【W】翔太郎「車のライダーだと?」フィリップ「ゾクゾクするねぇ」【ドライブ】 (99)

三条脚本が大好きで、Wとドライブのクロスものを妄想カキコ。
遅筆だけど暇潰し程度に読んでいただけるとありがたい。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1425567430

ここは、人々を温かく包み、見守る優しい風の吹く街、風都。

しかし善だけではない、時には悪の渦巻く風が、この街を泣かせることもある。

???「クソッ、こんなところで捕まるかよ!」

俺の目の前でそう息巻くこの怪物、エイプドーパントも、ガイアメモリという魅惑の箱に魅入られた人間の末路だ。

翔太郎「観念しな、連続通り魔。街を泣かせる奴は、例えおてんとさんが許しても、この2色の風が許さねえ」

エイプドーパントの行く手を遮るように現れた仮面ライダーWの、左半身のボディサイドから俺は口上をクールに決めて見せる。

フィリップ「翔太郎、おてんとさん……というのは一体どのことを指しているんだい? 例えば、古来より日本では……」

翔太郎「だぁーっ、そういう細かいことは気にすんなっての相棒!」

せっかくの俺のキメ台詞も、右半身のソウルサイドに宿る相棒の一言で台無しになってしまう。まあいい加減、こういう掛け合いにも慣れてきたころだが。

そもそも、このように戦闘中に誰かと喋るのも1年ぶりのことで、少し嬉しく、くすぐったくもある。

エイプ「何をぶつぶつ言ってる貴様!」

そんな俺達のやり取りにしびれを切らしたのか、エイプは常人の数倍もの脚力で飛び上がると、鋭い爪を光らせて飛び掛かってくる。

翔太郎「っと! 厄介だなあの力」

それをジョーカーの半身で躱しながら、俺は尚もこちらに荒い息を吐くエイプを見やる。

フィリップ「エイプ……猿の記憶を宿したガイアメモリ……以前香澄さんの事件の時にも戦って倒してはいるが油断は禁物だ」

翔太郎「分かってるって、それじゃあいくぜフィリップ!」

フィリップ「ああ、いこう翔太郎」

ルナ! トリガー!

トリガーマグナムを片手に構え、俺はエイプ目がけて次々にビームバレットを射出する。

エイプ「ふん、このような攻撃が当たるか!」

しかし、エイプは猿特有のすばしっこい動きで次々に弾丸の雨を掻い潜ると、ビルの谷間を右へ左へ飛び移りながら移動する。

だが、それが俺達の狙いでもあった。

フィリップ「翔太郎」

翔太郎「オッケー」

サイクロン! トリガー!

メモリをサイクロンに切り替え、ソウルサイドが変化したことを確認しながら、俺はエイプの頭上にある巨大な看板を撃ち落した。

エイプ「がはっ!」

頭上から強烈な一撃を喰らったエイプは、その場に膝を付き意識朦朧といった風にうずくまる。

翔太郎「猿も木から落ちる……ってか」

フィリップ「何だいそれ」

翔太郎「ん、知らねえのかフィリップ。日本のことわざって奴さ」

フィリップ「ことわざ……ああ、何だか強烈に知識欲を刺激されるよ翔太郎。この戦いが終わったらさっそく調べてみよう。」

戦闘中にまた余計なことを言ってしまったかもしれないと、俺は思わず心の中でげっという表情になった。これはまた今日は徹夜でことわざの話に付き合わされそうだ。

エイプ「くっ、こ、このお……」

まだ意識が混濁するのか、頭を抱えよろよろと起き上がるエイプに、俺は意識を引き戻される。

翔太郎「それじゃあとっとと決めるぜ」

サイクロン! ジョーカー!

基本フォームに戻ると同時に、俺はジョーカーメモリを素早く腰のスロットルに差し込み、力強く叩く。

ジョーカー! マキシマムドライブ!

突如として俺達の周囲を覆うように渦巻く緑色の風に包まれながら、Wの体が上空へと浮き上がる。

エイプ「ぐ、ぐぐ……ぐそおおお!」

相手が爪をめちゃくちゃに振り回しながらこちらに飛び掛かるよりも早く、俺は渾身の蹴りをエイプ目がけ繰り出した。

翔太郎・フィリップ「ジョーカーエクストリーム!!」

エイプ「あぎゃああああああ!!」

メモリブレイクの衝撃に怪人態から変身の解けた中年の男が吹き飛び、同時にエイプメモリは粉々に破裂した。

翔太郎「ふう」

フィリップ「それじゃあ僕は早速ことわざを調べるよ翔太郎。ああ、ゾクゾクするねえ」

翔太郎「おお、あんまりはまりすぎんなよ」

そう言いながら変身を解くと、後には俺の体のみが残され、フィリップの意識は元の体へと返っていった。今頃事務所では検索を開始していることであろう。

翔太郎「おら、さっさと立ちなオジサン」

中年「は、はひぇ……」

メモリブレイクの衝撃にまだフラフラしている様子の中年の腕を掴んで立たせ、俺は警察へと電話をした。あとはものの数分で現れるであろう刃野警部に、こいつを引き渡せば今日の仕事もお終いだ。

翔太郎「ったく、街を泣かせやがって。大体奥さんに逃げられたからって暴れてもなあ……」

俺が年上のオジサンにそう説教を垂れていた、その時。

翔太郎「なっ!!」

突然俺の体を強烈な感覚が襲った。言葉では言い表し辛いが、分かりやすくいうと、そう、「どんより」とした空気。

この場にフィリップがいればまた間違いなく笑われるだろうが、とにかくそのような訳の分からない現象が俺を襲ったのである。

???「ふむ、まだ試作品の段階ではこの程度が限界ですか」

突然の怪現象に困惑する俺の目の前に、俺と同い年に見える、全身白い服に包まれた青年が姿を現す。こいつ、何で自由に動けて……それに、この格好……まさか。

翔太郎「財団X!」

全ての物体がスローモーションのように動く世界で、俺は何とかその言葉を紡ぐ。

青年は俺の声にピクリと反応を示すと、ゆっくりと俺の顔を見やった。

???「おや、まさか財団のことを知っている人間がいたとは……驚きですね。まあいいでしょう、どうせこの空間では全てが無力。僕が世界の支配者だ」

そう言い残して、青年は踵を返す。

翔太郎「待てこの野郎……!」

意識だけはハッキリとした空間で、思い通りに動かない体を必死に動かしながらもがく俺を一瞥すると、青年はフッと笑んで歩き去る。

???「試作体763号……起動実験は明日か……」

青年が誰に言う訳でもなく呟いたその言葉を聞きながら、俺はただ立ち尽くすしかなかった。

翔太郎「……ってわけなんだよ」

亜樹子「ほえぇーそんなことがあったんだ。なんだか宇宙空間みたいだね」

フィリップ「物体の動きがスローモーションになる現象か……それにその謎の青年という人物も気になるねぇ」

探偵事務所に戻った後、俺は事の顛末をこの事務所の所長である鳴海亜樹子と、相棒のフィリップに説明していた。

翔太郎「ったく訳分かんねぇよ。とにかく、今度あいつを見つけたら詳しく話を……」

少し早口で話したため喉が乾いたので、俺は先程淹れたばかりのコーヒの入ったカップに口を付けた。

サンタちゃん「翔ちゃん大変大変!!」

翔太郎「ブーッ!!」

突然勢いよく飛び込んできたサンタちゃんに驚き、俺は目の前の亜樹子に口に含んだコーヒーを思いきり噴射してしまう。

亜樹子「きゃあっ! な、なにすんじゃい!」

翔太郎「あだっ!」

亜樹子が懐から取り出したスリッパに思い切り頭をひっぱたかれながら、俺は何事かとサンタちゃんを見た。

翔太郎「どうしたサンタちゃん!」

風都の街に住む年中サンタの風貌をしたこの中年男性は、端から見れば変質者かもしれないが、彼もこの街を愛する俺の協力者の一人だ。

サンタちゃん「いやね、さっきウォッチャマンと風麺にいってたらさぁ……」

ウォッチャマン「た、たすけて、重いい!」

まだ要領を得ない様子のサンタちゃんの後ろから、今度は一人の男性を肩に抱えたウォッチャマンが事務所に入ってきた。彼はどうやら気を失っているらしい。

亜樹子「ちょっとちょっと、何よ行き倒れ!?」

フィリップ「亜樹ちゃん、それってまさかあの大阪の?」

亜樹子「そりゃ食い倒れじゃろがい!」

服に着いたらコーヒーを拭いながらも、突っ込みを忘れない亜樹子。

ともあれ、俺は慌ててウォッチャマンに手を貸すとその男性をソファに寝かせる。良く見ると衣服も所々破けてボロボロだ。シルクハットを目深に被って顔が良く見えないが、渋い雰囲気の漂う男だと感じた。

ウォッチャマン「ふぅー、疲れた」

翔太郎「おいおい、一体どういうことなんだよウォッチャマン」

ソファに腰掛け自分の肩を揉みほぐしているのは、風都の情報屋ウォッチャマン。こいつも俺の良き協力者だ。

ウォッチャマン「いやぁ、この人が道端に倒れててさぁ」

サンタちゃん「放っておく訳にもいかないし、とりあえず近くの翔ちゃんの事務所まで運んできたのよ」

亜樹子「あのー、一応所長は私よ?」

手を挙げて自己主張する亜樹子は無視して、俺は2人の話を詳しく聞くことにした。

翔太郎「という訳で、このおっさんをしばらく預かることになった」

亜樹子「どういうことやねん!」

翔太郎「あだっ! テメェ亜樹子ぉ!」

サンタちゃんとウォッチャマンを返した後に報告した俺の頭を、またしても亜樹子がスリッパで思い切りひっぱたく。

翔太郎「仕方ねぇだろう、このまま放っておく訳にもいかねぇし!」

亜樹子「子犬や子猫ならまだしも、こんなおっさんどうすんのよ!」

フィリップ「ふむ、この状況……」

そんな俺達の様子を静観していたフィリップが、突然ハッとしたように顔をあげた。

翔太郎「どうしたフィリップ!」

亜樹子「何々、なにか名案!?」

期待の眼差しで見つめる2人の前で、フィリップはニヤリと微笑む。

フィリップ「ことわざでいうと、乗り掛かった舟……だろう?」

その一言に、俺と亜樹子は盛大にずっこけるのであった。

亜樹子「それにしても起きないねぇこのオジサン」

相変わらずソファに横になったままぴくりともしない男に、亜樹子がおずおずと近付いて様子を伺っている。

翔太郎「おい、おんまりいじくるんじゃねぇぞ」

俺の制止などどこ吹く風の様子の亜樹子は、ボロボロの白いスーツにしわの付いたシルクハットを被る男の体をツンツンとつついている。

フィリップ「……うーん」

その向かいのソファに腰掛けたフィリップは、またしても男を見つめながら何やら呟いていた。

翔太郎「どうしたフィリップ?」

フィリップ「あ、いや気にしないでくれたまえ。ただ、この男の人どこかで……」

亜樹子「あ、フィリップ君もそう思うそう思う!? 私もなんか他人の気がしないんだよねぇこの人」

そう言われてまじまじと見てみると、なるほど確かにソファに寝ている男の姿に既視感を覚える。なんだろう、すごく懐かしくて、それでいて悲しい気持ちになる。

相反する2つの気持ちに戸惑う俺を尻目に、亜樹子がシルクハットのつばに手を掛けた。

翔太郎「あっ、馬鹿!」

亜樹子「いいじゃん、ちょっと覗くだけ、ほりゃっ!」

俺の諌める声の届くより早く、亜樹子はシルクハットを少し持ち上げた。

翔太郎「なっ!?」

亜樹子「えっ……」

フィリップ「ほぉ、これは……」

そこから表れた男の顔に、俺達3人は目を剥いて暫しの間動けずにいた。

動揺した亜樹子の懐から落ちたスリッパの音で我に帰るまで、永遠ともとれる時間が流れたように感じた。

そこに表れた男の素顔は。

翔太郎「お、おやっさ……」

亜樹子「お父さん……」

鳴海荘吉。まさにそれであったのだから。

亜樹子「ど、どいういことよ、これ」

沈黙を破ったのは鳴海荘吉の実の娘である亜樹子だった。いつもの元気な様子からは一転して、動揺が見てとれるほど表れている。

無理もない。死んでいたと思っていた父が目の前にこうして眠っているのだ。

フィリップ「そ、そんなはずはない。例の事件の時にも似たようなことは起きたがこれは……」

例の事件とは、ダミードーパントの起こした死人還り事件の事なのだろう。亜樹子の手前、事件名を伏せたフィリップの心配りに俺はこんな事態だというのに少し感動を覚える。

かく言うフィリップも、鳴海荘吉は恩人であり、彼が人の心を取り戻すことができ、こうして優しさを見せられるようになったのも、鳴海……いや、おやっさんのおかげだと話していた。

そして、今フィリップが話した死人還り事件……。他の人物、物体に化けることのできるダミーのメモリを使った犯罪だ。

あの時は犯人であるロベルト志島が、偽物のおやっさんとなり、仮面ライダースカルの力で俺達を翻弄したが、結局は俺達の前に敗れ、偽装されていたデスメモリも、存在しない可能性が高いということで決着を見たはずだった。

しかし、今回はその時と何もかもが違う。目の前には確かにおやっさんが眠り、そこに生きていることが分かる。

まさか、デスメモリ……いや、しかしそんなはずはない。死者を生き返らせることのできる、そんな神のような力のメモリなど存在するはずが……

「ん……」

動揺する俺達の前で、とうとうその男は重い瞼を持ち上げた。ゆっくりと上体を起こし、優雅な所作でシルクハットを取ると、亜樹子、フィリップと1人ひとり確かめるように見回していく。

そして遂に、俺とおやっさんに良く似た男と視線が交差した。瞬間、あの日の出来事が走馬灯のように甦る。

ビギンズナイト……Wの初めて生まれた日。

「似合う男になれ……」

おやっさんは俺達を庇い、凶弾に倒れた後も最後まで俺から目を離さずそう語り掛けた。

駄目だ、分かっている。おやっさんはあの時に死んだ。分かっている筈なのに、体が、心が、本能で訴えかけてくる。

この男はおやっさんなんだと。

「……」

その男はやがて視線を俺達3人に戻すと、ややぁといった素振りで口を開いた。

「俺は一体……誰だ」

――某国某所

???「大変ですクラーク博士!」

ノックもせずに研究室に飛び込んできたその男に、モニターの前にいた青年は怪訝な顔で振り替える。

クラーク「何です試作体753号、騒々しい……」

753号「申し訳ありません。しかし、早急にお耳に入れておきたいことが」

クラーク「何です」

753号「はっ、昨日起動実験に成功した試作体763号が……逃亡しました」

その報告に、クラークは僅かに眉を動かしたが、すぐにまた冷静な表情に戻ると口を開いた。

クラーク「そうですか……全く、モデルにした人間が悪かったのか、あの試作体は言うことを聞きませんでしたからねぇ」

そう言うと、彼は手元のモニターを数回叩いた。すると画面に地図と赤く光るポイントが写し出される。

クラーク「体内に装置を仕込んでおいて正解でしたね。このポイントにいるようです、753号、行って連れ戻してきなさい。抵抗する場合は……処分しても構いません」

753号「ははっ」

753号は踵を返すと、すぐに部屋を飛び出していく。それを見送りながら、クラークはニヤリと微笑んだ。

クラーク「しかし、あの日重加速の実験をした都市とは……これは何の因果でしょうかねぇ」

――side ドライブ

進ノ介「はぁ、風都……ですか?」

本願寺「そうなんですよぉ、いやね、何でも風都の照井竜っていう刑事から捜査の依頼が届きまして」

目の前に書類を翳しながら、この特状課の課長である本願寺純が俺に子犬のような潤んだ目を向けてきた。

こういう時は、大抵面倒な事件を押し付けられるパターンと相場は決まっている。

西城「何でもどんより絡みの事件らしいよ。まぁ僕も個人的な興味で問い合わせてみたんだけどさ、俺に質問するな……とか言われて電話切られちゃった」

特状課の客員である情報収集担当、西城究がその照井とかいう刑事の物真似をしながらパソコン越しに声を上げる。

りんな「でもいいじゃない、風都といえば美しい自然においしいお店もたくさんあるって話よ? あぁーデートとかで行きたいなぁ」

西城「先生には無理じゃないかなぁ」

りんな「あら、どういうことかしら?」

西城「し、失礼しまぁす」

今にも西城の首を締め上げようとしているのは、沢神りんな。特状課には内緒だが、俺が変身する仮面ライダードライブのメカニック担当だ。

追田「まぁまぁ先生。それにしても進ノ介、今日は霧子ちゃんは?」

2人を諌めながら、俺の先輩でもある追田現八郎警部補が俺を伺う。言われてみれば、今日は霧子のやついないな。

本願寺「霧子ちゃんなら、先に打ち合わせに風都まで行ってもらってますよ、ささ、進ノ介君も急いだ急いだ!」

課長はそう言いながら傍らにキャリーバックを持っている。なるほど、俺に仕事を任せてまた家族旅行ですか、そうですか。

霧子、というのは本名詩島霧子。俺のお目付け役かつ、ドライブのサポートを任されている凄腕の女巡査だ。生身の肉弾戦なら多分俺より強い。

進ノ介「はいはい、行ってきますよ」

霧子が既に現場に向かった以上、俺も今回はサボる訳にはいかないらしい。それに、どんより……重加速が起きた以上、ロイミュード絡みの事件であることは明白だ。

風都へと向かう道すがら、トライドロンの中で
ベルトさんが話し出す。

ベルトさん「進ノ介、今回向かう街にはロイミュード以外の危険も潜んでいる。気をつけたまえ」

進ノ介「ロイミュード以外の危険……?」

ベルトさん「まぁ、それは照井刑事からも説明があるだろう。とにかく用心に越したことはないからね」

その言葉に首を捻りつつ、俺は霧子のいる風都へと急いだ。

すみません、所用のため次は夕方ごろカキコします。
申し訳ない。

753号・・・なんて315な番号なんだ

名護「>>24は私の弟子になりなさい」

というわけで続きです。

霧子「ここが風都……」

街まで送迎してくれた警察官にお礼を言って別れると、私は風都の街が見渡せる川沿いの柵に寄り掛かって景色を眺めていた。

遠くにはこの街のシンボルという大きな風都タワーが見える。

「いい風が吹く街だねぇ」

霧子「えぇ、本当ね……って剛!? 何でここに!」

聞き覚えのある声に思わず振り向くと、そこには私の実弟である、詩島剛がカメラを構えて佇んでいた。

剛「そりゃあ姉ちゃんが心配だったからに決まってんでしょ?」

霧子「嘘つきなさい! これは警察の仕事よ。一般人のあなたには関係」

剛「重加速が起きた以上、この件には確実にロイミュードが関わってる……そうでしょ」

剛の鋭い目に、私は思わず言葉に詰まる。相変わらずロイミュードに対しては敵意のこもった話し方をする弟だ。

まぁ、本来ならばこれが当たり前の反応なのだろう。私や泊さんのようにロイミュードに対して戸惑いや躊躇いを見せる方が人としては間違いなのかもしれない。

霧子「もう、来ちゃった以上はしょうがないけど……あんまり目立つようなことはしちゃダメだからね!」

剛「はいはいっと、全く姉ちゃんは心配性だねぇ」

私の忠告を全く聞いていない様子の剛は、手にしたカメラで風都の風景を次々とファインダーに収めていく。

しかし、こんな弟でも仮面ライダーの1人。傍にいてくれると頼もしいのも事実だ。

霧子「決めたわ。あなたは私の部下としてこれから風都署に同行すること。」

剛「えぇー、何でよ?」

剛が駄々をこねる子どものように私に非難の目を向けてくる。そんな彼に対し、私は無言で重力発生機の付いた靴をトントンと鳴らす。

剛「な、なーんてね、詩島剛、誠心誠意がんばります」

今はこうすることで彼を縛るのが最善だろう。下手に動かれるとまたトラブルの元になるし、泊さんが来るまで護衛してもらえることにもなる。

一抹の不安を感じながらも、私達は風都署へと向かうのであった。

仮面ライダードライブ753話『ボタンを毟る男とは誰か』
視聴率753.8315%間違いなし

刃野「いやぁお待たせしてすみませんね、別件で立て込んでまして。もう間もなく照井刑事が参りますので」

風都署の一室に通された私と剛は、照井刑事の部下という、刃野と真倉という名の2人の刑事に今回の事件の説明を受けていた。

刃野「……という訳で、我々もこの重……なんとか、えぇ、どんよりとかいう現象に悩まされてるんですよ、なぁ真倉?」

真倉「……」

警察関係者であっても、女性というだけで見下したり馬鹿にする刑事も多いが、この刃野という刑事はひょうきんながらも誠実な対応で私に接してくれた。

彼の優しい人柄もそうだが、彼の属する超常犯罪捜査課の雰囲気もそうさせるのだろう、人智を越えた物も決して馬鹿にせず、常に物事の本質を見抜く眼力が感じられ非常に好感が持てた。

刃野「おい、聞いてんのか真倉……おいっ!」

真倉「う、美しい……」

対する真倉と呼ばれる刑事は、私の顔を見つめたまま微動だにしないでいる。その手に持った急須からはボタボタとお茶が零れていた。

刃野「このスカタン!」

真倉「あだだっ!」

刃野刑事が手にしたツボ押し器で真倉刑事をひっぱたくと同時に、ドアノブが回され赤いジャンパーを羽織った青年が現れた。

名護「>>27あなたも私の弟子になりなさい」

バトルパートに中々行けず申し訳ない。
もう少しお付き合いください。

照井「すまない刃野刑事、例の事件で遅れてしまった。特状課の方にはこちらから招いておいて失礼なことをしてしまったな」

刃野「お任せください照井殿、この刃野、既に事件の概要を特状課の方に説明済みでございます!」

真倉「ごっ、ございます!」

刃野刑事に続き、真倉刑事も慌てて赤いジャンパーの青年に敬礼をする。この人が照井刑事……想像していたよりずっと若いことに驚きつつ、私もすぐ敬礼して立ち上がった。

しかし、今時署内でこんな派手な赤いジャンパーを……まぁ、特状課のメンバーを思えばさほど違和感はないのだか。

霧子「ちょっと、あなたも立ちなさい!」

剛「へっ!? ふぁーい」

窓から外を眺めていた剛を慌てて促すと、照井刑事は私に敬礼をしっかりと返しつつ、フッと微笑んだ。

照井「まさかこんなに若いとは、と驚いているのはこちらもですよ。しかし動きを見ればただ者じゃないことは分かりました。よろしくお願いします詩島巡査。風都は始めてだと聞きました。どうですか、この街は」

霧子「ええ、景色もきれいで人々も優しくて、それに……とっても素敵な風が吹く街だと思います」

私の答えに、照井刑事はさらに目を細めると嬉しそうに笑みをこぼした。この人も、この街を愛し守り抜くと決めたのだろう。そんな決意が感じられた。

剛「んー……」

そんな私とは対照に、剛は照井刑事の頭から足先までを値踏みするようにまじまじと見つめる。

照井「どうした、何か気になるのか?」

少し怪訝そうに照井刑事が剛を見やった。

剛「いやね、何か他人な気がしないんだよねぇ、おたくさん」

照井「そうか? 会ったことはないと思うが」

剛「とにかくよろしく、赤い刑事さん!」

突然がっしりと握手をしてきた剛に気圧されながらも、照井刑事は、あぁ、と呟き私に向き直った。

照井「到着早々で悪いが詩島巡査、早速重加速という現象が起きた現場へ同行を願いたい。状況の説明も実際に見ながらなら分かりやすいだろう」

霧子「えぇ、お願いします」

照井「刃野刑事と真倉刑事は課に戻っていてくれ。留守の間、よろしく頼む」

刃野「お任せください!」

刃野刑事が人の良さそうな笑みで敬礼を返したのを確認し、照井刑事は頷きで応え、私達を現場へと案内する手配に入った。

照井「ここが現場になります」

霧子「随分奥まった通りになるんですね」

照井刑事に連れられてやってきたのは、人通りの少ない路地裏だった。激しい戦闘でも行われたのだろうか、壁の所々に弾丸の跡や動物のような引っ掻き傷が残っている。

剛「てか、こんなとこによくどんよりの被害者がいたもんだねぇ」

照井「その目撃者は俺の信頼する風都の探偵でな。俺の相棒……はあいつにはもういるから違うかもしれんが、何度も捜査に加わってもらってるんだ」

照井刑事の剛への声色から、重加速の報告はイタズラ等ではなく、確かな情報だったということが分かる。その人のことを深く信頼しているような声色……何故か私の脳裏に泊さんの姿が浮かんだ。

ダメダメ、仕事に集中しないと。

照井「ところで、その、詩島巡査……」

霧子「はい?」

ふと、照井刑事が私を恐る恐る伺うように横目で見てきた。

照井「その、頭と背中にしょってる変な装置は一体」

霧子「あぁ、これですか。これは重加速の痕跡を発見する装置です。こう見えて凄いんですよ、照井さんもどうです?」

照井「あぁ、いや、俺は遠慮しておこう」

剛「姉ちゃん仕事には真面目に取り組んでるんで、まぁお気持ちは痛いほど分かりますけど。笑わないでやってください」

剛まで気の毒そうな声で何を言い出すんだろう、みんなこれ付けたらいいのに……。

照井「ん、姉ちゃん……ということはお2人はまさか?」

霧子「あぁ、言ってませんでしたね。剛は私の弟なんです」

照井「そうか……」

弟、という言葉に照井刑事は暫し黙り込む。えっ、まさか剛が私の部下という嘘がバレた……? やばい、確かに姉弟で同じ課なんて怪しまれるよなぁ。

照井「剛……といったな」

剛「なになに?」

照井「いや、姉弟というのはいいものだなと思ってな。姉さんをしっかり守ってやるといい」

剛「任せてよ! 地の果てだって助けにいくよ、姉ちゃん?」

霧子「あなたの助けはいらないです」

剛「そんなぁ」

そんな私達の一連のやり取りを、照井刑事はただ黙って見つめていた。何故だろう、その瞳には一瞬だけ悲しみがよぎったと感じた。


照井「よし、とりあえず実況見聞はここまでにしよう。一旦署に」

???「その必要はない。貴様達はここで消える」

霧子「!?」

気を取り直すように口を開いた照井刑事の言葉は、突然の乱入者に阻まれた。見ると、早くも身構える照井刑事と剛の視線の先に、スーツを来た青年が佇んでいる。

照井「貴様……何者だ」

???「私は試作体753号。データにあった仮面ライダー……始末する」

仮面ライダーのことを知っている……まさか!?

剛「753号だって? 嘘つけ、ロイミュードにそんな数字ねぇだろう!」

753号「ロイミュード……くくっ、そんなものとうに越えている。私はロイミュードをベースに作られた偉大なるクラーク博士の部下。そして、ロイミュードにはできないこともできる、例えば」

敵意の籠った剛の言葉を受けても、753号は余裕の所作を崩さなかった。そして、懐から1つのUSBを取り出す。

照井「ガイアメモリ……!」

照井刑事が更に身構える。先程ここに来るまでに彼から聞いた、あれが人を怪物へと変えるガイアメモリ!

753号「私は別の任務があるのでね、こいつらに倒されるといい」

コピー!

753号がメモリを強く押し込み、そのままそれを首筋に挿入する。次の瞬間、青年の体から蝙蝠型の見たことのない怪人と、コブラ型の下級ロイミュードが飛び出してきた。

照井「なっ! あれは……バットドーパントだと!」

剛「コブラ型のロイミュード!?」

お互いに別々の敵を認識しながら、驚きを顕にする。どうやらコブラ型ロイミュードの傍らにいるのは、ドーパントという怪人らしい。

753号「やれ」

バット「キエェーッ!」

コブラ「ハアアァ!」

753号は2体の怪人にそう言い残すと、踵を返して姿を眩ませた。

照井「くそっ!」

照井刑事が懐から何かを取り出す。と、同時に上空から飛来した剛のシグナルバイクが2体の怪人を吹き飛ばしながら駆け付けた。

照井「なっ、お前まさか!」

剛「あれ、やっぱりおたくさんもしかして?」

お互いに腰に巻いたベルトを凝視した後、顔を上げて視線を交わす。

剛「話は後がいいんじゃないの?」

照井「同感だ!」

私の目の前で照井刑事は赤いガイアメモリのスイッチを押し、剛はベルトにシグナルバイクをセットする。

アクセル!

シグナルバイク!

照井「変……身!!」

剛「Let's……変身」

アクセル!!

ライダー! マッハ!!

2人の仮面ライダーは、変身を終えると互いに構えをとった。

照井「さぁ……振り切るぜ」

端的に言ってのける照井刑事の横で、剛の変身した仮面ライダーマッハはその場でくるくる回りながら決めポーズを取る。

剛「追跡! 撲滅! いずれもぉーーーー」

照井「随分と長い名乗」

剛「マッ……ハァーー!!」

照井刑事の発言を遮るように、マッハは指を天高く掲げる。

剛「仮面ライダー……マッハー!!」

照井「……いつもこうなのか?」

仮面ライダーになった照井刑事がマスク越しにこちらを振り向く。私は苦笑いしながら頷いた。

剛「てかてか、竜兄さんもしかしてだけど、バイクの仮面ライダーな訳!? いやぁ、やっぱり他人の気がしなかったんだよねぇ!」

照井「にっ、兄さん? おっ、俺に質問するなぁ!」

気を取り直すように敵に向き直った照井刑事の体を、剛がわちゃわちゃと揺する。

剛「いやぁ、パッと見た感じ進兄さんのドライブに似てるって思ったんだけどさぁ、よく見るとこれバイクのハンドルだよね? ねっ?」

照井「ドライブ? 俺は仮面ライダーアクセルだ! 勝手にベルトに触るな!」

アクセル……それが彼の変身する仮面ライダーの名前なのか。私は忘れないように手帳を取り出すと急いで名前をメモしておいた。

バット「キシャア!」

コブラ「ムウゥ!」

そんな2人の掛け合いの間に、立ち上がったバットドーパントとコブラ型ロイミュードが再びこちらに駆け出す。

照井「とにかくこいつらを倒すぞ!」

剛「了解、竜兄さん!」

アクセルとマッハは同時に腰を落とすと、地面を蹴って互いに直線上のバットドーパントとコブラ型ロイミュードへ一気に間合いを詰めた。

バット「ギイッ!?」

照井「ハァッ!!」

バットドーパントはくないのような武器を横一線に薙ぐが、照井刑事はアクセルの足に付いた車輪で体を回転させながら攻撃をかわすと、手にした剣で返しの一撃を見舞う。

あれは確か照井刑事の持っていたエンジンブレード……あまりの重さに驚いていたが、成る程仮面ライダーの武器だったのか。

剛「やるねぇ竜兄さん!」

コブラ「グオオォ!」

剛もマッハの俊足を活かしてコブラ型ロイミュードのパンチをいなしながら、ゼンリンシューターを打ち込んでいく。

照井「戦闘中に油断をするな!」

剛「はいはいっと!」

互いに相反する性格の2人だが、狭い路地でも背中合わせに体を合わせながら、抜群のコンビネーションで敵を追い詰めていた。

照井「一気に決めるぞ!」

照井刑事はそう言うと、別のメモリを取り出しエンジンブレードに差し込む。

エンジン! マキシマムドライブ!

次の瞬間、エンジンブレードが高熱を帯びたように赤く光り、アクセルの体が蒸気に包まれる。

剛「了解!」

剛もベルトのシグナルバイクのスイッチを押すとベルトに再装填した。

ヒッサーツ! フルスロットール!

バット「ギィィ!!」

堪らずといったようにその場から退避しようとしたバットドーパントは、それよりも早く接近したアクセルにAの字に切り裂かれた。

照井「絶望がお前のゴールだ……」

剛も同時に空中に飛び上がると、同じく背中を向け逃げ出していたコブラ型ロイミュードの図上で高速回転し、その勢いのまま蹴りを叩き込んだ。

剛「くらえ!」

バット「ギャシャアアアア!!」

コブラ「グアァアアアアア!!」

同時に必殺技を喰らった2体の怪人は、壁際まで吹き飛ばされると爆発四散した。

剛「ほい終了っと」

照井「いや、まだだ!」

変身を解こうとしていた剛を、照井刑事が引き止める。私も慌てて怪人達がいた方向に目を向けると、そこにはバラバラの体が融合を始めるバットドーパントとコブラ型ロイミュードの姿があった。

剛「ちょ、そんなのってあり!?」

照井「構えろ、来るぞ!」

唖然とする私達の前で、やがて1つの集合体になったそれは、言うなればバットドーパントとコブラ型ロイミュードのキメラのように見えた。

キメラ「グルルルル……」

剛「くそっ!」

先手必勝と言わんばかりに、剛がマッハの瞬発力で殴りかかる。

剛「なっ!?」

しかし、それを軽々と受け止めたキメラは、耳をつんざくような咆哮を上げた。

「ギシャアアアアア!!」

照井「ツッ!!」

剛「これはまさか!?」

霧子「重加速!」

全ての物体の運動が限りなく0に近く静止し、スローモーションになる世界、何度も味わっているのにこの感覚だけは未だに慣れない。

そして私は1つ重大なミスを犯していた。いつも持ち歩いているシフトカーは、今日の夕方までりんな先生のメンテナンス中ということをすっかり失念していたのだ。

照井「くっ、これは……」

照井刑事は事前情報があったとはいえ、未知の現象に狼狽えて身動きが取れずにいる。それでも私より体を動かせるのは、仮面ライダーの超人たりえる力のお陰なのかもしれない。

剛「竜兄さん! 姉ちゃん! くっ、離せこの!」

頼りのマッハである剛は、キメラから逃れようと必死に体を動かすが、びくともしていない。

霧子「せめて他のシフトカーを……」

照井刑事だけでも動ければ戦況は好転するだろう。そう思い私は懐の通信機に手を伸ばす。駄目だ、時間がかかりすぎ……

照井「これが重加速、成る程確かに恐ろしい現象だ」

焦燥に駆られていた私は、照井刑事のその一言にゆっくりと視線を上げた。

照井「だが既に手は打っている。さぁ思いきり……振り切るぜ」

そう言われてベルトを見ると、ガイアメモリよりさらに大振りな、ストップウォッチのような装置が刺されていた。

トライアル!!

レースのカウントダウンと発信音と共に、青い装甲に換装を終えたアクセルが現れる。次の瞬間、目にも止まらぬ速さで駆け抜けたアクセルは、キメラの顔面に数発のパンチを叩き込んでいた。

キメラ「ギャアッ!」

剛「っと、サンキュー竜兄さん! 姉ちゃんこれを!」

剛がシグナルマガールを私の腰の銀色のホルスターに直接投げ渡す。それが収納された瞬間、体の自由が取り戻された。

霧子「ありがとう剛!」

照井「剛、このタイプの敵はスピードで翻弄するんだ。手数の多さで圧倒するぞ!」

剛「了解!」

照井刑事が剛の横に立ち拳を構える。まさか、先程のキメラが生まれる瞬間にあの装置を準備していたというのだろうか。その機転から、彼の潜り抜けてきた死線の数が垣間見えた。

剛「にしても重加速の中を高速で移動できるなんて、さすがは俺と同じバイクのライダーだね!」

照井「話は後だ! はぁっ!」

剛「着いていくよ竜兄さん!」

超高速で駆け出した2人は、円を描くようにキメラの周囲を駆け抜ける。

キメラ「ガ、ギギッ!?」

キメラは余りの速さに翻弄され、完全に2人の姿を捉えられずにいた。そうしている間にも、アクセルとマッハのパンチとキックの応酬がキメラを襲う。

キメラ「グゥオオオ!!」

痺れを切らしたキメラは、円に向かってがむしゃらに突進していった。

剛「今だよ竜兄さん!」

シグナルトマーレ!!

しかし、それをマッハが全身で何とか受け止めると、手にしたゼンリンシューターから、シグナルトマーレの光線でキメラを釘付けにする。

照井「これで決める!!」

キメラの背後に現れたアクセルがトライアルと呼ばれたメモリのスイッチを押し天へと放った。

照井「ハアアアアアァァァ!!」

ストップウォッチのカウントが刻まれる中、アクセルは華麗な足裁きでキメラに10発、20発と蹴りを浴びせた。

メモリのカウントが9.8秒を刻むと同時に、アクセルは振り替えるとメモリをキャッチしキメラに背を向けた。

照井「タイムアウトだ」

キメラ「ギャアアアアア!!」

Tの字に爆発したキメラは、今度こそ跡形もなく消し飛んでいった。

すみません、今日はここまでです。
明日はドライブ楽しみですね。
みなさんもよい休日を!

――side W

亜樹子「うわあ、とっても似合ってる!」

翔太郎「しっかり決まってるぜおじさん」

おやっさんにそっくりの男が目を覚まし、俺達はひとまず男にボロボロの服を着替えるよう促した。ちょうど事務所に昔おやっさんが使っていたスーツがあったのだが、サイズもぴったりで、全身白のタキシードに包まれたその姿は、どう見てもおやっさんそのものだ。

???「すまねえな、助けてもらったってのに、こんなもんまで貰っちまって」

男が純白のシルクハットのつばを直しながら、渋い声で話す。

亜樹子「何言ってんのよおと……おじさん、どうせこの半熟探偵には似合わないんだしどんどん使っちゃってよ」

翔太郎「誰が半熟だって亜樹子ォ!!」

亜樹子「へへーん、ハーフボイルドな探偵さん」

フィリップ「……」

そんな俺達の掛け合いを、フィリップは遠目から椅子に腰掛けただ眺めている。

???「ハーフボイルド……?」

亜樹子の発したフレーズに、男は少し眉根を動かし尋ねた。

亜樹子「あ、ハーフボイルドってのはね、この翔太郎君のニックネームみたいなもの。本人はハードボイルドになりたいみたいなんだけど、まだまだ半熟って意味なの」

こちらをニヤニヤ見つめながら解説する亜樹子に、俺は抗議しようと再び口を開きかける。

???「フッ、ハードボイルドか……翔太郎とか言ったな。頑張れよ」

翔太郎「おっ、おお……ありがとうなおじさん」

おやっさんの声と、顔で面と向かって言われると、何だか見習い時代に戻ったようで少しくすぐったい。そして、まるで本当におやっさんが生き返って激励してくれてるみたいで……俺は目頭が熱くなるのを感じ、慌てて顔を逸らした。

???「それじゃあ、世話になったな」

亜樹子「えっ、ちょっともう行っちゃうの!?」

着替え終わったと思いきや、足早に事務所の出口に向かう男に、亜樹子が思わずしがみつく。俺も慌てて行く手を遮るように出口のドアの前に立った。

翔太郎「亜樹子の言うとおりだぜ、まだ記憶も曖昧で地理も分かんねえってのに」

???「いや、これ以上若い連中の世話になる訳にはいかねえよ」

亜樹子「な、なんなら記憶が戻るまでこの事務所にいてくれたって、ほら、2人も3人も同じだしさ、ねえ翔太郎君!」

翔太郎「おお、もちろんだぜ、そうしてくれよおや……おっさん」

そんな俺達の必死の抵抗に、男は暫し思案するように顎に手を当てると考え込み、やがてゆっくりと視線を上げる。

???「そうだな、じゃあすまねえがこの街を案内してくれねえか、歩けば少しは記憶も戻るかもしれねえ」

翔太郎「おお、お安い御用だぜ、待ってな、すぐ準備するからよ!」

男の提案に、俺と亜樹子は嬉々として仕度を始めた。何だか、いつも頼ってばっかりだったおやっさんに初めて頼られたみたいで、高まる高翌揚感を隠し切れずについニヤけてしまう。

フィリップ「翔太郎、少しいいかい」

そんな俺を、フィリップが手招きして呼ぶ。

何事かと振り向いた俺を、フィリップは地下ガレージへと招いた。

翔太郎「どうしたんだよフィリップこんなとこまで」

訝しげに尋ねる俺に、フィリップはホワイトボードの前まで歩くとこちらを振り返り口を開いた。

フィリップ「翔太郎、今日は僕も同行しよう」

翔太郎「本当か? 一体どういう風の吹き回しだよ」

いつもは大抵事務所に籠り、検索をするか発明に勤しむフィリップが外出に同行するなど極めて稀なだけに、俺は驚きを顔に表す。

フィリップは尚も静かな口調で話す。

フィリップ「今の君は見ていて少し危なっかしくて心配だ。特に先日の事件のこともあるし、用心に越したことはないと思ってね」

翔太郎「何だと?」

聞き捨てならない言葉に、俺は思わず語気を強めて1歩踏み出す。しかし、そんな俺の様子にも全く物怖じせず、フィリップは顎に手を当てて俺を見据えた。

フィリップ「君はあの男が実は鳴海荘吉のそっくりさんではなく、本人ではないかと考えている……違うかい?」

翔太郎「……ッツ!」

図星だ。俺の心の中を見透かすような目で、フィリップはさらに続ける。

フィリップ「別にその可能性を100%否定するつもりはないよ、もしそうであれば、もちろんその方がいいに決まってる。でもね、翔太郎」

何も言い返せずにいる俺に、フィリップは更に言葉を紡いでいく。

フィリップ「君も彼の最期を看取ったはずだ。あの状態で生き残るもしくは蘇生するなんて芸当は……不可能だよ」

翔太郎「で、でも、万が一のことだって……」

フィリップ「それよりも僕は、また死人還り事件のように彼が何らかの原因で敵になってしまうことを危惧しているんだ、翔太郎。また敵のメモリによる攻撃なのではないかってね……。君はあきちゃんの言うようにハーフボイルドだ、でもむしろ僕はそれが君の素晴らしい所だと思っている。強さの中に優しさを兼ね備えた心、僕に足りないものを君は持っているんだ」

翔太郎「……」

フィリップ「残酷なことを言ってしまってすまない、でも、前例があるだけに、警戒を忘れないでほしい。特に、僕は戦闘に関しては非力だからね。頼れるのは君しかいないんだ、翔太郎」

翔太郎「ああ、分かってるぜフィリップ、ありがとな」

俺は改めて自分の中にあった甘さを思い知らされた。確かにフィリップの言うことは全て的を射ている。実際、死人還り事件の時、スカルの姿に動揺した俺は不覚を取っているのだ。相棒の心配は最もだろう。

翔太郎「……とりあえず、まだおやっさんに似た男の正体が分かった訳じゃねえしな、気を引き締めていくぜ」

フィリップ「ああ、すまないね翔太郎、こんな言い方しかできなくて」

翔太郎「気にすんな相棒、頼りにしてるぜ」

俺は気を取り直すように両手で頬を張ると、フィリップの肩を叩いて共にガレージを後にした。

亜樹子「それでね、ここが風都で有名な和菓子屋さん、すっごくおいしいんだよ!」

???「ほう」

大はしゃぎで先頭をいく亜樹子に続いて、男は笑みを浮かべながら説明を聞いている。そんな2人の様子を、俺とフィリップは少し離れた場所から眺めていた。

亜樹子「でね、あっちがー……」

今日の亜樹子はいつになく笑顔で、男と歩くその姿は、傍から見ればただの親子にしか見えない。思えば、いつも元気一杯のイメージだが、彼女も辛い過去を背負っているんだな、としみじみと実感してしまう。

翔太郎「嬉しそうだな、亜樹子の奴」

フィリップ「ふふ、あんなにはしゃぐあきちゃんも久しぶりだね」

翔太郎「ああ……」

しかし、そんな亜樹子から実の父親を奪ってしまったのは、他でもない俺のせいだ。だからこそ、俺はおやっさんに代わって一生守らなきゃならねえ、彼女のことを。

フィリップ「翔太郎、心配しなくてもあきちゃんには照井竜がいるよ」

翔太郎「はあっ!? バッカお前何勝手な想像してんだよ、別に亜樹子のことなんかどうでもいいっつの!」

フィリップ「君は本当に分かりやすくて、見ていて飽きないねえ」

しどろもどろになる俺を楽しそうに眺めながら、フィリップはクスリと微笑んだ。

フィリップ「……ん?」

と、急にフィリップの視線が俺の向こう側に注がれた。俺も異変に気付き振り返ると、亜樹子と男の前方に、1人の青年が立っていた。

亜樹子「それで次は……へっ?」

やがて青年の前を通り過ぎようとした亜樹子は、何かに気付いた様子で彼の手元を見た。その手には……銃が握られていた。

翔太郎「危ねえ、亜樹子ォ!」

フィリップ「クッ!」

フィリップと共に急いで駆け出すが、如何せん距離が離れている。くそっ、おやっさん似の男ばかりに気を配りすぎた!

???「亜樹子!!」

しかし、そんな亜樹子の危機を救ったのは、男の方であった。弾みでシルクハットが脱げながらも、亜樹子を抱えて横っ飛びに飛んだすぐ後に弾丸が空を掠める。

???「ムッ、何をするのです763号」

銃を放った青年は、眉を潜めるとさらに銃口を亜樹子へと向ける。しかし、それを庇うように男は亜樹子を背中に隠した。

翔太郎「待てテメエ!」

???「くっ」

ようやく追いついた俺がその勢いのまま青年の顔面目がけパンチを放つが、青年は人間離れした動きで身を翻すと、街灯の上に着地した。

フィリップ「その動き、君……何者だい?」

フィリップの問いかけに男は不敵に笑むと挑発するようにやれやれと首を振る。

???「全く、今日は自己紹介を多く求められますね、私は753号、偉大なるクラーク博士の部下」

翔太郎「753号? なんだそりゃ、ロボットか?」

753号「フン、ロボットなどという機械仕掛けの玩具ではない。それにしても何のつもりです、763号、人間を庇うとは」

亜樹子「えっ?」

753号は、確かにおやっさん似の男を指さしてそう言った。その言葉に、背後の亜樹子も心配そうに男を見つめる。

???「……」

753号「ふん、だんまり……ですか。いいでしょう、こいつらを片付けて連れ帰るとしますか」

翔太郎「させるかよ、いくぜフィリップ」

フィリップ「ああ」

753号の目の前に立ちはだかった俺とフィリップは、それぞれ黒と緑のガイアメモリを取り出す。

と同時に、それぞれの腰にダブルドライバーが出現した。

サイクロン! ジョーカー!

翔太郎・フィリップ「「変身!!」」

サイクロン! ジョーカー!

翔太郎・フィリップ「「さあ、お前の罪を数えろ!」」

753号「ふん、その命クラーク博士に捧げなさい!」

仮面ライダーWに変身を終え、俺とフィリップは753号に飛び掛かった。

翔太郎「ハアッ!」

753号「データにあった仮面ライダーW……始末する!」

ジョーカー側の蹴りを躱しながら、753号は街灯から飛び降り構えを取った。と同時に、彼の体は瞬く間に変異を遂げ、機械仕掛けの顔に聖職者のような衣服、いくつもの棘の生えた怪人へと変貌した。胸には「753号」と記されたプレートが埋め込まれている。

フィリップ「その姿……ドーパント……ではないのか」

753号「ふっ、いかにも。私はロイミュードの更に上をいく存在。そして……」

翔太郎「なっ!」

753号は、懐からガイアメモリを取り出した。

フィリップ「ガイアメモリ!」

753号「そこにガイアメモリの力が加わるのだ……すなわち無敵!!」

ヴァンパイア!

ヴァンパイアメモリを首筋に挿すと、753号の体から羽が生え、更に鋭い牙に大鎌まで出現した。その禍々しい変化に、Wは様子を伺うように距離を取る。

753号「ふふ、離れていては攻撃できません……よっ!!」

翔太郎「な、早……うわあっ!」

大鎌から振るわれたエネルギー波に、一瞬回避が遅れたWは、掠っただけにも関わらず壁面に叩き付けられる。

翔太郎「野郎、何て強さだ……」

フィリップ「翔太郎、ここは防御を固めて敵の手の内を探ろう」

翔太郎「オッケー!」

ヒート! メタル!

メモリチェンジしながら鉄の棒を振るうと、Wは753号へ棒術による打撃を繰り出す。幾度か打ち合うだけで、こちらの手に痺れが伝わってくる。恐ろしいほどの怪力だ。

753「フフ、ホラアッ!」

翔太郎「ぐあっ!」

何とか攻撃を防御しながら、Wは一旦飛び退くと体勢を立て直す。

フィリップ「翔太郎」

翔太郎「よしきた」

ルナ! メタル!

ルナメモリにソウルサイドを切り替え、Wは伸縮自在の鞭で753号を翻弄していく。

753号「くっ、小賢しい真似を!」

フィリップ「隙ができた、翔太郎!」

メタル! マキシマムドライブ!

翔太郎・フィリップ「「メタルイリュージョン!!」」

いくつもの円を描いたエネルギー弾が、753号に直撃した後再び集約し爆発する。

753号「くっ、まだだ!」

ルナ! トリガー!

753号「何っ」

翔太郎「どんどん行くぜ?」

爆発を耐えてこちらに攻撃を加えようとした753号に、Wはさらにルナトリガーの追尾弾を撃ちこんでいく。

753号「この、小賢しい真似をぉ!」

753号は、手にした大鎌を回転させながら、追尾する光弾を弾きつつ俺の目前へ迫る。

フィリップ「翔太郎、接近戦いで最も威力のあるヒートを」

翔太郎「もう挿してるぜ!」

ヒート! トリガー!

俺はWの基本フォームで最強の破壊力を持つ、ヒートトリガーへと姿を変えた。同時に大鎌の一撃が飛んでくるが、その柄の部分を肩で受けると、トリガーマグナムを753号の腹部にぴったりと突き付ける。

753号「何っ!?」

フィリップ「肉を切らせて骨を断つ……ってね」

翔太郎「終わりだぜ? 吸血男」

取った。俺はトリガーマグナムの引き金に指をかけた。

トリガー! マキシマムドライブ!

翔太郎・フィリップ「「トリガー! エクスプローショ」」

753号「ふっ、なんてね」

翔太郎「なっ!」

しかし、全てを焼き尽くす破壊の爆炎が撃ち出されんとしたその時、異変が起きた。

翔太郎「こりゃあ……まさか」

753号「ふふ、この力を受けるのは初めてではないのかな?」

あの時のどんよりとした空気、全てがスローになる瞬間が訪れる。

フィリップ「これが翔太郎が言っていたどんよりとした空気……!」

亜樹子「ほ、本当に宇宙にいるみたいになってるよぉ!」

どうやらこの空間はかなり広範囲に広がっているようだ。その証拠に、763号と呼ばれた男の後ろに立つ亜樹子もゆっくりと後ろに倒れながら素っ頓狂な声を上げている。

フィリップ「翔太郎、メモリをサイクロンジョーカーに!」

珍しく焦ったような声色のフィリップの指示に、俺はハッとしてWドライバーに手を伸ばした。

しかし、仮面ライダーの力を持ってしても、この空間では緩慢な動きしか取れない。

753号「ふふ、それをさせるとで…もっ!!」

翔太郎・フィリップ「「うわぁぁぁあ!!」」

あまりにも隙だらけの俺達を見逃すはずもなく、753号の振るった大鎌がWの胸部を斬りつける。

翔太郎「ぐはっ」

一撃で変身の解けた俺の体は、尚も痛みに呻きながらゆっくりと吹き飛ばされる。僅かに視線をずらすと、フィリップの意識も倒れていた体へと引き戻されたようだった。

753号「さて、終わりにしましょうか」

753号が左手に無数の光の弾を発生させ構える。

万事休す。俺は再び変身するために必死に体を動かすが、まるで鉛のように思い体は意思とは裏腹に言うことを聞いてくれない。

翔太郎「ぐっ……」

ゆっくりと地面に着地した俺は、なんとか体を起き上がらせる。この空間のおかげで叩き付けられることは回避されたが、それでも目の前の脅威は消え去らない。

753号「まずは見せしめにあなたから始末しましょう」

翔太郎「なっ」

753号は立ち上がろうともがく俺に、光弾の標準を合わせた。

フィリップ「翔太郎!!」

亜樹子「翔太郎君っ!!」

フィリップと亜樹子が悲痛な叫びを上げる。

753号「自分の意識がゆっくり遠退くのを感じながら……死になさい!」

その言葉を合図に、放たれた光弾が眼前に迫る。くそっ、こんなところで……

翔太郎「[ピーーー]るかあぁ!」

次の瞬間殺到した光の弾が視界を覆い、凄まじい爆音と土煙が辺りを包み込んだ。

亜樹子「う……そ」

フィリップ「翔太郎……翔太郎ぉお!!」

亜樹子は脱力したように呟き、フィリップは体を必死に動かし叫ぶ。そして、暫しの静寂が訪れた。

翔太郎「……」

翔太郎「……ん、あれ」

きつく目を瞑っていた俺は、ゆっくりと瞼を持ち上げる。体は……何ともない、なんで。

ハッと前を見るとそこには。

俺を庇うように立つおやっさん似の……いや、おやっさんの姿があった。

荘吉「よぉ翔太郎、怪我はねぇか?」

翔太郎「おやっさん……おやっさぁん!」

感極まった声で、俺は叫ぶ。両目からはゆっくりと涙の滴が零れ落ちた。

気付いたら50いってた……
平日はなかなか更新ができず申し訳ないです。感想等カキコありがとうございます。
もうしばらくお付き合いください。

すみません1つ前のカキコにフィルターかかってしまいました。
翔太郎の台詞は「こんなところで死ねるかあぁ!」です。申し訳ないです。

753号「何をするのです763号!」

予想外の乱入者に、753号が鎌の柄を地面に叩き付け憤慨する。その様子に、おやっさんはゆっくりシルクハットを上げた。

荘吉「撃っていいのは撃たれる覚悟のあるやつだけだぜ、兄ちゃん」

753号「な、何を!」

荘吉「763号……思い出したぜ、全て。翔太郎、お前の戦う姿を見てな」

翔太郎「おやっさん……」

亜樹子「じ、じゃあやっぱりあなたはお父さん……なのね?」

亜樹子が涙ぐみながら、おやっさんを見やる。

フィリップ「いや、753号のこれまでの言動を考えると彼はむしろ鳴海荘吉をベースにした……」

753「フハハッ、その通り! 彼は人間などではない。私と同じ、人間のデータをコピーした、クラーク博士の試作体、機械仕掛けの怪人だよ!」

荘吉「……」

翔太郎「そう、なのか、おやっさん?」

荘吉「……あぁ、どうやらそうらしい」

亜樹子「そんな、そんなのって」

運命はなんと皮肉なのだろうか。折角おやっさんに少しでも近付けたと思っていた、そんな時に巡りあったのが、本物のおやっさんではなく、おやっさんそっくりの機械だったなんて……。

753号「残念だったなぁ、当の本人は今頃既に」

翔太郎「やめろ!」

上機嫌で話していたところを遮られ、ムッとしたように753号は鎌を持ち上げた。

753号「ふん、偽物との友情ごっこなどくだらない、何がそんなに気にくわないのです」

翔太郎「てめぇの物差しでおやっさんを語るんじゃねぇよ。例え機械だろうがなんだろうが、おやっさんはおやっさんだ」

荘吉「……」

フィリップ「フッ、そうだね。それに、それを言うなら僕だって人間ではない時もあった」

亜樹子「うん、あたしこんなの聞いてない。聞いてないけど、だけど、それでもお父さんに会えたみたいで嬉しかった。この気持ちに嘘なんかない!」

荘吉「お前達……」

荘吉は少しだけシルクハットを下げ、目元を隠す。753号は呆れたように首を振った。

753号「下らない、実に下らない。ならばまとめてあの世にいくがいい!」

再び武器を構え闘気を剥き出しにした753号を、おやっさんはゆっくりと見据えた。

荘吉「あまりガイアメモリは使わねぇ主義なんだが、仕方ねぇ」

翔太郎「! まさかおやっさん……」

おやっさんが懐から取り出したスカルのガイアメモリに、俺はつい声を上げる。既に腰にはロストドライバーが装着されていた。

深闇に輝く紫のガイアメモリを、おやっさんは静かに起動した。

スカル!

荘吉「変身……」

スカル!

全身を覆うように出現した黒の鎧に、風になびくマフラー、骸骨の仮面を象った仮面ライダースカルが姿を現す。その姿を見るのは久しぶりだった。

変身を終えると、スカルは優雅な所作で純白のシルクハットを被る。

荘吉「さぁ、お前の罪を……数えろ」

まるで囁くように、しかし聞く者の体の芯に響くような声色で、おやっさんは753号を指差した。

753号「それはさっきも聞いている!」

大鎌で斬りかかる753号の攻撃をいなすと、スカルは手にしたスカルマグナムを的確に撃ち込んでいく。

753号「がふっ、なっ、こいつ私の弱所を!」

フィリップ「なるほど、先程753号が話していたロイミュードの力がこの空間を作り出しているのなら、同族である鳴海荘吉には力が作用しない訳か、興味深いねぇ」

こんな時だというのに、フィリップは満足に体も動かせない空間で戦闘や能力を分析している。

753号「くそっ、こんな……パワーでもスピードでも勝る私が何故!」

派手な武器や能力がある訳でもないスカルだが、流麗な格闘と正確な射撃で、徐々に753号を圧し始めていた。

荘吉「ふっ、はあっ!」

753号「ぐふっ、くそおっ!」

連続で叩き込まれた拳によろめきながらも、753号が大鎌からエネルギー波を飛ばす。その一撃を最小限の動きでかわしながら、スカルはスカルマグナムにメモリを挿し込んだ。

スカル! マキシマムドライブ!

荘吉「終わりだ」

スカルマグナムの銃口に集約したエネルギーが、ドクロを象った光弾となり、753号へと撃ち込まれた。

753号「グアアアァァァ! ク、クククッ、仲間に手をかけるとは……しかし、時が経てば装置が起動する、そうすればあなたはいずれ殺人マシーンに……ククク、クククグアアアァァァ!!」

今わの際に何かを呻くと、753号は爆発四散した。と同時に、俺たちを縛っていた重力の波も引いていき、体の自由が取り戻されていった。

荘吉「……」

おやっさんがロストドライバーからメモリを抜き、スカルの変身を解く。

痛みにまだ少し軋む体を、俺も何とか起き上がらせた。

亜樹子「お父さん!」

急いで駆け付けた亜樹子は、心配そうにおやっさんの体に触れる。おやっさんは笑顔で返すと、彼女の頭をポンポンと叩いてやる。

しかし、急に真剣な表情に戻ったおやっさんは、俺と俺の後ろに来ていたフィリップをゆっくりと振り返った。

荘吉「翔太郎、フィリップ……」

翔太郎「何だよおやっさん」

突然真面目な声で名前を呼ばれ、狼狽える俺と対照的にフィリップは神妙な面持ちで頷く。

そして次の瞬間、俺は信じられない言葉を耳にした。

荘吉「俺を今ここで倒せ」

荘吉「俺を今ここで倒すんだ、翔太郎」

言葉の意味が飲み込めず頭の中で咀嚼する俺に、おやっさんは再び口を開く。

亜樹子「な、なに言っちゃってるのお父さん……そんなことできるわけないじゃない! ね、フィリップ君!」

フィリップ「……鳴海荘吉、いや、敢えて呼ぼう、763号。それは763号としての意見なのかい?」

亜樹子から同意を求められたフィリップは、あくまで冷静な面持ちで荘吉を見据える。

おやっさんはゆっくりと頷くと、753号と同じ怪人態へと変化した。

亜樹子「!」

翔太郎「おやっさん、その姿……」

荘吉「これで分かったろう、俺は鳴海荘吉の偽物だ。この世にいちゃいけねぇ存在なんだよ」

翔太郎「そんなこと……!!」

荘吉「翔太郎、俺もいつかは奴のようになる。俺の体のことは俺自身一番分かるからな。その前に倒せと言っているんだ」

否定の言葉を口にしようとしたが、おやっさんの胸に埋め込まれた763号のナンバリングプレートを見て、俺は二の口が告げられない。

こいつはおやっさんなんかじゃない。フィリップから言われたときにもしかしたらと覚悟はしていた。していたはずなのに、体は動こうとはしなかった。

あぁ、やっぱり俺には無理だよおやっさん。こんな俺の姿を見たら、おめぇはやっぱりハーフボイルドだって笑うのかな。

それでもいい、俺は。

翔太郎「俺は……!!」

荘吉「さぁ、やれ」

おやっさんが怪人態の姿で1歩踏み出す。

その時。

???「進ノ介、ロイミュードだ!」

???「オッケー、ベルトさん!」

俺の思考は、突如として滑り込んできた乱入者に遮られた。

カキコ遅れて申し訳ないです。
年度末でばたついておりました。
少しずつ更新していきます。

――side ドライブ

俺が風都に到着したのは、正午を少し回った頃だった。トライドロンのハンドルを握りながら、よく整備された道路を駆け抜ける。

ベルトさん「進ノ介、そろそろ風都の中心部に入る頃だ」

進ノ介「みたいだな。それにしても綺麗な町だ、走り甲斐があるっても……」

突如として感じたどんよりの感覚に、俺は思わずブレーキを踏んでトライドロンを停車させた。

どうやらベルトさんの忠告通りシフトカーをセットしてきて正解だった。危うく重加速を喰らうところだ。

ベルトさん「進ノ介、どうやらここから近い場所にロイミュードが出現したらしい」

進ノ介「ったく、到着早々か。でも、文句もいってられねぇな」

俺は腰に巻かれたベルトさんを一撫ですると、どんよりの中心地点目掛けて駆け出した。

ベルトさん「あそこだ、進ノ介!」

進ノ介「オッケー、ベルトさん!」

俺の前方約100mに、骸骨のような外骨格を模したロイミュードとそいつに襲われている市民の姿が見える。恐怖で動けないのか、シルクハットの男は後ずさり、その傍らには若い少年と少女の姿があった。

ドラーイブ! ターイプ スピード!!

シフトカーを装着し、ドライブに変身を終えると、俺はそのまま滑り込みつつハンドル剣を袈裟がけに切りつけた。突然の攻撃に成す術もなく吹き飛ばされながら、763号は近くのビルの壁面に叩き付けられる。

胸のプレートには、763号と記されていた。

763号「ぐっ!」

翔太郎「お、お前!」

ハッとしたように我に返った様子のシルクハットの青年が、こちらの姿を見て驚きを顕わにする。

亜樹子「りゅ、竜くん!? ……じゃない」

フィリップ「君は……!?」

進ノ介「話は後で! 離れてて!」

3人を庇うように後ろに置きながら、俺はドア銃を763号へ乱射する。

763号「ぐっ」

弾丸を両腕で防ぎながら、763号はこちらへ突進してきた。

翔太郎「おやっさん……まさか!」

763号「ふん、どうした、この程度か小僧!」

シルクハットの青年が何やら叫ぶが、どこか怪我でもしたのか苦痛に顔を歪め膝をつく。

亜樹子「翔太郎君!」

見たところ中学生だろうか、少女が心配そうに翔太郎と呼んだ男の肩を担ぐ。その後ろには、細身の少年の姿もあった。

ベルトさん「すでに市民を襲っていたのか。それにあの胸の番号……そんな数字はロイミュードにあるはずが……」

進ノ介「考えるのは後だぜベルトさん、被害が広がらない内に一気に決める!」

俺はハンドル剣にシフトスピードを装填する。

ヒッサーツ! フルスロットール!!

763号を見据えると、俺は地面を蹴って駆け出した。

亜樹子「止めてえ!」

進ノ介「なっ!?」

ベルトさん「進ノ介、何をやってる!」

進ノ介「くっ」

背後から聞こえた悲痛な少女の声に、俺の意識は一瞬逸れかけるが、ベルトさんの声に再び我に返るとハンドル剣を強く握りしめた。

進ノ介「喰らえ!!」

763号「ぐうっ」

横一文字に切り裂かれた763号は、片膝をつきながら踏み止まる。

763号「まだだ、まだ足りねえぜ小僧」

進ノ介「こ、こいつ何てタフさだ」

ベルトさん「進ノ介、タイプワイルドでハードに攻めるんだ!」

進ノ介「了解!」

ドラーイブ! ターイプ ワイルド!!

フォームチェンジと同時にシフトダンプを装着すると、俺の右腕にランブルスマッシャーが出現する。

763号「さあ、打ってこい小僧!」

両腕を広げ立ち塞がる763号に、俺はドリルの先端を向けた。

進ノ介「言われなくてもいくぜ!」

ヒッサーツ! フルスロットール!!

高速回転するドリルを突き出したまま、俺は763号目がけ猛加速で突っ込む。

翔太郎「やめろおおおお!!」

ジョーカー!!

進ノ介「えっ!?」

ベルトさん「進ノ介、ストップだ!!」

進ノ介「ぐうっ!」

両者の間に突然飛び込んできた漆黒の鎧の男に、俺は慌ててドリルを逸らすが、僅かに間に合わない。

翔太郎「うわああああああっ!!」

腰にベルトを嵌めたその男は、変身解除されるとそのまま吹き飛び、意識を失って倒れた。見ると、先程のシルクハットの青年ではないか。

亜樹子「翔太郎君!」

フィリップ「翔太郎!! 君は何て無茶なことを!」

進ノ介「おい、あんた大丈夫か!!」

慌てて翔太郎という男に近付き、俺は急いでシフトドクターを呼び治療を施す。

翔太郎「ぐっ……」

ベルトさん「良かった、命に別状は無さそうだね」

ベルトさんの声にホッと胸を撫で下ろし、俺は763号を振り返る。

763号「翔太郎……くっ」

進ノ介「あ、待て!!」

その場から走り去る763号を急いで追おうにも、怪我人を放っておく訳にもいかず、仕方なく男のもとに戻る。

ベルトさん「この青年はなぜロイミュードをかばって……」

ベルトさんと同じ疑問を胸に抱きながら、俺は急いで男をトライドロンへと運んだ。

フィリップ「これが、翔太郎が君の攻撃から76……いや、鳴海荘吉を庇った理由という訳さ」

進ノ介「なるほどな……そうとは知らず本当にごめん。フィリップ、亜樹子ちゃん」

亜樹子「いいのいいの、ほら、あんな状況じゃ仕方ないよ」

3人の住処であるという鳴海探偵事務所で、俺達3人は翔太郎の眠るベッドを囲み話をしていた。ドクターの治療は効いているが、目覚めるのには時間がかかりそうだ。

ベルトさん「ふむ……人間の記憶や姿をコピーするのはロイミュードの特徴だが、他にも特殊な点がある。これは裏に何か絡んでいそうだね」

フィリップ「そう考えるのが妥当だろう。どうやらこれは単なるガイアメモリとロイミュードだけの問題ではなさそうだ」

亜樹子「あはは、すっかり意気投合しちゃったねこの2人」

初めのうちは喋るベルトさんの事に驚いていた2人だが、少し経つとすっかり慣れてしまい、今ではこうして普通にベルトさんと会話している。どうやらこいういった事には慣れっこらしい。

俺は翔太郎に怪我を負わせてしまった罪悪感で中々口を開くことができないので、こういう時にベルトさんが話をしてくれるのはありがたい。

亜樹子ちゃんも父の姿のロイミュードのことでまだショックを受けているのか、少し元気がなさそうだった。

フィリップ「よし、そうと決まれば話は早い」

フィリップが手に持っていた本を閉じ、顔を上げる。

フィリップ「亜樹ちゃん、ちょっと出かけてくるよ。翔太郎を頼む」

亜樹子「へっ、フィリップ君が!?」

驚く亜樹子ちゃんを尻目に、フィリップは俺の方を向きニヤリと微笑んだ。

フィリップ「それじゃあ、運転は頼むよ、もう1人の仮面ライダー」

急な頼みごとに、俺はただ頷くしかなかった。

――某国某所

クラーク「……753号は破壊されましたか 」

クラーク「くくく、しかしデータは集まりました。私も向かうとしますか。風の吹きすさぶあの場所に……ね」

クラーク「お前達もそれぞれ複製したメモリは持ちましたね? それでは、いきましょうか」

???「……」

???「……」

???「……」

???「……」

クラーク「そしてもう一度、君に会いに行くよ。茜。」

――sideW

フィリップ「ふむ、重加速、ガイアメモリ……まだ何か足りない」

進ノ介「どうしたんだ、フィリップ?」

ベルトさん「やけに考え込んでいるみたいだね」

トライドロンの助手席で物憂げに考え込んでいると、進ノ介とそのベルト……の中にいるというクリム・スタインベルトが僕に話し掛けてくる。

運転しているため前方を見ながらも、横目で心配そうにしている進ノ介の様子から、ついまた自分の世界に入り込んでいたのかと我に返った。

フィリップ「あぁ、すまないね。少し考え事をしていたよ」

進ノ介「いや、それは全然いいんだけどさ。さっきも俺に気を遣って外に連れ出してくれたんだろ?」

どうやら僕なりに気を遣わせて負傷した翔太郎
が目に触れないようにしたのだが、すっかり見抜かれていたらしい。

進ノ介「考え事は、753号たちのことか?」

フィリップ「あぁ、それもあるけど、そもそもなぜクラーク博士という人物は今回のような事を企てたのかと思ってね」

ベルトさん「ふむ、確かにその事は私も気になっていた。今回の事件はガイアメモリとロイミュードの特性を探り、その上で2つの力を併せた計画を企てているのではないかとね」

フィリップ「ほう……」

このスタインベルトという人物は生前も切れ者だったのだろう。だからこそベルトに人格を移すという離れ業もやってのけたろだろうが。

進ノ介「うーん、あんまり難しいことは分からねぇけど、フィリップとベルトさんが組めば怖いもんなしって感じだな」

ベルトさん「進ノ介、それは私を買い被りすぎだよ」

ハンドルを握りながら、進ノ介が悪戯っぽく笑う。こうして見ると、彼とベルトは、僕と翔太郎の関係によく似ているのかもしれない。

ベルトさん「進ノ介、向かってほしい場所があるんだが」

進ノ介「どうしたんだよ急に」

ベルトさん「あぁ、今回の一連の事件、そしてクラーク博士という言葉に少し心当たりがあってね」

進ノ介「そうなのか? フィリップ、今から」

フィリップ「僕は構わないよ。少し考え事をしたかっただけで、行くあても特になかったからね」

僕の言葉に頷くと、進ノ介はハンドルを切り別の道へと入っていった。

フィリップ「ここは……」

ベルトさん「ここはかつてある実験が行われていた研究所跡地だ」

山奥に停車したトライドロンを降りた僕達は、所々損壊し蔦の生い茂った研究所に到着していた。

進ノ介「ベルトさん、こんな所があるなんて聞いてないぜ?」

ベルトさん「あぁ、私もこの施設の存在は生前に少しだけ耳にした程度だったからね。記憶を頼りにシフトカー達を使って正確な場所を捜索したのさ」

進ノ介「いつの間に……」

ふと足元を見ると、大小多種多様なミニカーのようなものが集結している。

フィリップ「これは……興味深いねぇ」

ベルトさん「紹介しよう、私と進ノ介をサポートしてくれるシフトカー達だ」

スタインベルト博士の呼び掛けに、パトカーや救急車、更には演歌のような音が鳴り響く。

進ノ介「よしっ、とりあえず中に入ってみるか」

シフトカー達に導かれながら、僕と進ノ介は研究所の中へと踏み出した。

進ノ介「こりゃあ……」

フィリップ「……」

施設内に入った僕達の目に真っ先に飛び込んできたのは、中央に設置された巨大なカプセルだった。その周囲には、用途不明の精密機械やパソコンが所狭しと並んでいる。

ベルトさん「この設備、そしてこの機械は……まさか」

スタインベルト博士がなにかを思い出したかのように呟くと同時に、シフトカーの中でも一層きらびやかなものが演歌調の音を上げた。

進ノ介「デコトラベラーが何か見つけたみたいだぜ!」

音のしたほうに走り出した進ノ介に続き僕も歩を早める。

光を放つデコトラベラーの傍らには、小さな写真立てがあり、その中に3人の家族の写真が飾られていた。父親らしき男の傍らに立つ妻と娘の顔にはヒビが入り霞んでいる。

進ノ介「これは……」

ベルトさん「この男性、クラーク博士だ」

フィリップ「そうなのかい?」

ベルトさん「あぁ、間違いない。そして思い出したぞ、彼の研究は確か、物体の複写」

フィリップ「複写?」

ベルトさん「あぁ。そして彼の妻と娘は……」

???「話はそこまで……にしましょうか」

スタインベルト博士の言葉は、入り口に佇む青年に遮られた。

ベルトさん「君は、まさかクラーク博士!?」

クラーク「ふん、久しぶりですねスタインベルト」

ベルトさん「なっ、何故この姿を見て私だと分かる!? それにその姿、あまりにも若すぎる……」

言われて手元の写真と見比べると、なるほど確かに見た目が若返っている。

フィリップ「君は、まさか自らの体を」

クラーク「ええ、機械にしましたよ。それが何か?」

進ノ介「何て事を……」

さも当然かのように言ってのけるクラーク博士に、進ノ介が動揺を顕にする。

クラーク「あなた達のデータはすべていただきましたよ、753号と、こいつからね」

クラーク博士が指を鳴らすと背後から見覚えのある人物が現れた。

フィリップ「!! あなたは……」

荘吉「くっ」

現れた鳴海荘吉……の姿をした763号は苦し気に顔を歪めて何かに抗うかのように必死にもがこうとしている。

クラーク「全く、道具が主人に楯突くとは……まぁ創造主たる私に抗えるわけもないのですがね」

荘吉「に、逃げろフィリップ」

クラーク「まだ完全にはコントロールできませんか、下がりなさい」

クラーク博士が手元の時計をいじると、763号の姿はデータのように粒子化し吸収されていく。

クラーク「秘密を知ってもらったからには、死んでもらいますよ」

進ノ介「くるか……!」

右手に緑色のシフトカーを構える進ノ介にフッと笑むと、クラーク博士は再び指を鳴らした。すると、再び腕時計の中から2つの人影が出現する。

フィリップ「なっ!?」

珍しく動揺の声をあげてしまったことに自分で驚きつつ、僕はつい1歩踏み出してしまった。

そこにいたのは。

フィリップ「母さん、それに、若菜……姉さん」

地球の記憶の彼方へと消えた2人の家族の姿だった。

若菜「ライト……」

シュラウド「私達を倒しなさい、ライト!」

クラーク「クッ、クハハハ! 感動の再開でしょう?」

進ノ介「おい、母さん、それに姉さんって……」

フィリップ「あぁ、2人は僕の家族……だった人達だ」

まだ動揺を抑えきれない僕の言葉に、進ノ介がぐっと唇を噛み締める。

進ノ介「この、外道が!!」

クラーク「家族に倒されなさい、2人の仮面ライダー」

クラーク博士はそう言うと、僕達に背を向け踵を返した。

進ノ介「まっ、待て!」

ボム!

クレイドール!

駆け出そうとした進ノ介は、目の前で姿を変えた2体のドーパントの姿に足を止める。

1体は若菜姉さんのかつてのクレイドールドーパント。

そしてもう1体は……初めて目にする、黒々とした鎧に大量の爆弾をくくりつけた姿のボムドーパントだった。

と同時に、あの時のどんよりとした空気が僕を襲う。

ベルトさん「重加速! まさか彼女達もロイミュードなのか!?」

進ノ介「くっ! やるしかないのか……変身!!」

ドラーイブ! ターイプ テクニック!!

緑色の装甲に赤い銃を構えた仮面ライダードライブに姿を変え、進ノ介が戦闘の構えを取る。

フィリップ「!」

突然戻った体の自由に目をやると、いつの間に駆け付けたのか、デコトラベラーが僕の肩に乗っていた。

演歌調の音が、僕を鼓舞するように鳴り響く。

フィリップ「ふふ、そうだね。僕が止めないといけない。母さんと、姉さんを」

進ノ介「フィリップ、隠れてろ!」

進ノ介の忠告に、僕はゆっくりと首を振った。

フィリップ「僕も戦うよ、進ノ介」

進ノ介「戦うったって……」

僕は懐から翔太郎のロストドライバーを取り出すと、ゆっくりと腰に装着する。

フィリップ「翔太郎には内緒にしていてくれたまえ」

久しぶりの感覚にゾクゾクしながらも、ポケットからサイクロンメモリを抜き取り構える。

フィリップ「変身……」

サイクロン!

サイクロンメモリをスロットルに挿し、ゆっくりと倒す。

サイクロン!!

辺りを強風が包み込み、ボムドーパントとクレイドールドーパントが片手で顔を覆う。

風になびくマフラー、エメラルドに輝く装甲、赤い複眼の仮面ライダー。

この姿になるのはいつぶりだろう。

フィリップ「僕は仮面ライダー。仮面ライダー……サイクロン!!」

進ノ介「やれるのか、フィリップ!」

僕の顔色をうかがうように、ドライブとなった進ノ介が尋ねる。

フィリップ「問題ない、頼もしい相方もいるからね」

僕の言葉にデコトラベラーが嬉しそうに肩で跳ね、七色に輝く。

進ノ介「よし、それじゃあいくぜ!」

車の扉を模した銃を構え、ドライブタイプテクニックは地を蹴って若菜姉さんのクレイドールドーパント駆け出した。

そのあとに続いて、僕も風を切り母さんのボムドーパントへ向かい走る。

シュラウド「避けなさい、ライト!」

ボムドーパントの飛ばしてくる小型の爆弾を風の力でいなしながら、僕は懐へ一気に接近し回し蹴りを放つ。

シュラウド「危ない!」

フィリップ「なっ!」

母さんの叫びに慌てて飛び退くと、蹴りの当たった装甲が爆発し、先程までいた僕の場所を吹き飛ばす。

進ノ介「フィリップ!!」

クレイドールと銃撃戦を繰り広げていたドライブが、背中越しに声をかける。

フィリップ「心配ない、少しかすっただけさ」

なるほど、ボムドーパントの装甲には打撃系の攻撃を加えると爆発する仕組みがあるようだ。

僕は顎に手を当て暫し思案にふける。

進ノ介「くそっ、威力控えめだ、ベルトさん!」

ベルトさん「OKだ、進ノ介!」

ヒッサーツ、フルスロットール!!

こちらを援護しようと、ドライブが必殺技でクレイドールへ一気に勝負をかける。

若菜「きゃあっ!」

ドア型の銃から飛び出した弾丸が、クレイドールに直撃し、その体を粉々に砕いた。

進ノ介「えっ、ちょっ、ベルトさん威力強すぎ!!」

ベルトさん「馬鹿を言うな進ノ介! き、きみが調節を間違えたのだろう!」

フィリップ「いや、これがクレイドールの能力……」

僕が言葉を終えると同時に、千々に砕けたはずのクレイドールは修復を始め、やがて完全に元の姿に戻った。

進ノ介「よ、よかったー……って、よくはねぇか」

ベルトさん「驚いた、これがドーパントの力なのか」

フィリップ「進ノ介、ここはメモリブレイクで一気に勝負を決めよう」

進ノ介「へっ、目盛り……何?」

フィリップ「簡単に言えば、メモリのみを壊して中の人間を助け出すのさ」

進ノ介「なるほどな、でもどうやって?」

フィリップ「君のタイプテクニックの力、先程検索、閲覧を完了したよ。これを使ってくれ」

僕はバットショットをドライブに手渡す。

僕の手を離れたバットショットは、バサバサと羽ばたくとドライブの持つ銃へと飛び乗りスコープへと変化した。

フィリップ「トリガーバットシューティングの代わりにはなるだろう。警官としての君の射撃の腕、期待しているよ」

進ノ介「こいつ、ドア銃にも付けれるのか」

ドア銃……何とシンプルなネーミングセンスだろう。色々と突っ込みたいのはやまやまだが、今は家族の救出が先決だ。

フィリップ「僕は2人を食い止める、その隙に頼んだよ!」

進ノ介「あっ、おい! ……分かった、任せとけ!」

駆け出した僕を引き止めようとしたが、意を決したようにドア銃を構え直したドライブを背中に感じながら、僕はボムとクレイドールへ迫る。

シュラウド「ライト……くっ!」

若菜「早く逃げなさい、ライト!!」

体の自由を奪われている母さんと若菜姉さんが、苦しげに呻きながら攻撃を加えてきた。

飛来する爆弾とエネルギー弾をなんとかかわし、僕はメモリを腰のスロットルに挿し込んで強く叩いた。

サイクロン! マキシマムドライブ!!

風の力を数倍に大きくし、僕はボムドーパントの装甲に手刀を繰り出す。そしてその勢いのまま、直後に起きた爆風を風を操ってクレイドールドーパントへと飛ばした。

シュラウド「あぁっ!」

若菜「きゃあっ!」

家族の悲鳴に、思わず耳を防ぎたくなる衝動をこらえて、僕はドライブを振り返る。

進ノ介「フィリップ、後は任せろ!」

バット!

ヒッサーツ、フルスロットール!!

バットショット越しに2体のドーパントを見据え、ドライブが針の穴に糸を通すような精密射撃を放った。

シュラウド「あああっ!」

若菜「きゃっ!」

体の中に埋め込まれたメモリのみを正確に射抜かれ、メモリブレイクされた母さんと若菜姉さんが衝撃に吹き飛んだところを、僕はしっかりと受け止める。

ベルトさん「やれやれ、一件落着か」

スタインベルト博士の言葉に、進ノ介と僕は顔を見合わせ頷くと変身を解いた。

フィリップ「姉さん」

若菜「ん……」

フィリップ「気が付いたかい、姉さん」

若菜「ライト……」

僕の問いかけに、壁に背を預けるようにして座っていた姉さんが、ゆっくりと瞼を持ち上げた。

シュラウド「ライト、ありがとう」

その横にいた母さんも、同様に目を覚ます。

進ノ介「おっ、目が覚めたみたいだな」

遠くの方で機械を調べていた進ノ介が、僕達に近付いてきて、安堵の笑みを浮かべる。

ベルトさん「どうやら怪我はないみたいだね」

フィリップ「あぁ、よかっ……ツッ!!」

2人に返事を返しながらホッと息を吐いた僕だったが、ふと違和感に気付き慌てて若菜姉さんの手をとった。

見ると、指の先から少しずつ粒子のようなものが溢れ、空気中に溶け出している。それに伴い体も消えかけていた。

シュラウド「私たちは所詮模造品。マキシマムの衝撃には耐えられないのよ、フィリップ」

フィリップ「そ、そんな……」

若菜「悲しむことなんてないわ、ライト。だって私達、偽物よ?」

フィリップ「そんなことない!!」

自分で出した声の大きさに自ら驚きつつも、僕は堰を切ったように続ける。

フィリップ「君達2人だって、僕の……姉さんと母さんだ」

シュラウド「ライト……」

若菜「ふふ、あの探偵の泣き虫が移ったのかしら。でも、ありがとう、ライト」

若菜姉さんと母さんは、もうほとんど消えかけた体でゆっくりと頷くと、涙を流している僕に手を差し出した。

フィリップ「これは……」

シュラウド「私達の力、あなたに託すわ」

若菜「コピーだから1回しか使えないけれど、あなたに力を貸してくれるはずよ」

そう言われて見ると、僕の手には、ボムメモリとクレイドールメモリが置かれていた。

進ノ介「……」

フィリップ「姉さん、母さん……」

若菜「ライト、ずっと見守ってるわ」

シュラウド「この地球の中から、いつでも」

フィリップ「……ツッ」

そして、2人の姿は完全に光に溶けて消え失せた。

進ノ介が僕の肩に静かに手をのせる。

フィリップ「ありがとう」

進ノ介「いいって」

何も言わなず慰めを送ってくれる彼にフッと笑むと、僕はごしごしと目を擦りゆっくりと立ち上がった。

フィリップ「さぁ、検索を始めよう」

クラーク「ここが風都タワー……ですか」

風都の街並みを見守り、絶えずその羽を回しているシンボル、風都タワーを忌々しげに見上げ、クラークは手元の装置を起動した。

???「……」

???「……」

装置の中から、2人の体が飛び出し、クラークの眼前に現れる。

クラーク「やれ、琉兵衛、冴子」

琉兵衛「この私に命令をするとはねぇ」

冴子「フン、ふざけた男」

クラーク「そんな事、すぐに言えなくなりますよ」

クラークが手元の装置の目盛りをいじると、2人に電流のようなものが流れ、琉兵衛と冴子は顔を歪めた。

琉兵衛「くっ」

冴子「この」

クラーク「やれ」

テラー!!

タブー!!

出現したテラードーパントと、タブードーパントは、何かに抗うかのように緩慢に動いていたが、やがて静かにエネルギー弾を纏った。

琉兵衛「ハアッ!」

冴子「ハッ!」

大勢の人で賑わう風都タワーの麓に、無数の光弾が飛来する。

???「ちょっと待ったあー!!」

しかし、打ち出された光の弾が罪なき人々に降り注ぐことはなかった。

突然超高速で現れた乱入者の手にした銃で、光弾は次々に撃ち落されていく。

クラーク「何!?」

剛「追跡!」

ゼンリンシューターを手にしたマッハが、高速で走りながら銃を乱射する。

剛「撲滅!」

その最中にも、小さく決めポーズを取ることを忘れない。

剛「いずれもォォー! マッハァーー!!」

照井「おい、集中しろ剛!」

その後ろから、トライアルメモリの力で姿を蒼く変えたアクセルがエンジンブレードを携え駆けてくる。

剛「仮面ライダー……っと、竜兄さんは相変わらずまじめだなあ、そんなんじゃ奥さんの前でも冗談とか言わないでしょ?」

照井「なっ、お、俺に質問するなあ!」

アクセルが叫びながら残った光弾を全て弾き落とす。

クラーク「フン、マッハにアクセル……またしても邪魔をしますか」

剛「悪いね、でもこれが俺の仕事なもんで」

照井「テラーにタブーだと……やはり、先程フィリップから電話で聞いた通り複製されていたとはな」

クラーク「あなた達に構っている暇はないのです。やれ、お前達」

クラークはパチリと指を鳴らし、騒ぎに気付いて逃げ惑う人々と真逆に風都タワーへと歩を進める。

剛「逃がすかっての!」

照井「! 危ない!」

その後ろを追おうとしたマッハを、アクセルが慌てて抱えて飛び退く。直後、2人の立っていた地点はテラーの負のエネルギーで包まれた。

剛「うわっ、何あれ」

照井「テラーの攻撃だ。気を付けろ、複製メモリで威力は本物ほどではないが……直撃すれば間違いなく戦闘不能になるぞ!」

剛「わ、分かった」

照井「俺はテラーをやる、お前はもう1体を!」

剛「了解、竜兄さん!」

2人は互いに頷くと、一気に加速し駆け出した。

霧子「剛、照井刑事!」

と、やっとのことで追いついてきた様子の霧子が、肩で息をしながら2人の名を叫ぶ。

照井「詩島巡査は風都タワーに残った住民の避難誘導を!」

アクセルがテラーと肉弾戦を繰り広げながら、背中越しに指示を出す。

霧子「分かりました!」

霧子はすぐに頷き、住民達のいる方向へ向かっていった。

琉兵衛「やあ、久しぶりだねえ」

照井「まさか貴様ともう1度戦うことになるとはな」

互いに両者の拳をガードしながら、言葉を酌み交わす。

琉兵衛「あの時と比べ随分成長したものだ。ミックは元気かね?」

照井「フッ、安心しろ、俺の信頼できる探偵が大事に育てているさ」

琉兵衛「ハッハッハッ、それならなによりだ。自分で言うのも何だが、私を止めるのは骨が折れるよ?」

照井「安心しろ、あの時のようにはいかん。さあもう1度因縁を……振り切るぜ!!」

剛「お前の相手は俺だ、バブードーパント!」

冴子「タブーよ。全く、こんな馬鹿丸出しの男に頼むのは癪だけど、まあいいいわ。せいぜいがんばって私を倒しなさい」

剛「やっぱ進兄さんとフィリ何とか君が電話で言ってた通り、操られてるみたいだな。すぐに解放してやるからな!」

冴子「ほら、攻撃がくるわよ!」

宙に浮いているタブードーパントと銃撃戦を交わしながら、マッハは高速で動いて何とか突破口を探る。先程進ノ介から聞いた話では、どうやら強すぎる力で倒すと体が消滅してしまうらしいため、うかつなことはできない。

そうこうしている間にも、タブーは無数の光弾を放ってくる。その1つひとつを躱しながら、マッハはベルトにセットしたシグナルバイクを交換した。

シグナル交換! カクサーン!!

剛「これでどうだ!」

ヒッサーツ! フルスロットール! カクサーン!

マッハの放った弾丸が、散弾銃のように拡散しタブーに飛来する。

冴子「くっ」

剛「よし、今だ!」

敵の怯んだ隙を見逃さず、マッハはシグナルバイクを再びセットし、ベルトのボタンを数回叩いた。

ヒッサーツ、フルスロットル!!

剛「くっ」

しかし、地上に落ちてきたタブードーパントを前に、マッハは一瞬動きを鈍くする。

冴子「何をやっているの!」

剛「!」

そんな彼を叱咤したのは、他ならぬ冴子だった。

冴子「男なら覚悟を決めなさい、この街を守るんでしょう!」

剛「く……うおおおお、すまねえお姉さん!!」

マッハは自分を鼓舞するかのように拳を握り飛び上がった。

ヒッサーツ! フルスロットール!!

マッハはその場で大きく飛び上がると、車輪のように高速回転した後蹴りを放つ。

冴子「ああああっ!」

強力な1撃を受け、変身の解けた冴子が吹き飛ぶと、マッハは慌ててその体を受け止めた。

冴子「……フフ、やられちゃったわね」

変身解除した剛の腕の中に抱かれていた冴子は、静かに笑むと剛を見やる。

剛「散々手加減して戦ってくれたのによく言うよ、お姉さん」

冴子「ふっ、あんな男の言いなりになるなんて御免だもの。あなたにはお礼を言わないとね」

剛「いいって、それよりも今は手当を」

冴子「無駄よ」

剛「ッツ!」

見ると、冴子の体はゆっくりと空間に溶け始めていた。

剛「そんな、何で」

冴子「勘違いしないで。私達は元々負ければこうなるようプログラムされているのよ。だからあなたのせいじゃない」

剛「……くそっ、ふざけやがって」

悔しげに顔を歪める剛に、冴子は優しく笑いかけるとそっと目を閉じた。

冴子「ライトによろしく伝えといてちょうだい」

剛「ああ、約束するよ」

今にも泣き出しそうな剛の腕の中で、冴子はやがて完全に空中に溶けて無くなる。

冴子「それにしてもやっぱり、良い風が吹く街……ね……」

空に消えた冴子の姿を、剛はしばらく唇を噛みしめ見守っていた。

琉兵衛「どうした、その程度かね!」

照井「くっ、まだだ!」

テラーの放つ攻撃を掻い潜りつつ、アクセルはトライアルの加速力を乗せたエンジンブレードの斬撃を浴びせる。しかし、テラーは自分の周囲を強力なエネルギーで防御し攻撃を防いでいた。

照井「このっ」

琉兵衛「君は私の恐怖の干渉を受けない数少ない人間なのだ、自慢のスピードで翻弄したまえ!」

照井「言われなくてもやってやる!」

幸いテラードラゴンの力は使ってこないことに安堵しつつ、アクセルは何とか勝利の糸口を探していた。

照井「奴の攻撃は強力だが、その分隙も大きい。そこを突けば!」

琉兵衛「ハッハッハッ、さあ、少し強い攻撃がくるぞ」

照井「何!」

琉兵衛の一言にアクセルが顔を上げると、テラーの頭上に大きな負のエネルギーの塊が形成されていた。

照井「くっ!」

琉兵衛「躱すことばかりを考えるな、君達はどんな困難にも立ち向かう仮面ライダー……なのだろう?」

照井「!」

回避の体勢を取ろうとしていたアクセルは、琉兵衛の言葉にハッとしたように動きを止めた。

照井「ふっ、まさか貴様に諭されるとはな。だが礼を言う」

アクセルはベルトのメモリを赤いアクセルメモリに交換した。

照井「正面から……振り切ってみせる!」

琉兵衛「はあっ!」

アクセル! マキシマムドライブ!!

ベルトのハンドルを数回蒸かし、バイク形態へ変化したアクセルは、マキシマムの勢いのまま放たれた巨大なエネルギーに突っ込んでいく。

照井「うおおおおおおおお!!」

巨大な威力に耐えながらも、アクセルは何とかそれを突き破ってテラーへと突っ込んだ。

琉兵衛「ほう」

照井「はああっ!」

トライアル!

エンジン! マキシマムドライブ!

再びトライアルへメモリチェンジして、アクセルがエンジンブレードを携えテラーを斬りつける。

琉兵衛「ここで私を生かせば市民に危険が及ぶぞ、さあ、私を倒せ!」

照井「くっ、おおおおおお! すまんフィリップ!!」

躊躇しているアクセルの心境を察したのか、叫んだ琉兵衛の声にエンジンブレードを握り直し、アクセルが無数の斬撃を浴びせていく。

照井「はあ、はあ、振り切った……ぜ」

琉兵衛「ぐおおおおお!」

Aの字に裂かれたテラーは、メモリブレイクされそのまま吹き飛んだ。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年04月23日 (木) 17:48:51   ID: r2c1hGy2

がんばってー

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