吹雪「金剛さんが大和ホテルと言うのを止めない」 (25)

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今日、敵のはぐれ艦載機を大和さんが撃墜しました。

これまで出撃できず、艦娘としての自分に自信を持てずにいた大和さんは

自分のことを前向きに考えられるようになったみたいです。


金剛「やっぱり大和ホテールの食事は最高ネー!」

大和「金剛さん、ホテルではありません。大和型一番艦大和です」


金剛さんの無神経な言葉に対する反応にもどこか余裕が感じられます。

次の日

金剛「やっぱり大和ホテールの食事は最高ネー!」

大和「金剛さん、ホテルじゃないです」


その次の日

金剛「やっぱり大和ホテールの食事は最高ネー!」

大和「金剛さん、ホテルじゃないです。ぐすん」


さらに次の日

金剛「やっぱり大和ホテールの食事は最高ネー!」

大和「大和…ホテル…じゃない…です」


1週間後

金剛「やっぱり大和ホテールの食事は最高ネー!」

大和「………」

パ、…ピンチ、ピンチです。

金剛さんのセリフに大和さんが虚ろな目をして黙り込んでいます。

宙を見つめ、目の前に焦点が合っていないような感じでとても怖いです。

この1週間何度か注意してみたのですが、金剛さんは大和ホテルと言うのを止めませんでした。


金剛「Oh,ソーリーブッキー。忘れてたネ!」


このままでは大和さんの精神が病んでしまうかもしれません。

何か対策を立てなくては。

吹雪「と、言うわけで、これより”大和さんはホテルじゃありません作戦”の会議を始めます」

北上「なにそれ、だるい」

大井「怠そうにしている北上さんも素敵」

夕立「吹雪ちゃんネーミングセンス悪いっぽい」

睦月「吹雪ちゃん、大変そうだねえ」

大和「…」


空母の皆さんはお風呂です。

北上「ていうかさー、そんなの私たちがどうにかすることじゃないでしょ。

   提督にでも任せておけばいいんじゃない?」

大井「北上さんの言う通りよ。私と北上さんの時間をそんなことで邪魔しないで」

夕立「てーとくさんはここのてーとくさんじゃないから無理っぽい?」

北上「あーそっかー。じゃあ仕方ないかもね」

大井「本当に役に立たない提督ね。私と北上さんの時間をこんなことに割かせるなんて。
   
   この前の作戦も一番簡単な難易度で挑んでたし、ほんっとうに無能ね」


身の丈に合った難易度を選んで轟沈を出さずに終了できれば十分だと思います。


睦月「えーと、要するに、金剛さんがホテルって言わなければいいんだよね。

   じゃあ、まずい食事を出すのはどうかな?
   
   ホテルみたいじゃなくなればホテルって言わなくなるよ、きっと」

夕立「でも、夕立たちも食べるっぽい?」

北上「それはちょっと…」

大井「北上さんにまずいものを食べさせるつもりなの!」

睦月ちゃんの案が却下されそうになったその時です。


大和「…ホテルって言われなくなる?」


大和さんの目にわずかながら光が戻りました。


大和「食事をまずくすればホテルと言われなくなるんですか!!!?」

吹雪「えーとそれは…その…」


みんな傍観してないで助けてください。


北上「まあ仕方ないか。それで行くとしましょう」

大井「北上さんがそう言うのなら」

夕立「夕立も我慢するっぽい」

睦月「睦月が言いだしっぺだもんね。我慢するよ」


大和さんの様子があまりにも必死だったせいでしょうか。

皆さん折れてくれました。

これでやっと解決する、あの重苦しい空気から解放される、そう思いました。

しかし、この時私達はは重要なことを2つ見逃していることに気付いていなかったのでした。

次の日

大和「これが今日の食事です」


大和さんがまずい食事を用意して待っていました。

比叡さんの料理のように食べることのできないものではありませんが

焦げていたり生焼けだったり、味付けが変だったりしてかなりまずいです。

ですが、我慢して流し込みます。

これなら金剛さんもホテルのようだとは思わないはず。


金剛「やっぱり大和ホテールの食事は最高ネー!」


!?

大和「そ、そんな…。これでも駄目なんて…」


1つ、金剛さんが料理がまずいことで有名なイギリス生まれであること。

加賀「頭にきました」

赤城「忍耐?知らない言葉ですね」

瑞鶴「全機爆装、準備出来次第発艦!殺っちゃって!」

翔鶴「瑞鶴?あまり無茶をしちゃ駄目よ?」


2つ、食事が何よりの楽しみである空母の皆さんがいること。

金剛「この料理、いつもと違う感じで美味しいネ!」


この状況で何を呑気な。この状況の元凶であることを考えるとさすがに殺意が湧きます。


大和「これで駄目ならもういっそ全部吹き飛ばすしか…」


また虚ろな目になって不穏なことを呟いています。止められる気がしません。

なぜか後ろに艤装が見えます。


加賀「補給は大事。食事は戦場での兵士の数少ない楽しみの一つ。

   疎かにすることは許されません」


無表情ですが怒っています。ものすごい殺気が出ています。

唐突な登場はアニメ準拠です。便利な言い訳ですが、今回は鎮守府で入渠したままで良かったのに。


赤城「一航戦の誇りにかけてこんな食事を許すわけにはいきません」


赤城さんはいつ見てもかっこいいです。でも今はこの地獄絵図の一部です。

妖精さんに「お前を取って食う」と言わんばかりの形相で迫っています。

怒っている赤城さんもかっこいいです。でも地獄絵図です。


瑞鶴「第二次攻撃隊。稼働機、全機発艦!」


爆撃で部屋を破壊しています。誰が直すんだろう。


翔鶴「も、もう!何で私ばっかり!」


唯一正規空母の中で止める側に回っていますが、あまり役に立っていません。

赤城さんにぶつかった拍子に加賀さんの方に倒れ掛かり、

加賀さんの威圧に驚いて飛びのいき、瑞鶴さんの爆撃に巻き込まれています。

大井さんは北上さんを連れて逃げたみたいです。

睦月ちゃんと夕立ちゃんは机の下で震えています。

地獄絵図です。

苦労は買ってでもしろと言いますが、売りに出すので誰か買ってください。

長門「何の騒ぎだこれは!!」

吹雪「長門秘書官!」


天の助けです。

長門秘書官のことを”ながもん”なんて呼んでいる人たちがいますがとんでもないです。

厳しくも人情味があり、公正で、いかなる時も格好良く、有能な秘書官です。


長門「全員静まれ!!」


その後、長門秘書官の尽力により事態は収集し、

提督から金剛さんにホテル禁止令が出されて大和さんの問題も解決しました。

私がいくら言っても効果がなかったのに現金なことです。

そして、作戦も無事に終わり、鎮守府に戻ることができました。


金剛「ヘーイ(丙)、提督、紅茶(甲茶)が飲みたいネー!」

提督「……」

吹雪「あわわわわ」


終わり

読んでくれた方、ありがとうございました
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