女「いやいや、ありえないでしょ!?」 男「何がだよ!?」(30)

女「普通さぁ、女の子に勝たせて花を持たせようとは思わないわけ?」

男「だったら女も、もう少し頑張ってくれよ!!これでも、それなりに加減したんだぞ!?」

女「それでも平均スコアが180とかありえないでしょ!!あんたは、私に限界を超えろとでも言いたいの?」

男「だったらなんで、ボウリングに行きたいって言ったんだよ…。他にも場所はあっただろうに…」

女「うるさいわね。もうボウリングはいいわ。次行くわよ!」

男「えぇ~。次行っても、もう勝負はしないぞ?」

女「はぁ?何言ってんの?あんたに拒否権はないんだけど?」

男「いや、だってお前、何やっても俺に勝てないじゃん」

女「次こそ勝つから今に見てなさい!余裕でいられるのも今のうちなんだから!ほら、行くわよ!!」

男(どうしてこうなったかな?最後の思い出として、女に楽しんでもらいたかっただけなのに)

~~~ビリヤード場~~~

女「さっ、次はこれで勝負よ!!」

男「ビリヤードって…。大丈夫か?」

女「ムカつくわね、その余裕な態度」

男「けっこう…いや、かなり難しいぞ?」

女「フンッ!やってみなくちゃ分からないでしょうが!!」

男「ルール…知ってる?」

女「1から順番に落としていけばいいんでしょ?それくらい知ってるわよ!」

男「ん~まぁ、いいや。じゃあ単純なナインボールでやるか…」

女「私が先攻ね。決定事項だから!」

男「ん~まぁ、いいや。じゃあ単純なナインボールでやるか…」

女「私が先攻ね。決定事項だから!」

男「ブレイクショットできんのか?」

女「ブレイクショットって何?」

男「えぇ~!!?それで先攻とか言ったのかよ…」

女「で、ブレイクショットって何なのよ?教えなさいよ」

男「ブレイクショットってのは、こんなふうに真ん中に並んでるボール目掛けて打ってばらつかせる=ブレイクすることを言うんだよ」

男「実際にやってみるとこんな感じ」バコン

女「ふ~ん、テレビのマジックとかでよく見かけるのをブレイクショットって言うのね」

男「まぁそういうこと。理解できた?」

女「バカにしないでくれる?見たら誰でもできるでしょうに」

男「ほぅ、言ったな?じゃあ実際にやってもらおうか…」

女「ふ~ん、テレビのマジックとかでよく見かけるのをブレイクショットって言うのね」

男「まぁそういうこと。理解できた?」

女「バカにしないでくれる?見たら誰でもできるでしょうに」

男「ほぅ、言ったな?じゃあ実際にやってもらおうか…」

女「やり方さえわかれば、人間誰でもできるわ」スッ

女「こうして、狙いを定めて…打つ!!」バコン

女「どう?上出来でしょ?」

男「ブレイクショットは…っな」

女「この調子で全部落として、あんたの番は回って来ないようにしてあげるから、そこで見てなさい」

男「さて、その位置から1が狙えるのかねぇ?」

~~~~15分後~~~~

女「なっ…なんで一個も落ちないのよ…」

男「この角度なら、右に0.83cm…上に0.456cm……強さはレベル3.78!!」バコン コロコロ~ガコン

女「っ!!ありえないでしょ!なんであんたばっかり落ちるのよ!」

男「角度と距離を読まないと、ただ闇雲に打っても落ちないぜ」

女「そんな難しいことが、初心者にできるわけないでしょう?」

女「あ~あ、何回やっても全く落ちないし全然楽しくないからもう辞める」スタスタ

男「おいおい、自分でビリヤードがやりたいって言ったのに、それはねぇだろ~」

~~~公園~~~


女「ハァ~、なんか今日一日全然楽しくなかったわ」

男「…………………」

女「こんなことなら、来なけりゃよかったな」

男「おい…そりゃねぇだろ?」

女「何が?今日一日色んな遊びやって、あんたに一度も勝てなかったし、楽しくなかった」

女「何も間違ってないと思うけど?」

男「っ…!お前な…俺がどんな思いで、今日お前と遊びに行こうって誘ったと思ってんだよ!」

女「自分は何でもできることを自慢して、私は何にもできないことを嘲笑うためでしょ?」

男「っ!!!!お前…本気で言ってんのかよ…!?

女「じゃあ他にどんな理由があるのよ。言ってみなさいよ」

男「そっ…それはだな………」

女「ほら、言えないんでしょ?だったら、さっきの理由しかないじゃない」

男「違う!そんな理由じゃない!!」

女「もういいわ。今日は本当に最悪の日ね…。気分悪いから、しばらくあんたの顔見たくないんだけど?」

男「…………………。最後の日でこれかよ…」ブツブツ

女「何か言ったかしら?」

男「………………。ハッピーエンドにはならないもんだな……」ブツブツ

女「じゃあ、私帰るから」スタスタ

男「………………。神様って不公平だよな…」ブツブツ

~~~帰宅後~~~


男「どこで、間違えたんだろうか…」

男「女に最後の思い出を、と思った最初から間違ってたのかな?」

男「ハハハ…俺がこの地にいられる最後の時間だってのに……」

男「喧嘩してお別れとはね……」

男「でも、これはこれで俺も未練なく、実家に帰ることができるのかな…」

男「そう考えると、何か気が楽になってきたや…」

男「案外、悪くない結果だな…」

~~~~同時刻~~~~

女「あ~あ、最っ悪!まだ気分悪いわね」

女「男が久しぶり誘ってくれたから、期待してたのに…」

女「まさか、自慢だけでなく、私を嘲笑ってくるなんて、嫌みの極みかしら」

女「顔見たくないって言ったけど、当分話したくもないわね…」

女「明日、女友に愚痴聞いてもらお~っと♪」

~~~翌日学校内~~~


男友「おっす~。昨日はどうだった男~?」

男「終わったね。喧嘩して解散したよ」

男友「なにやってんだよ!?思い出作りはどうしたんだよ!!?」

男「もういいんだよ。俺達の恋は、最初から結ばれることはない運命だったのさ…」

男友「いいのか?今日午前中には行っちまうんだろ?」

男「正確には、今日の午前9時からだけどな」

男友「男…お前……」

女友「ヤッホー♪お二人さん!男二人で何を話してたのかな?」

男友「あぁ、女友か…。男から昨日のことを聴いてたんだよ」

女友「そっかそっか、最後のデートだったね。っで?うまくいった?」

男「ご破算…とでも言えば良いかな」

女友「えぇ!!?なんでそんなことに?」

男「時期に女来るだろうし、あいつから聴いてくれないか?」

男「話すのも、うんざりしてんだ…」

女友「男君……」

男「じゃあ、俺職員室に行ってくるから」ガタッ

男「今までありがとう。男友、女友…」

男「二人と親友になれて良かったよ」

女友「男く~ん(泣)」グスッ

男友「ちきしょう!なんか、お前ともう二度と会えないみたいな言い方すんじゃね~よぉ(泣)」ゴシゴシ

男「ハハ…大袈裟だな二人とも……」

男「本当にありがとな!じゃ!!」ガラガラ

女友「行っちゃったね……」

男友「あいつは本当に良い奴だったよ…」

女友「神は言っている…これでお別れではないと…」
男友「ククッ」

女友「アハハハ」

ガラガラ

女「おっは~」

男友「……!!」

女友「女…」

女「二人して笑ってたみたいだけど、なんか面白いことあった?」

男友「……………」

女友「女…あんた…」

女「??」

女「どうしたの?」

女友「何でもないよ……」

女「まぁいいや。それよりも聞いてよ女友~」

女友「!!………何を…?」

女「昨日さぁ、久しぶりに男に遊びに行こうって誘われたんだけどさ」

女「全っ然楽しくなかったのよね~」

女友「…………」

男友「…………」

女「ボウリングとかダーツとか色んなとこ行ったんだけど、男が本気出すからどれも勝てなくて楽しくなかったの」

女友「まさか…あんた男君に勝負で勝てなかったから楽しくなかった、なんて言ってないよね…?」

女「言ったけど?」

女友「………………」

男友「でもさ、昼飯とかは奢ってくれたりしたんだろ?」

女「まぁ、確かにジュースが飲みたいとか言ったら、すぐに買ってきてくれてたりしたかな?」

女友「あんたは、それでも楽しくなかったなんて言ったの?」

女「だから、理由を聞いたのよ。昨日誘ってくれた理由は何って?」

女友「……それで男君は何て?」

女「聞いても言わなかったから、『自分は何でもできることを自慢して、私は何にもできないことを嘲笑うためでしょ?』って言ってやったわ」

男友「っ!!」

女友「……何てことを……」

女「こう言ったら本当の理由を言ってくれると思ってたけど、それでも言わなかったから、しばらく顔見たくないって言って帰ったわ」

女友「…なっ!?」

男友「男もなんでそこで言わないんだよ…」ボソッ

女「ね?何かおかしいとこある?どう考えても、私のことを何も分かってくれてない男が悪いと思わない?」

男友「…………………」

女友「………ない……」スタスタ

女「えっ?聞こえなかったんだけ…」バシッ

女「っ痛!!??」

女「えっ!??何で私、ぶたれたの?」

女友「……分かってない…………」

女「えっ!?えっ!?何が!?」

女友「分かってないのは、女の方だよ」

女「えっ!?ど…どういうこと!?」

女友「男君が昨日、どんな思いで女を遊びに誘ったと思ってるの!!?」

女「いやだって、何も言ってくれなかったし…」

女友「男君はね、今日の9時から実家に帰らなきゃいけないから、最後くらい女に良い思い出をと思って誘ったのよ」

女「はっ…?男が…実家に……帰る……?」

女友「そうだよ!おじいさんの跡を継いで獣医士を目指すってね」

女「そんな……私聞いてない……」

女友「あんた淋しがりだから、言いたくても言えなかったんだよ」

女「じ……じゃ……昨日……私は……」

女友「言い方悪いかもしれないけど、自分の我が儘を主張しただけだよ」

女「………ぅ………」

男友「さらに追い撃ちをかけるようになるが、昨日の女ちゃんの態度で、男は実家に帰る決心がついたんだろうな」

女「!!!!えっ…それって……どういう……こと……?」

男友「男の奴さ、俺達に言ってたんだよ。『明日、女がどう思ってくれてるかで帰るかどうか決める』って」

女「そ……それ……じゃあ……私が……我が儘…言わなかったら……」

男友「思い止まったかもしれない…な。そこは何とも言えないけど」

女「………うぅ…」

女友「あっ!そういえば、そろそろ出発の時間じゃないかな…」

女「…えっ!?」

男友「そうだな…。確か9時45分の新幹線に乗るって言ってたっけか?」

女「どこの駅で!?」

男友「京都駅の北口改札からって言ってたかな…」

女「!!」ガタッ、ダッ

女友「行っちゃった…」

男友「さて、この先何が起ころうとも、俺達はただ行く末を見守るだけだ…」

女友「うん」

~京都駅 9時30分~

男「さてと、あと15分は暇だな~」

男「フッ……これでこの地ともお別れか…」

女「男!!」ゼェゼェ

男「っ女!?」

女「ゼェ…まっ…間に合った…ゼェ」

男「どうしてここが分かったんだ?」

女「女友たちに教えてもらった」ハァ…ハァ…

男「なるほど……。で、わざわざ見送りに来てくれたわけだ」

女「見送りじゃない!!」

男「じゃあ、何で来たの?」

女「……ごめんなさい。」

男「何で謝るの?」

女「私、男が実家に帰るなんて知らなかったから、昨日は我が儘ばかり言って、男の気持ちも考えないで………」

女「だから、ごめんなさい」

男「別にいいよ、もう何とも思ってないからさ…」

女「ね…ねぇ……本当に帰るの…?実家に……?」

男「ああ、決心はついたからね…」

女「やっぱり…私のせいで…」

男「それも聞いたのか……」

女「………ないで………」

男「ん?」

女「帰らないでよぉ~(泣)」グスッ

男「……」

女「嫌だよぉ~…エグッ…男ぉ~…ウグッ…帰っちゃやだよぉ~…ヒグッ」

男「…残念だけど……もう帰るって決めたから……」

女「…ヒグッ…お願いだから…エグッ…考え…直してよぉ…ヒグッ」

男「……俺は決めたんだ…」

女「ゥゥ……男が帰っちゃったら……私は何のために……今まで……頑張ってきたの……?」

男「何を頑張ったの?」

女「男が、『家事が上手な人と結婚したい』って言ってたでから」

女「私は、男に相応しい奥さんになれるように今まで頑張ってきたんだよ」

男「そういえば、そんなこと言ってたっけ…」

女「それに男は私に言ってくれた。『今は無理かもしれないけど、いつか女が変わってくれる日を信じて待ってる』って」

女「だから、私はその言葉を信じて変わろうと頑張ったんだよ」

男「その言葉、覚えててくれてたんだ…」

女「だけど、男がちっともその気を見せてくれないから、つい不安になって…」

女「男にきつく接してしまうことが多くなったの…」

男「なるほど……。ハッキリしない俺にも非があったわけか…」

男「………。だけど、昨日のうちにその言葉を聞きたかったな」

女「昨日はあまりにも男との勝負に勝てなかったから……つい……」

女「昨日のことについては、ちゃんと謝る。だから…もう一度、考え直してよぉ~」

男「………………遅かったよ……。昨日、女からその言葉を聞いていたら、思い止まったかもしれないけど…もう、後戻りはできないよ…」

女「男ぉ~~」グスッ

男「それに女には、俺なんかよりもっと相応しい奴がいると思う」

女「男以外にそんな人なんかいるわけないよぉ~」

女「お願いだよぉ~、行かないでよぉ~」

男「………………」

プルルルルルルルルル

アナウンス「まもなく、3番乗り場に、新快速列車青森行が参ります」

男「……電車が来たみたいだ……」

女「待って男ぉ~~」ガシッ

男「……ごめん、悪いけど行かなくちゃ」グッ

女「行かないでぇ~」ギュウ

男「それはできない」グイッ

女「ウゥ~~~」ポロポロ

男「さよなら…女……」

プシュー バタン

プルルルルルルルルル

女「…ウゥ……男ぉ~…………男ぉ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛~~~~~~~~~~~!!!!!!!」
女「ァ゛~~~~~」ボロボロ

~~~~列車内~~~~

男「……………」

男「これでいいんだ…」

男「これで……」

男「さようなら、○高校…」

男「さようなら、俺の親友たち…」

男「さようなら、俺の初恋…」

fin

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