ほたる「アンハッピーブレイカー」 (56)


※○○Pのように各アイドル毎に担当Pあり。(今回は一人しか出てきませんが)

※Pに名前あり。



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「屠所の羊、衛るは武神」


私のプロデューサーさんは、『強い』です。

何というか、その、『強い』んです。

他にあの人を例えられる言葉が見つからないというか、無理に言葉を重ねても伝わらないような感じがして。

とにかく―――『強い』んです……

―――事務所―――

ほたるP「よ、おはようほたる!」

ほたる「あ……プロデューサーさん、おはようございます……」ボサボサ

ほたるP「って、髪また凄い事になってんな……どうした?」

ほたる「あはは……鳥に絡まれてしまって……」

ほたるP「うーん。やっぱり俺が迎えに行ったほうがいいんじゃないか?」

ほたる「だ、大丈夫です。いつもの事ですし、それにプロデューサーさんにも迷惑がかかりますから……」

ほたるP「俺は別に大丈夫だって。何より俺に迷惑がかかるよりも、担当アイドルに何かある方が心配だ」

ほたる「でも……」

ほたるP「明日から朝、迎えに行くから。な?」

ほたる「……お願い、します」

ほたるP「よし、任された。そんじゃ今日の予定だけど……」

ほたる「(この人が私のプロデューサーになったのは3週間前のこと)」

―――3週間前―――

ほたるP「俺は武神(たけがみ)っていうんだ!みんなよろしくな!」

ほたる「(新しいプロデューサーさんが入ったんだ……)」

ワー パチパチー

ほたるP「特技は……うーん。ちひろさん、履歴書にも書いたアレでいいですかね?」

ちひろ「武神さんの特技は特技じゃなくて、何というか、常時装備というか……他にないんですか?」

ほたるP「すみません。それ以外脳がないもので……」

ちひろ「まぁ、武神さんのイメージがダイレクトに伝わりますから、一応それでいいですけど……」

ほたるP「ありがとうございます。えーと、改めまして」


ほたるP「特技は、『強い』事です」

シーン

ほたるP「あれ。何か間違えましたか俺?」

友香「あの、質問いいですか?」

ちひろ「はい友香ちゃん」

友香「押忍!その、武神さんのいう『強い』はどのような『強い』なのでしょうか?」

ほたるP「そのまんまの意味だ。喧嘩とか、戦闘とか」

友香「……ふーむ。なるほど」

ほたるP「何か荒事があったらこれからは俺に任せてくれってところだな」

有香「果たして本当に強いのでしょうか?」

ほたるP「ん?」

有香「ちひろさん!あたし、武神さんと手合わせを願います!」

ちひろ「えっ、その、有香ちゃん。本当に止めた方がいいわよ。この人の言ってる事、本当だから」

有香「自分で体験してみないとわからない事があると思うんです!」

早苗「同感ね」

ちひろ「早苗さんまで」

早苗「本当に強かったとしたらあたしの仕事も減るから助かるけど……あたしより弱かったらこの事務所は任せられないし」

ちひろ「そうかもしれませんけど、この人は……」

ほたるP「構いませんちひろさん。ちゃんと怪我のないようにしますから」

ちひろ「……わかりました。でも場所はどうするんですか?」

有香「あたしの家の道場まで来て下さい。そこならいくら暴れても大丈夫ですから」

早苗「ルールは?」

ほたるP「そうだな……何でもいいが、個人的には何でも有りがいいな。喧嘩ってのはそういうもんだろ?」

早苗「おーけー。後悔しないでよ?」

ちひろ「それじゃあ一旦ここは解散します。武神さんの『強い』の意味を知りたい人は有香ちゃんの道場に移動して構いません」

ほたる「(……変な人、ですね。でも悪い人じゃなさそう……)」

ほたる「(『強い』……ですか)」

―――道場―――

有香「押忍!お願いします!」

ほたるP「おう。お手柔らかに頼むぜ」

のあ「……ジャッジは私が行うわ」

ほたる「(何でのあさん……?)」

のあ「試合開始」

有香「……ハァッ!」ポーイ

有香「……ってええっ!?」

ほたる「(凄い勢いで武神さんに突撃したはずの有香さんが宙に浮いていました)」

ほたる「(い、一体何が起こったんでしょう……?)」

ほたるP「よっと、弱めに投げたが大丈夫か?今のが合気道っつーやつだ」ガシッ

有香「は、はい……」

のあ「(絶対違うと思うわ)」

ほたるP「最初の踏み込みも気迫が入っててよかった。ただまだどこかに慢心があったな、気をつけな」

有香「……お、押忍!師匠!」

ほたるP「弟子は取らない主義なんだけどなぁ」

早苗「……あのさ、ちひろさん」

ちひろ「はい?」

早苗「あの人、何者?」

ちひろ「あの人は……正直、よくわかりません」

早苗「えぇ……」

ちひろ「神奈川県の川神に仕事で向かった時、智絵里ちゃんと美穂ちゃんが男の人数人に囲まれてて……」

ちひろ「どうしようか悩んでたら、あの人がその男の人全員を一瞬で地面にめり込ませたんです」

早苗「……頭から?」

ちひろ「頭から」

ちひろ「正直目を疑いましたが、同時にこの人ならあの子を衛ってくれるんじゃないかと思いまして」

早苗「もしかしてそれって……」

ちひろ「はい。私は彼をほたるちゃんのプロデューサーに当てたいと思っています」

早苗「なるほどね……」

ちひろ「さて、それじゃああの人の強さを実感してきてくださいな」

早苗「あたた、急に腰痛が……」

ちひろ「ご遠慮なく♪」

早苗「いーやーよ!その話聞いたり、有香ちゃんの様子見てたらあたしなんか―――」

ほたる「(その後、早苗さんは見事に宙を舞っていました)」

ほたる「(ちなみにきらりさんは高い高いをされていました。きらりさんを高い高いできる人を初めて見ました)」

ほたる「(武神さんが正式に私のプロデューサーになる事を聞かされたのは、それから2日後の事でした)」

―――事務所―――

ちひろ「武神さーん」

ほたるP「は、はいー!」

ちひろ「資料のこの部分、間違えてるんで修正お願いします」

ほたるP「げっ、わ、わかりましたー!」

ほたる「(強い事以外は結構苦手な事が多いみたいで)」

ほたるP「ぎゃー!コーヒーがぁあああ!」

麗奈「作戦大成功っ!ぷぷっ!」

ほたるP「麗奈ぁ、いい度胸だなお前」シュンッ

麗奈「えっ、いつの間に背後に痛い痛いいいい!」

光「あれが瞬歩……!」キラキラ

ほたる「(なんだかんだで他のアイドルにも好かれています)」

ほたるP「さてほたる、今日はライブ会場の下見だ」バシュン

ほたる「……外に出るんですか?」

ほたるP「ああ。だから準備しとけよ」

ほたる「……はい」

ほたるP「んーな心配そうな顔するなって。俺が衛ってやるからさ」

ほたる「でも……私の不幸は……」

ほたるP「なぁほたるぅ」

ほたる「はい……?」

ほたるP「お前、もしかして自分は不幸だとか思ってないか?」

ほたる「え、あの、その」

ほたるP「世の中にはな、お前より不幸な人間なんて数えるほどいるんだぜ」

ほたるP「生きたくても生きられない人、外に出る事さえ出来ない人」

ほたるP「それに比べたらお前はよっぽど幸運だよ。まだ平凡に生活できて、尚且つ、人に恵まれてるんだから」

ほたる「人、に?」

ほたるP「ああ。柚とか忍を見ろよ。お前が不幸な事を気にしてるか?」

ほたる「……いえ」

ほたるP「ここにいるみんな、お前が不幸だって事はわかってる。でもそれを理由にお前から距離を取る人はいないだろ」

ほたる「森久保さんは」

ほたるP「あいつは例外だろ……ほぼ全員と距離取ってんだから」

ほたるP「周りに自分を理解してくれる人がいる。それは幸運なんだよ。自覚しようぜ」

ほたるP「不幸は気からって言うしな。これを期に考えを改めたら不幸だって直るかもしれないぞ?」

ほたる「……私は、幸運?」

ほたるP「まぁ俺が言いたいのはそんだけ。これ以上続けるとつまんねぇ説教になっちまうしな」

ほたる「……武神さんは」

ほたるP「んー?」

ほたる「武神さんは……周りに理解してくれている人が、いたんですか?」

ほたるP「……どうだろうな。いなかったと思うぜ、俺の事を理解しようとしてくれる人なんて」

ほたるP「でも今は幸せだ。俺の『強さ』なんて気にしないで話しかけてくれる人もいるし」

ほたるP「何より、ほたるみたいな美少女のプロデュースができるんだからさ」ニカッ

ほたる「っ、き、着替えてきますっ」タタッ

ちひろ「あんま担当アイドルを口説かないでくださいね」

ほたるP「口説いてるわけじゃないですよ。あくまで自信をつけたいだけです」

ほたるP「それに、見ました?」

ちひろ「何をですか?」

ほたるP「今ほたるのやつ、一回も転ばずに更衣室まで辿り着けてました。あんなに慌ててたら、いつもなら転ぶでしょうに」

ちひろ「あ……」

ほたるP「早速効果が出てるようで俺としては嬉しいです」

ほたる「きゃあっ、い、衣装台が倒れてー!」バタバタ

ほたるP「……まぁ、完全に不幸をなくす事は難しいかもしれませんが」

―――夜 ありすの部屋―――

ありす「調べたい事があるからパソコンを貸してほしい、ですか」

ほたる「は、はい。マキノさんは何だか忙しそうだったので……」

ありす「マキノさんには新しいプロデューサーさんが付く事になりましたからね……」

ほたる「それで、大丈夫ですか?」

ありす「構いません。しかし壊されると困るので、操作はこちらでさせてもらいますね」

ほたる「はい。それで大丈夫ですというか、それでお願いします……」

ありす「それで、何について調べたいんですか?」

ほたる「私の、プロデューサーさんの事です……」

ありす「あの、とにかく『強い』人の事ですか」

ほたる「はい……」

ありす「わかりました。少し待っててください」カタカタ

ありす「……これって」

ほたる「橘、さん?」

ありす「これを見てください」

ほたる「新聞記事……?『武神、全試合出場禁止』って……」

ありす「あの人、どうもほぼ全ての格闘技の世界大会への出場が禁止されているみたいですね」

ほたる「そ、そんな事ありうるんですか?」

ありす「普通に考えたらありえません。それこそ、化物のような強さを誇っていないと……」

ほたる「……」

『……どうだろうな。いなかったと思うぜ、俺の事を理解しようとしてくれる人なんて』

ほたる「ありがとうございました、橘さん」スクッ

ありす「もういいのですか?」

ほたる「はい。武神さんの事がまた一つ、わかったような気がしますから」

ありす「わかりました。私は私で調べたいことがありますので」

ほたる「あ、忙しかったんですか?」

ありす「いえ、私もプロデューサー絡みで……っと、噂をすれば電話ですね」プルルル

ほたる「す、すみません。それじゃあ今日はありがとうございました」ガチャ

ありす「はい。また明日」バタン

ほたる「……また明日……」

ほたる「そう、ですよね。明日は……」

<「だからありすと呼ばないでくださいと何度も言っているじゃないですか!」

ほたる「……大変そうですね。橘さんも」

―――翌日 事務所―――

ほたる「……お、おはようございます」ボロッ

ちひろ「ほたるちゃん!?どうしたのその格好?!」

ほたる「事務所に来る途中に……二回くらい、車に轢かれそうになりまして……」

ちひろ「……ほたるちゃん、もしかして今日って」

ほたる「はい……アンハッピーデー……です……」

ちひろ「やっぱり……言ってくれたなら、全部の仕事をキャンセルしたのに」

ほたる「皆さんに迷惑をかけるわけには行きませんから……」

ほたるP「ほたる!大丈夫か?!」バシュッ

ちひろ「(えっ、今どこから来たの)」

ほたる「あ……プロデューサーさん……」

ほたるP「迎えに行くって言ったじゃないか。どうして」

ほたる「あはは……すっかり忘れてました……今日はアンハッピーデーだったので……」

ほたるP「なんだそのアンハッピーデーって」

ほたる「一ヶ月に一度……特に不幸になる日があるんです」

ほたるP「それが今日ってワケか?」

ほたる「はい……」

ちひろ「武神さん」

ほたるP「なんでしょうか」

ちひろ「どうかほたるちゃんを、守ってください」

ほたるP「ええ。もちろんです」

ちひろ「ほたるちゃんのプロデューサーは、みんなこれが原因で去っていってしまいましたから……」

ほたる「ちひろさん」

ちひろ「ご、ごめんね。つい……」

ほたるP「不幸に遭って愛想を尽かしたってか?全くロクなプロデューサーじゃねぇな」

ほたる「……そうじゃ、ないんです」

ほたるP「どういう事だよ」

ほたる「……お仕事、行きましょうか」

ほたるP「おいほたる?」

ちひろ「ほたるちゃんを、よろしくお願いします。武神さん」

ほたるP「もちろんですって。待てってほたるぅ」

ちひろ「……貴方なら、きっと……」

―――外―――

ほたる「今日は、歩いて仕事場まで行きましょう」

ほたるP「いいのか?遠いぞ?」

ほたる「……車で行くと、もっと大変でしょうから」

ほたるP「そうか。ほたるがそれでいいなら俺は構わないよ」

ほたる「では、行きましょうか」

ほたるP「ったく。前任の野郎達は許せねぇな。不幸なだけでほたるを見捨てるとか―――」

キキィー!

ほたる「っ!?」

ほたるP「ん?」

ドゴォン!!

ザワザワ……イマトラックガヒトニ……

ほたる「た……武神さんっ!武神さんっ!!」

ほたる「ま、また、私の、プロデューサーが……」

ほたるP「……なるほどね、別に辞めたくて辞めたワケじゃねぇのな」

ほたる「武神さんっ!!」ギュッ

ほたるP「ちょ、ほたるぅ。心配しすぎだろ」

ほたる「よかった……本当によかった……!」

ほたるP「……」

ほたる「で、でもどうしてですか?今、武神さん、撥ねられて」

ほたるP「まぁ確かに撥ねられたけど……それが?」

ほたる「え?」

ほたるP「おーい。おっさーん。大丈夫かー?」

運転手「あわわわわわ」

ほたる「……と、トラックの方が凹んでるんですけど」

ほたるP「わりーわりー。いきなりだったからつい、体中に気を張っちまってさー」

運転手「あわわわわわ」

ほたるP「こりゃダメかな。行こうぜほたる」

ほたる「だ、ダメですよプロデューサーさん!病院、病院に行かないと」

ほたるP「ああそっか。もしかしたらケガしてるかもしれないからな」

ほたる「そうですよ!だから―――」

ほたるP「おっさーん。救急車呼んどくからー」

運転手「あわわわわわわ」

ほたるP「これでいいんだろ?」

ほたる「そうじゃないです!プロデューサーさんの心配を」

ほたるP「俺ならへーきだから。正直、トラックに撥ねられるのなんかよりほたるに何かあった方のが俺としてはダメージが来る」

ほたる「……ほ、本当に大丈夫なんですか?」

ほたるP「しつこいぞほたるぅ。ほら、仕事遅れちまうから行こうぜ」

ほたる「は、はい……」

ほたる「(あれ?でもあの運転手さんはどうやって事故の事を説明するんだろう……)」

―――スタジオ前―――

ほたる「あ、あのぅ?」

ほたるP「何?」

ほたる「本当に大丈夫ですか……?」

ほたるP「へーきへーき。トラックに三回轢かれて、何故か突然二回くらい銃で撃たれて、そんでもってマンホール内のガスが何らかの理由で引火して爆発しただけだろ?」

ほたる「絶対大丈夫じゃないですよぅ……」

ほたるP「それにしてもすげーな。お前のアンハッピーデーっつーの。まさかかすり傷一つ負っちまうとは」

ほたる「あれでかすり傷一つなプロデューサーさんに神様が怒ってるんじゃないですか……?」

ほたるP「ははは。そりゃねぇな。俺は神様に愛されて生まれてきたから」

ほたる「……そう、ですか」

ほたるP「そりゃお前もだぞ、ほたるぅ」

ほたる「え……?」

ほたるP「自分で生んだくせに神様が嫉妬して不幸を起こしちゃうくらい、お前は可愛いからな」

ほたる「~っ……ぷ、プロデューサーさんって、ナンパな人なんですね……」

ほたるP「いや、一途だと思うぜ?ほたる以外にこんなクッサイ台詞吐いた事ねぇし」

ほたる「調子のいい事ばっかり……」

ほたるP「さて、そろそろスタジオだな。今日はほたるが絵本を読んでそれを録音するんだっけ」

ほたる「きっと録音機器が故障しますけど……」

ほたるP「こんだけ不幸になったんだ。最後くらいはへーきさ」ヒュー

ほたる「そうですかね……?!」

ほたるP「ん、どうしt」

ズドォン!!

ほたる「……」

ほたるP「……」

テ、テッコツガオチタゾー!! イマヒトニアタラナカッタカ!?

ほたるP「いてぇじゃねーかクソ野郎ー!!!!」

ナ、ナンカシャベッテル!? ナンデヘイキナンダアイツ!?

ほたるP「流石の俺でも気を張ってない状態で頭から鉄骨落ちてきたら普通にいてーわアホか!」

ほたる「痛いだけで済む上に、やっぱり鉄骨の方が頭の形に曲がるんですね……」

ほたるP「ちょっと待ってろほたる。あいつらに文句言ってくる」バシュン

キ、キエタ!? ヨゥ ウワァナンカキタァ!?

ほたる「あ……プロデューサーさん……もう」

黒服1「白菊ほたる様でしょうか」

ほたる「え?……そ、そうですけど。すいません、サインは……」

黒服2「っ!」ガンッ

ほたる「うっ……」ドサッ

テッコツオトシタノハオメーラダロウガ! テッコツマゲタノハドイツダ! 

黒服1「おら!あいつが帰って来ないうちにずらかるぞ!」

黒服2「お、おう!」

ブロロロロ……


ほたるP「待たせたなほたるぅ。結局曲げた鉄骨を元に戻すまで帰さないとか言われてさぁ」バシュン

ほたるP「……ほたる?」

―――古倉庫―――

黒服1「へへへ、やったなぁオイ!」

黒服2「これで武神の野郎を狩れますねぇ!」

ほたる「う、うぅん……」

黒服1「お、起きたみたいだ」

黒服2「こんな可愛い子、あんな化け物にはもったいないっすよ」

黒服1「だよなぁ」

ほたる「あれ……ここは……」

黒服1「よぅ、起きたか」

ほたる「……えっと」

黒服2「ごめんなー。無関係のキミを巻き込んじゃってさー」

ほたる「……誘拐、ですか」

黒服1「察しがいいね」

ほたる「……何回もされたことありますし」

黒服2「……何か、この子もこの子で心配になってきたんすけど」

黒服1「俺もその通りだが、今回キミに危害を加えるつもりはない」

ほたる「……みんな、いつもそう言うんです」シラー

黒服2「……」

黒服1「……」

ほたる「お金が欲しいんなら……鞄の中に、お財布が入ってるのでカードでも何でも持っていってください……どうせ、何か起きて引き出せないと思いますけど……いつも私がそうなので……」

黒服2「あの」

黒服1「皆まで言うな。最後の最後、人質にでもしてやろうかと思ってた俺は死んだほうがいいんじゃないかとまで思ってきた」

黒服2「正々堂々、やります?」

黒服1「当たり前だろ……というかそうじゃないと、あいつに勝っても意味ねぇよ」ジャキン

ほたる「な、なんですかそれ……」

黒服1「これか?これは改造マシンガンだ」

黒服2「そんでこっちが改造火炎放射器」

ほたる「……そう、ですか」

黒服1「これであいつを蜂の巣にして、炙ってやるぜ」

ほたる「……その、大変申し上げにくいのですが」

黒服1「なんだよ」

ほたる「多分あの人……それぐらいじゃかすり傷一つつかないと思うんです……」

黒服1「なんでだよ。流石にあいつも人間だぞ?」

ほたる「さっきですね。マンホールが爆発したんですけど、それでもあの人傷一つついてませんでした」

黒服2「待ってくれ。まずマンホールが爆発したってなんだ」

ほたる「それでですね。唐突に何故かジャ○ク・バウアーが現れて」

黒服1「来日してんのかよ」

ほたる「『本当にすまないと思っている!』って言って武神さんのおでこを打ち抜いたんです」

黒服2「いや、思ってるなら打つなよ」

ほたる「でもむしろ銃弾の方が粉々になって」

黒服1「……流石に作り話だよな?」

ほたる「こんな状況で作り話なんてしても……」

黒服2「……兄貴」

黒服1「……そうだな。素直にほたるちゃんを解放して、謝ろう。土下座しよう」

ほたるP「そうだな。俺もそれがいいと思うぞ」

黒服2「ですよね」

黒服1「だな。よし、そんじゃ」

黒服1&黒服2『すんませんでしたー!!』ズザザザザァ

ほたるP「車で走れば20分、電車で向かえば1時間、俺が動けば30秒ってな」

黒服1「……へ?」メキッ

ほたる「……人の頭がコンクリートに突き刺さるの、始めてみました」

ほたるP「不思議だろ?死んでないんだぜこれで。一応ギャグのつもりだから」

黒服2「あわわわわわわ」メキャッ

ほたるP「で、平気……だろうな。こいつらがアホなおかげで」

ほたる「はい……でも、お仕事この時間だと間に合わない……」

ほたるP「仕方ない。ほたる、ちょっと我慢してくれよ」オヒメサマダッコ

ほたる「わっ、わっ、あ、あの……?」

ほたるP「目瞑ってないと酔うかもしれないから気をつけろ、よっ」バシュン

ほたる「わ、わわわっ!!」

―――スタジオ―――

ほたるP「はいセーフ!」バシュン

スタッフ「うわっ!?ど、どこから入ってきたの今!?」

ほたるP「ほらほたる、行って来い」

ほたる「……」

ほたるP「ほたる?」

ほたる「……はっ、す、すいません。頭の中が混乱してて……」

ほたるP「心配させんなよー。もしかして意識を置き忘れてきたのかと思ったじゃないか」

ほたる「(冗談に聞こえない)」

ほたるP「とにかく、言ってこいよ。アンハッピーデーだか何だかしらねぇけど、最後の最後、神様は笑ってくれるさ」

ほたる「……は、はいっ!」

―――翌日―――

『日本昔話……【つよすぎたおとこ】……』

ちひろ「何聞いてるんですか?」

ほたるP「ああ。昨日のほたるの朗読をな」

ちひろ「へぇ。聞かせてくださいよ」

ほたるP「だーめ。明日には放送されるんですから、我慢してくださいよ。今日はほたるは俺の物です」

ほたる「……へ?」

ほたるP「よ、おはようほたるぅ」

ほたる「あ、あの、プロデューサーさん。今、私はプロデューサーさんの物って」

ほたるP「そりゃ担当アイドルなんだから当たり前だろ」

ほたる「……そ、そうですか。そうですよね、はは」

ちひろ「おはようほたるちゃん」

ほたる「おはようございます」

ほたるP「そういや、今日は髪ぐちゃぐちゃじゃないな」

ほたる「えっと……何故か、寝癖も酷くなくて、鳥に絡まれたりもしなかったので……」

ほたるP「おお!もしかして直ってきたんじゃないか?」

ほたる「そう、だといいですけど……今日は財布を落としてしまって」

ほたるP「全然直ってない!ちひろさん!ちょっとほたるの財布探してきます!」バシュン

ほたる「ま、待ってくださいプロデューサーさん!」

ちひろ「はいはい、行ってらっしゃい」

ちひろ「……あれ?あの人、電源入れっぱなしにして……もう。切っておかなきゃ電池がもったいないですよ」

『守るべき人を見つけた強すぎる男は、その後、その守るべき人と一緒に幸せに暮らしましたとさ』ブツッ



おわり

最後は駆け足気味でしたが。

武内Pを見て、アイドル毎に個性的なPがついていてもいいんじゃないかと思い書きました。

まぁこのPは明らかにPaPですが。

では、ありがとうございました。

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