妹「わたし死にますから」兄「どうぞー」 (159)

妹「本当に死にますからね。嘘じゃないですよ」

兄「わかってるよ」

妹「いいんですか? 最愛の妹であるわたしが死んじゃうんですよ」

兄「うん」

妹「『うん』じゃないですよっ!」ビシィ

兄「えっ?」

妹「なにかないんですか?」

兄「何かって?」

妹「死なないでくれーとか、お前がいなくなったら俺はどうすればいいんだーとか」

兄「うーん、別にないかな」

妹「そ、そそ、そうですか。ふむ。なるほど」

兄「だからどうぞー」

妹「くっ」

兄「ん?」

妹「うおらっ」ゲシッ

兄「痛い」

妹「兄さんのバカッ!」タタタッ

兄「死なないの?」

妹「兄さんのアホんだら! 甲斐性なし! 結婚できない男!」

兄「最後は関係ないし僕はまだ高校生」

妹「うおおおおおおおおおおおおおお」タタタッ

兄「なにあの子」


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台所


妹「ふふん。これから死にますから何しても平気ですね」

妹「よし。まずはプリンをあらかた食べてしまいましょう」

妹「実食!」

妹「プルンプルンしてますねぇ。んっふっふ」

妹「うめえ。うまい。うますぎるぅ!」

妹「んふふ。幸せだなぁ」

妹「ひっひっひ。兄さんのぶんも食べてしまいましょうか」

妹「わたしは悪い子です。これはなんとしても死ななくてはいけません」

妹「なっはっはっはっは」

兄「人のを食べないでくれる」スッ

妹「ひっ」


兄「やっていいことと悪いことがある」

妹「ご、ごめんなさい」

兄「赦してやろう」

妹「……ありがとうございます」

兄「仕方ないから半分あげる」

妹「えっいいんですか……?」

兄「うん」


妹「でも、でも」

兄「食べたいんでしょ。だからいいよ」

妹「ダメですよ。それは兄さんのものです。悪い子は食べちゃダメなんです」

兄「……」

妹「だから、いいんです」

兄「──はい、あーんっ」

妹「なんですか。これは」


兄「食べたそうな顔をしてたから」

妹「……こんなわたしが人から施しを受けてもいいのでしょうか?」

兄「いいと思うよ。まあ、とりあえず一口だけ」

妹「……」パクッ

兄「おいしい?」

妹「──甘いです」

兄「プリンだもんね」

妹「そうですね。プリンなら甘いです。仕方ないです」

兄「もう一回いってみようか」

妹「……はい」


妹「んふふ。大変に気分がいい」

兄「そだねー」

妹「さて、お次はどうしましょうか」

兄「ご飯でも食べよ」

妹「なるほど。それはいいですね」

兄「なにがいい?」

妹「うーむ、オムライスがいいですね~」

兄「作ってあげるよ」

妹「最後の晩餐ですか。ふむ。オムライス。悪く無いです」


兄「できた」コトッ

妹「わはー美味しそうですっ!」

兄「これだけは得意なんだ」

妹「ケチャップでなにか書いてくれませんか?」

兄「えー」

妹「最後のお願い!」

兄「……」

妹「この通り」

兄「──わかった。なにがいい?」

妹「うーんと、えっと、『兄』って書いてください」

兄「……」

妹「はーやーくー」パタパタ

兄「嫌だなぁ」

妹「お優しい兄上様~」

兄「あーはいはい。わかったって」

妹「さっすがぁ!」


兄「こんなかんじかな……」

妹「おおっ、上手いです」

兄「よし。できた」

妹「では、食べますよ」

兄「召し上がれ」

妹「いただきまーす」

妹「……」モグモグ

妹「美味しいっ!」

兄「ありがと」


妹「今、わたしは、兄さんを食べています。バクバクと食べています。カニバリズムです」

兄「全く違う」

妹「んふふ。いいですねぇ、いいですよぉ。最高です」

兄「この子気持ち悪い」

妹「ひどいですね」

兄「だって」

妹「実の兄に蔑まれるなんてこれは死ぬしかないです」

兄「うん。そうだね」

妹「っ……」

兄「はやく食べなよ」

妹「は、はい」モグモグ


妹「ごちそうさまでした」

兄「おつかれ」

妹「げぷっ」

兄「お茶」コトッ

妹「ふぅ」ズズーッ

兄「僕も飲むかな」トポトポトポ

妹「ふひー」

兄「ふぅ」ズズーッ

妹「のどかですね~」

兄「そうだね~」


妹「あっ、最後のお菓子におせんべいでも食べますね」

兄「うん」

妹「げんこつでも行ってみましょうか」

兄「大丈夫?」

妹「ナメないでくださいよ……妹なんですよ、わたし」

兄「……すごい漢女だ」

妹「では──バキッ!」

妹「うあ、なんだと、硬い。硬すぎるっ!」

兄「だから言ったのに」


妹「戦略的撤退です。仕方ないですね」

兄「ポタポタ焼きにしとこうよ」

妹「はい」バリボリ

兄「こぼしすぎ」

妹「だって悪い子ですもん」

兄「全く」フキフキ

妹「もっと落としてあげますね」バリボリ

兄「やめて」

妹「あーあなくなってしまいました」

兄「よかったぁ」


妹「さて、次はなにをしましょうか」

兄「ねえ」

妹「はい」

兄「死なないの?」

妹「死にますよ」

兄「ふぅーん」

妹「死ぬにも準備が必要です」

兄「へー」


妹「ということで、外に行きましょう!」

兄「えー寒い」

妹「最後くらい付き合ってください」

兄「んー、どうしよ」

妹「いーきーたーいー」ガシッ

兄「どこに行くの」

妹「行ってから決めます」

兄「えー」

妹「貯金を全部使い果たして死にたいんです」

兄「あぁ、そういう」

妹「行きますよ」

兄「……はぁ」


妹「今日は天気がいいですね」

兄「寒い」

妹「こうすれば暖かいです」ギュッ

兄「暑い」

妹「ぬくぬくですよ」

兄「べたべたする」

妹「……」

兄「冗談だよ」

妹「ふむ」ギュー

兄「やっぱり暑い」

妹「寒いんですよね?」

兄「暑い」


妹「もう怒りました」

兄「今までこんなことしたことはなかったのに」

妹「最後の日だからです」

兄「あー」

妹「妹のわがままを許容して初めて、兄として認められるんですよ」

兄「ふぅーん」

妹「だから、わがままを聞いてくださいっ!」

兄「……」ニギッ

妹「そうすればいいのです」


妹「動物園に行きませんか」

兄「ご自由に」

妹「では、チケットを買って──と」

兄「あっ、ダチョウだ」

妹「首が長いですね」

兄「初めて見た」

妹「ですねー……って餌が売ってありますよ」

兄「……また言われそうだから買ってあげる」

妹「兄としての自覚が出てきたようです」


兄「うるさいだけ」

妹「素直じゃないですね」

兄「うるさい」

妹「ひどいっ!」

兄「はいはい。どうぞ」

妹「ダチョウ。この餌を食べる権利をあげよう」サッ

ダチョウ「……」スーッ

妹「うわっ!? 首がエレベーターみたいに下がった!!」


男「すごい勢いで下がったな」

妹「なにこれ、なにこれ! こんなの絶対にビックリしますよ!」ブンブン

男「痛い、痛い。腕が当たってる」

妹「だって、だって、すごいんですもん!」ブンブン

男「……」

妹「ダチョウ。いろいろ言ってごめんなさい。全部あげますから許してください」ペコペコ

ダチョウ「バクバク」

妹「ありがとうございます、ありがとうございます」


妹「……ふぅ。年甲斐もなく楽しんでしまいました」

兄「いや、中学二年生ならまだ許容範囲」

妹「思春期真っ盛りじゃないですかーやだー」

兄「あははー」

妹「まあ、それでも最後の日くらいは許されますよね」

兄「あっ、はい」

妹「適当な相槌は控えてください」

兄「そうだね」

妹「えーん、お兄ちゃんがいじめるー」


兄「はぁ」

妹「ぐすっ、ううっ、なんで、なんであのときわたしの初めてを……」

兄「見に覚えのない変な言いがかりはダメ」

妹「なら、ちゃんと返事してください」

兄「はいはい」

妹「……」

兄「ごめん」

妹「本当にどうしようもない兄さんなんですから」


妹「ということで楽しみました。次行きますよ」

兄「どこに」

妹「ファミレス」

兄「また食べるの?」

妹「お腹が減ったんです」

兄「へー」

妹「行きますよー」

ファミレス


妹「あー疲れました」

兄「あんなにはしゃぎ回ってればそうなるよ」

妹「貯金はまだ二万円くらいありますね……」

妹「すいませーん」

店員「はーい」

妹「このページのハンバーグを全部大盛りで」

兄「は?」

妹「それと──」


妹「よし」

兄「がんばってね」

妹「兄さんも食べるんですよ」

兄「いい」

妹「遠慮なさらずに」

兄「わかったよ。食べるよ」

妹「よし」

妹「おいしかったですねー」

兄「気持ち悪い……」

妹「いっぱい食べられたからいいじゃないですか」

兄「……」

妹「少し休憩してから出ましょう」

兄「……うん」


チリンチリーン


店員「お客様、何名様でしょうか」

女「えーと、二人でーす」

店員「では、ご案内致します」

女2「嘘でーす。本当は三人でーす」

女3「ぎゃはははは」

店員「は、はぁ」

女「ごめんなさーい」クスクス

店員「ご、ご案内致します」

女2「はーい」

女3「されまーす」


兄(うるさいなぁ)

兄「帰ろっか──あれ?」

兄「なんで下に隠れているの」

妹「何でもないです」ブルブル

兄「震えてるよ」

妹「……何でもないです」ブルブル

兄「ほんと?」

妹「……はい」


兄「同じ中学の制服を着ているけど」

妹「知らない人です」

兄「……」

妹「だから、知りません」

兄「……」

妹「わたしとは関係ありません」

兄「──少し話してくる」

妹「やめてください!」

兄「でも」

妹「知らない人にいきなり話しかけても迷惑です。だから……いっしょにいてください」

兄「──わかったよ」ニギッ

妹「……ごめんなさい」

兄「はいはい」


兄「……」

妹「……」

兄「もう行ったよ」

妹「……はい」

兄「帰ろう」

妹「……はい」ニギニギ

兄「手を繋いだままでもいいの」

妹「……はい」

兄「……」

妹「……はい」

兄「帰ろっか」

妹「……はい」


兄「……」

妹「……」とてとて

兄「……」

妹「……」とてとて

兄「もう夕方だ」

妹「……はい」

兄「夕日が綺麗だ」

妹「……はい」

兄「ところでさ、本当に死ぬの?」

妹「……はい」

兄「なにか心残りはない?」

妹「……」

兄「こうしとけばよかった、とか」

妹「……」

兄「なぜあのときできなかった、とか」

妹「……」

兄「──誰かを殺したい、とか」


妹「……」

兄「今日死ぬんでしょ。妹からの最後のお願いを叶えてあげる。だから」

妹「……」

兄「もう失うものはない。どうなの?」

妹「……」

兄「……」

妹「……本当ですか?」


兄「うん」

妹「本当の本当に叶えてくれますか」

兄「最後くらいはやってもいい」

妹「でも、そうしたら兄さんが……」

兄「あっ、そうだ。僕からもお願いがある」

妹「な、なんですか」

兄「後で言うよ」

妹「なんですかそれ」

兄「いいじゃない」

妹「ふふっ」

兄「で、お願いは?」


妹「そうですね……わたしはもう自殺するわけですから、自暴自棄な状態なはず。
だから、無差別殺人をしようとしてもおかしくないです。そういえばファミレスで
うるさい人たち達がいました。標的は彼女たちにしましょう。かわいそうだなぁ。
偶然にもファミレスに来てしまったから殺されてしまうなんて。ふふっ、なんて
バカで頭がかわいそうな人たちなのでしょう」

兄「うん。僕もそう思ってたんだ」

妹「あらあら、奇遇ですね。さすが兄妹。考えることは似るものなんですね~」

兄「ははっ、そうだね」

妹「ということでレッツラゴー」

兄「どこに?」

妹「えーと、ここからは距離があるんですけど、ある公園に行きます」

兄「歩いていける?」

妹「うーん。少し遠いですね」

兄「ふむ。仕方ない。バイクで行こう」

妹「えっ、バイク? まだ来てませんよね」

兄「あーそうだったね。じゃあ適当に乗っていこう」

妹「えっ」


妹「えっ」

兄「そこらかしこにいっぱい借りバイクがあるでしょ。それを使おう」

妹「なるほど。でも、かかりますか?」

兄「簡単にかけられるよ──ほらついた」

妹「うわーすごい」

兄「ちょうどヘルメットが二つあるから。被らないと虫が当たって痛いからさ
はい、どうぞ」

妹「はーい」

兄「よし。行こうか」

妹「うん!」

兄「どっち方面?」

妹「あっち!」

兄「しっかり掴まってて」

妹「はーいっ!」


兄『こっちで合ってる?』

妹『次の交差点を右です』

兄『了解』

妹『でも、すごいですね』

兄『なにが』

妹『だって、こんな風に走っていても話せるんですもん』

兄『そーかな?』

妹『わたしはバイクに乗るのは初めてなんですよ』

兄『そうだっけ』


妹『兄さんったらわたしを後ろに乗せてくれたこと一度もないじゃないですか』

兄『危ないからだよ』

妹『これくらい平気です』

兄『それだけ心配ってこと』

妹『うっ、今のは効きました。兄として合格です』

兄『へー』

妹『気分が乗ってきました』

兄『バイクだけに?』

妹『そういうのは突っ込んじゃダメです』

兄『はいはい』

妹『あっ、そこを右です』

兄『右ね』


妹『おっと、ここで止まってください』

兄『えっ。でも、まだ着いてないよ』

妹『このまま行ったらあの三人組にバレてしまいますよ』

兄『なるほど』

妹『あと凶器はどうするんですか? 何も持ってませんよね』

兄『凶器? そんなものそこら辺にあるじゃないか』

妹『えっ』

兄『少し大きな石』

妹『あー』


兄『そこら辺で買うとバレる可能性が高くなるから』

妹『ほうほう。少しは考えていますね』

兄『少しね──はい。ここでいいかな』

妹『もう外しても?』

兄『いいよ』

妹「ぷはぁ」

兄「大丈夫だった?」

妹「はい。むしろ爽快でした! まさに風を感じましたっ!」

兄「けっこう疲れたでしょ」

妹「はいーそうですね。疲れました……」

兄「慣れないうちは仕方ないよ」

妹「はひー」

また明日
一応酉を本人証明のためにつけとく


妹「さてさて、あの人たちはいるのでしょうか」

兄「いなかったらどうする?」

妹「そのときは家に行きます」

兄「知ってるんだ」

妹「なぜか知ってるんですよ」

兄「偶然だな」

妹「ですね──おっ、いましたいました」


女2「んでさー」

女3「えっ、マジ? でマジ?」

女2「マジマジ」

女3「マジっすか~」





兄「ん? でも二人しかいないな」

妹「ちっ、肝心の女がいません。取り巻きの女2と女3だけのようです」

兄「どうする?」

妹「とりあえずあの二人から殺ります」

兄「あれ、手伝ってくれるの」

妹「はい」


兄「汚いよ?」

妹「汚いものには慣れてますから」

兄「……そう」

妹「だから、やりますよ」

兄「うん。わかった。とはいってもどんな感じにやろうか」

妹「そうですね。まずは──」


女2「そのとき思ったわけよ。死ねって!」

女3「なーる。わかるわ~」

女2「でしょでしょー」

女3「女って変に猫被るときあるし~」

女2「ほんとそれー」

女3「ハブる?」

女2「いいねー」

女3「あはははは」

女2「わたしたち友達だもんねー」

女3「だよね~もう女は友達じゃないよね~」

女2「うわっひっどー」

女3「あんたも賛同したでしょ~」

女2「ふふふふふ。そうだねー」

女3「悪い子だね~」

女2「あんたもねー」

女2&女3「あはははは」


妹「……」とてとて

女3「あれ、妹じゃね?」

女2「あっ、ほんとだー」

女3「おーい、妹!!!!」

妹「……」

女3「おーいっ!!!!」

女2「聞こえてないんじゃないかな」

女3「いやいや、それはないでしょ」

女2「近くまで行ってみればー」

女3「めんどくさいなぁ……うおおおおおおおい」

妹「!」


女2「気づいたみたいだねー」

女3「こっち来いや」

妹「……」とてとて

女3「走れ!!!!」

妹「……」ダッ タタタッ

女3「やーやーおひさ~」

妹「……」

女3「なんか言えよ!!!!」

妹「……うるさいなぁ」ボソッ


女3「は? なんか言った?」

妹「何か言えっていま言いましたよね」

女3「言ってねえよ」

妹「……はぁ」

女2「言ったよー」

女3「うそ!!!!」

女2「あははー」

妹「やっぱりうるさいなぁ」

女3「あん?」


妹「自分で言ったことをすぐ忘れるなんて白痴なんですか?」

女3「意味わかんねえこと言ってんじゃねえよ」

女2「女3ちゃん、なんとなく意味は分かるでしょ。考えてみなよー」

女3「ん、えーと……」

女2「ほらほら、状況的に考えて」

女3「うーん……やべ~わかんね~」

女2「テレビしか見てないからだよー」

妹「……はぁ。一億総白痴化は見事に成し遂げられているようです」

女3「はぁ? さっきから変なことばっか言いやがって。殺すぞ」

女2「物騒だねー」

妹「本当ですね。ということでさようなら。おバカさん」スタスタ


女3「ちょ、待てよ」

妹「……」タタタッ

女3「おい! 逃げんな!!!!」タタタッ

女2「あははーがんばってねー」ケラケラ

兄「そうだね」スッ ドガッ

女2「──っ!?」グラッ

兄「もう一回」ドガッ

女2「ぅがっ……!?」

兄「一応追撃しとくか」ドガッ

女2「っ!?──」

兄「おら」ゲシッゲシッ

女2「や、ややmやめ」

兄「気絶って簡単にしないんだな。昔読んだ漫画のとおりだ」ドガッバキッ

女2「ぅ……」


妹「……」タタタッ

女3「てめぇ、待てや!!」ダダダッ

妹「……」タタタッ

女3「おいっ!!」

妹「……」サッ バッ

女3「うあっ!?」ドガシャッ

妹「……」タタタッ

女3「小石を投げやがって痛えじゃねえかっ!!」

妹「……」タタタッ

女3「なんか言えよ!!!!」ダッタタタッ

妹「……」タタタッ

女3「はぁ……はぁ……」


妹「……」タタタッ

女3「はぁ……何回も同じことやりやがって……絶対殺してやる!!!!」

妹「……」タタタッ

女3「はぁはぁ」

妹「……」タタタッ

女3(……! あいつバカだ。ぷぷ、このまま行けば公園に戻ることになる)

女3(そうすれば女2もいるし挟み撃ちにできんじゃん!! おばかちゃんでちゅね~~)

女3(そのときはいたぶってやんよ……)ニヤニヤ


妹「……」タタタッ

女3「はぁ……はぁ……」プルッルルル

女3(はぁ? なんでいまかかってくんだよ。あとにしろ)

妹「……」タタタッ

女3「はぁはぁ」プッルルルル

妹「……」タタタッ

女3「はぁはぁ」プッルルルル

妹「……」タタタッ

女3「はぁはぁ」プッルルルル

女3(ああああああああああああ!!!! 死ねっ、誰だよ!!!!)チラッ

女3(って女2じゃん。なんの用だ)pi


女3「さっきからなんだよ。今忙しいんだよ。知ってるだろ」タタタッ

女2『あ、あの……公園で……挟み撃ちしよ』

女3「は? なんで知ってんの」タタタッ

女2『う、え、んと……公園って……小高い丘になっているから……見えるんだ』

女3「じゃ、頼むわ」タタタッ

女2『遊ぶあれのところね……』

女3「ガキが遊んでいるところだろ。行くから待っててや」タタタッ

女2『はやくきてね……』

女3「んあー」ピッ


妹「……」タタタッ

女3「はぁ…はぁ……やべぇ、もう体力が……」

妹「……」タタタッ

女2「────!」

女3「! 女2の声……」

妹「っ……」ダッ

女2「捕まえた!」ガシッ

妹「──くっ」

女3「はぁ……はぁ……やっとかよ……はぁ……はぁ」

妹「離して!」

女2「だーめ」

女3「あはは、本当にお前はバカだな。だから、女にやられんだよ」

女2「……」

妹「……」

女3「ぎゃははははははは」

兄「──それはお前」ドガシッ!!!!


女3「んがっ!?」バタン

兄「おら、おら」ドゴッバキッゴゴ

女3「て、てめぇ、誰だよ!?」

兄「まずは自分で考えようか」バキッドガッ

女3「んあああっ!!!!」


女3「ぁ……」ぼろぼろ

兄「……ふぅ。年甲斐もなくやり過ぎた」

妹「高校生なら普通ですよ」

兄「思春期まっただ中だから別にいいか」

妹「あはは~」

女2「あ、あの……これで、見逃してくれるんですよね?」ビクビク

兄「とりあえず妹になにか言ってみれば」

女2「えっ、なにかってなにを……?」

兄「自分で考えなよ。君ならそこに這いつくばっているのよりはできるでしょ」


妹「……」

女2「い、妹さん。えっと、あの、ご、ごめんなさいっ!」

妹「?」

兄「なんのことだか分かっていないようだ」

女2「その、学校で女と共謀してハブったり……あとは、吐くまで食べさせたりとか……」

妹「……」

兄「それだけ? まだあるんじゃない?」

女2「んえ、そ、それは……その……」

兄「おらっ」ドガガ

女2「ひゃっ!! 叩かないで……」


兄「僕は暴力を振るいたいわけじゃなくて、謝罪を要求しているんだ。分かる?」

女2「……はい。分かります」

兄「うん。じゃあどうぞ」

女2「……頭から牛乳をかけたり……染み込んだ雑巾を細切れにして……食べさせたり」

兄「……」

女2「申し訳ございませんでした!!!!」

妹「やだ」

女2「……えっ」

兄「残念でした。ということで、見逃すのは取り消しになりましたー」

妹「わー」

女2「……」ぺたん


妹「あらら。女3よりはかわいい顔が青くなってますね。可哀想に」

兄「ふむ。どうしようか」

女3「うぐ……はぁ…はぁ」

妹「おっあちらの粗大ゴミが起きたようです」

兄「元気だなー」

妹「あちらにはいっぱい食べてもらいましょうか」

兄「なにを」

妹「石」

兄「えっ」

妹「これくらい平気です、ね?」ニコッ

女3「っ!?」

兄「なるほど」


妹「どうぞーおいしいですよー」

女3「やめろ!」

兄「どうぞー」

女3「ふざけんな!!!!」

兄「知らん」

女3「女2! 助けてくれ!」

女2「……」クル

女3「は?」

兄「この子は君を売ったんだ。だからこうなっているわけで」

女3「はあああぁぁぁっぁぁぁぁ!? てめぇふざけんな!!!!」


女2「……」

兄「残念」

妹「あはは」

兄「こちら石となります」

妹「どうぞー」

女3「てめぇあとで殺すからな!!!!」

女2「……」

女3「友達なら助けろや!!」

女2「……」

兄「あっちはそう思っていないようだね」

妹「かわいそう」

兄「あの人は仲間?」

女2「違います」

女3「てめええええ!!!!」

妹「あはは」

女3「あとで覚えてろよ!!!! 絶対に殺してやるからな!!!!」

兄「少しうるさい」ドガッ

女3「うげぇ!!」


兄「飲もうよ」ぐい

女3「……」

兄「おら」ドガッ

女3「はは腹はやめて……」

兄「飲もうよ」

女3「ややだ」

兄「どん」ドガッ

女3「くっ!?」

兄「学習」

女3「……」

兄「はい」

女3「……」ゴクッ


兄「おおおすごい」

妹「おいしいですか?」

女3「……なわけねーだろ」

兄「もっといってみよう」

妹「はい!」

女3「……こいつらマジキチすぎる」

兄「使い方を間違ってるよ」ドガッ

女3「うぁ!?」

妹「バカ」

兄「はやくしなよ」

女3「……」ゴクッ


女3「ぁあぁぁ」ぽっこり

妹「わーすごいですー。子豚さんだー」

兄「本当だ」

女3「がっんぐあぁ」

兄「次は?」

妹「ふむ。では、あちらをやりますか」

女2「……」ビクッ

妹「どうやって痛みつけてあげましょう」

女2「……」ガタガタ

兄「震えてる」

妹「逃げればいいのに」

兄「怖いんでしょ」

妹「そんなもんですかね」

兄「そうだよ」

妹「へー」

兄「実際に遭遇すると体が動かなくなるらしいよ」

妹「ふーん」

兄「で次は?」

妹「そうですね。同じやり方はつまらないと思うので別のにしましょうか」

兄「うーむ悩みどころ」

妹「あっ、そうだ。あれを使いましょう!」

兄「あれとは」

妹「えっとですね──」


妹「よいしょっと」ギュッ

男「くっつきすぎ」

妹「さっきと同じくらいですよー」

男「なるほど」

妹「レッツラゴー」

男「おー」ブゥゥゥゥウン

妹「さっきのような風は感じられませんね」

男「仕方ないよ」

妹「お荷物がありますしねー」



女2「うげげぐえげげぅgぇぐえぐえl」ドガガガッッガガッガg



男「どうなってる」

妹「周りの障害物にぶち当たって転がりまわっていますねー」チラッ

男「へー」


妹「もう少し速度を出しましょうか」

男「了解」ブゥゥゥゥウン!!!!



女2「ぐあおががおうごsぐおsぐいっだがぐうぎぐいづぎどs!!!!!!!」



妹「あははーすごーい」

男「いいアトラクションだ」

妹「言えてますね」


女2「ぐdぐいいdそいあうどしぐおsどうごds!!!!!!!!」


男「お疲れ様」

妹「ふぅ。大変にいい気分になれました」

男「よかったよ」

妹「はい!」



女2「……ぉぁ」ピクッピクッ



兄「さて、最後にしようか」

妹「ですねー」


兄「僕がトドメを差すよ」

妹「はいー」

兄「……どうやろう」

妹「お好きな様に」

兄「……うん」

妹「どうぞー」

兄「……簡単にやってはいけないし、とは言ってもいい方法がないし」

妹「まだですか」

兄「えーと……どうしよう?」

妹「……」

兄「うーむ」

妹「──地獄に落ちろっ!!!!」ガンッ



女2「あああっ……あぁ……ぁぁ…………」

女3「うぎゃああああああああああああ」


妹「死ねっっ!! 死ねっ! お前らなんか死んでしまえ!!!!」ドガッ

兄「おい!」

妹「この! この! 死ねっ! 死ねっ!」

女2「ぁぁ……」

女3「ひぎっ、うあぁあああああああああああ!!!!」

妹「死んで償え!!!!」


グチャッ


女2「……ぁ」

女3「いっ!!!」

妹「はぁ……はぁ……」

兄「なにやってるんだ!」


女2「」ピクッピクッ

女3「」ピクッピクッ


兄「あーあこんなに返り血を受けているじゃないか。全く」

妹「すいません。だって遅いんですもん」

兄「こんなんじゃ外歩けないよ」

妹「……ごめんなさい」

兄「仕方ないから僕のコートを着なよ」バサッ

妹「いいんですか?」

兄「こんな格好だと捕まっちゃうよ」

妹「あはは。そうですね。兄さんの言うとおりです」

兄「世話が焼ける妹だなぁ」

妹「……ごめんなさい」

兄「いいよ」

妹「……ありがとうございます」


兄「この粗大ゴミはどうする?」

妹「ふむ。あそこの土管へ入れておきましょうか」

兄「すぐにバレるだろうけどいいか」

妹「はい。どうせわたしは死にますし」

兄「……」

妹「では、女のところへ──いえ、まだ殺すべき人がいました」

兄「誰よ?」

妹「クラスの女性担任です。あの人は見て見ぬふりをしていたそうです。目があったとき
明らかに動揺し、顔を背けると、逃げるように駆け出しました。あのような人間、
いや家畜を生かしておくわけにはいきません。そうです。迫害を受けていた人の
代わりに正義の鉄槌を下さなくてはいけない。だから、殺しに行きます」

兄「どこに行けばいいの」

妹「この時間ならまだ学校に残っているはずです。ということで目的地はわたしが通う中学校!」

兄「確か僕が通っていたところで合ってるよね」

妹「はい!」

兄「よし。まずは後処理をしとこう」


兄「行くどー」

妹「はーいっ!」

兄「飛ばすよー」

妹「はい!」


ブゥウウウウウウウウン



女2「」

女3「」


男「着いたぞ」

妹「ふぅ」

男「その教師の車はまだある?」

妹「あはは。しっかりとあります。とりあえずマフラーに物でも押し込んどきますか」

男「お前ひどいなぁ」

妹「悪い子ですもん」

男「ははっ」

妹「来るまで車の陰にくるまりながら隠れてましょう」

男「……うわぁ」ジト

妹「なんですかその目」

男「なんでもないよ」

妹「ひどい」ぐすっ

男「ごめんね」


女教師「……ふぅ」

学年主任「いやはや、お疲れ様」

教師「ほんとですよ。全く最悪です」ブツブツ

主任「まあまあ、私達が教育をしていけばいいのだよ」

教師「おねがいしますよ」

主任「任せておきなさい」

教師「ふふっ、頼りがいがあるわね~」チュッ

主任「こらっ、まだ学校じゃないか」

教師「うふふ。少しくらいへいき♥」カチャカチャジー

主任「おいおい困ったなぁ」ボロン

教師「んじゅあむ。じゅぶぶぶぶ!」

主任「強引にやられたら仕方ない。はやくしたまえ」

教師「は~い。むちゅぐちゅんじゅうう」

主任「おおっ……」


兄「うわー」

妹「……気持ち悪い」オエッ

兄「吐かないでね」

妹「わかってますよ」

兄「あれに飛び込むのは嫌だなぁ」

妹「本当です。ああぁ、気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い」ブツブツ

兄「大丈夫?」

妹「──はっ!」

兄「気分が悪いなら見ててもいいよ」

妹「でも……」

兄「無理しなくてもいいんだよ」

妹「い、いえ、ただ腹が立っただけです。あとついでに学年主任も殺しましょう」

兄「じゃあ僕がその学年主任をやるから、そっちは女教師ね」

妹「ありがとうございます」


教師「んじゅれむれむ、ちゅぶぶんじゅるるるる!」

主任「相変わらずうまいねぇ」

教師「じゅぶぶじゅぽ、じゅっぽじゅっぽ!」

主任「ああっ、もう逝く」

教師「うふふ。はやく出してね。じゅぷぷぷぷぷぷ」

主任「うっ」

男「逝っていいよ」ドガッ

主任「うがっ!?」ドピュルルル

教師「きゃっ!?」

男「逝く! 逝く! 逝く! 逝く!」ドガッドガッドガッドガッ

教師「きゃあああああああああああ」

妹「うおらっ!!!!」ドガッ

教師「ぐげえぇぇぇぇぇぇl!!!!」ドサッ


兄「おらおら手加減無用」ドガッドガッ

主任「うああ!!!!……」ガクッ

兄「ふぅ」

妹「死ねっ!死ねっ!死ねっ!死ねっ!」

教師「い、妹さん。やめてやめて!!」

妹「うるさいっ! 統治者であるあなたが救わなくてどうするんですか!!!!」ドガッ

教師「だってぇ!!」

妹「生徒間だけではとまらないんですよ!! 止めるためにはどうしても強制力が必要なんです!
 なんでそれがわかんないんですか!」

教師「そんなの知らないわよ! あんたが勝手にやられただけでしょ!」

妹「──っ」ドガッ!!!!

教師「うぁ……あ……ぁ……──」バタッ

妹「はぁ……はぁ……」

兄「……」

妹「そんなこと言うからだ。あなたが悪いんです。悪い子を怒らすなんて愚かな人です」ハァハァ

兄「……そうだね」

主任「ぅ……お前ら……なにをするんだ」ダラダラ

妹「学年主任が起きたようですね。わたしが殺します。兄さんは見ていてください」

兄「──いや、今すぐはやめよう」

妹「なんでですか? この人にも責任の一端はあるんですよ。それなのになぜ」

兄「違う。そういうことではなく、車の中に縛りながら暖房をフルにかけて放置するんだ。そうすれば苦しみながら
死ねるだろう?」

妹「あは、素晴らしい名案ですね」

兄「ZIPPEIしよう」

妹「夏じゃないですけどねー」


兄「もちろん死ぬ寸前まで苦しめてからだ」

妹「はい!」

主任「ひいいいぃいぃぃぃぃ」


兄「よし。次が最後だ」

妹「はい! 女の家ですね」

兄「最後だから惨たらしくやろう!」

妹「記念ですもんね」

兄「うんうん」

妹「目標、女の家。レッツラゴー!」

兄「おー」


兄『もうけっこう暗いね』

妹『終わりが近づいてきた証拠です』

兄『……うん』

妹『これで最後です』

兄『……うん』

妹『んふふ』ギュー

兄『……』

妹『……兄さん』

兄『なんだい?』

妹『……何でもないです』

兄『そうかい』

妹『はい』

兄『速くするからさ、もう少しちゃんと掴まってね』

妹『……はい』ギュー



ブウウウウウゥゥゥゥゥン


妹『この辺りに止めましょう』

兄『うん』

妹「ぷはぁ」

兄「おつかれ」

妹「もう真っ暗です。こんなんじゃ不審者がうろついていても全くわかりません」

兄「怖いなー」

妹「んふふ。そうですね──っと、電気が消えました」

兄「本格的に暗い」

妹「仕方ないですよ」

兄「どうやって入る?」

妹「確か、女は窓を閉める癖がなかったはず。だから、つたって侵入することができます」

兄「不用心だなー」

妹「不用心不用心」


女「……」スースー

妹『どうですか、兄さん』

兄『寝ている』

妹『では、早速お願いします』

兄『うん。でも、ヘルメットが暑い』

妹『防御と通信を兼ねていますから仕方ありません』

兄『そうだね』

妹『では、どうぞー』

兄『はいー』

兄(あまり音を立てないように)スススッ

兄(家に侵入した)

女「……」スースー

兄(まだ気づかない)

兄(けっこう緊張する)

兄「……」

女「……」スースー


兄「……」ギシッ

女「……ん」パチッ

兄(やばい! 気づかれたっ!!!)

女「き、き──」

兄「黙れ」ドガッ

女「うああっ!!」

兄「騒ぐな」ガシッ

女「うぐぅ!!」

兄「騒ぐとこのまま首を絞めて殺すぞ」ギギギ

女「っ……」ビクッ コクコク

兄「そうだ。それでいいんだ」

女「……」コクッコクッ

兄「今からお前を拘束する。暴れたらわかってるよな?」

女「ひっ」

兄「この紐でいいか」グルグル

女「い、痛い……」

兄「うるさい」ドガッ

女「は、はい」

兄「口にもやるから」

女「……はい」

兄「やっとおとなしくなったか」グルグル


兄「よし。ここで待ってろ」ガチャッ

女「……」コクリ


バタン


兄(妹が入れるように玄関を開けないと)

兄(僕だから二階に侵入できたんだ。妹じゃ絶対無理だから仕方ない)

兄(なるべく音を立てないように……)スッ

兄「……」

兄「……」

兄「……」

兄(よし。玄関まで来た。あとは開けるだけ)ソーッ

兄(ゆっくりと、ゆっくりと絶対に音を立てたらダメだ)

兄「……」ソーッ

兄(よし。鍵が開いた。あとは妹が入るだけ)

兄『開けた』ヒソヒソ

妹『はい』ヒソヒソ

兄『こっちから開けるよ』ヒソヒソ

妹『はい』ヒソヒソ

兄「……」ドクンドクン

兄「……」ソーッ



ギギギ…

>>90
ドアの音は無いことにして


女父「なあ」

女母「……」スースー

父「なぁ」ユサユサ

母「……んーなによ」

父「上が少しうるさいんだが」

母「えーそう?」

父「いやな? 最近の女はあれ思春期ってやつか」

母「みんな通るわよ」

父「にしてもだ。俺のと洗濯を別にするのは傷つく」

母「それが普通よ」

父「お前はまだ仲がいいからそう言えるんだ」

母「あー」


父「あれか。ギザギザハートってやつか」

母「それは男でしょ」

父「ララバイララバイおやすみよ~」

母「ギザギザハートの、子守唄~」

父「へい!」

母「うるさい」

父「ごめん」ショボーン

母「呆れた」

父「ひどい」

母「もう寝るからおやすみ」

父「えー」

母「またあしたね」

父「はっ!? もしかして好きな人が!!」


母「まだ言ってんの」

父「あぁ、嬉しいような悲しいような……」

母「はぁ」

父「浅い夢だから~胸を離れない~」

母「なに、娘にふられて欲しいの?」

父「い、いやそんなことは……」

母「というか相変わらず歌が上手いわね。それ歌えるなんてプロ級よ」

父「すごいでしょ」

母「あーすごいすごい」

父「心がこもってない」

母「……」

父「……」

母「はぁ。あなたってどうしようもないわね」

父「ごめん」


母「知ってるけど」

父「うっ……」

母「どうしたの」

父「いや、今のいいな~って」

母「なにが」

父「ときめいた」

母「……はぁ」

父「また溜息をつかれた……」

母「……嘘よ」

父「ふえっ!?」

母「そういうところが好きで結婚したの」

父「くっ」///

母「おやすみなさーい」モゾモゾ


父「な、なぁ」

母「なによ」

父「そ、その……たまにはさ、しないか」

母「ええっ」

父「だってさ、最近してないからさ。だからたまにはどう」

母「……はぁ」ジトッ

父「お願いしますお願いします」ペコペコ

母「あー分かった。分かったから」ギュッ

父「わ!?」///

母「はい」チュッ

父「うっ」///


母「仕方ない人ね」

父「……女母も」

母「なんですって」

父「冗談」

母「このーっ!」

父「痛い、痛い」

母「まあいいわ。じゃあ始めて」

父「あぁ」キリッ

母「カッコつけても遅いけどね」

父「いいじゃないか」

母「赦してやる」

父「さすが」

母「はん」

胸糞注意だから気分が悪い人は見ない方がいい


父「では──」



ギギギ……



父「ん? いま玄関が開く音がしなかったか」

母「えーそう? たぶん気のせいよ」

父「聞こえた気がしたんだが」

母「もう、そんなのいいじゃない。だから、はやく」チュッ

父「いや、でもな。さっき上がうるさくて次は玄関とくれば女が立てている音と
推測するのが普通じゃないか」

母「んもう、ムードがないわね~」

父「ごめんな。でも、女のことが心配なんだ。ごめん。本当にごめん」

母「ふふ。あなたは優しいのね」

父「普通」


母「ふふふ見直したわ」

父「そうか! 見直されちゃったか」

母「また調子に乗ってる」

父「すまん」

母「それだけが難点ね~」

父「でもなー」

母「まあいいわ。じゃあ待ってるからいってらっしゃーい」

父「すぐ戻るから」

母「待ってま~す」

もう寝ないと大変だからまた明日


父「おーい女ー」

父「いかんぞーこんな夜に外に行くなんてー」

父「お父さん許さんぞー」

父「あれか。もしかして彼氏の家とかか」

父「まだいかんぞ。するならちゃんと避妊をしてだなー」

父「っていないのか」

父「彼氏もいるわけがない」

父「あーよかった。まだ眠れないだけでもう寝たのか」

父「よしよし。ちゃんと靴もあるし、鍵も閉まっている」ガチャガチャ

父「心配して損をした」

父「いやいや、損はしてないな。必要な心配だ。そうに違いない」

父「戻るか」とてとて

兄「お父さん、娘さんを僕にください!」ドガッ


父「!?」

兄「お願いしますお願いします」ドガッドガッ

父「ううっ……いかん……いかんぞぉ」バタッ

兄「そんなこと言わないでくださいよ」ドガッドガッ

父「まだ早い……早すぎる……あと二十年以上はだな……」

兄「行き遅れじゃないですかーやだー」ドガッ!!!!

父「ぐふっ!!」バタッ

兄「そんなこと言うから、こんな風に襲われちゃうんですねー」

父「くっ、お父さんは認めんぞぉ……」バタリ

兄「問・題・解・決!」


母「あ、あなた! どうしたの!? すごい音がしたんだけど……」バタバタ

妹「ハッスルしてるんですよ」

母「えっ」クルリ

妹「3、2、1ハッスル! ハッスル!」ドガッドガッ

母「くふっ」バタリ

妹「お母さんがいるなんて羨ましいですねー」ドガッ

兄「ハッスルプレーはそこまで」

妹「え~」

兄「母親には優しく」

妹「紳士ですね!」

兄「ほめないでいい」

妹「兄さんが言うのなら仕方ないですね。やめてあげましょう」

兄「できた妹だね」

妹「ほめないでください」ふふん

兄「じゃあ縛ろうか」

妹「任せて下さい」


兄「やあやあ」

女「──!!」

兄「リビングまで連れて行くから暴れんなよ」

女「……」コクコク

兄「よし」ガシッ

女「……」

兄「お前軽いな」

女「……」

兄「ちゃんと飯を食ってんのかよ」

女「……」コクリ

兄「それでこれかよ? かーっ、もっと食えや」

女「……」コクッコクッ

兄「まあいいか」

女「?」


兄「連れてきた」

妹「お疲れ様です」

父「女! 大丈夫だったか!?」

母「はぁ。よかったわ」ホッ

女「──!!」

父「君、なんでこんなことをするんだ!」

母「うちにはお金なんてないわよ」

妹「そんなものいりませんよ」ニコ

父「では、なぜこんなことを……」

妹「そこで震えている女なら知っているかもしれませんね」

女「……」ブルブル


兄「剥がすから喋っていいぞ」バリッ

女「……」

父「声と背丈から察するにこの子はお前と同年代じゃないか。知り合いなのかい?」

女「……」

母「女、なにか言ったらどうなのっ!?」

女「……知らない」

妹「ちっ」

父「こう言っているじゃないか。もしかして勘違いではないのかね?」

妹「んふふ。娘さんの言うことを信じちゃって。優しいお父様です」

父「どういうことだね?」

妹「どういうことでしょうね。キツく問いただしてはどうでしょうか?」

父「……」

母「私がやる」

父「だが」

母「あなたは優しすぎるのよ。そんなんじゃ無理だわ」

父「……頼む」


女「……」

母「女」

女「……」

母「なにかしたんでしょ。さもなければこんなひどいことをするなんて考えられない」

女「……知らない」

母「このバカ!!!!」ゴチン

女「っ──!」

兄「うわぁ」

妹「すごいです」

父「痛そう」

母「なんであなたまで入ってんの!?」ゴチン

父「ごめん」

妹「全然痛がってないですよ」

兄「これ明らかに慣れてるだろ」


母「で、どうなの? なにかしたの?」

女「……友達」

母「ともだちぃ? 友達がこんなことをしてくるの?」

女「知らない。あたしは何もしてない。逆恨みだよ」

母「……本当?」

女「ほんと」

母「……」

女「……」

妹「ダメな娘さんですね」

母「貴方は黙って」

妹「仕方ないですね。早くしてください」

兄「早くしろよ」

父「そーだそーだ」

母「……」キッ!!

父「ひっ」

母「はん!」ゴチン

父「痛い」

母「全く」

父「ごめん」


母「で、どうなの?」

女「だから、知らないって」ジー

母「嘘をついているときの顔をしているわよ」

女「してない」ジー

母「なんでそんなに目を見てくるの?」

女「いつもそうだよ」

母「違うわよ。嘘をつくとき、いつもそうやって目を見てくる」

女「気のせい」

母「あのね、人は滅多に他人と目を合わせないの。威圧するときや
威嚇するときくらいしか普通は見ないのよ。あと、怒られているのに
真っ直ぐ相手を見るなんて余計に怒りを増長させるから、視線をぶつけないのが常識」

女「っ……」

母「白状しなさい。このままじゃどうなるかわかっているでしょ」

兄「早くしろよ」

父「言いなさい」キリッ

妹「そうですよー……『女ちゃん』」ニコ

女「くっ、この人たち!!!!」


母「なにその口の聞き方は!?」

女「うるさい! うるさい!」

母「この反抗期!」

女「倦怠期!」

父「違うよ」

母&女「「うるさい!」

父「はい」

妹「このお父様はなんでこんなに余裕なのでしょうか」ヒソヒソ

兄「さぁ」ヒソヒソ

妹「いまいち緊張感がありません」ヒソヒソ

兄「気にしてるから言わないでよ」ヒソヒソ

妹「あと、兄さんに乱暴な口調は似合いません」ヒソヒソ

兄「だって、このくらいしないと抵抗してくるじゃない」ヒソヒソ

妹「そうですか」ヒソヒソ


女「──!」

母「──!」

妹「ふぅ。もう面倒くさいです。こちらにわたしの携帯があります。
そして、そちらの娘さんから受けとった数々のメールを見てもらいましょうか」

女「──っ!?」

母「……見せてもらいましょうか」

女「ちょ、ま、待って」ジタバタ

妹「はい」スッ

母「……」

女「ま、待って。違うの。それはあたしじゃない!」

母「……」

妹「どうでしょうか?」

母「……はぁ」

女「お、お母さん?」

母「こんなひどいことをしてたのね。どこで育て方を間違えたのかしら」

女「……」

母「精一杯の愛情を注いできたと思ったのに。こんな最低なことを
するなんて親として失格ね」

女「あ、あああぁぁぁ」

妹「育成失敗です」

兄「おめでとう」


母「ごめんなさいね。全てうちの娘が悪いわ。本当に申し訳ございません」

女「……」

妹「あはは」

兄「よくわかっているじゃないか」

母「そうね。こんなことをされても文句は言えないのかもしれない。それほど
人としていけないことをしたわ。だから、なけなしの贖罪を──」

妹「いえ、良いのです」

母「それはどういう」

妹「これからそれをすべて果たすのですから、お母様は見ていてください」ニコニコ

女「ひっ」ゾクッ

母「ちょ、ちょっと待ってくださらない。なにをするのかしら」

妹「んふふ」

兄「予想はついているだろ」

女「あ、うあ、うああああぁぁ」ガクガクブルブル

妹「では、はじめ──」

父「────待ちたまえ」


女「お、お父さん!」

妹「……なんでしょうか」

父「そのメールだけでは充分な証拠足り得ないのではないだろうか」

女「そうよ!」

母「あなた……」

父「メールを送ることはうちの娘でなくても、携帯を借りればできるはず。
娘が自分の携帯からその携帯へ送ったとは断定できない。だから、中傷をした
証拠を出してもらいたい」

妹「そうですね。しなかったということを証明するには、非常に難しいです」

父「そうだ。全ての場合について調べなくてはいけない」

妹「なんですか。推定無罪で行くつもりですか。犯罪者と似たことを言うんですね」

兄「『疑わしきは罰せず』ってやつだ」

父「……」

妹「ですが、したという事象が一つでも存在すればそれは一瞬で崩れてしまいますよ」

父「いいんだ」

妹「へぇ」

父「お父さんは信じているからな」

母「……はぁ」

女「……」


妹「んふふ。そちらの娘さんは大変に焦っているようですけどね」

兄「冷や汗が出てんじゃん」

父「拘束されているから当たり前だ」

妹「はいはい。そうですね」

父「はやく証拠を出したまえ」

兄「追い詰められた犯人が発しそうな台詞だな」

妹「それだけ窮地に陥っている証拠ですよ」

父「出さなければ認めんぞぉ」

妹「別に裁いているのではないんですけどね」

父「それでも、勘違いだったら大変だ。君たちはおそらく未成年だろう」

妹「逆に未成年だからこんなことしているんですけど」

兄「天下の未成年様だから平気なんだな」

父「……」


妹「では、娘さんがクラスメイトへいじめをしていた証拠を提出してもらいましょう」

兄「よしきた」サッ

女「ぁそれはあたしのスマホ……」

妹「ギャラリーを開いてください。そこにあるはずです」

女「や、やめてよ……」

兄「ちっ、スマホなんか使いやがって。俺様は携帯すら持っていないのに」

妹「お金がないんですし仕方ないですよ」

兄「お前貯金が二万もあったじゃないか」

妹「あれがわたしの全財産ですから♪」

兄「そうか──っと、これでいいか」

妹「うわぁ。これはひどい。この子は思い出したくもないでしょう」

女「……」

兄「……」


妹「お父様。こちらとなります」スッ

父「────なんだ、これは」

妹「んふふ。決定的ですね。これほどの高画質でさらに娘さんが暴行する瞬間を
写しています。被害者と加害者の顔がバッチリ映り込んでいますね。
スマホで撮影するからこうなるんですよ。ガラケーならまだ否定できただろうに。
高性能が故に娘さんは肯定されてしまうのです。
おそらくご友人に撮ってもらったのでしょう。んふふふふ。
証拠を残すなんてバカですねぇ。あっ、そういえば画像だけでなく動画もあるのです
。もちろんネットにもありますよ。承認欲求がお強いんですね!」

父「……」

母「なんていうことを……」

女「……」

兄「さいてー」

妹「被害者は体だけでなく心も攻撃をされていたのですね」

兄「……」

父「……」

妹「中傷の理由にはなりませんが暴行のそれには値します。要するに娘さんは──」

女「────あんたが悪いのよっ!!!!」


妹「……は?」

女「標的にされるあんたが悪いの!!」

父「お、おい女──」

女「お父さんは黙って!」

母「女、あんたやっぱり……」

女「はいはい! あたしは妹ちゃんをいじめました! だから、なに?」

妹「認めましたね」

女「ごめんなさーい」クスクス

兄「このにやけ顔……ファミレスで見たのと同じ」

妹「これが本性なんです」

父「女、お前というやつは……」

母「…………はぁ」


妹「んふふふふ。女ちゃん、お久しぶりです」ヌギッ

兄「おい、ヘルメットを脱いでいいのか?」

妹「もういいんです。わたしに殺されることに意味があるんですよ」

父「き、君は画像に写っていた……」

母「やっぱり、そういうことなのね」

妹「こんばんは。女の友人である妹と申します。だから今日は遊びに来た次第です!」

女「妹ちゃん、どうしてこんなことをしたの?」

妹「女ちゃんを殺すためにですよ♪」

女「くすくす。おっかしー」

妹「んふふ。そうですか?」

女「そうだよー」

妹&女「「あはは」」

父「……」

母「……」

兄「……」


妹「だから、女ちゃんには苦しみながら死んでもらいます」

女「やだなー」

妹「女ちゃんが悪いんです」

女「いじめられるほうにも責任はあると思うよ?」

妹「へぇ」

女「だってさー妹ちゃんの家って貧乏だよね」

妹「平均水準と比べるとそうなりますね」

女「あっ、両親は死んじゃったんだっけ」

妹「仕方ないですよ」

女「かわいそー」

妹「んふふ。そうですね」

女「そのときは怖かった?」

妹「よく覚えてないですね」

女「へーどうでもいいけど」


妹「はい! 女ちゃんが悪いんです」

女「だーかーらー妹ちゃんの身なりがみずぼらしいから悪いんだって」

妹「いやいや、直接手を下したほうが悪いに決まっています」

女「そうかなー?」

妹「はい」

女「でもさ、元を辿ればあたしをイライラさせた妹ちゃんに原因があるわけで」

妹「仮にそれが正しいとしても、あくまでも遠因なわけですよ」

女「あっ、認めたね。自分に原因があるって認めた!」

妹「あはは。よくある手段ですね」

女「えーだって認めたじゃん」

妹「仮定の話であって、認めてはないです」

女「そうかそうか」

妹「だから、女ちゃんが全面的に悪いんです」

女「えーだーかーらーそっちが悪いんだって」

妹「わかりました。ほんの少しでもこちらに責任があるとしましょう」

女「ソーダソーダクリームソーダ」

妹「学校に行く前に50円ぶん食べっちゃお~っと!」

女「古いよー」

妹「名作だからいいんですよ」

女「へー」


妹「でですね、こちらに責任があるとしても遠因でして、女ちゃんが手を下したのが近因です」

女「はぁ」

妹「それらを同列に述べること自体がおかしいんです」

女「なんで」

妹「いくら嫌いな人がいたとしても、我慢をするべき、いや無関心に徹することが最良の方法です」

女「えーでも学生だしー」

妹「学校は社会に出るための職業訓練場なのです」

女「本番じゃないなら別にいいよね?」

妹「そうとは言っても女ちゃんはやり過ぎました」

女「未成年だから平気」

妹「人の尊厳を踏みにじる最低な行為をしたんです。現代人として良心が傷まないんですか?」

女「ああ言えば上祐」

妹「──っ」

女「あれーどうしたの? お得意の論点ずらしをしてこれからどうするの?」

妹「……」


妹「……もういいです。女ちゃん、あなたを殺します」

女「えーまだ話し足りないよ」

妹「女ちゃんはわたしに対して肉体的にも精神的にも攻撃を行いました。
だから、意趣返しをされても文句は言えません。まさに悪因悪果、
自業自得、身から出た錆」

女「日常会話で出ない言葉を無理に使わなくてもいいよ」

妹「わたしは人間です。だから、殺られる前に殺ることが自然。人としての本能です」

女「あれー? あたしには現代人として振る舞えと言うのに、妹ちゃんは本能で生きるの?
 それってなにかおかしくない? 自分の意見を押し通すためにいいように展開してるよね」

妹「……」

女「過度に自身を特殊化させるなんてナンセンス極まりないよ」

妹「……外来語を無理に使うと意味が複数あるから、伝わりづらいですよ」

女「そうかなー? じゃあ屁理屈とか詭弁でも合ってるかな」

妹「……」

女「そもそも妹ちゃんは何を目的としてあたしと話しているの? 結論を出したいの、
もしくは妹ちゃんの正を認めさせようとしているの?」

妹「……」

女「ねぇねぇ」

妹「……女ちゃんみたいな人が将来モンペとか基地外と言われるんです」

女「不当なレッテルをとうとう貼ってきたよ。もうダメだね」

妹「くっ、この──」

兄「────もういい」


女「あら、なんでしょうか」

兄「早くしないと近所に気づかれる。さっさと処理を始めるぞ」

父「待ちたまえ! 話せばわかる」

兄「ああん?」

父「これは命乞いではない。まだ若いからそういう破壊的な考えに至るのであってね」

兄「もう遅い」

父「どういうことだね」

兄「既に人を四人殺してきた」

父「なっ──!?」

女「……えっ」ゾクッ

母「貴方達はなんてことを……」


兄「もう止まるわけにはいかない」

父「まだ、まだ大丈夫だ。君たちには未来がある。残りの人生は少なくとも五十年は
あるんだ! 一時の感情に流されるな!」

兄「うるせえ」ドガッ

父「うがあっ!?」

母「あなた!」

女「お父さん!」

兄「おい、妹」

妹「……えっ」

兄「始めるぞ」

妹「え、えっ」アタフタ

兄「お前がしたいようにしてやれ。思うがままにしてやれ」

妹「は、はい」

兄「準備があるなら俺様がするから言ってくれ」

妹「え、えっとですね。それでは──」

休憩

寝るからまた明日


父「……はぁ。まさかこんなことになるなんてな。ごめん」

母「あなたは悪く無いわ。原因は女と育てた私にあるの」

女「……」

父「なぁ」

女「……」

母「もう全ては明かされたのよ。素直になりなさい」

父「なんであの子をいじめたんだ」

女「……だって、あたしが遊びに誘っても全然来てくれないから」

父「それはあの子らの家にお金がないからだろう」

女「……」コクリ


母「それだけでいじめたの?」

女「……」コクリ

母「……はぁ。それだけ?」

女「……」コクリ

父「……」

母「……」

父「友人ではなかったのかい?」

女「……もう分からない」

母「嫌いだったの?」

女「……分からない」

父「そんなに相性が悪そうではなかったような」

女「……」


母「その以前には遊んでいたのよね?」

女「……」コクリ

母「嫌いだったの?」

女「……分からない」

母「どうしてあそこまでひどいことになったの?」

女「それは、女3が」

母「あの騒がしい子?」

女「……」コクリ

父「その子がどうなんだい?」

女「ローリングソバットとかジャーマンスープレックスとかを教えてきてやってみろって」

父「……」

母「……」

女「……」


母「他は?」

女「え、えっと、メールでひどいことを書いて送ったりネットに動画を上げたりとか」

母「それはあなたがやったの?」

女「……」コクリ

母「本当に?」

女「……」

父「すべて打ち明けなさい」

女「……女2」

母「あのおとなしい子?」

女「……」コクリ

母「あの子が?」

女「……書いて送れって」

母「嘘じゃない?」

女「……」コクリ


母「……はぁ。ならさっきの言葉の応酬は?」

女「あれは、昔いっしょにああやって遊んでいたし、それになんかいじめをするようになってから
ひどいことを言うようになったり、煽るようになったり……」

父「──なるほど。そういうことだったのか」

女「ご、ごめんなさい、お父さん」

父「あの子との関係に取り憑かれていたわけか」

女「……そうなの。しちゃいけないって分かっているのに、次第に曖昧になってきて……それで」

父「つまり、共依存していたわけか」

女「そう、なのかな?」

父「あぁ。一回入ると非常に抜け出しづらい。一生治ることはないそうだ」

父「って本に書いてあった」

母「……はぁ。いいところで」


女「くすくす」

父「な、なんだなんだ」

母「だって、ね」

女「くすくす」

父「笑うな」

母「ふふ」

女「くすくす」

父「……はぁ」

母「仕方ない人ね」

女「ほんとほんと」

父「……そういえば久しぶりに女と長く話した気がする」

女「そうかなー?」

母「難しい年頃だから仕方ないわよ」

女「ひどーい」

父「そうか」

女「くすくす」


母「でも、それだとここまでのことをするかしら?」

父「ここまでとは?」

母「だから、わざわざ侵入して石で殴ってくることよ。挙句の果てには拘束してくるなんて」

父「ま、まあそうだな。異常だ」

母「女、決定的なことをあの子にしたのではなくて?」

女「……」

母「明らかに言動がおかしいじゃない、どうなの?」

父「言いなさい」

女「……」

母「女!」

父「言いなさい! まだ間に合う可能性がある」

女「……そ、その」


ガチャ


兄「さてさて、始めようぜ」

妹「んふふ」


父「待ってくれないか」

兄「ああん? 無理に決まってんだろ」

父「そこをなんとか!」

兄「だから、無理だっつーの」

父「お願いだ! 私はどうなってもいいから家族には手を出さないでくれ!!」

兄「……」

妹「んふふ。まさにテンプレートですね。でも、いいでしょう」

父「ほ、本当か!」

妹「はい♪」

兄「ならこれから妹が言うとおりにやってもらおうか」

父「……善処しよう」

妹「んふふ。では、そちらの娘さんに食べさせてあげてください」

兄「あんなに軽いんじゃな、もっと食わないと」

女「……」

父「……なにを食べさせればいいんだ?」

またこんど

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