魔王「なっ……何だ貴様はッ、ここを我が玉座と知っての狼藉か!!」
王様「……」
王様「私はね、君に戦争を挑まれるまでは表立った戦はしたことが無かったんだ」
王様「争い事は苦手だ、無意味で、とても非効率でならない」
王様「何より退屈なんだ」
魔王「チィ……気でも狂ったようだな老いぼれ、何処から侵入したかは知らないが今すぐ消し炭に…」
王様「王を名乗るなら先ずは落ち着いて物を話せ、魔王」
王様「私は人間の王だよ、君が滅ぼそうとしている人間の国を統べる王だ」
魔王「なん……だと……」
魔王「貴様は昨夜ッ!! 我が四天王の一人である炎魔神が勇者を蹴散らして暗殺した筈だ!」
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王様「ふむ」
王様「あれが原因だよ」
魔王「原因……だと、何の話だ?」
王様「私はあんな粗末な暗殺を受けたのは初めてだった」
王様「これ見よがしに王都の外から暗雲やら爆炎やら撒き散らし、挙げ句にそのまま正面から襲撃」
王様「遠方から救援に来させた勇者では体力の消耗から止められず、私は仕方なく殺されてやったのだよ」
王様「分かるかな、君がしたことは迷惑極まりない事だ」
魔王「クク、やはり老いぼれ……戦争に迷惑をかけぬやり方があるわけなかろう」
王様「新参である魔物では、そうだろうね」
王様「だから少し今夜は教えてあげようと思って来たんだ、我々人間やこの世界にはマナーが存在する事を」
魔王「黙れ、貴様はここで我が力の前に屈し……人間共は今度こそ絶望に…」
王様「そう、それが迷惑なんだ」
王様「戦争とはいえ、私達王が前に出ない理由が何なのか君はまるで理解出来ていない」
王様「嘗めすぎだと言っているんだ、クソガキ」
─────ギンッッ!!─────
魔王「ッ!?」バッ
王様「この玉座の間をあらゆる位相から分断させ、孤立させたんだ」
王様「横槍は困る……教育はやはり一対一であるべきと私は考えているからね」
魔王「……位相……だと……………」
魔王「な、なんだそれは……馬鹿馬鹿しい!! 単に結界で玉座の間を包んだ……それだけであろう!」
王様「………」
< コツッ……コツッ……
王様「椅子が無いので、私はこの窓辺に座らせて貰おう」スッ
魔王「貴様ッ……………………!?」ビクッ
魔王(なんだ……? 奴の背後に見える筈の外が、夜ではない……漆黒の闇にも見えるが、まるで質が……)
魔王(いや、そもそも私の目で奥を見ようとすると自然と視界が揺れる……何か、何かがおかしくなっている)
王様「魔王」
魔王「ッ、貴様は……何者だ」
王様「話をしよう」
王様「私はこの世界の王だよ、そして君はそんな世界を脅かす魔王だ」
王様「知っていて、戦争をしている筈だね?」
魔王「………」
王様「私はね、君が来る前は王ではなかった時がある」
魔王「……」
王様「王族ではなかったんだ、元々私はなんてことはないただの兵士でね」
王様「何百年昔の事だったか……この世界には沢山の大国があったんだ」
王様「そしてそれらは全て、敵対し戦争をしていた」
王様「私の家族はその中で死に、私自身も時には死にかけたものだ」
魔王(……魔法の解除法は、やはりこの老いぼれか?)
魔王(いや、それより何故……我はコイツをさっさと殺さないのだ……?)
王様「戦争は残酷だ、そこには今のような華は無かったし秩序も無かった」
王様「弱い者はとことん強者に搾取され、虐げられる時代でもあった」
王様「そんな時だ」
王様「私はたった一人の『勇気ある者』に出会ったのだ」
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