餅「嫌われ餅子の一生」(18)

餅「特にじいちゃんばあちゃんのいる家庭に嫌われています」

餅「餅…餅はいりませんか」

通行人「いらないよ」

餅「餅はいりませんか」

通行人「だからいらないよ」

餅「餅は」

通行人「どうしてピンポイントで俺ばかりに言うの」

通行人「正月でもなけりゃ、たまり食べないよなぁ」

餅「そう言わずに。熱い緑茶と甘い餡に包まれたおはぎなんか最高ですよ」

通行人「でもなぁ。喉の通りが悪いのがネックなんだよな」

餅「喉の悩みなのにネックとはこれいかに」

通行人「だまれ」

餅「…もし買ってくれたら…私を差し上げます」

通行人「…体を売るってのかい、餅が!?」

餅「餅は姿形を自在に変えることができます。つまり…?」

通行人「Gokuri…」

餅「女体に変化する事もできるんです、そう、餅ならね」

グニ゙ャン

餅「どうでしょう、なかなかいいスタイルだと思いますが」

ボンッ キュッ ボン!

通行人「…!」

ムクムク

通行人「ひ、ひらけボッキッキ…」

餅「あらあら…ここじゃ何ですから、人通りの少ない路地裏へ行きましょうか」

通行人「はっ、はっ、早く!俺は最早辛抱できないだろうが!」

ジィーッ ボロンッ

餅「せっかちさんですねぇ…」

ソッ サワワ

餅「どうですか、餅の粘りが堪らないでしょう?」

ヌチャリ コスリ

通行人「おふっ」

餅「さぁ、次はこれを使いましょうか」

それは、ほっくり茹でられた豆であった。

餅「これをこうしてそうして…なんやかんやして…私に塗りたくる…ほぉら、ずんだだよ♪」

通行人「なっ、ナッパァァァ!」

ベジータ!

餅「ほぉら、ずんだズリ…」

ヌチャズリ…

通行人「あっ、あっちょんぶりけ!」

餅「まだ完全に潰れていない豆が奏でるハーモニー…そして餅の粘り!」

通行人「はっ、白・撥・中!」

餅「あはっ、大三元だっていうの!?」

餅「じゃあ、これは?」

それは、おはぎだった。

餅「甘さ控えめ…ならさっ!」

グイッ

通行人「ムグッ…んぐぐっ!?」

餅「ほらほらほら、たぁぁぁんとおたべ!」

グイグイ

通行人(つ、詰まる…おはぎが、詰まる!)

餅「あはっ、おはぎで死んじゃうのねぇぇぇ?」

グイグイ

グイグイ

通行人「あ…ぶぁ…」

グルンッ

通行人(意識が…そういえば、子供の頃、ばあちゃんが作ってくれたおはぎを、いらないって言ってばあちゃんを悲しませたっけなぁ…)

ボヤ~

~通行人の過去~

ばあちゃん「おはぎやで」

通行人「いらん」

ばあちゃん「くえ」

通行人「いらん」

ばあちゃん「食えやクソガキぃぃぃ!」

グイグイ

通行人「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

通行人「…ば、ばあちゃん…」
ポロッ

通行人の頬を伝う一筋の涙

それは

汚れなき 純粋な 液体

餅「…泣いてるの?」

通行人「ばあちゃん…ごめん…ごめんな…」

餅「…」

餅「…もっと早く貴方に出会えていれば…」

ボウッ

餅「私は…世界を壊すことなんかしなくてよかったのに…よかったのに!」

ゴゴゴゴゴ

通行人「なっ、何が!?」

餅「おはぎは世界滅亡のトリガー…貴方が致死量のおはぎを食べる事…そして」

ピカッ!

通行人「まぶっ…」

サワァァァ

餅「さよなら、この世の全ての生物はおはぎにより死滅する」

通行人「し、死滅!?」

餅「そう。私は世界を破壊する為に天界から送り込まれた…破壊者よ」

通行人「て、天界…いったい君は何を…」

サワァァァ

餅「言う必要は無いし知る意味も無い。何故なら世界はもうすぐ、その存在意味を失うから」

通行人「あ、あんだって?」

餅「ほら、聞こえるでしょう、破滅の足音が…」

通行人「…!?」

男「う、うわぁおはぎが!」

女「きゃあ、おはぎが!」

少年A「持って行かれた!」

少年B「兄さん!」

少女「いやっ…おはぎが膣内に…」

ばばあ「いやっ…おはぎが膣内に…」

通行人「おはぎが人間を襲っている…?」

餅「そう。おはぎたちは7日かけて生物を滅ぼすわ」

通行人「な、なぁ~にぃ~」

ヤッチマッタナ!

男「男は黙って!」

全員「みたらし!」

男「男は黙って!」

全員「みたらし!」



餅「おはぎ人気ないのかよ~」

こうして餅の放ったおはぎにより

世界は滅びた。

天界の思惑通りに…

だがそれは

新たな悲劇の幕開けでもあった…

嫌われ餅子の一生
第一部 おわり

完結です

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