卯月「凛ちゃんと会話に失敗してる気がします」 (35)

卯月「ずっと一人で練習しているばっかりだった私」

卯月「そんな私をプロデューサーさんが見つけてくれて、アイドル生活が始まりました!」

卯月「……のは、いいんですけど……」

卯月「一緒にステージに出る事になった友達が、ちょっと変なんです……」

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卯月(最初の世間話は……)


凛「あの人さ、変じゃない?」

卯月「プロデューサーさんですか?」

凛「毎日来て、アイドルになりませんかってそれだけ。不審者に間違われたりとか……」

卯月「あ、あはは……」

凛「ベース持って乱入して来るのが似合いそうな体格だし」

卯月「えっ?」

凛「プロデューサーだぁー、って、前奏の辺りで。硬質な音を出しそうだよね」

卯月「えーっと……」


卯月(何か全然違う話をしているような……)

卯月(アイドルの話になった時も……)


卯月「綺麗な衣装を着れて」

凛「戦闘服を着れて」

卯月「キラキラしたステージに立ってて」

凛「ピンクの恐竜とか居たり」

卯月「お姫様みたいで、あんな風になれたらいいな――」

ウエダシャーン

卯月「――って……」

凛「ファラオのように?」

卯月「凛ちゃん?」

卯月(御城プロに初めて来た時も……)


受付嬢「こちらに記名をお願いします」

卯月「はい……『島村卯月』っと」

凛「……」

『BITTER VALLEY』

卯月「凛ちゃん?」

凛「……『渋谷 凛』と」

卯月(夏樹さんのギターを聞いて変な指の形作り出すし)

卯月(未央ちゃんがあんな風に弾いてみたいって言えば「FAF弾ける?」って限定的だし)

卯月(そういえば初顔合わせの時も……)


みく「皆は何キャラで行くのー?」

卯月「えーと……」

未央「キャラかぁ……元気キャラではしまむーと被る……スポーツ万能美少女路線?」

未央「いや、それだと日野茜と被るか……ふーむ、キャラ……」

凛「渋谷凛、10万15歳です」

卯月「凛ちゃん?」

みく「むむ、ぶっ込んで来たにゃあ……」

李衣菜「多田李衣菜。ロックなアイドル目指してます」

凛「ふーん、メタルじゃなく」

李衣菜「メタルは……そう、違うんだなぁ! もっとこう、魂の在り方っていうか……」

凛「ロックだけはいけないよ」

李衣菜「そ、そんな事無いって! 私はロック一筋で――」

凛「こーいーするー、おとめーたーちよー」

李衣菜「渋谷さん?」

凛「WHY NOT? ROCK’N ROLL!」

夏樹「決めるのは自分だ!」

だりー「なつきち何で居るの」

卯月(危うく新ユニットが出来そうだったし……)

卯月「そんな凛ちゃん……と、それから未央ちゃんと三人で」

卯月「なんと、城ヶ崎美嘉ちゃんのライブでバックダンサーをする事に!」

卯月「という訳で、今日もレッスン頑張ります!」


ベテトレ「ワンツースリーフォー、渋谷もっと動作大きく!」

未央「もっと吹っ切れた感じにしようよしぶりん!」

凛「You make I a fool?」

未央「私時々しぶりんが分かんないなー」

ベテトレ「そうだ、もっと踊り狂うくらいで良い!」

卯月(誰か今の会話の意味を教えてください)

卯月「どうしましょう、凛ちゃんの言ってる事が分かりません……これから大丈夫かな……」

卯月「いえ、頑張ります! 明日はもう本番なんです!」


未央「しぶりんさー、どうしてアイドルになろうって思ったの?」

凛「その呼び方で確定なんだ」

未央「いいじゃんいいじゃん。しまむーは分かり易いけど、しぶりんがアイドルやろうって考えた理由、なんか想像できなくってさ」
卯月「……!」

卯月(これは……チャンスです!)

卯月(謎に包まれた凛ちゃんの思考回路を理解すれば、きっと言ってる事も分かるように……!)

凛「……『無尽合体キサラギ』って知ってる?」

未央「おおっ? 意外な名前が出たね……」

卯月「はいっ! 765プロ総出演の映画ですよね! 今年公開されたばっかりの!」

卯月(ロボットとか好きなのかな……?)

凛「学校でお昼食べてた時、誰かが話してたのが聞こえたんだ。クラスの男子だったかな……見に行ってきたって」

未央「ふんふん」

凛「『今回の閣下凄かったなー』って言ってた」

卯月(ハルシュタイン閣下……天海春香さんですね!)

凛「そんな映画有るんだー、って最初は思ってただけだったけど……その男子がさ」

未央「ほほうほう。しぶりん意外に学校では皆と喋ってたりするのかな?」

凛「ううん。他の女子が別なクラスに遊びに行ってて静かだったから、どうしても聞こえて」

未央「あっ……」

凛「『エンディングの〝arcadia〟が流れた時はもう泣いたぜ』って」

凛「そこまで聞いて、下校して直ぐ見に行ったよ」

卯月「どうでした? アクションシーンも歌も、凄かったですよね!」

凛「うん、期待してたものとは違ったけど」

卯月「えっ?」

凛「ん?」

凛「それで思ったんだ。アイドルって、本当に色々やるんだって」

凛「可愛い恰好をしてテレビに映るだけじゃない。俳優だって、歌手だって」

凛「とにかく何でもやれるし、やっていいんだって」

未央「ハチャメチャな映画でしたからなぁ……うんうん」

凛「学校で、部活に誘われたりもしたけど、どれもピンと来なかった。嫌じゃないけど、自分からやりたいとも思えなくって」

凛「それで、キサラギを見た帰りに、プロデューサーが卯月を連れて来たんだ」

卯月「あ……」

凛「やりたい事が分からない私と逆で、アイドルになりたいって真っ直ぐな卯月」

凛「それと……何考えてるか良く分からないけど、私に新しい世界を見せてくれるって言ったプロデューサー」

凛「他の事をするより、この二人を信じてみても良いって思ったから」

卯月「凛ちゃん……」

凛「正直、まだ実感は薄いよ。アイドルが何をするものかも、良く分かってない」

凛「けど、何をしても良いのがアイドルだっていうなら……やりたい事は有る、かな」

凛「例えば、うん。映画の最後に、エンドロールに合わせて歌うのは楽しいかも。キサラギみたいに」

未央「〝arcadia〟だね?」

凛「うん」

未央「くーっ、クールなしぶりんがこんなに本心をこぼすなんて……感動ものだあ」

未央「きっと何時か、私達で一緒に歌おう! こんな風に!」

未央「飛べ! うーんめいよりはげーしく!」

凛「限りーないみーらいー ARCADIA」

卯月「あれー?」

卯月「昨日は分かり合える予感がしてたのに……」

卯月「……! う、ううん、頑張る! 私、頑張ります! 今日が本番なんですから!」



卯月(で、でも、緊張する~……)

卯月(先輩たちはみんな堂々としてたけど、私達は偉い人の挨拶もちょっと遅れちゃったし)

卯月(これからリハーサルなんですよね? 覚えなきゃない事も沢山……)

卯月「えっと……かみてが……」

凛「ステージから見て左、下手が参謀」

未央「右手が上手で、左手が下手……待って」

凛「上手は長官だったけど、魔暦12年から代官が――」

未央「しぶりん待って」

凛「そもそも昔は代官が下手、長官が上手に立ってたんだ。割と初期だね」

凛「紅白に出たり、第六教典でオリコン一位を取った黄金期には、代官は一度人間に――」

未央「しぶりーん」

卯月「えっと、えっと未央ちゃん、右手が上手って誰の右手でしょう? わ、私? お客さん? 美嘉ちゃん?」

未央「しまむーもちょっと落ち着いて――」

凛「卯月は真ん中だから、日比谷での代官ポジションだね。私が参謀、未央が長官の位置」

未央「SAS基準で語るのやめよっかしぶりん!」

卯月「あああ、あれっ、右手が上手で参謀で……?」

音響「MC後に暗転、下手に掃けまーす」

凛「未央は、三人の誰が好き? 私は……やっぱり蒼が好きかな」

未央「………………」



未央「……ヤバい。私がしっかりしないと終わる」

プロデューサー(本番直前……いよいよか)

プロデューサー(正直に言えば、小さな仕事から段階的に経験を積ませたかった)

プロデューサー(会場が大きい為に、却って会場練習を行う事も出来ない環境は……デビューに適していない)

プロデューサー(三人を見ても、島村さんは、やはり緊張が抜けていない)

プロデューサー(本田さんは……何故だろう、緊張は見えるが、早朝に見えた怯えはすっかり消えている?)

プロデューサー(渋谷さんは……)

プロデューサー(……大丈夫だろう)

プロデューサー「小日向さん、日野さん、よろしいでしょうか」

凛「大丈夫、本番は上手く行く」

未央「そうだよしまむー、一緒に練習したじゃん!」

卯月「は、はいっ!」

茜「皆さーん、どうですか? 元気ですかー!?」

美穂「出る時の掛け声は決まってますか?」

卯月「掛け声ですか……?」

茜「好きな食べ物とかどうです? 私なら、ほか・ほか・ごはーん! ですね!」

卯月(掛け声、食べ物? えーと、食べ物なら、ケーキとかお菓子じゃなくって、ご飯、いや語呂が悪いから何かもっと長いのを――)

凛「紅玉」

卯月「こ……林檎ですかぁ?」

凛「紅玉」

未央「しぶりーん、それは言いづらいよー」

凛「この紅玉の事を、青森県南部地方及び岩手県地方に於いて何と呼ぶか」

凛「知っていても知らないと言うように、卯月!」

卯月「え、あ、はいっ!」

凛「何と呼ぶか知っているか!」

卯月「知りませんっ!」

凛「なんと青森県南部地方及び岩手県地方に於いて紅玉の事をまn――」

未央「フライドチキンでお願いします!」

卯月「ライブは大成功でした!」

卯月「私がダンスを失敗する事も無く、美嘉ちゃんにはお客さんの前で紹介もしてもらって!」

卯月「……でも、私は聞き逃しませんでした。ステージに飛び出す時、凛ちゃんが何と言っていたか」

卯月「プロデューサーさんに『満紅ってなんですか?』って聞いたら視線を逸らされました」

卯月「美嘉ちゃんに同じ事を聞いたら、何を言ってるか分からないくらい慌てちゃって……」

卯月「……そしてついさっき、自分の携帯で調べて後悔している所です」

卯月「そっ、それでも! 夢がまた一つ叶いました!」

プロデューサー「皆さんには、シンデレラプロジェクトのPR動画を取って来て欲しいのですが」

凛「BGMはどうするの?」

卯月「素敵な衣装、輝くステージ、沢山のお客さん……! 次のお仕事が楽しみ!」

プロデューサー「BGM……自然音で良いと思います。後で編集し付け足せるので」

未央「そ、そうだよしぶりん! ほら、早く行こう! 撮影しなきゃ」

凛「見失わない内に?」

卯月「歌もダンスも、それからお化粧だって、もっともっとレッスンを頑張ります!」

未央「え? ……あ、ほらしまむーも! 行こうよ!」

凛「はーやーくーゆけー はーやーくーゆけー」

卯月「これからも、もっと沢山の夢を叶える為に……!」

凛「夢にまでー↑えー↓ 見ーたー EL DORADOオオオオォォォ」

未央「……もう良い! 私アイドルやm」


Say Banzai to His Majesty Damian Hamada!

分かる人間が一人居ただけで儲けもの

sageミスった

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