シンジ「ヤンデレチルドレンしかいない」(173)

アスカ「ねぇバカシンジ…」

シンジ「な、何…?」ビクッ

アスカ「…今日さ、ヒカリと何話してたの」

シンジ「え、この前休んだ時のぶんのプリントもらって…」

アスカ「そんなこと聞いてるんじゃないわよ…!」ガシャン

アスカ「何で他の女と喋ったりすんのよ、止めてって言ってるじゃない!!」バンッ

シンジ「だって、プリントもらっておかないと…」

アスカ「そんなことどうだっていいでしょ!?バカシンジは…シンジはあたしのことなんかどうでもいいんだ」

シンジ「そ、そんなこと一言も言ってないじゃないか…!」

アスカ「じゃああたしの言うこと聞いてよ…好きって言いなさいよ、ずっと隣にいなさいよ…!」

アスカ「どうして分からないのよ…あたしは、こんなにアンタのことが…!!」バンッ

シンジ「痛っ…!」

アスカ「あ…っ!」ビクッ

アスカ「あ、あ…シンジ、シンジ…!」バッ

シンジ「いたた…」

アスカ「ご、ごめん…そんなことするつもりじゃ…ごめんなさい、ごめんなさい…!!」

シンジ「だ、大丈夫…ちょっとよろけて転けただけだよ。大したことないから」

アスカ「ほ…本当に…?…よかった」ホッ

アスカ「…氷持ってくるから、打ったところ冷やしておいてね」

アスカ「…はい。氷袋、タオルで包んでるからそのまま当てとくといいわ」

シンジ「ありがとう…ちょっとおおげさじゃない?」

アスカ「…あたしが悪いんだもの。ごめんね」

シンジ「いいって」ニコ

シンジ(いつもこんな風に優しかったらいいのになぁ…)

シンジ「もう遅いね…そろそろ寝ない?」

アスカ「…そうしよっか」

シンジ「おやすみ」

アスカ「…おやすみ」


シンジの部屋




シンジ「ん~…」モゾッ

シンジ(何だか寝苦しい)ゴロン

シンジ(…というか、視線を感じるような…?)チラッ

シンジ「…!」ハッ

シンジ「窓の外のあの人影…まさか!」ゾワッ

レイ「ごめんない、碇くん…起こすつもりはなかったの」ニコッ

シンジ「ひ…っ」

シンジ「そ、そんな…ここ一階じゃないのにどうやって…」

レイ「……これ」ヒョイ

シンジ(ロープ…!)

レイ「……せっかくだから、…話したい。…窓、開けて」トントン

バンッ


アスカ「話し声がすると思って来てみたら…またアンタね」

シンジ「あ、アスカ…!」

アスカ「いい加減シンジに付きまとうの止めなさいよ!迷惑してんのよ!!」

レイ「…迷惑かけてるのは、貴方」

アスカ「こいつ…ッ!!」ズカズカ

シンジ「アスカ、何でそっちに…?」

アスカ「決まってるでしょ…お望み通り窓開けて、アイツを突き落としてやるのよ!!」

シンジ「だ、駄目だそんなの!」ガシッ

アスカ「何で邪魔するの…!?離してっ、離しなさいよっ!!」


レイ(…流石に、長居はよくない…みたい)

レイ「…またね、碇くん」スルッ


アスカ「あ…!!」

アスカ「シンジが邪魔するから逃がしちゃったじゃない…!」

シンジ「え…」

アスカ「…ねぇ、どうしてファーストの肩持つの…?あたしより…アイツが好きなの…!?」

シンジ「そんなんじゃ…」

アスカ「ファーストがいたら邪魔でしょ!?いつも付きまとわれて困ってるんでしょ!?なのに、どうして…!」

アスカ「…あたしのこと、嫌いなの…?」

シンジ「あ、アスカのことは…好きだよ。だから、落ちついて…?」

アスカ「……本当でしょうね」

シンジ「本当だよ…アスカに嘘ついたことないよね…?」

アスカ「…ならいいわ」

シンジ(……)ホッ

アスカ「……夜に騒いで悪かったわ。…おやすみ」

シンジ「…おやすみ」

翌朝


シンジ(結局あんまり眠れなかった…とりあえず、新聞とらないと…)

シンジ(あれ、珍しい…今日は新聞以外に何もない…
違う、何だこれ?封筒?)ガサッ

シンジ「大きいし重い…差出人の名前は…なしか」

シンジ(…あけてみよう)ビリッ

シンジ(…便箋だ)


おはよう、碇くん。
昨日は疲れていたようですが大丈夫ですか?
それはそうと、昨日は久しぶりに私の中のコレクションのランキングが変動するような写真が撮れました。
綺麗に撮れたので碇くんにも見てもらいたいです。

追伸
結局、あの後寝ついたのは3時12分でしたね。
もっと早く寝たほうがいいと思います。



綾波

シンジ「あ、綾波…!?」

シンジ(じゃあ、残りの中身は…)

ドサッ

シンジ「……」ゾワッ

シンジ(ほとんど同じ、僕の寝顔の写真が角度や距離を変えて数十枚も…)

シンジ(綾波からのこういう手紙は珍しくないけど、今回は差出人の名前がないから分からなかった…)

シンジ(…とにかく、はやく処分しないと…
綾波からの手紙を読んだりしたことがばれたら、アスカがまた何て言うか…!!)

……………


シンジ(…ばれないように片付けるの、けっこう大変だったなぁ…)ハァ

カヲル「おや、シンジくんじゃないか」

シンジ「カヲルくん…」

カヲル「…どうしたの?元気少ないね。さっきのシンクロテストは疲れたかい?」

シンジ「それもあるけど…」

カヲル「……もしかして、セカンドとファーストのことかい?」

シンジ「……」コクン

カヲル「…ねぇシンジくん、今日…僕のところに来ないかい?」

シンジ「え?」

カヲル「セキュリティはかなりしっかりしてるから、誰も来たりしない。
たまには彼女達から離れたほうがいいと思うんだ。君のためにもね」

シンジ「でも、悪いよ…」

カヲル「僕のことなら気にしなくていい。むしろ、一人で寂しいからシンジくんが来てくれたら嬉しいんだけど」ニコ

シンジ「そ、そう…?じゃあ、お邪魔しちゃおっか…」

カヲル「うん。葛木三佐には僕から話しておくよ」ニコニコ

……………
カヲル宅



カヲル「さっそくだけど、ご飯にしよう」

シンジ「何か手伝うことある?」

カヲル「…いいよ、君はゆっくりしていて。なんたってお客さんなんだから。
…ふふっ、せっかくだからシンジくんの好きなハンバーグにしようか」

シンジ「本当?」パァッ

夕食後


シンジ「すごくおいしかった…誰かが自分のために食事を作ってくれるって、いいね」

カヲル「それはよかった。腕をふるったかいがあるね」

シンジ「……」

カヲル「どうしたんだい、シンジくん」

シンジ「…なんだか今日は、久しぶりにゆっくりできたから…明日になるのが怖いんだ。
…帰らなきゃいけないから」

カヲル「…シンジくん…」

カヲル「……君さえいいなら、もうしばらくここにいなよ。葛木三佐も、君の状況には気をやんでるから分かってくれるさ」

シンジ「…うん」

カヲル「……ここには、何も嫌なことなんてないんだよ」ニコッ

シンジ「ありがとう…」

翌朝


カヲル「シンジくん、起きて。学校に遅れてしまう」

シンジ「学校…」

カヲル「…浮かない顔だね」

シンジ「……学校には、アスカも綾波もいるから…会うのが怖いよ」

カヲル「…今日は休んでしまおうか」ニコ

シンジ「……」

カヲル「電話しておくね」

シンジ(…甘えてちゃ、いけないのに……)

…………

数日後


ミサト「…カヲルくん、少し話があるんだけど。いいかしら」

カヲル「なんですか?」

ミサト「…あのね、アスカとレイがあんなだから…シンジくんをしばらくよろしくって言ったのも私だし、
一日くらい学校休んでもかまわないって言ったのも私だけどね」

ミサト「今の状況は一体どういうことかしら」

カヲル「…今の状況とは?」

ミサト「……白々しいわね」

ミサト「…あなた、シンジくんに何をさせているの?」

カヲル「何も。それがなにか」

ミサト「やっぱり…それが問題なのよ。見てる限り…着替えも書類の記入も、何もかもあなたがしてあげてるわよね?どういうことかしら」

カヲル「…してあげたいから、してあげる…それじゃいけないんですか?」

ミサト「…限度があるでしょう。シンジくん、何も出来なくなっちゃうわ」

カヲル「僕がするから問題ありませんよ」

ミサト「…百歩譲って、それはよしとしても…
今のシンジくん、学校に全く来ないどころかろくに外出もしていないわよね?」

カヲル「…それはシンジくんの意志だ。僕は彼に、何も強要してませんよ。…セカンドや、あなた方と違って」

ミサト「…」チッ

ミサト「……とにかく、シンジくんは返してもらうわ。上官命令よ」

カヲル「……できません」

ミサト「!」

カヲル「勉強は僕が教えているし…ネルフからの収集にはきちんと応じています。エヴァにも支障は出ていないはずです」

ミサト「…でも…!」

カヲル「…それに、今のシンジくんを僕から引き離せるんですか?
僕がいないと何も出来なくなった彼を」クスッ

カヲル「…いまさら一人にしたら…それこそ全てに支障が出ますよ」

ミサト「……!」ギリギリ

アスカ「…見つけたわよ、フィフス…!!」

カヲル「…おや」

ミサト「アスカ!」

アスカ「シンジをどこへやったのよ、返しなさいよ!!」ガシッ

カヲル「…出来るわけないだろう」ギロッ

アスカ「どうせ無理矢理閉じ込めてるんでしょ…ミサトも何か言ってよ!」

ミサト「あ、アスカ…」

カヲル「…僕はシンジくんに何も無理強いしていない。君に会わないのはシンジくんが選んだことだ」

アスカ「はっ…嘘ね、シンジはあたしのこと好きなんだから!!」

カヲル「シンジくんが君を好きだって?笑わせないでよ…
あんなにシンジくんに傷をつけておいてさ」ふっ

アスカ「な…あ、あれはわざとじゃ…
て、ていうか何でアンタがそんなこと知ってんのよ!シンジに何したのよ!」

カヲル「話題のすり替えはお手のものだね…!」フン

アスカ「うるさい!さっさとシンジを…!」

カヲル(…しつこいな)

ドンッ

アスカ「きゃあっ!」ドサッ

アスカ「…女の子に手をあげるなんて最っ低ね…」ギロッ

カヲル「悪いけど、暴力的で自己中心的過ぎる君は女の子として見れないよ」フン

アスカ 「……」ムカムカ

カヲル「…そうだ、葛木三佐」スッ

カヲル「もうすぐシンジくんのシンクロテストが終わる…
迎えに行きたいので、セカンドをどうにかしてくれませんか?」コソッ

ミサト「……」

ミサト(とりあえず今はいう通りにするしかないわね…)

ミサト「…アスカ、しばらくここにいなさい。今日は…そう、まだ他のテストが残ってるから」

カヲル「……」クスッ

カヲル(…早く迎えに行ってあげないと)すたすた

アスカ「ちょっと、待ちなさいよ…!シンジのとこへ行くのは分かってんのよ!!」

ミサト「…駄目よ、アスカ」

アスカ「ミサト、何でよ…」

ミサト「……駄目なのよ」

アスカ「そんなの知らない…!あたしはシンジに会いたいの、それだけなのよ!!」

ミサト(最近のアスカは精神的にかなり擦りきれてる…シンジくんを遠ざけたのが原因ね)

ミサト(シンクロ率にも影響が出てきている…このままにしておく訳にもいかないわね)

ミサト(…でも…だからって、どうすれば…)

……………

数日後




レイ「……」ガチャガチャ

レイ(あの人の家…このドアのむこうに碇くんがいるのは分かってるのに)

レイ(…開かない。…このタイプはピッキングも出来ない…窓も雨戸を閉めてる)

レイ(…壁は…)ピタッ

シーン

レイ(……駄目、防音も抜かりない…何も聞こえないわ)

レイ(…碇くん…会えなくてもいいの。…一目見たい)ガチャガチャ

すたすた

レイ「…足音?」



レイ(…止まった)

レイ(碇くん…ちがう、私の、後方…?)クルッ

アスカ「……」

レイ「…!」ピクッ

アスカ「…ここね。ファースト、今日の目的はアンタじゃないの…見逃してあげるから、早く失せなさいよ」ズルズル

レイ(金属バット…)

レイ「…そうする」スッ

アスカ「…案外物分かりがいいのね」

カヲル宅 寝室


シンジ「……」ゴロン

シンジ(…1つ面倒になると、だんだん全部面倒になる…最近、何もする気が起きない)

シンジ(…それでもいいや。やりたくないなら、カヲルくんがやってくれるんだ…)

カヲル「どうしたの、ベットから起きるのも面倒かい」

シンジ「……うん」

カヲル「……」フフッ

カヲル「それなら、ずっとベットにいればいいよ。身の回りのことは、全部僕がしてあげる…」

カヲル「…君が嫌なら、もうエヴァにだって乗らなくていい」ニコ

シンジ(…僕がエヴァに乗らないと、皆は…)

シンジ(……ううん。カヲルくんがいいって言ってるんだ…カヲルくんが言うなら…)

カヲル「君はどうしたい?ずっと…ここにいたいかい?」

シンジ「………うん…」

カヲル「…そうか。それなら準備をしないとね」

カヲル「まずは…バルーンカテーテルとオムツ、どちらがいい?」ニコニコ

ドゴンッ!!


シンジ「なっ、何この音!」ビクッ

カヲル(…いいところだったのに)

カヲル「玄関のほうだね」



アスカ「ここにいるのは分かってんのよぉ!早く…っ、早くシンジを出しなさいよおおお!!」ガンガン



シンジ「あ、アスカ…」ブルブル

カヲル「大丈夫だよ、ドアは防犯の要…ここのはとくに頑丈だから。
女子供がちょっとやそっと暴れたって外れないよ」

カヲル「…開かなくなる可能性はあるけどね」フフッ

アスカ「くそ…!開きなさいよ、このぉ…!」ガンガン

シンジ「……」ビクビク

アスカ「…シンジぃ…!いるんでしょ!?どうして…何で出てきてくれないの…?」グスッ

シンジ「アスカ…?」

シンジ(泣いてる…?)

アスカ「シンジっ…ごめん、きっと…あたしが悪かったの…!
いっぱい痛いことしちゃった、いっぱいいっぱい怒って…でもっ、でもあたし…!」ガンガン

アスカ「…シンジがいないと駄目なの…アンタじゃなきゃ…!」

アスカ「…お願いだから…許して…帰ってきてよ…!
シンジがいないとっ…あたし…なんにもできないの…シンジがいないなら…全部意味ないの…!!」グスグス



カヲル(……)イライラ

シンジ「…アスカ…」ヨロッ

カヲル「何を…シンジくんはそこにいてよ、僕が片付けてくるから」

シンジ「やっぱり駄目だ…あんなアスカをほっとけない…」ヨロヨロ

カヲル「……!」ギリッ

シンジ「ごめん、カヲルくん…」

カヲル「…どうしても行くのかい?」

シンジ「…うん」

カヲル「彼女は絶対にまた…君に辛い思いをさせる。痛い思いをさせる…
彼女だけじゃない、外にはシンジくんにとって嫌なことしかないよ」

シンジ「………ごめん」

カヲル「…そう」

カヲル「…それが君の意志なら…僕は尊重するよ」

ガチャッ

アスカ(ドアが…)

シンジ「…アスカ」

アスカ「シンジ…シンジぃっ!!」ガバッ

シンジ「わっ…」

アスカ「よかった…あたし、もう…シンジに…」ポロポロ

シンジ「…ごめんね、アスカ…もう帰ろう」

アスカ「…うん…っ」









カヲル「……」チッ

カヲル(ここまで来て…あと少し、ほんの少しだったのに…!!)ギリギリ

ミサト宅


シンジ「た、ただいま…」

アスカ「おかえり」

シンジ「アスカも今一緒に帰ってきたところじゃないか」

アスカ「…おかえりって、アンタに言いたかっただけよ」フフッ

シンジ「…ありがとう」ニコ

……………


リツコ「…で、あれからシンジくんの様子は?」

ミサト「最初はアスカも手伝ってたけど…もうほとんど自分で何でもできるわ。思ったより回復が早くてよかったわ」

リツコ「たいそう心配してたものね…。短期間で変わったことは短期間で戻るものよ。
…それに、あの堕落っぷりも六割くらいはシンジくんが望んだものではないだろうから」

ミサト「どういうこと?」

リツコ「アスカがシンジくんを連れてきたあと…念のために検査したでしょう?
そのときに、彼の血液中からいろいろ検出されたのよ」

ミサト「…え?」

リツコ「平たく言えばおクスリね」

リツコ「運動能力と頭の働きを阻害するタイプのね…代謝速度から考えて経口摂取かしらね」

ミサト「…それ、カヲルくんが?」

リツコ「他に誰がいるの?ま、薬剤としてはそんなに珍しいものでもないわ…
シンジくんの復帰が早かったのは薬が抜けてきたからでしょう」

ミサト「……そこまでして…」

ミサト(こりゃ、やっぱりシンジくんとは接触禁止にしとくべきね…)

シンジ(…やっぱりアスカとの生活は疲れるなぁ…)ハァ

シンジ(…でも、今のアスカは少しだけ落ち着いてるし…何より、やっぱり誰かに必要とされるのは嫌いじゃない)

カヲル「…シンジくん」

シンジ「あ…カヲルくん」ビクッ

カヲル「…そんな反応しないでよ。僕 だって傷つくよ」

シンジ「…ごめん」

シンジ(カヲルくんは僕のために優しくしてくれたのに…あんなふうに飛び出してきちゃったから気まずい…)

カヲル「…シンジくん、今日は君に忠告しておこうと思ってね」

シンジ「…アスカのこと?それならもう…」

カヲル「セカンドもだけど…一番は葛木三佐のことさ」

シンジ「ミサトさん…?ミサトさんがどうしたの?」

カヲル「あまり、彼女を信用しないほうがいい」

シンジ「…!?」

シンジ「そんな、どうして…」

カヲル「彼女はね…あんなに保護者面しておきながら、君のことなんて全く考えちゃいない」

カヲル「…君へのストレスも考えないで、未だにセカンドを側に置いているがその証拠だ」

シンジ「でも、アスカは…僕がいないと…」

カヲル「その、君の優しい気持ちにつけ込んでセカンドを優先しているのさ」

カヲル「…ここの大人はね、葛木三佐含め…君を利用しているだけだ」

セコンド姫かわいい

シンジ「そんな、ミサトさんが…嘘だ…」

カヲル「…嘘じゃないよ。だからね、シンジくん…」スッ

カヲル「……もう一度この手をとってくれるなら、もう絶対に誰も、君を傷付けないところへ…連れて行ってあげるよ」

シンジ「…カヲルくん…」スッ

カヲル「……」フフッ

シンジ「…やっぱり駄目だよ。僕がいなくったらここも、エヴァも…」ピタッ

シンジ(アスカも…)

カヲル「……そう」

カヲル「…焦ることはない。今すぐじゃなくてもいいよ。…僕は、いつでも待っているから」フフッ

シンジ「……」



カッカッ…

カヲル(…おや……このヒールの音は…あの人か)

カヲル「…じゃあね、シンジくん…今は、もう引っ込んでおくことにするよ」タタッ

シンジ「あ、カヲルくん!」

シンジ(行っちゃった…)

ミサト「…あ、シンジくん。ちょうどいいところにいたわ。ちょっと話があるの」

シンジ「みっミサトさん…」ビクッ

ミサト「…?…どうしたの?」

シンジ「いや、なんでも…」フイッ

ミサト(どうして目を合わせてくれないのかしら?)

ミサト「…まぁいいわ。シンジくん、今後はカヲルくんとの接触を極力避けて欲しいの」

シンジ「え…」

ミサト(薬のことは…言わなくてもいいか。ショックを受けるかもしれないしね)

ミサト「少し一緒に生活しただけであんなに依存したでしょう?あんなふうになってしまったら困るし…何より、シンジくんのためにならないと思うの」

ミサト「許可を出した私にも勿論責任はあるわ…でも、またああなる可能性がないわけじゃない以上、そうして欲しいの」

シンジ(どうしてミサトさんはこんなことを…たしかにカヲルくんを頼りっきりにした僕が悪いけど…
カヲルくんは、あんなに優しくしてくれたのに…接触を控えろなんて)

シンジ(…もしかして、本当にミサトさんは僕のことなんて)

シンジ「……」

ミサト「…分かったわね?…シンジくん?」

シンジ「…はい…。…話って、これだけですか?」

ミサト「え?そうだけど…」

シンジ「…すいません、僕ちょっと…もう帰ります」タタッ

ミサト「し、シンジくん!?」











カヲル「……」コソッ

カヲル「…上手くいった」フフッ

………

また数日後の朝




シンジ「……」スヤスヤ

マリ「起っきろぉワンコくん!!」

シンジ「ん……えぇっ!?」ビクゥッ

マリ「おっはよーワンコくーん!ほらぁおめざのチューしちゃうわよん!」

シンジ「待って、ちょっと…誰!?」

マリ「ひっど…さすがに傷ついたにゃ」シュン

シンジ「…あ、ごめんなさい…?」

マリ「…まだ寝ぼけてんの~?キミの愛しのマリちゃんじゃん」

シンジ「…あ、たしか屋上で…」

マリ「そうそう!あのとき屋上でぶつかったときから、キミと私の運命は始まっていたんだよーっ」

シンジ「は…?」

マリ「その瞬間、私は真実の愛に目覚めたんだにゃ…!そう、もう昔の恋なんて振りかえらないのよん!!」

マリ「えいっ、もう眼鏡外しちゃえ!マリちゃん覚醒ー!!
…駄目だ、なんにも見えやしない…やっぱり戻そ」スチャ

マリ「…それにキミ、よく似てるしねっ♪」

シンジ「……」ポカーン

シンジ(……何から聞こう)

マリ「あ、こんなことしてる場合じゃなかった。…わんこくん、ご飯出来てるから早く食べよ!」

シンジ「へっ…?」

マリ「聞きたいことがあるのは分かるけど、まずは腹ごしらえ!頑張っていっぱい作っちゃったから、たーくさん食べるんだぞぉ!」

マリ「ほらっ、リビングへれっつらゴー!!」グイグイ

シンジ「ちょ、ちょっと…」ズルズル

マリ「ほらほら遠慮しないで座って!」グイグイ

シンジ「…ミサトさんの家なんだけど…」ストン

マリ「そうだけどさ!…ちょっと待っててね」






マリ「はーいわんこくん!カレー!!」ババーン

シンジ(朝からカレー……じゃなくて!それ以前に全部おかしい!)

シンジ「…あの、ま…」

マリ「マリでいいよん。ってゆーか先に食べて食べて!質問には食べなから答えてあげるからさ」

シンジ「…じゃ、じゃあいただきます…」カチャ

シンジ(……美味しい)モグモグ

マリ「どう?美味しい?美味しいかにゃ?」

シンジ「…う、うん」モグモグ

マリ「っしゃあ!!」グッ

マリ「…あ、もう聞きたいことあるなら聞いていいぞ?わんこくん」

シンジ「えっと、まず…何でここにいるんですか」

マリ「堅苦しいから敬語はなしっ!…んで、その質問の答えは…愛かな」

シンジ「……」

シンジ「…次に…アスカはどこなの?」

マリ「ん、姫ならネルフに呼び出されたみたいだぞ?ほら、そこに置き手紙があるよ」

シンジ「本当だ…」ペラッ




なんかネルフに呼び出されたから行ってくるわ。午後には戻ってくるから大人しくしてなさいよ!

あと、冷蔵庫のプリン勝手に食べたら許さないからね!!


アスカ



シンジ「…食べないよ」

シンジ「……」モグモグ

マリ「質問は終わりかい?わんこくん」

シンジ「…何でご飯作ってくれてるの?」

マリ「んもぅそこ聞いちゃう?私がキミにご飯つくるのなんて当たり前じゃん!」ニャハー

シンジ(……何一つ分からない)

シンジ「…どうして朝からカレーなの?」

マリ「えっとね、味の濃いのにしようと思ってさ!そうすればいろいろ気にならないっしょ?」

シンジ「?」

シンジ「…ごちそうさま」

マリ「はい!じゃあ私は洗っとくからわんこくんはパジャマ着替えてきなよー」

ジャバー

マリ「あっ、いた…」ズキッ

シンジ「ど、どうしたの?」

マリ「傷がしみて…あ、その…さっき切っちゃったんだにゃ。絆創膏貼ってたんだけど…」

マリ「まぁそんなことはどうでもいいのだよわんこくん!だから早く着替えて来なよ」

シンジ「なんで…」

マリ「今日はデートする予定じゃん!」

シンジ「えっ?」

………

シンジ(…すごい勢いで着替えさせられて、そのまま連れ出されてしまった)

マリ「タクシータクシー…あ、来た!へいタクシーぃ!!」バッ

マリ「止まったよわんこくん、早く乗ろ!」

シンジ「僕、お金持ってないんだけど…」

マリ「大丈夫大丈夫!私のおごりに決まってんじゃん!!」グイグイ

シンジ「ちょっと…」

同時刻 ネルフ


アスカ「…やっと着いたわ…ミサト、何の用よいきなり呼び出しといて」

ミサト「え?今日はとくに何もないわよ?」

アスカ「……?」

アスカ「ちょっと待ってよ、今朝いきなり電話で…」

ミサト「何のこと?」

アスカ「……」

アスカ(…じゃあ、誰が…?まぁいいわ、さっさと帰ってシンジに……、)

アスカ「…まさか!」ハッ

アスカ「……シンジ!!」タタッ

ミサト「アスカ、どうしたの!?」

カヲル「……」コソッ

カヲル(いきなりセカンドが来たから、無駄に顔を会わせたくないし隠れたんだけど…さっきの様子を見るに)

カヲル(……シンジくんに何かあったんだろうか)

カヲル(心配だ……)

カヲル(…探しに行こう。葛木三佐にはシンジくんとの接触を堅く禁じられているけれど…
かまうものか)

カヲル(……セカンドより早く、シンジくんを見つけないと)

…………



運転手「…着きました。お二人で7890円になります」

シンジ(高っ…どこまで来たんだろう)

マリ「はいはーい」ゴソゴソ

マリ「一万円札しかないや。はいっお釣りはいらないよん」

運転手「いえ、そう言うわけには…」

マリ「ありがたく貰っときなって!あ、そのかわりと言ったら何なんだけど、
ちょっとこっち来て」チョイチョイ

運転手「はい?」ズイッ

マリ「そうそう、もうちょい後ろ…っていうかこっちに身を乗り出して!」

マリ「…そりゃ!」バッ

バチィッ!!

運転手「ゔッ…!?」バタッ

シンジ「え?え…!?」

マリ「ちょちょ、わんこくんってばそんなうろたえなくても…ただのスタンガンだよ?」

シンジ「!?」

マリ「大丈夫!ちょっくら改造してるからメチャクチャ痛いけど気を失うだけだよん♪」

運転手「……」ピクピク

マリ「よっこいしょーいちっ!…うわ、この人重いにゃあ」ズッ

シンジ「な、なんでそんなこと…」ガタガタ

マリ「ん?ああ…わんこくんを勝手に連れ出してるわけだからネルフの人とかが探しにくるかもしれないじゃん?
そうなったら、目撃者ってことでこのおじさんが何か喋るかも…」

マリ「そうなったら、キミとの楽しい時間が減っちゃうじゃん。そんなの嫌だもーん」

マリ「…はいおじさん、起きる前にお注射よん!」スッ

シンジ「だ、駄目だ!!」バッ

マリ「何だいわんこくん、とめてくれるの?やっさしー!」

マリ「でもね、大丈夫だよわんこくん…
私は誇り高き、人類の未来を託されたエヴァンゲリオンのパイロットなんだから!民間人の命の1つや2つ、もみ消してくれるって!」

シンジ「…っ」ゾッ

マリ「……なーんちゃってね、嘘嘘!そこまでしないよ。これはただの水に溶かした向精神剤とアルコールだから死にゃしないって!それ!」プチュッ

シンジ「あ…!!」

マリ「48時間くらいハイになって有るもの無いもの見えて、その間と前後の記憶がブッ飛ぶだけだから!
一回の使用じゃ後遺症もろくにないよ」ちゅーっ…

シンジ「……」ガタガタ

マリ「…よし、終わりっ!」

マリ「さ、わんこくん早く降りよ!」グイグイ

シンジ「待って、救急車呼ばないと…!」

マリ「なーに言ってんの?それじゃ本末転倒じゃん!ほらっおじさんが起きる前に行くよん!」グイッ

シンジ「わっ…」

シンジ「…っ…どこ、ここ…」

マリ「遊園地だよ。デートと言えば遊園地だよねぇ」フフッ

マリ「出来るだけ近場にしたつもりだったけど…思ったより遠かったみたい」

シンジ「……」








レイ「……」ジーッ

マリ「わんこくんどれ乗る?フリーフォールは?」ワクワク

シンジ「あ、あの…もう帰らなきゃ…」ビクビク

マリ「来たばっかりなのに…何で?」むぅっ

シンジ「あ、アスカにばれたら…」

マリ「姫ねぇ…」ウーン

マリ「わんこくんはさぁ…優しいのはいいことだけど、自分を犠牲にし過ぎてるんだよ」

シンジ「?」

マリ「…たまには姫のことも何もかもぜーんぶ忘れてさ、ぱーっと遊んで羽を広げなよってこと」

マリ「心配しなくても、姫には私から適当に言っとくからさっ!」

シンジ「…じゃあマリさん、もしかして…今日って、僕のために…?」

マリ「ま、それも兼ねてるかな?」フフッ

シンジ(でも、あんなことしてまで…)ブルブル

マリ「…わんこくん、私が恐いの?」ニヤーッ

シンジ「え、あ…」ブルブル

マリ「……大丈夫だよ、わんこくんには絶っっ対に痛いことなんかしないから」ニコッ

マリ「…ほら、せっかく来たんだから何か乗ろーよ!」

…………


シンジ「ぅぇ…っ」

マリ「大丈夫…?ごめん、そこまで絶叫系苦手だと思わなかった…」

シンジ「…エヴァに乗るから揺れとか高いところは平気だと思ったんだけど…えぷっ…」

マリ「…別に落下系は慣れてないもんねぇ…ほい、エチケット袋」

シンジ「あ、ありがとう…」

シンジ(って、どうしてお礼言ってるんだよ…無理矢理乗せられたのに。
というより、こんなことしてる場合じゃ…)








レイ「……」ジーッ

レイ「……」パシャパシャ

レイ(…今日も、いつものように碇くんを見ていたらあの人が連れ出したから…ついてきてみたけど)

レイ(……碇くん、困ってる…?助けたほうがいいのかしら)

レイ(…でも、私が助けたって…)

レイ(……もちろん、あの人が碇くんを独り占めしてるのは…いい気分じゃないけれど)

レイ(…私が助けても、…何をしても……きっと私は、碇くんの一番にはなれない)

レイ(……それは、とても悲しいけれど…別に、それでもいいの。…でも、どうせ側にいられないなら…せめて…
…ずっと碇くんを見ていたい。いろんな碇くんを知りたい。だから、今は…)

レイ「…吐きそうな碇くん、かわいい」ポカポカ

マリ「じゃあ、次はソフトなの行こっか」

シンジ「え…まだ気分が…」

マリ「大丈夫大丈夫!お化け屋敷なら気分悪くならないっしょ?」グイグイ

シンジ「そ、それなら…」

マリ「よっしゃっ!お化け屋敷はこっち…あ、その前にこれ捨てていこっか」ポイッ





レイ「…エチケット袋…」

レイ(…回収しなきゃ)

ガサッ

レイ「……」ガシッ

レイ(温かい…碇くんのにおいがする…)ポカポカ

……

シンジ「……大丈夫…?」

マリ「う、うん…思ったより…ちょっと…」プルプル

マリ(正直怖かった…私の予定では、
『うわああああ!!マリさん!』ギュッ
『ははは!わんこくんは怖がりだなぁ♪よしよし』
…ってなるはずだったんだけど…)

マリ「わんこくん、案外頼りになるじゃん…カワイイ顔して肝座ってんね」

シンジ「はぁ…そうかな」

マリ(……やっぱり、あの人の子だなぁ…)クスッ

マリ「…さて、怖がってたらお腹空いたかも。わんこくん、もうご飯食べれそう?」

シンジ「う、うん…」

マリ「よかったぁ!実はお昼も作ってきちゃったから、あそこのベンチに座って食べよーよ」

シンジ「……」ストン

マリ「…はい!サンドイッチー!」ババーン!

マリ「ほら、食べて食べて!」

シンジ「い、いただきます」パクッ

シンジ(やっぱり美味しい…)モグモグ

シンジ「……ん?」

マリ「?」

マリ「ど…どうしたの?」

シンジ「いや、なんかこの…ケチャップだけ、鉄っぽい味がするような?」モグモグ

マリ「げげっ!?マジ!?」

マリ(あちゃー、混ぜすぎたか)

マリ「そ…そんなときにはマヨネーズ!ふん!」ぶぢゅっ

シンジ「うわ!」ビクッ

シンジ「…サンドイッチ、マヨネーズまみれになっちゃったんだけど…」

マリ「もうそれで雑味はナッシング!」ウインクー

マリ(マヨネーズ別に持ってきといてよかった…)

マリ(ぬかった…カレーはばれなかったのに)テヘ

シンジ「…?」モグモグ

シンジ(たしかに雑味はなくなった…というかマヨネーズの味しかしない…)モグモグ

マリ「……ねぇねぇわんこくん」ツンツン

シンジ「…何…?」

マリ「…楽しい?」

シンジ「…!」

マリ「ねぇってば」

シンジ「……」

シンジ「……ちょっと…だけ」

シンジ(ものすごくいろいろと言いたいことはあるけど…こんなに遊んだの、久しぶりかもしれない。
全く楽しくないと言うと…嘘になる。
…正直、マリさんは恐いけど)

マリ「本当?わんこくんがそう言ってくれると、なんかすっごく嬉しいにゃ」ニコッ

マリ「…あ、でもそこに関しては大丈夫!少なくとも、遊園地の人には口封じとかしないから!」

シンジ「え!?」ビクッ

マリ「まーた誰かに痛いことしないか心配だから、私が恐いんでしょー?そう思ったでしょ?」

シンジ「な、なんでそれが…」

マリ「あはは、わんこくんの考えてることなら何でも分かるよ!私とわんこくんの仲じゃん!」

シンジ「……」プルプル

マリ「私は別に怒ってないよ?そんな顔しないでって」

マリ「まぁ正直言うと…遊園地の人もなんとかしたいんだけど。でもちょっと人数多すぎるよねー!」

マリ「……それよりほら、次の乗ろっ!わんこくんもご飯食べ終わったし」スッ

マリ「あっ……」フラッ

シンジ「ちょっと、マリさん…!」バッ

ガシッ

シンジ「よかった、間に合った…」ホッ

マリ「え、ちょ…わんこくん…!」わたわた

マリ「わ、わんこくん…だめっ!」バッ

シンジ「あ、ごめんなさい…倒れそうだったから…」

マリ「……ご、ごめん!私ったらつい、なんか…びっくりしちゃって!」

マリ「ほんっとごめん!助けてくれて嬉しかったのにぃ~許してにゃっ!」ぎゅうう

シンジ「うわっ…!///」

マリ(倒れそうなのを助けるためとはいえ、わんこくんからスキンシップしてくれるなんて)

マリ(とまどっちゃった…らしくないなぁ、私)フフッ

マリ(それにしても、すごい立ち眩みだった……ちょっと血を絞りすぎたかにゃ?)

マリ「ねぇねぇっ、次は観覧車に乗ろ!」

シンジ「な、なんで…」

マリ「ここの観覧車有名なんだよー?わんこくん知らないの?」

マリ「まぁいいや、早くいこ!」











カヲル「……」キョロキョロ

カヲル(シンジくんのスマホに入れておいたGPSアプリの発信はこのあたりからのはず……もうすこし細かく見られればよかったのに)

カヲル(遊園地なんて、一体何をしに……来たいなら僕が連れてきてあげたのに)

カヲル(…いや、セカンドの様子を見るにシンジくんに何かがあったと考えるべきか…
もしかして、誰かに無理矢理連れてこられた…!?)

カヲル「…早く見つけないと」

…………


マリ「わぁ見てみてわんこくん!けっこう高くない!?」

シンジ「そうかなぁ…エヴァも高いし…あんまり」

マリ「もう、それとこれとは違うじゃん!」

マリ「見てみなよ、けっこう遠くまで見えるよ。…夕焼け、綺麗だねー」

シンジ「……うん」

マリ「ところでさぁ…わんこくん、おっぱいって好き?」

シンジ「うん……え!?」ガタッ

マリ「やっぱり好きなんだぁ~!男の子だもんね!」ぎゅっ

シンジ「ちがっ、今のは相づちうってただけで…っ……そ、そんなに押し付けたら…///」

マリ「ん?押し付けたらどうなっちゃうのかにゃー?」ニヤニヤ

シンジ「だいたい、こんなとこで……っ」

マリ「こんなところだからじゃん、二人っきりだよ?」

マリ「ねっ、今なら誰も見てないよ?」

シンジ「見てないって……」

マリ「…好きなこと、していいよ」

シンジ「え、……え!?」

マリ「やっぱり、好きな人とはそういうことしたいじゃん」ニコッ

シンジ「あ、その…///」

マリ「ねぇ、何して欲しい?わんこくんのしてほしいことなら、何だってしてあげるよ」

マリ「…ほらわんこくん、どういうのが好きか…教えてよ」プチプチ

シンジ「だっ、駄目だよそんな…!///」

マリ「そんなこと言っちゃって…満更でもなさそうなのに」クスクス

マリ「……私と、イイコトしよ?」

シンジ「う…!」




ガタンッ


マリ「…ありゃ、いいところだったのに…観覧車終わっちゃったね」

シンジ(助かった…)ホッ

マリ「はぁ…しゃーない、降りよっか」

シンジ「うん……」

マリ「どうしたわんこくん、残念そうな顔してるぞー?」ニヤニヤ

シンジ「し、してないよ!」

カヲル(…人が多くて敵わないな…こんなことしてる場合じゃないのに)




アスカ「…っ!……あんた、こんなとこで何してんのよ!!」

カヲル「セカンド…!?」

アスカ「やっぱりあんただったのね…シンジを返しなさいよ!!」

カヲル(思ったより早い…)チッ

カヲル「君はそれしか言えないのか…どうやってここを探りあてたんだい」

アスカ「ちょっとネルフの力を借りただけよ……シンジをこんなところへ連れてきて、何する気なのよ!!」

カヲル「…僕が聞きたいね」

アスカ「はぁ…!?」

カヲル「……君に教える必要はない。失礼するよ」

アスカ「待ちなさいよ!」

アスカ(シンジを連れ出したのはこいつじゃない…?
じゃあ、こいつもシンジを探して……?)

アスカ(やっぱり、いずれにしても邪魔だわ……いっそ、こいつから先に…!)

アスカ「……あんたに言いたいことがあるの。ここじゃあ何だから、ちょっと顔貸しなさいよ」

カヲル「……」

カヲル(…人気のないところへ誘導して…その背中にかけた長細い袋の中身で、何かする気だね…バレバレだよ。
まったく、オツムの足りないコだ)

カヲル(…でも、いい機会かもしれないな)

カヲル(恐らく、シンジくんにとって一番の障害はセカンドだ…ならばいっそ)

カヲル「……いいよ、行こうか」ニコッ

アスカ「……」

アスカ(絶対に殺してやる)

カヲル「……」スタスタ

アスカ「……」スタスタ

カヲル「…ここいらでいいんじゃないかい?」

アスカ「…そうね」ピタッ

カヲル「で、僕に言いたいことって何だい?……まぁ、内容は分かっているし、それに頷く気もないけれど…
聞くだけ聞いてあげるよ」

アスカ「……」チッ

アスカ「分かってんなら話は早いわよ。……もうシンジに関わらないで」

カヲル「……君って本当につまらないリリンだよね、案の定じゃないか」フッ

アスカ「……」イライラ

カヲル「……君も分かっているだろうけど…
答えはNOだ。もちろんね」

カヲル「シンジくんは、君のものじゃない」

アスカ「…だと思った……話し合いで解決しようとしたあたしがバカだったわね……!!」

ガンッ!!

カヲル「!」バッ

アスカ「……邪魔するなら、死んで」ギロッ

カヲル(金属バット……背中に背負っていたのはそれか!)

カヲル「……その言葉、そっくりそのまま御返しするよ」

カヲル「…僕はね、シンジくんの周りのリリンは全てだけれど…中でも君がいっとう気に入らないんだよ」

カヲル「君は、シンジくんが好きなんじゃない。シンジくんと一緒にいたいんじゃない。
シンジくんを我が儘と暴力で支配して手元に置いておきたいだけなんだよ」

カヲル「……そんなものは愛じゃない、君にシンジくんは渡せない」

アスカ「渡せない…?まるでシンジがあんたのものみたいな言い様ね」ハッ

アスカ「……たしかにね、あたしはシンジを支配したいわ。頭のてっぺんから爪先まで…
そうでもしないと、あたしなんかの側にいてくれないもの…」

アスカ「……でもっ、これが愛じゃなくても、あたしはシンジが好きなの…!」

アスカ「シンジが好き……好き、大好きッ!!
それで十分なはずだわ!!」

カヲル「……」

アスカ「…後あんた、あたしが一番気に入らないとか言ったわね」

アスカ「……奇遇だわ、あたしもあんたがキライ。
誰より何より一番キライ!!」

アスカ「あんたの、『シンジのためです』っていうその上から目線の態度が気に入らないのよ!」

カヲル「なに…?」

アスカ「シンジのためなんかじゃないわ、あんたがやってるのは全部自分のため」

カヲル「……違う、僕はシンジくんの嫌がることなんて…」

アスカ「…そうよね、クスリで頭動かなくしちゃえば嫌も何もないものね!!」

カヲル「どうしてそれを…ッ!!」

アスカ「…聞いたわよ、ミサトから」

カヲル(ぬかったか…!)ギリッ

アスカ「…あんただって、シンジを自分のものにしたいだけよ。
シンジの気持ちなんて何一つ考えちゃいないわ…!」

カヲル「……」チッ

カヲル「…ああそうさ、シンジくんが欲しいんだよ。彼の何から何までね……!
それの…それの、何がいけないんだ」ハッ

カヲル「なのに、どうしたって彼は僕のものにならない…。
気持ちは、心までは手に入らない」

アスカ「……」

カヲル「…だったらそんなもの最初からなければいいんだ、
例え空っぽになった人形のようでも、シンジくんが僕のものになれば満足なんだから…!」

カヲル「…そのためには君が邪魔なんだよ、セカンド…
だから、君が消えてよ」

カヲル「…と、言いたいところだけどね…
シンジくんは、まだ君を嫌いではないようだから。殺したりしたら、悲しむかもしれない」

アスカ「……何よ、だったら大人しくあたしに殺されてくれるわけ?」フン

カヲル「まさか!!」ハッ

カヲル「殺しはしない、でももうシンジくんに会えないようにしてあげるよ」

アスカ「はぁ…?」

カヲル「………君のその生意気な顔をぐちゃぐちゃにしても、シンジくんはまだ君に優しくしてくれるのかな」

アスカ「…!」

カヲル「それとも、顔より…内側の、もっと大事なところがいいかな?」フフッ

アスカ「こいつ…黙って聞いてりゃ!!」

カヲル「大丈夫だよ。シンジくんにとって君がどうでもよくなったら…そのときは改めて消してあげる」ギロッ

シンジ「暗くなってきた…もう本当に帰らなきゃ」

マリ「えぇー」ムスッ

シンジ「だ、だってもう…」

マリ「…わかったわかった」ハァ

マリ「じゃ、最後にあそこ行こ?わんこくん」

シンジ「あそこって…何もないじゃないか、あんな暗がり…」

マリ「……何もないから行くんじゃん。
…あそこでさ、さっきの続き…しよ?」ニヤ

シンジ「え!?///」

マリ「ほらほら、早くっ!」 グイグイ

シンジ「ちょ、ちょっと……!」

マリ「ほら、遠慮しないで…って、あれ!?姫!?」

シンジ「えっ…!?」ビクッ









アスカ「……シンジ……!!」ハッ

カヲル「ああ、シンジくんじゃないか…!」ニコッ

マリ(さっすが…こんな早いとは)

カヲル「シンジくん、ここで…その人と何をしていたんだい?」ニコ

シンジ「えっと、その…」

カヲル「…帰ってからでもかまわないよ。さぁ帰ろう、シンジくん」ニコニコ

シンジ「……カヲルくん、どうやってここを…?」

カヲル「……」ニコニコ

シンジ「……」





アスカ「…シンジ、どういうことよ」

シンジ「あ、アスカ…」ビクッ

アスカ「なんでコネメガネと一緒にいるの…?二人で逃避行ってわけ!?
あたしはもうどうでもいいの!?ねぇ!!」

シンジ「ちが、違うよ…!」

マリ「ちょっと姫…!わんこくんを責めないでよ、私が連れ出したんだよ」

アスカ「…どういうつもり?」

マリ「いやぁ、愛しのわんこくんとデートしようと思ってねぇ?」

シンジ「そ、それも違…」

アスカ「あんた達、いつからそんな仲なってたのよ…!!」ギリッ

シンジ「ひっ…」ビクッ

アスカ「……なんでよ、どうしてよ…!」ジワッ

カヲル「……」チッ

アスカ「なんでっ、どいつもこいつもあたしの邪魔ばっかするの…!?」ボロボロ

マリ「……」

アスカ「……殺してやる…」

アスカ「あたしからシンジを奪おうとする奴らなんて死ねばいいのよ、死ね死ね!死ね!!みんな死ね!!!」ガンッ

マリ「うわぁ!?」ヒョイッ

アスカ「………コネメガネも…フィフスも……ここで死んで。もう邪魔しないでよ」ポロポロ

マリ「…姫とだけは争いたくなかったんだけどにゃあ」ハァ

マリ「仕方ないか、恋に障害は付き物だよね」

シンジ「アスカもマリさんも、何言ってるんだよ…!?か、カヲルくんも何とか…」

カヲル「……シンジくん」ニコニコ

カヲル「…少し待っててね、すぐに二人とも片付けるから」ニコッ

シンジ「え…」

アスカ「こっちのセリフよ…!…シンジ、そこにいなさいよ…」

マリ「うわぁ、こっわいにゃあ」










シンジ(どうしよう、どうすれば…!!)オロオロ

レイ「……碇くん」ヒョコッ

シンジ「あ、綾な…!? むぐっ、!」

レイ「静かに。ここは危ないわ……こっち」グイグイ

レイ「……」グイグイ

シンジ「ちょ、ちょっと綾波!放してよ…!」

レイ「…ごめんなさい」パッ

レイ「でももう、ここまでくれば大丈夫。巻き込まれたりしないわ」

シンジ「な、何言ってるんだよ、止めにいかないと…!!」

レイ「駄目、行っては駄目」ガシッ

レイ「……どうして行こうとするの。みんな、碇くんの邪魔になっているんじゃないの…?」

シンジ「……」

シンジ「…みんな、僕を大事にしてくれる。好きだって言ってくれる…だから、僕は……」

レイ「そう。……誰でもいいのね」

シンジ「……?」

レイ「じゃあ、私でも」スルッ

シンジ「うわぁっ、あ、綾波!?何で脱いで…!!」

レイ「……こういうの、好きなんでしょう?さっき、観覧車で嬉しそうにしてるの…見たもの」スルスル

シンジ「だ、駄目だよこんな…!」カァッ

レイ「…いいえ、いいの。だって碇くんになら何だってしてあげられる。碇くんの為なら何だってできるもの…」ギュッ

シンジ「あ、綾波……///」

レイ「……何して欲しい?やり方がわからないの。…教えて、碇くん」


ズルズル……


レイ「?」

レイ(何か、引きずるような……足音?)










アスカ「…………何してるのよ、シンジ」ゼェゼェ

レイ「!」

シンジ「アスカ…!!」

アスカ「…そいつと……何してるのよ」ヨロヨロ

アスカ「何してるのって、聞いてんのよ…!!」ハァハァ

シンジ「ち、違うんだアスカ…」ブルブル

レイ「……」

アスカ「……ファースト、あんたも死にたいみたいね」

アスカ「っ、げほ……ッ!」ボタボタ

シンジ「アスカ、血が…!」

シンジ(下腹からも血が滲んでる…一体何が)

アスカ「……あいつらに…ちょっとやられてね、まぁほとんどフィフスに……なんだけど。
っふふ。でも、二人とも動かなくしてやったわ…!あはは!」

シンジ「そんな…!」

アスカ「これでファーストを消せば、もう邪魔物はいないわ!シンジ!」

シンジ「どうしてそこまでするの…?」

アスカ「……分からない?」

アスカ「……シンジが、大好きだからよ」ニコ

シンジ「え…」

アスカ「だからあたしとシンジの邪魔する奴なんて、消す。殺す…
次はあんたよ、ファースト…!」バッ

アスカ「…!?」ズキッ

アスカ「うっ、ぁ゙……」ドサッ

シンジ「アスカ?アスカ!!」

レイ「……もう、限界だったのね。酷い怪我だもの」


レイ「……かわいそう。バット、借りるわ」スッ

シンジ「あ、綾波…何を……」

レイ「……弐号機の人、楽にしてあげるの」

レイ「碇くんに迷惑ばかりかけていたし…丁度いい」

シンジ「ま、待って!そんなの絶対に駄目だ!」

レイ「……」

シンジ「だから、バットを置いて…」

レイ「…………わかった。碇くんがそうしたいなら…」パッ

シンジ「救急車、呼ばなきゃ…!」




………



リツコ「酷い有り様ね」

ミサト「……」

リツコ「マリは両大腿骨を骨折、腕……橈骨にヒビが入ってるわ。
カヲルくんは特に酷いわね。脳挫傷の上、胴体の骨が無茶苦茶…バットでフルスイングでもされたのかしら」

リツコ「アスカは肋骨が5本折れて2本にヒビ。肺にも傷がついていたわ。あと……」

ミサト「あと?」

リツコ「……なんでもないわ。
……貴女の監督不行き届きよ、ミサト」

ミサト「……そうね、返す言葉もないわ。シンジくんを巡ってこんなことになるなんて…」

リツコ「幸い、奇跡的にも全員どうにかなりそうよ。これからは完全に隔離するしかないわね」

ミサト「……ええ」


ミサト「……そういうことだから、これからは皆とは会えないわ。有事の際にエヴァを同時発進させることはあっても、パイロット同士が直接、接触することはないわ。
生活もまた私と二人。……いいわね」

シンジ「……はい」

ミサト「…ごめんなさい、私の責任だわ」

シンジ「…………」

シンジ「いいえ、僕なら大丈夫です」ニコ

ミサト(明らかに気を使わせてしまってるわ。……保護者失格ね、私…)


………


シンジ「ミサトさん、お帰りなさい」

ミサト「あら?シンジくん、今日は遅くなるから先に夕飯食べといてって言ったのに」

シンジ「ミサトさんと食べたかったんです。ミサトさんにも出来たてのご飯食べてもらいたかったし…
もうすぐ出来ますよ」ニコ

ミサト「ほんと?じゃ、ありがたく頂くわ~!」フフッ


………


ミサト「ん゛~~」

ミサト(今日休みだからって、昨晩は飲みすぎたかしら……身体が怠い、起きたくないわ…)

ミサト(でもゴミを出さなきゃ…)

シンジ「ミサトさん、まだ寝ててもいいですよ。ゴミ、出しときましたから」

ミサト「え、今日は私の当番じゃなかったっけ?」


シンジ「いいんです、ミサトさん忙しいんだから家事くらい僕がやりますよ。
せっかく休みなんだからゆっくりしてください」

ミサト「悪いわねぇ…うーん…」

ミサト「じゃあ、あと30分……」ゴロン

シンジ「はい」ニコ

シンジ(頑張らなきゃ 頑張ってミサトさんに側にいてもらわなきゃ)

シンジ(僕にはもう、ミサトさんしかいないんだから…)


…………



ミサト「ただいま~…ってあれ?シンジくん…?」

シンジ「お帰りなさい、ミサトさんっ
ご飯出来てますよ」

ミサト(もう深夜の2時なのに…)

ミサト「……シンジくん、待っててくれるのは嬉しいんだけど、貴方も学校があるんだし遅くなる日は一人で…」

シンジ「そんな……」

シンジ「……もう僕は、いらないんですか…?もしかして、迷惑でした?」

ミサト「そ、そんなこと一言も…」

シンジ「……そっか、そうですよね……
今日はミサトさん、遅くなるから軽めにしたんですよ。今運びますね」ニコ

ミサト「……」



………


ミサト「ただいま…」

ミサト(加持のやつ、またしらばっくれて……絶対に何か重要なことを知っているわ、聞き出さなくちゃ)

シンジ「お帰りなさい、ミサトさん」ニコニコ

シンジ「……」ふぁ

ミサト「眠いでしょ?待ってて貰って悪いけど、ご飯食べとくからシンジくんはもう寝なさい」

ミサト(育ち盛りに、こんなに毎日夜更かしさせちゃいけないわ)


シンジ「あっ違、今のは……えっと、大丈夫です」バッ

シンジ「……あの…ミサトさん、最近忙しいんですか?」

ミサト「ええ、仕事が立て込んでて…」ハァ

シンジ「……」

シンジ「…そうですか」

シンジ(…加持さんの香水の匂いがする)

シンジ「……本当に仕事なんですか」

ミサト「?……そうよ?」

シンジ「…………」

シンジ(もしかしたら、カヲルくんの言う通り……ミサトさんは、僕なんてどうでもいいのかもしれない
人類を守るための、替えがきく駒でしかないのかもしれない)

シンジ(……でも、それでもいいんだ)

シンジ(誰かに必要とされているなら、そこが僕の居場所。そこだけが…)

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