睦月「吹雪ちゃんが軍法会議に!?」 (71)

アニメ第9話のネタバレあります。
スレ主は艦これは絶賛着任待機中なので口調とかはおかしいかもです。
短い

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鎮守府が爆撃で破壊されて提督が行方不明になって以来、長門秘書艦が代理で指揮を執っていたけれども深海棲艦の圧倒的な物量の前に次第に押されるようになっていった。

次々と沈んでいく仲間達……
その姉妹艦たちの怒りの矛先が爆撃をした空母ヲ級を逃した第五遊撃部隊と翔鶴さんに向けられるのもあっという間だった。特に旗艦を任されていた吹雪ちゃんへの憎悪とイジメは相当なものだった。

今や駆逐艦で一番の出世頭と噂されていた吹雪ちゃんの評価は艦娘で最低と言ってもいい。しかも済し崩し的に再編された第五遊撃部隊からただ一人の轟沈も出さずにいつも帰ってくることから「吹雪は実は深海棲艦と内通している」という噂まで出る有様だった。

そんなある日のことだった。
海軍省の人たちが鎮守府にやって来て吹雪ちゃんを逮捕していったのは。

憲兵「駆逐艦吹雪、貴様は艦隊旗艦として追撃が可能と思われる敵を見逃し、鎮守府爆撃事件及び提督失踪の遠因を作った。これは明らかに旗艦としての職務怠慢である。さらに深海棲艦と内通しているという複数の証言もある。軍法会議にて話を聞かせてもらいたい」
そう言って憲兵さんは吹雪ちゃんを連れて行ってしまった。

長門「おそらくはこの戦況に対するスケープゴートだろうな……吹雪が逃したヲ級の爆撃によって鎮守府が壊滅に追いやられた上に提督まで行方不明のままだ……上層部としては吹雪が原因で戦況が悪化したということにしたいのだろう……」
睦月「でもっ!吹雪ちゃんだけが悪いってわけじゃ……」
長門「分かっているとも……だが吹雪旗艦の艦隊が逃したヲ級が爆撃をした以上は言い逃れができん……おそらく吹雪は……」
そこまで言って長門秘書艦は顔を伏せてしまった。その先は簡単に想像できる。
睦月「吹雪ちゃんが……処刑されちゃう……?」

吹雪ちゃんが処刑されちゃう……?吹雪ちゃんも如月ちゃんみたいにいなくなっちゃう?
睦月「嫌……いやぁぁぁぁ!」
外面も無く叫んでしまう。長門秘書艦も陸奥さんも苦虫を噛み潰したような顔をしている。
長門「睦月……とりあえず今日は休め……我々にはどうも出来ん……」
睦月「はい……失礼しました……」
そう言って指令室を出る。
部屋に向かう途中で立ち話してる娘の話が聞こえた。
「吹雪の奴、ついに捕まって軍法会議だってさ」
「ふぅーん……あいつのせいで鎮守府もダメになったし提督もいなくなっちゃったし、処刑で間違いないだろうね」
「っていうかあいつ深海棲艦と裏で繋がってたって話でしょ?処刑されて当然よ。むしろ解体処分で放免とかだったら許さないわよ」
「ですよね〜w」
いつものような悪口。でも今日はそれが一層聞いてて辛かった。喉まで出かけた言葉を無理矢理飲み下して部屋に帰る。一人でベッドに横になると涙が止まらなくなった。

睦月「吹雪ちゃん……自分の失敗を取り返そうと艦隊から轟沈も出さずに頑張ってたのに……あの子たちの何倍も反攻作戦に貢献したのに……それなのに処刑されて当然だなんて蔑まれて……あんまりだよぉ……」
そのまま気がついたら夜も明けつつあった。泣きながら寝てしまったらしい。
睦月「朝か……吹雪ちゃん今頃どうしてるかな……」
そう呟きながら朝食にむかう。

分かりました。次から一行空けます。

食堂に入ると第五遊撃部隊の周りだけがぽっかりと空いている。いつもの

ことだ。そして今日は旗艦が逮捕されたという話が広まっている事もあり

、いつにも増して端っこでこっそり食べているという感じだ。

睦月「ここ、いいですか?」

加賀「どうぞ。構わないわ」

加賀さんのOKもあったので加賀さんの前

に座る。みなさんお疲れのようだ。

睦月「聞きましたか?吹雪ちゃんが……」

金剛「ハイ……ブッキーが逮捕されて軍法会議にかけられるって話ですネ……」

加賀「どう考えても程がいいスケープゴートだけど……あの作戦に参加してない以上は私から言えることは無いわね」

口調はいつもの加賀さんだったけれど

どこか悔しそうだ。金剛さんも自分を責めているように見える。

だが北上さんと大井さん、瑞鶴さんは食事も手に付かないという感じで座っていた。

瑞鶴「私が一番悪いのよ……作戦前日の戦闘で勝手に前に出て、加賀を大破させて……加賀ならもしかしたら吹雪たちが追いついてくる前にヲ級を轟沈させられたかもしれなかったっ……」

北上「私の方が先輩だってのに一番の後輩の吹雪に旗艦の大任を押し付けてしかも責任取って吹雪は逮捕?はは……笑えないよ……」

大井「吹雪……あの子がヲ級を逃したのだって状況的に当然じゃないっ……!それに戦況の不利だってあの子は責任無いじゃないっ!」

睦月「皆さん……」

長門「ここ、いいか?」

睦月「長門秘書艦と陸奥さん……どうぞ」

長門秘書艦と陸奥さんがやって来た。

長門「吹雪の件だが……正式に軍法会議への出頭が決まった。容疑は旗艦任務の怠慢と深海棲艦との内通だ……」

睦月「そんなっ!深海棲艦との内通って……事実無根じゃないですか!」

長門「ああ……だが大半の艦娘が信じている以上は覆すのは難しいだろうな……」

陸奥「判決は少し先でしょうけど……覚悟はする必要があるでしょうね……」

その言葉で第五遊撃部隊の皆さんはさらに意気消沈したようだった。

長門「しばらくお前たち第五遊撃部隊は謹慎だ……なんとか交渉して吹雪の裁判に参加出来るようしてやろうとは思うが……お前たちも一応覚悟はしておけ……」

瑞鶴「はい……」

大井「分かり……ました……」

長門「睦月、それと夕立も吹雪と親しかったからお前たちも謹慎だ。大人しくしてろ」

睦月「はい……」

朝食を食べた後、言われた通り部屋で謹慎する。

まあ遠征しようにも制海権を完全に奪われているから最近はずっと待機だからいつもと大して変わらないけど、やっぱり部屋で座っていると吹雪ちゃんの事ばかり考えてしまう。

今日はこの辺で。
続きは明日の夜に

22:30くらいから投下します。
ちなみに鎮守府は横須賀を想定してます。

着任して初めて会った時にうっかりカバンの中身を落としてしまって

恥ずかしそうに拾う姿、

初めての出撃で赤城先輩たちに助けられて「私!赤城先輩の随伴艦に

なる!」と目を輝かせて宣言する姿

なかなか上手に戦えず、必死で訓練している姿

私に向かってくる艦載機をとっさに撃ち落としてくれた姿

如月ちゃんの轟沈を信じられずにいた私を抱きしめて一緒に泣いてく

れたあの日の事

曲者揃いな第五遊撃部隊に配属された上に駆逐艦なのに旗艦に任命さ

れて悩む姿

赤城先輩と話せたり頭を撫でられただけで大はしゃぎして報告してく

る姿

そして鎮守府爆撃と提督失踪の原因として鎮守府の大半の人たちに疎

まれながらも旗艦として必死で第五遊撃部隊の皆さんを連れ帰ろうと

努力する姿

他にもたくさんの吹雪ちゃんの姿が思い浮かぶ。

そうこうしていると唐突に長門秘書艦の放送が入った。

長門「第五遊撃部隊、睦月、夕立、翔鶴は指令室に出頭せよ」

その言葉を聞いて弾かれたように部屋を飛び出す。まさか……吹雪ち

ゃん……

指令室に着くと長門秘書艦たちが腕を組んで立っていた。

睦月「長門秘書艦っ……!」

長門「来たか……皆が揃ったら説明するから少し待て」

その後皆さんがすぐに集まった後に長門秘書艦はこう言った。

長門「お前たちの吹雪の軍法会議への傍聴が許可された。もちろん任

意だが参加するか?」

金剛「当然デース!」

瑞鶴「参加しないわけ無いじゃない!」

翔鶴「吹雪さんの支えになってあげられるといいのですが……」

北上「旗艦に推薦したのは私もなんだから当然だね」

夕立「私も参加するっぽい!」

長門「そうか。ならそう伝えておこう」

陸奥「会議は来週だからしっかりね。ただ……即日で判決は出るそう

だから覚悟はしておくのよ」

加賀「了解しました。では」

加賀さんがそう言ったのを皮切りに次々と皆さんは指令室を後にす

る。

もしかしたら吹雪ちゃんの支えになってあげられるかもしれない!

そう考えると心が弾むようだった。


そうしてあっという間に軍法会議の日がやって来た。


この一週間いろんな人に悪口を言われたりイタズラをされたけれど

吹雪ちゃんの支えになってあげられるって思えば耐えられた。

多分第五遊撃部隊の皆さんも夕立ちゃん、翔鶴さんも同じだろう。

鎮守府から電車に乗って大本営に向かう。

初めて見る大本営は鎮守府とは比べ物にならないほどに広くて綺麗な

建物だった。

そうして会議の部屋に通される。

本でしか見たことない裁判所そのもののような部屋だった。

そして吹雪ちゃんが連れてこられた。

一週間ぶりの吹雪ちゃんはちょっと痩せて目も虚ろだったけど私たちを見

てほんの少し光が目に戻ったようだった。

裁判長「では、駆逐艦吹雪の軍法会議を開始する」

白髪の裁判長さんの言葉で吹雪ちゃんの軍法会議が始まった。

人定質問の後に起訴状が朗読される。

判事「駆逐艦吹雪が旗艦を務めていた横須賀第五遊撃部隊の空母瑞鶴

と翔鶴は棲地MO攻略作戦に向かう途中で敵機動部隊と遭遇、

別機動部隊を追撃したのちに合流した吹雪らの砲撃等により敵機動部

隊の旗艦以外を撃沈、敵旗艦空母ヲ級を大破に追い込んだが逃走を許

し、このヲ級がのちに鎮守府を爆撃、鎮守府壊滅と提督の失踪を招い

た。

また、別泊地にて二度命令に背いて戦艦大和を連れ出し資源を浪費、

さらには大和を敵偵察機に発見までされておりこれは明らかな利敵行

為である。

他にも複数の艦娘から深海棲艦と内通しているという情報が複数得ら

れている。これは明らかな人類及び我が国への反逆である」

起訴状の朗読が終わると吹雪ちゃんには黙秘権があることが裁判長さんか

ら伝えられ、その後に吹雪ちゃんの罪状認否が行われる。

裁判長「これらの罪状に何か意見はありますか?」

吹雪「ヲ級を逃した判断ミスと戦艦大和を敵に発見されたことについ

ては異論はありません。しかし深海棲艦との内通については否定しま

す。」

吹雪ちゃんはそう言った。

その後判事さんの陳述や吹雪ちゃんへの質問。吹雪ちゃんの弁護士さ

んの陳述とかがあったけどろくに頭に入らなかった。

一通りの弁論が終わって裁判官さん達は一回別室に下がっていった。

私たちはしばらく休憩ということになって一回部屋の外に出た。

長門「まずいな……吹雪の判断ミスと利敵行為はどうしようもないと

は思っていたが吹雪が深海棲艦と内通していたという疑惑が払拭出来

ていない……」

瑞鶴「そんなっ!ほとんど言いがかりのようなものじゃない!」

長門「ああ……だがそういう可能性を0にするために吹雪を処分して

も戦力的にはそこまでの痛手ではない。これが私や瑞鶴たち空母なら

まだ監視が付く程度だったろうがな……」

睦月「じゃあ……吹雪ちゃんは……」

長門「おそらくは最低でも解体処分の上で収容所送り、最悪は……」

その言葉で長門秘書艦も含めた全員の顔が曇る。死刑の二文字が頭に

浮かぶ。その後もあれこれと話しているうちに判決の時間になった。

裁判長「駆逐艦吹雪。貴殿は判断ミスから将来の脅威になりうる空母

ヲ級を逃し、鎮守府壊滅と提督失踪の遠因を作った。さらには命令に

反して戦艦大和を連れ出し資源を浪費しさらには敵偵察機に発見され

るという利敵行為を犯し、また複数の証拠から深海棲艦との内通も否

定出来ない。以上より殺処分が妥当であると言える。

主文。駆逐艦吹雪を3日後の正午に解体処分の上銃殺刑とする。」

終わった……真っ先に頭にその言葉が浮かぶ。

翔鶴「殺処分……」

長門「やはりか……大本営側は吹雪にこの戦況の全ての罪を着せたい

ようだな……」

北上「そんな……あんまりだよ……」

大井「吹雪……」

翔鶴さんたちはそう呟いてうなだれてしまった。加賀さんと瑞鶴さん

は言葉が出ないようだ。

金剛「ブッキー……」

金剛さんも力無く呟いた。そして吹雪ちゃんも目の光を失ってただ立

ち尽くしている。しかし裁判長さんの言葉には続きがあった。

裁判長「されどMO攻略戦に於いて一定の貢献があったことも事実で

ある。その貢献を酌量し、処分前までの間は横須賀鎮守府内で監視下

において同僚との面会をある程度許可し、それ以外にも希望があれ

ば可能な範囲で聞き入れることを約束するものとする」

取りあえずは吹雪ちゃんは処刑までの間は鎮守府に預けられて面会も

許可されるらしい。なんの救いにもなってないような気もするけど。

吹雪「それなら……今の内に私の希望をお伝えします」

吹雪ちゃんが弱々しく話す。

吹雪「まず、処刑ですが鎮守府のグラウンドで希望者立会いでの公開

で行っていただきたいです。あと服装も囚人服じゃなくて特型駆逐艦

の制服を着用することを許可してもらいたいです」

裁判長「そのくらいなら構わない。伝えておこう」

吹雪「ありがとうございます……」

そう言って吹雪ちゃんは部屋を出て行った。このあと鎮守府に護送さ

れるのだろう。

長門「我々も帰ろう。吹雪を迎える準備をしなくてはな」

長門秘書艦がそう言うと皆も従った。鎮守府に残った大淀さんに長門

秘書艦が判決と特別措置を伝える電話をしたのを待って大本営を出る

とマスコミの人たちに囲まれた。

マスコミA「ついに反逆者の吹雪に死刑判決が下りましたが同僚とし

て何か一言を!」

マスコミB「吹雪は鎮守府ではどのようにしていたのですか!?」

マスコミC「この件について何か一言!」

長門「何もありません!退いて下さい!」

長門秘書艦がマスコミの人たちを追い払ってやっと私たちは駅前まで

来れた。そこでも号外で吹雪ちゃんの判決を報じている。

「反逆者吹雪に死刑判決!」

「裏切り者に正義の裁き!」

ふざけるなと叫びたかった。

長門「抑えろ。ここで騒ぎ立てても何にもならん」

その言葉で無理矢理怒りを飲み下して駅の構内に入る。とにかく早く

戻って吹雪ちゃんを迎えてあげないと。

鎮守府に戻ってしばらくすると吹雪ちゃんを乗せた車が来た。まず憲

兵さんが鎮守府の空いてる部屋に鉄格子や鍵をつけて吹雪ちゃんの牢

獄を作り、そこに吹雪ちゃんは入れられた。私はさっそく面会の予約

を入れた。面会は明日からだそうがそれでも吹雪ちゃんと一週間ぶり

に話せる。それだけで少し気分が高揚する。3日後の今頃には吹雪ちゃん

は殺されているというのに。

そうしてあっという間に私の面会時間がやって来た。

睦月「吹雪ちゃん……」

吹雪「睦月ちゃん……会ってくれてありがとう」

睦月「ううん!友達でしょ?私たち!今回は……残念だったね……」

吹雪「いや、私の判断ミスで鎮守府は壊滅して提督がいなくなっちゃ

ったんだもん。仕方ないよ……」

睦月「吹雪ちゃん……」

吹雪「ねえ睦月ちゃん、お願いがあるの」

睦月「なあに?吹雪ちゃん?」

吹雪「勝ってね!必ず勝って、解体されて、そして私が見れなかった

こと、体験出来なかったこと、他にもいろんな事をして私にあの世で

いろんな話をしてね。一足先に待ってるから!」

睦月「吹雪ちゃんっ!」

私はそれ以上何も言えなかった。あまりにも吹雪ちゃんがかわいそう

で。そうしているうちに面会時間も終わりが近くなってきた。

吹雪「じゃあね……バイバイ……睦月ちゃん……」

睦月「うん……じゃあね……バイバイ」

そう言って私は部屋を出た。その後は部屋でずっと泣いて1日が過ぎ

た。私の後も第五遊撃部隊の皆さんや赤木さん、間宮さんや金剛型の

皆さん、夕立ちゃん、川内さんたち、長門秘書艦と陸奥さん、大淀さ

んや暁型のみんなたちが入れ替わり立ち替わりで吹雪ちゃんと面会したら

しい。
そうしてついに吹雪ちゃんの処刑の日が来てしまった。

吹雪ちゃんが最期の食事を済ませて艤装を工廠で解体されて普通の女

の子に戻された。そうして希望者のみんなが見守る中で吹雪ちゃんが

グラウンドの真ん中に作られた処刑場に連行されてきた。処刑の前に

憲兵隊長さんたちのご厚意で吹雪ちゃんに最期の別れを言うことが許

された。

加賀「吹雪……いや、旗艦殿。貴女はよく頑張りました。今まで私た

ちが沈まずにこられたのも貴女の指揮のおかげです。今までお疲れ様

でした」

瑞鶴「ごめんね……吹雪……私があの時に加賀を大破させたりしなけ

ればあのヲ級は仕留められたかもしれない……そうだったらこんなこ

とには……」

翔鶴「吹雪さん……今まで瑞鶴をありがとうございました。そしてお

疲れ様でした……」

金剛「ブッキー……どうしてこんなことに……だけど必ず勝って見せ

るからネ!ヴァルハラから私たちを見守っててネ!」

北上「吹雪……じゃあね。今までありがとね。後のことは任せて」

大井「吹雪さん……どうか不甲斐ない私たちを許して下さい……必ず

勝ってみせますから……」

夕立「吹雪ちゃん!必ず勝って吹雪ちゃんに胸を張って報告に行くか

ら!待っててね!」

暁「吹雪!必ず立派なレディーになって見せるから!見守ってて

ね!」

響「До Свидания(さようなら)」

雷「吹雪!バイバイ!ゆっくりおやすみ!」

電「吹雪さん……ううぅ……さよなら……なの……です……」

川内「特型駆逐艦!いや、吹雪!立派に最後の務めを果たしてき

な!」

神通「吹雪さん……胸を張って下さい……!それじゃあ本当に悪いこ

とをした人みたいですよ」

那珂「吹雪ちゃんと〜アイドルとして勝負できなかったのは残念だけ

ど〜しっかり那珂ちゃんたちを見守っててね!」

長門「吹雪……!立派に務めを果たしてこい!」

陸奥「吹雪ちゃん……お疲れ様」

間宮「吹雪ちゃん……最期のご飯はどうだった?本当は……もっとい

っぱい食べさせてあげたい料理も作り方を教えてあげたい料理もあっ

たんだけどなぁ……」

利根「おまえはこの鎮守府で一番立派に働いておった駆逐艦じゃっ

た……こうなるとは……残念じゃのう……」

赤城「吹雪さん……一緒の艦隊で戦いたかったですね……こうなって

しまうとは……残念です……」

睦月「吹雪ちゃん……バイバイ……先に行って待っててね……」

吹雪ちゃんは涙が止まらないし声も出せないようだった……もうすぐ

死ぬともなれば仕方がないだろう。

憲兵隊長「もういいかね?」

睦月「はい……」

憲兵隊長「じゃあ皆さんは少し下がって下さい。憲兵隊!並べ!」

憲兵隊長さんの言葉で吹雪ちゃんの前に5人の憲兵さんが並んだ。

そして吹雪ちゃんに憲兵隊長さんが目隠しをしようとしたら吹雪ちゃ

んはそれを拒否した。

吹雪「最期にみんなの顔を見て逝きたいんです。あと出来れば腕だけ

自由にしてもらえますか?みんなに敬礼がしたいので」

憲兵隊長「分かった。出来るだけ希望は聞き入れるように言われてい

る事だし構わんだろう。だが下半身と腰は杭に縛り付けさせてもらう

からな」

吹雪「構いません。ありがとうございます」

そう言うと吹雪ちゃんは杭に縛り付けられて、敬礼の姿勢をとった。

憲兵隊長「憲兵隊!構え!よく狙えよ……撃て!」

憲兵隊長さんの号令で5発分の銃声が鳴った。同時に吹雪ちゃんの胸

に5つの赤い点が開き、そして吹雪ちゃんの上半身が前に倒れた。

睦月たち「「「吹雪!(吹雪ちゃん!吹雪さん!ブッキー!)」」」

憲兵隊長さんが吹雪ちゃんの絶命を確認しようとすると空襲警報が鳴

った。そして同時に沖合から弾丸と艦載機が飛んできた。

大淀「空襲警報!深海棲艦空母フラグシップヲ級改が突撃してきま

す!速やかに避難してください!」

長門「深海棲艦の空襲!?憲兵さん!急いで室内へ!おまえたちも急

げ!」

長門秘書艦の言葉で私たちは一斉に走り出した。しかしその目の前を

艦載機の銃撃が掠めて皆が動けなくなってしまった。

長門「これまでか……」

長門秘書艦が呟く。しかしなぜか艦載機は私たちを直接は撃たずに私

たちの周りを飛び回るだけだった。

長門「なんだ……?私たちを足止めして攻撃はしてこない?どういう

ことだ?」

艤装も無くただ立ち尽くしていると片目から青い光を発している空母

ヲ級が上陸してきた。おそらくあれが吹雪ちゃんたちが逃したヲ級だ

ろう。

ヲ級「ドウイウコトダ……?ナゼコノカンムス……フブキイッタカ?

ハ、シンデイル?」

憲兵隊長「駆逐艦吹雪は貴様ら深海棲艦と内通していたのだろう?反

逆者として処刑した!」

ヲ級「ナニヲイウ?ソンナコトアルハズガナイダロウ?

ソノヨウナツマラナイリユウデワタシカラフブキニ

リベンジスルキカイヲウバッタトイウノカ……」

憲兵隊長「なっ!?」

そう言うとヲ級は憲兵隊長さんと憲兵さんを頭の触手で締め上げて殺

してしまった。

ちょっと休憩

再開します。


ヲ級「フブキ……キサマハクヤシクナイカ……?ヌレギヌヲキセラ

レ、ウラギリモノトシテコロサレタ……サゾヤムネンダロウナ

ァ……」

そう言うとヲ級は吹雪ちゃんを縛り付ける縄を切って亡骸を抱き上げ

て海へと戻っていこうとした。

睦月「待って!吹雪ちゃんを連れてかないでぇぇぇ!」

私はとっさに叫んでいた。

ヲ級「ドウシテダ?コイツヲミステタノハオマエラダロウ?キイテヤ

ルギリハナイナ」

そうヲ級は言った。

ヲ級「ダガ、ドウシテモコイツトイッショニイタイトイウノナラ、

カクゴヲミセロ」

睦月「覚悟……?」

ヲ級「ソウダ。コイツノ タメニ スベテヲ ステテ ミセロ。ソシテワレラノ ナカマトナレ。ソウスレバ コイツト トモニイサセテ ヤロウ」

長門「睦月!しっかりしろ!」

この時私はある噂話を思い出した。「沈んだり戦死した艦娘は深海棲

艦になる」というものだ。

睦月「ねえヲ級さん……吹雪ちゃんも深海棲艦になるの?」

ヲ級「ヌレギヌヲ キセラレ、ゼツボウシテシンダノダ。スグニデモナ

レルダロウナ」

睦月「あなたたちの仲間になれば吹雪ちゃんとずっと一緒に居られ

る?」

ヲ級「フブキガユルスナライイダロウ」

長門「睦月!敵の甘言に引っかかるな!」

ウルサイ。ダマレ。

睦月「私や吹雪ちゃんがあなたたちの仲間になれるっていう確かな証

拠はあるの?」

ヲ級「フム……ナラミテロ」

そう言うとヲ級は吹雪ちゃんの亡骸を横たえて自分の指を噛み切ると

吹雪ちゃんの口に自身の血を垂らした。すると吹雪ちゃんの体が黒い

靄に包まれた。

ヲ級「オマエハ テキナガラ ミゴトナホド、ジンルイノ タメニ タタカ

ッタ。ダガ ソノケッカハ ドウダ?ニンゲンニ ウトマレ、シマイニハ

ヌレギヌヲキセラレテ コロサレタ。クチオシクハナイカ?」

靄の中から吹雪ちゃんの声がした。

吹雪「ああ……悔しいよ。残念じゃないわけ無いじゃない。いっぱい

みんなのために戦って、その報いがこれ?ふざけないでよ」

ヲ級「ドウダ?ジンルイニ フクシュウシタクナイカ? オマエニハ

ジンルイノ シウチニ フクシュウスル ケンリガアル」

吹雪「ああ……そうだね……そうかもしれない。そうだ。フクシュウ

シテヤロウ。オマエタチガ ワタシヲ ハンギャクシャト ヨブナラ イイ

ダロウ。ホントウニ キサマラニ ハンギャクシテヤロウジャナイカ」

そうして次の瞬間にもう吹雪ちゃんはいなかった。そこにいたのは

睦月「戦艦棲姫……?吹雪ちゃん?」

戦艦棲姫(吹雪)「ムツキチャン……ワタシキメタヨ……ニンゲンノミン

ナガ ワタシヲ ハンギャクシャッテ イウナラ ワタシハソウナル。ワタ

シヲ ジンルイハ コロシタンダ。ダッタラ ワタシダッテ ソノシウチニ

ムクイテヤル」

ヲ級「ムツキトイッタナ。オマエモ トモヲ ウバッタ ジンルイニ フク

シュウシタイ トハオモワナイカ?ホカノ フブキノ ナカマタチモダ

ナカマヲ ウバッタ ヤツラノ メニ モノヲ イワセタクナイカ?」

睦月「吹雪ちゃん……私をそばに置いてくれる?私は弱いから……

駆逐イ級かも知れないけど随伴艦にしてくれる?」

戦艦棲姫「イイヨ……ムツキチャン……ダカラ……オイデ……」

ヲ級「フブキ……ヤリカタハ カンタンダ。オマエノ チヲ アイテニノ

マセロ。ソウスレバ ソイツハ オマエノナカマダ」

戦艦棲姫「ワカッタ。カクゴハイイ?ムツキチャン……」

睦月「うん!吹雪ちゃん!お願い!」

長門「まて!落ち着け!睦月!」

長門秘書艦、いや、長門の制止を無視して私は吹雪ちゃんの血を口に

する。ソウシテ ワタシモ フブキチャント オナジモノニ ナッタ。

〜エピローグ〜
私は結局駆逐イ級にはならなかった。私の新しい姿は雷巡チ級だった。

私が吹雪ちゃんの仲間になってすぐに横須賀鎮守府は壊滅した。

吹雪ちゃんが深海棲艦側についたことで、もともと吹雪ちゃんを殺さ

れて人間に反感を抱いた加賀さんたち第五遊撃部隊は私と同じように

吹雪ちゃんの部下になった。加賀さんなんて空母棲姫になってしま

った。さらには赤城さん、金剛型の皆さん達も次々と姉妹艦や親友の

"交渉"で仲間になっていった。

結局横須賀鎮守府の長門さん、陸奥さん、大和さん達戦艦の殆ど、

正規空母の半数以上、重巡や軽巡の多くが吹雪ちゃんサイドに着いて

深海棲艦となった。

それ以外の残った人たちは抵抗してきたけれど数時間持たずに全滅し

た。いや、人類側からすれば全滅だろう。しかし、吹雪ちゃん以外の

私と第五遊撃部隊の皆はまだ吹雪ちゃんを貶めた連中への"御礼"が

終わっていない。そうである以上まだ生かしてはいる。

A「ま……まってよ……ねえ睦月?話し合いましょう?私たちだって

本意じゃなかったのよ」

B「周りの空気っていうかさ、分かるでしょう?女世帯での生き方っ

ていうかさ」

睦月「うんうん。分かるよAちゃん、Bちゃん、だけどさ許せない

ことってあるよね」

加賀「安心して頂戴。私たちの旗艦殿と私たちへの仕打ちへのお礼は

たっぷりしてあげるから文字通り"死ぬほどたっぷり"ね」

A「ほ……捕虜への虐待は禁止されて……」

B「何かしてごらんなさい、後で吹雪様に報告して……」

加賀「ハーグ陸戦協定とか捕虜の扱いに関する条約なんて人間じゃな

い私たちが守る義務もないし、守らなくても誰が処罰するのかし

ら?」

睦月「安心して〜吹雪ちゃんには2人は自決しちゃって仲間になるの

も拒否したって伝えておくから〜。だからたっぷり私たちの"お礼"を

楽しんでね。たっぷりバケツもダメコンも用意してあるから〜」

さあこれから砲撃、雷撃、爆撃etcのありとあらゆる轟沈の方法をたっぷり

体験するがいい。沈んでもすぐにダメコンで復活する。いつまで正気で

いられるかしら?

ちょっと休憩

ふと望月ちゃんが持ってた古いバトル漫画を思い出す。確か第5部

あたりで延々と死んでは生き返ってまた死ぬを繰り返す羽目になった

マフィアのボスがいたっけ。

睦月「ふふ……そっくりね」

そう呟きながら基地を歩いていると駆逐イ級が飛び出してきた。W島

海域に行って保護してきた如月ちゃん(仮)だ。如月ちゃんの髪飾りを

頭に刺してたから多分間違いないだろう。

睦月「如月ちゃん、お散歩?」

なぜか他の駆逐イ級と違って足が生えてる如月ちゃん(仮)はよく海辺を

お散歩している。その足と馬力を利用して地上での戦いでも荷物運び

をしているらしい。魚雷が主武装の私は砲撃が主武装の吹雪ちゃんと

か空母のヲ級さんみたいに地上戦にはあんまり参加できないから駆逐

のみんなを率いて遠征とか他の鎮守府の艦娘を沈める任務とかが中心

だからちょっと羨ましいかな。

そうこうしているうちに吹雪ちゃんの部屋に着いた。何十人もの艦隊

を率いる提督になっちゃった吹雪ちゃんは大淀さんとか長門さん達が

補佐している。艦娘時代とほとんど変わらないけれどやっぱり制海権

を奪い返すのと地上を侵攻するのじゃ勝手が違うらしくってみんな

いつもうんうん言っている。ただ、各地の鎮守府はほとんど爆撃で

使い物にならなくしたし、道路も電車もボロボロにしてあるし、各地をし

ょっちゅう爆撃しているからそう遠くないうちに日本は滅んでくれるでし

ょう。なので司令部のみんなは海が無い大陸の内地をどう攻めるかを考え

中みたい。

睦月「ふふふ……あははは!」

ずっと前に大本営と東京を滅ぼした時の事を思い出す。かつての大戦でも

今回の戦争でも私たちを道具として使い潰そうとしてくれた人間どもを

爆破し、駆逐のみんなたちに食べさせ、雷撃や砲撃の的に使ってやった。

あの日は今までで一番興奮した。

睦月「ざまぁみなさい。吹雪ちゃんを戦犯扱いして殺してくれた人間

ども。私たちを船の時と今の二回も利用してくれた人間ども。オマエ

タチノ ゼツボウシタ カオハ トッテモトッテモ ミジメデキモチヨカッタゾ」

そうだ。私たち帝國海軍の軍艦たちの魂はようやく人間に復讐できる

んだ。私たちを利用するだけして恩を仇で返すあいつらをこの地上か

ら消し去ってやって、私たちだけのための世界を人間から奪い取って

やるんだ。そう考えると心が躍るようだった。

睦月「ふふふふ……人間どもを滅ぼし尽くした後も私は吹雪ちゃんと

ずっと一緒だよ。だからずっとそばに置いてね。吹雪ちゃん……大好

き!」

終了です。

書いてるうちに睦月がヤンデレっぽくなっちゃったw

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年05月09日 (土) 22:33:24   ID: IiGP8eX0

最高!!

2 :  SS好きの774さん改二   2016年10月25日 (火) 20:18:37   ID: XjppyecV

途中の鬱展開から、めちゃくちゃスッキリする展開への切り替えがgood!!

3 :  SS好きの774さん   2017年05月12日 (金) 07:11:23   ID: VNKuvrWj

なんだろう、すごくスッキリする。

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