真・勇者無双~はじまりの物語 (30)

君よ一騎当千の勇士となれ


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突然地上に現れた魔王はその精強なる大軍を率い、瞬く間に全土に支配を広げ、人間の運命は今や風前の灯火であった。
魔王「フハハハハ!わが覇道の前に敵なし!」
側近「まあ、ひ弱な人間です。当然かと」
魔王「これではわが精鋭達も武功を立てる機会もなくなってしまうな」
側近「・・・しかし魔王様。そう言っていられるのも今のうちかと」
魔王「・・・勇者か」
側近「はい。噂によりますと勇者がはじまりの国より旅立ったと聞き及んでいます」
魔王「魔王あるところに勇者あり・・・太古より幾星霜繰り返されてきた歴史である。だがこの余は甘くない。早速勇者を抹殺せよ」
側近「はっ。はじまりの国方面軍司令のオークキングに勇者抹殺の司令を出してあります」
魔王「勇者とやらもこれでおしまいよ。奴が旅立って間もない所を方面軍全兵力を持って一気に叩く・・・ひとたまりもあるまい。ハハハ・・・フハハハハ!!」

側近「申し上げます!はじまりの国方面軍が全滅しました!」
魔王「何と!まことであろうな!?屈強なオーク達からなる1000もの兵が全滅だと!?」
側近「はっ。先鋒隊長のワーウルフが報告して参りました。」
魔王「信じられん・・・一体どのような・・・もしや余の知らぬ軍が?」
側近「ワーウルフにはそのまま迎撃命令を出しました。吉報をお待ち下さい」
魔王「・・・だとよいのだが・・・いや待て!使い魔を出せい。戦いの様子を記録させるのだ」
側近「仰せのままに・・・されど杞憂ではございませんか?」
魔王「敵を甘く見るな!相手は勇者だぞ!」
側近「申し訳ございません。過ぎたことを申しました」


魔王「では使い魔の報告を聞こうか」
側近「はっ。これに」
使い魔の語った内容は魔王軍にとってショックだった

ワーウルフ「くくく・・・勇者といえどもわが軍にはかなうまい!一気にかかれ!!」
部下「大変です!先行した隊が隊長を討ち取られ壊滅しました!」
ワーウルフ「くっ!さすがは勇者という所か。左翼と右翼を合流させ挟み撃ちだ!」
部下「勇者は進行スピードを増し、真っ直ぐこちらに!!左右合流前に本陣に迫る勢いです!どうぞお逃げ下さい!!」
ワーウルフ「俺が魔王軍先鋒隊隊長となってから敵に背を向けたことはない!踏みとどまれ!!」
部下「ほ、本陣の門が破られました!!」
バ ー ン!!
ワーウルフ「ほう・・・お前が勇者か・・・ここまでの狼藉!もはや許さん!!」
勇者「魔軍隊長の一人ワーウルフ殿とお見受けいたします!その首頂戴いたす!」
ワーウルフの曲刀がうなりをあげて襲いかかるが勇者はその槍で受け止める
ワーウルフ「ほう・・・人間にしては中々やる・・・だが終わりにしてやる!!」
なおもワーウルフの連撃は止まらず勇者は防戦一方
片っ端から襲いかかる部下達を刺し貫き、切りつけながら襲いかかるワーウルフの連撃を受け止める勇者
ワーウルフ「これでおしまいだ!!」
ワーウルフの渾身の一撃!!だがその一撃が振り下ろされる前に勇者の身体が光り輝いた
勇者はその渾身の一撃を切り払うと目にも止まらない連撃を繰り出した
勇者「受けてみろ!!」
光り輝く連続攻撃を全て受けてしまったワーウルフは、吹き飛ばされそして・・・倒れた
勇者「敵将!ワーウルフ討ち取った!!」
勝ち名乗りを上げた勇者にもはや対抗する意思を失った魔王軍はちりぢりに散らされた

側近「以上が報告です」
魔王「ぬう・・・勇者とやら予想以上の力を持っているようだな。では!」
側近「はい、四天王をこれに」
四天王「お呼びでございますか、魔王様」
魔王「おぬしらに命じる。勇者を消せい!!」
四天王「ははっ。かの者の首をこれに!」

ベリアル「さあてっと・・・こっから先は競争だな」
悪魔神官「実にくだらんな。誰が首級をあげるかなど我にはどうでも良いこと」
アトラス「自分も同感であります。魔王軍に仇成す、勇者を討ち取らずして我らの勝利はございますまい」
地獄の騎士「俺は魔王の前に立ちふさがる奴は全て排除する。それだけのことだ」
ベリアル「おーおー。皆さんお堅いこって。んじゃいっちょ行きますかねっと」
地獄の騎士「気をつけろよ。奴の力を甘く見るな」
悪魔神官「ここはひとつ、我に策が・・・お耳を」
ベリアル「・・・ふむふむ、なるほどな。んじゃいっちょやってみますか」
アトラス「先駆け、頼んだぞ」
ベリアル「おう!任せとけって」

勇者はなおも魔王軍を撃破しつつ進撃し、平原にて四天王の一人ベリアルと対峙した。

部下「ベリアル様!勇者が来ました!」
ベリアル「あわてんなよ。まずはこちらの罠に誘い込む。先鋒は退却だ!」
ベリアルの指示で先鋒隊は刃を交えることなく下がる。当然勇者はそれを追いかけた。
勇者が先鋒の陣営にさしかかったとき、敵陣の門がすべて閉ざされた!
ベリアル「よし、今だ!やれ!!」
ベリアルの指示で無数に放たれる火炎呪文!
敵陣には、わらや薪といった燃え広がりやすいものが積み込まれていて、火勢は激しく勇者を包んだ。
ベリアル「絶対に外に出すんじゃねえぞ!」

戦士「おうおうおう!面白そうなことやってんじゃねえか!」
部下「な、何者!」
戦士「うっせえ!邪魔だおらあ!!」

ふらりと現れた一人の戦士。彼はベリアル配下の魔族軍の包囲を蹴散らし、勇者の閉じ込められている陣営の門を叩き壊した。
戦士「おら!丸焼きになる前に出てこい!」
勇者「かたじけない!」
戦士「どうだ!まだやれるか?代わってやろうか?がははは」
勇者「いえ・・・決着は自分の手で!」
戦士「それでこそ勇者だ!頑張れよ!」
戦士が大きな手で勇者の背中を張り飛ばす。勇者は苦笑いを浮かべると槍を構えてベリアルの本陣へと駆けだした。

ベリアル「おほっ。こいつはちっとやべえかな?」
勇者「覚悟!!」
勇者がベリアルに襲いかかる!激しい槍先はベリアルに反撃の隙を与えず徐々に追い込んでいった。
ベリアル「っと・・・調子に乗ってんじゃねえ!!」
ベリアルの身体が赤く輝くと息もつかせない連続攻撃が繰り出される。
勇者「これは・・・無双乱舞!」
ベリアル「お前さんだけが使える訳じゃねえんだよ!」
ベリアルはその武器で勇者を何度も何度も殴りつけ最後にとどめとして火炎呪文を乱射した。
辺り一面は爆炎と舞い上がった土埃に包まれて一瞬何も見えなくなった。
ベリアル「・・・やったか?」
渾身の一撃だった。あれを受けて立ち上がれるはずはないとベリアルは確信していた。
勇者「はあああああああ!!」
勇者はあれだけの連撃を受けてなお向かってきた。
ベリアル「ガードしてたのか!やべえ!」
勇者の輝きが一層激しくまばゆいばかりになったと思うと激しい連続攻撃が浴びせられた。
息もつかせない連続攻撃が無防備になっていたベリアルに繰り出される。もはや受けることも反撃することもままならずただこの嵐をその身に刻みつけられていった。
ベリアル「がはっ・・・ぐっ・・・」
四天王の一人ベリアル・・・魔王軍旗揚げからの勇士にして最強の悪魔族がここに倒れた。

戦士「お、やるじゃねえか!」
勇者「危ないところでした。あなたが助けに来てくれなければ今頃は・・・」
騎士「ご謙遜を・・・たいしたものですな」
戦士「おう兄者!こっちは終わったぜ」
勇者「騎士殿!」
騎士「義弟(おとうと)はお役に立てましたかな?」
戦士「なんでえ。酒は飲んでねえよ・・・っく・・・と」
勇者「ははははは」
騎士「時に勇者殿!勇者殿のご活躍にわが君もついにご決断なされました」
戦士「兄貴が!ついにかあ」
騎士「うむ。西の王たるわが君も魔王討伐の兵を挙げましたぞ」
勇者「それはありがたい」
騎士「して、我らも勇者殿と共に戦いますぞ!」
勇者「しからば参りましょうぞ!」
戦士「魔王だかなんだか知らねえがこのおれさまがこてんぱんにのしてやるぜ!」
騎士「すぐに調子に乗るのはお前の悪い癖だぞ」
戦士「ちがいねえ」
一同「ハハハハハ・・・」

側近「申し上げます!四天王が一人ベリアル様、討ち死に!」
魔王「ふ・ふ・・ふ・・・フハハハハハ」
側近「ま、魔王さま!?」
魔王「面白い。実に面白い。これほどまでとはな・・・震えるわ」
アトラス「魔王様!次は自分が・・・」
魔王「下がれい!全軍総攻撃の命を出せい!余も出る!!」
地獄の騎士「魔王!軽率だぞ」
悪魔神官「私めは魔王様に賛成でございます。ベリアル殿を倒した相手・・・おそらくただ者ではありますまい。一人一人よりもここは力を合わせて叩きつぶすべきかと」
アトラス「・・・しかし」
悪魔神官「万が一のために我ら四天王があるわけでございましょう。なあにたかだか人間・・・残さず消し去ってくれましょう」
魔王「うむ。よくぞいった。全軍出撃!!」

お目汚し失礼いたします。
お初に投稿いたします。
ご意見ご感想お待ちしております。

これにて序章完とあいなりましてございます。

なるほど

こちらにある他の作品を参考に見たところ
確かに多少改行を多めにして間を作っている作品が多いようですね

次回の参考に致します

第2章

魔王軍追撃

西の王「勇者殿、初めてお目にかかります。」

西の王と名乗った高貴な雰囲気を漂わせる男は勇者に向かって頭を下げた。

戦士「長兄(あにき)は西の方を治めているんだぜ。まだ小さい国だけどな、気のいい奴ばかり集まってらあ!」

戦士は自分のことのように得意げに自慢した。子供が自分の親を自慢するようなその姿はとてもほほえましく思えた。

魔導師「初めてお目にかかります。私は西の王に仕える魔導師です。」

丈の長い布の服を身にまとい、羽毛で出来た団扇を手にした、彼らの中で最も若い者はそう自己紹介した。

戦士「お、出やがったな。ちょっといけすかねえ所はあるが頼りになる奴だぜコイツ」

なるほど。この魔導師と名乗った男は全ての人に真意をつかみ取らせないような、何とも得体の知れない不思議な雰囲気があった。

騎士「それよりも兄者、義弟と合流する前に民草を集めて参りました。城へ戻りましょう。」

勇者「・・・どういうことですか?騎士殿」

西の王「うむ、私から話そう。人々は魔王軍によって町や村を焼かれ、家を焼かれて住むところもなくさまよっているのだ。これを救わずして大義はない」

魔導師「微力なれど、我らは力を合わせてその人々を集め、保護しております」

戦士「おい!みんなあれを見ろよ。ちょっとやべえぞ」


一同がその指した方を見ると、立ち上る砂塵が砂嵐のように立ち上っていた。

膨大な数の魔王軍がこちらに迫っていることは誰の目にも明らかであった。


勇者「ここは私に任せて、王は民衆を守り後退下さい!」

魔導師「ざっと見たところ相手方は80万と見えます。この数では如何に勇者様と言えども困難でございましょう」

勇者「ですが!」

魔導師「私にお任せを。策がございます」

魔王軍80万の先鋒隊長として地獄の騎士が10万の手勢を率いて真っ先に迫っていた。


地獄の騎士「西の王・・・今はまだ微力なれどもいずれ魔王軍に仇成す存在となろう。その前に跡形もなく消し去ってくれる!!」


その気迫たるや鬼神もこれを避ける勢いであった。魔王軍先鋒隊全員も同じ気迫である。

この気炎万丈たる軍団に立ち向かったのは勇者であった。


勇者「さあ!かかってまいれ!」

地獄の騎士「言われずとも!!」


激しく打ち合う両者。互いの武器は激しく火花を散らし、その激しさは気迫に燃えていた魔王軍団兵士達も固唾をのんで見守るほどであった。

だが、決着を前に退いたのは勇者であった。

勇者「この勝負、ひとまず預けた!!」

勇者はそこから飛び退くと馬に乗り、魔王軍を前に退いた。

地獄の騎士「おのれ恥知らずめ!逃がすものか!!」


水を差された格好になった地獄の騎士は、不満を隠さず憎しみを燃やし勇者を追いかける。

この危険なおにごっこはしばし繰り広げられていたが、やがて地獄の騎士は勇者の姿を見失ってしまった。


部下「お待ち下さい!ここは危険です」

地獄の騎士が周りを見渡すと、そこは両側が切り立った斜面になった隘路であった。追撃に夢中で周りを見ることすら忘れてしまっていたのだ。

部下「ここは敵が待ち伏せするのに最適な場所です。追撃は諦めて一旦ひきましょう!」

地獄の騎士が部下の説得に心動かされかけたとき、突如として崖の上に兵士の姿が現れた。

あっと思うより早く、崖の上の兵士達は火矢を射かけてきた。


戦士「がっはっはっは!野郎ども!たっぷりお見舞いしてやれ」


地獄の騎士「おのれ!人間が!!」

部下「活路を開きます!将軍はお逃げ下さい!!」


地獄の騎士の率いる精鋭達が入ってきた入り口の方へ向き直ったその時、その入り口にも兵士達が現れた。


騎士「ここは通さぬ。通りたくば我を倒してゆかれよ」


騎士達の率いる騎馬兵たちは魔王軍に向かって勇敢に突進した。


部下「下がることは出来ません!かくなる上は前に進むしかありません!」


勇敢なる魔王軍の精鋭達が火矢に焼かれながらも、勇猛に騎馬兵達を押しとどめているうちに部下は地獄の騎士をなんとか逃がそうとしていた。

地獄の騎士と部下の正面突破が成功しようとしたその時、谷を抜けた場所に待っていたのは魔導師軍の精鋭達であった。


魔導師「ようこそいらっしゃいました。」


魔導師がその団扇を魔王軍に差し向けるのが合図となり、魔導師達の一斉魔法がさながら激しい瀑布のように魔王軍に降り注いだ。

魔翌力の嵐は激しく魔王軍を飲み込み、その奔流は邪なる生き物を生かしてはおかなかった。


こうしてわずかな手勢で立ち向かった西の王の軍は、魔王軍10万の精鋭その大半に激しい打撃を与えた。

魔導師「いかがでございましたかな?勇者殿・・・これが策というものです」

戦士「やったじゃねえか!魔王とやらも来るなら来てみやがれってんだ!」

勇者「あなたがたに比べて私の力など微々たるものでしかありません」

騎士「それは違います。勇者殿。あなたが立ち上がり、人々を解放したからこそ我らも立ち上がったのです」

魔導師「そうです。あなたの勇気が人々の勇気となって、私たちの兵士達が戦うことを選んだのですよ」

戦士「ま、堅えことは抜きにして、さっさと城に戻って祝勝会でもやろうぜ」

魔導師「残念ですがそれは後にして下さい。魔王軍本隊が攻めてきます。今度は策を弄してもおそらく無駄でしょう。数が違いすぎます。」

魔導師「ですので、城を盾に私が戻るまで持ちこたえて下さい。援軍を連れて参ります。」

勇者「その援軍とは?」

魔導師「東の王です。彼もまた立ち上がっておりますが、彼の地の兵は大変に強く、そして我々よりも多くいます。」

戦士「できるのかよ?」

魔導師「この盟約は必ずなし遂げなければなりません。でなければ人間の未来はありません」

魔導師「いいですか、決して城を開いてはなりません。あの城には私があらゆる兵器を配置してあります。私が戻るまでは耐えられるでしょう。」

騎士「お任せあれ!」

勇者「微力なれど私もお力になりましょう」

魔導師「皆さん、お願いします」


さて魔導師は東の王を動かすことが出来るのだろうか。そして西の城は魔導師が戻るまで魔王軍全軍の攻撃に耐えることが出来るだろうか。
続きはまた次回に

ご意見を参考に整形いたしました

第3章


嵐を耐えて


魔王軍全軍を迎え撃つ西の王の軍と勇者。

魔導師は城を盾にして守りきることを進言していたが、だが、そうは出来ない事情があった。

方々からの避難民誘導はまだ続いており、城を閉じることは出来なかったのだ。

そのため城の前に前線を作り、そこで魔王軍進行を食い止める必要があったのだ。

この絶望的状況の前に勇者と英雄達はどう立ち向かえるのか。


戦士「おー、来やがったな!魔王軍の奴ら」

勇者「先回は局地戦のためこちらの策も当たりましたが、総力戦となりますと兵力が圧倒的に少ないこちらが不利でしょう」

西の王「それは分かっている・・・だが私は民を見捨てるわけにはいかないのだ!」

戦士「しょうがねえよなあ!やるしかねえな!兄貴!」


目の前には魔王軍が威風を漂わせていた。

先鋒隊の敗戦など忘れてしまっているかのように、異形の戦士達が号令一つで飢えた獣のように飛びかかってくるだろう。

その偉容からして、おそらくは魔王が直接指揮を執っていると思われた。

たぎる闘志を内に秘め、合図を今かと待っている気配を感じる。

さながら一つの生き物のようになった軍。

これほどの見事な陣構えは誰も見たことがなかった。

にらみ合っていた両軍の戦端は小一時間後に唐突に開かれた。

先に兵を動かしたのは西の王の軍だった。

王子が率いる隊が突出し、戦いを仕掛けた。

これを迎え撃つのは四天王の一人、アトラス。

彼は軍を動かさず、ただそのままに前進させた。

それだけで戦闘は一方的になった。

数に任せ攻め寄せるだけで、寡兵である西の王の軍は、まるで火に投げ込まれた紙切れがさっと溶けるように燃える姿のようにあっという間に崩壊してしまった。

騎士の軍が魔導師の東方行きの護衛のためにこの場にいなかったことも大きかったであろう。


兵士「殿!わが方は総崩れ!御身に何かあっては一大事!お引き下さい!!」

西の王「う、うむ。大義のためにもここは引こう」

西の王はわずかな護衛に守られ退却を開始したが、魔王軍は足の速い機動部隊を使って追い迫ってきた。

戦士「しゃーねーな・・・兄貴!ここは任せてくれ!」

西の王「死ぬなよ・・・」


西の王を無事に逃がすために、決死のしんがりは戦士が務めた。

戦士は小さな橋の前に仁王立ちになると、追い迫る魔王軍を次々に叩き伏せていた。

戦士「おらおら!!死にたい奴からかかってきな!こっから先は通さねえぜ!」

皆で一斉に攻めようにも、橋の手前は隘路。

わずかな数で武勇でならす戦士と戦わなければならない。

しかも戦士の部下によって射かけられる。

地形を活かした鉄壁の布陣に追撃していた魔王軍は攻めあぐねていた。

しかし、そのころ勇者の元に悲報が伝えられていた。

兵士「一大事にございます!王子、敵陣にて孤立!!・・・ぐふっ」

勇者「なんと!」


勇者は馬を駆ると、敵陣目がけて放たれた1本の矢のように真っ直ぐに勢いよく駆けだした。

一方、王子は共の者たちをみな失い、ただ一人で醜悪なる魔物達に囲まれていた。

この王子、剣の腕前には多少の覚えがあるがまだ若く経験も少ない。

戦場なれしていない若き王子の顔には疲れが色濃く出ていた。


王子「はぁ・・・はぁ・・・」

魔物「げっへっへっへ・・・いい加減観念しろっての!」

王子「倒れるわけには・・・義が倒れるわけにはいかない!」

魔物「そうかい!ならあの世でも言ってろ!」

勇者「王子!!

魔物「あ~ん?何・・・だ・・・」

魔物が言い終わるよりも早く勇者の槍が魔物を貫いていた。

その電光石火の槍さばきはその場にいた誰もその軌跡を追うことが出来なかった。


王子「勇者殿!」

勇者「こんな所に長居は無用!すぐ戻りましょう」

魔物「おい!待ちな!!お前さんがどれだけ強えか知らねえが、これだけの数で包囲されているのが見えねえのか?」

勇者「ならばどいてもらおう!さもなければ無理にでも押し通る!!」

魔物「やっちまえ!!こいつらをやっちまえば手柄は思うがままだ!!」


魔物達は奇声を上げて蜜に群がる蜂のように二人に襲いかかった。

勇者は王子を自分の馬に乗せると槍を構え、ただの一払いで目の前の魔物達を蹴散らした。

勇者「王子、しばしご辛抱を」

王子「だ、大丈夫なのか?」

勇者「この勇者、わが命に代えても王子を守って見せましょう」

進行方向が開けると、目の前の魔物達を突き、薙払い、叩き伏せ、全速力で馬を走らせた。

魔物「あ、あいつ強ええええ!」

この危険な退却劇は後方で指揮を執っていた魔王の目にも止まった。

魔王「あやつの好きにさせてたまるか!奴を包囲殲滅せよ!」

魔物「はっ!必ずや」

次々と敵の新手が行く手を遮るように現れ、じわりじわりと包囲されていたが誰も勇者の行く手を遮ることなどは出来なかった。

数に勝る魔王軍は逃げる勇者を追い続けていた。

魔物「畜生!絶対逃がすな!!」

だが勇者が例の橋にさしかかったとき、戦士がその前に立ちふさがって魔王軍を蹴散らした。

戦士「おっと!こっから先は通せんぼだ!」

勇者「戦士殿」

戦士「ここは俺に任せな!」

戦士の後詰めによって、勇者と王子は無事に王の待つ城へと帰ることが出来た。


魔王軍は無理に城を攻めることをせず、この日は退いた。

先陣が城に近づいたところを、帰ってきた騎士の騎兵達に脇から奇襲を受け、少なからずの被害を受けたこともあるだろう。

バシッ!!

勇者と王子を迎えた西の王は、皆の面前で王子を打った。

西の王「さがっておれ!」

王子「は、はい・・・」

王は勇者に向き直ると頭を下げた。

西の王「すまない・・・不肖の息子のために勇者殿のいのちを危険にさらして・・・」

勇者「間一髪間に合って良かった・・・危ないところでした」


命を拾った西の王の軍はこの戦闘で壊滅的打撃を受けたが、後に魔導師によって良い知らせを受けた。

両国の同盟成立である。

さて連合軍は魔王軍を打ち破ることが出来るのだろうか。

週一ペースで更新できるといいのですが
忙しいと中々

疲れてテンション低い時に書いたものを推敲してみるとひどい出来だったので
手直ししたりしました

次回で第一部完の予定です

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