晶葉「出来たぞ! 弱点克服シミュレーターだ!」 (30)

モバP「見た目は何の変哲もない、ヘッドマウントディスプレイだな」

晶葉「ふっふっふ。これは装着した人間の脳に直接働きかけるのだ。すると」

P「すると?」

晶葉「その者が心から『苦手だ』『怖い』『克服したい』と願うシチュエーションが映像に変換され、再生される」

P「トラウマプレーヤーじゃねーか!」

晶葉「甘いぞ助手。強く願えば、映像の中での行動を変えることができる。行動が変われば……」

P「結果を、変えることができる」

晶葉「そのとおり。現実はやり直しが効かない。だから、これを使って何度も練習すればいい」

P「流石あきえもん! よーし早速、被験者を探しに行くぞ!」

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P「おっ、あそこにいるのは……おーい」

幸子「何ですか? 今日もカワイイボクに」

P「頼む。その可愛さを見込んで、一つ協力してほしいんだが」スッ

幸子「ごついサングラスですね。まあ、カワイイボクには似合ってしまうのが怖いですが!」スチャ

晶葉「実はこれはカクカクシカジカシカクイムーブ」

幸子「弱点克服ですか……カワイイボクにそんなものがあるのか不安ですが、協力しましょう」ドヤァ


晶葉「この部屋には大画面ディスプレイがあるから、これとシミュレーターを繋ぐ。すると」

P「幸子の見ている映像を、俺達も見られるというわけか」

晶葉「準備はいいか? シミュレーターの電源を入れてくれ」

幸子「わかりました、ってウワアアア――!?」

P「青い空、白い雲、そして急降下していく視点……」

晶葉「伝説のスカイダイビングライブの、再現というわけか」

ビュオオオ

幸子「風を切る音まで、あの時と同じじゃないですかヤダー!!」

P「あの時は、最後の最後でセットに引っかかったんだよな。
『今度は』完璧に着地するための練習だと思え」

幸子「またいつかやらせる気ですね、このカワイイボクに――!!」

晶葉「おっ、地上が見えてきた」

P「落ち着いて防寒具を脱いで、パラシュートを開くんだ。イメージイメージ」

幸子「そうですよね、落ち着けばできる。ボクはカワイイんですから……」

P「よし、ステージ衣装に着替えられたな。あとは鉄骨に注意しろ!」

幸子「はっはい……最後まできちんと指示してくださいよ!」

ストッ

幸子「ちゃんと降りられましたよ! さすがボク! 天使!!」

P「ふう。バーチャルとはいえ、すさまじい臨場感だ。手に汗握ったな」

晶葉「『今度は』上手くできそうかな、幸子」ニヤリ

幸子「勘弁して下さいよ……」ゲッソリ

P「お次は……」

みちる「フゴフゴ! プロデューサーさん、今日もパンが美味しいです」

晶葉「被験者としては興味深い人材が来たな」

P「まあ、パンがらみだろうな……おーいみちる、カクカクシカジカシカクイムーブ」

みちる「フゴフゴフゴフゴフゴゴゴフーゴ?」


晶葉「ではスイッチオンだ。実験中は食べるのをやめて、映像に専念してくれ」

みちる「えー……」

P「えーじゃない」

みちる「ではスイッチオン……こ、これは!?」

P「東京ドームに見渡す限りのパンの山!? うえ、胸焼けしてきた……」

みちる「バラエティ番組ですね。これを食べ尽くしたらお金もらえるみたいですよ」

晶葉「これが、みちるの『怖い』と思う状況なのか? さすがに、この量は荷が重い気もするが……」

みちる「分かりました! 限界に挑戦しろということですね!」

P「味や感触まで再現されるのか?」

晶葉「そんなはずはないと思うが……人間の、思い込みの力は凄いから、あるいは……」

1時間経過

みちる「フゴフゴフゴフゴフゴ――!!」

P「快調に飛ばしてるぞ」

晶葉「バーチャルだからな。喉に詰まることも、顎が疲れることもないんだろう」

P「ディスプレイ付けて口をモグモグさせるなよ……」


2時間経過

みちる「フゴ……フゴ……パ、パンが怖い……かも……」

P「おや、ペースが落ちてきた」

晶葉「映像を見ることで、脳の満腹中枢が騙されているのかもしれんな」


3時間経過

みちる「フゴ……ギブアップです」

P「うっぷ。俺、当分パンは見るのも嫌だ」

晶葉「無限にパンが出てくる状況は怖かったか?」

みちる「はい。パンの怖さを思い知りました!」ニコニコ

P「その割には嬉しそうだな」

みちる「ここらで一杯の熱いお茶はもっと怖いです。あっ出てきました、どうもー」ズズー

晶葉「???」

P「おーい悪用されてるぞー」

晶葉「そういう落語があるのか。意外と策士だな」

P「弱点どころか、いい思いをする奴も出てきそうだ。さて次っと」

美優「プロデューサーさん、お疲れ様です」ニコッ

P「美優さんを実験台に……心が痛むが……」

晶葉「年長組のデータも取っておきたい。協力を頼もう」


美優「弱点克服ですか……その、私なんて弱点だらけで、大丈夫でしょうか……」

P「強く願えば行動が変わり、結果も変わりますよ」

美優「分かりました。私、プロデューサーさんを信じてみます」

晶葉「ではスイッチオン」

美優「あ、あの……私、こういうことするの、初めてで……良い妻になれるでしょうか……」

P「布団は一つ、枕は二つ――!? 美優さん、寝間着姿だし! てか相手は!」

晶葉「助手……だと……!?」

美優「ん……キスの仕方、これでいいんですか……」チュ

P「美優さん、もっと舌を差し込んでもいいんですよ」キリッ

晶葉「お、おい……バーチャルに介入するな」ドキドキ

美優「男の人のコレ……どう扱えばいいのかしら」

晶葉「見たことがないからか、形状が不明瞭だな」ゴクリ

P「指先で優しく、フェザータッチでお願いできますか。
特に、先っぽの筋みたいになってるところとか」

美優「は、はい、こうでしょうか」サスサス

P「ヤバイ、この実験めっちゃヤバイ」

美優「はぁはぁ……!
は、はしたないとは思うのですが、純潔を捧げるのは自分から旦那様にまたがっt」

晶葉「ストップストーップ!!」プチッ

P「あー……いや、正直止めてくれて助かった。リアルとバーチャルがごっちゃになり始めていた」

晶葉「シミュレーターの優秀さが、イヤというほど分かったよ」

美優「この先のイメージトレーニングが、大事なのでは……」ポッ

P「俺プロデューサー貴女アイドル! 忘れましょう! お互いに!」

P「……ふう、お待たせ」スッキリ

晶葉「長いトイレだったが、腹の調子でも悪かったのか?」

P「晶葉14歳マジピュア」


晶葉「今更ながら、泉の組んだプログラムは凄すぎる。被験者はよく選んだほうがいい」

P「さすがIQ150……おや、足元に、二つ折りにした10000円札が」

スカッ

スカッスカッ

P「……あれ? 取れない!?」

麗奈「アーッハッハッハ! 引っかかったわね、それはシールよ!」

P「(#^ω^)ビキビキ」

晶葉(あ、マジギレ……助手も大人げないなあ)

麗奈「こ、こんな部屋に連れ込んで何をするつもりよ」

晶葉「カクカクシカジカシカクイムーブ」

麗奈「弱点ー? このレイナサマに? 面白いわ、何でもかかってらっしゃい!」スチャ

P「ん?」

晶葉「では電脳世界へダイブ!」


麗奈「ねえ晶葉。この機械、調子悪いんじゃないの?」

晶葉「おかしいな、まるで画面全体にモザイクがかかっているような……」

P「目を細めて見ると、某夢の国っぽいぞ? 千葉なのに東京を名乗っちゃうネズミーランドか?」

晶葉「だから安全のためにモザイクがかかったのか? 凄まじく嫌な予感がする。
麗奈、行動には気をつけた方がいい」

麗奈「ああもう、二人とも何ビビってるのよ? アタシは誰が相手でも、イタズラを止めないわ!」

ハハッ

麗奈「あら目の前に、世界一有名なあのネズミ(モザイク処理済み)が出てきたわ」

P「まさか……」

ヤア、ボク

麗奈「アーッハッハッハ! ここは電脳世界なんでしょ? 先制攻撃でバズーカ発射――!」

P「やめろォ――!!」

ドカーーン

晶葉「あのネズミの頭が、木っ端微塵に吹っ飛んだぞ!」

麗奈「え、え? 何この威力、聞いてないわよ」

P「その中から人」



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プチッ

晶葉「実験強制終了だな」

麗奈「」

P「物事を甘く見るのが、お前の弱点というわけだ。反省しろよ」

麗奈「わ、わかったわよ……次はもう少し穏便なイタズラを、世界一有名なあのアヒルに」

P「一ミリも反省してねーだろ!!」

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