五月雨「カリスマ鎮守府……ですか?」 (11)


ゆっくりやっていきます

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序章―泣き虫駆逐艦ととある鎮守府の話―









「うわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!」





自分で上げておいてなんだが、なんと情けない悲鳴なんだろうと白露型駆逐艦6番艦『五月雨』は思う。
全速力で走りながら涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔でクルリと後ろを振り返ってみる。





「「「グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」
「うわぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!」





さらに大きな悲鳴を上げながら五月雨は必死に足を動かす。

3体、かれこれ3里は走っているというのにまだ3体。
と言うか減っていない。一体も『奴ら』の数が最初と変わってない。

うう……、と涙ぐみながら五月雨は自分の腕に装着された新品の砲撃機を見る。確かに五月雨は『奴ら』を殲滅する為に生み出された存在だが、練度1の新兵でしかない今の自分が『奴ら』3体。(軽、駆逐、駆逐)それもエリートクラスの相手なんて出来る訳が無い。


まぁ重巡、戦艦、空母と言った強大な力を持った主力、もしくは自分の姉の様な、駆逐艦の中でも化物じみた一部の『例外』ならば練度1でも話は別かもしれないが……




(私じゃ無理ですよぉ………)


自分は一介の、それもレアでも武勲の称号も持っていないただの、それも、どちらかと言えば弱い方の部類に入る駆逐艦だ。
直接的な戦闘よりも護衛任務や燃料供給の為の遠征の方が性に合っている


「……ってこれも一応護衛任務みたいなものじゃないですかぁあああ!!!?」

ちょっと待て、まさかとは思うが輸送船の護衛任務って敵の排除なども含むのか?燃料の為の遠征時に敵の奇襲を受けた場合撃退しなくてはならないのか?
そんな至極当たり前の事に気づいた五月雨が、思わず絶叫しそうになった時だった





ズガガガガガガガガガガガガ!!!
と言うガトリングを乱射した様な音が耳に入るより先に、体全体に古びた木が軋むような衝撃が走る。



「きゃぁあああああ!」


艦装によって張り巡らされているシールドが敵の攻撃を受け止めた、と五月雨は擬似AIが情報を提供してくる前に悟った。



「う、う……やぁああああああああああああああああああ!!」


一見穏やかに見える海を駆けながら、後ろに向かって12cm単装砲を乱射する。鋼の装甲を撃ち貫く弾丸を、まるで散弾の様に打ち放つ。海面に何度も当たり、時に銃弾同士がぶつかり合う
しかし矢鱈滅多らに撃ったその砲撃が、敵の装甲を撃ち貫く事は無かった。精々跳弾が何発か当たった程度だ。
しかしそれでも、距離を少し放すことは出来た。


息も絶え絶えになりながら、五月雨は奴らに背を向け走り続ける――――――















少し速度を落としながら



(撃退する必要は無い……)

五月雨の目的はあくまでも『人命救助』なのだ。奴らを撃滅する必要も、撃退する必要も無い。

これは、奴らの行動原理上の問題でもあるが、奴らは何故だか自分達の様な存在を優先的に襲うと言う傾向がある。
ならば、自分と言う餌を見失った場合、奴らは再び先の輸送船を襲う事になるかもしれない。



だから自分は囮、餌。引き付けるだけ引き付け、あとは全速力で撤退すれば良い



(練度1しかない自分にだって、それ位の事は出来る!!)


逃げさせられれば、自分が逃げられれば、上手く敵を撒ければ





―――そう思っていたのは果たして慢心だったのか





ズドン!!



と言うとんでもない衝撃が脇腹に走った、そう感じる前に体が横薙ぎに弾き飛ばされ、そのまま5メートルは宙を飛び、その後もまるで石飛ばしの様に体が海面を何度も飛び跳ねて―――



「……がぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!?」


あまりの衝撃に肺の空気を全て吐き出させられた五月雨が激痛に声を荒げる事が出来たのは、勢いが完全に殺された後だった。
ガホッ、っと言う音と共に何かが口から吐き出される。自分の血の塊だと分かり、なんとも表現出来ない感情で頭がいっぱいになる。

ガタガタと震える全身に無理やり動かし、五月雨は自分が吹き飛ばされてきた方角を見据える。





戦艦タ級―戦艦ル級。





―――悪夢が、そこにあった。




「う、そ……」



―――まさか、誘導されていた?

自分が相手を引きつけていたのではなく、風上に身を置き、風が運ぶその匂いで草食獣に自分の存在を知らせて風下にいる仲間の元へ誘導し、獲物を仕留めると言う獅子の様に……。


それに怯えるより先に、2体の戦艦は、その砲身をこちらへと向ける。


もう、どうする事も出来ない。
今の自分は『大破』状態にあり、銃弾はさっきので全て使い切った。走るだけの燃料ももう底を着く。
完全なチェックメイト



(……ああ、そうか)


不意に、体の震えが止まった



(本当に怖くてどうしようもなくて、これから死ぬって時に)















(何にも感じなくなるって、本当だったんだなぁ……)







直後、無慈悲な一撃が一体の艦を食いつぶす轟音が響いた









「………え?」


ただし


それは、戦艦の砲弾が五月雨を撃ち貫いたものではない
『魚雷』が敵の戦艦一体を爆殺した事で発生したものだ


当然だがその魚雷は五月雨が放ったものではない





「あー、救援信号送ってきた輸送船が言ってた駆逐艦ってあんた?」



「あ、あの……」
「あー、ここでグダグダ話すのも嫌だし、詳しくは帰ってからねー……はー、面倒臭……絶対報告書書かされるの私だしなー……」


その乱入者はコキコキッと、まるで寝起きの様に肩を回しながら、戦場にいる事を感じさせない様な気軽な調子でこう言った






「んじゃまぁ、とっとと片付けますかね……重雷装巡洋艦『北上』敵艦隊を撃滅しまーすっと」






これこそが自分の日常だと言わんばかりに軽く、そう言った




このスレは>>1が勝手にランク付けした『カリスマがある』もしくは『カリスマがある様に見えないけどもしあったらその経緯を捏造すれば面白そう』なカリスマあふれる艦娘中心の話です。

カリスマにあふれた艦娘ばかり出るとは限りません。

かっこいい(笑)厨二病の話ばかりになります

地の文が付くのは初回のみ

それでも宜しければどうぞ

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