、最後なんて言おうとしたんだ?」

加蓮「え?あ、えーっとまだまだ、最高のプロデューサーにはなれてないから私がトップになるまで隣で一緒に成長しようねって」

P「そうか。分かった」

加蓮「うん。これからもプロデュースお願いねPさんっ!」ニコ

終わりです。

読んで下さった方ありがとうございます。

失礼いたしました。

おっつん
古典シリーズの人?
今回古典絡んでないからトリ抜き?

>>47
はい。おはようございます。

単純にシリーズ関係なく書いているというだけですね。

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