弟「姉さんの代わり?」(28)

姉「お願い!ねっ?」

弟「やだよ、ぼくその日友達と遊ぶもん」

姉「いいじゃない、あたしの代わりに衣装を着て、一晩本堂にこもっていればいいだけよ」

弟「でも、それって女の人じゃないとだめなんじゃあ…」

姉「大丈夫大丈夫、こんな小さな村の儀式だもの、ばれないわよ。大人たちもすぐに帰るわ」

弟「でも、やだよ…」

姉「お願い、どうしても駄目?」

弟「…」

弟「…仕方ないなぁ、怒られたら姉さんの所為だからね」

姉「やったぁ、ありがと!」

弟「ただこもっていればいいんでしょう」

姉「そう説明されたわ。これが衣装」

弟「…これ、ぼくが着るの?女の子の恰好しなきゃ駄目じゃないか…」

姉「一晩だけよ」

姉「それにあんたと私は双子、顔もそっくりだからばれないわよ、きっと」

弟「うーん…」

姉「じゃあ、明日の夜、神社に行って頂戴ね」

弟「…わかった」

次の日

弟「はぁ…」

弟(姉さんは母さんに嘘ついて行ったことにしたけど、ほんとに大丈夫かなぁ)

弟(…そろそろ行かなきゃ)

弟「姉さーん、姉さん、どこー?」

姉「ここよ」

弟「はぁ…、何もこんな奥まで行かなくても」

姉「静かにして。じゃ、服取り替えっこしましょう」

弟「…はぁい」

弟「ねぇ、着物の着方ってこうでいいのかな」

姉「うん、ばっちり。きっとばれないわ」

弟「でも、髪の毛…」

姉「被り物をするから大丈夫よ。あんたの帽子借りるわね」

弟「いいよ」

姉「ふふ、似合ってるわよ」

弟「褒められても嬉しくないよ」

姉「声もそっくりだから、きっと喋っても大丈夫。じゃあ、」

姉・弟「明日の朝、鳥居の前で」

姉「…ふふ」

弟「ほんとに大丈夫かなぁ…」

姉「心配性ねー」

村人「あ、来た来た」

弟「…」

村人「待ってたよ。さ、本堂に入って」

村人「明日の朝まで、本堂から出てはいけないよ。いいね?」

弟「…はい」

弟(よかった、ばれてないみたいだ…)

弟「…」

弟(…静かだ…)

弟(だ、駄目だ、今更怖くなってきた…)

弟(今は確か、8時くらいだった気がする…)

弟(怖い…早く朝になれ…)


「お前か?」


弟「!?っだ、だれ…」

「贄はお前か」


弟「…だ、誰ですか、どこから…」


「ここだ」


弟「わっ…」

「…ふむ」


弟(若い男の人…?)


弟「あ、あの」



「男ではないか」


弟「え」

「何故男がここに居る。これでは儀式が…」


「…まぁいい」


弟「あ、あの、あなた誰なんですか?それに儀式って…」



「細かいことはいい、私の命令に従っていればよいだけだ」

弟「あの、話がよく…」


「何も知らずにここへ来たのか」


弟「…姉さんの、代わりに」



「ほう。私を騙そうとでもしたのか」


弟「ごっ、ごめんなさい、すいません…」




「まあよい。儀式を始めるか」

弟「儀式って…」



「私の子を産むのだ」


弟「…は」



「大丈夫だ。…と」


「ふむ…こんなものでよいか」

弟「ばっ、ば、化けた…」


「どうだ?お前好みの女に化けたつもりだが」



弟「ぁ、う…」



「驚いて声も出ぬか。まあよい、こっちへ来い」

弟「だ、だって、ぅ、産むって、僕、男…」


「心配ない、来い」



弟「…は、い」




「いい子だ」

弟(何でこんなことになってんだろ…)



「脱がすぞ」


弟「え、や…」



「隠すな。出来ないだろう」

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