ありす「恋の呪縛」 (58)

ドキドキプリキュアのSSです

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ありす「『友達の恋を応援する』」

ありす「言葉にするのは簡単ですね」

ありす「いいえ、おそらく実行することも簡単でしょう、誰もがやっていることだと思います」

ありす「しかし、残念ながらわたしにはそれを行うことは出来ないようです」

ありす「なぜなら、わたしはその『友達』のことが好きなのですから」

ありす「もし、その友達の恋が成就してしまったら……わたしは死んでしまうでしょう」

ありす「しかし、もしわたしが自分の恋を押し通したとして、おそらくそれは成就せずわたしは傷心のあまり、やはり死んでしまうでしょう」

ありす「恋というものは……難しいですねぇ」

麗奈「で、今の話はなんですの? わざわざ放課後に人の家に来てまでする話ですか?」

ありす「ふふっ、聞いてくれてありがとうございます」

演説のような独り言を最後まで聞いてくれたお礼をしつつ、わたしはソファに腰掛けました

麗奈「つまり、アナタは六花さんのことが好き、ですが六花さんはマナさんのことが好き、そしてマナさんはレジーナさんと付き合っている」

ありす「最後に、麗奈さんはわたしのことが好きなんですよね?」

わたしがそう付け足すと麗奈さんは途端に苦虫を噛み潰したような顔になり

麗奈「それを知っていて私に恋愛相談をするアナタはどういう神経をしていますの?」

怒ったような口調で話しますが、麗奈さんは優しい人です 本当に怒っているわけでは無いのでしょう

ありす「はい、ですからわたしは麗奈さんに感謝していますよ ほっぺにちゅーしてあげましょうか?」

麗奈「なっ、何を言ってますのアナタは!」

ありす「ふふふ」

麗奈「何を笑っていますの!?
もう、本当アナタは悪い人間ですね、そんなアナタを好きになってしまった私の気持ち、時々は考えてくれてもいいのではありませんか?」

少し、イジワルし過ぎてしまったでしょうか?

ですが麗奈さんはすぐに落ち着き紅茶を一口、そんな姿を見てわたしは素直に

ありす「……麗奈さんは強い人ですね」

一つの感想を述べました

ありす「わたしの六花ちゃんへの思いをちゃんと聞いてくれる、これはわたしには出来ないことです」

ありす「わたしは六花ちゃんからマナちゃんへの恋愛相談をされた時、辛くて逃げてしまいました」

ありす「わたしは臆病者です
六花ちゃんの恋を応援することが出来ず、自分が六花ちゃんを幸せにすると言い切ることも出来ず、麗奈さんのように好きな人の側に居られるだけで幸せ、そう思うことすら出来ません」

ありす「麗奈さん……あなたは、どんな気持ちで……わたしの側に居てくれるんですか……?」

六花ちゃんへの思い、それは心に想うだけでわたしの目から涙が零させるほどでした……

麗奈「……泣いたらせっかくの美人が台無しですわよ? 今拭いてあげますからね」

ありす「ありがとう……ございます……」

わたしの涙を優しく拭ってくれた麗奈さん、そのお陰でわたしは少し落ち着くことが出来ました

麗奈「一つ、訂正させていただきますと」

麗奈「私はアナタの側でただ待つつもりはありませんわ」

麗奈「私はアナタの気持ちが変わる、そんな可能性に賭けてアナタの側に居るのですわ」

ありす「そんな可能性……万に一つもありません……」

麗奈「では億に一つはあるのですね、それで十分ですわ」

ありす「麗奈さんは強すぎます……わたしでは無く麗奈さんがプリキュアになるべきですわ」

麗奈「冗談はやめてもらえます? あんな危険なことがこの五星麗奈に出来まして?」

ありす「そうですね、ふふっ」

麗奈「やっと笑ってくれましたね、やはりアナタには笑顔が一番似合いますわ」

今日は六花ちゃんと2人で遊びに行きます

女の子2人でお買い物に映画館、そして喫茶店でお茶を飲む、これはもうデート……

などというわけは無く、ただ単に六花ちゃんがマナちゃんを誘わなくなった、それだけのことです

待ち合わせの場所、わたしはいつも待ち合わせの25分前に行くようにしています

だって六花ちゃんは30分前には来ていますもの

六花「ありす~、こっちこっち」

ありす「今そちらへ参りますー」

前に一度だけ六花ちゃんを待ってみたことがありましたが、そうしたら次は六花ちゃんがなんと1時間前から待ってしまったので、わたしはいつも25分前に来るようにしています

ありす「ごめんなさい、いつもわたしが遅れてしまって」

六花「いいのいいの、早く来るのは私の趣味なんだから、それにまだ25分前よ? ありすと遊べる時間が25分も増えるなんてラッキー、でしょ?」

ありす「ええ、そうですね」

いつもこうです 六花ちゃんはわたしが何を言っても優しく受け止めてくれます

あぁ、いとおしい

もしわたしが「付き合ってください」と言ったなら「いいよ」と言ってくれるかもしれません

しかし、それではだめです

わたしは自分の幸せと同じように六花ちゃんの幸せを願っているのです

わたしの望みを叶えるために六花ちゃんを悲しませてはいけません

だからわたしと六花ちゃんの気持ちが同じになるまでわたしはこの思いを悟られてはならないのです


まぁ、六花ちゃんがわたしを好きになることなんて無いと思いますが

六花「でね、マナがまた無茶なこと言っちゃってね」

ありす「ふふふ、やはりマナちゃんはマナちゃんですね」

六花ちゃんと2人きりでも六花ちゃんの口から出るのはマナちゃんの話ばかり、

マナちゃんに振られた時、六花ちゃん言いましたよね?『マナへの気持ちは忘れる マナの恋を応援する』って

それなのに、それなのにマナちゃんの話をするのですね

わたしと2人きりなのに……

そう言えばマナちゃんがレジーナさんと付き合い始めたのは六花ちゃんの告白がきっかけでしたね

六花ちゃんの真剣な告白を受けたマナちゃんが自分の気持ちに気付くとは、なんという皮肉でしょう

それからしばらくは六花ちゃんは本物の笑顔を見せることは無くなってしまいました

しかし、最近ではちゃんと本物の笑顔を見せてくれます

六花「こないだの給食の時間なんてマナが」


マナちゃんの話をする時だけですが

六花「それじゃ、今日は楽しかったわ またね」

ありす「ええ、ごきげんよう 六花ちゃん」

こうして今日は何気なく過ぎていく

わたしはこの生ぬるい現実を受け入れることしか出来ないのです



麗奈「で、私のところに来たのは今日のデートの反省会のつもりかしら?」

ありす「デートではありません、ただお買い物をして、喫茶店でお茶を飲み、恋愛モノの映画を見てきただけですわ」

麗奈「それを一般的にデートと呼ぶのではなくて?」

ありす「あら、麗奈さんが世俗を語るなんて意外ですね」

麗奈「今の失礼な発言は聞きのがすとして」

麗奈さんはソファに座り直し、まっすぐわたしを見つめ、語りかけました

麗奈「結局アナタは六花さんとどうなりたいのですか?」

ありす「……わかりません」

麗奈「わからないなら私のものになってくださる?」

ありす「あら……」

麗奈「」

ありす「」

麗奈「何か言いなさいよ」

麗奈さんは冗談のつもりだったのかはたまた本気だったのかわかりませんが、少し赤くなって目をそらしてしまいました

ありす「美人ですね」

わたしは正直な感想を述べます

麗奈「はぁ、アナタの心が私に少しもなびいてないことはわかりましたわ」

ありす「ごめんなさい」

麗奈さんのご期待には沿えなかったようです

麗奈「でも時間は無限では無いのよ、私たちは尚更そう そんなことくらい分かっていますわよね?」

麗奈さんは再びわたしに向き直り話しはじめました

ありす「ええ、わたし達がこうして自由に遊んでいられるのはせいぜい18才まで」

麗奈「その貴重な、『青春』なんて呼ばれるもの どう使うか考えなさい」

ありす「はい、ありがとうございます
それではそろそろ失礼します」

わたしが立ち上がり背を向けた時、後ろから麗奈さんが語りかけます

麗奈「辛かったらいつでも来ていいのよ」

ありす「麗奈さん……」

『好き』と喉元まで出かかった言葉をなんとかして抑えました

今のわたしの『好き』は麗奈さんに優しくされたから、友情の延長線上でしかない勘違いの産物

そんなモノを伝えたところでわたしも麗奈さんも幸せになどなれないでしょう

ありす「また、お話させてくださいね」

麗奈さんの家の前、わたしは一人呟きました

やっぱり麗奈さんと話すのは居心地が良いですね

先ほど荒んだわたしの心は麗奈さんと一緒に居ることで癒されました


好きですよ、麗奈さん……六花ちゃんの次に……

なんで、なんで人の心はこんなに不完全なのですか……

わたしはただ愛されたいだけなのに……

六花ちゃんのことを忘れることが出来たのなら楽なのに……

辛いです……助けてください……誰か……

今日はここまで、続きは明日書きます

訂正
4
× わたしの目から涙が零させるほど
◯ わたしの目から涙を零させるほど

マナ「六花おはよう!」

六花「おはよう、マナ」

相田マナ、私の親友、そう『親友』

マナ「ごめん!今日どうしても早く帰らないといけないの!
だから……日直の仕事……」

六花「大丈夫、やっておくわ」

マナ「ほんと! ありがとー!」

『六花大好き!』と今までだったら言ってくれたかもしれない

マナ「今度六花が日直の時変わってあげるね」

六花「別にそんなこと気にしなくて大丈夫よ」

私たち『親友』でしょ?

マナ「うぅ~ 六花ほんとゴメンね」

マナがこんなに早く帰りたがってる理由は多分……レジーナかな
どうやら大分振り回されてるみたいね

うらやましいな……

もし私がマナの彼女だったらあんな風にマナを振り回すことが出来たのかな?

私が好きな時にマナを呼んで
それにマナは答えて
他のことを放り出して

マナってそんな子じゃなかった気がするんだけどな

結局、私はマナのこと何も分かってなかったのかな、こんなに一緒にいたのに……

マナは、ずっと私の隣にいるんだって思ってた

子どもの頃から一緒で、これからもずっと一緒だって

でもまこぴーとか、レジーナとかが現れてもしかしたらもうマナの隣に居られないのかも、って恐くなった

だから告白した、『ずっとマナの隣に居たい!』って

結果は……

そもそもこんな嫉妬に狂うような女じゃ元々ダメだったのかもしれないわね

『マナへの気持ちを忘れる』そう言ったのは自分なのに全然忘れられて無いね、私 かっこ悪い

マナがレジーナに付きっきりになってから私はマナと距離を置いている、つもり

遊ぶのもありすとかまこぴーとか亜久里ちゃんとが多くなった

私の人生ってなんだろう?マナが抜けた途端いきなり空っぽになっちゃった

今日はありすと遊びに行く日

服を買ったり、アクセサリーをみたり

ありすは相変わらず優しくて癒された

次の日の朝やたら息巻いたマナに話しかけられた

マナ「六花、六花! 昨日ありすと居るとこ見たよー」

六花「あっ、そうなの?」

マナ「うん、2人の邪魔したら駄目だって思ったから声はかけなかったけど」

六花「そんなこと気にしなくていいのに」

マナ「いやぁ~だって折角のデートだよ?」

六花「え? デート?」

マナ「いやだって2人付き合い始めたんでしょ?」

六花「いや、そんなこと無いけど……ちょっとそれ詳しく聞かせてもらえる?」

マナ「え、だってありすって前から六花のこと好きだったじゃない? それで2人一緒にいるから遂に付き合い始めたのかと」

マナの言葉を聞いた瞬間、私は体温が一気に下がった気がした

六花「嘘でしょ……」

何か、とても大きな過ちをしてしまったような……

六花「ねぇ! ありすが私のこと好きになったのっていつ!?」

マナ「えぇっと……本人から聞いたわけじゃ無いから何とも言えないけど、少なくても中学生の頃からは六花を見る目は変わってたと思うよ」

六花「そんな……」

そんな前から……

マナ「六花? どうしたの六花?」

六花「う、うん いや~ありすが私のこと好きだったなんて知らなかったなぁ~って」

マナ「うーん……そしたら私の勘違いなのかなぁ」

勘違いな訳が無い

六花「そ、そうじゃない 私ありすのそんな素振り見たこと無いし……」

マナの人を見る目は本物だ マナがそうだと言うならそれは間違いなく合っている

学校が終わり、私はすぐにありすへメールした『ねぇ、今日大丈夫?大事な話があるから会いたい』って

今のありすは私と同じ、好きな相手がいてその子が別の方向を向いている

その苦しみを知っている私がありすを苦しめるなんて駄目だ

だからありすと付き合おう、そうすればきっと、きっと


今度こそマナを忘れられるはずだから

さっき突然六花ちゃんから来たメール、

『ねぇ、今日大丈夫?大事な話があるから会いたいんだけど』

いつも顔文字などを使って装飾されたメールを送ってくるはずの六花ちゃんが文字だけの簡素なメールを送る、これは相当大事な用件なのでしょう

もしかしたら告白されるのかも、と考えなかったわけでは無いのですが、まぁそんなことはあり得ませんね

だって六花ちゃんは未だにマナちゃんのことを忘れられないのですから

今日の待ち合わせ場所はわたしの家です

待ち遠しくて家の前で待っていますが、六花ちゃんを待つのは慣れませんね、うずうずします

しばらく待つと六花ちゃんが走って来ました、大分息を切らしています

六花「はぁ、はぁ、ごめんありす、待たせちゃった」

ありす「いえいえ
それより疲れているでしょう? お話はわたしの家の中で」

六花「ダメ!」

ありす「え?」

六花ちゃんらしくない、ずいぶんと強い口調でした……

六花「あ、あのね 今日はね、まずありすに謝らなくちゃいけないの!」

ありす「はぁ」

六花ちゃんがわたしに謝るようなことあったでしょうか?しかもメールで伝えられないような大事なこと
ますますわからなくなりました

六花「ごめん!私マナから聞いたの!
ありす、私のこと好きだったんだよね」

ありす「え……」

六花ちゃんを前にわたしは言葉を失い、立ち尽くしました

六花「私酷いよね、ありすが私のこと好きだって気付かずにマナのことばっかり喋っちゃって……」

六花「ありす……あのね、私愛すより愛されたいタイプだったみたいなの」

何を、いえ『誰に』話しかけているのですか……六花ちゃん……

六花「だからね、今はまだありすのこと本当に好きかわからない、けど今度こそ、今度こそマナのこと忘れるから!私と付き合ってください!」

それは言葉だけ見ると好意を寄せている相手から告白される、まさに理想的な状況

しかし現実は違います

六花ちゃんの目はわたしを見ておらず、わたしの後ろにいる誰か、
そうまるでわたしの後ろにマナちゃんを見て話しかけているようでした

六花ちゃん……これじゃ、これじゃまるで……

マナちゃんを忘れるためにわたしに告白したみたいじゃないですか……

六花「え、ありす何で泣いてるの……もしかして私の勘違いだった!?」

こんなはずじゃなかったのに……

ありす「こ、これは嬉し涙ですよ……
まさか六花ちゃんから告白されるなんて夢にもっ、思いませんでしたから」

悪いのは……マナちゃんでも六花ちゃんでも無いんです……

六花「そ、そうだよね良かった~」

安心して笑った六花ちゃんの笑顔は既にわたしの好きだった六花ちゃんの本物の笑顔ではありませんでした

ありす「あらためて……六花ちゃんお付き合いっ、お願いします…………」

どうして……どうしてこんなことに……

ありす「ご、ごめんなさい……今日は少し用事があって今から出掛けなきゃいけないんです……」

ありす「さよなら六花ちゃん」

さよなら

六花「あ、うんさよなら」

麗奈さん……こんな状況……あなたなら耐えられるのですか……?

助けてください……たすけて、麗奈さん……

ありす「麗奈さん!」

日も落ち、すっかり夜が町をつつんだ頃、突然私の家にありすさんがやって来ました

麗奈「ど、どうしたの!?」

ありすさんは大粒の涙を流し、私に抱きつきました、彼女の身に何が……

ありす「わたし、わたしもう限界です!
わたしの……わたしのせいで六花ちゃんは苦しみ続けてしまうんです!」

麗奈「え、え?」

ありす「わたしと同じ苦しみを六花ちゃんにも味わあわせ続けてしまうんです!」

短い言葉でしたが今のありすさんを見ればそれだけで説明は十分です

麗奈「そうですか、だいたいわかりましたわ」

麗奈「泣きたいなら私の胸を貸しますわ、いくらでも泣いていいのですよ」

ありす「麗奈さんっ!」

ありすさんは迷わず私の胸に飛び込み、声ならぬ声を上げました

麗奈「私、今この状況を楽しんでいますのよ?」

ありす「え?」

麗奈「想いを寄せているアナタが私をこんなにも頼ってくれている、こんなにも嬉しいこと他にありませんわ」

ありす「……麗奈さんは強すぎます」

麗奈「そうかも知れないわね」

ありす「では、今は麗奈さんの胸で泣かせていただきますわ」

好きな人が自分の胸の中で他の人を想って泣いている、この状況がどれだけ私を苦しめているか普段のありすさんなら簡単にわかりそうですのに……

アナタはおかしくなってしまったのですね……

それでも……私は、私は……


麗奈(ありすさん、アナタを想い続けますわ)

今日はここまで、続きは明日書きます

今日は六花ちゃんとのデート♪

やることは今までと同じですが今のわたし達はちゃんとしたカップル♪

ただのショッピングが好きな人といるそれだけで色めき立つのですわ♪


六花「あ、このスカート」

ありす「…………」

六花「ねぇ見てありす、このスカートマナにとっても似合いそう」

ありす「……そうですね」

六花「でも急にプレゼントなんてしたらマナ怪しむだろうし、どうしよっかな」

ありす「…………」

わたしと六花ちゃんのデートの間にマナちゃんの話が出ない時はありませんでした

六花ちゃんはいつだってわたしの後ろにいる誰かに話しかけていました

六花ちゃん、あなたの身に何が起きたのですか?今の六花ちゃんにはマナちゃん以外何も見えないのですか……?

六花ちゃんとの時間は前にも増して辛いものとなっています

それなのに六花ちゃんとの時間はどんどん増えて……

もう一つ増えたもの、それは麗奈さんとの時間です

あの日からわたしはほとんど毎日麗奈さんの家に入り浸るようになりました

わたしは甘えているのです……麗奈さんの優しさに……

ありす「麗奈さん」

今だって麗奈さんは何も聞かずわたしのことを抱き締めてくれています

ありす「麗奈さん……大好きです」

麗奈「っ……」

『好き』と麗奈さんに伝えるなど前までは考えられないことでした

もちろん今でもわたしにとっての一番は変わらず六花ちゃんです

しかしそれでも言わずにはいられないのです『好き』と、

中途半端な気持ちで愛される辛さ、わたしは知っているはずなのに……

最近ありすさんがよく……と言うより毎日私の家に来てくれるようになりました

と、言っても私たちのすることは前と大きく変わっています

前は仲良くお話しているだけでしたが今は……

麗奈「今日も来たのね」

ありす「ええ、麗奈さんと一緒に居たいので」

ありす「今日も……お願いします」

麗奈「……ええ」

ありすさんは私の部屋に入るなり私に抱きつく、
そして私はそれを受け入れる

これが今の私たちの関係、いえ今は更に

ありす「れっいなさん♪ ちゅーしてくださる?」

ありすさんは小動物のような目で私にねだります、これも今の私たちの関係

当然私は断っています

麗奈「ありすさん、もういい加減こんなこと止めませんか?
もしこんなことをしてると六花さんにバレたら

ありす「麗奈さん……そんなこと言うんですか……」

ありす「わたしは……愛されたいだけなんです……」

ありすさんの両目から涙が流れています

ありす「わたし、六花ちゃんと愛の無い『デート』を繰り返して心がボロボロなんです だから」

ありす「もしかしたら死んじゃうかも♪」

『死んじゃうかも』という言葉とは裏腹にありすさんは突如笑みを浮かべました、目の焦点が合っていない壊れた笑みを……

麗奈「っ」

これはただの脅し、わかってはいますが今のありすさんは本当に何をするか、何を考えているかわかりません

麗奈「ちゅっ」

私はありすさんと唇を重ねる他ありませんでした

ありす「ふふふ 麗奈さんだーいすきっ」

麗奈「っ、」

まるで気持ちを感じない『大好き』その言葉を聞くたび私の心は折れそうになってしまいます……

だけど私が折れてはいけません、そうなってしまったらありすさんは完全に壊れてしまいます、

今ありすさんを瀬戸際で止めてあげられるのは私だけだから……



ありす「麗奈、さんっ!」

麗奈「きゃあっ」

いきなりありすさんは私をベッドに押し倒し両手をふさぎました これ……まさか……

麗奈「や、やめてくださいありすさん!こんなことして何になるんですか!」

ありす「えへへ、緊張しなくていいんですよ?」

会話が全く成り立ってない……

麗奈「くっ!」

私が必死で暴れようとしても私の四肢はピクりとも動きません

ありす「ふふ、麗奈さんのこの細い手足じゃ無理ですよ」

そう言うとありすさんは私の二の腕を舐め出しました

麗奈「やぁ 嫌ぁ……」

私は気持ち悪さに思わず目を閉じ顔を背けました、すると

麗奈「んっ」

二の腕を舐めていたはずのありすさんの口はいつの間にか私の唇へと運ばれ、

麗奈「んっ!んんー!」

私の口の中に謎の異物を感じました……ありすさんの舌です……

……どのくらい経ったでしょうか?永遠とも感じられる時を経てありすさんはやっと口を離してくれました

麗奈「なんで……なんでこんなことを……」

涙が、流れていました

今までどんなに辛くても我慢していた涙、

『麗奈さんは強いですね』そうありすさんに言われたのが嬉しくて我慢していたのに

なのに今私が流している涙はそのありすさんによるものなのです

ありすさんは未だ焦点の合わないくすんだ瞳と壊れた笑顔のまま私の涙を拭います
左手の拘束は解かれていましたが最早抵抗する気力は私にはありませんでした

ありす「泣かないでください麗奈さんわたしは麗奈さんのためを思ってやっているんですよ愛が無いって悲しいことだと思いませんか思いますよねわたしは六花ちゃんから愛されなくて壊れてしまったのですだからせめて麗奈さんだけには壊れてほしくないからこうして愛してあげるんですよだからこれは麗奈さんを思った愛なんですよこれは愛なんですよこれは愛なんですこれは愛です愛愛愛」



ありす「大好きですよ、麗奈さん」

続きは今日書きます 次で終わらせます

わたしは麗奈さんの家から逃げるように飛び出してきました

わたしはどうしてしまったのでしょう

最近、自分が何をしているのか、何がしたいのかがわたしにもわからないのです

それでも麗奈さんの温もりを一度感じてしまったらもう自分を抑えることなど出来ませんでした

本当に麗奈さんのことを好きになれたら、そうでなくてもこのまま麗奈さんと付き合えば、そう考えることはたくさんあります

ですがそんなことをしてしまえば六花ちゃんはどうなるでしょう?

わたしのことを思って自分を殺そうとしているのに、そのわたしが裏切るのです

……今度は六花ちゃんが壊れてしまうでしょう

「ちょっとアナタ!」

ありす「……何でしょうか?」

誰にも見つからないように路地裏で泣いていたのですが、誰かに見つかってしまったみたいです

レジーナ「アナタのプシュケーひどいことになってるわよ、ってありすじゃない
こんなトコで何してんの?」

ありす「レジーナさん」

レジーナ「そうよ、レジーナよ
ねぇねぇそれよりどんなコトしたらプシュケーがそんな感じになるワケ?」

ありす「……言いたくありません」

レジーナ「ふーん」

レジーナさんは納得しないようです

レジーナ「アナタ、明らかに誰かに助けを求めてるような顔してたケド? ワタシで良かったら相談乗るわよ?」

ありす「……言いたくありません」

当たり前です、こんな事態を招いてしまった自分の醜態、そして今の六花ちゃんと麗奈さんのことを口外するわけにはいきません

するとレジーナさんは肩をがっくりと落としながら

レジーナ「あー、やっぱりマナみたいに上手くいかないなー」

ありす「マナちゃんみたいに……?」

レジーナ「そうよきっと今の状況、マナだったら無理にでも聞き出して解決しちゃうと思うよー」

確かに、マナちゃんだったらそうするでしょう

ありす「でも、レジーナさんはマナちゃんではありませんよ?」

レジーナ「んー、 ワタシだって一応変わりたいって思ってるの
マナみたいに他人に尽くせる人、そうなってみたいのよ」

ありす「変わりたい……」

その言葉はわたしに強く響きました

かつてジコチューだったレジーナさんが他人に尽くせるようになるなら

今のわたしも、六花ちゃんと麗奈さんを救える人に、そして自分自身を救えるようになるのでしょうか?

レジーナ「ま、無理に話す必要は無いんじゃない? 素直に人に相談するのは誰だって恥ずかしいだろうし」

ありす「話します」

レジーナ「ん?」

ありす「レジーナさん、助けてください」

レジーナ「助ける?」

ありす「六花ちゃんを、麗奈さんを、」

ありす「そして、わたしを」

そこからわたしはこれまでの経緯を話しました

レジーナ「なるほどね……」

話す前は頼られた喜びを隠さないレジーナさんでしたが話が終わったあとはすっかり真剣な顔に変わっていました

レジーナ「あのさ」

話を聞き終わったレジーナさんは一つの提案をしました、ある未来の可能性を

レジーナ「ありす、アナタは自分だけが幸せになる未来って考えたことあるかしら?」

ありす「わたしだけ……?」

レジーナ「そう、今までさんざん振り回してきた麗奈、だっけ? をポイっして今度は六花を無理やり振り回して自分しか見られないようにする、自分勝手な未来」

ありす「……」

レジーナさんの語る未来像にわたしは開いた口が塞がりません

レジーナ「いい? アナタは自分が幸せになることだけを考えればいいの」

ありす「そんなの間違っています! わたしだけ幸せになるということは誰かの幸せを奪うということです!」

ありす「わたしの幸せは……みんなの幸せです!」

レジーナ「だーかーらー! アナタが『人の幸せが自分の幸せ』って考えているってことは他のみんな、六花も麗奈も同じこと考えているってことでしょ!?
だったらアナタが幸せになれば他のみんなも幸せになるの! わかった!?」

ありす「いけません! そんな考え方……まるでジコチューです!」

レジーナ「そうよ、だから今からアナタを素敵なジコチューにしてあげるのよ」

ありす「え……?」

戸惑うわたしを無視してレジーナさんは目を閉じ何かを呟いています


ありす「何も……変わってませんよ?」

レジーナ「いいえ、アナタはもう素敵なジコチューよ
せいぜい周りを振り回して楽しみなさい」

レジーナ「ばいばーい」

何が起きたか、わたしがそれを理解する前にレジーナさんは手を振り去って行きました

果たしてわたしは何か変わったのでしょうか?

いいえ、答えは既にわたしの中に出ていますね

わたしは一つの決心をして帰路につきました

学校、授業、全部がどうでもよく感じる

私の席の前にはマナが居る

手を伸ばせば届く、そんな距離

でも私の手は届かなかった

六花「っ!」

まただ、今頭の中の全てがマナに支配されていた……

ありすに告白してマナを忘れようと思ったあの時

あの時から私の頭はマナでいっぱいになってしまった

それは、マナを忘れようとすることを脳が拒んでいるみたいで……

どうすれば、どうすればマナのことを忘れられるの?

ねぇ、教えてよマナ……

「失礼します」

授業中、いきなり教室のドアが開いた

教室に入ってきたのは、ありす!?

六花(なんでありすが……今日も学校あるはず、それにまず私たちだって授業中だし、ていうか

私が、いやクラス全員が突然の来訪者に呆気にとられる中ありす一人だけが冷静に、穏やかに私のもとへと歩いてくる

そして私の横で立ち止まり、

ありす「どこか行きましょう?」

優しく微笑んだ

六花「ちょ、ちょっと待って今授業中だし」

私の動揺と同時にクラスがざわつき始める

ありす「そんなものサボってしまいましょう?」

ありすは私の手を取り教室を出ようとする

六花「ちょ、ちょっと待ってって!」

無理やり止まろうとしてもありす、凄い力だし!

ありす「そうだ、マナちゃん」

教室を出る瞬間、ありすはマナへと振り返り

ありす「六花ちゃん、もらっていきますね
もう六花ちゃんはわたしのものですからっ」

そう言われたマナはぽかんとした顔から凛々しく、『わかった』と言わんばかりの顔になった



そして私たちは教室を抜け出した

城戸「ちょ、ちょっと待った」

マナ「先生、待ってください! あの二人は私が追うからみんなは授業続けてて!」

マナ(頑張ってね、ありす)

わたしは夢中で走っていました

体が軽い……夢中で走るってこんなに楽しいことだったんですね

さぁ下駄箱を抜ければ外ですよ、六花ちゃん!

六花「ちょっとありすっ!」

六花ちゃんに手を払われてしまいました

ありす「何ですか?」

六花「もう、何なの?」

ありす「さぁ早く靴に履き替えてデートしましょう?」

六花「ちょっと待ってよ! 少しくらい説明してよ!」

六花ちゃんは怒っています……

ありす「六花ちゃん」

六花「何?」

しかしその目は……

ありす「今、わたしを見てくれていますね」

六花「えっ……」

ありす「わたし、ずっと苦しかったんです」

ありす「六花ちゃんは二人で居る時もわたしを見てくれませんでした」

六花「……」

ありす「だけど今はわたしを、わたしだけを見てくれている」

ありす「わたしが六花ちゃんを独占しているんですっ」

わたしは六花ちゃんに思い切り抱き付きました わたしの愛が六花ちゃんにいーっぱい伝わるように

六花「あ、ありす……?」

ありす「六花ちゃん」

ありす「だぁーいすきっ」

私は混乱している

ありす「六花ちゃん」

友達、いや恋人にいきなり教室から連れ出され

ありす「だぁーいすきっ」

ありすの体全てから愛を受けている

六花「……」

ありすの素直な気持ちに私はどう答えればいいんだろう……

私はマナのことしか考えてなかった

そもそも恋人に『大好き』と言われて混乱するのがおかしいんだ……

六花「ごめん……ごめんねありす……」

私、やっぱり

六花「私、ありすに相応しくないんだ……」

こんな中途半端な気持ちじゃだめだよね……

六花「別れよう、ありす」

ありす「だめです♪」

六花「え?」

ありす「マナちゃんのことが忘れられないから、なんて理由じゃ許しませんよ?」

六花「でも私、マナを忘れるためにありすに告白したんだよ……」

ありす「ええ、それは知っていました」

六花「そっか」

やっぱりわかってたんだ、

六花「じゃあやっぱり」

ありす「わたし、負けませんよ?」

六花「『負けない』?」

ありす「六花ちゃんはマナちゃんのこと、忘れなくていいんです」

ありす「マナちゃんは大切なお友達なんですから忘れる必要なんて無いんですよ」

ありす「だから、わたし勝つんです」

ありす「六花ちゃんの中のマナちゃんに、ね?」

六花「ありす……」

ありす「さっ、行きましょう?」

六花「待って」

やっぱりありすは優しすぎるよ……

ありす「まだ、何かありますか?」

六花「だって、ズルいじゃない」

こんな私を許してくれるなんて……

ありす「ズルい?」

六花「私だってありすに伝えてないんだもん」

六花「ありす 大好きっ」

いつもありすさんが来る時間

今日はそれより少し遅い時間にありすさんは来ました

ありす「こんばんは麗奈さん」

麗奈「ふふ、そんなに笑っているということは今日はデートの反省会ではなく祝勝会ですか?」

ありす「ええ、わたしやって幸せになれたんです」

麗奈「『幸せ』ですか……」

つまり、それは……

ありす「麗奈さんにはちゃんと伝えていませんでしたね」

ありす「わたし、六花ちゃんと付き合うことになりました」

やっぱり、私じゃだめなのですね

麗奈「わざわざ私を振るために来たなんてやっぱりアナタは悪い人ですね」

泣いてはダメです、『友達』としてありすさんを祝福してあげないと……

ありす「それもありますが、今日わたしが来たのは別の理由があるんです」

ありすさんは急に私に抱き付いてきました、嘘っ!これって……

麗奈「ダメよ! ありすさん

ありす「安心してください麗奈さん、これは『友達』としてのハグです」

麗奈「……そうだったの」

心配して損したわ

ありす「そして、ありがとう
これからも一生の『友達』としてよろしくね、『麗奈ちゃん』!」

ありすさん……アナタは本当に……

これじゃ私はまだしばらく恋に苦しみそうじゃない

麗奈「ありがとう、おめでとう、そして」

でも、今ありすさんを独占しているのは私なんだから、許してね六花さん

麗奈「大好きよ、『ありすちゃん』」


おしまい

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