C58-1「ナンバープレートが汚れたからきれいにして頂戴。」 機関士「やだよ。」 (15)

梅小路機関車館 扇型車庫

C58-1「ねえ、そこのあなた、ちょっと。」

機関士「なんだい。」

C58-1「デフの飾りに埃がついてるの。拭いてちょうだい。」

機関士「やだよ。今からスチーム号の機関車の釜炊きしなきゃいけないし。」

C58-1「そんなのあとでやればいいでしょ。さあはやく!」

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機関士「.....しょうがないなぁ....。」キュッキュッ

C58-1「....ひゃあ!やらしい拭き方ね!もっとやさしくできないの!?」

機関士「いつも通りに拭いてるだけじゃん。」

C58-1「鳳凰の飾りのところはデリケートなんだからもっと丁寧にやりなさいよ!」

機関士「うるさいなぁ...。わかったよ...。」

C58-1「うるさいとはなによ!!」ギャイギャイ

.......

B20「あ、あのふたり...またけんかしてる....やめさせないの...?」オロオロ

8630号「いいのよ。いつもあんな感じなんだから。」

8630号「あの子機関士くんのこと大好きだから...。」

C55「そうそう、あの子は機関士くんにかまってほしいのよ...。」フフフ

B20「....」

次の日...

C58-1「機関士!ちょっと来なさい。」

機関士「なんだよ。」

C58-1「菊の紋章が少しくすんでるわ。拭いてちょうだい。」

機関士「一昨日綺麗にしたろうが。我慢しろよ、その位。」

C58-1「いやよ!飾りが汚れるのは私のプライドが許さないのよ!」

機関士「.....」イライラ

C58-1「ほら!はやくしなさいよ!!」

機関士「....うるさいよ!」

C58-1「っ!」ビクッ

機関士「毎日毎日ぼくに文句ばっかり言って...。」

機関士「自分で動けないからって人にあたるなよ!」

C58-1「...なによ!それがお召列車の牽引機に対して言う言葉!?」

機関士「なにがお召列車だ。何十年も前の話だろう。」

機関士「今の君はもう動けないんだ。ただの静態保存の元機関車..。」

機関士「言ってしまえば、もはやただの鉄の塊なんだよ....」

C58-1「!....」ガーン

........

B20「ね、ねえ...今日はいつもよりひどいよぉ...。」オロオロ

C55「...そうね、大ゲンカね...。」

C51「まあ、おもしろそうだし、様子を見ようか?」ニヤニヤ

1080号「そうね...。」

B20「.....」オロオロ

C58-1「.....もういいわ、あっちいって...。」

機関士「......ふん。」スタスタ

C58-1「.......」

.......

義経号「.....」

9633号「...なんだか雲行きが怪しくなってきたわね...。」

1080号「まあ、鉄くずなんて呼ばれたらショックよね...。」

D52「ましてや好きな人にそう言われると....。」

C61「もし私がそんなこと言われるとショックでボイラーが壊れちゃうわ...。」

夜...

機関士「....さて、帰るかな....。」

グスッ....ヒック...

機関士「?....なんだ.....車庫から何か聞こえる...。」ソーッ

C58-1「.....グスッ....うっ....」メソメソ

機関士(!!...C58....泣いてる...)

D50「いつまで泣いてるの...。」

C58-1「だって....だって....機関士に....」シクシク

8630号「...大丈夫よ....彼はとてもやさしい人じゃない..ね?」

C58-1「でも.....」グスン

1080号「仲直りできるわよ....きっと...。」

機関士(......)スタスタ

機関士(....C58...)

義経号「機関士くん....あなたが鉄くずなんて言っちゃたから、あの子ずっと泣いてるのよ。」

機関士「!....義経号...。」

義経号「まああの時はC58にも悪いところはあるけど...。」

D51「それでも君が言ったことはC58をとても傷つけた....。」

機関士「.......」

C57「それに、彼女は貴方のことをとても愛している...。」

C57「あの子、私が検査や修理でここへ帰ってくるたびにあなたの話をしてくるのよ...。」

機関士「....」

C62「....本当は君も好きなんでしょ?C58ねえさんのこと...。」

機関士「.......ぁぁ...」

C53「だったらほら!仲直りするなら今がチャンスよ。」

機関士「.......うん...」タッタッタ...

C56「....行ったね..。」

C11「...ええ....それにしても2人とも初々しくてかわいいわねぇ...。」

C59「....」コクコク

C58-1「....」クスン

機関士「C58!」

C58-1「.!!...機関士....」

機関士「その....あの....な....。」

C58-1「.....」

機関士「....!!」ギュッ

C58-1「!!」

機関士「....さっき鉄くずなんて言ってごめんな...。」

C58-1「!!....」

機関士「....ぼくは君が好きで、愛しているのにあんなこと言ってしまって....。」ギュー

C58-1「!!!....き...機関士....。」ポロポロ

C58-1「わ、私だって....機関士のこと...好きなのに...。」ポロポロ

C58-1「機関士のこと、困らせることばっかり言って....」ウルウル

機関士「いいんだ...そんなこと....。」ギュウ

C58-1「機関士っ......!」グスッ

.............

C58-1「...ねえ...機関士。」

機関士「...なんだい?」

C58-1「キスして。」

機関士「キスって....どこに?」

C58-1「ナンバープレート。...」//

機関士「....」CHU

機関士「.....これで、いいかい?」

C58-1「...うん...」//

...............

義経号「...生まれて135年、機関車にキスした男は彼がはじめてね.....。」

あくる日からの梅小路機関車館は、いつもと違い、すこし幸せそうな雰囲気であったという...。

おしまい

梅小路の蒸機たちは美しいものばかりですので是非行ってみては?

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