コナン「特殊警察イェーガーズ?」 (62)

アガサ博士「米花町の事件発生率があまりにも高いらしくてのう」

アガサ博士「それを調査するために派遣されることになったそうじゃ」

コナン「特殊警察ねぇ、どんな奴らなんだ」

アガサ博士「男女7名で構成された精鋭部隊らしいわい」

コナン「ふーん、まあいいや」

コナン「そんなことより博士、新しい装置はできたのか」

アガサ博士「うむ。これは光彦君の痛覚を3000倍にするスイッチじゃ」

コナン「サンキュー、博士」

アガサ博士「くれぐれも悪用するんじゃないぞー」


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警視庁


目暮「いやいや本日は遠路遥々、お越しいただき光栄です」

高木「これはつまらないものですが」

エスデス「気遣いは無用だ。さっそくだが本題に入らせてもらう」

ラン「事前資料を読ませていただいたのですが、この江戸川コナンという少年の周りで連続して殺人事件が起こっています」

ラン「これについてはそちらの見解はどうなのでしょう」

目暮「いやいやお恥ずかしい話なのですが、そのことについては何故かこれまで疑問に思わなかったのですよ」

クロメ「疑問に思わなかった?」

高木「ホント、彼が事件の現場にいるのが当たり前みたいな認識で」

佐藤「今思えば、これほど不自然なこともないわ」

ウェイブ「隊長、これはまさか」

エスデス「この子供、何かあるな」

ボルス「やっぱり帝具使いでしょうか?」

スタイリッシュ「決めつけるのはまだ早いわ」

エスデス「とりあえず実物を見てみないことには始まらん」

セリュー「彼が悪だったら、その場で正義執行ですね」

エスデス「それで、そのコナンという子供はどこに住んでいる」

目暮「コナン君なら今の時間は帝丹小学校にいるでしょう」

目暮「見に行くなら部下を一人つけますよ」

帝丹小学校前


高木「丁度下校時間なんで、そろそろ出てくると思いますが」

高木「いたいた、あれですよ。あの眼鏡をかけた少年」

エスデス「あれが、江戸川コナンか」

ラン「周りにいるのは彼の友人ですか」

高木「少年探偵団っていうんですが、五人でよく集まって遊んでいるんです」

ウェイブ「これだけ見れば特に不自然な点はないな」

セリュー「仲のいい子供たちですよね」

灰原「今日は放課後何をしようかしら」

歩美「歩美、お家で遊びたーい」

元太「うなっ!」

灰原「それなら博士の所に行くのがいいわね」

コナン「そうだ。博士からこんなもん貰ってたんだよ」

歩美「なぁに、それ」

コナン「光彦の痛覚を3000倍にするスイッチだ」

歩美「さすがアガサ博士! いいもの作るぅ!」

コナン「まずはこれを押す」ポチ

コナン「それでこのバットで光彦を」

光彦「ひぃ、や、止め」

コナン「強打だ!」バシィ

光彦「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ」

歩美「あははは、悲鳴あげてるよ、マジうけるー♪」

コナン「じゃあ今日は光彦を痛めつけて遊ぼうぜ」

歩美「賛成ぇ!」

元太「うな!」

エスデス「何だ……これは」

ウェイブ「さっきまで仲良しグループだったのに、一体どうなって」

クロメ「それだけじゃない。不自然なのは周りの様子」

ボルス「下校途中の他の生徒もまるで気にならないように無視をしているなんて」

ラン「高木さん、あなたはこのことを知っていたのですか」

高木「知ってましたけど、それが何か?」

ラン「これは明らかに度が過ぎたイジメです。大人として何故止めようと思わなかったのですか」

高木「だってあれは光彦ですよ」

エスデス「何……?」

セリュー「その光彦というのは何か悪いことをしたのでありますか」

高木「いや悪いとかじゃなくて、光彦なんですって」

クロメ「あなた一体何を言ってるの?」

高木「光彦である以上はあの程度の仕打ちは当然じゃないですか」

ウェイブ「どうなってんだよ。さっきまで高木さんはまともな刑事だったのに」

ボルス「まるで人が変わったみたいになっている」

スタイリッシュ「完全な異常者だわ」

ラン「子供を守るべき大人であるあなたが、一体何をしているんですか」

高木「何を言ってるんすか、だって光彦なんですよ」

ラン「ですから彼は具体的に何か悪いことをしたわけではないのでしょう」

高木「だぁから光彦なんですよ。光彦なら殺されて当然でしょう」

ラン「殺されても、当然っ!? あなたは子供を何だと思ってる!」

高木「別にいいでしょう、光彦なら」

エスデス「堂々巡りだな。こいつに何を言っても無駄だ」

エスデス「とりあえず、その光彦とやらの事情を聞くか」

エスデス「私としては痛覚3000倍の拷問とやらにも非常に興味があるのだが仕方ない」

エスデス「ウェイブ、奴が死ぬ前にあのガキ共から引きはがしてこい」

ウェイブ「そんなことする必要ないでしょう。だって光彦ですよ」

クロメ「……ウェイブ?」

ウェイブ「あ、あれ? 俺は何を言って」

エスデス「訳の分からんことを。もういい、セリュー、お前がやれ」

セリュー「しかし隊長、光彦は悪であります。そんな奴助ける必要は……え?」

エスデス「ちぃ、これはまさか」

ラン「間違いありません。私たちは既に何者かの攻撃を受けています」

エスデス「こちらの精神に浸食し書き換える帝具か」

エスデス「似たような経験がないわけではないが、やはり不快な感覚だ」

ウェイブ「未知の帝具による攻撃ですか」

エスデス「スタイリッシュ、何か心当たりはあるか」

スタイリッシュ「帝具については知りませんが、さっき小娘の一人が言っていたアガサという名前聞き覚えがあるわ」

セリュー「どのような人物なのでありますか」

スタイリッシュ「認めるのは悔しいけど、あの男はあたしを上回る技術力を持った科学者よ」

スタイリッシュ「でも何よりも厄介なのは、奴が内に秘めたその狂気」

スタイリッシュ「具体的にどのような研究をしているか分からないけれど、それが完成したら最後、帝都どころかこの世界そのものを滅ぼしかねないわ」

クロメ「そんな危ない男なら暗殺部隊のリストに載ってもおかしくないけど」

スタイリッシュ「記録上彼は既に死亡扱いになっていたわ」

ラン「なるほど、偽装死体ですか」

スタイリッシュ「そのようね。ダミーの死体を用意して、この街に潜み着々と研究を続けていたみたい」

ボルス「こうやって攻撃してきたってことは既に研究は」

スタイリッシュ「最終段階に入ったようね」

ウェイブ「何としても止めないと」

エスデス「一方的にやられるのも不愉快だ。反撃に出るぞ」

アガサ邸


セリュー「家の中には誰もいないようであります」

ボルス「やっぱり、もう逃げちゃったのかな」

ラン「いえ、そういうわけでもないようです」

エスデス「地下室への入り口が開いているな」

ウェイブ「隊長、これは明らかに罠です」

エスデス「だからこそ、あえてそれに乗る」

エスデス「罠を張るということは、その先に獲物が待ち構えているということだ」

エスデス「小細工など踏みつぶして進めばいい」

エスデス「とはいえ今のところ罠らしいものは、むっ」

クロメ「別れ道、こちらを分断するつもりです」

ラン「バラバラになるのは得策ではないと思いますが」

エスデス「だからといって獲物を取り逃がすわけにもいかん」

エスデス「二人一組に分かれて行動する」

エスデス「組み合わせはセリューとスタイリッシュ、クロメとウェイブ、ボルスとランで行く」

エスデス「私は一人で問題ない」

セリュー「了解であります。ドクター行きましょう」

スタイリッシュ「頼りにしてるわよ、セリュー」

ウェイブ「安心しろよ、クロメ。いざって時は俺がお前を守って」

クロメ「早く行くよ、ウェイブ」

ウェイブ「お、おう」

ラン「室内での戦闘は不得手ですので、奥の手を使うことも視野にいれなければいけませんね」

ボルス「私の帝具も屋内での戦闘向きじゃないけど、精一杯サポートするから」

エスデス「それでは行動開始だ。速やかに敵を殲滅しろ」

一本目の道


キャンティ「このオカマとガキがあたいたちの相手?」

コルン「油断するな。この小娘どもは普通じゃない」

キャンティ「まあいいけどさー」

セリュー「悪共がごちゃごちゃとやかましい」

セリュー「コロ、1番」

セリュー「」ガブリ

キャンティ「あのガキ、自分の体を改造してるのか」

セリュー「正義秦広球……!」

セリュー「まずは一人……何っ!?」

キャンティ「改造を受けているのが自分だけだと思ったのかい」

セリュー「まさか……!」

キャンティ「そうさ。あたいたちもあのお方の手によって体を改造されてるんだよ」

キャンティ「そんな鉄球、あたいのチタン合金の体に通用しないね」

セリュー(これ以上の威力となれば6番や7番だけど、こんな狭い部屋で使ったら生き埋めになる)

セリュー(私はともかくドクターまで巻き添えにすることはできない)

コロ「きゃうううう」ドス

コルン「ふん、他愛もない。これならコアもすぐに見つかるだろう」

セリュー「コロ……!」

キャンティ「よそ見してる暇があるのかい!」ドス

セリュー「ぐぅ、く、悪の攻撃に屈するものか」

キャンティ「このガキ、あたしの攻撃を受けた上で足を掴んで」

セリュー「おおおおおおおおお!」ドン

キャンティ「ひひ、無駄さ。例えコンクリートの壁に叩きつけられようと、チタンの体を持つあたしはダメージを受けない」

キャンティ「あんたに勝ち目なんてないのさ!」


二本目の道


ラン「部屋にいるのは女性が一人ですか」

ベルモット「あら、中々いい男じゃない」

ボルス「アガサって人は男らしいから、ここは外れみたい」

ラン「二対一ですが手加減はしませんよ」

ベルモット「悪いけどあなたたちじゃ私には勝てないわ」ボン

ボルス「これは煙幕!?」

ボルス「前が見えない。でもラン君の帝具なら煙を払えるはず」

ラン「」

ボルス「ラン君?」

ラン「」ニヤリ

ボルス「かはっ、な、何で、私をナイフで」ザク

ラン?「あら、まだ気づかないの」

ボルス「なっ! 声が女の人に」

ラン「ボルスさん、それは私じゃありません!」

ベルモット「今更気づいても手遅れだわ」

ラン「くっ、マスティマ!」ジャキジャキ

ベルモット「ふふ」ボン

ボルス「また煙幕をっ!」

ラン「二度も同じ小細工は通用しません」

ラン「煙を吹き飛ばします」バサバサ

ボルス「」

ボルス「」

ラン「くっ、今度はボルスさんに変装を!」

ボルス「ラン君、私が本物だよ、こっちに攻撃を」

ボルス「違うよ、ラン君、こっちが偽物だよ」

ラン(容姿や声、口調どころか傷の位置まで同じですか)

ラン(どうやら思った以上に厄介な相手のようですね)

三本目の道


ウェイブ「男が二人、どっちかがアガサなのか」

クロメ「違うよ、ウェイブ。ドクターの話だとアガサは中年の小太り男」

クロメ「大柄な方はそれと類似してなくもないけど細かい特徴が異なる」

ジン「その通りだぜ、嬢ちゃん。あのお方はここにはいねえ」

ウォッカ「へへ、誰が来るかと思えばガキが二人ですかい」

ウォッカ「こりゃ楽な仕事になりそうですぜ」

ジン「ところがだ、あの小娘は暗殺者で小僧は軍人ときたもんだ」

ウォッカ「えーー! マジですかい」

ウォッカ「人は見かけによらねえもんですね」

ジン「とはいえ相手は所詮ガキだ。漆黒の猟人である俺の敵じゃねえ」

ジン「奴らは所詮、似非の猟人なのさ」

ウェイブ「言わせておけば……!」

ジン「二対二だから互角、だなんて思ってないだろうな」

ジン「悪がガキの遊びに付き合う暇はねえ」

ウォッカ「なら兄貴、どのぐらいで終わらせます」

ジン「3分。それで十分だ」

クロメ「なら私は30秒で終わらせてあげる」

クロメ「ナタラ、ドーヤ!」ジャキ

ジン「ふん、これが八房。死体を操る帝具ってわけか」

クロメ「行って、二人とも!」

ウォッカ「チィ、小賢しい真似を」バンバン

クロメ「無駄だよ。死体人形は銃弾で頭を撃ちぬかれようが止まらない」

ウォッカ「く、くそ、この小娘自身も早い」

クロメ「まず一人」

ウォッカ「がはっ!」ザク

クロメ「次はあなたの番」

ジン「クク」ニヤ

クロメ「何を笑って?」

ウォッカ「」ズン

クロメ「え? 嘘、何で。あなたは仲間になんかしてないのに!」

ジン「答えは簡単、ウォッカは死んでないのさ」

クロメ(この距離じゃナタラもドーヤも間に合わないっ!)

ウォッカ「まずは一人仕留めましたぜ、兄貴」

ウェイブ「グランシャリオォォォォォォォォォ!」

ウォッカ「」ドス

ウェイブ「大丈夫だったか、クロメ」

クロメ「……ウェイブの癖に」

ウォッカ「」ムク

ウェイブ「あの一撃をモロにくらって立ち上がれるのか!」

クロメ「傷が再生してる。まさか、あれは」

ジン「そうだぜ、ようやく気づいたか」

ジン「ウォッカは帝具人間なのさ」

ジン「死者を操る八房も帝具を操ることはできねえだろ」

ウォッカ「そういうことだ、嬢ちゃん」

ウォッカ「あんたの攻撃は俺にはきかねえ」

クロメ「それなら残りの死体人形を総動員して数で攻めるだけ」

ジン「くく、そうだな。デカブツはともかく、他はこの場で展開できるからなぁ」

ジン「それをされれば、流石に分が悪い」

ジン「あのお方もエスデスの次にお前の八房を警戒していたさ」

ジン「だからこそ、このスイッチを作った」

ジン「この『クロメが一時的に八房で死体人形を操れなくなるスイッチ』をなっ!」ポチ

クロメ「嘘っ! ナタラ、ドーヤ!」

ジン「邪魔な死体人形は消えた。これで二対二に戻ったな」

ジン「さて、あと2分か。さっさと終わらせるとするぜ」

四本目の道


アガサ博士「待ちかえねておったぞ、エスデス将軍」

エスデス「この道が当たりだったというわけか」

アガサ博士「それは違うぞい」

アガサ博士「どの道を選ぼうが最終的に君はわしの元へ来ていたのじゃ」

エスデス「ほう、室内の構造を操作することができるのか」

アガサ博士「その通りじゃわい。道を入れ替えて、イェーガーズ全員が相性の悪い相手とあたるように仕組んだんじゃ」

アガサ博士「すぐに全滅するぞい、君は部下は」

エスデス「私の部下に貴様の手下ごときに負けるような弱者は一人もいない」

アガサ博士「カッカッカ、大した信頼じゃわい」

アガサ博士「まあいい。それよりも君はどこまで真相を掴んどる」

エスデス「大体の察しは既についているさ」

エスデス「まずコナンという少年の周りで連続して事件が起こること。これは明らかに不自然だ」

アガサ博士「何故?」

エスデス「事件が起こってから現場に向かうのならば説明はつくが、資料によれば江戸川コナンの行く先々で事件が起こっていたらしい」

エスデス「となると考えられる可能性は、江戸川コナン本人が事件を起こしているか、或いは帝具かそれに類する力で事件が起こされていたということ」

アガサ博士「ザッツライト! 正解じゃよ」

アガサ博士「わしが作った『江戸川コナンの周りで事件が起こるスイッチ』によって、あの現象を引き起こしておったのじゃ」

エスデス「そうなると、江戸川は道化だったということになる」

エスデス「毎回事件を解決しているらしいが、それも貴様の仕業か」

アガサ博士「そうじゃよ。わしが『江戸川コナンが事件を解決するスイッチ』を使用して犯人を暴き出していたんじゃ」

アガサ博士「何故、そんな回りくどいことをしたのか。その目的は」

エスデス「生贄、だろ」

アガサ博士「コングラッツレイショーン! 素晴らしい推理じゃ」

アガサ博士「事件によって人が死ぬことによって、その生命エネルギーを集めていたんじゃよ」

アガサ博士「装置で誤魔化していたとはいえ、迷宮入りが続いてはあの小僧が疑われかねんからのう」

アガサ博士「わざわざ解決させてやったわけじゃわい」

アガサ博士「そして一定のエネルギーが集まったことによって、計画は次の段階へシフトした」

エスデス「その犠牲になったのが光彦という少年か」

アガサ博士「作用。これまで集めたエネルギーの一部を使用して街の人間を操る装置を作り、光彦君のクローンを殺し続けることによって、より効率よくエネルギーを集めることにしたのじゃ」

エスデス「あの精神干渉は帝具ではなく貴様の発明品だったのか」

アガサ博士「そうじゃ。君たちのような帝具使いならともかく、並の人間ならすぐに操れたぞい」

アガサ博士「もっともその副作用で元太君のように池沼になるものも出たようじゃがのう」

エスデス「私たち相手に喧嘩を売ったということは、エネルギーを集める算段がついたということだな」

アガサ博士「そうじゃ。イェーガーズを全滅させることによって、必要量のエネルギーは満たされる」

エスデス「その力で貴様は何を望む」

アガサ博士「わしの目的は破壊と創生じゃよ」

アガサ博士「まずこのエネルギーで世界中の全ての人間を滅ぼす」

アガサ「人種に関わらず一人残らずな」

アガサ博士「とはいえ滅びを免れる人間、例外はおる」

アガサ博士「わしの子を産むために必要な人間じゃ」

アガサ博士「わしの気にいった女だけは生かしておいて、わしの遺伝子を持つ子供を産む道具にしてやるぞい」

アガサ博士「わしは歩美や哀のような体形の女が好みなんじゃが、君はかなりの美人」

アガサ博士「ストライクゾーンからは大きく外れるが出血大サービスじゃ」

アガサ博士「エスデス、首を垂れわしの女になるなら生かしておいてやってもいいぞ」

エスデス「それが貴様の遺言か」

アガサ博士「君はそう言うと思っておったよ」

エスデス「当たり前だな。そもそも状況が分かっているのか」

エスデス「貴様は科学者としては優秀らしいが、戦闘能力では私に大きく劣る」

エスデス「ただでは殺さん、たっぷりと拷問した上で己の発言を詫びさせてやる」

エスデス「首を垂れるべきは私ではなく貴様だ」スッ

アガサ博士「」ニヤリ

エスデス「……何故だ、何故私の帝具が発動しない!」

アガサ博士「この部屋、暑いとは思わんか」

エスデス「まさか、これが」

アガサ博士「そうじゃ。既にわしの帝具は展開されているのじゃよ」

アガサ博士「わしの帝具の領域では全ての水、氷系の帝具は発動不能になる」

アガサ博士「それは君の魔神顕現デモンズエキスとて例外ではない」

アガサ博士「これがわしの奥の手その1じゃ」


アガサ博士「続いて奥の手その2。『エスデスの痛覚を5000倍にするスイッチ』」

エスデス「ぐっ……!」ズキ

アガサ博士「ふひひ、そしてとっておきの奥の手その3『エスデスの痛覚全てを快楽に変換するスイッチじゃ』」

エスデス「っ……!」

アガサ博士「ほうほうほう。それでまだ立っていられるか。素晴らしい精神力じゃな」

アガサ博士「とはいえ、この状態でこの鞭をくらったらどうなるかのう」

エスデス「貴様ッ!」

アガサ博士「ぐふふ、すぐにわしの女にしてやるわい」

一つ目の部屋


セリュー「正義宋帝刀!」

キャンティ「だから無駄だってんだろう」ガキン

キャンティ「そろそろ終わりにしようじゃないかい」

コルン「こちらも片がつきそうだ」

コロ「きゅう」グッタリ

キャンティ「ひゃひゃひゃははは、これで勝負ありだよ!」

スタイリッシュ「そうね、勝負ありだわ」

キャンティ「何?」

キャンティ「貴様、何を言って」

キャンティ「!?」

キャンティ「か、体が動かない……!」

コルン「むう、これは」

キャンティ「まさか毒か……!」

スタイリッシュ「ようやく気づいたのね」

スタイリッシュ「でも残念、もう手遅れよ」

スタイリッシュ「いかにチタンの体を持っていようが毒を防ぐことはできないわ」

キャンティ「だ、だが、その小娘は何故動ける!」

スタイリッシュ「当たり前じゃない。セリューはあたしの改造を受けてるのよ」

スタイリッシュ「あたしの毒で動けなくなるわけがないじゃない」

セリュー「さすがドクター! そんな奥の手があったのですね」

スタイリッシュ「動けなくなればこっちのものよ。さあセリュー、トドメを刺しなさい」

セリュー「コロ! 5番」

キャンティ「ド、ドリル、まさかそれを上から」

セリュー「粉々に砕け散れ悪が! 正義閻魔槍!!」

キャンティ「ぎゃ、ぎゃあああああああああああああああああああああああああ」グシャ

コルン「待て、降参する。だから命は」

セリュー「悪に情けは無用」

セリュー「正義執行……!」ドス

コルン「」グシャ

二つ目の部屋


ベルモット(これであの坊やは私と仲間の区別がつかないはず)

ベルモット(あとは混乱している隙を突いて坊やを始末)

ベルモット(これでこちらの煙幕に対処できる者はいなくなるわ)

ベルモット(そうなれば後はこっちのもの)

ベルモット(大男を始末するのも容易いわね)

ベルモット(どれだけ見ようと私の変装を見抜くことは)

ラン「ボルスさん、マスクを外してください」

ベルモット(何ですって!?)

ベルモット(情報によれば、この男は人前でマスクを外すことはできなかったはず)

ベルモット(当然、仲間にも素顔を見せたことがないと思ってたのに)

ベルモット(私はこの男の顔を知らないから変装することができない!)

ベルモット(どうするっ!)

ボルス「わかったよ、ラン君」

ベルモット(なら、マスクをとった瞬間に煙幕を)

ラン「させませんよ!」ジャキジャキ

ベルモット「て、手に羽根があああああああああああああああ」ザクザク

ベルモット「わ、私がこんな坊やに」

ラン「今です、ボルスさん」

ボルス「ルビカンテ!!」ゴオオ

ベルモット「」メラメラ

ラン「何とか勝利できましたが、強敵でした」

三つ目の部屋


ジン(勝った! 厄介なクロメを完全に封じ込めた)

ジン(ウェイブとかいう小僧は所詮田舎者)

ジン(警戒するには値しねえ)

ジン「そらウォッカ、突撃だ!」

ウォッカ「へい、兄貴」

ジン(ウォッカはコアを破壊されない限り何度でも再生する)

ジン(八房が封じられた今、奴らに勝機はねえ)

ジン「なっ、何、小僧が飛びあがっただと」

ウェイブ「グランフォール……!」

ウォッカ「ぐおおおおおおおおおおおおおおお」ドン

ジン「馬鹿な、ここまでの威力のある攻撃を」

クロメ「見えた、左わき腹にあるのが、あの帝具人間のコア」

ウェイブ「帝具人間の相手は俺がする。クロメは術者を」

ジン「ちぃ、ウォッカと引き離されたか」

クロメ「これで一対一だね」

ジン「クク、いい目をしてるぜ、小娘」

ジン「この世界の闇を知っている目だ」

クロメ「」シッ

ジン「クッ、速ええな」

クロメ「」ジャキ

ジン「俺も齢をとったか、小娘に遅れをとるたあな」タッ

ジン「だがあまり舐めて貰っちゃ困るぜ」バンバン

クロメ「くっ」カキン

ジン「そこだ! この勝負、俺の勝ちだぜ」バン

クロメ「」

ジン「何っ、残像だと!」

クロメ「」ジャキ

ジン「かはっ!」ザクリ

ジン「ふっ、いい斬撃だ」

ジン「あの男以外で俺を興じさせる奴がいるとはなぁ」

ジン「世の中、分からねえもんだぜ」バタリ

博士の地下部屋


アガサ博士「快楽5000倍じゃ。もう動くのもきつかろう」

アガサ博士「わしがすぐにこの鞭で楽にしてやるからのう」

アガサ博士(仮にこの鞭を躱せたとしても、その際に体にかかる負担は測りしれん)

アガサ博士(どの道、これでチェックメイトじゃ)

アガサ博士「強者が上に立つのが君の理論なのじゃろう」

アガサ博士「なら、この場の強者はわしじゃわい!」ヒュン

エスデス「っ……!」バシ

アガサ博士「ひゃっはー、鞭が直撃じゃわい!」

アガサ博士「これでもうまともに動けんじゃろう」

アガサ博士「どれ、新世界誕生祝いに奥の部屋でお楽しみタイムじゃ」

エスデス「その貴様の迂闊な一歩を、待っていた」

アガサ博士「え……?」バシャリ

アガサ博士「う、腕が、わしの腕があああああああああああああああああああああああああああ!」

アガサ博士「ば、馬鹿な、5000倍だぞ、5000倍の痛覚を快楽に変換されてるのに、こいつは」

エスデス「」グシャリ

アガサ博士「あああああ、スイッチが踏みつぶされて!」

エスデス「さて」ニヤ

アガサ博士「ひっ」

エスデス「豚のような悲鳴をあげろ!」ジャキ

アガサ博士「ひぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」ザクリ

アガサ博士「こ、こんなはずが、新世界の神になるはずのわしが」

エスデス「なるほど、スタイリッシュの言う通り貴様は優秀な科学者だったよ」

エスデス「痛覚の倍増に快楽への返還。中々面白い体験をさせてもらった」

エスデス「だが足りんな。この程度で私を染められると思ったか」

アガサ博士「ま、待てえええええええええ、分かった」

アガサ博士「君をわしの正妻にしてやる!」

アガサ博士「他の小娘どもは愛人で、君は正妻じゃ」

アガサ博士「だから、ここは見逃してくれ!」

アガサ博士「わしと新しい世界を」

エスデス「興味がないな」バシャリ

アガサ博士「」ゴロリ

エスデス「自らの遺伝子を持つ子供を地上に放つ貴様の支配はさぞや完璧なものなのだろう」

エスデス「争いごとが起きることのない世界が作られるわけだ」

エスデス「そんな世界はこちらから願い下げだよ」

エスデス「それに、貴様は私の好みからかけ離れすぎている」

エスデス「私の好みに合う男がどこかにいないものか」

ラン「隊長、無事でしたか」

エスデス「ランか、それにボルスも」

セリュー「こちらも敵を撃破したであります」

ウェイブ「俺達の方も終わりました。どうやら全員無事に、なっ!」

エスデス「むっ、地面が揺れているな」

エスデス「なるほど、アガサめ。自爆装置を仕込んでいたか」

エスデス「自らの身になにかあればその研究諸共、地下施設を倒壊させる」

エスデス「厄介なものを用意しているじゃないか。大臣への手土産は諦めた方がよさそうだ」

スタイリッシュ「奴の研究成果を見られないのは残念ではあるけど、そのやり方は間違いなくスタイリッシュだわ」

エスデス「私の帝具なら崩壊を遅らせることはできるから、その間に退避するとしよう」タタタ

後日


大臣「そうでしたか、アガサの研究施設は完全に倒壊してしまいましたか」

エスデス「あれを掘り起こすのは誰にもできなかろうよ」

エスデス「残念ならが奴の研究は地下の底に葬られたわけだ」

大臣「いえいえ、エスデス将軍は見事に事件の主犯を討伐しました」

大臣「報酬はいつも通り軍へ送るとして、それ以外に何か褒美を望まれますかな」

エスデス「ふむ、そうだな」

エスデス「そう言えば大臣、私の指定した条件に合う男は見つかったか」

大臣「いえ、それはまだですが」

エスデス「ならば丁度いい、今度武芸大会を開くことにする」

エスデス「そこでなら条件に合う男が見つかるやもしれん」

大臣「分かりました。すぐに準備させましょう」


武芸大会にて氷の戦姫は運命の相手と邂逅を果たす

その先にあるのは恋か死か

美しき氷姫の運命の歯車は音を立てて動き始めた

これで完結です。アカ斬るとコナンの謎クロスssでした。

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