美少年「えぐっ…えぐっ…」 女「なに泣いてるんだよきめーな」 (288)

美少年「…」グシュグシュ

女「アイス間違って食べちゃっただけじゃん」

美少年「…」ジロ

女「そっちのバニラ食べればいいじゃん」

美少年「…」フルフル

女「バニラ嫌いなの?」

美少年「…」コクン

女「好き嫌いすんなガキ。チョコばっか食べてると女性ホルモン出るぞ」

美少年「…」

女「ま~た~泣~く~」

美少年「ぐすっ、ひぐっ」

女母「ちょっと!何美少年君泣かせてるのよ」

女「いや私じゃないし」

女母「そうなの?」

美少年「…」ブンブン

女母「あんたじゃないの!!!」

女「違っ!アイス間違ってチョコ食べちゃっただけなのに!!」

女母「少年君がバニラ嫌いって分かっててやったでしょ」

女「存じ上げない」

美少年「…」フルフル

女「お前…あとでどうなるか分かってるでしょうね」

美少年「…」ビク

女母「脅すな!あんた、今からコンビニ行ってきてチョコアイス買って来なさい!」

女「ちくしょう」

女「…行けばいいんでしょ!お金」

女母「自分のお小遣いから出しなさいよ。あんたのミスでしょ」

女「はあぁああい!?」

女母「はよ行け」ゲシ

女「これは酷い」

美少年「…」ガシ

女「ん?何よ」

女母「一緒に行って選びたいんじゃない?」

女「我儘なガキだなー…。はいはい、連れて行けばいいんでしょ」

コンビニ

女「選んだかー」

美少年「…」ニコニコ

女「…ハーゲンダッツ?贅沢言うなしばくよ」

美少年「…」

女「何よその目は…」

女「この100円台のやつでいいじゃん。子供の舌を肥やすわけにはいかないし」ヒョイ

美少年「…」フルフル

女「…チッ」

女「買えばいーんでしょ買えば。…私もこんなの食べた事ないのに」

アリガトウゴザイマシター

美少年「…」ワクワク

女「歩きながら食べるならコーンアイスにしろよ。要領わっる」

美少年「…」ペリペリ

女「無視すんな小坊主」

美少年「…」モグモグ

女「ちぇっ。いいなぁ」

美少年「…」スッ

女「は?い、いらないよ」

女「だいたいスプーン…使用済みだし」

美少年「…」グイグイ

女「親切の押し売りじゃん…。あー、はいはい。いただきます」パク

美少年「…?」

女「うおおおお」

女「の、のうっこう…!濃厚!すごいチョコ。高級感すげぇ」

美少年「…」ニコニコ

女「私食レポ向いてないな」

美少年「…」コクン

女「賛同すなボケ」バシ

美少年「…」クスクス

女「もう一口ちょうだい」

美少年「…」フルフル

女「いいじゃんケチ。元はといえば私のお金で…」

ブーッブーッ

美少年「!」ビクッ

女「あ、電話鳴ってるじゃん」

美少年「…」アタフタ

美少年「…」チラ

女「お母さんからの呼び出し?」

美少年「…」コク

女「そっか。んじゃ帰れ。送ってやるから」

美少年「…」

美少年宅前

女「相変わらずすっごい豪邸だなぁ」

美少年「…」

女「んじゃ、ばいばい」クル

美少年「!」ガシッ

女「もおおお何!?早く帰りたいんだけど」

美少年「……」ポチポチ

女「人止めておいてスマホっすか」

美少年「…」スッ

「きょうもありがとう またあしたね」

女「…」

女「うん。また明日ね」

美少年「…!」ニコ

女「…早く家入りなよ」

美少年「…」コクン

女「あ、」

美少年「?」

女「…明日は、声…出るといいね」

美少年「…」

美少年「…」コクン

女「んじゃ」

美少年「…」


美少年「…」ピンポーン

「…はい。あ、坊ちゃん」

「只今お開けします」

ガチャ

美少年「…」

メイド「お帰りなさいませ」

美少年「…」ペコ

メイド「門限を三分過ぎております。奥様がお待ちです」

美少年「!」

メイド「さ、早く」ツカツカ

美少年「…」ハァ


女「ただいまー」ボン

女母「靴揃えなさい馬鹿」

女「何で!何で見て無いのに分かったの!?」

女母「母親のカンよ!!」

女「おっそろしいいい」ソソクサ

女「はーつかれたー」

女母「あれ?美少年君は?」モグモグ

女「母上様から連絡来たから家まで送ってった」

女母「あらそう。泊まっていくと思って夕飯奮発しようと思ったのにな」

女「連れ戻すか…」

女母「やめなさい馬鹿」

女「ってかなんでバニラアイス食べてんの!」

女母「はぁ?」

女「帰ったら食べようと思ってたのにぃいいいい!」

=翌日

女「いってきまーす」

女母「ほーい。車に気をつけるのよー」

女「はいはい」タタタ


美少年「…」ソワソワ

女「よっす」

美少年「!」ジロ

女「何その目。何にらんでんの」

「ちこく」

女「ちょっと遅れただけじゃん!こまけーぞガキ。走ってきたからいいじゃん」

美少年「…」ジト

女「はいはい、じゃあ行くよ」グイ

美少年「…」コク

=有名私立小学校前

女「はいいってらっしゃいボンボン」ドン

美少年「…」ハァ

女「きばれきばれ」ドンドン

女「じゃーね。朝補習始まっちゃうから私行くね」タタタ

美少年「!」

美少年「…」

美少年「…」トボトボ

=教室

ボンボン「見てみてーw新作のスマートポン買って貰ったぜ~」

取り巻き「えーすっげー!」

ボンボン「うへへ」

美少年「…」ガラガラ

美少年「…」ストン

ボンボン「あ、来たww」

ボンボン「よお、美少年~。おはよお~」ドン

美少年「…」プイ

ボンボン「おはよう~」

美少年「…」

ボンボン「うわひっでーwおはよう返してくれなーいw」

取り巻き「まじだー最低だな美少年www」

美少年「…」グッ

教師「えー、ですから…」

美少年「…」カキカキ


「でねーw」

「なんだよそれww」

美少年「…」ポツン


「あ、今日のお弁当好物入ってる」

「いいなー」

美少年「…」モグモグ


「じゃーな、また明日ー」

「ばいばーい」

美少年「…」ガタッ

美少年「…」ポチポチ

「がっこうおわった?」

美少年「…」

ピロン

美少年「!」バッ

「まだ。ってか今日7限あるし遅いって言わなかったっけ」

「いってない」

「いや絶対言ったし。どこぞの作曲家か耳悪いな」

「はやくして」

「ちょw私だって帰れるもんなら帰りたいわw」

「さむい」

「はいはい、4時半くらいに行けるからそれまで中で待ってて」

「授業始まるからじゃね」

美少年「…」ニマニマ

美少年「…」

女「はぁはぁ、よっす」ポン

美少年「!」パァ

美少年「…」ムス

「おそい」

女「しょうがないじゃん、土壇場で先生に雑用頼まれちゃってさぁ」

女「ってかあんた、校門でずっと待ってたわけ?」

美少年「…」コクン

女「うわー。馬鹿じゃんこのクソ寒い中」

美少年「…」ムス

女「はいはい、早く帰ろうー。家かえってココアでも飲むべ」

美少年「…」

「おい、美少年」

美少年「…!」ビク

女「…お」

美少年「…!」

「何やってるんだ、下校時間はとっくに過ぎてたろ」

女「こんにちは、お兄さん」

美少年兄「…女さん。すみません、迎えに来てくれたんですか?」

女「え?いや、うーん」

兄「お前ももう小学校6年生なんだぞ!一人で登下校くらいできるようになれよ」

美少年「…」

女「いや、帰り道一緒だしついでなんで…」

兄「はぁ…。女さん、こいつに過剰に甘くしないでください」

女「はぁ」

兄「帰るぞ、母さんが待ってる」グイ

美少年「…っ」

女「…じゃあね、また明日」

兄「…」グイグイ

美少年「…っ、…っ!」ブン

兄「なんだ?」

美少年「……っ」フルフル

兄「何泣いてる。このくらいのことで泣くな」

美少年「…っ!」

兄「我儘ばかり言うな。どれだけ迷惑かけたら気が済むんだ」

兄「俺はお前が心配なんだよ。最近はあの高校生とつるむし、帰りは遅いし」

兄「母さんだって頭を抱えてる。そういう気持ちを汲んではくれないのか」

美少年「…」

兄「だんまり、か」

兄「…はぁ。もういい。今日は俺が勉強を見てやる日だろうが、早く帰るぞ」

美少年「……っ」

女「…ただいま」

女母「んー。あれ、美少年君は?」

女「お兄さんが迎えに来てたー」

女母「あらそう。じゃあ、今日は来ないのね」

女「そうーいうこと。お腹減ったー。お菓子ない?」

女母「太るわよ」

女「ちぇ」ガチャ

バタン

女「…ふー」ドサ

女(……あいつのお兄さん、相変わらず良い男だなー)

女(確か医大生なんだっけ。金持ちイケメン医大生…。ステ振りはんぱないな)

女「…っと」ポチポチ

「泣き虫、ちゃんと家帰ったかー」

女「送信」ポチ



「うん」

女「……」

女「そろそろ私なしで登下校したら?友達とかいるでしょ、っと」ポチポチ

女(…うーん。やっぱ他人の私が登下校つきそいってのも変だよなぁー。お兄さんも胡散臭そうに私見るし)

ピロン

「女ちゃん、あしたもいっしょに学校いこうね」

女「…」

女「…削除」

「うん。明日は遅刻しないようにしやす」

「きをつけてよね」

女「…あんのガキャ」イラッ

女「チッ」ボフン

女(…あーあ。ねっむ…)
……


「…っ、ひぐっ、うっ…」

女「…ん?」

「ううっ、っ…」

女「…おーい僕、何してんのこんな所で。傘は?」

「…」

女「無いのぉ?この土砂降りの中…。え、ってか泣いてる?」

「…っ」

女「ちょ、ど、どうしよう。とりあえず傘入って、はい」

女「どうしたの。迷子なの?名前は?」

「……」

女「大丈夫だって、私女子高生。不審者じゃないから。名前は?あと、家とか…」

「…」フルフル

女「どういう意味。ちょっと、質問に答え…」

「…っ、っ」ポロポロ

女「…あ」

女「えっと、まさか…。声、出せない、とか?」

「…」コクン

女「あら…。そりゃえっと、難儀だね」

女「…とりあえずさ、家近いからちょっとおいで。ずぶ濡れだし、なんか顔色悪いよ」

「…」

女「いいからいいから。おいで」グイ

女母「…彼氏?」

女「んなわけあるか!拾ったのよ」

女母「はぁ?どこで」

女「公園。ずぶ濡れでしゃがみこんで泣いてたの」

女母「ふーん…。こんにちは、僕。お名前は?」

「…」

女「あ、この子ちょっと今声出せないみたい。シャワー浴びさせるね」

女母「そう」


女「えっと、一人で大丈夫かな」

「…」

女「あー。家のシャワー使い勝手悪くて…。とりあえず、脱いで」

「…っ」

女「いやいやいや、年下の裸興味ないし。見ない見ない」

女「あーもう男のくせにモジモジすんなっ。脱げっ」グイ

「…!!!」バッ

女「ぐはっ」

女「げほっ、ぐっ…!な、なにすんのよっ」

「…」ハァ、ハァ

女「な、なに。そんな顔しないでよ…。服脱ぐのが、そんなに」

女母「あーもう、見てらんない」

「!」ビクッ

女母「僕、この赤いの捻ったらお湯。熱かったら青いの捻ってね。ボディーソープはこれ。脱いだ服は置いておいて」

女母「大丈夫。誰も見てない」

「…」

女母「ゆっくりでいいからね。じゃあ」バタン

女「…ってて。難なのよあいつ」

女母「ちょっと変ね」

女「大分変よ」

女母「服見る限りいい所の坊ちゃんみたいだけど…。あんた、見た。あのお腹」

女「え?いや」

女母「痣あったわよ。最近できたやつ」

女「は?…遊んでるときに怪我しちゃったのかな」

女母「…だといいけど」

女「やめてよその言い方…」

ガチャ

「…」ペコ

女母「上がったわね。替えの服でしばらく我慢して。もうすぐ乾くから」

「…」ペコペコ

女母「ココアでも飲む?」

「…」コクン

女母「じゃ女淹れて。コーヒーもお願い」

女「私かよ!」

……


美少年「…」キョロキョロ

兄「どうしたんだ、落ち着きのない。食事の時くらい静かにしろ」

美少年「…」ジッ

兄「何だ?」

美少年「…」カキカキ

「お母さんとお手伝いさんはどこですか」

兄「母さんはいない。友人と食事会に行った。お手伝いは…上がったはずだが」

美少年「…」

兄「何だ、まだ何かあるか」

「勉強はいつから見てくれますか」

兄「…」

兄「九時に部屋に行く」ガタン

美少年「……」

美少年「…」スッ

兄「残すのか?」

美少年「…」

兄「しっかり食べろ。夜の勉強がもたないぞ」

美少年「……」

「お手洗いに行ってもいいですか」

兄「ああ」

兄「…携帯端末は置いていけよ」

美少年「!」ビクッ

美少年「…」カタン

兄「どうぞ」

美少年「…」ガチャ

バタン

兄「…」スッ

「新着メッセージがあります」

兄「…」

「おい、明日寄り道してケーキでも食べようぜー」

「駅前にできたとこ美味しいらしいよ。明日学校終わるの早いし、いこいこ」

兄「…チッ」

「メッセージを削除しました」

兄「…はぁ」



美少年「…っ、…っ」

美少年「ぅえっ…ぉぇっ…」

美少年「…っ…ぅっ…」

=翌朝

女「おっはよーす」

美少年「…」ニコ

女「あれ、何か顔色悪くね」

美少年「…」ブンブン

女「あっそ。ってかさ、昨日なんで返信しなかったのよ」

美少年「?」

女「夜送ったじゃん、メッセージ。ケーキ食べにいこって」

美少年「……」ポカン

女「あれ?見てない?まいいや。行ける?」

美少年「…」

女「お家の人が駄目って言った?」

美少年「…」

女「おいおい、反応してよー」

美少年「…」

女「ちぇっ。ぱーって行って帰ってくるだけなのに。あんたの家の人きっびしー」

女「あーあ、じゃあ友達とでも行くか」スタスタ

美少年「!」

美少年「…っ」グイ

女「うお。な、なに?」

美少年「…」コクコク

女「行くの?」

美少年「…」コクコクコクコク

女「よっしゃ。じゃあ、今日は早く迎えに来る」

美少年「…」パァ

=夕方

女「えーっと、確かここら辺だったはず…」

美少年「…」ジト

女「もおお、ちょっとそんな目しないでってば!この地図が説明不足なの!」

美少年「…」クイクイ

女「んだよ、…あ」

女「あ、あったー!」

美少年「…」クスクス

女「分かりにくっ。隠れ家きどってんなよ馬鹿」プンプン

女「まあいいや、入ろう」グイ

……


女「静かで割りといい雰囲気のお店だねー」

美少年「…」コク

女「ケーキ美味しいし。うん、これはリピート決定だ」

美少年「…」コク

女「…ねえ、あのさ」

美少年「?」

女「今日何の日か知ってる?」

美少年「…?」

女「なんと、今日は私達が出会ってから4ヶ月記念日なんです」

美少年「…」

女「なんだその目は」

「それ先月もやった」

女「それは三ヶ月記念じゃん。やだー」

「めんどくさい」

女「公衆の面前で暴力振るわれたいんか?おお?」

美少年「…」クスクス

女「あの日からほぼ毎日会ってるよね、私達」

美少年「…」コクン

女「そうそう、昨日あんたと初めて会ったときの夢見たのよ」

美少年「…」

女「いやー、中々ドラマティックな出会いだったよね」

美少年「…」ブンブン

女「…っ。いやでもさ、あんた結構謎だよね」

女「なんであの土砂降りの中、傘もささず泣いてたの?」

美少年「…」カタ

女「ぶっちゃけあんた友達とかいなさそうだし、まさかいじめとか」

美少年「…」

女「えっと、その。まあ私は一応、あんたの友達だから。…何かあったら相談とかのるし」

女「…ね、何か困った事とかあるんじゃないの?」

「急にどうしたの」

女「急に、じゃなくて。前から気にはなってたけど、そのー…」

女「…どうしても、あんたには何か悩みがあるんじゃないかなあって」

「こんな話がしたいから、さそってきたの?」

女「そういうわけじゃないよ。ってか論点ずらさないで」

女「あんたの声、とか…。最初何か体の病気かなにかかと思ったけど」

女「違う、よね。心因性のものだよね。ストレスで声が出ないってこと」

美少年「…」

「わかんない」

女「分かんないって…。病院は?行ったの?」

「いってない」

女「何でよ。あんたの家金持ちだし、良い病院行きゃいいじゃん」

美少年「…」

女「親とか…普通連れて行くもんでしょ」

「ぼくが行きたくないって言ったから」

女「…何時からなのよ」

美少年「…」

「2年くらい前」

女「…マジか」

美少年「…」コクン

女「待って待って、ストレス性のものじゃないにしても、その期間声出ないで、治療なしってのは」

女「いくらなんでもおかしい…。って、あ!」

女「あんたのお兄さん、医大生なんでしょ。声のこと詳しかったり…」

美少年「…!」

女「ねえ、真剣に考えて。自分の体のことでしょ」

美少年「……っ」フルフル

女「何。何が嫌なの、何が気に入らないのよ。何で否定するの!」

女「私はあんたがしんぱ…」

女「…っ、じゃ、なくて。あんたの為を思って言ってるのよっ」

美少年「…っ」ビク

カシャン

女「あ、フォーク…」

美少年「…」ガタガタ

美少年「…」キュ

女「…な、に?どうした」

「ごめんなさい」

女「い、いや。怒ってるんじゃなくて」

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

美少年「…っ、…っ」ポロポロ

女「ちょ、なっ…」

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめ」

女「…やめなさいっ!」バッ

美少年「…!っ、っ」ガタガタ

女「私が悪かった。ごめん、だから、落ち着いて」ギュッ

女「大丈夫。怒ってないから、ごめんね…」ギュウ

美少年「…はぁ、はぁっ…」

女「落ち着いて。私はあんたの味方だから」ギュウウ

美少年「…っ、ぁ」




美少年「…たす、けて…」

女「…え?」

美少年「…」

女「…あ、あんた…」

店員「お客様…?」

女「あ、ごめんなさいっ。弟が喘息の発作おこしちゃったみたいでっ」

女「その、うるさくしてごめんなさい。お代金いくらですか?今出るんで」

美少年「……」

……


女「…おちついた?」

美少年「…」コクン

女「…その、声。もう出ないのかな」

美少年「……」

女「そっか。まあ、焦る事ないって」ポンポン

美少年「…」

女「で、さ」

女「やっぱりあんた、何か抱え込んじゃってるんでしょ。聞かせてよ」

美少年「…」

女「嫌なの。もう、だんまりは止めて。話してくれなきゃ伝わらないの、助けられないの」

美少年「…」

「女ちゃんにめいわくがかかる」

女「…」

女「はぁ」

女「…こんの大馬鹿っ」ポカッ

美少年「!?」

女「いい加減にしてよっ。どいつもこいつもっ、馬鹿にしないでよ!私がそんなに頼りないの!?」グッ

女「助けたいのに!私、あんたのこと助けたいの!!」ポロポロ

美少年「……」オロオロ

女「…っ、あんた、私の親友に似てる」グスッ

女「…中学校のとき、いじめられてた。クラスが違うから私、気づけなくて…」

女「…ある日、マンションから飛び降りちゃったの。あの馬鹿…」

美少年「!!」

女「死にはしなかったけど、大怪我で車椅子生活になって、転校。…私が、ちょっとでも相談にのってあげたら。こんなことには…」

美少年「……」

女「もうこんな思いは嫌。お願い、私の相談なしに居なくなったりしないで」ギュウ

美少年「…」ポンポン

女「お願い、助けさせてよ」ギュウ

美少年「…」

「ぼく…」

女「…」

「…美少年?」

美少年「!!」ビク

女「…あ、」

兄「こんな所にいたのかっ」

美少年「……」

兄「…っ、この馬鹿っ」

美少年「……」

女(あああ…最悪のタイミング)

兄「家にまだ帰ってきてないから探してみれば…」

兄「心配かけさせるな!勝手なことばかり…」

女「ちょっと待ってください。今日の事は、私が悪いんです」

兄「…はい?」

女「私がこの子連れまわしちゃって。ね」

美少年「…」

女「すみません、叱るのなら、私を」ペコ

兄「…」

兄「はあ。まあ、人といたならいいでしょう。俺はてっきり、事件かなにかかと…」

女「色々遊んでたら、つい時間忘れちゃって…。以後気をつけます」

兄「…母が門限に異常なほど厳しいんです。こういうことは控えてください」

女「…母、ですか」

女「あの、質問なんですけど」

兄「はい」

女「この子の声…一度病院に連れて行って検査したほうがいいかと」

兄「検査?」

兄「ああ、それなら…。母が連れて行ったはずですが。けど原因不明で経過観察中なんです」

女「え、そうなんですか」チラ

美少年「…」

女「……」

兄「それが何か?」

女(…下手な事を言うとまずいのかな)

女「いえ。心配になっただけです。友達として」

兄「それはどうも」

兄「じゃあ、今日はこれで。さようなら」

美少年「…」

女「さようなら。美少年、また明日ね」

兄「…本当に心配したんだぞ」

美少年「…」コクン

兄「いいか、俺たちの家は一応世間に名が通ってる。問題は起こせないんだ」

兄「だから母さんも厳しいだろ?」

美少年「…」コクン

兄「…窮屈なのは分かってるが、お前、俺よりはマシさ」

兄「俺は小さい頃から勉強勉強だったなぁ。お前より自由なんて無かった」

美少年「…」

兄「いいか、俺はお前を庇ってやってるんだぞ、これでも」

兄「遊び呆けてるのは母さんに黙ってる。けど限度があるんだ」

美少年「…」

兄「分かってくれるな?」ナデ

美少年「…っ」コク

兄「あの子との付き合いも…少し考えるべきだな」

美少年「…!」

兄「あまり母さんは良い顔し

兄「あの子との付き合いも…少し考えるべきだな」

美少年「…!」

兄「あまり母さんは良い顔しないと思うぞ」

兄「あの子との付き合いも…少し考えるべきだな」

美少年「…!」

兄「あまり母さんは良い顔しないと思うぞ」

兄「あの子との付き合いも…少し考えるべきだな」

美少年「…!」

兄「あまり母さんは良い顔しないと思うぞ」

兄「あの子との付き合いも…少し考えるべきだな」

美少年「…!」

兄「あまり母さんは良い顔しないと思うぞ」

美少年「…っ」

兄「美少年、いい加減我儘はよしてくれ」

兄「…お前がもう少し物分りが良かったら俺も苦労しない」ナデ

美少年「…っ」

兄「はやく夕飯にしよう。すっかり遅くなったからな」

兄「今日は八時から始めるか、勉強」

美少年「…」

なんかおかしくなったw


兄「あまり母さんは良い顔しないと思うぞ」

兄「あの子との付き合いも…少し考えるべきだな」

美少年「…!」

兄「あまり母さんは良い顔しないと思うぞ」

美少年「…っ」

兄「美少年、いい加減我儘はよしてくれ」

兄「…お前がもう少し物分りが良かったら俺も苦労しない」ナデ

美少年「…っ」

兄「はやく夕飯にしよう。すっかり遅くなったからな」

兄「今日は八時から始めるか、勉強」

美少年「…」

こうでした

兄「あの子との付き合いも…少し考えるべきだな」

美少年「…!」

兄「あまり母さんは良い顔しないと思うぞ」

美少年「…っ」

兄「美少年、いい加減我儘はよしてくれ」

兄「…お前がもう少し物分りが良かったら俺も苦労しない」ナデ

美少年「…っ」

兄「はやく夕飯にしよう。すっかり遅くなったからな」

兄「今日は八時から始めるか、勉強」

美少年「…」

うわああやっぱりこうでした

女「…むーん」

女(お兄さん、は結構過保護なんだね)カリカリ

女(まあちょっと冷たいけど、美少年のこと心配してんだ)

女(…だとしたら、問題はお母さん?)

女(ってかあの一家お父さんはどうなんだっけ。あーっと、海外出張中か)

女(それにまだイジメの線も捨て切れないしー。あああ)ガリガリ

女母「おっ勉強がんばってるねー」

女「え?い、いや。ははは…。って」

女「ノックぐらいしろおおおおお!!」

女(とんだ邪魔が入った)

女(まとめると…)

女(イジメか家庭か、どっちかに失声の原因がありそうかな。うん)

女(…でもやっぱり、お母さんが気になるんだよなぁ…)ポチポチ

女(メール大丈夫かなー。八時だしセーフか?)

「おーい、今日の話の続きなんだけど」

女「…」

シーン

女「未読無視」

「暇な時返してー。すぐ返事するから」

女「むぅ…。お風呂にでも入ってんのかな」




「…っ、っ、ぅっ…」

「----っ!!」

女「…ぅ」

女「あ、やっべ。寝おちしてた!」ガバ

女「セーフセーフ今日は土曜日」ドキドキ

女「…っと」ポチポチ

女「…メッセージなし、か」

女(…ちょっと、気になるな)

=美少年宅

女「…」ドキドキ

女「…っ」ピンポーン

「はい?どちらさまでしょうか」

女「あ、私、美少年君の知り合いで…。その、忘れ物届けにきましたっ」

「美少年様なら今、発熱してお休みになっています」

女「えっ、あらら」

女「じゃあ、お見舞いってことで…」

「はぁ。確認してまいります」

女「…」ソワソワ

「お待たせいたしました。美少年様は容態が芳しくないので、お引取りを」

女「え、そう、ですか…」

「申し訳ございません」

ブツッ

女「…発熱、って。そんないきなり」

女「…」ポチポチ

「風邪ひいたの?」

女「…」

女「既読つかない、か」

女「…はぁ」

=図書館

女「…えーっと、ストレス…精神病…」

女「うげ、難しそうな本ばっか」

女「頭痛くなりそう…」

女「ま、時間山ほどあるから片っ端から読むか」ドサ

女「……」ペラペラ

ピロン

女「…ん」

「風邪ひいちゃった」

女「…」

女(なん、だろ。どきどきする)

「大丈夫か?」

「うん」

「さっき行ったんだけど、追い返されちゃったの」

「お見舞い行って良い?」

「だめ」

女「…」

「本当に風邪?」

女「…」ドキドキ

女(…既読ついてるぞ。早く返せ)

「違う」

女「…!」

女(やっぱり…!)

「今一人?」

「お手伝いさんがいる」

「なんか変なかんじするよ。大丈夫なの」

「ううん」

女「…!」

「行って良い?」

「おねがい」

女「…っ」ダッ

女「…はぁ、はぁ」

女「玄関からは、無理か…!」

「外に出れそう?」

「ううん」

「今どうやってメッセージ送ってるの」

「トイレで隠れてやってる」

女「…」キョロキョロ

「トイレに小窓ある?」

「ある」

女「…ここか」

コンコン

「今丁度トイレの外にいる。受け止めてあげるから出てきて」

女「…美少年っ」

ガラガラ

美少年「……」

女「おいで」

美少年「…」スッ

女「よ、っと。うお意外に軽い」

美少年「…」

「大丈夫?」

女「ん。大丈夫だから、行こう」

美少年「…」コクン

=女宅

女「ふー、肝冷えたぁ」

女「あ、今日お母さんいないからくつろいで。どぞどぞ」ガチャ

女(…何か罪悪感すげー)

美少年「…」チョコン

女「えっと、鍵かけたから。多分安心」

美少年「…」コク

女「…隣座って良い?」

美少年「…」コク

女「…ふぅうう」ドサ

女「なんかさ、私お姫様を救い出すヒーローみたいじゃなかった?」クス

美少年「…」ジト

女「む。はいと言えはいと」ムニュ

美少年「~~っ」

女「…で、何で嘘ついたの」

美少年「…」

女「ほい、紙とペン」

女「無理にとは言わないけど」

美少年「…」キュキュ

「お兄ちゃんに外に出るなって言われた」

女「ふーん」

女「それはどうして?」

「女ちゃんと遊びすぎた罰だから」

女「…うへ。責任感」

女「他に言いたいことは?」

美少年「…」

女「…そう。まあ、いいや」

女「ご飯まだでしょ。作るよ。チャーハンとかでいい?」

美少年「…」コクン

女「味は保障しないけどねー」

美少年「…」クス

女(…なんかやつれてる気がするんだけど…)トントン

女(やっぱ、何かキツいこと言われたりとかしたんじゃ…)

美少年「…」ジー

女「ちょ、そんなに見られるとはずかs」ザク

女「」

美少年「!!!」

女「ったあああああああああああああああいい!!!指がぁあああ!!!」

美少年「……」アタフタ

女「うああああああああいってええええええ」ピョンピョン

美少年「……!」ナデナデ

女「うわああ、ごめん、絆創膏持ってきて」

美少年「!」コクコク


女「…うう、すまんね。ちょっと血流す」キュ

ジャー

美少年「…」ゴク

女「なに、どした」

美少年「………っ」フラ

女「ちょ、え!?」

美少年「……」ハァハァ

女「どうしたの!顔、真っ青だけど!」

美少年「……」ハァハァ

女(すごい汗、どうして急に…)

女「…あ」

女「まさ、か」

美少年「…っ…っ」ポロポロ

女「血?血が、嫌なの?」

美少年「…っ」ガタガタ

女「ごめん。今流す。綺麗にするから。大丈夫だよ」

女「ほら、私元気だから!ぜんっぜん、平気だから!」ゴシゴシ

美少年「……」ブルブル

女(…やっぱ、変だ。こいつ…)

美少年「…」

女「落ち着いた?大丈夫?」

「ごめんなさい」

女「ううん。謝らなくていいよ。…他人の血とかグロくて嫌だよね、ははは」

美少年「…」

女「…でも、あんなちょびっとじゃん。どうしてそんなに怖がるのかな」

美少年「…」フルフル

女「それは否定なの?嘘つかないで。怖がってたじゃない」

女「…」

女「血が怖いのは、痛いことを連想させちゃうから?」

美少年「…」

女「…ねえ、あんたさ。その…」

女「家の中のだれかに、痛いこととか…されてるんじゃないの?」

美少年「…」ピタ

女「違う?」

美少年「………」

美少年「………」ガタガタ

女「そうなの?」

美少年「……」

美少年「…」コク

女「…っ。やっぱり」

女「…それは誰なの。教えて」

美少年「……」ガタガタ

女「教えるのが怖いの?でも、教えてくれなきゃもっと怖い思いするんだよ」

美少年「…っ」

女「分かった、じゃあ質問変える。それはいつから?」

美少年「…」キュ

「二年前から」

女「声が出なくなった時期と一緒…」

美少年「…」コクン

女「例えば、どんなことをされるの?殴られる?蹴られる?」

美少年「…」

女「言いたくないのね、分かった。分かった…」ギュ

美少年「…」

「どうして泣いてるの」

女「…うっさい」ポロポロ

美少年「…」ギュ

女「…辛かった?」

美少年「…」コクン

女「そうだよね、もう、大丈夫だから。私が守るから…」ポロポロ

美少年「……」

美少年「…う、ん」

女「…っ、ぐすっ、ううっ…!」

女母「たっだいまー」

美少年「…あ」

女「げ」

女母「…お邪魔だったかしらぁ」

女「一旦待て。誤解だ、多大なる誤解なんだ」

……


美少年「…」スゥスゥ

女母「寝ちゃったわね」

女「寝顔は無邪気で可愛いもんだ」ブビーッ

女母「…で、どうするのよ」

女「とりあえず泊める。返せないわよあんな家」

女母「そ。まあ好きになさいな。けどどうやって説明しようかしら」

女「説明もなにも、通報すりゃいいじゃん。犯罪だよこんなの」

美少年「…」パチ

女「お、起きた」

美少年「…だ、め」

女「え?何が」

美少年「…けいさつ、だめ」

女「…なんでよ」

美少年「おねがい」

女「む。まあ本人がそう言うなら…」

女母「ってか声、どうしたの」

美少年「女ちゃんが、こえ、治してくれた」

女「え、わ、私?いやいや私は何もしてない…」

女母「ひゅーひゅー照れてる~」

女「ちちち違うし!!なにが!!?」

美少年「…いま、なんじ」

女「5時だけど…あっ」

女「門限過ぎてる。連絡しなきゃやばいかな」

美少年「…ぼく、する?」

女「いやいや、声まだガラガラだし、私がする」

女「…」ピピピ

プル ガチャ

「もっ、もしもしっ!」

女(早っっ)

「坊ちゃん、坊ちゃんそこにいらっしゃるんですか!?」

女「あ、はい。すんません…」

「もう門限のお時間は過ぎております!すぐ帰っ…」

女「それが、今日はここに泊まりたいらしくて」

「許可できかねます!」

女「えーっと。あなたお手伝いさん?一人ですか」

「そうです。坊ちゃんの行動の責任は私が…」

女「お母さんとかお兄さんは?」

「両方とも今日はお帰りになりませんっ」

女「えー、じゃあ黙っててくれません?お願いします」

「なっ…」

女「一晩くらいいいじゃないですか~。美少年も黙ってるし。ね」

「し、しかしですね」

女「大丈夫です。責任持って預かりますし…それに」

女「そちらのお宅よりここのほうがずっと安全なんじゃないかと」

「…」

女「違います?」

美少年「…おんな、ちゃん」ガシ

女「あーはいはい、ごめんて。…とにかく今日は泊まらせます。では」

「ちょっ…」

ガチャ

女「うーんこのわからずや」

美少年「…」

女「しかし明日はどうするかなー」

女母「ま、明日は明日に考えなさいよ。お風呂はいっといで」

女「うい」

美少年「…だいじょうぶ、かなぁ」

女「…っと」

女「一緒に入る?なんちゃって」

美少年「…」コクン

女「は」

女母「お湯もったいないし、そうしなさいよ」

女「いやいやいや無理無理無理」

女母「なーに恥ずかしがってんだか。意識してんの?」

女「そんなはずあるか。面白いことを言うねあなた」ワナワナ

美少年「…」クス

女「あー、はいはい。ガキのお風呂の世話でしょ。余裕余裕。ほら、行くよ」グイあ

美少年「う、うん」

女「お湯、熱くない?」

美少年「うん」

女「…あっそ。あ、これ以上近づいたらぶん殴るから」

美少年「わかった」

女「ふん」ザブ

女「…」チラ

美少年「…」チャプチャプ

女(…痣が消えてる)

女(何でだ…?虐待の痕がない。どこにも…)

美少年「なに、みてるの」

女「見てない!!!!」バシャッ

美少年「やめっ」

女「自意識過剰!自意識過剰!そっちこそ見るな!」バシャバシャ

美少年「ぼくは、みてないっ」

女「…」ポンポン

美少年「…」スゥスゥ

女「寝た、か」

女「…ふー」

女(どうして。虐待されてるなら大なり小なり痕が残ってるはずでしょ)

女「…」

女(何が起こってるんだろ、こいつに…)

……


女母「…な、おんな!」

女「…ん、はい?」

女母「美少年君のお兄さん、来てるわよ」

女「」

女「私はいないと言って。ついでに美少年も」バサッ

女母「何言ってるの。怒ってはないみたいよ。説明してきなさい」

女「マジか」

女「…おはようございます」

兄「どうも。うちの弟がお世話になったみたいで」

女「いえ。その、すみません勝手に」

兄「…いいんですよ。母もいなかったし、黙っていればばれません」

女「はぁ」

美少年「…おんな、ちゃん?」

兄「あ、美少年。迎えに来たぞ」

美少年「!」

兄「何だお前、声…出るようになったのか。良かったじゃないか」

美少年「…」コクン

女「あの、声のことなんですけど。ちょっとご相談が」

兄「はい?」

女「やっぱり彼の失声は心因性のものでした。多分。つまりー」

女「単刀直入に言いますと、そちらのご家庭にストレスの原因があるかと。それもかなり強い」

兄「…」

兄「はぁ」

美少年「…」ギュ

兄「確かに、そうかもしれません」

女「かも?」

兄「弟の失声はストレスによるもの、それはすぐ分かっていました」

女「そ、そうなんですか」

女「じゃあ、どうして」

兄「君は高校生ですよね」

女「は、はい」

兄「倫理の授業はとってるかな?それか保健体育で心身相互関係の授業とかは」

女「えーっとまあ、取ってますけど」

兄「ストレス、と言われても一概にはくくれないんですよ」

兄「例えば、君がストレスに感じる事と弟が感じる事。そこには大きな違いがあるわけです」

女「はい」

兄「人によって感じる度合いは全く違う。その点、弟は…」

美少年「…」

兄「ご存知の通り、心が繊細すぎます。少しの事で傷ついてしまうんです」

女「まあ、それはそうですね。弱虫だし」

美少年「…」ムス

兄「確かに家の母の教育や束縛は行き過ぎていると思います」

兄「かつては僕も心身のバランスを崩しそうになりました。けれど、なんとか折り合いをつける方法を覚えた」

女「…」

兄「弟は、まあありていに言うと、傷つきやすいんです」

兄「だから少しの事で大きなストレスを感じてしまう。それが失声の原因です」

女「…暴力があったんじゃないですか?」

兄「それは…」

兄「弟が言った事ですか?」チラ

美少年「…」

女「いえ。私の単なる推測です。ストレスって言ったらまず、暴力による虐待を思い浮かべるでしょう」

兄「…」

兄「確かに、母が弟に手を上げることはありました」

女「…そうですか」

兄「けれど、それはあくまで躾の範囲内です。これだけは言えます」

兄「恥ずかしながら僕もそんな経験はあります。しかし、これも躾です」

兄「暴力と呼べる領域には到底達していない。…現に、彼にその痕はないでしょう」

女「…確かに」

女「例えば粗相をしたときの平手とか」

兄「はい。そんなことはどんな家庭の子供も経験していますよね。あなたも」

女「そうですねー」

女(今でもあるしね…)

女「じゃあつまり、躾や叱責を美少年が重く受け止めすぎてる、ってことですか」

兄「はい。けれど、勿論保護者である俺たちにも責任はあります」

兄「…忙しさにかまけて、放置してるなんて、兄失格です」ギュ

女「…」

女「だってさ、美少年」

美少年「…」

女「えっと、お兄さんが言ってる事は合ってるのかな」

美少年「…」コクン

女「そっか…。そっかぁー」

兄「これからは母とも話し合って、改善していこうと思います」

女「す、すみませんでしたこちらこそ」ペコペコ

兄「俺も反省しています。弟のことをもっとしっかり考えるようにします」

女「他人が邪推してすみませんでしたっ。でも、よかったあー」

兄「美少年、今までごめんな」ジッ

女「良かったね美少年、あんたのこと思ってる人、ここにもちゃんといるんだよ」ニコ

美少年「…」

美少年「うん」コクン

女「…ふー」バタン

女「ああああ一件落着うううう」ヘナヘナ

女母「あはは、よかったねぇ。大した事じゃなくて」

女「本当だよー。もう、結局アイツのへなちょこハートが原因じゃない」ブツブツ

女母「声も出るようになったし、もう安心だね」

女「…ん!」クス

女「あいつの声、結構可愛かった」

女母「顔赤い」

女「お母さん、叩いて良い?」

女母「きゃーこわーーい」



兄「…今までごめんな、お前の気持ちに気づいてやれなくて」

美少年「…」フルフル

兄「これからは、もっと優しくしてやらないとな」ナデ

美少年「……」

兄「大丈夫、兄ちゃんはお前の事大好きなんだからさ」ニコ

女「…補習?」

担任「そ。補習」

女「いやいやいやちょっと待っておかしいおかしい」

担任「なぁーにがおかしい、だ!お前期末の結果どうだった!?お?言ってみろ!?」

女「…」

担任「明日から長期休みだが、毎日補習な。朝7時から夕方5時まで学校」

女「何でもするからそれだけは許して」

担任「何でもする?じゃあ補習して勉強してな」

女「あああああああああああああああああああああああああああああああ」




女「…あんまりだぁ」グスグス

女母「テメェ成績表持ってこなかった理由はそれか!殺されてぇか」

女「二次災害!!」

女「明日からまとまった休みだし、美少年と遊び呆けようと思ったのにぃい」

女母「しょうがないわね。自分の怠惰を恨みなさい」

女「くそったれえええええええええええええええええええええ」

女「…でも、ま」

女「お兄さんという良き理解者を得たし、私がそこまででしゃばらなくてもいいのかも」

女母「あら、そう思う?」

女「結局あいつとベタベタしてたのって、何かある!って心配感からだし…」

女「うん。あいつもそろそろ同じ世代の友達を作るべきだよ」

女「心配の種はなくなったんだし!」

女母「貴様の心配の種は増えてるだろうが」

女「勉強してきます」

女母「スマホ置いてけ」

女「流石…。くそ、見抜かれてたか」ギリリ

女母「没シュートね。一週間スマホ禁止」

女「殺す気!?」

女母「おー死ね。一向に構わん」ヒョイ

女「くっそおおおおおおおおおおおおおおおお」


補習1日目

女「be動詞って何ですか」

担任「…」

補習2日目

担任「だから、これを左辺に移項すんだって」

女「日本語でおk」

補習3日目

女「やった、小テスト10点!!これでもう補習しなくていいね」

担任「ふざけんなこれ50点満点だぞ」



ピコン

「新着メッセージがあります」

ピコン

「新着メッセージがあります」

ピコン

「新着メッセージがあります」



「…はぁ、はぁ」

「…っ、っ」


ピコン

ピコン ピコン ピコン

補習7日目

女「…」カリカリ

担任「…そこまで」

女「よっしゃああああきたあああああああ」バッ

担任「本当かー?じゃ、採点するぞ」

女「んふふふふ」

担任「…」シャッシャッシャ

担任「おお…満点だ。やりゃできるじゃねーか」

女「よおおおおおおおおおおおおしゃあああ!持ってる!私持ってるぅうう」

担任「おめでとう落第ギリギリ女君。今日で君の補習天国は終了だ」

女「地獄だったわ」

女「ありがとうございましたっ。以後きをつけまーす」ダッ

女(スッマホスッマホ♪美少年連れまわして遊ぶか)ワクワク


女「ただいまーっ!」バン

女母「おう、どうだった」

女「全教科テスト満点!補習終了しました!」ビシィ

女母「やればできるじゃない!じゃあ、スマホは返してあげるけど、精進しなさいよ」

女「勿論ですお母様」

女「一週間ぶりに触る文明機器ー。電源オンと」

女「…うお、そういえば一週間美少年と連絡絶ってるのか」

女「…」ポチ

女「…え」

「美少年 から新着メッセージが121件あります」

女「なにこれ…」

女「…っ」ポチポチ

女(嫌な予感がする、嫌な予感しかしない)

「家についたよ」

「女ちゃん泊めてくれてありがとう」

女「…泊まった翌日だ。昼に2件」

「女ちゃん、いる?」

「返事して」

「女ちゃん」

「ねえ」

女「…これは、夜」

「女ちゃん」

「お願い」






「たすけて」

女「……!!!!」

女「…っ」バッ

女「お母さんっ、今すぐ美少年ん家に電話してっ!!」

女母「え、どうして」

女「いいからっ!早くしてよっ!!」

女母「わ、分かった」タタタ

女「……っ」ポチポチ

「どうしたの。補習で携帯見れなかった、大丈夫なの?」

「返事して。何があったの」

女「……」ハァハァ

女母「出ないわ。すぐ切れちゃった」

女「…っ、お母さんっ、ちょっと出てくるっ」ダッ

女(メッセージの送信が昨日で切れてる…!)

女「…っ、畜生っ…」ダダダ



ピンポーン

「はい」

女「美少年の友達ですっ!入れて下さいっ!」

「また貴方ですか…。美少年様はあなたに会いたくないと」

女「そんな訳ないでしょ!美少年に何かしてるのは分かってんのよ!入れなさいっ!!入れろ!」ドンドン

「警察を呼びましょうか。お引取りください」

女「…っ、あなたこの家で何が起こってるのか分かってんの!?いい加減にし」

ブツッ

女「…くそっ!」ダン

女「はぁ、はぁっ」

女「どいつもこいつもっ…っ…」ボロボロ

女「落ち着かなきゃ、どうしよう。どうしたらいいの…」

女「お願い、返事してよ美少年…っ」



女「…お願い、嫌。嫌っ…」ポロポロ

「…あなた、何をしてるの?」

女「!」ビクッ

美女「…家になにか御用ですか」

女「…美少年に会わせてください、友達なんですっ」

美女「ああ、あの子の…」

女「いるんですよね!あの子、私に助けてって…」

ちょい落ちます

美女「とりあえず入って。近所迷惑だわ」

女「…分かりました」

美女「…はぁ」

バタン

メイド「奥様、お帰りなさいま…」

女「…お邪魔します」

メイド「!」

美女「お客様よ。お前は下がってなさい」

メイド「は、はい…」

美女「とりあえずそこのソファにでもかけて」

女「…」ストン

美女「で、何のご用かしら」

女「あ、あのっ…。美少年から、たすけてってメッセージが来て」

美女「ふーん」

女「…っ、心配になって来ました。会わせてください」

美女「ああ、あなた…。家が美少年を虐待してんじゃないかって言い出した女の子ね。合点がいったわ」スッ

女「…あなたは、その」

美女「母よ。煙草吸っていいかしら?」

女「は、はい」

美女「…はぁ」

女(この人がお母さん…。綺麗な人だけど、なんか…)

美女「単刀直入に言うと、美少年はここにはいません」

女「え?」

美女「貴方の家から帰ってきた翌日に家を出たわ」

女「え、え、でも」

美女「何から話せばいいかしらね」

美女「…まあまず、あの子を心配してくれてありがとう。無用だったけれど」

女「…」

美女「もう分かってるかもしれないけど、虐待の事実なんてないわ」

美女「私はあの子にそれほど構ってやれる時間はないし」

女「でも、このメッセージは」

美女「…あの子は、そうやってあなたの気を引きたいのね」

女「え…」

美女「…はぁ」

美女「昔からちょっと虚言癖があったわ。人の気を引きたがるの」

女「じゃあ、これは嘘なんですか」

美女「その可能性が高いわね」

美女「実際、声が出なくなったのも虚言の一種なんじゃないかと思ってるのよ、私」

女「そんなはずありません。2年ですよ」

美女「あなたね…。母親の私より何が分かるっていうの」

女「…っ」

美女「…この家庭はね、複雑なのよ」ギシ

美女「あの子がこうなった理由もなんとなく分かるわ」

女「複雑、ですか」

美女「そう」

美女「…知りたいのなら、話すわよ。美少年の友達ですもの」

女「ぜ、是非」

美女「…まず、あの子の兄は本当の兄じゃない」

女「えっ…」

美女「兄は私の連れ子なの。前との夫の子供」

女「…」

美女「けど美少年は正真正銘、私と夫の子供。この家の正式な長男ね」

女「そう、ですか」

美女「でも兄はよくあの子の面倒を見てくれてるわ。あの子が人間にあんな優しくするの見たことないもの」

女「…」

美女「兄が本当の血縁ではない。それが一つの引け目」

美女「二つ目に、あの子可哀相な位父親から愛されなかったわ」

美女「だって似すぎてるんですもの、自分と。弱くて、小さい」

女「そんな、でも」

美女「寧ろあの人は兄のほうが好きだったわ。優秀で、将来有望なの」フゥー

美女「それが二つ目の引け目」

女「…」

美女「それにまあ、自分がコンプレックスだったのもあるでしょうね」

美女「勉強も運動も人並み以下だもの、あの子」

女「…そんな言い方」

美女「勘違いしないで、私はあの子を愛してるわ」

美女「ただ…なぜかしら、兄のほうが」

女「…」

美女「聞きたくない話でしょうが、母親も結局人間ってこと」フゥ

女「…もう、結構です」

美女「そう」グリ

美女「勿論あの子は無事だし、心配しないで頂戴ね。休みを利用して休養してるだけだから」

女「…はい」

美女「それから、今後あまりこの家のことに首を突っ込まないでくれる。私も暇じゃないの」

美女「高校生の勘違いに振り回されるほどの時間はないし、仕事が山積みなのよ」

女「……」

美女「納得していただけたかしら」

女「…すみません。ありがとうございました」

美女「…あの子には兄がついてるの」

美女「あなたがそんなに心配しなくても、結構よ」

女「…はい」

美女「じゃあ、ごきげんよう」

バタン


女「…はー」

女「空回り、かー」

女「…虚言癖ね」

女「…」

女「ただいま」

女母「女、美少年君は…」

女「んー、大丈夫みたい。どっか療養に行ってるんだってさ」

女母「そう」

女「なんか、ごめん。一人で突っ走っちゃって。迷惑かけた」

女母「気にしないの。何もないんならそれでいいじゃない」

女「うん。…ちょっと、休むね」ガチャ

バタン

女「…」ボフン

女「はずかしーなー、なんか」

女「…ついでに寂しい」

……


女「…」カリカリ

女「…」チラ

女(結局昨日は連絡なかったな)

女「…はぁーあ」

担任「はぁーあじゃないよ、何でお前こんな所来てんの」

女「だって暇なんだもん。補習させろ」

担任「怖いくらいの変わりようだな…」

女「友達と遊べないわ、親にはやんわり来るなって言われるわ。寂しいわ」カリカリ

担任「お、おう。よくわかんないけど大変だな」

女「…ん」

女「補習監督ありがとうございます。あとは図書館でやります」ガタ

担任「おぉ」

女「…」フラフラー

担任「…なんだあいつ」

女「…」ポチポチ

「おーい」

「連絡してー」

女「…無視かい」

女「…勉強する気失せた…」グタ

女「ブラックジャックでも読むかなー」

ピコン

女「!」バッ

女「き、来たっ」

「gt」

女「…じーてぃー?」

「日本語でおk」

「あhlふぉうy」

女「…」

「悪ふざけはやめて」

女「…」

女「はぁあ…」

女「何なのよ、あいつ」

落ちますおやすみ

「どうかしたの?」

女「…」

「ねぇ」

「1157」

女「はぁ?」

「何が?」

女「…」

女「既読無視かい!何なのよさっきの!」

女「ああああ、めんどくっさ!構ってちゃんかあいつは」イライラ

女「あーもういい。帰ろ」ガタッ

女(言いたいことがあるんならはっきり言えっつの。全く…)ブツブツ

=小学校前

女「…あれ、そういえば小学校は休みじゃないんだな。ご苦労なこった」

「…あ、来たっ」

「お、おい本当に行くのかよ」

「ったりめーだろ、早く終わらせようぜ」

女(…めっちゃ見られてる…何だあの子たち)

ボンボン「あ、あのぉー」

女「ん、はぁ」

取り巻き「なあなあ、本当にこの人?」

ボンボン「うっせ、黙ってろって。あの、女…さんですよね」

女「うん、そうだけど…えっと君誰」

ボンボン「あ、俺は…。美少年のクラスメイトです」

ボンボン「あいつ、今学校休んでて…それで…」

女「あー知ってる知ってる。療養だってね」

ボンボン「…何か知らないけど、休む前にこれ、渡されたんです」スッ

女「…なにこれ、日記?」

ボンボン「自分が2日以上休むようなことがあったら、女って人に渡して欲しいって…」

女「え、私に?何で」

ボンボン「俺も分かりません。けど、熱心に頼まれて」

女「…中、見た?」

ボンボン「いえ。見ないでってクギ刺されたし、鍵ついてるんで」

女「あ、マジだ。ダイヤル式のついてる」

女「えーと、何か知らないけどありがと。貰っておく」

ボンボン「はい」

女「ありがとう、美少年の友達君」

ボンボン「え、いや俺は」

取り巻き「…友達ですっ!」バッ

ボンボン「おいっ」

女「じゃーね。ばいばい」スタスタ




ボンボン「…可愛かったな」

取り巻き「うん。お姉さんってかんじ」

女「…なんじゃこりゃ」

女「鍵なんかかけちゃって。何がしたいんだあいつ」

女「うーーーん…中は見るなってこと?じゃあ何で渡すわけ?」クルクル

女「気になる、めっちゃ気になる」クルクル

女「とりあえずあいつの誕生日に合わせて…」

女「…」

女「チッ、違うか。小学生のくせにセキュリティばっちりだな」

女「あーもー、気になる気になる気になる」イライラ

女(…ってか、本当なに考えてるんだあいつ)

女(今更私に何させたいわけ。コソコソしないでお兄さんに相談したら…)

女「…」

女「…ん?」

女「…」ポチポチ

「1157」

女「昼間のメッセージ…これか?」カチカチ

カチン

女「あ、開いた」

女「…」ゴク

女(えーっと、いいのかな。見ても)

女(鍵番号まで言ってきたってことは、良いんだよね)ペラ

「◎月◎日 お母さんが久々に帰ってきた」

「◎月×日 宿題が多くて大変だった」

女「淡白な日記だなー。つける意味あんの」

女「…」ペラペラ

「お母さんが海外出張」

「お兄ちゃんしか家にいない」

「居残りをして門限を少し過ぎてしまった。お兄ちゃんと勉強する」

女(…)

女(ふと、思ったんだけどさ)

女(あいつのお母さんって、会ったとき…。放任主義っぽくなかった?)

女(てっきり厳しい教育ママかと思ってたけど、ほとんど家空けてるし)

女「…」ペラ

女「あ、これ…。私と会う一日前の日記」

「外に出てはいけないって言われたのに、どうしても学校のウサギが気になって抜け出した。お兄ちゃんは悲しそうだった

 連れ戻されたあと、お兄ちゃんと勉強する。逃げたい」

女「…次が私に会ったときの」

「女ちゃんっていう友達ができる。嬉しい」

女「…」ペラ

「女ちゃんと遊んでて門限を過ぎる。お兄ちゃんと8時から勉強する」

女「……」ゾク

女(え、何。今の)

女「……何なの」ペラペラ

女(何で寒気がする。どうして)ペラペラ

「女ちゃんとケーキ屋さんに行く。声が少し出た。門限を破ってしまう。お兄ちゃんと勉強する」

「昨日勉強中に上手く出来なくて怒られた。門限を破って、勉強もできない罰だから今日は家から出れない。声が出ない」

女「…べん、きょう」ボソ

…あの子の母親が束縛が激しいのは認めます。

…私あんまりあの子に干渉はしないわ。忙しいの

女「……」ペラペラ

「●月●日

 お兄ちゃんが怒った。もう、女ちゃんに会えない」

女「…これ、泊まっていった次の日の…」

女「…」ペラ

「女ちゃん助けて。もう勉強は嫌だ痛い苦しい。声が 出ない」

女「…!」バサッ

女「え、なにこれ、血…!?」

女「文字の横に…」

…あいつ、2日以上休むことがあったら渡してって

女「…」ハァ ハァ

女「…っ」ダッ

女(気づけなかった、気づけなかった)

女(私…馬鹿だ…!)

女母「お、女?どしたの」

女「ごめん、お母さんっ!ちょっと出てくるっ」ガチャ

女母「え、ちょ…!」

=美少年宅前

メイド「…」ガチャ

メイド「…」カツカツ

「…あのっ」

メイド「!」ビク

女「すみません、どこ行かれるんですか?」

メイド「…買出しですが」

女「今日は美少年のお母さんは?」

メイド「家人は誰もおりません。私が留守を任されております」

女「ちょっと話があるんです」

メイド「すみません、勤務中ですので…」

女「…っ」

女「美少年と兄についてです。あなた、知ってたんでしょう」

メイド「…は」

女「あいつの兄ちゃんが、あいつに何してたか!知ってましたよね!毎日ここにいるあんたなら!!」

メイド「なに、を」

女「しらばっくれても駄目。もう私全部分かってるから」カツカツ

メイド「…!」

女「あいつのストレスの原因はずっとお母さんにあるかと思ってた!」

女「けど、違う!兄の誘導にまんまと引っかかったのよ」

メイド「すみません、何のことか私には…」

女「いい加減にしてよっ!兄が美少年を虐待してた!そうなんでしょ!」ガシッ

メイド「きゃっ…!」

女「美少年は何処に行った!教えろ!!」ギリギリ

メイド「っ…わ、たしは…っ」

女「お願い、あいつ……死ぬ、かも…」ポロ

メイド「……」

女「あんたがチクったなんて誰にも言わない。だから、お願い!美少年を助けてよっ」

メイド「…」

女「お願い…お願いしますっ…」ポロポロ



メイド「すみ、ませんでした…」

女「…っ」

メイド「私には、私にはどうしてもお金が必要だったんです…」

メイド「…兄様は、確かに美少年に酷いことをなさっていました。躾と称して…」

メイド「内容は存じ上げません。知らないでいい、黙っていろ、干渉するなとお金を渡されました」

メイド「私は……なんてことを」

女「もう、いい。分かった」

女「あんたのこと許せないけど、あんたは苦しんだから、もういい」

メイド「……」ポロ

女「…やっぱり、あいつだったのね」

女「気づいてやれなかった。一番の馬鹿は私だ」

女「美少年は何処にいますか」

メイド「…兄様と、別邸にいらっしゃるはずです」

女「別邸…。それは」

メイド「兄様の大学の近くにあります。住所は……」

女「…分かった」

女「今すぐあいつ助けに行かなきゃ。じゃあ」クル

メイド「お待ちください」

女「何よ、時間がないんだけどっ」

メイド「…お送りします。こうなってしまった責任は私にもあります」

女「え、いいの」

メイド「こんなことで罪滅ぼしにはなりませんが、せめてできることをしたいんです」

女「…分かった。お願いします」

=別邸前

女「…」バタン

メイド「あの…」

女「もういい。あとは私がやる」

メイド「いえ、待っています」

女「そ。じゃ、帰りもよろしく。随分遅くなっちゃったし」

メイド「…」コク

女「……」タタ

ピンポーン

女「…」

女「いな、い?」

女(…今6時半か。外出してるのかな。それとも、大学とか)

女(あんな危ない奴が美少年の傍にいないのは良いけど、どうやって入ろう…)

女「…」ポチポチ

「女です。今別邸の前にいる。迎えに来た」

女「…既読はつくのに」

女(少なくともスマホを使える状況下にいるってことよね)

女「…」ポチ

プルルル プルルル



女「…美少年?」

「…」

女「声、出せないのね」

女「大丈夫。迎えに来たから」

女「…えっとね、今から質問をするから、はいだったら音を一回、いいえだったら二回鳴らして。分かった?」

コン

女「今あんたは一階にいる?」

コンコン

女「二階にいるのね。お兄ちゃんはいる?」

コンコン

女「いないんだ、良かった」

女(…でも、どうしよう。二階にいるんじゃ難易度がな)

女「…今、動ける?」

コンコン

女「分かった。もう腹くくるわ。電話切らないでね」

女「……どこも鍵開いてないな。そりゃそうか…」

女「…」

女「はー、くそ」

女「…」ガシ

ガシャンッ

女(うわああああああごめんなさいごめんなさいごめんなさい割っちゃった)

女「…痛っ。ガラスで血出た」

女(心を無にしろ、お叱りなら後でたっぷり受けてやる)ゴソゴソ

カチャ

女「やった、開いたっ」ガララ

女(空き巣の気分…)

女「あのね、今お風呂場の窓割って家に入ったから」

女「…一応謝っておく。ごめん」

コン

女「今行く。待ってて」

コン

女「…」タタタ

女(無駄に広いな、…っと、あった階段)タタタ

女「…今、二階。もう少しだよ」

女「…」ガチャ

女(物置か)バタン

女「えっと、ここか」ガチャ

女(空き部屋かクソ)

女「…」

女「この部屋だけ鍵かかってる…」

女「…美少年っ!!」ダンダン

女「ここ!?ここにいるの!?」

コン

女「…っ。分かった、ちょっと待ってて」

女「えーと、えーとっ…」

女(空き部屋から伝えそうなところがある。行けそう…)ガララ

女「うわ、高っ…」ゴク

女(む、無心…!)ソロソロ

女(落ちませんように落ちませんように)

女「…っ!」ドサ

女「よ、よっしゃ無事ぃいい!やっぱ持ってるわ私」

女「美少年、聞こえる?今ベランダに回ってるの」

女「ここの窓の鍵なら開けれそう?届く?」

コン

女「…!」

女「ゆっくりでいいよ、がんばって!」


ガチャ

女「…っ、美少年!!」ガラッ




女「……あ」

異常だった。

部屋にはベッドが一つ、それだけ。

女「…美少、年」

ベッドの足には、目隠しをされて手錠でつながれたあいつがいた。


女「…っ、大丈夫っ!?」バッ

美少年「……」

女「な、なにこれっ。最悪!あんた、痣だらけじゃん!」

女「待って、今…」

ギュ

女「…っ」

美少年「…ぁ」

美少年「…女、ちゃん…」

女「…。うん、女。大丈夫だよ、もう安全だから」

女「痛かったね。よく頑張ったね」ギュ

美少年「…あり、がと」

女「ばーか。友達だから当たり前でしょ。目隠し外すよ」

美少年「うん」

女「…よし。見える?大丈夫?」

美少年「…えへへ、女ちゃん、ひさしぶり」

女「ごめん。気づけなくて…」

美少年「…」フルフル

女「出よう、ここ。警察に行こう」

美少年「…」

女「どうしよう、この手錠…。鍵、どっかに」

バタン

女「…っ」ビク

美少年「…!」

女「…玄関から?あいつ、帰ってきて…」

美少年「…にげ、て」

女「いやいや無理だから今更!あんた置いていけない!」

美少年「…だめ、女ちゃん、おねがい」

女「…っふざけんなっ。今すぐ警察呼ぶ、から」

女「…」

女「…携帯どこだ」

美少年「え」

女「やばい、興奮しすぎてベランダ下に落としちゃったかも」

美少年「……」

女「あ、あんたの携帯貸して!」



女「電池ねぇじゃねぇか!!!」

女「これはマズイ展開。神に見放されてる」

美少年「だから、にげ…」

女「…二階に電話ある?」

美少年「…お兄ちゃんの部屋」

女「今すぐ電話してくる。時間ない」ダッ

ガチャ

美少年「…ぁっ」



女(やばいやばいアドレナリンがやばい)ドキドキ

女(あいつまだ一階だよね?頼む永遠に上がってくるな)

女(兄の部屋、って。あ、ここかな。見逃してた)ガチャ

キィ

女「…」

女(あ、あった!良かったぁあ)

女(これで電話して、あとはもう解決…!)ドン

バサバサバサッ

女「」ビクッ

女(や、ばっ。音立てちゃった…!本棚からファイル落ちて…)

女「…」

女「…え」



「…ああ、母さん?こっちは大丈夫」

「うん、うん。…ちょっと待って。二階が騒がしいんだ、ちょっと見てくる」

「うん。また後でかけなおす」

ピッ

「…」

ギシッ

女「なに、これ」

女(…美少年の、写真だ)

女(……あざだらけで、泣いてて、縛られて、……裸の)

女「……っ」

女「…っ、うっ…!!」バッ

女(嘘、嘘だ。こんなことって)

女(虐待、って、こういう…!)

女「ぐっ、ぉえっ…」ガタガタ

女(信じられない……!)

ガタッ

女「!」ビクッ

「…!」

女「…ぁ…」

兄「…お前」

女「……っ」

兄「どうして…どっから入った?」ガッ

女「きゃっ…!!」

兄「メイドか、あいつがお前に余計な事喋ったんだろ!?なあ!?」ギリギリ

女「…っ、ぐっ…」

兄「見たのか、このファイル!見たのかよっ!!?」

女「…見たわよっ」ギリ

女「この外道!!!殺してやる!!」ポロポロ

兄「…ははっ」

ガチャ

美少年「…!」ビクッ

兄「よお」

美少年「……」ガタガタ

兄「お前のお友達が来てるみたいだぞ」

美少年「…!」

美少年「おんな、ちゃんっ。どこっ」

兄「ここだけど?」グイ

女「…っ」

美少年「おんなちゃんっ!!」ギシッ

兄「美少年、駄目じゃないか」クス

兄「何時の間に携帯取り戻したんだよ?どこにある?」

美少年「…こ、こ」

兄「…悪い子だ」

美少年「ごめ、なさ…」ガタガタ

兄「……っ」バキッ

美少年「がっ…!!」

女「やめっ…!」

兄「良い子にするって言ったよな?お前約束したよな?」ガッ

兄「お兄ちゃんの言う事聞きますって言ったよなぁ?なんで守れないんだ?何で俺を裏切るんだ?」ガッ、ガッ

兄「何で殴られないと分かんないんだ?俺のことそんなに嫌いなのか?答えろよ、答えろよ!!」バキッ

女「…っ!やめてっ!お願い!お願いぃっ!」

美少年「…はぁ、はぁ」

兄「…お前も余計なお世話なんだよ」グイ

兄「お前がいなきゃ、このまま美少年と一緒にずっといれたのにさぁ…」

女「…っ、痛っ…」

兄「…はー」

兄「何でいっつもこうなるんだよ…俺は弟を愛してる。愛してるだけなのに、邪魔が入る」

女「…っ、あんたの考えは間違ってる!汚らわしい!」

兄「…」

ドスッ

女「ぁぐっ…!」

女「…っ、ごほっ…!」

兄「黙ってろ」グイ

兄「美少年、こうなったのもお前のせいだからな。お前が悪い子だったからだ」ガチャ

兄「あとでまたどこが悪いか教えてやる。お前、勉強好きだもんな?」ニコ

美少年「……」ガタガタ

兄「じゃあな、また後で」

バタン

女「…っ、はぁ、はあ」

美少年「…おんなちゃん、だい、じょうぶ?」

女「大丈夫じゃ、ない。めっちゃ痛い…くそ…」ゼェゼェ

美少年「…っ」ジワ

女「泣くなっ。死にゃしないからっ…!」

女(…手、後ろに縛られてるし、足も縛られてる…。ぜんっぜん動かない)

女「…あのキチガイ…。許さない、絶対殺す」ギリ

美少年「…ぼくの、せいだ」ポロポロ

女「違う。それだけは違う」

女(お腹痛いっ…。あいつ腹ばっか狙いやがって)

女「あんたも、大丈夫なの?蹴られてたけど」

美少年「ぼくは…だいじょうぶ。慣れてるから」

女「腐ってる…ああもう」

女「…っ、…っ」ジタバタ

女「よ、っと。動くのもここが限界だわ」

美少年「…ぐすっ、うっ…」

女「泣くなって。ほら、空いてる手、こっちやって」

美少年「…っ」スッ

女「女ちゃんのほっぺでも触ってなよ。泣き虫美少年」

美少年「…うん」

女「あー…。これからどうしよう。殺されんのかな私」

美少年「…っ」

女「あ、今のナシ。ごめんごめん」

女「…その、さ。あんたの兄さん最低だね」

美少年「…」

女「何されたかは、だいたい分かるよ。私も子供じゃないし、うん」

女「…どうして、誰にも言わなかったの?お母さんとか先生に言えば…」

美少年「…お兄ちゃんは、エリートだから」

女「はぁ?」

美少年「ぼくなんかより、ずっと凄いから」

美少年「だから…言ったら、皆が困るって」

女「お前マジ…それ本気で思ってる?頭悪すぎ」

美少年「お兄ちゃんは、ぼくのこと好きだからこうするって言ってた」

女「きっしょ…。理解不能」

美少年「ぼくが悪い事するから、そのお仕置きってことも」

女「死ねあいつ。言っておくけど、あんたは良い子だよ!」

女「…っ。こんな酷い事される筋合いないんだよ」

美少年「うん」

女「はぁあ…。もう、何なのよ」

美少年「…」ナデナデ

女「もう、何で私が慰められてんのよ。逆でしょ」

美少年「おんなちゃんは、やさしいね」

女「…ばっかじゃないの」

美少年「ふふ」

女「…あいつ、今何してんのかな」

美少年「準備、だと思う」

女「何のよ」

美少年「…勉強」

女「薄々感づいてるけどさあ、それってそのつまりー」

美少年「セックス」

女「……」ガン

美少年「ご、ごめん。泣かないで」

女「うっせーよ泣いてないよ!怒ってんのよ!!」

女「あんたの声が出なくなったのもこれが原因なんでしょ」

女「…ずっと暴力の虐待だって決め付けてた。兄弟だし、こういう場合があるなんて…」

美少年「…」

女「どうしよう、早く逃げなきゃ」

美少年「ぼくが、おんなちゃんは逃がすよう、たのむ」

女「絶対嫌。ってか全部知ってるのに逃がすわけないじゃん」

美少年「でも」

女「もー、うるさい!今考えてるんだからっ」

女「…うー」

美少年「…」

女「とりあえずこの手足のガムテープどうにかしないと」

女「あんたは手錠ね」

美少年「うん」

女「刃物ある?この部屋」

美少年「ないよ」

女「ですよね」

トン、トン

美少年「…!」ビクッ

女「あ、あがってきた?」

美少年「……」コクコク

女「くっそ、どうしよう。どうしよう…」

美少年「ぼくは大丈夫だから、おんなちゃん」

女「何がっ…」

ガチャ

女「!」

美少年「…」

兄「…」ツカツカ

女「…ちょ、あんた」

美少年「…」

カチャ

兄「おいで、美少年」

女「だ、駄目っ。何するの!やめてっ」

美少年「おんなちゃん、もういいから」

兄「綺麗に洗ってやるからな。大人しくしてれば、そんなに酷くはしないから」

女「…っ」

美少年「…うん。お兄ちゃん」

女「いか、ないで!美少年っ…!!」

バタン

女「…ぁ、くそっ…」

女「…っ、畜生っ…」

女「どっか…ガムテ切れそうな物ないの!?」

女「ベッドのふちとかとがってるしいけるか?」ズリズリ

女「…っ」ガリ

女(早く、早くしないと…!)ガリガリ



ブツン

女「はぁ、はぁっ」

女「時間かかっちゃった…!足も、はがして…っ」ベリベリ

女(…っいたあああああああああああああ)

女「…っ」ダッ

ガチャ

女「…美少年っ」

女(何処、何処に行った!)

女(……お風呂場?)

女「…っ!」ダダダ



「…っ、あっ、ぐっ…」

「いた、い…。いたいよぉ…っ」

女「……」ピタ

女「…はぁ、はぁ」ガタガタ

女(どうしよう)

「泣くなって言ってるだろ!静かにしろ!」

ゴッ

女(どう、しよう)

「いやぁっ…!!」

女(殺したい)フラ

女(あいつ、殺してやる…)

女「…」チラ

女(…キッチンに、お酒のボトル…)

女「…」ギュ

「あっ、ぐうっ、いやっ…」

女(…許さない)

美少年「…っ、ぐすっ、ううっ…」

兄「いい加減静かにしろ」グイ

美少年「……っ」

兄「お前を殴るのはあんまり好きじゃないんだよ。傷つくし」

兄「なぁ…泣くなって、笑えよ」ゴッ

美少年「…っ、は、い…」

兄「ああ、そうだ。あの女がどうなってもいいのか?」

美少年「…!」

兄「あんまり抵抗するとあの女が…」

美少年「…っ、お兄ちゃんっ、ごめんなさい!ごめんなさい!」ガシッ

兄「……」ゾクゾク

美少年「なんでもしますっ。だから女ちゃんは!だめっ!」

兄「じゃあ、首絞めてみて良いか?」

美少年「…ぇ」

兄「窒息するとここも締まるんだってさ。前から試してみたかったんだ」ニヤニヤ

美少年「…して、ください」ガタガタ

兄「良い子だな、美少年は」グッ

美少年「!がっ…」ビク

兄「はぁ、はあっ…!」グググ

美少年「……っ、ぁ、っ…」

ガチャ

美少年「…!」

兄「…っ、はぁ、あははっ…」

美少年「だ、め」

兄「は?なんだぁ?」

美少年「…おんな、ちゃ…」

兄「は?」

「……っ!!」


ゴッ

ドサ

女「はぁっ、はあっ…」

美少年「……ひっ…!」

女「大丈夫、美少年…」

美少年「~~っ」コクコク

女「おいで。怖かったね、もう大丈夫」ギュッ

美少年「おんなちゃ…」

美少年「…っ」

美少年「うぅっ…うわあああ…」ポロポロ

女「…っ、ぐすっ…」

美少年「おにいちゃん…うごかないよ?」ポロポロ

女「…」

美少年「しんじゃったの?おんなちゃん、つかまっちゃうの?ねぇ」

女「捕まってもいい。あんたを助けられたんなら、それでいい」ギュ

美少年「いや…いやだあああ…」ポロポロ

女「…っ」

バンッ

美少年「…!」ビクッ

「警察だ!!」

女「…メイドさんが呼んでくれたのね」

バタバタ

女「よかったね、美少年…。もう怖いものないよ」

美少年「…っ、でも、でもっ」

女「…頭、痛い…」グラ

美少年「…!おんな、ちゃ」

女「…よかった。美少年…」

ドサ

美少年「おんなちゃん!やだ…!」

バンッ

「動くなっ!」

美少年「……っ。おんなちゃぁあんっ…!」ポロポロ

……


女「…」

女「…ん」モゾ

女「……」

女「あ?」パチ

女母「…」スゥスゥ

女「…ここどこ」

女母「!」バッ

女「あ、お母さん。おひさ」

女母「…馬鹿ぁああああああああ!!」ガバッ

女「うおっ。なにっ!?」

女母「病院よここ!何やってんの馬鹿!大馬鹿あああ!!」ギュウウウ

女「ご、ごめんなさいっ。ごめんなさいっ!」

女母「あんたはっ…どんだけ人に心配かければ…っ」

女「返す言葉もないわ…。ごめん、お母さん」

女母「…っ、とにかく意識が戻って良かったわ。あんた1日眠りっぱなしだったのよ」

女「…マジすか」

女母「こんな傷だらけで…もう…。良かった…」

女「うー、すみません本当」

女「…」

女「ちょっと待って。美少年は?」

女母「無事よ。同じ病院にいる」

女「あああ…良かったぁ…」

女「え、っと。あのーどうなってるのこれ」

女母「こっちが知りたいくらいよ!いきなり警察に呼び出されて…」

ガチャ

刑事「…すみません」

女「あ、どうも」

女「あの…私」

刑事「意識が戻って何よりです」

女「は、はあ」

刑事「すみませんがお母さん、少しご退出を」

女母「はい…」

バタン

女「…私捕まりますかね」

刑事「どの点に関してかな」

女「不法侵入と殺人」

刑事「…」

刑事「君の決定的なミスは、すぐに警察に任せなかったことだ」

女「のぼせ上がってたんですよ」

刑事「…兄なら生きてる。頭にでかいたんこぶが出来ただけだ」

女「あ、っそうですか…。安心なような残念なような」

刑事「何があったか聞かせてもらってもいいかな?」

女「その前に美少年はどうなってますか、今」

刑事「栄養状態と打撲が酷くてね…まだ目が覚めてない」

女「大丈夫でしょうか」

刑事「全く問題はない。心配なのは精神面だな」

刑事「強い精神疲労がある。PTSDも考えられる」

女「…」

刑事「まぁ」

刑事「乱暴で短絡的なやり方だったが、救出してくれた君には感謝している」

女「友達ですから、当たり前です」

刑事「…よろしいかな?」

女「はい、全部話します」

……


女「え、じゃあ私はお咎め無しですか」

刑事「当たり前だろう。一応暴行も受けているし被害者だからな」

女「やっほー。あのクズは?」

刑事「成年だし勿論、法的にしかるべき罰を受けるだろうな」

女「ざまあみろ」フン

刑事「では、ありがとう。また何か聞きにくるかもしれないが、その時はよろしく」

女「はーい」

バタン

女母「…」スタスタ

女「あ、おかーさん。お腹すいたー。売店でアイス買ってきて」

女母「その前にてめぇに良いたいことが山ほどあんだよ」

女「…」

女「お咎めありじゃねぇか…」ガタガタ

……


女母「だいたいあんたはね勉強もしないくせにいきなりこういう突拍子もないことを昔から」

女「…」ゲッソリ

看護師「あのー、お母様。そろそろ許してあげたらいいんじゃ…。もう入院3日目ですよ」

女「白衣の天使さんもっと言って。お願い」

女母「いいえ足りません!まだまだ言いたいことが」

看護師「あはは…あ、それより女ちゃん。美少年君、目を覚ましたみたいよ」

女「!」ガバッ

女「ま、まじでっ。行くっ」

看護師「ああ、走らないで!点滴抜けちゃうからっ」

女「は、はい!!」シャカシャカ

女「…」ドキドキ

女「よ、よし」ガラ

美女「!」

女「う、うわっ。すみません」

美女「あなた…」

女「あ、お母さん。お久しぶりです」

美女「…はぁ。お見舞いに来てくれたの?」

女「はい!目、覚ましたんですよねあいつ」

美女「…合わない方が良いわよ」

女「は?」

美女「ねぇ、病院内のカフェにでも行きましょうよ。奢るわ」グイ

女「え、ちょ…」

美女「…」

女「あの、病院内は禁煙ですよ」

美女「そう、そうだったわね。ごめんなさい」

女「…えーと」

美女「好きなの頼んでちょうだい」

女「じゃあ遠慮なく。すみませーん!注文いいですかっ」

美女「…」

女「ここのおすすめケーキ3つお願いしますっ。あ、あとプリンも」

美女「よく食べるわね」

女「入院食ばっかりで甘味無縁だったんですよ。ごちそうさまです」ニコニコ

美女「…」クス

美女「…言いたいことがあるの」

女「お叱りですか」

美女「そんなわけないでしょう。…美少年を助けてくれてありがとう。心の底から感謝してるわ」

女「…いえ。当然のことです」

美女「そう…。…でも兄が、まさかあんな…」

女「心中お察しします。けど、自分を責めないでください」

美女「私は…何も気づかなかった。兄のことも、美少年のことも…」

女「あいつは巧妙でした。お母さんも忙しかったし、仕方ないですよ」

女「けど、やっぱり…。気づいてほしかったなとは思います。美少年のためにも」

美女「…」

美女「兄は、本当にそんな子じゃなかったの」

女「…」

「おまたせしました」

女「あ、どうも」

美女「2年前のことよ」

美女「美少年が、兄と自分が血縁にないって知ったのは」

女「え…」

美女「兄は寂しい子だった。私が再婚して、弟が生まれて、余計肩身が狭かったでしょう」

美女「そんな中、良い兄、良い長男として立派であろうともがいてた」

女「…」

美女「美少年が兄が義理だと気づいた時、彼らの関係に変化ができたのかもしれない」

美女「…兄の中で、何かが切れてしまったのかもしれない」

女「…まあ何にせよ、彼のやったことは許されないことです」

美女「分かってる。分かってるわ…」

女「…本当に弱かったのは兄自信だったのでしょうね」サク

女「それに気づけなかったあなた」

女「気づいていても生活のために黙っていたお手伝いさん」

女「それから…勘違いで助けるのが遅れた私」

女「…」モグ

女「美少年を取り巻く、美少年を守るべき人全てに責任があります」

美女「…」

女「美少年は警察に通報しようとした私を止めました」

女「今、なんとなく理由が分かった気がします」

女「美少年は、自分のせいで兄がおかしくなってしまったのだと思っていたんでしょう」

女「けど、兄は優秀で母親からの信望も厚い。自分が我慢すれば、穏便に済む」モグ

女「…馬鹿です。けど、きっと一番強い心を持ってたんだと思います」

美女「…」

女「まあそういう諸々の理由で今回の悲しい出来事は起こりました」

女「ところで、どうして私は美少年に会えないんでしょうか」

美女「…」

美女「あの子は、もう…。何も見てない」

女「…」

美女「どうしたらいいのかしら、私は…」

美女「兄も、美少年も…救えない。心を殺してしまった…」

女「あいつは大丈夫ですよ」

美女「…え」

女「ゆっくりでいいんじゃないですか。今までの分愛してあげてください」

女「あいつは強いです。きっと立ち直れます」

美女「…っ」

女「それがあなたの…なんていうのかな、罪滅ぼしなんじゃないでしょうか」

美女「…そういうものかしら」

女「ええ」モグ

女「ご馳走様でした。美少年君に会ってもいいですか」

美女「…お願いします」

女「はい」ニコ

美女「…あ、待って」

女「はい?」

美女「一つどうしても聞きたいことがあるの」

美女「どうしてあなたはそこまでして、美少年のことを助けてくれたの?」

女「…」

女「んー」

女「ここだけの話なんですけど」

美女「ええ」

女「…好きだからです。あの子のことが」

美女「…そう」

女「そういうわけです。じゃあ、行ってきます」タタタ

美女「…」

美女「ふー…」

美女「…ありがとう。女さん」

女「…」コンコン

女「えーっと、女です。お見舞いに来ました失礼しまーす」

ガチャ

美少年「…」

女「おひさしぶりー」ヒラヒラ

看護師「あ、女ちゃん…」

美少年「…」

看護師「美少年君、女ちゃん来てくれたよ」

美少年「…」

女「…ずっとこうやって、窓の外見てるの?」

看護師「…ええ」

看護師「誰とも喋らないの。体は治っても、心は…」

女「…」

女「よいしょ」ストン

看護師「外そうか?」

女「うん。いちゃいちゃさせて」

看護師「…もう」

バタン

女「いー天気だね」

美少年「…」

女「ここ、眺めいいんだね。中庭全部見えるし」

美少年「…」

女「あ、小鳥。見てみてブサイクだね、あんたにそっくり」

美少年「…」

女「…ねー、美少年」

美少年「…」

女「…」

女「ね、こっち見て」

美少年「…」

女「手、握って良い?」

美少年「…」

女「…」ギュ

美少年「…」

美少年「…」チラ

女「あ、この袋の中気になる?じゃーん、これアイス」

女「入院生活って甘いもの食べられなくて鬱だよねー。まったく」ガサガサ

女「はいっ、美少年の好きなバニラ」

美少年「…」

女「どうぞ」

美少年「…」スッ

女「…覚えてる?あんた、好きだったんだよこれ」

美少年「…」

女「私は覚えてる。コンビニでクソ高いアイス買った事も、公園で砂遊びしたことも」

女「寒い中あんたを待たせて怒られたのも、ケーキ食べに行ったのも」

女「あんたが泣いてるとこも、笑ってるとこも、声も、ぜーんぶ覚えてるよ」

美少年「…」

女「あんたが私を忘れても、私はずっと覚えてるから、安心しろ」

美少年「…」

女「大好きだよ、美少年」

美少年「…」

女「…」

女「…また来るね」ガタ

女「私もさあ、検査とか色々面倒くさいことあんだよねー」

美少年「…」

女「あんたが戻ってくるまで、毎日でも来るよ。分かった?」

美少年「…」

女「…じゃ、ばいばい」

美少年「…」




美少年「…」ギュ

女「…え」

美少年「…ば」

美少年「…ばにら、きらい」

女「……っ!」

(´;ω;`)奇跡きた

美少年「…ちょこのと、こうかんして」

女「あ、んた…」

美少年「わざとでしょ」

女「私のこと、分かる!?」

美少年「…」コクン

女「誰!?」

美少年「…おんなちゃん。ぼくの、おんなちゃん」ニコ

女「は、はぁ!?何時から…何時からあんたのものになったのよ!きもいんだけど!」

美少年「…ないてる?」

女「…っ」

美少年「…よしよし」

美少年「…おんなちゃん」

女「なによぉ…」

美少年「…ありがとう。だいすき」

女「……」



女「うん。私も大好き」ギュッ

おしまい

お疲れさまです<(_ _)>
涙溢れてきた…(´┰ω┰)

その後

美女「本当にもう大丈夫なの?」

美少年「うん、大丈夫」

美女「もう少し休んでても…」

美少年「僕、早く学校行きたいから」ニコ

美女「…そう」

ピンポーン

「おいこらクソガキ!早く出て来い遅刻すんだろうが!」

美少年「…来た来た」クスクス

美女「ああ、これが目当てなのね」

美少年「…ちっ、違うよっ」

女「おっそ…あ、おはようございまーす」

美女「おはよう。ありがとう毎日」

女「いやいやついでなんで、全然」

女「あ、ところで…お仕事は?」

美女「やめたの。もう専業主婦としてやっていくわ。冷静になってみると、夫の稼ぎで十分良い暮らしできるし」

女「ファー…」

美少年「お父さんも、海外から来月帰ってくるんだよ」

女「お、そりゃ良かったね」

美女「引越しも検討したけど、やっぱりここがいいんですって」

女「へー、そうなの」

美少年「ん。ここ住みやすいし」

美女「そういう問題なのかしら~」

美少年「…」カァァ

女「…?」

美女「女ちゃん、夫が帰ってきたらまた改めて紹介するわ」

女「えーそんな」

美女「いいのいいの。どうせ将来」

美少年「女ちゃん、早く学校行こう」

女「ん、わ、分かった」

=小学校前

ボンボン「…お、来た来た」

美少年「…!」

ボンボン「ひ、久しぶり」

取り巻き「おっす」

美少年「…」

女「おー久しぶり。元気してた?」

ボンボン「あ、はいっ。してましたっ」

取り巻き「してましたっ!」

美少年「…」ムス

ボンボン「おい、荷物持つよ。貸せ」グイ

取り巻き「俺も俺も!」

美少年「え、ありがと…」

女「じゃあこいつのことよろしく」

美少年「また放課後ね」

女「はいはい」ヒラヒラ

ボンボン「…やっぱ可愛い…」

美少年「は、はあ?」

ボンボン「な、なあ俺も一緒に帰っていいか?」

美少年「だ、だめだよ!やだ!」

ボンボン「いいじゃねーか!友達だろー!」

美少年「…!」

美少年「と、友達でも駄目!!」

女「…」

「義弟に虐待 医大生逮捕」

女「…」バサッ

美少年「なに見てるの?」

女「あ、なんでもないっ。てか来てたなら言え馬鹿」

美少年「馬鹿って言うな。遅れてたくせに」

女「なにをっ…。あーもういい、帰ろう」

美少年「ん」

女「何、その手」

美少年「繋ご」

女「調子のんなや…」

美少年「…」ジト

女「ああああ、はいはい」ギュ

美少年「…ふんふーん」

女「あったかくなってきたねー。そろそろアイスのベストシーズン」

美少年「…」チラ

美少年「…」ツン

女「あだっ。お腹はやめろ」

美少年「…まだ、痛い?」

女「え?い、いや。全然」

美少年「…」

女「平気平気っ、鋼の回復力だからさー」

美少年「…でも」

女「ん」

美少年「女の子なのに、体に痕ついちゃった…」

女「だーもー。良いって言ってるじゃん。私がヘマしたんだから」

美少年「…」

美少年「…あのね」ギュ

女「はいはい」

美少年「ぼ、僕責任とるよ」

女「…」

女「え、なんの?」

美少年「…っ」カァア

女「え、え」

美少年「だからっ…。責任とって、女ちゃんと結婚してあげるから大丈夫だからねってこと!!」

女「…」

女「…」カァア

女「か、勝手に決めるな!!!馬鹿か!!」

美少年「駄目!する!」

女「うわあああああああああああああああ」

おしまい

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