櫻子「大室家は永遠に不滅だ!」 (69)

櫻子「ただいまー」

撫子「ん、おかえり」ペラ

櫻子「およ、ねーちゃんだけ?」

撫子「花子は部屋で勉強してるよ」

櫻子「ふーん」


撫子「櫻子もさっさと宿題終わらしたら?」シュイッ

櫻子「何読んでんの? 別リリ?」


撫子「せっかく聞いてるんだから、せめて関心は持ってよ」

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撫子「つーか別リリは来週じゃん」

櫻子「そうだったっけ? じゃその雑誌なに?」

撫子「賃貸住宅情報誌」

櫻子「ち、ちん……?」

撫子「そこで切らないでよ……」


櫻子「だってねーちゃんが難しい言葉使うから!!」

撫子「そうだね……。櫻子には難しすぎたね」フッ

櫻子「バカにした顔すんな!!!」


撫子「はいはい。要するにアパート情報誌だよ」

櫻子「あーなんだアパートかー」アハハハ


櫻子「って、え!? アパート!? ねーちゃん一人暮らしすんの!?」


撫子「ん、ちょっと考えててねー」

櫻子「は!? 何で!?!?」

撫子「受かった大学、家から通うのちょっと手間でさ」

櫻子「ね、ねーちゃんのくせに生意気な……」グヌヌ

撫子「誰に向かって言ってんの」



櫻子「えーだってねーちゃん一人だと料理とかしなさそうじゃん」

撫子「アンタに言われたくない」


櫻子「朝も起きなさそうだし」

撫子「アンタに言われたくない」


櫻子「宿題もためそう」

撫子「アンタに言われたくない、って何回言わせんの」

櫻子「ちなみにどんな部屋に住むつもりなの?」ヒョイ

撫子「あ、ちょっと勝手に見ないでよ」

櫻子「別にいいじゃん……って、あれ?」

撫子「なに」


櫻子「この辺のページにのってる部屋、やたら広くない?」

撫子「え? あぁ……」


撫子(しまった……)

櫻子「この丸つけてる部屋とか、2LDKで家賃6万だよ? 払えんの?」

撫子(同棲考えてる、なんて口が裂けても言えないしなぁ。なんとか誤魔化さなきゃ)

撫子「えーっとね? この辺は休憩がてら見てただけで……」

櫻子「え、部屋探してるのに、休憩で他の部屋見んの……? おかしくね……?」

櫻子「つーか、住むつもりない部屋に丸とかつけないでしょ……」


撫子「え、えっと……私、部屋の情報見るの、好きなんだよね……」

撫子「家賃のこととか考えずにこんな部屋に住みたいなーって物件に丸つけるの、結構楽しいんだ……」


撫子(我ながら苦しい……)


櫻子「ふーん」

撫子「……」ドキドキ


櫻子「ねーちゃん変わってんね」

撫子(櫻子がバカで助かった……)ホッ


櫻子「てっきり私も連れてってくれるのかと」

撫子(ここまでバカなのは予想外だけど……)ハァ

撫子「さて、じゃ私そろそろ晩御飯の買い出し行ってくるから」

櫻子「うんいってらっしゃ……って、あああああああ!!!!!!!!!!!!」ガタタァッ


撫子「!?」ビクッ

櫻子「そうじゃん……」

撫子「な、なに……?」


撫子(やっぱりバレた……?)



櫻子「ねーちゃんが一人暮らししたら晩御飯の当番早く回ってくるじゃん!やっぱり反対反対ー!!!」ジタバタ

撫子「……ったく、じゃあ行ってくるから」


ガチャッ


櫻子「反対反対反対反対~!!!!!」バッタンバッタンビヨンビヨーン

櫻子「反対はんた……あれ? ねーちゃん???」


櫻子「くそ……。いつの間にか逃げやがったな」ハァハァ



ガチャチャッ


花子「……櫻子、一人で汗だくになって何してるし?」

櫻子「お、花子ちょうどいいところに! 今ねーちゃんへの情熱を発散させてたところなんだよ!」


花子「……え?」サー

櫻子(ん? 何で花子ちょっと引いてんだ……?)


櫻子「とにかく一大事だし! こっちくるし!」

花子「マネすんなし!」



――少女説明中


花子「撫子お姉ちゃんが一人暮らし?」

櫻子「そー言ってた! 一人で勝手に決めちゃうなんて、ひどくない!?」


花子「……いや、お姉ちゃんもそういう時期だと思うし」

櫻子「ありゃ、花子は一人暮らし賛成派?」

花子「賛成、ではないけど……。お姉ちゃんの人生はお姉ちゃんが決めるべきだし」

花子「花子たちがひきとめちゃいけないと思うし」


櫻子「えぇー! 私は絶対反対だぞ!!」

花子「逆に櫻子はなんで反対してるし?」


櫻子「そりゃーもちろん、晩御飯の当番が早く回ってくるからに決まってんじゃん!」


花子「……ハァ」

櫻子「あー! 花子まで私をバカにするー!」

花子「実際バカなんだからしかたないし」


櫻子「なんだとー! ぬおー! だれがなんと言おうと、私は反対だしー!! 当番回ってくるのイヤだしー!!!」ジタバタ

花子「……もうしらんし」


ガッチャー


櫻子「反対だし反対だしー!!!」ズドンズドンペターンペターン

櫻子「……」ゴウンゴウンゴウンゴウン


櫻子「つ、つかれた……」ゼェハァゼェハァ

櫻子「ちくしょう、どうすればいいんだ……」

櫻子「今でさえメニューを考えるのには苦労してるのに……」

櫻子「何かいい方法は……」


櫻子「……そうだ!」ピコ-ン

櫻子「向日葵を当番に組み込めばいいんじゃん!」

櫻子「へへっ、わたし冴えてる!」

櫻子「よし、そうと決まれば、さっそく向日葵に話をつけに……」


撫子「バカなこと言ってないの」ベシッ

櫻子「あいたっ」

櫻子「ねーちゃん!? どうしてここに!?」

撫子「買い物から帰ってきたんだけど」

櫻子「お、おかえり……」


撫子「……何でアンタ汗だくなの?」

櫻子「え? んーと、花子への情熱を発散させてたから……かな?」


撫子「……は?」スー

櫻子(あれ? ねーちゃんも引いてる……?)


撫子「……ひ、人の好みにとやかく言うつもりはないけど、せめて見てないところで、お願い」ゲンナリ

櫻子(なぜだ……?)

撫子「それよりアンタまだ当番のこと言ってんの?」

櫻子「だって……」

撫子「だってじゃないよ」



撫子「……ねぇ櫻子、アンタもいい加減しっかりしなよ」


櫻子「は!? 十分しっかりしてるじゃん!」

撫子「どの口が言うよ。この前だってカレー焦がしたでしょ」

櫻子「う、うぐぐ……。料理はまだ修行中で……」

撫子「何がうぐぐ、だ。その言い訳はもう聞き飽きたよ」


櫻子「……」

撫子「まぁそれは別にいいんだよ。失敗は誰にでもあるし、私も別にできないことを責めようってわけじゃないの」

櫻子「……」


撫子「櫻子の場合はできなかったことはそのままほったらかしたり、私やひま子に丸投げしてばっかでしょ」

櫻子「……」


撫子「そういうだらしないところを責めてるの。今のうちに直しておかないと、大人になってから苦労するよ?」

櫻子「……」

撫子「それにうちはお父さんもお母さんも忙しくてなかなか家にいないでしょ?」



撫子「もし私が出て行ったら、こうやって叱ってくれる人だって……」



櫻子「ッ!」


櫻子「うるせー! ねーちゃんのバーカ!! 絶壁!!!」ダッ

撫子「あ、ちょ、こら櫻子!!! こんな時間にどこいくの!!!」


撫子「つーか絶壁ってどういう意味だコラァ!!!!!」



ガチャァァァン


撫子「……ったく。逃げ足だけは早いんだから」

撫子「絶壁は櫻子もじゃん……」


花子「撫子お姉ちゃん?」

撫子「あ、ごめん花子。勉強の邪魔しちゃった?」

花子「べつに大丈夫だし……。それよりも……」

撫子「ん?」


花子「一人暮らしするって本当だし?」

撫子「あー……」


撫子(櫻子め……。花子にまで話したのか)ハァ

撫子(別に隠すつもりはないけどさ。こっちにだって話すタイミングってもんが……)

撫子(ま、聞かれた時が話すタイミングなのかもしれないけど)

撫子「うん、実は今悩んでるとこなんだ」

花子「……お姉ちゃんは何になやんでるんだし?」

撫子「んー? とりあえずお金の問題だよね」

撫子「学費はお母さんに出してもらうし、その上生活費に家賃まで……ってわけにもね」


花子「やっぱり撫子お姉ちゃんはえらいし」

撫子「そんなことないよ。これくらい普通」


花子「櫻子だったら、ぜったい全部だしてもらおうとするし」

撫子「それは否定しない」クスッ

花子「そうしたら、バイトとかするし……?」

撫子「そうなるかな。本当なら初期費用とかあるから、そろそろ始めなきゃマズい気もするんだけどね」

撫子(ま、多分お母さんに前借りすることになるだろうけど……)


花子「そっか……。ほかには?」

撫子「あとは……」


撫子(掃除洗濯食事の当番どうするかとか、一緒に住んでたら大学の人にバレるんじゃないかとか、喧嘩したらどうしようとか……)

撫子(お、抑えきかなくなったら、どうしようとか……)

撫子(って、花子にこんな話してどうすんの! バカか私は///)


花子(お姉ちゃん、顔赤くして一体何になやんでるんだし……)

撫子「コホン……。ま、そうだね……。でも一番気がかりなのは、アンタたちのことかな」

花子「……花子と櫻子?」

撫子「うん」


花子「櫻子はともかく……花子なら大丈夫だし」

撫子「ふふ、頼もしいね」


撫子「でもどっちかといえば、花子のほうが心配かな」


花子「なッ!? それは納得いかないし!」

撫子「なんで?」

花子「だって櫻子はワガママだし、晩御飯の当番とかサボるし、宿題もやらないし……」

花子「だらしなすぎると思うし! そんな櫻子より心配されるとか……ちょっとムカつくし」


撫子「……花子はさ」



キィ


櫻子(ねーちゃんそろそろご飯作り始めたかな……? 今のうちに部屋に逃げ込もう……)ソロソロ


撫子「確かにしっかりしてると思うよ。うん、ワガママも言わないし、お手伝いも積極的だし、宿題もちゃんとやるし」

撫子「櫻子に見習わせたいくらい」


櫻子(やばっ、見つかる!)


撫子「だけど……いや、だからかな」

撫子「しっかり誰かが見ててあげないとなーって思うわけ」


櫻子(……ん? 何話してんだ?)


花子「……よく分からないし」

撫子「ま、分かんなくたっていいよ」

撫子「けど、私がいなくなっちゃったら、花子を見てあげられる人がいなくなっちゃうでしょ?」

撫子「お父さんお母さんはあまり家にいないし、櫻子はあんなだしさ」

櫻子(花子の話……?)


花子「だったら櫻子がしっかりすれば、その悩みはなくなるし?」

櫻子(余計なお世話だ!!!)


撫子「ううん。それだけじゃダメ」

花子「じゃあどうしたらいいし……」

撫子「そうだね……」



撫子「花子がもっと甘え上手になってくれたら、安心できるかな」


花子「へ?」

櫻子(へ?)

花子「それ余計に心配になるんじゃ……」

撫子「そんなことないよ。櫻子に甘えられるようになったら安心」


花子「どういうことだし……」

櫻子(どういうことだし……)


撫子「……子供の頃なんて、誰だって甘えられる対象が必要なんだよ。」

撫子「私のときはお母さんがそうだったし、櫻子は……まぁ私になるのかな?」

撫子「だから花子も、もっと櫻子に甘えられるようになってほしいんだ」

花子「……さっきお姉ちゃん、櫻子じゃ花子をまかせられないって……」

撫子「それは、今の二人の関係じゃ不安だからってだけだよ」



撫子「私ね、櫻子って、花子が想像してるよりも……」

櫻子(ん?)


撫子「ずっとしっかりしたお姉ちゃんだと思うんだ」


花子「え?」

櫻子(……え?)

花子「いやいやいやいや、それこそありえないし」

櫻子(……なんだよ、さっきと言ってること逆じゃんか)


撫子「そう? 花子が熱出したときにおかゆ作ってくれたの誰だったっけ?」

花子「……櫻子」


撫子「花子がいつも着てる着ぐるみのパジャマ、誰からもらったの?」

花子「……櫻子」


撫子「こないだ賞に選ばれたポスター、アドバイスくれたのは?」

花子「……櫻子だし」


撫子「去年、おねしょした花子のシーツをこっそり一緒に洗ってくれたのは?」

花子「さくr……って、なんでお姉ちゃんがそのこと知ってるし!?!?」

撫子「なんかゴソゴソ騒がしかったから、こっそり後つけて見てた」


花子「……」

櫻子(……)

撫子「ま、櫻子は確かにバカかもしれないけど、ちゃんと花子のことを見ててくれてる」

撫子「櫻子は櫻子なりにお姉ちゃんやってるって、私は思うんだけどな」

撫子「……バカだけど」


櫻子(バカバカうっせーぞ!!!)

花子「……」


撫子「だからさ、もうちょっと、櫻子のこと頼ってみてもいいんじゃない?」

撫子「案外、櫻子もそれがきっかけで変わるかもよ?」


花子「……」

櫻子(……)


撫子「花子が甘えて、それで櫻子と一緒に成長していって……って感じになってくれれば、もう言うことはないよ」

撫子「私の悩みはそれでおしまい、かな」

花子「……わかったし」

櫻子(……わからないし)

撫子「さて、と。出てった櫻子連れ戻してくるかな。留守番おねがいできる?」

花子「うん」


櫻子(あっ、やばっ、こっちくる!? と、とりあえず向日葵んとこに避難だ!)ソロロロロ


撫子「ったく、どうせひま子んところなんだろうけど……」ブツブツ

花子「……あ、そうだお姉ちゃん。最後に一つだけ質問いいし?」

撫子「ん?」


花子「絶壁ってなんのことだし?」

撫子「……」


撫子「……自分の胸に聞いてみな」ギロッ


花子「!?」ビクッ

花子(あれ、おこらせたし……?)


ガチャン

花子(……)

花子(櫻子に甘える、かぁ)

花子(あんまりうまくできる自信がないし)

花子(でも撫子お姉ちゃんが一人暮らしできないのは、花子のせい……)

花子(花子のせいで、お姉ちゃんのしたいことができないなんて、そんなの……)

花子(そんなのイヤだし……)


花子(でもお姉ちゃんが出てっちゃうのも寂しいし……)

花子(……)


花子(もしかして花子がこのままなら、お姉ちゃんは出ていかないし……?)

花子(って、ダメだし! そんな考えはズルだし!)

花子(そりゃお姉ちゃんにはずっと家にいてほしい、けど……)


花子(そんなの花子のワガママだし……)



ガチャー


撫子「ただいまー」

花子(んん? 思ったより早かったし……)

櫻子「いたいいたい!耳ひっぱんなって!」

撫子「こうでもしないとアンタ帰ってこないでしょ」


櫻子「……」

撫子「……? 櫻子、やたら大人しいね? かえって気持ち悪いんだけど」

櫻子「は!? う、うるさーい! 言っとくけど、私はまだ一人暮らしなんて認めないかんなー! ストライク! そうだストライクしてやるー!」

撫子「ストライキね。それをいうなら」

櫻子「あ、そうだっけ……? ス、ストライキしてやるから覚えておけー!!!」

撫子「はいはい。でも、せめてごはん食べてからにしてね」

櫻子「あ、今日の晩御飯なに?」

撫子「唐翌揚げとポテトサラダに、あと中華スープ」

櫻子「やったー唐翌揚げだー!」


花子(アレに甘えられるかなぁ……)ハァ

撫子「あ、そうだ櫻子。ごはん食べ終わったらでいいんだけどさ」ニコッ

櫻子「んー? なにー?」ヘラヘラ


撫子「さっきの絶壁って発言について詳しく教えてもらいましょうか?」ゴゴゴゴゴ

櫻子「ヒィッ!? ねーちゃん顔こわい!!! かお!!!!!!」


花子(あ、やっぱ絶壁っておこられるワードなんだし……)



タスケテヒマワリイイィィィィ..ィィィ...ィィ.....ィ......



――数日後


花子「……よし」

コンコン


花子「櫻子ーいるしー?」

櫻子「むにゃむにゃ……あはは向日葵また[ピザ]ってやんの……」

花子「いつまで寝てるし!!!!」ペチーン

櫻子「すんません向日葵さんはとてもナイスバディでいらっしゃる!!!」


櫻子「はっ、夢!?」

花子「もうおひる前だし……」

櫻子「ふあー……。お、マジだ……」

花子「ほらもうさっさと着替えろし!」

櫻子「分かった分かった! てか花子がなんで私の部屋にいるんだよ!?」


花子「それは……」モジモジ

文字化け避けにメール欄にsaga入れたほうがいいよ

>>29
あれ、入ってない?


櫻子「……」


櫻子(まさか私の美麗すぎる寝顔を拝むためか……?)

花子「櫻子に相談が……って何だしそのキメ顔……」

櫻子「どうだい花子、これで満足かい?」キラキラ

花子(おかしかった頭がさらにおかしく……)


――少女着替中


櫻子「え、相談? 花子が? 私に?」

花子「そうだし」


櫻子「……ふーん」ニヤニヤ

花子「なにニヤついてるし……」

櫻子「いやぁ、花子様がわたくしに相談なんて珍しいと思いまして」ニヨニヨ

櫻子「ま、ねーちゃんに似て小生意気ではありますけど、一応妹ですし? 聞いてあげないこともありませんわよ?」ニヨニヨ

花子「」イラシッ


花子(くっ、この程度でイライラしてたらはじまんないし!! 落ち着くし……)


花子「お、お願いするし……。それに櫻子にしか相談できないことだし……」

櫻子「ん、そうなの?」

花子「そうだし……。だから真面目に聞いてほしいし……」


櫻子「な、何だよ仕方ないなー! そういうことならこの櫻子様が聞いてやろうじゃん? で、相談って?」ニコニコ


花子(あっ、なんか普通になったし……)

花子(……もしかして素直に話せばちゃんと会話になるし?)


櫻子「おーい花子ー? まだ?」

花子「あ、えっと……」



花子「……花子、お姉ちゃんを――」

sageじゃなくてsaga
sagaを入れてないと、この掲示板の機能で「唐揚げ」は「唐翌揚げ」
デブは[ピザ]になる

しえん



――数十分後


撫子「ただいまー」

撫子「ん? なんかいい匂い……?」スンスン


ガチャシコ

撫子「ただい……って、何してんの?」

櫻子「あ、ねーちゃんおかえりー!」

花子「お、おかえりだし」


櫻子「見ての通り、花子にお昼ご飯作ってもらってんのー」

撫子「お昼? え、花子一人に?」

花子「ち、違うし! 櫻子に教えてもらいながらやってるし!!!」

櫻子「あ、そうだった」>>33


撫子「櫻子に? 何でまた……」


撫子(今日のお昼当番って……櫻子だったよね?)

撫子(どうやって花子を言いくるめたんだか……)

撫子(ま、料理の勉強自体は悪いことじゃないし、いっか。花子も乗り気みたいだし)フフッ

>>33
マジか!次からそうするわ


花子「頑張ってお姉ちゃんにおいしいチャーハンつくるし」

撫子「ん、期待してるね」ナデナデ


櫻子「櫻子様特性隠し味入りだぞ?」フンス

撫子「せめて食べれるもん入れてね?」


櫻子「大丈夫大丈夫。“あじは”ってヤツ入れるだけだし」

撫子「……言っちゃったら隠し味にならなくない?」

櫻子「しまった!?」


撫子「あとそれ“あじは”じゃなくて“ウェイパー”ね」

櫻子「うそォ!?!?」

花子「さ、櫻子、次なに入れればいいし?」

櫻子「えっと次はー……って、ちょ、花子! 焦げてる焦げてる!!」

花子「えっ、わあああ!!! ど、どうすればいいし!?!?」

櫻子「火! 火止めて!!!」

花子「おたまとフライパンで両手ふさがってるし!」

櫻子「フライパン置けよ!!!」

花子「そんなこと言ったって……」


火『テンションwwwwwwww上がってきたwwwwwwwwwwww』ボワァァー


花子「おわぁーー!!!」

櫻子「のわぁぁーーーー!!!!!」

撫子(胃薬ってどこに常備してたっけ……)



――数分後


チャーハン『美味いで~?』


花子「はいお姉ちゃん……。どうぞだし」

櫻子「ふふん、なかなかよくできたと思うよ?」

撫子「あんな火柱上げといてよく言うよ……」

櫻子「あ、味はおいしいから……ね? 多分……」

撫子「それじゃ、いただきます」


撫子(見た目も匂いも、不思議なことに問題ないっぽいけど、果たして……)

撫子(ま、チャーハンならよっぽどのことがない限り不味くはならないか)パクッ


撫子「――っ」モグモグ

櫻子「どう? どう?」

花子「……」ドキドキ

撫子「おいしい……」

花子「ほ、ほんとだし?」パァァ

撫子「うん、凄くおいしい」

櫻子「やったな花子!」

花子「うん……」


櫻子「ふふん、やっぱ私の教え方がよかったんだな」ドヤァ

花子「……今回は否定しないでやるし」

撫子「初めてに作ったにしては上出来。二人ともありがとね」

花子「えへへ」

櫻子「せやろ?」ドヤァ

櫻子「せやろ せやろ?」ドヤァ


櫻子「せ・や・ろ~?」ドドドヤァ

撫子(ホントにこれさえなきゃなぁ)

撫子「でもどうして急にお昼ご飯なんか作ってくれたの?」

花子「それは……」チラッ

櫻子「……」フルフル

花子「……」コクン


花子「花子もそろそろ、お母さんのお手伝いじゃなくて、一人でお夕食つくってみたいって思ってたから……」

撫子「そうだったんだ」

花子「そのことを櫻子に相談したら、私が教えてやるって言ってくれたし」


櫻子「ふふん、ちゃんと花子でも作れそうな料理をチョイスしたんだぞ」

撫子「あー、むしろそっちが気になる。アンタが料理を教えようなんて、一体どういう風の吹き回しなわけ?」

櫻子「え、うーんそうだな……。まぁ気まぐれというか、やる気出さざるを得なかったというか……」

撫子「何それ。はっきりしてよ」

櫻子「うーん、つまりどういうことかと言うと!」

撫子「言うと?」


櫻子「……ショートコント。“ツンデレ”」

撫子「……は?」


櫻子『こら櫻子! あんたぁだらなんちゃ、勉強もせんともっとだらんなるっちゃよ!』
(訳:こら櫻子! アンタ馬鹿なんだから、ちゃんと勉強しないともっと馬鹿になるよ!)

撫子「なにそのいかにも富山弁知らない人が想像で組み上げましたって感じの富山弁」


櫻子「え? ねーちゃんのマネなんだけど?」

撫子「私そんな訛ってないでしょ」


櫻子「え、じゃあ……『てゆーかー 櫻子マジウザいんですけどぉ~?』」クネクネ

撫子「なに、私のことバカにしてんの?」

櫻子「普段のねーちゃんはとっても怒りんぼうで、まるで悪魔のようです」

櫻子「ですがそんなねーちゃんにも、まだ善良な心が残されていたのです!」

櫻子「そのシーンが……こちら」

撫子(もういいや……。聞き流そう)ハァ


櫻子『わたしねぇ、櫻子さまってぇ、花子が想像してるよりもぉ……』

櫻子『ずっとしっかりしたお姉ちゃんだとぉ~思うんだぁ~』


撫子「」ポカーン



撫子「な、な、な、な……///」カァァァ

櫻子「いやー影でこんなこと言われちゃ、私だって本気出さないわけにいかないよねー」アッハッハー

撫子「は、は、花子アンタしゃべったの!?///」

花子「いやいやいや、しゃべってないし!!」


櫻子「ま、あの時ねーちゃん真剣だったみたいだし? 私がこっそり聞いてたのに気付かなくても無理はないんじゃない?」

撫子「はぁ、不覚だった……。あの時花子に気を取られ過ぎて……」

花子「お、お姉ちゃん元気だすし……」

櫻子「でもさ、ねーちゃん。これで分かったっしょ?」

撫子「……何が」


櫻子「私たちが二人だけでも大丈夫ってこと」

撫子(二人だけでも……?)

撫子「……あんたたち、まさか」

花子「そのまさかだし!」ガタッ


花子「は、花子たちは、お姉ちゃんに自由にしてほしい!」

花子「見てもらったとおり、花子たちなら、お姉ちゃんがいなくても大丈夫だし!! 二人で力を合わせてやっていけるし!!」

花子「だから、安心して一人暮らししてほしいんだし!!!」

撫子「……」


櫻子「私はやっぱ気分乗らないけどねー。ま、花子がそこまで言うなら、ねーちゃんの好きにしたらいいんじゃないのー?」

花子「櫻子!!!」


櫻子「そ、そんなに怒るなよー」

撫子「……」

撫子(そっか、二人とも私のことを考えてくれてたんだ……)

撫子(ちょっと前まで『自分がしっかりしなくちゃ』って思ってたのに)


櫻子「とりあえず今日の夜はどうするー?」

花子「んー……ハンバーグなんてどうだし?」

櫻子「いいね、買ってきて焼くだけだし」

花子「作れし!!!」

櫻子「冗談だってー」ケラケラ


撫子(なんだかちょっと寂しいかも……。なんてね)

撫子(そうだよね。二人とも、成長するんだもんね)



撫子(……よし、決めた)



――十数分後


櫻子「はー、皿洗いめんどくせー。食器洗い機ほしくない?」ジャバジャバ

花子「だまってやれし」

櫻子「へいへい分かってるってー。よし、このお皿拭いて」

花子「……」フキフキ

櫻子「いやーそれにしても大成功だったなー。見た? ねーちゃんのあの真っ赤な顔! 一生ネタにしてやれるなー」ジャバジャバ

花子「……」


櫻子「話変わるけどさー。私、花子に料理教えんのうまくなかった?」ジャバジャバ

花子「……」

櫻子「意外と教師とかの才能あるんじゃないかなー?」ジャバジャバ

花子「……」

櫻子「参ったなーもう将来の夢決まっちったよー」テレテレ

櫻子「ねー花子はどう思う?」ジャバジャバ

花子「……」


櫻子「花子?」

花子「……」

櫻子「おーい花子ー? どうした?」

花子「……花子、うまくできてたし?」


櫻子「……は? 上手くって? チャーハン?」

花子「……」フルフル


花子「……ちゃんと、お姉ちゃんに、一人暮らししても、大丈夫って、言えてたし?」

櫻子「え……い、言えてたんじゃないかな……」

櫻子(多分……)

花子「そっか……。なら、よかったし」



花子「うぇ……っ、あぅ……」ポロポロ


櫻子「ちょ、えっ!?」

花子「うわあぁあああああ……」


櫻子「ちょ、花子!? え、何で泣いてんの!?」

花子「あうぅぅ……っぐす……えうぅ……」

櫻子「おーい……。花子ーー?」




花子「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!!」



櫻子「!?!?」ビクッ


花子「いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだァァァァ!!!!!!!!!!!!!」

花子「でていっちゃやだああああああああああ!!!!!!!!!!!」


櫻子「花子……」


花子「お姉ちゃんとはなれたくないよおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

花子「でもでもそんなワガママいえないしいいいいいいぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!」

花子「だけど、だけどおおおおおぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉおぉぉぉ!!!!!!!!」

花子「もっと勉強もおし、おしえてほしいし、お、お買い物にもつれてってほしいしおしゃれな、おしゃれなおようふくとか、えらんでほしいしいっしょに寝、ねてほしいし、もっと、もっと思い出とかもいっぱいいっぱいいっぱい!!!!!!」

花子「いっぱい……作りたくてええええええええぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!」


櫻子「……」

櫻子(何だよ……)

櫻子(ちゃんとするって言っときながら、花子の本当の気持ちすら分かってやれてない)

櫻子(こんなの……姉失格じゃん……)グッ


櫻子(私も……ねーちゃんも)


ギュッ

花子「あっ……」

櫻子「よく……頑張ったじゃん……」


花子(櫻子……あったかいし……)

花子(なんだろ、ちょっと安心するような気がする)

花子(……もしかして、お姉ちゃんの言ってた甘えるって、こういうことなのかな……?)

櫻子「少し落ち着いた?」

花子「うん……」


花子「……花子、お姉ちゃんと……離れたくない……」

櫻子「……そっか」


花子「いつか、花子も大人に、なったら……こんな、ワガママ、言わなく、ても、大丈夫になる……し?」ポロポロ

櫻子「……どう、だろ」


櫻子「私もまだ大人じゃないもん、分からないよ」

花子「……」



櫻子「でも、一ついいこと思いついた」

花子「……なんだし?」


櫻子「今から花子は……私の人質だ!!!」

花子「は、はぁ!?」




――――



プルルル...


―もしもし?

撫子「ごめんね急に電話して。今、大丈夫?」

―うん、大丈夫だよ。

撫子「そっか、よかった」


―撫子がこんな時間に電話してくるなんて珍しいね。 クスクス

撫子「べ、別にいいでしょ……」

―うん。で、何か用事?

撫子「いや用事ってほどじゃないんだけど、ちょっと話したいことがあってさ……」

―えっ、なになに~?

撫子「……実はさっき妹たちが、お昼ご飯にチャーハンを作ってくれてね」

―え、何それ超かわいい! 一人ちょうだい~?

撫子「……やらないよ」

―あはは、冗談だよ。それで?


撫子「うん、しかも調理してくれたのが下の方の妹でさ」

―花子ちゃん?凄いね。まだ小学二年生だよね?

撫子「うん、そう」

―本当に賢いんだね。

櫻子「まぁ上の方の妹に教えられながらだけどね」

―それでも凄いよ。

撫子「ふふ、でも笑っちゃうんだ」

撫子「ごはんは全然パラパラになってないし、かと思えば焦げ付いて固い部分もあって、隠し味にって入れてた味覇が、入れ過ぎて全然隠れてなくて……」

―……。


撫子「まぁ初めて作ったにしてはよくやった方かな、とは思うんだけど」

撫子「とても人前に出せるレベルじゃないっていうか……」

―撫子。

撫子「ん?」

―結局。



―結局そのチャーハンって、美味しかったの?

撫子「――ッ!」


撫子「……そんなの」



撫子「世界一、美味しかったに決まってる」

―なにそれ~。それ私に自慢したくて電話してきたの?

撫子「まぁ、それもなくはない、けど」

―……いいなぁ、姉妹って羨ましい。

撫子「やらないからね」

―まだちょうだいなんて言ってないのに。

撫子「さっき言ってたでしょ」

―撫子、つまんな~い。


撫子「……でさ、そんなの食べさせられたら、私たまんなくなっちゃって」

―うん。


撫子「……だからさ」

―……うん。


撫子「こないだの話なんだけど」

―こないだの? あ、一緒に住むって話?

撫子「うん」




撫子「やっぱり、ナシにしてもらって、いいかな?」



撫子「ホントごめん……。でもやっぱ私、妹二人を放って出てくなんてできないみたい……」

撫子「まだまだ私が付いててやらないと、危なっかしくて見てられないっていうか……」


―……撫子。

撫子「ん?」

―盛り上がってるところ申し訳ないけど……。




―あれ冗談だったんだけど。






撫子「え」

―いや、勘違いしないで? 私も一緒に住みたいとは思ってるんだよ?

撫子「え、じゃあなんで……」

―え~だって~。



―シスコンの撫子が、妹離れできるわけないもん~。 クスクス



撫子「は?」


撫子「え、なにそれ……シス、え?」

―えっ、自覚症状なし!? これは重症だわ……。

撫子「アンタ私のことそんな風に思ってたの!?」

―いや、あの、仲いい子はみんなそう思ってるんじゃないかな……?


―特に3人で話すときなんかは大体その話題だし……。

撫子「」

撫子「辛い……」ズーン


―そんなに落ち込まないでよ~。羨ましいけどなぁ、仲の良い姉妹って。

撫子「いやもういっそ死んだ方が」

―何言ってんの。妹が可愛くて死ねないくせに。

撫子「……」


―ふふ、嫉妬しちゃうなぁ、花子ちゃんと櫻子ちゃんに。

撫子「ご、ごめん」

―ううん、全然大丈夫だよ。



―私、待ってるから。

―撫子が妹離れできる、その日まで。



撫子「……ありがと」

―じゃ、また10時にどうなったか聞かせてね。

撫子「はいはい」


ピッ

撫子「はぁー……」ゴロン


撫子「……結局、今回は私一人の空回りだったわけね」

撫子「欲に目がくらんで、周りが見えてなかったのかな……」


撫子「てか花子と櫻子には、なんて説明しよう」ポリポリ

撫子「や、普通に言えばいいんだろうけど、あそこまでしてもらった手前、言い出しにくいなぁ……」


ドタドタドタドタ

撫子「うるさいな……また櫻子?」



バァン


櫻子「頼もー!!!」

撫子「!? ちょっとノックくらい……」

櫻子「あれれ~? そんなこと言ってていいのかな?」ニヤニヤ

撫子「はぁ?」


櫻子「見ろ! 人質に取られ、縄で縛られ、自由に身動きが取れない花子が目に入らぬか!!!」

花子「……」チラッチラッ

撫子「……」


撫子「……何してんの?」



櫻子「い、いいか、ねーちゃん!!! 今すぐ一人暮らしを取りやめないと、大変なことになるぞ!?」

花子「……」チラッチラッ


撫子(何だこれ)

撫子「……取りやめないと、どうなるの?」

櫻子「花子の見てる前でこの大好物の牛乳を一気飲みしてやる!!!」

花子「……た、たすけてー」ボソッ


撫子(……)


櫻子「の、飲むぞ!?!? マジだぞ!?!?!?」

花子「……」チラッチラッチラッ

撫子「……」クスッ


撫子(はぁ、二人には敵わないなぁ……)

撫子(アンタの言う通り、私ってシスコンなのかも)

撫子(まぁ、でも……)


撫子(今はそれも、悪くない)



おしまい

ミスとか色々多くてすんませんした。

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