【シュタインズゲート】幻影のチェシャ猫 (1000)

・シュタゲssです。

・フェイリスエンド後の設定

・金土日の夜に更新します

・最初のほうは忘れてる人用に説明臭くなるかも

・結構長くなります、多分

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1425131416

頭が痛む......俺は...岡部倫太郎...19歳で...東京電機大学の一年生...

...そうか、世界線が変わったのか――


俺は幼馴染のまゆり、友人のダル、助手の紅莉栖達とともに、未来ガジェット研究所というサークルを作って活動していた。そこで、偶然過去にメールを送れる装置、電話レンジ(仮)を発明したのだ。

俺は調子に乗って、何人かの仲間たちにも過去に送れるメール、通称Dメールを使わせてしまった。

その結果、まゆりの死に収束する世界選にたどり着いてしまったのだ。まゆりを助けるため、それらのDメールを打ち消そうとしたが――

「フェイリスがDメールでかなえた願いは...10年前に死んだパパを、生き返らせることニャ...」

仲間の一人、フェイリスの送ったDメールを打ち消すことが、できなかった。誰かを助けるために、誰かを殺すことなんてできなかった。

俺は、神になんてなれなかった。

「ごめんニャ、フェイリスが迷わせちゃったニャ...」

「いや、違う...これは賭けになるが...」

どちらも死なせないための賭け。10年前に送った更なるDメールで、この世界線はどう変わっただろう?

アキバの街は、萌え系ショップが立ち並ぶ、元のアキバに戻っていた。

まずは天王寺裕吾の家に向かった。そこには、世界線の変動を表示するダイバージェンスメーターがある。

ダイバージェンスメーターの値は、.275349.最初の桁が...消えた?


綯「あの...誰ですか?ウチに、なんのようですか?」

一人で留守番していた天王寺綯が、恐る恐る話しかけてくる。

岡部「いきなり押しかけて悪かった。だが、もう用は済んだ。」

綯「誰...ですか?もう、出てってください。...でないと、警察を呼びます。それと、私のお父さんはとっても強いです」

...なんだ?彼女の父親の店の二階を、俺は借りている。このことも、何度も会っているはずなのに。

岡部「誰ですかって、ひどいな。たまに会うだろ?」

綯「お、お父さん...たすけて...」

岡部「本当に、知らないのか?会ったこともない?」

涙目の綯は、こくんとうなずく。

岡部「それは悪かった。お前の親父さんとは知合いでな。もう用は済んだから、帰るよ。」

―――これは予想の範囲内だ。人間関係に変化が起きているのも、大きく世界線が変わった影響だろう...

携帯を見ると、フェイリス以外の連絡先が消えている。...なぜ?まさか、ラボメンたちとの関係も、もしかしたら存在自体が消え去っているのか?


急いでラボに向かうと、そこは空き部屋になっていた。まゆりも、ダルも、紅莉栖も、だれもいない...当然、電話レンジ(仮)もなかった。


岡部「メイクイーンは、あるのか...」

メイクイーン・ニャンニャン。まゆりとフェイリスがバイトをし、俺とダルが常連だった、ネコ耳メイド喫茶。

俺の知っている人の痕跡を探して、真っ先にここに来た。

「「おかえりニャさいませ、ご主人様!!」」

岡部「フェイリス!まゆり!...よかった...」

消えてなんていなかった。心の底から、安堵した。

まゆり「ご主人様、違うよー。マユシィ・ニャンニャンだよ♪」

まゆり「あなたはフェリスちゃんのデュエルパートナーだよね~?もしかしてフェリスちゃん、この人にマユシィの本名教えちゃったの?」

フェイリス「フニャ?教えた記憶はないけどニャ~?」

何を言っているんだ?まゆりは俺の幼馴染なんだから、知ってて当然だ。

フェイリス「凶真、凶真、来てくれてありがとニャ?」

フェイリスが近づいてきて耳打ちする。

フェイリス「でもでも、お客様の前ではカレシっぽい行動は慎んでほしいニャ」

まゆり「もー、フェリスちゃん、お店でいちゃいちゃしたらダメだよー。まゆしぃしか知らないことなんだから」

フェイリス「にゃはは、そんなことしないニャ」

...??どういうことだ?

岡部「それよりまゆり、ダルと紅莉栖を知らないか?」

まゆり「...?だる?くりす?だれかなー?」

...もしかして、俺とこの二人との関係も変化しているのか?

岡部「ラボはどこだ?」

まゆり「ラボ?」

フェイリス「ラボってなんニャ?」

岡部「ラボは、つまり、、えー、未来ガジェット研究所のことで......まゆり、知っているだろう?」

まゆり「んー、」まゆしぃはわからないのです。ごめんね?」

フェイリス「ていうかなんでそんなにマユシィにばっかり話しかけるのニャ?カノジョがいる前ニャのに~」

カノジョ?フェイリスが?......俺の?なんでそんなことになってるんだ?ただの仲間だったのに!

岡部「ダル!ここにいたのか!」

客席に向かうと、ダルがいた。巨体を小刻みに揺らし、俺をにらんでくる。

ダル「君さ、フェイリスたんの何なん?」

......は?

ダル「どっかで見た顔なんだよなぁ...てか、フェイリスたんになれなれしすぎね?リア充か?リア充なんか?」

岡部「おいおいダルよ、いったい何を...」

まさか。ダルとの関係も変わってしまっているのか?

岡部「俺とお前は、初対面か?」

ダル「当たり前じゃん。てか、君ここ来るのも初めてっしょ?」

岡部「いや、結構くるほうだと思うが...」

ダル「この味は、うそをついている味だぜ...つーか君、フェイリスたんの何なん?まず名を名乗りたまえよ!」

岡部「...ほ、鳳凰院凶真」

なぜ本名ではなく脳内設定のほうでいってしまったのだろう...

ダル「まじで!?...ああ、そっかそっか、どっかで見たことあると思った!フェイリスたんのデュエルパートナーの鳳凰院氏だ!いやーうっかりしてたー!」

ダル「いやー、僕フェイリスたんと鳳凰院氏のファンなんですよ。この前の準決勝もみてました!」

握手された。

―――そうか。まゆりもダルも俺のことを知らない。幼馴染でも、仲間でもない。思い出が、消えてしまった。

ダル「いやー、明日はいよいよ決勝戦ですねー!ヴァイラルアタッカーズなんてボコボコにしちゃってくださいよ!」

つまり、俺とフェイリスはコンビで、雷ネットアクセスバトラーズの大会に出ていて、本来、昨日終わっていたはずの決勝戦が明日らしい。

岡部「...なあ、お前は牧瀬紅莉栖って知ってるか?」

ダル「ああ、えーっと、なんか論文がサイエンス誌に載ったっていう天才少女でしたっけ?ATFで前に講義してましたよ。かなりかわいかったなあ、うへへ。」

岡部「そうか...」

ラボがないなら、紅莉栖と面識がなくて当然か...

もういい。それより、まゆりが今日の夜死なないかどうか、それとフェイリスの父が生きているかどうか、だ。

どちらも助かるなら、この世界線でも...受け入れるさ。

フェイリス「パパなら今日もお仕事に行ったニャ!それがどうかしたのニャ?」

フェイリスは、バイトが終わってもネコ耳メイドのままである。おそらく、俺の設定の上に設定を重ねてくるのも、変わっていないのだろう。

岡部「生きているのか......よかった」

フェイリス「失礼だニャー、勝手に殺さないでほしいニャ」

岡部「で、俺とおまえは恋人同士、で間違いないな?」

すると、フェイリスが突然あわて始める。

フェイリス「え...もしかして凶真、フェイリスとのことは遊びだったのかニャ!?うう、ひどいニャ...」

急に、さびしさがこみ上げてきた。この世界で、俺は一人ぼっちだ。世界は、大きく変わってしまったのだ。

岡部「なぁ、フェイリス、...今の俺は、記憶喪失みたいなものだ」

フェイリス「えっ......?」

フェイリスは、じっと目を見つめてくる。フェイリスには、相手の目を見て心理を見抜く能力“チェシャー・ブレイク:チェシャ猫の微笑み”―要はただの勘だが―を持っている。

フェイリス「そんな、凶真、...ほんとに?だから今日の凶真は変だったのニャ...」

フェイリス「大変ニャ!いつから?何が原因で?」

岡部「世界線を越えてきた、と言ってもわからないだろう......俺はいわば、時空の漂流者なんだ」

フェイリス「ふざけてる場合じゃ――」

岡部「嘘はついていない。お前ならわかるはずだ。」


岡部「俺とおまえとの、関係を教えてくれ。」

フェイリス「うう......凶真、本当に覚えていないのニャ?...フェイリスと凶真は、雷ネットと大会で知り合ったニャ。アキバの小さなショップの大会だったけど、そこで死闘の末、心を通じ合わせたニャ」

俺が雷ネットの大会...?今の俺は、ルールもわからないのに。

フェイリス「で、意気投合して、コンビを組んだニャ。それで、今の雷ネットグランドチャンピオンシップでも、決勝まで勝ち上がったのニャン」

フェイリス「それで...一緒に戦っているうちに、フェイリスは凶真のこと、もっと知りたいって思うようになって...気づいたら、好きになってたのニャ。雷ネットだけじゃなく、プライベートでも一緒にいてほしいって、思うようになったのニャ...。」

フェイリスが、手を握ってくる。

フェイリス「だから、この前の準決勝に勝った後、思い切って告白したのニャ。そしたら、凶真も好きだって言ってくれて...フェイリスたちは甘いキスを交わして、晴れて恋人になったのニャ」

甘いキス?俺が?それなんてリア充?


フェイリス「ちなみに、フェイリスと凶真は同棲中ニャ♪」

岡部「な、何?」

フェイリス「といっても、大会中は合宿みたいな形で凶真をフェイリスの家に泊めてあげてるだけニャ」

フェイリス「だから、そのー...エッチなこととかは、してないのニャ。って、なにいわせるのニャー!」

フェイリス「今の話で、思い出せたかニャ?」

...思い出せるわけがない。そのことは、俺の記憶には最初からないんだから。

岡部「フェイリス、頼みがある。まゆりのことだ。」

フェイリス「マユシィ?そういえば、さっきやたらと話しかけてたニャ」

岡部「あいつは、もしかすると、今日の夜八時ごろ、何らかの形で死ぬかもしれん。」

フェイリス「え......?」

岡部「だから、あいつを見ていてほしい」

フェイリス「こ、こんどこそ冗談ニャ?」

岡部「嘘はついていない...頼む、見ているだけでいい」

フェイリス「正直、何が何だかさっぱりニャ...でも」

フェイリスは、再びおれの手を握ってくる。とても強く。

フェイリス「フェイリスは、凶真のこと、好きだから。大好きだから」

フェイリス「信じるニャ。凶真のこと」

岡部「ありがとう...」

俺は、フェイリスの家でじっと待っていた。フェイリスは、まゆりと一緒にカラオケに行ってくれた。

もうとっくにまゆりが死ぬ時間は過ぎている。


すると、フェイリスのご両親が顔を見せた。

秋葉父「おや、岡部君。留未穂はバイトかな?」

一瞬、留未穂と言われ戸惑う。そういえば、フェイリスの本名は秋葉留未穂だったな。

岡部「いえ、友人と遊びに行っています」

秋葉父「そうか、いつも、娘が世話を焼かせてすまないね。これからも、娘をよろしく頼むよ」

秋葉父「私は、君のことを買っているんだ」

岡部「ありがとうございます」

秋葉父「悪いんだが、私と家内はこれから仕事で海外でね。執事の黒木は残っているから、何かあれば彼に。では、言ってくるよ。」

岡部「お気をつけて」

...器の大きい人だ。あの人を助けられて、よかった。


フェイリス「ただいまニャーン♪」

入れ替わるようにフェイリスが帰ってくる。

フェイリス「あー楽しかった♪マユシィは、別に死んだりしなかったのニャン!」

――よかった。俺は賭けに勝ったんだ。思い出は、たくさん消えてしまったが。みんな生きているなら、それでいい。

確かに寂しくなってしまったけれど、フェイリスがいてくれる。

8月15日

UPX、雷ネットアクセスバトラーズグランドチャンピオンシップ決勝戦の会場。

フェイリス「凶真、雷ネットのルールまで忘れてるニャんて~」

昨日の夜、雷ネットの特訓をしたが、やはり駄目だった。俺は、ルールもろくに知らないんだ。だが...

決勝戦の相手はヴァイラルアタッカーズ。前の世界線でもフェイリスと戦った相手だ。負けた逆恨みで、フェイリスを襲ってきた危険な連中だ。

フェイリス「凶真、本当に大丈夫なのニャ?」

岡部「ああ、ヴァイラルアタッカーズは、勝っても負けても危険な相手だ。...奴らから、お前を守らないとな」

フェイリス「!...凶真、うれしいニャ!」

フェイリス「一緒に、戦うニャ!」

岡部「ああ、一緒に、だ。」

フェイリスの手を、この世界でのたった一人の俺の味方を、俺は優しく握りしめた。


 Chapter1

   孤独霧中のドリフター


ここまで導入で、こっから本編ですが今日はもう寝ます。

誰もいませんが...

よかった、見てくださる方いらっしゃったんですね

高校入りたてで友達できんかったころのこと思い出してました。高校入ればカノジョできるなんて幻想だった。

再開します。

雷ネットアクセスバトラーズは、大人気アニメ“雷ネット翔”をモチーフにした人気のカードゲームだ。伏せられたカードを奪い合い、相手の4枚のリンクカードを取ったら勝ち、相手の4枚のウイルスカードを取ってしまったら負けとなる。相手との駆け引きが重要なゲームだ。

ダル「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!フェイリスたーん!鳳凰院氏ー!萌えー!!!」

ダルよ...お前ひときわ目立つな......というか俺に萌えるな。

岡部「いいかフェイリス、お前は一言もしゃべらずにゲームに集中しろ」

フェイリス「...?」

フェイリスは疑問に思ったようだが、うなずいた。決勝の相手、ヴァイラルアタッカーズ、そしてそのリーダーの4℃(数字の4に温度の℃でシドと読むらしい。厨二病乙)は前の世界線でも見ている。汚い妨害行為も平気でするDQNだ。ならば――

4℃「フン、そのメス猫がメインか。」

4℃とそのパートナーはにやにや笑っている。二人とも、ていうかこいつら全員ぼろぼろの服に大量のシルバーアクセをつけている。あの格好、恥ずかしくないのか?

4℃「どっちがメインだろうと関係ねぇ!この雷ネット界に舞い降りた黒の孔雀、4℃様に勝てる奴なんていねぇのさ。知ってるか?孔雀は堕天使の象徴なんだぜ?」

プレイヤーは会場全体に声が聞こえるようにマイクをつけているため、非常にうるさい。ていうか何を言っているのかわからん。

4℃「この黒の貴公子である4℃様のダーティハートがざわめいちまったのさ。」

しかも話が無駄に長い...

こいつなんかどうでもいいが、厄介なのは会場に紛れ込んだこいつの取り巻きたちだ。フェイリスの邪魔はさせん。

岡部「さっきと言ってることが違うぞ、黒の孔雀じゃないのか?」

4℃「フン、黒の孔雀で黒の貴公子なんだよ!!余裕でいられるのも今のうちだぜ?この黒の絶対零度、4℃様は相手の身も心も凍らせちまうのさ...知ってたか?ドライアイスは肌を火傷させるんだぜ」

岡部「それはやけどではなく凍傷だ」

4℃「なっ...」

会場から失笑が漏れる。会場入りの時から感じていたが、人気は俺たちのほうが圧倒的に上のようだ。

岡部「フゥーハハハ!!いいかよんどしーよ、わが魔眼リーディングシュタイナーは貴様らのすべてをすでに見抜いている!!!」

岡部「この狂気のマッドサイエンティストにして世界の支配構造を破壊する男、鳳凰院凶真の前に、貴様らはひざまずくことになるのどぅあ!!!」

ダル「ウオーーーーーーーー!!!鳳凰院氏の厨二シャウトキターーーーーーーーーー!!!」

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!

会場から大歓声が上がる。みんな期待してたのかよ!!小学生男子が狂喜している...は、恥ずかしい......

4℃「て、てめー、...黒の孔雀のヘビーロックな翼がざわめいちまったぜ...」

岡部「ふん、ポエムならチラシの裏にでも書いているんだな、10円ハゲの黒の孔雀よ」

4℃「な...!?なぜそれをしってやがる!!だれもしらねぇアンタッチャブルな黒点なのに...」

岡部「10円ハゲを自白しているぞ」

前の世界線と同じく、こいつは110円ハゲのようだ。ハゲ隠しの帽子が哀れである。
会場が爆笑に包まれ、4℃は顔を真っ赤にした。このタイミングで、フェイリスに耳打ちをする。

岡部「フェイリス、俺の指示通りにプレイしているように見せかけろ」

フェイリス「うん、わかったニャ!」

フェイリスはすぐに理解し、大きな声で返事をしてきた。

―――

岡部「ちっ、きさまらぁぁ...」

勝負は、4℃とヴァイラルアタッカーズのほうに傾いていた。会場に紛れ込んだ4℃の取り巻きたちは、レーザーポインターで俺の目つぶしをし、BB段まで打ち込んできた。魔眼を信じるとは、かわいいやつらだな。

本当につぶすべきなのは、相手の心理を見抜いてしまうフェイリスの魔眼のほうだ。だが、もう遅い。

4℃「ここでこの伊達ワルストーリーテラー、4℃様が、漆黒の宣言をさせてもらうぜ!この勝負、俺たちの勝ちだ!!」

4℃「てめーらの戦術は、俺の伊達ワルハートの琴線にこれっぽっちも響かなかったぜ!俺のクールなブレインは、全部お見通しなのさ!へっ!!これで、ジ・エンド・オブ・グランドクロス...」

わけのわからん発言をしながら、4℃はフェイリスのカードを奪う。そのカードがリンクカードならヴァイラルアタッカーズの勝ち、ウイルスカードならおれたちの勝ちだ。4℃はカードの中身について確信をしているようだが...俺は、結果を知っている。

4℃は両手を広げて天を仰ぎ、恍惚とした表情でポーズを決めた。

うわあ......これは見ものだな。

4℃「黒の黙示録は現実となった。今、俺たちヴァイラルアタカーズの最高に壮絶で最高にセクシーな、黒のニュージェネレーションが開幕を―」

岡部「早くカードをオープンしろ、10円ハゲ。残りの毛も焼却するぞ」

4℃「な、なにぃ!?てめー、まだ言いやがるのか!てめーらはもう堕天の時を―」

岡部「こわいのか?はやくしろよ、よんどしー。俺がオープンしてやろうか?」

4℃「そ、そんなはずねぇ!伊達ワル的にありえねぇ!!俺のエレガントな戦術が敗れるわけが...」

やっと、4℃はカードをめくった。ハゲの上に恥を塗りたくって、こいつは何がしたいんだ?

「「「ウイルスカードだーーーーー!!!!!」」」

とたんに、大歓声が上がった。

ダル「うおーーーーーーー!!大逆転だ、すっげー!フェイリスたん、鳳凰院氏、俺だ、結婚してくれーーーーー!!!」

いやだ。

フェイリス「みんなーーー!!応援してくれて、ありがとニャー!!!」

岡部「フゥーハハハハハ!この勝利は最初から見えていた!わが魔眼の力によってな!!」

まあ、勝ったのはフェイリス一人の力だが。


トロフィーを渡され、花束を渡され、何やら取材を受けている間にも、ここからどう脱出するかを考えていた。

執事の黒木さんを呼ぶか?いや、黒木さんまで巻き込んでしまう...警察は?まだ何もされていないのに、助けてくれるだろうか。...いや、これはタイミング次第だ。俺は、まだ愛想を振りまいているフェイリスの手を握った。

岡部「よし、そろそろ出るぞフェイリス。4℃たちがこっちを狙っている」スチャ

そういいながら携帯を取り出した。

フェイリス「ニャニャ!?せっかくなんだし、もうちょっと勝利の余韻に浸っていたいニャ~」

岡部「だめだ!いくぞ!」

フェイリスの手を引いて出口に向かいながら、警察に電話する。奴らが前の世界線と同じ行動をするなら、腹いせに襲撃してくるはず...ならば奴らを誘導し、そこにあらかじめ警察を呼んでやる!

UPXから外に出ると、そこにはすでに4℃の取り巻きが集まっていた。

4℃「あっ、てめーら待ちやがれ!おい、そいつらをつかまえろ!!」

UPXの中から4℃の声が響く。すると、連中は俺たちを追いかけてきた。

岡部「フェイリス、走れ!」

まずは奴らを、人けのない路地に誘導する。さっき警察に、暴行事件が起きていると通報した場所だ。

フェイリス「はぁ...はぁ...あっ!きょ、凶真ぁ...」

見ると、路地の両側からヴァイラルどもがやってきた。10人はいるな...

フ、計算通り。あとは、警察が来るまでフェイリスを守り抜けば――

4℃「チッ、いきなり逃げやがって。だが、この黒の絶対零度、4℃様からは誰も逃れられねえ。どんな女だって一直線に俺の虜さ。へっ!さっきは卑怯な手を使いやがって!伊達ワルの神に愛されし俺の目はごまかせねえ」

フェイリス「な、何を言ってるのニャ!インチキみたいなことをしてたのはお前らのほうニャー!」

4℃「俺の言うことが常に正しいんだよ!ガイアもそう囁いてやがる。オイ知ってるか?そのけがれた白きシャム猫は、秋葉原の大地主の娘なんだってな。どうせ汚い手を使ってここまで勝ち上がったんだろ?さっさとその汚い王座を辞退しやがれ!」

ヴァイラルA「そうだそうだ、卑怯者!」

ヴァイラルB「雷ネットの世界から出ていきやがれ!」

4℃「それにそこのクソダセェヤローもだ!ワケわかんねーことばっか言いやがって!そこのメス猫にたらしこまれただけのカスがえらそーにすんじゃねえ!」

フェイリス「凶真を悪く言うニャー!くそダサいのはお前のハゲ隠しの帽子のほうニャン!」

4℃「なんだと、てめー!!この伊達ワルファッションのどこが...」

岡部「フゥーハハハ!そこまでにしておけ、よんどしー(笑)よ!いや、10円ハゲの黒い孔雀のほうがいいか?」

フェイリスを後ろにかがいながら、一歩進み出る。

4℃「て、てめー、ぜってー殺す!俺の名前はシドだ!よんどしーじゃねえ!」

フェイリス「凶真、あんまり刺激しないほうが...」

4℃「俺はいつだって体制に逆らってきた。シーンの最前線に立つのは、常に黒い羽根をはばたかせた孔雀」

岡部「あまり俺を怒らせないほうがいい...貴様ら全員そいつの10円ハゲの毛のように消え去ることになる......うぅっ!!まずい...このままだと俺の右腕の封印がぁぁぁ...貴様ら、早くにげろぉ...右腕が、暴走する...」

4℃「クレイジーな舞で、てめぇをエレガントに沈めてやるぜ。漆黒に選ばれるのは、この俺だ」

岡部「も、もうもたない...俺は、もう殺したくないんだぁぁぁぁ......」

4℃「って、なんだこいつ!?何してやがる!?」

ヴァイラルC「騙されるな4℃!!そいつはただの厨二病だ!」

岡部「いや、お前らが言うな」

次の瞬間、腹にすさまじい一撃が入り、思わずうずくまる。

4℃「オラ、おめーらもやっちまえ!!」

ヴァイラルどもは次々に俺を攻撃してくる。け、警察はまだか!?このままではフェイリスまで...

フェイリス「凶真!!やめてぇー!!だれかーー!!」

4℃「へっ、メス猫はこっちだ!すべての女を虜にする俺の伊達ワルブラックソードが輝きを...ん?」

ファンファンファンファン...

ヴァイラルA「お、おいシド、ポリ公だ!逃げるぞ!」

4℃「な、なにぃ!?やべーよ、捕まったらママにばれちまう!」

ヴァイラルD「マ、ママ?って、うわーー!」

4℃たちは逃げ出したが、路地の向こう側からも警察がやってきており、あっけなく御用となった。4℃は、最後までわめいていたが。やれやれ、厨二病とは哀れだな...

フェイリス「凶真!だ、大丈夫!?凶真、凶真ぁ!しっかりするニャー!!」

警察官「君、大丈夫かい?まずは、病院に行くよ」

その後、病院で診断書をもらい、警察に手渡した。とりあえず、フェイリスに怪我がないようで安心した。

気づくと、4℃の帽子を握っていた。4℃は10円ハゲをさらして取り調べを受けるのか...少し気が晴れた。

ブロロロ...

フェイリス「ううっ...凶真ぁ、あんまり無茶しないで...」グスッ

黒木「そうですよ岡部君。すぐに私を呼んでくだされば、お嬢様をお守りして戦いましたのに...」

執事の黒木さんが車で迎えに来てくれて、やっと帰路につけた。それにしても、執事って戦えるのか?初老の黒木さんからはそんなオーラは感じない。

フェイリス「ところで、なんで凶真は全部お見通しだったのニャ?」

さっきまで泣いていたフェイリスが、突然覗き込んできた。

岡部「フ...それは魔眼リーディングシュタイナーの力だ」

フェイリス「ニャニャ!?...えっ本当に!?」

もちろん本当だ。世界戦が変動すると、すべての記憶も再構成される。だが、俺だけは前の世界線の記憶を引き継げる。その力こそがリーディングシュタイナーである。ヴァイラルアタッカーズの負けた後の行動は“知っていた”のだ。

フェイリス「うにゃ~...」

フェイリスはそれきり黙りこんでしまい、会話もそれきりとなった。

―――

フェイリス宅で使わせてもらっている部屋に戻ると、すぐにベッドに倒れこんだ。

岡部「ふう...今日は疲れたな...」

前の世界線とかけ離れた状況。今までの人間関係はフェイリス以外すべて消えた。一人になると実感する...俺は、この世界で孤独だ。


その時、扉が開いてフェイリスが覗き込んできた。

フェイリス「凶真、まだおきてるかニャ?」

岡部「ああ、どうかしたのか?」

フェイリスは部屋に入ってきて、俺の隣に座る。

フェイリス「凶真、さっきの話なんだけど、どういうことニャ?」

岡部「どういうこととは、どういうことだ?」

フェイリス「だから、リーディングシュタイナーがどうたらって話ニャ!」

フェイリスには、俺が本当のことを言っているのが分かったようだ。フェイリスは、相手の目を見て嘘を見抜く能力、通称“チェシャー・ブレイク・チェシャ猫の微笑み”―ただの勘だが―を持っている。

フェイリス「そもそも、昨日から凶真はなんか変ニャ!記憶喪失にしてはおかしいし...それに、とっても悲しそうで、寂しそうニャ...」

フェイリス「凶真、どういうことなのか、フェイリスに教えてほしいニャ......今の凶真は、見てられないよ...」

――今の俺にとって、味方はフェイリスだけだ。だが、いくら本当か嘘か見抜けるといっても、こんな嘘みたいな話まで信じてくれるだろうか?もしかしたら、頭がおかしくなったと思われて、見捨てられるかもしれない。信じてくれたとしても、それは、今までフェイリスと一緒に過ごし、恋人にまでなった岡部倫太郎ではないことがわかるだけだ。

俺が消してしまったんだ、こいつの、大事な人を。

フェイリス「......」

フェイリスを見つめる。どちらにせよ、言い逃れはできない...

岡部「わかった。すべて話す」

フェイリス「!!...凶真、ありがとう」

岡部「嘘みたいな話だが、すべて真実だ。俺は、昨日までは違う世界にいた」

フェイリス「ニャッ!?ほ、ほんとに異世界から?」

まったかこいつは...なに目を輝かせているんだ。

岡部「異世界じゃない。別の可能性世界線からだ。わけわからんだろうが、一から説明するから、疑問はちょっと飲み込んでくれ」

フェイリス「ムムム...」

岡部「前の世界線では、俺は椎名まゆりと幼馴染で、ダル...橋田至とは高校時代からの友人だった。そして、俺は未来ガジェット研究所、通称ラボを創立し、その二人やほかの仲間たちと共に未来ガジェットを作っていたんだ。」

フェイリス「未来ガジェットって何かニャ?」

岡部「未来ガジェットとは、機関との来たるべきラグナロクに備えるための、さまざまな道具だ」

フェイリス「そっちの世界でも、凶真は機関と戦っていたのニャ...」

岡部「こっちの俺も戦っていたのか?」

フェイリス「そうニャ。街中でも戦闘を開始する危ない人だったニャ♪」

くっ、なんて痛いやつなんだ、この世界線の俺は...

岡部「ま、まあそれはいい。その開発した未来ガジェットのうちの一つ、電話レンジ(仮)が、タイムマシンだったんだ。

フェイリス「ニャニャ!?タ、タイムマシン!?」

岡部「タイムマシンといっても、人間がタイムトラベルできるわけではない。最初にできたものは、全角18文字、半角36文字までのメールを過去に送れる、というものだ。これはDメールと名付けられた。さらに、記憶を二日前まで飛ばすことのできる、タイムリープも可能とした」

フェイリス「データとかを飛ばせるってことかニャ?物も送れないのニャ?」

岡部「電子レンジに収まるものは送れなくはないが..要は電子レンジ内部にブラックホールを作り、そこを通って過去に戻る、という原理だから、人や物はブラックホールの圧縮に耐えられん。無数の穴の開いたゼリー状の物質となる」

フェイリス「そ、それはいやニャ。ダルニャンならスライム女子にも萌えられそうニャけど...」

岡部「話を戻すぞ。そのDメールを送ることによって過去を変えると、世界線が変動し...」

フェイリス「その世界線って、さっきから気になってたけど何かニャ?パラレルワールド?」

岡部「ああ、この世界は、アトラクタフィールド理論というもので成り立っている。いくつもの可能性世界線が交わることなく束ねられているんだ。平行世界とは違い、同時に複数の世界が存在しているわけじゃない。あくまで可能性だ。Dメールによって過去を変えると、世界線が変わり、現在も再構成される」

フェイリス「うにゃあ...難しいのニャ...なんで凶真はそんなこと知ってるのニャ?」

岡部「阿万音鈴羽という未来人に教えてもらった」

フェイリス「未来人!!?ニャニャニャ...」

岡部「だが、この世界線は大きく変えなければ、結局は同じ未来に収束する。俺が不用意にDメールで過去を改変したばかりに...あの世界線は、まゆりの死という結末に収束する世界線となってしまった」

フェイリス「にゃ!?だ、だからあんなにマユシィのことを気にしてたの...」

岡部「ああ...まゆりを救うためには、IBN5100というレトロPCで、エシュロンにとらわれた最初のDメールを――」

フェイリス「凶真、いきなりよくわからない用語を使われても困るニャ」

岡部「ああ、エシュロンというのは通信傍受システムのことだ。SERNという、タイムマシンを開発して独占しようと企む機関、世界中のタイムマシン研究を監視するために使用している。それに、最初のDメールが捕らえられたのだ」

岡部「エシュロンはIBN5100というレトロPC独自のプログラミング言語で構成されている。そこにアクセスし、Dメールを取り消せるのはIBN5100だけなのだ」

岡部「一度、俺はIBN5100を手に入れた。だが、それ以外に送られたDメールによって過去が変わり、IBN5100は俺の手元から消えた...」

岡部「俺は、それらのDメールを、更なるDメールを送ることによって、なかったことにしようとした。そのうちの一つが、フェイリス、お前の送ったDメールだ」

フェイリス「フェイリスに、変えたい過去があったとは思えないニャ」

岡部「......いや、あったんだ。10年前、お前はパパさんが海外に出張に行く日、家出をしたよな?」

フェイリス「ニャンで、知ってるのニャ!?あれは、パパになぜか、娘を誘拐したから金を出せ、っていうメールが来て、誘拐っていうことに――」

岡部「そのメールこそが、お前の送ったDメールだったんだ。お前の父は、...本当はあの日、飛行機事故で死んでいたんだ」

岡部「お前が誘拐された、というメールを受け取り、その飛行機に乗らなかった。...Dメールで、お前の父が死なない世界に再構成されたんだ」

フェイリス「そんな...パパは本当は死んでたの!?」

岡部「いや、もうそれはなかったことになっている。今は、この世界が“本当”だ。お前の父は身代金を作るために所有していたレトロPCを売った。それが、俺が手に入れるはずだったIBN5100だった」

岡部「だが、俺にこのDメールをなかったことにすることはできなかった。お前の父にも、まゆりにも、生きていてほしかった」

フェイリス「凶真...」

岡部「だから、賭けに出たんだ。どう再構成されるかわからなかったが......IBN5100を絶対手放さないよう、お前の父にDメールを送ったんだ。...そして俺は、この世界線にやってきた。なぜこのDメールで俺の周りの人間関係が消えたのかはわからんが...バタフライエフェクトというやつだろう」

フェイリス「...記憶も再構成されて、なかったことになるの?だとしたら...どうして、あなたはそれを覚えているの?」

岡部「これが、リーディングシュタイナーの力なんだ...俺は、世界線を移動しても、なぜか前の世界線の記憶を引き継ぐ...代わりに、この世界線での、これまでの記憶は覚えていない...というより知らないんだ」

俺は、フェイリスのほうを見られなかった。どんな表情をしているのか、見るのが怖かった。

フェイリス「その、あなたがいた世界線での、私とあなたの関係は?」

岡部「......。俺たちは、メイクイーンで知り合った。お前がDメールを使いたいというから、仲間にしたんだ」

フェイリス「...そっか」

フェイリスの声は沈んでいる。やはり、フェイリスも俺から離れて――


突然、いい香りが鼻腔に広がった。フェイリスが、ネコ耳を外して、抱き着いてきていた。

フェイリス「ううっ......グスッ...」

オカベ「すまない......俺は、お前の好きだった岡部倫太郎を消してしまった...結局、お前を悲しませてしまった...」

フェイリス「そうじゃないよ...岡部さんが、かわいそうで...」

岡部「俺が?」

フェイリス「だって、あなたはこの世界で独りぼっちなんでしょ?私のパパも、マユシィも助けるために...それなのに、あなただけが誰も知らない世界で孤独になるなんて...かわいそうだよ...」

岡部「おまえは、俺のために泣いてくれているのか?」

フェイリス「当たり前だよ。だって、岡部さんが、好きだもん。たとえ、違う記憶を持っていても、やっぱりあなたは岡部さんだよ。...あなたが許してくれるなら、これからも一緒にいてもいい?」

フェイリス「もう、今は留未穂って呼んでよ。...だって、今の岡部さんも、どうしようもない厨二病で、偉そうなのに押しに弱くて、...でもどんな時も自分より他人を守ろうとする、優しい私の王子様だから。......ふふっ、やっぱり変わってないよ!」

岡部「王子様は恥ずかしいな...ありがとう、留未穂。お前がいてくれて、よかった」


留未穂は、涙を拭っておれから離れ、微笑んだ。

フェイリス「全部教えてくれて、ありがとう。...今日は、ゆっくりお休みなさい、おか...倫太郎さん」

留未穂は、俺を下の名前で呼ぶと、真っ赤になって部屋を出て行った。...俺のほうこそ、ありがとう。すべて信じて、受け入れてくれて。

――8月16日

フェイリス「凶真、おはようニャー!!!」

朝、目を覚ますと、留未穂はフェイリスに戻っていた。...なんだか残念だ。

岡部「おはよう、朝から元気だな」

フェイリス「ニャフフ~♪」

やれやれ、と用意されていた朝食を食べる。

フェイリス「昨日の話のこと、ずっと考えてたんだけど、凶真とマユシィっていつから幼馴染なのかニャ?」

岡部「ん?そういえば、10年以上前からだな。家が近所で...いや、だとしたらおかしいな」

フェイリス「家って池袋かニャ?マユシィは池袋に住んでるニャ」

岡部「俺も池袋だぞ...いや、まさか」

財布から学生証を取り出してみる。東京電機大学であることは変わっていないが――

岡部「は、八王子だとぉ!?」

フェイリス「はニャン?八王子がどうかしたかニャ?まさか、八王子には、50の頭と100の腕を持つというあの伝説の怪物が――」

岡部「いや違う!八王子にそんなもんいてたまるか!そうではない、俺の住所が八王子になっている!」

早速、黒木さんの車で、八王子の見知らぬ実家へ向かった。

岡部「むう......俺はこんな家知らん...だが、結局は八百屋なのか」

フェイリス「ニャニャ~、狂気のマッドサイエンティストの実家が八百屋なんて、少年少女の夢もぶち壊しニャ~」

岡部「...八百屋は世を忍ぶ仮の姿だ」

フェイリス「まさか...この八百屋は、野菜を売ると見せかけて恐るべき魔法植物を売るという、通称“マッド・デス・ドルイド”...」

岡部「じゃあ行ってくる」

わけのわからん妄想を垂れ流すフェイリスを置いて実家へ入ってみる。

フェイリス「ああ~!フェイリスもご挨拶するニャ~!!」

岡部「いや、ネコ耳メイドを家に連れ込んだら、俺は大学を辞めさせられるかもしれん」

フェイリス「ウニャ~、お堅い家庭なのかニャ...」

そもそもなんでネコ耳メイドのまま出かけてるんだよ...

 
両親に話を聞いたところ、10年前に、元の池袋の実家のそばにスーパーができることとなり、八王子にあった親戚所有の家を譲ってもらいここで商売しているとのことだった。元の世界線ではなかったことだ。

土地が変わったため、通った小学校、中学校、高校も変わっていた。友達ができないのは変わっていないが、ダルもいなかったとなると...俺の青春はさびしかっただろう。

俺とまゆりは、10年前まではよく遊んでいたようだ。だが、別れた時はお互い小さくて、つながりは絶えてしまっていた。

黒木「池袋のスーパー、ですか」

次に、もともと実家のあった場所に向かってもらった。車中、実家で聞いた話をフェイリスに聞かせていると、黒木さんが何かを思い出したようにつぶやく。

岡部「何か知っているんですか?」

黒木「ええ、お嬢様が10年前に誘拐されたとき、旦那様は前々から話のあった池袋の土地の売却を決めて、お金を用意なさったんです。売却する代わりに、前金をすぐに渡してくれ、とね。確かその相手が、スーパーを立てる予定だといっていたような...」

フェイリス「えっ...そんなことが?」

岡部「そ、そんな!秋葉家は、秋葉原の地主では?」

黒木「ほかにも、いくつかの土地を持っていたのですよ。当時は土地ばかりで、お金はあまりありませんでした」

池袋の実家は、他人の家となっていた。そして、前の世界線では駐車場や貸倉庫だった場所には、大型スーパーが立っていた。

岡部「これが、バタフライエフェクトか...」

呆然とスーパーを見上げる。まさか一台のレトロPCを売るな、というメールで、ここまで変わってしまうとは...

フェイリス「凶真...ごめんなさい...」

フェイリスが申し訳なさそうに謝ってくる。

フェイリス「フェイリスのせいで、凶真の友達がいなくなってしまうなんて...」

岡部「......」

こうなってしまった理由は分かった。それがどうした?だからどうなるというんだ...

ふと、天王寺の家にあったダイバージェンスメーターのことを思い出す。鈴羽は過去にやってきたのだ。そして、あのダイバージェンスメーターを作るのは未来の俺だと鈴羽は言った。だとしたら――

この世界でも、SERNのディストピアがやってくるのか?結局、収束するのか?

フェイリス「きょ、凶真ぁ...」

フェイリスは、泣きそうな顔でこっちを見ている。


そうだ。俺はまだ何も失っていない。関係がリセットされただけだ。それに、フェイリスがいてくれる。

岡部「フ、フフフ...」

フェイリス「ニャニャ?凶真?」

岡部「フゥーハハハハハ!!!そうだ!ないのなら作ればいい!再びラボを、未来ガジェット研究所を創立し、来るべき機関とのラグナロクに備えるのだ!!!これこそがシュタインズゲートの選択!!フェイリスよ、お前も手伝え!いやとは言わせん!!」

フェイリス「凶真!!もちろん、フェイリスは凶真と一緒に戦うニャ!」



フェイリス「......ニャフフ、やっぱり凶真は凶真だニャ~♪」


 Chapter2

   
   相克のアナスタシス

今日はここまでということで、もう寝ます

明日余裕があれば書くかもしれません

今日は無理でした。

金曜日の6時ごろに再開します。

再開します。

もし誰か見てたら、投下中もレスしてあげてください...一人は寂しいです

――8月18日

フェイリス「凶真!おはようニャンニャン♪」ギューッ

岡部「うお!?いきなり抱きつくな!」

朝、部屋を出た途端フェイリスに抱き着かれた。昨日よりさらに元気だ。

フェイリス「ニャフフ、今日は何をするのかニャ?」

岡部「ああ、今日は未来ガジェット研究所の場所を確保しなければならん。まあ、当てはあるから問題ない」

フェイリス「そうなのニャ?じゃあじゃあ、朝ご飯を食べたら、さっそく出発ニャー!」

岡部「そういえば、フェイリスよ、メイクイーンはいいのか?昨日も今日も休みで」

フェイリス「昨日、今日、明日とご主人様たちは聖戦ニャ!だから、メイクイーンはお休みにしたのニャ~」

岡部「ああ、コミマだったな」

ダルとまゆりも参加しているのだろう...

岡部「いつも申し訳ありません」

いつも黒木さんを運転手にしていてさすがに申し訳なくなってきたので、とりあえず謝っておく。

フェイリス「黒木はいつもフェイリスの送り迎えをしてくれているから、大丈夫ニャ♪それに、今はパパもママも海外だから、黒木はフェイリスのお守りみたいなものニャ」

黒木「ははは、まあそういうことですよ。それに、私もお二人と一緒なのは楽しいですから」

岡部「はぁ...」

まあ、そういうことならいいが...と、フェイリスが突然声を上げた。

フェイリス「ンニャ?この道、メイクイーンに向かってるニャ。まさか、凶真が言ってた未来ガジェット研究所の当てっていうのは、メイクイーンの地下に広がる秘密のダンジョン...」

岡部「そんなわけないだろう!そもそも、メイクイーンに地下があるのか?」

フェイリス「ん~...ないニャ」

岡部「まったく...あ、黒木さん、ここに止まってもらってよろしいですか」

大檜山ビルに到着し、フェイリスとともに車から降りた。ブラウン管工房に入ってみると、相変わらず客は一人もいない。今のご時世、わざわざブラウン管を買うやつがいるのか?

岡部「失礼。店長はいるか?」

天王寺「ん?いらっしゃい。ブラウン管をお求めで?」

このブラウン管工房の店長にして大檜山ビルの所有者、天王寺裕吾、通称(というか俺がつけた)Mr.ブラウン。ブラウン管をこよなく愛する筋骨隆々の大男だ。前の世界線では、家賃月1万という格安の家賃でここの2階を貸してくれたのだが...

岡部「ああ、ブラウン管はいらないです」

天王寺「ああ!?」

岡部「い、いや、その、2階が空き部屋なようなので、僕に貸していただけないかと思いまして...」

天王寺「なんだ、そんなことか。悪いが、うちの2階は誰にでも貸していいもんじゃねえんだよ」

フェイリス「ええ~!?そこをニャンとかお願いします、かっこいい店長さん♪」

天王寺「そ、そんなこと言われたって、貸せねえもんは貸せねえよ!」

動揺している...やはりMr.ブラウン、色仕掛けに弱い。

天王寺「そういえば、お前名前は何てーんだ?」

岡部「俺ですか?...ほうお、岡部倫太郎です」

天王寺「岡部倫太郎...」

名を告げると、急にMr.ブラウンは黙り込んでしまった。

天王寺「...わかった。2階を貸してやる。家賃は1万でいいか?」

岡部「本当ですか!?」

天王寺「ああ、特別だからな?」

岡部「ありがとうございます!」

Mr.ブラウンの気が変わらないうちに急いで契約を済ませると、フェイリスは目を丸くした。

フェイリス「ニャニャ~、信じられないニャ。アキバで月1万円...経済の法則が乱れるのニャ~」

天王寺「俺はここのオーナーの天王寺裕吾だ。これからよろしくな。そっちの耳生えてるお嬢ちゃんはなんてーんだ?」

岡部「フ、よろしく頼むぞ、Mr.ブラウン。この猫娘の名前はフェイリスだ。それと、俺の真名も教えてやろう!!狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院...凶真だッ!!!」

フェイリス「末永くよろしくニャン、Mr.ブラウン♪」

天王寺「Mr.ブラウンって、俺のことか!?あとお前は岡部だろ!それにフェイリスってなんだ??本名だよ、本名!」

フェイリス「フェイリスは、フェイリスニャ!」

天王寺「...いや、もういい。おめーら二人で住むのか?まだ学生だろ!?やれやれ、世の中どーなってんのかね」

岡部「あ、あなたは勘違いしている!俺たちは、そういう関係じゃ...」

いや、この世界線ではそういう関係か...

フェイリス「...うにゃあ...」

...すまないフェイリス、まだそこまでは受け入れきれん...すまない。

天王寺「ん?なんだ違うのか?岡部一人で住むってことか?」

岡部「Mr.ブラウン、あなたには特別にお教えしよう!ここには未来ガジェット研究所が設立されるのだよ!そう、これがシュタインズゲートの選択!!フゥーハハハ!!!」

天王寺「...ハア?」

岡部「まあ、つまり研究サークルというやつですよ。丸く言えばね...ところでMr.ブラウン、あなたは、橋田鈴、という方を知っていますか?」

天王寺「...んん?お前、鈴さんのこと知ってんのか?」

!!やはり橋田鈴...阿万音鈴羽は、この世界線でも未来からタイムトラベルしてきているのか...

天王寺「鈴さんは10年も前に亡くなったってのに、なんでお前が知ってんのかねぇ...俺は昔、鈴さんに滅茶苦茶世話になったんだよ。変わった人だったな、天涯孤独で、これから未来に起こることを言い当てたりもしてたな」

天王寺「このビルも元々鈴さんのもんでよ、...鈴さんは今日のことも予言してたな。2010年に岡部倫太郎という青年がここを借りに来るから、その時は貸してやりなさいって」

...つまり、鈴羽はこの世界線でも俺と出会う、ということか?それとも、もうすでにあっている?...なんにせよ、この世界線の未来も、鈴羽が変えたいと願う未来ということか...?

天王寺「ま、そんなわけで、鈴さんには感謝しろよ?」

岡部「ええ...もちろんです」

天王寺「これが2階のカギだ。1個しかねえからなくすんじゃねえぞ。あと、ずいぶん前の住人が残してった家具があるから、好きに使いな。ブラウン管も1個サービスしてやるぜ。...あんま変なことすんじゃねえぞ?」

岡部「ふむ。これでラボの場所は確保した。次は設備を整えるぞ」

Mr.ブラウンの言っていた家具とは、机、ソファー、冷蔵庫、本棚などだった。とりあえず、前のラボの形に近づけねば!

フェイリス「来るべき機関とのラグナロクに備えて、このラボを要塞化するのニャ!」

さっきまで少し落ち込んでいたフェイリスだが、もう復活している。

フェイリス「というわけで、さっそくお買い物ニャー!凶真と一緒にお買い物デートニャン♪」

岡部「な...で、では、これより“オペレーション・ウトガルド;神に反逆せし城計画”を開始する!」

フェイリス「フミャぁ...お、オペレーション...」

岡部「こ、これは...」

夕方、必要なものはあらかた買い込み、ふとラボを見渡して大変なことに気付く。

岡部「なぜこんなにメルヒェンでファンシーなかんじになっているのだ!」

開発室を区切るカーテン、それに窓のカーテンもピンクになっていた。というより全体的にピンク多い!さらに、雷ネットのマスコットキャラクターであるうーぱをはじめとして、いろいろなキャラクターもののグッズが溢れかえっている。

フェイリス「このラボは萌えの中心地、諏都秋葉原の最後の砦ニャ♪だから、萌え萌え~な雰囲気じゃニャいと♪」

岡部「...俺だ。大変なことになった」スチャ

岡部「...そうだ。機関は恐るべき敵を送り込んできた。...わがラボは、謎のスイーツ(笑)波によって、壊滅的な被害を受けてしまったのだ...おのれぇぇ、これもシュタインズゲートの選択だというのか...ああ、何とか持ちこたえてみせる...エル・プサイ・コングルゥ」

フェイリス「ま~た凶真のケータイが、毒電波を受信しちゃってるのニャ~」

岡部「まあいい、今日はここまでにしよう...ところでフェイリス、一昨日話したIBN5100のことなんだが...どこにあるか知っているか?」

フェイリス「それって、エシュロンにハッキングできるっていう...」

岡部「そうだ。もしかしたら、俺はこの世界線でもSERNと戦わなければならないかもしれないからな」

フェイリス「そ、そんな...なんで?なんでそんなこと...」

岡部「この世界線でも、タイムマシンが開発されることになる。未来は、SERNのディストピアに収束してしまうかもしれないんだ...俺は、その未来を変えると、仲間と約束した。その約束を、守りたい」

もちろん、鈴羽との約束もなかったことになっている。覚えているのは、俺だけだ。俺だけだからこそ...

フェイリス「...じゃあ凶真、フェイリスとも1つ約束するニャ」

岡部「何をだ?」

フェイリス「これからは、フェイリスと一緒に戦うことニャ!フェイリスと凶真なら、運命だって変えられるのニャ!」

岡部「...お前には、いつも助けられてばかりだな。ありがとう」

フェイリス「ニャニャあ!?フェイリスは、まだ凶真に何もしてあげられてないニャ~」

岡部「そんなことはないだろ?...まあそういうなら、これからはこき使ってやろう!フゥーハハハ!」

フェイリス「にゃはは、頑張るニャ!...でも、IBN5100だけど、フェイリスはわかんないのニャ。パパは明日まで帰ってこないし...あ、黒木なら何か知ってるかも!」

岡部「なら、帰ってから聞いてみるか」

黒木「IBN5100ですか?確か10年前に、旦那様が柳林神社に奉納していましたよ」

岡部「本当ですか!?」

これも、前の世界線と同じだったか!うれしいと同時に、また少し不安が大きくなる。

フェイリス「ところで凶真、何してるのニャ?」

岡部「ん?荷物をまとめている。明日からはラボに住むことにしたからな」

フェイリス「ええ~、寂しいニャ~」

岡部「いつまでもお世話になるわけにはいかんだろう...それに明日には、パパさんやママさんも帰ってくるじゃないか」

フェイリス「凶真は別腹ニャのに~」

...こいつは何を言っているんだ。

――8月18日

次の日、朝一で柳林神社にやってきた。前の世界線ではラボメンナンバー006だった漆原るか、通称ルカ子がいる神社である。俺とルカ子は...この世界線では面識があるのだろうか...

るか「~♪」

ルカ子は、鼻歌交じりに境内を掃除している。巫女服がよく似合っている...だが男だ。
顔立ちは美しく可憐で、大和撫子を体現しているかのようだ...だが男だ。
...いや男か?この世界線では女という可能性も...

るか「あ、あの、何かご用でしょうか?」

岡部「うおわっ!?」

いつのまにやら、ルカ子の顔を覗き込んでいた。くっ、これも機関の精神攻撃か...

フェイリス「ニャンニャン♪初めましてニャ!この巫女さんは、とんでもない萌え萌えパワーニャ!」

るか「ニャ、ニャンニャン!?...あ、いえ、その...はじめまして」

どうやら、面識はないようだ。...ならば、親しくなるまで!この鳳凰院凶真に不可能はない!フゥーハハハ!...まずは性別を確かめねば...

るか「ええと、凶真さん?で、よろしいですか?」

俺が考えこんでいるうちに、フェイリスは俺を含めて自己紹介を済ませたようだ。

岡部「うむ、わが名は狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真だ!!フゥーハハハ!!!」

るか「えええっ!?ま、マッドサイエンティスト!?」

岡部「そう、人体実験も平気で行う恐るべきマッドサイエンティストよ!さあルカ子よ、その魂をこの鳳凰院凶真にささげるがよい!」

るか「ひっ...うう、ゆ、許して、くださいぃ...」グスッ

いかん、泣かせてしまった。

フェイリス「凶真、話が進まないニャ~。ルカニャンも、男の子なんだからすぐに泣いちゃダメニャ。ルカニャン、お父様を呼んできてくれるかニャ?」

るか「ええっ!?お、お父さん、ですか...!?えっと、その...お父さんは、何も悪いことしてなくて...ええと...だから、人体実験をするなら、ボクのほうを...」

岡部「いや、すまなかったルカ子よ。人体実験のことは忘れてくれ。父上に聞きたいことがあるのだ」

るか「聞きたいことですか...?わ、わかりました。すぐに呼んできます!」

ルカ子は、逃げるように神社の中へ走って行った。

フェイリス「やれやれニャ~、凶真はフェイリスがいないとダメダメニャ!」

岡部「う...そ、それより、なぜおまえはルカ子が男だと分かった?まさか、知っていたのか?」

フェイリス「そんなの、見ればわかるニャ」

岡部「み、見たってナニを!?」

フェイリス「...キョ~マ~?」

そんな話をしていると、ルカ子が父親を連れて戻ってきた。漆原氏はこの柳林神社の神主で物腰の柔らかい立派な方だが、息子にこんな格好をさせているあたり、HENTAIなのかもしれない...

漆原父「こんにちは、私に何かご用とのことですが...」

フェイリス「あ、こんにちニャンニャン♪漆原さん」

漆原父「ああ、秋葉さんのお嬢さんですか!ご立派になられましたな」

この二人は面識があるのか。しかし、ネコ耳メイドにたいして「ご立派になられましたな」というのはどうなんだ?やはりこの人はHENTAIなのだろう...

岡部「あの、この神社に秋葉家から奉納されたレトロPCはありますか?」

漆原父「パソコンですか?...ああ、ありますよ。もしかして、お引き取りにいらっしゃったのですか?」

フェイリス「そういうことニャン。持ってきてもらってよろしいですかニャ?」

漆原父「ええ、少しお待ちください」

漆原氏は、再び神社に戻っていった。ルカ子がなぜか困惑している。

るか「えっと、秋葉さんっていうんですか?さっきはフェイリスさんって...」

フェイリス「ニャフフ、フェイリスはネコ耳による萌えパワーによって、フェイリスとなっているのニャ!だから今はフェイリスなのニャ!」

るか「???」

岡部「フ、気にするなルカ子よ。こいつは少し痛々しい妄想に取りつかれているだけだ」

フェイリス「フミャア!?ど、どの口が...」


しばらくすると、漆原氏が大きな段ボールを、息を切らしながらもってきた。

漆原父「ハア...ハア...ええと、これですね」

岡部「ふむ...おお、これはまさしくIBN5100!ありがとうございます!!」

早速持ち上げようとしたが...重い...

フェイリス「ニャニャ!?子、これは重いニャ~」

フェイリスが手伝ってくれるが、まったく助けにならない。こいつ、力が弱すぎるな...

るか「あ、あのっ!ボ、ボク、手伝います!!」

フェイリス「問題ないのニャ!黒木!」

...黒木さんは、軽々とIBN5100を車のトランクに詰めてしまった。執事ってすごい。


岡部「ふぅ...ではまたな、ルカ子よ」

フェイリス「またね、バイバイニャ~ン♪」

るか「え?あ、はい!それでは、また...」

ラボの前に来て、車から降りるとMr.ブラウンが小さな女の子と一緒にいた。この女の子は天王寺綯。まだ小学生で、Mr.ブラウンの娘とは思えないかわいらしい少女である...本当に血がつながっているのか?

綯「あ...ああっ!」

この小動物が、何を思ったかいきなり俺を指さして大声を上げた。

綯「お父さん、この人!この前、いきなり家に入ってきた人!」

そういえば、この世界線に来た日、ダイバージェンスメーターの変動を確かめるために天王寺家にはいったんだった。面識がなくなっていたせいで、完全に不審者扱いされたことを忘れていた...

天王寺「この野郎、どういうことだ!まさか、うちの綯をさらおうとして――」

岡部「ち、違う!断じて違います!えーと...そう、鈴さん!鈴さんに会いたくて!」

天王寺「ん~?そういや、お前鈴さんと知り合いだっつってたな...まあ、今回だけは許してやるよ」

おのれ、小動物め...殺されるかと思った...

フェイリス「まあまあ、凶真も悪気があったわけじゃないから、許してあげてほしいニャ~」

綯「う、うん...ごめんなさい」

天王寺「いいか綯、こいつらは昨日からここの2階を借りることになった連中だ。そっちの怪しいのが岡部、そっちの変なのがフェイリスだ」

フェイリス「ナエニャンっていうのかニャ?よろしくニャンニャン、フェイリスニャ!」

岡部「Mr.ブラウンよ、俺は岡部ではない...狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真だッ!!」

天王寺「やれやれ...なんでこんな妙なやつらが...」


綯「ええ~~~~!?フェイリスときょーま!?知ってるよ、雷ネットのチャンピオンの人たち!」

岡部「な、なにぃ!?知っているのか!?」

綯「うん!フェイリスはネコ耳でメイドで魔法少女で、きょうまは相手の精神をハカイしちゃうんでしょ?」

フェイリス「ニャフフ、フェイリスと凶真は、雷ネット翔の原作漫画に登場しちゃうくらい、雷ネット界では有名なのニャ!!凶真の試合中の発言は、小学生にバカ受けなのニャ~♪」

な、なんて恥ずかしいやつなんだ、この世界線の俺は!

綯「キョーキのマッドサイエンティスト、ほーおーいん...きょーまだっ!ふーははは!」

岡部「ぐおおおおおおおっ!!」

い、今すぐベッドにもぐりこんで両足ばたばたさせたい気分だ!

綯「あー、それもしってる!ぐおおおおおお、右腕があああ...ぼうそうするぅぅぅ...」

フェイリス「ナエニャン、その辺にしてあげてほしいニャ...」

綯「えー、学校でみんなマネしてるよ?」

天王寺「てめー岡部...うちの綯に変なこと吹き込みやがって!」

岡部「いやいや、知りませんよ!これは本当に!」

さっさとIBN5100をラボに運び込んでしまおう...


フェイリス「ええ~~!?この前の決勝戦、テレビで全国放送されてたのニャ!?」

綯「うん!わがまがん、りーでぃんぐしゅたいなーは、きさまらの...」

ぜ、全国放送だとぉ!?...いや、落ち着け。本当に恥ずかしいのは、妄想ポエムを垂れ流して無様に敗北した4℃だ。奴はもうあの格好で外を歩けまい...10円ハゲをテレビの前でばらしたのはさすがにかわいそうだったか?...いや、別にいいか。

さすがに黒木さんに運んでもらうのは悪いので、自力で何とか運ぶ...が、階段はさすがに無理だ...

天王寺「オウ岡部、手伝ってやろうか?...なんだこの段ボール?重てーな、何入ってんだ?

岡部「すまない、Mr.ブラウン。はいってるのは、ただのレトロPCですよ」

天王寺「んん?レトロPC、ねぇ...」

さすがの筋肉、あっさりと段ボールを持ち上げて運んでくれた。


フェイリス「ニャニャ~、ナエニャンはネコ耳メイドの素質があるニャ!!」

綯「ホント!?ありがとニャンニャン♪」

...あいつは放っておくか...

今日はここまでです。続きは明日で。

日付を間違えてました。Chapter2の最初のほうは8月17日です。
何かご指摘やご要望があればガンガン言ってください。

レスくれた人ありがとうございます。おやすみニャンニャン

ちょっと再開します。

ラボについた後、IBN5100は開発室の奥にしまっておいた。ラボのほうはこれくらいでいいだろう。次はラボメンを集めねば!

昨日ラボに持ち込んだPC、X68000を起動し、ジョン・タイターについて検索してみる。

岡部「...ない」

2000年も、2010年も、ジョン・タイターは現れていなかった。もしかしたら、ジョン・タイター、つまり阿万音鈴羽じゃ、これから現れるのかもしれない...

次に、牧瀬紅莉栖について調べてみる。ヴィクトルコンドリア大学脳科学研究所所属、17歳にしてサイエンス誌に論文が掲載された天才少女。この世界線でもそれは同じで、やはり今はアメリカにいるようだ...彼女がいなければ、タイムリープマシンは完成しない。再び紅莉栖に出会うことは、あるのだろうか...

フェイリス「たっだいまニャンニャーン♪」

フェイリスが元気よくラボに入ってきた。

岡部「やっと来たか...遅いぞ」

フェイリス「ニャハハ、ごめんニャ~。...凶真、何飲んでるのニャ?」

岡部「ああ、ドクペだ。昨日買っておいたのだ」

フェイリス「ドクペ?」

岡部「知らないのか?まったく、この世界線の俺はどうしようもないな...ドクペ、すなわちドクトルペッパーの略!マッドサイエンティストの心の渇きを潤す知的飲料だ!!お前にも1本やろう」

冷蔵庫からドクペを取り出しフェイリスの前に置くと、フェイリスは物珍しそうにラベルを眺めた。

フェイリス「凶真は、このドクペが好きなのニャ?じゃあ、遠慮なくいただくニャン」

フェイリスは、一口飲むなり声を上げた。

フェイリス「凶真、これおいしーニャ!フェイリスも、ドクペ好きみたいニャ!」

岡部「フゥーハハハ!やはりお前もまたドクぺに選ばれし賢者だったのだな!これもシュタインズゲートの選択!」


岡部「...では、これより第1回円卓会議を始める!」

フェイリス「ま、まさかその円卓会議というのは...天界の神々が、裁かれるべき罪人を選定するという――」

いや、アーサー王伝説だろ!またもや設定に設定を重ねるフェイリスの能力、ダビング10が発動したか...ほっといて進めよう。

岡部「まずは、この未来ガジェット研究所の創立宣言だ!これより、わが未来ガジェット研究所と、機関との戦いが始まる!!」

フェイリス「ニャウ~、血がたぎるニャ~」

岡部「まずはラボラトリーメンバー、つまりラボメン二ナンバーを与えよう...ラボメンナンバー001は当然、このラボの創立者にして狂気のマッドサイエンティスト、世界の支配構造を破壊する男、鳳凰院...凶真だッ!!」

フェイリス「凶真がナンバー1ニャ~♪」

岡部「続いてフェイリス・ニャンニャンよ、お前にはラボメンナンバー007を与えよう」

フェイリス「うニャ!?な、なんで7番なのニャ!?」

岡部「フ...これは前世から定められた宿命のナンバリング――」

フェイリス「いやニャ、いやニャ、いやニャ~~~!!凶真の次がいいニャーーー!!!」

岡部「な!?しかしこれは前の世界線から――」

フェイリス「ウニャーーー!!凶真のニャンばかぁーーー!!!」

岡部「う...わかったよ。ではフェイリス、お前はラボメンナンバー002だ!」

フェイリス「最初からそうしてればいいのニャ♪」

一瞬でフェイリスの機嫌は治った。そんなに002がよかったのか!?

岡部「まあいい、世界線が変わればナンバーも変わることがあるだろう。もちろん、二人で満足したわけではないぞ!これより、“オペレーション・エインヘリヤル;不死身の戦士召集作戦”を開始する!!」

フェイリス「にゃ??今度はどんな作戦かニャ?」

岡部「前世で共に戦ったラボメンたちを、再びラボに召集するのだ!まずはダル、まゆり、ルカ子の3人」

フェイリス「ダルニャンやマユシィもラボメンだったのニャ?明日からメイクイーンを再開するから、ダルニャンとマユシィはそこで勧誘すればいいニャ」

フェイリスから頼めば、この二人はすぐにラボに入ってくれるだろう。だが――

岡部「フェイリス、とりあえず明日はあの二人と仲良くなってみる。勧誘はそれからにしよう」

フェイリス「にゃ~~...凶真、大丈夫なのかニャ?正直、凶真のコミュ力は心配ニャ」

岡部「フッ、フォローは任せたぞ」

まあ、あの二人なら何とかなるだろう...

秋葉宅には、フェイリスの両親が戻ってきていた。今日からはラボがこの俺のすみかだが、お世話になったお礼くらい入っておかねば。マッドサイエンティストは恩を忘れない。小悪党とは違うのだよフゥーハハハ!

フェイリス「パパ!ママ!おかえりニャさい!」

秋葉父「ああ、ただいま、留未穂」

そういえばフェイリスは両親の前でもフェイリスだ。寛容なのか、あるいはこの人もHENTAI...いや、失礼なことを考えるのはよそう。...だが漆原氏は間違いなくHENTAIだ。

岡部「秋葉さん、大変お世話になりました」

秋葉父「岡部君、娘が世話をかけたね。せっかくだから、今日も泊まっていきなさい」

岡部「ええっ!?しかし、ご迷惑では?」

フェイリス「今更遠慮はいらないニャ!凶真らしくないのニャン♪」

やれやれ...まあ、フェイリスが楽しそうだからいいか。

秋葉父「そういえば、IBN5100を引き取ったそうだね?」

夕食の席にて、秋葉氏は思いだしたように尋ねてきた。

岡部「あ、はい。まずかったでしょうか」

秋葉父「いやいや、不思議なこともあるものだと思ってね。昔あれを譲ってくれた橋田さんが、2010年にあれを必要とする若者が現れる、そのときは彼に貸してあげてほしい、とおっしゃっていたんだよ。まさか本当にその若者が現れ、それが君だとはね」

岡部「あの、IBN5100をどうして柳林神社に奉納されたんですか?」

秋葉父「あれは、留未穂が誘拐されたとき...まあ本当は留未穂が家出していただけなのだが...その時タイミングよく、いや悪く?娘を誘拐した、といういたずらメールが届いてね。ちょうどその頃、IBN5100を高額で買い取りたいというフランスの実業家がいたんだよ」

岡部「そのフランスの実業家に売ろうと?」

秋葉父「うん。しかし、今度はIBN5100を絶対に手放すな、というメールがきてねぇ...橋田さんに頼まれたとおり、IBN5100は持っていないということで通したんだ。代わりに池袋の土地の、前々からあった売買の話を急いで取りまとめて身代金を作ったんだよ」

岡部「その短期間のうちに、よくそれだけのことができましたね」

秋葉父「あはは、何せ留未穂は、誕生日の4月3日に家出をして、次の日の夜まで帰ってこなかったんだ」

フェイリス「も、もうその話はやめるニャ~」

秋葉父「それで、一度でも手放そうとしたのが申し訳なくなってね。橋田さんに謝りに行ったら、柳林神社に預けておきなさい、と言われたんだよ。橋田さんは6月に亡くなったから、あれが最後になってしまった...」

岡部「そうですか、橋田さんが」

秋葉父「そういえば、あれから留未穂を甘やかしっぱなしだな。留未穂の家出の原因は、誕生日は一緒に過ごす、という約束を私が破ってしまったからだからね。池袋の土地を売ってできたお金も、留未穂の言うとおり、秋葉原に萌え文化を導入することに使ってしまったし」

岡部「ああ、そういうことだったんですね」

秋葉父「もし本当に誘拐されていたなら、逆に留未穂にまったく自由がなくなっていたかもね。あのときは、本当に心配で心配で仕方なかった...」

フェイリス「ニャ~、もうストップ!!あの時は悪かったニャ~~」

――

岡部「留未穂は、愛されているな」

部屋に戻ると、思わずつぶやいてしまった。この家族を壊さなくて、本当に良かった―――

この世界線でよくわからなかったことも、秋葉氏の話で大体分かった。ただ、一つだけまったくわからないことがある...


フェイリス「あの、はいってもいいかな?」

岡部「何か用か?はいっていいぞ」

フェイリスは静かに部屋に入ってきた。ネコ耳をつけてないどころか、いつものツインテールもおろしている。隣に座ると、ほのかにシャンプーの香りがした。どうやら風呂上がりのようだ...

フェイリス「その、特に用はないんだけどね、ええっと、明日からまたメイクイーンのお仕事だし、もうすぐ夏休みも終わっちゃうし、倫太郎さんも今日でいなくなっちゃうし...だから、そのぅ...」ボソボソ

...声が小さくてよく聞こえん。

岡部「...?そうだ、ちょうどお前に聞きたいことがあったんだ」

フェイリス「えっ!?う、うん。何でも聞いて」

岡部「えーと...なんでお前は俺のことが好きになったんだ?正直、趣味悪いぞ...」

フェイリス「そんなに変かな?前にも言ったと思うけど、あなたは自分で思っているよりも素敵だよ」

岡部「うっ...い、いや、その具体的な理由を詳しく教えてくれ」

フェイリス「うーん...私はね、昔から変わり者だったの。ネコにあこがれてて、ずっとニャンニャン言ってた」

岡部「それは、なかなかすごいな。いや、かわいいは正義、ということか」

フェイリス「でもね、小学校を卒業して中学生にもなると、周りはみんな大人になってきて、なんというか、浮いちゃって。それで、思い切って完全に留未穂とフェイリスを分けることにしたんだ」

岡部「...」

意味が分からんが、とりあえず口をはさむのはやめておこう。

フェイリス「そうしたら、なんか振り切れたというか、もうフェイリスで受け入れられちゃって...ホントは違う一面もあるのに、なんかフェイリスとしてしか見られなくなっちゃって...まあ、自分でやったことだし、不満があったわけでもないけどね」

岡部「...」

フェイリス「でもそこに、あなたが現れた。自分は、鳳凰院凶真だー!なんて言ってるのに、私には、嘘で塗り固められた女に興味はないって...あははっ、ビックリしちゃったよ!」

フェイリス「でも、私のことを普通の女の子としてみてくれて、それなのに変な話にも付き合ってくれて、口ではおかしなこと言ってても優しくて、何があっても自分を貫いてて...ふふっ、これだけあれば好きにもなるよ。な、なんか恥ずかしいなぁ」

岡部「お、おれのほうがはずかしい!...俺だ、機関の精神攻撃を――」スチャ

フェイリス「もう、留未穂と話してるときはそれ禁止!」パッ

岡部「ぬおお...」

携帯を奪われてしまった...なんだこれ!?なんだこれ!?

フェイリス「...あなたの知っているフェイリスは、違ったの?」

岡部「ああ、俺に対して特別な感情を持っているようには...」

フェイリス「きっと、そのフェイリスも...留未穂も、あなたのこと、好きだったと思うよ」

岡部「いや、そんな風には見えなかったが...」

フェイリス「それは、倫太郎さんが鈍感だから。意外と私って、恥ずかしがり屋なんだよ。いっつも恥ずかしいことやってるのにね。あなたと一緒かも」

岡部「う...」

フェイリス「きっとね、どんな世界で出会っても、秋葉留未穂は倫太郎さんを好きになるよ。ちょっと変わってるけど、留未穂の理想の王子様だもん!」

岡部「そ、そうか...ふー...ハハ...」


フェイリス「ああっ!もう、何言わせてるの!?思わず長々と...えーと、ええーと、そのー...お、おやすみなさい!!」

顔を真っ赤にして、留未穂は出て行った。


――結局、何しに来たんだ?まあいいか...


Chapter3


   非日常のアブダクション

今日はここまでにします。

では...

ちょっと再開します

――8月19日

フェイリス「あっ、凶真!おっはよーニャンニャーン♪」

朝、フェイリスは早速飛びついてきた。

岡部「ぬお!?お前、昨日はあんなにしおらしかったというのに!」

フェイリス「何のことかニャ?それは、フェイリスじゃないニャ~ン」

岡部「やれやれ...」

まあ、昨日の調子のままだったら、それはそれで困るんだが...

フェイリス「じゃ、フェイリスはそろそろ行くニャ。マユシィのシフトはお昼からだから、凶真もお昼ごろに来ればいいのニャ」

岡部「ふむ。ダルは今日メイクイーンに来ると思うか?」

フェイリス「ダルニャンは聖戦の傷をいやすために、今日は絶対来るはずニャン♪」

岡部「よしわかった。せいぜい空気を暖めておけよフゥーハハハ!」

まゆりは昼から、ということで、まずはラボに行くことにした。話題を考えねば!...って、何を緊張している!


綯「あっ、きょうまだ!」

岡部「い、いきなり呼び捨てだと!?」

天王寺「ん?なんだ岡部か。今日はあのネコ耳のお嬢ちゃんと一緒じゃねえんだな」

岡部「いつも一緒というわけではないのだよ。残念だったな、Mr.ブラウン」

綯「おれのまがん、りーでんぐしゅたいなーのまえでは、きさまらははだかもどうぜんだー!ふーははは!」

岡部「うぐぐぐぐぐ...」

こ、この小動物めがあぁぁぁ...

天王寺「オイ岡部、お前、ウチにこれを見に来たんだってな」

Mr.ブラウンは、店からダイバージェンスメーターを持ってきた。世界線の変動を数値化した、ニキシ―管のメーターである。

天王寺「ウチにあってもどうしようもねえし、やるよ、これ。鈴さんも、そのほうが喜ぶだろ」

岡部「あ、ありがとうございます」


綯「このほーおーいんきょーまの前にたちはだかるものは、すべてたおれるうんめいなのだ!ふーははは!」

...シスターブラウンよ、空気の読める大人になれよ。

「「おかえりニャさいませ、ご主人様!」」

フェイリス「あっ、凶真!...ニャフフ♪ご主人様、1名ご来店ニャーン♪」

フェイリスは、ダルの隣の席をわざわざあけてくれていた。

ダルはというと、フェイリスにくぎ付けである。客観視すると実に恥ずかしい。本人は全く気にしないだろうが。

岡部「アイスコーヒーとオムライスだ」

フェイリス「かしこまりましたニャ♪少々お待ちくださいませ、ご主人様♪」

ダル「うはー、フェイリスたんマジフェイリスたん!いやされるお...って鳳凰院氏!」

岡部「ああ...雷ネットの決勝戦、お前見に来ていたな」

ダル「そーッス!僕、メチャ感動しました!いやマジで!」

岡部「ダルよ、敬語はよせ。俺とおまえは同い年だ」

ダル「ちょ、マジで!?鳳凰院氏って僕とタメ!?なんという老け顔...んじゃタメ口でいいん?てかなんで僕のあだ名知ってるわけ?」

岡部「フェイリスは常連の中でもお前がお気に入りらしくてな。いつもお前のことを話している」

嘘である。

ダル「うおーーーー!!キタコレ!!ひゃっほう!これで勝つる!」

岡部「ところでダルよ、お前は東京電機大学に通っているな?」

ダル「なんで知ってるん?もしかして鳳凰院氏、僕のストーカー?...アッー!」

岡部「ダルよ、お前は知っているはずだ。我が魔眼、リーディングシュタイナーの力を。この狂気の(略)鳳凰院凶真に、見抜けぬことなど何もないのだ!!!フゥーハハハ!」

ダル「厨二病乙!...え、マジで?もしかして僕、モノローグ出ちゃってる?」

岡部「お前からそんなもんでたら、エロゲのことで埋め尽くされるだろ」

ダル「失礼な!フェイリスたんのこととかも入ってるにきまってるっしょ常考」

岡部「どーでもいい。実は俺も、岡部倫太郎という世を忍ぶ仮の名で東京電機大学に通っていてな」

ダル「うわ...平凡な名前だお。にしても鳳凰院氏と同じ大学とは...もしかして学部も?」

岡部「そうだ。ダルよ――」

まゆり「お待たせいたしましたニャン♪アイスコーヒーとオムライスですニャンニャン♪」

岡部「ん?おお、まゆりか」

まゆり「もー、まゆりじゃなくて、マユシィ・ニャンニャンだよ。えっと、ほーおーいんさん?」

ダル「あれ?鳳凰院氏とまゆ氏って知り合いなん?」

まゆり「えっへへ~。ダルニャン、ダルニャン、この人はね~、フェリスちゃんの――」

うお!?それはまずい!というかそれは秘密なんだろ!?

岡部「フ、フゥーハハハ!久しぶりどぅあな!まーゆりよ!!」

まゆり「え~?マユシィとほーおーいんさんは、ちょっと前に会ったばっかりだニャン?」

岡部「...いや、岡部倫太郎、という名前に憶えがあるはずだ。お前がまだ小さいころのことだ。よぉーく思い出してみろ...」

頼む、まゆりよ!憶えていてくれ...

まゆり「ん~、おかべ...。......あ~~~~~~~~~!!!」


あまりの大声に、店中がびっくりしてこっちをみた。

まゆり「オカリンだーー!オカリンでしょーーー!」

...よかった。

ダル「え?どゆこと?生き別れの妹的な?」

まゆり「あのねぇ、あのねぇ♪オカリンは、まゆしぃの幼馴染なのです!ちっちゃいころは、いっつもオカリンがあそんでくれたよね~。オカリンが引っ越しちゃった日、まゆしぃは悲しくて悲しくて、一日中泣いてたんだよ」

ダル「メイド喫茶で幼馴染のメイドさんと再会するとか...それなんてエロゲ?うらやましすぎっしょ鳳凰院氏!フェイリスたんのデュエルパートナーで、幼馴染までいて!ほかにも女教師とか、先輩とか後輩とか、妹とか義妹とか姉とか弟とか母親とか、ヒロインに囲まれまくってるに違いない!!!チクショー!バカバカバカーン!鳳凰院氏爆発しろ!」

岡部「そんな奴らはおらん。俺は妄想ではなく現実に生きる狂気のマッドサイエンティスト...まゆりよ、また会えてうれしいぞ」

まゆり「えへへ、まゆしぃもうれしいなー。ねえねえオカリン、元気だった?友達できた?マユシィは心配で心配で...」

岡部「フ、立場をわきまえろ、まゆり。お前は心配する側ではなく心配される側なのだ!...ゆえに、これからはこの俺が、お前を見守ってやろう!感謝せよ、フゥーハハハ!」

ダル「いきなり告白っぽいのキターーー!」

岡部「な、告白じゃない!」

ダル「雷ネット強くて、パートナーも幼馴染もネコ耳メイドさんって、リア充すぎね?鳳凰院氏、もう応援しないお」

フェイリス「...うにゃあ~、フェイリスなしで、フツーに盛り上がってるのニャ」

まゆり「あ、フェリスちゃん!あのねえ、このほーおーいんさんがね、まゆしぃの幼馴染だったんだよ~?なんだかすごいねえ♪もう会えないと思ってたんだよ」

フェイリス「ニャッフフ~、凶真もマユシィに会いたがってたから、よかったニャ。これもフェイリスのおかげかニャ?」

岡部「ああ。ありがとう、フェイリス」

フェイリス「ニャニャ!?」

ダル「イケメンボイスキターーー!鳳凰院氏がリア充過ぎて世界がヤバい!」

フェイリス「そんなダルニャンには、コーヒーのおかわりだニャン♪それと、これはサービスニャ!」

ダル「まさか...で、出たーーー!フェイリスたんの、目を見て混ぜ混ぜ!!」

そう、これはフェイリスのみが可能な必殺技。相手の目を見つめながらコーヒーを混ぜる、恐るべき萌え奥義。相手は死ぬ。

フェイリス「ニャンニャン、ニャンニャン♪」


ダル「うっ...ふう。僕、もう死んでもいいお」

ダル「」

まゆり「あ~あ、ダルニャン、変なふうになっちゃったニャン」

岡部「今更だな、まゆりよ」

――

ダルとまゆりの連絡先は手に入れた。明日にでもラボメンに勧誘するか。

フェイリス「凶真が思ってたよりずーっとちゃんとおしゃべりべきてて、フェイリスはなんだか複雑な気分ニャー」

ラボに戻るなり、フェイリスが妙なことを言ってきた。

岡部「当然だ。奴らのことは知り尽くしているからな」

岡部「フェイリス、明日あの二人をラボメンに勧誘する。お前からもフォローを頼むぞ」

フェイリス「任せるニャ!...それにしても、マユシィにあ~んな告白みたいなこと言って、ちょっと妬いちゃうのニャ~」

岡部「何を言ってるんだ。まったく...おまえの“目を見て混ぜ混ぜ”だの、“直接フーフー”だのの方が...いや、なんでもない」

フェイリス「フニャ!?もしかして凶真も、妬いちゃったのかニャ?」

岡部「妬いとらん!そんなわけあるか、そんなわけあるか!」

フェイリス「んーーー...」ジーッ

フェイリス「...ニャフフ、やっぱり凶真も照れ屋さんだニャ♪申し訳ニャいけど、フェイリスはみんなのフェイリスだから、あれくらいは我慢してほしいのニャ♪」

岡部「だから違うといっているだろう...これも機関の陰ぼ――」


フェイリス「でも、留未穂は、倫太郎さんだけのものだからね」

岡部「...」


岡部「...俺だ。今、機関は恐るべき刺客を送り込んできた...」スチャ

岡部「ああ、そのまさかだ...そう、機関の幹部の一人、“メンタルブレイカ―;精神破壊”による攻撃だ...くっ、耐えろ、だと!?おのれぇぇぇ...これもシュタインズゲートの選択ということか...エル・プサイ・コングルゥ...」


フェイリス「...あ、あっ、凶真!黒木が迎えに来てるから、フェイリスはそろそろ帰るニャ!」

フェイリスはついさっきまでそばにいたのに、いつの間にやら出口まで移動していた。なぜか目を合わせてこない。

フェイリス「じゃ、凶真!また明日ニャン!」

やれやれ、困った猫娘だ...

えー、今日はこの辺で。

結構きついから、これからは刻んでいきます...

体力が余ってるから今日も更新します。

――8月20日

今日もまゆりは昼から、ということで、昼にメイクイーンへ向かう。すると、何やらカメラを手にしたオタク達が群がっている。

るか「あの...こまります、こういうのは...」

ルカ子だ...そうか、これがシュタインズゲートの選択!

オタA「いいじゃんいいじゃん、そんな巫女服のコスプレでアキバ来るってことは、写真撮られたいんでしょ、デュフフ」

オタB「なんだよ、俺たちみたいなキモオタはいやだっての~?」

るか「そうじゃ、なくってぇ...その...ええと...これは、コスプレじゃなくて...」


岡部「おい、そこのカメラ小僧ども!やめてやれ、嫌がっているだろう!」

オタA「いや...誰お前?嫌がってるって、コスプレしてアキバ来るって、そういうことだろ!?」

オタB「そ、そうだそうだ!なんか、カッコつけてるつもりだろうけどさ、ウザ」

オタC「てか、美少女がコスプレしてたら、写真撮るのは当然っしょ」

るか「だから、これはコスプレじゃないんですぅ...それに、ぼく、男なんです!」

オタA「はぁ?何言ってんの?こんなにかわいい子が男のはずが...」

るか「ほ、ほんとなんです!...ほら、喉仏もあります...」

ルカ子は上を向く。喉仏はともかく、その仕草は色っぽい。だが男だ。

オタB「えっ...うわっまじだ!うそだ!こんなにかわいい子が...」

岡部「愚かだな、カメラ小僧ども。こんなにかわいい子が女のはずがない、だろう?」

オタC「うわー、騙されたよ最悪...」

オタA「ていうか、男のくせにそんなコスプレするとかマジありえん...」

オタB「イミフ...」

ローアングラーのオタク達はとぼとぼ去っていった。フン、レベルの低いオタどもめ。

るか「あの...一昨日、うちの神社にいらっしゃった方ですよね?ええと、凶真さんでしたっけ。助けていただいて、ありがとうございます...男なんて助けて、がっかりですよね...」

岡部「フ...男だとか女だとか、、そんなことはどうでもいい」

るか「えっ、ええっ!?ど、どうでもいいって...」

岡部「それより、この趣都秋葉原を防衛するべき神聖なる巫女が、こんなにひ弱なのはいかんな!ついて来い、ルカ子よ!」

るか「あ、あの...どこに?」

岡部「ルカ子よ、お前に妖刀を授けてやろうというのだ!フゥーハハハ!」

――

武器屋本舗で妖刀五月雨(税込980円)を買うと、ルカ子とともに柳林神社にやってきた。

岡部「さあルカ子よ!その妖刀五月雨をふるうのだ!五月雨を使いこなした時、お前は清心斬魔流のすべてを習得し、アキバを守護する防人として覚醒することになるだろう!」

るか「は、はいっ!」

ルカ子は素直だなぁ...ある意味不安になるレベルだ。

るか「えいっ...えいっ...」

必死に五月雨で素振りするルカ子。汗が滴るその姿は美しい!だが男だ。

るか「す、すいません凶真さん...もう腕が上がりません...」

岡部「5回か...まだまだだなルカ子よ。修行を怠るなよ」

るか「は、はいっ!...その、また修行、みていただけますか...?」

岡部「もちろんだルカ子よ。お前は俺の弟子なのだからな」

るか「弟子、ですか...とっても、うれしいです...あの、ありがとうございます!」

うっ...!だ、だが男だ...男男男男男...


岡部「ではルカ子よ、ねぎらいに、いいところへ連れて行ってやろう!」

「「おかえりニャさいませ、ご主人様♪」」


るか「えっ...えええっ!?」

ルカ子は茫然としているまあ、そうだろうな。

フェイリス「あっ、凶真!遅いニャー。...あれ、ルカニャン?おかえりニャさいませ♪」

るか「あっ、えーと...秋葉さん?」

フェイリス「もー、フェイリスは、フェイリスニャ!」

るか「ご、ごめんなさい!フェイリスさん...」

岡部「フェイリスよ、あまりいじめてやるな。席に案内してくれ」

フェイリス「はーい!ご主人様二名、ご案内ニャーン♪」

フェイリスは、今日もダルのいる席へと案内してくれた。

ダル「あ、鳳凰院氏、今日も来たん?って、巫女さんと一緒、だと!?今度は巫女さん?これなんてエロゲ?」

岡部「黙れダル。ルカ子は男だ。ゆえにエロゲではない」

ダル「男!?マジ!?男の娘キターーー!やっぱエロゲだった件について。てか鳳凰院氏何者なん?ラノベの主人公?」

るか「ええっ!?ど、どういうことですか?」

岡部「フ...つまりダルは、ルカ子が男でも女でも萌えられる、ということだ」

ダル「むしろご褒美です!てか、こんなにかわいい子が女のはずがない!」

岡部「フェイリスはどうなんだ?」

ダル「フェイリスたんは別。フェイリスたんは僕の嫁だから」

岡部「意味が分からん」

まゆり「あれ?ルカ君?トゥットゥルー♪」

るか「えっ!?ま、まゆりちゃん!?」

この二人は、この世界線でも同級生のようだな...

まゆり「うわーい、ルカ君だー!!なになに、ネコ耳メイドさんに興味があるの?えっへへ~、やっとコスプレに興味が...」

るか「ち、違うよ、えっと...凶真さんに、連れてきてもらって」

まゆり「えー、オカリン、ルカ君と知り合いだったの!?」

岡部「ルカ子は俺の弟子だ」

ダル「弟子ってなんの?」

岡部「このアキバを守護するものとしての、だ!」

ダル「厨二病乙!」

岡部「ちょうどいい。お前たち、聞け!お前たち三人を、今日よりわが未来ガジェット研究所のラボメンとしよう!フゥーハハハ!」

ダル「未来ガジェット研究所、ってなんぞ?」

フェイリス「それは、フェイリスと凶真がこのアキバに設立した、機関と戦うための組織だニャン!」

いつの間にやら、フェイリスがやってきていた。

ダル「フェイリスたんの厨二病ペロペロ」

岡部「...なんでフェイリスのはペロペロで俺のは乙!なのだ」

ダル「鳳凰院氏の厨二病は誰得だけど、フェイリスたんの厨二病は属性だから」

まゆり「かわいいは正義なんだよ~?」

るか「ええと、つまりどういうとなんですか?」

フェイリス「まあまあ、ちょっとフェイリスたちに付き合ってほしいのニャ♪お願いニャ~ン♪」

ダル「フェイリスたんのお願いとか、断るわけないっしょ!参加します全力で!!」

まゆり「なんだかよくわからないけど、フェリスちゃんとオカリンに頼まれたら、ことわれないよ~」

るか「ボ、ボクもよろしいんですか?」

岡部「無論だ。では、フェイリスとまゆりのバイトが終わり次第、ラボに向かうぞ!」

――

岡部「――というわけで、わが未来ガジェット研究所の説明を終える。何か質問はあるか?」

ラボに三人を連れ帰り、さっそくラボの趣旨を説明した。

ダル「なんかよーわからんが、フェイリスたんもいるし、メイクイーンも近いし、はいってもいいお」

岡部「本当か!?助かる!さすがスーパーハカー、いい判断をしたな!お前は今日からラボメンナンバー003、マイフェイバリットライトアームだ!」

ダル「日本語でおk。てかハカーじゃなくてハッカーだろjk」

まゆり「なんだか楽しそうだし、まゆしぃもOKだよ~」

るか「あの、ボク、研究とか開発とか何もできないですけど、よろしくお願いします!」

岡部「フゥーハハハ!まゆりよ、お前は今日からラボメンナンバー004だ!そしてルカ子、お前にはラボメンナンバー005を授ける!」

よし、勝った!第三部完!

フェイリス「やったニャ~!みんな、ありがとニャ♪早速今夜はパーティニャーン!!」

岡部「よし、ダルよ。ピザでも何でも好きなだけ注文するがいい。今日はこの鳳凰院凶真がすべて出してやろう!!フゥーハハハハハ!!!」

ダル「さすが鳳凰院氏!僕たちにできないことを平然とやってのけるッ!そこにシビれる憧れる!」

まゆり「オカリーン...そんなにお金あるの?」

岡部「雷ネットの大会の優勝賞金があるからな。まゆりは何も心配するな」

ダル「なんかイケメンボイスもキターーー!」

――8月21日

あくる日、さっそくダルがラボに現れた。アキバにあるラボは、メイクイーンも近くダルにとってかなり都合のいい場所だ。昨日ラボメンになったばかりだというのに、もう最新のPCをラボに持ち込んでいる。

...ダルがいれば、電話レンジ(仮)を作ることができる。今はIBN5100もあるし、用心さえすればSERNに見つかることはない。

岡部「さて、ダルよ。早速未来ガジェットを制作するぞ!」

ダル「だが断る」

岡部「な、なぜだ!?」

前の世界線では、なんだかんだダルはいろいろ作ってくれた。ソフトにもハードにも強いスーパーハカーにしてマイフェイバリットライトアーム...もしかして、好感度が足りない?エロゲじゃあるまいし...だが、何が起こるかわからないこの世界線、一刻も早く電話レンジ(仮)は作っておきたい!

ダル「こーいうのは報酬を用意するべきっしょjk。つーわけで、なんかプリーズ!主にフェイリスたん関係のものキボンヌ」

岡部「ふむ...では、未来ガジェットを制作する代わりに、フェイリスと一日デートする権利をやろう!」

ダル「...マジで?」

岡部「ああ。この狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真に二言はない!!!」

ダル「オカリン、あんた今、最高に輝いてるぜ...」

岡部「まずはダルよ、この電子レンジと、この古い携帯を接続し、遠隔操作できるようにするのだ!わがIQ170の灰色の脳細胞は、すでにその構想を完成させている!フゥーハハ...ん?今オカリンっていったか?」

ダル「いや、まゆ氏がオカリンって呼んでるし。なんかそっちのほうがしっくりくるんだよね」

...訂正しようと思ったが、思いとどまった。これでいいんだ。このほうが、いい。

――

フェイリス「え~~~!?ダルニャンとデート!?ニャ、ニャンでそんな勝手に~!!」

フェイリスは思っていたよりも怒った。...そんなにダルが嫌か?

岡部「ちょ、声が大きい!開発室のダルに聞こえるだろ!?」

まゆり「オカリン...まゆしぃはガッカリなのです」

何にガッカリしているんだ?そ、そんなにまずかったのか?

フェイリス「凶真はホントに乙女心が分かってないのニャ~...」

岡部「すまんフェイリス、いくらでも埋め合わせはする!頼む、ヤツの力が必要なんだ!」

フェイリス「...まあ、今回だけは許してあげるニャ。ダルニャンとデー...お出かけするのは、なんか楽しそうだし」

まゆり「え~~~...フェリスちゃん甘いよ~」

ふう、助かった...ダルがいやなわけじゃなかったのか...?


フェイリス「......凶真のニャンばか」

えー今日はおしまいです。寝ます。

いまさらですが、投下速度ってこれぐらいでいいでしょうか?書いてるとよーわからんくなります。

読んでるぜ面白い

投下は主の好きなようにしておkかと

フェイリスたんをバックから思いっきり突き上げて昇天させたい

>>174
ありがとう。やりやすいようにやります。

>>176
ダル君はえっちだね~

再開します。

――8月29日

ダル「嘘...だろ!?」

フェイリス「な、なんてことニャ!?」

電話レンジ(仮)は完成した。前の世界線と同じように。さらに、誤作動によってバナナをタイムスリップさせることにも成功した。

ダル「オカリン、これってどゆこと?なんでバナナがゲル状になってんの?ていうか、ちぎったバナナが房に戻ってるし...」

岡部「この電話レンジ(仮)の中で、ブラックホールが発生したのだ。そこを通過することにより、バナナは圧縮されてゲルバナ化し、そして時をさかのぼったのだ」

ダル「ええー...厨二病乙...」

フェイリス「そ、それはリーディングシュタイナーの力で知ったこと?」

岡部「...そうだ」

フェイリスにはこれで伝わっただろう。ダルはまだ怪訝な顔をしているが...

Dメールも試しておきたいが、その前に、SERNへの、さらにIBN5100によるエシュロンへのクラッキングが必要だ。


岡部「ダルよ、このタイムマシン、さらに強力にしたいとは思わんか?」

ダル「タイムマシンて、もう決めつけてる件について」

ダル「まあ、多少興味はわいてきた罠。でもさ、これ以上何もできないと思われ」

岡部「ブラックホールについて研究している機関が存在するだろう?欧州原子核研究機関、通称SERNだ。奴らは、その所有するLHC、ラージハドロンコライダーによってブラックホールを生み出し....」

ダル「ちょ、ちょい待ち!たしかにSERNはLHCたそでブラックホールを生み出してるんじゃないかとか言われてたけどさ、SERNは公式にそれを否定してるお!いくらなんでも妄想が過ぎるっしょjk!」

岡部「LHCたそってなんだ。無機物に萌えるのはさすがにキモいぞ、ダルよ....確かに、SERNの言うとおりかもしれん。だが、確かめてみる価値はある。....SERNを、ハッキングしろ」

ダル「....マジで言ってるん?」

岡部「不可能なのか?スーパーハカーよ」

ダル「....オカリン、ちょっと二人で話し合いたいお」

岡部「....わかった。フェイリス、少しはずしてくれ」

フェイリス「フニャ、わかったニャ」

フェイリスは珍しく素直だった。ダルがいつになく真剣だからだろう....

ダル「いくらなんでも危険すぎるっしょ!だから、それに見合った報酬を要求させてもらうお!」

岡部「いいだろう、ダルよ。何でも言うがよい」


ダル「安西先生....!!フェイリスたんのおぱんちゅがほしいです....」

岡部「なん....だと!?」


岡部「お前、デートだけじゃ不満なのか!?お、お、お、おぱんちゅだとお!?」

ダル「いやだってさ、こんな危険なことすんだから、萌えるものがほしいわけで」

お、俺なら不可能ではないかもしれんな....だが....

岡部「ダルよ、それはできん。お前の要求には答えてやりたい。だが、だからと言ってフェイリスを傷つけていいことにはならん」

ダル「オカリン....」


ダル「その言葉が聞きたかった」キリッ

岡部「おお、わかってくれるのかダルよ!」

ダル「ま、サンボの牛丼10杯くらいで勘弁しといてやるお。まあ、あわよくば的なものはありましたけども?」

岡部「フ....ダルよ、お前の二次元の嫁達も泣いて喜んでいることだろう....フェイリスのパンツはやれんが、代わりにこれをやろう!フゥーハハハ!」

ダル「なんぞこれ」

岡部「白衣だ!これぞ研究機関の人間の正装!さあ、ともに白衣とたなびかせるのだ!知的にな!」

ダル「いや、イラネ」

――8月31日

ダルによるSERNへのハッキングは三日間に及んだ。俺はその間に、電話レンジ(仮)とX68000を接続しておいた。これで、どの時間にもDメールを送れるようになった....はずだ。

まゆり「まゆしぃはねー、悪いことは、よくないと思うのです」

るか「え、ええと....」

まゆりとルカ子は夏休みの課題をやっている。今日で夏休みも終わりか....結局、なにも起きなかったな。

岡部「お前たち、もう遅いから、そろそろ帰るんだ。送っていこう。明日から学校だろ?」

まゆり「うん....でもね、あんまり危ないことは、しちゃダメだよ?」

岡部「....ああ」

危ないこと、か。正直、ラボメンを集め、そして電話レンジ(仮)を再び作ったことが、まゆりやラボメンたちを危険にさらすことになっているのかもしれない。だが、この世界線は不安要素が多い。Dメールを用意してその危険に備え、仲間をそばで見守りたいという気持ちのほうが強かった。

――

二人を送り、戻ってくると、フェイリスが話しかけてきた。

フェイリス「ここまで教えてもらったのに、最後だけは見せないっていうのは、なしニャ!」

どうやら考えを読まれているようだ....仕方ないな。おそらく、そろそろのはずだ。


ダル「....キター!ひゃっほう!死ね!氏ねじゃなくて死ね!」

岡部「よし、成功したんだな!?」

ダル「フッ、スーパーハッカーにできないことはないのだぜ?」

フェイリス「ダルニャンすごいニャ!明日からはフェイリスデレが、メイクイーンでおかわり自由ニャン♪」

ダル「役得キター!早速肩とかもんでほしいお!あ、あててんのよ状態ならなおgood」

岡部「その前に、ハッキングした中身を調べるぞ。ダルよ、SERNのデータの中に解読できないシステムデータはないか?」

ダル「んー、あ、なんかあるお。....なにこれ、わけわかんね」

そこで表示された解読不能のプロフラミング言語で構成されたデータは、やはり見覚えのあるものだった。

岡部「エシュロンだ!やはりあったのか!」

ダル「いや、エシュロンて....厨二病乙」

岡部「SERNはタイムトラベル技術の独占のため、世界中のタイムマシンにかかわる研究者や施設を見張る通信傍受システムを所有している!それがこの、IBN5100独自のプログラミング言語で構成されたエシュロンなのだ....」

ダル「IBN5100って、あの幻のレトロPCのこと?確かにIBN5100には独自のプログラミング言語があるらしいけど....てか、なんでそんなに言い切れちゃうん?そこがすごく疑問なわけだが」

フェイリス「ダルニャン、凶真は今はウソをついてないニャ」

ダル「信じます、全力で!」

フェイリスがいれば、ダルの操縦は簡単だな。それでいいのか、ダルよ。

岡部「まあいい。ダルよ、そこにIBN5100がしまってある。これがあれば問題ないな?」

ダル「あんのかよ!....これが本当にIBN5100のプログラミング言語なら大丈夫じゃね」

岡部「....では、SERNのほうを調べよう。何かタイムトラベルに関係ありそうなものはあるか?」

ダル「このZプログラムって怪しくね?英語でよーわからんけど」

岡部「....ここに、ブラックホール生成に成功、と書いてある。それに、ここは時空転移実験、だ」

ダル「....マジ?」

どうやら、この世界線でも、SERNはタイムトラベルの研究を行っている。つまり....

岡部「....ここには、人体実験と書いてある。ヒューマンイズデッド、ミスマッチ。詳細はゼリーマンズレポート参照」

フェイリス「ヒュ、ヒューマンイズデッドって、まさか....」

ダル「ゼリーマンズレポートって、これ?なんか見るの怖いお....」

岡部「ダルよ、足がつくようなことはないよな?」

ダル「今更かよ!僕はそんなヘマしないお!」

岡部「そうか。まあ、そうだよな....俺は、確認しなければならん。お前たちは帰ってもいいぞ。特にフェイリスは――」

フェイリス「凶真、フェイリスは凶真と一緒に戦うって約束したニャ!何があっても、最後まで付き合うニャン。だから、信じてほしいニャ....」

ダル「ちょ、なんか固有結界っぽいもの出てる!オカリン許さない絶対にだ!....ま、僕もここまで来たら引けないし?フェイリスたんが見るっていうなら、僕も見ないわけにはいかん罠。」

ダル「ていうか、僕のハッキングがばれるわけないんだから、別に問題ないっしょ」

岡部「....わかった。じゃあダル、頼んだぞ」

ダル「オーキードーキー!」

ダルが、カーソルを合わせてクリックした瞬間、

フェイリス「....!!!」

ダル「ちょ....!?」


SERNは、やはりこの世界線でも人体実験を行っていた。

ゼリーマンズレポートには、タイムトラベル実験に失敗し、ゲルバナの如くゲル化した人間だった者たちが、いくつも記録されていた――


 Chapter4


   回帰輪廻のコンバージェンス

今日はここまでです。

ダル回でした。

再開

――

あの日から数日後、俺たちはIBN5100によってとうとうエシュロンを解読した。

まゆり「ハッキングはねー、悪いことなんだよー?」

岡部「まゆりよ、これはやらねばならない重要なことなのだ!」

ダル「オ、オカリン!本当にできたお!....ってなんじゃこりゃ!?うげ、すげーデータ量....」

岡部「ふむ....ダルよ、エシュロンの仕組みを解析できないか?」

ダル「ん~....なんか20年ぐらい前のメールとかまであるっぽい。なんか基準があると思うんだけど....」

ダル「....あ、あったお。どうも、特定のワードに反応してメールを捉えてるっぽい」

岡部「特定のワード....?過去や未来から送られてきたメールを捉えている、とかではないのか?」

ダル「何ぞそれ?そんなのないお」

フェイリス「そもそも、送受信日時なんてケータイの故障とかバグで変になっちゃうこともあるニャ。メールアドレスなんかもすぐに変わっちゃうものだし、送受信日時やメールアドレスより特定のワードに反応してメールを捉えるほうが、はるかに確実で合理的だと思うニャ」

岡部「た、確かに....」

前の世界線では、最初のDメールがエシュロンに捉えられたことが原因で、まゆりの死とSERNのディストピアに収束することとなっていた。その最初のDメールは『牧瀬紅莉栖が 男に刺された ――』というメールだったはず。送信日時もメールアドレスも関係ないとしたら、その特定ワードというのは....


岡部「牧瀬紅莉栖だ!!」

フェイリス「にゃ!?ビ、ビックリしたニャ」

岡部「ダル、特定ワードの中に『牧瀬紅莉栖』が含まれてないか調べてくれ!」

ダル「牧瀬紅莉栖って、あのサイエンス誌に論文が載った天才少女っしょ?なんで?ちょいまち、今から特定ワードの一覧出すから」

しばらくすると、ダルは特定ワードの一覧を出してくれた。そこには、世界中の著名な研究施設や研究者の名前などがあり――

ダル「牧瀬紅莉栖もいるお。日本語とか、英語とか、フランス語とか、いろんな言語で登録されてるっぽいよ」

岡部「そうか....」

つまり、あの最初のDメールは、牧瀬紅莉栖というワードが引っ掛かったわけだ。そして、それがたまたま未来から送られたメールで、タイムトラベルの研究をしていたSERNはそれに目を付けた。そういうことだったのか。

フェイリス「んー...フミャあ!?ここ、フェイリスのパパの名前がある!!」

ダル「えっ、フェイリスたんってパパがいるの?てっきり天から降ってきたのかと」

岡部「バカなことを言うな。....妙だな。秋葉原の大地主というだけで、エシュロンに登録されるものなのか?」

フェイリス「そ、そういえば、パパはタイムマシン研究をしているDr.中鉢っていう人と古い友達で、資金援助をしていたこともあるニャ」

岡部「Dr.中鉢!?あの胡散臭いおっさんと!?そうだったのか!?」

フェイリス「でもでも、そんなことで目をつけられたら、たまったもんじゃないのニャ~....」

確かに、少しおかしい気がするな。

岡部「よし、では、メールを過去に送る実験を始めるぞ」

ダル「いや、いきなりそんなこと言われても意味わからんのだが」

まゆり「えー、メールを過去に送れるの~?」

るか「そ、それって本当ですか?」

今までよくわかってなかったまゆりとルカ子も、これには反応してくる。

岡部「ああ、エシュロンは我々の手に落ちた!もはやこの実験に障壁はない!」

ダル「なんかオカリン、全部知ってたみたいなんだよね。これってどゆこと?」

フェイリス「これは、凶真の魔眼リーディングシュタイナーの力ニャ!」

ダル「フェイリスたん、それマジで言ってるん?」

フェイリス「....ダルニャンは、フェイリスの言うことが信じられないのかニャ?」

ダル「信じます、全力で!」

それでいいのか、ダルよ。


前の世界線と同じように操作すると、電話レンジ(仮)は放電現象を起こした。

まゆり「わわー!な、なになに!?」

るか「ま、まゆりちゃん、あぶないよ!」

フェイリス「フニャ!時空を超えるパワーがあふれ出てるのかニャ!?」

岡部「よし、送信!」

特定ワードが含まれておらず、過去も変えられなさそうなDメールを、過去の自分に、送信。

....リーディングシュタイナーは、発動しない。

岡部「ダル、エシュロンを確認してくれ!」

急いで携帯の受信履歴を確認する。....受信している。成功したか。

ダル「オカリン、エシュロンには捉えられてないお!」

岡部「本当か!?見せてくれ!」

どれだけ待とうが、何度探そうが、エシュロンにDメールが捉えられた痕跡は現れなかった。

岡部「....フ、フフフ....フゥーハハハ!とうとう機関を出し抜いたぞ!」

これで、SERNに見つかることなくDメールを使うことができる。これがあれば、SERNのディストピアも阻止できるかもしれない!

岡部「....俺だ!....ああ、ついにやった!」スチャ

岡部「機関に対抗する武器がとうとう手に入ったのだ!....フ、もちろん警戒は怠らんさ....そう、この戦いこそが宿命....そしてシュタインズゲートの選択!....ああ、任せておけ....エル・プサイ・コングルゥ」

まゆり「??オカリン、誰と電話してるのー?」

フェイリス「にゃははは、あれは凶真のケータイが毒電波を受信してるのニャン♪そう、あの電話の向こうにいるのは“インビシブル・オペレーター;見えざる闇の交換手”ニャ!」

ダル「厨二病乙!でもフェイリスたんは許される!不思議!」

まゆり「かわいいは正義なんだよねー♪」

るか「おか、凶真さんもかっこいいですよぉ....」

岡部「....お前たち、この電話レンジ(仮)については、このラボの最高機密とする!SERNは人体実験もする危険な連中....奴らがどこに潜んでいるかもわからん。このことは誰にも言うな!親にも、友達にもだ!」

るか「は、はい!絶対、誰にも言いません!」

まゆり「うん、わかったー。まゆしぃは結構口固いから、大丈夫だよ」

ダル「うへえ....なんかまたヤバい気がしてきたお....」

フェイリス「ニャニャニャ....奴らはすぐそこまで迫っているのニャ....」

....怖いことを言うな。

――10月23日(土)

....あれから、一か月半もの間、進展がない。紅莉栖がいなければタイムリープマシンは作れないし、鈴羽がいなければ何をすればいいのかもわからないのに、二人には会えそうな気配もなかった。

とはいえ、何事もないのが一番なのだ。今のところ、危険な兆候は何もない。もしかしたら、この世界線はこのまま平和に進んでいくのかもしれない。昨日のラボでのやり取りだって、平和そのものだった。

~~~

岡部「フゥーハハハ!できたぞ!未来ガジェット8号機、『攻殻機動迷彩ボール』だ!」

ダル「ちょ、もう名前決まってんの!?またすかオカリン!ほとんど僕が作ったのに!」

まゆり「ピカピカしててきれいだねー」

ダル「....まゆ氏まゆ氏、カピカピしてるって、もう一回行ってくれない?」

まゆり「カピカピしてる?」

ダル「じゃあ、その前に、このティッシュって――」

岡部「自重しろこのHENTAIが!」

ダル「HENTAIじゃないよ!HENTAI紳士だよ!」

るか「は、橋田さん....そんな、今のって....」

ダル「真っ赤になって恥ずかしがってるルカ氏キタコレ!ああ、もっとさげすんだ目で....」

フェイリス「ダルニャン、キモイニャ」

ダル「うっ!........ほぼイキかけました」

フェイリス「それに、その『攻殻機動迷彩ボール』って名前も悪くないけど、フェイリスは“コズミック・ベネディクション;小宇宙の祝福”って名前のほうがかわいいと思うニャン♪」

岡部「か、かわいい!?....か?ていうか、そのネーミングはイタすぎる!」

ダル「本日のお前が言うなスレはここですか?とりあえず、僕はフェイリスたんに賛成だお!」

まゆり「どっちもおぼえにくいよ~」

るか「えっと、どちらも素敵じゃないかと....」

フェイリス「ニャフフ、じゃあ決定!この子は、“コズミック・ベネディクション”ニャン♪」

~~~


フェイリスは、かつての未来ガジェットの名前を、次々と厨二病全開の名前に書き換えていった。1号機である電話レンジ(仮)は別として、そのままの名前で許されたのは2号機のビット粒子砲と、5号機のモアッド・スネークのみである。

3号機のタケコプカメラーは“アガシオン・オブ・アザゼル;監視者たる天使の使い魔”。
4号機のもしかしてオラオラですかーッ!?は“ファイナルジャッジメント;最後の審判”。
6号機、またつまらぬものをつないでしまったby五ェ門は“インフェルノ・ブレス;地獄の吐息”。
さらに7号機、サイリウムセイバーは“ブラッディ・エクスカリバー;血塗られし勝利の剣”。

半分はダルのせいだ。何でもかんでもフェイリスに賛成しおって!甘やかしすぎだ!

にしても、実にイタいネーミングセンスである。どう育てばあんなふうになるんだ、まったく....

――

るか「あっ、岡部さん、じゃなかった凶真さん」。おはようございます」ガチャ

岡部「ルカ子か、おはよう。聖戦に挑む覚悟はできたか?」

るか「は、はい!バッチリしてきました」

岡部「ならよい。お前は俺の弟子だ。清心斬魔流の奥義でもって、敵を蹴散らすのだ!おまえならできる!」

るか「うう....でも、そんなふうに期待されるのは....」

ダル「ん?二人とも早いお。」ガチャ

岡部「ダルよ、遅いぞ。お前が一番燃えていただろう」

ダル「いやー、今日のシミュレーションしてたら、なかなか眠れんかったわけで」

岡部「では、三人そろったところで、ヴァルハラへ向かうぞ!」

ちょっと中途半端だけど今日はここまでです。実質話が全然進んでないけど、もうすぐ話も動くんで。

明日は昼に更新します。昼と夜って住人も違うのかな

久しぶりに読み返してみたら、誤変換はともかく文章抜けてるとこあった....

>>63冒頭
岡部「フェイリス、本当に今の俺と一緒にいるつもりなのか?」

今更だしそこまで問題もないけど

というわけで再開します。

>>63

「「おかえりニャさいませ、ご主人様♪」」


岡部「ハア、それにしても何でこんなことをしなきゃならないんだ?」

ダル「いや、さっきまでノリノリだったわけだが」

岡部「なんだかだんだん嫌になってきたのだ....」

ダル「ヘタレ乙!」

言い返そうとした時、店内にマイク越しのフェイリスの声が響いた。

フェイリス「みんなー!今日はフェイリスのために集まってくれて、ありがとニャー!!!」

ダル「フェイリスたーん!今日もかわいいお!」

フェイリス「じゃあ、さっそくフェイリス杯開幕ニャー!」

オタク達「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」

フェイリス杯とは、メイクイーンで定期的に開催される雷ネットの大会である。優勝賞品はフェイリスの手料理。だが、最後にフェイリスに勝利しなければならないため、それを手に入れた者はいない。

フェイリス「最後に勝った人には、フェイリスの手料理を、フェイリスがあーん、って食べさせてあげるニャ♪」

ダル「バカな、進化しているだと!?」

フェイリス「今日はー、フェイリスの代わりに、この人がお相手をするニャン!フェイリスのデュエルパートナー、鳳凰院凶真ニャ!」

オタク達にざわめきが広がる。

オタA「フェイリスたん相手じゃなかったら本気で行けるぜ!」

オタB「ムフフ、フェイリスたんのデュエルパートナーとか、うらやま死刑」

オタC「でも、あの狂気のマッド雷ネッター相手とか....」

オタD「関係ねえ!フルボッコ決定」

くそ、好き勝手いいおって....こうなったらやけくそだ!

岡部「フゥーハハハ!オタクどもよ!フェイリスの手料理あーんを手に入れたくば、この狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真を見事打倒して見せろ!まあ、不可能だろうがなぁ!!」

るか「きょ、凶真さん!かっこいいです!」

ダル「ちょ、ルカ氏!ちゃんと戦ってくれないと困るぞぅ!」

なぜルカ子までこの大会に参加しているのか....それは少しでも勝利の確率を上げたいダルに土下座で頼まれたからだ。ルカ子が優勝した場合、優勝賞品はダルが受け取る約束だ。

ダル「というわけでオカリン、あとは分かってるよな?」

岡部「その前に、まずは予選を勝ち上がれ」

ダル「オーキードーキー!」


4ブロックに分かれて予選が始まった。俺が主催者席のほうに移動すると、まゆりがニコニコして近づいてくる。

まゆり「トゥットゥルー♪オカリン、コーヒーどうぞニャン♪」

岡部「ああ、すまんな」

まゆり「ダル君燃えてるね~」

岡部「フッ....よっぽどフェイリスの手料理がほしいんだろう。浅ましいやつだ」

まゆり「あのねえ、あのねえ!ルカ君まで来てくれるなんて、意外だよねー♪この二か月でみんなと仲良くなれて、まゆしぃはとーってもうれしいのです♪」

岡部「....ああ、そうだな」

確かにみんな仲良くなった。前の世界線と同じくらいに。だが、俺とまゆりの関係は、やはり離れてしまった。それを知っているのは俺だけだが、やはり少しさみしいものだ。

フェイリス「凶真!今日はフェイリスのために頑張るニャ!この二か月間、フェイリスとともに修行した成果を見せるのニャン♪」

岡部「だが、一回もお前に勝てなかったぞ。本当に大丈夫なのか?」

フェイリス「凶真がフェイリスに勝てないのはしょーがないことなのニャ。それは運命で定められたこと、シュタインズゲートの選択なのニャ!」

岡部「というか、手料理くらい別にいいだろ?そこまで真剣にならんでも....」

フェイリス「フミャア!ダメニャ!今日の凶真は、絶対に勝たないといけないのニャ!だって....うにゃあ....」

岡部「だって、なんだ?わざわざ食材まで準備してあるのに」

まゆり「フェリスちゃん、朝からいい食材を買い出しに行ってたもんねー♪」

フェイリス「ニャムムム....と、とにかく凶真は、いつも通りの凶真で勝負すればいいのニャ!」

――

るか「うう、ごめんなさい凶真さん....負けちゃいました....」

まゆり「ルカ君、早いよー」

フェイリス「ルカニャンは負けた罰として、メイクイーンで働いてもらうニャーン♪」

るか「えええっ!?き、きいてないよ!フェイリスさん、無理だよぉ....」

ダル「ウオオオオオオッ!キタキタキターーー!!」

やがて、各ブロックから歓喜の声が聞こえてきた。

フェイリス「ニャニャ!そろそろ予選を勝ち抜いた勇者4人が出そろったみたいニャ」

ダル「オカリーン!」

最初の相手となったダルは、対峙するなり土下座せんばかりの勢いで頭を下げてきた。

ダル「サンボの牛丼でも、メイクイーンのオムライスでも、なんでもおごるお!大学で代返だっていくらでもするし、カンニングにも協力するし、レポートも変わりに書くお!だから負けてくださいおながいします!!」

岡部「そこまでするのか....」

ちらり、とフェイリスを見る。フェイリスは、祈るような目でこっちを見ていた。

なんでそんな目をしているんだ!?みんな、これそんなに大事!?....くっ、仕方ない!

岡部「....フゥーハハハ!ダルよ、それはできんなぁ!わが麽眼リーディングシュタイナーは、すでに勝利を視界にとらえた!見せてやろう、ダ~ルよ、この鳳凰院凶真の華麗にして邪悪なる戦術の数々をなぁ!」

――

ダル「オカリン、ひどいお....」

俺は強かった。鳳凰院モードでしゃべり倒しているうちに、挑戦者はダル含め全員消え去っていた。

フェイリス「さっすが凶真!凶真の“シンク・ポリューション;思考汚染波”の前に敵なしニャー!」

なんか変な技名がついている....と、フェイリスが突然マイクを向けてきた。

フェイリス「何か一言、どーぞニャン♪」

岡部「そうだな....オタ達よ、よく頑張った感動した!フェイリスよ、彼らをサービスで癒してやってくれ!それがこの鳳凰院凶真の、戦友たちへのせめてもの手向けとなる」

フェイリス「ニャニャ!凶真はいいこと言うニャ♪がってんしょーちニャ!」

ダル「オカリン、あんたサイコーだよ!感服しますた!」

フェイリスは敗者たちにコーヒーを配り、目を見て混ぜ混ぜなどの萌え技を惜しげもなく披露していく。なんだか上機嫌である。


フェイリス「じゃ、フェイリスは帰るニャ♪」

岡部「へ?」

フェイリス「実は、フェイリスはフェイリス杯のために来ただけで、今日はシフトに入っていないのニャ~。じゃ、バイバイニャーン♪」

フェイリスはウキウキと店から出て行った。

まゆり「フェリスちゃんうれしそうだね~。きっと、オカリンがかっこよかったからだよ」

岡部「恥ずかしいことを言うな。....奴らににらまれるだろ」

ダル「....やっぱオカリン許さない、絶対にだ」

――

そのあと、なぜか雷ネット大会が続行されて閉店まで盛り上がった。

まゆり「あ~、たのしかったー!まゆしぃは、今日は直接かえるね!バイバーイ!」

ダル「僕ももう帰るお。オカリンに一回も勝てんかった....チクショー!バカバカバカーン!」

るか「じゃあ、ボクも今日は帰りますね。えっと、エル・プサイ・コンガリィ」

岡部「コングルゥ、だ!」



ラボに戻ってみると、執事の黒木さんの車が止まっていた。

黒木「こんばんは、岡部君。お嬢様がご自宅にお呼びなのですが、ご都合はよろしかったでしょうか?」

岡部「えっ、フェイリスが?まあ、特に用事はありませんが」

なんで自宅?とりあえず行ってみるか。


岡部「あの、どんな用なんでしょう?今日会った時に言えばいいのに」

車中で黒木さんに話しかけてみた。そういえば黒木さんと二人きりは初めてだな。

黒木「ふふふ、行けばわかりますよ」

岡部「はあ....あれ?これって7ドクペですか?」

黒木「はい。お嬢様が、ドクペを買い忘れた!とおっしゃっていましたので。岡部君はよっぽどドクペがお好きなんでしょう」

岡部「あはは....フェイリスもドクペが好きだといっていましたよ。フェイリスもほしかったんでしょう」

黒木「ん?お嬢様は炭酸飲料が小さいころから苦手でしたよ。今でもそのはずですが....」

岡部「えっ....ちなみに、フェイリスはどんな飲み物が好きなんですか?」

黒木「うーん....ココアですかねえ」

岡部「はあ....」

全然違うじゃないか。どういうことだ?

フェイリス「あっ、凶真!おっそいニャー!」

フェイリス宅に入ると、フェイリスが大量の料理とともに待っていた。

フェイリス「あ、黒木!ドクペ買ってきてくれたのニャ?ありがとニャンニャン♪」

黒木「いえいえ。では、失礼します」

黒木さんはニコニコしながら退出した。

フェイリス「ニャフフフフ、凶真!今日は、フェイリスの手料理をどうぞニャン♪」

岡部「な、なにぃ!?手料理だと!?」

フェイリス「な~に驚いてるのニャ?今日のフェイリス杯で、最後に勝った人にはフェイリスの手料理をあーんしてあげるって、ちゃんと言ったニャ!」

岡部「お前、もしかしてこのために....!?それより、あーん、だと!?」

フェイリス「凶真、うるさいニャ。はい、座って座って♪はい、あーん♪」

岡部「お、お、お、ちょっと待てい!パパさんやママさんは!?」

フェイリス「今日はいないニャ。ま、別にいても関係ニャいけどね♪」

岡部「くっ....お、俺だ。大変なことに――ムグゥ!?」ズボッ

フェイリス「そうニャ!フェイリスの手料理のおいしさによって、凶真はメロメロでドロドロの大変なことに――ムグゥ!?」ズボッ

岡部「フゥーハハハ!どーだ!これぞ相手の攻撃を奪い、上乗せして相手に返す能力“ダビング10”だ!」モグモグ

フェイリス「はニャ~ン♪食べさせっこニャ~♪」モグモグ

岡部「なん....だと!?こいつ、無敵か!?」

フェイリス「凶真はフェイリスには勝てないのニャン♪はい、あーん♪」

そのまま、恐ろしい精神攻撃を受け続けることとなった....



岡部「それにしても、フェイリスは料理がうまいんだな」

フェイリス「フェイリスのメイドとしてのスキルの一つニャ!さーて、食後は黒木の買ってきてくれたドクペを一緒に飲むニャン♪」

岡部「お前、本当にドクペが好きなのか?」

フェイリス「フニャ?もちろんニャ」

岡部「もしかして無理してるのか?俺がドクペ好きだから」

フェイリス「なーに言ってるのニャ?フェイリスは好みにはうるさいのニャ~」

岡部「お前じゃらちが明かん」

素早くフェイリスのネコ耳を奪い取った。

フェイリス「あっ、ちょっと、そんないきなり!」

岡部「留未穂、本当は炭酸飲料は苦手なんだろ?」

フェイリス「うう....だって、倫太郎さんと一緒に飲みたかったんだもん....」

岡部「やれやれ....今日は、この鳳凰院凶真が直々に飲み物を用意してやろう!ココアでいいな?フゥーハハハ!」

フェイリス「ええっ?で、でも....」

岡部「フ、今日はうまい料理をたらふく食った後だから、落ち着いた飲み物がほしかっただけだ!勘違いするな!」

フェイリス「え、えへへ....ありがと、倫太郎さん。ふふっ、ツンデレ乙!だね♪」

岡部「だれがツンデレだ!」

フェイリス「今日は楽しいなあ。最近学校とかバイトとか、それにラボにはみんなもいるし、なかなか二人になれなかったから。みんなといるのも楽しいけど、たまには二人っきりが....」

岡部「もしかして、今日のフェイリス杯はそのためだったのか?....素直じゃないのはお前じゃないか」

フェイリス「うっ....も、もう、この話はおしまいっ!」

....そういうことなら、勝ってよかったな。

今日はこの辺で。次は火曜の夜あたりに再開します。

次回から、やっとあの人が出せる....

ちょっとだけ更新します。

――10月24日(日)

朝、大変なことに気付いた。

岡部「昨日、フェイリスのネコ耳をあのまま持って帰ってきてたのか....」

まったく気づかなかった。これって替えはあるのか?

岡部「――いや、別に大変ではないな、うん」

ダル「オカリン!な、な、なんでフェイリスたんのネコ耳を!?譲ってくださいお願いします!」

まゆり「もー、ちゃんとフェリスちゃんに返してあげないとダメなんだよ?」

フェイリス「........」ガチャ  

と、フェイリスが無言でラボに入ってきた。....なぜか黒いネコ耳を装着して。


まゆり「フェリスちゃん、トゥットゥルー♪黒のネコ耳も似合ってるよ」

ダル「黒のネコ耳でなんかアダルティなフェイリスたんもありだお!」

フェイリス「フッ....知ってたかニャ?黒猫は堕天使の象徴ニャンだぜ?」

岡部「なん....だと....」

フェイリス「ガイアがもっと輝けと、フェイリスに囁くのニャ。知ってるかニャ?ドライアイスは肌を火傷させるんニャぜ?」

ダル「なんでも属性にしちゃうフェイリスたんマジフェイリスたん!その伊達ワルキャットっぷりに僕のハートはもう虜です!」

岡部「何を言ってるのかわからん。フェイリスもいい加減にしてくれ。不快な10円ハゲが脳裏を思い出すだろ」

フェイリスのネコ耳を入れ替えると、フェイリスはやっと元に戻った。

フェイリス「にゃはは、たまにはこんなのもありかニャ~って!マユシィ、そろそろメイクイーンに出勤ニャン♪」

ダル「あ、僕もいくお!」

まゆり「オカリンは?」

岡部「俺は新たなる未来ガジェットの材料を探さねばならない。あとから顔を出そう」

――

岡部「....ん?ここはどこだ?」

いつの間にやら、よくわからん路地に入ってしまった。なんだかぼろぼろの外車が止まっている。

岡部「シボルエか....珍しいな」

よく見ると、シボルエにはナンバープレートがない。おまけに、やたらと魔改造が施されているため、かなり異様だ。次の未来ガジェットは車がいいな....免許はないが。



???「あ~~~~~~~~~~~っ!!!」

岡部「な、なんだ!?」

???「ちょ、ちょっと、勝手にさわるなー!これ、繊細なんだよ!!」

急に現れた三つ編みの女が、何やら怒って車に駆け寄ってくる。

....って、こいつは!




岡部「鈴羽!おい、鈴羽じゃないか!!」

鈴羽「えええっ!?....な、なんで!?」

鈴羽は、大慌てでポケットから何かを取り出し、地面に投げつけた。

鈴羽「うりゃーっ!!」ボンッ!

その瞬間、視界が煙に包まれる。と、ドアが閉まる音がして、シボルエのエンジン音が響き始めた。

岡部「ちょっと待て!おい鈴羽!話を――」

しかし、爆音をとどろかせて、シボルエは走り去った。

岡部「くそっ!なんで逃げるんだ、あいつは!」

あわててシボルエの後を追い、アキバの街に走り出す。

――

岡部「も、もうだめだ....」

夕方、一日中走り回った俺は体力の限界を完全に超えていた。シボルエの影すら見つけられず、敗北感に包まれてラボに帰還する。


フェイリス「凶真、なんで今日は来てくれなかったのニャ~」

ダル「まあまあフェイリスたん、オカリン反抗期なんだよ、きっと」

るか「あの、岡部さん、大丈夫ですか?」

岡部「岡部ではない、凶真だッ!....も、問題ない....そ、そうだ....フゥーハハ....はあ、はあ」

岡部「これより、第59回円卓会議を....はあ、はあ....始める!」

まゆり「59回?まゆしぃは、そんなにやってないと思うよ?」

岡部「いいか、ラボメン諸君....はあ、はあ....これより、“オペレーション・ブリュンヒルデ;忘れられし姫君捜索作戦”を開始する!」

ダル「なにハアハアしちゃってんの?」

岡部「だまれぇい!これより、オペレーション・ブリュンヒルデの概要を説明する。シボルエを!シボルエを探すのだ!その主、阿万音鈴羽に用がある!」

まゆり「オカリン、その人に何の用?」

フェイリス「ま、まさかそれって....未来人!?」

岡部「その通りだ」

一度話しただけなのに、よく覚えていたな、フェイリス。

るか「えええ!?み、未来人ですか!?」

ダル「厨二病乙!でもフェイリスたんはおk」

岡部「とにかく、やつに用があるのだ!わがラボの総力を挙げて探し出せ!!」

――10月30日(土)

五日間探し回ったが、鈴羽とシボルエは見つからなかった。まずい....早くしなければ!

ダル「オカリン、やみくもに探し回っても無理じゃね?」

岡部「確かにそうだが、何か考えでもあるのか?」

ラボでダルと話し合う。そういえば、鈴羽はダルの娘だったな。もしかしたら、ダルなら何か....

ダル「いや、@ちゃんねるにその阿万音氏って人の情報を流すとか....あんまいいことじゃないけどね」

岡部「ムゥ....それはさすがに....ん?そうか、@ちゃんねるだ!ダルよ、ジョン・タイターで検索してくれ!」

ダル「ジョン・タイター?それって、今@ちゃんで祭りになってるやつ?....そういや、その阿万音氏も未来人って設定だっけ。ジョン・タイターもタイムトラベラーを名乗ってるお」

岡部「@ちゃんで書き込みをしているのか!見せてくれ!」

ダルが表示してくれたスレで、確かにジョン・タイターが書き込みをしていた。2036年、SERN、ディストピア、タイムマシン....前の世界線での書き込みと同じだ!唯一ちがうのは....

岡部「メールアドレスは公開していないのか....」

ダル「いや、フツー晒さんっしょ」

前の世界線において、ジョン・タイターこと阿万音鈴羽は、メールアドレスをネット上に公開していた。だが、今のジョン・タイターはメールアドレスを公開していない。

岡部「くっ....面倒な」

だが、鈴羽自身は前の世界線とそう変わっていないようだ。大きな違いは車に乗っていたことと、現れる時期くらいか。だとしたら、おそらく2010年に来た目的も同じの可能性がある。

1975年へのタイムトラベルはIBN5100を俺たちに届けるためだった。そして2010年に立ち寄った目的は、父親、つまりダルを探すためだ。

岡部「ダルよ、オフ会の予定はないか?なんでもいい」

ダル「急にどしたん?今日の夜、タイムマシンオフ会があるお。今回は居酒屋で飲むだけっぽいけど」

岡部「タ、タイムマシンオフ会だと!?それは夏休みにあったんじゃないのか?」

ダル「なんで知ってるん?夏休みに本格的なのがあったっぽいけど、そん時はタイムマシンとかなにそれ?おいしいの?状態だったわけで」

岡部「....なるほど。それに賭けるしかないな」

続きは木曜日の夜から。短いけど今日は終わりです

大変だ....今気づいた

>>243
×不快な10円ハゲが脳裏を思い出す→不快な10円ハゲが脳裏にちらつく

ぎりぎりで文章変えるのはよくないね

再開します。

――

夜になって、ダルはタイムマシンオフ会に向かった。鈴羽は、もしかしたら名前のわからない父親を探しに現れるかもしれない。....希望的観測だが、もうここに賭けるしかない。

夜遅い時間だったため、俺とフェイリスの二人のみで鈴羽を探す。

フェイリス「そのスズニャンって人、凶真ならすぐにわかるのかニャ?」

岡部「もちろんだ。どうやら、オフ会の会場の中にはいないようだが....」

オフ会は、居酒屋を貸し切って開催されている。窓から中をうかがうが、そもそも若い女性自体がほとんどいない。

フェイリス「うにゃ!ダルニャンお酒飲んでるにゃ!未成年なのに、いけないんニャ~」

ダルはどうでもいい。鈴羽は....鈴羽は参加しないとしたら、いったいどこから父親を探すだろう?

フェイリス「このあたりにいないってことは....スズニャンは、きっと入り口が見えるところから入っていく人を確認してるニャ!」

岡部「だとしたら、向かい側にあるどれかのビルの窓からか!?かなり多いぞ!」

フェイリス「迷っている暇はないのニャ!まずは行動あるのみ、ニャ!」

....再び、走り回ることになった。おまけに今度は階段の上り下りである。


――

岡部「はあ、はあ....ぐっ、まずい、オフ会が終わる!」

フェイリス「ふにゃ....はあ、はあ....ま、まだまだニャ。オフ会後のお店を出てくるときも、スズニャンは確認するはずニャ!」

岡部「だ、だが...もうほとんどのビルは探したぞ....ほかにどこが....」

フェイリス「う~ん....あっ!なーんてことニャ!フェイリスともあろうものが....屋上を探してないのニャー!」

岡部「お、屋上だと!?く、今からではまわりきれんぞ!」

フェイリス「一番高いビルに上るのニャ!凶真、早く!」

岡部「一番高い....?お前に賭けるぞ、フェイリス!」


――

しかし、必死に駆け上がったビルの屋上にも、鈴羽の姿はなかった。

岡部「くそっ....やはりダメだったか。フェイリス、次は――」

岡部「って、フェイリス、危ないぞ!」

フェイリスは屋上の端から、今にも落ちてしまいそうなほど身を乗り出していた。

岡部「フェイリス!何をやってるんだ!」

あわててフェイリスのもとに駆け寄る。すると――

フェイリス「....見つけたニャ!あそこの屋上!あの女の子であってるかニャ!?」

岡部「な、なんだと!?....ほ、本当だ!鈴羽がいる!」

鈴羽は双眼鏡で下を見ていた。フェイリスは、すべての屋上を見下ろすために一番高いビルの屋上に来たのか!

フェイリス「声をかけてみる?」

岡部「いや、また逃げられるかもしれん。ビルの下で待ち伏せするぞ。」

その時、ダルから電話がかかってきた。

ダル『もしもし。オカリン、オフ会終わったお。いや~、それにしても手羽先の形ってなんかエロ――』ブツッ!

岡部「....まずい!オフ会が終わった!急ぐぞ!」

フェイリス「ま~た走るのニャ....」

――

鈴羽がいたビルの入り口まで走り、やっと到着した。....もうタイムマシンオフ会の連中は、解散しおわっているようだ。

フェイリス「間に合ったのかニャ~?」

岡部「間に合ったと信じよう」

フェイリス「どうするニャ?上まで行く?」

岡部「いや、すれ違いになるかもしれん。ここで待ち伏せをしよう」

フェイリス「待ち伏せなら任せるニャ!フェイリスの秘奥義、“ステルス・キャットウォーク;闇を往く音無き猫”がベールを脱ぐときが――」

岡部「....来たぞ!」

とぼとぼと階段を下りてくる音が聞こえた。どうやら、ダルを父親とは認識できなかったようだ。

岡部「フェイリス、お前はそっち側にいろ」ヒソヒソ

フェイリス「了解ニャ」ヒソヒソ


そして、肩を落とした鈴羽が、とうとう入口に姿を現した。落ち込んでいる今なら、確保できるはず!

岡部「待っていたぞ、阿万音鈴羽!」

鈴羽「....えっ、夜襲!?おりゃー!」バキッ!

岡部「ぐは!な、なんてケリだ....」ドサッ

こ、こっちのほうがコンディションが悪いことを忘れていた....

鈴羽「だ、誰?もー、なんなのさー!」

やはり、鈴羽は逃げようとする。

岡部「ま、まて!」ヨロヨロ

フェイリス「ちょっと待つニャ、スズニャン!」

鈴羽の前に、フェイリスが立ちはだかった。

鈴羽「スズ....へっ!?な、なに!?君、なんか獣の耳生えてるよ!どういうこと?獣人なの!?」

フェイリス「獣人じゃないニャン♪フェイリスは、フェイリスニャ!」

やっと、鈴羽が立ち止った。

岡部「鈴羽、話を聞いてくれ。俺の名前は岡部倫太郎」

鈴羽「....えっ!?君が、岡部倫太郎なの?」

岡部「そうだ。お前が、未来から来たジョン・タイターだということも知っている」


鈴羽「....どういうこと?」

――

鈴羽「未来ガジェット研究所?変な名前だね」

鈴羽をラボに連れて帰ると、鈴羽は物珍しそうにきょろきょろししている。

岡部「わがラボは、来るべき機関とのラグナロクに備え、未来ガジェットを制作しているのだ」

鈴羽「ふ~ん....」

岡部「ところで鈴羽、タイムマシンはどこにある?ちゃんと隠してあるのか?」

鈴羽「あたしとしては、なんで岡部倫太郎があたしのことを知ってるのかが気になるところなんだけど....いいよ、あたしの質問にも答えてくれるなら、君の質問に答える」

岡部「もちろんだ」

鈴羽「....わかった。タイムマシンはね、君はもう目撃してるよ。あたしが乗ってたシボルエ、あれがタイムマシンなんだ」

岡部「あのシボルエがそうだったのか!」

鈴羽「シボルエはちゃんと....えーと、貸し車庫?に隠してある」

岡部「お前のタイムマシンは、過去と未来どちらにも行けるのか?」

鈴羽「あのタイムマシンの開発者はあたしの父さん、バレル・タイターっていうんだけど、父さんはあれを完成させる前に死んじゃったんだ。だからあれは未完成で、過去にしか行けない」

フェイリス「えっ?じゃ、じゃあ、スズニャンは元の時代には戻れないの!?」

鈴羽「も、もしかしてスズニャンってあたしのこと!?」

鈴羽「まあ、それはいいや。....別に戻れなくたって関係ないよ。あたしは過去を変えるために来たんだ。それくらいの覚悟はしてる。あたしは、一人前の戦士だからね」

フェイリス「で、でもー....そんなの、かわいそうニャ」

鈴羽「大丈夫。過去を変えることに成功しさえすれば、未来も再構成される。そうしたら、あたしが過去に行く未来も再構成されて、なかったことになるはずなんだ。....かいぎゃくみたいな話だけどさ」

かいぎゃく?....諧謔、か?

鈴羽「じゃあ、今度はこっちの質問。なんで岡部倫太郎は、あたしのことをいろいろと知ってるの?」

岡部「鈴羽、俺がお前についていろいろと知っているのは、お前自身に教えてもらったからだ」

鈴羽「え?あたし、君にそんなこと教えてないけど」

岡部「お前自身といっても、別の世界線の鈴羽だがな....俺は、こことは違う可能性世界線から来たんだ」

鈴羽「それって、ホントなの!?」

岡部「ああ。アトラクタフィールド理論も、世界線が収束することも鈴羽から教えてもらった」

岡部「それだけじゃない。お前が父親を探しに2010年に来たことも、これから1975年にIBN5100を手に入れに行くことも、そしてお前の父親の正体も知っている!」

鈴羽「す、すごい!リーディングシュタイナーの力、本当だったんだ....」


鈴羽「だとしたら、君はこの世界線の未来も知ってるの?」

岡部「....おまえが全てを捨ててでも変えたいと思う未来....SERNによるディストピアか?」

鈴羽「やっぱり知ってるんだ....正確には、SERNの後ろにいる300人委員会による、だけどね。あたしがいた2036年の世界において、奴らはタイムマシンを独占し、世界のすべてを支配し、管理している」

鈴羽「争い事はないけど、自由も何一つない、完全な管理社会。逆らう人間は存在ごと消されるんだ。みんな死んだ魚みたいな目をしてて....生きてる意味なんて何もない、そんな世界」

フェイリス「そ、そんな....」

鈴羽「あたしはさ、その支配に逆らうレジスタンスのメンバーなんだ。そして、父さんの残してくれたタイムマシンで、過去を変えに来た」

岡部「結局この世界線でも、その未来から逃れられないのか....」


鈴羽「....でも、君に会えてよかったよ、岡部倫太郎」

鈴羽「あたしだけじゃ、過去を変えられない。でも、君のその力なら....」


鈴羽「あたしに協力して。お願い、岡部倫太郎」



鈴羽「未来を、変えてほしい―――」


 Chapter5

   
   反逆のイグニッション

今日は終わりです。

続きは明日の20時から

更新します。


――「未来を、変えてほしい」――


あの後一晩中、鈴羽と前の世界線について、そして今の世界線について話し合った。その結果、やはりこの世界線は前の世界線と大きな違いはないことが分かってきた。

....つまり、俺は2025年に殺される。ディストピアに反抗するレジスタンスを創設した後、SERNの実行部隊、ラウンダーの手によって。


フェイリス「凶真が死んじゃうなんて、いやニャ~....」グスッ

鈴羽「でも、戦士として立派に戦ったんだから、そんなに悪くないって!死んだように生きるより、ずっといいよ」

フェイリス「残されたフェイリスは、どうなっちゃうのニャ~」

鈴羽「わかんない。あたしは岡部倫太郎には会ったことがないし、岡部倫太郎の仲間だった人も、父さんぐらいしか知らないから」

岡部「....あそこにおいてあるダイバージェンスメーター、お前が持ってきたものと一緒か?」

鈴羽「ん?....うわっ、もうあるの!?なんで?」

岡部「IBN5100もあるぞ。お前は、俺たちにIBN5100を届けることに成功したんだ」

鈴羽「そっか....成功するんだ!よかった....」

岡部「なぜ .275349 なんだ?最初の桁が表示されないのは故障か?」

鈴羽「それはね、マイナスなんだ。本当は -0.275349 だよ」

岡部「ま、マイナスだと!?....そうだったのか。」

岡部「ところで、未来を変えてほしいというが、具体的にはどうすればいいんだ?」

鈴羽「ダイバージェンスメーターの位が1以上変動したら、収束する未来も大きく変わる。つまり、ダイバージェンス-1以下の世界線、君に目指してもらいたいのは、そこだよ」

岡部「どうすれば、その壁を越えられるんだ?2010年に起きる、ダイバージェンスを大きく変えうる出来事はなんだ?タイムマシン開発成功か?」

鈴羽「開発成功というより、理論の確立かな。....2010年の年末、牧瀬紅莉栖という科学者がSERNに移籍する。牧瀬紅莉栖が、タイムマシン理論を確立させたんだ」

岡部「牧瀬、紅莉栖....」

そこも同じなのか....つまり、それを阻止すれば――

鈴羽「最初はさ、あたしが牧瀬紅莉栖を亡き者にしようとしたんだけど....あたしだって、戦士だから」

岡部「って、殺そうとしたのかよ!?」

フェイリス「フニャあ!スズニャン、物騒ニャ!」

鈴羽「でも、そんなことはできないんだ。牧瀬紅莉栖はタイムマシン理論を確立するまでは死なないって、あたしの主観では確定しているから」

鈴羽「でも....岡部倫太郎、君ならできるかもしれない。君は世界で唯一、世界線の収束に抗える。もちろん正攻法じゃ無理だけど、何とかして牧瀬紅莉栖を――」

岡部「いや、そんな極端じゃなくても....つまり牧瀬紅莉栖がSERNに移籍しなければいいんだろ!?そっちのほうがむしろ単純で簡単だ!」

鈴羽「う....まあ、そういう見解もあるかな。でも、牧瀬紅莉栖はディストピアと作り上げた張本人だよ!世界中があいつのせいで――」

岡部「....あいつは、そんな奴じゃない。俺は、知っている」

鈴羽「でも....」

岡部「大丈夫だ!この狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真に不可能はない!フゥーハハハ!!」


鈴羽「えっ!?な、何!?岡部倫太郎って名前じゃないの!?」

フェイリス「ニャフフ、凶真なりの決意表明みたいなものニャ♪」

鈴羽「....そのなんとか院きょーま、ってのがわかんないんだけど」

岡部「....俺だ。とうとう目標が定まった」スチャ

岡部「....ああ、牧瀬紅莉栖、あの小生意気な助手....奴を再びわが傘下に加えた時、われらの勝利が確定するだろう....フッ、あのツンデレクリスティーナお嬢ちゃんなど、この鳳凰院凶真にかかればたやすい相手....すべて任せておけ。これもシュタインズゲートの選択だ....エル・プサイ・コングルゥ」

鈴羽「???誰と電話してんのー?」



やるべきことは見えた。2010年の年末までに、牧瀬紅莉栖がSERNに移籍しないよう説得すればいいのだ!Dメールを実際に見せ、SERNのやろうとしていることを教えてやれば、まず問題ないだろう。フゥーハハハ!たやすいことだ!

鈴羽「ねえ、岡部倫太郎。さっきからずっと聞きたかったんだけどさ....」

岡部「なんでも聞くがいい、ラボメンナンバー006、阿万音鈴羽よ!」

鈴羽「....えっ!?ラボメン?仲間に入れてくれるの?」

岡部「当然だ。わがラボのために尽くすがよい、フゥーハハハ!」

鈴羽「本当に!?....うれしいよ。ありがとう、岡部倫太郎」

岡部「お前はもう一人じゃない。何かあったら、俺たちを頼るがいい」

鈴羽「う、うん....」

フェイリス「よろしくニャン、スズニャン♪ところで、聞きたいことってなんだったのニャ?」

鈴羽「....へ?あ、ああ!あたしってさ、君たちにIBN5100を届けられたんでしょ?だったら、今のあたしって....あ、やっぱこの質問はなし!」

岡部「........」

橋田鈴こと阿万音鈴羽は、10年前に亡くなった。....だが、知らないほうがいいだろう。


鈴羽「もう一個大事な質問!岡部倫太郎はさ、あたしの父さんを知ってるんだよね?教えてよ!」

岡部「フフフ、そろそろ来るさ。もう朝になるしな」

鈴羽「え、本当!?父さんもラボメンなの!?うわ~、緊張するなぁ....昨日はいなかったからさ、あきらめてたんだよ」

フェイリス「凶真?もしかしてそれって、ルカニャン?」

岡部「....お前は生命の奇跡を見るだろう」

フェイリス「ま、まさかダルニャン!??....ニャるほど、見る目がある女の人もいたものなのニャ....」

鈴羽「見る目がある人ってことは....やっぱり父さんは、昔から男前なんだ♪」

岡部「........。フェイリスがダルをそう見ていたとは意外だな」

フェイリス「ニャ?ダルニャンは、見た目と中身でソンしてるだけニャ!」

....それ以外に何があるんだ?メガネか?

――

やがて、ドスドスという足音が階段を上ってくる。来たか....

鈴羽「あっ、あたしが娘だって言っちゃだめだよ!」

フェイリス「え~、わざわざ会いに来たっていうのに、なんでニャ?」

鈴羽「変な人って思われちゃうだろうし、普通に接したいから....」

岡部「ああ、わかった」

ダル「フェイリスたん、おはようございます!オカリンも、おは....オ、オカリ....新しいおにゃのこ、だと....」

ダル「ちょ、またすか!?どゆことコレ!?オカリン、またヒロイン増やすん?ファンディスク張りに攻略対象広げていくん!?チクショー!リア充は死ね!でもグッジョブ」

フェイリス「ダルニャン、おはようニャンニャン♪」



鈴羽「ダル....ニャン....?えっ、ええっ!?」

岡部「フッ、ダルよ、紹介しよう!ラボメンナンバー006、阿万音鈴羽だ!」

ダル「スパッツ女子キターーー!あ、橋田至って言います。ハードもソフトもいけるスーパーハッカーなのだぜキリッ!」

鈴羽「....あ、どーも。阿万音鈴羽です。....昨日は徹夜だったから、今日はもう帰るね。あはは、そんじゃ....」


岡部「現実逃避か。戦士ともあろうものが....」

フェイリス「戦士といえどもかなわぬ大敵....それは、“現実”という名の無慈悲な魔獣....」

ダル「???とりあえず厨二病乙!でもフェイリスたんはおk」

――

夕方、再び鈴羽は現れた。

鈴羽「うぃーっす、岡部倫太郎。フェイリスに、橋田至も....はあ、やせたら男前なのに」

岡部「現実を受け入れたか....」

鈴羽「なんか辻褄もあってるし、認めるよ....」


まゆり「あー、この人が、新しいラボメン?」

るか「あ、ど、どうも、初めまして」

鈴羽「へえ~、ラボメンって結構いるんだ。いいね、こういうの!あたしは阿万音鈴羽!よろしく!」

まゆり「まゆしぃです。よろしくね、スズさん♪」

るか「漆原るかです。どうぞ、よろしくお願いします」

鈴羽「まゆしぃに、漆原るかだね!よーし、覚えた!」

岡部「まゆりは、椎名まゆりというんだ」

鈴羽「そうなの?じゃあフェイリスは?」

フェイリス「フェイリスは、フェイリスニャ!」

鈴羽「やっぱ君、人間じゃないんだ....この時代には、獣人がいるんだね」

ダル「阿万音氏って、もしかしてアホの子?」

岡部「....ところで鈴羽、いつまでこっちにいるつもりなんだ?」

鈴羽「う~ん、そうだなぁ....燃料はあと一回分しかないし....2010年中はこっちにいて、見届けようかなって思ってる」

ダル「ん?二か月間だけってこと?」

フェイリス「うにゃ....残念なのニャ~」

まゆり「じゃあじゃあ、そのあいだにい~っぱい、スズさんと楽しいことしないとね~♪」

ダル「楽しいこと....?その響き、なんかエロ。百合クルー?」

岡部「だまれHENTAI!」

ダル「変態じゃないお!変態紳士だお!」

鈴羽「........」

岡部「にしても、二か月か。鈴羽、どこに泊まるっているんだ?」

鈴羽「え?貸し車庫の車の中だけど」

るか「ええっ!?そ、そんなところ、体に悪いですよ」

鈴羽「そうかな?じゃあ野宿のほうがいいってこと?」

フェイリス「うら若い乙女が、野宿はキケンすぎるニャ!」

鈴羽「だって、お金とかないし....橋の下とかなら、結構安全じゃない?」

まゆり「そんなところ汚いよ~」

ダル「....まゆ氏まゆ氏、そんなところ汚いよ~、ってもう一回よろ。できれば、もっとはずかしそうに....」

岡部「いい加減自重しろ!」

フェイリス「ダルニャン、キモイニャ」

ダル「ありがとうございます!」

フェイリス「そんなことよりスズニャン!お金ないっていったかニャ?」

鈴羽「う、うん。....、もしかして、くれるの!?」

フェイリス「もちろん、その分働いてもらうニャン♪」

鈴羽「まっかせて!あたしは、こう見えても一人前の戦士なんだから!で、何すればいいの?」

フェイリス「それはこれからのお楽しみニャ~ン♪とりあえずスズニャンは、フェイリスのおうちに泊まればいいニャ!」

鈴羽「オーキードーキー!ありがとう、フェイリス!」

....鈴羽をネコ耳メイドにするつもりか、フェイリス。ちょっと想像がつかん。


ダル「フェイリスたんと阿万音氏の百合カップリング....アリだお」

――11月6日(土)

岡部「....くそ、わからん!」

牧瀬紅莉栖は、ヴィクトルコンドリア大学の研究所で、今も研究を続けている。SERNとの接点は見えないが....直接アメリカに行くしかないのか?はたして、会うことができるんだろうか....

ダル「また牧瀬氏のこと調べてるん?どう見てもストーカーです。本当にありがとうございました」

るか「でも、おきれいな方ですよね」

ダル「どの写真も、メチャ機嫌悪そだけどね。ルカ氏はこういうタイプはやめといたほうがいいんじゃね」

るか「い、いえ、そういう意味じゃ....」

しかし、牧瀬紅莉栖が日本に来てくれなければ、電話レンジ(仮)を見せられん。おそらく、紅莉栖は実際に見せられなければタイムマシンを認めないだろう。まったく、頭の固い助手だ!


ダル「そろそろメイクイーンに行こうず!今日はとうとう阿万音氏がホールに出る記念日だお!」

岡部「もう一週間たったのか....不安しかないが。あとは、ルカ子がネコ耳メイドをやればコンプリートだな」

るか「えええっ!?む、無理です!絶対無理ですぅ!」

ダル「じゃ、僕がやるお」

岡部「それは勘弁してくれ....」

「「おかえりニャさいませ、ご主人様!」」

鈴羽「あ、みんな!うぃーっす」

岡部「うぃーっす、って....」

フェイリス「うにゃあ!?いきなりダメダメニャ~!これじゃアキバの萌えの牙城、メイクイーンが陥落してしまうニャ!」

鈴羽「う、が、頑張るよ、ニャン!」

ダル「阿万音氏、いいよ!その着慣れてないカンジのメイド服が初々しさを引き立ててるお!その雰囲気で席までご案内プリーズ!」

岡部「なんにせよ、これでお前も正式にバイト戦士となったな」

鈴羽「バイト戦士?バイトじゃないよ!」

岡部「いや、バイトだろう?」

鈴羽「違うよ!あたしは。えーと、にゃ、にゃんこ戦士、スズニャンだよ!」


岡部「な、なんだ....それは」

フェイリス「ニャフフ♪スズニャンは、このアキバの萌えを守護する戦士、にゃんこ戦士スズニャンになったのニャ!」

ダル「お、おう」

フェイリス「スズニャンはアキバに迫る怪人たちを、そのネコ耳に秘められたニャンニャンパワーによって蹴散らすことがでいるのニャン♪未来より突如現れた、萌えを守護する正義の味方!しかし、迫りくる闇はさらに強大さを増していき――」

....な、なんて痛い設定なんだ....うかつに戦士を名乗ったばかりに。

まゆり「スズさんは、とっても強いんだよねー♪」

鈴羽「へへーん、当然だよ!なんたって、戦士だからね!ニャン!」

まゆり「次はルカ君の番だよ~?」

るか「うう....ボ、ボクは、恥ずかしくて、死んじゃうよ....」

フェイリス「ニャニャ!?大丈夫ニャン♪ルカニャンには、巫女としてもっともっとモエモエなポジションを用意してるニャ!」

ダル「それ、チョー胸熱!」

るか「も、もう許して....」

――

鈴羽「お待たせしましたー、ニャン!」ガチャン!

岡部「あっつ!お、おいバイト戦士よ!熱い飲み物は、もっと丁寧においてくれ!」

鈴羽「ご、ごめん!....ああ、あたしって、ダメダメだなぁ....フェイリスに申し訳ないよ....」

ダル「いや、ドジっ娘メイドとかむしろご褒美っしょ!阿万音氏阿万音氏、オムライスに字書いてちょ」

鈴羽「えっ!?あー、ケチャップでね!任せて!」


鈴羽「よーし、『 や せ ろ 』!どーだ!うまいでしょ!」

ダル「オゥフ」

鈴羽「よーっし、調子でてきた!漆原るか、“目を見て混ぜ混ぜ”してあげる!」

るか「えっ、ええっ!?い、いいですよ!そんな....」

鈴羽「まかせてってば!さっきフェイリスがやってるの見たから!」

岡部「お、おい、それは難しいんじゃ....」


鈴羽「ニャンニャン、ニャンニャ――」バシャ!

鈴羽「あっつー!なんでー!?」


岡部「....これはひどい」

るか「あわわわ....やけどは、大丈夫ですか?」

鈴羽「平気平気!くっそ~、今度こそ....」

岡部「もうやめておけ....あっちの客が呼んでるぞ」


オタ1「お~い、メイドさーん!」

鈴羽「あ、はーい!....って、あたしはメイドじゃないよ!戦士だよ!」

オタ2「にゃんこ戦士キターーー!」

オタ達「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」

岡部「........」

ダル「........」

るか「........」



岡部「....アリだな」

ダル「禿同」

今日は終わり。次は日曜です。

甲子園見ながら更新します。

――11月7日(日)

岡部「....うーむ」

今日も紅莉栖を日本に呼ぶ方法を考えている。最近はこのことばかりだな....何かいい方法はないのだろうか。

ダル「オカリンなに考え込んでるん?阿万音氏のキャラ設定について?」

岡部「は?」

ダル「いまどきはあんくらい振り切れてたほうがいいと思われ」

岡部「それはエロゲの話か?」

まゆり「せってー?あ、お待たせいたしましたニャン♪アイスコーヒーと、オムライスですニャンニャン!今日のはトロトロだよ~?」

ダル「まゆ氏まゆ氏、今のトロトロってとこ、もう一回艶っぽく――」

フェイリス「ダルニャン、キモいニャ」

ダル「キモイいただきますた!」

岡部「おお、フェイリス。鈴羽の様子はどうだ?」

フェイリス「仕事のほうは、今の感じがすっごく受けてるニャン♪フェイリスの狙い通りニャ!」

まゆり「スズさんかわいいよねー♪」

フェイリス「でもでも、日常生活のほうはとんでもないニャ....スズニャンは、世紀末を生きていたみたいニャ」

岡部「それは....どういうことだ?」

フェイリス「窓から双眼鏡で、い~っつも敵を探しているニャ。『フェイリス、あいつ怪しい!スパイだよ!』なんて言って来たり。あれは、下の階の山崎さんニャ!」

ダル「おいおいオカリンか」

岡部「俺はそんな事せんわ!」

鈴羽「いや、絶対あいつは怪しいって!」

いつの間にやら鈴羽もやってきていた。お前ら仕事は?

鈴羽「絶対おかしいよ!本読みながら不敵にニヤニヤしてたんだよ!きっと、あれは指令書だよ」

ダル「それ、ただのエロ本じゃね?」

鈴羽「えろほん?」

ダル「そう!ニヤニヤするご本と言ったらエロ本しかないっしょ常考!」

まゆり「ダルくんはえっちだね~」

フェイリス「うにゃ、せっかくみんな揃ったかと思ったのに、ルカニャンがいないニャ~」

岡部「ルカ子は今メイクイーンに危険を感じている」

まゆり「え~、残念だよー」

岡部「フェイリス、みんなに話でもあったのか?」

フェイリス「ニャニャ!凶真、よくぞ聞いてくれたニャ!今度の土日に、フェイリスの金糸雀学園高校で、学園祭が開催されるのニャ♪みんな、ぜひ来てほしいのニャ!」

岡部「学園祭?」

鈴羽「なにそれ、絶対行きたい!学校に行ってみたい!」

ダル「女子高の学園祭とか、ヤバすぎっしょ!行きます絶対イキます!」

まゆり「じゃあ、ルカ君にも明日学校で聞いておくね。楽しみだな~♪」


のんきだな....だが、考え込んでいても仕方ない。気分転換に行ってみるか。フェイリスの学校生活は滅茶苦茶気になるし。

あいつ、確か学校でもフェイリスのままでいると言っていたな。実際、ネコ耳+制服でラボを訪れてダルを悶絶させていたし。....ちゃんと学校でやっていけているのか?友達はいるのか?学校で浮いてるんじゃないか?心配だ....


フェイリス「凶真?どうかしたかニャ?」

岡部「いや、なんでもない....」

――11月13日(土)

結局、紅莉栖を日本に呼ぶ有効な手段は思いつかないまま、フェイリスの学園祭の日となった。鈴羽はバイトのため、初日は俺、ダル、まゆり、ルカ子の4人だけだ。


ダル「じょ、女子高生がいっぱいだお....なんだただの天国か」

岡部「まずはフェイリスのクラスに行くぞ。何をやっているのかは聞いてないがな」

まゆり「うーんと、フェリスちゃんのクラスは、結構遠いね~。あ、わわー!!オカリン、あれ見て!コスプレショーだって!」

岡部「コ、コスプレショー!?生着替え中だと!?この学校、何考えてるんだ!?」

るか「うわあ、みんなかわいいですね....で、でも、生着替え中って....」

まゆり「ん~?....ルカ君もエッチだね~♪えっへへ~」

るか「ええっ!?ま、まゆりちゃん、ひどいよ....」

まゆり「ルカ君もコスプレしたくなってきたでしょ~?お客さんもコスプレ参加できるみたいだよ!ルカ君もやろーよ!」

るか「む、無理だよぉ....」


まゆり「....あれ?ダル君は?」

岡部「ダルはあそこだ」

まゆり「あ~、ダル君ステージの真下から写真撮ってるんだ」


ダル「デュフフ、ナイスポーズですぞ~」パシャパシャ


るか「すごい笑顔ですね....」

岡部「もう奴は置いていくか」

まゆり「そんな、かわいそうだよ~」

岡部「....幸せそうじゃないか」

――

ダル「まさか3時間も放置されるとは思わんかった」

岡部「知るか。満足しただろ?」

ダル「フヒヒ、サーセン」

岡部「いい加減フェイリスのところに行くぞ。」


るか「えーっと、あ、ここじゃないですか?」

岡部「これは....和風喫茶か」

まゆり「わふう?」

扉を開けると、着物を着た店員たちが接客をしていた。大繁盛している。

ダル「着物....だと....」

まゆり「わー、着物ってきれいだねー」


フェイリス「あっ、りん....凶真さん、それに皆さんも、来てくれてありがとう!ふふっ、いらっしゃいませ♪」

ネコ耳を外した着物姿のフェイリ、いや留未穂がやってきた。

まゆり「わー、フェリスちゃんだー!かーわいーねー♪」

るか「フェイリスさん、いつもより大人っぽくて、すごくおきれいです!」

ダル「ネコ耳メイドこそがフェイリスたんのすべて。そう思っていた時期が僕にもありますた」

フェイリス「えへへ....ちょっとほめられすぎて、恥ずかしいかな....」

ダル「なんか見ちゃいけないものを見ている気すらしてきたお」

まゆり「猫じゃないフェリスちゃんもかわいいねえ♪」

フェイリス「....凶真さんは、何も言ってくれないの?」

フェイリスはいつものツインテールではなく、髪を一つにまとめておろしていた。フェイリスとも、留未穂とも違う雰囲気。そこにいつもの子供っぽいかわいらしさはなく、なんというか、妖艶な色気がある。

なんというか....きれいだ。


フェイリス「ねえ、倫太郎さん、どうなの?私、あなたに見てほしくて....」

フェイリスが耳元でささやく。いつもとは違う、大人の香りが漂った。

岡部「........。....俺だ。とんでもないことになった」スチャ

岡部「....ああ。機関の幹部“メンタル・ブレイカー;精神破壊”の、秘められし奥義が発動したのだ....アキバはもう終わりだ。下手したら、東京全土がな....人類は敗北した。これもシュタインズゲートの選択....エル・プサイ・コングルゥ」

フェイリス「....もう、せっかく頑張ったのに。皆さん、お席はこちらですよ♪」

ダル「今、二人で何やってたん?また固有結界?バカなの?死ぬの?」

岡部「フ、フゥーハハハ!バカなことを言うな、やつの力を試していただけだ!フゥーハハハ....」

まゆり「オカリンは素直じゃないのです....」



フェイリス「....ふふっ♪」

――

学園祭も初日が終わり、校門から次々と生徒や客たちが吐き出されていく。

フェイリス「みんなー!待ったかニャ―!?」

フェイリスは着物にネコ耳というアンバランスな格好で現れた。

ダル「着物にネコ耳、あると思います!」

まゆり「フェリスちゃん、すごい人気だったねー♪」

るか「あの後、全然しゃべれなかったもんね....」

ダル「ぶっちゃけ、どのコスプレよりも圧倒的にフェイリスたんが上だったお!」

まゆり「それにしても、すっごい楽しかったよ♪明日バイトなのが、残念なのです....」

るか「ボクも、明日は神社の手伝いで....でも、今日はとっても楽しかったです!」

フェイリス「おほめにあずかり、光栄ですニャン♪」


岡部「にしても、フェイリスよ....お前、本当に学校でもフェイリスなんだな。お前のクラスの友達から聞いたぞ」

フェイリス「にゃはは、堂々としてれば、意外と受け入れられるのニャ!実は、ネコ耳なしで高校に行ったのは今日が初めてニャ」


それは、なんだか残念だな。家族以外では俺だけだったのに....って、何を考えている!?これも機関の精神攻撃か....

――11月14日

鈴羽「うわー、すごーい!見てみて、岡部倫太郎!リンゴ飴だってー!」

岡部「わかったわかった、買ってやるから落ち着け!」

鈴羽「ホント!?ありがと!」

岡部「やれやれ....」


鈴羽「甘くておいしー♪こんなの、初めて食べたよ」ペロペロ

ダル「阿万音氏の舌使いエロ」

鈴羽「岡部倫太郎、あのみんなが一緒に動いてるやつ、あれは何?」

岡部「あれは、ダンスだな」

鈴羽「ふーん....なんだかえっぺい式みたい」

えっぺい....閲兵か。

岡部「未来にはダンスはないのか?」

鈴羽「みんなであんなに楽しそうにやるのはないかな....いいよね、ああいうの。学校って、いいなあ」

岡部「....フェイリスのところに行くぞ。ネコ耳を外しているところ、みてみたいんだろ?」

鈴羽「あ、うん!フェイリスの耳って、生えてるわけじゃないんだよね?」

岡部「当たり前だろ....」

鈴羽「だってさ、フェイリスのやつ、お風呂でも外さないんだよ?ほんとに生えてるのかと思うって」

ダル「お風呂....?阿万音氏阿万音氏、フェイリスたんが入った後の残り湯がほしいです!いくらでも出すお」


鈴羽「....はあ」

――

フェイリス「あ、今日も来てくれたんだ。鈴羽さんも!いらっしゃいませ♪」

鈴羽「えっ、フェイリス!?うわー、すごい。本当に人間だったんだ....」

ダル「阿万音氏何言ってんの?フェイリスたんはネコ耳がなくても天使だお!」

岡部「どーでもいい」

鈴羽「....まあ、普通の人間か―。そりゃそうだよね。岡部倫太郎も“ほーおーいんきょーま”とか名乗ってるけど、ただの岡部倫太郎だもんね」

岡部「なっ....!?俺はただの人間ではない!狂気のマッドサイエンティストにして、世界の支配構造を破壊し、世に混沌をもたらすもの!鳳凰院....凶真だッ!」

ダル「女子高のど真ん中で厨二病とか、さっすがオカリン!俺たちにできないことを平然とやってのける!」

フェイリス「そこに痺れる♪憧れる~♪」

鈴羽「いや、君たちも人のこと言えないよね....」


鈴羽「でも、着物ってすごいね。フェイリスってこんなに小っちゃいのに、ちょっと大人に見えるよ」

フェイリス「えへへ、ありがと♪」

岡部「普段だって、厨二病な言動に気を付ければもっと大人になれるだろう」

ダル「本日のお前が言うなスレはここですか?」

――

フェイリス「いらっしゃいませ♪....って、パパ!」

秋葉父「やあ、留未穂。なかなか繁盛しているね」

岡部「あっ、こんにちは、秋葉さん」

ダル「えっ、フェイリスたんのパパ!?....」

ダル「....どうも、橋田至です。いつも娘さんにはお世話になっております」キリッ!

鈴羽「うぃーっす、秋葉のおじさん」

秋葉父「みなさん、うちの留未穂がいつもお世話になってます」

ダル「いえいえ、こちらこそ!いやーさすがフェイリスた、さんのお父上!男前でいらっしゃる!」

岡部「グイグイ出てくるな、暑苦しい!」


秋葉父「???そうだ、留未穂。紹介したい人がいるんだ」

すると、秋葉氏のうしろからロングヘアーですらりとした若い女性が現れた。

紅莉栖「あ、えっと、初めまして。牧瀬紅莉栖といいます」


な、なん....だと....!?


紅莉栖「父が昔秋葉さんにお世話になっていまして、そのご縁で」

秋葉父「うん、紅莉栖ちゃんは小さいころから知っていてね。東京の研究所に少しの間所属することになったそうだから、住む場所を用意して――」


な、なんという奇跡....そうか、これがシュタインズゲートの選択!!!

紅莉栖「留未穂さん、っていうんですね。いつもお父様にはお世話に――」



岡部「フゥーハハハハハハハハハハハハ!!!!!」



みんながびっくりしてこっちを見たが、そんなことはどうでもいい!

――勝った!!!

岡部「紅莉栖、いやクリスティーナよ!」

紅莉栖「ふえっ!?い、いあ、クリスティーナじゃなくて紅莉栖です!っていうか、あなた誰ですか?」


紅莉栖に近づき、声を落として囁いた。

岡部「....お前のコテハンは分かっているぞ、栗悟飯とカメハメ波!@ちゃんねるで晒されたくなかったら、ついて来い!」

紅莉栖「ええっ!?ちょ、なんでそれを!?....ああ、もう!すみません、秋葉さん!失礼します!」

秋葉「んん?岡部君と知り合いなのかね?」

ダル「ちょ、オカリーン!?....いっちゃったお」

フェイリス「牧瀬、紅莉栖って....」



フェイリス「ねえ、鈴羽さん....あ、あれ?鈴羽さん!?」

今日は終わりです。

次は火曜の夜に。

更新します。

――

紅莉栖「ちょっと!どういうことですか!?ていうか、なんで私のコテハンを!?あ、いや、私の、というか....」

岡部「ごちゃごちゃうるさいぞ、@ちゃんねらークリス!」

紅莉栖「ちょ!なに言ってるんですか!」

岡部「お前のことはよ~く知っているぞ?我が魔眼リーディングシュタイナーの力によってな!」

紅莉栖「....つまりストーカーってことか」

突然、紅莉栖は廊下の真ん中で立ち止まった。

岡部「なんだ?@ちゃんねるで晒されたいのか?」

紅莉栖「う....わ、私をどこに連れて行く気?まさか二人っきりになってから、私にあんなことやこんなことを――」

岡部「せんわ!何を考えているんだ、この天才HENTAI少女め」

紅莉栖「へ、HENTAIちゃうわ!じゃあ、どこに連れて行く気!?」

岡部「ラボだ」

紅莉栖「ラボ!?何よその怪しい響き!」

うるさい。まずいな、みんなこっちを見ているぞ....

岡部「ラボとは、未来ガジェット研究所のことだ」

紅莉栖「どう考えても怪しいところです。本当にありがとうございました」

く、どうすれば....


鈴羽「....牧瀬紅莉栖」

岡部「バ、バイト戦士!?なんでついてきたんだ!?」

紅莉栖「はあ、今度は誰ですか?」

鈴羽「いいから、その男に従って。そうしなければ、拘束してでも連行する」

紅莉栖「えええ!?ど、どうしてそんな....」

よし、静かになった!今しかない!

岡部「クリスティーナ、お前に見てほしいものがあるんだ。....タイムマシンがな」

紅莉栖「はあ....?そんなもの、あるわけ――」

岡部「見てもいないうちから否定か?なんの考証もなしに?....フゥーハハハ!論理性のかけらもないな!」

紅莉栖「な....いいわよ、だったら見せてみなさいよ!」


....ちょろい。

――

ラボに到着すると、さっそく電話レンジ(仮)を見せてみた。ゲルバナ実験、さらにDメール実験を実際にやって見せたら、紅莉栖は顔面蒼白になった。

紅莉栖「そ、そんな....こんなこと、あるわけ....」

岡部「もう一度説明しよう。この電子レンジの中で、ミニブラックホールが発生しているのだ。そして、そこに下の階にあるブラウン管工房の42型ブラウン管テレビから電子が注入され....」

紅莉栖「ちょ、ちょっとストップ!ちょっと考えさせて!」

岡部「いくらでも考えるがいい、忘却の彼方より蘇りし者、ザ・ゾンビよ!」

紅莉栖「な、なんぞそれ!?」

頭を抱えてしばらく考え込んでいた紅莉栖が、やっとこちらに向き直ってきた。

紅莉栖「....どうして私なの?私、そもそも物理学の専攻じゃないし、タイムマシンなんて――」

その時、逃げられないように開発室の入り口をふさいでいた鈴羽が声を上げた。

鈴羽「君が、タイムマシンを作り出すからだよ、牧瀬久利栖。SERNのもとでね」

紅莉栖「....はあ?」

鈴羽「君のせいで、未来の世界は滅茶苦茶になる」

紅莉栖「何言ってるの、この子は!?私がタイムマシンなんて作るわけないでしょ!?そもそも、なんで未来のことが分かるっていうの?」

岡部「そいつは未来から来たんだ。タイムマシンを開発、独占したSERNによりディストピアが構築された2036年からな」

紅莉栖「....あんたたち、頭おかしいんじゃない?」

紅莉栖「大体、SERNはただの研究機関でしょ!?タイムマシンなんて作ってないし、それを使ってディストピアを構築なんて、妄想小説の世界よ」

岡部「....いや、事実だ。SERNがタイムマシン開発を秘密裏に進めている証拠もある。これは、SERNをハッキングした時に得たデータだ」

PCに、ダルがハッキングしたSERNのデータを表示する。

――

紅莉栖「う、嘘よ....こんなの、タイムマシンなんて....」

岡部「現実から目を背けるな....いいか、俺たちは何一つ嘘はついていない」

紅莉栖「....分かった。いや、わかってないけど....ちょっと何日か考えさせて」

岡部「....SERNから移籍の誘いがあったことは?」

紅莉栖「あったわ。つい最近。....でも、東京に二か月間派遣されることが決まってて、答えは保留してある。条件はかなり良かったんだけど、専門分野じゃないし、ちょっと迷ってたのよ」

鈴羽「なるほどね。君は2010年の年末、SERNに移籍する。そして、タイムマシンを作り上げるんだよ」

岡部「とりあえず、SERNの話は断ってくれ。それで未来は変わる....はずだ」

紅莉栖「そんなの当り前でしょ!こんな、人体実験までするなんて....しかも、世間を欺いて!こんなの、科学に対する冒涜よ!世界をバカにしてる!」

鈴羽「フン、どーだか。そのいい条件ってのにつられて、ホイホイ移籍しちゃうんじゃないの?」

紅莉栖「そんなわけない!私にだって、科学者としてのプライドはあるんだから!」


....これで未来は変わる、のか?このまま紅莉栖が移籍せずに、2011年を迎えることができたら。

何か、いい方法はないだろうか。紅莉栖が確実にSERNに行かなくなるような、いい方法が....


岡部「....そうだ、クリスティーナ!このラボに入れ!」

紅莉栖「ええっ!?ど、どういうこと!?」

岡部「本当はお前、タイムマシンが研究したくてしょうがないんだろう?」

紅莉栖「は、はあ!?そんなわけあるか、そんなわけあるか!」

岡部「大事なことだから二回言いました、ってか?いや、お前はタイムマシンを研究したくてウズウズしてるはずだ!」

紅莉栖「いや、何勝手に決めつけてんのよ!」

岡部「わがラボに入りラボメンとなれば、いくらでも....いやいくらでもはいかんが....この電話レンジ(仮)を調べさせてやる。お前なら、これをバージョンアップさせることも可能だ」

紅莉栖「....ふむん。要は、この研究所の一員として迎え入れてくれるってことね。」

岡部「そういうことだ」

紅莉栖「あんたの言いたいことは分かった。でも、今は頭の中がぐちゃぐちゃだから、何日か考えさせてもらっていい?」

岡部「かまわん。SERNに行かないのであれば、いつまででも待っていようクリスティーナ」

紅莉栖「だからクリスティーナじゃないっつーの!おのれは人の名前がもともにいえんのか!」

――

紅莉栖は、名前について無駄な訂正を繰り返したのち、肩を怒らせて帰って言った。

....紅莉栖がラボメンとなり、タイムリープマシンを作ってくれたら万全の態勢が整ったといえよう。

鈴羽「さすがに牧瀬紅莉栖をラボに入れるのは危険すぎじゃないかな」

岡部「いや、あいつは事実さえ知っていれば、SERNに協力するような奴じゃない。それに、クリスティーナはわがラボに必要な人材なのだ!フゥーハハハ!」


鈴羽「....やっぱり、あたしは反対だから」

――

夕方になると、ラボメンたちがラボに集まってきた。

ダル「オカリン!あの牧瀬氏ってオカリンがストーキングまがいのことしてた天才少女っしょ!?また手だしたん?」

岡部「手なんぞ出し取らん。人聞きの悪いことを言うな!」

フェイリス「それで凶真、どうなったニャ?」

岡部「とりあえず、これで大丈夫....のはずだ」

ダル「何が?」

岡部「それと、ラボメンに勧誘した。おそらく、いや間違いなくラボメンになるだろう」

ダル「またおにゃのこをラボメンにするってこと?さすがオカリン!俺たちにできないことを平然とやってのけるッ!」

まゆり「そこに痺れる♪憧れる~♪」

るか「新しいラボメンですか....なんだか楽しみですね。嫌われないといいなあ....」

フェイリス「それにしても、ま~た女の子ニャー....まったく、凶真はいけない子だニャン」

これで、前の世界線のラボメン八人のうち七人が戻ってきた....もう一人は、永遠にラボに戻ることはないだろう。そうでなくてはならないのだ。

すべてうまくいっている。この世界線は、きっと大丈夫だ。


鈴羽「........」

――11月15日(月)

岡部「....?」

大学の講義が終わり、ラボに向かう道でのこと。なにやら、視線を感じる....気のせいか?


岡部「....そんなはずはない!」

あたりを見回したが、人込みでよく見えない。が、不快な感覚は、一向に消えようとしない。


気のせいだ....気のせいだ!

――

岡部「はあ....はあ....」


フェイリス「あっ、凶真!おかえりニャさい!」

綯「おかえりニャさい♪」

ラボに戻ると、ブラウン管工房の前でフェイリスと天王寺綯が一緒に遊んでいた。前の世界線ではまゆりによくなついていた綯だが、この世界線ではフェイリスと一番仲がいい。一番顔を合わせているからだろう。

フェイリスもまゆりと同じく、いやそれ以上に人当たりがいいな....厨二病なのに。


しかし、この平和な光景に安堵感を覚えた。よかった....いつもの日常だ。

岡部「はあ....はあ....フェイリス、いくらなんでもネコ耳をつけてニャンニャン言わせるのは、人格形成上よくないだろう」

フェイリス「え~。凶真だってネコ耳幼女を前にして、ダルニャンみたいにハアハアしてるニャ♪」

綯「してるニャ♪」

岡部「お前なあ....これは走って帰ってきたからで――」


天王寺「てめえ岡部!!うちの綯にハアハアしてるだと!」

綯「あ、お父さん!」

岡部「ミ、Mr.ブラウン!?どこから現れた!?」

天王寺「ああん!?店ん中から見てたんだよ!この変態野郎、うちの綯に手を出しやがったら、マジで殺す!」

岡部「出さんわ!なぜそんなことをしなければならんのだ!」

天王寺「ああ!?うちの綯に手出したくないってのか!?」

岡部「ちょ!なんと答えればいいのだ!?」

フェイリス「まあまあ店長さん、綯ちゃんがかわいすぎるのが悪いのニャ♪だから、凶真を許してあげてほしーニャ~♪」

綯「えへへ、そうかニャ~」

天王寺「まあ、嬢ちゃんの言うとおりだな。綯がかわいすぎるのが悪い!岡部、今回は綯の可愛さに免じて許してやる!」

岡部「なんだそれは....そもそも、娘にハアハアしてる変態は貴方のほうだろう、Mr.ブラウン!」

天王寺「あのなあ、どこの世界に娘のネコ耳でハアハアする奴がいるってんだよ!」

....ダルか....


そうだ、心配ない。こんなバカらしくも平和な日常が、これからも続くんだ。問題なんて、もう起らないはずなんだ――

フェイリス「??凶真?なんだか顔色が悪いニャ!....大丈夫?」

岡部「大丈夫だ。ほら、綯が待っているぞ」

――11月16日(火)

今日はいつもとは違う道を使ってみた。人通りの少ない、静かな道。

昨日感じた視線は、どうしても気のせいとは思えなかった。あんな視線を、以前にも感じたことが....

いや、ちがう!そんなはずはない!


しかし、やはり今日も感じる。昨日よりも強く。

岡部「くそっ!」

耐えられなくなって、逃げるように走り出した。行先も決めず、滅茶苦茶に――

――

岡部「はあ....はあ....はあ....」

息が切れるまで、必死に走り続けた。何度も曲がり角を曲がり、狭い路地を潜り抜けた。


もう周りにはほとんど人がいなかった。視線は....

岡部「....いない?」

やった!とうとう振り切って――




――― カシャッ ―――


シャッター音が響いた。

音のする方向へ振り向くと――


携帯電話をこちらに向けた、

メガネの、若い女性。


前の世界線で、ラボメンナンバー005、“シャイニングフィンガー;閃光の指圧師”として仲間だった、


SERNの実行部隊、ラウンダーの一員として、まゆりを何度も何度も何度も何度も殺した、



――桐生萌郁が、そこにいた。



 Chapter6

   無明匣中のシュレディンガー

続きは、できたら明日に。では

元気だから更新します。

――

岡部「はあ、はあ、はあ、はあ....」

ラボについたときには、完全に息を切らしていた。萌郁を見た途端、再び走って逃げてきたのだ。


岡部「くっ....なぜだ!?なんであいつが現れた!?」

Dメールはエシュロンに捉えられていない。ラボメンたちにはタイムマシンについて秘密にするよう言ってある。SERNに、ラウンダーに目をつけられる要素は何一つないはずだ!。

岡部「もう....いないよな....!?」

視線はもう感じない。どうやら振り切ったようだが....


フェイリス「凶真?」

岡部「おわ!?フェ、フェイリス!いたのか!?」

フェイリス「も~、失礼しちゃうニャー。さっきからずっと話しかけてたニャン!」

岡部「フェイリス!ラボメンを大至急召集するのだ!早く!」ガシッ

フェイリス「はニャ!?ど、ど~したのニャ....?」

――

夕方になって、クリスティーナ以外のラボメンが集まってきた。もっとも、クリスティーナはまだ正式なラボメンではないが。

ダル「どしたん?急に」

フェイリス「今日も顔色が悪いけど、何かあったのニャ?」

岡部「....お前たち、ラボ以外の場所でタイムマシンのことを話したか?」

ダル「いや、あんなん見せられて外で話すとかありえなくね?僕は怖くて話せないお」

まゆり「オカリンが話すなって言ってたから、話してないよ。まゆしぃ、よくわかんないし」

るか「凶真さんが絶対話すなとおっしゃっていたので、ボクは話してません!」

鈴羽「あたしは当然話してないよ」

フェイリス「フェイリスも、絶対言ってないのニャ」

岡部「そうか....」

そもそも、多少の情報が漏れたところで、こんな学生だけの素人サークルに本当にタイムマシンがあると信じる奴なんていないだろうが....

いや、むしろ問題はこれからだ。


岡部「いいか、ラボの外で誰かに話しかけられた時、絶対にこのラボのことは話すな!怪しいやつにメールアドレスを教えてもいけない!特に桐生萌郁という、メガネをかけた女には注意しろ!」

まゆり「きりゅー、もえかー?」

るか「わ、わかりました!メガネのひと、めがねのひと....」

ダル「色仕掛けされんことを祈るお!いや、むしろウェルカム?」


岡部「わかったな?では、今日は解散だ。....フェイリス、鈴羽、ちょっと話がある」

フェイリス「ニャニャ?」

鈴羽「........」

――

鈴羽「何かあったの?急にあんなこと....」

岡部「ラウンダーが現れた。前の世界線で、まゆりを何回も殺した奴だ」

フェイリス「!....ら、ラウンダーって....?」

鈴羽「ラウンダーは、SERNの汚れ役担当の実行部隊だよ。主な任務は、IBN5100の捜索と回収」

岡部「それと、世界中のタイムトラベル研究の監視もだ。目的のためなら、殺人も窃盗も誘拐も厭わない危険な連中だ」

鈴羽「あたしたちは、2036年でラウンダーと戦っていたんだ。岡部倫太郎も、父さんも、ラウンダーに殺された」

フェイリス「そ、そんな....でも、なんで?見つかるようなことは、してないニャ」

岡部「わからん。まだ偶然、という可能性もある。あいつはかなり変わった奴だったからな。....とりあえず、お前たちには本当のことを言っておく。警戒は怠るな。いいか、常に携帯をいじっている女だ。それらしいやつを見つけたら、俺に教えてくれ」

鈴羽「わかった。偶然、か....だったらいいんだけどね」

フェイリス「う~....こ、怖いニャ....」

――11月21日(日)

あれから何日かたった。が、萌郁が現れる気配はなかった。視線を感じることもなかった。

偶然だった....のか?


岡部「........」

なんとなく街をうろついてみるが、桐生萌郁は見当たらず、視線も一向に感じない。どうやら、杞憂だったようだ。


と、前方で見覚えのある後姿を発見した。何かを覗き込んでいる。

岡部「....クリスティーナよ。何をそんなに一生懸命見ている」

紅莉栖「うわあっ!?」


紅莉栖「って、えーと、岡部?」

岡部「岡部ではない!狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真だ!」

紅莉栖「はあ....?厨二病乙!」

岡部「もはやねらーであることを隠そうともしないな!クリスティーナ、いや@ちゃんねらークリス!」

紅莉栖「う、うるさい!」

岡部「なにを見ていたのだ?....これは、うーぱのぬいぐるみか」

紅莉栖「い、いや、これは、そのー....」

岡部「そうかそうか!まだ臀部に蒙古斑があるクリスティーナお嬢ちゃんは、かわいいものが大好きか!フゥーハハハ!」

紅莉栖「あー、もう!かわいいもの好きで悪いか!」

岡部「臀部に蒙古斑は否定しないのだな」

紅莉栖「蒙古斑なんてないわ!セクハラよ、セクハラ!」

岡部「フゥーハハハ!これはすまなかったな。かわいいものが好きなら、お詫びにいいところに連れていてやろう!」

紅莉栖「い、いいところ!?....まさか、今度こそいかがわしいところに連れ込むつもりじゃ――」

岡部「何を妄想しているんだ、この天才HENTAI少女は」

紅莉栖「HENTAIはあんたでしょ!」

「「おかえりニャさいませ、ご主人様♪」」


紅莉栖「....女の子をいきなりメイド喫茶に連れて行く男の人って....しかもネコ耳とか、ハードル高すぎ」

フェイリス「いらっしゃいませ、お嬢様♪牧瀬紅莉栖さんだから、クーニャンでいいかニャ?」

紅莉栖「は、はあ!?何言っちゃってるの、この子は!?ク、クーニャン!?」

フェイリス「お気に召さないのかニャ?」

紅莉栖「それ以前に、なんで名前を知ってるの?」

岡部「もちろん、会ったことがあるからだろう。自己紹介もしていたぞ」

紅莉栖「いやいや、ネコ耳メイドさんに知り合いなんていないって....」

フェイリス「フニャ!?....クーニャンは、フェイリスのこと忘れちゃったのかニャ....」グスッ

紅莉栖「ええ!?だ、だって忘れるも何も....ん?」

フェイリス「んニャ?」


紅莉栖「あれ....もしかして、秋葉さんの娘さん!?」

フェイリス「もー、クーニャンは鈍いニャ~。それとも、フェイリスにわざとイジワルしてたのかニャ~?」

紅莉栖「わざとじゃないから!だって、全然違うじゃない!!」

岡部「顔は一緒だ」

紅莉栖「で、でもあの時はおしとやかそうなお嬢様だったのに....」

フェイリス「あれは世を忍ぶ仮の姿ニャ!フェイリスは、この趣都秋葉原の萌えを守り抜くためにネコ耳から萌え萌えパワーを吸収し、ネコ耳メイド“フェイリス・ニャンニャン”として覚醒したのニャン♪」


紅莉栖「ええ~....うそでしょ....ちゅ、厨二病、乙....」

――

まゆり「トゥットゥルー♪コーヒーお待たせいたしましたニャン♪オカリン、この人が新しいラボメンなの~?」

岡部「そう、クリスティーナだ」

紅莉栖「いや、適当すぎでしょ!クリスティーナじゃないし!」

紅莉栖「ええと、あなたもラボメンなのね。牧瀬紅莉栖です。まだラボメンになるって決めたわけじゃないけど、よろしく。あなたのお名前は?」

まゆり「クリスちゃんだね!よろしくニャンニャン♪マユシィ・ニャンニャンです♪」

紅莉栖「....いや、本名は?」

岡部「椎名まゆりだ」

紅莉栖「この店めんどくさい....」

岡部「ところでクリスティーナよ、まだラボに入ってくれないのか?」

紅莉栖「だって、あんな話いきなり全部受け入れるのは無理よ。それにタイムマシンなんて興味ないし」

フェイリス「それはウソニャ!」

紅莉栖「うわっ!?留未穂さん、いきなり現れないで!ビ、ビックリした....」

紅莉栖「む~。フェイリスは、フェイリスニャ!」

紅莉栖「はいはい、ここではフェイリスさんね」

岡部「いや、フェイリスは普段からフェイリスだ」

>>392

×紅莉栖「む~。フェイリスは、フェイリスニャ!」

 ↓

○フェイリス「む~。フェイリスは、フェイリスニャ!」

紅莉栖「いやいや、そんなわけ....」

岡部「本当だぞ。あの時留未穂だったのは、偶然なんだ」

紅莉栖「普段からフェイリスって....アキバおそるべし....」


フェイリス「そんなことより、クーニャンは素直になったほうがいいのニャ♪」

紅莉栖「す、素直って何が!?」

フェイリス「ホントは、タイムマシンを研究したくてしょうがないはずニャン!」

紅莉栖「そ、そんなはずないでしょ!何言ってるの、この子は!?」

岡部「だが、興味がないはずがないだろう?夏にATFでタイムトラベル理論に関しての講義をしたよな?」

紅莉栖「え?あんたもあの講義聞いてたの?あれは頼まれただけで....それに、あの講義はタイムトラベルを否定する内容だったでしょ!タイムマシンは実現不可能でFA!」

フェイリス「....むむむ、本当に素直じゃないのニャ。....クーニャンのパパはずっとタイムマシンを研究してる人なんだから、クーニャンがタイムマシンに興味があっても全然おかしくニャいのに」

岡部「なに!?そうなのか?」

紅莉栖「い、今は父とは仲悪いし....そもそも、あんな人もう父親じゃない!大嫌いよ、あんな人!」

フェイリス「....ほんっとに素直じゃないのニャー。....ニャフフ、クーニャンはかわいーニャン♪」

紅莉栖「いや、ほんとに嫌いだから!」

岡部「その父親っていうのは何者なんだ?」

フェイリス「Dr.中鉢ニャ。本名は、え~っと、牧瀬章一。フェイリスのパパもタイムマシンに興味があって、一時期は資金援助みたいなこともしてたらしいニャ」

岡部「ド、Dr.中鉢!?ま、まさか!」

紅莉栖「....はあ。今日はもう帰るわ。なんだか疲れた」

フェイリス「あ、ご、ごめんなさい....フェイリスがうっとうしかったかニャ....」

紅莉栖「ふえっ!?ち、違うから!そういうわけじゃなくて!ええと、シーユー!」タタタ...



岡部「まったく、クリスティーナは相変わらずのツンデレっぷりだな」

フェイリス「素直じゃないニャ~....」

――

仕事上がりのフェイリス、まゆりとともにラボに戻ると、ダルと鈴羽が二人で何かしていた。

鈴羽「あ、みんな、うぃーっす。休みもらっても、結局ラボでボーっとするくらいしかやることなくてさ....それより、見てみて!橋田至がすごいの作ってるよ」

岡部「ん?なんだこれは....また光線銃か?」

ダルは、ビット粒子砲のようなおもちゃの光線銃をいじっていた。

ダル「オカリン、引き金引いてみ」

岡部「引き金?」カチッ

―ズドオォォン!!!

轟音が鳴り響き、光線銃の中から黒くてでかいものが飛び出していった。

岡部「うおお!?」

まゆり「わわー!あぶないよ、もー」

フェイリス「フミャあ!!び、びっくりした....」


鈴羽「ほら、これ!スタンガンだよ。小さく改造してあるけど」

岡部「もしかして、スタンガンを遠距離用に改造しているのか?」

ダル「まだ発射と同時にスタンガンの電源を入れて、そのままの状態で飛ばす機能はできてないけどね。とりあえず飛ばすだけはできたお」

フェイリス「警察に見つかったりしたら、面倒なことになるんじゃないかニャ~?」

ダル「その辺突破して持ち歩けるように、見た目はおもちゃそのものなのだぜ?」

まゆり「ほんとだー。すごいよ、ダル君」

岡部「しかし、なんでまたこんなに実用的なものを....」

ダル「いや、最近リアルに不審者がうろついてるってオカリン言ってたっしょ?うちのラボは女の子も多いし、身を守れるものとか、あるといいと思ってさ」

岡部「そういうことなら、なぜこの俺に言わん!少しは手伝うぞ」

ダル「いや、なんかオカリン最近切羽詰ってそうだったし。何してるか知らんけど、邪魔しちゃ悪いと思って」

岡部「ダル....さすが、マイフェイバリットライトアームだ!」

鈴羽「それにしても、皆のためか~。橋田至って、いいやつだね!ちょっと見直した」

まゆり「ダル君は、実はとっても優しいんだよね~♪」

フェイリス「こんなにデッカイのを飛ばすなんて、ダルニャンはすごいニャ!」

ダル「....フェイリスたんフェイリスたん。こんなにデッカイのってとこ、おびえてる感じでもう一回――」

岡部「言わせるなHENTAI!」


鈴羽「....はあ。せっかく見直したのに....」

失敗した失敗した失敗した....

>>392がクリスティーナの一人芝居みたいになってもうた。今日はここまでです....また明日更新するかも。

更新します。

――11月24日(水)

岡部「....ん?」

大学での講義中、何気なく窓の外を見ると、見覚えのある姿がうろついているのが見えた。

岡部「あいつ、何をやってるんだ?」



岡部「....おい、バイト戦士」

鈴羽「へ!?うわあっ!!」バキッ

講義が終わった後、うろついていた鈴羽を見つけて話しかけたら、いきなり殴られた。なんでだよ!

岡部「ぐおお!」

鈴羽「岡部倫太郎!?もー、ビックリさせるなー!敵襲かと思ったよ」

岡部「て、敵だったら話しかける前に攻撃するだろ!?」

鈴羽「まあ、そうかも....ごめん、岡部倫太郎」

岡部「もういい。バイト戦士、もしかしてダルの様子を見に来てたのか?」

鈴羽「んー、まあね。バイトも休みだし、ちゃんとやってるかなーって。橋田至、今日はいないの?」

岡部「奴は今日はもういない」

鈴羽「ええー!?なんで?先週はいたはずなのに!」

岡部「何かアキバでイベントがあるらしい。俺に代返を任せてな。サンボの牛丼で手を打った」

鈴羽「ふーん....不忠勤なんだ」

ふちゅうきん....?わからん。


岡部「もしかしてお前、休みのたびにダルの様子を見に来てるのか!?」

鈴羽「あ、あはは~....なんか、気になっちゃって。あたしのほうが娘なのにね」

鈴羽「それより、牧瀬紅莉栖から返事は?もうすぐ12月になっちゃうよ」

岡部「そうだな....あまりあいつをふらふらさせておきたくない」

鈴羽「牧瀬紅莉栖の研究所の場所は調べたよ。やっぱり、今からでも拘束したほうが――」

岡部「そんなこと、今の日本でやったら犯罪になるわ!」

鈴羽「君が反対するなら、あたし一人でも....」

岡部「ええい、じゃあ今からその研究所に行くぞ!今度こそやつを納得させる。だから拘束はやめてくれ!」

――

紅莉栖「あっ、あんたたち、何してるの!?」

研究所につくと、ちょうどいいタイミングで紅莉栖が外に出てきた。

岡部「今日はもう終わりか?」

紅莉栖「....なに?またメイド喫茶でも連れて行く気?」

岡部「お望みならそれでもいいが。クリスティーナよ、まだわがラボに入ってくれないのか?」

紅莉栖「うーん....どうしても気になるというか、気に入らないというか....そういうことが一つあって」

岡部「何が気に入らんのだ?ラボが汚いところか?狭いところか?このセレセブめ!」

紅莉栖「セレセブ!?なんぞそれ?」

岡部「セレブ・セブンティーン、略してセレセブだ」

紅莉栖「セレブでもないし、セブンティーンでもないわ!....その、阿万音さんよ」


鈴羽「....あたし?」

紅莉栖「そ、そうよ!その人、私をやたらと敵視してるし、しかも未来人とか言っちゃってるし....そもそも、未来人っていう根拠はあるの?あるなら出しなさい!」

鈴羽「な、なにー!あたしが嘘ついてるっていうの!?」

紅莉栖「それか、ただの厨二病ね」

鈴羽「なら、証拠を見せてあげるよ!」

岡部「お、おい!何を見せる気だ?」

鈴羽「二人とも、ついてきて!」


紅莉栖「ふえっ!?ほ、本当にあるの!?」

――

鈴羽に連れられてたどり着いたのは、アキバのはずれにある貸し車庫だった。

岡部「ま、まさか....」

鈴羽「そう、タイムマシンを見せる。誰が聞いてるかわかんないし、大きい声出さないでよ」ヒソヒソ

キョロキョロと周りを見回しながら、貸し車庫の中に入り、扉を閉める。そこまでして、やっと鈴羽はふうっ、と息を吐いた。



鈴羽「....これが、このシボルエがタイムマシン。過去にしか行けない未完成品だけどね」

鈴羽「君たちなら、本物だってわかるはずだよ」

紅莉栖「この外車が?....中を見せてもらっても?」

鈴羽「あんまりいじくらないでよ。繊細だし....父さんの形見でもあるんだから」


俺と紅莉栖はシボルエの中を調べ始めた。確かに、見る人が見れば、すぐにわかる――

紅莉栖「う、うそ....こんな技術、あり得るの?」

鈴羽「この時代には存在しない技術も使われているらしいからね」

岡部「やはり、電話レンジ(仮)に少し似ているな」

しばらくすると、紅莉栖が観念したようにつぶやいた。

紅莉栖「もう納得するしかないみたいね、タイムマシンのこと....」

岡部「おお!やっとわかってくれたか、クリスティーナよ!」

紅莉栖「クリスティーナじゃないと言っとろーが!....平日は忙しいし、土曜日にお邪魔させてもらうわ。そこで返事をする」

岡部「って、今じゃないのか」

紅莉栖「う、うるさい!心の準備ってもんがあるでしょ!」

鈴羽「仕方ないか。....まあいいよ。牧瀬紅莉栖、これで君を近くで見張れるよ」

紅莉栖「あなたの敵意は変わらないってことね。まあいいわ」


岡部「....やれやれ」

――11月27日(土)

紅莉栖「....えーと、は、はろー。牧瀬紅莉栖です」

土曜日、やっと紅莉栖はラボに現れた。まったく、ツンデレには困ったものだ。

まゆり「あ~!クリスちゃんだ!トゥットゥルー♪」

フェイリス「クーニャン!やっと素直になったのニャ~」

ダル「黒スト女子キターーー!橋田至です。初めましてよろしくお願いしますキリッ!」

るか「ええと、漆原るかです。は、はじめまして」

紅莉栖「よろしくね、みなさん。橋田さんと、漆原さんでいいかしら?」

鈴羽「....ふーん。最初はそういう雰囲気で行くんだ」

紅莉栖「....何か文句あるの?」

鈴羽「べっつにー」

紅莉栖と鈴羽は、さっそく睨み合っている。大人気のないやつらめ....


フェイリス「あの二人、仲悪いのかニャ....」

岡部「そうだ。前世からの運命的なアレでな」

フェイリス「でも、皆との顔合わせくらい和気あいあいと言ってほしいニャ」

まゆり「そうだよ。喧嘩はよくないよ~」

岡部「和気あいあいか....よしフェイリス、任せた」

フェイリス「フニャ!?なんでフェイリスが!?」

ダル「オカリンが連れてきたんだから、オカリンが責任取るべきじゃね?」

岡部「う....だ、だがこういうのはフェイリスの得意分野だろう!?」

フェイリス「ニャニャ!?....確かに。むむ~....」

るか「だ、大丈夫ですか?フェイリスさん」

フェイリス「....よ、よーし!クーニャン!今から、フェイリスとネコ耳をつけるニャ!一緒にニャンニャンするニャン♪」


....どうしてそうなった。
紅莉栖「....ええ!?」

ダル「い、一緒にニャンニャンだとお!?キマシタワー!」

るか「い、一緒にニャンニャンって....///」

まゆり「ダル君もルカ君もえっちだね~」

るか「そ、そんなあ....ひどいよ、まゆりちゃん....」

紅莉栖「ええと、一緒にニャンニャンってことは、あのくんずほぐれつしてムギューッてするアレの隠語っていうこと!?」

岡部「おまえは何を言っているんだ」


鈴羽「....フェイリス、椎名まゆり。そろそろバイトの時間じゃない?」

フェイリス「ニャ!?仕方ないニャ....」

まゆり「二人とも、喧嘩はだめだよ?じゃあ、またねー」

るか「あ、ボクも神社に戻らないといけないので....それでは、えーと、エル・プサイ・コンガリィ」

岡部「コングルゥだ!」

ダル「じゃ、僕も出かけてくるお」

岡部「な....!?ダルよ、俺を見捨てるのか!?」

ダル「いや、しらんがな。オカリンが連れてきたんしょ。なんとかしといて」


あいつら、皆行きやがった!なんでよりによって鈴羽だけバイト休みなんだよ!最近こればっかだぞ!?

紅莉栖「........」

鈴羽「........」

岡部「うぐぐぐ....い、胃がああ....」

岡部「くそっ!クリスティーナよ!今日からおまえはラボメンナンバー007、そしてこの鳳凰院凶真の助手だ!ラボメン同士の反目はこの俺が許さん!」

紅莉栖「は、はあ!?いつ私があんたの助手になったのよ」

岡部「黙れえぃ!ラボメンの一員になったからには、存分にあの電話レンジ(仮)を調査するがいい!バイト戦士には邪魔はさせん!フゥーハハハ!」

紅莉栖「ホント、やかましい男ね。まあ、調査はさせてもらうけど」

鈴羽「む~....」

岡部「わからないことがあれば何でも聞くがよい!お前には、早く電話レンジ(仮)の仕組みを理解してもらわねばならんからな」

鈴羽「岡部倫太郎!破壊されないように注視しておかないと!」

紅莉栖「そんな事せんわ!失礼な!」

鈴羽「う~....」


なんだかんだ言いながら、電話レンジ(仮)の前に立つと紅莉栖は一瞬で研究者の顔になった。

紅莉栖「本当にミニブラックホールがこの中に....あ、SERNのデータも見せて。ふむん....電子をミニブラックホールに注入しているのは、下の42型ブラウン管テレビだっけ?ああ、リモコンはここにあるのね。ということは、いつでも実験可能ってわけだ....」

岡部「やはり、助手は実験大好きっ娘のようだな。クックック....」


エシュロンのことと特定ワードに気を付けることを紅莉栖に伝えると、さっそくDメール実験が始まった。

....が、紅莉栖がすさまじい勢いで実験を繰り返したため、Mr.ブラウンがラボに怒鳴り込んでくるという緊急事態が発生した。

天王寺「岡部え!!てめえ、何してやがる!」バアン!

岡部「み、Mr.ブラウン!?不法侵入だ!」

天王寺「ああ!?家主は俺だろうが!ガタガタガタガタと、さっきから何揺らしてやがんだ!」

岡部「ちょ、勝手に入ってくるんじゃない!」

天王寺「んん~?....本当に、何してたんだ?」

思いっきり入り込まれてしまった....まあ、見ただけでは電話レンジ(仮)がなんであるかは分かるまいが....


鈴羽「い、いや~、岡部倫太郎と戦争ごっこしてたら、つい盛り上がっちゃって!ごめんなさーい!」

よし、ナイスフォローだ、バイト戦士!

岡部「すまない、Mr.ブラウン。お詫びに、下働きとして今日一日そのバイト戦士を好きにこき使うがいい!フゥーハハハ!」

天王寺「ああ!?....それ、本当か?」

鈴羽「ええ!えーと....うん、任せて!あたし、こう見えても力はあるよ!」

すまん、バイト戦士よ。

天王寺「んじゃ、今日の店番任せていいか?実はいかなきゃならね―ところがあってよ」

鈴羽「それぐらい楽勝だよ!何が来ても守り切ってみせるよ!」

天王寺「いや、むしろなんもこねえと思うけどな」


な、なんという幸運!これで紅莉栖の満足いくまで好き放題実験できる!

――

紅莉栖の実験と調査は夕方まで続いた。

紅莉栖「....なるほど。これはとんでもないバケモノみたいね。ていうか、奇跡みたいなものよ、これ」

岡部「奇跡とは、どういうことだ?」

紅莉栖「たぶん、あらゆる条件がここで奇跡的にかみ合っているの。このビルの電力量とか、ブラウン管の配置とか、電子レンジの性能とか、ほかにもいろいろ。それによって、SERNがずっと悩まされている電子量という問題を自然に突破しちゃってる」

岡部「なるほど。つまり、このラボでなければこの電話レンジ(仮)は生まれなかったということか」

紅莉栖「そうよ。....ねえ、阿万音さんが未来からやってきたのは、過去を変えるためよね?じゃあ、あんたがこれを作ったのは何のためなの?偶然?それとも、阿万音さんに出会ったから?」

岡部「そうだな....」

前の世界線では、紅莉栖は俺の話をすべて信じてくれた。だが、今はどうだろう?あの時ほど、まだ親しくなれていない....

岡部「これは、最初は偶然でできてしまったものだ。そしてSERNをハッキングしてその計画を知り、そこに同じ目的を持った阿万音鈴羽が現れた、ということだ」

岡部「鈴羽のタイムマシンは、この電話レンジ(仮)をもとにして未来でダルが作ることとなる。鈴羽がこのラボに現れたのは、ある意味では必然だ」

かなりかいつまんだ説明になってしまったが、仕方ない。

紅莉栖「....つまり、阿万音さんのタイムマシンをもとにしたんじゃなくて、この電話レンジが阿万音さんのタイムマシンのもとになっているのね」


紅莉栖「ん?ダルって、橋田さんのこと?あれ、阿万音さんの父の形見って....そうなんだ、へえー....」

岡部「これは推測だが、お前が2011年の時点でSERNに移籍していなければ、未来が変わると思う」

紅莉栖「....そうしたら、阿万音さんはどうなるの?未来が変わってしまったら、もう過去を変える必要がなくなって....ええと??」

岡部「その時は世界線が変わり、今が再構成される」

紅莉栖「世界線?」


おそらく、リーディングシュタイナーは今の時点では信じてくれないだろう。とりあえず、アトラクタフィールド理論については説明しておこう。

――

その説明が終わるころ、鈴羽がつかれたようにラボに戻ってきた。さらに、同じタイミングでダルも戻ってくる。

鈴羽「もー、退屈すぎて死ぬかと思ったよ。誰も来ないしさ。あの店、大丈夫なの?」

ダル「あ、オカリン。例のモノ、持ってきたお」

岡部「例のモノ?俺は何も頼んでないぞ」

ダル「阿万音氏と牧瀬氏を仲良くするためのアイテムだよ。オカリン、これをもとめてたっしょ?」

岡部「なに!本当か!?でかしたぞ、ダルよ!」

鈴羽「本当!?でも、なんで橋田至が?」

ダル「いや、二人ともあんまここに長くいられないってことを聞いてさ。せっかくだからみんなと仲良くなって、いい思い出を作ってもらいたくて」

紅莉栖「は、橋田さん....ごめんなさい。あなたのこと、正直見た目で勘違いしてたわ」

鈴羽「えへへ....橋田至、君ってやっぱりいいやつなんだね!」

岡部「ダルよ、俺は今モーレツに感動している!さあ、そのアイテムとやらを出すんだ!」

ダル「括目せよ!おにゃのこ同士が仲良くなると言ったら、これしかないっしょ常考!」バンッ!



岡部「百合ゲー、だと....!?」

紅莉栖「....これは何の冗談?」

ダル「ゲームの中でおにゃのこ同士がちゅっちゅしてたら、ああ、私達も疼いてきちゃった♡♡♡ってなるじゃん?そしたら――」

紅莉栖「そんなわけあるか、そんなわけあるか!バカなの?死ぬの!?」

ダル「ルイズちゃんの名言キター!」

岡部「ダルに期待した俺が馬鹿だった....」

紅莉栖「このHENTAI!もうさん付けなんてしないからな!」

ダル「フヒヒ、サーセン」



鈴羽「....はああ」

今日はここまでです。できたらまた明日に。

初の4日連続更新です。体力が満ち溢れている

――

フェイリス「たっだいまニャ~ン♪クーニャン、何叫んでたニャ?」

紅莉栖「フェイリスさん!聞いてよ、このHENTAIが――」


岡部「ダルよ、お前もうちょっと自重したほうがいいぞ。実はものすごく恥ずかしいことをしている」

ダル「黒歴史製造機のオカリンにだけは言われたくないお!」


フェイリス「――ニャるほど、百合ゲーとはダルニャンらしいニャ!フェイリスも二人が仲良くなる方法を考えてきたのニャ♪」

鈴羽「ええ~?どうせネコ耳つけて二人でニャンニャンとかいうんでしょー?」

ダル「ネコ耳プレイだとお!?阿万音氏、それすごくイイ!」

紅莉栖「ぜ・っ・た・い・イ・ヤ」


フェイリス「フェイリスはまだなにも言ってないのに~....」

岡部「今度こそまともなことを言うんだろうな?」

フェイリス「もっちろんニャー♪明日、ラボで歓迎パーティを開くのニャ!」

紅莉栖「ホントにまともね....むしろビックリよ」

岡部「ふむ。血の盟約によりヴァルハラに集いし不死の戦士たちによる宴、というわけか」

紅莉栖「....なんで北欧神話?」

ダル「オカリンがカコイイと思ってるからじゃね」

フェイリス「クーニャンがお望みならギリシャ神話風にもできるニャ♪」


鈴羽「パーティ、宴、パーティ....えへへ、楽しみだな~♪」

――11月28日(日)

パーティは夜からである。それ迄の時間、紅莉栖にタイムリープマシン制作を依頼する。

紅莉栖「タ、タイムリープ!?そんなことできるわけ――」

岡部「いや、お前が言い出したんだが」

紅莉栖「言ってません」

タイムリープについても一から教えるのか....前の世界線では、こいつが言い出したのに。

岡部「まったく、助手は仕方のないやつだな。いいか、Dメールを送る要領で、圧縮した記憶のデータを携帯電話を通じて過去の自分の脳に送り込む、ということだ。」

紅莉栖「な、何よそのトンデモ発想は....!」

岡部「助手よ、お前は記憶のデータ化に関する論文でサイエンス誌に載ったんだろう?」

紅莉栖「えっ....そうか、確かにできるかも....で、でも、記憶のデータの圧縮はどうするの?」

岡部「ダルのクラッキングで、SERNのLHCを使わせてもらう」

紅莉栖「それ、SERNにばれないの?」

岡部「奴はこの鳳凰院凶真のフェイバリットライトアームにしてスーパーハカーなのだぞ!そんなヘマは踏まん....はず、だ」

紅莉栖「ならいいけどね」


紅莉栖「....よし、じゃあさっそく作るから、必要なパーツ買ってきて」

岡部「やはりやる気満々じゃあないか!実験大好きっ娘はさすがだな!よかろう!この鳳凰院凶真が責任を持ってパーツを集めてきてやろう!!フゥーハハハ!」

紅莉栖「いや、はよ行けよ」

岡部「なっ!?助手の分際で~....」


まさか萌郁が現れたのは、ダルのハッキングがばれたからか....?だが、ばれた痕跡はないとダルは言っていた。

なんにせよ、電話レンジ(仮)の存在さえ隠しきれば、ラボはただの素人サークルにしか見えないはずだ。これまで通り、情報が漏れないよう気を付けていれば、何も問題ない。

――

岡部「助手よ、ドクペでいいな?」

紅莉栖「助手じゃないと言っとろーが!まあ、ドクペはもらうけど。ありがと」

ダル「ツンデレ乙!」

紅莉栖「デレとらんわ!」

るか「す、すごい量のピザですけど....大丈夫なんでしょうか」

まゆり「ダル君がいれば大丈夫だよ~」

鈴羽「こ、これがパーティ....」

まゆり「ジューシィからあげナンバー1に、からあげあげクンに、ジュースに、おかしに、ピザに、あとなんかたくさん!」

紅莉栖「見事に太りそうなものばっかりね」

鈴羽「すごいよ!これが酒池肉林ってやつだね!」


フェイリス「では、聖なる神々の魂への召集に引き寄せられし精霊たちの最後の晩餐を始めるニャ!」

紅莉栖「いくらなんでも名称変わりすぎでしょ!詰め込みすぎだし!」

ダル「だがそれがいい!」


「「「かんぱーい!」」」

――

鈴羽「た、食べ過ぎた....」

ダル「阿万音氏、まさか僕やまゆ氏より食べるとは....」

紅莉栖「橋田と並んでまゆりさんなの?」


まゆり「ルカ君ルカ君、そろそろはじめよっか~」

るか「えっ?なにを?」

まゆり「じゃじゃ~ん!ルカ君用のメイド服と、ネコ耳でーす!メイクイーンじゃ無理でも、ここなら大丈夫でしょ?」

るか「えええ!?そ、そんな....ここでも無理だよぉ....」

紅莉栖「あら、いいじゃない。漆原さん、とってもキュートなんだし」

るか「そ、そんなあ....キュートって....」

フェイリス「ニャ?....ニャフフ、クーニャンもとってもとってもキュートニャ。つまり、クーニャンも来てくれるってことかニャ~?」

紅莉栖「いや、そんなこと一言も言ってないから!漆原さんなら、とってもかわいらしいし、似合うと思って!私は似合わないし、着たくない!」

フェイリス「うにゃ~....」ジーッ


フェイリス「....それはウソニャ!ホントはちょっと興味あるのニャ!」

まゆり「えっ、クリスちゃんも着たいの!?」

紅莉栖「いや、だから違うって!」

フェイリス「素直になるニャン♪というわけで、フミャ~!」ガバッ

紅莉栖「きゃあ!?ちょ、やめて、フェイリスさん!どこ触ってるの!?もう許して!いつか!いつか着るから!」


ダル「すごく....百合です....」

岡部「ダル、ティッシュだ」


紅莉栖「私よりまず漆原さんからでしょ!私は、まだ昨日来たばっかりだし!」

まゆり「うんうん、クリスちゃんはまだこれからだよね。ルカ君が先じゃないと♪」

るか「え、またボクに!?か、勘弁してよ....恥ずかしいよ」

鈴羽「え~?いいじゃん、それくらい。フェイリスなんて、いっつもネコ耳でメイド服だよ!」

岡部「フェイリスは別だ。奴は恥ずかしいという感情を失っているからな」

フェイリス「す、すごい言われようニャ....でも、仕方ないことニャ!フェイリスは、ギアナ高原での厳しい修行により、多くの感情を失ってしまったのニャン....」

紅莉栖「うわあ....厨二病乙」

鈴羽「でもさ、漆原るかは女性なんだし、そこまで恥ずかしがることもないでしょ?」

るか「えっ!?ボクは男、ですけど....」


鈴羽「....は?」

紅莉栖「....へ?」

ダル「あれ?牧瀬氏はともかく、阿万音氏も知らんかったん?ルカ氏は男の娘だお。だがそれがいい!」

まゆり「ルカ君は男の子だよー。でもでも、かわいいは正義なのです♪」

紅莉栖「う、うそだ!こんなにかわいい子が男の子のはずがない!」

岡部「間違っているぞクリスティーナよ!それを言うならこんなにかわいい子が女の子のはずがない、だろう?」

鈴羽「あたしをだまそうったって、そうはいかないよ!」

紅莉栖「そうよ!そんなのありえない!」


鈴羽「というわけで....ちゃんと確かめてやるー!」ガバッ

るか「ひゃああ!!?や、やめてぇ....///」


鈴羽「........ある」

紅莉栖「はあ!?どれどれ........ある」


まゆり「わわーー!!スズさんもクリスちゃんも、大胆~///」

るか「うう....ひどい」グスッ

ダル「いただきました....ふう」

フェイリス「ほかにも確かめる方法はいくらでもあったのに....あの二人はHENTAIコンビニャ!」


紅莉栖「私より女の子っぽいのに....死にたい」

鈴羽「あたしも....」

――

岡部「む、ドクペがなくなったか....助手が飲みすぎだな。まるで優勝力士のような飲みっぷりだ」

紅莉栖「力士とかいうな!あんたのほうが飲んでるから!」

フェイリス「お菓子もなくなっちゃったニャ~。凶真、買い出しに付き合うニャ!」

ダル「ちょ、フェイリスたんと二人で買い出しとか、オカリン許すまじ!」

フェイリス「ダルニャン、何かほしいものがあるのかニャ?フェイリスが買ってきてあげるニャ!」

ダル「フェイリスたんパシリにするとか背徳感ヤバすぎっしょ!ダイエットコーラおながいします!」

紅莉栖「結局頼むんかい!でもフェイリスさん、夜の街をその野獣と二人っきりとか、危険よ!」

まゆり「オカリンはそんな人じゃないし、大丈夫だよ~」

鈴羽「あ、じゃああたしも行く!お菓子選びたい!」

岡部「俺はまだいくとは言ってないが....」

フェイリス「いーからいーから♪さあ、出発ニャンニャン!」


ダル「よく考えたらオカリンいなくなってハーレムキタコレ!」

るか「あの、ボクも男ですって....」

――

鈴羽「今日は楽しいな~....こんなに楽しいのは、初めてだよ」

アキバの街を歩いていると、鈴羽がしみじみとつぶやいた。

鈴羽「君たちのラボって、楽しいよね。みんな変なのばっかだけど、優しいし。怒ったり、泣いたり、笑ったり....この時代って、ほんとに素敵だよ」

フェイリス「未来は、そんなにいやな世界なのかニャ....」

鈴羽「未来では、何の自由もないからさ。こんなふうにみんなでワイワイやるって、すごく新鮮。牧瀬紅莉栖も、まあそんなに悪いやつじゃなかったし」

岡部「さっきは息ったりだったしな」

鈴羽「もー、さっきのはもういいでしょ!?....でも、あたしは今がとっても幸せ。ありがとう、岡部倫太郎。ラボに入れてくれて」

岡部「お前がこの時代で幸せを感じているなら、俺も満足だ。ラボメンの幸福はすなわちこの鳳凰院凶真の幸福なのだからな!フゥーハハハ!」

鈴羽「君って飛び切り変だけど、いい人だね」

岡部「何!?いい人だと!?この狂気の――」

フェイリス「凶真は言動が変わってるだけで、ほんとは仲間思いの優しい人なのニャン♪」


岡部「なっ....!?俺だ!」スチャ

岡部「どうやら、機関の精神攻撃によってわがラボの小娘どもが洗脳を受けたようだ....なに!?手遅れだと!くっ....ああ、何とか持ちこたえてみせる....ラボメンを守ることが、この鳳凰院凶真の使命なのだから....おのれ、これがシュタインズゲートの選択というのか!....エル・プサイ・コングルゥ」

フェイリス「あいかわらず、素直じゃないのニャ」

鈴羽「照れるな照れるな、このー!」


岡部「まったく....バイト戦士よ、一か月たったが、父親の印象はどうだ?」

鈴羽「え、橋田至の?....うーん、変態だね」

岡部「た、確かにHENTAIだが、いいところも――」

鈴羽「知ってるよ。変態だけどなんだかんだ優しいし、やっぱり父さんなんだなって思う。たまにちょっと残念だけどね」

フェイリス「スズニャン、ちゃんとダルニャンのいいところも見てたんだ!なんだかうれしいニャ~♪」

鈴羽「未来の男らしい父さんも好きだけど、今の変態な父さんのほうが幸せなんだよね、きっと。....そういえば、このまま未来を変えたら未来のあたしの父さんまで変態になるってこと!?うわあ~....」

岡部「ダルは変態だが、いい変態だ。きっといい父親にもなれるだろう」

フェイリス「きっとスズニャンも変態として育成されるニャ!そして、変態魔法少女マジカル☆スズハとして、アキバに降臨することになるのニャー!」

鈴羽「そんなの、あたしじゃない....」

岡部「にゃんこ戦士スズニャンも相当なものだぞ....」


――そんな馬鹿な会話をしていた時、人ごみの中に見覚えのある姿が見えた。

岡部「!!!桐生、萌郁!」


鈴羽「えっ!?それって、ラウンダーの!?」

岡部「そうだ....どこに向かっている?」

萌郁は俺たちに気づかない。どこかへ向かっているようだ。

フェイリス「ニャニャニャ....凶真、尾行しよう!」

岡部「そうだな....だが三人は目立つ。鈴羽、頼めるか」

鈴羽「オーキードーキー」

鈴羽はすぐに萌郁の後を追った。少し離れて、俺とフェイリスも後を追う。

――

やがて、曲がり角の向こうを深刻そうに凝視する鈴羽に追いついた。


岡部「鈴羽、どうした?」ヒソヒソ

フェイリス「何かあったのかニャ?」ヒソヒソ

鈴羽「あいつ――」


鈴羽「あたしのタイムマシンがある貸し車庫を、見てる」

今日はここまで。また明日です。

更新します。

岡部「か、貸し車庫だと!?」

フェイリス「ちょ、凶真!声が大きいニャ!」

萌郁「....!!」


鈴羽「やばい、こっちに気付いた!近づいてくる!」ヒソヒソ

岡部「しまった、逃げるか!?」ヒソヒソ

フェイリス「それは不自然すぎるニャ。ここは、フェイリスに任せてニャ」ヒソヒソ

萌郁が近づいてくると、フェイリスが一歩進み出た。どうするつもりだ....?

萌郁「あの....貴方は、フェイリスさん?」

フェイリス「ニャニャ?どうしてフェイリスの名前を知ってるのかニャ?」

萌郁「....雷ネット、みてて....ファン、なんです」

フェリス「....にゃはは、うれしいニャ―♪もしかして、凶真のことも知ってるかニャ?」

萌郁「知ってる....鳳凰院さんも、ファンだから....」

フェイリス「フ~ン....あ、せっかくだから、あなたのお名前とかも教えてほしいニャン♪」

萌郁「....桐生、萌郁....編プロの、バイト....」

フェイリス「じゃあ、モエニャンでいいかニャ?モエニャンは、こんなアキバのはずれで何してたのニャ?」

萌郁「....ただ、ボーっとしてただけ....」

フェイリス「....フニャ?そうなのニャ?まあ、そういうときもあるかニャ~」

ちらり、とフェイリスがこっちに視線を送ってきた気がした。


岡部「フェイリス、そろそろ行くぞ!散歩は終わりだ。早くラボに戻って新必殺技“ミーミルの泉”を完成させ、雷ネットABグラチャン冬の陣において確実に勝利しなければならん!この鳳凰院凶真に敗北は許されんのだ!」

フェイリス「凶真はせっかちニャ。じゃ、フェイリスたちは帰るニャ!バイバイ、モエニャン♪」

萌郁「....!まって。せっかくだから、取材、させてほしい....そのラボ、行っていい?」

フェイリス「ム....ヒミツの必殺技を開発中だから、少なくとも冬の雷ネットABグラチャンが終わるまでは取材NGニャ!ごめんニャさい、またの機会にニャ」

萌郁「....それなら、せめてメアドを....」

フェイリス「ごめんニャ~、それは事務所NGなのニャン。じゃ、バイバイニャ~ン♪」

萌郁「事務所....?」


....曲がり角を曲がり、萌郁から見えなくなったところで、俺たちは走りだした。

――

岡部「はあ、はあ....も、もう大丈夫か?」

鈴羽「ふう....だいぶ離れたから、もう大丈夫だと思う。つけられてはいないよ」

フェイリス「け、結構走ったニャ....はあ、ふう....」


岡部「く、なんであそこにいたんだ!?どういうことだ!?」

フェイリス「少なくとも、ボーっとしてた、はウソニャ。それに、明らかにフェイリスたちをさぐってた」

岡部「じゃあ、何らかの目的をもってあの貸し車庫を見ていたのは間違いないんだな!?」

フェイリス「うん....で、でも、これはフェイリスの勘だけど、あそこにタイムマシンがあるとまでは思ってないと思うニャ」

フェイリス「それにしても、モエニャンは名前以外ウソばっかだったニャ。多分、フェイリスたちを知ってるのも、何か別の理由....」

岡部「やはり、俺たちを調べているのか....!だが、なぜあそこが分かった!?」

鈴羽「この前、君と牧瀬紅莉栖をここに連れてきた。その時も、ずっと見られてたのかも」

岡部「くそ!あのシボルエ、わかるやつが見たらタイムマシンだとわかってしまう!」

フェイリス「か、隠し場所を変えないと....」

鈴羽「........」

岡部「それも見られるかもしれん....それに、あんなものを隠しきれる場所など、そうは――」



鈴羽「あたし、行くよ」

岡部「何!?行くって、どこへ?」

鈴羽「1975年。今なら、まだタイムマシンだってばれてない。もしばれたら、全部おしまいでしょ?」

フェイリス「ええっ!?そ、そんな!」

岡部「ま、まて!まだ貸し車庫の中まで調べられたわけじゃないだろ!」

鈴羽「でも、これから見られるかもしれない。のんびりしてる暇はないよ」

岡部「だ、だがお前が1975年に行けることは確定している!焦ることは――」

鈴羽「そんなの、タイムマシンの存在がばれてからじゃ遅いでしょ!?」

岡部「ぐっ....」

鈴羽「あたしが1975年に行って君たちにIBN5100を届けても、タイムマシンのことが奴らにばれてたらだいなしだよ。あたしは、もう行かなきゃ」

フェイリス「で、でもぉ....そうしたら、スズニャンはもう戻ってこられないニャ....」

鈴羽「わかってたことだし、初めから覚悟はできてる。一か月も十分に楽しめたから、もう満足だよ」

フェイリス「そんなあ....」グスッ

岡部「鈴羽....」

鈴羽「ごめんね、岡部倫太郎。最後まで見届けられなくて。あとは、君に任せるよ」


岡部「....分かった」

フェイリス「そんな、凶真あ....」

岡部「すまない、鈴羽....何もしてやれなくて」

鈴羽「えっ!?....何言ってんの?あたしをラボに入れてくれて、こんなにいい思い出と仲間をくれたでしょ。十分すぎるよ」

岡部「すまない....」

鈴羽「もう、謝るなー!むしろ謝らなくちゃいけないのはこっち!全部君に押し付けて、あたしは成功するってわかってる任務に向かうんだから」

岡部「それでも、お前は孤独になってしまう....」

鈴羽「大丈夫!あっちでも、君たちみたいな仲間を作るから!....」


鈴羽「....岡部倫太郎。最後に、父さんと皆にお別れを言いに行ってもいいかな?」

岡部「....ああ」

――

まゆり「ええ~~~!!スズさん、いっちゃうの!?」

るか「そ、そんな!どうして急に!?」

ダル「ちょ、バッドエンドにしても急すぎるっしょ!どゆこと?」

紅莉栖「....なにかあったの?」


ラボに戻り、鈴羽がみんなに別れを告げると、みんな一斉に驚き、悲しんだ。

鈴羽「あはは、お迎えが来ちゃった、ってところかな」

まゆり「え~っ、いやだよ。スズさん、ずっといてほしいよ....」

るか「そうですよ....今年のうちはいるって、言ってたじゃないですかあ....」

鈴羽「ごめん。でも、行かなきゃいけないんだ」

まゆり「うう....」


鈴羽「....大丈夫!絶対、また会えるよ!そうしたら、このお別れもなかったことになる!だから、これは悲しむことじゃないよ」

岡部「........」

フェイリス「でも、もしかしたら、もう会えないかも....う、うええ....グスッ....」

鈴羽「もー!絶対会えるって!....フェイリスって、意外と泣き虫だよね。映画を見ててもすぐ泣いちゃうし」

フェイリス「泣き虫じゃないよ....」グスッ

鈴羽「フェイリス、一か月間ありがと。フェイリスと一緒に暮らせて、とっても楽しかった」


鈴羽「あと、牧瀬紅莉栖。悪い態度とっちゃってごめん。君のこと、悪い人って決めつけてた。ホントは、結構いい人だったよ」

紅莉栖「もう怒ってないわ。....でも、次会ったときは、ちゃんとなつきなさいよ」

鈴羽「あはは、わかったわかった!....じゃあ、そろそろ行くね。橋田至、ちょっといい?」

ダル「なんぞ?もしかして、お別れのキッスとか!?」

鈴羽「キッスはないよ!でも....ちょっとだけ」ギュッ


鈴羽は、ダルに抱き着いた。少しだけ泣いているようにも見えた。

ダル「え!?い、いつの間にフラグが!??」

鈴羽「あたし、頑張るから....応援してくれる?....父さん」

ダル「んん!?....う、うん。わかったお....父さんじゃないけど、応援する」

鈴羽「ありがと....橋田至も、頑張ってね」

ダルから離れた時には、鈴羽はもう笑顔に戻っていた。


まゆり「スズさん、まゆしぃたちのこと、忘れちゃいやだよ?」

るか「ボクたちも、また会える日まで絶対忘れませんから!」

鈴羽「....うん、任せて!....フェイリス、いつまでも泣くなー!ちゃんと、岡部倫太郎を助けてあげてね」

フェイリス「うにゃあ....わかった....」グスッ

鈴羽「岡部倫太郎、頼んだよ。....未来を、変えてね」

岡部「....ああ」

鈴羽「あの、もしまた会えたらさ、その時はまたラボメンに入れてくれる?」

岡部「当然だ!お前は、未来永劫ラボメンなのだからな!!」

鈴羽「....ありがとう、岡部倫太郎」


岡部「....必ず、未来を変えてみせる。お前も、やるべきことをやるんだ」

鈴羽「オーキードーキー!じゃあみんな、絶対また会おうね!」

ダル「ぼ、僕も頑張るから、阿万音氏も頑張れ!何をかは分からんけど、とにかく頑張れ!」

フェイリス「絶対、絶対また会えるよね....」グスッ



――鈴羽は、振り返らずに出て行った。だが、これは悲しいことじゃない。

  必ず会えるからだ。7年後、鈴羽が望んだ未来で。


 Chapter7

   神域のカタストロフィ

今日はここまで。明日はやれるかな?無理なら月曜です。

新作も公開されたことだし一層期待してます

>>494
今更新作とか出るわけないだろwwwとか思ってたらマジだった
このSSはステマでも便乗でもないですよ!本当に知らなかった

シナリオかぶってないか心配で見に行ったけどそんなわけはなかった
フェイリスの出番は少なそうですね・・・

再開します。

――12月4日(土)

鈴羽が1975年に行ってから、ラボの空気は何となく重かった。俺もまた桐生萌郁の動向が気になって落ち着かなかったが....

しかし、ようやく朗報が届いた。


紅莉栖「....よし、完成!」

平日の夕方にも作業を進めていた紅莉栖が、とうとう土曜日にタイムリープマシンを完成させたのだ。

紅莉栖「まあ、二日前までしか記憶を送れないから、完璧とは言えないけどね」

岡部「おお、完成したか!よくやった、助手よ。だが、とりあえず実験はしない」

紅莉栖「ええ!?じゃあ、なんでこれを作らせたわけ?」

岡部「....保険だな。もしこの先、例えばクリスティーナがSERNにさらわれるようなことがあった場合、その記憶を持ってやり直せる、というわけだ」

前の世界線では、タイムリープで世界線を変えることはできなかった。未来は結局収束する。

....とはいえ、時間稼ぎにはなる。これは大きなアドバンテージだ。


紅莉栖「でも、本当にタイムリープが成功するとは限らない。もしかしたら、脳に深刻な影響が出るかも....」

岡部「心配する必要はない。俺はお前の能力を信じている。そんな失敗はあり得ない、とな」

紅莉栖「お。岡部....って、あんた、もしかして何かあったら使うつもり!?」

岡部「当然だ。そのために作ってもらったんだからな」

紅莉栖「でも、本当に問題が起きるかもしれないのよ!?もしかしたら、脳に深刻な障害が発生するかも――」

岡部「心配してくれているのか?」

紅莉栖「ちがう!別にあんたのことを心配してるわけじゃないんだから!」


ダル「ツンデレ乙!」

紅莉栖「ツンデレちゃうわ!って、いつの間に!?」

フェイリス「途中から、こっちまで筒抜けだったニャ。クーニャン声大きいニャ!」

ダル「今の発言はテンプレすぐる!」

フェイリス「も~、クーニャンはかわいいニャ~♪」

紅莉栖「ああ、もう!疲れたから、今日はもう帰るわ!シーユー!」


ダル「最後までツンデレだった件について」

岡部「やれやれ、助手も変わらんな....」

フェイリス「クーニャンはホント素直じゃないのニャ。あ、凶真!クーニャンは明日から暇かニャ?」

岡部「ああ。奴は任務を成し遂げた」

フェイリス「ニャフフ~、明日はクーニャンの秘められしパワーを呼び覚ます日となるのニャ!」

ダル「おお!フェイリスたんが萌えている!明日が楽しみすぐる!」


岡部「フェイリス、やっと元気が出てきたか」

フェイリス「元気じゃないと、フェイリスじゃないのニャ!」

――12月5日(日)

紅莉栖「ちょ、ストップストップ!無理!無理だってば!」

フェイリス「それはウソニャ!クーニャン、素直になるのニャ!」

まゆり「クリスちゃん、早く行くよー」

ダル「まゆ氏、いまのイクっていうの、もうちょっと色っぽく――」

「「黙れHENTAI!」」


フェイリス「フェイリスは絶対あきらめないニャ!スズニャンの穴を埋められるのは、ツンデレネコ耳メイド“クリスティーニャンニャン”しかいないニャ!ムダな抵抗はやめるニャ~」

まゆり「クリスちゃんは、絶対に会うと思うのです♪」

紅莉栖「いや、似合わないって!ネコ耳とか絶対無理!」

フェイリス「まったく、同じウソをつき続けるとは困ったものニャ~♪」

紅莉栖「だから、嘘じゃないと言っとろうが!ネコ耳メイドとか、ぜ~~~ったい無理!」


フェイリス「ぜ、絶対って....うう、クーニャンはフェイリスのこと生理的に無理とか思ってたんだ....」グス

紅莉栖「えええ!?いや、思ってないから!生理的にとか言ってないし!」

まゆり「ああ~、フェリスちゃん泣いちゃった....」

フェイリス「う、うええん....」グス

紅莉栖「も、もう泣かないで、フェイリスさん....分かったから....」


フェイリス「あ、今わかったって言ったニャ?さっさとそう言っちゃえばいいのニャン♪」

紅莉栖「あ!嘘泣き!卑怯よ!!」

岡部「童貞並みのちょろさだな」

ダル「牧瀬氏、わかるってばよ....」

紅莉栖「あんたたち、傍観してないで助けなさいよ!」

岡部「フェイリス、本当にクリスティーナは嫌がってないのか?」

フェイリス「ニャ?ルカニャンは本気で嫌がってるのが分かるから、フェイリスは無理強いはしないニャ。でもでも、クーニャンは心のどこかで望んでるのが見えるのニャ♪」

岡部「じゃあ俺は何も言わん。ツンデレメイド、いいじゃないか」

紅莉栖「お、岡部!裏切る気!?」

岡部「あきらめろ助手よ。『べ、別にあんたの出迎えに来たんじゃないんだからねっ!』『さっさと飲みなさいよ!....あ、熱いならフーフーしてあげてもいいけど?』....アリだな」

ダル「いや、オカリンボイスでそれはないわ。でもツンデレメイドに関しては禿同」

紅莉栖「橋田まで!?も、もうだめぽ」

ダル「....は?」

岡部「....ん?」

まゆり「....え~?」

紅莉栖「あ、いやその....」

フェイリス「ウニャ~....クーニャンクーニャンクーニャン~!ガバッ

紅莉栖「ちょ、ちょっとー!?」ズルズル....

まゆり「じゃあ、バイト行ってくるね~♪」

ダル「....んじゃ、僕もメイクイーン行ってくるお。オカリンは?」

岡部「俺は用事がある」

ダル「わかったお。んじゃまた~」


正直クリスティーニャンニャンは滅茶苦茶気になる。が、電話レンジ(仮)から離れるのは怖かった。

奴らはどこまで俺たちを疑っている?どこまで知っている?....くそ、わからん。


ダルが出かけてしばらくすると、階段を上る足音が聞こえた。ルカ子か?

天王寺「おう、岡部。ちょっといいか?」ガチャ

岡部「ミ、Mr.ブラウン!?何か用か!?」

天王寺「何か用か、とはご挨拶だな!最近また部屋をガタガタ揺らしてるじゃねえか!部屋に傷とかついてねえか見に来たんだよ!」

そういえば、タイムリープマシンの作動テストを何回かしていたな....


天王寺「....まあ、傷はねえみたいだな」

岡部「ちょっと戦争ごっこが流行っているだけですよ、ハハハ....」

天王寺「あんま暴れんじゃねえよ!古い建物なんだぞ!」

岡部「もう大丈夫ですよ。全面禁止にしました」

天王寺「戦争ごっこといやあ、最近あの三つ編みの嬢ちゃん見ねえな」

岡部「....彼女は、実家に帰りました」

天王寺「そうか。そいつは残念だったな。....なんにせよ、もう変なことはすんじゃねえぞ!次やったら家賃一万値上げだ!」

岡部「な、横暴だ!」

そんなことをされたら、雷ネットの大会で優勝するかフェイリスのヒモになるしかないじゃないか!....意外と余裕だった。

――

紅莉栖「あーもう、疲れた....」

しばらくすると、今度は紅莉栖が入ってきた。

岡部「早かったな、助手よ。クリスティーニャンニャンはどうだった?」

紅莉栖「やってない!逃げてきたのよ。あと助手ゆーな!」

岡部「なんだ、やってないのか。つまらん」

紅莉栖「フェイリスさんって、何か弱点はないの?このままじゃ押し切られそう」

岡部「フェイリスの弱点....?そうだな、末期の厨二病患者なことだな」

紅莉栖「本日のお前が言うなスレはここですか?」

岡部「だが、やつの魔眼“チェシャー・ブレイク;チェシャ猫の微笑み”の力は本物だ。奴に嘘は通用しない」

紅莉栖「はいはいワロスワロス。大体、私は嘘なんてついてないのに!」

岡部「いや、やつが嘘と言ったら嘘だ。お前の深層心理はツンデレネコ耳メイドになることを望んでいる!素直になれ、クリスティーナ」

紅莉栖「ティーナも禁止!....あんたって、フェイリスさんの魔眼を本当に信じているの?他の人の厨二病は『くだらん!非ィ科学的だ!!』とか言って否定しそうなもんなのに」

岡部「....お前、もしかしてフェイリスのことが苦手か?」

紅莉栖「ふえっ!?そ、そんなことない!」

岡部「実は、初めは俺も苦手だった。だが、あいつはいいやつだぞ。....鈴羽がいなくなって寂しいんだ、仲良くしてやってくれないか?」

紅莉栖「それは大丈夫よ。フェイリスさんがいい人だってこともわかってる。私ってこんな性格だから、今まで友達って言える存在がいなかったのよね」

岡部「........」

紅莉栖「でも、このラボのみんなはこんな私に対してもすごく親しく接してくれる。フェイリスさんも、まゆりも、漆原さんも、橋田も、....それに、あんたも」


紅莉栖「だから、このラボはすごく居心地がいい。岡部、ラボに入れてくれてありがとう」

シュタゲの続編おめでとうございます
(祝)シュタゲ0発売&アニメ化

岡部「ククク、礼には及ばん!お前には、この鳳凰院凶真の助手として働いてもらわねばならないからな!フゥーハハハ!」

紅莉栖「真面目に言ってるのに....あんたもフェイリスさんも、厨二病ひどすぎよね」

岡部「フェイリスの妄想と一緒にするな!俺は現実を生きる狂気のマッドサイエンティストだぞ!」

紅莉栖「いや、どう考えても一緒なわけだが。二人だけで分かり合ってるみたいな空気も出しちゃったりするし....」

岡部「そんなものは出ていない!」

紅莉栖「初めはここ、岡部とフェイリスさんの二人だったんでしょ?....もしかして、付き合ってるとか?」


岡部「....助手よ、お前もまたスイーツ(笑)脳のようだな」

俺とフェイリスの関係か....うやむやにしたまま放置しているが、フェイリスはどう思っているんだろうか....?

今日はここまで。続きは明日。

>>512
アニメ化もきまってるの!?あと、ホントにステマでも便乗でもないんです!知らなかったんです!
フェイリスの出番も少なそうだし。

ラボメンガールズで唯一ENDルートの無いもえいくさんに新規でルート追加はあるんだろうか

>>519
萌郁さんルートほしいですね。新作のこと勘違いしてたけど、小説の内容だけじゃないんですね。

フェイリスがどうの言ってますけど、助手とかルカ子好き
ていうかみんな好きだから平等に見せ場があるといいな、と思います。

更新します。

――12月6日(月)

岡部「よかった....何も起きていない」

大学から急いで戻ると、すぐラボに異変が起きてないか調べる。幸い、ラボには何も起きていなかった。

本当は大学に行ってラボを開けるのも怖いが....もしかしたら、普段と違う行動は怪しまれるかもしれない。


次の日も、また次の日も....不安を感じながらの生活は続いた。

――12月11日(土)

土曜日は一日中ラボに立てこもった。今日も、何も起きない....

フェイリス「凶真?」

もしかしたら、このまま今年は終わるのだろうか?何も起こらずに?そうであってくれればいいが、そんなことがあり得るのか?

フェイリス「ねえ、凶真」

鈴羽が1975年に向かってから、萌郁は現れていない。もしかしたら、もうラウンダーは俺たちへのマークを外したのか?本当に、もう大丈夫なのか....?


フェイリス「凶真?むー、凶真、凶真きょうまきょうまぁ!」

岡部「うお!?フェイリス、いつの間に!?」

フェイリス「フェイリスはさっきからずーっと凶真に呼びかけてたニャ!」

岡部「そ、そうか....」

フェイリス「凶真は何を考え込んでたのかニャ?悩みがあるならフェイリスが聞いてあげるニャン♪」

岡部「何も悩んではいない!」

フェイリス「それはウソニャ!....もしかして、桐生萌郁さんのことかニャ?」

岡部「....!違う」

フェイリス「それもウソニャ。....なんでそんなウソをつくの?フェイリスまで心配になっちゃうからかニャ?フェイリス的には、そんな凶真のほうが心配ニャン♪」

岡部「フェイリス....」

フェイリス「ねえ凶真、明日一日かけて、ラボの周辺を調べてみない?ホントに監視されてるなら、どこかに桐生萌郁さんとか、ほかのラウンダーさんがいるはずニャ」

岡部「それは、危険すぎないか?」

フェイリス「にゃはは、二人でラボの周りを散歩するだけニャ♪別に怪しい行動をするわけじゃないのニャ~」

岡部「....そうだな。考え込んでいても仕方ない。そうしよう」

――12月12日(日)


天王寺「....お前ら、さっきから何周してんだ?」

呆れたようにMr.ブラウンが話しかけてきた。俺とフェイリスは、もう十周以上はラボ周辺を回っている。

萌郁も、ラウンダーらしき人間も、一人も確認していない。どうやら、本当にいなくなっているようだ!


綯「二人でずーっとお散歩してて、楽しいの?」

フェイリス「ニャフフ~♪ナエニャン、フェイリスは凶真と一緒にいると、それだけで楽しいニャ♪」

綯「そうなんだ?へんなのー」

天王寺「綯、こいつらは元から変だろ?こんなふうにはなるなよ。特に岡部はだめだ!」

岡部「Mr.ブラウン、貴方に付き合っている暇はない!これは機関との戦い、“オペレーション・スクリューミル;虚影の巨人殲滅作戦”の一環なのだ!」

綯「あっ、ほーおーいんきょーまだ!アニメ見たよ!先週は、火を噴いてた!」

岡部「目からビームの次は火だと!?あのテレビ局、また変な改変をしおって!」

フェイリス「フェイリスはかわいくアニメ化されてるのに、凶真はネタ方向の改変がひどいニャ....」

綯「くらえ、むすぺるへいむのごうかを!ぼおおー!」

岡部「北欧神話にだけ無駄なこだわりを見せおって....」

天王寺「ああ、綯!そんな奴のまねはしちゃダメだ!」

綯「えー、学校でみんなまねしてるよ?」

天王寺「くそっ、また学校に電話しねえと!禁止だ禁止!」

岡部「これがモンスターペアレントか」


綯「それより、冬の雷ネットABグラチャンでも優勝してね!きょうま、フェイリスお姉ちゃん!」

岡部「ちょ、ちょっと待て!なんでフェイリスはお姉ちゃんで、俺は呼び捨てなんだ!」

フェイリス「リスペクトの差が出ただけニャ♪」

綯「ふーははは!白衣ばさぁ!」

岡部「こんの小動物めがあぁぁ....」

天王寺「ああ!?おい岡部!ウチの綯を小動物呼ばわりだと!?」

岡部「あ、いえ、とってもかわいらしいという意味で....」

フェイリス「それはウソニャ♪」

綯「ウソにゃー♪」

天王寺「よし、殺す!」

岡部「フェ、フェイリス!そろそろいいだろう!ラボに戻るぞ!」

フェイリス「うにゃ?もう凶真は安心したってことかニャ?」

岡部「ああ。奴らは間違いなく、もういなくなっている」

フェイリス「それはよかったニャ♪じゃ、ラボに戻るニャン!」


天王寺「岡部!てめえちょっと待て!」

岡部「急げ!逃げるぞ!」ダッ

フェイリス「あ、待ってニャ~!」ダッ

――

岡部「....俺だ」スチャ

岡部「機関は怪人“魔造筋肉入道”を送り込んできた....ああ、問題ない。奴には知能が足りないからな....フ、これ以上邪魔をされたときには、な....今は見逃しておいてやるさ....全てはシュタインズゲートの選択のままに....エル・プサイ・コングルゥ」

フェイリス「“魔造筋肉入道”はいくらなんでもかわいくないニャ。せめて、“ブラウンバーバリアン”とか“スキンヘッドキュクロプス”とか――」

紅莉栖「どっちもどっちよ。ラボに戻ってくるなり厨二病全開って....」

ダル「オカリィィィン!」

開発室から突然ダルが現れ、おもちゃの光線銃を突き付けてきた。

ダル「フェイリスたんと二人でお散歩デートとか許せん!万死に値するお!」

岡部「ダルもいたのか。これはデートではなく機関との戦いの一環だ。そのおもちゃをしまえ」

紅莉栖「それ、おもちゃじゃないわよ。中から小型のスタンガンが放電しながら飛んでくるから」

岡部「なに!?あの未来ガジェットが完成したのか!?」

ダル「うん。だからオカリンで試し撃ちするお」

岡部「お前はジャイアンか!?ま、まて!話せばわかる!」

ダル「リア充は死ね!悲しいけどこれ、戦争なのよね」

フェイリス「まあまあダルニャン、その未来ガジェットの名前を決めるのが先ニャン♪こんなすごいの作っちゃうなんて、ダルニャンは天才ニャ!」

ダル「うへへ、フェイリスたんを守るために作りました。護身用にどうぞ」

ダルは、あっさりとフェイリスに銃を明け渡した。


紅莉栖「....これはひどい」

岡部「でかしたフェイリス!よーし、この未来ガジェットの名は....」


岡部「....ラグナロクにおいて永劫に再生せし世界蛇ヨルムンガルドを打ち滅ぼす神の雷霆、“トール・サンダーボルト”!」

ダル・紅莉栖「「厨二病乙!!」」

フェイリス「あ、凶真!それかっこいいニャ!」

ダル「じゃあ賛成」

紅莉栖「はあっ!?」

岡部「決まりだな。これの名称は未来ガジェット9号機、トール・サンダーボルト!」

紅莉栖「....頭痛くなってきた」

今日は久しぶりに楽しい気分だ!どうやら、俺たちはラウンダーのマークを外れたらしい。

まだ油断は禁物だが、希望が見えてきた!

今日はここまでです。

新作に負けないように明日から本気出す

更新します。

――12月13日(月)

久しぶりに悩みから解放された俺は、いつになくハイになっていた。

岡部「ダルよ、未来ガジェット10号機は火炎放射器にするぞ!」

ダル「いや、これからは冬コミの準備で忙しいから」

岡部「冬コミだとぉ!?お前それでもラボメンか!」


まゆり「オカリンが元気になって、まゆしぃはうれしいです♪」

紅莉栖「元気になったらなったで鬱陶しいわね」

フェイリス「ニャフフ、これなら....」

――12月14日(火)

フェイリス「凶真!おかえりニャさい♪」

大学からラボに戻ると、フェイリスが一人で待っていた。

岡部「ああ。フェイリス一人か」

フェイリス「....ニャフフ。凶真、もう悩みはなくなったみたいニャ♪」

岡部「完全に、ではないがな。ただ、そこまで張り詰めることもないだろう、フゥーハハハ!」

フェイリス「それでは、さっそく出発ニャ―!」ギュッ

フェイリスは突然、俺の手を引いて歩き出した。



岡部「しゅ、出発ってどこへ!?」

フェイリス「いーからいーから、フェイリスについて来てニャ♪」


――

黒木「では、ごゆっくり」

連れてこられたのは、アキバの高級マンションの最上階....つまりフェイリスの家だった。

机の上には何やらごちそうが並び、真ん中にはケーキがある。

岡部「こ、これは....どういうことだ?」

フェイリス「凶真、ほんとにわかんないのかニャ?」

岡部「き、記念日的な何かか?ス、スイーツ(笑)」


フェイリス「な~に言ってるのかニャ、凶真は....今日は、凶真の聖誕祭ニャン♪」

岡部「な、何!?....そうか、今日は12月14日か!」

今日は俺の誕生日じゃないか!....完全に忘れていた。

フェイリス「というわけで、凶真!お誕生日、おめでとニャンニャン♪」

岡部「あ、ありがとう....だから、俺の悩みを何とかしようとしていたのか....」


フェイリス「えーっと、凶真!お誕生日プレゼントは、フェイリス自身ニャ♪」

岡部「........」


岡部「は、はああああああ!??」

フェイリス「だからー、そのー、今日はフェイリスに何をしても、許されるってことニャ....」

岡部「お、お前なあ!!」

フェイリス「さあ凶真、好きにするがいいニャー....」



岡部「........よし、じゃあフェイリス、目をつむれ」

フェイリス「フニャ!?い、いきなり!?う~~~....お、OKニャ....うん....」

フェイリスはギュッと目を閉じて身構えている。俺はそのフェイリスに――



フェイリス「....えっ!?えええ!?な、なんで!?」

俺は、フェイリスのネコ耳を奪った。


岡部「今日は一日留未穂でいてもらうぞ!俺は嘘で塗り固められた女に興味はない!フゥーハハハハハ!」

フェイリス「な、なーんだ、そんなこと....いや、期待とかしてたわけじゃないけど....」ボソボソ

岡部「何か言ったか?」

フェイリス「な、なんでもない!」

フェイリス「あ、倫太郎さん!実は、もう一つプレゼントがあるんだ♪」

岡部「なに!?今度は、留未穂がプレゼントとか言い始めるんじゃ....」

フェイリス「そ、それでもいいけど....」

岡部「な....!?」


フェイリス「あ、いや、えっと....目を閉じてくれる?」

岡部「今度は俺が目をつむるのか....ま、まさかこのパターンは....!」

フェイリス「早く早く♪目を閉じたら、手を出して」

岡部「し、仕方ないな....」

俺は、言われたとおり目をつむって右手を差し出した。


フェイリス「....そっちなんだ....」

岡部「ん?」

フェイリス「えへへ、なんでもないよ!」


フェイリス「....はいっ!倫太郎さん、目を開けていいよ!」

岡部「....これは、指輪か」

右手の薬指に、精巧な紋様があしらわれた白銀に輝く指輪がはまっていた。


フェイリス「あ、あのね....実は、ペアリングなんだ」

留未穂の薬指にも、同じ指輪が輝いていた。

フェイリス「倫太郎さん、このペアリングは、魔法の指輪なんだよ」

岡部「お前までそんなことを....」

フェイリス「このペアリングをはめた二人は、たとえどれだけ離れていても、どんなことがあっても、心はずっと一緒....そんな魔法が込められているの」

岡部「ずっと一緒、か....」

フェイリス「そう!この魔法は、一度はめたらずーっと解けることはない....だって、私が込めた魔法だから」

岡部「そうか。それは、強力だな」

フェイリス「えへへ....」


岡部「お前にはいつももらってばかりだな。何かほしいものはないか?」

フェイリス「えっ?だって、今日は倫太郎さんのお誕生日だよ?」

岡部「礼がしたいんだ。何でも言ってくれ。できる限り、何とかする」

フェイリス「急に言われても....う、う~ん....えーっと、そのー....」


フェイリス「り、倫太郎さん自身、とか....?」

岡部「お前、またそんなことを....」

フェイリス「あ、あっ!白衣!倫太郎さんの白衣がほしい!」

岡部「ん?構わんが、何に使うんだ?雑巾か?」

フェイリス「そんなわけないでしょ!じゃあ、もらうね?」

白衣を脱いで渡すと、留未穂は早速そのボロボロの白衣を羽織った。


フェイリス「狂気のマッドサイエンティスト、秋葉留未穂だ!ふーははは!」

岡部「........」

フェイリス「や、やっぱり今のなし!」

岡部「....裾が地面についているし、袖も長すぎるし....子供が遊んでいるようにしか見えん」

フェイリス「もう、ひどいよ!そろそろ座ろっか....きゃあ!?」

岡部「うわ、危ない!」

留未穂は早速、裾を踏んで転びかけた。あわてて支えると、抱きしめるような格好に――


フェイリス「え、えへへ、ありがとう、倫太郎さん....あ、わ、わざととかじゃないよ!これは....そう、機関の攻撃!」

岡部「き、機関なら仕方ないな....」

フェイリス「うん、仕方ない、仕方ない....」

岡部「........」

フェイリス「........」


岡部「いつまでこのままなんだ....」

フェイリス「も、もうちょっと....」

――

岡部「やはり留未穂は料理がうまいな」

ケーキまで平らげ、もう満腹だ。

フェイリス「今日は学校もあったから、黒木やシェフにも結構手伝ってもらっちゃったけどね」

岡部「黒木さんは万能だな....そういえば、冬の雷ネットABグラチャンはいつからだ?何も聞いていないが」

フェイリス「私たちはチャンピオンだから、12月25日、クリスマスの決勝戦だけだよ」

岡部「そうなのか....もうあれから4か月たったのか」

フェイリス「ねえ、倫太郎さん。まだ寂しさを感じることはある?みんなとは仲良くなれても、思い出は消えてしまったままだから....」

岡部「そうだな。寂しいと感じないと言えば、うそになる」

フェイリス「やっぱり、そうなんだ....」

岡部「だが、今はこの世界線に来てよかったとも思っている」

フェイリス「え?」

岡部「この4か月間、お前が多くの思い出をくれたからな。消えてしまった思い出は、確かに俺にとってかけがえのないものだった。でも、お前との思い出もまた、俺にとってはかけがえのない大切なものだ」

フェイリス「それって、本当に?」

岡部「ああ。お前がいなかったら、俺はずっと孤独だった。全部、留未穂のおかげだ」


岡部「ありがとう、俺と一緒にいてくれて」

フェイリス「い、いいよ、お礼なんて....それに、これからもずーっと一緒なんだからね」

岡部「そうだな....」

フェイリス「........」


フェイリス「さ、さーて!倫太郎さん、そろそろお開きにするね!」

岡部「あ、ああ」

フェイリス「黒木ー!黒木―!」

留未穂が黒木さんを呼ぶと、すぐに黒木さんは現れた。....もしかして、全部聞いてたのか!?


黒木「はい、お嬢様」

フェイリス「倫太郎さんを、お家まで送ってくれる?」

黒木「かしこまりました」

岡部「へ?お家って、八王子の?」

フェイリス「お誕生日くらい、お父様とお母様に顔を見せてあげて。きっと、いつも心配してると思うから」

岡部「....留未穂に言われたら、仕方ないな。わかったよ」


――

岡部「今日は楽しかったぞ。ありがとう、留未穂。おやすみ」

フェイリス「おやすみなさい、倫太郎さん。....あ、あのね....」

岡部「なんだ?」


フェイリス「もし、もしもまた同じことがあったらね、その時は左手を....」

岡部「左?何の話を....って、それは――!」

フェイリス「わわ、お、おやすみなさいっ!」

岡部「お、おやすみ....」

今日はこれで終了です。次は金曜日に

更新します。

――12月18日(土)

ダル「もうだめぽ。全然勝てね」

まゆり「フェリスちゃんとオカリン、強すぎるよー」

フェイリス「にゃはは。これがダブル魔眼の力ニャ♪」

あれから数日、やはり何も起こらなかった。

この日は冬の雷ネットABグラチャンに備えてラボでダル・まゆりコンビを相手に練習をしていたが、どうやら全く問題なさそうだ。

岡部「フゥーハハハ!脆い脆い脆い!」

紅莉栖「ああ、ダメ....ああー!また負けた....漆原さん強すぎ....」

るか「えっ、あの、すいません....」

なぜか紅莉栖とルカ子も対戦しているが、こっちも一方的である。


岡部「助手よ、お前は顔に出すぎだ。ちなみにルカ子はこの5人の中で最弱だ」

紅莉栖「ぐぬぬ....」

まゆり「クリスちゃんクリスちゃん、悔しかったら練習あるのみだよ♪」

紅莉栖「く、悔しくなんてないから!」

ダル「負け惜しみ乙!」

紅莉栖「負け惜しみじゃない!」

岡部「フゥーハハハ!負けず嫌いのクリスティーナお嬢ちゃんはしょうがないなあ!」

紅莉栖「....はあ、もういいわ。あんたたち、そんなに強いなら練習なんていらないんじゃない?」

岡部「わかってないなクリスティーナよ....我々は王者らしく、芸術的に勝たねばならん!」

フェイリス「そうニャ!観客は、フェイリスたちの“エンターテインメント”に期待しているのニャ!」

紅莉栖「どういうこと?」

ダル「牧瀬氏知らんの?フェイリスたんと鳳凰院凶真は、雷ネットの原作漫画やアニメにも登場している雷ネット界で知らぬ者はいない超有名プレイヤーなのだぜ?」

るか「先週のアニメの凶真さん、とってもかっこよかったです!」

まゆり「手のひらから、だーくおまた(?)出してたもんねー♪」

岡部「“ダークマター”だ!」

紅莉栖「どんなキャラだよ!改変ってレベルじゃねーぞ!」

ダル「ところでまゆ氏、今のおまた、ってとこ――」

フェイリス「ダルニャン、キモイニャ」

ダル「ありがとうございます!」

フェイリス「ところでみんな、クリスマスは暇かニャ?ぜひぜひ応援に来てほしいニャ!」

まゆり「まゆしぃは、メイクイーンのクリスマスイベントだからいけないのです....」

フェイリス「そ、そういえばそうだったニャ....他のみんなは?」

ダル「応援します、全力で!」

るか「あ、ボクも行きます!」

紅莉栖「私も行くわ。面白そうだし。岡部が」

ダル「牧瀬氏は、オカリンの人気っぷりにドン引きすると思われ」

紅莉栖「下の綯ちゃんが真似してるのを見てもうドン引きしたから、大丈夫よ....多分」

――12月19日(日)

まゆり「♪~♪♪~」

岡部「まゆりよ、何をつくているんだ?冬コミ用のコスプレか?」

まゆり「これは違うよ~。メイクイーンの、クリスマスイベント用の衣装だよ!オカリン、そことそこを持って、びろーんって広げてくれる?」

ダル「まゆ氏まゆ氏、今の、びろーんをもう一回――」

紅莉栖「言わせるなHENTAI!」

岡部「....ってこれ、サンタコスか!?」

紅莉栖「し、しかもミニスカ....」

フェイリス「あ、マユシィ!できたかニャ?」

るか「ええっ!?ま、まゆりちゃん!丈が短すぎるよ!」

まゆり「るか君はエッチだね~♪」

るか「そ、そんなあ....」

ダル「オウフ、ミニスカネコ耳サンタコスメイドとか属性多過ぎっしょ!うへ、うへへ」

フェイリス「うーん、丈が短すぎて風営法に引っかかりそうニャ....もうちょっと長くしてニャ」

紅莉栖「い、一応その辺は気にするんだ....あはは....」

岡部「?フェイリス、お前は何を作っているんだ?」

フェイリス「んニャ~、クリスマスイベントはイヴとクリスマス当日の二日間ニャンだけど、フェイリスはイヴにしかメイクイーンに来られないのニャ。だから、イヴはフェイリスだけのイベントなのニャン♪」

フェイリス「フェイリスとじゃんけん大会をして、勝った人から、このくじを引いていくのニャ!」

フェイリスはいろいろな猫の絵が描かれたくじを作っていた。紅莉栖が一つとって中身を見てみると――


紅莉栖「えええ!!?『フェイリスと恋人つなぎでお店を一周』....何ぞこれ!」

ダル「なん....だと!?」

フェイリス「ニャフフフフ、一等賞は『フェイリスがほっぺにチュー』ニャ!」

るか「ええ!?フェイリスさん、大胆すぎるよ!」

ダル「あなたが神か?」

フェイリス「フェイリスのことなんて、別に好きじゃないんだからね!っていうクーニャンみたいなツンデレさんのために、ネコ以外のくじも用意してあるニャ♪」

紅莉栖「ほ、ほんとだ....なにこれ、ドラゴン?こっちはフェニックスね」


紅莉栖「....っていうか、私はそんなこと言わんわ!誰がツンデレだ、誰が!」

まゆり「メイクイーンのお客さんに、そんなこと言う人いないけどねー」

フェイリス「ラボメンは、イヴのイベントには全員参加ニャ!皆でニャンニャンするニャン♪」

岡部「俺はいかんぞ!そんなこっぱずかしいイベント....」

フェイリス「えー、凶真は凶真らしくするだけでいいから、来てほしいニャ~」

まゆり「オカリーン....フェリスちゃんがかわいそうだよ、行ってあげようよ~」

るか「き、凶真さん、ボクも勇気出しますから、行きましょうよ」

岡部「か、考えておく」

――12月21日(火)


大学から帰る途中、アクセサリーなどを売っている怪しげな露店が目に入った。

岡部「....ふむ」

もうすぐクリスマスだな....いつもフェイリスにもらっている分、たまには俺からも何かくれてやるか。

露天商「ヘーイ、オニーサン!イロイロアルデ、バッチ見テクヨロシ!」

岡部「日本語で頼む」

露天商「オー!バリバリ日本語ヨー!」

岡部「....ん?これは....」

それは、角度によってさまざまに光るネコの飾りがついたチョーカーだった。美しく妖しげに輝くそれは、まるで魔法のアイテムだ。

これなら間違いない。フェイリスの好みにも合うだろう!

岡部「店主、いいセンスだ。これをもらおう」

露天商「オー!オメガタカーイ!OK、ソレ7マンエンネー!」

岡部「な、7万円!?7万っていったか?もうちょっと安くは――」

露天商「ソレデモ、サービス価格ヨ~」

岡部「くそ、ちょっと待ってろ!」

あわててATMに走る。....どうやら奴は俺の口座の残高を知っていたようだ。


岡部「く....これは痛い....」

自分の薬指にはまった指輪を見る。これは、たぶん7万円どころじゃないんだろうな....ええい、しかたない!


露天商「ムフフ、オンナノコデスカー?グーッド!」

岡部「........」

まあ、たまにはいいだろう....たまには。いつでも渡せるよう、ポケットにチョーカーを入れてラボへ向かった。

――

紅莉栖「あ、岡部!ちょっと話がある」

ラボでは、紅莉栖が俺を待っていた。

岡部「どうした?クリスティーナよ」

紅莉栖「今日、SERNから返事をもらえるか、って電話があった」

岡部「なにっ!?それで、どう答えたんだ?」

紅莉栖「もちろん、断ったわ。でも、向こうもそんなに本気じゃないように思えたけどね」

岡部「なぜ?」

紅莉栖「だって、私は専門外でしょ?それに、本気なら電話じゃなくて直接勧誘するものじゃない?」

岡部「ふむ....」

リーディンフシュタイナーは、まだ発動していない。まだ油断は禁物だ。


岡部「また誘いがあるかもしれん。引き続き断ってくれ」

紅莉栖「OK。まあ、あの調子じゃもう来ないと思うけど」

――12月22日(火)

岡部「........」

今日も何も起きなかった。あと少しで2010年が終わる。

2010年中に牧瀬紅莉栖がSERNに移籍しなければ、世界線が変わるはず。俺は、未来を変えられたのか?


ダイバージェンスメーターは、相変わらず .275347 のままだ。

フェイリス「たっだいまニャンニャーン♪」

フェイリスがバイトから帰ってきた。フェイリスは、どんなに遅くなっても必ず一日に一回はラボに顔を出す。


フェイリス「凶真、クリスマスイヴの夜はあいているかニャ?」

岡部「あいている....クリスマスパーティーでもするのか?」

フェイリス「にゃはは、それは優勝祝いも兼ねて、クリスマス当日にするのニャ♪....えっと、イヴは凶真と二人だけニャ―....」

岡部「そうか....わかった。俺も最初からそのつもりだった」

フェイリス「やったぁー!そうと決まれば、さっそく....ムムムム~」

岡部「何をしてるんだ?」

フェイリス「イヴの夜をロマンチックに染めるために、雪を降らせる魔法をかけてるのニャ♪」

岡部「あいかわらずのメルヘンっぷりだな」

フェイリス「ニャフフ~、楽しみニャ~♪」





コツ、コツ、コツ........




その時、ラボの扉が勢いよく破られた。



???「動くな!手を上げろ!」


一瞬、何が起きたかわからなかった。


そして、数秒後に理解する。



ラウンダーだ。

フェイリス「えっ!?だ、誰!?」

岡部「ラウンダー、だ....」

フェイリス「ええっ!?な、なんで....?」


そして、誰かがまたラボへの階段を上ってくる。

俺は、それが誰かを知っている。


岡部「桐生、萌郁....」

萌郁「........」

萌郁は、無表情のまま俺たちに銃を突きつける。....まさか、力ずくで紅莉栖をさらいに....?


ラウンダーA「M4、ターゲットA、Cは確保した」

岡部「A、C....?それは、誰のことだ?」

萌郁「牧瀬紅莉栖と、橋田至....。岡部倫太郎、あなたも、連れて行く」

岡部「な、なんで俺とダルまでターゲットなんだ!?」

萌郁「この3人で、タイムマシン、作った....」

――なぜ知っているんだ!?だが、この流れは、まさか!?

....まゆりは?無事なのか!?


萌郁「抵抗は、無駄。....タイムマシンと、IBN5100は、回収する」


萌郁「岡部倫太郎も。秋葉留未穂は――」

――まさか!

その瞬間、フェイリスは素早く俺と反対方向に駆け出し、未来ガジェット9号“トール・サンダーボルト”を手に取った。

フェイリス「凶真!逃げて、早く!」

ラウンダーB「こいつ、抵抗する気か!」


萌郁と、ラウンダーの銃口は一斉にフェイリスのほうに向けられた。

岡部「フェイリス!やめ――」


ズダダダダダッ!!

銃声が、響き渡る。

岡部「フェイリス!くっ....!」

目を閉じ、開発室へ走りこんだ。後ろから、誰かの倒れる音がした。


ラウンダーC「こっちは片付いた。岡部倫太郎は?」

萌郁「....!あっち!」

ラウンダーA「何もさせるな!撃っても構わん!」

岡部「くそっ!どうしてこんなことに....!」

いそいでタイムリープマシンの設定を済ませ、ヘッドギアを被る。


ズダダダダッ!!

岡部「ぐわあっ!」

さらに銃声が響き、胸に激痛が走った。


その時、放電現象が始まり――



岡部「とべよおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


12月22日20:03

     ↓

12月22日16:03


 Chapter8

   冥走のオルフェウス

今日は終了です。できたらまた明日に。

更新します。

―――

――



岡部「ぐううっ....!」

4時間のタイムリープをした結果、大学で講義を受けている時間に帰ってきた。隣にいたダルが驚いたように声をかけてくる。


ダル「ちょ、いきなり呻きだすとか、講義中はマジ勘弁」

岡部「!ダル!東京を離れろ、今すぐにだ!」

ダル「は?いきなりなんなん?東京を離れろって....」

岡部「いいから、できるだけ東京から離れるんだ!」

ダルにそう伝えながら、すぐに教室の外へと走り出す。


ダル「いつもの厨二病ですね、わかります――ってオカリン!どこ行くん!?」

岡部「頼む、今すぐにだ!」ダッ

――

教室から出て、走りながら紅莉栖に電話をかける。


紅莉栖『....ハロー?』

岡部『紅莉栖!急いで東京を離れろ、今すぐにだ!』

紅莉栖『はあ?いきなり電話してきて、何を言い出すかと思えば....』

岡部『俺はタイムリープしてきたんだ!夜の8時、ラボが襲撃される!』

紅莉栖『えええ!?あんた、それ本気で言ってる?』

岡部『わかったな?すぐにだ!』

紅莉栖『ちょ、ちょっと――』ブツッ

まゆりとルカ子は今日はラボに来なかったし、そもそもラウンダーのターゲットになっていないから大丈夫だろう。

それより、フェイリス....前の世界線では、どうあがいても必ずまゆりの死に収束した。

まさか、この世界線ではフェイリスの死に収束するのか?


岡部「....いや、そんなはずはない!」


まだ、俺はフェイリスの死を直接見たわけじゃない!もしかしたら、可能性があるかもしれない!

今度はフェイリスに電話を掛ける。


フェイリス『もしもし?凶真から電話なんて、ちょっと珍し――』

岡部『フェイリス!今どこにいる!』

フェイリス『うニャ?今は学校で、これからメイクイーンに行くところニャ』

岡部『わかった!今からそこに行くから、ちょっと待っていてくれ!』

フェイリス『へ?な、なんで――』ブツッ


くそ、早くしなければ....!

――

フェイリス「凶真?どうかしたのニャ?」

フェイリスは、校門の前で黒木さんとともに待っていた。よし、まだ3時間もある!


岡部「今日の夜8時ごろに、ラウンダーが襲撃してくる!東京からできるだけ離れるんだ!」

フェイリス「ええ!?....わ、わかったニャ!黒木!」

黒木「??....とにかく、東京から離れればよろしいので?では、軽井沢の別荘にでも向かいましょうか」

――

――19:38


黒木「こんなところで検問とは、ついてませんねえ....」

車は、いまだに東京から出られていなかった。検問につかまり、前後左右に身動きが取れなくなってしまったのだ。

フェイリス「う~....こんなの、普通ありえないニャ」


....これも、前の世界線で体験した通り....だとしたら――

その時、窓の外を見ると見覚えのある連中が近づいてくる。


ラウンダーだ。

岡部「くそ、フェイリス!行くぞ!」

フェイリス「フニャ!?凶真、行くってどこに!?」

フェイリスの手を引いて車の外に出る。こうなったら、走って逃げるしかない!


フェイリス「ど、どこに行くの?ねえ、凶真!?」

岡部「どこでもいい!どこかに隠れて――」


ズドォン!



銃声が、検問でできた大渋滞の中に響き渡る。


岡部「バカな、こんなところで撃ってきただと!?おい、フェイリ――」

フェイリス「ううっ....」ヨロッ

岡部「なっ!?フェイリス!フェイリス!!」


倒れこむフェイリスの体を受け止め、必死に呼びかけた――

が、フェイリスは俺の腕の中で血まみれになり、もう動かなくなっていた。

運転手A「?なんだ今の?銃声?」

同乗者「そんなわけ――って、あいつの持ってるの、本物か!?」

運転手B「うわ、あっちの子、撃たれて死んでるぞ!」

運転手C「ひいいいい!た、助けてー!!」

渋滞が、混乱に包まれる。

逃げるなら、今しかない。


岡部「くっ!すまない、フェイリス....」

俺はフェイリスをそのままにして、ラボに向かって走り出した。

――

岡部「はあ、はあ....」

ラボはまだ襲われていなかった。ほんの少しだけ、安堵する。


....やはり、この世界線はフェイリスの死に収束するのか!?


岡部「....いや、まだだ!まだ何か可能性があるかもしれない!」

タイムリープマシンの設定をして、再びヘッドギアを被った。


今度こそ!今度こそ――


12月22日20:56

     ↓

12月22日15:56

――

その後も、さまざまな方法でフェイリスを助けようと試みた。

電車を使おうとしたら、前の世界線のように電車は止まっていた。

建物の中に隠れても、何らかの原因でラウンダーに見つかった。

それ以外にも、あらゆる方法で逃げようとし、かくれようとしたが、必ずフェイリスは殺された。

時にはラウンダーの手で。

時には全く違う原因で。

ラウンダーの本来のターゲットではないフェイリスだけを逃がそうとしても、無駄だった。

あえてずっと自宅で待機させても、無駄だった。

21日以前の時点ではるかに離れた場所に逃がしても、無駄だった。


もはやラウンダーとは全く関係のないことが原因で、フェイリスは死んだ。

死んだ。

死んだ。

死んだ。

死んだ。



やはり、この世界線は必ずフェイリスの死へ収束する。


フェイリスの死が、世界に承認されている。


この世界線にいる限り、避けることはできない。

――12月20日20:02


岡部「........」

考える時間がほしい。何十度目かもわからなくなったタイムリープで、二日前まで戻ってきた。


この因果が、ラウンダーの襲撃から始まっているのは間違いない。そもそも、なぜ俺たちはラウンダーに目をつけられた?なぜタイムマシンやIBN5100の存在が漏れているんだ?

....わからない。やはり電話レンジ(仮)を作ったことが間違いだったのか?

俺は、また間違えたのか?

フェイリス「凶真?」

岡部「!!....いたのか、フェイリス」

この日、この時間にフェイリスはいたか....?毎日顔を出しているから、いてもおかしくはないか。


フェイリス「....また何か悩んでるのかニャ?フェイリスに話してみるニャ!」

岡部「....悩んでなどいない」

フェイリス「........」


フェイリス「それはウソニャ」

岡部「なっ....嘘ではない!」

フェイリス「ウソニャ。....ねえ凶真、ほんとにどうしたのニャ?なんだか、まるであの時みたい」

岡部「あの時って、いつのことだ?」

フェイリス「4か月前の、凶真が世界線を越えてきた時」

岡部「な、何を言っている!」


フェイリス「もしかして....凶真、また世界線を変えたの?それとも、タイムリープをしたの?」

岡部「ち、違う!別に何もない!

フェイリス「それもウソ」

岡部「だから、嘘じゃないって言っているだろう!」

フェイリス「....どうしてそんなウソをつくの?今の凶真、とっても苦しそうだよ」

岡部「........」

フェイリス「凶真、苦しいなら、私を頼ってよ。そんな悲しいウソはつかないで」

岡部「う........」

フェイリス「一緒に戦おうって、約束したでしょ?お願い、教えて。お願い....」

岡部「フェイリス....」

岡部「....2日後、12月22日の夜8時ごろ、ラウンダーがラボに襲撃してくる」

岡部「そして、お前が....フェイリスが、殺される。どう逃れようとしても、その未来に収束するんだ....」

フェイリス「!!....」


フェイリス「もしかして、凶真はそれを何とかしようとして....」

岡部「ああ。もう何度もタイムリープしている。だが、これはこの世界線ではもう確定してしまっている....Dメールで過去の改変を行うしかないが、いつ、どうしてこの結末が確定したのかが、どれだけ考えてもわからないんだ!くそっ....!」

フェイリス「........」

フェイリス「ねえ、凶真」

岡部「....なんだ?もしかして、何か思いついて――」

フェイリス「一回、眠ったらどうかニャ?」


岡部「....はあっ!?」

フェイリス「そんなに心が疲れてたら、いい考えなんて浮かばないニャン♪凶真が寝てるうちに、このネコ耳メイド探偵、フェイリスがいいアイディアを考えておいてあげるニャ!だから、今は安心して眠るのニャ♪」

岡部「お前、もうすぐ死ぬんだぞ!?なんでそんなに平然としてるんだよ!」

フェイリス「凶真があきらめない限り、フェイリスは死なない。で、凶真は絶対にあきらめない。フェイリスは、何も心配することなんてないニャ~♪」

フェイリス「それより、凶真の顔色が悪いことのほうが心配ニャ!さあさあ、今ならフェイリスが膝枕してあげるニャン♪」

岡部「こんなことになったのは、俺のせいなんだぞ!?俺のことなんて――」

フェイリス「もー、そんなこといいから、早くこっちに来るニャ!」


フェイリスは強引に俺をソファーに寝かせた。頭が、柔らかい感触に包まれる。

フェイリス「ねんね~こ、ねんね~こ、ねんねこニャ~♪」

岡部「なんだそれは....」

フェイリス「子守唄に決まってるニャ~♪....凶真、ちょっとは落ち着いたかニャ?」

岡部「ああ....ありがとう」

フェイリス「ニャフフ~♪ねんね~こ、ねんね~こ――」


まったく休んでいなかったため、本当に眠くなってきた。おとなしく目をつむることにしよう。

....フェイリスを助けるはずが、また助けられてしまったな――



今日はここまでです。また明日。

更新します。

――12月21日09:28


次の日の朝、目を覚ますとフェイリスの顔が目の前にあった。


フェイリス「あ、凶真!おはようニャン♪」

岡部「お前、もしかしてずっと起きてたのか?学校は?」

フェイリス「今更学校なんて関係ないニャ!それより、やっぱりフェイリスにも、どうしてラウンダーに目をつけられたのかはわからなかったのニャ~....」

岡部「ああ....実際に確かめたいんだが、タイムリープは2日前までしかできん。つまり、12月以前には戻れない」

岡部「萌郁が現れたのは11月....タイムリープでは届かない」

フェイリス「それでも、実際にその人に会って確かめるしかないニャ」

岡部「だが、どうやって?」

フェイリス「探すしかないニャ。とりあえず土日まで戻って、フェイリスと一緒に探し出すのニャ!」

岡部「そ、そんなことができるか?」

フェイリス「こっちは記憶をもって何度でもやり直せるニャン!探し続ければ、絶対見つかるニャ!」

岡部「し、しかしあいつが口を割るようには....」

フェイリス「ニャフフ、そこはフェイリスの出番ニャ♪」

岡部「....!そうか、嘘を見抜く力があれば....」

フェイリス「凶真、フェイリスは力になれそうかニャ?」

岡部「ああ。....俺は情けないな。いつもお前に助けられてばかりだ」

フェイリス「にゃははは....そんなふうに言われると照れくさいニャ~....」


岡部「今度こそ....俺が、お前を助ける!」


12月21日10:15

     ↓

12月18日10:15

――

岡部「フェイリス、ちょっと話がある!」

フェイリス「はニャ?」

岡部「俺はタイムリープしてきた。12月22日、ラボがラウンダーに襲撃される!」

フェイリス「ええっ!?そ、そんな....どうして?」

岡部「それを今から調べるんだ!桐生萌郁を探し出し、ラボに目を付けた理由を聞きだす!協力してくれ!」

フェイリス「え、えーっと....」

岡部「お前ならわかるだろ?俺は嘘は言っていない」

フェイリス「う....わ、わかったニャ。何か手がかりはあるかニャ?」

岡部「手がかりか....」


確か、編プロでバイトをしていると言っていたな....本当かどうかはわからんが。

アークリライト、とか言っていたか?まずはそこからあたるしかない。

そこが空振りなら....アキバ中を隅々まで探してやる!

――

今度は、何度もこの土日の2日間を繰り返すこととなった。

桐生萌郁は確かにアークリライトという編プロでバイトをしていた。

だが、それは夏のほんの短い期間だけ。履歴書はとっくに捨てられていた。


手がかりのなくなった俺たちは、アキバ中を当てもなく探し回ることとなったのだ。

――12月19日14:13

岡部「くそ、アキバにはいないのか!?」

フェイリス「昨日も今日も、まるで雲をつかむような感じニャー....」


フェイリス「あれ?ルカニャン!」

るか「え?....あ、フェイリスさん。それにおか、凶真さんも。こんにちは」

フェイリス「こんにちニャンニャン♪」

岡部「ルカ子か。偶然だな」

るか「こんなところでお二人にお会いするなんて、珍しいですね」

フェイリス「ニャフフ~、ちょっとデートしてたのニャン♪」

るか「ええっ!?デ、デート!?」

岡部「違う!....そうだルカ子、怪しい女を見かけたことはないか?」

るか「えっ、怪しい女、ですか?うーん....そういえば、少し前なんですけど、柳林神社で不思議な女性に声をかけられました」

岡部「なに!?詳しく教えてくれ!なんと声をかけられたんだ?」ガシッ

るか「ふえっ!?え、ええと、古い神社に興味があるから、話を聞かせてほしいって....」

岡部「なぜその女が不思議なんだ?」

るか「えっと....あの、初対面なのに、まるでボクが男だって最初からわかってるみたいだったんです....」

岡部「もしかして、その女はメガネをかけていたか?」

るか「は、はい!」


間違いない、萌郁だ!奴はルカ子も調べようとしていたんだ!

岡部「ラボのことは聞かれたか?」

るか「い、いえ....」

岡部「そうか....じゃあ、関係ないのか....?」

るか「あの、でも、神社以外のこともいろいろ聞いてみたいからって、メールアドレスを聞かれました」

岡部「なんだと!?」

るか「で、でも、凶真さんが、メールアドレスは怪しい人に教えるなっておっしゃっていたので、教えていません!」

岡部「それはいつのことだ?」

るか「11月の終わりだったと思います」

岡部「11月か....」

11月では、結局意味がない....


るか「すいません、細かくは覚えていなくて....あ、でも、さっきコンビニで似たような人を見かけたんです」

岡部「本当か!?」

るか「はい。本人かどうかは、確信がないんですけど....」

岡部「そのコンビニ、案内してくれ!」

るか「え?は、はいっ!」

――

るか「今日のお昼ごろ、このコンビニの前を通りかかった時に、中から出てきたんです。ボクは、その....話しかけられたくなくて、かくれちゃいましたけど」

岡部「本人かどうかはわからなかったのか?」

るか「多分本人だとは思うんですけど....すみません、すぐかくれてしまったので....」

岡部「いや、直接確認すれば済むこと。助かったぞ、ルカ子!」

フェイリス「ルカニャン、ありがとニャン♪」

るか「??どういたしまして....?」

岡部「よし、俺はタイムリープする。ルカ子、正確には時間はいつごろだ?」

るか「ええと、12時ちょっと前でした」


12月19日15:32

     ↓

12月19日10:32

――


フェイリス「....あっ、凶真、きたニャ!」

コンビニの前で待ちぶせをし、とうとうその姿を捉えた。

岡部「よし、間違いない!桐生萌郁だ!」

フェイリス「それで、どうするのニャ?」

岡部「とりあえず、奴の住居を特定する。尾行するぞ」

――


岡部「あそこが、萌郁のアパートなのか」

桐生萌郁は、安アパートの2階の一室に入っていった。


フェイリス「凶真、さっそく話を聞き出しに行くニャ!」

岡部「いや、ほかのラウンダーを呼ばれたらまずい。“シャイニング・フィンガー;閃光の指圧師”なら、一瞬で助けを呼べてしまう」

フェイリス「それ、何のことニャ?」

岡部「....よし、今度はこのアパートで待ち伏せをするぞ!」


12月19日14:17

     ↓

12月19日11:17

――

今度は、萌郁のアパートで待ち伏せをする。戦闘準備はすでにできている。あとは萌郁の帰りを待つだけだ。


フェイリス「うにゃあ、物騒ニャ....」

岡部「奴は銃を持っている可能性がある。おまけに携帯に触れられたら終わりだ。万全を期す」



やがて、コンビニの袋を持った萌郁が帰ってきた。

岡部「奴がカギを開けたタイミングで突撃するぞ....」ヒソヒソ


萌郁がアパートの2階に上がっていく後ろから、気づかれないよう慎重についていく。そして――

萌郁「....!!!」


ズドオオオオン!!


萌郁が振り向いた時には決着はついていた。未来ガジェット9号機“トール・サンダーボルト”は、その名の通りすさまじい光とともにスタンガンを発射し、至近距離だった萌郁に見事命中した。

萌郁は、気を失ってその場に倒れる。

岡部「よし、うまくいったぞ!」

フェイリス「あ、荒っぽいニャ....」


手段は選んでいられない。急いで萌郁を部屋の中に運び、カギをかける。そして、携帯を奪って手足を縄で縛りあげた。

フェイリス「フニャあ!きつく縛りすぎニャ!それじゃあ、かわいそうニャ~!」

岡部「かわいそうだと!?フェイリス、こいつは――」

お前を殺したんだぞ、と言いかける。いや、フェイリスが殺されることは、このフェイリスには知らせていない。知るべきでもない。

落ち着け、俺。冷静になれ。


岡部「俺はまずこの携帯を調べる。フェイリス、この部屋に何か手がかりがないか調べてくれ」

フェイリス「う~、わかったニャ....」


岡部「....な、なんだこれは!?FB、FB、FB....送信履歴も、着信履歴も、FBだらけだ!FBってなんだ!?」

萌郁の携帯は、FBで埋め尽くされていた。1日に100通以上はメールのやり取りをしている。内容は他愛のない日常のことばかり....とはいえ、いくらなんでもこれは異常だ。

フェイリス「ニャニャ!?ぶ、武器がいっぱい隠してあるニャ!....ホントに危ない人だったんだ....」


しかし、これ以上は携帯と部屋から手がかりを見つけることはできなかった。


岡部「携帯にラウンダーとのやり取りがないのは、消去済みだからだろうか?」

フェイリス「そのFBって人が、日常会話の中に暗号を仕込んでいるのかも」

岡部「暗号か....どちらにせよ、本人に聞くしかないようだな」


――やがて、萌郁がゆっくりと目を開けた。

あれ?投下できてなかった。
今日はここまでです。続きは水曜日に

更新します。

萌郁「........!!」

萌郁は、目を覚ますと驚いた表情を浮かべた。


萌郁「これは....どういうこと!?」

岡部「いいか、桐生萌郁。お前がラウンダーであること、俺たちのラボを22日に襲撃する予定であることは知っている」

萌郁「!!!」

岡部「抵抗は無駄だ。俺の質問に答えてもらおう」


萌郁「そんなこと、知らない」

岡部「嘘も無駄だ。では、始めるぞ――」

萌郁「....携帯」

岡部「なに?」

萌郁「携帯は、どこ?」

岡部「携帯はここだ」

萌郁に俺の手にあった携帯を見せる。すると、萌郁は突然表情を変えた。


萌郁「!!返して!返してよ!」

岡部「な――!?」

フェイリス「ニャニャ!?」

萌郁「返して....返せ、返せえっ!!!」


岡部「そ、そんなに携帯が大事か?質問に素直に答えれば返してやる。だから、騒ぐな!」

萌郁「この....卑怯者!」

岡部「卑怯者....だと!?お前らが、何をしたと思ているんだ!卑怯なのはお前らだろ!!」

フェイリス「きょ、凶真!凶真も声が大きいニャ!お隣に聞こえちゃうニャ~」

岡部「す、すまん....いいか、桐生萌郁。おとなしく質問に答えたら、携帯は返す」

萌郁「........」

岡部「よし。まずは、なぜ俺たちのラボを襲撃した?」

萌郁「してない....」

岡部「これからするだろう?なぜ襲撃するんだ?」

萌郁「........」

岡部「答えない気か?まあいい、俺たちのラボにタイムマシンとIBN5100があることは知っているな?」

萌郁「!....知らない」

フェイリス「それはウソニャ。あなたは知っている」

岡部「誰からそれを聞いたんだ?このFBとかいうやつか?」

萌郁「....違う」

フェイリス「それもウソニャ!」

萌郁「な、なにを、言っているの?」

岡部「いいか、この猫娘は人の心が読める。嘘をついても無駄だ。次に嘘をついたら、この携帯を叩き割るぞ!」

萌郁「え!?....そ、そんな、ことが....!?」


岡部「FBとは誰だ?ラウンダーか?」

萌郁「....。FBは、私の、お母さんみたいな人」

フェイリス「はニャ?お母さん?」

萌郁「FBは、ラウンダーの上司で....私に居場所をくれた人」

岡部「....FBの本名は?そいつはどこにいる?」

萌郁「知らない....会ったこと、ない」

岡部「嘘をつくなといっただろう!」


フェイリス「うにゃ~....凶真、モエニャンはウソはついてないのニャ」

岡部「なに....!?本当に会ったことがないのか?お母さんみたいな人なんだろう!?会おうと思わないのか?」

萌郁「思わない....会ったら、きっと幻滅される....」


岡部「....まあいい。俺たちを調べていたのは、FBからの指示だろう?」

萌郁「そう....」

岡部「FBはなぜ俺たちに目を付けたんだ?理由くらいは知っているだろう!」

萌郁「........」

岡部「おい、答えろ!携帯を壊されてもいいのか!?」

萌郁「っ!!........」

岡部「ふざけるな、答えろ!!」ガシッ

フェイリス「凶真、落ち着くニャ!」

萌郁「........」


フェイリス「....もしかして、クーニャン?」

岡部「何!?紅莉栖がどうした?」

フェイリス「モエニャンが現れたのは、クーニャンがはじめてラボに来た直後ニャ。もしかしたら、クーニャンはSERNに誘われていただけじゃなくて、監視されていたのかも」

岡部「そ、そういえば!萌郁、お前らが最初に調べていたのは、牧瀬紅莉栖なのか?」

萌郁「!ち、ちがう....」

フェイリス「ウソニャ!やっぱり、ラボが目をつけられた原因は、クーニャンがラボに来たことニャ!」

萌郁「な、なんで....?」

岡部「そうだったのか....だが、なぜだ?確かにあいつは優秀な科学者だが、脳科学の専門家だぞ?タイムマシンとは分野が違うじゃないか!」


萌郁「....ATF」

岡部「なに?....ATF?」

萌郁「牧瀬紅莉栖が、ATFで夏に行った、講義」

岡部「あの講義がどうしたというんだ?確かにあれはタイムマシンに関してのものだったが....タイムマシンを否定する講義だったぞ!?」

萌郁「その講義の理論が、独創的で....SERNの関係者が、気に入った。牧瀬紅莉栖は、タイムマシンを開発しうる、と....」

岡部「あの講義、そこまで独創的だったか....?そもそも、あの講義はディスカッション形式で――」


~~~

紅莉栖「え?あんたも、あの講義聞いてたの?」

~~~


岡部「!!!」

そうか、あの講義がディスカッション形式になったのは、俺が紅莉栖に反論をしたからだ!だが、あれは前の世界線での出来事....。

この世界線での当時の俺は、牧瀬紅莉栖に会ったことはない。それに、ダルが隣にいて気が大きくなる、ということもない。牧瀬紅莉栖に何の興味もない、友達のいない孤独な大学生だ。

この世界線の俺は、牧瀬紅莉栖に偉そうに反論なんてしなかった。あの講義はディスカッション形式にならず、牧瀬紅莉栖は邪魔者なしでタイムマシンへの自論を展開し、たまたま聞いていたSERNの関係者に目をつけられた、というわけか!



岡部「ならば、紅莉栖に講義の内容を変えるようDメールを送ればいい!そうすれば紅莉栖はラウンダーに目をつけられず、ラボもまた目をつけられることはない!」

岡部「....萌郁、携帯は返す。だが、その前に....」


萌郁の口を、ガムテープでふさいだ。

萌郁「....!?....っ!」

岡部「Dメールを送る前に他のラウンダーに知らされたら面倒だからな。携帯は....あの棚の上に置いておこう」

携帯は、立ち上がらなければとれない高さにおいておく。

フェイリス「うう、なんかかわいそうニャ~....」

岡部「大丈夫だ、すぐになかったことになる。よし、行くぞ!」

――


岡部「紅莉栖、話がある!」

ラボに戻ってくると、紅莉栖は洋書を読んでいた。

紅莉栖「ふえっ!?今、紅莉栖って言った!?」

岡部「いいから来い!」

紅莉栖「ちょ、ちょっとー!!?」

ダル「うわ、オカリン大胆すぐる!」

まゆり「オ、オカリン?」

――

岡部「俺たちがSERN、そしてラウンダーに目をつけられた理由が分かった。夏にお前がATFで行った講義の内容が原因だったんだ。だから、今からDメールでその内容を変える」

紅莉栖「!どういうこと?」

岡部「お前のタイムマシンを否定する理論....SERNはそこに、むしろタイムマシン開発の可能性を見出したようだ。それでお前をSERNに誘い、監視までつけていたんだ」

紅莉栖「....ふむん。そういうことだったのね。だから私を急に勧誘してきたのか」


もしかしたら、初めから紅莉栖はタイムマシンを信じていたのかもしれないな。父が研究を続けるタイムマシンを....だからこそ、それは独創的な理論になりえたのかもしれない。

紅莉栖「わかった。じゃあ、あの講義よりも前の日の私にDメールを送ればいいのね?」

岡部「ああ。内容は....紅莉栖、考えてくれるか?」

紅莉栖「ええ....」


紅莉栖「できた! 『ATFの講義 タイムマシン 絶対にやめろ』 こんな感じでどう?」

岡部「....助手よ、こんなメールを受け取ったら、お前は逆に反発するんじゃないか?」

紅莉栖「せんわ!大体あの内容は教授たちに頼まれたからで、直前まで専攻の脳科学の講義にしようかどうかで迷ってたから!」

岡部「まあいいか....準備しよう」


すぐにDメール送信の準備に取り掛かる。このDメールで、フェイリスを救い、未来を変えられるはず....!


そして、放電現象が始まった。今度こそ――


岡部「よし、送れ!」

紅莉栖「OK、送信!」


-0.275349

     ↓

-0.519237

今日はここまでです。次は金曜日に。

更新します。

――


岡部「ううっ........」


久しぶりの感覚....リーディングシュタイナーが発動したのだ。世界戦は、変わった。


岡部「クリスティーナ!」

いそいで紅莉栖を探すと、すぐそばで洋書を読んでいた。

紅莉栖「ちょ、いきなり大きい声出さないでよ!びっくりした....」

ダル「ミニスカサンタコスを見て我を失ったと思われ」

まゆり「まだ着ていのに~?」


岡部「クリスティーナ、夏にATFで行った講義の内容は?」

紅莉栖「へ?夏の?脳科学の話に決まってるでしょ。専攻なんだし」

岡部「では、SERNから勧誘されたことはあるか?」

紅莉栖「あるわけないでしょ。専門外よ」

岡部「そうか!それならいい」

紅莉栖「???」


これで勝った....のか?ダイバージェンスメーターを見ると、.519237。これは、-1を越えてはいないのか?わからない....

いや、超えていないとしてもかなり大きな変化だ。もしかしたら、大丈夫かもしれない。


フェイリス「凶真、さっきからどうしたのニャ?顔が怖いニャ~」

岡部「いや、大丈夫だ....問題ない」

フェイリス「もしかして、またモエニャンのことでも考えてたのニャ?」


岡部「........は!?い、今なんといった!?」

フェイリス「へっ!?モ、モエニャンのこと、って言ったニャ」

岡部「バカな!桐生萌郁のことを知っているのか!?」

フェイリス「え、えっと....ラウンダーの人でしょ?」

岡部「なぜだ!桐生萌郁と会ったのか!?」

フェイリス「フニャあ!?えっと、凶真とスズニャンと一緒にいるときに会ったニャ~」

岡部「そ、そんなバカな....それは、いつだった?」

フェイリス「な、何をいまさら言ってるのニャ....11月の終わりの、スズニャンが行っちゃった日だったニャン....」


目の前が真っ暗になった。なぜ....?俺たちに目をつける理由は、もうないはずだ....


フェイリス「でもでも、その時の一回しか現れていないから、もしかしたら偶然かもって凶真は言ってたニャ」

岡部「一回だけ?いや、その前にも俺は出会っているはずだぞ?」

フェイリス「はニャ?凶真は、一回だけ、って言ってたニャン」

岡部「だとしたら、本当に偶然なのか....?」


わからない。だが、目をつけられる理由がない以上、偶然の可能性は高いはずだ!

もう一度ダイバージェンスメーターを見る。

大丈夫だ....大丈夫だ!

――12月22日


フェイリス「たっだいまニャンニャ~ン♪」

夕方、バイトを終えたフェイリスがラボにやってきた。

岡部「フェイリス、今日は帰るな」

フェイリス「........」


フェイリス「フニャア!!?」

フェイリス「えっ、えっ?凶真、急にどうしたニャ?....他のみんなは?」

岡部「今日はラボに来ないよう言ってある」

フェイリス「な、な....せめて、あと二日待つっていうのは....」

岡部「?何の話をしているんだ....いいから、今夜はここにいろ」

フェイリス「こ、心の準備が....えーっと....」


12月22日、夜8時。この時間を、無事に超えられるだろうか....頼む、来ないでくれ....!

――23:00


岡部「........」

フェイリス「........」


11時。おそらく、今日はもう来ないだろう。

やった....のか?前の世界線では、事件が起きる日が一日ずれたりもした。となると、明日....まだ、油断はできない。


岡部「フェイリス、今日はもう帰っていいぞ」

フェイリス「!!?は、はああ~~~~~!?ここまで放置しておいて、今度は帰れって、どういうことニャ~!!」

岡部「........」

フェイリス「きょ、凶真?どうかしたのかニャ?え、えっと、怒ってるわけじゃなくて....」

岡部「別に、どうもしていない」

フェイリス「....それはウソニャ。何か心配事でもあるのかニャ?フェイリスに相談してみるニャ!」

岡部「いずれ話す。だから、今日はもう帰るんだ。黒木さんを呼ぶぞ」

フェイリス「ム~....」

――12月23日

ダル「え~、オカリン本当にいかんの?今日から冬休みで、しかもサンタコスなのだぜ?」

岡部「いかん。そもそも明日も明後日もサンタコスだろ?」

ダル「オカリンノリ悪いお....」


ダルもフェイリスもまゆりもメイクイーンに誘ってきたが、少なくとも今日一日はラボを離れる気はない。

前の世界線と同じく、この世界線でも一日ずれているだけなのかもしれない....

――

フェイリス「ただいまニャーン。凶真、なんで来てくれないのニャ~....せっかくサンタコス初日なのに」

フェイリスは今日もバイト終わりにラボにやってきた。


フェイリス「凶真、明日は大切なイヴのイベントの日ニャ!だから、明日こそは絶対に――」

岡部「フェイリス、今夜も帰るな。ここにいてくれ」

フェイリス「フニャ!?また?本当に、どうしたの....?」


時計をにらみ続ける。もうすぐ8時....来るな、こないでくれ....

――


しかし、無情にもドアは蹴破られた。


ラウンダー「動くな!手をあげろ!」

フェイリス「えっ、ええっ!?だ、だれ!?」

岡部「ラウンダーだ....」



そして、足音が階段を上ってくる。


萌郁「........」

ラウンダーA「M4、ターゲットA、Cは確保した」

岡部「くそっ....どうしてだ!?なんで俺たちに目を付けた!?」

萌郁「....それは....」


萌郁「あなたたちが、IBN5100を持っていて....タイムマシンまで、作ったから」

岡部「な!?なぜそれを知っているんだ!」

ラウンダーB「おい、うるせえぞ!おとなしくしろ!」

ラウンダーの銃口が、一斉に俺に向けられた。その瞬間――


フェイリス「凶真、逃げて!早く!」

フェイリスが、俺が机の上に用意していた“トール・サンダーボルト”を手に取り、“モアッド・スネーク”を起動した。


一瞬でラボが霧に包まれる。その中で、フェイリスのいたあたりから、轟音と共に閃光が放たれた。

ラウンダーC「うわっ、攻撃してきやがった!」

ラウンダーA「ちっ、撃て!あっちは殺していい!」


ズダダダダダッ!!

岡部「フェイリス!くっ....」


銃声が響き渡る中、必死に開発室に駆け込み、用意してあったタイムリープマシンを起動する。

萌郁「....!岡部倫太郎は?」

ラウンダーB「あっちだ!」

岡部「くそっ....」


岡部「くそおおおおおおおおおおおおおおお!」―-


12月23日20:03

     ↓

12月21日20:03


 Chapter9

   倒錯欺罔のアポスタタ

今日はここまでです。また明日。

更新します。

――

岡部「うっ........」


二日前の夜8時に戻ってきた。やはり、まだ何かがあったのか。

なぜラウンダーは襲撃してきたんだ?なぜIBN5100とタイムマシンがラボにあることを知っていた?


....もう一度、調べるしかない。ならば――

フェイリス「??凶真?急に黙って、どうしたのニャ?」

岡部「うおっ、フェイリス!いたのか!?」

フェイリス「ず~っといたニャ!まったく、失礼ニャ~」

岡部「....よし、フェイリス。明日は学校を休め。ちょっと手伝ってほしいことがある」

フェイリス「ええ!?そ、そんな急に....まあ、凶真がそういうなら、手伝ってあげるけど....」


もう一度、萌郁を尋問するしかない!今度こそ終わらせてやる!

――12月22日

次の日、朝からフェイリスとともに再び萌郁のアパートの前で待ち伏せをする。


フェイリス「ふにゃ~~~、寒いニャ~~~」ギューッ

岡部「フェ、フェイリス!くっついてくるな!見つかったらどうするんだ!」

フェイリス「だって、全然戻ってこないニャ~....」

萌郁は朝に出かけたきり、夕方になっても戻ってくる気配がなかった。

岡部「いきなり現れるかもしれないだろ!」

フェイリス「そんな、人をお化けか何かみたいに~」

岡部「奴らにつかまったら、殺されるんだぞ!」

フェイリス「ニャ!?こ、殺される!?」

岡部「い、いや....かもしれない、ということだ」プイ

フェイリスには、自分が殺されるということは当然伝えていない。毎回、フェイリスの危機感が足りないように見えるのはそのせいか....?

フェイリス「ニャう~~~、そんなこと聞いたら、よけい寒くなってきたニャ~~~」ギューッ

岡部「まったく....」


岡部「!!来たぞ!」

やっと、萌郁がアパートのほうに歩いて戻ってくるのが見えた。


前回と同じく、萌郁が自分の部屋の鍵を開けた瞬間を狙い――

萌郁「....!」


ズドオォン!!


未来ガジェット9号機“トール・サンダーボルト”で気絶させる。

フェイリス「あ、荒っぽいニャ....」

急いで萌郁を部屋の中へ運び、鍵をかけて携帯を奪う。そして、手足を縛りあげた。


フェイリス「フニャあ!き、きつく縛りすぎニャ!これじゃかわいそうニャ~....」

後ろでおろおろしているフェイリスを無視し、まずは萌郁の携帯を調べる。


岡部「....くそ、やはり情報はなにもなしか!」

あいかわらずFBとの日常のやり取りだけで、萌郁の携帯は埋め尽くされていた。前回と何も変わっていない....

フェイリス「FB?FBって何かニャ?」

岡部「コードネームだ。FBはラウンダーの上司で、萌郁にとってはお母さんのような存在と言っていた....」

フェイリス「お母さんみたいな人?....」

フェイリスはFBから送られてきたメールの文面を見て、首をかしげた。


フェイリス「凶真、このFBって人、多分男ニャ」

岡部「な、なに!?メールの文章は明らかに女性の言葉遣いだぞ?」

フェイリス「なんか、考え方が男性的というか....そもそも、メールの文章が女性の言葉遣いだからって、その人が女とは限らないニャ。むしろ、本当に女なら、ここまであからさまな文章は書かないんじゃないかニャ?」

岡部「....??つまり、オカマってことか?」

フェイリス「ニャア!?そういうことじゃないニャ!メールでの人格と現実の人格がまったく違うっていうことは、よくあることニャン!」

岡部「つまり、FBはメールでは女を装っているだけで、本当は男、ということか?」

フェイリス「そういうことニャ!」

岡部「なるほど....そういえば、萌郁もメールでの人格と現実の人格がまったく違ったな」

フェイリス「まあ、誰だって多少はそういう所があるものニャ」


岡部「お前はメールでもニャンニャン言ってるけどな」

フェイリス「フェイリスは、メールでもフェイリスニャ!」

――

萌郁「....!....これは、どういうこと?」

岡部「やっと目を覚ましたか。....いいか、お前らが明日我がラボを襲撃してくることは知っている!お前がラウンダーであることもだ!」

萌郁「な、なにを....!?」

岡部「なぜ俺たちに目を付けた?どうやってIBN5100やタイムマシンのことを知った?」

萌郁「....何の話?」

岡部「とぼけるのはやめろ。時間の無駄だ。正直に言えば、この携帯は返してやる。これだけが、おまえの居場所なんだろう?」

萌郁「!!返して!返せ、返せ!」

岡部「正直に答えたら、返す」

萌郁「この、卑怯者....!」

岡部「いいか、正直に答えろ。この猫娘は相手の心を読むことができる。嘘をついても無駄だ」

萌郁「な、何を言って――」

岡部「なぜ俺たちに目を付けた?牧瀬紅莉栖が原因か?」

萌郁「....?違う....」

岡部「それは本当か?」

フェイリス「凶真、今のはウソじゃなかったニャ」

岡部「紅莉栖じゃないのか....?では、なぜIBN5100やタイムマシンのことを知っている?」

萌郁「し、知らない....」

フェイリス「あ、今のはウソニャ」

萌郁「!!」

岡部「言っただろう。この猫娘に嘘は通じない。次に嘘をついたときは、この携帯を破壊するぞ!」

萌郁「ま、まって!わかったから....」

岡部「ならば、早く言え!」

フェイリス「凶真、怖がってるからもう少し優しく....」

萌郁「FBから、メールで....」

岡部「FBから....つまり、すべてFBの指示ということか?」

萌郁「そう....私は、FBの指示通りに動いただけ」

岡部「FBか....なら、そのFBというやつはどこにいるんだ!?」

萌郁「知らない....」


くそ、前に訊問した時と同じか!お母さんみたいな人で、ラウンダーの上司で....FBとは、何者なんだ?

岡部「FB以外のラウンダーについては何か知らないか?」

萌郁「知らない....だれも」

フェイリス「凶真、モエニャンはウソはついてないニャ」

岡部「....萌郁、そもそもお前はどうやってラウンダーになったんだ?」


萌郁「........。....私、ずっと孤独だった。家族もいなくて、友達もいなくて....何もかもがいやになって、自殺しようとしてた」

萌郁「そんなときに、FBからの一斉送信のメールを受信したの。ラウンダーへの勧誘....それに、返信して....」

岡部「なるほど、それで唯一の居場所、というわけか」

萌郁「........」

岡部「もしお前が会いたいと伝えたら、FBは現れると思うか?」

萌郁「....それは....」

フェイリス「うにゃ~....凶真、なんだか悲しいけど、きっと現れないと思うニャ。自分は表に出ずにメールで集めた孤独な人達をうまく利用しているような人間が、そんなにあっさり呼び出せるとは思えないニャ」

岡部「それでは、手詰まりじゃないか!」

フェイリス「う~~~....」

萌郁「........」


フェイリス「あ、凶真。ちょっと考え方を変えてみるのはどうかニャ?」

岡部「どういうことだ?」

フェイリス「FBはラボの中にIBN5100とタイムマシンがあることを知っている....どうすれば、それを知ることができるのかニャ?」

岡部「どうすれば....ラボに実際に入るか、ラボメンから聞き出すか、だな」

フェイリス「ラボメンには固く口止めしてあるニャ」

岡部「だとしたら、誰かがラボに忍び込んだのか....?」

フェイリス「あの電話レンジ(仮)を見ただけじゃ、タイムマシンかどうかなんてわかるはずないニャ」

岡部「だが、FBはあれがタイムマシンだと知っている....」

岡部「....まさか、ラボメンの中にFBが!?いや、そんなはずはない」

フェイリス「う~~~ん、何か閃きそうな気が....」


電話レンジ(仮)がタイムマシンということを知る方法....エシュロンにDメールが捕らえられていない以上、ラボメンしかそれを知ることができる者はいない....だが、ラボメンがFBのはずがないし、ラボメンがこのことをラボの外で話すはずが――


岡部「!!!そうか、ラボの中の会話!」

岡部「ラボに、盗聴器が仕掛けられているんだ!」

フェイリス「ええ!?と、盗聴!?」

岡部「それしか考えられん!」

フェイリス「だとしたら、いつラボに忍び込んだのかニャ....ラボメン以外は鍵を持ってないのに」

岡部「それをこれから調べるのだ。....しかし、そもそもなぜラボに忍び込んだんだ?萌郁、何か知らないのか?」

萌郁「知らない....」

岡部「そうか....まあいい、そいつ自身に聞けばいい」

フェイリス「ラボに戻ったら、さっそく盗聴器を探すのニャ?」

岡部「いや、いったんタイムリープしてなかったことにする。萌郁にすべて聞かれてしまったしな」

萌郁「タイム....リープ....」

今までは、萌郁は俺にとって敵であり、憎むべき対象でしかなかった。だが、利用されているだけの萌郁が急にかわいそうになった。こいつも、ある意味では被害者だったのかもな....


岡部「萌郁、もし....いや、今言ってもなかったことになるのか。だが、できればラウンダーはやめるんだ。お前には、もっといい居場所がきっとある。じゃあな」

萌郁「........」


タイムリープを済ませたら、まずはラボの盗聴器を探そう。そこから、なんとかFBの尻尾をつかんでやる!――


12月22日20:24

     ↓

12月21日20:24

今日はここまでです。続きはまた明日。

リアルタイムで見てくれる人がいると嬉しいですね。緊張するけど

更新します。

――

タイムリープに成功後、すぐにラボを見渡す。どこだ?本当にあるだろうか?


紅莉栖「ひゃっ!?どこ覗き込んでるんだ、このHENTAI!」

岡部「おお!?いたのか、助手!」

ダル「いきなりおにゃのこの股下覗き込むとか、オカリンマジパネェっす!」

フェイリス「凶真~?」


....明日にするか。

――12月22日

盗聴のことなど全く知識にない俺にとって、盗聴器を探し出すことは想像以上に難しかった。一日かけてラボを探し回ったが、見つかる気配はなかった。


岡部「くそ、どうすれば....いや、ダルならば、あるいは....?」

こんなことも思いつかなかったとは....とにかく、ダルに電話をしてみよう。


ダル『もしもし、オカリン?なんで今日サボってるん?』

岡部『ダル、まだ大学か?すぐそっちに行くから、待っていてくれ!』

ダル『へ?今更?もう夕方――』ブツッ

ラボの中で話すわけにもいかない。急いで大学へ向かった。

――

岡部「――つまり、我がラボには盗聴器が仕掛けられている可能性が高い!」

ダル「厨二病乙!」

岡部「言うと思ったが、今回はマジだ。頼むダル!騙されたと思って協力してくれ!」

ダル「ん~、まあ調べるだけならいいお。べ、別にオカリンのためにやるんじゃないんだからね!」

岡部「そうか、助かったぞ、ダル!」


ダル「ツッコミが欲しかったお....」

岡部「で、どうやって調べるんだ?」

ダル「アキバなら、いくらでも盗聴器の探知機が売ってるお。それ使えばよくね?」

岡部「な....!」

その手があったか....


ダル「ちょ、それぐらい思いつくっしょ常考!」

岡部「う、うるさい!行くぞ!」

――

買ってきた探知機をラボで使ってみると、それはあっさりと見つかった。


ダル「オ、オカリン!これ、マジで――」

岡部「シッ!」

あわててダルの口をふさぐ。盗聴器は、うーぱ人形の下に張り付けられていた。こんなところにあったとは....!


ダル「本当にあるとか、信じられんお....それ、どうするん?」ヒソヒソ

岡部「破壊や取り外しをしたら、向こうに気付かれるかもしれん。....ダル、今日は帰れ」ヒソヒソ

ダル「そうさせてもらうお....」

――12月23日

昨日は、あの後ラボにやってきたフェイリスに事情を話して、いつ、だれが、どうやってラボに盗聴器を仕掛けたのかをラボの外で話し合った。


フェイリス「―-つまり、そのFBって人か、他のラウンダーの誰かがラボに侵入したのは間違いないってことかニャ?」

岡部「ああ。FB....FBは、このアキバ一帯、あるいは東京中のラウンダーを統括しているのかもしれんな」

フェイリス「う~~~ん、でも、実際ラボに侵入なんてできるのかニャ~?誰もいないときは鍵がかかっているし」

岡部「もしかしたら、侵入のプロがいるのかもしれん」

フェイリス「わざわざそんな人を送り込むなんて、理由を教えてほしいニャ....」

岡部「その理由が分かれば苦労してないがな。....フェイリス、何かいい考えはないか?」

フェイリス「そんな無茶な....でも、もしかしたらラボに何か痕跡が残っているかも」

岡部「そうだな....侵入した痕跡があれば、何かつかめるかもしれん。探すぞ!」

フェイリス「がってんしょーちニャ!」

――


その後、朝になってフェイリスがバイトに行った後も一人で侵入の痕跡を探し続けたが、何も見つからないまま時間だけが過ぎて行った。

――

岡部「くそ、もうこんな時間か....そろそろタイムリープをしなければ....」

気付けば、もう夕方になっていた。タイムリープして、次は....くっ、また手詰まりなのか!?


と、その時携帯に電話がかかってきた。

フェイリス『凶真!あのことなんだけど、バイト中に、一つ思い付いたことがあるニャ』

岡部『何!!本当か!?』

フェイリス『うん....とりあえず、メイクイーンに迎えに来てもらえるかニャ?』

岡部『わかった、すぐに行く!』ブツッ

――

急いでラボを飛び出し、メイクイーンへ走った。あまり時間がない....!


フェイリス「あ、凶真!」

岡部「フェイリス、思いついたこととはなんだ!早く教えてくれ!」ガシッ

フェイリス「フミャ!?ちょ、凶真、落ち着くニャ!お店の前で大胆すぎるニャン....」

岡部「う....」

オタク達がこっちをにらみつけていた。とりあえず、ラボに向かって歩き始める。

ある程度歩いた時、フェイリスが話し始めた。


フェイリス「凶真、何か侵入の痕跡は見つかったかニャ?」

岡部「いや、何もなかった」

フェイリス「やっぱり....」

岡部「やっぱり?やっぱりとはどういうことだ?」

フェイリス「....凶真が信じてくれるかは分かんないし、正直フェイリスもまだ信じられないんだけど....」

フェイリス「一人だけ、侵入なんてしなくてもラボに入ることのできた人がいるのニャ」

岡部「なに!?それは誰だ!」

フェイリス「ちょっと待って....今から、正解かどうかを確かめるのニャ」

岡部「それは、どういうことだ?」

――

フェイリスはそれきり黙ったまま、ラボの前まで来てしまった。


岡部「おい、ラボに来てどうするつもり――」

フェイリス「あ、店長さん!」


ちょうど、Mr.ブラウンが店じまいをしているところだった。

天王寺「....ん?おお、今帰りか」

岡部「ええ、まあ」

フェイリス「凶真、凶真♪早くラボに戻るニャ~ン♪」

岡部「おい、何をする!?」

フェイリスは、ぐいぐいと俺の背中を押してラボへの階段に向かわせてくる。


岡部「結局、またラボに戻るということか?」

フェイリス「いいからいいから♪」

そして、俺が階段に足をかけようという時、突然フェイリスがMr.ブラウンに向き直った。


フェイリス「店長さん、何をそんなにイライラしてるのニャ?」

天王寺「....はあ?イライラなんてしてねえよ」

フェイリス「それはウソニャ♪」

天王寺「ああ!?急にどうしたってんだ?」

岡部「??フェイリス、急に何を――」


フェイリス「盗聴器を仕掛けたのは、あなた?」

天王寺「盗聴器!?なんでそんなことしなきゃいけねえんだよ!お前らのお遊びサークルを盗聴してどうすんだ!」


岡部「........!」

待て、なぜラボのことだと分かった....?

フェイリス「あなたは、ラウンダーなの?」

天王寺「....何言ってんだ?そんなもん知らねえよ」


フェイリス「もしかして、あなたは、FB?」

天王寺「....!!」

天王寺「....まったく、何言ってやがんだ。FBってなんだよ?」

フェイリス「ウソばっかりニャン、店長さん....」

天王寺「はあ?さっきから嬢ちゃん、何言ってやがんだ?」

岡部「おい、フェイリス....本当に、Mr.ブラウンが....?」

フェイリスは、黙ってうなずいた。


信じられない。この人が、Mr.ブラウンがFBだと!?俺たちは、敵の真上にずっといたというのか!?

怒りっぽいが、子煩悩で、根はいい人だと思っていたのに....

岡部「なぜだ!?なぜあなたがFBなんだ!?」

天王寺「........」


天王寺「やれやれ、まさかそんなことまで知ってやがるとはな....FBっつーのは、フェルディナンド・ブラウン....ブラウン管の発明者の頭文字なんだよ。これは知らなかっただろ?」

岡部「....どうして、ラウンダーなんかになったんだ!?」

天王寺「俺だって、本当はこんなことしたくねえんだよ。でもよ、あの時は俺も生きるためにしかたなかったんだ」

Mr.ブラウンは銃を取り出し、俺のほうに向けてきた。

天王寺「おとなしくしてな。もうすぐほかの連中が来る。IBN5100とタイムマシンを回収して、それで全部おしまいだ」

フェイリス「いつ、どうしてラボに盗聴器を仕掛けたの?」

天王寺「....お前らが上をガタガタ揺らして、俺が怒鳴り込んだ時、IBN5100があるのが見えてな。すぐに回収してもよかったんだが、それを使って何をやっているのか調べろ、って上からの指示でな。そうしたら、まさしくタイムマシンだったってわけだ」


岡部「そんなことのために、またお前らは殺すのか!?鈴羽は....橋田鈴は、そんなことをさせるために貴方を世話してやったんじゃない!」

天王寺「....そうだろうな。俺も、綯が生まれた11年前、ラウンダーを抜けたいって上に言ったんだよ。綯のためにも、こんなことはやめにしたかった」

天王寺「そうしたら、IBN5100を手に入れることができたら抜けさせてやるってよ。だから、なんとしても手に入れたかった....それが、よりにもよってお前等とはな!」

天王寺「....どうして、こんなことになっちまったんだろうな」


やっと、すべてが分かった。早くDメールを送らねば....だが、どうやってここを抜け出す?

その時、通りの向こうから白いバンがこちらに向かって走ってくるのが見えた。


天王寺「ほかの連中もきたみてえだな。おしゃべりはここまでだ」

銃口はなおも俺に向けられている。一歩も動けない――


天王寺「うわっ!?な、何を!?」

フェイリス「凶真、行って!タイムリープ!」

フェイリスが、銃を持つMr.ブラウンの腕に飛びついた。....が、すぐにふり払われ、銃口がフェイリスのほうにむけられる。

フェイリス「早く!」


岡部「くっ....!」

階段は目の前だ。目を閉じ、急いで階段を駆け上がる。背後から、何発もの銃声が聞こえた。

天王寺「ちっ、岡部!待ちやがれ!」

ラボに入って一直線に電話レンジ(仮)のもとに走る。階段のほうからは、何人もの人間の足音が響いてきた。


岡部「Mr.ブラウン....なぜだ....」

放電現象が始まる。と同時に、ラボの扉が蹴破られた。

天王寺「岡部!!」――



12月23日20:04

    ↓

12月23日17:04

――

岡部「くっ....」


まだ、今見てきたものが信じられなかった。あのMr.ブラウンが、FB....あの人が、フェイリスが死ぬ原因だったとは....

だが、確かにラボメン以外でラボに入ったのはMr.ブラウンだけだ。Mr.ブラウンがはじめてラボに入った翌日に萌郁が現れた....あの日から、Mr.ブラウンは俺たちを調べ始めたんだ。


『ブラウン店長 を絶対にラボ に入れるな!』


Mr.ブラウンがFBだと伝えても、過去の俺が信じるかはわからない。だが、このメールならば実行するはずだ。

岡部「今度こそ....終わりだ!送信!」――


-0.519237

     ↓

-0.554821

今日はここまでです。次は火曜日に。

更新します。

――

岡部「うっ....」


リーディングシュタイナーは発動した。ダイバージェンスメーターは.... .554821 。-1を超えていないのか....?

次に、盗聴器が仕掛けてあったうーぱ人形の下を調べてみる。すると、盗聴器はなくなっている!

岡部「これは....大丈夫なのか?」

ふとラボの扉を見ると、俺があのDメールを受け取ってどう行動したのかが分かった。新しい鍵がついている。

フェイリス「たっだいまニャンニャ~ン♪」

その時、フェイリスが勢いよくラボに帰ってきた。


岡部「フェイリス、このラボにMr.ブラウンが入ったことはあるか?」ガシッ

フェイリス「はニャ!?....店長さんは、凶真が、ラボメン以外は絶対に入れん!って言って、新しい鍵までつけて入れないようにしたのニャ。だから、ラボメン以外はだーれもラボには入ってないニャ」」

岡部「じゃあ、桐生萌郁は知っているか!?」

フェイリス「ニャニャ?そんな人、聞いたことないニャ~」

岡部「本当か!?」

フェイリス「当たり前ニャ!急にどうしたのニャ?」


つまり、萌郁は本当に現れていない!俺たちは、ラウンダーに目をつけられていないんだ!

フェイリス「???」

フェイリスは、目を丸くして俺を見ている。


....毎回、フェイリスは自分を犠牲にして俺を助けてくれる。今度こそ、お前を助けられただろうか....


フェイリス「う~ん、まあいいニャ。凶真、明日こそメイクイーンに来てニャ♪明日は、クリスマスイヴのイベントが――」

岡部「悪い、フェイリス。明日はいけない」

フェイリス「ええー!!そンニャ~~~!」

岡部「明日は一日ラボから離れられんのだ。イベントは俺以外の皆と楽しんでくれ」

フェイリス「うう~....分かったニャ。でも、夜は付き合ってもらうニャ!」

岡部「ああ、ラボでなら、いくらでも付き合おう」

フェイリス「やったぁー!ニャフフ~、じゃあ、ちゃんと待っててニャ♪」

岡部「....ああ」


明日も、とりあえずは一日様子を見なければ....だが、今度こそ大丈夫だろう。そうあってくれ....

――12月24日

ダル「....へ?オカリンいかんの?」

紅莉栖「あんた、自分だけ逃げるつもり?」

まゆり「ええー、フェリスちゃん、いいの?」

フェイリス「残念だけど、大切な用事があるみたいだし、しょうがないニャ」

るか「凶真さんがいかないなら、ボクも....」

フェイリス「ルカニャンは、ダメニャ~♪」

まゆり「るか君、覚悟決めようよ」

フェイリス「まあまあ、命まではとらないから、安心してニャ♪皆の前で、ちょっとニャンニャンするだけニャン♪」

るか「そ、それが恥ずかしいんだってばぁ....」

紅莉栖「漆原さん、私だって恥ずかしいんだから....がんばりましょ」

ダル「うへ、うへへ....とうとうこの日が来たお!」


――

皆はメイクイーンへ向かった。この平穏が続いてくれれば....頼む、もう何も起きないでくれ!

――

岡部「遅いな....」


もう夜の7時を過ぎ、8時に近づきつつあった。いつもなら、とっくにフェイリスが帰ってきている時間だ。

....まさか!?

その時、ラボの扉が勢いよく開かれた。



フェイリス「メリークリスマース!!」バァン!

扉が開くと同時に、クラッカーを鳴らしながらフェイリスがラボに入ってきた。


岡部「よ、よかった....生きてたのか....」

フェイリス「フニャア!?生きてるにきまってるニャー!確かに、今日のフェイリスをめぐる死闘、“ギガントマキア;巨神戦争”は壮絶だったけど」

岡部「....ダルみたいなピザオタが集結していただけだろ」

フェイリス「そんなことより、このサンタコスの感想はないのかニャ?」


言われて初めて気が付いた。フェイリスは、まゆりが作ったサンタコスのままラボに戻ってきていた。

岡部「フェイリスに赤というのも新鮮だな」

フェイリス「ニャ!?それだけ?....む~~~」

悪いが、今の俺にはそんな余裕はない。....もうすぐ8時になる。

フェイリス「まあいいニャ。凶真、チキンもケーキも用意してきたから、さっそく二人でパーティを――」




その時、またもや扉が蹴破られた。そして――


ラウンダー「動くな!手を上げろ!」



....またもやラウンダーたちが、俺たちに銃を向けてきた。


フェイリス「ええっ!?だ、だれ?」

岡部「な....なぜだ....なぜだ!?」


そして、いつもと同じように足音が階段を上がってくる。しかし、そこに現れたのは――

岡部「!!!ミ、Mr.ブラウン!?」

現れたのは、萌郁ではなかった。覆面で顔を隠してはいるが、この大男を見間違えるはずがない....Mr.ブラウンだ。


フェイリス「ええ!?そんな!」

天王寺「........」


天王寺「ちっ、せっかくわざわざ覆面なんてしてきたってのに、やっぱ意味ねえか」

岡部「どうして、あなたが....!?そもそも、どうしてラウンダーが俺たちを襲撃するんだ!?」

天王寺「!....ラウンダーのことを知ってやがるのか。ということは、当然SERNやタイムマシンのことも知ってんだよな?」

岡部「え....それは、どういうことだ?」

天王寺「俺がここに力ずくで入ったのは、IBN5100を使って何をしてんのか確かめるためだ」


天王寺「....といっても、IBN5100でできることと言えば、SERNにケンカ売ることしかねえ。つまりタイムマシンだ。ほとんど決めつけだけどよ。....だが、正解だったみてえだな。残念だよ」

岡部「いや、それはおかしいだろう!?なぜ貴方がIBN5100の存在を知っているんだ!?貴方はラボに入ったことがないはずだ!」

天王寺「何度も入ろうとしたけど、お前が絶対に入れてくれなかったからな。....ちょっと前に思い出したんだよ。そこの嬢ちゃんのこと」


フェイリス「....え?フェイリスのこと!?」

天王寺「そうだ。どっかで見たことあるような気がしてたんだよ....あんた、秋葉幸高の娘の、秋葉留未穂だろ」

フェイリス「えっ?フェイリスは、店長さんとはこれまであったことないはずニャ!」

岡部「そもそも、それが何の関係があるんだ!」


天王寺「10年前、秋葉原の大地主の秋葉幸高が、レトロPC収集家でIBN5100を持ってるって情報があってな。SERNは、秋葉幸高にIBN5100を高額で買い取る、という話を持ちかけた」

天王寺「で、それと並行して、断られた時のための強硬策も用意されてたんだ。秋葉幸高の娘を誘拐して、IBN5100と交換する、っていうな」

天王寺「その誘拐計画の責任者が、俺だった」

フェイリス「そ、そんな!」

岡部「な....!?」

天王寺「IBN5100を手に入れたら、ラウンダーを抜けさせてくれるって約束でな。....俺は、綯のためにも、こんな仕事はやめにしたかったんだ。たとえ、何をしてでもな」

天王寺「運が良かったな、嬢ちゃん。ラウンダーに誘拐されてたら、間違いなく口封じで殺されてたぜ」

フェイリス「ううっ....」


その時、俺はエシュロンをハッキングした時のことを思い出した。

~~

フェイリス「んー...フミャあ!?ここ、フェイリスのパパの名前がある!!」

ダル「えっ、フェイリスたんってパパがいるの?てっきり天から降ってきたのかと」

岡部「バカなことを言うな。....妙だな。秋葉原の大地主というだけで、エシュロンに登録されるものなのか?」

フェイリス「そ、そういえば、パパはタイムマシン研究をしているDr.中鉢っていう人と古い友達で、資金援助をしていたこともあるニャ」

岡部「Dr.中鉢!?あの胡散臭いおっさんと!?そうだったのか!?」

フェイリス「でもでも、そんなことで目をつけられたら、たまったもんじゃないのニャ~....」

確かに、少しおかしい気がするな。

~~

10年前にそんな計画があったからこそ、フェイリスの父親の名前がエシュロンの特定ワードに入っていたのか!


天王寺「....だが、どっちも失敗した。秋葉幸高は、IBN5100は持ってないって言ってきた。誘拐計画のほうも、秋葉留未穂の警備が厳重だったせいで俺たちは手が出せなかったんだ」

天王寺「その後、俺たちは何年もかけて秋葉幸高の身辺を探った。だが結局、秋葉幸高はIBN5100を所有していない、という結論に至ったのさ」

....その時は、IBN5100は柳林神社に隠されていた。それで、ラウンダーの目を逃れたのか。


天王寺「で、今年だ。お前らがやってきた。レトロPCをもってな。その嬢ちゃんが秋葉留未穂ってことを思い出した時、あの時のレトロPCはIBN5100に違いねえ、と俺は考えたってわけだ」

岡部「そ、そんな根拠のない決めつけで、銃で武装して襲撃するのか!?そんなのおかしいだろ!?」

天王寺「俺だって、こんなことしたくねえんだよ!でもお前、俺を絶対中に入れようとしなかったじゃねえか!」

岡部「....!!」

天王寺「秋葉留未穂とレトロPC、絶対に見せられない研究、ここまでそろったらIBN5100とタイムマシンしか考えられねえんだよ!なにせ、10年以上もずっとそのことばっか考えてたんだからな」

岡部「くそっ....!どうして、こんなことに....」


こんなの....理不尽すぎるだろ....どうしようもないじゃないか!!

天王寺「悪いな。よりによって、お前らにこんなことをしちまうとは....お前らのこと、結構気に入ってたんだぜ?」

フェイリス「うう....店長さん....」

天王寺「最後だからって、ちょっとおしゃべりしすぎたな。....この研究所で、タイムマシン研究に関われそうなのは3人」

岡部「....なに?」

天王寺「その3人以外は、必要ない....」


その言葉を合図にしたかのように、ラウンダーたちが一斉に銃を――

岡部「やめろおおおおおお!!」

懐に用意していた“モアッド・スネーク”を起動すると、ラボは一瞬で霧に包まれた。


ラウンダーA「うわっ!?な、なんだこれは!?」

岡部「フェイリス、走れ!」ガシッ

フェイリス「わっ、きょ、凶真!?」

フェイリスの手をつかんで開発室に走りこむ。もうフェイリスの死ぬところは、見たくない....!

フェイリス「凶真!どうするの!?」

タイムリープマシンの設定は済んでいる。ヘッドギアを被った時、Mr.ブラウンの大声が響いた。

天王寺「くそっ!撃て、撃て!」


フェイリス「!!危ない!」

岡部「フェ、フェイリス!」

開発室へ向けて闇雲に銃が乱射される瞬間、フェイリスが俺の前に飛び出した。


ズダダダダダダダッ!!!

岡部「ぐああっ....!」

何発かが俺の腕や肩に直撃した。だが、致命傷にはならない。

岡部「くそ、フェイリス....」


フェイリスが俺の壁になっておかげで、俺は死なずに済んだ。また、助けられなかった....


ラウンダーB「あいつ、何かするぞ!」

天王寺「ちっ、もういい!殺せ!」


2回目の銃声が響くと同時に、放電現象が始まり――


12月24日20:02

     ↓

12月22日20:02

今日はここまでです。続きは金曜日に。

更新します。

――


体から痛みが消えた。タイムリープは成功した。

....どうすればいい?今度は、どこを変えたらいいんだ?本当に、この地獄のようなループから抜け出せるのか?


フェイリス「凶真!?いきなり頭を抱えて、どうしたニャ?」

岡部「....そうか!IBN5100をラボに持ち込まなければいい!」

フェイリス「フニャ?何の話ニャ~?」


フェイリスを無視し、さっそくDメールを作成する。

『レトロPCを 絶対にラボに 持ち込むな!』

IBN5100は特定ワードで、エシュロンに捉えられる。だが、レトロPCと言われたら過去の俺もわかるだろう。

....よし、送信!


岡部「....リーディングシュタイナーが発動しない!?なぜだ!?」

フェイリス「な~にを一人で騒いでるのニャ?フェイリスにも説明するニャ!」

....一人で考えていても仕方なさそうだ。フェイリスに、フェイリスが殺されるということ以外の全てを説明した。


岡部「――つまり、IBN5100をラボに持ち込まなければいいはずなのに、リーディングシュタイナーが発動しないのだ!」

フェイリス「んん?そもそも、IBN5100ならそこにあるニャ」

岡部「なに!?なぜ持ち込まれているんだ!?」

フェイリス「う~ん....そのDメールを受け取った人次第で、どう行動するかはわからないからじゃないかニャ?」

岡部「そ、それはどういうことだ?」

フェイリス「そのDメールを受け取った4か月前の凶真は、前の世界線でマユシィを救うために必死にIBN5100を探し回っていた凶真ニャ。だから、きっとDメールで何と言われようとも、IBN5100を持ち込んでしまうんじゃないかニャ?」

岡部「そんなバカな!俺なら、絶対にDメールを信じるはず....」


いや、わからない。あの時の俺なら....なにせ、前の世界線であれだけ苦しんだんだ。Dメールを罠だと考えて、IBN5100を持ち込んでしまったのだろう。

岡部「それなら、いっそラボも電話レンジ(仮)もなくしてしまえばいい!そうだ、そもそもラボを作らなければいい!」

フェイリス「えええ!?でも、そんなことしたらクーニャンに送ったDメールまでなかったことになっちゃうニャ!」

岡部「そんなことはもういい!」

フェイリス「で、でも、そうしたら未来が....」

岡部「ディストピアなどもう構わん!ラボさえなければ....」

....フェイリスは助けられる。


再び、Dメールを作成する。

『ラボも電話レ ンジも絶対に 作るな!』

しかし、このDメールでも、リーディングシュタイナーは発動しなかった。


岡部「なぜだ!?どうしてこのDメールでも変わらんのだ!?」

フェイリス「う~ん....もしかしたら、Dメールで過去を変えたら、Dメールの存在が確定してしまうからじゃないのかニャ?」

岡部「....つまり、DメールによってDメールの存在を消すことはできない、ということか?」

フェイリス「そうニャ!だって、送信したDメールは過去に残ってしまうんでしょ?その時点でDメールの存在が因果律によって確定するのニャ!」

岡部「確かに、因果律で考えればそうなるが....だが、俺がこの世界線に来た時、ラボと電話レンジ(仮)は消えていたぞ!」

フェイリス「でも、その時点で未来にラボと電話レンジ(仮)が作られることは確定していた。だって、実際にそうなったでしょ?きっと、これは変えられないニャ」

岡部「ということは、どう世界線を改変してもラボの存在は確定、ということか....電話レンジ(仮)、つまりDメールはこのラボでしか生まれない」


フェイリス「ムムム~~~....じゃあじゃあ、フェイリスをラボメンにしない、ラボにも近寄らせない、っていうのは?」

岡部「そ、そうか。フェイリスさえ見られなければ、IBN5100を疑われることもない。次はそれで行くか....」


だが、今度は失敗するという確信があった。フェイリスは、絶対に俺に手を差し伸べてくる。そして、この世界線で孤独だった俺は、絶対にその手を取ってしまうだろう....

『フェイリスを 絶対にラボに 関わらせるな』

岡部「....送信」


....やはり、リーディングシュタイナーは発動しなかった。

フェイリス「また失敗?なんでニャ!?」

岡部「4か月前、あの時のお前は絶対に俺を助けようとする。そして、俺は絶対にお前を頼ってしまうんだ....」

フェイリス「そ、そうかも....フニャあ~、もうあきらめるしかないのかニャ....おとなしく全部明け渡せば、命は助かるんじゃ――」

岡部「ダメだ!!」

フェイリス「はニャ!?」


岡部「フェイリス....そんなことをしたら....お前が、死ぬ」


フェイリス「....えっ!?」

岡部「この世界線のままだと、24日にお前が死ぬ。どうしても、そう収束するんだ....」

フェイリス「........」


フェイリス「そっか、それで凶真はそんなに悩んでくれてたんだ....えへへ、ちょっと嬉しいな」

岡部「な、何をのんきなことを....」

フェイリス「ニャフフ~♪凶真!きっとまだ何か方法があるはずニャ!もっと、思いっきり世界を変えちゃうような!」

岡部「思いっきり、か....そういえば、この世界線に来た時はかなり大きく世界線が変わったな」

フェイリス「それニャ!10年前からIBN5100を消しちゃうとか!」

岡部「いや、いかん!そうしたら、前の世界線に戻ってしまう!前の世界線の12月....まゆりが死に、SERNのディストピアが確定した世界だ」

フェイリス「それは、消し方次第じゃないかニャ?なるべくこの世界線の状況を変えないような....」

岡部「....フェイリスの父親が池袋の土地を売ったことが、この世界線の決め手となっている。だが、それを変えずにIBN5100を消すことなどできるのか....?」


フェイリス「う~ん....あ、あったニャ!一つだけ、パパが池袋の土地を売って、IBN5100も手放す方法!」

岡部「なんだと!?本当か!?」

フェイリス「フェイリスが、本当にFB、つまり店長さんに誘拐されればいいのニャ♪」

岡部「....え?」

フェイリス「フェイリスが家出をした4月3日、パパはDメールを受け取ってその日のうちに池袋の土地を売ったニャ」

フェイリス「で、フェイリスはその日、実は閉館したラジ館に隠れて夜を越したのニャ。その時なら、フェイリスは護衛も何もいない一人ぼっち....店長さんにDメールで居場所を伝えたら、誘拐計画が本当になるニャ!」

フェイリス「きっとパパは、フェイリスとIBN5100を交換するはず....これで、池袋の土地は売られて、IBN5100は10年前からなくなり、おまけに店長さんがラウンダーじゃなくなるニャ!一石三鳥ニャン!」


岡部「ちょっと待て!どうやって10年前のMr.ブラウンにDメールを送るんだ?アドレスだって変わっているだろうし、そもそも携帯を持っているかどうか――」

フェイリス「そんなこと、どーでもいいニャン♪」

岡部「どうでもいいだと!?」

フェイリス「エシュロンの特定ワードに、パパの名前があったニャ。Dメールの文章に『秋葉幸高の娘』って書き込んで10年前の4月3日に送れば、あとは勝手に向こうが捕まえてくれるニャ」


岡部「うっ....し、しかし....」

フェイリス「??何か問題あったかニャ?」


岡部「そ、そうだ!そんなことをしなくても、IBN5100が柳林神社にある時にそれをFBに教えてやればいいんじゃないか?」

フェイリス「それは無理ニャ。パパはあれを柳林神社に奉納した時、セキュリティを完璧にしたらしいのニャ。橋田さんの遺言だから、って....。秋葉家の人間と漆原さん以外は、あれを絶対取り出せないらしいニャ」

岡部「くそ....」

フェイリス「そんな得体のしれない情報で、そんなセキュリティに突っ込んでくるとは思えないのニャ~」

岡部「得体のしれない、ならフェイリスの居場所に関してのDメールだってそうだろう!?そんなメールを信じるとは思えん!」

フェイリス「誘拐計画があったんだから、少なくとも確認には来るんじゃないかニャ?」

岡部「うっ....」


フェイリス「ねえ、どうしたニャ?何がそんなに気になってるの?」

岡部「........」

~~

天王寺「運が良かったな、嬢ちゃん」

天王寺「ラウンダーに誘拐されてたら、間違いなく口封じで殺されてたぜ」

~~


10年前にそのDメールを送ってしまったら....10年前に、フェイリスは死ぬ。

SERNのディストピアは回避できる。未来は変えられる。


だが、フェイリスを....助けられない。


 Chapter10

   静寂のホワイトチャペル

今日は終わりです。続きは日曜日に。

更新します。

~~~


今日も一人、秋葉原の街をうろつく。

....結局、大学でもいまだに友達はできないままだ。

いつからか、一人でいることにも慣れてしまった。だが、もうこれでいい。俺は孤高の人生を生きていくのだ。


岡部「....ん?」

ふと、小さなゲームショップが目に入った。何やら騒々しいな....

「なんだよ!チクショウ、バカにしやがって!」

「はニャ?急に何を言い出すのニャ!?」

「ふざけやがって、てめえ一人だけ強すぎんだよ!大会が滅茶苦茶じゃねえか!」

「そうだそうだ!こんなんじゃ、勝負になんねえよ!」

「しかも、人を馬鹿にしたようなことばっかり言いやがって!」

「可愛けりゃ何でも許されると思ってんのか!?」

「そ、そんなわけじゃ....」


どうやら、雷ネットの大会をやっているようだ。が、何やらもめている。

「こんなやつ、もう参加させんなよ!」

「そうだそうだ!出てけ、このコスプレ女!」

「そ、そんな理不尽な....」

「でーてーけ!でーてーけ!」

「こんな優勝も無効だ!でーてーけ!でーてーけ!」

「う、うう....」グス


ネコ耳にメイド服という格好をした女の子を、皆で囲んで罵ってる。女の子は、今にも泣きそうだ....


なぜか、あの子に泣いてほしくなかった。あの子を助けたい、と思った。

岡部「そこまでだ!」バアン!

気が付いたら、そのゲームショップの扉を開いて叫んでいた。


「ああ!?なんだてめえ!」

「誰だお前!?」

し、しまった、勢いで行ってしまった。....こうなったらやけくそだ!


岡部「フゥーハハハ!俺は....そう、我が名は狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院....凶真だッ!」

頭の中に浮かんだ、中学生のころからの脳内設定が勝手に口から飛び出した。このまま勢いで押し切る!

「ほうおういん....きょうま?」

ネコ耳の女の子が、首をかしげた。

岡部「なんだ?貴様ら無様に敗北したうえ、女の子を集団で脅していたのか?実に惨めなやつらだ!」

「な、なんだとコノヤロー!」

「ケンカ売ってやがんのか!」

岡部「フン、誰もこの猫娘に歯がたたんというなら、この鳳凰院凶真が挑もう!貴様らはおとなしく見学していろ!」


「....えっ?あなたが、フェイリスと戦うってこと!?」

岡部「そうだ。本当の戦いというものを見せてやる」

「おいおい....誰だか知らねえが、あの女は滅茶苦茶つええぞ」

「そんな大口叩いて、恥かいても知らねえぞ?」

岡部「ククク....いまだかつて、雷ネットでこの鳳凰院凶真に勝った者はいない」

....当然だ。今までは脳内プレイしかしたことがないのだから。対人プレイは今日が初めてだ。


フェイリス「!!........ニャフフ、きょうまから強者のオーラをビリビリと感じるニャ!」

さっきフェイリスと名乗った女の子の前に進む。ほかの連中は空気に飲まれ、固唾をのんで見守っている。

すると、フェイリスは俺の耳元に近づいて、小さな声でささやいた。

フェイリス「....きょうま。助けてくれて、ありがとニャン♪」

その時、初めてこの女の子の端正な顔立ちが目に入った。ふわり、といい香りも漂う。

思わず、女の子の顔に見とれてしまう。


フェイリス「えっと、きょうま?」

岡部「!....フン、偽りで塗り固められた女に興味などない!ただ、戦いの気配を感じ取ったまでだ!」

フェイリス「ニャニャあ!?え、えっ!?」

照れ隠しで、思わず怒鳴ってしまった。女の子は目を丸くして呆然としている。

岡部「おい、早く始めるぞ!」

フェイリス「....!!わ、わかったニャ!」

岡部「フゥーハハハ!貴様は我が秘奥義“シンク・ポリューション;思考汚染波”によって敗れ去ることになるだろう!」

フェイリス「それじゃ、フェイリスも本気を見せてあげるニャ!........えへへ....」

岡部「?何を笑っている?」

フェイリス「ニャフフ~♪なんでもないニャ~ン♪」


~~~

――12月23日


岡部「....今の夢は、まさかこの世界線の俺の記憶....?....だとしたら....」


ずっと疑問だった。この世界線の鳳凰院凶真は、どうして生まれたのか。

まさか、フェイリスを助けようとして生まれたのか....


岡部「........」

ラボを見渡すが、誰もいない。昨日は考えているうちに疲れ果てて眠ってしまったようだ。

――

ダル「えー、オカリンいかんの?今日から冬休みで、しかもサンタコスなのだぜ?」

岡部「........」

ダル「オカリン、ノリ悪いお....」


俺はそれどころじゃないんだ。何か、何かほかの方法を探さなければならない。

IBN5100を消す方法....またはラボ自体を消す方法....あるいはフェイリスをラボに関わらせない方法....


最初に思い付いたのは、鈴羽を過去に行かせないという方法。そうすれば、IBN5100は俺の手から消える。

だが、この方法はリスクが大きすぎた。鈴羽が過去に行かなくなることによって世界線がどう変わるのか想像できない上、タイムマシンがラウンダーに見つかってしまうという最悪の事態が起きたら取り返しがつかない。

ラボ自体を消すこと....やはり、これが一番可能性があることのように思える。


――だが、その後何度もタイムリープを繰り返しながら何通ものDメールを送ったが、世界線は変えられなかった。

やはり、因果律によってラボの存在は確定しているようだ....Dメールを送った時点でラボへの因果が繋ってしまうのだ。


なら、最後の方法....フェイリスをラボに関わらせないようにするという方法で行くしか、可能性はない....


――だが、どんなDメールを送っても、やはり世界線は変わらない。

ダイバージェンスメーターは、ずっと .554821 のままだ。

一人ぼっちの俺は弱い。孤高など、結局俺には耐えられないのだ。

フェイリスがいたから、俺はこの世界線でも生きてこられた。どんなDメールを受け取っても、俺はフェイリスに頼ってしまう。助けられてしまう。

ラボが作られることは因果律で確定している。そして、俺はフェイリスなしではラボを作れない....


いつだって、フェイリスは俺を助けてくれた。俺の心を読み取って、手を差し伸べてくれた。ラウンダーに襲撃された時も、フェイリスは常に俺を逃がそうとして犠牲になる。俺は何度も助けられているのに....

それなのに、俺は助けられない。


――どれだけ考えても、何かにぶつかる。まるで出口のない迷宮のようだ....

――


フェイリス「凶真?」

岡部「....!!フェイリス!?なぜいるんだ!?」

フェイリス「なぜって....バイトが終わったからに決まってるニャ!」

岡部「そ、そうか」

フェイリス「なにをボ~っとしてたのかニャ?」

岡部「いや....なんでもない」プイッ


しまった....いつもはフェイリスが帰ってくる前に朝へタイムリープして戻っていたのに、今回は遅れてしまった。

フェイリス「ん~~~???もしかして、まだ昨日のことを考えてたのかニャ?」

岡部「........」

フェイリス「なんで昨日の話でそんなに迷うのか、フェイリスにはわからないニャ~。もう解決方法が見つかったっていうのに。なんなら、フェイリスが代わりにそのDメールを――」

岡部「だめだ!!」

フェイリス「フミャあ!!?で、でもでも、そうしないとフェイリスが死んじゃうんでしょ?」


岡部「心配するな。お前は、必ず俺が助ける。だが、そのDメールは....ダメなんだ」

フェイリス「はニャ?....う~ん....まあ、凶真に任せるニャ」

岡部「........」

フェイリスは意外にあっさりと引き下がってくれた。それにしても、フェイリスに会ってしまわないように12月23日を繰り返していたのに....どうも、俺は疲れて――


フェイリス「凶真、なんだか疲れてるみたいニャ」

岡部「な!?」

フェイリス「ニャフフ♪凶真、こっち来てニャン♪」

岡部「な、何をする気だ?」

フェイリス「いーから、こっちに来るニャ!」

フェイリスは、俺を強引にソファーまで引きずって言った。


フェイリス「疲れてる時は眠るのが一番ニャ!だから、今日は特別にフェイリスが膝枕してあげるニャン♪」

岡部「膝枕....」

だいぶ前に、こんな展開があった気がする。....そうだ、あの時のフェイリスは、俺のタイムリープに気付いて――


フェイリス「ねんね~こ、ねんね~こ、ねんね~こニャ~♪」

――12月24日


結局、あのまま眠ってしまったようだ....まあいい、今からタイムリープすればいい。

ラボを見渡すと、ラボメンたちが集まっていた。


るか「うう....正直、怖いです」

フェイリス「大丈夫ニャ♪ちょっとみんなの前で、フェイリスとニャンニャンするだけニャ!」

ダル「にゃんにゃん....にゃんにゃん....うへ、うへへ」

紅莉栖「ニャンニャンって、そこまで過激なことじゃないでしょ!....そうよね、フェイリスさん?」

フェイリス「それはどうかニャ~?ニャフフ~♪」

ダル「うおーーー!クリスマスサイコー!でもリア充は爆発しろ!」

まゆり「フェリスちゃんが楽しそうで何よりです♪」

るか「あわわ....やっぱり、ボクは帰ろうかな....」

まゆり「えーっ、ダメだよー。フェリスちゃん泣いちゃうよー?」

フェイリス「ル、ルカニャ~ン....」グスッ

るか「ええっ!?いや、あの....うう、行きます....」


紅莉栖「あれは卑怯よね....」

まゆり「じゃあ、そろそろ行こっか。....オカリン?どうかしたの、元気ないよ?」

岡部「....悪いが、俺は今日は....」

フェイリス「だーめーニャ♪一日くらい、フェイリスのイベントに付き合うニャ!」

岡部「フェイリス、俺には大事な用事が――」

フェイリス「それはウソニャ!いーからいーから♪」


おかしいな。いつもはこのあたりで引き下がるはずなのに....

ダル「もしかしてオカリン、明日雷ネットABグラチャンの決勝だから緊張してるん?んじゃ、なおさらメイクイーンで緊張をほぐすべきだと思われ」

紅莉栖「そうよ。そもそもあんただけ逃げるのはフェアじゃない」

フェイリス「凶真、せめてイベント中だけでもいてほしいニャ....ダメ?」

岡部「........」


俺はそんなことをしている余裕はない....だが、どうせ今タイムリープしてもいい考えが浮かぶわけじゃない。


岡部「わかった。いるだけだぞ」

フェイリス「!!やったぁーーー!ありがとニャーン♪」

紅莉栖「まったく、面倒くさいマッドサイエンティストだこと」

まゆり「フェリスちゃんよかったね~♪えっへへ~」

ダル「ん~....なんか納得いかんお....」


なぜか、俺に頼み込んできた時のフェイリスの目は真剣だった。そのため、断りきれなかったのだ。

....イベントが終わったら、すぐにタイムリープしよう。それで、問題はない。

今日はここまでです。次は水曜日に。

更新します。

――

メイクイーンは混雑していた。いつもの制服ではなくサンタコスというのもあるだろう。出てくる料理もチキンやケーキといったクリスマス仕様だ。

だが、今日の目玉はクリスマスイヴのフェイリスイベントだ。


ダル「フシュー....コホー....フシュー」

紅莉栖「何してんの?」

ダル「精神統一だお」

るか「で、でも、じゃんけん大会をして、勝った人からくじを引いていくだけのイベントだったような....」

ダル「だからこそ、精神統一が必要っしょ常考!僕、この戦いが終わったら結婚するんだ....」

紅莉栖「はいはい死亡フラグ乙。....はあ、クリスマスイヴだっていうのに、こんなむさくるしいオタクの巣窟にいるなんて」

るか「あはは....岡部さん、元気ないみたいですけど、大丈夫ですか?」

岡部「ああ、大丈夫だ。心配するな」


るか「....あれ?え、えーっと――」

ダル「オカリン!今日こそ、僕が勝つお!そして、フェイリスたんの、ちゅ、ちゅーを....」

紅莉栖「通報しますた。....岡部、本当に大丈夫?体調悪いなら、今日は――」


その時、サンタコスを着たフェイリスがマイクを持って現れた。

フェイリス「みんな―!!今日は、フェイリスのために集まってくれて、ありがとニャー!!!」

オタク達「「「うおおおおおおおおおおおおお!!!フェイリスたーーーん!!!」」」

オタA「フェイリスたーん!ああ、サンタコスかわいいよおおおおおお!」

オタB「くんかくんか!スーハースーハー!」

ダル「フェイリスたん、俺だー!結婚してくれー!」

紅莉栖「うわあ....地獄絵図ね」

るか「ま、牧瀬さん....いくらなんでも、それは言いすぎじゃ....」


フェイリス「ニャフフ、皆が元気いっぱいで、フェイリスはうれしいニャ!」

フェイリス「それでは、今日の“フェイリス杯inクリスマスイヴ”の説明を始めるニャン♪」

フェイリスは、いつもと変わらず元気なようだ。今日の夜、自分が死ぬことを知っているのに。なぜこんなに明るく振舞えるんだ?本当に、俺が助けてくれると信じているんだろうか....


フェイリス「今日はいつものフェイリス杯と違って、フェイリスと皆でじゃんけんをするだけニャ♪それで、勝ち残った一人がこのくじを引く!それを繰り返していくだけニャ」

ダル「フェイリスたん、質問です!それは、引けない人も出ちゃったりしますか?」

フェイリス「これは、フェイリスからのクリスマスプレゼントニャン♪だから、絶対に全員にひいてもらうニャ!ただし、一人一度まで!」

ダル「....夏のコミマ以来のシビアな戦いになりそうだお....」


フェイリス「このくじの中身が気になるかニャ?....マユシィ!試しにひいてみてニャ♪」

まゆり「はいはーい!じゃあ、ひいちゃうね~♪」


まゆりが選んだのは、ピンクのネコが書いてあるくじだった。その中身は――

まゆり「『フェイリスと愛のあるハグ』だってー!」

ダル「なん....だと....」

オタク達がどよめく。


紅莉栖「ちょ、やっぱこれは完全にOUTだろ!橋田とかが引いてたらどうすんのよ!」

るか「あわわ....」


フェイリス「ニャニャ、なかなか過激なものを引くのニャ....じゃ、さっそく!」ギューッ

まゆり「わわー!フェ、フェリスちゃん!」

ダル「すごく....百合です」

フェイリス「ま、こんな感じニャ♪一等賞は、『フェイリスがほっぺにチュー』ニャ!」

オタク達「「「キタアアアアアアアアアアアアア!!!!!」」」

紅莉栖「フェイリスさん、よくこんなことできるわね....」

まゆり「フェリスちゃんは、皆のフェリスちゃんだからね♪」

るか「答えになってないよ....」


フェイリス「というわけで、フェイリス杯inクリスマスイヴ、開幕ニャン!」

フェイリス「さあ皆、立つのニャ!フェイリスに負けた人とあいこの人は、座ってニャ♪じゃーん、けーん――」


紅莉栖「岡部?あんた、やらない気?やっぱり体調悪いんじゃない?」

岡部「気にするな。イベントには参加しないというだけだ。いるだけ、という約束だからな」

紅莉栖「な!?卑怯よ!」

岡部「クリスティーナ、じゃんけんに集中しろ」

紅莉栖「ああ、もう....うわ、また勝っちゃった」

――

紅莉栖「まさか、一番最初に勝ち残るとは....」

フェイリス「ニャフフ、クーニャン♪クーニャンが一番で、フェイリスはうれしいニャ~♪」

紅莉栖「うう、恥ずかしすぎるのは勘弁して....」

フェイリス「ニャフフ、クーニャンみたいな人のために、ネコの絵以外のくじも入っているのニャ♪そっちなら、フェイリスとは関係のないくじも入っているかも....」

紅莉栖「え、それ本当なの?じゃ、じゃあこの....ケルベロス?キングギドラ?これにするわ」

まゆり「えー、クリスちゃーん....」


紅莉栖「どれどれ、『今日一日ミニスカサンタコスネコ耳メイド』....な、なんぞこれええええ!?」

まゆり「あ、やったー!クリスちゃん、大当たりだよー!」

フェイリス「ニャニャ!萌えの神が舞い降りたニャ!」

ダル「オウフ、牧瀬氏のミニスカサンタ....薄い本が厚くなるお!」

オタA「デュフフ、すばらしい」

オタB「まさかのサービスタイムキタコレ!」

紅莉栖「黙れHENTAIども!」

フェイリス「さっそくお着替えタイムニャーン♪今日こそは逃げられないニャ!」ガシッ

紅莉栖「ちょ、ちょっと本当にやるの!?わ、わかったから!自分で着替えるからー!」ズルズル....

ダル「....にしても、ルカ氏以外の男が引いてたらと思うと....オエッ」

るか「ボクだっていやですよぉ....」


やがて、サンタコスに着替えた紅莉栖が現れた。

オタク達「「「オオオォォ....」」」

ダル「ひんぬーもありだお!」

紅莉栖「誰が貧乳だ!そこまでちゃうわ!」

フェイリス「あ、クーニャンは今はネコ耳メイドでもあるんだから、ご主人様にはそれ相応の言葉遣いをしてもらうニャ」

紅莉栖「え、ええー....」

フェイリス「はら、一緒に♪ニャンニャン♪」

紅莉栖「い、いやよ!」

フェイリス「ちょっとだけニャ♪ほら、ニャンニャン♪」

紅莉栖「うう....ニャ、ニャンニャン....」

ダル「キターーー!その恥じらう感じが素晴らしすぐる!」

フェイリス「ニャフフ~、とうとうクリスティーニャンニャンが現実に....♪」


紅莉栖「....死にたい」

――


るか「恋人つなぎ、デュエット、なでなで....うう、恥ずかしいのばっかりです」

ダル「結構当たりはずれも大きいお。そして、20人以上が終わって、まだチューは出ていない!天は僕に味方している!」

紅莉栖「確かに確率的には上がってるけど....まだ誤差の範囲よ」

ダル「チュー、チュー....うへへ....」

紅莉栖「だめだこいつ、早く何とかしないと....」

フェイリス「あー!クーニャン、またそんなしゃべり方してるニャー!」

紅莉栖「しまった....もう勘弁して、ニャン....」

――

るか「ああっ!?か、勝っちゃった....」

まゆり「わー、るか君だー!」

フェイリス「ニャニャ!さあ、くじを引いてニャ♪」

ダル「ルカ氏....わかってるよな?」

るか「そ、そんなこと言われても....」

フェイリス「猫の絵以外のくじなんてどうかニャ?」

るか「ひいっ!そ、そっちのほうがこわいですよぉ....じゃ、じゃあ、これ....」

るか「えっと、『フェイリスをお姫様抱っこして店内一周』!?ム、ムリだよ....」

紅莉栖「これはまた、男らしいのが来たわね....ニャン」

ダル「それもうらやまけしからん!フェイリスたんのあんなとこやこんなとこに触れられるとかヤバすぎっしょ!」

まゆり「ダル君はエッチだね~」

るか「だ、抱っこして一周なんて、ボクにはとても....」

フェイリス「ルカニャン、ルカニャン♪フェイリスは、ルカニャンの男らしいところ、見てみたいニャ~」

るか「うっ....お、男らしい....」

紅莉栖「漆原さん、頑張って!ニャン」

まゆり「るか君、なんとかかんとか流を修業してるから、大丈夫だよ!」

フェイリス「清心斬魔流の修行の成果を見せるのニャ!」

るか「そ、そっか、修行....わかりました。頑張ります!」


るか「えっと、こんな感じでいいですか?」

フェイリス「そうそう!そこから、一気に持ち上げてニャン♪」

るか「は、はい!....えいっ!う、おも....!」

フェイリス「....何か言ったかニャ?」

まゆり「えー、るか君ひどいよー」

るか「な、なんでも....ないですっ」


るか「よいしょ....う~ん、はあ....はあ....」ヨロヨロ....

フェイリス「ルカニャン、ファイトニャー!」

紅莉栖「こ、これは....かわいい....!」

ダル「ハアハアしてるルカ氏ハアハア」

――

るか「終わり....ましたっ!はあ、はあ....」

まゆり「るか君、カッコいーよー!」

フェイリス「ルカニャン、ありがとニャーン♪」ギューッ

るか「うわあっ!?フェ、フェイリスさん!?」

ダル「またもや百合キマシタワー!」

紅莉栖「いや、百合じゃないから」

――

ダル「キタアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

フェイリス「おお、とうとうダルニャンの番ニャ!」

紅莉栖「橋田、もう110番の準備はできて――」

ダル「神様仏様フェイリス様、チューチューチューチューチュー....」

紅莉栖「通報しますた」

まゆり「はやいよー」

ダル「絶対に負けられない戦いが、ここにある」ジーッ


るか「な、長いですね」

紅莉栖「橋田ー、早くしないと警察が到着するわよー」

ダル「俺のこの手が真っ赤に燃える!勝利をつかめと轟き叫ぶ!ばぁぁぁくねぇつぅ....」クワッ



ダル「う~ん、やっぱこれじゃないっぽい」

紅莉栖「あ~、もう!長いっつーの!これでいいでしょ!?これで決定!」バッ

ダル「ちょ、牧瀬氏!」

フェイリス「んじゃ、開けちゃうニャーン♪」

ダル「な!?....牧瀬氏、はずれっぽいのだったら、一生恨むお....」ガクッ


フェイリス「ニャニャあ!?『フェイリスがクリスマスケーキあ~ん+お弁当ついてるぞ☆』....なんか、とんでもないのがきたニャ....」


紅莉栖「えええっ!?いやいやいや、いくらなんでもそれは絶対だめよ!」

まゆり「お弁当ついてるぞ☆って、ほっぺについた食べ残しをペロってするあれのこと~!?」

るか「あ、あわわわ....」

ダル「あれは....メシア!?」ムクッ

ダル「救世主が舞い降りたお....デュフ、デュフフ....」

紅莉栖「....あ、もしもし警視庁ですか?ここに凶悪な性犯罪者が一人....」

フェイリス「いやいや、フェイリスからやるんだから、犯罪にはならないんじゃないかニャ....」

紅莉栖「ちょっと、本当にやる気!?あのHEMTAIに!?」

フェイリス「もっちろんニャ♪ダルニャン、こっちきてニャ!はい、あ~ん♪」

ダル「父上、母上、僕は天国に旅立ちます....先立つ不孝をお許しください」パクッ

オタク達「「「うわあああああああああのやろおおおおおおおおお」」」

ダル「僕、とうとうあ~んしてもらえたお....幸せ....」モグモグ

フェイリス「フニャ?ダルニャン、こんなとこにお弁当ついてるぞ☆」ペロッ



オタク達「「「ああああああああああああああああああああああああ」」」

紅莉栖「ちょ、おまわりさんこっちです!」

るか「ほ、本当に....!?」

まゆり「わわー....あれ?ダル君?」

ダル「」

るか「あの、橋田さん?」

ダル「」

フェイリス「こ、これは....!死んでるニャ」

紅莉栖「そんなわけあるか!おい、橋田!」ガクガク


ダル「――はっ!?なんだただの天国か」

フェイリス「にゃはは、照れるニャ~♪」


紅莉栖「........?」

――


紅莉栖「....結局、あんたは本当にいただけね」

イベントも大詰めになった時、紅莉栖が俺の席に戻ってきた。

岡部「........」

紅莉栖「まあ、そんなことより....今日のフェイリスさん、ちょと変じゃない?」

岡部「....どの辺がだ?」

紅莉栖「う~ん、そういわれると難しいけど....なんか、振り切れすぎというか....まあ、なんとなくよ」

岡部「曖昧だな」

紅莉栖「あんたなら、付き合いも長いし、わかるかと思って」

岡部「........」

言われてみると、確かになんとなくいつもの明るさとは違うような――


フェイリス「あー!クーニャン、また普通にしゃべってるニャ!」

紅莉栖「うっ、また見つかった!」

フェイリス「それより、凶真!こっちに来てニャン♪」

岡部「なんだ?俺はイベントには参加しないと――」

フェイリス「じゃんけんのイベントはもう終わったニャ。でもでも、くじは全員引いてもらうって、最初に言ったでしょ?」

岡部「な、なんだその屁理屈は....」

ダル「フェイリスたん!ずるいお、ひいきだお!オカリン、さてはこれを狙っていたな?汚い、さすがオカリンきたない!」

紅莉栖「....なにが?」

岡部「フェイリス、俺は参加しないと――」

フェイリス「え~っ、凶真、お願いニャー....皆のイベントにしたいのニャ....」

まゆり「オカリン、やってあげようよー」

るか「ま、まあ、ボクも参加したんですし、岡部さんも引いてあげてもいいんじゃないかと....」

紅莉栖「体調が悪いわけじゃないんでしょ?だったら引いてあげなさいよ」

フェイリス「鳳凰院凶真らしく、サッと決めるだけでいいのニャ~」


岡部「鳳凰院凶真らしく、か....」

残ったくじを見下ろす。そして、すぐに答えは見つかった。

迷わず、フェニックスの絵が描かれたくじを手に取る。鳳凰院凶真らしく....ならば、俺は絶対にお前を助ける!鳳凰院凶真は、そういう存在なのだから。


まゆり「え~、ネコの絵じゃないよ~?」

フェイリス「........」

岡部「俺には、この中身がわかる」

ダル「魔眼ですね、わかります」

紅莉栖「はいはいワロスワロス」

まゆり「まあまあ、中身を見てみようよー。どれどれ~、『フェイリスがほっぺにチュー』....」

ダル「........」

紅莉栖「........」

るか「........」

オタク達「「「........はああああああ!?」」」


まゆり「おー!!大当たり――!!さっすがオカリン♪」

フェイリス「ニャフフ、さすが凶真ニャ♪さあ、こっちに来てニャ♪」

紅莉栖「チューって....まさか本当に引くとは....でも、私も勧めちゃったわけだし、う~ん、どうしよう....橋田、あんたは――」

ダル「」

紅莉栖「し、死んでる....」


フェイリスの正面に立つと、フェイリスは俺の目をいつものように見つめてきた。フェイリスは、いつもこうして俺の心を見抜き、手を差し伸べてくる。

俺には、フェイリスの心は見えない。なぜ今日こんなにも明るいのか、死ぬのは怖くないのか、本当に俺を信じているのか....


だが、お前が鳳凰院凶真らしくいてくれ、というなら、俺は鳳凰院凶真として、必ずお前を救ってみせる。永遠にタイムリープをし続けることになったとしても――

フェイリス「....ふふっ、じゃあ凶真、目を閉じてニャ♪」


そうだ、俺は、絶対にお前を助ける。

目を閉じながら、強く誓った。


なぜなら、俺は―――

今日はここまで。続きは土曜日です。一気に完結するかもしれないので、かなり長くなるかも

更新します。

――


メイクイーンでみんながまだ盛り上がっている中、俺は一人で店を出た。

今まで気が付かなかったが、外は雪が降っていた。夜には積もって、明日はホワイトクリスマスになるだろう。


....はたして、俺が明日を迎えることはあるだろうか。



岡部「....そろそろタイムリープするか」

気付くと、もう夕方になっていた。

その時、唐突にラボの扉が開かれた。


フェイリス「凶真!メリークリスマース!」バァン!

岡部「フェイリス?早いな....」

フェイリス「にゃはは、早めに帰ってきちゃったのニャン♪」

フェイリスは、持っていた袋の中からいろいろと取り出し始めた。


フェイリス「これは七面鳥で、これはケーキで、これは....ドクペ!飾りがなくてちょっと地味だけど、凶真!クリスマスパーティニャン!」

岡部「........」

フェイリス「ム~、凶真!まだちょっとは時間あるでしょ?少しでもフェイリスに付き合ってニャ♪」

フェイリスはドクペをグラスに注いで、俺に差し出してきた。


岡部「....はあ。わかった、少しだけだぞ」

気付くと、のどがカラカラだった。差し出されたドクペを一気に飲み干す。


フェイリス「ニャフフ、言い飲みっぷりニャ!そんな凶真には、フェイリスサンタからクリスマスプレゼントニャ~ン♪」

岡部「おいおい、そんなものを受け取っても....俺は今からタイムリープするんだぞ!?」

フェイリス「いーからいーから♪さあ、目をつむってニャ」

岡部「....またチュー、なんて言うんじゃないだろうな」

フェイリス「ニャニャ!さっきはほっぺだったし、今度は....なーんて、残念ながら違うものニャ!早く早く♪」

岡部「....仕方ないな」

言われたとおり目を閉じる。


....そういえば、俺もクリスマスプレゼントを買った気がする。あれはいつの世界線だったか――


フェイリス「....はいっ!もう目を開けていいニャ!」

岡部「ん?........お前、これは何の冗談だ」


フェイリスは、俺の頭にネコ耳をつけていた。

フェイリス「それはニャンと!フェイリスとおそろいのネコ耳ニャ♪これでフェイリスと凶真は一心同体ニャ~ン♪」

岡部「こんなもの、いらん」ポイッ

フェイリス「あーー!」


岡部「....こんなものがなくても、俺たちはずっと一緒なんだろ?」

フェイリス「!!....えへへ、そうだよね」

フェイリス「....ねえ、凶真。これからはフェイリスと一緒に戦うって約束したの、覚えてる?」

岡部「ああ、もちろんだ」

フェイリス「じゃあ、なんで10年前へのDメールを送らないのか、教えてくれてもいいんじゃないかニャ?」

岡部「....それとこれとは話が別だ。悪いなフェイリス、そろそろ俺は――」

フェイリス「だ~め~ニャ~!....教えてくれないなら、フェイリスが当てちゃおうかニャ?」

岡部「あ、当てちゃうだと?」


フェイリスが身を乗り出して俺の目を覗き込んできた。

フェイリス「昨日の夜から、ず~っと考えてたニャ。10年前にフェイリスが誘拐されれば、全部まーるく解決なのに、なんで凶真はそうしないのか」

岡部「う....」

フェイリス「それは、きっと――」


フェイリス「フェイリスが誘拐されたら、未来は変わるけどフェイリスが殺されちゃうから」

岡部「....!」

あわててフェイリスから目をそらす。


フェイリス「今更目をそらしても遅いニャ~。昨日の時点でなんとなくわかってたし」

岡部「ち、違う!そういうわけでは――」

フェイリス「フェイリスはそのラウンダーっていう人たちがどんなのか知らないけど、凶真は知ってるんでしょ?きっと、誘拐した女の子をそのまま帰してくれるような人たちじゃない」

岡部「........」


フェイリス「きっと、フェイリスは殺されちゃうって、凶真にはわかった。だから、凶真はフェイリスを助ける方法を探してるのニャ。そうでしょ?」

岡部「....お前は、本当に何でもわかってしまうんだな」

フェイリス「ニャフフ~、凶真に関しては、特別ニャ!」

岡部「いいかフェイリス、心配するな。何度タイムリープしてでも、お前を救ってみせる!だから――」

フェイリス「それは無理ニャ」


岡部「な、なに!?」

フェイリス「きっと、そんな方法はないニャ。凶真自身が一番わかってることでしょ?この世界では、絶対にフェイリスは死ななきゃならない。全部助けられるような都合のいい世界なんて、あり得ないのニャ」

岡部「そんなはずはない!必ず、何かあるはずだ!」

フェイリス「どっちにしても、フェイリスは死ぬことが決まってるんでしょ?今日か、10年前かが違うだけ」

岡部「お前は何を言っているんだ!?だからこそ、俺はそうじゃない世界線を探して――」

フェイリス「何回もタイムリープして、あらゆる手段を試したんでしょ?それでも無理なんだから、もう無理ニャ」

岡部「もういい!俺はもう行く....ぞ........?」グラッ


立ち上がろうとした瞬間、視界がぼやけて全身の力が抜けた。立ち上がることができない....これは....?


フェイリス「凶真、ごめんなさい....」

岡部「フェイリス....?お前、まさか....!?」

フェイリスは立ち上がると、俺に背を向けて話し始めた。

フェイリス「ドクペにちょっと睡眠薬を混ぜたのニャ。凶真がタイムリープできないように」

岡部「な、なぜ....?」

フェイリス「凶真。フェイリスのために何度も何度も苦しんでくれて、ありがとう。そこまでしてもらえて、もうフェイリスは満足ニャ!だから――」


フェイリス「凶真の代わりに、フェイリスが10年前にそのDメールを送るニャ!」


岡部「な....!?バカな、やめろ!」

フェイリス「フェイリスと凶真は、一緒に戦うって約束でしょ?だから、凶真ができないならフェイリスが決着をつけるしかないのニャ!」

岡部「ふ、ふざけるな!そんなこと、俺は許さんぞ!」

フェイリス「....10年前の4月3日、フェイリスの誕生日の夜に、フェイリスがラジ館に隠れてるってDメールを送る。これで、フェイリスと凶真の完全勝利ニャン♪」

岡部「そ、そんなのは....勝ちじゃない!お前がいなければ、俺は....」


フェイリス「凶真は、フェイリスがいなくても大丈夫。一人でも、ちゃんとラボを作って、ラボメンを集めて、電話レンジ(仮)を作るニャ。これは、因果律で決まっていること」

フェイリス「....つまり、最初からフェイリスは必要なかったのニャ」

岡部「な....なにを....!?」

フェイリス「フェイリスがいたら凶真も頼っちゃうけど、最初からいなければ凶真は一人でも戦えちゃうのニャ」

岡部「そんな、バカな....お前がいなければ、俺は....」

フェイリス「........」



フェイリス「....ホントはね、凶真がこの世界線に来た時からわかってた。凶真にとって、フェイリスはただの仲間。特別な....好きな人なんかじゃないって」

岡部「え....!?」


フェイリス「それなのに、フェイリスを助けるためにこんなに必死になってくれるなんて....えへへ、やっぱり凶真は優しいね」

岡部「ふ、ふざけるな!俺は....!」

岡部「確かに、最初はそうだったかもしれない....だが、この世界で俺は何度もお前に助けられて、いくつも思い出をもらって....だから、今は――」


岡部「俺は、お前が好きだ!」


フェイリス「........」

岡部「聞いているのか!?俺は、お前が好きだ!だから、絶対に助けるんだ!」


フェイリス「....それは、ウソニャ」



岡部「な。なんだと!?嘘なわけがあるか!フェイリス、こっちを見ろ!」

フェイリス「........」

岡部「こっちを....俺の目を見ろ!」

フェイリス「....聞こえないニャ~ン♪」

岡部「ふざけるな!おい、フェイリス!」


フェイリス「....ニャニャ!そろそろ時間かニャ?」

フェイリスは、俺と目を合わせないまま開発室へ入っていった。


岡部「く....ま、まて!」


俺は睡魔に襲われて力が入らない体に無理やり力を込め、壁にもたれかかるようにして開発室を目指した。

1秒が、永遠のように長く感じる。早く、早くしなければ....!


岡部「うぐっ!」ドサッ

何かに躓いて床に倒れた。それでも、床を這うようにして進む。

岡部「フェイ....リス....!」


とうとう、開発室にたどり着いた。しかし、すでにフェイリスはDメールの設定を終えていた。

そして、携帯を机の上に置くと、両手を高らかに掲げ、再びおれに背を向けて叫んだ。



フェイリス「――勝利の時はきたニャン!」

フェイリス「フェイリスと凶真は、あらゆる陰謀に屈せず、信念を貫き、このラグナロクを戦い抜いたニャ!」


フェイリス「この勝利のため、ラボメンとして共に戦ってくれたみんなにも、感謝ニャ!」


フェイリス「これから訪れるのは、フェイリスと――凶真が望む世界ニャ!」


――ちがう。俺は、そんな世界は望んでいない!フェイリスがいない世界なんて――


フェイリス「すべては、シュタインズゲートの選択ニャ!」


――やめてくれ。そんなのは....シュタインズゲートなんて、ただの設定なんだ!やめろ!――

フェイリス「エル――」


岡部「フェ、フェイリス....」


フェイリス「プサイ――」


岡部「まってくれ....」


フェイリス「コングルゥ――」


岡部「やめろ....」

フェイリス「世界は――」



岡部「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」



フェイリス「再構成される――」



カチッ

その瞬間、世界が歪んだ。

リーディングシュタイナーが、発動する――



「....倫太郎さん」


フェイリスは、もう背を向けていなかった。ネコ耳を外し、床に這いつくばったままの俺に近づいてきて、そして俺を抱きしめた。

唇を、柔らかい感触が包む。

「んっ........ごめんね。勝手なことをして。あなたが苦しんでいる姿、もう見たくなくて」


「留未穂....俺は....」


「大丈夫。倫太郎さんは何があっても立ち上がれる、強い人。私は知ってるよ。私がいなくても、倫太郎さんは大丈夫」


「それに、私は完全に消えちゃうわけじゃない」


「ペアリングに魔法をかけたの、覚えてる?どれだけ離れていても、どんなことがあっても、心はずっと一緒、って」

「だから、見えなくても、聞こえなくても、触れられなくても」


「ずっと一緒にいるよ。だって、留未穂は倫太郎さんのこと――」


「好きだから。大好きだから」


「どんな世界でも、ぜーったいに、ね♪」



「....さようなら。私の大好きな、王子様」―――


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     ↓

-1.130426

―――

――




岡部「........はっ!?」

目を覚ますと、ソファーの上だった。どうやら、眠っていたようだ。


じゃあ、今のは....夢?

時計を見ると、もう日付が変わりそうな時間だ。ラボは、襲撃されていない。

窓の外を見ると、アキバは一面銀世界だった。ということは、今は間違いなく12月24日の夜。


そうだ、全部夢だったんだ!ラウンダーはもう襲撃してこない!もう何も起きない――


立ち上がった時、毛布のように俺の上にかかっていた白衣が、床に滑り落ちた。それは、あの誕生日にフェイリスにあげたはずの、ぼろぼろに使い古された白衣だった。

岡部「そんな....バカな....これは、フェイリスにやったはず....」

ということは....ということは――

岡部「いや、そんなはずはない!そんなことが、あるわけがない!」

狂ったようにラボを見渡す。


岡部「大丈夫だ....いつものラボだ。あの、懐かしいラボ――」

懐かしい?


岡部「な....ない!ないないない!」

ラボは、前の世界線のラボに戻っていた。4か月前までいた、あのラボに。


フェイリスが選んできたピンクのカーテンも、

フェイリスが取り付けたメルヘンな装飾も、

フェイリスが持ち込んだ賞品のうーぱグッズも、

フェイリスがいつの間にやら増やしたネコの置物も、

フェイリスがラボにいたすべての痕跡が消え去っていた。


....まるで、最初からフェイリスがいなかったかのように。

気付くと、IBN5100もなくなっている。やはり、これは....


岡部「ちがう!ちがう!くそ、フェイリス....!」

今度は携帯を取り出し、連絡を試みた。しかし――


こっちの世界線に来た時は、フェイリス以外のすべての連絡先が消えていた。

だが、今はフェイリスの連絡先だけが消えていた。

ふらふらと、開発室の中に入る。

そこには、それが当たり前のことであるかのように電話レンジ(仮)が鎮座していた。


――つまり、フェイリスの言っていた因果律の話は、正解だったということか。

俺はフェイリスが最初からいなくても、一人でラボを作り、電話レンジ(仮)を作るのだ。因果律に導かれて。

フェイリスに助けられなくても、俺は一人で....



こんな、こんな結末は、あんまりだろ....

体から力が抜け、床に手をついて崩れ落ちた。

そして、指からあのペアリングが消えていることに気が付いた。


もう、魔法は解けてしまったのだ。


この世界に、フェイリスはいない。


その存在も、思い出も、すべて消え去ってしまった――

岡部「あ....ああ........」



岡部「あああああああああああああああああああああああああああああ!!!」






その叫び声は、誰にも届くことなく白い雪の中へ消えて行った。




【シュタインズゲート】幻影のチェシャ猫


~~完~~

約2か月間、ありがとうございました。

長くなりましたが、これにて完結です。本当にありがとうございました




プルルルルル........



プルルルルル........


プルルルルル........


プルルルルル........


プルルルルル........


プルルル――


ピッ

岡部『........』


???『ん?....ねえ、これ聞こえてる?』

岡部『....誰だ?』

???『あっ、オカリンおじさん!』

岡部『なに?....お前、誰だ!?』

???『今、どうして叫んでたの?外まで聞こえてきたよ』

岡部『その声....まさか、鈴羽か!?』

鈴羽『え?なんで知ってるの?』

岡部『鈴羽、なぜここにいる!?』

鈴羽『おじさん、それより外に出てきてくれるかな。君に頼みたいことがあるんだ』

岡部『頼みたいことだと!?』

鈴羽『あたしは、2036年からタイムスリップしてきたんだ。過去を変えるために』

鈴羽『それには、オカリンおじさんの力が絶対に必要なんだよ。だから、お願い――』





鈴羽『あたしに協力して、未来を変えて!』




 Chapter11

   逆理創世のラグナロク

次スレ
【シュタインズゲート】幻影のチェシャ猫Ⅱ
【シュタインズゲート】幻影のチェシャ猫Ⅱ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1429975027/)

まだこのスレありますが、次スレに行きます。

こういうエンディングが好みの方はこのスレでお別れです。ご愛読ありがとうございました。

>>1にもう少し付き合ってやるか、という方は月曜日から次スレでお会いしましょう!

あと、>>1の茶番に付き合わせてしまい誠に申し訳ありませんでした。

当スレ誤字脱字誤変換一覧


>>2 ×世界選に→○世界線に

>>9 ×「んー、」→○「んー、

>>38 ×110円ハゲ→○10円ハゲ

>>39 ×BB段→○BB弾

>>45 ×かがいながら→○かばいながら

>>53 ×まったかこいつは→○まったくこいつは

>>63 冒頭 岡部「フェイリス、本当に今の俺と一緒にいるつもりなのか?」

>>80 ×8月18日→○8月17日

>>102 ×子、これは→○こ、これは

>>116 ×ラボメン二ナンバー→○ラボメンにナンバー

>>186 ×プロフラミング→○プログラミング

>>209 ×凶真さん」。→○凶真さん。

>>223 ×レポートも変わりに→○レポートも代わりに

>>227 ×7ドクペですか→○ドクペですか

>>243 ×脳裏を思い出す→○脳裏にちらつく

>>300 ×でいるのニャン→○できるのニャン

>>337 ×い、いあ→○い、いや

>>349 ×牧瀬久利栖→○牧瀬紅莉栖

>>392 ×紅莉栖「む~。フェイリスは→○フェイリス「む~。フェイリスは

>>451 ×来てくれる→○着てくれる

>>459 ×息ったり→○息ぴったり

>>475 ×フェリス→○フェイリス

>>505 ×ク~ニャン~!ガバッ→○ク~ニャン~!」ガバッ

>>588 ×リーディンフシュタイナー→○リーディングシュタイナー

>>667 ×思ているんだ→○思っているんだ

>>689 ×世界戦→○世界線

>>690 ×まだ着ていのに→○まだ着てないのに

>>875 ×ちょと→○ちょっと

>>890 ×言い→○いい

もしこのスレがまとめられるなら、できたら直しておいてもらいたいです....   

あと点線が全角になってるところも


まとめられないか。このスレは以上です。埋まるなら埋めてほしいです。

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